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特表2024-539098ガスバリア層、ガスバリア層の作製用のナノコンポジット塗料、及びその塗料の製造方法
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  • 特表-ガスバリア層、ガスバリア層の作製用のナノコンポジット塗料、及びその塗料の製造方法 図1
  • 特表-ガスバリア層、ガスバリア層の作製用のナノコンポジット塗料、及びその塗料の製造方法 図2
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  • 特表-ガスバリア層、ガスバリア層の作製用のナノコンポジット塗料、及びその塗料の製造方法 図4B)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ガスバリア層、ガスバリア層の作製用のナノコンポジット塗料、及びその塗料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241018BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20241018BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20241018BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
B05D5/00 F
B05D7/24 302A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523437
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-04-18
(86)【国際出願番号】 EP2022078653
(87)【国際公開番号】W WO2023072628
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021127635.7
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591037214
【氏名又は名称】フラウンホッファー-ゲゼルシャフト ツァ フェルダールング デァ アンゲヴァンテン フォアシュンク エー.ファオ
(74)【代理人】
【識別番号】100124626
【弁理士】
【氏名又は名称】榎並 智和
(72)【発明者】
【氏名】アイズナー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】シースル シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】キュチュクピナル ニアルコス エスラ
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC02
4D075AC53
4D075DA04
4D075DB31
4D075EA10
4D075EA12
4D075EA31
4D075EB01
4J038CD081
4J038CE031
4J038CF031
4J038DG191
4J038EA001
4J038HA456
4J038HA556
4J038KA20
4J038NA08
4J038PC02
4J038PC03
4J038PC06
4J038PC09
(57)【要約】
本発明は、ガスバリア層、ガスバリア層の作製に適したナノコンポジット塗料、及びその製造方法に関する。ガスバリア層は、小板状ナノ粒子が埋封されたポリマー材料からなり、ここで、ナノ粒子はケイ酸塩、特にフィロケイ酸塩である。ナノ粒子は、二酸化ジルコニウム容器及び50mm未満のボール直径を有する二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミルにおける400rpmの回転速度での30分間超にわたるナノ粒子としてのモンモリロナイトの剥離に際して得られるように均一なサイズ分布をポリマー材料中で有する。提案されたガスバリア層は高機能性であり、費用効率よく作製することができ、柔軟なシート及び動的な部材上で長寿命のバリア特性を保証し、適用及び乾燥が容易である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
小板状ナノ粒子が埋封されたポリマー材料から構成され、前記ナノ粒子がケイ酸塩、特にフィロケイ酸塩であるガスバリア層であって、前記ナノ粒子は、二酸化ジルコニウム容器及び50mm未満のボール直径を有する二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミルにおける400rpmの回転速度での30分間超にわたるナノ粒子としてのモンモリロナイトの剥離に際して得られるのと少なくとも同じくらい均一なサイズ分布を前記ポリマー材料中で有することを特徴とする、ガスバリア層。
【請求項2】
前記ナノ粒子は、モンモリロナイトであることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリア層。
【請求項3】
前記ガスバリア層は、0.3質量%から10質量%の間の含水量を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のガスバリア層。
