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特表2024-539007電気光学ディスプレイを駆動する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】電気光学ディスプレイを駆動する方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/34 20060101AFI20241018BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20241018BHJP
   G02F 1/16766 20190101ALI20241018BHJP
【FI】
G09G3/34 C
G09G3/20 612R
G09G3/20 624D
G09G3/20 624E
G09G3/20 641C
G09G3/20 621B
G09G3/20 622C
G09G3/20 622D
G09G3/20 670K
G09G3/20 642A
G09G3/20 621A
G02F1/16766
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522271
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 US2022048513
(87)【国際公開番号】W WO2023081119
(87)【国際公開日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】63/275,515
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】シム, テック ピン
(72)【発明者】
【氏名】ホー, チー-シアン
(72)【発明者】
【氏名】アムンドソン, カール レイモンド
【テーマコード(参考)】
2K101
5C080
【Fターム(参考)】
2K101AA04
2K101EC08
2K101ED13
2K101ED75
2K101EE01
2K101EJ11
5C080AA13
5C080AA16
5C080BB05
5C080DD05
5C080DD29
5C080EE29
5C080FF03
5C080FF11
5C080JJ03
5C080JJ04
5C080JJ05
(57)【要約】
本発明は、共通電極と、ディスプレイピクセル電極に関連付けられたディスプレイピクセルとの間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体と、n-型トランジスタを介して、電圧を共通電極およびディスプレイピクセル電極に印加することによって、フレームを備えている波形をディスプレイピクセルに印加することが可能であるディスプレイコントローラ回路に電気的に結合されたn-型トランジスタとを有する電気光学ディスプレイを駆動する方法および関連装置を提供する。方法は、1つ以上の波形をディスプレイピクセルに印加し、ディスプレイピクセルに近接する電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動することと、n-型トランジスタの漏出伝導効果を利用して、電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放することとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学ディスプレイであって、前記電気光学ディスプレイは、
共通電極と、ディスプレイピクセルに関連付けられたディスプレイピクセル電極との間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体と、
前記共通電極と、前記ディスプレイピクセル電極に関連付けられたn-型トランジスタと電気通信するディスプレイコントローラ回路と
を備え、
前記ディスプレイコントローラ回路は、1つ以上の時間依存電圧を前記共通電極と前記ディスプレイピクセル電極との間に印加することによって、前記ディスプレイピクセルに波形を印加することが可能であり、前記1つ以上の時間依存電圧は、前記n-型トランジスタを介して前記ディスプレイピクセル電極に印加され、
前記ディスプレイコントローラ回路は、
1つ以上の波形を前記ディスプレイピクセルに印加し、前記ディスプレイピクセルに近接する前記電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動することと、
保持期間にわたって、前記ディスプレイピクセルを前記第1の光学状態に維持することと、
前記ディスプレイピクセルを浮動状態に置くことと、
実質的にゼロボルトを前記共通電極および前記ディスプレイピクセル電極に印加することと、
低ゲート電圧レール電圧を前記n-型トランジスタのゲート電極に印加することと
を行うように構成され、
前記低ゲート電圧レール電圧は、前記電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路を前記n-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさの負の電圧であり、前記低ゲート電圧レール電圧は、前記n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する、電気光学ディスプレイ。
【請求項2】
ディスプレイピクセルのアクティブ行列をさらに備え、前記ディスプレイピクセルは、前記ディスプレイピクセルのアクティブ行列の前記ディスプレイピクセルのうちの1つである、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項3】
前記1つ以上の波形の各々は、1つ以上のフレームを備えている、請求項2に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項4】
前記保持期間は、1つ以上のフレームを備えている、請求項3に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項5】
前記漏出伝導経路は、前記n-型トランジスタのドレイン電極と前記n-型トランジスタのソース電極との間に形成される、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項6】
前記第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、ゲートオフ電圧を前記n-型トランジスタのゲート電極に印加することを含み、前記ゲートオフ電圧は、前記n-型トランジスタのドレイン電極および前記n-型トランジスタのソース電極を通した伝導経路の形成を防止するために十分な負の電圧である、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項7】
前記第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、前記共通電極と電圧源との間の電気接続を接続解除することを含む、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項8】
前記保持期間にわたって、前記ディスプレイピクセルを前記第1の光学状態に維持することは、
実質的に等しい電圧を前記共通電極および前記ディスプレイピクセル電極に印加することと、
ゲートオン電圧を前記n-型トランジスタのゲート電極に印加することと
を含み、
前記ゲートオン電圧は、前記n-型トランジスタを通した伝導経路を作成するために十分な正の電圧である、請求項1に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項9】
電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記電気光学ディスプレイは、共通電極とディスプレイピクセル電極に関連付けられたディスプレイピクセルとの間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体を備え、前記ディスプレイピクセルは、ディスプレイピクセル電極、およびディスプレイコントローラ回路に電気的に結合されたn-型トランジスタに関連付けられており、前記ディスプレイコントローラ回路は、n-型トランジスタを介して、1つ以上の時間依存電圧を前記共通電極と前記ディスプレイピクセル電極との間に印加することによって、波形を前記ディスプレイピクセルに印加することが可能であり、前記1つ以上の時間依存電圧は、前記ディスプレイピクセル電極に印加され、
前記方法は、順に、
1つ以上の波形を前記ディスプレイピクセルに印加し、前記ディスプレイピクセルに近接する前記電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動するステップと、
保持期間にわたって、前記ディスプレイピクセルを前記第1の光学状態に維持するステップと、
前記ディスプレイピクセルを浮動状態に置くステップと、
実質的にゼロボルトを前記共通電極および前記ディスプレイピクセル電極に印加するステップと、
