(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】多層複合体を形成する方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/20 20060101AFI20241018BHJP
B29C 48/21 20190101ALI20241018BHJP
B29C 48/07 20190101ALI20241018BHJP
C01B 21/064 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B29C48/21
B29C48/07
C01B21/064 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522444
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-26
(86)【国際出願番号】 US2022078155
(87)【国際公開番号】W WO2023064926
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593150863
【氏名又は名称】サン-ゴバン セラミックス アンド プラスティクス,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】SAINT-GOBAIN CERAMICS AND PLASTICS, INC.
【住所又は居所原語表記】One New Bond Street, Worcester, MA 01615, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ファ
(72)【発明者】
【氏名】プレイン,サラ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】リャン,シュアイ
(72)【発明者】
【氏名】ワトキンズ,ニコラス
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
【Fターム(参考)】
4F100AA14A
4F100AA14B
4F100AD10A
4F100AD10B
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK07A
4F100AK07B
4F100AK12A
4F100AK12B
4F100AK17A
4F100AK17B
4F100AK18A
4F100AK18B
4F100AK19A
4F100AK19B
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK27A
4F100AK27B
4F100AK41A
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AK42B
4F100AK45A
4F100AK45B
4F100AK49A
4F100AK49B
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK52A
4F100AK52B
4F100AK54A
4F100AK54B
4F100AK55A
4F100AK55B
4F100AK56A
4F100AK56B
4F100AL01A
4F100AL01B
4F100AL09A
4F100AL09B
4F100AS00A
4F100AS00B
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA08
4F100CA23A
4F100CA23B
4F100DE02A
4F100DE02B
4F100EH20
4F100JA11A
4F100JA11B
4F100JA20
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JG04
4F100JJ01
4F100YY00A
4F100YY00B
4F207AA04
4F207AA11
4F207AA13
4F207AA20
4F207AA24
4F207AA28
4F207AB16
4F207AG01
4F207AG03
4F207AR12
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB26
4F207KK12
4F207KL84
4F207KL88
(57)【要約】
【解決手段】 複合体を形成する方法は、第1の押出物及び第2の押出物を形成することであって、第1の押出物が有機ポリマー及びセラミック粒子を含み、セラミック粒子が六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含む、形成することと、第1の押出物と第2の押出物とを合わせて、2つの層を含む複合体を形成することと、複合体に層倍増手順を実施することであって、層倍増手順が、複合体を分割及び再結合して、多層複合体を形成することを含む、実施することと、を含むことができる。
【選択図】1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合物品を形成する方法であって、
第1の押出物及び第2の押出物を形成することであって、前記第1の押出物が有機ポリマー及びセラミック粒子を含み、前記セラミック粒子が六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含む、形成することと、
前記第1の押出物と前記第2の押出物とを合わせて、2つの層を含む複合体を形成することと、
