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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】車線の境界を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20241018BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20241018BHJP
   G06V 10/75 20220101ALI20241018BHJP
   G06V 20/58 20220101ALI20241018BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
G06T7/60 200J
G06V10/75
G06V20/58
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523123
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2022078053
(87)【国際公開番号】W WO2023061915
(87)【国際公開日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】2110938
(32)【優先日】2021-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524142714
【氏名又は名称】アンペア エス.エー.エス.
(71)【出願人】
【識別番号】508157749
【氏名又は名称】シーエヌアールエス
(71)【出願人】
【識別番号】524142725
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド テクノロジー ド コンピエーニュ(ユーティーシー)
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カマルダ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】シェールファオウィ,ヴェロニク
(72)【発明者】
【氏名】ダヴォイネ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】デュランド,ブルーノ
【テーマコード(参考)】
5H181
5L096
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181LL04
5L096BA04
5L096CA02
5L096CA27
5L096DA02
5L096FA03
5L096FA06
5L096FA66
5L096FA67
5L096FA69
5L096FA79
5L096JA11
5L096JA22
(57)【要約】
自動車両(1)の車線(VC1、VC2)の境界(L1、L2、L3)を検出するための方法(P1)が開示され、この方法は、-車両環境検出手段(3)によって前記境界を検出するステップ(E1)であって、前記境界は、関数、特に多項式関数によって定義される、検出するステップ(E1)と、-地図データに基づいて、また車両の現在の位置および方位に関するデータに基づいて、境界を特徴付ける複数の第1のベクトル(MXi)を決定するステップ(E4)と、-境界を特徴付ける複数の第2のベクトル(Fj)を決定するステップ(E6)であって、各第2のベクトルは、前記関数上への第1のベクトルの直交投影によって決定される、決定するステップ(E6)と、-各第1のベクトルと各第2のベクトルとの間のマハラノビス距離を計算するステップ(E8)とを含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両(1)の車線(VC1、VC2)の境界(L1、L2、L3)を検出するための方法(P1)であって、
- 前記車両の環境を検出するための検出手段(3)によって実行される、前記境界を検出するステップ(E1)であって、前記検出手段は、前記車両に内蔵されており、前記検出手段によって検出される前記境界は、関数、特に多項式関数によって定義される、検出するステップ(E1)と、
- 前記境界を特徴付ける複数の第1のベクトル(MXi)を決定するステップ(E4)であって、前記第1のベクトルは、地図データに基づいて、また前記車両の現在の位置および方位に関するデータに基づいて決定される、決定するステップ(E4)と、
- 前記第1のベクトルのおのおのの不確実性に関するデータを決定するステップ(E5)と、
- 前記境界を特徴付ける複数の第2のベクトル(Fj)を決定するステップ(E6)であって、各第2のベクトルは、前記関数上への第1のベクトルの直交投影によって決定される、決定するステップ(E6)と、
- 前記第2のベクトルのおのおのの不確実性に関するデータを決定するステップ(E7)と、
- 各第1のベクトルと、考慮中の前記第1のベクトルの前記直交投影から得られる各第2のベクトルとの間のマハラノビス距離を計算するステップ(E8)であって、各マハラノビス距離は、考慮中の各第1のベクトルおよび各第2のベクトルの不確実性に関するデータに基づいて計算される、計算するステップ(E8)と、
- 前記検出手段によって検出された前記境界を、先立って計算された前記マハラノビス距離に基づいて、正検知または誤検知として分類するステップ(E10)とを含むことを特徴とする、方法(P1)。
【請求項2】
前記第1のベクトルおよび前記第2のベクトルは、前記車両に結び付けられた同じ基準フレームにおいて定式化されることを特徴とする、請求項1に記載の検出方法(P1)。
【請求項3】
各第1のベクトルは、
- 前記車両の縦方向軸に沿った、考慮中の前記第1のベクトルの原点から前記車両までの距離に等しい第1の成分と、
- 前記車両の横方向軸に沿った、考慮中の前記第1のベクトルの前記原点から前記車両までの距離に等しい第2の成分と、
- 前記第1のベクトルの前記原点における前記境界への接線の方位を特徴付ける第3の成分とを備え、
各第2のベクトルは、
- 前記車両の縦方向軸に沿った、考慮中の前記第2のベクトルの原点から前記車両までの距離に等しい第1の成分と、
- 前記車両の横方向軸に沿った、考慮中の前記第2のベクトルの前記原点から前記車両までの距離に等しい第2の成分と、