【請求項4】
前記ガスバリア層は、250cm(STP)・1μm/(m・d・bar)未満の1μmの層厚当たりのヘリウムについての透過速度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のガスバリア層。
【請求項5】
前記ガスバリア層は、0.05cm(STP)・1μm/(m・d・bar)~0.2cm(STP)・1μm/(m・d・bar)の1μmの層厚当たりの酸素についての透過速度を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリア層。
【請求項6】
前記ポリマー材料中の前記ナノ粒子は、走査型電子顕微鏡によるガスバリア層の断面の切片画像において、0.01μm超の切断面を有するケイ酸塩粒子の切断面が、前記ガスバリア層の切断面全体の10%未満、有利には5%未満、特に有利には3%未満又は1%未満の面積割合を有することによって特徴付けられる均一なサイズ分布を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のガスバリア層。
【請求項7】
前記ガスバリア層は、0.2μmから1000μmの間、有益には1μmから20μmの間、特に有利には1μmから3μmの間の厚さを有することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のガスバリア層。
【請求項8】
前記ナノ粒子は、前記ガスバリア層の総固形分割合の10質量%~80質量%、有利には25質量%~60質量%、特に有利には50質量%の割合を占めることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のガスバリア層。
【請求項9】
ポリマー結合剤と前記結合剤中に分散された小板状ナノ粒子とからの混合物によって形成された、請求項1~8のいずれか一項に記載のガスバリア層の作製用のナノコンポジット塗料であって、前記ナノ粒子は、二酸化ジルコニウム容器及び50mm未満のボール直径を有する二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミルにおける400rpmの回転速度での30分間超にわたるナノ粒子としてのモンモリロナイトの剥離に際して得られるのと少なくとも同じくらい均一なサイズ分布を前記結合剤中で有するケイ酸塩、特にフィロケイ酸塩である、ナノコンポジット塗料。
【請求項10】
80を超える、好ましくは85を超える、特に有益には90を超える、CIE-L測色に従って決定される明度Lを有する、請求項9に記載のナノコンポジット塗料。
【請求項11】
前記結合剤は、1質量%から40質量%の間のエチレンの割合を有するポリビニルアルコール、アクリレート、ポリウレタン溶液、又はポリ塩化ビニリデン溶液であることを特徴とする、請求項9又は10に記載のナノコンポジット塗料。
【請求項12】
前記ナノ粒子は、モンモリロナイトであることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載のナノコンポジット塗料。
【請求項13】
前記結合剤中の前記ナノ粒子は、レーザー回折によって決定された粒子サイズ分布において、少なくとも1つの寸法において1μmを超える大きさを有する粒子の割合が10%未満であることによって特徴付けられる均一なサイズ分布を有することを特徴とする、請求項9~12のいずれか一項に記載のナノコンポジット塗料。
【請求項14】
前記ナノ粒子は、10nm~30nmの範囲内の厚さ、及び150nm~500nmの範囲内の面長さを有することを特徴とする、請求項9~13のいずれか一項に記載のナノコンポジット塗料。
【請求項15】
前記ナノ粒子は、前記塗料の総固形分割合の10質量%~80質量%、有利には25質量%~60質量%、特に有利には50質量%の割合を占めることを特徴とする、請求項9~14のいずれか一項に記載のナノコンポジット塗料。
【請求項16】
前記塗料は、0.5質量%~20質量%、有利には3質量%~8質量%、特に有利には6質量%の総固形分含量を有することを特徴とする、請求項9~15のいずれか一項に記載のナノコンポジット塗料。
【請求項17】
水と小板状ナノ粒子とからの懸濁液を製造し、ポリマー結合剤と混合する、請求項9~16のいずれか一項に記載のナノコンポジット塗料の製造方法であって、前記小板状ナノ粒子を、ナノ粒子が、二酸化ジルコニウム容器及び50mm未満のボール直径を有する二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミルにおける400rpmの回転速度での30分間超にわたるナノ粒子としてのモンモリロナイトの剥離に際して得られるのと少なくとも同じくらい均一なサイズ分布を有するように分散ミル、回転ミル、又はボールミルを用いて前記懸濁液中で細砕されるケイ酸塩、特にフィロケイ酸塩から形成する、方法。
【請求項18】
最初に前記結合剤の水溶液を製造し、引き続き前記懸濁液と混合することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記結合剤を前記懸濁液中に直接導入し、そこで溶解させることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記結合剤を、前記分散ミル、回転ミル、又はボールミルにおいて前記懸濁液と混合することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
