(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】白質ジストロフィーを治療するための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/76 20150101AFI20241018BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241018BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241018BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241018BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20241018BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20241018BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20241018BHJP
A61K 31/4402 20060101ALI20241018BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20241018BHJP
G01N 33/66 20060101ALI20241018BHJP
A61K 38/50 20060101ALN20241018BHJP
C12N 15/55 20060101ALN20241018BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
A61K35/76
A61P25/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/573
A61K31/135
A61K31/495
A61K31/4402
G01N33/68
G01N33/66 A
A61K38/50
C12N15/55 ZNA
C12N15/864 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522370
(86)(22)【出願日】2022-10-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 US2022077971
(87)【国際公開番号】W WO2023064811
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524139493
【氏名又は名称】ブリッジバイオ ジーン セラピー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ラフォレ, ジュヌヴィエーヴ
(72)【発明者】
【氏名】シェイウィッツ, アダム
(72)【発明者】
【氏名】カービー, キャスリーン エム.
【テーマコード(参考)】
2G045
4C084
4C086
4C087
4C206
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB30
2G045DA03
2G045DA04
2G045DA31
2G045DA35
2G045DA80
2G045FA40
2G045FB06
4C084AA13
4C084CA18
4C084DC01
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA02
4C086AA01
4C086AA02
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4C086EA16
4C086MA03
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4C086NA05
4C086NA13
4C086ZA02
4C087AA01
4C087AA02
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4C087NA05
4C087NA13
4C087ZA02
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA05
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA05
4C206NA13
4C206ZA02
(57)【要約】
アスパルトアシラーゼ(ASPA)タンパク質を発現する組換えアデノ随伴ウイルスベクター及び白質ジストロフィーを治療するための関連する使用が、本明細書に開示される。本開示は、アスパルトアシラーゼ(ASPA)の発現を必要とする対象においてそうするように操作された、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。本開示の態様は、神経変性疾患(例えば、カナバン病などの白質ジストロフィー)の治療を必要とする対象におけるその方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、対象におけるN-アセチルアスパラギン酸(NAA)レベルを調節することを含む。NAAは、アスパルトアシラーゼ(ASPA)によって酢酸塩及びL-アスパラギン酸塩に代謝される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象に治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)アスパルトアシラーゼ(ASPA)をコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約10
13vg/kg~約10
15vg/kgの範囲である、方法。
【請求項2】
アスパルトアシラーゼ(ASPA)の発現を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを前記対象に投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約10
13vg/kg~約10
15vg/kgの範囲であり、それによって、前記対象においてASPAを発現する、前記方法。
【請求項3】
アスパルトアシラーゼ(ASPA)のレベルの増加を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを前記対象に投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約10
13vg/kg~約10
15vg/kgの範囲であり、それによって、前記対象における前記ASPAのレベルを増加させる、前記方法。
【請求項4】
前記対象が、ASPAの発現を必要とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が、ASPAの低減したレベル及び/または機能を有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記対象が、白質ジストロフィーを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
白質ジストロフィーの治療を必要とする対象におけるその方法であって、前記対象に治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約10
13vg/kg~約10
15vg/kgの範囲であり、
それによって、前記対象における白質ジストロフィーを治療する、前記方法。
【請求項8】
前記白質ジストロフィーが、カナバン病、副腎脊髄ニューロパチー、アレキサンダー病、脳腱黄色腫症、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、ペリツェウス・メルツバッハー病、及びレフサム病からなる群から選択される状態に関連する、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記白質ジストロフィーが、カナバン病に関連する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記rAAVベクターを投与する前に、白質ジストロフィーを有する対象を選択することをさらに含む、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
カナバン病の治療を必要とする対象におけるその方法であって、前記対象に治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約10
13vg/kg~約10
15vg/kgの範囲であり、
それによって、前記対象におけるカナバン病を治療する、前記方法。
【請求項12】
前記rAAVベクターを投与する前に、カナバン病の対象を選択することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記rAAVベクターの投与が、前記対象の組織におけるASPAの発現をもたらす、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記組織が、末梢組織または中枢神経系(CNS)組織である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記対象において、解糖からベータ酸化への移行を含む代謝不均衡が存在することが判定されている、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、1つ以上の解糖及び/またはベータ酸化因子のレベルを評価することによって前記代謝不均衡を検出することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上の解糖及び/またはベータ酸化因子のレベルが、前記対象から得られる中枢神経系(CNS)液を使用して評価される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、
(a)前記対象からCNS液を得ることと、
(b)前記CNS液中のベータ酸化の増加を検出することと、
(c)前記(b)での検出に基づいて、前記rAAVを前記対象に投与することと、をさらに含む、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、(a)前記対象から得られた生体試料の代謝プロファイルを測定することと、(b)前記代謝プロファイルに基づいて、解糖からベータ酸化への移行を含む代謝不均衡を識別することと、をさらに含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記代謝プロファイルを測定することが、液体クロマトグラフィー(LC)、質量分析(MS)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)、または超高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(UPLC-MS/MS)を使用して前記生体試料をアッセイすることを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記生体試料が、血液、血清、CNS組織、または脳脊髄液(CSF)を含む、請求項19または請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記CNS組織が、脳組織である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記代謝プロファイルが、グルコース、グルコース-6-リン酸、3-ホスホグリセリン酸、ピルビン酸、乳酸、及びホスホエノールピルビン酸からなる群から選択される第1のバイオマーカーのレベルを含む、請求項19~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記代謝プロファイルが、カルニチン、マロニルカルニチン、ミリストイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、マロニルカルニチン、及びベータヒドロキシ酪酸からなる群から選択される第2のバイオマーカーのレベルを含む、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記治療有効量が、約10
14vg/kg~約5×10
14vg/kgの範囲である、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記治療有効量が、約1.32×10
14vg/kgである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療有効量が、約3×10
14vg/kgである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記rAAVが、注入によって投与される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記rAAVが、静脈内注入によって投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記rAAVが、注射によって投与される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記注射が、静脈内注射、血管内注射、及び脳室内注射からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記対象が生後30ヶ月以下である、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
ASPAが、ヒトASPAタンパク質を含む、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
ASPAが、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6に対して、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記プロモーターが、アストロサイト特異的プロモーター、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、または強化型トリβ-アクチンプロモーターである、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記プロモーターが、サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッドプロモーター、またはPGKプロモーターである、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッドプロモーターが、CAGプロモーター、CB6プロモーター、またはCBAプロモーターである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
ASPAをコードする前記非AAVヌクレオチド配列が、ヒトASPA cDNAを含むか、またはそれからなる、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
ASPAをコードする前記非AAVヌクレオチド配列が、コドン最適化ヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
ASPAをコードする前記非AAVヌクレオチド配列が、配列番号1を含むか、またはそれからなる、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記非AAVヌクレオチド配列が、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6に対して、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記核酸分子が、サイトメガロウイルス前初期エンハンサーを含む、請求項1~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記核酸分子が、ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む、請求項1~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記核酸分子が、Kozak配列を含む、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記核酸分子が、miR-122結合部位を含む、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記ITRが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、またはrh74血清型ITRである、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記rAAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、またはrh74血清型rAAVである、請求項1~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記rAAVが、AAV9血清型rAAVである、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記rAAVが、自己相補性rAAV(scAAV)である、請求項1~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記rAAVが、一本鎖rAAV(ssAAV)である、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
約1.32×10
14vg/kgの組換え自己相補性アデノ随伴ウイルス9(scAAV9)ベクターを静脈内注入によって対象に投与することを含み、前記rAAV9ベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー、Kozak配列、及びウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む核酸分子と、
(ii)配列番号1のアミノ酸配列をコードする非AAVヌクレオチド配列であって、前記対象におけるASPAの発現を指示するCB6プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記対象が生後30ヶ月以下であり、前記対象がカナバン病を有する、方法。
【請求項52】
約3×10
14vg/kgの組換え自己相補性アデノ随伴ウイルス9(scAAV9)ベクターを静脈内注入によって対象に投与することを含み、前記rAAV9ベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー、Kozak配列、及びウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む核酸分子と、
(ii)配列番号1のアミノ酸配列をコードする非AAVヌクレオチド配列であって、前記対象におけるASPAの発現を指示するCB6プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記対象が生後30ヶ月以下であり、前記対象がカナバン病を有する、方法。
【請求項53】
(a)前記対象に低分子代謝調節物質を投与すること、(b)前記対象に食事介入を処方することであって、前記食事介入が、前記対象における解糖を促進し、及び/またはベータ酸化を低減する、前記処方すること、及び/または(c)前記対象に免疫抑制剤を投与すること、をさらに含む、請求項1~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
治療有効量のグルココルチコイドを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記グルココルチコイドが、前記rAAVベクターの投与前、投与と同時、及び/または投与後に投与される、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記グルココルチコイドが、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、またはそれらの組み合わせである、請求項54または請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記対象に、治療有効量の抗ヒスタミン剤を投与することをさらに含む、請求項1~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記抗ヒスタミン剤が、前記rAAVベクターの投与前、投与と同時、及び/または投与後に投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記抗ヒスタミン剤が、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、クロルフェニラミン、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項57または請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記投与後、尿、脳脊髄液(CSF)、及び/または脳組織中のN-アセチルアスパラギン酸(NAA)レベルが低下する、請求項1~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記投与後、尿中のNAAレベルが低下する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記尿中のNAAレベルが、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記尿中のNAAレベルが、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上、治療前のレベルと比較して低減したままである、請求項61または62に記載の方法。
【請求項64】
前記投与後、CSF中のNAAレベルが低下する、請求項60~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記CSF中のNAAレベルが、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記CSF中のNAAレベルが、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上、治療前のレベルと比較して低下したままである、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
前記投与後、脳組織中のNAAレベルが低下する、請求項60~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記脳組織中のNAAレベルが、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記脳組織中のNAAレベルが、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上、治療前のレベルと比較して低減したままである、請求項67または68に記載の方法。
【請求項70】
前記投与後、新規髄鞘形成が、磁気共鳴イメージング(MRI)を使用して観察可能である、請求項1~69のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月12日に出願された米国仮出願第63/254,885号、及び2022年6月14日に出願された米国仮出願第63/352,049号に対する優先権の利益を主張し、そのそれぞれの内容は、あらゆる目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
電子配列表に対する言及
電子配列表の内容(ASPA_004_02WO_SeqList_ST26.xml;サイズ:32,450バイト;及び作成日:2022年10月11日)は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
白質ジストロフィーは、ミエリン及び中枢神経系(CNS)白質の他の成分、例えば、乏突起膠細胞及びアストロサイトと呼ばれる細胞の異常な産生、処理、または発達に起因するまれな、主に遺伝性の神経障害の群である。ミエリン機能の低下は、神経機能の進行的喪失をもたらす。
【0004】
50種類以上の白質ジストロフィーが同定されており、その中には次のものがある:自律神経疾患を伴うアレキサンダー病常染色体優勢白質ジストロフィー(Alexander disease autosomal dominant leukodystrophy with autonomic diseases)(ADLD)、カナバン病、脳腱黄色腫症(CTX)、異染性白質ジストロフィー(MLD)、ペリツェウス・メルツバッハー病、及びレフサム病。白質ジストロフィーの具体的な症状は、疾患の種類よって大きく異なる。
【0005】
