(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】印刷および染色の環境影響を改善するための組成物
(51)【国際特許分類】
B05D 7/24 20060101AFI20241016BHJP
C09D 11/03 20140101ALI20241016BHJP
C09D 9/04 20060101ALI20241016BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20241016BHJP
C12P 7/6436 20220101ALN20241016BHJP
【FI】
B05D7/24 302C
C09D11/03
C09D9/04
B05D7/00 F
B05D7/00 G
C12P7/6436
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024537807
(86)(22)【出願日】2022-08-30
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 US2022042054
(87)【国際公開番号】W WO2023034310
(87)【国際公開日】2023-03-09
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】524076028
【氏名又は名称】ローカス ソリューションズ アイピーコー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー ショーン
(72)【発明者】
【氏名】レフコウィッツ アンドリュー アール.
【テーマコード(参考)】
4B064
4D075
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4B064AD61
4B064CA06
4B064DA16
4D075DB13
4D075DB14
4D075DB18
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4D075EC11
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4D075EC60
4J038RA01
4J038RA17
4J039BB01
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE12
4J039BE13
4J039BE14
4J039BE16
4J039BE19
4J039BE22
4J039BE23
4J039BE28
4J039BE32
4J039FA03
(57)【要約】
本発明は、紙およびテキスタイル等の物品の印刷および染色を強化するための、環境に優しい組成物および方法を提供する。特定の態様において、本発明の方法は、化学物質使用を減少させ、水使用を減少させ、水質汚染を減少させ、かつ/または印刷もしくは染色プロセスに付加的利益を提供するために、生物学的な両親媒性分子の適用を前記プロセスに組み込むことを含む。特定の態様において、本発明の方法は、化学系界面活性剤を伝統的に用いる印刷および/または染色に関係する1つまたは複数の工程において化学系界面活性剤を生物学的な両親媒性分子で置き換えることを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に印刷しかつ/またはそれを染色するための方法であって、
生物学的な両親媒性分子、および着色剤を、前記表面に適用する工程を含み、
前記生物学的な両親媒性分子が、前記表面への前記着色剤の送達および固定に関与するアジュバント、添加物、および/または活性成分としての働きをする、
前記方法。
【請求項2】
前記生物学的な両親媒性分子が、洗剤、分散剤、乳化剤、湿潤剤、殺生物剤、消泡剤、または/および結合剤として機能する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記生物学的な両親媒性分子が、担体、溶媒、共溶媒、分散剤、乳化剤、保湿剤、結合剤、湿潤剤、殺生物剤、pH調整剤、可溶化剤、カール抑制剤、媒染剤、消泡剤、発泡抑制剤、洗剤、可塑剤、ワックス、乾燥剤、キレート剤、粘度調整剤、および/または増粘剤の性能を改善するためのアジュバントまたは添加物として機能する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記表面が、テキスタイル、紙、ポリマー、木材、ガラス、セラミック、パッケージング材、またはそれらの原材料である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記生物学的な両親媒性分子がバイオ界面活性剤である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記バイオ界面活性剤が、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリスリトール脂質、およびトレハロース脂質より選択される糖脂質バイオ界面活性剤、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、およびリケニシンより選択されるリポペプチド、フラボ脂質、リン脂質、脂肪酸エステル、または、リポタンパク質、リポ多糖・タンパク質複合体、および多糖・タンパク質・脂肪酸複合体より選択される高分子量ポリマーである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記バイオ界面活性剤がソホロ脂質である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記バイオ界面活性剤が精製形態である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記バイオ界面活性剤が、スターメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)の発酵により生産された、かつ
前記方法が、前記発酵から得られるブロスの形態で前記バイオ界面活性剤を適用する工程を含む、
請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記ブロスが酵母細胞物質を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的な両親媒性分子の適用の結果として水使用が減少する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的な両親媒性分子の適用の結果として化学物質使用が減少する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記生物学的な両親媒性分子の適用の結果として水質汚染が減少する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
生物学的な両親媒性分子と、着色剤と、担体とを含むインク組成物であって、
前記着色剤が顔料または染料であり、かつ前記担体が水または溶媒である、前記インク組成物。
【請求項15】
担体、溶媒、共溶媒、分散剤、乳化剤、保湿剤、結合剤、湿潤剤、殺生物剤、pH調整剤、可溶化剤、カール抑制剤、媒染剤、消泡剤、発泡抑制剤、洗剤、可塑剤、ワックス、乾燥剤、キレート剤、粘度調整剤、および/または増粘剤より選択される1つまたは複数の成分をさらに含む、請求項14記載のインク組成物。
【請求項16】
ヤーン、縫い糸、ファブリック、布、または、ヤーン、縫い糸、ファブリック、および/もしくは布から製造される完成品を含む、テキスタイル物品であって、
前記ヤーン、縫い糸、ファブリック、布が、生物学的な両親媒性分子と着色剤とをしみ込まされており、生物学的な両親媒性分子と着色剤とを用いて印刷されており、かつ/または生物学的な両親媒性分子と着色剤とでコーティングされている、前記テキスタイル物品。
【請求項17】
前記生物学的な両親媒性分子がソホロ脂質である、請求項16記載のテキスタイル物品。
【請求項18】
前記完成品が衣類、衣服、内装材、ドレープ、カーペット、およびラグより選択される、請求項16記載のテキスタイル物品。
【請求項19】
リグノセルロース繊維またはリグノセルロース繊維から製造される完成品を含む、紙物品であって、
前記繊維が、生物学的な両親媒性分子と着色剤とをしみ込まされており、生物学的な両親媒性分子と着色剤とを用いて印刷されており、かつ/または生物学的な両親媒性分子と着色剤とでコーティングされている、前記紙物品。
【請求項20】
前記生物学的な両親媒性分子がソホロ脂質である、請求項19記載の紙物品。
【請求項21】
前記完成品が、厚紙、印刷紙、衛生用紙、ティッシュペーパー、箱、ラッピング紙、新聞用紙、カード用紙、および手すき紙より選択される、請求項19記載の紙物品。
【請求項22】
表面からインク除去するための方法であって、
インクに生物学的な両親媒性分子が接触するように前記表面に前記生物学的な両親媒性分子を適用して、前記表面から前記インクが分離するのを可能にする工程、および
前記インクを収集する工程
を含む、前記方法。
【請求項23】
前記表面が古紙、プラスチック、またはテキスタイルである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
インクの染みをとるために使用される、請求項22記載の方法。
【請求項25】
インク除去した前記表面をリサイクル用に処理する工程をさらに含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記生物学的な両親媒性分子がソホロ脂質である、請求項22記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2021年8月30日に出願された米国仮特許出願第63/238,427号からの優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
界面活性剤は、多くの産業分野において潜在的用途を有する、表面活性両親媒性の分子である。したがって、現時点で数千の異なる表面活性分子からなる界面活性剤の市場は、急速に成長している。界面活性剤の約60%は、洗剤およびパーソナルケア商品用の化合物として使用されている。他の使用には、例えば、医薬品およびサプリメント;紙およびテキスタイル;石油およびガス回収;バイオレメディエーション;農業;美容;コーティングおよび塗装;食料品の生産および加工;ならびに建築が含まれる。
【0003】
表面活性分子の特性は、親水性親油性バランス(HLB)によって測定することができる。HLBは、表面活性分子の親水性部分と親油性部分のサイズおよび強度のバランスである。特定のHLB値が、例えば、安定なエマルジョンを形成するために必要とされる。水/油および油/水エマルジョンにおいて、表面活性分子の極性部分は水側に配向し、その非極性基は油側に配向し、それによって油相と水相の間の界面張力を低下させる。
【0004】
HLB値は0~約20の範囲であり、より低いHLB(例えば、10またはそれ未満)はより油溶性であり油中水エマルジョンに適し、より高いHLB(例えば、10またはそれ以上)はより水溶性であり水中油エマルジョンに適する。他の特性、例えば発泡、湿潤、洗浄、および可溶化能力もまたHLBに依存する。
【0005】
合成および化学系界面活性剤は、容易に製造することができ、かつそれらの分子構造に基づき所望の機能を発揮するよう仕立てることができる点で有利である。そのため、各々が特定の狭い機能を有する数千の異なる界面活性剤が開発されている。これは、界面活性剤を使用する製品を製造する際に豊富なオプションより選択できるようにする一方で、界面活性剤の機能の特異性は、複数の機能を有する製品を製造するためにより多くの界面活性剤の種類および組み合わせが必要となることを意味する。例えば、湿潤剤として有用な界面活性剤は洗剤として有用であるとは限らず、乳化剤として有用な界面活性剤は腐食防止剤として有用であるとは限らない。
【0006】
その結果が、数十年にわたる化学系界面活性剤の過剰使用および過剰生産である。消費者の増加および規制当局の注目にともない、例えばヒトおよび動物に対するそれらの潜在的なおよび既知の毒性;水中環境、土壌および地下水を含む環境内での残留性;生産および利用時の気候変動への寄与;ならびに他の化学物質との不適合性を含む、化学系界面活性剤の短所が表面化し始めている。
【0007】
界面活性剤を用いる環境影響が高い産業の1つの例は印刷業である。印刷は、表面、例えばテキスタイル、衣服、または紙に文字、画像、デザインまたはパターンを刻印することを含む。
【0008】
印刷には、手作業によるスタンピングから機械により自動化された大規模印刷まで、いくつかの異なるタイプが存在する。オフセット印刷においては、例えばアルミニウムまたは木材製のプレートまたはブロックが、デザインを含むよう彫刻または食刻される。インクがレリーフプレートまたはブロックに塗布され、ついで圧を用いて所望の表面、例えばテキスタイルまたは紙に転写されて印像が生成される。
【0009】
フレキソ印刷は、レリーフプレートが柔軟な素材、典型的にはポリマーであることを除いてオフセット印刷と似ている。これは、プラスチック、金属フィルム、セロファンおよび紙を含むほぼあらゆるタイプの被印刷体に対する高速回転印刷を可能にする。印刷される各々の色ごとに別々のプレートが作成されそれらに個々の色が充填されなければならず、これらはついで、その前に印刷された色に重なり、デザインを形成するようインラインで印刷される。
【0010】
スクリーン印刷は、フレーム内に引き伸ばされたまたは金属シリンダに巻き取られたポリエステル、ナイロン、または金属製の細かいメッシュのスクリーンを使用する。ブロッキングステンシルがスクリーン上にはめ込まれ、所望のデザインのネガが作成される。ついで、そのスクリーンが被印刷体上に置かれまたは被印刷体上を転がされ、ブロックされていないスクリーンの領域をインクが通過し、被印刷体上にデザインが形成される。スクリーン印刷は、衣服上に印刷するための一般的な方法である。
【0011】
最後に、別の一般的な印刷方法はデジタル印刷であり、これには例えば、インクジェット印刷およびレーザー印刷が含まれる。デジタルファイルを印刷された画像または文字に容易に変換することができ、すべての色が個別にではなく一度に印刷される。
【0012】
インクジェット印刷においては、多数の個別のインク滴を射出するノズルを用いて、印刷されるパターンが漸進的に、被印刷体上に直接構築される。レーザー印刷では、電気的に荷電した粉末状インク(トナー)を選択的に収集し、そのインクを画像として紙に転移させる「ドラム」と呼ばれる負に荷電したシリンダにレーザービームが反復的に照射される。紙はついで、画像が紙に恒久的に融着するよう加熱される。
【0013】
印刷は、被印刷体に画像またはデザインを付与する着色剤の使用を必要とする。染料および顔料の両方が印刷用インクにおける着色剤として使用される。顔料ベースのインク(ドライ印刷)において、着色剤は、溶媒中に分散された微細な顔料粒子のコロイド系として存在する。溶媒は水性または有機性であり得る。
