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特表2024-538938電気自動車の高電圧バッテリのための保護装置
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  • 特表-電気自動車の高電圧バッテリのための保護装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】電気自動車の高電圧バッテリのための保護装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20241018BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20241018BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241018BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20241018BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 S
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L58/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024518123
(86)(22)【出願日】2022-09-22
(85)【翻訳文提出日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 EP2022076380
(87)【国際公開番号】W WO2023066593
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】102021127371.4
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】シュヴィングハマー・フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ・ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】カルゲス・クリスティアン
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA08
5G503FA06
5G503FA14
5G503GD04
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC13
5H125BC21
5H125CC07
5H125CD02
5H125CD03
5H125DD02
5H125EE27
5H125EE41
5H125EE55
(57)【要約】
本発明は、車外のエネルギーネットワークを介して高電圧バッテリを充電するための充電コネクタを備えるとともに、電子的な制御ユニットを備えた電気自動車の高電圧バッテリのための保護装置であって、制御ユニットは、駐車している自動車において車外のエネルギーネットワークを介して充電を行なう場合の高電圧バッテリの充電状態を制御ユニットが監視し且つ制御するように構成されている保護装置に関する。制御ユニットはここで、自動車の位置を特定する車載の機能モジュールに接続されているとともに、車両のユーザの移動端末に無線で接続されており、端末が、ユーザの位置を特定する機能モジュールを備え、制御ユニットは、自動車からユーザまでの距離が、設定された制限値よりも大きい場合に、少なくともこの距離を反映している移動端末のデータを受信するように設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車外のエネルギーネットワークを介して高電圧バッテリを充電するための充電コネクタを備えるとともに、電子的な制御ユニット(SE)を備えた電動化された自動車(F)の高電圧バッテリのための保護装置であって、
前記制御ユニットは、駐車している自動車(F)において車外の前記エネルギーネットワークを介して充電を行なう場合の前記高電圧バッテリの充電状態(SOC)を当該制御ユニットが監視し且つ制御するように構成され、
前記制御ユニット(SE)は、前記自動車(F)の位置を特定する車載の機能モジュールに接続されているとともに、当該車両のユーザの移動端末(E)に無線で接続されており、当該端末(E)が、前記ユーザの位置を特定する機能モジュールを備え、
前記制御ユニット(SE)は、前記自動車(F)から前記ユーザまでの距離(d)が、設定された制限値よりも大きい場合に、少なくとも前記距離を反映している前記移動端末(E)のデータを受信するように設けられている
保護装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保護装置において、
電子的な前記制御ユニット(SE)は、前記移動端末(E)に宛てて前記ユーザに問い合わせを送信し、当該問い合わせに対する前記ユーザの返事を受信するように設けられ、
前記問い合わせは、前記自動車(F)の運転を開始する意志のない期間に関するものおよび/または既定の保護閾値まで前記充電状態(SOC)を低下させることに対する前記ユーザの同意に関するものである
ことを特徴とする保護装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の保護装置において、
電子的な前記制御ユニット(SE)は、手動で選択可能な第一の事前設定(V1)において、前記ユーザの前記同意(j)が前記移動端末(E)において確認されたときに初めて、既定の保護閾値(80%)まで前記充電状態(SOC)を低下させるように設けられている
ことを特徴とする保護装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の保護装置において、
電子的な前記制御ユニット(SE)は、手動で選択可能な第二の事前設定(V2)において、前記ユーザまでの前記距離(d)が、設定された制限値を超える場合、さらなる同意の問い合わせをすることなく、既定の保護閾値まで自動的に前記充電状態(SOC)を低下させるように設けられている
