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特表2024-538958ガンマデルタT細胞活性化抗体の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ガンマデルタT細胞活性化抗体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 31/663 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P19/10
A61P19/08
A61P3/00
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61K39/395 E
A61K39/395 D
A61P15/00
A61P13/08
A61P25/00
A61P11/00
A61P13/12
A61K31/663
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C07K16/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520602
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2022079374
(87)【国際公開番号】W WO2023067138
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21204014.1
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】63/270,267
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/274,711
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517262346
【氏名又は名称】ラヴァ・セラピューティクス・エヌ・ヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ヴリット,ヨハネス ジェレ
(72)【発明者】
【氏名】パーレン,ポール ウィレム アンリ イダ
(72)【発明者】
【氏名】ルーベン,ジャーレン マタイス
(72)【発明者】
【氏名】エンシング,エリック
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA02
4C084ZA59
4C084ZA81
4C084ZA96
4C084ZA97
4C084ZB26
4C084ZC21
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA34
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA02
4C086ZA59
4C086ZA81
4C086ZA96
4C086ZA97
4C086ZB26
4C086ZC21
4C086ZC75
4H045AA11
4H045DA76
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、ガンマデルタT細胞活性化抗体の新規な使用、特に、アミノビスホスホネート、またはファルネシルピロリン酸合成酵素もしくはメバロン酸経路のさらに下流にある酵素を阻害するメバロン酸経路の他の阻害剤でも治療中であるか、または治療を受けた患者におけるそのような抗体の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト対象におけるがんの治療に使用するための、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体であって、
前記ヒト対象は、アミノビスホスホネート(NBP)、またはメバロン酸経路の他の阻害剤でも治療中であるか、または治療を受けており、前記阻害剤は、フファルネシルピロリン酸合成酵素または前記経路のさらに下流の酵素を阻害し、
前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、前記ヒト対象が前記NBPまたは他の阻害剤の投与を2回以上受けた後に行われる、前記多重特異性抗体。
【請求項2】
前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与が、前記ヒト対象が、前記NBPまたは他の阻害剤を、3回以上(4回以上など)、例えば、5回以上(6回以上、7回以上、8回以上、9回以上または10回以上など)受けた後に行われる、請求項1に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項3】
前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与が、前記NBPまたは他の阻害剤の投与から2年以内(1年以内など)、例えば、6か月以内(4か月以内など)、例えば、3か月以内(2か月以内など)、例えば、1か月以内に行われる、請求項1または2に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項4】
前記多重特異性抗体の第1の投与が、前記ヒト対象が前記NBPまたは他の阻害剤の投与を2回以上受けた後に行われる、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項5】
前記NBPまたは他の阻害剤の前記投与が、静脈内投与である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項6】
前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与が、前記ヒト対象が、前記NBPまたは他の阻害剤の2回以上の投与を、2週間~16週間の間隔、例えば、2週間~12週間(3週間~5週間など)、例えば、3週間または4週間の間隔で受けた後に行われる、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項7】
前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与が、前記ヒト対象が、4か月~14か月の間隔、例えば、6か月~12か月の間隔で、前記NBPまたは他の阻害剤の投与を2回以上受けた後に行われる、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項8】
前記ヒト対象が、NBPで治療され、前記NBPは、クロドロネート、エチドロネート、パミドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート及びリセドロネートから選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項9】
前記NBPが、パミドロネートまたはゾレドロネートである、請求項8に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項10】
前記NBPがパミドロネートであり、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与が、前記ヒト対象が、パミドロネートの投与を2回以上受けた後に行われ、少なくとも2回またはすべての前記パミドロネート投与は、2週間~6週間の間隔(3週間~5週間の間隔など)、例えば、3週間~4週間の間隔である、請求項9に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項11】
前記NBPがゾレドロネートであり、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与が、前記ヒト対象が、ゾレドロネートの投与を2回以上受けた後に行われ、少なくとも2回またはすべての前記ゾレドロネート投与は、2週間~16週間の間隔、例えば、1か月~3か月の間隔(1、2もしくは3か月の間隔など)、または4、8、もしくは12週間の間隔である、請求項9に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項12】
前記NBPがゾレドロネートであり、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与が、前記ヒト対象が、ゾレドロネートの投与を2回以上受けた後に行われ、少なくとも2回またはすべての前記ゾレドロネート投与は、4か月~14か月の間隔、例えば、6か月~12か月の間隔である、請求項9に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項13】
NBPまたは他の阻害剤による前記治療が、前記多重特異性抗体の投与後に継続する、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項14】
前記治療が、複数回(2回~100回など)、例えば、2回~50回、例えば、2回~25回、例えば、6回~25回、または6回~12回の、例えば、週に2回、毎週、隔週、または3~4週間の間隔での前記多重特異性抗体の投与を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項15】
