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特表2024-538787ヒトTRPV6チャネルの細胞外エピトープに対する抗体並びにこれらの診断的及び治療的使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ヒトTRPV6チャネルの細胞外エピトープに対する抗体並びにこれらの診断的及び治療的使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20241016BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20241016BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20241016BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241016BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20241016BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
C07K14/705
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61P35/02
A61P15/00
A61P1/18
A61P13/08
A61P1/00
A61P5/14
A61K39/395 N
A61K39/395 T
G01N33/574 A
G01N33/531 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522356
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078728
(87)【国際公開番号】W WO2023062226
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21306438.9
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ノニデット
2.TWEEN
3.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】518057608
【氏名又は名称】ユニベルシテ・ドゥ・リール
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンスティチュート、ナシオナル、ドゥ、ラ、サンテ、エ、ドゥ、ラ、ルシェルシュ、メディカル
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DELA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナターリャ・プレヴァルスカヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヴャチェスラフ・レーヘンキー
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン・オストラート
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC23
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ヒト一過性受容体電位バニロイド6(TRPV6)チャネルタンパク質の細胞外エピトープに対する抗体、特には、細胞膜上でTRPV6チャネル活性を調節し、これによりTRPV6を発現するがん細胞のアポトーシスを引き起こす抗体に関する。また、本発明は、TRPV6チャネルに関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの診断、予後予測、及び治療のための、この抗体の使用に関する。本発明は、この抗体の生成に有用なヒトTRPV6タンパク質由来のペプチド抗原に更に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のhTRPV6タンパク質の細胞外エピトープに結合する、ヒトTRPV6チャネルタンパク質に対する抗体。
【請求項2】
エピトープが、グリコシル化されていない、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号16又は14から選択されるヒトTRPV6の第3の細胞外領域由来のエピトープに結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号3~5、7、及び8のいずれか1種から選択され、好ましくは、配列番号3、7、及び8のいずれか1種から選択される、ヒトTRPV6の第1の細胞外領域由来のエピトープに結合する、請求項2に記載の抗体。
【請求項5】
ヒトTRPV6チャネルの活性を調節する、請求項1から4のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項6】
TRPV6発現がん細胞の増殖を、好ましくは、前記細胞のアポトーシスを誘導することにより、阻害する、請求項1から5のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項7】
配列番号27のVH-CDR1、配列番号28のVH-CDR2、及び配列番号29のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号17のVL-CDR1、アミノ酸配列LVSのVL-CDR2、及び配列番号18のVL-CDR3、又はこれら機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDRを含む、請求項4、5若しくは6のいずれか一項に記載の抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項8】
a)配列番号49のVH-CDR1、配列番号50のVH-CDR2、及び配列番号51のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号38のVL-CDR1、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、及び配列番号39のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、又は
b)配列番号98のVH-CDR1、配列番号99のVH-CDR2、及び配列番号100のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号88のVL-CDR1、アミノ酸配列SDSのVL-CDR2、及び配列番号89のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR
を含む、請求項3、5若しくは6のいずれか一項に記載の抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項9】
a)配列番号118のVH-CDR1、配列番号119のVH-CDR2、及び配列番号120のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号108のVL-CDR1、アミノ酸配列YDSのVL-CDR2、及び配列番号109のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、
b)配列番号138のVH-CDR1、配列番号139のVH-CDR2、及び配列番号140のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号128のVL-CDR1、アミノ酸配列QDSのVL-CDR2、及び配列番号129のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、
c)配列番号158のVH-CDR1、配列番号159のVH-CDR2、及び配列番号160のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号148のVL-CDR1、アミノ酸配列GDSのVL-CDR2、及び配列番号149のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、又は
d)配列番号178のVH-CDR1、配列番号179のVH-CDR2、及び配列番号180のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号168のVL-CDR1、アミノ酸配列YDSのVL-CDR2、及び配列番号169のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR
を含む、請求項3、5若しくは6のいずれか一項に記載の抗体又はこの抗原結合断片。
【請求項10】
配列番号73のVH-FR1、配列番号70のVH-CDR1、配列番号74のVH-FR2、配列番号71のVH-CDR2、配列番号75のVH-FR3、配列番号72のVH-CDR3、及び配列番号76のVH-FR4、又はこれらの機能性バリアントを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号61のVL-FR1、配列番号59のVL-CDR1、配列番号62のVL-FR2、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、配列番号63のVL-FR3、配列番号60のVL-CDR3、及び配列番号64若しくは65のVL-FR4、又はこれらの機能性バリアントを含む軽鎖可変ドメインを含む、ヒト化モノクローナル抗体である、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列に対して配列番号34及び配列番号23の配列対との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項1、2、4、5、6、8のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項12】
重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列に対して次の配列対:配列番号56及び配列番号45又は46;配列番号77及び配列番号66又は67;配列番号105及び配列番号95又は96のいずれか1種との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含み、好ましくは、次の配列対:配列番号56及び配列番号45又は46;配列番号77及び配列番号66又は67のいずれか1種との少なくとも90%の同一性を有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項1から3及び5から7のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項13】
重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列に対して次の配列対:配列番号125及び配列番号115又は116;配列番号145及び配列番号135又は136;配列番号165及び配列番号155又は156;配列番号185及び配列番号175又は176のいずれか1種との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項1、2、3、5、6、9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項14】
重鎖配列及び軽鎖配列に対して配列番号35及び配列番号24の配列対との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖配列及び軽鎖配列を含む、請求項11に記載の抗体。
【請求項15】
重鎖配列及び軽鎖配列に対して次の配列対:配列番号57及び配列番号47;配列番号78又は80及び配列番号68;配列番号84又は86及び配列番号82;配列番号106又は107及び配列番号97のいずれか1種との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖配列及び軽鎖配列を含み、好ましくは、配列番号57及び配列番号47;配列番号78又は80及び配列番号68;配列番号84又は86及び配列番号82から選択される配列対との少なくとも90%の同一性を有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む、請求項12に記載の抗体。
【請求項16】
重鎖配列及び軽鎖配列に対して次の配列対:配列番号126又は127及び配列番号117;配列番号146又は147及び配列番号137;配列番号166又は167及び配列番号157;配列番号186又は187及び配列番号177のいずれか1種との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖配列及び軽鎖配列を含む、請求項13に記載の抗体。
【請求項17】
ポリクローナル又はモノクローナル抗体、特には、組換え、キメラ、及び/又はヒト化モノクローナル抗体、好ましくは、ヒトIgG1又はIgG4アイソタイプのモノクローナル抗体である、請求項1から16のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項18】
標識剤又は治療剤と共役する、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
配列番号3~5、7、8、14又は16のいずれか1種との少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、ヒトTRPV6タンパク質由来の細胞外ペプチド抗原であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体の生成を誘導する、細胞外ペプチド抗原。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか一項に記載の抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする少なくとも1種の核酸を含む、宿主細胞における前記抗体の組換え生成のための発現ベクター。
【請求項21】
配列番号37及び配列番号26の配列対との少なくとも90%の同一性を有する核酸配列対を含む、請求項20に記載の発現ベクター。
【請求項22】
次の配列対:配列番号48及び配列番号58;配列番号69及び配列番号79;配列番号69及び配列番号81;配列番号83及び配列番号85;配列番号83及び配列番号87のいずれか1種との少なくとも90%の同一性を有する核酸配列対を含む、請求項20に記載の発現ベクター。
【請求項23】
少なくとも請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体と、薬学的に許容される溶媒とを含む医薬組成物。
【請求項24】
医薬としての使用のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項25】
TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの治療における使用のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項26】
TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんのin vitroでの診断又は予後予測のための、請求項1から18のいずれか一項に記載の抗体の使用。
【請求項27】
前記がんが、子宮内膜がん、白血病、並びに乳房、膵臓、前立腺、結腸、卵巣、及び甲状腺の癌腫からなる群から選択され、好ましくは、前記がんが、前立腺がんである、請求項25に記載の使用のための抗体又は請求項26に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト一過性受容体電位バニロイド6(TRPV6)チャネルタンパク質の細胞外エピトープに対する抗体、特には、細胞膜上でTRPV6チャネル活性を調節し、これによりTRPV6を発現するがん細胞のアポトーシスを引き起こす抗体に関する。また、本発明は、TRPV6チャネルに関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの診断、予後予測、及び治療のための、この抗体の使用に関する。本発明は、この抗体の生成に有用なヒトTRPV6タンパク質由来のペプチド抗原に更に関する。
【背景技術】
【0002】
一過性受容体電位バニロイドサブファミリーメンバー6(TRPV6)は、高度にカルシウム選択的なTRPチャネルであり、上皮組織におけるカルシウム取込みを媒介し、体内のカルシウム恒常性に関与する(Claphamら、Nat. Rev. Neurosci., 2000, 2, 387-96; Hoenderopら、Pflugers Arch. 2003, 446, 304-8)。TRPV6は、一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーVメンバー6(TrpV6)、CaT-like (CaT-L);カルシウム輸送タンパク質1 (CaT1)又は上皮カルシウムチャネル2(ECaC2)としても公知である。TRPV6は、細胞内のN末端及びC末端ドメインと隣り合う中心のイオンチャネルポアとともに膜貫通ドメイン(TMD)を形成する4種のサブユニットを有する。TMDは、S1~S6の膜貫通らせん体とS5~S6間の凹形ポアループ(Pループ)とで構成される(図1)。TRPV6は、第1の細胞外ループに位置するNグリコシル化部位においてグリコシル化される(ヒトTRPV6配列の397番目、図1)。ヒトTRPV6は、UniProtKB/Swiss-Prot NP_061116.5又はQ9H1D0.3(配列番号1)のアミノ酸配列を有する。TRPV6の3D結晶構造は、決定されている(Saotomeら、Nature 2016, 534, 506-511)。
【0003】
TRPV6発現の変化は、がんを含む多様なヒト疾患と関連する。TRPV6は、子宮内膜がん、白血病、並びに乳房、膵臓、前立腺、結腸、卵巣、及び甲状腺の癌腫において高発現する(Pengら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 2000, 278, 326-332; Wissenbachら、J. Biol. Chem., 2001, 276, 19461-19468; Fleetら、Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol. 2002, 283, G618-G625; Zhuangら、Lab. Invest., 2002, 82, 1755-1764; Fixemerら、Oncogene, 2003, 22, 7858-7861 ; Wissenbachら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 2004, 322, 1359-1363; Tapariaら、Eur. J. Nutr. 2006, 45, 196-204 ; Wissenbach, U.& Niemeyer, B. A., Handb. Exp. Pharmacol., 2007, 179, 221-234; Bolanzら、Mol. Cancer Ther., 2008, 7, 271-279; Bolanzら、Mol. Cancer Res., 2009, 7, 2000-2010; Semenovaら、Am. J. Physiol. Cell. Physiol., 2009, 296, C1098-C1104; Lehen'kyiら、PLoS ONE, 2011, 6, e16856; Dhennin-Duthilleら、Cell Physiol Biochem., 2011, 28, 813-22 ; Zhengら、Biochem. Pharmacol., 2012, 84, 391-401; Bowenら、PLoS ONE, 2013, 8, e58866; Fecher-Trostら、Handb. Exp. Pharmacol., 2014, 222, 359-384; Singhら、Nature communications, 2018, DOI :10.1038 ; Songら、Oncol Rep., 2018, 39, 1432-1440 ; Skrzypskiら、Biosci Rep., 2016, 36, e00372. doi: 10.1042 ; Masamuneら、Gastroenterology, 2020, 158, 1626-1641)。TRPV6発現の変化は、皮膚疾患、例えば、乾癬(Cubillosら、J. Int J. Mol. Med., 2016, 38, 1083-92)、脱毛症及び皮膚炎(Bianco SDら、J. Bone Miner. Res. 2007, 22, 274-85)、上皮増殖異常(Dai Wら、Cell Death Differ. 2014, 21, 568-81)、皮膚老化(Li Wら、J. Gerontol. A Biol. Sci. Med. Sci., 2015, 70, 263-72)、皮膚透過性バリア(Do BHら、Acta Otolaryngol., 2017, 137, 1039-1045)、高リン血症及び異所性石灰化(Jurutka PWら、J. Bone Miner. Res., 2007, 22 Suppl 2:V2-10)、脳神経系障害、例えば、聴覚消失及び思春期後甲状腺腫(Wangemann Pら、Am. J. Physiol. Renal Physiol., 2007, 292, F1345-53)、離乳前(Lee GSら、J. Bone Mine.r Res., 2007, 22, 1968-78)、神経興奮性(Brittain JMら、Channels (Austin, Tex.), 2012 Mar-Apr;6(2):94-102)、性周期障害及び視床下部障害(Kumar Sら、Neuroscience, 2017, 344, 204-216)、概日リズム(Yang QJら、Drug Metab. Dispos., 2018, 46, 75-87)、薬物嗜癖(Janssens Aら、Pharmacol. Res., 2018, 136, 83-89)、パーキンソン病(Claro da Silvaら、J. Steroid Biochem. Mol. Biol., 2016, 163, 77-87)、痛覚(Jiang Yら、Onco.l Lett., 2016, 12, 1164-1170)、消化管障害、例えば、クローン病(Huybers Sら、Inflamm. Bowel Dis., 2008, 14, 803-11)、高カルシウム血症(Zella LAら、Endocrinology, 2009, 150, 3448-56)、結腸陰窩肥大症(Peleg Sら、Am. J. Physiol. Gastrointest. Liver Physiol., 2010, 299(3))、過敏性腸症候群(Ishizawa Mら、Int. J. Mol. Sci., 2018, 19(7))、腎疾患、例えば、動脈及び腎臓の石灰化(Ignat Mら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., 2008, 105, 2598-603)、慢性腎疾患(Torremadeら、PLoS One, 2017, 12, e0170654)、骨ミネラル濃度及び骨粗鬆症の疾患及び障害(Bianco SDら、J. Bone Miner. Res., 2007, 22, 274-85)、婦人科障害、例えば、絨毛性障害(Bernucci Lら、Placenta, 2006, 27, 1082-95)、女性不妊症(Yang Hら、Mol. Reprod. Dev., 2011, 78, 274-82)、真性糖尿病(Lee CTら、Kidney Int., 2006, 69, 1786-91)と関連する。
