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特表2024-539136IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/16 20060101AFI20241018BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20241018BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20241018BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20241018BHJP
   C12P 21/02 20060101ALN20241018BHJP
   C07K 14/705 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C07K1/16
C07K19/00 ZNA
C07K1/18
C07K1/20
C07K16/00
C12P21/08
C12P21/02 C
C07K14/705
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523614
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-05-02
(86)【国際出願番号】 KR2022015837
(87)【国際公開番号】W WO2023068740
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0139445
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517432732
【氏名又は名称】アルテオジェン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】ピョン、ミンス
(72)【発明者】
【氏名】ナム、キ ソク
【テーマコード(参考)】
4B064
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG20
4B064AG26
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE10
4B064CE11
4B064CE13
4B064DA01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA41
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA28
4H045FA72
4H045FA74
4H045GA21
4H045GA23
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質含有原料に対するマルチモーダルクロマトグラフィー精製ステップを行うことにより、エンドトキシン<0.05EU/mg又はサイズ排除HPLC純度98%以上のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を得る、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法、ア)IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を産生する細胞を培養するステップと、イ)前記ア)で培養した細胞からタンパク質を回収するステップと、ウ)前記イ)で回収したタンパク質を1次クロマトグラフィーにより精製するステップと、エ)前記ウ)で1次クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をマルチモーダルクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップとを含み、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いない、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法、前記方法により精製した、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgG Fcドメインを有する融合タンパク質含有原料に対するマルチモーダル(multimodal)クロマトグラフィー精製ステップを行うことにより、エンドトキシン<0.05EU/mg又はサイズ排除HPLC純度98%以上のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を得る、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項2】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法は、陽イオン交換クロマトグラフィー精製ステップをさらに含む、請求項1に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項3】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用(hydrophobic interaction)クロマトグラフィー及び陰イオン交換樹脂クロマトグラフィーを行わないものである、請求項1又は2に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項4】
前記マルチモーダルクロマトグラフィーのリガンドとして、イオン性結合、水素結合及び疎水性結合のマルチモーダル機能を有する物質を含む、請求項1に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項5】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドは、スルホン酸(-SO)、スルホプロピル(Sulfopropyl)及びカルボキシメチル(Carboxymethyl)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項6】
前記クロマトグラフィー精製ステップにおいて、溶出は、pH勾配を用いるものである、請求項1又は2に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項7】
前記クロマトグラフィーは、溶出ステップを含み、前記溶出ステップは、結合・溶出モード(binding and elution mode)で行うものである、請求項1又は2に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項8】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質は血管内皮細胞増殖因子アンタゴニストである、請求項1又は2に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項9】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質はアフリベルセプト(Aflibercept)である、請求項1又は2に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項10】
ア)IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を産生する細胞を培養するステップと、
イ)前記ア)で培養した細胞からタンパク質を回収するステップと、
ウ)前記イ)で回収したタンパク質を1次クロマトグラフィーにより精製するステップと、
エ)前記ウ)で1次クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をマルチモーダルクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップとを含み、
陰イオン交換クロマトグラフィーを用いない、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項11】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法で最終精製された、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質は、サイズ排除HPLC純度98%以上、エンドトキシン<0.05EU/mg、又はpI 6.0~8.0である、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項12】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質は血管内皮細胞増殖因子アンタゴニストである、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項13】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質はアフリベルセプトである、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項14】
前記エ)マルチモーダルクロマトグラフィーにより精製するステップは、
(a)pH6~8の緩衝液で平衡化したマルチモーダルクロマトグラフィーカラムに1次クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をローディングするステップと、
(b)前記(a)ステップのものより低いpHの緩衝液をクロマトグラフィーカラムに注入し、pH6~4の条件で精製タンパク質を溶出して収穫するステップとを含む、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項15】
前記マルチモーダルクロマトグラフィーのリガンドとして、イオン性結合、水素結合及び疎水性結合のマルチモーダル機能を有する物質を含む、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項16】
前記エ)陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップは、
(a)pH4~6の緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに先行クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をローディングするステップと、
(b)前記(a)ステップの緩衝液より高いpHの緩衝液で溶出し、pI 6.0~8.0のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を収穫するステップとを含む、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項17】
前記(b)ステップにおいて、(a)ステップの緩衝液より高いpHの緩衝液は、pH5~8である、請求項16に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項18】
前記陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドは、スルホン酸(-SO)、スルホプロピル(Sulfopropyl)及びカルボキシメチル(Carboxymethyl)からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項19】
