(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】GPAM発現を阻害するためのRNAIコンストラクト及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20241018BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241018BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241018BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20241018BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C12N15/113 130Z
C12N15/113 ZNA
A61P1/16
A61P29/00
A61K31/7105
A61K48/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523434
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-25
(86)【国際出願番号】 US2022047491
(87)【国際公開番号】W WO2023069754
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ルリフソン, イングリッド
(72)【発明者】
【氏名】ミード, ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ロング, ジェイソン シー.
(72)【発明者】
【氏名】マリー, ジャスティン ケー.
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA75
4C084ZB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB11
(57)【要約】
本開示は、GPAM遺伝子の発現を低下させるためのsiRNAなどのRNAiコンストラクトに関する。非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)などの肝疾患を治療又は予防するためにこのようなRNAiコンストラクトを使用する方法も記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センス鎖及びアンチセンス鎖を含むRNAiコンストラクトであって、前記アンチセンス鎖が、表1に列挙されるグリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ、ミトコンドリア(GPAM)mRNA配列に相補的な領域を含み、前記RNAiコンストラクトがGPAMの発現を阻害する、RNAiコンストラクト。
【請求項2】
表2に列挙されるアンチセンス配列と3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも15個の連続ヌクレオチドを有する領域を含む、請求項1に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項3】
前記アンチセンス鎖が、表1に列挙されるGPAM mRNA配列にハイブリダイズする、請求項1又は請求項2に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項4】
前記センス鎖が、約15~約30塩基対長の二重鎖領域を形成するために、前記アンチセンス鎖の配列と十分に相補的な配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項5】
前記二重鎖領域が、約17~約24塩基対長である、請求項4に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項6】
前記二重鎖領域が、約19~約21塩基対長である、請求項4に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項7】
前記二重鎖領域が、19塩基対長である、請求項6に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項8】
前記二重鎖領域が、20塩基対長である、請求項6に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項9】
前記二重鎖領域が、21塩基対長である、請求項6に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項10】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ約15~約30ヌクレオチド長である、請求項4~10のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項11】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ約19~約27ヌクレオチド長である、請求項10に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項12】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ約21~約25ヌクレオチド長である、請求項10に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項13】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖が、それぞれ約21~約23ヌクレオチド長である、請求項12に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項14】
少なくとも1つの平滑末端を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項15】
1~4個の不対ヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項16】
前記ヌクレオチドオーバーハングが2つの不対ヌクレオチドを有する、請求項15に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項17】
前記RNAiコンストラクトが、前記センス鎖の3’末端、前記アンチセンス鎖の3’末端、又は前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖の両方の3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む、請求項15又は16に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項18】
前記ヌクレオチドオーバーハングが、5’-UU-3’ジヌクレオチド又は5’-dTdT-3’ジヌクレオチドを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項19】
前記RNAiコンストラクトが、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む、請求項1~18のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項20】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-修飾ヌクレオチドである、請求項19に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項21】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、二環式核酸(BNA)、グリコール核酸、反転塩基又はこれらの組合せである、請求項19に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項22】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド又はこれらの組合せである、請求項21に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項23】
前記センス鎖及び前記アンチセンス鎖内の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである、請求項19に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項24】
前記修飾ヌクレオチドが、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド又はこれらの組合せである、請求項23に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項25】
少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項26】
前記センス鎖の3’末端に少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項25に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項27】
前記センス鎖の3’末端及び5’末端の両方に少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む、請求項25に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項28】
前記アンチセンス鎖が、表2に列挙されるアンチセンス配列から選択される配列を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項29】
前記センス鎖が、表2に列挙されるセンス配列から選択される配列を含む、請求項28に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項30】
表2に列挙される二重鎖化合物のいずれか1つである、請求項1~29のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクトであって、対照RNAiコンストラクトとインキュベートされた肝細胞内でのGPAM発現レベルと比較して、前記RNAiコンストラクトとのインキュベーション後の肝細胞内でのGPAMの発現レベルを低下させる、RNAiコンストラクト。
【請求項32】
前記肝細胞がHepG2細胞である、請求項31に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項33】
インビトロでHepG2細胞において5nMでGPAM発現を少なくとも10%阻害する、請求項1~32のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項34】
HepG2細胞におけるGPAM発現を約1nM未満のIC50で阻害する、請求項1~33のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項35】
肝細胞の表面上に発現される1つ以上のタンパク質に結合するリガンドをさらに含む、請求項1~34のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト。
【請求項36】
請求項1~35のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクトと、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む組成物。
【請求項37】
GPAMの発現の低下を必要とする患者においてGPAMの発現を低下させるための方法であって、請求項1~36のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクトを前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項38】
GPAMの発現の低下を必要とする患者においてGPAMの発現を低下させるための方法であって、請求項36に記載の組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項39】
肝細胞におけるGPAMの発現レベルが、前記RNAiコンストラクトを受けていない患者におけるGPAM発現レベルと比較して、前記RNAiコンストラクトの投与後の前記患者において低下している、請求項37又は請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記患者が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に罹患している、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記患者が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に罹患している、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
NAFLDの治療に使用するための、請求項1~35のいずれか一項に記載のRNAiコンストラクト又は請求項36に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ、ミトコンドリア(GPAM)の肝臓発現を調節するための組成物及び方法に関する。詳細には、本発明は、RNA干渉(RNAi)を介してGPAM発現を低下させるための核酸ベースの治療薬、及びそのような核酸ベースの治療薬を使用して、肝疾患、例えば非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を処置又は予防する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、様々な肝臓病理を含む世界で最も一般的な慢性肝疾患であり、その有病率は過去20年間で倍増し、現在では世界人口の20%超が罹患していると推定される(Sattar et al.(2014)BMJ 349:g4596;Loomba and Sanyal(2013)Nature Reviews Gastroenterology & hepatology 10(11):686-690;Kim and Kim(2017)Clin Gastroenterol Hepatol 15(4):474-485;Petta et al.(2016)Dig Liver Dis 48(3):333-342;Huang et al.(2021)Nat Rev Gastro & Hepatology(18):223-238)。NAFLDは、肝臓中におけるトリグリセリドの蓄積から始まり、1)著しい飲酒歴がなく、且つ2)他の種類の肝疾患の診断が除外されている個体において、5%超の肝細胞に細胞質脂質小滴が存在することによって定義される(Zhu et al(2016)World J Gastroenterol 22(36):8226-33;Rinella(2015)JAMA 313(22):2263-73;Yki-Jarvinen(2016)Diabetologia 59(6):1104-11)。一部の個体では、脂肪症と呼ばれる肝臓への異所性脂肪の蓄積により、炎症及び肝細胞損傷が誘発され、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)と呼ばれるより進行した段階の疾患が引き起こされる(Rinella、前掲)。2015年の時点で、7500万~1億人のアメリカ人がNAFLDを患っていると予測されており、NASHは、NAFLD診断のおよそ10~30%を占める(Rinella、前掲;Younossi et al(2016)Hepatology 64(5):1577-1586)。
【0003】
Genbank XM_005269998.1に見出される配列を有するグリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ、ミトコンドリア(GPAM、GPAT1)は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に関連する。GPAMにおけるミスセンス変異は、過剰な肝臓脂肪の蓄積及び非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)関連表現型に関連する(Jamialahmadi,O.,et al.,Exome-Wide Association Study on Alanine Aminotransferase Identifies Sequence Variants in the GPAM and APOE Associated With Fatty Liver Disease.Gastroenterology,2021.160(5):p.1634-1646 e7).
現在、NAFLD症状は、薬理学的処置が承認されていないので、減量及び任意の二次的症状の処置によって管理されている。従って、罹患した個体においてNAFLDを処置する組成物及び方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Sattar et al.(2014)BMJ 349:g4596
【非特許文献2】Loomba and Sanyal(2013)Nature Reviews Gastroenterology & hepatology 10(11):686-690
【非特許文献3】Kim and Kim(2017)Clin Gastroenterol Hepatol 15(4):474-485
【非特許文献4】Petta et al.(2016)Dig Liver Dis 48(3):333-342
【非特許文献5】Huang et al.(2021)Nat Rev Gastro & Hepatology(18):223-238
【非特許文献6】Zhu et al(2016)World J Gastroenterol 22(36):8226-33
【非特許文献7】Rinella(2015)JAMA 313(22):2263-73
【非特許文献8】Yki-Jarvinen(2016)Diabetologia 59(6):1104-11
【非特許文献9】Younossi et al(2016)Hepatology 64(5):1577-1586
【非特許文献10】Jamialahmadi,O.,et al.,Exome-Wide Association Study on Alanine Aminotransferase Identifies Sequence Variants in the GPAM and APOE Associated With Fatty Liver Disease.Gastroenterology,2021.160(5):p.1634-1646 e7
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むRNAiコンストラクトであって、アンチセンス鎖が、表1に記載のGPAM mRNA配列などのGPAM mRNA配列に相補的な配列を有する領域を含み、RNAiコンストラクトがGPAMの発現を阻害するRNAiコンストラクトを提供する。特定の実施形態では、RNAiコンストラクトは、表2に列挙されるアンチセンス配列と3ヌクレオチド以下だけ異なる少なくとも15個の連続的なヌクレオチドを有する領域を含む。いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖は、表1に列挙されるGPAM mRNA配列にハイブリダイズする。
【0006】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAiコンストラクトのセンス鎖は、アンチセンス鎖の配列に十分に相補的な配列を含み、約15~約30塩基対長の二重鎖領域を形成する。これら及び他の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖の各々は、約15~30ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、少なくとも1つの平滑末端を含む。他の実施形態では、RNAiコンストラクトは、少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを含む。このようなヌクレオチドオーバーハングは、少なくとも1~6個の不対ヌクレオチドを含み得、且つセンス鎖の3’末端、アンチセンス鎖の3’末端、又はセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方の3’末端に位置し得る。特定の実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の3’末端に2個の不対ヌクレオチドのオーバーハングを含む。他の実施形態では、RNAiコンストラクトは、アンチセンス鎖の3’末端に2個の不対ヌクレオチドのオーバーハングを含み、且つセンス鎖の3’末端/アンチセンス鎖の5’末端に平滑末端を含む。
【0007】
本発明のRNAiコンストラクトは、リボース環、核酸塩基又はホスホジエステル骨格に対する修飾を有するヌクレオチドを含む、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、1つ以上の2’-修飾ヌクレオチドを含む。このような2’-修飾ヌクレオチドは、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、二環式核酸(BNA)、グリコール核酸(GNA)、反転塩基(例えば、反転アデノシン)又はこれらの組合せを含み得る。特定の一実施形態では、RNAiコンストラクトは、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、又はこれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトのセンス鎖及びアンチセンス鎖の全てのヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドである。
【0008】
いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、修飾ヌクレオチド間結合又はヌクレオシド間結合などの少なくとも1つの骨格修飾を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載のRNAiコンストラクトは、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。特定の実施形態では、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合は、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖の3’末端又は5’末端に配置されてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトのアンチセンス鎖及び/又はセンス鎖は、表2に列挙されるアンチセンス配列及びセンス配列からの配列を含むか又はそれからなり得る。特定の実施形態では、RNAiコンストラクトは、表2に列挙される二重鎖化合物のいずれか1つであり得る。
【0010】
本開示はまた、前述のRNAiコンストラクト及び薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含む組成物、並びにそれを必要とする患者においてGPAMの発現を低下させる方法であって、前述のRNAiコンストラクト又は組成物を患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、GPAM遺伝子を標的化し、且つ肝細胞におけるGPAMの発現を低下させるRNAiコンストラクトの設計及び生成に部分的に基づく。GPAM発現の特異的阻害は、例えば、単純性脂肪肝(脂肪症)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変(肝臓の不可逆的な進行した瘢痕)、又はGPAM関連肥満といった肝臓関連疾患等のGPAM発現と関連する症状を処置又は予防するのに有用である。
【0012】
