(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】流体移動および加圧装置のための高度な作動機構および操作方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20241018BHJP
【FI】
A61M25/10 544
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522465
(86)(22)【出願日】2022-10-13
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 US2022046570
(87)【国際公開番号】W WO2023064471
(87)【国際公開日】2023-04-20
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502343160
【氏名又は名称】アトリオン メディカル プロダクツ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カナー,ローランド ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】コリンズ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】シャーリー,エマ キャサリン
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA07
4C267BB02
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB19
4C267BB20
4C267BB40
4C267CC10
4C267CC19
4C267EE11
4C267HH30
(57)【要約】
ハウジングと、ハウジング内の第1のピストンと、ハウジングから延び、その上に第2のピストンを有するプランジャと、ハウジング内の第2のピストンの位置に応じてピストンをハウジングまたはプランジャのいずれかに選択的にロックするように作動するアクチュエータとを備える流体移動および加圧装置である。事実上、アクチュエータは、ハウジングに対して第1のピストンをロックおよびロック解除する第1のロック機構と、ピストンに対してプランジャをロックおよびロック解除する第2のロック機構とを有する。このように、第1のロック機構はロック機構であるだけでなく、第2のロック機構を作動させることに関する作動機構でもある。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体移動および加圧装置であって
ハウジングと、
前記ハウジング内の第1のピストンと、
前記ハウジングから延び、その上に第2のピストンを有するプランジャと、
前記第2のピストンが前記流体移動および加圧装置内の第1の位置にあるとき、前記第1のピストンを前記ハウジングに対して選択的にロックし、前記第2のピストンが前記流体移動および加圧装置内の第2の位置にあるとき、前記第1のピストンを前記プランジャに対して選択的にロックするアクチュエータと、
を備える、流体移動および加圧装置。
【請求項2】
前記アクチュエータは、前記第1のピストンを前記ハウジングに対してロックおよびロック解除する第1のロック機構と、前記プランジャを前記第1のピストンに対してロックおよびロック解除する第2のロック機構とを備える、請求項1に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項3】
前記第1のロック機構は、前記第2のロック機構を作動させることに関する作動機構を構成する、請求項2に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項4】
前記ハウジングに対して、所定の位置で前記プランジャを選択的にロックおよびロック解除するように構成された前記ハウジング上の保持機構をさらに備える、請求項1に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項5】
プランジャがスレッドレスである、請求項1に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項6】
ボアを有するバレルをさらに備え、前記第1のピストンがボアを有し、前記プランジャがその上にハンドルを有し、前記ハンドルが、前記プランジャ上にある第2のピストンに対向する前記プランジャの端部にあり、前記第1のピストンに第1のピストンシールが設けられ、前記第2のピストンに第2のピストンシールが設けられ、前記第1のピストンシールが前記バレルの前記ボアとシールし、前記第2のピストンシールが前記第1のピストンの前記ボアとシールし、前記第2のピストンが前記第1のピストンの前記ボア内で前後に摺動し、前記第1のピストンが前記バレルの前記ボア内で前後に摺動する、請求項1に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、プランジャラッチ、ラッチ付勢部材、およびアクチュエータブロックを有するロックスライドアセンブリを備える、請求項6に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項8】
前記プランジャは、ピストン肩部および少なくとも1つのプランジャストップを提供し、前記ハウジングの内部に、ボルト付勢部材によって前記プランジャの縦軸に向かって駆動されるボルトが存在する、請求項7に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項9】
