(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】金属‐水素バッテリを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241018BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241018BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M10/44 P
H01M10/42 P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024519685
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 US2022079614
(87)【国際公開番号】W WO2023086869
(87)【国際公開日】2023-05-19
(32)【優先日】2021-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524120365
【氏名又は名称】エナーベニュー ホールディングス、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケニー、マイケル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジュ、ジンイ
(72)【発明者】
【氏名】ズ、ゲ
(72)【発明者】
【氏名】ウ、インイン
(72)【発明者】
【氏名】ケシャヴァルズ、マジド
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA03
5G503BB01
5G503CA11
5G503CB13
5G503EA08
5G503GD06
5H030AS20
5H030BB01
5H030BB21
(57)【要約】
金属‐水素バッテリを動作させる方法は、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリの変質のインジケータを監視する段階;放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリのエネルギー効率が減衰しているかどうかをインジケータに基づいて判定する段階;及び、酸化に起因して、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰していると判定したことに応じて、金属‐水素バッテリを再生する段階を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属‐水素バッテリを動作させるための方法であって:
放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの劣化のインジケータを監視する段階;
前記インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定する段階;及び
放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの前記エネルギー効率がアノード酸化に起因して減衰しているという判定に応じて、前記金属‐水素バッテリを再生する段階
を備える方法。
【請求項2】
前記金属‐水素バッテリは、放電及び充電の前記平常サイクル中にアノード酸化に起因して減衰する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属‐水素バッテリを再生する段階は、放電及び充電の再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用する段階を含み、ここで、放電及び充電の前記再調整サイクルは、放電及び充電の前記平常サイクルと異なる放電又は充電条件を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
放電及び充電の前記再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用する段階は、放電及び充電の前記再調整サイクルの各々において、同一の時間長にわたって同一の電流を適用する段階を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
放電及び充電の前記再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用する段階は:
放電及び充電の前記再調整サイクルの充電動作中に第1電流を適用する段階;及び
放電及び充電の前記再調整サイクルの放電動作中に第2電流を適用する段階、ここで前記第1電流は前記第2電流より大きい、
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの前記エネルギー効率が減衰しているかどうかを前記インジケータに基づいて判定する段階は:
放電及び充電の前記平常サイクルの放電動作中の放電電圧の第1減衰レートを計算する段階;
放電及び充電の前記平常サイクルの充電動作中の充電電圧の第2減衰レートを計算する段階;及び
前記第1減衰レートが前記第2減衰レートより大きいとき、放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰していると判定する段階
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記金属‐水素バッテリのアノード上の電位が閾値電圧より大きいとき、放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリは、減衰していると判定される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記閾値電圧は、H
2/H
2Oに対して約0.1Vである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを前記インジケータに基づいて判定する段階は:
複数の第1金属‐水素バッテリの放電及び充電のサンプルサイクルを取得する段階;
前記複数の第1金属‐水素バッテリが減衰していることを示す、放電及び充電の前記サンプルサイクルの第1パラメータを抽出する段階;
訓練済み機械学習モデルを生成するために、前記第1パラメータを用いて機械学習モデルを訓練する段階;
前記金属‐水素バッテリの放電及び充電の前記サイクルの第2パラメータを抽出する段階;及び
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するために、前記第2パラメータを前記訓練済み機械学習モデルに供給する段階
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
室温より上の温度で放電及び充電の前記平常サイクルを実行する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
室温より上の温度で放電及び充電の前記再調整サイクルを実行する段階を更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属‐水素バッテリを再生する段階は、放電及び充電の前記サイクルの後の放電動作中のカットオフ電圧を予め定められた電圧に増加させる段階を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
金属‐水素バッテリであって、
容器;
カソード及びアノードを含む少なくとも1つのセル、前記アノード及び前記カソードは各々、触媒を有し、前記少なくとも1つのセルは前記容器内に含まれ、前記少なくとも1つのセルは、充電及び放電サイクル中の水素発生反応(HER)及び水素酸化反応(HOR)をサポートする;
前記容器に含まれる電解液;及び
前記少なくとも1つのセルに連結されているコントローラ
を備え、前記コントローラは:
放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの劣化のインジケータを監視する;
前記インジケータに基づいて、放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定する;及び
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリがアノード酸化に起因して減衰しているという判定に応じて前記金属‐水素バッテリを再生する
ための命令を実行する、
金属‐水素バッテリ。
【請求項14】
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリは、アノード酸化に起因して減衰する、請求項13に記載の金属‐水素バッテリ。
【請求項15】
前記金属‐水素バッテリを再生するための命令は、放電及び充電の再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用するための命令を含み、ここで、放電及び充電の前記再調整サイクルは、放電及び充電の平常サイクルとは異なる放電又は充電条件を利用する、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項16】
放電及び充電の前記再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用するための命令は、放電及び充電の前記再調整サイクルの各々において、同一の時間長にわたって同一の電流を適用することを含む、請求項15に記載のバッテリ。
【請求項17】
放電及び充電の前記再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用するための命令は:
放電及び充電の前記再調整サイクルの充電動作中に第1電流を適用する;及び
放電及び充電の前記再調整サイクルの放電動作中に第2電流を適用する、ここで前記第1電流は前記第2電流より大きい、
ための命令を含む、
請求項15に記載のバッテリ。
【請求項18】
前記インジケータに基づいて、放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰していると判定する命令は:
放電及び充電の前記平常サイクルの放電動作中の放電電圧の第1減衰レートを計算する;
放電及び充電の前記平常サイクルの充電動作中の充電電圧の第2減衰レートを計算する;及び
前記第1減衰レートが前記第2減衰レートより大きいとき、放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの前記エネルギー効率は減衰していると判定する
ための命令
を含む、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項19】
前記金属‐水素バッテリのアノード上の電位が閾値電圧より大きいとき、放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの前記エネルギー効率は減衰している、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項20】
前記閾値電圧は、H
2/H
2Oに対して、約0.1Vである、請求項19に記載のバッテリ。
【請求項21】
前記インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定する命令は:
複数の第1金属‐水素バッテリの放電及び充電のサンプルサイクルを取得する;
前記複数の第1金属‐水素バッテリが減衰していることを示す放電及び充電の前記サンプルサイクルの第1パラメータを抽出する;
訓練済み機械学習モデルを生成するために、前記第1パラメータを用いて機械学習モデルを訓練する;
前記金属‐水素バッテリの放電及び充電の前記サイクルの第2パラメータを抽出する;及び
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリがアノード酸化に起因して減衰しているかどうかを判定するために、前記第2パラメータを前記訓練済み機械学習モデルに供給する
ための命令を含む、
請求項13に記載のバッテリ。
【請求項22】
室温より上の温度において放電及び充電の前記平常サイクルを実行するための命令を更に含む、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項23】
室温より上の温度において放電及び充電の前記再調整サイクルを実行するための命令を更に含む、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項24】
前記金属‐水素バッテリを再生するための命令は、放電及び充電の前記サイクルの後の放電動作中のカットオフ電圧を予め定められた電圧に増加させるための命令を含む、請求項13に記載のバッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本開示は、2021年11月10日に出願された米国仮出願第63/278,046号の優先権及び利益を主張する、2022年11月9日に出願された非仮特許出願第18/053,882号の優先権を主張し、それらの全体は参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に、金属‐水素バッテリを動作させることに関し、より具体的には、減衰(decay)した金属‐水素バッテリを再生することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の化石燃料と競合する、風及び太陽光などの再生可能エネルギー資源については、それらの本質的な断続性を緩和するために大規模エネルギー貯蔵システムが必要である。大規模エネルギー貯蔵を構築するために、コスト及び長期の寿命は、最大の考慮事項である。揚水式水力発電貯蔵は、長期間(約50年)にわたって大量のエネルギーを貯蔵するための安価な手段であるため、現在のグリッドエネルギー貯蔵市場を支配しているが、好適な場所が無いこと、及び、環境フットプリントにより制約を受ける。圧縮空気及びフライホイールエネルギー貯蔵などの他の技術は、いくつかの異なる利点を示すが、それらの比較的低い効率及び高いコストは、グリッド貯蔵のために著しく改善されるべきである。再充電可能バッテリは、大規模エネルギー貯蔵のために、低コスト、高容量、及び非常に信頼性の高いシステムを目標とする大きい機会を提供する。再充電可能バッテリの信頼性を改善することは、大規模エネルギー貯蔵を実現するための重要な課題となっている。
【0004】
結果として金属‐水素バッテリを動作させる方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書では、それらの信頼性を改善するために金属‐水素バッテリを動作させるための方法が記載されている。特に、本明細書において開示される方法は、それらの性能を改善する及びそれらの寿命を延長するために、減衰した金属‐水素バッテリを再生し得る。特に、金属‐水素バッテリを動作させるための方法は、放電及び充電の平常サイクル中に金属‐水素バッテリの動作を監視する段階、動作中に監視されているインジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリのアノードが劣化(degrade)しているかどうかを判定する段階;及び、アノードが劣化しているという判定に応じて、金属‐水素バッテリを再生する段階を備える。いくつかの実施形態において、金属‐水素バッテリを再生する段階は、放電及び充電の再調整サイクルを金属‐水素バッテリに適用する段階を含み、ここで、放電及び充電の再調整サイクルは、放電及び充電の平常サイクルと異なる放電又は充電条件を利用する。いくつかの実施形態において、金属‐水素バッテリを再生する段階は、放電及び充電のサイクルの後の放電動作中のカットオフ電圧を予め定められた電圧に増加させる段階を含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、金属‐水素バッテリは、容器;カソード及びアノードを含む少なくとも1つのセル、アノード及びカソードは各々触媒を有し、少なくとも1つのセルは容器内に含まれ、少なくとも1つのセルは、充電及び放電サイクル中の水素発生反応(HER)及び水素酸化反応(HOR)をサポートする;容器に含まれる電解液;及び少なくとも1つのセルに連結されているコントローラ、コントローラは、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリの動作中のインジケータを監視する、インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリのアノードが劣化しているかどうかを判定する、及び、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリのアノードが劣化しているという判定に応じて、金属‐水素バッテリを再生する命令を実行する、を含む。
【0007】
他の実施形態が本明細書で後に予期及び説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本技術の様々な実施形態の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細に記載される。本開示の原理が利用される例示的な実施形態を記載した以下の詳細な説明、および添付図面を参照することによって、本技術の特徴および利点のさらなる理解が得られるであろう。
【0009】
【
図1A】いくつかの実施形態による金属‐水素バッテリセルの概略を図示する。
【0010】
【
図1B】いくつかの実施形態による金属‐水素バッテリの概略を図示する。
【0011】
【
図1C】
図1Bに示される金属‐水素バッテリの動作の状態機能(state function)を示す。
【0012】
【
図2】いくつかの実施形態による、
図1Cに示される状態機能に従って金属‐水素バッテリを動作させるための方法を示すフローチャートである。
【0013】
【
図3】いくつかの実施形態による、金属‐水素バッテリのサイクルに対するエネルギー効率を図示する図面である。
【0014】
【
図4】いくつかの実施形態による、3電極金属‐水素バッテリセルにおけるアノード上のクロノポテンショメトリ測定結果を示す図面である。
【0015】
【
図5】いくつかの実施形態による、3電極金属‐水素バッテリセルにおけるアノード上のクロノポテンショメトリ測定結果を示す図面である。
【0016】
【
図6A】いくつかの実施形態による、金属‐水素バッテリを動作させるための方法を示すフローチャートである。
【0017】
【
図6B】いくつかの実施形態による金属‐水素バッテリの動作を示す。
【0018】
【
図7A】様々な実施形態による、増加したカットオフ放電電圧を適用することによって改善された充電及び放電効率を示す図面である。
【
図7B】様々な実施形態による、増加したカットオフ放電電圧を適用することによって改善された充電及び放電効率を示す図面である。
【
図7C】様々な実施形態による、増加したカットオフ放電電圧を適用することによって改善された充電及び放電効率を示す図面である。
【0019】
【
図8】いくつかの実施形態による、金属‐水素バッテリアノードが変質(degenerate)したかどうかを判定するための方法を示すフローチャートである。
【0020】
【
