(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】化学反応の温度を制御するための方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20241018BHJP
G05D 23/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B01J19/00 J
G05D23/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515438
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 US2021051259
(87)【国際公開番号】W WO2023048698
(87)【国際公開日】2023-03-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524088010
【氏名又は名称】エルラン・エイチ・フェリア
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】エルラン・エイチ・フェリア
【テーマコード(参考)】
4G075
5H323
【Fターム(参考)】
4G075AA03
4G075AA23
4G075AA41
4G075AA63
4G075AA65
4G075BA10
4G075BB02
4G075BB08
4G075CA02
4G075DA02
4G075DA18
4G075EA06
4G075EB01
5H323AA01
5H323BB01
5H323BB03
5H323BB17
5H323CA01
5H323CA04
5H323DA04
5H323DA09
5H323JJ01
5H323JJ06
5H323KK05
5H323SS03
(57)【要約】
化学反応の温度を測定せずに化学反応の温度を制御するための方法。化学反応の質量の変化をモニターし、これを使用して系の温度を計算する。反応は、温度を測定せずに、望ましい温度(T)で維持することができる。本開示の方法は、測定されたいずれの温度も定常状態条件であると推定される非平衡条件で起こる反応に有用である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度を測定せずに温度を制御するための方法であって、
a)溶媒中の反応物間の吸熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、該生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、該化学反応は望ましい温度(T)を有する、工程;
b)該反応物および該溶媒を容器に加えることによって、該化学反応を開始させる工程;
c)該排出生成物を該容器から排出させる工程;
d)該方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(M
i)を測定する工程;
e)該現在の系質量(M
i)に基づいて、工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(E
i)を決定する工程;
f)該排出質量(E
i)に基づいて、該i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔM
i’)を計算する工程;
g)計算された温度(T
i)を、
【数1】
(式中、αは2未満の正の数である)に従って計算する工程;
h)該容器に、追加の反応物を、該排出質量(E
i)に等しい量で加える工程;および
i)該計算された温度(T
i)と該望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、該化学系の温度を該望ましい温度(T)に調整する工程
を含む、上記方法。
【請求項2】
i+1番目の反復の間に工程c)~i)を繰り返す工程をさらに含み、該繰り返す工程は、予め決定された間隔で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め決定された間隔が、5分毎に少なくとも1回の繰り返しである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)~i)を繰り返す工程をさらに含み、該繰り返す工程は、リアルタイムで継続的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程c)およびd)は現在の系質量(M
i)が閾値未満になるまで繰り返され、次いで工程e)が実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
αが0.5~2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
αが0.8~1.5の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
αが0.8~1.2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
温度を測定せずに温度を制御するための方法であって、
a)溶媒中の反応物間の吸熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、該生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、該化学反応は望ましい温度(T)を有し、該化学系は該化学反応に関して不活性な固体である不活性成分をさらに含む、工程;
b)該反応物および該溶媒を容器に加えることによって、該化学反応を開始させる工程;
c)該排出生成物を該容器から排出させる工程;
d)該方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(M
i)を測定する工程;
e)工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(E
i)を決定する工程;
f)該排出質量(E
i)に基づいて、該i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔM
i’)を計算する工程;
g)計算された温度(T
i)を、
【数2】
(式中、αは2未満の正の数である)に従って計算する工程;
h)該容器に、追加の反応物を、反応物質量ΔM
i’の変化に等しい量で加える工程;
i)R
i=ΔM
i’-E
iによって与えられる該不活性成分の一部を除去する工程;および
j)該計算された温度(T
i)と該望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、該化学系の温度を該望ましい温度(T)に調整する工程
を含む、上記方法。
【請求項14】
前記不活性成分が、高分子ビーズ、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、およびステンレス鋼ビーズからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
