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特表2024-539128レーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法及びその装置並びに工作機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】レーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法及びその装置並びに工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/04 20140101AFI20241018BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20241018BHJP
   B23K 26/066 20140101ALI20241018BHJP
【FI】
B23K26/04
B23K26/082
B23K26/066
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523585
(86)(22)【出願日】2022-10-26
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 CN2022127529
(87)【国際公開番号】W WO2023116183
(87)【国際公開日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】202111567728.9
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520167047
【氏名又は名称】上海名古屋精密工具股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI NAGOYA PRECISION TOOLS CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 2988 Bao’an Road, Jiading District Shanghai 201801, China
(74)【代理人】
【識別番号】100185694
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 隆志
(72)【発明者】
【氏名】孫思叡
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA02
4E168CA13
4E168CB04
4E168CB19
4E168DA33
4E168EA15
4E168EA19
4E168KA02
4E168KA08
4E168KB02
(57)【要約】
レーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法は、レーザ発振器(100)から射出されたレーザ(110)が回転ステージ(400)の回転に従って指向方向を変化させる時、反射によって伝播方向を変化させたレーザを絞り(750)に向かって伝播し続けさせ、絞りを通過したレーザビームをプリセット経路に沿って伝播し続けさせる。また、前記方法を応用した加工デバイス、装置及び機械加工デバイスを提供する。前記方法は、回転ステージの回転、応力、振動、弾性変形又は温度などの要因によってビーム伝播方向がプリセット方向からずれることを回避し、レーザのワークに対する指向をプリセットに適合させ、ワークに作用する光スポット形状にも安定を維持させ、精密加工の必要を満たす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザが回転ステージの回転に従って、指向方向を変化させる時、反射により伝播方向が変化したレーザを絞りに向かって伝播し続けさせ、絞りを通過したレーザビームをプリセット経路に沿って伝播し続けさせることを特徴とするレーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法。
【請求項2】
レーザがキャビティに入る前に予備補正を行い、レーザビームを回転ステージの回転軸の延伸方向に沿って前向きに伝播させることを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ビームが絞りを通過する前に、リフレクタ及びセンサを通じてワークに対するレーザの指向のリアルタイム閉ループ調整を実行することを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
回転ステージに対して射出又は入射する一端にセンサを設置し、レーザ情報を受信し、リアルタイム入射情報を制御器に送信し、制御器がリアルタイム入射情報と設定位置情報を比較し、オフセット値を取得し、オフセット値が設定した閾値を超えた場合、高速反射ミラーを駆動し、高速反射ミラーは、超高速レーザから射出されたレーザを反射し、制御器の命令を得た後、レーザに対して補償を行い、補償後にガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージ回転軸中心線との相対的な位置関係を維持させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
回転ステージに対して射出又は入射する一端にセンサを設置し、レーザ情報を受信し、リアルタイム入射情報を制御器に送信し、制御器がリアルタイム入射情報と設定位置情報を比較し、オフセット値を取得し、オフセット値が設定した閾値を超えた場合、高速反射ミラーを駆動し、高速反射ミラーは、回転ステージから射出されたレーザを反射し、制御器の命令を得た後、リフレクタの角度を調整し、回転ステージの回転によるレーザ光路の偏差を補償することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
レーザが回転する回転ステージのキャビティから射出された後、少なくとも1回の反射を経て伝播方向を変更し、再び回転ステージの回転に従うことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の動作軸を有する加工デバイスに応用され、ワークに対するレーザの指向をプリセットに適合させて安定を維持させ、レーザ加工の精度を向上させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
複数の動作軸を有する加工デバイスに応用され、ワークに作用する光スポットの形状に安定を維持させ、精密加工の要求を満足させることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法を採用したことを特徴とする機械加工デバイス。
【請求項10】
