(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】金属イオン電池用の電気活性材料を調製する方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20241018BHJP
C01B 33/027 20060101ALI20241018BHJP
C01B 32/00 20170101ALI20241018BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
C01B33/027
C01B32/00
H01M4/36 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523613
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 GB2022052696
(87)【国際公開番号】W WO2023067361
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517050282
【氏名又は名称】ネクシオン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィッタム ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】フレンド クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】メイソン チャールズ
(72)【発明者】
【氏名】キアッキア マウロ
(72)【発明者】
【氏名】メオト サイロ
【テーマコード(参考)】
4G072
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G072AA01
4G072BB05
4G072EE10
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH03
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4G072RR11
4G072UU30
4G146AA01
4G146AB01
4G146AC02A
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4G146AC07A
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4G146CB32
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB11
5H050EA08
5H050FA17
5H050GA02
5H050GA12
5H050GA26
5H050GA27
5H050HA05
5H050HA06
5H050HA07
5H050HA14
5H050HA15
(57)【要約】
本発明は、複合粒子を調製する方法に関する。この方法は、窒素ガス吸着によって測定されるミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積が0.4cm3/g~2.2cm3/gの範囲である、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔を含む複数の多孔質粒子を準備する第一の工程を含む。この多孔質粒子を電気活性材料の前駆体と、多孔質粒子の細孔中で電気活性材料の堆積を引き起こすために有効な温度で接触させて、中間体粒子を形成する。電気活性材料の堆積を中断し、任意で中間体粒子から副産物を分離する。次いで、中間体粒子を電気活性材料の前駆体と、中間体粒子の細孔中で電気活性材料の更なる堆積を引き起こすために有効な温度で接触させて、複合粒子を形成する。堆積工程の少なくとも1つにおいて、リアクター圧は、200kPa未満に維持される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合粒子を調製する方法であって、
(a)窒素ガス吸着によって測定されるミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積が0.4cm
3/g~2.2cm
3/gの範囲である、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔を含む複数の多孔質粒子を提供する工程と、
(b)前記多孔質粒子の細孔中の電気活性材料の堆積を引き起こすために有効な温度で、前記多孔質粒子と電気活性材料の前駆体とを接触させて、中間体粒子を形成する工程と、
(c)前記電気活性材料の堆積を中断し、前記中間体粒子から副産物を分離する工程と、
(d)工程(c)由来の前記中間体粒子と電気活性材料の前駆体とを、該中間体粒子の細孔中で、該電気活性材料の更なる堆積を引き起こすために有効な温度で接触させる工程と、
を含み、
工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つの圧力が200kPa未満に維持される、
方法。
【請求項2】
前記多孔質粒子が導電性材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質粒子が導電性炭素材料を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔質粒子が、0.45cm
3/g~2.2cm
3/g、又は0.5cm
3/g~2cm
3/g、又は0.55cm
3/g~2cm
3/g、又は0.6cm
3/g~1.8cm
3/g、又は0.65cm
3/g~1.8cm
3/g、又は0.7cm
3/g~1.6cm
3/g、又は0.7cm
3/g~1.5cm
3/g、又は0.7cm
3/g~1.4cm
3/gの範囲のミクロ細孔及びメソ細孔の総容積を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記多孔質粒子のPD
50細孔径が30nm以下、又は25nm以下、又は20nm以下、又は15nm以下、又は12nm以下、又は10nm以下、又は8nm以下、又は6nm以下、又は5nm以下、又は4nm以下、又は3nm以下、又は2.5nm以下、又は2nm以下、又は1.5nm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質粒子骨格のPD
30細孔径が25nm以下、又は20nm以下、又は15nm以下、又は12nm以下、又は10nm以下、又は8nm以下、又は6nm以下、又は5nm以下、又は4nm以下、又は3nm以下、又は2.5nm以下、又は2nm以下、又は1nm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項7】
前記多孔質粒子が、0.5μm~30μm、又は1μm~25μm、又は1μm~20μm、又は2μm~25μm、又は2μm~20μm、又は2μm~18μm、又は2μm~15μm、又は2μm~12μm、又は2.5μm~15μm、又は2.5μm~12μm、又は2μm~10μmの範囲のD
50粒子径を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記多孔質粒子中のミクロ細孔対メソ細孔の容積比が、90:10~55:45、又は90:10~60:40、又は85:15~65:35である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記多孔質粒子が、100m
2/g~4000m
2/g、又は500m
2/g~4000m
2/g、又は750m
2/g~3500m
2/g、又は1000m
2/g~3250m
2/g、又は1000m
2/g~3000m
2/g、又は1000m
2/g~2500m
2/g、又は1000m
2/g~2000m
2/gの範囲のBET表面積を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)及び工程(d)で堆積する前記電気活性材料が、独立に、シリコン、スズ、ゲルマニウム、アルミニウム、並びにそれらの混合物及び合金から選択され、好ましくは、工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つで堆積する前記電気活性材料がシリコンである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)及び工程(d)の各々で堆積する前記電気活性材料が、同じ電気活性材料であり、好ましくは、工程(b)及び工程(d)の各々で堆積する前記電気活性材料がシリコンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記シリコン含有前駆体が、シラン(SiH
4)、ジシラン(Si
2H
6)、トリシラン(Si
3H
8)、テトラシラン(Si
4H
10)、メチルシラン、ジメチルシラン、及びクロロシランから選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)及び工程(d)の温度が、独立に、300℃~800℃、又は350℃~800℃、又は400℃~700℃、又は400℃~650℃、又は400℃~600℃、又は400℃~550℃、又は400℃~500℃、又は400℃~450℃、又は450℃~500℃、又は350℃~500℃、又は350℃~450℃、又は380℃~450℃の範囲である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つの圧力が、150kPa以下、又は120kPa以下、又は110kPa以下、又は100kPa以下、又は90kPa以下、又は80kPa以下、又は70kPa以下、又は60kPa以下、又は50kPa以下に維持される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも工程(b)の圧力が、150kPa以下、又は120kPa以下、又は110kPa以下、又は100kPa以下、又は90kPa以下、又は80kPa以下、又は70kPa以下、又は60kPa以下、又は50kPa以下に維持される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(c)が前記中間体粒子から副産物を分離することを含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
工程(c)が工程(b)で堆積される前記電気活性材料表面上で改質剤材料を形成することを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程(c)が、工程(b)由来の中間体粒子と不動態化剤とを接触させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記不動態化剤が、(i)酸素含有気体、(ii)アンモニア、(iii)アンモニアと酸素とを含む気体、及び(iv)ホスフィンから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記不動態化剤が、
(i)R
1-CH=CH-R
1、
(ii)R
1-C≡C-R
1、
(iii)O=CR
1R
1、
(iv)HX-R
2、及び、
(v)HX-C(O)-R
1
(式中、Xは、O、S、NR
1又はPR
1を示し、
各R
1は、独立に、H、若しくは1個~20個の炭素原子を有する非置換若しくは置換の脂肪族若しくは芳香族ヒドロカルビル基を示すか、又は2つのR
1基は環中に3個~8個の炭素原子を含む非置換若しくは置換環構造を形成し、
R
2は、1個~20個の炭素原子を有する非置換若しくは置換の脂肪族若しくは芳香族ヒドロカルビル基を示すか、又はR
1及びR
2は、一緒に、環中に3個~8個の炭素原子を含む非置換若しくは置換環構造を形成する)から選択される、
請求項17に記載の方法。
【請求項21】
工程(c)が、工程(b)由来の中間体粒子と炭素含有前駆体とを、前記中間体粒子の細孔中において熱分解性炭素材料の堆積を引き起こすために有効な温度で接触させることを含む、請求項17~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
工程(c)及び工程(d)を1回以上繰り返す、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
(e)工程(d)由来の複合粒子の細孔中、及び/又は外側表面上で、複数の改質剤材料ドメインを形成する工程、
を更に含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
工程(e)が、最後の工程(d)由来の複合粒子の表面と不動態化剤とを接触させることを含み、任意で、前記不動態化剤が、請求項19又は20に定義される通りである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
工程(e)が、工程(d)由来の複合粒子を熱分解性炭素前駆体と合わせることと、前記複合粒子の細孔内及び/又は外側表面上への熱分解性導電性炭素材料の堆積を引き起こすために有効な温度まで、前記熱分解性炭素前駆体を加熱することとを含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項の方法によって得られ得る複合粒子。
【請求項27】
請求項26の複合粒子と少なくとも1つの他の構成要素とを含む組成物。
【請求項28】
請求項26の複合粒子又は請求項27の組成物を含む電極。
【請求項29】