- 前記第2のベクトルの前記原点における前記境界への接線の方位を特徴付ける第3の成分とを備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の検出方法(P1)。
【請求項4】
各第1のベクトルは、その原点が前記検出手段(3)の範囲(ZP)内にあるように決定されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の検出方法(P1)。
【請求項5】
- 前記第1のベクトルのおのおのの前記不確実性に関する前記データは、前記車両の現在の位置および方位に関する不確実性の値に基づいて、および前記地図データに関する不確実性の値に基づいて計算され、および/または、
- 前記第2のベクトルのおのおのの前記不確実性に関する前記データは、前記検出手段(3)によって計算されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の検出方法(P1)。
【請求項6】
各第1のベクトルと、考慮中の前記第1のベクトルの前記直交投影から得られる各第2ベクトルとの間で計算される前記マハラノビス距離のうちの最大マハラノビス距離を計算するステップ(E9)を含み、第2の車線境界を、正検知または誤検知として分類する前記ステップ(E10)は、前記計算された最大マハラノビス距離に基づいて実行されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の検出方法(P1)。
【請求項7】
自動車両(1)の車線(VC1、VC2)の複数の境界(L1、L2、L3)を検出するための方法(P2)であって、
- 前記車両の環境を検出するための検出手段によって実行される、車線境界の第1の集合を検出するステップ(E01)であって、前記検出手段は前記車両に内蔵されている、検出するステップ(E01)と、
- 地図データに基づいて、また前記車両の現在の位置および方位に関するデータに基づいて、車線境界の第2の集合を検出するステップ(E02)と、
- 前記第1の集合の各境界と、前記第2の集合の各境界との間のマハラノビス距離の行列を計算するステップ(E12)であって、前記行列の各要素は、前記第1の集合の境界のうちの境界と、前記第2の集合の境界のうちの境界を用いて、請求項6に記載された前記検出方法(P1)を実施することによって計算される最大マハラノビス距離に等しい、計算するステップ(E12)と、
- マハラノビス距離の前記行列に最近傍決定アルゴリズムを実施することによって、マハラノビス距離の前記行列によって、前記第1の集合の境界を、正検知または誤検知として分類するステップ(E13)とを含むことを特徴とする、方法(P2)。
【請求項8】
前記第1の集合の各境界のタイプを、前記第2の集合の各境界のタイプと比較するステップ(E03)を含み、マハラノビス距離の前記行列を計算する前記ステップ(E12)では、タイプ比較を満たす前記行列の要素のみが計算されることを特徴とする、請求項7に記載の検出方法(P2)。
【請求項9】
道路上の車両(1)の位置を決定するための方法(P3)であって、
- 前記車両の少なくとも2つの測位仮説(H1、H2、H3)を決定するステップ(E21)と、
その後、前記車両の各測位仮説について、
- 請求項7または8に記載された前記検出方法(P2)を実施することと、
- 決定された正検知および誤検知の数に基づいて、精度指数を計算するステップ(E23)と、その後、
- 様々な仮説に対して計算された前記精度指数を比較することによって、測位仮説を選択するステップ(E24)とを含むことを特徴とする、方法(P3)。
【請求項10】
プログラムがコンピュータで動作したときに、請求項1から9のいずれか一項に記載された方法のステップを実施するためのコンピュータ可読媒体に記録されたプログラムコード命令を備えたコンピュータプログラム製品。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか一項に記載された方法を実施するためのプログラムコード命令を備えたコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ可読データ記録媒体(7)。
【請求項12】
自動車両(1)であって、前記車両の環境を検出するための検出手段(3)と、前記車両の地理位置を特定するための地理位置特定手段(4)と、前記車両の方位を決定するための決定手段(5)と、地図データが記録されたメモリ(6)またはメモリにアクセスするための手段と、請求項11に記載されたデータ記録媒体(7)を備えた計算ユニット(2)とを備えることを特徴とする自動車両(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車両の車線の境界を検出するための方法の分野に関する。本発明はまた、道路上の車両の位置を決定するための方法の分野にも関する。本発明は最後に、そのような方法を実施するための手段を備えた自動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車線境界検出は、自動運転車両の開発において重要な役割を果たす。車両の環境を正確に表現し、車両の制御に関して適切な決定を下すために、正しい検出が必要とされる。特に、一般に「誤検知(フォルスポジティブ)」と称される車線境界の誤検出は、たとえば、誤った車両の方位や、悪いタイミングでのブレーキ操作など、有害な結果をもたらす可能性がある。
【0003】
車線境界は、地面に描かれた線、路面の境界、障壁、歩道など、様々な形態をとり得る。したがって、これらの境界は、特に検出が複雑である。これらの境界を検出するために、カメラ、レーダ、またはライダなどの環境検出手段が従来から使用されている。これらの検出手段は、ますます洗練されてきているが、これらが提供するデータは、不確実性や誤りを含む場合がある。一般にニューラルネットワークに基づく検出手段の複雑性により、誤検知を理解または分析することが特に困難になる。そのような欠陥は、自動運転車両の導入を制限する。
【0004】
