IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ツェンラン・チューの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】がん治療の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/09 20100101AFI20241018BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 35/15 20150101ALI20241018BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20241018BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241018BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20241018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20241018BHJP
   C12N 5/0786 20100101ALN20241018BHJP
   C12N 15/86 20060101ALN20241018BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C12N5/09
A61P11/00
A61P1/00
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 111
A61K35/15
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K31/704
G01N33/53 Y
G01N33/53 P
G01N33/543 545A
C07K16/28
C12N5/10
C12N5/0786
C12N15/86 Z
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522563
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 US2022046781
(87)【国際公開番号】W WO2023064597
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/256,391
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519349562
【氏名又は名称】ツェンラン・チュー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【弁理士】
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】ツェンラン・チュー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065BB19
4B065CA44
4C084AA17
4C084AA19
4C084MA02
4C084NA05
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC412
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC75
4C087AA01
4C087BB37
4C087BB65
4C087MA02
4C087NA05
4C087ZA59
4C087ZA66
4C087ZB26
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA22
4H045EA28
(57)【要約】
本明細書に記載の本発明は、がんを治療するための潜在的な治療方法の迅速、効率的、かつ正確に評価するためにそれらを使用するための、固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物のための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形腫瘍/がん(NSCLCを含む肺がんなど)の治療に対する治療方法の効力を試験するための前記腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物であって、好適な哺乳動物組織培養培地中で培養された前記固形腫瘍/がんの新しく単離された組織試料を含み、前記新しく単離された組織試料のサイズが、最大寸法で約1~10mm(例えば、2~8mm、3~6mm、約5mm)に縮小される、エクスビボ培養モデル又は一括培養物。
【請求項2】
前記哺乳動物組織培養培地が、RPMI1640培地又はRPMI1640完全培地などの浮遊細胞培養のために配合される、請求項1に記載のエクスビボ培養モデル又は一括培養物。
【請求項3】
前記哺乳動物組織培養培地が、2~10%のFBSで補充され、任意選択で、前記哺乳動物組織培養培地が、1~2.5%の抗生物質-抗真菌剤溶液などの抗生物質で更に補充される、請求項1又は2に記載のエクスビボ培養モデル又は一括培養物。
【請求項4】
前記固形腫瘍/がんの前記新しく単離された組織試料が、24ウェル組織培養プレート内の前記好適な哺乳動物組織培養培地中で培養される、請求項1~3のいずれか一項に記載のエクスビボ培養モデル又は一括培養物。
【請求項5】
前記新しく単離された組織試料が、サイズが縮小される前に、最初に抗生物質を含む1×PBS緩衝液などの緩衝液中で洗浄される、請求項1~4のいずれか一項に記載のエクスビボ培養モデル又は一括培養物。
【請求項6】
固形腫瘍/がんを有する対象における前記固形腫瘍/がんを治療するために、療法の効力又は有効性を評価する方法であって、前記方法が、前記療法のための治療剤を、前記対象から単離された前記固形腫瘍/がんの、請求項1~5のいずれか一項に記載のエクスビボ培養モデル又は一括培養物と接触させることと、十分な期間後に好ましい転帰を識別することと、を含み、前記好ましい転帰が、前記対象が前記療法によって治療されるのに適していることを示し、かつ/又は前記方法が、前記好ましい転帰の観察の際に、前記療法による治療のために前記対象を選択することを更に含み、前記好ましい転帰が、
(1)化学療法剤(前記固形腫瘍/がんを治療するのに不十分な治療量以下の用量の化学療法剤など)を含む治療剤に関しては、(前記治療剤に接触しないHom-1発現と比較して)前記エクスビボ培養モデル又は一括培養物における腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1発現の上昇/増加を含み、又は、
(2)免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む治療剤に関しては、腫瘍/がん細胞に対する殺細胞効果;細胞傷害性T細胞(CTL)又はCD8T細胞の活性化;炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-8、IL-12B及びTNF-αなど)の発現及び/若しくは分泌の上昇、並びに/又は免疫抑制性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL13及びTGF-βなど)の発現の低下、並びに/又は組織培養物における腫瘍細胞の死を含む、方法。
【請求項7】
前記固形腫瘍/がんが、NSCLCなどの肺がんである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記療法が化学療法であり、任意選択で、前記治療剤が、ドキソルビシン(DOX)などの化学療法剤を含む、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記療法が、免疫療法であり、任意選択で、前記治療剤が、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ICIが、抗体又はその抗原結合断片を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体又はその抗原結合断片が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4/CD152、A2AR、B7-H3/CD276、B7-H4/VTCN1、BTLA/CD272、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、ガレクチン-9、SIGLEC7/CD328、又はSIGLEC9などの抑制性免疫チェックポイント標的に特異的である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体又はその抗原結合断片が、PD-1、PD-L1、又はPD-L2に特異的である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体又はその抗原結合断片が、PD-1に特異的であり、例えば1μg/mLのペムブロリズマブである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記固形腫瘍/がんの前記エクスビボ培養モデル又は一括培養物を、前記治療剤と少なくとも1~2日間接触させる、請求項6~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記固形腫瘍/がんの前記エクスビボ培養モデル又は一括培養物を第2の治療剤と接触させることを更に含む、請求項6~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の治療剤は、Hom-1発現が上昇/増加した(例えば、Hom-1を発現するように誘導又は修飾されている)マクロファージ又は単球を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記マクロファージ又は単球が、前記固形腫瘍/がんが単離された対象と同じ対象由来の自己マクロファージ又は単球である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記マクロファージ又は単球が、Hom-1をコードする異種構築物を前記マクロファージ又は単球に導入することによって、インビトロでHom-1を発現するように誘導される、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記Hom-1をコードする異種構築物が、Hom-1をコードするプラスミドを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記Hom-1をコードする異種構築物が、Hom-1をコードするmRNAを包含するナノ粒子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記Hom-1をコードする異種構築物が、Hom-1をコードするウイルスベクター(AAVベクターなど)を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記十分な期間が、37℃及び5%CO下で、約3~6日間、例えば、3、4、5、6、7、又は8日間培養することを含む、請求項6~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記転帰が、前記固形腫瘍/がんの前記エクスビボ培養モデル又は一括培養物から単一の細胞を単離することによって決定される、請求項6~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記好ましい転帰を決定することが、がん細胞の生存率又は死亡を評価すること;前記エクスビボ培養モデル若しくは一括培養物におけるCD8及び/若しくはCD4リンパ球の数及び/若しくは機能(任意選択でTregの数を含む)及び/若しくはマクロファージ(TAMを含む)の数/機能、細胞表面チェックポイント阻害剤(PD-1及びCTLA-4など)の発現、エフェクター分子(IFN-γ及びグランザイムBなど)の発現、前記TAMのM1若しくはM2様表現型、免疫抑制性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL13及びTGF-βなど)の発現、並びに/又は炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-8、IL-12B及びTNF-αなど)の発現、を評価すること、を含む、請求項6~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記好ましい転帰を決定することが、前記エクスビボ培養モデル若しくは一括培養物からの単離された単一細胞のFACS分析、及び/又は前記エクスビボ培養物モデル若しくは一括培養物からの培養上清のELISA分析(例えば、IL-2及びIFN-γ発現のELISA分析)を含む、請求項6~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記好ましい転帰を決定することが、TAM上のCD68及びCD206の細胞表面発現(例えば、FACSを介して)、並びに/又はHom-1発現レベル(例えば、qRT-PCR分析を介して)を決定することを含む、請求項6~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記好ましい転帰を決定することが、例えばCD4CD25FoxP3細胞のパーセンテージ変化のFACS分析によって、Treg細胞のパーセンテージを決定することを含む、請求項6~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記好ましい転帰を決定することが、前記治療剤(例えば、抗PD-1抗体などのICI抗体)による接触時のCD8T細胞活性化の変化又は増強を決定することを含む、請求項6~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、前記好ましい転帰を、前記療法のための対照治療剤を前記固形腫瘍/がんの前記エクスビボ培養モデル又は一括培養物と接触させることによって得られる対照転帰の転帰と比較することを含む、請求項6~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記治療剤が、抗体又はその抗原結合断片であり、前記対照治療剤が、アイソタイプが一致した対照抗体又はその抗原結合断片(IgG1又はIgG4など)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
固形がん/腫瘍(例えば、NSCLCを含む肺がん)などのがんを治療する方法であって、前記方法は、前記がんを有する対象に療法を施すことを含み、前記対象が、前記固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物を使用して前記固形腫瘍/がんを治療するための前記療法の効力又は有効性を評価するための、請求項6~30のいずれか一項に記載の方法における好ましい転帰に従って、前記療法による治療に応答することが検証されている、方法。
