(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】焼結品の製造方法及び焼結品
(51)【国際特許分類】
B22F 10/34 20210101AFI20241016BHJP
C22C 29/08 20060101ALI20241016BHJP
B22F 10/14 20210101ALI20241016BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20241016BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20241016BHJP
B33Y 40/20 20200101ALI20241016BHJP
B23P 15/28 20060101ALI20241016BHJP
B23B 27/14 20060101ALI20241016BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20241016BHJP
B22F 1/14 20220101ALI20241016BHJP
【FI】
B22F10/34
C22C29/08
B22F10/14
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y40/20
B23P15/28 Z
B23B27/14 B
B22F1/00 Q
B22F1/14 400
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522431
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2022078575
(87)【国際公開番号】W WO2023062158
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519208731
【氏名又は名称】サンドビック マシニング ソリューションズ アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ギレンフライクト, トビアス
【テーマコード(参考)】
3C046
4K018
【Fターム(参考)】
3C046FF32
3C046FF34
3C046FF38
3C046FF39
3C046FF40
3C046FF43
3C046FF44
3C046FF45
3C046FF46
3C046FF48
3C046FF50
3C046FF51
3C046FF53
3C046FF55
4K018AD06
4K018BA04
4K018CA44
4K018KA15
(57)【要約】
超硬合金又はサーメットの顆粒を含む粉末組成物から焼結品を付加的に製造する方法が開示される。本方法は、粉末組成物の複数の層を堆積させることによって底部を付加的に製造すること(102)と、底部の各層の表面全体に結合剤を付加することとを含む。本方法は、粉末組成物の複数の層を堆積させ、中間部分の各層の外側部分にだけ結合剤を付加することによって中間部分を付加的に製造すること(104)をさらに含む。本方法は、粉末組成物の複数の層を堆積させることによって頂部を付加的に製造すること(106)、及び頂部の各層の表面全体に結合剤を付加し、それによって印刷物品を製造し、印刷物品を焼結すること(108)をさらに含み、その際、粉末中の顆粒の気孔率は0~15重量%である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超硬合金又はサーメットの顆粒を含む粉末組成物から焼結品を付加的に製造する方法であって、
a)粉末組成物の複数の層を堆積させ、底部の各層の表面全体に結合剤を付加することによって、底部を付加的に製造する工程(102)と、
b)粉末組成物の複数の層を堆積させ、中間部分の各層の外側部分にだけ結合剤を付加することによって、中間部分を付加的に製造する工程(104)と、
c)粉末組成物の複数の層を堆積させ、頂部の各層の表面全体に結合剤を付加することにより、印刷物品を製造することによって、頂部を付加的に製造する工程(106)と、 d)印刷物品を焼結する工程(108)と
を含み、
粉末中の顆粒の気孔率が0~15重量%である、方法。
【請求項2】
粉末中の顆粒の気孔率が0~3重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
粉末組成物が8~14%の金属結合剤相を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
粉末組成物が9.5~10.5重量%の金属結合剤相を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
