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特表2024-538848試料調製中の食材における鉱油汚染の(部分的に)自動化された分析のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-23
(54)【発明の名称】試料調製中の食材における鉱油汚染の(部分的に)自動化された分析のための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/02 20060101AFI20241016BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20241016BHJP
   G01N 30/68 20060101ALI20241016BHJP
   A23L 5/00 20160101ALN20241016BHJP
【FI】
G01N33/02
G01N30/06 E
G01N30/88 C
G01N30/68 Z
A23L5/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024543591
(86)(22)【出願日】2022-10-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022077445
(87)【国際公開番号】W WO2023052643
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】102021125598.8
(32)【優先日】2021-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524125371
【氏名又は名称】アクセル セムラウ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】AXEL SEMRAU GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ネストーラ, マルコ
【テーマコード(参考)】
4B035
【Fターム(参考)】
4B035LC16
4B035LG12
4B035LP59
4B035LT20
(57)【要約】
食材中の鉱油汚染物質の(部分的に)自動化された分析のための方法が、開示され、この方法は、試料調製における以下、炭化水素溶媒及びアルコールの過剰量の溶液を用いて、20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、食品を接触及び溶解させるステップ、綴り直すと抽出するステップ、冷却した後、及び前のステップでアルコールが使用された場合、水又は水とアルコールとの混合物を添加することによって相分離を開始するステップ、有機相を過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)R-COOH(I)の化合物と、少量の無機酸の存在下で、20℃超~70℃の温度で5分~2時間、エポキシ化を伴って接触させるステップ、過剰量の水の添加による試薬の分離ステップ、次の分析のための炭化水素溶媒抽出物の使用ステップ、を含む。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材中の鉱油汚染を分析するための試料を調製するための方法であって、前記方法が、少なくとも部分的に自動化されており、前記方法が、
(i)炭化水素溶媒及び任意選択でアルコールの過剰量の溶液を用いて、20℃~前記溶媒混合物の沸点の温度で、前記食材を接触及び溶解させること、又は抽出することと、
(ii)冷却すること、及び前のステップでアルコールが使用された場合、水又は水と前記アルコールとの混合物の添加による相分離の開始と、
(iii)前記溶解又は抽出された食材を含む有機相を、過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)
式中、Rは、H又は一般部分式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルを表す、化合物と、触媒量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間接触させることと、
(iv)過剰量の水を添加することによって前記溶液を分割して、水相及び反応した有機相を提供することと、
(v)前記食材中の鉱油汚染の前記分析のために、前記反応した有機相を分離することと、
(vi)任意選択で、前記試料を分析することと、を含む、方法。
【請求項2】
エポキシ化ステップ(iii)の前に、前記有機相を蒸発させ、前記試料を溶解するのに必要な量のハロゲン化脂肪族若しくは芳香族炭化水素を添加するか、又は
前記エポキシ化ステップ(iii)が、ハロゲン化脂肪族若しくは芳香族炭化水素の存在下で実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、ステップ(iii)の後に、前記有機相を蒸発させること、及び前記溶媒をn-ヘキサンと交換することを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記炭化水素溶媒が、ヘキサン若しくはペンタン、又はそれらの組み合わせである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記炭化水素溶媒が、溶媒であり、n-ヘキサン、n-ペンタン、イソ-ペンタン、イソ-ヘキサン、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記炭化水素溶媒が、n-ヘキサンである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルコールが、エタノールである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、完全に自動化されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記食材が、前記有機相中にアルカリ性加水分解性成分を含み、ステップ(ii)の後かつステップ(iii)の前に、前記アルカリ性加水分解性成分が、
-前記溶解又は抽出された食材を過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物水溶液又は他の強塩基と、約20℃超~約70℃で接触させることと、
-前記炭化水素溶媒を添加することによって、非けん化成分を抽出することと、
-任意選択で、前記炭化水素溶媒を用いた前記抽出を1回以上繰り返すことと、によってけん化される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記食材が、前記有機相中に酸性加水分解性成分を含み、ステップ(ii)の後かつステップ(iii)の前に、前記酸性加水分解性成分が、
-前記溶解又は抽出された食材を、過剰量の濃縮塩酸水溶液又は他の強酸と、約20℃~約70℃で接触させることと、
-炭化水素溶媒を添加することによって、非加水分解成分を抽出することと、
-任意選択で、前記炭化水素溶媒を用いた前記抽出を1回以上繰り返すことと、によって加水分解される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記食材が、乾燥食材であるか、又は水相中に存在する食材であり、ステップ(i)の前及びステップ(ii)の前に、鉱油不純物が、前記食材から、
-前記食材を過剰量の有機非水溶性溶媒と接触させることと、
-好適な手段を使用して、抽出された鉱油不純物を含む前記溶媒を前記食材から分離することと、によって抽出される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
食品中の鉱油成分の前記溶解及び/又は抽出が、炭化水素溶媒及びアルコールの過剰量の溶液を用いて実施され、前記炭化水素溶媒対エタノールの体積:体積比が、1:xであり、xは、ある温度、又は約20℃~前記溶媒混合物の沸点において0~10の数である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記有機相のけん化が、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液の形態の過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物溶液を用いて、約20℃~約70℃で実施される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
ハロゲン化炭化水素クロロホルムが、前記エポキシ化、ステップ(iii)が開始される前に、前記有機相に添加される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記エポキシ化、ステップ(iii)が、
-前記有機相を、50%過酸化水素及び濃縮ギ酸及び/又は酢酸の混合物と、触媒量の濃縮リン酸及び/又は硫酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約10分~約60分間接触させること、を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記食材が、加工された、部分的に加工された、又は加工されていない状態で、ヒトによって摂取されるよう意図されるか、又は摂取されると合理的に予想され、特に、天然脂肪、タンパク質含有食品、炭水化物が豊富な食品、アルコール含有食品、アルカロイド含有食品、野菜及び野菜製品、果物及び果物製品、スパイス若しくはハーブ、飲料水、ソフトドリンク、機能性食品、栄養補助食品、ダイエット食品、新規食品、ビタミン、ミネラル、酵素、脂質、アミノ酸、添加剤、又は前述の物質の混合物、並びに/又は食品クラスの製品から選択される、物質又は製品である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記天然脂肪が、果肉脂肪若しくは種子脂肪若しくは動物性脂肪、又は前述の脂肪、好ましくは、食用油若しくは脂肪の混合物である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
脂肪含有食品が、乳若しくは乳製品、チョコレート、チョコレート製品、ココア、マーガリン製品、混合脂肪製品、乳児用調製粉乳及びフォローオン調製乳、又は前述の製品の混合物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(vi)が、好ましくはFID検出器を備える、結合された液体クロマトグラム及びガスクロマトグラム(LC-GC-FID)によって実行される、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
食材中の鉱油汚染物質を分析するための前記部分的に自動化された方法を実施するためのシステムであって、
-食材の鉱油含有量の分析のための前記食材の試料のためのレセプタクルであって、第1のウェル、第2のウェル、第3のウェル、及び第4のウェルと流体連通している、レセプタクルと、
-約20℃~前記溶媒混合物の沸点の温度での炭化水素溶媒及び任意選択でアルコールの前記レセプタクルへの導入に適合されている前記第1のウェルと、
-過剰量の少なくとも30%の過酸化水素の前記レセプタクルへの導入に適合されている前記第2のウェルと、
-第3のウェルであって、一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)、
式中、Rは、H又は一般部分式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルである、化合物の、好ましくは触媒量の無機酸の存在下での、約20℃~約70℃の温度での前記レセプタクルへの導入に適合されている、第3のウェルと、
-前記レセプタクルに水を導入するように適合されている前記第4のウェルと、
-反応した有機相を前記レセプタクルから分離し、前記炭化水素相を分析器に輸送するセパレータと、
-前記第1、第2、第3、及び第4のウェルの各々に含まれる前記溶媒の前記レセプタクルへの添加を制御するため、並びに前記レセプタクルの前記温度を制御するためのコントローラと、
-任意選択で、前記反応した有機相中の鉱油を検出することができる分析器と、を備える、システム。
【請求項21】
前記コントローラが、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法を実施するように適合されている、請求項20に記載のシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月2日に出願された独国出願第102021125598.8号の優先権を主張し、その内容全体は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、食材における鉱油汚染物質の分析のための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の意味における鉱油汚染は、鉱油中に見出される2つの異なる群の化合物を指す。MOSH(鉱油飽和炭化水素)は、飽和鉱油炭化水素、主にケロシン及びナフテンであり、MOAH(鉱油芳香族炭化水素)は、芳香族鉱油炭化水素、主に(多環式)芳香族炭化水素である。MOSHは、人体に蓄積する一方、MOAHは、発がん性物質を含有する可能性があると疑われる。
【0004】
製品の包装、潤滑剤又は類似品に起因する可能性のある両方のタイプの汚染は、10年超にわたって食品で定期的に試験されてきており、絶えない議論の主題である。以下の規格及びDGF刊行物(ドイツ規格)は、試料調製及び分析に関する現在の最先端技術を説明する。
【0005】
EN 16995-Vegetable oils and foodstuffs based on vegetable oils - Determination of MOSH and MOAH with online HPLC-GC-FID(2017年6月現在)では、n-ヘキサンに可溶性である油/脂肪中のMOSH及びMOAHの直接測定が、セクション9.1に説明されている。大量の生物由来n-アルカンの存在下で、セクション9.3は、MOSHの定量のためのシリカゲルALOXカラムを介した追加の予備精製を規定する。この場合、MOAHは、クロマトグラフィーカラム上に残り、その後、別の分析で、MOSHとは独立して定量しなければならない。
【0006】
更に、セクション9.4では、かなりの量の生物由来オレフィン系試料成分の存在下でのMOAHの定量のために、クロロペル安息香酸(CPBA)(77%純度)を使用するエポキシ化による精製を室温で、初期冷却下で実行することが、提案されている。この試験方法の達成可能な定量限界は、MOSH及びMOAHについて、食品1キログラム当たり10mgである。手作業によるエラーが発生しやすい試料調製と合わせて、この方法は、不十分で、実際の使用には適していないと考えられる。
【0007】
German Standard Method for the Analysis of Fats,Fat Products,Surfactants and Related Substances-Method C-VI 22,26th update edition,German Society for Fat Science 2020(以後、DGF 2020と呼ばれる)は、11ページのポイント7下に、試料調整を改善することによって感度を向上させる(1mg/kgの定量限界)ための手順を記載している。このために、試料は、けん化(ステップ7.2)後に、シリカゲルカラムクリーンアップ(ステップ7.4)を介して更に精製される。ALOXを介した生物由来のn-アルカンの分離(ステップ7.3)は、任意選択である。続いて、オレフィン成分が、40℃のエタノール中でクロロペル安息香酸(CPBA)(純度77%)を使用するエポキシ化、及び必要に応じて、その後の溶媒の濃縮(ステップ7.5)を使用して、除去される。この手順はまた、MOSH及びMOAHを高い信頼性で定量するために、実際の分析の前に、予備カラムクロマトグラフィーを必要とする。
【0008】
