(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】湿式食刻溶液組成物、及びガラスの湿式食刻方法、及びその湿式食刻方法でパターニングされたガラス
(51)【国際特許分類】
C03C 15/00 20060101AFI20241018BHJP
G02B 1/118 20150101ALI20241018BHJP
【FI】
C03C15/00 B
G02B1/118
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022523119
(86)(22)【出願日】2021-10-19
(85)【翻訳文提出日】2022-04-15
(86)【国際出願番号】 KR2021014601
(87)【国際公開番号】W WO2023068395
(87)【国際公開日】2023-04-27
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522154272
【氏名又は名称】イ サンロ
(71)【出願人】
【識別番号】509167811
【氏名又は名称】五十嵐 克史
(74)【代理人】
【識別番号】100166372
【氏名又は名称】山内 博明
(72)【発明者】
【氏名】イ サンロ
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 克史
【テーマコード(参考)】
2K009
4G059
【Fターム(参考)】
2K009AA01
2K009BB02
4G059AA01
4G059AB01
4G059AC02
4G059BB16
4G059BB17
(57)【要約】
本発明の湿式食刻方法は、ガラスを洗浄すること、洗浄されたガラスを湿式食刻してナノスケールのパターンを形成すること、及びナノパターニングされたガラスを洗浄及び乾燥することを含み、前記湿式食刻ステップで使用する湿式食刻溶液はフッ酸と界面活性剤、及びシュウ酸と酢酸を含むことができる。本発明によると高透過率/低反射率のガラスを提供することができる。このガラスはモバイル機器を含んだディスプレイ及び光学機器に活用されることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスを洗浄すること、
洗浄されたガラスを湿式食刻してナノスケールのパターンを形成すること、及び
ナノパターニングされたガラスを洗浄及び乾燥することが含まれ、
前記湿式食刻ステップで使用する湿式食刻溶液はフッ酸と界面活性剤を含むガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項2】
前記湿式食刻はディッピング方法で行われて、前記ガラスの両面又は断面に前記ナノスケールのパターンが形成される請求項1に記載のガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項3】
前記ナノスケールのパターンは1-100ナノメートルの範囲を有し、
前記ガラスの表面から突出する突起を含むモスアイ構造物である請求項1に記載のガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項4】
前記突起の厚さは1-50ナノメートルであり、前記突起の深さは1-50ナノメートルで提供される請求項3に記載のガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項5】
前記突起の厚さは5-30ナノメートルであり、前記突起の深さは5-30ナノメートルで提供される請求項3に記載のガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項6】
前記突起は厚さが深さより大きい請求項4又は5に記載のガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項7】
前記湿式食刻ステップで湿式食刻溶液組成物は、
-フッ酸及び界面活性剤を含んで残りは水で組成したり、
-フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸のうちの少なくとも1つを含んで残りは水で組成したり、
-フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸のうちの少なくとも1つを含み、NH
4F、HNO
3、H
3PO
4、及びHClのうちの少なくとも1つを含まずに残りは水で組成したり、
-フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸のうちの少なくとも1つを含み、NH
4F、HNO
3、H
3PO
4、及びHClの全てを含まずに残りは水で組成したり、
-フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸をさらに含んで残りは水で組成したり、
-フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸をさらに含み、NH
4F、HNO
3、H
3PO
4、及びHClの全てを含まずに残りは水で組成する、請求項1に記載のガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項8】
前記フッ酸は0wt%超過5.0wt%未満で含んだり、
前記シュウ酸0wt%超過5.0wt%未満で含んだり、
前記酢酸0wt%超過10.0wt%未満で含んだり、
前記界面活性剤は0wt%超過1.0wt%未満で含む請求項7に記載のガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項9】
湿式食刻温度は30-70℃であり、食刻時間は1-7分である請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガラスのナノ湿式食刻方法。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のガラスナノ湿式食刻方法で製造されたガラス。
【請求項11】
ガラスを食刻するための湿式食刻溶液組成物であり、
前記湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、界面活性剤を0wt%超過1.0wt%未満で含み、前記湿式食刻溶液組成物の残余成分は水で組成される湿式食刻溶液組成物。
【請求項12】
シュウ酸を0wt%を超過して5.0wt%未満で含む請求項11に記載の湿式食刻溶液組成物。
【請求項13】
酢酸を0wt%を超過して10.0wt%未満で含む請求項11に記載の湿式食刻溶液組成物。
【請求項14】
0wt%超過5.0wt%未満のシュウ酸、及び0wt%超過10.0wt%未満の酢酸を含む請求項11に記載の湿式食刻溶液組成物。
【請求項15】
前記シュウ酸より前記酢酸がさらに多く含まれる請求項14に記載の湿式食刻溶液組成物。
【請求項16】
NH
4F、HNO
3、H
3PO
4、及びHClのうちの少なくとも1つを含まない請求項11に記載の湿式食刻溶液組成物。
【請求項17】
NH
4F、HNO
3、H
3PO
4、及びHClを全て含まない請求項11に記載の湿式食刻溶液組成物。
【請求項18】
湿式食刻方法で提供されるナノスケールの表面突起を有するパターンを含んで高透過率/低反射率の具現が可能であって、平板ディスプレイ前面パネル、光学機器のレンズ又はウィンドウ又は保護カバーに適用が可能なナノパターニングされたガラスであり、
前記突起の厚さが前記突起の深さより大きい、湿式食刻方法でナノパターニングされたガラス。
【請求項19】
前記突起の厚さは1-50ナノメートルであり、前記突起の深さは1-50ナノメートルで提供される、請求項18に記載の湿式食刻方法でナノパターニングされたガラス。
【請求項20】
前記ガラスは両面又は断面がパターニングされた、請求項18に記載の湿式食刻方法でナノパターニングされたガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿式食刻してガラス表面にナノパターンを形成してガラスの光透過率を向上させて反射率を下げる、ガラスの湿式食刻方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食刻工程は湿式食刻と乾式食刻に区分することができる。湿式食刻は一般的に母材を腐食及び溶解させる性質を有する食刻溶液と、食刻の対象となる母材の化学反応を通じてなされる。乾式食刻は気体プラズマや活性化された気体による反応を利用してなされる。
【0003】
従来母材の表面処理方法において、数~数十nmの横幅(幅、厚さ)を有するパターンを形成するためには前述した乾式食刻を使用する。しかしながら、乾式食刻は湿式食刻に比べて高費用であって工程管理が難しくて大量生産が難しい。また、乾式食刻は曲面ガラス及び大面積ガラスに適用するには工程特性上困難がある。
【0004】