車線境界検出を改善するために、環境検出手段によって受信されたデータを、地図データと組み合わせることからなる方法が知られている。特許文献1は、そのような方法の1つの例を開示している。しかしながら、知られている方法は、依然として十分に効率的ではない。特に、誤検知の検出を常に回避できる訳ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開第20210004017A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の第1の主題は、誤検知の検出を回避することを可能にする、自動車両の車線の境界を検出するための方法である。
【0007】
本発明の第2の主題は、所定の道路上の車両の位置の決定を改善することを可能にする検出方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、自動車両の車線の境界を検出するための方法に関し、この方法は、
- 車両の環境を検出するための検出手段によって実行される、前記境界を検出するステップであって、前記検出手段は、車両に内蔵されており、検出手段によって検出される境界は、関数、特に多項式関数によって定義される、検出するステップと、
- 前記境界を特徴付ける複数の第1のベクトルを決定するステップであって、第1のベクトルは、地図データに基づいて、また車両の現在の位置および方位に関するデータに基づいて決定される、決定するステップと、
- 第1のベクトルのおのおのの不確実性に関するデータを決定するステップと、
- 前記境界を特徴付ける複数の第2のベクトルを決定するステップであって、各第2のベクトルは、前記関数上への第1のベクトルの直交投影によって決定される、決定するステップと、
- 第2のベクトルのおのおのの不確実性に関するデータを決定するステップと、
- 各第1のベクトルと、考慮中の第1のベクトルの直交投影から得られる各第2のベクトルとの間のマハラノビス距離を計算するステップであって、各マハラノビス距離は、考慮中の各第1のベクトルおよび各第2のベクトルの不確実性に関するデータに基づいて計算される、計算するステップと、
- 検出手段によって検出された境界を、先立って計算されたマハラノビス距離に基づいて、正検知または誤検知として分類するステップとを含む。
【0009】
第1のベクトルおよび第2のベクトルは、車両に結び付けられた同じ基準フレームにおいて定式化され得る。
【0010】
各第1のベクトルは、
- 車両の縦方向軸に沿った、考慮中の第1のベクトルの原点から車両までの距離に等しい第1の成分と、
- 車両の横方向軸に沿った、考慮中の第1のベクトルの原点から車両までの距離に等しい第2の成分と、
- 第1のベクトルの原点における前記境界への接線の方位を特徴付ける第3の成分とを備え得、
各第2のベクトルは、
- 車両の縦方向軸に沿った、考慮中の第2のベクトルの原点から車両までの距離に等しい第1の成分と、
- 車両の横方向軸に沿った、考慮中の第2のベクトルの原点から車両までの距離に等しい第2の成分と、
- 第2のベクトルの原点における前記境界への接線の方位を特徴付ける第3の成分とを備え得る。
【0011】
各第1のベクトルは、その原点が検出手段の範囲内にあるように決定され得る。
【0012】
第1のベクトルのおのおのの不確実性に関するデータは、車両の現在の位置および方位に関する不確実性の値に基づいて、および地図データに関する不確実性の値に基づいて計算され得る。
【0013】
第2のベクトルのおのおのの不確実性に関するデータは、検出手段によって計算され得る。
【0014】
検出方法は、各第1のベクトルと、考慮中の第1のベクトルの直交投影から得られる各第2ベクトルとの間で計算されるマハラノビス距離のうちの最大マハラノビス距離を計算するステップを含み得、第2の車線境界を、正検知または誤検知として分類するステップは、計算された最大マハラノビス距離に基づいて実行される。
【0015】
本発明はまた、自動車両の車線の複数の境界を検出するための方法にも関し、この方法は、
- 車両の環境を検出するための検出手段によって実行される、車線境界の第1の集合を検出するステップであって、前記検出手段は車両に内蔵されている、検出するステップと、
- 地図データに基づいて、また車両の現在の位置および方位に関するデータに基づいて、車線境界の第2の集合を検出するステップと、
- 第1の集合の各境界と、第2の集合の各境界との間のマハラノビス距離の行列を計算するステップであって、行列の各要素は、第1の集合の境界のうちの境界と、第2の集合の境界のうちの境界を用いて、上記で定義された境界を検出するための方法を実施することによって計算される最大マハラノビス距離に等しい、計算するステップと、
- マハラノビス距離の行列に最近傍決定アルゴリズムを実施することによって、マハラノビス距離の行列によって、第1の集合の境界を、正検知または誤検知として分類するステップとを含む。
【0016】
複数の境界を検出するための方法は、第1の集合の各境界のタイプを、第2の集合の各境界のタイプと比較するステップを含み得、マハラノビス距離の行列を計算するステップでは、タイプ比較を満たす行列の要素のみが計算され得る。
【0017】
本発明はまた、道路上の車両の位置を決定するための方法にも関し、この方法は、
- 車両の少なくとも2つの測位仮説を決定するステップと、
その後、車両の各測位仮説について、
- 上記で定義された複数の境界を検出するための方法を実施することと、
- 決定された正検知および誤検知の数に基づいて、精度指数を計算するステップと、その後、
- 様々な仮説に対して計算された精度指数を比較することによって、測位仮説を選択するステップとを含む。
【0018】
本発明はまた、上記で定義された方法のステップを実施するためのコンピュータ可読媒体に記録されたプログラムコード命令を備えたコンピュータプログラム製品にも関する。
【0019】
本発明はまた、上記で定義された方法を実施するためのプログラムコード命令を備えたコンピュータプログラムが記録されたコンピュータ可読データ記録媒体にも関する。
【0020】
本発明はまた、車両の環境を検出するための検出手段と、車両の地理位置を特定するための地理位置特定手段と、車両の方位を決定するための決定手段と、地図データが記録されたメモリまたはメモリにアクセスするための手段と、上記で定義されたデータ記録媒体を備えた計算ユニットとを備える自動車両に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の1つの実施形態による自動車両の概略図である。
図2】車両に内蔵された検出手段によって検出された車線の境界を示す、2つの車線を含む道路上の車両の第1の概略平面図である。