温度を測定せずに温度を制御するための方法であって、
a)溶媒中で反応物間の発熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、該生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、該化学反応は望ましい温度(T)を有する、工程;
b)該反応物および該溶媒を容器に加えることによって、該化学反応を開始させる工程;
c)該排出生成物を該容器から排出させる工程;
d)該方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(M
i)を測定する工程;
e)該現在の系質量(M
i)に基づいて、工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(E
i)を決定する工程;
f)該排出質量(E
i)に基づいて、該i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔM
i’)を計算する工程;
g)計算された温度(T
i)を、
【数3】
(式中、αは2未満の正の数である)に従って計算する工程;
h)該容器に、追加の反応物を、該排出質量(E
i)に等しい量で加える工程;および
i)該計算された温度(T
i)と該望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、該化学系の温度を該望ましい温度(T)に調整する工程
を含む、上記方法。
【請求項16】
温度を測定せずに温度を制御するための方法であって、
a)溶媒中で反応物間の発熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、該生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、該化学反応は望ましい温度(T)を有し、該化学系は該化学反応に関して不活性な固体である不活性成分をさらに含む、工程;
b)該反応物および該溶媒を容器に加えることによって、該化学反応を開始させる工程;
c)該排出生成物を該容器から排出させる工程;
d)該方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(M
i)を測定する工程;
f)該排出質量(E
i)に基づいて、該i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔM
i’)を計算する工程;
g)計算された温度(T
i)を、
【数4】
(式中、αは2未満の正の数である)に従って計算する工程;
h)該容器に、追加の反応物を、反応物質量ΔM
i’の変化に等しい量で加える工程;
i)R
i=ΔM
i’-E
iによって示される該不活性成分の一部を除去する工程;および
j)該計算された温度(T
i)と該望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、該化学系の温度を該望ましい温度(T)に調整する工程
を含む、上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本明細書で開示される主題は、温度制御系に関し、より特定には、非平衡条件のための温度制御系に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]多くの化学的および生物学的プロセスの間、適した温度制御は、重要な要素である。慣習的に、所与の化学反応は試行錯誤によって最適化される。例えば、反応は、特定の化学生成物の収量を最適化する望ましい温度を決定するために、わずかに異なる温度で何度も実行することができる。所与の反応の間、系の温度は、継続的に測定してもよい。測定された温度が望ましい温度から逸脱する場合、熱を加えるかまたは取り除いて相殺してもよい。この解決法は、多くの状況にとって十分である可能性があるが、問題の系が定常状態、平衡条件であることに頼る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003]一部の系は、測定された温度を得るだけでは不十分な程度に、定常状態の仮定から逸脱する非平衡系である。したがって、系の温度を制御するための改善された方法が望ましい。上記の議論は、一般的な背景の情報に関して提供されたにすぎず、特許請求された主題の範囲の決定における補助として使用されることは意図されない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]化学反応の温度を制御するための方法が開示される。化学反応の質量の変化をモニターし、これを使用して、系の温度を計算する。反応は、温度を測定せずに、望ましい温度(T)で維持することができる。開示される方法は、測定されたいずれの温度も定常状態条件であると推定される非平衡条件で起こる反応に有用である。
【0005】
[0005]第1の実施態様において、温度を測定せずに温度を制御するための方法が提供される。本方法は、a)溶媒中で反応物間の吸熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、化学反応は望ましい温度(T)を有する、工程;b)反応物および溶媒を容器に加えることによって、化学反応を開始させる工程;c)排出生成物を容器から排出させる工程;d)方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(Mi)を測定する工程;e)現在の系質量(Mi)に基づいて、工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(Ei)を決定する工程;f)排出質量(Ei)に基づいて、i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔMi’)を計算する工程;g)計算された温度(Ti)を、
【0006】
【0007】
(式中、αは、2未満の正の数である)に従って計算する工程;h)容器に、追加の反応物を、排出質量(Ei)に等しい量で加える工程;およびi)計算された温度(Ti)と望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、化学系の温度を望ましい温度(T)に調整する工程を含む。
【0008】
[0006]第2の実施態様において、温度を測定せずに温度を制御するための方法が提供される。本方法は、a)溶媒中で反応物間の吸熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、化学反応は望ましい温度(T)を有し、化学系は化学反応に関して不活性な固体である不活性成分をさらに含む、工程;b)反応物および溶媒を容器に加えることによって、化学反応を開始させる工程;c)排出生成物を容器から排出させる工程;d)方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(Mi)を測定する工程;e)工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(Ei)を決定する工程;f)排出質量(Ei)に基づいて、i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔMi’)を計算する工程;g)計算された温度(Ti)を、
