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特表2024-539116シプロフロキサシン及びセレコキシブを含む組成物
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  • 特表-シプロフロキサシン及びセレコキシブを含む組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】シプロフロキサシン及びセレコキシブを含む組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/496 20060101AFI20241018BHJP
   A61K 31/415 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K31/415
A61K9/22
A61K47/38
A61P21/00
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523514
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 IL2022051096
(87)【国際公開番号】W WO2023067592
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,130
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519453032
【氏名又は名称】ニューロセンス セラピューティックス リミテッド
【氏名又は名称原語表記】NEUROSENSE THERAPEUTICS LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(74)【代理人】
【識別番号】100181906
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 一乃
(72)【発明者】
【氏名】ベン ヌーン,アロン
(72)【発明者】
【氏名】スターリング,ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ヤコビー-ゼヴィ,オロン
(72)【発明者】
【氏名】コーエン ヴェレッド,シャロン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA38
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC44
4C076DD05F
4C076DD26
4C076DD29C
4C076DD38
4C076DD41C
4C076DD55F
4C076DD67
4C076EE16
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF04
4C076FF05
4C076FF07
4C076FF09
4C076FF31
4C076GG12
4C076GG14
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA10
4C086BC36
4C086BC50
4C086GA07
4C086GA12
4C086GA13
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA12
4C086ZA94
4C086ZC75
(57)【要約】
実施形態は、セレコキシブ、及びシプロフロキサシン又はその薬学的に許容される塩、並びに20℃で2%水溶液として測定した場合に150cP未満の粘度を有する低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む錠剤に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレコキシブ、及びシプロフロキサシン又はその薬学的に許容される塩、並びに20℃で2%水溶液として測定した場合に2cP~150cPの粘度を有する低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む錠剤。
【請求項2】
シプロフロキサシンの薬学的に許容される塩はシプロフロキサシン塩酸塩である、請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、28.0%~30.0%のメトキシル置換及び7.0%~12.0%のヒドロキシプロポキシル置換を有する、請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、19.0%~24.0%のメトキシル置換及び7.0%~12.0%のヒドロキシプロポキシル置換を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項5】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、錠剤の3重量%~10重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項6】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、錠剤の5重量%の量で存在する、請求項5に記載の錠剤。
【請求項7】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、錠剤中の有効成分であるセレコキシブ、及びシプロフロキサシンの薬学的に許容される塩の重量に対して4重量%~15重量%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項8】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、有効成分の重量に対して6重量%~8重量%の量で存在する、請求項7に記載の錠剤。
【請求項9】
錠剤は、粒外成分及び粒内成分を含み、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、粒外成分中に存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項10】
セレコキシブ、及びシプロフロキサシンの薬学的に許容される塩は、粒内成分中に存在する、請求項9に記載の錠剤。
【請求項11】
可溶性充填剤、非可溶性充填剤、及び可溶性充填剤と非可溶性充填剤との混合物からなる群から選択される充填剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項12】
充填剤は、第二リン酸カルシウム、デンプン、前ゼラチン化デンプン、粉末セルロース、微結晶セルロース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、及びラクトースからなる群から選択される、請求項11に記載の錠剤。
