(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】機械学習ベースのシム設定を用いた磁気共鳴イメージング
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
A61B5/055 351
A61B5/055 332
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024522636
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2022079006
(87)【国際公開番号】W WO2023066950
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145654
【氏名又は名称】矢ヶ部 喜行
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン ティム
(72)【発明者】
【氏名】ウエルバーン ヤン ヘンドリック
(72)【発明者】
【氏名】リップス オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ボーナート ペーター ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ネールケ ケイ
(72)【発明者】
【氏名】サズツカル シャルン エス
(72)【発明者】
【氏名】サラスワシー スジャ
(72)【発明者】
【氏名】ジャヤパラン マニヴァナン
(72)【発明者】
【氏名】スリニヴァサン アシュヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ルドラパトナ ウメッシュ スルヤナラヤナ
(72)【発明者】
【氏名】ネーラヴァリ ジャラダール
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB32
4C096AB34
4C096AD08
4C096AD10
4C096CA02
4C096CA15
4C096CA23
4C096CC20
4C096CC38
4C096CC40
(57)【要約】
磁気共鳴検査システムは、均一な静磁場を印加する主磁石を有する。アクティブシムシステムは、静磁場の不均一性を補正するためのシム磁場を印加する。シム駆動システムは、B0シム設定に基づいてアクティブシムシステムをアクティベートする。訓練済み機械学習モジュールは、1つ又は複数の実際の負荷パラメータから、B0シム設定を返すように訓練される。磁気共鳴検査システムは更に、RFアンテナ素子を有するRF送信システムと、予め決められた空間分布を有する(B1)RF場を印加するように前記RFアンテナ素子をアクティベートするRF駆動システムと、RFシム設定に基づいて、前記予め決められた空間分布からのRF場の空間分布の偏差を補正するためのシムRF場を印加するように前記RF駆動システムを制御するRFシムシステムと、1つ又は複数の実際の負荷パラメータからRFシム設定を返すように訓練された訓練済み機械学習モジュールと、を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴検査システムであって、
RFアンテナ素子と、予め決められた空間分布を有するRF場を印加するように前記RFアンテナ素子をアクティベートするRF駆動システムと、を有するRF送信システムと、
RFシム設定に基づいて、前記予め決められた空間分布からのRF場の空間分布の偏差を補正するためにシムRF場を印加するように、前記RF駆動システムを制御するRFシムシステムと、
1つ又は複数の実際の負荷パラメータからRFシム設定を返すように訓練された訓練済み機械学習モジュールと、
を有する磁気共鳴検査システム。
【請求項2】
前記RFシムシステムは、前記返されたRFシム設定を用いて実行された準備信号取得において実際に達成されたRF場の解析に基づいて、前記返されたRFシム設定の検証を実行するように構成される、請求項1に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項3】
前記返されたRFシム設定の検証は、前記準備信号取得において取得されたいくつかの予め決められたランドマーク位置における信号レベル又は前記信号レベルの統計解析に基づいて、実行される、請求項2に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項4】
1つ又は複数の実際の負荷パラメータからのRF場の空間分布の、予め決められた空間分布からの偏差を補正するために、RF駆動システムのRFシム設定を返すように機械学習モジュールを訓練する方法であって、前記訓練が、磁気共鳴検査システムのログファイル情報か、又は複数の磁気共鳴検査システムのインストールベースからのログファイル情報に基づく、方法。
【請求項5】
前記ログファイル情報から生成された訓練データセットが、前記返されたRF設定を用いて実行された準備信号取得において実際に達成されたRF場の解析に基づいて、前記返されたRFシム設定の検証に従って更新される、請求項10に記載の方法。
【請求項6】
均一な静磁場を印加する主磁石と、
静磁場の不均一性を補正するためにシム磁場を印加するアクティブシムシステムと、
B
0シム設定に基づいて、前記アクティブシムシステムをアクティベートするシム駆動システムと、
1つ又は複数の実際の負荷パラメータから、B
0シム設定を返すように訓練された訓練済み機械学習モジュールであって、前記実際の負荷パラメータが、検査される患者を予め決められた位置に有する検査ゾーンの画像から決定されることができる、機械学習モジュールと、
を有する、請求項1に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項7】
均一な静磁場の空間分布を表す測定データからB
0シム設定を計算するB
0場マッピングシステムと、
前記計算されたB
0シム設定を、前記B
0シム設定を返すように訓練された訓練済み機械学習モジュールから返された前記B