これに反し、従来の湿式食刻は乾式食刻に比べて工程管理が易しくて大量生産に容易である。しかしながら、湿式食刻を通じて形成されたパターンは平均3マイクロメートル以上の横幅を有する。このようなパターンは反射率を下げることはできるが透過率が顕著に減少する短所がある。これによって透過率を維持して反射率を下げることができる微細なナノパターンの必要性が台頭してきた。しかしながら、光の反射率又は透過率を調節することができる程度のナノスケールに至るパターンを湿式食刻方法で具現することが難しいので、従来には湿式食刻を利用して光に対する高透過率/低反射率のガラスを提供することは殆ど行われることができなかった。
【0005】
発明者はこのような技術的事情に基づいて研究開発を行って大韓民国登録特許10-1842083号、‘突起形成方法’を出願したことがある。前記従来技術によると透過率が向上して反射率が低くなる効果を得ることができた。しかしながら、食刻反応の安定性、再現性、及び食刻均一性で問題が以前通りであった。
【0006】
ここに発明者はさらに研究開発を続けて本発明に至るようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許10-1842083号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は高透過率/低反射率のガラスを提供することを目的とする。
【0009】
本発明は多様なガラスの表面に対する高透過率/低反射率処理を可能にすることを目的とする。
【0010】
本発明は食刻反応の安定性、再現性、及び食刻均一性が改善される高透過率/低反射率のガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の湿式食刻方法は、ガラスを洗浄すること、洗浄されたガラスを湿式食刻してナノスケールのパターンを形成すること、及びパターニングされたガラスを洗浄及び乾燥することを含む。
【0012】
前記湿式食刻ステップで使用する湿式食刻溶液はフッ酸と界面活性剤を含むことができる。
【0013】
前記湿式食刻はディッピング方法で行われることができる。
【0014】
前記ガラスの一面又は両面に前記ナノスケールのパターンが形成されることができる。
【0015】
前記ナノスケールのパターンは1-100ナノメートルの範囲を有することができる。
【0016】
前記ガラスの表面から突出する突起を含むことができる。
【0017】
前記突起を含んで前記ガラスの表面はモスアイ構造物を有することができる。
【0018】
前記ナノスケールの構造物は突起を含むことができる。
【0019】
前記突起は厚さが深さより大きい構造を有することができる。
【0020】
前記突起の厚さは1-50ナノメートルであり得る。
【0021】
前記突起の深さは1-50ナノメートルで提供されることができる。
【0022】
前記突起の厚さは5-30ナノメートルであり得る。
【0023】
前記突起の深さは5-30ナノメートルで提供されることができる。
【0024】
前記湿式食刻ステップで湿式食刻溶液組成物は、-フッ酸及び界面活性剤を含んで残りは水で組成したり、-フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸のうちの少なくとも1つを含んで残りは水で組成したり、-フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸のうちの少なくとも1つを含み、NH4F、HNO3、H3PO4、及びHClのうちの少なくとも1つを含まずに残りは水で組成したり、-フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸のうちの少なくとも1つを含み、NH4F、HNO3、H3PO4、及びHClの全てを含まずに残りは水で組成したり、フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸をさらに含んで残りは水で組成したり、フッ酸及び界面活性剤を含み、シュウ酸及び酢酸をさらに含み、NH4F、HNO3、H3PO4、及びHClの全てを含まずに残りは水で組成することができる。
【0025】
前記フッ酸は0wt%超過5.0wt%未満で含むことができる。
【0026】
前記シュウ酸0wt%超過5.0wt%未満で含むことができる。
【0027】
前記酢酸0wt%超過10.0wt%未満で含むことができる。
【0028】
前記界面活性剤は0wt%超過1.0wt%未満で含むことができる。
【0029】
前記湿式食刻が行われる温度は30-70℃の範囲であり得る。
【0030】