図9】いくつかの別の実施形態による、金属‐水素バッテリアノードが変質したかどうかを判定するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明では、本開示の様々な実施形態を十分に理解してもらうために、特定の具体的な詳細について記載する。しかしながら、本開示がこれらの詳細なく実践され得ることを当業者は理解するであろう。さらに、本開示の様々な実施形態が本明細書に開示されているが、この技術分野の当業者の一般常識に従って本開示の範囲内で多くの改作および修正がなされ得る。そのような修正は、実質的に同じやり方で同じ結果を実現するために、本開示の任意の態様の既知の等価物の代替を含む。
【0022】
文脈上別の解釈を必要とする場合を除き、本明細書および特許請求の範囲の全体を通して、「備える(comprise)」という用語ならびに「備える(comprises)」および「備える(comprising)」などのその変形は、オープンな包括的意味で、つまり「~を含むがこれに限定されない」ものとして解釈されるべきである。本明細書の全体を通して、値の数値範囲を記載することは、その範囲を定義する値を含めその範囲内にある別々の各値を個々に参照することの簡略表記として機能することを意図しており、別々の各値は、本明細書において個々に記載されているかのごとく、本明細書に組み込まれている。さらに、単数形態の「a」、「an」および「the」には、文脈に明らかに他の規定がない限り、複数の指示物が含まれる。
【0023】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」に言及することは、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書全体を通して様々な場所での「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」という句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではなく、場合によっては指す場合がある。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1又は複数の実施形態において任意の好適な方式で組み合わせてもよい。
【0024】
水素発生(HER)及び水素酸化(HOR)の両方の反応を促すために、本開示の態様による金属‐水素バッテリのアノードは、水素と結合するための金属部位及び水酸化物アニオンと結合するための金属酸化物/金属水酸化物の両方を含む遷移金属アノード(TMA)触媒を含むTMAである。金属及び金属酸化物の間の界面は、HER及びHORの両方について活性が高く、高い触媒活性を実現するために金属と金属酸化物の最適比が維持される。下に記載されるTMA触媒を用いると、バッテリの平常動作サイクル中に著しい自己回復機構が発生するが、最終的にアノードの劣化をもたらす酸化がTMA上で発生し続け得る。本発明の態様は、金属‐水素酸化物の動作を監視して、アノードの劣化を検出し、特定のレベルの劣化が検出されたときに再生ステップが行われる。
【0025】
結果として、本開示のいくつかの態様によれば、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリの劣化のインジケータが監視され、インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリの閾値レベルの劣化が検出されたかどうかが判定される。それに応じて、アノード酸化に起因してバッテリが変質したと判定された場合、金属水素バッテリのための再生手順が実行される。いくつかの実施形態において、再生手順は、放電及び充電の再調整サイクル(reconditioning cycle)を金属‐水素バッテリに適用することを含む。放電及び充電の再調整サイクルは、放電及び充電の平常サイクルと異なる放電又は充電条件を利用する。いくつかの実施形態において、再生手順は、放電及び充電のサイクルの後の放電動作中のカットオフ電圧を予め定められた電圧に増加させることを含む。減衰の判定は、減衰レートを監視すること、アノード電圧を監視すること、又は、AIベースのシステムを使用することによって実行され得る。
【0026】
図1Aは、いくつかの実施形態による金属‐水素バッテリ100の概略を図示する。金属‐水素バッテリ100は、カソード102、アノード104、及び、カソード102及びアノード104の間に配置されたセパレータ106を含むセル101を含む。セル101はエンクロージャ108に収容される。電解液110がカソード、アノード及びセパレータの間で飽和される。カソード102、アノード104、及びセパレータ106は、多孔性であり、電解液110がカソード102及びアノード104の間で連通することを可能にする。いくつかの実施形態において、セパレータ106は、カソード102及びアノード104が互いに隔離され得る限り、省略され得る。例えば、セパレータ106によって占有される空間は電解液110によって充填され得る。金属‐水素バッテリ100は更に、特定の量の電解液をエンクロージャ108内に導入するよう構成されている流入口112を含む。流入口112は、バルブを含み得、又はさもなければ、バッテリ100の動作前にエンクロージャ108が充填された後に密封され得る。下で更に説明されるように、バッテリ100は、水素発生反応(HER)及び水素酸化反応(HOR)を通じて充電及び放電される。
【0027】
図1Bは、本開示のいくつかの実施形態によるバッテリ構成を示す。
図1Bに示されるように、複数のセル101-1~101-Nがエンクロージャ108内に積み重ねられる。セル101-1~101-Nは、別のセパレータ106によって分離され得、並列又は直列のいずれかで連結され得る。本開示において、複数のセル101が並列に連結される構成が説明される。出力端子122及び124が提供されてセル101-1~101-Nのスタックに連結され、バッテリエンクロージャ108の内外の電流をセル101-1~101-Nへと提供する。
【0028】
端子122及び124は充電/放電コントローラ126に連結され得る。充電/放電コントローラ126は、下で更に詳細に記載されるように、端子122及び124上の電流又は電圧を制御し得る。充電/放電コントローラ126はいくつかの実施形態において、端子122及び124上の電圧及び電流を監視する検出回路132を含み得る。検出回路132は、容器108における温度及び圧力を監視するためにも連結され得る。検出回路132は信号をプロセッサ134に提供する。プロセッサ134は、検出回路132からの信号を処理して、下で更に詳細に記載される機能を実行するために、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、デジタル回路、ASIC、又は他の回路の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、プロセッサ134は、下に記載されるような機能を実行するために訓練されたAIプロセッサを含み得る。プロセッサ134は、下で更に記載されるようなバッテリ100のHER/HORサイクルを制御し得るサイクルコントローラ136に信号を提供し得る。特に、下に記載されるように、プロセッサ134は、下で更に説明されるように平常サイクルモードから再生サイクルモードに切り替えるために、サイクルコントローラ136に信号を提供する。
【0029】
図1Aに示され、上で説明されるように、各セル101は、セパレータ106によって分離されているカソード102及びアノード104を含む。セル101は、容器108に位置し、ここでは、電解液110がカソード102及びアノード104の間で流れ得る。下で更に説明されるように、カソード102は、多孔性活性材料102bによって被覆された多孔性導電性基材102aから形成されている。同様に、アノード104は、多孔性触媒102bによって被覆された多孔性導電性基材104aから形成されている。いくつかの実施形態において、電解液108は、アルカリ性(pH7より高い)の水性電解液である。アノード104及びカソード102の各々は、多重構造を伴う電極アセンブリとして形成され得る。
【0030】
水素発生反応(HER)及び水素酸化反応(HOR)は、酸性条件に比べてアルカリ条件において、機構的により複雑である。活性アルカリHER/HOR触媒は、より動的な表面を有する傾向がある。酸性条件において、反応は、H+からH2への還元、又は、H2からH+への酸化を介して進行する。酸性条件におけるこれらの反応についての触媒の活性は、金属面に対する水素の結合エネルギーに密接に関連し得る。水素の結合が強すぎる又は弱すぎる場合、触媒プロセスは、効果的に進行できず、キネティック過電位(kinetic overpotential)が大きくなる。白金は、水素についての理想的な結合エネルギーを有し、低pH溶液における任意の他の触媒と比べて、より良いHER/HOR性能を実証する。アルカリ条件において、遊離H+の濃度は本質的にゼロであり、したがって、HERはまず、水分子のH-O結合の開裂を介して進行し、下の式1に従って表面吸着水素原子及び水酸化物アニオンを生成する。このステップは金属面上で遅く、結果として、アルカリHER交換電流密度は、同一の金属上の酸性の場合と比べて、2~3桁小さい。水素ガスは、下の式2又は式3に従って生成される。このステップ(式1)は、HORの最後のステップとは逆に発生し、また、反応を完了してH2Oを形成するのに要求されるほど強く金属面が水酸化物アニオンと相互作用しないので、律速ステップである。
H2O+M+e-←→MHad+OH- (式1)
MHad+H2O+e-←→M+H2+OH- (式2)
MHad+MHad←→2M+H2 (式3)
【0031】
触媒上のHER及びHORの両方を促すべく、(i)水素と結合する金属部位及び(ii)水酸化物アニオンと結合する金属酸化物/金属水酸化物部位を含む触媒材料が提供される。金属及び金属酸化物が接する界面は、HER及びHORの両方について活性が高く、高い触媒活性を実現するために金属‐金属酸化物の最適比が維持される。長い、又は高い過電位のHOR中に触媒表面が酸化されすぎた場合、触媒表面は、不活性化され得、バッテリ性能は結果として減衰する。