【0004】
TRPV6は、腫瘍の形成及び進行に関係づけられており、この高発現パターンは、疾患の悪性度と相関する(Wissenbachら、2001; Fixemerら、2003; Wissenbachら、2004; Lehen'kyiら、PLoS ONE, 2011; Pengら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 2001, 282, 729-734; Lehen'kyiら、Oncogene, 2007, 26, 7380-7385; Lehen'kyiら、J. Physiol., 2012, 590, 1369-1376)。
【0005】
Ca2+は、細胞増殖の重要な調節物質であり、カルシウム依存性細胞増殖の強化及びアポトーシスの阻害においてTRPV6が果たす役割を示唆する(Bowenら、2013; Lehen'kyiら、Am. J. Physiol., 2011, 301, C1281-9; Raphaelら、Proc. Natl. Acad. Sci. U S A., 2014, 111, E3870-9)。したがって、TRPV6の調節因子は、TRPV6発現腫瘍の治療のための新規の治療戦略をもたらし得る(Bolanzら、2008; Bowenら、2013; Lehen'kyiら、2007; Schwarzら、Cell Calcium, 2006, 39, 163-173)。調節因子によるTRPV6活性の変化がいかなるものであっても、細胞に対する影響は壊滅的となる。実際、TRPV6チャネル活性又は発現の阻害により、カルシニューリンホスファターゼ活性の低下による生存促進経路及び抗アポトーシス経路に必要とされるカルシウムのレベルが低下する(Roderickら、Nat Rev Cancer., 2008,May;8(5):361-75)。TRPV6チャネルの活性化に関しては、これによりカルシウムの取込みが非制御的に上昇し、このためミトコンドリアに過剰な負荷がかかり、シトクロムCの放出が生じて、アポトーシス促進カスケードが引き起こされる(Bernardiら、Subcell Biochem 2007, 45, 481-506)。
【0006】
TRPV6チャネル活性の低分子阻害物質及びペプチド阻害物質が、開示されている(TH-1177、Landowskiら、Pharm Res., 2011, 28, 322-30;ソリシジン又はSOR-C13、Bowenら、PLoS One. 2013, 8, e58866及び国際PCT出願国際公開第2009/114943号)。
【0007】
N末端又はC末端において細胞内エピトープを認識するようにデザインされた、いくつかの抗TRPV6ポリクローナル抗体が開示されており、市販されている(Lehen'kyiら、2007; Van der Eerdenら、J. Cell. Physiol., 2011, 227, 1951-1959; TRPV6 #C-16 (Santa Cruz社); sc-31445 (Borthwickら、Cell Calcium, 2008, 44, 147-57; Dhennin-Duthilleら、2011); #ACC-036 (Alomone社)。抗体を使用して、TRPV6を検出し、がんとの相関性を試験する。
【0008】
しかし、ヒトTRPV6チャネルの細胞外エピトープを特異的に認識可能な抗TRPV6抗体、特には、抗TRPV6モノクローナル抗体は、これまでのところ報告されていない。加えて、TRPV6チャネル活性を調節し、これによりがんの増殖を阻害可能な抗TRPV6抗体は、これまでのところ報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/114943号
【非特許文献】
【0010】
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【非特許文献58】Kabatら、1987, in Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA
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【非特許文献61】Kohler及びMilstein, Nature, 1975, 256, 495-497
【非特許文献62】Merrifieldら、J. Am. Chem. Soc., 1964, 85: 2149-
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【非特許文献67】Bleekerら、Br J Haematol., 2008, 140, 303-12
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、S1~S2の膜貫通ドメイン間の細胞外ループ及びポア領域の細胞外部分に対応する、TRPV6チャネル細胞外エピトープに対して産生される抗体を生成した(図1)。このような抗体は、細胞膜上でTRPV6活性を調節して、カルシウム流入電流を変化させ、カルシウムシグナル伝達を障害し、これによりin vitroでがん細胞アポトーシスを引き起こすことが可能であった(図7図11及び図13図15)。ポアレベルでエピトープに対して生成したマウスモノクローナル抗体は、ヒト腫瘍異種移植マウスモデルにおいてin vivoで腫瘍の増殖及び転移の出現を抑制可能であることが示された(図12)。このようなデータにより、TRPV6チャネルが関与する疾患及び障害、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんにおいて、このような抗TRPV6抗体の治療的使用の展望が開かれる。
【0012】
細胞膜においてTRPV6を検出可能な生成抗体は、生きている、固定又は変性した細胞又は組織に対するin vitro又はin vivoでのあらゆる検出又は診断イムノアッセイ、例えば、制限されないが、イムノブロッティング、免疫沈降、免疫組織染色、免疫蛍光、及び免疫組織化学的検査、特には、TRPV6チャネルが関与する種々の疾患及び障害に罹患している患者由来のパラフィン包埋切片を使用するクリニックにおける診断に有用である。例えば、S1~S2の膜貫通ドメイン間の細胞外ループ又はポア領域の細胞外部分のエピトープに対して生成した抗体は、前立腺がん切除検体由来のパラフィン包埋切片におけるTRPV6発現を検出可能であった。同時に、抗体は、健常前立腺及び良性前立腺肥大症の検体由来のパラフィン包埋切片において、いかなるシグナルも生成しなかった。
【0013】
したがって、本発明は、配列番号1のhTRPV6タンパク質の細胞外エピトープ、特には、グリコシル化されていないエピトープ、例えば、配列番号3~5、7、及び8のいずれか1種から選択され、好ましくは、配列番号3、7、及び8のいずれか1種から選択されるヒトTRPV6の第1の細胞外領域由来のエピトープ、又は配列番号14若しくは16から選択されるヒトTRPV6の第3の細胞外領域由来のエピトープに結合する、ヒト一過性受容体電位バニロイド6(TRPV6)チャネルタンパク質に対する抗体に関する。抗体は、好ましくは、ヒトTRPV6チャネルの活性を調節し、好ましくは、ヒトTRPV6チャネルを活性化し、及び/又はTRPV6発現がん細胞の増殖を、好ましくは、この細胞のアポトーシスを誘導することにより、阻害する、抗体である。
【0014】
一部の実施形態では、本発明による抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号27のVH-CDR1、配列番号28のVH-CDR2、及び配列番号29のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号17のVL-CDR1、アミノ酸配列LVSのVL-CDR2、及び配列番号18のVL-CDR3、又はこれら機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDRを含む。
【0015】
一部の実施形態では、本発明による抗体又はこの抗原結合断片は、
a)配列番号49のVH-CDR1、配列番号50のVH-CDR2、及び配列番号51のVH-CDR3、若しくはこれら機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号38のVL-CDR1、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、及び配列番号39のVL-CDR3、若しくはこれら機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、又は
b)配列番号98のVH-CDR1、配列番号99のVH-CDR2、及び配列番号100のVH-CDR3、若しくはこれら機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号88のVL-CDR1、アミノ酸配列SDSのVL-CDR2、及び配列番号89のVL-CDR3、若しくはこれら機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDRを含む。
【0016】
一部の実施形態では、本発明による抗体又はこの抗原結合断片は、
a)配列番号118のVH-CDR1、配列番号119のVH-CDR2、及び配列番号120のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号108のVL-CDR1、アミノ酸配列YDSのVL-CDR2、及び配列番号109のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、
b)配列番号138のVH-CDR1、配列番号139のVH-CDR2、及び配列番号140のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号128のVL-CDR1、アミノ酸配列QDSのVL-CDR2、及び配列番号129のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、
c)配列番号158のVH-CDR1、配列番号159のVH-CDR2、及び配列番号160のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号148のVL-CDR1、アミノ酸配列GDSのVL-CDR2、及び配列番号149のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、又は
d)配列番号178のVH-CDR1、配列番号179のVH-CDR2、及び配列番号180のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号168のVL-CDR1、アミノ酸配列YDSのVL-CDR2、及び配列番号169のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDRを含む。
【0017】
一部の好ましい実施形態では、このモノクローナル抗体は、配列番号73のVH-FR1、配列番号70のVH-CDR1、配列番号74のVH-FR2、配列番号71のVH-CDR2、配列番号75のVH-FR3、配列番号72のVH-CDR3、及び配列番号76のVH-FR4、又はこれらの機能性バリアントを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号61のVL-FR1、配列番号59のVL-CDR1、配列番号62のVL-FR2、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、配列番号63のVL-FR3、配列番号60のVL-CDR3、及び配列番号64若しくは65のVL-FR4、又はこれらの機能性バリアントを含む軽鎖可変ドメインを含む、ヒト化モノクローナル抗体である。
【0018】
一部の実施形態では、本発明による抗体は、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列に対して配列番号34及び配列番号23の配列対との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む。一部の好ましい実施形態では、この抗体は、重鎖配列及び軽鎖配列に対して配列番号35及び配列番号24の配列対との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖配列及び軽鎖配列を含む。
【0019】
一部の実施形態では、本発明による抗体は、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列に対して次の配列対:配列番号56及び配列番号45又は46;配列番号77及び配列番号66又は67;配列番号105及び配列番号95又は96のいずれか1種との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含み、好ましくは、次の配列対:配列番号56及び配列番号45又は46;配列番号77及び配列番号66又は67のいずれか1種との少なくとも90%の同一性を有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む。一部の好ましい実施形態では、この抗体は、重鎖配列及び軽鎖配列に対して次の配列対:配列番号57及び配列番号47;配列番号78又は80及び配列番号68;配列番号84又は86及び配列番号82;配列番号106又は107及び配列番号97のいずれか1種との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖配列及び軽鎖配列を含み、好ましくは、配列番号57及び配列番号47;配列番号78又は80及び配列番号68;配列番号84又は86及び配列番号82から選択される配列対との少なくとも90%の同一性を有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む。
【0020】
一部の実施形態では、本発明による抗体は、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列に対して次の配列対:配列番号125及び配列番号115又は116;配列番号145及び配列番号135又は136;配列番号165及び配列番号155又は156;配列番号185及び配列番号175又は176のいずれか1種との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖可変ドメイン配列及び軽鎖可変ドメイン配列を含む。一部の好ましい実施形態では、この抗体は、重鎖配列及び軽鎖配列に対して次の配列対:配列番号126又は127及び配列番号117;配列番号146又は147及び配列番号137;配列番号166又は167及び配列番号157;配列番号186又は187及び配列番号177のいずれか1種との少なくとも90%の同一性をそれぞれ有する、重鎖配列及び軽鎖配列を含む。
【0021】
一部の実施形態では、本発明による抗体は、ポリクローナル又はモノクローナル抗体、特には、組換え、キメラ、及び/又はヒト化モノクローナル抗体、好ましくは、ヒトIgG1又はIgG4アイソタイプのモノクローナル抗体である。
【0022】
一部の実施形態では、本発明による抗体は、標識剤又は治療剤と共役する。
【0023】
本発明の別の態様は、配列番号3~5、7、8、10、14又は16のいずれか1種との少なくとも90%の同一性を有する配列を含む、ヒトTRPV6タンパク質由来の細胞外ペプチド抗原であって、本開示による抗体の生成を誘導する、細胞外ペプチド抗原に関する。
【0024】
本発明の別の態様は、本開示による抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする少なくとも1種の核酸を含む、宿主細胞におけるこの抗体の組換え生成のための発現ベクターに関する。
【0025】
一部の好ましい実施形態では、発現ベクターは、配列番号37及び配列番号26の配列対との少なくとも90%の同一性を有する核酸配列対を含む。
【0026】
一部の他の好ましい実施形態では、発現ベクターは、次の配列対:配列番号48及び配列番号58;配列番号69及び配列番号79;配列番号69及び配列番号81;配列番号83及び配列番号85;配列番号83及び配列番号87のいずれか1種との少なくとも90%の同一性を有する核酸配列対を含む。
【0027】
本発明の別の態様は、少なくとも本開示による抗体と、薬学的に許容される溶媒とを含む、医薬組成物に関する。
【0028】
本発明の別の態様は、医薬としての使用のための、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がん、特には、子宮内膜がん、白血病、並びに乳房、膵臓、前立腺、結腸、卵巣、及び甲状腺の癌腫からなる群から選択され、好ましくは、前立腺がんである、がんの治療における使用のための、本開示による抗体に関する。
【0029】
本発明の別の態様は、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がん、特には、子宮内膜がん、白血病、並びに乳房、膵臓、前立腺、結腸、卵巣、及び甲状腺の癌腫からなる群から選択され、好ましくは、前立腺がんである、がんのin vitroでの診断又は予後予測のための、本開示による抗体の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
抗体
また、本発明は、このタンパク質の細胞外エピトープに結合する、ヒト一過性受容体電位バニロイド6(TRPV6)チャネルタンパク質に対する抗体に関する。
【0031】
本明細書において使用するとき、「抗体」の用語は、「単離抗体」を指す。抗体は、免疫源による刺激に応答してリンパ球系細胞により生成される糖タンパク質を指す。抗体は、これらの産生を誘発する抗原決定基若しくはエピトープ又は相同抗原と密接に関連する抗原決定基と特異的且つ選択的にin vitro及びin vivoで反応する能力を有する。
【0032】
「抗原(X)を認識する抗体」、「抗原(X)に対する特異性を有する抗体」、「抗X抗体」、「Xに対する抗体」、及び「に対する抗体」の表現は、本明細書において、「抗原(X)に特異的に結合する抗体」の用語と互換的に使用する。
【0033】