前記ヒト対象が、乳癌、前立腺癌、神経膠芽腫、肺癌、腎臓癌または多発性骨髄腫と診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項16】
前記ヒト対象が、骨粗鬆症、骨のパジェット病、または高カルシウム血症と診断されている、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項17】
腫瘍細胞上で発現される前記標的が、CD1d、PSMA、EGFR、CD40及びCD123から選択される、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【請求項18】
前記多重特異性抗体が、二重特異性抗体である、先行請求項のいずれか1項に記載の使用のための多重特異性抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマデルタ(γδ)T細胞活性化抗体の新規な使用、特に、アミノビスホスホネート、またはファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)もしくはメバロン酸経路のさらに下流にある酵素を阻害するメバロン酸経路の他の阻害剤でも治療中であるか、または治療を受けた患者におけるそのような抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾレドロネート及びアレンドロネートなどのアミノビスホスホネート(NBP)は、骨粗鬆症、高カルシウム血症、固形腫瘍(例えば、乳癌及び前立腺癌)または血液腫瘍(例えば、多発性骨髄腫)の転移による溶骨破壊の治療または予防に頻繁に使用される化合物である。
【0003】
NBPは、FPPSの酵素活性を選択的に妨害する。NBPは(HMGCoARの下流のFPPSを標的とするため)イソペンテニルピロリン酸(IPP)の細胞内レベルを増加させ、細胞外空間でのその放出を刺激する。興味深いことに、IPPは、Vγ9Vδ2T細胞受容体(TCR)の天然リガンドに非常に似ており、微生物、及びストレスを受けて形質転換された細胞に対する自然免疫応答に深く関与する非標準的T細胞のユニークなサブセットによって発現される。
【0004】
NBPは、患者のこのT細胞サブセット、特にVγ9Vδ2T細胞を活性化して増殖させるために、γδT細胞ベースの免疫療法で使用されている。
【0005】
γδT細胞が関与するさらなる潜在的ながん治療は、γδT細胞による腫瘍細胞の死滅を媒介する、γδT細胞エンゲージャー(γδTCE、すなわち、γδT細胞受容体と腫瘍細胞標的とを結合する多重特異性抗体)の使用である。
【0006】
NBPによる反復治療は、γδT細胞の消耗、アネルギー、枯渇を引き起こすことが観察されている(Sicard et al.(2005)J Immunol 175:5471、またOberg et al.(2014)Front Immunol 2014,5:1でも論じられる)。したがって、本発明までは、γδT細胞は、NBPによる反復治療の後、γδTCEに対して反応しなくなるであろうと考えられていた。
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、NBPによる反復治療を受けた患者のVγ9Vδ2T細胞含有末梢血単核球(PBMC)が、依然としてγδTCEに反応しており、γδTCEがそのような患者のPBMCによる腫瘍細胞の死滅を媒介できることが判明した。さらに、驚くべきことに、NBPによる反復治療を受けた患者のγδT細胞は両方とも、γδTCEの存在下で腫瘍細胞を死滅させることができ、γδTCEの存在下で増殖することができた。
【0008】
これにより、反復的なNBP治療も同時に受けている、または受けた患者にγδTCEを投与するがん治療レジメンが可能になる。特に、γδTCE治療は、高カルシウム血症または溶骨破壊を回避するためにNBPで治療されているがん患者、または骨粗鬆症またはその予防のために同様に治療されている患者にとっても有益であることが期待される。
【0009】
第1の態様では、本発明は、ヒト対象におけるがんの治療に使用するための、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体に関し、
前記ヒト対象は、アミノビスホスホネート(NBP)、またはメバロン酸経路の他の阻害剤でも治療中であるか、または治療を受けており、阻害剤は、フファルネシルピロリン酸合成酵素または前記経路のさらに下流の酵素を阻害し、
前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が前記NBPまたは他の阻害剤の投与を2回以上受けた後に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】Vγ9Vδ2T細胞の脱顆粒を、γδTCEまたは培地対照(-)の存在下で、PBMCとMM1s.CD1d標的細胞との一晩共培養後に評価した。Vγ9Vδ2T細胞上のCD107a発現を、脱顆粒の尺度としてフローサイトメトリーによって評価した(n=8)。
図1B】同じデータを示しているが、個々の患者のγδTCEありとなしのデータを関連付けている。黒丸はゾレドロネート治療患者(n=4)を表し、白四角はパミドロネート治療患者(n=3)を表し、三角はクロドロン酸治療患者(n=1)を表す。
図2】γδTCEまたは培地対照(-)の存在下でVγ9Vδ2T細胞と7日間共培養した後のMM1s.CD1dの相対溶解。
図3】PBMC及びMM1s.CD1d標的細胞を、γδTCEまたは培地対照(-)の存在下で7日間及び14日間培養することにより、Vγ9Vδ2T細胞の増殖を0日目と比較して評価した。
図4】PBMC及びMM1s.CD1d標的細胞を、IL-2及びγδTCEまたは培地対照(-)の存在下で7日間及び14日間培養することにより、Vγ9Vδ2T細胞の増殖を0日目と比較して評価した。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
「アミノビスホスホネート」(NBPと略す)という用語は、本明細書で使用する場合、酸素原子の代わりに炭素を含むピロリン酸の窒素含有類似体を指す。NBPは次の一般構造を持ち、式中、R1とR2の少なくとも1つは窒素を含む。
【化1】
【0012】
「ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトγδT細胞上に見出されるVγ9Vδ2T細胞受容体を指す。
【0013】
「γδT細胞エンゲージャー」(γδTCEと略す)という用語は、γδT細胞上の標的に対する結合特異性、及び腫瘍細胞上の標的に対するさらなる結合特異性を有する分子を指す。これらの両方の標的に結合することにより、γδTCEはT細胞を腫瘍細胞または腫瘍環境に動員する。
【0014】
「ヒトVδ2」という用語は、本明細書で使用される場合、Vγ9Vδ2-T細胞受容体(TCR)の再配列δ2鎖を指す。GenBank:CAA51166.1には、δ2配列の例が示される。TRDV2、T細胞受容体デルタ変数2は、可変領域を表す(UniProtKB-A0JD36(A0JD36_HUMAN)はTRDV2配列の例を示す)。「Vγ9Vδ2-TCRのVδ2鎖に結合する」とは、抗体が別個の分子として、及び/またはVγ9Vδ2-TCR(T細胞受容体)の一部としてVδ2鎖に結合できることを意味する。しかしながら、抗体は、別個の分子としてVγ9鎖と結合しない。
【0015】
「ヒトVγ9」という用語は、本明細書で使用される場合、Vγ9Vδ2-T細胞受容体(TCR)の再配列y9鎖を指す。GenBank:NG_001336.2は、γ9配列の例を示している。TRGV9、T細胞受容体ガンマ変数9は可変領域を表す(UniProtKB=Q99603_HUMANはTRGV9配列の例を示す)。
【0016】
本明細書で使用される「免疫グロブリン」という用語は、典型的には、2対のポリペプチド鎖、1対の軽(L)鎖、及び1対の重(H)鎖からなる構造的に関連する糖タンパク質のクラスを指すことを意図しており、4つ全ては、ジスルフィド結合によって潜在的に相互接続されているが、一部の哺乳動物種は、軽鎖を生成せず、重鎖抗体のみを作製する。本明細書で使用される「免疫グロブリン重鎖」、「免疫グロブリンの重鎖」または「重鎖」という用語は、免疫グロブリンの鎖のうちの1つを指すことが意図されている。重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)と、免疫グロブリンのアイソタイプを定義する重鎖定常領域(本明細書ではCHと略される)とからなる。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3からなる。重鎖定常領域は、ヒンジ領域をさらに含む。免疫グロブリン(例えば、IgG)の構造内では、2つの重鎖は、ヒンジ領域内のジスルフィド結合を介して相互接続される。重鎖と同様に、各軽鎖は、典型的には、いくつかの領域、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)からなる。さらに、VH及びVL領域は、超可変性の領域(または、配列において超可変であり得る及び/または構造的に画定されたループを形成し得る超可変領域)、また相補性決定領域(CDR)とも称され、より保存性の高い領域が散在し、フレームワーク領域(FR)と称される超可変性の領域に細分化され得る。各VH及びVLは、典型的には、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へと、次の順序で配列される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。CDR配列は、様々な方法、例えば、Choitia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901またはKabat et al.(1991)Sequence of protein of immunological interest,fifth edition.NIH publication.によって提供される方法を使用して決定され得る。CDR決定及びアミノ酸番号付けのための様々な方法は、www.abysis.org(UCL)上で比較することができる。