0シム設定と比較する比較器と、
を有する、請求項6に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項8】
前記計算されたB
0シム設定と前記返されたB
0シム設定との前記比較から信頼度マップを導出し、前記信頼度マップを表示するように構成されたユーザインタフェースを更に有する、請求項7に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項9】
前記B
0シム設定を返すように訓練された機械学習モジュールは更に、低解像度磁気共鳴画像に応じてB
0シム設定を返すように訓練され、前記シム駆動システムは、(i)前記実際の負荷パラメータから生成された前記B
0シム設定と、(ii)前記低解像度磁気共鳴画像からの前記返されたB
0シム設定、から合成B
0シム設定を生成するように構成される、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項10】
前記検査ゾーンから画像を取得するように構成されたカメラを有する、請求項6乃至8のいずれか1項に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項11】
シム磁場を印加して静磁場の不均一性を補正するために、予め決められた位置に検査される患者を有する検査ゾーンの画像から決定される1つ又は複数の実際の負荷パラメータから、アクティブシムシステムのためのB
0シム設定を返すように機械学習モジュールを訓練する方法であって、前記訓練が、磁気共鳴検査システムのログファイル情報に基づくか、又は複数の磁気共鳴検査システムのインストールベースからのログファイル情報に基づく、方法。
【請求項12】
前記訓練は、ランダムフォレストジェネレータ又はニューラルネットワークを用いることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ログファイル情報から生成される訓練データセットは、前記返されたB
0シム設定を用いて実行された予備信号取得における前記B
0マッピングの解析に基づく前記返されたB
0シム設定の検証に従って、更新される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
逆動作機械学習モジュールが、前記返されたRF設定から関心領域データを返し、
前記訓練データセットの整合性解析が、前記実際の負荷パラメータと比較される前記関心領域データに基づいて、実施される、請求項11乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記整合性解析に基づき、前記訓練に用いられるログファイルデータがタグ付けされる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
RF場を送信し、磁気共鳴信号を取得するように構成されるRF送受信システムであって、 前記RF送受信システムのRF共振周波数帯域幅の調整可能な中心周波数を有する、RF送受信システムと、
撮像環境の側面から前記中心周波数の設定を返すように訓練された訓練済み機械学習モジュールと、
を有する磁気共鳴検査システム。
【請求項17】
前記撮像環境の側面は、
システム誘導される側面、
被検体により誘導される側面、
スキャンタイプにより誘導される側面、及び
前記磁気共鳴システムの勾配符号化システムの熱に関する側面、
のいずれかを含む、請求項16に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項18】
前記訓練済みの機械学習モジュールは、前記中心周波数についての受信された初期推定値と、最初に推定された撮像環境の側面に対する前記撮像環境の側面の変化と、から前記中心周波数を返すように訓練されている、請求項16又は17に記載の磁気共鳴検査システム。
【請求項19】
検査される患者を予め決められた位置に有する検査ゾーンの画像から決定されることができる1つ又は複数の実際の負荷パラメータから、B
0シム設定を返すように訓練された訓練済み機械学習モジュールを動作させ、前記B
0シム設定に基づいて、アクティブシムシステムをアクティベートするようにシム駆動システムを駆動することで、前記アクティブシムシステムに、静磁場の不均一性を補正するためのシム磁場を印加させること;及び/又は
1つ又は複数の実際の負荷パラメータからRFシム設定を返すように訓練された訓練済み機械学習モジュールを動作させ、RFアンテナ素子と、予め決められた空間分布を有するRF場を印加するために前記RFアンテナ素子をアクティベートするRF駆動システムと、を有するRF送信システムを駆動することで、前記RF送信システムに、前記RFシム設定に基づいて前記予め決められた空間分布からの前記RF場の空間分布の偏差を補正するためのシムRF場を印加させること;及び/又は
撮像環境側面から中心周波数設定を返すように訓練された機械学習モジュールを動作させ、RF場を送信し及び磁気共鳴信号を取得するRF送受信システムを駆動し、前記RF送受信システムのRF共鳴周波数帯域幅の調整可能な中心周波数を、前記返された中心周波数に設定すること、
をコンピュータに実行させる命令を有するコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一な静磁場(B0)を印加する主磁石と、静磁場の不均一性を補正するためにシム磁場を印加するアクティブシムシステムとを有する磁気共鳴検査システムに関する。シム駆動システムが、B0シム設定に基づいてアクティブシムシステムをアクティベートするために提供される。磁気共鳴検査システムは、磁気共鳴検査システムの検査ゾーンに、予め決められた空間分布を有するRF B1
+場を送出するように構成された無線周波数(radio frequency、RF)送信システムを更に有する。
【背景技術】
【0002】
