(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】多価効果を持つペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/745 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
C07K14/745 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523623
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022079429
(87)【国際公開番号】W WO2023067167
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522243624
【氏名又は名称】イントゥーキュア エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】シュミッチェン,アルトゥール
(72)【発明者】
【氏名】ペットラック,ガンナ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA17
4H045CA42
4H045EA20
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含むトロンビン由来ペプチドに関する。ペプチドは抗炎症作用を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来の10~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドであって、
i)10~40個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、ここで前記アミノ酸は、X
1及びX
2で示され、
iii)さらに少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248及びK252を含み、
ただし、前記ペプチドが、24~40個のアミノ酸の全長を有する場合は、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも2つの内部共有結合を含み、第1の内部共有結合の前記アミノ酸は、X
1及びX
2で示され、第2の内部共有結合の前記アミノ酸は、X
3及びX
4で示される、前記ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドが、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸R245、K247、K248及びK252を含む、請求項1に記載のペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが、10~23個のアミノ酸の全長を有する、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが、13~23個のアミノ酸の全長を有する、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドが、アミノ酸配列:
-U-U-(Z)
n-I-Q-K-V-I-D-Q-(Z)
m-
を含むか、またはそれからなり、式中、
各Zは、個別に任意の標準アミノ酸であり、
Uは、His、LysまたはArgであり、
nは、0~10の範囲の整数であり、
mは0~5の範囲の整数であり、
前記アミノ酸のうちの2つは、アルケニル化アミノ酸に置換されており、その側鎖は、共有結合によって結合されている、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項6】
アミノ酸X
1が、n位に位置し、アミノ酸X
2が、n+3位、またはn+4位、またはn+5位、またはn+6位、またはn+7位、またはn+8位、またはn+9位、またはn+10位、またはn+11位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数である、請求項1に記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合、
a)X
1は、配列番号12のGKY25内のArg11と一致しないこと、
b)X
1は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しないこと、
c)X
2は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しないこと、
d)X
2は、配列番号12のGKY25内のLys18と一致しないこと、及び
e)X
1が配列番号12のLys18と一致する場合、X
2は、Gln22と一致しないことを条件とする、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項8】
前記共有結合が、炭化水素ステープルである、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項9】
X
1及びX
2が、2つのα-置換アルケニルアミノ酸及び/またはα,α-二置換アルケニルアミノ酸などの2つのC-アルケニル化アミノ酸などのアルケニル化アミノ酸であり、前記共有結合が、前記アルケニル残基間に形成されるオレフィンテザーである、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項10】
X
3及びX
4がラクタム架橋によって共有結合しており、場合により、前記ラクタム架橋が、X
3のN末端アミン基とX
4の側鎖カルボン酸との間に形成される、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項11】
X
1及び/またはX
2が、テザーによって連結されており、前記テザーが、C-アルファ炭素から数えて10個の炭素原子のアルケン鎖である、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項12】
前記内部炭化水素ステープルが、2つの(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンを結合することによって形成される、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項13】
前記ペプチドが、14~22個のアミノ酸長、例えば13~18個のアミノ酸長、例えば15~21個のアミノ酸長、例えば16~20個のアミノ酸長、例えば17~20個のアミノ酸長を有する、先行請求項のいずれか1項の記載のペプチド。
【請求項14】
前記ペプチドが、前記ペプチドの末端またはその近くに挿入された1~5個、例えば1~4個、例えば1~3個、例えば1~2個、例えば2個の正に荷電したアミノ酸をさらに含む、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項15】
前記ペプチドが、前記N末端またはその近く、例えば、前記ペプチドのN末端に対して1、2及び/または3位から選択される位置に挿入されている、2個の正に荷電したアミノ酸を含む、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項16】
前記ペプチドが、配列番号1のトロンビンの15~20個の範囲の連続アミノ酸からなり、2個のアミノ酸が、内部炭化水素ステープルを形成するアルケニル化アミノ酸で置換されており、2~5個の範囲の追加のN末端アミノ酸である、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項17】
前記ペプチドが、
i)配列番号3、
ii)配列番号4、
iii)配列番号5、
iv)配列番号6、
v)配列番号7、
vi)配列番号8、
vii)配列番号9、
viii)配列番号10、
ix)配列番号11、
x)配列番号14、
xi)配列番号17、
xii)配列番号18、
xiii)配列番号19、
xiv)配列番号20、
xv)配列番号21、
xvi)配列番号22、
xvii)配列番号23、
xviii)配列番号24、
xix)配列番号25、または
xx)配列番号26
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X
1及びX
2は、共有結合によって結合されたアミノ酸であり、X
3及びX
4は、共有結合によって結合されたアミノ酸である、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項18】
前記ペプチドが、
i)配列番号3、
ii)配列番号5、
iii)配列番号6、または
iv)配列番号7
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X
1及びX
2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されており、場合により、X
1及びX
2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は、互いに反応してアルケニルテザーを形成しており、さらに場合により、X
1及びX
2は、Alaであり、その側鎖は、1つの二重結合を含むC
8アルケニルテザーによって互いに共有結合している、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項19】
前記ペプチドが、
i)配列番号3、または
ii)配列番号5
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X
1及びX
2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は、互いに反応してアルケニルテザーを形成しており、場合により、X
1及びX
2は、Alaであり、その側鎖は、1つの二重結合を含むC
8アルケニルテザーによって互いに共有結合している、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項20】
前記ペプチドが、インビトロでLPS刺激血液中のTNF-α放出を50%減少させるペプチド濃度において、新鮮な全血中、最大10%、好ましくは最大5%の溶血活性を有する、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項21】
医薬として使用するための、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項22】
炎症及び/または感染症の治療及び/または予防を必要とする個体における、炎症及び/または感染症の治療及び/または予防の方法で使用するための、先行請求項のいずれか1項に記載のペプチド。
【請求項23】
前記ペプチドが、急性炎症、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎、その他の種類の鼻炎、血管炎、血栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、胃腸炎、及び肺炎症からなる群から選択される疾患の治療または予防の方法で使用するためのものである、請求項22に記載のペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症及び/または感染症の治療のためのペプチドの分野に属する。特に、本発明は、良好な安定性、高い抗炎症活性及び/または抗菌活性を有するペプチドを提供する。
【背景技術】
【0002】
Toll様受容体4(TLR4)によるリポ多糖(LPS)の感知は、感染症に対する初期反応において重要であり、その後のNF-κB活性化は、サイトカイン、ケモカインの放出、及びその後の有害な止血障害を含む、敗血症やARDSに関連するさまざまな生物学的影響を引き起こし、凝固因子や他のメディエーターの消費につながる。興味深いことに、SARS-CoV-2の主要な細胞外タンパク質であるスパイク糖タンパク質は、インビトロ及び動物モデルでLPS反応を促進し、COVID-19で見られるARDSの分子的説明を提供し(Petruk et al.,JMCB,2020)、制御されていないLPS反応は、局所的な過剰な炎症を引き起こすだけでなく、感染症に対する重度の全身反応も引き起こす。したがって、LPSの感知は初期の宿主防御反応にとって重要であるが、過度の炎症及び臓器損傷を避けるためには、この分子のクリアランスと制御が重要である。
【0003】
抗生物質及び抗ウイルス薬に基づく現在の治療法は微生物のみを標的としており、敗血症で見られるような、それに伴う免疫応答の過剰活性化は標的としていない。これは米国単独では主な死因であり、毎年推定70万人以上の症例があり、敗血症性ショック患者の死亡率は30~50%となっている。したがって、細菌だけでなく過剰な免疫応答も標的とする、自然界独自の生来の防御戦略に基づいた治療概念は、大きな治療の可能性を有し得る。約2kDaのトロンビン由来C末端ペプチド(TCP)は、インビトロ及びインビボで抗エンドトキシン機能を発揮することが実証されている。このような小さなペプチドは、宿主防御ペプチド(HDP)の多様なファミリーに属しており、これには好中球由来α-ディフェンシン及びカテリシジンLL-37を含み、全て免疫調節活性を示すことが知られている。天然TCPの配列を包含するTCP-25(配列番号12)は、実験動物モデルにおいて、主に全身性サイトカイン反応の低下を介して、インビトロでLPSを中和し、P.aeruginosa敗血症及びLPS媒介性ショックから保護することを示している(Kalle et al.,PLOS One,2011)。
【0004】
TCP-25はLPSに結合し、単球及びマクロファージと直接相互作用し、CD14シグナル伝達及びTLR4/MD2二量体化を妨げ、その結果、微生物由来のアゴニスト及び無傷の細菌に反応したTLR4及びTLR2誘発性のNF-κB活性化を阻害する(Saravanan et al.,Nat Comm,2018)。TCPは、細菌膜及びLPSとの相互作用とは別に、CD14のLPS結合溝にも結合する(Saravanan et al.,Nat Comm,2018)。TCPが、LPS及びCD14に対してすべてμMの範囲にある複数の比較的弱い親和性を発揮するという事実により、感染症に対する宿主応答の調節が可能になる。多価性、複数の標的、高いオフレート、及びμMレベルのKd値によって定義される一過性薬剤と多くの特徴を共有していることから、TCPは、自然にインスピレーションを得た新規抗炎症療法の開発において興味深い。
【0005】
しかし、多くのペプチドベースの治療薬と同様に、TCP-25は内因性プロテアーゼによって分解される(Puthia et al.,2020)。全身投与または吸入投与が必要な敗血症やARDSなどの疾患の場合、急速に分解されるペプチドは非常に大量の投与と頻繁な投与が必要となるであろう。さらに、薬理学的な観点からは、その標的受容体であるCD14に対する向上した親和性が所望され、これにより必要な有効濃度が低減されるであろう。最後に、TCP-25は高濃度でオリゴマー及び凝集体を形成するため、薬物送達の観点からは溶解度の向上が利点となるであろう。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、以下の1つ以上を含むいくつかの有利な特性を有するペプチドを提供する:
・高いインビボ安定性
・ヒト好中球エラスターゼ(HNE)、Pseudomonasエラスターゼ(PE)、及び/またはトリプシンなどのプロテアーゼの存在下での増加した安定性
・高い抗炎症活性(例えば、TNF-α及び/またはIL-1βなどの炎症性サイトカインの減少した放出、または減少したNF-κB活性によって決定される)
・抗菌活性、例えば、グラム陰性菌及び/またはグラム陽性菌に対する殺菌活性
・血液中の低い溶血活性
・赤血球に対する低い溶血活性
・低毒性
【0007】
特に、本発明のペプチドは、ペプチドが高い抗炎症活性を有する濃度では、血液中で低い溶血活性を有する。
【0008】
本発明の好ましいペプチドは、前述の特性をすべて有する。高いインビボ安定性、プロテアーゼに対する増加した安定性、及び低い溶血活性により、本発明のペプチドは、全身投与に特に有用となる。特に、本発明は、高い抗炎症活性を有する濃度において、赤血球(RBC)に対して低い溶血活性を有するペプチドを提供する。
【0009】
より具体的には、本発明のペプチドはトロンビン由来ペプチドに基づいており、その構造は2つの非隣接アミノ酸間の共有結合によってロックされている。興味深いことに、本発明のペプチドは、前述の有利な特性のいくつか、好ましくはすべてを有する。トロンビン由来の直鎖ペプチドの多くは、抗炎症活性と抗菌活性の両方を有するが、一般にインビボ安定性が低い。
【0010】
安定化された構造を有する本発明のペプチドは、一般にらせん構造(複数可)を含む。これらは、安定化されたプロテアーゼ耐性構造を有し、抗菌活性を発揮し、一般に向上した抗炎症効果を有し得る。したがって、本発明のペプチドは、興味深い主要な抗炎症ペプチド模倣物である。一般に、本ペプチドは天然のTCPと比較してオリゴマー化する傾向が低い。薬剤のオリゴマー化はよく知られた現象であり、凝集を引き起こし、効果を低下させ、遅延免疫反応のリスクを高める可能性がある。したがって、本発明のペプチドは、一般に有意に少ないオリゴマー化を示し、これは薬剤の観点から有利である。
【0011】
内因性TCP HVF18は、低いpHでLPSに対してより高い親和性を発揮する。本発明の好ましいペプチドは、例えば、カチオン性K残基及びR残基の付加により、N末端の増大した極性及び電荷を有する。本発明は、核磁気共鳴分光法(NMR)、生物物理学、質量分析、微生物学、細胞、及びインビボ研究の組み合わせを利用して、毒性が高く、低下した抗炎症活性を有する、より長いカチオン性ストレッチを持つペプチドとは対照的に、電荷の増加、特に電荷が+2増加することが最適な効果及び高い治療指数をもたらし得ることを示している。
【0012】
ペプチドをステープル化すると、そのタンパク質分解安定性を向上させ得るが、驚くべきことに、特定のトロンビン由来ペプチドをステープル化すると、望ましくない効果も引き起こす。例えば、GKY25を単一の位置でステープル化すると、高い溶血活性を持つペプチドの生成をもたらし、これは望ましくない。GKY25を単一の位置でステープル化するとさらに、ステープル化されていないGKY25と比較して抗炎症効果が低下したペプチドをもたらす。
【0013】
驚くべきことに、本発明は、GKY25などのより長いペプチドとは対照的に、13~23個のアミノ酸などの全長10~23個のアミノ酸を有するより短いトロンビン由来ペプチドが、前述の有利な特性のほとんど、及びしばしばすべてを有することを開示する。
【0014】
さらに、本発明は、少なくとも2つの位置で24~40アミノ酸の長さを有するより長いトロンビン由来ペプチドをステープル化することにより、前述の有利な特性のいくつかを有するペプチドを与えることを開示する。
【0015】
本発明はさらに、追加の正に荷電したアミノ酸を含むペプチドが、さらに優れた抗炎症効果を有することを示す。
【0016】
さらに、本発明のペプチドは、抗凝固活性も有し得る。本発明は、追加の正に荷電したアミノ酸を含むペプチドが、さらに優れた抗凝固活性を有し得ることを示す。
【0017】
本発明は、最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来の10~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドを提供し、前記ペプチドは、
i)10~40個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、ここで前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)さらに少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248及びK252を含み、
ただし、ペプチドが、24~40個のアミノ酸の全長を有する場合は、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも2つの内部共有結合を含み、第1の内部共有結合のアミノ酸は、X1及びX2で示され、第2の内部共有結合のアミノ酸は、X3及びX4で示される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】異なるプロテアーゼによる、異なる時間の長さの無傷のペプチド及び消化ペプチドのSDS-PAGE。3つの独立した実験からの1つの代表的な画像を示す(n=3)。
【
図2】a)漸増濃度の直鎖及びステープル化GKY25の存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから20時間後の、THP1-XBlue-CD14レポーター細胞におけるNF-κB活性化及び細胞生存率。結果は、4回の実験の平均値±SDとして表示される(n=4)。有意性は、通常の二元配置分散分析、その後のGraphPad Prismソフトウェアを使用したTukeyの多重比較検定によって確立した。b)漸増濃度のGKY25及びsGKY25の存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液から放出されたサイトカイン。結果は、平均値±SEMとして表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。有意性は、通常の二元配置分散分析、その後のGraphPad Prismソフトウェアを使用したTukeyの多重比較検定によって確立した。
【