前記プランジャの前記ハンドルが、前記プランジャが全近位位置に動かされるようにユーザによって引かれるとき、前記第1のピストンは、前記プランジャによって提供される前記ピストン肩部に対するその接触によって近位に引出され、前記プランジャが前記全近位状態から一旦遠位に動かされると、前記プランジャラッチは、前記プランジャの前記少なくとも1つのプランジャストップと整列し、前記プランジャラッチが、前記ラッチ付勢部材によって係合するように駆動されることを可能にし、前記プランジャと前記第1のピストンのロック係合は、前記第1および第2のピストンの両方を一緒に結びつけ、それらが同期して一体として遠位方向に動くことを可能にする、請求項8に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項10】
前記第1のピストンがその全遠位移動限界に達すると、前記第1のピストンが前記ハウジング内の所定の位置にロックされ、前記第1のピストンの前記ロックが前記ボルトによって行われ、これにより、前記ロックスライドアセンブリが前記プランジャを解放し、前記第2のピストンがその全遠位位置まで移動し続けることを可能にする、請求項9に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項11】
前記第1のピストンの自動ロックおよび前記プランジャからのそのロック解除を制御するボルトは、ボルトガイドウェイ内で作動可能であり、前記バレルの前記ボアの近位端に位置し、前記ボルトガイドウェイ内の前記ボルトは、前記ボルトガイドウェイ内に位置する前記ボルト付勢部材によって前記プランジャに向かって付勢され、前記ボルトガイドウェイは、前記ボルトが前記バレルの前記ボアの中心軸に向かって駆動されることを可能にするように指向され、これにより、前記第1のピストンの近位端のロック室が前記ボルトと整列するときはいつでも、前記ロックスライドアセンブリの前記アクチュエータブロックに作用するように前記ボルトを位置付ける、請求項10に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項12】
前記ボルトは、前記第1のピストンの外壁によって妨げられ、ピストン外壁および前記ロック室のフロアがボルトを越えて遠位に移動した後にのみ、前記ボルトガイドウェイから延びることが許され、一旦前記ボルトが前記ピストン外壁および前記ロック室のフロアによって妨害されなくなると、前記ボルトは、前記ロック室のフロアを越えて自由に延び、前記ピストンをその全遠位位置に保持する、請求項11に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項13】
前記プランジャラッチが、前記プランジャの前記少なくとも1つのプランジャストップと係合するように、前記付勢部材によって前記プランジャに向かって付勢されている、請求項7に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項14】
前記プランジャラッチと前記アクチュエータブロックとが、前記アクチュエータブロックの表面が前記プランジャラッチの対応する表面に係合することにより、互いに摺動可能に係合し、前記プランジャラッチが、前記プランジャラッチを前記プランジャに向かって付勢するように前記付勢部材によって付勢されている、請求項13に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項15】
前記アクチュエータブロックおよび前記ボルトが前記プランジャから離れるように動かされるときはいつでも、前記表面は、前記ラッチ付勢部材によって前記プランジャラッチが前記プランジャに向かって駆動されることを可能にする、請求項14に記載の流体移動および加圧装置。
【請求項16】
前記ピストン肩部にカムが設けられ、前記カムが前記アクチュエータブロックと前記ボルトを前記プランジャから遠ざける、請求項15に記載の流体移動および加圧装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、カテーテルバルーンなどを拡張および収縮させるための流体加圧の機構および方法に関し、より具体的には、非常に直感的で使いやすく、シームレスな操作が可能なプランジャ作動機構を有する装置に関する。
【0002】
流体加圧装置は、大動脈瘤の治療や心臓弁の送達を含む他のタイプのバルーンカテーテル駆動処置と同様に、バルーン血管形成術やステント送達処置を血管の内部で行うために、測定された体積の流体を高圧下で選択的に送達させたり、緩和させたりするために使用される。この目的のための大型ピストンで大容量の流体送達装置は、昇圧に必要な機械的利点を提供するために、プランジャスクリュおよびナット機構に依存することが多い。一般的に大型ピストンの直径のため、例えば一般的な40mL移動装置の場合、8気圧(117.6psi)の大容量バルーンを拡張するために92lbf(41.7kgf)のプランジャ力負荷を必要とする可能性がある。大容量移動を必要とする処置では、カテーテルのバルーン拡張をプランジャスクリュ機構を使用可能な場合よりも素早く行わなければならない。このような処置の例としては、腹部大動脈瘤(AAA)を治療するための血管内ステントグラフトのバルーン拡張や、経カテーテル(TAVR)処置における大動脈バルブの設置および拡張が挙げられる。これらの処置中、このような拡張可能な人工器官を送達するために使用されるカテーテルのバルーン拡張は、体内の重要な循環血流を完全に阻害する。このような場合、バルーン拡張中の血流障害時間を数秒程度に抑えることが望ましい。このような使用条件下では、臨床医がプランジャスクリュ機構を回転させて送達バルーンに必要な圧力レベルを達成するのには単純に十分な時間がない。さらに、このような処置の中には、送達中にステントや心臓バルブが歪むのを避けるために、ステントの拡張を所望のバルーン直径に制限しなければならないものもあるため、圧力ではなく送達された流体量が必要な送達制御要因となる。このような場合、正確な所定量の作動流体を膨張装置に装填し、引き続き、バルーン拡張中に装置内の全ての作動流体を完全に移動させてカテーテルバルーンに全量送達しなければならない。そのため、このような処置には非常に特殊な膨張装置が必要となる。
