(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】膣切開モデル
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G09B23/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523192
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 US2022047490
(87)【国際公開番号】W WO2023069753
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503000978
【氏名又は名称】アプライド メディカル リソーシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】フォス ジャクリーン
(72)【発明者】
【氏名】ホフステッター グレゴリー ケイ
(72)【発明者】
【氏名】レイガン オスカー
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
膣切開術を実行するユーザの訓練及び練習を支援する膣切開モデルを提供する。膣切開モデルは、模擬骨盤フレームの近位端を覆う模擬膣口と、模擬子宮頸部を取り囲む内部空間を定める模擬膣管とを有する。模擬子宮頸部は、ユーザと模擬子宮頸部との相互作用に対するリアルな応答をもたらすように少なくとも1つのコードを介して懸架される。ユーザは、模擬子宮頸部を操作し、これらの操作から模擬膣管が模擬子宮頸部の付近で反転する箇所に1又は2以上の切開部を形成するように指示される。その後、ユーザは、実行中の模擬手術に従って、膣切開モデルを通じて模擬腹腔又は膣切開モデルの他の部分にアクセスし続けるように指示される。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術モデルであって、
近位端及び遠位端を有し、トップカバー、ベース、及び2つの側壁を有し、前記近位端に開口部を有し、1又は2以上の模擬組織構造を受け取るように適合された内部空洞を定める、模擬骨盤フレームと、
前記模擬骨盤フレーム内へのアクセスを提供するように構成され、前記模擬骨盤フレームの前記トップカバーに取り付けられて前記模擬骨盤フレームの前記近位端において前記模擬骨盤フレームの前記ベースまで下向きに延びる模擬組織を含む、模擬膣口と、
前記模擬膣口を介してアクセス可能な前記模擬骨盤フレーム内の内部空間を定め、近位端及び遠位端を有する、模擬膣管と、
前記遠位端において前記模擬膣管に接続され、前記模擬膣管内に延びる近位端及び前記模擬膣管を越えて延びる遠位端を有し、模擬子宮頸部がユーザインタラクションに応答して前後に動くことを可能にするように適合された少なくとも1つのコードを介して前記模擬骨盤フレーム内に懸架された、模擬子宮頸部と、
を備えることを特徴とする手術モデル。
【請求項2】
前記模擬膣口は、模擬導電性材料と、前記模擬膣口の一部に取り付けられる、取り外し可能に接続された接地パッドとを含む、
請求項1に記載の手術モデル。
【請求項3】
前記模擬膣管は、第1のセクション及び第2のセクションを含み、前記第1のセクションは複数の隆起部を有し、前記第2のセクションは滑らかである、
請求項1又は2に記載の手術モデル。
【請求項4】
前記模擬子宮頸部は、該模擬子宮頸部の前記遠位端に接続された構造をさらに含み、該構造は細長いチューブ形状を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコードは、前記構造に取り付けられる、
請求項4に記載の手術モデル。
【請求項6】
前記少なくとも1つのコードは、前記構造に通されてループ状になる、
請求項4又は5に記載の手術モデル。
【請求項7】
前記少なくとも1つのコードはナイロン又はヤーンを含む、
請求項1から6のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項8】
前記模擬子宮頸部を前記模擬骨盤フレーム内で懸架するために2つのコードが使用される、
請求項1から7のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項9】
前記模擬骨盤フレームの前記2つの側壁は複数のアパーチャを有する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコードは、前記複数のアパーチャに通される、
請求項8に記載の手術モデル。
【請求項11】
前記模擬膣管の前記遠位端を越えて前記模擬子宮頸部の上方に配置され、少なくとも2つの層を含み、前記模擬膣管の前記遠位端付近の近位端及び遠位端を有する、模擬膀胱子宮頸空間をさらに備える、
請求項1から10のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項12】
前記模擬膀胱子宮頸空間の前記少なくとも2つの層は、第1の所定の一連の位置において、前記少なくとも2つの層が鈍的切開を介して分離することを可能にする材料を介して互いに取り付けられ、前記第1の所定の一連の位置は分離面に対応する、
請求項11に記載の手術モデル。
【請求項13】
前記第1の所定の一連の位置における前記材料はシリコーングリースである、
請求項12に記載の手術モデル。
【請求項14】
前記模擬膀胱子宮頸空間の前記少なくとも2つの層は第2の所定の一連の位置において共に成形され、前記少なくとも2つの層を分離するために鋭的切開が必要とされる、
請求項12又は13に記載の手術モデル。
【請求項15】
前記模擬膀胱子宮頸空間は、前記模擬子宮頸部とは異なる色を有する材料で形成される、
請求項11から14のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項16】
前記模擬膣管、前記模擬子宮頸部及び前記模擬膀胱子宮頸空間の配色は類似する、
請求項11から14のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項17】
前記模擬膀胱子宮頸空間の前記遠位端付近の前記模擬骨盤フレームの前記遠位端に位置する模擬腹膜層をさらに備え、前記模擬腹膜層は、前記模擬骨盤フレームに関連する様々な位置に取り付けられる、
請求項11から16のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項18】
前記模擬腹膜層は、導電性接着剤を使用して取り付けられる、
請求項17に記載の手術モデル。
【請求項19】
前記導電性接着剤はキトサン接着剤である、
請求項18に記載の手術モデル。
【請求項20】
前記模擬腹膜層は、非導電性接着剤を使用して取り付けられる、
請求項17に記載の手術モデル。
【請求項21】
前記非導電性接着剤はLoctite接着剤である、
請求項20に記載の手術モデル。
【請求項22】
前記模擬膀胱子宮頸空間の上方に位置する模擬膀胱をさらに備え、該模擬膀胱は、該模擬膀胱を膨張させるように構成された充填チューブ及びポンプに接続される、
請求項11から21のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項23】
前記模擬膀胱は導電性材料を含む、
請求項22に記載の手術モデル。
【請求項24】
前記模擬膀胱の上部は、前記模擬膀胱子宮頸空間に向かう前記模擬膀胱の下向きの膨張を促すように修正される、
請求項22又は23に記載の手術モデル。
【請求項25】
前記模擬膀胱は、前記模擬骨盤フレームに非導電性接着剤で接続される、
請求項22から24のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項26】
前記模擬膀胱は、前記模擬骨盤フレームに導電性接着剤で接続される、
請求項22から25のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項27】
前記模擬膣口は、該模擬膣口のための支持構造として構成された中綿をさらに含む、
請求項1から26のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項28】
前記模擬子宮頸部は、該模擬子宮頸部のための支持構造として構成された補強マトリックス又はスリーブをさらに含む、
請求項1から27のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項29】
前記模擬子宮頸部は、前記模擬膣管を越えて前記遠位端に配置された接地パッドをさらに含む、
請求項4に記載の手術モデル。
【請求項30】
前記模擬子宮頸部は、前記模擬膣管を越えて前記遠位端に取り付けられた取り外し可能な接地ケーブルをさらに含む、
請求項4に記載の手術モデル。
【請求項31】
前記模擬腹膜は導電性材料を含む、
請求項17に記載の手術モデル。
【請求項32】
前記複数のアパーチャに通された前記少なくとも1つのコードは、それ自体に結び付けられる、
請求項10に記載の手術モデル。
【請求項33】
前記模擬子宮頸部を懸架するために使用される1つのコードを有し、該1つのコードは、一端が前記2つの側壁のうちの第1の側壁上の第1のアパーチャを介して前記模擬骨盤フレームに接続され、前記模擬子宮頸部を前記2つの側壁のうちの第2の側壁まで貫通し、前記第2の側壁の前記複数のアパーチャのうちの第1のアパーチャを介して前記模擬骨盤フレームから退出し、前記第2の側壁の前記複数のアパーチャのうちの第2のアパーチャを介して再び前記模擬骨盤フレームに入り込み、前記模擬子宮頸部の異なる位置において前記第1の側壁まで貫通し、前記第1の側壁の第2のアパーチャに接続される、
請求項1に記載の手術モデル。
【請求項34】
前記模擬子宮頸部を懸架するために使用される少なくとも2つのコードを有し、該コードの各々は、一端が前記2つの側壁のうちの第1の側壁上の異なるアパーチャを介して前記模擬骨盤フレームに接続され、前記模擬子宮頸部を前記2つの側壁のうちの第2の側壁まで異なる位置において貫通し、反対端が前記2つの側壁の第2の側壁上の異なるアパーチャを介して前記模擬骨盤フレームに接続される、
請求項1に記載の手術モデル。
【請求項35】
前記補強マトリックス又はスリーブは、ケブラーニットチューブ又はメッシュを含む、
請求項28に記載の手術モデル。
【請求項36】
前記模擬子宮頸部の少なくとも一部は、外部導電性材料で覆われたヤーン支持構造を含む、
請求項1に記載の手術モデル。
【請求項37】
前記ヤーン支持構造の色は、前記模擬子宮頸部の導電性材料と異なる、
請求項36に記載の手術モデル。
【請求項38】
前記ヤーン支持構造の色は、前記模擬子宮頸部の前記導電性材料に類似する、
請求項36に記載の手術モデル。
【請求項39】
前記模擬骨盤フレームは、円錐形又は円錐台形を有する、
請求項1に記載の手術モデル。
【請求項40】
前記手術モデルは外科訓練装置内に収容され、該外科訓練装置は、前記手術モデルの視界をユーザから実質的に隠すように構成され、前記外科訓練装置は、
トップカバーと、
少なくとも1つの脚部によって前記トップカバーに接続されて該トップカバーから間隔を空けたベースと、
前記手術モデルを受け取るように構成された模擬体腔と、
手術器具を使用しながら前記外科訓練装置の外部から前記模擬体腔内へのユーザアクセスを提供する少なくとも1つの領域と、
を含む、請求項1に記載の手術モデル。
【請求項41】
編まれたヤーン構造を含む模擬子宮頸部であって、前記編まれたヤーン構造は、該編まれたヤーン構造の外側に鋳造されて硬化した導電性材料の層内に封入される内部空間を有する、
ことを特徴とする請求項40に記載の模擬子宮頸部。
【請求項42】
前記模擬子宮頸部のためのさらなる支持又は構造をもたらすように構成された、前記内部空間内に含まれる追加材料をさらに含む、
請求項41に記載の模擬子宮頸部。
【請求項43】
前記編まれたヤーン構造は、3次元マンドレルにヤーンを巻き付けることによって形成される形状を有する、
請求項41に記載の模擬子宮頸部。
【請求項44】
前記編まれたヤーン構造の前記形状は「プラス」形状である、
請求項43に記載の模擬子宮頸部。
【請求項45】
前記3次元マンドレルは、複数の2次元コンポーネントを介して形成される、
請求項43に記載の模擬子宮頸部。
【請求項46】
前記3次元マンドレルは、互いに積み重なった複数の3次元形状を介して形成される、