このような磁気共鳴検査システムは、Y. Shi他の論文"Template-Based Field Map Prediction for Rapid Whole Brain B0 Shimming", In Magnetic Resonance in Medicine 80 (2018) 171-180から知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この刊行物は、B0場における人間の頭部の存在によって引き起こされるB0不均一性を決定するためのテンプレートベース方法に関する。シム設定は、テンプレートベース方法によって決定されるB0場分布から取得される。
【0004】
米国特許出願公開第2001/053877号公報は、磁気共鳴装置の撮像ボリューム内の基本的な(主)磁場均一性を改善するためのアクティブシムシステムを有する磁気共鳴装置を開示している。アクティブシムシステムを駆動するシム電流及び勾配システムのオフセット電流は、ニューラルネットワークによって調整されることができる。
【0005】
本発明の目的は、磁気共鳴イメージングの準備時間が短縮される磁気共鳴検査システムを提供することである。特に、正確なB0シム設定を決定するのに必要な期間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、均一な静磁場を印加する主磁石と、静磁場の不均一性を補正するためにシム磁場を印加するアクティブシムシステムと、B0シム設定に基づいて、アクティブシムシステムをアクティベートするシム駆動システムと、1つ又は複数の実際の負荷パラメータからB0シム設定を返す(return)ように訓練された訓練済み機械学習モジュールと、を有する磁気共鳴検査システムによって達成される。
【0007】
アクティブシムシステムは、主磁石からの均一な静磁場に重ね合わされるシム磁場を生成する1つ又は複数のシムコイルを有し、その結果、任意の主磁場不均一性(B0不均一性)が、シム磁場によって補償される。特に、B0不均一性は、検査ゾーン(の一部)内で補償される。B0シム設定は、補償シム磁場を生成するためにそれぞれのシムコイルに印加される電流強度を表すことができる。シム駆動システムは、シムシステムのシムコイルに電力を印加するための電流又は電圧増幅器として実現されることができる。シムシステムは、実際には、磁気共鳴信号の空間符号化のための勾配磁場パルスを生成するように動作する勾配システムと組み合わされるか、又はそれと一体化されることもできる。本発明の洞察は、実際に意図された検査のための実際の負荷パラメータから機械学習(ML)に基づいてB0シム設定を正確に決定することができることである。負荷パラメータは、磁気共鳴検査システムの無線周波数(RF)送信及び受信アンテナ(コイル又はコイルアレイ)システムとの患者の身体の電磁負荷又はカップリングを表す。従って、本発明は、撮像されるべき対象、例えば検査されるべき患者が磁気共鳴検査システムの検査ゾーン内に配置される場合に、B0シム設定の決定のために、磁気共鳴検査システムから、いかなるMRデータも全く取得する必要がないか、又は比較的簡単なMRデータの小さな集合のみが必要とされることを達成する。実際の負荷パラメータは、検査される患者の身体の特徴を表わすことができる。例えば、実際の負荷パラメータは、例えば、磁石の基準フレームにおける患者の体重、患者の向き、患者の位置に関する。実際の負荷パラメータのための他の選択肢は、磁石の基準フレームにおける患者キャリアの実際の位置、検査される身体部分、又は患者の性別である。実際の負荷パラメータがそこから決定されることができる情報は、(例えば、インボアカメラによって取得された位置において検査される患者を有する検査ゾーンの画像から取得されることができる。カメラは、光学(例えば、RGBカラー)カメラ又は赤外線(IR)カメラでありうる。IRカメラは、検査ゾーンの(高レベルの)照明を必要とせず、検査される患者の体温の温度分布及び患者キャリアの温度に依存し得る。これは更に、検査される患者にとって不快であり得る強い照明の必要性を回避する。これらの画像から、パラメータ(位置、向きなど)及び場合によってはより多くのパラメータ(例えば、身体の粗い形状など)を決定し、モデルに追加することができる。これらの画像は、磁気共鳴検査システムの検査ゾーンから画像を取得するように構成された熱光学(近赤外線)カメラによって生成されることができる。代替として、実際の負荷パラメータは、低解像度のサーベイ画像に組み込まれた画像情報から導出されることができる。更に、実際に接続された無線周波数(RF)コイルに関する技術情報は、患者の身体にロードされるときのRFコイルの電磁応答(例えば、電磁的負荷によるQファクタに影響を及ぼすコイル形状特性)を考慮するために、実際の負荷パラメータに含まれることができる。
【0008】
本発明は、時間がかかり且つエラーを起こしやすいシム準備フェーズが、人間のオペレータによって直接的に監督される必要性を回避する。このようにして、全体としてMR検査が加速される。米国特許出願公開第2020/0072931号公報から、磁場不均一性をマッピングするマルチパラメータ非線形回帰ΔB0マッピング法のための開始パラメータの推定を導出するためにニューラルネットワークを利用することがそれ自体知られている。
【0009】
本発明のこれら及び他の態様は、従属請求項に定義される実施形態を参照して更に詳述される。
【0010】
一実施形態では、磁気共鳴検査システムは、局所的な磁場強度を表す測定値から均一な静磁場の空間的な磁界分布を生成する、すなわちB0磁場測定値を生成するB0マッピングシステムを有する。B0マッピングシステムは、B0磁場測定値からB0シム設定を計算するように更に構成される。更に、B0マッピングシステムは、B0磁場測定値から計算されたB0シム設定を、機械学習によって取得されたB0シム設定値と比較するように構成される。この比較は、計算されたB0シム設定と、機械学習からのB0シム設定との間の偏差を表す信頼度マップにおいて表されることができる。測定されたシム設定と機械学習によって得られたシム設定との間の偏差が小さいほど、機械学習によって返されたシム設定の信頼度が高くなる。小さな偏差は、測定結果と機械学習結果との間の高い一貫性を表す。この信頼度マップは、グラフィカルユーザインタフェース上でオペレータに提示されることができる。この目的のために、ユーザインタフェースは、計算されたB0シム設定と訓練済み機械学習モジュールからのシム設定との比較から信頼度マップを導出し、信頼度マップを表示するように構成される。
