(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】接着剤組成物及びそれを含むセパレータ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20241018BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20241018BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20241018BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20241018BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/42
H01M50/414
H01M50/434
H01M50/443 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568164
(86)(22)【出願日】2022-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 CN2022121639
(87)【国際公開番号】W WO2024065161
(87)【国際公開日】2024-04-04
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李雷
(72)【発明者】
【氏名】康海楊
(72)【発明者】
【氏名】孫成棟
(72)【発明者】
【氏名】鄭義
(72)【発明者】
【氏名】艾少華
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE03
5H021EE06
5H021EE15
5H021EE21
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH07
(57)【要約】
接着剤組成物であって、ポリマーとセラミック粒子とを含み、前記ポリマーは、第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーに由来する構造単位を含み、且つ前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-58:40-44:2-6であり、ここで、前記第一類のモノマーは、式Iの化合物から選択される一つ又は複数であり、前記第二類のモノマーは、式IIの化合物から選択される一つ又は複数であり、前記第三類のモノマーは、式IIIの化合物から選択される一つ又は複数である。前記接着剤は、セパレータの空隙率を向上させ、イオン電導率を改善し且つ内部抵抗を低減させ、二次電池のサイクル性能を改善する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物であって、ポリマーとセラミック粒子とを含み、前記ポリマーは、第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーに由来する構造単位を含み、且つ前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-58:40-44:2-6であり、
前記第一類のモノマーは、式Iの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化1】
ここで、R
1は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、R
2は、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-15アルキル基、C3-6シクロアルキル基及びイソボルニル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基とC1-6鎖状アルキル基から選択され、
前記第二類のモノマーは、式IIの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化2】
ここで、R
3は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、
前記第三類のモノマーは、式IIIの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化3】
ここで、R
4は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、R
5は、水素原子、ヒドロキシC1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基から選択される、接着剤組成物。
【請求項2】
R
1は、水素原子とメチル基から選択され、且つR
2は、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基であり、及び/又はR
3は、水素原子とメチル基から選択され、及び/又はR
4は、水素原子とメチル基から選択され、且つR
5は、水素原子、ヒドロキシC1-4アルキル基及びC1-4アルコキシ基から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記第一類のモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルから選択される一つ又は複数であり、及び/又は
前記第二類のモノマーは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルであり、及び/又は
前記第三類のモノマーは、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-ブトキシメタクリルアミドから選択される一つ又は複数である、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-57:41-44:2-6である、請求項1から3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリマーと前記セラミック粒子との重量比は、40-90:10-60であり、選択的に50-80:20-50である、請求項1から4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリマーの重量平均分子量は、60000-120000であり、選択的に63300-118800である、請求項1から5のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記セラミック粒子の平均粒径Dv50は、40nm-110nmであり、選択的に45nm-106nmであり、さらに選択的に50nm-100nmであり、またさらに選択的に56nm-89nmである、請求項1から6のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記セラミック粒子は、多孔質粒子であり、且つ前記多孔質粒子の平均孔径は、0.3nm-6.0nmであり、選択的に0.5nm-5.7nmであり、さらに選択的に1.0nm-5.0nmであり、またさらに選択的に1.3nm-3.8nmである、請求項1から7のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記セラミック粒子は、多孔質二酸化ケイ素粒子である、請求項1から8のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記ポリマーは、前記セラミック粒子を被覆する、請求項1から9のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
ベース層と、前記ベース層の少なくとも一つの表面に設置されるコーティング層とを含むセパレータであって、前記コーティング層は、請求項1から10のいずれか1項に記載の接着剤組成物を含む、セパレータ。
【請求項12】
二次電池であって、請求項1から10のいずれか1項に記載の接着剤組成物、及び/又は請求項11に記載のセパレータを含む、二次電池。
【請求項13】
電池モジュールであって、請求項12に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項14】
電池パックであって、請求項13に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項15】
電力消費装置であって、請求項12に記載の二次電池、請求項13に記載の電池モジュール及び請求項14に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、リチウム電池の技術分野に関し、特に接着剤組成物及びそれを含むセパレータに関する。本出願は、さらに、二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二次電池の応用範囲がますます広がるにつれて、二次電池は、水力発電所、火力発電所、風力発電所、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く用いられる。二次電池の目覚ましい発展により、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対する要求がますます高まっている。二次電池のセパレータでは、接着剤を使用することが多いが、従来の接着剤は、粘性が悪く、基材の孔の目詰まりを起こしやすい問題が存在し、セパレータの空隙率が低くなり、セパレータ内のイオンの流動性が悪くなり、セパレータ内の抵抗が高まり、二次電池のサイクル性能に影響を与える。