免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖は、それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3及びH-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と名付けられた3種のCDRをそれぞれ有する。したがって、抗原結合部位は、重鎖V領域及び軽鎖V領域のそれぞれからなるCDRを含む6種のCDRを典型的に含む。フレームワーク領域(FR)は、CDR間に挿入されるアミノ酸配列を指す。したがって、軽鎖及び重鎖の可変領域は、次の配列のフレームワーク領域4種及びCDR 3種を典型的に含む: FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。
【0034】
抗体可変ドメイン内の残基は、Kabatらにより考案された方式に従って慣習的に付番される。この方式は、Kabatら、1987, in Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA (以後、「Kabatら」)に記載されている。本明細書では、この付番方式を使用する。Kabatの残基命名法は、配列番号の配列におけるアミノ酸残基の直鎖付番と常に直接的に対応するとは限らない。基本的可変ドメイン構造のフレームワーク領域であっても相補性決定領域(CDR)であっても、実際の直鎖アミノ酸配列は、構造成分の短縮又は構造成分への挿入に対応する厳密なKabat付番よりも少ないか又は更なるアミノ酸を含み得る。残基の正確なKabat付番は、所与の抗体について、抗体配列における「標準」Kabat付番配列との相同残基のアラインメントにより決定し得る。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat付番方式に従って残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)、及び残基95~102(H-CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat付番方式に従って残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)、及び残基89~97(L-CDR3)に位置する。
【0035】
本発明では、「抗体」及び「免疫グロブリン」の用語は、等価であり、無差別に使用する。抗体は、「Ab」として示し、免疫グロブリンは、「Ig」として示す。
【0036】
本明細書において使用するとき、「組換え抗体」の用語は、組換え手段により生成、発現、産生又は単離する抗体、例えば、宿主細胞内にトランスフェクトした組換え発現ベクターを使用して発現させる抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離する抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子により遺伝子導入した動物(例えば、マウス)から単離する抗体、又は特定の免疫グロブリン遺伝子配列(例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列)を他のDNA配列と会合させる他の任意の方法により生成、発現、産生若しくは単離する抗体を指す。組換え抗体は、例えば、キメラ抗体及びヒト化抗体を含む。一部の実施形態では、本発明の組換えヒト抗体は、天然に存在するヒト抗体と同一のアミノ酸配列を有するが、天然に存在するヒト抗体とは構造的に異なる。例えば、一部の実施形態では、グリコシル化パターンが、組換えヒト抗体の組換え生成の結果として異なる。一部の実施形態では、組換えヒト抗体は、ヒトにおいて天然に存在するヒト抗体の構造と比較して少なくとも1種の共有化学結合の加減により化学的に修飾する。
【0037】
「エピトープ」又は抗原決定基は、抗体により認識される抗原の部分を指す。
【0038】
本明細書において使用するとき、「同一性」の用語は、2種のポリペプチド分子間又は2種の核酸分子間の配列類似性を指す。比較する両方の配列における位置が同一塩基又は同一アミノ酸残基により占有されるとき、それぞれの分子は、その位置において同一である。2種の配列間の同一性のパーセンテージは、2種の配列により共有される適合する位置の数を比較する位置の数で割り、100を掛けた結果に対応する。一般には、2種の配列をアラインメントして最大同一性を得るとき、比較する。この同一性は、例えば、GCG社(Genetics Computer Group, Program Manual for the GCG Package, Version 7, Madison, Wisconsin)のパイルアッププログラム又は配列比較アルゴリズム、例えば、BLAST、FASTA若しくはCLUSTALWのいずれかを使用する、アラインメントにより算出し得る。以下の説明では、標準的な1文字アミノ酸コードを使用する。
【0039】
本発明による抗体は、ヒトTRPV6タンパク質の1種の細胞外(EC)領域に位置するエピトープに結合する。ヒトTRPV6は、UniProtKB/Swiss-Prot NP_061116.5又はQ9H1D0.3 (配列番号1)のアミノ酸配列を有する。TRPV6の3D結晶構造は、決定されている(Saotomeら、Nature 2016, 534, 506-511)。
【0040】
TRPV6は、3種の細胞外(EC)領域を有する。EC1は、第1の膜貫通領域(S1)と第2の膜貫通領域(S2)との間に位置し、EC2は、第3の膜貫通領域(S3)と第4の膜貫通領域(S4)との間に位置し、第3の細胞外領域は、2種のサブ領域:第5の膜貫通領域(S5)と膜内(IM)ポア形成領域との間に位置するEC3a及び膜内(IM)ポア形成領域と第6の膜貫通領域(S6)との間に位置するEC3bに分割される。構造予測に基づくと、EC1は、配列番号1の389~425番目に対応すると予測され、EC2は、配列番号1の484~489番目に対応すると予測され、EC3aは、配列番号1の563~565番目に対応すると予測され、EC3bは、配列番号1の586~596番目に対応すると予測される。しかし、細胞表面上で効率的に接触可能であり、抗体が結合し得るhTRPV6の細胞外領域の位置は、予測された位置とわずかに異なり得る。TRPV6細胞外領域は、TRPV6の3D結晶構造を使用して正確に決定し得る(Saotomeら、Nature 2016, 534, 506-511)。
【0041】
また、本発明による抗体が結合するエピトープは、隣り合う膜貫通(TM)領域及び/又は膜内(IM)領域由来の隣接配列(通常、アミノ酸を最大5種;アミノ酸1、2、3、4又は5種)を含み得る。抗体が結合するエピトープは、野生型ヒトTRPV6タンパク質に対する抗体の特異性を修飾しない野生型ヒトTRPV6配列のバリアントであり得る。これは、バリアントエピトープが、バリアントエピトープと野生型エピトープの両方に高い親和性で結合する交差反応性抗体を誘導することを意味する。
【0042】
本発明の抗体が結合する細胞外エピトープは、好ましくは、ヒトTRPV6(hTRPV6)の第1の細胞外領域又は第3の細胞外領域由来である。
【0043】
一部の特定の実施形態では、本発明の抗体が結合する細胞外エピトープは、グリコシル化されていない。特には、このエピトープは、グリコシル化部位を有しない。グリコシル化部位は、好ましくは、N-X-S又はN-X-Tであり、式中、Xは、任意のアミノ酸であり得る。
【0044】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号2(LLQEAYMTPKDDIRLVG);hTRPV6の412~428番目又はhTRPV6 412~428の配列に由来する、ヒトTRPV6の第1の細胞外領域(EC1)由来のエピトープに結合する。一部の好ましい実施形態では、エピトープは、配列番号3~5、7、8、好ましくは、配列番号3、7又は8からなる群から選択される。配列番号3(QEAYMTPKDDIRLVG)は、hTRPV6 414~428に対応し、配列番号4(QEAYMTPKDDIR)は、hTRPV6 414~425に対応し、配列番号5(LLQEAYMTPKDDIR)は、hTRPV6 412~425に対応し、
【0045】
【化1】
【0046】
は、ペプチド配列の8番目及び9番目にDからEへの置換並びにペプチド配列の最終位置にLからRへの置換を有するhTRPV6 415~426に対応し、配列番号8(EAYMTPKDDIRL)は、hTRPV6 415~426に対応する。
【0047】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトTRPV6の第3の細胞外領域(EC3)由来のエピトープに結合する。このエピトープは、EC3a、特には、配列番号9(IFQTEDPEELGHFYDYPMALFST; hTRPV6 551~573)の配列に由来し得るか、又はEC3bに由来し得る。一部の好ましい実施形態では、エピトープは、配列番号14及び配列番号16からなる群から選択される。配列番号14(TEDPEELGHFYDYPMA)は、hTRPV6 554~569に対応し、配列番号16(DGPANYNVDLPFMYS)は、hTRPV6 582~596に対応する。
【0048】
本発明による抗体は、細胞膜上のヒトTRPV6タンパク質、特には、ヒト成熟グリコシル化TRPV6タンパク質を特異的に認識する。これは、この抗体が、TRPV6のエピトープに対して相対的に高い親和性を有するが、実質的には認識せず、目的のペプチド以外のペプチドにも結合することを意味する。
【0049】
本明細書において使用するとき、「相対的に高い親和性」の用語は、少なくとも10-6M、好ましくは、少なくとも約10-7M、更により好ましくは、10-8M~10-10Mの、抗体と目的のタンパク質との間の結合親和性を意味する。このような親和性の決定は、好ましくは、当業者にとって一般的知識である、標準的な競合的結合イムノアッセイ条件下で実施する。
【0050】
一部の実施形態では、抗体は、ヒトTRPV6チャネルの活性を調節する。特定の実施形態では、抗体は、ヒトTRPV6チャネルを活性化する。別の特定の実施形態では、抗体は、ヒトTRPV6チャネルを阻害する。
【0051】
本発明の抗体によるTRPV6チャネル活性の調節は、制限されないが、全細胞パッチクランプ技術; Raphaelら、2014に開示のストア感受性カルシウム流入(SOCE)アッセイ; Nimigean CM, Nat Protoc. 2006; 1(3):1207-12に開示のイオンチャネルを越えてイオン輸送を測定する放射活性取込みアッセイ他を含む、当技術分野において周知の標準技術、例えば、本明細書の実施例に開示の技術に従って定量化し得る。
【0052】
一部の実施形態では、抗体は、TRPV6発現細胞、特には、がん細胞の増殖を阻害する。有利には、抗体は、TRPV6発現細胞、例えば、がん細胞におけるアポトーシスを誘導する。本発明の抗体によるTRPV6発現細胞における増殖の阻害又はアポトーシスの誘導は、当技術分野において周知の標準技術、例えば、本明細書の実施例に開示の技術に従って定量化し得る。例えば、増殖の阻害は、MTS又はMTTを使用する細胞生存アッセイ;細胞周期アッセイ、細胞計数アッセイ、LDH漏出、全細胞タンパク質測定、ニュートラルレッド、アラマーブルー(登録商標)、ウリジン組込みアッセイを使用するか、又はKi-67、PCNA、CdK4、及びサイクリンDタンパク質のウエスタンブロット/IHCにおける発現により測定し得る。アポトーシスの誘導は、TUNELアッセイ、ヘキスト染色を使用して、アポトーシスマーカー、例えば、ホスファチジルセリン曝露、カスパーゼ、カルパイン、及びカテプシンの活性化、ミトコンドリア膜電位の変化、若しくは細胞膜の小疱形成及び核凝縮の検出、DNAラダーアッセイ、切断カスパーゼ3アッセイ、又はアネキシンV結合により測定し得る。
【0053】
本発明による抗体は、全抗体又はこの抗原結合断片を含み得る。抗体断片は、Fv、ScFv、Sc(Fv)2、DsFv、Fab、F(ab)2、Fab'断片、ダイアボディ、及び単一ドメイン抗体(VHH)からなる群から選択され得る。本発明による抗体の可変領域は、定常領域ドメイン、例えば、IgA、IgM、IgE、IgG又はIgDドメイン、特には、ヒト定常領域ドメイン;好ましくは、IgG、特には、ヒトIgG1又はIgG4定常ドメインと結合し得る。このような定常領域は、特には、Fc受容体に対するこれらの結合能を修飾するか又は抗体半減期を増強するための、当技術分野において公知の方法によって、更に変異又は修飾し得る。抗体は、グリコシル化されていても、又はグリコシル化されていなくてもよい。
【0054】
抗体は、モノクローナル又はポリクローナル抗体、非組換え又は組換え抗体、キメラ又はヒト化抗体であり得る。モノクローナル抗体は、単一特異性及び二価性の免疫グロブリン分子である。「抗体」の用語は、抗体又は抗体断片の凝集物、ポリマー、誘導体、又はコンジュゲートを包含することを意図する。誘導体の例としては、このような抗体の抗原結合断片を使用する、バリアント及び構築物、例えば、多価抗体及び/又は多特異性抗体が挙げられる。
【0055】
一部の実施形態では、この抗体は、ポリクローナル抗体、例えば、ウサギポリクローナル抗体である。本発明によるポリクローナル抗体は、単一特異性抗体であり、これは、このポリクローナル抗体がhTRPV6タンパク質の細胞外エピトープに対して特異的であることを意味する。一般には、このようなポリクローナル抗体は、細胞外エピトープ配列、又は上に定義する交差反応抗体を誘導する近縁の配列を有する、ペプチドによる免疫化により得られる。一部の好ましい実施形態では、ポリクローナル抗体は、配列番号3のエピトープに結合する。
【0056】
一部の実施形態では、この抗体は、モノクローナル抗体(mAb)、好ましくは、ヒト、ヒト化又はキメラモノクローナル抗体である。キメラ抗体は、ヒト定常ドメイン、及び非ヒト供給源、一般には、マウス由来の可変ドメインを有する(ヒト/マウスキメラ抗体)。モノクローナル抗体は、好ましくは、組換え抗体である。
【0057】
一部の特定の実施形態では、配列番号8のエピトープ及び配列番号7のこのバリアントエピトープに結合する、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号27のVH-CDR1、配列番号28のVH-CDR2、及び配列番号29のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号17のVL-CDR1、アミノ酸配列LVSのVL-CDR2、及び配列番号18のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDRを含む。好ましくは、配列番号8のエピトープ及び配列番号7のこのバリアントエピトープに結合する、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号27のVH-CDR1、配列番号28のVH-CDR2、及び配列番号29のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号17のVL-CDR1、アミノ酸配列LVSのVL-CDR2、及び配列番号18のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変ドメインから選択される、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0058】
一部の特定の実施形態では、配列番号14のエピトープに結合する、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、
a)配列番号49のVH-CDR1、配列番号50のVH-CDR2、及び配列番号51のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号38のVL-CDR1、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、及び配列番号39のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、又は
b)配列番号98のVH-CDR1、配列番号99のVH-CDR2、及び配列番号100のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号88のVL-CDR1、アミノ酸配列SDSのVL-CDR2、及び配列番号89のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR
を含む。
【0059】
一部の好ましい実施形態では、配列番号14のエピトープに結合する、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号49のVH-CDR1、配列番号50のVH-CDR2、及び配列番号51のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38のVL-CDR1、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、及び配列番号39のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0060】
一部の他の実施形態では、配列番号14のエピトープに結合する、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号98のVH-CDR1、配列番号99のVH-CDR2、及び配列番号100のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号88のVL-CDR1、アミノ酸配列SDSのVL-CDR2、及び配列番号89のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0061】
一部の特定の実施形態では、配列番号16のエピトープに結合する、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、
a)配列番号118のVH-CDR1、配列番号119のVH-CDR2、及び配列番号120のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号108のVL-CDR1、アミノ酸配列YDSのVL-CDR2、及び配列番号109のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、
b)配列番号138のVH-CDR1、配列番号139のVH-CDR2、及び配列番号140のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号128のVL-CDR1、アミノ酸配列QDSのVL-CDR2、及び配列番号129のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、
c)配列番号158のVH-CDR1、配列番号159のVH-CDR2、及び配列番号160のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号148のVL-CDR1、アミノ酸配列GDSのVL-CDR2、及び配列番号149のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、又は
d)配列番号178のVH-CDR1、配列番号179のVH-CDR2、及び配列番号180のVH-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号168のVL-CDR1、アミノ酸配列YDSのVL-CDR2、及び配列番号169のVL-CDR3、若しくはこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDR、
を含む。
【0062】
一部の特定の実施形態では、配列番号16のエピトープに結合する、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、
a)配列番号118のVH-CDR1、配列番号119のVH-CDR2、及び配列番号120のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号108のVL-CDR1、アミノ酸配列YDSのVL-CDR2、及び配列番号109のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変ドメイン、
b)配列番号138のVH-CDR1、配列番号139のVH-CDR2、及び配列番号140のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号128のVL-CDR1、アミノ酸配列QDSのVL-CDR2、及び配列番号129のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変ドメイン、
c)配列番号158のVH-CDR1、配列番号159のVH-CDR2、及び配列番号160のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号148のVL-CDR1、アミノ酸配列GDSのVL-CDR2、及び配列番号149のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変ドメイン、並びに
