(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】バンパビーム
(51)【国際特許分類】
B60R 19/18 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
B60R19/18 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024515717
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 EP2022079192
(87)【国際公開番号】W WO2023067054
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522143531
【氏名又は名称】オートテック エンジニアリング エス.エレ.
【氏名又は名称原語表記】AUTOTECH ENGINEERING S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】イサクソン,ケネス
(57)【要約】
本発明は、U形長尺ビーム(10)を含むバンパビームであって、この長尺ビームに、車両への取付けのための取付け点(22)が設けられ、長尺ビームが、好ましくはこれらの取付け点の領域内に、ビーム(10)のウェブ(16、18)上に配置されるパッチ(24)を更に含み、前記パッチには、衝撃時にビーム(10)の変形を開始させるように構成されるイニシエータ(26)が設けられる、バンパビームに関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字プロファイルをもつ長尺ビーム(10)を含むバンパビームであって、該長尺ビームが、前記長尺ビーム(10)の長手方向に沿って延びる主要部分(12)と、前記主要部分(12)の両側に沿って長手方向で延びて、前記長尺ビーム(10)が取付けられるように構成された車両のホワイトボディの方を向くように構成される2つのウェブ(16、18)とを含むバンパビームであって、前記ウェブ(16、18)のうちの少なくとも一方の上に少なくとも1つのパッチ(24)が設けられ、前記パッチ(24)が、前記パッチ(24)の中間区域に位置決めされるイニシエータ(26)を含み、前記イニシエータ(26)は、衝撃時に、該イニシエータが設けられている前記長尺ビーム(10)の前記ウェブ(16、18)の変形を開始させるように構成されることを特徴とするバンパビーム。
【請求項2】
請求項1に記載のバンパビームであって、前記ウェブ(16、18)の各々の上にパッチ(24)が設けられ、各パッチ(24)が、該パッチの中間区域内に位置決めされるイニシエータ(26)を含む、バンパビーム。
【請求項3】
請求項1に記載のバンパビームであって、前記主要部分(12)、ならびに両方のウェブ(16、18)を被覆するようにパッチ(24)が配置され、前記イニシエータ(26)が、前記パッチ(24)の、前記ウェブ(16、18)を被覆する領域内に位置決めされる、バンパビーム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のバンパビームであって、前記長尺ビーム(10)に、前記車両の前記ホワイトボディへの取付けのための、相互に離間する2つの取付け区域(22)が前記ウェブ(16、18)の外側部分(20)に設けられ、前記パッチ(24)が、前記ウェブ(16、18)の、前記取付け区域(22)に隣接する部分上に設けられる、バンパビーム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のバンパビームであって、前記イニシエータ(26)が、前記パッチ(24)内の弱化部分から成るとともに前記長尺ビーム(10)の長手方向に延び、該イニシエータの設けられる前記ウェブ(16、18)に沿って長手方向で折れ曲がることにより変形を開始させる、バンパビーム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のバンパビームであって、前記イニシエータ(6)が、前記パッチ(24)内に1つ以上の切抜きを包含する、バンパビーム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のバンパビームであって、前記パッチ(24)が前記長尺ビーム(10)の内面に配置される、バンパビーム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のバンパビームであって、前記イニシエータ(26)が、前記ウェブ(16、18)に沿って長手方向で、外向きの変形を提供するように構成される、バンパビーム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のバンパビームであって、前記長尺ビーム(10)が、前記イニシエータ(26)の位置に対応する前記ウェブ(16、18)の局所領域(30)において、前記ビーム(10)の他の部分よりも軟性であるように構成される、バンパビーム。
