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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】オキソ酸性度の調整方法
(51)【国際特許分類】
   G21C 5/00 20060101AFI20241018BHJP
   C25B 9/09 20210101ALI20241018BHJP
   C25B 1/16 20060101ALI20241018BHJP
   C25B 15/033 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
G21C5/00
C25B9/09
C25B1/16
C25B15/033
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024521366
(86)(22)【出願日】2022-10-07
(85)【翻訳文提出日】2024-05-09
(86)【国際出願番号】 EP2022077931
(87)【国際公開番号】W WO2023057622
(87)【国際公開日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】21201498.9
(32)【優先日】2021-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524132324
【氏名又は名称】セーアボー アンパーツゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ルカ シルビオリ
(72)【発明者】
【氏名】アスク エミール ロブスハル-イェンセン
(72)【発明者】
【氏名】マーラ セイェディ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ アンフレット
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ヨーン コーパー
(72)【発明者】
【氏名】ビヤシュ バタチャーリャ
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AB01
4K021BB02
4K021CA01
(57)【要約】
本発明は、溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整する方法において:金属水酸化物中のHO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つの目標濃度を推定するステップと;
オキソ酸性度制御成分を提供するステップと;オキソ酸性度制御成分と金属水酸化物の溶融塩とを接触させて金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を調整するステップと;を含む方法に関する。該方法は、金属水酸化物の腐食性を低下させることによって金属水酸化物の溶融塩についての利用可能な温度範囲をより有効に使用することを可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化物塩がエネルギまたは熱貯蔵のための媒質を提供するエネルギまたは熱貯蔵コンテナ内で溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整する方法において:
金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つの目標濃度を推定するステップと;
オキソ酸性度制御成分を提供するステップと;
前記オキソ酸性度制御成分と金属水酸化物の前記溶融塩とを接触させて金属水酸化物の前記溶融塩のオキソ酸性度を調整するステップと;を含む方法。
【請求項2】
前記オキソ酸性度制御成分が、不活性キャリヤガスを含む処理用ガス中に提供され、前記方法がさらに、前記オキソ酸性度制御成分を含む前記処理用ガスと金属水酸化物の前記溶融塩とを接触させて、金属水酸化物の前記溶融塩の前記オキソ酸性度を調整するステップを含んでいる、請求項1に記載の溶融塩の前記オキソ酸性度を調整する方法。
【請求項3】
前記オキソ酸性度制御成分が水蒸気であり、前記水蒸気が前記処理用ガスに添加されて、前記処理用ガス中に水の分圧を提供する、請求項2に記載の溶融塩の前記オキソ酸性度を調整する方法。
【請求項4】
前記水蒸気が、水浴を通して前記処理用ガスを泡立てることによって前記処理用ガスに添加され、前記処理用ガス中の前記水蒸気の前記分圧が:
前記水浴の温度を制御すること、
前記水浴中の前記処理用ガスの滞留時間を制御すること;および
前記水浴中の前記処理用ガスの圧力を制御すること;
のうちの少なくとも1つによって制御される、請求項3に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項5】
前記オキソ酸性度制御成分が、前記オキソ酸性度制御成分を固体状態から昇華させることによって前記処理用ガスに添加される、請求項2に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項6】
前記オキソ酸性度制御成分が、スプレーまたはミスト生成を介して液体として前記処理用ガスに添加される、請求項2に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項7】
金属水酸化物の前記溶融塩が、ライニング材料で作られた内側表面を有するコンテナ内に配置され、前記OH、O2-、およびHOのうちの少なくとも1つの前記目標濃度が前記ライニング材料について定義されている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項8】
金属水酸化物の前記溶融塩が静止しているかまたは、強制対流または強制循環により前記コンテナ内を循環させられている、請求項7に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項9】
前記オキソ酸性度制御成分が、前記ライニング材料から0cm~100cmの範囲内の距離のところに配置された金属水酸化物の前記溶融塩と接触させられる、請求項7または8に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項10】
金属水酸化物の前記溶融塩に熱が加えられるかまたは前記溶融塩から熱が除去される、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項11】
前記コンテナが、金属水酸化物の前記溶融塩中で0.1℃/cm~10℃/cmの範囲内の温度勾配を創出するように構成された熱源および/またはヒートシンクを含む、請求項7ないし9のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項12】
金属水酸化物の前記溶融塩の上方のカバーガスが、周囲圧力より高い圧力に維持されている、請求項1ないし11のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項13】
前記カバーガスが前記処理用ガスである、請求項12に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項14】
前記処理用ガスが、金属水酸化物の前記溶融塩を通して泡立てられる、請求項2ないし13のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項15】
前記HO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つの前記目標濃度が、金属水酸化物の前記塩の融点および沸点の範囲内の少なくとも3つの異なる温度で推定される、請求項1ないし14のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項16】
材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定する方法において:
対象材料および金属水酸化物を選択するステップと、
不活性材料のるつぼを提供するステップと、
不活性材料の前記るつぼ内に前記金属水酸化物を適用し、前記金属水酸化物を加熱して前記金属水酸化物の溶融塩を提供するステップと、
前記対象材料でできた作用電極、基準電極および不活性金属でできた対電極を提供するステップと、
前記金属水酸化物の前記溶融塩中に、前記作用電極、前記基準電極および前記対電極を挿入するステップと、
前記金属水酸化物の前記溶融塩の上方にガスを適用し、前記ガスにオキソ酸性度制御成分を添加するステップと、
前記作用電極と前記対電極の間に電流を適用し、前記作用電極の分極を記録するステップと、
前記作用電極の前記分極から前記対象材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項17】
材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定する方法において、
対象材料および金属水酸化物を選択するステップと、
不活性材料のるつぼを提供するステップと、
不活性材料の前記るつぼ内に前記金属水酸化物を適用し、前記金属水酸化物を加熱して前記金属水酸化物の溶融塩を提供するステップと、
前記金属水酸化物の前記溶融塩中に前記対象材料でできた試験片を挿入するステップと、
オキソ酸性度制御成分を処理用ガスに添加し、前記処理用ガスを前記金属水酸化物の前記溶融塩と接触させるステップと、
前記試験片の重量損失から前記材料の前記オキソ酸性度ウィンドウを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