d)配列番号178のVH-CDR1、配列番号179のVH-CDR2、及び配列番号180のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号168のVL-CDR1、アミノ酸配列YDSのVL-CDR2、及び配列番号169のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変ドメイン
から選択される、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0063】
本明細書において使用するとき、抗体配列(CDR、FR又はその他)のバリアントに関する「機能性バリアント」は、配列バリアントを含む抗体が、ヒトTRPV6タンパク質を特異的に認識することを意味する。モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片が、本明細書において提供するモノクローナル抗体の1、2、3、4、5又は6種のCDRのアミノ酸配列において1、2、3、4、5、6種又はこれ以上の変化を有し得ることを意図する。抗体の軽鎖又は重鎖可変領域のVJ又はVDJ領域のCDR1、CDR2、CDR3、CDR4、CDR5又はCDR6の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12又は13番目のアミノ酸が、保存的又は非保存的アミノ酸による挿入、欠失又は置換を有し得ることを意図する。置換されるか又はこの置換を構成し得るこのようなアミノ酸は、下記に開示する。一部の特定の実施形態では、モノクローナル抗体又は抗原結合断片は、本明細書において提供するモノクローナル抗体の1、2、3、4、5又は6種のCDRのアミノ酸配列において1又は2種の保存的置換を有する。モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片が、本明細書において提供するモノクローナル抗体の1、2、3、4、5、6、7、8種のFRのアミノ酸配列において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10種又はこれ以上の変化を有し得ることも意図する。FR配列が、保存的又は非保存的アミノ酸による挿入、欠失又は置換を有することを意図する。置換されるか又はこの置換を構成し得るこのようなアミノ酸は、上記に開示する。一部の特定の実施形態では、モノクローナル抗体又は抗原結合断片は、明細書において提供するモノクローナル抗体の1、2、3、4、5、6、7、8種のFRのアミノ酸配列において保存的置換1、2、3、4、5種、好ましくは、1又は2種を有する。
【0064】
一部の実施形態では、置換は、保存的置換、即ち、アミノ酸1個と、類似の化学的又は物理的特性(サイズ、電荷又は極性)を有する別のアミノ酸との置換であり、この置換は一般に、抗体の生物化学的特性、生物物理的特性、及び/又は生物学的特性に有害には影響しない。特には、この置換は、抗体とヒトTRPV6タンパク質との相互作用を破壊しない。この保存的置換は、次の5種の群:群1-低分子で脂肪族の、非極性又はわずかに極性の残基(A、S、T、P、G);群2-極性で負荷電の残基及びこれらのアミド(D、N、E、Q);群3-極性で正荷電の残基(H、R、K);群4-高分子で脂肪族の非極性残基(M、L、I、V、C);並びに群5-高分子の芳香族残基(F、Y、W)のうちの1種から有利に選択される。
【0065】
一部の実施形態では、この抗体は、上に定義するVH-CDR配列6種及びVL-CDR配列6種を有する抗体が結合するエピトープに結合するモノクローナル抗体である。
【0066】
一部の好ましい実施形態では、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号49のVH-CDR1、配列番号50のVH-CDR2、及び配列番号51のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変CDR、並びに配列番号38のVL-CDR1、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、及び配列番号39のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変CDRを含む。好ましくは、モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号49のVH-CDR1、配列番号50のVH-CDR2、及び配列番号51のVH-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号38のVL-CDR1、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、及び配列番号39のVL-CDR3、又はこれらの機能性バリアントの少なくとも1種、好ましくは、3種すべてを含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0067】
一部の更に好ましい実施形態では、この抗体は、配列番号14のエピトープに結合し、配列番号73のVH-FR1、配列番号70のVH-CDR1、配列番号74のVH-FR2、配列番号71のVH-CDR2、配列番号75のVH-FR3、配列番号72のVH-CDR3、及び配列番号76のVH-FR4、又はこれらの機能性バリアントを含む重鎖可変ドメイン、並びに配列番号61のVL-FR1、配列番号59のVL-CDR1、配列番号62のVL-FR2、アミノ酸配列WASのVL-CDR2、配列番号63のVL-FR3、配列番号60のVL-CDR3、及び配列番号64若しくは65のVL-FR4、又はこれらの機能性バリアントを含む軽鎖可変ドメインを含む、ヒト化モノクローナル抗体又はこの抗原結合断片である。
【0068】
一部の特定の実施形態では、本開示による抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号34との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号23との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0069】
一部の特定の実施形態では、本開示による抗体又はこの抗原結合断片は、
a)配列番号56との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号45又は46との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
b)配列番号77との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号66又は67との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
c)配列番号105との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号95又は96との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
d)配列番号125との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号115又は116との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
e)配列番号145との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号135又は136との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、
f)配列番号165との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号155又は156との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、並びに
g)配列番号185との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン、及び配列番号175又は176との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン
から選択される、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含む。
【0070】
一部の好ましい実施形態では、本開示による抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号56との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号45若しくは46との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメイン、又は配列番号77との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメイン及び配列番号66若しくは67との少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含む。
【0071】
一部の更に特定の実施形態では、この抗体又はこの抗原結合断片は、配列番号35との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号24との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列を含む。
【0072】
一部の更に特定の実施形態では、この抗体又はこの抗原結合断片は、
a)配列番号57との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号47との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
b)配列番号78若しくは80との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号68との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
c)配列番号84若しくは86との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号82との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
d)配列番号106若しくは107との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号97との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
e)配列番号126若しくは127との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号117との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
f)配列番号146若しくは147との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号137との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
g)配列番号166若しくは167との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号157との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、又は
h)配列番号186若しくは187との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列、及び配列番号177との少なくとも90%の同一性を有する軽鎖アミノ酸配列、
を含む。
【0073】
一部の好ましい実施形態では、本開示による抗体又はこの抗原結合断片は、次の配列対:配列番号47及び配列番号57、配列番号68及び配列番号78、配列番号68及び配列番号80、配列番号82及び配列番号84、並びに配列番号82及び配列番号86のいずれか1種との少なくとも90%の同一性を有する重鎖アミノ酸配列及び軽鎖アミノ酸配列を有する。
【0074】
一部の実施形態では、本発明の抗体は、表Iに提示する配列を含む。
【0075】
本発明の抗体は、当業者に公知の従来技術により生成することができる。例えば、モノクローナル抗体は、CEA抗原で免疫した動物のBリンパ球と骨髄腫との融合により得られたハイブリドーマからKohler及びMilsteinの技術に従って生成し(Nature, 1975, 256, 495-497)、このハイブリドーマをin vitroで、特には、発酵槽において培養する。キメラ及び/又はヒト化した組換え抗体及び抗体断片は、抗原に対して特異的なハイブリドーマ細胞から、組換えDNAをクローニング及び発現させる従来技術により調製することができる。ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン座位を有する遺伝子導入マウスから得ることができる。
【0076】
一部の実施形態では、抗体は、修飾する。特には、抗体定常領域は、特には、Fc受容体に対するこれらの結合能を修飾するか、抗体半減期を増強するか、又は目的の薬剤、例えば、標識剤若しくは治療剤に共役させるための、当技術分野において公知の方法により、変異させるか又は修飾し得る。例えば、薬剤と抗体との共有結合は、抗体に反応基を組み込み、次いで、この基を使用して薬剤を共有的に結合させることにより達成し得る。或いは、共有結合は、融合タンパク質を改変することにより達成し得る。
【0077】
一部の実施形態では、抗体は、標識剤と共役する。標識剤は、検出可能及び/又は定量可能なシグナルを生成する任意の薬剤、特には、放射活性、磁性又は発光(放射性発光、化学発光、生物発光、蛍光又はリン光)剤である。抗体は、当業者に周知の標準的コンジュゲーション技術を使用して、共有又は非共有結合を介して直接的又は間接的に標識し得る。直接的に検出可能な標識は、放射性同位元素及びフルオロフォアを含む。間接的に検出可能な標識は、検出が可能となる、更なる試薬で標識することにより検出する。間接的に検出可能な標識は、例えば、化学発光剤、可視又は着色した試薬製剤を生成する酵素、及びリガンド(ハプテン、抗体、抗原、ビオチン)を標識したリガンド特異的結合パートナーに結合させることにより検出し得る、リガンドを検出可能なリガンド結合パートナーを含む。本発明による検出可能な標識は、任意の種類の標識であってもよく、特には、フルオロフォア、例えば、フルオレセイン若しくはルシフェラーゼ;放射性同位元素、特には、シンチグラフィーに適する放射性同位元素、例えば、99mTc;又は酵素、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼであり得る。
【0078】
一部の他の実施形態では、抗体は、薬物、例えば、抗がん薬と共役する。
【0079】
本発明による抗体は、TRPV6を発現する細胞、特には、腫瘍細胞を標的とするのに、診断的及び治療的な目的のために使用する。標的細胞は、好ましくは、TRPV6を高発現する。
【0080】
本発明では、「TRPV6を高発現する細胞」、特には、「TRPV6を高発現する腫瘍又はがん細胞」は、健常な個人における対応する組織又は臓器の正常細胞のレベルと比較して著しく高いTRPV6の発現レベルを示す細胞、例えば、腫瘍又はがん細胞を指す。TRPV6発現レベルは、mRNA(RT-PCR及びその他)又はタンパク質(イムノアッセイ、例えば、ELISA及びその他)の定量的解析に基づく標準的遺伝子発現アッセイにより測定する。
【0081】
本発明は、抗体の混合物又は組合せ、例えば、本発明による種々の抗TRPV6抗体の混合物、又は本発明による抗体及び他の抗体の混合物の使用を包含する。
【0082】
「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明白に他に指示しない限り複数参照を含む。従って、「a」(又は「an」)、「one or more(1種又は複数)」又は「at least one(少なくとも1種)」の用語は、本明細書において互換的に使用することができる。
【0083】
抗体生成のためのペプチド抗原及び使用
本発明は、本発明による抗体の生成を誘導する、ヒトTRPV6タンパク質由来の細胞外ペプチド抗原に関する。
【0084】
本発明のペプチドは、ヒト一過性受容体電位バニロイド6(TRPV6)タンパク質に由来する単離、組換え又は合成ペプチドであり、TRPV6タンパク質とは異なる。
【0085】
本発明のペプチドは、上に定義するヒトTRPV6タンパク質の細胞外(EC)領域のうちの1種に由来する細胞外ペプチドである。また、本発明によるペプチドは、隣り合う膜貫通(TM)領域及び/又は膜内(IM)領域由来の隣接配列(通常、アミノ酸を最大5種;アミノ酸1、2、3、4又は5種)を含み得る。本発明のペプチドは、好ましくは、ヒトTRPV6の第1又は第3の細胞外領域に由来する。
【0086】
本発明のペプチドは、抗原ペプチドであり、これは、本発明によるペプチドを用いた非ヒト哺乳動物、例えば、マウス又はウサギの免疫化によって、本発明による抗体の生成が誘導されることを意味する。
【0087】
一部の実施形態では、ペプチドは、ヒトTRPV6の第1の細胞外領域(EC1)、特には、配列番号2(LLQEAYMTPKDDIRLVG);hTRPV6の412~428番目又はhTRPV6 412~428の配列に由来する。一部の好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号3、4、5、7又は8の配列及びこの配列のいずれか1種との少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する配列、好ましくは、配列番号3、7又は8の配列からなる群から選択される配列を含むか又はこれからなる。配列番号3(QEAYMTPKDDIRLVG)は、hTRPV6 414~428に対応し、配列番号4(QEAYMTPKDDIR)は、hTRPV6 414~425に対応し、配列番号5(LLQEAYMTPKDDIR)は、hTRPV6 412~425に対応し、
【0088】
【化2】
【0089】
は、ペプチド配列の8番目及び9番目にDからEへの置換並びにペプチド配列の最終位置にLからRへの置換を有するhTRPV6 415~426に対応し、配列番号8(EAYMTPKDDIRL)は、hTRPV6 415~426に対応する。
【0090】
一部の実施形態では、ペプチドは、ヒトTRPV6の第3の細胞外領域(EC3)に由来する。ペプチドは、EC3a、特には、配列番号9(IFQTEDPEELGHFYDYPMALFST; hTRPV6 551~573)の配列に由来し得るか、又はEC3bに由来し得る。一部の好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号14及び配列番号16の配列並びにこれらの配列のいずれか1種との少なくとも70%のアミノ酸同一性を有する配列からなる群から選択される配列を含むか又はこれからなる。配列番号14(TEDPEELGHFYDYPMA)は、hTRPV6 554~569に対応する。配列番号16(DGPANYNVDLPFMYS)は、hTRPV6 582~596に対応する。好ましくは、このペプチドは、これらの配列のいずれか1種との少なくとも75%、80%、85%、87%、90%、95%、98%又は99%の同一性を有する。より好ましくは、このペプチドは、これらの配列のいずれか1種との少なくとも95%、98%又は99%の同一性を有する。
【0091】
ペプチドは通常、ヒトTRPV6に由来するアミノ酸最大50個、好ましくは、アミノ酸20、25、30、35、40、45個の配列からなる。
【0092】
本発明は、ペプチド結合を介して結合する天然アミノ酸の鎖(L立体配置及び/又はD立体配置に遺伝子コードアミノ酸(A、R、N、D、C、Q、E、G、H、I、L、K、M、F、P、S、T、W、X、及びY)20個)を含むか又はこれからなるペプチドを包含し、その上、アミノ酸及び/又はペプチド結合が機能性類似体により置換されているペプチドのペプチドミメティックを含む。このような機能性類似体は、この遺伝子コードアミノ酸20個以外のあらゆる公知のアミノ酸を含む。
【0093】
また、本発明は、修飾ペプチドが機能性である限り、1種又は複数のアミノ酸残基、ペプチド結合、ペプチドのN末端及び/又はC末端への任意の化学修飾の導入による、このペプチドに由来する修飾ペプチドを包含する。当業者に公知の従来方法によりペプチドに導入する、このような修飾は、天然アミノ酸と非タンパク質原性アミノ酸(Dアミノ酸又はアミノ酸類似体)との置換、ペプチド結合の、特には、retro若しくはretro-inverso型の結合又はペプチド結合とは異なる結合による修飾、環化、及び特には、目的の薬剤を本発明のペプチドと共役させるための、ペプチドの側鎖又は末端に対する化学基の付加を非制限的に含む。このような修飾は、抗原性、免疫原性、及び/若しくはバイオアベイラビリティを高めるため、又はペプチドを標識するために使用し得る。
【0094】