【0014】
筆記具およびテキスタイルにおいてより一般的に使用されている染料ベースのインク(ウェット印刷)において、着色剤は、溶液の形態、または染料をしみ込まされたラテックス分散物もしくはポリマーマイクロエマルジョンの形態で存在する。大部分の水溶性染料はイオン性化合物である。染料ベースのインクと比較して、印刷用インクにおける顔料は典型的に水溶性ではない。したがって、顔料は、適用されると、染料のように被印刷体にしみ込み化学的に結合するのではなく、被印刷体の表面に残留し一部の粒子が繊維間に位置する傾向がある。
【0015】
今日のインク配合物は複雑であり、顔料に加えて用途および性能ごとに他の添加物を含み得る。これらの添加成分には、例えば、(運搬媒体としてのおよびそれぞれ湿潤および乾燥特性を制御する働きをする)溶媒および共溶媒;(顔料を懸濁状態で維持する)分散剤/乳化剤;(機器上での時期尚早な乾燥および硬化を減少させる)保湿剤;(被印刷体への着色剤の固定を確実にする)結合剤;(被印刷体上でのインクの拡散および浸透を制御する)拡散および/または湿潤剤;(生物の成長を抑制する)殺生物剤;pH調整剤、可溶化剤、カール抑制剤、消泡剤、および/または増粘剤が含まれ得、これらはすべて、印刷プロセスのタイプならびに使用される機器および被印刷体に基づき微調整され得る。いくつかのテキスタイル印刷においては、よりペースト様のインクを生成するために追加のガムまたはデンプンが添加され得る。
【0016】
多くのインク配合物は、強い溶媒ならびに化学系界面活性剤および合成ポリマーを用いる。しかし、インク配合物中の揮発性有機化合物(VOC)の放出を制限するために有機溶媒を使用しない要望が大きくなっている。その結果、これらの溶媒を水で置き換えることが推進されている。水ベースのインクは、しかし、被印刷体の表面がより湿潤しやすくおよび顔料と相互作用しやすくなるよう水の表面張力を低下させる特別な添加物を必要とする。界面活性剤は、液体・気体および固体・液体界面で表面層に集積することによりこれを行う。これは、溶媒ベースのインクにおいても有用であり得る。印刷における湿潤剤の例には、安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、エトキシル化アセチレンジオール、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル-およびアルキルアリールスルホネート、ならびにアルキルスルホスクシネートが含まれるがこれらに限定されない。
【0017】
印刷における界面活性剤のさらなる使用には、分散および安定化が含まれる。顔料インクは、粉砕および分散プロセスにより顔料を連続相に組み込むことにより調製される。顔料粒子は、保管または適用中に凝集する可能性があり、これは顔料粒子のサイズおよび形状に影響し、したがって色強度、色合い、および耐光性を規定する。したがって顔料インクは、コロイド的に安定な混合物および印刷ヘッドノズルを目詰まりさせず確実に射出され得るインクを生成するよう、粉砕プロセスの間の顔料スラリーにおいて分散剤を必要とする。これらの分散剤は典型的にポリマーおよび/または界面活性剤である。界面活性剤および/またはポリマーは、顔料粒子に吸着し、粒子が凝集するのではなく相互に反発するようにするためのコーティングをその上に形成する。さらに、特定の着色剤顔料の表面張力のバランスをとることにより、界面活性剤は色間ブリーディング(bleeding)およびモットリング(motling)を最小化するのを助け得る。
【0018】
印刷における界面活性分散剤の例には、アルキル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、塩化ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウム、アルキルスルホベタイン、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルが含まれるがこれらに限定されない。
【0019】
さらに、界面活性剤は、印刷機器を洗浄およびメンテナンスするのに有用であり得る。ノズル、ヒーター、ロータリープレスにおける、ウェル、およびスクリーンにおけるインクの沈着を防ぐおよび/または除去することにより、例えば、印刷の質および機器の機能が維持され得る。リン酸エステルは、この目的で用いられる一般的な適切な界面活性剤であり、非界面活性剤であるポリホスフェート、サーフィノール、またはアセチレノールも用いられる。
【0020】
インク化学において界面活性剤を選択する際の1つの留意点は、多くのイオン性界面活性剤が泡を安定化させる傾向があることである。インク中での泡形成は、インクの流れを妨げ、ノズルにおけるインクのバブルまたはプリン形成の原因となり、それによって被印刷体上でのインクの誤った方向への滴下を引き起こし得る。したがって、泡の液体・空気界面に浸透して形成を遅らせる消泡剤または発泡抑制剤の働きをするさらなる界面活性剤が必要となり得る。そうでなければ、泡安定化界面活性剤は避けられるべきおよび/または泡不安定化特性を有する界面活性剤と置き換えられるべきである。
【0021】
被印刷体の印刷に加えて、テキスタイル、紙、および他の繊維材の染色もしばしば、均一な色を付与するために同様の組成物を用いる。より詳細に、染色では、染料分子を繊維の内部部分に移動させ、そこで染料分子は繊維構造に吸着し、拡散する。界面活性剤ベースの分散剤および湿潤剤は、染色媒体中での染料の均一な分散、および繊維マトリクスへの染色溶液の適切な浸透を支援する。染色プロセスは、原材料繊維、ヤーン、ヤーンまたは縫い糸のスケインまたはスプール、縫い糸、布、ファブリック片および衣服の完成品(finished garment)、ならびにパルプ紙および紙の完成品において実施され得る。典型的に、染色される個々の材料は、液体形態の染料中に浸漬されるまたは液体形態の染料を噴霧される。他の方法は、二酸化炭素または水以外の染料用の他のビヒクルを用いる。
【0022】
染色産業により引き起こされる影響の大部分は、水およびテキスタイル用助剤の大量消費に起因する。テキスタイルの染色後、例えば、着色剤をその場に付着させるのを助けるためにしばしば加熱エージングプロセスが使用される。付加的な環境影響は、過剰な処理、例えば着色剤、増粘剤および印刷または染料材の副産物を除くために洗剤が用いられる、付着後のテキスタイルの洗浄によりもたらされる。これらは化学物質の使い過ぎ、ならびに過剰な水使用および水質汚染を引き起こし得る。
【0023】
テキスタイル、紙、パッケージングおよび他の日用品の印刷および染色は、いくつかの潜在的な負の環境および健康への影響を有する化学物質多量使用および水多量使用プロセスである。したがって、環境および健康への影響が少ない印刷および染色のための改善された組成物および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0024】
本発明は、印刷および染色物、例えばテキスタイル、紙物品、およびパッケージングの生産を改善する環境に優しい組成物および方法を提供する。より詳細に、本発明は、印刷および染色に使用されるインクおよびプロセスにおいて用いられる化学物質に対する「グリーン」な代替物を提供する。有利には、前記組成物および方法は、これらのプロセスによる水および化学物質の使用を減少させるのを、ならびに水質汚染を減少させるのを助け得る。
【0025】
特定の態様において、本発明の組成物および方法は、化学物質使用を減少させ、水使用を減少させ、水質汚染を減少させ、かつ/または印刷もしくは染色プロセスに付加的利益を提供するために、「グリーン」な分子の使用を前記プロセスに組み込んでいる。特定の態様において、本発明の方法は、印刷または染色に使用されるインクにおいて化学系界面活性剤を「グリーン」な分子で置き換えることを含む。特定の態様において、前記方法は、化学系界面活性剤を伝統的に用いる印刷または染色プロセスに関係する1つまたは複数の工程において、グリーンな分子で置き換えることを含む。
【0026】
いくつかの態様において、「グリーン」な分子は、例えば洗剤、滑沢剤、乳化剤、可溶化剤、湿潤剤、分散剤、抗微生物剤として、またはテキスタイル物品、紙物品、もしくは他の表面、またはそれらの原材料の印刷または染色のプロセスにおける他の機能で用いられ得る、生物学的な両親媒性分子である。
【0027】
さらに、いくつかの態様において、生物学的な両親媒性分子は、例えば、印刷用インク、染料、溶媒、洗剤、滑沢剤、仕上げ剤、抗微生物剤、乳化剤、または表面の印刷もしくは染色に用いられる他の処理、の性能を改善するための、ならびに印刷および/または染色に用いられる機器の性能およびメンテナンスを改善するためのアジュバントまたは添加物として用いられ得る。
【0028】
特定の具体的態様において、本発明は、着色剤および生物学的な両親媒性分子を含む、表面に印刷するかまたはそれを染色するためのインク組成物を提供する。
【0029】
特定の態様において、着色剤は顔料または染料である。いくつかの態様において、着色剤は、粒子および/または、例えば10 nm~1,000 nmのサイズを有するナノ粒子の形態であり得る。
【0030】
前記組成物は、水中および/または別の溶媒中で着色剤と生物学的な両親媒性分子を混合することにより製造され得る。いくつかの態様において、生物学的な両親媒性分子は、着色剤を包み込むミセルを形成する。特定の態様において、着色剤混合物はその後、水または溶媒に添加され、水ベースまたは溶媒ベースのインクまたは染料が生成される。
【0031】
任意に、前記組成物はまた、例えば、担体、溶媒、共溶媒、分散剤、乳化剤、保湿剤、結合剤、湿潤剤、殺生物剤、pH調整剤、可溶化剤、カール抑制剤、媒染剤、消泡剤、発泡抑制剤、洗剤、および/または増粘剤を含む、1つまたは複数の添加物を含み得る。特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、これらの添加物のうちの1つまたは複数の機能を果たし得る。
【0032】
特定の態様において、表面の印刷および/または染色の環境影響を改善するための方法であって、印刷もしくは染色に関係する1つもしくは複数の組成物および/もしくは工程において伝統的に用いられる化学系活性化合物、添加物、もしくはアジュバントの代わりに、および/または前記化学系活性化合物、添加物、もしくはアジュバントに加えて、本発明にしたがう生物学的な両親媒性分子を表面に適用する工程を含む、方法が提供される。
【0033】
特定の態様において、前記方法は、本発明にしたがうインク組成物中のインクおよび/または着色剤が表面上にまたは表面内に固定されるように、前記インク組成物を表面に適用する工程を含む。特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、固定が起こり得るように、表面への着色剤の送達を促進する。特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、以下の目的のうちの1つまたは複数の働きをし得る:湿潤剤、可溶化剤、分散剤、乳化剤、粘度調整剤、洗剤、および発泡抑制剤、ならびに/または殺生物剤。
【0034】
表面は、例えば、テキスタイルもしくは衣服、またはテキスタイルもしくは衣服の繊維、ヤーン、縫い糸、布、またはファブリック原材料;紙物品、または紙物品のパルプ原材料;ならびに/またはパッケージング、ポリマー、ラッピング、セラミック、木材、もしくはそれらの任意の原材料であり得る。
【0035】
特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、乾燥、硬化、および付着後に表面からインク組成物の過剰成分を除去するための印刷後または染色後洗剤として適用され得る。
【0036】
特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、リサイクルおよびリユースの準備として古紙、古紙パルプ、テキスタイル、およびポリマーから印刷用インクを除去するためのインク除去剤または洗剤として用いられ得る。生物学的な両親媒性分子は、インク除去されることが意図されている材料に適用され得、生物学的な両親媒性分子はそこからインクを剥離させるのを助ける。一例として、古紙パルプは、水と混合され得、そして生物学的な両親媒性分子が、除去のためにインクの浮遊を促進するよう表面に添加される。
【0037】
1つの態様において、前記方法は、機器を洗浄するための、機器の性能を強化するための、および/または維持するための洗剤または洗浄組成物として生物学的な両親媒性分子を印刷および/または染色機器に適用する工程を含む。例えば、機器はローラー、スクリーン、またはノズルであり得る。
【0038】
特定の態様において、本方法はさらに、印刷品質、不粘着性(block resistance)、発泡、こすり落ち(scrubbing)、耐光性、ブリーディング、せん断安定性、光沢、耐水性、接着、および乾燥のうちの1つまたは複数を試験する工程、ならびに試験結果に基づき必要に応じてプロセスを調節する工程を含む。これは、例えば、機器を洗浄する工程および/または生物学的な両親媒性分子を印刷または染色プロセスにおける1つまたは複数の工程に添加する工程を含み得る。
【0039】
特定の態様において、本発明は、本発明にしたがうインク組成物が固定された印刷および/または染色製品を提供し、そのような製品は、例えば、テキスタイル、衣服、紙、パッケージング、ラッピング、ポリマー、セラミック、木材、またはそれらの原材料である。
【0040】
好ましい態様において、生物学的な両親媒性分子は、糖脂質バイオ界面活性剤(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリスリトール脂質、および/またはトレハロース脂質)である。いくつかの態様において、他のバイオ界面活性剤、例えば、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、および/またはリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルディオリピン)、脂肪酸エステル化合物、ならびに高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖・タンパク質複合体、および多糖・タンパク質・脂肪酸複合体が用いられ得る。
【0041】
特定の態様において、前記方法は、1つもしくは複数のソホロ脂質(SLP)分子を含む組成物および/またはSLP分子を含む酵母培養物を用いる。SLP分子は、例えば、酸型(直鎖状)SLP(ASL)、ラクトン型SLP(LSL)、ジアセチル化SLP、モノアセチル化SLP、エステル化SLP、アミノ酸・SLPコンジュゲート、金属・SLPコンジュゲート、塩形態のSLP、SLPアミノアルコール、その脂肪族鎖からカルボニル基が除去されたSLP、および/またはSLP分子の任意の他の誘導体であり得る。SLP分子は、純粋形態または粗形態であり得る。
【0042】