前記複合体に層倍増手順を実施することであって、前記層倍増手順が、前記複合体を分割及び再結合して、多層複合体を形成することを含む、実施することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記層倍増手順が、少なくとも2つの層倍増要素、又は少なくとも3つの層倍増要素、又は少なくとも4つの層倍増要素、又は少なくとも5つの層倍増要素を使用することを含み、各層倍増要素が、前記多層複合体における層の量を2倍にする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多層複合体が少なくとも16層を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の押出物及び前記第2の押出物が有機ポリマー材料及びセラミック粒子を含み、前記セラミック粒子が六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記多層複合体中の前記hBN粒子の量が、前記多層複合体の総体積に基づいて少なくとも20体積%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記hBN粒子の平均粒子サイズ(D50)が、少なくとも1ミクロン且つ60ミクロン以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記hBN粒子の長さ対厚さの平均アスペクト比が少なくとも5である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記多層複合体の面内熱伝導率が少なくとも3W/mKである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機ポリマーが熱可塑性ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、フルオロポリマー、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、若しくはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、又はそれらの任意のコポリマー、又はそれらの任意の組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記有機ポリマーが、官能基を含む重合性ポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記重合性ポリマーが、ビニル基を含むシリコーンポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記複合スライスの面内方向における前記hBN粒子のMarch-Dollase配向パラメータηが少なくとも50%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記多層複合体の厚さが少なくとも10ミクロンである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記多層複合体の電気体積抵抗率が、少なくとも1.0E+12Ω・mである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機ポリマーと、高い配向度を有する六方晶窒化ホウ素(hBN)を含むセラミック粒子とを含む多層複合体を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性ポリマー複合材料は、過熱を回避するために熱を放散することによって、動作温度を著しく低下させ、デバイスの寿命を延ばすことができるので、電気デバイスの熱管理に関して様々な産業において重要な役割を果たす。熱伝導性ポリマー複合材料が重要な役割を果たす典型的な産業としては、家庭用電化製品(例えば、携帯電話、タブレット)、電気通信インフラストラクチャ(例えば、セルタワー)、LED照明、ハイブリッド、及び電気自動車(電力モジュール)、データセンタ(サーバボード、スイッチ、監視モジュール、及び電源)、並びに太陽電池が挙げられる。
【0003】
熱管理に適した材料の多様性及び効率を更に高める必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本開示は、添付の図面を参照することによって、より良く理解され、その多数の特徴及び利点が当業者に明らかにされ得る。
【
図1A】
図1Aは、一実施形態による多層複合体を形成するためのシステムを示す線図を含む図である。
【
図1B】
図1Bは、一実施形態による2つの層を含む共押出複合体の層倍増手順を示す線図を含む図である。
【
図2A】
図2Aは、
図2Bに示す多層複合体に含まれる小板タイプのhBN粒子を示す線図を含む図である。
【
図2B】
図2Bは、一実施形態による面内配向hBN粒子を有する多層複合体のクロスカットの側面図を示す線図を含む図である。
【
図3A】
図3Aは、一実施形態による面内配向hBN粒子を有する多層複合体のX線スペクトルを示すグラフを含む図である。
【
図3B】
図3Bは、March-Dollase法によるrと配向パラメータηとの関係を示すグラフを含む図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書で使用される場合、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含を網羅することが意図される。例えば、特徴のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、必ずしもそれらの特徴のみに限定されず、明示的に列挙されていないか、又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に固有の他の特徴を含み得る。
【0006】
本明細書で使用される場合、明らかに矛盾する記載がない限り、「又は」は、包含的な又はを指し、排他的な又はを指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(又は存在し)、Bが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在せず)、Bが真である(又は存在する)、及び、AとBとの両方が真である(又は存在する)。
【0007】