一部の実施形態では、ペプチドは、ペプチドの免疫原性を高めるために担体タンパク質と共役させる。本発明のペプチドは、抗体の調製に使用する任意の担体タンパク質と共役させ得る。一部の特定の実施形態では、ペプチドは、KLHタンパク質と、例えば、ペプチドN-terを介して共役させる。一部の好ましい実施形態では、ペプチドは、担体タンパク質、例えば、KLHとペプチドN-terを介して共役した配列番号3、4、5、7又は8のいずれか1種である。
【0095】
一部の実施形態では、ペプチドは、更なるアミノ酸残基、特には、リジンをN-ter又はC-terに含む。例えば、ペプチドは、配列番号6又は配列番号15である。一部の他の実施形態では、ペプチドは、スペーサー配列をN-ter又はC-terに含む。このような修飾は、目的の薬剤と本発明のペプチドとの共役に有用である。
【0096】
本発明によるペプチドは、当業者に公知の従来技術、特には、固相若しくは液相合成、又は適する細胞系(真核細胞若しくは原核細胞)における組換えDNAの発現により調製する。ペプチドは通常、Merrifieldらにより最初に記載されたFmocによる技術に従って固相合成し(J. Am. Chem. Soc., 1964, 85: 2149-)、逆相高速液体クロマトグラフィーにより精製する。
【0097】
本発明によるペプチドは、本発明による抗体の生成のために使用する。
【0098】
したがって、本発明は、本発明による抗体の生成のための、本発明によるペプチドの使用に関する。
【0099】
また、本発明は、
a)非ヒト哺乳動物、例えば、実験げっ歯動物、例えば、ウサギ又はマウスを本発明によるペプチドで免疫して、この哺乳動物のB細胞による抗TRPV6抗体の生成を誘導する工程、
b)哺乳動物からこの抗TRPV6抗体又はB細胞を採取する工程
を含む、本発明による抗TRPV6抗体を生成する方法に関する。
【0100】
免疫化工程は、当技術分野において公知の標準プロトコルに従って、例えば、担体、例えば、KLHタンパク質と共役したペプチドの使用により実施する。
【0101】
抗体は、免疫化哺乳動物の血清から回収し得る。B細胞は、免疫化哺乳動物の脾臓から単離し得る。
【0102】
方法は、標準的ハイブリドーマ生成技術に従う、例えば、B細胞と骨髄腫細胞株、リンパ芽球様細胞株、リンパ腫細胞又はヘテロ骨髄腫細胞株との融合による、B細胞の不死化を更に含み得る。好ましくは、B細胞は、いかなるマウス抗体をも生成せず、不死化されており、免疫グロブリンの分泌に必要な分泌機構全体を有する、マウス骨髄腫細胞株、より好ましくは、マウス骨髄腫細胞株、例えば、SP2/0細胞株との融合により不死化する。不死化B細胞は、特異的抗体の産生について、従来のアッセイ、例えば、ELISAを使用してスクリーニングする。スクリーニング後、これらは通常、標準的方法を使用してクローニングする。不死化B細胞により分泌された抗体は、細胞外培地から回収し、通常、当業者に公知の従来技術、例えば、親和性クロマトグラフィーによって更に精製する。或いは、抗TRPV6抗体のVH断片及びVL断片は、本発明による抗TRPV6抗体を生成するB細胞からクローニングすることができ、組換え抗体は、当技術分野において周知の標準技術に従って生成し得る。
【0103】
また、本発明による抗TRPV6抗体は、ファージディスプレイライブラリーのスクリーニングにより生成し得る。特には、抗TRPV6抗体のVH断片及びVL断片は、ファージディスプレイライブラリーから、本発明によるペプチド抗原を使用してスクリーニングすることもでき、組換え抗体は、当技術分野において周知の標準技術に従って生成し得る。
【0104】
また、本発明は、本発明による抗TRPV6抗体を生成する方法により得られるか又は入手し易い抗体を包含する。
【0105】
ポリヌクレオチド及びベクター
また、本発明は、本発明の抗体を発現可能な形態でコードする単離ポリヌクレオチドに関する。
【0106】
抗体を発現可能な形態でコードするポリヌクレオチドは、細胞又は無細胞系における発現時に機能性ペプチド又は抗体が生じる核酸分子を指す。
【0107】
合成又は組換えのいずれかのポリヌクレオチドは、一本鎖及び/又は二本鎖の、DNA、RNA又はこれらの組合せであり得る。ポリヌクレオチドは、少なくとも1種の転写調節配列、及び任意選択で、少なくとも1種の翻訳調節配列に動作可能に結合する。好ましくは、このポリヌクレオチドは、ペプチド又は抗体が発現する宿主に対して最適化したコード配列を含む。
【0108】
一部の実施形態では、このポリヌクレオチドは、本発明によるモノクローナル抗体のVHドメイン及び/又はVLドメインを少なくともコードする。一部の好ましい実施形態では、VHドメインをコードするポリヌクレオチドは、配列番号36との少なくとも80%の同一性を有する配列を含み、VLドメインをコードするポリヌクレオチドは、配列番号25との少なくとも80%の同一性を有する配列を含む。一部の特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、本開示による抗体の重鎖及び/又は軽鎖をコードする。一部の好ましい実施形態では、本開示による抗体の重鎖及び軽鎖は、配列番号37及び配列番号26からなる群から選択される配列対、並びに前述の配列との少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、少なくとも1種のポリヌクレオチドによりコードされる。
【0109】
一部の他の好ましい実施形態では、本開示による抗体の重鎖及び軽鎖は、配列番号48及び配列番号58、配列番号69及び配列番号79、配列番号69及び配列番号81、配列番号83及び配列番号85、配列番号83及び配列番号87からなる群から選択される配列対、並びに前述の配列との少なくとも80%の同一性を有する配列を含む、少なくとも1種のポリヌクレオチドによりコードされる。ポリヌクレオチドは、上に開示する配列との少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する配列を含むか又はこれからなり得る。
【0110】
本発明によるポリヌクレオチドは、当技術分野において公知の従来方法により調製する。例えば、PCR若しくはRT-PCRによる核酸配列の増幅、相同プローブとのハイブリダイゼーションによるゲノムDNAライブラリーのスクリーニング、又は全体的若しくは部分的化学合成によるその他の方法により生成する。
【0111】
本発明の別の態様は、このポリヌクレオチドを含み、好ましくは、上に定義する本発明によるモノクローナル抗体のVHドメイン及び/又はVLドメインを少なくともコードするポリヌクレオチド配列対を含む、組換えベクターである。組換えベクターは、有利には、宿主細胞、例えば、原核又は真核細胞、例えば、哺乳動物又は最近細胞内に送達されるとき、このポリヌクレオチドを発現可能な発現ベクターである。組換えベクターは、遺伝子改変、ワクチン、及び遺伝子療法に使用される通常のベクターを含み、例えば、プラスミド及びウイルスベクターを含む。
【0112】
組換えベクターは、当技術分野において公知の従来の組換えDNA技術及び遺伝子改変技術により、構築し、宿主細胞に導入する。
【0113】
したがって、本発明の更なる態様では、このポリヌクレオチド又は組換えベクターにより形質転換した宿主細胞を提供する。
【0114】
本発明のポリヌクレオチド、ベクター、細胞は、周知の組換えDNA技術を使用する本発明の抗体の生成に有用である。
【0115】
医薬組成物及び治療的使用
また、本発明は、活性物質として、本発明による少なくとも1種の抗体、ポリヌクレオチド、及び/又はベクターを、少なくとも1種の薬学的に許容される溶媒とともに含む医薬組成物に関する。
【0116】
医薬組成物は、制限されないが、経口、非経口、及び局所を含む多くの経路による投与のために製剤化する。医薬溶媒は、計画した投与経路に適切な溶媒であり、当技術分野において周知である。
【0117】
医薬組成物は、投与する個人において肯定的な医学的反応を示すのに十分な治療有効量の抗体/ポリヌクレオチド/ベクターを含む。肯定的な医学的反応は、続発する(予防的処置)又は確立された(治療的処置)疾患症候の低減を指す。肯定的な医学的反応は、疾患の症候の部分的又は全体的阻害を含む。肯定的な医学的反応は、種々の客観的パラメーター又は基準、例えば、疾患の客観的臨床徴候及び/又は生存の向上を測定することにより決定することができる。本発明による組成物に対する医学的応答は、当技術分野において周知であり、本出願の実施例に例示する、適切な動物疾患モデルにおいて容易に検証することができる。
【0118】
治療有効量は、使用する組成物、投与経路、治療する哺乳動物の種(ヒト又は動物)、考察中の特定の哺乳動物の理学的特性、併用薬物、及び医学分野における当業者が認識する他の因子に依存する。
【0119】
一部の実施形態では、医薬組成物は、別の活性剤を含み、ここで、この活性剤は、ヒト又は動物において疾患を予防、治療又は回復させることが可能な医薬品又は治療薬である。活性剤は、抗体;アンチセンスオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、低分子干渉RNA、ロックド核酸(LNA)、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴヌクレオチド(PMO)、及びデコイDNA分子を含むオリゴヌクレオチド;プラスミド; DNA、RNA若しくはペプチドアプタマーを含むアプタマー;低分子若しくは高分子の化学薬物;又はこれらの混合物を含むタンパク質であり得る。特には、活性剤は、抗がん剤及び/又は免疫調節剤であり得る。抗がん剤は、化学療法剤であり得る。また、抗がん剤は、別の抗体、例えば、アラシズマブ(Alacizumab)、アミバンタマブ(Amivantamab)、アテゾリズマブ、BCD-100、ベマリツズマブ(Bemarituzumab)、ベバシズマブ、カビラリズマブ(Cabiralizumab)、カツマキソマブ、セトレリマブ(Cetrelimab)、セツキシマブ、エルツマキソマブ(Ertumaxomab)、フィクラツズマブ(Ficlatuzumab)、フツキシマブ(Futuximab)、マルゲツキシマブ(Margetuximab)、ネシツムマブ、オポルツズマブ(Oportuzumab)、パンコマブ(Pankomab)、トムゾツキシマブ(Tomuzotuximab)、及びその他であり得るが、これらに制限されない。免疫調節剤は、抗PD1又は抗PDL1剤、特には、抗PD1又は抗PDL1抗体;サイトカイン、マッシュルームグリカン、植物由来免疫調節物質、及び抗がん剤、スタチン、メトホルミン、及びアンジオテンシン受容体遮断物質(ARB)、アントラサイクリン、サリドマイド、レナリドミド、並びに低メチル化薬又はその他であり得る。抗がん剤及び/又は免疫調節剤は、当技術分野において公知の標準的手段、例えば、共有結合又は遺伝子融合の生成によって、本発明による抗体に有利に結合させ得る。
【0120】
また、本発明では、医薬としての使用のための、本発明による抗体、ポリヌクレオチド/ベクター又は医薬組成物を提供する。
【0121】
また、本発明では、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの治療における使用のための、本発明による抗体、ペプチド、ポリヌクレオチド/ベクター又は医薬組成物を提供する。
【0122】
また、本発明では、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの治療のための、本発明による抗体、ペプチド、ポリヌクレオチド/ベクター又は医薬組成物を提供する。
【0123】
また、本発明では、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの治療のための医薬の製造における本発明による抗体、ペプチド、ポリヌクレオチド/ベクターの使用を提供する。
【0124】
また、本発明では、本発明による抗体、ペプチド、ポリヌクレオチド/ベクターを活性成分として含む、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの治療のための医薬組成物を提供する。
【0125】
また、本発明では、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんを治療するための、本発明による抗体、ペプチド、ポリヌクレオチド/ベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0126】
本明細書において使用するとき、TRPV6発現と関連する疾患は、TRPV6発現の変化、特には、TRPV6の高発現と関連する疾患を指す。
【0127】
TRPV6発現と関連する疾患は、がん;皮膚疾患、例えば、制限されないが、乾癬、脱毛症及び皮膚炎、上皮増殖異常、皮膚老化、皮膚透過性、高リン血症及び異所性石灰化;脳神経系障害、例えば、制限されないが、聴覚消失及び思春期後甲状腺腫、離乳前、神経興奮性、性周期障害及び視床下部障害、概日リズム、薬物嗜癖、パーキンソン病、痛覚;消化管障害、例えば、制限されないが、クローン病、高カルシウム血症、結腸陰窩肥大症、過敏性腸症候群;腎疾患、例えば、制限されないが、動脈及び腎臓の石灰化、慢性腎疾患;骨ミネラル濃度及び骨粗鬆症の疾患及び障害;婦人科障害、例えば、制限されないが、絨毛性障害、女性不妊症;並びに真性糖尿病からなる群から選択され得る。
【0128】
がんは、原発腫瘍及びこの転移を含み、有利には、子宮内膜がん、白血病、並びに乳房、膵臓、前立腺、結腸、卵巣、及び甲状腺の癌腫からなる群から選択される。一部の更に好ましい実施形態では、このがんは、前立腺がんである。
【0129】
また、本発明では、治療有効量の本発明による医薬組成物を患者に投与する工程を含む、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんを治療するための方法を提供する。
【0130】
本発明の医薬組成物は一般に、公知の手順に従って、個人において有益な作用を誘導するのに有効な投与量及び期間、投与する。投与は、注射又は経口、舌下、鼻腔内、直腸内若しくは膣内投与、吸入による投与、或いは経皮適用であり得る。注射は、皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、皮内又はその他による注射であり得る。
【0131】
本発明の医薬組成物は、有利には、外科手術、放射線療法、化学療法、及び/又は免疫調節剤による免疫療法と組み合わせて使用する。併用療法は、別々、同時、及び/又は連続的に行い得る。
【0132】
一部の実施形態では、医薬組成物は、ヒトを対象とする治療のために使用する。
【0133】
一部の実施形態では、本発明の組成物は、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患を有すると、例えば、本発明による抗体を使用して、それまで診断されている個人の治療的処置のために使用する。
【0134】
抗体の診断的及び予後予測的使用
また、本発明の目的は、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの検出、診断、予後予測、及び/又はこのような障害の治療成績のための、本発明による抗体の使用である。
【0135】
これに関連して、本発明は、TRPV6チャネルが関与する疾患の診断のための診断剤としての本発明による抗体の、個人由来の生体試料におけるin vitroでの使用に関する。疾患は、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんである。
【0136】
本発明では、
(a)本発明による抗体を生体試料とともにインキュベートして、混合物を生成する工程と、
(b)混合物中の結合した抗体を検出する工程と
を含む、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの検出、診断、予後予測、及び/又はこのような疾患の治療成績のための、個人から得た生体試料におけるin vitroでの方法を提供する。
【0137】
抗体、好ましくは、上に定義するように標識した抗体は、個人が疾患、例えば、がんを有することを意味する、TRPV6タンパク質の発現を個人において検出するために使用する。
【0138】
例えば、TRPV6タンパク質の発現は、患者由来の腫瘍組織において、健常な個人由来の同種の組織と比較してin situで検出し得る。
【0139】
一部の実施形態では、工程(b)は、混合物中の結合した抗体の量の決定と、任意選択で、少なくとも1種の所定の値による混合物中の結合した抗体の量の比較とを含む。
【0140】
一部の実施形態では、方法は、個人が疾患に罹患しているかどうかを、この値から推定する工程を含み得る。
【0141】
また、本発明は、生体試料中に存在する、TRPV6タンパク質の存在を検出するか又はTRPV6タンパク質の量を決定するための、本発明による抗体のin vitroでの使用に関する。
【0142】
また、本発明は、
a)生体試料を本発明による抗体と接触させる工程と、
b)試料中の結合した抗体の存在又は非存在を定量又は検出する工程と、
c)試料中のTRPV6タンパク質の量又は存在若しくは非存在を、この値から推定する工程と
を含む、生体試料中のTRPV6タンパク質の量を検出又は決定するためのin vitroでの方法に関する。
【0143】
また、本発明は、
a)本発明による抗体、好ましくは、標識した抗体を個人に投与する工程と、
b)個人又は個人の一部において抗体を検出、定量、及び/又は局在化する工程と
を含む、個人における、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの診断、予後予測、及び/又はこのような疾患の治療成績のための方法に関する。
【0144】
一部の実施形態では、方法は、個人が疾患に罹患しているかどうかを、この値から推定する工程を含み得る。
【0145】
また、本発明は、
a)本発明による抗体を個人に投与する工程と、
b)個人又は個人の一部において抗体を検出、定量、及び/又は局在化する工程と、
c)個人又は個人の一部においてTRPV6タンパク質の存在若しくは非存在、量、及び/又は局在化を、この値から推定する工程と
を含む、個人又は個人の一部においてTRPV6タンパク質を検出、定量、又は局在化するための方法に関する。
【0146】
抗体を個人に投与するとき、抗体をin vivoでの画像診断方法により検出することが好ましく、このような方法は、特には、外的方法、例えば、二次元若しくは三次元(3D)蛍光画像診断、又は内的方法、例えば、内視鏡等である。
【0147】
また、本発明は、
a)本発明による抗体を使用して生体試料中のTRPV6タンパク質のレベルを決定する工程と、
b)a)のレベルをこのタンパク質の参照レベルと比較し、a)のレベルがこの参照レベルよりも高い場合、この患者は浸潤性疾患(がん)に罹患しており、予後不良であるとする工程と
を含む、個人から得た生体試料においてTRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの予後を評価するための方法に関する。
【0148】
参照値は、個人の代表的パネルから得た値の統計学的解析により確立される値を指す。このパネルは、例えば、試料の性質、疾患の型に依存し得る。参照値は、例えば、正常な個人及び/又は非浸潤性疾患、例えば、非浸潤がんを有する個人のパネルにおいてTRPV6タンパク質発現レベルを測定し、閾値、例えば、濃度中央値を決定することにより得ることができ、これを参照値として使用する。本発明による方法により、患者のモニタリングを目的とするとき、参照値は、それまでに検査した患者から得得る。高レベルは、有意に高いレベル、即ち、0.1未満のp値を指す。参照値は、有利には、同種の生体試料、及び/又は検査する患者と同型の疾患、特には、同型のがんを有する患者のパネルから得る。
【0149】
上述の予後予測方法は、比較工程後に、この生体試料におけるTRPV6レベルに基づいて患者を予後良好群及び予後不良群に分類する更なる工程c)を更に含み得る。
【0150】
上述の予後予測方法は、患者の分類工程後に、疾患の重症度に応じて適切な治療薬を各群の患者に投与する更なる工程を更に含み得る。本発明の予後予測方法の使用により、TRPV6発現と関連する疾患の治療効率が向上する。
【0151】
特には、この患者は、新たに診断された個人である。本発明の方法を使用する患者の初発性腫瘍におけるがんの予後の早期評価により、患者にとって最も効率的な治療:非浸潤性腫瘍に対する局所放射線療法又は浸潤性腫瘍に対する全身的化学療法の選択が可能となる。
【0152】
上の方法及び使用では、生体試料は、検出又は診断アッセイに使用可能な個人から得た生体材料を指す。任意の生物学的供給源に由来し得る生体材料は、当業者に周知の標準的方法により患者から採出する。生体試料は、有利には、生検腫瘍細胞若しくは組織、又は体液、例えば、血清、血漿、血液、リンパ液、滑液、胸水、腹水若しくは脳脊髄液、粘液、胆汁、尿、唾液、涙、及び汗である。一部の実施形態では、生体試料は、生検腫瘍細胞又は組織である。
【0153】
上の方法及び使用では、TRPV6タンパク質発現は、生体試料に対して直接的に、又は当業者に周知の前処理方法に従って標準的な前処理の後に、定量化し得る。前処理は、例えば、細胞の溶解、又はプラスチック若しくはパラフィンによる生検組織の包埋を含み得る。
【0154】
