(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】六フッ化リン酸塩の合成方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/455 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
C01B25/455
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523281
(86)(22)【出願日】2022-12-09
(85)【翻訳文提出日】2024-04-17
(86)【国際出願番号】 CN2022137757
(87)【国際公開番号】W WO2023116462
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111600015.8
(32)【優先日】2021-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520321498
【氏名又は名称】浙江中欣▲ふう▼材股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】521522939
【氏名又は名称】福建中欣▲ふう▼材高宝科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ユエン チーリャン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ジエン
(72)【発明者】
【氏名】チェン ハイフォン
(72)【発明者】
【氏名】シュー ポンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジュー ジエンフェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジエン ドンドン
(72)【発明者】
【氏名】チェン インハオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チャオ
(57)【要約】
本発明は、六フッ化リン酸塩の合成方法を開示し、化学合成の技術分野に属する。五ハロゲン化リンを不活性溶媒に溶解した五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液と、ハロゲン化アルカリ金属塩を無水フッ化水素に溶解したフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液を、所定の割合で反応器に投入して反応させ、六フッ化リン酸塩、フッ化水素、不活性溶媒及びハロゲン化水素からなる混合物を得た後、気液分離によりハロゲン化水素ガスを除去し、次に、加熱蒸発によりフッ化水素を回収し、最後に、固液分離により不活性溶媒を回収し、固体を乾燥して六フッ化リン酸塩を得ることを特徴とする。本発明の合成方法は、操作が簡単で、安全性に優れ、反応収率が高く、製品の品質に優れ、連続生産が可能であるなどの利点を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
五ハロゲン化リンを不活性溶媒に溶解して、五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液を得るステップ(1)と、
ハロゲン化アルカリ金属塩を無水フッ化水素に溶解して、フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液を得るステップ(2)と、
前記五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液と前記フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液を、所定の割合で反応器に投入して反応させ、六フッ化リン酸塩、フッ化水素、不活性溶媒及びハロゲン化水素からなる混合物を得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られた六フッ化リン酸塩、フッ化水素、不活性溶媒及びハロゲン化水素からなる混合物を気液分離して、ハロゲン化水素ガスを分離し、六フッ化リン酸塩、フッ化水素及び不活性溶媒からなる混合物を得るステップ(4)と、
ステップ(4)で得られた六フッ化リン酸塩、フッ化水素及び不活性溶媒からなる混合物からフッ化水素を除去し、六フッ化リン酸塩と不活性溶媒からなる混合物を得るステップ(5)と、
ステップ(5)で得られた六フッ化リン酸塩と不活性溶媒からなる混合物を固液分離して乾燥し、六フッ化リン酸塩を得るステップ(6)と、を含む、ことを特徴とする六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項2】
前記六フッ化リン酸塩は、六フッ化リン酸リチウム、六フッ化リン酸ナトリウム、六フッ化リン酸カリウムのいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項3】
ステップ(1)において、前記五ハロゲン化リンは、五塩化リン、五臭化リンから選択される1種又は2種である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、前記不活性溶媒は、アルカン系溶媒、ハロゲン化アルカン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、及びハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒から選択される1種又は複数種であり、
前記アルカン系溶媒は、C4~C10の直鎖状、分岐状又は環状のアルカンから選択され、
前記ハロゲン化アルカン系溶媒は、下記一般式
C
nH
(2n+2-m)X
m
(ただし、X=F、Cl、Br、n=1~10、m=1~4)で表され、ハロゲン化アルカンの炭素鎖は、直鎖状、分岐状又は環状であってもよく、
前記芳香族炭化水素系溶媒は、下記一般式
【化1】
(ただし、置換基Rは、H、C1~C6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル置換基であり、n=0~6であり、ベンゼン環上に複数のアルキル置換基がある場合、アルキル置換基は同一であっても異なっていてもよい。)で表され、
前記ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒は、下記一般式
【化2】
(ただし、置換基Rは、H、C1~C6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル置換基であり、n=0~6、置換基X=F、Cl、Br、m=0~6、n+m≦6であり、ベンゼン環上に複数のアルキル及びハロゲン原子が置換されている場合、置換アルキル及びハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。)で表される、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、不活性溶媒の使用量が五ハロゲン化リンの質量の1~20倍である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項6】
ステップ(2)において、前記ハロゲン化アルカリ金属塩は、下記一般式MX(M=Li、Na、K、X=F、Cl、Br)で表される、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項7】
ステップ(2)において、フッ化水素の使用量が、ハロゲン化アルカリ金属塩の質量の1~20倍である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項8】
ステップ(2)において、ハロゲン化アルカリ金属塩を無水フッ化水素に溶解して、フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液を得る操作温度及びフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液の保存温度が‐40~19℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項9】
合成生成物が六フッ化リン酸リチウムである場合、ハロゲン化アルカリ金属塩は、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウムから選択される1種又は複数種であり、合成生成物が六フッ化リン酸ナトリウムである場合、ハロゲン化アルカリ金属塩は、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウムから選択される1種又は複数種であり、合成生成物が六フッ化リン酸カリウムである場合、ハロゲン化アルカリ金属塩は、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウムから選択される1種又は複数種である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項10】
ステップ(3)において、前記反応器はマイクロ反応器である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項11】
ステップ(3)において、前記五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液と前記フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液との反応器への供給比率が、単位時間当たりに反応器に供給される五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液中に含まれるリンの物質量と、フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液中に含まれるアルカリ金属の物質量との比が、0.8~1.2:1である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【請求項12】
