(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】IgE介在性疾患の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241016BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241016BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20241016BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20241016BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241016BHJP
A61P 7/10 20060101ALI20241016BHJP
C07K 16/42 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P11/06
A61P37/08
A61P11/02
A61P1/00
A61P17/00
A61P7/10
C07K16/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522375
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-22
(86)【国際出願番号】 CN2022124777
(87)【国際公開番号】W WO2023061390
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】521079776
【氏名又は名称】ユナイテッド バイオファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】クオ,ビー-ション
(72)【発明者】
【氏名】リィ,チャオ-フン
(72)【発明者】
【氏名】リィ,ユワン-フォン
(72)【発明者】
【氏名】リン,シュージーン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チャン イー
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB11
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG04
4H045AA11
4H045AA30
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、抗IgE抗体を用いたIgE介在性疾患の治療に関する。特に、抗IgE抗体は、IgEを中和して、IgEの合成を阻害するIgEに対する多機能性抗体である。具体的には、本発明の治療は、疾患症状の迅速な抑制および/または持続的な抑制を提供するのに有効である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象に抗IgE抗体を投与することを特徴とするIgE介在性疾患の治療方法であって、該抗体は、IgEを中和して、IgE合成を阻害するIgEに対する多機能性抗体である、方法。
【請求項2】
抗体が、IgE介在性疾患の迅速な症状の緩和および/または持続的な症状の緩和を提供するために有効な量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体が、遊離IgE、Bリンパ球上の膜結合IgEおよび/またはCD23に結合したIgEには結合するが、マスト細胞上のFcεRIに結合したIgEとは結合しない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
抗体が、遊離形態でCD23結合IgEと結合し、IgE複合体形態でCD23と結合する、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抗体が、その抗原結合フラグメントである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
抗体が、ヒト化されている、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
抗体または抗原結合フラグメントが、
(a) 配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)および配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含んでいる重鎖可変領域(V
H);ならびに
(b) 配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)および配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)を含んでいる軽鎖可変領域(V
L)、
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
V
Hが、配列番号15のアミノ酸配列を含み;および/または
V
Lが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
症状の緩和が、IgEの低下、掻痒の緩和および/または膨疹数の低下を包含する、請求項2~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
症状の緩和が、投与後2週間~14週間またはそれ以上持続する、請求項2~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
症状の緩和が、投与後1週間以内またはそれよりも早く起こる、請求項2~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
抗体が、2週間~14週間毎またはそれ以下の頻度で投与される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
抗体が、4週間毎またはそれ以下の頻度で投与される、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
抗体が、12週間~24週間毎に投与される、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
抗体が、対象の体重1 kgあたり0.1~10 mgの用量で投与される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
抗体が、全用量で組成物中に含まれており、単回投与で対象に投与される、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
抗体が、静脈注射または皮下注射のいずれかによって投与される、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
IgE介在性疾患が、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、慢性特発性蕁麻疹、慢性副鼻腔炎、全身性マスト細胞症、皮膚マスト細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管性浮腫または好酸球関連胃腸障害である、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
治療が必要な対象におけるIgE介在性疾患の治療に使用するための抗IgE抗体であって、該抗体は、遊離IgEを中和して、IgE合成を阻害するIgEに対する多機能性抗体である、抗IgE抗体。
【請求項20】
対象における迅速な症状の緩和および/または持続的な症状の緩和を提供する、請求項19に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項21】
抗体が、遊離IgE、Bリンパ球上の膜結合IgEまたはCD23に結合したIgEには結合するが、マスト細胞上のFcεRIに結合したIgEとは結合しない、請求項19または20に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項22】
抗体が、遊離形態でCD23結合IgEと結合し、IgE複合体形態でCD23と結合する、請求項19~21のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項23】
抗体が、その抗原結合フラグメントである、請求項19~22のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項24】
抗体が、ヒト化されている、請求項19~23のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項25】
抗体または抗原結合フラグメントが、
(a) 配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)および配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含んでいる重鎖可変領域(V
H);ならびに
(b) 配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)および配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)を含んでいる軽鎖可変領域(V
L)を含む、請求項19~24のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項26】
V
Hが配列番号15のアミノ酸配列を含み;および/または
V
Lが配列番号16のアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項27】
症状の緩和が、IgEの低下、掻痒の緩和および/または膨疹数の低下を包含する、請求項20~26のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項28】
症状の緩和が、投与後2週間~14週間またはそれ以上持続する、請求項20~27のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項29】
症状の緩和が、投与後1週間以内またはそれよりも早く起こる、請求項20~28のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項30】
抗体が、2週間~14週間毎またはそれ以下の頻度で投与される、請求項19~29のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項31】
抗体が、4週間毎またはそれ以下の頻度で投与される、請求項19~30のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項32】
抗体が、12~24週間毎に投与される、請求項19~31のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項33】
抗体が、対象の体重1 kgあたり0.1~10 mgの用量で投与される、請求項19~32のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項34】
抗体が、全用量で組成物中に含まれており、単回投与で対象に投与される、請求項19~33のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項35】
抗体が、静脈注射または皮下注射のいずれかによって投与される、請求項19~34のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項36】
IgE介在性疾患が、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、慢性特発性蕁麻疹、慢性副鼻腔炎、全身性マスト細胞症、皮膚マスト細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管浮腫または好酸球関連胃腸障害である、請求項19~35のいずれか1項に記載の使用のための抗IgE抗体。
