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特表2024-538947貴金属を浸出させるための溶媒及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】貴金属を浸出させるための溶媒及び方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 11/00 20060101AFI20241018BHJP
   C22B 3/16 20060101ALI20241018BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20241018BHJP
   C22B 1/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C22B11/00 101
C22B3/16
C22B3/22
C22B1/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519562
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 CA2022051558
(87)【国際公開番号】W WO2023065044
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/271,034
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524118177
【氏名又は名称】ピィ・エイチ・7・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PH7 TECHNOLOGIES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーストモハマディ,モハマド
(72)【発明者】
【氏名】モガダム・ザデー,サナズ
(72)【発明者】
【氏名】ロバーツ,ライアン・ジョン
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA01
4K001AA04
4K001AA41
4K001BA01
4K001BA22
4K001CA01
4K001DB11
4K001DB16
4K001JA03
4K001JA10
(57)【要約】
貴金属、特に白金族金属(PGM)の浸出及び抽出のための、リサイクル可能な非毒性溶媒媒体及び方法が記載されている。溶媒媒体は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB)、臭素酸リチウムなどの酸化剤、及び臭化リチウムなどのハロゲン塩を含む。貴金属浸出プロセスは、溶媒媒体を調製することと、貴金属含有物質を溶媒媒体に添加することと、貴金属を物質から溶媒中に浸出させるために撹拌することと、を含む。撹拌は、相対的に低い温度で数時間から数日間実施され得る。浸出後、濾過が、溶媒溶解性貴金属を不溶性残基から分離するために実施される。本方法は、貴金属の精錬及び溶媒の精製を更に含み得る。精製された溶媒は、貴金属の浸出及び抽出のために溶媒媒体中でリサイクル/再使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貴金属を浸出させるための溶媒媒体であって、
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB)を含む溶媒と、
酸化剤と、
ハロゲン塩と、を含む、溶媒媒体。
【請求項2】
前記溶媒が、45%~55%w/wの水を更に含む、請求項1に記載の溶媒媒体。
【請求項3】
前記酸化剤の濃度が、0.1~100g/Lである、請求項1に記載の溶媒媒体。
【請求項4】
前記酸化剤が、臭化物を酸化するように選択される、請求項1に記載の溶媒媒体。
【請求項5】
前記酸化剤が、塩素、臭素、臭素酸塩、過臭素酸塩、過酸化水素、塩素酸塩、及び亜塩素酸塩のうちの1つである、請求項1に記載の溶媒媒体。
【請求項6】