二酸化ジルコニウム容器及び二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミルを用いて前記細砕を行うことを特徴とする、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ボールが50mm未満、有利には20mm未満、より良好には10mm未満、特に有利には3mmの直径を有するボールミルを用いて前記細砕を行うことを特徴とする、請求項17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ボールミルを、250rpmから500rpmの間、好ましくは400rpmの回転速度で30分間を超える、有利には60分間を超える期間にわたって、特に有利には120分間の期間にわたって運転することを特徴とする、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
結合剤として、1質量%から40質量%の間のエチレンの割合を有するポリビニルアルコール、アクリレート、ポリウレタン溶液、又はポリ塩化ビニリデン溶液を使用することを特徴とする、請求項17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
小板状ナノ粒子としてモンモリロナイトを使用することを特徴とする、請求項17~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~8のいずれか一項に記載のガスバリア層の製造用のナノコンポジット塗料を基材上に塗布し、乾燥させる、請求項17~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記塗料を、ドクターブレード、スロットノズル、印刷法、又は吹き付け被覆によって塗布することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記乾燥を、気化速度が毎分5g/mから100g/mの間、有利には毎分10g/mから50g/mの間となるように実施することを特徴とする、請求項26又は27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小板状ナノ粒子が埋封されたポリマー材料から構成されるガスバリア層に関する。本発明はまた、ガスバリア層の作製用のナノコンポジット塗料、及びそのナノコンポジット塗料の製造方法に関する。
【0002】
本特許出願において、ナノ粒子という用語は、少なくとも1つの次元(寸法)において100nm未満の大きさを有する粒子と解釈される。最小の大きさを有する寸法を厚さと呼び、他の2つの寸法を長さ及び幅と呼ぶ。本特許出願において、塗料という用語は、被覆準備ができた液状ナノコンポジットであることを意味する。本特許出願において、(ガス)バリア層は、或る特定の乾燥層厚を有し、かつポリマー及びナノ粒子という成分を含む硬化したナノコンポジット塗料として定義される。
【0003】
ナノコンポジット塗料は、例えばシート若しくは紙等の柔軟な表面のガスバリア、又は例えば(動的)機械的力作用によって弾性変形若しくは塑性変形する頑丈な三次元の揺動表面若しくは振動表面上のガスバリアを作り又は強化するのに用いられる。これには、例えば、部分的にガス透過性の良い材料からなる、様々な材料から構成される圧力変化に曝される容器、又は容器壁、配管、バルブ、若しくはシーリング等の揺動し、振動し、交互に締緩される部材が該当する。これらの透過性材料は、プラスチック、金属、セラミック、天然物質、又は複合材であり得て、これらには、水蒸気、水素、ヘリウム、酸素、又はその他のガスに対するバリア作用をもたらすのにバリア層が設けられる。ナノコンポジット塗料についての同様に可能な使用分野は、家具構造物からのホルムアルデヒド又はその他の溶剤のガス放出を減らすための材料の被覆である。
【背景技術】
【0004】
ガスバリアは多くの技術的用途において必要とされる。ガスバリアは、封入されたガスをほぼ損失なく貯蔵するか又は封入された詰め物(例えば、食品)を侵入ガスから保護するのに、ガスが材料(プラスチック、金属、天然物質)を通過して拡散しないか又はごく僅かな範囲でしか拡散しないことが保証されるべきである場合に使用される。使用される材料の固有のガスバリアがバリアの要件を満たすのに十分でない場合、通常は蒸着又は塗装による仕上げ工程を通じてバリアが作製され、又は既存のバリアが改善され得る。この場合に、「バリア」という表現は、ガスの透過に対する材料の抵抗を指す。この場合、透過速度(透過度)は、或る特定の圧力差で単位時間当たりに或る特定の面積を透過するガスの体積として定義される。このガス透過体積が少ないほど、バリアはより良好である。
【0005】