【請求項13】
充填剤は、微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール、又はそれらの組み合わせである、請求項12に記載の錠剤。
【請求項14】
低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、20℃で2%水溶液として測定した場合、50cPの粘度を有する、請求項1~13のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項15】
シプロフロキサシン遊離塩基の重量に対するセレコキシブの重量の比が1:1~1:100である、請求項1~14のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項16】
シプロフロキサシン遊離塩基の重量に対するセレコキシブの重量の比が1:10~1:25である、請求項15に記載の錠剤。
【請求項17】
シプロフロキサシン遊離塩基の重量に対するセレコキシブの重量の比が1:10である、請求項16に記載の錠剤。
【請求項18】
シプロフロキサシンの溶解は、750mlの0.1Nの塩酸中、II型装置にて、75回転/分(RPM)に配置する場合、2時間以内に70%未満40%超過であり、かつシプロフロキサシンの溶解は、750mlの0.1Nの塩酸中、II型装置にて、75RPM、37℃に配置し、次いで2時間後に媒質を1%のSLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合、6時間以内に合計で少なくとも80%である、請求項1~17のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項19】
セレコキシブの溶解は、750mlの0.1Nの塩酸中、II型装置にて、75RPM、37℃に配置し、次いで2時間後に媒質を1%のSLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合、6時間以内に80%未満であり、かつ12時間以内に少なくとも80%である、請求項1~18のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項20】
750mlの0.1Nの塩酸中、II型装置にて、75RPM、37℃に配置し、次いで2時間後に媒質を1%のSLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合、シプロフロキサシンとセレコキシブとの両方の45%超過が3時間で放出され、かつ90%未満が6時間で放出される、請求項1~19のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項21】
1%のSLSを含む900mlのpH 4.5の酢酸緩衝液中、II型装置にて、75RPM、37℃に配置する場合、10%~30%のシプロフロキサシン及びセレコキシブが1時間で放出され、かつ30%~70%のシプロフロキサシン及びセレコキシブが4時間で放出され、かつ85%超過のシプロフロキサシン及びセレコキシブが12時間で放出される、請求項1~20のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項22】
錠剤をヒト被験者に食物と水とともに7日間投与する場合、被験者の血清中のセレコキシブのTmaxが、被験者の血清中のシプロフロキサシンのTmaxの80%~125%の範囲内である、請求項1~21のいずれか一項に記載の錠剤。
【請求項23】
a. セレコキシブ及びシプロフロキサシン又はその薬学的に許容される塩を含む顆粒を形成すること;
b. 20℃で2%水溶液として測定した場合に、150cP未満の粘度を有する低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを顆粒に添加して、混合物を形成すること;及び
c. 混合物を圧縮して、錠剤を形成すること、
を含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の錠剤を製造するための方法(工程)。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の錠剤を患者に投与することを含む、それを必要とする患者における筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療のための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2021年10月19日出願の米国仮特許出願第63/257,130号に対して利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
シプロフロキサシン又はその薬学的に許容される塩及びセレコキシブを含む剤形が提供される。
【背景技術】
【0003】
シプロフロキサシンは、様々な細菌感染症の治療薬として多くの国で販売されている抗生物質で、経口及びさらなる経路での投与が可能である。例えば塩酸塩などの塩の形で入手可能であり、以下の構造を有する:
【化1】
【0004】
セレコキシブはCOX-2阻害剤であり、経口投与により摂取され、様々な症状にともなう疼痛又は炎症の治療に適応される。セレコキシブの構造は以下である:
【化2】
【0005】
PCT特許出願公開(WO)第2018/235082号(参照により本明細書に組み込まれる)は、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis:ALS)を含むがこれに限定されない様々な運動ニューロン疾患の治療用のシプロフロキサシンとセレコキシブとの組み合わせを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願公開第2018/235082号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本明細書には、シプロフロキサシン又はその薬学的に許容される塩、及びセレコキシブを含む錠剤などの徐放性組成物が記載される。例えば、本明細書で提供されるのは、セレコキシブ、及びシプロフロキサシンの薬学的に許容される塩と、20℃で2%水溶液として測定した場合に2cP~150cPの粘度を有する低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースとを含む錠剤である。
【0008】
本明細書にはさらに:
セレコキシブ及びシプロフロキサシン又はシプロフロキサシンの薬学的に許容される塩を含む顆粒を形成すること;20℃にて2%水溶液として測定した場合の粘度が150cP未満の低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを前記顆粒に添加して混合物を形成すること;及び混合物を圧縮して錠剤を形成すること、を含む錠剤の製造のための方法(工程)が記載される。