図3】本発明の1つの実施形態による車線の境界を検出するための方法のブロック図である。
図4】地図データによって決定された車線の境界を示す、車両の第2の概略平面図である。
図5】車両に内蔵された検出手段によって検出された車線の境界を、ベクトルモデリングによって示す、車両の第3の概略平面図である。
図6】本発明の1つの実施形態によって、複数の車線境界を検出するための方法のブロック図である。
図7】5つの車線を含む道路上の車両の概略平面図である。
図8】本発明の1つの実施形態によって、道路上の車両の位置を決定するための方法のブロック図である。
図9】車両の3つの測位仮説に対して計算された精度指数の時間的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の1つの実施形態による自動車両1を概略的に示す。車両1の種類は問わない。特に、車両1は、たとえば、自家用車、多用途車、トラック、またはバスであり得る。車両1は、車両の環境を検出するための検出手段3と、地理位置特定手段4と、車両の方位を決定するための決定手段5と、地図データが記録されているメモリ6とが接続されている計算ユニット2を備える。
【0023】
検出手段3は、たとえば、カメラ、レーダ、またはライダであり得る。検出手段3はまた、1つまたは複数のカメラ、レーダ、またはライダの連携によって形成され得る。たとえば、地面に描かれた境界線、障壁、歩道、さらには車線の端を定義する他の任意の形態の境界など、車両の環境内に存在する物体を検出できる。有利には、検出手段3は、インテリジェントな検出手段であり、すなわち、感知する信号を解釈し、これらの信号の初期処理から得られるデータを、計算ユニットへ送信することができる。
【0024】
地理位置特定手段4は、GPS座標などの車両1の地理的位置に関する情報を提供することができる。地理位置特定手段4は、たとえば、GPSセンサを備え得る。車両の方位を決定するための決定手段5は、車両が静止している平面に垂直な軸の周りの車両の方位に関するデータを提供することができる。説明を簡単にするために、車両は、水平な地面に静止しているものとみなされる。したがって、車両の方位を決定するための決定手段5は、垂直軸の周りの車両の方位に関するデータを提供することができる。車両の方位に関するデータは、車両が辿る向きまたは方位角に等しいか、またはそれに基づいて確立され得る。このデータは、たとえば、GPSセンサ、ジャイロスコープ、あるいは車両に内蔵されたコンパスによって提供され得る。
【0025】
メモリ6は、高精細地図データを記憶するデータ記録媒体である。これらの地図データは、所定の領域における車線の境界に関する位置および方位情報を備える。車線の各境界は、特に、複数のベクトルの形態で記憶することができ、その構成が、以下に詳細に説明される。地図データは、特に、ADASISv3規格の形態で提示され得る。変形例として、メモリ6は車両1の外部にあってもよく、その場合、車両は、たとえば4Gまたは5G通信手段など、このメモリにアクセスするための手段を備えている。メモリ6はまた、計算ユニット2に統合され得る。
【0026】
計算ユニット2は、特にメモリ7およびマイクロプロセッサ8を備える。メモリ7は、本発明の1つの実施形態による境界検出方法を実施するためのプログラムコード命令を備えるコンピュータプログラムが記録されたデータ記録媒体である。マイクロプロセッサ8は、前記コンピュータプログラムを実行することができる。
【0027】
検出手段3と、位置特定手段4と、車両の方位を決定するための決定手段5とは、車両に内蔵されたセンサである。これらは、所定の不確実性、言い換えれば、所定の分解能で情報を提供できる。同様に、メモリ6に記録されている地図データにも、所定の不確実性がある。したがって、不確実性は、送信される情報の精度を特徴付ける。これらの不確実性は、定量化可能である。これらは、様々なセンサによって提供される情報の各項目に固有の、または各地図データに固有の共分散行列の形態で提示され得る。有利には、以下に説明されるように、これらの不確実性の値は、前記境界のより良好な検出を達成する検出方法において利用される。以下、情報の各項目に関連付けられた不確実性は偏りがなく、ガウス法則にしたがうと仮定される。
【0028】
図2は、2つの車線VC1、VC2を含む道路上の車両1を示している。第1の車線VC1は、2つの境界L1、L2によって両側が区切られている。この場合、2つの境界L1、L2は、それぞれ地面に描かれた実線と破線である。変形例として、これら2つの境界は、たとえば障壁、歩道、または被覆端など、異なるタイプであることもできる。第2の車線VC2は、第1の車線VC1に隣接しており、境界L2、L3によって区切られている。
【0029】
グローバル基準フレームと称される、車線に対して固定され、車両1から独立した第1の基準フレームが定義される。この第1の基準フレームは、軸X1および軸Y1によって形成される。たとえば、軸X1は、南北軸に沿って配向され、軸Y1は、東西軸に沿って配向され得る。また、車両基準フレームと称される、車両1に結び付けられ、軸X2および軸Y2によって形成される第2の基準フレームも定義される。軸X2は、車両の縦方向軸(すなわち、車両がそれに沿って直線的に移動する軸)に対応する。軸Y2は、車両の横方向軸に対応し、縦方向軸X2に対して垂直である。
【0030】
検出手段3は、車両の前方の破線ZPによって概略的に表現される特定の範囲を備える。検出手段の範囲は、特に、最小縦方位範囲Xminおよび最大縦方位範囲Xmaxによって制限される。場合によっては、最小縦方位範囲は、ゼロに等しいとみなされ得る。最大範囲Xmaxは、たとえば、数十メートルまたは数百メートル程度であり得る。
【0031】
図3は、本発明の1つの実施形態にしたがって、車線の境界を検出するための方法P1の様々なステップを示すブロック図である。以下で理解されるように、この方法は、任意の数の車線境界を検出するために実施され得る。説明を簡単にするために、まず、単一の境界、たとえば、図2に示される境界L2を検出するための検出方法の実施の説明が与えられる。
【0032】
この検出方法は、検出手段3によって実行される境界の検出が、正検知(つまり、検出された境界が、実際に存在する)に対応するか、または誤検知(つまり、検出された境界が、検出手段3によって受信された信号の誤った解釈に起因し、実際の境界に対応しない)に対応するかを確認することを目的とする。次に、この方法の1つの特定の実施形態の様々なステップが説明される。