【0017】
「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそれらのいずれかの誘導体を指すことが意図され、これは、典型的な生理学的条件下で、重要な期間、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3、4、5、6、7日、もしくはそれ以上などの半減期、または任意の他の関連する機能的に定義される期間(例えば、抗原に結合する抗体に関連する生理学的応答を誘導、促進、増強、及び/または調節するのに十分な時間、及び/または抗体がエフェクター活性を獲得するのに十分な時間)で、抗原に特異的に結合する能力を有する。抗原と相互作用する抗原結合領域は、免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖の両方の可変領域を含み得るか、または単一ドメイン抗原結合領域、例えば、重鎖可変領域のみを含み得るか、またはそれからなり得る。免疫グロブリンの「Fc領」は、典型的には、免疫グロブリンの2つのCH2-CH3領域及び接続領域(例えば、ヒンジ領域)を含むパパインによる抗体の消化後に生成される抗体の断片として定義される。抗体重鎖の定常ドメインは、抗体アイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD、またはIgEを定義する。Fc領域は、補体系のFc受容体及びタンパク質と呼ばれる細胞表面受容体とともに、抗体のエフェクター機能を媒介する。
【0018】
本明細書で使用される「ヒンジ領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のヒンジ領域を指すことを意図している。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のヒンジ領域は、EU付番に従うアミノ酸216~230に対応する。
【0019】
本明細書で使用される「CH2領域」または「CH2ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH2領域を指すことが意図される。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH2領域は、EU付番に従うアミノ酸231~340に対応する。しかしながら、CH2領域はまた、本明細書に記載の他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0020】
本明細書で使用される「CH3領域」または「CH3ドメイン」という用語は、免疫グロブリン重鎖のCH3領域を指すことが意図される。したがって、例えば、ヒトIgG1抗体のCH3領域は、EU付番に従うアミノ酸341~447に対応する。しかしながら、CH3領域はまた、本明細書に記載の他のサブタイプのいずれであってもよい。
【0021】
本発明におけるFc領域/Fcドメインにおけるアミノ酸位置への言及は、EU番号付けによるものである(Edelman et al.,Proc Natl Acad Sci USA.1969 May;63(1):78-85、Kabat et al.,Sequences of proteins of immunological interest.5th Edition-1991 NIH Publication No.91-3242)。
【0022】
本明細書で使用される「アイソタイプ」という用語は、免疫グロブリン(サブ)クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)、または重鎖定常領域遺伝子によってコードされるIgG1m(za)及びIgG1m(f)などのその任意のアロタイプを指す。各重鎖アイソタイプは、カッパ(κ)またはラムダ(λ)軽鎖のいずれかと組み合わせることができる。本発明で使用されるアイソタイプを有することができる。
【0023】
上記に示されるように、本明細書で使用される抗体という用語は、別段の記載がない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって行われ得ることが示されてきた。「抗体」という用語に包含される結合断片の例としては、(i)Fab’またはFab断片、すなわち、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片、またはWO2007059782に記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)2断片、すなわち、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VH及びCH1ドメインから本質的になるFd断片;ならびに(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインから本質的になるFv断片が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VL及びVHは、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え法を使用して、それらが単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって接合することができ、VL及びVH領域は対となって、一価の分子(一本鎖抗体または一本鎖Fv(scFv)として知られる)を形成する(例えば、Bird et al.,Science 242,423-426(1988)及びHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)参照)。かかる一本鎖抗体は、文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語に包含される。抗体という用語は、別途指定されない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体及びヒト化抗体、ならびに酵素切断、ペプチド合成、及び組換え技術などの任意の既知の技術によって提供される抗体断片も含む。
【0024】
本発明で使用される抗体のいくつかの実施形態では、第1の抗原結合領域または第2の抗原結合領域、またはその両方は、単一ドメイン抗体である。単一ドメイン抗体(sdAb、Nanobody(登録商標)とも呼ばれる、またはVHH)は、当業者に周知であり、例えば、Hamers-Casterman et al.(1993)Nature 363:446、Roovers et al.(2007)Curr Opin Mol Ther 9:327及びKrah et al.(2016)Immunopharmacol Immunotoxicol 38:21を参照されたい。単一ドメイン抗体は、単一のCDR1、単一のCDR2及び単一のCDR3を含む。単一ドメイン抗体の例は、重鎖のみの抗体、軽鎖を天然に含まない抗体、従来の抗体に由来する単一ドメイン抗体、及び操作された抗体の可変断片である。単一ドメイン抗体は、マウス、ヒト、ラクダ、ラマ、サメ、ヤギ、ウサギ、及びウシを含む任意の種に由来し得る。例えば、天然由来のVHH分子は、ラクダ科の種、例えば、ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ、アルパカ、及びグアナコにおいて産生される、抗体に由来し得る。全抗体と同様に、単一ドメイン抗体は、特異的抗原に選択的に結合することができる。単一ドメイン抗体は、免疫グロブリン鎖の可変ドメイン、すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3ならびにフレームワーク領域のみを含み得る。
【0025】