焼結する工程(108)が、真空焼結と、35バールを超える圧力での高圧焼結の両方を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
結合剤が付加された各部分の厚さが0.05~0.5mmの範囲である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
物品の一部が、請求項1の工程a~dを使用して製造され、且つ残りの物品が、粉末組成物の層を堆積させ、粉末組成物の層全体に結合剤を付加することによって製造される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
物品が、請求項1の工程a~dを使用して製造された複数の部分を含み、且つ、残りの物品が、粉末組成物の層を堆積させ、粉末組成物の層全体に結合剤を付加することによって製造される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
結合剤が、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む少なくとも1つの有機非芳香族物質である化合物Aと少なくとも2つのカルボキシル基を含む少なくとも1つの有機非芳香族物質である化合物Bとを含む水溶性熱硬化性結合剤であり、化合物A及び化合物Bはモノマー又はオリゴマーである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
化合物Aが、プロピレングリコール、グリセロール、マルトデキストリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールから選択され、化合物Bが、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ポリアクリル酸オリゴマー及びカルバリ酸から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各底部、頂部、及び各中間部の外側部分を除去する工程(110)をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
物品が、機械加工のための切削工具又は研削工具の部品である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項を用いて製造された焼結品(200)。
【請求項14】
機械加工のための物品である請求項13に記載の焼結品。
【請求項15】
切削工具又は研削工具のための部品である、請求項13又は14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、概して、焼結品の製造方法及び焼結品に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]3D積層造形とも呼ばれる付加製造は、一般に、特殊なシステムを使用して一度に1層ずつ粉末を付加的に製造する。特に、材料の層を構築チャンバの作業面上に堆積させ、同じ又は異なる材料の別の層と結合させることができる。付加製造は、粉末床融合(PBF)、直接金属レーザー焼結(DMLS)、又はバインダージェット3D積層造形などの技術を使用して、コンピュータ支援設計モデルから物品を製造するために使用できる。
【0003】
[0003]超硬合金又はサーメット体の付加製造は、最初に未焼体を作製し、その後未焼結品を別の炉で焼結する3D積層造形技術によって行うことが好ましい。バインダージェッティングは、このような3D積層造形技術の最も一般的な形式である。
【0004】
[0004]バインダージェッティングでは、粉末の1つの層が構築チャンバの作業面に堆積され、その後、粉末粒子を融合させるために液体結合剤、つまりバインダーが粉末に付加される。
【0005】
[0005]バインダージェッティングなどの付加製造技術を使用して製造された超硬合金又はサーメット物品の材料特性は、従来の製造技術を使用して製造されたセメント又は超硬合金の圧縮物品の材料特性とより類似している場合に有益である。
【0006】
[0006]したがって、バインダージェッティングを使用して焼結品を製造する方法に関しては、改善の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本発明の目的は、上で概説した問題及び課題の少なくともいくつかに対処することである。本発明の実施形態の目的は、少なくとも従来の結合剤噴射法よりも金属結合剤相の蓄積領域が少ない、及び/又は小さいという点で、所望の材料特性を有する物品を製造することである。
