(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】光学検出器の性能を測定するための装置、および関連する測定方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/00 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
G01J1/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519461
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 FR2022051879
(87)【国際公開番号】W WO2023073296
(87)【国際公開日】2023-05-04
(32)【優先日】2021-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520342828
【氏名又は名称】リンレッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リリアン・マルチノー
【テーマコード(参考)】
2G065
【Fターム(参考)】
2G065AA04
2G065AA13
2G065AB09
2G065AB28
2G065BA09
2G065BA38
2G065BB02
2G065BB21
2G065BB28
2G065CA01
2G065CA15
2G065DA05
(57)【要約】
光学検出器(20)の性能を測定するためのこの装置(10)は、
- クライオスタット(17)と、
- クライオスタット(17)の内側に固定される、検出器(20)を受けることが可能な保持器(19)と、
- 検出器(20)の性能を測定するための手段と、
- 検出器(20)の波長域において保持器に達する可能性がある放射を制限することが可能な、保持器(19)の周りに配置される遮蔽体(12a~12b)と、
- クライオスタット(17)の開口部(15)に挿入される、検出器(20)の波長域におけるシングルモード光ファイバ(16)と、
- 光ファイバ(16)に光束を生成することが可能なファイバ光源(23)を内蔵する少なくとも1つの光束生成モジュール(50)と、
を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学検出器(20)の性能を測定するための装置(10)であって、
- 前記光学検出器(20)をその予想動作条件に置くことが可能なクライオスタット(17)であって、それを真空下に置きかつそれを冷却するための手段を備える、クライオスタット(17)と、
- 前記クライオスタット(17)の内側に固定される、前記光学検出器(20)を受けることが可能な保持器(19)と、
- 前記光学検出器(20)の前記性能を測定するための手段と、
- 前記光学検出器(20)の波長域において前記保持器に達する可能性がある放射を制限することが可能な、前記保持器(19)の周りに配置される遮蔽体(12a~12b)と
を備える、測定装置(10)において、
- 前記光学検出器(20)の前記波長域にあるシングルモード光ファイバ(16)であって、前記光ファイバ(16)が、前記クライオスタット(17)の開口部(15)に挿入され、かつ
前記遮蔽体(12a~12b)の開口部に固定されて、前記光学検出器(20)の全体または一部に光束を投射する第1の端(14)と、
光束を受けるように意図される、前記クライオスタット(17)の外部の第2の端(22)と、
を備える、光ファイバ(16)と、
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に光束を生成することが可能なファイバ光源(23、33、43)を内蔵する、前記光束を生成するための少なくとも2つのモジュール(50~52)と、
を備え、
前記光学検出器(20)の前記性能を測定するための前記手段が、前記第2の端(22)に受けられる前記光束に応じて前記性能を測定することが可能であり、前記第2の端(22)に接続される前記モジュール(50~52)を交換することによって複数の別個の測定が行われ得ることを特徴とする、光学検出器(20)の性能を測定するための装置。
【請求項2】
前記ファイバ光源(23、33、43)が、発光ダイオード、スーパーコンティニューム光源、またはレーザから形成される、請求項1に記載の光学検出器(20)の性能を測定するための装置。
【請求項3】
前記光ファイバ(16)に、フッ素化ガラス、カルコゲナイドガラス、または多結晶材料から作られるコアが形成される、請求項1または2に記載の光学検出器(20)の性能を測定するための装置。
【請求項4】
放射測定を行うために前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に接続されるように意図される、前記モジュールの1つ(50)が、
- 第1のフィーダ光ファイバ(28)の内側に光束を生成するように意図されるファイバ光源(23)と、
- 前記光束を制限することが可能な光減衰器(24)であって、前記第1のフィーダ光ファイバ(28)と第2のフィーダ光ファイバ(29)との間に接続される、減衰器(24)と、
- 前記第2のフィーダ光ファイバ(29)の前記光束を第3のフィーダ光ファイバ(30)および第4のフィーダ光ファイバ(31)に分割することが可能な、前記第2のフィーダ光ファイバ(29)に接続された光スプリッタ(25)であって、前記第3のフィーダ光ファイバ(30)は前記クライオスタット(17)に挿入される前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に接続される、光スプリッタ(25)と、
- 前記第4のフィーダ光ファイバ(31)に接続され、かつ前記ファイバ光源(23)および前記光減衰器(24)の電力を制御して予想測定光度を得るために前記光スプリッタ(25)の出力における前記光束を測定することが可能な、基準検出器(26)と、
を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の光学検出器(20)の性能を測定するための装置。
【請求項5】
残留磁気測定を行うために前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に接続されるように意図される、前記モジュールの1つ(51)が、
- 第1のフィーダ光ファイバ(28)の内側に光束を生成するように意図されるファイバ光源(33)と、
- 前記第1のフィーダ光ファイバ(28)と第2のフィーダ光ファイバ(29)との間に接続される、前記光束を遮断することが可能な、光シャッタ(35)と、
- 前記第2のフィーダ光ファイバ(29)の前記光束を第3のフィーダ光ファイバ(30)および第4のフィーダ光ファイバ(31)に分割することが可能な、前記第2のフィーダ光ファイバ(29)に接続された光スプリッタ(25)であって、前記第3のフィーダ光ファイバ(30)は前記クライオスタット(17)に挿入される前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に接続される、光スプリッタ(25)と、
- 前記光スプリッタ(25)の出力における前記光束を制御することが可能な、前記第4のフィーダ光ファイバ(31)に接続される、基準検出器(34)と、