前記湿式食刻が行われる時間は1-7分の範囲であり得る。
【0031】
前記ガラスはモバイル機器を含んだ平板ディスプレイ及び多様な光学機器に利用されることができる。
【0032】
他の側面による本発明の湿式食刻溶液組成物は、ガラスを食刻するための湿式食刻溶液組成物であり、前記湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、界面活性剤を0wt%超過1.0wt%未満で含み、前記湿式食刻溶液組成物の残余成分は水で組成されることができる。
【0033】
前記組成物はシュウ酸を0wt%を超過して5.0wt%未満で含むことができる。
【0034】
前記組成物は酢酸を0wt%を超過して10.0wt%未満で含むことができる。
【0035】
前記組成物は0wt%超過5.0wt%未満のシュウ酸、及び0wt%超過10.0wt%未満の酢酸を含むことができる。
【0036】
前記組成物は、前記シュウ酸より前記酢酸がさらに多く含まれることができる。
【0037】
前記組成物はNH4F、HNO3、H3PO4、及びHClのうちの少なくとも1つを含まない可能性がある。
【0038】
前記組成物はNH4F、HNO3、H3PO4、及びHClを全て含まない可能性がある。
【0039】
本発明によるパターニングされたガラスは、湿式食刻方法で提供されるナノスケールの表面突起を有するパターンを含んで高透過率/低反射率の具現が可能であって、平板ディスプレイ前面パネル、光学機器のレンズ又はウィンドウ又は保護カバーに適用が可能なパターニングされたガラスであり得る。
【0040】
前記突起の厚さが前記突起の深さより大きく提供されることができる。
【0041】
前記突起の厚さは1-50ナノメートルであり得る。
【0042】
前記突起の深さは1-50ナノメートルで提供されることができる。
【0043】
前記ガラスは両面又は断面がパターニングされている可能性がある。
【発明の効果】
【0044】
本発明による高透過率/低反射率のガラスを提供することができる。使用者は本発明のガラスを使用して外光の反射によるディスプレイの視認性低減を減らすことができる。
【0045】
本発明によるとメーカーの対外秘で管理される多様な組成で製造されたガラスの表面に対する高透過率/低反射率処理が可能な長所がある。本発明は特にモバイル機器のディスプレイに対して高透過率/低反射率の具現による視認性向上が可能な効果があることを実験で確認した。
【0046】
本発明によると、ディスプレイのこのような視認性向上を通じたモバイル機器の品質向上を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】
図1は実施例によるガラスの湿式食刻方法を説明する流れ図である。
【
図2】
図2は第1実施例による湿式食刻方法を繰り返して行った結果を示すグラフである。
【
図3】
図3は第2実施例による湿式食刻方法を繰り返して行った結果を示すグラフである。
【
図4】
図4は第3実施例による湿式食刻方法を繰り返して行った結果を示すグラフである。
【
図5】
図5は第4実施例による湿式食刻方法を繰り返して行った結果を示すグラフである。
【
図6】
図6は第5実施例による湿式食刻方法を繰り返して行った結果を示すグラフである。
【
図7】
図7はディッピング(dipping)時間による透過率の変化を示すグラフである。
【
図8】
図8は実施例の湿式食刻方法が行われたガラスの表面(a)と表面の断面(b)の写真である。
【
図9】
図9は実施例に適用される蛾の目構造物の作用を説明する図面であって、蛾の目構造物の作用原理を示す。
【
図10】
図10は実施例に適用される蛾の目構造物の作用を説明する図面であって、前記実施例4に対する蛾の目構造物による透過率向上/反射率減少の作用を説明する図面である。
【
図11】
図11は実施例によるナノスケールのパターンが形成されるガラスの高透過/低反射効果を説明する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下では図面を参照して本発明の具体的な実施例を詳細に説明する。しかしながら、本発明の思想は以下の実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は同一の思想の範囲内に含まれる他の実施例を構成要素の付加、変更、削除、及び追加等によって容易に提案することができるが、これもまた本発明思想の範囲内に含まれることができる。
【0049】
図1は実施例によるガラスの湿式食刻方法を説明する流れ図である。
【0050】