コンテナ、ヒートシンクおよび/または熱源そして前記コンテナ内に配置された溶融金属水酸化物塩を含むエネルギ貯蔵システムにおいて、金属水酸化物の前記溶融塩が、前記ヒートシンクおよび/または前記熱源から得られる強制対流によって前記コンテナ内で循環させられ、このヒートシンクおよび/またはこの熱源が、状況に応じて前記ヒートシンクおよび/または前記熱源から、金属水酸化物の前記溶融塩中の1点までの距離にわたって0.1℃/cm~10℃/cmの範囲内の温度勾配を創出するように構成されている、エネルギ貯蔵システム。
【請求項19】
前記ヒートシンクおよび/または前記熱源が、前記ライニング材料から0cm~100cmの範囲内の距離にわたり金属水酸化物の前記溶融塩と接触するように構成されている、請求項18に記載のエネルギ貯蔵システム。
【請求項20】
状況に応じて前記ヒートシンクおよび/または前記熱源から金属水酸化物の前記溶融塩中の前記点までの前記距離が、5cm~20cmの範囲内にある、請求項18または19に記載のエネルギ貯蔵システム。
【請求項21】
前記溶融金属水酸化物塩の前記オキソ酸性度が、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法を用いて調整される、請求項18ないし20のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整する方法に関する。該方法は、金属水酸化物の腐食性を低下させることによって金属水酸化物の溶融塩についての利用可能な温度範囲をより有効に使用することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
溶融塩は概して、極めて腐食性が高いが、溶融塩の物理的および化学的特性は、これらの塩を特定の利用分野にとって魅力あるものにしている。詳細には、溶融水酸化物塩は、核分裂プロセスにおける中性子減速材として潜在的な有用性を備えており、例えばエネルギ貯蔵において有用である塩化物、硝酸塩、炭酸塩などの溶融塩に比べてより広い温度範囲にわたって、使用され得る。
【0003】
溶融金属水酸化物塩の腐食性にも関わらず、核分裂プロセスにおける中性子減速材としてのそれらの使用が記述されてきている。例えば、国際公開第2020/157247号は、溶融塩核分裂原子炉(MSR)において溶融水酸化物減速材塩と接触している耐食性材料として、単結晶コランダムを使用する。しかしながら、単結晶コランダムは高価であり、したがって大規模システムのための建設材料としてのその使用には限界がある。
【0004】
溶融塩は、溶融塩の特性「オキソ酸性度」を定義するのに寄与することになる水および他の成分を含み得る。水酸化物を含有する溶融塩において、水酸化物イオンは、陽子を受容してHOとなり、かつ陽子を供与してスーパーオキシドイオンO2-となることのできる、両性種である。溶融塩中に存在する水は、以下の化学反応式1および化学反応式2により反応する:
化学反応式1 2HO⇔H+OH
化学反応式2 2OH⇔HO+O2-
【0005】
この文脈において、我々は、水相化学におけるpH=-log10[H]およびpOH=-log10[OH]という周知の定義と同様に、オキソ酸性度をpHO=-log10[HO]として定義し、オキソ塩基性度は、pO2-=-log10[O2-]である。
【0006】
オキソ酸性度は、Chemistry in Non-Aqueous Solvents,Springer Netherlands,Dordrecht,1974.doi:10.1007/978-94-010-2123-4およびAcid-Base Effects in Molten Electrolytes,in:Molten Salt Chemistry,1987:pp.279~303においてB.L.Tremillonによって記述されているように、溶融塩中において一定の種の安定性を予測する上で一助となる。例えば、アルミナは、酸性および中性のメルト中でわずかに可溶であり、塩基性メルト中では極めて可溶性が高い例示的材料である。酸性メルト中においてアルミナはAIOとして溶解し、塩基性メルト中ではAIO として溶解する。しかしながら、Tremillonsは、酸化種と塩基の組合せが系を安定化させ、容易に酸化される種がなぜ塩基性媒質中でより安定しているかの理由をこれが説明していると指摘する。逆に、酸化種は、塩基が酸性種と容易に組合わされる酸性の系内で概してはるかに安定性が低く、結果として還元種の方が好まれている。しかしながら、多くの金属合金に関して、合金がオキソ酸性/オキソ塩基性条件において安定した平衡状態で存在し得るオキソ酸性度範囲が存在する。したがって、材料が封じ込め材料として使用されるのに充分な安定性を有している溶融水酸化物中の水濃度範囲が存在する。
【0007】
国際公開第2018/229265号は同様に、減速材塩として溶融金属水酸化物を有するMSRを開示している。溶融減速材塩は、溶融減速材塩と接触している材料のものに比べて大きい還元電位を有するかまたは溶融減速材塩のオキソ酸性度を制御する例えば水などの化学種であるレドックス元素を含み得る。国際公開第2018/229265号は、溶融減速材塩を通して水性ガスを泡立てることまたはメルトのレドックス電位および/またはオキソ酸性度を制御する化学種を含む不活性カバーガスを使用することを提案しており、例示的化学種としてHO、HおよびHFが言及されている。しかしながら、国際公開第2018/229265号は、実際にオキソ酸性度をどのように制御するかについては開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2020/157247号
【特許文献2】国際公開第2018/229265号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chemistry in Non-Aqueous Solvents,Springer Netherlands,Dordrecht,1974.doi:10.1007/978-94-010-2123-4
【非特許文献2】Acid-Base Effects in Molten Electrolytes,in:Molten Salt Chemistry,1987:pp.279~303
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、工業的利用分野における溶融水酸化物塩の融点と沸点の間の広い温度範囲を使用することを可能にする方法を提供することにあり、溶融水酸化物を大規模に使用できるようにする方法を提供することが、さらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、水酸化物塩がエネルギまたは熱貯蔵のための媒質を提供するエネルギまたは熱貯蔵コンテナ内で溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整する方法において:金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つの目標濃度を推定するステップと;オキソ酸性度制御成分を提供するステップと;オキソ酸性度制御成分と金属水酸化物の溶融塩とを接触させて金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を調整するステップと;を含む方法に関する。詳細には、オキソ酸性度は、例えば調整がオキソ中性条件を提供するような形で、対応する目標濃度と整合するようにHO、O2-およびOHのうちの1つ以上のものの濃度との関係において調整されてよい。オキソ酸性度を調整することで、溶融金属水酸化物塩中の腐食の軽減が可能となり、したがって該方法は同様に溶融金属水酸化物塩における腐食の軽減のためにオキソ酸性度を調整する方法、あるいは、溶融金属水酸化物塩における腐食軽減方法とみなされてもよい。該方法の具体的例において、オキソ酸性度は、オキソ酸性度制御成分と金属水酸化物の溶融塩を接触させて金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を調整するステップにおいて、例えば特定のライニング材料について、オキソ中性条件に調整される。金属水酸化物は、所望される通りの任意の金属水酸化物であってよいが、金属水酸化物は好ましくは、例えばナトリウム、カリウムまたはリチウム水酸化物などのアルカリ金属の水酸化物、あるいはそれらの混合物であるか、または金属水酸化物は、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物であってよい。同様にして、金属水酸化物は、異なる金属の水酸化物であってもよい。
【0012】
溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整する方法は、水酸化物塩がエネルギまたは熱の貯蔵を提供するエネルギまたは熱貯蔵コンテナに特に関連するものである。別の態様において、本発明は、コンテナ、ヒートシンクおよび/または熱源そしてコンテナ内に配置された溶融金属水酸化物塩を含むエネルギ貯蔵システムにおいて、金属水酸化物の溶融塩が、ヒートシンクおよび/または熱源から得られる強制対流によってコンテナ内で循環させられ、このヒートシンクおよび/またはこの熱源が、状況に応じてヒートシンクおよび/または熱源から、金属水酸化物の溶融塩中の1点までの距離にわたって0.1℃/cm~10℃/cmの範囲内の温度勾配を創出するように構成されている、エネルギ貯蔵システムに関する。ヒートシンクおよび/または熱源は例えば、ライニング材料から0cm~100cmの範囲内の距離にわたり金属水酸化物の溶融塩と接触するように構成されていてよい。具体的実施形態において、状況に応じてヒートシンクおよび/または熱源から金属水酸化物の溶融塩中の点までの距離は、5cm~20cmの範囲内にある。
【0013】