【0011】
本発明の別の実施形態では、機械学習モジュールは更に、サーベイ画像などの低解像度磁気共鳴画像に応じてB0シム設定を返すように訓練され、シム駆動システムは、(i)実際の負荷パラメータからのB0シム設定、及び(ii)低解像度磁気共鳴画像からのB0シム設定(又は主磁場不均一性データ)、から複合B0シム設定を生成するように構成される。このようにして、B0シム設定は、小さなMR画像データセットの取得のために、短い取得時間、例えば数秒程度のみを必要とするk空間の中心領域のみからのMRデータの簡単な取得を犠牲にして、実際の負荷構成に対してより正確に調整される。
【0012】
本発明の磁気共鳴検査システムの一実施形態では、実際の主磁場不均一性の空間分布(B0マップ)を生成するためのB0マッピングシステムが提供される。このB0マップは、受信器無線周波数(RF)感度プロファイルの較正のために取得されたサーベイ画像又は画像データから計算されることができる。マルチポイントディクソン水-脂肪分離法が適用される場合、それはまたB0マップのためのデータを利用可能にする。比較器は、取得されたB0マップから導出されたシム値と、実際の負荷パラメータから訓練済み機械学習によって返されたB0シム設定の値とを比較するために(例えば、ソフトウェアにおいて)提供される。この比較は、ニューラルネットワークの重みなどの機械学習の設定をアップデートして、実際の負荷パラメータからのB0シム設定の機械学習モジュールによる予測の精度を改善するために使用されることができる。
【0013】
本発明の磁気共鳴検査装置のさらなる実施形態では、計算されたB0設定と、機械学習モジュールによって返されたB0シム設定とから信頼度マップを導出するようにユーザインタフェースが提供され構成される。信頼度マップは、ユーザインタフェースのディスプレイ上に表示されることができる。これは、機械学習モジュールによって返されるB0シム設定をどのように信頼するか、及びB0マップに基づくB0シム設定の従来の計算を省くかどうか、についてオペレータを支援することができる。信頼度マップに基づいて、ユーザは、機械学習モジュールを無効にし、B0マップの手動計測をトリガすることができる。さらなる変形例では、磁気共鳴検査システムのシム駆動システムは、検査プロトコル中にアイドル時間が生じた場合にB0マッピングデータを自律的に取得するように構成されてもよい。
【0014】
本発明の磁気共鳴検査装置の別の実施形態では、機械学習モジュールは、低解像度磁気共鳴画像に応答して、及び実際の負荷パラメータに応答して、B0シム設定を返すように訓練される。複合B0シム設定は、実際の負荷パラメータから返されるB0シム設定よりも正確であるシム駆動システムによって計算されることができる。複合B0シム設定のこの増大される精度は、実際の負荷パラメータからより正確なB0シム設定を返すように機械学習モジュールを更に訓練するために使用されることができる。機械学習モジュールが使用により一層良好に訓練されるにつれて、機械学習モジュールの挙動は、MRイメージデータから(例えば、サーベイスキャンから)B0マッピングデータをより一層少なく使用するように進化することができる。これは、高い空間分解能及び意図されたコントラス重み付けの診断MR画像データの実際の取得に先立って、準備フェーズの時間効率を増加させることにつながる。
【0015】
本発明は、更に、実際の負荷パラメータからB0シム設定を返すために機械学習モジュールを訓練することに関する。特に、訓練は、磁気共鳴検査システム自体のログファイル情報、又は複数の磁気共鳴検査システムのインストールベースからのログファイルデータに基づいて、連続的に実施されることができる。ランダムフォレスト回帰を含む機械学習モデルによって非常に良好な結果が達成される。更に、ニューラルネットワークに基づく機械学習モデルは、十分に訓練された機械学習モデルをもたらす。良好な結果は、完全に接続された(すなわち、非ディープ(non-deep)及び非畳み込み)ネットワークによって達成される。他のネットワークアーキテクチャも同様に機能すると想定される。特に、ログファイルデータは、典型的には、磁気共鳴検査システムによって又は非常に類似したタイプの磁気共鳴検査システムによって実施された多数の撮像プロシージャにおける、実際の負荷パラメータの値及び最適化されたシム設定に関する情報を含む。
【0016】
機械学習モデルの訓練の実現において、訓練は、ログファイルデータと、(例えば、低解像度の)取得されたMR画像データから計算されたB0シム設定とに基づいて実行されることができる。機械学習モデルが更に訓練され、より高いレベルの精度と信頼度が達成されると、取得されたMRデータから従来のように計算されるB0シム値がますます不要になりうる。精度及び信頼度レベルは、機械学習から導出されたB0シム設定とMR画像データから計算されたシム設定(例えば、ログファイルデータに基づく)との間の比較の統計解析に基づいて評価されることができる。このような統計解析は、予測値と測定値との間の相関関係、二乗誤差、L1ノルムの差異などの様々な誤差尺度による比較に基づいて実施されることができる。
【0017】
本発明の別の態様は、検査ゾーン内に無線周波数場(B1
+)を送信するための無線周波数システムを有する磁気共鳴検査システムに関する。送信される無線周波数場に関して、予め決められた空間分布が規定される。無線周波数場の空間分布は、無線周波数場の送信中に均一な静磁場に重畳される勾配磁場パルスと組み合わせて、無線周波数システムの周波数設定に基づいて制御されることができる。検査ゾーンに送信される無線周波数場は、スピンフリップ、スピン反転、スピンリフォーカシング等のような、検査される対象(例えば、検査される患者)内の核スピンを操作することができる。
【0018】