特定の態様において、本発明は、酵母株および/またはそれらの成長の副産物を用いる。例えば、いくつかの態様において、前記方法は、培養されたスターメレラ・ボンビコラ(Starmerella bombicola)ATCC 22214および/またはその微生物の成長の産物、例えばSLPを含む微生物ベースの生産物の適用を含む。特定の態様において、組成物中の酵母は、不活性および/または様々な成長状態、例えば、栄養型または胞子形態であり得る。特定の他の態様において、ブロス、微生物成長副産物、および、いくつかの例においては、微量の残留細胞物質が使用のために維持されるように、酵母細胞が培養物から取り出される。
【0043】
有利には、SLPは、本発明にしたがい使用される場合、それらを印刷および染色における用途にとって理想的にするいくつかの利益を有する。第1に、それらの優れた湿潤能力は、水および化学系湿潤剤の使用の減少を促進するのを助け、したがってそれらは水質汚染および廃水処理の減少に寄与し得る。加えて、それらの自然状態でのそれらの弱アニオン性は、それらを天然および合成繊維に適合するようにする。さらに、SLPは多機能性、低発泡性であり、低い臨界ミセル濃度(CMC)を有し、生分解性である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
詳細な説明
本発明は、印刷および染色物、例えばテキスタイル、紙物品、およびパッケージングの生産を改善するための、環境に優しい組成物および方法を提供する。より詳細に、本発明は、印刷および染色に使用されるインクおよびプロセスにおいて用いられる化学物質に対する「グリーン」な代替物を提供する。有利には、前記組成物および方法は、これらのプロセスによる水および化学物質の使用を減少させるのを、ならびに廃水汚染を減少させるのを助け得る。
【0045】
特定の態様において、本発明の組成物および方法は、化学物質使用を減少させ、水使用を減少させ、水質汚染を減少させ、かつ/または印刷もしくは染色プロセスに付加的利益を提供するために、「グリーン」な分子の使用を前記プロセスに組み込んでいる。
【0046】
特定の態様において、本発明の方法は、印刷または染色に使用されるインクにおいて化学系界面活性剤を「グリーン」な分子で置き換えることを含む。特定の態様において、前記方法は、化学系界面活性剤を伝統的に用いる印刷または染色プロセスに関係する1つまたは複数の工程において、グリーンな分子で置き換えることを含む。
【0047】
選択された定義
本明細書で使用される場合、「グリーン」な化合物または材料は、少なくとも95%が天然、生物学的、および/または再生可能な供給源、例えば植物、動物、鉱物、および/または微生物由来であることを意味し、さらに、前記化合物または材料は生分解性である。加えて、「グリーン」な化合物または材料は、ヒトに対して最小限の毒性しか示さず、LD50>5000 mg/kgを有する。「グリーン」な生産物は、好ましくは以下のいずれも含まない:非植物ベースのエトキシル化界面活性剤、直鎖状アルキルベンゼンスルホネート(LAS)、エーテルスルフェート界面活性剤、またはノニルフェノールエトキシレート(NPE)。
【0048】
本明細書で使用される場合、「バイオフィルム」は、微生物、例えば細菌、酵母、または真菌の複雑な凝集物であって、それらの細胞が細胞外マトリクスを用いて相互におよび/または表面に接着している、凝集物である。バイオフィルム中の細胞は液体培地中を浮動または遊泳することができる単一細胞である同じ生物の浮遊細胞とは生理学的に異なる。
【0049】
本明細書で使用される場合、「単離された」または「精製された」核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、または有機化合物、例えば低分子(例えば、以下に記載されるもの)は、自然状態では付随する他の化合物、例えば細胞物質を実質的に含まない。精製または単離されたポリヌクレオチド(リボ核酸(RNA)またはデオキシリボ核酸(DNA))は、その自然発生状態ではそれに隣接する遺伝子または配列を含まない。精製または単離されたポリペプチドは、その自然発生状態ではそれに隣接するアミノ酸または配列を含まない。単離された微生物株は、その株が自然状態でそれが存在する環境から取り出されていることを意味する。したがって、単離された株は、例えば、生物学的に純粋な培養物として、または担体に結合した胞子(またはこの株の他の形態)として存在し得る。
【0050】
特定の態様において、精製された化合物は、重量で少なくとも60%が関心対象の化合物である。好ましくは、調製物は、重量で少なくとも75%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも98%が関心対象の化合物である。例えば、精製された化合物は、重量で少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、98%、99%、または100%(w/w)が所望の化合物であるものである。純度は、任意の適切な標準的方法により、例えば、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、または高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により測定される。
【0051】
「代謝産物」は、代謝により生産される任意の物質または特定の代謝プロセスに参加するために必要とされる物質を表す。代謝産物は、代謝の出発物質、中間物質、または最終産物である有機化合物であり得る。代謝産物の例には、酵素、酸、溶媒、アルコール、タンパク質、ビタミン、ミネラル、微量元素、アミノ酸、バイオポリマー、およびバイオ界面活性剤が含まれるがこれらに限定されない。
【0052】
本明細書で使用される場合、「微生物ベースの組成物」への言及は、微生物または他の細胞培養物の成長の結果として生産された成分を含む組成物を意味する。したがって、微生物ベースの組成物は、微生物自体および/または微生物成長の副産物を含み得る。微生物は、栄養状態もしくは胞子形態、菌糸体形態、散布体(propagule)の任意の他の形態、またはこれらの混合物であり得る。微生物は、浮遊性もしくはバイオフィルム形態、または両方の混合物であり得る。成長の副産物は、例えば、代謝産物、細胞膜成分、発現されたタンパク質、および/または他の細胞成分であり得る。微生物は、インタクトであり得るまたは溶解され得る。微生物は、組成物中に存在し得るまたは組成物から除去され得る。微生物ベースの組成物において、微生物は、それらが成長したブロスと共に存在し得る。細胞は、例えば、組成物1ミリリットルあたり少なくとも1×103、1×104、1×105、1×106、1×107、1×108、1×109、1×1010、1×1011、1×1012、1×1013、またはそれ以上のCFUの濃度で存在し得る。
【0053】
本発明はさらに、所望の結果を達成するための実施において適用される生産物である、「微生物ベースの生産物」を提供する。微生物ベースの生産物は単に、微生物培養プロセスから収集された微生物ベースの組成物であり得る。あるいは、微生物ベースの生産物は、添加されたさらなる成分を含み得る。これらの添加成分には、例えば、安定化剤、緩衝剤、担体、例えば、水、塩溶液、もしくは任意の他の適切な担体、さらなる微生物成長を支援するために添加される栄養素、非栄養成長増進剤、ならびに/またはそれが適用された環境において微生物および/もしくは組成物の追跡を容易にする薬剤が含まれ得る。微生物ベースの生産物はまた、微生物ベースの組成物の混合物を含み得る。微生物ベースの生産物はまた、何らかの方法で、例えば、非限定的に、ろ過、遠心分離、溶解、乾燥、精製等により処理された微生物ベースの組成物の1つまたは複数の成分を含み得る。
【0054】
本明細書に提供される範囲は、その範囲内のすべての値の簡略表記であると理解される。例えば、1~20の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、および20、ならびに前述の整数の間のすべての介在する10進値、例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、および1.9からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むと理解される。部分範囲に関して、範囲のいずれかの端点から延びる「入れ子状(nested)部分範囲」が特に企図される。例えば、1~50の例示的な範囲の入れ子状部分範囲は、一つの方向に1~10、1~20、1~30、および1~40を含むか、またはもう一方の方向に50~40、50~30、50~20、および50~10を含むことができる。
【0055】
本明細書で使用される場合、「原材料」は、そこから生産物が製造される任意の基礎材料を含む。特定の態様において、原材料は、その天然状態から変化していない。特定の態様において、原材料は何らかの方法で、例えば1つのプロセスの一部としての前の工程で処理されている。したがって、原材料は出発材料であり得、および/またはそれは1つのプロセスの中での中間材料であり得る。
【0056】
本明細書で使用される場合、「減少」は負の変化を意味し、「増加」は正の変化を意味し、負または正の変化は少なくとも0.001%、0.01%、0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%である。
【0057】
本明細書で使用される場合、「界面活性剤」は、2つの液体の間または液体と固体の間の表面張力(または界面張力)を低下させる化合物を意味する。界面活性剤は、例えば、洗剤、湿潤剤、乳化剤、発泡剤、および/または分散剤として作用する。「バイオ界面活性剤」は、生きた細胞によりおよび/または天然由来物質を用いて生産される表面活性物質である。
【0058】
バイオ界面活性剤は、極性(親水性)部分と非極性(疎水性)基という2つの部分からなる構造的に多様な表面活性物質のグループである。それらの両親媒性構造により、バイオ界面活性剤は、例えば、疎水性、水不溶性物質の表面積を増加させ、そのような物質の水中利用性(water bioavailability)を増加させ、そして細菌細胞表面の特性を変化させ得る。バイオ界面活性剤はまた、水と油の間の界面張力を減少させ、したがって、捕捉された液体が毛細管効果に打ち勝って動くのに必要とされる静水圧を低下させ得る。バイオ界面活性剤は界面に蓄積し、それによって界面張力を減少させ、溶液中で凝集ミセル構造物の形成を促す。ミセルの形成は、例えば、移動水相中で油を移動させる物理的機構を提供する。
【0059】
孔を形成し生体膜を脱安定化するバイオ界面活性剤の能力もまた、例えば、害虫および/または微生物成長を制御するための、抗細菌、抗真菌、および溶血剤としてのそれらの使用を可能にする。
【0060】
典型的に、バイオ界面活性剤の親水性基は糖(例えば、単糖、二糖、もしくは多糖)またはペプチドであり、疎水性基は典型的に脂肪酸である。したがって、例えば糖のタイプ、糖の数、ペプチドのサイズ、そのペプチド内にどのアミノ酸が存在するか、脂肪酸の長さ、脂肪酸の飽和度、付加的なアセチル化、付加的な官能基、エステル化、その分子の極性および電荷に基づくバイオ界面活性剤分子の潜在的バリエーションは無数にある。
【0061】
これらのバリエーションにより、例えば、糖脂質(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリスリトール脂質、およびトレハロース脂質)、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、およびリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルディオリピン)、脂肪酸エステル化合物、ならびに高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖・タンパク質複合体、および多糖・タンパク質・脂質複合体を含む、幅広い多種のクラスを含む分子のグループが形成される。各々クラスのバイオ界面活性剤の各々のタイプはさらに、さらなる修飾構造を有するサブタイプを含み得る。
【0062】
化学系界面活性剤と同様、各々のバイオ界面活性剤分子は、その構造に依存するその独自のHLB値を有するが、単一のHLB値または範囲を有する単一の分子を生成する化学系界面活性剤の生産と異なり、バイオ界面活性剤生産の1つのサイクルは典型的に、バイオ界面活性剤分子(例えば、サブタイプおよびそれらの異性体)の混合物を生成する。
【0063】
「バイオ界面活性剤」および「バイオ界面活性剤分子」というフレーズは、任意のバイオ界面活性剤クラス(例えば、糖脂質)および/またはそれらのサブタイプ(例えば、ソホロ脂質)のすべての形態、アナログ、オルトログ、異性体、ならびに天然および/または人為的改変体を含む。
【0064】
本明細書で使用される場合、「ソホロ脂質」、「ソホロ脂質分子」、「SLP」、または「SLP分子」という用語は、例えば、酸型(直鎖状)SLP(ASL)およびラクトン型SLP(LSL)を含む、SLP分子のすべての形態、誘導体、およびそれらの異性体を含む。例えば、ジアセチル化SLP、モノアセチル化SLP、エステル化SLP、アミノ酸・SLPコンジュゲート、金属・SLPコンジュゲート、塩形態のSLP、SLPアミノアルコール、その脂肪族鎖からカルボニル基が除去されたSLP、および/またはSLP分子の任意の他の誘導体がさらに含まれる。
【0065】
本発明にしたがうSLP分子は、一般式(1)および/または一般式(2)により表され得、かつ、異なる脂肪酸鎖長(R
3)を有しかついくつかの例においてはR
1および/またはR
2にアセチル化またはプロトン化を有する30種類またはそれ以上の種類の構造ホモログの集合物として入手される。
【0066】
一般式(1)または(2)において、R0は水素原子またはメチル基のいずれかであり得る。R1およびR2は各々独立して水素原子またはアセチル基である。R3は飽和脂肪族炭化水素鎖、または少なくとも1つの二重結合を有する不飽和脂肪族炭化水素鎖であり、1つまたは複数の置換基を有し得る。
【0067】
置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、低級(C1~6)アルキル基、ハロ低級(C1~6)アルキル基、ヒドロキシ低級(C1~6)アルキル基、ハロ低級(C1~6)アルコキシ基等が含まれる。R3は典型的に、最大20個の炭素原子を有する。
【0068】
「含む(including)」または「含む(containing)」と同義である「含む(comprising)」という移行句は、包括的またはオープンエンド型であり、追加の、言及されていない要素または方法の工程を除外しない。これに対して、「からなる」という移行句は、特許請求の範囲に示されていないあらゆる要素、工程、または成分を除外する。「から本質的になる」という移行句は、特許請求の範囲を、示されている物または工程「および」請求項発明の「基本的かつ新規の特徴に実質的に影響しないそれら」に限定する。「含む」という用語の使用は、言及されている構成要素「からなる」または「から本質的になる」他の態様も想定している。
【0069】
