(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】混合作動流体を利用したLNG冷熱発電
(51)【国際特許分類】
F01K 25/10 20060101AFI20241018BHJP
F02C 1/10 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F01K25/10 U
F01K25/10 D
F02C1/10
F01K25/10 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522347
(86)(22)【出願日】2022-09-23
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 KR2022014265
(87)【国際公開番号】W WO2023063618
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0136036
(32)【優先日】2021-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519429679
【氏名又は名称】エスケー ガス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】ホン,ウン ギ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミ ヨン
【テーマコード(参考)】
3G081
【Fターム(参考)】
3G081BA01
3G081BB04
3G081BB07
3G081BC30
3G081BD01
(57)【要約】
本発明により二酸化炭素及びエタンからなる混合作動流体を利用してLNG冷熱発電をする場合、工程内の廃熱を利用することができ、従来の発電工程に比べて天然ガスの消耗量を顕著に減少させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素及びエタンからなる作動流体;ポンプ;蒸発器;タービン;及び凝縮器を含むLNG冷熱発電。
【請求項2】
二酸化炭素及びエタンのモル比が85~95:15~0.5であることを特徴とする請求項1に記載のLNG冷熱発電。
【請求項3】
前記作動流体をクローズドランキンサイクルに使用することを特徴とする請求項1に記載のLNG冷熱発電。
【請求項4】
供給されるLNGの供給圧力が飽和液体状態になる圧力に調整されることを特徴とする請求項1に記載のLNG冷熱発電。
【請求項5】
凝縮器後端の温度をLNGの飽和蒸気温度に調整することを特徴とする請求項1に記載のLNG冷熱発電。
【請求項6】
ポンプ後端の圧力を混合作動流体の臨界圧力まで調整することを特徴とする請求項1に記載のLNG冷熱発電。
【請求項7】
前記サイクルが2つのタービンとその間のヒータを含むことを特徴とする請求項3に記載のLNG冷熱発電。
【請求項8】
前記ヒータは作動流体が凝縮されないように加熱することを特徴とする請求項7に記載のLNG冷熱発電。
【請求項9】
蒸発器またはヒータまたは両方とも工程内の廃熱を活用することを特徴とする請求項1に記載のLNG冷熱発電。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合作動流体を使用するLNG冷熱発電に関する。
【背景技術】
【0002】
韓国が輸入する液化天然ガス(以下、LNG)は年間約4千万トン以上で、日本と中国に続いて世界3位の輸入国であり、単一受入基地としては韓国ガス公社(株)の平沢と仁川受入基地の規模が世界1位と2位である。韓国と日本及び中国は天然ガスを常圧に近い条件で-163℃以下で液化させて輸入している。
【0003】
天然ガスを液化させる理由は、常温及び常圧条件に比べてLNGの体積が約600分の1に減少して貯蔵及び輸送が容易になるためである。しかしながら、天然ガスを-163℃以下で液化させるためには、冷凍機と冷凍機を駆動するための電気エネルギーが必要である。液化工程に応じて異なるが、以下の表1には1kg/hのLNGを液化するために必要な所要動力を液化工程別に比較した。
【0004】
【表1】
液化天然ガスが気体状態の天然ガスに蒸発して相変化を起こす間には、天然ガス1kg当たり約200kcal程度の熱量が必要である。日本は輸入するLNGの60%を冷熱(Cold heat)として活用し、中国は輸入するLNGの約10%以上を冷熱として活用している。しかしながら、韓国の場合、大部分は海水との熱交換によりLNGを蒸発させることでLNGの冷熱をほとんど使わずに海水に吹き飛ばしている実情である。-163℃の低温のエネルギーを高温のエネルギーと区分して冷熱と呼んでいる。
【0005】
低圧状態のLNGを海水により気化させると動力が得られない。LNG冷熱発電とは、LNG状態でポンプを利用して高圧にした後に海水と熱交換して気化させれば高圧の天然ガスを得ることができるので、タービンにより相当量の動力を得ることである。この時、液体ポンピングにより消耗される動力は前記高圧の天然ガスを利用したタービン稼動により得られる動力に比べて相対的に小さい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明では従来のLNG冷熱発電の効果を改善できる混合作動流体を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、二酸化炭素及びエタンからなる作動流体;ポンプ;蒸発器;タービン;及び凝縮器を含むLNG冷熱発電を提供することである。
【0008】
前記二酸化炭素及びエタンのモル比は85~95:15~0.5であることが好ましい。
【0009】
前記作動流体をクローズドランキンサイクルに使用することが好ましい。
【0010】
供給されるLNGの供給圧力は飽和液体状態となる圧力に調整されることが好ましい。
【0011】