請求項28に記載の電極を備える充電式金属イオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、充電式金属イオン電池用電極における使用に好適な電気活性材料を調製する方法に関し、より詳細には、充電式金属イオン電池におけるアノード活物質としての使用に好適な高電気化学容量を有する粒子状材料に関する。
【背景技術】
【0002】
充電式金属イオン電池は、携帯電話及びノート型パソコン等の携帯型電子機器において広く使用されており、電気自動車又はハイブリッド車における適用が増加している。充電式金属イオン電池は、一般的に、本明細書において、電池の充電中及び放電中に金属イオンの挿入及び放出が可能な材料として定義される電気活性材料の層を備えた金属集電体の形態のアノードを含む。本明細書において、「カソード」及び「アノード」という用語は、アノードが負極となるように、電池に負荷がかけられるという意味で使用される。金属イオン電池を充電すると、金属イオンは金属イオン含有カソード層から電解質を介してアノードに輸送され、アノード材料に挿入される。本明細書において、「電池」という用語は、単一のアノード及び単一のカソードを含有するデバイス、並びに複数のアノード及び/又は複数のカソードを含有するデバイスの両方を指して使用される。
【0003】
充電式金属イオン電池の重量容量及び/又は体積容量を改善することに対して関心がある。これまで、市販のリチウムイオン電池は、主に、アノード活物質としての黒鉛の使用に限定されてきた。黒鉛アノードを充電すると、リチウムが黒鉛層間に挿入され、実験式LixC6(式中、xは、0より大きく1以下である)の材料を形成する。その結果、黒鉛は、リチウムイオン電池において、372mAh/gの最大理論容量を有し、実用上の容量はそれよりもやや低くなる(約340mAh/g~360mAh/g)。シリコン、スズ、及びゲルマニウム等の他の材料は、黒鉛よりも大幅に高い容量でリチウムを挿入することができるが、多数回の充放電サイクルにわたって十分な容量を維持することが難しいため、まだ広く商業的には使用されていない。
【0004】
特に、シリコンは、リチウムに対する容量が非常に高いため、高い重量容量及び体積容量を有する充電式金属イオン電池の製造において、黒鉛の有望な代替物として認識されてきた(例えば、非特許文献1を参照)。シリコンは、室温で、リチウムイオン電池における理論上の最大比容量が約3600mAh/g(Li15Si4に基づく)である。しかしながら、リチウムがバルクシリコンに挿入されると、シリコン材料の体積が大幅に増加し、シリコンがその最大容量までリチウム化されると、元の体積の400%にまで増加する。充放電サイクルが繰り返されると、シリコン材料に大きな機械的ストレスが発生し、シリコンアノード材料の破壊と層間剥離をもたらす。脱リチウム化の際のシリコン粒子の体積の収縮は、アノード材料と集電体との間の電気的接触の損失をもたらす可能性がある。更に困難なのは、シリコン表面に形成される固体電解質界面(SEI)層が、シリコンの膨張及び収縮に適応するのに十分な機械的耐久性を有さないことである。その結果、新たに曝露したシリコン表面によって、電解質が更に分解し、SEI層の厚さが増加し、かつ、リチウムが不可逆的に消費されることになる。これらの欠陥メカニズムは集合的に、連続した充放電サイクルにわたる許容できない電気化学容量の損失をもたらす。
【0005】
シリコン含有アノードを充電する際に観察される体積変化と関連する問題を克服するために、数多くの取り組みが提案されてきた。シリコンフィルム及びシリコンナノ粒子等の、断面が約150nm未満の微細シリコン構造体は、ミクロンサイズの範囲のシリコン粒子と比較して、充電及び放電の際の体積変化に対してより耐久性があることが報告されてきた。しかしながら、これらはいずれも、形態を変更せずに商業規模で適用するには適していない。ナノスケールの粒子は製造及び取り扱いが難しく、シリコンフィルムは十分なバルク容量を提供しない。
【0006】
特許文献1には、アスペクト比、すなわち、粒子の最小寸法に対する最大寸法の比が高いシリコン粒子を使用することによって、容量保持率が改善され得ることが開示されている。このような粒子が小断面を有することにより、充電及び放電の際の体積変化によって材料にかかる構造ストレスが低減する。しかしながら、このような粒子は、その製造が難しく、費用がかかる可能性があり、脆弱となり得る。また、大表面積を有することが、過剰なSEIの形成につながり、初回の充放電サイクルにおける過剰な容量損失につながり得る。
【0007】
シリコン等の電気活性材料が、活性炭材料等の多孔質担体材料の細孔内に堆積され得ることも一般的に知られている。これらの複合材料は、ナノ粒子の取り扱いの難しさを回避しながら、ナノスケールのシリコン粒子の有益な充放電特性の幾つかを提供する。Guoら(非特許文献2)は、多孔質炭素基材が、基材の細孔構造内に均一に分布して堆積したシリコンナノ粒子を備えた導電性骨格を提供するシリコン-炭素複合材料を開示している。この複合材料によって、複数回の充電サイクルにわたる容量保持率が改善したが、複合材料のmAh/gでの初期容量は、シリコンナノ粒子に対する容量よりも大幅に低いことが示されている。
【0008】
本発明者らは以前、ナノスケール電気活性材料、例えばシリコンが、高多孔質粒子状材料、例えば多孔質炭素材料の細孔ネットワーク内に堆積している複合構造を有する種類の電気活性材料の開発を報告している。
【0009】
例えば、特許文献2及び特許文献3は、これらの材料の電気化学性能の改善が、数ナノメートル程の又はそれに満たない寸法を持つ小ドメインの形の多孔質材料中に電気活性材料が位置する方式に起因し得ることを報告するものである。これらの微細電気活性構造は、より大きな電気活性構造よりも、弾性変形に対するより低い抵抗性及びより高い破壊抵抗性を有すると考えられ、したがって、過剰な構造ストレスを伴わずにリチウム化し脱リチウム化することが可能である。その結果、電気活性材料は、多数回の充放電サイクルにわたって優れた可逆的容量保持率を示す。第二に、細孔容積の一部のみが非荷電状態のシリコンによって占有されるように多孔質炭素骨格内のシリコンの充填を制御することによって、多孔質炭素骨格の非占有細孔容積が、内部でかなりの量のシリコンの膨張に適応することができる。さらに、上述のように、小さいメソ細孔及び/又はミクロ細孔内に、ナノスケールシリコンドメインを配置することによって、シリコン表面にて電解質にアクセス可能な領域はほんの僅かであり、したがってSEI形成が制限される。SEI形成が容量損失を招く重大な故障メカニズムとならないよう、続く充放電サイクル中のシリコンの更なる曝露が、実質的に妨げられる。これは、例えば、Guoによって開示される材料を特徴づける、過剰なSEI形成とは明らかに対照的である(上記を参照されたい)。
【0010】
特許文献2及び特許文献3に記載される材料は、異なるリアクター系(静止、回転及びFBR)中で化学気相浸透(CVI)によって合成されている。多孔質粒子は、シリコン含有前駆体(CVI)、典型的にはシランガスの流れと、大気圧及び400℃~700℃の温度で接触する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2007/083155号
【特許文献2】国際公開第2020/095067号
【特許文献3】国際公開第2020/128495号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Insertion Electrode Materials for Rechargeable Lithium Batteries, Winter, M. et al. in Adv. Mater. 1998, 10, No. 10
【非特許文献2】Journal of Materials Chemistry A, 2013, pp. 14075-14079
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
性能が改善された電気活性材料の改善された製造方法に関する必要性が当該技術分野には依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、複合粒子を調製する方法であって、
(a)窒素ガス吸着によって測定されるようなミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積が0.4cm3/g~2.2cm3/gの範囲である、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔を含む複数の多孔質粒子を準備する工程と、
(b)前記多孔質粒子の細孔中の電気活性材料の堆積を引き起こすために有効な温度で、前記多孔質粒子と電気活性材料の前駆体とを接触させて、中間体粒子を形成する工程と、
(c)前記電気活性材料の堆積を中断し、任意で前記中間体粒子から副産物を分離する工程と、
(d)工程(c)由来の前記中間体粒子と電気活性材料の前駆体とを、該中間体粒子の細孔中で、該電気活性材料の更なる堆積を引き起こすために有効な温度で接触させて、複合粒子を形成する工程と、
を含み、
工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つのリアクター圧が200kPa未満に維持される、
方法を提供する。
【0015】
本発明は、したがって、一般的に、電気活性材料が、少なくとも2つの別個の工程で、多孔質粒子材料の細孔内に堆積される、複合粒子状材料を調製する方法に関する。電気活性材料の最初の堆積は、工程(b)で行われ、電気活性材料の更なる堆積は、工程(d)で行われる。任意で、本発明の方法が、3回以上の工程にわたって電気活性材料を堆積することを含むように、工程(c)及び工程(d)を複数回繰り返してもよい。
【0016】
工程(b)及び工程(d)は、電気活性材料の前駆体の化学気相浸透(CVI)を使用して、多孔質粒子の細孔表面上に第一及び第二の電気活性材料層を堆積させる。化学気相浸透(CVI)は、典型的には、反応性ガス状前駆体と多孔質材料とを高温で接触させることによって、多孔質材料に更なる相を浸透させるプロセスである。細孔表面上の反応性ガス状前駆体の分解/反応は、細孔内での固相の堆積を生じる。
【0017】
多工程での電気活性材料の堆積によって、電気活性材料の堆積は、電気活性材料の堆積を中断する1つ以上の工程(工程(c))によって妨げられる。堆積全体の中間の段階での電気活性材料堆積の中断によって、単一工程で電気活性材料の全てを堆積させるプロセスと比較した際、幾つかの改善が可能になる。
【0018】
第一に、少なくとも2つの別個の工程で電気活性材料を堆積させると、各工程で異なる堆積条件を使用することが可能になる。これによって、堆積全体の異なる段階で、CVIプロセスに対する、より大きな制御が可能になる。CVIプロセスにおける電気活性材料の堆積は、多孔質粒子表面で起こる。多孔質粒子の内部表面積が非常に高いことを考慮すると、反応速度論は、ほぼ完全に、多孔質粒子の細孔内での電気活性材料の堆積を支持する。
【0019】
しかしながら、電気活性材料の堆積を制御する際の重要な要因は、粒子外部から、堆積が起こる部位への前駆体の物質移動である。物質移動がCVIプロセスの制限要因となる場合、電気活性材料は、より大きな細孔中に、又は電気活性材料の外側表面上に堆積され得る。さらに、次いで、堆積された電気活性材料は、電気活性材料が堆積されることが望ましい、より小さい細孔空間へのアクセスを遮断し得る。200kPa未満の圧力で工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つを実行すると、電気活性材料の前駆体の拡散性の増加が生じ、熱分解前に、マイクロ細孔及び/又は最小のメソ細孔へのアクセスが可能になる。したがって、本明細書に示されるような工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つの圧力の制御によって、電気活性材料堆積の制御を改善することが可能になる。
【0020】
第二に、中間段階で電気活性材料堆積が中断されると、電気活性材料の連続堆積の間に、更なるプロセス工程を行うことが可能になる。1つの好適なプロセス工程は、工程(b)で形成された中間体粒子から副産物を分離することを含む。電気活性材料の堆積を単一工程で行う場合、電気活性材料の前駆体が細孔容積内に拡散する必要があると同時に、副産物が多孔質粒子の細孔容積の外に拡散する必要がある。そのため、副産物の除去は非効率となり、副産物は、堆積された電気活性材料内に取り込まれ、その結果、電気化学性能が損なわれ得る。電気活性材料堆積の中断によって、副産物が多孔質粒子の外に拡散し、堆積を続ける前に除去される機会が提供される。その結果、堆積された材料の品質が改善されて、複合粒子が電極に取り込まれた際に電気化学性能の改善が生じる。
【0021】
中間段階での電気活性材料堆積の中断はまた、工程(b)において堆積された電気活性材料の表面上に他の材料が形成されることも可能にする。これらの材料は、本明細書において、一般的に「改質剤(modifier)材料」と称される。適切な改質剤材料は、工程(b)において堆積された電気活性材料の表面の化学的改質によって形成される材料を含み得る。別の適切な改質剤材料は、別の堆積材料を含んでもよく、ここでこの堆積材料は非電気活性である。改質剤材料は、工程(b)及び工程(d)で堆積される電気活性材料間に少なくとも部分的なバリアを生成できる。その結果、電気活性材料のいかなる連続ドメインの長さスケールも、改質剤材料の介在ドメインによって制限することができる。電気活性材料ドメインがより大きいと、電気化学性能が劣ることが見出されてきている。したがって、改質剤材料を使用して、電気活性材料ドメインを中断すると、個々の電気活性材料ドメインの長さスケールが制御されつつ、複合粒子中の電気活性材料全体が高容量であることがなお可能になる。