本開示は、グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ、ミトコンドリア(GPAM)遺伝子の発現を調節するための組成物及び方法を提供する。いくつかの実施形態では、この遺伝子は、細胞又は哺乳動物(例えば、ヒト)などの対象内に存在し得る。いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、GPAM mRNAを標的化し、且つ細胞又は哺乳動物におけるGPAM発現を低下させるRNAiコンストラクトを含む。そのようなRNAiコンストラクトは、様々な形態の肝臓関連疾患、例えば単純脂肪肝(脂肪症)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変(肝臓の不可逆的な進行性瘢痕化)、又はGPAM関連肥満を治療又は予防するのに有用である。
【0013】
ヒトの遺伝的証拠は、GPAMにおける一塩基多型(SNP)rs2792751(T)が「NAFLD促進性」であることを示している。このSNPは、GPAMにおけるアミノ酸変化をもたらす一般的なミスセンス変異:Ile43Valである。このSNPのキャリアは、磁気共鳴イメージングプロトン密度脂肪分率(MRI-PDFF)の増加及び脂肪肝及び全原因性肝硬変によるリスクの増加(オッズ比、OR)を示す。担体はまた、血清総コレステロール、LDL、HDL、トリグリセリド(TG)、ALT及びALPの増加、好中球及び性ホルモン結合グロブリンレベルの増加を示す(Haas,M.E.,et al.,Machine learning enables new insights into clinical significance of and genetic contribution to liver fat accumulation.2020:medRxiv 2020.09.03.20187195;Jamialahmadi,O.,et al.,Exome-Wide Association Study on Alanine Aminotransferase Identifies Sequence Variants in GPAM and APOE Associated With Fatty Liver Disease.Gastroenterology,2021.160(5):p.1634-1646 e7;Hammond,L.E.,et al.,Mitochondrial glycerol-3-phosphate acyltransferase-deficient mice have reduced weight and liver triacylglycerol content and altered glycerolipid fatty acid composition.Mol Cell Biol,2002.22(23):p.8204-14)。従って、ヒトデータの証拠は、NASH患者を治療するためのGPAM siRNA媒介療法の正しい方向性を示している。
【0014】
GPAMの遺伝学は、その作用機構及び生物学について知られていることと一致している。GPAMの機能的酵素的役割は十分に特徴付けられている(Gimeno,R.E.and J.Cao,Thematic review series:glycerolipids.Mammalian glycerol-3-phosphate acyltransferases:new genes for an old activity.J Lipid Res,2008.49(10):p.2079-88;Gonzalez-Baro,M.R.,T.M.Lewin、及びR.A.Coleman,Regulation of Triglyceride Metabolism.II.Function of mitochondrial GPAT1 in the regulation of triacylglycerol biosynthesis and insulin action.Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol,2007.292(5):p.G1195-9)。主に脂質生成組織で発現されるGPAMタンパク質は、ミトコンドリア外膜に局在し、アシル-CoAをグリセロール-3-リン酸からリゾホスファチジン酸に転移し、TG合成経路の開始に関与する律速段階として働く。GPAM欠損マウスは生存可能であり、生殖可能であり、肉眼的異常を示さない(Hammond et al.(2002))。高脂肪食では、GPAM欠損マウスは、脂肪パッドの増加、肝臓TG蓄積、血清脂質の増加から保護され、肝細胞β酸化の増加、血漿ケトンレベル、及びTG合成の減少を示す(Hammond et al.(2002);Hammond,L.E.,et al.,Mitochondrial glycerol-3-phosphate acyltransferase-1 is essential in liver for the metabolism of excess acyl-CoAs.J Biol Chem,2005.280(27):p.25629-36;Kuhajda,F.P.,et al.,Pharmacological glycerol-3-phosphate acyltransferase inhibition decreases food intake and adiposity and increases insulin sensitivity in diet-induced obesity.Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol,2011.301(1):p.R116-30;Wendel,A.A.,et al.,Glycerol-3-phosphate acyltransferase 1 deficiency in ob/ob mice diminishes hepatic steatosis but does not protect against insulin resistance or obesity.Diabetes,2010.59(6):p.1321-9;Xu,H.,et al.,Hepatic knockdown of mitochondrial GPAT1 in ob/ob mice improves metabolic profile.Biochem Biophys Res Commun,2006.349(1):p.439-48)。
【0015】
前臨床非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)モデルにおけるGPAMの役割が記載されている(Liao,K.,et al.,Glycerol-3-phosphate Acyltransferase1 Is a Model-Agnostic Node in Nonalcoholic Fatty Liver Disease:Implications for Drug Development and Precision Medicine.ACS Omega,2020.5(29):p.18465-18471)。NASH及び線維症の程度の増加を誘導するために3つの異なる動物モデルを使用して、増加するGPAM mRNA及びタンパク質発現と、増加するNAFLD活性スコア(NAS)及び線維症との間の直接的な相関が観察された。GPAM欠損マウスはまた、肝細胞癌(HCC)から保護されることが示されている(Ellis,J.M.,et al.,Mice deficient in glycerol-3-phosphate acyltransferase-1 have reduced susceptibility to liver cancer.Toxicol Pathol,2012.40(3):p.513-21)。従って、脂肪症の調節に加えて、データは、肝臓におけるGPAMのサイレンシングが重度の肝臓転帰を改善し得ることを示唆している(Li,X.,et al.,Genomic analysis of liver cancer unveils novel driver genes and distinct prognostic features.Theranostics,2018.8(6):p.1740-1751;Ng,C.K.Y.,et al.,Proteogenomic characterization of hepatocellular carcinoma.2021:bioRxiv 2021.03.05.434147)。
【0016】
RNA干渉(RNAi)は、細胞内に外来のRNAを導入して、標的とするタンパク質をコードするmRNAの特異的な分解をもたらし、その結果としてタンパク質の発現を低減させるプロセスである。RNAi技術及び肝臓への送達の両方の進歩、並びに他のRNAiに基づく療法により増大する良好なアウトカムは、RNAiがGPAMを直接標的化することによりNAFLDを治療するための説得力のある手段であることを示唆している。
【0017】
本明細書中で用いられる用語「RNAiコンストラクト」は、細胞中に導入された際にRNA干渉機構を介して標的遺伝子(例えばGPAM)の発現を下方制御することができるRNA分子を含む剤を指す。RNA干渉は、核酸分子が、例えば、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)経路を介して、配列特異的に標的RNA分子(例えば、メッセンジャーRNA又はmRNA分子)の切断及び分解を誘導するプロセスである。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、ハイブリダイズして二重鎖領域を形成するのに十分に互いに十分に相補的な、連続したヌクレオチドの2本の逆平行鎖を含む二本鎖RNA(dsRNA)分子を含む。二本鎖RNAiコンストラクトは、RNAi「トリガー」と呼ばれることもある。用語「ハイブリダイズする」又は「ハイブリダイゼーション」は、典型的には2つのポリヌクレオチドにおける相補的な塩基間の水素結合(例えば、ワトソン-クリック、フーグスティーン又は逆フーグスティーン水素結合)を介した、相補的なポリヌクレオチドの対形成を指す。標的配列(例えば、標的mRNA)と実質的に相補的な配列を有する領域を含む鎖は、「アンチセンス鎖」と称されている。「センス鎖」は、アンチセンス鎖のある領域に対して実質的に相補的な領域を含む鎖を指す。いくつかの実施形態において、センス鎖は、標的配列と実質的に同一の配列を有する領域を含み得る。
【0018】
特定の実施形態において、二本鎖RNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖は、ハイブリダイズして二重鎖領域を形成するが、そうでなければ分離している別々の2つの分子であり得る。2つの別々の鎖から形成されるそのような二本鎖RNA分子は、「低分子干渉RNA」又は「短干渉RNA」(siRNA)と称される。siRNAは、典型的には約20~27塩基対であり、RNAiの中心である非コード二本鎖RNA分子のクラスである。従って、いくつかの実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトはsiRNAを含む。他の実施形態では、RNAiコンストラクトは、マイクロRNA(「miRNA」又は「成熟miRNA」としても知られる)であり得る。miRNAは、植物、動物及びいくつかのウイルスに存在する小さい(およそ18~24ヌクレオチド長)非コードRNA分子である。miRNAはsiRNAに似ているが、miRNAはヘアピンmRNA構造に由来する。miRNAは、標的mRNAの相補的領域に対する塩基対形成によって遺伝子発現を調節する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、GPAMを対象としたRNAiコンストラクトである。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含むsiRNAであり、アンチセンス鎖は、GPAM mRNA配列に相補的な領域を含む。RNAiアンチセンス鎖の領域は、GPAM mRNA配列の任意の適切な領域に相補的であり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、GPAM rs2792751(T)部位に結合する。しかしながら、開示されたRNAiコンストラクトは、特定のGPAM SNPにハイブリダイズする必要はない。いくつかの態様において、RNAiコンストラクトは、表1又は表2に示される配列のいずれかを含有するsiRNA分子である。
【0021】
二本鎖RNAi分子は、リボヌクレオチドのリボース糖、塩基、又は本明細書中に記載されるもの若しくは当技術分野において知られているもの等の骨格構成要素への修飾が挙げられる、リボヌクレオチドへの化学修飾を含み得る。二本鎖RNA分子(例えば、siRNA、shRNA等)に用いられるようなあらゆる修飾が、本開示の目的のための用語「二本鎖RNA」によって包含される。
【0022】
本明細書中で用いられる第1の配列は、生理的条件等のある種の条件下で、第1の配列を含むポリヌクレオチドが、第2の配列を含むポリヌクレオチドにハイブリダイズして二重鎖領域を形成することができるならば、第2の配列に「相補的」である。他のそのような条件として、当業者に知られている中程度の、又はストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が挙げられ得る。第1の配列は、第1の配列を含むポリヌクレオチドが、第2の配列を含むポリヌクレオチドと、一方又は双方のヌクレオチド配列の全長にわたって、いかなるミスマッチもなく塩基対形成するならば、第2の配列に対して完全に相補的(100%相補的)であるとみなされる。配列は、標的配列に対して少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%相補的であるならば、標的配列と「実質的に相補的」である。相補性パーセントは、第2の配列又は標的配列内の対応する位置の塩基に対して相補的な、第1の配列内の塩基の数を、第1の配列の全長で割ることによって算出することができる。また、2つの配列がハイブリダイズする場合に、30塩基対の二重鎖領域の全体にわたって5、4、3、2、又は1つ以下のミスマッチが存在するならば、一方の配列が、もう一方の配列に対して実質的に相補的であると言うことができる。一般に、何らかのヌクレオチドオーバーハングが本明細書中で定義されるように存在するならば、そのようなオーバーハングの配列は、2つの配列間の相補性の程度を判定する際に、考慮されない。例として、ハイブリダイズして各鎖の3’末端に2ヌクレオチドオーバーハングを有する19塩基対二重鎖領域を形成する、21ヌクレオチド長のセンス鎖及び21ヌクレオチド長のアンチセンス鎖は、この用語が本明細書に使用される場合、完全に相補的であるとみなされることになる。
【0023】
いくつかの実施形態において、アンチセンス鎖の領域は、標的RNA配列(例えばGPAM mRNA)の領域と完全に相補的な配列を含む。そのような実施形態において、センス鎖は、アンチセンス鎖の配列に対して完全に相補的な配列を含み得る。他のそのような実施形態において、センス鎖は、アンチセンス鎖の配列に対して実質的に相補的な配列、例えばセンス鎖及びアンチセンス鎖によって形成される二重鎖領域内に1、2、3、4、又は5つのミスマッチを有する配列を含み得る。特定の実施形態では、任意のミスマッチが、末端領域内(例えば、鎖の5’及び/又は3’末端の6、5、4、3、2又は1個のヌクレオチド以内)に生じることが好ましい。一実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖から形成される二重鎖領域内の任意のミスマッチが、望ましくはアンチセンス鎖の5’末端の6、5、4、3、2、又は1ヌクレオチド以内に生じる。
【0024】
dsRNAの2本の実質的に相補的な鎖が別個のRNA分子によって構成される場合、それらの分子は、共有結合される必要はないが、共有結合することは可能である。2本の鎖が、二重鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端と他方の鎖の5’末端との間で、ヌクレオチドの中断されていない鎖以外の手段によって共有結合されている場合、その結合構造は「リンカー」と称される。RNA鎖は、同じ又は異なる数のヌクレオチドを有してもよい。二重鎖内の塩基対の最大数は、dsRNAの最短の鎖のヌクレオチドから、二重鎖内に存在するあらゆるオーバーハングを差し引いた数である。二重鎖構造に加えて、RNAiは、1つ以上のヌクレオチドオーバーハングを含んでもよい。
【0025】
他の実施形態において、ハイブリダイズして二重鎖領域を形成するセンス鎖及びアンチセンス鎖は、単一RNA分子の一部であり得、すなわち、センス鎖及びアンチセンス鎖は、単一RNA分子の自己相補的領域の一部である。そのような場合、単一RNA分子は、二重鎖領域(ステム領域とも称される)及びループ領域を含む。センス鎖の3’末端は、不対ヌクレオチドの隣接配列によってアンチセンス鎖の5’末端に連結されて、ループ領域を形成することとなる。ループ領域は、典型的には、アンチセンス鎖がセンス鎖と塩基対を形成して二重鎖又はステム領域を形成し得るように、RNA分子それ自体が再度折り畳まれることが可能なほど十分に長い。ループ領域は、約3~約25、約5~約15、又は約8~約12個の不対ヌクレオチドを含み得る。本明細書で述べるように、少なくとも部分的に自己相補的な領域を有するそのようなRNA分子は、「低分子ヘアピン型RNA」(shRNA)と称される。いくつかの実施形態では、ループ領域は、少なくとも1、2、3、4、5、10、20、又は25個の不対ヌクレオチドを含み得る。他の実施形態では、ループ領域は、10、9、8、7、6、5、4、3、2個以下の不対ヌクレオチドを含み得る。特定の実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトは、shRNAを含む。単一の、少なくとも部分的に自己相補的なRNA分子の長さは、約35ヌクレオチド~約100ヌクレオチド、約45ヌクレオチド~約85ヌクレオチド、又は約50~約60ヌクレオチドであり得、本明細書に列挙される長さをそれぞれ有する二重鎖領域及びループ領域を含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、本発明のRNAiコンストラクトは、センス鎖及びアンチセンス鎖を含み、アンチセンス鎖は、GPAMメッセンジャーRNA(mRNA)配列と実質的に、又は完全に相補的な配列を有する領域を含む。本明細書中で用いられる「GPAM mRNA配列」は、あらゆる種(例えば、マウス、ラット、非ヒト霊長類、ヒト)に由来するGPAMタンパク質のバリアント又はアイソフォームが挙げられるGPAMタンパク質をコードする、スプライスバリアントを含むあらゆるメッセンジャーRNA配列を指す。GPAMタンパク質は、GPAT又はGPAT1としても知られている。
【0027】
また、GPAM mRNA配列は、その相補的DNA(cDNA)配列として発現される転写物配列を含む。cDNA配列は、RNA塩基(例えば、グアニン、アデニン、ウラシル及びシトシン)ではなく、DNA塩基(例えば、グアニン、アデニン、チミン及びシトシン)として表されるmRNA転写産物の配列を指す。ゆえに、本発明のRNAiコンストラクトのアンチセンス鎖は、標的のGPAM mRNA配列又はGPAM cDNA配列と実質的に、又は完全に相補的な配列を有する領域を含み得る。GPAM mRNA又はcDNA配列は、NCBI参照配列NM_001244949.2又はNM_020918.6に由来し得るものなどの任意のGPAM mRNA又はcDNA配列を含み得るが、これらに限定されない。
【0028】
アンチセンス鎖の領域は、GPAM mRNA配列の少なくとも15個の連続したヌクレオチドと実質的に、又は完全に相補的であり得る。いくつかの実施形態において、相補性の領域をアンチセンス鎖が含むGPAM mRNA配列の標的領域は、約15~約30個の連続したヌクレオチド、約16~約28個の連続したヌクレオチド、約18~約26個の連続したヌクレオチド、約17~約24個の連続したヌクレオチド、約19~約25個の連続したヌクレオチド、約19~約23個の連続したヌクレオチド、又は約19~約21個の連続したヌクレオチドに及んでよい。特定の実施形態では、GPAM mRNA配列と実質的に又は完全に相補的な配列を含むアンチセンス鎖の領域は、いくつかの実施形態において、表2に列挙されるアンチセンス配列からの少なくとも15個の連続したヌクレオチドを含み得る。他の実施形態では、アンチセンス配列は、表2に列挙されるアンチセンス配列からの少なくとも16個、少なくとも17個、少なくとも18個又は少なくとも19個の連続したヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、センス配列及び/又はアンチセンス配列は、表2に列挙される配列からの1、2、又は3個以下のヌクレオチドミスマッチを有する少なくとも15個のヌクレオチドを含む。
【0029】
RNAiコンストラクトのセンス鎖は、通常、2本の鎖が生理的条件下でハイブリダイズして二重鎖領域を形成するようにアンチセンス鎖の配列と十分に相補的な配列を含む。「二重鎖領域」は、ワトソン-クリック塩基対形成又は他の水素結合相互作用のいずれかによって互いに塩基対を形成して、2つのポリヌクレオチド間で二重鎖を作出する2つの相補的又は実質的に相補的なポリヌクレオチド内の領域を指す。RNAiコンストラクトの二重鎖領域は、例えば、ダイサー酵素及び/又はRISC複合体が結合することにより(後述)、RNAiコンストラクトがRNA干渉経路に入ることを可能にする十分な長さのものであるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、二重鎖領域は、約15~約30塩基対長である。また、この範囲内の二重鎖領域の他の長さ、例えば約15~約28塩基対、約15~約26塩基対、約15~約24塩基対、約15~約22塩基対、約17~約28塩基対、約17~約26塩基対、約17~約24塩基対、約17~約23塩基対、約17~約21塩基対、約19~約25塩基対、約19~約23塩基対、又は約19~約21塩基対が適している。一実施形態において、二重鎖領域は、約17~約24塩基対長である。別の実施形態では、二重鎖領域は、約19~約21塩基対長である。
【0030】
いくつかの実施形態において、本発明のRNAiコンストラクトは、標的RNA配列、例えば、GPAM標的mRNA配列と相互作用して、標的RNAの切断を導く約24~約30個のヌクレオチドの二重鎖領域を含有する。理論に束縛されるものではないが、細胞に導入された長い二本鎖RNAは、ダイサーとして知られるIII型エンドヌクレアーゼによってsiRNAに分解され得る(Sharp et al.(2001)Genes Dev.15:485)。ダイサーであるリボヌクレアーゼIII様酵素は、dsRNAを、特徴的な2塩基の3’オーバーハングを有する19~23塩基対の短い干渉RNAにプロセシングする(Bernstein,et al.,(2001)Nature 409:363)。次に、siRNAは、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)中に組み込まれるが、ここで、1つ以上のヘリカーゼがsiRNA二重鎖を解いて、相補的なアンチセンス鎖が標的認識をガイドすることを可能にする(Nykanen,et al.,(2001)Cell107:309)。適切な標的mRNAに結合すると直ぐに、RISC内の1つ以上のエンドヌクレアーゼが標的を切断してサイレンシングを誘導する(Elbashir,et al.,(2001)Genes Dev.15:188)。
【0031】
センス鎖及びアンチセンス鎖が2つの別々の分子である(例えば、siRNA RNAiコンストラクト)実施形態について、センス鎖及びアンチセンス鎖は、二重鎖領域の長さと同じ長さである必要はない。例えば、一方の鎖又は双方の鎖が、二重鎖領域よりも長くてもよく、そして二重鎖領域の側面に位置する1個以上の不対ヌクレオチド又はミスマッチを有してもよい。ゆえに、いくつかの実施形態において、RNAiコンストラクトは、少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを含む。本明細書中で用いられる「ヌクレオチドオーバーハング」は、鎖の末端にて、二重鎖領域を越えて延在する不対ヌクレオチド又はヌクレオチドを指す。ヌクレオチドオーバーハングは、典型的には、一方の鎖の3’末端が他方の鎖の5’末端を越えて延在するか、又は一方の鎖の5’末端が他方の鎖の3’末端を越えて延在する場合に生成される。ヌクレオチドオーバーハングの長さは、一般に、1~6ヌクレオチド、1~5ヌクレオチド、1~4ヌクレオチド、1~3ヌクレオチド、2~6ヌクレオチド、2~5ヌクレオチド、又は2~4ヌクレオチドである。いくつかの実施形態において、ヌクレオチドオーバーハングは、1、2、3、4、5、又は6つのヌクレオチドを含む。特定の一実施形態において、ヌクレオチドオーバーハングは、1~4つのヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、ヌクレオチドオーバーハングは、2つのヌクレオチドを含む。オーバーハングにおけるヌクレオチドは、本明細書に記載される通りのリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、又は修飾ヌクレオチドであり得る。いくつかの実施形態では、オーバーハングは、5’-ウリジンウリジン-3’(5’-UU-3’)ジヌクレオチドを含む。そのような実施形態では、UUジヌクレオチドは、リボヌクレオチド又は修飾ヌクレオチド、例えば2’-修飾ヌクレオチドを含んでもよい。他の実施形態では、オーバーハングは、5’-デオキシチミジン-デオキシチミジン-3’(5’-dTdT-3’)ジヌクレオチドを含む。