請求項43に記載の模擬子宮頸部。
【請求項47】
前記3次元マンドレルはモノリシック構造である、
請求項43に記載の模擬子宮頸部。
【請求項48】
前記模擬膣口、前記模擬膣管及び前記模擬子宮頸部は、単一構造片又はモノリシック片として鋳造される、
請求項1に記載の手術モデル。
【請求項49】
前記模擬膣口、前記模擬膣管、前記模擬子宮頸部及び前記模擬膀胱子宮頸空間は、単一構造片又はモノリシック片として鋳造される、
請求項11に記載の手術モデル。
【請求項50】
膣切開術のために構成された模擬膣管であって、該模擬膣管は、近位端における開口部を介してアクセス可能な内部空間を定め、該内部空間は、前記近位端付近の複数の隆起部を有する第1の領域と、遠位端付近の滑らかな第2の領域と、最遠位端に接続された模擬子宮頸部とによって分離され、該模擬子宮頸部は、引っ張られること又は押されることによって前記第2の領域がそれ自体に折り重なり、これによってユーザが切開すべき場所を知らせるように構成される、
ことを特徴とする模擬膣管。
【請求項51】
手術モデルであって、
近位開口部及び遠位端を有する模擬骨盤フレームと、
前記模擬骨盤フレーム内に収容された模擬組織構造と、
を備え、前記模擬組織構造は、
前記模擬骨盤フレームの前記近位開口部に対応する近位端における模擬膣口、及び遠位端を介してアクセス可能な模擬膣管と、
前記模擬膣管の前記遠位端に接続された模擬子宮頸部であって、該模擬子宮頸部がユーザによって押されること又は引かれることを可能にする前記模擬骨盤フレーム内に懸架される、模擬子宮頸部と、
を含む、
ことを特徴とする手術モデル。
【請求項52】
前記模擬子宮頸部は、少なくとも1つのコードを介して懸架され、該少なくとも1つのコードは、前記模擬骨盤フレームに関連する複数のアパーチャを介して前記模擬骨盤フレームに取り付けられる、
請求項51に記載の手術モデル。
【請求項53】
電気手術のために構成された手術モデルであって、
模擬骨盤フレームと、
導電性材料で形成された模擬組織構造と、
を備え、前記模擬組織構造は、
少なくとも1つのコードによって前記模擬骨盤フレーム内に懸架され、少なくとも1つの接地要素を有する模擬子宮頸部と、
近位端及び遠位端を有し、内部空間を定める模擬膣管と、
を含み、前記模擬子宮頸部は、前記模擬膣管の前記遠位端に接続され、前記模擬子宮頸部は、前記内部空間内に延びる近位部分と、前記模擬膣管の前記遠位端を越えて延びる遠位部分とを有する、
ことを特徴とする手術モデル。
【請求項54】
手術モデルであって、
近位端及び遠位端を有し、カバー、ベース、及び2つの側壁を有する、模擬骨盤フレームと、
前記模擬骨盤フレームの前記近位端に配置された模擬膣口と、
前記模擬骨盤フレーム内に配置され、切断されるように構成された模擬膣管であって、該模擬膣管へのアクセスが前記模擬膣口を介して提供され、前記模擬膣管が近位端及び遠位端を有する、模擬膣管と、
近位端及び遠位端を有する模擬子宮頸部であって、該模擬子宮頸部が前記模擬膣管の前記遠位端に接続され、前記近位端が前記模擬膣管内に延び、前記遠位端が前記模擬膣管を越えて延び、前記模擬子宮頸部が前記模擬骨盤フレーム内に懸架されることにより、前記模擬子宮頸部がユーザ操作に応答して前後に動くことが可能になることによって前記模擬膣管の一部がそれ自体に折り重なって切開の場所を識別させる、模擬子宮頸部と、
前記模擬膣管の前記遠位端を越えて配置された模擬膀胱子宮頸空間であって、所望の分離面に対応する鈍的切開を介して少なくとも一部が容易に分離可能である少なくとも2つの層を含む、模擬膀胱子宮頸空間と、
前記模擬膀胱子宮頸空間及び前記模擬子宮頸部の上方に配置され、充填時に下向きに膨張するように構成される、模擬膀胱と、
前記模擬骨盤フレームの前記遠位端に取り付けられ、少なくとも前記模擬子宮頸部へのアクセスを閉塞させる、模擬腹膜層と、
を備えることを特徴とする手術モデル。
【請求項55】
導電性材料の少なくとも2つの層を含む模擬膀胱子宮頸空間であって、前記少なくとも2つの層の第1の一連の所定の位置が共に成形され、鋭的切開を介して分離可能であり、前記少なくとも2つの層の第2の一連の所定の位置が界面材料を使用して接続され、切開すべき場所を示す鈍的切開を介して分離可能である、
ことを特徴とする模擬膀胱子宮頸空間。
【請求項56】
前記界面材料はシリコーングリースである、
請求項55に記載の模擬膀胱子宮頸空間。
【請求項57】
バルーン状物体として鋳造され、空気又は液体で満たされた時に膨張するように構成された模擬膀胱であって、前記模擬膀胱の一部内に、膨張時の前記模擬膀胱の膨張方向を制御する支持材料が鋳造される、
ことを特徴とする模擬膀胱。
【請求項58】
充填チューブ及びポンプをさらに備え、前記模擬膀胱と前記充填チューブとの間の接続が、前記充填チューブと前記模擬膀胱との間の接続点の周囲の材料の熱収縮を介して形成される、
請求項57に記載の模擬膀胱。
【請求項59】
手術モデルであって、
近位端及び遠位端を有する模擬骨盤フレームであって、該模擬骨盤フレームの内部空間がカバー、ベース、及び2つの側壁によって定められ、前記2つの側壁が複数のアパーチャを含む、模擬骨盤フレームと、
少なくとも1つのコードによって前記模擬骨盤フレーム内に懸架されることにより、ユーザ操作に応答して前後に動くことができる模擬子宮頸部であって、前記少なくとも1つのコードが前記複数のアパーチャを介して前記模擬骨盤フレームに接続される、模擬子宮頸部と、
を備えることを特徴とする手術モデル。
【請求項60】
前記模擬膣口は、前記充填チューブの一端が前記模擬骨盤フレーム外で前記ポンプに接続されて前記充填チューブの反対端が前記模擬骨盤フレーム内で前記模擬膀胱に接続されるように前記充填チューブを挿入できる専用穴をさらに含む、
請求項11から22のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項61】
手術モデルであって、内部空間を定め、導電性材料の層内に封入される、巻かれた連続ファイバ構造を備える、
ことを特徴とする手術モデル。
【請求項62】
前記導電性材料の層の遠位端に接続された細長い延長部をさらに備える、
請求項1から61のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項63】
前記導電性材料の層及び/又は前記細長い延長部に取り付けられたコードをさらに備える、
請求項1から62のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項64】
前記導電性材料の層に接続された補強マトリックスをさらに備える、
請求項1から63のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項65】
手術モデルであって、内部空間を定め、導電性材料の層内に封入される補強マトリックスを備える、
ことを特徴とする手術モデル。
【請求項66】
前記導電性材料の層の遠位端に接続された細長い延長部をさらに備える、
請求項1から65のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項67】
前記導電性材料の層及び/又は前記細長い延長部に取り付けられたコードをさらに備える、
請求項1から66のいずれか1項に記載の手術モデル。
【請求項68】
導電性材料の少なくとも2つの層を備えた手術モデルであって、前記少なくとも2つの層の第1の一連の所定の位置が共に形成され、鋭的切開を介して分離可能である、
ことを特徴とする手術モデル。
【請求項69】
界面材料を使用して接続され、切断すべき場所を示す鋭的切開を介して分離可能な、前記少なくとも2つの層の第2の一連の所定の位置をさらに備える、
請求項68に記載の手術モデル。
【請求項70】
充填可能バルブをさらに備え、該充填可能バルブは、充填時に前記バルブの膨張方向を制限する支持材料を含む、
請求項1から69のいずれかに記載の手術モデル。
【請求項71】
前記充填可能バルブに恒久的に接続されたチューブと、該チューブに接続されたポンプとをさらに備える、
請求項70に記載の手術モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2021年10月22日に出願された「膣切開モデル(Colpotomy Model)」という名称の米国仮特許出願シリアル番号第63/271,022号、及び2021年12月16日に出願された「膣切開モデル」という名称の米国仮特許出願シリアル番号第63/290,586号に対する優先権及び利益を主張するものであり、これらの文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、一般に外科訓練システムに関し、具体的には、限定するわけではないが、腹腔鏡手術、内視鏡手術及び低侵襲手術に関連する様々な外科技術及び処置の指導及び練習のための模擬組織構造及びモデルに関する。具体的には、経膣的アプローチによる膣切開術の指導及び練習のための外科訓練システムを提供する。
【背景技術】
【0003】
医学生及び新たな外科技術を学ぶ熟練した専門家(例えば、外科医)は、人間の患者に手術を行う資格を得る前に幅広い訓練を受ける。この訓練の一部は、様々な組織タイプの切断、穿通、締め付け、把持、ステープリング、焼灼及び縫合のうちの1つ又は2つ以上を伴うこともある手術を実行するために採用される正しい技法をユーザが練習できるようにするものである。この目的のために、外科訓練システムの中には、ユーザが実際に行う異なる外科手術に対応する様々な異なる生体構造及びシナリオについてユーザが練習し、これらを体験できるようにする有用な指導ツールを提示するものもある。この結果、ユーザは、様々な外科的条件での、及び様々な外科手術のための多くの異なる外科技術を練習することができる。さらに、外科的条件は、患者のサイズ及び状態、外科手術及び近隣領域に関連する解剖学的景観(anatomical landscape)、並びにユーザが直ちにアクセスできることもできないこともある、手術を受ける組織のタイプなどの、患者固有の因子に影響を受けることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願シリアル番号第13/248,449号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
様々な外科手術の1又は2以上の側面の訓練及び練習を容易にするいくつかの教材(teaching aids)、訓練機、シミュレータ、モデル臓器が利用可能である。しかしながら、特定の外科手術の訓練及び練習に役立つように特別に設計されたモデル又は模擬組織要素が必要とされている。
【0006】
例えば、とりわけ模擬膣切開のためのより正確かつ応答性の高いシミュレーションを提供するように設計された外科訓練システムが必要とされている。さらに、電気外科エネルギーの有無にかかわらずにユーザがこのような外科手術を練習できるようにする外科訓練システムに関連する特徴、又はこれらの組み合わせも望ましいと思われる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
様々な実施形態によれば、本明細書では手術モデルについて説明する。手術モデルは、近位端及び遠位端を有する模擬骨盤フレームを含む。模擬骨盤フレームは、近位端に開口部を有するとともに、1又は2以上の模擬組織構造を収容できる内部空洞を有する。1又は2以上の組織構造は、模擬膣管及び模擬子宮頸部を含む。模擬膣管は、近位端付近の隆起部を有する第1のセクションと、遠位端付近の滑らかな第2のセクションとを有する内部空間を定める。模擬子宮頸部は、模擬子宮頸部の近位端が模擬膣管内に延び、模擬子宮頸部の遠位端が模擬膣管の遠位端を越えて延びるように、模擬膣管の遠位端に接続される。模擬子宮頸部は、模擬骨盤フレーム内で少なくとも1つのコードを介して懸架される。コードは模擬骨盤フレームに接続され、ユーザ操作に応答して模擬子宮頸部が前後に動くことによって模擬子宮頸部付近の模擬膣管も動くことを可能にする。ユーザは、模擬膣管の動きに基づいて、どこを切開する必要があるかを識別する学習を行うことができる。
【0008】