疾患の経過を著しく変える白質ジストロフィーの治療法はない。代わりに、治療は、症状を緩和し、いくつかの神経機能を維持することを目的としている。したがって、カナバン病などの白質ジストロフィー疾患タイプのための新しい治療剤を開発するための満たされていない需要が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、遺伝子療法による白質ジストロフィーを有する対象の治療方法を提供する。遺伝子療法は、アスパルトアシラーゼ(ASPA)をコードする核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルスベクターの投与を含み得る。
【0007】
ある態様では、本開示は、対象に治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを投与することを含み、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)アスパルトアシラーゼ(ASPA)をコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、非AAVヌクレオチド配列と、を含む、方法を提供する。
【0008】
関連する態様では、本開示は、アスパルトアシラーゼ(ASPA)の発現を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを対象に投与することを含み、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、方法を提供する。
【0009】
別の態様では、本開示は、アスパルトアシラーゼ(ASPA)のレベルの増加を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを対象に投与することを含み、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、方法を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本開示は、白質ジストロフィーの治療を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを対象に投与することを含み、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、方法を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、カナバン病の治療を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを対象に投与することを含み、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、方法を提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、白質ジストロフィーの治療における治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの使用であって、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、使用を提供する。
【0013】
別の態様では、本開示は、カナバン病の治療における治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの使用であって、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、使用を提供する。
【0014】
さらなる態様では、本開示は、白質ジストロフィーの治療のための組成物であって、カナバン病の治療における治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含み、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、組成物を提供する。
【0015】
さらなる態様では、本開示は、カナバン病の治療のための組成物であって、カナバン病の治療における治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含み、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、組成物を提供する。
【0016】
別の態様では、本開示は、白質ジストロフィーを治療するための物質の産生のための薬剤の製造における治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの使用方法であって、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、方法を提供する。
【0017】
別の態様では、本開示は、カナバン病を治療するための物質の産生のための薬剤の製造における治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターの使用方法であって、rAAVベクターが、(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列と、を含み、非AAVヌクレオチド配列がプロモーターに作動可能に連結されている、方法を提供する。
【0018】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、白質ジストロフィーは、カナバン病、副腎脊髄ニューロパチー、アレキサンダー病、脳腱黄色腫症、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、ペリツェウス・メルツバッハー病、及びレフサム病からなる群から選択される状態に関連する。いくつかの実施形態では、白質ジストロフィーはカナバン病に関連している。
【0019】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、治療有効量は、約1013ベクターゲノム/キログラム(vg/kg)~約1015vg/kgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、約1014vg/kg~約5×1014vg/kgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、少なくとも約1.32×1014vg/kgである。いくつかの実施形態では、治療有効量は約3×1014vg/kgである。
【0020】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、rAAVは、静脈内注入によって投与される。
【0021】
前述の態様のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、対象は、生後30ヶ月以下である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】CB6プロモーター及びヒトASPAタンパク質をコードするコドン最適化された導入遺伝子を含む、「scAAV9-CB6-hASPAopt」と称される、実施例1の研究で使用される自己相補性AAV(scAAV)ベクターの設計を示す。略語:CMV:サイトメガロウイルス;IE:前初期;ITR:逆位末端反復。
【0023】
【
図2】BBP-812の中用量及び高用量レジメンで処置した動物の体重を示す。最初の32日間は隔日、その後は隔週で体重を測定した(それぞれn=10)。
【0024】
【
図3】総クレアチン(tCr)(n=3)に対して正規化された、総N-アセチルアスパラギン酸(tNAA)レベルを示す脳の磁気共鳴分光分析を示す。
【0025】
【
図4】野生型(WT)マウス、未処置マウス、及びBBP-812で処置したマウスの、出生後日(PND)27、90、180、及び364における運動行動試験時間を示す。
【0026】
【
図5A】2.6×10
13、8.8×10
13、及び2.6×10
14ベクターゲノム/キログラム(vg/kg)で、BBP-812でPND1で処置した、野生型及びAspa-/-(ノックアウト、KO)マウスにおける脳組織学を示す。(CA3:アンモン角3;Ce:小脳;Cx:皮質;DG:歯状回)。
【
図5B】2.6×10
13、8.8×10
13、及び2.6×10
14ベクターゲノム/キログラム(vg/kg)で、BBP-812でPND1で処置した、野生型及びAspa-/-(ノックアウト、KO)マウスにおける脳組織学を示す。(CA3:アンモン角3;Ce:小脳;Cx:皮質;DG:歯状回)。
【0027】
【
図6】ベクター投与後364日目において、ddPCRを使用した、細胞当たりのベクターゲノムコピー数について分析したCNSの11の異なる領域を示す。(BS:脳幹;CBL:小脳;CSC:頸部脊髄;CNS:中枢神経系;Cx:皮質;ddPCR:液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応;HPC:海馬;LMN:蓋板;LSC:腰髄;MB:中脳)。
【0028】
【
図7A】BBP-812でPND1(生後1日目)に処置した野生型Aspa-/-マウスにおける脳組織学を示す。
【
図7B】BBP-812でPND1(生後1日目)に処置した野生型Aspa-/-マウスにおける脳組織学を示す。
【0029】
【
図8】BBP-812の生体内分布及びhASPAOpt導入遺伝子の発現を決定するために採取し、使用した試料の位置を示す。
【0030】
【
図9】脳(
図9A)、脊髄(
図9B)、肝臓(
図9C)、心臓(
図9D)、及び腎臓(
図9E)におけるBBP-812の評価を示す。脳及び脊髄の場合、各個々の組織領域は、個々のデータ点としてプロットされる。
【0031】
【0032】
【
図11】ビヒクル(V)、1×10
14vg/kg処置動物(L)、または3×10
14vg/kg処置マウス(H)からの脾臓細胞の、培地(陰性対照)、ConA(陽性対照)、及びペプチドプールの、AAV9及びASPAに対する反応性を示すELISAの結果を示す。(SFU:スポット成形単位)。
【0033】
【
図12】4週、12週、及び24週の生体内分布試料から3×10
14vg/kg用量群で検出された、ベクターゲノム(上パネル)及び導入遺伝子RNA(下パネル)を示す。
【0034】
【
図13】カナバン病を治療するための遺伝子療法の第1/2相研究のタイムライン及び全体的な設計を示す。(d:日;DSMC:データ及び安全性モニタリング委員会;kg:キログラム;mo:月;N:参加者数;vg:ベクターゲノム)。
【0035】
【
図14】研究用量の設定、観察、及び登録拡大シーケンスを示す。
【0036】
【
図15】グルココルチコイド予防及びテーパリングレジメンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示は、アスパルトアシラーゼ(ASPA)の発現を必要とする対象においてそうするように操作された、組換えアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに関する。本開示の態様は、神経変性疾患(例えば、カナバン病などの白質ジストロフィー)の治療を必要とする対象におけるその方法に関する。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、対象におけるN-アセチルアスパラギン酸(NAA)レベルを調節することを含む。NAAは、アスパルトアシラーゼ(ASPA)によって酢酸塩及びL-アスパラギン酸塩に代謝される。
【0038】
本明細書に使用される見出しは、単に構成の目的のためであり、記載されている主題を限定するものとして解釈されるべきではない。特許、特許出願、論説、書籍及び論文を含むが、これらに限定されない、本明細書で引用されている文書または文書の一部は全て、その全体があらゆる目的のために参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。組み込まれた文書または文書の一部の1つ以上が、ある用語を定義し、それが本出願でのその用語の定義と矛盾する場合、本出願に記載される定義が優先する。しかしながら、本明細書で引用された任意の参考文献、記事、刊行物、特許、特許公開、及び特許出願の言及は、それらが有効な先行技術を構成する、または世界の任意の国における一般的知識の一部を形成するという認識、または示唆の任意の形態ではなく、そのように受け取られるべきではない。
【0039】
本明細書において、いかなる濃度範囲、百分率範囲、比範囲、または整数範囲も、特に明記しない限り、記載された範囲内の任意の整数の値、及び適切な場合には、その分数(例えば、整数の10分の1及び100分の1)を含むと理解されるべきである。用語「約」は、数または数字の直前にある場合、数または数字がプラスまたはマイナス10%の範囲であることを意味する。本明細書で使用されるとき、用語「a」及び「an」は、特に明記しない限り、示される構成要素のうちの「1つ以上」を指すと理解されるべきである。選択肢(例えば、「または」)の使用は、選択肢のうちの一方、双方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。用語「及び/または」は、選択肢のちの一方または双方のいずれかを意味すると理解されるべきである。本明細書で使用されるとき、用語「含む(include)」及び「含む(comprise)」は同義的に使用される。
【0040】
組換えAAVベクター及び粒子
ある態様では、本開示は、ASPAをコードする核酸配列を細胞、例えば治療を必要とする細胞に送達するためのウイルスベクターを提供する。したがって、いくつかの実施形態では、本開示は、少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)及びASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列(異種ポリヌクレオチドとも称される)を含む核酸分子を含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターに関し、非AAVヌクレオチド配列はプロモーターに作動可能に連結されている。
【0041】
本明細書で使用される場合、「作動可能な連結」または「作動可能に連結された」という用語は、それらが意図された様式で機能することを可能にするように記載された構成要素の物理的または機能的な並置を指す。ポリヌクレオチドと作動可能に連結した発現制御エレメント(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)の例では、関係は、制御要素が核酸の発現を調節するようなものである。より具体的には、例えば、2つのデオキシリボ核酸(DNA)配列が作動可能に連結されていることは、2つのDNAが、DNA配列のうちの少なくとも1つが他の配列に生理学的効果を及ぼすことができるような関係で(シスまたはトランス)配置されていることを意味する。「作動可能に連結された」とは、連結されている核酸配列が連続している、または実質的に連続していることを意味し得、2つのタンパク質コード領域を連結するのに必要な場合には、連続しており、リーディングフレーム内にあることを意味し得る。
【0042】
いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、ヒトASPAタンパク質であるASPAタンパク質を発現する。いくつかの場合では、本明細書に記載のrAAVベクターによって発現されるASPAタンパク質は、天然(例えば、野生型)ASPAタンパク質である。ヌクレオチド配列によってコードされるASPAタンパク質またはポリペプチドは、天然に存在するASPAタンパク質と同様に、完全長の天然配列、ならびに機能的部分配列、修飾形態、または配列変異体を含み、ただし、その部分配列、修飾形態、または変異体は、天然の完全長ASPAタンパク質のある程度の機能を保持する。本開示の方法及び使用において、rAAVベクター中のヌクレオチド配列によってコードされるASPAタンパク質及びポリペプチドは、治療された対象において欠損しているか、またはその発現が不十分であるか、または欠乏している内因性ASPAタンパク質と同一であり得るが、必須ではない。いくつかの実施形態では、ASPAは、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6に対して少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列(例えば、異種配列)は、野生型ASPA遺伝子配列である。いくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列(例えば、異種配列)は、野生型ASPA遺伝子配列に対してコドン最適化されている。いくつかの実施形態では、本開示のASPAをコードするヌクレオチド配列は、コドン最適化配列であり、配列番号1を含むかまたはそれからなる。他の実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列は、配列番号1に対して、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、少なくとも約99.5%、または100%の同一性を有する核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列(例えば、異種配列)は、ヒトASPA相補的DNA(cDNA)であり、任意選択により、ヘマグルチニン(HA)タグをコードするヌクレオチド配列に連結されている。いくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列(例えば、異種配列)は、タグ、例えば、ヘマグルチニン(HA)、UA、cMyc、または任意の好適なタグをコードするヌクレオチド配列に結合されている。
【0044】
コドン最適化は、遺伝暗号の冗長性を利用して、コードされたタンパク質の同じアミノ酸配列を維持しながらヌクレオチド配列を変更できるようにする。いくつかの実施形態では、コードされたタンパク質の発現の増加または減少を促進するためにコドン最適化が実行される。これは、ヌクレオチド配列におけるコドンの使用を特定の細胞型のものに合わせることによって達成され、したがって、細胞型における特定の転移リボ核酸(tRNA)の相対存在量におけるバイアスに対応する細胞コドンのバイアスを利用する。ヌクレオチド配列のコドンを、対応するtRNAの相対存在量に合うように変更することで、発現を増加させることができる。逆に、対応するtRNAが特定の細胞型ではまれであることがわかっているコドンを選択することによって、発現を減少させることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードするコドン最適化ヌクレオチド配列は、野生型cDNA配列よりも安定であり、それによって、非AAVヌクレオチド配列が遺伝子療法を通じて転写装置に導入される場合、交互にスプライシングされた変異体または切断されたタンパク質の生成を回避する。
【表1-1】
【表1-2】
【0046】
用語「相同」または「相同性」は、2つ以上の参照されるエンティティが定義された領域(例えば、領域、ドメイン、または部分)にわたって同じであることを意味する(例えば、エンティティが整列されている場合)。「整列された」配列とは、複数のポリヌクレオチドまたはタンパク質(アミノ酸)の配列を指し、参照配列と比べて欠落または追加の塩基またはアミノ酸(ギャップ)の補正を含有することが多い。2つの配列が少なくとも部分的に相同である場合、それらは少なくとも部分的な同一性を共有する。相同性または同一性の「領域(Area)」、「領域(region)」または「ドメイン」は、それらが相同性または同一性を共有するように、2つ以上の参照されるエンティティの一部が同一であることを意味する。したがって、2つの配列が1つ以上の配列領域にわたって同一である場合、それらはこれらの領域で同一性を共有する。例として、2つのポリペプチド配列が同一である場合、それらは、少なくとも参照される領域または部分内で、同じアミノ酸配列を有する。同様に、2つのポリヌクレオチド配列が同一である場合、それらは、少なくとも参照される領域または部分内で、同じポリヌクレオチド配列を有する。「実質的な相同性」は、参照分子の構造または機能(例えば、生物学的機能または活性)のうちの1つ以上、またはそれが相同性を共有する参照分子の関連する/対応する領域または部分の少なくとも部分的な構造または機能を有するか、または有すると予測されるように、分子が構造的にまたは機能的に保存されることを意味する。
【0047】
2つの配列間の同一性または相同性は、配列長全体または配列の一部にわたって延在し得る。いくつかの実施形態では、パーセント同一性を共有する配列の長さは、2個、3個、4個、5個、またはそれよりも多く連続したポリヌクレオチドまたはアミノ酸、例えば、少なくとも6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、またはそれよりも多くの連続したアミノ酸である。いくつかの実施形態では、同一性を共有する配列の長さは、20個以上の連続したポリヌクレオチドまたはアミノ酸、例えば、少なくとも20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、29個、30個、31個、32個、33個、34個、35個、またはそれ以上の連続したアミノ酸である。いくつかの実施形態では、同一性を共有する配列の長さは、35以上の連続したポリヌクレオチドまたはアミノ酸、例えば、少なくとも35個、36個、37個、38個、39個、40個、41個、42個、43個、44個、45個、46個、47個、48個、49個、50個、またはそれ以上の連続したアミノ酸である。いくつかの実施形態では、同一性を共有する配列の長さは、50以上の連続したポリヌクレオチドまたはアミノ酸、例えば、少なくとも50~55、55~60、60~65、65~70、70~75、75~80、80~85、85~90、90~95、95~100、100~110、またはそれ以上の連続したポリヌクレオチドまたはアミノ酸である。
【0048】
2つの配列間の同一性(相同性)の程度は、コンピュータープログラム及び数学的アルゴリズムを使用して確認することができる。パーセント同一性は、初期設定のパラメータを使用するwww.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustaloから入手可能なアラインメントプログラムであるClustal Omegaを使用して算出することができる。例えば、Sievers et al.,“Fast,scalable generation of high-quality protein multiple sequence alignments using Clustal Omega.”(2011 October 11)Molecular systems biology 7:539を参照されたい。配列に対する同一性を計算するために、タグのような拡張は含まれない。
【0049】
本明細書に記載のrAAVベクターゲノム配列を含むベクターゲノム配列は、1つ以上の「発現制御エレメント」を含むことができる。典型的には、発現制御エレメントは、作動可能に連結されたポリヌクレオチドの発現に影響を与える核酸配列である。ベクター内に存在するプロモーター及びエンハンサー等の本明細書に記載の発現制御エレメントを含む制御エレメントは、適切な異種ポリヌクレオチド(例えば、ASPA遺伝子)の転写及び/または翻訳(例えば、プロモーター、エンハンサー、イントロンのためのスプライシングシグナル、mRNAのインフレーム翻訳を可能にするための遺伝子の正しい読み取りフレームの維持等)を容易にするために含まれる。発現制御エレメントには、適切な転写開始、終結、プロモーター、及びエンハンサー配列、スプライシング及びポリアデニル化(ポリA)シグナルなどの効率的なRNA処理シグナル、細胞質mRNAを安定化する配列、翻訳効率を高める配列(すなわち、Kozakコンセンサス配列)、タンパク質安定性を高める配列、ならびに場合によっては、コードされた生成物(例えば、ASPA)の分泌を高める配列が含まれる。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVベクターゲノム配列は、Kozak配列(例えば、RNA Kozak配列に転写されるDNA配列)のようなコンセンサス配列を含む。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVベクターゲノム配列は、ASPAタンパク質をコードするヌクレオチド配列の上流にKozak配列を含む。いくつかの実施形態では、RNA Kozak配列は、ACCAUGG(配列番号44)、GCCGCCACCAUGG(配列番号45)、CCACCAUG(配列番号46)、またはCCACCAUGG(配列番号47)を含むかまたはそれからなる。
【0050】
発現制御は、転写、翻訳、スプライシング、メッセージ安定性などのレベルで行うことができる。典型的には、転写を調節する発現制御エレメントは、転写されたポリヌクレオチドの5’末端の近く(すなわち、「上流」)に並置される。発現制御エレメントはまた、転写配列の3’末端(すなわち、「下流」)に位置するか、または転写産物内(例えば、イントロン内)に位置することができる。発現制御エレメントは、かなりの距離であるが、転写された配列から離れた距離(例えば、ASPAを発現するヌクレオチド配列からの100~500、500~1000、2000~5000、5000~10,000、またはそれ以上のヌクレオチド)に位置することができる。それにもかかわらず、ポリヌクレオチド長の制限のために、AAVベクターについて、そのような発現制御エレメントは、典型的には、ASPAをコードするヌクレオチド配列から1~1000ヌクレオチド以内であろう。
【0051】