を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の光学検出器(20)の性能を測定するための装置。
【請求項6】
残留磁気測定を行うために前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に接続されるように意図される前記光束生成モジュール(51)が、前記ファイバ光源(33)の電源を遮断することによって暗電流測定を行うためにも実装される、請求項5に記載の光学検出器(20)の性能を測定するための装置。
【請求項7】
前記光ファイバ(16)が、関心波長域において1.2から3.8の範囲の正規化周波数(V)を有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の光学検出器(20)の性能を測定するための装置。
【請求項8】
スペクトル応答測定を行うために前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に接続されるように意図される、前記光束生成モジュールの1つ(52)が、
- 第1のフィーダ光ファイバ(44)の内側に光束を生成するように意図されるファイバ光源(43)と、
- 前記第1のフィーダ光ファイバ(44)に接続される回折格子(46)と、
- 前記回折格子(46)の出力に接続されるフィルタ(47)と、
- 前記フィルタ(47)の出力に接続される第2のフィーダ光ファイバ(48)と、
を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の光学検出器(20)の性能を測定するための装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の光学検出器(20)の性能を測定するための装置を用いて光学検出器(20)の性能を測定する方法であって、
- 前記クライオスタット(17)の前記保持器(19)に前記光学検出器(20)を組み付けるステップ(60)と、
- 前記光学検出器(20)の所望の動作真空準位に達するまで前記クライオスタット(17)を真空下に置くステップ(61)と、
- 前記光学検出器(20)の所望の動作温度に達するまで前記クライオスタット(17)を冷却するステップ(62)と、
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に第1の光束生成モジュール(50~52)を接続するステップ(63)と、
- 前記光学検出器(20)の前記性能を測定するステップ(64)と、
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)から前記第1の光束生成モジュール(50~52)を分離するステップ(65)と、
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に第2の光束生成モジュール(50~52)を接続するステップ(66)と、
- 前記光学検出器(20)の前記性能を測定するステップ(67)と、
- 室温に達するまで前記クライオスタット(17)を加熱するステップ(72)と、
- 前記クライオスタット(17)を周囲圧力下に戻して前記光学検出器(20)を取り外すステップ(73)と、
を含む、方法。
【請求項10】
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に、放射測定を行う第1の光束生成モジュール(50)を接続するステップ(63)と、
- 前記光学検出器(20)の放射測定ステップ(64)と、
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)から前記第1の光束生成モジュール(50)を分離するステップ(65)と、
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に、残留磁気測定を行う第2の光束生成モジュール(51)を接続するステップ(66)と、
- 前記光学検出器(20)の残留磁気を測定するステップ(67)と、
- 前記光学検出器(20)の暗電流を測定するステップ(68)と、
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)から前記第2の光束生成モジュール(51)を分離するステップ(69)と、
- 前記光ファイバ(16)の前記第2の端(22)に、スペクトル応答測定を行う第3の光束生成モジュール(52)を接続するステップ(70)と、
- 前記光学検出器(20)のスペクトル応答を測定するステップ(71)と、
を含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学検出器の性能を測定するための装置、および関連する測定方法に関する。より詳細には、本発明は、低温で動作する量子現象を実装する検出器であって、超低温に、典型的には50から200Kの範囲に、冷却されなければならない検出器に関する。
【0002】
本発明は、可視域における、近赤外、すなわち1から2.5マイクロメートルの範囲内の波長を有する赤外(「短波長赤外(Short-Wavelength InfraRed)」としてSWIRとも呼ばれる)、3から8マイクロメートルの範囲内の波長を有する中赤外(「中波長赤外(Mid-Wavelength InfraRed)」としてMWIRとも呼ばれる)、および8から14マイクロメートルの範囲内の波長を有する遠赤外(「長波長赤外(Long-Wavelength InfraRed)」としてLWIRとも呼ばれる)、における検出器の性能を測定するために適用されるものと意図される。
【0003】
したがって、本発明は、多数の検出器にかつ多数の別個の領域に対して適用されてよい。より詳細には、本発明は、例えば、宇宙分野の用途などの、極めて要求が多い用途のために意図される検出器の性能を特性化するために、高精度の測定を提供することを意図する。
【背景技術】
【0004】
量子型検出器の性能を特性化するために、特にそれが衛星に搭載される前に、
- 放射測定、
- 残留磁気測定、
- 暗電流測定、および
- スペクトル応答測定
などの、複数の異なる測定が実施されてよい。
【0005】
放射測定は、検出器20への入射光子の束に応じて検出器の出力レベル応答を測定することを意図する。この目的で、
図1aに例示されるように、放射テストベンチ100が従来、およそ1マイクロメートルの発光ピークで擬似黒体発光法則を得ることを可能にする光源101を備える。
【0006】
典型的には、この光源101は、ほぼ2,700ケルビンの色温度で数十ワットの光強度を有してよい。本発明の意味では、「色温度」は、熱作用によってのみ光を発する理想材料との比較によって光源を特性化する。そのような光源101は従来、抵抗体を形成する巻線を備える。しかしながら、この種類の光源101によって発生される光L11は極めて不均一であり、遠視野では、光源101の抵抗体の巻線の形状による光変動を観察することが可能である。
【0007】
この欠点を是正するために、光源101の出力において積分球102が使用されて、より均一な光束L12を得る。より正確には、この積分球102は、可調絞り103を通して光源101によって駆動される。実際、可調絞り103は、上記光源101の安定性を保証するために、光源101のための定電流を保ちつつ光子の量を調節することを可能にする。更に、可調絞り103は、積分球102の出力における光線の分布を変更しない。