【0009】
さらに本明細書では、シプロフロキサシン又はその薬学的に許容される塩、及びセレコキシブを含む組成物を患者に投与することを含む、それを必要とする患者に対する筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療のための方法を記載する。
【0010】
上記及びその他の目的、特徴、及び利点は、添付図を参照しながら進む以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、シプロフロキサシン及びセレコキシブの投与後の経時的な、健康なボランティアに対する投与7日目に対する正規化平均血漿濃度を示すグラフを示し、シプロフロキサシン及びセレコキシブを含む組み合わせ錠剤(PrimeC)による投与と参照錠剤(Ref)による投与を比較した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
用語
特に断りのない限り、専門用語は従来の用法にしたがって使用する。分子生物学の一般的な用語の定義は以下を参照することができる:Benjamin Lewin,Genes V,Oxford University Press,1994(ISBN 0-19-854287-9);Kendrewら、(編),The Encyclopedia of Molecular Biology,Blackwell Science Ltd.により1994年に出版(ISBN 0-632-02182-9);及びRobert A.Meyers(編),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,VCH Publishers,Inc.により1995年に出版(ISBN 1-56081-569-8)。
【0013】
特に説明がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。単数形の用語「a」、「an」、「the」は、文脈で明確に別段の指示がない限り、複数形の参照語を含む。同様に、「又は(or)」という言葉は、文脈で明確に別段の指示がない限り、「及び」を含むことを意図している。さらに、核酸又はポリペプチドについて与えられたすべての塩基サイズ又はアミノ酸サイズ、及びすべての分子量又は分子質量値は概算であり、説明のために提供されていることを理解されたい。本開示の実施又は試験には、本明細書に記載したものと類似又は同等の方法及び材料を用いることができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。「含む(comprise)」という用語は「含む(include)」を意味する。略語「例えば(e.g.)」はラテン語の「exempli gratia」に由来し本明細書では非限定的な例を示すために使用される。したがって、「例えば(e.g.)」という略語は、「例えば(for example)」という用語と同義である。
【0014】
矛盾が生じた場合は、用語の説明を含む本明細書が優先される。さらに、すべての材料、方法、例は例示であり、限定を意図するものではない。
【0015】
粒外(extragranular):錠剤の形成の工程では、少なくとも1つの賦形剤と組み合わせた有効成分を含む顆粒が形成されることが多い。造粒工程により、微粉末は、自由に流動する、圧縮しやすい無塵の顆粒に変換する。顆粒はその後、さらなる賦形剤又は活性成分とブレンドすることにより混合することができる。最終的なブレンドは、カプセルに充填されるか、又は錠剤に圧縮される。「粒外(extragranular)」という用語は、錠剤の顆粒ではない部分を指す。
【0016】
粒内(intragranular):造粒工程を経て形成される錠剤組成物における、顆粒内にある組成物の部分。
【0017】
薬学的に許容される塩:「塩」とは、シプロフロキサシンなどの活性化合物の塩であり、化合物の酸塩又は塩基塩を形成することによって改変されたものである。これは、本発明の化合物の比較的無毒性の無機及び有機の酸又は塩基付加塩を指す。これらの塩は、医薬剤形を調製する工程でin situで調製することが可能であり、又は個別に、遊離塩基の形態の本発明の精製化合物を、適切な有機酸又は無機酸と反応させ、形成された塩を単離することによって調製することが可能である。代表的な塩としては、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、及びメシル酸塩などが挙げられる。
【0018】
定常状態(Steady State):単位時間内に排出される薬物の量が、単位時間内に体循環に到達する薬物の量と等しい状態。
【0019】
複数の実施形態の概要
本明細書には、セレコキシブ及びシプロフロキサシン又はシプロフロキサシンの薬学的に許容される塩を含む組成物が提供される。
【0020】
例えば、シプロフロキサシン遊離塩基の重量に対するセレコキシブの重量に基づいて、シプロフロキサシン又はその薬学的塩に対するセレコキシブの比が1:1~1:100、任意に1:4、1:10、1:25である組成物が提供される。本明細書に記載された例示的な錠剤は、1錠あたり34mgのセレコキシブ、及び340mgのシプロフロキサシン又はシプロフロキサシンの薬学的に許容される塩を含み、これは340mgのシプロフロキサシンを送達する量(例えば、剤形又は錠剤あたり377.41mgのシプロフロキサシン塩酸塩(ciprofloxacin HCl)であり、これは340mgのシプロフロキサシン遊離塩基に相当する)であり、よって、シプロフロキサシン遊離塩基に対するセレコキシブの重量比は1:10である。
【0021】
いくつかの実施形態によれば、セレコキシブ、及びシプロフロキサシン若しくはその薬学的塩を含む組成物は、以下の溶解特性の1つ又は複数を有する:
1. II型装置にて、75回転/分(revolutions per minute:RPM)で750mlの0.1Nの塩酸(HCl)中に配置した場合にシプロフロキサシンの溶解が2時間以内に70%未満であり、好ましくは40%~65%であること。
2. II型装置にて、100回転/分(RPM)で37℃にて750mlの0.1Nの塩酸中に配置した場合にシプロフロキサシンの溶解が2時間以内に80%未満であり、好ましくは40%~65%であること。
3. II型装置にて、75RPM、37℃で750mlの0.1Nの塩酸中に配置し、次いで2時間後に媒質を1%のSLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更(修正)する場合に、シプロフロキサシンの合計の溶解が6時間以内に少なくとも70%であり、及び/又は4時間以内に75%未満であること。
4. II型装置にて、100RPM、37℃で750mlの0.1Nの塩酸中に配置し、次いで2時間後に媒質を1%のSLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合に、シプロフロキサシンの合計の溶解が6時間以内に少なくとも80%であり、及び/又は4時間以内に80%未満であること。