本明細書における任意の先行技術の参照は、この先行技術が、任意の管轄区域における一般常識の一部を形成すること、又はこの先行技術が、当業者によって理解される、関連すると見なされる、及び/又は他の先行技術と組み合わせられると合理的に予想され得ることを、承認又は示唆するものではない。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、試料調製の際にまだカラムクロマトグラフィーを使用せず、更に、身元が分からない(blind)ことがある特殊ファインケミカルの代わりに、エポキシ化のために任意の実験室で利用可能な基礎化学薬品(過酸化水素、ギ酸、鉱酸など)を使用する点で、2017年及び2020年から事前に議論された方法よりも技術的に単純である、食用脂肪及び油を含む食材中の鉱油汚染の(部分的に)自動化された分析のための方法を提供するタスクに基づいている。
【0010】
本開示の第1の態様では、食材中の鉱油汚染を分析するための試料を調製する方法であって、当該方法が、少なくとも部分的に自動化されており、当該方法が、
(i)炭化水素溶媒及び任意選択でアルコールの過剰量の溶液を用いて、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、食材を接触及び溶解させること、又は抽出することと、
(ii)溶液を冷却すること、及び前のステップでアルコールが使用された場合、水又は水とアルコールとの混合物の添加によって相分離を開始することと、
(iii)溶解又は抽出された食材を含む有機相を、過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)、
式中、Rは、H又は一般部分式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルである、化合物と、触媒量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間接触させることと、
(iv)水を添加することによって溶液を分割して、水相及び反応した有機相を提供することと、
(v)食材中の鉱油汚染の分析のために、反応した有機相を分離することと、
(vi)任意選択で、試料を分析することと、を含む、方法、が提供される。
【0011】
実施形態では、炭化水素溶媒対アルコール(存在する場合)の比は、約1:x(v/v)であり得、xは、体積炭化水素溶媒に対するアルコールの体積であり、xは、0~10の値である。この比は、本明細書では(1:x、x:0~10、v/v)として表され得る。
【0012】
実施形態では、エポキシ化ステップ(iii)の前に、方法は、有機相を蒸発させること、及び試料を溶解させるのに必要な量のハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素を添加することを更に含み得る。
【0013】
代替的に、実施形態では、エポキシ化ステップ(iii)は、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素の存在下で実施されてもよく、方法は、ステップ(iii)後に、有機相を蒸発させること、及び溶媒を炭化水素溶媒と交換することを更に含む。
【0014】
炭化水素溶媒は、食材から鉱油を抽出することができる任意の好適な炭化水素溶媒であり得る。したがって、炭化水素溶媒は、典型的には、4~8個の炭素原子、好ましくは、5個又は6個の炭素原子を含む炭化水素などの非極性炭化水素である。実施形態では、炭化水素溶媒は、ヘキサン若しくはペンタン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、炭化水素溶媒は、n-ヘキサン、n-ペンタン、イソ-ペンタン、イソ-ヘキサン、又はそれらの組み合わせから選択される。実施形態では、炭化水素溶媒は、n-ヘキサンである。炭化水素溶媒は、任意選択でアルコールとともに、ステップ(i)で使用され得る。任意の好適なアルコールを使用してもよいが、典型的には、アルコールは、エタノールである。実施形態では、エタノールは、少なくとも96%(体積)のエタノールである。実施形態では、エタノールは、無水エタノールである。
【0015】
実施形態では、本明細書に記載の方法であって、完全に自動化されている、方法、が提供される。
【0016】
前述のエポキシ化ステップ(iii)は、過酸化水素の存在下インサイチュで、酸によって触媒された方式で、一般式(I)の化合物から対応する過酸を生成する。アルカン酸としては、ギ酸(R=H)に加えて、酢酸又は置換酢酸も使用することができる。例は、酢酸に加えて、モノ、ジ、又はトリフルオロ酢酸、モノ、ジ、又はトリクロロ酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、2-メチルプロパン酸、ネオペンタン酸である。塩酸、リン酸、硝酸、及び硫酸は、無機酸として使用され得る。
【0017】
本開示の一実施形態によれば、食材は、有機相内にアルカリ性加水分解性成分を含み、ステップ(i)の後かつステップiiの前に、アルカリ性加水分解性成分が、
-溶解又は抽出された食材を過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物水溶液又は他の強塩基と、約20℃超~約70℃で接触させることと、
-炭化水素溶媒を添加することによって、非けん化成分を抽出することと、
-任意選択で、炭化水素溶媒を用いた抽出を1回以上繰り返すことと、によって、けん化される。
【0018】
実施形態では、アルカリ性金属水酸化物溶液は、水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液であり、他の強塩基は、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化ストロンチウムなどのアルカリ土類水酸化物、又はアルキルアミンなどの有機塩基である。
【0019】
実施形態では、本明細書に記載の方法であって、エポキシ化ステップの前にマトリックスを除去するための、シリカゲルに対する事前のクリーンアップステップを伴わない、方法、が提供される。
【0020】
方法は、任意の好適な定量された量の試料に対して実施されてもよい。既知の量の試料でプロセスを開始することは、鉱油含有量を定量するために重要である。場合によっては、本発明の方法は、MOSH/MOAH汚染物質の検出の改善に起因して、より少ない量の試料の分析を可能にするが、MOSH/MOAH汚染物質の量が、存在する場合、選択された分析技術(例えば、LC-GC-FID)の検出限界を上回ることを確実にするためには、十分な試料が必要となる。いくつかの実施形態では、約10ミリリットル(mL)、約9mL、約8mL、約7mL、約6mL、約5mL、約4mL、約3mL、約2mL、又は約1ミリリットル(mL)以下の最大試料が、使用され得る。実施形態では、最小試料体積は、少なくとも約1マイクロリットル(μL)、約10μL、約50μL、約75μL、約100μL、約150μL、約200μL、約300μL、約400μL、約500μL、約600μL、約700μL、約800μL、約900μL、又は約950μLであり得る。実施形態では、試料体積は、これらの最小体積のいずれかからこれらの最大体積のいずれかまで、例えば、約1μL~約10mL、又は約500μL~約2mLであり得る。当業者は、最初の試料アリコートの質量/体積に応じて、適切な量の試薬及び/又は溶媒を選択することができるであろう。
【0021】
本開示の一実施形態によれば、食材は、有機相中に酸性加水分解性成分を含み、ステップ(i)の後かつステップ(ii)の前に、酸性加水分解性成分は、
-溶解又は抽出された食材を、過剰量の濃縮塩酸水溶液又は他の強酸と、約20℃~約70℃で接触させることと、
-炭化水素溶媒を添加することによって、非加水分解成分を抽出することと、
-任意選択で、炭化水素溶媒を用いた抽出を1回以上繰り返すことと、によって、加水分解される。
【0022】
実施形態では、他の強酸は、リン酸、硫酸、又は硝酸などの無機酸である。
【0023】
本開示の一実施形態によれば、食材は、乾燥食材であるか、又は水相中に存在する食材であり、ステップ(i)の前に、鉱油汚染物質が、食材から、
-食材を過剰量の有機非水溶性溶媒と接触させることと、
-好適な手段を使用して、抽出された鉱油不純物を含む溶媒を食材から分離することと、によって、抽出される。
【0024】
一実施形態では、食材からの鉱油成分の抽出は、炭化水素溶媒及びアルコールの過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて、温度又は約20℃~溶媒混合物の沸点において実施される。
【0025】
実施形態では、アルコールは、エタノールである。実施形態では、エタノールは、少なくとも96%(体積)のエタノールである。実施形態では、エタノールは、無水エタノールである。
【0026】
好ましくは、本明細書に記載の方法において使用される任意の溶媒及び/又は試薬は、MOSH/MOAH汚染物質を含まない。
【0027】
溶媒及び/又は試薬のMOSH/MOAH含有量は、本開示の方法に関して記載される同様の方法、例えば、ガスクロマトグラフィー(例えば、MXT-1カラム-Siltek処理ステンレス鋼、15m×0.25mm×0.25μm、Restek、Bellefonte,PA,USAを使用する)、又は例えば、本明細書に記載されるLC-GC-FIDを含む任意の他の好適な技術によって定量され得る。したがって、本明細書に記載の方法において使用される任意の溶媒及び/又は試薬のMOSH/MOAH含有量は、食材試料のMOSH/MOAH含有量を分析するために使用されることが意図される分析技術の検出限界未満であり得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、方法は、溶媒及び試薬の使用の前にそれらのMOSH/MOAH含有量を決定し、任意選択で、本開示の方法におけるそれらの使用の前に、溶媒及び/又は試薬を精製してMOSH/MOAH含有量を除去する最初のステップを含む。溶媒及び/又は試薬は、蒸留、クロマトグラフィーなどの当技術分野で既知の技術によって精製され得る。
【0029】
本開示の一実施形態では、有機相のけん化は、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液の形態の過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物溶液を用いて、約20℃~約70℃で実施される。
【0030】
本開示の一実施形態では、ハロゲン化炭化水素クロロホルムが、エポキシ化ステップ(iii)の前に、有機相に添加される。
【0031】
本発明の一実施形態では、エポキシ化、ステップ(iii)は、
-有機相を、50%過酸化水素及び濃縮ギ酸及び/又は酢酸の混合物と、触媒量の濃縮リン酸及び/又は硫酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約10分~約60分間接触させること、を含む。
【0032】
本開示の一実施形態によれば、食材は、天然脂肪、タンパク質含有食材、炭水化物豊富な食材、アルコール含有食材、アルカロイド含有食材、野菜及び野菜製品、果物及び果物製品、スパイス若しくはハーブ、飲料水、ソフトドリンク、機能性食材、栄養補助食品、ダイエット食材、新規食品、ビタミン、ミネラル、酵素、脂質、アミノ酸、添加剤、又は前述の物質の混合物、並びに/又は食材クラスの製品から選択される。本開示の一実施形態によれば、天然脂肪は、フルーツパルプファタ種子脂肪、若しくは動物脂肪、又はそれらの組み合わせである。
【0033】
本開示の別の実施形態によれば、脂肪含有食品製品は、乳若しくは乳製品、チョコレート、チョコレート製品、ココア、マーガリン製品、混合脂肪製品、乳児用調製粉乳及びフォローオン調製乳、又は前述の製品の混合物である。
【0034】
本開示の第2の態様では、システムであって、
-食材の鉱油含有量の分析のための当該食材の試料のためのレセプタクルであって、第1のウェル、第2のウェル、第3のウェル、及び第4のウェルと流体連通している、レセプタクルと、
-約20℃~溶媒混合物の沸点の温度での炭化水素溶媒及び任意選択でアルコールのレセプタクルへの導入に適合されている第1のウェルと、
-過剰量の少なくとも30%の過酸化水素のレセプタクルへの導入に適合されている第2のウェルと、
-第3のウェルであって、一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)、
式中、Rは、H又は一般部分式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルである、化合物の、触媒量の無機酸の存在下での、約20℃~約70℃の温度でのレセプタクルへの導入に適合されている、第3のウェルと、
-レセプタクルに水を導入するように適合されている第4のウェルと、
-反応した有機相をレセプタクルから分離し、反応した有機相を分析器に輸送するセパレータと、
-第1、第2、第3、及び第4のウェルの各々に含まれる溶媒のレセプタクルへの添加を制御するため、並びにレセプタクルの温度を制御するためのコントローラと、
-任意選択で、反応した有機相中の鉱油を検出することができる分析器と、を備える、システム、が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態では、システムは、レセプタクルを振とうするためのシェーカーを備え、シェーカーはまた、コントローラの制御下にあってもよい。いくつかの実施形態では、システムは、レセプタクルをシェーカーに自動的に移送するように適合されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、セパレータは、遠心分離機を備える。遠心分離機は、コントローラによって制御されてもよい。いくつかの実施形態では、システムは、レセプタクルを遠心分離機に自動的に移送するように適合されてもよい。
【0037】
本開示の第3の態様では、本明細書に記載される方法を実施するための、本明細書に記載されるシステムの使用が提供される。
【0038】
更なる態様では、試料が、本明細書に記載の第1の態様の方法及び実施形態に従って調製されて、試料が分析される、試料のMOSH及びMOAH分析が、提供される。
【0039】
更なる態様では、試料が、本明細書に記載の第2の態様及び実施形態のシステムを使用して調製され、分析される、試料のMOSH及びMOAH分析が、提供される。
【0040】
実施形態では、試料は、LC-GC-FIDによって分析されるか、又は試料は、HPLCを使用して予め分離され、GC-MS又はGCXGC-MSを使用して分析される。
【0041】
本明細書で使用される場合、文脈上別段の解釈が要求される場合を除い て、「含む(comprise)」という用語及び用語の変形、例えば「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「含んだ(comprised)」は、更なる添加剤、成分、要素、又はステップを除外することを意図しない。
【0042】
実施形態が「含む(comprising)」と定義される場合、「から本質的になる(consists essentially of)」及び「からなる(consists of)」のより狭いポジションも開示されることが理解される。「から本質的になる(consists essentially of)」という用語又は「から本質的になる(consisting essentially of)」などの変形は、実施形態が、全てのリストされた構成要素又はステップを含み、かつ実施形態の基本的な特性又は機能に実質的に影響を及ぼさない他のリストされていない構成要素又はステップを含み得ることを示す。「からなる(consists of)」という用語又は「からなる(consisting of)」などの変形は、実施形態が、更なる添加剤、構成成分、又はステップを除外するように定義されることを示すことを意図している。
【0043】
本開示の更なる態様及び前の段落に記載の態様の更なる実施形態は、例として与えられる以下の説明から、及び添付の図面を参照して、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】DGF標準方法及びEN 16995:2017に準拠した、エポキシ化後のパーム油(RBD-精製、漂白、脱臭)のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムを示す。
