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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】耐熱性伝熱管
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/14 20060101AFI20241018BHJP
   C08L 81/06 20060101ALI20241018BHJP
   C08L 101/06 20060101ALI20241018BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241018BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20241018BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20241018BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241018BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20241018BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241018BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20241018BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20241018BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20241018BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20241018BHJP
【FI】
C09K5/14 Z
C08L81/06
C08L101/06
C08L63/00 A
C08L81/02
F28F21/06
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/617
H01M10/653
H01M10/6568
H01M10/6556
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520788
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 EP2022078147
(87)【国際公開番号】W WO2023061958
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】21306421.5
(32)【優先日】2021-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サンソー, オリヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】サティッチ, ウィリアム イー.
(72)【発明者】
【氏名】カルヴァルゾ, ガエターノ
【テーマコード(参考)】
4J002
5H031
【Fターム(参考)】
4J002CD193
4J002CN011
4J002CN032
4J002FD090
4J002GN00
4J002GQ00
5H031AA09
5H031EE04
5H031HH08
5H031KK08
(57)【要約】
熱管理システム、特にバッテリー熱管理システム、並びに前記熱管理システムで使用するための難燃性伝熱管が開示される。難燃性伝熱管は、少なくとも1種のポリフェニルスルフィドポリマーと、少なくとも1種のポリフェニルスルホンポリマーと、少なくとも1種のエポキシ官能基含有熱可塑性エラストマーとを含有する組成物を含む。バッテリーを冷却する方法及び/又はバッテリーを動作させる方法は、伝熱流体、好ましくは水/エチレングリコール混合物をそのような難燃性伝熱管内に通すことを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
・45~75重量%の少なくとも1種のポリフェニルスルフィドポリマーと、
・20~45重量%の少なくとも1種のポリフェニルスルホンポリマーと、
・5~15重量%の少なくとも1種のエポキシ官能基含有熱可塑性エラストマーと、
を含有する組成物を含む伝熱管であって、
前記重量%が前記組成物の総重量基準である、伝熱管。
【請求項2】
UL94規格(Underwriters Laboratory(USA)の装置及び器具部品用のプラスチック材料燃焼性試験の規格番号)に従って決定されるV-0等級を有する、請求項1に記載の伝熱管。
【請求項3】
前記ポリフェニルスルホンポリマーが、式(B)の繰り返し単位(RPPSU):
【化1】
を少なくとも50モル%含み、前記モル%が前記ポリフェニルスルホンポリマー中の繰り返し単位の総モル数基準である、請求項1又は2に記載の伝熱管。
【請求項4】
前記組成物中の前記熱可塑性エラストマーが、ポリ(エチレン-co-グリシジルメタクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン-co-メチル(メタ)アクリレート-co-グリシジルアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン-co-n-ブチルアクリレート-co-グリシジルアクリレート)コポリマー、並びにスチレンとグリシジル(メタ)アクリレートとのコポリマーからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の伝熱管。
