(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】制御された光治療によるシータ・ガンマ神経コードの変調
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522462
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 US2022047432
(87)【国際公開番号】W WO2023069717
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523156914
【氏名又は名称】オプトスーティックス アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】OPTOCEUTICS APS
【住所又は居所原語表記】Gammel Kongevej 1,4. tv 1600 Kobenhavn V (DK)
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーステンセン、 マーカス
(72)【発明者】
【氏名】グエン、 ゴック、 マイ
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA02
4C082PC00
4C082PE09
4C082PG15
4C082PG16
4C082PJ01
(57)【要約】
ガンマ脳刺激(約40Hz)は、光パルスを使用して行われる。知覚可能な明滅のないシータ脳刺激(約7Hz)を行うように、光源は47Hz(やはりガンマ範囲内)でも点滅させられる。脳は、40Hzおよび7Hzの減算周波数(シータ範囲内)を知覚する。脳のガンマ波およびシータ波の複合刺激は、脳疾患または睡眠障害を予防または治療するために使用されてもよい。特定の刺激周波数およびそれらの位相は、記憶、アルツハイマー病、運動技能、および他の機能に有益な効果を有していることが示されている、神経細胞のガンマ・シータカップリングを脳内に作り出す。脳内にガンマ・シータカップリングを生成する、他のガンマおよびシータ周波数も有益である。光パルスの位相はまた、脳内のシータ・ガンマカップリングを最大にするためにフィードバックを使用して動的に制御される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数で光源に通電するように制御された1以上の電源と、
20から140Hzのガンマ波の範囲内の第1脳刺激速度と、前記第1脳刺激速度に4から10Hzのシータ波の範囲を加えた第2脳刺激速度と、で光を生成するように制御されるように前記1以上の電源に結合された前記光源と、
を備える、
人の脳刺激システム。
【請求項2】
前記1以上の電源は、20から140Hzの前記ガンマ波の範囲内の第1周波数で前記光を生成するように前記光源を制御し、前記第1周波数より4から10Hz大きい第2周波数で前記光を同時に生成するように前記光源を制御する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1以上の電源は、前記光源を制御して、20から140Hzの前記ガンマ波の範囲内の第1周波数で前記光を生成することと、前記第1周波数より4から10Hz大きい第2周波数で前記光を生成することと、を交互に行う、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1以上の電源は、前記光源を制御して、4から10Hzの第2周波数で変調されながら、20から140Hzの前記ガンマ波の範囲内の第1周波数で前記光を生成する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
第1電源は、前記光源内の第1の発光ダイオード(LED)セットを制御して、前記第1脳刺激速度で明滅させ、
第2電源は、前記光源内の第2のLEDセットを制御して、前記第2脳刺激速度で明滅させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1以上の電源は、前記第1脳刺激速度で明滅するように前記光源内の発光ダイオード(LED)を制御し、前記第2脳刺激速度で点滅するように前記LEDを制御する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
脳波を検出する1以上のEEGセンサと、
前記脳波に対応する第1信号を検出するように結合され、前記人の脳におけるシータ・ガンマカップリングを増加させるように前記光源からの前記生成された光の位相を制御するように結合される、処理システムと、
をさらに備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1以上のEEGセンサは、前記人の脳のMEC領域および海馬領域のうちの少なくとも1つからの電気放出を検出する、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
処理システムと、
前記人の目を検出し、第1データを前記処理システムに提供する視標追跡装置と、
をさらに備え、
前記処理システムは、前記第1データを使用して脳刺激セッションの態様を調整するよう構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1データは、前記光源に対する前記人の視線角度に対応する、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項11】
前記第1データは、前記人の前記光源までの距離に対応する、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項12】
前記第1データは、前記人の瞳孔サイズに対応する、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項13】
前記処理システムは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの持続時間を調節するように構成される、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項14】
前記処理システムは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの前記持続時間を延長するように構成される、
請求項11に記載の刺激システム。
【請求項15】
前記セッションが調整される際に、前記脳刺激セッションの継続時間を表示するディスプレイをさらに備える、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項16】
前記視標追跡装置は、カメラを備える、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項17】