低ゲート電圧レール電圧を前記n-型トランジスタのゲート電極に印加するステップと
を含み、
前記低ゲート電圧レール電圧は、前記電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路を前記n-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさの負の電圧であり、前記低ゲート電圧レール電圧は、前記n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する、方法。
【請求項10】
ディスプレイピクセルのアクティブ行列をさらに備え、前記ディスプレイピクセルは、前記ディスプレイピクセルのアクティブ行列の前記ディスプレイピクセルのうちの1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記1つ以上の波形の各々は、1つ以上のフレームを備えている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記保持期間は、1つ以上のフレームを備えている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記漏出伝導経路は、前記n-型トランジスタのドレイン電極と前記n-型トランジスタのソース電極との間に形成される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、ゲートオフ電圧を前記n-型トランジスタのゲート電極に印加することを含み、前記ゲートオフ電圧は、前記n-型トランジスタのドレイン電極および前記n-型トランジスタのソース電極を通した伝導経路の形成を防止するために十分な負の電圧である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、前記共通電極と電圧源との間の電気接続を接続解除することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記保持期間にわたって、前記ディスプレイピクセルを前記第1の光学状態に維持することは、
実質的に等しい電圧を前記共通電極および前記ディスプレイピクセル電極に印加することと、
ゲートオン電圧を前記n-型トランジスタのゲート電極に印加することと
を含み、
前記ゲートオン電圧は、前記n-型トランジスタを通した伝導経路を作成するために十分な正の電圧である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
電気光学ディスプレイであって、前記電気光学ディスプレイは、
共通電極と、ディスプレイピクセルに関連付けられたディスプレイピクセル電極との間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体と、
前記共通電極と、前記ディスプレイピクセル電極に関連付けられたn-型トランジスタと電気通信するディスプレイコントローラ回路と
を備え、
前記ディスプレイコントローラ回路は、n-型トランジスタを介して、1つ以上の時間依存電圧を前記共通電極と前記ディスプレイピクセル電極との間に印加することによって、波形を前記ディスプレイピクセルに印加することが可能であり、前記1つ以上の時間依存電圧は、前記ディスプレイピクセル電極に印加され、
前記ディスプレイコントローラ回路は、
1つ以上の波形を前記ディスプレイピクセルに印加し、前記ディスプレイピクセルに近接する前記電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動することと、
実質的にゼロボルトを前記共通電極および前記ディスプレイピクセル電極に印加することと、
低ゲート電圧レール電圧を前記n-型トランジスタのゲート電極に印加することと
を行うように構成され、
前記低ゲート電圧レール電圧は、前記電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路を前記n-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさの負の電圧であり、前記低ゲート電圧レール電圧は、前記n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する、電気光学ディスプレイ。
【請求項18】
ディスプレイピクセルのアクティブ行列をさらに備え、前記ディスプレイピクセルは、前記ディスプレイピクセルのアクティブ行列の前記ディスプレイピクセルのうちの1つである、請求項17に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項19】
前記1つ以上の波形の各々は、1つ以上のフレームを備えている、請求項18に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項20】
前記保持期間は、1つ以上のフレームを備えている、請求項19に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項21】
伝導経路は、前記n-型トランジスタのドレイン電極と前記n-型トランジスタのソース電極との間に形成される、請求項17に記載の電気光学ディスプレイ。
【請求項22】
電気光学ディスプレイを駆動する方法であって、前記電気光学ディスプレイは、共通電極とディスプレイピクセル電極に関連付けられたディスプレイピクセルとの間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体を備え、前記ディスプレイピクセルは、ディスプレイピクセル電極、およびディスプレイコントローラ回路に電気的に結合されたn-型トランジスタに関連付けられており、前記ディスプレイコントローラ回路は、n-型トランジスタを介して、1つ以上の時間依存電圧を前記共通電極と前記ディスプレイピクセル電極との間に印加することによって、波形を前記ディスプレイピクセルに印加することが可能であり、前記1つ以上の時間依存電圧は、前記ディスプレイピクセル電極に印加され、
前記方法は、順に、
1つ以上の波形を前記ディスプレイピクセルに印加し、前記ディスプレイピクセルに近接する前記電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動するステップと、
実質的にゼロボルトを前記共通電極および前記ディスプレイピクセル電極に印加するステップと、
低ゲート電圧レール電圧を前記n-型トランジスタのゲート電極に印加するステップと
を含み、
前記低ゲート電圧レール電圧は、前記電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路を前記n-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさの負の電圧であり、前記低ゲート電圧レール電圧は、前記n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する、方法。
【請求項23】
ディスプレイピクセルのアクティブ行列をさらに備え、前記ディスプレイピクセルは、前記ディスプレイピクセルのアクティブ行列の前記ディスプレイピクセルのうちの1つである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記1つ以上の波形の各々は、1つ以上のフレームを備えている、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記保持期間は、1つ以上のフレームを備えている、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記漏出伝導経路は、前記n-型トランジスタのドレイン電極と前記n-型トランジスタのソース電極との間に形成される、請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その全内容が本明細書に組み込まれる2021年11月4日に出願された米国仮特許出願第63/275,515号の優先権を主張する。さらに、本明細書で参照される任意の特許、公開出願、または他の公開された著作物の全内容は、参照することによって、それらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、反射性電気光学ディスプレイおよびそのようなディスプレイにおける使用のための材料に関する。より具体的に、本発明は、減らされた残留電圧を伴うディスプレイおよび電気光学ディスプレイにおける残留電圧を減らす駆動方法に関する。
【背景技術】
【0003】
直流電流(DC)非平衡波形によって駆動される電気光学ディスプレイは、残留電圧を生じさせ得、この残留電圧は、ディスプレイピクセルの開回路電気化学電位を測定することによって確認可能である。残留電圧が原因および影響の両方において電気泳動および他のインパルス駆動式電気光学ディスプレイにおけるより一般的現象であることが、見出されている。DC非平衡がいくつかの電気泳動ディスプレイの長期寿命劣化を引き起こし得ることも、見出されている。
【0004】