【0022】
多孔質粒子は、典型的には複数の電気活性材料ドメインの形で堆積される電気活性材料の骨格として機能する。「電気活性材料ドメイン」という用語は、これらが位置する多孔質粒子のミクロ細孔及び/又はメソ細孔の寸法によって決定される最大寸法を有する、電気活性材料、例えば元素シリコンの本体を指す。電気活性ドメインは、したがって、ナノスケール電気活性ドメインと記載することもでき、ここで「ナノスケール」という用語は、一般的に、100nm未満の寸法を指すと理解される。しかしながら、ミクロ細孔及びメソ細孔の寸法のため、電気活性材料ドメインは、いかなる方向でも、典型的には、50nm未満、通常、50nmよりも大幅に小さい最大寸法を有する。ドメインは、例えば、規則的粒子若しくは不規則粒子又は有界層(bounded layer)又は被膜領域の形を取り得る。
【0023】
多孔質粒子は、好ましくは、導電性材料を含む。導電性多孔質粒子の使用は、多孔質粒子が複合粒子内の導電性骨格を形成し、これが電気活性材料内に挿入されたリチウム原子/イオンと集電体との間の電子の流動を促進するため、好適である。
【0024】
好ましいタイプの導電性多孔質粒子は、導電性多孔質炭素粒子として本明細書に言及される、導電性炭素材料を含むか又はこうした材料からなる粒子である。
【0025】
導電性多孔質炭素粒子は、好ましくは少なくとも80重量%の炭素、より好ましくは少なくとも90重量%の炭素、より好ましくは少なくとも95重量%の炭素、任意で少なくとも98重量%、又は少なくとも99重量%の炭素を含む。炭素は結晶炭素若しくは非晶質炭素、又は非晶質炭素及び結晶炭素の混合物であってもよい。多孔質炭素粒子は、硬質炭素粒子又は軟質炭素粒子のいずれであってもよい。
【0026】
本明細書において使用される「硬質炭素」という用語は、炭素原子が、主に、ナノスケールの多環芳香族ドメインでsp2混成状態(三方結合)をとる無秩序な炭素マトリックスを指す。この多環芳香族ドメインは、化学結合、例えば、C-O-C結合によって架橋している。多環芳香族ドメイン同士が化学的に架橋しているため、高温において、硬質炭素は黒鉛に変換することはできない。ラマンスペクトルにおける高Gバンド(約1600cm-1)によって明らかなように、硬質炭素は黒鉛のような特性を有している。しかしながら、ラマンスペクトルにおける高Dバンド(約1350cm-1)によって明らかなように、炭素は完全に黒鉛のようではない。
【0027】
本明細書において使用される「軟質炭素」という用語も、炭素原子が、主に、5nm~200nmの範囲の寸法を有する多環芳香族ドメインでsp2混成状態(三方結合)をとる無秩序な炭素マトリックスを指す。硬質炭素とは対照的に、軟質炭素中の多環芳香族ドメインは、化学結合によって架橋せずに、分子間力によって結合している。すなわち、高温において、軟質炭素は黒鉛化し得る。多孔質炭素粒子は、好ましくは、XPSにより測定した場合に、少なくとも50%のsp2混成炭素を含む。例えば、多孔質炭素粒子は、好適には、50%~98%のsp2混成炭素、55%~95%のsp2混成炭素、60%~90%のsp2混成炭素、又は70%~85%のsp2混成炭素を含むことができる。
【0028】
多様な異なる材料を使用して、熱分解を通じて、好適な多孔質炭素粒子を調製することができる。使用することができる有機材料の例としては、リグノセルロース系材料(ココナッツ殻、籾殻、木材等)を含む植物バイオマス、及び石炭等の化石炭素源を挙げることができる。熱分解により多孔質炭素粒子を形成する樹脂及び高分子材料の例としては、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ピッチ、メラミン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びにアクリレート、スチレン、α-オレフィン、ビニルピロリドン、及び他のエチレン性不飽和モノマーのモノマー単位を含む様々なコポリマーが挙げられる。出発物質及び熱分解プロセスの条件に応じて、様々な異なる炭素材料が当該技術分野で利用可能である。多様な異なる仕様の多孔質炭素粒子が、供給業者より入手可能である。
【0029】
メソ細孔及びミクロ細孔の容積を増加させるために、多孔質炭素粒子に対して化学的活性化プロセス又はガス活性化プロセスを行うことができる。好適な活性化プロセスは、熱分解した炭素を、600℃~1000℃の範囲の温度で、酸素、スチーム、CO、CO2、及びKOHの1つ以上と接触させることを含む。
【0030】
メソ細孔は、熱分解又は活性化後に熱的手段又は化学的手段によって除去することができる、MgO及び他のコロイド状テンプレート又はポリマーテンプレート等の抽出可能な細孔形成剤を使用する既知のテンプレートプロセス(templating processes)によっても得ることができる。
【0031】
炭素に基づく導電性粒子の代替物には、窒化チタン(TiN)、炭化チタン(TiC)、炭化シリコン(SiC)、酸化ニッケル(NiOx)、窒化チタンシリコン(TiSiN)、窒化ニッケル(Ni3N)、窒化モリブデン(MoN)、酸窒化チタン(TiOxN1-x)、シリコンオキシカーバイド(SiOC)、窒化ホウ素(BN)、又は窒化バナジウム(VN)を含む多孔質粒子が含まれる。好ましくは、多孔質粒子は、窒化チタン(TiN)、シリコンオキシカーバイド(SiOC)又は窒化ホウ素(BN)を含む。
【0032】
多孔質粒子は、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔、及び任意で少量のマクロ細孔を含む3次元的に相互接続した開孔ネットワークを含む。従来のIUPAC用語に従うと、本明細書では、「ミクロ細孔」という用語は、直径2nm未満の細孔を指して使用され、本明細書では、「メソ細孔」という用語は、直径2nm~50nmの細孔を指して使用され、「マクロ細孔」という用語は、直径50nm超の細孔を指して使用される。
【0033】
多孔質粒子中のミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔の容積に関する本明細書での言及、及びまた、多孔質粒子内の細孔容積分布に関する言及は、請求される方法の工程(a)における、すなわち工程(b)における細孔容積内への電気活性材料の堆積前の出発材料として使用される多孔質粒子の内部細孔容積に関する。
【0034】
多孔質粒子は、0.4cm3/g~2.2cm3/gの範囲のミクロ細孔及びメソ細孔の総容積(すなわち0nm~50nmの細孔径範囲の総細孔容積)によって特徴づけられる。典型的には、多孔質粒子には、ミクロ細孔及びメソ細孔の両方が含まれる。しかしながら、ミクロ細孔を含みメソ細孔を含まない、又はメソ細孔を含みミクロ細孔を含まない多孔質粒子を使用し得ることは排除されない。
【0035】
より好ましくは、多孔質粒子中のミクロ細孔及びメソ細孔の総容積は、少なくとも0.45cm3/g、又は少なくとも0.5cm3/g、少なくとも0.55cm3/g、又は少なくとも0.6cm3/g、又は少なくとも0.65cm3/g、又は少なくとも0.7cm3/g、又は少なくとも0.75cm3/g、又は少なくとも0.8cm3/g、少なくとも0.85cm3/g、又は少なくとも0.9cm3/g、又は少なくとも0.95cm3/g、又は少なくとも1cm3/gである。高多孔質の使用は、細孔容積内により多量の電気活性材料が収容されることを可能にするため、好適であり得る。
【0036】
多孔質粒子の内部細孔容積は、粒子構造の脆弱性の増加が、より多量の電気活性材料を収容する細孔容積の増加の利点を上回る値で、適切に制限される。好ましくは、多孔質粒子中のミクロ細孔及びメソ細孔の総容積は、2cm3/g以下、又は1.8cm3/g以下、又は1.6cm3/g以下、又は1.5cm3/g以下、又は1.45cm3/g以下、又は1.4cm3/g以下、又は1.35cm3/g以下、又は1.3cm3/g以下、又は1.25cm3/g以下、又は1.2cm3/g以下、又は1.1cm3/g以下、又は1cm3/g以下、又は0.95cm3/g以下である。
【0037】
好ましくは、多孔質粒子中のミクロ細孔及びメソ細孔の総容積は、0.45cm3/g~2.2cm3/g、又は0.5cm3/g~2cm3/g、又は0.55cm3/g~2cm3/g、又は0.6cm3/g~1.8cm3/g、又は0.65cm3/g~1.8cm3/g、又は0.7cm3/g~1.6cm3/g、又は0.7cm3/g~1.5cm3/g、又は0.7cm3/g~1.4cm3/gの範囲である。
【0038】
多孔質粒子中のミクロ細孔及びメソ細孔の総容積はまた、0.55cm3/g~1.4cm3/g、又は0.6cm3/g~1.4cm3/g、又は0.6cm3/g~1.3cm3/g、又は0.65cm3/g~1.3cm3/g、又は0.65cm3/g~1.2cm3/g、又は0.7cm3/g~1.2cm3/g、又は0.7cm3/g~1.1cm3/g、又は0.7cm3/g~1cm3/g、又は0.75cm3/g~0.95cm3/gの範囲であってもよい。
【0039】
多孔質粒子中のミクロ細孔及びメソ細孔の総容積はまた、0.4cm3/g~0.75cm3/g、又は0.4cm3/g~0.7cm3/g、又は0.4cm3/g~0.65cm3/g、又は0.45cm3/g~0.75cm3/g、又は0.45cm3/g~0.7cm3/g、又は0.45cm3/g~0.65cm3/g、又は0.45cm3/g~0.6cm3/gの範囲であってもよい。
【0040】
多孔質粒子中のミクロ細孔及びメソ細孔の総容積はまた、0.6cm3/g~2cm3/g、又は0.6cm3/g~1.8cm3/g、又は0.7cm3/g~1.8cm3/g、又は0.7cm3/g~1.6cm3/g、又は0.8cm3/g~1.6cm3/g、又は0.8cm3/g~1.5cm3/g、又は0.8cm3/g~1.4cm3/g、又は0.9cm3/g~1.5cm3/g、又は0.9cm3/g~1.4cm3/g、又は1cm3/g~1.4cm3/gの範囲であってもよい。
【0041】
「PDn細孔径」という総称は、本明細書において、ミクロ細孔及びメソ細孔の総容積に対する、体積ベースのnパーセンタイルの細孔径を指す。例えば、本明細書において使用される「PD50細孔径」という用語は、この値未満に、総ミクロ細孔及びメソ細孔容積の50%が見られる細孔径を指す。
【0042】
多孔質粒子のPD50細孔径は、好ましくは30nm以下であり、任意で25nm以下、又は20nm以下、又は15nm以下、又は12nm以下である。より好ましくは、多孔質粒子のPD50細孔径は、10nm以下、又は8nm以下、又は6nm以下、又は5nm以下、又は4nm以下、又は3nm以下、又は2.5nm以下、又は2nm以下、又は1.5nm以下である。本明細書において使用される「PD50細孔径」という用語は、ミクロ細孔及びメソ細孔の総容積に対する、体積ベースでの中央細孔径を指す。したがって、本発明によると、ミクロ細孔及びメソ細孔の総容積の少なくとも50%は、好ましくは、30nm未満の直径を有する細孔の形である。
【0043】
多孔質粒子のPD30細孔径は、25nm以下、又は20nm以下、又は15nm以下、又は12nm以下、又は10nm以下、又は8nm以下、又は6nm以下、又は5nm以下、又は4nm以下、又は3nm以下、又は2.5nm以下、又は2nm以下、又は1nm以下であってもよい。
【0044】
多孔質粒子のPD90細孔径は、35nm以下、又は30nm以下、又は25nm以下、又は20nm以下、又は15nm以下、又は12nm以下、又は10nm以下、又は8nm以下、又は6nm以下、又は5nm以下、又は4nm以下、又は3nm以下、又は2.5nm以下、又は2nm以下であってもよい。好ましくは、多孔質粒子のPD90細孔径は、少なくとも2.5nm、又は少なくとも3nm、又は少なくとも3.5nm、又は少なくとも4nmである。例えば、多孔質粒子のPD90細孔径は、好ましくは、2.5nm~20nm、又は3nm~15nm、又は3.5nm~10nm、又は4nm~8nmの範囲である。
【0045】
多孔質粒子のPD10細孔径は、10nm以下、又は9nm以下、又は8nm以下、又は7nm以下、又は6nm以下、又は5nm以下、又は4nm以下、又は3nm以下、又は2.5nm以下、又は2nm以下、又は1.5nm以下、又は1nm以下であってもよい。好ましくは、多孔質粒子のPD10細孔径は、少なくとも0.3nm、又は少なくとも0.4nm、又は少なくとも0.5nmである。例えば、多孔質粒子のPD10細孔径は、好ましくは、0.3nm~10nm、又は0.3nm~5nm、又は0.3nm~1nm、又は0.4nm~1nm、又は0.5nm~1nmの範囲である。
【0046】
誤解を避けるため、PDn値を決定する目的のために、いかなるマクロ細孔容積(50nmより大きい細孔径)も考慮しない。
【0047】
多孔質粒子におけるミクロ細孔対メソ細孔の容積比は、原則として、100:0~0:100の範囲とすることができる。好ましくは、ミクロ細孔対メソ細孔の容積比は、90:10~55:45、又は90:10~60:40、又は85:15~65:35である。
【0048】
多孔質粒子の細孔径分布は、単峰性、二峰性又は多峰性であってもよい。本明細書で使用される「細孔径分布」という用語は、多孔質粒子の累積総内部細孔容積に対する細孔径分布に関する。ミクロ細孔と、より大きい直径の細孔との近接性によって、多孔質ネットワークを介してイオンが電気活性材料へと効率的に輸送されるという利点が提供されるため、二峰性又は多峰性の細孔径分布が好ましい場合がある。