【0009】
【0010】
(式中、αは、2未満の正の数である)に従って計算する工程;h)容器に、追加の反応物を、反応物質量の変化ΔMi’に等しい量で加える工程;i)Ri=ΔMi’-Eiによって示される不活性成分の一部を除去する工程;およびj)計算された温度(Ti)と望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、化学系の温度を望ましい温度(T)に調整する工程を含む。
【0011】
[0007]第3の実施態様において、温度を測定せずに温度を制御するための方法が提供される。本方法は、a)溶媒中で反応物間の発熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、化学反応は望ましい温度(T)を有する、工程;b)反応物および溶媒を容器に加えることによって、化学反応を開始させる工程;c)排出生成物を容器から排出させる工程;d)方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(Mi)を測定する工程;e)現在の系質量(Mi)に基づいて、工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(Ei)を決定する工程;f)排出質量(Ei)に基づいて、i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔMi’)を計算する工程;g)計算された温度(Ti)を、
【0012】
【0013】
(式中、αは、2未満の正の数である)に従って計算する工程;h)容器に、追加の反応物を、排出質量(Ei)に等しい量で加える工程;およびi)計算された温度(Ti)と望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、化学系の温度を望ましい温度(T)に調整する工程を含む。
【0014】
[0008]第4の実施態様において、温度を測定せずに温度を制御するための方法が提供される。本方法は、a)溶媒中で反応物間の発熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、化学反応は望ましい温度(T)を有し、化学系は化学反応に関して不活性な固体である不活性成分をさらに含む、工程;b)反応物および溶媒を容器に加えることによって、化学反応を開始させる工程;c)排出生成物を容器から排出させる工程;d)方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(Mi)を測定する工程;e)工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(Ei)を決定する工程;f)排出質量(Ei)に基づいて、i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔMi’)を計算する工程;g)計算された温度(Ti)を、
【0015】
【0016】
(式中、αは、2未満の正の数である)に従って計算する工程;h)容器に、追加の反応物を、反応物質量の変化ΔMi’に等しい量で加える工程;i)Ri=ΔMi’-Eiによって示される不活性成分の一部を除去する工程;およびj)計算された温度(Ti)と望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、化学系の温度を望ましい温度(T)に調整する工程を含む。
【0017】
[0009]この発明の概要は、単に1つまたはそれより多くの例示的な実施態様に従って本明細書で開示される主題の短い概要を提供することを意図しており、請求項を解釈したり、または本発明の範囲を定義または限定したりするためのガイドとして機能するものではなく、それらは、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。この概要は、詳細な説明でさらに後述される概念の例示的な選択を簡易化した形態で導入するために提供される。この概要は、特許請求された主題の主要な特徴または必須の特徴を確認することを意図しておらず、特許請求された主題の範囲の決定における補助として使用されることも意図していない。特許請求された主題は、背景で述べられたいずれかまたは全ての不利益を解決する手段に限定されない。
【0018】
図面の簡単な説明
[0010]本発明の特徴が理解できるように、本発明の詳細な説明は、特定の実施態様への参照によって行うことができ、このような実施態様の一部は、添付の図面で例示される。しかしながら、図面は、この発明の特定の実施態様のみを例示しており、したがってその範囲を限定するとはみなされないもとし、本発明の範囲については、他の同等に有効な実施態様を包含することに留意されたい。図面は、必ずしも目盛りがあるわけではなく、一般的に、本発明の特定の実施態様の特徴を例示することに重点が置かれている。図面において、様々な図面にわたり類似の部品を示すのに類似の数字が使用される。したがって、本発明のさらなる理解のために、以下の詳細な説明を参照し、図面と併せて読むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】[0011]
図1は、開示される方法を実行するための1つの系の概略図である。
【
図2】[0012]
図2は、開示される方法の一実施態様を描写する流れ図である。
【
図3】[0013]
図3は、温度を調整するための方法の一実施態様を描写する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[0014]開示された系は温度制御系に関し、具体的には、その質量が反応の経過にわたり変化する非平衡系を制御する系に関する。開示される方法は、ガス状または固体生成物などの生成物が反応の経過にわたり化学反応容器から排出される化学反応で使用される。
【0021】
[0015]いかなる特定の理論にも縛られることは望まないが、本方法のi番目の反復の間の非平衡条件における吸熱系の計算された温度(Ti)は、測定されるというよりは、以下の式に従って計算することができる:
【0022】
【0023】
式中、Tは、望ましい温度(すなわち標的温度)であり、Mは、容器内の化学系全体の最初の系質量であり、ΔMiは、反応物質量の変化であり、αは、2未満の正の数である。
[0016]同様に、本方法のi番目の反復中の非平衡条件における発熱系の計算された温度(Ti)は、測定されるというよりは、以下の式に従って計算することができる:
【0024】
【0025】
[0017]i番目の反復による反応物質量の変化(ΔMi’)を計算することによって、平衡条件下でしか正確な温度を示さないであろう熱電対または他の温度測定デバイスを使用しなくても、非平衡時の計算された温度(Ti)を見出すことができる。計算された温度(Ti)に基づいて、望ましい温度(T)を維持するために、正しい熱量を加えたりまたは除去したりすることができる。