一例において、溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整する方法は、対象材料で作られた内側表面を有するコンテナを提供するステップであって、このコンテナが金属水酸化物の溶融塩を含み、かつこのコンテナが金属水酸化物の溶融塩中で0.1℃/cm~10℃/cmの範囲内の温度勾配を創出するように構成された熱源および/またはヒートシンクを含んでいるステップと;金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-、およびOHのうちの少なくとも1つの対象材料について、例えば目標濃度などのオキソ酸性度ウィンドウを推定するステップと;オキソ酸性度制御成分と金属水酸化物の溶融塩とを接触させて、金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を調整するステップとを含む。
【0014】
金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を調整することによって、該方法は、金属水酸化物の溶融塩と接触している材料にとって最適な値を有するようにオキソ酸性度が調整されて、これにより、そうでなければ溶融水酸化物塩によってひき起こされる材料の腐食を最小限に抑えることを可能にしており、したがって、本開示の方法は、溶融水酸化物塩が有用であるかまたは適切であるあらゆる状況において使用可能である。例えば、該方法は、水酸化物塩が核分裂プロセスの減速材として役立つ溶融塩核分裂原子炉(MSR)において、水酸化物塩がエネルギまたは熱貯蔵のための媒質を提供するエネルギまたは熱貯蔵コンテナにおいて、あるいは、例えば純粋な溶融水酸化物といった溶融水酸化物で動作するスクラバユニットにおいて使用されてよい。HOおよび/またはO2-の目標濃度を推定することが特に好ましいが、たとえ溶融塩が金属水酸化物の溶融塩であっても、化学反応式1および化学反応式2で標示されているように、それでもなおOHの目標濃度を推定することが関連する。
【0015】
金属水酸化物の溶融塩は、所望される通りに任意の手順を用いてオキソ酸性度制御成分と接触させられてよい。例えば、オキソ酸性度制御成分は、金属水酸化物の溶融塩と直接接触させることのできる気体、液体または固体の形をしていてよい。
【0016】
該方法は、不活性キャリヤガスおよびオキソ酸性度制御成分を含む処理用ガスを使用してよい。例えば、オキソ酸性度制御成分は、不活性キャリヤガスを含む処理用ガス中で提供されてよく、該方法はさらに、オキソ酸性度制御成分を含む処理用ガスと金属水酸化物の溶融塩とを接触させて金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を調整するステップをさらに含んでいてよい。この文脈において、不活性ガスとは、金属水酸化物の溶融塩または金属水酸化物の溶融塩と接触している材料と反応しないあらゆるガスのことである。例示的不活性ガスとしては、窒素(N)および希ガス、例えばヘリウム、ネオン、アルゴンおよびそれらの混合物または組合せがある。処理用ガス中にオキソ酸性度制御成分を提供することによって、金属水酸化物の溶融塩と接触させられるオキソ酸性度制御成分の量を容易に制御して、金属水酸化物の溶融塩が配置されているコンテナのライニング材料の保護に最適なオキソ酸性度ウィンドウ内に金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を調整し維持することが可能である。
【0017】
この文脈において、オキソ酸性度制御成分は、溶融塩、特に金属水酸化物の溶融塩中のOH、O2-およびHOのうちの少なくとも1つのものの濃度に影響を及ぼすことのできるあらゆる化学物質、例えば元素、分子またはイオンであってよい。OH、O2-、およびHOのうちの少なくとも1つのものの濃度に対する影響は、直接的または間接的であり得、影響には、例えば化学反応式1および化学反応式2にしたがった濃度の増加または減少が関与し得る。詳細には、OH、O2-およびHOの全てが、該方法に関連してオキソ酸性度制御成分とみなされ、同様にして、OHまたはO2-および適切な対イオンを含む分子もオキソ酸性度制御成分とみなされる。水、HO、詳細には蒸気の形での水が、好ましいオキソ酸性度制御成分である。水、HOは同様に、塩または結晶中の水和物としても存在でき、水和物を含有する塩もまた、オキソ酸性度制御成分として使用されてよい。塩が水和物を含有する場合、塩中の水分子数は通常、塩の化学量論的組成と共に「x・HO」と表示され、xの値は、オキソ酸性度を調整するための塩の量を決定するために使用され得る。他のオキソ酸性度制御成分は、金属酸化物塩、例えば金属水酸化物の溶融塩の金属と同じ金属の酸化物塩である。OH、O2-、および/またはHOと結合する能力を有する分子も同様に、この文脈においてオキソ酸性度制御成分とみなされる。
【0018】
処理用ガスが利用される場合、処理用ガスは金属水酸化物の溶融塩と接触させられる。こうして、オキソ酸性度制御成分もまた金属水酸化物の溶融塩と接触させられ、金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を調整することができる。概して、金属水酸化物の溶融塩と接触させられるオキソ酸性度制御成分の量は、処理用ガス中のオキソ酸性度制御成分の濃度、処理用ガスの圧力、および例えば金属水酸化物の溶融塩と接触させられるm/minなどの時間単位あたりの体積単位として表わされる処理用ガスの量、によって決定される。本方法の具体的例に関連するオキソ酸性度制御成分の量は、金属水酸化物の溶融塩中のOH、O2-およびHOのうちの少なくとも1つの目標濃度の推定値、および選択されたオキソ酸性度制御成分と金属水酸化物の溶融塩中に存在するHO、O2-およびOHのうちの1つ以上のものとの間の化学反応平衡によって決定される。
【0019】
オキソ酸性度制御成分は同様に、処理用ガスを使用することなく金属水酸化物の溶融塩に対して添加されてもよい。例えば、酸化リチウムまたは酸化ナトリウムなどの固体金属酸化物を溶融塩中に固体ペレットの形で、金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHの目標濃度を達成するのに好適な数量で添加することができる。別の例においては、金属水酸化物の溶融塩中に溶融水酸化カリウム六水和物を滴定して、HO、O2-およびOHのいずれか1つの目標濃度を達成することができる。同様に、金属酸化物が溶融形態にある状態で、例えばLiOまたはNaOなどの酸化物と金属水酸化物の溶融塩とを接触させることも可能である。
【0020】
金属水酸化物の溶融塩は、処理用ガスと接触させられる場合、あらゆる種類のコンテナ、配管または管類内に配置されてよい。この文脈において、金属水酸化物の溶融塩と接触する材料は、「ライニング材料」と呼ばれるものとする。したがって、ライニング材料は金属水酸化物溶融塩に対し曝露される。概して材料は、耐食性が最適な「オキソ酸性度ウィンドウ」を有しており、オキソ酸性度が過度に高いか過度に低い場合、材料は、ライニング材料を実践的環境内で使用するには過度に急速に金属水酸化物の溶融塩によって腐食されることになる。オキソ酸性度ウィンドウに対応するオキソ酸性度は、「オキソ中性」条件と呼ばれてもよい。コンテナは、ライニング材料でできた内側表面を有する。コンテナは、例えば金属、金属合金、セラミック材料またはそれらの組合せなどの任意の材料で作られていてよく、この文脈において、この材料はコンテナ材料と呼ばれる。内側表面は、ライニング材料がコンテナ材料となるようにコンテナ材料の表面であってよく、あるいは、コンテナ材料をさらなる材料で被覆してライニング材料を提供してもよい。例えば、コンテナ材料は金属合金、例えばニッケル系合金、ニッケル系超合金、またはハステロイまたはニッケルであってよい。この文脈において、ニッケル系合金は、少なくとも50%w/wのニッケルを有する合金である。
【0021】
金属水酸化物の溶融塩がコンテナ内に配置されている場合、金属水酸化物の溶融塩は静止していてよく、あるいは、金属水酸化物の溶融塩は、自然対流、強制対流または強制循環によってコンテナ内を循環してよい。概して、強制循環には、金属水酸化物の溶融塩の撹拌が関与する。該方法では、あらゆる種類の撹拌を使用してよい。この文脈において、自然対流には、対流に影響を及ぼすためにいかなる能動的ステップも行なわれることなく、金属水酸化物の溶融塩の成分の温度および/または濃度の勾配に起因して発生する金属水酸化物の溶融塩中の運動が関与するものとみなされる。温度および/または濃度の勾配を創出するためにいかなる能動的ステップも講じられない場合、金属水酸化物の溶融塩は概して、この文脈において静止しているとみなされる。対照的に、強制対流には、温度および/または濃度、特に温度の勾配を能動的に導入することによってひき起こされる金属水酸化物の溶融塩中の運動が関与するものとみなされる。例えば、一定の体積の金属水酸化物の溶融塩の局所的加熱は、熱源近くの金属水酸化物の溶融塩の局所的膨張をひき起こす可能性があり、これが金属水酸化物の溶融塩中の運動をひき起こす。同様にして、一定体積の金属水酸化物の溶融塩の局所的冷却は、ヒートシンク近くの金属水酸化物の溶融塩の局所的収縮をひき起こす可能性があり、これが金属水酸化物の溶融塩中の運動をひき起こす。強制対流および強制循環は、金属水酸化物の溶融塩中のオキソ酸性度が概して均一で、例えばオキソ酸性度が金属水酸化物の溶融塩の体積全体にわたる平均的オキソ酸性度の30%以内で変動し得ることを可能にする。この文脈において、強制循環は、経時的体積置換の観点から表現され、時間あたり単位(つまりh-1)を有していてよく、例えば、体積置換は、0.1h-1~100h-1、例えば1h-1~20h-1の範囲内にあってよい。したがって、オキソ酸性度がオキソ酸性度ウィンドウの外にある領域を金属水酸化物の溶融塩中の局所的変動が創出する状況を回避するためには、強制循環および強制対流が有利である。
【0022】