【0008】
[0008]一態様によれば、超硬合金又はサーメットの顆粒を含む粉末組成物から焼結品を付加的に製造する方法が提供される。本方法は、a)粉末組成物の複数の層を堆積させ、底部の各層の表面全体に結合剤を付加することによって底部を付加的に製造することと、b)粉末組成物の複数の層を堆積させ、中間部分の各層の外側部分にだけ結合剤を付加することによって中間部分を付加的に製造することとを含む。本方法はさらに、c)粉末組成物の複数の層を堆積させ、上部の各層の表面全体に結合剤を付加することによって頂部を付加的に製造し、それによって印刷物品を製造することと、d)粉末の顆粒の気孔率は0~15重量%である、印刷物品を焼結することとを含む。
【0009】
[0009]別の態様によれば、本明細書に記載の方法を使用して製造された物品も提供される。
【0010】
[00010]この解決策のさらに可能な特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
[00011]次に、添付の図面を参照しながら、例示的な実施形態によって解決策をより詳細に説明する。
【
図1】[00012]一実施形態による方法のフロー図である。
【
図2】[00013]第1の実施形態による物品を示す。
【
図3】[00014]一実施形態による物品の中央部分の印刷層を示す。
【
図4】[00015]第2の実施形態による物品を示す。
【
図5A-5B】[00016]一実施形態による物品の微細構造を示す。
【発明を実行するための形態】
【0012】
[00017]簡単に説明すると、本開示は、例えばバインダージェッティングを使用して、粉末と結合剤の両方を含むシェル構造が、結合剤を添加しない遊離粉末組成物を取り囲む、焼結品を付加的に製造するための方法を提供する。通常のバインダージェッティングと同様の手順で成形品の底部と頂部を設けることでシェル構造を実現し、ここで、結合剤は各層の全体に付加され、結合剤が各層の外側部分にだけ付加される中間部分を提供する。結合剤が付加された印刷物品の部分、すなわち底部、頂部及び中間部の外側部分は、中央の遊離粉末の周囲にシェル構造を形成する。印刷物品はその後焼結され、得られた物品の特性は、焼結品が金属結合剤相と硬質相、例えば、焼結品の少なくとも中央部分における超硬合金中のWC相のより均一な分布を含むようなものになる。使用される粉末の顆粒の気孔率は0~15重量%の範囲である。
【0013】
[00018]本方法は、いくつかの実施形態では、物品の選択された部分だけがシェル構造を使用して製造されるように実行され得る。いくつかの実施形態では、そのような選択された部品は、完成品の係合領域であってもよい。
【0014】
[00019]本方法は主に、超硬合金又はサーメット製品を製造するためのバインダージェッティング技術に適用できる。
【0015】
[00020]この開示の目的上、結合剤が付加されていない物品の領域又は部分は、付加製造工程中に結合剤が付加されなかった焼結品又は未焼結品の領域として定義される。さらに、結合剤が添加された領域は、積層造形工程中に結合剤が添加された焼結品又は未焼結品の領域として定義される。したがって、たとえ焼結品中に結合剤が存在しなくても、例えば、焼結工程中に除去されるため、これらの領域は、依然として結合剤が付加されていない領域又は部分、及び結合剤が付加された領域又は部分と呼ばれることがある。
【0016】
[00021]「サーメット」という用語は、純粋に金属結合相中に硬質成分を含む材料を指すことを意図しており、硬質成分は、TiN、TiC及び/又はTiCNなどの、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、Mo及びZrのうちの1つ又は複数の炭化物又は炭窒化物を含む。
【0017】
[00022]「超硬合金」という用語は、純粋に、金属結合相中に硬質成分を含む材料を指すことを意図しており、硬質成分は少なくとも50重量%のWC粒子を含む。硬質成分は、TiN、TiC及び/又はTiCNなどの、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、Mo及びZrのうちの1つ又は複数の炭化物又は炭窒化物を含むこともできる。
【0018】
[00023]サーメット又は超硬合金中の金属結合相は金属又は金属合金であり、金属は例えばCr、Mo、Fe、Co又はNiの単独又は任意の組み合わせから選択することができる。好ましくは、金属結合剤相は、Co、Ni、Feの組み合わせ、CoとNiの組み合わせ、又はCoを含む。焼結後、金属結合相は、超硬合金又はサーメットの全体的な組成に応じて、焼結中に結合剤に溶解する他の元素、例えば、W、Ta、Ti、Nb、Cr、Hf、V、Mo、Zrも含む。粉末中の金属結合相の平均含有量は4~30重量%、好ましくは6~17重量%又は8~13重量%である。