ことを特徴とする保護装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の保護装置において、
電子的な前記制御ユニット(SE)は、手動で選択可能な事前設定において、前記ユーザまでの前記距離(d)が、設定された第一の制限値を超える場合、或いは、前記ユーザまでの前記距離(d)が、既定の期間、設定された第二の制限値を超える場合、さらなる同意の問い合わせをすることなく、既定の保護閾値まで自動的に前記充電状態(SOC)を低下させ、前記第一の制限値は、前記第二の制限値よりも大きいように設けられている
ことを特徴とする保護装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の保護装置において、
電子的な前記制御ユニット(SE)では、一人のメインユーザと少なくとも一人の共同ユーザを定めることができ、前記メインユーザによってのみ前記充電状態を下げることを実行可能にすることができ、前記共同ユーザは、前記充電状態を下げることについて通知可能とのみされている
ことを特徴とする保護装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の保護装置において、
電子的な前記制御ユニット(SE)では、一人のメインユーザと少なくとも一人の共同ユーザを定めることができ、前記メインユーザによってのみ前記充電状態を下げることを実行可能にすることができ、前記制御ユニット(SE)は、サブ機能を備え、当該サブ機能を用いて、前記共同ユーザが、前記メインユーザによって実行可能にされた前記充電状態を下げることについて再び非実行化することができる
ことを特徴とする保護装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の保護装置の前記制御ユニット(SE)および/または前記移動端末(E)のためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い充電状態が長期にわたると、電気自動車のバッテリが著しく劣化するという知見に基づいている。電気自動車(例えば、ハイブリッド自動車または純粋な電気自動車)を駆動するときの電気エネルギー源について“バッテリ”という用語は、本明細書中、高電圧蓄積部若しくはトラクションアキュムレータについて略するのにも用いられる。
【背景技術】
【0002】
電気自動車には通常、リチウムイオン電池が用いられているが、これらは、ある程度物理的に劣化を受けてしまう。経年劣化とサイクル劣化とは区別され、経年劣化は、高電圧蓄積部の温度および保管時充電状態が高いほど著しい。
【0003】
高電圧蓄積部は通常、充電ケーブルが差し込まれていて車両ユーザが充電状態の充電目標を100%に設定していれば、可能な限りフル充電が行なわれる。このフル充電は、従来技術によれば、通常、マニュアルによる入力装置によってユーザが具体的な運転再開時間のプログラミングを行える場合を除いて、予想される車両運転再開のインテリジェントな予測なしに行なわれる。電気自動車を長期間つなぎっぱなしにしたまま動かさないと、とりわけ、例えば(休暇や出張など)数週間不在の場合などに、バッテリが不必要に著しく劣化する。
【0004】
基本的に、充電状態が最大約80%であれば、バッテリは、明らかに劣化し難くなることが既に知られている。これに関して消耗を抑える可能な方法が、例えば特許文献1から公知である。この文献から公知の方法は、その焦点を充電状態の複数の限界値に当てている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102019119761号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、持ちをよくしてコストを削減する理由から、バッテリの早期交換を回避するべく、バッテリの劣化を簡単且つ確実な方法でさらに低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴により解決される。本発明のさらに他の有利な態様は、従属請求項の主題である。
【0008】
本発明は、車外のエネルギーネットワークを介して高電圧バッテリを充電するための充電コネクタを備えるとともに、電子的な制御ユニットを備えた電動化された自動車の高電圧バッテリのための保護装置であって、制御ユニットは、駐車している自動車において車外のエネルギーネットワークを介して充電を行う場合の高電圧バッテリの充電状態を制御ユニットが監視し且つ制御するように構成されている保護装置に関する。制御ユニットはここで、自動車の位置を特定する車載の機能モジュールに接続されているとともに、この車両のユーザの移動端末に無線で接続されており、この端末が、ユーザの位置を特定する機能モジュールを備え、制御ユニットは、自動車からユーザまでの距離が、設定された制限値よりも大きい場合に、少なくともこの距離を反映している、移動端末のデータを受信するように設けられている。
【0009】
車両のユーザが複数いる場合は、好ましくは、“ユーザ”のうちメインユーザが一人定められていてもよい。
【0010】
本発明によれば、使用(特に次の運転開始)のインテリジェントな予測を確実にできるように、電子的な制御ユニット(例えば“シャイ・テク”機能)に様々な基準を読み込ませることが提案される。駐車時間が長くなる(例えば2日以上)と予想される場合、高電圧蓄積部の充電状態を設定された制限値まで低下させる。本発明によれば、この予想は、車両から車両ユーザまでの距離を割り出すことにより実行される。
【0011】
バッテリ充電状態の制限値は80%であることが好ましい。この制限値を超えると、リチウムイオン電池の劣化は、充電状態が上がるにつれて指数関数的に増加する。基本的に、設定された制限値まで低下させることを決定するためには、以下の基準が推奨される:
- バッテリ充電状態が制限値(例えば80%)より大きい。
- 車両の停止状態が、設定期間(例えば2日)を超えている。
- 充電ケーブルが差し込まれている若しくはバッテリが電力網に接続されている。
- 車両からユーザまでの距離が、既定の距離閾値を(例えば500km)を超えている。この距離は、ユーザが携帯する移動端末(例えば、スマートフォン)を介して、然るべくプログラムされた機能モジュールを用いて(例えば、“アプリ”を用いて)、つまり、車両とユーザの両方の位置を特定するアプリケーションを用いて割り出される。