上の方法及び使用では、TRPV6タンパク質発現は、当業者に周知の多様な抗体に基づく技術を使用して、検出又は定量し得る。このような技術の例としては、イムノアッセイ、例えば、イムノブロッティング、免疫沈降、免疫組織染色、免疫組織化学的検査、免疫蛍光、例えば、フローサイトメトリー、及びFACSが挙げられるが、これらに制限されない。好ましくは、TRPV6タンパク質は、免疫組織化学的アッセイを使用して、検出するか又はこのレベルを測定する。当業者は、このような技術を使用する、本発明による抗TRPV6抗体を用いたTRPV6タンパク質の検出及び/又は定量を最適化する操作が必要とされ得るパラメーターを理解している。
【0155】
細胞膜においてTRPV6を検出可能な生成抗体は、生きている、固定又は変性した細胞又は組織に対するin vitro又はin vivoでのあらゆる検出又は診断イムノアッセイに有用である。
【0156】
疾患の検出、診断又は予後予測のための上の方法及び使用の一部の実施形態では、この疾患は、上に定義するがんであり、原発腫瘍及びこの転移を含む。がんは、好ましくは、子宮内膜がん、白血病、並びに乳房、膵臓、前立腺、結腸、卵巣、及び甲状腺の癌腫からなる群から選択される。一部の更に好ましい実施形態では、このがんは、前立腺がんである。
【0157】
疾患の検出、診断又は予後予測のための上の方法の一部の実施形態では、この患者は、ヒト個人である。
【0158】
本発明による疾患の検出、診断又は予後予測のための上述の方法及び使用は、種々の患者由来の生体試料に対して同時に又は後続して実施し得る。他のバイオマーカーの発現レベルは、並行して測定することができる。
【0159】
本発明の別の主題は、少なくとも本発明による抗体、好ましくは、標識した抗体、及び任意選択で、抗体の使用のための指示書を含む、TRPV6チャネルが関与する疾患、特には、TRPV6発現と関連する疾患、例えば、がんの検出、診断又は予後予測のためのキットである。
【0160】
本発明の実行には、他に指示しない限り、当分野の技術範囲内の従来技術を利用する。このような技術は、文献に十分に説明されている。
【0161】
本発明は、ここで非制限的な次の実施例により例証し、次のような添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0162】
図1】種々のペプチド抗原に対して産生される種々の抗TRPV6チャネル抗体のエピトープバリアントの設計及び選択を示す図である。A.4種のポリクローナル抗体Ab79、Ab80、及びAb81が結合するエピトープのチャネル及び相対位置の模式図である(チャネルの基本的画像はhttp://atlasgeneticsoncology.org/より)。B.モノクローナル抗体82が結合するエピトープバリアントのチャネル及び相対位置の模式図である(チャネルの基本的画像はhttp://atlasgeneticsoncology.org/より)。
図2】ファージディスプレイパニング戦略を示す概略図である。
図3】5種のIgGの特異性ELISAを示す図である。無関係なペプチド対標的ペプチドに対する高濃度でのIgG結合の評価を示す。
図4】本発明の抗TRPV6チャネル抗体(Ab79及び82)並びに市販の抗体を使用するイムノブロッティングアッセイを示す図である。A.40nMのsiRNA-Luciferase(siCT)又はsiRNA-TRPV6(siV6)のいずれかで48時間処理したLNCaP細胞(TRPV6陽性)の後、種々の抗TRPV6抗体でプローブした全細胞溶解物の、膜底面に指示されるイムノブロッティングを示す。B.Aと同一のPVDF膜を使用するが、抗ベータアクチン抗体によりプローブしたイムノブロッティングを示す。
図5】ノックダウン/ノックアウトモデル及び高発現モデルを使用するAb79a検証を示す図である。A.TRPV6チャネルを高発現するLNCaP細胞株、HEK細胞株、CHO細胞株、及びPNT1A細胞株による、vEF1ap-5'UTR-TRPV6_CMVp-mCherryベクター(V6)を使用し、非トランスフェクト細胞と比較したイムノブロッティングを示す。全細胞溶解物をAb79aによりプローブした。B.PC3M細胞株、HAP-1wttrpv6+/+細胞株、HAP-1trpv6-/-細胞株、及びBSAタンパク質による、ハウスキーピング遺伝子ベータアクチン(AKTB)と比較したイムノブロッティングを示す。
図6】フローサイトメトリーの図である。白色のヒストグラムは、二次抗体単独を表し、淡灰色のヒストグラムは、検査した抗体(Ab79、Ab82又はP3-R4-E11)に加えて二次抗体を表す。
図7】カルシウム流入に対する抗体処理の作用を示す図である。A.TRPV6チャネルが重要な役割を果たすストア感受性容量性カルシウムカルシウム流入(SOCE)の模式図である。タプシガルジンによるSERCAポンプの阻害によって、カルシウム漏出が誘発され、これにより貯蔵カルシウムが排出されることによってストア感受性チャネル(SOC)が活性化され、次いで、細胞内部へのカルシウム流入の増幅において重要な役割を果たすTRPV6チャネルが活性化される。B.グリセロール(CT)又はウサギポリクローナル抗HA若しくはポリクローナル抗TRPV6抗体No:79(79a)のいずれかで5分間調製したLNCaP細胞へのSOCEの定量的表示である。C.抗TRPV6抗体No:79(79a)による前処理に5分間供し、TRPV6チャネルをノックダウンした(siRNA、40nM、48時間)LNCaP細胞へのSOCEの定量的表示である。D.WT前立腺がん細胞株LNCaP(曲線1)、Ab83で前処理したLNCaP(曲線2)、及びAb79で前処理したLNCaP(曲線3)へのカルシウムの容量性流入を示す。
図8】抗体がTRPV6チャネルを通過する電流を変化させることを示す図である。A.vEF1ap-5'UTR-TRPV6wt_CMVp-mCherryベクターをトランスフェクトし、ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体No:79(79a)で処理したHEK細胞による、同一アイソタイプの対照ウサギポリクローナル抗HAエピトープ抗体と比較したTRPV6特異的電流の定量的表示である。n=3、*-p<0.05。B.0.5μg/μlの上のウサギポリクローナル抗TRPV6抗体No:79(79a)の種々の希釈による用量応答曲線である。C.vEF1ap-5'UTR-TRPV6wt_CMVp-mCherryベクターをトランスフェクトし、マウスモノクローナル抗TRPV6抗体No:82で処理した、HEK細胞のTRPV6特異的電流の定量的表示である。曲線は、DFV溶液によるTRPV6活性の刺激前後、並びに指示のとおり1:5000、1:2000、1:1000、1:500、及び1:200希釈の抗体の適用後の典型的電流を表す。Nは:1:5000(n=9)、1:2000(n=11)、1:1000(n=13)、1:500(n=25)、及び1:200(n=13)に等しい。*-p<0.05。
図9】ポリクローナル抗体79(79a)結合を介するTRPV6調節によりを細胞生存が低下することを示す図である。A.当量のグリセロールを対照(CT)として、抗TRPV6抗体No:79(79a)又は対照抗体抗HAのいずれかで3日間処理したLNCaP細胞の細胞生存アッセイ(MTS)を示す。希釈は、0.5μg/μlの初期量に対して正規化する。n=3、*-p<0.05;**-p<0.01。B.ポリクローナル抗TRPV6抗体No:79(79a)と更には抗体No:80及び抗体No:81(TRPV6チャネルの細胞内エピトープに対して産生)と、同一アイソタイプの抗SERCA2B抗体、並びにグリセロール(CT)で3日間処理したLNCaP細胞の細胞数を示す。n=3、**-p<0.01。C.培地、当量のグリセロールを対照(CT)として、抗TRPV6抗体No:79(79a)又は市販の抗TRPV6抗体(Alomone社#ACC-036)のいずれかで3日間処理したLNCaP細胞の細胞生存アッセイ(MTS)を示す。希釈は、0.5μg/μlの初期量に対して正規化する。n=3、*-p<0.05;**-p<0.01。
図10】ポリクローナル抗体79(79a)による前立腺がん細胞の処理により、前立腺がん細胞のアポトーシスが誘導されること示す図である。A.LNCaP細胞のヘキスト染色を使用するアポトーシス率アッセイの定量を示す。当量のグリセロール(CT)又はポリクローナル抗TRPV6抗体No:79(79a)のいずれかで72時間、細胞を前処理した(1/500、0.5μg/μl)。1μMのタプシガルジン(TG)による72時間の処理を陽性対照として使用して、アポトーシスを誘導した。n=3、**-p<0.01、***-p<0.001。§-p<0.05はTG(1μM、72時間)のみの処理と比較。B.HEK細胞のヘキスト染色を使用するアポトーシス率の定量を示す。n=3、**-p<0.01、***-p<0.001。§-p<0.05はTG(1μM、72時間)のみの処理と比較。C.当量のグリセロール(CT)又はポリクローナル抗TRPV6抗体No:79(79a)(1/500)若しくは同一アイソタイプの抗HAのいずれかで72時間処理したLNCaP細胞の細胞周期アッセイのsub-G1ピークの定量を示す。1μMのタプシガルジン(TG)による72時間の処理を陽性対照として使用して、アポトーシスを誘導した。n=3、*-p<0.05;**-p<0.01。D.当量のグリセロール(CT)又はポリクローナル抗TRPV6抗体No:79 (79a)で72時間(1/500)若しくは同一アイソタイプの抗HAで処理し、8時間、24時間、及び48時間実行したLNCaP細胞のトリパンブルー染色を示す。n=3、*-p<0.05;**-p<0.01。
図11】LNCaP前立腺がん細胞生存を示す図である。グリセロール又は対照抗体mabAU1若しくはmab82のいずれかで細胞を1日間、2日間、3日間、及び4日間処理した。n=3;*-p<0.05。
図12】免疫不全マウスにおけるin vivoでの腫瘍の増殖及び転移の進行に対するマウスモノクローナル抗体mab82(82a)の作用を示す図である。マウスにPC3Mtrpv6-/--pmCherry細胞株及びPC3Mtrp-/--pTRPV6wt細胞株の安定なクローン由来の2×10E6細胞を移植した。各マウスの頸背部に移植し、同一用量100μg/kgの対照抗AU1又はmab82実験抗体(82a)のいずれかによる処理について各群を二分した。A.PC3Mtrpv-+-+-pTRPV6wt群の対照抗AU1又はmab82実験抗体(82a)亜群において3日目ごとに測定した1mm3の腫瘍の増殖を示す。矢印は処理開始を意味する。*-p<0.05;**-p<0.001。B.両群由来のマウスの生存曲線を示す。C.PC3Mtrpv6+/+-mCherry群の対照抗AU1又はmab82実験抗体(82a)亜群において3日目ごとに測定した1mm3の腫瘍の増殖を示す。矢印は処理開始を意味する。D.PC3Mtrpv6+/+-mCherry群対PC3Mtrpv6-/--pTRPV6wt抗AU1亜群において3日目ごとに測定した1mm3の腫瘍の増殖を示す。矢印は処理開始を意味する。*-p<0.05。E.PC3Mtrpv6-/--pmCherry群及びPC3Mtrpv6-/--pTRPV6wt群間並びに両亜群:対照抗AU1又はmab82実験抗体(82a)間の%による転移の発生を示す。
図13】カルシウム流入に対する抗体処理の作用を示す図である。P3R4F03、P3R4E11、P3R5H03で前処理したWT前立腺がん細胞株LNCaP、及び非前処理(CT)WT LNCaPへのカルシウムの容量性流入を示す。
図14】カルシウム流入に対する抗体処理の作用を示す図である。ヒト化mab82、マウスmab82、P2R4G08で前処理したWT前立腺がん細胞株LNCaP、及び非前処理(CT)WT LNCaPへのカルシウムの容量性流入を示す。
図15】P3R4F03抗体結合を介するTRPV6調節により細胞生存が低下することを示す図である。当量の無関係なヒトIgG1抗体を対照(IA)として、又は抗P3R4F03抗体のいずれかで3日間処理したLNCaP細胞の細胞生存アッセイ(Cell titer glo)を示す。希釈は、0.5μg/μlの初期量に対して正規化する。n=3、* p<0.05; ** p<0.01; *** p<0,001。
【実施例
【0163】
材料及び方法
ペプチドエピトープ
ペプチドエピトープ(ペプチド抗原)は、ヒトTRPV6配列UniProtKB/Swiss-Prot: NP_061116.5又はQ9H1D0.3(配列番号1)に由来する。ペプチドは、合成し、精製して99%を超える純度とした。
【0164】
ポリクローナル抗体の生成
ペプチドエピトープ(ペプチド抗原)をKLHタンパク質とN末端まで共役させ、ウサギに1週間に1回4週間注射した後、最終的に放血を行った(Eurogentec, LTD社)。血清をELISAにより抗原コーティングプレートを使用して検査した後、カラム内で同一の結合した抗原に対して親和性精製を行った。最終的親和性精製抗体を供給し、グリセロールで50/50v/vに希釈し、-20℃で保存した。
【0165】
モノクローナル抗体の生成、クローニング、及び特性決定
製造プロセスは、標準的なものであり、同一ペプチド抗原による4回の連続的免疫化からなる。4回目の追加免疫後1週間目に、血清試料を検査し、好適な抗体保有動物を選択し、犠死させ、このBリンパ球をハイブリドーマと融合させた。十分な力価が得られると、mAb試料をもう一度検査して、最も効率的/有望な試料を選択した。次いで、ハイブリドーマを増殖させ、抗体を単離して、エピトープペプチドに対してカラム上で親和性精製を行った。
【0166】
プライマー及びsiRNA
【0167】
【表1】
【0168】
試薬
試薬はすべて、他に特定しない限りSigma社(Sigma社、L'Isle d'Abeau Chesnes、仏国)から購入した。
【0169】
細胞培養
ヒトPC3M細胞株(PC3細胞に由来する転移細胞株をin vivoで移植)、PC-3M細胞株、LNCaP細胞株、PNTA1細胞株、HEK293細胞株、及びCHO-K1細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手し、10%のウシ胎仔血清を補足し、必要に応じて、カナマイシン(100μg/ml)及びLグルタミン(2mM)を含む、RPMI培地(LNCaP、PC3M、PNT1A)、DMEM培地(HEK293)、及びF12(CHO)培地(Gibco-BRL社)中で培養した。HAP1細胞株は、ほぼ一倍体のヒト細胞株であり、男性の慢性骨髄性白血病(CML)細胞株KBM-7から入手し(Caretteら、Nature. 2011, 477, 7364, 340-3)、10%のウシ胎仔血清を補足し、カナマイシン(100μg/ml)及びLグルタミン(2mM)を含む、IMDM培地(Sigma-Aldrich社)中で培養した。PNT1a細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)から入手し、RPMI中で培養した。細胞はすべて、with 5% CO2 in air. 37℃の加湿雰囲気下、大気中5%CO2で培養した。培地は、1週間に3回交換し、培養物は、細胞を0.25%のトリプシン(PBS中)により5分間37℃で処理することにより分離すると、コンフルエンスに達した。この実験では、細胞を6ウェルプレートに播種してPCR及びウエスタンブロッティングを行った。細胞のtrpv6-/-状態を維持するために、選択した抗菌物質G418を200μg/mlの濃度でHAP1trpv6-/-細胞の培養の維持のために、及びピューロマイシンを0.1μg/mlの濃度でPC3Mtrpv6-/-細胞株の培養維持のために使用した。
【0170】
抗体の処理では、血清を全く徹底的に不完全化、即ち、62℃で1時間、持続的攪拌下で加熱するか、又は一部の場合では、無血清培地、例えば、Gibco(商標)のAIM Vを使用した。
【0171】
電気生理学及び溶液
vEF1ap-5'UTR-TRPV6_CMVp-mCherryベクターをトランスフェクトしたHEK-293細胞の電流を肉眼的に、パッチクランプ技術の全細胞立体配置によりコンピューター制御EPC-9増幅器(HEKA Electronic社、独国)を使用して、これまでに記載のように記録した(Raphaelら、2014)。パッチクランプ記録用の細胞外溶液の成分は、120mMのNaCl、5mMのKCl、10mMのCaCl2、2mMのMgCl2、5mMのグルコース、10mMのHEPESであり、TEA-OHによりpH7.4に調整し、Dマンニトールによりモル浸透圧濃度310mOsm/kgに調整した。パッチピペットを細胞内ピペット基本溶液:120mMのCs-メタンスルホン酸、10mMのCsCl、10mMのHEPES、10mMのBAPTA(1.2-ビス(2-アミノフェノキシ)エタンN,N,N',N'四酢酸)、6mMのMgCl2(CsOHによりpH7.4に調整し、Dマンニトールによりモル浸透圧濃度295mOsm/kgに調整)で満たした。所望の濃度における必要な補足物質は、適切な保存液から実験溶液に直接的に加え、水、エタノール又はジメチルスルホキシドに溶解した。化学物質はすべて、Sigma-Aldrich社から購入した。パッチクランプ記録の過程では、薬物及び溶液は、一般的流出量による多系列微小灌流系(Cell Micro Controls社、Norfolk, VA)を試験細胞の直近(約200μm)に配置することにより細胞に適用した。実験は室温で行った。
【0172】
カルシウム画像診断
細胞をカバーガラス上に播種し、4μMのFura-2 AMを室温で45分間、増殖培地に添加した。記録は、140mMのNaCl、5mMのKCl、2mMのMgCl2、0.3mMのNa2HPO3、0.4mMのKH2PO4、4mMのNaHCO3、5mMのグルコース、及び10mMのHEPES、pH7.4に調整したNaOHを含むHBSS中で実施した。CaCl2は、実験に応じて0.07mM又は1,8mMに調整した。次いで、カバーガラスを灌流チャンバー内の顕微鏡ステージ上に配置した。細胞の蛍光画像をビデオ画像解析系(Quanticell)により記録した。放射波長510nm、或いは、340nm及び380nmにおけるFura-2蛍光を、プローブを励起させることにより記録した。340/380nmのシグナル比を、in vitroでの較正を使用して[Ca2+]iレベルに変換した。
【0173】
SDS-PAGE及びウエスタンブロッティング
セミコンフルエントな細胞を、10mMのTris-HCl pH7.4、150mMのNaCl、10mMのMgCl、1mMのPMSF、1%のノニデットP-40、及びSigma社のプロテアーゼ阻害物質カクテルを含む氷冷した溶解緩衝液で処理した。この溶解物を15,000×gにより4℃で20分間遠心分離し、125mMのTris-HCl pH6.8、4%のSDS、5%のβメルカプトエタノール、20%のグリセロール、0.01%のブロムフェノールブルーを含む試料緩衝液と混合し、5分間95℃で煮沸した。全タンパク質試料を8%、10%、及び15%のSDS-PAGEに供し、セミドライウエスタンブロッティング(Bio-Rad Laboratories社)によりニトロセルロース膜に移した。膜は、TNT緩衝液(Tris-HCl pH 7.5、140mMのNaCl、及び0.05%のTween20)を含む5%のミルク中で一晩ブロッキングし、次いで、特異的ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体(すべて1/500希釈)及びマウスモノクローナル抗βアクチン抗体(Lab Vision Co.社、1/1000)を使用してプローブした。膜上のバンドは、増強化学発光法(Pierce Biotechnologies Inc.社)を使用して可視化した。濃度測定解析は、Bio-Rad社の画像取得系(Bio-Rad Laboratories社)を使用して実施した。
【0174】
フローサイトメトリー
200000細胞を15μg/mLのポリクローナルウサギ抗体pAb79又はモノクローナルマウス抗体mAb82とともに1時間氷上でインキュベートした。10μg/mLの抗ウサギAF488若しくは抗マウスAF488抗体(それぞれInvitrogen社のA-11034及びA-11029)又はP3-R4-E11を使用して1時間氷上でIgG結合を検出した。抗Fab-AF647(Jackson-109-605-006)を使用してIgG結合を検出した。解析はフローサイトメトリーにより行った。
【0175】
RT-PCR
RT-PCR実験をこれまでに記載のように実施した(Lehen'kyiら、2007)。グアニジウムチオシアネート-フェノール-クロロホルム抽出手順を使用して全RNAを単離した。DNase I(Life Technologies社)処理によりゲノムDNAを除去後、全RNA 2μgをcDNAに42℃でランダムヘキサマープライマー(Perkin Elmer社)及びMuLV逆転写酵素(Perkin Elmer社)を使用して最終容量20μlで逆転写させた後、下記のようにPCRを行った。TRPV6 cDNAの増幅に使用したPCRプライマー並びにAR、VDR、及びβアクチンのプライマーは、上のTable XVIに明示する。PCRは、RT生成cDNA上でGeneAmp PCR System 2400サーマルサイクラー(Perkin Elmer社)を使用して実施した。種々のcDNAを検出するために、PCRは、RT鋳型1μlを50mMのKCl、10mMのTris-HCl(pH8.3)、2.5mMのMgCl2、200μMの各dNTP、600nMのセンスプライマー及びアンチセンスプライマー、並びに1UのAmpliTaq Gold(Perkin Elmer社)の混合物(最終濃度)に最終容量25μlで加えることにより実施した。DNA増幅条件は、95℃で7分の初期変性工程、及び95℃で30秒、60℃で30秒、72℃で30秒を40サイクル、及び最終的に72℃で7分であった。使用したプライマーは、上の表に列挙するプライマーである。