【請求項10】
請求項9に記載のバンパビームであって、より軟性の材料をもつ前記局所領域(30)が、成形金型(31)内での単一の表面冷却により得られる、バンパビーム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のバンパビームであって、前記ビーム(10)と前記パッチ(24)とが、熱間成形及びプレス硬化工程において共に成形され、成形金型(31)内で共に冷却される、バンパビーム。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のバンパビームであって、前記ビーム(10)が先進高強度鋼(AHSS)材料から作製される、バンパビーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホワイトボディに取付けられるバンパビームに関する。具体的には、本発明は、衝撃があった場合に好ましい変形を提供するように配置されるパッチを備えたバンパビームに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車業界では、乗員のための高い安全性を達成すること、ならびに燃費向上のための軽量化に、常に重点が置かれている。これらの側面を組み合わせることは時として困難である。というのも、安全性が増すということは、しばしば、バンパ等の安全部品の材料が厚くなること、及び/又は設計が複雑になることを意味するからである。バンパビーム組立体の従来の設計は、クラッシュボックスにより車両に取付けられるバンパビームを含む。例えば、欧州における、低速衝撃に対する保険要件であるいわゆるクラッシュ修復テスト(CRT)に対応できるようにするために、これらのクラッシュボックスは、衝撃エネルギーの大部分を吸収するように設計される。これらのテストは、クラッシュボックス、及びクラッシュボックスへのバンパの取付け区域が衝撃の大部分を担うように設計される。
【0003】
乗員のための安全性、ならびに燃費向上のための軽量化という側面を満たすように構成される新規の解決策として、本出願人により開発された、いわゆるモノブロックバンパビームがある。このモノブロックバンパビームは、単一のプレス硬化部品として特別に設計されたプロファイルをもつ、いわゆる先進高強度鋼AHSSで作製される長尺ビームを含み、この長尺ビームは、中間的クラッシュボックスを使用するのではなく車両のホワイトボディ上に直接ボルト止めされる。CRT等の多くの衝撃テストでは、この解決策が良好に機能し、モノブロックビームのウェブが衝撃エネルギーのほとんどを吸収することが判った。ところが、衝撃が上方又は下方の力の成分を有すると、バンパビームは、両方のウェブが同じ方向で上方又は下方のいずれかへ折れ曲がる非対称座屈の傾向を有することがある。
【0004】
より安定的かつ制御された座屈を提供するための可能な解決策として、追加の内部補強材を導入することがある。しかし、これらの補強材があることにより、追加の道具及び組立て作業に起因して費用が追加され、単一のプレス硬化部品の概念が取り払われることになる。
【0005】
従って、バンパビームの造りには更なる改良の余地がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、バンパの、特にモノブロックバンパビームの、即ち単一の部品から成るバンパの変形特性を改良することである。この目的は、独立請求項に記載のバンパビームでもって達成される。本発明の代替実施形態は従属請求項の主題を成す。
【0007】
主な態様によれば、本発明は、U字プロファイルをもつ長尺ビームを含むバンパビームであって、長尺ビームが、この長尺ビームの長手方向に沿って延びる主要部分と、主要部分の両側に沿って長手方向で延びて、長尺ビームが取付けられるように構成された車両のホワイトボディの方を向くように構成される2つのウェブとを含むバンパビームであって、ウェブのうちの少なくとも一方の上に少なくとも1つのパッチが設けられ、前記パッチが、パッチの中間区域に位置決めされるイニシエータを含み、イニシエータは、衝撃時に、このイニシエータが設けられている長尺ビームのウェブの変形を開始させるように構成される、バンパビームに関する。