前記処理システムは、脳刺激セッション時間に対応する前記脳刺激の目標投与量を受信するように構成され、前記第1データは、前記セッション時間の持続時間を調整するために使用される、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項18】
メモリをさらに備え、
前記脳刺激セッションに対応する第2データは、後の検索のために前記メモリに記憶される、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項19】
前記脳刺激は、脳障害の治療に使用される、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項20】
通信システムをさらに備え、
前記通信システムは、前記脳刺激の有効性を決定する際に使用するために、前記セッションに関する第2データを送信する、
請求項9に記載の刺激システム。
【請求項21】
前記光源は、異色フリッカーを生成するために、少なくとも2つの異なる色の間で交互に変化する光を生成する、
請求項1に記載の刺激システム。
【請求項22】
約20から140Hzのガンマ波の範囲の第1脳刺激速度で光源を点滅させることと、
前記第1脳刺激速度に、4から10Hzのシータ波の範囲を加えた第2脳刺激速度で前記光源を点滅させることと、
を備える、
人の脳刺激方法。
【請求項23】
前記光源は、前記第1脳刺激速度および前記第2脳刺激速度で同時に点滅させられる、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光源は、前記第1脳刺激速度および前記第2脳刺激速度で交互に点滅させられる、
請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記光源は、複数の発光ダイオード(LED)を備え、1セットの前記LEDは、前記第1脳刺激速度で点滅させられ、第2セットのLEDは、前記第2脳刺激速度で点滅させられる、
請求項22に記載の方法。
【請求項26】
1以上のEEGセンサを用いて脳波を検出することと、
前記脳波に対応する第1信号を検出することと、
前記人の脳におけるシータ・ガンマカップリングを増加させるために、前記光源から発生する光の位相を制御することと、
をさらに備える、
請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記光源は、異色フリッカーを生成するために、少なくとも2つの異なる色の間で交互に変化する光を生成する、
請求項22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本PCT特許出願は、35USC111(a)の下で2021年10月21日に出願された「Modulation of the Theta-Gamma Neural Code with controlled Light Therapeutics」と題する米国実用特許出願第17/507,275号の優先権を主張する。この関連する実用特許出願の内容は、そのような主題が本明細書と矛盾しない、または本明細書を限定しない範囲で、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、アルツハイマー病、認知症、概日リズム睡眠障害、および他の脳障害などといった特定の疾患を治療または予防するための光(またはフォトニック)ガンマ脳刺激およびシータ脳刺激に関する。
【0003】
研究では、マウスにおいてガンマ脳波の刺激がアルツハイマー関連タンパク質を減少させ、病気に関連する神経変性を遅くするという証拠が示されている。ガンマ脳波は、脳の全ての部位からの情報を関連付け、そして処理するのに役立つ電荷である。人間においても同様の有益な効果が生じると考えられており、そのような研究は進行中である。
【0004】
健康な脳は、異なる周波数で動作するリズムパターンまたは脳波を特徴とする。ガンマ脳波は、およそ20~140Hzで振動し、より高次の認知機能と関連付けられ、そしてアルツハイマー病および他の神経疾患または精神疾患を有する人々の脳において減少することが知られている。
【0005】
アルツハイマーのモデルマウスの、40Hzで明滅する(すなわち、点滅する)可視波長LED光への曝露は、ガンマ波を刺激し、これがβ-アミロイドおよびタウ(アルツハイマーに関連するタンパク質)のレベルを低下させるだけでなく、有害なデブリを除去するミクログリアを活性化させることが発見されている。言い換えれば、そのような点滅は、40Hz付近の脳波振動を引き起こす。
【0006】
光ガンマ脳刺激の効果のさらなる詳細は、公開された出願の国際公開第2018/152255および米国特許出願公開第2020/0269065に記載され、いずれも参照により本明細書に組み込まれる。さらに多くの刊行物がそのような効果を記載している。
【0007】
アルツハイマーのモデルマウスにおける音(例えば、40Hzで再生されるクリック音)を使用したガンマ波刺激は、関連する有益な効果を有する。
【0008】
光または音ガンマ刺激を使用することにより、刺激を受けたマウスは、物体を認識し、水迷路をナビゲートして隠れたプラットフォームを見つけることを含む、記憶タスクに対してより良好に機能した。研究者らはまた、ミクログリアおよびアストロサイト(デブリの除去に関与する細胞)ならびに血管における活性化応答の変化を観察した。
【0009】
光および音ガンマ刺激の組み合わせに曝露されたマウスは、視覚および聴覚皮質を越えて前頭前皮質(タスクの計画および完了に重要な脳の領域)まで効果を拡大した。画像解析を用いて、科学者らは、刺激マウスにおけるアミロイド沈着周辺のミクログリアの独特のクラスタリング効果およびアミロイド病理の低下を見出した。効果は短命であったが、刺激後1週間減少した。
【0010】
定期刊行のニューロン誌にて公開された研究において、MITの研究者らは、より進行したアルツハイマー病のモデルマウスを、視覚刺激による最大6週間のガンマ同調に曝露することによって、長期治療の効果を検証した。結果は、視覚野と、海馬と前頭前野を含む高次の脳領域とにおいて、刺激がガンマ脳波を増加させたことを示した。継続的な刺激はまた、これらの脳領域におけるニューロンおよびシナプスの密度を保ち、記憶課題に対する成果を改善し、炎症を低減した。検証結果は、神経変性の後期においても、全体的な神経保護的効果があることを示唆している、と研究者は報告している。
【0011】
この研究の結果は、人間におけるアルツハイマー病の治療法になる可能性があるとして、以前のガンマ波刺激の研究をより深めた。
【0012】
40Hzの光刺激は、視覚野と同期するだけでなく、海馬および前頭皮質とも同期することが示されている(人間へのインプラントによる測定および検証)。
【0013】