【0033】
第1のステップE1では、検出手段3が、その範囲内の境界の部分を検出する。検出手段3は、検出された境界を特徴付けるデジタルデータを、予め設定された周波数で計算ユニット2に提供する。境界は、検出手段3によって定義されるy=f(x)タイプの関数によって特徴付けられる。特に、この関数は、多項式関数、特に、3次多項式関数である。変形例として、この関数は、次数が異なる多項式関数、または他の任意の数学的関数であってもよい。
【0034】
検出手段3によって検出された各境界Miについて、これらのデジタルデータは、以下の形態で送信され得る。
=[c,c,c,c,xmin,xmaxΣ,Mtype
ここで、
- c0、c1、c2、c3は、3次多項式関数P(x)の係数であり、
- XminおよびXmaxは、検出手段3の最小および最大の縦方位範囲であり、
- MΣPは、検出手段3によって実行される境界L2の検出に関する不確実性を表現する共分散行列であり、
- Mtypeは、検出された境界の性質またはタイプ(たとえば、地面に描かれた線、障壁、歩道などを含み得る)を表すデータである。
【0035】
したがって、各境界は、P(x)=c+cx+c+cである曲線y=P(x)によって車両基準フレームにおいて定義される。
【0036】
多項式関数P(x)は、考慮中の境界の形状を特徴付ける。この関数は、XminとXmaxとの間のxの任意の値に対して有限である。したがって、所与の瞬間において、検出手段3によって検出された境界は、多項式関数の4つの係数によって特徴付けられる。そのような境界を表現する手法により、境界に属するすべての点が計算ユニット2に送信されるモデルと比較して、検出手段3と、計算ユニット2との間で交換されるデータの量を低減することが可能になる。
【0037】
共分散行列MΣPは、以下の形態で表現され得る。
【0038】
【数1】
ここで、σxx、σc0c0、σc1c1、σc2c2、σc3c3は、標準偏差パラメータである。
【0039】
図2は、3つの曲線M1、M2、M3を使用して、検出手段3によって計算された境界L1、L2、L3のおのおのの表現を表す。線M2については、境界L2の検出に関連付けられた不確実性を概略的に表現するためにゾーンZ1が使用される。ゾーンZ1は、境界L2が位置すると考えられるゾーンを示す。境界L2が検出手段3によって良好に認識される場合(たとえば、地面に描かれた線のコントラストが良好で、視認性が良好な場合)、ゾーンZ1は、特に、線M2の周囲に限定され得る。逆に、検出手段3による境界L2の認識が悪い場合(たとえば、地面に描かれた線のコントラストが悪い場合、および/または、視認性が悪い場合)には、線M2の周囲のゾーンZ1が特に広くなる場合がある。もちろん、そのようなゾーンは、線M1、M3に対して表現することもできる。
【0040】
第2のステップE2では、地理位置特定手段4と、車両の方位を決定するための決定手段5とが、グローバル基準フレームにおける車両1の現在の位置および方位をそれぞれ決定する。地理位置特定手段4および決定手段5は、デジタルデータを、事前に設定された周波数で、計算ユニット2に提供する。これらのデジタルデータは、以下の形態で表現され得、
【0041】
【数2】
ここで、
- OxMは、グローバル基準フレームにおける軸X1に沿った車両の位置を示し、
- OyMは、グローバル基準フレームにおける軸Y1に沿った車両の位置を示し、
- OθMは、グローバル基準フレームにおける車両の方位を示す。
【0042】
第3のステップE3では、地理位置特定手段4と、車両の方位を決定するための決定手段5との測定不確実性が判定される。この不確実性は、地理位置特定手段4と、車両の方位を決定するための決定手段5とによって定量化され、計算ユニット2に送信され得る。この不確実性は、たとえば、地理位置特定手段4によって受信されるGPS信号の品質に、または、地理位置特定手段4、および/または、車両の方位を決定するための決定手段5の動作に影響を与える可能性のある他の任意の要因に依存し得る。変形例として、この不確実性はまた、計算ユニット2によって計算できるか、または予め決定された値に設定できる。この不確実性は、3×3次元の共分散行列OΣMの形態で表現され得、その形態は以下の通りである。
【0043】
【数3】
【0044】
第4のステップE4では、境界に特徴的な複数の第1のベクトルMXiが、地図データに基づいて、また車両の現在の位置および方位に関するデータに基づいて、決定される。有利には、決定される第1のベクトルMXiの集合は、車両の周囲の所定の境界線に外接する。この境界線は、e-horizonまたはelectronic horizonとも呼ばれ、検出手段3の範囲に対応し得る。したがって、第1のベクトルは地図データベースから取得され、車両の現在の位置および方位によって定義されるゾーンにおいて外接することが理解されるであろう。
【0045】
第5のステップE5では、第1のベクトルMXiのおのおのの不確実性に関するデータが決定される。
【0046】
より正確には、メモリ6は、車両の周囲の所定の境界線内に存在する様々な境界に関するデジタルデータを計算ユニット2に提供する。地図データを含むメモリ6は、車両に内蔵され、所定の精度で情報を提供するセンサとみなすことができる。各境界は、第1のベクトルMXiの集合によって定義される。したがって、地図データは、境界のおのおのを定義するための離散的な情報を提供する。車両の周囲の境界線内に存在する各境界MLIは、以下の形態で定義され得る。
【0047】
【数4】
ここで、
- MXi=1...Niは、車両基準フレームにおいて表現され、境界MLIに属する第1のベクトルの集合を示し、
- Var(OXi=1...Ni)は、グローバル基準フレームにおいて表現される共分散行列Var(OXi)の集合を示し、共分散行列Var(OXi)は、ベクトルMXiのおのおのの位置および方位に関連付けられた不確実性を表し、
- Ltypeは、検出された境界の性質またはタイプを表すデータである。
【0048】
第1のベクトルMXiのおのおのは、車両基準フレームにおいて、以下の形態で表現され得る。
【0049】
【数5】
ここで、
- Mxiは、ベクトルMXiの原点の、軸X2に沿った座標を示す。これは、車両の縦方向軸X2に沿った、地図データによって定義された境界の所定の点から車両までの距離であり、