【請求項37】
IgE介在性疾患を治療するための医薬品を製造するための抗IgE抗体の使用であって、該抗体は、IgEを中和して、IgE合成を阻害するIgEに対する多機能性抗体である、使用。
【請求項38】
対象における迅速な症状の緩和および/または持続的な症状の緩和を提供する、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
抗体が、遊離IgE、Bリンパ球上の膜結合IgEおよび/またはCD23に結合したIgEには結合するが、マスト細胞上のFcεRIに結合したIgEとは結合せず;
抗体が、遊離形態でCD23結合IgEと結合し、IgE複合体形態でCD23と結合し;
抗体が、その抗原結合フラグメントであり;
抗体が、ヒト化されており;ならびに/または
抗体または抗原結合フラグメントが、
(a) 配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)および配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含んでいる重鎖可変領域(V
H);および
(b) 配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)および配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)を含んでいる軽鎖可変領域(V
L)を含み、
好ましくは、V
Hが、配列番号15のアミノ酸配列を含み;および/または
好ましくは、V
Lが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、
請求項37または38に記載の使用。
【請求項40】
症状の緩和が、IgEの低下、掻痒の緩和および/または膨疹数の低下を包含し;
症状の緩和が、投与後2週間~14週間またはそれ以上持続され;および/または
症状の緩和が、投与後1週間以内またはそれよりも早く起こる、
請求項38または39に記載の使用。
【請求項41】
抗体が、2週間~14週間毎またはそれ以下の頻度で投与され;
抗体が、4週間毎またはそれ以下の頻度で投与され;
抗体が、12週間~24週間毎に投与され;
抗体が、対象の体重1 kgあたり0.1~10 mgの用量で投与され;
抗体が、全用量で組成物中に含まれており、単回投与で対象に投与され;および/または
抗体が、静脈注射または皮下注射のいずれかによって投与される、請求項37~40のいずれか1項に記載の使用。
【請求項42】
IgE介在性疾患が、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、慢性特発性蕁麻疹、慢性副鼻腔炎、全身性マスト細胞症、皮膚マスト細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管性浮腫または好酸球関連胃腸障害である、請求項37~41のいずれか1項に記載の使用。
【請求項43】
抗IgE抗体および医薬的に許容される賦形剤を含む、IgE介在性疾患の治療に使用するための医薬組成物であって、該抗体が、遊離IgEを中和して、IgE合成を阻害するIgEに対する多機能性抗体である、医薬組成物。
【請求項44】
症状の緩和を必要とする対象において、迅速な症状の緩和および/または持続的な症状の緩和を提供するのに有効である、請求項43記載の医薬組成物。
【請求項45】
抗体が、遊離IgE、Bリンパ球上の膜結合IgEおよび/またはCD23に結合したIgEには結合するが、マスト細胞上のFcεRIに結合したIgEとは結合せず;
抗体が、遊離形態でCD23結合IgEと結合し、IgE複合体形態でCD23と結合し;
抗体が、その抗原結合フラグメントであり;
抗体が、ヒト化されており;ならびに/または
抗体または抗原結合フラグメントが、
(a) 配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)および配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含んでいる重鎖可変領域(V
H);および
(b) 配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)および配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)を含んでいる軽鎖可変領域(V
L)を含み、
好ましくは、V
Hが、配列番号15のアミノ酸配列を含み;および/または
好ましくは、V
Lが、配列番号16のアミノ酸配列を含む、
請求項43または44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
症状の緩和が、IgEの低下、掻痒の緩和および/または膨疹数の低下を包含し;
症状の緩和が、投与後2週間~14週間またはそれ以上持続され;および/または
症状の緩和が、投与後1週間以内またはそれよりも早く起こる、
請求項44または45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
抗体が、2週間~14週間毎またはそれ以下の頻度で投与され;
抗体が、4週間毎またはそれ以下の頻度で投与され;
抗体が、12週間~24週間毎に投与され;
抗体が、対象の体重1 kgあたり0.1~10 mgの用量で投与され;
抗体が、全用量で組成物中に含まれており、対象に単回投与され;および/または
抗体が、静脈注射または皮下注射のいずれかによって投与される、請求項43~46のいずれか1項に記載の使用。
【請求項48】
IgE介在性疾患が、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、慢性特発性蕁麻疹、慢性副鼻腔炎、全身性マスト細胞症、皮膚マスト細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管性浮腫または好酸球関連胃腸障害である、請求項43~47のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項49】
治療を必要とする対象において、IgE介在性疾患を治療し、迅速な症状の緩和および/または持続的な症状の緩和を提供するための医薬品製造のための抗IgE抗体の使用であって、
該抗体が、
(a) 配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)および配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含んでいる重鎖可変領域(V
H);および
(b) 配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)および配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)を含んでいる軽鎖可変領域(V
L)を含み;ならびに
該抗体が、4週間毎またはそれ以下の頻度で単回投与される、使用。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年10月12日に出願された米国仮出願第63/254,729号に優先権を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、抗IgE抗体を用いたIgE介在性疾患の治療に関する。特に、抗IgE抗体は、IgEを中和して、IgEの合成を阻害するIgEに対する多機能性抗体である。具体的には、本発明の治療は、疾患症状の迅速な抑制および/または持続的な抑制に有効である。
【背景技術】
【0003】
様々なアレルギー性疾患に対するアンメット・メディカル・ニーズは、依然として存在しており、これら疾患の有病率は、世界人口の25%以上にまで大きく増加しており、世界的な健康脅威を引き起こし、経済的負担を増大させている1,2。食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、喘息およびアレルギー性鼻炎などのアレルギー性(アトピー性)疾患は、相互に関連している可能性があって、「アレルギー(アトピー)・マーチ」とも呼ばれる3-5。前記疾患は、小児期に開始する場合があり、主にIgEが介在する疾患である。非アレルギー性疾患はまた、外来抗原に対する免疫応答に関与しないIgE関連疾患、特に、慢性特発性蕁麻疹(CSU)を含めた炎症性皮膚疾患である可能性もある。
【0004】
IgEの機能は、そのFc領域(Cε2-Cε4)と2つの主要な受容体との相互作用によって左右される8-11;前記受容体とは、主にマスト細胞や好塩基球に発現し、アレルギー性過敏症および炎症に関与する高親和性FcεRI(KD、約10-10~10-11M)6、ならびに主にB細胞に発現し、IgE合成およびIgEクリアランスの調節を含めたその他の多くの免疫学的機能に関与する低親和性単量体CD23(FcεRII)(KD、約10-6~10-7M)7である。細胞表面上のCD23は、一般的には、ホモ三量体として存在する。遊離の三量体CD23へのIgE結合親和性あるいはIgE-免疫複合体(IgE-IC)形態におけるCD23との相互作用は、IgE-FcεRIの相互作用に近いアビディティ強度(KD、10-9-10-10M)をもたらす可能性がある12。
【0005】
IgEは、寄生虫や癌に対する有益な保護作用が報告されているが13,14、アレルギー症状に現れる有害なエフェクター機能を理由として、一般的には、生理学的に必要なものではなく、また医薬品開発のための適正かつ安全な標的であるとして認識されている。オマリズマブは、現在までに承認された唯一の抗IgE抗体であり、少数のIgE関連疾患に使用されているが、中等度~重度の持続性アレルギー性喘息(2003年)、慢性特発性蕁麻疹(CSU、2014年)および鼻ポリープ(2020年)に対する第3次追加治療としての使用に制限されている15。新しい抗IgE生物学的製剤は、前臨床および臨床学的に求められていた16,17。しかし、別のIgEを標的とする抗体(抗Cε)が研究されたが、後期臨床試験において実施可能であったのは、リゲリズマブ(QGE031)のみであった18,19。
【0006】
CSUの標準的な第一選択薬としては、低分子薬(例えば、抗ヒスタミン薬)または環状ペプチド薬(例えば、シクロスポリンなど)を、高頻度で投与するのが一般的である。しかし、何週間もの間、錠剤またはカプセルを毎日服用することは、服薬不遵守を招きがちであり、疾患コントロールが難しくなる。第一選択薬の治療が有効でない場合には、患者は生物学的製剤(即ち、唯一承認されたオマリズマブまたはリゲリズマブ;これは、極めて重要な第3相臨床試験で試験されたが、最終的には開発段階で失敗している)に頼る必要があろう。しかし、これら2つの抗IgEモノクローナル抗体は、4週間毎に投与される。
【0007】
当該技術分野では、IgE介在性疾患を治療するための有効かつ改良された抗IgE抗体が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
(発明の要約)
本発明は、少なくとも、IgEを中和して、IgEの合成を阻害する多機能性抗IgE抗体が、IgE介在性疾患の治療に有効かつ改善された効果をもたらすという知見に基づいている。特に、抗IgE抗体は、CD23を介したIgE産生のダウンレギュレーションを阻害または遮断する。具体的には、このような多機能性抗IgE抗体を用いた治療により、迅速な症状の緩和および/または持続的な症状の緩和が得られ、投与頻度が少なくて済むことから、患者の快適性および利便性が向上する。
【0009】
1つの局面において、本発明は、IgE介在性疾患を治療するための方法を提供するものであって、当該方法は、治療を必要とする対象に抗IgE抗体を投与することを特徴とし、前記抗体は、IgEを中和して、IgEの合成を阻害する多機能性抗体である。具体的には、本発明の方法は、対象において迅速な症状の緩和および/または持続的な症状の緩和を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、抗体は、遊離IgE、Bリンパ球上の膜結合IgEおよび/またはCD23に結合したIgEには結合するが、マスト細胞上のFcεRIに結合したIgEとは結合しない。
【0011】
いくつかの実施形態において、抗体は、遊離形態でCD23結合IgEと結合し、IgE複合体形態でCD23と結合する。