5. II型装置にて、75RPM、37℃で750mlの0.1Nの塩酸中に配置し、次いで2時間後に媒質を1%のSLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合に、セレコキシブの合計の溶解が12時間以内に少なくとも80%であり、及び/又は8時間以内に85%未満であり、より好ましくは8時間以内に80%未満であること。
6. II型装置にて、100RPM、37℃で750mlの0.1Nの塩酸中に配置し、次いで2時間後に媒質を1%のSLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合に、セレコキシブの合計の溶解が8時間以内に少なくとも80%であり、及び/又は6時間以内に80%未満であること。
7. II型装置にて、75RPM、37℃で750mlの0.1Nの塩酸中に配置し、次いで2時間後に媒質を1%のSLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合、シプロフロキサシンとセレコキシブとの両方の合計の溶解が3時間で45%超過であり、かつ6時間で90%未満であること。
8. II型装置にて、75RPM、37℃で、1%のSLSを含む900mlの酢酸緩衝液pH 4.5中に配置する場合、シプロフロキサシン及びセレコキシブの溶解が1時間で10%~30%であり、シプロフロキサシン及びセレコキシブの溶解が4時間で30%~70%であり、かつシプロフロキサシン及びセレコキシブの溶解が12時間で85%超過であること。
【0022】
いくつかの実施形態によれば、組成物は、低粘度のヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む。HPMCは結合剤であり、錠剤などの経口医薬品剤形のマトリックス系で使用される制御放出剤である。HPMCは、セルロース骨格がメチル基及びヒドロキシプロピル基で置換されたモノマーを有してなる賦形剤である。置換量はHPMCの特性を決定する。HPMCの特性の1つはその粘度であり、これは通常20℃で2%水溶液として測定される。好ましくは、本明細書に記載の組成物に使用されるHPMCは、150センチポアズ(cP)未満2cP超過の低粘度を有する。好ましくは、組成物に使用されるHPMCの粘度は40~60cPである。
【0023】
例示的なHPMCの種類を以下に記載する。
【0024】
Pharmacoat 603、645、606、及び615は、150cP未満の粘度を有し、メトキシル:29%(28.0%~30.0%)、ヒドロキシプロポキシル:10%(7.0%~12.0%)を有する例示的なHPMCである。
【0025】
Methocel E50 LVは、150cP未満の粘度を有し、メトキシル:29%(28.0%~30.0%)、ヒドロキシプロポキシル:10%(7.0%~12.0%)を有する例示的なHPMCである。
【0026】
Methocel E15 Premium LVは、150cP未満の粘度を有し、メトキシル:29%(28.0%~30.0%)、ヒドロキシプロポキシル:10%(7.0%~12.0%)を有する例示的なHPMCである。
【0027】
Methocel K100 LVは、150cP未満の粘度を有し、メトキシル:19.0~24.0%、ヒドロキシプロポキシル:7.0~12.0%、粘度(20℃での水中で2%):80~120cP、包装時の水分:最大3.0である例示的なHPMCである。
【0028】
好ましくは、組成物中に存在するHPMCの量は、組成物の重量に対して3%~10%である。任意に、組成物中に存在するHPMCの量は、錠剤コア(tablet core)の5重量%である。
【0029】
好ましくは、組成物中に存在するHPMCの量は、錠剤の有効成分であるセレコキシブ及びシプロフロキサシン塩の総重量に対して4%~15%である。好ましくは、組成物中に存在するHPMCの重量は、錠剤の活性成分の合計重量に対して6~8%である。好ましくは、HPMCの量は剤形の有効成分の合計重量に対して7%である。好ましくは、HPMCは錠剤の粒外部分に存在し、好ましくは、有効成分は錠剤の粒内部分に存在する。
【0030】
例えば、本明細書で企図されるのは、シプロフロキサシン及びセレコキシブ、充填剤、結合剤、及び任意に湿潤剤を含む粒内成分;並びにHPMC、充填剤、及び任意に流動剤及び/又は潤滑剤を含む粒外組成物を有する錠剤である。
【0031】
有効成分であるセレコキシブ及びシプロフロキサシン塩酸塩は、セレコキシブが25℃(推定値)における普通の水への推定溶解度が約4.3mg/Lの非常に難溶性の薬物であり、シプロフロキサシン塩酸塩が水への溶解度が約30g/Lの可溶性薬物であるという点で異なる。溶解度の違いは、酸性媒質において特に顕著である。理論に束縛されないが、本明細書に記載の組成物は、4時間超過にわたって両成分が徐放されることで送達されることにより、最適な治療効果を提供し得る。錠剤/剤形を、2時間、II型装置で100RPM又は75RPMで750mlの0.1Nの塩酸に導入し、次いで媒質を1%SLSを有するpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更するin vitro試験は、錠剤/剤形を胃に導入し、そこで錠剤は約2時間滞留し、その後腸に送られる、ヒト被験者を代表するものである。錠剤は有効成分(シプロフロキサシン及びセレコキシブ)を2時間超過の時間経過にわたってゆっくりと放出する。
【0032】
ヒトにおける本明細書に記載の組成物の試験は、摂食状態での投与後、及び「定常状態」に達した場合に、投与後のセレコキシブの最大血清濃度(Tmax)がシプロフロキサシンのTmaxと同様であることを示した。理論に束縛されないが、シプロフロキサシンとセレコキシブとの併用による相乗効果の向上は、食物及び水とともに投与した後、両有効成分のTmaxが実質的に同時に、あるいは80%~125%の期間内に起こる場合に得ることが可能であることが示唆される。
【0033】
治療の方法
本明細書に記載の組成物は、それを必要とする患者におけるALSの治療に使用することができる。組成物は、それを必要とする患者に、1日1回、1日2回、1日3回、又は1日4回投与され得る。投与により、ALSの症状を軽減又は緩和し得、あるいは投与の際にALSの進行を予防し得る。組成物は、好ましくは食物及び水とともに投与される。
【0034】
以下の実施例は、特定の特徴及び/又は実施形態を説明するために提供される。これらの実施例は、本開示を記載の特定の特徴又は実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例
【0035】
実施例1A:シプロフロキサシン塩酸塩及びセレコキシブを含む即時放出(Immediate Release:IR)カプセルの調製