前記凝縮器後端の温度はLNGの飽和蒸気温度に調整されることが好ましい。
【0012】
前記ポンプ後端の圧力は、混合作動流体の臨界圧力まで調整されることが好ましい。
【0013】
前記サイクルは、2つのタービンとその間のヒータを含むことが好ましい。
【0014】
前記ヒータは、作動流体が凝縮されないように加熱することが好ましい。
【0015】
前記蒸発器またはヒータまたは両方ともが工程内の廃熱を活用することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明による混合作動流体を利用してLNG冷熱発電をする場合、工程内の廃熱を利用することができ、従来の発電工程に比べて天然ガスの消耗量を顕著に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】オープンランキンサイクルを概略的に示した図である。
【
図2】PRO/II with PROVISIONを活用したオープンランキンサイクルの動力生産フローシートを概略的に示した図である。
【
図3】クローズドランキンサイクルを概略的に示した図である。
【
図4】PRO/II with PROVISIONを活用したLNG冷熱発電のためのクローズドランキンサイクルのフローシートを概略的に示した図である。
【
図5】本発明による混合作動流体を使用したLNG冷熱発電のためのクローズドランキンサイクルのフローシートを概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔発明を実施するための最良の形態〕
本発明は、二酸化炭素及びエタンからなる作動流体;ポンプ;蒸発器;タービン;及び凝縮器を含むLNG冷熱発電を提供する。
【0019】
〔発明を実施するための形態〕
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0020】
本実施例を説明するために、各図面の構成要素に参照符号を付加する時、同一の構成要素に対しては他の図面上に表示されても可能な限り同一の符号を付加することに留意しなければならない。また、本発明の説明において、関連した公知構成または機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明にする可能性があると判断される場合は、その詳細な説明は省略する。以下で参照される図面では蓄積比が適用されない。
【0021】
本発明の構成要素の説明において、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものであり、その用語により当該構成要素の本質や順番または順序などが限定されることではない。
【0022】
ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」または「接続」されると記載されている場合、その構成要素は他の構成要素に直接連結または直接接続されることもあるが、各構成要素間にまた別の構成要素が「連結」、「結合」または「接続」されることもあると理解されるべきである。
【0023】
また、層、膜、領域、板などの構成要素が他の構成要素「の上に」又は「上に」あるとする場合、これは他の構成要素の「真上に」ある場合のみならず、その中間にまた別の構成要素がある場合も含まれると理解されるべきである。逆に、ある構成要素が他の部分の「真上に」あるという場合は、中間にまた他の部分がないことを意味すると理解されるべきである。
【0024】
図1は、作動流体を利用したLNG冷熱発電のための最も単純なオープンランキンサイクルの概念図を示した。
【0025】
図1によれば、-162℃近傍の常圧より若干高い圧力条件にあるLNGは、ポンプにより加圧された後に高圧状態のLNGとなる。その後に海水により熱交換すると、LNGは蒸発して高圧状態の天然ガスに相変化する。高圧の天然ガスを利用してタービンを稼動すると、これにより動力を生産することができる。
【0026】
Tokyo Gas Co.では10ton/hのLNGを活用して約290kWほどの動力を生産した。
【0027】
LNGの組成を正確に知らないため、表2のような韓国ガス公社(株)で輸入しているLNG組成の中でTypical gas組成を利用した。
【0028】
【表2】
前記LNGを利用し、
図2に示すようにAVEVA(社)のPRO/II with PROVISION V10.2を使用してコンピュータシミュレーションを行った結果、以下の表3のようなコンピュータシミュレーションの結果が得られた。以下の表3から得られた純動力は300kWであり、Tokyo Gas Co.で得られた290kWより高い動力を得ることができた。
【0029】
【表3】
図3にはクローズドランキングサイクルの概要図を示した。オープンランキンサイクルに比べて
図3のクローズドランキンサイクルの長所は、蒸発した天然ガスの圧力を高圧に維持できるため、追加的にタービンによる発電が可能であるということである。
【0030】
Tokyo Gas Co.では、
図3のようなクローズドランキンサイクルに作動流体としてプロパンを使用したLNG冷熱発電により10ton/hのLNG冷熱を使用して442kWの発電効果を得た。
【0031】
図4には、PRO/II with PROVISIONを使用してクローズドランキンサイクルを実現したフローシートを示した。
【0032】
以下の表4には、
図4のPRO/II with PROVISIONを活用したコンピュータシミュレーション結果を要約して整理した。
【0033】
【表4】
表4によると、1ton/hのLNGの冷熱から得られる純動力は35.768kWである。さらに、作動流体蒸発器後端の温度が120℃であるので、スチームを使用して作動流体を蒸発させる必要がある。スチームを得るためには天然ガスの燃焼が必要である。前記表2においてLNGの分子量は17.924kg/k-moleであり、GHVは10,450kcal/Sm3であるので、作動流体蒸発器のheat dutyである1.2046×106kcal/hの分だけの熱量を供給するために必要なLNGの質量流量は92.24kg/hである。これはプロパンを作動流体として使用したLNG冷熱発電のためには時間当り92.24kg/hの分だけの天然ガスが消耗されるということを意味する。