ステップ(3)において、反応温度が‐40~100℃である、請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法
。
【請求項13】
ステップ(4)において、気液分離操作温度が、‐40~19℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法
。
【請求項14】
ステップ(5)において、フッ化水素除去操作の温度が20~100℃である、ことを特徴とする請求項1に記載の六フッ化リン酸塩の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学合成の技術分野に属し、具体的には、六フッ化リン酸塩の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化は、21世紀の人間が直面する重大な課題であり、人間の発展だけでなく、人間の生存にも影響を及ぼしている。地球温暖化の課題を解決するには、太陽エネルギー、風力エネルギーなどの新型クリーンエネルギーで従来の高汚染、高排出量の石油化学エネルギーを代替し、二酸化炭素などの温室効果ガスの発生を減らすことが最も重要なことであるため、グリーンで環境にやさしい二次電池の発展が課題を解決するための鍵となっている。半世紀以上にわたる研究と産業化の発展を経て、現在、リチウムイオン電池は、量産が実現されており、エネルギー貯蔵や動力などの面で応用が期待でき、ナトリウムイオン電池の開発が急速に進んでおり、徐々に応用段階に入っていると同時に、カリウムイオン電池の研究も注目を集めている。
【0003】
六フッ化リン酸塩は、現在の二次電池に広く使用されている電解質であり、その中でも、六フッ化リン酸リチウムは、リチウムイオン電池の製造に広く使用されており、六フッ化リン酸ナトリウムは、ナトリウムイオン電池の製造に使用されており、六フッ化リン酸カリウムは、カリウムイオン電池の研究製造以外に、六フッ化リン酸リチウムと六フッ化リン酸ナトリウムの製造にも使用されている。
【0004】
六フッ化リン酸塩の合成方法は、使用する原料と主要中間体によって、六フッ化リン酸塩イオン交換法、フルオロリン酸法、及び五フッ化リン法に分けられる。
(1)六フッ化リン酸塩イオン交換法
【化1】
(2)フルオロリン酸法:
【化2】
(3)五フッ化リン法:
【化3】
【0005】
上記の六フッ化リン酸塩の合成方法のうち、六フッ化リン酸塩イオン交換法は、合成において原料として五フッ化リンガスやフッ化水素を使用しないため、生産操作上の安全性と利便性が高いが、一方の六フッ化リン酸塩から他方の六フッ化リン酸塩を製造するには、原料自体が高価であるため、合成コストに関しては競争力がない。フルオロリン酸法は、五フッ化リンガスの使用を避け、合成の難易度をある程度下げることができるが、反応中に生成する水は、六フッ化リン酸塩製品の品質に悪影響を与え、高純度の六フッ化リン酸塩を製造することが困難である。五フッ化リン法は、五フッ化リンガスを使用するが、この方法は、操作が簡単で、合成コストが低く、反応収率が高く、製品の品質が良いなどの利点があり、六フッ化リン酸塩を工業的に合成するために最もよく使われる方法である。
五フッ化リン法には、リン源によって、単体リン法、リン酸法、ポリリン酸法、三塩化リン法、五塩化リン法などがある。
(i)単体リン法:
【化4】
(ii)リン酸法:
【化5】
(iii)ポリリン酸法:
【化6】
(iv)三塩化リン法:
【化7】
(v)五塩化リン法:
【化8】
【0006】
単体リン法は、単体リン(赤リン、黄リン、白リンなど)を特別の反応器に入れ、フッ素ガスを導入し、気固相反応により五フッ化リンを得るものであり、その長所は、製造した五フッ化リンの純度が高く、複雑な精製操作を必要とせずに、高純度の五フッ化リンを得ることができることであり、その短所は、追加の電解によるフッ素製造工程でフッ素ガスを製造しておく必要があり、しかも反応過程は気固相反応で、反応器の構造と材質への要件が高く、反応条件が厳しいため、大規模な工業的応用が難しいことである。リン酸法は、ポリリン酸法と類似しており、リン酸又はその重合体を原料とし、まず、フッ化水素と反応させて含水六フッ化リン酸を得た後、発煙硫酸又は三酸化硫黄で脱水して五フッ化リンを製造するものであり、この方法は、合成コストが低いが、大量の発煙硫酸又は三酸化硫黄を脱水剤として使用するため、環境に優しくなく、発煙硫酸及び三酸化硫黄中の不純物が多いため、高純度の五フッ化リンを製造することは困難である。三塩化リン法と五塩化リン法も類似しており、三塩化リン法は、まず、三塩化リンと塩素ガスを反応させて五塩化リンを合成し、更にフッ化水素と反応させて五フッ化リンを製造するものであり、五塩化リン法は、直接五塩化リンを原料とし、フッ化水素と反応させて五フッ化リンを製造するものであり、五塩化リン法は、三塩化リン法に比べて、塩化反応のステップを減らすため、合成コスト、製品の品質、環境配慮などの面で競争力があり、そのため、五フッ化リンを工業的に製造するために最もよく使われる方法となっている。
【0007】
五塩化リンを原料として、まず、フッ化水素と反応させて、五フッ化リンを製造し、次にフッ化塩と反応させて六フッ化リン酸塩を合成することは、現在、最も工業的に応用価値のある六フッ化リン酸塩の合成方法であるが、この方法にも、多くの欠点が存在する。
【0008】
(1):反応原料の1つである五塩化リン固体は、融点が180℃と高く、昇華しやすく、加熱方式で液体に変換することができないため、通常は、固体として供給され、もう1つの原料であるフッ化水素は、沸点が19.5℃しかなく、しかも、揮発性が非常に高く、反応中の少量の局所的な発熱やガス放出のいずれも、大量のフッ化水素の揮発を招くことがある。一方、五塩化リンとフッ化水素との反応は非常に激しく、2種類の原料が接触する瞬間に固液相反応が起こり、局所的な発熱が著しく、大量の塩化水素ガスが放出され、多量のフッ化水素が揮発し、その結果として、不必要なフッ化水素の損失を引き起こし、反応系の安定性を破壊するだけでなく、安全上の危険があり、生産安全上の事故が発生する傾向がある。したがって、五塩化リンの投入の課題をどのように解決するか、また、五塩化リンとフッ化水素との反応プロセスをどのように緩和するかが、解決すべき主な課題である。
【0009】
(2):五塩化リンとフッ化水素を反応させて得られる五フッ化リンは、沸点が-84.6℃と低いガスであり、液化しにくいため、精製、保存、輸送、使用が難しく、合成コストの高騰及び生産効率の低下を招く。さらに、五フッ化リンは、活性が高いため、保存、輸送、使用中に分解しやすく、反応収率や生成物の純度が低下してしまう。したがって、五フッ化リンの保存、輸送、使用の問題をいかに解決し、可能な限りいつでも製造・使用できるようにするか、あるいはその場で合成してその場で使用できるようにするかが重要な課題となっている。
【0010】
(3):六フッ化リン酸塩の合成に使用される原料は、毒性が高く、危険性が高く、反応中にも大きな安全上のリスクが伴うが、現在、六フッ化リン酸塩の合成にはバッチ釜式反応が一般的に使用されており、生産上の安全性に重大なリスクをもたらしている。したがって、既存の六フッ化リン酸塩合成プロセスを連続的に行うことを可能にし、生産の安全上のリスクを低減させる方法は、解決しなければならない急務となっている。
そのため、六フッ化リン酸塩の合成技術に存在する欠点に対して、検討・研究する必要のある最適化作業がまだたくさんある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
六フッ化リン酸塩の従来の合成方法に存在する欠点に対して、本発明は、安全で信頼性が高く、工業化に適しており、操作が簡単で、安全性に優れ、反応収率が高く、製品の品質に優れ、連続生産が可能であるなどの利点を有する六フッ化リン酸塩の合成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明が採用する技術的解決手段は以下のとおりである。
【0013】
五ハロゲン化リンを不活性溶媒に溶解して、五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液(I)を得るステップ(1)と、
ハロゲン化アルカリ金属塩を無水フッ化水素に溶解して、フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液(II)を得るステップ(2)と、
五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液(I)とフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液(II)を、所定の割合で反応器に投入して反応させ、六フッ化リン酸塩、フッ化水素、不活性溶媒及びハロゲン化水素からなる混合物(III)を得るステップ(3)と、
ステップ(3)で得られ混合物(III)を気液分離して、ハロゲン化水素ガスを分離し、六フッ化リン酸塩、フッ化水素及び不活性溶媒からなる混合物(IV)を得るステップ(4)と、
ステップ(4)で得られた混合物(IV)からフッ化水素を除去し、六フッ化リン酸塩と不活性溶媒からなる混合物(V)を得るステップ(5)と、
ステップ(5)で得られた混合物(V)を固液分離して乾燥し、六フッ化リン酸塩を得るステップ(6)と、を含む、六フッ化リン酸塩の合成方法を提供する。
【0014】
本発明で使用される合成経路は、以下の反応式で表されてもよい。
【化9】
【0015】
本発明の更なる構成は以下のとおりである。
【0016】
ステップ(1)において、