【0008】
積分球102に侵入する光子の量を制御するために、積分球102に基準検出器104が設けられて、積分球102に存在する光子の量を測定する。基準検出器104によって探索および測定される光子の量に応じてコントローラ110が光源101の電力および絞り103の開口率を制御する。
【0009】
積分球102の出力における光束L12は、その内壁が関心波長域における放射を吸収するように意図される熱化エンクロージャ105に侵入する。この熱化エンクロージャ105は、検出器20の視角を制限することを可能にする遮蔽体106を組み込む。より正確には、積分球102によって直接伝送される光束だけが検出器20に達するように、迷光束が遮蔽体106によって捕獲され、熱化エンクロージャ105の壁に吸収される。
【0010】
熱化エンクロージャ105の熱化は、壁の発光容量を制限することを可能にする。例えば、室温が実質的に22℃である間エンクロージャは12℃温度に維持できる。
【0011】
そのため、熱化エンクロージャ105の出力における光束L13は、検出器20に直接達する。検出器20は、検出器20の動作条件を再現するように意図されるクライオスタット107に埋め込まれる。例えば、宇宙用途のために、検出器20は、極低温度で真空下で動作し得る。
【0012】
より正確には、クライオスタット107における真空準位は10-5mbarでよく、一方、クライオスタット107の温度は、短波長赤外検出器には180K近く、中波長赤外検出器には150Kと110Kとの間、および長波長赤外検出器には60Kと100Kとの間でよい。
【0013】
クライオスタット107内の光束L13の伝搬を制限するために、検出器20の周りにも遮蔽体112が設けられてよい。この放射テストベンチ100に関して、遮蔽体112は、光束L13を受け入れるために開口される。
【0014】
クライオスタット107と熱化エンクロージャ105との間に圧力差および温度差があれば、クライオスタット107は、熱化エンクロージャ105から絶縁される。光束L13は、光学窓111を通ってクライオスタット107に侵入する。光学窓111と遮蔽体112との間に、クライオスタットは従来、検出器20によって使用される波長域を通すだけのサイズに特に設定されるフィルタを備える。
【0015】
更に、検出器20は従来、感応素子または画素のアセンブリを備える。従来、入射光子の束に応じてこれらの感応素子の出力レベルを測定することが所望される。この目的で、検出器20の出力レベルの測定を行う前に光束L13の受入れの中心点P10を、この中心点P10が検出器20の中心に配置されるように調節するために、検出器20は、変位部材109を用いて移動保持器108に組み付けられる。
【0016】
放射測定を行うために、
図1bに例示される第1のステップ120で、オペレータがはじめにクライオスタット107の移動保持器108に検出器20を組み付ける。オペレータは次いで、第2のステップ121の間、クライオスタット107を真空下に置くことを制御する。
【0017】
所望の真空準位が高ければ、このクライオスタット107を真空下に置くことは、特に長く、従来は4~8時間の間にわたって続き、その期間の間に圧力および温度の頻繁な制御が行われなければならない。所望の真空準位に達すると、第3のステップ122で、クライオスタット107は所望の温度に冷却される。このクライオスタット107の冷却の第3のステップ122は、一般に1~3時間の間にわたって続く。
【0018】
これらのクライオスタット107の準備のステップが完了されると、ステップ123で、オペレータは、様々な感応素子に対して様々な放射測定を行う。
【0019】
この目的で、オペレータは、光束L13の受入れの中心点P10を、この中心点P10が検出器20の中心に配置されるように調節するために、移動保持器108の変位を制御する。感応素子P10の出力レベルの測定は次いで、絞り103の開口を変化させることによって、複数の光子量に対して行われる。
【0020】
そのため、検出器20の全ての感応素子の出力レベルを測定するために測定が次々と行われる。典型的には、これらの測定は合わせて、オペレータにとってほぼ1日の操作を必要とする。
【0021】
測定の終了時に、ステップ124で、クライオスタット107が室温に戻るように温度が徐々にかつゆっくりと上げられなければならない。検出器の物理的完全性を保護するために、このステップ124は、圧力および温度の頻繁な制御が行われなければならないほぼ1日の操作を必要とする。最後のステップ125は真空準位を上げることを含み、その後、放射テストベンチ100からクライオスタット107を取り外すことが可能となる。全体的に、ステップ120から125は合わせて、オペレータにとってほぼ1週間の操作を必要とする。
【0022】
放射テストベンチ100において検出器20の性能が得られる前または後に、この検出器20は、別のテストベンチ、例えば
図2aに例示されるものなどの、残留磁気テストベンチ200で分析できる。この目的で、クライオスタット107が放射テストベンチ100から取り外されて残留磁気テストベンチ200に設けられる。
【0023】
残留磁気テストベンチ200への検出器20を組み込んだクライオスタット107の設置に先立ち、クライオスタット107の遮蔽体112に組み付けられたフィルタが変更されてよい。
【0024】
残留磁気測定は、検出器の画像へのシーンの時間変動の効果を観察することを意図する。この目的で、検出器によって以前に取り込まれた画像が読み出されている画像に影響する(残留磁気効果)かどうか、および読出し中に積分を行う検出器に対しては、検出器によって積分されている画像が読み出されている画像に影響する(残留磁気前効果)かどうかが調査される。
【0025】
この測定を行うために、制御された時間変動を有する光強度を有する光源201を使用することが必要である。そのため、光源201は、1ミリ秒のオーダーの応答時間で光源201の出力を閉じることが可能な機械シャッタ202と関連付けられる。
【0026】
光源201は、放射テストベンチ100の光源101と同一でよい。
【0027】
残留磁気測定を行うために、
図2bに例示される第1のステップ220で、オペレータがはじめに残留磁気テストベンチ200にクライオスタット107を組み付ける。オペレータは次いで、第2のステップ221で、クライオスタット107を真空下に置くことを、および第3のステップ222で、クライオスタット107を冷却することを制御する。
【0028】
これらのクライオスタット107の準備のステップが完了されると、ステップ223で、オペレータは、異なる残留磁気測定を行う。この目的で、オペレータは、シャッタ202の閉鎖時間の間に変更される複数の連続画像の取得を制御し、そしてオペレータは、取得画像を基準画像と比較して取得画像への残留磁気前または残留磁気効果を検出する。残留磁気効果は、取得画像が以前の画像の影響に関連するアーチファクトを呈するときに現れる一方で、残留磁気前効果は、読出し中に積分を行う検出器に対して、読み出されている画像が積分されている画像(IWR、「読み出しながら積分する(Integrated While Read)」、モードで取得)の影響に関連するアーチファクトを呈するときに現れる。
【0029】