- 加えて、相応に遠方の指定場所を伴う予定があれば、ユーザのカレンダーへの書き込みと照らし合わされてもよい。
【0012】
これらの基準に基づくことで、ユーザ自らが近い将来に車両を動かすことはないものと推論できる。つまり、長い電気的航続距離やバッテリの高充電状態は、当面は不要ということになる。
【0013】
同様に、他の人々(“共同ユーザ”、例えば、世帯構成員)も車両を使わないだろうということを認識させることができる。例えば、メインユーザと複数の共同ユーザを定めることができ、メインユーザだけが、充電状態を下げることに同意することを許されるようにできる。共同ユーザは、例えば、同じく移動端末のアプリケーションを介して或いは車内の情報ディスプレイを介して、充電状態を下げることについて知らされるだけである。代替的または付加的に、共同ユーザにサブ機能を提供することができ、この機能を用いて、もともとメインユーザが同意した充電状態を下げることについて再び非実行化することができる。このサブ機能は、例えば、同じく移動端末のアプリケーションにより或いは車内のマンマシンインターフェイス(HMI)により実装することができる。
【0014】
上述の基準が存在する場合に、好ましくも、高電圧蓄積部の保管時充電状態を設定された制限値まで下げるために、マニュアルで事前設定する少なくとも二つのシナリオが推奨される:
1. 事前設定1:車両からユーザまでの距離が、設定された制限値を超える場合或いは少なくともその距離が、設定された期間、設定された制限値を超えた場合に、設定された制限値まで充電状態を下げることについてのユーザの同意が、移動端末を介して毎回尋ねられる。車両のユーザ若しくは車両の所有者は、保管時充電状態を下げることに同意するかどうか、必要に応じて自ら決定することができる。
2. 事前設定2:上記距離が、設定された制限値を超えている場合或いは少なくともその距離が、設定された期間、設定された制限値を超えた場合に、車両のユーザ若しくは所有者により選択された然るべき別の事前設定により、代替的に、同意が毎回さらに尋ねられることなく自動的に充電状態を下げることができる。
【0015】
本発明の好ましい態様において、高電圧蓄積部から取り出されるエネルギーが、高電圧蓄積部の冷却のために使用される。これは、数日間にわたり複数回の冷却サイクルにおいて実行できる。これはさらに、天気予報と組み合わせて周囲の温度に応じて行うことができる。これにより、高電圧蓄積部の温度は、暑い夏の日に低く保つこともでき、高電圧蓄積部の寿命にさらにプラスの効果がもたらされる。
【0016】
図には、本発明の実施例が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明による第一のユーザシナリオを示す図である。
図2】本発明による第二のユーザシナリオを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1および図2の両図によれば、車外のエネルギーネットワークを介して高電圧バッテリを充電するための充電コネクタを備えるとともに、電子的な制御ユニットSEを備えた電動化された自動車Fの高電圧バッテリのための保護装置が示されており、制御ユニットは、駐車している自動車Fにおいて車外のエネルギーネットワークを介して充電を行なう場合の高電圧バッテリの充電状態SOCを当該制御ユニットが監視し且つ制御するように構成されている。
【0019】
両方のシナリオにおいて、制御ユニットSEは、自動車Fの位置を特定する車載の機能モジュールに接続されているとともに、車両のユーザの移動端末Eに無線で接続されており、端末Eは、ユーザの位置を特定する機能モジュールを備え、制御ユニットSEは、移動端末Eのデータを受信するように設けられている。このデータは、自動車Fからユーザまでの距離dが、設定された制限値(例えば500km)よりも大きい場合に、少なくともこの距離を反映している。
【0020】
図1の実施例によれば、電子的な制御ユニットSEはさらに、移動端末Eに宛ててユーザに問い合わせ(例えば“保護のために高電圧バッテリのSOCを80%に下げますか?”或いは“2日以上不在ですか?”)を送信し、この問い合わせに対するユーザの返事(例えば、はい/いいえ)を受信するように設けられ、その問い合わせは、自動車Fの運転を開始する意志のない期間に関するか、或いは、既定の保護閾値(例えば、80%)まで充電状態SOCを低下させることに対するユーザの同意に関するかの少なくともいずれかである。距離dに対して設定される制限値は、その距離からして比較的長い長旅になると言える程度の大きさが選択されることが好ましい。
【0021】
図1によれば、電子的な制御ユニットSEはさらに、手動で選択可能な第一の事前設定V1において、ユーザの同意(“はい”)が移動端末Eにおいて確認されたときに初めて、既定の保護閾値(80%)まで充電状態SOCを低下させるように設けられている。
【0022】
図2の実施例によれば、電子的な制御ユニットSEは、手動で選択可能な第二の事前設定V2において、ユーザまでの距離dが、設定された制限値(500km)を超える場合、さらなる同意の問い合わせをすることなく既定の保護閾値(80%)まで自動的に充電状態SOCを低下させるように設けられている。そのために、移動端末Eの機能モジュールKEは、自動車Fの制御ユニットSEに宛てて然るべき命令を送信し、制御ユニットSEは、この命令を自動的に実行して、充電状態SOCを低下させるように設けられている。
【0023】
本発明のさらなる発展態様では、電子的な制御ユニットSEは、手動で選択可能な事前設定において、ユーザ若しくは端末Eまでの距離dが、設定された第一の制限値を超える場合、或いは、ユーザ若しくは端末Eまでの距離dが、既定の期間、設定された第二の制限値を超える場合、さらなる同意の問い合わせをすることなく既定の保護閾値(80%)まで自動的に充電状態SOCを低下させ、上記第一の制限値は、上記第二の制限値よりも大きいように設けられていてもよい。
【0024】
本発明による制御ユニットSEの“装置”は、コンピュータプログラム(ソフトウェアモジュール)の形態のプログラミングされた機能モジュールにより実装されることが好ましい。
図1
図2
【国際調査報告】