本発明の別の洞察は、実際に意図される検査のための実際の負荷パラメータから、機械学習に基づいてB1シム設定を正確に決定することができることである。これらのB1シム設定は、無線周波数(RF)B1
+励起場の補正に関連する。これらの補正は、設定された予め決められた基準分布に対する実際に送信されたB1
+RF場の空間分布の偏差を表す。この所定の基準分布は、例えば、理想的な直交ボディコイル(QBC)によって生成されるような空間的に均一な分布、又はペンシルビーム励起もしくは所定の空間スラブの励起などの特別に設計された空間RFプロファイルでありうる。従って、本発明は、B1シム設定の決定のために、撮像されるべき対象、例えば検査されるべき患者が磁気共鳴検査システムの検査ゾーン内に配置されるときに、磁気共鳴検査システムから、いかなるMRデータも全く取得する必要がないか、又は比較的簡単なMRデータの小さな集合のみが必要とされることを達成する。更に、B1シム設定の機械学習に基づく決定は、B0シム設定の機械学習に基づく決定と組み合わされてもよい。従って、時間のかかるB0シム設定だけでなくB1シム設定も、MRデータ取得を必要とせずに、又はせいぜい限られたMR調査画像データセットの取得だけで決定することができる。これにより、実際のMR診断画像データが取得される前に準備フェーズを実行するための時間及びオペレータの労力が更に低減される。従って、MR検査のワークフローがより効率的になる。
【0019】
本発明はまた、予め決められた空間分布を有するB1
+無線周波数場を印加するための無線周波数(RF)送信システムを有する磁気共鳴検査システムに関する。例えば、無線周波数送信システムは、空間的に均一なB1
+場を磁気共鳴検査システムの検査領域に送信することができる。予め決められた空間分布は、例えば、ナビゲータのための局所的なRF励起プロファイル(例えば、ペンシルビーム形状)を生成するため、又は励起場の空間形状に基づく空間エンコーディングを達成するために、不均一であってもよい。この均一なB1
+場は、RF送信システムのそれぞれのRFアンテナ素子又はモードからの空間送信プロファイルの重ね合わせによって形成される。そのために、RF駆動システムが設けられ、RFシム設定に基づいてそれぞれのRFアンテナ素子をアクティベートし、複数のRFアンテナ素子が干渉重畳寄与によって予め決められた空間分布のB1場を生成するようにする。RFアンテナ素子を有するRFドライバは、RFシムシステムとして機能する。すなわち、RFシムシステム及びRF送信システムは、共通のハードウェア構成コンポーネントに基づくことができる。RFシムシステムは、予め決められた(例えば、均一である)空間分布からの無線周波数場の空間分布の偏差を補正するように機能する。本発明のこの態様によれば、RFシム設定は、機械学習モジュールによって、実際の負荷パラメータから返される。
【0020】
本発明の磁気共鳴検査システムの別の例では、RFシムシステムは、返されたシム設定を検証するように構成される。この検証は、低解像度サーベイ磁気共鳴画像のためのサーベイ収集のためのような準備取得のためのMR信号取得において、返されたRFシム設定から生成されたB1
+RF場の解析に基づいて行われることができる。解析は、B1
+RF場空間不均一性の評価に関連してもよい。より洗練された手法では、B1
+RF場は、B1
+RF場の振幅及び位相の中間値、標準偏差、中央値の計算などの統計的技法によって、又はB1
+RF場の振幅及び位相のヒストグラム解析に基づいて評価されることができる。より単純なバージョンでは、解析は、少数の予め決められたランドマーク位置における信号レベルに基づいて行われてもよい。
【0021】
本発明はまた、例えば空間的に均一な分布でありうる予め決められた空間分布に対するB1
+RF場の偏差を補正するためのRF駆動システムのRFシム設定を返すよう機械学習モデルを訓練する方法に関し、本方法は、B1
+RF場の空間的に非線形な分布にも適用されることができる。機械学習は、以前のRFシム設定を以前の負荷パラメータにリンクさせるログファイル情報に基づいて訓練されるニューラルネットワークに基づくことができる。
【0022】
本発明の訓練方法の一実施形態では、ログファイル情報は、返されたRFシム設定の検証に基づいて、更新又は強化されることができる。このようにして、訓練データのセットは拡大され、それにより、学習されたニューラルネットワークによって返されるシム設定をより正確なものにする。
【0023】
本発明の訓練方法の別の実施形態では、逆動作機械学習モジュールによって、関心領域データが、順動作機械学習において返されたRFシム設定から返されることができる。整合性分析は、返された関心領域データを、実際の負荷パラメータに含まれる関心領域データ(例えば、ユーザによって元々入力されたもの)と比較することによって、訓練データセットに対して実行されることができる。このようにして、訓練データセットは、ハードウェア欠陥に関連するデータなど、不安定又は信頼できないデータは破棄されることができ、機械学習モジュールのその後の訓練に影響を及ぼさないという点で強化されることができる。
【0024】
本発明の別の例では、磁気共鳴検査システムは、RF場を送信し、磁気共鳴信号を取得するように構成され及び無線周波数(RF)送受信(T/R)システムのRF共振周波数帯域幅の調整可能な中心周波数を有する無線周波数(RF)送受信(T/R)システムと、撮像環境の態様から中心周波数設定を返すように訓練された訓練済み機械学習モジュールとを有する。
【0025】
この態様の洞察は、中心周波数のいわゆるF0較正の煩雑な繰り返しが、撮像環境の側面からの機械学習に基づいて実施されるF0較正によって置き換えられることができることである。これらの撮像環境の側面は、磁気共鳴検査システムの熱的な状況を表す、勾配加熱、又は磁気共鳴検査システムの超電動磁石巻線の冷却システムの極低温動作の特性のような、システム誘導されるものでありうる。更に、撮像環境の側面は、被検体の動き又は負荷パラメータのような被検体(すなわち、患者)により誘導されるものでありうる。また、撮像環境の側面は、B0シム設定及びやB1シム設定を含むスキャンタイプの側面に関係しうる。