放射テストベンチ100に対してと同じように、残留磁気測定が完了されると、オペレータは、ステップ224で、クライオスタット107の温度の増加を、およびステップ225で、圧力上昇を制御する。全体的に、ステップ220から225は合わせて、オペレータにとって数日の操作を必要とする。
【0030】
残留磁気テストベンチ200で検出器20の性能が得られる前または後に、この検出器20は、
図3aに例示されるものなどの、暗電流テストベンチ300で分析されてよい。この目的で、クライオスタット107が残留磁気テストベンチ200から取り外されて暗電流ベンチ300に設けられる。
【0031】
暗さ測定または暗電流測定は、検出器20の暗電流、すなわち、磁束が存在しない検出器20に集積された部品の漏れ電流を測定することを意図する。暗電流レベルは、検出器性能に影響する。実際、暗電流が高いほど、欠陥画素の数が高く、暗電流雑音が検出器20の一般雑音に一層影響を与える。
【0032】
したがって、暗電流測定は、検出器20の動作温度を部分的に設定する。暗電流を測定するために、テストベンチから発する磁束に固有の電流は、測定されるべき暗電流に対して無視できるものでなければならない。
【0033】
したがって、この測定中に温度を変化させて、厳密に測定暗電流がバックグラウンド磁束から形成されないことを確実にすることも重要である。
【0034】
この目的で、暗電流ベンチ300への検出器20を組み込んだクライオスタット107の設置に先立ち、検出器20を絶縁するために、フィルタがクライオスタット107の遮蔽体112から取り外されてシャッタ313と置き換えられる。更に、光学窓111は、不透明カバー311でも覆われて検出器20を更に絶縁してもよい。
【0035】
これらの2つの光絶縁レベルは、クライオスタット107の温度を変化させることによって検出器20の感応素子の漏れ電流を測定することを可能にする。
【0036】
この目的で、
図3bに例示されるように、オペレータが同じく、第1のステップ320で、クライオスタット107に検出器20を組み付け、次いで第2のステップ321で、クライオスタット107を真空下に置くことを、および第3のステップ322で、クライオスタット107を冷却することを制御しなければならない。ステップ323で、各感応素子の漏れ電流の測定を行った後に、オペレータは、ステップ324で、クライオスタット107の温度の増加を、およびステップ325で、圧力上昇を制御する。全体的に、ステップ320から325は合わせて、やはりオペレータにとってほぼ1週間の操作を必要とする。
【0037】
最後のテストベンチは、検出器20のスペクトル応答を得ることを意図する。スペクトル応答の測定は、検出器20の画素の波長応答を得ることを可能にする。実際、使用される技術が何であれ、検出器20の応答は、波長に応じて均一ではない。それは、多くの技術的パラメータに依存し得る。
【0038】
特に検出器20の前に光学フィルタが使用されることが所望されるときに、スペクトル応答を知ることがしばしば必要である。したがって、所望の用途に応じて或る波長がフィルタリングされるべきであるか否かを予想することが可能である。
【0039】
スペクトル応答測定を行うために、単色光束L42の波長が変化されなければならず、既知のスペクトル応答を有する基準検出器404の応答に対する検出器20の応答の比率が測定されなければならない。
【0040】
この目的で、
図4aに例示されるように、スペクトル応答テストベンチ400が従来、その光束がコントローラ410によって波長変調される光源401を備える。光源401は、放射テストベンチ100の光源101と同一でよい。
【0041】
光源401によって発生される光束L41は、単色光束L42を得ることを可能にする回折格子414に伝送される。単色光束L42は次いで、積分球402に挿入される前に、回折格子414の高次の影響を排除するために、フィルタ415によって処理される。この積分球402は、基準検出器404に対する光束の他に検出器20に対する光束L44を発生させることを可能にする。この目的で、検出器のクライオスタット107は、開いている遮蔽体112、および同じく開いた光学窓111を備える。可能であれば遮蔽体112にフィルタが組み付けられてよい。
【0042】
スペクトル応答テストベンチ400を使用するために、オペレータが更に、
図4bに例示されるように、第1のステップ420で、クライオスタット107に検出器20を組み付け、次いで第2のステップ421で、クライオスタット107を真空下に置くことを、および第3のステップ422で、クライオスタット107を冷却することを制御しなければならない。ステップ423で、スペクトル応答測定を行った後に、オペレータは、ステップ424で、クライオスタット107の温度の増加を、およびステップ425で、圧力上昇を制御する。全体的に、ステップ420から425は合わせて、やはりオペレータにとっておよそ1週間の操作を必要とする。
【0043】
したがって、検出器20を完全に特性化するために、クライオスタット107はベンチ100、200、300および400間で搬送され、1人または複数のオペレータが全てのステップ120~125、220~225、320~325および420~425を実施しなければならない。したがって検出器20の完全特性化は、現在はオペレータにとってほぼ1カ月の作業を必要とする。
【0044】
更に、これらの異なるテストベンチ100、200、300および400は著しいバルクも有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0045】
したがって本発明の技術的問題は、より簡単かつより迅速に、放射測定、残留磁気測定、暗電流測定およびスペクトル応答測定などの、複数の別個の測定で検出器を特性化することである。
【課題を解決するための手段】
【0046】
この技術的問題に対処するために、本発明は、検出器を移動させることなく異なる測定を行うことを可能にする単一のテストベンチを提供する。この目的で、検出器はクライオスタット内に設けられ、クライオスタットは、光ビームを検出器の前に伝送するように意図される、内部に貫通したシングルモード光ファイバを有する。
【0047】
シングルモード光ファイバは、2つの端、すなわち、クライオスタットの内側に設けられる第1の端、ならびにクライオスタットの外側に設けられ、かつ、放射測定、残留磁気測定、暗電流測定およびスペクトル応答測定などの、複数の別個の測定を行うために、ファイバ光源を内蔵する複数の光束生成モジュールが接続され得る第2の端を備える。
【0048】
この目的で、第1の態様によれば、本発明は、光学検出器の性能を測定するための装置であって、
- 検出器を予想動作条件に置くことが可能なクライオスタットであり、それを真空下に置きかつそれを冷却するための手段を備える、クライオスタットと、
- 検出器性能を測定するための手段と、
- クライオスタットの内側に固定される、検出器を受けることが可能な保持器と、
- 検出器の波長域において保持器に達することが可能な放射を制限するように保持器の周りに配置される遮蔽体と
を備える、装置に関する。
【0049】
本発明は、測定装置が
- 検出器の動作波長域にあるシングルモード光ファイバであり、クライオスタットの開口部に挿入され、かつ
遮蔽体の開口部に固定されて、検出器の全体または一部に光束を投射する第1の端と、
光束を受けるように意図される、クライオスタットの外部の第2の端と、