【0049】
ミクロ細孔及びメソ細孔の総容積、並びにミクロ細孔及びメソ細孔の細孔径分布は、ISO 15901-2及びISO 15901-3に規定された標準的な方法論に従って、急冷固体密度汎関数法(QSDFT)を使用して、77Kで10-6の相対圧力p/p0までの窒素ガス吸着を使用して決定する。窒素ガス吸着は、ガスを固体の細孔内で凝縮させることにより、材料の空隙率及び細孔径分布を特徴付ける手法である。圧力を上昇させると、ガスは、最初は最小の直径を有する細孔にて凝縮し、全ての細孔が液体で満たされる飽和点に達するまで圧力を上昇させる。次いで、窒素ガス圧力を段階的に下げて、液体を系から蒸発させる。吸着等温線及び脱着等温線、並びにそれらの間のヒステリシスの分析により、細孔容積及び細孔径分布を決定することができる。窒素ガス吸着による細孔容積及び細孔径分布の測定に好適な装置としては、米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能なTriStar II空隙率分析装置及びTriStar II Plus空隙率分析装置、並びにQuantachrome Instrumentsから入手可能なAutosorb IQ空隙率分析装置が挙げられる。
【0050】
窒素ガス吸着は、最大50nmの直径を有する細孔の細孔容積及び細孔径分布の測定に効果的だが、はるかに大きな直径の細孔に対しては信頼性が低くなる。したがって、本発明の目的のために、最大50nm以下の直径を有する細孔のみ(すなわち、ミクロ細孔及びメソ細孔のみ)の細孔容積及び細孔径分布を決定するために窒素吸着を使用する。同様に、PD50の値は、ミクロ細孔及びメソ細孔のみの総容積に対して決定される。
【0051】
利用可能な分析手法の限界に鑑みると、単一の手法を使用して、ミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔の全範囲にわたる細孔容積及び細孔径分布を測定することは不可能である。多孔質粒子がマクロ細孔を含む場合、50nmより大きく、最大100nmまでの範囲の直径を有する細孔の容積は、水銀圧入法によって測定することができ、好ましくは0.3cm3/g以下、又は0.2cm3/g以下、又は0.1cm3/g以下、又は0.05cm3/g以下である。マクロ細孔の割合が小さいことは、細孔ネットワーク内への電解質のアクセスを促進するために有用であり得るが、本発明の利点は、ミクロ細孔及びより小さいメソ細孔中に電気活性材料を収容することによって実質的に得られる。
【0052】
水銀圧入法によって50nm以下の細孔径で測定されたいかなる細孔容積も無視する(上述のように、メソ細孔及びミクロ細孔を特徴付けるために窒素吸着を使用する)。水銀圧入法によって100nm超で測定された細孔容積は、本発明の目的のために粒子間空隙率であると想定され、この細孔容積も無視する。
【0053】
水銀圧入法は、水銀に浸漬した材料の試料に対して、様々なレベルの圧力をかけることにより、材料の空隙率及び細孔径分布を特徴付ける手法である。試料の細孔に水銀を侵入させるのに必要な圧力は、細孔径に反比例する。本明細書において報告する水銀圧入法によって得られる値は、室温での水銀の表面張力γを480mN/m、接触角φを140°として、ASTM UOP578-11に従って得られたものである。室温での水銀の密度は、13.5462g/cm3とする。米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能な自動水銀圧入計AutoPore IVシリーズ等、多くの高精度水銀圧入装置が市販されている。水銀圧入法の完全な報告についてP.A. Webb及びC. Orrによる「Analytical Methods in Fine Particle Technology, 1997, Micromeritics Instrument Corporation」(ISBN 0-9656783-0)を参照することができる。
【0054】
ガス吸着及び水銀圧入法等の侵入手法は、多孔質粒子の外部から窒素又は水銀がアクセス可能な細孔の細孔容積を決定するためだけに有効であることが理解されるだろう。本明細書において規定する空隙率の値は、開孔、すなわち、多孔質粒子の外部から流体がアクセス可能な細孔の容積を指すものとして理解されるべきである。窒素吸着又は水銀圧入法によって特定することができない完全に包囲された細孔は、本明細書において空隙率の値を決定する際に考慮しないものとする。同様に、窒素吸着による検出限界を下回るほど小さい細孔内に位置するいかなる細孔容積も考慮しない。
【0055】
本明細書において使用される「粒子径」という用語は、球相当径(esd)、すなわち、或る粒子と同じ体積を有する球の直径を指し、ここで、粒子の体積は、粒子内の細孔の体積を含むと理解される。本明細書において使用される「D50」及び「D50粒子径」という用語は、体積ベースでの中央粒子径、すなわち、その粒子径未満に、粒子集団の50体積%が存在する直径を指す。本明細書において使用される「D10」及び「D10粒子径」という用語は、体積ベースの10パーセンタイルの中央粒子径、すなわち、その粒子径未満に、粒子集団の10体積%が存在する直径を指す。本明細書において使用される「D90」及び「D90粒子径」という用語は、体積ベースの90パーセンタイルの中央粒子径、すなわち、その粒子径未満に、粒子集団の90体積%が存在する直径を指す。
【0056】
粒子径及び粒度分布は、ISO 13320:2009に従って、標準的なレーザー回折手法によって決定することができる。レーザー回折は、粒子が、粒子のサイズに応じて変化する角度で光を散乱し、粒子の集まりが、粒度分布に相関し得る強度及び角度によって規定される散乱光パターンを生成するという原理に基づいている。粒度分布を迅速かつ確実に決定するために、多くのレーザー回折装置が市販されている。特に明記しない限り、本明細書において規定又は報告する粒度分布測定値は、Malvern Instruments(商標)製の従来のMalvern Mastersizer(商標)3000粒度分析装置により測定されたものである。このMalvern Mastersizer(商標)3000粒度分析装置は、水溶液に懸濁した対象粒子を含有する透明セルを通してヘリウムネオンガスレーザービームを投射することによって動作する。粒子に当たる光線は、粒子径に反比例する角度で散乱され、光検出器アレイによって、所定の幾つかの角度で光の強度を測定し、様々な角度で測定した強度を、標準的な理論原理を使用してコンピューターによって処理し、粒度分布を決定する。本明細書に報告されるようなレーザー回折値は、界面活性剤SPAN(商標)-40(モノパルミチン酸ソルビタン)を5体積%添加した2-プロパノール中における粒子の湿式分散体を使用して得られる。多孔質粒子に関しては2.68、複合粒子に関しては3.50の粒子の屈折率を取り、1.378の分散剤の屈折率を取る。ミー散乱モデルを使用して、粒度分布を計算する。
【0057】
概して、多孔質粒子は、0.5μm~200μmの範囲のD50粒子径を有する。任意で、多孔質粒子のD50粒子径は、少なくとも1μm、又は少なくとも1.5μm、又は少なくとも2μm、又は少なくとも2.5μm、又は少なくとも3μm、又は少なくとも4μm、又は少なくとも5μmであってもよい。任意で、多孔質粒子のD50粒子径は、150μm以下、又は100μm以下、又は70μm以下、又は50μm以下、又は40μm以下、又は30μm以下、又は25μm以下、又は20μm以下、又は18μm以下、又は15μm以下、又は12μm以下、又は10μm以下、又は8μm以下であってもよい。
【0058】
例えば、多孔質粒子は、0.5μm~150μm、又は0.5μm~100μm、又は0.5μm~50μm、又は0.5μm~30μm、又は1μm~25μm、又は1μm~20μm、又は2μm~25μm、又は2μm~20μm、又は2μm~18μm、又は2μm~15μm、又は2μm~12μm、又は2.5μm~15μm、又は2.5μm~12μm、又は2μm~10μm、又は3μm~20μm、又は3μm~18μm、又は3μm~15μm、又は4μm~18μm、又は4μm~15μm、又は4μm~12μm、又は5μm~15μm、又は5μm~12μm、又は5μm~10μm、又は5μm~8μmの範囲のD50粒子径を有してもよい。これらのサイズ範囲内であり、本明細書に示されるような空隙率及び細孔径分布を有する粒子は、CVIプロセスによる金属イオン電池用のアノードにおいて使用するための複合粒子の調製に理想的に適している。
【0059】
多孔質粒子のD10粒子径は、好ましくは、少なくとも0.2μm、又は少なくとも0.5μm、又は少なくとも0.8μm、又は少なくとも1μm、又は少なくとも1.5μm、又は少なくとも2μmである。D10粒子径を0.2μm以上に維持することによって、サブミクロンサイズの粒子の望ましくない凝集の可能性が低下し、複合粒子の分散性が改善される。
【0060】
多孔質粒子のD90粒子径は、好ましくは300μm以下、又は250μm以下、又は200μm以下、又は150μm以下、又は100μm以下、又は80μm以下、又は60μm以下、又は40μm以下、又は30μm以下、又は25μm以下、又は20μm以下である。
【0061】
多孔質粒子は、好ましくは、狭い粒度分布スパンを有する。例えば、粒度分布スパン((D90-D10)/D50として定義される)は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、より好ましくは3以下、より好ましくは2以下、最も好ましくは1.5以下である。狭い粒度分布スパンを維持することによって、高密度粉末床への粒子の効率的な充填がより容易に達成可能である。
【0062】
多孔質粒子は、0.5より大きい平均球形度(上に定義される通り)を有してもよい。好ましくは、多孔質粒子は、少なくとも0.55、又は少なくとも0.6、又は少なくとも0.65、又は少なくとも0.7、又は少なくとも0.75、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.85の平均球形度を有する。好ましくは、多孔質粒子は、少なくとも0.90、又は少なくとも0.92、又は少なくとも0.93、又は少なくとも0.94、又は少なくとも0.95の平均球形度を有する。球形粒子は、堆積の均一性を補助し、一括圧力(batch pressure)リアクター中及び電極内に取り込まれた際の最終産物のより高密度の充填を促進すると考えられる。
【0063】
走査型電子顕微鏡法(SEM)、又は粒子によって投影された影を、デジタルカメラを使用して記録する動的画像分析によって、ミクロンスケールの粒子の高精度な2次元投影像を得ることができる。本明細書において使用される「球形度」という用語は、円の面積に対する粒子投影像の面積(そのような撮像技術から得られる)の比として理解されるものとし、ここで、粒子投影像と円とは同一の円周を有する。よって、個々の粒子に対して、球形度Sは以下のように定義され得る:
【数1】
(式中、A
mは、粒子投影像に対して測定した面積であり、C
mは、粒子投影像に対して測定した円周である)。本明細書において使用される粒子集団の平均球形度S
avは以下のように定義される:
【数2】
(式中、nは集団中の粒子の数を表す)。粒子集団の平均球形度は、好ましくは、少なくとも50の粒子の2次元投影から計算される。
【0064】
多孔質粒子は、好ましくは、少なくとも100m2/g、又は少なくとも500m2/g、又は少なくとも750m2/g、又は少なくとも1000m2/g、又は少なくとも1250m2/g、又は少なくとも1500m2/gのBET表面積を有する。本明細書において使用される「BET表面積」という用語は、ブルナウアー-エメット-テラー理論を使用し、ISO 9277に従って、固体表面上の気体分子の物理的吸着の測定から計算される、単位質量当たりの表面積を指すと解釈されるべきである。好ましくは、多孔質粒子のBET表面積は、4000m2/g以下、又は3500m2/g以下、又は3250m2/g以下、又は3000m2/g以下、又は2500m2/g以下、又は2000m2/gである。例えば、多孔質粒子は、100m2/g~4000m2/g、又は500m2/g~4000m2/g、又は750m2/g~3500m2/g、又は1000m2/g~3250m2/g、又は1000m2/g~3000m2/g、又は1000m2/g~2500m2/g、又は1000m2/g~2000m2/gの範囲のBET表面積を有してもよい。
【0065】
多孔質粒子は、好ましくは、少なくとも0.35g/cm3で好ましくは3g/cm3未満、より好ましくは2g/cm3未満、より好ましくは1.5g/cm3未満、最も好ましくは0.35g/cm3~1.2g/cm3の粒子密度を有する。本明細書で使用される「粒子密度」という用語は、水銀圧入法によって測定されるような「見かけの粒子密度」(すなわち粒子質量を粒子容積で割ったもの、ここで粒子容積は固体材料及びあらゆる閉鎖孔又は閉塞孔(blind pores)(「閉塞孔」は、水銀圧入法によって測定するには小さすぎる細孔である)の容積の合計であると解釈される)を指す。好ましくは、多孔質粒子は、少なくとも0.4g/cm3、又は少なくとも0.45g/cm3、又は少なくとも0.5g/cm3、又は少なくとも0.55g/cm3、又は少なくとも0.6g/cm3、又は少なくとも0.65g/cm3、又は少なくとも0.7g/cm3の粒子密度を有する。好ましくは、多孔質粒子は、1.15g/cm3以下、又は1.1g/cm3以下、又は1.05g/cm3以下、又は1g/cm3以下、又は0.95g/cm3以下、又は0.9g/cm3以下の粒子密度を有する。