【発明の概要】
【0003】
上記目的を達成するために、本出願は、接着剤組成物、及び、この組成物を含むセパレータ、二次電池、電池パック並びに電力消費装置を提供する。
【0004】
本出願の第一の態様は、接着剤組成物を提供し、ポリマーとセラミック粒子とを含み、前記ポリマーは、第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーに由来する構造単位を含み、且つ前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-58:40-44:2-6であり、
前記第一類のモノマーは、式Iの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化1】
ここで、R
1は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、R
2は、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-15アルキル基、C3-6シクロアルキル基及びイソボルニル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基とC1-6鎖状アルキル基から選択され、
前記第二類のモノマーは、式IIの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化2】
ここで、R
3は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、
前記第三類のモノマーは、式IIIの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化3】
ここで、R
4は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、R
5は、水素原子、ヒドロキシC1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基から選択される。本出願の接着剤組成物は、接着効果がよいとともに、セパレータの空隙率を向上させ、イオン電導率を改善し、セパレータの内部抵抗を低減させ、二次電池のサイクル性能を高めることができる。
【0005】
いずれかの実施の形態では、R1は、水素原子とメチル基から選択され、且つR2は、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基であり、及び/又はR3は、水素原子とメチル基から選択され、及び/又はR4は、水素原子とメチル基から選択され、且つR5は、水素原子、ヒドロキシC1-4アルキル基及びC1-4アルコキシ基から選択される。
【0006】
いずれかの実施の形態では、前記第一類のモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルから選択される一つ又は複数であり、及び/又は前記第二類のモノマーは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルであり、及び/又は前記第三類のモノマーは、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-ブトキシメタクリルアミドの一つ又は複数から選択される。
【0007】
それぞれ上記第一類、第二類及び/又は第三類のモノマーをさらに選択することで、セパレータのイオン電導率を改善するのに有利であり、電池のサイクル容量保持率を向上させる。
【0008】
いずれかの実施の形態では、前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-57:41-44:2-6である。上記範囲のモル比を採用し、接着剤組成物がさらにセパレータのイオン電導率を改善するのにより有利であり、電池のサイクル容量保持率を向上させる。
【0009】
いずれかの実施の形態では、前記ポリマーと前記セラミック粒子との重量比は、40-90:10-60であり、選択的に50-80:20-50である。前記ポリマーとセラミック粒子との重量比は、上記範囲内にあり、接着剤とセパレータ、極板との接着効果を保証できるとともに、セパレータが適切な空隙率と良好なイオン電導率を有することができる。
【0010】
いずれかの実施の形態では、前記ポリマーの重量平均分子量は、60000-120000であり、選択的に63300-118800である。ポリマーの重量平均分子量は、上記範囲内にあり、本出願の接着剤組成物が接着を行う時、ポリマーが適切な流動性を有することができ、それによって良好な接着効果を実現し、さらに二次電池のサイクル性能を改善する。
【0011】
いずれかの実施の形態では、前記セラミック粒子の平均粒径Dv50は、40nm-110nmであり、選択的に45nm-106nmであり、さらに選択的に50nm-100nmであり、またさらに選択的に56nm-89nmである。さらにセラミック粒子の平均粒径を制御し、さらにイオン電導率と容量保持率を改善できる。
【0012】
いずれかの実施の形態では、前記セラミック粒子は、多孔質粒子であり、且つ前記多孔質粒子の平均孔径は、0.3nm-6.0nmであり、選択的に0.5nm-5.7nmであり、さらに選択的に1.0nm-5.0nmであり、またさらに選択的に1.3nm-3.8nmである。多孔質粒子材料を選択し且つその平均孔径を制御し、セパレータの熱安定性を確保するとともに、さらにセパレータの空隙率とイオン電導率、及び二次電池のサイクル容量保持率を改善するのに有利である。
【0013】
いずれかの実施の形態では、前記セラミック粒子は、多孔質二酸化ケイ素粒子である。多孔質二酸化ケイ素粒子を用いることで、さらにセパレータの空隙率とイオン電導率を向上させ、セパレータの内部抵抗を低下させ、二次電池のサイクル性能を高める。
【0014】
いずれかの実施の形態では、前記ポリマーは、前記セラミック粒子を被覆する。このように接着剤組成物が理想的な配合比率で基材に均一に塗布され、それによって耐熱性能、空隙率を改善し、良好な接着効果を実現するのに有利である。
【0015】
本出願の第二の態様は、ベース層と、前記ベース層の少なくとも一つの表面に設置されるコーティング層とを含むセパレータを提供し、前記コーティング層は、本出願の第一の態様の接着剤組成物を含む。本出願のセパレータは、極板と安定して接着でき、向上した空隙率を有し、イオン電導率を改善し、セパレータの内部抵抗を低減させ、二次電池のサイクル性能を高める。
【0016】
本出願の第三の態様は、二次電池を提供し、この二次電池は、本出願の第一の態様による接着剤組成物、及び/又は本出願の第二の態様によるセパレータを含む。
【0017】
本出願の第四の態様は、電池モジュールを提供し、この電池モジュールは、本出願の第三の態様の二次電池を含む。
【0018】
本出願の第五の態様は、電池パックを提供し、この電池パックは、本出願の第四の態様の電池モジュールを含む。
【0019】
本出願の第六の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、本出願の第三の態様の二次電池、本出願の第四の態様の電池モジュール又は本出願の第五の態様の電池パックから選択される少なくとも一つを含む。
【0020】
本出願の接着剤は、良好な接着性能を有し、さらにセパレータの空隙率を向上させ、セパレータの内部抵抗を低減させ、二次電池のサイクル性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本出願の一実施形態の二次電池の概略図である。
【
図2】
図1に示す本出願の一実施形態の二次電池の分解図である。
【
図3】本出願の一実施形態の電池モジュールの概略図である。
【
図4】本出願の一実施形態の電池パックの概略図である。
【
図5】
図4に示す本出願の一実施形態の電池パックの分解図である。
【
図6】本出願の一実施形態の二次電池が電源として使用される電力消費装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を適切に参照しながら、本出願の接着剤組成物、セパレータ、二次電池、電池モジュール、電池パックと電力消費装置を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。しかしながら、必要のない詳細な説明を省略する場合がある。例えば、周知の事項に対する詳細な説明、実際に同じである構造に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に長くなることを回避し、当業者に容易に理解させるためである。なお、図面及び以下の説明は、当業者に本出願を十分に理解させるために提供するものであり、特許請求の範囲に記載されたテーマを限定するものではない。
【0023】