【0032】
したがって、
図1Aに示されるアノード104は、触媒水素電極である。いくつかの実施形態において、上で説明されたように、アノード104は、多孔性導電性基材104a及び多孔性導電性基材104aを覆う触媒層104bを含む。触媒層104bが多孔性導電性基材104aの外側表面を覆うことが
図1Aに示されているが、多孔性導電性基材104aは内部細孔又は相互接続されたチャネル(示されない)を有するので、触媒層104bはまた、それらの細孔及びチャネルの表面を覆うことが理解される。触媒層104bは、アノード104におけるHER及びHORの両方を触媒するための二元機能触媒を含む。いくつかの実施形態において、多孔性導電性基材104aは、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、及び最大約80%、最大約90%、最大約95%、又はそれより大きい多孔性を有する。いくつかの実施形態において、多孔性導電性基材104aは、ニッケルフォーム、銅フォーム、スチールフォーム、アルミニウムフォーム又は他のものなどの金属フォームである。いくつかの実施形態において、多孔性導電性基材104aは、ニッケル‐モリブデンフォーム、ニッケル‐銅フォーム、ニッケル‐コバルトフォーム、ニッケル‐タングステンフォーム、ニッケル‐銀フォーム、ニッケル‐モリブデン‐コバルトフォーム又は他のものなどの金属合金フォームである。金属ホイル、金属メッシュ、及び繊維状導電性基材などの他の導電性基材が本開示により包含される。いくつかの実施形態において、導電性基材は、炭素繊維紙、炭素布、炭素フェルト、炭素マット、炭素ナノチューブフィルム、グラファイトホイル、グラファイトフォーム、グラファイトマット、グラフェンホイル、グラフェンファイバ、グラフェンフィルム及びグラフェンフォームなどの炭素ベース材料である。
【0033】
いくつかの実施形態において、触媒層104bの二元機能触媒は、ニッケル‐モリブデン‐コバルト(NiMoCo)合金である。ニッケル、ニッケル‐モリブデン、ニッケル‐タングステン、ニッケル‐タングステン‐コバルト、ニッケル‐炭素、ニッケル‐クロムベースの複合体などの二元機能触媒としての他の遷移金属又は金属合金が本開示によって包含される。いくつかの実施形態において、二元機能触媒は、Ni、Co、Cr、Mo、Fe、Mn及びWのうち2又はより多くを含む遷移金属合金である。白金、パラジウム、イリジウム、金、ロジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、銀、及び、それらの(白金、パラジウム、イリジウム、金、ロジウム、ルテニウム、レニウム、オスミウム、銀、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、モリブデン、タングステン、クロム及び同様のものなどの貴金属及び非貴金属遷移金属との)合金などの、二元機能触媒としての他の貴金属及びそれらの合金が本開示によって包含される。いくつかの実施形態において、二元機能触媒は、水素発生反応及び水素酸化反応触媒の組み合わせである。いくつかの実施形態において、金属‐水素バッテリ100の二元機能触媒は、水素発生及び酸化反応に全体として寄与する遷移金属及びそれらの酸化物/水酸化物などの異なる材料の混合物を含む。いくつかの実施形態において、触媒層104bは、例えば、約1nm~約100nm、約1nm~約80nm、又は約1nm~約50nmの範囲のサイズ(又は平均サイズ)を有する二元機能触媒のナノ構造を含む。いくつかの実施形態において、触媒層104bは、例えば、約100nm~約500nm、約500nm~約1000nmの範囲のサイズ(又は平均サイズ)を有する二元機能触媒のマイクロ構造を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、アノード104上で電解液(例えば電解液108)に関する異なる親和性を形成するために、触媒層104bは、表面親和性修正材料で部分的に被覆され得る。例えば、多孔性基材104a上の触媒層104bが電解液に対して親水性であるとき、触媒層104bは、電解液に対して疎水性である材料で部分的に又は全体的に被覆され得る。反対に、多孔性基材104a上の触媒層104bが電解液に対して疎水性であるとき、触媒層104bは、電解液に対して親水性である材料で部分的に又は全体的に被覆され得る。この構造は、アノード104の細孔における水素ガスの移動を促進し、放電中のHORを改善し得る。
【0035】
カソード102は、導電性基材102a及び導電性基材102aを覆う被覆102bを含み得る。被覆102bは、遷移金属を含む酸化還元活性材料を含む。いくつかの実施形態において、導電性基材102aは、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%又は少なくとも約50%、及び最大約80%、最大約90%又はより高い多孔性を有するなど、多孔性である。いくつかの実施形態において、導電性基材102aは、ニッケルフォーム又は金属合金フォームなどの金属フォームである。金属ホイル、金属メッシュ、及び繊維状導電性基材などの他の導電性基材が本開示により包含される。いくつかのいくつかの実施形態において、酸化還元活性材料に含まれる遷移金属はニッケルである。いくつかの実施形態において、ニッケルがニッケル水酸化物又はニッケルオキシ水酸化物に含まれる。いくつかの実施形態において、酸化還元反応性材料に含まれる遷移金属はコバルトである。いくつかの実施形態において、コバルトがコバルト酸化物又は亜鉛コバルト酸化物として含まれる。いくつかの実施形態において、酸化還元活性材料に含まれる遷移金属はマンガンである。いくつかの実施形態において、マンガンが酸化マンガン又はドープされた酸化マンガン(例えば、ニッケル、銅、ビスマス、イットリウム、コバルト、又は他の遷移又はポスト遷移金属でドープされる)として含まれる。銀などの他の遷移金属が本開示によって包含される。いくつかの実施形態において、カソード102はカソードであり、アノード104はアノードである。いくつかの実施形態において、酸化還元活性材料の被覆マイクロ構造は、例えば、約1μm~約100μm、約1μm~約50μm、又は約1μm~約10μmの範囲のサイズ(又は平均サイズ)であり得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、電解液108は水性電解液である。水性電解液はアルカリ性であり、約7.5又はより大きい、約8又はより大きい、約8.5又はより大きい、又は約9又はより大きい、又は約11又はより大きい、又は約13又はより大きいなどの、7より大きいpHを有する。非限定的な例として、電解液108は、KOH又はNaOH又はLiOH、又は、LiOH、NaOH、及び/又はKOHの混合物を含み得る。
【0037】
安価な遷移金属などの水素酸化触媒が金属‐水素バッテリに好適であるが、それらは、長いHOR中に不動態化され、実際のデバイスにおけるそれらの使用が著しく妨害され得る。本開示のいくつかの実施形態によれば、触媒104bは、二元機能TMA(遷移金属合金)であり得る。いくつかの実施形態において、Ni、Co、Cr、Mo、Fe、及びWの組み合わせは、二元機能TMA触媒の代替として使用され得る。例えば、表面にCrOx粒子が付けられたNiから構成された触媒が使用され得る。活性を更に改善するべく小さい量のPtが追加され得る。1つのそのようなTMA触媒が、米国特許出願第16/373,247号に記載され、その全体は本明細書において参照によって組み込まれる。
【0038】
ここで記載されるTMA触媒と共に形成されるバッテリは、エネルギー効率において、遅い減衰を示すが、これは主に、放電中の電圧損失によって生じる。3電極構成を用いた試験は、劣化中に全体的なバッテリ電圧が0.95Vより下に低下するときに、アノード104上の電位が、概して0.1Vを超えて増加することを示す。TMA触媒は、触媒を損傷することなく放電反応(HOR)に対する注目すべき改善を示すことも発見された。この触媒は更に、高いT性能向上を実証し、高い温度で効率的に動作し得る。再生の労力は、より高い動作温度、特に、室温より高い温度において、強化され得る。
【0039】
アノード過電位がH2/H2Oに対して約0.1V又は0.1Vに到達するときに、著しい表面不動態化が発生を開始する。いくつかの点において、不動態化は、HORを上回り始め、より多くの酸化物が触媒上で成長するにつれて電位は急激に上昇し、それにより、触媒活性が劣化する。本明細書において開示される技法は、不動態化を反転し、劣化したバッテリをそれらのエネルギー効率状態に復元し得る。
【0040】
図1Cは、
図1Bに示されるプロセッサ134の動作例の状態機能150を示す。
図1Cに示されるように、状態機能150は、充電及び放電サイクルがバッテリ100によって実行される平常動作状態152を含む。平常動作152中に監視状態154も動作する。監視状態154は、劣化がいつ発生したかを判定するために、バッテリ100における電圧及び/又は電流を監視する。監視状態154は、平常動作状態152中に、継続的に又は周期的にエンゲージ(engage)される。
【0041】
監視状態154を通じて劣化が検出された場合、状態機能150が平常動作152から再生状態158へ移行する。再生状態158において、バッテリ100は、検出された劣化を少なくとも部分的に復元するような方式でサイクルを受ける。更に示されるように、監視ステップ156は、バッテリ100がいつ復元されたかを判定するために、状態158におけるサイクル中のバッテリ100の充電及び電流を監視する。復元されると、状態150は平常監視状態152に戻る。これらの状態は、下で更に詳細に説明される。更に記載されるように、バッテリ100の復元を促進するために、より高い温度動作が、再生状態158において使用され得る。