具体的に言及されていない限りまたは文脈から自明でない限り、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、包括的であると理解される。具体的に言及されていない限りまたは文脈から自明でない限り、本明細書で使用される場合、「1つの(a)」、「および(and)」、および「その(the)」という用語は、単数または複数であることが理解される。
【0070】
具体的に言及されていない限りまたは文脈から自明でない限り、本明細書で使用される場合、「約」という用語は、当技術分野における普通公差の範囲内、例えば、平均の2標準偏差内であると理解される。約は、言及されている値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%内であると理解され得る。そうでないことが文脈から明らかでない限り、本明細書に提供されるすべての数値は、約という用語により修飾される。
【0071】
本願における任意の可変要素の定義における化学基のリストの記載は、列挙されている基の任意の単一の基または組み合わせとしてのその可変要素の定義を含む。本願における可変要素または局面に関する態様の記載は、任意の単一の態様または任意の他の態様もしくはその一部との組み合わせとしての態様を包含する。
【0072】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0073】
表面に印刷しかつ表面を染色するための組成物および方法
本発明は、印刷物、例えばテキスタイル、紙物品、およびパッケージングの生産を改善する環境に優しい組成物および方法を提供する。より詳細に、本発明は、印刷および染色に使用されるインクおよびプロセスにおいて用いられる化学物質に対する「グリーン」な代替物を提供する。有利には、前記組成物および方法は、これらのプロセスによる水および化学物質使用を減少させるのを、ならびに廃水汚染を減少させるのを助け得る。
【0074】
特定の態様において、本発明の組成物および方法は、化学物質使用を減少させ、水使用を減少させ、水質汚染を減少させ、かつ/または印刷もしくは染色プロセスに付加的利益を提供するために、「グリーン」な分子の使用を前記プロセスに組み込んでいる。特定の態様において、本発明の方法は、印刷または染色に使用されるインクにおいて化学系界面活性剤を「グリーン」な分子で置き換えることを含む。特定の態様において、前記方法は、化学系界面活性剤を伝統的に用いる印刷または染色プロセスに関係する1つまたは複数の工程において、グリーンな分子で置き換えることを含む。
【0075】
いくつかの態様において、「グリーン」な分子は、例えば洗剤、滑沢剤、乳化剤、可溶化剤、湿潤剤、分散剤、抗微生物剤として、またはテキスタイル物品、紙物品、もしくは他の表面、またはそれらの原材料の印刷または染色のプロセスにおける他の機能で用いられ得る、生物学的な両親媒性分子である。
【0076】
さらに、いくつかの態様において、生物学的な両親媒性分子は、例えば、印刷用インク、染料、溶媒、洗剤、滑沢剤、仕上げ剤、抗微生物剤、乳化剤、または表面の印刷もしくは染色に用いられる他の処理、の性能を改善するための、ならびに印刷および/または染色に用いられる機器の性能およびメンテナンスを改善するためのアジュバントまたは添加物として用いられ得る。
【0077】
インク組成物
特定の具体的態様において、本発明は、着色剤および生物学的な両親媒性分子を含む、表面に印刷するかまたはそれを染色するためのインク組成物を提供する。
【0078】
生物学的な両親媒性分子は、組成物の重量に対する重量で0.01~50%、0.1~35%、0.25~25%、または0.5~20%の量で存在し得る。
【0079】
特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、用いられる着色剤の特性に基づき選択される。例えば、カチオン性着色剤は典型的にアニオン性両親媒性分子と共に用いられず、その逆も同様である。そうしなければ、結果は組成物からの着色剤の沈殿であり得る。当業者は、本明細書の恩恵を得て、これらの考慮に基づき組成物をどのように配合するかを理解するであろう。
【0080】
特定の態様において、着色剤は顔料または染料である。特定の態様において、着色剤はカラーインデックス国際データベースで分類されている公知の化合物より選択される。
【0081】
本明細書で使用される場合、「顔料」は、それらを取り込んだビヒクルまたは被印刷体において一般に不溶性である着色された、黒色、白色、または蛍光色の粒状の有機または無機固体である。それらは光の選択的吸収によりおよび/または散乱により見た目を変化させる。顔料は通常、例えば、インク、塗料、プラスチック、または他のポリマー物質の製造などの場合、適用のためにビヒクルまたは被印刷体中に分散される。顔料は、着色プロセスを通じて結晶または粒状構造を保持する。
【0082】
本明細書で使用される場合、「染料」は、光の選択的吸収により被印刷体に色を付与する、強い有色のまたは蛍光色の有機物質である。それらは、可溶性であり、かつ/または、少なくとも一時的に、吸収、溶解、および機械的保持により、もしくはイオン的もしくは共有的化学結合により結晶構造を破壊する様式で適用される。
【0083】
いくつかの態様において、着色剤は、粒子および/または、例えば、0.01 nm~1,000 nm、もしくは0.1~100 nm、もしくは0.25~10 nm、もしくは0.5~1 nmのサイズを有するナノ粒子を含む顔料である。顔料粒子は、例えばボールグラインダーを用いて、市販の顔料化合物を粉砕することにより入手され得る。
【0084】
無機顔料粒子の非限定的な例には、
紫色顔料:ウルトラマリンバイオレット(PV15;Na6Al6Si6O24S4)、ハンパープル(BaCuSi206)、コバルトバイオレット(PV14;Co3(PO4)2)、およびマンガンバイオレット(PV16;NH4MnP207);
青色顔料:ウルトラマリンブルー(PB29;Na6Al6Si6O24S4)、コバルトブルー(PB28)およびセルリアンブルー(PB35)コバルト(II)スタンナート、エジプシャンブルー(CaCuSi4O10)、ハンブルー(BaCuSi4O10)、アズライト(Cu3(C03)2(OH)2)、プルシャンブルー(PB27;Fe7(CN)18)、YlnMnブルー(Yl -xMnx03)、ならびに選択された銅フタロシアニン;
緑色顔料:クロムグリーン(PG17;Cr203)、ビリジアン(PG18;Cr203・H20)、コバルトグリーンまたはリンマングリーンまたはジンクグリーン(CoZn02)、マラカイト(Cu2C03(OH)2)、パリグリーン(Cu(C2H302)2-3Cu(As02)2)、シェーレグリーンまたはシュロスグリーン(CuHAs03)、ヴェルディグリ(Cu(CH3C02)2)、選択された銅フタロシアニン、およびグリーンアース(K[(Al,FeIII),(FeII,Mg](AlSi3,Si4)O10(OH)2);
黄色顔料:オーレオリンまたはコバルトイエロー(PY40;K3Co(N02)6)、イエローオーカー(PY43;Fe203.H20)、チタンイエロー(PY53;NiO・Sb2O3・20TiO2)、およびモザイクゴールド(SnS2);
赤色顔料:サングイン、カプトモルトゥム、インディアンレッド、ベネチアンレッド、オキシドレッド(PR102;酸化鉄)、レッドオーカー(PR102;無水Fe203)、バーントシエナ(PBr7;無水Fe203);
茶色顔料:ローアンバー(PBr7;Fe203+ Mn02 + nH20 + Si + AI03+)、およびローシエナ(PBr7;褐鉄鉱土);
黒色顔料:カーボンブラック(PBk7)、アイボリーブラック(PBk9)、バインブラック(PBk8)、ランプブラック(PBk6)、マースブラックまたはアイアンブラック(PBk11;Fe304)、二酸化マンガン(Mn02)、および酸化チタン(III)(Ti203);ならびに
白色顔料:酸化アンチモン(stibous oxide)(Sb203)、硫酸バリウム(BaS04)、リトポン(BaS04
*ZnS)、二酸化チタン(Ti02)、および酸化亜鉛(ZnO)
が含まれる。
【0085】
特定の態様において、顔料は、アゾ顔料、フタロシアニン、キナクリドン(quiacridone)、ジアリールピロロピロール、リソール、トルイジン誘導体、ピラゾロン、ジニトロアニリン、ハンサイエロー、インダンスレン、ジオキサジン、およびベンゾイミダゾロンが含まれるがこれらに限定されない有機顔料である。
【0086】
いくつかの態様において、着色剤は天然または合成染料である。本明細書の恩恵を受けた当業者は、分子構造に基づき様々なタイプの染料および異なる被印刷体に対するそれらの親和性を理解するであろう。
【0087】
天然染料は、植物、真菌、鉱物、および/または動物源から入手され得る。天然染料および/または天然染料の供給源の非限定的な例には、コチニール、ラック、尿、ムレックスカタツムリ、タコ/イカ、カッチツリー、ガンボジツリー樹脂、クリ、ルバーブ、コマツナギ(indigofera)、カマラ種子、アカネ根、マンゴスチン、ミロバラン、ザクロ、チーク葉、ウェルド、ブラックウォールナット、スマック木、カエデ属(Acer)の種、ピナス・エデュリス(Pinus edulis)、ラス・トリロバタ(Rhus trilobata)、ルピナス、フォラデンドロン・ジュニペリヌム(Phoradendron juniperinum)、キジョラン属(Marsdenia)、ポリゴヌム・チンクトルム(Polygonum tinctorum)、ロンコカープス・シアネセンス(Lonchocarpus cyanescens)、アカシア属(Acacia)の種、ケルメス、ブラジルボク、リソスパーマム・パープロカエルレウム(Lithospermum purpurocaeruleum)、マルベリー、ゲニスタ・チンクトリア(Genista tinctoria)、ウォード、オウボク(fustic)、鉄、トウモロコシ殻、アルテミシア・トリデンテート(Artemisia tridentate)、赤タマネギ、ティリアン(tyrian)、サフラン、ザクロ、ターメリック、ベニバナ、オニオンスキン、ウェルド、クエルシトロン、オウボク、バターナッツ、イエロールート、ルメクス・クリスプス(Rumex crispus)、スネークウィード、ゴム植物、ラビットブッシュ、ローズヒップ、ジュニパー、アルダー、ヘナ、アルカネット、アサフェティダ、スオウ、アカネ属(Rubia)の種、サルコドン・スクアモサス(Sarcodon squamosus)、ハイドネルム・ゲオゲニウム(Hydnellum geogenium)、ハイフォロマ・ファスシキュラレ(Hypholoma fasciculare)、ファエオルス・スクケイニツイ(Phaeolus schqeinitzii)、ピソリサス・チンクトリウス(Pisolithus tinctorius)、ロセラ・チンクトリア(Rocella tinctoria)、カドベアー、アーキル、リトマス、クロットル、ワイン、ブドウ、カクタスフルーツ、茶、コーヒーおよび血が含まれる。
【0088】
合成染料には、酸性またはアニオン性染料、塩基性またはカチオン性染料、アゾイックまたはナフトール染料、直接染料、分散染料、反応染料、硫黄染料、バット染料、アントラキノン、フタロシアニン、およびトリアリールメタンが含まれ得るがこれらに限定されない。
【0089】
特定の態様において、インクに含まれる着色剤の比率は、組成物の総重量に対する重量で約0.001~20%、約0.01~15%、約1~10%、約1~5%、または約1~2%である。
【0090】
本発明のインク組成物は、水中および/または別の溶媒中で着色剤と生物学的な両親媒性分子を混合することにより製造され得る。いくつかの態様において、生物学的な両親媒性分子は、着色剤を包み込むミセルを形成する。特定の態様において、着色剤混合物はその後に水または溶媒に添加され、水ベースまたは溶媒ベースのインクが生成される。
【0091】
任意に、前記組成物はまた、例えば、担体、溶媒、共溶媒、分散剤、乳化剤、保湿剤、結合剤、湿潤剤、殺生物剤、pH調整剤、可溶化剤、カール抑制剤、媒染剤、消泡剤、発泡抑制剤、洗剤、可塑剤、ワックス、乾燥剤、キレート剤、粘度調整剤、および/または増粘剤を含む、1つまたは複数の他の成分または添加物を含み得る。特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、これらの添加物のうちの1つまたは複数の機能を果たし得る。
【0092】
特定の具体的態様において、前記組成物は、水、DI水、アルコール、例えばイソプロパノール、ブタノール;ジオール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、チオジグリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、およびポリエチレングリコール;アルキレングリコールのモノアルキルエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル;ポリオール、例えばグリセロール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、およびペンタエリスリトール;環状エーテル、例えばテトラヒドロフランおよびジオキサン;ならびに、加えて、ジメチルスルホキシド、ジアセトンアルコール、グリセロールモノアリルエーテル、N-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、尿素、β-ジヒドロキシエチル尿素、アセトニルアセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、およびフェノキシエタノールより選択される担体、溶媒、および/または共溶媒を含む。
【0093】
特定の具体的態様において、前記組成物は、樹脂、アクリル系、アルキド、セルロース誘導体、ゴム樹脂、ケトン、マレイン系、ホルムアルデヒド、ポリウレタン、エポキシド、フマル系、炭化水素、ポリビニルブチラール、ポリアミド、シェラク、およびフェノール系より選択される結合剤を含む。
【0094】
上で列挙された成分のいずれも、各々、組成物の総重量に対する重量で0.001~99.9%、0.01~75%、0.05~50%、0.1~25%、または0.5~20%の量で存在し得る。
【0095】
方法
特定の態様において、表面の印刷および/または染色の環境影響を改善するための方法であって、印刷もしくは染色に関係する1つもしくは複数の組成物および/もしくは工程において伝統的に用いられる化学系活性化合物、添加物、もしくはアジュバントの代わりに、および/または前記化学系活性化合物、添加物、もしくはアジュバントに加えて、本発明にしたがう生物学的な両親媒性分子を表面に適用する工程を含む、方法が提供される。
【0096】
特定の具体的態様において、前記方法は、本発明にしたがうインク組成物中のインクおよび/または着色剤が表面上にまたは表面内に固定されるように、前記インク組成物を表面に適用する工程を含む。特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、表面への着色剤の固定の前に表面への着色剤の送達を促進する。特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、以下の目的のうちの1つまたは複数としての働きをし得る:湿潤剤、可溶化剤、分散剤、乳化剤、粘度調整剤、洗剤、媒染剤、発泡抑制剤、および/または殺生物剤。