【請求項5】
その長さ全体に沿って実質的に一定の断面、好ましくは円形の断面を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の伝熱管。
【請求項6】
伝熱流体が通って流れることができるように中空である、請求項1~5のいずれか一項に記載の伝熱管。
【請求項7】
直径が5~50mmの範囲であり、肉厚が0.5~5.0mmの範囲である、請求項1~6のいずれか一項に記載の伝熱管。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の伝熱管を備える熱管理システム。
【請求項9】
前記伝熱管内に含まれる伝熱流体を更に備える、請求項8に記載の熱管理システム。
【請求項10】
前記伝熱流体が、水、水/エチレングリコール混合物、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HFC)、及び(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)からなる群から選択される、請求項8又は9に記載の熱管理システム。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の熱管理システムを備える装置であって、前記熱管理システム内の前記伝熱流体と熱交換することを特徴とする装置。
【請求項12】
バッテリー、好ましくは充電式バッテリーである、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
電気自動車である、請求項12に記載のバッテリーを含む装置。
【請求項14】
バッテリー内の温度を制御する方法であって、請求項1~7のいずれか一項に記載の伝熱管を含む閉鎖系内で伝熱流体を循環させるステップを含み、前記系が、前記バッテリーと、並びに前記流体を所望の温度に加熱及び/又は冷却する機能を有する第2のシステムと、熱的に接触している方法。
【請求項15】
請求項14記載のバッテリー内の温度を制御する方法を含む、バッテリーの動作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月11日出願の欧州特許出願第21306421.5号に基づく優先権を主張するものであり、この出願の内容全体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、概して熱管理システムに関し、より詳しくは、熱管理システム、特に電気自動車で使用するための難燃性伝熱管に関する。
【背景技術】
【0003】
充電式バッテリーは公知であり、電気自動車の推進用を含む多くの用途でますます広く使用されてきている。最近、あらゆる業界において、再充電可能なバッテリーの分野での開発の大部分は、異なるタイプのリチウム塩をベースとするリチウムイオン系バッテリーに焦点が当てられている。当然のことながら、リチウムイオン系バッテリーの領域外の新技術も探求されており、継続的に開発されている。
【0004】
電気モビリティの分野において、バッテリーは、これまで以上に大きな瞬間電力を供給し、高い貯蔵容量を有する必要がある。現在、数百ボルトの動作電圧を有するバッテリーが知られている。望まれる電圧及び電流を達成するためには、複数の個別のバッテリーセルを並列及び/又は直列に一体に接続することが一般的である。
【0005】
電気自動車のバッテリーは、より多くの電力を供給し、充電の頻度を減らすことができるように進歩しているものの、バッテリーの安全性についての最大の課題の1つは、効果的な冷却システムを設計する能力である。
【0006】
従来の電力システムと異なり、バッテリー及び特に再充電可能なバッテリーは、それらの運転環境のための厳しい要件を有する。バッテリーは、比較的狭い温度範囲内の最良の条件で動作する傾向がある。
【0007】
一般的に、低い温度は、バッテリーの化学的特性に影響を与え、反応速度を緩慢にし、したがって充電又は放電時に電気の流れを低下させる。高い温度は、反応速度を増加させると同時に、エネルギー散逸も増加させ、したがって更に一層過剰な熱を生成し、場合により温度の制御されていない上昇を引き起こし、セルに対して不可逆的な損傷をもたらし得る。典型的なLiイオンバッテリーでは、その構造物の一部のみでも80℃を超える温度は、バッテリーの更なる温度上昇を引き起こす発熱化学反応を開始し得、最終的にバッテリーの完全な破壊をもたらし、火災及び爆発の危険がある。
【0008】
他方では、バッテリーの実際の適用は、はるかにより広い温度範囲でそれらが効率的であることを必要とする。例えば、車両のバッテリーは、人々がそれらを使用することが予想される任意の環境において適切に機能する必要があり、そのため、それらは、-20℃~+40℃以上の温度範囲において動作する必要がある。それに加えて、バッテリーの充電及び放電サイクルは、バッテリー自体において熱を生成し得、バッテリーを許容範囲の温度範囲内に維持することをより一層難しくする。
【0009】
典型的なLiイオンバッテリーの指標となる数値は、使用可能な範囲が通常-20℃~60℃であるが、良好な電力出力は0℃~40℃で得られるにすぎず、ここで、最適な性能は、20°~40℃で得られるにすぎないことを示す。また、温度は、バッテリーの持続時間に影響を与え、実際、消耗したと考えられるまでバッテリーが耐えることができる充電/放電サイクル数は、10℃未満においてアノードめっきのために、且つ60℃超において電極材料の劣化のために急速に低下する。最適な性能のための温度範囲は、異なるバッテリー化学及び構造のために異なり得るが、しかしながら、全ての現在の商用バッテリーは、それらの性能が最適である比較的狭い温度領域を共有する。バッテリー全体は、その寿命及び安全性を低下させ得るため、高温又は低温領域を有さずに同じ温度に均一に保持されることを確実にすることが一般的に同じく重要である。