【0176】
定量的リアルタイムPCR
TRPV6及びHPRTのmRNA転写物の定量的リアルタイムPCRを、MESA GREEN qPCR MasterMix Plus for SYBR Assay (Eurogentec社)を使用してBiorad社のCFX96リアルタイムPCR検出系上で行った。プライマー配列は、Table XVIに示す。HPRT遺伝子を内因性対照として使用して、RNA抽出、RNA分解度、及びRT効率の可変性における変動を正規化した。結果を定量するために、比較閾値サイクル法ΔΔCt及びBiorad社のCFX Manager Software v2.0を使用した。
【0177】
siRNAトランスフェクション
HAP1細胞に、40nMの、TRPV6に対するsiRNA(1~4若しくは混合物)又はsiLuciferase(Eurogentec, LTD社、ベルギー国)を、リポフェクタミン3000トランスフェクション試薬(Lipofectamine 3000、Thermofisher社)5μlを製造者の指示に従って使用してトランスフェクトした(siRNA配列については、Table I(表4)を参照)。特定の各標的に対するsiRNAによる細胞トランスフェクション効率は、リアルタイム定量的PCR及び/又はウエスタンブロッティングを使用して、必要に応じて検証した。
【0178】
ヌクレオフェクション(Nucleofection)
種々のプラスミドによる種々の細胞株のトランスフェクションを、Nucleofector(Amaxa GmbH社)を製造者の指示に従って使用して行った。簡潔には、プラスミド2μgをトリプシン処理細胞200万細胞内にトランスフェクトし、次いで、これを6ウェルディッシュ、35mmディッシュ又はカバーガラス上に48時間播種した。
【0179】
細胞生存アッセイ
CellTiter 96 Aqueous One Solution細胞増殖アッセイ(Promega社)を使用し、代謝的に活性な増殖細胞のみに見出されるデヒドロゲナーゼ酵素による可溶性ホルマザンへの比色分析試薬MTS[3,4-(5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム塩]の細胞内変換に基づいて、細胞増殖を測定した。各処理の後、色素溶液20μlを96ウェルプレート内の各ウェルに加え、2時間インキュベートした。その後、波長490nmにおける吸光度を、ELISAプレートリーダー(Molecular Devices社)を使用して記録した。細胞増殖阻害率は、(A対照-A試料)/(A対照-Aブランク)×100%として算出する。
【0180】
P3R4F03を評価するために、CellTiter-Glo(登録商標)Luminescent Cell Viability Assayを使用し、代謝的に活性な増殖細胞によるATP産生に対する、ルシフェリンを光に変換するホタルルシフェラーゼ反応に基づいて、細胞生存を測定した。等用量の、無関係な抗体(IA)又はP3R4F03のいずれかで細胞を処理した。各処理の後、CellTiter-Glo(登録商標)Reagent溶液100μlを96ウェルプレート内の各ウェルに加え、10分間インキュベートした。その後、発光を、ELISAプレートリーダー(Polar Star Omega、BMG Labtech社、独国)を使用して記録した。細胞増殖阻害率は、(A対照-A試料)/(A対照-Aブランク)×100%として算出する。
【0181】
細胞周期アッセイ
フローサイトメトリーアッセイを、最初に記載されているように(18)、三つ組の25cm2フラスコにおいて培養した細胞集団に対して実施した。およそ106細胞を氷冷した70%のメタノール1mlで30分間固定した。固定後、細胞を遠心分離により沈殿させて固定液を除去し、4℃のリン酸緩衝食塩水(PBS)で3回洗浄し、PBS 100μlに再懸濁し、RNAse A(1mg/ml、Sigma社)100μlで処理し、最終濃度50μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI、Sigma社)で染色した。染色した細胞を4℃の暗所で保存し、2時間以内に解析した。染色した試料は、FACScanフローサイトメーター(Becton-Dickinson社、San Jose、CA)で測定した。データは、7000回のイベントについて5%未満の変動係数により取得し、赤色蛍光は、蛍光検出器3(FL3)を使用してX軸に対して測定した。データは、保存し、CellQuestソフトウェアを使用し解析して細胞周期分布パターン(subG1(アポトーシス性)、G0/G1、S、及びG2/M相)を評価した。
【0182】
TUNELアッセイ
アポトーシスのレベルを、TUNEL-TMRレッドアッセイ(Roche Biochemicals社)又はヘキスト染色のいずれかにより明らかとなったアポトーシス核数から推定した。アポトーシス細胞のパーセンテージを、各「n」に対して三つ組で行った各条件について少なくとも5種の確率場を計数することにより決定した。
【0183】
免疫組織化学的検査
前立腺切除術8例由来のパラフィン処理した匿名のヒト前立腺組織切片をリールのサンヴァンサン病院(Hopital St Vincent de Lille)細胞病理学部から入手した。切除後直ちに腫瘍を固定し、従来の手順に従ってパラフィン処理した後、ミクロトームで7μmに切断し、スライドに積み重ねた。パラフィン包埋前立腺切片を従来の脱パラフィン処理に供した後、水浴内で95℃のクエン酸緩衝液を使用して抗原を回収した。PBS-ゼラチン中1%のBSA及び0,05%のTriton X100を含む溶液による飽和後、前立腺切片を特異的抗体、例えば、ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体(No:79a-c、80-82、1/200)とともに一晩4℃でインキュベートした。ロバ又はヤギポリクローナル抗ウサギペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体及びロバ又はヤギポリクローナル抗マウスペルオキシダーゼコンジュゲート二次抗体(Chemicon International社、1/200)を使用した。ジアミノベンジジン(Sigma-Aldrich社)により顕色後、スライドをグリセルゲル(Glycergel、登録商標)で封入し、Zeiss Axioskope顕微鏡(Carl Zeiss社)及びLeica Image Managerソフトウェア(Leica Geosystems AG社)を使用して画像を解析した。免疫組織化学的検査は、Benchmark XT自動スライド染色機(Ventana Medical Systems, Inc.社、Tucson、AZ)を確立されたプロトコルに従って使用して自動的に実施し、IVIEW-DAB検出系(N760-500、Ventana Medical Systems, Inc.社)を使用して検出を実施した。
【0184】
プラスミド
pCAGGS上に5'-UTRを含む全TRPV6 cDNAを使用して最終的vEF1ap-5'UTR-TRPV6_CMVp-mCherryベクター(E-Zyvec社、仏国)を得た。これを細胞内にヌクレオフェクションし、トランスフェクション率を、対照vEF1ap-5'UTR_CMVp-mCherryベクターを使用して評価した。pTRPV6-eYFP及びpOrai1-YFPベクターをこれまでに記載のように使用した(Raphaelら、2014)。
【0185】
動物、抗体注射、腫瘍原性アッセイ、及び外科手術
飼育及び世話を含む、動物を対象とする試験、安楽死の方法、並びに実験プロトコルは、動物倫理委員会に従い(承認番号201703021400830)、リール大学(University of Lille、Cite Scientifiqueキャンパス)の動物舎において(許可:C59-00913)、Dr. Lehen'kyiの監督下で行った(許可:59-009270)。腫瘍細胞(2×106細胞/マウス)を50%(v:v)マトリゲル(BD biosciences社)により、6週齢の雄スイスヌードマウス(Charles-Rivers社、仏国)の皮下に注射した。抗体試験では、腫瘍が可視化され始めると、処置のためにマウスをランダム化し(少なくとも10動物/群)、PBS中に希釈した100μg/kgの抗AU1又は抗TRPV6 mab82のいずれかの抗体を1週間に2回腹腔内投与した。動物福祉が冒される場合、マウスを犠死させた。腫瘍が最大公認サイズに達すると、動物を外科手術に供する、即ち、腫瘍を切除した。腫瘍は、解剖、撮影、秤量し、容量を求めた。転移試験では、動物を毎日モニターし、小動物画像診断系(Bruker社、米国)を使用してmCherry画像診断を行った。
【0186】
scFvスクリーニング
3ファージディスプレイ選択戦略を、iMAb社のHuscI II私有ライブラリーを使用して、TRPV6ペプチド及びPC3M luc C6細胞に対して行った(図18)。図4に記載のようにストレプトアビジン上で枯渇を行った。枯渇したライブラリーを使用して、ペプチドに対する第1の選択ラウンドを4回及び細胞に対する第5の選択ラウンドを1回実施した。
【0187】
第1のラウンド2回では、ビオチン化TRPV6ペプチドをストレプトアビジンでコーティングしたmaxisorpプレート上に固定した。各選択ラウンドのファージ(1010ファージ/mL)を加え、抗M13抗体-HRPを使用して検出した。
【0188】
第1のラウンド2回から選択したscFvでは、発現を誘導し、分泌されたscFvを含む培養上清を採取して、TRPV6ペプチドへのscFv結合をELISAにより3回目、4回目、及び5回目のラウンドについて評価した。
【0189】
3回目、4回目、及び5回目のラウンドでは、ビオチン化ペプチドをストレプトアビジンでコーティングしたmaxisorpプレート上に固定した。ScFv生成物(培養上清)を加え、抗c-myc-HRPを使用して検出した。
【0190】
精製IgGのSDS-PAGE解析
タンパク質は還元するか又は還元せずに、タンパク質1.6μgを各レーンの4~20%ゲル上に添加した。
【0191】
用量応答ELISA
TRPV6ビオチン化ペプチドを10μg/mLでストレプトアビジンコーティングプレート上に固定した。IgG結合を種々の濃度(0.00282nM~500nM)で検査し、抗Fab-HRP(Sigma社A0293)を使用して検出した。
【0192】
特異的ELISA
TRPV6及び無関係のビオチン化ペプチドをストレプトアビジンコーティングプレート上に固定した。IgG結合を高濃度(75μg/mL~500nM)で検査し、抗Fab-HRP(Sigma社A0293)を使用して検出した。
【0193】
データ解析
各種の実験では、少なくとも3回の測定データを蓄積した。データは、Origin 7.0ソフトウェア(Microcal Software Inc.社、Northampton, MA)を使用して解析した。結果は、必要に応じて、平均値±S.E.M.として表した。Nは、一連の実験回数に等しく、nは、この試験で使用した細胞数に等しい。ANOVAを差の統計学的比較に使用し、P<0.05を有意であると判断した。グラフでは、(*)及び(**)は、P<0.05及びP<0.01による統計学的有意差をそれぞれ意味する。
【0194】
(実施例1)
細胞外エピトープに対して産生される抗TRPV6抗体の設計及び検証
ウサギポリクローナル抗体No.79に対するエピトープの選択
アミノ酸37個が、S1膜貫通ドメインとS2膜貫通ドメインとの間に位置する第1の細胞外ループに及ぶ。このうちの3種の残基が、アスパラギン、Nの残基である。NetNGlyc 1.0ソフトウェアを使用する詳細な解析により、Nグリコシル化、RTNNRT、及びRDNTLの最も可能性の高い第2部位及び第3部位が実証された。このような部位及びこれらのNグリコシル化の存在により、抗体によるエピトープへの立体的接触の可能性が否定される。他方では、脂質二重層は、抗体がエピトープのそれぞれのアミノ酸に結合することを防ぐ。エピトープ3種を使用して、79a-cと呼ばれるウサギポリクローナル抗体を生成した。このような3種のエピトープは、ペプチド79a又はhTRPV6 414~428;hTRPV6配列である配列番号1の414~428番目;QEAYMTPKDDIRLVG(配列番号3)と、ペプチド79b又はhTRPV6 414~425;hTRPV6配列である配列番号1の414~425番目;QEAYMTPKDDIR(配列番号4)と、ペプチド79c又はhTRPV6 412~425;hTRPV6配列である配列番号1の412~425番目;LLQEAYMTPKDDIR(配列番号5)とにそれぞれ対応する。抗原を回収するこれらの効率は、一連のイムノブロッティングを変性条件下で使用して実証した。
【0195】
モノクローナル抗体83
モノクローナル抗体1種が、ペプチドEAYMTPKEEIRR(配列番号7)に対して産生された。これは、S1膜貫通ドメインとS2膜貫通ドメインとの間のXループのC末端に位置するペプチドhTRPV6 415~426(EAYMTPKDDIRL;配列番号8)のバリアントである。
【0196】
モノクローナル抗体82に対するエピトープの選択
モノクローナル抗体1種が、ポア領域内のpループ(S5とS6との間)のN末端に位置するペプチドに対して産生された(図1)。標的配列hPRV6 551~573(IFQTEDPEELGHFYDYPMALFST;配列番号9)に位置する種々の抗原ペプチド(ペプチドエピトープ):ペプチド82a(hPRV6 553~570;QTEDPEELGHFYDYPMAL;配列番号10);ペプチド82b(hPRV6 551~567;IFQTEDPEELGHFYDYP;配列番号11);ペプチド82c(hPRV6 557~573;PEELGHFYDYPMALFST;配列番号12);ペプチド82d(hPRV6 554~568;TEDPEELGHFYDYPM;配列番号13);ペプチド82(hPRV6 554~569;TEDPEELGHFYDYPMA;配列番号14)を検査した。ペプチド82(hPRV6 554~569)に対して産生されたモノクローナル抗体82(mab82)は、更に特性決定した。
【0197】
ファージディスプレイにより細胞外エピトープに対して産生される抗TRPV6抗体の設計及び検証
ヒトTRPV6のペプチド3種は、Genosphere Biotechnologies社により合成された。1種は、N末端において、他の2種はC末端においてビオチン化した。これらの主な特性をTable III(表2)に要約する。
【0198】
【表2】
【0199】
ペプチド1及びペプチド2は、pAb79及びmAb82をそれぞれ発見するためにペプチドの免疫化にこれまでに使用されているものであったが、ペプチド3は、ポア形成領域の別のループを標的とするように設計された更なるペプチドである。
【0200】
3ファージディスプレイ選択戦略を、iMAb社のHuscI II私有ライブラリーを使用して、TRPV6ペプチド及びPC3M luc C6細胞に対して行った(図2)。図2に記載のようにストレプトアビジン上で枯渇を行った。枯渇したライブラリーを使用して、ペプチドに対する第1の選択ラウンドを4回及び細胞に対する第5の選択ラウンドを1回実施した。第1の選択ラウンド3回の後、パニング戦略3回の結果を、ポリクローナルELISAによって、各パニングラウンドにおいて選択されたファージプール及び二次抗体として抗M13-HRPを使用して、TRPV6ペプチドに対する結合について検査した。すべての選択物において、TRPV6ペプチドバインダーの濃縮が観察された。第1の選択ラウンド3回の後、3回の各選択物の個々のコロニー(単一scFvを含む)93種を選定し、増殖させた。scFv発現を誘導し、分泌されたscFvを含む培養上清を採取して、TRPV6ペプチドに対するscFv結合をELISAにより評価した。抗c-myc-HRP抗体を使用してscFvsを検出した。まとめると、クローン21種:ペプチド1では3種、ペプチド2では7種、及びペプチド3では11種が、3回目のラウンドの終わりに陽性であることが見出された。TRPV6バインダーの選択物を更に濃縮するために、ペプチド及び細胞のそれぞれに対して追加のラウンド2回を実施することに決定した。4回目及び5回目のラウンドの選択結果を、これまでに記載のようにスクリーニングした。
【0201】
まとめると、クローン22種:ペプチド1では6種、ペプチド2では7種、及びペプチド3では9種が、4回目のラウンドの終わりに陽性であることが見出された。
【0202】
まとめると、クローン4種:ペプチド1では2種及びペプチド3では2種が、5回目のラウンドの終わりに陽性であることが見出された。
【0203】
3回目、4回目、及び5回目のスクリーニングラウンド後、scFv 47種が、TRPV6ペプチドに特異的に結合することが示された。
【0204】
scFv 47種は、ELISAスクリーニングにより選択され、シーケンシングに送られた。このうちの34種:ペプチド1では8種、ペプチド2では11種、及びペプチド3では15種が、ユニークな配列であった。高い配列同一性を有する配列を複数のクラスターに群化した。更なるELISAを行って、ユニークなクローンの特異的結合を確認した。ScFv発現を誘導し、培養上清を採取して、TRPV6ペプチド及び無関係なペプチドに対するscFv結合を三つ組で評価した。ScFvは、抗c-myc-HRP抗体を使用して検出した。scFv 11種が、IgG型による更なる特性決定のために選択され、選択されたscFv 11種を、HEK293T細胞において小規模に発現するヒトIgG1型にサブクローニングし、プロテインAビーズ上で精製した。11種のうち9種のSDS-PAGE遊走プロファイルは、対照IgG(トラスツズマブ)に匹敵した。IgG 2種は、高い分子量を示し、Nグリコシル化と対応した。これは配列解析により確認された(データ不提示)。
【0205】
ヒトTRPV6ペプチドに対するIgG結合をELISAにより検査した。TRPV6ビオチン化ペプチドを10μg/mLでストレプトアビジンコーティングプレート上に固定した。IgG結合を種々の濃度(0.00282nM~500nM)で検査し、抗Fab-HRP(Sigma社A0293)を使用して検出した。P2-R4-G8、P3-R4-F3、P3-R4-E11、P3-R5-E6、及びP3-R5-H3のIgGは、TRPV6ペプチドに対する強力な結合を示し、これによりEC50の決定が可能となった(Table IV(表3))。
【0206】
【表3】
【0207】
次いで、IgGの特異性をELISAにより評価した。TRPV6及び無関係のビオチン化ペプチドをストレプトアビジンコーティングプレート上に固定した。IgG結合を高濃度(75μg/mL~500nM)で検査し、抗Fab-HRP(Sigma社A0293)を使用して検出した。P2-R4-G8、P3-R4-F3、P3-R4-E11、P3-R5-E6、及びP3-R5-H3のIgGでは、無関係なペプチドに対する結合は観察されず、IgGが選択されたペプチドに対する高い特異性が示された(図3)。
【0208】
種々のウサギポリクローナル抗体を使用するTRPV6ペプチド発現の検出
ポリクローナル抗体3種(Ab79a、Ab79b、Ab79c)が、S1膜貫通ドメインとS2膜貫通ドメインとの間のXループのC末端に位置するペプチドに対して産生された(図1)。抗体反応性を種々の全細胞溶解物、LNCaP(図4及び図5A)並びにPC-3M(図5B)(即ち、TRPV6陽性)のイムノブロッティングにより定量化した。グリコシル化/成熟形態のTRPV6チャネルに対して予想されたサイズのおよそ95~100kDaのバンドが、ab79a及びab79b及びab79cについて、LNCaP細胞において観察された(図4A)。非特異的50kDaのバンドも、Ab79a~cにより検出された(図4B)。多数の小型サイズのバンドは、殆どがAb79cにより観察され(図4A)、信頼可能な染色は、ヒトTRPV6の細胞内エピトープを認識するように設計した市販の抗TRPV6抗体(Sigma社SAB2106366及びSanta-Cruz社sc-28763)によって観察されなかった(図4A)。
【0209】
結果として、変性条件下でのイムノブロッティングにより、抗体が産生された特定のエピトープに対する抗体特異性の評価が可能となった。Ab79aは、単量体TRPV6タンパク質に対して予想されたサイズのバンドを検出することが可能な、更に良好な抗体であった。
【0210】
mab82抗体を使用するTRPV6タンパク質発現の検出
モノクローナル抗体1種が、ポア領域におけるpループ(S5とS6との間)のN末端に位置するペプチドに対して産生された(図1)。抗体反応性を種々の全細胞溶解物、LNCaP(図4B)(即ち、TRPV6陽性)のイムノブロッティングにより定量化した。グリコシル化/成熟形態のTRPV6チャネルに対して予想されたサイズのおよそ95~100kDaのバンドが、mab82のみについて、LNCaP細胞において観察され、信頼可能な染色は、ヒトTRPV6の細胞内エピトープを認識するように設計した市販の抗TRPV6抗体(Sigma社SAB2106366及びSanta-Cruz社sc-28763)によって観察されなかった。
【0211】