【0032】
ヌクレオチドオーバーハングは、一方又は両方の鎖の5’末端又は3’末端に存在してもよい。例えば、一実施形態では、RNAiコンストラクトは、アンチセンス鎖の5’末端及び3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む。別の実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖の5’末端及び3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の5’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む。他の実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0033】
RNAiコンストラクトは、二本鎖RNA分子の一方の末端に単一のヌクレオチドオーバーハングを含み、且つ他の末端に平滑末端を含み得る。「平滑末端」は、センス鎖及びアンチセンス鎖が分子の末端で完全に塩基対を形成しており、二重鎖領域を越えて延在する不対ヌクレオチドがないことを意味する。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖の3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含み、且つセンス鎖の5’末端及びアンチセンス鎖の3’末端に平滑末端を含む。他の実施形態では、RNAiコンストラクトは、アンチセンス鎖の3’末端にヌクレオチドオーバーハングを含み、且つアンチセンス鎖の5’末端及びセンス鎖の3’末端に平滑末端を含む。特定の実施形態では、RNAiコンストラクトは、二本鎖RNA分子の両末端で平滑末端を含む。そのような実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は同じ長さを有し、二重鎖領域は、センス鎖及びアンチセンス鎖と同じ長さである(すなわち、分子は、その全長にわたって二本鎖である)。
【0034】
センス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ独立して、任意の適当な長さ、例えば約15~約30ヌクレオチド長、約18~約28ヌクレオチド長、約19~約27ヌクレオチド長、約19~約25ヌクレオチド長、約19~約23ヌクレオチド長、約21~約25ヌクレオチド長、又は約21~約23ヌクレオチド長であり得る。特定の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は、それぞれ約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24又は約25ヌクレオチド長である。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトが2つのヌクレオチドオーバーハングを有するように、センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ長さであるが、これらの鎖よりも短い二重鎖領域を形成する。例えば、一実施形態では、RNAiコンストラクトは、(i)それぞれ21ヌクレオチド長であるセンス鎖及びアンチセンス鎖、(ii)19塩基対長である二重鎖領域、並びに(iii)センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の3’末端の両方にある2個の不対ヌクレオチドのヌクレオチドオーバーハングを含む。別の実施形態では、RNAiコンストラクトは、(i)それぞれ23ヌクレオチド長であるセンス鎖及びアンチセンス鎖、(ii)21塩基対長である二重鎖領域、並びに(iii)センス鎖の3’末端及びアンチセンス鎖の3’末端の両方にある2個の不対ヌクレオチドのヌクレオチドオーバーハングを含む。他の実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖は、同じ長さを有し、それらの全長にわたって、二本鎖分子のいずれの末端にもヌクレオチドオーバーハングが存在しないように二重鎖領域を形成する。このような一実施形態では、RNAiコンストラクトは、平滑末端であり、(i)それぞれ21ヌクレオチド長であるセンス鎖及びアンチセンス鎖、並びに(ii)21塩基対長である二重鎖領域を含む。別の実施形態では、RNAiコンストラクトは、平滑末端であり、(i)それぞれ23ヌクレオチド長であるセンス鎖及びアンチセンス鎖、並びに(ii)23塩基対長である二重鎖領域を含む。
【0035】
他の実施形態では、RNAiコンストラクトが少なくとも1つのヌクレオチドオーバーハングを含むように、センス鎖又はアンチセンス鎖がもう一方の鎖よりも長く、この2本の鎖は、短い方の鎖の長さに等しい長さを有する二重鎖領域を形成する。例えば、一実施形態では、RNAiコンストラクトは、(i)19ヌクレオチド長であるセンス鎖、(ii)21ヌクレオチド長であるアンチセンス鎖、(iii)19塩基対長の二重鎖領域、及び(iv)アンチセンス鎖の3’末端にある2個の不対ヌクレオチドの単一ヌクレオチドオーバーハングを含む。別の実施形態では、RNAiコンストラクトは、(i)21ヌクレオチド長であるセンス鎖、(ii)23ヌクレオチド長であるアンチセンス鎖、(iii)21塩基対長の二重鎖領域、及び(iv)アンチセンス鎖の3’末端にある2個の不対ヌクレオチドの単一ヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0036】
本発明のRNAiコンストラクトのアンチセンス鎖は、表2に列挙されたアンチセンス配列のいずれか1つの配列を含むことができる。
【0037】
修飾ヌクレオチド
本発明のRNAiコンストラクトは、1つ以上の修飾ヌクレオチドを含み得る。「修飾ヌクレオチド」は、ヌクレオシド、核酸塩基、ペントース環、又はリン酸基への1つ以上の化学修飾を有するヌクレオチドを指す。本明細書で使用する場合、修飾ヌクレオチドは、アデノシン一リン酸、グアノシン一リン酸、ウリジン一リン酸、及びシチジン一リン酸を含有するリボヌクレオチド、並びにデオキシアデノシン一リン酸、デオキシグアノシン一リン酸、デオキシチミジン一リン酸、及びデオキシシチジン一リン酸を含有するデオキシリボヌクレオチドを包含しない。しかしながら、RNAiコンストラクトは、修飾ヌクレオチド、リボヌクレオチド及びデオキシリボヌクレオチドの組合せを含み得る。二本鎖RNA分子の一方又は双方の鎖中への修飾ヌクレオチドの組み込みは、例えば、ヌクレアーゼ及び他の分解プロセスに対する分子の感受性を低下させることによって、RNA分子のインビボ安定性を向上させることができる。修飾ヌクレオチドの組み込みにより、標的遺伝子の発現を低下させるためのRNAiコンストラクトの効力を増強させることもできる。
【0038】
特定の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、リボース糖の修飾を有する。これらの糖の修飾には、ペントース環の2’及び/又は5’位での修飾並びに二環式糖修飾が含まれ得る。2’-修飾ヌクレオチドは、H又はOH以外の置換基を2’位に有するペントース環を有するヌクレオチドを指す。このような2’修飾としては、2’-O-アルキル(例えば、O-C1~C10又はO-C1~C10置換アルキル)、2’-O-アリル(O-CH2CH=CH2)、2’-C-アリル、2’-フルオロ、2’-O-メチル(OCH3)、2’-O-メトキシエチル(O-(CH2)2OCH3)、2’-OCF3、2’-O(CH2)2SCH3、2’-O-アミノアルキル、2’-アミノ(例えば、NH2)、2’-O-エチルアミン及び2’-アジドが挙げられるが、これらに限定されない。ペントース環の5’位での修飾としては、5’-メチル(R又はS)、5’-ビニル及び5’-メトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
「二環式糖修飾」は、環の2個の原子を架橋により連結して第2の環を形成して二環式糖構造を生じさせる、ペントース環の修飾を指す。いくつかの実施形態では、二環式糖修飾は、ペントース環の4’炭素と2’炭素との間の架橋を含む。二環式糖修飾を有する糖部分を含むヌクレオチドは、本明細書中で二環式核酸又はBNAと称される。例示的な二環式糖修飾としては、α-L-メチレンオキシ(4’-CH2-O-2’)二環式核酸(BNA);β-D-メチレンオキシ(4’-CH2-O-2’)BNA(ロックド核酸又はLNAとも称される);エチレンオキシ(4’-(CH2)2-O-2’)BNA;アミノオキシ(4’-CH2-O-N(R)-2’)BNA;オキシアミノ(4’-CH2-N(R)-O-2’)BNA;メチル(メチレンオキシ)(4’-CH(CH3)-O-2’)BNA(拘束エチル又はcEtとも称される);メチレン-チオ(4’-CH2-S-2’)BNA;メチレン-アミノ(4’-CH2-N(R)-2’)BNA;メチル炭素環式(4’-CH2-CH(CH3)-2’)BNA;プロピレン炭素環式(4’-(CH2)3-2’)BNA;及びメトキシ(エチレンオキシ)(4’-CH(CH2OMe)-O-2’)BNA(拘束MOE又はcMOEとも称される)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のRNAiコンストラクトに組み込むことができるこれら及び他の糖修飾ヌクレオチドは、例えば、米国特許第9,181,551号明細書、米国特許出願公開第2016/0122761号明細書及びDeleavey and Damha,Chemistry and Biology,19:937-954(2012)に記載されている。
【0040】
いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド、2’-O-アリル修飾ヌクレオチド、二環式核酸(BNA)、又はこれらの組合せを含む。特定の実施形態では、RNAiコンストラクトは、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-O-メトキシエチル修飾ヌクレオチド又はこれらの組合せを含む。特定の一実施形態では、RNAiコンストラクトは、1つ以上の2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、又はこれらの組合せを含む。
【0041】
RNAiコンストラクトのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、1つ又は複数の修飾ヌクレオチドを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、センス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の修飾ヌクレオチドを含む。特定の実施形態において、センス鎖内の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、アンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個又はそれを超える修飾ヌクレオチドを含む。他の実施形態において、アンチセンス鎖内の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。特定の他の実施形態において、センス鎖内の全てのヌクレオチド及びアンチセンス鎖内の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。これら及び他の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド又はこれらの組合せであり得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、センス鎖及び/又はアンチセンス鎖においてアデノシンヌクレオチドの前にあるすべてのピリミジンヌクレオチドは修飾ヌクレオチドである。例えば、いずれかの鎖で配列5’-CA-3’又は5’-UA-3’が現れる場合、シチジン及びウリジンヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドであり、好ましくは2’-O-メチル修飾ヌクレオチドである。特定の実施形態では、センス鎖内の全てのピリミジンヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド(例えば、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド)であり、アンチセンス鎖内に存在する全ての配列5’-CA-3’又は5’-UA-3’の5’ヌクレオチドは、修飾ヌクレオチド(例えば、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド)である。他の実施形態では、二重鎖領域内の全てのヌクレオチドが修飾ヌクレオチドである。このような実施形態では、修飾ヌクレオチドは、好ましくは、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド又はこれらの組合せである。
【0043】
RNAiコンストラクトがヌクレオチドオーバーハングを含む実施形態では、オーバーハング内のヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド又は修飾ヌクレオチドであり得る。一実施形態では、オーバーハング内のヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、例えばデオキシチミジンである。別の実施形態では、オーバーハング内のヌクレオチドは、修飾ヌクレオチドである。例えば、いくつかの実施形態では、オーバーハング内のヌクレオチドは、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-メトキシエチル修飾ヌクレオチド又はこれらの組合せである。
【0044】
本開示のRNAiコンストラクトはまた、1つ以上の修飾ヌクレオチド間結合を含み得る。本明細書で使用する場合、用語「修飾ヌクレオチド間結合」は、天然の3’-5’ホスホジエステル結合以外のヌクレオチド間の結合を指す。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチド間結合は、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、アルキルホスホナート(例えば、メチルホスホナート、3’-アルキレンホスホナート)、ホスフィナート、ホスホロアミダート(例えば、3’-アミノホスホロアミダート及びアミノアルキルホスホロアミダート)、ホスホロチオエート(P=S)、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、チオノホスホロアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル及びボラノホスフェートなどのリン含有ヌクレオチド間結合である。一実施形態では、修飾ヌクレオチド間結合は、2’-5’ホスホジエステル結合である。他の実施形態において、修飾ヌクレオチド間結合は、リン非含有ヌクレオチド間結合であるため、修飾ヌクレオシド間結合と称され得る。そのようなリン非含有結合として、モルホリノ結合(一部はヌクレオシドの糖部分から形成される);シロキサン結合(-O-Si(H)2-O-);スルフィド、スルホキシド、及びスルホン結合;ホルムアセチル及びチオホルムアセチル結合;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンメチルイミノ(-CH2-N(CH3)-O-CH2-)及びメチレンヒドラジノ結合;スルホネート及びスルホンアミド結合;アミド結合;並びにN、O、S、及びCH2構成要素部分が混合された他のものが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、修飾ヌクレオシド間結合は、米国特許第5,539,082号明細書、米国特許第5,714,331号明細書、及び米国特許第5,719,262号明細書に記載されているもの等のペプチド核酸又はPNAを作出するためのペプチドベースの結合(例えばアミノエチルグリシン)である。開示されたRNAiコンストラクトに使用され得る他の適切な修飾されたヌクレオチド間及びヌクレオシド間結合は、米国特許第6,693,187号明細書及び第9,181,551号明細書、米国特許出願公開第2016/0122761号明細書、並びにDeleavey及びDamha、上記に記載されている。
【0045】
特定の実施形態では、RNAiコンストラクトは、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。ホスホロチオエートヌクレオチド間結合は、RNAiコンストラクトのセンス鎖、アンチセンス鎖又は両方の鎖に存在し得る。例えば、いくつかの実施形態において、センス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。他の実施形態において、アンチセンス鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8個以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。さらに他の実施形態において、双方の鎖は、1、2、3、4、5、6、7、8つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。RNAiコンストラクトは、センス鎖、アンチセンス鎖又は両方の鎖の3’末端、5’末端又は3’末端及び5’末端の両方に1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み得る。例えば、特定の実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖、アンチセンス鎖又は両方の鎖の3’末端に、約1つ~約6つ以上(例えば、約1、2、3、4、5、6つ以上)の連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。他の実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖、アンチセンス鎖又は両方の鎖の5’末端に約1つ~約6つ以上(例えば、約1、2、3、4、5、6つ以上)の連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一実施形態において、RNAiコンストラクトは、センス鎖の3’末端に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖の3’末端に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、且つアンチセンス鎖の3’末端に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一実施形態では、RNAiコンストラクトは、センス鎖の5’末端に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、且つセンス鎖の3’末端に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。一実施形態では、RNAiコンストラクトは、アンチセンス鎖の5’末端に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、且つアンチセンス鎖の3’末端に単一のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。別の実施形態では、RNAiコンストラクトは、アンチセンス鎖の3’末端に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合(すなわちアンチセンス鎖の3’末端における第1及び第2のヌクレオチド間結合でのホスホロチオエートヌクレオチド間結合)を含む。別の実施形態では、RNAiコンストラクトは、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。さらに別の実施形態では、RNAiコンストラクトは、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、且つセンス鎖の5’末端に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む。さらに別の実施形態では、RNAiコンストラクトは、アンチセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、且つセンス鎖の3’末端及び5’末端の両方に2つの連続したホスホロチオエートヌクレオチド間結合を(すなわちアンチセンス鎖の5’末端及び3’末端の両方において第1及び第2のヌクレオチド間結合でのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含み、且つセンス鎖の5’末端及び3’末端の両方において第1及び第2のヌクレオチド間結合でのホスホロチオエートヌクレオチド間結合を)含む。一方又は両方の鎖が1つ以上のホスホロチオエートヌクレオチド間結合を含む実施形態のいずれかでは、鎖内の残りのヌクレオチド間結合は、天然の3’-5’ホスホジエステル結合であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖の各ヌクレオチド間結合は、ホスホジエステル及びホスホロチオエートから選択され、少なくとも1つのヌクレオチド間結合はホスホロチオエートである。
【0046】
RNAiコンストラクトがヌクレオチドオーバーハングを含む実施形態において、オーバーハング内の不対ヌクレオチドの2つ以上が、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結されていてよい。特定の実施形態では、アンチセンス鎖及び/又はセンス鎖の3’末端のヌクレオチドオーバーハングにおける全ての不対ヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結されている。他の実施形態では、アンチセンス鎖及び/又はセンス鎖の5’末端のヌクレオチドオーバーハングにおける全ての不対ヌクレオチドは、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結されている。更に他の実施形態では、あらゆるヌクレオチドオーバーハング内の全ての不対ヌクレオチドが、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合によって連結されている。
【0047】
特定の実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトの鎖の一方又は両方に組み込まれる修飾ヌクレオチドは、核酸塩基(本明細書では「塩基」とも称される)の修飾を有する。「修飾核酸塩基」又は「修飾塩基」は、天然に存在するプリン塩基であるアデニン(A)及びグアニン(G)、並びにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)、及びウラシル(U)以外の塩基を指す。修飾核酸塩基は、合成的な修飾又は天然に存在する修飾であってもよく、且つユニバーサル塩基、5ーメチルシトシン(5-me-C)、5-ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン(X)、ヒポキサンチン(I)、2-アミノアデニン、6-メチルアデニン、6-メチルグアニン並びにアデニン及びグアニンの他のアルキル誘導体、アデニン及びグアニンの2-プロピル並びに他のアルキル誘導体、2-チオウラシル、2-チオチミン及び2-チオシトシン、5-ハロウラシル及びシトシン、5-プロピニルウラシル及びシトシン、6-アゾウラシル、シトシン及びチミン、5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、8-ハロ、8-アミノ、8-チオ、8-チオアルキル、8-ヒドロキシル及び他の8-置換アデニン及びグアニン、5-ハロ、特に5-ブロモ、5-トリフルオロメチル及び他の5-置換ウラシル及びシトシン、7-メチルグアニン及び7-メチルアデニン、8-アザグアニン及び8-アザアデニン、7-デアザグアニン及び7-デアザアデニン並びに3-デアザグアニン及び3-デアザアデニンを含むことができるが、これらに限定されない。