【0097】
前記方法は、例えば、表面印刷、レリーフ印刷、スタンピングまたはブロック印刷、フレキソ印刷、ローラー印刷、スクリーン印刷、熱転写印刷、ロータリースクリーン印刷、グラビア印刷、3D印刷、およびデジタル印刷より選択される印刷方法を用いてインク組成物を適用する工程を含み得る。
【0098】
前記方法はまた、例えば、直接染色、繊維のストック染色、繊維のトップ染め、先染め(yarn dyeing)、かせ染め(skein dyeing)、パッケージ染色、ワープビーム染色、製品染色(garment dyeing)、後染め(piece dyeing)、およびバット染めより選択される染色方法を用いてインク組成物を適用する工程を含み得る。いくつかの態様において、これらの方法のいずれか1つまたは組み合わせが用いられ得る。
【0099】
本発明にしたがい処理され得る表面には、例えば、テキスタイル、紙製品、木材、突板、ポリマー、セラミック、ガラス、他のパッケージング材、およびそれらの原材料が含まれ得る。
【0100】
一般に、「テキスタイル」は、原料繊維を紡いで長い撚りをかけられた1本にすることにより製造されるヤーンまたは縫い糸を連結することによって作製される任意の柔軟な生地、例えばファブリック、布、またはカーペットを表す。この連結は、例えば、織り、ニット編み、クロシェ編み、節止め、タティング、フェルト、ボンディング、組みひもを通じて達成され得る。テキスタイルは、綿、羊毛、リネン、麻、サイザル麻、カポック、セルロース、リヨセル、ポリラクテート、多タンパク質源(例えば、木材、絹、毛髪、毛皮)、鉱物(例えば、アスベスト)、ならびに合成物質、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリウレタン、およびそれらの混合物から作製され得る。上記の柔軟な生地に加えて、本明細書で使用される「テキスタイル」はまた、柔軟な生地ならびに原料繊維、ヤーンおよび縫い糸を含む柔軟な生地の作製に関係する原材料を用いて作製される完成品を含み得る。特定の態様において、テキスタイルの完成品には、衣類、衣服、内装材、ドレープ、カーペット、およびラグが含まれる。
【0101】
紙製品は、リグノセルロース繊維、または水中で処理された木材、ラグ、草、再生紙、もしくは他の植物源から得られるパルプから作製されるシート材である。紙製品には、印刷紙、ラッピング紙、ワックスペーパー、クラフト紙、筆記用紙、帳簿用紙、バンクペーパー、ボンド紙、ブロッティング用紙、画紙、手すき紙、ティッシュペーパー、巻紙、トイレ用ティッシュ、衛生用品、サンドペーパー、壁紙、板紙、厚紙、およびカード用紙が含まれるがこれらに限定されない。
【0102】
例示的な態様において、生物学的な両親媒性分子は、処理前にほこりおよび他の混入物を除去するための原材料の洗浄における洗剤としての働きをする。
【0103】
別の例示的な態様において、生物学的な両親媒性分子は、水または溶媒ベースのインク組成物のための湿潤剤としての働きをする。生物学的な両親媒性分子は、水、溶媒、または表面の表面張力を低下させ、表面への着色剤の送達および固定を促進し得る。有利には、湿潤剤は、インク組成物の着色剤に対する表面の受け入れ性(receptiveness)を改善し、表面の繊維マトリクスへの着色剤の適切な浸透を促進し得る。
【0104】
有利には、生物学的な両親媒性分子の使用を通じて、伝統的な化学系湿潤剤を、減少させること、および/または低発泡性、高湿潤性、生分解性、非毒性の代替物で置き換えることができる。これらの伝統的な湿潤剤には、アセチレン系界面活性剤、例えば3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオールおよびそれらのエトキシル化アナログ;アルキル-およびアルキルアリールスルホネート;アルキルスルホスクシネート;フッ素化界面活性剤;ポリ(アルキレングリコール);ポリ(オキシアルキレングリコール)および脂肪酸、脂肪アルコール、脂肪アミン、ソルビタンエステル、アルカノールアミド、ヒマシ油の付加体;ポリ(ジアルキル-シロキサン);脂肪イミダゾリン;スルホン化脂肪エステル;リン酸化脂肪アミン;脂肪アミンおよびそれらの誘導体;第4級アルコスルフェート化合物;ポリ(プロピレンオキシド)/ポリ(エチレンオキシド)コポリマー;アルキルスルホキシドおよびアルキルスルホン;カルボキシメチルアミロースアルキルスルフェート;スルホネート;脂肪酸または脂肪酸エステルスルフェート;カルボン酸石鹸;リン酸エステル;ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル;ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル;ポリオキシエチレンプロピレンブロックコポリマー等が含まれるがこれらに限定されない。
【0105】
別の例示的な態様において、生物学的な両親媒性分子は、水または溶媒ベースのインク組成物のための分散剤および/または乳化剤としての働きをする。インク組成物の製造時に、担体または溶媒中での着色剤化合物の混合および/または粉砕は、粒子の凝集を防ぐ分散剤の添加により強化され得る。分散剤はまた、顔料および/または染料の適用の均一性を支援するのに有用であり得る。有利には、これはまた、色強度、一貫性、均一性、色合い、耐光性を改善し、同時に顔料粒子による機器、例えばノズルおよびスクリーンの目詰まりを防ぐ。なおさらに、分散剤は、着色剤の表面張力のバランスをとり、それによって色間ブリーディングおよびモットリングを最小化するのを助け得る。
【0106】
特定の態様において、生物学的な両親媒性分子はまた、紙およびテキスタイル製品へのコーティング材の印刷のための分散剤としての働きもし得る。例えば、粒状の鉱物であるカオリンクレイはしばしば、外見、光沢、なめらかさ、明るさ、不透明度を改善するよう紙を充填およびコーティングするために使用される。カオリンはまた、紙の印刷性を改善する。生物学的な両親媒性分子を用いてカオリン粒子の適用の均一性を改善することにより、より少ないコーティングが必要となり、より効率的な印刷が達成され得る。
【0107】
有利には、生物学的な両親媒性分子の使用を通じて、伝統的な化学系分散剤および乳化剤を、減少させること、および/または低発泡性、高湿潤性、生分解性、非毒性の代替物で置き換えることができる。これらの伝統的な分散剤/乳化剤には、アルキル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、N-メチル-N-オレオイルタウリン酸カリウム、塩化ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウム、塩化アルキルベンジルメチルアンモニウム、臭化セチルピリジニウム、臭化アルキルトリメチルアンモニウム、第四級化ポリオキシエチルアルキルアミンのハロゲン化物塩、塩化ドデシルベンジルトリメチルアンモニウム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、疎水化置換ポリアクリルアミド、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、アルキルまたはジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノール誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
【0108】
特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、ブリード抑制剤としての働きをし得る。例えば、いくつかの態様において、ミセルへの染料および顔料の組み込みは、固定前の着色剤の拡散を遅らせ、その移動を減少させることができる。可溶性の染料の場合、その設定時間を、溶解された染料がミセルを通じて拡散するのに必要とされる時間よりも短くした場合、1つのミセルからの着色剤が隣接するミセルからの着色剤と入れ替わる可能性が低い。
【0109】
有利には、生物学的な両親媒性分子の使用を通じて、伝統的なブリード抑制剤を、減少させること、および/または低発泡性、高湿潤性、生分解性、非毒性の代替物で置き換えることができる。これらの伝統的なブリード抑制剤には、N,N-ジメチル-N-テトラデシルアミンオキシド;N,N-ジメチル-N-ヘキサデシルアミンオキシド;N,N-ジメチル-N-オクタデシルアミンオキシド;およびN,N-ジメチル-N-(9-オクタデセニル)アミンオキシドが含まれるがこれらに限定されない。
【0110】
別の例示的な態様において、生物学的な両親媒性分子は、泡形成を脱安定化させる消泡および/または発泡抑制剤としての働きをし得る。加えて、または代替的に、生物学的な両親媒性分子は、過剰な発泡または泡安定化のない印刷または染色の別の局面においては界面活性剤として用いられ得、それによって消泡剤および/または発泡抑制剤、例えば、ケイ素化合物、ミネラルオイル基剤中の有機エステルのブレンド、およびEO/POブロックコポリマーの必要性を排除し得るまたは減少させ得る。
【0111】
特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、乾燥、硬化および/または付着後に表面から過剰なインク組成物の成分を除去するために印刷後または染色後洗剤として適用され得る。
【0112】
特定の態様において、生物学的な両親媒性分子は、リサイクルおよびリユースの準備において古紙、古紙パルプ、テキスタイル、およびポリマーから印刷用インクを除去するためのインク除去剤または洗剤として用いられ得る。生物学的な両親媒性分子は、インク除去されることが意図されている材料に適用され得、生物学的な両親媒性分子はそこからインクを剥離させるのを助ける。一例として、古紙パルプは、水と混合され得、そして生物学的な両親媒性分子が、除去のためにインクの浮遊を促進するよう表面に添加される。
【0113】
1つの態様において、前記方法は、機器を洗浄するための、機器の機能を強化するための、および/または維持するための洗剤または洗浄組成物として生物学的な両親媒性分子を印刷および/または染色機器に適用する工程を含む。例えば、機器はローラー、スクリーン、またはノズルであり得る。有利には、生物学的な両親媒性分子の使用を通じて、伝統的な化学系洗剤を、減少させること、および/または低発泡性、高湿潤性、生分解性、非毒性の代替物で置き換えることができる。これらの伝統的な洗剤には、リン酸エステル、ポリホスフェート、サーフィノール、およびアセチレノールが含まれるがこれらに限定されない。
【0114】
特定の態様において、本方法はさらに、印刷品質、不粘着性、発泡、こすり落ち、耐光性、ブリーディング、せん断安定性、光沢、耐水性、接着、および乾燥のうちの1つまたは複数を試験する工程、ならびに試験結果に基づき必要に応じてプロセスを調節する工程を含む。これは、例えば、機器を洗浄する工程および/または生物学的な両親媒性分子をそのプロセスにおける1つまたは複数の工程に添加する工程を含み得る。
【0115】
特定の態様において、本発明は、本方法にしたがい製造される印刷および/または染色物品を提供する。例えば、いくつかの態様において、本発明にしたがい生物学的な両親媒性分子を含むインク組成物を用いて印刷された、前記組成物を固定された、および/または前記組成物をしみ込まされた繊維、ヤーン、縫い糸、ファブリック、布、カーペット、テキスタイル、紙物品、パッケージング材、ポリマー、セラミック、木材、およびガラス製品が提供される。その完成品は、例えば、重量で少なくとも0.0001%、0.001%、0.01%、0.1%、1%、2%、5%、またはそれ以上の生物学的な両親媒性分子を含み得る。
【0116】
生物学的な両親媒性分子
特定の態様において、本方法したがい使用される生物学的な両親媒性分子は、細胞により生産されるおよび/または天然由来の基質を用いて生産される表面活性化合物を意味するバイオ界面活性剤である。好ましい態様において、バイオ界面活性剤は微生物により生産される。
【0117】
好ましい態様において、前記方法は、糖脂質バイオ界面活性剤(例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、セロビオース脂質、マンノシルエリスリトール脂質、および/またはトレハロース脂質)を用いる。いくつかの態様において、他のバイオ界面活性剤、例えば、リポペプチド(例えば、サーファクチン、イツリン、フェンギシン、アルスロファクチン、および/またはリケニシン)、フラボ脂質、リン脂質(例えば、カルディオリピン)、脂肪酸エステル化合物、ならびに高分子量ポリマー、例えば、リポタンパク質、リポ多糖・タンパク質複合体、および多糖・タンパク質・脂肪酸複合体が用いられ得る。
【0118】
特定の態様において、前記方法は、1つもしくは複数のソホロ脂質(SLP)分子を含む組成物および/またはSLP分子を含む酵母培養物を用いる。SLP分子は、例えば、酸型(直鎖状)SLP(ASL)、ラクトン型SLP(LSL)、ジアセチル化SLP、モノアセチル化SLP、エステル化SLP、アミノ酸・SLPコンジュゲート、金属・SLPコンジュゲート、塩形態のSLP、SLPアミノアルコール、その脂肪族鎖からカルボニル基が除去されたSLP、および/またはSLP分子の任意の他の誘導体であり得る。SLP分子は、精製形態または粗形態であり得る。
【0119】
特定の態様において、本発明は、酵母株および/またはそれらの成長の副産物を用いる。例えば、培養されたスターメレラ・ボンビコラATCC 22214および/またはその微生物の成長の産物、例えばSLPを含む微生物ベースの生産物が使用され得る。特定の態様において、組成物中の酵母は、不活性および/または様々な成長状態、例えば、栄養型または胞子形態であり得る。特定の他の態様において、ブロス、微生物成長副産物、および、いくつかの例においては、微量の残留不活性細胞物質が使用のために維持されるように、酵母細胞が培養物から取り出される。
【0120】
有利には、SLPは、それらをテキスタイルおよび革製造産業における使用に十分適したものにするいくつかの利益を有する。第1に、それらの優れた湿潤能力は、水および化学物質の使用の減少の促進を助け、それらはテキスタイルおよび革製造プロセスに起因する水質汚染および廃水処理の減少に寄与し得る。加えて、それらの弱アニオン性は、それらを天然および合成繊維、ならびにほとんどのカチオン性柔軟剤に適合するようにする。さらに、SLPは多機能性であり、低い臨界ミセル濃度(CMC)を必要とし、かつ生分解性である。
【0121】
好ましい態様において、本発明は、1つまたは複数の所望の機能的特性を有する「グリーン」な界面活性剤組成物を生産するための方法であって、特定の機能的特性を有するバイオ界面活性剤分子を同定する工程、および、バイオ界面活性剤分子の生産にとって好ましい条件下でバイオ界面活性剤生産微生物を培養することによりバイオ界面活性剤分子を生産する工程を含む、方法を提供する。
【0122】