前記マルチモーダルクロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーからなる群から選択される少なくとも1つは、溶出ステップを含み、前記溶出ステップは、結合・溶出モード(binding and elution mode)で行うものである、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項20】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法は、サイズ排除クロマトグラフィー及び疎水性相互作用(hydrophobic interaction)クロマトグラフィーを行わないものである、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項21】
前記ウ)及びエ)からなる群から選択される少なくとも1つのステップの前に、前記ステップの後に、又はそれらを組み合わせて、深層濾過ステップ、限外濾過ステップ、透析濾過ステップ及びウイルス不活化ステップからなる群から選択される少なくとも1つをさらに行うものである、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項22】
前記ウ)1次クロマトグラフィーにより精製するステップ、及びエ)マルチモーダルクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップからなる群から選択される少なくとも1つのステップは、溶出ステップを含み、前記溶出ステップは、pH勾配を用いるものである、請求項10に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法。
【請求項23】
請求項1又は10に記載の精製方法により精製された、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を含む組成物。
【請求項24】
前記組成物は、疎水性相互作用クロマトグラフィー分析の際に、50mMリン酸ナトリウム、2M塩化ナトリウム、pH7.0である移動相A、及び50mMリン酸ナトリウム、30%アセトニトリル、pH7.0である移動相Bにおいて、移動相Bの割合が40~45%の区間で溶出するピーク1分画物を含む、請求項23に記載のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を含む組成物。
【請求項25】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を含む組成物は、ピーク1分画物を5%以下の量で含むものである、請求項24に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質含有原料に対するマルチモーダルクロマトグラフィー精製ステップを行うことにより、エンドトキシン<0.05EU/mg又はサイズ排除HPLC純度98%以上のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を得る、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法、ア)IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を産生する細胞を培養するステップと、イ)前記ア)で培養した細胞からタンパク質を回収するステップと、ウ)前記イ)で回収したタンパク質を1次クロマトグラフィーにより精製するステップと、エ)前記ウ)で1次クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をマルチモーダルクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップとを含み、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いない、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法、前記方法により精製した、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、及び前記融合タンパク質を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫グロブリンG(IgG)Fcドメインは、タンパク質の機能を有するドメインとの融合により、タンパク質医薬品に持続性を持たせる要素となる。よって、多くの商業用タンパク質医薬品がFc融合タンパク質の形態で開発されている。
【0003】
血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor,VEGF)は、血管新生と血管透過性を亢進させる重要な因子である。特に、VEGFは、腫瘍において過剰発現し、血管新生及び腫瘍増殖を異常に促進する(非特許文献1)。また、異常な血管新生は、腫瘍発生以外に、他の疾病にも深く関与することが報告されている。VEGF関連機序において、異常な血管新生は、眼科疾患である湿性黄斑変性、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞黄斑浮腫などに関与する(非特許文献2)。
【0004】
このような、眼科疾患に対する治療には、ペガプタニブ(Pegaptanib; RNAアプタマー)、ラニビズマブ(Ranibizumab; モノクローナルIgG抗体断片(Fab))、ベバシズマブ(Bevacizumab; モノクローナルIgG抗体)が用いられており、アフリベルセプト(Aflibercept; IgG1 Fcに融合されたVEGFR1及びVEGFR2)が湿性黄斑変性の治療剤として2011年に米国で承認されている(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Oncogene(2004)23,1745-1753
【非特許文献2】J.Korean Med.Assoc.(2014),57(7),614-623
【非特許文献3】Biol.Ther.(2012)2(3)1-22,Drug Design,Development and Therapy(2013)3(7),711-722
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、マルチモーダルクロマトグラフィー精製ステップを行うことにより、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を効果的に精製する方法を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質含有原料に対するマルチモーダルクロマトグラフィー精製ステップを行うことにより、エンドトキシン<0.05EU/mg又はサイズ排除HPLC純度98%以上のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を得る、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、ア)IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を産生する細胞を培養するステップと、イ)前記ア)で培養した細胞からタンパク質を回収するステップと、ウ)前記イ)で回収したタンパク質を1次クロマトグラフィーにより精製するステップと、エ)前記ウ)で1次クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をマルチモーダルクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップとを含み、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いない、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記方法により精製した、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質又はそれを含む組成物を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の精製方法を用いると、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を効率的かつ大量に生産及び供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、MabSelect SuRe樹脂を用いて、結合・溶出モードでProtein Aクロマトグラフィーを行って得られたクロマトグラムである。
図2】CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、図1の精製ステップ(タンパク質Aクロマトグラフィー)後に、Capto Adhere樹脂を用いて、結合・溶出モードでマルチモーダルクロマトグラフィーを行って得られたクロマトグラムである。
図3】CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、図1及び図2の精製ステップ(タンパク質Aクロマトグラフィー及びマルチモーダルクロマトグラフィー)後に、Capto S樹脂を用いて、結合・溶出モードで陽イオン交換クロマトグラフィーを行って得られたクロマトグラムである。
図4図3の精製ステップ(Capto S陽イオン交換クロマトグラフィー)で精製及び溶出した分画の等電点電気泳動(Isoelectric focusing)の分析結果を示す図である。Lane 1は内部標準1であり、Lane 2は内部標準2である。Lane 3はCEX(陽イオン交換クロマトグラフィー)の溶出体積3CVを収集した試料の分析結果であり、また、Lane 4、5、6、7及び8はCEXの溶出体積を0.5CVずつ増加させて収集した試料の分析結果である。
図5】CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、図1及び図2の精製ステップ(タンパク質Aクロマトグラフィー及びマルチモーダルクロマトグラフィー)後に、SP-550C樹脂を用いて、結合・溶出モードで陽イオン交換クロマトグラフィーを行って得られたクロマトグラムである。
図6図5の精製ステップ(SP-550C陽イオン交換クロマトグラフィー)で精製及び溶出した分画の等電点電気泳動(Isoelectric focusing)の分析結果を示す図である。Lane 1はCEXの溶出体積4CVを収集した試料の分析結果であり、また、Lane 2及び3はCEXの溶出体積を8CV及び10CVに増加させて収集した試料の分析結果である。
図7】陽イオン交換クロマトグラフィーで得られた塩勾配溶出クロマトグラムである。
図8】陽イオン交換クロマトグラフィーで得られた塩勾配溶出の各分画における等電点電気泳動の分析結果を示す図である。塩勾配溶出においては、アイソフォーム除去により標的タンパク質の収率が低下する。
図9】Capto Adhere樹脂マルチモーダルクロマトグラフィーと比較評価するために、CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、Capto Q樹脂を用いて、フロースルーモードで陰イオンクロマトグラフィーを行って得られたクロマトグラムである。
図10】Capto Q樹脂陰イオン交換クロマトグラフィーと比較評価するために、CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、Capto Adhere樹脂を用いて、結合・溶出モードでマルチモーダルクロマトグラフィーを行って得られたクロマトグラムである。