本出願に開示された「範囲」は、下限と上限の形式で限定され、与えられた範囲は、一つの下限と一つの上限を選定することで限定されるものであり、選定された下限と上限は、特定の範囲の境界を限定する。このように限定される範囲は、端値を含むか又は含まないものであってもよく、且つ任意の組み合わせが可能であり、即ち任意の下限は、任意の上限と組み合わせて、一つの範囲を形成することができる。例えば、特定のパラメータに対して60-120と80-110の範囲がリストアップされている場合、60-110と80-120の範囲も想定できると理解される。なお、最小範囲値として1と2がリストアップされており、最大範囲値として3、4及び5がリストアップされている場合1-3、1-4、1-5、2-3、2-4と2-5という範囲がすべて想定できる。本出願では、特に断りのない限り、「a-b」という数値範囲は、a-bの任意の実数の組み合わせの短縮表現を表し、ここで、aとbはいずれも実数である。例えば、数値範囲「0-5」は、本明細書においてすでに「0-5」の間のすべての実数をリストアップしたことを表し、「0-5」は、これらの数値の組み合わせの短縮表現だけである。また、あるパラメータが≧2の整数であると表現すると、このパラメータが例えば整数2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12などであることを開示していることに相当する。
【0024】
特に説明しない場合、本出願のすべての実施の形態及び選択的な実施の形態は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0025】
特に説明しない場合、本出願のすべての技術的特徴及び選択的な技術的特徴は、互いに組み合わせて新たな技術案を形成することができる。
【0026】
特に説明しない場合、本出願のすべてのステップは、順番に行われてもよく、ランダムに行われてもよく、好ましくは、順番に行われる。例えば、前記方法がステップ(a)と(b)とを含むことは、前記方法が、順番に行われるステップ(a)と(b)とを含んでもよく、順番に行われるステップ(b)と(a)とを含んでもよいことを表す。例えば、以上に言及された前記方法がステップ(c)をさらに含んでもよいことは、ステップ(c)が任意の順序で前記方法に追加されてもよいことを表し、例えば前記方法は、ステップ(a)、(b)及び(c)を含んでもよく、ステップ(a)、(c)及び(b)を含んでもよく、ステップ(c)、(a)及び(b)などを含んでもよい。
【0027】
特に説明しない場合、本出願に言及された「含む」と「包含する」は、開放型を表し、閉鎖型であってもよい。例えば、前記「含む」と「包含する」は、リストアップされていない他の成分をさらに含むか又は包含してもよく、リストアップされている成分のみを含むか又は包含してもよいことを表してもよい。
【0028】
特に説明しない場合、本出願では、「又は」という用語は包含的である。例を挙げると、「A又はB」というフレーズは、「A、B、又はAとBとの両方」を表す。より具体的には、Aが真であり(又は存在し)且つBが偽である(又は存在しない)条件と、Aが偽である(又は存在しない)が、Bが真である(又は存在する)条件と、AとBがいずれも真である(又は存在する)条件とのいずれも「A又はB」を満たしている。
【0029】
近年、二次電池の応用範囲がますます広がるにつれて、二次電池は、水力発電所、火力発電所、風力発電所、太陽光発電所などのエネルギー貯蔵電源システム、及び電動工具、電動自転車、電動バイク、電気自動車、軍事装備、航空宇宙などの複数の分野に広く用いられる。二次電池の目覚ましい発展により、そのエネルギー密度、サイクル性能と安全性能などに対する要求がますます高まっている。二次電池の重要な部分として--セパレータは、自然に、技術者が注目する重点のうちの一つになっている。従来の技術では、セパレータ基材にセラミック粒子(例えば、無機酸化物粒子、例えば二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、ベーマイトなど)をコーティングする方式を採用して、セパレータの耐熱性、耐突き刺し性などを改善することが多く、そしてセラミック粒子がコーティングされたセパレータに接着剤を塗布し、且つそれを極板と接着し、さらに二次電池を製造する。しかしながらこのような方式は、その欠点があり、まず、セラミック粒子は、基材の細孔に入り込みやすく、セパレータの空隙率を低減させ、イオンの移動に有利ではなく、そして、従来の接着剤の接着効果が弱い。
【0030】
上記問題を解決するために、本出願は、接着剤組成物を提案し、それは、接着作用を果たすポリマーと、安全性能を改善するセラミック粒子とを含み、孔の目詰まり現象の発生を低減ひいては回避し、良好な接着効果を実現する。なお、本出願の接着剤組成物におけるポリマーは、そのモノマーの選択と比率の制御により、イオン電導率を改善するのに有利である。以上をまとめると、本出願の接着剤組成物は、セパレータの空隙率を向上させ、イオン電導率を向上させ、二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0031】
<接着剤>
本出願の一つの実施の形態では、本出願は、接着剤組成物を提案し、それは、ポリマーとセラミック粒子とを含み、前記ポリマーは、第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーに由来する構造単位を含み、且つ前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-58:40-44:2-6であり、
前記第一類のモノマーは、式Iの化合物から選択された一つ又は複数であり、
【化4】
ここで、R
1は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、R
2は、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-15アルキル基、C3-6シクロアルキル基及びイソボルニル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基とC1-6鎖状アルキル基から選択され、
前記第二類のモノマーは、式IIの化合物から選択された一つ又は複数であり、
【化5】
ここで、R
3は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、
前記第三類のモノマーは、式IIIの化合物から選択された一つ又は複数であり、
【化6】
ここで、R
4は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、R
5は、水素原子、ヒドロキシC1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基から選択される。
【0032】
本出願の接着剤組成物は、接着効果が良好であるとともに、セパレータの空隙率を向上させ、イオン電導率を改善し、セパレータの内部抵抗を低下させ、二次電池のサイクル性能を高めることができる。
【0033】
本出願のポリマーでは、第一類のモノマーは、アクリレート系モノマーであり、それは、接着剤の抗膨潤能力を改善できるとともに、分子鎖セグメントにおける柔軟なモノマー鎖セグメントとして、ポリマーのガラス化転移温度を調節でき、それによって接着剤組成物が良好な接着作用を発揮するのに有利である。第二類のモノマーは、アクリロニトリル系モノマーであり、それは、強い極性のシアノ基を有し、イオン電導率を向上させるのに有利である。第三類のモノマーは、アクリルアミド系モノマーであり、そのうちのアミド基の主な作用は、架橋作用を果たし、ポリマーの分子量を調節するのに有利であることである。上記三種類のモノマーのモル比を一定範囲内に制御することにより、ポリマーが理想的な分子量とガラス化転移温度を有し、それによって、接着剤の接着性能を保証するとともに、イオン電導率を改善するのに有利である。
【0034】
いくつかの実施の形態では、R1は、水素原子とメチル基から選択され、且つR2は、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基である。いくつかの実施の形態では、R3は、水素原子とメチル基から選択される。いくつかの実施の形態では、R4は、水素原子とメチル基から選択され、且つR5は、水素原子、ヒドロキシC1-4アルキル基及びC1-4アルコキシ基から選択される。
【0035】
いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルから選択される一つ又は複数である。いくつかの実施の形態では、前記第二類のモノマーは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルである。いくつかの実施の形態では、前記第三類のモノマーは、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-ブトキシメタクリルアミドの一つ又は複数から選択される。
【0036】
上記第一類、第二類及び/又は第三類のモノマーからそれぞれさらに選択されることにより、セパレータのイオン電導率を改善するのに有利であり、電池のサイクル容量保持率を向上させることができる。
【0037】
いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-57:41-44:2-6である。上記範囲のモル比を採用することにより、接着剤組成物がさらにセパレータのイオン電導率を改善するのにより有利であり、電池のサイクル容量保持率を向上させることができる。
【0038】
いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーの総モル量を基準として、前記第一類のモノマーのモル百分率含有量は、50-58mol%であり、選択的に50-57mol%であり、選択的に、前記第一類のモノマーのモル百分率含有量は、50mol%、51mol%、52mol%、53mol%、54mol%、55mol%、56mol%、57mol%又は58mol%であり、又は上記数値のうちのいずれか2つからなる範囲内である。いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーの総モル量を基準として、前記第二類のモノマーのモル百分率含有量は、40-44mol%であり、選択的に41-44mol%であり、選択的に、前記第二類のモノマーのモル百分率含有量は、40mol%、41mol%、42mol%、43mol%又は44mol%であり、又は上記数値のうちのいずれか2つからなる範囲内にある。いくつかの実施の形態では、前記第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーの総モル量を基準として、前記第三類のモノマーのモル百分率含有量は、2-6mol%であり、選択的に、前記第三類のモノマーのモル百分率含有量は、2mol%、3mol%、4mol%、5mol%又は6mol%であり、又は上記数値のうちのいずれか2つからなる範囲内にある。
【0039】
いくつかの実施の形態では、前記ポリマーと前記セラミック粒子との重量比は、40-90:10-60であり、選択的に50-80:20-50である。ポリマーとセラミック粒子との重量比は、上記範囲内にあり、接着剤とセパレータ、極板との接着効果をさらに保証できるとともに、セパレータが適切な空隙率と良好なイオン電導率を有することができる。
【0040】
いくつかの実施の形態では、前記ポリマーの重量平均分子量は、60000-120000であり、選択的に63300-118800である。ポリマーの重量平均分子量が上記範囲内にあり、本出願の接着剤組成物が接着を行う時、ポリマーが適切な流動性を有することができ、それによって良好な接着効果を実現し、さらに二次電池のサイクル性能を改善することができる。
【0041】
いくつかの実施の形態では、前記セラミック粒子の平均粒径Dv50は、40nm-110nmであり、選択的に45nm-106nmであり、選択的に、前記セラミック粒子の平均粒径Dv50は、40nm、45nm、50nm、56nm、70nm、89nm、100nm、106nm又は110nmであり、又はこれらの数値のうちのいずれか2つからなる範囲内にある。選択的に、前記セラミック粒子の平均粒径Dv50は、50nm-100nmであり、さらに選択的に56nm-89nmである。さらにセラミック粒子の平均粒径を制御することにより、さらにイオン電導率と容量保持率を改善できる。
【0042】
本出願ではセラミック粒子の材料は、適用可能な任意の当分野の従来の材料であってもよい。いくつかの実施の形態では、前記セラミック粒子は、酸化アルミニウム、ベーマイト、二酸化チタン及び二酸化ケイ素から選択される。
【0043】
いくつかの実施の形態では、前記セラミック粒子は、多孔質粒子又は中実粒子(即ち、非多孔質粒子)であってもよい。いくつかの実施の形態では、前記セラミック粒子は、多孔質粒子である。前記多孔質粒子の平均孔径は、0.3nm-6.0nmであり、選択的に、前記平均孔径は、0.5nm、1nm、1.3nm、3nm、3.8nm、5nm又は5.7nmであり、又はこれらの数値のうちのいずれか2つからなる範囲内にある。選択的に、前記平均孔径は、0.5nm-5.7nmであり、さらに選択的に1.0nm-5.0nmであり、またさらに選択的に1.3nm-3.8nmである。さらに多孔質粒子材料を選択するとともに、好ましくその平均孔径を制御することにより、セパレータの熱安定性を確保するとともに、セパレータの空隙率とイオン電導率、及び二次電池のサイクル容量保持率を改善するのに有利である。
【0044】
いくつかの実施の形態では、前記セラミック粒子は、多孔質二酸化ケイ素粒子である。この多孔質二酸化ケイ素粒子を用いることで、さらにセパレータの空隙率とイオン電導率を向上させ、セパレータの内部抵抗を低下させ、二次電池のサイクル性能を高めることができる。
【0045】
いくつかの実施の形態では、前記ポリマーは、前記セラミック粒子を被覆する。施用前に、ポリマーをセラミック粒子に被覆し、それによって粒子がセパレータ細孔に落ちて細孔が閉塞するのを減少又は回避するとともに、ポリマーとセラミック粒子が理想的な配合比率で基材に均一に塗布され、それによって耐熱性能、空隙率を改善し、良好な接着効果を実現することができる。いくつかの実施の形態では、前記ポリマーは、前記多孔質二酸化ケイ素粒子を被覆する。
【0046】
<セパレータ>
本出願の他の態様は、ベース層と、前記ベース層の少なくとも一つの表面に設置されるコーティング層とを含むセパレータを提供し、前記コーティング層は、本出願の接着剤を含む。
【0047】
本出願は、セパレータベース層の材料種類に対して特に限定しないが、良好な化学的安定性と機械的安定性を有する任意の公知の多孔質構造のベース層を選択してもよい。
【0048】
いくつかの実施の形態では、セパレータベース層の材質は、ガラス繊維、不織布、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリフッ化ビニリデンのうちのから選ばれた少なくとも一つであってもよい。セパレータは、単層フィルムであってもよく、多層複合フィルムであってもよく、特に限定されない。セパレータが多層複合フィルムである時、各層の材料は同一であっても異なっていてもよく、特に限定されない。
【0049】
<二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置>
本出願の第三の態様は、二次電池を提供し、この二次電池は、本出願の接着剤、及び/又は本出願のセパレータを含む。
【0050】
本出願の第四の態様は、電池モジュールを提供し、この電池モジュールは、上記第三の態様の二次電池を含む。
【0051】
本出願の第五の態様は、電池パックを提供し、この電池パックは、上記第四の態様の電池モジュールを含む。
【0052】
本出願の第六の態様は、電力消費装置を提供し、この電力消費装置は、上記第三の態様の二次電池、第四の態様の電池モジュール及び第五の態様の電池パックから選択される少なくとも一つを含む。
【0053】
また、以下、図面を適切に参照して本出願の二次電池、電池モジュール、電池パック及び電力消費装置を説明する。
【0054】
本出願の一つの実施の形態では、二次電池を提供する。いくつかの実施の形態では、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池である。
【0055】
一般的には、二次電池は、正極極板と、負極極板と、電解質と、セパレータとを含む。電池の充放電中においては、活性イオンは、正極極板と負極極板との間で往復して吸蔵及び離脱される。電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。セパレータは、正極極板と負極極板との間に設置され、主に正負極短絡を防止する作用を果たすとともに、イオンを通過させることができる。
【0056】
[正極極板]
正極極板は、正極集電体と、正極集電体の少なくとも一つの表面に設置される正極膜層とを含み、前記正極膜層は、正極活物質を含む。
【0057】
例として、正極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、正極膜層は、正極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方に設置される。
【0058】
いくつかの実施の形態では、前記正極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、アルミニウム箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と、高分子材料ベース層の少なくとも一つの表面上に形成される金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0059】