【0010】
この理由のため、特にバッテリーの安全性、信頼性及び寿命が重要な関心の対象であるとき、バッテリー熱管理システム(BTMS)を商用バッテリー組立体内に組み込むことが現在では通例である。これらのBTMSは、バッテリーのタイプに応じて、程度の差はあっても複雑であり得るが、しかしながら、1つの共通の要素は、バッテリーと熱を交換し、その結果それを加熱又は冷却する伝熱流体の存在である。
【0011】
バッテリーの熱管理のために、空冷、液冷、及び直接冷媒冷却などの複数の伝熱システムが存在する。これらの中でも、液体冷却は、その便利な設計と優れた伝熱性能のため最も一般的に使用されているシステムである。
【0012】
このタイプの伝熱システムは、従来の駆動装置、すなわち内燃機関を備えた車両ではすでに一般的であるため、水、又は水/エチレングリコール混合物の使用は広く普及している。
【0013】
この水ベースの伝熱媒体の使用の安全上重大な欠点は、その導電性である。例えば事故の結果として伝熱回路が漏出した場合、漏出した水又は水/エチレングリコール混合物が短絡を引き起こす可能性がある。その結果、火災やその他の緊急事態が発生する可能性があり、ひいては車両に追加の、場合によっては重大な損傷を引き起こす可能性がある。このリスクを低減するために、熱管理システムの構成部品は高い難燃性を有する必要がある。プラスチック材料の難燃性を識別する従来の方法の1つは、Underwriters Laboratory(USA)によって開発された標準試験であり、UL94(装置及び器具部品用のプラスチック材料燃焼性試験の規格番号)と呼ばれる。好ましくは、電気自動車のバッテリーで使用される熱管理システムの構成要素は、「垂直部分で10秒以内に燃焼が停止し、発火させないプラスチックの落下を可能にする」プラスチック材料を識別する規格V0に適合する必要がある。
【0014】
したがって、当該技術分野では、最高の難燃性等級を有し、それと同時に車両の使用中の要請に耐えるために必要な機械的特性を有する最適化された伝熱管を使用する、バッテリー、特に電気自動車で使用されるバッテリーのための熱管理システムが、継続的に求められている。更に、熱管理システムで一般的に使用される伝熱流体、例えば水/エチレングリコール混合物に対して高い耐薬品性も有する伝熱管が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0015】
今回、少なくとも1種のポリフェニルスルフィドと、少なくとも1種のポリフェニルスルホンと、エポキシ官能基含有熱可塑性エラストマーとを含む特定の組成物により、バッテリーの熱管理システムで使用するための最も厳しい要件を満たす伝熱管を得ることができることが見出された。
【0016】
したがって、本発明の第1の目的は、
・45~75重量%の少なくとも1種のポリフェニルスルフィド(PPS)と、
・20~45重量%の少なくとも1種のポリフェニルスルホン(PPSU)と、
・5~15重量%の少なくとも1種のエポキシ官能基含有熱可塑性エラストマー(TPE)と、
を含有する組成物を含む伝熱管であって、
前記重量%が組成物の総重量基準である、伝熱管に関する。
【0017】
本発明の伝熱管は、UL94(装置及び器具部品用のプラスチック材料燃焼性試験の規格番号)に従って決定されるV-0等級を有し、またハロゲンフリーである。これは、引張強さや引張弾性率など、用途のニーズを満たす機械的特性を有している。好ましくは、難燃性のV-0等級を有することに加えて、管は30%を超える破断点歪みを示す(ISO527-2に従って室温(23℃)で測定)。
【0018】
更に、本発明の伝熱管は、水/エチレングリコール混合物中での化学的老化に対して耐性を有する。
【0019】
本発明の第2の目的は、第1の目的の伝熱管を備える熱管理システム、特にバッテリー熱管理システムである。
【0020】
本発明の更なる目的は、第1の目的による伝熱管内に伝熱流体、好ましくは水/エチレングリコール混合物を通すことを含む、バッテリーを冷却する方法及び/又はバッテリーを動作させる方法である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の目的は、
・45~75重量%の少なくとも1種のポリフェニレンスルフィドポリマーと、
・20~45重量%の少なくとも1種のポリフェニルスルホンポリマーと、
・5~15重量%の少なくとも1種のエポキシ官能基含有熱可塑性エラストマーと、
を含有する組成物を含む伝熱管であって、
前記重量%が組成物の総重量基準である、伝熱管に関する。
【0022】
ポリフェニレンスルフィドポリマー(PPS)
組成物は、少なくとも1種のポリフェニレンスルフィドポリマー(以降「PPS」と呼ぶ)を含有する。
【0023】
その最も広い定義において、PPSは、置換及び/又は無置換のフェニレンスルフィド基から製造することができる。
【0024】
本明細書によれば、PPSポリマーは、式(A)の繰り返し単位(RPPS)を少なくとも50モル%含む任意のポリマーを意味する(モル%はPPSポリマー中の繰り返し単位の総モル数を基準とする):
【化1】
(式中、Rは、ハロゲン、C1~C12アルキル基、C7~C24アルキルアリール基、C7~C24アラルキル基、C6~C24アリーレン基、C1~C12アルコキシ基、及びC6~C18アリールオキシ基からなる群から独立して選択され、iは独立して0又は1~4の整数である)。
【0025】
式(A)によれば、繰り返し単位(RPPS)の芳香環は、1~4個のラジカル基Rを含み得る。iが0である場合、対応する芳香環は、いかなるラジカル基Rも含まない。