【0019】
[00024]粉砕、噴霧乾燥、プレス及び焼結を使用した超硬合金又はサーメット体の従来の製造では、プレスに使用される粉末は焼結されない。しかしながら、付加製造の場合、そのような粉末は脆弱すぎ、また気孔率が高すぎる。したがって、顆粒の形態の乾燥粉末は、付加製造に使用される場合、様々な程度に焼結され、したがって、使用される粉末は焼結顆粒を含む。
【0020】
[00025]ここで
図1を参照して、一実施形態による焼結品の製造方法の工程をより詳細に説明する。
【0021】
[00026]本方法は、粉末組成物の複数の層を堆積させ、結合剤を付加することによって物品の底部を付加的に製造すること102を含み、言い換えれば、物品の底部の各層の表面全体に付加製造で使用される液体結合剤である。言い換えれば、底部を付加的に製造すること102の第1の工程は、従来のバインダージェッティング技術を使用することを含む。
【0022】
[00027]本方法は、粉末組成物の複数の層を堆積させ、中間部分の各層の外側部分にだけ結合剤を付加することによって、物品の中間部分を付加的に製造すること(104)をさらに含む。言い換えると、中間部分を付加的に製造すること104は、結合剤が粉末組成物の層全体に付加されないという点で従来のバインダージェッティング技術とは異なり、得られる中間部分は、結合剤と混合された粉末から形成された壁に囲まれた遊離粉末を含む。
【0023】
[00028]この方法は、頂部を付加的に製造すること102と同じ工程を使用して上部を付加的に製造すること106をさらに含む、すなわち、粉末組成物の複数の層を堆積させ、物品の頂部の各層の表面全体に結合剤を付加することを含む。
【0024】
[00029]付加的に製造すること102、104、106が実行された後、未焼成体とも呼ばれる印刷物品が得られる。印刷物品は、遊離粉末から構成される内部と、結合剤融合粉末からなる外部とを含む。
【0025】
[00030]本方法はさらに、物品を焼結すること108を含み、それによって焼結された物品を製造する。
【0026】
[00031]本解決策は、既知の付加製造技術をいくつかの方法で改善することができる。
【0027】
[00032]第一に、本明細書に記載の方法を使用して得られる焼結品の特性は、従来のバインダージェッティング技術を使用する場合よりも、周囲のシェル構造を使用する場合の方が優れている。本開示による方法を使用することによって、その特性がプレスされた超硬合金又はサーメット製品の特性により類似した焼結製品を得ることができる。焼結品の微細構造は、コバルト相とWC相との間に不均一な分布を有する領域がない、又は少なくとも比較的均一な分布を有する、特にコバルトが多く蓄積した領域がないようなものであることが好ましい。さらに、本明細書に記載の方法を使用して製造された焼結品は、従来の付加製造技術を使用して製造された物品よりも高い硬度を有する。
【0028】
[00033]第二に、除去する結合剤が少なく、結合剤が製品の外側部分に配置されるため、焼結の脱結合することを従来の結合剤噴射法よりも速く実行できる。さらに、物品の中央に結合剤がないため、脱脂中に物品が破損する危険性が減少する。
【0029】
[00034]さらに、本開示による方法を使用することにより、従来の方法で可能なものよりも金属結合相の含有量が低い粉末を使用して製品を製造できる可能性がある。金属結合相の含有量が少なすぎる粉末を使用する場合、焼結品の気孔率が高くなりすぎる可能性があるが、製品全体に結合剤を使用するのではなく、遊離粉末の周囲にシェル構造を使用することで、金属結合相の含有量が低い粉末を使用した製品の製造が可能になる場合、気孔率は減少する可能性がある。
【0030】
[00035]試験中に、本明細書に記載の方法は、15重量%までの比較的低い気孔率を有する顆粒を含む超硬合金粉末などの特定の組成を有する粉末に特に適していることが判明した。本開示の目的に使用される粉末は、特に金属結合剤相がコバルトである場合、比較的低程度の金属結合剤相を含んでもよい。
【0031】
[00036]いくつかの実施形態では、粉末組成物は金属結合相としてコバルトを含み、コバルト含有量は7~13%である。いくつかの実施形態では、コバルト含有量は8~12%である。いくつかの実施形態では、コバルト含有量は9~11パーセントである。いくつかの実施形態では、コバルト含有量は9.5~10.5パーセントである。
【0032】
[00037]いくつかの実施形態では、使用される粉末中の顆粒の気孔率は0~10重量%の範囲であり、いくつかの実施形態では0~5重量%であり、いくつかの実施形態では0~3重量%の範囲である。粉末顆粒の気孔率が低いことは、一般に、低気孔率及び金属結合相蓄積領域の小さいサイズなど、所望の材料特性を有する焼結品を達成するのに有利である。