【0066】
好ましくは、多孔質粒子は、
(i)0.4cm3/g~2.2cm3/gの範囲の窒素ガス吸着によって測定されるようなミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積、
(ii)20nm以下のPD50細孔径、好ましくは30nm以下のPD90細孔径、好ましくは15nm以下のPD30細孔径、及び、
(iii)0.5μm~30μmの範囲のD50粒子径、
を有する。
【0067】
より好ましくは、多孔質粒子は、
(i)0.6cm3/g~1.8cm3/gの範囲の窒素ガス吸着によって測定されるようなミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積、
(ii)10nm以下のPD50細孔径、好ましくは20nm以下のPD90細孔径、好ましくは8nm以下のPD30細孔径、及び、
(iii)1μm~25μmの範囲のD50粒子径、
を有する。
【0068】
より好ましくは、多孔質粒子は、
(i)0.7cm3/g~1.6cm3/gの範囲の窒素ガス吸着によって測定されるようなミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積、
(ii)10nm以下のPD50細孔径、好ましくは20nm以下のPD90細孔径、好ましくは8nm以下のPD30細孔径、及び、
(iii)1μm~20μmの範囲のD50粒子径、
を有する。
【0069】
より好ましくは、多孔質粒子は、
(i)0.7cm3/g~1.5cm3/gの範囲の窒素ガス吸着によって測定されるようなミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積、
(ii)5nm以下のPD50細孔径、好ましくは10nm以下のPD90細孔径、好ましくは3nm以下のPD30細孔径、及び、
(iii)2μm~20μmの範囲のD50粒子径、
を有する。
【0070】
より好ましくは、多孔質粒子は、
(i)0.7cm3/g~1.4cm3/gの範囲の窒素ガス吸着によって測定されるようなミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積、
(ii)5nm以下のPD50細孔径、好ましくは10nm以下のPD90細孔径、好ましくは3nm以下のPD30細孔径、及び、
(iii)2μm~20μmの範囲のD50粒子径、
を有する。
【0071】
より好ましくは、多孔質粒子は、
(i)0.7cm3/g~1.4cm3/gの範囲の窒素ガス吸着によって測定されるようなミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積、
(ii)5nm以下のPD50細孔径、好ましくは10nm以下のPD90細孔径、好ましくは3nm以下のPD30細孔径、及び、
(iii)2μm~18μmの範囲のD50粒子径、
を有する。
【0072】
より好ましくは、多孔質粒子は、
(i)0.7cm3/g~1.4cm3/gの範囲の窒素ガス吸着によって測定されるようなミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積、
(ii)2nm以下のPD50細孔径、好ましくは5nm以下のPD90細孔径、好ましくは1nm以下のPD30細孔径、及び、
(iii)2μm~15μmの範囲のD50粒子径、
を有する。
【0073】
工程(b)及び工程(d)で堆積される電気活性材料は同じであっても又は異なってもよく、任意で、独立に、シリコン、スズ、ゲルマニウム、アルミニウム並びにそれらの混合物及び合金から選択されてもよい。好ましい電気活性材料はシリコンである。好ましくは、工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つで堆積される電気活性材料は、シリコンである。より好ましくは、工程(b)及び工程(d)の各々で堆積される電気活性材料はどちらも、シリコンである。
【0074】
シリコンの適切な前駆体には、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)、トリシラン(Si3H8)、テトラシラン(Si4H10)、メチルシラン(CH3SiH3)、ジメチルシラン((CH3)2SiH2)、又はクロロシラン類、例えばトリクロロシラン(HSiCl3)又はメチルクロロシラン類、例えばメチルトリクロロシラン(CH3SiCl3)若しくはジメチルジクロロシラン((CH3)2SiCl2)が含まれる。シリコンの好ましい前駆体はシランである。
【0075】
スズの適切な前駆体には、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]スズ(II)([[(CH3)3Si]2N]2Sn)、テトラアリルスズ((H2C=CHCH2)4Sn)、テトラキス(ジエチルアミド)スズ(IV)([(C2H5)2N]4Sn)、テトラキス(ジメチルアミド)スズ(IV)([(CH3)2N]4Sn)、テトラメチルスズ(Sn(CH3)4)、テトラビニルスズ(Sn(CH=CH2)4)、スズ(II)アセチルアセトネート(C10H14O4Sn)、トリメチル(フェニルエチニル)スズ(C6H5C≡CSn(CH3)3)、及びトリメチル(フェニル)スズ(C6H5Sn(CH3)3)が含まれる。スズの好ましい前駆体はテトラメチルスズである。
【0076】
アルミニウムの適切な前駆体には、アルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)(Al(OCC(CH3)3CHCOC(CH3)3)3)、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)、及びトリス(ジメチルアミド)アルミニウム(III)(Al(N(CH3)2)3)が含まれる。アルミニウムの好ましい前駆体はトリメチルアルミニウムである。
【0077】
ゲルマニウムの適切な前駆体には、ゲルマン(GeH4)、ヘキサメチルジゲルマニウム((CH3)3GeGe(CH3)3)、テトラメチルゲルマニウム((CH3)4Ge)、トリブチルゲルマニウムヒドリド([CH3(CH2)3]3GeH)、トリエチルゲルマニウムヒドリド((C2H5)3GeH)、及びトリフェニルゲルマニウムヒドリド((C6H5)3GeH)が含まれる。ゲルマニウムの好ましい前駆体はゲルマンである。
【0078】
前駆体が塩素化化合物、例えばクロロシランである場合、前駆体は、水素ガスとの混合中で、好ましくは、水素対塩素の少なくとも1:1原子比で、使用される。
【0079】
任意で、前駆体は塩素を含まない。塩素を含まないとは、前駆体が1重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、好ましくは0.01重量%未満の塩素含有化合物を含有することを意味する。
【0080】
工程(b)及び工程(d)において、前駆体は純粋な形(又は実質的に純粋な形)で、又は不活性キャリアガス、例えば窒素若しくはアルゴンとの希釈混合物としてのいずれで用いてもよい。不活性キャリアガスとの希釈混合物中にある場合、前駆体は、好ましくは、前駆体及び不活性キャリアガスの総気体体積に対して、1体積%~95体積%、又は1体積%~85体積%、又は1体積%~70体積%、又は1体積%~50体積%、又は2体積%~40体積%、又は5体積%~30体積%、又は5体積%~25体積%の範囲の量で使用される。不活性大気中の作業のための従来法に従って、酸素の存在は、堆積された電気活性材料の望ましくない酸化を防止するため、最小限であるべきである。好ましくは、酸素含有量は、工程(b)及び工程(d)で使用される気体の総体積に対して、0.01体積%未満、より好ましくは0.001体積%未満である。
【0081】
工程(b)及び工程(d)における温度は、前駆体を分解して電気活性材料を形成するために有効な任意の温度である。好ましくは、工程(b)及び工程(d)における温度は、独立に、300℃~800℃、又は350℃~800℃、又は380℃~700℃、又は380℃~650℃、又は380℃~600℃、又は380℃~550℃、又は380℃~500℃、又は400℃~450℃、又は450℃~500℃、又は350℃~500℃、又は350℃~450℃、又は380℃~450℃の範囲である。より好ましくは、工程(b)及び工程(d)における温度は、各々独立に、380℃~500℃、好ましくは380℃~450℃の範囲である。
【0082】
工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つにおける圧力は、200kPa未満に維持される。好ましくは、工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つにおける圧力は、150kPa以下、又は120kPa以下、又は110kPa以下、又は100kPa以下、又は90kPa以下、又は80kPa以下、又は70kPa以下、又は60kPa以下、又は50kPa以下に維持される。
【0083】
好ましくは、少なくとも工程(b)における圧力は、200kPa未満に維持される。好ましくは、少なくとも工程(b)における圧力は、150kPa以下、又は120kPa以下、又は110kPa以下、又は100kPa以下、又は90kPa以下、又は80kPa以下、又は70kPa以下、又は60kPa以下、又は50kPa以下に維持される。
【0084】
任意で、工程(b)及び工程(d)の両方における圧力は、200kPa未満に維持してもよい。任意で、工程(b)及び工程(d)の両方における圧力は、150kPa以下、又は120kPa以下、又は110kPa以下、又は100kPa以下、又は90kPa以下、又は80kPa以下、又は70kPa以下、又は60kPa以下、又は50kPa以下に維持してもよい。
【0085】
工程(b)における圧力は、工程(d)における圧力よりも低くてもよい。例えば、工程(b)における圧力が200kPa未満に維持されてもよく、工程(d)における圧力が200kPaを超えるか、又は工程(b)における圧力が150kPa未満に維持されてもよく、工程(d)における圧力が150kPaを超えるか、又は工程(b)における圧力が120kPa未満に維持されてもよく、工程(d)における圧力が120kPaを超えるか、又は工程(b)における圧力が110kPa未満に維持されてもよく、工程(d)における圧力が110kPaを超えるか、又は工程(b)における圧力が100kPa未満に維持されてもよく、工程(d)における圧力が100kPaを超える。
【0086】
工程(d)と比較した際の工程(b)の圧力の減少は、堆積の初期段階で堆積に対する更なる制御が必要である状況で、特に、非常にミクロ多孔性である粒子に浸透させる際に、好適であり得る。上に示すように、工程(b)を低圧で実行した結果、電気活性材料の前駆体の拡散が増加し、熱分解前に、ミクロ細孔及び/又は最小のメソ細孔へのアクセスが可能になる。
【0087】
あるいは、工程(d)における圧力は、工程(b)における圧力よりも低くてもよい。例えば、工程(b)における圧力が200kPaを超えてもよく、工程(d)における圧力が200kPa未満に維持されるか、又は工程(b)における圧力が150kPaを超えてもよく、工程(d)における圧力が150kPa未満に維持されるか、又は工程(b)における圧力が120kPaを超えてもよく、工程(d)における圧力が120kPa未満に維持されるか、又は工程(b)における圧力が110kPaを超えてもよく、工程(d)における圧力が110kPa未満に維持されるか、又は工程(b)における圧力が100kPaを超えてもよく、工程(d)における圧力が100kPa未満に維持される。
【0088】
工程(b)と比較した際の工程(d)の圧力の減少は、堆積の後期段階で堆積に対する更なる制御が必要である状況で、好適であり得る。例えば、電気活性材料が多孔質粒子の細孔容積の高い比率を占有する場合、前駆体気体が残った細孔容積に浸透することを確実にし、したがって電気活性材料が内部細孔容積内に優先的に堆積し、多孔質粒子の外部表面上には堆積しないことを確実にするため、更なる制御が後期段階で必要とされ得る。
【0089】
請求される方法の任意の工程での圧力に関する言及は、任意の適切な型のリアクター容器を含み得る、反応ゾーンにおける絶対圧を指す。
【0090】
CVIによる電気活性材料の堆積は、副産物、特に水素等の副産物気体の除去を生じる。工程(c)は、好ましくは、少なくとも工程(b)で形成された中間体粒子からの副産物の分離を含む。工程(b)で形成された中間体粒子からの副産物の分離は、リアクターに不活性ガスをフラッシュすることによって、及び/又は圧力を減少させることによりリアクターを排気することによって、達成することができる。例えば、工程(b)で形成される中間体粒子からの副産物の分離は、リアクターを100kPa未満、又は80kPa未満、又は60kPa未満、又は40kPa未満、又は20kPa未満、又は10kPa未満、又は5kPa未満、又は2kPa未満、又は1kPa未満の圧力まで排気することによって、達成することができる。リアクターを排気して低い圧力にすることは、気相の副産物を除去するだけでなく、堆積された電気活性材料表面上に吸着する可能性があるいかなる副産物も脱着させるために有効であり得る。
【0091】
上に論じられるように、工程(c)は、任意で、工程(b)で堆積される電気活性材料の表面上に改質剤材料を形成する工程を含んでもよい。
【0092】