金属水酸化物の溶融塩は好ましくは、コンテナ内に配置され、典型的には金属水酸化物の溶融塩の上方にカバーガスが存在することになり、例えば、コンテナは、閉鎖システムを提供するために金属水酸化物の溶融塩を覆う蓋を有していてよいが、この蓋は同様に、カバーガスの組成および圧力を制御するための開口部を有していてもよい。カバーガスは、周囲圧力よりも高い圧力、例えば1バール~10バールの範囲内の圧力に維持されてよい。カバーガスは不活性ガスまたは、オキソ酸性度制御成分を含有する処理用ガスであってよい。カバーガスは例えば、オキソ酸性度制御成分として水蒸気を0.01バール~2バール、例えば0.02バール~0.5バールの範囲内の分圧で含有していてよい。カバーガスがオキソ酸性度制御成分を含有する場合、カバーガスは、金属水酸化物の溶融塩を通って泡立てられて、カバーガスへと再循環されてよく、詳細には、例えば分圧として表現されるオキソ酸性度制御成分の含有量はカバーガス中に補充されてよい。例えば、オキソ酸性度制御成分は直接カバーガスに添加されてよく、このカバーガスは次に金属水酸化物の溶融塩を通して泡立てられてよい。カバーガスとしてオキソ酸性度制御成分を含む処理用ガスを使用し金属水酸化物の溶融塩を通してカバーガスを泡立てて処理用ガスをカバーガスへと再循環させることによって、金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を制御し易いセットアップが創出される。
【0023】
一例において、ガスは金属水酸化物の溶融塩を通して泡立てられる。ガスは不活性ガス、すなわちオキソ酸性度制御成分、オキソ酸性度制御成分を伴う処理用ガス、または気体形態のオキソ酸性度制御成分を含まない不活性ガスであってよい。ガスがオキソ酸性度制御成分を含む場合、金属水酸化物の溶融塩を通して泡立てられたガスの体積には、金属水酸化物の溶融塩と接触させられるべきオキソ酸性度制御成分の意図された量が考慮に入れられ、金属水酸化物の溶融塩を通して泡立てられるガスの量は、単位が時間あたりのもの(つまりh-1)となるように時間単位あたりの金属水酸化物の溶融塩の体積との関係における不活性ガスの体積で表現されてよい。金属水酸化物の溶融塩の体積を通して泡立てられる不活性ガスの量は、0.1h-1~10h-1、例えば0.5h-1~2h-1の範囲内であってよい。金属水酸化物の溶融塩を通ってガスが泡立てられると、気泡は、特に金属水酸化物の溶融塩の体積を通して泡立てられたガスの体積が2h-1超である場合に、金属水酸化物の溶融塩の強制循環を創出し得る。
【0024】
塩が溶融させられる前に、金属水酸化物中にオキソ酸性度制御成分が存在していてよく、したがってオキソ酸性度制御成分は、ひとたび溶融した時点で金属水酸化物塩中に存在することになる。しかしながら、塩を溶融させるためには典型的に高い温度が使用されること、およびオキソ酸性度制御成分と他の成分との間の反応が可能であることに起因して、オキソ酸性度制御成分の含有量は経時的に恒常ではなくなる。例えば、オキソ酸性度制御成分は溶融塩から蒸発し得る。
【0025】
該方法は、金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つのものの目標濃度を推定するステップを含む。HO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つのものの目標濃度は、金属水酸化物が溶融している任意の温度で推定されてよい。概して、目標濃度の有用な推定値を提供するためには少なくとも1つの温度で充分である。しかしながら、HO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つのものの目標濃度が、金属水酸化物の塩の融点および沸点の範囲内、または金属水酸化物の塩の融点と1000℃の間の少なくとも3つの異なる温度で推定されることが好ましい。温度、例えば少なくとも3つの温度は好ましくは、セットアップの意図された温度動作範囲内となるように選択される。少なくとも3つの温度は異なる温度であり、異なる温度は互いに少なくとも10℃だけ離隔していなければならないが、温度は好ましくは、金属水酸化物塩が溶融している温度範囲全体にわたり分布しており、例えば温度は、少なくとも50℃、少なくとも100℃または少なくとも200℃だけ互いに隔てられた点で選択されてよい。例えば、温度には、例えば金属水酸化物の塩の融点から金属水酸化物の塩の融点+100℃までの範囲の「最下点温度」などの第1の温度、例えば金属水酸化物の塩の融点と沸点の間の中間点から±50℃の範囲内の「中間点温度」などの第2の温度、そして、例えば金属水酸化物の塩の沸点より100℃低い温度から金属水酸化物の塩の沸点までの範囲内の「最高点温度」などの第3の温度が含まれていてよい。HO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つのものの目標濃度が、金属水酸化物の塩の融点および沸点の範囲内の少なくとも3つの異なる温度で推定される場合、詳細には、温度が互いに少なくとも50℃または少なくとも100℃だけ離隔している場合、当該発明人らは意外にも、目標濃度の推定値が、対応する金属水酸化物の溶融塩の全温度範囲にわたって有用であることを発見した。したがって、該方法は、金属水酸化物塩の全温度範囲を使用するための単純なアプローチを提供する。
【0026】
概して、目標濃度は、金属水酸化物の溶融塩を含むコンテナの材料、例えばライニング材料の耐食性を最適とするために腐食が最小限に抑えられるオキソ酸性度ウィンドウを表わし、典型的に、目標濃度は、mol/Lまたはmol/kg単位で表現される点または範囲であってよい。目標濃度は概して、ライニング材料、例えばライニング材料の化学的組成および動作温度範囲に左右される。Ni、CrおよびFe(典型的な高ニッケル合金の主成分)についての理論的分析は、それらの800℃のNaOH中における安定性の共通のオキソ酸性度ウィンドウを強調している。これらについては、p(HO)=-Log[HO]として表現されるHO濃度は、2.5~5.6、例えば2.5~3.1の間に含まれていなければならない。図2は、安定性を共有する理論上の領域が網かけ部域として強調されているNi、FeおよびCr金属についての理論上の潜在的オキソ酸性度ダイヤグラムを描いている。太い輪郭は、800℃における水酸化ナトリウム溶融塩の安定性ウィンドウを示す。しかしながら、図2の理論上の潜在的オキソ酸性度ダイヤグラムは、純粋Ni、FeおよびCr金属についてのみあてはまるものである。当該発明人らは、現在約90%w/wのNiを含有する合金については、HOのオキソ酸性度ウィンドウが金属水酸化物の溶融塩1kgあたりHOが0.1~40mmolの範囲内、好ましくは金属水酸化物の溶融塩1kgあたりHOが1~15mmolであることを発見した。したがって、特定のライニング材料について目標濃度を定義することができる。目標濃度は、HO、O2-およびOHのうちの1つについて表現されてよく、あるいは、HO、O2-およびOHのうちの2つまたは全ての組合せについて表現されてもよい。HO、O2-およびOHは、オキソ酸性度に寄与し、オキソ酸性度制御成分を含む処理用ガスと金属水酸化物の溶融塩を接触させることと併せてHO、O2-およびOHのうちの1つ、2つまたは3つ全ての目標濃度を推定することによって、金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を、ライニング材料のオキソ酸性度ウィンドウ内となるように例えばヘンリーの法則にしたがって調整、詳細には制御することができる。概して、オキソ酸性度制御成分が気体形態で提供される場合、金属水酸化物の溶融塩中に溶解したオキソ酸性度制御成分の量は、例えば、金属水酸化物の溶融塩の上方にあることによってこの溶融塩と接触させられたオキソ酸性度制御成分の分圧に比例するということが仮定される(図3参照)。こうしてライニング材料の腐食は最小限に抑えられる。1つの具体例において、金属水酸化物の溶融塩は、ライニング材料でできた内側表面を有するコンテナ内に配置され、HO、O2-およびOHの少なくとも1つの目標濃度はライニング材料について定義される。処理用ガス中の水蒸気分圧と水酸化ナトリウムの溶融塩中の水の濃度との間の、当該発明人らによって発見された経験的相関が、図3に示されている。
【0027】
溶融金属水酸化物塩に対してオキソ酸性度制御成分を適用しなければ、特に金属水酸化物の溶融塩がコンテナ内で静止している場合または金属水酸化物の溶融塩が自然対流によって循環させられている場合、金属水酸化物の溶融塩の体積全体を通したオキソ酸性度の変動は限定的なものでしかない。概して、金属水酸化物の溶融塩がコンテナ内で静止している場合、金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度の局所的変動が存在し得るが、コンテナの壁から20cmを超えた、例えば50cmまたは100cmを超えた金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度は、コンテナの壁上の金属水酸化物の溶融塩に対する影響に限定的な効果しか及ぼさないとみなされている。しかしながら、腐食のリスクは、特に、溶融金属水酸化物塩とこの溶融金属水酸化物塩と接触するライニング材料などのあらゆる材料との間の界面において、特に関連性が高い。一具体例において、金属水酸化物の溶融塩は、ライニング材料でできた内側表面を有するコンテナ内に配置され、オキソ酸性度制御成分は、ライニング材料から0cm~100cm、例えば0cm~50cm、または0cm~20cmの範囲内の距離のところに配置された金属水酸化物の溶融塩と接触させられる。詳細には、100cm以内または50cm以内または20cm以内に配置された金属水酸化物の溶融塩は、例えばライニング材料でできた内側表面などのコンテナの壁からの距離全体にわたってオキソ酸性度制御成分と接触させられてよい。したがって、金属水酸化物の溶融塩は、例えばコンテナ内で静止していてよく、ライニング材料から100cmを超える、例えば50cmまたは20cmを超える距離のところに配置された金属水酸化物の溶融塩は、オキソ酸性度制御成分と接触させられる必要が無く、これは、コンテナの内側壁からこの距離を超えたところにある金属水酸化物の溶融塩が、例えばライニング材料などのコンテナの内側壁の材料の限定的腐食しか結果としてもたらさないためである。例えば、オキソ酸性度制御成分、例えば、不活性キャリヤガス中に含まれているかまたは気体形態をしたオキソ酸性度制御成分を、例えば金属水酸化物の溶融塩を格納するコンテナの壁などのライニング材料から0cm~100cm、例えば0cm~50cm、または0cm~20cmの範囲内の距離のところにおいて、またはこの距離全体にわたって、金属水酸化物の溶融塩を通して泡立ててよい。