【0042】
図2は、例示的な一実施形態による、
図1Cに示される状態機能150と一貫する、金属‐水素バッテリを動作させるための方法200を示すフローチャートである。いくつかの実施形態において、方法200は、金属‐水素バッテリの電極上の酸化物不動態化を反転することによって、劣化した金属‐水素バッテリを再生し得る。202において、放電及び充電のサイクル中の金属‐水素バッテリのアノードの劣化のインジケータが、監視状態154中に監視される。例えば、金属‐水素バッテリが、平常動作152中に放電及び充電動作のサイクルの繰り返しの対象となるとき、それらの動作の劣化のインジケータが、本明細書に開示される技法に従って取得又は計算され得る。いくつかの実施形態において、劣化のインジケータはまた、エネルギー効率を示し得る。バッテリ100などのバッテリにおける放電及び充電のサイクル中のエネルギー効率の一例が
図3に示される。
図3は、例示的な一実施形態による、金属‐水素バッテリのエネルギー効率対サイクルを図示する図面である。
図3に示されるように、金属‐水素バッテリのエネルギー効率は、放電及び充電のより多くのサイクルが実行されるにつれて減少し、金属‐水素バッテリの性能が劣化/減衰することが示される。エネルギー効率は、例えば、各サイクルにおけるバッテリの放電中の電流、時間長、及びセル電圧と比較して、充電中の電流、時間長、及びセル電圧を監視することによって判定され得る。いくつかの実施形態において、エネルギー効率は、アノード劣化のインジケータとしても使用され得るアノード104上の電圧を監視することによって監視され得る。インジケータを監視して、再生状態158へのエントリをトリガするのに十分な劣化が発生したかどうかを判定するために、他の方法も使用され得る。
【0043】
再び
図2を参照すると、204において、放電及び充電の監視されているサイクル中の金属‐水素バッテリの監視されているインジケータが、閾値を超える減衰を示すかどうかが判定される。放電及び充電のサイクル中の金属‐水素バッテリの劣化の監視されているインジケータが減衰を示すかどうかは、下で更に記載されるように、複数の方式で判定され得る。
【0044】
放電及び充電の監視されているサイクル中の金属‐水素バッテリの監視されているインジケータが減衰していないと判定された場合(すなわち、監視されているインジケータが閾値に到達していない)、方法は動作202に戻り、金属‐水素バッテリのインジケータの監視を続ける。しかし、放電及び充電の監視されているサイクル中の金属‐水素バッテリの監視されているインジケータが、閾値より下のアナログ減衰を示すと判定された場合、206において放電及び充電の再調整サイクルが金属‐水素バッテリに適用される。206において、放電及び充電の再調整サイクルは、異なる(平常動作状態152において実行される放電及び充電の平常サイクルと異なる)放電又は充電条件を利用して、金属‐水素バッテリを再生し、それにより、放電及び充電の再調整サイクルの終了時における金属‐水素バッテリの放電及び充電性能は、放電及び充電の監視されているサイクルの終了時、又は、放電及び充電の再調整サイクルの開始時における金属‐水素バッテリのそれより良好である。いくつかの実施形態において、放電及び充電の監視されているサイクルは、金属‐水素バッテリの平常動作、又は、金属‐水素バッテリの性能を試験する特定のセッションにあり得、一方、放電及び充電の再調整サイクルは、劣化した金属‐水素バッテリを再生するよう構成されている放電及び充電の修復/自己回復サイクル(又は再生サイクル)と称され得る。
【0045】
例えば、劣化した金属‐水素バッテリは、後続の対称のサイクルによって再生され得、ここでは、放電及び充電の(例えば、監視されているサイクルに続く)後続サイクルの各々の間に同一の電流が同一の時間長にわたって金属‐水素バッテリに適用される。非限定的な例が
図4に示されている。
図4は、例示的な一実施形態による、3電極金属‐水素バッテリセルにおけるアノード104上のクロノポテンショメトリ測定結果を示す図面である。金属‐水素バッテリセルは、26%KOH電解液110を採用する。0.5Aの定常電流が2分間にわたって放電及び充電の各サイクルに適用される。
図4に示されるように、後続/再調整サイクルの開始時に、アノードにおける電位はH
2/H
2Oに対して約170mVであり、酸化物によって覆われるアノードの表面はHORを妨害することが示される。アノードにおける電位は、初期の10サイクル後に、H
2/H
2Oに対して100mV未満へ迅速に降下する。そして、250サイクル後、HOR及びHER電位は、それぞれ、H
2/H
2Oに対して約37mV、及び、H
2/H
2Oに対して34mVで安定的であり、金属‐水素バッテリの著しい性能向上が示される。これらの技法に基づいて、放電及び充電の再調整(例えば、修復/自己回復)サイクルの終了時における金属‐水素バッテリの性能が、放電及び充電の再調整サイクルの開始時より良くなるように、劣化した金属‐水素バッテリは再生され得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、劣化した金属‐水素バッテリは、後続の非対称サイクルによって再生され得、ここでは、放電及び充電動作において異なる電流が金属‐水素バッテリに適用される。いくつかの実施形態において、後続の非対称サイクルにおける放電及び充電動作の期間は異なり得る。非限定的な例が
図5に示される。
図5は、例示的な一実施形態による、3電極金属‐水素バッテリセルにおけるアノード上のクロノポテンショメトリ測定結果を示す図面である。金属‐水素バッテリセルは、26%KOH電解液を採用する。
【0047】
図5に示されるように、後続/再調整サイクルの開始時に、アノードにおけるHOR電位はH
2/H
2Oに対して約800mVであり、アノードの表面が、HORを妨害する酸化物によって覆われることが示される。後続/再調整サイクルにおいて、5Aの電流が初期充電動作(HER)において30分間にわたって適用され、それに続く放電動作(HOR)では、1Aの電流が5分間にわたって適用される。初期充電及び放電動作の後、充電及び放電動作の反復が金属‐水素バッテリに適用され、ここでは、充電動作(HER)において10Aの電流が5分間にわたって適用され、それに続く放電動作(HOR)では、1Aの電流が5分間にわたって適用される。放電及び充電の約6の再調整(例えば、修復/自己回復)サイクルの後、アノードにおける電位が、H
2/H
2Oに対して100mV未満へ迅速に降下し、金属‐水素バッテリの著しい性能向上が示される。これらの技法に基づいて、放電及び充電の再調整(例えば、修復/自己回復)サイクルの終了時における金属‐水素バッテリの性能が、放電及び充電の再調整サイクルの開始時より良くなるように、劣化した金属‐水素バッテリは再生され得る。
【0048】
図6Aは、例示的な一実施形態による、金属‐水素バッテリを動作させるための別の方法600を示すフローチャートである。いくつかの実施形態において、方法600は、金属‐水素バッテリの電極上の酸化物不動態化を反転することによって、劣化した金属‐水素バッテリを再生し得る。上で説明されたように、202において、放電及び充電のサイクル中の金属‐水素バッテリが監視される。例えば、金属‐水素バッテリが、放電及び充電動作の繰り返しサイクルの対象になるとき、それらの動作中の劣化のインジケータが、監視に基づいて取得又は計算され得る。204において、放電及び充電の監視されているサイクル中の金属‐水素バッテリの監視されているインジケータが変質アノードを示しているかどうかを判定する。
【0049】
ステップ204において、放電及び充電の監視されているサイクル中の金属‐水素バッテリの劣化を示す条件が満たされていないと判定された場合、方法は動作202に戻り、金属‐水素バッテリの監視を続ける。しかし、ステップ204において、放電及び充電の監視されているサイクル中の金属‐水素バッテリの劣化を条件が示していると判定された場合、方法600は、状態158中のステップ602における放電及び充電の監視されているサイクルの後の放電動作中のカットオフ電圧を予め定められた電圧に増加させる。この動作により、金属‐水素バッテリの放電及び充電性能が改善されるように、金属‐水素バッテリを再生する。いくつかの実施形態において、予め定められたカットオフ電圧は、約0.6、0.8、1.2又は1.5Vであり得る。いくつかの実施形態において、放電及び充電の監視されているサイクルは、金属‐水素バッテリの平常動作、又は、金属‐水素バッテリの性能を試験する特定のセッションにあり得、一方、放電及び充電の監視されているサイクルの後の放電動作は、放電及び充電の監視されているサイクルの後の放電及び充電の修復/自己回復サイクルの一部であり得る。
【0050】
いくつかの実施形態において、第3の白金基準電極が含まれ得る。そのような基準電極は、セルにおけるアノード及びカソード電圧の独立した監視を可能にする。
図6Bは、動作610中の例示的な160Ahバッテリを実証する。特に、動作610に示されるバッテリは、C/5のCレート、153Ahの充電容量(CCAP)、83%のCE、73%のEE、及び、88%のVEを特徴とし得る。
図6Bは、曲線612において、基準に対するアノード電圧を、曲線614において、基準に対するカソード電圧を、曲線616において、出力電圧を示す。示されるように、アノード電圧612は、放電の終了近くにおいて、エリア618における急速な電圧増加を示す。同時に示されるように、基準曲線614に対するカソード電圧及びバッテリ出力電圧616によって示されるように、バッテリ性能は、結果として妨害される。示されるように、アノード電圧がH
2/H
2Oに対して0.06Vより上に上昇してセル性能を制限すると、アルゴリズム600のステップ204がトリガされ、下で示されるようにステップ602に進み得る。
