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特表2024-538807金属コート層付き燃料電池用分離板、及び、その製造方法
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  • 特表-金属コート層付き燃料電池用分離板、及び、その製造方法 図1
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  • 特表-金属コート層付き燃料電池用分離板、及び、その製造方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】金属コート層付き燃料電池用分離板、及び、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20241016BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20241016BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20241016BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0206
H01M8/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523788
(86)(22)【出願日】2022-11-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2022017131
(87)【国際公開番号】W WO2023080675
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10-2021-0150245
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510307299
【氏名又は名称】ヒュンダイ スチール カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】イム、ヒョンウク
(72)【発明者】
【氏名】キム、クンホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、クァンソ
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジェホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヨンス
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD05
5H126DD14
5H126EE45
5H126GG02
5H126GG08
5H126GG12
5H126HH01
5H126HH04
5H126JJ08
5H126JJ10
(57)【要約】
本発明の一側面による車両用燃料電池の金属分離板の製造方法は、母材を準備するステップ;前記母材に白金(Pt)を含むコート剤、及び、電解液を適用し、不連続的なコート膜を形成するステップ;及び、コート膜付き母材を熱処理するステップ;を含むことを特徴とする車両用燃料電池の金属分離板の製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材を準備するステップ;
前記母材に、
白金(Pt)を含むコート剤、及び、電解液を適用し、不連続的なコート膜を形成するステップ;及び、
コート膜付き母材を熱処理するステップ;
を含むことを特徴とする車両用燃料電池の金属分離板の製造方法。
【請求項2】
前記コート剤は、金(Au)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、酸化ルテニウム(RuO)、及び、酸化イリジウム(IrO)からなる群から選択される少なくとも一つをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用燃料電池の金属分離板の製造方法。
【請求項3】
前記母材は、ステンレス鋼板、チタニウムまたはアルミニウムである請求項1に記載の車両用燃料電池の金属分離板の製造方法。
【請求項4】
前記コート膜形成ステップは、電解メッキ、無電解メッキ、または、PVD工程のいずれか一つでなる請求項1に記載の車両用燃料電池の金属分離板の製造方法。
【請求項5】
前記コート剤に含まれる白金(Pt)として、塩化白金酸(HPtCl)または塩化白金酸カリウム(KPtCl)が含まれる請求項1に記載の車両用燃料電池の金属分離板の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理ステップは、80~600℃の温度範囲、及び、10~180分の時間範囲で行われることを特徴とする請求項1に記載の車両用燃料電池の金属分離板の製造方法。