【0028】
コンテナは、所望される通りの任意のサイズおよび形状を有していてよい。例えばコンテナ、特に貯蔵用コンテナは、コンテナの壁からの距離によって定義される中央容積を有していてよい。したがってコンテナは、コンテナの壁までの距離が少なくとも20cm、少なくとも50cmまたは少なくとも100cmである中央容積を有していてよい。中央容積内の金属水酸化物の溶融塩は概して、コンテナの内側壁の腐食に寄与しないものとみなされる。例示的コンテナ容積は、1m~10mの範囲内にある。該方法との関連では、コンテナは同様にパイプまたは導管、例えば貯蔵用コンテナに対し例えば溶融形態で金属水酸化物の塩を添加するためのパイプまたは導管であってもよい。
【0029】
特に金属水酸化物の溶融塩がエネルギ貯蔵のために使用される場合の金属水酸化物の溶融塩の工業的利用分野には、金属水酸化物の溶融塩の融点と沸点の間の大きな温度範囲を有効に利用するために金属水酸化物の溶融塩に熱を加えるかまたはそこから熱を除去することができることが関与し得る。したがって、一例において、金属水酸化物の溶融塩は、コンテナ内に配置され、コンテナは、金属水酸化物の溶融塩中で例えば5cm~50cmの範囲内の距離全体にわたり、0.1℃/cm~100℃/cm、例えば0.1℃/cm~10℃/cmの範囲内の温度勾配を創出するように構成された熱源および/またはヒートシンクを含む。他の関連する温度勾配は、0.1℃/cm~5℃/cm、0.15℃/cm~2℃/cm、または1℃~5℃/cmの範囲内にある。温度勾配は、温度が測定される点の間の温度差および距離の観点から見て定義されてよい。概して、温度差は、例えば金属水酸化物の溶融塩を表わす基準点、そして状況に応じて、熱源および/またはヒートシンクを表わすさらなる点から記録される。温度勾配は、距離、例えばヒートシンクから金属水酸化物の溶融塩中の1点まであるいは熱源から金属水酸化物の溶融塩中の1点までの距離との関係において表現されてよく、この距離は1cm~100cm、例えば10cm~50cmの範囲内にあってよい。したがって、一例において、例えばヒートシンクから金属水酸化物の溶融塩中の1点まであるいは熱源から金属水酸化物の溶融塩中の1点まで記録された温度勾配は、10cmにわたり1℃~10cmにわたり10℃、あるいは50cmにわたり10℃~100℃の範囲内である。概して、熱を金属水酸化物の溶融塩に対し加えるかまたはこの金属水酸化物の溶融塩から除去することができる。詳細には、金属水酸化物の溶融塩に対して熱を加えるかまたはそこから熱を除去して金属水酸化物の溶融塩中に強制対流を創出してよく、こうして金属水酸化物の溶融塩が熱源またはヒートシンクと接触している場合、ライニング材料、例えば金属水酸化物の溶融塩を格納するコンテナの壁から0cm~100cmまたは0cm~50cmの距離にわたって金属水酸化物の溶融塩と接触するかまたは、強制循環を用いて金属水酸化物の溶融塩の均一なオキソ酸性度を提供することが、特に適切である。したがって、該方法は、例えばライニング材料などのコンテナの内側壁の保護を可能にすることから、エネルギ貯蔵のための溶融金属水酸化物塩の大規模使用にとって特に有利である。一具体例において、該方法は、溶融金属水酸化物塩が配置されているコンテナを有するエネルギ貯蔵システム内で溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整することを目的とし、HO、O2-、およびOHのうちの少なくとも1つのものの目標濃度は、理論的計算から、例えば純金属などの具体的材料についての予備知識から、あるいは本明細書中に別段記載されている通りに推定され、金属水酸化物の溶融塩は、状況に応じて、熱源および/またはヒートシンクから5cm~20cmの範囲内の距離にわたり0.1℃/cm~10℃/cmの範囲内の温度勾配を創出するように構成されたヒートシンクおよび/または熱源から、金属水酸化物の溶融塩中の1点まで、得られた強制対流によってコンテナ内を循環させられる。例えば、温度勾配は、20cmの距離にわたり少なくとも20℃であってよい。
【0030】
同様にして、金属水酸化物の溶融塩がMSRにおける減速材として使用される場合にも、加熱および除熱が関連する。例えば、核分裂反応は熱を発生させ、発生した熱はMSRから除去されて電気に変換される。金属水酸化物の溶融塩がMSR内で使用される場合、熱は典型的に熱交換器を用いて金属水酸化物の溶融塩から除去され、したがって熱交換器は、金属水酸化物の溶融塩中に強制対流を創出し、金属水酸化物の溶融塩が配置されているMSR内の任意の場所でオキソ酸性度制御成分が添加されてよい。例えば、オキソ酸性度制御成分は、不活性カバーガス中に含有された水蒸気であってよく、したがってカバーガスは処理用ガスに相当し、任意には、同じく水蒸気の添加点を含んでいてよい再循環ループ内で金属水酸化物の溶融塩を通してカバーガスを泡立ててもよい。
【0031】
本方法は、同様に、金属水酸化物の溶融塩の他の用途においても有利であり得る。汚染したガスを金属水酸化物の溶融塩と接触させることによって動作するガス流浄化を、ライニング材料を伴うコンテナを有するスクラバユニット内で動作させることができ、ライニング材料を本明細書中で開示された技法によって保護することができる。スクラバユニット内のコンテナ中の汚染したガス流と同時に、泡立てを通して目標濃度にあるオキソ酸性度制御成分を補給して、ガス流の浄化および金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度調整を同時に決定してもよい。
【0032】
金属水酸化物の溶融塩を、オキソ酸性度制御成分を含有する処理用ガスと接触させてよい。一具体例において、オキソ酸性度制御成分は、固体状態からオキソ酸性度制御成分を昇華させることによって処理用ガスに添加される。例えば、酸化ナトリウムまたは酸化リチウムなどの金属酸化物を昇華させて、気相分子金属酸化物の一定の分圧を発生させてよく、この気相分子金属酸化物はその後処理用ガスと混合され、金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を制御するために使用される。
【0033】
もう1つのさらなる例においては、オキソ酸性度制御成分は、液体としてスプレーまたはミスト生成を介して処理用ガスに添加される。例えば、水を処理用ガス中に噴霧して、金属水酸化物の溶融塩中のOH、O2-および/またはHOの目標濃度を提供できる処理用ガス中の液滴の濃度に到達することも可能である。
【0034】
金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHの目標濃度は、所望される通りの任意の手順を用いて推定されてよい。純金属については、科学文献から入手可能であり得る。図2を参照のこと。しかしながら、当該発明人らは、今や、金属が他の成分、例えば合金用金属、非合金用金属および/または非金属成分、例えば炭素、窒素、酸素、ホウ素および/またはケイ素を含むことで直ちに、たとえ最高約99%の金属純度でも、他の成分の存在が、他の成分の無い純粋な形態の同じ金属に比べて、電気化学的特性に影響を及ぼし、したがってこれらの成分を伴う金属は、対応する純金属とは異なる形で、例えば純金属よりも一層、溶融水酸化物からの腐食を受け易くなるということを認識している。当該発明人らは、金属水酸化物の溶融塩中のオキソ酸性度制御成分の定常状態濃度と、ライニング材料に対する水酸化物の腐食攻撃とを相関する正確なデータを生成するための方法を考案した。詳細には、異なる金属材料は、材料の開路電位、破壊電位、不動態化電位により規定されるような異なる分極特性を有する。これらの電気化学的パラメータの検出は、研究対象の環境内における材料の腐食因子の識別を可能にする。該方法は、水腐食研究において使用される方法と類似しており、それは、金属水酸化物の溶融塩中の腐食を研究するために修正を加えて適用されている。利用されるセットアップは、対象材料のための目標濃度のベンチスケールの分析を可能にすることから、特に有利である。約90%w/wのニッケルを含有する例示的ニッケル合金についての実験結果が、図4に示されている。これに関連しては、3つの電極が金属水酸化物の溶融塩と接触している3電極配設を使用してよい。この配設には、作用電極としての対象ライニング材料、基準電極そして、純ニッケルまたは溶融水酸化物腐食に対する優れた耐性を有するものと考えられているニッケル系超合金などの別の適切な金属で作られた対電極、が含まれる。一例においては、基準電極として、ベーターアルミナナトリウム基準が使用される。本開示で報告されている電位は、この基準電極を基準にしている。例示的セットアップには、金属水酸化物の溶融塩を格納する、例えばグラファイトで作られたるつぼなどの不活性材料のるつぼが設置されている、例えば金属製容器などを含む高温電気化学セルが含まれる。容器は、実験の雰囲気、例えば金属水酸化物の溶融塩の上方の雰囲気の制御を維持するための蓋を有する。蓋はさらに、電極の貫入を可能にする開口部、およびガス、例えば分析すべき処理用ガスを添加し除去するためのガス入口およびガス出口を有する。全ての開口部は、実験用セットアップのために必要に応じて閉鎖および/または開放可能である。ガス入口は同様に、金属水酸化物の溶融塩に対する非ガス成分の添加のためにも使用してよい。図1に、例示的電気化学セルが例示されている。この配設は、動電位分極として電流に対する電位を測定することを可能にし、該配設は、電気パラメータを制御し測定するためのあらゆるセンサおよびコンピュータなどを含んでいてよい。