【0051】
図7A~
図7Cは、様々な実施形態による、増加したカットオフ放電電圧を適用することによって改善された充電及び放電効率を示す図面である。
図7Aは、C/2における4Ahバッテリセルサイクルについてのクーロン効率(CE)を図示する。
図7Bは、C/2における4Ahバッテリセルサイクルについての電圧効率(voltaic efficiency)(VE)を図示する。
図7Cは、C/2における4Ahバッテリセルサイクルについてのエネルギー効率(EE)を図示する。
【0052】
図7A~
図7Cにおいて、放電カットオフ電圧は、平常動作状態152における放電及び充電の監視されているサイクル中に0.8Vであり、再生状態158中に、方法600の602における放電及び充電の監視されているサイクルの後の放電動作中に1Vに増加する。
図7Aは、C/2における4Ahバッテリセルサイクルについての、全体的な充電/放電サイクルにわたる、バッテリに入った総電荷に対する、バッテリから抽出された総電荷の比率として定義されるクーロン効率(CE)を図示する。
図7Aに示されるように、放電及び充電の約40サイクルの後に、0.8V放電カットオフ電圧についてのCEは約98.2%であり、一方、1V放電カットオフ電圧についてのCEは約99%である。
図7Bは、C/2における4Ahバッテリセルサイクルについての、充電/放電サイクルにわたる、充電中及び放電中の平均電圧間の差として定義される電圧効率(VE)を図示する。放電及び充電の約45サイクルの後、0.8V放電カットオフ電圧についてのVEは約85.6%であり、一方、1V放電カットオフ電圧についてのVEは約87.8%である。
図7Cは、C/2における4Ahバッテリセルサイクルについての、全体サイクル中にバッテリから取り出された電流に対する、バッテリに提供された電流の比率として定義されるエネルギー効率(EE)を図示する。放電及び充電の約45サイクルの後、0.8V放電カットオフ電圧を伴うサイクルについてのEEは約83.7%であり、一方、1V放電カットオフ電圧を伴うサイクルについてのEEは約86.5%である。これらの結果は、劣化した金属‐水素バッテリが、増加したエネルギー効率を有し得るように、放電カットオフ電圧の増加が、バッテリを再生する効果を有することを実証する。
【0053】
本明細書において開示される技法はまた、
図2及び6のステップ204において金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するために使用され得る。非限定的な例として、金属‐水素バッテリのアノード上の電位は、金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するために、監視されているインジケータとして使用され得る。いくつかの実施形態において、金属‐水素バッテリのアノード上の電位がH
2/H
2Oに対して約0.1Vより大きいとき、放電及び充電のサイクル中の金属‐水素バッテリは減衰したと判定される。いくつかの実施形態において、金属‐水素バッテリのアノード上の電位がH
2/H
2Oに対して約75、80、85、90、95、105、110、115、120又は125mVより大きいとき、放電及び充電のサイクル中の金属‐水素バッテリは減衰したと判定される。
【0054】
204において、アノードが(おそらく酸化によって)劣化しているかどうかを判定する別の非限定的な例示的な方法が
図8に示される。
図8は、例示的な一実施形態による、金属‐水素バッテリが劣化しているかどうかを判定するための方法800を示すフローチャートである。802において、放電及び充電のサイクルの放電動作中の放電電圧の第1減衰レートが計算される。804において、放電及び充電のサイクルの充電動作中の充電電圧の第2減衰レートが計算される。806において、第1減衰レートが閾値だけ第2減衰レートより大きいかどうかが判定される。第1減衰レートが第2減衰レートより大きい場合、808において、放電及び充電のサイクル中の金属‐水素バッテリのエネルギー効率が劣化しているかどうかが判定される。第1減衰レートが第2減衰レートより大きくない場合、810において、放電及び充電のサイクル中の金属‐水素バッテリのエネルギー効率が十分に劣化していないと判定される。示される実施形態において、放電及び充電電圧の減衰レートは、金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するためのインジケータとして採用される。一般に、放電電圧の減衰に対して、充電電圧はより遅く減衰するが、放電の減衰レートは、十分な劣化が発生したときに、大幅に増加することが発見された。これは、長期の使用にわたって、HOR中に酸化物がアノード上に蓄積し、更なるHORのための触媒部位を不動態化し得るからである。
【0055】
いくつかの実施形態において、金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するために、第1減衰レート及び第2減衰レートの比率が判定されて閾値と比較され得る。例えば、金属‐水素バッテリの著しい減衰を捉えるために、閾値は、2.0、2.25、又は2.5などの、より大きい値に設定され得る。これにより、金属‐水素バッテリを再生する頻度が減少減し得る。いくつかの実施形態において、金属‐水素バッテリの早期ステージの減衰を識別するために、閾値は、1.5及び2.0の間(境界を含む)などのより小さい値に設定され得る。
【0056】
図9は、例示的な一実施形態による、金属‐水素バッテリが204において減衰しているかどうかを判定するための別の方法900を示すフローチャートである。方法900は、金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを自動的に判定するために機械学習モデルを採用する。例えば、バッテリシステムにおいて、各バッテリは、バッテリ情報を、バッテリシステムにおけるバッテリを管理するサーバへ転送するよう構成されている通信インタフェースに関連付けられている。サーバは、各バッテリのバッテリ情報を分析するための、及び、特定のバッテリがバッテリの性能を復元するために再生状態158における再生を必要とするかどうかを識別するための機械学習モデルを含み得る。そうである場合、サーバは、劣化したバッテリを再生するために、
図2及び
図6A及び
図6Bに関連して説明されるものなど、本明細書において開示される技法を採用し得る。
【0057】
図9を参照すると、902において、複数の金属‐水素バッテリの放電及び充電のサンプルサイクルが取得される。例えば、金属‐水素バッテリの各々の通信インタフェースが、周期的に又はオンデマンドでバッテリ情報をサーバへ転送するよう構成され得る。バッテリ情報は、バッテリ識別子、及び、バッテリの使用履歴情報、例えば、バッテリが放電及び充電のサイクルをいくつ経たか、放電及び充電のそれらのサイクル中のアノード及びカソードにおける電位、充電状態、温度、バッテリ電圧、サイクルに対するクーロン効率、サイクルに対する電圧効率、サイクルに対するエネルギー効率、インピーダンスデータ、圧力データ、電荷の電圧に対しての微分(dQ/dV)、及び他のデータパラメータなどを含み得る。バッテリ情報は例示的であり非限定的である。他のバッテリ性能インデックスが予期される。バッテリ情報は、複数の金属‐水素バッテリの各々が減衰していると判定されたかどうかについての判定と共に、サーバへ送信され得る。
【0058】
904において、複数の金属‐水素バッテリが減衰していると示す放電及び充電のサンプルサイクルのパラメータが抽出される。バッテリ情報が取得された後、サーバは、バッテリ情報を分析し、複数の金属‐水素バッテリが減衰していることを示す放電及び充電のサンプルサイクルのパラメータを抽出するよう構成され得る。いくつかの実施形態において、複数の金属‐水素バッテリが減衰していないことを示す放電及び充電のサンプルサイクルのパラメータも、機械学習モデルを訓練するために抽出され得る。
【0059】
906において、機械学習モデルが、訓練済み機械学習モデルを生成するために、抽出されたパラメータを用いて訓練される。いくつかの実施形態において、機械学習モデルは、教師付き学習を受け得、ここで、抽出されたパラメータは、金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを示すラベルと共に機械学習モデルに入力される。機械学習プロセスのために様々なモデルが採用され得る。訓練済み機械学習モデルを生成するために、例えば、ニューラルネットワーク、決定木、回帰分析、サポートベクターマシンなどが、動作906において採用され得る。
【0060】
908において、平常動作中の問題になっている金属‐水素バッテリの放電及び充電のサイクルのパラメータが抽出される。バッテリシステムにおける新しいバッテリ又は任意の既存のバッテリが、バッテリが減衰しているかどうかの判定を受ける予定であるとき、そのバッテリ情報が取得される。動作904と同様に、問題になっているバッテリのパラメータが抽出される。
【0061】
910において、放電及び充電のサイクル中の問題になっている金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するために、問題になっているバッテリの抽出されたパラメータが、訓練済み機械学習モデルに供給される。放電及び充電のサイクル中の問題になっている金属‐水素バッテリが減衰している場合、サーバは、問題になっているバッテリを再生するために、本明細書に開示される技法を開始し得る。
【0062】
これらの技法に基づいて、金属‐水素バッテリがkWhあたり150ドル未満のコストでNASAのバッテリセルより長く持続することを可能にするバッテリ管理ソフトウェアシステム(BMS)が確立され得る。当該技法は、サイクル中の触媒の表面酸化状態を制御することによって、重要な貴金属触媒を使用することなく、バッテリが数十年の安定性を実現することを可能にする。