様々な実施形態によれば、手術モデルは、本明細書で説明する模擬膀胱子宮頸空間(simulated vesicocervical space)も含む。模擬膀胱子宮頸空間は、共に成形された部分と互いに界面材料で取り付けられた部分とを有する2又は3以上の層で形成される。2つの層間の取り付けタイプに基づいて、異なるタイプの切開が使用される。このようにして、ユーザは、模擬膀胱子宮頸空間が鋭的切開ではなく鈍的切開を可能にする場所に対応する、ユーザがこの空間を切断すべき場所に対応する切開面の場所の識別方法を教わることができる。
【0009】
様々な実施形態によれば、手術モデルは模擬膀胱も含む。模擬膀胱は、バルーンに液体又は空気を導入してバルーンを膨張させるために使用される充填チューブ及び付属ポンプを使用して膨張するように形成される。模擬膀胱は、バルーンが膨張する方向を制御するのに役立つ支持構造で補強された部分も有する。
【0010】
様々な実施形態によれば、手術モデルの模擬子宮頸部は、模擬子宮頸部の遠位端に取り付けられたさらなる支持構造(すなわち、コネクタ)を含むことができる。模擬子宮頸部及び/又は支持構造は、3次元マンドレルの周囲に巻かれ/編まれて導電性材料の層と共に鋳造されたヤーンで形成することができる。模擬子宮頸部及び/又は支持構造は中空に形成し、その後に支持材料で満たすこともできる。
【0011】
本発明は、全体を通じて参照番号が同じ部品を指定する添付図面に関連して行う以下の説明を参照することによって理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2A】膣切開モデルの内部コンポーネントの実施形態例を示す図である。
【
図2B】膣切開モデルの内部コンポーネントの実施形態例を示す図である。
【
図2C】膣切開モデルの内部コンポーネントの実施形態例を示す図である。
【
図2D】膣切開モデルの内部コンポーネントの実施形態例を示す図である。
【
図2E】膣切開モデルの内部コンポーネントの実施形態例を示す図である。
【
図2F】膣切開モデルの内部コンポーネントの実施形態例を示す図である。
【
図2G】膣切開モデルの内部コンポーネントの実施形態例を示す図である。
【
図2H】膣切開モデルの内部コンポーネントの実施形態例を示す図である。
【
図3】模擬骨盤フレーム内で組み立てられていない膣切開モデルのコンポーネント例を示す図である。
【
図4A】膣切開モデルの異なるビューを示す図である。
【
図4B】膣切開モデルの異なるビューを示す図である。
【
図4C】膣切開モデルの異なるビューを示す図である。
【
図4D】膣切開モデルの異なるビューを示す図である。
【
図5】模擬骨盤フレーム内に配置された膣切開モデルの内部コンポーネントを示す図である。
【
図6A】1又は2以上のコードの配置例を示す図である。
【
図6B】1又は2以上のコードの配置例を示す図である。
【
図7A】膣切開モデルに対して行われる膣切開術のステップを示す図である。
【
図7B】膣切開モデルに対して行われる膣切開術のステップを示す図である。
【
図7C】膣切開モデルに対して行われる膣切開術のステップを示す図である。
【
図7D】膣切開モデルに対して行われる膣切開術のステップを示す図である。
【
図7E】膣切開モデルに対して行われる膣切開術のステップを示す図である。
【
図7F】膣切開モデルに対して行われる膣切開術のステップを示す図である。
【
図8】本発明による外科訓練装置の上面斜視図である。
【
図9A】膣切開モデルを収容する外科訓練装置の実施形態である。
【
図9B】膣切開モデルを収容する外科訓練装置の実施形態である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の様々な実施形態によれば、膣切開モデルが提供される。膣切開モデルは、ユーザ(例えば、医学生、医療専門家)が膣切開術の実施方法を指導及び/又は練習するための方法を含む。膣切開術では、ユーザが子宮頸部付近の膣の後壁に切開部を形成する。例えば、膣式子宮摘出術は、子宮頸部周囲の円周方向切開部を通じて膣にアプローチし、子宮頸部及び子宮底を除去することによって完了する。
【0014】
図1A~
図1Bを参照すると、これらの図には、様々な実施形態による膣切開モデル例100を示す。図には膣切開モデル例100を含む多くの要素を示しているが、追加要素(すなわち、さらなる組織構造)を含めることもできる。また、モデル全体を単純化するために、膣切開モデル例100に示す特徴は、除去すること/除去可能であることもできる。
【0015】
膣切開モデルの最近位端(すなわち、図の最も左側の部分)は、(このビューではベースが示されている)模擬骨盤フレーム110の近位端を覆う模擬膣口105である。様々な実施形態では、模擬膣口105が、模擬骨盤フレーム110の上部(例えば、カバー)に取り付けられて模擬骨盤フレーム110の全高を模擬骨盤フレーム110のベースまで下向きに延びる模擬組織を含む。様々な実施形態では、膣管への開口部が妨げられない限り、模擬膣口のあらゆる部分に接地パッドを関連付けることができる。例えば、接地パッドは、模擬骨盤フレームの上部に配置することができる。
【0016】
(例えば、
図4Aに示すように)模擬膣口105の開口部は模擬膣管115に通じている。模擬膣管115は、模擬子宮頸部120の一部を取り囲む内部空間を定める。様々な実施形態によれば、例えば
図2A~
図Cに示すように、模擬膣管115は2つの異なるセクションを有する。模擬膣管の第1のセクション210は、模擬襞(simulated rugae)を提供する複数の隆起部を有する。第1のセクションは、模擬膣管115の近位端から開始して第2のセクション220の開始地点で終端する。第2のセクション220は滑らかであり、模擬膣管115が模擬子宮頸部120に接続される模擬膣管115の円周方向領域付近に位置する。
【0017】
2つの異なるセクション又は領域210、220間の区別又は描写は、模擬膣管115を切開すべき視覚的ランドマーク又は指標をユーザに提供する。切開すべき場所を識別するために膣切開モデルによって使用され提供される別のランドマーク又は指標は、模擬膣管が「ローリング(rolling)」と呼ばれる動きを通じて模擬子宮頸部上に反転する場所に対応する。(模擬膣管に関連する)「ローリング」は、模擬子宮頸部の(例えば、前後の)操作を意味する。一般に、切開が行われる地点は、模擬膣管が模擬子宮頸部上に反転する第2のセクション220内に位置する。
【0018】
図2Bを参照すると、この図には、模擬子宮頸部が第1の位置Aから第2の位置B(例えば、白線)に動くシナリオ例を示す。模擬子宮頸部の動き(例えば「ローリング」)は、模擬子宮頸部と共に模擬膣管の一部を動かす。具体的には、模擬子宮頸部が、第1の位置Aから、膣切開術での切開が望ましい模擬膣管の領域に対応する第2の位置Bに移動すると、模擬子宮頸部の周囲で模擬膣管の一部がそれ自体にさらに押し込まれ/折り重なるようになる。
【0019】
ユーザは、模擬膣管の「ローリング」地点に切開部を形成することによって模擬膀胱子宮頸空間にアクセスすることができる。とりわけ、ユーザは、意図せずに模擬子宮頸部又は模擬膀胱まで切除、切開及び/又は切断してしまうのを避けることができる。
図2Cには、模擬膣管の第2のセクション内の切開部が配置される地点例を示す。
【0020】
再び
図1Aを参照すると、模擬子宮頸部120は、ユーザ操作(例えば、引き込み及び引き出し)に応答して動くことによってさらに模擬膣管115の一部に「ローリング」を形成するように設計される。この動きは、遠位側が模擬膣管115を越えて模擬子宮頸部120に接続されたコネクタ又は支持体130に取り付けられた少なくとも1つのコード125を介して促される。様々な実施形態では、模擬子宮頸部120から延びているように示すコネクタ130が子宮の位置に対応することができる。様々な実施形態では、膣切開術をシミュレートする目的で模擬子宮を設けることもできる。しかしながら、図示の実施形態を含む様々な実施形態では、模擬子宮を設けずに資源を節約し、廃棄物を減らし、モデルの組み立て及び製造可能性を容易にしている。コネクタ130は、コード125を介した模擬子宮頸部120及び模擬膣管115の懸架及び動きを容易にする。
【0021】
様々な実施形態では、遠位側が模擬子宮頸部120に接続されたコネクタ130との接続を介して模擬子宮頸部120を懸架するために単一のコード125を使用することができる。例えば、コード125は、例えば
図6Aに示すようにコネクタ130に通してループ状にすることができる。他の実施形態では、例えば
図6Bのように2又は3以上のコード125を使用することができる。例えば、コネクタの両側に2組のコード125を取り付け、これを使用してコネクタのそれぞれの側を模擬骨盤フレーム110に接続することができる。様々な実施形態では、コード125を模擬骨盤フレーム110の壁内のアパーチャに通してコネクタ130を模擬骨盤フレーム110に接続する。
【0022】
ユーザは、模擬膣管115を切開した後に模擬膀胱子宮頸空間135内にアクセスすることができる。
図2Dに、模擬膀胱子宮頸空間の実施形態を示す。具体的には、模擬膀胱子宮頸空間の例示的な部分的断面切断部分を示す模擬膀胱子宮頸空間の側面図及び上面図を示す。最初に側面図を参照すると、様々な実施形態では、模擬膀胱子宮頸空間が少なくとも2つの層352、354によって定められる。2つの層352、354間には、少なくとも2つの層352、354を互いに部分的に付着させる界面層又は界面材料250(例えば、シリコーングリース)が様々な部分で加えられる。界面材料250(例えば、シリコーングリース)は、2つの層が分離のために鈍的切開を使用して互いに分離可能である分離面を定めることを容易にする。この分離面は、膣切開術中にユーザ(例えば、外科医)が模擬膀胱子宮頸空間のさらに背後の腹膜にアクセスするために従う平面に対応する。従って、様々な実施形態では、これらの界面材料又は界面層が、間に界面材料又は界面層が配置された層又は構造の分離又は意図する分離を可能に又は容易にするレジスト、リリース又は分離材料又は層であり、或いはこのような材料又は層として機能する。
【0023】
分離面の外側領域(すなわち、シリコーングリースが存在しない領域)では、模擬膀胱子宮頸空間135の少なくとも2つの層352、354が互いに完全に付着する(例えば、共に成形される)。模擬膀胱子宮頸空間135の2つの層352、354が互いに接続される部分は、少なくとも1つの模擬膀胱膣中隔(simulated vesicovaginal septa)260に対応する。
【0024】
(352の上部を除去した状態を想像する)上面図を参照すると、塗りつぶし部分は、模擬膀胱子宮頸空間135の層352、354が互いに完全に付着して模擬膀胱膣中隔260を形成する位置に対応する。上面図の「前方」は、ユーザが模擬膣管の「ローリング」部分を切開した後に進入する模擬膀胱子宮頸空間135の部分に対応する。
【0025】
層352、354が完全に付着した部分は模擬膀胱膣中隔260に対応し、層352、354間に界面材料250が配置された模擬膀胱子宮頸空間135の他のセクション又は部分に比べて互いに分離しにくくなっている。ユーザは、膀胱膣中隔260の1つにおいて層352、354を分離するには、例えば鈍的切開を使用できる他の部分とは対照的に鋭的切開(例えば、スニップ)を使用することが必要になる。
【0026】
様々な実施形態では、模擬膀胱子宮頸空間135が、模擬膣管115、コネクタ130及び/又は模擬子宮頸部120の一部上に2つの独立層として取り付けられ、例えば鋳造され、すなわち模擬膀胱子宮頸空間135の(要素354に対応する)下部が、模擬膣管115、コネクタ130及び/又は模擬子宮頸部120の一部上に鋳造され、その後に模擬膀胱子宮頸空間135の(要素352に対応する)上部が鋳造される。他の実施形態では、模擬膀胱子宮頸空間135の下部が模擬子宮頸部と同時に/共に鋳造される。模擬膀胱子宮頸空間135の上部は、模擬膀胱子宮頸空間135の下部とは別に、後で鋳造される。この結果、鋳造ステップ(すなわち、模擬膀胱子宮頸空間354の下部を模擬子宮頸部120とは別に鋳造するステップ)が排除されることにより、製造の単純化及び/又はコストの削減が可能になる。
【0027】
様々な実施形態では、模擬膀胱子宮頸空間135が、模擬子宮頸部及び模擬膣管115とは異なる色を有する。配色の違いは、ユーザがどこを切開すべきかを視覚的に確認して識別できるようにする視覚的合図又は指標を提供する。他の様々な実施形態では、模擬膣管115、模擬子宮頸部及び/又は模擬膀胱子宮頸部空間135の配色が類似することにより、模擬子宮頸部の動き及び模擬膣管115のローリングがどこに位置するかに基づいてどこを切開すべきかを識別することをユーザに求める。