例えば、該配設は、PARSTAT(Princeton Applied Research,Hampshire,UK)などのコンピュータによって制御されるマルチチャネルポテンシオスタット/ガルバノスタットを含んでいてよい。このポテンシオスタット/ガルバノスタットは、作用電極と対電極の間に適切な電流を通過させることによって、作用電極と基準電極の間の所望の電位を自動的に目標とするようにセットアップされ得る。作用電極の分極は、電位が連続的に変更されるような形で、動電位的に達成されてよい。この変更は、20mV/sまたは50mV/sの掃引速度で起こってよい。分極ダイヤグラムが実験に基づいて作製される前に、開路条件にある、すなわち印加電流がゼロである基準電極に対して作用電極の腐食電位を決定することができる。数分ないしは数時間後に、開路電位のおおよその恒常値が達成されてよい。その後、作用電極は、開路電位よりも100mVマイナスである電位から出発して過不動態電位までアノード分極されてよい。腐食現象の確率的性質のため、分極試験は、研究対象の各材料についてかつ使用すべき試験条件の下で少なくとも3回反復することができる。その上、試料に対する分極試験中に形成されるスケール/腐食生成物を、例えばエネルギ分散型X線分光法(EDS)と組合わせた走査型電子顕微鏡法(SEM)などを用いた事後解析を用いて金属組織学的に検査して、分極時点で材料が何らかの微細構造変化を起こしているか否かを評価することができる。例示的セットアップにおいては、調査すべき試験条件は、処理用ガス中のオキソ酸性度制御成分の異なる目標濃度であってよい。一例において、キャリヤガスとして、乾燥または湿潤のいずれかのアルゴンを使用してよく、例示的処理用ガスとしての湿潤アルゴンガスは、例えば30℃~90℃の範囲内の温度の恒温水浴中でアルゴンと水を接触させることによって生成されてよい。
【0035】
別の態様において、本発明は、材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定する方法において:
対象材料および金属水酸化物を選択するステップと、
不活性材料のるつぼを提供するステップと、
不活性材料のるつぼ内に金属水酸化物を適用し、金属水酸化物を加熱して金属水酸化物の溶融塩を提供するステップと、
対象材料でできた作用電極、基準電極および不活性金属でできた対電極を提供するステップと、
金属水酸化物の溶融塩中に、作用電極、基準電極および対電極を挿入するステップと、
金属水酸化物の溶融塩の上方にガスを適用し、ガスにオキソ酸性度制御成分を添加するステップと、
作用電極と対電極の間に電流を適用し、作用電極の分極を記録するステップと、
作用電極の分極から対象材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定するステップと、
を含む方法に関する。
【0036】
一実施形態においては、材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定する方法において、
対象材料および金属水酸化物を選択するステップと、
不活性材料のるつぼを提供するステップと、
不活性材料のるつぼ内に金属水酸化物を適用し、金属水酸化物を加熱して金属水酸化物の溶融塩を提供するステップと、
金属水酸化物の溶融塩中に対象材料でできた試験片を挿入するステップと、
オキソ酸性度制御成分を処理用ガスに添加し、処理用ガスを金属水酸化物の溶融塩と接触させるステップと、
試験片の重量損失から材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定するステップと、
を含む方法が提供されている。
【0037】
材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定する2つの方法は、第1の態様、すなわち溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法において、金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つの目標濃度を推定するのに適しており、対象材料は金属水酸化物の溶融塩を格納するためのコンテナのライニング材料であってよい。金属水酸化物は、任意の金属水酸化物、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物であってよく、オキソ酸性度制御成分は以上で定義された通りであってよい。不活性材料は、グラファイトなどの、溶融水酸化物腐食に対する優れた耐性を有すると考えられているあらゆる材料であってよい。
【0038】
該方法は、オキソ酸性度ウィンドウを推定するのに適している。第1の実施形態において、対象材料のオキソ酸性度ウィンドウは、作用電極の分極から決定される。第2の実施形態において、これは、一定のオキソ酸性度範囲内における試験片の重量損失を測定することによって材料の腐食速度を測定することにより行なわれる。金属水酸化物は、任意の金属水酸化物、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物であってよい。
【0039】
したがって、例えば制御された分圧でオキソ酸性度制御成分を含む処理用ガスと接触させられた金属水酸化物の溶融塩に対して曝露される前後の選択された材料の試験片の重量差を測定することによって、腐食速度が得られることになる。例えば、腐食速度は、試験片の厚みとの関係における時間あたりの長さの単位、例えばmm/年(mm/y)単位で表現されてよい。このとき、材料のオキソ酸性度ウィンドウは、最低腐食速度を提供するオキソ酸性度、例えばオキソ酸性度範囲として決定される。この状況において、MSR用としてエネルギまたは熱貯蔵用コンテナ内、または溶融水酸化物と共に動作するスクラバユニット内で使用すべき材料については、0.1mm/yの腐食速度が概して容認できるものとみなされる。
【0040】
対電極は、ニッケル例えば純ニッケルなどの、溶融水酸化物腐食に対する優れた耐性を有すると考えられているあらゆる金属、または溶融水酸化物腐食に対する優れた耐性を有すると考えられているニッケル系超合金などの金属で作られてよい。基準電極は、アルミナ、例えばベーターアルミナナトリウム基準電極をベースとしていてよい。
【0041】
したがって、金属水酸化物の溶融塩のオキソ酸性度を推定し、制御された分圧でオキソ酸性度制御成分を含む処理用ガスと金属水酸化物の溶融塩とを接触させることにより、オキソ酸性度ウィンドウ内に、すなわちライニング材料にとってのオキソ中性条件を提供して金属水酸化物の溶融塩によるライニング材料の腐食を最小限に抑えるように、オキソ酸性度を維持することができる。例えば、オキソ酸性度制御成分は水蒸気であってよく、水蒸気は処理用ガスに添加されて、処理用ガス中に水の分圧を提供してよい。金属水酸化物の溶融塩は、高圧でも水の沸点よりもはるかに高い温度にあり、処理用ガスに添加される水は、金属水酸化物の溶融塩の状態の如何に関わらず蒸気の形をとることになる。処理用ガス中の水蒸気濃度は、体積百分率として表現されてよく、処理用ガス中の水蒸気の濃度は、自由に選択されてよい。例えば、処理用ガス中の水蒸気の濃度は、5%V/V~95%V/Vの範囲内にあってよい。相応して、処理用ガス中の不活性担体濃度は、95%V/V~5%V/Vの範囲内にあってよい。しかしながら、水蒸気は、概して、処理用ガス中のその分圧の観点から見て説明される。水蒸気の分圧は、例えば0.01バール~2バール、例えば0.02バール~0.5バールの範囲内にあってよい。該方法の具体的例に適した水蒸気分圧、そして処理用ガス量もまた、金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つのものの目標濃度の推定値によって決定される。
【0042】
一具体例において、オキソ酸性度制御成分は水蒸気であり、水蒸気は処理用ガスに添加されて、処理用ガス中の水分圧を提供する。例えば、水蒸気は、水と処理用ガスとを接触させることによって処理用ガスに添加されてよい。水と処理用ガスとを接触させるためのあらゆる方法を使用してよく、一例においては、処理用ガスは水浴、例えば恒温水浴を通して泡立てられる。水浴を通して泡立てられた処理用ガスは、いかなる含水量も無い不活性キャリヤガスであってよく、あるいは、処理用ガスは、すでに一定量、例えば微量の水蒸気、特に目標濃度より低い量の水を含んでいてよい。水浴を通して処理用ガスを泡立てた後、今や水蒸気を含む処理用ガスは、金属水酸化物の溶融塩と接触させられる。処理用ガス中の水蒸気の分圧は、水浴の温度を制御すること、水浴中の処理用ガスの滞留時間を制御すること、および水浴中の処理用ガスの圧力を制御すること、のうちの少なくとも1つによって制御されてよい。概して、水浴は、水浴中の水が液体であるように水の沸点より低い温度におかれることになる。処理用ガス中で適切な水の分圧を得るための最適な温度範囲は、25℃~90℃、例えば30℃~50℃の範囲内にある。
【0043】
本発明のいずれの実施形態も、本発明のあらゆる態様において使用されてよく、1つの具体的実施形態についてのいずれの利点も、実施形態が1つの具体的態様において使用される場合に等しく当てはまる。
【0044】
以下では、実施例を用いて、概略的図面を参照しながら、本発明についてより詳細に説明するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、本開示に係る金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つのものの目標濃度を推定するための電気化学セルを示す。
図2図2は、Ni、FeおよびCrについての潜在的オキソ酸性度ダイヤグラムを示す。
図3図3は、処理用ガス中の水分圧と水酸化ナトリウムの溶融塩中のHOの定常状態濃度との間の経験的相関を示す。
図4図4は、600℃で溶融NaOH中のNi合金について測定された動電位データを示す。