「親抗体」という用語は、本発明で使用される抗体と同一であるが、親抗体が特定の変異のうちの1つ以上を有しない抗体として理解されるべきである。本発明で使用される「バリアント」または「抗体バリアント」または「親抗体のバリアント」は、「親抗体」と比較して1つ以上の変異を含む抗体分子である。アミノ酸置換は、天然アミノ酸を別の天然に存在するアミノ酸、または天然に存在しないアミノ酸誘導体と交換し得る。アミノ酸置換は保存的であっても非保存的であってもよい。本発明の文脈において、保存的置換は、以下の3つの表のうちの1つ以上に反映されるアミノ酸のクラス内の置換によって画定され得る。
【表1】

【表2】

【表3】
【0026】
本発明の文脈において、バリアントにおける置換は、以下のように示される:
元のアミノ酸-位置-置換アミノ酸;
アミノ酸残基を示すために、コードXaa及びXを含む3文字コード、または1文字コードが使用される。したがって、表記「T366W」は、バリアントが、親抗体における366位のアミノ酸に対応するバリアントアミノ酸位置において、トリプトファンによるスレオニンの置換を含むことを意味する。
【0027】
さらに、「置換」という用語は、他の19個の天然アミノ酸のいずれか1つへの置換、または非天然アミノ酸等の他のアミノ酸への置換を包含する。例えば、366位のアミノ酸Tの置換には、以下の置換のそれぞれが含まれる:366A、366C、366D、366G、366H、366F、366I、366K、366L、366M、366N、366P、366Q、366R、366S、366E、366V、366W、及び366Y。
【0028】
「配列同一性%」は、本明細書で使用する場合、異なる配列が共有する同一のヌクレオチドまたはアミノ酸位置の数(すなわち、同一性%=同一の位置の#/位置の総#×100)を指し、最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮する。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、例えば、PAM120重み残基表、ギャップ長さペナルティ12及びギャップペナルティ4を使用、ALIGNプログラム(バージョン2.0)中に組み込まれているE.Meyers and W.Miller,Comput.Appl.Biosci 4,11-17(1988)のアルゴリズムを用いて決定され得る。
【0029】
「全長抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、そのアイソタイプの野生型抗体に通常見出されるものに対応する全ての重鎖及び軽鎖定常及び可変ドメインを含む抗体を指す。
【0030】
「キメラ抗体」という用語は、可変領域が非ヒト種(例えば、げっ歯類に由来する)に由来し、定常領域がヒトなどの異なる種に由来する抗体を指す。キメラ抗体は、遺伝子工学によって生成され得る。治療用途のためのキメラモノクローナル抗体は、抗体免疫原性を低減するために開発される。
【0031】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト抗体定常ドメイン、及びヒト可変ドメインと高レベルの配列相同性を含有するように改変された非ヒト可変ドメインを含有する遺伝子操作された非ヒト抗体を指す。これは、一緒に抗原結合部位を形成する6つの非ヒト抗体相補性決定領域(CDR)を相同ヒトアクセプターフレームワーク領域(FR)に移植することによって達成することができる。親抗体の結合親和性及び特異性を完全に再構築するために、親抗体(すなわち、非ヒト抗体)からのフレームワーク残基のヒトフレームワーク領域への置換(逆変異)が必要とされ得る。構造相同性モデリングは、抗体の結合特性に重要なフレームワーク領域内のアミノ酸残基を同定するのに役立ち得る。したがって、ヒト化抗体は、非ヒトCDR配列、主に、非ヒトアミノ酸配列に対する1つ以上のアミノ酸逆変異を任意選択で含むヒトフレームワーク領域、及び任意選択で完全ヒト定常領域を含んでもよい。任意選択で、必ずしも逆変異ではない追加のアミノ酸修飾を導入して、親和性及び生化学的特性等の好ましい特性を有するヒト化抗体を得ることができる。非ヒト治療抗体のヒト化は、ヒトにおけるその免疫原性を最小限に抑えるために行われるが、そのようなヒト化抗体は同時に、非ヒト由来の抗体の特異性及び結合親和性を維持する。
【0032】
「多重特異性抗体」という用語は、2つ以上の抗原結合領域の存在に起因する、少なくとも2つの異なる、例えば少なくとも3つの、典型的には重複しないエピトープに対する特異性を有する抗体を指す。そのようなエピトープは、同じ標的抗原上にあっても、異なる標的抗原上にあってもよい。エピトープが異なる標的上にある場合、そのような標的は同じ細胞上にある場合もあれば、異なる細胞または細胞型上にある場合もある。
【0033】
「二重特異性抗体」という用語は、2つの抗原結合領域の存在に起因して、2つの異なる、典型的には重複しないエピトープに対する特異性を有する抗体を指す。そのようなエピトープは、同じ標的上にあっても、異なる標的上にあってもよい。エピトープが異なる標的上にある場合、そのような標的は同じ細胞上にある場合もあれば、異なる細胞または細胞型上にある場合もある。
【0034】
異なるクラスの二重特異性抗体の例としては、限定されないが、(i)ヘテロ二量体化を強制するための相補性CH3ドメインを有するIgG様分子、(ii)組換えIgG様二重標的分子(分子の2つの側面がそれぞれ、少なくとも2つの異なる抗体のFab断片またはFab断片の一部を含有する)(iii)IgG融合分子(全長IgG抗体が余分なFab断片またはFab断片の一部に融合される)(iv)Fc融合分子(単鎖Fv分子または安定化ダイアボディが重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部に融合される)、(v)Fab融合分子(異なるFab断片が一緒に融合され、重鎖定常ドメイン、Fc領域またはその一部に融合される)及び(vi)scFv及びダイアボディベースの抗体及び重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、Nanobodies(登録商標))(異なる単鎖Fv分子もしくは異なるダイアボディ抗体もしくは異なる重鎖抗体(例えば、ドメイン抗体、Nanobodies(登録商標))が互いに、または別のタンパク質に融合されるか、または担体分子が重鎖定常ドメイン、Fc領域もしくはその一部に融合される)が挙げられる。
【0035】
相補的なCH3ドメイン分子を有するIgG様分子の例としては、限定されないが、Triomab(登録商標)(Trion Pharma/Fresenius Biotech)、Knobs-into-Hole(Genentech)、CrossMAb(Roche)及び静電的にマッチングした(Amgen,Chugai,Oncomed)、LUZ-Y(Genentech,Wranik et al.J.Biol.Chem.2012,287(52):43331-9,doi:10.1074/jbc.M112.397869. Epub 2012 Nov 1)、DIG-body and PIG-body(Pharmabcine,WO2010134666,WO2014081202)、Strand Exchange Engineered Domain body(SEEDbody)(EMD Serono)、Biclonics(Merus,WO2013157953)、FcΔAdp(Regeneron)、二重特異性IgG1及びIgG2(Pfizer/Rinat),Azymetric scaffold(Zymeworks/Merck)、mAb-Fv(Xencor)、二価の二重特異性抗体(Roche,WO2009080254)及びDuoBody(登録商標)分子(Genmab)が挙げられる。
【0036】
組換えIgG様二重標的分子の例としては、限定されないが、Dual Targeting(DT)-Ig(GSK/Domantis、WO2009058383)、Two-in-one Antibody(Genentech,Bostrom,et al 2009.Science 323,1610-1614)、Cross-linked Mabs(Karmanos Cancer Center)、mAb2(F-Star)、Zybodies(商標)(Zyngenia,LaFleur et al.MAbs.2013 Mar-Apr;5(2):208-18)、共通軽鎖によるアプローチ、κλBodies(NovImmune,WO2012023053)及びCovX-body(登録商標)(CovX/Pfizer,Doppalapudi,V.R.,et al 2007. Bioorg.Med.Chem.Lett.17,501-506)が挙げられる。
【0037】
IgG融合分子の例としては、限定されないが、Dual Variable Domain(DVD)-Ig(Abbott)、Dual domain double head antibodies(Unilever、Sanofi Aventis)、IgG-like Bispecific(ImClone/Eli Lilly,Lewis et al.Nat Biotechnol.2014 Feb;32(2):191-8)、Ts2Ab(MedImmune/AZ,Dimasi et al.J Mol Biol.2009 Oct 30;393(3):672-92)及びBsAb(Zymogenetics,WO2010111625)、HERCULES(Biogen Idec)、scFv融合(Novartis)、scFv融合(Changzhou Adam Biotech Inc)及びTvAb(Roche)が挙げられる。