図2】本発明の実施例1による試料調製後のパームオレインのMOAH画分のLC-GC-FIDクロマトグラム(一番上のクロマトグラム)、及び先行技術、比較例[EN 16995、DGF-2020]を示す。右側のパネル:20分未満の時間。
図3】汚染をシミュレートするために鉱油を添加した試料調製後の、オリーブ及びヒマワリ油の1:1混合物のMOAH画分のLC-GCクロマトグラムを示す。上側のクロマトグラムは、DGF 2020、比較例による調製を示し、下側の曲線は、本発明の実施例2による方法を示す。
図4】使用されたエポキシ化技術に依存して残存する多価不飽和物を示す、エポキシ化RBDパーム油のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムオーバーレイを示す。
図5】複数の精製パーム油画分に見出されるピーククラスターを強調する、エポキシ化後のEIEパーム油のMOAHクロマトグラムを示す。
図6図5からの強調されたピーククラスターの分解図を示す。文献からの質量スペクトル及び溶出順序に従って、精製パーム油中で傾向的に同定された単環芳香族ステロイド炭化水素。
図7A】シトステロールに由来する単環芳香族炭化水素について得られた質量スペクトルを示す。
図7B】シトステロールに由来する単環芳香族炭化水素について得られた質量スペクトルを示す。
図7C】シトステロールに由来する単環芳香族炭化水素について得られた質量スペクトルを示す。
図8】クロロホルム中の過ギ酸によるエポキシ化のための芳香族炭化水素構造及びそれらの半減期時間の図面を示す。
図9】MOSH/MOAH試料調製及び分析のためのワークフローを示す。
図10A】MOSH(10A)及びMOAH(10B)の試薬ブランクのLC-GC-FIDクロマトグラムを示す。
図10B】MOSH(10A)及びMOAH(10B)の試薬ブランクのLC-GC-FIDクロマトグラムを示す。
図11A】DGF標準方法C-VI 22の開発中の試験からの、ココアバター(A)、ヒマワリ油(B)、スパイクした菜種油(C)、スパイクしたオリーブ油(D)、スパイクしたヒマワリ油(E)、及びスパイクしたパーム油(F)の試料のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムを示す。
図11B】DGF標準方法C-VI 22の開発中の試験からの、ココアバター(A)、ヒマワリ油(B)、スパイクした菜種油(C)、スパイクしたオリーブ油(D)、スパイクしたヒマワリ油(E)、及びスパイクしたパーム油(F)の試料のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムを示す。
図11C】DGF標準方法C-VI 22の開発中の試験からの、ココアバター(A)、ヒマワリ油(B)、スパイクした菜種油(C)、スパイクしたオリーブ油(D)、スパイクしたヒマワリ油(E)、及びスパイクしたパーム油(F)の試料のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムを示す。
図11D】DGF標準方法C-VI 22の開発中の試験からの、ココアバター(A)、ヒマワリ油(B)、スパイクした菜種油(C)、スパイクしたオリーブ油(D)、スパイクしたヒマワリ油(E)、及びスパイクしたパーム油(F)の試料のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムを示す。
図11E】DGF標準方法C-VI 22の開発中の試験からの、ココアバター(A)、ヒマワリ油(B)、スパイクした菜種油(C)、スパイクしたオリーブ油(D)、スパイクしたヒマワリ油(E)、及びスパイクしたパーム油(F)の試料のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムを示す。
図11F】DGF標準方法C-VI 22の開発中の試験からの、ココアバター(A)、ヒマワリ油(B)、スパイクした菜種油(C)、スパイクしたオリーブ油(D)、スパイクしたヒマワリ油(E)、及びスパイクしたパーム油(F)の試料のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本明細書に開示され、定義される本発明は、言及された、又は文章若しくは図面から明らかな個々の特徴のうちの2つ以上の代替的な組み合わせの全てに及ぶことが理解されるであろう。これらの異なる組み合わせの全てが、本発明の様々な代替的態様を構成する。
【0046】
定義
本明細書を解釈するために、単数形で使用される用語は、複数形も含み、逆の場合も同様である。例えば、「1つの(a)」は、別段の指示がない限り、1つ以上を意味する。
【0047】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の任意の材料及び方法を使用して、本開示を実施又は試験することができるが、好ましい材料及び方法を以下に記載する。
【0048】
当業者は、本開示の実施に使用され得る、本明細書に記載されるものと類似又は同等の多くの方法及び材料を認識するであろう。本開示は、決して、記載された方法及び材料に限定されない。
【0049】
本明細書で使用される「測定」という用語は、定量的及び定性的測定を含む、その最も広い意味で解釈されるべきである。特に明記しない限り、測定は、周囲条件、典型的には室温及び室圧、例えば、約1気圧(atm)において約20~25℃で実施されることを理解されたい。
【0050】
本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、「及び」、若しくは「又は」、若しくはその両方を意味する。
【0051】
名詞に続く用語「(s)(複数可)」は、単数形及び複数形、又はその両方を企図する。
【0052】
本明細書に開示される数字の範囲(例えば、1~10)への言及はまた、その範囲内の全ての有理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)、並びにその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば、2~8、1.5~5.5、及び3.1~4.7)への言及も組み込まれることが意図され、したがって、本明細書に明示的に開示される全ての範囲の全てのサブ範囲は、本明細書に明示的に開示される。これらは、具体的に意図されているものの単なる例であり、列挙された最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせは、同様の方法で本出願に明示的に記載されていると見なされる。
【0053】
本発明の様々な特徴は、特定の値、又は値の範囲を参照して説明される。これらの値は、様々な適切な測定技術の結果に関連することが意図されており、したがって、任意の特定の測定技術に固有の誤差範囲を含むと解釈されるべきである。本明細書で言及される値のいくつかは、「約」という用語によって示され、少なくとも部分的に、この変動性を考慮する。「約」という用語は、値を説明するために使用される場合、その値の±10%、±5%、±1%、又は±0.1%以内の量を意味し得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「過剰」という用語は、文脈上別段の解釈を必要としない限り、体積過剰又はモル過剰のいずれかを意味することが意図される。文脈に基づいて明確でない場合、過剰への本明細書での言及は、体積過剰として解釈されるべきである。
【0055】
食材
本開示の一実施形態によれば、食材は、天然脂肪、タンパク質含有食材、炭水化物豊富な食材、アルコール含有食材、アルカロイド含有食材、野菜及び野菜製品、果物及び果物製品、スパイス若しくはハーブ、飲料水、ソフトドリンク、機能性食材、栄養補助食品、ダイエット食材、新規食品、ビタミン、ミネラル、酵素、脂質、アミノ酸、添加剤、又は前述の物質の混合物、並びに/又は食品クラスの製品から選択される。タンパク質食品の例は、肉、ソーセージを含む肉製品、肉エキス、ブロス調味料、ゼラチン、魚、甲殻類、貝類及び軟体動物、魚製品、卵、卵製品、大豆、ルピナス由来のものを含む植物性タンパク質製品である。炭水化物豊富な食品の例としては、砂糖、糖アルコール、砂糖菓子、蜂蜜、シリアル(穀物)、パン及びベーカリー製品、ベーキング剤、ベーキングパウダー、パスタ、デンプンが挙げられる。アルコール含有食品の例は、菓子及び焼き菓子のアルコール添加剤としてのワイン、スパークリングワイン、ビール、ブランデーである。アルカロイド含有食品の例は、コーヒー、紅茶、ココア、及びチョコレートである。野菜及び野菜製品の例は、ジャガイモ、トマト、キャベツ野菜、豆類、キノコなどの新鮮野菜、及び冷凍野菜、缶詰野菜、乾燥野菜、発酵野菜、漬物野菜などの長持ちする野菜(vegetable durables)である。果物及び果物製品の例としては、新鮮な果物、ドライフルーツ、砂糖漬けの果物菓子、ジャム、ゼリー、マーマレード、果汁、フルーツネクターが挙げられる。スパイス又はハーブの例としては、生鮮食品に加えて、果物、種子、花、根、樹皮、葉、及びハーブのスパイス、スパイスブレンド、醤油、エッセンス、食塩、酢、及びフルーツ酸が挙げられる。ソフトドリンクの例は、ミネラルウォーター、スイートソフトドリンク、ノンアルコールソフトドリンク、ソーダ、及びアイソトニック飲料である。機能性食品の例は、オメガ-3脂肪酸、ACEビタミン、又はベータ-グルカンを強化した製品である。添加剤の例は、酸化防止剤、乳化剤、増粘剤、安定剤、保湿剤、及び香味料である。
【0056】
本開示の一実施形態によれば、天然脂肪、特に精製脂肪は、本発明の意味における食材、例えば、植物性脂肪、例えば、果肉脂肪、例えば、パーム油、オリーブ油、アボカド油、種子脂肪、例えば、ココナッツ脂肪、塩脂肪(salt fat)、パーム核脂肪、ババス脂肪、ベイリーフ脂肪、ナツメグバター、ウクフバ脂肪、ジカ脂肪、ココアバター、シアバター、ボルネオ脂、綿実油、カポック油、オクラ油、コーンシード油、パンプキンシード油、トウモロコシ胚芽油、穀物油、ヒマワリ油、ゴマ油、アマニ油、紫蘇油、大麻油、椿油、サフラワー油、ニジェール油、グレープシード油、ポピーシード油、ブナの実油、ヘーゼルナッツ油、大豆油、ピーナッツ油、ビート油、キリ油、オイチシカ油、ボレコ油、パリナリウム油、リシナス油、チョウルムグラ油、ヒドノカルプス油、ゴルリ油(gorli oil)、ベルノニア油であると理解される。更に、本発明の意味における脂肪、特に精製脂肪は、陸上動物脂肪、例えば、ブタ脂肪、牛脂、羊脂、ウマ脂肪、ガチョウ脂肪、鶏脂肪、又は海洋動物油、例えば、鯨油、魚油、魚及びクジラの肝油、スパーム油などの動物性脂肪であると理解される。ここでは、前述の脂肪の混合物も可能である。本発明の意味での好ましい脂肪は、全ての市場向き精製段階のパーム脂肪、シア脂肪、ココナッツ脂肪、及び塩脂肪、並びに、植物性脂肪及び油に加えて、バター、マーガリン、特製マーガリンを例として含む、食用油及び食用脂肪である。特殊な脂肪(プレート脂肪、揚げ物用脂肪)、分離油(separating oils)、マヨネーズ、及びサラダドレッシング。
【0057】
食品のMOSH/MOAH含有量の一般的な検出は、特定の油において、MOSH/MOAHに重複するシグナルを伴う油中の他の成分、例えば、多価不飽和物の存在に起因して、困難である。特にパーム油は、MOSH/MOAH含有量の検出を困難にする難しいマトリックスを有することが知られている。驚くべきことに、本発明者らは、本開示の方法が、向上した感度で、パーム油を含む食品中のMOSH/MOAH含有量を検出することができることを見出した。
【0058】
いくつかの実施形態では、食材は、パーム油を含む。
【0059】
本開示の別の実施形態によれば、脂肪含有食品製品は、乳若しくは乳製品、チョコレート、チョコレート製品、ココア、マーガリン製品、混合脂肪製品、乳児用調製粉乳及びフォローオン調製乳、又は前述の製品の混合物である。乳製品は、例えば、コンデンスミルク、乾燥乳製品、酸味乳製品、クリーム、牛乳ベースのデザート製品、バター、チーズ、アイスクリームである。チョコレート製品は、例えば、プラリーヌ、飲料用チョコレート、チョコレートパウダー、中空チョコレート、チョコレートスプリンクルである。マーガリン製品は、例えば、家庭用マーガリン、半脂肪マーガリン、ベーキングマーガリンである。乳児用調製粉乳及びフォローオン調製乳は、例えば、乾燥粉乳に基づく乾燥形態の乳児用調製粉乳である。
【0060】
自動化
本明細書で使用される場合、「少なくとも部分的に自動化された」という語句は、プロセス又は方法のステップのうちの少なくとも2つ以上(又は最大で全て)が、手動での処理を必要とせずに自動的に実施され得るプロセス又は方法を指す。
【0061】
実施形態では、部分的に自動化されたとは、2つの自動化されたステップを指す。実施形態では、部分的に自動化されたとは、3つの自動化されたステップ、又は4つの自動化されたステップ、又は5つの自動化されたステップ、又は6つの自動化されたステップを指す。実施形態では、部分的に自動化されたとは、1つのステップを除く全てが自動化されている、又は2つのステップを除く全てが自動化されている、又は3つのステップを除く全てが自動化されている、又は5つのステップを除く全てが自動化されている、又は6つのステップを除く全てが自動化されていることを指す。
【0062】
実施形態では、自動化されたステップのうちのいくつかは、連続的なステップである。実施形態では、2つ以上の更なる自動化ステップが続く手動処理ステップが、一連の自動化されたステップに続いてもよい。
【0063】
本明細書で使用される場合、「完全に自動化されたプロセス」という語句は、プロセスの開始時に試料を提供する以外に、ステップのいずれも手動での人間の取り扱いを必要としないプロセスを指す。
【0064】
本明細書に記載されるように、本開示は、鉱油、好ましくは食品油中のMOAH及びMOSH含有量を分析する少なくとも部分的に自動化された方法に関する。
【0065】
予抽出
任意選択で、本方法は、食品が乾燥食品であり、食品油を得るための予抽出ステップが要求されるときに適用することができる。これは、当技術分野で既知の好適な手段によって行うことができる。
【0066】
好適な手段としては、ソックスレー抽出器における固液抽出が挙げられる。同様に、Weibull-Stoldt、Rose-Gottlieb、又はSchmid-Bondzynski-Ratzlaffによる脂肪抽出のための一般的な方法は、試料のマトリックスに応じて、非極性鉱油成分を抽出するのに好適である。
【0067】
抽出ステップ
本開示の実施形態では、方法は、抽出ステップを含む。
【0068】
抽出ステップは、
(i)炭化水素溶媒及び任意選択でアルコールの過剰量の溶液を用いて、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、食材を接触及び溶解させること、又は抽出することと、
(ii)溶液を冷却することと、を含む。
【0069】
実施形態では、ステップ(i)でアルコールが使用された場合、方法は、水又は水とアルコールとの混合物の添加によって相分離を開始することを更に含む。
【0070】
実施形態では、炭化水素溶媒対アルコールの体積:体積比は、1:xからであってもよく、xは、炭化水素溶媒に対するアルコールの体積であり、xは、0~10の値である。
【0071】
けん化
本開示の一実施形態によれば、食材は、有機相内にアルカリ性加水分解性成分を含み、ステップ(i)の後かつステップiiの前に、アルカリ性加水分解性成分は、
-溶解又は抽出された食材を過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物水溶液又は他の強塩基と、約20℃超~約70℃で接触させることと、
-炭化水素溶媒を添加することによって、非けん化成分を抽出することと、
-任意選択で、炭化水素溶媒を用いた抽出を1回以上繰り返すことと、によって、けん化される。
【0072】
実施形態では、炭化水素溶媒を用いた抽出が、1~10回繰り返される。
【0073】