【0008】
イニシエータが設けられることに起因して、発明的なバンパビームは、衝撃時に好適なやり方で変形しやすくなるのであり、その場合、衝撃力が好ましく分散することに寄与するよう、ウェブの中間部分同士が互いから離れるように変形する。
【0009】
実現可能な一実施形態によれば、ウェブの各々の上にパッチが設けられ、各パッチは、パッチの中間区域内に位置決めされるイニシエータを含む。このことにより対称的な造りが提供されることになり、このことにより、所望する対称的な形でビームが変形する傾向が増すことになる。
【0010】
バンパビームの複数の実施形態において、主要部分とウェブの両方を被覆するようにパッチが配置され、イニシエータは、パッチの、ウェブを被覆する領域内に位置決めされる。2つ以上の小さめのパッチではなく、1つの大型のパッチにより、バンパビームの成形が簡素化されることになる。
【0011】
バンパビームの複数の実施形態において、長尺ビームには、車両のホワイトボディへの取付けのための、相互に離間する2つの取付け区域がウェブの外側部分に設けられ、パッチは、ウェブの、取付け区域に隣接する部分上に設けられる。
【0012】
バンパビームの複数の実施形態において、イニシエータは、パッチ内の弱化部分から成って長尺ビームの長手方向に延び、これらのイニシエータの設けられるウェブに沿って長手方向で折れ曲がることにより変形を開始させる。
【0013】
バンパビームの複数の実施形態において、イニシエータは、パッチ内に1つ以上の切抜きを包含する。
【0014】
バンパビームの複数の実施形態において、パッチは長尺ビームの内面に配置される。
【0015】
バンパビームの複数の実施形態において、イニシエータは、ウェブの長手方向部分に沿って延びて、バンパビームのウェブに沿った長手方向での変形を開始させるように構成される。
【0016】
バンパビームの複数の実施形態において、イニシエータは、ウェブに沿って長手方向で、外向きの変形を提供するように構成される。
【0017】
バンパビームの複数の実施形態において、長尺ビームは、イニシエータの位置に対応するウェブの局所領域において、ビームの他の部分よりも軟性であるように構成される。
【0018】
具体的には、より軟性の材料をもつ局所領域は、成形金型内での単一の表面冷却により得ることができる。
【0019】
複数の実施形態において、ビームとパッチとは、熱間成形及びプレス硬化工程において共に成形され、成形金型内で共に冷却される。
【0020】
複数の実施形態において、ビームは先進高強度鋼(AHSS)材料から作製される。
【0021】
上記の態様及びその他の態様、ならびに本発明の利点は、以下の、本発明の詳細な説明及び添付の図面から明らかになる。
【0022】
以下の、本発明の詳細な説明において、添付の図面を参照することにする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明による、パッチを備えたモノブロックバンパビームの斜視図である。
【
図2】衝撃時のビーム及びパッチの変形挙動の断面図である。
【
図3】成形金型内でのビーム及びパッチの冷却の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、U形断面構造、具体的には帽子形の断面構造をもつ長尺体の設けられたバンパビーム10を示す。
図1に示すように、バンパビーム10は、図示するX方向に延びる車両上に配置されるように構成され、車両の駆動もX方向になされるように構成される。バンパビーム10はY方向において長手方向で延びる。Y方向は側方へ延びるのでありX方向と直交している。
【0025】
バンパビーム10の長尺体のプロファイルは、略帽子形とし、長手方向のY方向と垂直Z方向の両方において略対称とすることができる。ビーム10は、Y方向に延びる主要部分12を含み、この主要部分に、長尺ビーム10の主要部分12の長さ部分に沿って走る半円溝14を設けることができる。主要部分12は垂直Z方向において、主要部分12の上下で主要部分12の両側にてそれぞれ2つのウェブ、つまり上方ウェブ16及び下方ウェブ18に接続される。ウェブ16、18は、X方向において内方に、バンパビーム10の配置される車両の車両本体に向かって延びるように配置される。
【0026】