【請求項32】
前記療法が、ドキソルビシン(DOX)を前記対象に投与することを含む化学療法である、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記療法が、ICIを前記対象に投与することを含む免疫療法である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記ICIが、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4/CD152、A2AR、B7-H3/CD276、B7-H4/VTCN1、BTLA/CD272、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、ガレクチン-9、SIGLEC7/CD328、又はSIGLEC9などの抑制性免疫チェックポイント標的に特異的な抗体又はその抗原結合断片である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体又はその抗原結合断片が、PD-1、PD-L1、又はPD-L2に特異的である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体又はその抗原結合断片が、PD-1に特異的である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記療法が、前記対象に、Hom-1発現が上昇/増加したマクロファージ又は単球(例えば、前記マクロファージ又は単球におけるHom-1発現をエクスビボで増加するように修飾されている)を投与することを含む、請求項31~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記マクロファージ又は単球が、前記がんを有する前記対象から単離された自己マクロファージ又は単球である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記マクロファージ又は単球が、前記がんを有する前記対象とHLAが一致した健康な個体から単離された非自己マクロファージ又は単球である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記マクロファージ又は単球が、Hom-1をコードするプラスミドをトランスフェクションすることによって、Hom-1発現を増加させるようにエクスビボで修飾される、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記マクロファージ又は単球が、Hom-1 mRNAを封入するナノ粒子と接触させることによって、Hom-1発現を増加させるようにエクスビボで修飾される、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記マクロファージ又は単球が、Hom-1をコードするウイルスベクター(AAVウイルスベクターなど)による感染によって、Hom-1発現を増加させるようにエクスビボで修飾される、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記好ましい転帰が、前記固形腫瘍/がんの前記エクスビボ培養モデル又は一括培養物を使用して前記固形腫瘍/がんを治療するための前記療法の効力又は有効性を評価する方法において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍以上増強されたCD8T細胞活性化を示す、請求項31~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記治療が、最適以下又は治療量以下の用量の第1の治療剤及び第2の治療剤を含み、前記第1の治療剤が、前記がんを治療するのに有効なICI抗体又は化学療法剤であるが、前記最適以下又は治療量以下の用量の前記ICI抗体又は化学療法剤は、前記がんを単独で治療するのには無効であり、前記第2の治療剤が、Hom-1を発現するように(例えば、CD8T細胞活性化を増強するために、前記がんにおける腫瘍微小環境(TME)を変化させるのに十分なレベルまで)修飾又は誘導されたマクロファージ又は単球を含む、請求項31~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
対象におけるがんの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)媒介療法又は化学療法(例えば、NSCLCの治療)を増強する方法であって、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進することを含む、方法。
【請求項46】
対象における免疫チェックポイント阻害剤(ICI)媒介療法又はがんの化学療法(例えば、NSCLCの治療)に対する耐性を打破する方法であって、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進することを含む、方法。
【請求項47】
Hom-1活性化が、前記TAMによるがん細胞の食作用を促進する、請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
(1)腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を促進/誘導/増強することであって、例えば、前記TAMを、治療量以下の用量のHom-1を活性化する化学療法剤(ドキソルビシンなど)と接触させることによるものであり、前記治療量以下の用量の前記化学療法剤が、前記がんを単独で治療するには不十分である、促進/誘導/増強することと、
(2)がん細胞を、(1)の増加したHom-1活性又は発現を有する前記TAMと接触させて、前記がん細胞の食作用を増強することと、
(3)CD8T細胞を、(2)の前記TAMと接触させて、前記CD8T細胞を活性化することと、を含む、請求項45~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
(4)エクスビボ又はインビトロで活性化CD8T細胞を増殖させることを更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
エクスビボ法である、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
インビボ法である、請求項45~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記ICI媒介療法が、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4/CD152、A2AR、B7-H3/CD276、B7-H4/VTCN1、BTLA/CD272、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、ガレクチン-9、SIGLEC7/CD328、又はSIGLEC9などの抑制性免疫チェックポイント標的に特異的な抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、請求項45~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記抗体又はその抗原結合断片が、PD-1、PD-L1、又はPD-L2に特異的である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記抗体又はその抗原結合断片が、PD-1に特異的である、請求項52に記載の方法。
【請求項55】
前記TAMが、前記Hom-1活性化の前に、下方制御されたHom-1の発現を有する、請求項45~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
対象におけるがん(例えば、肺がん又は結腸直腸がん)を治療するための療法(例えば、化学療法剤、標的療法、免疫療法治療、放射線療法、又はそれらの組み合わせ)の有効用量を選択する方法であって、前記方法は、前記がんを前記療法と接触させた際に、(例えば、エクスビボ、インビボ、又はその両方での)前記がんの腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を決定することを含み、Hom-1活性化をもたらす前記療法の最小有効用量、又はより高い用量が、有効用量となるように選択される、方法。
【請求項57】
対象におけるがん(例えば、肺がん又は結腸直腸がん)を治療するための療法(例えば、化学療法剤、標的療法、免疫療法治療、放射線療法、又はそれらの組み合わせ)の有効用量を選択する方法であって、前記がんを前記療法と接触させて、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、前記がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進する前記療法の最小有効用量を特定することを含む、方法。
【請求項58】
前記対象を、前記有効用量で前記療法により治療することを更に含む、請求項56又は57に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月15日出願の米国仮特許出願第63/256,391号の優先権及び出願日の利益を主張し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
肺がんは、世界中でがん関連死の主要な原因であり、生存期間の中央値は約1年であり、全5年生存率は20%未満である。新たに診断された症例の55%以上を占める遠隔転移患者では、5年生存率は5%まで急激に低下する。病理学的には、肺がんの約85%が非小細胞肺がん(NSCLC)であり、そのうちの約70%が腺がん(L-ADCA)であり、20%が扁平上皮がん(L-SCCA)である。
【0003】
補助化学療法の惨めな効果とは異なり、最近のFDA承認の免疫チェックポイント阻害剤(ICI)治療は、NSCLCに対して前例のない成功を示しています。それにもかかわらず、全体として、ICIに反応するNSCLC患者はわずか20%である。更に、応答者の大部分は、長期の5年間のフォローアップ中に最終的に疾患が再発し、死亡する。したがって、NSCLCに対するICIの効力を改善するための更なる戦略を開発するためには、ICIベースの肺がん治療の改善が、部分的にはICI耐性の機構的理解と洞察に基づいて、緊急に必要とされている。
【0004】
CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)は、腫瘍免疫学における重要な免疫エフェクター細胞である。CD8T細胞機能は、共刺激分子及び共抑制分子によって調節され、外来抗原/腫瘍抗原に対する免疫反応と過剰な自己免疫炎症応答に対する防御との間の適切なバランスを確保する。共抑制性チェックポイント受容体と、腫瘍及び間質細胞上のそれらのリガンドとの相互作用は、腫瘍関連CD8T細胞の阻害/枯渇、及びNSCLCの免疫病態発生中の免疫破壊からの腫瘍細胞の回避を説明する。PD-1抗体及びCTLA-4抗体などのICIは、部分的には、CD8阻害をブロックすることによって機能するため、CD8CTLを再活性化する。腫瘍微小環境(TME)内での不十分な抗原提示及びCD8CTLの免疫抑制は、ICI治療失敗の2つの考えられる理由として提案されている。しかしながら、免疫細胞プロファイリングに関する知識は限られており、TME内のICIと免疫細胞の機能的相互作用を解析するためのプラットフォームが欠如しているため、NSCLCに対するICIの効力を高めるためにTMEを標的とすることは依然として理論的根拠のままであり、生化学的データのサポートと臨床試験の承認を待っている。
【発明の概要】
【0005】
腫瘍抗原認識及びCTL活性化は、がん免疫療法の最前線にある。ICIによるCD8CTLの全身刺激は、がん免疫療法において前例のない成功をもたらしたが、がん(NSCLCなど)に対するICIの効力は依然として限定的であり、ICI誘発性irAEは重篤となる可能性がある。TMEの免疫抑制は、ICI耐性の中心的プレーヤーとして認識されているが、TMEを標的とする取り組みは、1つにはTMEの組成及び制御メカニズムの理解が限られているために、NSCLC及び他の固形腫瘍の治療においてインパクトのある結果を生み出していない。
【0006】
したがって、本発明の一態様は、固形腫瘍/がん(NSCLCを含む肺がんなど)の治療に対する治療方法の効力を試験するための腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物であって、好適な哺乳動物組織培養培地中で培養された固形腫瘍/がんの新しく単離された組織試料を含み、新しく単離された組織試料のサイズが、最大寸法で約1~10mm(例えば、2~8mm、3~6mm、約5mm)に縮小される、エクスビボ培養モデル又は一括培養を提供する。
【0007】
本発明の別の態様は、固形腫瘍/がんを有する対象における当該固形腫瘍/がんを治療するための療法の効力又は有効性を評価する方法を提供し、本方法は、療法のための治療剤を、当該対象から単離された当該固形腫瘍/がんの、対象となるエクスビボ培養モデル又は一括培養物と接触させることと、十分な期間後に好ましい転帰を識別することと、を含み、好ましい転帰が、当該対象が当該療法によって治療されるのに適していることを示し、かつ/又は本方法が、好ましい転帰の観察の際に、当該療法による治療のために当該対象を選択することを更に含み、好ましい転帰は、(1)化学療法剤(当該固形腫瘍/がんを治療するのに不十分な治療量以下の用量の化学療法剤など)を含む治療剤に関しては、(治療剤に接触しないHom-1発現と比較して)当該エクスビボ培養モデル又は一括培養物における腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1発現の上昇/増加を含み、又は(2)免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む治療剤に関しては、腫瘍/がん細胞に対する殺細胞効果;細胞傷害性T細胞(CTL)又はCD8T細胞の活性化;炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-8、IL-12B及びTNF-αなど)発現及び/若しくは分泌の上昇、並びに/又は免疫抑制性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL13及びTGF-βなど)の発現の低下、並びに/又は組織培養における腫瘍細胞の死を含む。
【0008】