【0003】
全圧バルーン拡張を達成するために以前に改良された膨張装置は、より小さな直径のピストンを使用するものであり、臨床医が50~52lbf(22.7~23.6kgf)の範囲のプランジャ力をまっすぐに手動で加えることによって、例えば8気圧の圧力に達することができるものである。このタイプのバルーン膨張装置は、臨床医がプランジャスクリュとナット機構に依存することなく、プランジャの連続的な手動圧縮によって膨張装置の内容物をステント送達バルーン内に素早くかつ完全に排出できるため、しばしば使用される。このより小さなピストン方式で要求される流体容量を達成するためには、大型ピストン装置に比べてプランジャストロークが長くなり、したがってかなり長いボアが必要となる。実際には、装置バレル内にこのような長くて小さな直径のボアを製造することは、これらの使い捨て装置の製造に通常使用される樹脂成形プロセスにとって困難であることが判明している。この樹脂成形の難題は、使用中のピストンのシールの信頼性を保証するために、抜き勾配(部品成形プロセスを支援するためのボアテーパ)がほとんどない装置ボアを製造する必要性によって、さらに難しくなっている。
【0004】
50-52lbfの範囲内の、より達成可能なプランジャ力で、大型バルーンを全圧まで迅速に拡張することが可能であるが、この程度の力であっても、一部の臨床医には到底無理であり、そのため、膨張装置のプランジャスクリュおよびナット機構を使用してカテーテルバルーンの最終的な加圧を達成せざるを得ないことが認識されている。流体の完全送達とバルーン拡張を達成するためのこの余分なステップは、わずか数秒で完了するはずの処置における人工器官の装着時間を劇的に阻害している。残念なことに、より小さなピストンおよびボアの人間工学的な利点は、ユーザの投入力をさらに低減し得るものの、装置の製造に必要な成形プロセスの実用的な制限により、装置の製造適性は大きく損なわれる。小型の2次ピストンを追加することは可能かもしれないが、一対のピストンを手動で切り替えることは、シリンジのような作業を達成するために単一のプランジャに連続的な力を加えるという単純さを過去の訓練と経験で身につけたユーザにとっては、不必要に混乱し、面倒なことである。
【0005】
先行技術の複数ピストンの単一バレルシリンジの設計の例には、米国特許第3,749,084号、第4,583,978号および第4,702,737号に開示された装置が含まれる。これら3つの特許はすべて、単一の大きな薬液充填物から複数の個別分注量を送達するために、1つを超えるピストンを有する複数投与シリンジを開示している。
【0006】
米国特許第4,476,866号は、二重ピストンシリンジを開示している。二重ピストンシリンジは、まず、より小さな内部ピストンを前進させて予備的な高圧状態を作り出し、バルーンを反転動作させてから、より小さなピストンのプランジャ親指ボタンが底を打った後により大きなピストンを移動させて、より低い圧力で充填するように設計されている。
【0007】
米国特許第4,758,223号は、大型ピストンと小型ピストンがそれぞれのシリンジバレルボア内で独立して操作可能であるように、ユーザが選択可能な二重ピストンプランジャ装置を収容し、同軸に配置された二重ボアを有するシリンジバレルを開示している。
【0008】
米国出願公開第US2021/0085952号は、一方向バルブを有し、軸方向に配置された内側ボアを収容する主ピストンアセンブリを有する二重ピストン膨張装置を開示しており、内側ボアは、第2のより小さなピストンを有する操作可能なプランジャを受容するように作られている。操作では、この装置に作動流体が充填されると、小型ピストンプランジャに対する押圧により、まず大型ピストンが遠位方向に駆動され、作動流体がバルーンに送達されるはずであるが、大型ピストン内のバルブが、小型ピストンとの間の圧力上昇に応じて開くのに十分な抵抗力を有していることが条件となる。大型ピストンが、バルブを開くように設計された、より大きなピストンのバレル内の遠位側に取り付けられた「開口部の突出」の機構に遭遇すると、小型ピストンによって作られた圧力下の流体が、バルブ開口部機構の中央内腔から送達可能となる。この設計は、先に引用した米国特許第4,702,737号に開示された二重投与シリンジと、概念的にも操作原理的にもよく似ている。
【0009】