【0026】
[0018]
図1は、化学反応容器102、現在の系質量(M
i)をコンピューター106に提供する質量センサー104を含む系100を描写する。コンピューター106は、化学反応容器102を選択的に加熱または冷却するように構成される熱調整器108を制御する。一実施態様において、化学反応容器102は、周囲環境への放熱を最小化するための従来の断熱方法を使用して断熱されている。質量センサー104は、例えば、質量バランスであり得る。熱調整器108は、従来の加熱または冷却エレメントを含んでいてもよく、コンピューター106は、熱調整器108を選択的に作動させて、追加または除去される熱のジュールを制御することができる。
【0027】
[0019]
図2を参照すると、温度を測定せずに化学反応の温度を制御するための方法200が開示される。方法200は、望ましい温度(T)を決定する工程202を含む。例えば、望ましい温度(T)は、様々な温度で化学反応を繰り返して実行することにより特定の化学生成物の収量を最適化することによって実験的に決定することができる。以下の仮定の例では、T=353Kである。
【0028】
[0020]工程204において、αの値が確立される。αの値は、この開示の他所で論じられる通りに決定される。反応が吸熱性である場合、熱を加えて、系を望ましい温度(T)に戻さなければならない。αの値は、2未満の、ゼロではない正の数値である。一実施態様において、αの値は、0.5より大きいかまたはそれに等しく、ただし1.5未満である。別の実施態様において、αの値は、0.8~1.2である。以下の仮定の例において、α=1である。
【0029】
[0021]方法200の工程206において、化学反応物、溶媒および不活性成分の最初の系質量(M)は、ゼロ番目の反復(i=0)の間に決定される。最初の系質量(M)は、反応物、溶媒および不活性成分を含むが、生成物を含まない。例示として、これらに限定されないが、所与の化学反応は、予め決定された量の反応物AおよびBを溶媒中で反応させて、望ましい生成物Cならびに副産物DおよびEを形成することを含んでいてもよい。この例において、副産物Dは、形成されたときに反応容器から排出されるガス状の副産物である。
A+2B→2C+D(g)+E (2)
[0022]例えば、1300gの反応物A(モル質量100.0g・mol-1)は、13,000gの溶媒の存在下で、910gの反応物B(モル質量35.0g・mol-1)と反応すると計算することができる。それゆえに、最初の系質量(M)は、15,210gである。
【0030】
[0023]工程208において、これらの反応物は、化学反応を開始させる容器、例えば容器102に加えられる。次いで開示される方法300は、容器から排出される生成物Dの量に基づいて、系の温度を調整する。
【0031】
[0024]吸熱性の例
[0025]
図3を参照すると、開示される方法300は、容器から放出された生成物の少なくとも1つに起因して質量の変化が起こる化学反応のために使用される。例えば、ガス状生成物は、形成されたときに容器から排出させることができる。代替として、固形の沈殿を、ろ過または他の好適な方法によって除去してもよい。以下の例において、吸熱反応が使用される。
【0032】
[0026]工程302において、所定量(すなわち一部または全部)の1種の生成物を、化学反応の経過中に化学反応容器から排出させることができる。このi番目の反復の生成物の排出は、この排出質量(Ei)をもたらしたi番目の反復における反応物質量の変化(ΔMi’)を計算することを可能にする。
【0033】
[0027]工程304において、i番目の反復の現在の系質量(Mi)は、質量センサー104で測定される。現在の系質量(Mi)は、反応物、溶媒、不活性成分および容器から排出されなかったあらゆる生成物などの容器の全内容物を含む。現在の系質量(Mi)は、容器の質量を最初の系質量(M)と一致するように調整する前に測定されることから(工程312)、Mi,beforeと称することもできる。
【0034】
[0028]工程306において、i番目の反復の間に容器から排出された排出質量(Ei)は、i番目の反復における現在の系質量(Mi)を最初の系質量(M)と比較することによって決定される。この例において、この質量は、容器から排出された生成物Dの質量に相当する。例えば、最初の系質量(M)が15,210gである場合、第1の反復(i=1)の系質量(M1,before)は、15,070であり(いずれかの質量を加える前に測定した場合)、次いで排出質量(Ei)は、140gであると見出される。
Ei=M-Mi,before (3a)
E1=M-M1,before (3b)
E1=15,210g-15,070g=140g (3c)
[0029]工程308において、反応物質量の変化(ΔMi’)は、i番目の反復について、排出質量(Ei)に基づき計算される。例えば、E1=140gの場合、反応の化学量論(式2を参照)から、400gの反応物Aおよび280gの反応物Bが消費されたと計算することができる:
【0035】
【0036】
[0030]したがって、i番目の反復における反応物質量の変化(ΔMi’)は、i=1の場合、以下の通りである:
ΔMi=ΔMreactants=ΔMA+ΔMB (5a)
ΔM1=400g+280g=680gの消費された反応物 (5b)
[0031]次いで工程310において、計算された温度(Ti)は、以下に従って見出される:
【0037】
【0038】
[0032]工程312において、追加の反応物の形態での追加の質量が、反応容器に加えられる。一実施態様において、加えられる反応物の質量は、排出質量(Ei)に等しい。例えば、140gの反応物を加えて、系を最初の系質量(M)まで回復させることができる。方程式2の化学量論を考慮すれば、これは、反応物A:Bのモル質量比を考察することによって見出された52.36gの反応物Aおよび57.64gの反応物Bに相当する。
【0039】
【0040】
[0033]別の実施態様において、加えられる質量は、反応物質量の変化(ΔMi’)に等しい。この実施例において、680gの反応物(具体的には400gの反応物Aおよび280gの反応物B)が容器に加えられる。この開示の他所で詳細に論じられている通り、不活性成分の形態での過量の質量を除去して、最初の系質量(M)を維持する。
【0041】
[0034]一実施態様において、質量を加える工程は、温度調整済みの反応物質量を加えることによって、同時に系の温度を調整する(すなわち工程312および工程314は同時に達成される)。一実施態様において、加えられる質量は、その温度を、熱が容器から除去されるように、計算された温度(Ti)未満に事前に調整されている。別の実施態様において、加えられる質量は、その温度を、熱が容器に加えられるように、計算された温度(Ti)より高く事前に調整されている。
【0042】
[0035]加えられた質量が(Ei)である場合の反復
[0036]加えられた質量が排出質量(Ei)に等しい実施態様において、アップデートされた系質量は、以下の通りである:
Mi,after=M-Ei+Ei (8a)