【0012】
いくつかの実施形態において、抗体は、その抗原結合フラグメントである。
【0013】
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化されている。
【0014】
いくつかの実施形態において、抗体または抗原結合フラグメントは、
(a) 配列番号2のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(HC CDR1)、配列番号4のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(HC CDR2)および配列番号6のアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(HC CDR3)を含んでいる重鎖可変領域(VH);ならびに
(b) 配列番号9のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(LC CDR1)、配列番号11のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(LC CDR2)および配列番号13のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(LC CDR3)を含んでいる軽鎖可変領域(VL)、
を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号15のアミノ酸配列を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、VLは、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、症状の緩和には、IgEの低下、掻痒の緩和および/または膨疹数の低下が挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態において、症状の緩和は、投与後2週間~14週間またはそれ以上持続する。
【0019】
いくつかの実施形態において、症状の緩和は、投与後1週間以内またはそれよりも早く起こる。
【0020】
いくつかの実施形態において、抗体は、2週間~14週間毎またはそれ以下の頻度で投与される。
【0021】
いくつかの実施形態において、抗体は、4週間毎またはそれ以下の頻度で投与される。
【0022】
いくつかの実施形態において、抗体は、12週間~24週間毎に投与される。
【0023】
いくつかの実施形態において、抗体は、対象の体重1 kgあたり0.1~10 mgの用量で投与される。
【0024】
いくつかの実施形態において、抗体は、全用量で組成物に含まれ、単回投与で対象に投与される。
【0025】
いくつかの実施形態において、抗体は、静脈注射または皮下注射のいずれかによって投与される。
【0026】
いくつかの実施形態において、IgE介在性疾患は、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、慢性特発性蕁麻疹、慢性副鼻腔炎、全身性マスト細胞症、皮膚マスト細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管性浮腫または好酸球関連胃腸障害である。
【0027】
本発明は、抗IgE介在性疾患の治療に使用するための、本明細書に記載の抗IgE抗体またはそれを含む医薬組成物も提供する。さらに開示されるものは、抗IgE介在性疾患を治療するための医薬品を製造するための、本明細書に記載の抗IgE抗体の使用である。
【0028】
本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細は、以下の説明に記載されている。本発明のその他の特徴または利点は、いくつかの実施形態に関する以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲からも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
(図面の簡単な説明)
前記要約および以下の発明の詳細な説明は、添付の図面と併せて読めば、より良く理解されるであろう。本発明を説明する目的で、好ましい実施形態が図面に示されている。しかし、本発明は、記載された厳格なアレンジメントおよび機器に限定されるものではないことを理解されたい。図面について以下に記載する。
【0030】
【
図1】
図1は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって実施された抗IgEモノクローナル抗体のUB-221 vs. オマリズマブに結合するIgEの速度論的分析を示す。
【
図2】
図2は、表面プラズモン共鳴(SPR)によって実施された抗IgEモノクローナル抗体のUB-221 vs. リゲリズマブ vs. オマリズマブに結合するIgEの速度論的分析を示す。
【
図3】
図3は、IgE結合に関するUB-221 vs. オマリズマブによる競合的中和(上部パネル)、ならびにIgE特異的オボアルブミン(OVA)により誘導される好塩基球性FcεRI発現RBX SX-38の脱顆粒の阻害(下部パネル)を示す。
【
図4】
図4は、UB-221 vs. オマリズマブの1回の単回静脈内(IV)投与により処理したhIGHE-ノックインマウスにおける血清ヒト化IgEの低下を示す。
【
図5】
図5A~5Cは、UB-221 vs. リゲリズマブ vs. オマリズマブによるアトピー性皮膚炎患者の血清中の高濃度IgEのex vivoでの中和を示し、これには、低濃度IgE(<4,800 ng/mL,
図5A)、中濃度IgE(4,800~24,000 ng/mL,
図5B)および高濃度IgE(>24,000 ng/mL,
図5C)が含まれる。
【
図6】
図6は、UB-221 vs. リゲリズマブ vs. オマリズマブの遊離形態でのCD23結合IgEへの結合(上部パネル)ならびにmAb:IgE複合体形態でのCD23への結合(下部パネル)を示す。
【
図7】
図7Aおよび7Bは、UB-221 vs. リゲリズマブ vs. オマリズマブによるヒトPBMCにおけるIgE新規合成に対する効果を示すもので、これには、1、3および10 μg/mLの用量でのデータ(
図7A)ならびに10、20および80 μg/mLの用量でのデータ(
図7B)が含まれる。
【
図8】
図8A~8Dは、UB-221がカニクイザルのIgEおよびCD23結合IgEと結合して、単回IV投与後に、急速かつ大幅な血清IgEの低下を誘導し得ることを示しており、データは、UB-221がcIgEと結合できることを示し(
図8A)、UB-221が用量依存的にcCD23結合cIgEに関与し得ることを示し(
図8B)、5 mg/kg IV投与後のUB-221の薬物動態(PK)を示し(
図8C)、UB-221が、急速かつ大幅な血清遊離形態cIgEの低下を誘導できることを示す(
図8D)。
【
図9】
図9は、UB-221を、0.2、0.6、2、6および10 mg/kgで単回IV投与した15名の慢性特発性蕁麻疹患者における安全性、忍容性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)を評価するための第1相臨床試験のデザインを示す。
【
図10】
図10は、UB-221の単回IV投与による治療後の慢性特発性蕁麻疹患者の血清における22日までに用量依存的半減期に伴い減衰したUB-221濃度を示す。
【
図11】
図11A~11Cは、UAS7疾患スコア、個体別(
図11A)および平均(
図11B)の急速な低下ならびにUAS疾患スコアの日変化(
図11C)により実証される通り、UB-221の単回IV投与が慢性特発性蕁麻疹の治療に有効であることを示している。
【
図12】
図12Aおよび12Bは、HSS7スコアの個体別(
図12A)および平均(
図12B)の急速な低下により実証される通り、UB-221の単回IV投与が慢性特発性蕁麻疹の治療に有効であることを示している。
【
図13】
図13は、UB-221の単回IV投与による治療後の慢性特発性蕁麻疹患者の血清中の個体別の遊離IgE濃度を示す。
【
図14】
図14は、UB-221の単回IV投与を受けた慢性特発性蕁麻疹患者における血清UB-221、遊離IgE濃度およびUAS7スコアの平均値を示す。
【
図15】
図15は、UB-221の重鎖可変領域(V
H)および軽鎖可変領域(V
L)のアミノ酸配列を示す。相補的決定領域(CDR)には下線が引かれており、GYTFNGYWMH(HC CDR1;配列番号2)、YINPTTGHTEYNQKFKD(HC CDR2;配列番号4)、ARQEYRHSWFAY(HC CDR3;配列番号6)、QSVDYDGDTYM(LC CDR1;配列番号9)、AASNLDS(LC CDR2;配列番号11)およびQQTNEDPWT(LC CDR3;配列番号13)が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下の説明は、単に本発明の様々な実施形態を説明するためのものである。そのため、本明細書で議論される特定の実施形態または変更は、本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更または等価物を成し得ることは、当業者には明らかであろう。
【0032】
I. 定義
本発明を、明確かつ即座に理解するために、まず特定の用語を定義する。追加の定義は、詳細な説明の全体にわたって記載されている。別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0033】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の指示対象の語を含む。従って、例えば、「成分」への言及は、当業者には公知の複数の前記成分およびその等価物を含む。
【0034】
用語「含む」または「含んでいる」は、一般に、1つまたは複数の特徴、含有物または成分の存在を許容することを意味する「包含する/包含している」の意味で使用される。用語「含む」または「含んでいる」は、用語「含有する」または「から成る」を包含する。
【0035】
本明細書において、「ポリペプチド」という用語は、ペプチド結合を介して連結されたアミノ酸残基から成るポリマーを意味する。用語「タンパク質」は、通常、比較的大きなポリペプチドを指す。「ペプチド」という用語は、通常、比較的短いポリペプチド(例えば、最大100、90、70、50、30、20または10個のアミノ酸残基を含む)を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「おおよそ」または「約」という用語は、当業者に理解されるであろう許容可能な偏差の程度を指し、これは、使用される文脈によって、ある程度変化し得る。具体的には、「おおよそ」または「約」は、引用した値の前後±10%または±5%または±3%の範囲を有する数値を意味し得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、「実質的に同一」という用語は、80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、または更に好ましくは95%以上の相同性を有する2つの配列を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「抗体」(複数の抗体も互換的に使用されてもよい)という用語は、特定の標的抗原分子に特異的に結合する能力を有する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用する場合、「抗体」という用語は、インタクトな(すなわち、全長の)抗体分子だけでなく、抗原結合能を保持するその抗原結合フラグメント、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2およびFvもまた包含する。前記フラグメントも当技術分野でよく知られており、in vitroおよびin vivoの両方において頻繁に使用されている。「抗体」という用語には、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ダイアボディ、直鎖抗体、一本鎖抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のその他の修飾された構造も含まれ、例えば、抗体のアミノ酸配列変異体、抗体のグリコシル化変異体および共有結合により改変された抗体などが挙げられる。
