(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】可変のアクロマティック性を有する電荷フィルタマグネット
(51)【国際特許分類】
H01J 37/317 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
H01J37/317 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522524
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2024-05-16
(86)【国際出願番号】 US2022048051
(87)【国際公開番号】W WO2023076492
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】プラトウ,ウィルヘルム
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 修
(72)【発明者】
【氏名】バッサム,ニール
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA25
5C101BB07
5C101EE13
5C101EE22
5C101EE28
5C101EE32
5C101EE34
5C101EE35
5C101EE36
5C101EE62
5C101EE67
5C101EE72
5C101FF02
(57)【要約】
イオン注入システム100は、イオンビーム108を発生させるイオン源104と、第1電荷状態における所望のイオンを有する第1イオンビーム114を定める質量分析器112と、を有している。第1線形加速器116は、第1イオンビームを複数の第1エネルギーまで加速させる。電荷ストリッパ118は、所望のイオンから電子をストリッピングし、複数の第2電荷状態における第2イオンビーム120を定める。第1双極子マグネット124は、第2イオンビームを第1角度125で屈曲させ、当該第2イオンビームを空間的に分散させる。電荷画定アパーチャ126は、第2イオンビームの所望の電荷状態を通過させつつ、複数の第2電荷状態の内の残りの電荷状態を阻止する。四極子マグネット128は、第2イオンビームを空間的に集束させ、第3イオンビーム130を定める。第2双極子マグネット132は、第3イオンビームを第2角度133で屈曲させる。第2線形加速器134は、第3イオンビームを加速させる。最終エネルギーマグネット136は、第3イオンビームを第3角度137で屈曲させる。エネルギー画定アパーチャ138は、所望のエネルギーおよび所望の電荷状態における所望のイオンのみを通過させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムであって、
イオンを発生させ、ビームラインに沿った発生イオンビームを定めるイオン源と、
前記発生イオンビームを質量分析することにより、第1電荷状態における所望のイオンを含む第1イオンビームを定める質量分析マグネットと、
前記第1イオンビームの所望のイオンを複数の第1エネルギーまで加速させる第1線形加速器と、
前記第1イオンビームの所望の前記イオンから少なくとも1つの電子をストリッピングすることにより、複数の第2電荷状態における所望の前記イオンを含む第2イオンビームを定める電荷ストリッパと、
前記第2イオンビームを第1所定角度で屈曲させることにより、前記第2イオンビームを空間的に分散させる第1双極子マグネットと、
複数の前記第2電荷状態の内から選択された前記第2イオンビームの所望の電荷状態を通過させるとともに、前記第2イオンビームの複数の前記第2電荷状態の内の残りの電荷状態の通過を阻止する電荷画定アパーチャと、
前記第2イオンビームを空間的に集束させることにより、複数の前記第1エネルギーおよび所望の前記電荷状態における所望の前記イオンを含む第3イオンビームを定める四極子装置と、
前記第3イオンビームを第2所定角度で屈曲させる第2双極子マグネットと、
前記第3イオンビームの所望の前記イオンを複数の第2エネルギーまで加速させる第2線形加速器と、
エネルギー画定アパーチャを含む最終エネルギーマグネットと、を備えており、
前記最終エネルギーマグネットは、前記第3イオンビームを第3所定角度で屈曲させ、
前記エネルギー画定アパーチャは、所望のエネルギーにおける所望の前記イオンのみを通過させることにより、所望の前記エネルギーおよび所望の前記電荷状態における所望の前記イオンを含む最終イオンビームを定める、イオン注入システム。
【請求項2】
前記第1所定角度および前記第2所定角度は、約45°である、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項3】
前記第3所定角度は、約90°である、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項4】
前記電荷画定アパーチャは、複数の前記第1エネルギーの全ての通過を許容する、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項5】
前記電荷画定アパーチャは、前記四極子装置の開口によって定められており、
前記開口を通じて、前記第2イオンビームが前記四極子装置に入る、請求項4に記載のイオン注入システム。
【請求項6】
前記電荷画定アパーチャは、前記ビームラインに沿って、前記第1双極子マグネットと前記四極子装置との間に配置されている、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項7】