図3】左パネル:漸増濃度のHVF18及びsHVF18の存在下または非存在下で、100ng ml-1のE.coli LPSで刺激してから20時間後の、THP-1単球におけるNF-κB活性化及び細胞生存率。結果は、4回の実験の平均値±SDとして表示される(n=4)。有意性は、通常の二元配置分散分析、その後のGraphPad Prismソフトウェアを使用したTukeyの多重比較検定によって確立した。右パネル:漸増濃度のHVF18及びsHVF18の存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液からの放出されたサイトカイン。結果は、平均値±SEMとして表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。有意性は、通常の二元配置分散分析、その後のGraphPad Prismソフトウェアを使用したTukeyの多重比較検定によって確立した。
【
図4】ヒートマップは、赤血球(RBC)または全血におけるペプチドの溶血活性を示す。数字は溶血活性%を示す。データは、3つの独立した実験の平均として表示され、それぞれの実験は、異なるドナーからの血液を使用して実行した(n=3)。A)GKY25及びsGKY25、B)HVF18及びsHVF18。
【
図5】ペプチドの抗炎症活性に対するステープル化の効果を示す。a、MSTによって得られた、NaClの存在下または非存在下でのCD14とGKY25、HVF18またはsHVF18の間の代表的な結合曲線。KdはMST曲線から計算した。データは、6つの異なる測定値の平均±SDとして表示される(n=6)。有意性は、通常の一元配置分散分析、その後のGraphPad Prismソフトウェアを使用したTukeyの多重比較検定によって確立した。
【
図6】直鎖及びステープル化HVF18の抗炎症活性を示す。a、10μMの直鎖及びステープル化HVF18の存在または非存在で、100ng ml
-1のE.coli LPS(LPS
Ec)、1μg mL
-1のS.aureus LTA(LTA
Sa)、1μg mL
-1E.coli PGN(PGN
EB)、1μg mL
-1S.aureus PGN(PGN
Sa)、10μg mL
-1S.cerevisiae zymosan(Zym
Sc)で刺激してから20時間後のTHP1-XBlue-CD14レポーター細胞におけるNF-κBの活性化と細胞生存率。結果は、4回の実験の平均値±SDとして表示される(n=4)。有意性は、通常の一元配置分散分析、その後のGraphPad Prismソフトウェアを使用したDunnettの多重比較検定によって確立した。
【
図7】血液中の直鎖及びステープル化HVF18の抗炎症活性を示す。a)漸増用量のHVF18またはsHVF18と混合した100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後のヒト血液から放出されたサイトカイン。b)100ng ml
-1のE.coli LPSで30分間刺激し、その後、漸増用量のHVF18またはsHVF18とインキュベートした、刺激から24時間後の、ヒト血液から放出されたサイトカイン。結果は、平均±SEMとして表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。有意性は、通常の二元配置分散分析、その後のGraphPad Prismソフトウェアを使用したTukeyの多重比較検定によって確立した。
【
図8a】実験マウスモデルにおけるエンドトキシン反応に対するステープル化ペプチドの効果を示す。NF-κBレポーターマウスにおけるIVISによる代表的なインビボ炎症イメージング。トランスジェニックBALB/c Tg(NF-κB-RE-luc)-Xenレポーターマウスの背中に皮下注射する直前に、HVF18またはsHVF18をLPSと混合した。インビボイメージングは、皮下沈着後3、6、24時間でIVIS Spectrumバイオイメージングシステムを使用して取得した。棒グラフは、これらのマウスから放出される測定された生物発光強度を示す。データは、平均±SEM(n=8各群)として表示される。P値は、Mann-Whitney U検定を使用して決定した。
【
図8b】実験マウスモデルにおけるエンドトキシン反応に対するステープル化ペプチドの効果を示す。腹腔内投与(i.p.)による致死未満量のLPSで刺激し、その後、sHVF18i.p.で処理したC57BL/6マウスから8時間後及び20時間後に採取した血漿からのサイトカイン放出。データは、平均±SEMとして表示される(各丸は1匹のマウスを表す)。P値は、Dunnettの多重比較検定に続いて通常の一元配置分散分析を使用して決定した。
【
図9】実験マウスモデルにおけるエンドトキシン反応に対する直鎖及びステープル化ペプチドの効果を示す。NF-κBレポーターマウスにおけるIVISによる代表的なインビボ炎症イメージング。トランスジェニックBALB/c Tg(NF-κB-RE-luc)-Xenレポーターマウスの背中に皮下注射する直前に、200μgのHVF18またはsHVF18を25μgのLPSと混合した。インビボイメージングは、皮下沈着後3、6、24時間でIVIS Spectrumバイオイメージングシステムを使用して取得した。棒グラフは、これらのマウスから放出される測定された生物発光強度を示す。データは、平均±SEM(n=5各群)として表示される。P値は、Mann-Whitney U検定を使用して決定した。b、i.p.による致死未満量のLPSで刺激し、その後、漸増用量のsHVF18i.p.で処理したC57BL/6マウスから20時間後に採取した血漿からのサイトカイン放出。データは、平均±SEMとして表示される(各丸は1匹のマウスを表す)。P値は、Dunnettの多重比較検定に続いて通常の一元配置分散分析を使用して決定した。
【
図10A】HVF18の抗菌活性に対するステープル化の効果を示す。ヒートマップは、RDAにより決定される漸増濃度のHVF18及びsHVF18の抗菌活性を示す。活性は、NaClの非存在下及び存在下の両方で、E.coli、P.aeruginosa O1、及びS.aureusについて評価した。データはクリアランスゾーンとして表示される。グレースケール及び各ボックスの値は平均値を表す(n=4)。
【
図10B】HVF18の抗菌活性に対するステープル化の効果を示す。VCAによって評価された、単独またはNaClもしくは25%のヒト血漿を補足したTris緩衝液中のHVF18及びsHVF18の殺傷効果。データは、平均±SEM(n=4)として表示される。
【
図10C】HVF18の抗菌活性に対するステープル化の効果を示す。VCAによって評価された、Tris緩衝液中のS.aureusに対するsHVF18の殺傷効果。データは、平均±SEM(n=4)として表示される。
【
図10D】HVF18の抗菌活性に対するステープル化の効果を示す。E.coli、P.aeruginosa O1、及びS.aureusのHVF18及びsHVF18についてのMIC値。実験を4回繰り返し、同様の結果を得た(n=4)。
【
図10E】HVF18の抗菌活性に対するステープル化の効果を示す。P.aeruginosa O1及びS.aureusの臨床分離株についてのMIC値。実験を4回繰り返し、同様の結果を得た(n=4)。
【
図11】sHVF18及びそのK及びR変異体の二次構造の評価を示す。すべてのペプチドを、1mMストック溶液から10μMの最終濃度でpH7.4の10mM Trisに希釈した。スペクトルを25℃で取得した。結果は、3回の異なる実験の平均として表示される。
【
図12a】インビトロでの異なるステープル化ペプチドの溶血特性の評価を示す。ヒストグラムは、赤血球(a)または全血(b)に対する異なる濃度でのsHVF18K及びR変異体の溶血活性を示す。データは、4回の独立した実験の平均±SDである(点で表示)。(c)では、全血に対するGKY25、sGKY25、及び2sGKY25の溶血活性が示されている。データは、2回の独立した実験の平均±SDである。すべてのグラフにおいて、破線は100μM sHVF18の溶血活性を表し、点線は10%の溶解に相当する。
【
図12b】インビトロでの異なるステープル化ペプチドの溶血特性の評価を示す。ヒストグラムは、赤血球(a)または全血(b)に対する異なる濃度でのsHVF18K及びR変異体の溶血活性を示す。データは、4回の独立した実験の平均±SDである(点で表示)。(c)では、全血に対するGKY25、sGKY25、及び2sGKY25の溶血活性が示されている。データは、2回の独立した実験の平均±SDである。すべてのグラフにおいて、破線は100μM sHVF18の溶血活性を表し、点線は10%の溶解に相当する。
【
図12c】インビトロでの異なるステープル化ペプチドの溶血特性の評価を示す。ヒストグラムは、赤血球(a)または全血(b)に対する異なる濃度でのsHVF18K及びR変異体の溶血活性を示す。データは、4回の独立した実験の平均±SDである(点で表示)。(c)では、全血に対するGKY25、sGKY25、及び2sGKY25の溶血活性が示されている。データは、2回の独立した実験の平均±SDである。すべてのグラフにおいて、破線は100μM sHVF18の溶血活性を表し、点線は10%の溶解に相当する。
【
図13A】sHVF18及びそのK及びR変異体のTHP-1-XBlue-CD14レポーター細胞における抗炎症活性の評価を示している。K(a)及びR(b)漸増濃度のsHVF18変異体の存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから20時間後の、THP-1単球におけるNF-κB活性化及び細胞生存率。結果は、4回の実験の平均±SDとして表示される(n=4)。LPS存在下での10μM sHVF18を、比較のために使用した。
【
図13B】sHVF18及びそのK及びR変異体のTHP-1-XBlue-CD14レポーター細胞における抗炎症活性の評価を示している。K(a)及びR(b)漸増濃度のsHVF18変異体の存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから20時間後の、THP-1単球におけるNF-κB活性化及び細胞生存率。結果は、4回の実験の平均±SDとして表示される(n=4)。LPS存在下での10μM sHVF18を、比較のために使用した。
【
図14A】ヒト血液中のステープル化ペプチドの抗炎症活性の評価を示す。漸増濃度のK(a)及びR(b)sHVF18変異体、またはGKY25及びそのステープル化変異体(c)の存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液からの放出されたサイトカイン。結果は、平均値±SEMとして表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。
【
図14B】ヒト血液中のステープル化ペプチドの抗炎症活性の評価を示す。漸増濃度のK(a)及びR(b)sHVF18変異体、またはGKY25及びそのステープル化変異体(c)の存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液からの放出されたサイトカイン。結果は、平均値±SEMとして表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。
【
図14C】ヒト血液中のステープル化ペプチドの抗炎症活性の評価を示す。漸増濃度のK(a)及びR(b)sHVF18変異体、またはGKY25及びそのステープル化変異体(c)の存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液からの放出されたサイトカイン。結果は、平均値±SEMとして表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。
【
図15】マウスエンドトキシンモデルにおけるsHVF18及びそのK及びR変異体の抗炎症活性の評価を示す。C57BL/6マウスを致死未満量のLPSで刺激し、30分後に10μgのsHVF18、sKVF18、sKKVF18、sRVF18またはsRRVF18で処理した。20時間後、マウスをイソフルランで深く麻酔し、心臓穿刺によって血液を採取した。サイトカイン放出プロファイルを、ヒストグラムとして示す。データは、平均±SEMとして表示される(n=7、sHVF18及びLPSの一部n=13、及び未処置n=2)。P値は、Dunnettの多重比較検定に続いて通常の一元配置分散分析を使用して決定した。
【
図16】sHVF18K及びR変異体の抗菌活性の評価を示す。ヒートマップは、RDAによって決定される漸増濃度のペプチドの抗菌活性を示す。活性は、NaClの非存在下(a)及び存在下(b)の両方で、E.coli、P.aeruginosa O1(PAO1)、及びS.aureusについて評価した。データは、mmで表されるクリアランスゾーンとして表示される。グレースケール及び各ボックスの値は、平均値を表す(n=4)。
【
図17】溶液中のsHVF18K及びR変異体の抗菌活性の評価を示す。pH7.4、10mM Trisにおける、VCAによって評価される、単独(a)またはNaClを補足した(b)E.coli、P.aeruginosa O1(PAO1)、及びS.aureusに対するsHVF18及びその変異体の殺菌効果。データは、平均±SEM(n=4)として表示される。
【
図18】凝固に対する異なるペプチドの効果を示す。活性化部分トロンビン時間(aPTT)及びプロトロンビン時間(PT)を、図に示すように異なるステープル化ペプチドの増加濃度を、ヒトクエン酸血漿に加えた後に決定した(n=2)。
【
図19】オリゴマー化の尺度として異なるペプチドの流体力学的半径(Rh)を示している。ペプチドを、1mMで最終濃度として、pH7.4の10mM TrisまたはpH5.0の10mM NaOAc中に再懸濁した。各サンプル30μLを使用して、溶液中の粒子の流体力学的半径(nmで)を測定した。各サンプルについて、マルチモーダルモードを使用して10回のサブランでスペクトルを3回記録した。各実験を3回実行した(n=3)。P値は、一元配置分散分析とともにTukeyの多重比較検定を使用して決定した。**P≦0.01、****P≦0.0001。
【
図20A】改善された抗炎症活性を有するステープル化ペプチドの選択を示す。a、ヒートマップは、全血または赤血球(RBC)に対するペプチドの溶血活性を示す。4人の異なるドナーからの赤血球または血液に対して行われた実験のデータは、平均(n=4)として表示される。b、ヒートマップは、漸増濃度の異なるペプチドの存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液から放出されたサイトカインを示す。結果は、平均として表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。c、(a)及び(b)からのデータを組み合わせて得たグラフであり、示されているように、異なるサイトカインに対するペプチドのIC
50の関数としてのペプチドの溶血活性を表す。IC
50>10のペプチドについては、20μMでの溶血活性が示されている。d、TNF-αに対するペプチドのIC
50の関数としてのペプチドの溶血活性。グラフは、実施例1及び2に記載のように得られた結果を要約する。IC
50>10μMのペプチドについては、正確なIC
50が不明であるが、50μMでの溶血活性を示すように選択した。
【
図20B】改善された抗炎症活性を有するステープル化ペプチドの選択を示す。a、ヒートマップは、全血または赤血球(RBC)に対するペプチドの溶血活性を示す。4人の異なるドナーからの赤血球または血液に対して行われた実験のデータは、平均(n=4)として表示される。b、ヒートマップは、漸増濃度の異なるペプチドの存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液から放出されたサイトカインを示す。結果は、平均として表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。c、(a)及び(b)からのデータを組み合わせて得たグラフであり、示されているように、異なるサイトカインに対するペプチドのIC
50の関数としてのペプチドの溶血活性を表す。IC
50>10のペプチドについては、20μMでの溶血活性が示されている。d、TNF-αに対するペプチドのIC
50の関数としてのペプチドの溶血活性。グラフは、実施例1及び2に記載のように得られた結果を要約する。IC
50>10μMのペプチドについては、正確なIC
50が不明であるが、50μMでの溶血活性を示すように選択した。
【
図20C】改善された抗炎症活性を有するステープル化ペプチドの選択を示す。a、ヒートマップは、全血または赤血球(RBC)に対するペプチドの溶血活性を示す。4人の異なるドナーからの赤血球または血液に対して行われた実験のデータは、平均(n=4)として表示される。b、ヒートマップは、漸増濃度の異なるペプチドの存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液から放出されたサイトカインを示す。結果は、平均として表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。c、(a)及び(b)からのデータを組み合わせて得たグラフであり、示されているように、異なるサイトカインに対するペプチドのIC
50の関数としてのペプチドの溶血活性を表す。IC
50>10のペプチドについては、20μMでの溶血活性が示されている。d、TNF-αに対するペプチドのIC
50の関数としてのペプチドの溶血活性。グラフは、実施例1及び2に記載のように得られた結果を要約する。IC
50>10μMのペプチドについては、正確なIC
50が不明であるが、50μMでの溶血活性を示すように選択した。
【
図20D】改善された抗炎症活性を有するステープル化ペプチドの選択を示す。a、ヒートマップは、全血または赤血球(RBC)に対するペプチドの溶血活性を示す。4人の異なるドナーからの赤血球または血液に対して行われた実験のデータは、平均(n=4)として表示される。b、ヒートマップは、漸増濃度の異なるペプチドの存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液から放出されたサイトカインを示す。結果は、平均として表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。c、(a)及び(b)からのデータを組み合わせて得たグラフであり、示されているように、異なるサイトカインに対するペプチドのIC
50の関数としてのペプチドの溶血活性を表す。IC
50>10のペプチドについては、20μMでの溶血活性が示されている。d、TNF-αに対するペプチドのIC
50の関数としてのペプチドの溶血活性。グラフは、実施例1及び2に記載のように得られた結果を要約する。IC
50>10μMのペプチドについては、正確なIC
50が不明であるが、50μMでの溶血活性を示すように選択した。
【
図21】sKKW13のK及びR変異体の溶血活性及び抗炎症活性を示す。a、ヒートマップは、全血に対するペプチドの溶血活性を示す。4人の異なるドナーからの血液に対して行われた実験のデータは、平均(n=4)として表示される。b、ヒートマップは、漸増濃度の異なるペプチドの存在下または非存在下で、100ng ml
-1のE.coli LPSで刺激してから24時間後の、ヒト血液から放出されたサイトカインを示す。結果は、平均として表示される。毎回異なるドナーからの血液を使用した(n=4)。
【
図22A】sHVF18の静脈内投与が、ブタにおける敗血症様状態を改善し、重篤な状態のARDSの進行を妨げたことを示す。図は、sHVF18ありまたは無しで処置した急性肺損傷及びARDSのブタの結果を示している。(a)図は実験セットアップの概要を示している。ブタは人工呼吸器で麻酔され、動脈ライン及びスワンガンツカテーテルを使用して継続的にモニタリングした。LPSを静脈内投与し、処置動物にはsHVF18を投与した。血行動態、バイタル、及び肺ガス交換は、実験期間中継続的に追跡した。(b)は、処置したブタ(n=5)と未処置のブタ(n=5)間の肺ガス交換をPaO
2 FiO
2
-1比として示す。未処置動物はすべて、軽度から中等度のARDSを発症した。心拍出量の有意な増加(c)、尿量の有意な減少(d)、変力補助の必要性の有意な増加(e)、及び乳酸レベルの有意な増加(f)が未処置動物で見られたが、処置動物では見られず、敗血症のような状態の重篤な段階を示している。(g)健康な対照(n=5)(左)、未処置(中央)(n=5)及びsHVF18処置(右)(n=5)肺のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学のn=15サンプルを表す画像。大きな画像のスケールバーは0.5mmを表す。吹き出しは、組織の拡大部分を示し、スケールバーは、0.2mmを表す。(h)組織像の累積盲検スコアリングの結果。未処置群と処置群間の統計的有意差は、両側Student T検定で、またグループ内では両側配置分散分析で検定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。すべての値は、平均±標準偏差を表す。
【
図22B】sHVF18の静脈内投与が、ブタにおける敗血症様状態を改善し、重篤な状態のARDSの進行を妨げたことを示す。図は、sHVF18ありまたは無しで処置した急性肺損傷及びARDSのブタの結果を示している。(a)図は実験セットアップの概要を示している。ブタは人工呼吸器で麻酔され、動脈ライン及びスワンガンツカテーテルを使用して継続的にモニタリングした。LPSを静脈内投与し、処置動物にはsHVF18を投与した。血行動態、バイタル、及び肺ガス交換は、実験期間中継続的に追跡した。(b)は、処置したブタ(n=5)と未処置のブタ(n=5)間の肺ガス交換をPaO
2 FiO
2
