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特表2024-538964回転装置で生成された熱エネルギーを使用して鋼を製造する方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】回転装置で生成された熱エネルギーを使用して鋼を製造する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/00 20060101AFI20241018BHJP
   C21C 1/00 20060101ALI20241018BHJP
   C21B 13/00 20060101ALI20241018BHJP
   C22B 1/20 20060101ALI20241018BHJP
   C10B 23/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C21C7/00 Z
C21C1/00
C21B13/00
C22B1/20 Z
C10B23/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024520874
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 FI2022050685
(87)【国際公開番号】W WO2023062281
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/255,433
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521148164
【氏名又は名称】クールブルック オーワイ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】ベリ マッティ プロラ
(72)【発明者】
【氏名】トゥオマス オウニ
【テーマコード(参考)】
4K001
4K012
4K013
4K014
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA40
4K001GA10
4K012DA05
4K012DA09
4K013CC09
4K014AC08
(57)【要約】
少なくとも1つの回転装置によって、鋼製造プロセスにおいて流体媒体中へ熱エネルギーを投入する方法であって、回転装置が少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に固定ベーン集成体として形成されたステータと、を含む、方法が提供される。この方法では、当該流体媒体流が固定ベーンと少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与される。この方法は、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で鋼生産プロセス、例えば酸化鉄と炭素の反応、又は原材料の生産を実施するように形成された鋼生産設備内へ前記少なくとも1つの回転装置を組み込み、そして熱消費プロセス設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギー量を導き、投入エネルギーが電気エネルギーを含む、ことをさらに含む。回転装置及び関連する使用がさらに提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼を生産する方法であって、前記方法が、鋼生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成され、
前記方法が、
- 前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、
- 前記鋼生産設備内へ、少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体の流れを供給すること、及び
- 約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で鋼生産を実施するように、前記少なくとも1つの回転装置及び前記鋼生産設備を操作すること、
をさらに含む、鋼を生産する方法。
【請求項2】
前記鋼生産設備内で、前記少なくとも1つの回転装置が、製鋼のために形成された炉に接続されている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鋼生産設備内で、前記少なくとも1つの回転装置が、鋼を生産するために鋼前駆体材料を反応させるように形成された少なくとも1つの炉に接続されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記鋼生産設備内で、前記少なくとも1つの回転装置は、鉄鉱石を還元して鉄にすることにより溶融鉄を生産するための高炉として形成された少なくとも1つの炉に接続されている、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記鋼生産設備内で、前記少なくとも1つの回転装置が、鉄鉱石を直接還元鉄(DRI)へ直接還元するための炉、キルン、又は反応器として形成された少なくとも1つのプロセスユニットにさらに接続されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記鋼生産設備内で、前記少なくとも1つの回転装置が、
(i) 鉄鉱石を焼結して鉄鉱石焼結物/ペレットにするように形成された焼結/ペレットプラント、
(ii) 石炭をコークス化してコークスにするように形成されたコークス化プラント、
(iii) 熱処理、浸炭、鋳造、及び/又は圧延のうちのいずれか1つを介して鋼製品を後処理するように形成された後処理ユニット、
(iv) 鋼生産に際して発生したオフガスの吸熱反応のために形成された反応器又は一連の反応器、又は
(vi) これらの任意の組み合わせ、
のうちのいずれか1つにさらに接続されており、又は組み込まれている、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度、好ましくは約1200℃に本質的に等しい、又は約1200℃を超える温度、さらに好ましくは約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に加熱された前記流体媒体を、前記回転装置によって生成することを含む、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記加熱された流体媒体が生成される際の条件を作り出すために、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流の速度及び/又は圧力を調節することを含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱された流体媒体が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む少なくとも1つの回転装置によって生成される、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記加熱された流体媒体が、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む少なくとも1つの回転装置によって生成され、前記方法が、当該流体媒体流が前記固定ベーンと、前記ロータブレードと、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記回転装置内で、前記ディフューザ領域が、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流に加えられる前記熱エネルギー量が、前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ導かれる前記投入エネルギー量を調節することにより制御される、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの回転装置の下流側に付加的な加熱装置を配置し、そして前記付加的な加熱装置を通って伝搬する流体媒体流に、反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入すると、すぐに熱エネルギー量が発熱反応を通して前記流体媒体流に加えられることをさらに含む、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、所定の温度に予熱された前記流体媒体流に導入される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱された前記流体媒体流に導入される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記所定の温度への前記流体媒体の予熱が、前記回転装置内で実施される、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記鋼生産設備内へ組み込まれた少なくとも2つの回転装置によって前記加熱された流体媒体を生成し、前記少なくとも2つの回転装置が並列又は直列に接続されている、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
連続的に接続された少なくとも2つの回転装置によって、前記加熱された流体媒体を生成し、前記流体媒体流が連続内の少なくとも第1の回転装置内で所定の温度に予熱され、そして当該第2の回転装置を通って伝搬する前記予熱された流体媒体流中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流が、前記連続内の少なくとも第2の回転装置内でさらに加熱される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記連続内の少なくとも前記第1の回転装置内で、前記流体媒体流が約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記流れ中へ導入することにより、前記付加的な熱エネルギー量が、前記連続内の前記少なくとも第2の回転装置を通って伝搬する流体媒体流に付加される、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
鋼の生産に関連するプロセス中へ、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入することを含む、請求項1から20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体が、供給ガス、リサイクルガス、メイクアップガス、及びプロセス流体から成る群から選択される、請求項1から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記回転装置に入る前記流体媒体が、本質的にガス状の媒体である、請求項1から22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記加熱された流体媒体を前記回転装置内で生成することを含む、請求項1から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が、空気、蒸気(HO)、窒素(N)、水素(H)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、又はこれらの任意の組み合わせ、のうちのいずれか1つを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体が、鋼を生産するために鋼前駆体材料を反応させることから生成されたオフガスからリサイクルされたリサイクルガスである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記回転装置の外部で、加熱された流体媒体、例えばガス、蒸気、液体、及びこれらの混合物、及び/又は加熱された固体材料を生成することを、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体と、前記回転装置を迂回する上述の物質のいずれか1つとの間の熱伝達プロセスを通して行うことをさらに含む、請求項1から26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体が、前記鋼生産設備内部の少なくとも1つの熱消費ユニット内へ供給され、前記熱消費ユニットが、(i)鋼を製造するように形成された炉、キルン又は反応器、(ii) 鉄鉱石を焼結して鉄鉱石焼結物/ペレットにするように形成された焼結/ペレットプラント、(iii) 石炭をコークス化してコークスにするように形成されたコークス化プラント、(iv) 熱処理、浸炭、鋳造、及び/又は圧延のうちのいずれか1つを介して鋼製品を後処理するように形成された後処理ユニット、(v) 鋼生産に際して発生したオフガスの吸熱反応のために形成された反応器又は一連の反応器、又は(vi)これらの任意の組み合わせ、のうちのいずれか1つとして提供される、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体が、前記鋼生産設備内部の少なくとも1つの熱消費ユニット内へさらに供給され、前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、加熱器、バーナ、オーブン、焼却炉、乾燥器、コンベア装置、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つとして提供されている、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めることをさらに含む、請求項1から29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
鋼生産設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれたエネルギー量が、約5パーセント~100パーセントの範囲内にある、請求項1から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記鋼生産設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、再生可能エネルギー源、又は種々異なるエネルギー源、任意には再生可能エネルギー源の組み合わせから得ることができる、請求項1から31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの回転装置が、非電気エネルギーで動作可能な少なくとも1つの加熱器装置と一緒に前記鋼生産設備内へ組み込まれることにより、前記電気エネルギー量、任意には再生可能電気エネルギー量の変動、例えば供給過剰及び不足のバランスをとるために利用される、請求項1から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記鋼生産設備のエネルギー効率が改善され、且つ/又は前記鋼生産設備内の温室効果ガス排出量及び粒子排出量が低減される、請求項1から33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
鋼生産設備であって、加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、鋼生産に関連するプロセスを実施するように形成された少なくとも1つの熱消費ユニットとを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように動作するように、前記少なくとも1つの回転装置が形成されており、そして
前記少なくとも1つの回転装置が、電気エネルギーを含む投入エネルギーの量を受容するように、そして少なくとも1つの熱消費ユニット内へ熱エネルギーを投入するための加熱された流体媒体を生成するように形成されており、前記熱消費ユニットが、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で鋼生産に関連するプロセスを実施するように形成されている
、鋼生産設備。
【請求項36】
前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、製鋼のために形成された炉であり、そして前記少なくとも1つの回転装置が前記炉に接続されている、請求項35に記載の鋼生産設備。
【請求項37】
前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、鋼を生産するために鋼前駆体材料を反応させるように形成された炉であり、そして前記少なくとも1つの回転装置が前記炉に接続されている、請求項35又は36に記載の鋼生産設備。
【請求項38】
前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、(i)鉄鉱石を還元して鉄にすることにより溶融鉄が生産される高炉、(ii) 鉄鉱石を焼結して鉄鉱石焼結物/ペレットにするように形成された焼結/ペレットプラント、(iii) 鉄鉱石を直接還元鉄(DRI)へ直接還元するように形成された炉、キルン、又は反応器、(iv) 石炭をコークス化してコークスにするように形成されたコークス化プラント、(v) 熱処理、浸炭、鋳造、及び/又は圧延のうちのいずれか1つを介して鋼製品を後処理するように形成された後処理ユニット、(vi) 鋼生産に際して発生したオフガスの吸熱反応のために形成された反応器又は一連の反応器、又は(vii) これらの任意の組み合わせ、のうちのいずれか1つであり、そして、前記少なくとも1つの回転装置が(i)~(vii)のうちのいずれか1つに接続され且つ/又は組み込まれている、請求項35に記載の鋼生産設備。
【請求項39】
前記少なくとも1つの回転装置が、加熱器、バーナ、オーブン、焼却炉、乾燥器、コンベア装置、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つとして形成された熱消費ユニットにさらに接続されている、請求項35から38のいずれか1項に記載の鋼生産設備。
【請求項40】
前記少なくとも1つの回転装置が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む、請求項35に記載の鋼生産設備。
【請求項41】
前記少なくとも1つの回転装置が、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む、請求項35に記載の鋼生産設備。
【請求項42】
前記回転装置が、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成された前記ディフューザ領域を含む、請求項41に記載の鋼生産設備。
【請求項43】