図1を参照すると、ガラスの湿式食刻方法は、ガラス基板を洗浄するステップ(S1)、湿式食刻を通じてガラス基板上にナノパターンを形成するステップ(S2)、及びパターニングされたガラスを洗浄及び乾燥するステップ(S3)を含むことができる。
【0051】
前記洗浄ステップ(S1)ではガラス基板に存在する有機物等の異質物を除去することができる。前記洗浄ステップ(S1)によって、前記パターン形成ステップ(S2)で食刻溶液による食刻処理が全体ガラス基板に対して均一になされるようにすることができる。前記洗浄ステップ(S1)にはIPA(Isopropyl Alcohol)又はエタノールを使用することができる。IPA(Isopropyl Alcohol)又はエタノールでガラス基板を洗浄した後には水で洗浄することができる。洗浄方式としては超音波を利用したり、ブラシを利用してガラス基板を洗浄することができる。
【0052】
前記パターニングステップ(S2)は湿式食刻溶液の中にガラス基板を浸すディッピング(dipping)方法又はガラス基板に湿式食刻溶液を噴射するスプレー(spray)方式等で行うことができる。前記パターニングステップ(S2)によってはガラス基板上にナノパターンが提供されることができる。前記ディッピング方法によってガラス基板の両面又は断面に前記パターンを形成することができる。断面の場合にはマスキングを利用して行うことができる。
【0053】
この時、湿式食刻溶液組成物は、フッ酸及び界面活性剤を適正量含むことができる。前記湿式食刻溶液組成物はシュウ酸、酢酸のうちの少なくとも1つを適正量含むことができる。前記湿式食刻溶液組成物にはNH4F、HNO3、H3PO4、及びHClのうちの少なくとも1つを含まない可能性がある。前記湿式食刻溶液組成物にはNH4F、HNO3、H3PO4、及びHClの全てを含まない可能性がある。この時、組成物の残りは水からなることができる。
【0054】
前記パターニングステップによると、凹凸が繰り返して具現されるナノスケールのパターニングされた構造物を提供することができる。前記パターニングされた構造物はナノスケールの繰返し的な突起を含むことができる。前記ナノスケールは1-100ナノメートルの単位を言及することができる。前記突起は前記ガラスの表面から突出することができる。前記突起は前記ガラスの表面で直交する高さ方向に突出することができる。
【0055】
前記パターニングされた構造物はナノスケールの蛾の目構造物であって、ガラスと他の媒質との境界面で光の反射率を下げることができ、透過率を十分に向上させることができる。前記光は可視光線を例示することができる。
【0056】
前記ガラスはモバイル機器のカバーガラスとして使用されることができる。この場合、モバイル機器の使用者はカバーガラスの高透過率/低反射率効果によってモバイル機器の表示情報の可視性を高めることができる。勿論、ガラスの使用例はモバイル機器に制限されないが、好ましい例としてモバイル機器の強化ガラスを例に挙げることができる。前記強化ガラスにはナトリウムとカリウムのうちの少なくとも1つが分散されているものと推測される。
【0057】
前記ガラスを洗浄するステップ(S3)では、ガラスを洗浄及び乾燥することができる。このステップで湿式食刻を通じてパターンを形成するステップ(S2)を経た後に残留する酸性の食刻溶液を除去することができる。
【0058】
表1は前記湿式食刻溶液の組成物を示すテーブルである。
【0059】
【0060】
表1を参照して説明する。
【0061】
一実施例の湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%を超過し、5.0wt%未満で含むことができる。一実施例の湿式食刻溶液組成物は、シュウ酸を0wt%を超過し、5.0wt%未満で含むことができる。一実施例の湿式食刻溶液組成物は、酢酸を0wt%を超過し、10.0wt%未満で含むことができる。一実施例の湿式食刻溶液組成物は、界面活性剤を0wt%超過し、1.0wt%未満で含むことができる。前提食刻溶液の残余成分としては水を含むことができる。
【0062】
一実施例の湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、界面活性剤を0wt%超過1.0wt%未満で含むことができる。前提食刻溶液の残りの組成は水を含むことができる。発明者は市販中である多様なガラスの内部及び表面にはナトリウムとカリウムの酸化物がナノスケール凹凸を作るのに適した水準で均質に分散するものと推測する。これを通じてフッ酸を含ませることによってナノスケールの構造物をガラスの表面に形成することができることを推測する。