異なる速度で明滅する一連のLED光を使用して、研究者らは、40Hzで点滅する光の、1回1時間にわたる治療が、アルツハイマーの極めて早期の段階にあるマウスの視覚野においてガンマ波を増加させ、ベータアミロイドのレベルを半減させることを発見した。しかし、24時間以内に、眼からの情報を処理するこの脳領域において、アミロイドレベルは通常に戻った。科学者らが、さらに高いレベルのアミロイドを有するマウスを、1日あたり1時間、7日間にわたり明滅光に曝露した場合、アミロイド斑の数および自由浮遊アミロイドのレベルは減少した。治療はまた、ミクログリアの効率を上昇させ、アミロイド斑および自由浮遊アミロイドの数を減少させた。
【0014】
このように、ガンマ脳刺激には反復治療が必要であり、ガンマ脳刺激光の最適な投与量が決定される。
【0015】
脳はまた、4~10Hzの範囲のシータ波も生成する。シータ波は、多くの動物における学習、記憶、および空間ナビゲーションを含む認知および行動の様々な側面の根底にある、脳内の神経振動であるシータリズム(theta rhythm)を生成する。これは、脳の内部から、または頭皮に取り付けられた電極から記録される脳波図(EEG)などの様々な電気生理学的方法を用いて記録することができる。
【0016】
少なくとも2種類のシータリズムが記載されている。海馬シータリズムは、げっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、コウモリ、有袋類を含む多くの哺乳類の海馬および他の脳構造において観察できる強い振動である。皮質シータリズムは、通常は人間から記録される、頭皮の脳波図の低周波成分である。シータリズムは、EEGLABまたはNeurophysiological Biomarker Toolbox(NBT)などの一般に利用できるツールボックスを用いて、定量的脳波図(qEEG)を用いて定量化することができる。
【0017】
人間において、海馬シータリズムが観察され、記憶形成およびナビゲーションに関連付けられている。シータリズムは、海馬の機能に重要であることに加え、脳領域間の長距離コミュニケーションにも重要である。
【0018】
ラットと同様に、人間も、レム睡眠中に海馬のシータ波活動を示す。人間はまた、レム睡眠中に主に皮質のシータ波活動を示す。眠気の増加は、アルファ波パワーの減少およびシータ波パワーの増加に関連している。瞑想は、シータ波パワーを増加させることが示されている。
【0019】
Ole JensenおよびJohn Lismanは、「ニューロン」誌の最近の論文で、ガンマ振動(40Hz)および、より遅いシータ振動(7Hz)が同じ脳領域で発生し、互いに影響し合う、クロス周波数カップリングとして知られるプロセスを説明している。JensenおよびLismanは、このクロス周波数カップリングが、脳が複数の情報を順序立てて表現(コード化)することを可能にすること、クロス周波数カップリングが、シータ振動の位相とガンマパワーのエンベロープとの関係を測定するために使用され得ることを提案している。したがって、カップリングの値が高いということは、ガンマ振幅がシータ位相の強い関数であることを示す。https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3648857/を参照のこと。
【0020】
最近の研究では、このコード化スキームが脳領域間のコミュニケーションを調整し、記憶プロセスだけでなく感覚プロセスにも関与していることが示唆されている。
【0021】
このように、脳内で生成されるシータ波およびガンマ波が十分に強く、最適な位相で発生すれば、人間の精神的・身体的健康に大きなメリットがあると考えられている。
【0022】
出願人の知る限り、ガンマ波とシータ波を組み合わせてユーザの脳を刺激するユーザ操作システムは存在しない。
【0023】
ガンマ波およびシータ波で脳を光学的に刺激する場合の1つの問題点は、シータ波の周波数4~10Hzの光の明滅が、長時間以上にわたって使用者に極度の不快感を与え、他の神経学的な問題につながる可能性があることである。しかし、ガンマ光の周波数40Hzの明滅は、人間にはほとんど知覚されない。
【0024】
必要とされるのは、アルツハイマー病または他の脳疾患を予防するまたは遅らせる、および/または記憶力および他の能力の改善に役立つ、ガンマ波やシータ波を最適な位相と量で生成するように脳を刺激する非侵襲的なシステムである。また、必要なのは、光の明滅を目立たせることなく、そのような刺激を行う技術である。
【発明の概要】
【0025】
1つの目的は、アルツハイマー病の治療または他の神経疾患および精神疾患(すなわち脳ネットワーク機能障害)の治療などといった、治療・診断目的で、明滅光を用いて(脳内の)神経細胞のシータ・ガンマカップリングを刺激する方法を提供することである。シータ・ガンマカップリング(TGC)は、脳内のクロス周波数カップリングの一形態であり、これによって「高周波」のガンマ(例えば30~50Hz)振動が低周波のシータ(例えば4~10Hz)振動によって変調される。
【0026】
光を使う必要はなく、皮膚の振動、皮膚への電気刺激、ガンマ/シータ周波数での音刺激など、他の感覚刺激でもプラスの効果が得られる。
【0027】
一実施形態においては、白色光または青色光LEDなどの1以上の光源を特定のガンマ周波数、例えば40Hzの速度で明滅させ、さらに1以上の白色光または青色光LEDを47Hzの速度で明滅させることで、脳内に7Hz(シータ周波数)のビート周波数(または減算周波数)を生じさせるとともに、40Hzのガンマ周波数を生じさせる、ユーザ操作の光(またはフォトニック)ガンマおよびシータ脳刺激システムが開示されている。あるいは、47Hzの刺激の後、6秒以内に40Hzの刺激を続けても、使用者の脳内にガンマ波とシータ波を誘導する同様の効果が得られる。このようにして、知覚可能な明滅をほとんど経験することなく、誘発されたシータ・ガンマカップリングが脳内に生じる。
【0028】
シータ周波数では光の明滅がないため、明滅があっても実質的に知覚できず、煩わしさがない。30Hz以上の周波数では、明滅は実質的に知覚できない。
【0029】
別の実施形態では、光が明と暗との間で交互に変化する代わりに、光は刺激周波数で2つの異なる色に交互に変化することができる。例えば、一方の光源はXX色とYY色の間を47Hzで交互に変化し、他方の光源はZZ色とKK色の間を40Hzで交互に変化することができる。これは異色フリッカーと呼ばれる。異色フリッカーは、複数の波形の組み合わせによって構成することができる。このような異色フリッカーは、目立つ明滅を減少させつつ、良好な結果をもたらす。2つの色の輝度が等しければ(それでも色相は異なる)、明滅は知覚できないはずである。
【0030】