前記少なくとも1つの回転装置がさらに、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めるように形成されている、請求項35に記載の鋼生産設備。
【請求項44】
少なくとも2つの回転装置が集成体を成すように配置され、そして並列又は直列に接続されている、請求項35から43のいずれか1項に記載の鋼生産設備。
【請求項45】
請求項1から34のいずれか1項に記載の方法を通して鋼を生産することに関連するプロセスを実施するように形成された、鋼生産設備。
【請求項46】
鋼生産設備内で鋼を生産することに関連するプロセス中へ熱エネルギーを投入する方法であって、前記方法が、鋼生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、
少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、
ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、
前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、
を含み、
前記方法が、
- 約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で鋼を生産することに関連するプロセスを実施するように形成された鋼生産設備内へ前記少なくとも1つの回転装置を組み込むこと、
- 前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、及び
- 当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作すること、
をさらに含む、
熱エネルギーを投入する方法。
【請求項47】
前記鋼生産設備内で鋼を生産することに関連するプロセスが、
(i) 炉内で実施される、鋼を製造するプロセス、
(ii) 焼結/ペレットプラント内で実施される、鉄鉱石を焼結して鉄鉱石焼結物/ペレットにするプロセス、
(iii) コークス化プラント内で実施される、石炭をコークス化してコークスにするプロセス、
(iv) 後処理ユニット内で実施される、熱処理、浸炭、鋳造、及び/又は圧延のうちのいずれか1つを介して鋼製品を後処理するプロセス、
(v) 鋼生産に際して反応器又は一連の反応器内で実施される吸熱反応、又は
(vi) これらの任意の組み合わせ
のうちのいずれか1つである、請求項46に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大まかに言えば、流体中へ熱エネルギー(熱)を投入するためのシステム及び方法に関する。具体的には、本発明は、高い温度及び極めて高い温度で実施される、鋼生産に関連する熱消費産業プロセスにおいて、エネルギー効率を最適化し、そして温室効果ガス排出量及び粒子排出量を低減するツール及びプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
業界及び政府は、温室効果ガス(GHG)排出量を著しく低減するための技術を見出そうと闘っている。鋼生産のような重工業プロセスは、企業、政府、及び国際機関によって設定された低排出量目標を達成するための重要な役割を担っている。これらのプロセスの電化が、排出量を低減するための解決手段と考えられている。電化のための障害物の1つは、鋼生産において必要とされる高い温度の達成である。例えば、鋼を溶融し形成するための中核プロセスは極めて高い温度、例えば約850~1600℃の範囲内の温度を必要とする。このことはエネルギー源及び利用される技術に対して厳しい要件を課す。具体的には電気はいくつかの高温プロセスのために既に使用されてはいるものの(例えば鋼を溶融するための電気アーク炉内で)、大抵の場合には、技術も経済的側面もまだそのようにする位置にはない。
【0003】
加熱を目的として、いくつかの回転解決手段が提案されている。米国特許第11,098,725号明細書(Sanger他)に開示された液体力学的加熱器ポンプ装置は、加熱された流体及び/又は加圧された流体の流れを選択的に生成するために動作可能である。前述の液体動圧加熱器ポンプは、自動車車両の乗客コンパートメントを暖める熱を提供するために、そして他の能力、例えばウィンドウの除氷及びエンジンの冷却を可能にするために、自動車車両の冷却システム内に組み付けられるように設計されている。開示された装置は、エンジンを冷却するための加圧流体流を提供することもできる。開示された技術は摩擦に基づくものであり、また加熱されるべき流体は液体なので、提示されたデザインは、ガス空気力学の極端な乱流を伴う条件には適していない。
【0004】
米国特許第7,614,367号明細書(Frick)には、回転運動エネルギーを熱に変換することにより、流体を無炎加熱し、濃縮し、又は蒸発させるシステム及び方法が開示されている。流体加熱のために形成されたシステムは、回転運動エネルギー発生器と、回転加熱装置と、一次熱交換器とを、すべて閉ループ流体連通した形で含んでよい。回転加熱装置は水ブレーキ動力計であってよい。前記明細書は海洋掘削又は採油プラットフォームにおいて水を加熱するためのシステムの使用を開示している。しかしながら、提示されたシステムは、ガス状の媒体を加熱するのには適しておらず、また、高い温度及び極めて高い温度との使用には(液体安定性、蒸気圧などに基づき)実現し得ない。
【0005】
加えて、いくつかの回転ターボ機械型装置も、炭化水素(蒸気)クラッキングのプロセスを実施することで知られており、目標製品、例えばエチレン及びプロピレンの収率を最大化することを目的としている。
【0006】
これに関して、効率的な加熱システム、具体的には高い温度及び極めて高い温度に関連する使用に適したシステムを設計し製造することに関連する技術分野のアップデートが、流体物質の上昇する温度に伴う難題に効率的かつ環境に優しい方法で対処することに鑑みて、なおも望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、関連技術の制約及び欠点から生じる問題の少なくともいくつかを解決し、又は少なくとも軽減することである。1つ又は2つ以上の目的は、本明細書中に記載された、加熱された流体媒体を生成するための方法、回転装置、及び本明細書中に定義された関連の使用の種々の実施態様によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1態様では、鋼を生産する方法が、鋼生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含む。
【発明の効果】
【0009】
1つの実施態様によれば、鋼を生産する方法であって、前記鋼生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含む方法は、エネルギー効率を改善するか、又は温室効果ガス排出量及び粒子排出量を低減し、あるいはこれら両方をもたらす。
【0010】
実施態様では、鋼を生産する方法は、鋼生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成され、前記方法が、前記熱消費プロセス設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、前記鋼生産設備内へ、少なくとも1つの回転装置によって生成された、加熱された流体媒体の流れを供給すること、及び約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で鋼生産を実施するように、前記少なくとも1つの回転装置及び前記鋼生産設備を操作すること、をさらに含む。
【0011】
別の態様では、鋼生産中に流体媒体中に熱エネルギーを投入する方法が提供される。
【0012】
一実施態様では、方法が、鋼生産設備内で鋼を生産することに関連するプロセス中へ熱エネルギーを投入することを含み、前記方法が、鋼生産設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、前記方法が、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で鋼を生産することに関連するプロセスを実施するように形成された鋼生産設備内へ前記少なくとも1つの回転装置を組み込むこと、前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ、投入エネルギー量を導くこと、ここで、前記投入エネルギーが電気エネルギーを含み、及び当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作すること、をさらに含む。
【0013】
実施態様では、前記方法が、前記鋼生産設備内部の少なくとも1つの炉に動作接続された前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。一実施態様では、前記少なくとも1つの炉が、製鋼のために形成されている。一実施態様では、前記炉が、鋼前駆体材料を反応させるように、そして前記鋼生産設備内で鋼を製造するように形成されている。実施態様では、前記方法は、鉄鉱石を還元して鉄にすることにより溶融鉄を生産するための高炉として形成された少なくとも1つの炉に動作接続された前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。高炉内の鉄鉱石の還元は、還元剤としてコークスを採用してよい。
【0014】
いくつかの形態では、前記少なくとも1つの回転装置は、溶融鉄を酸素化するための塩基性酸素転炉として形成され、これにより低炭素鋼が生産される少なくとも1つの炉に動作接続することができる。実施態様では、前記方法は、鉄鉱石「スポンジ鉄」とも呼ばれる直接還元鉄(DRI)を生産するために鉄鉱石を直接還元するための炉、キルン、又は反応器として形成された少なくとも1つのプロセスユニットに動作接続された少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。DRI生産中に、鉄鉱石はこれを溶融することなしに鉄に還元される。ガスに基づくDRIプロセスは、炉、キルン、又は流動床タイプの反応器として形成されたプロセスユニット内で行われる。反応器内では、鉄鉱石は高温還元ガス、例えば水素、天然ガス、又はコークスガスと反応させられる。コークスガスは、コークス・プラント・オフガス又はコークス・オーブンガス(COG)とも呼ばれる、コークス形成プロセスの副生成物である。DRIプロセスに続いて、鋼を生産するために、適宜の溶融処置(例えば電気アーク溶融が行われてよい。
【0015】
実施態様では、前記方法は、鉄鉱石を焼結して鉄鉱石焼結物/ペレットにするように形成された少なくとも1つの焼結プラント及び/又は/ペレットプラントに動作接続された少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。実施態様では、前記方法は、鋼生産設備内で石炭をコークス化してコークスにするように形成された少なくとも1つの炉又はコークス化プラントに動作接続された少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。実施態様では、前記方法は、熱処理、浸炭、鋳造、及び/又は圧延のうちのいずれか1つを介して鋼製品を後処理するように形成された少なくとも1つの後処理ユニットに動作接続された少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。実施態様では、前記方法は、鋼生産における吸熱反応のために、具体的には鋼生産に際して発生したオフガスの吸熱反応のために形成された少なくとも1つの反応器又は一連の反応器に動作接続された少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。上記実施態様のいかなる組み合わせも考えられる。
【0016】
本明細書中に使用される「炉」は、熱が燃焼プロセスの一部として生成又は付加される装置を意味する。炉は、具体的な用途のニーズに応じて、高炉、キューポラ炉、ポット・アンド・タンク炉、シャフト炉、再生炉、又は別の炉であってよい。任意の特定のタイプの炉又は燃焼のための別の装置を除外して「炉」を説明しようと判断することは、簡潔さを目的としているにすぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【0017】
実施態様では、約500℃に本質的に等しい、又は約500℃を超える温度、又は約1200℃に本質的に等しい、又は約1200℃を超える温度、又は約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に加熱された前記流体媒体を、少なくとも1つの回転装置によって生成することを含む。
【0018】
実施態様では、前記加熱された流体媒体が生成される際の条件を作り出すために、前記回転装置を通って伝搬する流体媒体流の速度及び/又は圧力を調節することを含む。
【0019】
実施態様では、前記方法において、前記加熱された流体媒体が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む少なくとも1つの回転装置によって生成される。
【0020】
実施態様では、前記方法において、前記加熱された流体媒体が、少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む少なくとも1つの回転装置によって生成され、前記方法が、当該流体媒体流が前記固定ベーンと、前記少なくとも1つのロータブレード列と、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置を操作することを含む。前記ディフューザ領域は、固定ベーンを有する又は有しない状態で形成されていてよい。
【0021】
実施態様では、前記方法において、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流に加えられる前記熱エネルギー量が、前記鋼生産設備内へ組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内へ導かれる前記投入エネルギー量を調節することにより制御される。
【0022】
実施態様では、前記方法は、前記少なくとも1つの回転装置の下流側に付加的な加熱装置を配置し、そして前記回転装置を通って及び/又は前記付加的な加熱装置を通って伝搬する流体媒体流に、反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入すると、すぐに前記熱エネルギー量が発熱反応を通して前記流体媒体流に加えられることをさらに含む。実施態様では、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、所定の温度に予熱された前記流体媒体流に導入される。実施態様では、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物が、約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱された前記流体媒体流に導入される。実施態様では、前記所定の温度への前記流体媒体の予熱が、回転装置内で実施される。
【0023】
一実施態様では、前記方法が、鋼生産設備内へ組み込まれた少なくとも2つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記少なくとも2つの回転装置が、並列又は直列に接続されている。一実施態様では、前記方法が、連続的に接続された少なくとも2つの回転装置によって、加熱された流体媒体を生成することを含み、前記流体媒体流が連続内の少なくとも第1の回転装置内で所定の温度に予熱され、そして当該第2の回転装置を通って伝搬する前記予熱された流体媒体流中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流が、該連続内の少なくとも第2の回転装置内でさらに加熱される。一実施態様では、前記方法において、該連続内の少なくとも前記第1の回転装置内で、前記流体媒体流が約1700℃に本質的に等しい、又は約1700℃を超える温度に予熱される。一実施態様では、前記方法において、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を前記流れ中へ導入することにより、前記付加的な熱エネルギー量が、順番で前記少なくとも第2の回転装置を通って伝搬する流体媒体流に付加される。一実施態様では、前記方法が、鋼の生産に関連するプロセス中へ、前記反応性化合物又は反応性化合物の混合物を導入することを含む。このようなプロセスは例えば、製鋼のために形成された炉内で実施することができる。
【0024】
一実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置によって生成された前記加熱された流体媒体が、供給ガス、リサイクルガス、メイクアップガス、及びプロセス流体から成る群から選択される。一実施態様では、前記方法において、前記回転装置に入る前記流体媒体が、本質的にガス状の媒体である。
【0025】
一実施態様では、前記方法は、前記加熱された流体媒体を前記回転装置内で生成することを含む。実施態様では、前記方法において、前記回転装置内で加熱されるべき流体媒体が、空気、蒸気(HO)、窒素(N)、水素(H)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、メタン(CH)、又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つを含む。適切な場合には、任意の他のガスを利用することができる。一実施態様では、前記方法において、前記回転装置内で加熱されるべき流体媒体が、鋼製造プロセス中に、鋼前駆体材料、例えば鉄又は鉄鉱石及び炭素を反応させることから生成されたオフガス、例えば排ガスからリサイクルされたリサイクルガスである。実施態様では、前駆体材料はしたがって炭素と鉄とを含む。前駆体は酸化鉄であってよいので、この方法は酸化鉄から鉄を生産するのに効果的である。前駆体は石炭であってよいので、この方法は石炭からコークスを生産するのに効果的である。
【0026】
一実施態様では、前記方法は、前記回転装置の外部で、前記加熱された流体媒体、例えばガス、蒸気、液体、及びこれらの混合物、及び/又は加熱された固体材料を生成することを、前記回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体と、前記回転装置を迂回する上述の物質のいずれか1つとの間の熱伝達プロセスを通して行うことをさらに含む。
【0027】