【0039】
インタクトな抗体または完全抗体は、2本の重鎖および2本の軽鎖を含む。各重鎖は、可変領域(VH)、ならびに第1、第2および第3の定常領域(CH1、CH2、CH3)を含み;ならびに各軽鎖は、可変領域(VL)および定常領域(CL)を含む。抗体は、「Y」の形をしており、Yの軸はジスルフィド結合を介して一緒に結合された2本の重鎖の第2および第3の定常領域から成る。Yの各アームは、一本の軽鎖の可変領域および定常領域と結合した一本の重鎖の可変領域および第1の定常領域を含む。軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域が、抗原の結合に関与する。両鎖内の可変領域は、一般的には、抗原結合に関与しており、これらの各領域は、いわゆる、相補性決定領域と呼ばれる3本の超可変領域を含んでいる:即ち、重鎖(H)CDRは、HC CDR1、HC CDR2およびHC CDR3を含み;ならびに軽鎖(L)CDRは、LC CDR1、LC CDR2およびLC CDR3を含む。3つのCDRは、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3およびFR4)に挟まれており、これらの領域は、CDRよりも高度に保存されており、超可変領域を支える足場を形成している。重鎖および軽鎖の定常領域は、抗原結合には関与しないが、様々なエフェクター機能に関与している。重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列によって、免疫グロブリンは異なるクラスに分類され得る。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMの5つの主要なクラスがある。各クラスの免疫グロブリンに対応する重鎖定常ドメインは、各々α、δ、ε、γおよびμと呼ばれている。
【0040】
本明細書で使用する場合、「抗原結合フラグメント」または「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原結合に関与するインタクトな抗体分子の一部または領域を指す。抗原結合フラグメントは、親抗体が結合する抗原と同じ抗原に結合できる。抗原結合フラグメントの例示としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものでは無い:(i) VH-CH-1鎖およびVL-CL鎖を含む一価のフラグメントであり得るFabフラグメント;(ii) ヒンジ領域でジスルフィド架橋により結合した2つのFabフラグメントを含む二価のフラグメントであり得るF(ab')2フラグメント;(iii) 非共有結合により一緒に結合した抗体分子のVHドメインおよびVLドメインを含むFvフラグメント;(iv) ペプチドリンカーを介してVHドメインおよびVLドメインを含む一本のポリペプチド鎖であり得る単鎖Fv(scFv);ならびに(v) ペプチドリンカーを介して連結された2つのVHドメインと、ジスルフィド架橋を介して2つのVHドメインと結合している2つのVLドメインを含み得る(scFv)2。
【0041】
本明細書で使用する場合、「キメラ抗体」という用語は、異なる起源、例えば、異なる種から得たポリペプチドを含む抗体を指す。いくつかの実施形態では、キメラ抗体において、軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、ある種の哺乳動物(例えば、マウス、ウサギおよびラットなどの非ヒト哺乳動物)から得られる抗体の可変領域を模倣してもよいが、定常領域は、ヒトのような別の哺乳動物から得られる抗体の配列と相同であり得る。
【0042】
本明細書で使用する場合、「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体に由来するフレームワーク領域および非ヒト(通常はマウスまたはラット)免疫グロブリンに由来する1つまたは複数のCDRを含む抗体を指す。
【0043】
本明細書で使用する場合、「ヒト抗体」という用語は、相補的決定領域(CDR)を含む軽鎖および重鎖配列の全配列が、本質的にヒト遺伝子由来の抗体を指す。状況によっては、ヒト抗体は、例えば、潜在的な免疫原性を低下させるため、親和性を増加させるため、望ましくないフォールディングを引き起こす可能性のあるシステインを除去するために、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列にコードされていない1つ以上のアミノ酸残基、例えば、CDRの1つ以上またはFRの1つ以上の変異を含んでもよい。
【0044】
本明細書で使用する場合、「特異的に結合する」または「特異的な結合」という用語は、2つの分子間の非ランダム結合反応、例えば、標的抗原のエピトープへの抗体の結合を指す。標的抗原またはエピトープに「特異的に結合する」抗体は、当技術分野で十分理解されている用語であり、そのような特異的な結合を決定する方法も当技術分野で十分知られている。抗体が、標的抗原と「特異的に結合する」のは、他の物質と結合するよりも高い親和性/強度で、より容易に、および/またはより長い期間結合する場合である。言い換えれば、この定義を読めば、例えば、第一の標的抗原に特異的に結合する抗体は、第二の標的抗原に特異的または優先的に結合していても、していなくても良いことも理解できる。このように、「特異的な結合」または「優先的な結合」は、必ずしも独占的な結合を必要とするものではない(独占的な結合を含む場合もあるが)。一般的に、結合の親和性は、解離定数(KD)で定義され得る。通常、抗体に関して使用される場合、特異的に結合するとは、KD値が、約10-8 M以下、例えば、約10-9 M以下、約10-10 M以下、約10-11 M以下または約10-12 M以下あるいはそれ以下で標的と特異的に結合(認識)し、かつ非特異的抗原(例えば、BSAまたはカゼイン)に結合するための親和性よりも、少なくとも10倍低い、例えば、少なくとも100倍低い(例えば、少なくとも1,000倍低いか、または少なくとも10,000倍低い)KDに相当する親和性で特定の標的に結合する抗体を指す。
【0045】
本明細書で使用する場合、「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド単位を含むポリマーを指すことができる。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(「DNA」)およびリボ核酸(「RNA」)などの天然に存在する核酸、ならびに非天然に存在するヌクレオチドを有する核酸を含む核酸アナログを包含する。ポリヌクレオチドは、例えば、自動DNA合成機を用いて合成できる。ヌクレオチド配列が、DNA配列(即ち、A、T、G、C)で表される場合、「U」が「T」に置き換わるRNA配列(即ち、A、U、G、C)も含まれることは理解されるであろう。「cDNA」とは、一本鎖形態または二本鎖形態において、mRNAと相補的または同一であるDNAのことを言う。
【0046】
本明細書で使用する場合、「相補的」という用語は、2つのポリヌクレオチドの相互作用する表面のトポロジー的な互換性または適合性を指す。第1のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が第2のポリヌクレオチドのポリヌクレオチド結合パートナーのヌクレオチド配列と同一である場合、第1のポリヌクレオチドは、第2のポリヌクレオチドに相補的である。従って、配列が、5'-ATATC-3'であるポリヌクレオチドは、配列が、5'-GATAT-3'であるポリヌクレオチドと相補的である。
【0047】
本明細書で使用する場合、「コードする」という用語は、RNA転写物(即ち、rRNA、tRNAおよびmRNA)の所定の配列またはアミノ酸の所定の配列のいずれかを有する生物学的プロセスにおける別のポリマーおよびマクロ分子を合成するための鋳型として機能するポリヌクレオチド(例えば、遺伝子、cDNAまたはmRNA)中のヌクレオチドの特定の配列に関する天然の性質ならびにそれらから生じる生物学的性質を指す。従って、遺伝子がタンパク質をコードするのは、その遺伝子によって産生されたmRNAの転写および翻訳が、細胞または別の生物学的システムにおいてタンパク質を産生する場合である。遺伝暗号の縮退の結果として、多数の異なるポリヌクレオチドおよび核酸が、同じポリペプチドをコードし得ることは当業者には理解される。また当業者は、日常的な技術を用いて、ポリペプチドが発現される特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映するように、そこに記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を与えないヌクレオチド置換を行ってもよいこともまた理解される。従って、別段の記載がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」とは、互いの縮退バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を包含する。
【0048】
本明細書で使用する場合、「組換え核酸」という用語は、天然には結合していない配列を有するポリヌクレオチドまたは核酸を指す。組換え核酸は、ベクターの形態で存在してもよい。「ベクター」とは、目的とする所定のヌクレオチド配列および調節配列を含んでもよい。ベクターは、所定のヌクレオチド配列を発現するか(発現ベクター)、または所定のヌクレオチド配列を確実に複製させるか、組換えるか、または異なる位置(例えば、異なる生物間)間に移行させるために使用され得る。ベクターは、上記の目的のために、適切な宿主細胞に導入され得る。「組換え細胞」とは、組換え核酸を導入した宿主細胞を示す。「形質転換細胞」とは、組換えDNA技術により、目的のタンパク質をコードするDNA分子が導入された細胞を意味する。
【0049】
ベクターは、プラスミド、コスミド、エピソーム、フォスミド、人工染色体、ファージ、ウイルスベクターなどを含む様々なタイプであってよい。通常、ベクターにおいて、所定のヌクレオチド配列は、ベクターが宿主細胞に導入されるとき、所定のヌクレオチド配列が調節配列の制御下で宿主細胞において発現され得るように、調節配列に作動可能に連結される。調節配列は、例えば、限定するものではないが、プロモーター配列(例えば、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、T7プロモーターおよびアルコールオキシダーゼ遺伝子(AOX1)プロモーター)、開始コドン、複製起点、エンハンサー、分泌シグナル配列(例えば、α-接合因子シグナル)、停止コドンおよびその他の調節配列(例えば、シャイン・ダルガーノ配列および終止配列)を含んでもよい。好ましくは、ベクターは、その後のスクリーニング/選択工程のためのマーカー配列(例えば、抗生物質耐性マーカー配列)をさらに含んでもよい。タンパク質産生の目的のために、ベクターにおいて、融合ポリペプチドが産生され、その後の精製工程に有益であるように、目的とする所定のヌクレオチド配列は、上記の調節配列以外の別のヌクレオチド配列に連結されてもよい。前記融合ポリペプチドには、精製を目的としたタグ、例えば、Hisタグが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、障害、障害の兆候もしくは症状、または障害の進行に冒された患者に、前記障害、障害の兆候もしくは症状、または障害の進行を、回復、治癒、緩和、軽減、変更、治療、改善または改良させるか、あるいは影響を及ぼす目的で、1つ以上の活性薬剤を適用または投与することを指す。
【0051】
II.IgEに対する抗体
本発明に従えば、本明細書で使用する場合に、抗IgE抗体は、IgEを中和し、IgE合成を阻害する多機能性抗IgE抗体である。
【0052】