実施形態では、抽出ステップは、1回、又は2回、又は3回、又は4回、又は5回、又は6回、又は7回、又は8回、又は9回、又は10回繰り返される。
【0074】
炭化水素溶媒は、食材から鉱油を抽出することができる任意の好適な炭化水素溶媒であり得る。したがって、炭化水素溶媒は、典型的には、4~8個の炭素原子、好ましくは、5個又は6個の炭素原子を含む炭化水素などの非極性炭化水素である。実施形態では、炭化水素溶媒は、ヘキサン若しくはペンタン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、炭化水素溶媒は、n-ヘキサン、n-ペンタン、イソ-ペンタン、イソ-ヘキサン、又はそれらの組み合わせから選択される。実施形態では、炭化水素溶媒は、n-ヘキサンである。必要に応じて、けん化ステップは、抽出溶液が冷却された(本明細書に記載されるステップ(ii))後に実施されてもよい。
【0075】
実施形態では、アルカリ性金属水酸化物溶液は、水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液である。
【0076】
実施形態では、他の強塩基は、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、及び水酸化ストロンチウムなどのアルカリ土類水酸化物、又はアルキルアミンなどの有機塩基である。
【0077】
実施形態では、有機相のけん化は、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液の形態の過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物溶液を用いて、約20℃~約70℃の温度で実施される。
【0078】
有利には、けん化ステップは、試料の体積によって制限されず、試料のために、必要に応じてスケーリングすることができる。試料体積を増やすことができる理由の1つは、測定の感度を高めるためである。
【0079】
実施形態では、方法は、エポキシ化ステップの前にマトリックスを除去するための、シリカゲルに対するクリーンアップステップを伴わない。
【0080】
従来技術のMOSH/MOAH分析では、剥き出しのシリカゲルに対するHPLCクリーンアップは、マトリックスを除去するのに役立ったが、これは、試料の量が、使用されるHPLCカラムの限界を超えて増加する場合、実用的ではない。より大きなHPLCカラムを選択すると、GCへの移送体積に関する問題が生じる。有利には、けん化は、より大きな試料体積を処理することができる。好都合には、このステップも、自動化することができる。
【0081】
酸性加水分解
本開示の一実施形態によれば、食材は、有機相中に酸性加水分解性成分を含み、ステップ(i)の後かつステップiiの前に、酸性加水分解性成分は、
-溶解又は抽出された食材を、過剰量の濃縮塩酸水溶液又は他の強酸と、約20℃~約70℃で接触させることと、
-炭化水素溶媒を添加することによって、非加水分解成分を抽出することと、
-任意選択で、炭化水素溶媒を用いた抽出を1回以上繰り返すことと、によって、加水分解される。
【0082】
実施形態では、炭化水素溶媒を用いた抽出は、1~10回繰り返される。
【0083】
実施形態では、抽出ステップは、1回、又は2回、又は3回、又は4回、又は5回、又は6回、又は7回、又は8回、又は9回、又は10回繰り返される。
【0084】
炭化水素溶媒は、食材から鉱油を抽出することができる任意の好適な炭化水素溶媒であり得る。したがって、炭化水素溶媒は、典型的には、4~8個の炭素原子、好ましくは、5個又は6個の炭素原子を含む炭化水素などの非極性炭化水素である。実施形態では、炭化水素溶媒は、ヘキサン若しくはペンタン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、炭化水素溶媒は、n-ヘキサン、n-ペンタン、イソ-ペンタン、イソ-ヘキサン、又はそれらの組み合わせから選択される。実施形態では、炭化水素溶媒は、n-ヘキサンである。
【0085】
実施形態では、他の強酸は、リン酸、硫酸、又は硝酸などの無機酸であってもよい。
【0086】
エポキシ化ステップ
実施形態では、方法は、エポキシ化ステップを含む。エポキシ化ステップは、
溶解又は抽出された食材を含む有機相を、過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)、
式中、Rは、H又は一般部分式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)、
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルである、化合物と、触媒量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間接触させることと、
水を添加することによって溶液を分割して、水相及び反応した有機相を提供することと、
食材中の鉱油汚染の分析のために、反応した有機相を分離することと、を含む。
【0087】
炭化水素溶媒は、食材から鉱油を抽出することができる任意の好適な炭化水素溶媒であり得る。したがって、炭化水素溶媒は、典型的には、4~8個の炭素原子、好ましくは、5個又は6個の炭素原子を含む炭化水素などの非極性炭化水素である。実施形態では、炭化水素溶媒は、ヘキサン若しくはペンタン、又はそれらの組み合わせである。実施形態では、炭化水素溶媒は、n-ヘキサン、n-ペンタン、イソ-ペンタン、イソ-ヘキサン、又はそれらの組み合わせから選択される。実施形態では、炭化水素溶媒は、n-ヘキサンである。
【0088】
実施形態では、エポキシ化ステップは、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素の存在下で実施される。
【0089】
実施形態では、エポキシ化ステップの前に、本方法は、有機相を蒸発させること、及びハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素を添加することを含む。ハロゲン化脂肪族又は芳香族溶媒の量は、試料を溶解させるのに必要な量であり得る。
【0090】
エポキシ化ステップ(iii)がハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素の存在下で実施される場合、方法は、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素を蒸発させること、及びエポキシ化後に炭化水素溶媒を添加して、ハロゲン化溶媒を、分析に好ましい炭化水素溶媒と交換することを更に含み得る。試料調製ステップについて記載される炭化水素溶媒のいずれかを使用することができるが、典型的には、炭化水素溶媒は、ヘキサンである。
【0091】
実施形態では、溶媒交換は、当技術分野で既知の任意の好適な手段、例えば、熱及び/若しくは振とう、又はそれらの組み合わせとともに、真空又はガス流を適用することによって実行される。
【0092】
実施形態では、ハロゲン化脂肪族炭化水素は、(以下に限定されないが)クロロメタン(モノクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、及び四塩化炭素)、クロロエタン、塩化ビニル、1,1-ジクロロエチレン、1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレン及びペルクロロエチレン、クロロプロパン、クロロブタン、クロロブテン、フッ素化脂肪族フルオロメタン、フルオロエタン、フルオロエチレン、フルオロプロパン、フルオロブタン、並びにフルオロブテンなどの塩素化脂肪族炭化水素であり得る。
【0093】
好ましい実施形態では、ハロゲン化脂肪族炭化水素は、クロロメタン、好ましくは、ジクロロメタン又はクロロホルム、最も好ましくは、クロロホルムである。
【0094】
実施形態では、ハロゲン化芳香族炭化水素は、(以下に限定されないが)モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、テトラクロロベンゼン、ペンタクロロベンゼン、及びヘキサクロロベンゼンを含むクロロベンゼンなどの塩素化芳香族炭化水素、並びにモノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、及びヘキサフルオロベンゼンを含むフルオロベンゼンなどのフッ素化芳香族炭化水素であり得る。
【0095】
実施形態では、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素の溶液は、メタ-クロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)を含まない。
【0096】
いくつかの実施形態では、抽出又は溶解した食材を含む有機相は、キーパー溶媒を更に含む。キーパー溶媒は、好ましくは、エポキシ化条件に対して反応性の不飽和C-C結合(例えば、オレフィン)を含まない。キーパー溶媒は、溶媒交換ステップを支援するために、食材の成分を溶液中に保持することを意図しており、したがって、例えば、炭化水素溶媒とハロゲン化溶媒との間の溶媒交換を伴う方法において好ましい。エポキシ化条件に対して非反応性の任意の好適なキーパー溶媒を使用することができる。好適なキーパー溶媒としては、セバシン酸などが挙げられる。キーパー溶媒の量は、抽出又は溶解した食材を溶液中に保持するための最小量が存在するという条件で、限定されず、最小量は、抽出又は溶解した食材の特異性に依存する。
【0097】
本発明の好ましい実施形態によれば、エポキシ化は、有機相を、約50%過酸化水素及び濃縮ギ酸及び/又は酢酸の混合物と、触媒量の濃縮リン酸及び/又は硫酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約10分~約60分間接触させることによって実施される。
【0098】
実施形態では、エポキシ化は、有機相を、約50%過酸化水素及び濃縮ギ酸及び/又は酢酸の混合物と、触媒量の濃縮硫酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約10分~約60分間接触させることによって実施される。
【0099】
実施形態では、エポキシ化反応は、リン酸の非存在下で実施される。
【0100】
実施形態では、ギ酸は、濃縮ギ酸である。実施形態では、ギ酸は、ニートギ酸(例えば、100%の濃度)である。重要なことに、酸は、MOSH/MOAH不純物を含有すべきでない。
【0101】
実施形態では、酢酸は、濃縮酢酸である。実施形態では、ギ酸は、ニートギ酸(例えば、100%の濃度)である。重要なことに、酸は、MOSH/MOAH不純物を含有すべきでない。
【0102】
本明細書で使用される場合、エポキシ化反応ステップに存在する酸に関連して使用される「触媒量」とは、反応速度を増加させるのに十分な量、例えば、約5%~約10%の量である。
【0103】
実施形態では、濃硫酸は、少なくとも95%の純度を有する。
【0104】
実施形態では、濃縮リン酸は、少なくとも85%の純度を有する。
実施形態では、濃縮リン酸及び/又は硫酸の触媒量は、約5%~約10%である。好ましい実施形態では、触媒量は、約10%である。
【0105】
実施形態では、エポキシ化は、触媒量の濃硫酸の存在下で実施される。実施形態では、エポキシ化反応は、リン酸を含まない。
【0106】
エポキシ化反応の温度は、分析物(サイズ、化学組成など)に応じて異なることになる。いくつかの実施形態では、エポキシ化反応の最小温度は、少なくとも約20℃、約25℃、約30℃、約35℃、約40℃、約45℃、又は約50℃であり得る。いくつかの実施形態では、エポキシ化反応の最高温度は、約70℃、約65℃、約60℃、約55℃、又は約50℃以下であり得る。エポキシ化ステップの温度は、最大温度が最小温度よりも高いことを条件に、これらの最小温度のいずれかからこれらの最大温度のいずれかまでであってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、エポキシ化ステップの温度は、約30℃~約55℃、又は約40℃~約60℃である。
【0107】
必要な反応時間は、選択された温度、及び分析物の性質、及び生物学的干渉の存在に部分的に依存することになる。典型的には、エポキシ化反応は、約10分~約60分間実行されることが可能である。
【0108】
実施形態では、分析のための試料体積は、最大400μLであり得る。有利には、試料量を増加させると、分析の感度が高まる。典型的には、先行技術の方法は、最大100μLの試料体積に制限される。
【0109】
実施形態では、エポキシ化ステップ、ステップ(iii)で使用される過酸化水素は、少なくとも35%の過酸化水素、又は少なくとも40%の過酸化水素、又は少なくとも45%の過酸化水素、又は少なくとも50%の過酸化水素である。
【0110】
MOSH/MOAH分析の従来技術の方法の1つの問題が、mCPBAを使用したエポキシ化ステップ後に残存する生物学的干渉の導入である。これらの汚染物質は、MOAHの同定及び定量を妨げる(図1を参照)。有利には、本開示の方法は、これらの影響を改善し、試料中のMOAHのより良好な同定を可能にする。
【0111】
分離ステップ
本開示の方法は、
水を添加することによって溶液を分割して、水相及び反応した有機相を提供し、かつ
食材中の鉱油汚染の分析のために、反応した有機相を分離する分離ステップを更に含む。
【0112】
その後の分析
本開示の方法は、鉱油汚染物質の分析のための試料を調製する方法に関する。
【0113】
調製された試料は、当技術分野で既知の好適な手段、例えば、LC-GC-FID(オンライン結合液体クロマトグラフィーガスクロマトグラフィー炎イオン化検出)によって分析され得る。代替的に、得られた抽出物を、HPLCを使用して予め分離し、次いでGC-MS又はGCXGC-MSで分析する。
【0114】
実施形態では、n-ヘキサンのアリコートを添加する前に、試料を蒸発乾固する。MOSH/MOAHの現在の較正曲線は、n-ヘキサン試料用に開発されており、そのため、好ましい方法では、分析前に、任意の代替溶媒を除去し、n-ヘキサンと交換してもよい。蒸発は、当技術分野で既知の及び/又は本明細書に記載の溶媒交換技術のいずれかによって達成され得る。本開示の少なくとも部分的に自動化された方法では、これをオートサンプラー内で実施して、このステップも自動化することができる。
【0115】
本明細書に記載される分析方法を使用するとき、より正確なMOSH/MOAH含有量が定量され得、これらの結果に基づいて、食材の推奨MOSH/MOAH限度に基づいて食材の販売が推奨されるかどうかが、理解されるであろう。
【0116】
実施形態では、本明細書に記載の試料を調製し、LC-GC-FIDを使用して試料を分析する方法が、提供される。
【0117】
システム
本明細書に記載される食材中の鉱油汚染物質を分析するための部分的に自動化された方法を実施するためのシステムも、本明細書に記載される。
【0118】
したがって、第2の態様は、システムであって、
-食材の鉱油含有量の分析のための当該食材の試料のためのレセプタクルであって、第1のウェル、第2のウェル、第3のウェル、及び第4のウェルと流体連通している、レセプタクルと、
-約20℃~溶媒混合物の沸点の温度での炭化水素溶媒及び任意選択でアルコールのレセプタクルへの導入に適合されている第1のウェルと、
-過剰量の少なくとも30%の過酸化水素のレセプタクルへの導入に適合されている第2のウェルと、
-第3のウェルであって、一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)、
式中、Rは、H又は一般部分式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルである、化合物の、触媒量の無機酸の存在下での、約20℃~約70℃の温度でのレセプタクルへの導入に適合されている、第3のウェルと、
-レセプタクルに水を導入するように適合されている第4のウェルと、
-反応した有機相をレセプタクルから分離し、反応した有機相を分析器に輸送するセパレータと、
-第1、第2、第3、及び第4のウェルの各々に含まれる溶媒のレセプタクルへの添加を制御するため、並びにレセプタクルの温度を制御するためのコントローラと、