いくつかの実施の形態では、正極活物質は、当分野において公知の電池用の正極活物質を採用してもよい。例として、正極活物質は、オリビン構造のリチウム含有リン酸塩、リチウム遷移金属酸化物及びそれぞれの改質化合物、ナトリウム遷移金属酸化物、ポリアニオン型化合物とプルシアンブルー系化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限定されるものではなく、電池用正極活物質として使用できる他の従来材料を使用してもよい。これらの正極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、リチウム遷移金属酸化物の例は、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO2)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMnO2、LiMn2O4)、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムマンガンコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2(NCM333と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2(NCM523と略称されてもよい)、LiNi0.5Co0.25Mn0.25O2(NCM211と略称されてもよい)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622と略称されてもよい)、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811と略称されてもよい))、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えばLiNi0.85Co0.15Al0.05O2)及びその改質化合物などのうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。オリビン構造のリチウム含有リン酸塩の例は、リン酸鉄リチウム(例えばLiFePO4(LFPと略称されてもよい))、リン酸鉄リチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガンリチウム(例えばLiMnPO4)、リン酸マンガンリチウムと炭素との複合材料、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムと炭素との複合材料のうちの少なくとも一つを含んでもよいが、それらに限らない。
【0060】
いくつかの実施の形態では、ナトリウム遷移金属酸化物において、遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよい。ナトリウム遷移金属酸化物は、例えばNaxMyO2であり、ここで、Mは、Ti、V、Mn、Co、Ni、Fe、Cr及びCuのうちの一つ又は複数であり、0<x≦1、0.5<y≦1.5である。いくつかの実施の形態では、正極活物質は、Na0.88Cu0.24Fe0.29Mn0.47O2を採用してもよい。
【0061】
いくつかの実施の形態では、ポリアニオン型化合物は、ナトリウムイオン、遷移金属イオン及び四面体型(YO4)n-アニオン単位を有する一種類の化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよく、Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも一つであってもよく、nは、(YO4)n-の価数を表す。
【0062】
いくつかの実施の形態では、ポリアニオン型化合物は、ナトリウムイオン、遷移金属イオン、四面体型(YO4)n-アニオン単位及びハロゲンアニオンを有する一種類の化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよく、Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも一つであってもよく、nは、(YO4)n-の価数を表し、ハロゲンは、F、Cl及びBrのうちの少なくとも一つであってもよい。
【0063】
いくつかの実施の形態では、ポリアニオン型化合物は、ナトリウムイオン、四面体型(YO4)n-アニオン単位、多面体単位(ZOy)m+及び選択的なハロゲンアニオンを有する一種類の化合物であってもよい。Yは、P、S及びSiのうちの少なくとも一つであってもよく、nは、(YO4)n-の価数を表し、Zは、遷移金属を表し、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよく、mは、(ZOy)m+の価数を表し、ハロゲンは、F、Cl及びBrのうちの少なくとも一つであってもよい。
【0064】
いくつかの実施の形態では、ポリアニオン型化合物は、例えばNaFePO4、Na3V2(PO4)3、NaM’PO4F(M’は、V、Fe、Mn及びNiのうちの一つ又は複数である)及びNa3(VOy)2(PO4)2F3-2y(0≦y≦1)のうちの少なくとも一つである。
【0065】
いくつかの実施の形態では、プルシアンブルー系化合物は、ナトリウムイオン、遷移金属イオン及びシアン化物イオン(CN-)を有する一種類の化合物であってもよい。遷移金属は、Mn、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Ti、Zn、V、Zr及びCeのうちの少なくとも一つであってもよい。プルシアンブルー系化合物は、例えばNaaMebMe’c(CN)6であり、ここで、Me及びMe’は、それぞれ独立してNi、Cu、Fe、Mn、Co及びZnのうちの少なくとも一つであり、0<a≦2、0<b<1、0<c<1である。
【0066】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、さらに選択的に接着剤を含む。例として、前記接着剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン-プロピレン三元共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン三元共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体及びフッ素含有アクリレート樹脂のうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0067】
いくつかの実施の形態では、正極膜層は、さらに選択的に導電剤を含む。例として、前記導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーのうちの少なくとも一つを含んでもよい。
【0068】
いくつかの実施の形態では、以下の方式により正極極板を製造してもよい:上記正極極板を製造するための成分、例えば正極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えばN-メチルピロリドン)に分散させ、正極スラリーを形成し、正極スラリーを正極集電体上にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、正極極板を得ることができる。
【0069】
[負極極板]
負極極板は、負極集電体と、負極集電体の少なくとも一つの表面上に設置される負極膜層とを含み、前記負極膜層は、負極活物質を含む。
【0070】
例として、負極集電体は、それ自体の厚さ方向において対向する二つの表面を有し、負極膜層は、負極集電体の対向する二つの表面のうちのいずれか一方又は両方の上に設置される。
【0071】
いくつかの実施の形態では、前記負極集電体は、金属箔シート又は複合集電体を採用してもよい。例えば、金属箔シートとして、銅箔を採用してもよい。複合集電体は、高分子材料ベース層と、高分子材料基材の少なくとも一つの表面上に形成される金属層とを含んでもよい。複合集電体は、金属材料(銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、チタン、チタン合金、銀及び銀合金など)を高分子材料基材(例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)などの基材)上に形成することで形成されてもよい。
【0072】
いくつかの実施の形態では、負極活物質は、当分野において公知の電池用の負極活物質を採用してもよい。例として、負極活物質は、人造黒鉛、天然黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、シリコーン系材料、スズ系材料とチタン酸リチウムなどを含んでもよい。前記シリコーン系材料は、シリコーンモノマー、シリコーン酸化物、シリコーン炭素複合体、シリコーン窒素複合体及びシリコーン合金から選ばれた少なくとも一つであってもよい。前記スズ系材料は、スズモノマー、スズ酸化物及びスズ合金から選ばれた少なくとも一つであってもよい。しかし、本出願は、これらの材料に限定されるものではなく、電池用負極活物質として使用できる他の従来材料を使用してもよい。これらの負極活物質は、単独で一つのみを使用してもよく、二つ以上を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に接着剤を含む。前記接着剤は、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸ナトリウム(PAAS)、ポリアクリルアミド(PAM)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸ナトリウム(SA)、ポリメタクリル酸(PMAA)及びカルボキシメチルキトサン(CMCS)から選ばれた少なくとも一つであってもよい。
【0074】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に導電剤を含む。導電剤は、超伝導カーボン、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンドット、カーボンナノチューブ、グラフェン及びカーボンナノファイバーから選ばれた少なくとも一つであってもよい。
【0075】
いくつかの実施の形態では、負極膜層は、さらに選択的に他の助剤、例えば増粘剤(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na))などを含む。
【0076】