回転運動を実施し、レーザの光路を収容するキャビティを含む回転ステージと、射出するレーザが前記キャビティを経て前記回転ステージを通過する超高速レーザと、回転ステージに設置され、回転ステージに伴って回転ステージの回転軸線を中心に回転し、キャビティの射出端からのレーザを受け取り、レーザの光路の方向を変化させた後、レーザを射出し、少なくとも第1リフレクタを含むレーザ投射中継部材と、第1リフレクタから反射されたビームを受け取る絞りと、を含むことを特徴とする装置。
【請求項11】
回転ステージに設置され、回転ステージに伴って回転ステージの回転軸線を中心に回転し、レーザ投射中継部材から射出されるレーザを受け取って、回転軸の範囲内に集光する光射出部材を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
レーザのリアルタイム入射情報を取得するセンサと、センサが発するリアルタイム入射情報を受信し、プリセット位置情報と比較して位置オフセット値を取得する制御器と、超高速レーザから射出されるレーザを受け取り、制御器の命令を得た後、反射後のレーザ光路を補償し、集束光スポットから回転ステージ回転軸線までの距離を一定に維持し、即ち、回転ステージの任意の角度での前記距離の偏差を1μm以下に維持する反射機構と、を更に含むことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
前記反射機構は、少なくとも2つの高速反射ミラーを含み、各高速反射ミラーは、少なくとも2つの調整可能な自由度を有することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記反射機構は、第3リフレクタ及び第4リフレクタを含み、第3リフレクタはレーザを受け取った後に第4リフレクタにレーザを反射し、第4リフレクタはレーザを受け取った後にキャビティに向かってレーザを反射することを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項15】
請求項10に記載の装置を備えることを特徴とする機械加工デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザの光路を調整する方法に関し、特に、回転して伝播するレーザの伝播方向及び/又は位置のプリセットからのずれを補償する方法、及びその方法を用いる装置並びに工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、レーザは、金属板金や型材の切断、溶接及びマーキング加工プロセスに広く使われているほか、切削工具を製造するための超硬材料加工などの技術分野でも使用されている。多軸加工センタまたは多関節ロボットによるレーザを手段とする板金及び型材の切断又は溶接加工は、最もよく見られる解決案であり、機械軸を利用してレーザ発振器(即ち、加工を実施するためのレーザ出力部材、その機能に基づいて業界内での通称は切断レーザヘッド又は溶接レーザヘッド等である)から放出された集束ビームを切断又は溶接対象のワークに対して相対的に移動させることで、必要な加工動作を完成させ、レーザと加工対象平面の位置合わせ(又は高さ調整とも称される)は、レーザ装置に統合される位置合わせモジュール又は多軸加工センタのZ軸によって実現される。レーザ発振器は、一般に専用の産業用インタフェース(QBHなど)を介してレーザ発生装置の光出力端子に直接接続され、コリメート、ビーム拡張、焦点合わせ及び集束等の外部光路機能を高度に統合した重要な機能部材である。モジュール化されたレーザ発振器とレーザ発生装置の光出力端子との直接接続によって、機器の組み立てが簡単化され、システムの信頼性が向上するだけでなく、さらに重要なこととしては、機械的な動作構造と光路構造を簡単化することであり、レーザ発振器の回転運動及びピッチング動作によって集束ビームの射出方向に直接角度の変更を実現することができ、更に比較的大きな加工の自由度を達成する。また、高度に統合された光出力端子とレーザ発振器によって空間自由光路を最大限に短縮し、外乱によるビーム指向精度への悪影響を極力回避し、加工精度の向上に貢献する。この種の解決案は、レーザ焦点方向の広範囲の自由な変更を実現できるが、この解決案は、回転ステージでのレーザ回転の半径偏差による集束光スポットの位置決め誤差を大幅に増幅し、且つこの種の解決案は、レーザ発生装置の光出力端子がレーザ発振器に従って自由空間で共に任意に移動できることが求められるため、曲げたり引っ張ったりできる特性を持つ光ファイバを使用してレーザ発振器と光出力端子とを繋いだ光ファイバ接続レーザ又はマイクロ秒、ナノ秒レベルの光ファイバパルスレーザ光源であって初めてその技術案に使用することができるが、光ファイバが自由に曲げたり引っ張ったりできない光ファイバ超高速レーザ発生装置及び光ファイバを介して光伝送しない半導体レーザ発生装置等がレーザ光源を提供する場合、当該技術案を使用することができない。
【0003】
レーザ焦点方向の広範囲な変更の自由度を考慮し、回転位置決め誤差を最小限に抑えるため、多軸加工センタのデバイスに適用される偏心揺動構造を有する装置は、加工軸系が「XA及びYZB」である多軸レーザ加工に適用され、この種の解決案は、比較的小さい回転半径を有し、更に集束光スポットの回転位置決め誤差を大幅に低減できる。通常のパルスレーザでは実現可能であるが、超高速レーザでは技術的条件の制限を受け、その光ファイバの可動特性が不十分であり(許容曲げ半径が大きすぎ、光ファイバの最大全長が短すぎる)、揺動機構に取り付けることができず、これにより、5軸加工センタに超高速レーザを統合して加工することが困難になる。この問題を解決するために、一部のビームを、回転ステージの中心を通過させた後、回転ステージの中心に配置したリフレクタによって射出する飛行光路の技術案が提出されており(例:CN202020298469.9及びCN202020298514.0)、この一連の技術案では、レーザビームが調整された後、回転ステージの回転軸と同軸となるため、回転ステージの光路部分が回転ステージでどのように回転しても、ビームは常に回転ステージの回転軸線に位置するリフレクタ上の同じ点に同じ方向で入射し、回転ステージから射出するレーザビームの回転ステージの回転中心軸線との挟み角が一定となる。但し、正確に調整できない場合、又は加工センタの稼動中に発生する様々な応力、振動、弾性変形および温度等の要因により、レーザビームと回転ステージ中心が同軸を維持できなくなった場合、回転ステージの回転によりレーザが回転ステージ中心のリフレクタを経て射出するレーザビームは、回転に伴って角度の偏りや位置の偏移(後者を「ずれ」と称する)を生じ、最終的にワークに作用するレーザスポットにずれが生じ、加工精度が低下し、精密加工の要求を満たすことができなくなる。
【0004】