-1比として示す。未処置動物はすべて、軽度から中等度のARDSを発症した。心拍出量の有意な増加(c)、尿量の有意な減少(d)、変力補助の必要性の有意な増加(e)、及び乳酸レベルの有意な増加(f)が未処置動物で見られたが、処置動物では見られず、敗血症のような状態の重篤な段階を示している。(g)健康な対照(n=5)(左)、未処置(中央)(n=5)及びsHVF18処置(右)(n=5)肺のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学のn=15サンプルを表す画像。大きな画像のスケールバーは0.5mmを表す。吹き出しは、組織の拡大部分を示し、スケールバーは、0.2mmを表す。(h)組織像の累積盲検スコアリングの結果。未処置群と処置群間の統計的有意差は、両側Student T検定で、またグループ内では両側配置分散分析で検定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。すべての値は、平均±標準偏差を表す。
【
図22C】sHVF18の静脈内投与が、ブタにおける敗血症様状態を改善し、重篤な状態のARDSの進行を妨げたことを示す。図は、sHVF18ありまたは無しで処置した急性肺損傷及びARDSのブタの結果を示している。(a)図は実験セットアップの概要を示している。ブタは人工呼吸器で麻酔され、動脈ライン及びスワンガンツカテーテルを使用して継続的にモニタリングした。LPSを静脈内投与し、処置動物にはsHVF18を投与した。血行動態、バイタル、及び肺ガス交換は、実験期間中継続的に追跡した。(b)は、処置したブタ(n=5)と未処置のブタ(n=5)間の肺ガス交換をPaO
2 FiO
2
-1比として示す。未処置動物はすべて、軽度から中等度のARDSを発症した。心拍出量の有意な増加(c)、尿量の有意な減少(d)、変力補助の必要性の有意な増加(e)、及び乳酸レベルの有意な増加(f)が未処置動物で見られたが、処置動物では見られず、敗血症のような状態の重篤な段階を示している。(g)健康な対照(n=5)(左)、未処置(中央)(n=5)及びsHVF18処置(右)(n=5)肺のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学のn=15サンプルを表す画像。大きな画像のスケールバーは0.5mmを表す。吹き出しは、組織の拡大部分を示し、スケールバーは、0.2mmを表す。(h)組織像の累積盲検スコアリングの結果。未処置群と処置群間の統計的有意差は、両側Student T検定で、またグループ内では両側配置分散分析で検定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。すべての値は、平均±標準偏差を表す。
【
図22D】sHVF18の静脈内投与が、ブタにおける敗血症様状態を改善し、重篤な状態のARDSの進行を妨げたことを示す。図は、sHVF18ありまたは無しで処置した急性肺損傷及びARDSのブタの結果を示している。(a)図は実験セットアップの概要を示している。ブタは人工呼吸器で麻酔され、動脈ライン及びスワンガンツカテーテルを使用して継続的にモニタリングした。LPSを静脈内投与し、処置動物にはsHVF18を投与した。血行動態、バイタル、及び肺ガス交換は、実験期間中継続的に追跡した。(b)は、処置したブタ(n=5)と未処置のブタ(n=5)間の肺ガス交換をPaO
2 FiO
2
-1比として示す。未処置動物はすべて、軽度から中等度のARDSを発症した。心拍出量の有意な増加(c)、尿量の有意な減少(d)、変力補助の必要性の有意な増加(e)、及び乳酸レベルの有意な増加(f)が未処置動物で見られたが、処置動物では見られず、敗血症のような状態の重篤な段階を示している。(g)健康な対照(n=5)(左)、未処置(中央)(n=5)及びsHVF18処置(右)(n=5)肺のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学のn=15サンプルを表す画像。大きな画像のスケールバーは0.5mmを表す。吹き出しは、組織の拡大部分を示し、スケールバーは、0.2mmを表す。(h)組織像の累積盲検スコアリングの結果。未処置群と処置群間の統計的有意差は、両側Student T検定で、またグループ内では両側配置分散分析で検定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。すべての値は、平均±標準偏差を表す。
【
図22E】sHVF18の静脈内投与が、ブタにおける敗血症様状態を改善し、重篤な状態のARDSの進行を妨げたことを示す。図は、sHVF18ありまたは無しで処置した急性肺損傷及びARDSのブタの結果を示している。(a)図は実験セットアップの概要を示している。ブタは人工呼吸器で麻酔され、動脈ライン及びスワンガンツカテーテルを使用して継続的にモニタリングした。LPSを静脈内投与し、処置動物にはsHVF18を投与した。血行動態、バイタル、及び肺ガス交換は、実験期間中継続的に追跡した。(b)は、処置したブタ(n=5)と未処置のブタ(n=5)間の肺ガス交換をPaO
2 FiO
2
-1比として示す。未処置動物はすべて、軽度から中等度のARDSを発症した。心拍出量の有意な増加(c)、尿量の有意な減少(d)、変力補助の必要性の有意な増加(e)、及び乳酸レベルの有意な増加(f)が未処置動物で見られたが、処置動物では見られず、敗血症のような状態の重篤な段階を示している。(g)健康な対照(n=5)(左)、未処置(中央)(n=5)及びsHVF18処置(右)(n=5)肺のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学のn=15サンプルを表す画像。大きな画像のスケールバーは0.5mmを表す。吹き出しは、組織の拡大部分を示し、スケールバーは、0.2mmを表す。(h)組織像の累積盲検スコアリングの結果。未処置群と処置群間の統計的有意差は、両側Student T検定で、またグループ内では両側配置分散分析で検定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。すべての値は、平均±標準偏差を表す。
【
図22F】sHVF18の静脈内投与が、ブタにおける敗血症様状態を改善し、重篤な状態のARDSの進行を妨げたことを示す。図は、sHVF18ありまたは無しで処置した急性肺損傷及びARDSのブタの結果を示している。(a)図は実験セットアップの概要を示している。ブタは人工呼吸器で麻酔され、動脈ライン及びスワンガンツカテーテルを使用して継続的にモニタリングした。LPSを静脈内投与し、処置動物にはsHVF18を投与した。血行動態、バイタル、及び肺ガス交換は、実験期間中継続的に追跡した。(b)は、処置したブタ(n=5)と未処置のブタ(n=5)間の肺ガス交換をPaO
2 FiO
2
-1比として示す。未処置動物はすべて、軽度から中等度のARDSを発症した。心拍出量の有意な増加(c)、尿量の有意な減少(d)、変力補助の必要性の有意な増加(e)、及び乳酸レベルの有意な増加(f)が未処置動物で見られたが、処置動物では見られず、敗血症のような状態の重篤な段階を示している。(g)健康な対照(n=5)(左)、未処置(中央)(n=5)及びsHVF18処置(右)(n=5)肺のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学のn=15サンプルを表す画像。大きな画像のスケールバーは0.5mmを表す。吹き出しは、組織の拡大部分を示し、スケールバーは、0.2mmを表す。(h)組織像の累積盲検スコアリングの結果。未処置群と処置群間の統計的有意差は、両側Student T検定で、またグループ内では両側配置分散分析で検定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。すべての値は、平均±標準偏差を表す。
【
図22G】sHVF18の静脈内投与が、ブタにおける敗血症様状態を改善し、重篤な状態のARDSの進行を妨げたことを示す。図は、sHVF18ありまたは無しで処置した急性肺損傷及びARDSのブタの結果を示している。(a)図は実験セットアップの概要を示している。ブタは人工呼吸器で麻酔され、動脈ライン及びスワンガンツカテーテルを使用して継続的にモニタリングした。LPSを静脈内投与し、処置動物にはsHVF18を投与した。血行動態、バイタル、及び肺ガス交換は、実験期間中継続的に追跡した。(b)は、処置したブタ(n=5)と未処置のブタ(n=5)間の肺ガス交換をPaO
2 FiO
2
-1比として示す。未処置動物はすべて、軽度から中等度のARDSを発症した。心拍出量の有意な増加(c)、尿量の有意な減少(d)、変力補助の必要性の有意な増加(e)、及び乳酸レベルの有意な増加(f)が未処置動物で見られたが、処置動物では見られず、敗血症のような状態の重篤な段階を示している。(g)健康な対照(n=5)(左)、未処置(中央)(n=5)及びsHVF18処置(右)(n=5)肺のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学のn=15サンプルを表す画像。大きな画像のスケールバーは0.5mmを表す。吹き出しは、組織の拡大部分を示し、スケールバーは、0.2mmを表す。(h)組織像の累積盲検スコアリングの結果。未処置群と処置群間の統計的有意差は、両側Student T検定で、またグループ内では両側配置分散分析で検定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。すべての値は、平均±標準偏差を表す。
【
図22H】sHVF18の静脈内投与が、ブタにおける敗血症様状態を改善し、重篤な状態のARDSの進行を妨げたことを示す。図は、sHVF18ありまたは無しで処置した急性肺損傷及びARDSのブタの結果を示している。(a)図は実験セットアップの概要を示している。ブタは人工呼吸器で麻酔され、動脈ライン及びスワンガンツカテーテルを使用して継続的にモニタリングした。LPSを静脈内投与し、処置動物にはsHVF18を投与した。血行動態、バイタル、及び肺ガス交換は、実験期間中継続的に追跡した。(b)は、処置したブタ(n=5)と未処置のブタ(n=5)間の肺ガス交換をPaO
2 FiO
2
-1比として示す。未処置動物はすべて、軽度から中等度のARDSを発症した。心拍出量の有意な増加(c)、尿量の有意な減少(d)、変力補助の必要性の有意な増加(e)、及び乳酸レベルの有意な増加(f)が未処置動物で見られたが、処置動物では見られず、敗血症のような状態の重篤な段階を示している。(g)健康な対照(n=5)(左)、未処置(中央)(n=5)及びsHVF18処置(右)(n=5)肺のヘマトキシリン・エオジン(H&E)組織学のn=15サンプルを表す画像。大きな画像のスケールバーは0.5mmを表す。吹き出しは、組織の拡大部分を示し、スケールバーは、0.2mmを表す。(h)組織像の累積盲検スコアリングの結果。未処置群と処置群間の統計的有意差は、両側Student T検定で、またグループ内では両側配置分散分析で検定した。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001。すべての値は、平均±標準偏差を表す。
【
図23】ステープル位置のインシリコ解析を示す。(a)HVF18をCD14にドッキングし、N末端GKYGFYT残基をモデル化してGKY25ペプチドを形成した。GKY25のCD14への結合エネルギーは、MMPBSAを使用して計算した。示されたアミノ酸はペンテニルアラニンで置換され、ペプチドの配列に沿って残基iとi+3を接続するためにステープルが付加された。MMPBSAを使用して、ステープル化ペプチドのCD14への結合エネルギーを計算した。グラフは、すべてのステープル位置における、非ステープル化GKY25とステープル化GKY25との結合エネルギーの差を示している。正の値は結合が悪化していることを示し、負の値はステープル化ペプチドの結合がより良好であることを示す。(b)残基iとi+4を接続するためにステープルを付加することによって、同様の分析を実行した。(c及びd)より短いHVF18ペプチドについても同様の分析を実行した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語は、任意の標準アミノ酸及び非標準アミノ酸などの任意のアミノ酸を指す。
【0020】
本明細書で使用される「標準アミノ酸」という用語は、タンパク質形成アミノ酸を指す。好ましくは、タンパク質形成アミノ酸は、標準的な遺伝暗号によってコードされる20個のアミノ酸のうちの1つである。IUPACの1文字コードと3文字コードが、アミノ酸の名前に使用される。
【0021】
本明細書で使用されるアミノ酸の2つの側鎖間の「共有結合」という用語は、前記側鎖間の共有結合であるか、または前記側鎖が共有的にリンカーの各末端に結合しているかのいずれかであり、そのため側鎖を連結するすべての結合が共有であることを指す。
【0022】
本明細書で使用される「炭化水素ステープル」という用語は、アミノ酸側鎖に結合するアルキルまたはアルケニル部分を指す。典型的には、「炭化水素ステープル」は、1つ以上の二重結合を含むC6~16アルケニル部分である。
【0023】
ペプチド内のアミノ酸に関して本明細書で使用される「内部」という用語は、そのアミノ酸が、ペプチドの一次配列において最もN末端のアミノ酸としても最もC末端のアミノ酸としても位置していないことを指す。
【0024】
ペプチド内のアミノ酸に関して本明細書で使用される「非隣接」という用語は、2つのアミノ酸が、ペプチドの一次配列において互いに隣り合って位置していないことを指す。
【0025】
ペプチド内のアミノ酸に関して本明細書で使用される「n位」という用語は、最もN末端のアミノ酸がn位を有する一次配列内の位置を指す。
【0026】
本明細書で使用される「ステープル化ペプチド」という用語は、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの共有結合を含むペプチドを指す。特に、ステープル化ペプチドは、炭化水素ステープルを含み得る。
【0027】
内部共有結合を含むペプチド
本発明は、最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来の10~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドを提供し、前記ペプチドは、
i)10~40アミノ酸の全長、好ましくは10~23の全長、より好ましくは13~23の全長を有し;
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、ここで前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)さらに少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248及びK252を含み、
ただし、ペプチドが、24~40個のアミノ酸の全長を有する場合は、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも2つの内部共有結合を含み、第1の内部共有結合のアミノ酸は、X1及びX2で示され、第2の内部共有結合のアミノ酸は、X3及びX4で示される。
【0028】
本発明はさらに、最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来の10~40個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドを提供し、前記ペプチドは、
i)10~40アミノ酸の全長、好ましくは10~23の全長、より好ましくは13~23の全長を有し;
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、ここで前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)さらに少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248及びK252を含み、
ただし、ペプチドが、24~40個のアミノ酸の全長を有する場合は、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも2つの内部共有結合を含み、第1の内部共有結合のアミノ酸は、X1及びX2で示され、第2の内部共有結合のアミノ酸は、X3及びX4で示される。
【0029】
本発明はさらに、最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むかまたは最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列からなるペプチドを提供し、前記ペプチドは、
i)10~23個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの共有結合を含み、ここで前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)さらに少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248、K252を含む。
【0030】
本発明はさらに、最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むかまたは最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列からなるペプチドを提供し、前記ペプチドは、
i)13~23個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの共有結合を含み、ここで前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)さらに少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248、K252を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸R245、K247、K248及びK252を含む。
【0032】
内部共有結合は、本明細書の以下の「内部共有結合」の項に記載されているとおりであり得る。
【0033】
好ましくは、ペプチドは、本明細書の上記の「概要」または以下の「ペプチド機能」の項に記載される1つ以上の有利な特性を有する。
【0034】
ペプチドは、例えば「治療の方法」の項に記載されているように、炎症及び/または感染症の治療に有用である。
【0035】
プロトロンビンの配列は、本明細書では配列番号16として提供される。プロトロンビンは、Arg271で切断され得る。この切断により、フラグメント1・2として知られる2つのフラグメントが生成され、プロトロンビンの最初の271残基と、残基272~579で構成される中間プレトロンビン2を含む。フラグメント1・2は活性化ペプチドとして放出され、プレトロンビン2はArg320で切断され、活性トロンビンを生成する。活性トロンビンの配列は、本明細書では配列番号1として提供される。
【0036】
内部共有結合
本発明のペプチドの1つの特徴は、それらが2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に共有結合を含むことである。したがって、前記共有結合は、前記アミノ酸の側鎖間の直接共有結合であるか、または側鎖がリンカーを介して互いに共有結合しているかのいずれかである。換言すれば、ペプチド骨格における共有結合は、本発明によれば、「2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間の共有結合」とはみなされない。
【0037】
より短いペプチド
ペプチドが、そのような共有結合を2つ以上含むことも可能であるが、前記ペプチドが10~23個のアミノ酸である場合、ペプチドが、2つの非隣接の内部アミノ酸の間に共有結合を1つだけ含むことが好ましい。側鎖間に内部結合を有するアミノ酸は、本明細書ではX1及びX2とも表される。
【0038】
本発明のペプチドにおいて、X1及びX2は共有結合によって互いに結合しているが、本明細書では、X1及びX2を遊離の非結合形態で記載することがあり得る。当業者であれば、X1及びX2が非結合形態で記載されている場合でも、本発明の最終ペプチドでは、それらが妥当な共有結合を形成していることを理解するであろう。例として、X1及びX2はそれぞれ「(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニン」と記載される場合があるが、本発明のペプチドでは、ペンテニル基は、典型的には環閉メタセシスによって、反応し、二重結合を1つだけ持つ8炭素長のアルケニルからなるリンカーを形成している。
【0039】
2つの非隣接の内部アミノ酸間に共有結合を含むペプチドは、「ステープル化」ペプチドとしても知られている。
【0040】
当業者に周知のステープル化ペプチドを形成する多くの異なる方法があり、本発明のペプチドは、ペプチドステープル化に有用な2つの非隣接の内部アミノ酸間に、任意の種類の共有結合を含み得る。例えば、ペプチドは、Li et al.,2020または国際特許出願第WO2019018499号に記載されるステープルのいずれかを含み得、その両方は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0041】
アミノ酸X1がn位に位置する場合、アミノ酸X2は、n+3位、またはn+4位、またはn+5位、またはn+6位、またはn+7位、またはn+8位、またはn+9位、またはn+10位、またはn+11位に位置することが好ましく、式中、nは整数である。より好ましくは、アミノ酸X1がn位に位置する場合、アミノ酸X2は、n+3位、またはn+4位、またはn+7位、またはn+11位に位置し、式中、nは整数である。さらにより好ましくは、アミノ酸X1がn位に位置する場合、アミノ酸X2は、n+4位、またはn+7位に位置し、式中、nは整数である。後者の配置パターンは、ペプチドのα-ヘリックス構造をサポートするのに特に役立つ。典型的には、nは2~18の範囲の整数であるが、nは、X1が最N末端に位置しないように、より好ましくは、X1またはX2のいずれも最N末端または最C末端に位置しないように選択されなければならない。
【0042】