本発明の別の態様は、固形がん/腫瘍(例えば、NSCLCを含む肺がん)などのがんを治療する方法を提供し、本方法は、当該がんを有する対象に療法を施すことを含み、対象が、当該固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物を使用して当該固形腫瘍/がんを治療するための療法の効力又は有効性を評価する対象方法のいずれか1つの好ましい転帰に従って、当該療法による治療に応答することが検証されている。
【0009】
本発明の別の態様は、対象におけるがんの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)媒介療法(例えば、NSCLCの治療)を増強する方法を提供し、本方法は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進することを含む。
【0010】
本発明の別の態様は、対象におけるがんの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)媒介療法(例えば、NSCLCの治療)に対する耐性を打破する方法を提供し、本方法は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進することを含む。
【0011】
本発明の別の態様は、対象におけるがんの化学療法剤療法(例えば、結腸直腸がんの治療)の効力を増強する方法を提供し、本方法は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進することを含む。
【0012】
本発明の別の態様は、対象におけるがんの化学療法耐性(例えば、結腸直腸がんの治療)に対する耐性を打破する方法を提供し、本方法は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進することを含む。
【0013】
本発明の別の態様は、対象のがん(例えば、肺がん又は大腸がん)を治療するための療法(例えば、化学療法剤、標的療法、免疫療法治療、放射線療法、又はそれらの組み合わせ)の有効用量を選択する方法を提供し、この方法は、がんを当該療法と接触させた際に、当該がんの腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を(例えば、エクスビボ、インビボ、又はその両方で)決定することを含み、Hom-1活性化をもたらす当該療法の最小有効用量、又はより高い用量が、有効用量となるように選択される。
【0014】
本発明の別の態様は、対象のがん(例えば、肺がん又は大腸がん)を治療するための療法(例えば、化学療法剤、標的療法、免疫療法治療、放射線療法、又はそれらの組み合わせ)の有効用量を選択する方法を提供し、この方法は、がんを当該療法と接触させて、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、当該がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進する当該療法の最小有効用量を特定することを含む。
【0015】
実施例又は特許請求の範囲にのみ記載される実施形態を含む、本明細書に記載される任意の実施形態は、明示的に否認されるか、又は不適切でない限り、本発明の任意の他の1つ以上の実施形態と組み合わせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.概要
本明細書に記載の本発明は、部分的に、NSCLC-TMEの分子及び細胞組成の特徴付け、並びにNSCLC-TME内のICI及び免疫細胞の機能的相互作用の分析に基づいている。
【0017】
本明細書に提示されるデータは、NSCLC-TMEが、枯渇した表現型を呈示する豊富なCD8T細胞を含むことを示した。PD-1抗体の適用は、CD8T細胞を活性化するが、NSCLC-TMEの免疫状況に限定的な効果を及ぼす。更に、マクロファージ可塑性及び免疫極性のマスターレギュレーターとしてのホメオボックス遺伝子Hom-1の発現は、NSCLCの腫瘍関連マクロファージ(TAM)において著しく下方制御される。
【0018】
本明細書で使用される場合、(用語が優先出願USSN63/256,391で使用されるように)「Hom-1」は、「VentX」と互換的に使用される。
【0019】
一方、NSCLC-TAMにおけるHom-1発現の回復は、NSCLC-TMEの免疫状況を免疫抑制から活性化に変換し、Hom-1調節TAMは、NSCLCに対するPD-1抗体の殺腫瘍効果を4~5倍促進し、TAM/マクロファージ/単球におけるHom-1発現を活性化することができる化学療法剤(NF-κB媒介Hom-1発現を上方制御することができる化学療法剤、例えば、ドキソルビシン(DOX)など)の殺腫瘍効果を約10倍促進するが、全て正常組織に対する細胞傷害性効果をもたらすことはない。ある特定の実施形態では、化学療法剤は、細胞傷害性に必要な濃度よりも低い、例えば、はるかに低い濃度で、例えば、それ自体ではその細胞傷害性を介してがんを治療するのに十分ではない治療量以下の用量で、Hom-1発現を活性化することができる。このように、免疫療法及び化学療法は、その治療目的を達成するために、非細胞傷害性又は最適以下又は治療量以下の用量で適用することができる。
【0020】
更に、Hom-1調節TAMは、個々の原発性NSCLCの前臨床NSG-PDXモデルにおいて、NSCLC腫瘍形成に対するPD-1抗体の効力を促進することができた。
【0021】
したがって、本明細書に記載の本発明は、対象におけるがんの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)媒介療法又は化学療法(例えば、NSCLCの治療)を増強する方法を提供し、本方法は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進することを含む。
【0022】
関連する態様では、本明細書に記載の本発明は、対象におけるがんの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)媒介療法(例えば、NSCLCの治療)に対する耐性を打破する方法を提供し、本方法は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進することを含む。
【0023】
ある特定の実施形態では、Hom-1活性化は、当該TAMによってがん細胞の食作用を促進する。
【0024】
ある特定の実施形態では、方法は、(1)腫瘍関連マクロファージ(TAM)のHom-1活性化又はTAMのHom-1媒介活性化を促進/誘導/増強することであって、例えば、当該TAMを、治療量以下の用量のHom-1の発現を誘導する化学療法剤(ドキソルビシンなど)と接触させることによるものであり、当該治療量以下の用量の化学療法剤が、それ自体では当該がんを単独で治療するには不十分である、促進/誘導/増強することと、(2)がん細胞を、(1)の増加したHom-1活性又は発現を有する当該TAMと接触させて、当該がん細胞の食作用を増強することと、(3)CD8T細胞を、(2)の当該TAMと接触させて、当該CD8T細胞を活性化することと、を含む。
【0025】
ある特定の実施形態では、本方法は、(4)エクスビボ又はインビトロで活性化CD8T細胞を増殖させることを更に含む。
【0026】
ある特定の実施形態では、本方法は、エクスビボ法である。例えば、TAM/単球/マクロファージは、患者の腫瘍/がん試料から単離でき、任意選択で、標準培養条件下、インビトロで増殖/培養することができる。次いで、このようなTAM単球/マクロファージは、修飾/活性化するか、又は誘導して、Hom-1を発現させることができる。次いで、Hom-1発現が増加したTAM単球/マクロファージをがん細胞と接触させて、がん細胞の食作用を可能にすることができる。続いて、そのようなTAM単球/マクロファージを、がんを有する同じ患者から単離されたCD8T細胞などのCD8T細胞、又はTILと接触させて、CD8T細胞を活性化させることができる。このように活性化されたCD8T細胞は、CD8T細胞が単離されている患者に再投与される前に、標準的な組織培養条件下、任意選択で増殖され得る。
【0027】
他の実施形態では、本方法は、インビボ法である。例えば、TAM単球/マクロファージが、例えば、NF-κBシグナル伝達の刺激を通じて、Hom-1発現を上昇させるそのような減量用量の化学療法剤に曝露されるように、治療を必要とする患者に減量用量(例えば、それ自体ではがんを治療するか、又は殺腫瘍効果を引き起こすのに不十分である、治療量以下の有効な用量)を、投与してもよい。
【0028】
ある特定の実施形態では、当該ICI媒介療法は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4/CD152、A2AR、B7-H3/CD276、B7-H4/VTCN1、BTLA/CD272、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、ガレクチン-9、SIGLEC7/CD328、又はSIGLEC9などの抑制性免疫チェックポイント標的に特異的な抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む。
【0029】
ある特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1、PD-L1、又はPD-L2に特異的である。ある特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に特異的である。
【0030】
ある特定の実施形態では、TAMは、当該Hom-1活性化の前に、Hom-1の下方制御された発現(例えば、TMEにおける)を有する。
【0031】
ある特定の実施形態では、がんは、NSCLCなどの肺がんである。
【0032】
本発明の別の態様は、好適な哺乳動物組織培養培地中で培養された固形腫瘍/がんの新しく単離された(任意選択で凍結されている)組織試料を含む、腫瘍/がんの治療方法の効力を試験するための、NSCLCなどの固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養を提供し、新しく単離された組織試料は、サイズが最大寸法で約1~10mm(例えば、2~8mm、3~6mm、約5mm)に縮小される。
【0033】
ある特定の実施形態では、哺乳動物組織培養培地は、RPMI1640培地又はRPMI1640完全培地など浮遊細胞培養のために配合される。
【0034】
ある特定の実施形態では、哺乳動物組織培養培地は、2~10%のFBSで補充され、任意選択で、哺乳動物組織培養培地は、1~2.5%の抗生物質-抗真菌溶液などの抗生物質で更に補充される。
【0035】
ある特定の実施形態では、固形腫瘍/がんの新しく単離された組織試料は、24ウェルの組織培養プレート内の好適な哺乳動物組織培養培地中で培養される。
【0036】
ある特定の実施形態では、新しく単離された組織試料は、サイズを縮小する前に、最初に、抗生物質を用いた1×PBS緩衝液などの緩衝液中で洗浄される。
【0037】
本発明の別の態様は、固形腫瘍/がんを有する対象における当該固形腫瘍/がんを治療するための療法の効力又は有効性を評価する方法を提供し、本方法は、療法のための治療剤(又は薬剤の組み合わせ)を、当該対象から単離された当該固形腫瘍/がんの、対象となるエクスビボ培養モデル又は一括培養物と接触させることと、十分な期間後に好ましい転帰を識別することと、を含み、好ましい転帰が、当該対象が当該療法によって治療されるのに適していることを示し、かつ/又は本方法が、好ましい転帰の観察の際に、当該療法による治療のために当該対象を選択することを更に含み、好ましい転帰は、(1)化学療法剤(当該固形腫瘍/がんを治療するのに不十分な治療量以下の用量の化学療法剤など)を含む治療剤に関しては、(治療剤に接触しないHom-1発現と比較して)当該エクスビボ培養モデル又は一括培養物における腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1発現の上昇/増加を含み、又は(2)免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む治療剤に関しては、腫瘍/がん細胞に対する殺細胞効果;細胞傷害性T細胞(CTL)又はCD8T細胞の活性化;及び/若しくは炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-8、IL-12B及びTNF-αなど)の発現及び/若しくは分泌の上昇、並びに/又は免疫抑制性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL13及びTGF-βなど)の発現の低下を含む。
【0038】
本発明の方法は、化学療法剤又はICI媒介療法に限定されないことに留意されたい。放射線療法、Car-Tベースの免疫療法などの治療的介入も、そのような療法が、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化又はTAMのHom-1媒介活性化をもたらし得る限り、本発明の方法から利益を得ることができる。
【0039】
したがって、ある特定の実施形態では、好ましい転帰は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を含む。
【0040】
ある特定の実施形態では、固形腫瘍/がんは、NSCLCなどの肺がんである。
【0041】
ある特定の実施形態では、治療は化学療法であり、任意選択で、治療剤は、ドキソルビシン(DOX)などの化学療法剤を含む。
【0042】
ある特定の実施形態では、治療は免疫療法であり、任意選択で、治療剤は免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を含む。
【0043】
他の実施形態では、免疫療法は、抗原ベースのアプローチ、例えば、CAR-T細胞を用いた療法、又は腫瘍抗原刺激を含む療法を含む。
【0044】
ある特定の実施形態では、ICIは、抗体又はその抗原結合断片を含む。ある特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4/CD152、A2AR、B7-H3/CD276、B7-H4/VTCN1、BTLA/CD272、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、ガレクチン-9、SIGLEC7/CD328、又はSIGLEC9などの抑制性免疫チェックポイント標的に特異的である。
【0045】
ある特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1、PD-L1、又はPD-L2に特異的である。ある特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に特異的であり、例えば1μg/mLのペムブロリズマブである。
【0046】