基材材料は大抵その機械的特性、触覚的特性、及び/又は光学的特性に基づいて選択され、多くの場合、全くバリアをもたらさないか又は非常に不十分なバリアしかもたらさないため(例えば、紙、天然物質シート、プラスチック等)、バリアを施す仕上げ工程が必要とされる。従来技術によれば、ガスバリアを施す幾つかの仕上げ工程が知られている。例えば蒸着の場合、金属酸化物又はケイ素酸化物から構成される層が物理気相堆積を介して施与(塗布)される。これらの方法は主に、酸素及び水蒸気に対する高度なバリアを作製するのに使用される。けれども、蒸着に付随する不利点も幾らか存在する。ここで、気相堆積用の設備は非常に高価であり、気相堆積のプロセスに必要とされるエネルギーは比較的高い。とりわけ、真空の印加には多くの時間及びエネルギーが必要となる。さらに、水分を多く含む多くの系では、例えば巻き取り紙(Papierbahnen)の場合、安定した真空を維持することは不可能であるか又は非常に高いエネルギー消費を伴ってのみ可能であるにすぎない。さらに、例えばアルミニウムでの蒸着が不透明な表面をもたらすことは不利であり、これは多くの場合に望ましくない。さらに、品質的に価値の高い気相堆積は非常に平坦な表面でしか実現することができないため、多くの基材材料では、平坦化を行わなければならず、コストが増す。
【0006】
バリア塗料で塗装することは、バリアを改善する2つ目の方策である。従来技術によれば、溶剤ベースのバリア塗料(例えば、PVDC系)が存在し、これは健康上のリスクの要因となり得るため、処理中に吸い出しを行うことが必要となる。これらの溶剤ベースの系は、(食品)産業ではますます不所望となっている。
【0007】
従来技術により使用可能なナノ粒子を含まない他の単相バリア塗料は、十分な被覆厚さの場合にしか対応するバリアをもたらさないことから、材料及び乾燥の費用がつり上げられる。
【0008】
特許文献1の国際特許出願は、基材を異なる組成の2つの重なり合った層で被覆してガスバリアを製造することを記載している。第1の組成物はアルコールベースの結合剤及び粒子状無機材料を含む。第2の組成物はラテックス結合剤及びフィロケイ酸塩を含む。アルコールベースの結合剤についての例としては、とりわけポリビニルアルコールが挙げられ、粒子状無機材料としては、とりわけ小板状フィロケイ酸塩が挙げられる。フィロケイ酸塩は1つ以上の細砕工程、特に粉砕によって事前に細砕される。細砕には、プラスチック(例えば、ナイロン)から構成される微粒若しくは顆粒、砂、又はセラミック製の研削助剤若しくは粉砕助剤を利用することができる。
【0009】
特許文献2は、基材上の透明な自己組織化された高秩序のポリマー-ナノコンポジット被覆を開示している。ポリマー-ナノコンポジット被覆は、主鎖上に極性又はイオン性であり得る側鎖を有する水分散性ポリマーを含む。ポリマー-ナノコンポジット被覆は、表面に小さなイオン又は分子を含む大きな縦横比を有する小板状のナノ粒子を更に含む。水分散性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール(PVOH)が使用され、小板状ナノ粒子としては、例えばモンモリロナイト(MMT)等のスメクタイトクレーが使用される。小板状ナノ粒子は、被覆組成物中に0.1重量%~0.5重量%、好ましくは0.15重量%~0.45重量%の濃度で含まれている。それによって形成された塗料は、インクジェットプリンター、吹き付け、又は浸漬によって施与される。この刊行物では、出発物質から小板状ナノ粒子を得ることに関して如何なる詳細な説明もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第2016/087578号
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/215896号
【発明の概要】
【0011】
本発明の課題は、柔軟なシート及び動的な部材上で長寿命のバリア特性を保証し、透明に構成することができ、かつ適用(塗布)及び乾燥が容易である、高機能性で費用効率の高いガスバリア層の作製を単層としても可能にするガスバリア層、ガスバリア層の作製に適したナノコンポジット塗料、及びそのナノコンポジット塗料の製造方法を提示することにある。ガスバリア層は、ヘリウム又は水素等のより小さなガス分子に対しても高いバリア作用を示すべきである。
【0012】
上記課題は、請求項1に記載のガスバリア層、請求項9に記載のナノコンポジット塗料、及び請求項17に記載の製造方法によって解決される。ガスバリア層、そのガスバリア層を作製するナノコンポジット塗料、及び製造方法の有利な実施の形態は、従属形式請求項の主題であるか、又は以下の詳細な説明だけでなく例示的実施形態にも見出すことができる。
【0013】
本発明によるガスバリア層は、小板状ナノ粒子が埋封されたポリマー材料からなる。ナノ粒子はケイ酸塩、特にフィロケイ酸塩であり、二酸化ジルコニウム容器及び50mm未満のボール直径を有する二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミル(Fritsch社のPULVERISETTE 6)における400rpmの回転速度での30分間超にわたるナノ粒子としてのモンモリロナイトの剥離に際して得られるのと少なくとも同じくらい均一なサイズ分布をポリマー材料中で有する。したがって、本発明によるガスバリア層中のナノ粒子の均一なサイズ分布は、ナノ粒子が上記条件下で剥離され、相応してポリマー材料中に分散されたモンモリロナイトである場合のガスバリア層中のサイズ分布の均一性と比較することによって検証され得る。本発明によるガスバリア層におけるサイズ分布は、少なくともこの均一性を有する。ナノ粒子のこの均一なサイズ分布では、ガスバリア層は、1μmの層厚当たり250cm(STP)・1μm/(m・d・bar)未満であるヘリウムについての透過速度を有する。酸素についての透過速度は、1μmの層厚当たり0.05cm(STP)・1μm/(m・d・bar)~0.2cm(STP)・1μm/(m・d・bar)である。