前記ハロゲン塩の濃度が、0.1~1.0モルである、請求項1に記載の溶媒媒体。
【請求項7】
前記ハロゲン塩が、アルカリ金属臭化物塩及びアルカリ塩化物塩のうちの1つである、請求項1に記載の溶媒媒体。
【請求項8】
前記ハロゲン塩が、臭化リチウム、臭化ナトリウム、及び臭化カリウムのうちの1つである、請求項7に記載の溶媒媒体。
【請求項9】
>600mVの酸化還元電位を有する、請求項1に記載の溶媒媒体。
【請求項10】
1~4のpHを有し、より好ましくは、1~3のpHを有する、請求項1に記載の溶媒媒体。
【請求項11】
貴金属を、前記金属を含む物質から浸出及び抽出するための方法であって、
>600mVの酸化還元電位及び1~4のpHを有する溶媒媒体を調製することであって、前記溶媒媒体が、
3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを含む溶媒と、
酸化剤と、
ハロゲン塩と、を含む、調製することと、
前記物質を前記溶媒媒体に添加することであって、前記溶媒媒体中の前記物質が、 25%w/w以下のパルプ密度を有するスラリーを形成し、前記スラリーが、貴金属含浸溶液及び不溶性不純物を含む、添加することと、
前記不溶性不純物を前記スラリーから濾過することと、
前記貴金属含浸溶液から前記貴金属を抽出することと、を含む、方法。
【請求項12】
前記物質を研削又は粉砕することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記スラリーを最大96時間撹拌することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記スラリーを50℃~75℃の温度に加熱することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記スラリーに酸を添加することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記貴金属含浸溶液から前記貴金属を抽出した後に、残留溶液を精製して、精製された溶媒を生成することを更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記精製された溶媒を前記溶媒媒体に添加することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
特許請求されるものは、本明細書に概して及び具体的に記載される組成物及び方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、貴金属を浸出させるための方法に関し、より具体的には、非毒性及び非水性溶媒を使用する貴金属の浸出に関する。
【0002】
序論
金、銀、及び白金族金属(PGM)を含む貴金属は、世界的に戦略的な金属の一群である。例えば、PGMは、それらの触媒特性のために、温室効果ガス及び有毒ガスを低減する上で不可欠な役割を果たす。世界中でより厳しい環境規制が実施されているため、新しい環境方針に見合うように持続可能なPGM生産の需要が、著しく増加している。PGMの高い経済的価値及び再現不可能な技術的及び触媒的特性、並びに地球の地殻におけるそれらの希少性は、それらの危機的状態に関する懸念を正当化し、PGM軸受材料(すなわち、鉱業濃縮物、使用済み材料など)の経済的で環境に優しいリサイクル及び抽出方法を開発することの重要性を高める。
【0003】
鉱業濃縮物及び尾鉱からの貴金属の抽出、及び使用済み材料からの貴金属リサイクルは、業界において非常に重要である。それらは、異なる資源から貴金属を抽出するための乾式冶金、湿式冶金、及びハイブリッド技術である。
【0004】
貴金属を一次又は二次源から抽出するために、多くの方法が使用されているか、又は提案されている。これらの技術は、典型的には、貴金属を浸出及び抽出するために、強酸(例えば、HCl、HNO)及び/又は有毒有機化合物(例えば、シアン化物)及び高温(例えば、>100℃)を使用する(米国特許第11427886号、欧州特許第1501952号、及び中国特許公開第112280983号を参照されたい)。資本集約度、高い運用コスト、及び厳格な環境規制は、従来の冶金加工オプション、特に貴金属の抽出における精錬所ベースの操作の実装を制限する。このため、貴金属を抽出するために、より安全で毒性が低い新しいアプローチが所望される。