図11】陰イオンクロマトグラフィーとマルチモーダルクロマトグラフィーを比較評価するために、同一試料を添加して精製し、その後HCP(Host cell protein)を分析した結果を示す図である。
図12】本発明及び市販の精製アフリベルセプトにおけるメチオニン残基の酸化(Oxidation)の分析結果を示す図である。
図13】本発明及び市販の精製アフリベルセプトにおけるヒスチジン残基の酸化の分析結果を示す図である。
図14】本発明及び市販の精製アフリベルセプトにおける各アミノ酸残基の脱アミド(Deamidation)の分析結果を示す図である。
図15】本発明及び市販の精製アフリベルセプトにおける各アミノ酸残基の脱水(Dehydration)の分析結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。なお、本発明で開示される一態様の説明及び実施形態は、共通事項について他の態様の説明及び実施形態にも適用される。また、本発明で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。さらに、本発明に引用される文献は、本発明に参照として組み込まれている。さらに、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0013】
本発明の一態様は、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質含有原料に対するマルチモーダル(multimodal)クロマトグラフィー精製ステップを行うことにより、エンドトキシン<0.05EU/mg又はサイズ排除HPLC純度98%以上のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を得る、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法を提供する。
【0014】
本発明における「IgG Fcドメインを有する融合タンパク質」とは、IgG Fcドメインを含む融合タンパク質を意味する。本発明のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質含有原料は、動物細胞株を用いた細胞培養により生産されたものであるが、これに限定されるものではない。
【0015】
一実施例として、本発明の融合タンパク質は血管内皮細胞増殖因子(Vascular Endothelial Growth Factor,VEGF)アンタゴニストであるが、これに限定されるものではない。
【0016】
一実施例として、本発明の融合タンパク質は、IgG Fcドメインと、VEGF受容体1及び2とを含むものであるが、これに限定されるものではない。
一実施例として、前記VEGF受容体1及び2は、VEGF受容体1及び2の細胞外ドメイン(extracellular domain)であるが、これに限定されるものではない。
【0017】
一実施例として、前記VEGF受容体はヒトVEGF受容体であるが、これに限定されるものではない。
一実施例として、本発明の融合タンパク質はアフリベルセプト(Aflibercept)であるが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明における「IgG Fc」とは、免疫グロブリンIgGの定常領域であるFc領域を意味する。前記免疫グロブリンIgGのFc領域は、前記タンパク質と同一又は相当する活性を有するものであれば、一部の配列が欠失、改変、置換、保存的置換又は付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であっても本発明に用いられることは言うまでもない。
【0019】
前記免疫グロブリンIgG Fcは、IgGのCH1、CH2、CH3及びCH4ドメインからなるものであってもよく、ヒンジ(hinge)部分を含むこともある。
また、本発明の免疫グロブリンIgG Fc領域には、天然アミノ酸配列だけでなく、その配列変異体(mutant)も含まれる。アミノ酸配列変異体とは、天然アミノ酸配列の少なくとも1つのアミノ酸残基が欠失、挿入、非保存的もしくは保存的置換、又はそれらの組み合わせにより異なる配列を有するものを意味する。
【0020】
一実施例として、本発明のIgG FcはヒトIgG Fcであってもよい。
一実施例として、本発明のIgG Fcは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のFcドメインであり、具体的にはIgG1のFcドメインであるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明における「IgG Fcドメインを有する融合タンパク質含有原料」は、細胞培養などにより得られた、精製されていない細胞、その培養物、破砕物などであって、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本発明のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法は、マルチモーダル(multimodal)クロマトグラフィー精製ステップを含む。
本発明における「クロマトグラフィー」とは、混合物の成分が異なる速度で媒質を通過するように混合物に媒質を通過させ、混合物の成分を分離する任意のプロセスを意味する。前記クロマトグラフィーには、カラムクロマトグラフィー、平面(planar)クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー(陽イオン交換クロマトグラフィー,陰イオン交換クロマトグラフィー)、サイズ排除クロマトグラフィー、マルチモーダルクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィーなどが含まれる。
【0023】
本発明の精製工程の各ステップにおいて、クロマトグラフィー工程又は装置の一例を開示しているが、これらは前述した全てのタイプのクロマトグラフィーに適用することができる。
【0024】
本発明の各ステップからなるクロマトグラフィーは、試料注入ステップと、平衡ステップと、洗浄ステップと、溶出ステップとを含んでもよい。ここで、各ステップは、順序を変えて行ってもよく、各ステップの前後又は間に他のステップ(例えば、平衡ステップ、洗浄ステップ)をさらに含んでもよく、1つのステップに他のステップが含まれてもよい。例えば、前記試料注入ステップの前に平衡ステップをさらに含んでもよく、前記洗浄ステップが前記平衡ステップに含まれてもよく、前記洗浄ステップに前記平衡ステップが含まれてもよい。本発明の平衡ステップは、平衡緩衝液をカラムに流して樹脂を平衡化するステップであってもよく、本発明の洗浄ステップは、緩衝液でカラムを洗浄して樹脂に吸着している不純物を除去するステップであってもよく、本発明の溶出ステップは、標的タンパク質を溶出及び/又は回収するステップであってもよい。
【0025】
例えば、本発明のクロマトグラフィーにおいて、緩衝液は、トロメタミン、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸及び酢酸からなる群から選択される少なくとも1つを含むものであるが、これに限定されるものではない。前記緩衝液は、平衡ステップ、洗浄ステップ及び溶出ステップにおいて用いるものであってもよい。
【0026】
一実施例として、本発明の溶出ステップは、塩勾配、pH勾配又はそれらの組み合わせを用いるものであってもよい。
一実施例として、本発明の溶出ステップは、結合・溶出モード(binding and elution mode)で行うものであってもよい。
【0027】
一実施例として、本発明の溶出ステップは、フロースルーモード(flow through mode)を用いないものであってもよい。
本発明における「フロースルー」とは、クロマトグラフィーにおいて通過液を収集するモードを意味し、本発明における「結合・溶出」とは、標的タンパク質を混合モードの相互作用により樹脂に結合したリガンドに結合させ、緩衝液の組成やpHなどを用いて前記樹脂から分子を放出させるモードを意味する。前記フロースルーモードは、特定条件でカラム樹脂に結合する物質のみ除去するモードであり、前記結合・溶出は、特定条件でカラム樹脂に結合しない物質を除去し、カラム樹脂に結合しない物質を回収するモードである。
【0028】
本発明におけるIgG Fcドメインを有する抗体及び融合タンパク質の精製は、一般に用いる陰イオン交換クロマトグラフィー又はマルチモーダル(Multimodal)クロマトグラフィーにおいて通過液を収集するフロースルーモード(Flow through mode)を採用せず、マルチモーダルクロマトグラフィーにおいて結合・溶出モード(binding and elution mode)で融合タンパク質を精製することにより、陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又はマルチモーダルクロマトグラフィーにおけるフロースルーモードに比べて、宿主細胞タンパク質、エンドトキシン、ウイルス、Protein A溶出液(protein A leachate)などを効果的に除去できることに意義がある。また、本発明の精製方法を用いると、簡単な3段階のクロマトグラフィー精製だけで高純度の融合タンパク質を生産することができ、等電点pH6~8の範囲を有するIgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトを効果的に精製することができる。
【0029】
本発明における「マルチモーダルクロマトグラフィー(multimodal chromatography)」とは、標的タンパク質の分離のために、固定相と標的タンパク質間における少なくとも1つの相互作用を用いるクロマトグラフィーを意味する。前記相互作用には、タンパク質サイズ、電荷、疎水性、親水性及び/又は特異的相互作用などが含まれる。前記マルチモーダルクロマトグラフィーは、マルチモードクロマトグラフィー及び混合モードクロマトグラフィー(mixed mode chromatogragphy)と混用される。本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーには、物理的マルチモーダルクロマトグラフィー及び化学的マルチモーダルクロマトグラフィーが含まれる。
【0030】
本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーは、平衡ステップと、試料注入ステップと、洗浄ステップと、溶出ステップとを含んでもよい。
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの各ステップにおいて用いる緩衝液は、トロメタミン、リン酸ナトリウム及び酢酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0031】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの平衡ステップは、100~200cm/hr、110~190cm/hr、120~180cm/hr、130~170cm/hr、140~160cm/hr、又は150cm/hrの流速で、1~10CV(column volume)、2~8CV、4~6CV、又は5CVの緩衝液をカラムに流す過程を含むが、これに限定されるものではない。
【0032】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの平衡ステップは、約pH6~8、具体的にはpH7で行うものであるが、これらに限定されるものではない。