M1,after=15,210g-140g+140g=15,210g (8b)
[0037]これらの実施態様において、-Eiおよび+Eiの相殺によって、現在の系質量(Mi)は、最初の系質量(M)で維持される。
【0043】
[0038]加えられた質量がでΔMiある場合の反復
[0039]加えられた質量が反応物質量の変化(ΔMi’)に等しい別の実施態様において、連続的な方法を維持しながら一定の系質量を維持するために、追加の工程を実行してもよい。例えば、工程206において、最初の系質量(M)は、ろ過によって系から容易に分離される固体などの不活性成分を含む場合がある。例えば、1300gの反応物Aは、11,245gの溶媒および1,755gの不活性成分の存在下で、910gの反応物Bと反応すると計算することができる。したがって、最初の系質量(M)は、15,210gである。1,755gの不活性成分は、各反復の間に系質量を調整するのに使用できる質量のオーバーヘッドを提供する。
【0044】
[0040]化学的に不活性な成分の組成は反応の性質に依存するが、その例としては、例えば高分子ビーズ、ガラスビーズ、シリカまたはアルミナ、ステンレス鋼ビーズなどの物質を挙げることができる。固体のサイズは、それが反応の間に形成されるあらゆる沈殿生成物から容易に分離できるように選択することができる。これらの不活性成分は、一定の系質量を維持するために除去できる除去された不活性質量(Ri)を提供し、以下の通りである:
Ri=ΔMi-Ei (9a)
[0041]以前の例を参照すれば、680gの反応物が消費された結果として140gの排出質量が容器を出た場合、一定の系質量を維持するために、540gの不活性成分が除去されて、680gの追加の反応物が加えられる。
R1=680g-140g=540gの除去される不活性成分 (9b)
[0042]それゆえに、このような実施態様において、アップデートされた系質量は以下によって示され得る:
Mi,after=M-(Ei+Ri)+ΔMi (10a)
M1,after=15,210g-(140g+540g)+680g=15,210g (10b)
[0043]工程314において、熱を調整して、系を望ましい温度(T)まで回復させる。例えば、溶媒が水である場合、水の比熱(4.184J・g-1K-1)を使用して、353Kの望ましい温度(T)を達成するように容器を15.78K温めるのに使用される熱量(単位J)の推定値を得ることができる。例えば、系質量が一定の15,210gであるように加えられた質量が排出質量(Ei)に等しい(例えば140g)実施態様において、加えようとする熱のkJは、以下によって示される:
【0045】
【0046】
[0044]他の実施態様において、水以外の溶媒が、対応する比熱で使用される。発熱反応の場合、熱調整器108を使用して正確な熱量を除去して容器を冷却することができる。
[0045]後続の反復
[0046]方法300は、工程302に戻り、本方法の新たな反復(i=2)を実行することによって継続することができる。方法300の第2の反復の始めに、現在の系質量(M2)が、その値は(M1,after)に等しく、最初の系質量(M)と同じであることが見出される。例えば、以前の仮定の例では、現在の系質量(M2)および最初の系質量(M)は両方とも15,210gに等しい。
【0047】
[0047]工程302において、所定量の1種の生成物を化学反応容器から排出させることができる。
[0048]工程304において、2番目の反復の現在の系質量(M2)は、その値はM2,beforeで示され、工程312が実行される前に質量センサー104で測定される。この仮定の例において、現在の系質量(M2,before)値が測定され、15,140gであることが見出される。
【0048】
[0049]工程306において、仮定の実施例の場合、容器から排出された排出質量(E2)は、70gと決定される:
Ei=M-Mi,before (12a)
E2=M-M2,before (12b)
E2=15,210g-15,140g=70g (12c)
[0050]工程308において、第2の反復の反応物質量の変化(ΔM2)は、排出質量(E2)に基づいて計算される。例えば、E2=70gと仮定すると、反応の化学量論により、200gの反応物Aおよび140gの反応物Bが消費されたと計算することができる:
【0049】
【0050】
[0051]したがって、反応物質量の変化(ΔM2)は、以下の通りである:
ΔM2=ΔMreactants=ΔMA+ΔMB (14a)
ΔM2=200g+140g=340gの消費された反応物 (14b)
[0052]工程310において、第2の反復の計算された温度(T2)は、以下に従って見出される:
【0051】
【0052】
[0053]工程312において、一実施態様において、追加の反応物の形態での追加の質量(排出質量(Ei)に等しい)が加えられる。考察中の例の第2の反復(排出質量E2=70gである)において、70gの反応物(具体的には41.18gの反応物Aおよび28.82gの反応物B)が容器に加えられる。反応物質量の変化(ΔMi’)は常に排出質量(Ei)(その質量は、反応物の形態で容器に戻される)より大きいため、この実施態様はセミバッチプロセスであり、これはなぜなら、反応物の連続的な使用によりその質量が部分的に置き換えられるため、可能性のある反復回数は上限があるためである。
【0053】
[0054]工程312において、別の実施態様において、追加の反応物の形態での追加の質量(反応物質量の変化(ΔMi’)に等しい)が加えられる。この例において、340gの反応物(具体的には200gの反応物Aおよび140gの反応物B)が容器に加えられる。反応物の追加の質量は消費される反応物の質量に等しいため、このような方法は、連続的な方法である。追加の質量の量は排出質量の量より多いため、不活性成分は、この開示の他所で詳細に論じられる通り、一定の系質量を維持するために容器から除去される。
【0054】
[0055]工程314において、熱を調整して、系を望ましい温度(T)まで回復させる。本発明の第2の反復の例において、熱量を加えて、温度を7.79K増加させる(345.31Kから353Kに)。水ベースの系の場合、以下の通りである:
【0055】
【0056】
[0056]発熱性の例
[0057]前記の議論は吸熱性の例に向けられたが、類似の方法を発熱反応に等しく適用できる。以下の仮定の例において、αはまた1である。2回の反復(i=1およびi=2)の仮定の例において、a)M=15,210g;b)T=353K;c)α=1;d)ΔM1=680gをもたらすE1=140g;およびe)E2=70gをもたらすΔM2=340gである場合、以下が導き出される:
【0057】
【0058】
これは、反復間に望ましい温度(T)まで回復される発熱反応に相当する。熱は、熱調整器108を作動させて容器を冷却することによって除去することができる。
[0058]αを確立すること
[0059]αの統計値は、容易に見出すことができる。例えば、αの統計値は、ガスD(g)が連続的に放出される式2のようなの仮定の化学反応について、以下の方法を使用して見出すことができる:
【0059】
【0060】