【0026】
PPSポリマーは、好ましくは、式(A’)の繰り返し単位(RPPS)、すなわちiが0である式(A)の繰り返し単位を少なくとも50モル%含む任意のポリマーである:
【化2】
【0027】
本発明の一実施形態によれば、PPS中の繰り返し単位の少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、少なくとも99モル%が、式(A)又は(A’)の繰り返し単位(RPPS)である。モル%は、PPSポリマー中の繰り返し単位の総モル数に基づく。
【0028】
PPSは、酸洗浄されても酸洗浄されなくてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、PPSは酢酸洗浄されたPPSである。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、PPSポリマーは、繰り返し単位の100モル%が式(A)又は(A’)の繰り返し単位(RPPS)であるものである。この実施形態によれば、PPSポリマーは、式(A)又は(A’)の繰り返し単位(RPPS)から本質的になる。
【0031】
適切なPPSは、Solvay Specialty Polymers USA,LLC.から商品名Ryton(登録商標)PPSとして市販されている。本出願との関係において、QA200Nなどの接頭辞「QA」で始まるPPS製品Ryton(登録商標)は、酸洗浄されたPPSを意味する。
【0032】
PPSのメルトフローレート(316℃、荷重5kg、ASTM D1238、手順Bに準拠)は、50~400g/10分、例えば60~300g/10分、又は70~200g/10分であってよい。例えば、Ryton(登録商標)PPS QA220N及びQA200Nは、それぞれ160g/10分及び100g/10分のメルトフローレートを有する。Ryton(登録商標)PPS QC220N、QC210N、及びQC200Nは、それぞれ175g/10分、135g/10分、及び100g/10分のメルトフローレートを有する。
【0033】
本明細書において使用されるメルトフローインデックス(MFI)としても知られるメルトフローレート(MFR)は、ポリマー溶融物を特徴付けるために使用される。これは分子量の間接的な尺度であり、高いMFRは低い分子量に相当することを意味する。それと同時に、メルトフローレートは、材料の溶融物が加圧下で流動する能力の尺度でもある。メルトフローレートは、ポリマー溶融物の粘度に反比例する。MFI又はMFRが低い場合には、溶融粘度及びメルトフロー抵抗は高くなる。
【0034】
組成物は、組成物の総重量を基準として少なくとも45重量%、少なくとも47重量%、又は少なくとも50重量%の量の少なくとも1種のPPSを含む。
【0035】
組成物は、組成物の総重量を基準として75重量%未満、70重量%未満、65重量%未満、又は60重量%未満の量の少なくとも1種のPPSを含む。
【0036】
好ましくは、組成物は、組成物の総重量を基準として45~75重量%、又は50~65重量%の範囲の量の少なくとも1種のPPSを含む。
【0037】
ポリフェニルスルホンポリマー(PPSU)
組成物は、少なくとも1種のポリフェニルスルホンポリマー(以降「PPSU」と呼ぶ)を含む。
【0038】
本明細書において、PPSUは、式(B)の繰り返し単位(RPPSU)を少なくとも50モル%含む任意のポリマーを意味し、モル%はPPSUポリマー中の繰り返し単位の総モル数を基準とする:
【化3】
【0039】
本開示の一実施形態によれば、PPSUポリマー中の繰り返し単位の少なくとも60モル%(PPSUポリマー中の繰り返し単位の総モル数基準)、少なくとも70モル%、少なくとも80モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%、若しくは少なくとも99モル%、又は全てが、式(B)の繰り返し単位(RPPSU)である。
【0040】
PPSUは、公知の方法によって調製することができ、とりわけSolvay Specialty Polymers USA,L.L.C.からRADEL(登録商標)PPSUとして入手可能である。適切なPPSUポリマーは、限定するものではないが、Radel(登録商標)R-5500NT、R-5700NT、R-5800NT、及びR-5900NTから選択することができる。
【0041】
PPSUのメルトフローレート(365℃、荷重5kg、ASTM D1238に準拠)は、5~40g/10分、例えば5~35g/10分、10~40g/10分、10~30g/10分、12~40g/10分、20~40g/10分、又は10~35g/10分であってよい。例えば、Radel(登録商標)PPSUR-5500NT、R-5700NT、R-5800NT、及びR-5900NTは、それぞれ12~17g/10分、34~40g/10分、20~28g/10分、及び26~36g/10分のメルトフローレートを有する。
【0042】
組成物は、組成物の総重量を基準として少なくとも22重量%、例えば少なくとも25重量%、少なくとも27重量%、又は少なくとも29重量%の量の少なくとも1種のPPSUを含む。
【0043】
組成物は、組成物の総重量を基準として少なくとも1種のPPSUを43重量%未満、例えば40重量%未満、又は38重量%未満の量で含み得る。
【0044】
好ましくは、組成物は、組成物の総重量を基準として22~43重量%、例えば25~40重量%、29~38重量%の範囲の量で少なくとも1種のPPSUを含み得る。
【0045】
エポキシ官能基含有熱可塑性エラストマー(TPE)
組成物は、少なくとも1種のエポキシ官能基含有熱可塑性エラストマー(以降「TPE」と呼ぶ)を含む。
【0046】