【0014】
ガスバリア層の作製用に提案されたナノコンポジット塗料は、ポリマー結合剤、好ましくは水溶性ポリマー結合剤と、この結合剤中に分散された小板状ナノ粒子とからの混合物によって形成される。ナノコンポジット塗料は、ナノ粒子が、二酸化ジルコニウム容器及び50mm未満のボール直径を有する二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミル(Fritsch社のPULVERISETTE 6)における400rpmの回転速度での30分間超にわたるナノ粒子としてのモンモリロナイトの剥離に際して得られるのと少なくとも同じくらい均一なサイズ分布を結合剤中で有するケイ酸塩、特にフィロケイ酸塩であることによって特徴付けられる。
【0015】
この均一なサイズ分布は、ナノコンポジット塗料中、またバリア層中、つまり硬化したナノコンポジット塗料中のナノ粒子から構成される弱凝集体の低い割合によって特徴付けられる。弱凝集体は、以下に説明される様々な方法を用いて塗料及びバリア層中で検出可能なより大きな粒子である。この場合、低い割合とは、以下で検出方法に関連付けられる比率と解釈される。図4は、ボールミルを用いて粒子の細砕を達成することができるような本発明による塗料中のナノ粒子の均一なサイズ分布を、ナノ粒子のこのような均一な分布を有しない塗料(比較塗料)と比較した場合の一例を示している。この図によれば、比較塗料ではより大きな粒子半径の場合に分布の更なる最大値が明らかに現れているのに対し、本発明による塗料は1つの最大値のみを有するはるかに均一な分布を有する。
【0016】
バリア層中の弱凝集体の割合は、走査型電子顕微鏡においてバリア層の断面の切片を検査することによって確認可能である。このために、当業者に既知の特別な試料調製法を使用することが望ましい。これには、好ましくは自立被膜としてのバリア層、又は可能であれば十分に薄い基材(1.5mm未満)上に被覆されたバリア層を切断し、断面研磨装置を用いてイオン化ガスジェットで切断面を研磨することが含まれる。研磨された断面を走査型電子顕微鏡において検査し、0.01μm超の断面積を有するより大きなケイ酸塩粒子に割り当てることができる面積を画像で決定する。弱凝集体又はより大きなケイ酸塩粒子のこれらの切断面の合計はバリア層の断面の総面積に対する比率で定められる。本発明によるバリア層の上記の均一なサイズ分布では、バリア層の断面の総面積に対するケイ酸塩粒子の0.01μm超の切断面の合計は10%未満であり、有利には5%未満、特に有利には3%未満又は1%未満である。提案されたガスバリア層を測定した場合の対応する切片画像における様々な切断面を、ナノ粒子のこのような均一な分布を有しないガスバリア層(比較層)と比較した場合の一例が図3から分かる。この場合、図3Aは、比較層における0.01μm超の切断面を有するケイ酸塩粒子の切断面を概略的に示し、図3Bは、本発明によるガスバリア層の例示的な実施の形態におけるこれらの切断面を示す。
【0017】
塗料中の弱凝集体の割合は、既知のレーザー回折技術を用いて決定され得る。ナノコンポジット塗料中のナノ粒子の上記の均一なサイズ分布では、レーザー回折によって決定された粒子サイズ分布において、少なくとも1つの次元(寸法)において1μm超の大きさを有する粒子の割合は10%未満である。
【0018】
この均一なサイズ分布は、提案されたガスバリア層の本質的な特徴であり、その作製に使用されるナノコンポジット塗料の本質的な特徴でもある。それというのも、その均一なサイズ分布は、提案された製造方法で達成されるような、弱凝集体として存在するケイ酸塩粒子の特別な細砕を必要とするからである。使用されるナノ粒子のこの均一な分布によって、使用される結合剤と組み合わせることで、塗布し乾燥させたナノコンポジット塗料の、例えば1μm~20μmの被覆厚さを有する薄い層であっても、ヘリウム等のより小さなガス分子に対しても良好なガスバリアが達成される。
【0019】
提案されたナノコンポジット塗料は、その中に分散されたナノ粒子の均一なサイズ分布に基づき、CIE-L測色に従って決定される80を超える、好ましくは85を超える、特に有益には90を超える明度Lを有する。この明度は、弱凝集体を含まないか、又は弱凝集体をごく僅かな割合でしか含まない均一なサイズ分布によって得られる。
【0020】
ポリマー結合剤としては、好ましくは、1質量%から40質量%の間のエチレン、好ましくは6質量%から10質量%の間のエチレンの割合を有するポリビニルアルコールが使用され、ここで、アクリレート、ポリウレタン溶液、又はポリ塩化ビニリデン溶液(PVDC)の使用も有利である。特に有利には、ナノ粒子としてモンモリロナイトが使用される。小板状ナノ粒子は、好ましくは、10nm~30nmの範囲内の厚さ、及び150nm~500nmの範囲内の面長さを有する。この場合、面長さとは、小板又は粒子の厚さ方向に対して垂直な最大の大きさと解釈される。厚さ方向は、最小の大きさの方向に相当する。
【0021】
ナノ粒子は、好ましくは、ガスバリア層及びナノコンポジット塗料の総固形分含量に対して10質量%~80質量%、より良好には25質量%~60質量%、特に有利には約50質量%の割合を有する。原則として、総固形分含量において5質量%から90質量%までの間のナノ粒子の割合が可能である。総固形分含量とは、ナノ粒子及び結合剤のポリマー又はポリマー材料からの合計と解釈される。塗料において、この総固形分含量(以下、塗料の固形分含量とも呼ばれる)は、0.5質量%から20質量%にまで及び得る。塗料中の3質量%~8質量%、特に有利には約6質量%の総固形分含量が有利である。固形分含量は塗料の粘度を決定し、粘度は、とりわけ塗布挙動にとって重要である。