-任意選択で、反応した有機相中の鉱油を検出することができる分析器と、を備える、システム、を提供する。
【0119】
実施形態では、システムは、触媒量の無機酸をレセプタクルに導入するように適合されている第5のウェルを更に備えてもよい。典型的には、無機酸は、一般式(I)の化合物とともに添加されるが、いくつかの実施形態では、システムは、その別個の添加のために、この任意選択の第5のウェルを備える。触媒酸の別個の添加は、システム内のエポキシ化反応条件を支援し得、制御する。
【0120】
実施形態では、システムは、過酸化水素及び/又は一般式(I)の化合物の添加前に、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素をレセプタクルに導入するように適合されている第6のウェルを更に備えてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、システムは、炭化水素溶媒と別に、アルコールをレセプタクルに供給するための第7のウェルを備える。
【0122】
実施形態では、第1、第2、第3、及び第4、並びに任意選択の第5、第6、及び第7のウェルは各々、必要な溶媒及び/又は試薬を各ウェルに充填するための入口を備える(例えば、第1のウェルは第1の入口を備え、第2のウェルは第2の入口を備え、第3のウェルは第3の入口を備え、第4のウェルは第4の入口を備え、第5のウェルは第5の入口を備え、第6のウェルは第6の入口を備え、第7のウェルは第7の入口を備える)。各入口は、所望の体積の溶媒を手動で充填するように適合されてもよいか、又は必要な溶媒及び/又は試薬の外部供給源と連通していてもよい。各ウェルからレセプタクルへの各溶媒及び/又は試薬の供給は、コントローラによって制御される。これを容易にするために、各ウェルは、その内容物のレセプタクルへの供給を制御するためのポンプを備えてもよい。ポンプは、所望の量の溶媒及び/又は試薬をレセプタクルに供給することができる定量ポンプであってもよいか、又はウェルが、固定量の溶媒及び/又は試薬を充填される実施形態では、ポンプは、ウェルの内容物全体をレセプタクルに吐出するように動作可能であってもよい。
【0123】
レセプタクルは、その内容物の温度を制御するように適合されてもよい。したがって、実施形態では、レセプタクルは、熱電対を備えてもよい。他の実施形態では、レセプタクルは、レセプタクルの内容物の温度を制御するために、レセプタクルの内容物を熱交換器を通して輸送することができる入口及び出口を備える。熱交換器は、レセプタクルの内容物を加熱及び/又は冷却するように適合されてもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、システムは、レセプタクルを振とうするためのシェーカーを備えてもよく、シェーカーはまた、コントローラによって制御可能であってもよい。いくつかの実施形態では、システムは、レセプタクルをシェーカーに自動的に移送するように適合されてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、セパレータは、遠心分離機を備える。遠心分離機は、コントローラによって制御されてもよい。いくつかの実施形態では、システムは、レセプタクルを遠心分離機に自動的に移送するように適合されてもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、セパレータは、反応した有機相を分析器に輸送するためのオートサンプラーを備える。
【0127】
いくつかの実施形態では、システムは、溶媒蒸発ユニットを更に備える。溶媒蒸発ユニットは、方法が、炭化水素溶媒と、ハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒又はハロゲン化芳香族炭化水素溶媒とを交換するステップを含む場合に、好ましい。溶媒蒸発ユニットは、試料中に存在する化合物から炭化水素溶媒(例えば、ヘキサン及び/若しくはペンタン)を選択的に除去するため、並びに/又は試料中に存在する化合物からハロゲン化脂肪族若しくは芳香族炭化水素を選択的に除去するために好適な任意のものであり得る。したがって、溶媒蒸発ユニットは、任意選択で、熱及び/又は攪拌(例えば、振とう若しくは回転)を加えながら、炭化水素溶媒が、減圧又はガス流(例えば、窒素又はアルゴン)下で除去されるものであり得る。いくつかの実施形態では、溶媒蒸発ユニットは、レセプタクルと一体化される。他の実施形態では、レセプタクルは、溶媒蒸発ユニットに自動的に移送されてもよい。溶媒蒸発ユニットは、本明細書に記載の方法で揮発性溶媒の除去が必要とされるとき、コントローラによって制御可能であってもよい。
【0128】
コントローラは、以下、
溶解又は抽出した食材を含む有機相を、過剰量の、第2のウェルからの少なくとも30%の過酸化水素及び、第3のウェルから、一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)、
式中、Rは、H又は一般部分式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルである、化合物と、好ましくは触媒量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間接触させるステップと、
第4のウェルから水を添加することによって溶液を分割して、水相及び反応した有機相を提供するステップ、及び
食材中の鉱油汚染の分析のために、セパレータを動作させて、反応した有機相を分離するステップと、
任意選択で、分析器中で試料を分析するステップと、を実施するように適合され得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、コントローラは、エポキシ化ステップの前に、以下、
(i)レセプタクル内で、過剰量の、第1のウェルからの炭化水素溶媒の溶液、及び任意選択で第2のウェルからのアルコールを用いて、食材を接触及び溶解させるステップ、又は抽出するステップであって、炭化水素溶媒及び任意選択のアルコールが、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で提供される、ステップと、
(ii)レセプタクル内の溶液を冷却するステップ、及び前のステップでアルコールが使用された場合、水又は水とアルコールの混合物を添加することによって相分離を開始するステップと、を第4のウェルから実施するように適合され得、
コントローラは、好ましくは、試料が食用油である場合、上記のステップ(i)及び(ii)を実施するように適合され得る。他の食材の場合、少なくとも部分的に自動化されたシステムに試料を提供する前に、ステップ(i)及び(ii)を手動で実施することが好ましいことがある。
【0130】
いくつかの実施形態では、コントローラはまた、溶媒蒸発ユニットを動作させて、レセプタクル内の溶解又は抽出された食材から炭化水素溶媒を実質的に除去するように適合され、そして好ましくは、第6のウェルからある量のハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素を添加すること。
【0131】
いくつかの実施形態では、コントローラは、過酸化水素及び/又は一般式(I)の化合物の添加の前に、ある量のハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素を第6のウェルからレセプタクルに添加するように適合される。
【0132】
いくつかの実施形態では、コントローラはまた、溶媒蒸発ユニットを動作させて、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素をレセプタクルから実質的に除去するように適合され、そして第1のウェルから炭化水素溶媒を添加すること。
【0133】
いくつかの実施形態では、コントローラはまた、溶媒蒸発ユニットを動作させて、試料を実質的に蒸発乾固させるように適合され、そして任意選択で、第1のウェルから炭化水素溶媒を添加すること。
【0134】
実施形態では、分析器は、炭化水素相中のMOSH/MOAHの検出に好適な任意のデバイスであってもよい。したがって、実施形態では、分析器は、LC-GC-FID、又はGC-MS若しくはGCXGC-MSと結合されたHPLCを備えてもよい。
【0135】
コントローラは、任意選択の第5及び/又は第6及び/又は第7のウェルからレセプタクルへの溶媒及び/又は試薬の供給を制御するように適合されてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、システムは、分析器に到達する前に、レセプタクルから採取された炭化水素相を更に精製するためのカラムを備えてもよい。カラムは、アルミナ、シリカ、又はサイズ排除ゲルなどの任意の好適なカラムであってもよい。好ましい実施形態では、システムは、(シリカクロマトグラフィー成分を利用する分析器に含まれるカラム以外の)シリカゲルカラムを備えない。
【0137】
第3の態様は、本明細書に記載の方法を実施するための第2の態様のシステムの使用を提供する。
【0138】
実施形態の説明
本開示の態様の様々な実施形態が、以下に記載される。
【0139】
1. 食材中の鉱油汚染を分析するための試料を調製するための方法であって、
-(i)n-ヘキサン及び任意選択でエタノールを含む過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、食材を接触及び溶解させること、又は抽出することと、
-(ii)溶液を冷却すること、及び前のステップでエタノールが使用された場合、水又は水とエタノールとの混合物(1:x、x:0~10、v/v)を添加することによって相分離を開始することと、
-(iii)前のステップで生成された有機相を、過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)
式中、Rは、H又は部分一般式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルを表す、化合物と、触媒量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間接触させることと、
-(iv)過剰量の水を添加することによって溶液を分割して、水相及びn-ヘキサン相を提供すること、及び
-(v)食材中の鉱油汚染の分析のために、n-ヘキサン相を分離することと、
-(vi)任意選択で、試料を分析することと、を含む、方法。
2. エポキシ化ステップ(iii)の前に、有機相を蒸発させ、試料を溶解するのに必要な量のハロゲン化脂肪族若しくは芳香族炭化水素を添加することを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
3.エポキシ化ステップ(iii)が、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素の存在下で実施され、当該方法が、ステップ(iii)後に、有機相を蒸発させること、及び溶媒をn-ヘキサンと交換することを更に含むことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
4.食材中の鉱油汚染を分析するための試料を調製するための方法であって、当該方法が、少なくとも部分的に自動化されており、当該方法が、
-(i)n-ヘキサン及び任意選択でエタノールを含む過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、食材を接触及び溶解させること、又は抽出することと、
-(ii)溶液を冷却すること、及び前のステップでエタノールが使用された場合、水又は水とエタノールとの混合物(1:x、x:0~10、v/v)を添加することによって相分離を開始することと、
-(iii)前のステップで生成された有機相を、過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)
式中、Rは、H又は部分一般式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルを表す、化合物と、触媒量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間接触させることと、
-(iv)過剰量の水を添加することによって溶液を分割して、水相及びn-ヘキサン相を提供すること、及び
-(v)食材中の鉱油汚染の分析のために、n-ヘキサン相を分離することと、
-(vi)任意選択で、試料を分析することと、を含む、方法。
5.エポキシ化ステップ(iii)の前に、有機相を蒸発させ、試料を溶解するのに必要な量のハロゲン化脂肪族若しくは芳香族炭化水素を添加するか、又は
エポキシ化ステップ(iii)が、ハロゲン化脂肪族若しくは芳香族炭化水素の存在下で実施され、当該方法が、ステップ(iii)後に、有機相を蒸発させること、及び溶媒をn-ヘキサンと交換することを更に含むことを特徴とする、実施形態1に記載の方法。
6.当該方法の少なくとも2つのステップ、又は少なくとも3つのステップ、又は少なくとも4つのステップ、又は少なくとも5つのステップ、又は少なくとも6つのステップが、自動化され、オペレータの関与なしに実行されることを特徴とする、実施形態4又は5に記載の方法。
7.当該方法が、完全に自動化されることを特徴とする、実施形態4又は5に記載の方法。
8.食材が、有機相中にアルカリ性加水分解性成分を含み、ステップ(ii)の後かつステップiiiの前に、アルカリ性加水分解性成分が、
-溶解又は抽出された食材を過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物水溶液又は他の強塩基と、約20℃超~約70℃で接触させることと、
-n-ヘキサンを添加することによって、非けん化成分を抽出することと、
-任意選択で、n-ヘキサンを用いた抽出を1回以上繰り返すことと、によってけん化されることを特徴とする、先行実施形態のいずれか1つに記載の方法。
9.食材が、有機相中にアルカリ性加水分解性成分を含み、ステップ(ii)の後かつステップiiiの前に、アルカリ性加水分解性成分が、
-溶解又は抽出された食材を過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物水溶液又は他の強塩基と、約20℃超~約70℃で接触させることと、
-n-ヘキサンを添加することによって、非けん化成分を抽出することと、
-任意選択で、n-ヘキサンを用いた抽出を1回以上繰り返すことと、によってけん化されることを特徴とする、実施形態1~7のいずれか1つに記載のプロセス。
10.食材が、乾燥食材であるか、又は水相中に存在する食材であり、ステップ(i)の前に、鉱油不純物が、食材から、
-食材を過剰量の有機非水溶性溶媒と接触させることと、
-好適な手段を使用して、抽出された鉱油不純物を含む溶媒を食材から分離することと、によって抽出されることを特徴とする、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
11.食品中の鉱油成分の溶解/抽出が、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、n-ヘキサン及び96体積%又は無水エタノールの過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて実施されることを特徴とする、実施形態1~10のいずれか1つに記載のプロセス。
12.有機相のけん化が、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液の形態の過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物溶液を用いて、約20℃~約70℃で実施されることを特徴とする、実施形態8~11のいずれか1つに記載のプロセス。
13.ハロゲン化炭化水素クロロホルムが、エポキシ化、ステップ(iii)が開始される前に、有機相に添加されることを特徴とする、実施形態1~12のいずれか1つに記載のプロセス。
14.エポキシ化、ステップ(iii)が、
-有機相を、50%過酸化水素及び濃縮ギ酸及び/又は酢酸の混合物と、触媒量の濃縮リン酸及び/又は硫酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約10分~約60分間接触させること、を含むことを特徴とする、実施形態1~13のいずれか1つに記載のプロセス。