機能的には、ASPAをコードする作動可能に連結されたヌクレオチド配列の発現は、エレメント(例えば、プロモーター)によって少なくとも部分的に制御可能であり、その結果、エレメントは、ヌクレオチド配列の転写を調節し、必要に応じて、転写産物の翻訳を調節する。発現制御エレメントの具体的な例はプロモーターであり、それは通常、転写された配列の5’に位置する。発現制御エレメントの別の例はエンハンサーであり、それは転写された配列の5’、転写された配列の3’、または転写配列内に位置することができる。
【0052】
本明細書で使用される「プロモーター」は、組換え産物(例えば、ASPA)をコードする核酸配列(例えば、異種ポリヌクレオチド)に隣接して位置する核酸配列を指すことができる。プロモーターは、典型的には、隣接する配列、例えば、異種ポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。プロモーターは通常、プロモーターが存在しない場合に発現される量と比べて、異種ポリヌクレオチドから発現される量を増加させる。
【0053】
本明細書で使用される「エンハンサー」は、ASPAをコードするヌクレオチド配列に隣接して位置する配列を指すことができる。エンハンサーエレメントは、典型的には、プロモーターエレメントの上流に位置するが、機能的でもあり、DNA配列(例えば、ASPAをコードするヌクレオチド配列)の下流またはDNA配列内に位置し得る。したがって、エンハンサーエレメントは、異種ポリヌクレオチドの上流または下流に100塩基対、200塩基対、または300以上の塩基対を配置することができる。エンハンサーエレメントは通常、プロモーター要素によってもたらされる発現増加のレベルを超えて、異種ポリヌクレオチドの発現を増加させる。
【0054】
いくつかの実施形態では、発現制御エレメントは、多くの異なる細胞型におけるポリヌクレオチドの発現を駆動することができるユビキタス、構成的または無差別プロモーター及び/またはエンハンサーを含む。そのような要素には、サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッド(例えば、CAG、CB6、またはCBA)プロモーター、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)前初期プロモーター及び/またはエンハンサー配列、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター及び/またはエンハンサー配列、ならびに様々な哺乳動物細胞型で活性な他のウイルスプロモーター及び/またはエンハンサー、または天然に存在しない合成要素(例えば、Boshart et al,Cell,41:521-530(1985)を参照されたい)、SV40プロモーター、ジヒドロ葉酸レダクターゼプロモーター、トリβ-アクチン(CBA)プロモーター、EF1プロモーター(Invitrogen)、CBAプロモーターと結合された前初期CMVエンハンサー(Beltran et al.,Gene Therapy,17(9):1162-1174(2010))、及びCBhプロモーター(Gray et al.,Hum Gene Ther,22(9):1143-1153(2011))が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示のrAAVは、CMVエンハンサーの一部、トリベータアクチンプロモーターの一部、及びUBCエンハンサーの一部を含有する合成CASIプロモーターを含む。(例えば、国際特許公開第WO2012115980号を参照されたい)。いくつかの実施形態では、プロモーターは、アストロサイト特異的プロモーター、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、または強化型トリβ-アクチンプロモーターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッドプロモーター、またはPGKプロモーターである。いくつかの実施形態では、サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッドプロモーターは、CAGプロモーター、CB6プロモーター、またはCBAプロモーターである。
【0055】
いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、配列番号2を含むCAGプロモーター配列、または配列番号2に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、配列番号3を含むPGKプロモーター配列、または配列番号3に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、配列番号4を含むCB6プロモーター配列、または配列番号4に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、配列番号5を含むCBAプロモーター配列、または配列番号5に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%、または100%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。表1は、プロモーター配列の非限定的な例を含む。
【0056】
誘導性プロモーターは、遺伝子発現の制御を可能にし、外来的に供給される化合物、温度のような環境因子、もしくは特定の生理学的状態、急性期、細胞の特定の分化状態の存在によって、または複製している細胞のみにて調節され得る。誘導性プロモーター及び誘導系は、Invitrogen及びClontechを含むがこれらに限定されない、種々の市販の供給源から入手可能である。他の多くの系が記載されており、使用可能である。外来的に供給される化合物によって調節される誘導性プロモーターの例としては、亜鉛誘導性ヒツジメタロチオニン(MT)プロモーター、デキサメタゾン(Dex)誘導性マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、T7ポリメラーゼプロモーター系、エクジソン昆虫プロモーター、テトラサイクリン抑制系、テトラサイクリン誘導系、RU486誘導系、及びラパマイシン誘導系が挙げられる。厳密に調節され、ASPA発現が意図される特定の標的細胞型に特異的である任意の種類の誘導性プロモーターを使用してもよい。
【0057】
発現制御エレメント(例えば、プロモーター)は、本明細書において「組織特異的発現制御エレメント/プロモーター」と称される、特定の組織または細胞型において活性なものを含む。組織特異的発現制御エレメントは、典型的には、特定の細胞または組織(例えば、脳、中枢神経系、脊髄等)において活性である。発現制御エレメントは、特定の細胞、組織、または臓器タイプに固有である転写活性化タンパク質、または他の転写調節因子によって認識されるため、典型的には、これらの細胞、組織、または臓器において活性である。したがって、いくつかの場合において、本開示のrAAVベクターは、宿主細胞(例えば、乏突起膠細胞、シュワン細胞、ミクログリア細胞、アストロサイトもしくはニューロン等の神経細胞、または肝細胞等の非神経細胞)におけるASPAタンパク質をコードするヌクレオチド配列の発現を指示するプロモーターを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、本開示のrAAVベクターにおいて有用な調節配列はまた、イントロンを含有し、イントロンは任意選択によりプロモーター/エンハンサー配列とASPA遺伝子との間に位置する。いくつかの実施形態では、イントロン配列はSV-40に由来し、SD-SAと呼ばれる100bpのミニイントロンスプライスドナー/スプライスアクセプターである。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは転写後調節要素を含む。転写後調節要素の一例は、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後エレメント(WPRE)である。(例えば、Wang and Verma,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,96:3906-3910(1999)を参照されたい)。特定の実施形態では、転写後調節要素は、B型肝炎ウイルス転写後調節要素(HBVPRE)またはRNA輸送要素(RTE)である。いくつかの実施形態では、WPREまたはHBVPRE配列は、米国特許第6,136,597号または米国特許第6,287,814号に開示されるWPREまたはHBVPRE配列のうちのいずれかである。いくつかの実施形態では、WPRE配列は以下を含むかまたはそれらからなる:
【化1】
【0059】
いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、ポリAシグナルを含む。ポリAシグナルは、ウサギ、SV-40、ヒト、及びウシを含むがこれらに限定されない多くの好適な種に由来し得る。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、ウサギβ-グロビンポリAシグナルなどのウサギグロビンポリAシグナルを含む。いくつかの実施形態では、ウサギβ-グロビンポリAシグナルは、配列番号101の核酸配列を有するか、または配列番号101(配列番号101-aataaaggaa atttattttc attgcaatag tgtgttggaa ttttttgtgt ctctca)と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%、または100%同一のヌクレオチド配列を有する。
【0060】
rAAVベクターに含まれてもよい別の有用な調節成分は配列内リボソーム進入部位(IRES)である。IRES配列または他の好適な系を使用して、単一の遺伝子転写物から2つ以上のポリペプチドを生成してもよい。IRES(または他の好適な配列)を使用して、2つ以上のポリペプチド鎖を含有するタンパク質を生成する、または同じ細胞から、または同じ細胞内で、2つの異なるタンパク質を発現させる。例示的なIRESは、ポリオウイルス配列内リボソーム進入配列である。IRESは、rAAVベクター内のASPA導入遺伝子に対して5’または3’に位置し得る。他の実施形態では、rAAVベクターは、単一のプロモーターからの複数のポリペプチドの発現を可能にする2Aペプチドをコードするヌクレオチド配列を含んでもよい。
【0061】
本明細書で使用される場合、組換え「ベクター」または「rAAVベクター」は、ウイルスから野生型ゲノムを除去し、それを異種ポリヌクレオチド配列(例えば、ASPAを発現する治療用遺伝子発現カセット)等の非天然核酸で置き換えるための分子方法を使用することによって、AAV等のウイルスの野生型ゲノムに由来するベクターを指す。通常、AAVについては、野生型AAVゲノムの一方または双方の逆位末端反復(ITR)配列がAAVベクター内に保持される。ウイルスゲノムの全て(または一部)がウイルスゲノム核酸に関して非ネイティブ配列に置換されているので、rAAVベクターはウイルスゲノムと区別することができる。したがって、異種ポリヌクレオチドなどの非天然配列の組み込みは、ウイルスベクターを「組換え」ベクターとして定義し、AAVの場合には「rAAVベクター」と称することができる。ASPAをコードする核酸分子を含むrAAVベクターはまた、「scAAV9-CB6-hASPAopt」または「ASPAベクター」と称されてもよい。文脈から明らかなように、「ベクター」は、単離された組換えヌクレオチド配列、または組換えヌクレオチド配列を含むAAV粒子もしくはビリオンを指してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、miRNA(マイクロRNA)に対するいかなる結合部位をも含まない。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、ASPAタンパク質の発現が所望されない(すなわち、非標的化)細胞において発現されるmiRNAに対する1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の結合部位を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、miR-122に対する1つ以上の結合部位を含む。ASPAコード配列へのmiR-122の結合は、miR-122が非常に広く存在する肝細胞におけるこの配列の発現を低下させ得る(Thakral and Ghoshal,Curr Gene Ther.2015;15(2):142-150)。
【0063】
rAAV核酸配列を、エクスビボ、インビトロ、またはインビボにおける細胞のその後の感染(形質転換)のためにウイルス(本明細書において「粒子」または「ビリオン」とも称される)にパッケージ化することができる。組換えベクター配列がAAV粒子に封入またはパッケージ化されている場合、粒子は「rAAV」と称され得る。そのような粒子またはビリオンには通常、ベクターゲノムをカプシドで封入するまたはパッケージングするタンパク質が含まれる。特定の例には、ウイルスエンベロープタンパク質、及びAAVの場合はカプシドタンパク質が含まれる。
【0064】
本明細書に記載されているrAAVベクター及びrAAV粒子のAAV成分は、種々のAAV血清型から選択されてもよい。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、rh10、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、またはrh74血清型由来のAAV核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、AAV9血清型由来のAAV核酸配列を含む。これらのAAV成分は、種々の技術を使用してAAV血清型から容易に単離され得る。そのようなAAVは、単離されてもよく、または学術的、商業的、または公的な情報源から得られてもよい(例えば、American Type Culture Collection,Manassas,VA)。あるいは、AAV配列は、文献中または例えばGenBank(商標)、PubMed等のデータベース中で利用可能であるような公表された配列を参照することによって、合成または他の好適な手段によって得られてもよい。
【0065】
ある特定の実施形態では、rAAVベクターまたはrAAV粒子は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,906,111号または米国特許第7,629,322号に開示されるようなAAV核酸配列またはAAVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターまたはrAAV粒子は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,282,199号、第9,587,250号または第9,677,089号に開示されるような、AAV血清型AAV8またはその変異体由来のAAV核酸配列またはAAVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターまたはrAAV粒子は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,198,951号に開示されるような、AAV血清型AAV9またはその変異体由来のAAV核酸配列またはAAVタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターまたはrAAV粒子は、AAV血清型rh74またはその変異型由来のAAV核酸配列またはAAVタンパク質を含む。
【0066】
いくつかの実施形態では、本開示のrAAVベクターは、少なくとも1つのAAV ITR配列を含む核酸分子を含む。特定の実施形態では、rAAVベクターは2つのITR配列を含み、これらのITR配列は同じまたは異なるAAV血清型のものであってもよい。AAV ITRは、rh10、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh74、及び他のAAV血清型を含むがこれらに限定されない、任意の有用なAAV血清型の中から選択され得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されているrAAVベクターは、1つまたは2つのAAV2 ITR配列を含むゲノムを含む。
【0067】
本開示はさらに、本明細書に記載されているrAAVベクターを含むrAAV粒子を提供する。したがって、いくつかの態様では、本開示は、少なくとも1つのAAV ITR、及びASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列(異種ポリヌクレオチドとも称される)を含む核酸分子を含むrAAV粒子に関し、非AAVヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、AAV血清型rh10、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh74、及び他のAAV血清型からなる群から選択される少なくとも1つのカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAV粒子は、少なくとも1つのAAV9カプシドタンパク質を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、rAAVベクターまたは粒子は、AAV9カプシドタンパク質、ヒトASPA cDNA、CAG、PGK、CBAまたはCB6プロモーター、及び任意選択により1つまたは2つのAAV2 ITR配列を含む核酸分子を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターまたは粒子は、AAV9-CAG-hASPAopt、AAV9-PGK-hASPAopt、AAV9-CBA-hASPAoptまたはAAV9-CB6-hASPAoptベクターである。いくつかの実施形態では、プロモーターは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5、または配列番号2、配列番号3、配列番号4、もしくは配列番号5に対して少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、Kozak配列を含む。いくつかの実施形態では、Kozak配列は、配列番号44、配列番号45、配列番号46、または配列番号47を含むか、またはそれに転写することができる。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、HBVPRE配列またはWPRE配列(例えば、配列番号51)をさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、rAAVベクターまたはrAAV粒子は、カプシド(「Cap」)タンパク質(例えば、vp1、vp2、vp3及び超可変領域を含む)、ウイルス複製(「Rep」)タンパク質(例えば、rep78、rep68、rep52、またはrep40)、及び/または1つ以上のそのようなタンパク質をコードする配列を含む。これらのAAV成分は、様々なベクター系及び宿主細胞において容易に利用され得る。そのような構成成分は、単独で、他のAAV血清型配列もしくは成分と組み合わせて、または非AAVウイルス配列由来の要素と組み合わせて使用されてもよい。本明細書で使用されるとき、人工AAV血清型は、限定するものではないが、天然に存在しないカプシドタンパク質を持つAAVが含まれる。そのような人工カプシドは、選択されたAAV配列(例えば、vp1カプシドタンパク質の断片)を、異なる選択されたAAV血清型から、同じAAV血清型の非連続部分から、非AAVウイルス源から、または非ウイルス源から得られてもよい異種配列と組み合わせて使用して、任意の好適な技術によって生成されてもよい。人工AAV血清型は、限定するものではないが、シュードAAV、キメラAAVカプシド、組換えAAVカプシド、または「ヒト化」AAVカプシドであってもよい。1つのAAVのカプシドが異種カプシドタンパク質で置換されているシュードベクターは本開示において有用である。いくつかの実施形態では、AAVはAAV2/5である。いくつかの実施形態では、AAVはAAV2/8である。例えば、Mussolino et al.,Gene Therapy,18(7):637-645(2011);Rabinowitz et al.,J Virol,76(2):791-801(2002)を参照されたい。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている組成物及び方法にて有用なベクターは、少なくとも、選択されたAAV血清型カプシドまたはその断片をコードする配列を含有する。いくつかの実施形態では、有用なベクターは、少なくとも、選択されたAAV血清型repタンパク質またはその断片をコードする配列を含有する。任意選択により、そのようなベクターはAAVのcapタンパク質とrepタンパク質の双方を含有してもよい。AAVのrep及びcapの双方が提供されているベクターでは、AAVのrep配列及びAAVのcap配列は双方とも1つの血清型であることができる。あるいは、rep配列が1つのAAV血清型に由来し、cap配列が異なるAAV血清型に由来するベクターが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、rep及びcap配列は、別個の供給源(例えば、別個のベクター、または宿主細胞及びベクター)から発現される。いくつかの実施形態では、これらのrep配列は、異なるAAV血清型の配列をキャップするフレーム内で融合されて、米国特許第7,282,199号に記載されるAAV2/8などのキメラAAVベクターを形成し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0071】
好適なrAAVは、本明細書に定義されるAAV血清型カプシドタンパク質、またはその断片をコードする核酸配列、機能的rep遺伝子、少なくともAAV逆位末端反復(ITR)及びASPAをコードする核酸配列からなる核酸分子、ならびに核酸分子のAAVカプシドタンパク質へのパッケージングを可能にするのに十分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することによって生成することができる。いくつかの態様では、本開示は、本明細書に開示されているrAAVベクターまたはrAAV粒子を含む宿主細胞を提供する。rAAVベクターをAAVカプシド内にパッケージングするために宿主細胞内に存在する必要がある成分は、トランスで宿主細胞に提供されてもよい。あるいは、必要な成分(例えば、ベクター、rep配列、cap配列、及び/またはヘルパー機能)のうちのいずれか1つ以上は、様々な方法を使用して必要な成分のうちの1つ以上を含有するように操作された安定した宿主細胞によって提供され得る。最も好適には、そのような安定な宿主細胞は、誘導性プロモーターの制御下に必要とされる成分(複数可)を含有するであろう。しかしながら、必要とされる成分(複数可)は構成的プロモーターの制御下にあってもよい。非AAVヌクレオチド配列、すなわち、ASPAとともに使用するのに適した調節要素の上記の議論において、好適な誘導性及び構成的プロモーターの例が本明細書に提供される。さらに別の代替では、選択された安定した宿主細胞は、構成的プロモーターの制御下にある選択された成分(複数可)と、1つ以上の誘導性プロモーターの制御下にある他の選択された成分(複数可)とを含有し得る。例えば、293細胞(構成的プロモーターの制御下にあるE1ヘルパー機能を含有する)に由来するが、誘導性プロモーターの制御下にあるrepタンパク質及び/またはcapタンパク質を含有する安定な宿主細胞が生成されてもよい。さらに他の安定な宿主細胞が生成されてもよい。
【0072】
本開示のrAAVを産生するために使用されるrAAVベクター、rep配列、cap配列、及びヘルパー機能は、その上に運ばれる配列を移す任意の遺伝要素の形態でパッケージング宿主細胞に送達され得る。選択された遺伝要素は、本明細書に記載されている方法を含む任意の好適な方法によって送達されてもよい。rAAV粒子の生成を含む、本開示の任意の実施形態を構築するのに使用される方法は、核酸操作の当業者に既知であり、遺伝子工学、組換え工学及び合成技術を含む。例えば、Sambrook et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Fisher et al,J.Virol.,70:520-532(1993);及びUS 5,478,745を参照されたい。これらの各々は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0073】
ある態様では、本開示は、rAAV粒子の産生方法を提供し、本方法は、(a)本明細書に記載のASPAを発現するrAAVベクターゲノムを含むかまたはそれからなる核酸分子、(b)AAV repをコードする核酸分子、(c)少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質をコードする核酸分子、及び(d)rAAVベクターゲノムをrAAV粒子にパッケージングするための十分なヘルパー機能を含む宿主細胞を培養することを含む。
【0074】