脳の非線形性、特に2波、3波、4波の混合特性を利用して、シータ・ガンマカップリングの多重周波数刺激のために、特定の二重周波数の組み合わせを刺激するために、他の周波数の組み合わせも生成することができる。
【0031】
別の実施形態では、光の変化は正弦波であり、LEDへの電流は40Hzおよび47Hzである。その結果、ガンマ周波数(40Hz)およびシータ周波数(7Hz)の両方で脳が刺激される。
【0032】
ガンマ脳刺激速度範囲は、20Hz~140Hzの範囲が効果的で、シータ脳刺激速度範囲は、4Hz~10Hzの範囲が効果的である。したがって、2つの光の明滅周波数は、4~10Hzだけ異なり、20~150Hzの範囲にある。
【0033】
パルスシステムの場合、デューティサイクルは50%で十分であるが、デューティサイクルは重要ではない。
【0034】
シータ・ガンマカップリングは、内嗅・海馬ネットワークにおける記憶プロセスをサポートしている。シータガンマで変調された低周波ガンマは記憶の検索を促進し、シータで変調された高周波ガンマは記憶の符号化を促進する可能性がある。
【0035】
光源出力パワーは、患者またはそれを見ている他の人などの被検者にとって快適なレベルであるべきであり、正確な出力パワーは重要ではないようである。最適な投与量は、システムに予めプログラムされる。患者などの特定の被検者にとっての最適な投与量は、例えば午前9時に、例えば毎日連続1時間であり得る。多くの同様の被検者への投与量を正確に観察し、情報を記憶し、同時に病状の変化について被検者を検査することで、投与量と患者の改善との間に相関性を持たせることができる。
【0036】
海馬、扁桃体、前頭前野(PFC)、視覚野(VC)、および視交差上核(SCN)などの脳の様々な領域は、光脳刺激治療によって刺激することができる。脳のこれらの特定の領域に対する、光脳刺激の最適な目標有効用量を決定する能力は、神経変性に関連する病気の治療に役立つ。特に、海馬およびSCNを活性化して概日リズム(しばしばアルツハイマーの早期発症に関連する)に作用するために必要とされる最小投与量を理解することは、病気の治療の個別化/個人化を可能にし得る。
【0037】
光曝露の15分以内にサイトカインの活性化の用量依存性を調べることができるが、自己免疫細胞の活性化には60分かかる。したがって、特定の酵素および転写/翻訳活性化がいつ起こるかを知ることは、必要とされる治療継続時間(または投与量)を決定する際に重要であり、治療は、被検者ごとに個別化することができる。
【0038】
より正確な有効投与量を決定するために、視標追跡システムは、刺激セッション中の光源に対する被検者の視線角度を検出する。被検者が特定の距離(例えば、50cm)で光源を直視している場合、最大投与量が与えられる。その場合、投与時間は最小であり得る。治療中のある時間にわたって、被検者の視線が光源から逸れている場合、被検者が、1日の適切な総投与量を受けるように、非ゼロ視線角度は、アルゴリズムを使用して処理され投与時間が延長される。
【0039】
視線追跡器はまた、光源からの眼の距離及び瞳孔の直径を判定することができる。これらの要因はまた、有効投与量に影響し、システムは、眼距離および瞳孔サイズを補償するように、投与時間または光出力パワーさえも動的に制御する。
【0040】
ディスプレイは、治療の残り時間を被検者に伝えてもよく、それは被検者の視線に応じて動的に調整される。したがって、セッション時間を最小限にするために、被検者は光源を直視することが奨励される。
【0041】
システムは、机に支持されたシステム、携帯型スクリーンおよびタブレット、スマートフォン、平面もしくは曲面スクリーン、着用型ゴーグル、または他のタイプの平面、曲面、円形、もしくはその他の異なる形状の光学スクリーンもしくは光源システムに組み込まれてもよい。
【0042】
別の実施形態では、変化するLED光は実質的に正弦波であってもよい。これは、単にローパスフィルタでパルスを平滑化することによって行うことができる。
【0043】
他の実施形態では、LEDをパルス化する、または正弦波状の光出力を作り出す電源は、電気刺激または振動刺激を提供するためにユーザの皮膚に貼り付けられた電極に通電してもよく、または音声刺激を提供するために音響システムに通電してもよい。どのような種類の感覚刺激も、脳に影響を与え、脳内でガンマ波やシータ波を発生させたり、増幅させたりする。
【0044】
一実施形態では、光(光刺激)、皮膚刺激、および音声刺激、またはそれらの任意の組み合わせが、同時に発生して、脳の様々な部分を刺激してもよい。
【0045】
刺激の結果、脳内のガンマ波とシータ波の位相は、例えばEEG(脳波図)信号を検出することによって、インプラントを使用することによって、または脳活動を測定するための他の方法を使用することによって、リアルタイムで測定される。その後、位相フィードバック機構によって神経細胞のシータ・ガンマカップリングが最適になるように、脳がある位相で刺激されるよう、光刺激の位相が(刺激パルスを時間的にずらすことによって)制御される。治療中に位相を能動的に測定し、次いで、EEGフィードバックを使用して刺激を動的に調整することで、刺激は自然なシータリズム(常に存在するもの)または誘導されたシータリズム(光、音、触覚、電気/磁気刺激などによって刺激される脳のリズム)のいずれかに位相ロックされる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、投与量調整部を有する光ガンマ/シータ脳刺激装置を示す。
【
図4】ガンマ/シータ脳刺激投与量に対する様々な要因の効果を示すフローチャートである。
【
図5】システムプロセスの概要における工程を特定するフローチャートである。
【
図6】脳における望ましいシータ・ガンマ波カップリングを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
様々な図面において同じ番号が付された要素は、同じまたは同等であり得る。
【0048】
図1は、アルツハイマー病と診断されたか、アルツハイマー病もしくは他の脳疾患を発症するリスクがあるかのいずれか、または概日リズム睡眠障害と診断された、光変調ガンマ/シータ脳刺激で疾患または障害が治療され得る被験者10などの対象者を示す。被験者10は、さらに、皮膚または音ガンマ/シータ脳刺激を受けるか、または皮膚または音ガンマ/シータ脳刺激で治療されてもよい。
【0049】
ガンマ/シータ脳刺激光システム12は、被験者10から約50~100cmの場所に配置される。システムは、テーブルまたは机によって支持されてもよい。別の実施形態では、システムは被験者10が着用するゴーグルを構成する。
【0050】
一実施形態では、パルスする光源14は、青色LED、白色LED、または種々の異なる波長の単色LEDを使用する。
【0051】
一組のLEDは40Hz(または他のガンマ周波数)で励起され、別の組のLEDは47Hz(または他のシータ周波数)で同時に励起される。人の脳によって知覚される合成光は40Hzであり、ビート周波数(減算周波数)は7Hzである。明滅は、40Hzではほとんど感知できない。