ウェブ16、18の外端では、帽子プロファイルを完成させるために、外向きにされたフランジ20が、Z方向において、バンパビーム10の長さ部分に沿って延びるように配置される。フランジ20には取付け区域22が設けられ、この取付け部分は、長尺ビーム10を車両のホワイトボディに直接取付けるためのねじ穴を含むことができる。長尺ビーム10の、取付け区域22に隣接する領域内には、長尺ビームの、具体的にはウェブ16、18のこれらの部分を強化するためのパッチ24が配置される。好ましくは、パッチ24は、
図1に示すように、長尺ビーム10の内面に設けられる。パッチ24は、これらのパッチが取付けられるビーム10の領域と同じ輪郭構造を有する。
【0027】
衝撃時の変形を制御するために、パッチ24には或る所定の場所に、通常は幾何学的トリガの形態のイニシエータ26が設けられる。これらのイニシエータ26は、弱化部分から成り立っており、ビームの変形開始の制御が所望される領域内で、パッチ24内にある切抜きから成ることができる。この故に、イニシエータ26は、衝撃時の変形の制御を得るために設けられる。イニシエータ26は、一方の又は両方のウェブ16、18に関連させて位置決めされる。
図1に示す実施形態では、イニシエータ26は、ウェブ16、18の、X方向における延長部に沿ってほぼ中間のところに位置決めされる長尺細孔として形成される。
【0028】
図2に示すように、衝撃時に、X方向に沿った力がバンパビーム10上に及ぼされると、この種類のイニシエータ26は、ビーム10が、制御されたやり方で曲げられて座屈することになるようにバンパビーム10の変形を開始させることになり、ビームが上方又は下方へと圧潰するリスクが低減される。圧潰するのではなく、
図2に示すように、上方ウェブ16は、上方ウェブ16に沿って設けられるイニシエータ26のところで上方に曲がることになり、下方ウェブ18は、下方ウェブ18に沿って設けられるイニシエータ26のところで下方に曲がることになる。
【0029】
この故に、イニシエータ26は、外向きの、ウェブ16、18に沿った長手方向での変形を提供するように構成される。この点については、ウェブ16とウェブ18とが、互いから離れるように同じ仕方で座屈するよう、対称的なイニシエータ26がパッチ24に設けられると好ましいことがある。
【0030】
イニシエータ26の更なる展開として、パッチ24は、ビーム10及びパッチ24の成形中に加工することができる。例えば、トリガであるこれらの切抜きに隣接する或る領域上に、単一の接触冷却を実施することができる。
【0031】
図3は、バンパビーム10及び取付けたパッチ24に冷却を提供するために、約900℃の温度を有する熱間成形部の、200℃未満の温度Tで保持される雄部品32と雌部品33とから成る成形金型31内での単一の接触冷却を達成するやり方を略示する。イニシエータ26の領域内では、道具との接触が一方の側でのみ提供される、即ち、バンパビーム10のみが道具と接触している。他方の側では、イニシエータ26の切抜きにより空隙が形成され、この空隙が、熱輸送(
図3に矢印で示すもの)に悪影響を及ぼし、これによって冷却速度に悪影響を及ぼす。局所領域30の冷却速度が局所的に抑制されることが、この局所領域30におけるビームの材料内でのマルテンサイトの形成に影響することがある。通常、マルテンサイトではなく、強度が低めであるが延性が高めの、より軟性の材料をこの局所領域30内に提供する他の相を、この局所領域30内で形成することができる。
【0032】
延性が高めであるというのは、材料が破断なしに多めに引き伸ばされ得ることを意味し、強度が低めであるというのは、ビームのウェブの、このような局所領域30内で曲がる傾向、従ってイニシエータ26と協働する傾向が大きくなることを意味する。更に、熱間成形金型内でのビーム及びパッチ24の接合成形に、追加の道具又は製造ステップが一切不要になる。イニシエータ26は、変形開始を提供して所定の領域での曲げが可能になる他の形状、及び/又は構成をも有することができる。例えば、イニシエータ26は、細孔ではなく、パッチ24内に打ち抜かれた1つ以上の窪み、穴の列、又は同様のものから成ることができる。
【0033】
バンパビームの特定の実施形態において、長尺ビーム10のウェブ16及び18は局所領域30にて、ビームに馬蹄様の形状を提供する僅かな屈曲部を包含することができ、このことが、前記局所領域30における曲がりやすさを更に誘発することができるであろう。
【0034】
図面に示す上述した実施形態は、本発明の、非限定的な例としてのみ見なされるべきであり、本発明の範囲内で多くの仕方で修正できるということが理解されるべきである。
【国際調査報告】