原則として、X1は、最N末端以外のペプチド内の任意の位置に位置することができる。ただし、ペプチド内の特定の位置が、他の位置よりもより有利である場合があり得る。本発明のペプチドは、配列番号1のトロンビンまたは配列番号12のGKY25由来のアミノ酸の連続配列を含む。以下において、アミノ酸の位置は、配列番号12のGKY25のアミノ酸番号付けに関連して与えられる。したがって、アラインメント後、配列番号12のGKY25における特定のアミノ酸と同じ位置を有する任意のアミノ酸は、GKY25の当該アミノ酸に「一致する」と称される。
【0043】
一実施形態では、本発明のペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントした後は、
a.X2は、配列番号12のGKY25内のLysと一致しない、及び
b.X1がLysと一致する場合、X2は、Glnと一致しないことが好まれる。
【0044】
一実施形態では、本発明のペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントした後は、
i)X1は、配列番号12のGKY25内のArg11と一致しない、
ii)X1は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しない、
iii)X2は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しない、
iv)X2は、配列番号12のGKY25内のLys18と一致しない、及び
v)X1が配列番号12のLys18と一致する場合、X2は、Gln22と一致しないことが好まれる。
【0045】
一実施形態では、アミノ酸X1はn位に位置し、アミノ酸X2はn+3位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数であり、本発明のペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントした後は、
i)X1は、配列番号12のGKY25内のArg11と一致しない、
ii)X1は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しない、及び
iii)X2は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しない。
【0046】
一実施形態では、アミノ酸X1はn位に位置し、アミノ酸X2はn+4位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数であり、本発明のペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントした後は、
i)X1は、配列番号12のGKY25内のArg11と一致しない、
ii)X1は、配列番号12のGKY25内のLeu12と一致しない、
iii)X1は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しない、
iv)X2は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しない、
v)X1は、配列番号12のGKY25内のLys18と一致しない、及び
vi)X2は、配列番号12のGKY25内のLys18と一致しない。
【0047】
好ましい実施形態では、アミノ酸X1はn位に位置し、アミノ酸X2はn+3位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数であり、本発明のペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合は、X1及びX2は、配列番号12の
Val9及びLeu12;または
Phe10及びLys13;または
Leu12及びTrp15;または
Lys13及びIle16;または
Ile16及びVal19;または
Gln17及びIle20;または
Lys18及びAsp21;または
Val19及びGln22;または
Ile20及びPhe23;または
Asp21及びGly24;または
Gln22及びGlu25に対応する。
【0048】
別の好ましい実施形態では、アミノ酸X1はn位に位置し、アミノ酸X2はn+4位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数であり、本発明のペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合は、X1及びX2は、配列番号12の
Val9及びLys13;または
Lys13及びGln17;または
Trp15及びVal19;または
Ile16及びIle20;または
Gln17及びAsp21;または
Val19及びPhe23;または
Ile20及びGly24;または
Asp21及びGlu18に対応する。
【0049】
非常に好ましい実施形態では、アミノ酸X1はn位に位置し、アミノ酸X2はn+4位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数であり、本発明のペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合は、X1及びX2は、Gln17及びAsp21にそれぞれ対応する。
【0050】
一実施形態では、X1及びX2は、共有結合を形成するための反応前の標準アミノ酸である。例えば、X1及びX2は、共有結合を形成するための反応の前に、以下からなる群から選択され得る:
i)X1は、Lysであり、X2は、Asp、Glu、Lys、Cys及びTyrからなる群から選択される;
ii)X1は、Cysであり、X2は、Cys、Lys及びMetからなる群から選択される;
iii)X1は、Aspであり、X2は、Lysである;
iv)X1は、Gluであり、X2は、Lys及びGluからなる群から選択される;
v)X1は、Tyrであり、X2は、Lys、Phe及びTrpからなる群から選択される;
vi)X1は、Metであり、X2は、Met及びCysからなる群から選択される;
vii)X1は、Hisであり、X2は、Hisである;
viii)X1は、Pheであり、X2は、Phe、Tyr、Ala及びTrpからなる群から選択される;
ix)X1は、Alaであり、X2は、PheまたはTyrである;
x)X1はTrpであり、X2はTrp、Phe及びTyrからなる群から選択される。
【0051】
一実施形態では、X1及びX2は、共有結合を形成するための反応の前に、以下の通りであり得る:
X1は、Lysであり、X2は、Asp、Glu、CysまたはLysであるか、またはその逆である、
X1及びX2は、Cysである。
【0052】
共有結合は、標準アミノ酸の側鎖間の直接反応によって形成される場合もあれば、架橋剤を介して形成される場合もある。X1及びX2がCysである場合、共有結合は、ジスルフィド架橋であり得るか、または架橋剤を介して形成され得、例えば、架橋剤は、少なくとも2つの(ブロモメチル)置換基を含むリンカーなどのビスアルキル化剤である。
【0053】
好ましい実施形態では、X1及びX2は、誘導体化された標準アミノ酸である。共有結合を形成するための反応の前に、X1及び/またはX2は、例えば、Ser誘導体及びAla誘導体からなる群から選択され得る。
【0054】
一実施形態では、共有結合は、2つの非標準アミノ酸を結合することによって形成される。例えば、共有結合は、トロンビン由来の連続配列の2つの天然アミノ酸を置換した2つの非標準アミノ酸を連結することによって形成され得る。
【0055】
一実施形態では、共有結合は炭化水素ステープルである。
【0056】
好ましい一実施形態では、共有結合を形成するための反応前のX1及びX2は、2つのα-置換アルケニルアミノ酸及び/またはα,α-二置換アルケニルアミノなどの2つのC-アルケニル化アミノ酸などのアルケニル化アミノ酸であり、共有結合は、前記アルケニル残基間に形成されるオレフィンテザーである。
【0057】
前記アルケニル化アミノ酸は、アルケニル化されたトロンビンに固有のアミノ酸であり得る。あるいは、前記アルケニル化アミノ酸は、トロンビンに固有のアミノ酸を置換するアミノ酸であってもよい。
【0058】
好ましい一実施形態では、共有結合を形成するための反応前のX1及びX2は、アルケニル化Ala、アルケニル化Leu、アルケニル化Met、アルケニル化Ser、アルケニル化Tyr、アルケニル化Lys、アルケニル化Arg及びアルケニル化Pheからなる群から個別に選択され得る。このような場合、共有結合は、前記アルケニル残基間に形成されるオレフィンテザーである。
【0059】
好ましい一実施形態では、共有結合を形成するための反応前のX1及びX2の一方は、アルケニル化Alaであり得、他方は、アルケニル化Ala、アルケニル化Leu、アルケニル化Met、アルケニル化Ser、アルケニル化Tyr、アルケニル化Lys、アルケニル化Arg及びアルケニル化Pheからなる群から個別に選択され得る。このような場合、共有結合は、前記アルケニル残基間に形成されるオレフィンテザーである。
【0060】
好ましい一実施形態では、X1及びX2は、α-アルケニルオレフィン末端アミノ酸及び/またはα,α-二置換アルケニルオレフィン末端アミノ酸である。
【0061】
好ましい一実施形態では、共有結合を形成するための反応前のX1及びX2は、アルケニル化アラニン、好ましくはα-置換アルケニルまたはα,α-二置換アルケニル化アラニンであり得る。そのような場合、共有結合は、前記アルケニル残基間に形成されるオレフィンテザーである。
【0062】
好ましい一実施形態では、共有結合を形成するための反応前のX1及びX2は、O-アルケニル化Serなどのアルケニル化Serであり得る。
【0063】
前記アルケニル化アミノ酸は、アルケニル鎖中に2~10個の炭素、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素、好ましくは4、5または6個の炭素を含む。前記アルケニル化アミノ酸は、1つ以上の二重結合を含み得るが、好ましくは1つのみの二重結合を含む。二重結合が、アルケニルの自由端に位置することがさらに好ましい。2つのアルケニル残基の自由端に位置する2つの二重結合は、RCMによって反応してオレフィンテザーを形成することができる。
【0064】
したがって、X1及びX2は、前記アルケニル残基間に形成されるオレフィンテザーによって結合されるアミノ酸であることが好ましい。前記オレフィンテザーは、C8~14アルケニルなどのC6~16アルケニル、例えば、例えばC8またはC14アルケニルテザーであり得る。前記テザーは、1つ以上の二重結合、好ましくは、1つの二重結合を含み得る。
【0065】
好ましい一実施形態では、共有結合を形成するための反応前のX1及びX2は、α,α-二置換S-もしくはR-ペンテニルアラニン(S5またはR5)、またはS-もしくはR-オクテニルアラニン(S8またはR8)アラニンであり得る。したがって、内部炭化水素ステープルは、2つのα,α-二置換S-もしくはR-ペンテニルアラニン(S5またはR5)、またはS-もしくはR-オクテニルアラニン(S8またはR8)アラニンを結合することによって形成され得る。
【0066】
好 ましい一実施形態では、共有結合を形成するための反応前のX1及びX2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり得る。したがって、内部炭化水素ステープルは、2つの(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンを結合することによって形成され得る。
【0067】
一実施形態では、共有結合は、閉環メタセシス(RCM)などの閉環を通じて確立される。
【0068】
好ましい一実施形態では、共有結合を形成するための反応前のX1及びX2の一方は、非標準アジド末端アミノ酸であり、他方は、非標準イン末端アミノ酸であり得る。
【0069】
より長いペプチド
24アミノ酸以上である本発明のペプチドは、少なくとも2つのステープルを含むことが好ましい。言い換えれば、24~40アミノ酸などの24アミノ酸以上ある本発明のペプチドは、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも2つの内部共有結合を含むことが好ましく、第1の内部共有結合のアミノ酸は、X1及びX2で示され、上記の通りであり、第2の内部共有結合のアミノ酸は、X3及びX4で示される。
【0070】
配列番号12のGKY25の最もN末端の4つのアミノ酸を含むペプチドが、少なくとも2つのステープルも含むことも好ましく、第1の内部共有結合のアミノ酸は、X1及びX2で示され、上記の通りであり、第2の内部共有結合のアミノ酸は、X3及びX4で示される。
【0071】
X3及びX4は、「より短いペプチド」の項で上述した通りであり得る。好ましくは、X3及びX4は、X1及びX2と比較してN末端により近い。特に、X3及びX4は、X3が最初の4つのアミノ酸のうちの1つに位置するように位置し得る。ペプチドが、配列番号12のGKY25の最もN末端の4つのアミノ酸を含む場合、X3は、配列番号12のGKY25の最もN末端の4つのアミノ酸のうち1つに対応する位置に位置することが好ましい。
【0072】
いくつかの実施形態では、アミノ酸X3は、n位に位置し、アミノ酸X4は、n+3位、またはn+4位、またはn+5位に位置し、式中、nは整数である。好ましい実施形態では、アミノ酸X3は、n位に位置し、アミノ酸X4は、n+4位に位置し、式中、nは1~18の範囲、好ましくは1~10の範囲、より好ましくは1~5の範囲の整数である。したがって、X1は最N末端に位置しないことが好ましい一方で、X3は、最N末端に位置され得る。
【0073】
X3が最N末端に位置する場合、ステープルが、N末端-NH2基とアミノ酸の側鎖、好ましくはGluまたはAspの側鎖、より好ましくはGluの側鎖との間に形成され得る。
【0074】
特定の実施形態では、アミノ酸X3は、ペプチドの最N末端に位置する。好ましい実施形態では、アミノ酸X3は、最N末端に位置し、アミノ酸X4は、n+4位に位置する。非常に好ましい実施形態では、本発明のペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合は、X3及びX4は、配列番号12のGKY25のGly1及びPhe5に対応し、Phe5は、GluまたはAspのいずれか、好ましくはGluで置換される。後者のX3及びX4の位置パターンは、ペプチドのプロテアーゼ部位を保護またはマスキングするのに特に有用である。
【0075】
X3とX4の共有結合は、例えば、カルボン酸部分とアミンとの間に形成されるアミド結合であり得る。いくつかの実施形態では、カルボン酸部分は、グルタミン酸側鎖である。いくつかの実施形態では、アミンはアミノ酸側鎖である。他の実施形態では、アミンは、ペプチド骨格のN末端アミン基である。いくつかの実施形態では、X3及びX4の共有結合は、N末端アミン基と前記それぞれのアミノ酸の側鎖カルボン酸との間に形成されるラクタム架橋である。
【0076】
好ましい実施形態では、配列番号12のGKY25のPhe5は、Glu5によって置換される。このような実施形態では、X3及びX4は、配列番号14のGly1及びGlu5に対応する。
【0077】
ペプチド特性
本発明のペプチドは、以下の特性のうちの1つ以上を有し得る。
【0078】
本発明は、単一のステープルを含む、GKY25などのステープル化されたより長いトロンビン由来ペプチドが、いくつかのあまり望ましくない特性を有することを示す。したがって、1つのステープルを含むGKY25は、血液中での溶血活性が高く、抗炎症活性が低いため、インビボでの使用は不可能である。
【0079】
対照的に、ステープル化されたHVF18などの、ステープル化されたより短いトロンビン由来ペプチドは、血液中での溶血活性が比較的低く、血液中での抗炎症活性が高い。
【0080】
さらに、2つのステープルを有するGKY25などの、二重ステープルを有するより長いトロンビン由来ペプチドは、単一ステープルのGKY25と比較して血液中での溶血活性が低く、非ステープルのGKY25と比較してより高い安定性を有する。
【0081】
より短いペプチド
したがって、本発明のペプチドは適切な長さを有することが好ましい。したがって、好ましくは、本発明のペプチドは、10~23個のアミノ酸、例えば13~18個のアミノ酸、例えば12~22個のアミノ酸、例えば14~22個のアミノ酸、例えば15~21個のアミノ酸、例えば16~20個のアミノ酸、例えば17~20個のアミノ酸の長さを有する。
【0082】
特に、ペプチドは、18または19個のアミノ酸など、18~20個のアミノ酸の長さを有し得る。
【0083】
ペプチドの長さは、ペプチドの全長を示す。したがって、たとえペプチドが1つ以上の追加の部分に結合し得るとしても、ペプチドは、示された数を超えるアミノ酸を含まないことが好ましい。
【0084】
さらに、本発明のペプチドが、適切な長さを有する配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むことも好ましい。したがって、好ましくは、本発明のペプチドは、配列番号1のトロンビン由来の、10~23個のアミノ酸の範囲、例えば13~23個のアミノ酸、例えば13~18個のアミノ酸、例えば14~22個のアミノ酸、例えば15~21個のアミノ酸、例えば16~20個のアミノ酸、例えば17~20個のアミノ酸、好ましくは17~18個のアミノ酸、より好ましくは18~19個のアミノ酸の連続したアミノ酸配列を含むか、またはそれからなる。
【0085】
本発明によるペプチドは、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、最大6個のアミノ酸が交換され得る。換言すれば、ペプチドは、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり得るが、しかし、前記連続配列内のアミノ酸の1~6個が、別のアミノ酸に置換され得る。しかしながら、ペプチドが、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248、K252を含むことが重要である。換言すれば、前記アミノ酸は、置換されるべきではない。
【0086】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸R245、K247、K248及びK252を含む。
【0087】
本発明によるペプチドは、特に、10~23個のアミノ酸の全長を有し、配列番号12のGKY25由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、最大6個のアミノ酸が交換され得る。換言すれば、ペプチドは、配列番号12のGKY25由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり得るが、しかし、前記連続配列内のアミノ酸の1~6個が、別のアミノ酸に置換され得る。しかしながら、少なくともペプチドが配列番号12のGKY25のアミノ酸K13、K14及びK18を含むことが重要である。換言すれば、前記アミノ酸は、置換されるべきではない。
【0088】
いくつかの実施形態では、ペプチドは、少なくとも配列番号12のGKY25のアミノ酸R11、K13、K14、及びK18を含む。
【0089】
本発明によるペプチドは、好ましくは、16~21個のアミノ酸の範囲、より好ましくは、17~18個のアミノ酸の範囲の配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなる。
【0090】
連続配列は、最大6個のアミノ酸置換を含み得る。例えば、前記ペプチドは、トロンビンの連続配列と比較して、少なくとも2つのアミノ酸置換、例えば3つのアミノ酸置換、例えば4つのアミノ酸置換、例えば5つのアミノ酸置換を含み得る。好ましくは、連続配列は、最大4個のアミノ酸置換を含み、さらにより好ましくは、連続配列は、最大2個のアミノ酸置換を含み得る。1つ以上の前記置換は、保存的置換であり得、例えば、1、2、3または4つのアミノ酸置換は、保存的置換であり得る。
【0091】
非常に好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、一方のアミノ酸は、アミノ酸X1(例えば、「内部共有結合」の項に記載のX1のいずれか)で置換されており、別のアミノ酸は、X2(例えば、「内部共有結合」の項に記載のX2のいずれか)で置換されている。置換された前記アミノ酸は、「内部共有結合」の項で、アミノ酸X1及びX2について記載したように、互いに関連して位置することが好ましい。
【0092】
さらに、配列番号1の連続配列に加えて、本発明のペプチドは、1つ以上の追加のアミノ酸を含み得る。好ましくは、ペプチドは、最大4個の追加アミノ酸、例えば、2個の追加アミノ酸など、最大3個の追加アミノ酸を含み得る。前記追加のアミノ酸は、例えば、以下の「正に荷電したアミノ酸」の項に記載されるアミノ酸のいずれかであり得る。
【0093】
一実施形態では、本発明によるペプチドは、最大2個のアミノ酸置換を含む、17~18個の範囲のアミノ酸の、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、ペプチドは、最大4つの追加アミノ酸を含み得る。
【0094】
一実施形態では、本発明によるペプチドは、アミノ酸X1について1つのアミノ酸の置換、及びアミノ酸X2について1つのアミノ酸の置換を含む、17~18個の範囲のアミノ酸の、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、ペプチドは、最大4つの追加アミノ酸を含み得る。
【0095】
したがって、一実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号1のトロンビンの15~20個の連続アミノ酸からなり、2個のアミノ酸が、X1及びX2で置換されており、X1及びX2は、内部炭化水素ステープルを形成するアルケニル化アミノ酸であり、2~5個の範囲、好ましくは2個の追加のN末端アミノ酸である。
【0096】
一実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号1のトロンビンの16~18個の連続アミノ酸からなり、2個のアミノ酸が、X1及びX2で置換されており、X1及びX2は、内部炭化水素ステープルを形成するアルケニル化アミノ酸であり、2~5個の範囲の追加のN末端アミノ酸であり、好ましくは2個の追加のN末端アミノ酸である。