- Myiは、ベクトルMXiの原点の、軸Y2に沿った座標を示す。これは、車両の横方向軸Y2に沿った所定の点から車両までの距離であり、
- Mhiは、車両基準フレームにおけるベクトルMXiの方位を示す。Mhiは、所定の点において考慮中の境界への接線の方位を特徴付ける。
【0050】
共分散行列の集合Var(OXi=1...Ni)の各共分散行列Var(OXi)は、3×3次元の行列であり、以下の形態で表現され得る。
【0051】
【数6】
【0052】
これら行列は、各ベクトルMXiの地図データに関連付けられた不確実性を表現する。この不確実性は、地図データの開発のために使用された手段に起因し得る。地図データの不確実性を特徴付けるデータも、メモリ6に格納される。
【0053】
有利には、第1のベクトルMXiは、車両基準フレームにおいて定式化され、第1のベクトルMXiの不確実性を特徴付ける共分散行列Var(OXi)は、グローバル基準フレームにおいて定式化される。メモリ6において最初に利用可能な地図データは、グローバル基準フレームにおいて定式化されているため、第4のステップE4は、有利には、グローバル基準フレームにおいて表現される第1のベクトルに基づいて、車両基準フレームにおいて第1のベクトルを計算するサブステップE41を含む。このサブステップでは、ステップE2において決定された車両の位置および方位に関するデータに基づいて、各第1のベクトルMXiが計算される。特に、以下の式が使用され得る。
【0054】
【数7】
ここで、
- MRoは、回転行列を示し、
- Oxiは、グローバル基準フレームにおいて表現されるベクトルMXiの原点の、軸X1に沿った座標を示し、
- Oyiは、グローバル基準フレームにおいて表現されるベクトルMXiの原点の、軸Y1に沿った座標を示し、
- Ohiは、グローバル基準フレームにおいて表現されるベクトルMXiの方位を示す。
【0055】
回転行列MRoは、以下のように表現され得る。
【0056】
【数8】
ここで、θ=OθMであり、グローバル基準フレームにおける車両の方位を示す。
【0057】
同様に、第5のステップE5は、車両基準フレームにおける共分散行列Var(OXi)の集合を計算するサブステップE51を含む。この計算は、以下の式を用いて実行され得る。
【0058】
【数9】
ここで、
- Var(MXi)は、車両基準フレームにおけるベクトルMXiの位置および方位に関連付けられた不確実性を特徴付ける共分散行列を示し、
- δMXi/δOX6は、以下で定義されるヤコビアン行列を示し、
- OΣMは、上記で定義されたように、地理位置特定手段4と、車両の方位を決定するための決定手段5との測定不確実性を特徴付ける共分散行列であり、
- Var(Oxi)は、グローバル基準フレームにおけるベクトルMXiの位置および方位に関連付けられた不確実性を表現する共分散行列を示す。
【0059】
ヤコビアン行列δMXi/δOX6は、以下の式によって定義され得る。
【0060】
【数10】
ここで、
- θ=OθMであり、グローバル基準フレームにおける車両の方位を示し、
- Mxiは、車両基準フレームにおいて表現されるベクトルMXiの原点の、軸X2に沿った座標を示し、
- Myiは、車両基準フレームにおいて表現されるベクトルMXiの原点の、軸Y2に沿った座標を示す。
【0061】
最終的に、検出方法のこの段階では、一方では、地図データに基づく境界のベクトルモデルが利用可能になる。境界は、車両基準フレームにおいて表現される第1のベクトルMXiの集合によって特徴付けられる。この第1のベクトルの集合の不確実性を特徴付けるデータも利用可能である。この不確実性も、車両基準フレームにおいて表現される。図4は、地図データから得られ、境界L1、L2、L3のおのおのに対して第4のステップE4を実施することによって定義される境界ML1、ML2、ML3を概略的に示す。各ベクトルMXiの原点は、境界ML1、ML2、ML3に属する点によって識別される。特に、境界L2を特徴付ける各ベクトルMXiについて、ゾーンZ2が、ベクトルMXiの原点の位置に関する不確実性を表現するために使用されている。地図データを使用した境界のモデリングは、離散的モデリングの形態であり、すなわち、境界は、ベクトルの有限の集合によって定義される。一方、検出手段3によって生成される境界の連続モデルが利用可能である。実際、境界は、y=f(x)タイプの関数の形態で表現されるため、境界は、検出手段3の範囲内の任意の点において有限である。これら2つのモデルを比較するために、検出手段3からの境界の連続モデルが離散化される。
【0062】
第6のステップE6では、検出手段3によって識別された境界に特徴的な複数の第2のベクトルFjが決定される。各第2のベクトルFjは、第1のベクトルの集合からのベクトルMXiを、上記で定義された関数y=P(x)に直交投影することによって決定される。言い換えると、各第2のベクトルFjは、その原点が関数y=P(x)に属し、ベクトルFjの原点と、ベクトルMXiの原点とを通る直線が、関数y=P(x)に直交し、ベクトルFjの方位が、ベクトルFjの原点における関数y=P(x)の接線の方位と等しくなるように決定される。関数y=P(x)は一般に、関数y=P(x)へのベクトルMXiの単一の直交投影が存在するのに十分な大きさの曲率半径を有することに留意されたい。関数y=P(x)へのベクトルMXiの可能な直交投影が複数存在する可能性がある非常に稀な仮説では、これらの投影のうちの1つ、たとえば、最初に発見された投影が、任意に使用され得、つまり、直交投影が発見されるや否や、直交投影の探索が停止される。
【0063】
このようにして、検出手段3によって検出された境界のモデルが離散化される。このモデルを離散化することは、各境界を、(XminとXmaxとの間の任意の点で有限な)関数ではなく、ベクトルFjの有限集合によって表現することを含む。各ベクトルFjは、車両基準フレームにおける境界の点の座標と、この点において考慮中の境界の方位を特徴付ける成分とによって、境界を局所的に特徴付ける。したがって、特定の境界について、ベクトルFjは、車両基準フレームにおいて以下のように表現され得る。
【0064】
【数11】
ここで、
- xjは、検出手段3によって検出された境界の所定の点の、軸X2に沿った座標を示す。したがって、これは、車両の縦方向軸X2に沿った所定の点から車両までの距離である。