用語「残留電圧」はまた、時として、全体的現象を指す便利な用語としても使用される。しかしながら、インパルス駆動式電気光学ディスプレイの切り替え挙動のための基本は、電気光学媒体を横断した電圧インパルス(時間に対する電圧の積分)の印加である。残留電圧は、駆動パルスの印加の直後にピーク値に到達し得、その後、実質的に指数関数的に減衰し得る。かなりの期間にわたる残留電圧の存続は、「残留インパルス」を電気光学媒体に印加し、厳密にいえば、残留電圧ではなく、この残留インパルスが、残留電圧によって生じると通常考えられている電気光学ディスプレイの光学状態への影響に関与し得る。
【0005】
理論上、残留電圧の影響は、直接、残留インパルスに対応するはずである。しかしながら、実際は、インパルス切り替えモデルは、低電圧において正確さを失い得る。いくつかの電気光学媒体は、約1Vの残留電圧が、駆動パルスが終了した後、媒体の光学状態の顕著な変化を引き起こさないこともあるように、ある閾値を有する。しかしながら、本明細書に説明される実験において使用される好ましい電気泳動媒体を含む他の電気光学媒体では、約0.5Vの残留電圧が、光学状態の顕著な変化を引き起こし得る。したがって、2つの等価残留インパルスは、実際の結果において異なり得、残留電圧の影響を減らすために電気光学媒体の閾値を増加させることが、有用であり得る。E Ink Corporationは、駆動パルスが終了した後にいくつかの状況において経験される残留電圧がディスプレイ画像を直ちに変化させることを防止するための適正な「小さい閾値」を有する電気泳動媒体を製作した。閾値が不適正である場合、または、残留電圧が高すぎる場合、ディスプレイは、キックバック/自己消去または自己改良現象を提示し得る。用語「光学キックバック」は、本明細書では、少なくとも部分的にピクセルの残留電圧の解放に対する応答を引き起こすピクセルの光学状態の変化を説明するために使用される。
【0006】
残留電圧が、小閾値を下回るときでも、それらが、依然として、次の画像更新が生じるときに存続する場合、それらは、深刻な影響を画像切り替えに及ぼし得る。例えば、電気泳動ディスプレイの画像更新中、+/-15V駆動電圧が、電気泳動粒子を移動させるために印加されると仮定する。+1V残留電圧が、前の更新から存在する場合、駆動電圧は、事実上、+15V/-15Vから+16V/-14Vにシフトされるであろう。その結果、ピクセルは、正の残留電圧を有するか、負の残留電圧を有するかに応じて、暗色または白色状態に向かって付勢されるであろう。さらに、この影響は、残留電圧の減衰率に起因して、経過時間に伴って変動する。前の画像更新の直後に15Vの300ms駆動パルスを使用して白色に切り替えられるピクセル内の電気光学材料は、実際に、300msにわたって16Vにより近い波形を経験し得る一方、正確に同じ駆動パルス(15V、300ms)を使用して1分後に白色に切り替えられるピクセル内の材料は、実際に、300msにわたって15.2Vにより近い波形を経験し得る。その結果、ピクセルは、白色の著しく異なる陰影を示し得る。
【0007】
残留電圧場が前の画像による複数のピクセルを横断して生成された場合(例えば、白色背景上の暗色線)、残留電圧も、類似パターンでディスプレイを横断して整列させられ得る。実際の問題として、ディスプレイ性能に及ぼす残留電圧の最も顕著な影響は、残影であり得る。この問題は、前に記載された問題、すなわち、DC非平衡(例えば、15V/15Vの代わりに、16V/14V)に加え、電気光学媒体のゆっくりとした寿命劣化の原因であり得る。
【0008】
残留電圧が、ゆっくりと減衰し、ほぼ一定である場合、波形をシフトさせることにおけるその影響は、画像更新毎に変動せず、実際に、迅速に減衰する残留電圧ほど残影を生成しないこともある。したがって、10分後にあるピクセルを更新し、11分後に別のピクセルを更新することによって経験される残影は、直ちにあるピクセルを更新し、1分後に別のピクセルを更新することによって経験される残影よりはるかに少ない。逆に言えば、次の更新が生じる前にゼロに近づくように迅速に減衰する残留電圧は、実際、検出可能な残影を引き起こさないこともある。
【0009】
複数の潜在的残留電圧源がある。残留電圧の1つの大きな原因は、ディスプレイを形成する種々の層の材料内のイオン分極であると考えられる(但し、いくつかの実施形態は、この考えによっていかようにも限定されない)。
【0010】
要約すると、現象としての残留電圧は、画像更新中の経過時間に伴って変動し得るある程度の感度を伴って、種々の点において、画像残影または視覚的アーチファクトとして現れ得る。残留電圧は、DC非平衡も生成し、最終ディスプレイ寿命を短縮させ得る。残留電圧の影響は、したがって、電気泳動または他の電気光学デバイスの品質に有害であり、残留電圧自体および残留電圧の影響に対するデバイスの光学状態の感度の両方を最小化することが望ましくあり得る。
【0011】
したがって、電気光学ディスプレイの残留電圧を解放することは、残留電圧がすでに低い状況でも、表示される画像の品質を改良し得る。本発明者らは、電気光学ディスプレイの残留電圧を解放するための従来の技法が、残留電圧を完全に解放しないこともあることを認識および理解している。すなわち、残留電圧を解放する従来の技法は、電気光学ディスプレイが少なくとも低残留電圧を保持する結果をもたらし得る。したがって、残留電圧を電気光学ディスプレイからより良好に完全に解放するための技法が、必要とされる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、電気光学ディスプレイのディスプレイピクセルを駆動する方法を提供し、方法は、負のバイアス電圧をピクセルトランジスタのゲート-ソースに印加し、トランジスタにおける漏出伝導を誘発し、それによって、残留電圧を排出させるための伝導経路を作成することを含む。
【0013】
一側面では、本発明は、共通電極とディスプレイピクセルに関連付けられたディスプレイピクセル電極との間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体とを含む電気光学ディスプレイを特徴とする。電気光学ディスプレイは、共通電極とディスプレイピクセル電極に関連付けられたn-型トランジスタと電気通信するディスプレイコントローラ回路も含む。ディスプレイコントローラ回路は、1つ以上の時間依存電圧を共通電極とディスプレイピクセル電極との間に印加することによって、波形をディスプレイピクセルに印加することが可能であり、1つ以上の時間依存電圧は、n-型トランジスタを介して、ディスプレイピクセル電極に印加される。ディスプレイコントローラ回路は、1つ以上の波形をディスプレイピクセルに印加し、ディスプレイピクセルに近接する電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動し、保持期間にわたって、ディスプレイピクセルを第1の光学状態に維持するように構成される。ディスプレイコントローラ回路は、ディスプレイピクセルを浮動状態に置き、実質的にゼロボルトを共通電極およびディスプレイピクセル電極に印加するようにも構成される。ディスプレイコントローラ回路は、低ゲート電圧レール電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加するようにも構成され、低ゲート電圧レール電圧は、電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路をn-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさの負の電圧であり、低ゲート電圧レール電圧は、n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、電気光学ディスプレイは、ディスプレイピクセルのアクティブ行列を含み、ディスプレイピクセルは、ディスプレイピクセルのアクティブ行列のディスプレイピクセルのうちの1つである。いくつかの実施形態において、1つ以上の波形の各々は、1つ以上のフレームから成る。いくつかの実施形態において、保持期間は、1つ以上のフレームから成る。
【0015】
いくつかの実施形態において、漏出伝導経路は、n-型トランジスタのドレイン電極とn-型トランジスタのソース電極との間に形成される。
【0016】
いくつかの実施形態において、第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、ゲートオフ電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加することを含み、ゲートオフ電圧は、n-型トランジスタのドレイン電極およびn-型トランジスタのソース電極を通した伝導経路の形成を防止するために十分な負の電圧である。いくつかの実施形態において、第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、共通電極と電圧源との間の電気接続を接続解除することを含む。
【0017】