【0097】
一実施形態では、本発明のペプチドは、配列番号1のトロンビンの17個の連続アミノ酸からなり、2個のアミノ酸が、X1及びX2で置換されており、X1及びX2は、内部炭化水素ステープルを形成するアルケニル化アミノ酸であり、2~3個の範囲の追加のN末端アミノ酸である。
【0098】
前記追加のN末端アミノ酸は、好ましくは正に荷電したアミノ酸、例えばLysまたはArgである。
【0099】
本発明のペプチドは、前記ペプチドに結合した1つ以上の部分をさらに含み得る。前記部分は、場合により、リンカーを介してペプチドに連結され得る。前記1つ以上の結合部分は、例えば、アルキル、アリール、ヘテロアリール、オレフィン、脂肪酸、ポリエチレングリコール(PEG)、糖類、及び多糖類からなる群から選択され得る。
【0100】
より長いペプチド
しかしながら、本発明のペプチドは、より長くもあり得る。いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、24~40個のアミノ酸、例えば25~35個のアミノ酸、例えば25~30個のアミノ酸、例えば28~34個のアミノ酸の長さを有する。
【0101】
特に、ペプチドは、25個または26個のアミノ酸など、24~28個のアミノ酸の長さを有し得る。
【0102】
24個のアミノ酸またはそれ以上である本発明のペプチドは、少なくとも2つのステープルを含む。
【0103】
24~40個のアミノ酸の長さを有する本発明のペプチドは、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含む。したがって、好ましくは、本発明のより長いペプチドは、24~40個の範囲のアミノ酸、例えば25~35個のアミノ酸、例えば25~30個のアミノ酸、例えば28~34個のアミノ酸、好ましくは24~28個のアミノ酸、さらにより好ましくは25個及び26個のアミノ酸の、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなる。
【0104】
本発明のより長いペプチドは、上記の「ペプチドの特性-より短いペプチド」の項で定義したとおりであり得る。
【0105】
したがって、本発明によるより長いペプチドは、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、最大6個のアミノ酸が交換され得る。しかしながら、ペプチドが、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248、及びK252を含むことが重要である。換言すれば、前記アミノ酸は、置換されるべきではない。いくつかの実施形態では、本発明によるより長いペプチドは、配列番号1のトロンビンのR245、K247、K248及びK252を含む。
【0106】
非常に好ましい実施形態では、ペプチドは、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、1つのアミノ酸は、アミノ酸X1(例えば、「内部共有結合」の項に記載のX1のいずれか)で置換されており、別のアミノ酸は、X2(例えば、「内部共有結合」の項に記載のX2のいずれか)で置換されており、別のアミノ酸は、X3(例えば、「内部共有結合」の項に記載のX3のいずれか)で置換されており、及び、別のアミノ酸は、X4(例えば、「内部共有結合」の項に記載のX4のいずれか)で置換されている。置換された前記アミノ酸は、「内部共有結合」の項で、アミノ酸X1、及びX2、及びX3、及びX4について記載したように、互いに関連して位置することが好ましい。
【0107】
正に荷電したアミノ酸
興味深いことに、本発明は、1つ以上の正に荷電したアミノ酸の挿入により、ペプチドの抗炎症効果を有意に増強し得ることを示す。
【0108】
したがって、好ましい実施形態における本発明によるペプチドは、ペプチドの末端またはその近くに挿入された1~5個(1~4個など)、例えば1~3個、例えば1~2個(2個など)の正に荷電したアミノ酸を含む。
【0109】
特に、前記正に荷電したアミノ酸は、ペプチドのN末端に対して1位、2位、3位、4位及び/または5位から選択される位置など、N末端またはN末端付近に挿入され得る。
【0110】
好ましい実施形態では、正に荷電したアミノ酸は、N末端に挿入される。
【0111】
一実施形態では、本発明のペプチドは、ペプチドのN末端に対して1位、2位、及び/または3位から選択される位置など、N末端またはN末端付近に挿入された2つの正に荷電したアミノ酸を含む。
【0112】
前記正に荷電したアミノ酸は、好ましくは、アルギニン、リジン及びヒスチジンからなる群から選択され得る。好ましくは、正に荷電したアミノ酸は、アルギニン及び/またはリジンであり、さらにより好ましくは、正に荷電したアミノ酸はリジンである。
【0113】
ペプチド配列
本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドは、本明細書のこのセクションに記載されるペプチド配列のうちの1つを有し得る。このセクションに記載される配列を有するペプチドに加えて、ペプチドは、以下であることも好ましい:
・配列番号1のトロンビン由来の10~23個の範囲のアミノ酸、好ましくは、13~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含む
・10~40個のアミノ酸の全長を有する
・少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248及びK252を含む、より好ましくは、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸R245、K247、K248及びK252を含む
ただし、ペプチドの全長が24~40個のアミノ酸の場合、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも2つの内部共有結合を含むことを条件とする。
【0114】
より短いペプチド
本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドは、本明細書のこのセクションに記載されるペプチド配列のうちの1つを有し得る。このセクションに記載される配列を有するペプチドに加えて、ペプチドは、以下であることも好ましい:
・配列番号1のトロンビン由来の10~23個の範囲のアミノ酸、好ましくは、13~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含む
・10~23個のアミノ酸、好ましくは、13~23個のアミノ酸の全長を有する
・少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248及びK252を含む、より好ましくは、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸R245、K247、K248及びK252を含む。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態では、ペプチドは、本明細書のこのセクションに記載されるペプチド配列のうちの1つを有し得る。このセクションに記載される配列を有するペプチドに加えて、ペプチドは、以下であることも好ましい:
・配列番号12のGKY25由来の10~23個の範囲のアミノ酸、好ましくは、13~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含む
・10~23個のアミノ酸、好ましくは、13~23個のアミノ酸の全長を有する
・少なくとも配列番号12のGKY25のアミノ酸K13、K14、及びK18を含む、より好ましくは、少なくとも配列番号12のGKY25のアミノ酸R11、K13、K14、及びK18を含む。
【0116】
このセクションの配列におけるX1及びX2は、例えば、本明細書の上記「内部共有結合」のセクションに記載されている通りであり得る。
【0117】
このセクションの配列におけるUは、例えば、His、ArgまたはLysであり、好ましくは、ArgまたはLysであり得る。
【0118】
このセクションの配列におけるZは、個別に任意の標準アミノ酸であり得る。好ましい実施形態では、配列のほとんどまたはすべてのZが、配列番号12のGKY25のアミノ酸に対応するように選択される。
【0119】
一実施形態では、本発明によるペプチドは、配列:
-K-K-Z-Z-X1-K-Z-Z-X2-Z
を含み、式中、
Zは、任意の標準アミノ酸であり、
X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されている。
【0120】
一実施形態では、本発明によるペプチドは、アミノ酸配列:
-U-U-(Z)n-I-Q-K-V-I-D-Q-(Z)m-
を含むか、またはそれからなり、式中、
ペプチドは、10~23個のアミノ酸の全長を有し、
各Zは、個別に任意の標準アミノ酸であり、
Uは、His、LysまたはArgであり、
nは、0~10の範囲の整数であり、
mは、0~5の範囲の整数であり、
アミノ酸のうちの2つは、アルケニル化アミノ酸に置換されており、その側鎖は、共有結合によって結合されている。
【0121】
一実施形態では、本発明によるペプチドは、配列:
U-U-(Z)n-K-K-Z-Z-X1-K-Z-Z-X2-Z
または、配列:U-U-Z-Z-R-Z-K-K-Z-Z-X1-K-Z-Z-X2-Z
を含むか、またはそれからなり、式中、
Zは、任意の標準アミノ酸であり、
Uは、His、LysまたはArgであり、
nは、0~10の範囲の整数であり、
X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されている。
【0122】
一実施形態では、本発明によるペプチドは、配列:
U-V-F-R-L-K-K-W-I-X1-K-V-I-X2-Z-F-G-Z
を含むか、またはそれからなり、式中、
Zは、任意の標準アミノ酸であり、
Uは、His、LysまたはArgであり、
X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されている。
【0123】
一実施形態では、本発明によるペプチドは、配列:
V-F-R-L-K-K-W-I-X1-K-V-I-X2-Q-F-G-E
を含むか、またはそれからなり、式中、
X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されている。
【0124】
一実施形態では、ペプチドは、配列:
U-U-V-F-R-L-K-K-W-I-X1-K-V-I-X2-Z-F-G-Z
を含むか、またはそれからなり、式中、
Zは、任意の標準アミノ酸であり、
Uは、His、LysまたはArgであり、
X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されている。
【0125】
一実施形態では、ペプチドは、配列:
U-U-V-F-R-L-K-K-W-I-X1-K-V-I-X2-Q-F-G-E
を含むか、またはそれからなり、式中、
Uは、His、LysまたはArgであり、
X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されている。
【0126】
本発明の一実施形態では、ペプチドは、
i)配列番号3、
ii)配列番号4、
iii)配列番号5、
iv)配列番号6、
v)配列番号7、
vi)配列番号8、
vii)配列番号9、
viii)配列番号10、
ix)配列番号11、
x)配列番号17、
xi)配列番号18、
xii)配列番号19、
xiii)配列番号20、
xiv)配列番号21、
xv)配列番号22、
xvi)配列番号23、
xvii)配列番号24、または
xviii)配列番号25
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合している。
【0127】
本発明の一実施形態では、ペプチドは、
i)配列番号3、
ii)配列番号4、
iii)配列番号5、
iv)配列番号8、または
v)配列番号9
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合している。
【0128】
一実施形態では、ペプチドは、
i)配列番号3、
ii)配列番号4、
iii)配列番号5、
iv)配列番号8、または
v)配列番号9
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は、互いに反応してアルケニルテザーを形成している。
【0129】
一実施形態では、ペプチドは、
i)配列番号3、
ii)配列番号4、
iii)配列番号5、
iv)配列番号8、または
v)配列番号9
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、Alaであり、その側鎖は、1つの二重結合を含むC8アルケニルテザーによって互いに共有結合している。
【0130】
一実施形態では、ペプチドは、
i)配列番号3、
ii)配列番号5
iii)配列番号6、または
iv)配列番号7
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合している。
【0131】
一実施形態では、ペプチドは、
v)配列番号3、
vi)配列番号5、
vii)配列番号6、または
viii)配列番号7
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は、互いに反応してアルケニルテザーを形成している。
【0132】
一実施形態では、ペプチドは、
ix)配列番号3、
x)配列番号5、
xi)配列番号6、または
xii)配列番号7
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、Alaであり、その側鎖は、1つの二重結合を含むC8アルケニルテザーによって互いに共有結合している。
【0133】
一実施形態では、ペプチドは、
i)配列番号3、または
ii)配列番号5
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合している。
【0134】
一実施形態では、ペプチドは、
i)配列番号3、または
ii)配列番号5
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は、互いに反応してアルケニルテザーを形成している。
【0135】
一実施形態では、ペプチドは、
i)配列番号3、または
ii)配列番号5
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、Alaであり、その側鎖は、1つの二重結合を含むC8アルケニルテザーによって互いに共有結合している。
【0136】
より長いペプチド
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、少なくとも2つのステープル、及び配列番号1のトロンビン由来の24~40個のアミノ酸を含むより長いペプチドであり、本明細書のこのセクションに記載されるペプチド配列のうちの1つを有し得る。このセクションに記載される配列を有するペプチドに加えて、ペプチドは、以下であることも好ましい:
・配列番号1のトロンビン由来の24~40個の範囲のアミノ酸、好ましくは、25~30個の範囲のアミノ酸の連続配列を含む
・24~40個のアミノ酸、好ましくは、25~30個のアミノ酸の全長を有する
・少なくとも配列番号1のアミノ酸K247、K248及びK252を含む、好ましくは、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸R245、K247、K248及びK252を含む。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、少なくとも2つのステープルを含むより長いペプチドである。このセクションに記載される配列を有するペプチドに加えて、ペプチドは、以下であることも好ましい:
・配列番号12のGKY25由来の24~25個の範囲のアミノ酸の連続配列を含む
・24~40個のアミノ酸、好ましくは、25~30個のアミノ酸の全長を有する
・少なくとも配列番号12のGKY25のアミノ酸K13、K14、及びK18を含む、好ましくは、少なくとも配列番号12のGKY25のアミノ酸R11、K13、K14、及びK18を含む。
【0138】
好ましい実施形態では、本発明のより長いペプチドは、
i)配列番号14、または
ii)配列番号26
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は共有結合によって結合されており、さらに、X3及びX4は、アミノ酸であり、その側鎖は共有結合によって結合されている。このセクションの配列におけるX1、X2、X3及びX4は、例えば、本明細書の上記「内部共有結合」のセクションに記載されている通りであり得る。好ましくは、X1及びX2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は互いに反応してアルケニルテザーを形成しており、X3及びX4は、それぞれGly及びGluであり、相互に反応してラクタム架橋を形成している。
【0139】
ペプチド機能
本明細書において上述したように、ペプチドは以下の機能のうちの1つ以上を有し得る。
【0140】
高いインビボ及び/またはインビトロ安定性
好ましくは、ペプチドは高いインビボ安定性を有する。したがって、本発明によるペプチドは、好ましくは、アミノ酸X1及びX2が、共有結合を欠く他のアミノ酸に交換されている以外は同じ配列を有するペプチドと比較して、前記ペプチドを同じ条件下で試験した場合に、インビボ及び/またはインビトロでの増加した安定性を有する。
【0141】
インビボ安定性は、例えば、ペプチドを経時的に投与した後のマウスにおける抗炎症活性を決定することによって決定することができる。有意な抗炎症活性が、例えば、24時間後も維持される場合に、ペプチドは高いインビボ安定性を有する。
【0142】
特に、ペプチドの抗炎症効果は、好ましくは、ペプチドの全身投与後24時間インビボで維持され得る。
【0143】
インビボ安定性は、例えば、本明細書の以下の実施例1に記載されるように決定することができる。
【0144】
プロテアーゼ耐性の増加
好ましくは、本発明のペプチドは、増加したプロテアーゼ耐性を有する。したがって、このペプチドは、アミノ酸X1及びX2が、共有結合を欠く他のアミノ酸に交換されている以外は同じ配列を有するペプチドと比較して、増加した1つ以上のプロテアーゼに対する耐性を有し得る。
【0145】
好ましくは、本発明のペプチドは、アミノ酸X1及びX2が、共有結合を欠く他のアミノ酸に交換されている以外は同じ配列のペプチドと比較して、前記ペプチドを同じ条件下で試験した場合に、ヒト好中球エラスターゼ(HNE)、Pseudomonasエラスターゼ(PE)、及び/またはトリプシンなどのプロテアーゼの存在下で増加した安定性を有する。
【0146】
プロテアーゼに対する前記耐性は、例えば、以下の実施例1に記載されるように決定され得る。
【0147】
高い抗炎症活性
好ましくは、本発明のペプチドは、高い抗炎症活性を有する。さらにより好ましくは、本発明のペプチドは、抗菌活性及び抗炎症活性の両方を有する。
【0148】
抗炎症活性は、さまざまな方法で決定することができるが、特に、制御された方法で炎症を誘発し、炎症が軽減されるかどうかを決定することによって決定することができる。炎症は、例えば、インビトロでレポーター細胞または血液サンプルをLPSと接触させることによって、または動物にLPSを投与することによって誘発することができる。炎症は、例えば、1つ以上の炎症誘発性サイトカインのレベルを測定することによって、または、NF-κB活性を決定することによって決定され得る。
【0149】
したがって、本発明によるペプチドは、LPSなどの1つ以上のエンドトキシンの存在下で炎症誘発性サイトカインの分泌を減少させることが好ましい。特に、ペプチドは、LPSなどの1つ以上のエンドトキシンを含む血液中の炎症誘発性サイトカインの分泌を、インビボで減少させることが好ましい。
【0150】
前記炎症誘発性サイトカインは、例えば、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキンβ(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン10(IL-10)、インターフェロン(IFN-γ)及び/または単球走化性タンパク質-1(MCP-1)からなる群から選択され得る。好ましくは、炎症性サイトカインは、TNF-α及び/またはIL-1βである。
【0151】
本発明によるペプチドは、リポ多糖類(LPS)、リポテイコ酸(LTA)、Staphylococcus aureusペプチドグリカン(SA-PGN)及び/またはザイモサンなどのtoll様受容体(TLR)アゴニストの存在下で、NF-κB活性を低下させることが好ましい。
【0152】
10μMの濃度の本発明のペプチドは、LPSの存在下で新鮮な血液中でインキュベートした後、TNF-α及び/またはIL-1βの分泌を、アミノ酸X1及びX2が、共有結合を欠く他のアミノ酸に交換されている以外は同じ配列のペプチドと比較して、前記ペプチドを同じ条件下で試験した場合に、少なくとも50%(少なくとも60%など)、例えば、少なくとも70%減少させることが好ましい。
【0153】
一実施形態では、本発明のペプチドは、10μM未満(7μM未満など)、例えば、1~10μMの範囲(1~7μMの範囲の濃度など)で、LPSで刺激した血液中のTNF-αの放出を50%減少させることができる。
【0154】
抗炎症活性は、本明細書の以下の実施例1及び2に記載される方法の1つによって試験され得る。
【0155】
抗菌活性