【0033】
[00038]本開示による方法及び物品の目的のために、超硬合金又はサーメットの印刷に適した任意の結合剤を使用することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、使用される結合剤は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含む、少なくとも1つの有機非芳香族物質である化合物A、及び少なくとも2つのカルボキシル基を含む、少なくとも1つの有機非芳香族物質である化合物Bを含み、水溶性熱硬化性結合剤であり、化合物A及び化合物Bはモノマー又はオリゴマーである。このような結合剤は、比較的強い接着効果を有することができ、したがって、結合剤が付加された領域が従来の結合剤よりも小さくなり得るように、本開示による方法において有利に使用することができる。
【0035】
[00040]いくつかの実施形態では、化合物Aは、プロピレングリコール、グリセロール、マルトデキストリン、エリスリトール、キシリトール、ソルビトール及びマンニトールから選択される。いくつかの実施形態では、化合物Bは、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ポリアクリル酸オリゴマー及びカルバリル酸から選択される。
【0036】
[00041]さらに、本明細書に記載の方法は、ある種の焼結を使用する場合に特に適していることも判明した。
【0037】
[00042]いくつかの実施形態では、焼結は真空焼結を使用することを含む。本開示の目的上、真空焼結は、最大1013ミリバールの圧力の低真空中での焼結を含むことができる。いくつかの実施形態では、真空焼結は、最大500ミリバールの圧力又は分圧での焼結を含む。いくつかの実施形態では、真空焼結は、最大250ミリバールの圧力又は分圧での焼結を含む。
【0038】
[00043]いくつかの実施形態では、焼結は、最初に真空焼結を使用し、次に少なくとも35バールの圧力で高圧焼結を使用することを含む。さらに、いくつかの実施形態では、焼結は脱結合工程を含んでもよい。
【0039】
[00044]
図2は、本開示による印刷及び/又は焼結品200の側面図を示す。本物品は、結合剤が添加された粉末を含む底部210を含み、結合剤が付加された粉末を含む頂部230、及びより具体的には、結合剤が外側部分にだけ付加された中央部分215(物理的構造を表すものではない破線で囲まれている)頂部及び底部210、230と同様の構造を有する2つの側部220、すなわち結合剤が付加された粉末と、結合剤が付加されていない遊離粉末だけを含む中央部240とを含む。
【0040】
[00045]これを前に説明した方法工程に接続するために、工程102は、底部210を付加的に製造するために実行され、工程104は、2つの側部220及び中央部240を含む中央部215を付加的に製造するために実行され、工程106は、上部230を付加的に製造するために実行される。
【0041】
[00046]いくつかの実施形態では、製品が焼結された後、外側部分210、220、230が除去され、残りの製品が中央部分240、すなわち粉末に結合剤が付加されなかった部分だけを含むようにすることができる。
【0042】
[00047]外側部分210、220、230の厚さは、製造される物品に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、外側部分210、220、230の厚さは、0.05~0.5mmの範囲にある。
【0043】
[00048]厚さは、物品の使用目的によっても異なる。切削工具用インサート等、機械加工時の嵌合を目的とした物品の場合、物品の中央部分240は、機械加工中に望まれる改善された材料特性を有する物品の部分であるため、外側部分210、220、230は、後でより容易に除去できるように比較的薄くてもよい。
【0044】
[00049]いくつかの実施形態では、方法は、物品の中間部分215の一部又は全部が物品200の外側部分を形成するように、物品の外側部分210、220、230の一部又は全部を除去すること110をさらに含む。外側部分の除去は、例えば研削によって行うことができる。
【0045】
[00050]
図3は、
図2の中央部分215の印刷層300を上から見た図である。印刷層は、結合剤付加される外側部分310と、結合剤が付加されない中央部分320とを含む。上述したように、印刷層300は、方法工程104を使用して、すなわち、粉末組成物の層を堆積し、層の外側部分310にだけ結合剤を付加することによって製造される。
