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特表2024-539071遮断弁および遮断弁を備えた水素タンクシステム
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  • 特表-遮断弁および遮断弁を備えた水素タンクシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】遮断弁および遮断弁を備えた水素タンクシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20241018BHJP
   F16K 1/44 20060101ALI20241018BHJP
   F17C 13/04 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
F16K31/06 305V
F16K31/06 385F
F16K1/44 B
F17C13/04 301Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523208
(86)(22)【出願日】2022-09-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2022076680
(87)【国際公開番号】W WO2023072505
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021212129.2
(32)【優先日】2021-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
3E172
3H052
3H106
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172DA90
3E172JA02
3E172KA02
3H052AA01
3H052BA25
3H052CA12
3H052EA01
3H106DA07
3H106DA13
3H106DA22
3H106DA32
3H106DA35
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB22
3H106DB32
3H106DC02
3H106DC17
3H106DD02
3H106DD05
3H106EE23
3H106EE34
3H106GA15
3H106GB08
3H106GC14
3H106KK12
(57)【要約】
本発明は、-一端で弁座(4)と協働し、他端で制御室(5)を画定する一体構成または複数個構成に形成された往復運動可能な弁部材(3)を有する主弁(2)と、-ハウジング側の制御弁座(8)を開閉するための往復運動可能な制御弁ピストン(7)を有し、制御弁ピストンを介して制御室(5)を少なくとも1つの減圧制御領域(9、10)に接続可能な制御弁(6)と、-制御弁ピストン(7)に接続されているか、または制御弁ピストン(7)を形成する第1の電磁可動子(12)と、主弁(2)の弁部材(3)に接続されている第2の電磁可動子(22)とに作用を及ぼすための電磁コイル(11)と、を備える水素タンクシステムの遮断弁(1)に関する。さらに、本発明は、本発明による遮断弁(1)を備えた水素タンクシステムに関する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素タンクシステムの遮断弁(1)であって、
-一端で弁座(4)と協働し、他端で制御室(5)を画定する一体構成または複数個構成に形成された往復運動可能な弁部材(3)を有する主弁(2)と、
-ハウジング側の制御弁座(8)を開閉するための往復運動可能な制御弁ピストン(7)を有し、前記制御弁ピストンを介して前記制御室(5)を少なくとも1つの減圧制御領域(9、10)に接続可能な制御弁(6)と、
-前記制御弁ピストン(7)に接続されているか、または前記制御弁ピストン(7)を形成する第1の電磁可動子(12)と、前記主弁(2)の前記弁部材(3)に接続されている第2の電磁可動子(22)とに作用を及ぼすための電磁コイル(11)と、を備える遮断弁。
【請求項2】
前記制御室(5)が前記主弁(2)の弁室(20)に流体絞り接続されており、殊に前記主弁(2)の前記弁部材(3)のガイド領域(23)において、前記制御室(5)と前記弁室(20)との間にシール要素が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の遮断弁(1)。
【請求項3】
前記制御弁(6)の前記減圧制御領域(9)が前記主弁(2)の減圧制御領域(10)に接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項4】