米国特許第9,452,279号および第10,238,843号は、内部に3つの同軸ピストンを有する非常に複雑な多重ピストンシリンジの設計を開示している。この装置の意図は、小型ピストンが単独で送達できる圧力よりも低い圧力まで、より大きな体積の流体を移動させた後、小型ピストンでより高い圧力を送達するのに必要なユーザの力を低減することである。操作では、流体室内でトリガー圧力に達するまで、3つのピストンすべてを一緒に近位に動かすことによって、より大きな体積を移動させることができる。そのトリガー圧力に達すると、前進したプランジャハンドルに対して最大ピストンが近位に移動させられ、双方が中間ピストンをハウジングとロック係合させ、小型ピストンを単独で遠位側に前進させるように解放する一連の事象をトリガーする。このシフトは、a)ある流体室圧力に達した時、または、b)トリガー圧力に達していない場合、操作者が十分な力でシリンジのボアの端部に対して駆動した時に発生する。また、いずれのシナリオにおいても、このシフトが発生する際の圧力は、プランジャストップと嵌合する可撓性ポリマーフィンガーの剛性と、これらのフィンガーを嵌合するプランジャストップから外すために克服しなければならない摩擦によって厳密に制御されることも認識しなければならない。このような機構に固有の変動性により、圧力の代わりに正確な流体量の送達のみによってサイズ制御を必要とするステントの送達への使用には適していない。この装置の機能が圧力に依存するという事実は、正確に設定された流体量の全送達が要求される用途への適性に難点がある。
【0010】
先行技術の装置は、いくつか存在するが、迅速な大型バルーンステント送達処置の際にユーザの投入力が少なくて済む高度なバルーンカテーテル膨張装置が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の実施形態の目的は、ユーザの投入力が少なくて済む高度なバルーンカテーテル膨張装置を提供することである。
【0012】
本発明の実施形態の別の目的は、高度なバルーンカテーテル膨張装置を提供することであり、この装置の操作は、ユーザがそのプランジャを遠位内側に迅速に駆動して作動流体をカテーテルバルーン内に移動させ、全充填に達した後、プランジャを完全に引き抜いて送達された流体を排出し、バルーンを崩壊させるだけでよいように構成されている。
【0013】
本発明の実施形態の別の目的は、必要とされる充填終了時のユーザ入力送達力を低減する高度なバルーンカテーテル膨張装置を提供することである。
【0014】
本発明の実施形態のさらに別の目的は、ねじ付きプランジャの支援に頼ることなく処置を確実に達成できるように構成された高度なバルーンカテーテル膨張装置を提供することである。
【0015】
本発明の実施形態のさらに別の目的は、同一の流体量を送達させるためのユーザの投入力の低減を達成するために、極端に長くより小さいボアを必要としない高度なバルーンカテーテル膨張装置を提供することである。
【0016】
本発明の実施形態のさらに別の目的は、完全に開放され、バルブまたは他の空気もしくは流体を捕捉する機構によって妨げられないピストンボアを有する高度なバルーンカテーテル膨張装置を提供することである。
【0017】
簡単に述べると、本発明の実施形態は、ハウジングと、ハウジング内の第1のピストンと、ハウジングから延び、その上に第2のピストンを有するプランジャと、ハウジング内の第2のピストンの位置に応じて第1のピストンをハウジングまたはプランジャのいずれかに選択的にロックするように作動するアクチュエータとを備える流体移動および加圧装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の構造および操作の組織および態様は、そのさらなる目的および利点とともに、同様の参照数字が同様の要素を識別する添付図面と関連してとられた以下の説明を参照することによって最もよく理解され得る。
【
図1】プランジャ力とカテーテルバルーンに送達された流体量を示すグラフである。
【
図2】本発明の実施形態に係る高度な膨張装置の分解斜視図である。
【
図3】送達バルーンカテーテルおよび拡張可能な人工器官を備え、組み立てられた高度な膨張装置の斜視図である。
【
図4A】
図3の平面4A-4Aに沿った部分断面図であり、高度な膨張装置のロックスライドアセンブリを示し、プランジャが大型ピストンにロックされている間のロックスライドアセンブリの状態を示す。
【
図5A】
図4Aに類似しているが、ロックスライドアセンブリの異なる状態、具体的にはプランジャが大型ピストンからロック解除されている状態を示している。
【
図6A】
図4Aに類似しているが、ロックスライドアセンブリの異なる状態、具体的には、大型ピストンが付勢ボルトによって装置のハウジングにラッチされ、小型ピストンを有するプランジャが移動の途中にある状態を示す。
【
図7A】
図4Aに類似しているが、ロックスライドアセンブリの異なる状態、具体的には、大型ピストンが移動途中にあり、付勢ボルトからロック解除された後にプランジャにロックされた状態を示している。
【
図8】
図4Aに類似しているが、プランジャが大型ピストンからロック解除され、大型ピストンが付勢ボルトによって装置のハウジングにロックされた完全遠位の排出位置にある状態を示している。
【
図9】
図4Aに類似しているが、プランジャが完全な近位にある充填位置を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、異なる形態で具体化することが可能であるが、本開示は、本発明の原理の例示と見なされるものであり、本発明を図示のものに限定することを意図するものではないことを理解した上で、具体的な実施形態を図面に示し、本明細書で詳細に説明する。
【0020】
本明細書では、高度なバルーンカテーテル膨張装置であって、迅速な大型バルーンステント送達処置の際に、先に説明した改良型膨張装置よりもさらに少ないユーザの投入力で済む装置を開示する。このアプローチは、大型の拡張可能な人工器官のバルーン送達中にプランジャ力が非線形に上昇することを効果的に考慮したものであり、特にバルーン充填終了時に発生する大きな力が必要とされることに重点を置いている。先に改良されたシングルピストン膨張装置について示した