【0052】
40Hzおよび47Hzの周波数が好ましいが、必須ではない。ガンマ脳刺激速度範囲は、20Hz~140Hzの範囲が効果的で、シータ脳刺激速度範囲は、4Hz~10Hzの範囲が効果的である。したがって、2つの光の明滅周波数は、4~10Hzだけ異なり、20~150Hzの範囲にある。その結果、ガンマ周波数およびベータシータ周波数で脳が刺激される。
【0053】
LEDは、中央にカメラレンズ16を有する円形光源14を形成するように任意で配置される。別の実施形態では、光源14は、より多くの点光源であってもよく、カメラレンズ16は、それに隣接してもよい。その場合、視線角度は、レンズのオフセットと光源に対して調整される。代わりに、光源14は、20cm×20cmの拡散ランベルト光源などの、LEDの平坦な二次元アレイであってもよい。
【0054】
別の実施形態では、LEDは、振幅が正弦波である光を出力するように通電される。このような場合、異なるセットのLEDへの通電電流は40Hzおよび47Hzであるため、明滅は知覚されない。
【0055】
別の実施形態では、LEDは40Hzで一定時間(数秒間)通電され、その後47Hzで数秒間通電され、交番は6秒未満である。脳は、周波数が変調されていると知覚する。
【0056】
別の実施形態では、光が明と暗との間で交互に変化する代わりに、光は刺激周波数で2つの異なる色に交互に変化することができる。例えば、一方の光源はXX色とYY色の間を47Hzで交互に変化し、他方の光源はZZ色とKK色の間を40Hzで交互に変化することができる。これは異色フリッカーと呼ばれる。異色フリッカーは、複数の波形の組み合わせによって構成することができる。このような異色フリッカーは、目立つ明滅を減少させながらも、良好な結果をもたらす。2つの色の輝度が等しければ(それでも色相は異なる)、明滅は知覚できないはずである。
【0057】
被検者10に対する光の総投与量は、臨床試験および検査に基づいて医療従事者によって決定されてもよい。患者などの異なるタイプの人々にとって最適な投与レベルが依然として研究されているが、合理的な投与量は、被検者10が光源14を1時間直視することである。そのようなセッションは、毎日同じ時刻に行われてもよい。被検者10は、ガンマ脳刺激をアルツハイマー病または他の疾患の影響と相互に関連付けるために、医療従事者によって定期的に評価されてもよい。被検者の体内の特定のタンパク質および他の化学物質の存在を判定するための検査と同様に、認知検査が行われてもよい。検査は、脳波記録(electroencephalography)を含んでもよい。評価のためには、どれくらいの量の光が被検者10に投与されたかを正確に知ることが不可欠である。
【0058】
本出願人らは、神経同調光の有効投与量は、視線角度、光源からの眼距離、および瞳孔サイズの組み合わせによって大きく影響されるが、これらの要因のうちのいずれかを補償することが、目標投与量の達成に役立つことを発見した。実際の投与量は、セッション中の特定の視線角度、眼距離、および瞳孔サイズを考慮して、一定の脳刺激セッション継続時間に対応する。視線角度の調整は、目標投与量を達成するために最も重要である。
【0059】
カメラ18(
図2)及びレンズ16は、視線追跡に使用される従来のタイプのものであってよい。従来のソフトウェアおよび処理ハードウェアもまた、視線角度、眼/顔の距離、および瞳孔サイズを検出するために使用されてもよい。カメラ18は、赤外線信号を放射し、視線角度、眼/顔の距離、および瞳孔サイズを決定するためにその反射を検出してもよい。あるいは、カメラ18は、視線角度、眼/顔の距離、および瞳孔サイズを計算するため、画像処理を使用してもよい。人による較正は、最初に基準値を確立するために用いられてもよく、この場合、被検者10は、基準値データを確立するために異なる距離で異なる領域を見るように指示される。次いで、この基準値データは、セッション中に集められたデータと後で比較するためにメモリに記憶される。
【0060】
目標光投与量は、まず医療従事者によって被検者10に対して確立され、この情報は、インターネット等を介してシステム12にダウンロードされる。既知の光の光出力パワー及びパルス周波数を考慮すると、光源から特定の距離にいる平均的な瞳孔の大きさを有する被検者であれば、目標光投与量はセッション継続時間に相関する。一例として、この目標投与量では、被検者10が平均瞳孔サイズを有し50cmの距離で光源14を直視していると仮定される。しかしながら、被検者10が光源14を直視しないか、50cmより遠く離れているか、または平均瞳孔サイズよりも小さい瞳孔を有する場合、実際の有効投与量は少なくなる。
【0061】
図2~
図5に関して説明されているように、視線角度、光源からの眼距離、および瞳孔サイズは、カメラおよびアルゴリズムによって自動的に検出され、セッション継続時間は、所定の目標光投与量を達成するために必要に応じて拡大される。例えば、0°の視線角度は光源14を直視している状態であるため、平均瞳孔サイズを有する被検者10は50cmの距離で投与量の100%を受ける。視線角度が90°では被検者10が光の0%を受け、視線角度が45°では被検者10が光の50%を受ける結果となった。検出された視線角度と受光量との相関関係は、0~100%の間で線形に推定されてもよく、または相関関係は、実験による結果に基づいて非線形であってもよい。
【0062】
被検者10が、光源から50cmから100cmに移動するにつれて光の効果が非線形的に減少するので、光源からの検出距離は、実際の有効投与量に対して非線形の相関関係を有する。同様に、瞳孔サイズは、実際の投与量に対して非線形の効果を有する。
【0063】
また、
図1に示すように、EEGフィードバックシステムは、脳のガンマリズム(gamma rhythm)とシータリズムの間のカップリングを最大化するように、刺激パルスの位相を動的に最適化するために使用される。最近の証拠によると、良好な記憶パフォーマンスには、脳内でガンマリズム(約30~140Hz)とシータ周期の特定の位相がカップリングしていることが必要である。シータ・ガンマカップリングは、嗅内海馬ネットワーク全体の情報伝達を促進すると考えられている。特定のシータ位相でガンマ変調された細胞集合体を活性化することで、分散した細胞が時間的に密接に発火するようになり、ネットワークがより強力な出力を出せるようになるかもしれない。このようなメカニズムは、どの種類のガンマリズムを利用するかによって、記憶の符号化と記憶の検索のいずれかを促進する働きをし得る。
【0064】
EEGは、通常、脳波の異常や脳の電気的活動の異常を検出する検査として用いられる。処置中、細いワイヤが付いた小さな金属ディスクから成る電極が、ユーザの頭皮に貼り付けられるか、ヘッドピースを使うなどして頭皮の近くに配置される。電極は、脳細胞の活動から生じる微弱な電気放出を検出する。