一方、機械軸の代わりにガルバノメータなどの光学装置を使用してビーム焦点方向を変更することも一般的な解決案であり、この技術案は、通常レーザ光源に対する特別な要件がないため、フロントフォーカスガルバノメータなどの技術改良案もあるが、一般的に焦点ビームは限られた角度内でしか調整できず、産業用途におけるレーザ焦点方向の広範囲な変更の自由度の要求を満たすことが困難である。もう1つの明確な問題は、焦点距離に制限があることであり、ガルバノメータ加工案では、フロントフォーカスガルバノメータであっても、リアフォーカスガルバノメータであっても、より大きな加工幅を得るには、より大きな直径とより長い焦点距離(即ち、作動距離)の集束レンズ(フィールドレンズ)を設置する必要があり、より大きな直径の集束レンズ(フィールドレンズ)は、製造が難しくコストがかかるだけでなく、作動距離が長いとレーザの指向精度が低下して加工システム全体の加工位置決め精度を低下させるため、ガルバノメータを用いて大規模・大角度・高精度のレーザフリー加工を実現するには、多くの場合でコストが過度に高くなり、実施が難しくなっている。
【0005】
一方、多軸の機械構造を用いて加工対象物の角度を変えることは、レーザ精密加工において最も主要な解決案であり、この解決案は、一般的にレーザが垂直下向きに照射するように固定し、ワークを回転揺動ステージに配置し、ワークのピッチング運動及び回転運動等を制御することによってレーザがワークに作用する方向を調整し、即ち、レーザの焦点方向を変更することに相当する。この方式は、実質的にレーザ光路を変更せずに最も高いビーム指向精度を有し、ガルバノメータなどの光学装置の配置や光路短縮などの利点も併せ持ち、加工の自由度を更に広げることができる。したがって、この解決案は、現在、超硬材料のレーザ加工などの高度精密加工分野で最も広く使用されている。ただし、この解決案は、多軸機械構造の設置によって制限され、汎用性がなく、特に長軸部品の加工に使用する場合、部品の長さによって部品の回転半径が増幅され、回転位置決め誤差の増幅を招く。
【0006】
従って、一般に、技術者は高精度の大角度レーザ加工のための多くの技術的手段を開発したが、現在のレーザ加工において、より大きなビーム指向の自由度とより優れたビーム指向位置決め精度を如何にして兼ね備えるかは、依然として解決が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の1つの目的は、超高速レーザ光路の回転中に応力、振動、弾性変形、温度などの要因によって引き起こされる偏差を排除し、精密加工の要求を満たすレーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法を提供することである。
【0008】
本発明のもう1つの目的は、回転ステージが回転してレーザに指向を変化させる時、レーザのワークに対する指向をプリセットに合わせて安定を維持させ、精密加工の要求を満たすレーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法を提供することである。
【0009】
本発明の更にもう1つの目的は、回転ステージが回転してレーザに指向を変化させる時、レーザのワークに作用する光スポットの形状に安定を維持させ、精密加工の要求を満たすレーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法を提供することである。
【0010】
本発明のまたもう1つの目的は、レーザ偏差に対する補正を実施し、レーザが指向する方向が30°以上変化した場合にレーザのワークに対する指向が依然としてプリセットに適合し、ワークに作用する光スポットの形状も安定を維持し、精密加工の要求を満たすレーザ指向変化時に経路偏差を補正する装置を提供することである。
【0011】
本発明の第5の目的は、多軸加工センサ、特に、レーザ指向変化時に経路偏差を補正する装置を有する多軸工作機械を提供し、精密加工の要求を満たし、加工精度を向上させ、コスト増加も効果的に抑えることができ、特に、長軸系部品自体の回転半径が大き過ぎることにより加工精度が低下する問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一般に理解されているように、レーザは、原子が刺激を受けて輻射した光であり、原子内の電子がエネルギーを吸収し、低いエネルギーレベルから高いエネルギーレベルにジャンプし、その後、高いエネルギーレベルから低いエネルギーレベルに戻る時、放出されたエネルギーは光子の形で放出される。レーザの形態は、連続レーザとパルスレーザに分けられる。レーザのパルス幅特性によりホットレーザとコールドレーザに分けられる。
【0013】
レーザ発振器は、ナノ秒、フェムト秒、またはピコ秒レーザなどであり、生成するレーザは、赤外線、青色光、緑色光、紫色光または極紫光などであるが、これらに限定されない。
【0014】
超高速レーザとは、出力レーザのパルス幅が数十ナノ秒以下、即ち、ピコ秒レベル以下のパルスレーザを指す。超高速レーザに関与するコア部材は、発振器、ストレッチャ、増幅器及びコンプレッサ等を含む。
【0015】
機械加工において、いわゆるワークとは、通常、部品又は部材を製造するために使用される材料または半完成品であり、機械加工の過程中の加工対象である。即ち、ワークを機械加工した後、加工または設計の要件を満たす製品が得られる。
【0016】
精密機械加工とは、加工精度と表面品質が極めて高いレベルに達する加工技術のことである。例えば、工具加工では、サイズ、直線度、輪郭、表面粗さ、刃先の円弧半径、加工精度などが何れもミクロンレベルを超えている。
【0017】
シャフトワークは、直径の3倍以上の長さを有する。
【0018】
機械加工デバイス(又は機械加工センタ)は、複数の動作軸を備えた加工デバイスである。即ち、右手直交座標系では、直線方向の移動に沿うX、YおよびZ軸と、それぞれX、YおよびZ軸を中心に回転するA、BおよびC軸がある。
【0019】
CNC工作機械などの加工デバイスは、通常、各制御ソフトウェアが搭載されており、コード形式で各命令を送受信してワークの自動加工を実施する。
【0020】
本発明では、超高速レーザから発せられたレーザは、まずキャビティの一部に入り、次にキャビティから射出された後、レーザ投射中継部材に入り、レーザ投射中継部材がレーザの光路を変更してレーザを射出し、最後に光射出部材が受け取った後に射出し、ワークに対して加工を実施する。レーザは、キャビティ内を伝播し、キャビティの出口端で直線に沿って伝播し、光射出部材から射出されたレーザは、前記回転軸範囲内に集束し、即ち、レーザビーム集束光スポットは、回転軸を中心とした半径100mmの円柱形空間内に入る。
【0021】