【0022】
基材、例えばポリマーシート上に塗料を適用(塗布)するのに、通常の塗料塗布方法を使用することができる。この場合、被覆すべき表面上に塗料を一様に塗り、塗布後に乾燥させて水(又は溶剤)を蒸発又は気化させる。その際、塗料は次第に固まる。
【0023】
したがって、本発明によるガスバリア層は、小板状ケイ酸塩ナノ粒子の割合と、マトリックスとしてナノ粒子を取り囲む、例えばポリビニルアルコール(エチレンの割合を含む)等の、好ましくは水溶性のポリマー結合剤の割合又は他の結合剤とからなる。他の結合剤は、例えば、アクリレート分散液、PVDC溶液、ポリウレタン溶液等であり得る。
【0024】
この場合、乾燥は、気化速度が毎分5g/mから100g/mの間、有利には毎分10g/mから50g/mの間となるように実施される。特に有利には、塗布された塗料層を80℃の温度で毎分約30g/mの気化速度で乾燥させる。一般に、可能な乾燥温度は、大抵は基材によって決定される。ナノコンポジット塗料については、室温から140℃までの乾燥温度が可能である。
【0025】
乾燥は、好ましくは、乾燥させた塗料層、つまり本発明によるガスバリア層中の含水量が0.3質量%~10質量%、有利には0.5質量%から5質量%の間、特に有利には0.6質量%から1質量%の間になるまで行われる。含水量についての記述は、カールフィッシャー法による測定に対するものである。結合剤としてのエチレンの割合を含むポリビニルアルコール又はエチレンビニルアルコール(EVOH)の場合には、ケイ酸塩粒子とEVOHとの間に水素架橋結合の形態で相互作用が起こる。この場合、EVOH鎖の末端水酸化物基は、ケイ酸塩のケイ素四面体の端部酸素原子と相互作用する。この相互作用を、FTIR測定を介して検出することができ、ここで、炭素-酸素結合の伸縮モード(「streching mode」)は1092cm-1からより短波数側に移行し、ケイ素-酸素結合の伸縮モードは1026cm-1からより高波数側に移行する。
【0026】
乾燥によって、埋封されたナノ粒子を含む薄い固形層が生じ、この固形層は、粒子の塗布及び配置に応じて或る程度の柔軟性を示すため、柔軟なシート、振動する部材上だけでなく圧力変動を受ける設備又は容器の表面上にも、そのような機械的負荷がかかる部材用にも非常に良好なガスバリアが維持される。特に有利には、塗料層は、乾燥させた層中の粒子の或る程度の割合が平らに配向するように塗布され、ここで、粒子の質量の50%未満、より良好には25%未満、特に有利には10%未満が70°(角度α)を超える配向を示し、粒子の質量の60%未満、より良好には30%未満、特に有利には15%未満が60°(角度α)を超える配向を示し、特に有利には、粒子の質量の25%未満が45°(角度α)を超える配向を示す。基材3上の乾燥させた層2における粒子1の角度α及び配向を図1に概略的に示す。本発明により作製されるガスバリアの特に有利な実施の形態において、粒子の質量の95%超が基材の表面に対して-30°~+30°の角度で、又はより良好には-20°~+20°の角度で配向している。
【0027】
好ましくは、ガスバリア層、すなわち基材上に塗布し乾燥させたナノコンポジット塗料の層は、0.2μm~1000μm、有益には1μm~20μm、特に有利には1μm~3μmの厚さを有する。塗布後の視覚的外観は、層厚及び粗さに応じて透明から乳白色であり、使用されるナノ粒子に応じて、白っぽい色(例えば、モンモリロナイトの場合)から軽く褐色がかった色まで着色され得る。他の色調である可能性もある。その後に封止フィルムを貼り合わせると、部分的に密着透明性も現れる。
【0028】
本発明によるガスバリア層を用いると、食品包装用の高いガス透過性を有するシート上に、油脂を数週間後にのみ非常にゆっくりと酸化させ、食品に本来の特性(例えば、チップスのサクサク感)が非常に長期間にわたって保持されるような酸素又は水蒸気に対する良好なバリアを施すのに成功することが明らかになる。
【0029】
しかしながら、驚くべきことに、本発明によるガスバリア層を用いると、シートの場合に酸素の透過が大幅に遅くなるだけでなく、ナノ粒子の均一なサイズ分布によって、ガスバリアが、はるかにより小さなガス分子に対する非常に良好なバリア性も示し、ヘリウム又は水素等のガスの場合にも物質移動を250cm・μm/m・d・bar未満、有利には100cm・μm/m・d・bar未満、特に有利には50cm・μm/m・d・bar未満まで低下させることも明らかになる。これにより、簡単な塗装によってシート、容器、タンク、又は配管の内側及び/又は外側に非常に効果的な水素バリア又はヘリウムバリアを設けることに成功する。
【0030】
気相堆積用の設備に対して、本ガスバリアを作製する費用は非常に少ない。このガスバリアを簡単な塗装方法によって施与することができる。そのための設備は多くの企業が既に持ち合わせている。それというのも、この塗料層をあらゆる一般的な塗装技術(グラビア、スロットノズル、吹き付け、ブレード塗布、ディップコーティング等)で塗布することができるからである。
【0031】