本発明との関係において、「エラストマー」とは、(1)低いガラス転移温度(Tg)、つまり25℃未満、更には0℃未満のガラス転移温度と、(2)低い弾性率(ヤング率)、つまり200MPa未満、更には100MPa未満の弾性率と、を示すポリマー系材料として定義される。
【0047】
TPEのポリマー主鎖は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン;エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコアシェルエラストマー、又は上記の1つ以上の混合物を含むエラストマー主鎖から選択することができる。
【0048】
組成物中で使用されるTPEは、エポキシ官能基を含む。主鎖の官能化は、エポキシ官能基含有モノマーの共重合から、或いはポリマー主鎖と更なるエポキシ官能基含有成分とのグラフト化から得ることができる。
【0049】
TPEの具体例は、特に、ポリ(エチレン-co-グリシジルメタクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン-co-メチル(メタ)アクリレート-co-グリシジルアクリレート)コポリマー、ポリ(エチレン-co-n-ブチルアクリレート-co-グリシジルアクリレート)コポリマー、並びにスチレンとグリシジル(メタ)アクリレートとのコポリマーである。本発明の伝熱管に適した市販のTPEの注目すべき非限定的な例は、例えば、Arkema(Bristol,PA,USA)のLotader(登録商標)AX8900及びLotader(登録商標)AX8840であり、それぞれポリ(エチレン-co-アルキルアクリレート-co-グリシジルアクリレート)ターポリマー(67重量%のエチレンと、25重量%のメチルアクリレートと、8重量%のグリシジルメタクリレートとから誘導される構造単位を含む)、並びにポリ(エチレン-co-グリシジルメタクリレート)コポリマー(92重量%のエチレンと8重量%のグリシジルメタクリレートとから誘導される構造単位を含む)、又は同様にポリ(エチレン-co-グリシジルメタクリレート)コポリマーである住友化学株式会社のIgetabond(登録商標)BF-E(88重量%のエチレンと12重量%のグリシジルメタクリレートとから誘導される構造単位を含む)である。適切なTPEの別の例は、商品名Paraloid(商標)EXL2314としてDow Inc.(Midland,MI,USA)から市販されており、これは、主に架橋ポリ(n-ブチルアクリレート)ゴムから構成されるコアと、主にポリ(メチルメタクリレート)-ポリ(グリシジルメタクリレート)コポリマーから構成されるシェルとから構成されるコア-シェル型アクリレート系ポリマーである。
【0050】
組成物は、好ましくは、10g/10分未満、例えば7g/10分未満、6g/10分未満、5g/10分未満、又は4g/10分未満のメルトフローレート(ASTM D1238、190℃、荷重2.16kg)を有するTPEを含む。
【0051】
組成物は、組成物の総重量を基準として少なくとも6重量%、又は少なくとも7重量%、例えば少なくとも8重量%の量で少なくとも1種のTPEを含む。
【0052】
組成物は、組成物の総重量を基準として14重量%未満、例えば12重量%未満の量で少なくとも1種のTPEを含み得る。
【0053】
好ましくは、組成物は、組成物の総重量を基準として5~14重量%、例えば6~12重量%の範囲の量で少なくとも1種のTPEを含み得る。
【0054】
添加剤
いくつかの実施形態では、組成物は、限定するものではないが、酸化防止剤(例えば紫外光安定剤及び熱安定剤)、加工助剤、造核剤、潤滑剤、難燃剤、煙抑制剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、着色剤、顔料などの任意選択的な添加剤を更に含むことができる。
【0055】
存在する場合、添加剤は、組成物の総重量に対して典型的には10重量%を超えない、更には8重量%を超えない、又は5重量%を超えない量で組成物中に含まれる。添加剤は、通常、組成物の総重量に対して少なくとも0.5重量%、例えば少なくとも0.8重量%又は少なくとも1重量%の量で存在する。
【0056】
いくつかの実施形態では、1種以上の顔料は、白色、黒色、又は着色された管を得るために特に望ましい添加剤である場合がある。顔料は、カーボンブラックなどの黒色顔料、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、アンチモン白、二酸化チタン(ルチル型又はアナターゼ型、好ましくはルチル型)などの白色顔料、及び/又は有色顔料であってもよい。顔料は、通常、組成物の総重量を基準として0~6重量%、好ましくは0.05~5重量%、特には0.1~3重量%の量で存在する。
【0057】
いくつかの実施形態では、酸化防止剤が特に望ましい添加剤であることができる。酸化防止剤は、組成物の熱安定性及び光安定性を改善することができる。例えば、熱安定剤である酸化防止剤は、例えば、ポリマー分解の防止に役立つ一方で、ポリマーをより高温でも加工可能にすることにより、製造中における(又は高温用途設定における)複合材料の熱安定性を改善することができる。
【0058】
望ましい酸化防止剤としては、銅塩(例えば、CuO及びCuO)、アルカリ金属ハロゲン化物(例えばCuI/KIが挙げられるがこれに限定されないアルカリ金属ハロゲン化物の組み合わせを含む、CuI、KI、及びKBr)、ヒンダードフェノール、ヒンダードアミン光安定剤(「HALS」)(例えば三級アミン光安定剤)、並びに有機又は無機リン含有安定剤(例えば次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸マンガン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