【0038】
Fc融合分子の例としては、限定されないが、scFv/Fc融合(Academic Institution,Pearce et al Biochem Mol Biol Int.1997 Sep;42(6):1179),SCORPION(Emergent BioSolutions/Trubion,Blankenship JW,et al.AACR 100th Annual meeting 2009(Abstract #5465)、Zymogenetics/BMS,WO2010111625)、Dual Affinity Retargeting Technology(Fc-DARTTM)(MacroGenics)及びDual(ScFv)2-Fab(National Research Center for Antibody Medicine-China)が挙げられる。
【0039】
Fab融合二重特異性抗体の例としては、限定されないが、F(ab)2(Medarex/AMGEN)、Dual-Action or Bis-Fab(Genentech)、Dock-and-Lock(登録商標)(DNL)(ImmunoMedics)、Bivalent Bispecific(Biotecnol)及びFab-Fv(UCB-Celltech)が挙げられる。
【0040】
scFv抗体、ダイアボディベース抗体、及びドメイン抗体の例としては、限定されないが、Bispecific T Cell Engager(BiTE(登録商標))(Micromet,Tandem Diabody(Tandab)(Affimed)、Dual Affinity Retargeting Technology(DARTTM)(MacroGenics)、Single-chain Diabody(Academic,Lawrence FEBS Lett.1998 Apr3;425(3):479-84)、TCR-like Antibodies(AIT,ReceptorLogics)、Human Serum Albumin ScFv Fusion(Merrimack,WO2010059315)及びCOMBODY molecules(Epigen Biotech,Zhu et al.Immunol Cell Biol.2010Aug;88(6):667-75)、dual targeting nanobodies(登録商標)(Ablynx,Hmila et al.,FASEB J.2010)、dual targeting heavy chain only domain antibodiesが挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明に使用される多重特異性抗体は、VHH-Fcフォーマットであり、すなわち、抗体は、ヒトFc領域二量体を介して互いに連結されている2つ以上の単一ドメイン抗原結合領域を含む。このフォーマットでは、各単一ドメイン抗原結合領域は、Fc領域ポリペプチドに融合され、2つの融合ポリペプチドは、ヒンジ領域内のジスルフィド架橋を介して二量体二重特異性抗体を形成する。かかる構築物は、典型的には、完全な、または任意のCH1または軽鎖配列を含有しない。WO06064136の図12Bは、本実施形態の一例の例示を提供する。
【0042】
抗原に結合する抗体の文脈において、「結合する」または「特異的に結合する」という用語は、所定の抗原または標的(例えば、ヒトVδ2)に対する抗体の結合を指し、その結合は、通常、例えば、本明細書の実施例に記載のフローサイトメトリーを使用して測定した場合の約10-6M以下、例えば10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11M以下のKに対応する親和性である。あるいは、K値は、例えば、BIAcore3000の表面プラズモン共鳴(SPR)技術を使用して、抗原をリガンドとして、結合部分または結合分子を分析物として使用して決定することができる。特異的結合とは、抗体が、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)との結合に対する親和性よりも少なくとも10倍低い、例えば、少なくとも100倍低い、例えば、少なくとも1,000倍低い、例えば、少なくとも10,000倍低い、例えば、少なくとも100,000倍低い、Kに対応する親和性で所定の抗原と結合することを意味する。親和性が低い程度は、結合部分または結合分子のKに依存するため、結合部分または結合分子のKが非常に低い場合(すなわち、結合部分または結合分子が非常に特異的である場合)、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い程度は、少なくとも10,000倍であり得る。「K」(M)という用語は、本明細書で使用される場合、抗原と結合部分または結合分子との間の特定の相互作用の解離平衡定数を指す。
【0043】
「Vγ9Vδ2-TCRのVδ2鎖に結合することができる」または「Vγ9Vδ2-TCRのVδ2鎖に結合する」とは、抗体が別個の分子として、及び/またはVγ9Vδ2-TCRの一部として、Vδ2鎖に結合することができることを意味する。しかしながら、抗体は、別個の分子としてVγ9鎖と結合しない。
【0044】
「第1の」及び「第2の」抗原結合領域という用語は、本明細書で使用される場合、抗体におけるそれらの向き/位置を指さず、すなわち、それらは、N末端またはC末端に関して意味を持たない。「第1の」及び「第2の」という用語は、特許請求の範囲及び説明における2つの異なる抗原結合領域を正確かつ一貫して指すようにのみ機能する。
【0045】
【表4-1】

【表4-2】

【表4-3】

【表4-4】

【表4-5】
【0046】
本発明の更なる態様及び実施形態
上記のように、第1の態様では、本発明は、ヒト対象におけるがんの治療に使用するための、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体に関し、
前記ヒト対象は、アミノビスホスホネート(NBP)、またはメバロン酸経路の他の阻害剤でも治療中であるか、または治療を受けており、阻害剤は、フファルネシルピロリン酸合成酵素または前記経路のさらに下流の酵素を阻害し、
前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が前記NBPまたは他の阻害剤の投与を2回以上受けた後に行われる。
【0047】
したがって、同様に、本発明は、ヒト対象におけるがんの治療に使用するための、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体に関し、前記ヒト対象は、NBP、またはそのようなメバロン酸経路の他の阻害剤の投与を2回以上受けている。
【0048】
したがって、同様に、本発明は、ヒト対象におけるがんの治療に使用するための、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体に関し、前記ヒト対象は、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与の前に、NBPまたはそのようなメバロン酸経路の他の阻害剤の投与を、前記2回以上受けている。
【0049】
したがって、同様に、本発明は、NBPまたはそのようなメバロン酸経路の他の阻害剤と組み合わせた、ヒト対象におけるがんの治療に使用するための、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体に関し、前記ヒト対象は、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与の前に、前記NBPまたはメバロン酸経路の他の阻害剤の投与を2回以上受ける。
【0050】
同様に、本発明は、がんの治療のための方法に関し、本方法は、ヒト対象への、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体の投与を含み、
前記ヒト対象は、アミノビスホスホネート(NBP)またはメバロン酸経路の他の阻害剤でも治療中であるか、または治療を受けており、阻害剤は、ファルネシルピロリン酸合成酵素または前記経路のさらに下流の酵素を阻害し、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が2回以上の前記NBPまたは他の阻害剤の投与を受けた後に行われる。
【0051】
同様に、本発明は、がんの治療のための方法に関し、本方法は、ヒト対象への、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体の投与を含み、前記方法は、
(i)NBPまたはメバロン酸経路の他の阻害剤で治療中であるか、または治療を受けたヒト対象を選択するステップであって、阻害剤は、ファルネシルピロリン酸合成酵素または前記経路のさらに下流にある酵素を阻害し、対象は、前記NBPまたは他の阻害剤の投与を2回以上受けている、ステップと、
(ii)前記多重特異性抗体を投与するステップと、を含む。
【0052】