【0065】
代わりに、脳からのEEG信号を検出してガンマリズムとシータリズムの結合を検出し、結合が最大になるように光刺激パルスの位相を調整する。
【0066】
図1では、金属電極等の従来のセンサ17が、人の頭皮またはその付近に配置される。EEG信号は、従来のEEG検出器19を使用して感知される。センサ17は、内側嗅内皮質(MEC)および海馬のCAI領域からの信号を感知するように配置される。このようなセンサ17の正確な配置は、当業者には既知であろう。そして、従来のEEG検出器19は、2つの脳波を読み取る。次いで、プロセッサ21は、2つの波を検出し、2つの検出された波が最大カップリングを有するように光刺激パルスの位相を調整する。これは
図6に示されており、左側の検出されたMEC波形およびCAI波形は、プロセッサ21による適切な位相調整により、望ましい強さのシータ・ガンマカップリングを示しており、右側の波形は、位相調整前のような弱いシータ・ガンマカップリングを示している。
図6は、https://www.semanticscholar.org/paper/Theta%E2%80%93gamma-coupling-in-the entorhinal%E2%80%93hippocampal-Colgin/4d21566e350ff22f4c03628f5dcaf50fa91430b0からのコピーである。また、EEGでは、センサ電極だけで位相カップリングの「代理/間接」効果を測定することもできる。EEGでは、「ソース空間」と「センサ空間」を区別することができる。ソース空間では、十分な電極を用いて、海馬および海馬近傍の領域(ソース空間)の位相を測定することができ、センサ空間では、例えば前頭部や後頭部の電極を用いて、脳深部の位相ロックの間接的な効果を測定することができる。そのため、好ましくは、シータ・ガンマカップリングを検出するために、ソース空間内の海馬の測定値が使用されるが、その代わりに、センサ空間を使用してカップリングを検出することもできる。
【0067】
図2~4は、光刺激の所定量を達成することに関する。
【0068】
図2において、被検者の眼20は、光源14の上方を見ていると仮定する。カメラ18は、画像フレームまたは反射赤外光を使用して、視線角度、距離、および瞳孔サイズを判定する。視線検出は、通常、表示画面と併せて使用され、画面上のどのアイコンが閲覧者によって見られているかを検出し、そして、そのアイコンを自動的に選択する。視線検出は、潜在的な顧客がどこを見ているかを判定するために小売業界でも使用されている。距離検出を含む視線角度検出は、様々な他の分野でも使用され、そのようなシステムは市販されており、安価である。
【0069】
カスタマイズに適した視線検出システムは、SR Research、Tobi AB、および他の会社から入手可能である。完全にカスタマイズされたシステムは、ラズベリーパイ3モデルB+シングルボードコンピュータを併用して、ラズベリーパイカメラモジュールv2を用いて作製することもできる。ソフトウェアの多くは市販されている。
【0070】
次いで、カメラ18からの生のデジタルデータは、視標追跡モジュール22内のアルゴリズムを実行するプロセッサによって処理される。そのようなアルゴリズムは、本発明のためにカスタマイズされた一般に入手可能なソフトウェアから構成されていてもよい。本発明の場合、特に被検者が患者である場合に、最終的に被検者10が目標投与量を受けるよう投与量を動的に制御するために、ソフトウェアは視線角度、距離、および瞳孔サイズについて得られた情報を使用する。
【0071】
次いで、視標追跡モジュール22の出力は、投与量制御部24が制御する投与量を調整するために使用される。投与量制御部24は、まず初めに医療従事者から、1時間のセッションと相関し得る目標投与量を受信する。次いで、この目標セッション時間は、直視、50cmの距離、及び平均瞳孔サイズという理想的な状態からの偏差に基づいて自動的に延長される。
【0072】
図2は、投与量コントローラ24が、40Hzの電流パルス電源と47Hzの電流電源26を一定時間オンになるように制御している様子を示している。投与量コントローラ24はまた、光源14に印加される電流も制御してもよい。これにより、人間の脳は、ビート周波数(減算周波数)により、40Hzのパルス光と7Hzのパルス光とを知覚することになる。一実施形態では、40Hzの電源と47Hzの電源の両方が、光源14内に分散配置されたLEDの異なるセットに電流を供給する。
【0073】
別の実施形態では、光源14に供給される電流は正弦波であり、通電電流はガンマ周波数およびガンマ周波数にシータ周波数を加えた周波数である。
【0074】
必要とされるセッション時間は、被検者10に対して表示画面28上で表示される。したがって、被検者10は、被検者10が光源14から視線が逸れているか、または50cmより離れているために、セッション時間が延長されたことがわかる。表示画面28は、ローカルシステムによって生成されたデータ、またはインターネットを介して通信するリモートシステムによって生成されたデータを使用してもよい。
【0075】
メモリ30は、医療従事者が投与量に関しての正確なデータを把握できるように、セッションの結果を記憶する。通信ハードウェア32は、医療従事者にデータを伝達し、次回のセッション情報でシステムを更新してもよい。
【0076】
図3は、好適なカメラおよびアルゴリズムの一実施形態についてより詳細に示す。アルゴリズム及びプロセッサは、
図2の視標追跡モジュール22内にある。カメラ18は、被検者の顔及び眼の位置を撮像し、画像を解析する。他のシステムでは、赤外線が被検者から反射され、反射光が処理される。システムは、被検者によって初期較正が行われたと仮定される。
【0077】
図3において、顔は、例えばビオラ・ジョーンズ物体検出アルゴリズムを用いて検出される(ブロック34)。顔は関心領域(ROI)である。顔が検出されると、ROI情報は、距離推定のために顔の特徴間の相対距離を検出する顔位置合わせブロック36に伝達される(ブロック38)。次いで、計算された距離は、データパッケージで提供される(ブロック40)。
【0078】
眼はまた、定量的固定閾値アルゴリズムによって検出および処理される(ブロック42)。この処理は、コントラスト閾値(二値化)を使用して、虹彩および瞳孔等の物体を判定する。このデータに基づいて、瞳孔角度が推定される(ブロック44)。これから、視線の角度が三角関数によって計算され、光源に対する統合カメラ18のレンズのオフセットを補正した後(ブロック46)、結果として生じた角度は、次のフレームを撮像する前に、データのパッケージ化ブロック40に伝達される。投与量は、フレームごとに動的に調整されてもよく、または単にセッションの終了間際で調整されてもよい。
【0079】