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの平衡ステップにおいて用いる緩衝液は、約pH6~8、具体的にはpH7の緩衝液であるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの平衡ステップにおいて用いる緩衝液は、トロメタミン、リン酸ナトリウム又はそれらの組み合わせを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0034】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの洗浄ステップは、1~10CV(column volume)、2~8CV、4~6CV、又は5CVの緩衝液をカラムに流すものであるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの溶出ステップは、1~10CV(column volume)、3~9CV、5~8CV、又は7CVの緩衝液をカラムに流す過程を含むが、これに限定されるものではない。
【0036】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの溶出ステップは、約pH3~7、約pH4~6、具体的には約pH5で行うものであるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの溶出ステップにおいて用いる緩衝液は、約pH3~7、約pH4~6、具体的には約pH5の緩衝液であるが、これらに限定されるものではない。
【0038】
本発明における「約(about)」は、特定の数値の前に用いられる。本発明における「約」とは、約という用語の後に続く正確な数値のみではなく、ほとんどその数値であるか、又はその数値に近い範囲をも含むものである。その数値が用いられた文脈を考慮すると、言及された具体的な数値と近いか、ほとんどその数値であるかを決定することができる。一例として、「約」は、所定の数値の-10%~+10%の範囲を示す。他の例として、「約」は、所定の数値の-5%~+5%の範囲を示す。しかし、これらに限定されるものではない。
【0039】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの溶出ステップにおいて用いる緩衝液は、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム又はそれらの組み合わせを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0040】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの溶出ステップは、塩勾配、pH勾配又はそれらの組み合わせ、具体的にはpH勾配を用いるものであってもよい。
【0041】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの溶出ステップは、結合・溶出モード(binding and elution mode)で行うものであってもよい。
【0042】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーの溶出ステップは、フロースルーモード(flow through mode)を用いないものであってもよい。
【0043】
例えば、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーに用いる樹脂は、Capto AdhereTM、Capto MMCTM、Capto MMC ImpResTM、Capto Adhere ImpResTM、Nuvia aPrime 4A、Capto Core 400TM及びCapto Core 700TMからなる群から選択される少なくとも1つであり、前記マルチモーダルリガンドは、具体的にはCapto Adhereであり、より具体的にはN-ベンジル-N-メチルエタノールアミン(N-Benzyl-N-methylethanolamine)であるが、これらに限定されるものではない。
【0044】
一実施例として、本発明のマルチモーダルクロマトグラフィーに用いるマルチモーダルリガンドは、イオン性結合、水素結合及び疎水性結合のマルチモーダル機能を有する物質を含むものであってもよい。
【0045】
本発明の一実施例においては、150cm/hrの流速で5CVの平衡緩衝液をカラムに流し、樹脂を平衡化した。平衡緩衝液としては、pH7程度のトロメタミン及び/又はリン酸ナトリウム緩衝液を用いた。その後、得られた深層濾過回収液を注入し、5CVの平衡緩衝液でカラムを洗浄した。7CVの溶出緩衝液をカラムに流し、標的タンパク質を溶出し、回収した。溶出緩衝液としては、pH5程度のリン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液を用いた(実施例5)。
【0046】
本発明の精製方法は、陽イオン交換クロマトグラフィー精製ステップをさらに含んでもよい。
一実施例として、本発明の精製方法は、マルチモーダルクロマトグラフィー精製ステップの前に、その後に、又はそれと同時に行う陽イオン交換クロマトグラフィー精製ステップを含んでもよい。具体的には、本発明の精製方法は、マルチモーダルクロマトグラフィー精製ステップの後に、陽イオン交換クロマトグラフィー精製ステップを含むが、これに限定されるものではない。
【0047】
本発明における「イオン交換クロマトグラフィー」とは、媒質とタンパク質表面の正味電荷の可逆的な相互作用、すなわちイオン結合強度の差に基づく交換樹脂を用いるものを意味する。本発明に用いる陽イオン交換クロマトグラフィーとは、陽イオン交換樹脂を充填したカラムを用いるイオンクロマトグラフィーを意味する。前記ステップにおいては、陽イオン交換クロマトグラフィーを行うことにより、不純物をさらに除去することができ、目的とする等電点を有する同形体を選択的に分離することができる。
【0048】
本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーは、平衡ステップと、試料注入ステップと、第1洗浄ステップと、第2洗浄ステップと、溶出ステップとを含んでもよい。
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの各ステップにおいて用いる緩衝液は、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム又はそれらの組み合わせを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0049】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの平衡ステップは、100~200cm/hr、110~190cm/hr、120~180cm/hr、130~170cm/hr、140~170cm/hr、又は160cm/hrの流速で、5~15CV、7~13CV、8~12CV、9~11CV、又は10CVの緩衝液をカラムに流す過程を含むが、これに限定されるものではない。
【0050】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの平衡ステップは、約pH3~7、約pH4~6、具体的にはpH5で行うものであるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの平衡ステップにおいて用いる緩衝液は、約pH3~7、約pH4~6、具体的にはpH5の緩衝液であるが、これらに限定されるものではない。
【0052】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの第1洗浄ステップは、1~10CV(column volume)、2~8CV、4~6CV、又は5CVの緩衝液をカラムに流すものであるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの第2洗浄ステップは、標的タンパク質関連物質のうち酸性度が高い分画を除去するためのものであり、約pH3~7、約pH4~6、約pH5~6、具体的には約pH5.9の緩衝液を1~5CV、2~4CV、又は3CVの分量でカラムに流すものであるが、これらに限定されるものではない。
【0054】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの溶出ステップは、5~15CV、8~12CV、又は10CVの緩衝液をカラムに流す過程を含むが、これに限定されるものではない。
【0055】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの溶出ステップは、約pH3~8、pH6~8、約pH4~7、pH5~7、pH6~7、具体的には約pH6.5で行うものであるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの溶出ステップにおいて用いる緩衝液は、約pH3~8、pH6~8、約pH4~7、pH5~7、pH6~7、具体的には約pH6.5の緩衝液であるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの溶出ステップは、塩勾配、pH勾配又はそれらの組み合わせ、具体的には塩勾配を用いるものであってもよい。
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの溶出ステップは、結合・溶出モードで行うものであってもよい。
【0058】
一実施例として、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの溶出ステップは、フロースルーモード(flow through mode)を用いないものであってもよい。
本発明の一実施例においては、10CVの平衡緩衝液を160cm/hrの流速でカラムに流し、樹脂を平衡化した。平衡緩衝液としては、pH5程度の緩衝液を用いた。リン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液を用いることが好ましい。マルチモーダルクロマトグラフィーステップで得られた回収液を注入し、5CVの平衡緩衝液でカラムを洗浄した。標的タンパク質関連物質(related substance)のうち酸性度が高い分画を除去するために、pH5.9程度のリン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液3CVの分量をカラムに流し、洗浄を行った。溶出緩衝液としてpH6.5程度のリン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液10CVを用いて、標的タンパク質を回収した(実施例6)。本発明者らは、マルチモーダルクロマトグラフィーの結合・溶出モードステップの後に、陽イオン交換樹脂を用いて残量の宿主細胞タンパク質、エンドトキシン、アフリベルセプト関連物質などをさらに除去することにより、等電点pH6~8の範囲を有する融合タンパク質を効果的に精製する方法を開発した。
【0059】
例えば、本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーに用いることのできる樹脂としては、CM Sepharose Fast Flow、Capto ImpRes SP、SOURCE 30 S、SOURCE 15 S、Eshmuno S、Eshmuno CPX、Eshmuno CP-FT、Eshmuno CPS、Fractogel EMD SO3-、Fractogel EMD SE、Capto MMC、Macro-Prep 25 S、Macro-Prep CM、UNOsphere S、Macro-Prep High S、POROSTM XS、POROSTM 50 HS、Nuvia S Resin、Nuvia HR-S、Nuvia cPrim、Exhmuno CMXTM、Capto MMC ImpResTM、Nuvia cPrime、TOYOPEARL SP-650、TOYOPEARL GigaCap S-650、TOYOPEARL CM-650、TOYOPEARL GigaCap CM-650、TOYOPEARL Salfate-650、TOYOPEARL MegaCap II SP-550、TOYOPEARL SP-550が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーに用いる樹脂は、Capto STM、Capto ImpRes SP及びEshmuno CPSからなる群から選択される少なくとも1つであることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0060】