【0046】
[00051]
図4は、一実施形態による印刷及び/又は焼結品400の側面図を示しており、物品400の選択された部分410だけが、遊離粉末420を有する体積を取り囲むシェル構造を使用することによって製造される。バルク部分430と呼ばれる、物品400の全体積の大部分を占める残りの部分430は、粉末と結合剤の組み合わせからなる。
【0047】
[00052]
図4の選択された部分410は、
図2の物品200と同じ構造を有し、すなわち、結合剤が添加されていない遊離粉末を含む内部体積420と、周囲のシェル構造とを含む。画像からわかるように、選択された部分200の最右部分と底部分を構成する部分も、バルク430の一部であるように見えることがある。
【0048】
[00053]物品の選択した部分にだけシェル構造を使用することで、より高い未焼結品強度を有し、それ故、付加製造段階と焼結段階の間に必要な、輸送と取り扱いが容易に物品を達成することが可能となり得る。別の利点は、粉末と結合剤の両方を含む部品が、遊離粉末だけを含む部品とは別の方法で収縮することから生じ得る。したがって、物品全体の選択された比較的小さい部分の周りにだけシェル構造を使用することによって、物品全体がシェル構造によって囲まれたものよりも均一な収縮を示す物品が達成され得る。
【0049】
[00054]したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、工程202、204、206を用いて物品の一部だけを製造することと、粉末組成物の層を堆積させることによって残りの物品を製造することと、粉末組成物の層全体に結合剤を付加することとを含む。
【0050】
[00055]いくつかの実施形態では、本方法は、工程202、204、及び206を使用して複数の部品を製造することと、粉末組成物の層を堆積させることによって残りの物品を製造することと、粉末組成物の層全体に結合剤を付加することとを含む。
【0051】
[00056]ここで
図5A及び
図5Bを参照して、本開示による方法を使用することによって達成できる微細構造の違いについて説明する。前述したように、完成した焼結品中に金属結合剤相が大量に蓄積しないように、硬質相と金属結合剤相との間の分布が比較的均一であることが好ましい。
【0052】
[00057]上記の方法を使用して製造された完成した焼結品では、物品の微細構造は一般に、粉末に結合剤が添加されていない領域、つまり物品の中心でより良好である。
図5Aは、従来の方法を使用して製造された、すなわち、各印刷層全体に結合剤が付加された製品の中央の微細構造を示しており、
図5Bは、シェル構造を使用して製造された製品の中心の微細構造を示している。図上の明るい領域はコバルトなどの金属結合相を表し、暗い領域はWCなどの硬質相を表す。
【0053】
[00058]ここで
図5Aを見ると、各印刷層全体に結合剤を使用して製造された物品が示されており、該物品は、金属結合相が比較的大量に蓄積したいくつかの領域510、520、530を有し、これらは、金属結合相蓄積領域と呼ばれることがある。これらの領域510、520、530は、大部分が金属結合相で構成され、実質的に硬質相は含まれず、物品の微細構造に悪影響を与える可能性がある。
【0054】
[00059]ここで
図5Bを見ると、各印刷層の外側部分にだけ結合剤を使用して製造された物品が示されており、金属結合剤相と硬質相との間の分布は比較的均一である。画像の一部の部分が他の部分よりも明るいことがわかるが、全体の構造は比較的均一であり、
図5Aに示す部分よりも明らかに均一である。
【0055】
[00060]
図5A及び5Bは、金属結合剤相と硬質相の分布が、結合剤が付加された領域よりも結合剤が付加されなかった領域の方が良好であることを示しており、これは、本開示の基礎となる重要な洞察の1つである。
【0056】
行われた試験
[00061]本開示による方法を使用して製造された物品を比較するために、異なる粉末組成及び異なる焼結方法を使用して、多くの試験が実施された。次いで、金属結合相蓄積領域の平均サイズを決定することにより、微細構造の均質性を決定する方法を使用して、得られた物品を分析した。使用される様々な焼結方法及び使用される分析方法について最初に説明し、その後、後続の実施例で参照する。
【0057】
焼結方法A
[00062]この方法は、210分間かけて550℃まで段階的に温度を上昇させる水素雰囲気中での脱結合工程から始まる。
【0058】
[00063]次に、温度を真空下で1380℃まで上昇させ、そこでCOとArを1:1の流量比、40ミリバールの分圧で30分間の保持時間中に導入した。次いで、温度を1410℃まで上昇させた。温度及びCO/Ar雰囲気を60分間維持した。その後、1200℃までの制御冷却を適用し、その後、炉を室温まで自由冷却させた。