【請求項7】
前記熱処理ステップは、真空状態、大気中及び酸素雰囲気中のいずれか一つの条件で行われることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池用の金属分離板の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法で製造される車両用燃料電池の金属分離板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コート層付き燃料電池用分離板、及び、その製造方法に関し、より詳しくは、白金及び貴金属を活用しての不連続的なコート層付き燃料電池用分離板、及び、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素電気に使用される燃料電池は、反応ガスと触媒との電気化学反応で電気を生成する動力源として活用される。燃料電池の電池本体(stack)は、膜電極接合体(membrane electrode assembly、MEA)、分離板(separator、bipolar plate)、ガスケット(gasket)、集電体(current collector)、エンドプレート(end plate)などの部品が連結される構造を有し、そのうち、前記膜電極接合体(MEA)は、高分子電解質膜を介して、触媒層とガス拡散層(gas diffusion layer、GDL)とからなるガス拡散電極(gas diffusion electrode, GDE)が両側に接している構造からなる。
【0003】
燃料電池用金属分離板は、燃料電池の本体を構成する部品の一つであって、単位電池セルの水素極と隣接セルの空気極とに電気的に接触し、水素と空気とは、前記分離板の両面の流路(fluid flow channel)を介して各電極の内部に供給される。よって、燃料電池の金属分離板は、電気化学反応で生成される電気を収集及び伝達し、電気の伝導、電気反応で形成される水の排出、電池内部の熱管理の核心的な役割を行う。
【0004】
分離板の母材としては、ステンレス鋼、チタニウム合金、アルミニウム合金ないし高分子複合素材など、その自体として優れた電気伝導性を有する素材が使用されるが、金属の特性上、分離板が、高温多湿な車両用燃料電池の作動環境に長時間で露出したとき、腐食が促進され、表面に生成される金属酸化物が電気絶縁体として作用し、伝導性の低下または触媒の汚染などにより、燃料電池全般の性能の低減が発生することとなる。
【0005】
このような不都合を防止するため、金属分離板の母材の表面に高分子、カーボン、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)などを含む様々の貴金属材料を含む不連続的なコート膜を形成することにより、耐食性を確保し、伝導性を改善しようとする研究が続いてきているが、実質的には、金(Au)ナノコート膜を使用するコート膜が主流とされている。しかしながら、持続的な金(Au)の価格の上昇による代替のコート膜の開発の必要性が台頭している。
【0006】
ひいて、母材の表面に不連続的な白金(Pt)コート膜が形成され得るという実験ないし研究は、既に存在してきていたが、工程の効率性と、白金を使用するコート膜の適用に当たって目立った意義を示す結果物は、十分でないのが実情である。
【0007】
不連続的なコート膜が適用される場合、分離板の母材の表面の一部が外部に直接露出することとなるが、高い出力と長い耐久性とを要する将来の燃料電池スタックの場合、新規なコート材のコート均一性による性能の確保と、メッキされた電極体の安定性の検証とに、多くの財源が必要とされるにもかかわらず、過酷な環境において使用されても、優れた伝導性、化学的安定性を有するコート技術が求められている。
【0008】
関連した技術としては、韓国公開特許第10-2015-0138105号公報(公開日:2017.04.07.、発明の名称:固体酸化物燃料電池の金属分離板用コート組成物、及び、その製造方法)がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、耐食性、接触抵抗に優れており、かつ、生産効率に優れている車両用燃料電池の金属分離板、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面による車両用燃料電池の金属分離板の製造方法は、母材を準備するステップ;前記母材に白金(Pt)を含み、金(Au)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、酸化ルテニウム(RuO)、及び、酸化イリジウム(IrO)からなる群から選択される少なくとも一つをさらに含むコート剤、及び、電解液を適用し、不連続的なコート膜を形成するステップ;及び、コート膜付き母材を熱処理するステップ;を含み得る。