工程(c)で形成される改質剤材料は、任意で、工程(b)で堆積された電気活性材料表面上に形成される不動態化層であってもよい。したがって、工程(c)は、工程(b)由来の中間体粒子を不動態化剤と接触させることを更に含んでもよい。本明細書に定義されるように、不動態化剤は、工程(b)で堆積された電気活性材料表面と反応して改質された表面を形成可能な化合物又は化合物の混合物である。
【0093】
不動態化層は、天然酸化物層であってもよい。例えば、電気活性材料の表面を空気又は別の酸素含有気体から選択される不動態化剤に曝露することによって、天然酸化物層を形成してもよい。第一の電気活性材料がシリコンである場合、不動態化層は、式SiOx(式中、0<x≦2)の酸化シリコンを含んでもよい。酸化シリコンは好ましくは非晶質酸化シリコンである。天然酸化物層の形成は発熱性であり、したがって、粒子状材料の過熱又は更には燃焼を防止するために注意深いプロセス制御を必要とする。工程(c)で形成される改質剤材料が天然酸化物層である場合、工程(c)は、電気活性材料ドメインの表面を酸素含有気体と接触させる前に、工程(b)で形成された材料を300℃未満、好ましくは200℃未満、任意で100℃未満に冷却することを含み得る。
【0094】
不動態化層は、例えば、第二の電気活性材料層の堆積前に、アンモニア又は別の窒素含有分子から選択される不動態化剤に電気活性材料の表面を曝露することによって形成される窒化物層であってもよい。電気活性材料がシリコンである場合、不動態化層は、式SiNx(式中0<x≦4/3)の窒化シリコンを含んでもよい。窒化シリコンは、好ましくは非晶質窒化シリコンである。窒化物層は、電気活性材料ドメイン表面を、200℃~700℃、好ましくは400℃~700℃、より好ましくは400℃~600℃の範囲の温度で、アンモニアと接触させることによって形成することができる。次いで、必要であれば温度を500℃~1000℃の範囲に上昇させて、窒化物表面(例えば式SiNx(式中、x≦4/3)の窒化シリコン表面)を形成してもよい。例えば、アンモニアを使用する場合、工程(c)は、工程(b)において電気活性材料ドメインを堆積するために使用したものと同じ又は類似の温度で行ってもよい。窒化物不動態化は、酸化物不動態化よりも好ましい場合がある。準化学量論的窒化物(例えばSiNx(式中、0<x≦4/3))は、導電性であるため、窒化物中間層は、電気活性材料のより迅速な充電及び放電を可能にする導電性ネットワークとして機能する。窒化物改質剤材料ドメインはまた、容量保持率を改善するとも考えられる。ホスフィンもまた、アンモニアのリン類似体として、不動態化剤として使用されてもよい。
【0095】
不動態化層は、例えば、第二の電気活性材料層の堆積前に、第一の電気活性材料層の表面を、アンモニア(又は別の窒素含有分子)及び酸素ガスを含む不動態化剤に曝露することによって形成される酸窒化物層であってもよい。第一の電気活性材料層がシリコンである場合、第一の中間層材料は、式SiOxNy(式中、0<x<2、0<y<4/3、及び0<(2x+3y)≦4)の酸窒化シリコンを含んでもよい。窒化シリコンは、好ましくは非晶質酸窒化シリコンである。
【0096】
不動態化層は、炭化物層であってもよい。第一の電気活性材料層がシリコンである場合、第一の中間層は、式SiCx(式中、0<x≦1)の炭化シリコンを含んでもよい。炭化シリコンは、好ましくは非晶質炭化シリコンである。炭化物層は、第一の電気活性材料の表面を、昇温で、例えば250℃~700℃の範囲で、炭素含有前駆体、例えばメタン又はエチレンから選択される不動態化剤と接触させることによって形成されてもよい。より低い温度では、電気活性材料表面と炭素含有前駆体との間で共有結合が形成され、これは温度が上昇するにつれて、結晶炭化シリコンの単層に変換される。電気活性材料ドメインがシリコンを含む場合、改質剤材料ドメインは、式SiCx(式中、0<x≦1)の炭化シリコンを含み得る。
【0097】
不動態化層は、電気活性材料表面の少なくとも一部に共有結合した有機部分を含んでもよい。例えば、改質剤材料ドメインは、電気活性材料ドメイン表面の少なくとも一部に共有結合した炭素含有有機部分を含んでもよい。例えば、改質剤材料ドメインは、電気活性材料ドメイン表面に共有結合したヒドロカルビル基を含んでもよい。
【0098】
電気活性材料表面の少なくとも一部に共有結合した有機部分を含む不動態化層を形成するために適した不動態化剤には、アルケン、アルキン又はカルボニル官能基、より好ましくは末端アルケン、末端アルキン、アルデヒド又はケトン基を含む化合物が含まれる。
【0099】
好ましい不動態化剤には、以下の式:
(i)R1-CH=CH-R1、
(ii)R1-C≡C-R1、及び、
(iii)O=CR1R1
(式中、各R1は独立に、H、若しくは1個~20個の炭素原子を有する非置換若しくは置換の脂肪族若しくは芳香族ヒドロカルビル基を示すか、又は2つのR1基は環中に3個~8個の炭素原子を含む非置換若しくは置換環構造を形成する)の1つ以上の化合物が含まれる。
【0100】
特に好ましい不動態化剤には、以下の式:
(i)CH2=CH-R1、及び、
(ii)HC≡C-R1
(式中、R1は上に定義される通りである)の1つ以上の化合物が含まれる。好ましくは、R1は非置換である。
【0101】
適切な不動態化剤の例としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、ブタジエン、1-ペンテン、1,4-ペンタジエン、1-ヘキセン、1-オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、アセチレン、フェニルアセチレン、ノルボルネン、ノルボルナジエン及びビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エンが挙げられる。任意で、異なる不動態化剤の混合物もまた使用可能である。
【0102】
アルケン、アルキン又はカルボニル基を含む不動態化剤は、電気活性材料表面のM-H基(式中、Mは電気活性材料の原子を示す)との挿入反応を経て、空気による酸化に抵抗性である共有不動態化表面を形成すると考えられる。シリコンが電気活性材料である場合、シリコン表面と不動態化剤との間の不動態化反応は、以下に模式的に示されるようなヒドロシリル化の1つの形と理解されることができる。
【化1】
【0103】
水素化物末端は、分解されて水素ガスを生じることがあり、これが電極のトポグラフィに有害であり得るため、電気活性材料ドメイン表面での水素化物末端を、共有結合した有機改質剤材料ドメイン、例えば炭素含有有機部分に置き換えることが好適である。さらに、Si-C結合は、導電性を改善すると考えられている。
【0104】
他の適切な不動態化剤には、酸素、窒素、硫黄又はリンに結合した活性水素原子を含む化合物が含まれる。例えば、不動態化剤は、アルコール、アミン、チオール又はホスフィンであってもよい。-XH基と電気活性材料表面のヒドリド基との反応は、H2の除去及びXと電気活性材料表面との間の直接結合の形成をもたらすと理解される。
【0105】
このカテゴリーの適切な不動態化剤には、以下の式:
(iv)HX-R2、及び、
(v)HX-C(O)-R1
(式中、Xは、O、S、NR1又はPR1を示し、各R1は独立に上に定義される通りであり、R2は、1個~20個の炭素原子を有する非置換若しくは置換の脂肪族若しくは芳香族ヒドロカルビル基を示すか、又はR1及びR2は、一緒に、環中に3個~8個の炭素原子を含む非置換若しくは置換環構造を形成する)の化合物が含まれる。
【0106】
好ましくは、XはO又はNHを示す。
【0107】
好ましくは、R2は、2個~10個の炭素原子を有する、任意で置換された脂肪族又は芳香族基を示す。ピロリジン、ピロール、イミダゾール、ピペラジン、インドール、又はプリンにおけるように、4員~10員の脂肪族又は芳香族環構造に、アミン基も取り込まれていてもよい。
【0108】
工程(c)において、電気活性材料と不動態化剤との接触は、25℃~700℃の範囲の温度で、好ましくは50℃~500℃、より好ましくは100℃~300℃の範囲の温度で行われてもよい。
【0109】
工程(c)で形成される改質剤材料は、任意で、炭素含有前駆体の熱分解によって、すなわち化学気相浸透(CVI)法によって、電気活性材料表面上に堆積される熱分解性炭素材料を含み得る。工程(c)における熱分解性炭素材料の堆積は、複合粒子内の電子伝達を促進し得る電気活性材料ドメイン間の導電性ネットワークを形成するため、好適であり得る。工程(c)は、したがって、工程(b)由来の中間体粒子と、炭素含有前駆体、好ましくは炭化水素とを、中間体粒子の細孔において熱分解性炭素材料の堆積を引き起こすために有効な温度で接触させることを含んでいてもよい。
【0110】
適切な炭化水素には、10個~25個の炭素原子、及び任意で1個~3個のヘテロ原子を含む多環炭化水素が含まれ、任意で、多環芳香族炭化水素は、ナフタレン、置換ナフタレン、例えばジヒドロキシナフタレン、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、フルオレン、アセナフテン、フェナントレン、フルオランテン、ピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、フルオレノン、アントラキノン、アントロン及びこれらのアルキル置換誘導体から選択される。適切な熱分解性炭素前駆体にはまた、二環モノテルペノイドが含まれ、任意で、二環モノテルペノイドは、カンファー、ボルネオール、ユーカリプトール、カンフェン、カリーン(careen)、サビネン、ツジェン及びピネンから選択される。更に適切な熱分解性炭素前駆体には、C2~C10炭化水素が含まれ、任意で、炭化水素は、アルカン、アルケン、アルキン、シクロアルカン、シクロアルケン、及びアレーン、例えばメタン、エチレン、プロピレン、リモネン、スチレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、α-テルピネン及びアセチレンから選択される。他の適切な熱分解性炭素前駆体には、フタロシアニン、スクロース、デンプン、酸化グラフェン、還元酸化グラフェン、ピレン、ペルヒドロピレン、トリフェニレン、テトラセン、ベンゾピレン、ペリレン、コロネン、及びクリセンが含まれる。好ましい炭素前駆体はアセチレンである。
【0111】
工程(c)における熱分解性炭素材料の堆積に適した温度は、300℃~800℃、又は400℃~700℃の範囲である。例えば、温度は、680℃以下、又は660℃以下、又は640℃以下、又は620℃以下、又は600℃以下、又は580℃以下、又は560℃以下、又は540℃以下、又は520℃以下、又は500℃以下であってもよい。最低温度は、使用される炭素前駆体のタイプに応じて変わる。好ましくは、温度は、少なくとも300℃、又は少なくとも350℃、又は少なくとも400℃、又は少なくとも450℃、又は少なくとも500℃である。
【0112】
工程(c)で使用される炭素含有前駆体は、純粋な形で、又は窒素若しくはアルゴン等の不活性キャリアガスで希釈された混合物中で使用されてもよい。例えば、炭素含有前駆体は、前駆体及び不活性キャリアガスの総体積に対して、0.1体積%~100体積%、又は0.5体積%~20体積%、又は1体積%~10体積%、又は1体積%~5体積%の範囲の量で使用されてもよい。堆積された電気活性材料の望ましくない酸化を防止するため、酸素の存在は最小限でなければならない。好ましくは、酸素含有量は、気体の総体積に対して、0.01体積%未満、より好ましくは0.001体積%未満である。
【0113】
熱分解性炭素材料が工程(c)で堆積される場合、同じ化合物が、不動態化剤及び熱分解性炭素前駆体の両方として機能することができる。例えば、スチレンが熱分解性炭素前駆体として選択される場合、これはまた、工程(b)由来の中間体粒子がスチレンとの接触前に酸素に曝露されないならば、不動態化剤としても機能するであろう。この場合、工程中の導電性炭素材料の不動態化及び堆積は、例えば300℃~700℃の範囲の温度で、同時に行うことができる。代替的には、導電性炭素材料の不動態化及び堆積は、不動態化剤及び熱分解性炭素前駆体が同じ材料であるが、熱分解性炭素前駆体の堆積が不動態化よりもより高い温度で行われる場合、連続して行うことができる。例えば、不動態化は、25℃~300℃未満の範囲の温度で行うことができ、熱分解性炭素の堆積は、300℃~700℃の範囲の温度で行うことができる。これらの2つの工程は、不動態化剤及び熱分解性炭素前駆体の両方として機能する化合物との接触を維持しながら、温度を上昇させることによって、連続して適切に行うことができる。より低い温度(例えば25℃~300℃未満の範囲)では、不動態化が主なプロセスであろう。温度が(例えば300℃~700℃へ)上昇するにつれ、熱分解性炭素の堆積が続いて起こると考えられる。
【0114】
各工程で堆積される電気活性材料の量に応じて、本発明の方法は、工程(c)及び工程(d)が電気活性材料のターゲット量を堆積させるために必要なだけ何度も繰り返される、マルチパスプロセスとして操作されてもよい。例えば、工程(c)及び工程(d)は2回~15回行い、工程(b)及び工程(d)の繰返しを含めて、合計3回~16回の電気活性材料の堆積工程が生じてもよい。
【0115】
工程(c)及び工程(d)を繰り返す際、工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つの圧力を200kPa未満に維持するという要件は、工程(b)又はいずれか1つの工程(d)を指すと解釈されなければならない。好ましくは、少なくとも工程(b)の圧力が200kPa未満に維持される。
【0116】
任意で、工程(b)及び繰返し工程(d)の2つ以上における圧力が200kPa未満に維持されてもよい。例えば、少なくとも工程(b)及び少なくとも1つの工程(d)の圧力が200kPa未満に維持されてもよい。任意で、工程(b)及び繰返し工程(d)の全ての圧力が200kPa未満に維持されてもよい。