図1の曲線「A」の例に示されているように、プランジャ力のレートが著しく上昇し始めるのは、バルーンが50%から80%充填された時点であり、残りの50%から20%の膨張流体の送達が完了する前である。本明細書で開示する高度なバルーンカテーテル膨張装置の操作は、ユーザがプランジャを遠位内側に迅速に駆動して作動流体をカテーテルバルーン内に移動させ、完全充填に達した後、プランジャを完全に引き抜いて送達された流体を排出し、バルーンを崩壊させるだけでよい。この装置は、先に述べた改良型のより小さなピストン装置の必要な充填終了時のユーザ入力送達力を、例えば50~52lbf(22.7~23.6kgf)から30~32lbf(13.6~14.5kgf)に低減する能力を有し、これにより強靭な体力を有しない施術者が素早くかつ快適に血管内大動脈ステントグラフトを送達したり、TAVR処置を実施したりすることを可能にする。重要なことは、他のこのような装置でしばしば必要とされるねじ付きプランジャの支援に頼ることなく、これらの処置を行うことができることである。さらに、製造の観点から重要なことは、この高度な装置が、同一の流体量を送達させるためにユーザの投入力の低減を達成するために、先に述べた改良装置よりも極端に長く小さいボアを必要としないという事実である。実際、この高度な膨張装置の例では、どのような移動であっても、装置を実際に短くすることができる。さらに、2つのピストン間の移動比を調整して、特定の送達バルーン充填応答に対する所望のプランジャ投入力に最適に一致させることもできる。最後に、高度なバルーンカテーテル膨張装置は、そのピストンボアが完全に開放され、バルブや、上述の米国出願公開第US2021/0085952号明細書に示された設計内のバルブ開口部の突出を囲む環状デッドボリュームのような、他の空気や流体を捕捉する機構によって妨げられないように設計されている。したがって、バルブの障害なしに、本明細書に開示される高度な膨張装置は、準備中の正確な充填とバルーン膨張中の正確な流体送達を確保するために、すべての空気を簡単かつ素早くパージすることができる。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る高度な膨張装置1の分解斜視図である。
図3は、組み立てられた装置1の斜視図であり、装置1が送達バルーンカテーテル33および拡張可能な人工器官32に接続された状態を示している。
【0022】
装置1は、ハウジング14と、ハウジング14から延びるバレル37とを備える。部品14および37は集合的に、装置1の全体的なハウジングを形成する。しかし、簡潔に、「ハウジング」という用語は主に部品14を指すために使用され、「バレル」という用語は主に部品37を指すために使用される。
【0023】
制御プランジャ2がハウジング14から延出しており、好ましくは、プランジャ2の先端にハンドル12が設けられている。好ましくは、ハウジング14に対して所定の位置にプランジャ2を選択的にロックおよびロック解除するための保持機構10がハウジング14に設けられる。
図3に示すように、装置1は、バレル37の近位端等に、ホース4が装置1に接続可能であるように構成される。図示のように、ホース4の端部には、カテーテル33に接続するためのルアーコネクタ28が設けられていてもよく、カテーテル33は、拡張可能な人工器官32に係合するための送達バルーン31を含んでいてもよい。ホース4は、装置1が送達バルーン31を膨張および収縮させるために使用できるように、装置1内の流体室15(
図4A、
図5A、
図6B、
図7A、
図8および
図9において特定)と連通している。
【0024】
好ましくは、装置は、流体室15と連通する圧力計を備える。圧力計は、ユーザが圧力計を見て、送達バルーンに供給されている圧力を判断できるように設けられている。圧力計は、従来のねじ込み式の圧力検出およびディスプレイモジュールとすることも、
図2に示すように、レンズ36で保護された機械式または電子式の圧力検出およびディスプレイモジュール34を有する一体型の圧力検出およびディスプレイモジュールハウジング35として設けることもできる。
【0025】
操作において、ユーザはハウジング14を保持し、そしてプランジャ2のハンドル12をハウジング14の中へ/向かって押して圧力を増加させ送達バルーン31を膨張させるか、またはプランジャ2のハンドル12をハウジング14から出し/から離して引いて圧力を減少させ送達バルーン31を収縮させる。装置1のすべての機能は、バレル37のボア3(
図2参照)内で、単一の制御プランジャ2を遠位側に動かすか、または近位側に引き出すだけで実行される。
【0026】
図2に示すように、プランジャ2は、その長さに沿ってねじ山が設けられていなくてもよく、小型ピストン5は、好ましくは、ハンドル12を有する端部とは反対側のプランジャ2の端部に設けられる。この小型ピストン5は、プランジャ2と一体的に形成することもできるし、プランジャ2の端部に取り付けることもできる。好ましくは、小型ピストン5には、大型ピストン7のボア11とシールするためのピストンシール30が設けられる(ボア11は
図5Aで特定され、シールは
図5Bで見ることができる)。ピストンシール29もまた、好ましくは、バレル37のボア3とシールするために大型ピストン7に設けられる(
図6B参照)。このように、小型ピストン5は大型ピストン7のボア11内を前後に摺動し、大型ピストン7はバレル37のボア3内を前後に摺動し、両方のピストンは常にそれぞれのボアに対してシールを提供する。
【0027】