【0005】
金属の抽出のための最も有望な最近提案されたプロセスのうちの1つは、溶媒冶金である。このプロセスでは、低公害型(すなわち、非毒性)溶媒及び生分解性溶媒が、金属の選択的抽出に適用される。この新しい冶金学の分野では、金属の抽出において使用される溶媒は、非水性であり、廃水が最小限に抑えられる。持続可能な溶媒冶金法では、低公害型溶媒が使用されており、これらは非毒性又は有害であり、かつ生分解性であり、このため環境への影響が最小限である。溶媒冶金学の主な利点には、限られた水消費量、エネルギー消費量の減少、ほぼゼロの酸消費、改善された浸出選択性、低品位鉱石への適合性、シリカゲルの形成の減少、及び都市廃棄物処理に適していることが挙げられる。
【0006】
適切な溶媒の選択は、溶媒冶金学において不可欠である。更に、最良の溶媒の選択は、その溶解性能のみに依存するものではなく、安定性、リサイクル能力、経済性、環境への影響、安全性、及び毒性などの他の重要な基準を考慮するべきである。溶媒冶金プロセスの持続可能性は、溶媒選択に依存する。いずれの有害又は危険な溶媒も、浸出及び抽出プロセスにおいて良好な性能を有していても、溶媒冶金に使用することができないということが所望される。
【0007】
したがって、溶媒冶金学、特に、PGMに関して、新規の非毒性生分解性溶媒が必要である。
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、貴金属回収及び貴金属リサイクルの実現可能性を増加させながら、貴金属含有物質からの貴金属に関する持続可能かつ経済的な溶媒冶金抽出プロセスを提示することである。貴金属と試薬との反応性を最大化するために、貴金属を選択的に溶解する能力を有する有機溶媒媒体が説明される。溶媒媒体は、安全、健康、及び環境基準に望ましい特性を有する。
【0009】
本開示は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB)を含有する溶媒、臭素酸リチウムなどの酸化剤、及び臭化リチウムなどのハロゲン塩を含む溶媒媒体に焦点を当てる。溶媒媒体は、ハロゲンの酸化相における溶解度を最大化する有機媒体を提示し、これは、ハロゲンの蒸発を防止するが、溶媒媒体中の標的金属とのハロゲンの反応性も増加させる。溶媒媒体は、低公害型かつ生分解性の溶媒であり、貴金属を安全かつ持続可能な様式で浸出及び抽出する引火点を有しない。溶媒の再使用性により、貴金属浸出プロセスが排水のない閉ループシステムで実施されることが可能になる。
【0010】
更に、本開示は、金、銀、及び白金族金属を含む貴金属を抽出するための方法を提供する。
【0011】
一実施形態によれば、貴金属を浸出させるための溶媒媒体が存在する。溶媒媒体は、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(MMB)、酸化剤、及びハロゲン塩を含む溶媒を含む。酸化剤は、塩素、臭素、臭素酸塩、過臭素酸塩、過酸化水素、塩素酸塩又は亜塩素酸塩であり得る。ハロゲン塩は、アルカリ金属臭化物塩又はアルカリ塩化物塩であり得、好ましくは、臭化リチウム、臭化ナトリウム及び臭化カリウムのうちの1つである。溶媒媒体は、>600mVの酸化還元電位及び1~4のpH、より好ましくは、1~3のpHを有する。
【0012】
別の実施形態によれば、以下の段階:(1)溶媒調製、(2)浸出、及び(3)濾過/抽出を含む貴金属抽出プロセスが存在する。
【0013】
浸出段階中に、貴金属を含有する物質を、開示された溶媒媒体に添加し、パルプ密度が約10%、及び25%w/w以下のスラリーを形成する。スラリーは、貴金属含浸溶液及び不溶性不純物を含む。濾過段階中、不溶性不純物は、貴金属含浸溶液から分離し、貴金属含浸溶液から貴金属を抽出する。プロセスはまた、浸出段階において使用された溶媒をリサイクルするための溶媒精製段階を含み得る。
【0014】
他の態様及び特徴は、添付の図面と併せて開示される特定の実施形態の以下の説明を参照する当業者に明らかとなるであろう。