ある特定の実施形態では、当該固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物を、当該治療剤と少なくとも1~2日間接触させる。
【0047】
ある特定の実施形態では、本方法は、固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物を第2の治療剤と接触させることを更に含む。
【0048】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、Hom-1発現が上昇/増加した(例えば、Hom-1を発現するように誘導又は修飾されている)マクロファージ又は単球を含む。
【0049】
ある特定の実施形態では、第2の治療剤は、免疫治療剤、化学療法剤、標的療法剤、放射線法/薬剤を含む。
【0050】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、固形腫瘍/がんが単離された対象と同じ対象由来の自己マクロファージ又は単球である。
【0051】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、Hom-1の上昇したレベルを発現するように修飾される。
【0052】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、Hom-1を発現するように誘導される。
【0053】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、Hom-1をコードする異種構築物をマクロファージ又は単球に導入することによって、Hom-1を発現するように修飾される。
【0054】
ある特定の実施形態では、Hom-1をコードする異種構築物は、Hom-1をコードするプラスミドを含む。
【0055】
ある特定の実施形態では、Hom-1をコードする異種構築物は、Hom-1をコードするmRNAを包含するナノ粒子を含む。
【0056】
ある特定の実施形態では、Hom-1をコードする異種構築物は、Hom-1をコードするウイルスベクター(AAVベクターなど)を含む。
【0057】
ある特定の実施形態では、方法は、マクロファージ又は単球に異種Hom-1タンパク質を導入することを含む。
【0058】
ある特定の実施形態では、十分な期間は、37℃及び5%CO下で、約3~6日間、例えば、3、4、5、6、7、又は8日間培養することを含む。
【0059】
ある特定の実施形態では、転帰は、当該固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物から単一の細胞を単離することによって決定される。
【0060】
特定の実施形態では、好ましい転帰を決定することは、がん細胞の生存率又は死亡を評価すること;エクスビボ培養モデル若しくは一括培養物におけるCD8及び/若しくはCD4リンパ球の数及び/若しくは機能(任意選択でTregの数を含む)及び/若しくはマクロファージ(TAMを含む)の数/機能、細胞表面チェックポイント抑制剤(PD-1及びCTLA-4など)の発現、エフェクター分子(IFN-γ及びグランザイムBなど)の発現、TAMのM1又はM2様表現型、免疫抑制性サイトカイン(IL-4、IL-10、IL13及びTGF-βなど)の発現、並びに/又は炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-8、IL-12B及びTNF-αなど)の発現を評価することを含む。
【0061】
ある特定の実施形態では、好ましい転帰を決定することは、エクスビボ培養モデル若しくは一括培養物からの単離された単一細胞のFACS分析、及び/又はエクスビボ培養モデル若しくは一括培養物からの培養上清のELISA分析(例えば、IL-2及びIFN-γ発現のELISA分析)を含む。
【0062】
ある特定の実施形態では、好ましい転帰を決定することは、TAM上のCD68及びCD206の細胞表面発現(例えば、FACSを介して)、及び/又はHom-1発現レベル(例えば、qRT-PCR分析を介して)を決定することを含む。
【0063】
ある特定の実施形態では、好ましい転帰を決定することは、Treg細胞のパーセンテージを、例えば、CD4CD25FoxP3細胞のパーセンテージ変化のFACS分析によって、決定することを含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、好ましい転帰を決定することは、治療剤(例えば、抗PD-1抗体などのICI抗体)による接触時のCD8T細胞活性化の変化又は増強を決定することを含む。
【0065】
ある特定の実施形態では、好ましい転帰を決定することは、生存若しくは残存するがん細胞のパーセンテージ、及び/又はがん細胞の生存率を決定することを含む。
【0066】
ある特定の実施形態では、好ましい転帰を決定することは、生存若しくは残存するがん細胞のパーセンテージ、及び/又はがん細胞の生存率を決定することを含む。例えば、これには、腫瘍において発現レベルが上昇しているマーカーの免疫組織化学分析を含むことができる。
【0067】
ある特定の実施形態では、本方法は、好ましい転帰を、治療のための対照治療剤を当該固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物と接触させることによって得られる対照転帰の転帰と比較することを含む。
【0068】
ある特定の実施形態では、治療剤は、抗体又はその抗原結合断片であり、対照治療剤は、アイソタイプが一致した対照抗体又はその抗原結合断片(IgG1又はIgG4など)である。
【0069】
本発明の別の態様は、固形がん/腫瘍(例えば、NSCLCを含む肺がん)などのがんを治療する方法を提供し、本方法は、当該がんを有する対象に療法を施すことを含み、対象は、当該固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養物を使用して、当該固形腫瘍/がんを治療するための療法の効力又は有効性を評価する方法における好ましい転帰に従って、当該療法による治療に応答することが検証されている。
【0070】
ある特定の実施形態では、療法は、化学療法剤を単独で又は併用して当該対象に投与することを含む化学療法である。
【0071】
ある特定の実施形態では、療法は、ドキソルビシン(DOX)を当該対象に投与することを含む化学療法である。
【0072】
ある特定の実施形態では、療法は、当該対象にICIを投与することを含む免疫療法である。
【0073】
ある特定の実施形態では、ICIは、PD-1、PD-L1、PD-L2、CTLA-4/CD152、A2AR、B7-H3/CD276、B7-H4/VTCN1、BTLA/CD272、IDO、KIR、LAG3、NOX2、TIM-3、VISTA、ガレクチン-9、SIGLEC7/CD328、又はSIGLEC9などの抑制性免疫チェックポイント標的に特異的な抗体又はその抗原結合断片である。
【0074】
ある特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1、PD-L1、又はPD-L2に特異的である。ある特定の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、PD-1に特異的である。
【0075】
ある特定の実施形態では、本療法は、対象に、Hom-1発現が上昇又は増加したマクロファージ又は単球(例えば、当該マクロファージ又は単球におけるHom-1発現を増加させるようにエクスビボで修飾されている)を投与することを含む。
【0076】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、当該がんを有する対象から単離された自己マクロファージ又は単球である。
【0077】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、当該がんを有する当該対象とHLAが一致する健康な個体から単離された非自己マクロファージ又は単球である。
【0078】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、Hom-1発現を増加させるようにエクスビボで修飾される(例えば、細胞透過性リーダー配列を有するHom-1ポリペプチドで誘導又は処理される)。
【0079】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、Hom-1をコードするプラスミドをトランスフェクションすることによって、Hom-1発現を増加させるようにエクスビボで修飾される。
【0080】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、Hom-1 mRNAを封入するナノ粒子と接触することによって、Hom-1発現を増加させるようにエクスビボで修飾される。
【0081】
ある特定の実施形態では、マクロファージ又は単球は、Hom-1をコードするウイルスベクター(AAVウイルスベクターなど)による感染によって、Hom-1発現を増加させるようにエクスビボで修飾される。
【0082】
ある特定の実施形態では、好ましい転帰は、当該固形腫瘍/がんのエクスビボ培養モデル又は一括培養を使用して、当該固形腫瘍/がんを治療するための療法の効力又は有効性を評価する方法において、少なくとも2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍以上増強されたCD8T細胞活性化を示す。
【0083】
ある特定の実施形態では、治療は、最適以下又は治療量以下の用量の第1の治療剤及び第2の治療剤を含み、当該第1の治療剤は、当該がんを治療するのに有効なICI抗体又は化学療法薬であるが、当該ICI抗体又は化学療法薬の当該最適以下又は治療量以下の用量は、当該がんを単独で治療するのには無効であり、当該第2の治療剤は、Hom-1を発現するように修飾又は誘導されたマクロファージ又は単球を含む。例えば、Hom-1発現は、がん特異的CD8T細胞活性化を増強するために、当該がんにおける腫瘍微小環境(TME)を変化させるのに十分なレベルまで増加又は誘導され得る。
【0084】
ある特定の実施形態では、ICI抗体の最適以下又は治療量以下の用量は、治療有効用量よりも約2~8倍(例えば、3~5倍、又は4~5倍)低い。
【0085】
ある特定の実施形態では、化学療法薬の最適以下又は治療量以下の用量は、治療有効用量よりも約2~15倍(例えば、5~12倍、又は約9倍若しくは10倍)低い。
【0086】
本発明の別の態様は、対象のがん(例えば、肺がん又は大腸がん)を治療するための療法(例えば、化学療法剤、標的療法、免疫療法治療、放射線療法、又はそれらの組み合わせ)の有効用量を選択する方法を提供し、この方法は、がんを当該療法と接触させた際に、当該がんの腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を(例えば、エクスビボ、インビボ、又はその両方で)決定することを含み、Hom-1活性化をもたらす当該療法の最小有効用量、又はより高い用量が、有効用量となるように選択される。
【0087】
本発明の別の態様は、対象のがん(例えば、肺がん又は大腸がん)を治療するための療法(例えば、化学療法剤、標的療法、免疫療法治療、放射線療法、又はそれらの組み合わせ)の有効用量を選択する方法を提供し、この方法は、がんを当該療法と接触させて、腫瘍関連マクロファージ(TAM)におけるHom-1活性化、又はTAMのHom-1媒介活性化を介して、当該がんの腫瘍微小環境(TME)におけるCD8T細胞の腫瘍特異的活性化を促進する当該療法の最小有効用量を特定することを含む。
【0088】
ある特定の実施形態では、本方法は、対象を有効用量の療法で治療することを更に含む。
【0089】
ある特定の実施形態では、本方法は、本発明のエクスビボ培養モデル又は一括培養物を使用して実行される。
【0090】
上に記載された本発明の一般原理により、以下の実施例は、本発明の範囲内の実用的な実施形態を提供し、いかなるの点においても限定的なものではない。
【実施例
【0091】
実施例1 NSCLC-TMEの特徴付け-NSCLC-TAMにおけるHom-1発現の減少
ICIは、部分的に、CD8枯渇を救済することによって、その機能を発揮する。一方、NSCLC-TME内の免疫抑制はICI耐性に関与している。
【0092】
NSCLE-TMEにおける免疫細胞の豊富さ及び多様性にもかかわらず、未知のメカニズムを介して、腫瘍は、それらの腫瘍微小環境(TME)を介して免疫細胞に免疫抑制を及ぼすことができる。
【0093】
新しく単離された組織を使用して、同じ患者からの対合NSCLCと対照非関与肺組織(nLung)の免疫細胞プロファイルを比較した。免疫的に「冷たい」PDA及びCRCにおける出願人の以前の所見とは異なり、肺L-ADCA及びL-SCCAにおけるCD8及びCD4リンパ球数の有意な減少は観察されなかった(データ図示せず)。それにもかかわらず、NSCLC CD8T細胞は免疫枯渇表現型を示し、細胞表面チェックポイント阻害剤PD-1及びCTLA-4の発現が上昇し、刺激時にIFN-γ及びグランザイムBなどのエフェクター分子の発現が減少した(データ図示せず)。
【0094】
一方、NSCLCは、対照nLung組織と比較して、Tregの増加した数が含まれていた(データ図示せず)。
【0095】
TAMは、TMEにおける先天性免疫と適応性免疫の両方の重要な執行者である。免疫的に「冷たい」腫瘍のTAM可塑性は、Hom-1(「VentX」としても知られる)によって制御されることが示される。組織の手がかりがマクロファージ生物学に大きな影響を与えるため、NSCLC-TMEの顕著な組織微小環境と、NSCLCの病因における慢性炎症の影響は、NSCLC-TAMの分布と表現型の更なる特徴づけにつながった。
【0096】
対照nLungと比較して、L-ADCA及びL-SCCAの両方で有意に増加した数のマクロファージを含有することが見出された(データ図示せず)。更に、NSCLC-TAMは、M2マーカー並びにICIリガンドPD-L1及びPD-L2の発現が増加する、特徴的な免疫抑制性M2様表現型(データ図示せず)を示す。NSCLC-TAMはまた、IL-4、IL-10、IL13及びTGF-βなどの免疫抑制性サイトカインの発現の上昇を呈示したが、炎症性サイトカイン、IL-1β、IL-8、IL-12B及びTNF-αのレベルは減少した(データ図示せず)。
【0097】
Hom-1がNSCLC-TAMの中心的な調節因子であるという考えと一致して、この実施例は、TAMにおけるHom-1発現が、研究における全てのNSCLCの試験症例において有意に減少したことを示した(データ図示せず)。
【0098】
実施例2 PD-1抗体は、NSCLC-TME中の細胞傷害性CD8T細胞を活性化する
この実施例は、TMEにおけるICI機能に対処するためのインビトロプラットフォームを提供する。このプラットフォームは、例えば、前臨床動物モデル及び初期段階の臨床試験の前に、ICIコンジュゲート併用療法の効力を評価及び査定するために使用することができ、したがって、前臨床動物モデル及び初期段階の臨床試験の前に、より速く、より効率的で、かつ費用対効果の高い手段を提供する。