いくつかの実施形態において、保持期間にわたって、ディスプレイピクセルを第1の光学状態に維持することは、実質的に等しい電圧を共通電極およびディスプレイピクセル電極に印加することと、ゲートオン電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加することであって、ゲートオン電圧は、n-型トランジスタを通した伝導経路を作成するために十分な正の電圧である、こととを含む。
【0018】
別の側面では、本発明は、共通電極とディスプレイピクセルとの間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体を含む電気光学ディスプレイを駆動する方法を特徴とする。ディスプレイピクセルは、ディスプレイピクセル電極と、n-型トランジスタを介して、1つ以上の時間依存電圧を共通電極とディスプレイピクセル電極との間に印加することによって、波形をディスプレイピクセルに印加することが可能であるディスプレイコントローラ回路に電気的に結合されたn-型トランジスタに関連付けられ、1つ以上の時間依存電圧は、ディスプレイピクセル電極に印加される。方法は、以下の順序において、(1)1つ以上の波形をディスプレイピクセルに印加し、ディスプレイピクセルに近接する電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動するステップと、(2)保持期間にわたって、ディスプレイピクセルを第1の光学状態に維持するステップと、(3)ディスプレイピクセルを浮動状態に置くステップと、(4)実質的にゼロボルトを共通電極およびディスプレイピクセル電極に印加するステップと、(5)低ゲート電圧レール電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加するステップであって、低ゲート電圧レール電圧は、電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路をn-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさの負の電圧であり、低ゲート電圧レール電圧は、n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する、ステップとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、方法は、ディスプレイピクセルのアクティブ行列を含み、ディスプレイピクセルは、ディスプレイピクセルのアクティブ行列のディスプレイピクセルのうちの1つである。いくつかの実施形態において、1つ以上の波形の各々は、1つ以上のフレームを備えている。いくつかの実施形態において、保持期間は、1つ以上のフレームを含む。いくつかの実施形態において、漏出伝導経路は、n-型トランジスタのドレイン電極とn-型トランジスタのソース電極との間に形成される。
【0020】
いくつかの実施形態において、第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、ゲートオフ電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加することを含み、ゲートオフ電圧は、n-型トランジスタのドレイン電極およびn-型トランジスタのソース電極を通した伝導経路の形成を防止するために十分な負の電圧である。いくつかの実施形態において、第1のディスプレイピクセルを浮動状態に置くことは、共通電極と電圧源との間の電気接続を接続解除することを含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、保持期間にわたって、ディスプレイピクセルを第1の光学状態に維持することは、実質的に等しい電圧を共通電極およびディスプレイピクセル電極に印加することと、ゲートオン電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加することであって、ゲートオン電圧は、n-型トランジスタを通した伝導経路を作成するために十分な正の電圧である、こととを含む。
【0022】
別の側面では、本発明は、共通電極とディスプレイピクセルに関連付けられたディスプレイピクセル電極との間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体を含む電気光学ディスプレイを特徴とする。電気光学ディスプレイは、共通電極とディスプレイピクセル電極に関連付けられたn-型トランジスタと電気通信するディスプレイコントローラ回路を含む。ディスプレイコントローラ回路は、n-型トランジスタを介して、1つ以上の時間依存電圧を共通電極とディスプレイピクセル電極との間に印加することによって、波形をディスプレイピクセルに印加することが可能であり、1つ以上の時間依存電圧は、ディスプレイピクセル電極に印加される。ディスプレイコントローラ回路は、1つ以上の波形をディスプレイピクセルに印加し、ディスプレイピクセルに近接する電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動するように構成される。ディスプレイコントローラ回路は、実質的にゼロボルトを共通電極およびディスプレイピクセル電極に印加し、低ゲート電圧レール電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加するようにも構成され、低ゲート電圧レール電圧は、電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路をn-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさの負の電圧であり、低ゲート電圧レール電圧は、n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、電気光学ディスプレイは、ディスプレイピクセルのアクティブ行列を含み、ディスプレイピクセルは、ディスプレイピクセルのアクティブ行列のディスプレイピクセルのうちの1つである。いくつかの実施形態において、1つ以上の波形の各々は、1つ以上のフレームを含む。いくつかの実施形態において、保持期間は、1つ以上のフレームを含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、漏出伝導経路は、n-型トランジスタのドレイン電極とn-型トランジスタのソース電極との間に形成される。
【0025】
別の側面では、本発明は、共通電極とディスプレイピクセルとの間に電気的に結合された電気泳動ディスプレイ媒体を含む、電気光学ディスプレイを駆動する方法を特徴とする。ディスプレイピクセルは、ディスプレイピクセル電極と、ディスプレイコントローラ回路に電気的に結合されたn-型トランジスタとに関連付けられ、ディスプレイコントローラ回路は、n-型トランジスタを介して1つ以上の時間依存電圧を共通電極とディスプレイピクセル電極との間に印加することによって波形をディスプレイピクセルに印加することが可能であり、1つ以上の時間依存電圧は、ディスプレイピクセル電極に印加される。方法は、以下の順序において、(1)1つ以上の波形をディスプレイピクセルに印加し、ディスプレイピクセルに近接する電気泳動ディスプレイ媒体を第1の光学状態に駆動するステップと、(2)実質的にゼロボルトを共通電極およびディスプレイピクセル電極に印加するステップと、(3)低ゲート電圧レール電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加するステップであって、低ゲート電圧レール電圧は、電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路をn-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさの負の電圧であり、低ゲート電圧レール電圧は、n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する、ステップとを含む。
【0026】
いくつかの実施形態において、電気光学ディスプレイは、ディスプレイピクセルのアクティブ行列を含み、ディスプレイピクセルは、ディスプレイピクセルのアクティブ行列のディスプレイピクセルのうちの1つである。
【0027】
いくつかの実施形態において、1つ以上の波形の各々は、1つ以上のフレームを含む。いくつかの実施形態において、保持期間は、1つ以上のフレームから成る。いくつかの実施形態において、漏出伝導経路は、n-型トランジスタのドレイン電極とn-型トランジスタのソース電極との間に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本明細書に開示される主題による電気泳動ディスプレイを表す回路図である。
【0029】
図2図2は、本明細書に開示される主題による電気光学結像層の回路モデルを示す。
【0030】
図3図3は、印加されるゲート電圧に応答する、トランジスタの伝導マップを図示する。
【0031】
図4図4は、本明細書に開示される主題による駆動シーケンスの一実施形態を図示する。
【0032】
図5図5は、本明細書に開示される主題による駆動シーケンスの別の実施形態を図示する。
【0033】
図6図6は、異なるゲート電圧を使用した残留電圧解放有効性の比較を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