特定の態様において、前記方法はさらに、前記バイオ界面活性剤分子を1つまたは複数の追加のバイオ界面活性剤分子と組み合わせる工程を含み、それらのアイデンティティ、比、および/または分子構造はその組成物の所望の用途に基づき決定される。このようにして、例えば、表面/界面張力減少、粘度減少、乳化、解乳化、溶媒性、洗浄性、および/または抗微生物作用を含む1つまたは複数の所望の機能的特徴を有する組成物が生産される。
【0123】
いくつかの態様において、グリーンな界面活性剤組成物におけるバイオ界面活性剤分子のアイデンティティ、比、および/または分子構造は、例えば、個々の分子のHLB、CMC、および/またはKBに基づき決定される。いくつかの態様において、バイオ界面活性剤分子のアイデンティティ、比、および/または分子構造は、組成物全体としての理論上のまたは実際の所望のHLB、CMC、および/またはKB値に基づき決定される。
【0124】
いくつかの態様において、本発明にしたがう生物学的な両親媒性分子は、それらのナノスケールのミセルサイズのために特に有用である。より小さな粒子サイズは、小さな空間および孔、例えば、紙およびテキスタイル等の繊維材において見いだされるそれらに浸透するのにより都合がよい。特定の態様において、これはまた、材料からの着色剤粒子の漏出の減少および色定着の増加に寄与する。
【0125】
特定の態様において、ミセルサイズは1,000 nm未満、好ましくは500 nm未満、より好ましくは100 nm未満である。例示的な態様において、本発明にしたがうソホロ脂質は、50 nm未満、25 nm未満、または10 nm未満のミセルサイズを有する。
【0126】
1つまたは複数のバイオ界面活性剤は、小~大規模培養方法を用いて生産され得る。前記方法は、産業規模、すなわち、商業用途、例えば、原油増進回収のための組成物の生産における要求を満たす量でのバイオ界面活性剤の供給に使用するのに適した規模に大規模化され得る。好ましい態様において、バイオ界面活性剤は、いくつかの態様においてはグリーンな界面活性剤組成物が使用されるであろう場所から300マイル、200マイル、100マイル、または10マイル以内の集中的な場所で生産され、任意で改変され、混合される。
【0127】
バイオ界面活性剤を生産するために用いられる微生物は、天然または遺伝子操作微生物であり得る。例えば、微生物は、特定の特徴を示す特定の遺伝子を用いて形質転換され得る。微生物はまた、所望の株の変異体であり得る。本明細書で使用される場合、「変異体」は、参照微生物の株、遺伝的変種、またはサブタイプを意味し、変異体は、参照微生物と比較して1つまたは複数の遺伝的バリエーション(例えば、点変異、ミスセンス変異、ナンセンス変異、欠失、重複、フレームシフト変異、またはリピート伸長)を有する。変異体を作製する手順は、微生物学分野において周知である。例えば、UV変異誘発およびニトロソグアニジンがこの目的で広く使用されている。
【0128】
特定の態様において、微生物はグラム陽性およびグラム陰性細菌を含む細菌である。細菌は、例えば、アグロバクテリウム属(Agrobacterium)(例えば、A.ラジオバクター(A. radiobacter))、アゾトバクター属(Azotobacter)(A.ビネランディ(A. vinelandii)、A.クローコッカム(A. chroococcum))、アゾスピリルム属(Azospirillum)(例えば、A.ブラジリエンシス(A. brasiliensis))、バシルス属(Bacillus)(例えば、B.アミロリケファシエンス(B. amyloliquefaciens)、B.サーキュランス(B. circulans)、B.ファームス(B. firmus)、B.ラテロスポルス(B. laterosporus)、B.リケニフォルミス(B. licheniformis)、B.メガテリウム(B. megaterium)、B.モジャベンシス(B. mojavensis)、B.ムシラギノサス(B. mucilaginosus)、B.サブチリス(B. subtilis))、バークホリデリア属(Burkholderia)(例えば、B.タイランデンシス(B. thailandensis))、フラテウリア属(Frateuria)(例えば、F.オーランティア(F. aurantia))、ミクロバクテリウム属(Microbacterium)(例えば、M.ラエバニフォーマンス(M. laevaniformans))、粘液細菌、(例えば、ミクソコッカス・キサンタス(Myxococcus xanthus)、スティグナテラ・オーランティアカ(Stignatella aurantiaca)、ソランギウム・セルロサム(Sorangium cellulosum)、ミニシスティス・ロセア(Minicystis rosea))、パエニバシルス・ポリミクサ(Paenibacillus polymyxa)、パントエア属(Pantoea)(例えば、P.アグロメランス(P. agglomerans))、シュードモナス属(Pseudomonas)(例えば、P.アエルギノーザ(P. aeruginosa)、P.クロロラフィス亜種オーレオファシエンス(クルイバー)(P. chlororaphis subsp. aureofaciens (Kluyver))、P.プチダ(P. putida))、リゾビウム属の種(Rhizobium spp.)、ロドスピリルム属(Rhodospirillum)(例えば、R.ルブルム(R. rubrum))、スフィンゴモナス属(Sphingomonas)(例えば、S.パウシモビリス(S. paucimobilis))、および/またはチオバシルス・チオオキダンス(Thiobacillus thiooxidans)(アシドチオバシルス・チオオキシダンス(Acidothiobacillus thiooxidans))であり得る。
【0129】
特定の態様において、微生物は酵母または真菌である。本発明にしたがう使用に適した酵母および真菌種には、オーレバシジウム属(Aureobasidium)(例えば、A.プルランス(A. pullulans))、ブラケスレア属(Blakeslea)、カンジダ属(Candida)(例えば、C.アピコラ(C. apicola)、C.ボンビコラ、C.ノダエンシス(C. nodaensis))、クリプトコッカス属(Cryptococcus)、デバリオミセス属(Debaryomyces)(例えば、D.ハンセニィ(D. hansenii))、エントモフトラ属(Entomophthora)、ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora)(例えば、H.ウバルム(H. uvarum))、ハンセヌラ属(Hansenula)、イサトシェンキア属(Issatchenkia)、クルイベロミセス属(Kluyveromyces)(例えば、K.ファフィ(K. phaffii))、モーティエレラ属(Mortierella)、ミコリザ属(Mycorrhiza)、ミエロジマ・ギリアーモンディ(Meyerozyma guilliermondii)、ペニシリウム属(Penicillium)、ヒゲカビ属(Phycomyces)、ピキア属(Pichia)(例えば、P.アノマラ(P. anomala)、P.ギリアーモンディ、P.オクシデンタリス(P. occidentalis)、P.クドリアブゼビィ(P. kudriavzevii))、ヒラタケ属の種(Pleurotus spp.)(例えば、P.オストレアタス(P. ostreatus))、シュードジマ属(Pseudozyma)(例えば、P.アフィディス(P. aphidis))、サッカロミセス属(Saccharomyces)(例えば、S.ボウラルディ後続種(S. boulardii sequela)、S.セレビシアエ(S. cerevisiae)、S.トルラ(S. torula))、スターメレラ属(Starmerella)(例えば、S.ボンビコラ)、トルロプシス属(Torulopsis)、トリコデルマ属(Trichoderma)(例えば、T.リーセイ(T. reesei)、T.ハージアヌム(T. harzianum)、T.ハマツム(T. hamatum)、T.ビリデ(T. viride))、ウスティラゴ属(Ustilago)(例えば、U.メイディス(U. maydis))、ウィッカーハモミセス属(Wickerhamomyces)(例えば、W.アノマルス(W. anomalus))、ウィリオプシス属(Williopsis)(例えば、W.ムラキィ(W. mrakii))、ジゴサッカロミセス属(Zygosaccharomyces)(例えば、Z.バイリィ(Z. bailii))等が含まれる。
【0130】
好ましい態様において、微生物は、スターメレラ属の種の酵母および/またはカンジダ属の種の酵母より選択される酵母または真菌、例えば、スターメレラ(カンジダ)・ボンビコラ、カンジダ・アピコラ、カンジダ・バティスタエ(Candida batistae)、カンジダ・フロリコラ(Candida floricola)、カンジダ・リオドセンシス(Candida riodocensis)、カンジダ・ステラテ(Candida stellate)、および/またはカンジダ・クオイ(Candida kuoi)である。特定の具体的態様において、微生物はスターメレラ・ボンビコラ、例えばATCC 22214株である。
【0131】
本明細書で使用される場合、「発酵」は、制御された条件下での細胞の成長または培養を表す。成長は好気的または嫌気的であり得る。文脈がそれ以外のことを必要としていない限り、このフレーズは、このプロセスの成長相および生産物生合成相の両方を含むことが意図されている。
【0132】
本明細書で使用される場合、「ブロス」、「培養ブロス」、または「発酵ブロス」は、少なくとも栄養素を含む培養培地を表す。発酵プロセス後のブロスが参照される場合、前記ブロスは微生物成長副産物および/または微生物細胞も含み得る。
【0133】
本発明にしたがい使用される微生物成長ベッセルは、産業用の任意の発酵槽または培養リアクターであり得る。本明細書で使用される場合、「リアクター」、「バイオリアクター」、「発酵リアクター」、または「発酵ベッセル」という用語には、1つまたは複数のベッセルおよび/もしくはタワーまたは配管からなる発酵装置が含まれる。そのようなリアクターの例には、連続攪拌タンクリアクター(CSTR)、固定化細胞リアクター(ICR)、トリクルベッドリアクター(TBR)、気泡塔、ガスリフト発酵槽、スタティックミキサー、または気体・液体接触に適した他のベッセルもしくは他の装置が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの態様において、バイオリアクターは、第1成長リアクターおよび第2発酵リアクターを含み得る。したがって、バイオリアクターまたは発酵反応への基質の添加を参照する際、それは、適切な場合、これらのリアクターのいずれかまたは両方への添加を含むことが理解されるべきである。
【0134】
1つの態様において、前記方法は、液体成長培地を含む発酵リアクターにバイオ界面活性剤生産微生物を植菌して培養物を生成する工程、およびバイオ界面活性剤の生産に好ましい条件下で培養物を培養する工程を含む。
【0135】
本発明にしたがい使用される微生物成長ベッセルは、産業用の任意の発酵槽または培養リアクターであり得る。1つの態様において、ベッセルは、培養プロセスにおける重要な因子、例えば、pH、酸素、圧、温度、攪拌シャフト動力、湿度、粘度および/または微生物密度および/または代謝産物濃度を測定するために、機能制御/センサを有し得るまたは機能制御/センサに接続され得る。
【0136】
さらなる態様において、ベッセルはまた、ベッセル内での微生物の成長のモニター(例えば、細胞数および成長相の測定)が可能なものであり得る。あるいは、計数、純度測定、バイオ界面活性剤濃度、および/または視覚的油レベルのモニタリングのためにベッセルからサンプルが採取され得る。例えば、1つの態様において、サンプル採取は24時間毎に行われ得る。
【0137】
本方法にしたがう微生物植菌体(inoculant)は、好ましくは、所望の微生物の細胞および/または散布体を含み、これらは任意の公知の発酵方法を用いて調製され得る。植菌体は、所望の場合、水および/または液体成長培地と事前混合され得る。
【0138】
特定の態様において、培養方法は、液体成長培地中での液内発酵を用いる。1つの態様において、液体成長培地は炭素源を含む。炭素源は、炭水化物、例えば、グルコース、デキストロース、スクロース、ラクトース、フルクトース、トレハロース、マンノース、マンニトール、および/またはマルトース;有機酸、例えば、酢酸、フマル酸、クエン酸、プロピオン酸、リンゴ酸、マロン酸、および/またはピルビン酸;アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、イソブタノール、および/またはグリセロール;脂肪および油、例えば、菜種油、大豆油、米糠油、オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、胡麻油、および/または亜麻仁油;粉末モラセス等であり得る。これらの炭素源は、個別にまたは2つもしくはそれ以上の組み合わせで使用され得る。好ましい態様において、親水性炭素源、例えばグルコース、および疎水性炭素源、例えば油または脂肪酸が使用される。
【0139】
1つの態様において、液体成長培地は窒素源を含む。窒素源は、例えば、酵母エキス、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、アンモニア、尿素、および/または塩化アンモニウムであり得る。これらの窒素源は、個別にまたは2つもしくはそれ以上の組み合わせで使用され得る。
【0140】
1つの態様において、1つまたは複数の無機塩もまた液体成長培地中に含まれ得る。無機塩には、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸一カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸鉄、塩化鉄、硫酸マンガン、塩化マンガン、硫酸亜鉛、塩化鉛、硫酸銅、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、および/または炭酸ナトリウムが含まれ得る。これらの無機塩は、個別にまたは2つもしくはそれ以上の組み合わせで使用され得る。
【0141】
1つの態様において、微生物のための成長因子および微量栄養素が培地中に含まれる。これは特に、それらが必要とするビタミンのすべてを生産することができない微生物を成長させる場合に好ましい。微量元素、例えば、鉄、亜鉛、銅、マンガン、モリブデンおよび/またはコバルトを含む無機栄養素もまた、培地中に含まれ得る。さらに、ビタミン、必須アミノ酸、タンパク質および微量元素の供給源、例えばトウモロコシ紛、ペプトン、酵母エキス、ジャガイモエキス、肉エキス、大豆エキス、バナナ皮エキス等、または精製された形態のそれらが含まれ得る。アミノ酸、例えば、タンパク質の生合成に有用なもの、も含まれ得る。
【0142】