【0063】
一実施例の湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、シュウ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、界面活性剤を0wt%超過1.0wt%未満で含むことができる。前提食刻溶液の残りの組成は水を含むことができる。
【0064】
一実施例の湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、酢酸を0wt%超過10.0wt%未満で含み、界面活性剤を0wt%超過1.0wt%未満で含むことができる。前提食刻溶液の残りの組成は水を含むことができる。
【0065】
一実施例の湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、0wt%超過5.0wt%未満のシュウ酸、0wt%超過10.0wt%未満の酢酸、及び0wt%超過1.0wt%未満の界面活性剤の中で少なくとも1つを含むことができる。前提食刻溶液の残りの組成は水を含むことができる。この時、シュウ酸と酢酸が共に含まれる場合には酢酸がさらに多く含まれることができる。
【0066】
前記シュウ酸、及び酢酸のうちの少なくとも1つを適正量含むことによって、食刻反応の安定性、再現性を向上させることができる。前記シュウ酸、及び酢酸のうちの少なくとも1つの適正量は0wt%超過5.0wt%未満であり得る。
【0067】
好ましく、一実施例の湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、シュウ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、酢酸を0wt%超過10.0wt%未満で含み、界面活性剤を0wt%超過1.0wt%未満で含むことができる。前提食刻溶液の残りの組成は水を含むことができる。
【0068】
実施例の湿式食刻溶液組成物はフッ酸を必ず含み、その含量は0wt%超過5.0wt%未満で含むことができる。
【0069】
前記フッ酸は化学式1、化学式2、及び化学式3によってガラスにナノスケールの構造物を形成することができる。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
前記化学式を参照すると、前記フッ酸はガラスに存在するナトリウムとカリウムの酸化物と反応してNaF、及びKFを形成することができる。前記NaFとKFは全て水溶性であるので食刻溶液に溶解されて存在する。
【0074】
ガラスの主成分であるSiO2も化学式3のようにHFと反応してH2SiF6を生成することができる。前記化学式3の反応速度は化学式1と化学式2の反応速度に比べて顕著に低いので、その反応速度の差によってナノスケールの凹凸構造物が形成されるものと理解される。
【0075】
前記H2SiF6も水溶性であるので反応後食刻溶液に溶解されて存在するようになる。前記化学式1、及び化学式2と化学式3の反応速度差によるナノ構造物形成が本発明の一特徴をなすことができる。ここでナノスケールは凹凸の厚さ及び深さ全てに該当することができる。
【0076】
実施例の湿式食刻溶液組成物は界面活性剤を含むことができる。界面活性剤はガラス基板の表面から副食物がよく落ちるようにする役割、界面活性剤が気泡を形成して前記副食物をよく吸着する役割、及び湿式食刻溶液の作用成分がガラス基板の微細表面によく接触するようにする役割を行うことができる。前記界面活性剤を通じてナノスケールの構造物をガラスの全体面に対して均一でかつ円滑に提供することができる。
【0077】
実施例の湿式食刻溶液組成物はNH4F、HNO3、H3PO4、及びHClを含まない可能性がある。前記NH4F、HNO3、H3PO4、及びHCl等がナノスケール構造物の形成に大きい役割をするものと期待したが、工程の安定化と再現性及びナノ構造物の均一性等において問題を起こすことを確認することができた。前記NH4F、HNO3、H3PO4、及びHCl等は界面活性剤との反応性が良くないことに起因したものと推測することができる。
【0078】
前記湿式食刻溶液組成物は反応時間と反応温度に影響を受けることができる。発明者は計り知れない繰返し実験を行って製品として適用が可能な多様な実施例を得ることができた。ガラスは多様なガラスを使用し、各ガラス製造社は自分のガラスの成分及び加工方法を公開しない。これにより、発明者は繰返し実験を通じて前記湿式食刻溶液組成物の性能を確認した。前記ガラスはモバイル機器の前面カバーとして使用されるガラスをその一例とした。