前記制御弁ピストン(7)がスプリング(13)の弾撥力により前記制御弁座(8)の方向に付勢され、前記スプリングは、好ましくは他端で前記主弁(2)の前記一体構成または複数個構成に形成された弁部材(3)に支持されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項5】
前記主弁(2)の前記一体構成または複数個構成に形成された弁部材(3)がスプリング(14)の弾撥力により開方向に付勢されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項6】
前記主弁(2)の弁部材(3)は、前記弁座(4)と協働する第1の弁部材部(3.1)と前記制御室(5)を画定する別の弁部材部(3.2)とを有し、前記別の弁部材部が、殊に前記ガイド領域(23)にわたって往復運動可能に案内されており、および/またはストッパ(15)と協働するリング状つば部(16)を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項7】
前記制御弁ピストン(7)および/または前記第1の電磁可動子(12)が前記制御室(5)を画定し、前記制御弁ピストン(7)および/または前記電磁可動子(12)に形成された少なくとも1つの貫流開口(17)を介して前記制御室(5)と制御弁室(18)との接続が形成されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項8】
前記第1の電磁可動子(12)がフラット可動子として形成されているか、またはフラット可動子として形成された部分を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項9】
前記第2の電磁可動子(22)がプランジャ可動子として形成されているか、またはプランジャ可動子として形成された部分を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項10】
前記主弁(2)と前記制御弁(6)とが同軸に配置されている、および/または共通のハウジング(19)に収容されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項11】
前記主弁(2)の前記弁室(20)にガスライン(21)が通じており、前記ガスラインを介して前記弁室(20)を前記水素タンクシステムの圧縮ガス容器の貯留容積に接続可能であることを特徴とする、請求項2から10までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)。
【請求項12】
水素タンクシステムであって、少なくとも1つの圧縮ガス容器と、請求項1から11までのいずれか1項に記載の遮断弁(1)とを備え、好ましくは前記遮断弁(1)が前記圧縮ガス容器に、さらに好ましくは前記圧縮ガス容器のボンベ首部に組み込まれている、水素タンクシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素タンクシステムの遮断弁に関するものである。さらに、本発明は、本発明による遮断弁を備えた水素タンクシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池または内燃機関に水素を供給するために用いられる自動車用の水素タンクシステム、あるいは移動式水素タンクシステムが知られている。例えば配管の破損などの故障または事故の場合、制御できない水素流出を防ぐために、水素タンクシステムの個々の容器をそれぞれ遮断弁によって閉鎖できなければならない。したがって、使用される遮断弁を、非通電時に自動的に閉じる弁として形成する必要がある。
【0003】
制御弁を介して間接的に制御される主弁を有する、非通電時自動遮断弁が従来技術から知られている。制御弁は、通常、閉作用する主弁の押圧面に位置する制御弁座と、磁力によって制御弁座から持ち上げることができる制御弁ピストンとを有する。この場合、制御弁座を形成して閉じる主弁の押圧面が、いわゆる制御室を画定する。反対側に位置する端では、主弁の開作用する押圧面が、いわゆる弁室内に突出し、この弁室は蓄圧器に流体案内接続されている。制御室と弁室とは、絞り箇所によって空気圧的に互いに分離されている。制御弁を開くことによって制御室の圧力が解消される。これに伴い主弁の弁部材の圧力も解消される。次いで、スプリングの弾撥力または電磁アクチュエータ(Magnetaktor)の磁力によって主弁を開くことができる。主弁の閉鎖は、通常、閉作用する弾撥力によってもたらされる。しかしこの遮断弁の欠点は、大きい開弁量(Huebe)を実現する必要があり、この大きい開弁量も大きいおよび/または複数の電磁アクチュエータを必要とし、それにより所要設置スペースとコストが増大するため、一般に所要設置スペースが大きくなるということである。
【0004】