また、「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、本明細書に記載の要素及び構成成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるために行われる。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読まれるべきであり、単数はまた、そうでないことを意味することが明らかでない限り、複数も含む。
【0008】
本開示は、複合物品を形成する方法を対象としており、本方法は、第1の押出物及び第2の押出物を形成することであって、第1の押出物が有機ポリマー及びセラミック粒子を含む場合があり、セラミック粒子が六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含む、形成することと、第1の押出物と第2の押出物とを合わせて、2つの層を含む複合体を形成することと、複合体に層倍増手順を実施することと、を含むことができる。層倍増手順は、複合体を分割及び再結合して、多層複合体を形成することを含むことができる。
【0009】
一実施形態では、層倍増手順は、少なくとも2つの層倍増要素、又は少なくとも3つの層倍増要素、又は少なくとも4つの層倍増要素、又は少なくとも5つの層倍増要素を使用することを含むことができ、各層倍増要素は、多層複合体における層の量を2倍にする場合がある。
【0010】
本方法の一態様では、多層複合体は、少なくとも16層、又は少なくとも32層、又は少なくとも64層を少なくとも含むことができる。
【0011】
一実施形態では、第1の押出物と第2の押出物とを組み合わせることは、共押出によって行うことができる。本発明の方法は、2つの押出物の共押出に限定されず、少なくとも3つの押出物、又は少なくとも4つの押出物、又は少なくとも5つの押出物などのより多数の押出物の共押出を含むこともできる。
【0012】
共押出とそれに続く層の倍増を行うためのシステムの一実施形態を
図1Aに示す。システムは、第1の押出機(11)及び第2の押出機(12)を備えることができ、両方の押出機を共押出ブロック(13)に取り付けることができる。各押出機は、本明細書において第1の押出物及び第2の押出物(図示せず)と呼ばれる、液体流の形態の押出物を製造することができる。第1の押出物及び第2の押出物は、共押出(13)ブロックにおいて組み合わされて、本明細書において交換可能な複合体(図示せず)とも呼ばれる、2つの層を含有する共押出流れにすることができる。層倍増は、共押出流が共押出ブロック(13)を出て複数の層倍増要素(LME)(14)を通過した後に開始してもよい。各LMEでは、流れを垂直方向又は水平方向に分割(スライス)して、少なくとも2つの分割流れを形成することができる。分割された流れは、更に圧縮され、拡張され、再結合されることができ、これは、1つのLEMを通過した後の複合体の層の量の倍増をもたらし得る。したがって、LEMを通過するたびに、複合体の層を少なくとも二重にすることができる。システムは、端部にダイ(15)を更に含むことができ、ダイ(15)を通過させた後に、多層複合体(16)が得られる。
【0013】
図1Bは、第1の層倍増要素を通過させることによって、共押出流をどのように分割し、拡張し、再結合して4層複合体にすることができるかの実施形態を示す。8層への層の量の更なる倍増は、更なるLME(合計2つのLME)を通過させることによって達成され得、2(n+1)層の量への更なる倍増は、n個の量のLMEを通過させることによって達成され得る。
【0014】
層倍増を含む共押出プロセスの利点は、層倍増中に加えられる応力が、hBN粒子を、形成されたシート状体の長さ方向(本明細書では面内とも呼ばれる)に高い整列で配向させることができることであり得る。
図2Aに示されるように、その厚さ(T)と比較してより大きな長さ(L)を有する小板形態のhBN粒子を使用する場合、
図2Bにも示されるように、形成された複合シートの長さ方向に平行な層倍増処理中の整列が起こり得る。
図2Bは、4つの層(22a、22b、22c、22d)を有するシートの形態の多層複合体(21)の断面を示し、各層は、シートの面内(x方向)に高度に配向したhBN粒子(23)と有機ポリマー(24)とを含む。
【0015】
特定の態様において、第1の押出物を形成するための第1の組成物及び第2の押出物を形成するための第2の組成物は、第1の押出物及び第2の押出物が同じ材料を有することができるように、同じ成分を同じ量で含有することができる。
【0016】
別の態様では、第1の組成物及び第2の組成物の成分及び濃度は異なっていてもよい。例えば、第1の組成物のみがhBN粒子を含むことができ、第2の組成物はhBN粒子を含有しなくてもよい。別の例では、hBN粒子の量及び/又はhBN粒子の平均粒子サイズは、第1の組成物と第2の組成物との間で異なっていてもよい。
【0017】
特定の更なる態様において、第1及び第2の組成物は、添加剤、例えば、界面活性剤、染料、粘度調整剤、又は安定剤を更に含むことができる。
【0018】
一実施形態において、本開示の方法は、形成された多層複合体中のhBN粒子の量が、多層複合体の総体積に基づいて少なくとも10体積%、又は少なくとも15体積%、又は少なくとも20体積%、又は少なくとも25体積%、又は少なくとも30体積%、又は少なくとも35体積%、又は少なくとも40体積%、又は少なくとも45体積%、又は少なくとも50体積%であり得るように適合され得る。別の態様において、多層複合体中のhBN粒子の量は、多層複合体の総体積に基づいて70体積%以下、又は60体積%以下、又は50体積%以下、又は40体積%以下、又は35体積%以下であってもよい。
【0019】
更なる実施形態では、多層複合体を形成するために使用されるhBN粒子の平均粒子サイズ(D50)は、少なくとも1ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも10ミクロン、又は少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロン、又は少なくとも40ミクロンであり得る。別の実施形態では、hBN粒子の平均粒子サイズ(D50)は、60ミクロン以下、又は55ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下であり得る。本明細書で使用される場合、小板形状のhBN粒子を使用する場合、平均粒子サイズは、本明細書では直径とも呼ばれる、hBN粒子の平均長さ(L)に相当する。