いくつかの実施形態では、添加剤はハロゲンフリー難燃剤である。いくつかの実施形態では、ハロゲンフリー難燃剤は、ホスフィン塩(ホスフィネート)、ジホスフィン塩(ジホスフィネート)、及びこれらの縮合生成物からなる群から選択される有機リン化合物である。代替の実施形態では、組成物は難燃剤を含まない。
【0060】
組成物は、好ましくはハロゲンフリーであり、これは組成物中にハロゲン含有成分が使用されないことを意味する。
【0061】
組成物は、TPE、PPS、及びPPSUポリマーとは異なる別のポリマーを除外することができる。
【0062】
組成物からは、好ましくは、ポリ(エーテルイミド)(「PEI」)ポリマーが除外され;「ポリ(エーテルイミド)」及び/又は「ポリマー(PEI)」という表現は、ポリマー中の総モル数を基準として少なくとも50モル%の、少なくとも1つの芳香環と、それ自体及び/又はそのアミド酸形態での少なくとも1つのイミド基と、少なくとも1つのエーテル基とを含む繰り返し単位(RPEI)を含むポリマーを意味する。繰り返し単位(RPEI)は、イミド基のアミド酸の形態に含まれない少なくとも1つのアミド基を任意選択的に更に含み得る。
【0063】
本発明の伝熱管は、上で詳述した組成物を含む。伝熱管は、典型的には上で詳述した組成物からなる。
【0064】
有利には、本発明の伝熱管は、UL94規格(Underwriters Laboratory(USA)の装置及び器具部品用のプラスチック材料燃焼性試験の規格番号)により決定されるV-0等級を有する。
【0065】
伝熱管は、当該技術分野で公知の任意の適切な方法を使用して製造することができる。伝熱管は、典型的には押出によって製造される。管の長さ全体が押出可能であること、及び/又は単一の押出プロセスで押出されることが適切である。
【0066】
本発明の伝熱管は、その長さ全体に沿って実質的に一定の断面を有することが適切である。前記管は、好ましくは円形の断面を有する。管は、伝熱流体の流れを可能にするように中空である。
【0067】
中空である本発明の伝熱管は、伝熱流体と直接接触する内表面層を有する。この内表面層は、好ましくは上で詳述した組成物から製造される。好ましくは、本発明の中空伝熱管全体が、上で詳述した組成物から製造される。
【0068】
伝熱管の寸法は限定されず、この管が使用される熱管理システムの寸法によって設定される。いくつかの実施形態では、伝熱管は、5~50mm、更には5~30mmの範囲の直径を有し得る。管の肉厚は、典型的には0.5~5.0mm、0.8~5.0mm、更には1.0~5.0mmの範囲であってよい。
【0069】
本発明の第2の目的は、本発明の第1の目的である伝熱管を備える熱管理システムである。熱管理システムは、更に伝熱流体を含む。伝熱流体は伝熱管内に収容される。伝熱流体は、好ましくは、伝熱管の内部を通過する(流れる)。伝熱流体は、水、水/エチレングリコール混合物、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HFC)、及び(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)からなる群から選択することができる。本発明の好ましい実施形態では、伝熱流体は、水又は水/エチレングリコール混合物からなる群から選択される。特定の実施形態では、伝熱流体は、クロロフルオロカーボン(CFC)、ハイドロクロロフルオロカーボン(HFC)、及び(パー)フルオロポリエーテル(PFPE)からなる群から選択することができる。請求項8に記載の熱管理システムは、伝熱管内に収容された伝熱流体を更に含む。
【0070】
本発明の一実施形態では、熱管理システムは、バッテリーシステム、好ましくは充電式バッテリーシステムの温度を制御するための熱管理システムであるバッテリー熱管理システム(以降「BTMS」)である。
【0071】
BTMSは、用途に応じて、程度の差はあっても複雑であり得るが、BTMSは、典型的にはバッテリーと熱交換する本発明の冷却管内を流れる伝熱流体を使用して、バッテリーの温度が高すぎる場合にバッテリーを冷却する機能と、バッテリーの温度が低すぎる場合にバッテリーを加熱する機能を少なくとも有する。BTMSの他の一般的な特徴は、バッテリー温度への外部環境の影響を低減するための絶縁システム及びバッテリーパック内に生じ得る危険ガスを散逸させることを促進する換気システムである。
【0072】
典型的には、伝熱流体は、バッテリーと熱的に接触している本発明の伝熱管と、伝熱流体を所望の温度に加熱及び/又は冷却する機能を有する第2のシステムとを含む閉鎖系内でポンプによって循環される。この第2のシステムは、冷却システムと加熱システムとの任意の組合せを含むことができるか、又はヒートポンプ内で加熱機能と冷却機能とを組み合わせることができる。循環伝熱流体は、熱をバッテリーから吸収するか又は熱をバッテリーに放出し、次いで、それは、前記第2のシステム内で循環され、伝熱流体を所望の温度に戻す。程度の差はあるが、伝熱流体の瞬間温度と各瞬間における伝熱流体の温度を最適化するバッテリーの温度とを制御する、精巧な制御システムが存在し得る。
【0073】
したがって、本発明の更なる目的は、バッテリー内の温度を制御する方法であって、本発明の伝熱管を含む閉鎖系内で伝熱流体を循環させるステップを含み、前記系がバッテリーと、並びに流体を所望の温度に加熱及び/又は冷却する機能を有する第2のシステムと、熱的に接触している方法である。
【0074】
本発明の更なる目的は、上で定義したようにバッテリーの温度を制御するステップを含む、バッテリーを動作させる方法である。
【0075】