本明細書に記載されるように、中和抗IgE抗体は、マスト細胞および好塩基球上のFcεRIへのIgEの結合を部分的または完全に阻害することが可能であり、またアレルギー性過敏症および炎症に関与するFcεRIを介したIgEシグナル伝達の何らかの実質的な阻害または遮断を引き起こすことができる。中和は、任意の適切な方法で測定され得る。一態様において、IgEの中和は、中和抗体が、中和抗体が存在しない実質的に同一の条件下で、通常起こる脱顆粒の量と比較して、IgE介在性の抗原刺激によって誘導される脱顆粒を、少なくとも約30%、好ましくは少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約75%以上(例えば、約25~100%)阻害できることを表す。
【0053】
本明細書に記載されるように、IgE合成は、de novo IgE産生を含む。IgEレベルおよびIgE合成の阻害は、任意の適切な方法によって測定され得る。一態様において、IgE合成を実質的に阻害する阻害抗体は、阻害抗体が存在しない実質的に同一条件下における細胞のIgEレベルと比較して、阻害抗体で処理された細胞のIgEレベルを、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上低下させ得る。具体的には、IgE合成を阻害する阻害抗体は、遊離形態もしくはIgE複合体形態、またはその両方でCD23との相互作用に関与する。より具体的には、阻害抗体は、遊離形態およびIgE複合体形態の両形態にて、CD23との相互作用を介してIgE合成を阻害するため、CD23介在性のIgE産生のダウンレギュレーションを実質的に阻害または遮断する。
【0054】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗IgE抗体は、抗IgEモノクローナル抗体、即ちUB-221 mAbである。UB-221 mAbの重鎖可変領域(VH)および軽鎖可変領域(VL)、ならびにそれらの相補的決定領域(HC CDR1、HC CDR2およびHC CDR3)(LC CDR1、LC CDR2およびLC CDR3)のアミノ酸配列は、以下の表1に示す通りである。本発明の抗IgE抗体には、UB-221 mAbおよびその機能変異体が含まれる。
【0055】
【0056】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IgE抗体は、(a) 配列番号2のHC CDR1、配列番号4のHC CDR2および配列番号6のHC CDR3を含むVH;ならびに(b) 配列番号9のLC CDR1、配列番号11のLC CDR2および配列番号13のHC CDR3を含むVLを含むことを特徴とするUB-221 mAbの機能的バリアント、またはその抗原結合フラグメントである。
【0057】
いくつかの実施形態において、本発明の抗IgE抗体は、(a) 配列番号2のHC CDR1、配列番号4のHC CDR2および配列番号6のHC CDR3を含むVH;ならびに(b) 配列番号9のLC CDR1、配列番号11のLC CDR2および配列番号13のLC CDR3を含むVLを有しており、前記抗体は、配列番号15またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を含むVH;ならびに配列番号16またはそれと実質的に同一のアミノ酸配列を含むVLを含むことができる。具体的には、本発明の抗IgE抗体は、配列番号15と少なくとも80%(例えば、82%、84%、85%、86%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むVH;ならびに配列番号16と少なくとも80%(例えば、82%、84%、85%、86%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、98%または99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含むVLを包含する。本発明の抗IgE抗体は、本明細書に記載した関連するVHまたはVLアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列によってコードされる組換えにより得られた(遺伝子工学的に得られた)抗体も含む。
【0058】
米国特許第10,047,166号には、本発明の抗IgE抗体の一例が記載されており、各特許の関連する開示は、本明細書で言及される目的または主題について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0059】
「実質的に同一」という用語は、変異体の関連するアミノ酸配列(例えば、FR、CDR、VHまたはVL)が参照抗体と比較して僅かに異なっているが、変異体が参照抗体と実質的に同様の結合活性(例えば、親和性、特異性またはその両方)および生物活性を有することを意味する。このような変異体は、僅かなアミノ酸の変更を含んでいてもよい。ポリペプチドは、活性または機能とは関係が無いポリペプチドのある部分内で為され得る限られた数の変更または修飾を有する場合があり、それでも同等または類似の生物活性または機能の許容し得るレベルの変異体となることは理解できる。いくつかの例では、このアミノ酸残基の変更は保存的アミノ酸置換であって、これは別のアミノ酸残基と類似の化学構造のアミノ酸残基をいい、ポリペプチドの機能、活性またはその他の生物学的特性への影響は小さいか、あるいは実質的には影響しない。一般的に、抗体の結合機能または生物活性に悪影響を与えない限り、CDR領域とは逆に、FR領域では比較的多くの置換を行うことができる(例えば、元の抗体と比較して、結合親和性を50%以上低下させる)。いくつかの実施形態では、配列同一性は、参照抗体と変異体との間で、約80%、82%、84%、85%、86%、88%、90%、92%、94%、95%、96%、98%または99%、あるいはそれ以上であり得る。当業者には公知のポリペプチド配列を改変する方法に従って、変異体を作成することが可能であり、例えば、前記の方法をまとめた文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual, J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989において見られる。例えば、アミノ酸の保存的置換は、以下のグループの内のアミノ酸間で行われる置換を含む:(i) A、G;(ii) S、T;(iii) Q、N;(iv) E、D;(v) M、I、L、V;(vi) F、Y、W;および(vii) K、R、H。
【0060】
本明細書に記載の抗体は、動物抗体(例えば、マウス由来抗体)、キメラ抗体(例えば、マウス-ヒトキメラ抗体)、ヒト化抗体またはヒト抗体であってもよい。また、本明細書に記載の抗体には、その抗原結合フラグメント、例えば、Fabフラグメント、F(ab')2フラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fv(scFv)および(scFv)2を挙げることができる。抗体またはその抗原結合フラグメントは、当技術分野で公知の方法により製造できる。
【0061】
III. 抗体の製造
抗体またはその抗原結合フラグメントを得るためには、この技術分野で従来から用いられている数多くの方法を利用することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、従来のハイブリドーマ技術によって作製されてもよい。一般に、キャリアタンパク質に適宜結合させた標的抗原および/またはアジュバントと混合した標的抗原を用いて、その抗原に結合する抗体を生成するために宿主動物を免疫化してもよい。モノクローナル抗体を分泌するリンパ球を回収し、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作製する。このようにして形成されたハイブリドーマクローンをスクリーニングして、所望のモノクローナル抗体を分泌するものを同定し、選択する。
【0063】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される抗体は、組換え技術を用いて製造されてもよい。関連する態様において、開示されたアミノ酸配列をコードする単離された核酸もまた、そのような核酸を含むベクター、およびその核酸で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞とともに提供される。
【0064】
例えば、このような抗体の重鎖および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含む核酸を、常法の技術により発現ベクター(例えば、大腸菌ベクターのような細菌ベクター、酵母ベクター、ウイルスベクターまたは哺乳動物ベクター)にクローニングして、抗体の発現のために適切な細胞(例えば、細菌細胞、酵母細胞、植物細胞または哺乳類細胞)にベクターのいずれかを導入することができる。哺乳動物の宿主細胞株の例としては、ヒト胚性腎臓株(293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK細胞)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO細胞)およびヒト肝臓細胞(Hep G2細胞)が挙げられる。本明細書に記載の抗体を発現させるための組換えベクターは、通常、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターに作動可能に連結された抗体アミノ酸配列をコードする核酸を含む。典型的なベクターは、抗体をコードする核酸の発現調節に有用な転写および翻訳ターミネーター、開始配列ならびにプロモーターを含む。ベクターは、原核生物系および真核生物系の両方の選択マーカーを所望により含有してもよい。いくつかの例では、重鎖および軽鎖コード配列の両方が同じ発現ベクターに含まれる。別の例では、抗体の重鎖および軽鎖の各々を、個々のベクターにクローニングし、別々に作製し、それを抗体のアセンブリーのための適切な条件下でインキュベートすることができる。
【0065】
本明細書に記載の抗体を発現させるための組換えベクターは、通常、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーターに作動可能に連結された抗体アミノ酸配列をコードする核酸を含む。組換え抗体は、原核生物または真核生物の発現系、例えば、細菌、酵母、昆虫、哺乳動物細胞で産生され得る。典型的なベクターは、抗体をコードする核酸の発現調節に有用な転写および翻訳ターミネーター、開始配列ならびにプロモーターを含んでいる。ベクターは、原核生物系および真核生物系の両方の選択マーカーを所望により含有してもよい。産生された抗体タンパク質を、さらに単離または精製して、さらなるアッセイおよび応用のために実質的に均質な調製物を得ることができる。例えば、イムノアフィニティーカラムまたはイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、硫酸アンモニウム沈殿およびゲル濾過などが挙げられる。
【0066】
完全長抗体が望まれる場合、本明細書に記載のVH鎖およびVL鎖のいずれかのコード配列を免疫グロブリンのFc領域のコード配列に連結させ、その結果生じる完全長抗体重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を、適切な宿主細胞、例えば、植物細胞、哺乳動物細胞、酵母細胞または昆虫細胞で発現させて、アセンブルできる。
【0067】
抗原結合フラグメントを、常法により製造できる。例えば、F(ab')2フラグメントは、全長抗体分子のペプシン消化によって作製でき、Fabフラグメントは、F(ab')2フラグメントのジスルフィド結合を還元することによって作製できる。あるいは、このようなフラグメントは、適切な宿主細胞で重鎖および軽鎖フラグメントを発現させて、in vivoまたはin vitroで所望の抗原結合フラグメントを形成するようにアセンブルさせることによる組換え技術によって製造することもできる。単鎖抗体は、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列および軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を連結することによる組換え技術を用いて製造できる。好ましくは、2つの可変領域の間にフレキシブルリンカーが組み込まれる。
【0068】
IV. 組成物
本発明によれば、抗IgE抗体は、送達および吸収を目的とする組成物に医薬的に許容される担体と共に製剤化されてもよい。