IRカプセルは、1カプセルあたり377.41mgのシプロフロキサシン塩酸塩(ciprofloxacin hydrochloride(HCl))と1カプセルあたり34.00mgのセレコキシブを混合することにより調製した。この混合物を番号0のゼラチンカプセルに充填した。
【0036】
実施例1B:IRカプセルの溶解
実施例1Aのとおり調製したIRカプセルを、750mlの0.1Nの塩酸を用いて1時間溶解し、次いで1%ラウリル硫酸ナトリウムをともなう、250mlのリン酸緩衝液を加えてpH6.8のリン酸緩衝液を形成して溶解試験を行った。
【0037】
【表1】
【0038】
この実施例の溶解試験の条件は、実施例1Aのとおり調製したカプセルを、カプセルが胃酸性状態に約1時間留まり、その後pHが6.8に近い腸に送られる、ヒト患者への投与のシュミュレーションを行うように設計される。ここで表1からわかるとおり、0.1Nの塩酸中1時間後、シプロフロキサシンはほぼ完全に溶解したが、セレコキシブは放出されなかった。250mlのリン酸緩衝液を加えて1%ラウリル硫酸ナトリウムを有するpH6.8のリン酸緩衝液を形成した後にはセレコキシブ及びシプロフロキサシンの両方の溶解は急速であり、ヒトへの投与の数時間以内にシプロフロキサシンはすべて放出されるであろう。シプロフロキサシンの放出時間をより長くするプロファイルが望まれた。
【0039】
実施例2A:シプロフロキサシン塩酸塩及びセレコキシブを含む徐放性(Extended Release:ER)錠剤の調製
シプロフロキサシンとセレコキシブとの2つの有効成分の異なる溶解度を考慮し、そして胃の酸性条件にて開始し、剤形が腸を通過する間持続するシプロフロキサシンの放出時間をより長くするために、錠剤マトリックス組成物(バッチ08と指定)を開発した。
【0040】
特定の供給元からの以下の有効成分及び賦形剤を錠剤組成物に使用した:
シプロフロキサシン塩酸塩、アメリカ薬局方(USP);Neuland インド
セレコキシブ、USP;HiKAL、インド
微結晶セルロース、USP、国民医薬品集(NF);FMC International、コーク、アイルランド
ポビドン(Povidone)K-30 USP、NF;BASF、ドイツ
ラウリル硫酸ナトリウム、USP、NF;BASF、ドイツ
ヒドロキシプロピルメチルセルロース、USP、EP Dow
コロイド状二酸化ケイ素 USP、NF Evonik
ステアリン酸マグネシウム、ヨーロッパ薬局方(Ph.Eur.);Peter Greven、オランダ
錠剤組成物における使用量は表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
錠剤は以下の一般的な手順を用いて調製した:
ふるいがけ:手動で、シプロフロキサシン塩酸塩は16番のメッシュのスクリーンでふるいにかけ、セレコキシブは16番のメッシュのスクリーンでふるいにかけ、微結晶セルロース/ラクトースは40番のメッシュのスクリーンでふるいにかけた。
【0043】
ラウリル硫酸ナトリウム及びポビドン(Povidone)、PVP K-30の分量を秤量し、次いでこれらを撹拌しながら精製水に加え、透明な溶液が得られるまで撹拌を続けることによって結合剤溶液を調製した。
【0044】
乾式混合:ふるいにかけた材料を急速ミキサー造粒機(10L)に装填し、チョッパーをオフにして遅いインペラ速度を使用して10分間乾式混合した。
【0045】
造粒:結合剤溶液を乾燥混合物に添加し、湿った塊を手動で10番のメッシュのスクリーンに通した。
【0046】
乾燥:湿った顆粒をレッチェ乾燥機で乾燥させた。
【0047】
ふるいがけ及び粉砕(乾燥顆粒):乾燥した顆粒を20番のメッシュのスクリーンでふるいにかけ、ふるいにかけた顆粒をポリバッグに回収した。
【0048】
ブレンド及び潤滑:ヒドロキシプロピルメチルセルロース(METHOCEL E 50 PRE LV)、微結晶セルロース(Avicel PH102)、及びコロイド状二酸化ケイ素(Aerosil 200)を40番のメッシュスクリーンでふるいにかけた。次に粒内部分の乾燥顆粒及び粒外部分のふるいにかけた材料はともに15RPMで15分間ブレンドした(Conta Blender 10L)。
【0049】
ステアリン酸マグネシウムを60番のメッシュスクリーンでふるいにかけ、上記のブレンドに加え、15RPMで5分間潤滑化を行った。最終的なブレンドを圧縮した。
【0050】
実施例2B:バッチ08のER錠剤の溶解
バッチ08の溶解試験は、750mLの0.1Nの塩酸で2時間、それに続いて剤形を1% SLS 含有のpH 6.8のリン酸緩衝液、900mlに移して、II型、100RPMで行った。各時点での薬物放出の割合は以下の表3に詳述する。
【0051】
【表3】
【0052】
上の表からわかるように、0.1Nの塩酸中で2時間、続いてリン酸緩衝液媒質pH6.8+1%SLS中で10時間の合計12時間後に、セレコキシブ製剤原料の50%のみが放出された。
【0053】
実施例3A:シプロフロキサシン塩酸塩及びセレコキシブを含むさらなる徐放性(ER)錠剤の調製
本実施例では、バッチ08組成物の粒外充填剤の代わりにラクトースなどのより可溶性の充填剤を使用し、セレコキシブの溶解性の改善を試みた。可溶性充填剤(ラクトース)の添加に加え、マトリックスからの薬物放出を制御及び遅延し、並びに結合剤特性を持つHPMC(METHOCEL E50 LV)ポリマーを除いた。
【0054】
実施例2Aで採用した一般的な製造手順を、以下の表4に記載した賦形剤とともに使用し、バッチ36を形成した:
【0055】
【表4】
【0056】
さらに、粒外充填剤としてラクトースを使用し、顆粒中の充填剤として微結晶セルロースの代わりにラクトース一水和物を使用したバッチ37を調製した。実施例2Aで採用した一般的な製造手順を、以下の表5に記載した賦形剤とともに使用し、バッチ37を形成した:
【0057】
【表5】
【0058】
さらに、顆粒外充填剤としてラクトースを使用し、バッチ08の顆粒中の微結晶セルロースの一部をラクトース一水和物で置き換えたバッチ38を調製した。実施例2Aで採用した一般的な製造手順を、以下の表6に記載される賦形剤とともに使用し、バッチ38を形成した:
【0059】
【表6】
【0060】
実施例3B:バッチ08対バッチ37のER錠剤の溶解
バッチ08及びバッチ37から調製した錠剤を0.1Nの塩酸中で2時間、それに続いて1% SLSを含有するpH 6.8のリン酸緩衝液、900ml、II型に移し、100RPMで溶解試験を行った。各時点での薬物放出の割合は以下の表7に詳述する。
【0061】
【表7】
【0062】
バッチ08の錠剤とバッチ37の錠剤を比較すると、バッチ08と比較してバッチ37では12時間後のセレコキシブの溶解が増加していること(86%)がわかる。しかし、バッチ08の溶解度が50%超過(59%)であったのに対して、バッチ37の溶解度が27%であったことから、シプロフロキサシンは2時間では酸性媒質に十分に溶解しなかった。バッチ37では、より溶解性の高い粒外及び粒内の充填剤が使用されたにもかかわらず、シプロフロキサシンの溶解度はマイナスの影響を受けた。