【0059】
焼結方法B
[00064]この方法は、220分間かけて550℃まで段階的に温度を上昇させる水素雰囲気中での脱結合工程から始まる。
【0060】
[00065]次に、温度を真空下で1380℃まで上昇させ、そこでCOとArを1:1の流量比、50ミリバールの分圧で45分間の保持時間中に導入した。次いで、温度を1410℃まで上昇させた。温度及びCO/Ar雰囲気を90分間維持した。その後、50バールのAr圧力を30分間加えた。次いで、炉を1150℃まで制御された冷却工程に供した後、炉を室温まで自由冷却した。1150℃に達した後、50バールのAr圧力を6時間維持した。
【0061】
焼結方法C
[00066]温度を真空下で1380℃まで上昇させ、そこでCOとArを1:1の流量比、5ミリバールの分圧で30分間の保持時間中に導入した。次いで、温度を1410℃に上昇させ、分圧を40ミリバールに上昇させた。温度及びCO/Ar雰囲気を60分間維持した後、50バールのAr圧力を30分間加えた。次いで、炉を1150℃まで制御しながら冷却し、その後、炉を室温まで自由冷却した。1150℃に達した後、50バールのAr圧力を6時間維持した。
【0062】
微細構造の解析方法
[00067]微細構造の均質性は、研磨された試料から採取された微細構造の断面画像の画像解析を通じて推定された。複数のコバルト領域と画像に円が刻まれた。試料ごとに50,000~60,000の領域が分析された。内接円直径の加重平均は、パラメータp=6及びq=3を使用して、式1に従って計算される。これらの結果はX[6,3]で示され、単位はμmである。一般的に言えば、本明細書に記載の物品及び方法については、X[6,3]の結果の値が高いほど好ましい。
【0063】
【0064】
気孔率の測定方法
焼結顆粒の気孔率は、ソフトウェアImage Jを使用して、顆粒の断面のLOM(光学顕微鏡)画像(倍率2000倍)の画像解析によって測定した。粉末試料ごとに平均約50個の顆粒が分析された。
【0065】
実施例1
焼結超硬粒子(表1)を使用して試料の立方体(15×15×6mm)を印刷した。顆粒は、WC及びCo粉末を含むスラリーを粉砕し、スラリーを噴霧乾燥して顆粒を形成することによって調製され、その後、約1~3体積%の気孔率まで真空焼結により1275℃で60分間焼結され、WC粉末は、0.8μmの平均粒径を有していた。
【0066】
立方体はバインダージェット印刷によって製造された。印刷は、印刷中に層厚50μmのExOne Innovent+を使用して行われた。印刷時の彩度は80%に設定され、使用された結合剤はExOne AquaFuseであった。
【0067】
[00068]参照1では、通常のバインダージェット印刷と同様に、立方体全体に結合剤が付加された。発明1では、結合剤は、立方体のすべての側面から0.5mm内側にだけ適用された。両方のバージョンは、同じビルドジョブで印刷された。
【0068】
[00069]印刷された立方体は、最初に焼結方法Aで焼結され、次に方法Bで焼結された。
【0069】
[00070]表2からわかるように、本発明を使用して製造された立方体におけるコバルト蓄積領域の平均サイズは、基準と比較してはるかに小さく、半分未満である。
【0070】
実施例2
[00071]焼結超硬粒子(表3)を使用して試料立方体(15×15×6mm)を印刷した。顆粒は、WC及びCo粉末を含むスラリーを粉砕し、スラリーを噴霧乾燥して顆粒を形成することによって調製され、その後、約1~3体積%の気孔率まで真空焼結により1275℃で60分間焼結され、WC粉末は、0.8μmの平均粒径を有していた。
【0071】
[00072]立方体はバインダージェット印刷によって製造された。印刷は、印刷中に層厚50μmのExOne Innovent+を使用して行われた。印刷時の彩度は80%に設定され、使用された結合剤はExOne AquaFuseであった。
【0072】
発明1、2及び3では、結合剤は、立方体のすべての側面から0.5mm内側にだけ適用された。両方のバージョンは、同じビルドジョブで印刷された。
【0073】
[00074]発明1の印刷された立方体は、まず焼結方法Aで焼結され、次に方法Bで焼結された。発明2の印刷された立方体は、まず焼結方法Aで焼結され、次に方法Cで焼結された。発明3の印刷された立方体は、方法Bで焼結された。発明1、2、3の粉末組成は同じであった。
【0074】
[00075]表4からわかるように、焼結法Bを使用して製造された立方体のコバルト蓄積領域は、最初に焼結法Aを使用して製造され、その後方法Bを使用して製造された立方体よりも小さい平均サイズを有し、さらに、焼結法Aと次に方法Bを使用して製造された立方体よりも小さい平均サイズを有していた。