前記五ハロゲン化リンは、五塩化リン、五臭化リンから選択される1種又は2種である。五ハロゲン化リンの種類の選択は、どのような六フッ化リン酸塩を合成するかと直接関係がなく、すなわち、五塩化リン又は五臭化リンを選択しても、両者の混合物を選択しても、六フッ化リン酸リチウム、六フッ化リン酸ナトリウム、六フッ化リン酸カリウムのいずれかの六フッ化リン酸塩の合成に用いることができる。五ハロゲン化リンは、好ましくは、五塩化リン、五臭化リンのいずれかであり、混合物の使用は推奨されない。従って、後続の反応過程で生成されるハロゲン化水素ガスは、塩化水素又は臭化水素などの単一のハロゲン化水素であり、塩化水素と臭化水素の混合物の生成が回避され、水に吸収されると塩化水素又は臭化水素溶液を併産することができ、より高いリサイクル価値を有する。
【0017】
前記不活性溶媒には、五ハロゲン化リンに対する良好な溶解性が要求されるだけでなく、反応中に原料、中間体や生成物等と副反応を起こしないことが要求される。不活性溶媒は、アルカン系溶媒、ハロゲン化アルカン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒などであってもよく、単一溶媒であってもよく、複数種の溶媒からなる混合溶媒であってもよい。アルカン系溶媒は、C4~C10の直鎖状、分岐状又は環状のアルカンであり、代表的なアルカン系溶媒は、n‐ペンタン、n‐ヘキサン、シクロヘキサン、n‐ヘプタン、メチルシクロヘキサンなどである。ハロゲン化アルカン系溶媒は、下記一般式
C
nH
(2n+2-m)X
m
(ただし、X=F、Cl、Br、n=1~10、m=1~4である。)で表されてもよく、ハロゲン化アルカンの炭素鎖は、直鎖状、分岐状、又は環状であってもよく、代表的なハロゲン化アルカン系溶媒は、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、ブロモエタン、ジブロモエタンなどである。芳香族炭化水素系溶媒は、下記一般式
【化10】
(ただし、置換基Rは、H、C1~C6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル置換基であり、n=0~6であり、ベンゼン環上に複数のアルキル置換基がある場合、アルキル置換基は同一でも異なっていてもよい。)で表されてもよく、代表的な芳香族炭化水素系溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、メチルエチルベンゼンなどである。ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒は、下記一般式
【化11】
(ただし、置換基Rは、H、C1~C6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル置換基であり、n=0~6、置換基X=F、Cl、Br、m=0~6、n+m≦6であり、ベンゼン環上に複数のアルキル及びハロゲン原子が置換されている場合、置換アルキル及びハロゲン原子は同一であっても異なっていてもよい。)で表されてもよく、代表的なハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒は、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジフルオロベンゼン、ジクロロベンゼン、p‐クロロフルオロベンゼン、p‐フルオロトルエンなどである。不活性溶媒の使用量が、五ハロゲン化リンの質量の1~20倍である。
【0018】
なお、アセトニトリルなどのニトリル系溶媒、炭酸ジメチルなどのエステル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒、アセトンなどのケトン系溶媒などの窒素、酸素などの原子を含有する溶媒は、五ハロゲン化リンに対する溶解性は良好であるが、反応過程においてフッ化水素、五フッ化リン、六フッ化リン酸塩などと分解、錯化等の副反応を起こしやすく、反応液の色が濃くなり、製品の外観や純度が劣り、反応収率が低下し、溶媒回収率が低下し、溶媒のリサイクルが困難になる等の原因となるため、反応溶媒としての使用には適さない。
【0019】
五ハロゲン化リンと不活性溶媒との溶解過程を短縮するために、加熱方式により五ハロゲン化リンの不活性溶媒中の溶解速度を高め、五ハロゲン化リンを溶解した後、五ハロゲン化リンの固体が析出しないことを確保した上で、必要な温度まで温度を下げ、反応器に入れて反応を行うことができる。水分導入が最終製品の品質に悪影響を及ぼすことを考慮して、五ハロゲン化リンの投入、溶解などの過程では、密閉、乾燥不活性ガスによる保護などの方法で、環境水蒸気を遮断する。
【0020】
五ハロゲン化リンを不活性溶媒に溶解して、五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液を得た後、次の反応を行うという操作スキームは、プロセスが順調に実施できるかどうかに重要な意義を持っている。五ハロゲン化リンとして、五塩化リンも五臭化リンも昇華性固体であり、その中でも、五塩化リン固体は、融点が180℃と高く、五臭化リン固体は、明確な融点がなく、温度が100℃を超えると分解が起こる。このため、五塩化リン及び五臭化リンの安定した物理状態は固体であり、五塩化リン及び五臭化リンを液体及びガスの形態で安定して維持することは困難である。五ハロゲン化リンは固体として投入する場合、バッチ釜式反応器に適用できるが、投入速度を精密に制御できず、そのほか、五ハロゲン化リン固体とフッ化水素との接触瞬間に固液相反応が起こり、局所的な発熱が著しく、大量のハロゲン化水素ガスが放出され、大量の材料の揮発とガス同伴損失を招くだけでなく、重大な安全上のリスクがあり、安全生産事故が発生しやすい。言い換えれば、五ハロゲン化リンをガスで供給しようとすると、五ハロゲン化リンの特殊な物理的及び化学的性質により、五ハロゲン化リンのガスは凝縮して固体となりやすく、供給パイプラインを閉塞し、反応の円滑性に影響を及ぼす。また、ガスの材料を正確に測定し、必要に応じて正確に供給することは困難であるため、バッチ釜式反応器では不正確な計量もまだ許容されるが、連続フロー反応では、瞬間的な供給制御に非常に高い精度が要求されるため、連続フロー反応プロセスの要件を満たすことができない。さらに、連続フロー反応器は通常加圧反応器であり、ガスの材料は反応器の内圧よりも高い圧力を持っている場合にのみスムーズに反応器に入ることができる。したがって、五ハロゲン化リンのガスでの供給はプロセスの要件を満たすことができないだけでなく、工業的に達成することも困難である。
【0021】
ステップ(2)において、
前記ハロゲン化アルカリ金属塩は、下記一般式で表される。
【化12】
合成対象生成物が六フッ化リン酸リチウムである場合、ハロゲン化アルカリ金属塩は、フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウムから選択される1種又は複数種であり、合成対象生成物が六フッ化リン酸ナトリウムである場合、ハロゲン化アルカリ金属塩は、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウムから選択される1種又は複数種である。合成対象生成物が六フッ化リン酸カリウムである場合、ハロゲン化アルカリ金属塩は、フッ化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウムから選択される1種又は複数種である。
【0022】
ハロゲン化アルカリ金属塩がフッ化アルカリ金属塩である場合、フッ化アルカリ金属塩を無水フッ化水素に溶解する過程は、純粋な溶解過程であり、溶解発熱が目立たず、ガス発生がなく、溶解過程は比較的温和である。ハロゲン化アルカリ金属塩が塩化アルカリ金属塩及び臭化アルカリ金属塩である場合、ハロゲン化アルカリ金属塩を無水フッ化水素に溶解する過程は、溶解過程だけでなく、ハロゲン交換の反応過程でもあり、反応式は次のとおりである。
【化13】
【0023】
無水フッ化水素に塩化アルカリ金属塩及び臭化アルカリ金属塩を溶解した後、フッ化アルカリ金属塩を生成すると同時に、1分子のハロゲン化水素ガスを生成し、塩化アルカリ金属塩を用いる場合、生成するハロゲン化水素ガスは塩化水素、臭化アルカリ金属塩を用いる場合、生成するハロゲン化水素ガスは臭化水素である。ハロゲン化アルカリ金属塩は単一のハロゲン元素化合物であることが好ましく、特にハロゲン化アルカリ金属塩が塩化塩及び臭化塩である場合、溶解過程で生成するハロゲン化水素ガスは単一のハロゲン化水素、塩化水素又は臭化水素であり、それにより、塩化水素と臭化水素の混合物の発生が回避され、水に吸収されると塩化水素又は臭化水素溶液を併産することができ、より高いリサイクル価値を有する。塩化アルカリ金属塩と臭化アルカリ金属塩を無水フッ化水素に溶解する過程は、ハロゲン交換の反応を伴い、1分子のハロゲン化水素が生成されるが、反応過程が温和で、発熱が少なく、投入速度を調整することで制御できるため、安全性が高い。
【0024】
六フッ化リン酸塩の合成効率と経済性を更に向上させるために、ステップ(2)に用いるハロゲン化アルカリ金属塩が塩化アルカリ金属塩又は臭化アルカリ金属塩である場合、ステップ(1)に用いる五ハロゲン化リンは五塩化リン又は五臭化リンであり、即ち、ステップ(2)に塩化アルカリ金属塩を用いる場合、ステップ(1)に五塩化リンが使用され、ステップ(2)に臭化アルカリ金属塩を用いる場合、ステップ(1)に五臭化リンが使用され、これにより、ステップ(2)とステップ(4)とのハロゲン化水素処理システムの共用を図ることができ、それによって、製造設備を繰り返して建設することを回避し、設備のランニングコストを低減することができるだけでなく、混合ハロゲン化水素の発生を効果的に回避し、併産するハロゲン化水素溶液の経済価値を向上させる。
【0025】
特に、ハロゲン化アルカリ金属塩は、無水フッ化水素への溶解過程及びその後の反応過程では、水分を導入せずにハロゲン化水素ガスのみを生成するため、好ましいアルカリ金属由来であり、一方、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属水酸化物等のアルカリ金属由来は、無水フッ化水素への溶解時に水が生成し、反応系に導入されたこのような水は、生成物である六フッ化リン酸塩を分解してフルオロオキシリン酸塩を生成し、最終的な製品の品質に悪影響を及ぼすため、本発明のアルカリ金属由来としては使用できない。