【0063】
金属‐水素バッテリの広範なバッテリサイクルデータが様々な条件下で収集される。データは次に、バッテリ管理システムの基礎となるサイクルアルゴリズムを訓練するために使用される。バッテリシステムにおける個別のバッテリのフィールドデータは、継続的にサーバへ送り返され得、BMSアルゴリズムを更に改善するために使用され得る。バッテリシステムにおける個別のバッテリには、周期的に、又は、オンデマンドで、更新されたBMSソフトウェアが提供され得、これは、バッテリの各々が最小限の物理的メンテナンスで数十年持続することを確実にするために、バッテリのためのコントローラにおいて自動的にインストールされ得る。
【0064】
金属‐水素バッテリのアノードの健全性は、充電状態、温度、バッテリ電圧などを含む複数の要因に依存する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される放電及び充電のサイクルは、約30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、又は80℃などの室温より上の温度で、又は上の値のうち任意の2つの間で実行され得る。金属‐水素バッテリの動作温度を増加させることは、金属‐水素バッテリのアノードにおける放電電位を減少させるだけでなく、金属‐水素バッテリの信頼性を長期間にわたって改善する。
【0065】
結果として、非限定的な例として、以下の態様が本開示に含まれる。
【0066】
態様1は、金属‐水素バッテリを動作させるための方法であって:放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリの劣化のインジケータを監視する段階;インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定する段階;及び、放電及び充電中の金属‐水素バッテリのエネルギー効率がアノード酸化に起因して減衰しているという判定に応じて、金属‐水素バッテリを再生する段階を備える方法を含む。
【0067】
態様2は、金属‐水素バッテリは、放電及び充電の平常サイクル中のアノード酸化に起因して減衰する、態様1に記載の方法を含む。
【0068】
態様3は、金属‐水素バッテリを再生する段階は、放電及び充電の再調整サイクルを金属‐水素バッテリに適用する段階を含み、ここで、放電及び充電の再調整サイクルは、放電及び充電の平常サイクルと異なる放電又は充電条件を利用する、態様1に記載の方法を含む。
【0069】
態様4は、放電及び充電の再調整サイクルを金属‐水素バッテリに適用する段階は、放電及び充電の再調整サイクルの各々において、同一の時間長にわたって同一の電流を適用する段階を含む、態様3の方法を含む。
【0070】
態様5は、放電及び充電の再調整サイクルを金属‐水素バッテリに適用する段階は:放電及び充電の再調整サイクルの充電動作中に第1電流を適用する段階;及び、放電及び充電の再調整サイクルの放電動作中に第2電流を適用する段階、ここで第1電流は第2電流より大きい、を含む、態様3に記載の方法を含む。
【0071】
態様6は、インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリの性能が減衰しているかどうかを判定する段階は:放電及び充電の平常サイクルの放電動作中の放電電圧の第1減衰レートを計算する段階;放電及び充電の第1平常サイクルの充電動作中の充電電圧の第2減衰レートを計算する段階;及び、第1減衰レートが第2減衰レートより大きいとき、放電及び充電の第1平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰していると判定する段階を含む、態様1の方法を含む。
【0072】
態様7は、金属‐水素バッテリのアノード上の電位が閾値電圧より大きいとき、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリは、減衰していると判定される、態様1の方法を含む。
【0073】
態様8は、閾値電圧はH2/H2Oに対して約0.1Vである、態様7に記載の方法を含む。
【0074】
態様9は、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかをインジケータに基づいて判定する段階は:複数の第1金属‐水素バッテリの放電及び充電のサンプルサイクルを取得する段階;複数の第1金属‐水素バッテリが減衰していることを示す、放電及び充電のサンプルサイクルの第1パラメータを抽出する段階;訓練済み機械学習モデルを生成するために、第1パラメータを用いて機械学習モデルを訓練する段階;金属‐水素バッテリの放電及び充電のサイクルの第2パラメータを抽出する段階;及び、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するために、第2パラメータを訓練済み機械学習モデルに供給する段階を含む、態様1に記載の方法を含む。
【0075】
態様10は、室温より上の温度において放電及び充電の平常サイクルを実行する段階を更に備える、態様1に記載の方法を含む。
【0076】
態様11は、室温より上の温度において放電及び充電の再調整サイクルを実行する段階を更に備える、態様1の方法を含む。
【0077】
態様12は、金属‐水素バッテリを再生する段階が、放電及び充電のサイクルの後の放電動作中のカットオフ電圧を予め定められた電圧に増加させることを含む、態様1に記載の方法を含む。
【0078】
態様13は、金属‐水素バッテリであって、容器;カソード及びアノードを含む少なくとも1つのセル、アノード及びカソードは各々、触媒を有し、少なくとも1つのセルは容器内に含まれ、少なくとも1つのセルは、充電及び放電サイクル中の水素発生反応(HER)及び水素酸化反応(HOR)をサポートする;容器に含まれる電解液;及び、少なくとも1つのセルに連結されているコントローラを備え、コントローラは:放電及び充電の第1平常サイクル中の金属‐水素バッテリの劣化のインジケータを監視する:インジケータに基づいて、放電及び充電の第1平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定する;及び、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰しているという判定に応じて金属‐水素バッテリを再生するための命令を実行する、金属‐水素バッテリを含む。
【0079】
態様14は、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリがアノード酸化に起因して減衰する、請求項13に記載の金属‐水素バッテリを含む。
【0080】
態様15は、金属‐水素バッテリを再生するための命令は、放電及び充電の再調整サイクルを金属‐水素バッテリに適用するための命令を含み、ここで、放電及び充電の再調整サイクルは、放電及び充電の平常サイクルとは異なる放電又は充電条件を利用する、態様13に記載のバッテリを含む。
【0081】
態様16は、放電及び充電の再調整サイクルを金属‐水素バッテリに適用する命令は、放電及び充電の再調整サイクルの各々において、同一の時間長にわたって同一の電流を適用することを含む、態様15に記載のバッテリを含む。
【0082】
態様17は、放電及び充電の再調整サイクルを金属‐水素バッテリに適用する命令は:放電及び充電の再調整サイクルの充電動作中に第1電流を適用する命令;及び、放電及び充電の再調整サイクルの放電動作中に第2電流を適用する命令、第1電流は第2電流より大きい、命令を含む、態様15に記載のバッテリを含む。
【0083】
態様18は、インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰していると判定する命令は:放電及び充電の平常サイクルの放電動作中の放電電圧の第1減衰レートを計算する命令;放電及び充電の平常サイクルの充電動作中の充電電圧の第2減衰レートを計算する命令;及び、第1減衰レートが第2減衰レートより大きいとき、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリのエネルギー効率は減衰していると判定する命令を含む、態様13に記載のバッテリを含む。
【0084】
態様19は、金属‐水素バッテリのアノード上の電位が閾値電圧より大きいとき、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリの性能は減衰している、態様13に記載のバッテリを含む。
【0085】
態様20は、閾値電圧がH2/H2Oに対して約0.1Vである、態様19に記載のバッテリを含む。
【0086】
態様21は、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかをインジケータに基づいて判定する命令は:複数の金属‐水素バッテリの放電及び充電のサンプルサイクルを取得する命令;アノード酸化に起因して複数の金属‐水素バッテリが減衰していることを示す、放電及び充電のサンプルサイクルの第1パラメータを抽出する命令;訓練済み機械学習モデルを生成するために、第1パラメータを用いて機械学習モデルを訓練する命令;金属‐水素バッテリの放電及び充電のサイクルの第2パラメータを抽出する命令;及び、アノード酸化に起因して放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するために、第2パラメータを訓練済み機械学習モデルに供給する命令を含む、態様13に記載のバッテリを含む。
【0087】
態様22は、室温より上の温度における放電及び充電の平常サイクルを実行する命令を更に含む、態様13に記載のバッテリを含む。
【0088】
態様23は、室温より上の温度における放電及び充電の再調整サイクルを実行する命令を更に含む、態様13に記載のバッテリを含む。