しかし、移動式水素タンクシステムでは利用可能な場所が限られている。これは、特に遮断弁が組み込まれるべきボンベ首部を有する圧縮ガス容器を備えた水素タンクシステムに当てはまる。ボンベ首部は、最も安定した、したがって最も安全な取り付け箇所であるが、所要設置スペースの小さい遮断弁でなければならない。
【0005】
制御弁を介して間接的に制御される内燃機関のための噴射弁が従来技術からさらに知られており、制御弁と主弁が大きさの異なる開弁量を有することができ、その結果として制御弁の電磁アクチュエータをより小さく寸法設定できるため、噴射弁の設置スペースが比較的小さくて済む。制御弁を開くことによって、制御室における圧力低下がもたらされ、この圧力低下が最終的に主弁を開くことにつながる。完全な開状態において主弁の弁部材と制御弁ピストンとを高圧が取り囲み、それにより、自動的に閉じるために必要とされるのは閉方向に作用するスプリングの弾撥力のみである。しかしその後、主弁は、負荷の減少により配管システムにおける圧力が低下して初めて再び開くことができる。なぜなら、より低い圧力レベルが制御室に再び利用可能になるのはその場合だけだからである。このように続く開閉は、水素分野において一般的なプラスチックシートまたはエラストマシートにおける摩耗の増加につながる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、水素タンクシステムの圧縮ガス容器のボンベ首部に組み込み可能であり、それと同時に可能な限り摩耗が少なくなるように小型化された水素タンクシステムの遮断弁を提供するという課題にもとづいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の特徴を有する遮断弁が提供される。本発明の有利な発展形態は従属請求項から読み取ることができる。さらに、少なくとも1つの本発明による遮断弁を備えた水素タンクシステムが提供される。
【0008】
提案される水素タンクシステムの遮断弁は、
-一端で弁座と協働し、他端で制御室を画定する一体構成または複数個構成(ein-oder mehrteilig)に形成された往復運動可能な弁部材を有する主弁と、
-ハウジング側の制御弁座を開閉するための往復運動可能な制御弁ピストンを有し、制御弁ピストンを介して制御室を少なくとも1つの減圧制御領域に接続可能な制御弁と、
-制御弁ピストンに接続されているか、または制御弁ピストンを形成する第1の電磁可動子と、主弁の弁部材に接続されている第2の電磁可動子とに作用を及ぼすための電磁コイルと、を備える。
【0009】
提案される遮断弁では、制御弁が開くことにより主弁の開放がもたらされる。制御弁が開くことにより、制御室と、制御室における圧力低下をもたらす減圧制御領域(Absteuerbereich)との接続が形成される。制御室における圧力低下は主弁の開放につながり、それにより高圧下にある水素が主弁の弁座を介して水素タンクシステムの貯留容積(Speichervolumen)から流れ出す。その場合、電磁コイルの磁力が主弁の開放を補助する。主弁が完全に開くと、磁力は、主弁の弁部材における圧力が完全に補償された場合に、この弁部材に閉作用する弾撥力に抗して主弁を確実に開状態に保持する保持力をもたらす。このようにして、主弁の絶え間ない開閉を、冒頭で従来技術との関連で説明したように効果的に回避することができる。
【0010】
したがって、主弁の開放は実質的に圧力制御して行われる。この場合、電磁コイルの磁力は補助的に作用するにすぎない。しかし完全に圧力補償された場合、主弁は電磁コイルの磁力のみで開くこともできる。
【0011】
しかし電磁コイルの磁力は、優先的に制御弁を開くために使用され、主弁の開放運動の補助には割合に応じて(anteilig)使用されるにすぎない。制御弁座の弁座直径が相応に小さい場合、および主弁の弁部材に作用する空気圧的開放力にもとづいて、電磁コイルを比較的小さく設計することができる。このことも提案される遮断弁の小型化を可能にする。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、制御室が主弁の弁室に流体絞り(fluidisch drosselnd)接続されている。遮断弁を閉じるために電磁コイルの通電がオフにされた場合、最初に制御弁が閉じる。それによって制御室と減圧制御領域との接続が分離され、流体絞り接続を介して制御室が弁室からのガスで満たされる。このことは制御室における圧力上昇につながり、この圧力上昇が主弁の確実な閉鎖を保証する。
【0013】
提案される遮断弁の有利な一実施形態では、主弁の弁部材のガイド領域において、制御室と弁室との間にシール要素が設けられている。その場合、流体絞り接続(fluidisch drosselnde Verbindung)は、定められた絞り箇所を介して、例えば制御室を弁室に接続する絞り孔を介して形成されることが好ましい。定められた絞り箇所を介して制御室へのガスの流入を最適にコントロールすることができる。シール要素を用いない実施形態では、ガイド領域自体を絞り隙間として形成することもできる。