【0011】
一実施例において、前記母材は、ステンレス鋼板、チタニウムまたはアルミニウムであり得る。
【0012】
一実施例において、前記コート膜形成ステップは、電解メッキ、無電解メッキ、または、PVD工程のいずれか一つでなり得る。
【0013】
一実施例において、前記コート剤に含まれる白金(Pt)として、塩化白金酸(HPtCl)または塩化白金酸カリウム(KPtCl)が含まれ得る。
【0014】
一実施例において、前記熱処理ステップは、80~600℃の温度範囲、及び、10~180分の時間範囲で行える。
【0015】
一実施例において、前記熱処理ステップは、真空状態、大気中及び酸素雰囲気中のいずれか一つの条件で行える。
【0016】
本発明の他の側面による車両用燃料電池の金属分離板は、上記の実施例のいずれかに記載の方法で製造される車両用燃料電池の金属分離板であり得る。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐食性、接触抵抗に優れており、かつ、生産効率に優れている燃料電池用金属分離板、及び、その製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一具体例による燃料電池用分離板の製造方法を概略的に示す工程流れ図である。
図2】本発明の一実施例及び比較例による白金コートステップを模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施例及び比較例による熱処理ステップを模式的に示す図である。
図4】本発明の実施例及び比較例の接触抵抗を測定するための試片及び測定位置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明を詳細に説明する。本発明は、種々の相違した形態で具現することができ、本明細書において説明する実施例に限定されない。本明細書の全体において、同一または類似の構成要素については、同一の符号を付する。また、本発明の要旨を不要にぼかすことができる公知の機能及び構成についての詳細な説明は省略する。
【0020】
図1は、本発明の一具体例による車両用燃料電池の金属分離板の製造方法に使用される流れ図である。本発明による製造方法は、母材形成ステップS110、母材表面上へのコート層形成ステップS120、及び、熱処理ステップS130を含む。
【0021】
母材形成ステップS110
【0022】
車両用燃料電池の金属分離板の鋼材は、金属分離板に使用される金属ないし非鉄金属であれば、特に制限がないが、ステンレス、チタニウム、アルミニウムなどが使用され得、たとえば、SUS300系、及び、400系のステンレスや、Grade 1のチタニウムが、延伸率及び耐久性の側面において好ましい。
【0023】
母材表面上へのコート層形成ステップS120
【0024】
図2は、前記母材の表面に不連続的な白金が含まれるコート膜を形成するステップを概略的に示す図である。
【0025】
車両用燃料電池が高温多湿な作動環境に長期間で露出される場合、母材の表面に、燃料電池の伝導性に漸進的な悪影響を及ぼす金属酸化物が形成されることとなるので、本発明においては、耐食性及び伝導度の側面においていずれも優れている燃料電池を提供するため、母材表面上に不連続的なコート層を形成する。
【0026】
耐食性及び伝導度がいずれも優れているコート層を形成するためには、通常、金(Au)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)を含む様々な貴金属が使用されるが、本発明は、その目的に応じて、白金(Pt)を含むコート層を、母材の表面に形成することにより、耐食性及び伝導度に優れている車両用燃料電池の金属分離板のコート層を形成することができる。
【0027】
具体的には、コート層形成ステップでは、コート材と電解液とを用い、一定のコート温度で電流を印加することにより、コート膜を形成する。コート材としては、白金(Pt)を含み、かつ、コート材に使用され得るものであれば、特に制限することなく使用され得るが、特に、塩化白金酸(HPtCl)または塩化白金酸カリウム(KPtCl)が、安定して、かつ、効率的な工程のために望ましい。
【0028】
コート材に使用される白金(Pt)及び追加の貴金属系列のコート材は、10nm~1μmの大きさを有するナノパーティクルが使用され得、上記の範囲において、母材の表面に、密度を低めている不連続的なコート膜の形態を備えることができる。
【0029】
電解液としては、酸性電解液が使用され得、例えば、硫酸系または塩酸系電解液が使用され得、特に、HSOまたはHClOが、工程の白金コート層形成過程において、効率的な化学反応の側面において好ましい。
【0030】