【0020】
一態様では、hBN粒子の長さ(L)対厚さ(T)の平均アスペクト比は、少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも70、又は少なくとも80、又は少なくとも90、又は少なくとも100、又は少なくとも110、又は少なくとも120であり得る。別の態様では、hBN粒子の平均アスペクト比は、200以下、又は120以下、又は100以下、又は80以下、又は50以下、又は40以下、又は35以下、又は30以下、又は20以下であってもよい。
【0021】
更なる態様では、hBN粒子の厚さは、少なくとも0.05ミクロン、又は少なくとも0.1ミクロン、又は少なくとも1ミクロンであり得る。別の態様では、厚さは、5ミクロン以下、又は3ミクロン以下、又は1ミクロン以下であり得る。
【0022】
更なる実施形態では、異なるサイズのhBN粒子の組合せを使用することができる。一態様では、hBN粒子は、3~7ミクロンの平均粒子サイズを有するhBN粒子の第1の部分と、12~20ミクロンの平均粒子サイズを有するhBN粒子の第2の部分と、25~35ミクロンの平均粒子サイズを有するhBN粒子の第3の部分とを含むことができる。第1の部分対第2の部分及び第3の部分の体積比は、0.7:1.0:1.3~1.3:1.0:0.7、又は0.8:1.0:1.2~1.2:1.0:0.8、又は0.9:1.0:1.1~1.1:1.0:0.9の範囲であり得る。
【0023】
第1の押出物と第2の押出物とを組み合わせることは、有機ポリマーの溶融温度を超える温度での共押出を含むことができる。一態様では、共押出中の温度は、有機ポリマーの溶融温度より少なくとも15℃且つ135℃以下高くてもよい。特定の態様では、温度は、固化を回避するために共押出後に維持され、共押出された流れ(本明細書では複合体とも呼ばれる)は、複数の層倍増要素を通過させて層倍増手順を行う。層倍増要素を通過させた後、得られた多層複合体は、温度を低下させるか、又はそれを必要な硬化条件に供することによって固化させることができる。
【0024】
一実施形態では、本開示の方法は、多層複合体を連続的に形成するように適合され得る。
【0025】
驚くべきことに、本開示の方法が、小板形状のhBN粒子を、形成された多層複合体の面内方向に高い配向度で整列させることができることが観察された。理論に束縛されるものではないが、各層倍増ステップ中、液体流(本明細書では複合体とも呼ばれる)は、収束チャネル内の流体流と同様の実質的に拡大する流れを経験する。その結果、
図3Aに示すように、hBN小板状粒子は面内方向に高度に整列される。
【0026】
一実施形態において、多層体の面内方向におけるhBN粒子のMarch-Dollase配向パラメータηは、少なくとも50%、又は少なくとも53%、又は少なくとも55%、又は少なくとも57%、又は少なくとも60%、又は少なくとも61%、又は少なくとも62%、又は少なくとも63%であり得る。本明細書で使用される場合、March Dollase配向パラメータは、多層複合体内のhBN粒子の整列の程度を特徴付けるための定量的表現である。March Dollase配向パラメータは、X線回折測定を行い、March-Dollase法(実施例の詳細な説明を参照)に従ってX線スペクトルを分析することによって得られる。March Dollase配向パラメータηが、多層複合体内の分散されたhBN粒子の整列の程度を特徴付けるための適切な定量的表現であり得ることがわかった。50%以上のMarch-Dollase配向パラメータηは、hBN粒子の高い配向度(本明細書では整列とも呼ばれる)に対応する。
【0027】
高い整列度は、多層複合体の高い熱伝導率に対応し得る。一態様では、多層複合体の面内熱伝導率は、少なくとも2W/mK、又は少なくとも3W/mK、又は少なくとも4W/mK、又は少なくとも5W/mK、又は少なくとも7W/mK、又は少なくとも10W/mK、又は少なくとも15W/mK、又は少なくとも20W/mKであり得る。別の態様において、多層複合体の面内熱伝導率は、40W/mK以下、又は30W/mK以下、又は20W/mK以下、又は10W/mK以下であってもよい。
【0028】
一実施形態では、第1の押出物及び第2の押出物の有機ポリマー材料は、熱可塑性ポリマーを含むことができる。熱可塑性ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、フルオロポリマー、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、若しくはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、又はそれらの任意のコポリマー、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。
【0029】
別の実施形態において、有機ポリマーは、官能基を含む重合性ポリマーであってもよい。この場合、本方法は、重合性モノマーの硬化の大部分が、第1及び第2の押出物を組み合わせた後、且つ層倍増要素を通過させた後に起こるように適合させることができる。
【0030】
特定の態様では、重合性ポリマーは、シリコーンポリマー、又はアクリレートポリマー、又はエポキシポリマーを含むことができる。
【0031】
ある特定の態様において、重合性ポリマーは、ビニル基を含むシリコーンポリマーであり得る。非限定的な実施形態において、ビニル基を含むシリコーンポリマーは、架橋剤を用いた架橋によって重合され得る。ある特定の態様では、ビニル基を含むシリコーンポリマーの架橋剤に対する重量比は、0.5~5、又は1~3、又は1~2であり得る。
【0032】