実施態様では、前記方法が、前記少なくとも1つの回転装置によって、又は前記少なくとも1つの回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体を、前記鋼生産設備内部の少なくとも1つの熱消費ユニット内へ供給することをさらに含み、前記熱消費ユニットが、(i)鋼を製造するように形成された炉、キルン又は反応器、(ii) 鉄鉱石を焼結して鉄鉱石焼結物/ペレットにするように形成された焼結/ペレットプラント、(iii) 石炭をコークス化してコークスにするように形成されたコークス化プラント、(iv) 熱処理、鋼製品を炭素源でアップグレードすること(浸炭)、鋳造、及び/又は圧延のうちのいずれか1つを介して鋼製品を後処理するように形成された後処理ユニット、(v) 鋼生産における吸熱反応のために、具体的には鋼生産に際して発生したオフガスの吸熱反応のために形成された反応器又は一連の反応器、又は(vi)これらの任意の組み合わせ、のうちのいずれか1つとして提供される。
【0028】
実施態様では、製鋼プロセス(i)が、高炉内で溶融鉄を生産するか、又はプロセスユニット、例えば炉、キルン、又は反応器内で直接還元鉄(DRI)を生産することに関与する。
【0029】
実施態様では、前記方法が、前記少なくとも1つの回転装置によって、又は前記少なくとも1つの回転装置内で生成された前記加熱された流体媒体を、前記鋼生産設備内部の少なくとも1つの熱消費ユニット内へ供給することをさらに含み、前記熱消費ユニットが、加熱器、バーナ、オーブン、焼却炉、乾燥器、コンベア装置、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つとして提供されている。いくつかの形態では、方法は、製鋼取鍋(溶融金属を輸送し注ぎ出すために使用される容器)の(予)加熱のために形成された(予)加熱器へ、加熱された流体媒体を供給することをさらに含んでよい。
【0030】
実施態様では、前記方法は、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めることをさらに含む。
【0031】
実施態様では、前記方法において、鋼生産設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、約5パーセント~100パーセントの範囲内にある。
【0032】
実施態様では、前記方法において、鋼生産設備内に組み込まれた前記少なくとも1つの回転装置内への投入エネルギーとして導かれた電気エネルギー量が、再生可能エネルギー源、又は種々異なるエネルギー源、任意には再生可能エネルギー源の組み合わせから得ることができる。
【0033】
実施態様では、前記方法において、前記少なくとも1つの回転装置が、非電気エネルギーで動作可能な少なくとも1つの加熱器装置と一緒に前記鋼生産設備内へ組み込まれることにより、(例えば供給及び/又は生産を通して得られる)前記電気エネルギー量、任意には再生可能電気エネルギー量の変動、例えば供給過剰及び不足のバランスをとるために利用される。
【0034】
別の態様では、本開示によれば、鋼生産設備が提供され、前記鋼生産設備が、加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、鋼生産に関連するプロセスを実施するように形成された少なくとも1つの熱消費ユニットとを含む。
【0035】
一実施態様では、前記鋼生産設備が、加熱された流体媒体を生成するように形成された少なくとも1つの回転装置と、鋼生産に関連するプロセスを実施するように形成された少なくとも1つの熱消費ユニットとを含み、前記少なくとも1つの回転装置が、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、ロータ軸上に取り付けられたロータハブの周囲にわたって配置された少なくとも1つのロータブレード列を含むロータと、前記少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に集成体を成すように配置された複数の固定ベーンと、を含み、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように動作するように、前記少なくとも1つの回転装置が形成されており、そして前記少なくとも1つの回転装置が、電気エネルギーを含む投入エネルギーの量を受容するように、そして少なくとも1つの熱消費ユニット内へ熱エネルギーを投入するための加熱された流体媒体を生成するように形成されており、前記熱消費ユニットが、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で鋼生産に関連するプロセスを実施するように形成されている。
【0036】
一実施態様では、前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、製鋼のために形成された炉であり、そして前記少なくとも1つの回転装置が、前記鋼生産設備内部で前記炉に接続されている。一実施態様では、前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、鋼を生産するために鋼前駆体材料を反応させるように形成された炉であり、そして前記少なくとも1つの回転装置が前記鋼生産設備内部で前記炉に接続されている。
【0037】
実施態様では、鋼生産設備内に提供された前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、(i) 鉄鉱石を還元して鉄にすることにより溶融鉄が生産される高炉、(ii) 鉄鉱石を焼結して鉄鉱石焼結物/ペレットにするように形成された焼結/ペレットプラント、(iii) 鉄鉱石を直接還元鉄(DRI)へ直接還元するように形成された炉、キルン、又は反応器、(iv) 石炭をコークス化してコークスにするように形成されたコークス化プラント、(v) 熱処理、浸炭、鋳造、及び/又は圧延のうちのいずれか1つを介して鋼製品を後処理するように形成された後処理ユニット、(vi) 鋼生産における吸熱反応のために、具体的には鋼生産に際して発生したオフガスの吸熱反応のために形成された反応器又は一連の反応器、又は(vii) これらの任意の組み合わせ、のうちのいずれか1つである。実施態様では、前記少なくとも1つの回転装置が(i)~(vii)のうちのいずれか1つに接続され且つ/又は組み込まれている。
【0038】
実施態様では、前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、加熱器、バーナ、オーブン、焼却炉、乾燥器、コンベア装置、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つとして形成されており、そして前記少なくとも1つの回転装置が、前記鋼生産設備内部で、これらの熱消費ユニットのいずれか1つ又はこれらの任意の組み合わせに接続されている。
【0039】
実施態様では、前記鋼生産設備において、前記少なくとも1つの回転装置が、前記ロータ軸に沿って連続的に配置された2つ又は3つ以上のロータブレード列を含む。1つの実施態様では、前記少なくとも1つのロータブレード列の上流側で集成体を成すように配置された固定ベーンが、固定ガイドベーンとして形成されている。1つの実施態様では、前記少なくとも1つの回転装置が、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む。前記ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成されていてよい。いくつかの形態では、ベーン付きディフューザは、前記少なくとも1つのロータブレード列の下流側で集成体を成すように配置された複数の固定ベーンとして実現されていてよい。
【0040】
1つの実施態様では、前記鋼生産設備内部に設けられた前記少なくとも1つの回転装置が、前記回転装置を通って伝搬する前記流体媒体流中の圧力を高めるようにさらに形成されている。
【0041】
一実施態様では、鋼生産を実施するように形成された前記少なくとも1つの熱消費ユニットが、鋼を生産するために鋼前駆体材料を反応させるように形成された炉である。
【0042】
いくつかの形態では、前記鋼生産設備内部に設けられた少なくとも1つの回転装置は、本質的にトロイダル形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、本質的に管状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、本質的に半径方向の軌道、及び左右方向のボルテックスリングとして巻き上げられた2つのスパイラルの形態を成す流体媒体流によって確立された流路のうちのいずれか1つに基づいて確立された流路に沿って入口と出口との間で流体流を実現するように形成される。
【0043】
さらなる態様では、集成体が設けられており、そして前記集成体が、何らかの前の態様に基づく少なくとも2つの回転装置を含み、前記回転装置が並列又は直列に接続されている。
【0044】
さらなる態様では、配列が提供され、そして前記配列は、いくつかの前の態様に基づく少なくとも1つの回転装置を含み、前記少なくとも1つの回転装置は、少なくとも1つの炉に接続されている。
【0045】
さらなる態様では、鋼生産設備が提供されており、前記鋼生産設備は、前に定義されたいくつかの態様及び実施態様に基づく方法を通して、鋼生産プロセスを実施するように形成されており、そして前記鋼生産設備は何らかの前の態様に基づく少なくとも1つの回転装置を含む。
【0046】
本発明の有用性は、本発明のそれぞれの具体的な実施態様に応じた種々の理由から生じる。
【0047】
全体的に見て、実施態様は、燃料燃焼型加熱器の代わりに、鋼の生産に使用されるべき、高温の流体、例えばガスを提供するための電化された回転流体加熱器を提供する。提示された方法は、高い温度及び極めて高い温度、例えば概ね500℃を超える温度で動作する、鋼生産又は鋼前駆体生産に際して使用される炉内へ熱エネルギーを投入することを可能にする。本発明は、約500℃~約2000℃の範囲内の温度、すなわち鋼生産に使用される温度まで流体物質を加熱するための装置及び方法を提供する。
【0048】
本発明は、種々の製鋼段で発生するオフガスを熱処理する方法を提供する。熱処理済みのオフガスは、実施態様によれば、鋼生産設備内へ組み込まれた吸熱反応器内で合成ガス生産のためにさらに使用することができる。
【0049】
鋼生産設備は、熱エネルギーに対して、ひいては熱消費に対して高い需要を有するユーティリティ、例えば燃焼型加熱器を典型的には採用する。前記熱消費ユーティリティを使用して、鋼生産プロセスのために必要とされる温度に流体を加熱する。ここに提示された本発明は、コンベンショナルな熱消費ユーティリティ、例えば燃料燃焼型加熱器の代わりに回転装置を使用することを可能にする。方法において、燃焼型加熱器の代わりに回転装置を使用することに伴う利点は、少なくとも、
- 電化加熱を支援すること、
- 温室効果ガス(例えばNO、CO、CO、NO)、燃料に由来する他の有害成分(例えばHCl、HS、SO、及び重金属)、粒子排出量及び煤煙排出量を排除するか、又は少なくとも著しく低減すること、
- 加熱器の体積が低減され、すなわち回転装置の体積が、コンベンショナルな処理加熱器又は熱交換器と比較して少なくとも1桁小さくなること、
- 投資コストが減少すること、
- 引火性の有害な流体/ガスを使用する場合の安全性が改善されること、
- 大量のガスの取り扱いが実現可能であること、
- 圧力降下が存在しないこと、
- ガスの圧縮(ブロワ機能)のためにも回転(加熱器)装置を使用することが可能であること、
- ガスの直接加熱に際しての温度差に依存していないこと。回転装置内の温度上昇は、約10~1700℃以上であり得ること、
- 任意には熱交換器内の温度差を最適化することにより、流体の間接加熱に際して回転装置を使用することが可能であること、
- 高温プロセスガスの少なくとも部分的なリサイクルが可能であり、ひいては熱回収を改善してよりシンプルにし、そしてエネルギー効率を改善すること、
- 発熱反応によりガス温度を例えば2000℃以上までさらに高める反応性化学物質を添加することによって、加熱されるべきガスの温度をさらに上昇させることが可能である、
ことを含む。
【0050】
実施態様では、回転装置は、鋼生産に際して直接又は間接に加熱するためのコンベンショナルな燃焼型加熱器又はプロセス炉の代わりに使用することができる。伝統的には、このような熱は主として、顕著なCO排出量を招く化石燃料の燃焼を通して生産されている。化石燃料の代わりに、木材又は他のバイオベースの材料を使用することには、顕著な資源限界があり、また環境への他の顕著な影響、例えば持続可能な土地利用と関連する影響がある。再生可能電気のコスト効率が高められるのにともなって、つまり風力圧電及び太陽光発電の急速な開発にともなって、化石燃料燃焼の代わりに、再生可能電気によって給電される回転装置を使用することが可能である。これは温室効果ガス排出を著しく低減することになる。回転装置は、流体を最大1700℃以上の温度に電化加熱することを可能にする。このような温度は、現行の電気加熱を用いることによって到達するのは困難又は不可能である。
【0051】
回転装置は、プロセスガス、不活性ガス、空気、又は任意のその他のガスを直接加熱するために、又はプロセス流体(液体、蒸気、ガス、蒸気/液体混合物など)を間接加熱するために使用することができる。前記回転装置内で生成された、加熱された流体は、ガス、蒸気、液体、及び固体材料のうちのいずれか1つを加熱するために使用することができる。具体的には回転装置は、鋼生産中の鉄又は鉄鉱石と炭素との反応から発生した排ガスからリサイクルされたリサイクルガスを直接加熱するために使用することができる。回転装置は、鋼生産に際して使用される炉を含む、固形、液状、又はガス状の化石燃料、いくつかの事例ではバイオベースの燃料で伝統的に燃焼又は加熱される(例えば予熱器としての)多数のタイプの炉、加熱器、キルン、ガス化器、及び反応器と少なくとも部分的に置き換えることができ、あるいはこれらと組み合わせることもできる。加熱されたガスは引火性、反応性、又は不活性であってよく、そしてリサイクルして回転装置へ戻すことができる。加熱に加えて、回転装置は複合ブロワ-加熱器として作用してよく、圧力を高め、そしてガスをリサイクルするのを可能にする。
【0052】
加熱された流体、例えばガスを種々の用途に使用することができる。加熱された物体は、固体材料、液体又はガスであり得る。ガスは数多くの反応にさらに参加し、又は加熱媒体として使用される。したがって、鋼生産設備におけるような固体材料を加熱するために、高温ガスを使用することができる。さらに、回転装置100は、鋼生産プロセス/設備内で、熱の提供及び流動床用途における流動化のために適用される。流動床用途の一例としては固形物の乾燥、ガス状反応物質を含む固体触媒型反応器、鉄鉱石還元、及び浸炭が挙げられる。
【0053】
本発明は温室効果ガス排出量(CO、CO、NO)及び粒子排出量の低減を可能にする。回転装置を使用することにより、プロセスのための閉加熱ループ又は準閉加熱ループを形成すること、そして煙道ガスを通した熱損失を低減することにより、これらのプロセスのエネルギー効率をさらに改善することもできる。コンベンショナルな加熱器内では、煙道ガスを部分的にしかリサイクルすることができない。
【0054】
加えて、本解決手段は、間接加熱に際して熱交換器内の温度差の改善された最適化を可能にする。
【0055】
本発明は、電気エネルギー、例えば再生可能源から得られる電気エネルギーをフレキシブルに使用することをさらに可能にする。再生可能エネルギーの生産量は日を単位として、そしてさらに時間を単位として変化する。本発明は、鋼生産プロセスに、そして具体的には、例えば鉄と炭素との高温混合物に熱を提供するために、ここに開示された回転装置をコンベンショナルな燃料動作型(燃料燃焼型)加熱器と一体化することにより、再生可能電気生産量のバランスをとることを可能にする。
【0056】
本発明はさらに、伝統的な化石燃焼炉と比較して、現場投資コストの低減を可能にする。
【0057】
「いくつかの(a number of)」という表現は、本明細書中では1から出発して例えば1、2、又は3までの任意の正の整数を意味する。「複数の(a plurality of)」という用語は、本明細書中では2から出発して例えば2、3、又は4までの任意の正の整数を意味する。「第1」及び「第2」という用語は、別段の明示がない限り、いかなる順番又は重要性をも示すことなしに、1つのエレメントを別のエレメントから区別するだけのために使用される。
【0058】
「ガス化」という用語は、ここでは、物質が任意の可能な手段によってガス状形態へ変換されることを示すために利用される。
【0059】
詳細な説明及び添付の図面を考察することにより、本発明の種々異なる実施態様が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1図1は、実施態様に基づく方法を実施するように形成された鋼製造プロセス設備として提供された高温熱消費プロセス設備のレイアウトを符号1000で示すブロックダイアグラムである。
図2A図2Aは、実施態様に基づく、鋼生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2B図2Bは、実施態様に基づく、鋼生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2C図2Cは、実施態様に基づく、鋼生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2D図2Dは、実施態様に基づく、鋼生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2E図2Eは、実施態様に基づく、鋼生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図2F図2Fは、実施態様に基づく、鋼生産設備内部に回転装置100を配置する模範的レイアウトを示す図である。
図3A図3Aは、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
図3B図3Bは、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
図3C図3Cは、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
図3D図3Dは、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
図3E図3Eは、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
図3F図3Fは、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
図3G図3Gは、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
図3H図3Hは、実施態様に基づく設備及び方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の詳細な実施態様が、添付の図面に関連してここに開示される。
【0062】