- P(xj)は、所定の点の軸Y2に沿った座標を示す。したがって、これは、車両の横方向軸Y2に沿った所定の点から車両までの距離である。
- arctan(P’(xj))は、考慮中の点における関数P(x)の導関数の逆正接関数を示す。この成分は、考慮中の点における曲線y=P(x)の接線の方位を特徴付ける。
【0065】
図5は、線M1、M2およびM3の離散化の一例を示している。各線M1、M2またはM3は、ベクトルFjの集合によって表現され、ベクトルFjの原点は、車両基準フレームにおける座標の点(x(j),P(x(j))であり、その方位は、arctan(P’(xj))に等しい。
【0066】
第7のステップE7では、第2のベクトルFjのおのおのに関連付けられた不確実性が決定される。実際、境界のおのおのの検出に関する検出手段3の不確実性も離散化され得る。各ベクトルF(j)について、測定不確実性は、以下の式を用いて計算され得る。
【0067】
【数12】
ここで、
- mΣFは、3×3次元の共分散行列を示し、
- yj=P(xj)であり、
- θj=arctan(P’(xj))であり、
- δFj/δMiは、ベクトルFjの偏導関数、特にベクトルFjのヤコビアン行列、変数xj、c0、c1、c2、c3の関数を示し、
- MΣPは、上記で説明した検出手段3の測定不確実性を表現する共分散行列である。
【0068】
図5では、境界L2を特徴付ける各ベクトルFjについて、ゾーンZ11は、ベクトルFjの原点の位置に関する不確実性を表現するために使用され、ゾーンZ12は、ベクトルFjの方位に関する不確実性を表現するために使用される。車両の方位に関する不確実性のため、車両から最も遠いベクトルFjに関する不確実性は、より大きくなる。したがって、ゾーンZ11、Z12は、車両から離れるほど大きくなる。
【0069】
第8のステップE8では、各第1のベクトルMXiと、考慮中の第1のベクトルMXiの直交投影から得られる各第2のベクトルFjとの間のマハラノビス距離が計算される。マハラノビス距離の計算は、ベクトルMXiおよびベクトルFjの成分だけでなく、これら2つのベクトルの不確実性に関するデータにも基づいている。ベクトルFjとベクトルMXiとの間のマハラノビス距離は、以下の式を用いて計算され得る。
【0070】
【数13】
ここで、
- MXiは、第1のベクトルの集合からのベクトルを示し、
- Fjは、関数y=P(x)への第1のベクトルMXiの直交投影から得られる第2のベクトルの集合のベクトルを示し、
- mΣFは、ベクトルFjの不確実性を特徴付ける共分散行列であり、
- Var(MXi)は、ベクトルMXiの不確実性を特徴付ける共分散行列である。
【0071】
このようにして計算されたマハラノビス距離は、ベクトルFjと、ベクトルMXiとの類似度を表現する値である。このマハラノビス距離は、その原点が検出手段3の範囲内にある各ベクトルMXiについて計算され得る。
【0072】
第9のステップE9では、同一の境界の各第1のベクトルと、考慮中の第1のベクトルに関連付けられた各第2のベクトルとの間で計算されたマハラノビス距離のうちの最大マハラノビス距離が計算される。この最大値は、検出手段3によって検出された境界と、地図データにおいて識別された境界との間の類似度の指標となる。最大値が低いほど、検出手段3によって検出された境界は、地図データにおいて識別された境界に近いとみなされる。検出手段3によって検出された境界と、地図データにおいて識別された境界との間のマハラノビス距離は、この最大値に等しいと定義され得る。
【0073】
第10のステップE10では、ステップE9において計算された最大距離に基づいて、検出手段3によって検出された車線の境界が、正検知または誤検知として分類される。この目的のために、たとえば、先立って計算された最大値を、方法の較正段階で決定された事前定義されたしきい値と比較することが可能である。
【0074】
変形例として、検出手段3によって正検知または誤検知として検出された車線の境界の分類は、それ自体が先立って計算されたマハラノビス距離の集合に基づく他の指標に基づくことができる。たとえば、ベクトルMXiとベクトルFjとの間で計算されたマハラノビス距離の集合の平均値または最小値を、しきい値と比較することができる。しかしながら、最大値の比較は、実施が簡単で、正検知または誤検知として信頼性の高い分類が可能となる。
【0075】
次に、図6を参照して、複数の車線境界を検出するための方法P2の1つの実施形態の説明が与えられる。方法P2は、車両の検出手段によって提供されるデータに基づいて車線境界の第1の集合を検出するステップE01と、地図データに基づいて、また車両の現在の位置および方位に関するデータに基づいて、車線境界の第2の集合を検出するステップE02とを含む。ステップE01およびステップE02は、上記で説明されたように、方法P1の実施前に実行される。
【0076】
本発明の第1の変形実施形態によれば、ステップE1からステップE10によって定義される方法P1は、第1の集合の境界によって、および第2の集合の境界によって形成される各可能なペアについて実行され得る。検出手段3によって検出された境界の数がN1であり、地図データにおいて識別された境界の数がM1である場合、方法P1は、N1×M1に等しい回数反復される。そのような変形例は、特に大量の計算リソースを必要とし得る。
【0077】
本発明の第2の、より有利な変形実施形態によれば、検出方法は、検出手段3によって検出された境界のタイプを、地図データにおいて識別された境界のタイプと比較するステップE03を含み得る。その後、この方法は、同じタイプの境界間のマハラノビス距離、場合によっては、任意のタイプの境界と、未知のタイプの境界との間のマハラノビス距離を計算するためにのみ実施される。たとえば、検出手段は、「地面に描かれた線」タイプ、未知のタイプ、および障壁タイプの3つの境界M1、M2、M3をそれぞれ検出し得る。同時に、地図データは、「地面に描かれた線」タイプ、未知のタイプ、および「障壁」タイプの3つの境界ML1、ML2、ML3をそれぞれ識別し得る。この場合、この方法は、以下の境界のペア間のマハラノビス距離を計算するために使用されることになる。
- M1、ML1
- M1、ML2
- M2、ML1
- M2、ML2
- M2、ML3
- M3、ML2
- M3、ML3
【0078】
この方法は、以下の境界のペア間のマハラノビス距離の計算には使用されない。