したがって、ヒト対象は、前記多重特異性抗体による治療に適格な対象の部分集団に属し、前記部分集団は、NBPまたはそのような他の阻害剤で治療を受けている、または治療を受けた対象を含む。
【0053】
上述したように、NBPによる反復治療を受けた患者のVγ9Vδ2T細胞含有PBMCが、依然としてγδTCEに反応しており、γδTCEがそのような患者のPBMCによる腫瘍細胞の死滅を媒介できることが判明した。これにより、反復的なNBP治療も同時に受けている、または受けた患者にγδTCEを投与するがん治療レジメンが可能になる。
【0054】
したがって、γδTCE治療は、NBP(または機能的に類似した阻害剤)による反復治療後に施すことができるか、または、γδTCEによる治療とNBP(または他の阻害剤)による治療とを同時に行うことができる。「反復」という用語は、本明細書で使用される場合、複数回、すなわち2回以上を意味する。
【0055】
一実施形態では、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が、前記NBPまたは他の阻害剤を、3回以上(4回以上など)、例えば、5回以上(6回以上、7回以上、8回以上、9回以上または10回以上など)受けた後に行われる。
【0056】
別の実施形態では、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、前記NBPまたは他の阻害剤の投与から2年以内(1年以内など)、例えば、6か月以内(4か月以内など)、例えば、3か月以内(2か月以内など)、例えば、1か月以内に行われる。
【0057】
別の実施形態では、前記多重特異性抗体の第1の投与は、ヒト対象が前記NBPまたは他の阻害剤の投与を2回以上受けた後に行われる。
【0058】
パミドロネートやゾレドロネートなどの一部のNBPは、通常、静脈内に投与される。したがって、一実施形態では、前記NBPまたは他の阻害剤の前記投与は静脈内投与である。別の実施形態では、前記NBPまたは他の阻害剤の前記投与は、経口投与ではない。
【0059】
NBPの投与頻度は通常、化合物及び投与方法によって異なる。例えば、パミドロネートなどのNBPは、3週間に1回または4週間に1回投与され得る。例えば、ゾレドロネートは、1、2もしくは3か月に1回、または6~12か月に1回投与され得る。
【0060】
したがって、一実施形態では、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が、前記NBPまたは他の阻害剤の2回以上の投与を、2週間~16週間の間隔、例えば、2週間~12週間(3週間~5週間など)、例えば、3週間または4週間の間隔で受けた後に行われる。
【0061】
一実施形態では、多重特異性抗体の第1の投与は、ヒト対象が、3週間または4週間の間隔で(すなわち、NBP投与の間に3週間または4週間の時間間隔をあけて)NBPの投与を2回以上受けた後に行われ、多重特異性抗体の第1の投与は、NBPの投与後6か月以内、例えば、3か月もしくは2か月以内、または1か月以内に行われる。
【0062】
別の実施形態では、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が、4か月~14か月の間隔、例えば、6か月~12か月の間隔で、前記NBPまたは他の阻害剤の投与を2回以上受けた後に行われる。
【0063】
別の実施形態では、多重特異性抗体の第1の投与は、ヒト対象が、6週間または12週間の間隔でNBPの投与を2回以上受けた後に行われ、多重特異性抗体の第1の投与は、NBPの投与後6か月以内、例えば、3か月もしくは2か月以内、または1か月以内に行われる。
【0064】
いくつかのNBPが医療目的で記載されている。本発明の使用の一実施形態では、ヒト対象は、クロドロネート、エチドロネート、パミドロネート、アレンドロネート、イバンドロネート、ゾレドロネート及びリセドロネートから選択されるNBPで治療される。さらなる実施形態では、NBPは、パミドロネートまたはゾレドロネートである。
【0065】
一実施形態では、NBPはパミドロネートであり、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が、パミドロネートの投与を2回以上受けた後に行われ、少なくとも2回またはすべてのパミドロネート投与は、2週間~6週間の間隔(3週間~5週間の間隔など)、例えば、3週間~4週間の間隔であった。
【0066】
一実施形態では、多重特異性抗体の第1の投与は、ヒト対象が、3週間または4週間の間隔でパミドロネートの投与を2回以上受けた後に行われ、多重特異性抗体の第1の投与は、パミドロネートの投与後6か月以内、例えば、3か月もしくは2か月以内、または1か月以内に行われる。一実施形態では、パミドロネートは、30mgまたは90mgの用量で投与される。
【0067】
別の実施形態では、NBPはゾレドロネートであり、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が、ゾレドロネートの投与を2回以上受けた後に行われ、少なくとも2回またはすべてのゾレドロネート投与は、2週間~16週間の間隔、例えば、1か月~3か月の間隔(1、2もしくは3か月の間隔など)、または4、8、もしくは12週間の間隔であった。
【0068】
一実施形態では、多重特異性抗体の第1の投与は、ヒト対象が、1、2、または3か月の間隔でゾレドロネートの投与を2回以上受けた後に行われ、多重特異性抗体の第1の投与は、ゾレドロネートの投与後6か月以内、例えば、3か月もしくは2か月以内、または1か月以内に行われる。一実施形態では、ゾレドロネートは4mgの用量で投与される。
【0069】
別の実施形態では、NBPはゾレドロネートであり、前記多重特異性抗体の第1の投与またはその後の投与は、ヒト対象が、ゾレドロネートの投与を2回以上受けた後に行われ、少なくとも2回またはすべてのゾレドロネート投与は、4か月~14か月の間隔、例えば、6か月~12か月の間隔であった。
【0070】
本発明による上記の使用のさらなる実施形態では、多重特異性抗体の投与後、NBPまたは他の阻害剤による治療が継続する。したがって、多重特異性抗体による治療の開始後、NBPまたは他の阻害剤は、多重特異性抗体の投与後に少なくとももう1回、例えば、2、3、4、5、6回以上投与される。したがって、NBPと抗体との治療は同時となる。
【0071】
一実施形態では、ヒト対象は、少なくとも6か月間(少なくとも9か月など)、例えば、12か月間のNBPまたは他の阻害剤治療を受けているか、またはそれに登録されている。
【0072】
さらに、多重特異性抗体は必要に応じて何度でも投与することができる。一実施形態では、治療は、複数回(2回~100回など)、例えば、2回~50回、例えば、2回~25回、例えば、6回~25回、または6回~12回の、例えば、週に2回、毎週、隔週、または3~4週間の間隔での多重特異性抗体の投与を含む。
【0073】
したがって、例えば、一実施形態では、NBP(または他の阻害剤)及び多重特異性抗体による治療は同時であり得る。例えば、3~4週間の間隔で2回以上のNBP投与を受けた患者は、NBPによる週3~4回の治療を継続しながら、一定期間、例えば、3~12か月の多重特異性抗体による治療を開始する。同様に、多重特異性抗体による治療を受けた患者は、多重特異性抗体による治療を継続しながら、NBPによる3~4週間の治療を開始することができる。
【0074】
上述のように、いくつかの実施形態では、患者はNBP(のみ)で治療されるのではなく、メバロン酸経路の別の阻害剤で(も)治療され、阻害剤は、ファルネシルピロリン酸合成酵素(FPPS)またはメバロン酸経路のさらに下流の酵素を阻害する。一実施形態では、そのような他の阻害剤による治療は、イソペンテニルピロリン酸(IPP)の蓄積をもたらす。
【0075】
一実施形態では、阻害剤は、FPPS(UniProtKB-P14324(FPPS_HUMAN))の阻害剤である。一実施形態では、阻害剤は、カルノシン酸である(Han et al.J.Med.Chem.2019,62,23,10867-10896)。別の実施形態では、阻害剤は、イソブチルアミンまたはsec-ブチルアミンなどのアルキルアミンである(Thompson et al.Blood,107:651,2006)。別の実施形態では、阻害剤は、ゲラニル二リン酸合成酵素の阻害剤である。別の実施形態では、阻害剤は、イソペンテミルイソメラーゼの阻害剤である(Wang H et al.J Immunol 2011;187:5099-5113)。別の実施形態では、阻害剤の組み合わせ、例えば、スクアレン合成酵素、ゲラニルゲラニルPP合成酵素、及びファルネシルトランスフェラーゼの阻害剤の組み合わせが使用される。
【0076】
臨床適応症
NBPは、骨粗鬆症、高カルシウム血症、固形腫瘍(例えば、乳癌及び前立腺癌)または血液腫瘍(例えば、多発性骨髄腫)の転移による溶骨破壊の治療または予防に頻繁に使用される。
【0077】
前立腺癌及び乳癌患者におけるアミノビスホスホネートを含むビスホスホネートの使用は、Coleman(2020)Bone140:115570及びD’Oronzo et al.(2021)Bone147:115907によって総説されており、Mhaskar et al.(2017)Cochrane Database Syst Rev12(12)CD003188は、多発性骨髄腫におけるそれらの使用の総説を提供している(すべて参照により本明細書に組み込まれる)。