【0063】
実施例3C:バッチ08対バッチ36、37及び38のER錠剤の溶解
0.1Nの塩酸中、II型で2時間、100RPMでバッチ08から調製した錠剤とバッチ37から調製した錠剤の溶解性を比較して溶解試験を行った。各時点での薬物放出の割合は以下の表8に詳述する。溶解は、それぞれのバッチのうちの3錠を12台の溶解装置で同時に行った。
【0064】
【表8】
【0065】
表8から明らかなように、バッチ36、37、及び38の0.1Nの塩酸中の溶解は、錠剤からのシプロフロキサシンの溶解が50%未満(なお30%未満)の不十分な溶解性を示した。驚くべきことに、HPMCポリマー及び非水溶性充填剤である微結晶セルロースを含有していたにもかかわらず、バッチ08の錠剤からはシプロフロキサシンがより急速に放出された。理論に縛られることなく言えば、これはラクトースに比べてHPMCの吸水力がより速く、シプロフロキサシンの放出速度に影響を与えるための可能性がある。HPMCはより多くの液体をマトリックスに吸収させてゲル化を可能にする。このゲル化期間中、溶解液が存在すると、シプロフロキサシンは0.1Nの塩酸における溶解度がセレコキシブより高いため、より速い速度で溶液に移行し始める。しかし、セレコキシブの溶解度は、0.1Nの塩酸中で非常に低いため、セレコキシブの薬物放出はこの現象により影響が最小限であり、そして2時間後の剤形のリン酸緩衝液への移行の際の薬物放出をより速くさせる可溶性ラクトース充填剤の存在によってより大きな影響を受ける。
【0066】
実施例4A:シプロフロキサシン塩酸塩及びセレコキシブを含有するさらなる徐放性(ER)錠剤の調製
バッチ08と同様の方法でさらなる錠剤組成物を調製した。バッチ39Aは、以下の表9に記載の賦形剤を用いて調製した。
【0067】
【表9】
【0068】
コア錠剤は、1錠あたり17.1mgのオパドライブルー(Opadry Blue)でコーティングした。この組成物では、バッチ08の微結晶セルロースとは反対に、ラクトースを粒内充填剤及び粒外充填剤として使用した。別のHPMCポリマーであるMethocel E15 LVも使用した。
【0069】
バッチ39Bは、以下の表10に記載の賦形剤を用いて調製した。
【0070】
【表10】
【0071】
コア錠剤は、1錠あたり17.1mgのオパドライブルーでコーティングした。バッチ39Bにより作成された錠剤はバッチ39Aの錠剤と類似したが、異なる種類のHPMCを使用したという違いがあった。
【0072】
バッチ40Aは、以下の表11に記載の賦形剤を用いて調製した。
【0073】
【表11】
【0074】
コア錠剤は、1錠あたり17.1mgのオパドライブルーでコーティングした。この組成物はバッチ08と同様であったが、異なるHPMCポリマーであるMethocel E15 LVを使用した。
【0075】
バッチ40Bは、以下の表12に記載の賦形剤を用いて調製した。
【0076】
【表12】
【0077】
コア錠剤は、1錠あたり17.1mgのオパドライブルーでコーティングした。この組成物はバッチ08と同様であったが、異なるHPMCポリマーであるMethocel E15 LVを使用した。
【0078】
実施例4B:ER錠の溶解
溶解試験は、0.1Nの塩酸中、II型、100RPMで2時間、バッチ39A、39B、40A、及び40Bから調製した錠剤の溶解を比較することで実施した。分単位での様々な時点における薬物放出の割合を以下の表13に詳述する。
【0079】
【表13】
【0080】
バッチ39A、39B、40A、及び40Bのように、様々な種類の低粘度HPMCの存在は、0.1Nの塩酸で2時間、シプロフロキサシンの溶解を50%以上の許容レベルまで増加させるのに有効であった。バッチ39A及び39Bの溶解を40A及び40Bと比較すると、微結晶セルロースとは対照的に、希釈剤としてのラクトースの使用により、シプロフロキサシンの溶解レベルがより速くなることが観察された。
【0081】
実施例5:代替的な溶解方法
実施例2Bに記載した方法では、12時間後のセレコキシブ放出は限定的(50%)でしかないことが示された。酸性媒質中でシプロフロキサシンが急速に放出されるため、錠剤の部分的な崩壊をもたらし、それ故、錠剤は酸性媒質から完全に移行されない可能性があり、それ故、代替的な方法もまた使用した。
【0082】
代替的な方法として、錠剤を750mlの0.1Nの塩酸に2時間入れ、その後1%SLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように250mlを加えた。この工程は100RPMで撹拌しながら行う。この方法により、錠剤のハンドリング及び媒質間での移行を行わないようにした。
【0083】
バッチ08からの錠剤に対して実行した溶解試験の結果を以下の表14に示す。
【0084】
【表14】
【0085】
錠剤を750mlの0.1Nの塩酸に2時間入れ、その後1%SLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように250mlを加える、代替的な方法を実施した。この工程は、75RPMで攪拌しながら行う。バッチ08からの錠剤で実施したこの溶解試験の結果を以下の表15に示す。
【0086】
【表15】
【0087】
表14及び表15から明らかなように、この方法を用いた場合、表3に示した方法と比較して、バッチ08、39Bのセレコキシブの80%超過のレベルでのほぼ完全な溶解は、100RPMで8~12時間以内、又は75RPMで12~16時間以内に得られる。バッチ39A、40A、及び40Bからの組成物は、この方法に供する際に同様の挙動を示すであろう。溶解は、可溶性充填剤及び非可溶性充填剤を有する組成物を比較した場合、有意差はなかった。
【0088】
要約すると、低粘度HPMCを含む組成物は、2時間、0.1Nの塩酸中で、70%未満、好ましくは40%~65%の許容レベルまでシプロフロキサシンを溶解させるのに有効であり、一方、この方法で75RPMにて10時間にわたって、及び100RPMにて6時間にわたって80%を超えるレベルの溶解を維持した。
【0089】
実施例6A:さらなる錠剤組成物
バッチ08と同様の方法でさらなる錠剤組成物を調製した。バッチ2Dは、以下の表16に記載の賦形剤を用いて調製した。バッチ2Dは、HPMCの量が錠剤重量の20%であったバッチを示す。
【0090】
【表16】
【0091】
バッチ05Eを、以下の表17に記載の賦形剤を用いて調製し、HPMCの量が錠剤重量の10%であったバッチを示す。
【0092】
【表17】
【0093】
バッチ08と同様の方法でさらなる錠剤組成物を調製した。バッチ05Bは、以下の表18に記載の賦形剤を用いて調製した。バッチ05Bは、HPMCの種類が錠剤重量の5%の量のMethocel K100 LVであったバッチを示す。
【0094】
【表18-1】
【0095】