提案されたナノコンポジット塗料の唯一の塗料層だけでもガスバリアを作製することができる。しかしながら、異なる機能を有する複数の層の組合せによって、例えば、伸縮性のある軟質のポリマーから構成される層と、提案されたナノコンポジット塗料から構成される層、つまり本発明によるガスバリア層との交番構造によってガスバリアを作製することもできる。柔軟な層は、湾曲、伸展、圧縮、又は振動の際に力を均一に分散する役割を果たす。
【0032】
ナノコンポジット塗料についての製造方法では、小板状ナノ粒子がポリマーマトリックス中に組み込まれる。このために、水と小板状ナノ粒子とからの懸濁液を製造し、好ましくは水溶性のポリマー結合剤と混合する。この方法は、小板状ナノ粒子を、ナノ粒子が、二酸化ジルコニウム容器及び50mm未満のボール直径を有する二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミル(Fritsch社のPULVERISETTE 6)における400rpmの回転速度での30分間超にわたるナノ粒子としてのモンモリロナイトの剥離に際して得られるのと少なくとも同じくらい均一なサイズ分布を有するように分散ミル、回転ミル、又はボールミルを用いて細砕されるケイ酸塩、特にフィロケイ酸塩から形成することによって特徴付けられる。
【0033】
ナノ粒子としてモンモリロナイトが使用される場合がガスバリア層にとって特に有利である。拡散する分子に対する小板状の障壁としてモンモリロナイトを使用するには、モンモリロナイトを最初にナノスケールまで引き離すか、又は剥離しなければならない。これは、機械的細砕と強力な機械的剪断とを組み合わせることによって行われる。この場合、水中で細砕がどの程度激しく起こるかに応じて、ガスバリアの有効性に非常に大きな差があることが明らかになる。提案された方法による高剪断をかける方法を使用する際に、特に分散ミル、ボールミル、又は回転ミルの使用によって、特別な利点がもたらされる。
【0034】
特に有利には、二酸化ジルコニウム容器及び二酸化ジルコニウムボールを用いて運転されるボールミルが使用される。これにより、特に良好なガスバリアの形成がもたらされる。この場合、ボールは、好ましくは50mm未満、有利には20mm未満、より良好には10mm未満、特に有利には3mmの直径を有する。
【0035】
ボールミルの運転に際して、このプロセスに特に有利な設定が250rpmから500rpmの間の回転速度、特に好ましくは400rpmの回転速度であること、及びこの過程を30分間超、有利には60分間超、特に有利には120分間以上実施することが明らかになる。しかしながら、上記の均一なサイズ分布が達成される限り、粉砕容器及びボールの材料、ボールサイズ、回転速度、並びに継続時間に関する他の設定も考えられる。
【0036】
驚くべきことに、細砕中の二酸化ジルコニウムボールとの非常に多くの回数の衝突にもかかわらず、モンモリロナイトの小板構造は破壊されず、維持されたままであることが明らかになる。その代わりに、ボールミルを用いた細砕は、もっぱら既存の強凝集体及び弱凝集のみを解体し、それにより粒子の特に均一なサイズ分布が得られることが明らかになる。このことは、水性分散液中の粒子(他のケイ酸塩の粒子も)の機械的剪断に使用される他のミルにも当てはまる。
【0037】
水中に分散させた後、ナノ粒子は10~500のアスペクト比を有し、20のアスペクト比が特に有利である。アスペクト比は、最長の寸法又は大きさ(厚さ方向に対して垂直な最長の大きさ)と最短の寸法又は大きさ(小板の厚さ)との比を表す。この場合に、20のアスペクト比は、例えば、25nmの厚さ及び500μmの面長さを有する小板又は小板状ナノ粒子によって実現され得る。厚さはナノ粒子がどれだけ十分に剥離され得るかによって決まり、1nm~2nm(個々のケイ酸塩小板に完全に剥離された場合)から100nmまでであり得る。この文脈における「剥離」という用語は、主に小板状ナノ粒子が互いに分離することを意味する。これらの粒子は、最初は積層物として存在し、ここで、層内には強力な化学的共有結合が存在する。層同士、つまり或る層と隣の層とはファンデルワールス力によって結びついている。これらのファンデルワールス力に打ち勝って、層を互いに分離し、個々の層又は小板を得なければならない。
【0038】
個々のケイ酸塩層の剥離、つまり分離がうまくいくほど、バリア作用は一層高くなる。さらに、粒子のアスペクト比は塗料の粘度を大きく左右する。同じ固形分割合でアスペクト比が高くなるほど、ナノ粒子分散液の粘度は一層高くなるため、分散液をポリマーと混合した後の粘度も一層高くなる。また、より高いアスペクト比は、乾燥させた層2中の小板状ナノ粒子1が示されている図2に概略的に示されるように、透過経路(蛇行)4の延長にもつながる。この場合、蛇行は、透過ガスに対して透過性のあるポリマーマトリックスを通過する透過経路4の延長を表す。
【0039】
ナノコンポジット塗料の製造方法及びその視覚的外観は、ガスバリアの特性に特に大きな影響を与える。塗料の色をバリア特性の目安として用いることができる。提案されたナノコンポジット塗料を用いて作製されたガスバリアは、塗料の色が表面に塗布される前に白っぽくなる場合が特に有利である。本発明により作製されたガスバリアは、塗布された塗料の色が80を超える、有利には85を超える、特に有利には90を超えるL値を有するスノーホワイト色である場合に特に高いことが明らかになる。
【0040】