結果として、変性条件下でのイムノブロッティングにより、抗体が産生された特定のエピトープに対する抗体特異性の評価が可能となった。mAb82は、単量体TRPV6タンパク質に対して予想されたサイズのバンドを検出することが可能な、唯一の抗体であった(検査した市販の抗体と比較して)。
【0212】
ノックダウンモデル、(高)発現モデル、及びノックアウトモデルを使用する79a抗体の検証
この試験ではsiRNA 4種を使用して、TRPV6発現の特異的ノックダウンを行った。siRNA配列のリストは、Table I(表4)に示す。これらは、mRNAの第1、第7、第11、及び第13のエクソンを標的とする。最初に、40μMの対照siRNA(ルシフェラーゼ)又はTRPV6チャネルに対する40μMのsiRNA 1~4のいずれか若しくはこれらの混合物をトランスフェクトしたLNCaP細胞において、TRPV6チャネルの定量的リアルタイムPCRを、HPRT遺伝子発現と比較して実施した。mRNA減衰レベルのノックダウンは60%を超える効率であり、AKTBと比較した、siRNA処理LNCaP細胞由来のタンパク質溶解物の対応するイムノブロッティング及びバンドの定量により反映された(データ不提示)。
【0213】
次の工程として、(高)発現系を使用した。殆どすべての培地に2mMのカルシウムが存在することによりTRPV6の発現が細胞生存に有利となるため、TRPV6チャネルを発現しないin vitroでの細胞系を有することが極めて困難であることに留意すべきである。データにより、TRPV6発現が、わずかな上昇から強力な上昇まで変動することが示され、約100kDaのバンドが特異的であることが示唆された。
【0214】
フローサイトメトリー
TRPV6を発現するTRPV6 PC3Mに対する抗体の特異性を検査するために、luc C6をトランスフェクトした細胞株及びPC3M KO細胞株を検査した。結果は、Ac 79、82又はP3-R4-E11では、PC3M luc C6細胞に対して強力な結合を示したが、PC3M KOに対して弱いシグナルが観察された(図6)。
【0215】
(実施例2)
臨床試料におけるがんの診断及び予後予測のための細胞外エピトープに対して産生される抗TRPV6抗体の使用
ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aを使用して、正常前立腺を含む前立腺切除検体(膀胱がん切除検体及びグリーソンスコア7を有する腺癌)由来のヒト臨床試料を使用する免疫組織化学的検査(IHC)を実施した(データ不提示)。
【0216】
このようなデータにより、健常前立腺におけるTRPV6チャネルの発現陰性が確認され、これは以前の公表データと一致する(Wissenbachら2001; 2004; Pengら、2001; Raphaelら、2014)。したがって、ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aを診断/予後予測目的に使用することができる。最終的には、HAP-1trpv6-/-細胞株及びHAP-1trpv6+/+細胞株を使用して移植した腫瘍に由来する腫瘍スライスのIHCを、ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aを使用して実行した。結果は、ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aが、HAP-1trpv6-/-形成腫瘍において、いかなるTRPV6チャネルも認識不能であることを示し、ノックアウトモデル及び抗体特異性の両方が検証される。
【0217】
マウスモノクローナルmab82a抗体を使用して、正常前立腺を含む前立腺切除検体(膀胱がん切除検体)及びグリーソンスコア7を有する腺癌由来のヒト臨床試料を使用する免疫組織化学的検査(IHC)を実施した。
【0218】
このようなデータにより、健常前立腺におけるTRPV6チャネルの発現陰性が確認され、これは以前の公表データと一致する(Wissenbachら2001; 2004; Pengら、2001; Raphaelら、2014)。したがって、ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体mab82aを診断/予後予測目的に使用することができる。
【0219】
(実施例3)
細胞外エピトープに対して産生される抗TRPV6抗体を用いた処理によりTRPV6チャネル活性が調節される
抗体処理によりPCa細胞におけるストア感受性容量性カルシウム流入が上昇する
TRPV6は、PCa細胞へのストア感受性カルシウム流入(SOCE)の重要な要素であることが示されており、これによりTRPV6活性を検出及び解析するためのこの機構の使用が可能となる(Raphaelら、2014)。この機構は、小胞体(ER)における貯蔵カルシウムの排出により引き起こされる。タプシガルジン(1μM)によるSERCAポンプの阻害を使用して、カルシウム漏出を誘導する。これにより、貯蔵カルシウムが排出されることによってストア感受性チャネル(SOC)、例えば、Orai1又はTRPC1が活性化され、次いで、細胞内部へのカルシウム流入の増幅において少なくとも半分は重要な役割を果たすTRPV6チャネルが活性化される(Raphaelら、2014;図7A)。
【0220】
実験プロトコルでは、最初に、カルシウム不含の溶液とともに細胞をインキュベートして外向き勾配を生成し、これを、SERCAポンプを遮断する1μMのタプシガルジンの使用により増幅することによって、カルシウムのERへの再取込みが不能となる。この人工条件により、細胞生存に重要なカルシウムの大幅な欠如がもたらされ、これによって、所謂、ストア感受性チャネル(SOC)が開口される。2mMのカルシウムを加えると、SOCを介してカルシウム流入がもたらされ、次いで、これにより、細胞内部へのカルシウム流入の増幅において重要な役割を果たすTRPV6チャネルが活性化される(Raphaelら、2014)。PCa細胞、例えば、LNCaPを、すべて1/500希釈による0.5μg/μlに正規化した、グリセロール(CT)又はウサギポリクローナル抗HA若しくはポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aのいずれかとともに5分間プレインキュベートすることにより、差次的作用、例えば、ポリクローナル抗体No.79aの場合におけるSOCEレベルの選択的且つ有意な上昇が引き起こされた(図7B)。このような作用がTRPV6チャネルにより媒介されることを立証するために、TRPV6ノックダウンのためのsiRNA戦略使用の間に抗体を制御した。SOCEは、TRPV6チャネルノックダウンの間に有意に低下し、抗体No.79aにより媒介されるSOCEの上昇(siCT+No.79a)が、siTRPV6+No.79処理と比較して有意に減弱された(図7C)。したがって、No.79の両ポリクローナル抗体は、SOCEを増幅するTRPV6を活性化し、更に大量のカルシウムを細胞内部に流入させる。
【0221】
細胞を抗体83とともにプレインキュベートすると、対照を上回る容量性カルシウム流入の上昇が生じ、TRPV6により媒介されるカルシウム流入が、抗体79と同様に、抗体83により上昇することが示される(図7D)。
【0222】
ポリクローナル抗体79aがTRPV6誘導電流に直接的に影響する
イオンチャネルに対する細胞外抗体作用における至適基準は、電気生理学による技術であり、これらの抗体のそれぞれがユニークな伝導的特徴又は特性を有するため、この技術によって特定のチャネルを通過するイオン電流の測定が可能となる。開発したポリクローナル抗体No.79の特異性を、vEF1ap-5'UTR-TRPV6wt_CMVp-mCherryをトランスフェクトしたHEK細胞から記録した全細胞電流に対する作用を測定することにより検証した(図8)。最初に、記載のように、TRPV6活性を遮断することがわかっている10mMのCa2+を含む生理溶液に細胞を浸した(Singhら、Sci Adv. 2018, 4, eaau6088; Derlerら、J Physiol. 2006, 577, 31-44 ; Niemeyerら、Proc Natl AcadS ci U S A. 2001, 98, 3600-5)。細胞外(bath)溶液を、TRPV6活性を刺激することが一般にわかっている二価カチオン不含(DVF)溶液に交換することにより、TRPV6特異的電流を誘発した(Derlerら、2006; Niemeyerら、2001)。ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aは、対照抗体の同一アイソタイプのウサギポリクローナル抗HAエピトープ抗体と比較して、TRPV6チャネルに結合する間に電流を有意に上昇させることが可能であった(1/500、0.5μg/μl)(図8A)。この結合の特異性を確認するために用量応答実験を行ったところ、TRPV6チャネルの漸進的活性化が示された(図8B)。
【0223】
モノクローナル抗体82がTRPV6誘導電流に直接的に影響する
イオンチャネルに対する細胞外抗体作用における至適基準は、電気生理学による技術であり、これらの抗体のそれぞれがユニークな伝導的特徴又は特性を有するため、この技術によって特定のチャネルを通過するイオン電流の測定が可能となる。モノクローナルmab82の特異性を、vEF1ap-5'UTR-TRPV6wt_CMVp-mCherryをトランスフェクトしたHEK細胞から記録した全細胞電流に対する作用を測定することにより検証した(図8C)。最初に、記載のように、TRPV6活性を遮断することがわかっている10mMのCa2+を含む生理溶液に細胞を浸した(Singhら、Sci Adv. 2018, 4, eaau6088; Derlerら、J Physiol. 2006, 577, 31-44 ; Niemeyerら、Proc Natl AcadS ci U S A. 2001, 98, 3600-5)。細胞外(bath)溶液を、TRPV6活性を刺激することが一般にわかっている二価カチオン不含(DVF)溶液に交換することにより、TRPV6特異的電流を誘発した(Derlerら、2006; Niemeyerら、2001)。マウスモノクローナル抗TRPV6抗体mab82aは、対照抗体(CT)と比較して、TRPV6チャネルに結合する間に電流を有意に低下させることが可能であった(図8C)。開発したモノクローナル抗体No.82a(mab82)の特異性を、vEF1ap-5'UTR-TRPV6wt_CMVp-mCherryベクターをトランスフェクトし、マウスモノクローナル抗TRPV6抗体No.82a(mab82)で処理した、HEK細胞から記録した全細胞電流に対する作用を測定することにより検証した。マウスモノクローナル抗TRPV6抗体No.82aを一連の上昇濃度(1:5000、1:2000、1:1000の後、1:500、及び1:200希釈)で適用して、TRPV6電流に対するこの抗体の用量依存的作用を確立した。図8Cでは、適用抗体の上昇濃度による観察されたTRPV6電流を要約し、これにより濃度依存的作用が示唆される。
【0224】
エピトープP2に対する他のモノクローナル抗体がTRPV6誘導電流に直接的に影響する
細胞をヒト化mab82又はP2R4G08とともにプレインキュベートすると、対照を上回る容量性カルシウム流入の低下が生じ、TRPV6により媒介されるカルシウム流入が、マウスmab82と同様に、ヒト化mab82又はP2R4G08により低下することが示される(図14)。
【0225】
エピトープP3に対するモノクローナル抗体がTRPV6誘導電流に直接的に影響する
細胞をP3R4F03、P3R4E11又はP3R5H03とともにプレインキュベートすると、対照を上回る容量性カルシウム流入の上昇が生じ、TRPV6により媒介されるカルシウム流入が、P3R4F03、P3R4E11又はP3R5H03により上昇することが示される(図13)。
【0226】
(実施例4)
細胞外エピトープに対して産生される抗TRPV6抗体を用いた処理によりTRPV6活性の調節を介して細胞生存が低下する
抗体79
TRPV6チャネルに対する抗体の直接的作用が立証されると、次の問題は、ウサギポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aが、PCa細胞生存にin vitroで影響することが可能かどうかであった。このために、LNCaP細胞をグリセロール(CT)又は種々の希釈によるポリクローナル抗TRPV6抗体No.79a若しくは対照抗体抗HAとともに72時間インキュベートし、細胞生存をMTSアッセイにより測定した(図9A)。ポリクローナル抗体79aでは細胞生存の強力な低下が観察されたが、対照抗HA抗体では作用は観察されなかった。
【0227】
シトクロムp-450活性の評価に基づく細胞生存アッセイが複雑なアッセイであり、細胞増殖と細胞死との両方を測定するため、更なる技術パネルを使用した。
【0228】
種々の対照抗体(ウサギポリクローナル抗SERCA2B; TRPV6チャネルの細胞内エピトープを標的とするウサギポリクローナル抗体No.80及びウサギポリクローナル抗体No.81;ペプチド80(hTRPV6 64~78;QRRESWAQSRDEQNL(配列番号189);ペプチド81 hTRPV6 692~707; HTRGSEDLDKDSVEKL(配列番号190);同一アイソタイプのウサギポリクローナル抗GFP)を用いた細胞計数アッセイにより、生存アッセイの結果が確認され、ポリクローナル抗体No.79aの特異性が強調される(図9B)。
【0229】
培地、当量のグリセロールを対照(CT)として、抗TRPV6抗体No.79(79a)又は市販の抗TRPV6抗体(Alomone社#ACC-036)のいずれかで3日間処理したLNCaP細胞の細胞生存アッセイ(MTS)により、抗TRPV6抗体No.79(79a)に起因するこの作用の特異性が示された(図9C)。
【0230】
ヘキスト染色による古典的アポトーシスアッセイを使用して、ポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aによるアポトーシス誘導の仮説を確認した。長期処理によりカルシウム依存的アポトーシスを誘導するため、1μMのタプシガルジンを陽性対照として3日間使用した。アポトーシス細胞の定量により、ポリクローナル抗TRPV6抗体No.79aによる3日の処理によって誘導される有意な細胞死率がLNCaP細胞(図10A)及びHEK細胞(図10B)について示された。このHEK細胞は、PCa細胞と比較してはるかにアポトーシス感受性である。加えて、ポリクローナル抗体No.79aと同時にTGの存在により、抗体79ではLNCaP(図10A)及び79a抗体ではHEK(図10B)において、アポトーシスがTGのみによる処理と比較して有意に増強される。
【0231】
細胞周期アッセイにより、ポリクローナル抗体No.79aで処理したLNCaP細胞において明確なsubG1ピークが示され、抗TRPV6抗体が増殖の低下ではなくアポトーシスの誘導を介して作用することが示唆された(図10C)。最終的には、可能性を有する機構として壊死を除外するために、8時間、24時間、及び48時間の時系列によりトリパンブルー染色を実施し、膜完全性が損なわれる中間から後期のアポトーシスを指標とすると、染色細胞が後期に出現した(図10D)。
【0232】
抗体82(Ab82)
TRPV6チャネルに対する抗体の直接的作用が立証されると、次の問題は、マウスモノクローナル抗TRPV6抗体mab82が、がん細胞生存にin vitroで影響することが可能かどうかであった。このために、LNCaP細胞をグリセロール(CT)又は抗TRPV6抗体mab82若しくは対照抗体mabAU1のいずれかとともに24、48、72、96時間インキュベートし、細胞生存をCellTiterにより測定した(図11)。72時間及び96時間に、Mab82では細胞生存の強力な低下が観察されたが、対照mabAU1では作用は観察されなかった。
【0233】
エピトープP3に対するモノクローナル抗体
抗体の細胞カルシウム調節が立証されると、次の問題は、抗TRPV6抗体P3R4F03が、PCa細胞生存にin vitroで影響することが可能かどうかであった。このために、LNCaP細胞を種々の希釈によるP3R4F03抗体又は無関係な抗体(IA)のいずれかとともに72時間インキュベートし、細胞生存をCell titer gloアッセイにより測定した(図15)。P3R4F03抗体では、無関係な抗体(IA)と比較して、細胞生存の低下が観察された。
【0234】
(実施例5)
細胞外エピトープに対して産生される抗TRPV6抗体を用いた処理により腫瘍の増殖及び転移の進行が抑制される
モノクローナル抗体82(mab82)の治療作用を、PCa細胞についてこれまでに記載のようにPC3Mtrpv6-/--pmCherry細胞株及びPC3Mtrp-/--pTRPV6wt細胞株の安定なクローン由来の2×10E6細胞を移植した免疫不全「スイスヌード」マウスモデルを使用して検査した(Raphaelら、2014)。抗体処理は、TRPV6チャネル有り無しのPC3M細胞の2種の群、及び各群では、対照マウスモノクローナル抗AU1抗体又は抗TRPV6抗体mab82のいずれかによる処理のための2種の亜群を使用して実施した。in vivoでのモニタリングを容易とするために、抗体は、Cf790フルオロフォアに事前に共役させた。動態試験は、最も近い公表文献に基づいて決定した種々の用量(0.5μg~15μg/マウス)により実施した(Bleekerら、Br J Haematol., 2008, 140, 303-12)。EC50(最大持続時間の維持に必要とされる最小量)を算出し、mab82及び同一アイソタイプ(IgG2a)の対照抗体抗AU1の両方に100μg/kg(マウス1匹当たり3μg)の用量を選択した。また、ボーラス注射直後には両抗体の体内分布を、抗体注射後30分には体内の種々の臓器におけるこれらの分布を試験した。腫瘍が可視化されると直ちに、対照抗AU1又はmab82実験抗体のいずれかによる処理を1週間に2回開始し、次のような確信的データを得た: PC3Mtrpv6-/--pTRPV6wt群のmab82で処理した亜群における腫瘍は、サイズが低下し、処理開始後3週間目には、対照抗AU1で処理した亜群と比較して、青色でわずかに可視の境界のみが残るか又は何も残らなかった。mab82による処理から5週間後に、この青色の境界の痕跡は消滅し、一部の結合組織様の痕跡が残るか又は何も残らなかった。全体的に見て、9日目に開始した処理(矢印、図12A)により、サイズにおける有意な差が移植後24日目及び処理後15日目から開始して既にみられ、実験の終わりには、この差は際立つものとなった。PC3Mtrp-/--pTRPV6wt群の抗AU1で処理した亜群における腫瘍は、極めて高悪性度であり(TRPV6チャネルのため)、一般的生存率を反映しているが(図12B)、PC3Mtrpv6-/--pmCherry群では、いかなる亜群(抗体処理)であっても、亜群間でいかなる有意差をも示さなかったことに留意すべきである(図12C)。PC3Mtrpv6-/--pmCherry群とPC3Mtrpv6-/--pTRPV6wt群との間の腫瘍増殖における差については、TRPV6チャネルが存在するため、後者の群が腫瘍増殖における有意差を示した(図12D)。in vivoでのmCherry画像診断を、小動物画像診断系を使用して毎週行い、腫瘍の抑制を実証した。腫瘍が最大サイズに達すると、直ちに切除し、マウスを生存させたまま、in vivoでの画像診断を少なくとも3カ月間毎週継続した。
【0235】
転移試験により、PC3Mtrpv6-/--pmCherry群では転移は存在しなかったが、対照AU1抗体で処理したPC3Mtrpv6-/--pTRPV6wt群では100%、mab82で処理したPC3Mtrp-/--pTRPV6wt群では、わずかに40%の転移の可能性が存在したことが明らかに示された(図2E)。この群では、転移の70%が頸部における高悪性度腫瘍の存在に起因し、このような腫瘍は通常、過剰に血管新生され、過剰な増殖のために切除困難なものとなる。
【0236】
結果として、mab82処置は、in vivoでの固形腫瘍の増殖及び転移の発生に対して将来性を有する治療的解法であることが立証された。
【0237】
本発明の実行に有用な更なるアミノ酸配列の簡単な説明
配列番号1:ヒトTRPV6タンパク質(UniProtKB/Swiss-Prot: NP_061116.5又はQ9H1D0.3)
【0238】
【化3】
【0239】
【表4A】
【0240】
【表4B】
【0241】
【表4C】
【0242】
【表4D】
【0243】
【表4E】
【0244】
【表4F】
【0245】
【表4G】
【0246】
【表4H】
【0247】
【表4I】
【0248】
【表4J】
【0249】
【表4K】
【0250】
【表4L】
【0251】
【表4M】
【0252】
【表4N】
【受託番号】
【0253】
UniProtKB/Swiss-Prot NP_061116.5
UniProtKB/Swiss-Prot Q9H1D0.3
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5A
図5B
図6-1】
図6-2】
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10
図11
図12-1】
図12-2】
図12-3】
図13
図14
図15
【配列表】
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【国際調査報告】