式18は、化学反応のN回繰り返された反応の平均を意味する。これらの反応は、αが{αi:i=1、・・・、N}として特定される場合、N回の潜在的な実現化が得られ、αiは、式19を使用して各測定時間で見出され、式19において、a)Mは、最初の系質量であり、Tは、望ましい温度であり;b)ΔMiは、化学反応の開始時から始まる時間間隔Δτiの間の反応物質量の変化であり;c)|ΔTi|は、時間間隔Δτiの間に経た温度変化の規模である。
【0061】
[0060]一連の好適な反応物の時間間隔{Δτi:i=1、・・・、N}は、N回の独立した実験が実行されるように選択される。i番目の実験は、時間間隔Δτiの間に容器に存在するガス生成物Dの質量を測定する質量センサーを使用して実験的に決定できるΔMiの値を与える。時間間隔Δτiの間の容器の温度変化の規模は、例えば熱電対を使用して測定される。反応は、最良の結果を得るために容器が高度に断熱されている条件下で実行される。
【0062】
[0061]表1および2は、仮定の化学反応例に関する値および物理特性を提示する。この例は、αの統計値が1に近いことが見出されている式2によって与えられる全体的な化学反応から導き出された結果を調べる。仮定の例は、a)溶媒質量が13,000gの一定の値を有し;b)反応物Aの最初の質量が1,300gであり;c)反応物Bの最初の質量が910gであり;d)容器中の最初の系質量Mが15,210gであり;e)容器中の望ましい温度Tが353Kであるケースを考察する。これらの値を表1にまとめる。4つの異なる時間(1分、4分、7分、8分、それらをまとめた表2を参照)に、質量バランスを使用して、表2で(17g、70g、123g、140g)によって示されている通り排出されたガス生成物Dの質量を測定する。次いで、反応の化学量論から、反応物A+Bの総質量(85g、340g、595g、680g)が排出されたガス生成物Dの質量(17g、70g、123g、140g)に関与することを見出すことができる。これらの時間のそれぞれの間、各測定時間における温度の測定を行うことで(例えば、熱電対を使用して)、望ましい温度Tからのその変化が決定され(1.9K、8.0K、13.8K、16.0K)、各時間間隔Δτiの終了時における温度Tiの値が、吸熱反応のT未満であり、発熱反応のTより大きい。次いで式19を使用して、異なる各測定時間におけるαの値を評価したところ(1.00021、0.99968、1.00003、0.99935)、式18によりその平均値は、およそ1に等しいことが見出され、すなわち、α≒1である。
【0063】
【0064】
【0065】
[0062]理論上の背景
[0063]リンガー-サーモ(Linger-thermo)の理論(LTT)は、POPと略記される物理学の過去の不確実性/未来の確実性の時間相補的な双対原理の「動的」副産物であり、これは、1960年に初めて確率的最適制御において出現し、最大限効率的で手頃な高性能の解決法をもたらすレーダー設計を作成するために、このケースでは「定常的」である遅延情報理論(Latency-information theory;LIT)と名付けられたPOPの別の副産物を介してこれまで使用されてきた(米国特許第10,101,445号を参照)。動的LTTは、統計学的に異なるセル(SDC)ベースの回転質量量子(gyrating mass quantum)であるジャイラドール(gyrador)の運動エネルギーを供給する自由度(DoF)ベースの熱エネルギー量子であるサーモート(thermote)を利用する生物物理学的な寿命研究や天体物理学のダークマター研究に対する効率的な解決法を見出すために、すでに使用されている。サーモートは、2014年に、寿命研究での使用のために柔軟相媒体のエントロピーの導出からLTTにおいて初めて自然に出現した。これらはエントロピーの発見を簡単にし、それらの熱エネルギーは、eTh=NDoFkBT/2であり、式中、kBは、ボルツマン定数であり、Tは、媒体の温度であり、NDoFは、粒子の動きに対する自由度の数であり、例えば、光子気体(PG)中の光子の場合は3であり、ブラックホール(BH)の事象の地平線で移動する粒子の場合は2である。BHおよびPGの場合、それらのエントロピーは、サーモートエネルギーに対するそれらの質量エネルギーの比率のkB/2倍である。さらに、2.725ケルビンの宇宙マイクロ波背景放射(CMB)温度におけるBHおよびPGサーモートのeV質量は、それぞれ235.14μeVおよび352.71μeVであることが見出されており、これらの値は、上位のダークマター候補であるアクシオンの場合の50~1,500μeVの範囲内に当てはまる。LTTにおいて、質量Mおよび体積Vの媒体の形状は、その中心において点質量Mが存在すると仮定される半径rの球体としてモデリングされる。このLTTモデルでは、総運動エネルギーが媒体の重力ポテンシャルエネルギーGM2/2rと一致する媒体中に、M/mGジャイラドール粒子(mGは、ジャイラドール粒子の質量である)が存在し、これは、ジャイラドールの旋回運動による媒体の重力崩壊を防ぐためになされる。最終的に、LTTにおいてジャイラドールの運動エネルギーmGv2/2は、サーモートのエネルギーeThに等しく設定され、それがジャイラドールにエネルギーを与え、次いでmG=2eth/v2=2reth/GMが得られ、式中、ジャイラドールの速度v=(GM/r)1/2は、点質量Mの周りをラジアル距離rで周回するジャイラドールの周回速度を意味し、Gは、重力定数である。したがってmG方程式は、サーモートエネルギーeThの線形関数として、したがって媒体の温度Tの線形関数として、ジャイラドールの質量mGを表すことが見出される。この方法において、媒体の温度Tは、ジャイラドールの質量mGを介した重力作用に関することが見出されており、LTTでは、これらの統計学的なジャイラドールの運動が重力崩壊を回避するように作用する。
【0066】
[0064]開示される方法は、望ましい出力を達成するために物理的および化学的に相互作用しながら、異なるセル(例えば別々の化学種、別々の生物学的セルなど)が作り出され、系から排出されるかまたは致死する工業プロセスに最大効率および手頃さをもたらす。このような「第一原理」から導き出された工業プロセス設計の方法は、それに関連する物理的な原理が十分に知られていないため、実在しない。これはもはや、異なるセル方程式の開示された温度モデル化平均質量を本来的に生じさせた物理学またはPOPの新たに出現した時間相補的な双対原理に当てはまらない。
【0067】
[0065]この開示は、あらゆる媒体および媒体の温度における異なるセルのモデル化した平均質量間に存在することが発見された直接的な関係を提供する。この式により、異なるセルが作り出され、致死し、物理的および化学的な相互作用の両方を経験して、望ましい出力を生産する媒体の操作を効率的に手頃に調節することができる。
【0068】
[0066]最初に、媒体の異なるセルの平均質量の式、すなわちジャイラドール質量mGが付与されると予想される。このジャイラドール質量の式は、物理学またはPOPの時間相補的な双対原理の適用から自然に生じるものであり、所与の媒体の温度、質量、体積、およびその基本的な粒子または分子の自由度に関する知識だけでジャイラドール質量を見出すことを可能にする。