バッチ05Fは、HPMC Methocel E50LVの量がバッチ08のように錠剤重量の5%であったバッチを示す。
【表18-2】
【0096】
実施例6B:バッチ2D対バッチ05E及び05BのER錠剤の溶解
バッチ2D、05E、及び05Bから調製された錠剤の溶解を、pH 12を有する媒質中、75RPMで比較する溶解試験を行った。分単位での様々な時点における薬物放出の割合を以下の表19に詳述する。
【0097】
【表19】
【0098】
セレコキシブの即時放出錠剤の薬局方試験に照らし、このpH 12を有する媒質を使用した。表19からわかるとおり、バッチ05B、及びバッチ08と同様の05Fの組成物は、pH 12の媒質の各有効成分の溶解プロファイル放出が同様であった。10重量%のHPMC Methocel E 50 LVを有するバッチ05E及び5重量%のHPMC Methocel K100LVを有するバッチ05Bの組成物は、有望な放出プロファイルを示し、2時間以内に40%超過、さらに50%の活性物質を放出した。HPMC Methocel K 100 LVの重量が錠剤重量の20%であるバッチ2Dの組成物は、pH 12の媒質中で、両方の有効成分の溶解プロファイル放出がより遅かった。
【0099】
実施例6C:
バッチ08と同様の方法でさらなる錠剤組成物を調製した。バッチ19Cは、以下の表20に記載の賦形剤を用いて調製した。バッチ19Cは、HPMCの量が錠剤重量の3%であるバッチを示す。
【0100】
【表20】
【0101】
実施例6D:バッチ19CのER錠剤の溶解
バッチ19Cから調製した錠剤の溶解を決定するため、900mlの0.1Nの塩酸の媒質中で、100RPMで2時間、溶解試験を行った。分単位での様々な時点における薬物放出の割合を以下の表21に詳述する。
【0102】
【表21】
【0103】
バッチ19Cで使用されたHPMCの量は錠剤コアの重量の3%であり、活性剤に対して4.1%であり、比較的少量であったにもかかわらず、0.1Nの塩酸媒質中で2時間後、シプロフロキサシンの溶解度は50%を超えていた。
【0104】
実施例6E:ER錠剤の「摂食」条件に相当する条件下での溶解
徐放性(ER)錠剤を実施例2Aと同様に調製したが、各錠剤を17.10mg/錠のヒプロメロース系フィルム、オパドライ(登録商標)ブルー(Opadry blue 13B 5050008 IH;Colorcon、インド)を用いたフィルムコーティングでコーティングした点は異なる。これらの錠剤はERPCと指定した。
【0105】
酢酸緩衝液 1%SLS、900ml、75RPM、重りを備えるUSP IIを用い、pH 4.5の媒質中でバッチ08及びERPCから調製した錠剤の溶解を比較する溶解試験を実施した。分単位での様々な時点における薬物放出の割合を以下の表22に詳述する。この媒質は、摂食条件下での被験者への投与を再現するために選ばれた。
【0106】
【表22】
【0107】
溶解試験1時間でのセレコキシブ及びシプロフロキサシンの両方の平均放出は10%~30%であった。溶解試験4時間でのセレコキシブ及びシプロフロキサシンの平均放出は30%~70%であった。12時間でのセレコキシブ及びシプロフロキサシンの両方の平均溶解は85%超過であった。これらの結果は、摂食条件下で、これらの組成物がヒトでのセレコキシブ及びシプロフロキサシンの両方の溶解に同様のプロファイルを提供できることを示している。
【0108】
実施例7:ヒトにおけるセレコキシブ及びシプロフロキサシン塩酸塩を含む錠剤の試験
徐放性(ER)錠剤を実施例2Aと同様に調製したが、各錠剤を17.10mg/錠のヒプロメロース系フィルム、オパドライ(登録商標)ブルー(Opadry blue 13B 5050008 IH;Colorcon、インド)を用いたフィルムコーティングでコーティングした点は異なる。これらの錠剤をヒト試験で使用し、ERPCと指定した。
【0109】
オープンラベル、無作為化、複数回投与、2治療、クロスオーバー研究を実施して、参照製品に対する、セレコキシブ及びシプロフロキサシン塩酸塩で構成される固定用量の組み合わせ錠剤であるERPCの比較バイオアベイラビリティを評価した。参照製品は、CIPRO(登録商標)錠(シプロフロキサシン塩酸塩、Bayer)とCELBREX(登録商標)カプセル(セレコキシブ、Pfizer)とを同時投与し、健康な成人男性及び女性に12時間ごとに6.5日間、計13回、摂食条件下で投与した。
【0110】
薬物動態分析:
1日目の朝投与のCmaxの5%超過である投与前濃度を特定するために濃度データを確認した。投与前濃度が1日目の朝投与のCmaxの5%超過である被験者は特定されなかった。
【0111】
薬物動態パラメータの概要:
シプロフロキサシン及びセレコキシブの推定濃度-時間プロファイルを用いて、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)バージョン8.3(Certara L.P.)のノンコンパートメントモデルを用いて、シプロフロキサシン及びセレコキシブの薬物動態パラメータを算出した。
【0112】
試験治療は、2錠のERPC錠剤の形態の680mgの経口投与のシプロフロキサシン、及び68mgの経口投与のセレコキシブである朝投与の2錠のERPC錠剤、及び680mgの経口投与のシプロフロキサシン及び68mgの経口投与のセレコキシブを含む夕投与の2錠のERPC錠剤からなる。参照治療は、Cipro(登録商標)錠である750mgの経口投与のシプロフロキサシン(1×500mg錠及び1×250mg錠)とCelebrex(登録商標)カプセルである200mgの経口投与のセレコキシブ(1×200mgカプセル)とを同時投与する朝投与、及びCipro(登録商標)錠である750mgの経口投与のシプロフロキサシン(1×500mg錠、1×250mg錠)とCelebrex(登録商標)カプセルである200mgの経口投与(1×200mgカプセル)とを同時投与する夕投与からなる。両試験とも、1~7日目(Days 1~7)の朝投与を、先に少なくとも10時間の絶食を行い、標準カロリーの食事の開始後30分に被験者に投与した。1~6日目の夕投与は、先に少なくとも2時間の絶食を行い、標準カロリーの食事の開始後30分に被検者に投与した。シプロフロキサシン及びセレコキシブの薬物動態パラメータ(平均値)を計算し、シプロフロキサシンの値を表23に、セレコキシブの値を表24に示した:
【0113】
【表23】
【0114】
【表24】
【0115】
図1は、投与7日目以降のボランティアにおけるシプロフロキサシン及びセレコキシブの両方の平均血漿濃度を示す。ERPC(PrimeCと指定)を投与される群の投与量、及び参照錠剤の投与量は異なるため、グラフ内の濃度は、シプロフロキサシンの参照濃度に(680/750)=0.906667を乗算し、セレコキシブの参照濃度に(68/200)=0.34を乗算することで正規化する。上の線は投与後のシプロフロキサシン濃度を示し、下の線はセレコキシブ濃度を示す。ERPC群の濃度を丸で示し、参照群の濃度を三角で示す。