【0026】
実際の実施形態では、中心周波数は、検査ゾーン内の予め選択された領域での測定から又は他の何らかのF0較正方法から得られた最初の中心周波数設定から調整されることができる。調整は、初期状況と比較して変化した画像状況に基づいて実施されることができる。例えば、患者の動きのために、測定ゾーンはシフトされる必要がありうる。訓練済み機械学習モジュールは、撮像環境の変化から測定ゾーンの更新を返すことができ、又は調整された中心周波数の推定値を直接返すことさえできる。
【0027】
本発明の別の例では、磁気共鳴検査システムは、無線周波数(RF)送受信(T/R)システムを有し、RF T/Rシステムは、RF場を送信し、磁気共鳴信号を取得するように構成されるとともに、RF T/RシステムのRF共振周波数帯域幅の調整可能な中心周波数を有する。
【0028】
より詳細な例では、訓練済み機械学習モジュールは、1つ又は複数の実際の負荷パラメータから中心周波数設定を返すように訓練されたものである。
【0029】
本発明の他の態様では、訓練済み機械学習モデルは、中心周波数の受信された初期推定値及び磁気共鳴検査システムの勾配符号化システムの熱的側面からも中心周波数設定を返すように訓練される。
【0030】
これらの実現例は、機械学習によってRFシステムの中心周波数を正確に設定することを、かなりの程度まで自動的に可能にする。これは、中心周波数を設定するための時間が短縮され、中心周波数の調整が、撮像プロシージャの総スキャン時間に大きな影響を与えることなくしばしば繰り返されることができるので、撮像プロシージャの準備フェーズの時間を実質的に短縮する。実際には、中心周波数の調整は、準備時間のかなりの部分を占めるようである。従って、中心周波数は、例えば、臨床検査プロトコル内の信号取得と信号取得の間に又は信号取得グループと信号取得グループとの間に、総スキャン時間を大幅に増加させることなく更新されることができる。中心周波数のMLベースの調整は、磁気共鳴検査システムの勾配符号化システムの熱挙動などのシステム誘起効果を考慮に入れることができる。すなわち、MLシステムは、特定のスキャンタイプに関連する中心周波数の系統的なバリエーションを学習するように構成される。特に、MLシステムは、それぞれ異なるタイプであり得る以前のスキャンの時間パターンに関連する加熱を考慮するように訓練されることができる。また、検査される患者の呼吸運動、及びRFシステムの送信アンテナ及び受信アンテナにおける実際の負荷に影響を及ぼす解剖学的バリエーションなど、対象によって誘導される側面が考慮されることができる。更に、MLベースの中心周波数調整は、B0シム設定を利用することができる。これらのB0シム設定は、従来の方法によって導出されてもよいし、本明細書に開示される機械学習によって生成されることができる。
【0031】
本発明は更に、請求項19に記載のコンピュータプログラムに関する。
【0032】
従って、本発明のコンピュータプログラムが磁気共鳴検査システムの制御プロセッサにインストールされると、磁気共鳴検査システムは、本発明の方法を実行することができる。従って、本発明のコンピュータプログラムは、本発明の方法の技術的効果を生じさせる命令を含む。本発明のコンピュータプログラムは、CD-ROM又はUSBスティックなどのデータ担体上に提供されてもよい。代替として、本発明のコンピュータプログラムは、クラウドベースのワールドワイドウェブなどのデータネットワークからダウンロードされてもよい。本発明のコンピュータプログラム(製品)は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに本発明の方法(ステップ)を実行させる命令を有する。本発明は更に、コンピュータによって実行される場合に該コンピュータに本発明の方法(ステップ)を実行させる命令を有するコンピュータ可読(記憶)媒体に関する。
【0033】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照し、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】実際の負荷パラメータに応じてB
0シム設定が機械学習によって返される、本発明の実現例を組み込んだ磁気共鳴検査装置の一例の概略図。
【
図2】実際の負荷パラメータに応じてRFシム設定が機械学習によって返される、本発明の実現例を組み込んだ磁気共鳴検査システムの一例の概略図。
【
図3】実際に測定されたB
0シム設定と機械学習により予測されたB
0シム設定との比較の結果を示す図。
【
図4】実際に測定されたRFシム設定と機械学習によるRFシム設定との比較の結果を示す図。
【
図5】RF中心周波数のMLベースの調整の例を示す概略図。
【
図6】RF中心周波数のMLベースの調整の例を示す概略図。
【
図7】RF中心周波数のMLベースの調整の例を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、B
0シム設定が実際の負荷パラメータに応じて機械学習によって返される、本発明の実現例を組み込んだ磁気共鳴検査装置の一例の概略図を示す。磁気共鳴検査システム10は、通常は超電導コイルである一組の主磁場コイル14と、一組のシムコイル11とを有する磁石システムを有する。主磁場コイルは、ほぼ空間的に均一な静磁場を生成する。シムコイル11は、主磁石の磁場に重畳される補正シム磁場を生成するように制御することができ、重畳磁場は、1ppm未満でより高い程度の空間不均一性を有する。磁気共鳴検査システムは、一般に可動患者テーブルである患者キャリア16を有し、検査される患者は、磁気共鳴検査システムの検査ゾーン15内の磁場内で患者キャリア16上に配置されることができる。
【0036】