を備える、光ファイバと、
- 光ファイバの第2の端に光束を生成することが可能なファイバ光源を内蔵する少なくとも2つの光束生成モジュールと、
を備え、
検出器性能を測定するための手段が、第2の端に受け入れられる光束に応じて上記性能を測定することが可能であり、第2の端に接続されるモジュールを交換することによって複数の別個の測定が行われ得ることを特徴とする。
【0050】
本発明の意味では「ファイバ光源」は、その生成される光ビームが、光源と関連付けられる光ファイバのモードと結合される光源である。このファイバ光源は、例えば、発光ダイオード、スーパーコンティニューム光源またはレーザでよい。非線形光伝送特性を有する材料へレーザビームを向けた結果、材料を通るレーザビームの走行がレーザビームのスペクトルを変更することによって、スーパーコンティニューム光源が得られる。
【0051】
ファイバ光源とは、光ファイバとの光源の結合を意味し、一次光源から発する光束は、光ファイバの内側をファイバ出力まで導かれる。光源とファイバとの間の結合は、2つの部品の配列によっておよび/または中間部品(レンズ、プリズム...)を用いて行われてよい。
【0052】
本発明は、したがって、光束を生成するためのモジュールを用いて光ファイバに注入される上記光束を変更することによって、クライオスタット内で検出器を移動させることなく、かつそれを繰り返し真空下に置くことを必要とすることなく複数の測定を行うことを可能にする。結果として、光束変化の間クライオスタットが同じテストベンチにかつ同じ状態にとどまることができるので、多数の圧力上昇/低下のおよび温度上昇/低下の段階を実施することはもはや必要でない。
【0053】
本発明は、したがって、放射測定およびスペクトル応答テストベンチの嵩張る要素、すなわち、光源および積分球を、ファイバ光源およびシングルモード光ファイバを内蔵するモジュールと置き換えることを含む。
【0054】
実際、ファイバ光源、例えば発光ダイオードによって発生される光束は従来、現状技術の光源より低い電力およびその構造に起因する不均一な空間分布を有する。積分球を使用して均一化を行うことが可能と考えられる。しかしながら、積分球の使用は著しい電力損失をもたらし、それゆえ所望の電力レベルを得ることは困難である。
【0055】
この問題を解決するために、本発明は、ファイバ光源から発する光束を空間的にフィルタリングし、光度を失うことなく、その出力において、例えばガウスビームの形態の均一な発散を可能にする、シングルモード光ファイバを使用することを提供する。
【0056】
したがって、光ファイバのシングルモード特性は、不均一性を補正することを可能にし、その結果、シングルモード光ファイバの出力において、検出器に伝送される光束は現状技術に使用される光束と同等となる。
【0057】
公知であるように、光ファイバのシングルモード特性は、以下の関係に従って、正規化周波数(V)が1から2.405のオーダーとなるように光ファイバのステップインデックス(NA)およびコアの直径(a)を選択することによって得られる:
【0058】
【0059】
式中λは検出器の関心波長に相当する。
【0060】
本発明の意味では、「シングルモード」光ファイバは、関心波長域において1.2から3.8の範囲の正規化周波数(V)を有する光ファイバである。実際、この正規化周波数域において、波長域の大部分がシングルモード挙動を有し、光ファイバは、外部光束の結合をほとんど受けない。したがって、光ファイバは、外乱からの効率的な絶縁を提供する。
【0061】
光ファイバの使用は他の利点も有する。
【0062】
実際、光ファイバは、外部放射を非常に効率的にフィルタリングすることおよび検出器の関心波長域における光束の伝送を支持することが可能な光シースを有するように選択されてもよい。したがって、中波長または長波長赤外における用途には、シリカコアを持つ光ファイバは、シリカの吸収により最適でない。
【0063】
好ましくは、光ファイバは、フッ素化ガラスから、例えばZblan、カルコゲナイド、または塩化銀もしくは臭化銀などの多結晶材料から作られるコアが形成される。Zblanは、その名前がフッ素化ガラスに含まれる元素、特にジルコニウム、バリウム、ランタン、アルミニウムおよびナトリウムに由来し、それは、3から8マイクロメートルの範囲内の波長を有する、中波長赤外における用途のために高性能を有する。カルコゲナイドガラス光ファイバは、赤外における広い透明領域および有意な非線形光学特性を有する。したがって、カルコゲナイドガラス光ファイバは、中波長赤外および長波長赤外における用途のために適合される。コアが多結晶材料から作られる光ファイバが広く開発されており、それらは、それゆえに比較的低コストを有し、全ての赤外域における検出器に伝送される光ビームの均一性を確実にすることを可能にする。
【0064】
更に、光ファイバは、温度または圧力損失のリスクを制限するために開口部を非常に小さくしてクライオスタットに組み込まれてよい。
【0065】
更に、光ファイバの使用は、電気通信から発する集積光機能を使用することを可能にする。
【0066】
したがって、放射測定を行うために、光ファイバの第2の端に接続されるように意図される、光束生成モジュールの1つが、
- 第1のフィーダ光ファイバの内側に光束を生成するように意図されるファイバ光源と、
- 第1のフィーダ光ファイバと第2のフィーダ光ファイバとの間に接続される、光束を制限することが可能な、光減衰器と、
- 第2のフィーダ光ファイバの光束を第3および第4のフィーダ光ファイバに分割することが可能な、第2のフィーダ光ファイバに接続された光スプリッタであって、第3のフィーダ光ファイバはクライオスタットに挿入される光ファイバの第2の端に接続される、光スプリッタと、
- ファイバ光源のおよび光減衰器の電力を制御して予想測定光度を得るために光スプリッタの出力における光束を測定することが可能な、第4のフィーダ光ファイバに接続される基準検出器と
を備える。
【0067】
結果として、低バルク光学素子を限定的に実装することによって、現状技術の放射テストベンチで実施される放射測定と同程度効率的な放射測定を行うことが可能である。
【0068】
残留磁気測定を行うために、光ファイバの第2の端に接続されるように意図される、光束生成モジュールの1つが、
- 第1のフィーダ光ファイバの内側に光束を生成するように意図されるファイバ光源と、
- 光束を遮断することが可能な光シャッタであり、第1のフィーダ光ファイバと第2のフィーダ光ファイバとの間に接続される、シャッタと、
- 第2のフィーダ光ファイバの光束を第3および第4のフィーダ光ファイバに分割することが可能な、第2のフィーダ光ファイバに接続された光スプリッタであって、第3のフィーダ光ファイバはクライオスタットに挿入される光ファイバの第2の端に接続される、光スプリッタと、
- 光スプリッタの出力における光束を制御することが可能な、第4のフィーダ光ファイバに接続される基準検出器と
を備える。
【0069】
従来の残留磁気テストベンチと逆に、この実施形態は、機械シャッタの代わりに光または音響光学シャッタを使用することを可能にする。ここで、光または音響光学シャッタが1マイクロ秒のオーダーの応答時間を呈するのに対し、機械シャッタは例えば、1ミリ秒のオーダーの応答時間を有する。したがって残留磁気測定はより正確となることができる。
【0070】