一実施形態において、hBN粒子は、それらを有機ポリマーと組み合わせる前に表面官能化することができる。例えば、hBN粒子の表面官能化は、酸素プラズマ処理、又はシラン表面官能化、又はフッ素表面官能化、又はエポキシ表面官能化、又はアミン表面官能化、又はヒドロキシル表面官能化を含むことができる。hBN粒子の表面官能化は、有機ポリマー内のhBN粒子のより高い固体負荷を得るために、並びに層倍増のための押出物及び形成された複合体の流動挙動を改善するために有利であり得る。特定の態様では、表面官能化の前に、hBN粒子を、OH導入化合物による処理によって剥離及び/又は活性化に供することができる。
【0033】
ある特定の態様において、有機ポリマーはシリコーンであり得、hBN粒子は、シランで、又は酸素プラズマ処理を介して、又はフッ素表面官能化を介して表面官能化され得る。シラン化合物の非限定的な例としては、SiH4又はアミノシランを挙げることができる。フッ素表面官能化の例としては、CF4、又はCHF3、SF6、又はC2F6によるプラズマ処理を挙げることができる。
【0034】
別の態様では、有機ポリマーはエポキシポリマーであってもよく、hBN粒子はエポキシ化合物、又はアミン、又はヒドロキシル基で表面官能化されていてもよい。エポキシ化合物を導入する非限定的な例は、グリシジルメタクリレートでのプラズマ処理又はアリルグリシジルエーテルでのプラズマ処理であり得る。アミン官能化の例としては、アリルアミン又は3-(アミノプロピル)トリエトキシシランによるプラズマ処理を挙げることができる。
【0035】
更なる態様において、有機ポリマーはポリエチレンであってもよく、hBN粒子はフッ素表面官能化又はシラン官能化に供されてもよい。
【0036】
更に別の態様では、有機ポリマーは、熱可塑性ポリウレタン(TPU)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)であり得、hBN粒子は、エポキシ化合物、アミン、又はヒドロキシル基で官能化され得る。特定の更なる態様では、PBTは、酸素プラズマ処理、空気プラズマ処理、熱処理と組み合わせたホウ酸/尿素による処理、又は熱処理と組み合わせたホウ酸/メラミンによる処理によって表面官能化することもできる。
【0037】
本方法の一実施形態では、多層複合体の厚さは、少なくとも10ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも50ミクロン、又は少なくとも100ミクロン、又は少なくとも150ミクロン、又は少なくとも200ミクロン、又は少なくとも250ミクロンとすることができる。別の実施形態では、多層複合体の厚さは、2500ミクロン以下、又は1000ミクロン以下、又は500ミクロン以下、又は300ミクロン以下、又は100ミクロン以下であってもよい。
【0038】
本方法の更に別の実施形態では、多層複合体の各層の厚さは、少なくとも0.5ミクロン、又は少なくとも1ミクロン、又は少なくとも3ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも8ミクロン、又は少なくとも10ミクロンとすることができる。別の態様では、各層の厚さは、20ミクロン以下、又は10ミクロン以下、又は7ミクロン以下、又は5ミクロン以下、又は3ミクロン以下、又は2ミクロン以下、又は1ミクロン以下であり得る。
【0039】
特定の態様では、多層複合体の各層の厚さは、少なくともhBN粒子の平均厚さのサイズであり、hBN粒子の平均(D50)サイズの2倍以下、又はhBN粒子の平均サイズの5倍以下、又は10倍以下であり得る。
【0040】
本方法によって形成された多層複合体は、電気絶縁特性を有することができる。一態様では、多層複合体の電気体積抵抗率は、少なくとも1.0E+12Ω・m、又は少なくとも1.0E+13Ω・m、又は少なくとも1.0E+14Ω・mであり得る。
【0041】
別の実施形態において、多層複合体は、多層シートの形態で連続的に形成することができる。多層シートは、折り畳んで多層スタックを形成することができる。一態様では、多層スタックは、少なくとも1cm、又は少なくとも10cm、又は少なくとも20cm、又は少なくとも30cmの高さを有することができる。多層スタックは、複合スタックを形成するために(必要に応じて)プレス及び硬化を受けることができる。有機ポリマーが熱可塑性ポリマーであり、共押出溶融流を形成するときに出発材料として既に使用されている場合、例えば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)である場合、硬化は必要とされなくてもよい。その後、複合スタックの高さ方向(z)に複合スライスを切断することができ、複合スライスは、少なくとも3W/mK、又は少なくとも5W/mK、又は少なくとも7W/mK、又は少なくとも10W/mK、又は少なくとも12W/mK、又は少なくとも14W/mK、又は少なくとも16W/mK、又は少なくとも18W/mK、又は少なくとも20W/mKの、切断方向に直交する(面貫通)熱伝導率を有し得る。
【0042】
多くの異なる態様及び実施形態が可能である。それらの態様及び実施形態のいくつかを本明細書に記載する。本明細書を読んだ後、当業者は、それらの態様及び実施形態が例解的であるに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解するであろう。実施形態は、以下に列挙される実施形態のうちのいずれか1つ以上に従い得る。
【0043】
実施形態
実施形態1.複合物品を形成する方法であって、
第1の押出物及び第2の押出物を形成することであって、第1の押出物が有機ポリマー及びセラミック粒子を含み、セラミック粒子が六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含む、形成することと、
第1の押出物と第2の押出物とを合わせて、2つの層を含む複合体を形成することと、
複合体に層倍増手順を実施することであって、層倍増手順が、複合体を分割及び再結合して、多層複合体を形成することを含む、実施することと、を含む。
【0044】
実施形態2.層倍増手順が、少なくとも2つの層倍増要素、又は少なくとも3つの層倍増要素、又は少なくとも4つの層倍増要素、又は少なくとも5つの層倍増要素を使用することを含み、各層倍増要素が、多層複合体における層の量を2倍にする、実施形態1に記載の方法。
【0045】