シム駆動システム12を有するシムコイル11は、アクティブシムシステムを形成する。アクティブシムシステムは、シム駆動システム12によって制御され、シム駆動システム12は、主磁場コイルの磁場の空間不均一性を補正するように前記アクティブシムシステムをアクティベートする。シム駆動システム12は、実際の負荷データからシム設定27を返す訓練されたニューラルネットワークを有する機械学習モジュール23を備える。隠れ層(250)を有する完全に接続されたネットワークにより良好な結果が得られる。シム設定は、シムコイルのアクティベーションを調整する制御信号である。実際の負荷データは、検査ゾーン内の磁場が検査される患者の身体によって影響を受ける方法を表す。患者の身体(組織、血液、骨)の磁化率により、検査ゾーン内の磁場は、患者の身体によって影響を受ける。シム設定は、検査される患者によって引き起こされる磁場摂動が補償されるように、シムコイルをアクティベートする。
【0037】
機械学習モジュールは、検査されるべき患者に起因する実際の(誘導)負荷を表す予め決められたパラメータのセットからシム設定を生成するように訓練される。これらの予め決められたパラメータは、磁石システムの設計パラメータ及び配置の特徴、並びに患者及びシーケンスの特徴を含む。これらの予め決められたパラメータは、例えば、テーブル位置、適用されるRFコイル、患者の体重、患者の向き、RFボディコイルの電圧定在波比VSWR、選択されたFOV、又は選択された解剖学的構造に関連し得る。機械学習モデルは、シム設定の従来の調整と並行して初期にシム設定を生成するように訓練されてもよい。そのような従来のアプローチでは、磁場分布は、不均一の磁場の中の様々な不所望の高調波成分を識別する磁場マッピングによって決定されることができる。補正されていない磁場内の不所望の球面調和成分ごとに、シム磁場は、シムコイルアクティブシムシステムに電流を流すことによって生成される。磁場マッピングは、磁場測定に基づいて、例えば、検査ゾーン上に分散された磁気的に感受性のあるプローブによって、実施されることができる。機械学習モデルの訓練中、ニューラルネットワークのアクティベーションレベルは、機械学習モデルによって返されるシム設定と、シム設定の従来の調整によって生成されるシム設定との間の差を最小限に抑えるように調整される。代替として、機械学習モジュールは、ランダムフォレスト回帰器を使用することによって訓練されることもできる。これは、トレーニング時に多数の決定木を構築し、個々の木のクラス(分類)又は中間/平均予測(回帰)のモードであるクラスを出力することによって動作する、分類、回帰、及び他のタスクのためのアンサンブル学習方法である。機械学習モデルが所望のレベルの精度を達成した場合、従来の調整は省かれることができ、機械学習モデルによって返されたシム設定のみに基づいてアクティブシムシステムが制御されることができる。このようにして、検査ゾーン内で正確に均一な磁場を達成するために必要とされる時間がより少なくなる。機械学習モジュールの訓練は、正確なシミングに一致するシム設定及び実際の負荷パラメータに基づいて行われる。これらのデータは、磁気共鳴検査システムに搭載されてローカルに記憶されてもよい。従って、機械学習モジュールは、磁気共鳴検査システム上で最も頻繁に実行される検査のための正確なシミングに関連するシム設定及び実際の負荷パラメータの対のデータセットを含むオンサイト学習アプローチで訓練されることができる。
【0038】
多種多様な検査プロトコル及び検査される個々の患者にわたるシム設定の分布は、しばしば複雑であるが、シム設定は、ログファイルデータに基づいて訓練された訓練された機械学習モジュールによって、実際の負荷パラメータに基づいてかなり正確に予測されることができる。機械学習モジュールのための予め訓練されたモデルは、機械学習モジュールの学習の展開の効率を増大させることができる。これらの予め訓練されたモデルは、磁場の残留不均一性に対するMRデータ取得の感度のレベルを表すMR取得シーケンスの撮像パラメータの選択された値を含む、患者の身体及び検査プロトコルを表す特定のパラメータのための初期シム設定を含む。例えば、これらのパラメータは、例えば上述のような入力パラメータであってもよく、例えば、実際に測定された値を予測するためにランダムフォレストリグレッサを使用してもよい。ネットワークは、訓練及び検証データを使用する標準的な訓練プロシージャを使用して、訓練されることができる。本発明のこの態様は、機械学習モデルをゼロから訓練する必要を回避する。更に、機械学習モデルは、診断用MR撮像データ取得に先行する準備用MRデータ取得から、及び較正用MRデータ取得から、導出されるデータに基づいても訓練されることができ、かかるデータの情報は、取得された診断用MR撮像データから磁気共鳴画像を再構成する際に用いられることができる例えば、主磁場マップ(B0マップ)は、RF受信器コイル(素子)の局所感度プロファイルが評価されるコイル感度マップ(CSM)から取得されることができる。これらのCSMマップは、アンダーサンプリングされたk空間データ(パラレルイメージング、例えばSENSE)からエイリアシング再構成を展開するために必要とされる。具体的には、B0マップは、磁化率誘起の磁場歪みを計算するために、大きさ画像の閾値処理と双極子カーネルによる畳み込みによって、SENSE基準スキャンからシミュレートされた。その後、B0マップは、直交多項式(又は他の適切に選択された基底関数)のための係数セットに拡張された。第2のランダムフォレスト分類器を訓練してシム値の最終予測を得るために、ログファイル値及び第1のモデルの予測に加えて、最低次数の係数が使用された。SENSE基準スキャンの代わりに他のタイプの画像が使用されることができ(例えば、コイルサーベイ、スカウトスキャン)、又は利用可能な場合は、測定された3D B0マップが使用されることができる。
【0039】
単一のモデルを使用する代わりに、モデルは、(例えば、スキャンされた解剖学的構造/接続されたコイルに応じて)いくつかのより具体的なサブモデルに分解されてもよい。どのモデルが所与の状況に対して正しいモデルであるかは、実行時に選択される。この分解は、ログファイルパラメータのいくつかがカテゴリ値であり、いくつかが連続的であり、いくつかのスケーリング問題を提起するので、有利であり得る。これらの問題は、カテゴリ値に基づいてサブモデルを選択し、次いで、特定のサブモデルを訓練するために連続値のみを使用することによって、自然な方法で除去されることができる。