【0075】
実施例3
[00076]焼結超硬粒子(表5)を使用して試料立方体(15×15×6mm)を印刷した。顆粒は、WC及びCo粉末を含むスラリーを粉砕し、スラリーを噴霧乾燥して顆粒を形成することによって調製され、その後、約1~3体積%の気孔率まで真空焼結により1275℃で60分間焼結され、WC粉末は、0.8μmの平均粒径を有していた。
【0076】
[00077]立方体はバインダージェット印刷によって製造された。印刷は、印刷中に層厚50μmのExOne Innovent+を使用して行われた。印刷時の彩度は80%に設定され、使用された結合剤はExOne AquaFuseであった。
【0077】
[00078]参照2では、通常のバインダージェット印刷と同様に、立方体全体に結合剤が付加された。発明4では、結合剤は、立方体のすべての側面から0.5mm内側にだけ適用された。両方のバージョンは、同じビルドジョブで印刷された。印刷された立方体は、最初に焼結方法Aで焼結され、次に方法Cで焼結された。
【0078】
[00079]表6からわかるように、本発明を使用して製造された立方体のコバルト蓄積領域は、参照のものよりも小さい平均サイズを有する。さらに、本発明を使用して製造された立方体は、参照よりも高い硬度を有する。
【0079】
実施例4
[00080]焼結超硬粒子(表7)を使用して試料立方体(15×15×6mm)を印刷した。顆粒は、WC及びCo粉末を含むスラリーを粉砕し、スラリーを噴霧乾燥して顆粒を形成することによって調製され、その後、約1~3体積%の気孔率まで真空焼結により1275℃で60分間焼結され、WC粉末は、1.5μmの平均粒径を有していた。
【0080】
[00081]立方体はバインダージェット印刷によって製造された。印刷は、ExOne Innovent+を使用し、印刷中に50μmの層厚で行われた。印刷時の彩度は80%に設定され、使用された結合剤はExOne AquaFuseであった。
【0081】
[00082]参照3では、通常のバインダージェット印刷と同様に、立方体全体に結合剤が付加された。発明5では、結合剤は、立方体のすべての側面から0.5mm内側にだけ適用された。両方のバージョンは、同じビルドジョブで印刷された。印刷された立方体は焼結方法Bで焼結された。
【0082】
[00083]表8からわかるように、本発明を使用して製造された立方体のコバルト蓄積領域の平均サイズは、参照におけるよりも大幅に小さい。
【0083】
実施例5
[00084]この例は、同じ粉末を使用した、3つの参照試料と本発明を使用した3つのそれぞれの試料との間の微細構造(X[6,3])と硬度(Hv10)の違いを示しており、粉末はコバルトの形態の金属結合相を10%含んでいた。
【0084】
[00085]見てわかるように、バッチ2と3では、金属結合相の蓄積面積の差は非常に大きく、参照試料の物品が使用できないほどであった。バッチ1の場合でも、本発明を使用する方法と従来の方法との違いは大きかったが、バッチ2及び3ほどではなかった。
【0085】
[00086]これは、特に金属結合相がコバルトである場合、従来の製造技術を使用する場合よりも、金属結合相の含有量が少ない粉末を使用して物品を製造することが可能であり得ること、及び、粉末のコバルト含有量が少なくとも13%~10%の範囲で減少するにつれて、本発明を使用することの相対的な利点が増加することを示している。
【0086】
[00087]実行された試験からわかるように、本開示による方法を使用することにより、従来の付加製造技術を使用して達成されるよりも優れた微細構造で物品を製造することが可能である。
【0087】
[00088]上記の説明には複数の特異性が含まれているが、これらは、説明される概念の範囲を限定するものとして構成されるべきではなく、単に説明される概念のいくつかの例示的な実施形態の図を提供するものとして構成されるべきである。ここで説明する概念の範囲は、当業者にとって明らかとなる他の実施形態を完全に包含し、したがって、現在説明する概念の範囲は限定されないことが理解されるであろう。単数形での要素への言及は、明示的に明記されていない限り、「1つだけ」を意味するものではなく、「1つ又は複数」を意味するものである。当業者に知られている上述の実施形態の要素と構造的及び機能的に同等なものはすべて、参照により明示的に援用され、本明細書に包含されるものとする。さらに、方法が本明細書に包含されるために、現在説明されている概念によって解決しようとしているすべての問題に対処する必要はない。例示的な図において、破線は、概して、破線内の特徴が任意選択的であることを示す。
【国際調査報告】