図1は、実施態様に基づく方法を実施するように形成された高温鋼製造プロセス設備のレイアウトを、符号1000で示すブロックダイアグラムである。図2A~2F及び図3B~3Hは、実施態様に基づく装置及び方法を記載している。図3Aは、下記回転装置を組み入れることができる、鋼を製造するためのプロセス及び関連する設備3000を大まかに示している。図3Fは、実施態様に基づくプロセス及び関連する設備4000を示している。図面及び関連する実施例は、例示を目的としたものであり、本発明の概念の適用可能性を、本開示において明示されたレイアウトに限定しようと意図するものではない。破線で示されたブロックダイアグラム区分は任意である。
【0063】
熱消費プロセス設備1000、3000、4000は、約500℃に本質的に等しい温度、又は約500℃を超える温度で熱消費産業プロセス101を実施するように形成された設備である。設備1000、3000、4000は産業プラント、工場、又は上述の熱消費産業プロセスを実施するように構成された機器を含む任意の産業システムによって代表することができる。熱消費産業プロセス101は、焼結物又はペレットを生産するための鉄鉱石の焼結又はペレット化(図3A、3C、3Fの符号317、実施例2参照)、コークスを形成するための石炭のコークス化(図3Bの符号308、実施例1参照)、炭素コークス(実施例3、図3Dの符号300参照)又は水素(実施例6、図3Gの符号504参照)を使用して鉄を形成するための酸化鉄の還元、鋼を生産するための溶融鉄の酸素化(図3Fの符号328参照)、鋼の後処理(実施例4、図3Eの符号334参照)、水素/合成ガスの生産のための高温触媒反応を実施するための反応器(図3Fの符号406参照)、又はこれらの任意の組み合わせ、のうちのいずれか1つで代表されてよい。
【0064】
実施態様では、設備1000、3000、4000は、500~1700℃の範囲内の温度で熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000、3000、4000は、本質的に約800~900℃以上の範囲内の温度で開始する熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000、3000、4000は、本質的に1000℃に等しい、又は1000℃を超える温度で熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備1000、3000、4000は、本質的に約1100~1200℃以上の範囲内の温度で開始する熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に1200℃に等しい、又は1200℃を超える温度で、熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に約1300~1700℃以上の範囲内の温度で、熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に1500℃に等しい、又は1500℃を超える温度で、熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。実施態様では、設備は、本質的に1700℃に等しい、又は1700℃を超える温度で、熱消費産業プロセスを実施するように形成されている。いくつかの実施態様では、設備は、1700℃を超える温度、例えば2000℃以上、例えば約1700℃~約2500℃の範囲内の温度で、産業プロセスを実施するように形成することができる。設備は、1700℃、1800℃、約1900℃、約2000℃、約2100℃、約2200℃、約2300℃、約2400℃、約2500℃で、そして上述の温度点の間に含まれる任意の温度値で、産業プロセスを実施するように形成することができる。なお指摘しておくが、設備1000、3000、4000は、500℃未満の温度で産業プロセスの少なくとも一部を実施することから排除されない。
【0065】
特に明記しない限り、さらなる説明では、図1に示された符号を利用する。設備1000内部で前記熱消費プロセスを実施するように形成され、熱消費プロセスユニット/ユーティリティと呼ばれる熱消費プロセス及び関連の動作ユニットは、符号101によって集合的に示されている。セメント生産設備1000は、同じ又は異なる熱消費プロセスを実施するように形成されたいくつかの動作ユニット101を含む。実施態様では、各動作ユニット101は、熱消費プロセスを実施するように形成された少なくとも1つの熱消費装置を含み、又はこれから成っている。実施態様では、ユニット101は、製鋼のための炉(図3A、3D、3Fの符号300、及び図3Gの符号504も参照)である。鋼生産はいくつかの高温処理工程を含む。典型的には燃料ガス又は石炭を焼却することにより高温に達する。このような動作工程は、ガスが高炉、コークスプラント、又は焼結プラントに入る前にガスを予熱すること、鉄鉱石をガス、例えば水素で還元すること(この反応は吸熱性であり、熱が進行することを必要とする)と、半完成済み又は完成済みの鋼製品を鋳造及び/又は熱間圧延によって後処理することとを含む。後処理において、鋼は、熱発生のために天然ガス又は油を燃焼することにより、その再結晶化温度を上回る温度に加熱される。半完成済み又は完成済みの鋼製品は例えば鋼のスラブ、板(plates)、又は板(sheets)を含んでよい。
【0066】
鉄鉱石の鉄への還元は典型的には、炉、例えば高炉内で行われるものの、これはガス-固体プロセスユニット、例えばキルン又は(流動床)反応器内で達成することもできる。後者は典型的には、いわゆる直接還元鉄(DRI)又はスポンジ鉄の生産に使用される。上述のアプライアンス内では、酸素の除去を通して酸化鉄鉱を鉄へ還元する。酸化鉄鉱からの酸素除去は、一酸化炭素及び水素ガスを導入することを通して、又は一酸化炭素及び水素の源、例えば石炭又はコークスを添加することによって、一酸化炭素/水素が豊富な雰囲気中で酸化鉄鉱を加熱することにより達成され得る。
【0067】
いくつかの実施態様では、高炉内で、コークスの補助によって、酸化鉄鉱を鉄へ還元する。コークス中の炭素を酸化させることにより、CO及びCOにする。コークスが還元剤として使用される場合には、レドックス反応は発熱性であり、高炉は自己熱モードで動作することができる。この場合、高い反応温度を維持するために、付加的な熱源は必要とされない。現代の炉の場合、天然ガスのような付加的な燃料を炉内へ供給することにより、温度をより高くブーストすることができ、また還元効率を高めることができる。それというのも天然ガスは主としてメタンを含み、メタンは還元剤として作用するからである。効率を高める別の手段は、いわゆるホットブラストを通すことである。ホットブラストは約900℃~約1300℃の範囲内の温度まで加熱された空気である。この空気は、コークス又は石炭を直接に焼却することにより温度をブーストする。
【0068】
高炉ガスは典型的には窒素及び二酸化炭素が豊富な混合物である。この混合物は引火性でない。残余は、発熱量がかなり低い一酸化炭素と、水素とから成る。鋼製造から生じるCO排出量の多くは、鉄及びコークスの高炉における加熱に由来し、炉オフガスの形態で放出される。鋼産業におけるCO排出量の低減に対する関心は高い。これを行う1つの方法は付加的な再生可能な水素をオフガス流中へ導入し、逆水性ガスシフト反応(RWGS)を実施することにより、CO及び水素をCO及び水に変換することである。COは付加的な水素と結合することができ、これにより合成ガス(syngas)と呼ばれるCOとHとの混合物を産出する。合成ガスはメタノールのための原材料として、又は化学産業のための原材料としての価値を有するフィッシャー・トロプシュ炭化水素の原材料として使用することができる。合成ガスは酸化鉄の鉄への還元剤として役立つために、システム内でリサイクルされてよい。
【0069】
RWGSに伴う1つの難題は、反応平衡が1000℃を上回る温度でのみ生成物にとって有利であることである。供給ガス混合物をこのような温度まで加熱するためには、典型的には化石燃料燃焼型炉が必要となる。化石燃料燃焼型炉はCO排出物を生成し、そして合成ガスへの高炉オフガス改質のような用途における利点を部分的に無効にする。本発明の回転装置は、付加的なCO排出物なしに、約1000~1200℃の反応温度へ供給物をもたらすように適用することができる。反応混合物中へ追加の水素を添加することは、所望の生成物組成への到達を助ける。それというのは水素は平衡CO濃度を押し下げるからである。このことは、1000℃未満の温度でのRWGS反応器の動作を可能にし得るものの、650~700℃を上回る温度をなおも必要とし、そして水素リサイクル量が高いことに基づき反応器サイズの増大を招く。反応は触媒を必要とし、中度の吸熱性であるので、生成物温度は供給温度よりも低く、所期反応平衡に達するためには、付加的な回転装置/触媒サイクル又は生成物リサイクルが必要とされることがある。
【0070】
RWGSの代わりとなるものは、乾式改質である。この場合、メタンは高炉オフガス中のCOと反応することにより、水素と一酸化炭素(CO)とを生産する。同様の高温の、触媒的な、そして吸熱性の反応スキームが、乾式改質にも同様に当てはまるが、しかし原材料としてのメタンは、グリーン水素よりもアクセスが容易である。結果としての合成ガスは、CO/H比がRWGSよりも高い。このことはその用途を限定し得る。
【0071】
CO排出量を軽減する別の方法は、石炭の代わりに水素を還元剤として使用することである。コークス還元とは異なり、水素還元は吸熱反応であり、そして反応温度を維持するために付加的な熱投入を必要とする。このような付加的な熱投入は典型的には、高炉内で焼却された余剰の水素に由来する。水素による鉄鉱石還元に際して回転装置を適用すると、水素を反応温度以上の温度に加熱することによりこの付加的な熱を供給し、そしてガス状反応生成物、主として水と未反応の水素とをリサイクルして、最適な熱回収のために還元動作へ部分的に戻すことになる。水素を還元剤として使用する直接鉄還元(DRI)用途において、回転装置内で加熱された水素ガスをガス-固体プロセスユニット、例えばキルン又は(循環)流動床タイプの反応器内で使用することができる。ここでは固形鉄鉱石が高温水素ガスと接触させられる。これに加えて又はこの代わりに、回転装置内で加熱された空気又は他のガスを熱転移媒体として使用することにより、例えば流動床システム内で固形鉄鉱石原料を間接(予)加熱することもできる。(実施例7参照)
【0072】
鋼産業における回転装置のさらなる用途は、熱間圧延である。この場合、回転装置は高温空気又は窒素を鋼板の周りでリサイクルすることにより、これらを再結晶化温度を上回る温度にもたらすことになる。高温空気又は窒素のリサイクルは、エネルギー効率を改善することになる。
【0073】
鋼の製造は、高い熱エネルギーの需要及び消費量を有しており、そしてコンベンショナルな解決手段(つまりここで提示された熱統合スキーム1000の範囲外)においては、大気中へのかなりの産業排出物、例えば二酸化炭素を生成する。本開示は、高い熱エネルギー需要のある鋼製造101へ熱エネルギーを投入する方法及び装置を提供する。これにより、前記プロセスにおけるエネルギー効率が顕著に改善され、且つ/又は大気中へ放出される空気汚染物質量が低減され、又はその両方が達成される。レイアウト1000(図1)は、これらの改善された設備及び方法を概略的に示している。
【0074】
実施態様では、方法は、少なくとも1つの回転装置(以後、装置100)を含む又はこれから成る回転加熱器ユニット100によって、加熱された流体媒体、例えば空気又は酸素又は燃料で富化された空気を生成することを含む。明確にするために、回転加熱器ユニットは、回転装置と同じ符号100によって、本開示において示されている。回転加熱器ユニットは好ましくは、プロセス設備1000内へ組み込まれている。実施態様では、加熱された流体媒体は、少なくとも1つの回転装置によって生産されるものの、いくつかの実施態様では、複数の回転装置が並列又は直列に使用されてよい。
【0075】
回転装置100は独立型の装置として、又は直列に(連続して)又は並列に配置されたいくつかの装置として提供することができる。1つ又は2つ以上の装置が、共通の熱消費ユニット101に接続されてよい。接続は直接に、又はいくつかの熱交換器を通して行われてよい。
【0076】
熱消費ユニット101は、鋼の製造に関連するプロセスを実施するように構成された1つ又は2つ以上の炉又は他のユーティリティとして提供される。いくつかの他の形態では、符号100内で加熱された流体、例えばガスの熱エネルギーが、ユニット101内で吸熱反応を実施するために用いられる(図3Fに関する説明参照)。このような事例では、符号100内で加熱された流体は、符号101のプロセス流体を少なくとも部分的に形成する。いくつかの他の形態では、符号100内で加熱された流体はその熱エネルギーを、熱消費ユニット/プロセス101内で使用されるプロセス流体へ転移することにより、反応熱を前記プロセスへ間接的に提供する。間接加熱の場合には、符号100内で加熱された流体は、熱消費ユニット/プロセス101内で使用されるプロセス流体と同じであるか又はこれとは異なっていてよい。しかしながら典型的には、これは異なっている。本発明の目的上、「プロセス流体」、「プロセス流体」、又は「プロセス流体流」という用語は、ガス、液体、蒸気、ペレット状、顆粒状、又は粉末状の材料を含む固体、又はこれらの組み合わせのうちのいずれか1つを示すために使用される。前記間接加熱を伴う形態では、回転装置100内の流体中へ加えられる熱エネルギーは、いわゆる「熱交換器」タイプの形態の使用を通して、熱消費ユニット/プロセス101へ転移される。「熱交換器」タイプの形態は、この文脈では、任意の既存の燃焼型加熱器、反応器、又は炉、又は任意のコンベンショナルな熱交換器装置で代表される。これらすべての装置は熱消費ユニット101とみなされる。さらなる形態では、回転装置100内で加熱された流体、例えばガスは、その熱エネルギーを熱消費ユニット101へ必ずしも転移するとはかぎらず、熱は、同じ又は後続の回転装置ユニット100内部の吸熱反応を実行するために使用されてよい(図示せず)。
【0077】
鋼製造のための熱消費ユニット/ユーティリティ101は、典型的には1つ又は2つ以上の炉である。いくつかの形態では、いくつかの装置をいくつかの熱消費ユニットに接続することができる。異なる形態、例えばn+x個の回転装置をn個のユニット(例えば炉)に接続してもよい。nはゼロ以上であり、そしてxは1以上である。こうして、いくつかの形態では、設備1000、及び具体的には回転加熱器ユニット100は、共通の熱消費ユニット、例えば炉に接続された1、2、3又は4つの並列の回転装置100を含んでよい。4を超える回転装置の数も排除されない。いくつかの回転装置を共通の熱消費ユニットに並列接続する場合、前記装置100の1つ又は2つ以上は、異なるタイプの駆動エンジンを有していてよく、例えば電動モータ駆動型反応器は、蒸気タービン、ガスタービン、及び/又はガスエンジンによって駆動される反応器と組み合わせることができる。
【0078】
実施態様において、投入エネルギー量Eは、熱消費プロセス設備1000内へ(回転)加熱器ユニットとして組み込まれた少なくとも1つの回転装置100内へ導かれる。投入エネルギーEは好ましくは電気エネルギーを含む。いくつかの実施態様では、熱消費プロセス設備内に組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギーとして導かれる電気エネルギー量は、約5~約100パーセントの範囲内、好ましくは約50~約100パーセントの範囲内で提供される。このように、熱消費プロセス設備内に組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ投入エネルギーとして導かれる電気エネルギー量は、(総投入エネルギーから)5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、及び100パーセントのうちのいずれか1つ、又は上記点の間に含まれる任意の中間値を占めてよい。
【0079】
電気エネルギーは外部源又は内部源から供給することができる。実際には、装置内へ供給される電気投入エネルギーE1は、電力の観点で定義することができる。後者は単位時間あたりのエネルギー転移速度(ワットで測定される)として定義される。
【0080】
図1の設備レイアウトで実施される本発明のいくつかの実施態様の詳細を、下記ラインに沿って説明する。図1に関して、以下の符号は部材のために使用される。流れ:1.供給流体、2.予熱された供給物又は供給混合物、3.回転装置100によって加熱された供給物、4.例えば(発熱)化学反応を通して温度を上昇/促進するように形成された付加的な(ブースタ)加熱器ユニット内でさらに加熱された供給流体、5.熱消費プロセス101から出る高温流体媒体、6.浄化部へ導かれた流体媒体、7.生成物流及び/又は廃ガス、8.反応性化合物又は化合物の混合物、例えば反応性化学物質、又は付加的な加熱器ユニット103内で流体/ガスの温度を高めるために使用される支援燃料、9.熱消費プロセス101中に高温流体媒体によって加熱されるべきプロセス流(固体、液体、ガス、蒸気、又はこれらの混合物)(間接加熱器用途)、10.さらなる処理及び/又は貯蔵のために送られる、加熱されたプロセス流(固体、液体、ガス、蒸気、又はこれらの混合物)(間接加熱器用途)、11.浄化部から出たリサイクル流、12.熱回収部への供給流、13.熱回収部からの高温流体流。区分(ユニット):100.回転加熱器ユニット(回転装置)、101.熱消費動作(プロセス)ユニット(炉)、102.予熱器ユニット、103.付加的な加熱装置(ブースタ加熱器ユニット)、104.熱回収ユニット、105.浄化ユニット。
【0081】
回転装置100は、供給流1、以後、供給物1を受容するように形成されている。全体的に見ると、供給物1は、純粋な成分又は成分混合物として提供された任意の適宜の流体、例えば液体又はガス又はこれらの組み合わせを含み、又はこれから成ることができる。供給物は原料ガス、プロセスガス、メイクアップガス(いわゆる置換/補充ガス(replacement / supplement gas)、及びこれに類するものであり得る。ガス状供給物は不活性ガス(空気、窒素ガス、及びこれに類するもの)、又は反応性ガス(例えば酸素)、引火性ガス、例えば炭化水素、又は水素及びアンモニアのような任意の他のガスを含むことができる。供給物はプロセスに応じて選択される。すなわち、熱消費プロセス101の性質、(及び実際には熱消費プロセス101が配属する具体的な産業/産業の分野)が、供給物質の選択に対する特定の要件及び/又は制限を暗示する。したがって、鋼の製造に際して、供給物1は典型的には空気、又は空気と付加的な酸素との組み合わせ、又は燃焼燃料である。コークスを形成するための石炭のコークス化に際しては、供給物1は典型的には無酸素ガス、例えば予熱された二酸化炭素、又は不活性ガスである。これに加えて又はこの代わりに、供給物1は、(水)蒸気、窒素(N)、水素(H)、二酸化炭素(CO)、一酸化炭素(CO)、及びメタン(CH)のうちのいずれか1種を含んでよい。
【0082】