【0026】
前記無水フッ化水素は液体フッ化水素であり、フッ化水素の沸点が19.5℃であることから、フッ化水素を液体にするためには、溶解過程及びフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液の保存過程において、系の温度が19.5℃未満であることが必要であり、好ましくは溶解及び保存温度は‐40~19℃である。無水フッ化水素の使用量が、ハロゲン化アルカリ金属塩の質量の1~20倍である。
【0027】
水分導入による最終製品の品質への悪影響を考慮して、ハロゲン化アルカリ金属塩の投入、溶解などの過程では、密閉、乾燥不活性ガスによる保護などの方法により、環境水蒸気を遮断する。
【0028】
ステップ(3)において、
五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液(I)とフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液(II)を、所定の割合で反応器に投入した後、まず、五ハロゲン化リンとフッ化水素とを反応させて、五フッ化リンを生成し、生成した五フッ化リンをその場でフッ化アルカリ金属塩と反応させて、六フッ化リン酸塩を生成する。五フッ化リンをその場で生成、反応させることにより、五フッ化リンの分離、精製、保存、輸送等の操作を回避し、生産過程を効果的に簡略化し、五フッ化リンの利用率を向上させ、生産効率を向上させ、合成コストを削減させる。
【0029】
前記反応器は、バッチ釜式反応器、管状反応器及びマイクロ反応器であってもよく、好ましくは管状反応器及びマイクロ反応器であり、より好ましくはマイクロ反応器である。マイクロ反応器を使用すると、以下の理由により、反応収率と製品の純度が効果的に向上し、反応操作が簡素化され、反応の安全性が向上する。(1)五ハロゲン化リンとフッ化水素の反応による五フッ化リンの合成は非常に激しく、大量の熱を放出するため、五ハロゲン化リンを不活性溶媒に溶解して、溶液状態で供給することにより、より激しい固液状態の反応を避けるとともに、供給速度を制御し、反応の激しさを制御し、反応をバッチ釜式反応器と管状反応器でも行えるようにするが、マイクロ反応器は、バッチ釜式反応器と管状反応器に比べてより優れた混合効果やより高い熱交換面積を持っているため、より温和な条件下での反応を制御するのに有利である。(2)五ハロゲン化リンとフッ化水素とを反応させて五フッ化リンを合成する過程において、5分子のハロゲン化水素ガスが生成されると同時に、五ハロゲン化リンを溶解するための不活性溶媒とフッ化水素とも相溶しないので、反応過程において、実際には、気、液、液の3相の不均一反応が存在し、より良好な混合効果が必然的により良好な反応効果をもたらす。混合効果については、マイクロ反応器はバッチ釜式反応器や管状反応器よりも有利である。(3)反応の特殊性に鑑みて、五フッ化リンとフッ化水素との接触瞬間の局所的な発熱量が大きく、しかも反応過程で5分子のハロゲン化水素ガスが生成され、加えて中間生成物の五フッ化リンがガスであること、及びフッ化水素の沸点が低く揮発性が高いことなどの要素があるため、バッチ式反応器を採用すれば、反応過程で反応系の局所的な発熱とハロゲン化水素ガスの放出に伴い、必然的に一部の中間生成物の五フッ化リンがフッ化アルカリ金属塩と反応していない時に、ハロゲン化水素ガスと揮発したフッ化水素ガスによって反応系外に持ち出されて損失され、フッ化水素の損失は反応系の安定性を破壊する可能性があり、更に深刻な結果として、フッ化水素の残量が不足して反応の正常な進行に影響を与える。管状反応器の場合、混合効果が不十分であるため、五フッ化リンガスはハロゲン化水素ガスと混合され、気液相がある程度分離され、その結果、五フッ化リンはフッ化水素溶液中のフッ化アルカリ金属塩と十分に反応できずに失われる。マイクロ反応器を使用すると、上記の問題を効果的に回避することができ、優れた混合効果により、反応中間生成物である五フッ化リンがフッ化水素中のフッ化アルカリ金属塩と完全に接触し、マイクロ反応器の出口に到達した時点で、五フッ化リンは完全に反応しており、反応が終了しており、このとき、反応液を気液分離してハロゲン化水素を除去する際に、フッ化水素の一部がハロゲン化水素に同伴して損失されても、その時点で反応は終了しているので、損失されたフッ化水素は反応に悪影響を及ぼさない。(4)六フッ化リン酸塩を合成する原料であるフッ化水素、中間生成物である五フッ化リン、及び反応により得られる混合生成物(III)は、毒性が高く、反応過程においても安全上のリスクが大きいため、反応過程の液体保持容量を減らすことで、安全上のリスクを効果的に低減、回避することができる。工業グレードのマイクロ反応器の液体保持容量は数リットルのスケールであり、バッチ式反応器や管状反応器の液体保持容量と比較すると、安全上のリスクはほとんど無視できる。
【0030】
反応器としてマイクロ反応器を使用する場合、単一のマイクロ反応器であってもよいし、複数のマイクロ反応器を緊密に組み合わせたマイクロ反応器群であってもよく、具体的な構造はプロセス条件によって決定される。マイクロ反応器内の反応温度分布は、均一な温度であってもよいし、必要に応じてマイクロ反応器内に異なる温度分布を形成してもよい。均一な反応温度を採用する場合、この反応温度は、無水フッ化水素の沸点以下とし、マイクロ反応器の出口から流出する反応混合物(III)中のフッ化水素が液体であることを確保する。マイクロ反応器の内部が異なる温度分布である場合、マイクロ反応器内では、無水フッ化水素の沸点より高い温度を許容することができ、反応混合物(III)がマイクロ反応器の出口に向かって流れるとき、混合物(III)がマイクロ反応器から流出するときの温度が無水フッ化水素の沸点より低い温度になるように冷却することができる。マイクロ反応器の反応温度は‐40~100℃であることが好ましい。反応過程で生成する中間生成物である五フッ化リンはガスであり、生成するハロゲン化水素もガスであり、ガスの生成は必然的にマイクロ反応器内部の圧力を上昇させ、さらに、マイクロ反応器の反応温度が無水フッ化水素の沸点より高くなると、フッ化水素のガス化にも圧力が発生するため、マイクロ反応器の選択時に材質が耐食性要件を満たすかどうかだけでなく、マイクロ反応器の耐圧能力を考慮して反応過程の安全性を確保する必要がある。マイクロ反応器の材料と接触する部位の材質は、非金属材質として炭化ケイ素、金属材質として高ニッケル合金材料、例えば、モネル合金、ハステロイなどで、マイクロ反応器の耐圧能力は反応過程で出現する可能性のある最高圧力より高くなければならない。
【0031】
五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液(I)とフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液(II)との供給比率は、単位時間当たりにマイクロ反応器に供給される五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液中に含まれるリンの物質量と、単位時間当たりにマイクロ反応器に供給されるフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液中に含まれるアルカリ金属の物質量との比率である。好ましくは、単位時間当たりにマイクロ反応器に供給されるリンの物質量とアルカリ金属の物質量との比は、(0.8~1.2):1であり、より好ましくは、単位時間当たりにマイクロ反応器に供給されるリンの物質量とアルカリ金属の物質量との比は、(0.9~1.1):1である。
【0032】
五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液(I)とフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液(II)の供給速度は、五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液の濃度と温度、フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液の濃度と温度、マイクロ反応器の容積と構造、冷却システムの温度と冷却液の流量などと関係があり、実際の運転過程で、関連パラメータに基づいて調整確認を行い、マイクロ反応器内の温度をプロセスの必要な温度に制御することを確保する必要がある。五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液(I)とフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液(II)の供給速度がどのように変化しても、換算すれば、五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液(I)中に含まれるリンの物質量とフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液(II)中に含まれるアルカリ金属の物質量との供給比率をプロセスに最適な比率に正確に制御し、反応液がマイクロ反応器の出口に到達した時に、五ハロゲン化リンとフッ化アルカリ金属塩の両方が十分に反応して六フッ化リン酸塩を生成することを確保し、それによって、材料の利用率を高めるだけでなく、製品純度と反応収率の向上にも有利である。
【0033】
ステップ(4)において、