本発明では、キャビティは、回転ステージに設置され、回転ステージ回転軸と同軸の軸線を有する。レーザは、キャビティ内に入射され、直線に沿って前方に伝播するが、回転ステージ回転軸の延伸方向(平行または同軸を含む)に沿って前方に伝播するように事前に設定されている。レーザ投射中継部材は、回転ステージに設置され、回転ステージの駆動を受けて回転する。第1リフレクタも同様に回転ステージの回転に伴って回転し、第1リフレクタを介して反射したレーザが施行する方向を変化させ、例えば、レーザ投射中継部材に入射して射出する際、この間にレーザの指向が30°以上回転する。
【0022】
精密加工の要求を満たすために、レーザは直線に沿って前方に伝播すると同時に、回転軸(例えば、回転ステージの回転軸など)との交差角を0~5°に保つ必要があり、最も好ましくは、平行または同軸などの0°である。したがって、射出後、レーザ投射中継部材に入る伝播経路も事前に設定される。
【0023】
レーザ投影中継部材は、レーザを少なくとも1回反射して、レーザのビーム方向を変更する。
【0024】
光射出部材は、フィールドレンズ、ガルバノメータ、集束レンズ、ビームエキスパンダ及びリフレクタのうちの少なくとも1つを含み、これらは市販で得られるか、従来のレーザから取得される。
【0025】
絞りは、光学系のビームを制限する部材を指す。これは、レンズの辺縁、フレーム又は設置された穴あきスクリーンであってよい。その主な作用は、ビームを制限すること、または視野(結像範囲)のサイズを制限することである。光学系においてビームを最も制限する絞りは、孔径絞りと呼び、視野(大きさ)を最も制限する絞りを視野絞りと呼ぶ。レーザ分野では、絞りは一般に光路を予備調整するために使用されるか、ビームを形成するための空間フィルタの一部として使用される。
【0026】
ガルバノメータに入射する前のレーザ光路は、回転ステージ回転軸線と設定距離及び設定挟み角を有し、応力、振動、弾性変形、温度および回転誤差などの要因により、ガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージ回転軸中心線の実際の距離及び実際の挟み角が設定距離及び設定角度の偏差が過度に大きい場合、回転ステージの回転は、余分なレーザ位置決め誤差を招き、即ち、位置ずれを生じる。
【0027】
実際の使用条件下では、応力、振動、弾性変形、温度及び回転誤差などの要因により、回転ステージ回転中に回転ステージを通過するレーザは、回転ステージ回転軸線と本来の角度及び距離(例えば、同軸)を維持できなくなり、レーザの伝播に偏向およびずれが生じる。ずれを生じたレーザがレーザ投射中継部材を介して方向を変えた後、プリセットされたレーザ伝播経路とのずれの程度が更に拡大する。
【0028】
本発明の方法の実施時、回転軸がA軸、B軸、またはC軸であり、光射出部材が射出したレーザを(回転ステージ)回転軸を中心に回転する方向に分布させ、レーザ光路が回転運動により指定角度に位置決めして機械加工を実施することを実現する。
【0029】
本発明の方法の実施時、回転ステージ、回転ステージに設置されるレーザ投射中継部材及び光射出部材は、直線軸に沿って同期して移動し、回転軸を中心に回転する方向に分布したレーザを命令に基づいて直線に沿って同期移動させてワークの機械加工を実施する。
【0030】
本発明の方法は、レーザの伝播経路上に絞りを設置し、具体的には、レーザがキャビティから射出した後、光射出部材に入射する前の伝播経路の一部に設置する。この部分の経路では、レーザは少なくとも1回反射され、レーザが光射出部材に入射する前に、絞りの作用を受け、絞りがずれを生じたレーザビームをブロックし、ずれていないレーザビームが通過して伝播を継続できるようになり、これにより、レーザの速度をプリセットされた伝播経路に適合させる。
【0031】
本発明の方法は、ガルバノメータに入射する前のレーザ光路も補償できる。補償後、ガルバノメータに入射する前のレーザ光路は、回転ステージの回転軸中心線と第2距離及び第2挟み角を有し、第2距離と設定距離を比較し、差値が1μm以下であり、第2挟み角と設定挟み角を比較し、差値が0.05mrad以下である場合、(補償後)ガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージの回転軸中心線の相対位置は、維持される。
【0032】
本発明の方法を実施するため、レーザ発振器が射出したレーザは、キャビティの一端から入射し、他端で射出するまで直線方向に沿って伝播し、偏向を生じないものを選択することが好ましい。直通空間を有するキャビティを採用することができ、例えば、管状、円錐状及び円錐台形状の穴又は空洞などであるが、これらに限定されない。
【0033】
レーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法は、レーザが回転ステージの回転に従って、指向方向を変化させる時、反射により伝播方向が変化したレーザを絞りに向かって伝播し続けさせ、絞りを通過したレーザビームをプリセット経路に沿って伝播し続けさせる。
【0034】
ガルバノメータなどの光学機器を接続する必要がある場合、通常、ガルバノメータに入射するレーザの方向を調整するために、絞りを通過したビームを再度反射させる必要がある。
【0035】
もう1つのレーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法は、レーザが回転ステージの回転に従って、指向方向を変化させる時、反射により伝播方向が変化したレーザを絞りに向かって伝播し続けさせ、絞りを通過したレーザビームをプリセット経路に沿って伝播し続けさせ、再度反射させて伝播方向を変化させる。
【0036】
回転ステージの回転に従ったレーザは、まず回転する回転ステージのキャビティから射出され、少なくとも1回の反射を経て伝播方向を変え、その後絞りに向かって伝播し続けるため、絞りを通過したレーザビームをプリセット経路に沿って伝播し続けさせる。
【0037】
本発明の方法で補正されたレーザは、絞りを経た後のビームをプリセット経路に沿って伝播させるだけでなく、回転ステージの任意の角度においてガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージ回転軸線との間の設定距離と設定角度を維持することができ、ワークに対するレーザの指向をプリセット要求に適合させ、ワークに作用する光スポット形状も安定を維持し、精密加工の要求を満たすことができる。
【0038】
レーザのワークに対する指向がプリセット要求を満たす安定性、及びワークに作用する光スポット形状の安定性を向上させるため、レーザビームがキャビティに入射される前に予備補正を行い、レーザビームを回転ステージ回転軸の延伸方向(平行または同軸を含む)に沿って前向きに伝播させる。即ち、先ずレーザビームを調整し、回転ステージ回転軸とできるだけ同軸または平行な状態にさせる。または、閉ループ指向制御を行い、即ち、ビームが絞りを通過する前に、高速反射ミラーとセンサを介してワークへのレーザの指向をリアルタイム閉ループ調整する。
【0039】