上で詳述したBTMSを含むバッテリーは、充電式バッテリーが使用され得るあらゆる用途に使用することができる。そのような用途の注目すべき非限定的な例は、例えば、自動車、電動自転車、バスなどのアーバンモビリティー車両である。
【0076】
上記の実施形態は、例示的であり、限定的ではないことを意図する。追加の実施形態は、本発明の概念内にある。加えて、本発明は、特定の実施形態に関連して記載されているが、当業者は、本発明の主旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における変更が行われ得ることを認めるであろう。
【実施例
【0077】
原材料
PPSポリマー(PPS):Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cから入手したRyton(登録商標)QA200N;酸洗浄したPPSであり、温度316℃、荷重5kgで100g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238)を有する。
【0078】
PPSU-1ポリマー:Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cから入手したRadel(登録商標)R-5500NT;温度365℃、荷重5kgで12~17g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238)を有する。
【0079】
PPSU-2ポリマー:Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cから入手したRadel(登録商標)R-5800NT;温度365℃、荷重5kgで20~28g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238)を有する。
【0080】
PPSU-3ポリマー:Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cから入手したRadel(登録商標)R-5900NT;温度365℃、荷重5kgで26~36g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238)を有する。
【0081】
PPSU-4ポリマー:Solvay Specialty Polymers USA,L.L.Cから入手したRADEL(登録商標)R-5600NT;温度365℃、荷重5kgで34~40g/10分のメルトフローレート(ASTM D1238)を有する。
【0082】
TPE-1:Arkema,Bristol USAのLotader(登録商標)AX8900;190℃、荷重2.16kgで6g/10分のメルトフローインデックス(ASTM D1238)を有する。
【0083】
TPE-2:住友化学株式会社のIgetabond(登録商標)BF-E;3g/10分のメルトフローレート(JIS K7210-1、190℃、21.2N)及び-26℃のTgを有する。
【0084】
AO:BASFのIrgafos(登録商標)168;トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、酸化防止剤として使用。
【0085】
カーボンブラック濃縮物(「CBC」):Ryton(登録商標)PPS QA200N(Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.)中30重量%のArosperse 11Wカーボンブラック(Orion Engineered Carbons GmbH,Germany)。
【0086】
組成物の調製のための基本手順
PPSUポリマーを、最初にオーブン中135℃で少なくとも5時間乾燥した。次いで、確実に均一にするために振動シェーカーでポリマーを2~3分間混合することによってドライブレンドを行った。その後、ドライブレンドを重量フィーダーに入れ、二軸押出機(Clextral D32)に供給し、溶融し、押し出した。押出中の温度は、参照組成物については約320℃に、本発明による組成物については340℃~350℃に制御した。
【0087】
溶融流を冷却し、ペレタイザーに供給した。ペレットを回収し、射出成形のために使用するまで密封されたプラスチックバケツに保持した。
【0088】
試験
以下の試験方法を、組成物の評価に用いた:
引張特性-ISO527タイプ1A棒及び小さい薄片(1.6mm)を、Billion Injectionで射出成形により製造した(参照組成物1及び2については300~320℃、実施例1~4については340℃)。引張特性は、ISO527-2に従って室温(23℃)で、引張り弾性率については1mm/分の速度で、終局特性(破断点応力及び歪み)については5mm/分の速度で決定した。
【0089】
ウェルドライン強度測定は、ISO527を使用して行った。
【0090】
曲げ特性を決定するためにはISO178を使用した。
【0091】
シャルピー衝撃特性は、ISO179-1/1eU(ノッチなし)及びISO179-1/1eA(ノッチあり)に従って23℃で測定した。
【0092】
D3835:押出ペレットの溶融粘度評価を、Netzsch RH2000キャピラリーレオメーターを使用し、316℃(参照組成物1及び2)及び340℃(実施例1)で60s-1でキャピラリーレオメトリーにより行った。
【0093】
UL94:難燃性は、厚さ1.6mmのサンプルについてUnderwriters Laboratory(USA)の規格UL94に従って評価した。
【0094】
いくつかの組成物は表1に詳細に示されている通りであり、この中の全てのパーセント割合は組成物の総重量に対して計算された重量によるものである。
【0095】
【表1】