供給物1が本質的にガス状の形態で装置100内へ入ることが好ましい。供給物の予熱、又は液状及び本質的に液状の供給物のガス状形態への変換は、任意の予熱器ユニット102内で実施することができる。予熱器ユニットは、(予)加熱器装置又は装置群として形成されている。予熱器ユニット102内では、最初はガス状形態(例えばプロセスガス)で提供された供給物流をさらに加熱(例えば過熱)することができる。予熱器ユニット102内では、供給物1が既にガス形態になっていなければこれを蒸発させ、そして任意には過熱することができる。
【0083】
予熱器ユニット102は、流体物質に熱を提供するように形成された任意のコンベンショナルな装置/システムであってよい。いくつかの形態では、予熱器ユニット102は燃焼型加熱器(すなわち、加熱器内部に配置されたコイルを通って流れる流体供給物、例えばプロセス流体の温度を上昇させるために高温燃焼ガス(煙道ガス)を使用する直接燃焼型熱交換器)であってよい。これに加えて又はこの代わりに、予熱器ユニット102は、(例えば熱回収部から到着した高温流13から熱エネルギーを抽出することによって)熱消費設備内の他のユニットによって利用可能となるエネルギーを活用するように形成することもできる。予熱器ユニット102はこのように、他の蒸気流、並びに電気、及び/又は排熱流(図示せず)を利用するように形成することができる。
【0084】
鋼生産である本実施態様において、熱消費プロセス及び関連の機器に応じて、回転加熱器ユニット(装置100)によって、空気などの加熱された流体媒体を生産するために使用される供給物流1は、未使用の供給物(新鮮な供給物)及び/又はリサイクル流を含んでよい。したがって、供給物1は、新鮮な供給物、リサイクル(流体)流、及びこれらの混合物のうちのいずれか1種から成ることができる。予熱された供給物を表す流れ2は、供給物1に加えて、すべてのリサイクル流、例えば浄化区分105及び/又は熱回収区分104から到着したものを含んでよい。
【0085】
必要とされるレベルまで、又は回転装置によって達成される最大レベルまで高められる。回転装置100によって達成された温度上昇が熱消費プロセスにとって十分ではない場合、且つ/又は例えば流体の温度を、流体がその熱を熱消費プロセスへ転移したあとで再び上昇させる必要がある場合には、回転加熱器ユニット100(100A)の下流側に、「ブースタ」加熱器とさらに呼ばれる付加的な加熱器ユニット(100B、103)によって、温度をさらに高めることができる。図2Bに関する説明参照。それぞれの付加的な加熱器ユニットは、下記に基づいて実現された付加的な加熱装置を含み、又はこれから成る。
【0086】
本願明細書に記載の鋼生産のような、熱消費プロセスにおいて、主な熱消費源は、作業流体及び/又は関連する機器の加熱、及び吸熱反応(進行するのに外部エネルギーを必要とする反応)である。いくつかの用途では、熱消費プロセス101から熱を回収することができる。熱回収区分が図1において符号104で示されている。回収された熱は、供給物流1及び/又はリサイクル流(分離したリサイクル流が図1に符号11で示されている)を加熱するためにさらに使用することができる。
【0087】
熱回収は、プロセスユニット101から出たガスを収集し、これらのガスを予熱器ユニット102及び/又は回転装置100へリサイクルすることを通して準備されてよい。熱回収装置104は、少なくとも1つの熱交換装置(図示せず)で代表することができる。任意の適宜の技術に基づく熱交換器を利用することができる。熱回収は、熱がどこか他の場所で消費される場合、又は安全性又はその他の理由により熱を回収することができない場合、供給ガスを加熱するのに際して任意であってよい。
【0088】
設備レイアウト1000では、熱回収ユニット104は、予熱器102の前及び/又は後に配置することができる。後者の形態では、熱回収ユニット104は、鋼生産プロセス101から流れる高温流体媒体(流れ5)から熱を回収するように配置されている。この熱は、供給物流1及びリサイクル流11を加熱するようにさらに利用されてよい。他方において、熱回収ユニット104が予熱器102の前に配置されている場合には、供給物1はまずユニット104へ(流れ12として)導かれ、そして次いで予熱部102へ流れ13として戻される。このような場合には、ユニット104は第1予熱器として作用する。
【0089】
いくつかの事例において、ガスは熱回収部へ導かれる前に、例えばダスト及び微粒子からの浄化を必要とする。浄化は、例えば熱回収区分104の前に配置された一連のフィルタによって行うことができる(図示せず)。これに加えて又はこの代わりに、プロセスユニット101から出たガスは、浄化ユニット105(熱回収部104を迂回する)へ導かれ、そして浄化後に熱回収部へ戻されてもよい(図示せず)。
【0090】
プロセスガスは、価値生成物に加えて、望まれない不純物及び副生成物をも含有し得る。不純物及び副生成物は、加熱器装置100、103に蓄積し且つ/又はプロセスユニット101にとって有害であり、腐食を引き起こし、触媒床に毒をもたらすことがある。熱消費プロセス101から放出された流れの浄化及び分離は、浄化ユニット105内で実施される。ユニット105は、ダスト及び固形粒子を機械的に除去するように構成されたいくつかのアプライアンス、例えばフィルタ、サイクロンなどを含むことができる。任意のコンベンショナルな浄化/分離法及び装置が利用されてよい。模範的な浄化/分離法の一例としては、極低温分離法、膜処理、圧力スイング吸着(PSA)、蒸留、吸収、及びこれらの方法の任意の組み合わせが挙げられる。ユニット105は、例えば圧縮によってガス圧を高めるように形成された装置を含んでもよい。典型的には、浄化ユニット105は、プロセスユニット101よりも低い温度で動作する。したがって浄化ユニットに入る前には、製品ガス流が(例えば熱回収部104内で)冷却される。符号101における反応器床の劣化範囲を最小限に抑えるために、リサイクルガス11の組成を制御することも重要である。
【0091】
浄化ユニット105は、排ガス、例えば二酸化炭素をさらなる炭素捕捉のために浄化するようにさらに構成することができる。セメント生成設備から流れ7(図1)として放出された排ガスは、炭素捕捉部へさらに導くことができる(図示せず)。好適な排ガス浄化法の一例としては、例えばPSA、蒸留、吸収などが挙げられる。
【0092】
熱消費プロセス101を実施するために必要とされる、加熱された流体媒体が、少なくとも1つの回転装置100によって生成される。
【0093】
一実施態様では、加熱された流体媒体は回転装置100内で生成される。ここでは前記装置を通して伝搬された流体媒体中へ、熱エネルギー量が直接に加えられる。このような場合には、回転装置内で生成された、加熱された流体媒体は例えばプロセスガス、例えば炭化水素含有ガス(例えばメタン)(図1、流れ1~4、具体的には流れ2参照))であってよく、これに対して、熱消費ユニット101から出る高温流体媒体5は、生成物含有流であってよい。直接加熱の場合、流れ1~5は作業流体又はプロセス流体と関連する。プロセス流体の直接加熱は図3Fに関連してより詳しく記載されている。
【0094】
回転装置内で生成された、加熱された流体媒体は、熱消費プロセス100へ熱エネルギーを転移するためにキャリアとしてさらに使用することができる。キャリアは、鋼の製造に関連する熱消費プロセス(101)を実施又は媒介するように形成されている。例えば、不活性ガス、例えば空気、窒素、又は蒸気(HO)を回転装置100内で加熱し、そしてこの不活性ガスをさらに使用して、回転装置によって生成された熱を、鋼の製造に関連するプロセス101を実施するように構成された炉へ搬送することができる。これに関連して、加熱された媒体(例えばプロセス101によって活用された流体流又は固体流)の生成は、回転装置内で生成された、加熱された流体媒体と、プロセス101によって活用されひいては回転装置を迂回する適宜の媒体との間の熱転移プロセスを通して、回転装置外部で実施することができる。図1はこのように、回転装置100を迂回し、この文脈において供給物/プロセス流(例えば鉄鉱石焼結物、コークス、及び/又は石灰石)を意味する流れ9(プロセス流)を示し、これに対して回転加熱器100を介してプロセスユニット101に到着する流れ1~4は、「低温」プロセス流9を加熱するためにプロセスユニット101へ導かれた流体媒体(例えば空気、窒素、蒸気又はその他の不活性加熱媒体)を意味する。加熱されるべきプロセス流が高温又は真空下にあるときに、間接加熱用途において加熱媒体として不活性高温ガスが使用されることが好ましい。流れ10はそれぞれ「高温」プロセス流/生成物流を表す。ユニット101が、(図3Dに関連して説明されているような)鋼を生産するための高炉である場合には、流れ10は溶融生成物含有流(符号324に関連して図3Dに示された溶融金属鉄)を表し、これに対して流れ5は、ユニット/プロセス101から出る不活性流体媒体流(1~4と同じ)を表す。間接加熱において、流れ9及び10は、作業流体又はプロセス流体に関連するのに対して、流れ1~5は熱転移媒体を表す。したがって、間接加熱において、ユニット101は「熱交換器」タイプの装置として作用する。この装置は、当該流体間の直接的な接触なしに、装置を通って流れる2種の流体間で熱エネルギーを転移するのを可能にする。
【0095】
実施態様に基づく、鋼生産設備内へ供給されるべき加熱された流体媒体を生成するように形成された回転装置100は、ロータ軸上に取り付けられたロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって少なくとも1つの列を成すように配置された複数のロータブレードを含むロータと、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備えたケーシングと、を含み、ロータがケーシング内部に閉じ込められている。装置100では、当該流体媒体流が前記回転装置のケーシング内部の、入口と出口との間で伝搬するときに、前記少なくとも1つのロータブレード列を通過したときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成される。
【0096】
回転装置100の実施形態は、米国特許第7,232,937号明細書(Bushuev)、米国特許第9,494,038号明細書(Bushuev)、及び米国特許第9,234,140号明細書(Seppala他)に基づく回転反応器装置、並びに米国特許第10,744,480号明細書(Xu及びRosic)に基づくラジアル反応器装置の開示内容に概ね従う。前記明細書の内容全体はここに参照することにより援用される。実施態様に基づく方法を採用するように形成され得る、任意の他の実施形態を利用することもできる。
【0097】
上で参照した特許文献において、回転ターボ機械タイプの装置は、炭化水素を処理するための、具体的にはスチームクラッキングするための反応器として設計されている。これらの用途に対する大まかな要件は、ガスの急速加熱、高い温度、短い滞留時間、及び栓流(軸方向の混合を暗示しない流動モデル)である。これらの要件は、ターボ機械タイプの反応器が、比較的小さな容積内に収容されるいくつかの加熱段を有するデザインをもたらす。
【0098】
本開示は、回転装置(限定はしないが上で参照したものを含む)を電化し、そして熱消費プロセス101、例えば鋼の生産に関連するプロセスにおいてさらに供給される、加熱された流体媒体を生成するための加熱器として使用することができる。回転装置加熱器ユニットを熱消費プロセス中へ組み込むことにより、温室効果ガス及び粒子の排出量を著しく低減することができる。一例としては、回転装置は多様な適用において、燃料燃焼型加熱器に取って代わることができる。温度範囲は、(上で参照した反応器装置で概ね達成可能な)約1000℃から少なくとも約1700℃まで、そしてさらに2500℃まで広げることができる。これらの高い温度を達成し得る回転装置の構成は、空気力学的ハードルが存在しないことにより可能である。
【0099】
実施態様に基づいて鋼生産設備内へ組み込まれ、且つ実施態様に基づく方法のために、加熱された流体媒体を生成するように形成された回転装置100は、こうして、少なくとも1つのロータユニットがロータ軸上に取り付けられた状態で、水平方向(長手方向)軸線に沿って位置決めされたロータ軸を含む。ロータユニットは、ロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって配置された複数のロータ(作業)ブレードを含む。ロータブレードは一緒に、ロータブレード・カスケードを形成する。回転装置100はこのように、ロータ軸上に取り付けられたロータハブ又はロータディスクの周囲にわたって少なくとも1つの列を成すように配置された複数のロータ(作業)ブレードを含み、これらのロータブレードは、本質的に環状のロータブレード集成体又はロータブレード・カスケードを形成している。
【0100】
実施態様では、装置は、少なくとも1つのロータブレード列の少なくとも上流側に位置する集成体を成すように配置された複数の固定ベーンをさらに含む。この形態では、当該流体媒体流が前記固定ベーンと前記少なくとも1つのロータブレード列とをそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、回転装置は操作される。
【0101】
いくつかの実施態様では、複数の固定ベーンは固定ベーン・カスケード(ステータ)を成すように配置することができる。固定ベーン・カスケードは、少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する、本質的に環状の集成体として提供される。少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する集成体を成すように配置された固定ベーンは、固定ガイドベーン、例えば(入口)ガイドベーン(IGV)として提供されてよく、そして流体流をロータ内へ所定の方向に導くように、例えばロータ固有の作業投入能力を制御し、そしていくつかの事例ではこれを最大化するように、固定ベーンは中心軸の周りにプロフィール、寸法、及び配置関係に関して形成されていてよい。
【0102】
回転装置は、2つ又は3つ以上の本質的に環状のロータブレード列(ロータブレード・カスケード)がロータ軸に/ロータ軸に沿って連続的に配置された状態で形成されている。このような場合には、固定ガイドベーンは、第1ロータブレード列の上流側に、各ロータブレード列の上流側に順番に、又はロータブレード列の連続的な配置における任意の選択されたロータブレード列の上流側に設けられていてよい。
【0103】
実施態様では、回転装置100は、少なくとも1つのロータブレード列(ロータブレード・カスケード)の下流側に配置されたディフューザ領域をさらに含む。この形態では、当該流体媒体流が前記固定ガイドベーンと、前記少なくとも1つのロータブレード列と、前記ディフューザ領域とを連続的にそれぞれ通過するときに発生する一連のエネルギー転換によって、前記入口と前記出口との間で前記ケーシング内部に形成された流路に沿って導かれる流体媒体流に熱エネルギー量が付与され、これにより加熱された流体媒体の流れが生成されるように、回転装置は操作される。ディフューザ領域は、固定ディフューザベーンを有する又は有しない状態で形成することができる。いくつかの形態では、ベーン付き又はベーン無しのディフューザが、少なくとも1つのロータブレード・カスケードの下流側の前記ディフューザ領域内に配置されている。いくつかの形態では、ディフューザは、複数の固定(ステータ)ベーンとして実現することができる。これらの固定ベーンは、ロータの下流側の本質的に環状の集成体として提供されるディフューザベーン・カスケードを成すように配置される。
【0104】
ロータ、固定ガイドベーン、及びディフューザ領域は、ケーシング内に形成された内部通路(ダクト)内部に閉じ込められている。
【0105】
例えば米国特許第10,744,480号明細書(Xu及びRosic)に記載されたようないくつかの形態では、ディフューザ(装置)を設けることが省かれ、そしてディフューザ領域は、ロータの下流側に配置されたダクトの本質的にベーン無しの部分(いわゆるベーンレス・スペース)によって形成されてよく、そしてロータから到着する高速流体流を拡散するように、そのジオメトリ及び/又は寸法パラメータに関して形成されてよい。
【0106】
ダクトのベーン無し部分を設けることは、上記回転装置100のすべての形態に共通している。形態に応じて、ベーン無し部分(ベーンレス・スペース)はロータブレードの下流側(Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書参照)、又はディフューザベーン・カスケードの下流側(Bushuevの米国特許第9,494,038号明細書及びSeppala他の米国特許第9,234,140号明細書参照)に配置されている。例えばSeppala他によって記載されたいくつかの形態では、ケーシング内部の内部通路内の回転ブレード列及び固定ブレード列は、ベーン無し部分がロータブレードの下流側に配置された固定ディフューザベーンからの出口と、後続のロータブレード・カスケードユニットのロータブレードの上流側に配置された固定ガイドブレードへの入口との間に形成されるように配置されている。
【0107】
「上流側」及び「下流側」という用語はここでは、装置全体を通した流体流の方向(入口から出口へ)における、所定の部分又は構成部分、ここではロータに対する構造的な部分又は構成部分の空間的且つ/又は機能的な配置を意味する。
【0108】
全体的に見ると、作業ブレード・カスケードを備えたロータは、作業ブレード列の一方又は両方の側に本質的に環状の集成体(カスケードと呼ばれる)を成すように配置された固定(ステータ)ベーン列の間に位置決めすることができる。ロータ軸に/ロータ軸に沿って連続的(順番に)配置された2つ又は3つ以上のロータブレード/ロータブレード・カスケード列を含む形態が、これらの間に固定ブレードを有する又は有しない状態で考えられる。ロータブレード列の間に固定ベーンが存在しない場合には、ダクトを通って伝搬する流体媒体の速度はそれぞれ後続の列において増大する。このような場合には、複数の定置ベーンが第1ロータブレード・カスケードの上流側に前記順番で(固定ガイドベーンとして)、そして最後のロータブレード・カスケードの下流側に(固定ディフューザベーンとして)、集成体を成すように配置されてよい。
【0109】
に閉じ込められた、ロータブレード列(ロータブレード・カスケード)と、前記ロータブレードの下流側に位置するダクトの一部とは、完全なエネルギー転換サイクルを媒介するように形成された最小限のプロセス段(以後、段)とみなすことができる。したがって、少なくとも1つの回転ブレード列によって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流がロータブレードから出てダクト内を後続のロータブレード列へ向かって伝搬するか、又は本質的にトロイド形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道に続く同じロータブレード列に入ったときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。(ロータの周囲を閉じ込める)ダクトは好ましくは、流体流がダクト内で伝搬すると、流体が減速し、流体媒体の内部エネルギー中へ運動エネルギーを散逸させ、そして熱エネルギー量が流体媒体流へ加えられるように成形されている。