前記電荷画定アパーチャの幅によって、複数の前記第1エネルギーの所定の分散のみが前記四極子装置に入ることが許容される、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項8】
前記電荷画定アパーチャの前記幅は、可変である、請求項7に記載のイオン注入システム。
【請求項9】
前記第1所定角度と前記第2所定角度との和は、約90°である、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項10】
前記第1所定角度と前記第2所定角度とが等しく、
前記第1双極子マグネットと前記第2双極子マグネットとが互いに概ね鏡像である、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
前記第1双極子マグネットの出口と前記第2双極子マグネットの入口とは、所定の隔離距離だけ隔離されており、
前記四極子装置は、第1双極子マグネットと第2双極子マグネットとの間において、所定の前記隔離距離の約半分の位置に配置されている、請求項10に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
前記第1所定角度は、前記第1双極子マグネットに関連する半径を定め、
所定の前記隔離距離は、前記半径の約2倍未満である、請求項11に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
前記最終イオンビームを第1方向に走査することにより、走査イオンビームを定めるビームスキャナと、
前記走査イオンビームを平行化およびシフトする角度補正レンズと、をさらに備えている、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
前記第1線形加速器および前記第2線形加速器のうちの1つ以上は、RF加速器を含んでおり、
前記RF加速器は、加速RF場を発生させる1つ以上の共振器を含んでいる、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項15】
前記第1線形加速器および前記第2線形加速器のうちの1つ以上は、定常的なDC高電圧によって所望の前記イオンを加速させるDC加速器を含んでいる、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項16】
前記四極子装置は、磁気四極子を含んでいる、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項17】
前記四極子装置は、静電四極子を含んでいる、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項18】
前記第1双極子マグネットと前記第2双極子マグネットとは、互いに対称に配置されている、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項19】
前記第1双極子マグネットと前記第2双極子マグネットとは、互いに非対称に配置されている、請求項1に記載のイオン注入システム。
【請求項20】
イオン注入システムであって、
イオンの供給源と、
前記イオンを加速させて、複数の第1エネルギーにおける前記イオンを含む第1イオンビームを定める第1加速ステージと、
前記第1イオンビームの前記イオンから少なくとも1つの電子をストリッピングすることにより、複数の第2電荷状態および複数の第1エネルギーにおける前記イオンを含む第2イオンビームを定める電荷ストリッパと、
前記第2イオンビームを第1所定角度で屈曲させることにより、前記第2イオンビームを空間的に分散させる第1双極子マグネットと、
複数の前記第2電荷状態の内から選択された所望の電荷状態の前記イオンのみを通過させる電荷画定開口と、
前記第2イオンビームを空間的に集束させて、複数の前記第1エネルギーおよび所望の前記電荷状態における前記イオンを含む第3イオンビームを定める四極子装置と、
前記第3イオンビームを第2所定角度で屈曲させる第2双極子マグネットと、
前記第3イオンビームの前記イオンを加速させて、複数の第2エネルギーにおける前記イオンを含む第4イオンビームを定める第2加速ステージと、
エネルギー画定アパーチャを含む最終エネルギーマグネットと、を備えており、
前記最終エネルギーマグネットは、前記第4イオンビームを第3所定角度で屈曲させ、
前記エネルギー画定アパーチャは、複数の前記第2エネルギーの内から選択された所望のエネルギーにおける前記イオンのみを通過させることによって、所望の前記エネルギーおよび所望の前記電荷状態における前記イオンを含む最終イオンビームを定める、イオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[分野]
本開示は、全般的にはイオン注入システムに関する。より詳細には、本開示は、小さいフットプリント(占有面積)を有しており、かつ、所望の電荷状態に応じた高エネルギーにおいてイオンビーム電流を増加させるイオン注入システムに関する。
【0002】
[背景]