更に、次いで実装される光束生成モジュールは、ファイバ光源の電源を遮断することによって暗電流の測定を行うために使用されてよい。実際、正規化周波数(V)が関心波長域において1.5から3の範囲である光ファイバを使用することによって、周囲光の光束の波長は、光ファイバと結合できない。したがって、カバーを使用することは必要でない。
【0071】
スペクトル応答測定を行うために、光ファイバの第2の端に接続されるように意図される、光束生成モジュールの1つが、
- 第1のフィーダ光ファイバの内側に光束を生成するように意図されるファイバ光源と、
- 第1のフィーダ光ファイバに接続される回折格子と、
- 回折格子の出力に接続されるフィルタと、
- 第2のフィルタの出力に接続される第2のフィーダ光ファイバと
を備える。
【0072】
したがって、放射測定、残留磁気測定、暗電流測定およびスペクトル応答測定は、クライオスタットに挿入される光ファイバに接続されるファイバ光源によって実施でき、その結果2つの測定間に検出器を移動させることは必要でない。
【0073】
したがって、1つの測定から他方に移るために、クライオスタットの真空準位または温度を変更する必要はなく、動作モードおよび/または光束生成モジュールを変えることで十分である。したがって本装置は、全ての必要とされる測定を簡略的に行うことを可能にする。
【0074】
したがって、第2の態様によれば、本発明は、上述したものの種類の測定装置を用いて光学検出器の性能を測定する方法に関する。この方法は、
- クライオスタット保持器に、その性能が測定されることが所望される検出器を組み付けるステップと、
- 検出器のための所望の動作真空準位に達するまでクライオスタットを真空下に置くステップと、
- 検出器の所望の動作温度に達するまでクライオスタットを冷却するステップと、
- 光ファイバの第2の端に第1の光束生成モジュールを接続するステップと、
- 検出器性能を測定するステップと、
- 光ファイバの第2の端から第1のモジュールを分離するステップと、
- 光ファイバの第2の端に第2の光束生成モジュールを接続するステップと、
- 検出器性能を測定するステップと、
- 室温に達するまでクライオスタットを加熱するステップと、
- クライオスタットを周囲圧力下に戻して検出器を取り外すステップと
を含む。
【0075】
好ましくは、4つの別個の測定が行われ、そのため本方法は、
- 光ファイバの第2の端に、放射測定を行う第1の光束生成モジュールを接続するステップと、
- 検出器の放射測定ステップと、
- 光ファイバの第2の端から第1の光束生成モジュールを分離するステップと、
- 光ファイバの第2の端に、残留磁気測定を行う第2の光束生成モジュールを接続するステップと、
- 検出器の残留磁気を測定するステップと、
- 検出器の暗電流を測定するステップと、
- 光ファイバの第2の端から第2の光束生成モジュールを分離するステップと、
- 光ファイバの第2の端に、スペクトル応答測定を行う第3の光束生成モジュールを接続するステップと、
- 検出器のスペクトル応答を測定するステップと
を含む。
【0076】
本発明は、以下の説明を読むことでよく理解され、その詳細は単に一例として与えられ、同一の参照符号が同一の要素に関する、添付の図面との関連で展開される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【
図1a】現状技術の放射テストベンチの簡略表現である。
【
図1b】
図1aのベンチに基づく放射測定の実装のステップの例示である。
【
図2a】現状技術の残留磁気テストベンチの簡略表現である。
【
図2b】
図2aのベンチに基づく残留磁気測定の実装のステップの例示である。
【
図3a】現状技術の暗電流テストベンチの簡略表現である。
【
図3b】
図3aのベンチに基づく暗電流測定の実装のステップの例示である。
【
図4a】現状技術のスペクトルテストベンチの簡略表現である。
【
図4b】
図4aのベンチに基づくスペクトル測定の実装のステップの例示である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る光学検出器の性能を測定するための装置の簡略表現である。
【
図6】放射測定を得る
図5の測定装置の構成の概略的例示である。
【
図7】残留磁気測定を得る
図5の測定装置の構成の例示である。
【
図8】スペクトル測定を得る
図5の測定装置の構成の例示である。
【
図9】
図6の構成でのファイバ光源の出力における光束の変動の例示である。
【
図10】
図6の構成でのクライオスタットに挿入される光ファイバの出力における光束の変動の例示である。
【
図11】
図6の構成での検出器上の光束の変動の例示である。
【
図12】
図1aの現状技術の放射テストベンチにおける積分球の出力における光束の変動の例示である。
【
図13】
図1aの現状技術の放射テストベンチにおける光学窓の入力における光束の変動の例示である。
【
図14】
図1aの現状技術の放射テストベンチにおける検出器上の光束の変動の例示である。
【
図15】本発明の方法の一実施形態に係る放射測定の、残留磁気測定の、暗電流測定の、およびスペクトル測定の実装のステップの例示である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
図5に例示されるように、本発明は、光学検出器20の性能を特性化することを可能にする試験装置10を目的とする。この目的で、光学検出器20は、保持器19を用いてクライオスタット17に組み付けられる。保持器19は、検出器20が組み付けられる電子回路を受けるように意図されるプレートから形成されてよい。したがって、保持器19は、検出器20のアセンブリの電子回路のための電源コネクタを受けてよい。
【0079】
この保持器19は、脚18を用いてクライオスタット17の内壁に結合される。典型的には、4つの脚18が保持器プレート19の4つの角に配置される。検出器20の電力供給および情報帰還信号を伝達するために、クライオスタット17は従来、
図5に図示されない、一組のコネクタによって交差される。そのため、検出器20が保持器19に組み付けられると、後者は、検出器20の使用中に予想される条件でのその動作と同様に給電および制御され得る。
【0080】
例えば、検出器20は、検出器20が極低温かつ超高真空準位で動作する宇宙用途のために意図され得る。そのため、クライオスタットは、検出器20をその予想動作条件に置くことを可能にする、それを真空下に置き、それを冷却するための手段を備える。
【0081】
電源のおよび検出器性能の測定の装置は、クライオスタット17を冷却しかつ真空下に置くための手段とともに、従来クライオスタット17の外側に配置される。
【0082】
検出器20の周りに、クライオスタット17は、検出器20の波長域において保持器19に達することが可能な放射を制限するように意図される遮蔽体を備える。
図5の例では、遮蔽体は、2つの部分で形成される。平行六面体または円筒部12aがクライオスタット17の内壁にまたは保持器19に取り付けられる。より詳細には、遮蔽体の平行六面体または円筒部12aは、脚18が取り付けられるクライオスタットの内壁に関して保持器19の高さを超えて延びる。この第1の平行六面体または円筒部12aの上に、第2の角錐または円錐部12bが検出器20を越えて設けられる。この角錐または円錐部12bの頂点に、遮蔽体は、光ファイバ16の第1の端14を受け入れる開口部を有する。この光ファイバ16は、遮蔽体の角錐または円錐部12bの開口部の前に配置される、クライオスタットの開口部15も通り抜ける。