ロックスライドアセンブリ13は、大型ピストン7の端部に、好ましくはロック室カバー22によってシールされたロック室25内に設けられている。ロックスライドアセンブリ13は、好ましくは、プランジャラッチ20、圧縮バネ24のようなラッチ付勢部材、およびアクチュエータブロック19を備える。
【0028】
ピストン5はまた、好ましくは、少なくとも1つのプランジャストップ8と同様にピストン肩部6を提供し、ハウジング14の内部には、圧縮バネ18のようなボルト付勢部材によってプランジャ2の縦軸に向かって駆動されるボルト16が設けられている。
【0029】
図5Aおよび
図5Bに示されるように、制御プランジャ2が全近位位置に動かされるようにプランジャ2のハンドル12がユーザによって引かれると、大型ピストン7は、制御プランジャ2と共に動くにつれて、ピストン肩部6に対する当接によって近位側に引き出される。一方、制御プランジャ2がこの全近位の状態から遠位に動かされると、プランジャラッチ20は、制御プランジャ2の少なくとも1つのプランジャストップ8と整列し、ラッチ付勢部材24によって係合するように駆動されることを可能にする。制御プランジャ2と大型ピストン7とのこのロック係合は、両方のピストンを一緒に結びつけ、大型ピストン7の近位端のロック室25内で、
図4A、
図4Bおよび
図4Cに示すように、同期して一体となって遠位側に動くことを可能にする。
【0030】
図6Aに最もよく見られるように、大型ピストン7(ピストンシール29を有する)がその全遠位移動限界に達し、それによって、例えば、送達バルーンカテーテル33によって必要とされる流体充填量の約50%~80%が送達された後、大型ピストン7は、膨張装置ハウジング14内の所定の位置にロックされる。大型ピストン7のロックは付勢ボルト16によって行われ、これによってロックスライドアセンブリ13がプランジャ2を解放し、
図8に示すように小型ピストン5がその全遠位位置まで移動し続けることを可能にする。このようにして、小型ピストン5は、例えば、
図1の曲線「B」で示されるように、減少したプランジャ力でステント送達バルーンの拡張を完了するために、残りの50%~20%の流体を送達できる。これにより、膨張装置流体室15内で移動可能な全ての流体は、ユーザが制御プランジャ2に対して単一の遠位力を継続的に加えることによって分注される。このロックおよびロック解除アクションは、制御プランジャ2および大型ピストン7の位置に応じて自動的に発生するので、ロックまたは解除を効果的に行うための2次的なユーザ入力は必要なく、したがって、ピストン間のロックおよびロック解除アクションは、ユーザが意識する必要は無い。
【0031】
図7Aおよび
図7Bに示すように、大型ピストン7の自動ロックおよび制御プランジャ2からのロック解除を制御するボルト16は、ボルトガイドウェイ17内で操作可能であり、膨張装置バレル37のボア3の近位端に配置されている。ボルトガイドウェイ17内のボルト16は、同じくボルトガイドウェイ17内に配置されるボルト付勢部材18によって制御プランジャ2に向かって付勢されている。ボルトガイドウェイ17は、ボルト16が膨張装置バレル37のボア3の中心軸に向かって駆動されることを可能にするように配向され、したがって、大型ピストン7の近位端のロック室25がそれと整列するときはいつでも、ボルト16がロックスライドアセンブリ13のアクチュエータブロック19に作用するように位置決めされる。
図4Aおよび
図4Bに示すように、ボルト16は、大型ピストン7の外壁26によって妨げられ、ピストン外壁26およびロック室25のフロア27がそれを越えて遠位側に移動した後にのみ、ボルトガイドウェイ17から延びることができる。一旦ピストン外壁26とロック室フロア27に妨げられなくなると、ボルト16はロック室フロア27を越えて自由に延び、ピストン7を完全な遠位位置に保持する。ボルトガイドウェイ17内に存在し、それによって整列されたボルト16は、ここに示すように直線的に横断するように案内されるか、あるいは、装置内で利用可能なスペースに最も適したように、ハウジング14に固定され、枢動可能な取り付けによって案内されるかのいずれかである。
【0032】
前述のように、ロックスライドアセンブリ13は、好ましくは、プランジャラッチ20、アクチュエータブロック19およびラッチ付勢部材手段24を備える。プランジャラッチ20は、制御プランジャ2の少なくとも1つのプランジャストップ8に係合するように、付勢部材24によってプランジャ2に向かって付勢されている。プランジャラッチ20およびアクチュエータブロック19は、アクチュエータブロック19の表面21がプランジャラッチ20の対応する表面23に係合することにより、互いに摺動可能に係合する。プランジャラッチ20は、付勢部材24によって軽くばねで付勢され、プランジャ2に向かって付勢されている。これらの当接面21および23は、
図5A、
図5Bおよび
図5Cに示すように、アクチュエータブロック19およびボルト16が、好ましくはピストン肩部6に設けられたカム9によって制御プランジャ2から離れるように動かされるときはいつでも、ラッチ付勢部材24によってプランジャラッチ20が制御プランジャ2に向かって駆動されることを可能にする。逆に、ボルト16の付勢部材18がプランジャラッチ20のラッチ付勢部材24の力を克服し、アクチュエータブロック19を制御プランジャ2に向かって押すとき、当接面21および23は、プランジャラッチ20が制御プランジャ2から離れる方向に駆動されることを可能にする。
【0033】