【0110】
少なくとも1つのロータブレード列の上流側に位置する固定ガイドブレード列は、エネルギー変換サイクル中の回転ブレード列(カスケード)の進入時の所要の流動条件を準備する。
【0111】
いくつかの形態では、プロセス段は、(ロータブレードの上流側の)固定ガイドベーンと、ロータブレード列と、前記ロータブレードの下流側に配置されたディフューザ領域とから成る集成体によって確立される。ディフューザ領域は、任意にはディフューザベーンが設けられたタクトの本質的にはベーン無しの部分として提供される。固定ガイドベーン、少なくとも1つのロータブレード列、及びディフューザ領域をそれぞれ通して制御された状態で、流体媒体流が連続的に伝搬することにより可能になるエネルギー変換サイクル中、ロータ軸の機械エネルギーが運動エネルギーへ変換され、そしてさらに流体の内部エネルギーへ変換され、続いて流体温度が高められる。回転ブレード列によって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流がロータブレードを出てディフューザ領域を通ってダクト内を通過して、流体が減速し、流体媒体の内部エネルギー中へ運動エネルギーを散逸させ、そして熱エネルギー量が流体媒体流へ加えられたときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。ロータブレード列内で、流れは加速し、そして軸及び回転ブレードの機械エネルギーは流体流へ転移される。各ロータブレード列の少なくとも一部では、流れは超音速流状態へ達し得る。ディフューザ領域内では、ロータから到着した高速流体流は、顕著なエントロピー増大を伴って拡散される。これにより流れは運動エネルギーを流体物質の内部エネルギー内へ散逸し、ひいては熱エネルギーを流体中へ提供する。ディフューザの上流側の流れが超音速である場合、流体流の運動エネルギーは、多重ショック及び粘性混合及び散逸のシステムを通して流体の内部エネルギーへ変換される。流体の内部エネルギーが増大する結果、流体温度が上昇する。エネルギー変換機能は、例えばロータブレードの下流側に配置されたダクトのベーン無しの部分によって(Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書参照)、且つ/又は拡散ベーン集成体によって(Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書参照)果たすことができる。
【0112】
回転装置100は、多段又は単一段解決手段として形成することができる。多段形態は、共通のディフューザ領域(ベーン無し又はベーン付き)と交互に配置されたいくつかのロータユニット(例えばロータ軸上/ロータ軸に沿って連続的に配置された1~5つのロータブレード列)を含むと考えることができる。
【0113】
Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において概要を示された模範的形態において、回転装置100は実質的にリングトーラスの形状で実現することができる。ここでは子午面におけるダクトの断面はリング状プロフィールを形成する。装置は、固定ガイドベーン(ノズルベーン)と固定拡散ベーンとの間に配置されたロータユニットを含む。段は、固定ノズルベーン、ロータブレード、及び拡散ベーンの列を有する状態で形成されている。これらを通って流体流は、本質的に螺旋状の軌道に基づいて確立された流路にしたがって、連続的に伝搬する。この形態において、流体流は、装置内部の入口と出口との間を伝搬しながら、数回にわたって回転ロータブレード・カスケードを通って循環する。同様のリング形状の形態がBushuevの米国特許第9,494,038号明細書に記載されている。
【0114】
Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において概要を示された別の模範的形態では、回転装置100は、本質的に管状の軸方向タイプのターボ機械として形成することができる。このような形態では、装置は延長された(細長い)ロータハブを含む。このロータハブに沿って、複数のロータブレードがいくつかの連続的な列を成すように配置されている。ロータはケーシング内部に閉じ込められている。ケーシングの内面は固定(ステータ)ベーンとディフューザベーンとを備えている。固定ベーン及びディフューザベーンは、ステータ、ロータ・カスケード、及びディフューザ・カスケードのブレード/ベーンが、ロータハブに沿って長手方向に(ロータシャフトの長さに沿って入口から出口まで)交互に位置している。長手方向においてロータに沿った特定の位置におけるロータ・カスケードのブレードは、それぞれ固定ガイド(ノズル)ベーン及び拡散ベーンの隣接する対と一緒に段を形成する。
【0115】
記載された形態において、後続の段は、段の間にブレード/ベーンのないスペースを有する。
【0116】
Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書に概要を示されたさらに別の模範的形態では、回転装置100は、ラジアル・ターボ機械として形成することができる。ラジアル・ターボ機械は概ね遠心圧縮機又は遠心ポンプのための設計に従う。「遠心」という用語は、装置内部の流体流が半径方向であることを暗示し、したがって、装置は本開示では「ラジアルフロー装置」と呼ばれることがある。装置は細長い軸上に取り付けられたいくつかのロータユニットを含む。各ロータユニットには固定ガイドベーンが先行する。エネルギー変換を可能にする方式で成形されたダクトのベーン無し部分(例えばU字ベンド又はS字ベンド)が、ロータユニットの後に配置されている。加えて形態は、ロータの下流側に配置された別個のディフューザ装置(ベーン付き又はベーン無し)を含んでもよい。
【0117】
上記すべての形態において、回転装置100は、本明細書中に開示された方法において同様に機能する。動作中、熱消費プロセス設備内へ組み込まれた少なくとも1つの回転装置内へ導かれる投入エネルギー量は、ロータの機械エネルギーへ変換される。回転装置内の状態は、流量状態を作り出すように調節される。この流量状態にあるときには、ロータの回転ブレードによって流体媒体流に加えられた運動エネルギー量は、前記流体媒体流が少なくとも1つのロータブレード列から出て、ダクト及び/又はディフューザ領域を通過することにより後続のロータブレード列又は同じロータブレード列に入ったときに、流体媒体の温度を所定の値まで上昇させるのに十分である。ロータブレード列には、固定ガイドベーンが先行してよい。したがって調節し得る状態は、少なくとも回転装置のケーシング内部の、入口と出口との間で伝搬する流体媒体流を調節することを含む。流れの調節は、このような装置の動作関連パラメータ、例えば温度、質量流量、圧力などを調節することを含んでよい。これに加えて又はこの代わりに、流れの状態は、ケーシング内部に形成されたダクトの形状を変更することにより調節することができる。
【0118】
いくつかの模範的な形態では、回転装置は、Bushuevの米国特許第9,494,038号明細書及びSeppala他の米国特許第9,234,140号明細書のいずれか一方において論じられた、本質的にトロイダル形状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、Seppala他の米国特許第9,234,140号明細書において論じられた、本質的に管状のケーシング内部に形成された本質的に螺旋状の軌道、Xu及びRosicの米国特許第10,744,480号明細書において論じられた本質的に半径方向の軌道、及びBushuevの米国特許第7,232,937号明細書において論じられているような、左右方向のボルテックスリングとして巻き上げられた2つのスパイラルの形態を成す流体媒体流によって確立された流路のうちのいずれか1つに基づいて確立された流路に沿って入口と出口との間で流体流を実現するように形成することができる。回転装置の空気力学的設計は様々であり得る。
【0119】
回転装置は駆動エンジンを利用する。好ましい実施態様では、装置は電気エネルギーを投入エネルギーとして利用し、したがって装置は電動モータ駆動型である。本開示の目的上、任意の適宜のタイプの電動モータ(すなわち、電源から機械的負荷へエネルギーを転移し得る装置)を利用することができる。モータ駆動軸とロータ軸との間に配置された好適なカップリング、並びに種々のアプライアンス、例えば出力コンバータ、コントローラ、及びこれに類するものは、ここでは説明しない。加えて、装置は例えばガスタービン又は蒸気タービン、又は任意の他の適宜の駆動装置によって直接に駆動することができる。いくつかの回転装置100を、例えば炉のような、共通の熱消費ユニット101に並列接続することを伴うレイアウトにおいて、前記装置の1つ又は2つ以上は、異なるタイプの駆動エンジンを利用してよく、例えば電動モータ駆動型装置を、蒸気タービン、ガスタービン、及び/又はガスエンジンによって駆動される装置と組み合わせることができる。
【0120】
電力(単位時間当たりのエネルギー転移速度と定義される)を、装置の回転軸を推進するために使用される電動モータに電流を供給することを通して、回転装置内へ供給することができる。回転装置内への電力の供給は(回転加熱器ユニット/装置100及び/又は熱消費プロセス設備1000に対して)外部源から実現することができる。これに加えて又はこの代わりに、電気エネルギーを設備1000の内部で生産することもできる。
【0121】
外部源は、持続可能なエネルギー生産のために提供された種々の支援設備を含む。こうして、電力は少なくとも1つの再生可能エネルギー源を活用する発電システム、又は異なる再生可能エネルギー源を活用する発電システムの組み合わせから供給することができる。再生可能エネルギーの外部源は太陽光発電、風力発電、及び/又は水力発電として提供することができる。こうして、電力は以下のユニット、すなわち、太陽光発電システム、風力発電システム、及び水力発電システムのうちの少なくとも1つからプロセス中へ受容されてよい。いくつかの模範的な例では、外部電力源として原子力発電所が提供されてよい。原子力発電所は一般にエミッションフリーとみなされる。「原子力発電所」は、伝統的な原子力、そしてこれに加えて又はこの代わりに、核融合電力を使用するものと解釈されるべきである。
【0122】
電気は、発電機を駆動するための運動エネルギー源としてタービンを利用する発電所から供給することができる。いくつかの事例では、少なくとも1つの装置100を駆動するための電力は、例えば別個の設備として、又はコジェネレーション設備内部、及び/又は複合サイクル発電所内部で提供される少なくとも1つのガスタービン(GT)から供給することができる。電力はこうして、以下のユニット、すなわち複合サイクルガスタービンプラント(CCGT)、及び/又は熱回収と組み合わされた電気生産、及び熱電併給(CHP)を通した利用のために形成されたコジェネレーション設備、のうちの少なくとも1つから供給することができる。いくつかの例では、CHPプラントは、記載のプロセスにおける再生可能エネルギーのシェアを大きくするためのバイオマス燃焼プラントであり得る。これに加えて又はこの代わりに、電力の供給は、任意にはエンジン発電所の一部として提供された、火花点火エンジン、例えばガスエンジン、及び/又は圧縮エンジン、例えばディーゼルエンジンから実現することができる。さらに、典型的には蒸気タービンの使用によって媒介される形で、化石原料、例えば石炭、油、天然ガス、ガソリン、及びこれに類するものから電気エネルギーを生産するように形成された任意のコンベンショナルな発電所を使用して、回転装置100のための投入エネルギーとして電気エネルギーを生成することもできる。また、再生可能エネルギー源として水素を利用して、燃料電池を使用して例えば電気へ再変換することもできる。
【0123】
外部源及び内部源として実現された上述の電力源のいかなる組み合わせも考えられる。低排出量の電力を別の(外部の)源から取り込むことは、熱消費プロセス設備のエネルギー効率を改善する。
【0124】
回転装置の駆動エンジン内への電力を含む投入エネルギーの導入にはさらに、任意には設備1000内の他の場所、又は前記設備の外部で生成された熱エネルギーを利用して、出力タービンから機械軸出力を駆動エンジンへ導くことが付随し得る。軸出力は、1つの回転エレメントから別の回転エレメントへ伝達された機械出力と定義され、軸のトルクと回転速度との合計として計算される。機械出力は、単位時間あたりの作業量又はエネルギー量(ワットで測定)と定義される。
【0125】
実際には、例えば電動モータ及び出力タービンからの軸出力は、これらのうちのいずれか一方が全軸出力又はその一部を提供し得るように分割することができる。
【0126】
図2A~2Dは、設備1000内部の回転加熱器ユニットを形成する回転装置100の、予熱器ユニット102、温度ブースタ区分103、及び熱回収ユニット104の関する模範的レイアウトを示している。以下の符号は部材のために使用される。すなわち100、100A、100B-回転加熱器ユニット(回転装置)、101-熱消費ユニット/プロセス、102-予熱器ユニット、103-付加的な加熱装置(ブースタ加熱器)。
【0127】
図2Aは、回転装置を通して導かれた流体媒体流(供給物流1)中に熱を投入するように形成された回転装置100の基本実施形態を概略的に示している。装置100から出た加熱された流れが、それぞれ符号2で示されている。基本実施形態において、流体の体積が、装置100のケーシング内の入口と出口との間に形成された流路に沿って伝搬している間に、所定の温度まで加熱されるように、回転装置100のロータシステムは空気力学的に形成されている(いわゆる「ワンパス」実施形態)。装置100は1つの段において、約10℃~約120℃の範囲内の、いくつかの形態では約500℃までの温度上昇(デルタT、ΔT)を可能にする。したがって、多段実施形態の場合には流体は「ワンパス」の実施に際して1000℃まで加熱することができる(10段装置の場合には1段あたり100℃の温度上昇)。流体媒体が装置段を通過するのに費やす滞留時間は数秒に満たない規模、例えば約0.01~1.0ミリ秒の規模なので、基本形態において既に、高速の効率的な加熱を達成することができる。温度上昇は必要に応じて最適化することができる。
【0128】
図2Bは、いわゆるブースタ加熱に関与する基本概念を示している。ブースタ加熱は、独立型の加熱装置100の能力を超えて流体媒体、例えばプロセスガスを加熱する任意の方法である。
【0129】
温度ブーストは、熱的、化学的、又はその両方のものとみなすことができる。「熱的ブースト」とも呼ばれる第1形態の場合、付加的な回転加熱器装置(図2B、2C及び2Dに符号100Bとして示されている)が、「一次」回転加熱器装置(図2B、2C及び2Dに符号100Aとして示されている)の下流側に配置されている。装置100A、100Bは、本開示の範囲内では回転加熱器ユニット100として概ね認識される。加熱された流体媒体の生成はこのように、連続して接続された少なくとも2つの回転装置100A、100Bを設けることによって達成し得る。流体媒体流(供給物流1)は、ここでは一次加熱器と呼ばれる、連続内の少なくとも第1の回転装置(100A)内で所定の温度に加熱される。そして第1の回転装置100A内で「予熱された」、当該第2の回転装置100Bを通って伝搬する流体媒体流(流れ3参照)中へ付加的な量の熱エネルギーを投入することにより、前記流体媒体流(流れ2参照)は、該連続内の少なくとも第2の回転装置(100B)内でさらに加熱される。装置100Bはしたがってブースタ加熱器と呼ばれる。装置100A、100Bは同一であってよく、またサイズ又は内部設計に関して変化していてもよい。例えば符号100Bのような2つ又は3つ以上のブースタ装置の列を、一次加熱器100Aの後に配置することができる。ブースタ装置は並列又は直列に、あるいはその回転速度及び空気力学特性の最適化を可能にする任意の組み合わせで配置することができる。
【0130】
第2の付加的又は代替的な形態(さらに「化学的ブースト」とも呼ばれる)では、符号103(図1、2B)で示された付加的な加熱装置は、これを通って伝搬する流体媒体流中へ反応性成分5、例えば可燃燃料を受容し、これにより、鋼生産の熱消費プロセス101へ前記流体媒体流を導く前に発熱反応によって熱を提供するように構成されている。この形態では、付加的な加熱器ユニット/加熱装置103を通して導かれた流体媒体流中に反応性化学物質5を導入(例えば注入)することにより、温度ブーストを達成することができる。なお、図2Bの流れ5は、図1に示された流れ8に相当する。
【0131】
反応性化学物質に基づくブースタ加熱器ユニット103は、熱的ブースタ加熱器ユニット100、100B(図2B)の後、又は一次加熱器100、100A(図1)のすぐ後に配置されてよい。反応性化学物質(反応物質)5は燃焼ガス、例えば水素ガス、炭化水素、アンモニア、酸素、空気、他のガス及び/又は任意の他の適宜の反応性化合物、任意には触媒を含んでよい。ユニット103において、発熱反応によって、流体流は、化学物質媒介加熱に関与しない単一の回転装置によっては典型的には達成し得ないレベルまで加熱することができる(流れ4参照)。例えば、燃料ガス、例えば水素は、酸素含有プロセスガス、例えば空気中に導入することができる。高温において、水素と酸素とは発熱反応に入ることによって、水分子を生産する(水素燃焼)。
【0132】
燃料ガスを空気(又は富化酸素)とともにバーナを通してブースタ加熱器ユニット103内へ注入することにより、ガスの温度を上昇させ得る。加熱されたガスが引火性ガスを含有し、これらのガスを加熱のためだけに消費し得るならば、空気/又は酸素を添加することができる。プロセスガスは、H、NH、CO、燃焼させて熱を生成し得る燃料ガス(メタン、プロパンなど)を含有することができる。実現し得るならば、他の反応性ガスを注入することにより熱を生成することもできる。
【0133】
化学的ブーストのために構成された付加的な加熱器103は、パイプ片として、又は発熱反応が行われるチャンバとして形成されてよく、且つ/又は付加的な熱エネルギーを生産するための発熱反応に対応するために反応性化合物を受容するように配置された少なくとも1つの回転装置100を含むことができる。ブースタ区分103はこのように、少なくとも1つの回転装置100を含むことができる。任意には、反応性化学物質は、熱消費プロセス101に直接に注入することができる(図示せず)。これに加えて又はこの代わりに、反応性化学物質媒介ブーストは、相応に変更された単一の装置100、103内で実施することもできる。
【0134】