【0069】
本明細書で使用される場合、「医薬的に許容される」という用語は、担体が組成物中の有効成分と適合性があり、好ましくは当該有効成分を安定化させることができ、かつ投与される個体に対して安全であることを意味する。前記担体とは、有効成分に対する希釈剤、ビヒクル、賦形剤またはマトリックスであってもよい。通常、本明細書に記載した抗IgE抗体を有効成分として含む組成物は、水溶液、即ち生理食塩水のような溶液の形態とすることができるか、または粉末の形態で提供することができる。組成物は、生理学的条件に近づけるために必要な医薬的に許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどのpH調整剤および緩衝剤をさらに含有することができる。組成物の形態としては、懸濁液、ローション、溶液、滅菌注射液および個包装された粉末などが挙げられる。本発明の組成物は、非経口(筋肉内、静脈内、皮下および腹腔内など)および経鼻法などの任意の生理学的に許容される経路を介して送達され得る。特定の実施形態において、本発明の組成物は、即時使用可能な剤形として、または溶解可能な安定な粉末として提供され得る液体注射剤形として投与される。
【0070】
V. 治療
本発明は、本明細書に記載の多機能性抗IgE抗体を投与することにより、IgE介在性疾患を治療する方法を提供する。本発明の方法は、迅速かつ/または持続的な症状の緩和を提供するのに有効であり、投与頻度が少なくて済むため、患者の快適性および利便性が向上する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「症状の緩和」という用語は、疾患または他の異常状態の1つ以上の知覚される症状を軽減または除去する活性薬剤を意味し得る。疾患の症状の重症度レベルは、当該技術分野で知られている任意の適切なインデックスまたはスコアによって決定することができる。一般に、インデックスのレベルが高いほど、またはスコアが高いほど、疾患の重症度が高いことを示す。いくつかの実施形態において、症状の緩和とは、例えば、当業者および/または医療専門家、例えば、医師が、同様の身体的特徴および病歴を有する罹患個体または集団が有すると予想されるインデックスの疾患レベルまたは疾患スコアと比較して、5%、10%、15%、20%、25%、30%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の前記インデックスのレベルまたはスコアのレベル低下を含み得る。いくつかの実施形態において、症状の緩和は、疾患またはその他の異常状態の1つまたは複数の知覚される症状が、正常な状態まで緩和されることを意味し得る。
【0072】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される症状の緩和は、CSUに対するIgEの低下、掻痒の緩和および/または膨疹数の低下を含み得る。具体的には、以下の2つのスコアシステムを使用して、CSUの徴候および症状を評点した:1) 毎日の膨疹数および掻痒の強度を、7日間にわたり0~3のスケールで毎日評点したスコアに基づくUAS7(蕁麻疹活動性スコア);および2) 膨疹数を、7日間にわたって0~3のスケールで毎日評点したスコアに基づくHSS7(膨疹重症度スコア)。UAS7スコアは、5つのスコアバンドに分類される:(i) 膨疹無し, 0点、(ii) 膨疹のコントロールが良好, 1~6点、(iii) 軽症, 7~15点、(iv) 中等症, 16~27点、(v) 重症, 28~42点。HSS7スコアは4つのスコアバンドに分類される:(i) 無し, スコア0;(ii) 軽症(1~6の膨疹/12時間);(iii) 中等症(7~12の膨疹/12時間);および(iv) 重症(12を超える膨疹/12時間)。特定の例において、本明細書に記載される「症状の緩和」は、患者の状態が重篤な状態から中等度、軽度または無症状に改善されることを意味し得る。
【0073】
本明細書で使用される場合、「迅速な緩和」という用語は、活性薬剤の投与後、1週間以内またはそれよりも早く(例えば、7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内または1日以内、すなわち24時間以内)疾患の症状の緩和が生じることを意味し得る。「持続的緩和」とは、活性薬剤投与後、2週間以上(例えば、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間)持続する疾患の症状の緩和をいう。具体的には、「迅速かつ持続的な緩和」という用語は、即時的な緩和が、活性薬剤の投与後、1週間以内またはそれよりも早く(例えば、7日以内、6日以内、5日以内、4日以内、3日以内、2日以内または1日以内、即ち24時間以内)に開始し、少なくとも2週間以上(例えば、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、13週間、14週間以上)、特に少なくとも3週間以上(例えば、3~14週間以上)、少なくとも4週間またはそれ以上(例えば、4~14週間以上)、少なくとも5週間またはそれ以上(例えば、5~14週間以上)、少なくとも6週間またはそれ以上(例えば、6~14週間以上)、少なくとも7週間またはそれ以上(例えば、7~14週間以上)、少なくとも8週間またはそれ以上(例えば、8~14週間以上)、少なくとも9週間またはそれ以上(例えば、9~14週間以上)、少なくとも10週間またはそれ以上(例えば、10~14週間以上)、
少なくとも11週間またはそれ以上(例えば、11~14週間以上)、少なくとも12週間またはそれ以上(例えば、12週間~14週間以上)、少なくとも13週間またはそれ以上(例えば、13~14週間以上)あるいは少なくとも14週間またはそれ以上、一定かつ安定に維持される事を意味し得る。いくつかの実施形態では、緩和は、少なくとも8~24週間(2~6ヵ月)、少なくとも12~24週間(3~6ヵ月)、少なくとも16~24週間(4~6ヵ月)、少なくとも20~24週間(5~6ヵ月)または少なくとも24週間(6ヵ月)継続し得る。
【0074】
本明細書で使用される場合、投与に関する「頻度が低い」または「低頻度で」という用語は、疾患を治療するための活性薬剤(例えば、UB-221)が、2~14週間毎またはそれ以下の頻度、例えば、3週間毎、4週間毎、5週間毎、6週間毎、7週間毎、8週間毎、9週間毎、10週間毎、11週間毎、12週間毎、13週間毎または14週間毎またはそれ以下の頻度で投与されることを意味し得る。いくつかの実施形態において、活性薬剤(例えば、UB-221)は、3~14週間毎またはそれ以下の頻度、4~14週間毎またはそれ以下の頻度、5~14週間毎またはそれ以下の頻度、6~14週間毎またはそれ以下の頻度、7~14週間毎またはそれ以下の頻度、8~14週間毎またはそれ以下の頻度、9~14週間毎またはそれ以下の頻度、10~14週間毎またはそれ以下の頻度、11~14週間毎またはそれ以下の頻度、12~14週間毎またはそれ以下の頻度、13~14週間毎またはそれ以下の頻度、あるいは14週間毎またはそれ以下の頻度で投与される。いくつかの実施形態において、活性薬剤(例えば、UB-221)は、8~24週間毎(2~6ヶ月毎)、12~24週間毎(3~6ヶ月毎)、16~24週間毎(4~6ヶ月毎)、20~24週間毎(5~6ヶ月毎)または24週間毎(6ヶ月毎)に投与される。
【0075】
いくつかの実施形態において、IgE介在性疾患を治療するための活性薬剤として本明細書に記載されるような多機能性抗IgE抗体を用いると、対象がその他の治療、例えば、低分子薬、環状ペプチド薬またはその他の生物製剤を投与された場合よりも、持続期間が長く、投与頻度がより少なくて済む持続的な症状の緩和が得られる。低分子薬(例えば、抗ヒスタミン薬)および環状ペプチド薬(例えば、シクロスポリン)は、通常、高頻度で投与され、例えば、錠剤またはカプセルによる投薬が毎日長期間にわたって行われる。その他の生物学的製剤の例、例えば、オマリズマブおよびリゲリズマブ(抗IgE抗体)は、2週間または4週間毎に投与される。前記の抗IgE抗体は、IgEを中和する能力はあるが、de novoのIgE産生の実質的な阻害(例えば、IgEレベルの35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上の低下を引き起こす)を提供できない単一機能性抗IgE抗体(または、単にIgE中和剤と呼ばれる)とみなされる。具体的には、このような単一機能性抗IgE抗体は、CD23に対して限定的に反応するか、または不活性なままであるため、CD23介在性IgE産生のダウンレギュレーションを実質的に阻害しない。
【0076】
本発明の方法は、アレルギー性または非アレルギー性疾患を含むIgE介在性疾患の治療に有効である。本明細書に記載されるIgE介在性疾患の例としては、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、慢性特発性蕁麻疹、慢性副鼻腔炎、全身性マスト細胞症、皮膚マスト細胞症、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、再発性特発性血管浮腫または好酸球関連胃腸障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書で使用される用語「有効量」とは、処理された対象または細胞において所望の生物学的効果を与えるための有効成分の量を指す。例えば、有効量は、本明細書に記載される通り、de novoのIgE産生の実質的な阻害を提供し、IgE介在性疾患に対する迅速かつ/または持続的な症状の緩和を導くことができる活性薬剤としての多機能性抗IgE抗体の量であってよい。有効量は、投与経路および投与頻度、当該医薬を投与される個体の体重および種ならびに投与目的などの様々な理由に応じて変更することができる。当業者は、本明細書における開示内容、確立された方法および自身の経験に基づいて、各々の場合における投与量を決定することができる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の多機能性抗IgE抗体は、対象の体重1 kgあたり0.1~10 mg、好ましくは0.3~10 mg、より好ましくは0.5~10 mg、なおより好ましくは1~10 mg、さらに好ましくは2~10 mg、3~10 mg、4~10 mg、5~10 mg、6~10 mg、7~10 mg、8~10 mgまたは10 mgの用量範囲で投与される。
【0079】
いくつかの実施形態において、抗体は、全用量で組成物中に含まれ、単回投与で対象に投与される。
【0080】
本明細書に記載の治療方法によって治療される対象は、哺乳動物、より好ましくはヒトであってもよい。哺乳動物としては、家畜、競技用動物、ペット、霊長類、ウマ、イヌ、ネコ、マウスおよびラットなどが挙げられるが、これらに限定されない。治療を必要とするヒト対象とは、標的疾患/障害を有するか、その危険性があるか、またはその疑いがあるヒト患者であり得る。前記標的疾患/障害のいずれかを有すると疑いのある対象は、疾患/障害の1つ以上の症状を示す可能性がある。疾患/障害のリスクのある対象は、その疾患/障害のリスク因子を1つ以上有する対象であり得る。
【0081】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらの実施例は、限定ではなく実証の目的で提供される。当業者は、本発明の開示に照らして、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、開示されている特定の実施形態において多くの変更を加えることができ、それでもなお同様または類似の結果を得ることができることを理解すべきである。
【実施例】
【0082】
実施例1:表面プラズモン共鳴(SPR)分析におけるUB-221対オマリズマブのIgE結合親和性の決定
抗IgEモノクローナル抗体UB-221(親CHO-SクローンからのUBP産物)およびオマリズマブ(Novartis, Xolair(登録商標)CA-075)へのIgE結合の速度論的解析を、Biacore X100装置(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって実施した。最初に、抗ヒトIgG Fcフラグメント抗体(BR-1008-39, GE)を、アミノカップリングによりCM5ゴールドセンサーチップ表面に固定し、そこに1 μg/mLに希釈した抗IgE抗体を捕捉した。HBS-EP緩衝液で希釈した0.312~50 nM Expi293発現ヒト全長IgEサンプルを、120秒間注入し、一定の緩衝液送液下で解離を720秒間測定した。解離速度定数(Kd)、会合速度定数(Ka)および平衡解離速度定数(K