図5図5は、溶融NaOH中のNi合金についての腐食速度を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、図面中に例示されている実施形態に限定されない。したがって、添付クレーム中で言及されている特徴の後に引用符号が続いている場合、このような符号は単にクレームの理解度を高める目的でのみ含められており、いかなる形であれクレームの範囲を限定していないということを理解すべきである。
【0047】
本明細書およびクレーム中で使用される「comprising(~を含む)」なる用語は、「少なくとも部分的に~で構成されている」ことを意味している。「comprising」なる用語を含む本明細書およびクレーム内の記載を解釈する場合には、各記載においてこの用語により前置きされている特徴以外の特徴も同様に存在し得る。「comprise(~を含む)」および「comprised(含まれた)」といった関連する用語は、同様に解釈されるべきである。
【0048】
本発明は、溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整する方法に関する。該方法についてここで、以下の非限定的実施例において例示する。
【実施例
【0049】
実施例1
処理用ガス中の水分圧と、水酸化ナトリウムの溶融塩中のHOの定常状態濃度の間の相関を決定するために、実験をセットアップした。具体的には、純ニッケルで作られた容器内のグラファイトるつぼに、NaOHを添加した。容器は、るつぼの上方のガスの組成を制御できるように、ガスを添加するための開口部およびガスを除去するための開口部を伴う蓋を有し、容器はさらに、温度計およびガス分析器プローブ用の開口部を有していた。容器をミネラルウールのコンテナ内に設置し、ミネラルウール内の電熱線に電流を印加することによって加熱し、るつぼを600℃まで加熱して水酸化ナトリウムを溶融させた。水酸化ナトリウムがひとたび溶融したならば、るつぼの上方のガス中の水蒸気量を漸進的に増大させ、ガス中の含水量を増大させた後、溶融した水酸化ナトリウム中の水の含有量を測定した。結果は図3に示されており、この図は、ガス中の水蒸気と溶融した水酸化ナトリウム中の含水量の間に線形相関が見られたことを示している。
【0050】
実施例2
70%w/w超のニッケルを含有する2つの高Ni含有量の市販の合金を分析して、目標濃度を決定した。1つの合金は、約90%w/wのニッケルおよび鉄、マンガン、ケイ素、銅および炭素を含有する。鉄、マンガン、ケイ素、銅および炭素は微量とみなすことのできる量で存在するにせよ、これらの量は、目標濃度を決定するために合金を分析することを要求するのに充分なものである。他の合金は、70%w/w超のニッケル、10%w/w未満のクロム、5%w/w未満の鉄および他の成分を含有する。これらの合金についてのHO、O2-およびOHの目標濃度を、純粋な形での個別の成分の目標濃度から予測することはできない。
【0051】
2つの合金の試料を、例示的金属水酸化物塩として水酸化ナトリウムを用いてグラファイト基準るつぼ内で分析した。水酸化ナトリウムの融点と900℃の範囲内の温度で分析を行なった。オキソ酸性度制御成分として水蒸気を使用し、図3に記載の相関関係から、水酸化ナトリウムの溶融塩中の水の量を得た。
【0052】
具体的には、2つの合金は、図1に例示されているように電気化学セル1内で分析された。90%w/w超のニッケルを含有する合金は、直径1mmのワイヤとしてQ-metalによって供給され、70%w/w超のニッケルを含有する合金は、Merckにより直径1mmのワイヤとして供給された。電気化学セル1は、グラファイト製のるつぼ20を格納する純ニッケル製の容器2を有していた。るつぼ20に対し、NaOHのペレットを添加し、るつぼ20を伴う容器2を、絶縁材料23としてのミネラルウールのコンテナ内に設置し、銅でできた電熱線231に対して電流を印加することによって加熱して、NaOHを溶融させ、金属水酸化物の溶融塩3を提供した。NaOHは、600℃で98%以上の公称純度を有するHoneywellから入手したものであった。
【0053】
容器2は、セル支持体24上に組付けられた蓋21を有し、この蓋21は、作用電極11、基準電極12、対電極13および熱電対14用ならびにガス入口41およびガス出口42用の開口部22を有していた。開口部22は、金属水酸化物の溶融塩3と適切に接触する任意の物品またはデバイス用に使用されてよいと理解すべきである。ガス入口41およびガス出口42は、分析すべき処理用ガスを添加/除去するためのステンレス鋼製パイプおよびポンプを格納していた。
【0054】
作用電極11は、分析すべき合金の1つでできており、基準電極12と対電極13は純ニッケルでできていた。基準電極12は、ベーターアルミナ121の膜121内に格納されていた。電極11、12、13を、コンピュータ(図示せず)によって制御されたPARSTAT多重チャネルポテンシオスタット/ガルバノスタット(図示せず)に連結した。作用電極11と対電極13の間に直流を通すことによって作用電極と基準電極の間の電位を維持するようにポテンシオスタット/ガルバノスタットをセットアップし、作用電極11の分極を分析するために電位を連続的に変更した。具体的には、この変更は、20mV/sまたは50mV/sの掃引速度で行なった。
【0055】
実験により分極ダイヤグラムを作製する前に、開路条件下、すなわち印加された電流がゼロであった基準電極12に対して、作用電極11の腐食電位を決定した。通常、数分後に開路電位のおおよその恒常値が達成された。その後、開路電位よりも100mVマイナスである電位から出発して過不動態電位まで、作用電極11をアノード分極した。腐食現象の確率的性質のため、作用電極11材料の各々について3回、分極試験を反復した。
【0056】
その上、試験合金に対する分極試験中のスケール/腐食生成物の形成を、エネルギ分散型X線分光法と組合わせた走査型電子顕微鏡法(SEM/EDS)を用いた事後解析を用いて、金属組織学的に検査して、材料が分極後に何らかの微細構造変化を起こしているか否かを評価した。
【0057】
キャリヤガスとしてアルゴンを使用し、36℃、50℃または90℃の温度の水浴(図示せず)を通してアルゴンを泡立てることによって、例示的処理用ガスとして湿潤アルゴンを生成した。ガス入口41を介して容器2内に湿潤アルゴンを導入した。圧力を周囲圧力に維持するために、ガス出口42を介して余剰のガスを容器2から除去した。
【0058】
この実践例の結果は、所与の材料の最適なオキソ酸性度ウィンドウを発見するための技法を示しているが、結果は網羅的ではない。オキソ酸性度ウィンドウの正確な評価のために、多数の試験条件を査定することができる。さらに、実施例では、溶融塩の1つの温度が使用されていたが、温度過渡を考慮に入れる目的で実践的商業セットアップにおける好適なオキソ酸性度ウィンドウを定義するために、多数の温度を適切に評価することができる。
【0059】
約90%w/wのニッケルを含有するニッケル合金についての結果は、図4に示されており、この図は、決定された電流対電位の変動を示す。溶融塩中の水の定常状態濃度を調整するために使用された処理用ガス中の水の異なる分圧(ppHO)で同じタイプの試料について異なる電気化学的応答が得られた。異なるプロファイルを比較することにより、発明人らは、フルスケールのセットアップのオキソ酸性度制御において使用すべき目標オキソ酸性度条件を定義した。図4は、全圧1atmのカバーガス中のppHO=5.5968%についての明確な腐食軽減を示している。プロット中の2つの主要な特徴は、水分圧を調整することによる改善を標示している。第1に、0.4Vと1.2Vの間の電位領域内のピークは、腐食電位領域に割当てられる。電位が高くなればなるほど、動作条件における材料の耐食性は高くなる。溶融塩中への水の添加が無い場合に対応する黒線は、0.6Vに腐食電位のピークがあり、最悪の性能を示した。塩はオキソ塩基性が極めて高く、容易に試料を腐食させた。特筆すべきは、処理用ガスガス中のppHOの量が過剰な場合も同様に、程度はより低いものの、試料の腐食の軽減度が低かった。青線および緑線は、塩のオキソ酸性条件に対応し、0.77V前後の腐食電位を決定している。最後に、赤線は、目標オキソ酸性度の入念な制御によって達成可能な腐食軽減を示している。これらの条件下では、溶融塩がオキソ中性条件にある、すなわち選択されたライニング材料に関してオキソ塩基性とオキソ酸性の間にあると、発明人らは考えている。このオキソ酸性度ウィンドウ内では、腐食電位ピークは大幅に増大して、1.1Vの値に達する可能性がある。
【0060】
さらに、プロットの別の領域は、正しい水目標濃度により達成される腐食軽減を示す。1.2V~2Vの電位領域においては、保護的不動態層が観察できる。電流が低くなればなるほど、保護的不動態化は強くなる。ライニング材料の目標濃度が正しい場合には、材料上の界面化学は安定しており、空気/湿気に曝露された従来のステンレス鋼において得られるCr酸化物不動態化層と同様に、表面上の安定した金属酸化物の形成が可能となり、これが表面下の腐食していない材料層を保護する。プロットのこの領域においては、ここでもまた、第1のppHO(赤線)が腐食からの保護に最高の性能を示し、その一方で、オキソ塩基性レジーム(黒線)は材料上の安定した酸化物層の形成を促進する上で最悪であり、第2(緑)および第3(青色)のppHO濃度はオキソ酸性条件および類似の保護効果を決定している、ということが観察できる。
【0061】
実施例3
実施例2でも使用された90%のニッケル合金を分析するために、実験をセットアップした。例示的金属水酸化物塩として水酸化ナトリウムを伴うアルミナるつぼ内で、合金の試料を分析した。水酸化ナトリウムの融点と900℃の範囲内の温度で分析を行なった。オキソ酸性度制御成分として水蒸気を使用し、図3に描かれた相関から、水酸化ナトリウムの溶融塩中の水の量を得た。
【0062】