【0040】
図2は、実際の負荷パラメータに応答して機械学習によってRFシム設定が返される、本発明の実現例を組み込んだ磁気共鳴検査システムの一例の概略図を示す。
図2には、RF送信システムのRF送信アンテナ素子21も示されている。RF送信アンテナ素子は、患者身体における(例えば、陽子又は他の核双極子モーメントの)原子核スピンの励起、リフォーカス、反転などのスピン操作を引き起こす検査ゾーン内のRF(B
1
+)場パルスを生成するようにアクティベートされることができる。少なくともある程度、RFアンテナ素子は、空間的に(非)選択的なスピン操作のためにRF場の空間分布を制御することができるように、独立してアクティベートされることができる。RF送信システムは、RFアンテナ素子と、RFシムシステム25を備えるRF駆動システム22と、を有する。RF駆動システムは、RFアンテナ素子に電流(パルス)を印加するための1つ又は複数のRF増幅器及び調整回路を有するRF駆動システムは更に、RFシムシステム25を有し、RFシムシステムは、所望の空間RF磁界分布からの偏差を補正するようにRFアンテナ素子のRFシム設定を生成する。RFシムシステムは、実際の負荷パラメータから、RFドライバのRFシム設定を返すための機械学習モデル23を有する。RFシム設定を返すための機械学習モデルは、主磁場シム(B
0)シム設定を生成するための
図1に示される機械学習モデル13と組み合わされてもよく、又は2つの別個の機械学習モジュールが、それぞれ、B
0シミング及びRFシミングのために用いられることができる。機械学習モジュール23は、所望のRF磁界分布を生成するのに適切でありかつ実際の誘導負荷データに関連するRFシム設定を有するログファイルデータに基づいて訓練されることができる。これらの訓練データは、B
0シム測定(上記参照)と同様にパラメータ化された実際の標示負荷データの様々な値について、特に両ボディコイルチャンネルのVSWR(それらの比を含む)、テーブル位置などについて、従来の(例えばDREAMベースの)B
1
+マッピングプロシージャに基づいて生成されることができる。
【0041】
図3及び
図4はそれぞれ、測定されたB
0シム設定と機械学習で予測されたB
0シム設定との実験結果と、測定されたRFシム設定と機械学習で予測されたRFシム設定との実験結果である。グラフは、従来技術によって設定された実際のシム設定と、MLモジュールによって返された予測されたシム設定との間の適正な対応を示す。これは、信頼できる推定が本発明のMLベースのアプローチによって行われることを示している。
【0042】
図5、
図6及び
図7は、RF中心周波数のそれぞれ異なるMLベースの調整の概略図を示す。特に、
図5の実施形態では、3つの平面で撮像された関心領域を得るために低解像度3平面ローカライザスキャンが最初にスキャンされて、さらなるセッションが計画される。準備フェーズのエントリーポイントは、中心周波数F
0の粗いモード及び微細なモードを含むこのスキャンのために実行される。この提案されるアプローチでは、サーベイ中に測定されたF
0を基準値と見なし、系統的なF
0バリエーションを予測するために、モデルを用いて2回目のスキャンのF
0の変化が推定される。同様に、3回目のスキャンでは、2回目のスキャンから得られたF
0が基準値であり、同じモデルに基づいてデルタF
0が計算される。このステップは、検査のすべての後続のスキャンについて繰り返される。
【0043】
直前のスキャンからのF
0の変化を計算する間、勾配rms値、推定最大勾配ホットスポット温度、スルーレート、スキャン時間、スキャン間の時間のようなパラメータが、モデルへの入力として使用される。次いで、このモデルは、直前のスキャンのF
0に加えられるF
0の変化を予測して、現在のスキャンのための所望のF
0を得る。
図6において、本発明の実現例は、各スキャンの中心がサーベイスキャンから遠くなるほど、F
0の予測が困難になることを説明する。ここでは、提案された解決策は、解剖学的ランドマークの知識に基づいて測定ボリュームを適切に配置することによって、測定ステップの最中の多数のF
0測定の必要を最小限に抑え、患者動きを追跡し、オフライン検討から決定されたであろう特有のランドマークの周りのF
0測定ボックスに基づくことにより、スキャン間のF
0をより一貫性をもってアップデートすることを支援する。また、後続の計画が変化するが、それでもなお予め決定されたランドマークをカバーする場合、測定されるF
0予測は効果的である。しかしながら、新しい計画が指定されたランドマークをカバーしない場合、新しいランドマークが識別される必要がありうる。
図7において、本発明の実現例は、サーベイスキャンからのF
0の最初の推定を使用し、サーベイスキャンから(例えば、スマートサーベイから)得ることができる解剖学的ランドマークも使用する。更に、本実施の形態(1-3)では、B
0シム予測も用いられる。サーベイ後の最初のスキャンの開始時に、計画の中心に近い特定のランドマーク付近のF
0の測定が実施される。動き(剛体又は非剛体)があっても、その特定のランドマークにおいて相対B
0がどのように変化するかについての知識から、すべての後のスキャンについて、F
0は、観察された動き(センサに基づくか、又は画像のコレジストレーションによる)及び予想される全身的なドリフトに基づいて予測される。この場合、B
0予測もシムを設定するために使用される。更に、後続の計画が変更されても、サーベイで得られたランドマークの1つをカバーする場合、ランドマーク間の相対B
0及びF
0はB
0シム予測から利用可能であるので、F
0予測はなお機能する。計画がランドマークをカバーしない場合、関心領域をカバーする新たなサーベイが実行される必要があり、予測を続けるために最初のF
0測定が繰り返されなければならない。この実現例は、F
0測定の必要を完全に排除する。
【0044】
この実施形態は、多くの利点、すなわち、a)B0の予測及びシムの設定、b)F0の予測、及びc)動きのある場合のa及びbの両方のアップデート、を有する。
【国際調査報告】