顔が検出されない場合、「ユーザ不在」信号が生成され、光源に電源が投入されない。パッケージ化されたデータは、前述のように、セッション継続時間を調節するために、
図2の投与量制御部24に適用される。
【0080】
図4は、投与量を動的に制御するためのステップを示すフローチャートである。
【0081】
ステップ50において、40Hz/47Hzの点滅光源をオンにして刺激光52を放出する。視線検出システムは、被検者の眼が光を受ける(ステップ56)と、被検者の距離、視線角度、および瞳孔直径を検出する(ステップ54)。次いで、脳は神経同調(すなわち、脳波周波数を周期的な外部刺激のリズムと自然に同期させる脳の能力)を経る(ステップ58)。
【0082】
医療従事者または他の提供元によって提供される目標継続時間(ステップ60)は、光の予想または目標投与量と相関付けられる(ステップ62)。次いで、ステップ54の分析中のリアルタイム検出(ステップ64)は、視線角度等に起因する投与量の予測損失(ステップ66)と相関付けられる。データを投与量の損失と相関付けるために、ルックアップテーブルを使用してもよい。
【0083】
次いで、投与量補正ステップ68は、「理想条件」投与量から投与量の損失を減算して、被検者が受けている実際の有効投与量を導出する。次いで、有効投与量情報(ステップ69)を使用して、必要に応じてセッションを延長し、目標投与量を達成する。
【0084】
セッションから、および特に患者などの被検者の検査から得られたデータは、例えばアルツハイマー病や他の神経疾患または精神疾患(すなわち、脳ネットワーク機能障害)に対するガンマ脳刺激の効果の理解を促進するために使用されてもよい。
【0085】
図5は、望ましい投与量を達成し、また脳内のシータ・ガンマカップリングを最大化するための、1つの方法における特定のステップを要約した、より広範なフローチャートである。ステップ70において、医療従事者または他の提供元は、ガンマ/シータ脳刺激の最適投与量をシステムに伝達し、これは、既知の光源を用いたセッション継続時間の形態であってもよい。
【0086】
ステップ72において、光源及び視線追跡器が起動され、セッションを開始する。
【0087】
ステップ74において、検出された視線角度、眼距離、および瞳孔直径が、有効投与量の減少と相関付けられる。
【0088】
ステップ76において、検出された視線角度、眼距離、及び瞳孔直径を補償するように、セッション時間は要求に応じて延長される。別の実施形態では、目標投与量は、検出された視線角度、眼距離、および瞳孔直径の理想からのある程度の変動を推定し、システムは、セッション時間から加算または減算することができる。
【0089】
有効投与量の検出と並行して、脳内のシータ・ガンマカップリングが最大になるように光刺激の位相が制御される。位相を調整するためのシステムは、
図1に関して説明された。ステップ78では、脳のMECおよびCAI領域からのEEG信号が、センサを用いて検出される。
【0090】
ステップ80では、EEG信号が処理され、光刺激システムの位相は、
図6の左側に示されるように、2つの検出されたEEG信号が高いカップリングを有するように、動的に調整される。
【0091】
ステップ82では、セッションデータは、治療の有効性を評価するためにメモリに記憶される。
【0092】
ステップ84において、通信システムは、診療所または他の医療従事者にデータを伝達する。通信システムはまた、目標線量などの情報を受信することもできる。
【0093】
本システムは、治療のために使用されてもよく、研究のためのさらなるデータを収集するため、同じような人の群に対する光ガンマ/シータ脳刺激の効果を分析するためだけに使用されてもよい。前述のように、40Hzおよび47Hz以外の他の点滅周波数も、さらなる研究によって価値が証明され得る。
【0094】
本発明は、20~140Hzおよび4~10Hzのガンマ/シータ脳刺激速度に限定されない。光源14が放出する他の周波数の光パルスは、ベータ脳波(13~38Hzのベータ脳刺激速度)および概日機能に有益であり得る。知覚可能な明滅を引き起こす周波数よりも大きい光を生成し、さらにその周波数に低い周波数を加えた光を生成することで、明滅を検出することなく、元の周波数および減算周波数が脳の内部で知覚される。
【0095】
別の実施形態では、本システムは、ガンマ波刺激のみに使用される。
【0096】
他の実施形態では、
図1の光学システムは、感触および聴覚などの他の感覚を刺激する他のシステムと組み合わされる。光源14のLEDへの通電はまた、人の皮膚に貼り付けられた電極への電気パルスをトリガし、軽いショックを与えることもでき、および/または電気信号は、音パルスをトリガしてもよい。したがって、脳の異なる領域は、全く同じガンマ波およびシータ波で同時に刺激される。この皮膚および音響システムは、
図1の機能ブロック86によって表される。
【0097】
ガンマ波およびシータ波の位相はまた、異なる位相の結果を試験するために変動されてもよい。
【0098】
定義
「ガンマ脳刺激」という用語は、光源など、脳におけるニューロンガンマ活性を変化させることができる刺激を意味する。
【0099】
「被検者」という用語は、アルツハイマー病などの脳疾患の症状を呈する患者、または早期ガンマ脳刺激を望む被検者などのガンマ脳刺激を受ける対象者、または、教育もしくは検査目的でガンマ脳刺激を受ける受験者を意味する。
【0100】
「刺激セッション」という用語は、被検者が脳刺激装置に曝露されて光の一定の投与量を受ける、経時的な治療を意味する。一回の刺激セッションは、通常1日以内に行われるが、カスタマイズされたセッションは拡大され、複数の日、週、または月からなるよう個別に変えることができる。
【0101】
「刺激継続時間」という用語は、刺激セッションの時間を意味するが、刺激セッション時間を、15分×4=60分のセッションなどの「インターバル」トレーニングを可能にする複数の個々の継続時間に分割することができるので、「刺激継続時間」はセッション全体の継続時間を含むことに限定されない。点滅および明滅は、本出願において同じ意味で使用される。
【0102】
本発明の特定の実施形態を示し、説明してきたが、そのより広範な態様において、本発明から逸脱することなく変更および修正を行うことが可能であることが、当業者に明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内に、本発明の真の趣旨および範囲内にあるそのような変更および修正のすべてを含む。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数で光源に通電するように制御された1以上の電源と、
20から140Hzのガンマ波の範囲内の第1脳刺激速度と、前記第1脳刺激速度に4から10Hzのシータ波の範囲を加えた第2脳刺激速度と、で光を生成するように制御されるように前記1以上の電源に結合された前記光源と、