一実施例として、前記陽イオン交換クロマトグラフィーのリガンドは、スルホン酸(-SO)、スルホプロピル(Sulfopropyl)及びカルボキシメチル(Carboxymethyl)からなる群から選択される少なくとも1つ、具体的にはスルホン酸を含むものであってもよい。
【0061】
本発明の陽イオン交換クロマトグラフィーの陽イオン交換樹脂とは、他の水溶液に添加されて水溶液中の特定の陽イオンと自らの陽イオンを交換する役割を果たす合成樹脂を意味し、陽イオン交換カラムは、等電点以上で陽イオンとなるタンパク質を吸着する。
【0062】
一実施例として、前記陽イオン交換クロマトグラフィー樹脂の官能基は、スルホン酸メチル(S)、スルホプロピル(SP)、カルボキシメチル(CM)、ポリアスパラギン酸(Poly aspartic acid)、スルホエチル(SE)、スルホプロピル(SP)、リン酸(P)及びスルホン酸(S)からなる群から選択される1つであってもよい。
【0063】
本発明の精製方法は、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用(hydrophobic interaction)クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを行わないものであるが、これに限定されるものではない。本発明において、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用(hydrophobic interaction)クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーを行わないことにより、試料濃縮過程と精製規模のスケールアップの容易性が得られ、タンパク質構造の疎水性部分が塩に暴露されることを防止することができ、精製レベルを高めることができる。
【0064】
ここで、前記サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用(hydrophobic interaction)クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーは、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製ではない用途(例えば、融合タンパク質の純度の確認又は検証)には用いてもよい。
【0065】
一実施例として、本発明の精製方法は、IgG Fcドメインを有する抗体及び融合タンパク質の精製において一般に用いられる陰イオン交換クロマトグラフィーを用いないものであってもよい。
【0066】
本発明の陰イオン交換クロマトグラフィーとは、陰イオン交換樹脂を充填したカラムを用いるイオンクロマトグラフィーを意味する。
本発明のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法は、各ステップの前又は後に、濾過ステップをさらに含んでもよく、前記濾過ステップは、深層濾過、限外濾過及び透析濾過からなる群から選択されるいずれかであるが、これに限定されるものではない。前記濾過は、1回以上行われるものであってもよい。
【0067】
本発明における「深層濾過(depth filtration)」とは、粒径が大きく、均等係数が小さい濾過材を用いて、濾層表面では濾過されずに通過したフロックを内部で捕捉する濾過を意味する。
【0068】
本発明における「限外濾過(ultrafiltration)」とは、圧力及び膜を用いて、液体中に溶解又は分散した物質を粒径や分子量の大きさによって分画する工程を意味する。
【0069】
本発明における「透析濾過(diafiltration)」とは、透析を用いて、溶媒と分子の大きさが異なる2つ以上の溶質を含む流体から一部の溶質だけ除去する方法を意味する。前記透析濾過は、定容濾過と混用される。
【0070】
本発明の他の態様は、ア)IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を産生する細胞を培養するステップと、イ)前記ア)で培養した細胞からタンパク質を回収するステップと、ウ)前記イ)で回収したタンパク質を1次クロマトグラフィーにより精製するステップと、エ)前記ウ)で1次クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をマルチモーダルクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップとを含み、陰イオン交換クロマトグラフィーを用いない、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法を提供する。前記エ)ステップにおいて、マルチモーダルクロマトグラフィーは、陽イオン交換クロマトグラフィーの前に行ってもよく、陽イオン交換クロマトグラフィーの後に行ってもよく、それらの組み合わせであってもよい。
【0071】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法で最終精製された、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質は、サイズ排除HPLC純度98%以上であってもよく、エンドトキシン<0.05EU/mgであってもよく、pI 6.0~8.0であってもよい。
【0072】
本発明の精製方法を用いると、サイズ排除クロマトグラフィー、疎水性相互作用(hydrophobic interaction)クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィーなどを用いなくても、簡単な3段階のクロマトグラフィー精製だけで高純度の融合タンパク質を生産することができる。また、等電点pH6~8の範囲を有するIgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトを効果的に精製することができる。
【0073】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、マルチモーダルクロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー及び陰イオン交換クロマトグラフィーについては前述した通りである。
【0074】
本発明のア)IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を産生する細胞を培養するステップにおいて、前記細胞は、動物細胞、具体的にはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)であるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
本発明における「培養」とは、前記細胞を適宜調節した環境条件で生育させることを意味する。本発明の培養過程は、当該技術分野で公知の好適な培地と培養条件で行うことができる。このような培養過程は、当業者であれば選択される細胞の種類に応じて容易に調整して用いることができる。
【0076】
本発明のイ)前記ア)で培養した細胞からタンパク質を回収するステップにおいて、前記回収方法は、本発明の培養方法などに応じて、当該技術分野で公知の好適な方法を用いて目的とするIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を回収(collect)するものであってもよい。例えば、遠心分離、濾過、深層濾過、抽出、限外濾過、透析などを組み合わせて用いることができ、当該分野で公知の好適な方法を用いて培地又は細胞から目的とするIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を回収することができる。
【0077】
本発明のウ)前記イ)で回収したタンパク質を1次クロマトグラフィーにより精製するステップにおいて、1次クロマトグラフィーは、アフィニティークロマトグラフィーであり、具体的にはタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーであるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明における「アフィニティークロマトグラフィー」とは、標的分子とリガンド間の特異性の高い相互作用を用いるクロマトグラフィーを意味する。
本発明のアフィニティークロマトグラフィーは、平衡ステップと、試料注入ステップと、第1洗浄ステップと、第2洗浄ステップと、溶出ステップとを含んでもよい。
【0079】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの各ステップにおいて用いる緩衝液は、トロメタミン、リン酸ナトリウム、酢酸及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1つを含む緩衝液であるが、これに限定されるものではない。
【0080】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの平衡ステップは、2~8CV、4~6CV、又は5CVの緩衝液をカラムに流す過程を含むが、これに限定されるものではない。
【0081】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの平衡ステップは、約pH6~8、具体的にはpH7で行うものであるが、これらに限定されるものではない。
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの平衡ステップにおいて用いる緩衝液は、約pH6~8、具体的にはpH7の緩衝液であるが、これらに限定されるものではない。
【0082】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの平衡ステップにおいて用いる緩衝液は、トロメタミン、リン酸ナトリウム又はそれらの組み合わせを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0083】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの第1洗浄ステップにおいて用いる緩衝液は、クエン酸、酢酸又はそれらの組み合わせを含むものであってもよく、L-アルギニン(L-Arginine)及び/又は尿素(urea)をさらに含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0084】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの第1洗浄ステップは、約pH3~7、約pH4~7、pH5~6.5、具体的には約pH5.9で行うものであるが、これらに限定されるものではない。