15.食材が、加工された、部分的に加工された、又は加工されていない状態で、ヒトによって摂取されるよう意図されるか、又は摂取されると合理的に予想され、特に、天然脂肪、タンパク質含有食品、炭水化物が豊富な食品、アルコール含有食品、アルカロイド含有食品、野菜及び野菜製品、果物及び果物製品、スパイス若しくはハーブ、飲料水、ソフトドリンク、機能性食品、栄養補助食品、ダイエット食品、新規食品、ビタミン、ミネラル、酵素、脂質、アミノ酸、添加剤、又は前述の物質の混合物、並びに/又は食品クラスの製品から選択される、物質又は製品であることを特徴とする、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.天然脂肪が、果肉脂肪若しくは種子脂肪若しくは動物性脂肪、又は前述の脂肪、好ましくは、食用油若しくは脂肪の混合物であることを特徴とする、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
17.脂肪含有食品が、乳若しくは乳製品、チョコレート、チョコレート製品、ココア、マーガリン製品、混合脂肪製品、乳児用調製粉乳及びフォローオン調製乳、又は前述の製品の混合物であることを特徴とする、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
18.食材中の鉱油汚染を分析するための試料を調製するための方法であって、
-(i)n-ヘキサン及び任意選択でエタノールを含む過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、食材を接触及び溶解させること、又は抽出することと、
-(ii)溶液を冷却すること、及び前のステップでエタノールが使用された場合、水又は水とエタノールとの混合物(1:x、x:0~10、v/v)を添加することによって相分離を開始することと、
-(iii)前のステップで生成された有機相を、過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)
式中、Rは、H又は部分一般式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルを表す、化合物と、触媒量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間接触させることと、
-(iv)過剰量の水を添加することによって溶液を分割して、水相及びn-ヘキサン相を提供すること、及び
-(v)食材中の鉱油汚染の分析のために、n-ヘキサン相を分離することと、
(vi)任意選択で、試料を分析することと、を含む、方法。
19.食材中の鉱油汚染を分析するための試料を調製するための方法であって、当該方法が、少なくとも部分的に自動化されており、当該方法が、
-(i)n-ヘキサン及び任意選択でエタノールを含む過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、食材を接触及び溶解させること、又は抽出することと、
-(ii)溶液を冷却すること、及び前のステップでエタノールが使用された場合、水又は水とエタノールとの混合物(1:x、x:0~10、v/v)を添加することによって相分離を開始することと、
-(iii)前のステップで生成された有機相を、過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)の化合物であって、
-COOH
(I)
式中、Rは、H又は部分一般式(II)を表し、
(R)(R)C(R)-
(II)
式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルを表す、化合物と、触媒量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間接触させることと、
-(iv)過剰量の水を添加することによって溶液を分割して、水相及びn-ヘキサン相を提供すること、及び
-(v)食材中の鉱油汚染の分析のために、n-ヘキサン相を分離することと、
(vi)任意選択で、試料を分析することと、を含む、方法。
20.エポキシ化ステップ(iii)の前に、有機相を蒸発させ、試料を溶解するのに必要な量のハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素を添加する、実施形態18又は19に記載の方法。
21.エポキシ化ステップ(iii)が、ハロゲン化脂肪族又は芳香族炭化水素の存在下で実施され、当該方法が、ステップ(iii)後に、有機相を蒸発させること、及び溶媒をn-ヘキサンと交換することを更に含む、実施形態18又は19に記載の方法。
21.当該方法が、完全に自動化されている、実施形態19~21のいずれか1つに記載の方法。
22.当該方法の少なくとも2つのステップ、又は少なくとも3つのステップ、又は少なくとも4つのステップ、又は少なくとも5つのステップ、又は少なくとも6つのステップが、オペレータの関与なしに実行される、実施形態19~21のいずれか1つに記載の方法。
23.当該方法が、完全に自動化されている、実施形態19~21のいずれか1つに記載の方法。
24.食材が、有機相中にアルカリ性加水分解性成分を含み、ステップ(Ii)の後かつステップiiiの前に、アルカリ性加水分解性成分が、
-溶解又は抽出された食材を過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物水溶液又は他の強塩基と、約20℃超~約70℃で接触させることと、
-n-ヘキサンを添加することによって、非けん化成分を抽出することと、
-任意選択で、n-ヘキサンを用いた抽出を1回以上繰り返すことと、によってけん化される、実施形態18~23のいずれか1つに記載の方法。
25.食材が、有機相中にアルカリ性加水分解性成分を含み、ステップ(ii)の後かつステップ(iii)の前に、アルカリ性加水分解性成分が、
-溶解又は抽出された食材を過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物水溶液又は他の強塩基と、約20℃超~約70℃で接触させることと、
-n-ヘキサンを添加することによって、非けん化成分を抽出することと、
-任意選択で、n-ヘキサンを用いた抽出を1回以上繰り返すことと、によってけん化される、実施形態18~23のいずれか1つに記載のプロセス。
26.食材が、乾燥食材であるか、又は水相中に存在する食材であり、ステップ(i)の前に、鉱油不純物が、食材から、
-食材を過剰量の有機非水溶性溶媒と接触させることと、
-好適な手段を使用して、抽出された鉱油不純物を含む溶媒を食材から分離することと、によって抽出される、実施形態18~23のいずれか1つに記載の方法。
27.食品中の鉱油成分の溶解/抽出が、約20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、n-ヘキサン及び96体積%又は無水エタノールの過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて実施される、実施形態18~26のいずれか1つに記載のプロセス。
28.有機相のけん化が、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液の形態の過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物溶液を用いて、約20℃~約70℃で実施される、実施形態18~27のいずれか1つに記載の方法。
29.ハロゲン化炭化水素クロロホルムが、エポキシ化、ステップ(iii)が開始される前に、有機相に添加される、実施形態18~28のいずれか1つに記載のプロセス。
30.エポキシ化、ステップ(iii)が、
-有機相を、50%過酸化水素及び濃縮ギ酸及び/又は酢酸の混合物と、触媒量の濃縮リン酸及び/又は硫酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約10分~約60分間接触させること、を含む、実施形態18~29のいずれか1つに記載のプロセス。
31.食材が、加工された、部分的に加工された、又は加工されていない状態で、ヒトによって摂取されるよう意図されるか、又は摂取されると合理的に予想され、特に、天然脂肪、タンパク質含有食品、炭水化物が豊富な食品、アルコール含有食品、アルカロイド含有食品、野菜及び野菜製品、果物及び果物製品、スパイス若しくはハーブ、飲料水、ソフトドリンク、機能性食品、栄養補助食品、ダイエット食品、新規食品、ビタミン、ミネラル、酵素、脂質、アミノ酸、添加剤、又は前述の物質の混合物、並びに/又は食品クラスの製品から選択される、物質又は製品である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
32.天然脂肪が、果肉脂肪若しくは種子脂肪若しくは動物性脂肪、又は前述の脂肪、好ましくは、食用油若しくは脂肪の混合物である、実施形態31に記載の方法。
33.脂肪含有食材が、乳若しくは乳製品、チョコレート、チョコレート製品、ココア、マーガリン製品、混合脂肪製品、乳児用調製粉乳及びフォローオン調製乳、又は前述の製品の混合物である、実施形態18~31のいずれか1つに記載の方法。
34.脂肪含有食材が、パーム油を含む、実施形態18~31のいずれか1つに記載の方法。
35.食材中の鉱油汚染の(部分的に)自動化された分析のための方法であって、試料調整における以下、
-n-ヘキサン及びエタノールの過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて、20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、食品を接触及び溶解させるステップ、すなわち抽出するステップと、
-冷却後、及び前のステップでエタノールが使用された場合、水又は水とエタノールとの混合物(1:x、x:0~10、v/v)を添加することによる相分離の開始ステップと、
-有機相を、過剰量の少なくとも30%の過酸化水素及び一般式(I)R-COOH (I)の化合物であって、式中、Rは、H又は一般式(II)(R)(R)C(R)-(II)を表し、式中、R、R、及びRは、互いに独立して、H、F、Cl、OH、又はメチルを表す、化合物と、少量の無機酸の存在下で、約20℃~約70℃の温度で約5分~約2時間、けん化を伴って接触させるステップと、
-過剰量の水を添加することによる試薬の分離ステップと、
-その後の分析のためのn-ヘキサン抽出物の使用ステップと、を含み、
有機相の蒸発及び溶液に必要な量のハロゲン化脂肪族若しくは芳香族炭化水素の添加が、エポキシ化ステップに先行することか、又は有機相の蒸発及びハロゲン化脂肪族若しくは芳香族炭化水素の存在下で溶媒をn-ヘキサンと交換することが、エポキシ化ステップに続くことを特徴とする、方法。
36.有機相中にアルカリ性加水分解性成分を有する食材の場合、けん化が、第1のステップの後に、過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物水溶液又は他の強塩基との20℃超~70℃での密接な接触によって実施され、後続の抽出が、n-ヘキサンを添加することによって、少なくとも1回実施されることを特徴とする、実施形態35に記載のプロセス。
37.有機相中に酸性加水分解性成分を有する食材の場合、加水分解が、第1のステップの後に、過剰量の濃縮塩酸水溶液又は他の強酸との20℃超~70℃での密接な接触によって実施され、後続の抽出が、n-ヘキサンを添加することによって、少なくとも1回実施されることを特徴とする、実施形態35に記載のプロセス。
38.乾燥食材又は水相中に存在する食材の場合、試料調製の第1のステップの前に、食材からの鉱油不純物の抽出が、それ自体公知の方法で、過剰量の有機非水溶性溶媒を用いて、それ自体公知の方法で実施されることを特徴とする、実施形態35に記載の方法。
39.食品中の鉱油成分の溶解/抽出が、20℃~溶媒混合物の沸点の温度で、n-ヘキサン及び96体積%又は無水エタノールの過剰量の(1:x、x:0~10、v/v)溶液を用いて実施されることを特徴とする、実施形態35に記載のプロセス。
40.有機相のけん化が、水酸化ナトリウム溶液及び/又は水酸化カリウム溶液の形態の過剰量の濃縮アルカリ性金属水酸化物溶液を用いて、20℃~70℃で実施されることを特徴とする、実施形態36に記載のプロセス。
41.ハロゲン化炭化水素クロロホルムが、エポキシ化が開始される前に、有機相に添加されることを特徴とする、実施形態35に記載のプロセス。
42.エポキシ化が、有機相を、50%過酸化水素及び濃縮ギ酸及び/又は酢酸の混合物と、触媒量の濃縮リン酸及び/又は硫酸の存在下で、20℃超~70℃の温度で10分~60分間接触させることによって実施されることを特徴とする、実施形態35に記載のプロセス。
43.食品が、加工された、部分的に加工された、又は加工されていない状態で、ヒトによって摂取されるよう意図されるか、又は摂取されると合理的に予想され、特に、天然脂肪、タンパク質含有食品、炭水化物が豊富な食品、アルコール含有食品、アルカロイド含有食品、野菜及び野菜製品、果物及び果物製品、スパイス若しくはハーブ、飲料水、ソフトドリンク、機能性食品、栄養補助食品、ダイエット食品、新規食品、ビタミン、ミネラル、酵素、脂質、アミノ酸、添加剤、又は前述の物質の混合物、並びに/又は食品クラスの製品から選択される、物質又は製品であることを特徴とする、実施形態35~42のいずれか1つに記載の方法。
44.天然脂肪が、果肉脂肪若しくは種子脂肪若しくは動物性脂肪、又は前述の脂肪、好ましくは、食用油若しくは脂肪の混合物であることを特徴とする、実施形態43に記載の方法。
45.脂肪含有食品が、乳若しくは乳製品、チョコレート、チョコレート製品、ココア、マーガリン製品、混合脂肪製品、乳児用調製粉乳及びフォローオン調製乳、又は前述の製品の混合物であることを特徴とする、実施形態43に記載の方法。
【実施例
【0140】
ここで、本発明を、非限定的な実施例によって説明する。本発明の当業者には、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正が行われ得ることが理解されるであろう。
【0141】
実施例1
一例として、1グラムのパームオレイン(ヨウ素値62~64)を、ブランク隔壁を有する20mLのスクリューキャップガラスバイアル内に秤量し、10mLのn-ヘキサン/エタノール(1:1、v/v)に溶解した。10μLの内部標準を添加した(Restek GmbH、#31070、w=300ng/μL)。続いて、2mLの水酸化カリウム水溶液(50%、w/v)を添加した。試料を、オートサンプラーによって、65℃及び750rpmで20分間けん化した。4mLの水を添加した後、試料を自動的に遠心分離した(2分間、3500rpm)。得られた上部相を、シリンジを通して新しいスクリューキャップガラスバイアルに移送した。別の5mLのn-ヘキサンを添加し、試料を振とうした。その後の遠心分離(2分間、3500rpm)の後、上部相を組み合わせた。200mbarの真空で、250rpm(65℃)で振とうしながら、有機相を体積で約1mLに減少させた。これに続いて、2mLのクロロホルム及び70μLのH3PO4(Sigma Aldrich、85重量%、水溶液)、700μLのギ酸(Sigma Aldrich、98~100%)、及び700μLのH2O2(Bernd kraft、50%、水溶液)を添加した。750rpmの激しい振とうで、抽出物を65℃で30分間エポキシ化した。7.5mLの水を添加することによって反応を停止させた。有機下部相をより良好に移送するために、相反転のために2.5mLのn-ヘキサンを添加した。したがって、上部相を新しいスクリューキャップガラスバイアルに移送することができた。キーパー(50μLのビス(2-エチルヘキサル)-セバカート、Sigma Aldrich、90%超)を添加した後、有機相を真空下(200mbar、250rpm、65℃)で慎重に濃縮し、1.5mLのn-ヘキサンで構成した。最後の懸濁固形物を除去するために、溶液を再び遠心分離した(2分間、3500rpm)。
【0142】