【0014】
制御弁の減圧制御領域が主弁の減圧制御領域に接続され、それにより両方の減圧制御領域に少なくともほぼ同じ圧力が支配することが好ましいい。制御弁が開いた場合、すなわち制御室における圧力が低下し、減圧制御領域における圧力が上昇した場合に主弁の弁部材において圧力補償が達成され、それにより電磁コイルの磁力の補助により主弁を開くことができる。
【0015】
制御弁の制御弁ピストンがスプリングの弾撥力により制御弁座の方向に付勢されることが好ましい。スプリングの弾撥力を用いて制御弁ピストンの復帰もしくは制御弁の閉鎖をもたらすことができる。スプリングを他端で主弁の一体構成または複数個構成に形成された弁部材に支持することができ、それにより弁部材は主弁の弁座の方向に付勢されている。したがって、故障および/または事故時の遮断弁の自動的閉鎖を1つのばねで確保することができる。
【0016】
さらに、主弁の一体構成または複数個構成に形成された弁部材がスプリングの弾撥力により開方向に付勢されていることが提案される。これは、別のスプリングの弾撥力を用いて、複数の弁部材部が1つの弁部材のように動作することを確保できるため、特に弁部材が複数個構成に形成されている場合に有利である。さらに、開く弾撥力と主弁の弁座直径により主弁における開弁圧差が調整され得る。実際の圧力差が開弁圧差よりも大きい場合、主弁は閉じたままである。これは、主弁の弁部材が複数個構成、特に2個構成に形成されている場合、主弁における開く弾撥力がシステムに与えられる圧力衝撃を制限することを意味し、それによりシステムにおける部品への負荷が軽減され、そのことがシステム全体におけるコスト削減につながる。
【0017】
好ましくは、主弁の弁部材は、弁座と協働する第1の弁部材部と制御室を画定する別の弁部材部とを有することが好ましい。これは弁部材が複数個構成に形成されていることを意味する。一体構成に形成することに比べて、複数個構成に形成することには、製造公差および/または組立公差によって引き起こされる軸心の不一致問題(Desachsierungsprobleme)を簡単に補償できるという利点がある。例えば、弁部材を軸方向に案内することができ、弁座としての別の部品にガイドを形成することができる。ガイドと弁座が正確に同軸に配置されていない場合、一体構成に形成された弁部材では傾きが生じる可能性があり、それにより遮断弁が緊密に閉じなくなる。これに対して、複数個構成に形成することにより、両方の弁部材部を互いに半径方向に変位させて同軸度の不足を補償することができる。
【0018】
制御室を画定する弁部材部は、殊にすでに言及したガイド領域にわたって往復運動可能に案内されている。したがって、弁部材のガイドは、弁座から遠い弁部材部により実現され、それにより複数個構成に形成することの利点が特に明確に効果を発揮する。
【0019】
代替的または補足的に、制御室を画定する弁部材部がストッパと協働するリング状つば部(Ringbund)を有することが提案される。この措置によって、主弁の開弁量を制限することができる。
【0020】
特に有利な実施形態では、第2の電磁可動子、すなわち主弁の電磁可動子は、制御室を画定する弁部材部および/または開弁ストッパ(Hubanschlag)を形成する。
【0021】
さらに、制御弁ピストンおよび/または第1の電磁可動子、すなわち制御弁の電磁可動子が制御室を画定し、制御弁ピストンおよび/または電磁可動子に形成された少なくとも1つの貫流開口を介して制御室と制御弁室との接続が形成されていることが提案される。少なくとも1つの貫流開口を介して、厳密には制御弁ピストンもしくは電磁可動子の現在位置とは関係なく、制御室と制御弁室との恒久的な接続を確保できる。
【0022】
第1の電磁可動子が、すなわち制御弁の電磁可動子が、フラット可動子として形成されているか、またはフラット可動子として形成された部分を有することが有利である。フラット可動子としての実施形態では、制御弁、したがって遮断弁も特に場所節約的もしくは省スペース的に形成することができる。
【0023】
第2の電磁可動子、すなわち主弁の電磁可動子がプランジャ可動子として形成されるか、またはプランジャ可動子として形成された部分を有することがさらに好ましい。この実施形態では、電磁可動子は同時に案内されている。
【0024】
所要設置スペースをさらに低減するために、主弁と制御弁とが同軸に配置されていることが提案される。これは、制御弁ピストンと弁部材の長手軸が互いに重なり合うことを意味する。その場合、制御弁ピストンと弁部材の開放運動は互いに逆方向である。
【0025】
代替的または補足的に、主弁と制御弁とが共通のハウジングに収容されていることが提案される。この措置によっても、遮断弁の所要設置スペースをさらに少なくすることができる。これに加えて、遮断弁を予め組み立てられたユニットとして圧縮ガス容器、殊に水素タンクシステムの圧縮ガス容器のボンベ首部に組み込むことができるため、遮断弁の組付けが容易になる。