【0085】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの第1洗浄ステップは、約pH3~7、約pH4~7、pH5~6.5、具体的には約pH5.9の緩衝液を5~15CV、7~13CV、8~12CV、9~11CV、又は10CVの分量でカラムに流すものであるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの第2洗浄ステップにおいて用いる緩衝液は、クエン酸、酢酸又はそれらの組み合わせを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0087】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの第2洗浄ステップは、約pH3~7、約pH4~6、pH5~6、具体的には約pH5.6で行うものであるが、これらに限定されるものではない。
【0088】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの第2洗浄ステップは、約pH3~7、約pH4~6、pH5~6、具体的にはpH5.6の緩衝液を1~7CV、又は3~5CVの分量でカラムに流すものであるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの溶出ステップは、約pH1~5、約pH2~4、約pH3~4、具体的には約pH3.5で行うものであるが、これらに限定されるものではない。
【0090】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの溶出ステップは、約pH1~5、約pH2~4、約pH3~4、具体的には約pH3.5の緩衝液を1~7CV、又は3~5CVの分量でカラムに流す過程を含むが、これに限定されるものではない。
【0091】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの溶出ステップにおいて用いる緩衝液は、クエン酸、酢酸又はそれらの組み合わせを含むものであるが、これに限定されるものではない。
【0092】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの溶出ステップは、塩勾配、pH勾配又はそれらの組み合わせ、具体的にはpH勾配を用いるものであってもよい。
【0093】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの溶出ステップは、結合・溶出モード(binding and elution mode)で行うものであってもよい。
【0094】
一実施例として、本発明のアフィニティークロマトグラフィーの溶出ステップは、フロースルーモード(flow through mode)を用いないものであってもよい。
【0095】
例えば、本発明のアフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムは、MabSelect PrismAであってもよく、MabSelectであってもよく、MabSelect Xtraであってもよく、MabSelect SuReであってもよく、MabSelect SuRe LXであってもよく、MabSelect SuRe pccであってもよく、MabCaptureCTMであってもよい。
【0096】
例えば、本発明のアフィニティークロマトグラフィーに用いる樹脂は、alkali-stabilized Protein A-derivedリガンドを有するMabSelect SuReから選択される少なくとも1つであるが、これに限定されるものではない。
【0097】
本発明の一実施例においては、約5カラム体積(CV)の分量のpH6~8、好ましくは約pH7のトロメタミン及び/又はリン酸ナトリウム緩衝液を滞留時間7.5分の流速でカラムに流し、樹脂を平衡化した。その後、実施例1で得られた細胞培養収穫液を平衡化したカラムに注入し、3CVの平衡緩衝液でカラムを洗浄し、樹脂に吸着している不純物を除去した。その後、10CVの洗浄緩衝液1と3~5CVの洗浄緩衝液2をカラムに順次流し、さらに不純物を除去した。洗浄緩衝液1としては、pH5~6.5、好ましくは約pH5.9のクエン酸及び/又は酢酸緩衝液を用いた。洗浄緩衝液1は、L-アルギニン(L-Arginine)及び/又は尿素(urea)をさらに含んでもよい。洗浄緩衝液2としては、pH5.6程度のクエン酸及び/又は酢酸緩衝液を用いた。その後、溶出溶液として5CVの分量のpH3.5程度のクエン酸及び/又は酢酸緩衝液をカラムに流し、標的タンパク質を回収した(実施例2)。
【0098】
本発明のエ)前記ウ)で1次クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をマルチモーダルクロマトグラフィーにより精製するステップについては前述した通りである。
一実施例として、前記エ)マルチモーダルクロマトグラフィーにより精製するステップは、(a)pH6~8の緩衝液で平衡化したマルチモーダルクロマトグラフィーカラムに1次クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をローディングするステップと、(b)前記(a)ステップのものより低いpHの緩衝液をクロマトグラフィーカラムに注入し、pH6~4の条件で精製タンパク質を溶出して収穫するステップとを含むが、これに限定されるものではない。
【0099】
本発明の前記エ)で陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップについては前述した通りである。
一実施例として、前記陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップは、(a)pH4~6の緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに先行クロマトグラフィーにより精製したタンパク質をローディングするステップと、(b)前記(a)ステップの緩衝液より高いpHの緩衝液で溶出し、pI 6.0~8.0のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質を収穫するステップとを含むが、これに限定されるものではない。
【0100】
一実施例として、前記(b)ステップにおいて、(a)ステップの緩衝液より高いpHの緩衝液は、約pH5~9、約pH6~9、約pH5~8、具体的にはpH6~8であるが、これらに限定されるものではない。
【0101】
一実施例として、前記ウ)及びエ)からなる群から選択される少なくとも1つのクロマトグラフィーにより精製するステップの前に、前記ステップの後に、又はそれらを組み合わせて、深層濾過ステップ、限外濾過ステップ、透析濾過ステップ及びウイルス不活化ステップからなる群から選択される少なくとも1つをさらに行うが、これに限定されるものではない。
【0102】
一実施例として、前記ウ)1次クロマトグラフィーにより精製するステップ、及びエ)マルチモーダルクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーにより精製するステップからなる群から選択される少なくとも1つのステップは、溶出ステップを含み、前記溶出ステップは、塩勾配、pH勾配又はそれらの組み合わせ、具体的にはpH勾配を用いるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本発明のさらに他の態様は、本発明のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法により精製した、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を含む組成物を提供する。
【0104】
前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、その精製方法などについては前述した通りである。
本発明の組成物は、ピーク1分画物を含むものであってもよい。ここで、ピーク1分画物は、本発明のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質の精製方法により精製した、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質の疎水性相互作用クロマトグラフィー分析の際に、50mMリン酸ナトリウム、2M塩化ナトリウム、pH7.0である移動相A、及び50mMリン酸ナトリウム、30%アセトニトリル、pH7.0である移動相Bにおいて、移動相Bの割合が40~45%の区間で溶出するものであってもよい。
【0105】
一実施例として、前記IgG Fcドメインを有する融合タンパク質を含む組成物は、ピーク1分画物を5%以下の量で含むものであってもよく、0.001%~5%含むものであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0106】
一実施例として、ピーク1分画物は、配列番号1~配列番号4からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸を含むものであってもよい。
本発明のさらに他の態様は、前記精製方法により精製された融合タンパク質を提供する。
【0107】
一実施例として、前記融合タンパク質はアフリベルセプトであるが、これに限定されるものではない。
【実施例
【0108】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示する好ましい実施形態にすぎず、本発明がこれらに限定されるものではない。なお、本明細書に記載されていない技術的事項は、本発明の技術分野又は類似技術分野における熟練した技術者が十分に理解し、容易に実施することのできるものである。
【実施例1】
【0109】
培養液の収穫及び前処理
標的タンパク質であるIgG Fcドメインを有する融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクトルを導入したチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)を培養することにより、培養液を準備した。融合タンパク質の代表例として、CHO細胞には、アフリベルセプトをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを導入して培養した。
【0110】
通常、培養液は、動物細胞をはじめとする不純物を含んでいる。よって、クロマトグラフィーを行う前に、深層濾過を行い、動物細胞をはじめとする不純物を除去した。この過程を経て、細胞培養収穫液(Harvested cell culture fluid; HCCF)を準備した。フィルター材料の表面で不純物と粒子を除去する表面濾過方式とは異なり、深層濾過を用いて粗い繊維構造と高い多孔性を有する3次元フィルターで不純物と粒子を除去する方式により、工程速度と効率性を向上させることができる。
【実施例2】
【0111】
タンパク質A(Protein A)アフィニティークロマトグラフィー精製
実施例1の前処理過程で得られた細胞培養収穫液から融合タンパク質(CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプト)を捕獲(direct product capture)するために、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを行った。これは、抗体又はFcを有する融合タンパク質のFcドメインに結合する親和性リガンドを用いて精製するステップであり、pH3~5、好ましくはpH3~4、より好ましくはpH約3.5の緩衝液、例えばクエン酸及び/又は酢酸緩衝液を用いて、タンパク質を溶出し、回収した。
【0112】