【0099】
単に例示するために、この実施例は、NSCLCの一括培養物が、NSCLC-TMEの状況下で、PD-1抗体(及び任意の他の免疫チェックポイント阻害剤又は「ICI」)の機能を査定するために使用され得ることを示す。
【0100】
簡単に説明すると、新しく単離されたNSCLC又はnLung組織の小片をRPMIベースの培地中でインキュベートし、指定された時間PD-1抗体処理に供した(データ図示せず)。次いで、腫瘍浸潤T(TIL)細胞及びTAMを単離し、それらの機能状態をFACS分析によって決定した。
【0101】
具体的には、一括NSCLC又はnLung組織を24ウェルプレートで培養し、1μg/mLの抗PD-1抗体ペムブロリズマブ、又は対照としてヒトIgG4を24時間又は48時間処理した。次いで、単一細胞懸濁液を生成し、FITCコンジュゲート抗CD8抗体で染色した。次に、細胞を固定し、透過処理し、PEコンジュゲート抗IL2又は抗IFNγ抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
【0102】
PD-1抗体による炎症性サイトカイン分泌の投与量依存的な刺激を評価するために、上述の一括NSCLC及びnLung組織培養物を、様々な試験濃度でペムブロリズマブ又はヒトIgG4対照で処理した。培養培地を48時間後に収集した。IL-2及びIFN-γのレベルを、ELISAキットを使用して定量化し、統計的有意性を、二元配置分散分析によって決定した。
【0103】
NSCLC-TMEにおけるTAMに対するPD-1抗体の効果を評価するために、一括NSCLC又はnLung組織を1μg/mLのペムブロリズマブ又はヒトIgG4で処理し、48時間後に上記のように単一細胞懸濁液を得た。TAMに対する処理の効果は、CD68及びCD206の細胞表面発現のFACS分析、並びにHom-1発現レベルのqRT-PCR分析によって決定した。
【0104】
NSCLC-TMEにおけるTregに対するPD-1抗体の効果を評価するために、上記のペムブロリズマブ又はヒトIgG4処理後の一括培養物におけるTreg細胞のパーセンテージを、CD4CD25FoxP3細胞のパーセンテージ変化のFACS分析によって決定した。
【0105】
IL-2及びIFN-γ発現及び分泌の上昇によって明らかになったように、PD-1抗体処理がTME中のCD8T細胞を活性化することが見出された(データ図示せず)。CD8活性化におけるPD-1抗体の生理学的役割と一致して、CD8T細胞活性化に対するPD-1抗体の効果が用量依存性であることも見出された(データ図示せず)。しかしながら、他のインビトロアッセイとは異なり、CD8+T細胞のPD-1抗体活性化におけるTMEの機能は、PD-1抗体の適用が、追加の抗原及びサイトカイン刺激を必要とせずに、TMEにおけるCD8+T細胞の活性化を直接もたらしたという知見によって示された。
【0106】
このデータは、本発明の一括NSCLC培養物が、TMEの生理学的状況下でのICIの機能評価のための優れた機会を提供することを実証した。
【0107】
アッセイプラットフォームの特異性は、一括NSCLC培養物へのPD-1抗体の適用がTreg細胞及びTAMの顕著な表現型変化を引き起こさず、TAMにおけるHom-1の発現を変化させない(データ図示せず)という知見によって更に示された。
【0108】
実施例3 Hom-1制御TAMは、CD8T細胞のPD-1抗体再活性化を促進する。
この実施例は、Hom-1がTAMの可塑性を調節し、それがTILの分化を指示することによって、TMEの免疫状況を再プログラムすることを実証する。
【0109】
NSCLCには、豊富な免疫細胞と炎症性サイトカインを有する独特のTMEが含まれている。TAM分化は環境的なきっかけによって調節され、単球分化に対するHom-1効果は細胞外シグナル伝達によって調節されるため、NSCLC-TMEの独特の特性により、NSCLC-TAM表現型に対するHom-1の役割の検討が行われた。
【0110】
具体的には、一括NSCLC組織を、GFP-Hom-1又はGFP対照でトランスフェクトされた自己TAMで最大5日間インキュベートした。次いで、単一細胞懸濁液を機械的破壊によって生成し、腫瘍内因性TAMを分析し、M1及びM2様TAMのパーセンテージを、それぞれCD80及びCD206のFACS分析によって決定した。Treg分化に対するインキュベーションの効果は、CD4CD25Foxp3細胞のパーセンテージのFACS分析によって決定した。一括NSCLC組織を、GFP-Hom-1又はGFP対照でトランスフェクトした自己TAM、及び1μg/mLのペムブロリズマブとともに5日間インキュベートした。CD8T細胞の活性化を、APCコンジュゲート抗IFNγ又はPEコンジュゲート抗グランザイムB抗体を使用して、FACSによって分析した。
【0111】
この目的のために、TAMにおけるHom-1発現の回復が、NSCLC-TAMのプロ腫瘍(pro-tumor)M2様表現型から抗腫瘍M1様表現型への分極を促進することが見出された(データ図示せず)。
【0112】
Hom-1制御TAM(Hom-1-TAM)は、NSCLC-TAM及びCD4T細胞の分化を調節することによって、免疫状況を抑制から活性化に再プログラムすることが更に見出された(データ図示せず)。
【0113】
M2-TAM及びTregが、TMEにおけるCD8の枯渇に関与していることから、CD8T細胞のPD-1抗体の再活性化を増強するためのHom-1-TAMの能力が調査された。一括NSCLC培養物へのHom-1-TAMの適用が、PD-1抗体誘導性CD8T細胞活性化の3~4倍増幅をもたらしたことが見出された。
【0114】
実施例4 Hom-1制御TAMは、CD8+CTLの腫瘍特異的活性化を介して、NSCLCに対するPD-1抗体の効力を促進する。
臨床的には、PD-1抗体治療は、NSCLC患者の約20%で全奏功を有している。PD-1抗体が一括NSCLC培養物中でCD8T細胞を活性化するという今回の知見は、一括NSCLCが、エクスビボでNSCLCに対するPD-1抗体の効力を査定するために使用できるという調査及びその後の実証を促した。
【0115】
簡単に説明すると、PD-1抗体を一括NSCLC及びnlung組織培養物に5日間適用し、NSCLCがん及び正常な肺上皮細胞の生存率を、PI染色及びFACS分析によって決定した。
【0116】
具体的には、一括NSCLS又は対照nLung組織を、1μg/mLのペムブロリズマブ又は対照ヒトIgG4抗体で処理し、GFP-Hom-1又は対照GFPでトランスフェクトした自己TAMと5日間共培養した。次いで、機械的破壊によって単一細胞懸濁液を得た。腫瘍細胞を固定し、透過処理し、CK7抗体で染色し、非腫瘍上皮細胞をEP4抗体で染色した。細胞をPIで標識し、PI陽性細胞の割合をFACS分析によって決定した。
【0117】
臨床転帰と一致して、エクスビボ一括NSCLC培養物への抗PD-1抗体の適用は、腫瘍細胞のPI染色の若干の増加をもたらしたが、nlung組織の正常上皮細胞のPI染色ではもたらさなかったことが見出された(データ図示せず)。
【0118】
TMEはICI耐性に関与しているため、次に、NSCLC-TMEにおける免疫抑制の反転が、PD-1抗体の効力を増加させることが示された。具体的には、一括NSCLC又は対照nLung組織をPD-1又は対照抗体で処理し、Hom-1又は対照GFPでトランスフェクトされた自己TAMと共培養した。共培養の効果を、がん又は正常上皮細胞生存率のFACS分析によって決定した。
【0119】
NSCLC-TAMを単離し、GFP又はGP-Hom-1をコードするプラスミドでトランスフェクトした。次いで、トランスフェクトされたTAMを、1μMのCellTrack Yellow標識がん又は正常上皮細胞と、1:1の比率で24時間インキュベートした。次いで、食作用の速度を、フローサイトメトリーによって決定した。
【0120】
Hom-1-TAMによるCD8T細胞増殖のがん特異的刺激を示すために、Hom-1-TAMを、がん又は正常上皮細胞と24時間混合し、次いで、CellTrack Yellow標識自己CD8TILと1:10の比率で、5日間共培養した。CD8T細胞増殖に対するインキュベーションの効果を、FACS分析によって決定した。
【0121】
更に、Hom-1-TAMを、がん又は正常上皮細胞と24時間混合し、次いで、1:10(M:T)の比率で自己CD8TILと5日間共培養した。CD8T細胞活性化に対するインキュベーションの効果を、APCコンジュゲート抗IFNγ又はPEコンジュゲート抗グランザイムB抗体を使用するFACSによって決定した。
【0122】
Hom-1-TAMは、NSCLCに対するPD-1抗体の殺細胞効果を4~5倍促進することが見出された。比較すると、正常上皮細胞の死の有意な増加はなかった(データ図示せず)。
【0123】
Hom-1が食作用を調節するため、NSCLCに対するPD-1抗体の効力を促進するHom-1-TAMのメカニズムは、Hom-1がNSCLC腫瘍細胞のNSCLC-TAM食作用を促進する可能性があり、これにより、がん特異的な方法でCD8T細胞の活性化が促進される可能性がある。この目的のために、TAMをGFP又はGFP-Hom-1でトランスフェクトし、次いで、CFSE標識精製NSCLC細胞又は正常上皮細胞で24時間インキュベートした(データ図示せず)。TAMの食作用に対するHom-1の効果を、FACS分析によって決定した。
【0124】
結果は、Hom-1ががん細胞と正常上皮細胞の両方の食作用を促進することを示した。更に、Hom-1が、食作用ステップの後、クロスプライミングを介してCD8T細胞のTAMの活性化を促進することが示された。具体的には、Hom-1-TAMを自己CD8T細胞とともにインキュベートした。Hom-1-TAMのクロスプライミング機能と一致して、Hom-1-TAMによる正常上皮細胞ではなくがんの食作用が、CD8T細胞増殖及び活性化の4~5倍の増強をもたらすことが見出された(データ図示せず)。
【0125】
実施例5 Hom-1制御TAMは、インビボでNSCLCに対するPD-1抗体の効力を促進する。
患者由来異種移植片のNSGモデル(NSG-PDX)は、抗がん剤開発のための重要なツールとなりつつある。同系マウスモデルと比較して、原発性ヒト腫瘍のNSG-PDXモデルは、関連するTMEを有するという利点を有し、CRC及びPDAの腫瘍形成に対する修飾されたTAMの効果を評価するために首尾よく使用されている。
【0126】
この実施例は、原発性NSCLCのNSG-PDXモデルを使用して、NSCLCに対するPD-1抗体の機能をインビボで査定することができることを実証する。
【0127】
具体的には、原発性NSCLCの個々のNSG-PDXモデルは、原発性NSCLC組織の小片をNSGマウスの背側外側の皮下空間に移植することによって生成した。NSGマウスにおける腫瘍増殖を最大6週間観察した(データ図示せず)。
【0128】
モデルにおけるヒトリンパ球の存在を決定するために、移植に成功した腫瘍を興奮させ、CD8T細胞の存在をFACSによって決定した。移植されたNSCLC腫瘍は、顕著な数の初代ヒトCD8T細胞を含むことが見出された(データ図示せず)。移植された腫瘍における機能性CD8T細胞の存在と一致して、PD-1抗体の注入が原発性NSCLCのこれらの個々のNSG-PDXモデルにおいて腫瘍形成の若干の阻害を引き起こすことが見出された(データ図示せず)。
【0129】
Hom-1-TAMが、ICI耐性に関与するTMEの免疫抑制を反転させるため、NSCLCに対するPD-1抗体の効力を促進する際のHom-1-TAMの潜在的な機能が決定された。PD-1抗体及びHom-1-TAMの混注により、原発性NSCLCのNSG-PDXモデルにおいてNSCLC腫瘍形成に対するPD-1抗体の効力が4~5倍増強されることが見出された。したがって、データは、NSCLCのICIコンジュゲート併用療法におけるHom-1-TAMの潜在的な機能を示唆した。
【0130】
上記の実施例では、一括NSCLCのエクスビボ培養モデルを使用して、NSCLCのICI治療におけるTMEの機能を研究した。エクスビボ培養物へのPD-1抗体の適用は、CD8CTLを活性化し、がん細胞に対して若干の殺腫瘍効果を発揮することが見出された。ICI治療におけるTMEの生理学的機能を反映したモデルの真正性は、他の細胞ベースのインビトロアッセイとは異なり、TMEにおけるCD8CTLのPD-1抗体活性化に抗原又はサイトカインは必要とされないという知見によって示された。
【0131】
エクスビボ培養モデルを使用して、Hom-1調節TAMによるTMEの再プログラミングは、CD8T細胞の再活性化及びPD-1抗体の殺細胞効果を腫瘍特異的様式で4~5倍増強することが実証された(データ図示せず)。
【0132】
NSCLCに対するICIの腫瘍特異的増強の潜在的メカニズムとして、Hom-1がNSCLCがん細胞のTAM食作用を促進し、ひいては腫瘍特異的様式でCD8T細胞を活性化することが実証された(データ図示せず)。
【0133】
この知見は、腫瘍特異的CD8+T細胞の既存のプールの概念、及び腫瘍特異的CD8Tをクロスプライムし活性化するための腫瘍抗原の交差提示におけるHom-1修復型TAMの能力と一致する。データはまた、Hom-1-TAMによるCTLの腫瘍特異的活性化が、PD-1抗体によって更に2倍増幅され得ることを示し、NSCLC処理における併用免疫療法の可能性を実証する。
【0134】
したがって、Hom-1-TAMベースの併用療法は、他の免疫的に「熱い」及び「冷たい」腫瘍の治療において同様の効果を発揮する可能性があり、したがって、がん免疫療法の効力を改善する新たな機会を提供する。
【0135】
実施例6 一括組織培養における化学療法剤DOXの殺腫瘍効果
ドキソルビシン(DOX)は、広域化学療法剤であり、がん細胞及びマクロファージの両方においてHom-1発現の強力な誘導物質である(データ図示せず)。この実施例は、本発明の一括組織培養モデルが、TMEとの関連でDOXの殺腫瘍機能の根底にあるメカニズムを研究するために使用できることを実証する。
【0136】
この目的のために、同じ患者からの一括結腸直腸がん(CRC)又は対照非腫瘍結腸粘膜組織を、RPMIベースの培地中でインキュベートし、DOXで3日間処理した。次に、腫瘍又は正常細胞に対する処理の効果を、PI染色及びFACS分析によって決定した。
【0137】
結果は、DOX処理が、一括腫瘍培養物における腫瘍細胞に対して投与量依存的な殺細胞効果をもたらすことを示した(データ図示せず)。適応性ストレス応答及び細胞死を制御するメカニズムの異常に起因する化学療法剤に対するがん細胞の優越性(venerability)と一致して、DOX処理は組織微小環境の状況で正常上皮細胞に対してより少ない細胞傷害性効果を及ぼすことが見出された(データ図示せず)。TMEにおけるDOX誘発性殺腫瘍効果におけるHom-1の潜在的関与と一致して、DOXが一括CRC培養物においてTAM Hom-1発現を用量依存的に誘導したことが見出された(データ図示せず)。