【0015】
本明細書に含まれる図面は、本明細書の物品、方法、及び装置の様々な例を例解するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態による、貴金属浸出プロセスのフローチャートである。
図2】一実施形態による、貴金属抽出プロセスのフローチャートである。
図3A】本開示の王水対溶媒を使用する、経時的な白金溶解の量を比較するグラフである。
図3B】本開示の王水対溶媒を使用する、経時的なパラジウム溶解の量を比較するグラフである。
図3C】本開示の王水対溶媒を使用する、経時的なロジウム溶解の量を比較するグラフである。
図4】白金回収における酸化剤(重量%)の効果を示す比較研究である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
各特許請求される実施形態の例を提供するために、様々な組成物又はプロセスが、以下に説明される。以下に説明される実施形態は、任意の特許請求される実施形態を制限せず、任意の特許請求される実施形態は、以下に説明されるものとは異なるプロセス又は組成物を対象にし得る。特許請求される実施形態は、以下に説明される任意の1つの組成物若しくはプロセスの特徴のうちの全てを有する組成物若しくはプロセス、又は以下に説明される組成物の複数若しくは全てに共通する特徴に限定されない。
【0018】
低公害型(非毒性及び生分解性)、非水性溶媒、並びに試薬/添加剤を塗布して、PGMの溶解度を最大化することを含む新規の浸出方法を使用して、貴金属含有物質から貴金属を抽出する新しい方法を導入することが、本開示の目的である。提案された溶媒は、以下「MMB」と称される3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノールを含む。貴金属含有物質は、濃縮物又は尾鉱石を含む鉱業抽出物などの一次資源、又は使用済み自動車触媒を含むリサイクル材料などの二次資源であり得る。
【0019】
本開示の方法は、貴金属の溶解に適用することができ、それによって、貴金属は、元素Au、Ag、Pd、Pt、Ir、Rh、Ru、及びOsであると理解されるはずである。また、Pd、Pt、Ir、Rh、Ru、及びOsを含む白金族金属は、以下、PGM又はPGMと称される。
【0020】
本開示は、貴金属含有物質から貴金属を浸出させる方法を開示し、本方法は、物質を溶媒媒体中に浸漬することを含み、溶媒媒体は、
a)MMBを含む溶媒、
b)塩素、臭素、臭素酸塩、過臭素酸塩、過酸化水素、塩素酸塩、亜塩素酸塩、過塩素酸塩などの1つ以上の酸化剤、及び
c)塩化物アルカリ金属塩、臭化物アルカリ金属塩、好ましくは、臭化リチウム塩などのハロゲン塩を含む。
【0021】
浸出方法は、貴金属含有物質を、溶媒、ハロゲン塩、及び酸化剤を含有する溶媒媒体中に浸漬することによって実施される。結果として生じる混合物は、撹拌されて、撹拌浸出プロセスを行う。その後、得られた混合物中で、貴金属が酸化され、溶媒媒体中で可溶性である貴金属塩を形成する。
【0022】
溶媒媒体中の可溶性ハロゲンは、酸化剤と直接反応して、より強力な酸化剤(例えば、臭素)を生成し、貴金属を酸化し、それらを荷電イオンに変換し、その後、溶媒媒体中で可溶性貴金属塩を生成する。貴金属の溶媒媒体への良好な溶解を達成するために、溶液酸化還元電位(ORP)の好ましい量は、標準カロメル電極(SCE)に対して予想されるように、600mVを上回る必要がある。このORP量は、貴金属をイオン形態に変換して、溶液中に存在するハロゲン化物イオンとの可溶性複合体を生成するのに十分である。溶媒媒体は、得られた貴金属塩を選択的に溶解し、他の元素、金属、及び材料を固体形態で残す。
【0023】
このため、貴金属が溶媒媒体中に溶解される際、溶媒媒体中で可溶性ではない固体残基が生成され、したがって、溶媒媒体は、液体貴金属含浸溶液及び固体残基を含有するスラリーに変わる。理想的には、得られる固体残基は、貴金属を実質的に含まない。
【0024】