【0026】
主弁の弁室にガスラインが通じており、このガスラインを介して弁室を水素タンクシステムの圧縮ガス容器の貯留容積に接続可能であることがさらに好ましい。したがって、主弁が開いた場合に、減圧制御領域と圧縮ガス容器の貯留容積との接続を形成することができる。
【0027】
さらに冒頭で述べた課題を解決するために提案される水素タンクシステムは、少なくとも1つの圧縮ガス容器と本発明による遮断弁とを備える。本発明による遮断弁の小さい所要設置スペースは、圧縮ガス容器への遮断弁の組み込みを可能にし、それにより容器を個別に遮断できる。
【0028】
したがって、遮断弁は、好ましくは圧縮ガス容器、さらに好ましくは圧縮ガス容器のボンベ首部に組み込まれる。ボンベ首部は圧縮ガス容器の最も安定した箇所であるため、ボンベ首部において、遮断弁は特に安全に保管される。遮断弁がボンベ首部に部分的にのみ組み込まれることも可能である。
【0029】
提案される水素タンクシステムは、特に、燃料電池車または水素燃焼車両に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による遮断弁の模式的縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の好ましい実施形態を添付の図面をもとにして以下に詳しく説明する。
【0032】
図に示される本発明による遮断弁1は、共通のハウジング19において同軸に配置された主弁2と制御弁6とを備える。
【0033】
主弁2は、弁座4と協働する第1の弁部材部3.1と制御室5を画定する第2の弁部材部3.2とを含む複数個構成の弁部材3を有する。第2の弁部材部3.2は、ガイド領域23にわたって往復運動可能に案内されており、ガイド領域23の外側に、開弁量を制限するためにストッパ15と協働するリング状つば部16を有する。リング状つば部16は、主弁2の開放を磁気的に補助し、かつ完全に開いた主弁2を確実に開状態に保持する電磁可動子22として用いられるように形成されている。第1の弁部材部3.1の方を向いた第2の弁部材部3.2の端が球状に成形されており、それにより、場合によって存在する製造公差および/または組立公差を補償するためにこの端を介して第1の弁部材部3.1との関節的接続を形成できる。第1の弁部材部3.1は、スプリング14の弾撥力によって第2の弁部材部3.2の方向に付勢されている。
【0034】
制御弁6は、一端で制御弁座8と協働し、他端でフラット可動子として形成された電磁可動子12に接続されている往復運動可能な制御弁ピストン7を備える。電磁可動子12に作用を及ぼすために電磁コイル11が設けられている。電磁コイル11が通電された場合、磁場が形成され、この磁場の磁力は、制御弁ピストン7を含めて電磁可動子12を電磁コイル11の方向に引っ張る。その場合、制御弁座8が開き、それにより制御弁室18を介して制御室5と減圧制御領域9との接続が形成される。制御室18は、電磁可動子12に形成された少なくとも1つの貫流開口17を介して制御弁室18に恒久的に接続されている。制御弁6の開放は、制御室5における圧力低下をもたらし、それにより主弁2の弁部材3の負荷が解消され、主弁2が開く。その場合、特に制御弁6が開いた場合に主弁2の電磁可動子22に開放する力の作用が生じ、この力の作用が主弁2の開放を補助するように磁気回路が形成される。主弁2が開いた場合、ガスライン21が通じている弁室20と主弁2の減圧制御領域10との接続が形成される。ガスライン21は、弁室20を圧縮ガス容器(図示せず)の貯留容積に接続し、それにより高圧下にある水素が圧縮ガス容器から減圧制御領域10に到達する。これによってシステムが満たされ、減圧制御領域9、10と弁室20と制御室5との間で圧力補償が行われる。この圧力補償は、制御室5と弁室20との流体絞り接続を介して行われ、流体絞り接続は、ここではガイド領域23を介して形成されている。その一方で、圧力補償は制御弁6の制御弁座8を介して行われる。この場合、主弁2の電磁可動子22の磁気保持力は、主弁2がスプリング13の閉作用する弾撥力に抗して確実に開状態に保持されることをもたらす。
【0035】
遮断弁1を閉じるために、電磁コイル11の通電が終了され、それにより制御弁ピストン7に支持されたスプリング13の弾撥力が制御弁ピストン7を制御弁座8へ押し戻す。同時に、制御弁ピストン7には、閉方向に空気圧力が作用し、この空気圧力は、制御室5における圧力上昇によってもたらされる。圧力上昇は、弁室20への流体絞り接続を介して制御室5がガスで満たされることによってもたらされる。制御室5における圧力上昇は、主弁2がスプリング13の弾撥力を用いて確実に閉じ得ることにつながる。
【符号の説明】
【0036】
1 遮断弁
2 主弁
3 弁部材