半導体デバイスの製造において、半導体に不純物をドーピングするためにイオン注入が用いられる。多くの場合、n型またはp型の材料ドーピングを生じさせるために、あるいは、集積回路の製造時にパッシベーション層を形成するために、半導体ウェハなどのワークピースにイオンビームに由来するイオンをドーピングすることを目的として、イオン注入システムが利用されている。集積回路の製造時に半導体材料を作成するために、特定のドーパント材料の不純物を、所定のエネルギーレベルかつ制御された濃度で、ウェハに選択的に注入するために、このようなビームの取り扱いがなされることが多い。半導体ウェハのドーピングに使用される場合、イオン注入システムは、選択されたイオン種をワークピースに注入し、所望の外因性材料を生じさせる。シリコンウェハにイオンを注入する場合、例えばアンチモン、ヒ素、リンなどのソース材料に由来して生じたイオンから、「n型」外因性材料のウェハが得られる。その一方、ボロン(ホウ素)、ガリウム、インジウムなどのソース材料に由来して生じたイオンからは、「p型」外因性材料のウェハが得られる場合が多い。シリコンカーバイド(炭化ケイ素,SiC)ウェハにイオンを注入する場合、例えば、窒素(n型ドーパント)およびアルミニウム(p型ドーパント)が、従来からイオン種として使用されている。
【0003】
一般的なイオン注入装置は、イオン源、イオン引出デバイス、質量分析デバイス、ビーム輸送デバイス、およびウェハ処理デバイスを含んでいる。質量分析デバイスは、後段(ポストステージ)加速部を有していてもよいし、有していなくともよい。イオン源は、所望の原子または分子ドーパント種のイオンを発生させる。これらのイオンが、イオン抽出引出デバイスによってイオン源から引き出されることにより、イオンビームが形成される。イオン抽出引出デバイスは、典型的には、イオン源からのイオンにエネルギーを与え、当該イオンの流れを方向付ける電極のセットである。所望のイオンは、質量分析デバイスの内部において、イオンビームから分離させられる。質量分析デバイスは、典型的には、引き出されたイオンビームの質量分散または質量分離を行う磁気双極子(magnetic dipole)である。ビーム輸送デバイスは、分析された後のイオンビームの所望の特性を維持しつつ、当該イオンビームをウェハ処理デバイスに向けて輸送する。ビーム輸送デバイスは、典型的には、一連の集束デバイスと加速/減速デバイスとを含む真空システムである。最終的に、半導体ウェハは、ウェハハンドリングシステムによってウェハ処理デバイスの内外へと搬送される。ウェハハンドリングシステムは、処理されるべきウェハを分析された後のイオンビームの正面に配置し、かつ、処理された後のウェハをイオン注入装置から取り出すために、1つ以上のロボットアームを含みうる。
【0004】
[概要]
本開示では、イオン源を劣化させないより高いビーム電流および十分なビーム純度をもたたすために、高エネルギーレベルにおけるイオン注入レシピ(例:イオンビームエネルギー、質量、電荷値、ビーム純度、ビーム電流、および/または、注入の総線量レベル)に対する重大な要求が求められていると考慮している。したがって、本明細書では、高ビーム純度とともに高ビーム電流を生じさせるための様々なシステムまたは方法が提示されている。
【0005】
そこで、以下では、本開示の一部の態様についての基本的な理解を提供するために、本開示の簡略化された概要を示す。本概要は、本開示の広範な概要ではない。本概要は、本発明の重要な要素を特定することを意図しているわけではないし、本発明の範囲を規定することを意図しているわけでもない。本概要の目的は、後に提示されるさらなる詳細な説明の序文(前置き)として、本開示の一部のコンセプトを簡略化された形で提示することにある。
【0006】
本開示の態様は、ワークピースにイオンを注入するための高エネルギーイオン注入プロセスを容易化する。例示的な一態様によれば、イオン注入システムが提供される。当該イオン注入システムは、(i)イオンビームを形成するように構成されているイオン源と、(ii)イオンビームを選択的に輸送するように構成されているビームラインアセンブリと、(iii)ワークピースへのイオン注入のためにイオンビームを受け入れる(受容する)ように構成されているエンドステーションと、を有している。
【0007】
本開示の例示的な一態様によれば、イオン源は、ビームラインに沿った発生イオンビーム(generated ion beam)を定める。質量分析マグネットは、発生イオンビームを質量分析することにより、第1電荷状態における所望のイオンを含む第1イオンビームを定めるように構成されている。第1ステージ(例:第1線形加速器)は、第1イオンビームの所望のイオンを、複数の第1エネルギーまで加速させる。電荷ストリッパは、第1イオンビームの所望のイオンから、少なくとも1つの電子をストリッピング(剥奪)するように構成されている。これにより、複数の第2電荷状態(例:ガウシアン電荷状態分布)の所望のイオンを含む第2イオンビームが定められる。
【0008】
一例として、第1双極子マグネットは、第2イオンビームを第1所定角度で屈曲させることにより、当該第2イオンビームを空間的に分散させるようにさらに構成されている。電荷画定アパーチャ(charge defining aperture)は、複数の第2電荷状態の内から選択された所望の電荷状態を通過させるとともに、複数の第2電荷状態の内の残りの電荷状態の通過を阻止(ブロッキング)するように構成されている。四極子(四重極,quadrupole)マグネットは、例えば、第2イオンビームを空間的に集束させることにより、複数の第1エネルギーにおける所望の電荷状態の所望のイオンを含む第3イオンビームを定める。第2双極子マグネットは、第3イオンビームを第2所定角度で屈曲させるようにさらに構成されている。
【0009】
第2加速ステージ(例:第2線形加速器)は、例えば、第3イオンビームの所望のイオンを複数の第2エネルギーまで加速させるように構成されている。エネルギー画定アパーチャ(energy defining aperture)を含む最終エネルギーマグネットがさらに提供されている。最終エネルギーマグネットは、第3イオンビームを第3所定角度で屈曲させるように構成されている。エネルギー画定アパーチャは、例えば、所望のエネルギーにおける所望のイオンのみを通過させることにより、所望のエネルギーおよび所望の電荷状態における所望のイオンを含む最終イオンビームを定めるように構成されている。