このようにして得られた最大400μLの抽出物を、LC-GC-FIDシステムに注入することができた。HPLCカラムに注入されたヘキサン抽出物を、通常の相勾配(ヘキサン/DCM)によってシリカゲル相上で、物質クラスMOSH及びMOAH並びに極性成分に分離した。ここで、HPLCカラムは、以前の試料指示書(sample instructions)からシリカゲルクリーンアップのタスクを完全に引き継ぐ。MOSH及びMOAHの画分切片は各々、600μLの体積を構成した。これは、部分的同時溶媒蒸発及び早期蒸気排出を使用する、大容量オンカラム移送インターフェースによって圧縮された。得られた2つのGC適合性画分を、それらの沸点に従って、好適なキャピラリカラム上で分離し、炎イオン化によって検出した。
【0143】
同時に、HPLCカラムの流れ方向を反転させ(バックフラッシュ)、カラムから極性残渣を効率的に除去した。次の試料の注入の準備ができるまでの全プロセスは、約35分かかった。
【0144】
アルミナを介した精製がMOSH画分に必要な場合、対応する画分をシリカゲルカラムからAl2O3カラムに通した後に、ガスクロマトグラフに移送する。このように、手動のALOX-クリーンアップは必要ない。
【0145】
実施例2
実施例1を繰り返したが、精製パームオレインの代わりに、エクストラネイティブオリーブ油及び精製ヒマワリ油の油混合物(1:1、v/v)1gを再処理した。ワークアップは、100%類似であり得るが、必要に応じて簡素化を可能にする。
【0146】
食用油が、天然の食用油によくあるように、中程度又は高い電子密度を有するオレフィンのみを含有する場合、ハロゲン化炭化水素への溶媒変更を省略することができ、すなわち、エポキシ化は、(けん化された)ヘキサン相から直接実施することができる。この手順は、本明細書に提示される試験方法の加速を確実にする。
【0147】
実施例3-DGFに準拠した試料調製
実施例1による脂肪を、DGFに従って、以下のように試料調整に供した。
3gの試料を40mLのスクリューキャップ付き遠心管内に秤量した。n-ヘキサン及びエタノールの混合物(1:1、v/v)30mL及び10μLのISTD(w=300ng/μL)を添加し、振とうした。試料バイアルに、10mLを移送し、3mLの水酸化カリウム溶液(33g/100g水)を添加した。溶液を、水浴中60℃で30分間、振とうしながらけん化した。続いて、各5mLのn-ヘキサン及び5mLのエタノールと水との混合物(1:1、v/v)を添加し、混合物を再び振とうし、相分離後、下部相を廃棄した。
【0148】
パームオレインは、少量の生物由来のn-アルカンしか含有しないので、ALOX精製は、必要でなかった。けん化からの上部相を、クリーンアップカラム(3gのシリカゲル+1gのNaSO)に直接移送し、n-ヘキサンとDCMとの溶媒混合物(7:3、v/v)15mLを用いて、カラムから炭化水素(MOSH+MOSH)を溶出した。
【0149】
2滴のビス(2-エチルヘキシル)マレイン酸塩を添加した後、全ての内部標準を維持しながら、混合物を40℃で真空中で濃縮し、n-ヘキサンで1mLの体積にした。
【0150】
このようにして得られた抽出物に、1mLのエタノールCPBA溶液(100mg/mL)を添加し、試料を、例えば500rpmで、40℃で20分間シェーカー上に配置した。次いで、過剰のCPBAが反応しないように、500μLのエタノール及び2mLの溶液(Na、5g/100mL+NaHCO、5g/100mLの水溶液)を使用した。過剰のCPBAが反応しないように、試料バイアルを約750rpmで約1分間振とうした。上部ヘキサン相を新鮮な試料バイアルに移送し、へら先端量の硫酸ナトリウムで乾燥させた。ここで、乾燥した溶液を、60~90μLの注入量でLC-GC-FIDシステムに注入した。1mg/kgの定量限界に近い低レベルでの再現性のある評価を可能にするために、溶媒を、内部標準を維持しながら、40℃で約300μLのより適切な体積に調整した。
【0151】
図2は、実施例3[EN 16995、DGF-2020]と比較した、本発明の実施例1による試料調製後のパームオレインのMOAH画分のLC-GC-FIDクロマトグラム(一番上のクロマトグラム)を示す。右パネル内:20分未満の時間、下側のクロマトグラム2及び3は、MOAHとして誤解される可能性のある有意に未分解のシグナルピークを示す一方、これらのピークは、[本発明による]一番上のクロマトグラムでは、有意に減少している。(3つの方法は全て、比較のために、注入された試料の量が同一であるように実施された)。未分解のシグナルハンプは、典型的には、鉱油汚染を表すため、本明細書に提示される試験方法を使用する場合、有意により低い偽陽性識別率が予想され得る。簡略化された試料調製及び増加した注入量(400μL対60~90μL)と相まって、定量限界に近い同定信頼度も増加する。
【0152】
図3は、汚染をシミュレートするために鉱油を添加した試料調製後の、オリーブ及びヒマワリ油の1:1混合物のMOAH画分のLC-GCクロマトグラムを示す。上側のクロマトグラムは、DGF 2020の比較例による調製を示し、下側の曲線は、本発明の実施例2による方法を示す。MOAH含有量は、2.5mg/kgである。12~16分の間の未分解のシグナルハンプ(又は未分解のシグナルピーク)は、この量に対応する。また、この「単純な」油について、新しい方法は、改善されたクロマトグラフィーを示す。クロマトグラム全体、特に未分解のシグナルハンプ(又は未分解のシグナルピーク)は、干渉する個々のピーク又はピーククラスターがより少ないことを示す。(比較のために、両方法は、注入された試料の量が同じであるような方法で実行された)。
【0153】
実施例4
材料及び方法
試料
エクストラバージンオリーブ油を地元のスーパーマーケットで入手し、方法の開発及び検証に使用した。加えて、標準的な方法C-VI 22(20)の検証中にDGFによって組織された、2020年に実行された共同試験からの食用油試料が、利用可能であった。それらは、ココアバター、ヒマワリ油、スパイクした菜種油、スパイクしたオリーブ油、スパイクしたヒマワリ油、及びスパイクしたパーム油からなった。EIE(酵素的エステル交換)及びRBDパーム油は、個人的な贈り物であった。
【0154】
化学物質及び溶液
n-ヘキサンはTh.Geyer GmbH & Co.KG(CHEMSOLUTE、Renningen,Germany)からのものであった。MOH定量のための内部標準(ISTD)(カタログ番号31070-n-ウンデカン、n-トリデカン、ビシクロヘキシル、α-コレスタン、n-ペンチルベンゼン、1-メチルナフタレン、2-メチルナフタレン、1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼン、ペリレン)、保持時間標準(カタログ番号31076)、及びEPA-PAH標準(カタログ番号31011)は、Restek(Bellefonte,PA,USA)によって供給された。スパイク実験のための工業用ギア油(Omala S2 GX68)及びナフテン系プロセス油(Gravex 913)は、Shell Deutschland GmbH(Hanburg,Germany)から入手した。バルク酸化アルミニウム(90活性塩基性、0.063~0.200mm)、ビス(2-エチルヘキシル)セバシン酸塩(合成用)、クロロホルム(HPLC Plus、≧99.9%)、ジクロロメタン(Suprasolv)、エタノール(Suprasolv)、β-カロチン(≧93%UV)、3,5-コレスタジエン(≧93%HPLC)、ジベンゾフラン(DBF、98%)、ジベンゾチオフェン(DBT、98%)、ギ酸(EMPROVE ESSENTIAL、98~100%)、メタ-クロロペルオキシ安息香酸(≦77%)、リン酸(H2O中85重量%)、イソオクタン(Suprasolv)、水酸化カリウム(EMSURE、≧85%)、メタ重亜硫酸ナトリウム(ReagentPlus、≧99%)、スクアレン(≧98%)、1,13-テトラデカジエン(90%)、及び1-オクタデセン(分析標準)は、Merck(Steinheim,Germany)からのものであった。硫酸ナトリウムは、Fluka(Buchs,Switzerland)からのものであった。過酸化水素(50%、w/v)は、Berndt Kraft GmbH(Duisburg,Germany)から入手した。水を、Milli-Q水精製システム(Merck、Darmstadt,Germany)によって供給した。
【0155】
3A 動態研究のためのモデル物質のエポキシ化
n-ヘキサン又はクロロホルム(20μg/mL、w/v)中の使用されたモデル物質の1mL混合物に、オートサンプラーが、200μLのギ酸(10%HPO、v/v、で酸性化)及び200μLのH水溶液を試料に添加した。バイアルを攪拌器内に配置し、65℃で5、10、15、20、25、及び30分間、750rpm(回転毎分)の速度で振とうした。反応中に、副反応によって、かなりの量の酸素及び二酸化炭素が形成され、オートサンプラーバイアル内の圧力を高めた。したがって、バイアルはしっかりと閉じられた。
【0156】
その後、2.5mLの水を添加して反応を停止させ、相分離を誘導した。バイアルを750rpmで1分間振とうした。その後、バイアルを1分間、2000rpmで遠心分離して、透明な有機相を得た。へら先端量の硫酸ナトリウムを予め充填した2mLオートサンプラーバイアルに、500マイクロリットルのn-ヘキサン酸上部相を移送した。乾燥させた有機相を、LC-GC-FIDに供した。
【0157】
試料調製ワークフロー
けん化
1グラムの脂肪又は油を、20mLのオートサンプラーバイアル内に秤量した。5マイクロリットルのISTD(300μg/mL、w/v)、及び10mLのn-ヘキサン/エタノール(1:1、v/v)を添加した。KOH水溶液(1g/L、w/v)2mLを添加した後、バイアルをしっかりと閉じた。750rpmで安定した振とうを行いながら、けん化を65℃で20分間実行した。その後、4mLの水を添加し、バイアルを750rpmで1分間強く振とうした。3000rpmで1分間遠心分離した後、透明な上部n-ヘキサン相を、新鮮な20mLオートサンプラーバイアルに移送した。5mLの新鮮なn-ヘキサンをけん化試料に添加し、振とう及び遠心分離することによって、第2の抽出を実行した。両方のヘキサン相を組み合わせて、約8.5mLの最終体積をもたらした。
【0158】
エポキシ化
50マイクロリットルのビス(2-エチルヘキシル)セバシン酸塩を、けん化試料のn-ヘキサン抽出物に添加し、溶媒を真空(65℃、200mbar)によって蒸発させて、約1mLの体積にした。その後、オートサンプラーが、2mLのCHCl、400μLのギ酸(10%のHPO、v/v、で酸性化)、及び400μLのH水溶液を試料に添加した。バイアルを攪拌器内に配置し、65℃で20分間、750rpmの速度で振とうした。
【0159】
その後、3.5mLのn-ヘキサン、1mLのエタノール、及び7mLの水の混合物を添加して、反応を停止させ、相分離を誘導した。添加されたn-ヘキサン及びエタノールを、相層反転のために使用して、バイアルの上部から有機層を吸引することを可能にした。バイアルを750rpmで1分間振とうした。その後、バイアルを4000rpmで1分間遠心分離して、透明な有機相を得た。
【0160】
6ミリリットルの上部有機相を、へら先端量の硫酸ナトリウムを予め充填した10mLオートサンプラーバイアルに移送し、穏やかに蒸発乾固させた(65℃、200mbar)。最後に、残渣を1.5mLのn-ヘキサン中に溶解させ、750rpmで1分間振とうし、4000rpmで5分間遠心分離した。透明な有機相をLC-GC-FIDに供した。
【0161】
20mLのオートサンプラーバイアルの水相中の過剰なHを、2mLのメタ重亜硫酸ナトリウム水溶液(300g/L)をゆっくりと添加することによって破壊した。
【0162】
LC-GC-FIDの方法
LC-GC-FID実験を、Axel Semrau(Sprockhovel,Germany)のCHRONECT Workstation MOSH/MOAH上で実行した。これは、1260 Infinity II HPLCシステム(Agilent Technologies、Waldbronn,Germanyによるバイナリ及びクォータナリポンプ及び可変波長検出器)、2つの炎イオン化検出器を備えたAgilent 7890Bガスクロマトグラフ、並びにPAL3オートサンプラー(CTC Analytics AG、Zwingen,Switzerland)に基づくCHRONECT Roboticsプラットフォームからなった。
【0163】
4つの回転式切替弁(VICI AG International、Schenkon,Switzerland)を使用して、HPLC溶出液をHPLCからGCに誘導した。ガスクロマトグラフは、2つのオンカラムインターフェース(Yインターフェース)及び溶媒蒸気出口を備えた。
【0164】
典型的には、400μLの調製された試料(267mgの食用油又は脂肪に相当)を、追加のカラム温度制御なしに、Allure Si HPLCカラム(250mm×2.1mm、5μm、60Å、Restek、Bellefonte,PA,USA)上に注入した。移動相は、n-ヘキサン及びジクロロメタンからなった。300μL/分の100%n-ヘキサンで開始して、移動相を、注入後に70%n-ヘキサンに変更した。これを7.5分まで保持した。生物由来のn-アルカンの除去のために、手動で充填した酸化アルミニウムHPLCカラム(125mm×2.1mm、吸着剤を、使用前に500℃で16時間活性化した)を通して、2.0~4.0分MOSHを溶出した(600μL)。MOAH画分の溶出(4.1~6.1分、600μL)後、カラムをジクロロメタンで、500μL/分で9分間逆フラッシュした。その後、カラムをn-ヘキサンで、500μL/分で15分間再調整した。同時に、酸化アルミニウムHPLCカラムをイソオクタンで、1mL/分で10分間逆フラッシュした後、n-ヘキサンで、1mL/分で10分間再調整した。MOAH溶出ウィンドウを、230nmでのUV検出によって検証した。1,3,5-トリ-tert-ブチルベンゼン(TBB)及びペリレン(Per)が、このウィンドウの始点及び終点をマークした。
【0165】
LC-GC移送は、リテンションギャップ技術及び部分的に同時の溶媒蒸発(PCSE)によって生じた。コーティングされていない、非活性化されたプレカラム(非活性化ステンレス鋼、10m×0.53mm、Axel Semrau、Sprockhovel,Germany)に、溶媒蒸気出口に接続する鋼製Tピースユニオン(修正されたバットツーバットコネクタ、Trajan Scientific and Medical、Ringwod,Australia)及び100%ジメチルポリシロキサンフィルムでコーティングされた分離カラム(MXT-1、Siltek処理されたステンレス鋼、15m×0.25mm×0.25μm、Restek、Bellefonte,PA,USA)が続いた。
【0166】
HPLCから、MOSH及びMOAH画分を、それぞれ95及び55kPaのキャリアガス入口圧力(水素)、並びに60℃のオーブン温度でGCに移送した。溶媒蒸気出口を、各画分の溶出の0.5分前に開放し、画分が移送されて0.4分後に閉鎖した。ウンデカン及びn-ペンチルベンゼンの回収は、これらの条件下で計量した。同時に、キャリアガス入口圧力を150kPaに設定し、分析全体を通して維持した。オーブン温度を、60℃(8分)から370℃(6.5分、合計実行時間30.00分)まで、20℃/分でプログラムした。FIDベース温度を380℃に設定した。空気、水素、及び窒素のガス流量を、それぞれ300、30、及び25mL/分に設定した。
【0167】
データ処理は、Clarity 8.5(DataApex、Prague,Czech Republic)で実行した。定量は、MOSHについてはビシクロヘキシル(シクロヘキシルシクロヘキサン、Cycy)に、ISTDとして使用されるMOAHについてはTBBに、基づいた。MOxH含有量を、次の方程式に従って計算した。
【数1】

式中、C:含有量[mg/kg]、AMOxH、Total:未分解のMOxHハンプ面積、AMOxH、Peaks on Top:MOxHハンプ上部の鋭いピークの面積、AISTD:ISTDのピーク面積、mISTD:ISTDの質量[mg]、mSample:試験試料の質量[kg]。
【0168】