実施形態3.多層複合体が、少なくとも16層、又は少なくとも32層、又は少なくとも64層を含む、実施形態1又は2に記載の方法。
【0046】
実施形態4.第1の押出物及び第2の押出物が有機ポリマー材料及びセラミック粒子を含み、セラミック粒子が六方晶窒化ホウ素(hBN)粒子を含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
実施形態5.第1の押出物の材料と第2の押出物の材料とが同じである、実施形態4に記載の方法。
【0048】
実施形態6.第2の押出物がhBN粒子を含まない、実施形態1に記載の方法。
【0049】
実施形態7.多層複合体中のhBN粒子の量が、多層複合体の総体積に基づいて少なくとも10体積%、又は少なくとも15体積%、又は少なくとも20体積%、又は少なくとも25体積%、又は少なくとも30体積%、又は少なくとも35体積%、又は少なくとも40体積%、又は少なくとも45体積%、又は少なくとも50体積%である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0050】
実施形態8.多層複合体中のhBN粒子の量が、多層複合体の総体積に基づいて70体積%以下、又は60体積%以下、又は50体積%以下、又は40体積%以下、又は35体積%以下である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0051】
実施形態9.hBN粒子の平均粒子サイズ(D50)が、少なくとも1ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも10ミクロン、又は少なくとも15ミクロン、又は少なくとも20ミクロン、又は少なくとも25ミクロン、又は少なくとも30ミクロン、又は少なくとも35ミクロン、又は少なくとも40ミクロンである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態10.hBN粒子の平均粒子サイズ(D50)が、60ミクロン以下、又は55ミクロン以下、又は50ミクロン以下、又は45ミクロン以下、又は40ミクロン以下、又は35ミクロン以下である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態11.hBN粒子の長さ対厚さの平均アスペクト比が、少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも20、又は少なくとも30、又は少なくとも40、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも70、又は少なくとも80、又は少なくとも90、又は少なくとも100、又は少なくとも110、又は少なくとも120である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0054】
実施形態12.hBN粒子の平均アスペクト比が、200以下、又は120以下、又は80以下、又は50以下、又は40以下、又は35以下、又は30以下、又は20以下である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態13.hBN粒子のアスペクト比が、少なくとも5且つ50以下、又は少なくとも5且つ35以下、又は少なくとも7且つ20以下である、実施形態11又は12に記載の方法。
【0056】
実施形態14.hBN粒子の厚さが、少なくとも0.05ミクロン、又は少なくとも0.1ミクロン、又は少なくとも1ミクロンである、実施形態1~13のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
実施形態15.hBN粒子の厚さが、5ミクロン以下、又は3ミクロン以下、又は1ミクロン以下である、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
実施形態16.多層複合体の面内熱伝導率が、少なくとも2W/mK、又は少なくとも3W/mK、又は少なくとも4W/mK、又は少なくとも5W/mK、又は少なくとも7W/mK、又は少なくとも10W/mKである、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
実施形態17.多層複合体の面内熱伝導率が、40W/mK以下、又は30W/mK以下、又は20W/mK以下、又は10W/mK以下である、実施形態1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
実施形態18.有機ポリマーが熱可塑性ポリマーを含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
実施形態19.熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド、液晶ポリマー(LCP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエーテルイミド、熱可塑性エラストマー(TPE、オレフィン系又はスチレン系)、フルオロポリマー、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、若しくはエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、又はそれらの任意のコポリマー、又はそれらの任意の組合せを含む、実施形態18に記載の方法。
【0062】
実施形態20.有機ポリマーが、官能基を含む重合性ポリマーである、実施形態1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
実施形態21.重合性ポリマーが、シリコーンポリマー、又はアクリレートポリマー、又はエポキシポリマーを含む、実施形態20に記載の方法。
【0064】
実施形態22.重合性ポリマーが、ビニル基を含むシリコーンポリマーである、実施形態21に記載の方法。
【0065】