本開示のrAAV粒子は種々の方法によって精製されてもよい。いくつかの実施形態では、rAAVウイルスは、アニオン交換クロマトグラフィーによって精製されてもよい。例えば、米国特許公開第2018/0163183A1号を参照されたい。本明細書に開示されるAAVベクター及び粒子の構築及び特徴付けに関するさらなる詳細は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際特許公開第WO2019/143803号に記載される。ASPAをコードするrAAV粒子に関するさらなる詳細は、米国特許第9,102,949号、米国特許公開第2019/0125899A1号、及び米国特許公開第2018/0311323A1号に見出すことができ、これらのそれぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるヒトASPA導入遺伝子の発現カセットを含有する非複製組換えAAV血清型9(AAV9)ベクターを含む組成物は、
図2に示されるAAV-hASPAopt-Optベクター設計を有する。いくつかの実施形態では、rAAVベクターの発現カセットは、配列番号102の核酸配列(配列番号102-ctgcgcgctc gctcgctcac tgaggccggg cgaccaaagg tcgcccgacg cccgggcttt gcccgggcgg cctcagtgag cgagcgagcg cgcagagagg gagtggccaa ctccatcact aggggttcct)を含む5’ITRを含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターの発現カセットは、配列番号1のhASPAをコードするコドン最適化された核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターの発現カセットは、配列番号101の核酸配列を含むウサギβ-グロビンポリAを含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターの発現カセットは、配列番号103の核酸配列(配列番号103-aggaacccct agtgatggag ttggccactc cctctctgcg cgctcgctcg ctcactgagg ccgggcgacc aaaggtcgcc cgacgcccgg gctttgcccg ggcggcctca gtgagcgagc gagcgcgcag)を含む3’ITRを含む。
【0076】
薬学的組成物
本開示のrAAVベクターまたはrAAV粒子は、投与に好適な薬学的組成物に組み込むことができる。ある態様では、本開示は、本明細書に開示されるrAAVベクターまたはrAAV粒子(例えば、ASPAをコードする核酸配列を含むrAAV粒子)及び、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む薬学的組成物を提供する。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される」という用語は、確立された経路を使用して投与した場合に一般にアレルギー反応または他の重篤な有害反応を生じない分子実体及び組成物を指す。米国連邦政府または米国州政府の規制機関によって承認された、または米国薬局方または動物、より具体的にはヒトでの使用のために一般的に認識されている他の薬局方に記載されている分子実体及び組成物は、「薬学的に許容される」とみなされる。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される担体」という用語は、薬学的投与に適合する任意の及びあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤及び吸収遅延剤などを含むことが意図されている。好適な担体は、当該分野における標準的な参照テキストであるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に記載され、参照により本明細書に組み込まれる。そのような担体または希釈剤のいくつかの例として、限定されないが、水、食塩水、緩衝食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、5%ヒト血清アルブミン、及び適切な生理学的レベルでpHを維持するための他の緩衝剤、例えば、HEPESが挙げられる。任意の媒体または薬剤が活性成分と不適合である限りを除き、組成物中でのそれらの使用が企図される。補助的活性化合物を組成物に組み込むこともできる。
【0077】
この説明全体を通して、「vg」は「ウイルスゲノム」または「ベクターゲノム」を指し得る。
【0078】
本明細書に開示されるrAAVの投与に使用され得る薬学的組成物及び送達系の例は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(2003)20th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.;Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.;The Merck Index(1996)12th ed.,Merck Publishing Group,Whitehouse,N.J.;Pharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms(1993),Technomic Publishing Co.,Inc.,Lancaster,Pa.;Ansel and Stoklosa,Pharmaceutical Calculations(2001)11th ed.,Lippincott Williams & Wilkins,Baltimore,Md.;及びPoznansky et al.,Drug Delivery Systems(1980),R.L.Juliano,ed.,Oxford,N.Y.,pp.253-315に見出される。
【0079】
本開示の薬学的組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化されてもよい。投与経路の例としては、非経口投与、例えば、静脈内投与、または注射が挙げられる。非経口(例えば、静脈内または注射による)適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含むことができる:注射用水、食塩溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコールまたはメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸または硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等のキレート化剤;アセテート、シトレートまたはホスフェート等の緩衝液、及び塩化ナトリウムまたはデキストロース等の浸透圧を調整するための薬剤。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムのような酸または塩基で調整することができる。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器、またはガラスもしくはプラスチックでできた複数回用量バイアルに封入され得る。
【0080】
注射可能な使用に好適な薬学的組成物には、無菌の水溶液(水溶性の場合)または分散液及び無菌の注射用溶液もしくは分散液の即時調製のための無菌粉末が含まれる。静脈内投与では、好適な担体として、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標)(BASF、Parsippany、N.J.)またはリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動性でなければならない。組成物は、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌のような微生物の混入作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、糖等の等張化剤、マンニトール及びソルビトール等の多価アルコール(例えば、ポリオール)、ならびに塩化ナトリウムを組成物中に含むことが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、組成物中に吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0081】
無菌注射液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じて、上に列挙された原料のうちの1つまたはその組み合わせとともに適切な溶媒中に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上で列挙されたものからの必要とされる他の原料を含有する無菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。無菌注射液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、有効成分に、予め無菌濾過したその溶液からの任意の追加的な成分を加えた粉末が得られる、真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0082】
注射については、薬学的に許容される担体は液体とすることができる。例示的な生理学的に許容される担体には、発熱物質を含まない無菌水及び発熱物質を含まない無菌リン酸緩衝生理食塩水が含まれる。様々なそのような既知の担体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,629,322号に提供される。いくつかの実施形態では、担体は等張塩化ナトリウム溶液である。いくつかの実施形態では、担体は平衡塩類溶液である。いくつかの実施形態では、担体はTWEEN(登録商標)(ポリソルベート)を含む。rAAVを長期間保管する場合、グリセロールまたはTWEEN(登録商標)(ポリソルベート)20の存在下で凍結してもよい。
【0083】
投与の容易性及び投与量の均一性のために非経口組成物を投与量単位剤形で製剤化することが特に有利である。本明細書で使用される投与量単位剤形は、治療される対象のための単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位が、必要な薬学的担体に関連して所望の治療効果がもたらされるように計算された所定の量の活性剤(例えば、rAAV)を含有する。本開示の投与量単位剤形の仕様は、活性剤(例えば、rAAV)固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の治療のためにそのような活性剤(例えば、rAAV)のを調合する技術分野に固有の制限によって必要とされ、かつそれらに直接依存する。単位剤形は、例えば、液体組成物、または凍結乾燥または凍結乾燥状態の組成物を含み得るアンプル及びバイアル内であり得、例えば、無菌液体担体は、インビボで投与または送達する前に添加することができる。個々の単位剤形は複数回用量のキットまたは容器に含めることができる。組換えベクター(例えば、rAAV)配列、プラスミド、ベクターゲノム、組換えウイルス粒子(例えば、rAAV)、及びそれらの薬学的組成物は、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、単一または複数の単位剤形にパッケージ化することができる。
【0084】
rAAVベクターを含む薬学的組成物またはASPAをコードする核酸配列を含むrAAV粒子は、容器、パック、またはディスペンサーに、投与のための指示書とともに含まれてもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、組成物は界面活性剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ポロキサマー188などのポロキサマーを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、増粘剤、可塑剤、及び/または凍結保護剤を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、ソルビトールなどの糖アルコールを含む。いくつかの実施形態では、組成物は緩衝液を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.0、5重量/体積(w/v)ソルビトール、0.001%w/vポロキサマー188中の無菌溶液として製剤化される。それは、2.5mLの充填量で5ミリリットル(mL)のパイロジェンフリーバイアルで供給し、ラテックスフリーのゴムストッパーとアルミニウムフリップオフシールで密封してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、137ミリモル(mM)の塩化ナトリウム、8.1mMの二塩基性リン酸ナトリウム、1.47mMのリン酸二水素カリウム、2.7mMの塩化カリウム、5%w/vのソルビトール、0.001%w/vのポロキサマー188、及び注射用水を含む無菌溶液として製剤化される。製剤化製品のベクター濃度は限定されず、約1012vg/mL~約1015vg/mL、例えば、約5×1012vg/mL、約1×1013vg/mL、約5×1013vg/mL、約1×1014vg/mL、約5×1014vg/mLの範囲であり得、これらの間に存在する全ての値及びサブ範囲を含む。いくつかの実施形態では、製剤化製品のベクター濃度は、約1.8×1013vg/mL~約5.0×1013vg/mLの範囲である。いくつかの実施形態では、製剤化製品のベクター濃度は、約1.8×1013vg/mL~約4.2×1013vg/mLの範囲である。バイアルは、使用可能になるまで-60℃以下で凍結保存することができる。
【0086】
ある態様では、本開示は、rAAVベクター、またはそれを含む粒子を含むキットを提供し、rAAVベクターは、少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)及びASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、非AAVヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。いくつかの実施形態では、キットはさらに、rAAVベクターを対象に投与するための説明書を含む。いくつかの実施形態では、キットは、静脈内注入によってrAAVベクターを投与するための説明書をさらに含む。
【0087】
別の態様では、本開示は、rAAVベクター、またはそれを含む粒子を含む単位用量を提供し、rAAVベクターは、少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)及びASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列を含む核酸分子を含み、非AAVヌクレオチド配列は、プロモーターに作動可能に連結され、治療有効量は、約1013vg/kg~約1015vg/kgの範囲である。いくつかの実施形態では、治療有効量は、約1.32×1014vg/kgである。いくつかの実施形態では、治療有効量は、約3×1014vg/kgである。いくつかの実施形態では、単位用量は液体製剤を含む。いくつかの実施形態では、単位用量は、静脈内注入によって対象に投与するように構成される。
【0088】
上記の態様のいくつかの実施形態では、ASPAタンパク質は、ヒトASPAタンパク質である。上記の態様のいくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列は、ヒトASPA cDNAを含むかまたはそれからなる。上記の態様のいくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列は、コドン最適化ヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。上記の態様のいくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列は、配列番号1を含むかまたはそれからなる。上記の態様のいくつかの実施形態では、ASPAタンパク質をコードする非AAVヌクレオチド配列は、配列番号1のアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%同一のアミノ酸配列をコードする。上記の態様のいくつかの実施形態では、プロモーターは、神経細胞などの宿主細胞におけるASPAタンパク質の発現を指示する。上記の態様のいくつかの実施形態では、プロモーターは、サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッドプロモーター、またはPGKプロモーターである。上記の態様のいくつかの実施形態では、サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッドプロモーターは、CAG、CB6、またはCBAプロモーターである。上記の態様のいくつかの実施形態では、プロモーターは、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。上記の態様のいくつかの実施形態では、ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、またはrh74血清型ITRである。上記の態様のいくつかの実施形態では、rAAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、またはrh74の血清型である。上記の態様のいくつかの実施形態では、rAAVはAAV9血清型である。上記の態様のいくつかの実施形態では、核酸分子はさらにKozak配列を含む。上記の態様のいくつかの実施形態では、核酸分子はさらにはmiR-122結合部位を含む。
【0089】
組換えAAVベクター及び粒子の使用方法
本開示は、必要とする対象の治療などにおける、AAV(例えば、組換えAAV)ベクターの使用を伴う方法を提供する。本明細書に提供される方法は、例えば、本明細書において開示される治療有効量のrAAVまたは組成物のうちのいずれか1つを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターの投与は、対象の組織におけるASPAの発現をもたらす。いくつかの実施形態では、組織は末梢組織または中枢神経系(CNS)組織である。いくつかの実施形態では、rAAVベクターの投与は、対象の細胞におけるASPAの発現をもたらす。いくつかの実施形態では、細胞は神経細胞、例えば乏突起膠細胞である。
【0090】
いくつかの実施形態では、対象は、ヒト、非ヒト霊長類、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ハムスター、マウス、またはラットである。特定の実施形態では、対象はヒトである。ヒト対象は、ヒト女性またはヒト男性であり得る。いくつかの実施形態では、対象は、以前にホルモン療法プログラムを受けたことがあるヒトである。いくつかの実施形態では、対象はホルモン療法プログラムを受けている。いくつかの実施形態では、対象は、支持療法または栄養管の使用などの物理療法または他の物理的介入を受けたか、または受けている。いくつかの実施形態では、対象は、カナバン病の1つ以上の症状、例えば、抗発作または抗けいれん薬による治療を受けているか、または受けた。いくつかの実施形態では、対象は、グルコン酸リチウム、グリセリルトリアセテート(GTA)、臍帯血細胞療法、またはASPA遺伝子療法などのカナバン病の治験治療を受けたか、または受けている。いくつかの実施形態では、対象はヒト幼児である。ある特定の場合において、対象は、生後約1ヶ月、生後約2ヶ月、生後約3ヶ月、生後約4ヶ月、生後約5ヶ月、生後約6ヶ月、生後約7ヶ月、生後約8ヶ月、生後約9ヶ月、生後約10ヶ月、生後約11ヶ月、または生後約1年のヒト幼児である。いくつかの実施形態では、対象は、生後3ヶ月未満、生後6ヶ月未満、生後9ヶ月未満、生後1年未満、または生後18ヶ月未満のヒト幼児である。いくつかの実施形態では、対象は生後30ヶ月以下のヒトである。いくつかの実施形態では、対象は、13~18歳、12~18歳、10~18歳、8~18歳、6~18歳、2~18歳、10~13歳、8~13歳、6~13歳、2~13歳、10~12歳、8~12歳、6~12歳、2~12歳、6~12歳、2~12歳、2~10歳、2~8歳、もしくは2~6歳、またはその中の任意の範囲の間の小児などのヒト小児(例えば、18歳未満)である。いくつかの実施形態では、対象はヒト成人(例えば、18歳以上)である。
【0091】
本明細書で使用される場合、「必要とする患者」または「必要とする対象」という用語は、白質ジストロフィーなど、ASPAをコードする核酸配列を含むrAAVまたは本明細書に提供されるそのようなrAAVを含む組成物で治療または改善することができる疾患、障害、または状態のリスクがあるか、またはそれに苦しんでいる患者または対象を指す。いくつかの実施形態では、「必要とする患者または対象」は、ASPAの機能不全に関連する疾患、例えば、カナバン病を発症するリスクがある、またはそれに苦しんでいる患者または対象である。いくつかの実施形態では、「必要とする患者」または「必要とする対象」は、ASPA機能の改変をもたらすASPA遺伝子内の1つ以上のアミノ酸変異を有する。「対象」及び「患者」は、本明細書では相互交換可能に使用される。
【0092】
本明細書で使用される場合、「有効量」または「治療有効量」という用語は、障害、例えば、カナバン病などの白質ジストロフィー、またはその1つ以上の症状の重症度及び/または持続時間を軽減または改善し、障害の進行を予防し、障害の退縮を引き起こし、障害に関連する1つ以上の症状の再発、発症、発症または進行を予防し、障害を検出し、または別の療法(例えば、予防薬または治療薬)の予防または治療効果(複数可)を増強または改善するのに十分な薬剤、例えば、rAAVの量を指す。いくつかの実施形態では、有効量のrAAVは、例えば、ASPAの発現を増加させ、及び/または適切なASPAレベル及び/または十分なASPA機能の欠乏に関連する疾患に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽減し得る。
【0093】
本開示は、ASPAの欠損または機能不全を特徴とする障害または疾患を有する対象に治療上の利益を提供するための、本明細書に記載のASPAをコードする核酸分子を含む、方法及びrAAVの使用を提供する。いくつかの態様では、方法は、治療有効量のrAAVまたは本明細書に記載の組成物を、それを必要とする対象に投与することによって、対象におけるASPAの欠乏または機能不全を特徴とする障害または疾患を治療することを含む。
【0094】
いくつかの場合では、本開示は、ASPAの発現を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の本明細書に記載のrAAV粒子または本明細書に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含み、それによって対象においてASPAを発現する、方法を提供する。ある特定の実施形態では、本開示は、対象におけるASPAの発現の増加を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を対象に投与することを含み、それによって対象におけるASPAの発現を増加させる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、ASPAの発現をもたらすか、または対象の神経細胞におけるASPAの発現を増加させる。
【0095】
いくつかの実施形態では、対象はASPAの発現を必要とする。いくつかの実施形態では、対象はASPA欠損を有する。本開示は、対象に治療有効量の本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を投与することを含み、それによって対象におけるASPA欠損を治療する、ASPAの欠損を有する対象を治療する方法を提供する。本開示は、対象に治療有効量の本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を投与し、それによって対象における白質ジストロフィーを治療することを含む、カナバン病などの白質ジストロフィーを有する対象を治療する方法を提供する。
【0096】
白質ジストロフィーは、神経学的機能の進行性の喪失をもたらすミエリン機能に影響を及ぼす50以上のタイプの白質ジストロフィーを含む、医師によってそのように特定された任意の白質ジストロフィーであり得る。いくつかの実施形態では、白質ジストロフィーは、成人発症型常染色体優性白質ジストロフィー(ADLD)、エカルディ-グティエール症候群、アレキサンダー病、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、カナバン病、皮質下梗塞及び白質脳症を伴う脳常染色体劣性動脈症(CARASIL)、脳腱黄色腫症、小児運動失調症、大脳ミエリン形成不全(cerebral hypomyelination)(CACH)/白質消失症(VWMD)、ファブリー病、フコシドーシス、GM1ガングリオシドーシス、クラッベ病、L-2ヒドロキシグルタル酸尿症、皮質下嚢胞を伴う大頭型白質脳症、異染性白質ジストロフィー、マルチプルスルファターゼ欠損症、ペリツェウス・メルツバッハー病、Pol III 関連白質ジストロフィー、レフサム病、サラ病、(遊離サラ酸貯蔵症)、シェーグレン・ラルソン症候群、X連鎖性副腎白質ジストロフィーまたはツェルウェーガー症候群スペクトラム障害を含む。