【0048】
いくつかの実施形態において、修飾塩基はユニバーサル塩基である。「ユニバーサル塩基」は、結果として生じる二重鎖領域の二重らせん構造を変えることなく、RNA及びDNA内の天然の塩基の全てと無差別に塩基対を形成する塩基類似体を指す。ユニバーサル塩基は、当業者に知られており、これとして、イノシン、C-フェニル、C-ナフチル、及び他の芳香族誘導体、アゾールカルボキサミド、並びに3-ニトロピロール、4-ニトロインドール、5-ニトロインドール、及び6-ニトロインドール等のニトロアゾール誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本発明のRNAiコンストラクトに組み込むことができる他の好適な修飾塩基としては、例えばHerdewijn,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.,10:297-310,2000及びPeacock et al.,J.Org.Chern.,76:7295-7300(2011)に記載のものが挙げられる。グアニン、シトシン、アデニン、チミン、及びウラシルは、上述の修飾核酸塩基等の他の核酸塩基によって置換され得る(但し、そのような置換核酸塩基を有するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変えない)ことを当業者は十分に認識している。
【0050】
いくつかの実施形態では、本開示のRNAiコンストラクトのセンス鎖、アンチセンス鎖、又はアンチセンス鎖及びセンス鎖の両方の5’末端は、ホスフェート部分を含む。本明細書中で用いられる用語「ホスファート部分」は、非修飾ホスファート(-O-P=O)(OH)OH)及び修飾ホスファートを含む末端ホスファート基を指す。修飾ホスフェートは、O及びOH基の1つ以上がH、O、S、N(R)又はアルキルで置換されており、RがH、アミノ保護基又は非置換若しくは置換アルキルであるホスフェートを含む。例示的なホスフェート部分としては、5’-モノホスフェート;5’ジホスフェート;5’-トリホスフェート;5’-グアノシンキャップ(7-メチル化若しくは非メチル化);5’-アデノシンキャップ又は任意の他の修飾若しくは非修飾ヌクレオチドキャップ構造;5’-モノチオホスフェート(ホスホロチオエート);5’-モノジチオホスフェート(ホスホロジチオエート);5’-α-チオトリホスフェート;5’-γ-チオトリホスフェート;5’-ホスホロアミダート;5’-ビニルホスフェート;5’-アルキルホスホナート(ここで、「アルキル」はメチル、エチル、イソプロピル、プロピルなどであり得る);及び5’-アルキルエーテルホスホナート(ここで、「アルキルエーテル」はメトキシメチル、エトキシメチルなどであり得る)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
本発明のRNAiコンストラクトに組み込むことができる修飾ヌクレオチドは、本明細書に記載される2つ以上の化学修飾を有し得る。例えば、修飾ヌクレオチドは、リボース糖への修飾及び核酸塩基への修飾を有し得る。例として、修飾ヌクレオチドは、2’糖修飾(例えば、2’-フルオロ又は2’-メチル)を含み得、修飾塩基(例えば、5-メチルシトシン又はシュードウラシル)を含み得る。他の実施形態では、修飾ヌクレオチドは、5’ホスフェートへの修飾と組み合わされた糖修飾を含んでもよく、これにより、修飾ヌクレオチドがポリヌクレオチドに組み込まれたときに、修飾されたヌクレオチド間又はヌクレオシド間結合を生成することになる。例えば、いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオチドは、糖修飾、例えば2’-フルオロ修飾、2’-O-メチル修飾又は二環式糖修飾及び5’ホスホロチオエート基を含み得る。従って、いくつかの実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトの一方又は両方の鎖は、2’修飾ヌクレオチド又はBNA及びホスホロチオエートヌクレオチド間結合の組合せを含む。特定の実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトのセンス鎖及びアンチセンス鎖の両方は、2’-フルオロ修飾ヌクレオチド、2’-O-メチル修飾ヌクレオチド及びホスホロチオエートヌクレオチド間結合の組合せを含む。修飾ヌクレオチド及び修飾ヌクレオチド間結合を含む例示的なRNAiコンストラクトを表2に示す。
【0052】
RNAiコンストラクトの機能
本発明のRNAiコンストラクトは、望ましくは、細胞、特に肝細胞におけるGPAMの発現を低下させるか又は阻害する。従って、一実施形態において、本発明は、細胞を本明細書中に記載されるあらゆるRNAiコンストラクトと接触させることによって、細胞内でのGPAM発現を低下させる方法を提供する。細胞は、インビトロ又はインビボであり得る。GPAM発現は、GPAM mRNA、GPAMタンパク質、又はGPAM発現と関連する別のバイオマーカーの量又はレベルを測定することによって評価することができる。本発明のRNAiコンストラクトで処理された細胞又は動物におけるGPAM発現の低下は、RNAiコンストラクトで処理されていないか又は対照RNAiコンストラクトで処理された細胞又は動物におけるGPAM発現と比較して判定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、GPAM発現の低下は、(a)本発明のRNAiコンストラクトで処置した肝細胞におけるGPAM mRNAの量又はレベルを測定すること、(b)対照RNAiコンストラクト(例えば、肝細胞に発現しないRNA分子を対象とするRNAiコンストラクト、又はナンセンス配列若しくはスクランブル配列を有するRNAiコンストラクト)で処置した肝細胞、或いはコンストラクトなしで処置した肝細胞におけるGPAM mRNAの量又はレベルを測定すること、及び(c)(a)で処置した細胞から測定したGPAM mRNAレベルを、(b)の対照細胞から測定したGPAM mRNAレベルと比較することによって評価する。処理された細胞及び対照細胞におけるGPAM mRNAレベルは、比較前に、対照遺伝子(例えば、18S リボソームRNA)について、RNAレベルに関して正規化されてもよい。GPAM mRNAレベルは、ノーザンブロット分析、ヌクレアーゼプロテクションアッセイ、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション(FISH)、逆転写酵素(RT)-PCR、リアルタイムRT-PCR、及び定量PCRが挙げられる種々の方法によって測定することができる。
【0053】
他の実施形態では、GPAM発現の低下は、(a)本発明のRNAiコンストラクトで処置した肝細胞におけるGPAMタンパク質の量又はレベルを測定すること、(b)対照RNAiコンストラクト(例えば、肝細胞に発現しないRNA分子を対象とするRNAiコンストラクト、又はナンセンス配列若しくはスクランブル配列を有するRNAiコンストラクト)で処置した肝細胞、或いはコンストラクトなしで処置した肝細胞におけるGPAMタンパク質の量又はレベルを測定すること、及び(c)(a)で処置した細胞から測定したGPAMタンパク質レベルを、(b)の対照細胞から測定したGPAMタンパク質レベルと比較することによって評価する。GPAMタンパク質レベルは、ウエスタンブロット、イムノアッセイ(例えば、ELISA)及びフローサイトメトリーを含むがこれらに限定されない、当業者に公知の任意の適切な方法を用いて測定することができる。GPAM mRNA又はタンパク質を測定する任意の適切な方法を使用して、本発明のRNAiコンストラクトの有効性を評価することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、GPAM発現レベルを評価するための方法は、GPAMを自然に発現する細胞(例えば肝細胞)又はGPAMを発現するように操作された細胞においてインビトロで実施される。特定の実施形態では、本方法は、肝細胞においてインビトロで実施される。適切な肝細胞としては、初代肝細胞(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、又は齧歯類の肝細胞)、HepAD38細胞、HuH-6細胞、HuH-7細胞、HuH-5-2細胞、BNLCL2細胞、Hep3B細胞、又はHepG2細胞が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、肝細胞は、Hep3B細胞である。別の実施形態では、肝細胞は、HepG2細胞である。
【0055】
他の実施形態において、GPAM発現レベルを評価する方法は、インビボで実施される。例えば、RNAiコンストラクト及び任意の対照RNAiコンストラクトを動物(例えば、齧歯類又は非ヒト霊長類)に投与することができ、処置後の動物から採取した肝臓組織でGPAM mRNA又はタンパク質レベルを評価することができる。代わりに、又は加えて、GPAM発現と関連するバイオマーカー又は機能表現型を、処理した動物において評価することができる。
【0056】
特定の実施形態において、GPAMの発現は、本発明のRNAiコンストラクトによって、肝細胞内で少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、又は少なくとも50%低下する。いくつかの実施形態において、GPAMの発現は、本発明のRNAiコンストラクトによって、肝細胞内で少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、又は少なくとも85%低下する。他の実施形態において、GPAMの発現は、本発明のRNAiコンストラクトによって、肝細胞内で約90%以上、例えば91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上低下する。GPAM発現の低下パーセントは、本明細書中に記載される方法のいずれか、又は当技術分野において知られている他の方法によって測定することができる。例えば、特定の実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトは、インビトロでHepG2細胞(I43V変異を有するGPAMを含む)において5nMでGPAM発現の少なくとも45%を阻害する。関連する実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトは、インビトロのHepG2細胞において5nMでGPAM発現の少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%又は少なくとも75%を阻害する。他の実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトは、インビトロのHepG2細胞において5nMでGPAM発現の少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも92%、少なくとも94%、少なくとも96%、又は少なくとも98%を阻害する。GPAMの低下は、例えばRNA FISH又は液滴デジタルPCRを含む様々な技術を用いて測定することができる(例えばKamitaki et al.,Digital PCR.Methods in Molecular Biology、1768:401-422(2018).doi:10.1007/978-1-4939-7778-9_23)を含む様々な技術を用いて測定することができる。
【0057】
いくつかの実施形態において、IC50値を算出して、肝細胞内でのGPAM発現の阻害について、本発明のRNAiコンストラクトの効力を評価する。「IC50値」は、生物学的又は生化学的機能の50%阻害を達成するのに要求される用量/濃度である。任意の物質又はアンタゴニストのIC50値は、任意のアッセイにおいて、用量反応曲線を構築し、発現レベル又は機能活性に及ぼす種々の濃度の物質又はアンタゴニストの効果を試験することによって決定することができる。最大の生物学的応答又は本来の発現レベルの半分を阻害するのに必要な濃度を決定することにより、所与のアンタゴニスト又は物質のIC50値を計算することができる。従って、任意のRNAiコンストラクトについてのIC50値は、免疫アッセイ、RNA FISHアッセイ又は液滴デジタルPCRアッセイなどの任意のアッセイにおいて、肝細胞における天然GPAM発現レベル(例えば、対照肝細胞におけるGPAM発現レベル)の半分を阻害するのに必要なRNAiコンストラクトの濃度を決定することによって計算することができる。本発明のRNAiコンストラクトは、約20nM未満のIC50(例えば、約15nM、10nM、5nM又は1nM未満)で肝細胞(例えばHepG2細胞)におけるGPAM発現を阻害し得る。例えば、開示されるRNAiコンストラクトは、約0.001nM~約20nM、約0.001nM~約10nM、約0.001nM~約5nM、約0.001nM~約1nM、約0.1nM~約10nM、約0.1nM~約5nM又は約0.1nM~約1nMのIC50で肝細胞におけるGPAM発現を阻害し得る。特定の実施形態において、RNAiコンストラクトは、約1nM~約10nMのIC50で肝細胞(例えばHepG2細胞)内でのGPAM発現を阻害する。
【0058】
本発明のRNAiコンストラクトは、当技術分野において公知の技術を用いて、例えば従来の核酸固相合成法を用いて容易に作製することができる。RNAiコンストラクトのポリヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド又はヌクレオシド前駆体(例えばホスホラミダイト)を利用して、適切な核酸合成装置でアセンブルすることができる。自動核酸合成装置が、いくつかのベンダーによって市販されており、Applied Biosystems(Foster City,CA)のDNA/RNA合成装置、BioAutomation(Irving,TX)のMerMade合成装置、及びGE Healthcare Life Sciences(Pittsburgh,PA)のOligoPilot合成装置が挙げられる。
【0059】
リボヌクレオシドの5’位で酸解離性ジメトキシトリチル(DMT)とともに2’シリル保護基を使用して、ホスホラミダイト化学を介してオリゴヌクレオチドを合成することができる。最終脱保護条件は、RNA産物を著しく分解しないことが知られている。全ての合成は、任意の自動又は手動合成装置により、大規模、中規模、又は小規模で行うことができる。また、合成は、複数のウェルプレート、カラム、又はスライドガラスにおいて実行することができる。
【0060】
2’-O-シリル基は、フッ化物イオンに曝露することによって除去することができ、フッ化物イオンは、フッ化物イオンの任意の供給源、例えば無機対イオンと対になるフッ化物イオンを含有する塩、例えばフッ化セシウム及びフッ化カリウム又は有機対イオンと対になるフッ化物イオンを含有する塩、例えばフッ化テトラアルキルアンモニウムを含むことができる。クラウンエーテル触媒が、脱保護反応において無機フッ化物と組み合わせて利用され得る。例示的なフッ化物イオン供給源としては、フッ化テトラブチルアンモニウム又はアミンヒドロフルオライド(例えば、双極性非プロトン溶媒、例えばジメチルホルムアミド中でトリエチルアミンと水性HFとを組み合わせる)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
亜リン酸トリエステル及びホスホトリエステルに用いられる保護基の選択により、フッ化物に対するトリエステルの安定性を改変することができる。ホスホトリエステル又は亜リン酸トリエステルのメチル保護は、フッ化物イオンに対する結合を安定化させ、且つプロセス収率を向上させることができる。
【0062】
リボヌクレオシドは、反応性の2’ヒドロキシル置換基を有するため、RNAにおける反応性の2’位を、5’-O-ジメトキシトリチル保護基に対して直交性である保護基、例えば酸処理に対して安定であるもので保護することが望ましい場合がある。シリル保護基が、この条件を満たしており、最終的なフッ化物脱保護工程において容易に除去され得、これにより、RNA分解を最小減に抑えることが可能となる。
【0063】
テトラゾール触媒を、標準的なホスホラミダイトカップリング反応に用いることができる。例示的な触媒は、例えば、テトラゾール、S-エチル-テトラゾール、ベンジルチオテトラゾール、及びp-ニトロフェニルテトラゾールを含む。
【0064】
本明細書に記載のRNAiコンストラクトを合成する更なる方法は当技術分野の当業者に明らかであろう。加えて、種々の合成工程を、代替の順番又は順序で実行して、所望の化合物を得ることができる。本明細書に記載のRNAiコンストラクトの合成において有用な他の合成化学転換、保護基(例えば、塩基に存在するヒドロキシル、アミノなどのための)及び保護基の手法(保護及び脱保護)は、当技術分野で知られており、例えばR.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,2d.Ed.,John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser,Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1994);及びL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John Wiley and Sons(1995)、並びにそれらの後続版に記載されるものが挙げられる。RNAiコンストラクトのカスタム合成も、Dharmacon,Inc.(Lafayette、CO)、AxoLabs GmbH(Kulmbach、Germany)及びAmbion,Inc.(Foster City、CA)を含むいくつかの商業的ベンダーから入手可能である。
【0065】
本発明のRNAiコンストラクトは、リガンドを含み得る。本明細書で使用する場合、「リガンド」は、別の化合物又は分子と直接的又は間接的に相互作用することができる任意の化合物又は分子を指す。別の化合物又は分子とリガンドとの相互作用は、生物学的応答を誘発し得るか(例えば、シグナル伝達カスケードを惹起する、受容体媒介性のエンドサイトーシスを誘導する)、又はまさに物理的会合であり得る。リガンドは、結合する二本鎖RNA分子の1つ以上の特性、例えばRNA分子の薬力学、薬物動態、結合、吸収、細胞分布、細胞内取り込み、電荷及び/又はクリアランス特性を修飾することができる。
【0066】
リガンドは、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン、低密度リポタンパク質、グロブリン)、コレステロール部分、ビタミン(例えば、ビオチン、ビタミンE、ビタミンB12)、葉酸部分、ステロイド、胆汁酸(例えば、コール酸)、脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸)、炭水化物(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリン若しくはヒアルロン酸)、グリコシド、リン脂質又は抗体若しくはその結合断片(例えば、肝細胞などの特定の細胞型に対するRNAiコンストラクトを標的化する全抗体若しくは結合断片)を含み得る。リガンドの他の例としては、染料、挿入剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、プソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(例えば、TPPC4、テキサフィリン、サフィリン)、多環芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子(例えば、アダマンタン酢酸、1-ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3-ビスO(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3-プロパンジオール、ヘプタデシル基、03-(オレオイル)リトコール酸、03-(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル又はフェノキサジン)、ペプチド(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド、RGDペプチド)、アルキル化剤、ポリマー、例えばポリエチレングリコール(PEG)(例えば、PEG-40K)、ポリアミノ酸及びポリアミン(例えば、スペルミン、スペルミジン)が挙げられる。
【0067】
特定の実施形態では、リガンドは、エンドソーム不安定化特性を有する。エンドソーム不安定化リガンドは、エンドソームの溶解及び/又は本発明のRNAiコンストラクト若しくはその構成要素のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進する。エンドソーム不安定化リガンドは、pH依存性膜活性及び膜融合性を示すポリカチオンペプチド又はペプチド模倣体であり得る。一実施形態では、エンドソーム不安定化リガンドは、エンドソームのpHでその活性型コンフォメーションを取る。「活性型」コンフォメーションは、エンドソーム不安定化リガンドが、エンドソームの溶解及び/又は本発明のRNAiコンストラクト若しくはその構成要素のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進するコンフォメーションである。例示的なエンドソーム不安定化リガンドとしては、GALAペプチド(Subbarao et al.,Biochemistry,Vol.26:2964-2972,1987)、EALAペプチド(Vogel et al.,J.Am.Chern.Soc.,Vol.118:1581-1586,1996)及びこれらの誘導体(Turk et al.,Biochem.Biophys.Acta,Vol.1559:56-68,2002)が挙げられる。一実施形態では、エンドソーム溶解構成要素は、pHの変化に応答して電荷又はプロトン化の変化を起こすことになる化学基(例えば、アミノ酸)を含有し得る。エンドソーム不安定化構成要素は、直鎖状又は分枝状であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、リガンドは、脂質又は他の疎水性分子を含む。一実施形態では、リガンドは、コレステロール部分又は他のステロイドを含む。コレステロールコンジュゲート型オリゴヌクレオチドは、その非コンジュゲート型対応物よりも活性であると報告されている(Manoharan,Antisense Nucleic Acid Drug Development,Vol.12:103-228,2002)。核酸分子へのコンジュゲーションのためのコレステロール部分及び他の脂質を含むリガンドは、米国特許第7,851,615号明細書;米国特許第7,745,608号明細書;及び米国特許第7,833,992号明細書にも記載されている。別の実施形態において、リガンドは、葉酸部分を含み得る。葉酸部分にコンジュゲートしているポリヌクレオチドは、受容体依存性エンドサイトーシス経路を介して細胞に取り込まれ得る。そのような葉酸-ポリヌクレオチドコンジュゲートは、例えば、米国特許第8,188,247号明細書に記載されている。
【0069】
GPAMが肝細胞(liver cell)(例えば肝細胞(hepatocyte))において発現されることを考慮すると、特定の実施形態において、当該肝細胞にRNAiコンストラクトを特異的に送達することが望ましい。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、肝細胞の表面に発現されるタンパク質と結合又は相互作用するリガンドを採用することにより、肝臓に特異的に標的化され得る。例えば、特定の実施形態において、リガンドは、肝細胞上で発現される受容体に特異的に結合する1つ以上の抗原結合タンパク質(例えば、抗体又はその結合断片(例えば、Fab、scFv))を含んでもよい。