ブースタ加熱に関与する配置関係において、第1の回転装置(100A)内で所定の温度まで予熱された流体媒体流の温度を、後続の加熱器ユニット(100B、103)内で最大限度までさらに上昇させることができる。一例としては、一次加熱器(100A)内で約1700℃まで予熱された流体媒体流の温度を、後続の加熱器ユニット(100B、103)内で2500℃以上までさらに上昇させることができる。
【0135】
上述の概念を別々に又は組み合わせて用いることにより、並列又は直列に(連続に)接続された装置100のいずれか1つに、反応性化学物質5を導入することができる。ブースタ加熱器を設けることは任意である。
【0136】
付加的又は代替的な形態において、予熱及び付加的な加熱を同じ装置100内で実施することもできる(図示せず)。このことは、多段形態において達成することができる。多段形態は、共通のディフューザ領域(ベーン無し又はベーン付き)と交互に位置するいくつかのロータユニット(例えばロータ軸上/ロータ軸に沿って1~5つのロータブレード列が連続的に配置されている)を含む。
【0137】
これに加えて又はこの代わりに、例えば回転装置100内で一度加熱された流体の温度を、流体がその熱を熱消費プロセス101へ転移した後で再び上昇させる必要がある場合に、ブースタ加熱を用いることができる。熱消費ユニット101と交互に位置するいくつかの回転加熱器装置100(100A、100B及び/又は任意には103)を含む模範的形態が、図2Eに示されている。このような形態は、温度低下が各ユニット101内で発生し、ユニット101間で再び上昇させることが必要とされる場合に利用することができる。図2Eの配置関係は、一連の連続的な触媒吸熱反応器(ここでは熱消費ユニット101である)にとって有益であり得る。この場合温度は反応器毎に低下し、反応器間で温度を再び上昇させなければならない。図3Fに関する説明も参照されたい。ここでは、区分406は用途に応じて、触媒反応器又は一連の触媒反応器を示している。
【0138】
少なくとも2つの回転装置、例えば100A、100B、及び任意には103(103が回転装置100として実施される場合)を並列又は直列に接続すると、回転装置集成帯を確立することができる(例えば図2B~2D参照)。「一次」加熱器100A又は「ブースタ」加熱器100B、103として実現された回転装置100間の接続は、機械的且つ/又は機能的であり得る。少なくとも2つの個々の、物理的に一体化された又は一体化されていない個々の装置ユニット間が連携されると、機能的(例えば達成可能な熱投入に関して)な接続を確立することができる。後者の場合、いくつかの補助装置を介して、少なくとも2つの回転装置間の連携を確立することができる(図示せず)。いくつかの形態では、集成体は、互いにミラー状に反映するように接続された少なくとも2つの装置を含む。これにより、前記少なくとも2つの装置はこれらの中心(ロータ)軸を介して少なくとも機能的に接続される。このようなミラー状の形態は、直列に(連続に)機械的に接続された少なくとも2つの回転装置100を有するものとさらに定義し得るのに対して、機能的接続は並列(アレイ状)の接続とみなすことができる。いくつかの事例では、前記「ミラー状」の配列はさらに変更を加えることにより、少なくとも2つの入口と、配列の本質的に中心に配置された共通の排出(放出)モジュールとを含むことができる。
【0139】
回転装置(図2Bの100A、100B、103参照)を同じ(ロータ)軸上で集成することができる。各回転装置は任意には、装置の独立した最適化を可能にする別々の駆動装置(モータ)を備えることができる。2つ又は3つ以上の別々の回転装置が使用されると、動作温度及び圧力の観点から、建築費(材料など)を最適化することができる。
【0140】
これに加えて又はこの代わりに、集成体内部の少なくとも1つの回転装置は、流体流の圧力を高めるように設計することができる。したがって、集成体内の少なくとも1つの回転装置には、加熱器機能とブロワ機能との組み合わせを割り当てることができる。
【0141】
これに加えて又はこの代わりに、反応性ガス又は不活性ガスを含有する流れ(例えば図1の流れ8)を回転装置100(図示せず)へ、又は前記装置の下流側に位置する任意の機器へ(例えば熱消費プロセス区分101内へ)供給することができる。このように、熱消費プロセスユニット101がこのような化学物質を受容するように形成されている場合には、反応性ガス(例えば図1の流れ8)は熱消費プロセスユニット101へ直接に注入されてよい。鋼又は鋼前駆体材料の製造に際しては、熱を生成し、且つ/又は反応に関与するために、支援燃料(8)がプロセスユニット101、例えば炉へ直接に注入されてよい。1つの例は、(さらに下でより詳しく論じるように)高炉内のメタン又は水素によって鉄鉱石を還元することである。
【0142】
図2Cは、間接プロセス加熱とともに回転加熱器装置100A、100B(任意)を使用する様子を示している。回転装置100(100A、100B)は、熱消費ユニット101内の流体を間接加熱するために使用することができる。熱は、熱交換器タイプの形態を成す2つの非混合流体間で転移される。したがって、流体、例えばガス又は液体を、回転装置100内で加熱された流体に対して、実現可能な熱交換器装置101内で蒸発(気化)させるか又は過熱することができる。熱消費プロセスに対応するように形成された熱消費ユニット101は、任意の(既存の)燃焼型加熱器、反応器、又は炉、又は任意のコンベンショナルな熱交換器装置によって代表することができる。前記「熱交換器」形態(101)のタイプは、最適な熱転移のために必要に応じて選択することができる。加熱用ガス(流れ1~3参照)は、加熱及び安全性にとって最適であるように選択することができる(例えば蒸気、N、空気)。回転装置100A、100B内で加熱されたガスは大気圧に近くてよく、あるいは圧力を上昇させることにより、熱転移を改善することもできる。装置100内で加熱された熱転移媒体3(100Bから出た流れ3)は、熱消費プロセス101へ導かれる。ここで熱は流れ3から「低温」プロセス流6へ転移され、これにより「高温」プロセス流7が生産される。流れ4は熱転移媒体流出物をそれぞれ表す。
【0143】
図2Cのプロセス流6及び7はこうして図1の流れ9及び10にそれぞれ相当し(間接加熱形態)、これに対して図2Cの熱転移媒体流3および4は流れ3(任意には4)及び5にそれぞれ相当する(間接加熱形態)。
【0144】
回転装置100によってプロセス流体を直接加熱するための別の模範的な形態が、図2Fに提示されている。熱消費ユニット101は、回転装置100から供給された加熱用媒体(熱転移媒体)流によって所定の温度までプロセス流入流を加熱するように構成された熱交換器として作用するように設定されている。図2Fの形態は、鋼生産設備内部の熱交換器101内で、ガス状媒体、例えば水素(ガス)及び/又は水素含有ガス流を加熱することに適用されてよい。熱交換器装置を通って流れる任意の他のプロセス流の温度を上昇させるために、同じレイアウトが適用されてよい(例えば図3G参照)。
【0145】
ガス状媒体の加熱は、単に蒸気を加熱流体として使用することにより回転装置100内で実施し得るものの(図示せず)、ガス状プロセス流体流の圧力が例えば10バールを上回る値に高められるような場合、又は前記ガス状プロセス流体流の温度が極めて高くなり、例えば最大1000℃を上回る値になるような場合には、図2Fに示された間接加熱概念を適用することが有益である。高圧且つ/又は高温で動作するように回転装置を設計することは、その材料要件を増やし、その技術的解決手段を複雑なものにし、このことは装置のコストを高くしてしまう。しかしながら、不活性ガス、例えば空気、窒素、二酸化炭素、又は蒸気を低圧加熱するように装置を設計し、そして(熱交換器形態を成す)プロセスユニット101内で水素又は他のプロセス流を加熱するために、加熱されたガスを使用すると結果として、加熱システムのコスト全体を低くすることができる。
【0146】
図2Fにおいて、回転装置100は、非作業流体(例えば不活性流体)、例えば空気、(水)蒸気、二酸化炭素、又は窒素ガス(N)を低い圧力、例えば10バール未満の圧力で加熱するために使用される。このような非作業流体は「熱転移媒体」とさらに呼ばれる。装置100に入る流入流4(熱転移媒体、低温)の温度は、約200~1100℃であり、そして符号100から出る流出流3(熱転移媒体、高温)の温度はそれぞれ、約800~1200℃である。熱消費ユニット101に入る「低温」プロセス流体6(例えば水素)の温度は約20~500℃であるのに対して、101を出る「高温」プロセス流出流7の温度は約700~1000℃である。熱転移流体からプロセス流体中への熱転移を可能にするために、回転装置100から放出された、加熱された流体の温度は、加熱されたプロセス流体の目標温度を超えなければならない。
【0147】
回転装置100から放出された「高温」熱転移流体3は、熱消費ユニット101、すなわち熱転移媒体(符号100内で加熱された不活性流体)から熱転移面を通ってプロセス流体へ熱エネルギーを転移可能にする熱交換器として図2Fのレイアウトにおいて提供された熱消費ユニット101内へ導入される結果、水素流が加熱される。熱転移媒体は、これがその熱をプロセス流へ供与するのに伴って冷める。冷却された熱転移媒体4を回転装置100内へ再導入することにより、システムの熱効率を改善することができる。
【0148】
熱交換器101の材料は、高温水素雰囲気、及び/又は高圧に耐えるように選択されるものの、熱交換器のような定置の機器の場合、これは回転装置100よりもなおもコスト効率の高い選択肢である。
【0149】
回転装置100を使用することにより、熱交換器形態(ここでは熱消費ユニット101によって表される)の温度差の最適化が可能になる。これにより、(熱交換器、反応器、炉、加熱器などとして形成された)ユニット101のサイズ、及び表面温度が過度に高いことに起因して表面上に発生する不所望な反応(ファウリング、コーキング)を最小化することができる。高い表面温度はプロセス加熱器内の過剰なファウリングを引き起こすおそれがある。間接加熱を用いることにより、例えば精製及び/又は石油化学製品の生産に関連する種々の用途、例えば動作圧力が通常低い重質流の蒸発のための鋼生産において、プロセス加熱器を交換することができる。
【0150】
図2Dは回転加熱器装置100Aを、予熱器102と、熱消費プロセス(図示せず)からリサイクルされたリサイクルプロセス流体(流れ4)と一緒に示している。予熱器は、電気式、燃焼型、燃焼エンジン、ガスタービンなどであってよく、これはプロセスにおける任意の高温流から余剰の熱を回収するための熱交換器であり得る。予熱器102を設けることは任意である。この概念は、装置100Aの下流側に位置する任意のブースタ加熱器100Bを含むことができる。熱または化学ブースタ加熱が用いられることができる。流れ1’は、予熱器102へ送られる(供給物)流体を表す。前記流体は回転装置100A、100Bを通ってさらに伝搬され、そこで供給物は加熱され、そして流れ3において熱消費プロセスへ送られる。
【0151】
回転装置100A、100Bのいずれか1つは、流体リサイクル装置(図2Dの流れ4参照)を備えることができる。回転装置と流体リサイクル装置とのいかなる組み合わせも考えられる。少なくとも1つの回転装置による流体媒体流の再循環を通して、リサイクルが可能になる。
【0152】
いくつかの形態において、回転装置100はコンベンショナルな燃焼型加熱器から排出された低酸素含量の煙道ガスを利用することができる。このような場合には、燃焼型加熱器から排出された高温煙道ガスはリサイクルガス(図2Dの流れ4)と混合されることにより、回転加熱器100、100A内での加熱のために使用される。記載の事例において使用される煙道ガス中の酸素含量は好ましくは、安全な加熱を可能にするための引火性限界を下回る。
【0153】
下記説明は図3Aに関する。図3Aは相応の鋼生産設備において実施される鋼生産プロセス3000の概観を示している。プロセス/設備3000では、高炉300は、鉄鉱石焼結物302及びコークス304の形態を成す原料で動作する。両者は典型的には炉の頂部に設けられた開口を通して、炉内へ供給される固体材料である。両原材料は、高炉内での原材料の利用を最適化するために調製プロセスを必要とする。
【0154】
コークス化プロセス308において、石炭306からコークスを生成する。コークス化中、酸素の不存在下で石炭306を約18時間にわたって1000~1250℃まで加熱することにより、重質芳香族炭化水素、硫黄、及びアンモニアのような揮発性不純物を除去する。これらの揮発性物質は、コークスプラントオフガス(COG)310として知られているものに放出される。コークスプラントオフガスはまた、CO、CO及び水素に富んでいる。コークス化に必要な高い温度は、典型的には化石燃料312を燃焼させることにより達成される。
【0155】
焼結プロセス(317)において鉄鉱石314から鉄鉱石焼結物302を焼結プラント317内で形成する。典型的な焼結プロセスにおいて、破砕された鉄鉱石314をコンベアベルトで輸送する。微細コークス粉末316を鉄鉱石314と混合することにより、加熱のための燃料を提供する。天然ガス318を燃焼させるように形成されたバーナを使用して、鉄鉱石314とコークス316との混合物を火炎上に設置し、この混合物を燃焼させることから生じるオフガス320を、コンベアベルトの下方から抜き取り、ひいてはベルト上の材料層全体にわたって均一な熱分布を提供する。固体生成物であるクリーンな鉄鉱石焼結物302を焼結後に破砕し、冷却し、サイズ設定することにより、高炉300のための原料を形成する。
【0156】
高炉300内では、コークス304及び鉄鉱石焼結物302を、石灰石、及び高温空気又は酸素(1000~1200℃)322(後者は典型的には炉内へ底部から供給される)と一緒に炉内へ供給する。高温空気322はコークス304及び粉末状石炭と反応し、そして還元ガスを形成する。還元ガスは、鉄鉱石302から酸素を取り除く。同時に、還元された鉄鉱石を溶融するときに必要となる熱が形成される。「スラグ」の形態を成すサンドシリケートの除去を助けるために石灰石を添加する。高炉からの生成物は溶融生成物(溶融金属鉄)324、スラグ325、及び高炉ガス(BFG)326を含む。高炉ガスはCO及び水素に富んでいる。
【0157】
高炉300の後で、塩基性酸素転炉328内で、溶融金属生成物324を純酸素327と混合する。塩基性酸素転炉は酸素変換器プロセスを通して炭素と他の化学不純物とを除去し、典型的には鋼板の形態を成す鋼製品330を形成する。炭素の大部分はCOとして除去され、COが豊富な、ひいては発熱量及び炭素含量が豊富な塩基性酸素転炉ガス(BOFG)332を形成する。鋼板330は冷却されるのに伴って、顧客への出荷前に典型的には後処理ユニット334、例えば鋼板330を熱間圧延してコイル336にするための熱間圧延機へ送られる。熱間圧延に際して、鋼板330の上部で天然ガス338を燃焼させることにより、鋼板330を1000~1270℃まで加熱し、COが豊富なオフガス340を生産する。鋼板330の表面からいかなるの不純物(スラグ)をも除去し、そして鋼板を所期厚まで圧延し、冷却し、そして出荷のためにロール加工してコイル336にした。
【0158】
製鋼から出る主なオフガスは、コークスプラントオフガス(COG)310、高炉ガス(BFG)326、及び塩基性酸素転炉ガス(BOFG)332である。これらのガスの全ては窒素及びCOに富んでいるが、しかしこれらはまた発熱量を有する成分(水素、CO、及び炭化水素)を含有しており、したがって典型的にはCOに富んだオフガス344を生成する、エネルギーのための発電プラント342内で焼却される。最近では、これらのオフガスの材料バロリゼーション(material valorisation)が広く研究されている。これらの流れの材料バロリゼーションのための最も有望な経路は、逆水性ガスシフト反応及び乾式改質を含む。これらは両方とも還元性化学物質(水素又はメタン)と一緒に使用することにより、ガス流中のCO及び炭化水素を、CO及び水素の合成ガス様混合物へ変換することができる。合成ガス(syngas)は数多くの方法で基礎化学物質へ変換することができる。これらの方法のうち最も産業的に関連するのは、メタノール生産及びフィッシャー・トロプシュ合成である。
【0159】
本明細書中に使用される「バロリゼーション(valorisation)」とは、廃棄物の再利用及びリサイクルに関する経済的分析を意味する。したがって、本明細書中に使用される「バロリゼーション」は、「リサイクル」と同義である。
【実施例
【0160】
下記非限定的な実施例は、製鋼における回転装置100の使用を示す。
【0161】
実施例1:コークス化プラントのための熱の提供(図3B
図3Bは、コークス化プロセス308における回転装置100の利用を示すブロックダイアグラムである。
【0162】
コークスプラント内で石炭を化石燃料燃焼型加熱器で加熱する代わりに、回転装置100を使用して、石炭のコークス化のために熱を提供することができる。加熱は、回転装置100を通してガス346(空気、窒素、蒸気)を循環させることによって行うことができる。回転装置内ではガスは約1300~1500℃まで加熱される。加熱されたガス348は、次いでコークスオーブン308へ移される。ここでは、加熱されたガス348は、その熱の一部を石炭306へ放出する。コークス化プロセスは典型的には、約18時間にわたって約1200℃で動作する。オーブン308に対して低い温度まで冷却されてはいるものの、まだ約500℃オーダーにある、コークス化オーブンから生じた排ガス350を、最適な熱統合、並びに熱及びエネルギーのリサイクルのために、リサイクルすることにより回転装置へ戻すことができる。オーブン308から回転装置100へリサイクルされる排ガス350の量に応じて、最適な流量及びエネルギー容量を維持するために必要なガス346の量を相応に低減することができる。排ガス350のリサイクルを通して、大気へ放出されるオフガス310の量を最小化することができる。
【0163】
コークス化プロセス及び関連のプラント308は、蒸気熱消費ユニット101に相当する。
【0164】
実施例2:焼結プラントのための熱の提供(図3C
図3Cは、焼結プラントにおける回転装置の利用を示すブロックダイアグラムである(図3Aの焼結プラント317参照)。
【0165】
焼結プラント内で粗鉄鉱石を化石燃料燃焼型加熱器及びコークスで加熱する代わりに、回転装置100を使用して、酸化鉄鉱石を鉄鉱石焼結物に還元するために加熱することができる。加熱は、回転装置100を通してガス352(空気、窒素、蒸気)を循環させることによって行うことができる。回転装置内ではガスは約1200℃まで加熱される。加熱されたガス354は、次いでコンベアベルト356へ引き渡される。ここで、酸化鉄鉱石314の鉄鉱石焼結物302への還元が行われる。コンベアベルトは穿孔することができる。コンベアベルト356から生じた排ガス358を、最適な熱統合のために、リサイクルすることにより部分的に回転装置100へ戻すことができる。リサイクルされたガスの部分は、リサイクルにおける不純物の蓄積に基づき、ガススプリッタ又はスクラバ362を使用して、パージガス360としてパージされる(そして同様の量の新鮮ガス/メイクアップガス352と交換される)。あるいは、リサイクルされたガスから、焼結プロセスから生じた不純物を除去することにより、不純物の濃度を容認し得るレベルに維持することもできる。