を備える、
人の脳刺激システム。
【請求項2】
前記1以上の電源は、20から140Hzの前記ガンマ波の範囲内の第1周波数で前記光を生成するように前記光源を制御し、前記第1周波数より4から10Hz大きい第2周波数で前記光を同時に生成するように前記光源を制御する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記1以上の電源は、前記光源を制御して、20から140Hzの前記ガンマ波の範囲内の第1周波数で前記光を生成することと、前記第1周波数より4から10Hz大きい第2周波数で前記光を生成することと、を交互に行う、
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記1以上の電源は、前記光源を制御して、4から10Hzの第2周波数で変調されながら、20から140Hzの前記ガンマ波の範囲内の第1周波数で前記光を生成する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
第1電源は、前記光源内の第1の発光ダイオード(LED)セットを制御して、前記第1脳刺激速度で明滅させ、
第2電源は、前記光源内の第2のLEDセットを制御して、前記第2脳刺激速度で明滅させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記1以上の電源は、前記第1脳刺激速度で明滅するように前記光源内の発光ダイオード(LED)を制御し、前記第2脳刺激速度で点滅するように前記LEDを制御する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
脳波を検出する1以上のEEGセンサと、
前記脳波に対応する第1信号を検出するように結合され
、人の脳におけるシータ・ガンマカップリングを増加させるように前記光源からの前記生成された光の位相を制御するように結合される、処理システムと、
をさらに備える、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記1以上のEEGセンサは、前記人の脳のMEC領域および海馬領域のうちの少なくとも1つからの電気放出を検出する、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
処理システムと、
人の目を検出し、第1データを前記処理システムに提供する視標追跡装置と、
をさらに備え、
前記処理システムは、前記第1データを使用して脳刺激セッションの態様を調整するよう構成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1データは、前記光源に対する前記人の視線角度に対応する、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項11】
前記第1データは、前記人の前記光源までの距離に対応する、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項12】
前記第1データは、前記人の瞳孔サイズに対応する、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項13】
前記処理システムは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッションの持続時間を調節するように構成される、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項14】
前記処理システムは、前記第1データに基づいて前記脳刺激セッション
の持続時間を延長するように構成される、
請求項11に記載
のシステム。
【請求項15】
前記
脳刺激セッションが調整される際に、前記脳刺激セッションの継続時間を表示するディスプレイをさらに備える、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項16】
前記視標追跡装置は、カメラを備える、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項17】
前記処理システムは、脳刺激セッション時間に対応する前記脳刺激の目標投与量を受信するように構成され、前記第1データは、前記
脳刺激セッション時間の持続時間を調整するために使用される、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項18】
メモリをさらに備え、
前記脳刺激セッションに対応する第2データは、後の検索のために前記メモリに記憶される、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項19】
前記脳刺激は、脳障害の治療に使用される、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項20】
通信システムをさらに備え、
前記通信システムは、前記脳刺激の有効性を決定する際に使用するために、前記
脳刺激セッションに関する第2データを送信する、
請求項9に記載
のシステム。
【請求項21】
前記光源は、異色フリッカーを生成するために、少なくとも2つの異なる色の間で交互に変化する光を生成する、
請求項1に記載
のシステム。
【請求項22】
20から140Hzのガンマ波の範囲の第1脳刺激速度で光源を点滅させることと、
前記第1脳刺激速度に、4から10Hzのシータ波の範囲を加えた第2脳刺激速度で前記光源を点滅させることと、
を備える、
人の脳刺激
システム制御方法。
【請求項23】
前記光源は、前記第1脳刺激速度および前記第2脳刺激速度で同時に点滅させられる、
請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記光源は、前記第1脳刺激速度および前記第2脳刺激速度で交互に点滅させられる、
請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記光源は、複数の発光ダイオード(LED)を備え、
第1セット
のLEDは、前記第1脳刺激速度で点滅させられ、第2セットのLEDは、前記第2脳刺激速度で点滅させられる、
請求項22に記載の方法。
【請求項26】
1以上のEEGセンサを用いて脳波を検出することと、
前記脳波に対応する第1信号を検出することと、
人の脳におけるシータ・ガンマカップリングを増加させるために、前記光源から発生する光の位相を制御することと、
をさらに備える、
請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記光源は、異色フリッカーを生成するために、少なくとも2つの異なる色の間で交互に変化する光を生成する、
請求項22に記載の方法。
【国際調査報告】