ロックスライドアセンブリ13は、膨張装置バレル37のボア3の近位端のボルトガイドウェイ17内にボルト16が存在する間、常に大型ピストン7と共に留まる。ボルト16は、大型ピストン7がその最も遠位の位置に達するときはいつでも、ロックスライドアセンブリ13のアクチュエータブロック19と整列するようにボルトガイドウェイ17内に位置決めされる。したがって、大型ピストン7がその最遠位位置に達するときはいつでも、ボルト16はピストン外壁26およびロック室フロア27によって覆われなくなり、したがって制御プランジャ2に向かって動くことができる。ボルト16のこの作用は、
図6Aおよび
図6Bに示されるように、ピストン7をその最遠位位置にロックし、制御プランジャ2の少なくとも1つのプランジャストップ8との係合からプランジャラッチ20を解放する一方で、ラッチ付勢部材24を圧縮することによって、
図6Cに示されるように、ロックスライドアセンブリ13を制御プランジャ2とのロック解除状態に駆動する。このロック解除アクションは、流体室15内に残っている作動流体の移動を完了するために、
図6Aおよび
図6Bに示されているように、小型ピストン5が自由に遠位方向に駆動されることを可能にするために、大型ピストン7から制御プランジャ2を解放する。したがって、制御プランジャ2の連続的な遠位側への移動および両方のピストンの移動は、膨張装置ハウジング14内の2つの流体移動ピストンの位置に応答する自動ロックおよび解除機構によって制御される。ロック機構はまた、膨張装置バレル37のボア3内の全遠位位置に大型ピストン7を保持し、流体室15内でピストン5が前進し続ける間に生じる圧力によって流体圧で後方に移動するのを防止する。
【0034】
ロックアセンブリ13からのピストン制御により、
図3に示す拡張可能な人工器官32を送達するためにルアーベアリングホース4を通して流体を供給するための大型ピストン7のボア11内での小型ピストン5の前進は、送達バルーン31を拡張するための最も高い送達力要求期間中に生じる。したがって、拡張可能な人工器官32の展開は、大型ピストン7と同じ直径の単一のピストンが利用された場合に必要とされるよりも、制御プランジャ2のハンドル12に対するユーザの力をはるかに小さくして達成することができる。小型ピストン5の有効面積は、両方のピストン(5および7)を一緒に前進させた有効面積よりも小さいので、最終的なバルーン拡張中に制御プランジャ2を前進させるのに必要な力の量は、大型ピストン7の有効面積が両方のピストン(5および7)の組み合わせた有効面積に占める割合だけ減少する。
【0035】
ステントバルーンの膨張中に制御プランジャ2が完全に前進し、両方のピストンによって流体室15から作動流体が完全に排出された後、または別の方法として、両方のピストンが完全に排出された位置から流体室15内に流体を最初に充填する際、制御プランジャ2を近位に引き出すと、まず小型ピストン5が近位に移動する。小型ピストン5がピストン7のボア11内でその近位移動限界に近づくと、ピストン肩部6上のカム9がアクチュエータブロック19に係合し、制御プランジャ2をユーザに向かって近位に引き出し続けながら、これを制御プランジャ2から遠ざける。アクチュエータブロック19のこの動きは、同時にボルト16を制御プランジャ2から離れる方向に押し、大型ピストン7とのロック係合から外し、それによってピストン7を近位に自由に動くように解放する。制御プランジャ2に対する操作者の力を受けて大型ピストン7が近位に移動すると、ピストン7の外壁26は、制御プランジャ2の中心に向かってボルト16が移動するのを阻止する。小型ピストン5と大型ピストン7の両方は、ピストン肩部6がロック室フロア27に突き当たると、1つの大きな表面積の実体として再び作動することができる。したがって、両方のピストンは制御プランジャ2とセットで動き、大型ピストン7の近位移動限界まで戻る。この事象のシーケンスによって、作動流体は、まず小型ピストン5によって大型ピストン7内の小型ボア11内に引き込まれ、続いて、制御プランジャ2が引き出され続けるにつれて、膨張装置バレル37のボア3内の流体室15内に作動流体が装填される。
図9に示すように、この動作と事象のシーケンスにより、両方のピストンが近位に動かされると、作動流体が拡張した送達バルーン31から流体室15内に排出される。
【0036】
作動流体を送達バルーン31から排出するのと全く同じ動作と事象のシーケンスにより、高度な膨張装置1が使用のために準備されている際の流体室15内への作動流体の最初の充填も容易化する。大型ピストン7と小型ピストン5の両方がそれらの最遠位位置にある状態から始めて、大型ピストン7はボルト16によって膨張装置ハウジング14にロックされ、一方小型ピストン5はプランジャ2によって自由に動かされる。プランジャ2を近位側に引くと、まず、ピストン7のボア11内の最近位位置に小型ピストン5が達するまで、小型ピストン5が近位側に引き込まれ、それにより、ピストン肩部6が大型ピストン7のロック室フロア27で係合する前に、ルアーベアリングホース4を通して作動流体で最初に充填できるようになる。さらに、小型ピストン5がピストン7のボア11内の最近位位置に近づくと、アクチュエータブロック19は、ピストン肩部6上のカム9によって制御され、ボルト16を駆動して大型ピストン7を解放し、それを最近位位置まで引き出して流体室15の残りの部分に作動流体を2次的に充填することを可能にする。小型ピストン5と大型ピストン7の相互に統制された作用(そしてロックスライドアセンブリ13によって制御された)は、作動流体が装置1のルアーベアリングホース4を通して流体室15内に引き込まれる際に、それぞれのボア(それぞれ11と3)の順次充填を可能にする役割を果たす。この作用により、ピストン7のボア11と膨張装置バレル37のボア3の両方が、その大きさの順に流体室15を満たすことができ、それにより、それぞれのボア内に空気が閉じ込められるのを最小限に抑え、これらのボア内に滞留する可能性のある気泡を容易にパージすることができる。