反応器から流出する混合物(III)は、六フッ化リン酸塩、フッ化水素、不活性溶媒及びハロゲン化水素からなる。混合液から揮発性ハロゲン化水素ガスを気液分離により分離して六フッ化リン酸塩、フッ化水素及び不活性溶媒からなる混合物(IV)を得る。気液分離工程は、専用の気液分離器で行ってもよく、分離して得られた混合物(IV)を収集器に入れて、収集器で気液分離操作を行ってもよい。収集器内で気液分離を行う場合、収集器には、混合物(IV)を貯蔵し、気液分離操作を行うための十分なスペースが必要であり、温度調整、凝縮、除泡などの機能を備えていなければならない。収集器内の材料を均一に保つために、収集器は撹拌機能を有することが好ましい。気液分離器と収集器の材料と接触する部分の材質は、フッ化水素、ハロゲン化水素などの腐食に耐える必要があり、炭化ケイ素などの非金属材料、モネル合金、ハステロイなどの高ニッケル合金材料、PTFE、PFAなどの耐腐食性高分子材料を裏打ちすることもできる。
【0034】
分離されたハロゲン化水素ガスに対しては、多段高度凝縮方式によって、ハロゲン化水素ガスに同伴したフッ化水素を凝縮して回収し、多段吸着脱フッ素方式により少量の残留フッ化水素を除去して、高純度のハロゲン化水素ガスを得、水で吸収して、ハロゲン化水素溶液を製造し、商業的用途に用い、経済性を向上させる。もちろん、ハロゲン化水素ガスは他の適切な方法で精製・資源化して利用することも可能であり、具体的には実際のニーズに応じて決定される。
【0035】
混合物(III)を気液分離して混合物(IV)を得る過程では、液体フッ化水素が揮発して、ハロゲン化水素ガスの脱フッ素精製操作の負荷と困難性を増大させるために、無水フッ化水素の沸点以下の操作温度が必要とされ、好ましい気液分離操作温度は、-40~19℃である。
【0036】
ステップ(5)において、
混合物(IV)は六フッ化リン酸塩、フッ化水素及び不活性溶媒からなる。この混合物(IV)を所定量回収した後、フッ化水素除去操作を行い、六フッ化リン酸塩と不活性溶媒からなる混合物(V)を得る。フッ化水素除去操作は、収集器で行ってもよいし、専用の脱溶媒釜で行ってもよい。脱溶媒釜でフッ化水素除去操作を行う場合、脱溶媒釜は撹拌、温度調整、凝縮、除泡などの機能を備えなければならず、脱溶媒釜の材料と接触する部分の材質は、フッ化水素の腐食に耐える必要があり、炭化ケイ素などの非金属材料、モネル合金、ハステロイなどの高ニッケル合金材料、PTFE、PFAなどの耐腐高分子材料を裏打ちすることもできる。
【0037】
フッ化水素除去操作は、フッ化水素の低沸点と高揮発性の特性を主に利用して、加熱昇温方式によりフッ化水素を沸騰蒸発させ、混合物からフッ化水素を除去することである。フッ化水素蒸気は、まず凝縮され、同伴された不活性溶媒を凝縮して混合物に戻し、フッ化水素蒸気は、フッ化水素回収システムに入る。混合物(IV)のフッ化水素除去速度及び除去効果を向上させるために、フッ化水素除去中、特にフッ化水素除去操作終了前に、乾燥窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスを用いて混合物をバブリングしてパージすることができ、フッ化水素が十分に除去され、フッ化水素が残留しない混合物(V)を得ることができる。フッ化水素回収システムに入ったフッ化水素ガスは、多段高度凝縮に供して、フッ化水素を凝縮して回収し、高度凝縮による排ガスは、多段の水、アルカリスプレー、又は多段の吸着脱フッ素を経て、基準を満たすものとして排出する。
【0038】
フッ化水素除去過程は、フッ化水素の沸点より高く、不活性溶媒の沸点より低い操作温度を必要とし、フッ化水素回収システムへの不活性溶媒の巻き込みを回避しつつ、フッ化水素の円滑な除去を確保する。フッ化水素を除去するための操作温度は、20~100℃であることが好ましい。フッ化水素除去が終了すると、六フッ化リン酸塩と不活性溶媒からなる混合物(V)が得られるが、六フッ化リン酸塩の不活性溶媒への溶解度は低く、材料温度が六フッ化リン酸塩の溶解度に与える影響も小さいが、その後の固液分離操作を容易にし、固液分離操作の安全性を高めるためには、混合物(V)の温度を室温以下にすることが望ましい。
【0039】
ステップ(6)において、
六フッ化リン酸塩と不活性溶媒とからなる混合物(V)を固液分離して乾燥し、六フッ化リン酸塩完成品を得る。混合物(V)の固液分離には、遠心分離、加圧濾過、吸引濾過などの一般的な固液分離操作が適用できる。固液分離により得られた固体を乾燥して、純度99.8%以上、収率99.0%以上の六フッ化リン酸塩完成品を得る。
【0040】
六フッ化リン酸塩の品質をさらに向上させ、よりハイエンドな用途の需要を満たすために、得られた六フッ化リン酸塩を再結晶により精製し、純度99.99%以上、収率98%以上の超高純度六フッ化リン酸塩を製造することができる。
【発明の効果】
【0041】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は、以下の通りである。
(1):五ハロゲン化リンを不活性溶媒に溶解して、五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液を製造してから供給する方法により、従来技術の五ハロゲン化リンの固体又はガスを供給する方式を避け、五ハロゲン化リンの供給速度と供給精度の精密な制御を実現しただけでなく、五ハロゲン化リンとフッ化水素との反応が激しすぎるという問題を効果的に解決し、合成プロセスの安全性と操作性を根本的に向上させた。
(2):従来技術におけるニトリル系、エステル系、エーテル系、ケトン系等の窒素原子、酸素原子を含む溶媒に代えて、アルカン系溶媒、ハロゲン化アルカン系溶媒、芳香族炭化水素系溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素系溶媒等、反応系に対して不活性である溶媒を用いることによって、溶媒が反応過程において完全に不活性であることを確保し、溶媒が関与する分解、錯化等の副反応を回避し、反応収率と製品純度を向上させ、溶媒回収操作を簡略化し、溶媒回収率を向上させる。
(3):五フッ化リンのその場の生成、フッ化アルカリ金属塩とのその場の反応を採用することによって、五フッ化リンの分離、精製、保存、輸送などの操作を回避し、五フッ化リンのガス供給方式を廃止し、五フッ化リンの利用率を効果的に高め、操作プロセスを簡略化し、生産効率を高め、合成コストを下げる。
(4):異なる成分の材料を段階的に分離する方法を採用して、反応で生成したハロゲン化水素、反応余剰原料のフッ化水素、反応不活性溶媒、及び六フッ化リン酸塩製品を順次分離して、分離順序を合理化し、分離プロセスを最も簡素化し、分離効果を最適化し、混合材料の生成を最大限に回避し、各種材料の資源化利用を実現し、廃棄ガス、廃水及び固体廃棄物を最小に抑える。その中で回収したハロゲン化水素は、商業用途用の高純度ハロゲン化水素水溶液を製造するために使用することができ、回収したフッ化水素と不活性溶媒は、反応に再使用することができ、それにより、経済効果を最大限に高めることができる。
(5):六フッ化リン酸塩製品は、六フッ化リン酸塩と不活性溶媒との混合物を固液分離して得られるものであり、従来技術の六フッ化リン酸塩製品をフッ化水素溶液から固液分離して得られることを回避し、固液分離工程及びその後の精製、乾燥工程の安全性及び操作性を大幅に向上させ、しかも、分離して得られた六フッ化リン酸塩中の残留フッ化水素をより少なくし、製品の品質をより高くする。
(6):本発明の六フッ化リン酸塩の合成方法は、原料の五ハロゲン化リンとハロゲン化アルカリ金属塩が溶液を製造する際に固体の投入を伴うこと、最終製品を固液分離し乾燥して完成品を得る際に固体の排出を伴うことを除き、その他の工程はすべて連続フローと自動化生産を実現することができ、「釜式連続-連続フロー-釜式連続」の連続反応モードを容易に実現することができ、従来技術の全釜式間欠反応モードを回避し、生産過程の安全性を大幅に向上させ、生産効率を向上させる。
以下、添付の図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明をさらに説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の理解を助けるためにのみ使用され、本発明を限定するものではない。具体的な実施形態は、本発明のすべての技術的特徴を網羅することは不可能であり、明細書に係わる技術的特徴は、互いに矛盾がない限り、相互に組み合わせて新たな実施形態を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明の六フッ化リン酸塩の「釜式連続‐連続フロー‐釜式連続」連続合成プロセスフローの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1に示すように、本発明は、「釜式連続‐反応器連続フロー‐連続気液分離‐釜式連続」の連続反応プロセスを用いて六フッ化リン酸リチウムを合成する。具体的なプロセスフローは以下の通りである。
【0044】
(1):五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液は、A、Bの2つの経路により調製される。A、Bの2つの経路は交互に運転し、A経路で五ハロゲン化リン溶液の調製を行う場合、B経路で五ハロゲン化リン溶液を供給し、逆の場合、B経路で五ハロゲン化リン溶液の調製を行う場合、A経路で五ハロゲン化リン溶液を供給し、このように、五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液を連続的に供給する。
(2):フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液の調製は、A、Bの2つの経路により行われ、A、Bの2つの経路は交互に運転し、A経路でフッ化アルカリ金属塩溶液の調製を行う場合、B経路でフッ化アルカリ金属塩溶液を供給し、逆の場合、B経路でフッ化アルカリ金属塩溶液の調製を行う場合、A経路でフッ化アルカリ金属塩溶液を供給し、このように、フッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液の連続供給を実現することができる。フッ化アルカリ金属塩として塩化アルカリ金属塩又は臭化アルカリ金属塩を用いる場合、生成したハロゲン化水素ガスをハロゲン化水素処理システムに導入する。