本発明のペプチドは、好ましくは抗菌活性を有する。ペプチドは、他のトロンビン由来ペプチドと比較して改善された抗菌活性を有していない場合があるが、増加した抗炎症活性と組み合わせて少なくともある程度の抗菌活性を有することが好ましい。
【0156】
したがって、本発明のペプチドは、グラム陰性菌及び/またはグラム陽性菌に対して殺菌活性を有し得る。興味深いことに、本発明のペプチドは、グラム陰性菌に対して有効であることが示されている。理論に束縛されるものではないが、この効果は、LPS及び/または他の膜構造へのペプチドの結合によってもたらされると考えられる。本発明のペプチドは、グラム陽性菌に対しても有効であることが示されている。理論に束縛されるものではないが、この効果は、LTA及び/または他の膜構造の結合によってもたらされると考えられる。
【0157】
したがって、ペプチドは、細菌膜を損傷することによって細菌を殺すことができるペプチドを介して媒介される殺菌活性を有し得る。
【0158】
特に、本発明のペプチドは、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa及びEscherichia coliからなる群より選択される1種以上の細菌に対して殺菌効果を有することが好ましい。好ましくは、ペプチドは、前述の細菌のすべてに対して殺菌効果を有する。
【0159】
抗菌活性または殺菌活性は、例えば、放射状拡散アッセイまたは生菌数アッセイによって決定され得る。前記アッセイは、例えば、本明細書の以下の実施例1及び2に記載されるように実施され得る。
【0160】
血液中の低い溶血活性
本発明のペプチドは、血液中で低い溶血活性を有することが非常に好ましい。高い溶血活性を有するペプチドは、有毒であり得、それゆえ全身投与にはあまり適していない。
【0161】
一般に、最大10%の溶血活性が許容される。したがって、本発明のペプチドの溶血活性は、10%未満であることが好ましく、特に、新鮮な全血における本発明のペプチドの溶血活性は、10%未満であることが好ましい。
【0162】
より好ましくは、本発明のペプチドの溶血活性は、有効な抗炎症活性を有するペプチド濃度において10%未満である。好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、抗炎症活性を50%低下させるペプチド濃度で10%未満の溶血活性を有する。前記抗炎症活性は、好ましくは、LPSで刺激した血液中のTNF-αの放出として決定される。
【0163】
したがって、本発明のペプチドの溶血活性は、LPSで刺激した血液中のTNF-αの放出を50%減少させることができるペプチド濃度で、10%未満であることが好ましい。
【0164】
一実施形態では、本発明のペプチドの溶血活性は、LPSで刺激した血液中のTNF-αの放出を50%減少させることができるペプチド濃度で、5%未満であることが好ましい。
【0165】
LPSで刺激した血液中のTNF-αの放出は、好ましくは、本明細書の以下の実施例1または2に記載されるように決定され得る。
【0166】
いくつかの実施形態では、50μMのペプチドを、新鮮な全血中でインキュベートした場合、溶血活性は、最大5%(最大4%など)、例えば、最大3%(最大2%など)である。
【0167】
いくつかの実施形態では、20μMのペプチドを、25%の新鮮な全血中でインキュベートした場合、溶血活性は、最大5%(最大4%など)である。
【0168】
溶血活性は、好ましくは、新鮮な血液を本発明のペプチドとインキュベートし、溶血を決定し、新鮮な血液をTween-20などの界面活性剤とインキュベートすることによって調製された対照における新鮮な血液の溶血と比較することによって決定される。好ましくは、溶血活性は、対照と比較した溶血%として提供される。
【0169】
溶血活性は、特に、本明細書の以下の実施例1及び2に記載されるように決定され得る。
【0170】
低毒性
本発明のペプチドは、好ましくは、ペプチドの全身投与を可能にする低毒性も有する。
【0171】
構造
本発明のペプチドは、水溶液中で実質的にアルファヘリックス二次構造を有することが好ましい。前記実質的にアルファヘリックス二次構造は、クラスター分化14(CD14)などの標的分子との結合時に維持されることが好ましい。
【0172】
水溶液中のアルファヘリックス二次構造は、好ましくは、円二色性分光法によって決定される。
【0173】
さらに、ペプチドは、低いオリゴマー化度を有することが好ましい。流体力学的半径はオリゴマー化の指標であり、したがって、本発明のペプチドは、低い流体力学的半径を有することが好ましい。好ましくは、本発明のペプチドは、pH7.4で150nm未満、及び/またはpH5で100nm未満の流体力学的半径を有する。いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、pH7.4で100nm未満、及び/またはpH5で80nm未満の流体力学的半径を有することが好ましい。
【0174】
前記流体力学的半径は、以下の実施例4に記載されるように、動的光散乱によって決定されることが好ましい。
【0175】
抗凝固活性
本発明のペプチドは、抗凝固活性も有し得る。したがって、好ましくは、本発明のペプチドは、血液が血栓を形成する時間を増加させる能力を有する。特に、ペプチドが内因系凝固経路の凝固時間を延長できることが好ましい。前記凝固時間は、好ましくは、「活性化部分トロンボプラスチン凝固時間」(aPTT)を決定することによって決定され得る。好ましくは、本発明のペプチドは、aPPTによって決定される凝固時間を、60μMの濃度で少なくとも100%増加させる。いくつかの実施形態では、本発明のペプチドは、aPPTによって決定される凝固時間を、40μMの濃度ペプチドで少なくとも90%増加させる。凝固時間の前記増加は、ペプチドの非存在下での凝固時間と比較される。
【0176】
前記凝固時間は、特に、本明細書の以下の実施例3に記載されるように、aPTTによって決定され得る。
【0177】
低下した精製RBCに対する溶血活性
本発明のペプチドは、好ましくは、有効な抗炎症活性を有するペプチド濃度で精製RBCに対して低い溶血活性を有する。したがって、本発明のペプチドは、LPSで刺激された血液中のTNF-α放出及び/またはIL-β放出に関してIC50に相当する濃度で、精製RBCに対して75%未満、より好ましくは65%未満、例えば60%未満の溶血活性を有することが好ましい。精製されたRBCに対する前記溶血活性は、好ましくは、溶血アッセイの項の実施例1に記載されているように決定され得る。
【0178】
治療方法
本発明のペプチドは、さまざまな臨床状態の治療に有用である。したがって、本発明は、薬剤として使用するための本明細書に開示されるペプチドを提供する。
【0179】
特に、本発明のペプチドは、炎症の治療及び/または予防を必要とする個体における、炎症の治療及び/または予防の方法で使用するためのものであり得る。前記方法は、通常、治療的有効量のペプチドを前記個体に投与することを含む。
【0180】
本発明のペプチドは、感染症の治療及び/または予防を必要とする個体における、感染症の治療及び/または予防の方法で使用するためのものでもあり得る。
【0181】
特に、本発明のペプチドは、炎症及び感染症の併用治療または予防、例えば、それを必要とする個体における感染症に関連する炎症の治療に有用である。
【0182】
ペプチドは、任意の有用な方法によって投与することができるが、ペプチドは、非経口投与などの全身投与に特に有用である。例えば、ペプチドは、皮下投与または静脈内投与用であり得る。ペプチドは、肺投与、例えば、吸入によって投与され得る。他の投与経路には、気管内投与及び腹腔内投与が含まれる。
【0183】
治療を受ける個体は、それを必要とする任意の個体、例えば、人間であり得る。
【0184】
本発明のペプチドで治療される感染症は、細菌、真菌、ウイルス及び原生動物からなる群から選択される微生物による感染などの微生物による感染であり得る。したがって、例えば、ペプチドは、細菌感染、真菌感染、もしくはウイルス感染の治療、またはそのような感染に関連する症状の治療に使用するためのものであり得る。
【0185】
したがって、個人は、細菌感染症に罹患し得る。細菌感染症は、急性または慢性の細菌感染症であり得る。本発明のペプチドで治療される症状の非限定的な例には、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、肺炎または敗血症が挙げられる。
【0186】
一実施形態では、本発明のペプチドは、炎症性疾患の治療に使用するためのものである。前記炎症性疾患は、例えば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、胃腸炎、及び肺炎症、例えば、肺炎または肺組織の炎症からなる群から選択され得る。
【0187】
本発明のペプチドで治療される感染症は、あらゆる感染性細菌の感染症であり得る。例えば、細菌は、グラム陰性細菌またはグラム陽性細菌であり得る。したがって、細菌は、例えば、Staphylococcus、Enterococcus、Streptococcus、Corynebacterium、Escherichia、Klebsiella、Stenotrophomonas、Shigella、Moraxella、Acinetobacter、Haemophilus、Pseudomonas及びCitrobacterからなる群から選択される属のものであり得る。
【0188】
一実施形態では、治療される個体は、LPS、LTA、ザイモサン及び/またはSA-PGNのレベルの増加など、エンドトキシンの増加したレベルを有する。前記個体は、1つ以上の体液中のエンドトキシンの増加したレベルを有し得る。前記体液は、例えば、血液、血清、唾液、鼻咽頭スワブサンプル及び気管支肺胞洗浄(BAL)サンプルからなる群から選択され得る。前記エンドトキシンは、特にLPSであり得る。前記増加したLPSレベルは、少なくとも50pg/mlのレベル、例えば、少なくとも50pg/mlのLPSの血清レベルであり得る。
【0189】
個体はまた、ウイルス感染症、例えば、スパイク糖タンパク質含有ウイルス(本明細書では「Sタンパク質ウイルス」とも呼ばれる)、例えば、コロナウイルス科のウイルスによる感染症にも罹患する可能性があり、例えば、ウイルスは以下からなる群から選択される:
PorCov-HKU15、
SARS-CoV、
HCoV NL63
HKU1、
MERS-CoV
SARS-CoV2、及び
MERS-CoV。
【0190】
本発明のペプチドは、単独で、または抗生物質、抗炎症剤、または防腐剤(抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤及び抗寄生虫剤など)などの他の治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0191】
本発明は、ヒト、及び、特に馬、犬、猫、牛、豚、ラクダなどの他の哺乳動物の両方に関する。したがって、本発明のペプチドは、ヒトの治療及び獣医学への用途の両方に使用するためのものである。このような治療に適した対象物は、発熱、脈拍、微生物の培養等、感染症の確立された特徴によって特定され得る。当該分子で治療され得る感染症には、微生物に起因する感染症が含まれる。微生物の例には、細菌(例えば、グラム陽性またはグラム陰性)、真菌(例えば、酵母及びカビ)、寄生虫(例えば、原生動物、線虫、条虫及び吸虫)、ウイルス、及びプリオン及びそれらの混合物が挙げられる。これらのクラスの特定の微生物はよく知られている(例えば、Davis et al.,Microbiology,3.sup.rdedition,Harper&Row,1980を参照のこと)。
【0192】
本発明の一実施形態では、本明細書に開示されるペプチドは、疾患、病気または症状の治療または予防に使用するためのものであり、例えば、以下に記載する疾患、病気または症状のいずれかであり得る。
【0193】
全身性炎症反応症候群(SIRS)、ARDS、敗血症、重篤な敗血症、尿路敗血症、敗血症性ショックなどの、感染性要素の有無にかかわらず、急性全身性炎症性疾患。髄膜炎、関節炎、トキシックショック症候群、憩室炎、虫垂炎、膵炎、胆嚢炎、大腸炎、肺炎、尿路感染症、及び腹膜炎を含む、他の侵襲性感染症及び炎症性疾患。
【0194】
嚢胞性線維症、COPD及びその他の肺疾患、慢性胃潰瘍を含む胃腸疾患を含む、慢性炎症性疾患及び/または感染症。
【0195】
血栓症及び播種性血管内凝固症候群(DIC)を含む、炎症性及び凝固障害。さらに、血管炎関連の炎症性疾患、及びアレルギー性鼻炎や喘息を含むアレルギー。
【0196】
脳卒中、ECMOなどの体外循環処置、心肺バイパス、またはエクスビボ肺灌流プロセスに関連する炎症、ただしこれらに限定されない。
【0197】
脳卒中、ECMOなどの体外循環処置、心肺バイパス、またはエクスビボ肺灌流プロセスに関連する過剰な接触活性及び/または凝固、ただしこれらに限定されない。
【0198】
抗菌治療による過剰な炎症
例えば、本発明のペプチドは、急性炎症、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎、その他の種類の鼻炎、血管炎、血栓症、及び/または播種性血管内凝固症候群(DIC)の治療または予防における使用のためのものであり得る。
【0199】
一実施形態では、本発明のペプチドは、抗炎症活性と抗凝固活性の両方を呈し、炎症及び凝固の併用治療または予防に使用され得る。このようなペプチドは、ARDS、敗血症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、血栓症、DIC、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)など、炎症プロセスと凝固プロセスの両方を合わせて阻害することが望ましい症状の治療と予防に特に適し得る。さらに、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎及び他の種類の鼻炎、ならびに血管炎など、過剰な炎症及び凝固変化に関連する他の疾患も、ペプチドによる治療から恩恵を受ける得る。
【0200】
ペプチドの調製
ペプチドの製造方法は当技術分野でよく知られている。
【0201】
ペプチドは、当技術分野で周知の組換え法によって産生され得る(例えば、Sambrook&Russell,2000,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Third Edition,Cold Spring Harbor,New Yorkを参照のこと)。
【0202】
あるいは、ペプチドは、例えば、アミド結合を介して複数のアミノ酸を結合することによって化学的に合成され得る。通常、ペプチドは、あるアミノ酸のカルボキシル基と別のアミノ酸のアミノ基の縮合反応によって化学的に合成される。さまざまなアミノ酸側鎖との望ましくない副反応を防ぐために保護基戦略が使用され得る。
【0203】
よく知られる液相または固相ペプチド合成技術は当業者に周知である(標準的なf-BocまたはFmoc固相ペプチド合成など)。
【0204】
2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖の共有結合は、当業者に周知の任意の方法、例えば、Li et al.,2020に記載された方法のいずれかによって導入され得る。
【0205】
X1及びX2が、オレフィン末端アミノ酸などのアルケニル化アミノ酸である場合は、炭化水素ステープルが、閉環メタセシス(RCM)、例えば、ルテニウム触媒による閉環メタセシス、または1,2-ジクロロエタン中のGrubbs第1世代触媒を使用したRCMによって導入され得る。RCMは、溶液中または固体担体上で実行され得、複数の方法がLi et al.,2020及び実施例1に記載されている。
【0206】
同様に、X3及びX4が、オレフィン末端アミノ酸などのアルケニル化アミノ酸である場合は、炭化水素ステープルが、閉環メタセシス(RCM)、例えば、ルテニウム触媒による閉環メタセシス、または1,2-ジクロロエタン中のGrubbs第1世代触媒を使用したRCMによって導入され得る。RCMは、溶液中または固体担体上で実行され得、複数の方法がLi et al.,2020及び実施例1に記載されている。
【0207】
X3が、N末端アミノ酸及び/またはアミン基を含むアミノ酸であり、X4が、カルボン酸側鎖を含むアミノ酸である場合、共有結合は、前記アミンと前記カルボン酸との間のアミド結合であり得る。換言すれば、共有結合は、前記アミンとカルボン酸との間のアミド結合、すなわちラクタム架橋であり得る。このような環化は固相上で実施され得る。
【0208】
本発明によるペプチドは、カスタムメイドペプチドの製造を専門とする会社、例えば、AmbioPharm Inc.(US)から注文することもできる。
【実施例】
【0209】
実施例1
材料及び方法
ペプチド
ペプチドGKY25(GKYGFYTHVFRLKKWIQKVIDQFGE)(配列番号12)、HVF18(HVFRLKKWIQKVIDQFGE)(配列番号2)、ならびに、sGKY25(GKYGFYTHVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号13)、2sGKY25(cyclo[GKYGE]YTHVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号14)及びsHVF18(HVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号3)と示されるそれぞれのステープル化バージョンが、AmbioPharm,Inc.(USA)により合成された。簡単に言うと、標準的な9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成(SPSS)を使用した。炭化水素ステープル化ペプチドを得るために、オレフィン含有(S)-2-(4’ペンテニル)-アラニンを、配列番号3及び13のそれぞれのペプチド配列の特定の位置(Xで示される)に挿入した。オレフィンメタセシス反応は、1,2-ジクロロエタン中のGrubbs第1世代触媒を使用して固体担体上で実行した。生成ペプチドを樹脂から切断し、RP-HPLCによってさらに精製した。ペプチドは、酢酸塩として得られ、純度は、MALDI-TOF MSで確認した(>95%)。2sGKY25の環化は、固相条件を用いて、前記ペプチドのGly1のN末端アミンとGlu5のカルボン酸側鎖との間にアミド結合、すなわちラクタム架橋を形成することによって実施した。
【0210】
生体材料
書面によるインフォームドコンセントを得た後、健康なドナーから静脈血を採取した。採取後、全血またはその分画(血漿や血清など)は、すぐに使用するか、-80℃で保存した。血液の使用は、Lund University,Lund,Sweden倫理委員会によって承認を受けた(許可番号:DNR2015/801)。
【0211】
円二色性分光法
Escherichia coli O111:B4(LPS、Sigma-Aldrich、USA)由来のリポ多糖有りまたは無しの、GKY25、HVF18、及びそれぞれのステープル化バージョンの二次構造を、円二色性(CD)によって評価した。ペプチドを、pH7.4で10mM Tris中で10μMに希釈し、100μg mL-1LPSとともに37℃で30分間インキュベートした。25℃に設定したJasco CDF-426S Peltierを備えたJasco J-810分光偏光計(Jasco、USA)を使用して測定を実行した。スペクトルは、0.2cmクォーツキュベット(Hellma,GmbH&Co,Germany)内での5回の測定の平均として、190~260nm(走査速度:20nm分-1)の間で記録した。Morrissette et alによって報告されているように、ベースライン(10mM Tris pH7.4±100μg mL-1LPS)を、各スペクトルから差し引き、最終シグナルを平均残基楕円率θ(mdeg cm2dmol-1)に変換した。
【0212】
別の実験のセットでは、HVF18の直鎖及びステープル化バージョンを25または50%TFEと混合するか、または100μg mL-1LPSを含む水中で混合し、その後、上で示したようにスペクトルを取得した。
【0213】
RP-HPLC
HVF18及びそのステープル化バージョン(2.5μg)を、Petruk et al.Biomolecules(2020)により報告されたプロトコルに従い、Agilent1260 Infinity Systemを使用して、逆相C18カラム(Phenomenex Kinetex 50×2.1mm 2.6μM、孔径100Å、California,USA)に注入した。簡単に説明すると、MilliQ中に0.25%のTFAを含有する95%の緩衝液A、及びアセトニトリル中に0.25%のTFA含有する5%の緩衝液Bを使用してカラムを平衡化した。カラムにロードする5分前に、ペプチドを緩衝液A(1:3)と事前混合した。
【0214】
以下に説明するように、ペプチドをさまざまなプロテアーゼでさまざまな時間消化し、その後、逆相C18カラムに注入した。分析は上記のように実行した。2つの異なる消化からのサンプルを分析した。
【0215】
インビトロでのペプチドのタンパク質分解
ペプチドを、エンドトキシンを含まない水に1mMの濃度で再懸濁した。次に、20μgのGKY25及びsGKY25または14.7μgのHVF18及びsHVF18を、0.2μgのヒト好中球エラスターゼ(HNE、Calbiochem(登録商標),Merk KGaA,Darmstadt,Germany)、P.aeruginosaエラスターゼ(PE,Calbiochem(登録商標),Merk KGaA,Darmstadt,Germany)、S.aureus V8由来のグルタミル-Cエンドペプチダーゼ(EC3.4.2.11.9)(BioCol GmbH,Michendorf,Germany)またはトリプシン(Try,Promega,Madison,WI,USA)と一緒に、さまざまな時間の長さ(0~18時間)、最終量20μLでインキュベートした。インキュベーションの最後に、TricineSDS-PAGE及び質量分析法(GKY25、sGKY25、HVF18、及びsHVF18について)、及びRP-HPLC(HVF18及びsHVF18について)によって消化を評価した。すべての消化は、3つの独立した実験で実行した。