D)は、1:1のLangmuir曲線フィッティングモデルを用いて算出した。その結果、UB-221は、オマリズマブ(K
D, 8.98 x 10
-11 M)の約8倍の親和性(K
D, 1.15 x 10
-11 M)にてIgEに結合することが実証された。速度論的センサーグラムおよび結合親和性の値を
図1に示した。
【0083】
実施例2:表面プラズモン共鳴(SPR)分析におけるUB-221対リゲリズマブ対オマリズマブのIgE結合親和性の決定
抗IgEモノクローナル抗体UB-221(安定なCHO-Sクローンから得たUBP産物)、リゲリズマブ(Creative Biolabs, CB190513)の代用抗体(SA)およびオマリズマブ(Novartis, Xolair(登録商標)CA-075)へのIgE結合の速度論的分析を、Biacore X100装置(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって実施した。最初に、抗ヒトIgG Fcフラグメント抗体(BR-1008-39, GE)を、アミノカップリングによりCM5ゴールドセンサーチップ表面に固定し、チップ上で1 μg/mLに希釈した抗IgE抗体を捕捉した。HBS-EP緩衝液で希釈した0.312~50 nM Expi293発現ヒト全長IgEサンプルを120秒間注入し、一定の緩衝液送液下で解離を720秒間測定した。解離速度定数(Kd)、会合速度定数(Ka)および平衡解離速度定数(K
D)は、1:1のLangmuir曲線フィッティングモデルを用いて算出した。その結果、リゲリズマブは、最も高い親和性(K
D, 1.61 x 10
-11 M)にてIgEと結合し、UB-221(K
D, 5.85 x 10
-11 M)の約4倍、オマリズマブの約14倍高いことが実証された。速度論的センサーグラムと結合親和性の値を、
図2に示した。
【0084】
実施例3:IgE:FcεRI相互作用および好塩基球脱顆粒に対する競合阻害
3.1. FcεRI発現RBL SX-38細胞へのIgE結合の阻害
1×10
5のRBL SX-38細胞を、400 ng/mLの組換えヒトIgEと共に氷上で1時間混合した。1% BSA/PBSで3回洗浄した後、UB-221およびオマリズマブを、25,000~6 ng/mLの濃度で、細胞に添加し、氷上で1時間インキュベートした。最後に、細胞を、1%BSA/PBSで3回洗浄し、0.75 μg/mLのPE標識抗ヒトIgE(eBioscience, CN. 12-6986, Lot. E11877-1636)と共に、氷上で30分間インキュベートした。染色した細胞を、3回洗浄した後に、FACS Verse サイトメーターで分析した。
図3(上段)に示す通りに、FcεRI発現RBL SX-38へのIgE結合の競合阻害(平均±SD, n=3)において、UB-221は、オマリズマブ(IC
50:0.035 対 0.106 mg/mL)に対して3倍の優位性にてIgEの結合を阻害した。
【0085】
3.2. RBL SX-38脱顆粒アッセイ
β-ヘキソサミニダーゼは、刺激後に放出されるリソソーム酵素であり、ヒスタミンの放出と十分に相関するため、脱顆粒の測定に使用することができる。RBL SX-38細胞(ヒトFcεRIを発現するラット好塩基球細胞)を、1 μg/mLのOVA特異的hIgE(AllerMAbs, CN:OVA8G9-02)および0.002~15 μg/mLの抗IgE抗体(UB-221またはオマリズマブ)と共に、37℃で2時間共培養した。その後、細胞を培養培地で2回洗浄し、OVA/Triton X-100 (1 % トライトンX-100中の10 μg/ml OVA)を用いて30分間脱顆粒反応を誘導した。細胞上清中のβ-ヘキソサミニダーゼを回収して、4-MUGを含むクエン酸(4-メチルウンベリフェリル-N-アセチル-β-D-グルコサミニド, Sigma-Aldrich, CN:M2133)を添加して1時間反応させた。得られた蛍光(励起355 nm;発光460 nm)を、蛍光リーダーで測定した。脱顆粒のパーセンテージは、%β-ヘキソサミニダーゼ放出として表した。
図3(下段)に示す通り、IgE特異的オボアルブミン(OVA)-IgE複合体によって誘導されるRBL SX-38の脱顆粒の阻害(平均±SD, n=6)において、UB-221は、オマリズマブ(IC
50:0.14 vs 0.94 mg/mL)に対して7倍の阻害優位性を示した。
【0086】
実施例4:UB-221とオマリズマブの単回IV投与で処理したhIGHE-ノックインマウスにおける血清ヒト化IgEの低下
ゲノムのCg1およびCk定常領域がヒトCeおよびCk定常領域に置換されたヒトIgEノックインC57BL/6マウスにおいて、そのIgE分泌B細胞は、マウスIgEよりも、はるかに高いレベルでヒト化IgEを産生できる。UB-221またはオマリズマブを0.3または3.0 mg/kgで単回i.p.投与したhIGHEノックインマウス(n=6)において、
図4に示す通りに、UB-221は、0.3 mg/kgの低用量で、血清遊離IgEの90%以上の急速な低下を誘導することが観察されたが、一方で、オマリズマブがこのレベルのIgE低下を達成するには、10倍の高用量(3.0mg/kg)が必要であろう。データは、平均値±SEMとして示した。*P < 0.05は、統計学的に有意であることを示す。
【0087】
実施例5:アトピー性皮膚炎患者の血清中の高IgEのex vivoでの中和
アトピー性皮膚炎患者30名の血清中の高IgEの低下における効力を、ELISAに固定されたFcεRIへのIgE結合の競合阻害に基づいて、UB-221、リゲリズマブおよびオマリズマブについて比較した。採取した血清サンプルを、低IgE(<4,800 ng/mL, n=9)、中IgE(4,800~24,000 ng/mL, n=11)および高IgE(>24,000 ng/mL, n=10)の3つの範囲のIgEのグループに分けた。血清サンプルを、3段階の濃度の抗IgE mAbsと共にインキュベートした。比較は、Mann-Whitney U検定で推定した(P<0.001, ns =有意ではない)。その結果、UB-221およびリゲリズマブは、血清IgEの中和において同等の効力であるが、オマリズマブは、
図5A~
図5Cに示す通りに効力は低く、低IgE群(
図5A)を用いた場合、50%のIgE低下を達成するmAb薬剤濃度(EC
50, 平均±SEM)は、UB-221、リゲリズマブおよびオマリズマブについて、各々450±100、419±100および1,647±317 ng/mLであると評価された。
【0088】
実施例6:遊離形態またはIgE複合体形態の抗IgE mAbsによるCD23との相互作用
5 mg/mL CD23(100 μL)を96ウェルELISAプレートにコートして、PBS-0.5 %BSAでブロッキングした。CD23結合IgEに結合するmAb結合のアッセイのために、PBS-0.5 %BSA中の100 ng/mL IgE/(100 μL)を添加し、RTで1時間インキュベートした。洗浄後、0.0001~100 μg/mLで連続希釈したUB-221、オマリズマブおよびリゲリズマブを加えて、RTで1時間インキュベートした。抗IgE mAbsの結合を、ヤギ抗ヒトIgG Fc-HRP(Jackson Immuno Research, Inc.)を用いて検出した。予め形成したIgE複合体における抗IgE mAbsのCD23への結合を、同じELISAを用いて調べたが、1つ変更したことは、UB-221、オマリズマブおよびリゲリズマブ(1.0~200 ng/mL)を、1時間室温でインキュベートして複合体を形成させて、CD23を固定したELISAプレートに混合物を加えた後、CD23に結合した抗IgE mAbsをヤギ抗ヒトIgG Fc-HRPで検出したことである。
【0089】
IgEを予めロードしたCD23を固定したELISAにおいて、遊離形態のUB-221は、
図6(上図)に示す通りに、CD23結合IgEに対して濃度依存的に強い結合を示し、EC
50値(平均値±SD)が38.4±3.6 vs. 402±47.3 ng/mLを示したことから、リゲリズマブよりも10倍以上多く結合すると推定されたが、オマリズマブは不活性であった。予め形成されたUB-221:IgE複合体もまた、
図6(下段)に示す通りにCD23と強い結合を示し、そのEC
50は、41.6±4.6ng/mLであり、CD23結合IgEとほぼ同じ程度であったが、IgEと複合体化したリゲリズマブは、CD23との結合能を完全に失い、オマリズマブ:IgE複合体は、CD23に対して不活性であった。
【0090】
実施例7:UB-221、リゲリズマブおよびオマリズマブによるヒトPBMCのIgEの新規合成の低下
UB-221、オマリズマブまたはリゲリズマブの存在下で、健康なドナーのヒトPBMCを、ヒト組換えIL-4および抗ヒトCD40抗体で刺激して、de novoのIgEを合成させた。14名の血液ドナーからのPBMC(n=14)を用いた1つの研究では、 (a) 1 μg/mL、(b) 3 μg/mLおよび(c) 10 μg/mLの薬剤用量を用いた7日目および11日目のIgE産生に対する効果を、オマリズマブとの比較において、UB-221について試験した。3~5名の血液ドナーを用いた別の試験では、UB-221、オマリズマブおよびリゲリズマブを、(d) 10 μg/mL(n=3)、(e) 20 μg/mL(n=5)および(f) 80 μg/mL(n=5)の薬剤用量を用いた11日目のIgE産生に対する効果に重点を置いた。細胞培養上清サンプル中の全IgEを、ELISAで定量した。IgE低下率は、各々の未処理細胞のIgEレベルを100%として計算した。データは、平均値±SEMで示した。未処理コントロールを基準としたTukeyの多重比較による二元配置分散分析を用いて、様々な処理を、未処理コントロール群と相対比較した。*p < 0.05, **p < 0.01, ***p < 0.001。
【0091】
図7Aに示す結果は、UB-221が、1、3および10 μg/mLの全ての用量レベルで、全IgEの87~94%の低下を示し、オマリズマブは7.9~53.5%と低い割合でIgEを低下させたことから、UB-221が、オマリズマブより優れていることを示している。投与量を10、20および80 μg/mLとした追加試験(
図7B)でも、UB-221が69%~74%の高い割合の低下に対してオマリズマブが4.9%~31%の低い割合の低下を示し、UB-221は、オマリズマブに対してUB-221の優位性が確認された。リゲリズマブは、統計学的に有意ではなかったが、IgEを全体として16%~31%低下させ、オマリズマブよりも良好な低下を示す傾向がみられた。従って、UB-221は、CD23を介したIgE産生のダウンレギュレーションにおいてリゲリズマブおよびオマリズマブよりも優れており、遊離形態のUB-221は、CD23結合IgEに十分に結合し、IgE:mAb複合体形態のUB-221は、CD23に自由に結合するが、リゲリズマブは限定的に反応し、オマリズマブは、CD23に対して不活性であるという所見と一致した(
図6)。
【0092】
実施例8:UB-221は、カニクイザルのIgEおよびCD23結合IgEに結合することができ、単回IV投与後、急速かつ大幅に血清IgEの低下を誘導することができる
UB-221は、カニクイザルのcIgEに結合することができ(
図8A)、用量依存的にcCD23結合cIgEに関与することができ(
図8B)、カニクイザルが薬理学および毒性学の適切な動物モデルとして機能し得ることを証明する。5.0 mg/kgのUB-221を、単回IV投与されたカニクイザル(n=3)では、抗体は、6.3日の平均消失半減期にて血清中で低下し(
図8C)、UB-221は、血清遊離cIgEを約400 ng/mLの基底レベルから90%~100%(
図8D)までの急速かつ大幅な低下を誘導することができた。基底IgEレベルは、カニクイザルNo.1、No.2およびNo.3については各々434、399および411 ng/mLであった。