(3):五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液とフッ化アルカリ金属塩フッ化水素溶液を定量ポンプにより所定の割合で連続フロー反応器に投入して反応させ、供給比率、供給速度、反応温度、滞留時間等を、プロセスの要件に応じてパラメータの設定、調整をし、反応を連続的に行い、連続的に供給して連続的に排出する。
(4):連続フロー反応器の出口からの混合物(III)を連続気液分離によりハロゲン化水素を除去して、混合物(IV)を得、除去したハロゲン化水素ガスをハロゲン化水素処理システムに導入する。
(5):混合物(IV)を収集し、フッ化水素を除去して混合物(V)を得、混合物(V)を固液分離して六フッ化リン酸塩を得る。上記の操作はA、Bの2つの経路で行われ、A、Bの2つの経路は、交互に運転し、A経路で混合物(IV)を収集する場合、B経路で混合物(IV)からフッ化水素を除去して混合物(V)を得、混合物(V)を固液分離して六フッ化リン酸塩を得る操作を行う。B経路で混合物(IV)を収集する場合、A経路で混合物(IV)からフッ化水素を除去して混合物(V)を得、混合物(V)を固液分離して六フッ化リン酸塩を得る操作を行う。このようにして、連続気液分離器にシームレスに接続する一方、フッ化水素を連続的に除去して固液分離する操作を実現し、合成プロセスの連続的かつ安定した運転を確保し、除去したフッ化水素はフッ化水素回収系に入り、固液分離により得られた不活性ガスは五ハロゲン化リン不活性溶媒溶液の調製工程に戻る。
(6):六フッ化リン酸塩を乾燥して六フッ化リン酸塩完成品を得る、及び六フッ化リン酸塩完成品を包装する過程は、1つの経路で行われ、実際の生産能力に基づいて合理的に連続乾燥、連続包装設備を配置し、六フッ化リン酸塩の連続乾燥、連続包装操作を実現する。
【0045】
実施例1
マイクロ反応器を連続反応器とし、五塩化リン、塩化リチウム、及びフッ化水素を原料とし、トルエンを不活性有機溶媒として、六フッ化リン酸リチウムを合成した。フローチャート1に示すように、合成過程は以下の通りである。
(1):所定量のトルエンを五塩化リントルエン溶液調製釜に加えて、窒素保護下、所定量の五塩化リン固体を加え、撹拌して60~65℃に昇温し、固体を完全に溶解した後、20~25℃に降温し、濃度25質量%の五塩化リントルエン溶液を得て、使用するまで窒素保護下で保存した。五塩化リントルエン溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(2):所定量の無水フッ化水素液体をフッ化リチウムフッ化水素溶液調製釜に加えて、窒素保護下、温度を-10~-5℃に制御し、所定量の塩化リチウム固体をバッチ式でゆっくりと加え、撹拌して溶解した後、濃度20質量%のフッ化リチウムフッ化水素溶液を得て、-10~-5℃で使用するまで窒素保護下で保存した。調製過程で生成された塩化水素ガスは塩化水素処理システムに入った。フッ化リチウムフッ化水素溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(3):五塩化リントルエン溶液を定量ポンプにより500g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入し、フッ化リチウムフッ化水素溶液を定量ポンプにより77.85g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入した。2種の材料はマイクロ反応器の入口で十分に混合されてから、マイクロ反応器内に入って反応を行った。マイクロ反応器は、段階的温度制御を採用しており、中部の最高温度が60~65℃に制御され、出口の温度が-15~-10℃に制御され、マイクロ反応器内の材料の滞留時間は約80秒である。
(4):反応液がマイクロ反応器から流出した後、-15~-10℃の温度に制御された連続気液分離器に入り、気液分離器で分離されたガスは塩化水素処理システムに入り、分離された液相は、0~5℃の温度に制御された収集釜に入った。収集釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(5):収集釜に充分な材料が収集された後、収集釜を40~45℃にゆっくりと昇温し、フッ化水素を蒸発除去し、フッ化水素蒸気をフッ化水素回収システムに入れ、フッ化水素をほとんど除去した。その後、乾燥窒素を導入し、40~45℃で材料を2時間パージし、パージが終了した後、収集釜を5~10℃に降温し、材料を排出して遠心分離し、六フッ化リン酸リチウム湿固体を得て、遠心分離母液をトルエンとして回収し、五塩化リントルエン溶液調製工程におけるトルエンタンクに戻した。
(6):六フッ化リン酸リチウム湿固体を固形分輸送システムによりシングルコーンスパイラルベルト乾燥機に送り、減圧乾燥し、検出の結果合格すると、自動包装システムで包装した。
塩化水素処理システム:塩化水素処理システムは、3段直列コンデンサ、2段脱フッ素充填塔、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、塩化水素に含まれるフッ化水素凝縮を回収し、2段脱フッ素充填塔は、フッ化水素吸着パッキンを内部に充填しており、凝縮により脱フッ素された塩化水素中に残留する少量のフッ化水素を除去し、脱フッ素処理により得られた高純度塩化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水で吸収され、濃度35~36%の塩化水素溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
フッ化水素回収システム:フッ化水素回収システムは、3段直列コンデンサ、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、ほとんどのフッ化水素を凝縮して回収し、排ガス中に残ったフッ化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水に吸収され、濃度49±0.2%のフッ化水素酸溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
本実施例では、六フッ化リン酸リチウムの合成には、供給開始から安定的になるようにデバッグまで、10時間がかかった。デバッグ完了後に計時を開始すると、300時間安定的に運転した結果、合計で五塩化リン2250kg、塩化リチウム458kgが消費され、六フッ化リン酸リチウム完成品1630kgが得られ、収率は99.3%、純度は99.85%であった。
【0046】
実施例2
マイクロ反応器を連続反応器とし、五塩化リン、フッ化ナトリウム、およびフッ化水素を原料とし、クロロベンゼンを不活性有機溶媒として、六フッ化リン酸ナトリウムを合成した。フローチャート1に示すように、合成過程は以下の通りである。
(1):所定量のクロロベンゼンを五塩化リンクロロベンゼン溶液調製釜に加えて、窒素保護下、所定量の五塩化リン固体を加え、撹拌して50~55℃に昇温し、固体を完全に溶解した後、10~15℃に降温し、濃度20質量%の五塩化リンクロロベンゼン溶液を得て、使用するまで窒素保護下で保存した。五塩化リンクロロベンゼン溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(2):所定量の無水フッ化水素液体をフッ化ナトリウムフッ化水素溶液調製釜に加えて、窒素保護下、温度を10~15℃に制御し、所定量のフッ化ナトリウム固体をバッチ式でゆっくりと加え、撹拌して溶解した後、濃度30質量%のフッ化ナトリウムフッ化水素溶液を得て、10~15℃で使用するまで窒素保護下で保存した。フッ化ナトリウムフッ化水素溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(3):五塩化リンクロロベンゼン溶液を定量ポンプにより550g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入し、フッ化ナトリウムフッ化水素溶液を定量ポンプにより73.94g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入した。2種の材料はマイクロ反応器の入口で十分に混合されてから、マイクロ反応器内に入って反応を行った。マイクロ反応器は、段階的温度制御を採用しており、中部の最高温度が70~75℃に制御され、出口の温度が-10~-5℃に制御され、マイクロ反応器内での材料の滞留時間は約70秒である。
(4):反応液がマイクロ反応器から流出した後、-5~0℃の温度に制御された連続気液分離器に入り、気液分離器で分離されたガスは塩化水素処理システムに入り、分離された液相は、-5~5℃の温度に制御された収集釜に入った。収集釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(5):収集釜に充分な材料が収集された後、収集釜を50~55℃にゆっくりと昇温し、フッ化水素を蒸発除去し、フッ化水素蒸気をフッ化水素回収システムに入れ、フッ化水素をほとんど除去した。その後、乾燥アルゴンを導入し、50~55℃で材料を2時間パージし、パージが終了した後、収集釜を20~25℃に降温し、材料を排出して遠心分離し、六フッ化リン酸ナトリウム湿固体を得て、遠心分離母液をクロロベンゼンとして回収し、五塩化リンクロロベンゼン溶液調製工程のクロロベンゼンタンクに戻した。
(6):六フッ化リン酸ナトリウム湿固体を固形分輸送システムによりシングルコーンスパイラルベルト乾燥機に送り、減圧乾燥し、検出の結果合格すると、自動包装システムで包装した。