【0089】
態様24は、金属‐水素バッテリを再生するための命令は、放電及び充電のサイクルの後の放電動作中のカットオフ電圧を予め定められた電圧に増加させる命令を含む、態様13に記載のバッテリを含む。
【0090】
本開示の上述の説明は例示および説明の目的で提供されている。この説明は、網羅的であること、又は開示される正確な形態に本開示を限定することを意図するものではない。本開示の広さおよび範囲は、上述した例示の実施形態のいずれかによって限定されるべきでない。多くの修正および変形は当業者には明らかであろう。修正および変形には開示されている特徴の任意の関連の組み合わせが含まれる。実施形態は、本開示の原理、およびこの実際的応用を最も良く説明することによって、他の当業者が、様々な実施形態について、考えられる特定の用途に適する様々な修正と共に本開示を理解可能にするために、選択されかつ記載されたものである。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価性によって定義されることを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属‐水素バッテリを動作させるための方法であって:
放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの劣化のインジケータを監視する段階;
前記インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定する段階;及び
放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリ
のエネルギー効率がアノード酸化に起因して減衰しているという判定に応じて、前記金属‐水素バッテリを再生する段階
を備える方法。
【請求項2】
前記金属‐水素バッテリを再生する段階は、放電及び充電の再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用する段階を含み、ここで、放電及び充電の前記再調整サイクルは、放電及び充電の前記平常サイクルと異なる放電又は充電条件を利用する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
放電及び充電の前記再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用する段階は、放電及び充電の前記再調整サイクルの各々において、同一の時間長にわたって同一の電流を適用する段階を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
放電及び充電の前記再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用する段階は:
放電及び充電の前記再調整サイクルの充電動作中に第1電流を適用する段階;及び
放電及び充電の前記再調整サイクルの放電動作中に第2電流を適用する段階、ここで前記第1電流は前記第2電流より大きい、
を含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項5】
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの前記エネルギー効率が減衰しているかどうかを前記インジケータに基づいて判定する段階は:
放電及び充電の前記平常サイクルの放電動作中の放電電圧の第1減衰レートを計算する段階;
放電及び充電の前記平常サイクルの充電動作中の充電電圧の第2減衰レートを計算する段階;及び
前記第1減衰レートが前記第2減衰レートより大きいとき、放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰していると判定する段階
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを前記インジケータに基づいて判定する段階は:
複数の第1金属‐水素バッテリの放電及び充電のサンプルサイクルを取得する段階;
前記複数の第1金属‐水素バッテリが減衰していることを示す、放電及び充電の前記サンプルサイクルの第1パラメータを抽出する段階;
訓練済み機械学習モデルを生成するために、前記第1パラメータを用いて機械学習モデルを訓練する段階;
前記金属‐水素バッテリの放電及び充電の前記
サンプルサイクルの第2パラメータを抽出する段階;及び
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定するために、前記第2パラメータを前記訓練済み機械学習モデルに供給する段階
を含む、請求項1
から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
金属‐水素バッテリであって、
容器;
カソード及びアノードを含む少なくとも1つのセル、前記アノード及び前記カソードは各々、触媒を有し、前記少なくとも1つのセルは前記容器内に含まれ、前記少なくとも1つのセルは、充電及び放電サイクル中の水素発生反応(HER)及び水素酸化反応(HOR)をサポートする;
前記容器に含まれる電解液;及び
前記少なくとも1つのセルに連結されているコントローラ
を備え、前記コントローラは:
放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリの劣化のインジケータを監視する;
前記インジケータに基づいて、放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定する;及び
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリがアノード酸化に起因して減衰しているという判定に応じて前記金属‐水素バッテリを再生する
ための命令を実行する
、
バッテリ。
【請求項8】
前記金属‐水素バッテリを再生するための命令は、放電及び充電の再調整サイクルを前記金属‐水素バッテリに適用するための命令を含み、ここで、放電及び充電の前記再調整サイクルは、放電及び充電の平常サイクルとは異なる放電又は充電条件を利用する、請求項
7に記載のバッテリ。
【請求項9】
前記インジケータに基づいて、放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰していると判定する命令は:
放電及び充電の前記平常サイクルの放電動作中の放電電圧の第1減衰レートを計算する;
放電及び充電の前記平常サイクルの充電動作中の充電電圧の第2減衰レートを計算する;及び
前記第1減衰レートが前記第2減衰レートより大きいとき、放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリ
のエネルギー効率は減衰していると判定する
ための命令
を含む、請求項
7に記載のバッテリ。
【請求項10】
前記インジケータに基づいて、放電及び充電の平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリが減衰しているかどうかを判定する命令は:
複数の第1金属‐水素バッテリの放電及び充電のサンプルサイクルを取得する;
前記複数の第1金属‐水素バッテリが減衰していることを示す放電及び充電の前記サンプルサイクルの第1パラメータを抽出する;
訓練済み機械学習モデルを生成するために、前記第1パラメータを用いて機械学習モデルを訓練する;
前記金属‐水素バッテリの放電及び充電の前記
サンプルサイクルの第2パラメータを抽出する;及び
放電及び充電の前記平常サイクル中の前記金属‐水素バッテリがアノード酸化に起因して減衰しているかどうかを判定するために、前記第2パラメータを前記訓練済み機械学習モデルに供給する
ための命令を含む、
請求項
7から9の何れか一項に記載のバッテリ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
図1Aに示され、上で説明されるように、各セル101は、セパレータ106によって分離されているカソード102及びアノード104を含む。セル101は、容器108に位置し、ここでは、電解液110がカソード102及びアノード104の間で流れ得る。下で更に説明されるように、カソード102は、多孔性活性材料102bによって被覆された多孔性導電性基材102aから形成されている。同様に、アノード104は、多孔性触
媒104bによって被覆された多孔性導電性基材104aから形成されている。いくつかの実施形態において、電解液108は、アルカリ性(pH7より高い)の水性電解液である。アノード104及びカソード102の各々は、多重構造を伴う電極アセンブリとして形成され得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
ここで記載されるTMA触媒と共に形成されるバッテリは、エネルギー効率において、遅い減衰を示すが、これは主に、放電中の電圧損失によって生じる。3電極構成を用いた試験は、劣化中に全体的なバッテリ電圧が0.95Vより下に低下するときに、アノード104上の電位が、概して0.1Vを超えて増加することを示す。TMA触媒は、触媒を損傷することなく放電反応(HOR)に対する注目すべき改善を示すことも発見された。この触媒は更に、高いT性能向上を実証し、高い温度で効率的に動作し得る。再生効果は、より高い動作温度、特に、室温より高い温度において、強化され得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0079
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0079】
態様14は、放電及び充電の平常サイクル中の金属‐水素バッテリがアノード酸化に起因して減衰する、態様13に記載の金属‐水素バッテリを含む。
【国際調査報告】