【0010】
一例として、第1所定角度および第2所定角度は、約45°である。別の例では、第1所定角度と第2所定角度との和(合計)は、約90°である。さらに別の例では、第3所定角度は、約90°である。
【0011】
一例として、第1所定角度と第2所定角度とは等しい。そして、第1双極子マグネットと第2双極子マグネットとは、互いに概ね鏡像(mirror images)である。一例として、第1双極子マグネットの出口(exit)と第2双極マグネットの入口(entrance)とは、所定の隔離距離(separation distance)だけ隔離されている。この場合、例えば、四極子マグネットは、第1双極子マグネットと第2双極子マグネットとの間において、所定の隔離距離の約半分の位置に配置されていてよい。例えば、第1所定角度は、第1双極子マグネットに関連する半径を定めうる。この場合、所定の隔離距離は、当該半径の約2倍未満である。
【0012】
例えば、電荷画定アパーチャは、複数の第1エネルギーの全ての通過を許容するようにサイジングされている、あるいは構成されている。例えば、電荷画定アパーチャは、四極子マグネットの開口(opening)によって定められうる。当該開口を通じて、第2イオンビームは、当該四極子マグネットに入る。一例として、電荷画定アパーチャは、ビームラインに沿って、第1双極子マグネットと四極子マグネットとの間に位置している。電荷画定アパーチャの幅は、例えば、複数の第1エネルギーの所定の分散のみが四極子マグネットに入る(四極子マグネットを通過する)ことを許容しうる。電荷画定アパーチャの幅は、例えば、可変であってよい。
【0013】
別の例では、スキャナが設けられている。当該スキャナは、最終イオンビームを第1方向に走査することにより、走査イオンビーム(scanned ion beam)を定めるように構成されている。パラレライザ(平行化装置)が、さらに設けられてもよい。当該パラレライザは、スキャンイオンビームを平行化およびシフトするように構成されていてよい。
【0014】
別の例では、第1加速ステージおよび第2加速ステージのうちの1つ以上は、RF加速器を含んでいる。当該RF加速器は、加速RF磁場を発生させるように構成された1つ以上の共振器を含んでいる。別の例では、第1加速ステージおよび第2加速ステージのうちの1つ以上は、定常的な(一定の,stationary)DC高電圧によって所望のイオンを加速させるように構成されたDC加速器を含んでいる。このように、第1加速ステージおよび第2加速ステージは、DC加速器およびRF加速器の任意の組み合わせを含んでいてよい。
【0015】
上述の概要は、本開示の一部の実施形態の一部の構成についての簡潔な概観を示すことを意図しているに過ぎない。したがって、他の実施形態は、付加的な構成、および/または、上述の構成とは異なる構成を含んでいてもよい。特に、本概要は、本出願の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。したがって、上述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に記載されており、かつ、特許請求の範囲において特に挙示されている構成を含んでいる。以下の説明および添付の図面は、本開示の特定の例示的な実施形態を詳細に示している。しかしながら、これらの実施形態は、本開示の原理が採用されうる様々な方法のうちの一部を示している。図面と併せて考慮される場合、本開示の以下の詳細な説明から、本開示の他の目的、利点、および新規な構成が明らかになるであろう。
【0016】
[図面の簡単な説明]
図1は、本開示の一態様に係るイオン注入システムを示す、簡略化された上面図(top view)である;
図2は、本開示の少なくとも1つの態様に係るイオン注入システムの電荷選択装置(charge selector apparatus)である;
図3は、
図2の電荷選択装置における四極子マグネットおよび電荷画定アパーチャを示す;
図4は、本開示の少なくとも1つの別の態様に係るイオン注入システムにおける、別の電荷選択装置を示す。
【0017】
[詳細な説明]
本開示は、ワークピースへのイオンの注入に関連する様々な装置、システム、および方法を全般的に対象としている。より具体的には、本開示は、小さいフットプリントを有しており、かつ、所望の電荷状態に応じた高エネルギーにおいてイオンビーム電流を増加させるイオン注入システムを対象としている。
【0018】
そこで、以下では、図面を参照して本発明について説明する。本明細書では、同様の参照数字は、全体を通じて同様の要素を参照するために使用されている場合がある。これらの態様についての説明は単なる例示であり、限定的な意味として解釈されるべきではないことを理解されたい。以下の記載では、説明を目的として、本発明についての十分な理解を提供するために、多数の具体的な詳細部が開示されている。しかしながら、これらの具体的な詳細部がなくとも本発明が実施可能であることは、当業者であれば明らかであろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に説明する実施形態または例によって限定されることは意図されていない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【0019】