用語「電気光学」は、材料またはディスプレイに適用されるように、画像化技術分野におけるその従来的な意味で使用され、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する材料を指すために、本明細書で使用され、材料は、材料への電場の印加によって、その第1からその第2の表示状態に変化させられる材料。光学特性は、典型的に、ヒトの眼に知覚可能な色であるが、光学透過率、反射率、ルミネッセンス、または機械読み取りのために意図されるディスプレイの場合、可視範囲外の電磁波長の反射の変化の意味における擬似色等の別の光学特性であり得る。
【0035】
用語「グレー状態」は、画像化技術分野におけるその従来的な意味で本明細書で使用され、2つの極端なピクセルの光学的状態の中間の状態を指し、必ずしも黒と白とのこれらの2つの極端な状態間の遷移を意味するわけではない。例えば、下で参照されるいくつかの電気泳動インクに関する特許および公開された出願は、極端な状態が白および濃青である電気泳動ディスプレイを説明し、それによって、中間の「グレー状態」は、実際には薄青である。実際、すでに述べたように、光学的状態の変化は、色の変化では全くないこともある。用語「黒」および「白」は、ディスプレイの2つの極端な光学的状態を指すように以下で使用され得、例えば、前述の白および濃青状態等の厳密には黒および白ではない極端な光学的状態を通常含むものとして理解されるべきである。用語「モノクロ」は、以降、介在グレー状態を伴わず、ピクセルをその2つの極端な光学状態のみに駆動するディスプレイ駆動スキームを指すために使用され得る。
【0036】
以下の議論の多くは、初期グレーレベルから最終グレーレベル(初期グレーレベルと異なることも、異ならないこともある)への遷移を通して、電気光学ディスプレイの1つ以上のピクセルを駆動する方法に焦点を当てるであろう。用語「波形」は、ある特定の初期グレーレベルから特定の最終グレーレベルへの遷移をもたらすために使用される時間曲線に対する電圧全体を示すために使用されるであろう。典型的に、そのような波形は、複数の波形要素を備えているであろう:これらの要素が本質的に長方形である場合(すなわち、所与の要素がある期間にわたって一定電圧の印加を備えている場合)、要素は、「パルス」または「駆動パルス」と呼ばれ得る。用語「駆動スキーム」は、特定のディスプレイに関するグレーレベル間のあらゆる可能な遷移をもたらすために十分な波形の組を示す。ディスプレイは、2つ以上の駆動スキームを利用し得る:例えば、前述の米国特許第7,012,600号は、駆動スキームが、ディスプレイの温度またはその寿命中に動作していた時間等のパラメータに応じて、修正される必要があり得、したがって、ディスプレイが異なる温度等で使用されるための複数の異なる駆動スキームを具備し得ることを教示する。このように使用される駆動スキームの組は、「関連駆動スキームの組」と称され得る。前述のMEDEOD出願のうちのいくつかに説明されるように、2つ以上の駆動スキームを同じディスプレイの異なるエリアにおいて同時に使用することも可能であり、このように使用される駆動スキームの組は、「同時駆動スキームの組」と称され得る。
【0037】
いくつかの電気光学材料は、材料が固体外部表面を有するという意味において、固体であるが、材料は、内部液体またはガス充填空間を有し得、多くの場合、そうである。固体電気光学材料を使用するそのようなディスプレイは、以降、便宜上、「固体電気光学ディスプレイ」と称され得る。したがって、用語「固体電気光学ディスプレイ」は、回転二色部材ディスプレイ、カプセル化された電気泳動ディスプレイ、マイクロセル電気泳動ディスプレイ、およびカプセル化された液晶ディスプレイを含む。
【0038】
用語「双安定」および「双安定性」は、当技術分野におけるそれらの従来の意味で、少なくとも1つの光学特性が異なる第1および第2の表示状態を有する表示要素を備えているディスプレイを指すために、本明細書で使用され、所与の要素が第1または第2の表示状態を示すために有限持続時間のアドレスパルスを用いて駆動され、アドレスパルスが終了した後、その状態は、表示要素の状態を変化させるために必要とされるアドレスパルスの最小持続時間の少なくとも数倍、例えば、少なくとも4倍、続く。米国特許第7,170,670号において、グレースケール対応のいくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイが、その極端な黒および白状態においてだけではなく、その中間グレー状態においても安定しており、同じことがいくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにも当てはまることが、示されている。このタイプのディスプレイは、適切に、双安定ではなく、「多安定」と呼ばれるが、便宜上、用語「双安定」が、本明細書では、双安定および多安定ディスプレイの両方を包含するために使用され得る。
【0039】
いくつかのタイプの電気光学ディスプレイが、公知である。1つのタイプの電気光学ディスプレイは、例えば、米国特許第5,808,783号、第5,777,782号、第5,760,761号、第6,054,071号、6,055,091号、第6,097,531号、第6,128,124号、第6,137,467号、および第6,147,791号に説明されるような回転二色部材タイプである(このタイプのディスプレイは、多くの場合、「回転二色ボール」ディスプレイと称されるが、前述の特許のうちのいくつかでは、回転部材が球状ではないので、用語「回転二色部材」の方がより正確なものとして好ましい)。そのようなディスプレイは、多数の小さい本体(典型的に、球状または円筒形)を使用し、本体は、異なる光学特性を伴う2つ以上の区分と、内部双極子とを有する。これらの本体は、行列における液体充填された空胞の中に懸濁され、空胞は、本体が自由に回転するように、液体で充填されている。ディスプレイの外観は、ディスプレイに電場を印加することによって、したがって、本体を種々の位置に回転させ、視認表面を通して見られる本体の区分の位置を変動させることによって、変更される。このタイプの電気光学媒体は、典型的に、双安定性である。
【0040】
長年にわたり研究および開発の関心の対象である1つのタイプの電気光学ディスプレイは、粒子ベースの電気泳動ディスプレイであり、複数の荷電粒子が、電場の影響下で流体を通って移動する。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較したとき、良好な輝度およびコントラスト、広視野角、状態双安定、および低電力消費の属性を有することができる。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長期画質に関する問題は、その広範な使用を妨げている。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈降し、これらのディスプレイのために不適正な有効寿命をもたらす傾向にある。
【0041】
上述のように、電気泳動媒体は、流体の存在を必要とする。ほとんどの従来技術の電気泳動媒体では、流体は、液体であるが、電気泳動媒体は、ガス状流体を使用して生成され得る(例えば、Kitamura,T.,et al.「Electrical toner movement for electronic paper-like display」,IDW Japan,2001,Paper HCS1-1、およびYamaguchi,Y.,et al.,「Toner display using insulative particles charged triboelectricaily」,IDW Japan,2001,Paper AMD4-4参照)。同様に、米国特許第7,321,459号および第7,236,291号も参照されたい。そのようなガスベース電気泳動媒体は、例えば、媒体が鉛直面において配置される看板等、媒体がそのような沈降を可能にする向きで使用されると、粒子沈降のために液体ベース電気泳動媒体と同じ種類の問題の影響を受けやすいと考えられる。実際、粒子沈降は、流体の粘度と比較したガス状懸濁流体のより低い粘度が電気泳動粒子のより高速の沈降を可能にするので、液体ベース電気泳動媒体より、ガスベース電気泳動媒体において深刻な問題であると考えられる。
【0042】
Massachusetts Institute of Technology(MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれらの名義の多数の特許および出願は、カプセル化された電気泳動および他の電気光学媒体に使用される種々の技術を説明している。そのようなカプセル化された媒体は、多数の小型カプセルを備え、それらの各々は、それ自体、流体媒体中の電気泳動移動可能な粒子を含む内相と、内相を包囲するカプセル壁とを備えている。典型的に、カプセルは、それら自体、ポリマー接着剤内に保持され、2つの電極間に位置付けられる密着した層を形成する。これらの特許および出願に説明される技術は、以下を含む:
【0043】