【0028】
再び
図1Aを参照すると、ユーザは、模擬膀胱子宮頸空間135を膣切開モデル100の後端又は遠位端に向かって切開するように指示される。ユーザは、模擬膀胱子宮頸空間135の分離面に従うことによって他の空間(例えば、膀胱、子宮)内への切開を避け、代わりに模擬腹膜層(simulated peritoneum layer)140にアプローチする。模擬腹膜層140は、膣切開モデル100の遠位端に取り付けられており、模擬骨盤フレーム110の近位内部を模擬骨盤フレーム110の(模擬腹膜腔に対応できる)遠位開口部から分離するために使用される。模擬腹膜層140は、模擬骨盤フレーム110、模擬膀胱150及び/又はコネクタ130に様々な地点で(例えば、接着剤を介して)取り付けられる。様々な実施形態では、例えばキトサン接着剤などの導電性接着剤が模擬膀胱150及び/又はコネクタ130を模擬腹膜層140に接続する。様々な実施形態では、例えばLoctite接着剤などの非導電性接着剤が模擬腹膜層140を模擬骨盤フレーム110に接続する。
【0029】
ユーザは、模擬膀胱子宮頸空間135を切開した後に、模擬腹膜層140の模擬腹膜反転部(simulated peritoneal reflection)145の位置の識別に進む。一般に、模擬腹膜反転部145は、模擬腹膜層140がより凸状に見える(例えば、模擬膣管115の「ローリング」と同様に膣切開モデル100の遠位端に向かって反対方向にそれ自体に折り重なる)模擬腹膜層140の地点に対応する。ユーザは、模擬腹膜反転部145において、模擬腹膜層140のその位置で切開を進めて、様々な実施形態では模擬腹膜層140の背後の模擬腹膜腔にアクセスする。模擬腹膜反転部145での切開は、ユーザが模擬腹膜腔にアクセスし、模擬子宮頸部/コネクタ、模擬膀胱、及び/又は模擬膀胱の周囲領域までさらに切開しないことを確実にする。
【0030】
図示のような模擬膀胱150は、模擬膀胱子宮頸空間135、模擬膣管115、及びコネクタ130の上方に位置する。様々な実施形態では、模擬膀胱150が(熱収縮シール又はコネクタ/ナットを介して)充填チューブ155及びポンプ160に接続される。模擬膀胱150は、実際の膀胱と同様に膨張させるために使用されるバルーン状物体を形成するように鋳造することができる。模擬膀胱150は、充填チューブ155及びポンプ160を介して、ユーザがポンプ160を利用している時に空気の注入を介して膨張するように構成される。様々な実施形態では、充填チューブ155が一種の透明プラスチックチューブである。様々な実施形態では、ポンプ160がハンドポンプである。ポンプ160を使用した膀胱150の膨張は、外科医が生理食塩水などを導入して膀胱を膨張させる膣切開術中における膀胱の膨張をシミュレートする。様々な実施形態では、模擬膀胱150が導電性材料を含む。
【0031】
様々な実施形態では、模擬膀胱150を、模擬膀胱150の鋳造後に挿入されるバルーン、或いは(例えば、ラテックス、ポリオレフィンなどから形成された)気密性又は空気不透過性の膨張可能又は充填可能容器を使用して形成することができる。これらの実施形態では、模擬膀胱150の鋳造された外面の内側に位置するバルーンが、例えばポンプ及び管体を介して空気などを受け取って膨張することによって模擬膀胱150全体を膨張させる気密コンテナ又は容器を提供する。バルーンを使用すると、模擬膀胱150の鋳造又は成形時に模擬膀胱150の外面又は材料が均一、不透過性及び/又は気密性であることをそれほど重視又は心配しなくて済むようになる。
【0032】
様々な実施形態では、模擬膀胱150が鋳型内で鋳造されている時に、模擬膀胱150の上部セクションの様々な部分に追加材料を配置することができる。このような材料は、さらなる支持のために模擬膣口105に含められる中綿(batting)を有する実施形態と同様の中綿を含むことができる。模擬膀胱150に追加される材料は、模擬膀胱150にさらなる構造的支持をもたらすとともに、模擬膀胱150の膨張の制御及び/又は方向ももたらす。様々な実施形態では、模擬膀胱150の下部が、コネクタ130、模擬膣管115及び/又は模擬膀胱子宮頸空間135に接触する。模擬膀胱150は、補強材料を追加せずに膨張させると、膣切開モデルの上部に向かって膨張することがある。しかしながら、模擬膀胱150の上向きの膨張は望ましくない場合がある。模擬膀胱150の上部に材料(例えば、中綿)を追加し、又は模擬膀胱150の上部におけるシリコーンなどを厚くすると、模擬膀胱の上方への膨張に対する模擬抵抗をもたらすことができる。従って、模擬膀胱150が膨張する際に、コネクタ130、模擬膣管115及び/又は模擬膀胱子宮頸空間135に向かう、例えば外科的手順及び/又はその訓練に近い下向きの膨張をもたらすことができる。
【0033】
様々な実施形態では、模擬膀胱150が、接着剤を使用して膣切開モデル100内に固定される。様々な実施形態では、模擬膀胱150が、Loctite接着剤などの非導電性接着剤を使用して模擬骨盤フレーム110に固定される。様々な実施形態では、模擬膀胱150が、キトサン接着剤などの導電性接着剤を使用して模擬腹膜層に固定される。
【0034】
図1Bに、膣切開モデルの別のビューを示す。具体的には、
図1Bには、さらなる支持を提供するために膣切開モデルに組み込むことができる追加材料又は特徴に関するさらなる詳細を示す。様々な実施形態では、膣切開モデルの要素のうちの1つ又は2つ以上に支持構造を組み込み/埋め込むことができる。例えば、模擬膣口は、内部の様々な位置に埋め込まれた中綿を有することができる。また、模擬子宮頸部、及び遠位側が模擬子宮頸部に接続されたコネクタに、補強マトリックス又はスリーブを組み込むこともできる。様々な実施形態では、充填チューブと模擬膀胱との間の接続を強化するために、これらの間の接続点の周囲で熱収縮チューブを熱収縮させることができる。
【0035】
図3に、模擬骨盤フレームに接続されていない膣切開モデルのコンポーネント例を示す。具体的には、この図には、充填チューブ155(及び図示していないポンプ)に接続された可膨張膀胱150、模擬膣口105、模擬膣管115、模擬膀胱子宮頸空間135、模擬子宮頸部の一部に接続されたコネクタ130、及びコネクタ130に接続された1又は2以上のコード125を示す。コネクタ130には、図示していない模擬子宮頸部の一部が接続され、模擬膣管115によって定められる内部空間内に収容又は包囲される。
【0036】
上述したように、模擬膀胱150は、膣切開モデルの模擬骨盤フレームの外側に延びる充填チューブ155に接続される。様々な実施形態では、充填チューブ155が、模擬膣口105の充填チューブ専用穴335を貫通する。専用穴335は、模擬膣管115へのアクセスを提供する模擬膣口105の主開口部の上方に位置する。充填チューブ155は、ポンプ(例えば、ハンドポンプ)(図示せず)に接続される。
【0037】
様々な実施形態では、模擬膣口105、模擬膣管115、模擬子宮頸部、コネクタ130、及び模擬膀胱子宮頸部空間135が、共に単一構造片又はモノリシック片として形成される。様々な実施形態では、複数の異なる鋳型を用いた連続鋳造によってこれが行われる。具体的には、1つの鋳型を使用して、模擬膣管115を模擬子宮頸部及びコネクタと共に単一のモノリシック構造として鋳造することができる。この鋳型が完成すると、連成構造物(combined structure)を別の鋳型に導入し、模擬膣管115及び模擬子宮頸部上に模擬膀胱子宮頸空間135を鋳造する。その後に別の鋳造を行って、前の連成物上に模擬膣口105を鋳造する。これらの連続鋳造の結果として一群のコンポーネント(例えば、模擬膣口105、模擬子宮頸部、模擬膀胱子宮頸空間135、コネクタ130、及び模擬膣管115)が得られ、これらは全て、これらのコンポーネントを共に保持する接着剤又は他のタイプの結合特徴を必要とすることなく互いに接続され、又は単一のモノリシック構造として形成される。様々な実施形態では、これらの一群のコンポーネント(例えば、模擬膣口105、模擬子宮頸部、模擬膀胱子宮頸空間135、コネクタ130、及び模擬膣管115)を別々の成形工程によって鋳造し、例えば接着剤を使用して共に組み立てることができる。様々な実施形態では、コネクタ及び模擬子宮頸部が単一のモノリシック構造として形成される。
【0038】
様々な実施形態では、模擬膣口が、模擬骨盤フレームの上部に折り重なる模擬膣口の拡大部分を提供するようなサイズ及び/又は形状を有する。いくつかの実施形態では、模擬骨盤フレームが、模擬骨盤フレームのベースから間隔を空けてベースと平行に配置されたカバーを有することができる。様々な実施形態では、(例えば、
図4D及び
図5に示すように)カバーが模擬骨盤フレームの近位端に取り付けられる。カバーには模擬膣口の拡大部分が取り付けられる。模擬膣口の拡大部分又は折り重ね部分は、模擬導電性組織の肉厚領域を提供するように構成され、従って電気外科的発電機に取り外し可能に接続された接地パッドに物理的かつ電気的に接触するように配置され、このように接触するのに適する。
【0039】
引き続き
図3を参照すると、様々な実施形態では、模擬膣管115に模擬子宮頸部が接続される。具体的には、模擬子宮頸部がこのように接続されることにより、模擬子宮頸部の近位端が模擬膣口105の主開口部に向かって延びるようになる。一方で、模擬子宮頸部は、遠位側が膣切開モデルの遠位端に向かって延びるコネクタ130を提供するように接続され及び/又は延びる。様々な実施形態では、ユーザが模擬子宮頸部の近位端を操作及び操縦するように指示される。従って、模擬子宮頸部及び模擬膣管は互いに対して動くことができる。様々な実施形態では、遠位側が模擬子宮頸部に接続及び/又は一体化されたコネクタ130が1又は2以上のコード125に接続される。
【0040】
様々な実施形態では、コネクタ130が細長いチューブを含み、様々な実施形態では導電性材料及び/又は補強スリーブ(例えば、メッシュ)で形成される。コード125の数及び配置は、(例えば、膣管及び/又は子宮頸部は、子宮及び靭帯などのいずれかの数の異なる組織及び/又は臓器によって保持されるため)特に解剖学的に正しくはない模擬子宮頸部及び模擬膣管115の懸架、動き及び/又は張力をもたらす。様々な実施形態では、1又は2以上のコード125及び/又はコネクタ130が、モデルの複雑性を高めると思われる様々な臓器及び/又は組織を全体的な膣切開モデルが実装しないことを可能にする。膣切開モデルの単純化は、組み立て、コスト及び廃棄物の削減において利点をもたらすとともに、膣切開術の学習、訓練及び練習に比類なく適したモデルの関連部分にユーザの注意を集中させる。
【0041】
図2Eに、模擬膣管115、模擬子宮頸部120、模擬膀胱子宮頸空間135及びコネクタ130の別のビューを示す。例えば、補強マトリックス(例えば、補強スリーブ材料)350が埋め込まれたコネクタ130を示す。また、模擬膀胱子宮頸空間135に関するさらなる詳細を見ることもできる。具体的には、模擬膀胱子宮頸空間135は、第1の層352、第2の層354、及び第1の層352と第2の層354との間の様々な部分に配置された界面材料(例えば、シリコーングリース)250を有する。
【0042】
図2Fには、模擬膀胱子宮頸空間135の別の実施形態を示す。具体的には、模擬膀胱膣中隔260の配置は、模擬膀胱膣中隔260が模擬膀胱子宮頸空間135の全長に沿って延びないように縮小される。代わりに、模擬膀胱膣中隔260を越えた模擬膀胱子宮頸空間135の2つの層352、354間にさらなる界面材料250が設けられる。模擬膀胱子宮頸空間135に追加される界面材料250は、鈍的切開を使用して分離できる模擬膀胱子宮頸空間135の層352、354内にさらなる空間をもたらすことにより、模擬膣切開術中にユーザ(例えば、外科医)が作業できる分離面を拡大する。
【0043】
図4A~
図4Dを参照すると、これらの図には、膣切開モデルの実施形態の異なるビュー(例えば、正面、背面、側面及び上面)を示す。膣切開モデルは、膣切開術の指導、訓練及び/又は練習のための特定のシミュレーションモデルを提供する。様々な実施形態では、膣切開モデルに関連するコンポーネント及びコンポーネントの配置が、人体構造の正確なレプリカであるように設計されていない。むしろ、様々な実施形態では、膣切開モデルが、例えば関係のない組織及び/又は臓器(例えば、子宮)が省略された状態でユーザが膣切開術を学習して練習するのに有用なコンポーネントを含む。モデルのコンポーネントの一部及び/又はこれらの部分は、ユーザが膣切開術に関連する様々な組織及び/又は臓器を認識し、これらの組織及び/又は臓器との相互作用に慣れることができるように提供される。例えば、模擬膣管は、ユーザが模擬膣管内のどこで切開地点を探るべきであるかをユーザに指示できる有用な解剖学的マーキング又はインジケータとして提供される、関連する襞を有する。