【0070】
特定の実施形態では、リガンドは、炭水化物を含む。「炭水化物」は、酸素、窒素、又は硫黄原子が各炭素原子に結合されている少なくとも6つの炭素原子を有する1つ以上の単糖単位(直鎖状、分岐鎖状、又は環状であり得る)で構成される化合物を指す。炭水化物として、糖(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、及び約4、5、6、7、8、又は9つの単糖単位を含有するオリゴ糖)、並びに多糖、例えば、デンプン、グリコーゲン、セルロース、及び多糖ガムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、リガンドに組み込まれる炭水化物は、ペントース、ヘキソース又はヘプトースから選択される単糖並びにこのような単糖単位を含む二糖及び三糖である。他の実施形態では、リガンドに組み込まれている炭水化物は、アミノ糖であり、例えば、ガラクトサミン、グルコサミン、N-アセチルガラクトサミン及びN-アセチルグルコサミンである。
【0071】
いくつかの実施形態では、リガンドは、ヘキソース又はヘキソサミンを含む。ヘキソースは、グルコース、ガラクトース、マンノース、フコース又はフルクトースから選択され得る。ヘキソサミンは、フルクトサミン、ガラクトサミン、グルコサミン又はマンノサミンから選択され得る。特定の実施形態では、リガンドは、グルコース、ガラクトース、ガラクトサミン又はグルコサミンを含む。一実施形態では、リガンドは、グルコース、グルコサミン又はN-アセチルグルコサミンを含む。別の実施形態では、リガンドは、ガラクトース、ガラクトサミン又はN-アセチル-ガラクトサミンを含む。特定の実施形態では、リガンドは、N-アセチル-ガラクトサミンを含む。グルコース、ガラクトース及びN-アセチル-ガラクトサミン(GalNAc)を含むリガンドは、化合物を肝細胞(例えば、D’Souza and Devarajan,J.Control Release,Vol.203:126-139,2015)に標的化するのに特に有効である。本発明のRNAiコンストラクトに組み込むことができるGalNAc又はガラクトース含有リガンドの例は、米国特許第7,491,805号明細書;同第8,106,022号明細書;及び同第8,877,917号明細書;米国特許出願公開第2003/0130186号明細書;並びに国際公開第2013/166155号パンフレットに記載されている。
【0072】
特定の実施形態では、リガンドは、多価炭水化物部分を含む。本明細書中で用いられる「多価炭水化物部分」は、他の分子と独立して結合又は相互作用することができる2つ以上の炭水化物単位を含む部分を指す。例えば、多価炭水化物部分は、2つ以上の異なる分子、又は同じ分子上の2つ以上の異なる部位に結合することができる、炭水化物で構成される2つ以上の結合ドメインを含む。炭水化物部分の価数は、炭水化物部分内の個々の結合ドメインの数を示す。例えば、炭水化物部分に関する用語「一価」、「二価」、「三価」、及び「四価」は、それぞれ1、2、3、及び4つの結合ドメインを有する炭水化物部分を指す。多価炭水化物部分は、多価ラクトース部分、多価ガラクトース部分、多価グルコース部分、多価N-アセチル-ガラクトサミン部分、多価N-アセチル-グルコサミン部分、多価マンノース部分、又は多価フコース部分を含み得る。いくつかの実施形態では、リガンドは、多価ガラクトース部分を含む。他の実施形態では、リガンドは、多価N-アセチル-ガラクトサミン部分を含む。これら及び他の実施形態では、多価炭水化物部分は、二価、三価、又は四価である。そのような実施形態において、多価炭水化物部分は、二分岐又は三分岐であり得る。特定の一実施形態において、多価N-アセチル-ガラクトサミン部分は、三価又は四価である。別の特定の実施形態において、多価ガラクトース部分は、三価又は四価である。本発明のRNAiコンストラクト中への組み込みのための例示的な三価又は四価のGalNAc含有リガンドを、以下に詳述する。
【0073】
リガンドは、RNAiコンストラクトのRNA分子に直接的又は間接的に結合又はコンジュゲートされ得る。例えば、いくつかの実施形態では、リガンドは、RNAiコンストラクトのセンス鎖又はアンチセンス鎖に共有結合的に直接結合される。他の実施形態では、リガンドは、RNAiコンストラクトのセンス鎖又はアンチセンス鎖にリンカーを介して共有結合的に結合される。リガンドは、本発明のRNAiコンストラクトのポリヌクレオチド(例えば、センス鎖又はアンチセンス鎖)の核酸塩基、糖部分又はヌクレオチド間結合に結合され得る。プリン核酸塩基又はその誘導体へのコンジュゲーション又は結合は、環内原子及び環外原子が挙げられるあらゆる位置にて起こり得る。特定の実施形態では、プリン核酸塩基の2位、6位、7位又は8位がリガンドに結合される。また、ピリミジン核酸塩基又はその誘導体へのコンジュゲーション又は結合は、あらゆる位置にて起こり得る。いくつかの実施形態では、ピリミジン核酸塩基の2位、5位及び6位がリガンドに結合され得る。ヌクレオチドの糖部分へのコンジュゲーション又は結合は、あらゆる炭素原子にて起こり得る。リガンドに結合され得る糖部分の例示的な炭素原子としては、2’、3’及び5’の炭素原子が挙げられる。塩基性残基等において、1’位もまた、リガンドに結合されてよい。ヌクレオチド間結合もリガンドの結合を支援することができる。リン含有結合(例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロアミダートなど)の場合、リガンドは、リン原子に直接結合することができるか、又はリン原子に結合しているO原子、N原子若しくはS原子に結合することができる。アミン含有ヌクレオシド間結合又はアミド含有ヌクレオシド間結合(例えば、PNA)では、リガンドは、アミン若しくはアミドの窒素原子又は隣接する炭素原子に結合することができる。
【0074】
特定の実施形態では、リガンドは、センス鎖又はアンチセンス鎖のいずれかの3’又は5’末端に結合され得る。特定の実施形態では、リガンドは、センス鎖の5’末端に共有結合的に結合される。他の実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端に共有結合的に結合される。例えば、いくつかの実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端ヌクレオチドに結合される。このような特定の実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端ヌクレオチドの3’位で結合される。代替的な実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端近傍であるが、1つ以上の末端ヌクレオチドの前(すなわち1、2、3又は4つの末端ヌクレオチドの前)に結合される。いくつかの実施形態では、リガンドは、センス鎖の3’末端ヌクレオチドの糖の2’位で結合される。
【0075】
特定の実施形態では、リガンドは、リンカーを介してセンス鎖又はアンチセンス鎖に結合される。「リンカー」は、リガンドをRNAiコンストラクトのポリヌクレオチド構成要素に共有結合的に結合する原子又は原子の基である。リンカーは、約1~約30原子長、約2~約28原子長、約3~約26原子長、約4~約24原子長、約6~約20原子長、約7~約20原子長、約8~約20原子長、約8~約18原子長、約10~約18原子長、及び約12~約18原子長であり得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、2つの官能基を有するアルキル部分を一般に含む、二官能性結合部分を含み得る。官能基の一方は、目的の化合物(例えば、RNAiコンストラクトのセンス鎖又はアンチセンス鎖)に結合するように選択され、他方は、本明細書に記載されるようなリガンドなどの任意の選択された基に実質的に結合するように選択される。特定の実施形態において、リンカーは、エチレングリコール単位又はアミノ酸単位等の反復単位からなる鎖構造又はオリゴマーを含む。二官能性結合部分に典型的に使用される官能基の例として、求核性基と反応させるための求電子剤、及び求電子性基と反応させるための求核剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、二官能性結合部分として、アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、不飽和(例えば、二重結合又は三重結合)等が挙げられる。
【0076】
リガンドを本発明のRNAiコンストラクトのセンス鎖又はアンチセンス鎖に結合するために使用することのできるリンカーは、ピロリジン、8-アミノ-3,6-ジオキサオクタン酸、スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート、6-アミノヘキサン酸、置換C1-C10アルキル、置換若しくは非置換C2-C10アルケニル又は置換若しくは非置換C2-C10アルキニルを含むが、これらに限定されない。そのようなリンカーにとって好ましい置換基として、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、カルボキシ、ベンジル、フェニル、ニトロ、チオール、チオアルコキシ、ハロゲン、アルキル、アリール、アルケニル、及びアルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
特定の実施形態では、リンカーは、切断可能である。切断可能リンカーは、細胞外部で十分に安定であるが、標的細胞内への進入後に切断されて、リンカーが一体に保持している2つの部分を放出するものである。いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーは、標的細胞中又は第1の参照条件(例えば、細胞内条件を模倣するか、又はそれに相当するように選択され得る)下において、対象の血液中又は第2の参照条件(例えば、血液若しくは血清に見出される条件を模倣するか、又はそれに相当するように選択され得る)下よりも少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍若しくは90倍以上又は少なくとも100倍速く切断される。
【0078】
切断可能なリンカーは、切断剤、例えばpH、酸化還元電位又は分解性分子の存在に対して感受性である。一般に、切断剤は、血清又は血液中よりも細胞内部で優勢であるか、又は高いレベル若しくは活性で見出される。このような分解性薬剤の例としては、例えば、細胞内に存在し、還元によって酸化還元切断可能リンカーを分解することができるメルカプタンなどの酸化酵素若しくは還元酵素又は還元剤を含む、特定の基質のために選択されるか、又は基質特異性のない酸化還元剤;エステラーゼ;エンドソーム又は酸性環境を生成することができる薬剤、例えば、5以下のpHをもたらすもの;一般的な酸として作用することによって酸切断可能リンカーを加水分解又は分解することができる酵素、ペプチダーゼ(基質特異的であり得る)及びホスファターゼが挙げられる。
【0079】
切断可能リンカーは、pHに感受性のある部分を含み得る。ヒト血清のpHは7.4であるが、平均的な細胞内pHは、わずかにより低く、約7.1~7.3の範囲である。エンドソームは、5.5~6.0の範囲のより酸性のpHを有し、リソソームは、およそ5.0の更により酸性のpHを有する。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断され、それによってリガンドから細胞内部又は細胞の所望の区画にRNA分子を放出する切断可能な基を有する。
【0080】
リンカーは、特定の酵素によって切断可能となる切断可能な基を含み得る。リンカーに組み込まれる切断可能な基の種類は、標的化される細胞に依存し得る。例えば、肝臓標的化リガンドは、エステル基を含むリンカーを介してRNA分子に結合され得る。肝細胞はエステラーゼに富んでおり、従って、リンカーは、エステラーゼに富んでいない細胞型よりも肝細胞において効率的に切断されることとなる。エステラーゼに富む他の種類の細胞としては、肺、腎皮質及び精巣の細胞が挙げられる。肝細胞及び滑膜細胞などのペプチダーゼに富む細胞を標的化する場合、ペプチド結合を含有するリンカーを用いることができる。
【0081】
一般に、切断可能リンカー候補の適合性は、リンカー候補を切断する分解性薬剤の能力(又は条件)を試験することによって評価することができる。また、血液中又は他の非標的組織と接触する場合の切断に抵抗する能力について、切断可能なリンカー候補を試験することが望ましい。従って標的細胞内で切断を示すように選択される第1の条件と、他の組織又は体液、例えば血液又は血清内で切断を示すように選択される第2の条件との間で切断に対する相対的感受性を判断することができる。評価は、無細胞系、細胞、細胞培養物、臓器若しくは組織培養物中において又は動物全体で実行することができる。無細胞又は培養条件で初期評価を行い、更に動物全体で評価することによって確認することが有用であり得る。いくつかの実施形態では、有用なリンカー候補は、細胞において(又は細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下で)、血液又は血清(又は細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較して少なくとも2倍、4倍、10倍、20倍、50倍、70倍又は100倍速く切断される。
【0082】
他の実施形態では、酸化還元切断可能なリンカーが利用される。酸化還元切断可能リンカーは、還元又は酸化されると切断される。還元的に切断可能な基の一例は、ジスルフィド連結基(-S-S-)である。切断可能なリンカー候補が、好適な「還元的に切断可能なリンカー」であるかどうか、又は例えば特定のRNAiコンストラクト及び特定のリガンドと共に使用するのに好適であるかどうかを判定するために、本明細書に記載の1つ以上の方法を使用することができる。例えば、ジチオスレイトール(DTT)又は例えば標的細胞などの細胞中で観察されるであろう切断速度を模倣する当技術分野で知られる他の還元剤と共にインキュベーションすることにより、リンカー候補を評価することができる。リンカー候補は、血液条件又は血清条件を模倣するように選択された条件下で評価することもできる。特定の実施形態では、リンカー候補は、血液中で最大10%切断される。他の実施形態では、有用なリンカー候補は、細胞(又は細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)において、血液(又は細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較して少なくとも2倍、4倍、10倍、20倍、50倍、70倍、又は100倍速く分解される。
【0083】
さらに他の実施形態では、ホスフェート系の切断可能リンカーは、ホスフェート基を分解又は加水分解する薬剤によって切断される。細胞内でホスフェート基を加水分解する薬剤の例としては、細胞内のホスファターゼなどの酵素がある。ホスフェート系の切断可能な基の例は、-O-P(O)(ORk)-O-、-O-P(S)(ORk)-O-、-O-P(S)(SRk)-O-、-S-P(O)(ORk)-O-、-O-P(O)(ORk)-S-、-S-P(O)(ORk)-S-、-O-P(S)(ORk)-S-、-S-P(S)(ORk)-O-、-O-P(O)(Rk)-O-、-O-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-O-、-S-P(S)(Rk)-O-、-S-P(O)(Rk)-S-、-O-P(S)(Rk)-S-である。特定の実施形態としては、-O-P(O)(OH)-O-、-O-P(S)(OH)-O-、-O-P(S)(SH)-O-、-S-P(O)(OH)-O-、-O-P(O)(OH)-S-、-S-P(O)(OH)-S-、-O-P(S)(OH)-S-、-SP(S)(OH)-O-、-O-P(O)(H)-O-、-O-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-O-、-S-P(S)(H)-O-、-S-P(O)(H)-S-、-O-P(S)(H)-S-が挙げられる。別の特定の実施形態は、-O-P(O)(OH)-O-である。これらのリンカー候補は、上記に記載されるものに類似する方法を用いて評価することができる。
【0084】
他の実施形態では、リンカーは、酸性条件下で切断される基である、酸切断可能な基を含み得る。いくつかの実施形態では、酸切断可能な基は、pH約6.5以下(例えば、約6.0、5.5、5.0又はそれを下回る)の酸性環境において又は一般酸として作用し得る酵素などの薬剤によって切断される。細胞内では、エンドソーム及びリソソームなどの特定の低pHオルガネラが、酸切断可能な基に切断環境を提供することができる。酸切断可能な結合基の例としては、ヒドラゾン、エステル及びアミノ酸のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。酸切断可能な基は、一般式-C=NN-、C(O)O又は-OC(O)を有し得る。特定の実施形態は、エステルの酸素に結合された炭素(アルコキシ基)が、アリール基、置換アルキル基又は三級アルキル基、例えばジメチル、ペンチル又はt-ブチルである場合である。これらの候補は、上に記載されているものに類似した方法を用いて評価することができる。
【0085】
他の実施形態では、リンカーは、細胞中のエステラーゼ及びアミダーゼなどの酵素によって切断されるエステル系の切断可能な基を含み得る。エステル系の切断可能な基の例としては、アルキレン、アルケニレン及びアルキニレン基のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。エステルの切断可能な基は、一般式-C(O)O-又は-OC(O)-を有する。これらのリンカー候補は、上記に記載されるものに類似する方法を用いて評価することができる。
【0086】
更なる実施形態では、リンカーは、細胞中のペプチダーゼ及びプロテアーゼなどの酵素によって切断されるペプチド系の切断可能な基を含み得る。ペプチド系の切断可能な基は、オリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)及びポリペプチドを生じるような、アミノ酸間で形成されたペプチド結合である。ペプチド系の切断可能な基は、アミド基(-C(O)NH-)を含まない。アミド基は、あらゆるアルキレン、アルケニレン又はアルキニレン間で形成され得る。ペプチド結合は、ペプチド及びタンパク質を生じるような、アミノ酸間で形成される特殊なタイプのアミド結合である。ペプチド系の切断基は、一般に、アミノ酸間で形成されてペプチド及びタンパク質を生じるペプチド結合(すなわちアミド結合)に限定され、アミド官能基全体を含むわけではない。ペプチド系の切断可能な連結基は、一般式-NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)-を有し、式中、RA及びRBは、2つの隣接するアミノ酸のR基である。これらの候補は、上に記載されているものに類似した方法を用いて評価することができる。
【0087】
本明細書に記載のRNAiコンストラクト中のセンス鎖又はアンチセンス鎖にリガンドを結合させるのに適した他の種類のリンカーは当技術分野で公知であり、例えば米国特許第7,723,509号明細書;同第8,017,762号明細書;同第8,828,956号明細書;同第8,877,917号明細書;及び同第9,181,551号明細書に記載のリンカーを含むことができる。
【0088】
特定の実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトのセンス鎖又はアンチセンス鎖に共有結合的に結合されるリガンドは、GalNAc部分、例えば多価のGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、多価のGalNAc部分は、三価のGalNAc部分であり、且つセンス鎖の3’末端に結合される。他の実施形態では、多価のGalNAc部分は、三価のGalNAc部分であり、且つセンス鎖の5’末端に結合される。さらに他の実施形態では、多価のGalNAc部分は、四価のGalNAc部分であり、且つセンス鎖の3’末端に結合される。さらに他の実施形態では、多価のGalNAc部分は、四価のGalNAc部分であり、且つセンス鎖の5’末端に結合される。
【0089】
いくつかの実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトは、RNAiコンストラクトの細胞内発現をコードし、且つ制御するベクターを投与することにより、目的の細胞又は組織に送達され得る。「ベクター」(本明細書では「発現ベクター」とも称される)は、目的の核酸を細胞の内部に送達するために使用することができる物質の組成物である。多数のベクターが当技術分野で知られており、線状ポリヌクレオチド、イオン性又は両親媒性化合物と結合したポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。従って、用語「ベクター」は、自律的に複製するプラスミド又はウイルスを含む。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター及びレトロウイルスベクターなどが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターは、生細胞内で複製されてもよいし、合成的に作製されてもよい。
【0090】
一般に、本発明のRNAiコンストラクトを発現するためのベクターは、RNAiコンストラクトをコードする配列に作動可能に連結された1つ以上のプロモーターを含むことになる。「作動可能に連結された」、「作動可能に連結された」又は「転写制御下で」という語句は、RNAポリメラーゼによる転写の開始及びポリヌクレオチド配列の発現を制御するために、プロモーターがポリヌクレオチド配列に対して正しい位置及び向きにあるときを示すために、本明細書では互換的に使用され得る。「プロモーター」は、細胞の合成装置によって認識されるか又は合成装置に導入され、特定の遺伝子配列の転写を開始するのに必要とされる配列を指す。適切なプロモーターとしては、RNA pol I、pol II、HI、又はU6 RNA pol III、及びウイルスプロモーター(例えば、ヒトサイトメガロウイルス(CMV)最初期遺伝子プロモーター、SV40初期プロモーター、及びラウス肉腫ウイルスの長い末端反復)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、HI又はU6RNA pol IIIプロモーターが使用される。プロモータは、組織特異的プロモーター又は誘導性プロモーターであり得る。特に注目するのは、ヒトα1-アンチトリプシン遺伝子、アルブミン遺伝子、ヘモペキシン遺伝子、及び肝性リパーゼ遺伝子由来のプロモータ配列等の肝臓特異的プロモータである。誘導性プロモーターとしては、例えばエクジソン、エストロゲン、プロゲステロン、テトラサイクリン、及びイソプロピル-PD1-チオガラクトピラノシド(IPTG)によって調節されるプロモーターが挙げられる。
【0091】
RNAiコンストラクトがsiRNAを含む場合、別々の2つの鎖(センス鎖及びアンチセンス鎖)を、単一のベクターか、又は別々の2つのベクターから発現させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、センス鎖をコードする配列は、第1のベクターのプロモーターに作動可能に連結され、アンチセンス鎖をコードする配列は、第2のベクターのプロモーターに作動可能に連結される。このような実施形態では、第1及び第2のベクターは、例えば、感染又はトランスフェクションによって標的細胞に同時に導入され、その結果、センス鎖及びアンチセンス鎖が転写されると、細胞内でハイブリダイズしてsiRNA分子を形成することになる。別の実施形態では、センス鎖及びアンチセンス鎖は、単一のベクター内に位置する2つの別個のプロモーターから転写される。このような実施形態では、センス鎖をコードする配列は、第1のプロモーターに作動可能に連結され、アンチセンス鎖をコードする配列は、第2のプロモーターに作動可能に連結されてもよく、第1及び第2のプロモーターは、単一のベクター内に配置されてもよい。一実施形態では、ベクターは、siRNA分子をコードする配列に作動可能に連結される第1のプロモーターと、同じ配列に逆方向で作動可能に連結される第2のプロモーターとを含み、その結果、第1のプロモーターからの配列の転写がsiRNA分子のセンス鎖の合成をもたらし、第2のプロモーターからの配列の転写がsiRNA分子のアンチセンス鎖の合成をもたらす。