実施形態23.複合スライスの面内方向におけるhBN粒子のMarch-Dollase配向パラメータηが少なくとも50%、又は少なくとも55%、又は少なくとも60%である、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
【0066】
実施形態24.多層複合体の厚さが少なくとも10ミクロン、又は少なくとも50ミクロン、又は少なくとも250ミクロンである、実施形態1~23のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
実施形態25.多層複合体の厚さが、2500ミクロン以下、又は1000ミクロン以下、又は500ミクロン以下である、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
実施形態26.多層複合体の各層の厚さが、少なくとも0.5ミクロン、又は少なくとも1ミクロン、又は少なくとも3ミクロン、又は少なくとも5ミクロン、又は少なくとも8ミクロン、又は少なくとも10ミクロンである、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
実施形態27.多層複合体の各層の厚さが、20ミクロン以下、又は10ミクロン以下、又は7ミクロン以下、又は5ミクロン以下、又は2ミクロン以下、又は1ミクロン以下である、実施形態1~26のいずれか1つに記載の方法。
【0070】
実施形態28.多層複合体の各層の厚さが、1ミクロン以下、又は10ミクロン以下、又は20ミクロン以下である、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
【0071】
実施形態29.多層複合体の各層の厚さが、少なくともhBN粒子の平均厚さのサイズであり、hBN粒子の平均(D50)サイズの10倍以下、又はhBN粒子の平均サイズの5倍以下、又は3倍以下、又は2倍以下である、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
実施形態30.hBN粒子の厚さ(T)が、少なくとも0.05ミクロン、又は少なくとも0.1ミクロン、又は少なくとも1ミクロンである、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
【0073】
実施形態31.hBN粒子の厚さ(T)が、5ミクロン以下、又は3ミクロン以下、又は1ミクロン以下である、実施形態1~30のいずれか1つに記載の方法。
【0074】
実施形態32.多層複合体の電気体積抵抗率が、少なくとも1.0E+12Ω・m、又は少なくとも1.0E+13Ω・m、又は少なくとも1.0E+14Ω・mである、実施形態1~31のいずれか1つに記載の方法。
【0075】
実施形態33.第1の押出物と第2の押出物とを組み合わせることが、有機ポリマーの融点を超える温度での共押出を含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態34.共押出中の温度が、有機ポリマーの溶融温度より少なくとも15℃且つ135℃以下高い、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態35.本方法が、多層複合体を連続的に形成するように適合される、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態36.多層複合体が多層複合シートである、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態37.有機ポリマーを固化又は硬化させる前に、多層体を圧力下でダイに通すことを更に含む、実施形態1~36のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態38.hBN粒子が多峰性粒子分布を含む、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
実施形態39.多峰性粒子分布が二峰性又は三峰性である、実施形態34に記載の方法。
【0082】
実施形態40.hBN粒子が3つの異なる粒子サイズ範囲の組合せを含む、実施形態34又は35に記載の方法。
【0083】
実施形態41.hBN粒子が、3~7ミクロンの平均粒子サイズを有するhBN粒子の第1の部分と、12~20ミクロンの平均粒子サイズを有するhBN粒子の第2の部分と、25~35ミクロンの平均粒子サイズを有するhBN粒子の第3の部分とを含む、実施形態34~36のいずれか1つに記載の方法。
【0084】
実施形態42.第1の部分対第2の部分対第3の部分の体積比が、0.7:1.0:1.3~1.3:1.0:0.7、又は0.8:1.0:1.2~1.2:1.0:0.8、又は0.9:1.0:1.1~1.1:1.0:0.9の範囲である、実施形態37に記載の方法。
【0085】
実施形態43.第1の押出物及び第2の押出物を形成する前に、hBN粒子の表面官能化を更に含む、実施形態1~42のいずれか1つに記載の方法。
【0086】
実施形態44.hBN粒子の表面官能化が、酸素プラズマ処理、又はシラン表面官能化、又はフッ素表面官能化、又はエポキシ表面官能化、又はアミン表面官能化、又はヒドロキシル表面官能化を含む、実施形態39に記載の方法。
【実施例】
【0087】
以下の非限定的な実施例は、本発明を例示する。
【0088】
実施例1
整列したhBN粒子を含む多層複合体の連続的形成。
【0089】
2つの押出機のセット(押出機A及び押出機B)を使用する。ここで、各押出機は、シリコーンゴム(AB specialty Indium H110-O)中に分散された37体積%のhBN粒子(平均粒子サイズ30ミクロン)及び架橋剤としての2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド(ポリジメチルシロキサン中50%)の同じ液体混合物を含有する架橋剤対シリコーンの重量%比は約1対1.5である。液体混合物は、2~5重量%の界面活性剤又は界面活性剤の組合せを更に含む。
【0090】