その後、浸出段階は、スラリーが濾過されて、固体残基から含浸溶液を分離する濾過行程を含む。固体残基は、例えば、有機溶媒又は水を使用して洗浄され得る。含浸溶液及び固体残基は、例えば、X線蛍光(XRF)分光法を使用して計量及び測定され得る。質量バランスを完了することは、貴金属の回収及び溶媒の溶解効率のための値を提供することができる。以下の例では、いくつかの抽出値が提示される。
【0025】
浸出溶液温度、pH、撹拌速度、パルプ密度(溶液中の固体貴金属含有物質の量である)、OPR、及び貴金属含有物質が溶媒媒体と接触する時間は、浸出プロセスによって監視されるか又は制御されるべき重要なパラメータである。貴金属抽出に対するこれらのパラメータのいくつかの影響は、提供された実施例において説明される。
【0026】
図1を参照すると、そこに示されているのは、貴金属浸出プロセス100のフローチャートである。第1の行程110では、溶媒媒体は、MMB含有溶媒、ハロゲン塩、及び酸化剤を混合することによって調製される。
【0027】
溶媒は、MMBを含み、水を含み得るか、又は含んでいなくてもよい、アルコール系混和性溶媒である。MMBは、濃縮され得るか、又は水で希釈され得る。水濃度は、溶媒質量の0%~99%の範囲内、好ましくは、40%~70%の範囲内、より好ましくは、45%~55%w/wの範囲内で選択することができ、残りの溶媒はMMBである。溶媒は、溶媒媒体中で起こる化学反応によって、酸化剤、ハロゲン塩、及び貴金属含有物質を溶解することができる。一方、溶媒自体は、試薬及び酸化剤と反応しないように十分に安定しており、全ての試薬及び貴金属塩などの望ましい生成物を溶解するためのホスト媒体としてのみ作用することができる。水酸系媒体の代わりに溶媒を利用することは、試薬及び酸化剤の溶解度を最大化し、これは、反応の力学及び浸出プロセス100の効率を増加させる。また、開示された溶媒は、回収及び抽出効率を増加させる、標的貴金属及びそれらの塩の溶解度を最大化することができた。
【0028】
酸化剤としては、塩素、臭素、臭素酸塩及び過臭素酸塩、過酸化水素、塩素酸塩及び亜塩素酸塩、過塩素酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、酸化剤は、臭素酸リチウム、過臭素酸リチウム、塩素酸リチウム、過塩素酸リチウム、及び亜塩素酸リチウムのうちの1つである。酸化剤の濃度は制限されず、貴金属含有物質に応じて変化し得るが、溶媒媒体1リットル当たり0.1~100グラムの範囲内にあり、好ましくは、1リットル当たり2~20グラムの範囲内にあり得る。
【0029】
ハロゲン塩に関しては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、及び臭化リチウムなどのアルカリ及びアルカリ形態が好ましい。可溶性ハロゲン化物塩の量は、可溶性貴金属ハロゲン化物錯体を生成し、また、溶媒媒体中の貴金属イオン形態を維持するのに十分な高いORPを維持するのに十分でなければならない。ハロゲン化物イオンの量は、好ましくは、0.1~1.0モルの範囲内にあり、好ましくは、0.2~0.5モルの範囲内にあるべきである。
【0030】
溶媒媒体中では、酸化剤は、ハロゲン塩と反応し、このインサイチュ酸化が、貴金属の強力な酸化剤である溶媒媒体中のハロゲン元素の生成をもたらす。
【0031】
得られた溶媒媒体は、媒体中で生じる反応をホストするのに十分な安定性を有し、酸化剤-ハロゲン塩酸化反応及び行程120の貴金属含有物質の添加後に発生する反応に関与しない。また、溶媒は、化学物質の排気及び蒸発を最小限に抑えながら抽出の効率を増加させ、抽出のコストを劇的に減少させる、試薬及び酸化剤並びに反応生成物の溶解度を最大化することができる。溶媒媒体は、酸化相における酸化剤及び試薬の溶解性及び安定性を増加させ、これはその後、浸出プロセスで必要とされる酸化剤の量を制御することを容易にし、インサイチュ及び漸進的な酸化の発現に役立ち、これは、プロセスにおける化学消費を最小限に抑え、貴金属抽出コストを劇的に低減させるであろう。
【0032】
行程120では、好ましくは、粉末形態の貴金属含有物質は、反応器/反応容器内の調製された溶媒媒体に添加されるか、又は浸水される。
【0033】