そのために、約5カラム体積(CV,column volume)の分量のpH6~8、好ましくは約pH7のトロメタミン及び/又はリン酸ナトリウム緩衝液を滞留時間7.5分の流速でカラムに流し、樹脂を平衡化した。その後、実施例1で得られた細胞培養収穫液を平衡化したカラムに注入し、3CVの平衡緩衝液でカラムを洗浄し、樹脂に吸着している不純物を除去した。その後、10CVの洗浄緩衝液1と3~5CVの洗浄緩衝液2をカラムに順次流し、さらに不純物を除去した。洗浄緩衝液1としては、pH5~6.5、好ましくは約pH5.9のクエン酸及び/又は酢酸緩衝液を用いた。洗浄緩衝液1は、L-アルギニン(L-Arginine)及び/又は尿素(urea)をさらに含んでもよい。洗浄緩衝液2としては、pH5.6程度のクエン酸及び/又は酢酸緩衝液を用いた。その後、溶出溶液として5CVの分量のpH3.5程度のクエン酸及び/又は酢酸緩衝液をカラムに流し、標的タンパク質を回収した。樹脂を再利用するために、標的タンパク質を回収した後に、ストリッピング緩衝液、0.1M水酸化ナトリウム、平衡緩衝液、保存緩衝液の順で洗浄を行い、次いで保管した。
【0113】
一方、本実施例のタンパク質Aクロマトグラフィーは、MabSelect SuRe樹脂を用いて、結合・溶出モードで行った。
図1にタンパク質Aアフィニティークロマトグラフィーを用いて細胞培養収穫液を精製した結果を示す。
【実施例3】
【0114】
ウイルス不活化及び中和
タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー精製で得られた溶出液は、pH3.5±0.1に滴定して1~2時間放置することにより、潜在的ウイルスの不活化処理を行った。不活化反応後に、タンパク質溶液をpH5.5±0.1の条件で中和し、微細濾過により凝集体などの不純物を除去した。
【実施例4】
【0115】
深層濾過
深層濾過は、デプスフィルターを用いて、主に工程由来不純物を除去するステップである。
【0116】
そのために、フィルターのホールドアップ体積(Hold-up volume)の5倍の分量の平衡緩衝液を156LMH(Liter/m/h)の流速でフィルターに流し、平衡化を行った。平衡緩衝液としては、pH5.5程度のリン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液を用いた。平衡後に、タンパク質溶液をデプスフィルターに注入し、濾液を回収した。
【実施例5】
【0117】
マルチモーダルクロマトグラフィー
マルチモーダルクロマトグラフィーは、工程由来不純物、内毒素、潜在的ウイルスを除去するステップである。よって、CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、Capto Adhere樹脂を用いて、結合・溶出モードでマルチモーダルクロマトグラフィーを行った。
【0118】
そのために、150cm/hrの流速で5CVの平衡緩衝液をカラムに流し、樹脂を平衡化した。平衡緩衝液としては、pH7程度のトロメタミン及び/又はリン酸ナトリウム緩衝液を用いた。その後、実施例4で得られた深層濾過回収液を注入し、5CVの平衡緩衝液でカラムを洗浄した。7CVの溶出緩衝液をカラムに流し、標的タンパク質を溶出し、回収した。溶出緩衝液としては、pH5程度のリン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液を用いた。樹脂を再利用するために、タンパク質を回収した後に、ストリッピング緩衝液、1M水酸化ナトリウム、平衡緩衝液、保存緩衝液の順でカラムを洗浄し、次いで保管した。図2に精製クロマトグラムの結果を示す。
【0119】
マルチモーダルクロマトグラフィーを行うと、ウイルス対数減少(Virus log reduction)結果が得られた。その結果を実施例7の表5に示す。ここで、潜在的ウイルスにおいては、最大対数減少6以上の結果が得られ、効率的なウイルス除去効果を有することが確認された。
【実施例6】
【0120】
陽イオン交換クロマトグラフィー
陽イオン交換クロマトグラフィーは、特定の等電点範囲のIgG Fcドメインを有する融合タンパク質のみ捕獲するための最終精製ステップである。
【0121】
そのために、10CVの平衡緩衝液を160cm/hrの流速でカラムに流し、樹脂を平衡化した。平衡緩衝液としては、pH5程度の緩衝液を用いた。リン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液を用いることが好ましい。マルチモーダルクロマトグラフィーステップで得られた回収液を注入し、5CVの平衡緩衝液でカラムを洗浄した。標的タンパク質関連物質(related substance)のうち酸性度が高い分画を除去するために、pH5.9程度のリン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液を3CVの分量でカラムに流し、洗浄を行った。溶出緩衝液としてpH6.5程度のリン酸ナトリウム及び/又は酢酸ナトリウム緩衝液10CVを用いて、標的タンパク質を回収した。最大ピークの8%までタンパク質を回収した。樹脂を再利用するために、タンパク質を回収した後に、ストリッピング緩衝液、1M水酸化ナトリウム、平衡緩衝液、保存緩衝液の順で洗浄を行い、次いで保管した。
【0122】
一方、陽イオン交換樹脂クロマトグラフィーの種類とその精製条件の実験は、表1に示すように行った。
【0123】
【表1-1】
【0124】
【表1-2】
【0125】
CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、実施例5の精製ステップの後に(すなわち、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー及びマルチモーダルクロマトグラフィーの後に)、Capto S樹脂を用いて、結合・溶出モードで陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。その結果を図3に示す。図4図3のCapto S陽イオン交換クロマトグラフィー精製ステップで精製及び溶出した分画の等電点電気泳動の分析結果を示す図である。図4のLane 1、2は内部標準(internal reference)であり、Lane 3、4、5、6、7及び8はCapto S溶出液の各収集区間の分析結果である。収集区間が増加しても、同等のIEF patternが生じることが確認された。
【0126】
また、CHO細胞培養により得られた、IgG Fcドメインを有する融合タンパク質、特にアフリベルセプトに対して、実施例5の精製ステップの後に(すなわち、タンパク質Aアフィニティークロマトグラフィー及びマルチモーダルクロマトグラフィーの後に)、SP-550C樹脂を用いて、結合・溶出モードで陽イオン交換クロマトグラフィーを行った。その結果を図5に示す。図6図5のSP-550C陽イオン交換クロマトグラフィー精製ステップで精製及び溶出した分画の等電点電気泳動(Isoelectric focusing)の分析結果を示す図である。
【0127】
一方、図7は陽イオン交換クロマトグラフィーで得られた塩勾配溶出クロマトグラムである。図8は陽イオン交換クロマトグラフィーで得られた塩勾配溶出の各分画における等電点電気泳動の分析結果を示す図である。塩勾配溶出においては、アイソフォーム除去により標的タンパク質の収率が低下する。
【実施例7】
【0128】
マルチモーダルクロマトグラフィーと陰イオン交換クロマトグラフィーの精製効率評価
マルチモーダルクロマトグラフィーと陰イオン交換クロマトグラフィーの精製効率を評価するために、Capto AdhereマルチモーダルクロマトグラフィーとCapto Q陰イオンクロマトグラフィーの結果を比較した。Capto Adhereマルチモーダルクロマトグラフィー及びCapto Q陰イオンクロマトグラフィーを行うために、AC、深層濾過01、深層濾過02、HIC、UF/DF、深層濾過03を行い、その後試料を分注してCapto Adhereマルチモーダルクロマトグラフィー及びCapto Q陰イオンクロマトグラフィーをそれぞれ行った。
【0129】
Capto Q及びCapto Adhereクロマトグラフィーにより、IgGドメインを有する同一の融合タンパク質試料(特に、アフリベルセプト;実施例1~4で得られた試料)に対してそれぞれ精製を行い、それにより得られた溶出試料の残留HCP(Host cell protein; 不純物の一種)を分析し、各試料のHCP残存量を比較した。Capto Q陰イオン交換クロマトグラフィー及びCapto Adhereマルチモーダルクロマトグラフィーは、次の方法で行った。
【0130】
ACクロマトグラフィー
深層濾過01
深層濾過02
疎水性相互作用クロマトグラフィー(Hydrophobic Interaction Chromatography,HIC
UF/DF
Capto Q陰イオン交換クロマトグラフィー
Capto Q陰イオン交換クロマトグラフィーは、緩衝液としてBuffer A(Q)(50 mM Sodium phosphate,pH 7.0)及びBuffer B(Q)(50 mM Sodium phosphate,1M Sodium chloride,pH 7.0)を用いて、フロースルーモードで行った。その結果を図9に示す。
【0131】
Capto Adhereマルチモーダルクロマトグラフィー
Capto Adhereマルチモーダルクロマトグラフィーは、緩衝液としてBuffer A(Ad)(50 mM Sodium phosphate,pH 7.0)、Buffer B(Ad)(50 mM Sodium phosphate,pH 5.0)及びBuffer C(Ad)(20 mM Sodium phosphate,150 mM Sodium chloride,pH 2.0)を用いて、同一の試料をローディングする条件にて、結合・溶出モード(binding and elution mode)で行った。その結果を図10に示す。
【0132】
Capto Qクロマトグラフィー及びCapto Adhereクロマトグラフィーで溶出した各試料の残留HCP(Host cell protein)は、Immunoenzymetric Assay for the Measurement of CHO Host Cell Protein kit(GYGNUS,F550)を用いて分析した。その分析結果を図11に示す。また、表2はHIC(Hydrophobic interaction chromatography)及びAEX(Anion Exchange chromatography)工程を含む各精製ステップで得られた残留HCPの結果値を示す表である。さらに、表3はマルチモーダルクロマトグラフィー工程を含む各精製ステップで得られた残留HCPの結果値を示す表である。HCPの結果値は、CHO細胞のHCPをELISA方法で検出する米国Cygnus社製品を用いて測定した。
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
表2及び表3に示すように、表2の工程(陰イオン交換クロマトグラフィー利用)においては、深層濾過を2回行ってHCPを低下させることができたのに対して、表3の工程(マルチモーダルクロマトグラフィー利用)においては、深層濾過を1回だけ行ってもHCPを低下させることができた。
【0136】
表4は各精製ステップにおけるHCP、HCD、Protein A溶出液及びエンドトキシン含有量を示す表である。また、表5は各精製方法におけるウイルス残留量を示す表である。
【0137】