【0093】
実施例9:ヒトで初めての第1相臨床試験のデザインにより、単回IV投与で処理した慢性特発性蕁麻疹患者において、UB-221は、安全かつ十分な容認性を有し、長期持続的な(3~6ヶ月)疾患改善効果(UAS7およびHSS7スコア)を誘導できることが実証された
第一選択薬のH1-抗ヒスタミン薬で治療中の慢性特発性蕁麻疹(CSU)対象において、安全性、忍容性、薬物動態(PK)および薬力学(PD)を評価するために、追加療法としてUB-221のIV注射による第1相の単回投与用量漸増試験を実施した。台湾で2ヵ所の試験施設から合計15名の対象が登録され、5つのコホートのいずれかに割り付けられ、UB-221を0.2 mg/kg(コホート1)、0.6 mg/kg(コホート2)、2.0 mg/kg(コホート3)、6.0 mg/kg(コホート4)および10 mg/kg(コホート5)の単回IV注射投与により投与された(
図9)。登録された15名全ての対象は、男性8名および女性7名のアジア人であり、年齢は21歳~72歳で、体重は49.0 kg~87.6 kgであった。CSUの徴候および症状を評点するために、2つのスコアシステムを用いた:1) UAS7(蕁麻疹活動性スコア)は、7日間にわたって毎日の膨疹数および掻痒の強さを、0~3のスケールで評点する;および 2) HSS7(膨疹重症度スコア)は、7日間にわたって毎日の膨疹数を、0~3のスケールで評点する。15名の対象のうち、ベースライン時のCSUは、重症9名(UAS7スコア28~42)、中等症4名(UAS7スコア16~27)および軽症2名(UAS7スコア7~15)であった。
【0094】
UB-221は、安全かつ良好な忍容性を示した。対象15名全員が試験を完了した。治療の中断、中止または追跡調査不能となった者はいなかった。用量制限毒性は観察されなかったので、コホート5の10mg/kgの用量レベルを最大耐量として決定した。39件の治療薬投与後の有害事象(TEAE)の殆どは、軽症または中等症であり、UB-221とは無関係であった。2.0 mg/kg以上の用量では、2ヶ月以上の長期持続性の疾患症状の抑制が見られた。
【0095】
実施例10:UB-221の単回IV注射投与後の蕁麻疹患者における血清濃度曲線および薬物動態プロファイル
UB-221に特異的に結合できる中和抗UB-221イディオタイプモノクローナル抗体を、プレートにコートした捕捉抗体として用い、UB-221の単回IV注射投与後の血清中濃度を、ELISAにより測定した。検出抗体にはマウス抗ヒトIgG Fc-HRPを用いた。その結果、UB-221曝露の持続時間は、用量依存的であることが実証された。UB-221の半減期は、0.6~10 mg/kgの用量で16~22日の範囲と推定された(
図10)。
【0096】
実施例11:UB-221で処理した蕁麻疹患者における有効性スコアUAS
11.1 7日間の蕁麻疹活動性スコア(UAS7)
UB-221の別の有効性マーカーは、ベースラインからのUAS7の変化として疾患症状の緩和によって評価される。14週間にわたる5つの各投与コホートにおける疾患スコアUAS7の個々の週間変化を
図11Aに示す。平均値(平均±SD)は、各投与コホートの3名の対象(n=3)から算出した(
図11B)。UAS7のスコアが高いほど、疾患の重症度が高いことを示している。その結果から、ベースライン時に重症から中等症のCSU(UAS7スコア≧16)を示す13名の対象全員において、UAS7の急速な低下が、UB-221の単回用量のIV注射を受けた後の最初の週に起こることが示された。ベースライン時のUAS7スコアが14であったコホート5の対象のような軽症のCSU対象では、10 mg/kgのUB-221の単回用量を投与した後の8週間まで反応が遅れた。良好にコントロールされた段階/疾患がない段階(UAS7≦6)までの症状緩和は、用量依存的に表れ、15名中で10名の対象において達成された(
図11A)。特に、コホート3(2 mg/kg)の3名全員、コホート4(6 mg/kg)の3名全員が、追跡期間中2週間~14週間、無病期、すなわち完全奏効(UAS7=0)を持続した。UB-221の単回投与は、平均スコアUAS7≦6(疾患が良好にコントロールされている)を達成する可能性を保持しており(
図11B)、>2 mg/kgの単回用量により、3~6ヵ月間の間、疾患を効果的に抑制できることを示唆している。
【0097】
11.2 UAS疾患スコアの毎日の変化
コホート当たり3名の対象のUASスコアを毎日収集して、平均した。注射後の毎日の平均値を、UB-221注射前の7日間にわたり、同じ対象由来の毎日のUASスコアの平均値であるベースライン値と比較した。表2および
図11Cに結果を示す。
【表2】
【0098】
このプロファイルから、UASの疾患スコアが1日目以降から急速に低下し、CSU患者はUB-221投与後の24時間以内に迅速に症状が緩和されたことが示唆された。
【0099】
実施例12:UB-221で治療された蕁麻疹患者における有効性スコアHSS7
UB-221の1つの有効性マーカーは、ベースラインからの7日間の膨疹重症度スコア(HSS7)の変化として、疾患症状の緩和によって評価される。14週間にわたる5つの用量のコホート各々における疾患スコアHSS7の個々の週間変化を
図12Aに示す。平均値(平均±SD)は、各用量のコホート3名の対象(n=3)から算出した(
図12B)。HSS7のスコアが高いほど、疾患の重症度が高いことを示す。その結果、全ての対象において、HSS7スコアは、UAS7スコア(
図11A~
図11C)と類似していた。HSS7スコアの急速な低下は、UB-221の単回IV注射を受けた最初の週に起きた。良好にコントロールされた/無病の段階(HSS7≦6)までの症状の低下は、用量依存的に表れ、15名中12名の対象で達成された(
図12A)。特に、コホート1の2名(0.2 mg/kg)、コホート2の2名(0.6 mg/kg)、コホート3の3名全員(2 mg/kg)、コホート4の3名全員(6 mg/kg)およびコホート5の2名(10 mg/kg)は、追跡期間中に2週間~14週間、無病期、即ち完全奏効(HSS7=0)を継続していた。HSS7スコアに対する効果と同様に、UB-221の単回投与により、平均スコアHSS7≦6(疾患が良好にコントロールされている)を達成する可能性を担保しており(
図12B)、>2 mg/kgの単回用量により3~6ヵ月間良好に疾患が抑制できることを示唆している。
【0100】
実施例13:UB-221で処理した蕁麻疹患者における遊離IgEの血清濃度
蕁麻疹患者へのUB-221の単回IV投与は、血清遊離IgEの急速かつ大幅な低下を誘導することができる(
図13)。血清遊離IgEを、捕捉タンパク質として組換えFcεRIα-IgG.Fc融合タンパク質を用いて、ビオチン標識マウス抗ヒトIgEモノクローナル抗体に続いてシグナル増強のためのストレプトアビジン-ポリHRPを添加して、ELISAにより測定した。遊離IgEの定量下限(LLOQ)は、24 ng/mLであった。UB-221注射前のベースライン時の遊離IgE濃度の範囲は、コホート1(0.2 mg/kg)では3999~272 ng/mL、コホート2(0.6 mg/kg)では1015~24 ng/mL未満、コホート3(2 mg/kg)では129~697 ng/mL、コホート4(6 mg/kg)では48.9~233 ng/mLおよびコホート5(10 mg/kg)では593~24 ng/mL未満であった。15名の対象全員について、血清IgEは、UB-221注射後4時間以内にUB-221によって完全に中和された(遊離IgEレベル<LLOQ)。完全なIgEの中和は、コホート1(0.2 mg/kg)では2~22日間、コホート2(0.6 mg/kg)では15~99日間、コホート3(2 mg/kg)では29~85日間、コホート4(6 mg/kg)では99日間以上、コホート5(10 mg/kg)では85~99日間以上持続した。これらのデータは、UB-221の効力が、強力かつ長期間持続することを示唆している。
【0101】
実施例14:UB-221の単回IV投与後の蕁麻疹患者における血清UB-211濃度、血清遊離IgEレベルおよびUAS7疾患スコアの同時変化
単回投与試験期間である14週間にわたり、5つの用量のコホート各々に参加した対象におけるUB-221の平均血清濃度、血清遊離IgEレベルおよびUAS7疾患スコアを同時に示す。SDを伴う平均(平均値)は、各コホート3名の対象(n=3)から計算された。UB-221の血清濃度が高いほど、血清遊離IgE濃度は完全に抑制され、UAS7疾患スコアの低下がより長い期間維持されるという、これら3つのパラメータの間で良好な相関関係がある(
図14)。この用量依存的な相関から、血清IgEレベルが重要な役割を果たす疾患である慢性特発性蕁麻疹(CSU)の治療において、>2.0 mg/kgの単回IV投与により、UB-221を3~6ヶ月毎に投与して、完全奏効(UAS7=0)または良好にコントロールされた段階(UAS7
<6)を達成できることが示唆された。
【0102】
結論
本発明は、CHO-S細胞株で発現するヒト化抗IgE IgG1であるUB-221モノクローナル抗体を、3~6ヶ月毎に投与して、IgEが関連する慢性特発性蕁麻疹を効果的に治療することが可能であることを見出したことに関する。このことは、UB-221単回投与の第1相試験(実施例9)の実施において実証されており、上述を支持する結果が得られている(実施例9~14)。このような3ヵ月(12週)または6ヵ月(24週)毎という投与頻度が少ないレジメンは、CSUの管理において4週毎に投与されるその他の2つの抗IgE mAbs、即ち、唯一承認されたオマリズマブおよび第3相試験で開発されなかったリゲリズマブとは対照的である24。
【0103】
投与頻度が少ないレジメンについての有用性は、オマリズマブおよびリゲリズマブと比較したUB-221のユニークな結合プロファイルおよび機能プロファイルを理由とするものである。UB-221は、IgEと強力な親和性で結合し(実施例1および2)、オマリズマブよりもIgEの中和(実施例3)および処理済hIGHE-ノックインマウス血清中の遊離IgEの低下(実施例4)において優れている。UB-221およびリゲリズマブは、アトピー性皮膚炎患者の高い血清IgEを、同等の効力で中和するが、オマリズマブは効力が弱い(実施例5)。カニクイザルでは、UB-221の単回投与は、血清IgEレベルを、急速かつ大幅に低下させることができた(実施例8)。これらの所見は、UB-221が、強力なIgE中和剤として機能することを示している。
【0104】
UB-221 mAbは、新規のヒト化抗IgE IgG1抗体であり、CD23との相互作用様式においてオマリズマブやリゲリズマブとは異なる。UB-221は、遊離形態ではCD23結合IgEに結合し、IgE:mAb複合体形態では制限無くCD23に作用するが、一方でリゲリズマブおよびオマリズマブは、CD23との間接的な相互作用のいずれの様式においても制限される(実施例6)。このことは、UB-221が、ヒトPBMCにおけるCD23介在性IgEの新規合成を最大レベルでダウンレギュレートするという知見と相関する(実施例7)。これらの知見から、UB-221は、多機能性抗IgE抗体であり、強力なIgE中和剤のみならず、有効なIgE合成阻害剤としても機能し、1) 循環中の可溶性遊離IgEおよびIgE:CD23複合体を掃引して、2) UB-221:IgE複合体を形成し、3) UB-221:IgE複合体が、消化管腔および気管支肺胞の上皮細胞を通過することによりIgE:アレルゲン複合体およびIgE:自己抗体複合体を除去する23、効率的なIgEの捕捉剤(trapper)であることが示された。CD23は、多くの種類の細胞において発現している10。一方で、オマリズマブおよびリゲリズマブは、単にIgEの中和剤として主に作用する。
【0105】
強力なIgE中和剤および有力なIgE合成阻害剤としての二つの役割を果たすUB-221のユニークな特性は、UB-221の強力なIgEダウンレギュレーションと蕁麻疹治療における長期にわたる疾患改善効果に関連している。投与頻度の少ないレジメン、即ち、3カ月(12週間)または6カ月(24週間)毎の投与レジメンは、IgE介在性またはIgE関連性の様々なアレルギー性疾患および非アレルギー性疾患に適用できる。
【0106】
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