押出機Aの混合物を用いて第1の押出物を形成し、押出機Bの混合物を用いて第2の押出物を形成し、第1の押出物と第2の押出物とを組み合わせて2層複合体にする。2層複合体がまだ流体流の形態である間に、5つの層倍増要素の組合せを使用して層倍増手順にかけられる。5つの層倍増要素を通過した後、64層を含む多層複合シート(本明細書では多層複合体とも呼ばれる)が得られる。
【0091】
連続的に形成されたhBN複合シートの各層は約3.0ミクロンの厚さを有し、シートの全厚さは約190ミクロンである。シートの熱伝導率は、少なくとも5W/mKである。
【0092】
多層複合体の平面方向におけるhBN粒子の配向は、以下に記載されるようにX線分析を介して測定され、配向パラメータηは、March-Dollase法を介して計算され、ηは60%より大きい。
【0093】
実施例2
実施例2は、hBN粒子がシランで表面官能化されることを除いて、実施例1と同じ方法で行われる。熱伝導率及び配向パラメータが測定されており、実施例1の多層複合シートの熱伝導率及び配向パラメータよりも大きいと予想される。
【0094】
実施例3
実施例3は、様々な熱可塑性ポリマー、具体的にはポリエチレン、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びエポキシポリマーが使用されることを除いて、実施例1と同じ方法で行われる。
【0095】
更に、追加の一連の実験において、hBN粒子は表面官能化されている。表面官能化のタイプ及び対応する有機ポリマーを表1に列挙する。得られた多層シートの熱伝導率が測定されており、表面官能化されていないhBNを使用した場合の熱伝導率よりも大きいことが予想される。
【0096】
【0097】
実施例4
多層複合シートの連続的折り畳み。
【0098】
実施例1又は実施例2の連続的に形成された多層複合シートは、多層スタックを形成するために連続的に折り畳まれる。スタックに圧力を加えて圧縮処理を行い、次いで、必要に応じて有機ポリマーの硬化を行うために熱処理を行う。
【0099】
プレスされ硬化された多層スタックから、厚さ0.5mmの複合材スライスをダイヤモンドワイヤで切断する。複合材スライスは、熱伝導率についてその厚さ方向(z)で分析される。複合材スライスの厚さ方向(面貫通方向)全体の熱伝導率は、実施例1及び2で得られた多層複合体の面内熱伝導率と少なくとも90%同じである。
【0100】
熱伝導率の測定
熱伝導率は、過渡平面ソースデバイス(transient plane source device:TPS 2500 S、Hot Disk Instruments)を使用して測定される。機器及び測定は、試験材料の2つの試料の間に温度センサを配置し、試験試料の表面に熱パルスを導入し、温度変化を測定し、それに基づいて熱伝導率を計算することによって設計される。温度センサは、Paton-insulated Hot Disk(登録商標)センサモデル5501(半径6.4mm)である。熱パルスを60~150mWの範囲で3~15秒間変化させて、導電率値がパルスパラメータとは無関係に一定のままであることを確実にする。測定は、Hot Disk(登録商標)からのHot Disk Thermal Constants Analyser Instruction Manual(2015-04-15)に従って行う。面内測定についてはSlab Moduleが使用され、面貫通値については異方性法が使用される。
【0101】
March-Dollase配向パラメータηの測定
X線回折分析は、複合体内のhBN粒子の配向(本明細書では整列とも呼ばれる)の程度を判定するために行われる。面内整列したhBNプレートレットの場合、対象となる主面は、表面に平行な面内方向((002)面など)であった。最初に、2D XRDスペクトルは、10°~80°の範囲の角度位置でステップスキャンモードで集束Cu Kα線(λ=1.5418Å)を使用するBruker D8回折計による試料のスポット回折後に得られる。その後、1次元(1D)XRDスペクトルが、BrukerからのEVAソフトウェアのビルトイン能力を使用して2Dスペクトルの積分によって得られる。Rietveldピークフィッティング法を用いて、配向hBNパターンの(002)ピーク強度を非配向hBNデータベースパターンと比較して、配向の定量化可能な測定値を得る。(002)ピークを示す典型的なXRDスペクトルを
図2Aに示す。より多くの(002)hBN面が表面に平行に整列するにつれて、(002)実験ピークの相対強度は、データベースピークと比較して増加する。
【0102】
BrukerからのピークTopas定量ソフトウェアを使用して、XRDパターンのピークフィッティングを行う。Topasソフトウェアは、March-Dollase関数W(α)を使用してMarch-Dollaseパラメータを判定するための組み込み改良機能を有する。方程式(1)参照。
【0103】
【数1】
式中、W(α)は好ましい方向に配向された結晶子の割合であり、αは結晶子面(hkl)法線と好ましい配向方向との間の角度であり、rはMarch-Dollaseパラメータである。
【0104】
March-Dollaseパラメータrの関数としての好ましい配向度η(r)は、以下の式(2)に従って計算される。
【0105】
【0106】
図2Bに示すグラフは、March-Dollaseパラメータrと、本明細書では「March-Dollase配向パラメータη」とも呼ばれる好ましい配向度η(r)との間の関係を示す。グラフ中の実線は実際に測定された曲線を示し、破線は曲線を簡略化された線形傾向線に変換したものである。
【0107】
電気体積抵抗率の測定
サンプルの電気抵抗率は、ASTM D257に従って決定される。
【0108】
前述の明細書では、特定の実施形態を参照して概念を記載してきた。しかしながら、当業者であれば、以下の特許請求の範囲に掲げる本発明の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを理解する。そのため、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例解的な意味で考慮されるべきであり、全てのそのような修正は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【国際調査報告】