いくつかの実施の形態では、以下の方式により負極極板を製造してもよい:上記負極極板を製造するための成分、例えば負極活物質、導電剤、接着剤と任意の他の成分を溶媒(例えば脱イオン水)に分散させ、負極スラリーを形成し、負極スラリーを負極集電体上にコーティングし、乾燥、冷間プレスなどの工程を経た後、負極極板を得ることができる。
【0077】
[電解質]
電解質は、正極極板と負極極板との間でイオンを伝導する作用を果たす。本出願は、電解質の種類に対して具体的に限定せず、需要に応じて選択することができる。例えば、電解質は、液体、ゲル状又は全固体であってもよい。
【0078】
いくつかの実施の形態では、前記電解質として、電解液を採用する。前記電解液は、電解質塩と溶媒とを含む。
【0079】
いくつかの実施の形態では、電解質塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、テトラフルオロホウ酸リチウム、過塩素酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ジフルオロリン酸リチウム、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、ビス(オキサラト)ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、ヘキサフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、NaN(SO2F)2(NaFSIと略称)、NaClO4、NaAsF6、NaB(C2O4)2(NaBOBと略称)、NaBF2(C2O4)(NaDFOBと略称)、NaN(SO2RF)2及びNaN(SO2F)(SO2RF)から選ばれた一つ又は複数であってもよく、ここで、RFは、CbF2b+1を表し、bは、1-10範囲内の整数であり、選択的に1-3範囲内の整数であり、さらに選択的に、RFは、-CF3、-C2F5又は-CF2CF2CF3である。
【0080】
いくつかの実施の形態では、溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、1,4-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン及びジエチルスルホンから選ばれた少なくとも一つであってもよい。
【0081】
いくつかの実施の形態では、前記電解液は、さらに選択的に添加剤を含む。例えば、添加剤は、負極膜形成添加剤、正極膜形成添加剤を含んでもよく、さらに、電池のいくつかの性能を改善できる添加剤、例えば電池の過充電性能を改善する添加剤、電池の高温又は低温性能を改善する添加剤などを含んでもよい。
【0082】
いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに製造されることができる。
【0083】
[外装体]
いくつかの実施の形態では、二次電池は、正極極板、負極極板と電解質をパッケージングするための外装体を含んでもよい。一例として、正極極板、負極極板とセパレータは、積層又は捲回によって積層構造電池コア又は捲回構造電池コアを形成してもよく、電池コアは、外装体内にパッケージングされ、電解質は、本出願の第一の態様に記載の電解液を採用し、電解液は、電池コアに浸潤される。二次電池における電池コアの数は、一つ又は複数であってもよく、需要に応じて調節することができる。
【0084】
一つの実施の形態では、本出願は、電極アセンブリを提供する。いくつかの実施の形態では、正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリに製造されることができる。外装体は、上記電極アセンブリ及び電解質をパッケージングするために用いられてもよい。
【0085】
いくつかの実施の形態では、二次電池の外装体は、パウチ、例えば袋状パウチであってもよい。パウチの材質は、プラスチックであってもよく、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリブチレンサクシネート(PBS)などのうちの一つ又は複数を含んでもよい。いくつかの実施の形態では、二次電池の外装体は、硬質ケース、例えば硬質プラスチックケース、アルミニウムケース、鋼製ケースなどであってもよい。
【0086】
本出願は、二次電池の形状に対して特に限定せず、それは、円筒型、四角形又は他の任意の形状であってもよい。例えば、
図1は、一例としての四角形構造の二次電池5である。
【0087】
いくつかの実施の形態では、
図2を参照すると、外装体は、ケース51とカバープレート53とを含んでもよい。ここで、ケース51は、底板と底板に接続される側板を含んでもよく、底板と側板は囲んで収容キャビティを形成する。ケース51は、収容キャビティと連通する開口を有し、カバープレート53は、前記収容キャビティを密閉するように前記開口に蓋設されることが可能である。正極極板、負極極板とセパレータは、捲回プロセス又は積層プロセスによって電極アセンブリ52を形成することができる。電極アセンブリ52は、前記収容キャビティ内にパッケージングされる。電解液は、電極アセンブリ52に浸潤される。二次電池5に含まれる電極アセンブリ52の数は、一つ又は複数であってもよく、当業者は、実際の需要に応じて選択することができる。
【0088】
いくつかの実施の形態では、二次電池は、電池モジュールに組み立てられることが可能であり、電池モジュールに含まれる二次電池の数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池モジュールの用途と容量に応じて選択することができる。
【0089】
図3は、一例としての電池モジュール4である。
図3を参照すると、電池モジュール4において、複数の二次電池5は、電池モジュール4の長手方向に沿って順に並べて設置されてもよい。無論、他の任意の方式で並べてもよい。さらに締結具によってこれらの複数の二次電池5を固定することができる。
【0090】
選択的に、電池モジュール4は、収容空間を有するハウジングをさらに含んでもよく、複数の二次電池5は、この収容空間に収容される。
【0091】
いくつかの実施の形態では、上記電池モジュールは、さらに電池パックに組み立てられてもよく、電池パックに含まれる電池モジュールの数は、一つ又は複数であってもよく、具体的な数は、当業者が電池パックの用途と容量に応じて選択することができる。
【0092】
図4と
図5は、一例としての電池パック1である。
図4と
図5を参照すると、電池パック1には、電池ボックスと電池ボックスに設置される複数の電池モジュール4が含まれてもよい。電池ボックスは、上部筐体2と下部筐体3とを含み、上部筐体2は、下部筐体3に蓋設され、電池モジュール4を収容するための密閉空間を形成することができる。複数の電池モジュール4は、任意の方式で電池ボックスに並べられてもよい。
【0093】
また、本出願は、電力消費装置をさらに提供し、前記電力消費装置は、本出願による二次電池、電池モジュール、又は電池パックのうちの少なくとも一つを含む。前記二次電池、電池モジュール、又は電池パックは、前記電力消費装置の電源として用いられてもよく、前記電力消費装置のエネルギー貯蔵ユニットとして用いられてもよい。前記電力消費装置は、移動体機器(例えば携帯電話、ノートパソコンなど)、電動車両(例えば純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、電動自転車、電動スクータ、電動ゴルフカート、電動トラックなど)、電気列車、船舶及び衛星、エネルギー貯蔵システムなどを含んでもよいが、これに限らない。
【0094】
前記電力消費装置は、その使用需要に応じて二次電池、電池モジュール又は電池パックを選択することができる。
【0095】
図6は、一例としての電力消費装置である。この電力消費装置は、純電気自動車、ハイブリッド電気自動車、又はプラグインハイブリッド電気自動車などである。この電力消費装置の二次電池の高パワーと高エネルギー密度に対する需要を満たすために、電池パック又は電池モジュールを採用することができる。
【0096】
別の例としての装置は、携帯電話、タブレットパソコン、ノートパソコンなどであってもよい。この装置は、一般的には薄型化が要求され、二次電池を電源として採用することができる。
【実施例】
【0097】
以下、本出願の実施例を説明する。以下に記述される実施例は、例示的なものであり、本出願を解釈するためのものに過ぎず、本出願に対する制限と理解されるべきではない。実施例では特定の技術又は条件が明記されていない場合、当分野内の文献に記述された技術又は条件に従って、又は製品仕様書に従って行う。使用される試薬又は器具は、メーカーが明記されておらず、いずれも市販で入手できる通常の製品である。
【0098】
1.ポリマーの製造
<製造例1>
室温で、モル比50:44:6に従って、アクリル酸メチル60.92g、アクリロニトリル33.04g及びアクリルアミド6.04gを秤量し、メカニカルスターラー、温度計及び凝縮パイプが入れられた500mLの四つ口フラスコに加え、そして3gのラウリル硫酸ナトリウム乳化剤、1gの過硫酸アンモニウム開始剤及び120gの脱イオン水を加え、1600rpmの回転数で30min攪拌して乳化させ、そして窒素ガス保護下で75℃まで昇温して4h反応させ、pH値を6~8に調節し、即座に40℃以下まで降温して排出し、ポリマー1を得た。
【0099】
<製造例2~5>
製造例2~5の製造ステップは、製造例1と同じであるが、相違点は、三種類のモノマーのモル比がそれぞれ51:43:6、52:42:6、53:41:6及び54:40:6であり、且つ三種類のモノマーの合計質量が100gであり、製造してポリマー2~5を得ることである。