【0138】
実施例7 Hom-1は、腫瘍微小環境の免疫状況に対するDOX効果を媒介する。
DOXは、一括CRC培養物中のTAMにおけるHom-1発現を誘導するため(データ図示せず)、この実施例は、DOXの治療効果の媒介におけるHom-1の関与を示す。一括CRC培養モデルを使用して、DOX処理がM1マーカー及びサイトカインの発現を促進することによってTAMの集団をM2様表現型からM1様表現型にシフトさせたが、TAMにおけるM2マーカー及びサイトカインの発現を阻害することが示された(データ図示せず)。
【0139】
TAM可塑性に対するDOX効果に対応して、TMEの免疫状況に対するDOXの効果は、CD8T細胞活性化は増加するが、CD4T細胞のTreg細胞への分化は低下するなど、TIL分化の交代によって更に明らかにされた(データ図示せず)。TAM可塑性及びTMEの免疫状況に対するDOX効果の媒介におけるHom-1の主要な制御的役割と一致して、TAMにおけるHom-1発現のノックダウンが、M1及びM2マーカーの発現に対するDOX効果を減弱させ、炎症性サイトカインのDOX誘導分泌を阻害することが示された(データ図示せず)。免疫状況に対するDOX効果の媒介におけるHom-1調節TAMの効果は、Hom-1修飾TAMによるTIL分化のDOX誘導の交代の廃止によって更に明らかにされた(データ図示せず)。
【0140】
実施例8 NFκBは、TAMにおけるDOX誘導性Hom-1発現を媒介する。
DOX誘導Hom-1発現のメカニズムを決定するために、Hom-1プロモーターをECRブラウザで分析し、3つの潜在的なNFκB結合部位の同定を得た(データ図示せず)。NFκBは、炎症及びがんの病因におけるマクロファージ機能の主要レギュレーターである。
【0141】
NFκBが単球におけるHom-1発現のDOX活性化に役割を果たすかどうかを決定するために、初代単球におけるNFκB発現に対するDOXの効果を決定した。DOXが投与量依存的様式で初代ヒト単球におけるNFκB発現を誘導することが見出された(データ図示せず)。
【0142】
Hom-1発現のDOX誘導を媒介するNFκBの役割と一致して、TAMにおけるHom-1発現がDOX誘導性NFκB発現と相関し、NFκB阻害剤によってブロックされることが見出された(データ図示せず)。NFκBがHom-1発現のDOX誘導を媒介する転写因子であるという考えと一致して、CHIP分析によって示されるように、DOXがNFκBとHom-1プロモーターとの相互作用を促進し、NFκBとHom-1プロモーターとの間の増強された結合がNFκB阻害剤によって廃止されたことが見出された(データ図示せず)。
【0143】
実施例9 Hom-1-TAMは、腫瘍特異的な様式でDOXの殺腫瘍効果を促進する
Hom-1制御TAMがTMEで免疫を支配するため、DOXがTAMでHom-1発現を誘導するという知見は、Hom-1制御TAM(Hom-1-TAM)がDOXの治療効力を促進するかどうかの調査につながった。
【0144】
この目的のために、一括CRC腫瘍又は対照結腸粘膜組織を、低い非細胞傷害性用量のDOXで処理し、次いで、Hom-1又は対照GFPでトランスフェクトされたTAMと共培養した。5日間の共培養後、腫瘍又は対照正常上皮細胞の生存に対する処理の効果を、PI染色及びFACS分析によって決定した。
【0145】
非細胞傷害性濃度では、DOX単独では、腫瘍細胞に対する殺細胞効果をほとんど発揮しないことが見出された。しかしながら、Hom-1-TAMを処理に含めた場合、腫瘍細胞に対するDOXの効力は10倍以上増加した(データ図示せず)。驚くべきことに、DOXに対するHom-1-TAMの効果は、腫瘍特異的であることが見出された。腫瘍組織に対するその効果と比較して、Hom-1-TAMは、正常上皮細胞に対するDOXの細胞傷害性効果を有意に促進しなかった(データ図示せず)。
【0146】
更なる実験では、Hom-1が、CRC腫瘍細胞のCRC-TAM食作用を促進し、その結果、がん特異的な方法で細胞傷害性CD8Tリンパ球を活性化することが実証された。この目的のために、CRC-TAMをGFP又はGFP-Hom-1でトランスフェクトし、次いで、CFSE標識精製CRCがん細胞又は正常上皮細胞で24時間インキュベートした。TAMの食作用に対するHom-1の効果を、FACS分析によって決定した。結果は、Hom-1ががん細胞と正常上皮細胞の両方の食作用を促進することを示した。
【0147】
Hom-1がクロスプライミングを介してCD8T細胞のTAM活性化を促進することができることを示すために、食作用ステップの後、Hom-1-TAMを自己CD8T細胞とともにインキュベートした。Hom-1-TAMのクロスプライミング機能と一致して、正常上皮細胞ではなく、Hom-1-TAMによるがん細胞の食作用が、CD8T細胞増殖及び活性化の有意な増強をもたらすことが見出された(データ図示せず)。
【0148】
実施例10 Hom-1-TAMは、原発性ヒトCRCのNSG-PDXモデルにおけるCRC腫瘍形成のDOX阻害を促進する
原発性ヒト腫瘍のNSG-PDXモデルは、化学療法剤の治療効力を評価するための強力なツールである。原発性ヒト腫瘍のNSG-PDXモデルを使用した研究に基づいて、Hom-1-TAMは、用量依存的様式で原発性CRCの腫瘍形成に対して強い阻害を発揮することが示された。Hom-1-TAMが、エクスビボでDOXの殺腫瘍効果を促進するという知見は、インビボでのCRCの併用療法におけるHom-1-TAMとDOXとの間の潜在的な相乗効果の検討につながり、この実施例で実証された。
【0149】
この目的のために、原発性ヒトCRCのNSG-PDXモデルを、確立された方法に従って確立した。原発性CRC腫瘍の移植の1週間後、マウスに、低用量のHom-1-TAMを尾静脈注射した。3日後、1.5mg/kgの低用量のDOXを尾静脈注射によって投与し、2週間後にDOX注射を繰り返した。移植された腫瘍の増殖は、最大6週間観察された。
【0150】
結果は、低用量のDOXが、インビボで、CRC腫瘍形成に対してわずかに識別可能な阻害を発揮する一方で、低用量のHom-1-TAMによって、CRC腫瘍形成に対する低用量のDOXの阻害効果が有意に増強されたことを示した。低用量のDOX及びHom-1-TAMの併用レジメンは、良好な耐容性があり、化学療法剤の治療効力を改善する新規のアプローチを示唆している。
【0151】
実施例11 Hom-1-TAMは、広範囲の腫瘍タイプに対する化学療法剤の殺腫瘍機能を促進する。
この実施例は、本発明の一括腫瘍培養モデルが、TMEとの関連で化学療法剤の殺腫瘍機能を査定するための一般的なツールとして使用できること、及びHom-1-TAMが他の化学療法剤の殺腫瘍効果を促進し得ることを実証する。
【0152】
CRCに加えて、Hom-1-TAMはPDAC及びNSCLC TMEの免疫極性を逆転させる(データ図示せず)。DOXの殺腫瘍効果に対するHom-1-TAMの効果は、PDAC、NSLC、食道がん及び胃がんなどの他の腫瘍タイプで更に調査された。CRCの場合と同様に、Hom-1-TAMは、これらの試験された腫瘍タイプ全てに対して低用量DOXの殺腫瘍機能を促進することが見出された(データ図示せず)。
【0153】
DOX以外の、5-FUなどの他の化学療法剤の殺腫瘍機能も、本発明の一括腫瘍モデル用いて査定/実証することができる。具体的には、DOXに対するその効果と同様に、5-FUは、CRCの一括腫瘍培養物中の腫瘍細胞に対して投与量依存的な殺細胞効果を発揮した(データ図示せず)。
【0154】
更なるデータは、Hom-1-TAMが5-FU及び他の化学療法剤の殺腫瘍効果を促進することを示した。具体的には、様々な腫瘍タイプの一括培養モデルを使用して、データは、Hom-1-TAMがCRCに対する5-FU殺腫瘍効果、PDACに対するゲムシタビン殺腫瘍効果、非小細胞肺がん(NSCLC)、食道がんに対するシスプラチン殺腫瘍効果、胃がん及び卵巣がんに対するタキソール効果を促進したことを示した(データ図示せず)。本試験で使用される追加の化学試薬を以下に列挙する。
【表1】
【0155】
まとめると、本明細書に提示されるデートは、本発明の一括腫瘍培養モデルが、化学療法剤の効力及び安全性を改善するために、腫瘍微小環境との関連で多くの異なる化学療法剤の殺腫瘍効果及びTMEにおける免疫を調節する効果を査定するための効果的なツールとして使用できることを示唆した。
【0156】
実施例1~11で使用される特定の手順及び材料は、例示を目的として以下に提供され、いかなる点においても限定するものではない。
【0157】
しかしながら、本明細書で使用される特定の条件及び試薬は、特定の実施形態として本発明の組成物及び方法で使用されることが明確に企図されており、参照により組成物及び方法の説明に組み込まれる。
【0158】
材料及び方法
肺組織試料の収集
外科的切除を予定していた合計20名のNSCLC患者が、研究目的で切除された組織及び血液の一部を採取することに同意した。全ての患者は、病院の治験審査委員会によって承認されたインフォームドコンセント文書に署名した。腫瘍塊、又は非関与肺組織から約5~10グラムの組織を収集した。腫瘍試料及び対照組織は、施設の委員会認定病理学者によって検証された。
【0159】
及び腫瘍組織からのリンパ球及びマクロファージの調製
リンパ球を基本的に標準プロトコールに従って単離した。簡潔に述べると、解剖された新鮮な腫瘍及び肺組織を、2%のウシ胎児血清(FBS)及び2mMのジチオスレイトール(DTT)(Sigma-Aldrich)を含有する、Ca2+フリー及びMg2+フリーのハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(life technologies)を用いて、10cmペトリ皿中ですすいだ。次に、肺及び腫瘍組織を、カミソリ刃によって約0.1cmの小片に切断し、5mMのEDTA(Sigma-Aldrich)を含有する5mLのHBSS中、37℃で1時間インキュベートした。次いで、組織をグレーメッシュ(100ミクロン)に通した。次に、リンパ球及び上皮細胞を含有するフロースルーをフローサイトメーターによって分析した。
【0160】
マクロファージを単離するために、腫瘍及び肺組織をHBSSですすぎ、カミソリ刃によって約0.1cmの小片に切断し、次いで、2%のFBS、1.5mg/mLのコラゲナーゼD(Roche)、0.1mg/mLのDnase Iを含有するHBSS(Ca2+及びMg2+を含む)中で、37℃で1時間インキュベートした。次いで、消化された組織をグレーメッシュ(70ミクロン)フィルターに通した。フロースルーを収集し、洗浄し、RPMI1640培地中に再懸濁した。正常組織マクロファージ及びTAMを、製造業者の指示に従い、CD16を枯渇させることなく、EasySep(商標)ヒト単球/マクロファージ濃縮キット(StemCell Technologies、カタログ番号19085)を使用して更に精製した。単離プロセスは、マクロファージの活性化をもたらさず、単離されたマクロファージの純度は95%を超えていた。本技術によって単離された細胞の98%以上は、ヨウ化プロピジウム(PI)染色試験によって生存可能であった。
【0161】
FACS分析
マクロファージ及びリンパ球の表現型分析は、蛍光色素コンジュゲート抗体による細胞の免疫標識後にフローサイトメトリーを使用して行った。細胞外染色を4℃で30分間行い、次いで、2%のパラホルムアルデヒドで固定した。細胞内染色については、製造業者によって提供されたプロトコールに従って、固定/透過化溶液(Fisher Scientific)を使用して細胞を固定及び透過化し、次いで抗体染色に供した。同位体対照標識を並行して行った。抗体は、供給業者の推奨に従って希釈した。ヨウ化プロピジン(propidine iodide)(PI)染色を伴う実験では、染色ステップの後、細胞を洗浄し、5μLのPI染色溶液(eBioscience/Fisher Scientific)を補充した200μLのFACS染色溶液に15分間再懸濁した後、FACS分析に供した。標識細胞を、FACS Divaソフトウェア(BD Biosciences)備えたDana Farber Cancer InstituteのフローサイトメトリーコアでBD LSRFortessaを使用して取得し、FlowJo10.1ソフトウェア(Treestar)を使用して分析した。典型的には、標準的なFACS分析手順に従って、試料ごとに20,000個の細胞を分析した。補償は、抗体染色の2つ以上の蛍光で実行し、機器は、CS&Tビーズを使用して毎日較正した。ゲーティングは、生活単一細胞(life single cell)に対して実行された。結果は、陽性細胞のパーセンテージとして表される。
【0162】
定量的RT-PCR
総RNAをTRIzol試薬(Life Technologies)によって単離し、RNA量をNanoDrop 2000(Thermo Scientific)によって測定した。等量のRNAを、製造業者のプロトコールに従い、SuperScript III First-Strand Synthesis System(Life Technologies)を用いた第1鎖cDNA合成に使用した。AccuPrime Taq DNAポリメラーゼシステム(Life Technologies)を使用して、従来のPCRでHom-1 cDNAを増幅した。Hom-1及び他のcDNAの定量的測定は、Mastercycler ep Gradient S(Eppendorf)を使用してSYBR Greenを用いて、行った。GAPDHは、mRNA発現を正規化するためのハウスキーピング遺伝子として使用された。mRNAの相対的発現プロファイルを、比較Ct法(DDCT法)を使用して計算した。
【0163】
サイトカイン測定
IL-1β、IL-2、IFN-γ及びTNF-αのレベルを、eBiosciencesから得たELISAキットを使用して定量した。分析は、製造業者の説明に従って行われた。各条件ごとに3つのウェルをプレーティングした。
【0164】
トランスフェクションアッセイ
GFP-Hom-1及びGFPのマクロファージへのトランスフェクションは、Human Macrophage Nucleofector Kit(カタログ番号:VVPA-1008、Lonza,Walkersville,MD)を使用して実行された。簡潔に述べると、2×10細胞を、5μgのプラスミドDNAを有する100μLのヌクレオフェクター溶液に、氷上で20分間再懸濁した。トランスフェクションは、Nculeofector 2b Device(Lonza)で実施した。トランスフェクション後、細胞を直ちに氷上に1分間置き、次に、10%のFBS及び1%の抗生物質-抗真菌溶液(Gibco、カタログ番号15240062)を含有する、予熱したRPMI1640完全培地で24~48時間培養し、その後トランスフェクトされた細胞を実験に使用した。
【0165】
一括組織培養及び処理