ナノコンポジット塗料についての製造方法に際して、ナノ粒子分散液又は水とナノ粒子とからの対応する懸濁液をポリマー溶液と混合して、ポリマーマトリックスを導入する。ポリマーをナノ粒子分散液中に直接導入して溶解させる場合が有利である。特に有利な実施の形態において、結合剤をナノ粒子分散液に直接導入し、分散ミル、回転ミル、又はボールミルにおいて懸濁液と混合する。しかしながら、最初にポリマーを溶解させ、次にポリマー溶液をナノ粒子分散液と混合することが有利である場合もある。
【0041】
更に既に上記したように、塗料を0.5質量%~10質量%の固形分含量で製造することができるが、有益には、塗料は3質量%~8質量%、より良好には6質量%~8質量%の固形分含量で製造される。6質量%~8質量%の固形分含量の場合に、ドクターブレード、リバースグラビア、又はスロットノズルによる塗布が有利である。2質量%未満の固形分含量の場合には、粘度が低いため、吹き付け被覆による塗布が可能であり有利である。
【0042】
ナノコンポジット塗料をドクターブレードで基材上に塗布すると、特に良好なバリアが得られる。しかしながら、幾つかの場合には、スロットノズル、印刷法、又は吹き付け被覆を使用することもできる。乾燥させた塗料の層厚は0.2μm~1mmであり得る。1μmの乾燥させた塗料の層厚が特に有利である。
【0043】
ガスバリア層は非常に良好なガスバリア性を与え、酸素だけでなく水素及びヘリウムに対するバリア性も特に高くなる。これにより、本発明によるガスバリア層、又はその層を作製するのに提案された塗料は0.35nm未満のガス運動直径を有するガスに対して非常に汎用的に使用可能である。小さなガス(水素、ヘリウム、酸素)に対する高いガスバリア性が高圧の場合にも必要とされるところで、この層又は塗料を使用することができる。この場合、基材はシート又はチューブ等の柔軟な部材であり得るが、管等の剛性若しくは湾曲した部材、又は例えばタンク等の伸展する部材でもあり得る。この場合、本発明によるガスバリア層は、部材自体の材料がポリマー又は天然物質等の高いガスバリア性を有しない場合に特に利点を示す。
【0044】
基材材料としては、金属、ポリマー、セラミック、天然物質(例えば、皮革又は木材等)だけでなく、それらの複合材も可能である。
【0045】
本発明の有利な実施の形態において、シート上へのガスバリア層の塗布を、頑丈な部材(例えば、タンク)の封止と組み合わせる。このために、最初に柔軟で伸縮性のあるシートにガスバリア層を設け、次にシートを容器内にはめ込む。この場合、シートを容器の表面上に接着することも、又は表面と固着することもできる。また、シートを単に表面上に載せ、容器内に圧力を加えて容器の壁に押し付けることもできる。この措置によって、容器の外側でバリアの形成及び乾燥を行うことができ、容器の内側からの吹き付けを回避することができる。
【0046】
添付の図面には以下のことが示される:
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】提案されたナノコンポジット塗料を塗布して基材を被覆した後の小板状ナノ粒子の配向の概略図である。
図2】塗料内又は層内にあるナノ粒子を通過する透過経路の延長に基づくバリア作用の概略図である。
図3】提案されたガスバリア層を測定したときの様々な切断面を、ナノ粒子のこのような均一な分布を有しないガスバリア層と比較した場合の一例を示す図である。
図4】本発明による塗料中のナノ粒子の均一なサイズ分布を、ナノ粒子のこのような均一な分布を有しない塗料と比較した場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下にナノコンポジット塗料の製造及び使用を例として説明する。
【0049】
最初に、遊星型ボールミルにおいて、水中のモンモリロナイトの5%質量の分散液を製造した。酸化ジルコニウム容器において、そこに3mmの大きさの酸化ジルコニウムボールを水及びモンモリロナイト粉末とともに入れた。ボールミルにおいて、容器を400rpmで2時間撹拌した。白みがかった不透明な液体を得た。
【0050】
この液体を3質量%の固形分含量まで水で希釈し、更に3質量%のEVOHを顆粒として液体に加え、90℃で1時間溶解させた。
【0051】
それによって得られたナノコンポジット塗料をポリプロピレンシート(PP)上に塗布した。塗布方法としては、33μmの液体層厚を適用するワイヤーバーによるブレード法を利用した。引き続き、被覆したシートを循環空気炉内で80℃にて2分間乾燥させた。ガス透過性の測定を、酸素についてDIN 53380-3に従って実施した。
【0052】
以下の表に関する測定を、23℃及び50%の空気湿度で行った。
【0053】
【表1】
【0054】
得られた透過速度Q全体は被覆されたシートの透過速度である。個々の材料、この場合には基材及び被覆の透過速度、つまりQ基材及びQ被覆を互いに分けるには、以下の式を使用する。
【数1】
透過速度Qから透過係数Pを決定するには、透過速度を層厚d、この場合は1μmの層厚に対して正規化する。
【数2】
【0055】
この場合、層厚は、乾燥させた塗料又は基材の厚さを指す。
【0056】
純粋なPPシートは、37500cm・1μm/(m・d・bar)の酸素透過係数を有する。純粋な1μm厚の乾燥EVOHで被覆された純粋なPPシートは、1.4cm・1μm/(m・d・bar)の酸素透過係数を有する。製造されたナノコンポジット塗料で被覆されたPPシートは、1μmの乾燥層厚で0.12cm・1μm/(m・d・bar)の酸素透過係数を有する。
図1
図2
図3
図4A)】
図4B)】
【国際調査報告】