センサは、レーザがセンサ部材に接触した時のレーザの入射角度情報とセンサ部材上のレーザの位置情報を含むレーザの入射情報を感知するために使用される。通常、位置情報としては、センサ部材上のレーザの光スポットが位置する2次元座標系の情報が用いられる。レーザビームはセンサ上に設定位置情報を有するが、応力、振動、弾性変形、温度及び回転誤差などの要因により、レーザビームのセンサにおける実際の位置は設定位置と偏差を生じる。センサは、入射したレーザを感知した後、位置情報を取得し、実際の位置を知り、設定位置と偏差を発生しているか、及び補償するかどうかの基準を提供する。センサにおいて、通常、少なくとも1つのセンサ部材を有するが、より多くのレーザ入射情報を取得するため、2つ以上のセンサ部材を使用することがより良い選択である。
【0040】
設定位置情報は、デバッグ後に設定され、精密加工の要求を満たすことができる情報として理解すべきである。例えば、レーザビームの集束光スポットと回転ステージ回転軸線の距離は、常に維持され、即ち、回転ステージが任意の角度で回転しても、集束光スポットから回転ステージ回転軸線までの距離の偏差は1μm以下である。(補正後)レーザビームがガルバノメータに入射し、集束光スポットから回転ステージ回転軸線までの距離の偏差が1μm以下の場合、レーザ光路の回転誤差は解消されていると考えられる。
【0041】
本発明の方法は、回転ステージが回転する時、センサがレーザ情報(例えば、回転ステージからの射出の情報、回転ステージからの入射の情報)を受信し、レーザの入射情報を感知して、リアルタイムの入射情報を制御器に送信し、制御器は、このリアルタイム入射情報と設定位置情報を比較してオフセット値を求め、オフセット値が設定した閾値を超えた場合、反射機構を駆動してリアルタイムにレーザ光路を調整して補償し、補償後のガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージ回転軸中心線との相対位置を維持させる。
【0042】
センサは、通常、回転ステージからレーザが入射または射出される端に設置され、レーザ情報を受信する。射出端に設置した場合は回転ステージに伴って回転ステージ回転軸線を中心に回転してレーザ情報を受信し、特にリフレクタよりも後に設置した場合はリフレクタで屈折したレーザ情報を受信する。
【0043】
反射機構は、通常、少なくとも1つの高速反射ミラーを含み、超高速レーザからのレーザと、制御器の命令を受信し、リフレクタを調整し、レーザ光路を補償する。
【0044】
もう1つのレーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法は、回転ステージが回転する時、レーザが回転ステージから射出又は入射する一端にセンサを設置し、レーザ情報を受信し、リアルタイム入射情報を制御器に送信し、制御器は、リアルタイム入射情報を設定位置情報と比較し、オフセット値を取得し、オフセット値が設定した閾値を超える場合、高速反射ミラーを駆動する。
【0045】
高速反射ミラーは、超高速レーザから射出されたレーザを反射し、制御器からの命令を受けて、レーザ光路に対して補償を行い、補償後にガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージ回転軸中心線との相対的な位置関係を維持させる。
【0046】
もう1つのレーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法は、回転ステージが回転する時、レーザが回転ステージから射出又は入射する一端にセンサを設置し、レーザ情報を受信し、リアルタイム入射情報を制御器に送信し、制御器は、リアルタイム入射情報を設定位置情報と比較し、オフセット値を取得し、オフセット値が設定した閾値を超える場合、高速反射ミラーを駆動する。
【0047】
高速反射ミラーは、回転ステージから射出されたレーザを反射し、制御器からの命令を受けて、リフレクタの角度を調整して回転ステージの回転によるレーザ光路(発生する偏差)を補償する。
【0048】
本発明の方法は、複数の動作軸を有する加工デバイス(例えば、3軸工作機械、4軸工作機械、5軸工作機械など)に適用され、回転ステージの回転、応力、振動、弾性変形、温度および回転誤差などの要因によって集束後のレーザ指向及び光スポット位置に対する影響を排除し、回転ステージを任意の角度で回転させた場合でも、集束後のレーザの光スポットと回転ステージ面上の回転軸中心までの空間距離を維持させる。
【0049】
上記の方法を実施し、本発明の方法を機械加工デバイスに適用し易くするため、本発明は、更に、レーザ指向変化時に経路偏差を補正する、
回転運動を実施し、レーザの光路の伝播を収容するキャビティを含む回転ステージと、射出するレーザがキャビティを経て回転ステージを通過する超高速レーザと、
回転ステージに設置され、回転ステージに伴って回転ステージの回転軸線を中心に回転し、キャビティの射出端からのレーザを受け取り、レーザの光路の方向を変化させた後、レーザを射出し、少なくとも第1リフレクタ及び第2リフレクタを含むレーザ投射中継部材と、
第1リフレクタから反射されたビームを受け取る絞りと、
を含む装置を提供する。
【0050】
本発明の装置は、回転ステージ上に配置され、回転ステージとともに回転ステージの回転軸線を中心に回転し、レーザ投射中継部材から射出されるレーザを受け取って、回転軸の範囲内に集光する光射出部材を更に含む。
【0051】
本発明の装置は、
レーザのリアルタイム入射情報を取得するセンサと、
センサが発するリアルタイム入射情報を受信し、プリセット位置情報と比較して位置オフセット値を取得する制御器と、
超高速レーザから射出されるレーザを受け取り、制御器の命令を得た後、反射後のレーザ光路を補償する反射機構と、
を更に含む。
【0052】
本発明の装置において、反射機構は、少なくとも1つのリフレクタを含む。但し、より優れたレーザ光路補償解決案を得るために、2つのリフレクタが必要である。さらに、各リフレクタは、単独のフレームに配置され、各リフレクタに少なくとも2つの調整可能な自由度を持たせ、即ち、少なくとも2つのリフレクタによって4つ以上の自由度を提供し、レーザ補償解決案を実施する。
【0053】
反射機構の具体的な実施方式は、第3リフレクタ及び第4リフレクタを含み、第3リフレクタは、レーザを受け取った後、レーザを第4リフレクタに反射し、第4リフレクタがレーザを受け取った後、レーザをキャビティに向かって反射する。
【0054】
本発明の装置は、レーザ投影中継部材は、両面研磨レンズである少なくとも1つのリフレクタを含む。第2リフレクタから反射したレーザを受け取り、キャビティの射出端からレーザを直接受け取り、レーザの光路方向を変化させた後、ガルバノメータの入射レーザとして使用することができる。
【0055】