腫瘍組織を1×PBS緩衝液+抗生物質で洗浄し、次いで0.5cmの小片に切断した。組織を、24ウェルプレート(Corning)中の2~10%のFBS(Sigma)及び1%の抗生物質-抗真菌溶液(Gibco)を補充した2mLのRPMI1640培地中で培養した。培養物を、37℃、5%COインキュベーターでインキュベートした。一括組織培養物におけるPD-1抗体の機能評価のために、ペムブロリズマブ(ヒト化抗PD-1モノクローナル抗体、Selleckchem)又はヒトIgG4アイソタイプ対照を指定された濃度でウェルに添加し、免疫細胞活性及び腫瘍細胞生存に対する効果を記載されているように決定した。化学療法剤の効果を査定するために、抗PD-1抗体の代わりに、指定された濃度の化学試薬又はPBSを使用した。一括組織及びマクロファージ共培養アッセイでは、同じ患者の0.25x10個のGFP-Hom-1又は対照GFPトランスフェクト自己マクロファージを一括組織培養ウェルに添加した。穏やかに振盪した後、プレートを37℃、5%COで3~5日間インキュベートした。次いで、記載されているように、一括組織を単一1細胞単離及び分析に供した。
【0166】
腫瘍及び正常上皮細胞の単離
腫瘍及び正常な肺組織を、カミソリの刃によって約0.1cmの小片に切断し、機械的破壊によって単一細胞懸濁液を生成し、続いて細胞懸濁液を70μmのナイロンメッシュを通して濾過した。PBSで洗浄した後、細胞をRPMIのみの培地に再懸濁し、15mLのFalconチューブ中のFicoll溶液の上部に置いた。次いで、Beckman Allegra 6R卓上遠心分離機で、2000rpmで30分間、低い加速度及び減速度でチューブを遠心分離した。次に、細胞をFalconチューブの底部から収集し、赤血球をRBC溶解緩衝液(Fisher Scientific)によって除去した。PBSで洗浄した後、腫瘍細胞及び正常上皮細胞をRPMI完全培地に収集した。単離された細胞を、CK7及びEP4抗体染色及びFACS分析によって更に特徴付けた。
【0167】
食作用アッセイ
NSCLC腫瘍細胞又は正常上皮細胞を、Cell Proliferation Kit(Fisher Scientific)を使用して、1μMのCell Trace Yellowで標識した。次いで、標識細胞を、GFP又はGFP-Hom-1でトランスフェクトした2×10個の自己TAMと、12ウェル組織培養プレート(Coring)中で、1:1の比率で混合し、RPMI完全培地+10%FBS、1%抗生物質-抗真菌溶液(Gibco、カタログ番号15240062)中でインキュベートした。24時間のインキュベーション後、TAMを洗浄し、セルスクレーパーで回収し、フローサイトメーターによって食作用を分析した。
【0168】
T細胞増殖及び活性化アッセイ
増殖アッセイでは、NSCLC患者のCD8TILを、製造業者の指示に従って、EasysepヒトCD8濃縮キット(StemCell Technologies、カタログ19053)によって単離し、次いで、Cell Proliferationキット(Fisher Scientific)を使用して、1μMのCellTraceで標識した。TAMを調製するために、10個のGFP-Hom-1又はGFPトランスフェクトTAMを、同じ患者由来の同量の腫瘍細胞又は正常上皮細胞と混合し、RPMI1640培地+10%FBS、1%抗生物質-抗真菌溶液(Gibco、カタログ番号15240062)を含む12ウェルプレートで、37℃、5%COで24時間培養した。次いで、1×10個の標識CD8TIL及びTAMを10:1の比率で混合し、次いで、37℃、5%COで5日間培養した。次いで、細胞を抗CD8-APCコンジュゲート抗体で染色し、フローサイトメーターによって分析した。活性化アッセイでは、CD8TILを、処理したTAMと10:1の比率で混合し、次いで、37℃、5%COで3日間培養した。次に、細胞を抗CD8-APCコンジュゲート抗体で染色し、記載されるように、細胞内INF-γ及びグランザイムBの存在をFACSによって決定した。
【0169】
原発性ヒトNSCLCの個々のNSG-PDXモデル
原発性ヒト肺がんの個々のNSG-PDXモデルを、標準的な手順に従って開発した。全ての動物実験は、施設内動物実験委員会によって承認された。簡潔に述べると、8週齢のNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJマウス(一般に、NODscidガンマ、又はNSGマウスとして知られている)をJackson Laboratoryから購入し、特定の病原体を含まない条件下で維持した。NSCLC腫瘍を約0.5cmの小片に切断し、次いでNSGマウスの背側の皮下空間に外科的に移植した。移植の1週間後、動物を、示されるように、PD-1抗体又はHom-1-TAM又は対照で処理した。PD-1抗体処理群では、150μgのペムブロリズマブ(ヒト化抗PD-1抗体)又はヒトIgG4対照を、指示されるように最大5週間、週に1回尾静脈注射した;Hom-1-TAM処理群では、GFP-Hom-1又は対照GFPでトランスフェクトされた0.25×10のTAMを、指示されるように1回尾静脈注射した。腫瘍増殖を毎週2回モニタリングし、6週間にわたってキャリパーによって測定した。腫瘍体積は、式1/2(長さ×幅)に従って計算した。
【0170】
原発性ヒト大腸直腸がんのNSG-PDXモデル
原発性ヒト結腸がんの動物モデルは、以前に開発された。簡単に言えば、8週齢のNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJマウス(一般にNODscidガンマ、又はNSGマウスとして知られている)をJackson Laboratoryから購入し、特定の病原体を含まない条件下で維持した。腫瘍を約0.5cmの小片に切断し、次いで外科的にNSGマウスの脇腹の皮下空間に移植した。移植の1週間後、GFP-Hom-1又は対照GFPでトランスフェクトされた0.25×10個のTAMを、尾静脈を介してマウスに注射した。3日後、1.5mg/KgのDOX又はPBS対照を尾静脈注射し、次いで2週間後に繰り返した。腫瘍増殖を毎週2回モニタリングし、6週間にわたってキャリパーによって測定した。腫瘍体積は、式1/2(長さ×幅)に従って計算した。
【0171】
免疫組織化学
免疫組織化学は、確立されたプロトコールに従って実行した。簡潔に述べると、肺又は結腸の腫瘍又は正常組織をホルマリン(Fisher Scientific Company、Kalamazoo,MI)中で少なくとも48時間固定した。次いで、組織をパラフィンに包埋し、切片化した。
【0172】
ヘマトキシリン/エオシン(H&E)染色を行った後、スライド全体の画像をPannoramic MIDI IIデジタルスライドスキャナによって走査し、 Caseviewer及びQuant centerソフトウェア(3DHistech)で分析した。
【0173】
多重免疫蛍光法
多重免疫蛍光法(IF)を、BOND RX全自動染色装置(Leica Biosystems)を用いて行った。厚さ5μmのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織切片を60℃で3時間ベーキングした後、BOND RXに装填した。組織切片を脱パラフィン化し(BOND DeWax Solution,Leica Biosystems、カタログAR9590)、一連の段階的エタノールから脱イオン水で再水和させた。抗原賦活化を、BOND Epitope Retrieval Solution 1(pH6)又は2(pH9)、以下に示される(ER1、ER2、Leica Biosystems、カタログAR9961、AR9640)で、95℃で行った。脱パラフィン、再水和及び抗原賦活化は全て事前にプログラムされ、BOND RXによって実行された。次に、スライドを、抗CD8(クローン4B11;Leica、希釈1:200)などの一次抗体で連続的に染色した。一次抗体当たりのインキュベーション時間は30分であった。続いて、抗マウス+抗ウサギオパールポリマーホースラディッシュペルオキシダーゼ(Opal Polymer HRP Ms+Rb、Akoya Biosciences、カタログARH1001EA)を、二次標識として10分のインキュベーション時間で適用した。抗体複合体のシグナルは、スライドを10分間インキュベートすることによって、対応するオパールフルオロフォア試薬(Akoya)によって標識され、視覚化された。スライドを、Spectral DAPI溶液(Akoya)中で10分間インキュベートし、風乾し、Prolong Diamond Anti-fade封入剤(Life Technologies、カタログP36965)で封入し、撮像前に4℃で遮光ボックスで保管した。標的抗原、抗体クローン、マーカーの希釈、及び抗原賦活化の詳細を補足表2に列挙する。
【0174】
画像取得は、Vectra Polarisマルチスペクトルイメージングプラットフォーム(Vectra Polaris,Akoya Biosciences,Marlborough,MA)を使用して行った。代表的な関心領域が病理学者によって選択され、3~5つの視野(FOV)が20倍の解像度でマルチスペクトル画像として取得された。細胞同定は、前述のように行われた。要するに、画像キャプチャ後、FOVをスペクトル的に非混合にし、次いで、Inform 2.4(Akoya)内の教師付き機械学習アルゴリズムを使用して分析した。この画像解析ソフトウェアは、セグメント化された核(DAPIシグナル)に関連付けられた免疫蛍光特性の組み合わせに基づいて、画像内の全ての細胞に表現型を割り当てる。各細胞表現型特異的アルゴリズムは、反復トレーニング/試験プロセスに基づいており、対象となる各表現型の最も代表的なものとして、少数の細胞(トレーニング段階、典型的には15~20個の細胞)が手動で選択され、次いで、アルゴリズムが、残りの全ての細胞の表現型を予測する(試験段階)。病理学者は、表現型が最適化されるまで、ソフトウェアによって行われた決定を覆して、精度を改善することができる。「陽性」染色の閾値及び表現型アルゴリズムの精度を、各症例について、病理医によって最適化し、確認した。
【0175】
細胞生存アッセイ
一括組織培養から生成された単一細胞懸濁液を、FACS染色溶液(PBS+2%FBS)で洗浄し、固定及び透過処理し(Invitrogen)、次いで、正常上皮細胞についてはBer-EP4抗体で、がん細胞についてはCK7、CK19及びCK20で、氷上で30分間染色した。FACS染色溶液で洗浄した後、細胞をFITCコンジュゲート二次抗体で、氷上で30分間染色した。次に、細胞をFACS染色溶液で洗浄し、PBS中の2%パラホルムアルデヒドで30分間又は一晩固定した。細胞を洗浄し、200μLのFACS染色溶液に再懸濁し、5μLのPI染色溶液(eBioscience/Fisher Scientific)を溶液中に15分間添加した。次いで、細胞生存率をフローサイトメトリーで分析した。
【0176】
ChIPアッセイ
ヒト単球を1μMのDOX又はPBS対照で24時間処理し、ChIPアッセイのために収集した。ChIP手順は、製造業者の指示に従って、Upstate biotechnologyのキットを使用して実行した。免疫沈降には、NFκBp65抗体(Cell Signaling Technology、カタログ番号8242)を使用した。ウサギIgG抗体を陰性対照として提供した。推定上NFκB結合部位を含有するHom-1プロモーター領域を、特異的プライマー5’-CGCGGAAGACACCGTCCTA-3’及び5’-TGGGAGCAGGCTTCGGGGT-3’で増幅した。全てのPCR産物を1%アガロースゲル上で分離し、臭化エチジウム染色によって視覚化した。
【0177】
NF-κB活性化アッセイ
ヒト単球を、指示された濃度のDOX又はPBS対照で処理した。処理の24時間後、核抽出物キット(Active Motif、カタログ40010)を使用して核抽出物を調製した。NF-κBp65のDNA結合活性は、製造業者の取扱説明書に従ってTransAmアッセイ(Active Motif、カタログ40097)を使用して決定した。簡潔に述べると、各試料の2.5μgの核抽出物を、固定化したNF-κB特異的オリゴヌクレオチドとともに1時間インキュベートした。次に、DNAに結合したp65タンパク質を、p65特異的抗体、HRPコンジュゲート二次抗体、及び現像液でインキュベートすることによって視覚化し、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度を測定した。
【0178】
統計分析
Prismバージョン9(GraphPad,La Jolla,CA)での統計分析には、スチューデントの検定又は一元配置分散分析が使用された。データを平均±標準偏差(SD)として提示した。腫瘍増殖曲線は、Sidakの多重比較検定を使用した、反復測定二元配置分散分析によって分析された。有意水準はp値で示した。
【0179】
参考文献:
1.Gerber,D.E.& Schiller,J.H.Maintenance chemotherapy for advanced non-small-cell lung cancer:new life for an old idea.J Clin Oncol 31,1009-20(2013).
2.Siegel,R.L.,Miller,K.D.& Jemal,A.Cancer statistics,2019.CA Cancer J Clin 69,7-34(2019).
3.Travis,W.D.et al.International Association for the Study of Lung Cancer/American Thoracic Society/European Respiratory Society:international multidisciplinary classification of lung adenocarcinoma:executive summary.Proc Am Thorac Soc 8,381-5(2011).
4.Pignon,J.P.et al.Lung adjuvant cisplatin evaluation:a pooled analysis by the LACE Collaborative Group.J Clin Oncol 26,3552-9(2008).
5.Garon,E.B.et al.Pembrolizumab for the treatment of non-small-cell lung cancer.N Engl J Med 372,2018-28(2015).
6.Garon,E.B.et al.Five-Year Overall Survival for Patients With Advanced NonSmall-Cell Lung Cancer Treated With Pembrolizumab:Results From the Phase I KEYNOTE-001 Study.J Clin Oncol 37,2518-2527(2019).