【0116】
上記の表及び図1からわかるように、試験治療の投与後7日目(Day 7)におけるセレコキシブ及びシプロフロキサシンのTmax値を比較する場合、試験製品を数日間投与して定常状態に達する際、セレコキシブのTmax(5時間)は、シプロフロキサシンのTmax(4時間)の80%~125%の範囲内である。このことは、図1においてシプロフロキサシン及びセレコキシブの濃度のピークが比較的同時に生じていることから明らかである。しかし、参照治療の投与後7日目のセレコキシブ及びシプロフロキサシンのTmax値を比較する場合、セレコキシブのTmax値は、シプロフロキサシンのTmax値の200%である。このことは、シプロフロキサシン参照製品の濃度のピークがセレコキシブ参照製品の濃度のピークより早く発生していることから明らかである。
【0117】
本明細書では、一実施形態にしたがって、セレコキシブ及びシプロフロキサシン又はその薬学的に許容される塩、並びに20℃で2%水溶液として測定した場合に2cP~150cPの粘度を有する低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロース、を含む錠剤を記載する。任意に、シプロフロキサシンの薬学的に許容される塩は、シプロフロキサシン塩酸塩である。任意に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、28.0%~30.0%のメトキシル置換、及び7.0%~12.0%のヒドロキシプロポキシル置換を有する。任意に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、19.0%~24.0%のメトキシル置換、及び7.0%~12.0%のヒドロキシプロポキシル置換を有する。任意に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、錠剤の3重量%~10重量%の量で存在する。任意に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは錠剤の5重量%の量で存在する。任意に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、錠剤中の活性成分であるセレコキシブ、及びシプロフロキサシンの薬学的に許容される塩の重量に対して4重量%~15重量%の量で存在する。任意に、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、有効成分の重量に対して6重量%~8重量%の量で存在する。任意に、錠剤は粒外成分及び粒内成分を含み、ここでヒドロキシプロピルメチルセルロースは粒外成分に存在する。任意に、セレコキシブ、及びシプロフロキサシンの薬学的に許容される塩は、粒内成分に存在する。任意に、錠剤は、可溶性、非可溶性、及び可溶性と非可溶性との混合物からなる群から選択される充填剤をさらに含む。任意に、充填剤は、第二リン酸カルシウム、デンプン、前ゼラチン化デンプン、粉末セルロース、微結晶セルロース、マンニトール、スクロース、ソルビトール、及びラクトースからなる群から選択される。任意に、充填剤は微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール、又はそれらの組み合わせである。任意に、低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、20℃で2%水溶液として測定した場合に50cPの粘度を有する。任意に、セレコキシブの重量とシプロフロキサシン遊離塩基との重量の比は1:1~1:100である。任意に、セレコキシブの重量とシプロフロキサシン遊離塩基との重量の比は1:10~1:25である。任意に、セレコキシブの重量とシプロフロキサシン遊離塩基との重量の比は1:10である。任意に、シプロフロキサシンの溶解は、750mlの0.1Nの塩酸中、II型装置中、75回転/分(RPM)に配置される場合、2時間以内に70%未満40%超過であり、シプロフロキサシンの溶解は、750mlの0.1Nの塩酸中、II型装置中、75RPM、37℃に配置し、次いで2時間後、媒質を1%SLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合、6時間以内に合計で少なくとも80%である。任意に、セレコキシブの溶解は、750mlの0.1Nの塩酸中、II型装置、75RPM、37℃に配置され、次いで2時間後、媒質を1% SLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合、6時間以内に80%未満、及び12時間以内に少なくとも80%である。任意に、750mlの0.1Nの塩酸中、II型装置、75RPM、37℃に配置し、次いで2時間後に媒質を1%SLSを含むpH 6.8のリン酸緩衝液を形成するように変更する場合に、シプロフロキサシン及びセレコキシブの両方の45%超過が3時間で放出され、かつ90%未満が6時間で放出される。任意に、II型装置内、75RPM、37℃で、1%SLSを含むpH 4.5の酢酸緩衝液900ml中に配置する場合に、10%~30%のシプロフロキサシン及びセレコキシブが1時間で放出され、30%~70%のシプロフロキサシン及びセレコキシブが4時間で放出され、85%以上のシプロフロキサシン及びセレコキシブが12時間で放出される。任意に、錠剤をヒト被験者に食物と水とともに7日間投与すると、被験者の血清中のセレコキシブのTmaxは、被験者の血清中のシプロフロキサシンのTmaxの80%~125%の範囲内である。
【0118】
さらに本明細書には、セレコキシブ及びシプロフロキサシン又はその薬学的に許容される塩を含む顆粒を形成すること;20℃で2%水溶液として測定した場合に150cP未満の粘度を有する低粘度ヒドロキシプロピルメチルセルロースを顆粒に添加して混合物を形成すること;及び混合物を圧縮して錠剤を形成すること;を含む錠剤の製造方法(製造工程)が記載される。
【0119】
さらに本明細書には、上記の錠剤を患者に投与することを含む、それを必要とする患者における筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療のための方法が記載される。
【0120】
開示された本発明の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮すると、示された実施形態は本発明の好ましい例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものとして捉えられるべきではないことを認識すべきである。むしろ、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲によって定義される。したがって本発明者らは、これらの請求項の範囲及び精神に含まれるすべてのものを発明として主張する。

図1
【国際調査報告】