【0216】
SDS-PAGE
各条件からの2μgのペプチドを、Invitrogen(USA)からの10~20%のNovex Tricineプレキャストゲルにロードした。100Vで100分間実行した。ゲルを、Coomassie Brilliantブルー(Invitrogen、USA)を用いて染色した。画像は、Gel Doc Imager(Bio-Rad Laboratories,USA)を使用して取得した。3つの独立した消化からのサンプルを分析した。
【0217】
NMR分光法
NMR実験は、QCIクライオプローブ及び磁場勾配パルスを備えた700MHz Bruker Avance III HD分光計(Swedish NMR Centre,Gothenburg,Sweden)で実行した。サンプルは、10%のD2O、200μMのDSS、0.02体積%のNaN3を補充した50%の2,2,2-トリフルオロエタノール(TFE)に1.6mMのsHVF18をpH4.5で溶解することによって調製した。1Hスペクトルは、298Kでサンプルから取得した。1Hスペクトル及びTOCSYスペクトル(混合時間80分)に基づいて、一連のTOCSY(混合時間40及び80分)、NOESY(混合時間100及び150分)、ROESY(混合時間100及び150分)、DQF-COSY、13C編集HSQC、15N-SOFAST-HMQC、13C HSQCTOCSY、及び13C-HMBCスペクトルを取得した。スペクトルは、二乗コサインアポダイゼーション及び両次元のゼロフィリングでnmrPipeを使用して処理した。スペクトルは、CCPNMR v2.4を使用して分析し割り当てた。スピン系は、NOESYスペクトル及びTOCSYスペクトルの組み合わせを使用して同定し、NOESYクロスピークを使用して残基間の結合を割り当てた。
【0218】
NF-κB活性化アッセイ
4つのペプチドの抗炎症活性を、THP1-XBlue-CD14レポーター細胞(InvivoGen,San Diego,USA)で試験した。簡単に説明すると、180,000細胞ウェル-1を、10%(v v-1)熱不活化FBS及び1%(v v-1)抗生物質-抗真菌溶液(AA)を補充したフェノールレッドRPMI培地の96ウェルプレートに播種した。次いで、異なる濃度(1~20μM)のペプチドを含む及び含まない100ng ml-1のLPS(Sigma,USA)を添加した。NF-κB活性は、製造業者(InvivoGen,San Diego,USA)の指示に従って、20時間のインキュベーション後に、つまり20μLの上清を180μLのSEAP検出試薬(Quanti-Blue(商標)、Invivo-Gen)と混合し、続いて600nmでの吸光度を測定することによって決定した。示されているデータは、すべて3連で行われた少なくとも4つの独立した実験から得られた平均値±SEMである。別の実験のセットでは、細胞を、10μMの直鎖及びステープル化HVF18の存在下または非存在下で、100ng ml-1のE.coli LPS、1μg mL-1のS.aureus LTA、1μg mL-1のE.coli PGN、1μg mLl-1のS.aureus PGN、10μg mL-1のS.cerevisiae zymosanで刺激した。実験は上記のように実行した。NF-κBの活性を前述のように評価した。
【0219】
溶血アッセイ
健康なドナーからの新鮮な静脈血を、レピルジンチューブに収集した(50μg mL
-1)。次いで、50μLの血液を、フェノールレッド(Gibco)を含まないRPMI-1640-GlutaMAX-Iで予め希釈した150μLのペプチドを含む丸底96ウェルプレートに移した。1:4に希釈した血液を対照として使用した。150μlの5%Tween-20と混合した50μLの血液を、陽性対照として使用した。37℃及び5%CO
2で1時間インキュベートした後、プレートを800gで遠心分離し、各サンプル150μLを平底96ウェルプレートに移し、450nmでの吸光度を測定した。溶血のパーセンテージは、以下に報告する式に従って計算した:
【数1】
【0220】
赤血球に対するペプチドの溶血効果を評価するために、上で報告したように血液を採取し、250gで10分間遠心分離した。次いで、血漿を廃棄し、赤血球を10mM Tris pH7.4中の150mM NaClで3回洗浄した。次に、ペレットを、生理食塩水Tris緩衝液で100倍に希釈した。この溶液100μLを、生理食塩水Tris緩衝液で予め希釈したペプチド100μLを含有した丸底96ウェルプレートに加えた。37℃、5%CO2で1時間インキュベートした後、プレートを遠心分離し、450nmでの吸光度を測定し、上で報告した式を使用して赤血球溶解の割合を決定した。
【0221】
CD14発現及び精製
ヒトHisタグCD14(hCD14-his)を、以前の報告のように昆虫細胞で生成し、精製した23。
【0222】
マイクロスケール熱泳動
NanoTemper Monolith NT.115装置(Nano Temper Technologies,Germany)を使用して、マイクロスケール熱泳動(MST)を実行した。Monolith NTタンパク質標識キットRED-NHS(Nano Temper Technologies,Germany)を使用して、製造業者のプロトコルに従って687μL(20μM)の組換えhCD14を標識した。hCD14(5μLの21nM)を、150mM NaClの有りまたは無し、1:1の比率で、pH7.4の10mM Tris中で、漸増濃度のGKY25、HVF18及びそれらのステープル化バージョン(0.03~1000μM)とインキュベートした。次に、サンプルを標準的なガラスキャピラリー(Monolith NT Capillaries、Nano Temper Technologies)にロードし、MST分析を実行した(発光ダイオードと赤外線レーザーの設定は80%)。表示された結果は、6回の測定の平均値±SDである。
【0223】
全血アッセイ
レピルジン(50μg mL-1)の存在下で健康なドナーから新鮮な静脈血を採取した。血液をRPMI-1640-GlutaMAX-I(Gibco)で1:4に希釈し、この溶液1mLを24ウェルプレートに移し、漸増濃度のGKY25、HVF18及びそれらのステープル化バージョンを加えた直後に100ng ml-1のLPSで刺激した。5%CO2中、37℃で24時間インキュベートした後、プレートを1000gで5分間遠心分離し、その後上清を収集し、分析まで80℃で保存した。実験は、毎回異なるドナーからの血液を使用して少なくとも4回行った。ペプチドの治癒特性を評価するために、血液を100ng ml-1LPSで刺激し、37℃で30分間インキュベートした後、漸増用量の4つのペプチドで処理した。最後の実験のセットでは、血液を、漸増濃度のGKY25、HVF18、及びそれらのステープル化バージョンに30分間曝露することによって、ペプチドの予防的抗炎症活性を評価した。次に、血液を100ng ml-1のLPSで刺激した。
【0224】
サイトカインアッセイ
血液実験から得た血漿を使用してサイトカイン放出を評価した。TNF-α及びIL-1βに特異的な、ヒト炎症DuoSet(登録商標)ELISAキット(R&D Systems)を、製造業者の指示に従って使用した。吸光度は、波長450nmで測定した。示されているデータは、すべて2連で行われた少なくとも4つの独立した実験から得られた平均値±SEMである。
【0225】
ネズミ血漿中のTNF-α、IFN-γ、MCP-1、IL-10、及びIL-6のレベルを、マウス炎症キット(Becton Dickinson AB)を製造者の指示に従って使用して評価した。
【0226】
マウス炎症モデル
HVF18及びsHVF18の免疫調節効果を、BALB/c tg(NF-κB-RE-Luc)-Xenレポーターマウス(Taconic、10~12週齢)で研究した。ペプチド(50μgマウス-1)を、最終体積200μLにてE.coli LPS(25μgマウス-1)と同時に皮下注射した。マウス(治療群あたり8匹のマウス)の背側を丁寧に剃り、清潔にした。注射後、動物をすぐに個別に換気されたケージに移し、3時間後に画像を撮影した。NF-κB活性化の測定にIn Vivo Imaging System(IVIS Spectrum、Perkin Elmer Life Sciences)を使用した。マウスからの生物発光は、Living Image 4.0ソフトウェア(Perkin Elmer Life Sciences)を使用して検出及び定量化した。IVISイメージングの15分前に、マウスに100μLのD-ルシフェリン(150mg/kg体重)を腹腔内投与した。
【0227】
インビボLPSモデル
E.coli 0111:B4 LPSを10mMのTris pH7.4に再懸濁した。次に、致死未満量(体重1kgあたり6mg)を雄C57BL/6マウス(11~12週、22+/-5g)に腹腔内(i.p.)注射した。30分後、マウス1匹あたり10、20、50、100または500μgのsHVF18(10mM NaOAc pH5中)をマウスに腹腔内注射した。LPS投与から8時間後及び20時間後、マウスをイソフルランで深く麻酔し、心臓穿刺により血液を採取し、さらなる分析まで-80℃で保存した。
【0228】
細菌細胞培養
1つのE.coli ATCC 25922、S.aureus ATCC 29213、P.aeruginosa O1のコロニー、ならびに8つのS.aureusの臨床分離株及び7つのP.aeruginosaを、5mLのTodd-Hewitt(TH)培地に37℃で振盪しながら一晩播種した。翌日、細菌細胞培養物を新鮮なTH培地で1:50に希釈し、対数期中期まで増殖させた。次に、細菌を3500gで10分間遠心分離し、洗浄し、その後2×109コロニー形成単位(CFU)mL-1の最終濃度で10mM Tris pH7.4に再懸濁した。
【0229】
放射拡散アッセイ(RDA)
細菌を上記のように増殖及び調製した。次に、微生物(4×106CFU)を、0.03%(w/v)のTSB、1%(w/v)の低電気浸透型アガロース(Sigma-Aldrich)及び0.02%(v/v)のTween20(Sigma-Aldrich)からなる15mLのアンダーレイアガロースゲルに加えた。アンダーレイゲルを直径144mmのペトリ皿に注いだ。アガロースが固化した後、直径4mmのウェルに穴を開け、6μLの必要な濃度のペプチド溶液を各ウェルに加えた。プレートを37℃で3時間インキュベートしてペプチドを拡散させた。次いで、アンダーレイゲルを、15mLの溶融オーバーレイゲル(蒸留H2O中の6%のTSB及び1%の低電気浸透型アガロース)で覆った。ペプチドの活性を、明確なゾーンからウェルまでの直径として表示する(4mmウェルを除く)。すべての実験は、少なくとも4回実行した。
【0230】
生菌数アッセイ(VCA)
細菌を上記のように増殖及び調製した。次に、細菌懸濁液を、10mM Tris pH7.4で2×106CFUmL-1の濃度で1:1000に希釈した。細菌(50μL)を、150mMのNaClまたは25%のヒトクエン酸血漿の存在下または非存在下で、10mMのTris pH7.4中で異なる濃度のGKY25、sGKY25、HVF18及びsHVF18(1~20μM)とともに37℃で2時間インキュベートした。インキュベーションの最後に、サンプルの段階希釈物をTH寒天プレートにプレーティングし、37℃で一晩インキュベートし、CFUを計算した。それぞれの緩衝液で処理した細菌を対照として使用した。すべての実験は、少なくとも4回実行した。示されるデータは平均±SEMである。
【0231】
生/死アッセイ
細菌膜の透過性は、以前に記載24されているように、LIVE/DEAD BacLight(商標)Bacterial Viability kit(Invitrogen,Molecular Probes,Carlsbad,CA,USA)によって評価した。簡単に言えば、細菌懸濁液を、VCAと同様に調製した。次に、S.aureus及びP.aeruginosa O1懸濁液(50μL)を、それぞれ1μMまたは5μMのHVF18、及びそのステープル化バージョンによって、pH7.4の10mM Tris中で処理した。陰性対照として緩衝液を用いた。2時間後、製造会社のプロトコルに示されるように、サンプルを、細菌懸濁液1mLあたり1μLの色素混合物と混合し、暗所において室温で15分間インキュベートした。インキュベーションの最後に、5μLの染色された細菌懸濁液をスライドと18mm四方のカバースリップの間に挟んだ。Zeiss AxioScope A.1蛍光顕微鏡(対物レンズ:Zeiss EC Plan-Neofluar100/1.3オイル;カメラ:Zeiss AxioCam MRm、取得ソフトウェア:Zeiss Zen 2.6(blue edition))を使用して、3つの独立したサンプル調製物から得た載置サンプルの10個の視野範囲(1×1mm)を検査した。
【0232】
透過電子顕微鏡法
S.aureus及びP.aeruginosa O1膜に対するペプチドの効果を、ネガティブ染色と組み合わせた透過型電子顕微鏡法(TEM)(Jeol Jem 1230;Jeol,Japan)によってさらに評価した。特に、VCAからの5μLの細菌懸濁液を炭素被覆グリッド(銅メッシュ、400)上に60秒間吸着させ、7μLの2%酢酸ウラニルで30秒間染色した。グリッドは、低気圧でのグロー放電によって親水性にした。分析は、3つの独立した実験から得たグリッド(ピッチ62μm)上に乗せたサンプルの10個の視野範囲(倍率’4200)で行った。
【0233】
MIC及びMBCアッセイ
最小阻止濃度(MIC)は、Wiegand et al.によって報告されたプロトコルに従って決定した。細菌を上記のように増殖及び希釈した。次に、細菌を、2×BBL(商標)Mueller Hinton II(MH)、カチオン調整ブロス(Becton,Dickinson and Company,Sparks,USA)でさらに1:1000に希釈した。50μLの2×MHブロス(対照)を含むかまたは2×2.5~320μMの範囲の濃度のペプチド(HVF18またはsHVF18)を含有するMHブロスを含む96ウェル丸底ポリスチレンプレート(Corning INC、Kennebunk、USA)に細菌(50μL)を加えた。-次いで、プレートを37℃で24時間インキュベートした。MICは、目に見える細菌の増殖が観察されない最低濃度として検証した。MICの分析後、同じプレートを使用して最小殺菌濃度(MBC)を決定した。この目的のために、各条件のサンプルをピペットチップを使用して再懸濁し、10μLの液滴をTHAプレート上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートした。MBCは細菌コロニー形成が観察されない濃度で決定した。
【0234】
結果
タンパク質分解安定性が向上した二重作用ペプチドの設計
トロンビンC末端ペプチドGKY25は、細菌感染及び関連するTLRによる炎症の両方を標的とする二重作用があることが証明されている。ペプチドの安定性を高める1つのアプローチは、ペプチド炭化水素ステープル化であり、これは、側鎖共有結合炭化水素架橋を使用してペプチドの二次構造を安定化する修飾である。ステープル化は他のペプチドにも適用されているが、ステープル化の効果を予測するのは困難である。特定のアミノ酸を(S)-2-(4’ペンテニル)-アラニンで置換することにより、炭化水素ステープル部分をGKY25の配列(GYGFYTHVFRLKKWIQKVIDQFGE)に導入した。ステープル化の位置は、表1にまとめたGKY25の情報に基づいて決定した。
表1
【表1】
【0235】
さらに、中央に位置するリジン残基(K13、K14、及びK18-このセクションの番号はGKY25配列(配列番号12)を指す)は、GKY25の抗菌活性にとって重要であり得る。さらに、pH5.5でのH8のプロトン化により、膜破壊によるGKY25のグラム陰性Escherichia coliに対する抗菌活性が増加する。GKY25は、LPS及びCD14のLPS結合疎水性ポケットに結合する。LPSとCD14の相互作用に関与する残基を表1に示している。研究では、CD14においてK14がK87に架橋することが実証されており、インシリコドッキング研究では、Q17、K18、D21、Q22、及びE25のC末端残基が溶媒に暴露されることを示している。NMR研究により、C末端α-ヘリックスがI16から始まるLPS結合立体配座(PDBコード5z5x)を決定した。LPSとの相互作用は、疎水性残基及び正に荷電した残基H8、R11、K13、及びK14によって媒介される。前述の活性のいずれかを有する可能性があるGKY25のアミノ酸を無視すると、アミノ酸Q17、D21、Q22、及びE25が残った。Q22とE25が末端に近いため、Q17とD21の位置にステープル化が導入された。
【0236】
ステープル化GKY25(本明細書ではsGKY25と表記される)の、その天然バージョンと比較したヘリシティを、円二色性(CD)を使用して分析した。LPS存在下でのGKY25のスペクトルを陽性対照として使用した。sGKY25は、α-ヘリックス構造を示し、LPSに結合した場合のヘリシティ内容はGKY25と同等であった。LPSとのsGKY25の場合、α-ヘリックス内容に変化はなかった。ステープル化がペプチドのタンパク質分解安定性を高めていることを確認するために、ペプチドをさまざまなプロテアーゼに異なる時間曝露し、SDS-PAGEを使用して分析した。
図1aに示すように、ステープル化は、HNEの存在下で最大6時間、GKY25の安定性を向上させた。さらにトリプシンに対する安定性も向上した。実際、6時間の消化後でも、無傷のsGKY25を検出することは可能であった。興味深いことに、その切断部位が配列中に存在するにもかかわらず、どのペプチドもV8消化の影響を受けなかった。天然型と比較して、消化されたsGKY25からどの領域が放出されたかを理解するために、LC-MS/MSを使用した。予想通り、直鎖ペプチドは、30分の消化後にすでに放出された多種多様なフラグメントを示した。一方、ステープル化はsGKY25に部分的な保護を与えていた。分析した時点では、PEでの消化後にsGKY25のC末端部分に対応するフラグメントはほとんど見つからず、HNEではまったく見つからなかった。GKY25のN末端部分はより柔軟性があり、タンパク質分解を受けやすいことが知られているため、これは驚くべきことではない。GKY25をステープル化すると、特に赤血球(RBC)に対してより溶血性の高い構築物が得られたが(
図4a)、sGKY25は全血においても顕著な溶血活性を示した(
図4a)。50μMの濃度でも、sGKY25は全血中で10%を超える溶血活性を示し、これは通常、許容される溶血活性の上限である。
【0237】
LPSで刺激したTHP-I細胞で抗炎症活性を試験したところ、sGKY25は直鎖ペプチドに関して顕著な改善を示したが、より高濃度では高い毒性も示した(
図2a)。より生理的な状態、すなわち血液中では、ステープル化sGKY25ペプチドは、LPSによって誘発される炎症を全くブロックできなかった(
図2b)。
【0238】
ステープル化HVF18(sHVF18)のヘリシティは、CD及びRP-HPLCの特徴などの疎水性環境によって確認した。sHVF18は、機能的結合表面がロッキングにより増加したため、直鎖HVF18(8.03分)と比較した場合、より長い保持時間(9.42分)を示した。続いて、SDS-PAGE(
図1b)、HPLC、及びLC-MS/MSによってプロテアーゼ切断に対する耐性を試験した。ステープル化により、HNE及びPEを使用した場合、HVF18の安定性が最大18時間向上した。さらにトリプシンに対する安定性も向上した。実際、18時間後でも無傷のsHVF18を検出することは可能であった。直鎖及びステープル化GKY25と同様に、HVF18変異体はV8消化の影響を受けなかった。LC-MS/MSの結果により、HVF18のステープル化がペプチドにタンパク質分解に対する完全な保護を与えていることが確認された。sHVF18のヘリックス安定性を、ペプチドを高温に暴露しCDによる二次構造を分析することでさらに試験した。80℃に曝露した後でも、sHVF18は依然としてα-ヘリックススペクトル、すなわち208及び222nmに2つの特徴的な最小値を示すことが判明した。注目すべきことに、sHVF18は、sGKY25と比較した場合、より低い溶血活性を示した(
図4bと
図4aを比較)。特に、sHVF18は、sGKY25と比較して、全血中で有意に低い溶血活性を示した。
【0239】
ステープルが正しい位置に挿入されていることは、核磁気共鳴(NMR)によって確認した。sHVF18は、二次構造を増加させることが知られている50%TFEに溶解し、TOCSY、NOESY、ROESY、13C-HSQC及び15N-SOFAST-HMQCスペクトルを収集した。二次構造の推定は、CCPNMRスイートのDANGLE二面角及び化学シフト指数(CSI)モジュールを使用して行い、sHVF18には7~14個の残基からなるα-ヘリックスが含まれていると推定した。
【0240】