コート材及び電解液の含量は、具体的な実施の態様により、求められるPt蒸着量及びコート密度により、変動することができるが、たとえば、塩化白金酸(HPtCl)または塩化白金酸カリウム(KPtCl)を、(1×10-4~1)Mと、過塩素酸(HClO)または硫酸(HSO)(1×10-2~1)Mの範囲で混合して使用され得、特に、塩化白金酸(HPtCl)または塩化白金酸カリウム(KPtCl)2mM~0.1Mと、過塩素酸(HClO)または硫酸(HSO)0.1M~0.5Mの範囲で使用される場合、腐食性能及び接触抵抗に優れることができ、さらに好ましくは、塩化白金酸(HPtCl)または塩化白金酸カリウム(KPtCl)10mM~0.05Mと、過塩素酸(HClO)または硫酸(HSO)0.2M~0.3Mの範囲で使用され得る。
【0031】
上記範囲内でコート材と電解液との相対的な含量は、電解液の単位モル含量に対して1~10倍の範囲内で、優れた腐食性能及び接触抵抗を有するコート膜が形成され得、上記範囲未満では、十分な白金(Pt)コートが行われない可能性があり、上記範囲を超過する場合、工程の効率性が低下する。
【0032】
コート材として、塩化白金酸(HPtCl)または塩化白金酸カリウム(KPtCl)が5×10-3未満で使用される場合、十分な白金(Pt)蒸着量を確保しにくいこととなり、電解液が5×10-3未満で使用される場合、十分な還元を確保しにくいこととなる。
【0033】
コート材として、前記白金を含む塩化白金酸または塩化白金酸カリウムに加えて、金(Au)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、酸化ルテニウム(RuO)、及び、酸化イリジウム(IrO)などの貴金属系列成分から構成されるコート材がさらに使用され得る。さらなるコート材が使用される場合、硫酸系ないし塩酸系電解液以外にも、追加される物質の化学的性質により、フッ酸系ないし硫酸系電解液がさらに使用され得る。
【0034】
コートステップは、コート温度は、常温でも可能であるものの、加熱により反応性を向上させることから、たとえば、25~80℃の範囲で行われるが、特に、40~60℃の範囲で行われる場合、工程の効率を再考するとともに、腐食性能及び接触抵抗に優れており、特に、50℃~60℃の範囲で、腐食性能及び接触抵抗に優れている。
【0035】
コートの際、印加電流は、5~60mA/cmの範囲で行うことが、白金(Pt)蒸着量の未塗布ないし過塗布を抑制する一方、過電流による表面酸化を防止するために好ましく、特に、10~20mA/cmの範囲で行うことが、母材の表面安定性、及び、コート膜の優れた性能の側面において好ましい。
【0036】
母材表面コート工程方法は、通常使用される方法であれば、特に制限がないが、たとえば、電解メッキ、無電解メッキ、ないしPVD方式から選択することができ、これらの方式を用いたとき、工程の効率性が増大され得る。特に、電解メッキの場合、分離板の両極のコート及び製造において、均一なコート性及び大量生産の側面において好ましい。
【0037】
熱処理ステップS130
【0038】
図3は、前記コート膜付き母材を熱処理するステップを模式的に示す図である。
【0039】
母材表面コートステップにおいて、母材の表面には、不連続的な白金(Pt)、及び、他の物質のコート層が形成され、母材の表面の一部が外部に露出されるので、分離板の全般にわたって、優れた腐食電流及び接触抵抗の確保のため、熱処理工程を通じての酸化膜形成ステップS130を行う。
【0040】
具体的には、熱処理工程の温度は、母材の酸化膜形成の特徴により変わるが、たとえば、80~600℃の温度範囲で行われることができ、特に、ステンレス母材の場合、170~230℃の温度範囲で、チタニウム母材の場合、300~500℃の温度範囲で、酸化膜形成速度及び酸化膜の効率に優れている。
【0041】
熱処理工程の時間も、母材の特性により変わるが、たとえば、10~180分間で行われることができ、特に、30~60分間で行われるとき、酸化膜の腐食電流及び接触抵抗性能に優れている。
【0042】
熱処理工程は、一般大気中で行われることもできるが、低酸素、真空ないし窒素雰囲気内で行われる場合、酸化膜形成効率、及び、形成される酸化膜の性能が向上する。特に、低酸素雰囲気で熱処理工程を行う場合、酸化膜の過生成を防止し、接触抵抗性能に優れており、コート接着性能の維持において好ましい。
【0043】
車両用燃料電池の金属分離板
【0044】
前記車両用燃料電池の金属分離板の製造方法によれば、高温多湿な作動環境でも、燃料電池の金属分離板が長期間で優れた耐食性及び電気伝導性を有することができる。
【0045】
よって、優れた耐食性及び電気伝導性を有する車両用燃料電池の金属分離板は、前述のように、白金(Pt)を含むコート材、及び、電解液を用いる母材コートステップ、及び、熱処理ステップを経て、母材、その表面に不連続的なコート膜、そして、前記コート膜が形成されない部分に酸化膜が形成される車両用燃料電池の金属分離板が完成されることができる。