【0083】
もちろん、遮蔽体の形状は、本発明を変えることなく変化し得る。例えば、遮蔽体は、検出器20の前に小寸法の開口部を形成することを可能にするテーパ部分または任意の他の形状が頂部となる第1の円筒部分を備えてよい。実際、本発明は、クライオスタット17の遮蔽体に2つの別個の役割を与える:
- クライオスタット17に存在する望ましくない光束を遮断する第1の役割、および
- 検出器20の前に光ファイバ16の第1の端14を位置決めする第2の役割。
【0084】
実際、光ファイバ16の第1の端14は、この第1の端14から出てくる光束が主に検出器20の焦点面をカバーするように配置されなければならない。この目的で、クライオスタット寸法は、光ファイバ16のこの第1の端14の案内の必要性に適合されなければならない。例えば、クライオスタット17の容積は、250cm3から1,000cm3の範囲にあってよい。それによって、クライオスタット17の容積は、現状技術のクライオスタットの容積より3倍大きくてよく、この容積は、使用される光ファイバ16の種類におよび第1の端14のレベルのその開口数に依存する。開口数は、ファイバの入力において受光錐を、およびファイバの出力において伝搬錐を特性化する。例えば、光ファイバ16の開口数は、シングルモードで0.1と0.4との間で選択されてよい。
【0085】
好ましくは、クライオスタット17の内壁の、遮蔽体12aおよび12bの、保持器19の、ならびに脚18の材料は、検出器20が真空下に置かれるときに分子の脱着を制限するように選択される。同様に、クライオスタット17の開口部15は、好ましくは光ファイバ16の直径に適合されて、クライオスタット17への迷光束の取込みを制限する。
【0086】
より詳細には、光ファイバ16は、主に検出器20の波長域にあるシングルモード光ファイバである。光ファイバ16のこのシングルモード特性は、光ファイバが好ましくは関心波長域において1.2から3.8の範囲の正規化周波数を有することを示す。例えば、光ファイバは、Zblanから、カルコゲナイドガラスから、または多結晶材料から作られるコアが形成されてよい。更に、光ファイバ16は、特に検出器20への迷光束の伝送のリスクを制限するように選択されるシース、例えばアクリレートシースで覆われてよい。シースは、光ファイバ16と同じ材料に基づいて形成されてもよく、この材料は、それゆえ、伝送窓を画定することを可能にするドーパント、したがって光ファイバ16が使用され得るスペクトルバンドと関連付けられる。
【0087】
正規化周波数が検出器20の関心波長域において1.2から3.8の範囲である光ファイバを使用することによって、光ファイバ16は特に、その端の一方からの外部漂遊磁束の取込みを受けにくくなるが、これは、これらの漂遊磁束が、光ファイバ16と結合されることが可能な波長と明らかに別個の波長を有するからである。更に、シースは、光ファイバ16の端の外側の漂遊磁束の積分のリスクを制限する。
【0088】
光ファイバ16の内側で光束を伝送するために、光ファイバ16の第2の端22が、ファイバ光源23、33、43から光束を受けるように意図される。
【0089】
このファイバ光源は好ましくは、所望される測定に応じて使用される光束生成モジュールに組み込まれる。したがって、検出器20はクライオスタット17に組み付けられてよく、光ファイバの第2の端22は、所望される測定に応じて光束生成モジュールを受けてよい。
【0090】
光ファイバ16の第2の端22に光束を伝送するように意図されるこのファイバ光源は、例えば発光ダイオード、スーパーコンティニューム光源、またはレーザ光源から形成される。
【0091】
放射測定が行われることが所望されるとき、
図6に例示されるように、光束生成モジュール50は例えば、第1のフィーダ光ファイバ28に接続されたファイバ光源23を備える。このフィーダ光ファイバは、第1のフィーダ光ファイバ28にわたって伝送される光束を制限することを可能にする光減衰器24に接続される。減衰器24の出力において、光減衰器24の出力における光束を光スプリッタ25に伝送するために第2のフィーダ光ファイバ29が実装される。この光スプリッタ25は、2つの出力:第3のフィーダ光ファイバ30に接続され、それ自体は光ファイバ16の第2の端22に接続される、第1の出力と、基準検出器26に接続される第4のフィーダ光ファイバ31と、を備える。
【0092】
コントローラ11が、基準検出器26によって測定される所望の光子量に応じてファイバ光源23の電力および光減衰器24の減衰率を制御する。
【0093】
ファイバ光源23の出力において、光ファイバ23に生成される光束のスペクトル分布が
図9に例示される。
図9~
図14において、ファイバ出力における光束のスペクトル分布は、ナノメータの波長に対してW/cm
2で図示される。このスペクトル分布は、分光放射計型の装置によって測定されてよい。更に、ファイバ出力における光束のこのスペクトル分布は、「エネルギー束のスペクトル密度」という語としても知られている。
【0094】
図9の例では、ファイバ光源23のおよび光ファイバ28の使用は既に、特に関心波長域の中央を占めかつ非常に許容可能な光度を有する光束を得ることを可能にする。
【0095】
光減衰器を越えた後に、クライオスタット17における光ファイバ16の出力における光束L1が
図10に例示される。この光束L1がそのスペクトル幅を保ったが低下した光強度を有することを観察できる。クライオスタット内のこの光束L1の伝搬の後、検出器20において測定される光束が
図11に例示される。ここでも、検出器20において測定される光束は、非常に正確なスペクトル幅を保ったが、ただその光度の一部を失った。
【0096】
そのため、ファイバ光源23のおよびファイバ光源23の伝送モードに適合される光ファイバ28、29、30、16の使用は、要素が非常に小さいバルクを有する光束を効率的に伝送することを可能にする。比較として、
図12は、
図1aの積分球102の出力における光束L12を例示しており、この光束がファイバ光源23のおよび光ファイバ28、29、30、16の関連によって伝送される光束よりかなり正確でないスペクトル幅を有することを観察できる。
【0097】
同様に、
図1aの例では、クライオスタットの入力における光束L13が
図13に例示され、やはり著しいスペクトル幅を有する。遮蔽体112のフィルタを通過した後にだけ、現状技術の光束のスペクトル幅は減少される。したがって、
図14に例示されるように、現状技術の放射テストベンチにおいて検出器20に伝送される光束も、本発明のものに近いスペクトル幅を有するが、光強度レベルが低い。
【0098】
それによって、より低コストで、嵩張らず、かつ低電力消費の要素により、本発明は、
図1aに例示されるものなどの、現状技術の放射テストベンチで伝送されるものと同程度に正確で、より強力な光束を生成することを可能にする。
【0099】
更に、クライオスタット17を移動させる必要なく光束生成モジュールを変えるという可能性は、現状技術の複数の連続したベンチの使用に対して測定速度を有意に改善することを可能にする。
【0100】
放射測定を行うために
図6に例示されるモジュール50に加えて、残留磁気測定を行うためにモジュール51を接続することも可能である。