【0092】
RNAiコンストラクトがshRNAを含む場合、単一の少なくとも部分的に自己相補的RNA分子をコードする配列が、単一の転写物を生成するプロモーターに作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、shRNAをコードする配列は、リンカーポリヌクレオチド配列によって結合される逆方向反復を含み、転写後にshRNAのステム及びループ構造を生成する。
【0093】
いくつかの実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトをコードするベクターは、ウイルスベクターである。本明細書に記載のRNAiコンストラクトを発現するのに好適な様々なウイルスベクター系は、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター、マロニー(maloney)マウス白血病ウイルス)、アデノ随伴ウイルスベクター;単純ヘルペスウイルスベクター;SV40ベクター;ポリオーマウイルスベクター;パピローマウイルスベクター;ピコルナウイルスベクター;及びポックスウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス)を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター(例えば、レンチウイルスベクター)である。
【0094】
本発明での使用に適した様々なベクター、siRNA又はshRNA分子をコードする核酸配列をベクターに挿入する方法、及びベクターを目的の細胞に送達する方法は、当技術分野で公知である(例えば、Dornburg ,Gene Therap.,Vol.2:301-310,1995;Eglitis,Biotechniques,Vol.6:608-614,1988;Miller,HumGene Therap.,Vol.1:5-14,1990;Anderson,Nature,Vol.392:25-30,1998;Rubinson D A et al.,Nat.Genet.,Vol.33:401-406,2003;Brummelkamp et al.,Science,Vol.296:550-553,2002;Brummelkamp et al.,Cancer Cell,Vol.2:243-247,2002;Lee et al.,Nat Biotechnol,Vol.20:500-505,2002;Miyagishi et al.,Nat Biotechnol,Vol.20:497-500,2002;Paddison et al.,GenesDev,Vol.16:948-958,2002;Paul et al.,Nat Biotechnol,Vol.20:505-508,2002;Sui et al.,Proc Natl Acad Sci USA,Vol.99:5515-5520,2002及びYu et al.,Proc Natl Acad Sci USA,Vol.99:6047-6052,2002を参照されたい)。
【0095】
組成物
本開示はまた、本明細書に記載のRNAiコンストラクトと、薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤とを含む組成物及び製剤を提供する。そのような組成物及び製剤は、それを必要とする対象において、GPAMの発現を低下させるのに有用である。臨床上の用途が想定される場合、医薬組成物及び製剤は、目的の用途に適切な形態で調製される。一般に、このことは、パイロジェンだけでなく、ヒト又は動物に有害となる虞のある他の不純物も本質的にない組成物の調製を伴うこととなる。
【0096】
語句「薬学的に許容される」又は「薬理学的に許容される」は、動物又はヒトに投与される場合の有害な、アレルギー性の、又は他の不都合な反応をもたらさない分子実体及び組成物を指す。本明細書中で用いられる「薬学的に許容される担体、賦形剤、又は希釈剤」として、ヒトへの投与に適した医薬等の医薬の製剤化における使用に許容される溶媒、バッファ、溶液、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張化剤、並びに吸収遅延剤等が挙げられる。薬学的に活性な物質に対するそのような媒体及び薬剤の使用は、当技術分野において周知である。従来のあらゆる媒体又は薬剤が、本発明のRNAiコンストラクトと適合しない場合を除いて、治療組成物に使用されることが意図される。補助的な活性成分もまた、それらが組成物のベクター又はRNAiコンストラクトを不活化しないことを条件として、組成物中に組み込まれ得る。
【0097】
医薬組成物の製剤化のための組成物及び方法は、投与経路、処置されることとなる疾患若しくは障害の種類及び程度、又は投与されることとなる用量が挙げられるがこれらに限定されない、いくつかの基準に依存する。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、意図される送達経路に基づいて製剤化される。例えば、特定の実施形態において、医薬組成物は、非経口送達用に製剤化される。非経口の送達形態として、静脈内、動脈内、皮下、髄腔内、腹腔内、及び筋肉内の注射又は注入が挙げられる。一実施形態において、医薬組成物は、静脈内送達用に製剤化される。そのような実施形態において、医薬組成物は、脂質ベースの送達ビヒクルを含んでよい。別の実施形態では、医薬組成物は皮下送達用に製剤化される。このような実施形態では、医薬組成物は、標的化リガンド(例えば、本明細書に記載のGalNAc含有リガンド)を含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、有効量の本明細書に記載されるRNAiコンストラクトを含む。「有効量」は、有利な又は所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。いくつかの実施形態において、有効量は、対象の肝細胞内でGPAM発現を低下させるのに十分な量である。いくつかの実施形態において、有効量は、GPAM発現を、例えばヒトヘテロ接合体における野生型GPAM対立遺伝子の発現に匹敵するレベルにまで部分的にのみ低下させるのに十分な量であり得る。機能欠損型のGPAMバリアントアレルのヘテロ接合性ヒト保因者は、非保因者と比べて非HDLコレステロールの血清レベルが低く、且つ冠動脈疾患及び心筋梗塞のリスクが低いと報告された(Nioi et al.,New England Journal of Medicine,Vol.374(22):2131-2141,2016)。従って、理論に束縛されることなく、GPAM発現の部分的な低下は、有利な血清非HDLコレステロールの低減並びに冠動脈疾患及び心筋梗塞のリスクの低減を実現するのに十分であり得ると考えられる。
【0099】
本発明のRNAiコンストラクトの有効量は、約0.01mg/kg体重~約100mg/kg体重、約0.05mg/kg体重~約75mg/kg体重、約0.1mg/kg体重~約50mg/kg体重、約1mg/kg~約30mg/kg体重、約2.5mg/kg体重~約20mg/kg体重、又は約5mg/kg体重~約15mg/kg体重であり得る。特定の実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトの単回の有効量は、約0.1mg/kg、約0.5mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg又は約10mg/kgであり得る。有効量のRNAiコンストラクトを含む医薬組成物は、毎週、隔週、毎月、四半期毎又は半年毎に投与され得る。有効であると考えられる投与量及び投与頻度を正確に決定することは、患者の大きさ、年齢、性別、処置する障害の種類(例えば、心筋梗塞、心不全、冠動脈疾患、高コレステロール血症)、使用される特定のRNAiコンストラクト並びに投与経路を含むいくつかの要因に基づき得る。本発明の特定のあらゆるRNAiコンストラクトの有効投薬量及びインビボ半減期の推定値は、従来の方法及び/又は適切な動物モデルにおける試験を用いて確認することができる。
【0100】
水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含む、高分子複合体、ナノカプセル、マイクロスフェア、ビーズ及び脂質ベースのなどのコロイド分散系を、本発明のRNAiコンストラクト又はそのようなコンストラクトをコードするベクターの送達ビヒクルとして使用してもよい。本発明の核酸の送達に好適な市販の脂肪エマルションとしては、INTRALIPID(登録商標)、LIPOSYN(登録商標)、LIPOSYN(登録商標)II、LIPOSYN(登録商標)III、NUTRILIPID及び他の類似の脂肪エマルションが挙げられる。インビボ送達ビヒクルとして用いられる好ましいコロイド系として、リポソーム(すなわち人工膜小胞)がある。本発明のRNAiコンストラクトは、カチオン性リポソームなどのリポソーム内に封入され得る。或いは、本発明のRNAiコンストラクトは、脂質、例えばカチオン性脂質に対して複合体形成され得る。適切な脂質及びリポソームとして、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、及びジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC))、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG))、そしてカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピル(DOTAP)及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOTMA))が挙げられる。このようなコロイド分散系の調製及び使用は、当技術分野においてよく知られている。例示的な製剤はまた、例えば、米国特許第5,783,565号明細書;同第5,837,533号明細書;同第5,981,505号明細書;同第6,127,170号明細書;同第6,217,900号明細書;同第6,379,965号明細書;同第6,383,512号明細書;同第6,747,014号明細書;同第7,202,227号明細書;及び国際公開第03/093449号パンフレットに開示されている。
【0101】
いくつかの実施形態では、本発明のRNAiコンストラクトは、脂質製剤に完全に封入されて、例えばSPLP、pSPLP、SNALP、又は他の核酸-脂質粒子を形成する。本明細書で使用する場合、用語「SNALP」は、SPLPを含む安定な核酸-脂質粒子を指す。本明細書で使用する場合、用語「SPLP」は、脂質小胞に封入されたプラスミドDNAを含む核酸-脂質粒子を指す。SNALP及びSPLPは典型的に、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び粒子の凝集を妨げる脂質(例えばPEG-脂質コンジュゲート)を含有する。SNALP及びSPLPは、静脈内注射後に長期間の循環寿命を示し、且つ遠位部位(例えば、投与部位から物理的に離れた部位)にて蓄積するため、全身投与に非常に有用である。SPLPは、国際公開第00/03683号パンフレットに記載の封入された縮合剤-核酸複合体を含む「pSPLP」を含む。核酸-脂質粒子は、典型的に、平均直径が約50nm~約150nm、約60nm~約130nm、約70nm~約110nm、又は約70nm~約90nmであり、実質的に非毒性である。加えて、核酸-脂質粒子内に存在する核酸は、水溶液中で、ヌクレアーゼによる分解に対して耐性があるのが望ましい。核酸-脂質粒子及びその調製方法は、例えば、米国特許第5,976,567号明細書、米国特許第5,981,501号明細書、米国特許第6,534,484号明細書、米国特許第6,586,410号明細書、米国特許第6,815,432号明細書、及び国際公開第96/40964号パンフレットに開示されている。
【0102】
注射に好適な医薬組成物は、例えば、滅菌水溶液又は分散体及び注射用滅菌溶液又は分散体の即時調製のための滅菌粉末を含む。一般に、これらの調製物は、滅菌済みであり、容易に注射可能である程度の流体である。調製物は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の汚染作用から保護されていなければならない。適切な溶媒又は分散媒体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、それらの好適な混合液、及び植物油を含有し得る。適切な流動性は、例えば、コーティング(レシチンなど)を使用することによって、必要な粒径を維持することによって(分散液の場合)、及び/又は界面活性剤を使用することによって維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によってもたらされ得る。多くの場合、等張剤(例えば、糖又は塩化ナトリウム)が組成物に含まれ得る。注射可能な組成物の持続的な吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによってもたらされ得る。
【0103】
滅菌注射用溶液は、適切な量のRNAiコンストラクト(単独又はリガンドと複合体化)を、必要に応じて任意の他の成分(上記など)と共に溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製され得る。一般的に、分散系は、塩基性分散媒体及び所望の他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に、滅菌された種々の活性成分を組み込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合、適切な調製方法として、その予め滅菌濾過した溶液から活性成分プラス任意の追加の所望の成分の粉末が得られる、真空乾燥技術及び凍結乾燥技術が挙げられる。
【0104】
本明細書で提供される組成物は、中性形態又は塩形態で製剤化され得る。薬学的に許容される塩として、例えば、無機酸(例えば、塩酸又はリン酸)又は有機酸(例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸等)から誘導される酸付加塩(遊離アミノ基と共に形成される)が挙げられる。また、遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、又は水酸化第二鉄)から、又は有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカイン等)から誘導され得る。
【0105】
水溶液中での非経口投与のために、例えば、溶液は一般に適切に緩衝され、液体希釈剤は最初に、例えば、十分な生理食塩水又はグルコースと等張にされる。そのような水溶液は、例えば、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内投与に用いられ得る。当技術分野の当業者に知られているように、滅菌水性媒体を使用することが望ましい。実例として、単回用量を等張NaCl溶液1ml中に溶解し、皮下注入液1000mlに添加し得るか、又は提示された注入部位に注射し得る(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580を参照されたい)。ヒト投与について、調製物は、FDA基準によって要求される無菌性、発熱性、一般的安全性、及び純度の基準を満たさなければならない。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は、滅菌生理食塩水、及び本明細書中に記載されるRNAiコンストラクトを含むか、又はそれらからなる。他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載のRNAiコンストラクト及び滅菌水(例えば、注射用水、WFI)を含むか又はそれらからなる。さらに他の実施形態では、本発明の医薬組成物は、本明細書に記載のRNAiコンストラクト及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含むか又はこれからなる。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与用デバイスでパッケージ化されるか又はその中に保存される。注射製剤用のデバイスとしては、注射ポート、プレフィルドシリンジ、自動注入装置、注射ポンプ、装着型注射器、及び注射ペンが挙げられるが、これらに限定されない。エアロゾル化製剤又は粉末製剤用のデバイスとして、インヘラー、通気器、吸引器等が挙げられるが、これらに限定されない。従って、本発明は、本明細書に記載される障害の1つ以上を治療又は予防するための本発明の医薬組成物を含む投与デバイスを含む。
【0107】
GPAM発現を阻害するための方法
本開示はまた、細胞におけるGPAM遺伝子の発現を阻害する方法を提供する。本方法は、細胞を、RNAiコンストラクト、例えば、二本鎖RNAiコンストラクトと、細胞内でのGPAMの発現を阻害するのに有効な量で接触させることによって、細胞内でのGPAMの発現を阻害することを含む。細胞をRNAiコンストラクト、例えば二本鎖RNAiコンストラクトと接触させることは、インビトロ又はインビボで行われ得る。細胞をインビボでRNAiコンストラクトと接触させることは、対象、例えばヒト対象内の細胞又は細胞群をRNAiコンストラクトと接触させることを含む。細胞を接触させるインビトロ及びインビボ方法の組合せも本開示の範囲内である。
【0108】
本発明は、GPAMの発現の低下又は阻害を必要とする対象において、GPAMの発現を低下させるか又は阻害する方法、及びGPAM発現又は活性と関連する症状、疾患、又は障害を処置又は予防する方法を提供する。「GPAM発現と関連する症状、疾患、又は障害」は、GPAM発現レベルが変わるか、又はGPAMの発現レベルの上昇が、症状、疾患、若しくは障害の発症リスクの増大と関連する症状、疾患、又は障害を指す。
【0109】
細胞を接触させることは、上記で考察されるように、直接的であっても、又は間接的であってもよい。さらに、細胞を接触させることは、本明細書に記載されるか、又は当技術分野で知られるあらゆるリガンドを含む標的化リガンドを介して達成してもよい。好ましい実施形態では、標的化リガンドは、炭水化物部分、例えばGalNAcリガンド、又は実施例1に示されるものなどの三分岐GalNAc構造、又はRNAiコンストラクトを目的の部位に指向させる任意の他のリガンドである。
【0110】
一実施形態では、細胞とRNAiの接触は、細胞への取り込み又は細胞への吸収を促進するか又は引き起こすことによって、「導入すること」又は「細胞にRNAiを送達すること」を含む。RNAiの吸収又は取り込みは、補助なしの拡散性若しくは活性細胞性プロセスによって、又は補助剤若しくはデバイスによって起こすことができる。例えば、インビボでの導入のために、RNAiを組織部位に注射してもよいし、全身投与してもよい。細胞へのインビトロ導入は、エレクトロポレーション及びリポフェクションなどの当技術分野で公知の方法を使用して達成することができる。更なる方法は、本明細書において以下に記載されており、且つ/又は当技術分野において知られている。
【0111】
本明細書で使用する場合、用語「阻害する」は、「低下させる」、「サイレンシングする」、「下方制御する」、「抑制する」、及び他の類似用語と互換的に使用され、あらゆるレベルの阻害を含む。
【0112】
語句「GPAMの発現を阻害する」は、任意のGPAM遺伝子(例えば、マウスGPAM遺伝子、ラットGPAM遺伝子、サルGPAM遺伝子、又はヒトGPAM遺伝子など)及びGPAM遺伝子のバリアント又は変異体の発現の阻害を指すものとする。従って、GPAM遺伝子は、野生型GPAM遺伝子、変異体GPAM遺伝子(アミロイド沈着を引き起こす変異体GPAM遺伝子など)、又は遺伝子操作細胞、細胞群、若しくは生物の文脈におけるトランスジェニックGPAM遺伝子であってもよい。
【0113】
「GPAM遺伝子の発現を阻害する」には、GPAM遺伝子のあらゆるレベルの阻害、例えばGPAM遺伝子の発現の少なくとも一部の抑制が含まれる。GPAM遺伝子の発現は、例えば、GPAM mRNAレベル、GPAMタンパク質レベル、又はアミロイド沈着物の数若しくは程度などのGPAM遺伝子発現と関連する任意の変数のレベル、又はレベルの変化に基づいて評価され得る。このレベルは、例えば、対象に由来する試料を含む個々の細胞又は細胞群において評価され得る。
【0114】
阻害は、対照レベルと比較して、GPAM発現と関連する1つ以上の変数の絶対レベル又は相対レベルの低下によって評価され得る。対照レベルは、例えば、投与前のベースラインレベル、又は治療されていないか若しくは対照(例えば、緩衝液のみの対照又は不活性薬剤対照)で治療された類似対象、細胞、若しくは試料から決定されるレベルなどの当技術分野で利用される任意のタイプの対照レベルであり得る。いくつかの実施形態では、GPAM遺伝子の発現は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94% 少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、又は少なくとも約99%阻害される。
【0115】
GPAM遺伝子の発現の阻害は、第1の細胞又は細胞群と実質的に同一であるが、同様に処置されていない第2の細胞又は細胞群(対照細胞)と比較した場合の、GPAM遺伝子の発現が阻害されるように、GPAM遺伝子が転写され、且つ処置された(例えば、細胞を本発明のRNAiコンストラクトと接触させることにより、又はこの細胞が存在する、若しくは存在した対象に本発明のRNAiコンストラクトを投与することにより)第1の細胞又は細胞群(このような細胞は、例えば、対象に由来する試料中に存在し得る)により発現されるmRNAの量の減少によって明らかにされ得る。阻害は、以下の式を用いて、処置細胞中のmRNAレベルを対照細胞中のmRNAレベルの割合として表すことによって評価し得る。
【数1】
【0116】
或いは、GPAM遺伝子の発現の阻害は、GPAM遺伝子発現、例えば、GPAMタンパク質発現又はヘッジホッグ経路タンパク質活性に機能的に関連するパラメーターの低下に関して評価されてもよい。GPAM遺伝子サイレンシングは、当技術分野で公知の任意のアッセイによって、内因的又は組換え的にGPAMを発現する任意の細胞において決定され得る。
【0117】
GPAMタンパク質の発現の阻害は、細胞又は細胞群によって発現されるGPAMタンパク質のレベル(例えば、対象に由来するサンプル内で発現されるタンパク質のレベル)の低下によって明らかにされ得る。上記で説明されるように、mRNAの抑制を評価するために、処置細胞又は細胞群におけるタンパク質発現レベルの阻害は、対照細胞又は細胞群におけるタンパク質のレベルのパーセンテージとして同様に表され得る。
【0118】
GPAM遺伝子の発現の阻害を評価するのに用いられ得る対照細胞又は細胞群として、本発明のRNAiコンストラクトとまだ接触していない細胞又は細胞群が挙げられる。例えば、対照細胞又は対照細胞群は、RNAiコンストラクトによる対象の処置の前に、個々の対象(例えば、ヒト対象又は動物対象)から得てもよい。
【0119】
細胞又は細胞群によって発現されるGPAM mRNAのレベル、又は循環GPAM mRNAのレベルは、mRNA発現を評価するための当技術分野で公知の任意の方法、例えば上記の方法を使用して決定することができる。いくつかの実施形態において、サンプル内でのGPAMの発現のレベルは、例えばGPAM遺伝子のmRNAといった、転写ポリヌクレオチド又はその一部を検出することによって判定される。この点について、例えばRNAは、例えば、酸性フェノール/グアニジンイソチオシアネート抽出(RNAzol B;Biogenesis)、RNeasy RNA調製キット(Qiagen)又はPAXgene(PreAnalytix、Switzerland)の使用を含むRNA抽出技術を用いて、細胞から抽出され得る。リボ核酸ハイブリダイゼーションを利用する典型的なアッセイ形式としては、核ランオンアッセイ、RT-PCR、RNアーゼ保護アッセイ(Melton et al.,Nuc.Acids Res.,12:7035)、ノーザンブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーション及びマイクロアレイ分析が挙げられる。循環GPAM mRNAは、国際公開第2012/177906号パンフレットに記載されている方法を使用して検出することができる。
【0120】