培養方法はさらに、成長中の培養物の酸素化を提供し得る。1つの態様は、低酸素含有空気を除去し、酸素化空気を導入するゆるやかな空気の動きを用いる。酸素化空気は、液体の機械的攪拌のためのインペラおよび液体への酸素の溶解のために液体に気体の泡を供給するためのエアスパージャーを含む機構を通じて毎日補充される大気であり得る。特定の態様において、溶解酸素(DO)レベルは、約25%~約75%、約30%~約70%、約35%~約65%、約40%~約60%、または約50%の空気飽和度で維持される。
【0143】
いくつかの態様において、培養のための方法はさらに、培養プロセス前および/または培養プロセス中に液体培地に追加の酸および/または抗微生物剤を添加する工程を含み得る。抗微生物剤または抗生剤(例えば、ストレプトマイシン、オキシテトラサイクリン)は、培養物を混入から保護するために使用される。いくつかの態様においては、しかし、酵母培養物により生成される代謝産物が、培養物の混入を防ぐのに十分な抗微生物効果を提供する。
【0144】
1つの態様において、植菌前に、液体培養培地の成分は任意で滅菌され得る。1つの態様において、液体成長培地の滅菌は、約85~100℃の温度の水中に液体培養培地の成分を入れることにより達成され得る。1つの態様において、滅菌は、1~3%の過酸化水素中に成分を1:3(w/v)の比で溶解することにより達成され得る。
【0145】
1つの態様において、培養に使用される機器は滅菌状態にある。培養機器、例えば、リアクター/ベッセルは、滅菌ユニット、例えば、オートクレーブから独立したものであり得るが、それに接続され得る。培養機器はまた、植菌を開始する前にインサイチューで滅菌する滅菌ユニットを有し得る。ガスケット、開口部、チューブ、および他の機器の部品に、例えば、イソプロピルアルコールを噴霧され得る。空気は、当技術分野で公知の方法により滅菌され得る。例えば、大気は、ベッセルに導入される前に少なくとも1つのフィルターを通され得る。他の態様において、培地は、低温殺菌され得るまたは、任意で、加熱が全くなされず、望ましくない細菌の成長を制御するためにpHおよび/または低水分活性の使用が利用され得る。
【0146】
培養物のpHは、関心対象の微生物に適したものとすべきであり、所望の場合、培養物中で特定のバイオ界面活性剤分子を生成するよう変更され得る。緩衝剤、およびpH調節剤、例えば炭酸塩およびリン酸塩は、pHを好ましい値付近で安定化させるために使用され得る。
【0147】
いくつかの態様において、pHは約2.0~約7.0である。いくつかの態様において、pHは約2.5~約5.5、約3.0~約4.5、または約3.5~約4.0である。1つの態様において、培養は、一定のpHで連続的に行われ得る。別の態様において、培養は、pHの変更に供され得る。
【0148】
1つの態様において、培養方法は、約5℃~約100℃、約15℃~約60℃、約20℃~約45℃、約22℃~約30℃、または約24℃~約28℃で行われる。1つの態様において、培養は、一定温度で連続的に行われ得る。別の態様において、培養は、温度の変更に供され得る。
【0149】
本方法にしたがい、微生物は、所望の効果、例えば、所望の量の細胞バイオマスまたは所望の量の1つもしくは複数の微生物成長副産物の生産を達成するのに十分な期間、発酵システム内でインキュベートされ得る。微生物により生産される微生物成長副産物は、微生物内で保持され得、かつ/または成長培地に分泌され得る。バイオマス含量は、例えば、5 g/l~180 g/lもしくはそれ以上、または10 g/l~150 g/lであり得る。
【0150】
特定の態様において、培養物の発酵は、約48時間~150時間、または約72時間~150時間、または約96時間~約125時間、または約110時間~約120時間、行われる。
【0151】
発酵サイクルが完了した後、前記方法は、いくつかの態様において、バイオ界面活性剤分子を抽出、濃縮および/または精製する工程を含み得る。
【0152】
特定の態様において、本発明の方法は、最小限からゼロの廃棄物が生じ、それによって下水および廃水システムに排出されるならびに/または埋立地に投棄される発酵廃棄物の量が減少するように実施され得る。
【0153】
バイオ界面活性剤の抽出後に培養物から収集される細胞バイオマスは典型的に、不活性化されるまたは投棄される。しかし、本方法はさらに、細胞バイオマスを収集して、土壌改良、家畜の給餌、油井処理、および/またはスキンケア製品を含むがこれらに限定されない様々な目的で細胞バイオマスを生きたまたは不活性な形態で使用する工程を含み得る。細胞バイオマスは、直接使用され得る、またはそれは意図された用途に特化した添加物と混合され得る。
【0154】
いくつかの態様において、バイオ界面活性剤を抽出および/または精製するために使用される水または他の非毒性の液体は、残留バイオ界面活性剤、栄養素、および/または細胞物質を含み得る。したがって、特定の態様において、前記液体は、植物のための土壌または葉の処理として点滴灌漑ラインもしくはスプリンクラーにおいて、ヒトおよび動物のための安全な栄養および/もしくは水分サプリメントとして、洗浄組成物として、ならびに/または発酵廃棄物を減少させるための無数の他の用途で使用され得る。
【0155】
1つの態様において、前記方法は、組成物への添加前にバイオ界面活性剤分子の構造を改変する工程を含む。
【0156】
いくつかの態様において、発酵のパラメータの調節は、培養物中の1つもしくは複数の特定のバイオ界面活性剤分子の改変および/または生産、ならびに/または特定比の複数のバイオ界面活性剤分子の生産をもたらす。これらのパラメータには、例えば、特定株の微生物を使用すること、成長培地の組成を調節すること、前記微生物を拮抗するおよび/または影響を与える微生物と共培養すること、栄養培地に阻害剤および/または刺激化合物を添加すること、発酵の温度、pH、および/または通気を調節すること等が含まれ得る。
【0157】
いくつかの態様において、発酵サイクルから得られるバイオ界面活性剤分子は、例えば、エステル化、重合、アミノ酸の添加、金属の添加、および脂肪酸鎖長の変更により、発酵後改変され得る。
【0158】
追加のおよび/または代替の態様において、組成物は、組成物中のバイオ界面活性剤分子のアイデンティティおよび比に基づき、特定の、そしていくつかの例においては非常に正確な、HLB値を有するよう調整され得る。
【0159】
特定の態様において、組成物は、例えば、糖脂質、リポペプチド、フラボ脂質、リン脂質、脂肪酸エステル化合物、リポタンパク質、リポ多糖・タンパク質複合体、および多糖・タンパク質・脂肪酸複合体より選択されるクラスに属する1つまたは複数のバイオ界面活性剤分子を含む。
【0160】
いくつかの態様において、組成物は、同じバイオ界面活性剤クラスに属する複数のバイオ界面活性剤分子を含む。いくつかの態様において、組成物は、これらのバイオ界面活性剤クラスの2つ以上に属するバイオ界面活性剤分子を含む。
【0161】
いくつかの態様において、組成物は、糖脂質、例えば、ソホロ脂質、ラムノ脂質、トレハロース脂質、セロビオース脂質、および/またはマンノシルエリスリトール脂質を含む。
【0162】
具体的態様において、組成物は、重量で0%~100%、5%~95%、10%~90%、15%~85%、20%~80%、25%~75%、30%~70%、35%~65%、40%~60%、45%~55%、または50%の、本明細書の他所で定義されるソホロ脂質を含み得る。
【0163】
1つの態様において、組成物は、ラクトン型SLPおよび直鎖状SLPを、0.1%ラクトン対99.9%直鎖(総SLPに対して)、0.5%ラクトン対99.5%直鎖、1%ラクトン対99%直鎖、5%ラクトン対95%直鎖、10%ラクトン対90%直鎖、20%ラクトン対80%直鎖、30%ラクトン対70%直鎖、40%ラクトン対60%直鎖、50%ラクトン対50%直鎖、60%ラクトン対40%直鎖、70%ラクトン対30%直鎖、80%ラクトン対20%直鎖、90%ラクトン対10%直鎖、95%ラクトン対5%直鎖、99%ラクトン対1%直鎖、99.5%ラクトン対0.5%直鎖、または99.9%ラクトン対0.1%直鎖の比で含む。
【0164】
具体的態様において、組成物は、重量で0%~100%、5%~95%、10%~90%、15%~85%、20%~80%、25%~75%、30%~70%、35%~65%、40%~60%、45%~55%、または50%のラムノ脂質分子を含み得る。「ラムノ脂質」または「ラムノ脂質分子」には、例えば、モノまたはジラムノ脂質、およびそのすべての可能性のある誘導体、ならびに本明細書に記載される他の形態が含まれ得る。
【0165】
具体的態様において、組成物は、重量で0%~100%、5%~95%、10%~90%、15%~85%、20%~80%、25%~75%、30%~70%、35%~65%、40%~60%、45%~55%、または50%のマンノシルエリスリトール脂質分子を含み得る。「マンノシルエリスリトール脂質」または「マンノシルエリスリトール脂質分子」には、例えば、トリアシル化、ジアシル化、モノアシル化、トリアセチル化、ジアセチル化、モノアセチル化、および非アセチル化MEL、ならびにそれらの立体異性体および/または構造異性体が含まれ得る。特定の具体的態様において、MELは、MEL A(ジアセチル化)、MEL B(C4でモノアセチル化)、MEL C(C6でモノアセチル化)、MEL D(非アセチル化)、トリアセチル化MEL A、トリアセチル化MEL B/Cのグループ、および本明細書に記載される他の形態として特徴づけられる。
【0166】
いくつかの態様において、組成物は、重量で0%~100%、5%~95%、10%~90%、15%~85%、20%~80%、25%~75%、30%~70%、35%~65%、40%~60%、45%~55%、または50%のリポペプチド、例えば、サーファクチン、フェンギシン、アルスロファクチン、リケニシン、イツリン、および/またはビスコシンを含む。
【0167】
いくつかの態様において、2つまたはそれ以上の精製されたバイオ界面活性剤分子が互いに混合される。いくつかの態様において、2つまたはそれ以上の未精製のまたは粗形態のバイオ界面活性剤が互いに混合され、ここで粗形態は、例えば、残留栄養培地、微生物細胞、および/または発酵の間に生成された他の微生物代謝産物を含み得る。いくつかの態様において、精製されたバイオ界面活性剤分子は、粗形態のバイオ界面活性剤と混合され得る。いくつかの態様において、誘導体化されたバイオ界面活性剤分子が、別の誘導体化されたバイオ界面活性剤、精製された非誘導体化バイオ界面活性剤分子、および/または粗形態のバイオ界面活性剤と混合され得る。
【0168】
微生物ベースの生産物の調製
本発明の1つの微生物ベースの生産物は、単に、微生物および/もしくは微生物により生産される微生物代謝産物ならびに/または任意の残留栄養素を含む発酵培地である。発酵の生産物は、抽出または精製を行わずに直接使用され得る。所望の場合、抽出および精製は、標準的な抽出および/もしくは精製法または文献に記載される技術を用いて容易に達成され得る。
【0169】
微生物ベースの生産物中の微生物は、活性もしくは不活性形態、または栄養細胞、複製性の胞子、分生子、菌糸体、菌糸、もしくは微生物散布体の任意の他の形態であり得る。微生物ベースの生産物はまた、微生物が取り除かれたブロスおよび/または成長副産物を含み得る。
【0170】
微生物ベースの生産物は、さらなる安定化、保存、および保管なしに使用され得る。有利には、これらの微生物ベースの生産物の直接使用は、微生物の高い生存性を保全し、外来物質および望ましくない微生物の混入の可能性を減少させ、微生物成長の副産物の活性を維持する。
【0171】
成長ベッセルから微生物ベースの生産物を収集すると、収集された生産物を容器に入れるまたはそれ以外の手段で使用のために輸送する際にさらなる成分が添加され得る。添加物は、例えば、緩衝剤、担体、同じまたは異なる施設で生産された他の微生物ベースの組成物、粘度調整剤、保存剤、微生物成長のための栄養素、界面活性剤、乳化剤、滑沢剤、溶解度制御剤、トラッキング剤、溶媒、殺生物剤、抗生剤、pH調節剤、キレート剤、安定化剤、耐紫外線剤、そのような調製において慣習的に使用される他の微生物および他の適切な添加物であり得る。
【0172】
1つの態様において、有機酸およびアミノ酸またはそれらの塩を含む緩衝剤が添加され得る。適切な緩衝剤には、クエン酸塩、グルコン酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、酢酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、アスパラギン酸塩、マロン酸塩、グルコヘプトン酸塩、ピルビン酸塩、ガラクタル酸塩、グルカル酸塩、タルトロン酸塩、グルタミン酸塩、グリシン、リジン、グルタミン、メチオニン、システイン、アルギニンおよびそれらの混合物が含まれる。リン酸および亜リン酸またはそれらの塩も使用され得る。合成性緩衝剤も使用に適するが、天然の緩衝剤、例えば上で列挙された有機酸およびアミノ酸またはそれらの塩を使用するのが好ましい。
【0173】
さらなる態様において、pH調節剤には、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸もしくは炭酸水素カリウム、塩酸、硝酸、硫酸または混合物が含まれる。
【0174】
微生物ベースの組成物のpHは関心対象の微生物に適したものであるべきである。いくつかの態様において、組成物のpHは約3.5~7.0、約4.0~6.5、または約5.0である。
【0175】
1つの態様において、追加成分、例えば塩の水性調製物、例えば炭酸水素もしくは炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムが、配合物中に含まれ得る。
【0176】
任意で、生産物は、使用前に保管され得る。保管時間は、好ましくは短い。したがって、保管時間は、60日、45日、30日、20日、15日、10日、7日、5日、3日、2日、1日、または12時間未満であり得る。好ましい態様において、生産物中に生きた細胞が存在する場合、生産物は、低温、例えば、20℃、15℃、10℃、または5℃未満で保管される。
【0177】
微生物ベースの生産物の現地生産
本発明の特定の態様において、微生物成長施設は、関心対象の新鮮な、高密度の微生物および/または微生物成長副産物を所望の規模で生産する。微生物成長施設は、適用場所またはその付近に設置され得る。施設は、高密度の微生物ベースの組成物を、バッチ、準連続、または連続培養で生産する。
【0178】
本発明の微生物成長施設は、微生物ベースの生産物を使用するであろう場所に設置され得る。例えば、微生物成長施設は、使用場所から300、250、200、150、100、75、50、25、15、10、5、3または1マイル未満であり得る。
【0179】
微生物ベースの生産物は、従来的な微生物生産の微生物安定化、保全、保管および輸送プロセスによらずに現地で生成され得るので、非常に高密度の微生物を生成することができ、それによって現地での適用に使用するためにより小さな体積の微生物ベースの生産物しか必要とせず、またはそれは所望の効果を達成するために必要な場合、非常に高密度の微生物の適用を可能にする。これは、システムを効率的にし、細胞を安定化させるまたはそれらをそれらの培養培地から分離する必要性を排除し得る。微生物ベースの生産物の現地生成はまた、製品に成長培地を含めることを容易にする。培地は、現地使用に特に適する、発酵中に生産された物質を含み得る。