【0101】
このモジュール51は、ファイバ光源33、例えばモジュール50の光源23と同一の光源、または別個の特性を有する光源を備える。このファイバ光源33は、第1のフィーダ光ファイバに接続され、それ自体は光シャッタ35に接続される。光シャッタ35は、第2のフィーダ光ファイバ29に接続され、それ自体は光スプリッタ25に接続される。この光スプリッタ25は、2つの出力を備える:
- 第3のフィーダ光ファイバ30に接続され、それ自体は光ファイバ16の第2の端22に接続される、第1の出力、および
- 基準検出器34に接続される第4のフィーダ光ファイバ31に接続される第2の出力。
【0102】
コントローラ11は、検出器20と基準検出器34とによって取得される画像を比較することによって残留磁気および残留磁気前効果を測定するために、ファイバ光源および光シャッタ35によって発される光束を制御することを可能にする。
【0103】
暗電流測定を得るために、専用の光束生成モジュールを使用することは必要でなく、光束生成モジュール50または51のファイバ光源23または33をオフにすることで十分である。
【0104】
実際、ファイバ光源23または33によって生成される光束がなければ、周囲光の光束の波長は光ファイバと結合できず、その結果、暗電流を効率的に測定することが可能である。
【0105】
スペクトル応答に関しては、
図8に例示されるように、光束生成モジュール52が光ファイバ16の第2の端22に接続されてよい。例えば、このモジュール52は、第1のフィーダ光ファイバ44に接続されるファイバ光源43を備える。この第1のフィーダ光ファイバ44は、回折格子46にも接続される。回折格子46の出力は、回折格子46の出力における光束の回折次数を制限することを可能にするフィルタ47に投射される。このフィルタ処理した光束は、第2のフィーダ光ファイバ30において積分される。この第2のフィーダ光ファイバ30は、光ファイバ16の第2の端22に接続される。
【0106】
したがって、コントローラ11が、スペクトル応答測定を行うために回折格子46のパラメータを制御できる。
【0107】
スペクトル応答測定を行うために、ファイバ16の出力における光束の波長が変化されなければならず、既知のスペクトル応答を有する基準検出器の応答に対する検出器20の応答の比率が測定されなければならない。
【0108】
この目的で、基準検出器の応答に対する検出器20の応答の比率を直接得るために、基準検出器は、クライオスタットにおいて検出器20の隣に位置決めされてよい。
【0109】
変形例として、基準検出器は、検出器20のクライオスタット17のものに類似の特性を有する第2のクライオスタットに位置決めされてよく、この第2のクライオスタットも、光束を受けることが可能な光ファイバ16を組み込む。検出器20で測定を行った後または前に、光ファイバ30は、そのため基準検出器で同じ測定を行うために第2のクライオスタットの光ファイバに接続できる。基準検出器の応答に対する検出器20の応答の比率は、したがって、検出器20および基準検出器での2つの測定段階の終了時に計算される。
【0110】
図15に例示されるように、光学検出器20の性能を測定する方法は、クライオスタットの保持器19に検出器20を組み付ける第1のステップ60を含んでよい。第2のステップ61は、検出器20の所望の動作真空準位に達するまでクライオスタットを真空下に置くことから成る。クライオスタット17を冷却するための手段が次いでステップ62で実装され、同時に、ステップ63で、第1の光束生成モジュールが光ファイバ16の第2の端22に接続されてよい。光束生成モジュール50~52が光ファイバ16の第2の端22に接続されると、ステップ64で、検出器20の性能の測定を行うことができる。
【0111】
次いで、接続されたモジュール50~52を用いて検出器20の性能の全ての測定が行われると、ステップ65で、モジュール50~52を分離できる。このモジュール50~52の分離の間、クライオスタット17の温度または真空準位を変更することは必要でなく、その結果、ステップ66で、第2のモジュール50~52を次いで光ファイバ16に接続できる。次いで光ファイバ16に接続された新たなモジュール50~52に基づいて、ステップ67で、検出器20の性能の測定を行うことができる。
【0112】
したがって、クライオスタット17の温度または真空準位を変更する必要なく、複数のモジュール50~52を連続して光ファイバ16に接続できる。
【0113】
例えば、以下のステップの連続を行ってよい:
ステップ63:放射測定を行うことを可能にする生成モジュール50の接続、
ステップ64:検出器20の性能の放射測定、
ステップ65:モジュール50の分離、
ステップ66:残留磁気を測定するモジュール51の接続、
ステップ67:検出器の残留磁気の測定、
ステップ68:モジュール51のファイバ光源33をオフにすることによる検出器の暗電流の測定。
【0114】
残留磁気および暗電流測定がモジュール51によって実施されると、次いで以下のステップの連続を行う:
ステップ69:モジュール51の分離、
ステップ70:スペクトル応答を測定することを可能にするモジュール52の接続、
ステップ71:検出器20のスペクトル応答の測定。
【0115】
検出器20を特性化するために光ファイバ16に接続されるモジュール50~52の数にかかわらず、本方法は、クライオスタット17を加熱するステップ72およびクライオスタット17を周囲圧力下に戻して検出器20を取り外すステップ73で終了する。
【0116】
したがって本発明は、複数のテストベンチの使用に関して低バルクおよび限られたコストを有する光学検出器20の性能を測定するための装置10を得ることを可能にする。実際、本発明は、光束生成モジュールを交換して、クライオスタット17に部分的に組み込まれた光ファイバにそれらを結合することを可能にする。光ファイバ16に異なるモジュール50~52を結合するこの可能性は、全ての測定を行うのに必要な速度および期間を改善することを可能にする。
【0117】
例えば、放射測定、残留磁気測定、暗電流測定およびスペクトル応答測定を行うことによって検出器20を特性化することが所望されるとき、本発明は、5から10の範囲の係数による測定時間の除算を得ることを可能にする。
【0118】
更に、得られた測定の精度も現状技術で得られたものより高い性能を有することが観察された。実際、測定の繰返し率は、現状技術の装置に関しては0.1%と推定されており、本発明は0.01%の繰返し率を得ることを可能にした。この繰返し率は、同様の測定を多数回繰り返すことによって、およびこれらの測定間の発散を計算することによって計算される。
【符号の説明】
【0119】
10 試験装置
11 コントローラ
12a 平行六面体または円筒部
12b 角錐または円錐部
14 第1の端
15 開口部
16 光ファイバ
17 クライオスタット
18 脚
19 保持器
20 光学検出器
22 第2の端
23、33、43 ファイバ光源
24 光減衰器
25 光スプリッタ
26 基準検出器
28 第1のフィーダ光ファイバ
29、30 第2のフィーダ光ファイバ
30 第3のフィーダ光ファイバ
31 第4のフィーダ光ファイバ
34 基準検出器
35 光シャッタ
44 第1のフィーダ光ファイバ
46 回折格子
47 フィルタ
50、51、52 光束生成モジュール
L1 光束
【国際調査報告】