リフレクタの後にセンサを設置し、リフレクタを利用してビームを屈折(透過)し、レーザ光スポットを観察及び検出し、レーザのリアルタイム入射情報を取得する。
【0056】
反射したレーザをガルバノメータの入射レーザとして使用しやすくするために、複数のリフレクタを更に設置し、反射するレーザ光路を調整することもできる。
【0057】
本発明が提供する装置において、回転ステージは、例えば、インナロータ回転ステージ、アウタロータ回転ステージ、機械伝動回転ステージ及びダイレクトドライブ回転ステージ等であるが、これに限定するものではなく、キャビティを設置するため、内部が中空である。回転ステージ内に設置するキャビティは、外壁を有するか、ロータ内の中空構造の内壁をキャビティの外壁として利用し、この場合、キャビティは、回転ステージ内の中空構造であり、装置が占める空間を減少する。
【0058】
本発明が提供する装置において、レーザ投射中継部材、光射出部材及び中空回転ステージは、同期して回転する。具体的には、光射出部材は、レーザ投影中継部材に接続され、中空の回転ステージによって駆動され、回転軸を中心に回転する。
【0059】
本発明が提供する各種装置を加工デバイスに取り付け、例えば、3つの直線動作軸、ワークを固定する回転動作軸及びレーザビーム回転軸を互いに組み合わせて5軸レーザ加工解決案を形成し、多軸でワークを加工し、複雑かつ多様な構造の製品の製造を実現することができる。例えば、工作機械には少なくとも3つの直線軸があり、1つの直線軸には、本発明の装置が取り付けられ(例えば、X軸とZ軸で決まる平面上に設置し、Z軸に沿って直線移動する)、もう1つの直線軸には、回転位置決め機構が取り付けられ、加工対象物の回転の位置決めを駆動し(例えば、ワークをX軸およびY軸によって決まる平面に設置する)、応力、振動、弾性変形、温度上昇および回転誤差等の要因による集光後のレーザ指向及び光スポット位置に対する影響を除去し、回転ステージを任意の角度において、集光後のレーザの光スポットから回転ステージ面上の回転軸中心までの空間距離を変化させず、レーザ加工の精密度を向上させ、各種仕様の部品にレーザ加工を実施できるようにする。
【0060】
また、本発明の装置の回転ステージを直線軸上に設置した加工デバイスもあり、装置が直線移動すると光射出部材が射出するレーザの集束光スポットが直線移動し、光射出部材が回転軸を中心に回転するとレーザの光スポットが回転面上に分布し、各種ワークの加工に適応する。
【発明の効果】
【0061】
本発明の技術案が実現する有益な効果は、以下のとおりである。
本発明が提供する方法は、レーザが回転ステージの回転に従って、レーザ指向変化時に絞りで伝播経路を補正し、回転によってずれ(例えば、レーザ指向の偏差)を生じた部分のビームを選択的に除去し、絞りを通過したレーザビーム(即ち、ずれていないプリセット伝播経路)にプリセット経路に沿って伝播を継続させ、反射を経て伝播方向を変更し、レーザにワークに対する指向をプリセットに適合するように維持し、ワークに作用する光スポット形状にも安定を維持させ、精密加工の要求を満たすことができる。
本発明が提供する方法は、センサを通じてレーザの光スポットの位置と指向情報をリアルタイムに感知し、制御器を通じて反射機構を調整してレーザ光路に発生するオフセットを補償し、回転ステージの回転、応力、振動、弾性変形、温度上昇や回転誤差などによる集光後のレーザの指向及び光スポット位置に対する影響を除去し、回転ステージが任意の角度において、集束後のレーザの光スポットと回転ステージ面上の回転軸の中心との間の空間距離が変化しないため、レーザ加工の精度を向上させる。
本発明が提供する方法は、超高速レーザのレーザヘッドを垂直に取り付け、下方に向け、加工デバイスに超高速レーザを統合し、レーザの精密加工を実施し易くする。
本発明が提供する装置は、絞りをレーザ投射中継部材の隣接する2つのリフレクタの間に設置し、回転ステージの回転、応力、振動、弾性変形、温度上昇及び回転誤差などの要因によるレーザがプリセットからずれた伝播経路を補正し、従来の加工デバイスに低コストの改造を行って超高速レーザを加工デバイスに統合し、レーザの精密加工実施に役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】従来のレーザ加工に使用される装置の一実施形態の説明図である。
図2】従来のレーザ加工に使用される装置のレーザ光路の一実施形態の説明図である。
図3】従来のレーザ加工に使用される装置のレーザ光路の別の実施形態の説明図である。
図4】本発明の方法の-実施形態の説明図である。
図5図4に示す絞り角の拡大説明図である。
図6】本発明の方法を実施するための装置の一実施形態の説明図である。
図7】本発明の方法を実施するための装置の別の実施形態の説明図である。
図8】本発明の装置を用いてワークを加工する時のワーク表面のレーザマーキングの説明図である。
図9】本発明の装置の絞りを除去した後のワーク表面のレーザマーキングの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
以下では、本発明の技術案を図面と併せて詳細に説明する。本発明の実施形態は、本発明の技術案を説明するものであって、限定するものではない。好適な実施形態を参照して本発明を詳細に説明するが、当業者であれば理解できるように、発明の技術案に対して修正又は均等の置き換えをすることができ、本発明の技術案の精神及び範囲を逸脱しなければ、本発明の特許請求の範囲に含まれるべきである。
【0064】
本実施形態が提供するレーザ加工方法では、レーザ発振器が射出したレーザは、先ずキャビティの一部に入射し、キャビティから射出された後、レーザ投射中継部材に入射し、レーザ投射中継部材がレーザの伝播経路を変化させた後にレーザを射出し、最後に光射出部材によって受け取った後に射出され、ワークに対して加工を実施する。レーザは、キャビティ内で伝播するか、直線に沿って伝播するか、折り曲げ線に沿って伝播する。レーザは、キャビティの出口端で直線に沿って伝播し、右手直交座標系において、回転軸がA軸、B軸又はC軸であり、光射出部材から射出されたレーザを、回転軸を中心に回転する方向に分布させ、レーザを前記回転軸範囲内、即ち、回転軸を中心に半径100mmの回転(円)面内に集光させ、特に、回転軸線上に集光させる。回転軸の回転によりレーザの指向方向を変えて機械加工を実施する。本実施形態では、キャビティがY軸方向であり、回転軸がB軸であり、光射出部材がB軸を中心に回転する。
【0065】
図1は、従来のレーザ加工を行う装置の一実施形態の説明図である。図1に示すように、この装置は、レーザ発振器100、キャビティ200、レーザ投影中継部材700、光射出部材300および回転ステージ400を含む。
【0066】