【0034】
本発明によりLNG冷熱を活用したクローズドランキンサイクルに適用するための作動流体の選定条件は次の通りである。
【0035】
第1に、ポンプ後端の圧力を高く稼動できる作動流体が良い。これは、作動流体の臨界圧力と関連する。ポンプ後端の圧力は概ね臨界圧力の近くまで加圧する。
【0036】
第2に、LNGとの熱交換による作動流体凝縮器の後端において温度が低いほど有利である。これは、直ちに膨張バルブ後端の圧力を下げることができてタービンで膨張比を高めることができるため、より多くの動力を得ることができるからである。作動流体凝縮器後端の温度は、作動流体の氷点に関連する。作動流体凝縮器の後端にはすぐにポンプと連結されるため、作動流体の氷点以上の温度を維持しなければならないという制約がある。
【0037】
第3に、作動流体蒸発器の後端において温度が低いほど有利である。
図4の場合、プロパンを作動流体として使用した場合、蒸発器後端での温度は120℃であった。こうなると、作動流体を蒸発させるために低圧(Low Pressure、LP)スチームを使わなければならないため、天然ガスの燃焼による消耗が発生する。
【0038】
このような条件を満たす作動流体を選別するために、以下の表5にはいくつかの作動流体候補に対するいくつかの基本的な物性値を整理した。
【0039】
【表5】
前記表5に示した作動流体候補のうち、臨界圧力の側面では二酸化炭素が73.83barで最も高くて有利である。氷点の側面ではエタン成分が-182.8℃で最も低くて有利である、この場合は、LNGの供給温度よりさらに低いため、LNGの完全蒸発によるLNGの冷熱を十分に活用できないという短所がある。そして、最後に、作動流体の臨界温度はポンプにおいて臨界圧力の近くまで加圧した後に作動流体蒸発器で完全蒸発した時、温度が低いほど有利である。この場合は、エチレンの臨界温度が9.19℃で低いため、最も有利であるといえる。
【0040】
以下の表6には、本発明で利用したLNGの組成及び温度と圧力条件を示した。
【0041】
【表6】
LNGの潜熱を全て活用するためにはLNGの供給圧力を飽和液体状態になる0.605MPaGまで下げた。この条件でLNGが全て蒸発する温度は-54.125℃になることが分かった。この時、LNG冷熱を全て活用して混合作動流体の凝縮器後端の温度がLNGの蒸発後の温度と3℃だけ異なるようにするためには、-51.125℃になるようにする二酸化炭素とエチレンの組成として二酸化炭素10mol%とエチレン90mol%が好ましかった。
【0042】
前記表5において二酸化炭素とエタンをそれぞれ90mol%と10mol%の組成で使用した混合作動流体を
図5のような工程に使用してLNG冷熱を使用した動力生産工程を考案した。ここで、E3は混合作動流体凝縮器であり、これはLNGと熱交換をするので、ここではE4と事実上同じ熱交換器である。
【0043】
以下の表7には二酸化炭素とエタンのいくつかの物性を集中的に示した。
【0044】
【表7】
以下の表8には、
図5のコンピュータシミュレーション結果を要約して整理した。
【0045】
【表8】
前記表8に記載されているように、まず、LNGの潜熱を全て利用するためにLNGが蒸発器(E4)で全て蒸発して飽和蒸気となる温度は-54.125℃であるため、作動流体凝縮器(E3)後端の温度は-54.125℃としており、この時、飽和液体となる圧力までタービン(EX1、EX2)後端で膨張することとした。混合作動流体の予想される融点(または、氷点)は-69.193℃程度であるため、約15℃程度の余裕がある。ポンプ(P1)後端の圧力は混合作動流体の臨界圧力の95%である67.67barまで加圧することとした。作動流体蒸発器(E1)後端と二基のタービン(EX1、EX2)の間でのヒータ(E2)後端の温度は69℃とした。これは、
図5で1番目のタービン(EX1)後端で凝縮液が発生しないようにする最小の温度である。1番目のタービン(EX1)の後端で凝縮が発生すると、生産される動力の量が減少する。2つの成分の臨界温度は両方とも30℃に近く、ポンプ(P1)後端の圧力を2つの混合作動流体の臨界圧力の95%までに設定したので、蒸発器(E1)後端での温度は飽和蒸気状態まで加熱した場合、30℃より低い。
【0046】
前記表8によれば、1ton/hのLNGの冷熱から得られる純動力は36.573kWである。これは、プロパンを作動流体として使用した場合に比べて、得られる純動力35.768kWよりは若干高い程度であるが、作動流体蒸発器後端の温度は69.215℃であることが分かる。これは、プロパン作動流体の蒸発器後端温度である120℃より非常に低い温度であることが分かる。これは、工程内に使用可能な廃熱を利用できる程度の低い温度であることが分かる。また、この工程はプロパンを作動流体とするLNG冷熱を活用する発電工程に比べて92.24kg/hの天然ガスを消耗しなくても良いという長所がある。
【0047】
以上の説明は、本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から外れない範囲で 多様な変形が可能である。
【0048】
従って、本明細書に開示された実施例は、本発明を限定するためのものではなく説明するためのものであり、このような実施例により本発明の思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は以下の請求範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内の全ての技術は本発明の権利範囲に含むものと解釈されるべきである。
【国際調査報告】