【0097】
本開示は、白質ジストロフィーを有する対象における白質ジストロフィー(例えば、カナバン病)を治療する、減少させる、改善する、進行を遅延させる、または症状を予防するための方法をさらに提供し、本方法は、対象に、治療有効量の本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を投与することによって、対象における白質ジストロフィーを治療する、減少させる、改善する、進行を遅延させる、または症状を予防することを含む。白質ジストロフィーの症状の非限定的な例としては、バランス、呼吸、認知(学習、思考、記憶)、摂食及び嚥下、聴覚、運動、バランス及び協調、音声、及び視覚のうちの1つ以上に関する問題が挙げられる。
【0098】
いくつかの実施形態では、白質ジストロフィーはカナバン病である。本開示は、治療有効量の本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む、カナバン病を有する対象の治療方法を提供し、それによって対象のカナバン病を治療する。いくつかの実施形態では、方法は、rAAVベクターを投与する前に、カナバン病の対象を選択することをさらに含む。本開示は、カナバン病を有する対象におけるカナバン病を治療する、軽減する、改善する、進行を遅延する、または症状を予防する方法をさらに提供し、方法は、対象に、治療有効量の本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を投与することを含み、それによって、対象におけるカナバン病を治療する、軽減する、改善する、進行を遅延する、または症状を予防する。カナバン病の症状の非限定的な例としては、以下のうちの1つ以上が挙げられ得る:運動発達の欠如;食事の困難;異常な筋緊張(脱力感またはこわばり);異常に大きく、制御が不十分な頭部;麻痺、失明;または聴覚喪失。いくつかの実施形態では、カナバン病の症状は、頭部制御不良、大頭症(異常に大きい頭部)、筋緊張低下(筋緊張の低下)、無関心(無反応)、嗜眠、短気、嚥下障害(嚥下困難)、摂食障害、発達マイルストーンの到達の遅延、独立した歩行の失敗、精神運動退縮(能力及び協調の進行性の喪失)、精神遅滞、知的障害、発作、睡眠障害、鼻逆流、嘔吐に関連する場合がある逆流、視神経の悪化、視神経萎縮、視覚応答性の低下、聴覚喪失、痙攣、除脳硬直状態、麻痺、または尿中のNAAの増加である。
【0099】
いくつかの実施形態では、方法は、rAAVベクターを投与する前に、白質ジストロフィーを有する対象を選択することをさらに含む。いくつかの実施形態では、対象は、疾患の1つ以上の症状を有さないにもかかわらず、対象をスクリーニングし、白質ジストロフィーを有する(例えば、遺伝子検査または生理学的検査によって)と識別または診断され得る。他の実施形態では、対象は、白質ジストロフィーの1つ以上の症状を有する。ある特定の実施形態では、対象は、カナバン病などの白質ジストロフィーに関連する遺伝子の変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、アスパルトアシラーゼ(ASPA)の発現及び/または機能を制御する遺伝子、例えば、ASPAをコードする遺伝子における機能喪失変異を有する。いくつかの実施形態では、対象は、ASPAのレベル、及び/またはASPAをコードする遺伝子内の変異をスクリーニングする出生前血液検査に基づいてカナバン病を有すると診断される。
【0100】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物の投与前の対象の生体試料中のN-アセチルアスパラギン酸(NAA)のレベル、及び/または(b)対照対象の生体試料中のNAAのレベルと比較して、対象の生体試料中のNAAのレベルを低下させることを含み、対照対象は、白質ジストロフィー(カナバン病など)を有し、本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を投与されない。いくつかの実施形態では、方法は、対象から得られる生体試料中のN-アセチルアスパラギン酸(NAA)のレベルを、(a)本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物の投与前の対象の生体試料中のNAAのレベル、及び/または(b)対照対象の生体試料中のNAAのレベルと比較して、少なくとも約2%(例えば、約3%、約4%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%(これらの間に存在する全ての値及びサブ範囲を含む))低下させることを含み、対照対象は白質ジストロフィー(カナバン病など)を有し、本明細書に記載のrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を投与されない。いくつかの実施形態では、生体試料は、血液、尿、末梢組織、CNS液、またはCNS組織である。
【0101】
いくつかの実施形態では、対象において解糖からベータ酸化への移行を含む代謝不均衡があることが判定されている。いくつかの実施形態では、方法は、1つ以上の解糖及び/またはベータ酸化因子のレベルを評価することによって代謝不均衡を検出することをさらに含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の解糖及び/またはベータ酸化因子のレベルは、対象から得られる中枢神経系(CNS)液を使用して評価される。いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象からCNS液を得ることと、(b)CNS液中のベータ酸化の増加を検出することと、(c)(b)での検出に基づいて、rAAVを対象に投与することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象から得られた生体試料の代謝プロファイルを測定することと、(b)代謝プロファイルに基づいて解糖からベータ酸化への移行を含む代謝不均衡を特定することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、代謝プロファイルを測定することは、液体クロマトグラフィー(LC)、質量分析(MS)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)、または超高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(UPLC-MS/MS)を使用して生体試料をアッセイすることを含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、CNS組織または脳脊髄液(CSF)を含む。いくつかの実施形態では、CNS組織は脳組織である。いくつかの実施形態では、代謝プロファイルは、グルコース、グルコース-6-リン酸、3-ホスホグリセリン酸、ピルビン酸、乳酸、及びホスホエノールピルビン酸からなる群から選択される第1のバイオマーカーのレベルを含む。いくつかの実施形態では、代謝プロファイルは、カルニチン、マロニルカルニチン、ミリストイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、マロニルカルニチン、及びベータヒドロキシ酪酸塩からなる群から選択される第2のバイオマーカーのレベルを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、ASPAをコードする核酸分子を含むrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物が、対象に全身的に投与される。いくつかの実施形態では、ASPAをコードする核酸分子を含むrAAV粒子または粒子を含む薬学的組成物を、開腹手術または腹腔鏡検査を介した直接注射、カテーテル留置を介した動脈または静脈への注射によって、静脈内に対象に投与する。本明細書に記載の治療方法のいずれにおいても、ASPAをコードする核酸分子を含むrAAV粒子または本明細書に開示される粒子を含む薬学的組成物は、静脈内注入を使用して対象に投与してもよい。
【0103】
本開示は、対象におけるASPAの機能不全または欠損を特徴とする障害または疾患を治療するための薬剤の製造における、本明細書に記載の薬剤(例えば、rAAVまたはrAAVを含む薬学的組成物)の使用をさらに企図する。本開示はまた、対象におけるASPAの機能不全または欠損を特徴とする障害または疾患を治療するための、本明細書に記載の薬剤(例えば、rAAVまたはrAAVを含む薬学的組成物)の使用を含む。
【0104】
組成物は、治療される領域のサイズ、使用されるウイルス力価、投与経路、及び方法の所望の効果に応じて、範囲内の全ての数値を含む、約50マイクロリットル(μL)~約1mLの体積で送達されてもよい。いくつかの実施形態では、体積は約50μLである。別の実施形態では、容量は約70μLである。別の実施形態では、容量は約100μLである。別の実施形態では、容量は約125μLである。別の実施形態では、容量は約150μLである。別の実施形態では、容量は約175μLである。さらに別の実施形態では、容量は約200μLである。別の実施形態では、容量は約250μLである。別の実施形態では、容量は約300μLである。別の実施形態では、容量は約450μLである。別の実施形態では、容量は約500μLである。別の実施形態では、容量は約600μLである。別の実施形態では、容量は約750μLである。別の実施形態では、容量は約850μLである。別の実施形態では、容量は約1000μLである。
【0105】
いくつかの実施形態では、毒性または有害な免疫応答のような望ましくない影響のリスクを減らすために、ウイルスの最低有効濃度が利用される。これらの範囲内のさらに他の投与量は、治療されている対象(例えば、ヒト)の身体状態、対象の年齢、特定のASPA欠乏障害、及び障害が進行性である場合に発達した程度を考慮して、主治医によって選択され得る。
【0106】
いくつかの実施形態では、ASPAをコードする核酸配列を含むrAAVベクターまたはrAAV粒子は、対象の約1012~約1016vg/kg体重、例えば、対象の約1013vg/kg~約1015vg/kg体重の範囲の用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ASPAをコードする核酸配列を含むrAAVベクターまたはrAAV粒子は、約1014vg/kg~約5×1014vg/kgの範囲の用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ASPAをコードする核酸配列を含むrAAVベクターまたはrAAV粒子は、約1.32×1014vg/kgの用量で対象に投与される。いくつかの実施形態では、ASPAをコードする核酸配列を含むrAAVベクターまたはrAAV粒子は、約3×1014vg/kgの用量で対象に投与される。
【0107】
いくつかの実施形態では、治療有効量は、約1014vg/kg~約5x1014vg/kgの範囲、例えば、約1.1x1014vg/kg、約1.2x1014vg/kg、約1.3x1014vg/kg、約1.4x1014vg/kg、約1.5x1014vg/kg、約2x1014vg/kg、約2.5x1014vg/kg、約3x1014vg/kg、約3.5x1014vg/kg、約4x1014vg/kg、約4.5x1014vg/kg、または約5x1014vg/kgであり、これらの間に存在する全ての値及びサブ範囲を含む。いくつかの実施形態では、治療有効量は約1.32×1014vg/kgである。いくつかの実施形態では、治療有効量は約3×1014vg/kgである。いくつかの実施形態では、治療有効量は、約1.32×1014vg/kg~約3×1014vg/kgの範囲である。
【0108】
いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に開示されているrAAVベクター、rAAV粒子、または組成物の単回用量が投与される。いくつかの実施形態では、対象は、本明細書に開示されているrAAVベクター、rAAV粒子、または組成物の複数回用量、例えば、2回、3回、4回、または5回の用量が投与される。いくつかの実施形態では、対象は、静脈内注入によって、本明細書に開示されるrAAVベクター、rAAV粒子、または組成物の単回用量が投与される。
【0109】
本明細書に開示されている組成物は、任意の頻度で対象に投与してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は1日1回または1日2回以上、対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、対象に1日に2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回または10回投与されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、毎日、隔日、3日ごと、4日ごと、5日ごと、または6日ごとに対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、毎週、隔週、または3週間ごとに対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、または11ヶ月ごとに対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は毎年対象に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、1、2、3、4、5、10、15または20年ごとに対象に投与されてもよい。特定の実施形態では、組成物は対象の生涯中に1回だけ対象に投与されてもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されている方法のいずれか1つはさらに、治療有効量の免疫抑制剤を投与することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、治療有効量の本明細書に開示されているrAAVまたは組成物、及び治療有効量の免疫抑制剤を対象に投与することを含む。本開示は、治療有効量の本明細書に開示されているrAAVまたは組成物、及び治療有効量の免疫抑制剤を対象に投与する、治療方法を提供する。
【0111】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤はrAAVベクターの投与前に、投与と同時に、及び/または投与後に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤はrAAVベクターの投与前に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤はrAAVベクターの投与の少なくとも12時間前に投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤はrAAVベクターの投与の約2日前に投与される。
【0112】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は非グルココルチコイド免疫抑制剤である。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤はカルシニューリンの阻害剤である。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、エベロリムス、ゾタロリムス、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤はタクロリムスである。免疫抑制剤の他の非限定的な例には、ナイトロジェンマスタード(シクロホスファミド)のようなアルキル化剤、ニトロソウレア、白金化合物、メトトレキサートのような葉酸類似体、アザチオプリン及びメルカプトプリンのようなプリン類似体、フルオロウラシルのようなピリミジン類似体、タンパク質合成阻害剤、ダクチノマイシン、アントラサイクリン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、ミトラマイシンのような細胞傷害性抗体、Tリンパ球を阻害するポリクローナル抗体、バシリキシマブまたはダクリズマブのようなIL-2受容体指向性モノクローナル抗体、ムロモナブのような抗CD3モノクローナル抗体、オピオイド、インフリキシマブ、エタネルセプト、またはアダリムマブのようなTNF-アルファ結合タンパク質、ミコフェノレート、フィンゴリモド、及びミリオシンが挙げられる。生物学的免疫抑制剤の他の例としては、モノクローナル抗体、例えば、共刺激経路を遮断するモノクローナル抗体(例えば、CTLA4、ICOS、CD80、OX40、または他の標的に対する適切な抗体)、免疫刺激分子(例えば、サイトカイン)を標的とする干渉RNA(例えば、siRNA、dsRNA、shRNA、miRNAなど)、及びタンパク質(例えば、プロテアソーム阻害剤)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
いくつかの実施形態では、免疫抑制剤は経口投与される。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤の治療有効量は、約0.005ミリグラム/キログラム(mg/kg)~約0.1mg/kgの範囲、例えば、約0.01mg/kg、約0.015mg/kg、約0.02mg/kg、約0.025mg/kg、約0.03mg/kg、約0.035mg/kg、約0.04mg/kg、約0.045mg/kg、約0.05mg/kg、約0.06mg/kg、約0.07mg/kg、約0.08mg/kg、約0.09mg/kg、または約0.1mg/kgであり、これらの間に存在する全ての値及びサブ範囲を含む。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤の治療有効量は約0.01mg/kg~約0.05mg/kgの範囲である。いくつかの実施形態では、免疫抑制剤の治療有効量は約0.025mg/kgである。いくつかの実施形態では、治療有効量の免疫抑制剤は1日2回投与される。
【0114】
いくつかの実施形態では、方法は治療有効量のステロイドを対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、ステロイドはミネラルコルチコイドである。いくつかの実施形態では、ステロイドはグルココルチコイドである。いくつかの実施形態では、グルココルチコイドは、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、コルチゾール、コルチゾン、プレドニゾン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、デオキシコルチコステロン(DOCA)、アルドステロン、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの実施形態では、ステロイドはヒドロコルチゾンである。いくつかの実施形態では、ステロイドは、rAAVベクターの投与前に、投与と同時に、及び/または投与後に投与される。いくつかの実施形態では、rAAVベクターの投与前に対象に投与されるステロイドの治療有効量は、rAAV投与後に対象に投与されるステロイドの治療有効量よりも多い。
【0115】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法のうちのいずれか1つは、治療有効量の抗ヒスタミン剤を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、抗ヒスタミン剤は、rAAVベクターの投与の前に、rAAVベクターの投与と同時に、及び/またはrAAVベクターの投与の後に投与される。いくつかの実施形態では、抗ヒスタミン剤は、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、クロルフェニラミン、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0116】
いくつかの実施形態では、方法は、(a)対象に低分子代謝調節物質を投与すること、(b)対象に食事介入を処方することであって、食事介入は、対象における解糖を促進し、及び/またはベータ酸化を低減する、処方すること、及び/または(c)免疫抑制剤を対象に投与すること、をさらに含む。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のベクターを投与した後、尿、脳脊髄液(CSF)、及び/または脳組織中のN-アセチルアスパラギン酸(NAA)レベルが低下する。いくつかの実施形態では、投与後、尿中のNAAレベルが低下する。いくつかの実施形態では、尿中のNAAレベルは、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、尿中のNAAレベルは、治療前のレベルと比較して、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上低下したままである。いくつかの実施形態では、投与後、CSF中のNAAレベルが低下する。いくつかの実施形態では、CSF中のNAAレベルは、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、CSF中のNAAレベルは、治療前のレベルと比較して、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上低下したままである。いくつかの実施形態では、投与後、脳組織中のNAAレベルは低下する。いくつかの実施形態では、脳組織中のNAAレベルは、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上減少する。いくつかの実施形態では、脳組織中のNAAレベルは、治療前のレベルと比較して、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上低下したままである。
【0118】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるベクターを投与した後、新規髄鞘形成は、磁気共鳴イメージング(MRI)を使用して観察可能である。
【実施例】
【0119】
実施例1:カナバン病のためのBBP-812遺伝子療法ベクター
BBP-812活性物質は、ヒトASPA導入遺伝子の自己相補性発現カセットを含有する非複製rAAV血清型9(AAV9)ベクターである。scAAV9-CB6-hASPAoptベクター設計を
図1に示す。それは、5’及び3’末端反復によって隣接されるサイトメガロウイルス前初期エンハンサーを含むCB6プロモーターの制御下でコドン最適化されたヒトアスパルトアシラーゼ導入遺伝子を含有する。Repニッキングの部位は、5’逆位末端反復において除去され、それによって自己相補性AAVゲノムを作製する。
【0120】
BBP-812は、リン酸緩衝生理食塩水、pH7.0、5重量/体積(w/v)ソルビトール、0.001%w/vポロキサマー188中の注射用無菌溶液として製剤化される。これは、2.5mLの充填量で5ミリリットル(mL)のパイロジェンフリーバイアルで供給され、ラテックスフリーのゴムストッパー及びアルミニウムフリップオフシールで密封されている。製剤化製品のベクター濃度は、1.8×1013~5.0×1013vg/mLである。バイアルは、使用可能になるまで-60℃以下で凍結保存される。
【0121】
BBP-812製剤(DP)は、1.8×1013~4.2×1013vg/mLの濃度の非複製組換えAAV9ベクターの単回用量、保存剤不使用、無菌溶液、静脈内(IV)注射である。BBP-812DP溶液は、137mMの塩化ナトリウム、8.1mMのリン酸二ナトリウム、1.47mMのリン酸二水素カリウム、2.7mMの塩化カリウム、5%w/vソルビトール、0.001%w/vポロキサマー188、及び注射用水を含有する。BBP-812DPを、公称充填量2.5mLのCrystal Zenith(登録商標)(CZ、環状オレフィンポリマー)バイアル5mLに充填し、60℃以下で保管する。
【0122】
この研究は、ASPAをコードするAAV9ベクター(
図1に示される)の2つの用量レベルの安全性、忍容性薬力学的(PD)活性、及び臨床活性を、生後30ヶ月以下のカナバン病の小児患者について評価する。投薬は、参加者が生後31ヶ月になる前の日付までに行われる。最初の6人の参加者におけるBBP-812の安全性、忍容性、PD活性、及び予備的臨床活性の評価は、用量選択、及び選択された用量で合計15人の参加者までの登録拡大を通知する。全ての参加者は、BBP-812による治療日から少なくとも5年間追跡される。
【0123】
BBP-812を1.32×1014ベクターゲノム(vg)/キログラム(kg)体重の用量でコホート1に、3.0×1014vg/kg体重の用量でコホート2に投与する。この研究では、プラセボは投与されない。最大18人の参加者が研究に登録され、15人の参加者の試料サイズが、選択された用量で治療される。
【0124】
薬力学的解析については、尿及びCNS組織におけるBBP-812投与後のN-アセチルアスパラギン酸(NAA)レベルの変化を測定する。臨床的変化については、例えば、脳イメージングを使用して、BBP-812の投与後に運動、認知及び言語発達及び機能を評価する。
【0125】
実施例2:BBP-812の非臨床試験