レーザ発振器100は、キャビティ200の一端に配置され、レーザ発振器100から射出されたレーザ110は、キャビティ200に入射する。本実施形態において、キャビティ200は直管状であり、レーザ発振器100から射出されたレーザ110は、キャビティ200に入射後、偏向することなく直線方向に沿って伝播し、回転ステージ400の回転軸と同軸又は平行に、他端から射出される。レーザ投影中継部材700の作用により、キャビティ200から射出されたレーザが方向に変化を生じた後、光射出部材300で受光され、射出されたレーザ310は、回転軸410範囲内に集光されてワークに対する加工を実施する。
【0067】
本実施形態では、レーザ投射中継部材700は、第1反射機構710と第2反射機構720を含み、第1反射機構710は、レーザ投射中継部材に入射したレーザを受光し、レーザを第2反射機構720の方向に反射し、第2反射機構720が第1反射機構710から反射されたレーザ730を受光した後、レーザ730を再度反射し、レーザをレーザ投射中継部材に射出する。
【0068】
レーザ投射中継部材700は、回転ステージ400で駆動され、回転軸410を中心に回転し、キャビティの射出端からレーザを受け取り、レーザの光路方向に変化を発生させた後、レーザを射出する。光射出部材300が回転軸410を中心に回転し、機械加工を実施するレーザビーム310を射出する。
【0069】
右手直交座標系では、回転ステージ400は、Y軸の周りを回転し、その回転の中心となる軸はB軸(図示せず)である。キャビティ200は、B軸と同軸の軸線(図ではレーザ110と同軸、図示せず)を有する。光射出部材300は、B軸を中心に回転するため、射出されるレーザ光はB軸方向を中心に分布し、レーザが回転加工を行うことができる。キャビティ200は、回転ステージ400内に設置され、回転ステージ400内の一部が直管中空キャビティに位置し、キャビティの軸線は、B軸と同軸であり、回転ステージの回転対称軸とも同軸である。
【0070】
中空回転ステージ400が回転しても、その内部に設置されるキャビティ200は移動しないので、キャビティ200を通過したレーザ110は、直線方向に沿って伝播し、偏向を発生せず、常に光射出部材300で受け取られる。光射出部材300がB軸を中心に回転し続けると、B軸回転方向を中心にレーザの分布が形成される。
【0071】
この種の装置に多軸系の機械加工デバイスが装備された後、キャビティに入射するレーザ光路110と回転ステージの回転軸410との間の交差角度が0~5°に維持されると、回転ステージが回転するにつれて、レーザ投影中継部材と光射出部材も回転軸410を中心に回転し、機械加工に使用するレーザは、光射出部材300から射出され、回転ステージ回転軸線410を中心に回転する。レーザ投影中継部材は、回転ステージに従って回転し、レーザ指向を変化させ、例えば、1°、5°、10°、20°、30°、40°、50°、60°、70°、80°、90°以上である。実際の製造においては、必然的に発生する応力、振動、温度および弾性変形などの要因により、回転ステージ回転中にレーザが回転ステージ回転軸軸方向に伝播しなくなり、レーザ伝播にずれが生じる。ずれを生じたレーザがレーザ投射中継部材を介して方向を変えた後、設定されたレーザ伝播経路とのずれの程度がさらに拡大し、光射出部材が発するレーザ310にずれを発生させ、レーザ加工精度に影響を与える。図2および図3は、従来のレーザ加工に使用される装置のレーザ光路の別の実施形態の説明図であり、リレー部材及び光射出部材が回転ステージに伴って回転する時、キャビティに入射するレーザ光路110と回転ステージの回転軸410が同軸状態になっていない場合、光射出部材300が発したレーザは同じ位置に照射することができないことを模式的に示している。そのため、依然として経常的に光路を再調整し、ガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージ回転軸中心線の実際の距離及び実際の挟み角が設定距離及び設定挟み角からずれている場合に調整を行う必要があり、多くの時間を浪費し、コスト制御に不利である。
【0072】
このため、本実施形態は、レーザ指向変化時に経路偏差を補正する方法を提供し、回転ステージ400から射出されたレーザは、少なくとも1回の反射を経て伝播方向を変えた後、引き続き絞りに向かって伝播し、絞りを通過したレーザビームをプリセット経路に沿って伝播し続けさせる。図4は、本発明の方法の一実施形態の説明図であり、図5は、図4に示す絞り角度の拡大説明図である。図1と組み合わせ、図4および5に示すように、レーザ投射中継部材は、回転ステージ400の作用下で同期して回転し、動作中に応力、振動、温度および弾性変形などの要因によってビーム762に影響を与え、ビーム761は、ずれを生じた後、ビーム762となる。ビーム761,762が第1リフレクタ731で反射された後、絞り750に向かって伝播し、絞り750を介してプリセットされた伝播経路に適合するレーザビーム760が得られ、即ち、反射によって伝播方向が変更され、例えば、反射によって伝播方向が変更した後、光射出部材300に入射し、プリセット伝播経路からずれたビームを補正し、レーザが回転ステージに同期して回転し、伝播方向が180°以上変化する時、ワークに対するレーザの指向がプリセットに適合し、ワークに作用する光スポット形状も安定を維持し、精密加工の要求を満たすことができる。
【0073】
図6は、本発明法を実施するために使用される装置実施形態の説明図である。図6に示すように、本実施形態の装置は、回転ステージ400、超高速レーザ120およびレーザ投影中継部材700を含む。回転ステージ400は、中空であり、レーザの伝播を収容するキャビティを含む。超高速レーザ120は、ブラケット600に取り付けられ、射出されたレーザ121は反射機構800で反射されて方向を変え、キャビティ200内に入射し、キャビティ200の出口端では、レーザ121は直線に沿って伝播する。
【0074】
レーザ投射中継部材700は、回転ステージ400上に配置され、回転ステージ400に伴って回転ステージ回転軸線を中心に回転し、キャビティの射出端からレーザを受け取り、レーザの光路方向に変化を生じさせた後、少なくとも第1リフレクタ731と第2リフレクタ721を含むレーザを射出する。絞り750は、第1リフレクタ731と第2リフレクタ721との間に設置され、第1リフレクタ731の反射により伝播方向が変化した後、絞り750に向かって伝播し続け、絞り750を通過したレーザビームをプリセット経路に沿って伝播し続けさせる。レーザがレーザ投影中継部材に入射して射出するまで、レーザ伝播角度の変化の総和は、180°以上に達する。レーザは、レーザ投影中継部材700の作用を受けて方向を変えた後、光射出部材のガルバノメータ320によって受け取られる。光射出部材は回転軸を中心に回転し、回転軸範囲に集光する。
【0075】