【0069】
[0067]ジャイラドールの質量mG(POPによって誘導されるLTTにおいて自然に出現する統計学的な粒子)は、媒体を構成する異なるセルのモデル化した平均質量を意味する。その定常状態値は、以下の式によって示される:
【0070】
【0071】
式中:a)Mは、媒体の総質量であり;b)rは、媒体の体積V=M/ρの半径であり(式中、ρは、球状の形状であると仮定して、媒体の密度である);c)Gは、重力定数であり;d)Tは、媒体の作動温度であり;e)kBは、ボルツマン定数であり;f)NDoFは、媒体粒子の自由度の数であり(例えば、310ケルビンで液体の水ベースの媒体の場合、NDoFは、5である)、(g)NCellsは、系中の別の細胞の数である。その球の体積を決定するのに、反応容器は必ずしも球状でなくてもよい。例えば、円柱の体積を計算してもよいし、次いで同じ体積を有する対応する球体の半径(r)を使用してもよい。この半径は、円柱の球面半径である。
【0072】
[0068]特定の期間の後、新しい温度T’は、考慮された期間の間に作用するMにおける反応物によって発生し、媒体から排出されると仮定される、媒体中で生じる温度と予想される。ΔM’によって示されるこれらの反応物の質量をMから引くことによって、以下の式によって示される媒体ごとの異なる動的なジャイラドール質量m’Gが得られ得る:
【0073】
【0074】
式中、a)質量M’は、以下:
M’=M-ΔM’ (22)
に従って付与され、b)T’は、吸熱化学反応のT未満であり、発熱化学反応のTより大きくなり;c)N’Cellsは、M’を形成する別のセルの数を意味する。
【0075】
[0069]吸熱化学反応の場合、T’は、以下の式:
T’=T+ΔT’=T-|ΔT’|、吸熱 (23)
によって示され得て、式中、|ΔT’|は、ΔT’=T’-Tによって示されるT’とTとの間の差の規模を意味し、T’の値はT未満である。
【0076】
[0070]定常状態のジャイラドール-重力方程式20および動的なジャイラドール-重力方程式21を組み合わせて、以下を得ることができる:
【0077】
【0078】
[0071]αの値は、化学系の動的な質量/温度
【0079】
【0080】
に対する、定常状態の質量/温度の比率(M/T)であり、この比率は、互いに大きく逸脱することはないと予想される。
[0072]一定のNDoF、kB、G、およびrで方程式20、21、24aおよび24bを組み合わせ、T’を解くことにより、以下が導き出される:
【0081】
【0082】
[0073]開示された式25aおよび25bの有用性は、この式は、非平衡条件で反応が起こる工業プロセスの温度を最適に調節するために、全てではなくともほとんどの工業プロセスで使用できることである。これは、T’=α(M’/M)Tに従ってT’をTと関連付けるパラメーターαの一定の値を統計学的に見出すことによって達成される。次いでいずれかの所与の質量比M’/Mについても、αの値は、媒体の異なるセルの分布によって支配されることになり、それによって順に、式α=(NCells/N’Cells)(M’/M)に従ってαの値に直接影響を与えるセル数の比率NCells/N’Cellsがもたらされる。
【0083】
[0074]発熱化学反応の場合、新しい温度T’は、Tより大きくなる。ΔM’によって示される反応物質量の使用の場合、容器中の温度の増加は、吸熱反応で起こる減少と同じと仮定することができる。この仮説のもと、媒体の温度の新しい増加した値は、以下の式から見出すことができる:
【0084】
【0085】
式26において、
【0086】
【0087】
によって示される温度Tの増加量|ΔT’|は、規模において、化学反応が発熱性というより吸熱性である場合、容器の内部で減少すると予想されるTの量と同じ量である。この
【0088】
【0089】
の量は、Tが、
【0090】
【0091】
より大きいため正の値であり、次いでこれをTに加えて、Tより高い発熱温度をもたらす容器の内部における温度T’を得る。
[0075]さらに、留意すべきことに、吸熱性ジャイラドール質量方程式21において、発熱温度
【0092】
【0093】
で、吸熱温度
【0094】
【0095】
を置き換える場合、以下の発熱性のジャイラドール質量の式は、
【0096】
【0097】
をもたらし、式中、
【0098】
【0099】
であり、式中、a)m’G,exoは、発熱性ジャイラドールの質量であり、これは、吸熱性ジャイラドールm’Gの質量より大きいかまたはそれに等しい質量であり;b)N’Cells,exoは、発熱性の異なるセルの数であり、これは、吸熱性の異なるセルの数N’Cellsより小さいかまたはそれに等しい数である。
【0100】
[0076]開示されたPOPから導き出された方程式の有用性は、それが、異なるセルが作り出され、致死するか、またはそれ以外の方法で系から排出され、望ましい出力を生産する物理的および化学的な相互作用の両方を経験するプロセスの調節のための効率的なモデルを提供するという点である。これらのPOPから導き出された方程式は、少なくとも5つの異なる様式で使用することができる。この様式とは、以下の通りである:1)必要な温度範囲を満たすために、異なるセルの分布を好適にモデル化すること;2)異なるセルの特定された混合物の温度をモデル化した平均質量と適合するように、プロセスの温度をモデル化すること;3)望ましい結果に到達するように混合物の体積をモデル化すること;4)望ましい結果に到達するように媒体の質量をモデル化すること;および5)前述のモデルのうち2つまたはそれより多くを組み合わせた調節スキーム。さらに、異なるセルの方程式の温度をモデル化した平均質量は、生命の進化の段階およびプロセスのモデル化および調査において用途があると予想される。
【0101】
[0077]この明細書は、最良の形態を含む本発明を開示するための実施例を使用し、あらゆる当業者が、いずれかのデバイスまたは系の作製および使用ならびにいずれかの組み入れられた方法の実行を含む本発明の実施も可能にする。本発明の特許請求の範囲は、請求項によって定義され、当業者が想到する他の例を含み得る。このような他の例は、それらが、請求項の文言通りではない構造的な要素を有するか、または請求項の文言との差が実質的ではない等価な構造的なエレメントを含む場合、特許請求の範囲内であることが意図されている。
【符号の説明】
【0102】
100 システム
102 化学反応容器
104 質量センサー
106 コンピューター
108 熱調整器
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度を測定せずに温度を制御するための方法であって、
a)溶媒中の反応物間の吸熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、該生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、該化学反応は望ましい温度(T)を有する、工程;
b)該反応物および該溶媒を容器に加えることによって、該化学反応を開始させる工程;
c)該排出生成物を該容器から排出させる工程;