【0079】
湿式食刻方法の実施例1
【0080】
-S製造者のAガラス、ディッピング食刻、温度30-40℃、食刻時間1-2分
【0081】
湿式食刻方法の実施例2
【0082】
-S製造者のBガラス、ディッピング食刻、温度60-65℃、食刻時間1.5-2分
【0083】
湿式食刻方法の実施例3
【0084】
-X製造社のAガラス、ディッピング食刻、温度65-70℃、食刻時間2-4分
【0085】
湿式食刻方法の実施例4
【0086】
-C製造社のAガラス、ディッピング食刻、温度65-70℃、食刻時間3-5分
【0087】
湿式食刻方法の実施例5
【0088】
-S製造者のCガラス、ディッピング食刻、温度40-45℃、食刻時間3.5-5分
【0089】
この時に使用した湿式食刻溶液組成物は、フッ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、シュウ酸を0wt%超過5.0wt%未満で含み、酢酸を0wt%超過10.0wt%未満で含み、界面活性剤を0wt%超過1.0wt%未満で含むことができる。前提食刻溶液の残りの組成は水を含むことができる。
【0090】
食刻溶液にディッピングされるので、ガラスは両面に食刻処理になり得る。
【0091】
前記各実施例による湿式食刻方法を行ってパターニングされたガラスの、パターニング前(Before)、パターニング後(After)の透過率を測定した。
【0092】
図2乃至
図6は第1乃至第5実施例による湿式食刻方法を繰り返して行った結果を各グラフで示した。
【0093】
実施例によると、
図2の湿式食刻方法の実施例1では550nmで透過率が92%から97%に5%向上したことを見ることができる。
図3の湿式食刻方法の実施例2では550nmで透過率が92%から96%に4%向上したことを見ることができる。
図4の湿式食刻方法の実施例3では550nmで透過率が91.5%から95.5%に4%向上したことを見ることができる。
図5の湿式食刻方法の実施例4では550nmで透過率が92%から98%に6%向上したことを見ることができる。
図6の湿式食刻方法の実施例5では550nmで透過率が91.7%から96%に4.3%向上したことを見ることができる。
【0094】
上で見たように、実施例の湿式食刻方法が行われたガラスは透過率が全て向上することを確認することができる。これを通じて例えば透過率が向上すると反射率が低くなるので、モバイル機器使用者の情報視認性を向上させることができ、目の疲労感を減少させることができる効果があるものである。
【0095】
図7は実施例5のディッピング(dipping)時間による透過率の変化を示すグラフである。
【0096】
図7を参照すると、ディッピング時間が長いサンプルであるほど透過率が向上する。しかしながら、透過率は4分で96%の頂点をなす。ディッピング時間が不足すると食刻反応が不足するようになってナノ構造物の形成が十分ではないことによって透過率向上が不足する可能性がある。
【0097】
前記ディッピング時間が4分を超過してさらに長くなると透過率が再び減少することができる。これはガラス表面部位にある存在するナトリウムとカリウムの酸化物が、前記化学式1、及び化学式2の反応によって消尽された後に、突起を形成しているSiO
2が化学式3による反応で食刻されるためである。これによって結局、凹凸をなすSiO
2突起が小さくなって凹(Valley)部分の深さが減少して起こる現象として理解することができる。即ち、既に形成された突起の高さが減ることによって凹(Valley)部分の深さが再び低くなるためである。言い換えると、
図9のような突起役割の不足で起こる現象であり得る。実施例で湿式食刻温度は60℃にすることができる。
図7(実施例5)を参照すると、ディッピング時間を7分以内にしなければならないことが分かる。
【0098】
図8は実施例の湿式食刻方法が行われたガラスの表面(a)と表面の断面(b)の写真である。
【0099】
図8を参照すると、
図8(a)で突起の厚さは数ナノメートルから数十ナノメートルに形成されたことを見ることができる。
図8(b)で突起の深さは数ナノメートルから数十ナノメートルに形成されたことを見ることができる。
【0100】