【0078】
本発明の使用の一実施形態では、治療されるヒト対象は、乳癌、前立腺癌、神経膠芽腫、肺癌、腎臓癌、または多発性骨髄腫と診断されている。
【0079】
骨粗鬆症の治療または予防におけるNBPの使用は、例えば、Grey and Ried Ther Clin Risk Manag.2006Mar;2(1):77-86によって総説されており、Drake et al.(2008)Mayo Clin Proc.2008Sep;83(9):1032-1045による総説では、骨のパジェット病、骨に転移性の悪性腫瘍、多発性骨髄腫、及び悪性腫瘍の高カルシウム血症におけるNBPの使用も総説されている。
【0080】
本発明の使用の一実施形態では、ヒト対象は、骨粗鬆症、骨のパジェット病、または悪性腫瘍の高カルシウム血症などの高カルシウム血症と診断されている。
【0081】
いくつかの実施形態では、ヒト対象は、骨粗鬆症、骨のパジェット病、または悪性腫瘍の高カルシウム血症などの高カルシウム血症の治療または予防のためにNBPまたは他の阻害剤による治療を受けており、かつ、その後、(さらなる)がん疾患を診断され、前記(さらなる)がん疾患を本明細書に記載の多重特異性抗体にて治療を受ける対象である。
【0082】
多重特異性抗体
上記のように、本発明は、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体に結合する第1の抗原結合領域、及び腫瘍細胞上に発現する標的に結合する第2の抗原結合領域を含む多重特異性抗体の使用に関する。
【0083】
一実施形態では、多重特異性抗体は、二重特異性抗体である。一実施形態では、多重特異性抗体は、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体のVδ2鎖に結合する。一実施形態では、多重特異性抗体は、ヒトVγ9Vδ2T細胞受容体のVγ9鎖に結合する。
【0084】
一実施形態では、第1の抗原結合領域は単一ドメイン抗体である、及び/または、第2の抗原結合領域は単一ドメイン抗体である。
【0085】
一実施形態では、第1の抗原結合領域は、WO2015156673(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている抗体の群から選択される単一ドメイン抗体である。
【0086】
一実施形態では、第1の抗原結合領域は単一ドメイン抗体であり、以下のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む:
a)それぞれ配列番号1、2、及び3;
b)それぞれ配列番号4、5、及び6;
c)それぞれ配列番号7、8、及び9;
d)それぞれ配列番号10、11、及び12
e)それぞれ配列番号13、14、及び15;
f)それぞれ配列番号16、17、及び18;
g)それぞれ配列番号19、20、及び21;または
h)それぞれ配列番号22、23、及び24。
【0087】
一実施形態では、第1の抗原結合領域は、配列番号25~34から選択される配列を含む。別の実施形態では、第1の抗原結合領域は、配列番号25~XXから選択される配列のバリアントを含み、そのようなバリアントは、配列番号25~XXからなる群から選択される配列と、少なくとも90%(少なくとも92%など)例えば、少なくとも94%(少なくとも96%など)、例えば、少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0088】
一実施形態では、腫瘍細胞上で発現される標的は、CD1d、EGFR、CD40、PSMA及びCD123からなる群から選択される。
【0089】
「CD1d」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトCD1dタンパク質(UniProtKB-P15813(CD1D_HUMAN))を指す。
【0090】
「EGFR」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトEGFRタンパク質(UniProtKB-P00533(EGFR_HUMAN))を指す。
【0091】
「CD40」という用語は、本明細書で使用される場合、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー5(UniProtKB-P25942(TNR5_HUMAN))、アイソフォームIとしても知られるCD40タンパク質を指す。
【0092】
「PSMA」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト前立腺特異的膜抗原タンパク質(UniProtKB-Q04609(FOLH1_HUMAN))を指す。
【0093】
「CD123」という用語は、本明細書で使用される場合、インターロイキン-3受容体アルファ鎖(NCBI参照配列:NP_002174.1)とも呼ばれるヒトCD123タンパク質を指す。
【0094】
さらなる実施形態では、第2の抗原結合領域は単一ドメイン抗体であり、腫瘍細胞上で発現される標的は、CD1d、PSMA、EGFR、CD40、及びCD123からなる群から選択される。
【0095】
一実施形態では、腫瘍細胞上で発現される標的はCD1dであり、すなわち、第2の抗原結合領域はCD1dに結合し、抗体で治療されるがんは、T細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、くすぶり型骨髄腫、ホジキンリンパ腫、骨髄単球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、及び脾辺縁帯リンパ腫などの血液系腫瘍、または腎細胞癌、黒色腫、結腸直腸癌、頭頸部癌、乳癌、前立腺癌、肺癌、膵臓癌、胃食道癌、小腸癌、中枢神経系腫瘍、髄芽腫、肝細胞癌、卵巣癌、神経膠腫、神経芽腫、尿路上皮癌、膀胱癌、肉腫、陰茎癌、基底細胞癌、メルケル細胞癌、神経内分泌癌、神経内分泌腫瘍、原発不明癌(CUP)、胸腺腫、外陰癌、子宮頸癌、精巣癌、胆管癌、虫垂癌、中皮腫、膨大部癌、肛門癌、絨毛癌などの固形腫瘍から選択される。
【0096】
一実施形態では、第2の抗原結合領域は、ヒトCD1dに結合する単一ドメイン抗体であり、それぞれ配列番号35、36、及び37のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。そのような単一ドメイン抗体は、WO2016122320及びWO2020060405(両方とも参照により組み込まれる)に記載されている。一実施形態では、抗体は、配列番号38に記載の配列を含む。別の実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号38のバリアントを含み、そのようなバリアントは、配列番号38に記載の配列と少なくとも90%(少なくとも92%など)、例えば、少なくとも94%(少なくとも96%など)、例えば、少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む。一実施形態では、抗体は、配列番号39に記載の配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号39のバリアントを含み、そのようなバリアントは、配列番号39に記載の配列と少なくとも90%(少なくとも92%など)、例えば、少なくとも94%(少なくとも96%など)、例えば、少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0097】
一実施形態では、腫瘍細胞上で発現される標的はEGFRである、すなわち、第2の抗原結合領域はEGFRに結合する。一実施形態では、第2の抗原結合領域は、ヒトEGFRに結合する単一ドメイン抗体であり、それぞれ配列番号40、41、及び42のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。そのような単一ドメイン抗体は、WO2021052995(参照により組み込まれる)に記載されている。一実施形態では、抗体は、配列番号43に記載の配列を含む。別の実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号43のバリアントを含み、そのようなバリアントは、配列番号43に記載の配列と少なくとも90%(少なくとも92%など)、例えば、少なくとも94%(少なくとも96%など)、例えば、少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0098】
一実施形態では、腫瘍細胞上で発現される標的はCD40であり、すなわち第2の抗原結合領域はCD40に結合し、抗体で治療されるがんは慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、濾胞性リンパ腫、頭頸部癌、膵臓癌、卵巣癌、肺癌、乳癌、結腸癌、前立腺癌、B細胞リンパ腫/白血病、バーキットリンパ腫またはB型急性リンパ芽球性白血病である。
【0099】