HCPは、CHO細胞のProteinをELISA方法で検出する米国Cygnus社製品を用いて測定し、HCDは、CHO細胞のDNAをRT-PCR(Real Time-Polymerase Chain Reaction,リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応)方法で検出するApplied Biosystems社製品を用いて測定した。Protein A溶出液(leachate)は、Protein A樹脂のリガンドが溶出する含有量をELISA方法で検出するRepligen社製品を用いて測定した。エンドトキシン含有量は、製品に含まれるエンドトキシンの含有量を米国薬局方の方法により検出するCharles River社製品を用いて測定した。
【0138】
LRVは、各工程がウイルスを除去する工程であるか否かを確認するために、所定量のウイルスを注入して各工程を行い、その後ウイルスの残量を測定するものであり、公知の方法を用いた。
【0139】
表5のLow pH treatmentは実施例3の工程を示し、Capto Adhereは実施例5の工程を示し、ウイルスフィルター(Virus filtration)は実施例6以降に行う工程を示す。
【0140】
【表4】
【0141】
【表5】
【実施例8】
【0142】
精製アフリベルセプトのOxidation/Deamidation/Dehydration分析
本発明の方法により精製したアフリベルセプト試料(Aflibercept 1)と市販のアフリベルセプト試料(Af;ibercept 2)を用いて、それらの酸化、脱アミド及び脱水を分析した。
【0143】
実施例1~6で得られた精製アフリベルセプト試料1mgと1Mジチオトレイトール(dithiothreitol)10ulを混合した変性緩衝剤(7M Guanidine hydrochloride,0.25 M Tris-HCl,pH 8.4)を1mlに調製し、37℃で1時間反応させてタンパク質試料を還元した。その後、1Mヨードアセトアミド(iodoacetamide)10ulを前述したように還元した溶液に添加し、1時間反応させてアルキル化(Alkylation)した。遠心フィルターチューブ(Centrifugal filter tube)を用いて、緩衝液を50mM Tris-HCl(pH7.8)に置換し、前述したように作製した試料50ulと1mg/mLトリプシン(Trysin)2ulを混合し、37℃で18時間反応させてタンパク質をペプチドに分解した。このようにして得られた各試料のペプチド試料は、RP-UPLC(Reverse-phase ultraperformance chromatography,米国ThermoFisher社)及びQ-TOF(Online electrospray ionization mass spectrometry absorption,米国ThermoFisher社)によりLC-MS分析及びLC-MS/MS分析をそれぞれ行い、その結果をByonic software(米国Protein Metrics社)により分析した。
【0144】
酸化(Oxidation)の分析結果は、酸化されるアミノ酸の種類によって、メチオニン残基の酸化の分析結果(10、163、192及び237番目のアミノ酸)を図12に示し、ヒスチジン残基の酸化の分析結果を図13(19、209及び253番目のアミノ酸)に示す。脱アミド(Deamidation)及び脱水(Dehydration)の分析結果は、それぞれ図14及び図15に示す(84、91、99、152、180、261、271、300、346、369、374及び375番目のアミノ酸、及び2、47、52、102、173、179、234、250、255、279、341、384、386、398番目のアミノ酸)。
【0145】
図12及び図13に示すように、酸化(Oxidation)はほとんどメチオニン(Methionine)残基において発生し、ヒスチジン(Histidine)残基において一部観察されたが、トリプトファン(Tryptophan)残基においては観察されなかった。
【0146】
メチオニン酸化部位は、Methionine #10(M10)、Methionine #163(M163)、Methionine #192(M192)及びMethionine #237(M237)の4つのアミノ酸残基において観察された。酸化の程度は全て10%以下であり、本発明の方法により精製した試料(Aflibercept 1)と市販の試料(Aflibercept 2)において同程度の結果が得られた。
【0147】
ヒスチジン酸化部位は、Histidine #19(H19)、Histidine #209(H209)及びHistidine #253(H253)の3つのアミノ酸残基において観察された。酸化の程度は全て0.5%以下であり、本発明の方法により精製した試料(Aflibercept 1)と市販の試料(Aflibercept 2)において同程度の結果が得られた。
【0148】
図14に示すように、脱アミド(Deamidation)は、アスパラギン(Asparagine)及びグルタミン(Glutamine)残基において一部観察された。脱アミド部位は、Asparagine #84(N84)、Asparagine #91(N91)、Asparagine #99(N99)、Asparagine #152(N152)、Glutamine #180(Q180)、Asparagine #261/#271(N261/N271)、Asparagine #300(N300)、Asparagine #346(N346)及びAsparagine #369/#374/#753(N369/N374/N753)の9つのアミノ酸残基において観察された。N261/N271、N369/N374/N753は、併記されている位置のアスパラギン残基のいずれか1つで脱アミドが生じたことは確認されたが、正確にどの残基であるかまでは分析していない。これらのうち、N84の脱アミドの程度が12.8%及び11.4%であることを除いて、全て10%以下であり、本発明の方法により精製した試料(Aflibercept 1)と市販の試料(Aflibercept 2)において同程度の結果が得られた。
【0149】
図15に示すように、脱水(Dehydration)は、アスパラギン酸(Aspartate)残基において一部観察された。脱水部位は、Aspartate #2(D2)、Aspartate #39(D39)、Aspartate #47/#52(D47/D52)、Aspartate #102(D102)、Aspartate #173(D173)、Aspartate #179(D179)、Aspartate #234(D234)、Aspartate #250/#255(D250/D255)、Aspartate #297(D297)、Aspartate #341(D341)及びAspartate #384/#386(D384/386)の11のアミノ酸残基において観察された。脱水の程度は全て10%以下であり、本発明の方法により精製した試料(Aflibercept 1)と市販の試料(Aflibercept 2)において同程度の結果が得られた。
【0150】
上記結果は、本発明の方法により精製したアフリベルセプト試料(Aflibercept 1)と市販のアフリベルセプト試料(Aflibercept 2)がどちらも同様の傾向を示すので、本発明の精製方法も効果的にアフリベルセプトを精製できることを示唆するものである。
【実施例9】
【0151】
精製アフリベルセプトの疎水性相互作用クロマトグラフィー及び各分画分析
本発明の方法により精製したアフリベルセプト(Aflibercept 1)と市販の精製アフリベルセプト(Aflibercept 2)の疎水性相互作用クロマトグラフィー分析を行った。移動相Aの組成は、50mMリン酸ナトリウム、2M塩化ナトリウム、pH7.0とし、移動相Bの組成は、50mMリン酸ナトリウム、30%アセトニトリル、pH7.0とした。分析カラムはTSKGel(登録商標)Phenyl-5PW(TOSOH,Cat No.0007573)であり、分析条件は、カラムオーブン温度30℃にて、1mL/minの流速で移動相Bの割合を0%から90%に高めて15分間溶出させるものとした。この分析には、本発明の方法により精製したアフリベルセプト試料(Aflibercept 1)と市販のアフリベルセプト試料(Aflibercept 2)を用いた。表6の精製アフリベルセプトの疎水性相互作用クロマトグラフィーの各分画における割合に示すように、2つのアフリベルセプト試料において同程度の結果が得られた。Peak 1は移動相Bの割合が40~45%の区間で溶出し、Peak 2は移動相Bの割合が50~55%の区間で溶出し、Peak 3は移動相Bの割合が70~80%の区間で溶出した。
【0152】
【表6】
【0153】
HI-HPLC分析で観察されたPeak 1及びPeak 2分画のタンパク質において、LC-MSにより還元型(Reduced form)及び脱グリコシル型(deglycosylated form)のIntact mass分析を行った。Peak 1分画のIntact massの分析の結果、表7の精製アフリベルセプトの疎水性相互作用クロマトグラフィーにおけるPeak 1分画のタンパク質断片(Peptide fragment)の分析結果に示すアミノ酸配列を有するタンパク質断片が分析された。それらのうち、202-431 peptideがMajor formであるものと分析され(peak 1-d)、それは、VEGFR1 domain 2部分とVEGFR2 domain 3部分がほとんど欠失した型であるものと予想される。Peak 2分画は、さらにPeak 2-1、Peak 2-2、Peak 2-3に分けられるが、当該分画のIntact massの分析結果においては差がなかった。
【0154】
【表7】
【0155】
HI-HPLC分析で観察されたPeak 1及びPeak 2分画のタンパク質において、LC-MSにより翻訳後修飾(Post-translational modification)分析を行った。表8の精製アフリベルセプトの疎水性相互作用クロマトグラフィー分画のDeamidationの分析結果に示すように、アスパラギン残基の脱アミドにおいて、Peak 1分画とPeak 2分画に差がなく、同等であると分析された。
【0156】
【表8】
【0157】
表9の精製アフリベルセプトの疎水性相互作用クロマトグラフィー分画のMethionine oxidationの分析結果に示すように、メチオニン残基の酸化において、Peak 2分画のタンパク質に比べて、Peak 1分画のタンパク質が約2~3倍多く酸化されたことが確認された。T1 peptideのM10/M20と、T28ペプチドのM237の両方において、酸化が増加した。
【0158】
【表9】
【実施例10】
【0159】
精製アフリベルセプトの疎水性相互作用クロマトグラフィー及び各分画のAnti-VEGF bioassay分析
HI-HPLC分析において観察されたPeak 1及びPeak 2分画のタンパク質の活性を評価するために、PathHunter Anti-VEGF bioassay(米国Eurofins Discoverx社)を行った。VEGFに反応するPathHunter細胞と精製アフリベルセプトの疎水性相互作用クロマトグラフィーの各分画を培養液に混合し、VEGFの結合にいかなる影響を及ぼすかを標準品と比較し、各分画の活性を測定した。
【0160】
Peak 1分画において分析された相対力価が6.6%であったので、VEGFR domainの欠失により活性が低下することが確認された。Peak 2分画において分析された相対力価が維持されていたので、活性が低下しないことが確認された。
【0161】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれる変更又は変形された形態が全て含まれるものと解釈すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【配列表】
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【国際調査報告】