【0044】
図4Aには、膣切開モデルの前端又は近位端を示す。膣切開モデルの正面からは、模擬骨盤フレーム、充填チューブ及び接続されたポンプに取り付けられた模擬膣口を見ることができる。充填チューブ及びポンプは、膣切開術中の膀胱の膨張をシミュレートできるように提供される。ユーザは、模擬膣切開術中に模擬膀胱が膨張するように、ポンプを使用して(充填チューブを介して)模擬膀胱に空気を導入する。この行為は、例えば外科医が膣切開術を行っている間に生理食塩水を導入して膀胱を膨張させる外科実務に対応することができる。様々な別の実施形態では、膣切開術のこのステップをシミュレートする目的で、他の液体又は気体ソースを提供するためのポンプの交換も想定されている。充填チューブは、模擬膣口の開口部を介して膣切開モデルに挿入される。
【0045】
図4Aには、充填チューブ及びポンプに加えて、模擬骨盤フレーム上に組み立てられた模擬膣口も示す。模擬膣口は、模擬子宮頸部(図示せず)を把持して操作(例えば、引っ張ることが)できる内部空間を定める模擬膣管(図示せず)への主開口部を介したアクセスを提供する。様々な実施形態では、使用中に模擬膣口が模擬骨盤フレームから外れないように、例えば接着剤を使用して模擬膣口が模擬骨盤フレームに取り付けられる。様々な実施形態では、模擬膣口が模擬骨盤フレームから取り外し可能である。これにより、模擬膣口(及び模擬子宮頸部、模擬膣管、模擬膀胱子宮頸空間などの関連する付属コンポーネントのいずれか)の取り外し及び交換が可能になる。様々な実施形態では、模擬膣口及び関連するコンポーネントが単回使用及び/又は使い捨てであるように設計される。
【0046】
様々な実施形態では、特に電気手術のシミュレーションに関連して膣切開モデルが使用される場合、シミュレーション中に使用される電気を管理する目的で模擬膣口に接地パッドを取り付け及び/又は組み込むことができる。接地パッドは、例えば膣切開モデルの上部の一部を介して模擬膣口の表面の少なくとも一部に取り外し可能に取り付け及び/又は接触させることができる。模擬膣口のさらに多くの又は少ない表面及び模擬膣口沿いの異なる位置に接地パッドを組み込みながら模擬膣管へのアクセスをもたらす主開口部を曖昧にしない他の実施形態も想定されている。
【0047】
様々な実施形態では、膣切開モデル又はその一部が(例えば、導電性ヒドロゲルを含む)導電性材料で形成される。様々な実施形態では、模擬子宮頸部、模擬腹膜層、模擬膀胱子宮頸空間、模擬膣管及び/又は模擬膣口のみが導電性材料で形成され、又は導電性材料を含む。様々な実施形態では、模擬骨盤フレーム、1又は2以上のコード、充填チューブ及び/又はポンプが導電性でなく、絶縁され、及び/又は導電性材料で形成されないことにより、膣切開モデルの他の部分、外科訓練装置及び/又は周辺領域への潜在的損傷及び/又は熱拡散及び/又は影響を防止又は低減する。
【0048】
図4Bには、膣切開モデルの後端又は遠位端を示す。具体的には、骨盤フレームの後部に位置する腹膜層をシミュレートするために層を使用する。様々な実施形態では、模擬腹膜層をシミュレートするために使用される層が導電性材料を含む。模擬腹膜層は、模擬腹膜層の背後の膣切開モデルの遠位端における開放空間に対応する模擬腹膜腔に到達するためにユーザが切開する必要がある模擬膣切開術の一部である。模擬腹膜層に到達するには、既にユーザが模擬膣管に切開部を形成して模擬膀胱子宮頸空間を切開し終えていることが必要になる。
【0049】
様々な実施形態では、模擬腹膜層が、膣切開モデルの後端/遠位端の全体(例えば、模擬膣口が模擬骨盤フレームと共に位置する上部から模擬骨盤フレームのベースまで)を覆う。さらに、模擬腹膜層のエッジが模擬骨盤フレームの側面及び/又はベースに(例えば、接着剤を介して)取り付けられているので、膣切開モデルの後端又は遠位端からは、模擬膀胱及び模擬子宮頸部へのアクセスが模擬腹膜層によって完全に閉塞される。
【0050】
様々な実施形態では、模擬腹膜層の一部が(例えば、導電性接着剤を介して)模擬膀胱及びコネクタにも取り付けられる。
図1Aに示すように、模擬腹膜層を模擬膀胱に取り付けると、模擬膀胱の膨張及び/又はコネクタ/模擬子宮頸部の動きに関連する変化に基づいて模擬腹膜層が動くようになる。同様に、模擬腹膜層の一部は(例えば、導電性接着剤を介して)コネクタ及び/又は模擬子宮頸部に取り付けられる。従って、ユーザは、(模擬膣切開術を行いながら)模擬腹膜層の現在の状態に基づいて、模擬腹膜層が反転する模擬腹膜層の地点を探すことになる。模擬腹膜反転部は、模擬腹膜層がそれ自体に部分的に折り重なっているように見える部分に対応する。換言すれば、膣切開モデルの模擬膣管側から見ると、模擬腹膜層は、凹状であるのとは対照的に、より凸状に見える部分を有する。模擬腹膜反転部は、ユーザが模擬腹膜層の背後の腹腔にアクセスするために模擬腹膜層を切開するとともに、模擬子宮頸部、コネクタ、模擬膀胱及び/又は模擬膀胱の周囲の領域などの望ましくない領域への切開又はアクセスを避ける望ましい位置である。
【0051】
図4Cには、膣切開モデルの側面を示す。この膣切開モデルのビューには、先の
図4Aで見ることができる模擬膣口、充填チューブ及びポンプとは別に、模擬骨盤フレームに関連する様々なアパーチャを示す。具体的には、模擬骨盤フレームは、中央外面付近に位置する第1の一連のアパーチャを有する。様々な実施形態では、第1の一連のアパーチャが、模擬骨盤フレーム内に収容された膣切開モデルの内部コンポーネントを(コネクタに取り付けられたコードと連動して)懸架するために使用される。様々な実施形態では、(例えば、
図6Aに示すような)1つ又は(例えば、
図6Bに示すような)2つ以上のコードを使用して膣切開モデルの内部コンポーネントを懸架することができる。
【0052】
ある実施形態例では、膣切開モデルの内部コンポーネントを模擬骨盤フレーム内に懸架するために1つのコードを使用する。
図6Aに示すように、コードの第1の端部は、模擬骨盤フレームの壁の一方のアパーチャ(1)においてそれ自体に結び付けられる。同じコードの反対端は、模擬骨盤フレームの他方の壁のアパーチャ(3)と相互連結するためにコネクタの一端(2)を貫通する。その後、コードは1つのアパーチャから模擬骨盤フレームを出て付近のアパーチャ(4)から再び模擬骨盤フレームに入る。従って、(
図4Cに示すように)膣切開モデルの外側から見ると、ユーザには模擬骨盤フレームに関連するアパーチャの一部を覆い隠すコードの一部(B)しか見えない。コードは、再び模擬骨盤フレームに入った後にコネクタの反対端(5)を貫通し、コードの第1の端部と同じ壁の付近のアパーチャ(6)においてそれ自体に結び付けることができる。
【0053】
様々な実施形態では、コネクタ、模擬子宮頸部及び/又はその一部が、コネクタを貫通し及び/又はコネクタに別様に取り付けられた1又は2以上のコードの動きに耐え及び/又はコードを支持するように補強され及び/又は断裂耐性を有する。様々な実施形態では、コネクタが、導電性ヒドロゲルなどを含んで内部に補強マトリックス又はスリーブ(例えば、ケブラー(Kevlar)ニットチューブ又はメッシュ)が埋め込まれた導電性組織を含み、そこにコードが通され及び/又は取り付けられる。
【0054】
様々な実施形態では、ファイバベースの支持構造を使用してコネクタを補強することができ、様々な実施形態では、コネクタが、編まれ、織られ及び/又は巻かれたヤーン支持構造である。
図2Gに、ヤーン支持構造の実施形態例を示す。具体的には、
図2Gには、コネクタに組み込まれる前の金型内のヤーン支持構造を示す。
【0055】
ヤーンは、ユーザが模擬膣切開術を行う際に模擬子宮頸部及び/又はコネクタの伸張を抑えることができる。さらに、ヤーン支持構造を使用する実施形態は、使用するヤーンのタイプ及び使用するヤーンの量を調整することによってカスタマイズすることができる。例えば、コネクタ130及び/又は模擬子宮頸部120に関連する体積が同じである時に存在するファイバの割合が高くなるようにヤーン支持構造を構築する際には、より多くのヤーンを使用することができる。ファイバの割合の変化を使用して、膣切開術をより良好にシミュレートするようにコネクタ及び/又は模擬子宮頸部の感触及び伸縮性を調整することができる。
【0056】
また、ヤーンなどを使用することにより、いずれかの色のヤーンを選択することによって実施形態を色分けすることができる。例えば、様々な実施形態では、ヤーンの色を、模擬子宮頸部120に関連する色に対応するように選択することができる。これにより、模擬子宮頸部120の内部と模擬膀胱子宮頸空間135に関連する構造との間で色を区別するための別々のステップがもはや不要になるので、膣切開モデルを形成する際に鋳造ステップを排除することができる。従って、ヤーン支持構造は、製造を単純化し又はコストを削減することができる。様々な実施形態では、ヤーンの色を、模擬子宮頸部120に関連する色とは異なる/違うように選択することができる。この色差は、模擬膣切開術のどこに進むべきであるかを指示するためにユーザが使用できる視方向を可能にする。様々な実施形態では、模擬膣切開術においてどのように進むべきであるかをユーザに指示するいずれかのテクスチャランドマーク又はその他の解剖学的カラースキームの代わりにヤーンの色差を使用することができる。様々な実施形態では、ヤーンの色差をテクスチャランドマーク又は解剖学的カラースキームと共に使用して模擬膣切開術中にユーザを導くことができる。
【0057】
図2Hには、
図2Gに示すようなコネクタ130と共に成形されるヤーン支持構造を配置する前のヤーン支持構造の形成に関連する様々なステップを示す。なお、(図に示す以外の)ステップの変形も想定されており、適切な場合には以下でその一部を取り上げる。
【0058】
コネクタ金型の形状に対応するヤーン支持構造の特定の形状を提供するために、3次元マンドレルを形成する。マンドレル292などの3次元マンドレルは、ヤーン支持構造が組み立てられている(例えば、編まれている、織られている、束ねられている及び/又は巻かれている)時にヤーンのストランドを適所に保持するように設計される。3次元マンドレルは、2又は3以上の別の2次元コンポーネント290を介して形成することができる。この場合、2次元コンポーネントは、ヤーン支持構造の形状に対応するマンドレル292の3次元形状を形成するように接続される。
【0059】
図2H(1)に示す実施形態では、2次元コンポーネント290が、各コンポーネントの中央を部分的に貫通する対応するスリットを有する。この結果、接着剤を使用することなく2つの対応するコンポーネントが一体になって形状を維持することができる。他の実施形態は、
図2H(2)に示すようなマンドレル292などの3次元マンドレルを形成するように異なる方法で接続される異なる数の別のコンポーネント(2次元又は3次元)を利用することができる。例えば、2次元コンポーネントを互いに接着して3次元マンドレルを形成することもできる。異なる実施形態では、3次元マンドレルを形成するために複数の3次元セクションを互いに積み重ねることができる。さらに、様々な実施形態では、マンドレルが3次元モノリシック構造であることができる。
【0060】
様々な実施形態では、3次元マンドレルの断面が、互いに接続された2つの2次元コンポーネント290によって形成される「プラス記号」である。他の実施形態では、接続時に格子などの3次元マンドレルの異なる断面をもたらす複数の2次元コンポーネントを準備することができる。この形状(及び3次元マンドレルの対応する断面)に基づいて、ヤーンの配置及び/又はヤーン支持構造内に存在するヤーンの量を制御することができる。ヤーン又はファイバ支持構造に含まれるヤーン又はファイバなどの配置及び体積百分率を変更することにより、内部にヤーン又はファイバ支持構造が埋め込まれたコネクタ130の伸縮性及び硬度を調整することができる。
【0061】
様々な実施形態では、3次元マンドレルが形成されると、3次元マンドレル上にヤーンのストランドを配置する。1つの実施形態では、例えば