塩化水素処理システム:塩化水素処理システムは、3段直列コンデンサ、2段脱フッ素充填塔、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、塩化水素に含まれるフッ化水素凝縮を回収し、2段脱フッ素充填塔は、フッ化水素吸着パッキンを内部に充填しており、凝縮により脱フッ素された塩化水素中に残留する少量のフッ化水素を除去し、脱フッ素処理により得られた高純度塩化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水で吸収され、濃度35~36%の塩化水素溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
フッ化水素回収システム:フッ化水素回収システムは、3段直列コンデンサ、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、ほとんどのフッ化水素を凝縮して回収し、排ガス中に残ったフッ化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水に吸収され、濃度49±0.2%のフッ化水素酸溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
本実施例では、六フッ化リン酸ナトリウムの合成には、供給開始から安定的になるようにデバッグまで、10時間がかかった。デバッグ完了後に計時を開始すると、300時間安定的に運転した結果、合計で五塩化リン1980kg、フッ化ナトリウム399kgが消費され、六フッ化リン酸ナトリウム完成品1589kgが得られ、収率は99.5%、純度は99.83%であった。
【0047】
実施例3
マイクロ反応器を連続反応器とし、五塩化リン、塩化カリウム、及びフッ化水素を原料とし、クロロホルムを不活性有機溶媒として、六フッ化リン酸カリウムを合成した。フローチャート1に示すように、合成過程は以下の通りである。
(1):所定量のクロロホルムを五塩化リンクロロホルム溶液調製釜に加えて、窒素保護下、所定量の五塩化リン固体を加え、撹拌して40~45℃に昇温し、固体を完全に溶解した後、20~25℃に降温し、濃度30質量%の五塩化リンクロロホルム溶液を得て、使用するまで窒素保護下で保存した。五塩化リンクロロホルム溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(2):所定量の無水フッ化水素液体をフッ化カリウムフッ化水素溶液調製釜に加えて、窒素保護下、温度を-15~-10℃に制御し、所定量の塩化カリウム固体をバッチ式でゆっくりと加え、撹拌して溶解した後、濃度35質量%のフッ化カリウムフッ化水素溶液を得て、-15~-10℃で使用するまで窒素保護下で保存した。調製過程で生成された塩化水素ガスは塩化水素処理システムに入った。フッ化カリウムフッ化水素溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(3):五塩化リンクロロホルム溶液を定量ポンプにより450g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入し、フッ化カリウムフッ化水素溶液を定量ポンプにより107.62g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入した。2種の材料はマイクロ反応器の入口で十分に混合されてから、マイクロ反応器内に入って反応を行った。マイクロ反応器は、段階的温度制御を採用しており、中部の最高温度が40~45℃に制御され、出口の温度が-15~-10℃に制御され、マイクロ反応器内での材料の滞留時間は約90秒である。
(4):反応液がマイクロ反応器から流出した後、-10~-5℃の温度に制御された連続気液分離器に入り、気液分離器で分離されたガスは塩化水素処理システムに入り、分離された液相は、0~5℃の温度に制御された収集釜に入った。収集釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(5):収集釜に充分な材料が収集された後、収集釜を50~55℃にゆっくりと昇温し、フッ化水素を蒸発除去し、フッ化水素蒸気をフッ化水素回収システムに入れ、フッ化水素の除去が終了した。その後、収集釜を0~5℃に降温し、材料を排出して加圧ろ過し、六フッ化リン酸カリウム湿固体を得て、加圧ろ過母液をクロロホルムとして回収し、五塩化リンクロロホルム溶液調製工程のクロロホルムタンクに戻した。
(6):六フッ化リン酸カリウム湿固体を固形分輸送システムによりシングルコーンスパイラルベルト乾燥機に送り、減圧乾燥し、検出の結果合格すると、自動包装システムで包装した。
塩化水素処理システム:塩化水素処理システムは、3段直列コンデンサ、2段脱フッ素充填塔、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、塩化水素に含まれるフッ化水素凝縮を回収し、2段脱フッ素充填塔は、フッ化水素吸着パッキンを内部に充填しており、凝縮により脱フッ素された塩化水素中に残留する少量のフッ化水素を除去し、脱フッ素処理により得られた高純度塩化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水で吸収され、濃度35~36%の塩化水素溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
フッ化水素回収システム:フッ化水素回収システムは、3段直列コンデンサ、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、ほとんどのフッ化水素を凝縮して回収し、排ガス中に残ったフッ化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水に吸収され、濃度49±0.2%のフッ化水素酸溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
本実施例では、六フッ化リン酸カリウムの合成には、供給開始から安定的になるようにデバッグまで、10時間がかかった。デバッグ完了後に計時を開始すると、300時間安定的に運転した結果、合計で五塩化リン2430kg、塩化カリウム870kgが消費され、六フッ化リン酸カリウム完成品2131kgが得られ、収率は99.2%、純度は99.88%であった。
【0048】
実施例4
マイクロ反応器を連続反応器とし、五塩化リン、塩化ナトリウム、及びフッ化水素を原料とし、m-ジクロロベンゼンを不活性有機溶媒として、六フッ化リン酸ナトリウムを合成した。フローチャート1に示すように、合成過程は以下の通りである。
(1):所定量のm-ジクロロベンゼンを五塩化リンm-ジクロロベンゼン溶液調製釜に加えて、窒素保護下、所定量の五塩化リン固体を加え、撹拌して70~75℃に昇温し、固体を完全に溶解した後、25~30℃に降温し、濃度30質量%の五塩化リンm-ジクロロベンゼン溶液を得て、使用するまで窒素保護下で保存した。五塩化リンm-ジクロロベンゼン溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(2):所定量の無水フッ化水素液体をフッ化ナトリウムフッ化水素溶液調製釜に加えて、窒素保護下、温度を0~5℃に制御し、所定量の塩化ナトリウム固体をバッチ式でゆっくりと加え、撹拌して溶解した後、濃度25質量%のフッ化ナトリウムフッ化水素溶液を得て、0~5℃で使用するまで窒素保護下で保存した。調製過程で生成された塩化水素ガスは塩化水素処理システムに入った。フッ化ナトリウムフッ化水素溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(3):五塩化リンm-ジクロロベンゼン溶液を定量ポンプにより450g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入し、フッ化ナトリウムフッ化水素溶液を定量ポンプにより108.89g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入した。2種の材料はマイクロ反応器の入口で十分に混合されてから、マイクロ反応器内に入って反応を行った。マイクロ反応器は、段階的温度制御を採用しており、中部の最高温度が30~35℃に制御され、出口の温度が-5~0℃に制御され、マイクロ反応器内での材料の滞留時間は約90秒である。
(4):反応液がマイクロ反応器から流出した後、-5~0℃の温度に制御された連続気液分離器に入り、気液分離器で分離されたガスは塩化水素処理システムに入り、分離された液相は、-5~0℃の温度に制御された収集釜に入った。収集釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(5):収集釜に充分な材料が収集された後、収集釜を60~65℃にゆっくりと昇温し、フッ化水素を蒸発除去し、フッ化水素蒸気をフッ化水素回収システムに入れ、フッ化水素をほとんど除去した。その後、乾燥窒素を導入し、60~65℃で材料を1時間パージし、パージが終了した後、収集釜を15~20℃に降温し、材料を排出して遠心分離し、六フッ化リン酸ナトリウム湿固体を得て、遠心分離母液をm-ジクロロベンゼンとして回収し、五塩化リンm-ジクロロベンゼン溶液調製工程のm-ジクロロベンゼンタンクに戻した。
(6):六フッ化リン酸ナトリウム湿固体を固形分輸送システムによりシングルコーンスパイラルベルト乾燥機に送り、減圧乾燥し、検出の結果合格すると、自動包装システムで包装した。
塩化水素処理システム:塩化水素処理システムは、3段直列コンデンサ、2段脱フッ素充填塔、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、塩化水素に含まれるフッ化水素凝縮を回収し、2段脱フッ素充填塔は、フッ化水素吸着パッキンを内部に充填しており、凝縮により脱フッ素された塩化水素中に残留する少量のフッ化水素を除去し、脱フッ素処理により得られた高純度塩化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水で吸収され、濃度35~36%の塩化水素溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