カナバン病の治療におけるBBP-812の治療可能性及び安全性の実証は、カナバン病のAspa-/-マウスモデルにおける有効性、ならびに野生型マウス及び非ヒト霊長類における安全性評価を調べる非臨床研究によって提供される。以下に記載する有効性研究のために、ヘテロ接合性Aspa+/-マウスを交配して、ホモ接合性の子を生成した。動物を、尾部組織試料から調製されたゲノムデオキシリボ核酸(gDNA)テンプレートを利用したポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースのアッセイを使用して、出生直後に遺伝子型決定した(PND0/1)。有効性研究のために、全てのマウスをPND1上の顔面静脈へのIV注射を介して処置した。BBP-812で実施した非臨床安全性及び薬理学的研究を表2に要約する。研究の主な結果については、以下のセクションで考察する。
【表2】
【0126】
カナバン病マウスモデル
カナバン病のAspa-/-マウスモデルを使用して、BBP-812の安全性及び有効性を調べた。Aspa-/-マウスは、カナバン病の最初に開発された動物モデルであり、カナバン病患者の臨床表現型を模倣し、生後1ヶ月以内に運動失調症、不安定、筋力低下、成長障害、頭蓋顔面異常、及び認知障害を呈する。介入なしでは、Aspa-/-マウスは、PND28付近で死亡する(Ahmed 2013)。
【0127】
カナバン病の他のいくつかのマウスモデルが報告されているが、それらはそれほど重篤ではない表現型を示す(Carpinelli 2014,Mersmann 2011,Traka 2008)。特筆すべきことに、これらの他のモデルは全て正常な寿命を示し、測定可能な運動機能欠陥は生後数週間まで発症しない。この表現型は、より軽度のカナバン病を連想させる(Janson 2006a,Mendes 2017,Yalcinkaya 2005)。
【0128】
PoC研究のために、Aspa-/-マウスを、初期実験のためにPND0と20との間、及び最小有効用量(MED)の決定のためにPND1で注入した。文献から、PND0~PND20の範囲のマウスにおけるニューロン発達は、妊娠35週~生後約2.5歳のヒトの神経発達と同等である(Dutta 2016)。したがって、PoC研究における治療のタイミングは、第1/2相小児臨床試験(CVN102)で、生後30ヶ月以下の小児患者におけるBBP-812の使用を支持する。
【0129】
出生後1日目のAspa-/-マウスにおける用量範囲設定有効性試験
動物疾患モデルにおけるMEDを確立し、提案されている第1/2相小児臨床試験CVN102の開始用量を決定するために、用量範囲設定試験(Gessler 2017)が開始された。MEDを決定するための重要なパラメータには、生存及び体重増加、CNS NAAレベルの低下、運動機能の改善、及び脳病理組織学の改善が含まれた。脳内の生体内分布も評価した。
【0130】
研究設計:無作為化及び用量の正当化
本研究で評価した用量は、2.6×1013、8.8×1013、及び2.6×1014vg/kgであった。最高用量は、以前の世代のベクターを用いた以前の研究に基づいていた(Ahmed 2013)。中用量及び低用量は、ベクターの3倍及び10倍の減少を表す。マウスは、顔面静脈にPND1に単回IV注射を受けた。
【0131】
これらの研究について、動物は2014年3月から2016年1月の間に生まれた。無作為化は、同じように胎児の全ての動物に投薬することによって行われた。妊娠中の胎児のうちAspa-/-である子はわずか25%である。したがって、同じ胎児で複数の用量を試験することは必ずしも可能ではなかった。最初の投薬には、最高用量、ビヒクル(0.9%NaCl)処置、及び未処置の動物が含まれた。有効性データが生成されるにつれて、最小有効用量を確立するための追加の胎児が生まれるため、より低い用量が試験された。しかしながら、試験期間中、無作為な胎児は、経時的及びベクターロットにわたって結果の一貫性を示すために、最高用量またはビヒクルを受けたか、または未処置のままであった。BBP-812の開発及びMEDの確立に使用される動物の完全なリストを表3に列挙した。
【表3】
【0132】
研究設計:研究で測定された有効性パラメータ
生存率と体重増加:生存率を毎日監視し、体重をPND1からPND32まで隔日で測定し、次いでPND42(6週間)からPND364(1年)まで隔週で測定した。
【0133】
CNS及び末梢NAAレベルの減少:CNS及び末梢NAAレベルの低下を、磁気共鳴分光法(MRS)及び質量分析によって測定した。
【0134】
運動機能及び空間記憶試験:マウスの運動性能は、運動機能及び持久力のための加速ロータロッド、前庭機能及び運動失調症のためのバランスビーム、及びグリップ強度のための反転スクリーン(inverted screen)を使用して評価した。ロータロッド(ロータロッドシリーズ8、IITCライフサイエンス、Woodland Hills,CA)を除き、機器はUniversity of Massachusetts Medical School Machine Shopによって製造された。各運動機能試験について、マウスは注入され、独立して試験された。これらの実験の対照としては、未処置のAspa-/-マウス、0.9%生理食塩水で処置したAspa-/-マウス、及び野生型(WT)マウスが含まれた。動物が受けた処置は、評価者に対して盲検化され、動物は、研究における全ての評価について2年間の期間を超えて試験された。
【0135】
加速ロータロッド:マウスを試験日の2日前に訓練し、各々3回ランした。試験日に、マウスをロータロッド上に配置し、1分間順応させた。各マウスを3回試験し、最良の値を分析に使用した。加速度及びタイミングを5分間にわたって4~40rpmに設定した。
【0136】
バランスビーム:水平の木製バランスビーム(1.5×100cm)の真ん中に動物を配置し、ビームから落下する可能性のあるマウスを保護するために、その下にパッドを配置した。低下の遅延を記録し、各試験に5分間の時間制限を設けた。このテストの厳密性を高めるために、カットオフ時間を以前使用していた3分から5分に延長した。動物を3回試験し、最良値をカウントした。
【0137】
反転スクリーン:マウスを、水平位置にグリッド(25平方ミリメートル(mm2)の穴を有する30平方センチメートル(cm2))の中心に配置し、1分間順応させた。マウスが逆さまにぶら下がるように、グリッドを15秒以内に125度までゆっくりと回転させた。落ちるまでの時間を測定した。PND27試験のカットオフは、以前に公開されたように3分であった。他の全ての時点において、テストの厳密さを増加させるためにカットオフは5分であった。各動物を3回試験し、最良の値をカウントした。
【0138】
脳病理組織学を、ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色によって評価した。
【0139】
生体内分布は、液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)によって決定した。
【0140】
試験結果:生存率及び体重増加
BBP-812処置は、未処置のAspa-/-動物と比較して、生存率を増加させ、体重増加を促進した(
図2)。未処置動物(赤線)は生後2週前後から体重が減り始め、生後4週までに死亡した。処置された動物は、WT動物と同等の体重を増加させ、実験の終了まで生存した。
【0141】
表4に概説されるように、治療に起因する予定外の死亡は、研究中に報告されなかった。死亡の原因には、不正咬合(n=2)及び幼児殺傷(n=5)が含まれた。これらの事象の性質を考慮して、さらなる病理学または病理組織学的評価は行われなかった。
【表4】
【0142】
試験結果:CNS NAAレベルの減少
MRS解析を使用して、BBP-812を投与された動物を、NAAのCNSレベルについてモニタリングした(
図3及び表5)。8.8×10
13vg/kg及び2.6×10
14vg/kgの用量のBBP-812を受けた動物は、CNS NAAの減少を有し、2.6×10
14vg/kgの処置群は、8.8×10
13vg/kgの群よりも統計的に優れていた。未処置のAspa-/-動物と比較して、より低い2.6×10
13vg/kgでは、NAAの変化は観察されなかった。
【表5】
【0143】
機能と空間記憶の試験
マウスを、3つの運動機能評価の改善について試験した。PND27で、2.6×10
13vg/kgを受けた動物は、未処置のAspa-/-マウスと比較して改善を示したが、WT動物と同様には振る舞わなかった。8.8×10
13vg/kgまたは2.6×10
14vg/kgで処置したマウスにおける運動機能試験(ロータロッド、バランスビーム、及び反転スクリーン)は、3つの評価全てにおいて、PND27及びPND90のWTマウスと同等であった。PND180及びPND360の結果は、2.6×10
14vg/kgのBBP-812による運動機能レスキューの維持を示した。8.8×10
13vg/kgを受けたマウスは、PND180で運動機能の限られた改善を示し、最終時点では利益を示さなかった(
図4)。
【0144】
試験結果:脳病理組織学
BBP-812を受けた動物における脳病理組織学を、H&E染色によって評価し、WT及び未処置のAspa-/-マウス(
図5A及び
図5B)と比較した。2.6×10
14vg/kgの用量を受けた動物由来の病理学は、WT動物と区別できなかった。8.8×10
13vg/kgの用量を投与された動物は、空胞形成の減少とともに顕著な改善を示したが、いくつかの疾患は依然として存在した(例として、脳橋(Po)、小脳(Ce)、及び線条体(St)に留意されたい)。2.6×10
13vg/kgで処置したマウスは、未処置のAspa-/-マウスと比較して、あったとしてもごくわずかな改善を示した。
【0145】
試験結果:生体内分布
二倍体細胞(vg/細胞)当たりのベクターゲノムを、脳の異なる領域からの試料中のddPCRによって決定した(
図6)。投薬後1年で0.5~1.5vg/細胞が検出され、BBP-812のIV投与が、試験した脳の全ての領域にアクセスし、持続することができることが実証された。
【0146】
有効性の最終決定として、BBP-812を受けたAspa-/-マウスにおける脳病理組織学をH&E染色によって評価し、野生型及び未処置のAspa-/-マウス(
図7A及び
図7B)と比較した。2.6×10
14vg/kgの用量を受けたAspa-/-動物由来の病理組織学は、野生型動物と区別できなかった。8.8×10
13vg/kgの用量を受けた動物は、未処置の対照と比較して顕著な改善を示し、空胞化は減少したが、いくつかの疾患特徴は依然として存在する(例として、脳橋[Po]、小脳[Ce]、及び線条体[St]に留意されたい)。2.6×10
13vg/kgで処置したAspa-/-マウスは、処置していないマウスと比較して、あったとしてもごくわずかな改善を示した。
【0147】
これらの分析の結果は、2.6x10
14vg/kgの用量で疾患表現型の完全な回復を達成することができ、10倍低い用量は運動機能に最小限の利益をもたらすが、NAA代謝または病理組織学には利益をもたらさないことを示した。中間用量の8.8×10
13vg/kgは、全ての有効性エンドポイントを有意に改善するのに十分であったが、最高用量と同様ではなかった。これらの所見に基づいて、BBP-812のMEDは、約8.8×10
13vg/kgである。
非ヒト霊長類における安全性及び生体内分布
この研究の目的は、CNS及び末梢組織におけるBBP-812の安全性(臨床観察、臨床化学[血清、尿、及びCSF]、血液学、免疫応答、及び病理組織学)及び生体内分布を評価することであった。この研究では、3つの投与経路を比較した。伏在静脈にIV、腰部くも膜下腔内にくも膜下(IT)、左側脳室内に脳室内(ICV)。投薬後3週目及び8週目に動物を屠殺した。全体的な研究設計を表6に概説する。
【表6】
【0148】
研究設計:用量の正当化
用量は、カナバン病のAspa-/-マウスモデルにおけるPoC研究で特定された最小有効用量に基づいて選択された。IV投与経路をIT及びICV送達と直接比較して、どの経路が大型動物モデルにおける優れた全般的なCNS生体内分布を促進したかを決定した。
【0149】
研究設計:アウトカム測定
動物は、毎日の臨床観察によって、研究を通して定期的にモニタリングした。神経学的評価は、22日目及び57日目に実施した。投薬後-1日目、3日目、8日目、22日目、36日目、及び57日目に、臨床病理及び血液学のために血液を採取した。AAV9キャプシド及びASPAタンパク質に対する抗体応答を、投薬前及び投薬後22日目及び57日目に、血清及びCSFにおいて決定した。生体内分布は、導入遺伝子特異的TaqManアッセイを用いて液滴デジタルポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)によって測定した二倍体細胞当たりのベクターゲノムとして評価した。病理組織学には、全ての組織のH&E染色が含まれ、CNSは、イオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA-1)及びグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)について追加の免疫染色を受けた。動物ごとに少なくとも8つの背根神経節及び関連する脊髄神経根を調査した。
試験結果:生体内分布
BBP-812の生体内分布及びhASPAOpt導入遺伝子の発現を、群1、2、3、7、及び9の動物由来の試料において評価した。脳における発現を、3mm×3mmの組織パンチから評価した。脳から収集及び分析(太字)された全てのパンチのリストは、
図8において見ることができる。脊髄(胸部、腰部、及び頸部)及び末梢臓器を含む、分析された組織の完全なリストは、表7に示される。
【表7】
【0150】
静脈内に処置された動物は、CNSにわたるベクターゲノム及び末梢組織において用量依存的な増加を呈する。高用量群では、57日目の剖検の脳パンチにおけるベクターゲノムは、0.26~2.16の範囲であった。BBP-812のITまたはICV投与を受けた動物は、3回全てのIV用量と比較して、CNSにおける形質導入のレベルが有意に低かった。最高用量のIV動物において、ベクターは、各動物において試験された全ての脳領域において検出可能であった。IT及びICV投薬群において、ベクターは、それぞれ5/30及び13/30の脳パンチにおいて検出されなかった。末梢組織中のベクターゲノムの検出は、IV群についても用量依存的であり、肝臓及び心臓で検出されたレベルが最も高かった。BBP-812のIT及びICV投与を受けた動物は、末梢組織において検出可能なゲノムを有したが、IV経路によって投与された動物よりもはるかに低いレベルであった(
図9A~9E)。静脈内投薬は、ITまたはICVのいずれよりもはるかに優れ、深部皮質白質及びカナバン病で最も関連性があると考えられている他の全ての脳領域に浸透することが観察された。
【0151】
試験結果:抗AAV9及び抗ASPA抗体の検出
全ての動物は、無作為化及び投薬前に、AAV9に対する中和抗体について陰性であるとスクリーニングされた。AAV9及びASPAに対する総抗体を、適格な酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、群1、2、3、7、及び9の動物において、投薬前及び投薬後に測定した。血清の分析には、投薬前及び投薬後22日目及び57日目に収集した試料が含まれた(表8)。投薬前にAAV9に対する抗体が陽性と検査された動物はいなかった。投薬後、11/12のIV処置動物、5/6のIT処置動物、及び5/6のICV処置動物は、AAV9に対する抗体を発現した。投薬前に、高用量IV群の1つの動物は、ASPAに対する検出可能な抗体を有した。投薬後、10/12のIV処置動物、1/6のIT処置動物、及び1/6のICV処置動物は、ASPAに対する抗体を有した。
【表8】
【0152】
試験結果:神経学的検査
動物は、22日目及び57日目に神経学的検査を受けた。これには、一般的な感覚及び運動機能、脳反射、及び脊髄反射の評価が含まれた。これらの神経学的検査中にBBP-812関連の変化は見られなかった。
【0153】
試験結果:臨床化学及び血液学及び凝固評価
血液学的パラメータに決定的なBBP-812関連の変化はなく、凝固値は全ての群で顕著ではなかった。血清化学の変化は、高用量IV群における肝酵素の一過性上昇に限定された。これらの値は、介入なしで正常に戻った。いずれの動物についても、尿分析パラメータに顕著な変化はなかった。BBP-812の投与後のCSF化学の変化には、IV経路を介して投与された動物の22日目及び57日目のアルブミンの減少が含まれた。
【0154】
試験結果:剖検と病理組織学的評価と所見
徹底的な病理組織学的検査を行った。剖検では、脳を3mmの冠状切片厚で脳マトリックス内で切断した。第1のスライス及びその後の全ての他のスライスを、組織学的解析のために10%中性緩衝ホルマリン中に固定した。脊髄(頸部、胸部、及び腰部)を1cmの切片に切断し、カテーテル先端をIT動物のゼロ点及びIV動物の胸腰部接合部として定義した。第1の切片及びその後の全ての第2の切片(奇数番号)を、病理組織学的評価のために10%中性緩衝ホルマリン中に固定した。分析された組織の完全なリスト、及びサンプリング及び分析に関する具体的な情報が、表9に提供される。
【表9】
【0155】
試験結果:病理組織学的所見
3.14×1014vg/kgまでの用量のBBP-812のIV投与後、NHPに有害な試験試料関連の顕微鏡的または機能的変化はなかった。試験試料関連の変化は、22日目及び57日目の剖検から1.8×1014vg/kgのBBP-812IVを投与された3匹の動物のうちの2匹の肝臓(門脈浸潤及び/または細胞性の増加[Kupffer細胞])においてのみ観察された。これらの変化は、AAV製品のIV投与を伴う研究において一般的に観察され、有害とみなされなかった。
【0156】
背根神経節(DRG)における細胞浸潤の所見は、6匹のBBP-812処置されたIV高用量動物のうちの3匹で報告され、48匹のDRGのうちの合計4匹に影響を及ぼした。浸潤は、神経変性及び/または壊死の証拠とは関連しておらず、対照NHPで日常的に観察される同じ所見とは区別できなかった。IV投与によってBBP-812を受けた動物のDRG所見は、有害ではなく、機能的活動に影響を及ぼさず、毒性学的結果をもたらさなかった。この研究から、3.14×1014vg/kgの観察されない有害作用レベル(NOAEL)を決定した。
【0157】
5.0×1012個の総vg BBP-812を含むIT用量では、試験試料関連の有害な顕微鏡的変化はなかった。5.0×1012個の総vgBBP-812用量レベルで2つのあいまいな試験試料関連の変化が観察された。第一に、3匹の動物のうちの2匹の単一の背根神経節において、細胞充実度の軽度の増加があった(22日目に犠牲)。これは、いかなるニューロンの変化とも関連しておらず、有害であると解釈されなかった。同様の変化は、57日目に剖検した動物において観察されなかった。第二に、22日目の屠殺では、腹側灰白質の両側の小膠細胞症(軽度)が3匹の動物のうちの1匹に存在した。この変化は、明らかなニューロンの喪失または変性とは関連しておらず、57日目の動物を含む任意の他の動物には存在せず、居住ミクログリア細胞の増強された染色に厳密に起因していた可能性がある。このレベルの小膠細胞症は有害とはみなされなかった。
【0158】
非臨床毒性:研究設計
野生型C57BL/6マウスにおいて、GLPに準拠した安全性及び生体内分布の研究を行った。この研究のための実験設計を表10に示す。3群のC57BL/6マウスは、0日目に後眼窩注射を介して低用量(1×10
14vg/kg)または高用量(3×10
14vg/kg)のBBP-812またはビヒクルを受け、24週間モニタリングした。これらのBBP-812用量レベルは、臨床的に関連性があると考えられている。臨床観察、体重、及び食物摂取を研究期間中記録した。投薬後4、12、及び24週に動物を安楽死させた。組織を収集し、重量を量り、病理組織学、生体内分析、及び免疫原性のために保存した。血液学、臨床化学、生体内分布、及び免疫原性のために血液(末端収集)を収集した。
【表10】
【0159】
用量の正当化
用量は、カナバン病のAspa-/-マウスモデルで実施された用量範囲発見研究に基づいて選択された。IV投与経路は、Aspa-/-マウスで生成された有効性データ及びNHPで観察されたIT及びICV投薬と比較した場合のCNSへの改善された分布のために選択された。PoC研究で使用されるベクターの濃度に基づいて、マウスで所望のより高い用量を達成するために必要なより大きな体積の投与を可能にするために、後眼窩経路を実施した。GLP毒性試験で投与される用量は、提案された臨床投薬レジメンを支持する。介入の年齢はまた、基礎となる疾患病態を矯正した後の長期的な転帰の成功のための重要な要因である。
【0160】
24週目までの転帰測定
動物は、毎日、次いで毎週の臨床観察を受けた。投薬後4週目、12週目、及び24週目に動物を屠殺し、そこで末梢血液試料を臨床病理及び血液学のために収集した。各剖検でAAV9及びASPAに対する抗体を評価した免疫アッセイ及びT細胞反応性を、全長AAV9及びヒトASPAについてのペプチドプールに対する酵素結合免疫吸収スポット(ELISpot)によって、全ての時点で決定した。ベクターゲノムについては定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)、導入遺伝子RNAについては逆転写定量的ポリメラーゼ連鎖反応(RT-qPCR)によって生体内分布を評価した。H&E染色による組織学的検査のために組織の包括的パネルを収集した。
【0161】
試験結果:24週目までの臨床観察
詳細な臨床観察を、無作為化時、投薬前日、及び投薬後0日目、1日目、2日目、及び3日目、最初の12週間は毎週、及び研究の残りの期間は隔週で実施した。同様に、体重は、無作為化、投薬前日、及び投与後0、1、2、及び3日目、最初の12週間は毎週、及び研究の残りの期間は隔週で測定した。最終体重は剖検時に収集した。最後に、ケージ当たり及び週当たりの食物摂取を、投薬当日から開始する最初の12週間にわたって毎週モニタリングし、その後、研究の残りの期間にわたって隔週でモニタリングした。試験試料関連の所見は認められなかった。
試験結果:24週目までの血液学と臨床化学
血液学及び臨床化学パネルを、4、12、及び24週目に全ての群で評価した。臨床的に有意な試験試料関連の変更はなかった。クレアチンキナーゼ及び乳酸デヒドロゲナーゼの用量依存的減少があり、これは、いかなる顕微鏡的変化とも関連しなかった(
図10A及び
図10B)。
【0162】
24週目までの病理組織学
検査した組織に試験試料関連の観察はなかった。
【0163】
24週目までの抗薬物抗体応答
血液試料を、4週、12週、及び24週の剖検におけるAAV9及びヒトASPAに対する循環抗体の分析のために収集した。血液を血清に処理し、試料を分析まで<-60℃で保管した。抗体価を、適格なELISAによって測定した。
【0164】
4週間で、動物は導入遺伝子に対する抗体応答を有さず、BBP-812を受けた全ての動物は、AAV9に対する抗体を発現した。
【0165】
12及び24週に、各時点で1匹のビヒクル処置動物がAAV9に対する抗体について陽性であるとスクリーニングされ、12週のみが、BBP-812を受けた1匹の動物が導入遺伝子に対する軽度の抗体応答を生じた。BBP-812を受けた1匹を除く全ての動物が、AAV9に対する抗体を発現した(12週目)。データの概要を表11に示し、陽性動物の数/試験動物の数として提示する。
【表11】
【0166】
AAV9及びASPAに対する細胞免疫応答を評価するために、12週及び24週の剖検において、各用量群の動物のコホートから脾臓細胞を単離した。細胞を、AAV9及びASPAの全長にわたる15量体のペプチドプールで刺激し、ペプチド当たり2アミノ酸の重複を生じさせた。ペプチドプールへの反応性を、ELISpotアッセイによって決定されるインターフェロンガンマ分泌によって測定した。Concanavalin A(ConA)を陽性対照として使用した。試験した全ての試料は、ConAに対する強力な応答を示し、これは媒体処置細胞には存在せず、細胞の健康及び応答性を示した。ASPAペプチドに応答はなかった。AAV9ペプチドプールのうちの2つは、対照群において観察されなかった処置マウスにおいて応答を示した。観察された値は、アッセイの検出限界をわずかに上回り、ConAで観察された値よりも>20倍低かった(
図11)。
【0167】
24週目までの生体内分布
収集した組織を表12に列挙した。各スケジュールされた剖検で組織を収集し、<-60℃で保存する前に液体窒素中でフラッシュ凍結した。<-60℃で保存する前に、血液をK
2EDTAチューブに収集し、液体窒素中でフラッシュ凍結した。
【表12】
【0168】
ビヒクル処置動物由来の組織中に検出可能なベクターはなかった。処置された動物由来の全ての組織は、ベクターゲノム及び導入遺伝子RNAについて陽性であった(
図12)。最も高いレベルのベクターは、肝臓で検出された。導入遺伝子RNAの最高レベルは、心臓、骨格筋、及び肝臓であった。
【0169】
評価されたパラメータのいずれにおいても有害な所見がないため、この研究の条件下でのBBP-812のNOAELは、3.0×1014vg/kgであると決定された。
【0170】
実施例3:アデノ随伴ウイルス(AAV)の投与によるカナバン病に対する、遺伝子療法の安全性及び臨床活性に関する第1/2相非盲検試験
ヒトASPA遺伝子(本明細書において「BBP-812」とも称される)をコードするアデノ随伴ウイルス血清型9(AAV9)ベースの組換えベクターの投与による、カナバン病に対する遺伝子療法の安全性及び臨床活性の第1/2相非盲検試験を実施する。研究のタイムライン及び全体的な研究デザインを
図13に示す。
【0171】