【0100】
<製造例6~10>
製造例6において、室温で、モル比51:44:5に従って、アクリル酸n-ブチル69.71g、アクリロニトリル24.90g及びN-メチロールアクリルアミド5.39gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー6を得た。
【0101】
製造例7~10では、上記三種類のモノマーのモル比は、それぞれ52:43:5、53:42:5、54:41:5、55:40:5であり、且つ三種類のモノマーの合計質量は、100gであり、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー7~10を得た。
【0102】
<製造例11~15>
製造例11において、室温で、モル比52:44:4に従って、メタクリル酸エチル68.42g、アクリロニトリル26.91g及びN-メチロールアクリルアミド4.66gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー11を得た。
【0103】
製造例12~15では、上記三種類のモノマーのモル比は、それぞれ53:43:4、54:42:4、55:41:4、56:40:4であり、且つ三種類のモノマーの合計質量は、100gであり、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー12~15を得た。
【0104】
<製造例16~20>
製造例16において、室温で、モル比53:44:3に従って、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル67.94g、メタクリロニトリル29.08g及びN-ブトキシメタクリルアミド2.99gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマー16を得た。
【0105】
製造例17~20では、上記三種類のモノマーのモル比は、それぞれ54:43:3、55:42:3、56:41:3、57:40:3であり、且つ三種類のモノマーの合計質量は、100gであり、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー17~20を得た。
【0106】
<製造例21~25>
製造例21において、室温で、モル比54:44:2に従って、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピル70.44g、メタクリロニトリル26.71g及びN-ブトキシメタクリルアミド2.85gを秤量し、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー21を得た。
【0107】
製造例22~25では、上記三種類のモノマーのモル比は、それぞれ55:43:2、56:42:2、57:41:2、58:40:2であり、且つ三種類のモノマーの合計質量は、100gであり、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー22~25を得た。
【0108】
<製造例26>
製造例26において、室温で、モル比52:42:6に従って、アクリル酸シクロヘキシル75.13g、アクリロニトリル20.88g、アクリルアミド4.00gを秤量し、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー26を得た。
【0109】
<製造例27>
製造例27において、室温で、モル比57:40:3に従って、メタクリル酸イソボルニル80.07g、メタクリロニトリル16.95g、N-ブトキシメタクリルアミド2.98gを秤量し、他の製造ステップは、製造例1と同じであり、ポリマー27を得た。
【0110】
<比較製造例1>
室温で、モル比60:32:8に従って、アクリル酸メチル69.50g、アクリロニトリル22.85g及びアクリルアミド7.65gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマーC1を得た。
【0111】
<比較製造例2>
室温で、モル比60:40に従って、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル74.42g及びメタクリロニトリル25.58gを秤量し、他のステップは、製造例1と同じであり、ポリマーC2を得た。
【0112】
Waters 1515ゲル浸透クロマトグラフを採用して、上記製造例と比較製造例で得られたポリマー1-27と比較ポリマー1-2の重量平均分子量を測定し、ここで、流動相は、N,N-ジメチルホルムアミド、標準サンプルは、分子量分布の狭い直鎖状ポリメタクリル酸メチルポリマーであり、溶媒の流速は、1.0ml/minである。
【0113】
表1は、上記製造例1-27と比較製造例1-2におけるモノマーとそのモル比、及び最終的に得られたポリマーの重量平均分子量を示す。
【0114】
【0115】
本出願では、以下の実施例におけるセラミック粒子は、いずれも市販で入手できる。レーザー粒度分析装置(脱イオン水を分散剤とする)を採用してセラミック粒子の平均粒径Dv50を測定し、ガス吸着-脱着等温線法を採用してセラミック粒子の平均孔径を測定した。平均粒径と平均孔径を下記表2に示す。
【0116】
<実施例1>
1.接着剤組成物の製造
ポリマーと多孔質二酸化ケイ素粒子との質量比75:25に従って、製造例1で得た750gのポリマー1に250gの多孔質二酸化ケイ素粒子と1kgの脱イオン水を加え、室温条件で1時間攪拌し、噴霧及び乾燥を経て、ポリマーが多孔質二酸化ケイ素粒子の表面を均一に被覆し、そしてボールミル粉砕し、本出願の接着剤組成物を得た。表2に示すように、上記採用した多孔質二酸化ケイ素粒子の平均粒径Dv50は、70nmであり、平均孔径は、2.5nmである。
【0117】
2.セパレータの製造
厚さが20μm、平均孔径が80nmである市販のPP-PE共重合体微細孔フィルム(卓高電子科技公司製、型番20)を基材として採用する。以上に製造した接着剤組成物をN-メチルピロリドン(NMP)において均一に攪拌混合し、スラリー(固形分が20%である)を得た。スラリーを基材の二つの表面上に均一に塗布し、有機溶媒を乾燥させて除去し、接着剤組成物の基材上の塗布密度が0.5g/m2である、セパレータを得た。
【0118】
3.正極極板の製造
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、リン酸鉄リチウム(LFP)、導電剤カーボンブラック、N-メチルピロリドン(NMP)を質量比1.2:58.38:0.42:40で、十分に均一に攪拌混合した後に正極スラリーを製造した。この正極スラリーを200g/m2の担持量で正極集電体アルミニウム箔の一つの表面上に均一にコーティングし、その後に、乾燥、冷間プレス、スリットを経て、正極極板を得た。
【0119】
4.負極極板の製造
人造黒鉛、導電剤アセチレンブラック、接着剤スチレンブタジエンゴム(SBR)、増粘剤カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC-Na)を質量比96.2:1.0:1.6:1.2で脱イオン水に加え、十分に均一に攪拌混合した後、負極スラリー(固形分が63%である)を製造した。この負極スラリーを98g/m2の担持量で負極集電体銅箔の一つの表面上にコーティングし、その後に、乾燥、冷間プレス、スリットを経て、負極極板を得た。
【0120】
5.電解液の製造
25℃の温度下で、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)を体積比1:1:1で混合して混合溶媒を得、そしてLiPF6を上記混合溶媒に溶解し、LiPF6の濃度が1mol/Lである電解液を得た。
【0121】
6.二次電池の製造
上記正極極板、セパレータ、負極極板を順番に積層して捲回し、予備プレス成形(このプロセスで、セパレータが極板と接着する)を行って電極アセンブリを得、電極アセンブリを外装体に入れ、上記で製造した電解液を加え、パッケージング、静置、化成、エージングなどの工程を得た後、二次電池を得た。
【0122】
<実施例2>
以下の表2に示すように、ポリマーと二酸化ケイ素との60:40の質量比に従って、製造例11で得た600gのポリマー11に400gの多孔質二酸化ケイ素粒子と1kgの脱イオン水を加え、室温条件で1時間攪拌し、噴霧及び乾燥を経て、ボールミル粉砕し、ポリマーが多孔質二酸化ケイ素粒子の表面に均一に被覆した、接着剤組成物を得た。上記多孔質二酸化ケイ素粒子の平均粒径は80nmであり、平均孔径は3.0nmである。他のステップは、実施例1と同じである。
【0123】
<実施例3~5>
ポリマーがそれぞれ製造例24で得たポリマー24、製造例26で得たポリマー26と製造例27で得たポリマー27であること以外、実施例3~5の他のステップは、実施例1と同じである。
【0124】
<実施例6~11>
多孔質二酸化ケイ素粒子の平均粒径をそれぞれ45nm、50nm、56nm、89nm、100nmと106nmに変更すること以外、実施例6~11の他のステップは、実施例1と同じである。
【0125】
<実施例12~17>
多孔質二酸化ケイ素粒子の平均孔径をそれぞれ0.5nm、1nm、1.3nm、3.8nm、5nm及び5.7nmに変更すること以外、実施例12~17の他のステップは、実施例2と同じである。