フッ化水素回収システム:フッ化水素回収システムは、3段直列コンデンサ、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、ほとんどのフッ化水素を凝縮して回収し、排ガス中に残ったフッ化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水に吸収され、濃度49±0.2%のフッ化水素酸溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
本実施例では、六フッ化リン酸ナトリウムの合成には、供給開始から安定的になるようにデバッグまで、10時間がかかった。デバッグ完了後に計時を開始すると、300時間安定的に運転した結果、合計で五塩化リン2430kg、塩化ナトリウム682kgが消費され、六フッ化リン酸ナトリウムリチウム完成品1942kgが得られ、収率は99.1%、純度は99.90%であった。
【0049】
実施例5
マイクロ反応器を連続反応器とし、五塩化リン、フッ化リチウム、及びフッ化水素を原料として、ジクロロエタンを不活性有機溶媒として、六フッ化リン酸リチウムを合成した。フローチャート1に示すように、合成過程は以下の通りである。
(1):所定量のジクロロエタンを五塩化リンジクロロエタン溶液調製釜に加えて、窒素保護下、所定量の五塩化リン固体を加え、撹拌して60~65℃に昇温し、固体を完全に溶解した後、20~25℃に降温し、濃度25質量%の五塩化リンジクロロエタン溶液を得て、使用するまで窒素保護下で保存した。五塩化リンジクロロエタン溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(2):所定量の無水フッ化水素液体をフッ化リチウムフッ化水素溶液調製釜に加えて、窒素保護下、温度を5~10℃に制御し、所定量のフッ化リチウム固体をバッチ式でゆっくりと加え、撹拌して溶解した後、濃度25質量%のフッ化リチウムフッ化水素溶液を得て、5~10℃で使用するまで窒素保護下で保存した。フッ化リチウムフッ化水素溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(3):五塩化リンジクロロエタン溶液を定量ポンプにより500g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入し、フッ化リチウムフッ化水素溶液を定量ポンプにより62.28g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入した。2種の材料はマイクロ反応器の入口で十分に混合されてから、マイクロ反応器内に入って反応を行った。マイクロ反応器は、段階的温度制御を採用しており、中部の最高温度が50~55℃に制御され、出口の温度が0~5℃に制御され、マイクロ反応器内の材料の滞留時間は約80秒である。
(4):反応液がマイクロ反応器から流出した後、-20~-15℃の温度に制御された連続気液分離器に入り、気液分離器で分離されたガスは塩化水素処理システムに入り、分離された液相は、-5~5℃の温度に制御された収集釜に入った。収集釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(5):収集釜に充分な材料が収集された後、収集釜を60~65℃にゆっくりと昇温し、フッ化水素を蒸発除去し、フッ化水素蒸気をフッ化水素回収システムに入れ、フッ化水素の除去が終了した。その後、収集釜を10~15℃に降温し、材料を排出して遠心分離し、六フッ化リン酸リチウム湿固体を得て、遠心分離母液をジクロロエタンとして回収し、五塩化リンジクロロエタン溶液調製工程のジクロロエタンタンクに戻した。
(6):六フッ化リン酸リチウム湿固体を固形分輸送システムによりシングルコーンスパイラルベルト乾燥機に送り、減圧乾燥し、検出の結果合格すると、自動包装システムで包装した。
塩化水素処理システム:塩化水素処理システムは、3段直列コンデンサ、2段脱フッ素充填塔、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、塩化水素に含まれるフッ化水素凝縮を回収し、2段脱フッ素充填塔は、フッ化水素吸着パッキンを内部に充填しており、凝縮により脱フッ素された塩化水素中に残留する少量のフッ化水素を除去し、脱フッ素処理により得られた高純度塩化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水で吸収され、濃度35~36%の塩化水素溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
フッ化水素回収システム:フッ化水素回収システムは、3段直列コンデンサ、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、ほとんどのフッ化水素を凝縮して回収し、排ガス中に残ったフッ化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水に吸収され、濃度49±0.2%のフッ化水素酸溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
本実施例では、六フッ化リン酸リチウムの合成には、供給開始から安定的になるようにデバッグまで、10時間がかかった。デバッグ完了後に計時を開始すると、300時間安定的に運転した結果、合計で五塩化リン2250kg、フッ化リチウム280kgが消費され、六フッ化リン酸リチウム完成品1631kgが得られ、収率は99.4%、純度は99.86%であった。
【0050】
実施例6
マイクロ反応器を連続反応器とし、五臭化リン、臭化カリウム、及びフッ化水素を原料とし、メチルシクロヘキサンを不活性有機溶媒として、六フッ化リン酸カリウムを合成した。フローチャート1に示すように、合成過程は以下の通りである。
(1):所定量のメチルシクロヘキサンを五臭化リンメチルシクロヘキサン溶液調製釜に加えて、窒素保護下、所定量の五臭化リン固体を加え、30~35℃で撹拌し、固体を完全に溶解した後、濃度15質量%の五臭化リンメチルシクロヘキサン溶液を得て、使用するまで窒素保護下で保存した。五臭化リンメチルシクロヘキサン溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(2):所定量の無水フッ化水素液体をフッ化カリウムフッ化水素溶液調製釜に加えて、窒素保護下、温度を-5~0℃に制御し、所定量の臭化カリウム固体をバッチ式でゆっくりと加え、撹拌して溶解した後、濃度40質量%のフッ化カリウムフッ化水素溶液を得て、-5~0℃で使用するまで窒素保護下で保存した。調製過程で生成された臭化水素ガスは、臭化水素処理システムに入った。フッ化カリウムフッ化水素溶液調製釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(3):五臭化リンメチルシクロヘキサン溶液を定量ポンプにより600g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入し、フッ化カリウムフッ化水素溶液を定量ポンプにより30.37g/minの速度でマイクロ反応器に連続的に投入した。2種の材料はマイクロ反応器の入口で十分に混合されてから、マイクロ反応器内に入って反応を行った。マイクロ反応器は、段階的温度制御を採用しており、中部の最高温度が80~85℃に制御され、出口の温度が-10~-5℃に制御され、マイクロ反応器内での材料の滞留時間は約60秒である。
(4):反応液がマイクロ反応器から流出した後、-10~-5℃の温度に制御された連続気液分離器に入り、気液分離器により分離されたガスは臭化水素処理システムに入り、分離された液相は、-5~5℃の温度に制御された収集釜に入った。収集釜は、交互に使用されるA釜とB釜がある。
(5):収集釜に充分な材料が収集された後、収集釜を70~75℃にゆっくりと昇温し、フッ化水素を蒸発除去し、フッ化水素蒸気をフッ化水素回収システムに入れ、フッ化水素の除去が終了した。その後、収集釜を20~25℃に降温し、材料を排出して加圧ろ過し、六フッ化リン酸カリウム湿固体を得て、加圧ろ過母液をメチルシクロヘキサンとして回収し、五臭化リンメチルシクロヘキサン溶液調製工程のメチルシクロヘキサンタンクに戻した。
(6):六フッ化リン酸カリウム湿固体を固形分輸送システムによりシングルコーンスパイラルベルト乾燥機に送り、減圧乾燥し、検出の結果合格すると、自動包装システムで包装した。
臭化水素処理システム:臭化水素処理システムは、3段直列コンデンサ、2段脱フッ素充填塔、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、臭化水素に含まれるフッ化水素を凝縮して回収し、2段脱フッ素充填塔は、フッ化水素吸着パッキンを内部に充填しており、凝縮により脱フッ素された臭化水素中に残留する少量のフッ化水素を除去し、脱フッ素処理により得られた高純度臭化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水で吸収され、濃度46~48%の臭化水素溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
フッ化水素回収システム:フッ化水素回収システムは、3段直列コンデンサ、3段流下液膜吸収装置、及び2段アルカリスプレー塔からなる。3段直列コンデンサは、-35~-30℃の凍結液を入れており、ほとんどのフッ化水素を凝縮して回収し、排ガス中に残ったフッ化水素は、3段流下液膜吸収装置を通って水に吸収され、濃度49±0.2%のフッ化水素酸溶液が得られた。排ガスは2段アルカリスプレーにより脱酸処理され、基準を満たすものとして排出された。
本実施例では、六フッ化リン酸カリウムの合成には、供給開始から安定的になるようにデバッグまで、10時間がかかった。デバッグ完了後に計時を開始すると、300時間安定的に運転した結果、合計で五臭化リン1620kg、臭化カリウム448kgが消費され、六フッ化リン酸カリウム完成品688kgが得られ、収率は99.3%、純度は99.84%であった。
【国際調査報告】