非盲検、対照試験は、カナバン病の30ヶ月以下の小児参加者に投与された2つの計画用量レベルのBBP-812の安全性、忍容性、薬力学的(PD)活性、及び臨床活性を評価するように設計されている。最初の6人の参加者におけるBBP-812の安全性、忍容性、PD活性、及び予備的臨床活性の評価は、用量選択、及び選択された用量で合計15人の参加者までの登録拡大の情報を与える。全ての参加者は、BBP-812による治療日から少なくとも5年間追跡される。
【0172】
スクリーニング期間
患者の親(複数可)及び/または法定後見人(複数可)が書面による同意を提供した後、患者は研究参加者となり、研究に登録されたとみなされる。治験参加者は、スクリーニング期間中に治療適格性について評価される。全ての参加者について、標準スクリーニング期間は最初のスクリーニング評価時に開始される。スクリーニング期間は、BBP-812による治療の最大42日前(0日目)である。必要に応じて、一過性の病気、避けられないロジスティクス上の課題、または治験責任医師が決定したその他の要因により、スクリーニング期間が延長される場合がある。主要なスクリーニング評価の間に>90日が経過すると、それらの評価が繰り返される(すなわち、再スクリーニング)。
【0173】
ベースライン、治療、及び急性フォローアップ期間
ベースライン、治療、及び急性フォローアップ期間の合計期間は52週間になる予定である。その後の長期フォローアップ期間は、急性フォローアップ期間の終了後少なくとも4年間続く。合計で、全ての参加者は、BBP-812による治療日から少なくとも5年間追跡される。
【0174】
スクリーニング手順の完了後、参加者の治療適格性はベースライン期間中に確認される。BBP-812による治療に適格である参加者は、BBP-812への潜在的な免疫応答を防止または抑制するために、BBP-812投薬の前日にグルココルチコイド予防を開始し、BBP-812投与の当日に、注入反応を防止するために抗ヒスタミン剤予防を受ける。参加者は、0日目に、治験依頼者指定の治療センターで入院中に実施される、BBP-812の静脈内(IV)注入を受ける。参加者は、BBP-812の単回投与のみを受ける。参加者は、BBP-812を投与された後、治験責任医師の判断により医学的に示されているように、投薬終了後少なくとも72時間、またはそれ以上、安全性観察のために治験依頼者指定の治療センターに滞在する。退院時に、参加者は、BBP-812投与後の最初の1ヶ月間、グルココルチコイド予防を継続し、その後、プロトコルで定義されたテーパリングレジメンを継続する。
【0175】
本研究は、極めてまれな疾患を有するこの小児/幼児患者集団におけるウイルスベクター用量の選択に保守的なアプローチを使用する。合計で、少なくとも6人の参加者が、各用量レベルで計画された少なくとも3人の参加者とともに、用量設定フェーズ中に治療される。最初の参加者が開始用量でBBP-812を受けた後、その後の参加者の治療は、少なくとも投与後28日目の来院までの最初の参加者の安全性データのレビュー後にのみ行われる。このレビューは、BBP-812の安全性及び忍容性を評価するために、治験依頼者及びデータ及び安全性モニタリング委員会(DSMC)によって実施される。各参加者が投与された後の進行中の治験依頼者安全性データレビューに加えて、DSMC及び治験依頼者は、投与量漸増、用量コホートにおける第2の参加者の投与、及び所与の用量レベルでのコホート拡大の前に、少なくとも4週間の全ての参加者の累積投薬後安全性データのレビューが必要である。さらに、用量漸増がコホート2に進む前に、コホート1の少なくとも1人の参加者からの3ヶ月目のMRI及びCSF結果を評価する。コホート2については、少なくとも3人の参加者が投与され、少なくとも4週間の安全性データがレビューされた後、用量拡大を考慮してもよい。用量拡大を進める前に、コホート1の少なくとも3人の参加者及びコホート2の少なくとも1人の参加者からの3ヶ月目のMRI及びCSF結果を評価する。コホート2で治療した第3の参加者から12週間の投与後データが利用可能になった後、安全性及びNAAレベルを含む試験参加者からの利用可能な全てのデータを評価して、用量選択を通知し、選択された用量レベルで合計15人の参加者までの登録拡大を支援する。
【0176】
治療後最初の4週間は、全ての評価が治療センターで行われる。この期間を過ぎると、その後の評価はフォローアップセンターで許可され、評価の種類に応じて、参加者の自宅で許可される。
【0177】
有害事象(AE)及び併用薬の使用は、継続的にモニタリングされる。標準的な安全性評価、検査室測定、身体検査、標準的な12誘導心電図(ECG)、及びベースライン脳波図を実施する。参加者がMRI及びMRSと一致する時点で鎮静/麻酔下にある間に、腰部穿刺を介して脳脊髄液(CSF)試料を取得する。免疫原性は、カプシド及び導入遺伝子産物への抗体及びT細胞応答の発達を評価することによって評価する。血液中のAAV9ベクターの生体内分布、及び唾液、尿、及び糞便中のベクター排出をモニタリングする。BBP-812による治療後の最初の12週間、参加者の介護者は、そのような接触が予定された治験来院と一致しない場合、安全性の評価のために毎週、参加者の介護者に連絡される。
【0178】
BBP-812による治療のPD活性は、尿及びCNS中のNAAレベルを測定することによって評価される。脳NAAレベルは、MRSによって非侵襲的に測定され、MRS時点と一致する腰部穿刺によって得られた試料を介してCSFにおいても直接測定される。同時に、脳解剖学的構造及び組織組成の特徴に対するBBP-812による処置の効果をMRIによって評価する。
【0179】
機能的尺度は、精密及び肉眼的運動発達及び認知ならびに言語発達の尺度及び試験を通じて評価される。参加者の適応行動と家族/介護者(複数可)の生活の質(QOL)には、小児集団で検証された方法が含まれる。カナバン病の評価尺度は、カナバン病の参加者の神経学的ドメインを評価するために特に使用される。
【0180】
カナバン病に関連する変化の評価のために標準的な神経学的検査を実施する。さらに、視覚誘発電位(VEP)試験を含む眼科的評価が行われる。
【0181】
長期フォローアップ期間
治療及び急性フォローアップ期間の後、長期フォローアップ期間は少なくとも4年間続く。安全性に加えて、運動発達、認知及び言語発達、家族/介護者(複数可)の家族のQOL、神経学的状態、及びNAAレベルの評価を追跡し、BBP-812による治療の効果の持続性を評価する。合計で、全ての参加者は、BBP-812による治療日から少なくとも5年間追跡される。長期フォローアップ監視計画には、DSMCと協力して治験依頼者が実施する継続的な安全監視のプロセスが記載されている。
【0182】
安全性モニタリング
DSMCは、試験安全管理計画及びDSMC憲章に従って、試験中に発生するAE、重篤な有害事象(SAE)、及び用量後の毒性を監視及び評価する。DSMCは、累積安全性データをレビューし、用量設定フェーズ中のコホート1及びコホート2における継続的な治療及び登録、用量選択、ならびに試験の登録拡大フェーズ中の登録及び治療に関連して、BBP-812の安全性及び忍容性を評価する。
【0183】
停止規則、用量制限毒性、投薬調整
この試験は、治験依頼者によって一時停止、一時的に中断、または早期に終了される可能性がある。
【0184】
毒性は、有害事象の共通用語基準(CTCAE)v5.0によって決定される。用量制限毒性の疑いには、BBP-812に関連して治験責任医師によって評価され、カナバン病または他の原因に起因しないSAE、グレード≧3の有害事象、またはグレード≧3の臨床AEが含まれるが、これらに限定されない。BBP-812用量は、参加者ごとに調整されない。
【0185】
禁止薬
BBP-812以外の任意の遺伝子療法の使用は、試験前及び試験中に禁止されている。カナバン病または他の病気の治療のための他の治験薬の使用は、BBP-812投与前の30日以内(または5半減期のいずれか長い方)は許可されない。任意の肝毒性剤は、BBP-812を投与される前に少なくとも4週間、及び投与された後12週間禁止される。参加者の親/介護者は、同じ期間中に参加者にアセトアミノフェンを投与しないように助言されるべきである。医学的に必要な場合、肝毒性を有する可能性のある薬剤の使用は、治験責任医師と治験依頼者との間の議論の後、個々の参加者に基づいて決定される。治験責任医師は、プロトコル指定の評価に必要な適切な抗てんかん薬及び鎮静剤または麻酔剤を選択することにより、肝毒性リスクを最小限に抑えるためにあらゆる努力を払う。免疫抑制剤は、プロトコルで別途定義されていない限り、研究中に使用することはできない。
【0186】
参加者数(予定)
計画された登録:最大18人の用量を受けた参加者(合計):
●用量設定フェーズ:6人以上の参加者
●登録拡大フェーズ:最大12名の参加者
【0187】
参加基準及び参加除外基準
組み入れ基準:
【0188】
この臨床試験の参加資格を得るには、参加者は以下の全ての基準を満たす必要がある。
●BBP-812注入の予測日で、男性または女性の生後30ヶ月以下である。(すなわち、投薬は参加者が31ヶ月になる前日まで発生する可能性がある)
●治験責任医師の見解では安定した健康状態を有し、急性または慢性の血液疾患、腎疾患、肝疾患、免疫、または神経疾患(カナバン病以外)がないことが病歴及び臨床試験で確認されている。
●カナバン病の生化学的及び遺伝的診断を受けている:
●スクリーニング時に決定された、または参加者の病歴に記録されたASPA遺伝子の尿中NAA及び二対立遺伝子変異の上昇。
●カナバン病(筋緊張低下、発達遅延、及び大頭症を含むがこれらに限定されない)の臨床診断及び活動徴候を有する。
●地理的に適用可能なガイドライン(例:疾病管理予防センター、世界保健機関)に従って全ての予防接種について最新であり、参加者の親(複数可)及び/または法定後見人(複数可)は、臨床試験の過程で必要とされる標準及び研究特異的予防接種の投与に同意している。
●研究の性質が説明された後、及び研究関連の手順の実施前に、読み/理解することを希望し、それが可能な親(複数可)及び/または法定後見人(複数可)を有し、書面で署名されたインフォームドコンセントを提供することができる。
●参加者の臨床試験への参加を許可し、併用薬及びその他の治療制限を含む全ての臨床試験要件を遵守する意思があり、可能である親(複数可)及び/または法定後見人(複数可)がいること。
【0189】
除外基準:
【0190】
以下の基準のいずれかを満たす参加者は、この研究から除外される:
●酵素結合免疫吸着アッセイによって決定される、総抗AAV9抗体(>1:50)試験が陽性である。
●AAVを伴う以前の遺伝子療法または他の療法(ワクチンを含む)を受けた。
●免疫抑制剤による高用量療法を受けている。
●以下を特徴とするカナバン病を有意に進行させている:
●連続的/一定の除脳または除皮質姿勢の存在、
●再発性てんかん重積状態、または
●3種類以上の抗てんかん薬を服用している間に反応しない不応性発作
●治験責任医師の判断に従って、軽度のカナバン病の表現型に関連することが知られるASPA遺伝子型を有する。
●スクリーニング中の病歴または臨床及び/または検査所見によって証明される肝疾患の病歴(例えば、肝硬変または現在の活動性肝機能不全)がある。
●治験責任医師によって臨床的に有意であるとみなされる異常な検査値がある:
●アラニンアミノトランスフェラーゼまたはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ>正常上限(ULN)
●共役ビリルビン>ULN
●ガンマグルタミルトランスフェラーゼ>ULN
●推定糸球体濾過率(eGFR)が年齢の正常値の下限を下回っている
●ヘモグロビン<8g/dL
●年齢の正常範囲外の白血球(WBC)数
●血小板数<150,000/μL
●基準範囲外の部分トロンボプラスチン時間
●基準範囲外の国際正規化比率
●重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS CoV2;すなわち、コロナウイルス疾患-2019[COVID19])、ヒト免疫不全ウイルス1型または2型(HIV1またはHIV2)、B型またはC型肝炎、または結核の陽性スクリーニング検査を含む、臨床及び/または検査所見による活動性または潜伏感染の証拠がある。
●スクリーニング中のALDOB遺伝子検査の結果に基づいて、遺伝性果糖不耐症の診断が確定している。
●現在別の介入性臨床試験に参加しているか、またはBBP-812投与前の30日以内または5半減期(治験責任医師の裁量による)以内に治験薬またはデバイスを使用した別の臨床試験を完了している。
●治験責任医師の判断に従って、過去または現在の医学的または行動的状態、身体検査またはその他の医学的評価の所見、その可能性のあるその他の状況がある。
●治験中の参加者の安全性と健康に悪影響を及ぼす、
●治験手順またはフォローアップの完了を妨げる、または
●研究結果の混同する解釈。
●治験薬の賦形剤のいずれかに対して過敏症の病歴がある。
【0191】
治験薬とプラセボ、投与量、投与方法
予防:BBP-812投薬の少なくとも24時間前の-1日目に、参加者は、BBP-812投与に関連する潜在的な免疫応答を予防または抑制するために、栄養管(既に存在する場合)を介したプレドニゾロンまたはIV注入を介したメチルプレドニゾロンのいずれかでグルココルチコイド予防を開始する。参加者は、入院期間中、グルココルチコイド予防を継続する。BBP-812投薬当日、参加者は注入反応を防ぐために抗ヒスタミン剤の予防投与を受ける。退院時に、参加者は、BBP-812投与後の最初の1ヶ月間、プレドニゾロンによるグルココルチコイド予防(既に存在する場合は栄養管によって、または経口で)を受ける。代替のグルココルチコイドは、治験責任医師の判断に従って、及びメディカルモニターと相談した後に医学的に指示された場合に投与することができる。用量後28日目の来院時に、治験責任医師は、プロトコル定義のガイドラインに従ってグルココルチコイドテーパリングを開始するかどうかを決定する。
【0192】
投薬:治療は以下のように投与される:BBP-812コホート1:1.32×1014ベクターゲノム(vg)/キログラム(kg)体重;BBP-812コホート2:3.0×1014vg/kg体重。必要に応じて、BBP-812の低用量または中間用量は、累積安全性及び活性データのレビューに基づいて治験依頼者によって選択され得る。参加者は、治療適格性の確認日に応じて、治療コホート1または2に順次割り当てられる。BBP-812は、治験の0日目に1回の単回IV注入として治験依頼者指定の治療センターで投与される。注入の持続時間は、投与される用量レベルに依存する。
【0193】
投薬は、参加者が生後31ヶ月になる前日まで(その日を含む)行われ得る。
【0194】
プラセボ:この研究においてプラセボは投与されない。
【0195】
治療の期間及び研究への参加
各治療適格参加者は、研究の0日目にIV注入によって投与されるBBP-812の単回用量を受ける。
【0196】
本治験への参加の最大総期間は、少なくとも5年とする。
【0197】
スクリーニング期間:最大42日間(必要に応じて、一過性の参加者の病気、避けられないロジスティクス上の課題、または治験責任医師が判断したその他の要因により、時間が延長される場合がある)
【0198】
治療及び急性フォローアップ期間:1年
【0199】
長期フォローアップ:少なくとも4年
【0200】
統計的方法
解析母集団:任意の量の治験薬を受けた全ての参加者は、安全性解析セットに含まれる。任意の量の治験薬を受け、少なくとも1回のベースライン後の有効性評価を有する全ての参加者は、修正された治療(mITT)解析セットに含まれる。中止した参加者は、ベースライン後の有効性評価がない場合でも、mITT解析セットに含まれる。主要なプロトコル違反のないmITT解析セットの全ての参加者は、プロトコルごとの解析セットに含まれる。
【0201】
データ表集計の一般的なプレゼンテーションは、年齢層別になる。連続変数の要約には、総数(N)、平均、中央値、標準偏差、最小、最大、及び両側95%信頼区間(CI)が含まれる。カテゴリデータの要約には、カウントとパーセンテージ、及び両側95%CIが含まれる。Kaplan-Meier法を使用して、関連する両側95%CIを有する25、50(中央値)、及び75パーセンタイルを含む事象までの時間エンドポイントを要約する。
【0202】
有効性パラメータの分析は、主にそれぞれの分析集団の全ての参加者に基づく。しかしながら、有効性は、診断時の参加者の年齢に依存し得るか、または診断から治療までの時間に依存し得るため、追加の探索的分析が行われ、それによって参加者は、年齢グループ及び診断からの時間(例えば、生後12ヶ月以下及び>生後12~30ヶ月;診断から12ヶ月以下及び12ヶ月超)などの適切なカテゴリに層別化される。治験CVN-101から得られた自然病歴データとの比較は、マッチングされた患者データを使用して実施され、ペアマッチング、傾向スコアリンググループマッチングなどのマッチング方法の具体的な詳細は、統計解析計画で指定される。
【0203】
BBP-812またはグルココルチコイド投薬に関連するAEの評価のベースラインは、投与開始直前として定義され、一般に、治療出現(すなわち、治療出現有害事象[TEAE])としてのAEの指定は、治療開始の日/時に開始される。他の全ての変数/エンドポイントの変化の分析のためのベースラインは、製剤注入前の最も近い値として定義される。したがって、ベースラインは、特定の変数について、試験-1日目、-2日目、-3日目、-4日目、-5日目、-6日目、-7日目、-8日目、-9日目、-10日目、またはスクリーニングのいずれかとして考慮される。縦断的データ(治験とフォローアップで時間をかけて連続的に収集)は、データの性質に応じて、毎月、四半期などの適切な時間間隔で提示される。
【0204】
参加者の配置と人口統計学的特徴
参加者の配置には、各年齢層に登録された参加者の数と、年齢層別の各分析集団に含まれる参加者の数と割合が含まれる。また、治験を早期に中止した参加者の頻度とパーセンテージ、及び中止の主な理由も要約する。年齢、性別、人種、民族、体重、長さ、及びボディマス指数(BMI)を含む人口統計学及びベースライン特性、ならびに診断からの時間及び臨床徴候の発症を年齢グループ別に要約する。
【0205】
安全性分析
安全性解析のための統計的方法は、主に本質的に記述的であり、安全性解析セットで実施される。欠落している安全性データの補完は、欠落している日付または部分的な日付以外に実施されず、統計分析計画にさらに詳細に記載される。参加者は年齢別に分類される。
【0206】
The Medical Dictionary for Regulatory Activities version 23.1(または必要に応じてそれ以降)を使用して、全てのAEをコードする。SAE及びTEAEを含む有害事象は、年齢群別及び全体別に、全身臓器クラス及び推奨用語別に要約される。TEAEは、BBP-812の投与中または投与後に発生する任意のAEとして定義される。全てのTEAE要約には、イベントを経験した参加者の数と割合、及び参加者が経験したAEの数が含まれる。パーセンテージは、各年齢グループ内の安全性解析セットの参加者数に基づいている。BBP-812の遅延安全性効果の可能性は、計画された長期フォローアップ安全性評価の一部として評価される。重症度グレード3またはグレード4のAE、及び発生率5%以上のAEを要約する。TEAEとBBP-812及びグルココルチコイドとの関係を要約する。
【0207】
グルココルチコイド
全ての適格な参加者について、グルココルチコイド予防は、BBP-812投与に関連する潜在的な免疫応答を予防または抑制するために投与される。投与レジメンを
図15に示す。AAVベクターへの抗原特異的T細胞応答は、遺伝子療法を受けた2~4週間後の小児患者において報告されている(Novartis 2021、Mendell 2017)。
【0208】
予防:-1日目に、BBP-812の投薬の少なくとも24時間前から開始し、入院時に継続して、参加者は、プレドニゾロンを用いたグルココルチコイド予防剤を栄養管(既に存在する場合)を経由して、またはIV注入を経由してメチルプレドニゾロンを受ける。退院時に、参加者は、グルココルチコイド予防を、栄養管を介した経口プレドニゾロン(既に存在する場合)によって、または経口で、少なくとも治療後28日間の来院まで受ける。治験責任医師は、臨床的に適応がある場合、異なるグルココルチコイドを選択することができる。安全性臨床試験及び参加者の臨床評価は、グルココルチコイド予防をテーパーすべきか、現在の用量で継続すべきか、または増加すべきか(最大2.0mg/kg/Dプレドニゾロンまたは当量の用量)を導くために使用される。現在推奨されている投薬とテーパリングのレジメンについては、以下を参照されたい。
【0209】
参加者は、個々の参加者の臨床状態及び地域のベストプラクティスの治験責任医師の評価に基づいたレジメンを使用して、任意の介入性熱性疾患または生理学的ストレスのためのストレス用量のステロイドを受ける。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験を実施し、視床下部-脳下垂体-副腎(HPA)軸が損傷していないかどうか、及びストレスステロイドの使用がもはや必要ないかどうかを決定する。本研究のグルココルチコイドレジメンは、長期的な副腎機能不全を引き起こすことは予想されない。
【0210】
最初に投与された参加者からの安全性データのレビューに基づいて(実施例4を参照)、DSMCは、以下に概説されるように、より高い開始用量のプレドニゾロン、ならびにより長いテーパー及び増加したモニタリングに移動することを推奨した。
●7日目まで2.0mg/kg/日
●29日目まで1.5mg/kg/日
●56日目まで1.0mg/kg/日(Mo2)
●テーパーを開始し、1週間当たり15%以下の減少で少なくとも6週間継続する。
●少なくとも週に1回、または関連する傾向がある場合はそれ以上の頻度で肝機能検査を行う安全性検査室を監視する。
●AST/ALT上昇の事象については、潜在的な非肝臓原因について評価するために、少なくとも1つのクレアチニンキナーゼレベルを取得する。
【0211】
上記のレジメンを、第2の用量を受けた参加者に使用し(実施例4を参照)、現在のベースケースを反映した。しかしながら、BBP-812のさらなる臨床経験の自然増加に基づく追加の修正の対象となる。
【0212】
テーパリング
BBP-812投与の1ヶ月後に肝臓炎症と一致する臨床的に有意な検査または他の所見がない場合、グルココルチコイド予防は、治験責任医師の判断及び少なくとも28日間にわたる現地の臨床実践に従って、テーパーされ得る。28日目の臨床試験来院結果で肝臓の異常が認められた場合、メディカルモニターと相談して、1日1回のグルココルチコイド予防を継続するか、異常が解消するまで経口プレドニゾロンの1日総用量2.0mg/kg/日に相当する最大量まで増やし、その後、治験責任医師及び現地の臨床実践に従って、用量レベル及び治療期間に基づいて適切にテーパリングする必要がある。
【0213】
グルココルチコイドテーパー中の参加者の安全性臨床試験及び臨床評価が推奨される。
【0214】
ACTH刺激試験を実施し、HPA軸が損傷していないかどうかを決定する。上記の試験によって正常なHPA軸機能の回復が確認されるまで、参加者は、個々の参加者の臨床状態及び地域のベストプラクティスの治験責任医師の評価に基づいたレジメンを使用して、任意の介入性熱性疾患または生理学的ストレスのためのストレス用量ステロイドを受ける。プロトコルで義務付けられたグルココルチコイド投薬レジメンが、長期的な副腎機能不全をもたらすことは予想されない。
【0215】
さらに、グルココルチコイドの用量または持続時間に関係なく、テーパーの後期フェーズ中及びグルココルチコイド予防の中止前に、ACTH刺激試験を実施して、HPA軸が損傷していないか、及びグルココルチコイド予防が完全に停止し得るかどうかを決定する。HPA軸機能が完全に回復していない場合、患者は現在のグルココルチコイド用量を維持し、次の予定された治験来院時(約4週間以上後)に2回目のACTH刺激試験を実施する。ACTH刺激試験は、HPA機能が正常化するまで治験来院時に継続され、その後、患者はグルココルチコイドを中止し、もはやストレスステロイドのカバレッジを必要としなくなる可能性がある(以下を参照)。検査のための特定の方法、基準範囲、収集時期、及びその他の詳細は、現地の実践基準及び治験責任医師の医学的判断に従う必要がある。上記の試験によって正常なHPA軸機能の回復が確認されるまで、参加者は、個々の参加者の臨床状態及び地域のベストプラクティスの治験責任医師の評価に基づいたレジメンを使用して、任意の介入性熱性疾患または生理学的ストレスのためのストレス用量ステロイドを受ける。プロトコルで義務付けられたグルココルチコイド投薬レジメンが、長期的な副腎機能不全をもたらすことは予想されない。
【0216】
抗ヒスタミン剤
全ての適格な参加者について、抗ヒスタミン剤予防は、BBP-812への注入反応の予防のために使用される。承認された抗ヒスタミン剤としては、ジフェンヒドラミン(IV)、ヒドロキシジン(筋肉内[IM])、及びクロルフェニラミン(IV)、または栄養管を介して投与される対応する経口製剤(既に存在する場合)が挙げられる。抗ヒスタミン剤、用量、及び投与経路の選択は、治験責任医師の医学的判断及び現地の施設の実践に基づいて行われる。
【0217】
その他の予防的治療及びレスキュー薬