【0126】
<実施例18~21>
ポリマーと多孔質二酸化ケイ素粒子との質量比をそれぞれ40:60、50:50、75:25、80:20、90:10に変更すること以外、実施例18~21の他のステップは、実施例3と同じである。
【0127】
<実施例22~27>
多孔質二酸化ケイ素粒子を異なる粒径の中実(非多孔質)二酸化ケイ素粒子に変更すること以外、実施例22~27の他のステップは、実施例1と同じである。
【0128】
<比較例1~2>
ポリマーを製造例1のものから比較製造例1と比較製造例2のものに変更すること以外、比較例1~2の他のステップは、実施例1と同じである。
【0129】
<比較例3~4>
ポリマーを製造例11のものから比較製造例1と比較製造例2のものに変更すること以外、比較例3~4の他のステップは、実施例2と同じである。
【0130】
<比較例5>
ポリマーを製造例1のものから比較製造例C1のものに変更するとともに、粒子を多孔質粒子から平均粒径が同じ中実(非多孔質)粒子に変更すること以外、比較例5の他のステップは、実施例1と同じである。
【0131】
<テスト方法>
1.セパレータイオン電導率テスト
(1)テスト用の2025型番のボタン電池の製造:真空グローブボックスにおいて、電池用負極ハウジングにリチウムシートを入れ、150μLの上記電解液を加え、そして上記で製造したセパレータ(面積が3.14cm2で、厚さが12μmである)を入れてリチウムシートに密着させ、そして25μLの上記電解液を加え、最後にその上に上記正極極板を置き、パッケージングした。組み立てたボタン電池を真空グローブボックスから取り出し、次のテストを行うために24h静置した。
【0132】
(2)テスト:電気化学ワークステーションで、10
-1~10
6Hzの周波数範囲内においてテストを行い、セパレータの抵抗Rbを得、以下の式によりイオン電導率σ(単位:S・cm
-1)を計算した。
【数1】
ここで、Rbは、セパレータの本体抵抗であり、LとSは、それぞれテスト対象であるセパレータの厚さと面積である。
【0133】
2.電池サイクル性能/容量保持率テスト
実施例1を例とし、電池容量保持率テストプロセスは、以下のとおりである。25℃の条件下で、実施例1において製造して得られた電池を1/3Cの定電流で4.3Vまで充電し、そして4.3Vの定電圧で電流0.05Cまで充電し、5min放置し、1/3Cで2.8Vまで放電し、得られた放電容量を初期容量C0とした。上記と同一の電池に対して以上のステップを繰り返し、同時にn回目のサイクル終了後の電池の放電容量Cnを記録し、各サイクル後の電池容量保持率(Pn)は、Pn=Cn/C0*100%として計算した。即ち特定のサイクル回数での電池容量保持率を用いて、サイクル性能の差異を反映できる。
【0134】
表2において、実施例1に対応する電池容量保持率データは、上記テスト条件で100サイクル後にテストしたデータである。比較例及び他の実施例のテストプロセスは上記と同様である。
【0135】
以上のテスト結果を表2に示す。
【0136】
【0137】
以上の表2に示す各実施例から分かるように、本出願の接着剤組成物は、イオン電導率を改善し、二次電池のサイクル性能(例えば、容量保持率)を高める。実施例6~30と比較例1~5との比較から分かるように、ポリマーとセラミック粒子の含有量比率、及びセラミック粒子の粒径及び/又は平均孔径を制御することにより、得られたセパレータのイオン電導率が比較的高く、電池容量保持率が比較的良好であった。
【0138】
説明すべきこととして、本出願は、上記実施の形態に限らない。上記実施の形態は、例示であり、本出願の技術案の範囲内の技術的思想と実質的に同じ構成を有し、同じ作用効果を奏する実施の形態は、いずれも本出願の技術的範囲内に含まれる。なお、本出願の趣旨を逸脱しない範囲内で、実施の形態に対して当業者が想到し得る様々な変形を加え、実施の形態における一部の構成要素を組み合わせて構成された他の方式も、本出願の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0139】
1電池パック、2上部筐体、3下部筐体、4電池モジュール、5二次電池、51ケース、52電極アセンブリ、53カバープレート
【手続補正書】
【提出日】2023-11-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤組成物であって、ポリマーとセラミック粒子とを含み、前記ポリマーは、第一類のモノマー、第二類のモノマー及び第三類のモノマーに由来する構造単位を含み、且つ前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-58:40-44:2-6であり、
前記第一類のモノマーは、式Iの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化1】
ここで、R
1は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、R
2は、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-15アルキル基、C3-6シクロアルキル基及びイソボルニル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基とC1-6鎖状アルキル基から選択され、
前記第二類のモノマーは、式IIの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化2】
ここで、R
3は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、
前記第三類のモノマーは、式IIIの化合物から選択される一つ又は複数であり、
【化3】
ここで、R
4は、水素原子と直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択されるとともに、R
5は、水素原子、ヒドロキシC1-6アルキル基及びC1-6アルコキシ基から選択される、接着剤組成物。
【請求項2】
R
1は、水素原子とメチル基から選択され、且つR
2は、置換又は無置換の直鎖又は分岐鎖のC1-6アルキル基から選択され、置換の場合、置換基は、ヒドロキシル基であり、及び/又はR
3は、水素原子とメチル基から選択され、及び/又はR
4は、水素原子とメチル基から選択され、且つR
5は、水素原子、ヒドロキシC1-4アルキル基及びC1-4アルコキシ基から選択される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記第一類のモノマーは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルから選択される一つ又は複数であり、及び/又は
前記第二類のモノマーは、アクリロニトリル又はメタクリロニトリルであり、及び/又は
前記第三類のモノマーは、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド及びN-ブトキシメタクリルアミドから選択される一つ又は複数である、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記第一類のモノマーと、第二類のモノマーと、第三類のモノマーとのモル比は、50-57:41-44:2-6である、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ポリマーと前記セラミック粒子との重量比は、40-90:10-60で
ある、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリマーの重量平均分子量は、60000-120000で
ある、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記セラミック粒子の平均粒径Dv50は、40nm-110nmで
ある、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記セラミック粒子は、多孔質粒子であり、且つ前記多孔質粒子の平均孔径は、0.3nm-6.0nmで
ある、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記セラミック粒子は、多孔質二酸化ケイ素粒子である、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記ポリマーは、前記セラミック粒子を被覆する、請求項
1に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
ベース層と、前記ベース層の少なくとも一つの表面に設置されるコーティング層とを含むセパレータであって、前記コーティング層は、請求項1から10のいずれか1項に記載の接着剤組成物を含む、セパレータ。
【請求項12】
二次電池であって、請求項1から10のいずれか1項に記載の接着剤組成物、及び/又は請求項11に記載のセパレータを含む、二次電池。
【請求項13】
電池モジュールであって、請求項12に記載の二次電池を含む、電池モジュール。
【請求項14】
電池パックであって、請求項13に記載の電池モジュールを含む、電池パック。
【請求項15】
電力消費装置であって、請求項12に記載の二次電池、請求項13に記載の電池モジュール及び請求項14に記載の電池パックから選択される少なくとも一つを含む、電力消費装置。
【国際調査報告】