【0117】
工程(c)及び工程(d)を繰り返す際、工程(c)及び工程(d)の各過程は、独立に上述の通りである。例えば、工程(c)の各繰返しは、同じ又は異なる改質剤材料の形成を含んでいてもよく、又は改質剤材料は、任意で、1つ以上の工程において全く形成されなくてもよい。同様に、工程(d)の各繰返し中で堆積される電気活性材料は、同じであっても又は異なっていてもよく、工程(b)で堆積される電気活性材料とやはり同じであっても又は異なっていてもよい。好ましくは、工程(b)及び繰返し工程(d)の少なくとも1つで堆積される電気活性材料はシリコンである。より好ましくは、工程(b)及び繰返し工程(d)の各々で堆積される電気活性材料はシリコンである。
【0118】
工程(c)及び工程(d)を繰り返す場合、工程(c)の繰返し中に使用される粒子は、先行する工程(d)から得られる中間体粒子である。したがって、工程(c)の説明における「工程(b)由来の粒子」に対する本明細書中のいかなる言及も、工程(c)を任意で繰り返す場合には、「先行する工程(d)由来の粒子」として解釈されるべきである。
【0119】
複合粒子中の或る範囲の異なる電気活性材料の充填を本発明の方法を使用して得てもよい。例えば、複合粒子中の電気活性材料(例えば、シリコン)の量は、複合粒子の総質量に対して、5重量%~85重量%の範囲であってもよい。好ましくは、複合粒子中の電気活性材料の量は、複合粒子の総質量に対して、10重量%~85重量%、又は15重量%~85重量%、又は20重量%~80重量%、又は25重量%~80重量%、又は30重量%~75重量%、又は35重量%~75重量%、又は40重量%~70重量%、又は45重量%~65重量%である。複合粒子中の総電気活性材料の充填は、工程(b)及び工程(d)(工程(d)の繰り返しを含む)で堆積された電気活性材料の合計である。
【0120】
複合粒子中の電気活性材料(例えば、シリコン)の量は、好ましくは、多孔質粒子の内部細孔容積の少なくとも20%かつ最大90%が、工程(c)後に電気活性材料によって占有されるように選択される。例えば、電気活性材料は、多孔質粒子の内部細孔容積の20%~80%、又は25%~75%、又は30%~70%、又は35%~65%、又は40%~60%、又は45%~55%を占有してもよい。これらの好ましい範囲内で、多孔質粒子の残りの細孔容積は、粒子状粒子の体積容量に寄与しない過剰な細孔容積を伴わず、充電及び放電中の電気活性材料の膨張に適応するのに有効である。しかしながら、電気活性材料の量はまた、不適切な金属イオン拡散速度のため、又はリチウム化に対する機械的抵抗性を生じる不適切な膨張容積のため、有効なリチウム化を妨げるほど高くはない。
【0121】
電気活性材料がシリコンである場合、複合粒子中のシリコンの量は、シリコン対多孔質粒子の質量比が[0.5×P1~1.9×P1]:1の範囲であるという要件によって、多孔質粒子中の利用可能な細孔容積に関連付けることが可能であり、ここで、P1は、cm3/gで示されるような、多孔質粒子中のミクロ細孔及びメソ細孔の総細孔容積の度合いを有する無次元の量である(例えば、多孔質粒子が、1.2cm3/gのミクロ細孔及びメソ細孔の総容積を有するならば、P1=1.2である)。この関係は、シリコンの密度及び多孔質粒子の細孔容積を考慮に入れて、細孔容積が約20%~82%占有されるシリコンの重量比を定義する。
【0122】
複合粒子中の電気活性材料の量は、元素分析によって決定されることができる。好ましくは、元素分析を使用して、多孔質粒子のみの元素組成、及び複合粒子の組成を決定する。
【0123】
シリコンの含有量は、好ましくは、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)によって決定される。ThermoFisher Scientificから入手可能なICP-OES分析装置のiCAP(商標)7000シリーズ等、多くのICP-OES装置が市販されている。複合粒子及び多孔質炭素粒子のみにおける炭素の含有量(並びに必要に応じて、水素、窒素、及び酸素の含有量)は、好ましくは、IR吸収によって決定される。炭素、水素、窒素、及び酸素の含有量を決定するのに好適な装置は、Leco Corporationから入手可能なTruSpec(商標)Micro元素分析装置である。
【0124】
好ましくは、複合粒子の外部表面上には、まったく又はほとんど電気活性材料が位置しないように、複合粒子中の電気活性材料の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、更により好ましくは少なくとも98重量%が、多孔質粒子の内部細孔容積内に位置する。上に論じられるように、CVIプロセス中の電気活性材料の堆積は、多孔質粒子表面で起こる。多孔質粒子の内部表面積が非常に高いことを考慮すると、CVIプロセスの反応速度論は、電気活性材料の堆積が、ほぼ完全に多孔質粒子の細孔内で起こることを確実にする。電気活性材料の内部堆積は、工程(b)及び工程(d)の少なくとも1つにおける圧力が200kPa未満に、又は上に論じられる好ましい圧力範囲内に維持されるという要件によって更に改善される。
【0125】
本発明の方法は、任意で、
(e)工程(d)由来の複合粒子の細孔中及び/又は外側表面上に複数の改質剤材料ドメインを形成する工程、
を更に含む。
【0126】
最後の電気活性材料の堆積工程(すなわち工程(d)、又は工程(c)及び工程(d)を繰り返す場合、工程(d)の最後の繰返し)後、工程(e)を直ちに行う。工程(e)における改質剤材料ドメインの形成は、工程(e)が最後の電気活性材料の堆積工程(最後の工程(d))の後に行われる一方で、工程(c)は連続する電気活性材料の堆積工程の間に行われることを除けば、上述の工程(c)と類似している。工程(c)に関連して本明細書に開示される改質剤材料及び堆積条件はいずれも、工程(e)にも当てはまる。
【0127】
工程(e)で形成される改質剤材料ドメインは、工程(c)で形成される改質剤材料ドメインと同じ又は異なる改質剤材料を含んでいてもよい。
【0128】
任意で、工程(e)は、工程(d)由来の複合粒子と不動態化剤とを接触させることを含む。工程(c)に関連して上に示される好ましい不動態化剤及び不動態化条件はまた、工程(e)における不動態化にも当てはまる。
【0129】
任意で、工程(e)は、工程(d)由来の複合粒子の細孔内及び/又は外側表面上に、リチウムイオン透過性材料を堆積することを含む。これは、複合粒子の表面積を減少させることによって、かつ電気活性材料ドメインを電解質へのアクセスから遮断することによって、リチウムイオン電池のための電気活性材料として使用される際、複合粒子の性能の更なる改善をもたらす。
【0130】
リチウムイオン透過性材料は、最後の電気活性材料の堆積工程(すなわち工程(d)、又は工程(c)及び工程(d)を1回以上繰り返す場合、最後の工程(d)の後)の直後に堆積してもよい。代替的に、上に論じられるように、工程(e)中の不動態化工程を最初に実施した後に、リチウムイオン透過性材料を堆積させてもよい。
【0131】
適切なリチウムイオン透過性材料は、熱分解性炭素材料である。熱分解性炭素材料は、化学気相浸透(CVI)法によって、すなわち複合粒子表面上への揮発性炭素含有ガス(例えばエチレン)の熱分解によって得られ得る。
【0132】
熱分解性炭素材料を堆積させるために適したプロセスは、工程(d)由来の複合粒子を熱分解性炭素前駆体と合わせることと、複合粒子の細孔内及び/又は外側表面上への熱分解性導電性炭素材料の堆積を引き起こすために有効な温度まで、熱分解性炭素前駆体を加熱することとを含む。
【0133】
工程(c)に関連して上に示される好ましい熱分解性炭素前駆体及び熱分解条件はまた、工程(e)における熱分解性炭素材料の形成にも当てはまる。
【0134】
リチウムイオン透過性材料が熱分解性炭素材料である場合、同じ化合物が、工程(e)において、不動態化剤及び熱分解性炭素前駆体の両方として機能し得る。工程(e)において、不動態化剤及び熱分解性炭素前駆体として同じ化合物を使用して、熱分解性炭素材料を不動態化し、形成するために適した条件は、工程(c)に関連して上に示されるものと同じである。
【0135】
代替的には、工程(e)において、不動態化剤として、かつ熱分解性炭素前駆体として、異なる化合物を使用してもよい。例えば、不動態化剤はスチレンでもよく、熱分解性炭素前駆体は、熱分解性炭素材料を形成可能であるが、電気活性材料表面を不動態化することができない、シクロヘキサン等の化合物であってもよい。
【0136】
本発明の方法によって得られる複合粒子は、空気中の熱重量分析(TGA)下での性能によって特徴づけられ得る。この分析法は、電気活性材料が空気中及び昇温で酸化される際に、重量増加が観察されるという原理に基づいている。
【0137】
本明細書に定義されるように、「表面シリコン」は、150℃~500℃の間の最小値から550℃~650℃の間の温度範囲で測定される最大質量までのTGAトレースの初期質量増加から計算され、TGAは、空気中10℃/分の昇温速度で行われる。この質量増加は、表面シリコンの酸化から生じると仮定され、したがって、以下の式:
Y=1.875×[(Mmax-Mmin)/Mf]×100%
(式中、Yは試料中の総シリコンの比率としての表面シリコンのパーセンテージであり、Mmaxは、550℃~650℃の間の温度範囲で測定された試料の最大質量であり、Mminは、150℃より高く500℃より低い温度での試料の最小質量であり、Mfは1400℃での酸化完了時の試料の質量である)に従って、シリコンの総量の比率としての表面シリコンのパーセンテージを決定することができる。完全を期すために、1.875は、O2に対するSiO2のモル質量比(すなわち、酸素の添加による質量増加に対する形成されたSiO2の質量比)であることが理解されるであろう。典型的には、TGA分析は、10mg±2mgの試料サイズを用いて行われる。
【0138】
本発明の方法の1つの利点は、低圧CVI工程が、上述のTGA法によって決定されるような高含有量を有する複合粒子を生じることである。その結果、多数回の充電/放電サイクルにわたる可逆性容量保持率がかなり改善する。本発明の方法に従って調製された複合粒子において、表面シリコン含有量は、一般的に、複合粒子中のシリコン総量の少なくとも20重量%であり、複合粒子中のシリコン総量の少なくとも22重量%、又は少なくとも25重量%、シリコンの少なくとも30重量%、又はシリコンの少なくとも35重量%、又はシリコンの少なくとも40重量%、又は複合粒子中のシリコン総量の少なくとも45重量%であってもよい。
【0139】
表面シリコン含有量に加えて、本発明の方法によって得られるシリコン含有複合粒子は、TGAによって決定されるように、粗バルクシリコン(coarse bulk silicon)を低い含有量で有する。粗バルクシリコンは、本明細書において、TGAによって求められる800℃超で酸化を受けるシリコンとして規定され、ここで、TGAは、空気中10℃/分の昇温速度で行われる。したがって、粗バルクシリコン含有量は、以下の式:
Z=1.875×[(Mf-M800)/Mf]×100%
(式中、Zは800℃での未酸化のシリコンのパーセンテージであり、M800は、800℃での試料の質量であり、Mfは1400℃での酸化完了時の灰の質量である)に従って決定される。この分析の目的のため、800℃超でのいかなる質量増加も、シリコンからSiO2への酸化に対応し、酸化完了時の総質量がSiO2であると仮定する。
【0140】
800℃超で酸化を経るシリコンはあまり望ましくない。本発明の方法に従って調製される複合粒子中、粗バルクシリコン含有量は、一般的に、複合粒子中のシリコン総量の10重量%以下であり、複合粒子中のシリコン総量の8重量%以下、又は6重量%以下、又は5重量%以下、又は4重量%以下、又は3重量%以下、又は2重量%以下、又は1.5重量%以下であってもよい。
【0141】
好ましくは、シリコンの少なくとも30重量%が表面シリコンであり、シリコンの10重量%以下が粗バルクシリコンであり、どちらもTGAによって求められる。より好ましくは、シリコンの少なくとも35重量%が表面シリコンであり、シリコンの8重量%以下が粗バルクシリコンであり、どちらもTGAによって求められる。より好ましくは、シリコンの少なくとも40重量%が表面シリコンであり、シリコンの5重量%以下が粗バルクシリコンであり、どちらもTGAによって求められる。より好ましくは、シリコンの少なくとも45重量%が表面シリコンであり、シリコンの2重量%以下が粗バルクシリコンであり、どちらもTGAによって求められる。
【0142】
本発明の方法に従って得られる複合粒子は、好ましくは、300m2/g以下、又は250m2/g以下、又は200m2/g以下、又は150m2/g以下のBET表面積を有する。より好ましくは、100m2/g以下、又は80m2/g以下、又は60m2/g以下、又は40m2/g以下、又は30m2/g以下、又は25m2/g以下、又は20m2/g以下、又は15m2/g以下、又は10m2/g以下、又は5m2/g以下である。一般的に、アノードの最初の充放電サイクル中の複合粒子表面での固体電解質界面(SEI)層の形成を最小限にするため、BET表面積が低いことが好ましい。しかしながら、BET表面積が過剰に低いと、周囲の電解質中で、大量の電気活性材料が金属イオンにアクセス不能であるため、充電速度及び容量が許容し得ないほど低くなる。BET表面積は、好ましくは少なくとも0.1m2/g、又は少なくとも1m2/g、又は少なくとも2m2/g、又は少なくとも5m2/gである。例えば、複合粒子のBET表面積は、0.1m2/g~100m2/g、又は0.1m2/g~80m2/g、又は0.5m2/g~60m2/g、又は0.5m2/g~40m2/g、又は1m2/g~30m2/g、又は1m2/g~25m2/g、又は2m2/g~20m2/gの範囲であってもよい。