レーザのワークに対する指向が事前に設定された要件を満たす安定性およびワークに作用する光スポット形状の安定性を向上させるため、レーザビームがキャビティに入射する前に予備補正を行い、レーザビームを回転ステージ回転軸の延伸方向(平行または同軸を含む)に沿って前向きに伝播させる。即ち、レーザビームを予め調整し、回転ステージ回転軸とできるだけ同軸または平行な状態にさせる。または、閉ループ指向制御を行い、即ち、高速反射ミラーおよびセンサを介してレーザのワークに対する指向をリアルタイムに調節する。例えば、回転ステージが回転する時、センサも回転ステージとともに回転ステージ回転軸線を中心に回転し、回転ステージのレーザが射出する一端にセンサを設置し、レーザ情報を受け取り、リアルタイム入射情報を制御器に送信し、制御器は、リアルタイム入射情報と設定位置情報を比較し、オフセット値を求め、オフセット値が設定閾値を超える場合、反射機構を駆動する。
【0076】
反射機構は、超高速レーザからのレーザを受け取り、制御器の指示を得た後、レーザ光路に対して補償を行い、補償後のガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージ回転軸中心線の相対位置を維持する。
【0077】
図7は、本発明の方法を実施する装置の別の実施形態の説明図である。図7に示すように、ロータの中空構造の内壁がキャビティの外壁として利用され、キャビティ200が回転ステージ内の中空構造キャビティである。超高速レーザ120は、ブラケット600上に配置され、射出されたレーザ121は、反射機構800によって反射された後に方向を変え、再びキャビティ200内に入射し、キャビティ200の出口端で、レーザ121は、直線に沿って伝播する。レーザは、レーザ投影中継部材700の作用を受けて方向を変えた後、光射出部材のガルバノメータ320によって受信される。光射出部材は、回転軸を中心に回転し、回転軸範囲内に集光する。
【0078】
レーザ投影中継部材は、少なくとも1つのリフレクタ系両面研磨レンズを含む。本実施形態では、レーザ投射中継部材は、第2リフレクタ721と第1リフレクタ731に設置される。具体的には、第1リフレクタ731がレーザを受け取った後、レーザを反射してビームを絞り750に向かって伝播させ、絞り750を通過した後、伝播経路は、設定された経路に適合し、第2リフレクタ721に向かい、第2リフレクタ721がレーザを受け取った後、レーザをガルバノメータに向けて反射する。
【0079】
センサ900は、第2リフレクタ721の後ろに位置し、リフレクタを透過した光を使用してキャビティの射出端からのレーザ光スポットを検出し、レーザのリアルタイム位置情報を取得する。制御器(図示せず)は、センサ900によって送信されたリアルタイム位置情報を受信し、プリセット位置情報と比較して、位置オフセット値を取得する。位置オフセット値が閾値を超えた場合は、レーザ光路と回転ステージ回転軸との相対位置が維持できないことを示し、反射機構に命令を発する。本実施形態では、2つのセンサ部材を使用してレーザの入射角度情報、及びセンサ部材上のレーザの位置情報を取得し、より多くのレーザ入射情報を取得する。
【0080】
反射機構800は、制御器からの命令を受信した後、超高速レーザから受け取ったレーザを調整し、ガルバノメータに入射するレーザ光路740と回転ステージ回転軸中心線の相対位置が維持されるように、レーザ光路の変化をリアルタイムに補償する。本実施形態では、反射機構800は、第3リフレクタ810と第4リフレクタ820を含み、各リフレクタは、単独のフレーム上に配置され、各リフレクタにいずれも少なくとも2つの調整可能な自由度を持たせ、即ち、少なくとも2つのリフレクタによって4つ以上の自由度を提供し、レーザ補償技術案を実施する。具体的には、第3リフレクタ810がレーザを受け取った後、第4リフレクタ820にレーザを反射し、第4リフレクタがレーザを受け取った後、キャビティに向けてレーザを反射し、ガルバノメータに入射するレーザ光路と回転ステージ回転軸のレーザ光路の相対位置を維持させる。第3リフレクタ810と第4リフレクタ820のAOIが22.5°であることが好ましい選択である。
【0081】
また、レーザが回転ステージ400に入射する前にセンサ900を設置してもよく、リフレクタを透過した光を使用してキャビティの射出端からのレーザスポットを検出し、レーザのリアルタイム位置情報を取得できる。又は、回転ステージ400の上に反射機構800を配置することも、本技術案の均等の置き換えと見なされるべきである。
【0082】
上記各実施形態が提供する装置は、加工デバイスに取り付けられ、例えば、3つの直線動作軸、1つのワークを固定するための回転動作軸と1つのレーザビーム回転軸とを組み合わせて、空間5軸レーザ加工技術案を形成し、多軸方式によりワークに機械加工を行い、複雑で多様な構造の製品を製造することができ、特に長軸部品の精密加工に適する。例えば、工作機械は、少なくとも3つの直線軸を有し、1つの直線軸に本発明の装置を設置し(例えば、X軸とZ軸で決まる平面上に設置し、Z軸に沿って直線移動する)、もう1つの直線軸に回転位置決め機構を設置し、加工対象のワークの回転の位置決めを駆動し(例えば、X軸とY軸で決まる平面上にワークを設置)、応力、振動、弾性変形又は温度などの要因により、ビームと回転ステージ回転軸の相対位置が維持できない状況を解消し、レーザ加工の精度が向上し、各種仕様の部品に対してレーザ加工を実施するのに役立つ。
【0083】
本実施形態の図6に示す装置を工作機械に設置し、焦点面にサンプルカードを設置し、サンプルカードは、B軸の回転に従い、レーザをオンにしてB軸を駆動して180度回転させた後、サンプルカードを200倍の顕微鏡で観察し、エッチングの痕跡は、直径が光スポットの直径に相当する円形パターンのみであり(図8参照)、これは、B軸の回転に従って光スポットが自転を発生するのみであって変位を生じないことを表している。
【0084】
上記装置から絞りを取り外した後、同じテストを実行し、サンプルカードを200倍の顕微鏡で観察すると、発生したエッチング痕跡は、図9に示すとおりである。図8と比較すると、絞りを取り外した後、B軸の回転に従い、レーザ集束点の位置がドリフトし、実験装置における最大ずれ量が光スポット直径の4倍以上に達し、明らかに精密加工の要求を満たすことができないことが分かる。
【符号の説明】
【0085】
100 レーザ発振器
110 レーザ
120 超高速レーザ
121 レーザ
200 キャビティ
300 光射出部材
310 レーザ
320 ガルバノメータ
400 回転ステージ
410 回転軸
600 ブラケット
700 レーザ投射中継部材
710 第1反射機構
720 第2反射機構
721 第2リフレクタ
730 レーザ
731 第1リフレクタ
740 レーザ光路
750 絞り
760 レーザビーム
761 ビーム
762 ビーム
800 反射機構
810 第3リフレクタ
820 第4リフレクタ
900 センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】