図面は、本開示の実施形態の複数の態様についての例示を与えるために示されており、概略としてのみ見做されるべきことにも留意されたい。特に、図面に示されている要素は、必ずしも互いにスケールが一致していない。図面における様々な要素の配置は、それぞれの実施形態の明確な理解を提供するために選択されている。したがって、当該配置は、本発明の実施形態に係る具現化における様々なコンポーネント(構成要素)の実際の相対的な位置を表していると必ずしも解釈されるべきではない。さらに、本明細書において記載されている様々な実施形態および例の構成は、別段の定めがない限り、互いに組み合わせ可能である。
【0020】
以下の説明において、図面に示されている、または、本明細書に記載されている、機能ブロック、デバイス、コンポーネント、または他の物理的または機能的なユニット間の直接的な接続または結合は、間接的な接続または結合によって実現されてよいことも理解されたい。さらに、図面に示されている機能ブロックまたはユニットは、ある実施形態では個別の構成またはコンポーネントとして具現化されてもよいし、あるいは、別の実施形態では共通の構成またはコンポーネント内において完全にまたは部分的に具現化されてもよことも理解されたい。
【0021】
半導体装置の製造において、半導体ワークピースおよび/またはウェハ材料にドーパントを選択的に注入するために、イオン注入が採用されている。イオン注入は、物理的なプロセスであり、化学的なプロセスである拡散とは対照的である。このため、注入の作用は、ドーパントと半導体材料との化学的相互作用に依存しない。イオン注入の場合、ドーパント原子/分子は、イオン化させられ、分離させられ、場合によっては加速または減速させられ、ビームへと成形され、そして、ワークピースまたはウェハを横断するように掃引される。典型的には、ドーパントイオンは、ワークピースに対して物理的に衝突し、ワークピース表面から侵入し、当該ワークピース表面の下方の結晶格子構造内において静止するに至る。Satohの共有米国特許8,035,080には、ビーム電流を増加させるための様々なシステムおよび方法が記載されている。当該特許の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
高エネルギーイオン注入システム、例えば1MeVを超えるエネルギーでイオンを注入するシステム(例:イメージセンサの形成に使用されるシステム)は、長いサイズを有していることが知られている。フットプリントを最小限に抑え、かつ、クリーンルームのスペースを節約するために、RF線形加速器(linear accelerator,LINAC)またはDC加速器カラムは、複数の部分(セクション)へと分割され、かつ、複数の屈曲マグネットによって分離されている場合がある。屈曲マグネットは、例えば、イオンビームを様々な所望の角度へと屈曲させることにより、ビームラインのさらなるコンパクト化を実現する。例えば、ビームラインは、V字型またはほぼ多角形状のチェーン(連鎖)となりうる。
【0023】
例えば、単純なシステムは、1つの屈曲マグネットによって分離された第1および第2の加速ステージまたはLINACを含みうる。本開示では、このような構成の場合、第1加速ステージの後にいわゆるストリッパを追加することが有益でありうると考慮している。ストリッパは、イオンビームのイオンから電子をストリッピングするように構成されている。これにより、イオンの電荷状態を増加させることができる。その結果、第2加速ステージは、当該電荷状態に等しい係数(factor)だけエネルギーを増加させることができる。このような構成によれば、屈曲マグネットを有していないシステムと比較して、システムのフットプリントを大幅に低減できる。
【0024】
例えば、ストリッパから出るイオンビームは、多くの様々な電荷状態のイオンを含んでいる。この場合、一部の望ましくない電荷状態がイオンビームに含まれている。上述の屈曲マグネットを用いれば、このような望ましくない電荷状態をビーム経路から分離できるので、イオンビームの汚染を防ぐことができる。しかしながら、本開示では、2つ以上のLINACを屈曲マグネットによって分離した場合には、イオンビームは、ビーム電流を維持するために、屈曲マグネットを通過して輸送されるべきある程度のエネルギースプレッド(エネルギーの広がり)をも含んでおり、さもなくばビーム電流がかなり低くなるであろうと考慮している。
【0025】
このような屈曲マグネットは、ある程度まではエネルギーに依存しないため、アクロマティック系(無色系)であると考慮されてよい。本開示では、第1LINACと第2LINACとの間にストリッパを設けつつ、第1LINACと第2LINACとを分離することに関連する1つの問題は、(i)一方では、屈曲マグネットが望ましくない電荷状態をフィルタリングする必要があり、(ii)他方では、当該屈曲マグネットが典型的には1~2%のエネルギースプレッドを有するイオンビームを受け入れて当該イオンビームを通過させるためには、当該屈曲マグネットはほぼ(実質的に,substantially)アクロマティックである(例:低分散を有している)必要があることであると考慮している。
【0026】
したがって、1つの例示的な態様に従って、本開示は2つの双極子マグネットを採用している。そして、本開示は、2つの双極子マグネットの間に配置されている四極子マグネットを有している。四極子マグネットは、不要な電荷状態を拒絶(拒否)しつつ、所定のエネルギースプレッドシートを受け入れるように構成されたアパーチャを備えている。このように、本開示の構成は、実質的に小さいフットプリントを維持しつつ、電荷をフィルタリングするように構成されたマグネットアーキテクチャを提供している。
【0027】
以下では、本開示に対する理解を深めるために、各図面を参照する。
図1は、本開示の様々な例示的な態様に係る例示的なイオン注入システム100を示す。後述する通り、イオン注入システム100は、例えばポスト加速注入装置(加速後注入装置)と称されてもよい。