【0096】
結果を下の表2にまとめる。
【0097】
【表2】
【0098】
PPSとTPEとを含む参照組成物に対して、PPSU-1を含む本発明の組成物は、予想外にも、UL94可燃性規格によるV0等級を満たす材料をもたらした。改善された難燃性に加えて、この組成物は改善された破断点歪みも示した(30%以上)。
【0099】
管押出試験
表1の実施例1の組成物を使用して、管を以下の通りに作製した:材料を90℃で4時間乾燥させた後、押出機に入れた。バレル押出機の温度は330~350℃に設定した。
【0100】
校正浴を使用して管を押し出した。得られた管は、優れた表面外観と規則的な形状を有していた。管は、16mmの外径、1.5mmの肉厚、及び10cmの全長を有していた。
【0101】
実施例1と同じ組成物から作製した10本の管について、簡単な自由落下ダーツ試験を行って、耐衝撃性を決定した。この落下ダーツ試験は、-40℃の温度で、1回の落下高さ65cmで880gのダーツを用いて行った。いずれの管も破損しなかった。
【0102】
PPS選択の影響
本発明の追加の配合物を、実施例2~4において、異なるPPSU Radel(登録商標)製品を使用して上で詳述した基本手順に従って製造した;これらそれぞれの組成を表3に示す(比較のために実施例1を再度示す)。この中の全てのパーセント割合は各組成物の総重量を基準とした重量によるものである。
【0103】
【表3】
【0104】
実施例1~4の引張特性及び衝撃特性を表4にまとめる。
【0105】
【表4】
【0106】
実施例1~4の全てで、4つの配合物に使用されたPPSUポリマーに関わらず、適切且つ同様の引張弾性率、引張強さ、破断点引張強さ、及び衝撃特性が得られた。
【0107】
実施例1~4の全てが30%より大きい破断点歪みを有していた。しかしながら、実施例1~4の組成物中のPPS及びTPEが同じである場合、全体として20~40g/10分の範囲のMFR(ASTM D1238、荷重5kg、温度365℃)を有するPPSU-2、PPSU-3、及びPPSU-4を使用すると、12~17g/10分(ASTM D1238、荷重5kg、温度365℃)のMFRを有するPPSU-1を使用する場合と比較して破断点歪みが改善されることが観察された。この理論に限定されることを望むものではないが、より粘性の低いPPSU(20~40g/10分のMFR(ASTM D1238、荷重5kg、温度365℃)を有する)が、組成物の破断点歪みを改善したと考えられる。
【0108】
TPE選択の影響
本発明の追加の配合物を、実施例5~6において、2つの異なるTPEを使用して上で詳述した基本手順に従って製造した;これらそれぞれの組成を表5に示す。この中の全てのパーセント割合は各組成物の総重量を基準とした重量によるものである。
【0109】
【表5】
【0110】
実施例5及び6の引張特性及び衝撃特性を表6にまとめる。
【0111】
【表6】
【0112】
実施例5と6の両方で、配合物に使用されたTPEに関わらず、適切且つ同様の引っ張り特性が得られたが、TPE-2:Igetabond(登録商標)FB-Eを含む実施例6の配合物では、破断点歪みがはるかに優れた材料が得られ、実際、TPE-1:Lotader(登録商標)AX8900を含む実施例5の同等の配合物で得られた値(35%)の2倍の値(70%)を有していた。この理論に限定されることを望むものではないが、より粘性の高いTPE(実際にLotader(登録商標)AX8900よりも低いMFRを有するIgetabond(登録商標)FB-E)が、破断点歪みを改善したと考えられる。
【0113】
PPSU含有量の影響
本発明による追加の配合物を、実施例7~10において、組成物中の含有量を20から33重量%まで変化させて、PPSU-1(Radel(登録商標)R-5500NT)を使用して、上で詳述した基本手順に従って製造した;これらそれぞれの組成を表7に示す。この中の全てのパーセント割合は各組成物の総重量を基準とした重量によるものである。
【0114】
【表7】
【0115】
実施例7~10の引張特性及び衝撃特性を表8にまとめる。
【0116】
【表8】
【0117】
実施例7~10の全てで、4つの配合物に使用されたPPSU-1の含有量に関わらず、適切且つ同様の引張弾性率、引張強さ、破断点引張強さ、及び30%を超えるの破断点歪みを示した。
【0118】
しかしながら、PPSU含有量が20重量%から33重量%に増加すると、衝撃特性が増加し、実施例9及び10で得られた材料が実施例7及び8と比較して向上した耐衝撃性を有することが観察された。
【0119】
実施例9及び10の材料は、UL94可燃性規格によるV0等級を満たすことが確認された。
【0120】
化学的老化
実施例1の配合物を使用して、ISO527-2タイプ1Aに従って射出成形によりポリマー試験片を製造した。この試験片を、エチレングリコール(HaertolのFrostox(登録商標)HT12)と水との50:50(v/v)ブレンドに最大1000時間直接接触させることにより、135℃のオートクレーブ内で化学的に老化させた。
【0121】
ポリマー試験片の引張特性及び曲げ特性を、エチレングリコール/水ブレンドに曝露する前(t=0時間)と、500時間及び1000時間曝露した後に測定し、その後初期値と比較した。
【0122】
結果を表9に示す。この中で、引張弾性率及び曲げ弾性率及び強さの%は、初期値と比較した時間「t」(t=500h又は1000h)における値Vのパーセント変化率(減少についてはマイナス、増加についてはプラス)を表す:t=0hにおけるVは、次の式に従う:%変化率=100*(V-V)/V
【0123】
【表9】
【0124】
この試験は、本発明による管に使用される実施例1の組成物の高い耐薬品性を実証した。
【国際調査報告】