d)該方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(M
i)を測定する工程;
e)該現在の系質量(M
i)に基づいて、工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(E
i)を決定する工程;
f)該排出質量(E
i)に基づいて、該i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔM
i’)を計算する工程;
g)計算された温度(T
i)を、
【数1】
(式中、αは2未満の正の数である)に従って計算する工程;
h)該容器に、追加の反応物を、該排出質量(E
i)に等しい量で加える工程;および
i)該計算された温度(T
i)と該望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、該化学系の温度を該望ましい温度(T)に調整する工程
を含む、上記方法。
【請求項2】
i+1番目の反復の間に工程c)~i)を繰り返す工程をさらに含み、該繰り返す工程は、予め決定された間隔で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め決定された間隔が、5分毎に少なくとも1回の繰り返しである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)~i)を繰り返す工程をさらに含み、該繰り返す工程は、リアルタイムで継続的に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程c)およびd)は現在の系質量(M
i)が閾値未満になるまで繰り返され、次いで工程e)が実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
αが0.5~2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
αが0.8~1.5の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
αが0.8~1.2の間である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
温度を測定せずに温度を制御するための方法であって、
a)溶媒中の反応物間の吸熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、該生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、該化学反応は望ましい温度(T)を有し、該化学系は該化学反応に関して不活性な固体である不活性成分をさらに含む、工程;
b)該反応物および該溶媒を容器に加えることによって、該化学反応を開始させる工程;
c)該排出生成物を該容器から排出させる工程;
d)該方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(M
i)を測定する工程;
e)工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(E
i)を決定する工程;
f)該排出質量(E
i)に基づいて、該i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔM
i’)を計算する工程;
g)計算された温度(T
i)を、
【数2】
(式中、αは2未満の正の数である)に従って計算する工程;
h)該容器に、追加の反応物を、反応物質量ΔM
i’の変化に等しい量で加える工程;
i)R
i=ΔM
i’-E
iによって与えられる該不活性成分の一部を除去する工程;および
j)該計算された温度(T
i)と該望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、該化学系の温度を該望ましい温度(T)に調整する工程
を含む、上記方法。
【請求項10】
前記不活性成分が、高分子ビーズ、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、およびステンレス鋼ビーズからなる群から選択される、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
温度を測定せずに温度を制御するための方法であって、
a)溶媒中で反応物間の発熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、該生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、該化学反応は望ましい温度(T)を有する、工程;
b)該反応物および該溶媒を容器に加えることによって、該化学反応を開始させる工程;
c)該排出生成物を該容器から排出させる工程;
d)該方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(M
i)を測定する工程;
e)該現在の系質量(M
i)に基づいて、工程c)の間に排出された排出生成物の排出質量(E
i)を決定する工程;
f)該排出質量(E
i)に基づいて、該i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔM
i’)を計算する工程;
g)計算された温度(T
i)を、
【数3】
(式中、αは2未満の正の数である)に従って計算する工程;
h)該容器に、追加の反応物を、該排出質量(E
i)に等しい量で加える工程;および
i)該計算された温度(T
i)と該望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、該化学系の温度を該望ましい温度(T)に調整する工程
を含む、上記方法。
【請求項12】
温度を測定せずに温度を制御するための方法であって、
a)溶媒中で反応物間の発熱化学反応を実行して生成物を生産する化学系の、最初の系質量(M)を決定する工程であって、該生成物の少なくとも1つはガス状生成物または沈殿生成物である排出生成物であり、該化学反応は望ましい温度(T)を有し、該化学系は該化学反応に関して不活性な固体である不活性成分をさらに含む、工程;
b)該反応物および該溶媒を容器に加えることによって、該化学反応を開始させる工程;
c)該排出生成物を該容器から排出させる工程;
d)該方法のi番目の反復にわたる現在の系質量(M
i)を測定する工程;
f)該排出質量(E
i)に基づいて、該i番目の反復の間に生じた反応物質量の変化(ΔM
i’)を計算する工程;
g)計算された温度(T
i)を、
【数4】
(式中、αは2未満の正の数である)に従って計算する工程;
h)該容器に、追加の反応物を、反応物質量ΔM
i’の変化に等しい量で加える工程;
i)R
i=ΔM
i’-E
iによって示される該不活性成分の一部を除去する工程;および
j)該計算された温度(T
i)と該望ましい温度(T)との間の温度変化に基づいて熱を追加または除去することによって、該化学系の温度を該望ましい温度(T)に調整する工程
を含む、上記方法。
【国際調査報告】