【0028】
図1のイオン注入システム100は、例えば、ソースチャンバアセンブリ102を備えている。ソースチャンバアセンブリは、イオン源104と引出電極106とを備えている。引出電極は、イオン源に由来するイオンを中間エネルギーまで加速させて当該イオンを引き出すことにより、ビームライン110に沿った発生イオンビーム108を形成できるように構成されている。質量分析器112は、例えば、発生イオンビーム108を質量分析し、望ましくない質量および電荷のイオン種を当該発生イオンビームから除去することにより、第1イオンビーム114(分析後イオンビームとも称される)を定める(形成する)。第1イオンビーム114は、第1電荷状態(q
1)における所望のイオンを含んでいる。第1線形加速器116(第1LINACとも称される)は、例えば、第1イオンビーム114の所望のイオンを複数の第1エネルギーまで加速させるように構成されている。本開示の例によれば、第1LINAC116は、RF線形粒子加速器を含んでいる。当該RF線形粒子加速器では、イオンがRF場によって繰り返し加速させられる。あるいは、第1LINAC116は、DC加速器(例:タンデム静電加速器)を含んでいるDC加速器では、定常的なDC高電圧によってイオンが加速させられる。
【0029】
一例として、電荷ストリッパ118がさらに設けられている。電荷ストリッパ118は、第1イオンビーム114の所望のイオンから少なくとも1つの電子をストリッピングすることによって、第2イオンビーム120を定めるように構成されている。第2イオンビーム120は、複数の第2電荷状態(q2)における所望のイオンを含んでいる。本開示によれば、例えば、電荷ストリッパ118の下流に、電荷セレクタ122がさらに配置されている。これにより、ストリッピングプロセス後に、より高い電荷状態を有する所望のイオンを選択できる。
【0030】
電荷セレクタ122は、例えば、第1双極子マグネット124を含んでいる。第1双極子マグネットは、第2イオンビーム120を第1所定角度125で屈曲させることにより、当該第2イオンビームを空間的に分散させるように構成されている。第1双極子マグネット124の下流には、電荷画定アパーチャ126が配置されている。当該電荷画定アパーチャは、(i)複数の第2電荷状態の内から選択された第2イオンビーム120の所望電荷状態を通過させるとともに、(ii)当該第2イオンビームの複数の第2電荷状態の内の残りの電荷状態の通過を阻止するように構成されている。
【0031】
電荷セレクタ122は、例えば、四極子装置128(例:四極子マグネット)をさらに含んでいる。当該四極子装置は、第2イオンビーム120を空間的に集束させて、複数の第1エネルギーおよび所望電荷状態における所望のイオンを含む第3イオンビーム130を定めるように構成されている。一例として、電荷画定アパーチャ126は、四極子装置128の開口131によって定められる。第2イオンビーム120は、開口131を通じて、当該四極子装置に入る。電荷セレクタ122の第2双極子マグネット132は、第3イオンビーム130を第2所定角度133で屈曲させるようにさらに構成されている。この例において、第1所定角度125と第2所定角度133との和は、約90°である。例えば、第1所定角度125および第2所定角度133は、約45°である。第1所定角度125および第2所定角度133の例示的な角度値は、限定的なものとして考慮されるべきではない。本開示では、他の様々な角度値が本開示の範囲内に含まれるものとして考慮されていることに留意されたい。
【0032】
第2双極子マグネット132から出た第3イオンビーム130は、例えば、第2線形加速器134に向けてさらに導かれてよい。これにより、元の電荷状態のイオンよりも高い最大エネルギー(最高エネルギー)を得ることができる。例えば、第2線形加速器134は、第3イオンビーム130の所望のイオンを、複数の第2エネルギーまで加速させるように構成されていてよい。
【0033】
一例として、最終エネルギーマグネット136がさらに設けられている。当該最終エネルギーマグネットは、第3イオンビーム130を第3所定角度137で屈曲させるように構成されている。例えば、第3所定角度137は、約90°である。最終エネルギーマグネットのエネルギー画定アパーチャ138は、例えば、所望のエネルギーの所望のイオンのみを通過させることによって、所望のエネルギーおよび所望の電荷状態における所望のイオンを含む最終イオンビーム140を定めるように構成されている。このように、最終エネルギーマグネット136は、第2線形加速器134の出力部(出口)から現れた加速後の第3イオンビーム130から、望ましくないエネルギースペクトルを除去することによって、最終イオンビーム140を定めるように構成されている。
【0034】
一例として、ビームスキャナ142がさらに設けられていてもよい。ビームスキャナ142は、最終エネルギーマグネット136から出た後の最終イオンビーム140を走査するように構成されていてよい。この場合、最終イオンビーム140が高速周波数(ファスト周波数)において前後に走査されることにより、走査イオンビーム144が定められる。ビームスキャナ142は、例えば、最終イオンビーム140を静電的または電磁的に走査することによって、走査イオンビーム144を定めるように構成されている。
【0035】
走査イオンビーム144は、角度補正レンズ146にさらに通される。この場合、角度補正レンズ146は、例えば、走査イオンビーム144を平行化およびシフトするように構成されていてよい。これにより、ワークピースサポート152に支持されているワークピース150への注入に供される、平行化後最終イオンビーム(平行化された最終イオンビーム)148を定めることができる。角度補正レンズ146は、例えば、走査イオンビーム144をシフトおよび/または平行化するように構成されている電磁デバイスまたは静電デバイスを含みうる。