図2H(3)に示すように、3次元マンドレルに関連する側面(例えば、プラス記号の延長部)の1つの周囲に長手方向にストランドを巻き付ける。様々な実施形態では、例えば
図2H(4)に示すように3次元マンドレルの各側面がヤーンに覆い尽くされるまでこの巻き付けを継続する。
【0062】
様々な実施形態では、3次元マンドレルの各側面が長手方向に覆われた後に、例えば
図2H(5)に示すように3次元マンドレルの全長に沿って3次元マンドレルの断面に沿ってヤーンを巻き付ける。ヤーン支持構造は、完成後にはヤーンの内部配置がヤーンの外層によって取り囲まれるようになる。他の様々な実施形態では、(例えば、ヤーンの水平方向及び長手方向の配置を逆転させ又は交互にする)他の配置も可能であることができる。
【0063】
3次元マンドレル上にヤーン支持構造が形成されると、ヤーン支持構造及び3次元マンドレルを(
図2Gに示すように)金型内に配置してコネクタ130内に鋳造する。様々な実施形態では、コネクタ130を鋳造するために使用する材料が導電性材料であることができる。コネクタ130(及び模擬膀胱子宮頸空間135の下部)の鋳造後には、ヤーン支持構造に関連する様々な露出したファイバが3次元マンドレルと共に存在する場合がある。その状態で放置すると、余分なヤーン及び/又は3次元マンドレル材料がユーザを困惑させて模擬膣切開術の邪魔になる可能性があるため、コネクタ130は使用可能ではあるが理想的ではないと考えられる。コネクタ130の材料が硬化し(これによってヤーン支持構造の大部分が内部に包み込まれ)た時点で、余分なヤーンを除去してコネクタの外面に対応させることができる。
【0064】
余分なヤーンを除去することに加えて、コネクタ130内から3次元マンドレルを除去することもできる。いくつかの実施形態では、3次元マンドレルが複数の2次元又は3次元コンポーネントで形成されている場合、これらの別々のコンポーネントを分解して個別に除去することができる。他の実施形態では、コネクタ130の外面又は外側部分を形成する材料が硬化した時点でコネクタ130の内部から3次元マンドレルを滑り出させるように、3次元マンドレルの周囲にヤーンを配置することができる。いくつかの実施形態では、3次元マンドレルを適所に保持するヤーン支持構造の内部からヤーンの一部を切断することにより、3次元マンドレルを解放して除去できるようにすることができる。
【0065】
様々な実施形態では、3次元マンドレルが除去されると、コネクタ130にさらなる支持/構造を提供するために、ヤーン支持構造の内部をさらなるヤーン又は他の材料で満たすことができる。様々な実施形態では、ヤーン支持構造の内部を空のままにしておくこともできる。
【0066】
様々な実施形態では、コネクタ、模擬膣管及び/又は模擬子宮頸部を懸架するために2又は3以上のコードが使用される。例えば、
図6Bに示すように、遠位側が模擬子宮頸部に接続されたコネクタの異なる地点に各コード(の一端)が接続される(X)。各コードの他端(Y)は異なるアパーチャでループ状になり、コードを模擬骨盤フレームに固定するためにそれ自体に結び付けられる。様々な実施形態では、近位コード及び/又は遠位コードなどのコードの一端が模擬骨盤フレームの第1の壁に取り付けられ又は接続され、コードがコネクタを貫通し又はコネクタに通されて模擬骨盤フレームの第2の又は対向する壁に延び、そこにコードの他端が取り付けられる。様々な実施形態では、隣接する開口部又はアパーチャにコードを通して結び目を作ることによってコードが骨盤フレームの壁に取り付けられる。
【0067】
様々な実施形態では、コードがコネクタの方向と垂直に延び、模擬骨盤フレームのベースと概ね平行な状態を保つ。様々な実施形態では、次にコードの(単複の)自由端を骨盤フレームのアパーチャで「ループ状」にすることにより、コードの自由端が1つのアパーチャを通じて骨盤フレームの内部から退出し、付近のアパーチャを通じて再び骨盤フレームに入り込む。様々な実施形態では、一般に各コードがコネクタ全体の長さに対して互いに等距離に位置し、コネクタの一方の側のコードの位置がコネクタの他方の側を正確に映し出す。内部では、例えば接着剤を使用してコードをそれ自体又はコネクタに付着させることができる。様々な実施形態では、コードの一部をコネクタに通し、及び/又は埋め込むことができる。様々な実施形態では、コードを模擬骨盤フレームに固定するために、アパーチャ付近にコードの結び目を作り又はコードを結び付けることができる。様々な実施形態では、コードの張力/弾性を調整することにより、模擬骨盤フレーム内での模擬子宮頸部の懸架及び動きに同様に影響を与えることもできる。
【0068】
様々な実施形態では、コードが、連続的な長さのファイバ又はフィラメントで形成される。様々な実施形態では、コードがモノフィラメントファイバで形成される。様々な実施形態では、コードがヤーン及び/又はナイロンを含む。様々な実施形態では、コードが柔軟であることにより、それ自体の屈曲、湾曲及び/又は動きを可能にする。様々な実施形態では、コードが断裂耐性を有する。様々な実施形態では、コードが、コネクタ、模擬子宮頸部及び/又は模擬膣管よりも大きな引張強度、長手方向強度及び/又は横方向強度を有する。様々な実施形態では、模擬骨盤フレーム又はその一部がコードよりも剛性であり、及び/又は高い引張強度を有する。様々な実施形態では、コードがヤーン支持構造に組み込まれ、取り付けられ、及び/又はヤーン支持構造から延び、及び/又はヤーン支持構造のヤーン又はファイバのモノリシックな延長部又は連続部であることができる。
【0069】
様々な実施形態では、模擬骨盤フレームが、他の位置(例えば、
図4Cに示すような模擬骨盤フレーム壁の外面Bの側面)に複数の他のアパーチャを含むことができる。これらのアパーチャは、本開示では説明していない他のさらなる臓器又は組織を同様に懸架するために使用することもできるが、後から追加することによって本膣切開モデルを他の模擬外科手術に使用できるようにすることもできる。これらのアパーチャは、骨盤フレームを外科訓練装置に固定するために使用することもできる。様々な実施形態では、これらの他のアパーチャのうちの1つ又は2つ以上を使用して模擬子宮頸部及びその他のコンポーネント(例えば、模擬膣管)を懸架することができ、従って図示のアパーチャの一部を除去し/含めないこともできる。
【0070】
図4Dには、膣切開モデルの上部を示す。様々な実施形態では、この膣切開モデルのビューから、模擬膣口の一部が、模擬膣管及び模擬子宮頸部の上方に位置する模擬骨盤フレームの上部を横切って配置され、様々な実施形態では密閉空間に関与し及び/又は密閉空間を形成することが分かる。様々な実施形態では、この模擬膣口の部分に接地パッドを付着させ、又は別様に取り付けることができる。
【0071】
また、この膣切開モデルの上面図からは、模擬骨盤フレームの全体的形状のビューを見ることができる。具体的には、模擬骨盤フレームは、一般に遠位端の方が近位端よりも広いことに対応する円錐形又は円錐台形を有する。さらに、模擬骨盤フレームは、ベースに垂直な2つの側壁を有する。模擬骨盤フレームの(2つの側壁間の)内部は、遠位端と近位端との間で概ね開放されている。
【0072】
様々な実施形態では、模擬骨盤フレームの上部が、ベースと平行であって模擬骨盤フレームの内部を少なくとも部分的に覆うトップカバーを含むことができる。トップカバーは、模擬膣口及び/又は接地パッドを膣切開モデルの内部コンポーネントの上方の位置に固定するために使用することができる。
【0073】
図5に、模擬骨盤フレーム内に配置された膣切開モデルの内部コンポーネントを示す。具体的には、この図には、模擬腹膜層が膣切開モデルの内部コンポーネントを不明瞭にしない遠位端から見た膣切開モデルの実施形態を示す。様々な実施形態では、模擬腹膜層が取り外し可能かつ交換可能である。
【0074】
様々な実施形態では、ユーザが模擬膣管内で模擬子宮頸部を把持して動かすことに応答して模擬子宮頸部が前後に動くようにするために、コードが所定の態様で配置される。図示のように、コードは、一般にコネクタの両側で同じ間隔を有するようにコネクタに取り付けられる。また、コードは、模擬骨盤フレームのベースと実質的に平行に配置される。さらに、コードは、模擬骨盤フレームのベースの上方の所定の高さ、及び/又はフレーム内での及び/又は膣切開モデルの他の部分に対する動きをコネクタが維持するように、所定の張力及び/又は弾性を有する。
【0075】
様々な実施形態では、
図5に示すように、膣切開モデルが、例えば遠位側が模擬子宮頸部に接続されたコネクタの端部に、膣切開モデルに取り外し可能に取り付けられた接地ケーブルを含むこともでき、ケーブルの別の端部は、電気外科発電機に取り外し可能に取り付けられる。膣切開モデルが冷間切開装置(cold-cutting devices)のみを介して使用される(すなわち、電気手術ではない)場合には、接地ケーブルを除去し、及び/又は接地パッドをモデルに取り付けず又は接触させないことができる。
【0076】
様々な実施形態では、ケーブル及び/又はポートを、電気外科エネルギーを管理するために使用される他のケーブル及び/又はポートを受け取るように適合される膣切開モデルの一部に関連付けることができる。ケーブル及び/又はポートの特徴は、膣切開モデルの一部として鋳造することができる。
【0077】
接地ケーブルは、それ自体が模擬子宮頸部の動きを妨げ、さらには模擬膣管の「ローリング」がどこで発生するかを識別するユーザの能力に影響を与える恐れがあるため、様々な実施形態では、接地ケーブルをコネクタに取り付けることが望ましくない場合もある。また、患者内部での接地ケーブルの使用は、電気外科手術の実行中における従来の電気外科エネルギーの管理の典型的な表現ではない。
【0078】
接地ケーブルを使用する代わりにコネクタに取り外し可能な接地パッドを直接取り付ける別の実施形態も想定されている。しかしながら、上述した接地ケーブルの使用と同様に、模擬子宮頸部の懸架及び関連する動きに影響が及ぶ恐れがある。
【0079】
様々な実施形態では、模擬膣口の一部(例えば、トップカバー)の選択が、電気的接続のための十分な領域をもたらす。従って、接地パッドは、膣切開モデルの他の部分(例えば、模擬子宮頸部/膣管の動き、及び/又はユーザの気を散らす動き)に対するユーザ操作を妨げないように、このような位置としての実装が望ましいと考えられる。
【0080】
図7A~
図7Eを参照しながら、(上述した)膣切開術の様々なステップを膣切開モデルの使用に関連して説明する。
図7Aでは、ユーザが、模擬膣管内のどこに切開部を配置すべきであるかを識別するために、(模擬膣管内に位置する)模擬子宮頸部を前後に把持/操作しながら同時に模擬膣管の主開口部を後退させることができる。切開部の位置は、誤って望ましくない組織及び/又は臓器(子宮頸部、子宮、膀胱など)に入り込まないようにするために有用である。一般に、関心点は、模擬膣管が滑らかである領域内の模擬膣管の襞を越えたところに位置する。
図7Bに示すような襞は、模擬膣管内の連続する隆起部に対応する。子宮頸部を動かすと、模擬子宮頸部の付近の組織が凹状になる場所に対応する膣管の組織の一部がローリングする。膣管の組織がローリングする地点は、切開が行われる場所である。
図7Cには、ユーザが模擬子宮頸部付近の模擬膣管の組織を切開するシナリオ例を示す。このように静止した又は容易に動かせない又は操作可能でない模擬子宮頸部は、切開のための標的領域の識別が全く可能ではないとしても困難である可能性があるため、膣管内の標的領域の識別にとって理想的ではない。
【0081】
ユーザは、切開地点を識別した後に模擬膣管の膣粘膜を切開する。ユーザは、
図7Dに示すように、模擬膣管の切開部を越えて模擬膀胱子宮頸空間に進入する。その後、ユーザは、模擬膀胱子宮頸空間を切開し始める。
【0082】
図2Dに示すように、模擬膀胱子宮頸空間は、模擬腹膜に向かって膣切開モデルの遠位部分につながる、ユーザがたどる分離面を有する。この模擬膀胱子宮頸空間の分離面は、鈍的切開を使用して分離可能な層を有する。
図7Fは、ユーザが分離面を切開している様子を示す図である。界面材料(例えば、シリコーングリース)が配置された領域では、2つの層が部分的に、一時的に及び/又は除去可能にしか付着しておらず、鈍的切開を使用して剥離することができる。界面材料が存在しない部分では、2つの層が一体になって、鋭的切開(例えば、スニッピング(snipping))でしか分離できない(隔壁に相当する)凝集帯(cohesive strip)を形成する。部分的に付着した2つの層を分離する際の剥離動作は、人体構造における対応する領域の組織を分離する感触に対応する。