【0180】
現地生産された高密度、堅牢な微生物培養物は、一定期間サプライチェーンにとどまったものよりも実地で効果的である。本発明の微生物ベースの生産物は、発酵成長培地中に存在する代謝産物および栄養素から細胞が分離された従来の生産物と比較して特に有利である。輸送時間の減少は、微生物および/またはそれらの代謝産物の新鮮なバッチを現地の要求により必要とされる時間および体積で生産および送達することを可能にする。
【0181】
本発明の微生物成長施設は、微生物自体、微生物の代謝産物、および/または微生物を成長させる培地の他の成分を含む、新鮮な微生物ベースの組成物を生産する。所望の場合、組成物は、高密度の栄養細胞もしくは散布体(例えば、胞子)、または栄養細胞および散布体の混合物を有し得る。
【0182】
1つの態様において、微生物成長施設は、微生物ベースの生産物が使用されるであろう場所に、またはその付近に、例えば300マイル以内に、200マイル以内に、もしくは100マイル以内にでさえ、設置される。有利には、これは、組成物が特定場所での使用のために特別仕立てにされることを可能にする。微生物ベースの組成物の配合および効能は、個別の用途に対して、および適用時の現地条件にしたがい特注され得る。
【0183】
有利には、分散型の微生物成長施設は、その製品の品質が上流の処理の遅れ、サプライチェーンのボトルネック、不適切な保管、ならびに、例えば、生きた多細胞数の生産物ならびに細胞を成長させた関連する培地および代謝産物の適時の送達および適用を妨げる他の不測の事態により損なわれる、遠方の産業規模の生産者に依存するという現在の問題に対する解決策を提供する。
【0184】
さらに、組成物を現地で生産することにより、適用時の具体的な場所および条件に対して配合および効能をリアルタイムで調節することができる。これは、中心場所で事前製造される、例えば、その場所に最適でない可能性がある比および配合が設定された組成物を上回る利点を提供する。
【0185】
微生物成長施設は、目的地の地理とのシナジーを高める微生物ベースの生産物を特別仕立てにするそれらの能力により、製造汎用性(manufacturing versatility)を提供する。有利には、好ましい態様において、本発明のシステムは、天然に存在する現地微生物およびそれらの代謝副産物の力を活用する。
【0186】
現地生産、および、例えば発酵から24時間以内の送達は、純粋な高細胞密度の組成物および実質的に低い輸送費をもたらす。より効率的および強力な微生物植菌体の開発における急速な進歩の可能性を考えれば、消費者は、微生物ベースの生産物を迅速に送達するこの能力から大きな利益を享受するであろう。
【0187】
化学系界面活性剤の置き換え
好ましい態様において、本発明のグリーンな界面活性剤組成物は、典型的に化学系界面活性剤を含む製品において化学系界面活性剤の代わりに用いられ得、ここで1つまたは複数のバイオ界面活性剤は化学系界面活性剤と同一または同様の機能的特性を有するものが選択される。
【0188】
したがって、1つの態様において、前記方法は、1つまたは複数の化学系界面活性剤および任意で1つまたは複数の追加成分を含む既知の組成物を選択する工程、ならびに前記化学系界面活性剤の代わりに本発明のグリーンな界面活性剤組成物を用いることにより前記既知の組成物の環境に優しいバージョンを生成する工程を含む。グリーンな界面活性剤組成物は、存在する場合、1つまたは複数の追加成分と混合され得る。
【0189】
特定の態様において、前記組成物は、化学系界面活性剤を含む組成物と置き換えるために使用され得る。典型的な(非生物学的界面活性剤を意味する)化学系または合成系界面活性剤は、通常は分枝していることもしていないこともある長い炭化水素鎖(C8~C18)である疎水性基を含み、他方その親水性基は、カルボキシレート、スルフェート、スルホネート(アニオン性)、アルコール、ポリオキシエチレン化鎖(非イオン性)、および第4級アンモニウム塩(カチオン性)等の部分により形成される。
【0190】
界面活性剤組成物において本発明の方法および組成物を用いて置き換えられ得る非生物学的界面活性剤には、アニオン性界面活性剤、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS、ドデシル硫酸ナトリウムとも呼ばれる)、アルキルエーテルスルフェート、ラウレス硫酸ナトリウム(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)としても公知)、ミレス硫酸ナトリウム;ドキュセート、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、パーフルオロブタンスルホネート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート(LAB)、アルキル・アリールエーテルホスフェート、アルキルエーテルホスフェート;カルボキシレート、アルキルカルボキシレート(石鹸)、ステアリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、カルボン酸ベースのフルオロ界面活性剤、パーフルオロノナノエート、パーフルオロオクタノエート;カチオン性界面活性剤、pH依存性第1級、第2級、または第3級アミン、オクテニジンジヒドロクロリド、永久荷電第4級アンモニウムカチオン、アルキルトリメチルアンモニウム塩、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとしても公知)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC)、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム(BAC)、塩化ベンゼトニウム(BZT)、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、臭化セトリモニウム、臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB);双性(両性)界面活性剤、スルタイン CHAPS(3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ベタイン、コカミドプロピルベタイン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン;非イオン性界面活性剤、エトキシレート(例えば、アルコールエトキシレート)、長鎖アルコール、脂肪アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル(Brij):CH3-(CH2)10-16-(O-C2H4)1-25-OH(オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル)、ポリオキシプロピレングリコールアルキルエーテル:CH3-(CH2)10-16-(O-C3H6)1-25-OH、グルコシドアルキルエーテル:CH3-(CH2)10-16-(O-グルコシド)1-3-OH(デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、オクチルグルコシド)、ポリオキシエチレングリコールオクチルフェノールエーテル:C8H17-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OH(Triton X-100)、ポリオキシエチレングリコールアルキルフェノールエーテル:C9H19-(C6H4)-(O-C2H4)1-25-OH(ノノキシノール-9)、グリセロールアルキルエステル(ラウリン酸グリセリル)、ポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル(ポリソルベート)、ソルビタンアルキルエステル(スパン(span))、コカミドMEA、コカミドDEA、酸化ドデシルジメチルアミン、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコールのコポリマー(ポロキサマー)、ならびにポリエトキシル化牛脂アミン(POEA)が含まれるがこれらに限定されない。
【0191】
アニオン性界面活性剤は、それらのヘッド部にアニオン性官能基、例えばスルフェート、スルホネート、ホスフェート、およびカルボキシレートを含む。主なアルキルスルフェートには、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS、ドデシル硫酸ナトリウムとも呼ばれる)、および関連するアルキルエーテルスルフェートである、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)としても公知のラウレス硫酸ナトリウムおよびミレス硫酸ナトリウムが含まれる。カルボキシレートは、最も一般的な界面活性剤であり、アルキルカルボキシレート(石鹸)、例えばステアリン酸ナトリウムを含む。
【0192】
カチオン性ヘッド基を有する界面活性剤には、pH依存性第1級、第2級、または第3級アミン;オクテニジンジヒドロクロリド、永久荷電第4級アンモニウムカチオン、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩;臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムとしても公知)、塩化セチルトリメチルアンモニウム(CTAC);塩化セチルピリジニウム(CPC);塩化ベンザルコニウム(BAC);塩化ベンゼトニウム(BZT);5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン;塩化ジメチルジオクタデシルアンモニウム;臭化セトリモニウム;および臭化ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODAB)が含まれる。
【0193】
双性(両性)界面活性剤は、同一の分子に付加されたカチオン性中心およびアニオン性中心の両方を有する。そのカチオン性部分は、第1級、第2級、もしくは第3級アミンまたは第4級アンモニウムカチオンに基づく。そのアニオン性部分は、より多様であり得、スルホネートを含む。双性界面活性剤は通常、例えばリン脂質であるホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、およびスフィンゴミエリンにおいて見いだされるように、アミンまたはアンモニウムを有するホスフェートアニオンを有する。
【0194】
非荷電親水性部分を有する界面活性剤、例えばエトキシレートは、非イオン性である。多くの長鎖アルコールが一定の界面活性特性を示す。
【実施例】
【0195】
本発明およびその多くの利点のより深い理解は、例として提供される以下の実施例からもたらされ得る。以下の実施例は、本発明の方法、応用、態様、および派生のいくつかを例示している。それらは本発明を限定するものとみなされるべきでない。本発明に関して多くの変更および改変を行うことが可能である。
【0196】
実施例1 - ソホロ脂質の生産
SLPを生産するために、発酵リアクターにスターメレラ・ボンビコラ酵母を植菌する。発酵温度は23~28℃で維持する。約22~26時間後、20%NaOHを用いて培養物のpHを約3.0~4.0、または約3.5に設定する。発酵リアクターは、pHをモニターし、pHを3.5で維持するよう塩基を投入するために使用されるポンプを制御するコンピューターを含む。
【0197】
約6~7日間の培養(120時+/-1時間)後、7.5 mlのSLP層を確認でき、油分を確認できずかつグルコースが検出されない場合、バッチは収集の準備ができている。
【0198】
発酵中でのSLP生産物の改変
本発明により生産されるSLP分子の構造は、発酵パラメータを変更することにより様々に改変することができる。1つのアプローチは、栄養培地に長鎖脂肪アルコール(例えば、C4~C26アルコール)を含めることである。得られるSLP分子は、長さが最大C36の疎水性部分を含み、組成物の疎水性、乳化、および洗浄能を増加させ得る。
【0199】
別のアプローチは、発酵培地中の糖および/または油の量を制限することである。例えば、いくつかの態様において、グルコースの量を約25 g/L~約75 g/Lに制限し、かつ/または菜種油の量を約25 ml/L~約75 ml/Lに制限する。特定の態様において、これは培養物中で生産されるASLの量を増加させ得る。
【0200】
疎水性SLP分子(例えば、LSLおよび一部のASL)の量を増加させるために、酵母を約22℃~約28℃の温度、および約2.5~4.0のpHで培養し、pHは、約4.0から始めて培養中に約2.5まで減少させ、約2.5で安定させる。
【0201】
培養物中のASLの量を増加させるために、酵母を約5.5のpH、および約35℃の温度で培養する。加えて、酵母カンジダ・クオイを用いれば、この酵母はASLのみを生産するので、ASLのみを含む組成物が得られる。
【0202】
発酵後のSLP生産物の改変
SLP分子のいくつかの改変は、培養サイクルが終了した後に行われる。例えば、無機酸、アルカリ性物質、および/または塩をSLPと混合することで溶解度を変化させることができる。
【0203】
さらに、SLPに加えて、酵母はまたリパーゼおよびエステラーゼ等の酵素を酵母培地中に生成する。特定の酵素は、SLP分子に対するアミノ酸の結合を触媒する。したがって、アミノ酸が酵母培養物に添加され得、アミノ酸はアミノ酸の特徴およびSLP分子の所望の特徴に基づき選択される。カチオン性、アニオン性、極性、および非極性のアミノ酸およびアミノアルコールは、SLP分子に結合されると、例えばカチオン性、アニオン性、極性、または非極性となるようSLP分子の特性を変化させることができる。これは、合成的な手段を用いて達成することもできる。
【0204】
加えて、特定の酵素は、アルコールおよび脂肪酸の存在下でSLP分子のエステル化を触媒する。
【0205】
発酵サイクルが完了すると、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、またはヘプタノールより選択されるアルコール(例えば、10% v/v)が酵母培養物に添加される。液体発酵培地は好ましくは、脂肪酸の供給源、例えば菜種油をすでに含んでいる。しかし、特定のエステル化産物が望まれる場合、追加の脂肪酸、例えば精製形態の脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ラウリン酸、およびミリスチン酸を添加することができる。
【0206】
酵母培養物をアルコールおよび脂肪酸と24時間混合する。24時間後、混合は停止され、培養物は、添加されたアルコール、ソホロース、および脂肪酸エステル、例えば、メタノールとオレイン酸が使用される場合に形成されるメタノールソホロ脂質オレイン酸エステル、を含むSLPエステルを含み得る。
【国際調査報告】