【0036】
ワークピース150(例:半導体ウェハ)は、プロセスチャンバまたはエンドステーション154に選択的に配置されうる。一例として、ワークピース150は、ハイブリッドスキャン方式によって、平行化後最終イオンビーム148と直交するように移動させられうる(例えば、紙面内および紙面外へと移動させられうる)。これにより、ワークピース150の表面全体への均一な照射を行うことができる。本開示では、ワークピース150に対して最終イオンビーム140を走査するための様々な他の機構および方法が考慮されている。これらの機構および方法は全て、本開示の範囲内に含まれるものとして考慮されていることに留意されたい。
【0037】
一例として、コントローラ156がさらに設けられていてもよい。コントローラ156は、イオン注入システム100の1つ以上のコンポーネント(例:イオン源104、質量分析マグネット112、第1線形加速器116、電荷セレクタ122、第2線形加速器134、ビームスキャナ142、最終エネルギーマグネット136、およびワークピースサポート152のうちの1つ以上)を制御しうる。
【0038】
上述の通り、イオン注入システム100は、電荷セレクタ122のほぼアクロマティックな構成に少なくとも部分的に由来する最小のフットプリントを提供できるので、従来のシステムに比べて有利である。
図2では、90°の屈曲を伴う電荷セレクタ202の例200が示されている。非限定的な一例として、5%のエネルギースプレッドを有するイオンビーム204(例:
図1の電荷セレクタ122に入射する第2イオンビーム120)は、第1双極子マグネット206に入射し、四極子装置208を通過し、第2双極子マグネット210を通過し、当該第2双極子マグネットから出る。このように、アクロマティック装置212が概ね定められている。アクロマティック装置212は、例えば、電荷画定アパーチャ214をさらに含んでいる。この例において、第1双極子マグネット206と第2双極子マグネット210とは、互いに鏡像である。一例として、電荷画定アパーチャ214は、四極子装置208の開口215によって定められる。
【0039】
図3は、
図2のアクロマティック装置212における四極子装置208の拡大
図216を示す。当該拡大図は、イオンビーム204の複数のエネルギー部分218A,218B,218Cを示す。イオンビームの複数のエネルギー部分は、第1双極子マグネット206の対応する複数の磁気剛性および分散特性によって空間的に分離または分散させられている。例えば、アクロマティック装置212の四極子装置208は、イオンビーム204の複数のエネルギー部分218A,218B,218Cを集束させる。その結果、当該複数のエネルギー部分が
図2における第2双極子マグネット210から出る場合に、当該複数のエネルギー部分が空間的に分離されないので、所望のアクロマティック性を生じさせることができる。イオンビーム204の複数のエネルギー部分218A,218B,218Cを受け入れ、当該複数のエネルギー部分を集束させることによって、イオンビームのいわゆる「エネルギースプレッド」のほぼ全てが第2双極子マグネット210へと通される。この場合、有益であることに、イオンビーム電流が維持される。
【0040】
図3は、イオンビーム204が通過する電荷画定アパーチャ214をさらに示す。電荷画定アパーチャ214は、例えば、所定のエネルギースプレッド(例:±2%)を許容して(受け入れて)通過させるための所定幅222を有する開口220を含んでいる。一例として、開口部220の所定幅222は、特定の注入について望まれる所定のエネルギースプレッドに基づいて変更されうる。別の例では、電荷画定アパーチャ214は、複数の第1エネルギーの全ての通過を許容する。
【0041】
図3における四極子装置208は、磁気四極子224(例:四極子マグネット)として図示されている。ただし、本開示の代替的な態様において、四極子装置は、静電四極子(不図示)を含みうると理解されるべきである。
図3に示されている磁気四極子224は、例えば、イオンビーム204の調整(チューニング)に関して、静電四極子に比べて利点を提供しうる。磁気四極子を使用する場合には、システムに関連するソフトウェアは、異なるイオン種間を切り替える場合における磁気剛性および静電剛性の差を無視しうるためである。
【0042】
図4を参照して以下に説明する通り、本開示は、従来のシステムに対する電荷フィルタリングの利点をさらに提供する。例えば、電荷セレクタ302の別の例300では、
図2~
図3において例示されているイオンビーム204と同じ寸法およびエミッタンスを有するイオンビーム304(例:単一エネルギーイオンビーム)が示されている。ただし、
図4の例では、イオンビーム304が第1双極子マグネット308に入射し、当該第1双極子マグネットを通過する場合に、当該イオンビームが複数の電荷状態306A,306B,306Cを含んでいるものとして図示されている。非限定的な例として、イオンビーム304は、ヒ素イオンビームを含む。この場合、電荷状態306AはAs5+に対応しており、電荷状態306BはAs6+に対応しており、電荷状態306CはAs7+に対応している。
【0043】
例えば、第1双極子マグネット308の様々な磁気剛性および分散特性に起因して、複数の電荷状態306A,306B,306Cは、当該第1双極子マグネットから出た後に空間的に分離させられる。例えば、アパーチャ310は、複数の電荷状態の内の選択された1つの電荷状態(例:電荷状態306BまたはAs6+)のみが当該アパーチャの開口部312を通って四極子マグネット314および第2双極子マグネット316へと入ることを許容しつつ、複数の電荷状態のうちの残りの電荷状態をフィルタリングして除外する(filtering out)。