【0083】
ユーザは、模擬膀胱子宮頸空間から出た後に、模擬腹膜層上に位置する模擬腹膜反転部(
図1Aを参照)の位置を識別しようと模索する。模擬腹膜反転部は、一般に模擬腹膜層内の凸状の(例えば、それ自体に部分的に折り重なった)地点に対応する。識別されると、ユーザは、模擬腹膜反転部に切開部を形成して模擬腹膜層の先に位置する模擬腹膜腔にアクセスするように指示される。例えば、
図7Eにこの切開の完了を示す。
【0084】
様々な実施形態では、外科訓練装置10が、患者内で行われる腹腔鏡外科手術をシミュレートする目的で1又は2以上の模擬組織、臓器又はモデルを受け取るように構成される。本出願の文脈では、
図8を参照すると、外科訓練装置10が、上述した膣切開モデルを受け取るように構成されている。
図8は、例示的な外科訓練装置の上面斜視図である。外科訓練装置10は、腹腔鏡手術又はその他の低侵襲性外科手術の練習に特に適している。その理由は、外科訓練装置10が患者の胴体/腹部領域などの腹腔鏡処置に関連する条件をシミュレートするように構成されているからである。腹腔鏡処置に関連する条件のシミュレーションを容易にする1つの特徴は、外科訓練装置10内に収容された練習対象の模擬組織、モデル臓器及び/又は訓練モデルをユーザから直接見えにくいように外科訓練装置10を設定できる点である。
【0085】
引き続き
図8を参照すると、外科訓練装置10は、本発明において説明した模擬組織、モデル臓器及び/又は訓練モデルを受け取るように構成された、ユーザから実質的に隠された体腔12を提供する。いくつかの実施形態では、体腔12内に配置されていることが分かっている模擬組織、モデル臓器及び/又は訓練モデルに対して外科技術を練習するために外科器具(例えば、腹腔鏡器具)を使用するユーザによって貫通される組織模擬領域14を介して体腔12にアクセスすることができる。様々な実施形態では、体腔12にアクセスするために代わりに採用されるハンドアシスト式アクセス装置(hand-assisted access device)又は単一部位ポート装置(single-site port device)を通じて体腔12にアクセスすることもできる。様々な実施形態では、組織シミュレーション領域14及びハンドアシスト式アクセス装置又は単一部位ポート装置の両方を介して体腔12にアクセス可能であることができる。2011年9月29日に出願された「ポータブル腹腔鏡訓練機(Portable Laparoscopic Trainer)」という名称の米国特許出願シリアル番号第13/248,449号に例示的な外科訓練装置が記載されており、この文献はその全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0086】
外科訓練装置10は、体腔12をユーザから隠すために、少なくとも1つの脚部20によってベース20に接続されてベース20から間隔を空けたトップカバー16を有するように設計される。様々な実施形態では、外科訓練装置10が1又は2以上の脚部20を有することができる。外科訓練装置10は、トップカバー16、ベース20及び少なくとも1つの脚部20を使用して、体腔12がユーザの直接的な視界から隠れた腹腔鏡条件をシミュレートするように構成される。このような腹腔鏡条件は、腹部領域などの患者の内部(例えば、体腔)に存在する組織又は臓器をユーザ(例えば、外科医)が手術することに関連する処置に対応することができる。従って、外科訓練装置10は、外科手術を受ける患者をシミュレートすることによって関連する外科器具を用いた外科手術の指導、練習及び実演を行うための有用なツールである。
【0087】
上述したように、手術器具は、外科訓練装置10のトップカバー16内に配置されたハンドアシスト式アクセス装置又は単一部位ポート装置を介して、1又は2以上の組織シミュレーション領域14及び予め定められたアパーチャ22を通じて体腔12内に挿入される。上面カバー16に予め開口部を形成しておくこともできるが、体腔12にアクセスするために様々な手術器具及び技術を使用して上面カバー16を貫通することによって外科手術のさらなるシミュレーションを可能にすることもできる。ユーザは、体腔12内に入ると、トップカバー16とベース18との間の体腔12内に位置する模擬組織、臓器又はモデルを使用して模擬外科手術を実行することができる。
図9Aに、膣切開術の指導、練習及び実演のために設計された(本出願において上述したような)膣切開モデルを収容するために使用される外科訓練装置10の実施形態例を示す。
【0088】
再び
図8を参照すると、様々な実施形態では、外科訓練装置10の使用中に模擬組織、臓器又はモデルが動かないことを確実にするために、模擬組織、臓器又はモデルが、トップカバー内に配置された組織模擬領域14又はアパーチャ22のうちの1つ又は2つ以上の下方に固定される。体腔12内に配置された1又は2以上の模擬組織、臓器又はモデルを固定するために、ベース18は、模擬組織、臓器又はモデルを外科訓練装置10内の適所に載置又は固定するように構成されたモデル収容エリア24又はトレイを有するように設計することができる。様々な実施形態では、ベース18のモデル収容エリア24が、模擬組織、臓器又はモデルを適所に保持するためのフレーム様要素を含むことができる。フレーム様要素は、模擬組織、臓器又はモデルの少なくとも一部(例えば、底部)と連動して、外科訓練装置10の使用中に模擬組織、臓器又はモデルが動いたり又は変位したりするのを防ぐ。様々な実施形態では、フレーム様要素が複数の異なるタイプの模擬組織、臓器又はモデルを受け入れるように構成されるので、模擬組織、臓器又はモデルが取り外し可能であるとともに、他の模擬組織、臓器又はモデルと交換可能である。
【0089】
引き続き
図8を参照すると、他の実施形態では、格納可能ワイヤに取り付けられたクリップを介して模擬組織、臓器又はモデルを固定することもできる。具体的には、格納可能ワイヤ及びクリップは、モデル収容エリア24に関連する体腔12内の様々な位置(例えば、26)に設けることができる。格納可能ワイヤは、模擬組織、臓器又はモデルにクリップが取り付けられるのを可能にするために様々な位置(例えば、26)から伸長可能である。この結果、格納可能ワイヤが緊張することによって模擬組織、臓器又はモデルを固定することができる。同様に、様々な実施形態では、格納可能ワイヤ及びクリップが、ベース18と模擬組織、臓器又はモデルとの間の取り外し可能な接続も可能にする。格納可能ワイヤ及びクリップは、各模擬組織、臓器又はモデルが異なるサイズ及び形状を有することができる体腔12内に様々な異なる模擬組織、臓器又はモデルを固定するように適合される。
【0090】
模擬組織、臓器又はモデルを体腔12内に固定するための他の手段も想定される。例えば、模擬組織、臓器又はモデルは、模擬組織、臓器又はモデルをベース18に取り外し可能に接続できるVELCRO(R)などのフックアンドループタイプの締結材料のパッチを使用してベース18に固定することもできる。他の実施形態では、ベース18と模擬組織、臓器又はモデルとの間の取り外し可能な接続をもたらさない他の取り付け方法を利用することができる。例えば、接着剤を使用して、ベース18と模擬組織、臓器又はモデルとの間に容易に取り外しできないさらなる接続をもたらすこともできる。
【0091】
様々な実施形態では、外科訓練装置10と共にビデオディスプレイモニタ28が提供される。例えば、ビデオディスプレイモニタ28は、トップカバー16にヒンジ結合されて、少なくとも2つの異なる配向、すなわちビデオディスプレイモニタ28が隠れる閉じた配向と、ユーザがビデオディスプレイモニタ28を見ることができる開いた配向とを有することができる。様々な実施形態では、ビデオディスプレイモニタ28をトップカバー16から分離する一方で、依然として外科訓練装置10に通信可能に接続することができる。
【0092】
様々な実施形態では、ビデオディスプレイモニタ28が、ビデオディスプレイモニタ28に画像を配信する様々な視覚システムに通信可能に接続される。例えば、予め定められたアパーチャ22のうちの1つを通じて挿入される腹腔鏡、又は体腔12内に配置された画像取り込み装置(例えば、ウェブカム)を、ユーザによって実行される模擬手術の画像を取り込み、ユーザが外科訓練装置10内の領域を見ることができるように、取り込まれた画像をビデオディスプレイモニタ28及び/又はその他のコンピュータ装置(例えば、デスクトップ、モバイル装置)に転送するように構成することができる。様々な実施形態では、視覚データと組み合わせてビデオディスプレイモニタ28上に表示できる音声データなどの他のタイプのデータを取り込むために、外科訓練装置10と共に他の装置(例えば、マイク、センサ)を使用することもできる。
【0093】
外科訓練装置10は、実演を目的とする模擬外科手術の記録及び/又は外科訓練装置10から取得されたデータのモニタ上での再生をさらに容易にする、フラッシュドライブ、スマートフォン、デジタルオーディオ又はビデオプレーヤ、或いはその他のデジタルモバイル装置などのポータブルメモリストレージデバイスを受け取るように構成することができる。様々な実施形態では、外科訓練装置10から取得されたオーディオビジュアルデータを表示するために使用できるさらなる又は別の(例えば、より大型の)オーディオビジュアル装置を外科訓練装置10に接続することができる。様々な実施形態では、外科訓練装置10を、外科訓練装置10から取得されたデータを受け取って他の人物に見えるようにデータを表示するように構成された異なるコンピュータ装置(例えば、デスクトップ、ラップトップ、モバイル装置)に通信可能に(例えば、有線又は無線で)接続することができる。このような実施形態は、ビデオディスプレイモニタ28を含まない外科訓練装置10の変形例において有用であることができる。
【0094】
図8に示すように、トップカバー16は、ベース18の実質的に周辺部に沿って配置された1又は2以上の脚部20を使用して、一般にベース18を直接覆って配置される。脚部20は、トップカバー16とベース18との間を相互接続する。1又は2以上の脚部20が存在する実施形態では、各脚部が互いに等距離で離間し、トップカバー16をベース18の上方の適所に保持する構造的支持体として機能することができる。様々な実施形態では、トップカバー16及びベース18が実質的に同じ形状及びサイズであり、実質的に同じ周辺輪郭を有する。様々な実施形態では、形状が患者の胴体/腹部領域などの人体構造の形状に対応することができる。
【0095】
様々な実施形態では、トップカバー16、ベース18及び1又は2以上の脚部20の配置に応じて体腔12をユーザの視野から部分的又は全体的に隠すことができる。いくつかの変形例では、脚部20が、体腔12が周囲光によって照らされるようにするともに外科訓練装置10全体の軽量化をもたらすために開口部を含むことができる。また、脚部20に関連するアパーチャは、ユーザが外科訓練装置10の体腔12内を視認し、及び/又はアクセスするのを可能にすることができる。
【0096】
様々な実施形態では、トップカバー16が1又は2以上の脚部20から取り外し可能である。また、様々な実施形態では、各脚部がベース18に対して取り外し可能又は折り畳み可能である。これらの特徴は、ユーザが外科訓練装置10を低い高さの持ち運び可能な形態に変換できるようにする。
【0097】
上述したように、外科訓練装置10は、患者内で行われる外科手術をシミュレートするのに有用な腹腔鏡条件をシミュレートする目的で、膣切開モデルを受け取るように構成される。
図9Aに示すように、外科訓練装置10の実施形態は、膣切開モデルを収容するために使用されている。上述したように、膣切開モデルは、外科医などのユーザが関連する解剖学的ランドマークを識別することにより、示されたものに基づいて膣切開術の実行方法を学習できるように設計される。さらに、膣切開モデルは、ユーザと膣切開モデルとの相互作用に対し、実際の膣切開術の実行時に発生すると思われる応答と同様のフィードバック及び/又は応答を提供するように設計される。
【0098】
様々な実施形態では、膣切開モデルが、電気外科装置だけでなく非電気外科装置などの冷間切断装置と適合するようにも設計される。従って、膣切開モデルは、電気外科手術、非電気外科手術、又はこれらの組み合わせをシミュレートするために使用することができる。
【0099】