【0143】
反応のプロセスは、昇温で固体及び気体を接触させることが可能ないずれのリアクターを使用して行ってもよい。多孔質粒子及び形成する複合粒子は、粒子の固定床の形で、又は粒子の移動床若しくは攪拌床の形で、リアクターに存在し得る。
【0144】
第2の態様において、本発明は、本発明の第1の態様の方法に従って得られ得る複合粒子を提供する。
【0145】
本発明の第3の態様において、本発明の第2の態様による複合粒子と、少なくとも1つの他の構成要素とを含む組成物が提供される。特に、本発明の第2の態様による複合粒子と、(i)バインダー、(ii)導電性添加剤、及び(iii)追加の粒子状電気活性材料から選択される少なくとも1つの他の構成要素とを含む組成物が提供される。本発明の第3の態様による組成物は、電極組成物として有用であり、よって、電極の活性層を形成するのに使用することができる。
【0146】
組成物は、複合粒子と、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料とを含むハイブリッド電極組成物とすることができる。追加の粒子状電気活性材料の例としては、黒鉛、硬質炭素、シリコン、スズ、ゲルマニウム、アルミニウム、及び鉛が挙げられる。少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、好ましくは、黒鉛及び硬質炭素から選択される。少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、最も好ましくは、黒鉛である。
【0147】
ハイブリッド電極組成物の場合、組成物は、好ましくは、組成物の総乾燥重量に対して、3重量%~60重量%、又は3重量%~50重量%、又は5重量%~50重量%、又は10重量%~50重量%、又は15重量%~50重量%の本発明の第2の態様による複合粒子を含む。
【0148】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、好適には、20重量%~95重量%、又は25重量%~90重量%、又は30重量%~750重量%の少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料の量で存在する。
【0149】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、好ましくは10μm~50μm、好ましくは10μm~40μm、より好ましくは10μm~30μm、最も好ましくは10μm~25μm、例えば15μm~25μmの範囲のD50粒子径を有する。
【0150】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料のD10粒子径は、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも6μm、より好ましくは少なくとも7μm、より好ましくは少なくとも8μm、より好ましくは少なくとも9μm、更に好ましくは少なくとも10μmである。
【0151】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料のD90粒子径は、好ましくは最大100μm、より好ましくは最大80μm、より好ましくは最大60μm、より好ましくは最大50μm、最も好ましくは最大40μmである。
【0152】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、炭素含有粒子、黒鉛粒子、及び/又は硬質炭素粒子から選択されることが好ましく、ここで、黒鉛粒子及び硬質炭素粒子は、10μm~50μmの範囲のD50粒子径を有する。更に好ましくは、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は黒鉛粒子から選択され、ここで、黒鉛粒子は、10μm~50μmの範囲のD50粒子径を有する。
【0153】
組成物は、追加の粒子状電気活性材料を実質的に含まない非ハイブリッド(すなわち、「高充填」)電極組成物であってもよい。この文脈では、「追加の粒子状電気活性材料を実質的に含まない」という用語は、組成物が、該組成物の総乾燥重量に対して、任意の追加の電気活性材料(すなわち、電池の充電中及び放電中に金属イオンの挿入及び放出が可能な追加の材料)を15重量%未満、好ましくは10重量%未満、好ましくは5重量%未満、好ましくは2重量%未満、より好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.5重量%未満で含むことを意味するものと解釈されるべきである。
【0154】
この種の「高充填」電極組成物は、該組成物の総乾燥重量に対して、本発明の第2の態様の複合粒子を、好ましくは、少なくとも50重量%、又は少なくとも60重量%、又は少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%、又は少なくとも90重量%含む。
【0155】
組成物は、任意で、バインダーを含むことができる。バインダーは、組成物を集電体に接着させ、かつ、組成物の一体性を維持するように機能する。本発明に従って使用することができるバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)及びそのアルカリ金属塩、変性ポリアクリル酸(mPAA)及びそのアルカリ金属塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、変性カルボキシメチルセルロース(mCMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na-CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩及びそのアルカリ金属塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、並びにポリイミドが挙げられる。組成物は、バインダーの混合物を含むことができる。好ましくは、バインダーは、ポリアクリル酸(PAA)及びそのアルカリ金属塩、並びに変性ポリアクリル酸(mPAA)及びそのアルカリ金属塩、SBR、並びにCMCから選択されるポリマーを含む。
【0156】
バインダーは、好適には、組成物の総乾燥重量に対して、0.5重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、好ましくは2重量%~10重量%、最も好ましくは5重量%~10重量%の量で存在することができる。
【0157】
バインダーは、任意で、架橋促進剤、カップリング剤、及び/又は接着促進剤等、バインダーの特性を変更する1つ以上の添加剤と組み合わせて存在することができる。
【0158】
組成物は、任意で、1つ以上の導電性添加剤を含むことができる。好ましい導電性添加剤は、組成物の電気活性構成要素間、及び組成物の電気活性構成要素と集電体との間の導電性を改善するように含まれる非電気活性材料である。導電性添加剤は、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、金属繊維、金属粉末、及び導電性金属酸化物から選択することができる。好ましい導電性添加剤としては、カーボンブラック及びカーボンナノチューブが挙げられる。
【0159】
1つ以上の導電性添加剤は、好適には、組成物の総乾燥重量に対して、0.5重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、好ましくは2重量%~10重量%、最も好ましくは5重量%~10重量%の総量で存在することができる。
【0160】
第4の態様において、本発明は、集電体と電気的に接触する、本発明の第2の態様による複合粒子を含む電極を提供する。本発明の第4の態様の電極を製造するために使用される粒子状材料は、本発明の第3の態様による組成物の形態とすることができる。
【0161】
本明細書において使用される集電体という用語は、組成物中の電気活性粒子へと、また該電気活性粒子から電流を流すことができる任意の導電性基板を指す。集電体として使用することができる材料の例としては、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、及び焼結炭素が挙げられる。銅が好ましい材料である。集電体は、典型的には、3μm~500μmの厚さを有する箔又はメッシュの形態を有する。本発明の粒子状材料は、集電体の片面又は両面に、好ましくは10μm~1mm、例えば、20μm~500μm、又は50μm~200μmの範囲の厚さまで適用することができる。
【0162】
本発明の第4の態様の電極は、本発明の粒子状材料を、溶媒及び任意で1つ以上の粘度調整添加剤と合わせてスラリーを形成することによって作製することができる。次いで、スラリーを集電体の表面にキャストし、溶媒を除去することによって、集電体の表面に電極層を形成する。任意のバインダーを硬化させる熱処理及び/又は電極層のカレンダリング処理等の更なる工程を、適宜、行うことができる。電極層は、好適には、20μm~2mm、好ましくは20μm~1mm、好ましくは20μm~500μm、好ましくは20μm~200μm、好ましくは20μm~100μm、好ましくは20μm~50μmの範囲の厚さを有する。
【0163】
代替的には、例えば、スラリーを好適なキャストテンプレートにキャストし、溶媒を除去し、次いでキャストテンプレートを除去することによって、スラリーを本発明の粒子状材料を含む自立型フィルム又はマットに成形することができる。得られたフィルム又はマットは、自立型凝集塊の形態を有しており、次いで、既知の方法によって集電体に接着することができる。
【0164】
本発明の第4の態様の電極は、金属イオン電池のアノードとして使用することができる。よって、第5の態様において、本発明は、上述のような電極を含むアノードと、金属イオンを放出及び再吸収することができるカソード活物質を含むカソードと、アノードとカソードとの間の電解質とを含む充電式金属イオン電池を提供する。
【0165】
金属イオンは、好ましくはリチウムイオンである。より好ましくは、本発明の充電式金属イオン電池はリチウムイオン電池であり、カソード活物質はリチウムイオンを放出及び受容することができる。
【0166】
カソード活物質は、好ましくは金属酸化物系複合材である。好適なカソード活物質の例としては、LiCoO2、LiCo0.99Al0.01O2、LiNiO2、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.5O2、LiCo0.7Ni0.3O2、LiCo0.8Ni0.2O2、LiCo0.82Ni0.18O2、LiCo0.8Ni0.15Al0.05O2、LiNi0.4Co0.3Mn0.3O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.34O2が挙げられる。カソード集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有する。カソード集電体として使用することができる材料の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、及び焼結炭素が挙げられる。
【0167】
電解質は、好適には、金属塩、例えばリチウム塩を含有する非水性電解質であり、非水性電解液、固体電解質、及び無機固体電解質を含むことができるが、これらに限定されるものではない。使用することができる非水性電解液の例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の非プロトン性有機溶媒が挙げられる。
【0168】
有機固体電解質の例としては、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、及びイオン性解離基を含有するポリマーが挙げられる。
【0169】
無機固体電解質の例としては、Li5NI2、Li3N、LiI、LiSiO4、Li2SiS3、Li4SiO4、LiOH、及びLi3PO4等のリチウム塩の窒化物、ハロゲン化物、及び硫化物が挙げられる。
【0170】
リチウム塩は、好適には、選択した溶媒又は溶媒の混合物に可溶である。好適なリチウム塩の例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiBC4O8、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、及びCF3SO3Liが挙げられる。
【0171】
電解質が非水性有機溶液である場合、金属イオン電池は、好ましくは、アノードとカソードとの間に挿入されたセパレータを備える。セパレータは、典型的には、高いイオン透過性及び高い機械的強度を有する絶縁材料で形成されている。セパレータは、典型的には、0.01μm~100μmの細孔径を有し、5μm~300μmの厚さを有する。好適な電極セパレータの例としては、マイクロポーラスポリエチレンフィルムが挙げられる。
【0172】
セパレータは、高分子電解質材料で置き換えることができ、そのような場合、高分子電解質材料は、複合アノード層及び複合カソード層の両方内に存在する。高分子電解質材料は、固体高分子電解質又はゲル型高分子電解質とすることができる。
【国際調査報告】