【0044】
このように、電荷セレクタ302は、四極子マグネット314を利用したアクロマティック性を提供しつつ、電荷フィルタリングをも提供する。これにより、
図2のイオンビーム204の複数のエネルギー部分218A,218B,218Cに関連する所定のエネルギースプレッドを通過させるだけでなく、望ましくない電荷状態を拒絶し、複数の電荷状態の内、選択された1つの電荷状態を、
図4のアパーチャ310の開口312を通すように選択的に通過させることができる。例えば、アパーチャ310は、望ましくない電荷状態を拒絶するだけでなく、
図2に示されている開口220の幅222を変化させることにより、所定のエネルギースプレッドをさらに通過させて、電荷セレクタに関連する可変のアクロマティック性を提供しうる。このように、アパーチャ310は、複数の目標に寄与している。
【0045】
さらに、本開示では、小さいフットプリントを実現するために、例えば
図4の四極子装置208は、第1双極子マグネットおよび第2双極子マグネットのいずれかの屈曲半径の2倍未満の位置において、第1双極子マグネット206および第2双極子マグネット210に近接するように配置されうると考慮している。この場合、第1双極子マグネット206、第2双極子マグネット210、および四極子装置208の双極子磁気作用に関連するフリンジ場は、イオンビーム204の複数の高エネルギー部分218A,218B,218Cの軌道に影響を及ぼしうる。それゆえ、例えば、当該軌道を補償し、イオンビームの複数の高エネルギー部分の大部分を有利に通過させるように、四極子装置208が配置されうる。
【0046】
一例として、均質な双極子マグネットの例では、当該マグネットを通過するイオンビーム304の屈曲半径Rは、
【数1】
として表される。mはイオンの質量であり、Eは運動エネルギーであり、Bは磁場(磁界)であり、qはイオンの電荷である。電荷およびエネルギーの両方について、屈曲半径の相対変化であるdR/Rを計算すると、
dR/R=-dq/q
dR/R=0.5*dE/E
となる。このことは、エネルギーの方が、空間分離が約2倍小さくなることを示している。さらに、例えばLINACではdE/Eが概ね1~2%のみであるが、dq/qは例えば概ね17%にもなりうる。このように、本開示によれば、有益であることに、異なる電荷状態に対しての著しく大きい空間分離が提供される。上記の例は、90°という全体的(総合的)な屈曲角度についての例である。しかしながら、より小さい全体的な屈曲角度(例:70°)に対しても、あるいは、より大きい全体的な屈曲角度(例:360°)に対しても、同様のコンセプトが適用可能であるとさらに考慮されている。
【0047】
さらに、本開示では、四極子マグネットに関連する鋼(steel)がイオンビームの双極子フリンジ場に影響を及ぼし、このことが第2双極子から出るイオンビームの過大な収束を引き起こすと考慮している。当該収束を緩和するために、本開示の四極子マグネットは、y1寸法においてわずかにオフセットされている。これにより、良好な平行性(parallelism)が実現される(例:dE=±5%に対して、±0.06°)。このため、本開示の例では、1.23*Rという双極子距離を使用しうる。当該距離は、従来のシステムに比べて3倍を超えて小さい。
【0048】
さらに、有益であることに、本開示は、システム100に対して小さいフットプリントを提供する。これにより、例えば
図3~
図4において示されている小さい屈曲半径は、高磁場(例:1.5テスラ以上)を採用しうる。
【0049】
本開示は、特定の用途および実施態様に関して図示および説明されているが、当業者であれば、本明細書および添付の図面を読んで理解することにより、同等の変更および修正をなしうることが理解されるであろう。特に、上述のコンポーネント(アセンブリ、デバイス、回路、システムなど)によって実行される様々な機能に関して、当該コンポーネントを説明するために使用される用語(「手段」(means)への言及を含む)は、別段の定めがない限り、本開示の明細書において示されている例示的な実施態様において、開示されている構造と構造的に等価でなくとも、説明されているコンポーネントの指定の機能を実行する(すなわち、機能的に等価である)任意のコンポーネントに対応していることが意図されている。
【0050】
加えて、本開示の特定の構成は、複数の実施態様のうちの1つのみに関して開示されている場合があるが、当該構成は、任意の所与または特定の用途に対して所望され、かつ有利となりうるように、他の実施態様の1つ以上の他の構成と組み合わせられてもよい。さらに、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語および当該用語の変形語は、詳細な説明または特許請求の範囲のいずれかにおいて使用されている限り、これらの用語は、「備えている(comprising)」という用語と同様の様式において包括的であることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】本開示の一態様に係るイオン注入システムを示す、簡略化された上面図である。
【
図2】本開示の少なくとも1つの態様に係るイオン注入システムの電荷選択装置である。
【
図3】
図2の電荷選択装置における四極子マグネットおよび電荷画定アパーチャを示す。
【
図4】本開示の少なくとも1つの別の態様に係るイオン注入システムにおける、別の電荷選択装置を示す。
【国際調査報告】