行程130では、溶媒媒体と貴金属含有物質との混合物は、例えば、磁石撹拌器を使用して撹拌され、実際の浸出反応を行う。貴金属含有物質のサイズ/量に応じて、溶媒媒体は、0.5~48時間、好ましくは、8~24時間撹拌され得る。前述のように、溶媒媒体中の既存の酸化剤の存在は、貴金属の酸化及び溶媒媒体中に可溶性である貴金属塩の形成を引き起こす。溶媒媒体は、得られた貴金属塩を選択的に溶解し、他の元素、金属、及び材料を固体形態で残す。
【0034】
行程140では、浸出スラリーは濾過され、液体溶液及び固体残基は、互いに分離される。スラリーは、1~25ミクロン、好ましくは、5~10ミクロンの細孔サイズを有するプラスチックフィルタ(例えば、ポリプロピレン又はポリ塩化ビニル)を通過する。フィルタを通るスラリーの流れは、重力によるものであり得るが、好ましくは、真空又は正圧が使用される。
【0035】
浸出方法100は、貴金属抽出プロセスの一部であり得る。図2は、貴金属抽出プロセス200のフローチャートを示す。抽出プロセス200は、物質調製段階210と、浸出段階220と、抽出段階230と、を含む。
【0036】
物質調製段階210では、鉱業抽出物又は使用済み自動車触媒などの1つ以上の貴金属含有物質が、例えば、細かい粉末に粉砕されることによって調製される。浸出段階220では、調製された物質は、溶媒媒体に添加されて、貴金属を浸出させ、貴金属含浸溶液を取得する。抽出段階230では、貴金属は、含浸溶液から抽出される。
【0037】
貴金属抽出プロセス200は、貴金属が精錬される貴金属精錬段階240と、残留溶液/溶媒が精製され、リサイクルされて、浸出段階220において再使用される溶媒精製段階250と、を更に含み得る。リサイクルされた溶媒は、新しい貴金属含有物質から貴金属を溶解するために再使用することができる。
【実施例
【0038】
本発明の方法は、以下の実施例によってより詳細に説明される。これらの実施例は、本発明の範囲を限定しないことを理解されたい。
【0039】
参考例-浸出試験
撹拌浸出及び抽出プロセスを、サーモスタットで制御された水槽又は磁気撹拌器を備えたビーカに配置された丸底フラスコで実施した。ハロゲン塩を、溶媒中に溶解させてから、フラスコにハロゲン塩を注いだ。溶媒媒体が20℃~90℃、好ましくは、40℃~70℃の所定の温度に達すると、貴金属含有試料を添加した。磁気撹拌器のRPMを、約600に維持し、溶媒媒体のpHを、1~4に維持した。パルプ密度は、全ての試験で10%w/w未満を維持した。試験時間は、数時間から数日まで変化した。溶液が継続的に使用されるため、試薬及び溶媒の無駄がない(これにより、プロセスを固有かつ崇高なものにする)。浸出後、含浸溶液及び尾鉱(すなわち、固体残基)を計量し、XRF方法論を使用して測定される。実施例における全ての回収は、固体残基中に残った固体及び貴金属から抽出された貴金属に基づいて、計算される。例えば、ヘッド試料が100グラムの貴金属を含有し、99グラムが99%の回収率で抽出されている場合、1グラムの貴金属が固体残基中に残っていることを意味する。質量バランスを完了することは、実施例中に提示される溶媒の回収及び効率の値を提供した。
【0040】
臭素酸リチウムなどの酸化剤を、臭化物塩、好ましくは、溶媒中に溶解した臭化リチウムに添加すると、臭化物は、臭素に酸化される。反応は以下の通りである。
【数1】
【0041】
生成された臭素は、溶媒に溶解される強力な酸化剤である。pHを低減させること、及び過剰な酸を反応に添加することによって、臭素が主要な成分となる。臭素は溶媒中に可溶であるため、反応全体を通して臭素のままであり、溶液を加水分解して、強酸である臭化水素酸を生成することはない。したがって、pHは4~5前後に維持され、抽出は安全な環境で行われる。pHを減少させ、効率を最大化するためには、酸を溶媒に添加する必要がある。酸は、希釈されるか又は濃縮された硫酸、塩酸、酢酸若しくはクエン酸であり得る。
【0042】
pHが4未満、好ましくは、約1~3に減少するとき、臭素の酸化強度は、PGMの溶解に好適である。白金及びパラジウム、又は他のPGMが臭素と反応すると、PGMの臭化物塩が生成され、これは溶媒媒体に非常に可溶性である。