具体的には、アルミナるつぼに対し、NaOHのペレットを添加し、るつぼを、絶縁材料としてのミネラルウールのコンテナ内に設置し、るつぼの周りに巻き付けられた銅の電熱線に対して電流を印加することによって加熱して、NaOHを溶融させ、金属水酸化物の溶融塩を提供した。NaOHは、600℃で98%以上の公称純度を有するHoneywellから入手したものであった。
【0063】
合金は、厚み3mm、長さ20mm、幅7mmの試験片としてQ-metalによって供給された。試験片を、秤量前に洗浄し乾燥させ、その後溶融NaOH中に挿入した。一週間後に、溶融NaOHから試験片を取出し、溶融NaOHの残渣を試験片の表面から除去した後、周囲温度まで試験片を冷却して秤量した。各試験片の重量損失を記録し、試験片の表面積(すなわち長さ×幅)との関係においてmg/cm単位で表現した。溶融NaOHに対する曝露の持続時間から、腐食速度を計算し、試験片の厚みとの関係においてmm/年(mm/y)単位で表現した。結果は図5に示されており、この図は、±0.1mm/yの腐食速度で決定された異なるオキソ酸性度レベルにおける重量変化および腐食速度を示している。溶融塩中の定常状態濃度を調整するために使用された処理用ガス中の水の異なる分圧(ppHO)で、同じタイプの試料について異なる腐食速度が得られた。図5は、重量変化および誘導結合プラズマ発光分光法(ICP-OES)の結果から得られた結果を示す。重量変化計算からの最低の腐食速度は2.27のp[HO]で0mm/yであることが分かっている。
【符号の説明】
【0064】
1 電気化学セル
2 容器
20 るつぼ
21 蓋
22 開口部
23 絶縁材料
231 電熱線
24 セル支持体
3 金属水酸化物の溶融塩
11 作用電極
12 基準電極
121 膜
13 対電極
14 熱電対
41 ガス入口
42 ガス出口
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化物塩がエネルギまたは熱貯蔵のための媒質を提供するエネルギまたは熱貯蔵コンテナ内で溶融金属水酸化物塩のオキソ酸性度を調整する方法において:
金属水酸化物の溶融塩中のHO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つの目標濃度を推定するステップと;
オキソ酸性度制御成分を提供するステップと;
前記オキソ酸性度制御成分と金属水酸化物の前記溶融塩とを接触させて金属水酸化物の前記溶融塩のオキソ酸性度を調整するステップと;を含む方法。
【請求項2】
前記オキソ酸性度制御成分が、不活性キャリヤガスを含む処理用ガス中に提供され、前記方法がさらに、前記オキソ酸性度制御成分を含む前記処理用ガスと金属水酸化物の前記溶融塩とを接触させて、金属水酸化物の前記溶融塩の前記オキソ酸性度を調整するステップを含んでいる、請求項1に記載の溶融塩の前記オキソ酸性度を調整する方法。
【請求項3】
前記オキソ酸性度制御成分が水蒸気であり、前記水蒸気が前記処理用ガスに添加されて、前記処理用ガス中に水の分圧を提供する、請求項2に記載の溶融塩の前記オキソ酸性度を調整する方法。
【請求項4】
前記水蒸気が、水浴を通して前記処理用ガスを泡立てることによって前記処理用ガスに添加され、前記処理用ガス中の前記水蒸気の前記分圧が:
前記水浴の温度を制御すること、
前記水浴中の前記処理用ガスの滞留時間を制御すること;および
前記水浴中の前記処理用ガスの圧力を制御すること;
のうちの少なくとも1つによって制御される、請求項3に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項5】
前記オキソ酸性度制御成分が、前記オキソ酸性度制御成分を固体状態から昇華させることによって前記処理用ガスに添加される、請求項2に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項6】
前記オキソ酸性度制御成分が、スプレーまたはミスト生成を介して液体として前記処理用ガスに添加される、請求項2に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項7】
前記オキソ酸性度制御成分が、H O、H およびHFから選択される、請求項2に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項8】
金属水酸化物の前記溶融塩が、ライニング材料で作られた内側表面を有するコンテナ内に配置され、前記OH、O2-、およびHOのうちの少なくとも1つの前記目標濃度が前記ライニング材料について定義されている、請求項1ないしのいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項9】
金属水酸化物の前記溶融塩が静止しているかまたは、強制対流または強制循環により前記コンテナ内を循環させられている、請求項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項10】
前記オキソ酸性度制御成分が、前記ライニング材料から0cm~100cmの範囲内の距離のところに配置された金属水酸化物の前記溶融塩と接触させられる、請求項またはに記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項11】
金属水酸化物の前記溶融塩に熱が加えられるかまたは前記溶融塩から熱が除去される、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項12】
前記コンテナが、金属水酸化物の前記溶融塩中で0.1℃/cm~10℃/cmの範囲内の温度勾配を創出するように構成された熱源および/またはヒートシンクを含む、請求項ないし10のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項13】
金属水酸化物の前記溶融塩の上方のカバーガスが、周囲圧力より高い圧力に維持されている、請求項1ないし12のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項14】
前記カバーガスが前記処理用ガスである、請求項13に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項15】
前記処理用ガスが、金属水酸化物の前記溶融塩を通して泡立てられる、請求項2ないし14のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項16】
前記HO、O2-およびOHのうちの少なくとも1つの前記目標濃度が、金属水酸化物の前記塩の融点および沸点の範囲内の少なくとも3つの異なる温度で推定される、請求項1ないし15のいずれか1項に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項17】
材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定する方法において:
対象材料および金属水酸化物を選択するステップと、
不活性材料のるつぼを提供するステップと、
不活性材料の前記るつぼ内に前記金属水酸化物を適用し、前記金属水酸化物を加熱して前記金属水酸化物の溶融塩を提供するステップと、
前記対象材料でできた作用電極、基準電極および不活性金属でできた対電極を提供するステップと、
前記金属水酸化物の前記溶融塩中に、前記作用電極、前記基準電極および前記対電極を挿入するステップと、
前記金属水酸化物の前記溶融塩の上方にガスを適用し、前記ガスにオキソ酸性度制御成分を添加するステップと、
前記作用電極と前記対電極の間に電流を適用し、前記作用電極の分極を記録するステップと、
前記作用電極の前記分極から前記対象材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項18】
前記オキソ酸性度制御成分が、H O、H およびHFから選択される、請求項17に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項19】
材料のオキソ酸性度ウィンドウを決定する方法において、
対象材料および金属水酸化物を選択するステップと、
不活性材料のるつぼを提供するステップと、
不活性材料の前記るつぼ内に前記金属水酸化物を適用し、前記金属水酸化物を加熱して前記金属水酸化物の溶融塩を提供するステップと、
前記金属水酸化物の前記溶融塩中に前記対象材料でできた試験片を挿入するステップと、
オキソ酸性度制御成分を処理用ガスに添加し、前記処理用ガスを前記金属水酸化物の前記溶融塩と接触させるステップと、
前記試験片の重量損失から前記材料の前記オキソ酸性度ウィンドウを決定するステップと、
を含む方法。
【請求項20】
前記オキソ酸性度制御成分が、H O、H およびHFから選択される、請求項19に記載の溶融塩のオキソ酸性度を調整する方法。
【請求項21】
コンテナ、ヒートシンクおよび/または熱源そして前記コンテナ内に配置された溶融金属水酸化物塩を含むエネルギ貯蔵システムにおいて、金属水酸化物の前記溶融塩が、前記ヒートシンクおよび/または前記熱源から得られる強制対流によって前記コンテナ内で循環させられ、このヒートシンクおよび/またはこの熱源が、状況に応じて前記ヒートシンクおよび/または前記熱源から、金属水酸化物の前記溶融塩中の1点までの距離にわたって0.1℃/cm~10℃/cmの範囲内の温度勾配を創出するように構成されている、エネルギ貯蔵システム。
【請求項22】
前記ヒートシンクおよび/または前記熱源が、前記ライニング材料から0cm~100cmの範囲内の距離にわたり金属水酸化物の前記溶融塩と接触するように構成されている、請求項20に記載のエネルギ貯蔵システム。
【請求項23】
状況に応じて前記ヒートシンクおよび/または前記熱源から金属水酸化物の前記溶融塩中の前記点までの前記距離が、5cm~20cmの範囲内にある、請求項21または22に記載のエネルギ貯蔵システム。
【請求項24】
前記溶融金属水酸化物塩の前記オキソ酸性度が、請求項1ないし16のいずれか1項に記載の方法を用いて調整される、請求項21ないし23のいずれか1項に記載のエネルギ貯蔵システム。
【国際調査報告】