図9Bに、膣切開術のシミュレーションに利用されながら膣切開モデルを収容する外科訓練装置10の実施形態を示す。具体的には、ユーザは、外科訓練装置10内の膣切開モデルを使用して異なる外科的タスクを行うために異なる手術器具(例えば、腹腔鏡、把持器、切開器)を利用して膣切開術を行う。例えば、1又は2以上の手術器具を使用して、外科訓練装置10内に配置された膣切開モデルの視覚をもたらすことができる。さらに、1又は2以上の器具を使用して、以下に限定するわけではないが、必要とされる切開をどこで行うべきかを識別するために膣切開モデルの部品を動かし、所望の場所で切開を行うことを含む、膣切開モデルの様々な特徴を操作することができる。
【0100】
様々な実施形態によれば、本明細書では、ユーザに膣切開術の実行方法を教示してその練習を可能にするように設計されたモデルを説明する。本開示は、膣切開モデルの様々な実施形態について説明する。
【0101】
様々な実施形態によれば、膣切開モデルは、模擬膣口、模擬骨盤フレーム、模擬膣管、模擬子宮頸部、模擬膀胱子宮頸空間、模擬腹膜層、コネクタ、及び/又は模擬膀胱を含む。さらなる実施形態では、ユーザが模擬膀胱を膨張させることができるように、模擬膀胱に充填チューブ及びポンプを接続することができる。
【0102】
様々な実施形態では、膣切開モデルが電気外科シミュレーションに適合することができる。従って、膣切開モデルは、模擬膣口、模擬膣管、模擬子宮頸部、模擬膀胱子宮頸空間、模擬腹膜層、コネクタ及び/又は模擬膀胱などの導電性材料を含む1又は2以上の特徴を有することができる。さらに、1又は2以上の特徴は、模擬骨盤フレームなどの非導電性材料を含むこともできる。また、膣切開モデルは、電気外科シミュレーションで使用される電気外科エネルギーを管理するのに有用な接地要素をさらに含むことができる。様々な実施形態では、接地要素が、模擬膣口の一部に取り付けられた接地パッドであることができる。様々な実施形態では、接地要素が、コネクタなどの膣切開モデルの別の部分に取り付けられた接地ケーブルであることができる。
【0103】
様々な実施形態では、模擬骨盤フレームが膣切開モデルの内部特徴を収容する。様々な実施形態では、模擬骨盤フレームが、模擬骨盤フレームの近位端の方が模擬骨盤フレームの遠位端よりも狭いような円錐形又は円錐台形を有する。様々な実施形態では、模擬骨盤フレームが、複数のアパーチャ(又は開口部)を有する少なくとも2つの側壁を有する。少なくとも2つの側壁は、模擬骨盤フレームのベースに垂直である。様々な実施形態では、模擬骨盤フレームの内部が、少なくとも2つの側壁間で概ね開放されている。いくつかの実施形態では、模擬骨盤フレームが、側壁の反対端においてベースから間隔を空けたカバーを有することができる。カバーは、模擬骨盤フレームの内部空間の一部を概ね取り囲むことができる。様々な実施形態では、カバーを、模擬膣口及び/又は接地パッドを取り付けて保持するために使用することができる。
【0104】
様々な実施形態では、膣切開モデルが、模擬骨盤フレームの近位端を取り囲む模擬膣口を含む。模擬膣口は、模擬膣管へのアクセスを提供する少なくとも1つの開口部を有する。様々な実施形態では、模擬膣口が、接地パッドを受け取ることによって膣切開モデルを電気外科器具と適合するように構成するよう適合された部分を含む。様々な実施形態では、模擬膣口内に支持のための中綿が埋め込まれる。
【0105】
様々な実施形態では、模擬膣管が2つの異なるセクションを含む。模擬膣管の第1のセクションは、隆起部を介して表される複数の襞を有する。第1のセクションは、模擬膣管の近位端から開始して第2のセクションの開始地点で終端する。模擬膣管の第2のセクションは滑らかである(すなわち、隆起部を有していない)。第2のセクションは、模擬膣管の遠位端から模擬膣管によって定められる内部空間内に延びる模擬子宮頸部付近に位置する。様々な実施形態では、模擬膣管が、開放された近位端と、模擬子宮頸部が取り付けられ及び/又は貫通する遠位端とを有する管状又は円筒状である。様々な実施形態では、模擬膣管が、模擬膣管の長さ全体にわたって配置された山及び谷をもたらす複数の円周方向隆起部を含む。
【0106】
様々な実施形態では、模擬子宮頸部の近位端が模擬膣管の内部空間内に延びる。様々な実施形態では、模擬子宮頸部の近位端がドーム形又は半球形であり、遠位側が管状又は円筒状に延びる。模擬子宮頸部の遠位端は、1又は2以上のコードを受け取るように構成されたコネクタに接続され、又はコネクタ内に形成される。コネクタ及び1又は2以上のコードは、模擬子宮頸部を懸架して模擬子宮頸部の前後の動き(例えば、「ローリング」運動)を可能にするために設けられる。様々な実施形態では、模擬子宮頸部が「ローリング」すると、模擬膣管の一部がそれ自体に反転する(例えば、折り重なる)。模擬子宮頸部付近の模擬膣管に関連する組織の反転は、後述するモデルの他の部分にアクセスするためにユーザが切開を行う領域に対応する。
【0107】
様々な実施形態では、コネクタ又は支持体の遠位側が、模擬子宮頸部に接続又は一体化される。コネクタは、模擬子宮頸部から膣切開モデルの遠位端に向かって延びる。様々な実施形態では、コネクタが、模擬子宮頸部を懸架してその弾性的な動き及び/又は緊張などの動きを容易にするように設けられる1又は2以上のコードに接続されるように構成される。様々な実施形態では、コードをコネクタに通すことができる。コードは、模擬骨盤フレームのベースに比べて平行に延びる。コードは、模擬子宮頸部の懸架及び/又は動きをもたらすために、模擬骨盤フレームの側壁と連動するように構成される。様々な実施形態では、コードが、模擬骨盤フレームの側壁に関連するアパーチャで「ループ状」になる。様々な実施形態では、1又は2以上のコードをコネクタに通す際に有用な支持をもたらす補強マトリックスがコネクタに埋め込まれる。様々な実施形態では、コネクタが接地ケーブルを受け取るように構成される。
【0108】
様々な実施形態では、ケブラー又はメッシュで形成された補強マトリックス又はスリーブがコネクタに埋め込まれる。他の実施形態では、コネクタをヤーン又はファイバ支持構造で構成することができる。ヤーン支持構造は、ヤーンのストランドを3次元マンドレルに巻き付けることによって形成される。ヤーン支持構造は、3次元マンドレルの周囲に配置された時点でコネクタと並んで/コネクタ内で鋳造することによってヤーン支持構造を埋め込む。余分なヤーン及び3次元マンドレルは、材料の硬化後に除去することができる。埋め込まれた補強マトリックス、スリーブ、ヤーン又はファイバ支持構造は、コネクタに様々な度合いの引張耐性/伸縮性、及び硬度をもたらす。
【0109】
様々な実施形態では、模擬膀胱子宮頸空間が少なくとも2つの層を含む。層間の様々な位置には、これらの位置で層を互いに部分的に付着させるシリコーングリースなどの界面材料が提供される。これらの位置は、鈍的切開を使用して剥離できる切開面にも対応する。シリコーングリースなどの界面材料が提供されない位置では、層が互いに付着して(1又は2以上の膀胱膣中隔に対応する)凝集帯又は凝集部分を形成する。ユーザは、模擬腹膜層に到達するために、模擬膀胱膣腔を切開面に沿って切開する。様々な実施形態では、膀胱膣中隔が、模擬膣管付近の模擬膀胱子宮頸空間の一端から、模擬腹膜層付近の模擬膀胱子宮頸空間の他端に延びることができる。
【0110】
様々な実施形態では、模擬膀胱子宮頸空間を、模擬膀胱子宮頸空間の下部をコネクタ上に鋳造する第1のステップと、及び模擬膀胱子宮頸空間の上部を模擬膀胱子宮頸空間の下部上に鋳造する第2のステップとを含む2つの別々のステップとして鋳造することができる。他の実施形態では、模擬膀胱子宮頸空間の下部をコネクタと共に鋳造し、後続のステップで上部を下部上に鋳造することもでき、後者の実施形態では別々の鋳造ステップが排除又は回避される。
【0111】
様々な実施形態では、模擬膣口、模擬膣管、模擬子宮頸部及びコネクタ、並びに模擬膀胱子宮頸空間が、単一のモノリシック構造として鋳造される。様々な実施形態では、同じ要素を別々のコンポーネントとして鋳造し、例えば接着剤を使用して共に組み立てることができる。
【0112】
様々な実施形態では、模擬腹膜層が、少なくとも模擬骨盤フレーム、模擬膀胱、及び遠位側が模擬子宮頸部に接続されたコネクタに接続された膣切開モデルの遠位端に配置される。模擬腹膜層の一部は、模擬膀胱及び/又はコネクタの動きに基づいて、ユーザが切開部を形成する模擬腹膜層の地点に対応して反転することができる。様々な実施形態では、模擬腹膜層が導電性材料を含む。
【0113】
様々な実施形態では、実際の膣切開術中の生理食塩水による膀胱の膨張を再現するように、模擬膣切開術中に膨張するように構成された模擬膀胱が設けられる。模擬膀胱は、模擬膀胱に接続された充填チューブ及びポンプを使用して膨張する。ユーザは、模擬膀胱に空気を満たすことによって模擬膀胱を膨張させるためにポンプを使用することができる。
【0114】
様々な実施形態では、模擬膀胱を、膣切開術中の膀胱の膨張をシミュレートするために使用される空気などを受け取るように構成された可膨張構造又はエンベロープとして鋳造することができる。様々な実施形態では、模擬膀胱が、可膨張構造内に挿入されたバルーン、或いは充填可能又は膨張可能な容器を含むことができる。バルーンは、膀胱の膨張をシミュレートするために使用される空気などのための気密性又は空気不透過性の容器を提供する。様々な実施形態では、模擬膀胱が、模擬膀胱の上部に追加材料を含むことができる。(内部に埋め込まれた、又は別様に取り付けられた)追加材料は、模擬膀胱の膨張に関連する抵抗をもたらすことにより、模擬膀胱の方向を追加材料の配置方向とは逆方向に向ける。
【0115】
様々な実施形態では、膣切開モデルが、外科訓練装置内に受け取られて収容されるように構成される。外科訓練装置は、腹腔鏡条件をシミュレートすることによって、ユーザが腹腔鏡下で膣切開術をシミュレートすることを可能にする。様々な実施形態では、外科訓練装置が、ユーザの視界から概ね隠れた内部空間を定めるために使用されるベース、カバー及び1又は2以上の脚部を含む。様々な実施形態では、外科訓練装置内部の視聴覚データを取り込むために、腹腔鏡ツール、センサ、又は画像取り込み装置が使用される。外科訓練装置内部から取り込まれた視聴覚データがユーザに見えるようにするディスプレイ画面、又はその他の接続されたコンピュータ装置も提供される。
【0116】
いくつかの特定の態様において本発明を説明したが、当業者には多くのさらなる修正及び変形が明らかであろう。従って、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、サイズ、形状及び材料の様々な変更を含む具体的に説明したもの以外の形で本発明を実施することもできると理解されたい。例えば、当業者であれば、これらの例を使用して、本開示全体を通じて説明した外科訓練システムの主要機能を保持する様々な異なる実装を導出できるはずである。実施形態の一部は、構造的ステップ及び/又は方法関連のステップに特化した説明を利用しているが、このような主題は必ずしも詳細内容に限定されるものではないと理解されたい(例えば、特徴の機能は、複数のコンポーネントにわたって異なる形で分散させることも、或いは上記で明確に識別したものとは異なるコンポーネントの組み合わせで実行することもできる)。従って、本発明の実施形態は、全ての態様が例示的なものであって限定的なものではでないとみなすべきである。
【0117】
上記の説明は、当業者による装置又はシステムの作製及び使用、並びに本明細書で説明した方法の実行を可能にするように行ったものであり、本発明を実行する発明者らが検討する最良の形態を記載したものでもある。しかしながら、当業者には様々な修正が明らかなままであろう。これらの修正は、本開示の範囲に含まれるように企図される。本明細書全体を通じて、異なる実施形態又はこのような実施形態の態様を様々な図に示して説明することができる。しかしながら、単独で図示又は説明した各実施形態及びその態様は、別途明示していない限り、他の実施形態及びその態様のうちの1つ又は2つ以上と組み合わせることもできる。各組み合わせを明示していないのは、本明細書の可読性を容易にするためにすぎない。
【符号の説明】
【0118】
100 膣切開モデル
105 模擬膣口
110 模擬骨盤フレーム
115 模擬膣管
120 模擬子宮頸部
125 コード
130 コネクタ
135 模擬膀胱子宮頸空間
140 模擬腹膜層
150 模擬膀胱
155 充填チューブ
160 ポンプ
【国際調査報告】