一実施形態では、第2の抗原結合領域は、ヒトCD40に結合する単一ドメイン抗体であり、それぞれ配列番号44、45、及び46のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。そのような単一ドメイン抗体は、WO2020159368(参照により組み込まれる)に記載されている。一実施形態では、抗体は、配列番号47に記載の配列を含む。別の実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号47のバリアントを含み、そのようなバリアントは、配列番号47に記載の配列と少なくとも90%(少なくとも92%など)、例えば、少なくとも94%(少なくとも96%など)、例えば、少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0100】
一実施形態では、腫瘍細胞上で発現される標的はPSMAであり、すなわち、第2の抗原結合領域はPSMAに結合し、抗体で治療されるがんは、前立腺癌、結腸直腸癌、肺癌、乳癌、子宮内膜癌及び卵巣癌、胃癌、腎細胞癌、尿路上皮癌、肝細胞癌、口腔扁平上皮癌、甲状腺腫瘍または神経膠芽腫である。
【0101】
一実施形態では、第2の抗原結合領域は、ヒトPSMAに結合する単一ドメイン抗体であり、それぞれ配列番号48、49、及び50のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。一実施形態では、抗体は、配列番号51に記載の配列を含む。別の実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号51のバリアントを含み、そのようなバリアントは、配列番号51に記載の配列と少なくとも90%(少なくとも92%など)、例えば、少なくとも94%(少なくとも96%など)、例えば、少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0102】
一実施形態では、腫瘍細胞上で発現される標的はCD123であり、すなわち、第2の抗原結合領域はCD123に結合し、治療されるがんの抗体は、急性骨髄性白血病、B細胞急性リンパ芽球性白血病、有毛細胞白血病、ホジキンリンパ腫、芽細胞性形質細胞様樹状突起腫瘍、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、B細胞慢性リンパ増殖性疾患または骨髄異形成症候群の治療に使用するための抗体である。
【0103】
一実施形態では、第2の抗原結合領域は、ヒトCD123に結合する単一ドメイン抗体であり、それぞれ配列番号52、53、及び54のCDR1、CDR2、及びCDR3を含む。一実施形態では、抗体は、配列番号55に記載の配列を含む。別の実施形態では、第2の抗原結合領域は、配列番号55のバリアントを含み、そのようなバリアントは、配列番号55に記載の配列と少なくとも90%(少なくとも92%など)、例えば、少なくとも94%(少なくとも96%など)、例えば、少なくとも98%の配列同一性を有する配列を含む。
【0104】
本発明で使用される多重特異性抗体は、本明細書に記載される二重特異性形式などの多重特異性のいずれかであり得、ヒト、ヒト化もしくはキメラ、またはこれらの組み合わせ、例えば、一方の抗原結合領域がヒト化され、他方がヒト化されていないものであり得る。
【0105】
本発明で使用される多重特異性抗体は、Fc領域などの定常領域配列を含んでもよいか、または含まなくてもよい。抗体の定常領域は、存在する場合、免疫系の様々な細胞(エフェクター細胞及びT細胞など)、ならびに補体活性化の古典的経路における第1の構成要素であるC1qなどの補体系の構成要素を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、本抗体のFc領域は不活性になるように修飾されており、「不活性」とは、個々の抗体の2つのFc領域を介して、任意のFcγ受容体に結合したり、FcRのFc媒介性架橋を誘導したり、または標的抗原のFcR媒介性架橋を誘導したりすることが少なくともできないFc領域を意味する。更なる実施形態では、不活性Fc領域は、加えて、C1qに結合することができない。一実施形態では、抗体は、234位及び235位に変異(Canfield and Morrison(1991)J Exp Med 173:1483)、例えば、234位にLeuからPheへの変異、及び235位にLeuからGluへの変異を含有する(EU付番に従う、以下を参照されたい)。別の実施形態では、抗体は、234位にLeuからAlaへの変異、235位にLeuからAlaへの変異、及び329位にProからGlyへの変異を含有する。別の実施形態では、抗体は、234位にLeuからPheへの変異、235位にLeuからGluへの変異、及び265位にAspからAlaへの変異を含有する。
【0106】
本明細書に引用されるすべての参考文献、記事、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願は、参照によりそれらの全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書で引用されるいずれの参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願の言及も、それらが有効な先行技術を構成するか、または世界のいずれかの国で共通の一般知識の一部を形成するという承認または何らか形態の示唆ではなく、そのようにみなされるべきではない。
【実施例
【0107】
末梢血単核球(PBMC)を、転移性乳癌と診断され、3か月~2.5年の範囲の間NBPで治療を受けた7人の患者から単離した。これらの患者のうち、3人はパミドロネート、3人はゾレドロネート、1人の患者は経口クロドロン酸で治療を受けていた。さらに、PMBCを、1年間毎月ゾレドロネートの投与を受けていた多形膠芽細胞腫患者から単離した。6人の対象から、最後のNBP投与後2週間~12週間の間にPMBCを単離した。
【0108】
使用した抗体は、Vγ9Vδ2T細胞受容体のVδ2鎖及び腫瘍標的CD1dに結合する二重特異性γδTCEであった。抗体は、WO2020060405の配列番号87に記載されている。
【0109】
10^5個のPBMCを、標的γδTCEまたは培地対照の存在下で、2.5*10^4 MM1s.CD1d標的細胞(Lameris,R.,et al(2020)Nat Cancer 1,1054-1065)と共培養した。一晩培養した後、脱顆粒の尺度としてフローサイトメトリーを使用して、Vγ9Vδ2T細胞上のCD107a曝露を評価した。PBMCを標的細胞株と共培養すると、Vγ9Vδ2T細胞上で20.2%の平均CD107a発現が誘導され、γδTCEの存在下では68.8%まで有意に増加した(p=0.0009、n=8)(図1A)。各個人の患者では、γδTCEの存在下でCD107a発現が増加した(図1B)。
【0110】
これは、そのようなNBPで前治療を受けた患者由来のVγ9Vδ2T細胞が、γδTCEによる活性化に応答することを示している。
【0111】
Vγ9Vδ2T 細胞結合後の相対標的細胞溶解を、γδTCE対培地対照(-)の存在下で、10^5個のPBMCを2.5*10^4個のMM1s.CD1d標的細胞と7日間共培養することによって決定した。フローサイトメトリー用の計数ビーズを使用して、生存可能な(7AAD-)標的細胞の絶対数を定量した。MM1s.CD1d標的細胞の相対生存率は、培地対照と比較して、γδTCEの存在下で平均55.6%まで有意に減少した(p=0.003、n=8)(図2)。
【0112】
これは、そのようなNBPで前治療を受けた患者由来のVγ9Vδ2T細胞含有PBMCが、γδTCEの存在下で標的腫瘍細胞を死滅させることができたことを示している。
【0113】
γδTCEまたは培地対照を用いて、PBMCをMM1s.CD1d標的細胞と4:1の比率で共培養した。フローサイトメトリー用の計数ビーズを使用して、Vγ9Vδ2T細胞の絶対数を定量した。Vγ9Vδ2T細胞の増殖を7日目と14日目に評価し、0日目と比較してプロットした。
【0114】
培地対照と比較して、γδTCE結合後のVγ9Vδ2T細胞数の増加が7日目(1.1倍対1.8倍)及び14日目(1.1倍対5.1倍)に観察された(p=ns、n=8)(図3)。
【0115】
同様の実験において、100U/ml IL-2の存在下で、γδTCEまたは培地対照を用いて、PBMCをMM1s.CD1d標的細胞と4:1の比率で共培養した。フローサイトメトリー用の計数ビーズを使用して、Vγ9Vδ2T細胞の絶対数を定量した。Vγ9Vδ2T細胞の増殖を7日目と14日目に評価し、0日目と比較してプロットした。培地対照と比較して、γδTCE結合後にVγ9Vδ2T細胞数の強い増加が7日目(1.0倍対7.3倍)及び14日目(1.0倍vs54.7倍)に観察された(n=1)(図4)。
【0116】
これは、そのようなNBPで前治療を受けた患者由来のVγ9Vδ2T細胞が、γδTCEの存在下で増殖することができたことを示している。これらのインビトロ条件では、IL-2を添加すると増殖がより強くなった。
図1A
図1B
図2
図3
図4
【配列表】
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【国際調査報告】