【0166】
いくつかの形態では、区分317はペレットプラントを表す。焼結プロセス及びペレット化プロセスは両方とも、本質的に同じ機能を発揮し、すなわち高炉内で処理されるように、鉄鉱石材料を調製する。鉄鉱石の焼結物及びペレットは両方とも、高炉に装入される材料として使用するのに適した鉄鉱石の凝集形態である。
【0167】
焼結/ペレット化プロセス及び関連の焼結物/ペレットプラント317は、上記熱消費ユニット101に相当する。
【0168】
実施例3:高炉のための熱風ガスの加熱(図3D
図3Dは、高炉における回転装置の利用を示すブロックダイアグラムである。
【0169】
酸化鉄の鉄への還元に際して、高炉300は、石炭をCOへ変換するために空気又は酸素を必要とする。COは、鉄鉱石の鉄への変換のための還元ガスとして作用する。高炉300内のコークスの消費量、及び後続のCOの発生を低減するために、この空気又は酸素を約1200℃まで外部で予熱することが一般に実践されている。先ず、空気/酸素又は「熱風(hot blast)」の予熱は、高炉オフガス364から熱の一部を捕捉し、そして化石燃料焼却から提供される熱を介して、約1200℃の最終温度に達することを通して行われる。回転装置100は、(さもなければ炉300内で燃焼される)化石燃料の代わりに最終加熱工程を提供するために使用することができる。加えて、回転装置100は、オフガス中の未反応COのバロリゼーションのために、高炉オフガス364の一部をリサイクルすることにより高炉300へ戻すために使用することもできる。
【0170】
この実施態様では、高炉300は原料366を受け入れる。原料366は鉄鉱石焼結物302と、コークス304(図3A参照)と、石灰石とを含む。加熱された空気又は酸素368は、回転装置100によって提供される。原料366中の鉄鉱石焼結物は、下記式:
3CO(g) + Fe(s) → 2Fe(l) + 3CO(g)
反応1: 鉄鉱石の還元
を有する反応において約700℃で先ず還元される。
【0171】
約800~850℃で、供給された空気368中の二酸化炭素、及び反応の結果としての二酸化炭素の両方が、下記式:
CO(g) + C(s) → 2CO(g)
反応2: 二酸化炭素のコークスとの反応
を有する反応において、原料366中のコークスと反応する。
【0172】
約850℃で、石灰石は下記式:
CaCO(s) → CaO(s) + CO (g)
CaO(s) + SiO(s) → CaSiO(l)
反応 3: 石灰石の分解
を有する一連の反応において分解し、そしてスラグ(CaSiO)を形成する。
【0173】
約1000℃で、高温空気が下記式:
C(s) + O(g) → CO(g)
反応 4: コークスの酸化
を有する反応において、コークスと反応する。
【0174】
高炉300において、溶融鉄324は最大密度を有し、炉の底部から抽出される。溶融スラグ325は溶融鉄324の上部に位置しており、溶融鉄324の上方の位置から抽出される。
【0175】
排ガス364は高炉300から出て、高炉300内で消費される空気に取って代わるのに必要な量の、熱交換器372内の新鮮空気370と合体させられる。排ガス364及び新鮮空気370のいくらかは回転装置100へ転移されるのに対して、いくらかは余剰のCOを捕捉するためのガススプリッタ/スクラバ362へ転移される。高炉ガス(BFG)326は、スクラバ362から放出され、残りのガスは回転装置100内で再合体させられる。
【0176】
高炉100の後で、溶融金属生成物(溶融鉄324)は塩基性酸素転炉328内で純水素と混合させられる(図3A、3F参照)。このプロセスにおいて、溶融金属鉄中に含有される炭素及び化学不純物が酸化され、これにより不純物が除去され、そして炭素の含有率が低下する。塩基性酸素転炉328内では、溶融鉄は低炭素鋼へ変換される。塩基性酸素転炉(BOFG)332は、さらなる処理のために酸素変換器炉328から放出される。図3Fのレイアウトにおいて、BOFG332を完全又は部分的にリサイクルすることにより、回転装置100へ戻すことができる。鋼溶融物は、取鍋(図示せず)を介して後処理ユニット334へさらに輸送される。
【0177】
後処理ユニット334は、熱処理、浸炭、鋳造、及び/又は圧延のいずれか1つを介して、鋼製品を後処理するように形成することができる。浸炭プロセスでは、鋼製品を炭素源、例えば一酸化炭素によってアップグレードすることにより、これをより硬質にする。ユニット334は、鋼板330が生産される鋳造ユニット、例えば連続鋳造機と、圧延装置、例えば(連続)熱間圧延機とを含んでよい。圧延装置には、顧客への発送前に、ロール加工によりコイル336にするように、冷却された鋼板330を送ることができる。いくつかの事例では、少なくとも鋳造機は、酸素変換器328と一体化することができる(図3F参照)。後処理ユニット334に回転装置100を設置する一例が、図3Eに示されている(実施例4)。
【0178】
高炉300は上記熱消費ユニット101に相当する。
【0179】
実施例4:回転装置による熱間圧延プロセスにおける鋼板の加熱(図3E
図3Eは、熱間圧延における回転装置の利用を示すブロックダイアグラムである。
【0180】
図3Eは、少なくとも圧延機を含む後処理ユニット334内へ回転装置100を組み込んだ様子を示している。熱間圧延に際して、鋼板を約1000~1270℃の温度まで加熱することにより、鋼板330を、これらを圧延しロール加工し得る状態へもたらす。典型的には、高い温度は、鋼板330の上部で天然ガス(338、図3A、3F参照)を燃焼して鋼板を加熱することによって達成される。回転装置100は天然ガスバーナの代わりとなり、鋼板330を所要の温度まで加熱するための高温ガス374(窒素、空気、蒸気)を提供することができる。熱間圧延オフガス376を少なくとも部分的に回転装置を通してリサイクルすることにより、熱間圧延中の熱損失を最小化することができる。
【0181】
後処理ユニット334は、上記熱消費ユニット101に相当する。
【0182】
実施例5:コークスプラント、塩基性酸素転炉、及び高炉のオフガスの材料バロリゼーション(図3F:鋼生産-オフガスのバロリゼーション)
コークスプラント、塩基性酸素転炉、及び高炉のオフガスは、発熱量及び炭素に富んでいる。したがって、これらの流れは材料的又はエネルギー的にバロライズすることができる。エネルギー的バロリゼーションは、発電所又は発電機器内でガスを焼却してエネルギーにすることによって、ガスをバロライズする標準的な方法である。しかしながら、このことはCO排出を招き、そして最近の革新活動は、これらの流れの材料バロリゼーションに焦点を合わせている。水素とC1化学物質とを含有する流れの材料バロリゼーションは、炭化水素とCOとを合成ガスへ変換することにより、典型的には行われる。合成ガスは、比率が変動するCOと水素との混合物であり、フィッシャー・トロプシュ合成のメタノール合成のようないくつかの一般的なベース化学反応のための原材料である。これらのガスをバロライズするためのさらにシンプルな方法は、これらの成分を(あるときには外部メタン源と一緒に)、CO及びHの含量が最大になる方向に操作することである。CO及びHは両方とも、高炉内の還元剤として作用することができ、したがって不純物の除去後に、リサイクルすることにより高炉へ戻すことができる。表1は、製鋼から生じる3つの主要オフガス流の典型的な組成を示している(出典: Angewandte Chemie; Volume 60, Issue 21; May 17, 2021, Pages 11852-11857)。
【0183】
【表1】
【0184】
選択された用途によって必要とされる最適なCO/H比へ向かってガス組成を調節することは、一般によく知られた4つの高温触媒反応、すなわち
反応5: 水性ガスシフト反応

反応 6: 逆水性ガスシフト反応

反応7: 逆水性ガスシフト反応

反応 8: メタン「乾式」改質

を用いて行うことができる。
【0185】
CO排出の回避が、このようなC1化学操作の目標であることが典型的なので、反応5(水性ガスシフト反応WGS)は、これがCOを生産するため、推奨されない。その代わりに、合成ガス混合物中の水素の割合を高めるために、電気分解又はメタン熱分解から生じた持続可能な水素を使用することが望ましい。
【0186】
逆水性ガスシフト反応、メタン蒸気改質又はメタン「乾式」改質によって必要とされる温度は、典型的には800℃~1200℃であり、そしてこのような高い温度は今日では、化石燃料の焼却によって達成される。回転装置100は、オフガスを、これらの触媒反応によって必要とされる温度まで加熱するための電化されたエミッションフリーの技術である。
【0187】
図3Fは、CO/H比を調節し、鋼圧延装置のオフガス中の合成ガスの含有率を最大化するために、高温触媒反応器内に回転装置100を使用することを示している。部材の符号は図3Aと同じである。
【0188】
高炉300、コークス化プロセス308、焼結プラント/ペレットプラント317、及び塩基性酸素転炉328のそれぞれは、残留熱を担持するオフガスを生産する。図3Fに示された実施態様では、これらのオフガスは、回転装置100へ再指向される。この回転装置はこれらのオフガスを、反応5~8に記載された触媒反応に必要な温度までさらに加熱する。次の工程における触媒反応の必要に応じて、典型的には再生可能源から生じる、メイクアップ水素及び/又はメタン402が、加熱されるべき回転装置100へ添加されてよい。
【0189】
加熱されたオフガス及びメークアップ水素/メタン404を次いで、触媒反応器406へ輸送する。触媒反応器は、反応5~8に記載された吸熱性の高温反応のために形成されている。触媒反応器406は、用途のニーズに応じて、一連の反応器であってよい。これらの一連の反応器は図2Eに示されたように実現されてよい。ここでは各ユニット101は触媒反応器を表している。触媒反応器406から生じた生成物408、すなわちHとCOとの所期の比を有する生成物ガスは、最終用途又はリサイクルのための調製を目的として清浄化又はスクラビングのための装置410へ輸送される。装置410は不活性ガス(水蒸気、窒素ガス、など)パージ412を有してよく、そして最終生成物414は装置410から放出される。最終生成物414は所期の最終用途に応じて、さらなる反応又はより高い収率のために触媒反応器へリサイクルされてよく、さらなる鉄鉱石還元のために高炉300へリサイクルされてよく、メタノール生産プロセスへ送られてよく、又はフィッシャー・トロプシュ反応へ送られてよい。
【0190】
図3Fは、鋼製造設備1000、4000内で製造された排ガス(流れ310(COG)、320(焼結/ペレットプラントから生じるオフガス)、326(BFG)及び332(BOFG)参照)を収集するために回転装置100を使用し得ることを示している。流れ402とともに水素又はメタンが添加されると、結果として生じるガス混合物404を使用して、燃料及び化学物質(図示せず)を生産するためにさらに精製する目的で、所期のCO/H比で吸熱触媒反応器406内で合成ガスを生産することができる。
【0191】
図3Fを参照すると、焼結/ペレットプラント317、コークス化プラント308、高炉300、塩基性酸素転炉328、鋼後処理ユニット334、及び反応器406、及び/又はこれらの任意の組み合わせのうちのいずれか1つが、本明細書に上述した熱消費ユニット101に相当する。
【0192】
実施例6:鉄鉱石の直接水素還元のための水素の予熱(図3G
鋼産業から生じたCO排出量を軽減するための新規の方法は、石炭の代わりに還元剤として水素を使用することである。コークス還元とは異なり、水素還元は吸熱反応であり、水素を反応温度まで加熱するために、そして反応温度を維持するためには、付加的な熱投入を必要とする。このような付加的な熱投入は典型的には、炉内で酸化された余剰の水素に由来し、これは水素消費量の著しい増大をもたらす。
【0193】
水素による鉄鉱石還元に際して回転装置100を適用すると、水素を約900℃の還元温度以上の温度に加熱することによりこの付加的な熱を供給し、そしてガス状反応生成物、主として水と未反応の水素とをリサイクルして、最適な熱回収のために還元プロセスへ部分的に戻すことになる。
【0194】
図3Gは、水素による鉄鉱石の鉄への還元プロセス(直接置換鉄(DRI)又はスポンジ鉄を生産するための鉄鉱石の直接水素還元)に回転装置100を適用することを示している。鉄鉱石/ペレット502は鋼生産のためのプロセスユニット504へ供給される。プロセスユニット504は、炉、任意には高炉、キルン、又は反応器として形成することができる。高温の未反応水素及び水506が約200℃で、熱交換器/エコノマイザ508へ放出される。高温ガス510は、熱交換器508から回転装置100へ放出される。熱交換器508からの液体水512は、水分離器514へ転移される。水分離器は、水516を未反応水素518から分離する。この未反応水素518は熱交換器508へ引き渡される。回転装置100へ引き渡された、熱交換器508からの高温ガス510は、典型的には再生可能源から来たメイクアップ水素520と合体させられる。高温ガス510及びメイクアップ水素520は、約1200℃まで加熱され、DRI炉、キルン、又は反応器504内へ、高温ガス流522の形態で装入される。高温ガス流522は鉄鉱石焼結物/ペレットと反応することにより、鋼に形成するのに適したスポンジ鉄524を生産する。図3D及び3Gはしたがって、鉄鉱石の鉄への主要還元プロセスを示している。ここでは図3Dのプロセスは、高炉300内で溶融鉄を生産することを示すのに対して、図3Gは、鉄鉱石の金属鉄への、これを溶融することなしに行う直接還元プロセスを示している。還元はプロセスユニット300(高炉)又は504(DRI炉、キルン、又は反応器)(それぞれ図3D、3G)で発生する。プロセスユニットは鉄鉱石焼結物/ペレット302又は502を原料として使用する。鉄鉱石焼結物/ペレット(302又は502)は、それぞれ焼結プラント又はペレットプラント317から、炉(300、504)内へ供給される。
【0195】
DRIプロセスユニット504は、本明細書中に上述した熱消費ユニット101に相当する。
【0196】
図3Hは、伝統的な製鋼におけるCO排出源の分配法を示している。図3Hは、実施例1~6(図3B~3G)と一緒に、回転装置100が、油及び石炭によって導出されるエネルギーキャリアに完全又は部分的に取って代わるように、鋼生産設備内へ設置されると、すべての主要な製鋼工程においてエネルギー効率及びCO排出軽減を支援し得ることを示している。CO排出物がまだ発生する場合には、回転装置を使用して、これらの排出物を他のオフガス成分及び外部の水素/メタン源と一緒に、これらの流れを材料使用に導入するべく調製するように操作することができる。回転装置は、コンベンショナルなコークス系鉄鉱石還元プロセス及び新規の水素系還元プロセスの両方において、排出物及びエネルギー効率に対する好都合な効果をもたらす形で適用することができる。
【0197】
実施例7:低品質鉄鉱石の直接還元鉄(DRI)へのペレット化及び直接還元のための、キルン型プロセスユニット内での回転装置の適用
実施例7は前出の実施例6を補足する。回転装置100は、熱消費ユニット101内で鉄鉱石を直接還元することにより直接還元鉄にするプロセスにおいて、加熱された流体媒体を生産するために使用することができる。熱消費ユニット101は、鉄鉱石を金属鉄へ、これを溶融することなしに還元するためのプロセスユニットとして形成されている。上述のように、DRIプロセスは、典型的には水素ガス、コークスガスを還元剤として使用する流動床タイプの炉内、キルン内、又は反応器内で実施することができる。ここで固形物が高温還元ガスと接触させられる。種々のタイプのキルン、例えば回転キルン、又はグレートキルンを利用することができる。
【0198】
模範的な回転キルンは、回転式の水平方向の容器である。ここでは容器の軸線を中心とした回転により、キルン内部の固形物が混合される。特定の設計を施された内部構造を加えることにより、固形物及び高温ガスの混合を改善することができる。グレートキルンは、到来する固形原材料を先ず「グレート処理(grate)」することにより粉砕し、そしてその表面積を高温ガスと接触させるために最適化するようにサイズ設定するタイプのキルンである。製鋼に際して、グレートキルンは、焼結プラント内で鉄鉱石焼結物へ変換されることのない低品質鉄源(塊鉱、海浜砂、イルメナイト、及び鉄鋼石微粉)をペレット化するために使用することができる。これらのペレットは、鉄鉱石焼結物(図3、DRIプロセスユニット504内へ供給された鉄鉱石焼結物/ペレット502参照)との同時供給物として、高炉へ供給することができる。
【0199】
回転キルンは、鉄鉱石をコークスと混合し、そして固形混合物を高温空気と接触させることにより、鉄鉱石を鉄へ直接還元するために使用することができる。コークスは高温空気中の酸素と反応することにより、COを産出する。COは鉄鉱石のための還元剤として作用し、鉄鉱石を鉄とCOとへ変換する。反応スキーム及び反応物質は、高炉におけるもの(図3D及び実施例3参照)と同じではあるものの、回転キルンは、鉄含有率が低い鉄鉱石の使用を可能にし、製鋼のための固形鉄生成物(直接還元鉄、DRI)を生産する。
【0200】
グレートキルンと回転キルンとはしばしば組み合わせて使用される。グレートキルン内で生産されたペレットは、直接還元のために回転キルン内へ供給することができ、あるいは、回転キルンは、固形物及び高温ガスの間の熱転移を改善するために、グレートキルンシステムの一部であってよい。
【0201】
回転キルン及びグレートキルン内の回転装置の適用はわかりやすく、大まかに言えば図3D(実施例3)に関する説明に示された経路に従う。高温ガスをキルン内へ導入する典型的な方法は、キルンの高温端部から生じる天然ガスを燃焼させることである。天然ガスを燃焼させる代わりに、本発明の回転装置から生じる1200~1700℃の高温空気をキルンの高温端部へ供給することにより、必要な加熱を可能にすることができる。
【0202】
あるいは、いくつかの用途では、回転装置100内で加熱されるガスは水素であり得る。この場合には、コークスの使用(及び関連のCO排出)は必要ではない。それというのも高温の水素が、鉄鉱石のための還元剤として作用し得るからである。水素還元反応において生産された未反応水素と水とは、キルンの後で分離することができ、そして水素はリサイクルされることにより、回転装置を通してキルンへ戻され、エネルギー及び材料双方のリサイクルをさらに改善する。水素による鉄鉱石の直接還元については、図3Gに関連して記載されている。
【0203】
当業者には明らかなように、技術の発展とともに、本発明の基本的な考えを種々の方法で実現し組み合わせることができる。本発明及びその実施態様はこのように上記実施例に限定されることはなく、これらは添付の特許請求の範囲内で広く変化し得る。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
【国際調査報告】