図8を参照すると、実施例で言及した前記ナノスケールは凹凸の厚さ及び深さ全てに該当することができる。前記凹凸は突起と溝部からなり得る。前記突起の厚さは1-50ナノメートルで提供されることができる。前記突起の厚さは好ましく5-30ナノメートルで提供されることができる。前記突起の厚さは1-50ナノメートルの時、前記突起の深さは1-50ナノメートルで提供されることができる。前記突起の厚さが5-30ナノメートルの時、前記突起の深さは5-30ナノメートルで提供されることができる。上のような数で数十ナノメートル範囲内のナノスケールの構造物が
図9のような原理によって高透過率/低反射率を効果を示すようになる。
【0101】
前記突起は厚さ(横幅又は幅)が深さより大きい可能性がある。これを通じてタッチパネルに繰返し的に外部物体が接触しても反射率の性能低下が発生しない可能性がある。例えば、接触によって突起の破損及び崩壊が発生しない可能性がある。
【0102】
比較例として、数百ナノメートル(100-500ナノメートル)の深さ、数十ナノメートル(1-99ナノメートル)の厚さを有する突起物を有する蛾の目構造物は繰返し的な外部衝撃に脆弱である。それ故、ガラスの反射率を経時変化を激しく示して反射率改善効果が低下する。結局、外部環境に対する接触及び露出が激しい環境に使用されるガラスとしては使用することが難しい可能性がある。
【0103】
図9及び
図10は実施例に適用される蛾の目構造物の作用を説明する図面であって、
図9は蛾の目構造物の作用原理を示し、
図10は前記実施例4に対する蛾の目構造物による透過率向上及び反射率減少の作用を説明する図面である。
【0104】
光の反射は光が通過する異なる媒質の境界面で屈折率(Refractive index)の差によって起こるようになる。
図9を参照すると、空気と表面にナノ構造物が形成されているガラスの境界面からガラスに入射される光に対する屈折率の差がある。言い換えると、空気の屈折率1.0からガラスの屈折率1.5に漸進的に増加する。このために反射率が低くなることによって透過率も増加するものである。
【0105】
図10を参照すると、ナノスケールのパターンが形成された場合(b)にはパターンが形成されていない場合(a)に比べて、反射される光が顕著に減ることができる。前記ナノスケールのパターンはガラスの両面に全て提供されることができる。ガラスの断面にだけ必要な場合には一面に食刻反応を排除するためのマスキングをしてディッピングすることができる。
【0106】
図11は実施例によるナノスケールのパターンが形成されたガラスの高透過率/低反射率効果を説明する写真である。
【0107】
図11は太陽光下で撮影した写真である。これを参照すると、高透過/低反射効果によってナノパターニングされた部分の底面のイメージが遥かに鮮明に見えることを確認することができる。また、モバイル機器のカバーガラスにナノパターニングされた部分の画面も鮮明に見えることを確認することができる。図面でMENSは蛾の目ナノ構造(Moth Eye Nano-Structure)を意味する。
【0108】
本発明による高透過率/低反射率を有するガラスは、モバイル機器のカバーガラスとして好ましく使用されることができる。しかしながら、これに制限されず、その他の多様な分野に適用されることができる。
【0109】
例えば、平板ディスプレイ(FPD:Flat Panel Display)の最外殻カバーに適用されるものであって、具体的に、Tablet PC、TV、CCTV、モニタ、キオスク、ATM、及びDID(Digital Information Display)等の前面パネルに適用されることができる。また、自動車のCID(Center Information Display)、Navigation、RSE(Rear Seat Entertainment)に適用されることができる。また、カメラ、望遠鏡、顕微鏡のレンズ又はウィンドウに適用されることができる。また、UVLED、OLED等の保護カバー(Encapsulating cover)として適用されることができる。その他にも、電子黒板、展示台ガラス、View port、額縁、軍事用光学機器、及び太陽電池等にも適用されることができる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明によって多様なガラスに対して湿式食刻方法で高透過率/低反射率を具現することができる。これを通じて各種ディスプレイ及び光学部品が含まれる多様な電子機器の性能向上を図ることができるだけではなく、使用者の便宜性を向上させることができる。
【0111】
本発明によると、食刻反応の安定性、再現性、及び食刻均一性が改善される高透過率/低反射率のガラスを得ることができる。
【国際調査報告】