同定のために、MOSH又はMOAH画分を回収し、GC-MS(GCMS-QP2020 NX、Shimadzu Europa GmbH、Duisburg,Germany)によって分析した。イオン源及び移送ラインの温度をそれぞれ250及び320℃に設定した。データ取得は、70eVでのEIイオン化を用いて、3スペクトル/秒の速度で、フルスキャンモード(50~750amu)で実行した。データ処理をGCMSsolution 4.52で実行した。
【0169】
図4は、残留多価不飽和物を示すエポキシ化RBDパーム油のLC-GC-FIDのMOAHクロマトグラムオーバーレイを示す。過ギ酸は、より多くの干渉mCPBAを除去しただけでなく、percidに由来する汚染を実質的に示さなかった。この試料の、エタノール中のmCPBAによるエポキシ化は、ジクロロメタンと比較して、反応速度の予想された遅延を示した。
【0170】
食用油中のMOSH/MOAHを分析するための本方法の問題のうちの1つが、汚染物質に関する懸念を伴うmCPBAの一貫性のない品質である。GC-MS調査を通じて、これらの汚染物質が過酸の合成に由来することがわかった。それらは、主にポリ塩化ベンゼン及びビフェニル(PCB)で構成される。n-ヘキサンを用いたmCPBAの洗浄が、既に大部分を除去しているが、不穏な残留物が依然として存在する可能性があり、追加のクリーンアップが必須になる。純粋なmCPBAは衝撃に敏感である傾向があるため、特に注意が必要である。このため、代替のエポキシ化試薬をチェックした。過ギ酸及び過酢酸は、例えば、エポキシ化大豆油を調合するために、食用油のエポキシ化に広く使用されるため、これらの化合物を更に分析した。両方の過酸は、周囲条件下で不安定であり、したがって、それぞれ、過酸化水素及びギ酸又は酢酸からインサイチュで生成する必要がある。HPO又はHSOなどの強無機酸は、形成速度を増加させるための触媒として機能する。
【0171】
その目的のために、持続的な干渉を有することが知られているRBDパーム油のような困難なマトリックスを、両方の試薬で、65℃で30分間処理した。予想通り、過ギ酸は、過酢酸よりも多価不飽和物の除去が高く、かつ速いことを示した。
【0172】
驚くべきことに、除去は、mCPBAと比較して更により高かった。図4には、過ギ酸でのエポキシ化後のRBDパーム油のMOAH画分が、より少ないクロマトグラフィー干渉を含んだことを示すクロマトグラムオーバーレイが示されている。エタノール中のmCPBAによるエポキシ化がジクロロメタンに劣ることは、この特定の試料についても明らかである。理論に拘束されることを望まないが、これは、反応速度の低下を引き起こす溶媒の極性に起因する可能性があると考えられる。これらの理由から、本研究の範囲内で、エポキシ化の性質の更なる調査のために、過ギ酸を選択した。
【0173】
典型的な生物由来のオレフィンに類似した5つのモデル物質を選択し、過ギ酸でエポキシ化した。必要に応じて、mCPBAによる従来のエポキシ化との比較を行った。エポキシ化は、次式による二次動力学に従う:
【数2】
【0174】
過酸が過剰に添加され、その濃度が一定であると見なされる場合、反応は、擬似一次に従い、したがって、反応速度定数(k1)及び半減期時間(t1/2)などの重要なパラメータを導き出すことができる上段の方程式を簡略化することができる。
【数3】

【表1】
【0175】
表1に、これらの実験の結果を要約する。スクアレン及びβ-カロチンのエポキシ化は、3,5-コレスタジエンのエポキシ化よりもはるかに高速である。理論に拘束されることを望まないが、これは、それらの共役π電子系によるものであると提案される。1,13-テトラデカジエン及び1-オクタデセンのエポキシ化の半減期時間は、有意により高かった。本発明者らは、これは、二重結合の数及び位置が反応速度に及ぼす影響に起因する可能性があることを提案する。加えて、溶媒の極性の影響は、エタノール及びジクロロメタン中のmCPBAエポキシ化の結果を比較するときに見ることができる。
【0176】
ジクロロメタン中のmCPBAで実行されたエポキシ化は、ほとんどの化合物について、最高の反応速度を示した一方、これは、クロロホルム中の過ギ酸と比較した場合、末端オレフィンについては当てはまらなかった。このシステムは、妥当な時間内に末端オレフィンをエポキシ化することができる唯一のものであり、したがって、求める試料調製手順のために選択された。
【0177】
3B GC-MSによるMOAHクロマトグラムの説明
次に、エポキシ化後のクロマトグラフィーシグナルを調べた。HPLC分離後、MOAH画分を回収し、GC-MS分析に供した。ほとんどのシグナルが安全に同定できなかったにもかかわらず、非常に顕著なピーククラスターが、分析されたほぼ全ての精製パーム油画分(図5で強調され、図6で拡大されている)で見出された。興味深いことに、これは、バージンパーム油には存在せず、精製プロセス中の形成を暗示した。
【0178】
質量スペクトルは、植物ステロールからのこれらの化合物の遺伝を示した。非常に豊富なm/z 211及びm/z 253の発見は、芳香族ステロイド化合物の存在を暗示した。。理論に拘束されることを望むものではないが、脱水がステラトリエンの形成につながることが提案される。1つの環部分の芳香族化を伴う二重結合のその後の再配列は、単環式芳香族ステロイド炭化水素をもたらす可能性がある(図7A図7Cを参照)。これらの化合物は、MOAHの大部分と同じ芳香族構造を共有するため、エポキシ化によって除去することはできず、GCxGCによるLC-GC-FIDクロマトグラムの注意深い目視検査によるなど、他の方法で残りと区別する必要があることが、提案される。
【0179】
定義に従って、MOAHの分類は、剥き出しのシリカゲル上のそれらのクロマトグラフィー溶出プロファイル、及び高度にアルキル化されたMAC及びペリレンを含有する溶出液を収集するための慣習にのみ基づく。。(精製されていない)鉱油に典型的に見出される以下の物質クラスは、この画分内で溶出される:
様々な程度のアルキル化を有する(部分的に水素化された)単環式、二環式、三環式、及び多環式の芳香族化合物(MAC、BAC、TAC、及びPAC)、硫黄又は酸素を含有する芳香族複素環、例えば、PASH又はPAOH(窒素含有複素環、すなわち、PANHは、同じウィンドウ内に溶出されない)、MAC、及びある程度までのBACは、MOAHに見出される最も顕著な物質クラスである。より高い共役芳香族系は、はるかに低い程度で見出される。
【0180】
どの物質がエポキシ化の影響を受けるかの単純な試験のために、MOH ISTD、EPA PAH、ジベンゾフラン、及びジベンゾチオペンを含有するモデル混合物を構成した。この混合物をエポキシ化に供した。加えて、2つの市販の鉱油をエポキシ化した。表2に、結果を要約する。


【表2】
【0181】
第一に、少数の例外にもかかわらず、全ての化合物が、オレフィンよりもはるかに高い半減期時間を示すことは注目に値する(表2及び図8を参照)。MAC及びDBF(PAOHの代表として)は、エポキシ化によって有意に影響されない。競合する試料マトリックスがないクロロホルムでも、TBBの半減期時間は、90分よりも長い。PASHは、短時間でスルホキシド、最終的にはスルホンに酸化される。BAC、TAC、及びPACについては、フタル酸又はキノンなどの酸化生成物が、文献に報告されている。損失は、リングサイズ又はイオン化エネルギーと厳密に相関しないが、使用される溶媒に大きく依存する。クロロホルムは、末端オレフィンのエポキシ化を可能にするだけでなく、芳香族物質の酸化も加速する。
【0182】
ナフタレンのクラス(BAC)について表2に更に見ることができるように、メチル化ナフタラン(methylated naphthalane)及びアセナフテンの損失は、親化合物よりも高く、アルキル化による超共役が有意な影響を有することを示す。アセナフチレンの高い損失は、酸化を受けやすいその顕著な二重結合によって引き起こされる。
【0183】
TACクラスでは、アントラセンは、フェナントレンよりもはるかに高い程度で失われる。
【0184】
定量されたMOAH含有量の大部分、すなわち、MAC及びBACは、主にエポキシ化による影響を受けない一方、過酷なエポキシ化条件は、さもなければ信頼性の高いMOAH定量を妨げるオレフィンを除去するために避けられないと、要約することができる。
【0185】
定量限界の引き下げ
分析方法の感度を向上させる最も簡単な方法のうちの1つが、分析される試料量を増加させることである。明らかに、試料量を増やすことによって、望ましくない試料副産物(又はマトリックス)の量もまた増加する。普通の炭化水素の分析のために、けん化は、マトリックスの大部分を除去するための貴重なツールである。典型的には、典型的な食用油又は脂肪の不けん化物は、総重量の1~2%を占めるに過ぎない。
【0186】
MOSH/MOAH分析の初期段階では、剥き出しのシリカゲルのHPLCクリーンアップが、マトリックスを除去するのに役立った一方、このアプローチは、使用されるHPLCカラムの限界を超えて試料量が増加すると、実用的でなくなる。より大きなHPLCカラムを選択すると、GCへの移送体積に関する問題が生じる。したがって、けん化は、それがより複雑な試料調製につながる場合でも、この障害に取り組むための最も簡単な解決策である。便利なことに、このステップは、自動化することができる。
【0187】
EN16995:2017は、20mgの試料量を使用し、10mg/kgのLOQで検証されたので、1mg/kgを得るために約200mgが必要であると仮定することは合理的である(他の干渉が定量を妨げない場合)。DGF標準方法は、実験室での手作業を容易にするために、100mgの試料しか使用しない。MOAH含有量が非常に低い場合、試料量を約200~300mgに増加させるために、第2の蒸発ステップが必須である。現在の研究では、少なくとも200~300mgの試料サイズ、好ましくは400mgで作業する方法を開発することが目的であった。
【0188】
典型的には、過剰量のエタノール中の水酸化カリウムを使用して、主にトリグリセリドを高温でけん化する。他の水酸化物又はアルコールは、多くの場合、不溶性脂肪酸塩の形成をもたらす。その後、不けん化物をn-ヘキサンなどの非極性溶媒で抽出する。このアプローチは、MOSH/MOAH検出にも適用可能である。
【0189】
不けん化物のけん化及び抽出後のISTDの回収率が低いことが、過去に報告されている。明らかに、けん化中に形成される大量の石鹸は、ISTD、特にBACの一部をカプセル化することができる。MOAHへの影響は文献に記載されていないが、同様の化合物も部分的に失われると仮定することは公正である。独自の試験で、メチルナフタレンの20%もの損失が明らかになった一方、他の標準は、完全に回収された。第2のn-ヘキサン抽出を付加することで、この問題が解決された。
【0190】
方法設計
クロロホルム中の過ギ酸によるエポキシ化が、干渉の最良の除去を示したため、それをけん化と併せて使用した。全てのプロセスが、使用されたオートサンプラー上で完全に自動化されたため、HPLC注入前の溶媒切り替えは、問題とはみなされなかった。これにより、蒸発ステップ中のユーザー関連の問題は、無関係になった。図9に、プロセス全体を提示する。
【0191】
ヘキサン除去及びクロロホルムへの溶媒の切り替えを支援するために、キーパー溶媒を事前に添加した。伝統的に使用されるキーパー、ビス(2-エチルヘキシル)マレイン酸塩は、そのオレフィン二重結合に起因してエポキシ化を妨害するため、使用することができなかった。しかしながら、対応するセバケートは、その目的に好適であることが判明した。
【0192】
手動シリカゲルカラムクロマトグラフィーは、従来の方法と比較して、高酸性条件下での過ギ酸によるエポキシ化が3つの重要な利点を示したことが見出されたため、省略した。第一に、極性試料副産物は、エポキシ化を遅らせなかった。第二に、残留脂肪酸石鹸が中和され、最終的にHPLCによって除去されたため、けん化後のn-ヘキサン相の洗浄は、必要でなかった。最後に、形成されたエポキシドは、水性酸によって迅速に開裂された。得られたジオールは、剥き出しのシリカゲル上でより高い保持性を示す。したがって、トリグリセリドの不存在下で、これらの化合物を除去するために、使用されたHPLCカラムを使用することができ、不けん化物の割合が低い試料については、手動カラムクロマトグラフィーは不必要であった。MOAHクロマトグラムの目視検査により、典型的な油及び脂肪の極性副産物の不存在が検証された。いずれにせよ、カラムエージングによるマトリックスブレークスルーの場合、極性溶出液でフラッシュすることが、HPLCカラムの性能を回復するための適切な方法であった。
【0193】
元の方法に対する最終的な変更として、拡大された試料ループ並びにHPLC及びGC移送条件のわずかな調整を使用することによって、HPLCへの最大注入量を100μLから400μLに増加させた。この変更は、試料調製中の最終的な蒸発ステップをより堅牢にした。なぜなら、さもなければ必要とされる375μLの体積を1500μLに増加させることができ、10mLのオートサンプラーバイアルを使用することが可能になるからである。さもなければ、円錐形のインサートを有する特別なバイアルが必要とされたか、又は蒸発を、より小さいバイアルサイズへの中間的な液体移送を伴う2つのステップで行う必要があったであろう。
【0194】
方法の検証
けん化、濃縮、及びエポキシ化を伴う提案された試料調製を、地元のスーパーマーケットからのオリーブ油に対する再現性の観点から試験した。3週間内に8回の測定で、それぞれ14.9±1.0mg/kg及び2.1±0.1mg/kgのMOSH及びMOAHの測定値がもたらされた。最新の共同試験によると、再現性のある条件下での相対標準偏差は、7%未満であり、25%の許容値に完全に準拠した。
【0195】
DGF標準方法によれば、ブランクレベルは、求めるLOQの1/3未満であるべきである。提案された方法に試薬ブランクを供したところ、MOSH及びMOAHのブランク値が、それぞれ0.2mg/kg未満及び0.1mg/kg未満であることが明らかになった(図10A及び図10Bを参照)。したがって、ブランク値は、少なくとも1mg/kgの求めるLOQとは無関係である。
【0196】
真度実験及び回収実験は、DGF標準方法開発の範囲内の共同試験で以前に使用された周知の試料で実施された。表3に、得られた結果が要約されており、±2のzスコア範囲内で、許容可能な比較が概して得られることを示す。


【表3】
【0197】
しかしながら、ココアバター、スパイクした菜種油、及びパームオイルについては、幾分負のMOAHのzスコアが得られた。これが、MOAHの意図しない損失に関連しているか、又は共同試験の参加者によるMOAHの過大評価に関連しているかどうかは、完全には明らかにすることができなかった。対応するクロマトグラムを図11A図11Fに示す。ヒマワリ油及び菜種油のMOAHの結果が、求めるLOQを下回ることは、達成可能な最も低い汚染で、できるだけ多くの試料量を注入することがいかに重要であるかを示す。そうでなければ、信頼性の高い統合は不可能になる。
【0198】
MOSHについては、大量の生物由来のn-アルカンを含有する試料は、求める範囲外のzスコアを示す。これは、酸化アルミニウムクリーンアップの効率のばらつきに起因する可能性がある。
【0199】
結論
結果は、持続的な生物学的干渉の除去が、エポキシ化のより穏やかな反応条件よりも好まれるべきであることを示す。クロロホルム中の過ギ酸によるエポキシ化は、生物由来のπ電子欠乏性オレフィンを除去するための最も効果的な試薬であることが証明され、MOSH及びMOAH試料調製における重要な成果を示す。TAC及びPACのMOAH損失を完全に防ぐことはできないが、精製鉱油中のこれらの化合物の存在量が少ないため、それらは、定量的には無関係である。MAC及びBACなどの主要なクラスは、はるかに少ない程度にエポキシ化の影響を受ける。
【0200】
けん化、濃縮、及びHPLCへの注入量の増加を伴う合理化されたワークフローと組み合わせて、完全に自動化された方法が、確立された。共同試験試料についての定量的結果は、提案された方法の真度を検証し、方法を、日常的な環境における食用油及び脂肪の分析に適したものにする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
【国際調査報告】