3.1 第1の弁部材部
3.2 第2の弁部材部
4 弁座
5 制御室
6 制御弁
7 制御弁ピストン
8 制御弁座
9 減圧制御領域
10 減圧制御領域
11 電磁コイル
12 第1の電磁可動子
13 スプリング
14 スプリング
15 ストッパ
16 リング状つば部
17 貫流開口
18 制御弁室
19 ハウジング
20 弁室
21 ガスライン
22 第2の電磁可動子
23 ガイド領域
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-04-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素タンクシステムの遮断弁(1)であって、
-一端で弁座(4)と協働し、他端で制御室(5)を画定する一体構成または複数個構成に形成された往復運動可能な弁部材(3)を有する主弁(2)と、
-ハウジング側の制御弁座(8)を開閉するための往復運動可能な制御弁ピストン(7)を有し、前記制御弁ピストンを介して前記制御室(5)を少なくとも1つの減圧制御領域(9、10)に接続可能な制御弁(6)と、
-前記制御弁ピストン(7)に接続されているか、または前記制御弁ピストン(7)を形成する第1の電磁可動子(12)と、前記主弁(2)の前記弁部材(3)に接続されている第2の電磁可動子(22)とに作用を及ぼすための電磁コイル(11)と、を備える遮断弁。
【請求項2】
前記制御室(5)が前記主弁(2)の弁室(20)に流体絞り接続されており、殊に前記主弁(2)の前記弁部材(3)のガイド領域(23)において、前記制御室(5)と前記弁室(20)との間にシール要素が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の遮断弁(1)。
【請求項3】
前記制御弁(6)の前記減圧制御領域(9)が前記主弁(2)の減圧制御領域(10)に接続されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項4】
前記制御弁ピストン(7)がスプリング(13)の弾撥力により前記制御弁座(8)の方向に付勢され、前記スプリングは、好ましくは他端で前記主弁(2)の前記一体構成または複数個構成に形成された弁部材(3)に支持されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項5】
前記主弁(2)の前記一体構成または複数個構成に形成された弁部材(3)がスプリング(14)の弾撥力により開方向に付勢されることを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項6】
前記主弁(2)の弁部材(3)は、前記弁座(4)と協働する第1の弁部材部(3.1)と前記制御室(5)を画定する別の弁部材部(3.2)とを有し、前記別の弁部材部が、殊に前記ガイド領域(23)にわたって往復運動可能に案内されており、および/またはストッパ(15)と協働するリング状つば部(16)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項7】
前記制御弁ピストン(7)および/または前記第1の電磁可動子(12)が前記制御室(5)を画定し、前記制御弁ピストン(7)および/または前記電磁可動子(12)に形成された少なくとも1つの貫流開口(17)を介して前記制御室(5)と制御弁室(18)との接続が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項8】
前記第1の電磁可動子(12)がフラット可動子として形成されているか、またはフラット可動子として形成された部分を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項9】
前記第2の電磁可動子(22)がプランジャ可動子として形成されているか、またはプランジャ可動子として形成された部分を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項10】
前記主弁(2)と前記制御弁(6)とが同軸に配置されている、および/または共通のハウジング(19)に収容されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の遮断弁(1)。
【請求項11】
前記主弁(2)の前記弁室(20)にガスライン(21)が通じており、前記ガスラインを介して前記弁室(20)を前記水素タンクシステムの圧縮ガス容器の貯留容積に接続可能であることを特徴とする、請求項2に記載の遮断弁(1)。
【請求項12】
水素タンクシステムであって、少なくとも1つの圧縮ガス容器と、請求項1または2に記載の遮断弁(1)とを備え、好ましくは前記遮断弁(1)が前記圧縮ガス容器に、さらに好ましくは前記圧縮ガス容器のボンベ首部に組み込まれている、水素タンクシステム。
【国際調査報告】