アナフィラキシー反応の場合、治療センターの標準的な施設手順に従って、以下の治療薬を準備する:エピネフリン、クリスタロイド、抗ヒスタミン剤(例えば、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、またはクロルフェニラミン)、及びヒドロコルチゾン。CRSの潜在的な発達に対処するために、サイトカインに対する抗体(例えば、トシリズマブ、IL-6R抗体)は、容易に使用可能である。加えて、補体媒介性血栓性微小血管症と一致するエピソードは、一部が抗補体療法を必要とする他の全身性AAV9媒介性遺伝子療法製品(Pfizer 2019、Solid 2018、Solid 2019)とともに報告されているため、補体阻害剤(例えば、エクリズマブ、C5切断をブロックする抗体、及びBerinert(登録商標)などの組換えまたは血漿由来のC1エステラーゼ阻害剤)も容易に利用可能でなければならない。これらの薬物の詳細については、トシリズマブ(Actemra(登録商標)[Genentech 2019])、エクリズマブ(Soliris(登録商標)[Alexion 2020])、及びC1エステラーゼ阻害剤(Berinert(登録商標)[CSL Behring 2019])の処方情報を参照されたい。
【0218】
注目すべきことに、エクリズマブは重篤な髄膜炎菌性感染症に関連しており、したがって、リスク評価及び緩和戦略(Alexion 2020)の下で制限されたプログラムを通じてのみ注文することができる。髄膜炎菌予防に関する情報及びエクリズマブを取得するための登録要件については、Soliris(登録商標)(Alexion 2020)の処方情報を参照されたい。エクリズマブの使用及び補体活性化症候群/血栓性微小血管症の管理に経験のある医療専門家との相談が推奨される。
【0219】
身体検査所見、検査室評価、バイタルサイン、及びECGの臨床的に有意な変化は、AEとして報告される。検査室及びバイタルサインデータは、年齢群ごとに要約される。全ての検査データとバイタルサインがリストされる。
【0220】
併用薬物データは、年齢群ごとにリストされ、要約される。治験薬曝露は、年齢群別に要約する。
【0221】
薬力学的活性解析
尿及びCNS(PDマーカー)中のNAAレベルの分析のいくつかの基本的な態様がある。固有の患者の経時的な可変性区別可能であるBBP-812投与後のNAAレベルの変化、特にベースラインからの実質的な減少は、BBP-812遺伝子療法の生理学的効果、すなわち、NAAが効果のバイオマーカーであることの検証のマーカーとみなされ得る。これらの分析では、ベースラインからの変化は、縦断的データ分析法を使用して評価することができる。さらに、NAAレベルの低下との相関を評価するための臨床活動尺度における絶対値及びベースラインから治療後までの変化の分析、ならびにベースラインNAAレベルに関連し得る経時的な臨床転帰変化の潜在的な差異を評価する分析が行われる。
【0222】
ベースラインから特定の時点までのNAAレベルの変化の統計的分析は、対応のあるt検定などの標準的な方法を使用して実行され、主要な時点分析は、BBP-812による処置後12ヶ月に変更される。ベースラインからの変化は、縦方向の反復測定のデータ分析方法を使用して評価することもできる。さらに、NAAレベルの低下との相関を評価するために、ベースラインから治療後までの臨床活動測定値の絶対値及び変化の分析が行われ、ベースラインNAAレベルに関連し得る経時的な臨床転帰変化の潜在的な差異を評価する分析も行われる。PD及び臨床活動評価の詳細は、正式な統計解析計画において提供される。
【0223】
臨床活動:運動、認知、言語発達と機能;適応行動
mITT解析セットは、臨床有効性の評価のために主要とみなされ、臨床有効性のベースライン後評価なしに試験を中止する参加者は、治療に応答しないとみなされる。そのような完全に欠落した結果の分析のためのいくつかの補完方法も使用することができ、これには、全ての処置された参加者にわたる最悪の値の割り当て(最悪の場合分析)、及び分析からのそのような参加者の除外(最良の場合分析)が含まれる。全ての臨床有効性解析について、参加者は、年齢群及び診断からの期間によって分類される。
【0224】
臨床解析は、発達試験における絶対データとベースラインからの経時的な変化の両方に基づいて行われる。潜在的な有効性シグナルを検出し、これらの絶対値及びベースラインからの変化の臨床的重要性を評価するために、臨床活性データを、治験CVN-101のカナバン病の参加者の自然経過データベースで収集された同様のデータと比較してもよい。
【0225】
その他の評価:イメージング、介護者質問票
mITT解析セットは、イメージング及び介護者質問票の評価のために主要とみなされる。ベースライン後イメージング評価または質問票回答なしに試験を中止する参加者は、治療に応答しないとみなされる。全てのイメージング及び質問票分析では、参加者は年齢グループ別に分類される。年齢グループによるデータを提示するために、記述統計が使用される。
【0226】
解析は、ベースライン時の脳MRI及び脳MRS、ならびにベースライン時の質問票回答、ならびにベースラインからの変化に関連するであろう。
【0227】
試料サイズ
治験への登録は最大18人の用量を受ける参加者になる。選択された用量で治療された最大15人の参加者の試料サイズは、ベースラインからの変化における0.493mmolの標準偏差が決定され、ベースラインからの2~3mmolの差を検出することが重要であると考えられた、以前に公開されたプロトコル(Leone 2012)で使用されたのと同様であるが、やや保守的な仮定に基づいて、NAAに対するPD効果の評価に適切であろう。1.0mmolのより保存的な推定標準偏差及び2.0mmolの臨床的に関連する差を有するNAAのベースラインからの変化についてのこれらの仮定を使用すると、15の試料サイズは、90%を超える検出力に対して十分以上である。
【0228】
研究スケジュール
スクリーニング及び長期追跡期間の事象のスケジュールを表13及び表14にそれぞれ示す。
【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【表13-4】
【表13-5】
【表13-6】
【表13-7】
【表13-8】
【表13-9】
【表13-10】
【表13-11】
【表13-12】
【表13-13】
【表13-14】
【表14-1】
【表14-2】
【表14-3】
【表14-4】
【表14-5】
【0229】
実施例4:第1/2相非盲検臨床試験の暫定結果
2人の患者に、実施例3に記載されるようにBBP-812を投与した。磁気共鳴分光法(MRS)イメージングを使用して、尿、脳脊髄液(CSF)、及び脳組織中のN-アセチルアスパラギン酸(NAA)の堅牢で永続性のある処置後の減少を観察した。磁気共鳴イメージング(MRI)で測定した新規髄鞘形成の徴候も観察された。脳NAAの減少は、静脈内(IV)投与されたBBP-812が血液脳関門の背後にあるその意図された標的に到達し、機能的アスパルトアシラーゼ(ASPA)酵素を発現していることを示唆する早期シグナルである。科学文献には、より低いNAAレベルがより軽度の疾患に関連しているというエビデンスがある。NAAのそれらの減少が臨床転帰にどのように変換されるかを確認するには、より多くの時間が必要である。
【0230】
BBP-812の静脈内注入は忍容性が良好であり、これまでのところ、治療関連の重篤な有害事象を経験した参加者はいない。治療後6ヶ月で、参加者1は、CSFにおけるNAAの77%の低下、MRSイメージングによって測定された脳白質におけるNAAの15%の低下、及び尿NAAの約50%の低下を示した。治療後3ヶ月で、参加者2は、CSFにおけるNAAの89%の低下、MRSイメージングによって測定された脳白質におけるNAAの50%を超える低下、及び尿NAAの81%の低下を示した。これらの観察された生化学的変化は、BBP-812が、この疾患のマイルストーンであるカナバン病プロセスに重要な細胞に到達していることを示唆している。これらのデータは暫定的な結果を表しており、治験遺伝子療法の最終的な安全性及び有効性プロファイルは完全に確立されていない。
*******
【0231】
本明細書において引用される全ての論文、出版物及び特許は、あたかも各々の個別の論文、出版物または特許が参照することによって援用されることが具体的かつ個別に指示されたかのように、参照することによって本明細書に援用され、引用された出版物に関連した方法及び/または材料を開示及び記述するために参照することによって本明細書に援用される。しかし、本明細書で引用されるいずれの参考文献、論文、刊行物、特許、特許公報、及び特許出願の言及も、それらが有効な先行技術を構成するか、または世界のいずれかの国で共通の一般知識の一部を形成するという承認または何らかの示唆ではなく、そのようにみなされるべきではない。
【0232】
本明細書において例証及び考察される実施形態は、本発明を作製し、使用するために本発明者らに既知の最善の方法を当業者に教示することのみを意図する。本発明の上記実施形態は、本発明から逸脱することなく、上記教示に照らして当業者によって理解されるように修正または変更され得る。したがって、特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内で、本発明は、具体的に記載されるものとは別の方法で実施され得ることが理解される。
列挙された実施形態
実施形態1.対象に治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)アスパルトアシラーゼ(ASPA)をコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約1013vg/kg~約1015vg/kgの範囲である、方法。
実施形態2.アスパルトアシラーゼ(ASPA)の発現を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを前記対象に投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約1013vg/kg~約1015vg/kgの範囲であり、それによって、前記対象においてASPAを発現する、前記方法。
実施形態3.アスパルトアシラーゼ(ASPA)のレベルの増加を必要とする対象におけるその方法であって、治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを前記対象に投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約1013vg/kg~約1015vg/kgの範囲であり、それによって、前記対象における前記ASPAのレベルを増加させる、前記方法。
実施形態4.前記対象が、ASPAの発現を必要とする、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
実施形態5.前記対象が、ASPAの低減したレベル及び/または機能を有する、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6.前記対象が、白質ジストロフィーを有する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
実施形態7.白質ジストロフィーの治療を必要とする対象におけるその方法であって、前記対象に治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約1013vg/kg~約1015vg/kgの範囲であり、
それによって、前記対象における白質ジストロフィーを治療する、前記方法。
実施形態8.前記白質ジストロフィーが、カナバン病、副腎脊髄ニューロパチー、アレキサンダー病、脳腱黄色腫症、クラッベ病、異染性白質ジストロフィー、副腎白質ジストロフィー、ペリツェウス・メルツバッハー病、及びレフサム病からなる群から選択される状態に関連する、実施形態6または実施形態7に記載の方法。
実施形態9.前記白質ジストロフィーが、カナバン病に関連する、実施形態8に記載の方法。
実施形態10.前記rAAVベクターを投与する前に、白質ジストロフィーを有する対象を選択することをさらに含む、実施形態6~9のいずれか1つに記載の方法。
実施形態11.カナバン病の治療を必要とする対象におけるその方法であって、前記対象に治療有効量の組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを投与することを含み、前記rAAVベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)を含む核酸分子と、
(ii)ASPAをコードする非AAVヌクレオチド配列であって、プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記治療有効量が、約1013vg/kg~約1015vg/kgの範囲であり、
それによって、前記対象におけるカナバン病を治療する、前記方法。
実施形態12.前記rAAVベクターを投与する前に、カナバン病の対象を選択することをさらに含む、実施形態11に記載の方法。
実施形態13.前記rAAVベクターの投与が、前記対象の組織におけるASPAの発現をもたらす、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14.前記組織が、末梢組織または中枢神経系(CNS)組織である、実施形態13に記載の方法。
実施形態15.前記対象において、解糖からベータ酸化への移行を含む代謝不均衡が存在することが判定されている、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16.前記方法が、1つ以上の解糖及び/またはベータ酸化因子のレベルを評価することによって前記代謝不均衡を検出することをさらに含む、実施形態15に記載の方法。
実施形態17.前記1つ以上の解糖及び/またはベータ酸化因子のレベルが、前記対象から得られる中枢神経系(CNS)液を使用して評価される、実施形態16に記載の方法。
実施形態18.前記方法が、
(a)前記対象からCNS液を得ることと、
(b)前記CNS液中のベータ酸化の増加を検出することと、
(c)前記(b)での検出に基づいて、前記rAAVを前記対象に投与することと、をさらに含む、実施形態15~17のいずれか1つに記載の方法。
実施形態19.前記方法が、(a)前記対象から得られた生体試料の代謝プロファイルを測定することと、(b)前記代謝プロファイルに基づいて、解糖からベータ酸化への移行を含む代謝不均衡を識別することと、をさらに含む、実施形態15~18のいずれか1つに記載の方法。
実施形態20.前記代謝プロファイルを測定することが、液体クロマトグラフィー(LC)、質量分析(MS)、液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)、または超高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(UPLC-MS/MS)を使用して前記生体試料をアッセイすることを含む、実施形態19に記載の方法。
実施形態21.前記生体試料が、血液、血清、CNS組織、または脳脊髄液(CSF)を含む、実施形態19または実施形態20に記載の方法。
実施形態22.前記CNS組織が、脳組織である、実施形態21に記載の方法。
実施形態23.前記代謝プロファイルが、グルコース、グルコース-6-リン酸、3-ホスホグリセリン酸、ピルビン酸、乳酸、及びホスホエノールピルビン酸からなる群から選択される第1のバイオマーカーのレベルを含む、実施形態19~22のいずれか1つに記載の方法。
実施形態24.前記代謝プロファイルが、カルニチン、マロニルカルニチン、ミリストイルカルニチン、パルミトイルカルニチン、マロニルカルニチン、及びベータヒドロキシ酪酸からなる群から選択される第2のバイオマーカーのレベルを含む、実施形態19~23のいずれか1つに記載の方法。
実施形態25.前記治療有効量が、約1014vg/kg~約5×1014vg/kgの範囲である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26.前記治療有効量が、約1.32×1014vg/kgである、実施形態25に記載の方法。
実施形態27.前記治療有効量が、約3×1014vg/kgである、実施形態25に記載の方法。
実施形態28.前記rAAVが、注入によって投与される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29.前記rAAVが、静脈内注入によって投与される、実施形態28に記載の方法。
実施形態30.前記rAAVが、注射によって投与される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31.前記注射が、静脈内注射、血管内注射、及び脳室内注射からなる群から選択される、実施形態30に記載の方法。
実施形態32.前記対象が、生後30ヶ月以下である、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
実施形態33.ASPAが、ヒトASPAタンパク質を含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34.ASPAが、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6に対して、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
実施形態35.前記プロモーターが、アストロサイト特異的プロモーター、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)プロモーター、または強化型トリβ-アクチンプロモーターである、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態36.前記プロモーターが、サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッドプロモーター、またはPGKプロモーターである、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37.前記サイトメガロウイルス/β-アクチンハイブリッドプロモーターが、CAGプロモーター、CB6プロモーター、またはCBAプロモーターである、実施形態36に記載の方法。
実施形態38.ASPAをコードする前記非AAVヌクレオチド配列が、ヒトASPA cDNAを含むか、またはそれからなる、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
実施形態39.ASPAをコードする前記非AAVヌクレオチド配列が、コドン最適化ヌクレオチド配列を含むか、またはそれからなる、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
実施形態40.ASPAをコードする前記非AAVヌクレオチド配列が、配列番号1を含むか、またはそれからなる、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
実施形態41.前記非AAVヌクレオチド配列が、配列番号6のアミノ酸配列、または配列番号6に対して、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
実施形態42.前記核酸分子が、サイトメガロウイルス前初期エンハンサーを含む、実施形態1~41のいずれか1つに記載の方法。
実施形態43.前記核酸分子が、ウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
実施形態44.前記核酸分子が、Kozak配列を含む、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
実施形態45.前記核酸分子が、miR-122結合部位を含む、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
実施形態46.前記ITRが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、またはrh74血清型ITRである、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
実施形態47.前記rAAVが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、rh10、またはrh74血清型rAAVである、実施形態1~46のいずれか1つに記載の方法。
実施形態48.前記rAAVが、AAV9血清型rAAVである、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
実施形態49.前記rAAVが、自己相補性rAAV(scAAV)である、実施形態1~48のいずれか1つに記載の方法。
実施形態50.前記rAAVが、一本鎖rAAV(ssAAV)である、実施形態1~49のいずれか1つに記載の方法。
実施形態51.
約1.32×1014vg/kgの組換え自己相補性アデノ随伴ウイルス9(scAAV9)ベクターを静脈内注入によって対象に投与することを含み、前記rAAV9ベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー、Kozak配列、及びウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む核酸分子と、
(ii)配列番号1のアミノ酸配列をコードする非AAVヌクレオチド配列であって、前記対象におけるASPAの発現を指示するCB6プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記対象が生後30ヶ月以下であり、前記対象がカナバン病を有する、方法。
実施形態52.
約3×1014vg/kgの組換え自己相補性アデノ随伴ウイルス9(scAAV9)ベクターを静脈内注入によって対象に投与することを含み、前記rAAV9ベクターが、
(i)少なくとも1つのAAV逆位末端反復(ITR)、サイトメガロウイルス前初期エンハンサー、Kozak配列、及びウサギβ-グロビンポリAシグナルを含む核酸分子と、
(ii)配列番号1のアミノ酸配列をコードする非AAVヌクレオチド配列であって、前記対象におけるASPAの発現を指示するCB6プロモーターに作動可能に連結されている、前記非AAVヌクレオチド配列と、を含み、
前記対象が生後30ヶ月以下であり、前記対象がカナバン病を有する、方法。
実施形態53.(a)前記対象に低分子代謝調節物質を投与すること、(b)前記対象に食事介入を処方することであって、前記食事介入が、前記対象における解糖を促進し、及び/またはベータ酸化を低減する、前記処方すること、及び/または(c)前記対象に免疫抑制剤を投与すること、をさらに含む、実施形態1~52のいずれか1つに記載の方法。
実施形態54.治療有効量のグルココルチコイドを前記対象に投与することをさらに含む、実施形態1~53のいずれか1つに記載の方法。
実施形態55.前記グルココルチコイドが、前記rAAVベクターの投与前、投与と同時、及び/または投与後に投与される、実施形態54に記載の方法。
実施形態56.前記グルココルチコイドが、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、またはそれらの組み合わせである、実施形態54または実施形態55に記載の方法。
実施形態57.前記対象に、治療有効量の抗ヒスタミン剤を投与することをさらに含む、実施形態1~56のいずれか1つに記載の方法。
実施形態58.前記抗ヒスタミン剤が、前記rAAVベクターの投与前、投与と同時、及び/または投与後に投与される、実施形態57に記載の方法。
実施形態59.前記抗ヒスタミン剤が、ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、クロルフェニラミン、またはそれらの任意の組み合わせである、実施形態57または実施形態58に記載の方法。
実施形態60.前記投与後、尿、脳脊髄液(CSF)、及び/または脳組織中のN-アセチルアスパラギン酸(NAA)レベルが低下する、実施形態1~59のいずれか1つに記載の方法。
実施形態61.前記投与後、尿中のNAAレベルが低下する、実施形態60に記載の方法。
実施形態62.前記尿中のNAAレベルが、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する、実施形態61に記載の方法。
実施形態63.前記尿中のNAAレベルが、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上、治療前のレベルと比較して低減したままである、実施形態61または62に記載の方法。
実施形態64.前記投与後、CSF中のNAAレベルが低下する、実施形態60~63のいずれか1つに記載の方法。
実施形態65.前記CSF中のNAAレベルが、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する、実施形態64に記載の方法。
実施形態66.前記CSF中のNAAレベルが、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上、治療前のレベルと比較して低減したままである、実施形態64または65に記載の方法。
実施形態67.前記投与後、脳組織中のNAAレベルが低下する、実施形態60~66のいずれか1つに記載の方法。
実施形態68.前記脳組織中のNAAレベルが、少なくとも約10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上低下する、実施形態67に記載の方法。
実施形態69.前記脳組織中のNAAレベルが、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、またはそれ以上、治療前のレベルと比較して低減したままである、実施形態67または68に記載の方法。
実施形態70.前記投与後、新規髄鞘形成が、磁気共鳴イメージング(MRI)を使用して観察可能である、実施形態1~69のいずれか1つに記載の方法。
【図】
【図】
【配列表】
【国際調査報告】