7.Mellman,I.,Coukos,G.& Dranoff,G.Cancer immunotherapy comes of age.Nature 480,480-9(2011).
8.Murciano-Goroff,Y.R.,Warner,A.B.& Wolchok,J.D.The future of cancer immunotherapy:microenvironment-targeting combinations.Cell Res 30,507-519(2020).
9.Thommen,D.S.et al.A transcriptionally and functionally distinct PD-1(+)CD8(+)T cell pool with predictive potential in non-small-cell lung cancer treated with PD-1 blockade.Nat Med 24,994-1004(2018).
10.Topalian,S.L.,Drake,C.G.& Pardoll,D.M.Immune checkpoint blockade:a common denominator approach to cancer therapy.Cancer Cell 27,450-61(2015).
11.Keir,M.E.,Butte,M.J.,Freeman,G.J.& Sharpe,A.H.PD-1 and its ligands in tolerance and immunity.Annu Rev Immunol 26,677-704(2008).
12.Kargl,J.et al.Neutrophils dominate the immune cell composition in non-small cell lung cancer.Nat Commun 8,14381(2016).
13.Hellmann,M.D.et al.Nivolumab plus Ipilimumab in Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.N Engl J Med 381,2020-2031(2019).
14.Horvath,L.,Thienpont,B.,Zhao,L.,Wolf,D.& Pircher,A.Overcoming immunotherapy resistance in non-small cell lung cancer(NSCLC)-novel approaches and future outlook.Mol Cancer 19,141(2020).
15.Wu,X.,Gao,H.,Ke,W.,Giese,R.W.& Zhu,Z.The homeobox transcription factor Hom-1 controls human macrophage terminal differentiation and proinflammatory activation.J Clin Invest 121,2599-613(2011).
16.Wu,X.,Gao,H.,Bleday,R.& Zhu,Z.Homeobox transcription factor Hom-1 regulates differentiation and maturation of human dendritic cells.J Biol Chem(2014).
17.Le,Y.,Gao,H.,Bleday,R.& Zhu,Z.The homeobox protein Hom-1 reverts immune suppression in the tumor microenvironment.Nat Commun 9,2175(2018).
18.Le,Y.et al.Hom-1 expression in tumor associated macrophages promotes phagocytosis and immunity against pancreatic cancers.JCI Insight(2020).
19.Lavin,Y.et al.Tissue-resident macrophage enhancer landscapes are shaped by the local microenvironment.Cell 159,1312-26(2014).
20.Hart,K.et al.A combination of functional polymorphisms in the CASP8,MMP1,IL10 and SEPS1 genes affects risk of non-small cell lung cancer.Lung Cancer 71,123-9(2011).
21.Takahashi,H.,Ogata,H.,Nishigaki,R.,Broide,D.H.& Karin,M.Tobacco smoke promotes lung tumorigenesis by triggering IKKbeta-and JNK1-dependent inflammation.Cancer Cell 17,89-97(2010).
22.Jo,Y.et al.Chemoresistance of Cancer Cells:Requirements of Tumor Microenvironment-mimicking In Vitro Models in Anti-Cancer Drug Development.Theranostics 8,5259-5275(2018).
23.Gillis,S.& Smith,K.A.Long term culture of tumour-specific cytotoxic T cells.Nature 268,154-6(1977).
24.DeRose,Y.S.et al.Tumor grafts derived from women with breast cancer authentically reflect tumor pathology,growth,metastasis and disease outcomes.Nat Med 17,1514-20(2011).
25.Grenga,I.,Donahue,R.N.,Lepone,L.M.,Richards,J.& Schlom,J.A fully human IgG1 anti-PD-L1 MAb in an in vitro assay enhances antigen-specific T-cell responses.Clin Transl Immunology 5,e83(2016).
26.Deng,S.,Clowers,M.J.,Velasco,W.V.,Ramos-Castaneda,M.& Moghaddam,S.J.Understanding the Complexity of the Tumor Microenvironment in K-ras Mutant Lung Cancer:Finding an Alternative Path to Prevention and Treatment.Front Oncol 9,1556(2019).
27.Saito,Y.,Shultz,L.D.& Ishikawa,F.Understanding Normal and Malignant Human Hematopoiesis Using Next-Generation Humanized Mice.Trends Immunol 41,706-720(2020).
28.Curran,M.A.,Montalvo,W.,Yagita,H.&Allison,J.P.PD-1 and CTLA-4 combination blockade expands infiltrating T cells and reduces regulatory T and myeloid cells within B16 melanoma tumors.Proc Natl Acad Sci U S A 107,4275-80(2010).
29.Coulie,P.G.,Van den Eynde,B.J.,van der Bruggen,P.& Boon,T.Tumour antigens recognized by T lymphocytes:at the core of cancer immunotherapy.Nat Rev Cancer 14,135-46(2014).
30.Linette,G.P.& Carreno,B.M.Tumor-Infiltrating Lymphocytes in the Checkpoint Inhibitor Era.Curr Hematol Malig Rep 14,286-291(2019).
31.Lecoultre,M.,Dutoit,V.& Walker,P.R.Phagocytic function of tumor-associated macrophages as a key determinant of tumor progression control:a review.J Immunother Cancer 8(2020).
32.Zhu,Z.& Kirschner,M.Regulated proteolysis of Xom mediates dorsoventral pattern formation during early Xenopus development.Dev Cell 3,557-68(2002).
33.Gao,H.,Wu,B.,Giese,R.& Zhu,Z.Xom interacts with and stimulates transcriptional activity of LEF1/TCFs:implications for ventral cell fate determination during vertebrate embryogenesis.Cell Res 17,345-56(2007).
34.Gao,H.et al.Hom-1,a novel lymphoid-enhancing factor/T-cell factor-associated transcription repressor,is a putative tumor suppressor.Cancer Res 70,202-11(2010).
35.Wu,X.et al.Hom-1 trans-activates p53 and p16ink4a to regulate cellular senescence.J Biol Chem 286,12693-701(2011).
36.Gao,H.et al.Suppression of Homeobox Transcription Factor Hom-1 Promotes Expansion of Human Hematopoietic Stem/Multipotent Progenitor Cells.J Biol Chem 287,29979-87(2012).
37.Gao,H.,Wu,B.,Le,Y.& Zhu,Z.Homeobox protein Hom-1 induces p53-independent apoptosis in cancer cells.Oncotarget(2016).
38.Wu,B.,Gao,H.,Le,Y.,Wu,X.& Zhu,Z.Xom induces proteolysis of beta-catenin through GSK3beta-mediated pathway.FEBS Lett 592,299-309(2017).
39.Wang,C.et al.In vitro characterization of the anti-PD-1 antibody nivolumab,BMS-936558,and in vivo toxicology in non-human primates.Cancer Immunol Res 2,846-56(2014).
40.Germeau,C.et al.High frequency of antitumor T cells in the blood of melanoma patients before and after vaccination with tumor antigens.J Exp Med 201,241-8(2005).
41.Kamada,N.et al.Unique CD14 intestinal macrophages contribute to the pathogenesis of Crohn disease via IL-23/IFN-gamma axis.J Clin Invest 118,2269-80(2008).
42.Rogler,G.et al.Isolation and phenotypic characterization of colonic macrophages.Clin Exp Immunol 112,205-15(1998).
43.Eruslanov,E.B.et al.Tumor-associated neutrophils stimulate T cell responses in early-stage human lung cancer.J Clin Invest 124,5466-80(2014).
44.Mittal,V.K.,Bhullar,J.S.& Jayant,K.Animal models of human colorectal cancer:Current status,uses and limitations.World J Gastroenterol 21,11854-61(2015).
45.Wong,H.H.& Chu,P.Immunohistochemical features of the gastrointestinal tract tumors.J Gastrointest Oncol 3,262-84(2012).
46.Peters,W.P.et al.Prospective,randomized comparison of high-dose chemotherapy with stem-cell support versus intermediate-dose chemotherapy after surgery and adjuvant chemotherapy in women with high-risk primary breast cancer:a report of CALGB 9082,SWOG 9114,and NCIC MA-13.J Clin Oncol 23,2191-200(2005).
47.Opzoomer,J.W.,Sosnowska,D.,Anstee,J.E.,Spicer,J.F.& Arnold,J.N.Cytotoxic Chemotherapy as an Immune Stimulus:A Molecular Perspective on Turning Up the Immunological Heat on Cancer.Front Immunol 10,1654(2019).
48.Powley,I.R.et al.Patient-derived explants(PDEs) as a powerful preclinical platform for anti-cancer drug and biomarker discovery.Br J Cancer 122,735-744(2020).
49.Noy,R.& Pollard,J.W.Tumor-associated macrophages:from mechanisms to therapy.Immunity 41,49-61(2014).
50.De Palma,M.& Lewis,C.E.Macrophage regulation of tumor responses to anticancer therapies.Cancer Cell 23,277-86(2013).
51.Galluzzi,L.,Buque,A.,Kepp,O.,Zitvogel,L.& Kroemer,G.Immunological Effects of Conventional Chemotherapy and Targeted Anticancer Agents.Cancer Cell 28,690-714(2015).
52.Bracci,L.,Schiavoni,G.,Sistigu,A.& Belardelli,F.Immune-based mechanisms of cytotoxic chemotherapy:implications for the design of novel and rationale-based combined treatments against cancer.Cell Death Differ 21,15-25(2014).
53.Solimini,N.L.,Luo,J.& Elledge,S.J.Non-oncogene addiction and the stress phenotype of cancer cells.Cell 130,986-8(2007).
54.Mantovani,A.,Polentarutti,N.,Luini,W.,Peri,G.& Spreafico,F.Role of host defense merchanisms in the antitumor activity of adriamycin and daunomycin in mice.J Natl Cancer Inst 63,61-6(1979).
55.Ben-Neriah,Y.& Karin,M.Inflammation meets cancer,with NF-kappaB as the matchmaker.Nat Immunol 12,715-23(2011).
56.Biswas,S.K.& Lewis,C.E.NF-kappaB as a central regulator of macrophage function in tumors.J Leukoc Biol 88,877-84(2010).
57.Arlt,A.et al.Inhibition of NF-kappaB sensitizes human pancreatic carcinoma cells to apoptosis induced by etoposide(VP16)or doxorubicin.Oncogene 20,859-68(2001).
58.Wang,S.et al.Activation of nuclear factor-kappaB during doxorubicin-induced apoptosis in endothelial cells and myocytes is pro-apoptotic:the role of hydrogen peroxide.Biochem J 367,729-40(2002).
59.Kroemer,G.,Galluzzi,L.,Kepp,O.& Zitvogel,L.Immunogenic cell death in cancer therapy.Annu Rev Immunol 31,51-72(2013).
60.Freeman,A.E.& Hoffman,R.M.In vivo-like growth of human tumors in vitro.Proc Natl Acad Sci U S A 83,2694-8(1986).
61.Vescio,R.A.,Connors,K.M.,Kubota,T.& Hoffman,R.M.Correlation of histology and drug response of human tumors grown in native-state three-dimensional histoculture and in nude mice.Proc Natl Acad Sci U S A 88,5163-6(1991).
62.Yoshimasu,T.et al.Data acquisition for the histoculture drug response assay in lung cancer.J Thorac Cardiovasc Surg 133,303-8(2007).
63.Yoshimasu,T.et al.In vitro evaluation of dose-response curve for paclitaxel in breast cancer.Breast Cancer 14,401-5(2007).
64.Hayashi,Y.et al.Class III beta-tubulin expression in tumor cells is correlated with resistance to docetaxel in patients with completely resected non-small-cell lung cancer.Intern Med 48,203-8(2009).
65.Ma,Y.et al.Anticancer chemotherapy-induced intratumoral recruitment and differentiation of antigen-presenting cells.Immunity 38,729-41(2013).
66.Correale,P.et al.Dendritic cell-mediated cross-presentation of antigens derived from colon carcinoma cells exposed to a highly cytotoxic multidrug regimen with gemcitabine,oxaliplatin,5-fluorouracil,and leucovorin,elicits a powerful human antigen-specific CTL response with antitumor activity in vitro.J Immunol 175,820-8(2005).
67.Carey,C.D.et al.Topological analysis reveals a PD-L1-associated microenvironmental niche for Reed-Sternberg cells in Hodgkin lymphoma.Blood 130,2420-2430(2017).
【国際調査報告】