(a)電気泳動粒子、流体、および流体添加物(例えば、米国特許第7,002,728号および第7,679,814号参照);
【0044】
(b)カプセル、結合剤、およびカプセル化プロセス(例えば、米国特許第6,922,276号および第7,411,719号参照);
【0045】
(c)マイクロセル構造、壁材料、およびマイクロセルを形成する方法(例えば、米国特許第7,072,095号および第9,279,906号参照);
【0046】
(d)マイクロセルを充填およびシールする方法(例えば、米国特許第7,144,942号および第7,715,088号参照);
【0047】
(e)電気光学材料を含むフィルムおよびサブアセンブリ(例えば、米国特許第6,982,178号および第7,839,564号参照);
【0048】
(f)バックプレーン、接着剤層、および他の補助層、およびディスプレイに使用される方法(例えば、米国特許第7,116,318号および第7,535,624号参照);
【0049】
(g)色形成および色調節(例えば、米国特許第7,075,502号および第7,839,564号参照);
【0050】
(h)ディスプレイの適用(例えば、米国特許第7,312,784号および第8,009,348号参照);
【0051】
(i)非電気泳動ディスプレイ(例えば、米国特許第6,241,921号および米国特許出願公開第2015/0,277,160号参照)およびディスプレイ以外のカプセル化およびマイクロセル技術の適用(例えば、米国特許出願公開第2015/0,005,720号および第2016/0,012,710号参照);および、
【0052】
ディスプレイを駆動する方法:(例えば、米国特許第5,930,026号、第6,445,489号、第6,504,524号、第6,512,354号、第6,531,997号、第6,753,999号、第6,825,970号、第6,900,851号、第6,995,550号、第7,012,600号、第7,023,420号、第7,034,783号、第7,061,166号、第7,061,662号、第7,116,466号、第7,119,772号、第7,177,066号、第7,193,625号、第7,202,847号、第7,242,514号、第7,259,744号、第7,304,787号、第7,312,794号、第7,327,511号、第7,408,699号、第7,453,445号、第7,492,339号、第7,528,822号、第7,545,358号、第7,583,251号、第7,602,374号、第7,612,760号、第7,679,599号、第7,679,813号、第7,683,606号、第7,688,297号、第7,729,039号、第7,733,311号、第7,733,335号、第7,787,169号、第7,859,742号、第7,952,557号、第7,956,841号、第7,982,479号、第7,999,787号、第8,077,141号、第8,125,501号、第8,139,050号、第8,174,490号、第8,243,013号、第8,274,472号、第8,289,250号、第8,300,006号、第8,305,341号、第8,314,784号、第8,373,649号、第8,384,658号、第8,456,414号、第8,462,102号、第8,537,105号、第8,558,783号、第8,558,785号、第8,558,786号、第8,558,855号、第8,576,164号、第8,576,259号、第8,593,396号、第8,605,032号、第8,643,595号、第8,665,206号、第8,681,191号、第8,730,153号、第8,810,525号、第8,928,562号、第8,928,641号、第8,976,444号、第9,013,394号、第9,019,197号、第9,019,198号、第9,019,318号、第9,082,352号、第9,171,508号、第9,218,773号、第9,224,338号、第9,224,342号、第9,224,344号、第9,230,492号、第9,251,736号、第9,262,973号、第9,269,311号、第9,299,294号、第9,373,289号、第9,390,066号、第9,390,661号、および第9,412,314号、および米国特許出願公開第2,003/0,102,858号、第2,004/0,246,562号、第2,005/0,253,777号、第2,007/0,070,032号、第2,007/0,076,289号、第2,007/0,091,418号、第2,007/0,103,427号、第2,007/0,176,912号、第2,007/0,296,452号、第2,008/0,024,429号、第2,008/0,024,482号、第2,008/0,136,774号、第2,008/0,169,821号、第2,008/0,218,471号、第2,008/0,291,129号、第2,008/0,303,780号、第2,009/0,174,651号、第2,009/0,195,568号、第2,009/0,322,721号、第20,100,194,733号、第20,100,194,789号、第20,100,220,121号、第20,100,265,561号、第20,100,283,804号、第2,011/0,063,314号、第2,011/0,175,875号、第2,011/0,193,840号、第2,011/0,193,841号、第2,011/0,199,671号、第2,011/0,221,740号、第2,012/0,001,957号、第2,012/0,098,740号、第2,013/0,063,333号、第2,013/0,194,250号、第2,013/0,249,782号、第2,013/0,321,278号、第2,014/0,009,817号、第2,014/0,085,355号、第2,014/0,204,012号、第2,014/0,218,277号、第2,014/0,240,210号、第2,014/0,240,373号、第2,014/0,253,425号、第2,014/0,292,830号、第2,014/0,293,398号、第2,014/0,333,685号、第2,014/0,340,734号、第2,015/0,070,744号、第2,015/0,097,877号、第2,015/0,109,283号、第2,015/0,213,749号、第2,015/0,213,765号、第2,015/0,221,257号、第2,015/0,262,255号、第2,016/0,071,465号、第2,016/0,078,820号、第2,016/0,093,253号、第2,016/0,140,910号、および第2,016/0,180,777号参照)
【0053】
前述の特許および出願の多くは、カプセル化電気泳動媒体内の別々のマイクロカプセルを包囲する壁が連続相と置換され得、したがって、いわゆるポリマー分散電気泳動ディスプレイを生成し、ポリマー分散電気泳動ディスプレイにおいて、電気泳動媒体が、電気泳動流体の複数の別々の液滴と、ポリマー材料の連続相とを備え、そのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイにおける電気泳動流体の別々の液滴が別々のカプセル膜が各個々の液滴に関連付けられない場合でも、カプセルまたはマイクロカプセルと見なされ得ることを認識する。例えば、前述の第2,002/0,131,147号を参照されたい。故に、本願の目的のために、そのようなポリマー分散電気泳動媒体は、カプセル化電気泳動媒体の亜種と見なされる。
【0054】
関連タイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイでは、荷電粒子および懸濁流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されず、代わりに、担体媒体、例えば、ポリマーフィルム内に形成される複数の空洞内に保持される。例えば、国際出願公開第WO02/01,281号および公開された米国出願第2,002/0,075,556号(両方とも、Sipix Imaging,Inc.に譲渡されている)を参照されたい。
【0055】
前述のE INKおよびMIT特許および出願の多くは、マイクロセル電気泳動ディスプレイおよびポリマー分散電気泳動ディスプレイも検討する。用語「カプセル化された電気泳動ディスプレイ」は、あらゆるそのようなディスプレイタイプを指し得、それは、壁の形態を横断して一般化するために、集合的に、「マイクロキャビティ電気泳動ディスプレイ」とも説明され得る。
【0056】
別のタイプの電気光学ディスプレイは、Philipsによって開発され、Hayes,R. A.,et al.の「Video-Speed Electronic Paper Based on Electrowetting」,Nature,425,383-385(2003)に説明されるエレクトロウェッティングディスプレイである。2004年10月6日に出願された同時係属中の出願第10/711,802号では、そのようなエレクトロウェッティングディスプレイは、双安定にされ得ることが示される。
【0057】
他のタイプの電気光学材料も、使用され得る。特に着目すべきこととして、双安定強誘電液晶ディスプレイ(FLC)が、当技術分野において公知であり、それは、残留電圧挙動を示している。