【0037】
図9に示されるように、両方のピストン5および7がそれらの最近位位置にある状態で、流体室15からの混入空気または作動流体のパージは、完全に伸長したプランジャ2を遠位側に押して小型ピストン5および大型ピストン7の両方を遠位側に駆動することによって達成することができ、小型ピストン5は、プランジャラッチ20によって大型ピストン7内のボア11内にロックされたままである。大型ピストン7がバレル37のボア内の最遠位位置に達すると、ボルト16によってハウジング14にロックされる。大型ピストン7が更なる移動に対してロックされると直ちに、小型ピストン5は大型ピストン7からロック解除され、
図8に示すようにプランジャ2が完全な遠位側に移動するにつれて遠位側に移動し続ける。これにより、装置1内に混入した作動流体の空気は、ルアーベアリングホース4を通して排出される。
【0038】
拡張可能な人工器官33をセットするための送達バルーン31の充填中、
図1の曲線「A」のセグメント「1」によって描かれる充填の第1の段階は、小型ピストン5を収容する大型ピストン7の遠位側への迅速な前進によって達成される。この両方のピストン5および7の前進(制御プランジャ2のハンドル12に加えられるユーザの力によって制御される)は、送達バルーン31の初期大容量充填を素早く達成するために、図示のように、比較的低いプランジャ力で大量の流体を迅速に移動させる。大型ピストン7と小型ピストン5の両方の掃引面積を合わせたピストンは、小型ピストン5のロック解除がなければ、
図1の曲線「A」のセグメント「2」で示すように送達バルーン31の充填を継続するためにかなりのプランジャ力を必要とするであろう。小型ピストン5のロックを解除して送達バルーン31の充填を完了させることにより、
図1の曲線「B」で示すように、拡張可能な人工器官32の最終セッティング中に送達バルーン31の充填を完了させるのに必要なプランジャ力を大幅に低減することができる。このように、拡張可能な人工器官32の送達のためにバルーン拡張を迅速に完了するために必要な装置1のプランジャ2に対するユーザの力は、より小さなピストン5の導入により、よりユーザが扱いやすいレベルまで低減される。
【0039】
大型ピストン7および小型ピストン5の両方のそれぞれの直径および流体移動容積は、所定の送達バルーン31およびそれぞれの拡張可能な人工器官32の膨張特性に最も適合するように、それらのプランジャ力要求特性を調整するために広く調整することができる。
【0040】
本質的に、ボルト16および関連する付勢部材18は、集合的に、第1のロック機構(すなわち、ハウジング14に対してピストン7をロックおよびロック解除するロック機構)であると考えることができる。ロックスライドアセンブリ13は、集合的に、第2のロック機構(すなわち、ピストン7に対してプランジャ2をロックおよびロック解除するロック機構)であると考えることができる。このように、第1のロック機構(すなわち、ボルト16および関連する付勢部材18)は、ロック機構であるだけでなく、装置1がどのように作動するように構成されているかに起因して、第2のロック機構(すなわち、ロックスライドアセンブリ13)をロック状態からロック解除状態に作動させることに関する作動機構でもある。すなわち、第1のロック機構(すなわちボルト16)がロックすると、第1のロック機構は第2のロック機構のロックも解除する。ピストン7がハウジング14の所定の位置にロックされると、プランジャ2はピストン7からロック解除される。このように、ピストン7は、装置1の操作状態に応じて(すなわち、ハンドル12がハウジング14内に押し込まれたか、またはハウジング14から引き出された程度に応じて)、ハウジング14に概ねロックされるか、またはプランジャ2にロックされる。したがって、第1のロック機構および第2のロック機構は、集合的に、ピストン7をハウジング14またはプランジャ2のいずれかに選択的にロックするように働く単一のアクチュエータであると考えることができる。
【0041】
装置1内の自動的なロックまたはロック解除アクションの編成を容易にするために、流体室15内の流体圧力に応じて、ユーザが駆動する制御プランジャ2の移動方向とは反対方向にピストンが移動することは、いかなる場合も必要でなく、また移動させられることもないことを理解されたい。送達バルーンの拡張の充填段階において、流体室15からの流体移動は常に維持され、ピストンまたはバルブの動作によって瞬間的に中断または吸収されることはなく、この装置の操作を容易にするために、制御プランジャ2の動作に対するユーザ入力が失われることもない。流体室15のいかなる減圧も、制御プランジャ2に対するユーザの意図的な力の変化によって開始されなければならない。さらに、高度な膨張装置1内のいずれかのピストンの動きを制御する切り替え機構の操作は、膨張装置バレル37のボア3に対する大型ピストン7および小型ピストン5の位置に厳密に依存する。装置1の予測可能性と性能の一貫性を確実にするために、ピストンの動きを同期させるロックスライドアセンブリ13は、いかなる流体圧力の依存、または機械的に作動するバルブ手段、または流体圧力に応答する部品の弾性的たわみ、または係止機構の摩擦係合を必要とせず、またはそれに依存することなく作動するように設計されている。
【0042】
本発明の具体的な実施形態を示して説明したが、当業者であれば、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な改変を考案できることが想定される。
【国際調査報告】