一実施形態では、GPAMの発現のレベルは、核酸プローブを使用して決定される。用語「プローブ」は、本明細書で使用する場合、特定のGPAM配列に選択的に結合することができる任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成することができるか、又は適切な生物学的調製物から誘導することができる。プローブは、標識するように特別に設計してもよい。プローブとして利用され得る分子の例としては、RNA、DNA、タンパク質、抗体及び有機分子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
単離mRNAは、サザン又はノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析及びプローブアレイを含むが、これらに限定されないハイブリダイゼーション又は増幅アッセイに使用することができる。mRNAレベルの一決定方法は、単離されたmRNAを、GPAM mRNAにハイブリダイズすることができる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。一実施形態では、例えば、アガロースゲル上で単離mRNAを泳動させ、mRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜に移すことによって、mRNAを固体表面上に固定化し、プローブと接触させる。代替的な実施形態では、プローブは、例えば、Affymetrix遺伝子チップアレイにおいて、固体表面上に固定化し、mRNAをプローブと接触させる。当業者であれば、既知のmRNA検出法を、GPAM mRNAのレベルの判定での使用に容易に適合させることができる。
【0122】
サンプル中のGPAMの発現レベルを決定するための代替方法は、例えばRT-PCR(例えば、米国特許第4,683,202号明細書を参照されたい)、リガーゼ連鎖反応(Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:189-193)、自家持続配列複製法(Guatelli et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh et al.(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173-1177)、Q-ベータレプリカーゼ(Lizardi et al.(1988)Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardi et al、前出;及び米国特許第5,854,033号明細書)又は任意の他の核酸増幅方法を含み、これに続いて、当業者に周知の技術を使用して増幅された分子を検出する。これらの検出スキームは、特に、核酸分子が非常に少ない数で存在するときに、核酸分子を検出するのに有用である。本発明のいくつかの態様では、GPAMの発現レベルは、定量的蛍光発生RT-PCR(すなわち、TAQMAN(商標)システム)によって決定され得る。GPAM mRNAの発現レベルは、メンブレンブロット(ノーザン、サザン、ドットなどのハイブリダイゼーション分析に使用されているものなど)又はマイクロウェル、サンプルチューブ、ゲル、ビーズ若しくはファイバー(又は結合核酸を含む任意の固体支持体)を使用してモニターされ得る(例えば米国特許第5,445,934号明細書;同第5,677,195号明細書;同第5,770,722号明細書;同第5,744,305号明細書;及び同第5,874,219号明細書参照のこと)。GPAM発現レベルの判定は、溶液中の核酸プローブの使用を含んでもよい。特定の実施形態において、mRNA発現のレベルは、分枝状DNA(bDNA)アッセイ又はリアルタイムPCR(qPCR)を用いて評価される。
【0123】
GPAMタンパク質発現のレベルは、タンパク質レベルの測定のための、当技術分野において知られているあらゆる方法を用いて判定され得る。このような方法としては、例えば、電気泳動、キャピラリー電気泳動、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、高拡散クロマトグラフィー、液体又はゲル沈降素反応、吸収分光法、比色アッセイ、分光光度アッセイ、フローサイトメトリー、免疫拡散法(一元又は二元)、免疫電気泳動、ウエスタンブロッティング、放射性免疫アッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、電気化学発光アッセイなどが挙げられる。
【0124】
いくつかの実施形態において、本発明の方法の有効性は、四肢、顔、喉頭、上気道、腹部、躯幹、及び性器の浮腫状腫脹、前駆症状;喉頭部浮腫;非掻痒性発疹;吐き気;嘔吐;又は腹痛の低減等のGPAM疾患の病徴の低減を検出又は監視することによって監視することができる。これらの症状は、当技術分野で知られる任意の方法を使用してインビトロ又はインビボで評価され得る。
【0125】
いくつかの態様では、RNAiコンストラクト又はRNAiコンストラクトを含む組成物は、RNAiコンストラクトが対象内の特定の部位に送達されるように対象に投与される。GPAMの発現の阻害は、対象内の特定の部位由来の体液又は組織に由来するサンプル内でのGPAM mRNA又はGPAMタンパク質のレベル又はレベルの変化の測定を用いて評価され得る。いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトは、肝臓、脈絡叢、網膜、及び膵臓などの部位に送達され得る。その部位は、前述の部位のいずれか1つに由来する細胞の小単位又は部分群であってもよい。また、当該部位は、特定の型の受容体を発現する細胞を含んでもよい。
【0126】
GPAM関連疾患を処置又は予防する方法
本発明は、GPAM関連の疾患、障害及び/若しくは状態を有するか、又はGPAM関連の疾患、障害及び/若しくは状態を発症する傾向がある対象、RNAiコンストラクト、RNAiコンストラクトを含む組成物(例えば、医薬組成物)、又は本明細書に記載のRNAiコンストラクトを含むベクターに投与することを含む治療的及び予防的方法を提供する。GPAM関連疾患の非限定的な例として、例えば、脂肪肝(脂肪症)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、肝臓内での脂肪の蓄積、肝臓の炎症、肝細胞壊死、肝線維症、肥満、及び非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が挙げられる。一実施形態において、GPAM関連疾患は、NAFLDである。別の実施形態において、GPAM関連疾患は、NASHである。別の実施形態において、GPAM関連疾患は、脂肪肝(脂肪症)である。別の実施形態において、GPAM関連疾患は、インスリン抵抗性である。別の実施形態において、GPAM関連疾患は、インスリン抵抗性ではない。
【0127】
特定の実施形態において、本発明は、GPAMの発現の低下を必要とする患者においてGPAMの発現を低下させる方法であって、本明細書中に記載されるRNAiコンストラクトのいずれかを患者に投与することを含む方法を提供する。本明細書中で用いられる用語「患者」は、ヒトが挙げられる哺乳動物を指し、用語「対象」と互換的に用いられ得る。患者の肝細胞内でのGPAMの発現レベルは、RNAiコンストラクトを受けていない患者のGPAM発現レベルと比較して、RNAiコンストラクトの投与後に低下するのが望ましい。
【0128】
本発明の方法は、GPAM関連疾患を患っている対象、例えば、GPAM遺伝子発現及び/又はGPAMタンパク質産生の低下から利益を受けることとなる対象を処置するのに有用である。一態様では、本発明は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を有する対象におけるグリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ、ミトコンドリア(GPAM)遺伝子発現のレベルを低下させる方法を提供する。別の態様において、本発明は、NAFLDを患っている対象においてGPAMタンパク質のレベルを低下させる方法を提供する。また、本発明は、NAFLDを患っている対象において、ヘッジホッグ経路の活性のレベルを低下させる方法を提供する。
【0129】
本発明の処置方法(及び使用)は、対照、例えばヒトに、GPAM遺伝子を標的とする治療有効量の開示されたRNAiコンストラクト、RNAiコンストラクトを含む医薬組成物、又はRNAiコンストラクトを含むベクターを投与することを含む。
【0130】
一態様では、本発明は、例えば、高められたヘッジホッグシグナル伝達経路の存在、疲労、衰弱、減量、食欲不振、吐き気、腹痛、クモ状血管、皮膚及び眼の黄色化(黄疸)、かゆみ、水分蓄積及び脚の腫脹(浮腫)、腹部膨満(腹水)、及び精神錯乱などの、NAFLDを有する対象の少なくとも1つの症状を予防する方法を提供する。この方法は、予防有効量のRNAiコンストラクト、例えばdsRNA、RNAiコンストラクトを含む医薬組成物、又はRNAiコンストラクトをコードするベクターを対象に投与し、それによってGPAM遺伝子発現の低下から利益を得る障害を有する対象における少なくとも1つの症状を予防することを含む。「予防有効量」は、所望の予防結果(例えば、疾患発症の予防)を達成するために、必要な投与量及び期間で有効な量を指す。
【0131】
別の態様において、本発明は、対象、例えば、GPAM遺伝子発現の低下及び/又は阻害から利益を受けることとなる対象を処置するための、治療有効量の本発明のRNAiコンストラクトの使用を提供する。更なる態様において、本発明は、GPAM遺伝子発現の低下から利益を受けることとなる、障害、例えば、GPAM関連疾患を患っている対象等の対象、例えば、GPAM遺伝子発現及び/又はGPAMタンパク質産生の低下及び/又は阻害から利益を受けることとなる対象を処置するための医薬の製造における、GPAM遺伝子を標的化する本発明のRNAiコンストラクト、例えば、dsRNA、又はGPAM遺伝子を標的化するRNAiコンストラクトを含む医薬組成物の使用を提供する。
【0132】
本開示は、GPAM遺伝子発現及び/又はGPAMタンパク質産生の低下及び/又は阻害から利益を受けることとなる、障害に罹患している対象において少なくとも1つの病徴を予防するための、本発明のRNAiコンストラクト、例えば、dsRNAの使用を提供する。例えば、本開示は、NAFLDの処置における、本明細書中に記載のRNAiコンストラクト、それを含む組成物及びそれを含むベクターの使用を提供する。
【0133】
更なる態様では、本発明は、GPAM関連疾患などのGPAM遺伝子発現及び/又はGPAMタンパク質産生の低下及び/又は阻害から利益を得る障害に罹患している対象における少なくとも1つの症状を予防するための医薬品の製造における、開示されるRNAiコンストラクト、それを含む組成物、又はそれを含むベクターの使用を提供する。
【0134】
一実施形態において、GPAMを標的化するRNAiコンストラクトは、RNAiコンストラクトが対象に投与される場合、例えば、対象の細胞、組織、血液、又は他の組織若しくは体液におけるGPAM遺伝子の発現が、少なくとも約10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、62%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも約99%以上低下するように、GPAM関連疾患、例えば、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を患っている対象に投与される。
【0135】
本発明の方法及び使用は、標的GPAM遺伝子の発現が、任意の適切な時間、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、12、16、18、24、28、32、36、40、44、48、52、56、60、64、68、72、76、又は約80時間低減するように、本明細書に記載の組成物を投与することを含む。一実施形態において、標的GPAM遺伝子の発現は、長期間、例えば、少なくとも約2、3、4、5、6、7日以上、例えば、約1週、2週、3週、又は約4週以上減少する。
【0136】
本発明の方法及び使用に従うRNAiコンストラクトの投与は、GPAM関連疾患、例えば、NAFLDを患っている患者におけるそのような疾患又は障害の重症度、徴候、病徴、及び/又はマーカーの低減をもたらし得る。この文脈における「低減」は、このようなレベルの統計的に有意な低減を意味する。低減は、例えば、少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は約100%であり得る。疾患の治療又は予防の有効性は、例えば、疾患進行、疾患寛解、病徴重症度、疼痛の低減、生活の質、治療効果を維持するのに必要な医薬の用量、疾患マーカーのレベル又は治療されているか若しくは予防の標的となる所与の疾患に適した他の任意の測定可能パラメーターを測定することによって評価され得る。このようなパラメーターのいずれか1つ又はパラメーターの任意の組合せを測定することにより、治療又は予防の有効性を観察することは、十分に当業者の能力の範囲内である。例えば、NAFLDの処置の有効性は、例えば、NAFLD病徴、肝臓脂肪レベル、又は下流遺伝子の発現を定期的に観察することよって評価することができる。最初の読取りと後の読取りとの比較は、治療が有効であるかどうかの指標を医師に提供する。このようなパラメーターのいずれか1つ又はパラメーターの任意の組合せを測定することにより、治療又は予防の有効性を観察することは、十分に当業者の能力の範囲内である。GPAMを標的化するRNAi又はその医薬組成物の投与と関連して、GPAM関連疾患「に対して有効」とは、臨床的に適切な様式での投与が、少なくとも統計的に有意な割合の患者に、症状の改善、治癒、疾患の低減、延命、生活の質の改善、又はNAFLD及び/若しくはGPAM関連疾患並びに関連原因の治療に精通している医者によって、好ましいと一般に認められている他の効果などの有益な効果をもたらすことを示す。
【0137】
治療又は予防効果は、病状の1つ以上のパラメーターにおいて統計的に有意な改善がある場合、又はそうでない場合に予期される症状が悪化又は発症しないことによって明らかとなる。一例として、疾患の測定可能なパラメーターの少なくとも10%の、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%以上の好ましい変化が、有効な治療を意味し得る。所与のRNAi薬物又はこの薬物の製剤の有効性は、当技術分野において知られている所与の疾患のための実験動物モデルを用いて判断することもできる。実験動物モデルを使用する場合、治療の有効性は、マーカー又は症状の統計的に有意な低減が観察される場合に証明される。
【0138】
対象には、任意の治療有効量のRNAiコンストラクトを投与することができる。RNAiコンストラクトの例示的な治療有効量としては、0.01mg/kg、0.02mg/kg、0.03mg/kg、0.04mg/kg、0.05mg/kg、0.1mg/kg、0.15mg/kg、0.2mg/kg、0.25mg/kg、0.3mg/kg、0.35mg/kg、0.4mg/kg、0.45mg/kg、0.5mg/kg、0.55mg/kg、0.6mg/kg、0.65mg/kg、0.7mg/kg、0.75mg/kg、0.8mg/kg、0.85mg/kg、0.9mg/kg、0.95mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.2mg/kg、1.3mg/kg、1.4mg/kg、1.5mg/kg、1.6mg/kg、1.7mg/kg、1.8mg/kg、1.9mg/kg、2.0mg/kg、2.1mg/kg、2.2mg/kg、2.3mg/kg、2.4mg/kg、2.5mg/kg、2.6mg/kg、2.7mg/kg、2.8mg/kg、2.9mg/kg、3.0mg/kg、3.1mg/kg、3.2mg/kg、3.3mg/kg、3.4mg/kg、3.5mg/kg、3.6mg/kg、3.7mg/kg、3.8mg/kg、3.9mg/kg、4.0mg/kg、4.1mg/kg、4.2mg/kg、4.3mg/kg、4.4mg/kg、4.5mg/kg、4.6mg/kg、4.7mg/kg、4.8mg/kg、4.9mg/kg、5.0mg/kg、5.1mg/kg、5.2mg/kg、5.3mg/kg、5.4mg/kg、5.5mg/kg、5.6mg/kg、5.7mg/kg、5.8mg/kg dsRNA、5.9mg/kg、6.0mg/kg、6.1mg/kg、6.2mg/kg、6.3mg/kg、6.4mg/kg、6.5mg/kg、6.6mg/kg、6.7mg/kg、6.8mg/kg、6.9mg/kg、7.0mg/kg、7.1mg/kg、7.2mg/kg、7.3mg/kg、7.4mg/kg、7.5mg/kg、7.6mg/kg、7.7mg/kg、7.8mg/kg、7.9mg/kg、8.0mg/kg、8.1mg/kg、8.2mg/kg、8.3mg/kg、8.4mg/kg、8.5mg/kg、8.6mg/kg、8.7mg/kg、8.8mg/kg、8.9mg/kg、9.0mg/kg、9.1mg/kg、9.2mg/kg、9.3mg/kg、9.4mg/kg、9.5mg/kg、9.6mg/kg、9.7mg/kg、9.8mg/kg、9.9mg/kg、9.0mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kg、30mg/kg、35mg/kg、40mg/kg、45mg/kg又は約50mg/kgが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、対象には、0.5mg/kgのRNAiコンストラクトが投与され得る。列挙された値の中間の値及び範囲も本開示に含まれる。
【0139】
RNAiコンストラクト又はそれを含む組成物の投与は、例えば、患者の細胞、組織、血液、尿、又は他のコンパートメント内のGPAMタンパク質レベルの存在を、少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも約99%以上低下させ得る。
【0140】
RNAiの総用量の投与前に、5%の注入液などのより少ない用量を患者に投与し、アレルギー反応などの有害作用についてモニターしてもよい。別の実施例では、サイトカイン(例えば、TNF-アルファ又はINF-アルファ)レベルの増大などの望ましくない免疫賦活作用について、患者を観察してもよい。
【0141】
GPAM発現に及ぼす阻害効果によって、本発明に従う組成物又はそれから調製される医薬組成物は、生活の質を高めることができる。
【0142】
本発明のRNAiは、「裸の」形態で投与されてもよく、この場合、修飾又は未修飾RNAiコンストラクトは、「遊離RNAi」として、水性又は好適な緩衝溶液中に直接的に懸濁される。遊離RNAiは、医薬組成物の不在下で投与される。遊離RNAiは、好適な緩衝溶液中にあってもよい。バッファ溶液は、アセタート、シトラート、プロラミン、カルボナート、若しくはホスファート、又はそれらのあらゆる組合せを含んでもよい。一実施形態において、バッファ溶液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。RNAiを含有する緩衝溶液のpH及び重量オスモル濃度は、対象への投与に好適であるように調節され得る。
【0143】
或いは、本発明のRNAiは、dsRNAリポソーム製剤などの医薬組成物として投与され得る。
【0144】
GPAM遺伝子発現の低下及び/又は阻害から利益を受けることとなる対象は、本明細書中に記載される非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)及び/又はGPAM関連疾患若しくは障害を患っている対象である。
【0145】
GPAM遺伝子発現の低下及び/又は阻害から利益を受けることとなる対象の処置として、治療的及び予防的処置が挙げられる。
【0146】
本発明はさらに、例えば既知の医薬品及び/又は既知の治療法といった他の医薬品及び/又は他の治療法、例えば、これらの障害を処置するために現在利用されているものと組み合わせた、GPAM遺伝子発現の低下及び/又は阻害から利益を受けることとなる対象、例えば、GPAM関連疾患を患っている対象を処置するための方法、並びにRNAiコンストラクト又はその医薬組成物の使用を提供する。
【0147】
例えば、特定の実施形態では、GPAM遺伝子を標的化するRNAiは、例えば、GPAM関連疾患を治療するのに有用な薬剤と組み合わせて投与される。例えば、GPAM発現の低下から利益を得る対象、例えばGPAM関連疾患を有する対象を治療するのに適した追加の治療薬及び治療方法には、GPAM遺伝子の異なる部分を標的とするRNAiコンストラクト、治療薬、及び/又はGPAM関連疾患を治療するための手順、又は前述のいずれかの組合せが含まれる。特定の実施形態では、GPAM遺伝子を標的とする第1のRNAiコンストラクトは、GPAM遺伝子の異なる部分を標的とする第2のRNAiコンストラクトと組み合わせて投与される。例えば、第1のRNAiコンストラクトは、二重鎖領域を形成する第1のセンス鎖及び第1のアンチセンス鎖を含んでいてもよく、前記第1のセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全て、且つ第1のアンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが修飾ヌクレオチドであり、前記第1のセンス鎖は、3’末端に結合したリガンドにコンジュゲートされており、当該リガンドは、二価又は三価の分枝状リンカーを介して結合された1つ以上のGalNAc誘導体であり;且つ第2のRNAiコンストラクトは、二重鎖領域を形成する第2のセンス鎖及び第2のアンチセンス鎖を含み、第2のセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全て、且つ第2のアンチセンス鎖のヌクレオチドの実質的に全てが修飾ヌクレオチドであり、第2のセンス鎖は、3’末端に結合したリガンドにコンジュゲートされており、当該リガンドは、二価又は三価の分枝状リンカーを介して結合された1つ以上のGalNAc誘導体である。一実施形態では、第1及び第2のセンス鎖のヌクレオチドの全て、並びに/又は第1及び第2のアンチセンス鎖のヌクレオチドの全ては、修飾を含む。修飾ヌクレオチドは、本明細書に記載の修飾ヌクレオチドのいずれか1つ又は組合せであり得る。
【0148】
他の実施形態において、GPAM遺伝子を標的化する第1のRNAiコンストラクトは、GPAM遺伝子とは異なる遺伝子を標的化する第2のRNAiコンストラクトと組み合わせて投与される。例えば、GPAM遺伝子を標的化するRNAiコンストラクトは、SCAP遺伝子を標的化するRNAiコンストラクトと組み合わせて投与されてよい。SCAP(SREBP切断活性化タンパク質)は、SREBPファミリの転写因子の唯一知られている調節因子である。SREBP(ステロール応答要素結合タンパク質)ファミリは、肝臓内での新規の脂質生成及びトリグリセリド(TG)蓄積の調節において、重要な役割を果たす。GPAM遺伝子を標的化する第1のRNAiコンストラクト、及び異なる遺伝子、例えば、SCAP遺伝子を標的化する第2のRNAiコンストラクトは、同じ医薬組成物の一部として投与されてよい。或いは、GPAM遺伝子を標的化する第1のRNAiコンストラクト、及び異なる遺伝子、例えば、SCAP遺伝子を標的化する第2のRNAiコンストラクトは、異なる医薬組成物の一部として投与されてよい。これに加えて、又はこれに代えて、GPAM遺伝子を標的とする第1のRNAiコンストラクトは、パタチン様ホスホリパーゼドメイン含有(Patatin-Like Phospholipase Domain Containing 3、PNPLA3)遺伝子を標的とする第2のRNAiコンストラクトと組み合わせて、又はSCAPを標的とする第2のRNAi及びPNPLA3を標的とする第3のRNAiと組み合わせて投与することができる。以前にアディポニュートリン(ADPN)及びカルシウム非依存性ホスホリパーゼA2-イプシロン(iPLA(2)ε)として知られるパタチン様ホスホリパーゼドメイン含有3(PNPLA3)は、II型膜貫通タンパク質である(Wilson et al(2006)J Lipid Res 47(9):1940-9;Jenkins et al(2004)J Biol Chem 279(47):48968-75)。マウスにおいて脂肪生成中に誘導される膜結合型の脂肪に富むタンパク質として脂肪細胞で最初に同定されたが、現在では肝臓を含む他の組織において発現していることが明らかになっている((Wilson et al,上掲;Baulande et al(2001)J Biol Chem 276(36):33336-44;Moldes et al.(2006)Eur J Endocrinol 155(3):461-8;Faraj et al.(2006)J Endocrinol 191(2):427-35;Liu et al(2004)J Clin Endocrinol Metab 89(6):2684-9;Lake et al(2005)J Lipid Res 46(11):2477-87)。無細胞生化学系において、組換え体PNPLA3タンパク質は、トリアシルグリセロールリパーゼ又はアシル交換反応活性のいずれかを示すことができる(Jenkins et al.,上掲;Kumari et al(2012)Cell Metab 15(5):691-702;He et al(2010)J Biol Chem 285(9):6706-15)。肝細胞において、PNPLA3は、小胞体及び脂質膜上に発現され、主にトリアシルグリセロールヒドロラーゼ活性を示す(He et al.,上掲;Huang et al(2010)Proc Natl Acad Sci USA 107(17):7892-7;Ruhanen et al(2014)J Lipid Res 55(4):739-46;Pingitore et al.(2014)Biochim Biophys Acta 1841(4):574-80)。分泌性シグナルを欠いているが、データは、PNPLA3が分泌され、且つジスルフィド結合依存性多量体としてヒト血漿において見出され得ることを示す(Winberg et al.(2014)Biochem Biophys Res Commun 446(4):1114-9)。