【実施例
【0046】
実施例及び比較例
【0047】
下記表1の母材、コート材と電解液の成分系、印加電流及び温度を有する母材形成ステップ及びコートステップを行い、不連続的なコート層付き母材に、表2の条件で熱処理ステップを進行し、それぞれ、実施例及び比較例の試片を製造した。
【0048】
具体的には、本発明による実施例に対比したとき、コート材形成ステップにおいて、比較例1は、コート材の量を、比較例5は、電解液の量を、比較例2及び6は、印加電流を、それぞれ、表1のように異ならせ、熱処理ステップにおいて、比較例3及び6は、熱処理時間を、比較例4及び比較例8は、表2のように、熱処理温度を、それぞれ異ならせ、金属分離板の試片を製造した。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
接触抵抗の測定
【0052】
実施例及び比較例について、界面接触抵抗(interfacial contact resistance、ICR)測定を実施した。図4は、本発明による車両用燃料電池の金属分離板の接触抵抗を測定する試片の構造、及び、比較試片(ダミー)の測定位置を示す概略図である。実測に先立って、各々の比較例及び実施例の金属分離板(bipolar plate、bp)110の両面のそれぞれに、二つのガス拡散層(GDL)120、及び、一つの集電体(current collector)130を形成し、試片を製作した後、分離板とガス拡散層(GDL)との間の接触抵抗を、二つの地点R1及びR2を測定し、下式のように計算し、分離板とガス拡散層との間の抵抗を計算した。R2の測定のため、金属分離板を除いたまま、三つのガス拡散層120を積層し、その両面に集電体130を積層し、ダミー(dummy)試片を製作した後、接触抵抗の測定の際、ダミーに対して、圧力器(Instron社 68SC5)を用い、50~100N/cmの圧力を加えた。
【0053】
【数1】
【0054】
【数2】
【0055】
【数3】
【0056】
【数4】
【0057】
上記式において、bpは、金属分離板を、GDLは、ガス拡散層を、ccは、集電体を、Sは、分離板-GDL反応面積を意味する。
【0058】
腐食性能の測定
【0059】
上記実施例及び比較例の金属分離膜から試片を製作し、各々の試片に対して、母材及び表面処理層の短期耐食評価を実施した。動電位分極試験法(Potentiodynamic polarization method)を実施し、試験条件は、下表3のとおりである。電流印加及び抵抗測定装備としては、HIOKI社の3541精密抵抗測定装備を使用した。
【0060】
【表3】
【0061】
以上のように測定した界面接触抵抗及び腐食性能の結果値は、下表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
比較例及び実施例について、ステアリングラックバーを製作し、冷間引抜テストを行い、製品のひび割れが発生したか否かを目視で観察し、その結果を表4に示す。
【0064】
表1~4を参照すれば、ステンレス母材を使用した実施例1~5、比較例1~4、及び、チタニウム母材を使用した実施例6~10、比較例5~8において、各々の実施例は、比較例と比較したとき、腐食性能及び界面接触抵抗の側面において優れていることが表れた。
【0065】
具体的にみれば、電解液ないしコート材の量が本発明の範囲から外れる場合、界面接触抵抗及び腐食性能の両側面において、同じ母材を使用した他の実施例に比べて目立つ性能低下が確認でき、印加電流及びコート温度が一定の範囲を外れると、界面接触抵抗の性能が低下することが確認できたが、これは、適切なコート工程条件が、本発明の目的を達成することに大きく影響することを意味する。
【0066】
熱処理ステップにおいても、熱処理温度及び熱処理時間は、それぞれ、界面接触抵抗及び腐食性能に影響することが表れたが、特に、熱処理時間は、界面接触抵抗の側面において、熱処理温度は、腐食性能の側面において、大きく影響することが確認できた。
【0067】
以上、本発明の実施例を中心に述べたが、当業者のレベルにおいて様々な変更や変形を加えることができる。このような変更及び変形が、本発明の範囲を逸脱しない限り、本発明に属するといえる。よって、本発明の権利範囲は、以下に記載される請求の範囲により判断されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、燃料電池の分野、及び、燃料電池用分離板の分野において活用が可能であり、該当分野において、製品の信頼性及び競争力を向上することができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】