- M1、ML3
- M3、ML1
【0079】
したがって、この比較ステップを実施することにより、計算ユニット2によって実行される計算演算の数を低減することができる。
【0080】
次に、第11のステップE11では、ステップE1からステップE10によって定義される方法P1が、識別された境界の各ペアに対して実行され、これらのペアのおのおのに対する最大マハラノビス距離が決定される。次に、第12のステップE12において、第1の集合の各境界と、第2の集合の各境界との間のマハラノビス距離の行列が計算され、行列の各要素は、第1の集合の境界のうちの境界と、第2の集合の境界のうちの境界とを用いて方法P1を実行することによって計算された最大マハラノビス距離に等しい。もちろん、境界のタイプを比較するステップE03が事前に実行されていると仮定すると、上記で説明されたタイプ比較を満たす行列の要素のみが計算される。
【0081】
次に、第13のステップE13において、マハラノビス距離の行列に最近傍決定アルゴリズムを実施することによって、マハラノビス距離の行列により、第2の集合の境界が、正検知または誤検知として分類される。そのようなアルゴリズムは、一般に「グローバル最近傍(GNN)」アルゴリズムとも称される。これにより、第2の集合の境界と第1の集合の境界との間で可能な限り最良の関連付けを得ることが可能になる。第1の集合の境界を第2の集合の境界と関連付けることが不可能な場合は、そこから、第1の集合の境界が誤検知に対応している、つまり、検出手段3によって実行された誤検出の結果であると推測することが可能である。
【0082】
図7は、5つの平行な車線を備える道路上で方法P2を実施した結果を示している。車両1は、中央車線上に位置している。検出手段3は、図7において実線で表現される4つの境界M1、M2、M3、M4を検出する。3つの境界M1、M2、M3は直線であるが、第4の境界M4は曲線である。各境界について、ベクトルFjの原点の位置に関する不確実性を表現するゾーンZ11を表現するために円または楕円が使用されている。さらに、地図データは、図7において破線で表現される8つの境界ML1~ML8を識別するために使用される。次に、複数の車線境界を検出するための方法P2が実施される。最近傍決定アルゴリズムの実行後、境界M1、M2、M3はそれぞれ、境界ML3、ML4、ML5に関連付けられる。地図データによって定義される境界はいずれも、境界M4に関連付けることはできない。後者は、その後、誤検知として正しく分類される。
【0083】
複数の車線境界を検出するための方法は、道路上の車両の位置を決定するための方法P3においても使用され得る。そのような方法の1つの実施形態が、図8に示される。
【0084】
第1のステップE21では、車両に対する少なくとも2つの測位仮説が決定される。たとえば、車両1が、3つの平行な車線を含む高速道路などの道路上にあると仮定すると、第1の仮説H1は、車両1が最も右側の車線に位置していると仮定することにある。第2の仮説H2は、車両1が中央車線上に位置していると仮定することにある。第3の仮説H3は、車両1が最も左側の車線に位置していると仮定することにある。
【0085】
次に、第2のステップE22において、複数の車線境界を検出するための上記で説明された方法P2が、車両の各測位仮説H1、H2、H3に対して実施される。方法P2の連続的な実施において、地理位置特定手段4によって決定された車両の現在の位置は、測位仮説のおのおのにしたがって、車両を位置決めするように修正される。この場合、車両の決定された現在の位置は、右側車線の中央、その後、中央車線の中央、その後、左側車線の中央に、連続的に車両を位置決めするように補正される。この補正は、各ベクトルMXiの原点の軸Y2に沿った座標に対応するオフセットを成分Myiに適用することによって行うことができる。
【0086】
次に、第3のステップE23において、各仮説H1、H2、H3について決定された正検知および誤検知の数に基づいて精度指数が計算される。たとえば、精度指数は、以下の式を用いて計算され得る。
【0087】
【数14】
ここで、
- 精度(t,t+5)は、5秒の時間ウィンドウにわたって計算された精度指数を示し、
- TPは、5秒の時間ウィンドウにわたって計算された正検知の数を示し、
- FPは、5秒の時間ウィンドウにわたって計算された誤検知の数を示す。
【0088】
図9は、各仮説H1、H2、H3のおのおのの精度指数の推移を示す。仮説H1に関連付けられた精度指数は、仮説H2に関連付けられた精度指数よりも全体的に高く、仮説H2自体も、仮説H3に関連付けられた精度指数よりも全体的に高いことが観察される。したがって、様々な仮説を区別することが可能である。したがって、第4のステップE24では、様々な仮説に対して計算された精度指数を比較することによって、測位仮説が選択される。この目的のために、たとえば、所定の時間ウィンドウにわたって、精度指数が最も高い平均値を有する仮説、すなわち、図9の例による仮説H1を保持することが可能である。これにより、車両が実際に走行している車線を判定することができる。この情報は、車両自律制御システムまたはナビゲーションシステムで利用され得る。
【0089】
本発明は、車両に内蔵された環境を検出するための検出手段による誤検知の検出を識別することを可能にする、車線の1つまたは複数の境界を検出するための方法を提供する。この検出方法は、より高い信頼性で車両の位置を決定するために、道路上の車両の位置を決定するための方法において有利に実施され得る。
【0090】
第1、第2などの列挙用語は、単に方法の様々なステップを区別することを目的としていることに留意されたい。これらの用語は、様々なステップ間の順序関係を特徴付けるものではなく、入力時に必要なデータが利用可能であれば、どの順序でも実行され得る。図3図6、および図8に示されるブロック図は、矢印を使用して、様々なステップ間の1つの可能な順序を示している。しかしながら、当業者であれば、同じ結果を達成するために、異なる順序を想定することができるであろう。説明された方法は、事前に定義された反復頻度で無限に反復され得る。
【符号の説明】
【0091】
1 車両
2 計算ユニット
3 検出手段
4 地理位置特定手段
5 決定手段
6 メモリ
7 メモリ、データ記録媒体
8 マイクロプロセッサ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】