【0149】
RNAiコンストラクト及び追加の治療剤並びに/又は処置は、同時に、且つ/又は同じ組合せで、例えば、非経口的に投与してもよく、或いは、追加の治療剤が、別個の組成物の一部として、若しくは別々に、且つ/又は当技術分野において知られているか若しくは本明細書に記載される別の方法によって投与してもよい。
【0150】
本発明はまた、細胞内のGPAM発現(遺伝子又はタンパク質発現)を低下させ、及び/又は阻害するために、本発明のRNAiコンストラクト及び/又は本発明のRNAiコンストラクトを含有する組成物を使用する方法も提供する。さらに他の態様において、細胞内のGPAM遺伝子発現を低下させ、且つ/又は阻害する医薬の製造のための、本発明のRNAiコンストラクト及び/又は本発明のRNAiコンストラクトを含む組成物の使用が提供される。さらに他の態様では、本発明は、細胞内のGPAMタンパク質産生を低下させ、及び/又は阻害するのに使用するための、本発明のRNAi及び/又は本発明のRNAiコンストラクトを含む組成物を提供する。さらに他の態様において、細胞内でのGPAMタンパク質産生を低下させ、且つ/又は阻害する医薬の製造のための、本発明のRNAiコンストラクト及び/又は本発明のRNAiコンストラクトを含む組成物の使用が提供される。本方法及び使用は、細胞を本発明のRNAiコンストラクト、例えばdsRNAと接触させ、GPAM遺伝子のmRNA転写物の分解を達成するのに十分な時間にわたって細胞を維持し、それにより細胞内のGPAM遺伝子の発現を阻害するか又はGPAMタンパク質産生を阻害することを含む。遺伝子発現の低下は、mRNA又はタンパク質レベルを決定するための当技術分野で公知の又は本明細書に記載される任意の方法によって評価することができる。
【0151】
本発明の方法及び使用において、細胞は、インビトロで接触されてもインビボで接触されてもよい、すなわち、細胞は、対象の外側(例えば細胞培養中)にあっても又は対象内にあってもよい。本発明の方法を使用する処置に適した細胞は、GPAM遺伝子を発現するあらゆる細胞、例えば、NAFLDを患っている対象由来の細胞、又はGPAM遺伝子若しくはGPAM遺伝子の一部を含む発現ベクターを含む細胞であり得る。本開示の方法に用いるのに好適な細胞としては、例えば哺乳動物細胞、例えば霊長類細胞(ヒト細胞又は非ヒト霊長類細胞、例えばサル細胞若しくはチンパンジー細胞など)、非霊長類細胞(ウシ細胞、ブタ細胞、ラクダ細胞、ラマ細胞、ウマ細胞、ヤギ細胞、ウサギ細胞、ヒツジ細胞、ハムスター、モルモット細胞、ネコ細胞、イヌ細胞、ラット細胞、マウス細胞、ライオン細胞、トラ細胞、クマ細胞又はバッファロー細胞など)、鳥類細胞(例えば、アヒル細胞又はガチョウ細胞)又はクジラ細胞が挙げられる。一実施形態では、細胞は、ヒト細胞である。
【0152】
GPAM遺伝子発現は、細胞内で、少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は約100%阻害され得る。
【0153】
GPAMタンパク質の産生は、細胞内で少なくとも約5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は約100%阻害され得る。
【0154】
本発明のインビボでの方法及び使用は、RNAiコンストラクトを含有する組成物を対象に投与することを含んでもよく、RNAiコンストラクトは、処置されることとなる対象のGPAM遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部と相補的なヌクレオチド配列を含む。治療対象の生物がヒトである場合、組成物は、当技術分野で知られる任意の手段によって投与してもよく、このような手段としては、皮下、静脈内、経口、腹腔内又は頭蓋内(例えば、脳室内、実質内及び髄腔内)、筋肉内、経皮、気道(噴霧剤)、経鼻、直腸を含む非経口経路並びに局所(頬側及び舌下を含む)投与が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、組成物は、皮下又は静脈内の注入又は注射によって投与される。一実施形態では、組成物は、皮下注射によって投与される。
【0155】
いくつかの実施形態では、投与は、デポ注射による。デポ注射は、長期間にわたってRNAiコンストラクトを一貫して放出し得る。ゆえに、デポ注射は、所望の効果、例えば、所望のGPAMの阻害、又は治療効果若しくは予防効果を得るのに必要な投与頻度を減少させ得る。デポ注射は、より一貫した血清濃度も提供し得る。デポ注射としては、皮下注射又は筋肉内注射が挙げられ得る。いくつかの実施形態では、デポ注射は、皮下注射である。
【0156】
いくつかの実施形態では、投与は、ポンプによる。ポンプは、外部ポンプ又は外科的に埋め込まれるポンプであり得る。特定の実施形態では、ポンプは、皮下に埋め込まれる浸透圧ポンプである。他の実施形態では、ポンプは、注入ポンプである。注入ポンプは、静脈内、皮下、動脈又は硬膜外注入に用いられ得る。好ましい実施形態では、注入ポンプは、皮下注入ポンプである。他の実施形態では、ポンプは、RNAiを対象に送達する外科的に植え込まれたポンプである。
【0157】
投与様式は、局所性又は全身性の処置が所望されるかに基づいて、そして処置されることとなる領域に基づいて選択されてよい。投与経路及び投与部位は、標的化を高めるように選択され得る。
【0158】
方法及び使用は、哺乳動物の細胞内でGPAM遺伝子を標的化するRNAiコンストラクト、例えばsiRNAを含む組成物を、哺乳動物、例えばヒトに投与することと、哺乳動物を、GPAM遺伝子のmRNA転写物の分解を得るのに十分な時間維持することによって、哺乳動物内でのGPAM遺伝子の発現を阻害することとを含む。遺伝子発現及び/又はタンパク質発現の低下は、当技術分野で公知の又は本明細書に記載される任意の方法によって、RNAiコンストラクト投与対象から得られたサンプルで評価することができる。一実施形態において、組織サンプルは、GPAM遺伝子及び/又はタンパク質発現の低下を監視するための組織材料として機能する。別の実施形態において、血液サンプルは、GPAM遺伝子及び/又はタンパク質発現の低下を監視するための組織材料として機能する。
【0159】
いくつかの実施形態では、RNAiコンストラクトを投与した後のインビボにおける標的mRNA(例えばGPAM mRNA)のRISC媒介性切断の検証は、5’-RACE又は当技術分野で知られるプロトコルの改変(Lasham A et al.,(2010)Nucleic Acid Res.,38(3)p-el9;及びZimmermann et al.(2006)Nature 441:111-4)を実行することによって行われる。
【0160】
本明細書に開示される全てのリボ核酸配列は、配列中のウラシル塩基をチミン塩基で置換することにより、デオキシリボ核酸配列に変換することができることが理解される。同様に、本明細書に開示される全てのデオキシリボ核酸配列は、配列中のチミン塩基をウラシル塩基と置換することにより、リボ核酸配列に変換することができる。本明細書に開示される全ての配列のデオキシリボ核酸配列、リボ核酸配列並びにデオキシリボヌクレオチド及びリボヌクレオチドの混合物を含有する配列が本発明に含まれる。
【0161】
加えて、本明細書に開示されるあらゆる核酸配列は、化学修飾の任意の組合せによって修飾され得る。当技術分野の当業者は、特定の場合、修飾ポリヌクレオチドを記載するための「RNA」又は「DNA」のこのような指定が任意であることを容易に理解するであろう。例えば、リボース糖に2’-OH置換基及びチミン塩基を有するヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、修飾糖を有するDNA分子(DNAの天然の2’-Hに対して2’-OH)又は修飾塩基(RNAの天然のウラシルに対してチミン(メチル化ウラシル))を有するRNA分子と記載され得る。
【0162】
従って、配列表に記載のものを含むがこれらに限定されない本明細書に提供される核酸配列は、修飾核酸塩基を有するそのような核酸を含むが、これらに限定されない天然若しくは修飾RNA及び/又はDNAの任意の組合せを含有する核酸を包含するように意図される。更なる例として、限定するものではないが、配列「ATCGATCG」を有するポリヌクレオチドは、修飾又は非修飾にかかわらないRNA塩基、例えば配列「AUCGAUCG」を有するもの、並びに「AUCGATCG」などのいくつかのDNA塩基及びRNA塩基を有するもの、並びに「ATmeCGAUCG」などの他の修飾塩基を有するポリヌクレオチドを含むそのような化合物を含むが、これらに限定されないそのような配列を有する任意のポリヌクレオチドを包含し、配列中、meCは、5位にメチル基を含むシトシン塩基を示す。
【0163】
実行された実験及び達成された結果を含む以下の実施例は、例示目的のためにのみ提供されるものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0164】
本明細書に記載される全ての動物実験は、Amgenの動物実験委員会(IACUC)により承認され、Guide for the Care and Use of Laboratory Animals,8th Edition(National Research Council(U.S.))、Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsの更新のための委員会、Institute for Laboratory Animal Research(U.S.)及びNational Academies Press(U.S.)(2011)Guide for the care and use of laboratory animals.8th Ed.,National Academies Press,Washington,D.C.に従って管理された。マウスは、空調された空間において22±2℃で12時間明期;12時間暗期のサイクル(0600~1800時間)で単独飼育した。動物には、別段の指示がない限り、通常の固形飼料食餌(Envigo、2920X、又は別途明記された食餌)及び自動給水システムによる水(逆浸透精製)を自由に与えた。終了時に、深麻酔下で心臓穿刺によって血液を回収し、その後Association for Assessment and Accreditation of Laboratory Animal Care(AAALAC)ガイドラインに従って、二次的な物理的方法によって安楽死させた。
【0165】
実施例1:修飾GPAM siRNA分子の選択、設計、及び合成
グリセロール-3-リン酸アシルトランスフェラーゼ、ミトコンドリア(GPAM)を標的とする治療用siRNA分子の最適な配列の同定及び選択を、ヒトGPAM転写物(GenBankアクセッション番号XM_005269998.1)のバイオインフォマティクス解析を使用して同定した。表1は、治療特性を有すると同定された、センス鎖の3’末端に付加された逆位脱塩基ヌクレオチドを有するGPAM mRNA標的配列を列挙する。
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
GPAM siRNA配列の効力及びインビボ安定性を向上させるために、化学修飾をGPAM siRNA分子中に組み込んだ。具体的には、リボース糖の2’-O-メチル及び2’-フルオロ修飾を、GPAM siRNA内の特定の位置に組み込んだ。また、アンチセンス配列及び/又はセンス配列の末端にホスホロチオエートヌクレオチド間結合を組み込んだ。
【0184】
生成したアンチセンス及びセンスsiRNA配列を表2に示す。表2及び本出願の他の部分のヌクレオチド配列は、以下の表記法に従って列挙されている。A、U、G、及びC=対応するリボヌクレオチド;dT=デオキシチミジン;dA=デオキシアデノシン;dC=デオキシシチジン;dG=デオキシグアノシン;invDT=反転デオキシチミジン;invDA=反転デオキシアデノシン;invDC=反転デオキシシチジン;invDG=反転デオキシグアノシン;a、u、g、及びc=対応する2’-O-メチルリボヌクレオチド;Af、Uf、Gf、及びCf=対応する2’-デオキシ-2’-フルオロ(「2’-フルオロ」)リボヌクレオチド;Ab=脱塩基;invAb=反転脱塩基;MeO-I=2’メトキシイノシン;GNA=グリコール核酸;sGNA=3’ホスホロチオエートを有するグリコール核酸;LNA=ロックド核酸。配列中の「s」の挿入は、2つの隣接するヌクレオチドがホスホロチオジエステル基(例えば、ホスホロチオエートヌクレオチド間結合)によって連結されることを示す。特に示されない限り、他の全てのヌクレオチドは、3’-5’ホスホジエステル基によって連結されている。表2中のsiRNA化合物の各々は、双方の鎖の3’末端に2ヌクレオチドオーバーハング、又は一方若しくは双方の末端に平滑末端を有する19~21塩基対の二重鎖領域を含む。各[ホスフェート]は、以下のGalNAc構造に結合しており(sGalNAc3):
【化1】
式中、X=O又はSである。
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
【0202】
実施例2:RNA FISHアッセイにおける選択したGPAM siRNA分子の有効性
実施例1からの完全に化学修飾されたsiRNAのパネルを調製して、mRNAノックダウンの効力及び選択性をインビトロで試験した。各siRNA二重鎖は、2つの鎖であるセンス鎖又は「パッセンジャー」鎖及びアンチセンス鎖又は「ガイド」鎖からなった。
【0203】
RNA FISH(蛍光インサイチュハイブリダイゼーション)アッセイを実行して、GPAM mRNAノックダウンを試験siRNAによって測定した。HepG2細胞(ATCC HB-8065)を、10%ウシ胎児血清(FBS、シグマ)及び1%ペニシリン-ストレプトマイシン(P-S、コーニング)を補充したイーグル最小必須培地(EMEM)(ATCC(登録商標)30-2003(商標))中で培養した。リポフェクタミンRNAiMAXトランスフェクション試薬(Thermo Fisher Scientific)を用いて、逆トランスフェクションによりsiRNAを細胞にトランスフェクトした。Bravo自動液体処理プラットフォーム(Agilent)によって、1μLの試験siRNA(500nMの最終濃度で開始する1:3希釈で投与された10データポイント中)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)ビヒクル及び4μLのサプリメントを含まないプレーンEMEMをPDL被覆CellCarrier-384 Ultraアッセイプレート(PerkinElmer)に加えた。続いて、補充なしのプレーンEMEMに前希釈した5μLのLipofectamine RNAiMAX(Thermo Fisher Scientific)(5μLのEMEM中0.06μLのRNAiMAX)を、Multidrop Combi試薬分注器(Thermo Fisher Scientific)によってアッセイプレート中に分注した。室温(RT)でsiRNA/RNAiMAX混合物を20分インキュベートした後、10%FBS及び1%P-Sを補充したEMEM中の30μLのHepG2細胞(1ウェルあたり2000個の細胞)を、Multidrop Combi試薬分注器を使用してトランスフェクション複合体に添加した。アッセイプレートを、インキュベーターに入れる前にRTで20分間インキュベートした。細胞を、37℃、5%CO2にて72時間インキュベートした。
【0204】
RNA FISHアッセイを、自社内で組み立てた自動FISHアッセイプラットフォーム上で、製造者のアッセイ試薬及びプロトコル(Thermo Fisher ScientificからのQuantiGene(登録商標)ViewRNA HC Screening Assay)を用いて、siRNAトランスフェクションから72時間後に実施した。簡潔に言えば、細胞を4%ホルムアルデヒド(Thermo Fisher Scientific)中でRTにて15分間固定して、界面活性剤によりRTにて3分間透過処理してから、プロテアーゼ溶液によりRTで10分間処理した。標的特異的プローブ(Thermo Fisher Scientific、VA6-3170392-VC(GPAM)及びVA1-10148-VC(PPIB)又はビヒクル(陰性対照として標的プローブを含まない標的プローブ希釈剤)を3時間インキュベートし、一方でプリアンプリファイアー、アンプリファイアー及び標識プローブを各1時間インキュベートした。全てのハイブリダイゼーション工程を、Cytomat 2 C-LIN自動インキュベーター(Thermo Fisher Scientific)内で40℃で実施した。
【0205】
ハイブリダイゼーション反応後、細胞をHoechst及びCellMask Blue(Thermo Fisher Scientific)で30分間染色してから、Opera Phenixハイコンテントスクリーニングシステム(PerkinElmer)で画像化した。画像を、Columbus image data storage and analysis system(PerkinElmer)を用いて分析して、1細胞あたりの平均スポット数を得た。高(標的プローブを含むPBS)及び低(標的プローブを含まないPBS)対照ウェルを用いて、1細胞あたりの平均スポット数を正規化した。高対照及び低対照は、それぞれ100及び0の正規化された値を有する。試験siRNA濃度に対する正規化された値を、Genedata Screenerデータ解析ソフトウェア(Genedata,Basel,Switzerland)を使用して4パラメータシグモイダルモデルに当てはめて、IC50値及び最大活性を得た。
【0206】
アッセイの結果を表3に示す。GPAMノックダウンは、対照サンプルと比較したノックダウンのパーセンテージを提供する。負の値は、GPAMレベルの低減を示す。
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
【0212】
【0213】
【0214】
【0215】
実施例3:ヒトPNPLA3配列を含むAAVベースのマウスモデルにおける選択されたPNPLA3 siRNA分子の有効性スクリーニング
リン酸緩衝生理食塩水(Thermo Fisher Scientific,14190-136)に希釈したアデノ随伴アデノウイルス(AAV;血清型AAVDJ8;エンドトキシン非含有、Amgenによって内部調製)を、1匹当たり1×1012のウイルス粒子で、C57BL/6NCrl雄又は雌マウス(Charles River Laboratories Inc.)の尾静脈に投与して、肝臓におけるヒトGPAM配列の発現を駆動した。インビボスクリーニングのために、GPAM_XM_005269998.1転写物から5つのAAVコンストラクト;1つは、GPAMI43Vの全長コード配列を含むもの、並びに5’非翻訳領域、コード領域及び3’非翻訳領域のストレッチを含む4つの増強された緑色蛍光タンパク質(eGFP)レポーターコンストラクト(ヌクレオチド(nt)1~1700、nt 1600~3300、nt 3200~4900及びnt 4800~6527(AAV-A、AAV-B、AAV-C、及びAAV-D)を設計した。eGFP含有コンストラクトはまた、AAV及び研究にわたるsiRNA媒介ノックダウン有効性を比較するためのベンチマークsiRNA標的配列を含有した。
【0216】
表4に示すGalNAc結合siRNAをGPAMI43V、AAV-A、AAV-B、AAV-C、又はAAV-Dに対して試験した。AAV注射の2週間後、マウス(一般に10~12週齢及びn=3~4匹/群)を、リン酸緩衝生理食塩水(Thermo Fisher Scientific,14190-136)で希釈した動物1キログラム当たり0.5、1.0、又は3.0ミリグラムで、皮下注射によって単回用量のsiRNAで処置した。siRNA注射の28日後、動物を安楽死させ、動物から肝臓を採取し、液体窒素中で急速凍結した。製造業者の指示に従って、QIACube HT装置(Qiagen,9001793)及びRNeasy 96 QIACube HTキット(Qiagen,74171)を使用して、精製RNAについて肝臓の一部を処理した。試料は、QIAxpertシステム(Qiagen、9002340)を使用して分析された。RNAは、RQ1 RNase-フリーDNase(Promega、M6101)で処理され、TAQMAN(商標)RNA-to-CT(商標)1-ステップキット(Applied Biosystems、4392653)を使用してリアルタイムqPCRのために調製された。リアルタイムqPCRは、QuantStudioリアルタイムPCR装置上で実施された。結果は、ヒトGPAM(Invitrogen、Hs00326039)、GFP2(IDTカスタムアッセイ:フォワードプライマー:TCATCTGCACCACTGGAAAG(センス、配列番号2801)、リバースプライマー:CTGCTTCATATGGTCTGGGTATC(アンチセンス、配列番号2802)、プローブ:5’-6FAM CCAACACTGGTCACTACCCTCACC TAMRA-3’(センス;配列番号2803)及び/又はウシ成長ホルモンのポリアデニル化(BghpA、これは各AAVコンストラクトに含まれる。IDTカスタムアッセイ:フォワード:5’-GCCAGCCATCTGTTGT-3’(配列番号2804)、リバース:5’-GGAGTGGCACCTTCCA-3’(配列番号2805)、プローブ:5’-6FAM-TCCCCCGTGCCTTCCTTGACC TAMRA-3’(配列番号2806)の遺伝子発現に基づいており、マウスTATA結合タンパク質(Tbp)(IDT,Hex Mm.PT.39a.22214839)に対して正規化され、マウスTbpに対して正規化されたヒトGPAM、GFP、及び/又はBghpA mRNA発現の相対的なノックダウンパーセントとして、ビヒクル処置対照動物と比較して示される。陰性結果はノックダウンを示す。(nd=未決定)。
【0217】
【0218】
【0219】
【0220】
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
本明細書において言及される全ての刊行物、特許及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許又は特許出願が具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示された場合と同程度に参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものと解釈されるべきではない。参照により組み込まれる参考文献において提供される定義又は用語のいずれかが、本明細書で提供される用語及び考察と異なる限りにおいて、本用語及び本定義が優先される。
【0226】
前述の本明細書は、当業者が本発明を実施するのに十分なものであると考えられる。前述の説明及び実施例は、本発明のある特定の好ましい実施形態を詳細に説明し、本発明者らが企図する最良の形態を記載するものである。しかしながら、前述の内容がいかに詳細に記載されようとも、本発明を多くの方法で実施してもよく、添付の特許請求の範囲及びその均等物に従って本発明が解釈されるべきであることが理解されるであろう。
【国際調査報告】