【0058】
電気泳動媒体は、不透明であり(例えば、多くの電気泳動媒体では、粒子は、ディスプレイを通した可視光の透過を実質的に遮断する)、反射モードで動作し得るが、いくつかの電気泳動ディスプレイは、あるディスプレイ状態が、実質的に不透明であり、あるディスプレイ状態が、光透過性であり、いわゆる「シャッタモード」で動作するように作られることができる。例えば、米国特許第6,130,774号および第6,172,798号および米国特許第5,872,552号、第6,144,361号、第6,271,823号、第6,225,971号、および第6,184,856号を参照されたい。電気泳動ディスプレイに類似するが、電場強度の変動に依拠する誘電泳動ディスプレイは、類似モードで動作することができる。米国特許第4,418,346号を参照されたい。他のタイプの電気光学ディスプレイも、シャッタモードで動作することが可能であり得る。
【0059】
高分解能ディスプレイは、個々のピクセルを含み得、これは、隣接するピクセルからの干渉を伴わずに、アドレス可能である。そのようなピクセルを取得するための1つの方法は、トランジスタまたはダイオード等の非線形要素のアレイを提供することであり、少なくとも1つの非線形要素は、各ピクセルに関連付けられ、「アクティブ行列」ディスプレイを生じさせる。1つのピクセルをアドレスするアドレスまたはピクセル電極は、関連付けられた非線形要素を通して適切な電圧源に接続される。非線形要素が、トランジスタであるとき、ピクセル電極は、トランジスタのドレインに接続され得、この配置は、以下の説明では仮定されるであろうが、本質的に恣意的であり、ピクセル電極は、トランジスタのソースにも接続され得る。高分解能アレイでは、ピクセルは、任意の特定のピクセルが1つの規定された行および1つの規定された列の交点によって一意に画定されるように、行および列の2次元アレイで配置され得る。各列における全てのトランジスタのソースは、単一の列電極に接続され得る一方、各行における全てのトランジスタのゲートは、単一の行電極に接続され得る。再び、行へのソースおよび列へのゲートの割り当ては、所望に応じて、逆転され得る。
【0060】
ディスプレイは、行毎様式で書き込まれ得る。行電極は、行ドライバに接続され、行ドライバは、選択された行における全てのトランジスタが伝導であることを確実にするような電圧を選択された行電極に印加するが、これらの選択されていない行における全てのトランジスタが非伝導のままであることを確実にするような電圧を全ての他の行に印加し得る。列電極は、列ドライバに接続され、列ドライバは、選択された行におけるピクセルをその所望の光学状態に駆動するように選択された電圧を種々の列電極にかける。(前述の電圧は、電気光学媒体の非線形アレイから反対側に提供され、ディスプレイ全体にわたって広がり得る共通正面電極に対するものである。当技術分野において公知のように、電圧は、相対的であり、2つの点間の電荷差の尺度である。一方の電圧値は、別の電圧値に対するものである。例えば、ゼロ電圧(「0V」)は、別の電圧に対して無電圧差を有することを指す。)「ラインアドレス時間」として知られる事前に選択された間隔後、選択された行は、選択解除され、別の行が、選択され、列ドライバ上の電圧は、ディスプレイの次のラインが書き込まれるように変化させられる。
【0061】
しかしながら、使用時、ある波形が、残留電圧を電気光学ディスプレイのピクセルに生じさせ得、上記議論から明白なように、この残留電圧は、いくつかの望ましくない光学効果を生じさせ、一般に、望ましくない。
【0062】
本明細書に提示されるように、アドレスパルスに関連付けられた光学状態における「シフト」は、電気光学ディスプレイへの特定のアドレスパルスの最初の印加が第1の光学状態(例えば、第1のグレー色調)をもたらし、電気光学ディスプレイへの同じアドレスパルスの後続印加が第2の光学状態(例えば、第2のグレー色調)をもたらす状況を指す。残留電圧は、アドレスパルスの印加中に電気光学ディスプレイのピクセルに印加される電圧が残留電圧とアドレスパルスの電圧との合計を含むので、光学状態におけるシフトもたらし得る。
【0063】
ディスプレイの光学状態における経時的「ドリフト」は、ディスプレイが静止している間(例えば、アドレスパルスがディスプレイに印加されない期間中)に電気光学ディスプレイの光学状態が変化する状況を指す。残留電圧は、ピクセルの光学状態がピクセルの残留電圧に依存し得、ピクセルの残留電圧が経時的に減衰し得るので、光学状態におけるドリフトをもたらし得る。
【0064】
上記に議論されるように、「残影」は、電気光学ディスプレイが書き換えられた後、前の画像の痕跡が、依然として、可視である状況を指す。残留電圧は、前の画像の一部の輪郭(エッジ)が可視のままである残影のタイプである「エッジ残影」をもたらし得る。
【0065】
用語「光学キックバック」は、本明細書では、少なくとも部分的にピクセルの残留電圧の解放に応答して生じるピクセルの光学状態の変化を説明するために使用される。
【0066】
図1は、本明細書に提起される主題による電気光学ディスプレイのピクセル100の概略を示す。ピクセル100は、結像フィルム110を含み得る。いくつかの実施形態において、結像フィルム110は、双安定であり得る。いくつかの実施形態において、結像フィルム110は、限定ではないが、カプセル化された電気泳動結像フィルムを含み得、それは、例えば、荷電顔料粒子を含み得る。
【0067】
結像フィルム110は、正面電極102と背面電極104との間に配置され得る。正面電極102は、結像フィルムとディスプレイの正面との間に形成され得る。いくつかの実施形態において、正面電極102は、透明であり得る。いくつかの実施形態において、正面電極102は、限定ではないが、酸化インジウムスズ(ITO)を含む任意の好適な透明材料から形成され得る。背面電極104は、正面電極102の反対に形成され得る。いくつかの実施形態において、寄生静電容量(図示せず)が、正面電極102と背面電極104との間に形成され得る。
【0068】
ピクセル100は、複数のピクセルのうちの1つであり得る。複数のピクセルは、行および列の2次元アレイで配置され、行列を形成し得、それによって、任意の特定のピクセルは、1つの規定された行および1つの規定された列の交点によって一意に画定される。いくつかの実施形態において、ピクセルの行列は、各ピクセルが少なくとも1つの非線形回路要素120に関連付けられた「アクティブ行列」であり得る。非線形回路要素120が、背面電極104とアドレス電極108との間に結合され得る。いくつかの実施形態において、非線形要素120は、ダイオードおよび/または、限定ではないが、MOSFETを含むトランジスタを含み得る。MOSFETのドレイン(またはソース)は、背面電極104に結合され得、MOSFETのソース(またはドレイン)は、アドレス電極108に結合され得、MOSFETのゲート106は、ドライバに結合され、MOSFETのアクティブ化および非アクティブ化を制御するように構成され得る。(便宜上、背面電極104に結合されたMOSFETの終端は、MOSFETのドレインと称され、アドレス電極108に結合されたMOSFETの終端は、MOSFETのソースと称されるであろう。しかしながら、当業者は、いくつかの実施形態において、MOSFETのソースおよびドレインは、交換され得ることを認識するであろう。)
【0069】
アクティブ行列のいくつかの実施形態において、各列における全てのピクセルのアドレス電極108は、同じ列電極に接続され得、各行における全てのピクセルに結合される全てのトランジスタのゲート106は、同じ行電極に接続され得る。行電極は、行ドライバに接続され得、行ドライバは、選択された行における全てのピクセル100の非線形要素120をアクティブ化するために十分な電圧を選択された行電極に印加することによって、ピクセルの1つ以上の行を選択し得る。列電極は、列ドライバに接続され得、列ドライバは、ピクセルを所望の光学状態に駆動するために好適な電圧を選択された(アクティブ化された)ピクセルのトランジスタゲート106にかけ得る。アドレス電極108に印加される電圧は、ピクセルの正面電極102に印加される電圧(例えば、約ゼロボルトの電圧)に対するものであり得る。いくつかの実施形態において、アクティブ行列における全てのピクセルの正面電極102は、共通電極に結合され得る。
【0070】
いくつかの実施形態において、アクティブ行列のピクセル100は、行毎様式で書き込まれ得る。例えば、ピクセルの行は、行ドライバによって選択され得、ピクセルの行に関する所望の光学状態に対応する電圧が、列ドライバによって、ピクセルに印加され得る。「ラインアドレス時間」として知られる事前に選択された間隔後、選択された行は、選択解除され得、別の行が、選択され得、列ドライバ上の電圧は、ディスプレイの別のラインが書き込まれるように変化させられ得る。
【0071】