Pt+2Br→PtBr (2)
Pt+3Br→PtBr (3)
Pd+2Br→PdBr (4)
Pd+3Br→PdBr (5)
【0043】
実施例1
PGMを含有する非常に高級な使用済み触媒物質の試料を、P100、125ミクロン(粒子の80%が75ミクロン未満のサイズであり、粒子の100%が125ミクロン未満のサイズであることを意味する)の研削サイズに研削して、PMG含有物質の全体の表面積を増加させ、浸出反応を増加させた。試料を、2つの均質な試料にリフル分割した。各試料を、溶液を除いて、同じ条件で、上記の参考例で説明されているように、2つの浸出試験に使用した。1つの試料を、最も強力な浸出物のうちの1つとして、王水(3:1塩酸及び硝酸)中に浸し、他の試料を、本開示の溶媒媒体中で浸出させた。
【0044】
試験を、両方の試験について、5%w/wのパルプ密度で室圧及び温度で96時間実施した。溶液に溶解したPGMの量を、誘導結合プラズマ光学放出分光法(ICP-OES)によって1、6、33及び96時間で測定した。結果を、Pt、Pd、及びRdに関して、それぞれ図3A図3B、及び図3Cにおいて示す。最初の6時間において:200ppmの白金が溶媒媒体中に溶解したのに対し、王水では170ppmである;3800ppmのパラジウムが溶媒媒体中に溶解したのに対し、王水では3200ppmである;及び410ppmのロジウムが溶媒媒体中に溶解したのに対し、王水では320ppmである。結果は、開示された溶媒が、王水と比較して、より高い浸出力学を有し、より高い量の貴金属を溶液に溶解したことを示す。
【0045】
実施例2
PGMを含有する使用済み触媒の試料を、P100、125ミクロンに粉砕した。試料を、開示された溶媒を使用して、上記の参考例において説明されているように浸出させた。試料は、XRFデバイスを使用して測定された。結果は、試料が、1850ppmのパラジウム、207ppmの白金、及び350ppmのRhを含有していたことを示した。浸出試験は、10%w/wのパルプ密度で6時間、1つは室温で、他方は50℃で実施した。両方の温度に関して、Pd、Pt及びRhの回収率を表1に示す。室温と比較して、50度で回収されたPt及びRhに著しい増加がある。Pdは、概して、抽出が容易であるため、室温と比較して50度で回収されるPdの量はわずかに増加する。
【表1】
【0046】
実施例3
高品位白金レベルを含有する精錬所で使用された触媒を、試料として使用した。試料を、P100、125ミクロンの研削サイズに粉砕した。溶媒効率に対する溶媒媒体中の酸化剤レベル(重量%)の効果を研究した。全ての試験は、参照例で説明されているように、5%w/wのパルプ密度で、45℃で12時間実施した。この実施例の結果を、図4に示す。図4に示されるように、溶媒媒体中のより高い酸化剤レベルは、より高い溶解量の白金をもたらした。
【0047】
実施例4
ジルコニア-チタニア、炭化ケイ素、及び混合マトリックス(シリカ、アルミナ、酸化セリウム、炭化ケイ素)を含む異なるマトリックスに充填されたPGMを含有する使用済み触媒物質の様々な試料を、参照例で説明されているように、開示された溶媒を使用して浸出させた。試料を、300USガロンの操作能力を有するパイロットプラント規模で商業化された反応器において浸出させた。250ガロンの溶媒媒体を、約100kgの貴金属含有物質と混合した。試料を、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)に続くマイクロ波酸消化を使用して測定した。浸出液パイロット試験を、10%w/wパルプ密度で、75℃で24時間実施した。Pd、Pt、及びRhの試料の特徴付け及び回収は、以下の表に示される。
【表2】
【0048】
具体的な実施形態が説明され、例解されてきたが、かかる実施形態は、例示的なものに過ぎず、開示された実施形態を限定するものではないと見なされるべきである。当業者によって解釈されるように、他の組成物及び方法が特許請求の範囲内にあり得ることが理解されるだろう。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
【国際調査報告】