電気光学ディスプレイは、電力をディスプレイコントローラ等の外部電子機器から受け取り、「電力管理」回路網から電圧を供給することができる。電力管理回路網は、「ゲートオン電圧」を含む複数の電圧を供給し得、ゲートオン電圧は、選択されたライン上のトランジスタを伝導状態にするために、ゲートライン(本明細書では、「選択ライン」とも称される)に供給される。電力管理回路網は、別々の構成要素または集積回路(例えば、電力管理集積回路(「PMIC」)であり得る。追加の回路網は、プルダウン抵抗器および/またはプルダウンコンデンサを含み得る。
【0072】
電気光学ディスプレイは、ディスプレイピクセルに近接する電気泳動ディスプレイ媒体の光学状態を変化させるために十分な電圧波形をディスプレイピクセルに印加するための電力管理回路網を含むディスプレイコントローラ回路網を含むことができる。当業者は、本発明のディスプレイコントローラ回路網が、いくつかの異なる物理的形態において実装されることができ、かつ様々なアナログおよびデジタル構成要素を利用することができることを理解するであろう。例えば、ディスプレイコントローラ回路網は、汎用マイクロプロセッサと共に、マイクロプロセッサからのデジタル出力をピクセルへの印加のために適切な電圧に変換することができる適切な周辺構成要素(例えば、1つ以上のデジタル/アナログコンバータ「DAC」)を含む。代替として、ディスプレイコントローラ回路網は、特定用途向け集積回路(「ASIC」)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(「FPGA」)において実装されることができる。当業者は、ディスプレイコントローラ回路網が、処理構成要素と上で説明されるPMIC等の電力管理回路網との両方を含むことができることを理解するであろう。
【0073】
いくつかの実施形態において、ディスプレイコントローラ回路網は、タイミングコントローラ集積回路(「IC」)を含み、タイミングコントローラICは、着信画像データを受け取り、所望の画像を表示するためのピクセルにおける適切な電圧を生じさせるための制御信号をデータの収集および選択ドライバICに出力する。いくつかの実施形態において、ディスプレイコントローラ回路と通信するホストコントローラが、ディスプレイに対する更新を要求し、更新のための画像データをディスプレイコントローラ回路に供給する。いくつかの実施形態において、ディスプレイコントローラ回路網は、画像データを含むメモリバッファへのアクセスを通して画像データを受け取るか、または、画像データが抽出される信号を受信する。いくつかの実施形態において、メモリバッファは、前述で参照された米国特許第9,721,495号に説明されるもの等の構造を有する。いくつかの実施形態において、ディスプレイコントローラ回路網は、情報を含むシリアル信号を受信し、情報は、ピクセルアレイの走査中、電気泳動媒体に印加するための駆動インパルス(例えば、駆動波形)を発生させるために必要な計算を実施するために必要とされる。
【0074】
図2は、本明細書に提示される主題による正面電極102と背面電極104との間に配置される電気光学結像層110の回路モデルを示す。抵抗器202およびコンデンサ204は、任意の接着剤層を含む電気光学結像層110、正面電極102、および背面電極104の抵抗および静電容量を表し得る。抵抗器212およびコンデンサ214は、積層接着剤層の抵抗および静電容量を表し得る。コンデンサ216は、正面電極102と背面電極104との間、例えば、結像層と積層接着剤層との間および/または積層接着剤層と背面電極との間の界面等の層間の界面接触エリアに生じ得る静電容量を表し得る。ピクセルの結像フィルム110を横断した電圧Viは、ピクセルの残留電圧を含み得る。
【0075】
いくつかの実施形態において、残留電圧の解放は、各ディスプレイピクセルに関連付けられたトランジスタの漏出伝導効果を利用することによって達成され得る。例えば、ここで図3のプロット300を参照すると、トランジスタ漏出電流は、ここでは、トランジスタゲート/ソースを横断した電圧バイアスまたはVgsがますます負になるにつれて増加するドレイン/ソース電流またはIdsとして示される。実践では、Vgsがますます負になるつれて、トランジスタは、伝導性になり、この伝導は、ディスプレイピクセルからのみならず、ディスプレイからも残留電圧を排出させるために使用されることができる。
【0076】
使用時、ピクセルトランジスタの漏出伝導効果を使用したピクセルの残留電圧の解放は、任意の好適な信号の組(限定ではないが、下記の図4および5にさらに詳細に図示されるような信号の組を含む)をピクセルに印加することによって開始および/または制御され得る。
【0077】
図4は、本明細書に開示される主題によるn-型電界効果トランジスタと、貯蔵コンデンサとを伴う単一のディスプレイピクセルを駆動するための駆動パルス構成の一実施形態を図示する。図4の例は、ゲート電圧402(例えば、ピクセルトランジスタのゲートに印加される電圧)と、基準電圧404(例えば、ゼロボルト)と、正面電極102(図1)に印加される電圧である、共通電圧406(一般に、VCOMと称される)と、ソース電圧408と、電気光学層によって経験される電圧である、電圧Vi410とを示す。
【0078】
図4に示されるように、1つ以上の波形が、アドレス段階420中、ディスプレイピクセルに印加され、ディスプレイピクセルに近接する電気泳動ディスプレイ媒体を所望の光学状態に駆動する。1つ以上のフレームの持続時間にわたって続く、保持期間430が、アドレス段階420に続く。保持期間430中、実質的に等しい電圧が、源電圧408を介して、共通電圧406およびディスプレイピクセル電極に印加される一方、ゲートオン電圧が、ゲート電圧402を介して、n-型トランジスタのゲート電極に印加される。ゲートオン電圧は、n-型トランジスタを通した伝導経路を作成するために十分な正の電圧である。いくつかの実施形態において、保持期間430は、アドレス段階420の一部である。
【0079】
保持期間430後、ゲート電圧402は、ゼロボルトに設定され、ディスプレイピクセルを浮動滞留状態440に置く。いくつかの実施形態において、ディスプレイピクセルを浮動滞留状態440に置くことは、ゲート電圧402を介して、ゲートオフ電圧をn-型トランジスタのゲート電極に印加することを含む。ゲートオフ電圧は、n-型トランジスタのドレイン電極およびn-型トランジスタのソース電極を通した伝導経路の形成を防止するために十分な負の電圧であることができる。いくつかの実施形態において、ディスプレイピクセルを浮動滞留状態440に設置することは、共通電極と共通電圧406を供給する電圧源との間の電気接続を接続解除することを含む。
【0080】
浮動滞留状態440に続いて、ディスプレイピクセルは、放電状態450に入る。放電状態450中、低ゲート電圧レール電圧460(VEEd460とも称される)が、ゲート電圧402を介して、n-型トランジスタのゲート電極に印加され得る。電圧VEEd460は、電気泳動ディスプレイ媒体から残留電圧を解放するための漏出伝導経路をn-型トランジスタ内で誘発するために十分な大きさである。いくつかの実施形態において、低ゲート電圧レール電圧は、n-型トランジスタのゲートオフ電圧より大きい大きさを有する。残留電圧の排出の完了時、ゲート電圧402は、ゼロボルトに戻ることができる。
【0081】
代替として、ここで図5を参照すると、低ゲート電圧レール電圧VEEd560は、任意の介在する保持期間または浮動滞留状態を伴わずに、アドレス段階520の終了直後、ゲート電圧502を介して、n-型トランジスタのゲート電極に印加され、ディスプレイピクセルを放電状態550にし得る。
【0082】
図6は、従来の技法のために行われるように、ゲート電圧を+28ボルトレベル(VDDH=+28V(610)に設定することと比較して、VEEd(VEEd=-10V(620)、VEEd=-20V(630)、VEEd=-25V(640)、VEEd=-28V(650)の異なるレベルを用いた残留電圧解放有効性を図示する。示されるように、匹敵する放電が、正のゲート電圧のものと比較して、漏出伝導効果を使用して達成可能である。加えて、この漏出伝導量を伴って、ディスプレイは、依然として、通常または標準的更新動作のために使用されることができる。
【0083】
さらに、図4および図5に提示される駆動シーケンスを使用すると、トランジスタ性能不安定性を緩和するために高ゲート電圧をピクセルトランジスタに提供するための特殊回路は、もはや必要とされず、さらなる追加の正の応力バイアスは、従来の技法におけるように、正のゲート電圧を使用した残留電圧の排出に起因して、トランジスタに導入されない。
【0084】
故に、本明細書に開示される技法は、従来の技法より単純な残留電圧を解放する方法を提供する。さらに、本明細書に説明される技法は、アドレス段階と別個である期間中、残留電圧を解放するので、ディスプレイピクセルは、典型的に、DC平衡波形より持続時間が短い、DC非平衡波形を使用して、駆動されることができる。これは、ディスプレイの全体的更新時間を減らすことによって、ユーザ体験を向上させる。
【0085】
多数の変更および修正が、本発明の範囲から逸脱することなく、上で説明される本発明の具体的実施形態に行われ得ることが、当業者に明白であろう。故に、前述の説明の全体は、限定的意味ではなく、例証的意味で解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】