sHVF18の詳細な核磁気共鳴(NMR)研究を実施した。ペプチドを、50%TFEに溶解した。TOCSY、NOESY、ROESY、13C-HSQC、及び15N-SOFAST-HMQCスペクトルを50%TFE中のsHVF18で収集した。TOCSY、NOESY、及びROESYスペクトルはよく分散したピークを示し、TOCSYスペクトルで、アミノ酸の種類を簡単に識別することができる。NOESY及びROESYスペクトルには多くのHN-Hα及びHN-HNクロスピークが示されており、ペプチドの連続的な割り当てを容易にする。13C HSQCスペクトルはよく分散したピークを示す。アミド骨格原子に対応する16個のクロスピークが15N SOFAST-HMQCスペクトルにおいて検出でき、さらに8Trp及び15Glnの側鎖クロスピークも検出できた。15N HMQC及び13C HSQCスペクトルは、sHVF18サンプルが、これらの条件下で明確な立体配座状態を有することを示している。複数のHN-HN(I,i+2)及びHN-Hα(I,i+2/3)の存在は、明確な二次構造の存在を示す。割り当てが行われ、利用可能な1H共鳴の97%を特定することができた。二次構造の推定は、CCPNMRスイートのDANGLE二面角推定及び化学シフト指数(CSI)モジュールを使用して行い、sHVF18には7~14個の残基からなるα-ヘリックスが含まれていると推定し、これはNOEパターンにも一致している。ステープル化リンカーは、ステープルの芳香族性によりNOESYスペクトルで容易に確認でき、TOCSYスペクトルに基づいてステープルの存在を確認することができる。構造アンサンブルは、残基Val2-Leu5及びLys11-Gly17からなる2つのα-ヘリックスを持つL字型構造を形成する。N末端及びC末端のα-ヘリックスは、構造的に明確であるが、2つのα-ヘリックスの互いの方向には比較的大きなばらつきがある。TFE中のsHVF18の構造をLPS存在下でのHVF18と比較した場合、2.2Åの骨格RMSDを持つ同様のL字型三次構造を観察することができる。主な違いはHVF18のN末端部分に見られ、ここではsHVF18で見られるα-ヘリックスは観察されない。しかし、これは、CD分析によって示されるように、LPSがHVF18を螺旋構造に誘発するよりも、TFEがsHVF18をより螺旋構造に誘発することに起因する可能性がある。sHVF18では、sHVF18のN末端部分が、HVF18よりも規則的になっているように見える。HVF18のC末端α-ヘリックスは、残基Ile9~Gly17におよんでおり、これはsHVF18よりもアミノ酸2個分長い。sHVF18構造アンサンブルからは、ステープルがα-ヘリックスを破壊しているように見える。sHVF18について取得されたNOEをより詳細に調べ、これらをHVF18アンサンブル構造の距離と比較すると、残基5Leu、7Lys、8Trp、9Ile、及び11LysのNOE距離は、HVF18構造アンサンブルとは一致せず、sHVF18とHVF18との構造の違いを示している。
【0241】
ペプチドの抗炎症活性に対するステープル化の効果
マイクロスケール熱泳動(MST)を使用してK
dを決定した。CD14に対するsHVF18のK
dは、塩の存在下でさえ顕著に減少した(
図5)。THP1-XBlue-CD14レポーター細胞を、漸増濃度の直鎖及びステープル化HVF18の存在下でLPSで刺激し、NF-κB活性化を評価した。
図3は、sHVF18の抗炎症活性が、有意に改善したことを明らかに示している。さらに、これは、S.aureus由来のLTA及びPGN、E.coli由来のPGN、及びS.cerevisiae由来のザイモサンなどの他のTLRアゴニストにも当てはまった(
図6a)。THP-1細胞では、sHVF18によるLPS誘発性のNF-κB/AP-1活性化のより強い阻害が、その直鎖形態と比較して観察された(
図3)。25%の新鮮なヒト静脈血を、ステープル化HVF18または直鎖HVF18とインキュベートし、同時に、LPSで24時間刺激した。本発明者らは、特にLPSによる刺激前またはLPSと一緒にペプチドを添加した場合に、sHVF18が効率的かつ用量依存的にTNF-α及びIL-1β分泌を減少させることを見出した(
図3及び
図7a)。血液を最初にLPSで30分間刺激し、その後、漸増用量のペプチドで処理した場合、sHVF18の阻害はより低かったが、依然として有意であった(
図7b)。
【0242】
実験マウスモデルにおけるエンドトキシン反応に対するステープル化ペプチドの効果。
第1の実験のセットでは、sHVF18が、NF-κBレポーターマウスにおけるLPS誘発性の局所炎症を抑制できるかどうかを調査した。同量のステープル化または直鎖ペプチドを皮下注射し、同時にLPSを添加し、次いで、NF-κB活性化を経時的に測定した(
図8a及び9)。インビトロデータと一致して、sHVF18は、50μgですでに強力な抗炎症活性を示したが、その直鎖対応物は効果がなかった(
図8a及び
図9)。実際、より高濃度のHVF18が必要であった(200μg)。さらに、直鎖ペプチドの活性は、時間の経過とともに不安定になり、LPSによって誘発される炎症誘発効果の阻害が減少した。第2の実験のセットでは、エンドトキシン誘発性ショックのマウスモデルでsHVF18の活性を評価した。C57BL/6マウスに致死未満量のLPSをi.p.注射し、30分後に漸増用量のsHVF18で処理した。20時間後、マウスを屠殺し、血液サンプル中のサイトカインレベルを分析した(
図9b)。20、50、及び100μgのsHVF18において、TNF-α、IL-6、IFN-γ、及びMCP-1などの炎症誘発性サイトカインが有意に減少したことが観察された(
図9b)。興味深いことに、500μgのsHVF18は、サイトカインレベルをまったく低下させることができなかった。次に、8時間という短い時点を使用して、50及び100μgのsHVF18の効果を調査した(
図8b)。両方の濃度のsHVF18において、サイトカインレベルの低いながらも有意な低下が観察された。
【0243】
ペプチドの抗菌活性に対するステープル化の効果
放射状拡散アッセイ(RDA)を使用することにより、sHVF18は、条件、つまりNaClの有無に関係なく同様に活性であるのに対し、塩なしの実験では、直鎖ペプチドの方が優れた細菌死滅性を示したことが注目された。実際、NaClの存在下では、活性の低下が観察された(
図10a)。溶液中の抗菌活性を試験すると、評価したすべての菌株においてsHVF18がHVF18よりも殺菌性が高いことが判明した(
図10b、左パネル)。さらに、それはS.aureusに対して顕著な親和性を示し、1μM未満の濃度でそれを死滅させた(
図10c)。この研究の1つの目標は、sHVF18を全身薬として使用することであったため、塩またはヒト血漿の存在などのより複雑な状況においてもペプチドの活性を評価した(
図10b、中央及び右パネル)。両方のペプチドの抗菌活性は、培地の複雑さが増加するにつれて低下したが、それにもかかわらず、sHVF18は、その直鎖形態よりも強い殺傷効果を示した(
図10b、中央及び右パネル)。
【0244】
sHVF18の抗菌活性は、標準的な最小発育阻止濃度(MIC)アッセイでさらに確認した(
図10d、e)。VCAと同様に、sHVF18は、グラム陽性菌に対してより強い活性を示した。
【0245】
総合すると、これらの結果は、sHVF18が、グラム陰性菌に対する抗菌活性を、その直鎖形態と比較した場合、保持していることを示している。さらに、より活性が高いものになり、したがって、グラム陽性菌に対する選択性も高まる。最後に、死滅は、細菌の膜透過性と破壊によってもたらされる。
【0246】
実施例2
材料及び方法
ペプチド
ペプチドGKY25(GKYGFYTHVFRLKKWIQKVIDQFGE)(配列番号12)、sGKY25(GKYGFYTHVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号13)、2sGKY25(ciclo[GKYGE]YTHVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号14)、sHVF18(HVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号3)、sKVF18(KVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号4)、sKKVF18(配列番号5)、sKKKVF18(配列番号6)、sKKKKVF18(配列番号7)、sRVF18(RVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号8)、sRRVF18(配列番号9)、sRRRVF18(配列番号10)及びsRRRRVF18(配列番号11)は、sHVF18について示しているように、AmbioPharm,Inc.(USA)によって合成及び精製された。ペプチドは、酢酸塩として得られ、純度は、MALDI-TOF MSで確認した(>95%)。
【0247】
円二色性分光法
すべてのステープル化ペプチドの二次構造は、円二色性(CD)によって評価した。ペプチドを、pH7.4の10mM Trisで10μMに希釈し、sHVF18について示しているように、25℃に設定されたJasco CDF-426S Peltierを備えたJasco J-810分光偏光計(Jasco,USA)によってスペクトルを測定した。示されているデータは、3回の独立した実験から得た平均値である。
【0248】
NF-κB活性化アッセイ
全てのステープル化ペプチドの抗炎症活性を、THP1-XBlue-CD14レポーター細胞(InvivoGen,San Diego,USA)で試験した。実験は、各ペプチドの最終濃度が1~10μMであることを除いて、sHVF18について示しているように実施した。示されているデータは、すべて3連で行われた4つの独立した実験から得られた平均値±SEMである。
【0249】
溶血アッセイ
赤血球または全血に対するステープル化ペプチドの溶血効果を、sHVF18について示しているように試験した。示されているデータは、すべて3連で行われた少なくとも4つの独立した実験から得られた平均値±SEMである。各実験では、異なるドナーからの血液を使用した。
【0250】
全血アッセイ
血中のさまざまなステープル化ペプチドの抗炎症効果を、sHVF18について示しているように実施した。各実験では、異なるドナーからの血液を使用した。
【0251】
サイトカインアッセイ
血液実験から得た血漿を使用してサイトカイン放出を評価した。TNF-α及びIL-1βに特異的な、ヒト炎症DuoSet(登録商標)ELISAキット(R&D Systems)を、製造業者の指示に従って使用した。吸光度は、波長450nmで測定した。示されているデータは、4回の独立した実験から得た平均値±SEMである。2sGKY25については、示されているデータは、2回の独立した実験から得た平均値±SEMである。
【0252】
ネズミ血漿中のTNF-α、IFN-γ、MCP-1、IL-10、及びIL-6のレベルを、マウス炎症キット(Becton Dickinson AB)を製造者の指示に従って使用して評価した。
【0253】
インビボLPSモデル
E.coli 0111:B4 LPSをpH7.4の10mM Trisに再懸濁した。次に、致死未満量(体重1kgあたり6mg)を雄C57BL/6マウス(11~12週、22+/-5g)に腹腔内(i.p.)注射した。30分後、マウス1匹あたり10μgのsHVF18、sKVF18、sKKVF18、sRVF18またはsRRVF18(pH5の10mM NaOAc中)をマウスに腹腔内注射した。未処置のマウスの場合、30分前にpH7.4の10mM Tris100μLを注射し、30分後にpH5の10mM NaOAc100μLを注射した。LPS投与から20時間後、マウスをイソフルランで深く麻酔し、心臓穿刺により血液を採取し、さらなる分析まで-80℃で保存した。
【0254】
抗菌作用
E.coli ATCC 25922、S.aureus ATCC 29213及びP.aeruginosa O1に対するさまざまなステープル化ペプチドの抗菌活性を、放射拡散アッセイ(RDA)または生菌数アッセイ(VCA)により、sHVF18と同様に実施した。ただし、各ペプチドの最高試験濃度は、RDA及びVCAについてそれぞれ20μM及び10μMであった。
【0255】
結果
ステープル化ペプチドの構造と溶血活性の解析
実施例1に示すように、HVF18のステープル化は、タンパク質分解に対するその安定性を高め、その抗炎症活性(インビトロ及びインビボ)を大幅に改善し、その抗菌活性を維持したが、主にグラム陽性菌に対して活性を向けると同時に、低い溶血活性を有した。sHVF18のさまざまな変異体が作製され、N末端His残基は、1~4個のLysまたはArg残基に置換した。さらに、ステープル化GKY25の別の変異体(2sGKY25)が作製され、これは2つのステープル領域を有し、1つの変異体はsGKY25と同様にC末端領域にあるが、N末端領域に追加のステープルを有する。実施例1に記載したように、sGKY25は、ヒト血液のような複雑な環境においてLPS誘発性炎症を阻止できなかったため(
図2b参照)、二重ステープルの目的は、2sGKY25が何らかの抗炎症活性を示すことができるかどうかを評価することであった。
【0256】
sHVF18とその変異体の二次構造を円二色性(CD)によって評価した。
図11では、sHVF18のK及びR変異体がさらに明確なαへリックス構造を持ち、208nmに1つ、222nmに1つ、2つの最小値があることが見て取れる。これらのペプチドの溶血活性を赤血球(RBC)と全血で比較した(それぞれ
図12aとb)。すべてのペプチドが、赤血球に対して溶血性であることが判明した。この点においては、K残基とR残基の量の差による違いは生じなかった(
図12a)。同じ分析を全血で実施した場合、陽性残基の数が1または2と比較して3または4の場合に、K及びR変異体の溶血活性が有意に増加することが観察された(
図12b)。全血中の2sGKY25の溶血活性を分析すると、溶血活性はsGKY25よりもわずかに低いが、sHVF18よりは明らかに高いことが注目された(
図12c-破線を参照)。
図12の点線は、10%の溶血活性を示す。一般に、ペプチドの溶血活性が10%未満であることが好ましい。
【0257】
インビトロ及びインビボでのステープル化ペプチドの抗炎症活性の評価
LPS誘発性炎症に対抗するステープル化ペプチドの能力は、THP-1-XBlue-CD14レポーター細胞で最初に評価した。Kを含むHVF18の変異体についてのデータを
図13aに、Rを含む変異体について
図13bにデータを示す。最終濃度10μMで試験した場合、すべてのペプチドが元のsHVF18よりも向上した活性を示した。3つ及び4つのKまたはRを有する変異体は、10μMのsHVF18と比較して、すでにそれぞれ2μM及び5μMで、より良好な活性を示した。次に、より生理的な環境、つまり25%の全血における抗炎症活性を評価した。血液を、異なるペプチドの存在下または非存在下でLPSで刺激し、次いで、血漿中のTNF-α及びIL-1βの放出をELISAによって定量した(
図14a及びb)。驚くべきことに、ここでは、3つ及び4つのKまたはRを有するペプチドの活性は、1つまたは2つの正に荷電した残基を有するペプチドよりも低かった。特に、2つのKまたはRを有するペプチドは改善された効果を示した。特に、これらのペプチドは、1~2μMという非常に低濃度でもTNF-α放出を大幅に減少させ、5~10μMペプチドでは、TNF-α放出がほぼ完全に消失することがわかった。これらのペプチドは、2~5μMでIL-1β放出を大幅に減少させることもわかった。また、本発明者らは、LPSで刺激された血液中での、その直線及び単一ステープル型バージョンに関する二重ステープル型GKY25の活性を試験した(
図14c)。N末端領域でもGKY25を閉鎖すると、GKY25よりもLPS誘発性のTNF-α及びIL-1β放出がよりよく抑制されることが判明したが、sHVF18の変異体と比較した場合、より高い用量が必要であった。
【0258】
1つ及び2つのKまたはR変異体を有する10μgのsHVF18の活性を、LPSで刺激されたマウスにおいて比較した。ペプチドで処置したマウスでは、すべてのペプチドがさまざまなサイトカインのレベルを低下させることができることを発見した。2つのK及びRの変異体は、サイトカイン減少に対して最も強い効果を示した(
図15)。
【0259】
インビトロでのステープル化ペプチドの抗菌活性の評価
抗菌ペプチドの活性は、その特定の配列特性と強く関連している。したがって、E.coli、P.aeruginosa O1及びS.aureusに対する活性に対する、ステープル化sHVF18変異体におけるK及びRの追加の影響を測定した。クリアランスゾーンを、NaClの非存在下(
図16a)及び150mMのNaClの存在下(
図16b)で測定した。一般に、正の正味電荷が低いペプチドは塩を含まない培地中でより活性であり、その逆も同様であることが判明した。さらに、sHVF18K及びR変異体のNaClなしでプレート上の細菌を除去する能力は、一般に、元のsHVF18と比較した場合、より低濃度でより優れていた。インビボの状況により類似しているNaClを含むプレートにおいて、特に、Kの数が増加した変異体が、大幅に向上した抗菌活性を示した。溶液中のペプチドの殺菌活性を、再度NaClの非存在下(
図17a)及び存在下(
図17b)で調査した。ここで、K及びR変異を有するsHVF18は、特に塩の存在下で、元のsHVF18と比較して、すべての細菌株に対してより活性であることが見られた。さらに、ペプチドの正味電荷が増加するにつれて活性もより高くなった。
【0260】
結論
実施例1及び2で調査した異なる直鎖及びステープル化ペプチドについての全体的な結果を表2及び
図20dに要約する。ステープル化ペプチドの抗炎症活性は、ヒト血液などの複雑な環境において大幅に増加することが実証された。特に、2RまたはKを有するsHVF18の変異体は、優れた結果を示した。一方で、Hisを3及び4RまたはKで置換した場合、抗炎症効果は、1及び2RまたはKをもつ変異体よりも低くなり、これは、溶血の結果によって示されるように、おそらくこれらのペプチドの毒性が高いことによる。これらの結果は、ペプチド構造に挿入できる最適な量の正に荷電した残基が存在することを示しており、この場合、これはKまたはRの2つの残基に相当する。これらの変異体は両方とも、より高い治療指数、つまり治療濃度と毒性を引き起こす用量との差が大きいことを示した。抗菌活性の保持に関しては、元のsHVF18と比較した場合、Hisを1つ以上のLysまたはArg残基で置換すると、これらの変異体の殺菌効果が、特に塩の存在下で、増強されることが観察された。
【0261】
表2:直鎖及びステープル化ペプチドの溶血活性、抗炎症活性及び抗菌活性の比較
【表2】
*IC
50>10μMのペプチドについては、正確なIC
50が不明であるが、50μMで溶血活性を示すように選択した。
【0262】
実施例3-ペプチドの抗凝固特性
材料及び方法
凝固アッセイ
すべての凝固時間の測定に、凝固計(Amelung,Lemgo,Germany)を使用した。全ての実験に、新しく収集したヒトクエン酸血漿を使用した。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を測定するために、100μLのカオリン含有溶液(Dapttin、Technoclone)及び血漿ペプチドミックスを、37℃で、200秒間インキュベートし、次いで、100μLの30mMの新鮮なCaCl2溶液を添加することによって血餅形成を開始した。プロトロンビン凝固時間(PT、トロンボプラスチン試薬(Trinity Biotech))は、100μLのあらかじめ温めた(37℃で60秒)血漿-ペプチド混合物に、100μLの凝固試薬を添加することで記録した。
【0263】
結果
ペプチドの抗凝固特性の評価
ペプチドsHVF18、sKVF18、sKKVF18、sRVF18、及びsRRVF18を凝固アッセイで試験した。これらのペプチドの配列を以下の配列概要に示す。結果を
図18に示す。
【0264】
LPS及び細菌誘発性接触活性化を介した凝固カスケードの過剰な活性化は、敗血症及び敗血症ショック中に観察される有害な影響の一因となる。したがって、本発明者らは、凝固経路に対する本発明のペプチドの考えられる効果を調査した。活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)及びプロトロンビン時間(PT)に対するペプチドの効果を分析したところ、すべてのペプチド変異体がインビトロでのヒト血漿凝固の内因系経路(aPTT)の活性化を用量依存的に阻害してはいたが、RR及びKK変異体sHVF18は、特に効果的であった(
図18、上パネル)。対照的に、プロトロンビン時間(PT)を測定することによってモニタリングされた凝固の外因性経路は、試験したどの用量でも影響を受けなかった(
図18、下パネル)。
【0265】
結論
凝固の活性化、線維素溶解の阻害、及び凝固阻害剤の消費は、播種性血管内凝固症候群(DIC)によって合併する可能性のある疾患であるARDS及び敗血症で観察されるように、凝固促進状態をもたらし、微小血管内にフィブリンの沈着をもたらす。結果として、微小血管血栓症は、臓器の機能不全の促進に寄与する。さらに、過剰な接触活性化は、炎症誘発性ペプチドであるブラジキニンの放出とその後の炎症反応の誘発を引き起こし、低血圧や血管漏出などの重篤な合併症の一因となる。したがって、生物学的に関連した状況で、sHVF18、特にKK及びRR変異体で実証されたような、炎症や凝固を含むいくつかの経路を調節するペプチドは、ARDS、敗血症、その他の全身性炎症性疾患に見られるものなど、これらの経路の過剰な活性化を示す患者に対し、ペプチドに基づく将来の治療法を開発するにあたり、興味深いものである。さらに、接触システムの活性化は、いくつかの非感染性疾患で起こるため、ペプチドによる干渉は凝固機能不全を伴う他の症状にも有益であり得る。
【0266】
実施例4-ペプチドのオリゴマー化
材料及び方法
動的光散乱(DLS)
溶液中の粒子の流体力学的半径を、温度制御されたチャンバー(25℃)を備えたDynaPro Plateリーダー(WYATT Technology)を使用して測定した。ペプチド(HVF18、sHVF18、sKVF18、sKKVF18、sRVF18、及びsRRVF18-配列は以下の配列概要に記載)を、分析の直前に、最終濃度として1mMでpH7.4の10mM TrisまたはpH5の10mM NaOAcに再懸濁した。分析には、各サンプル30μLを使用した。各測定は、10回のサブランで3連で実施した。流体力学的半径は、Dynamics7.19ソフトウェアを使用して分析した。結果は、3回の独立した実験から得られた平均値±DSとして表される。
【0267】
結果
ペプチドのオリゴマー化
結果を
図19に示す。ペプチドのオリゴマー化は、多くの場合、毒性や免疫原性、さらには活性の低下と関連しているため、不利であると考えられている。TCP-25及びHVF18はオリゴマー化する。ペプチドのオリゴマー化に対するステープル化の影響を測定した。溶液中の粒子の流体力学的半径(nmで)のサイズは、ペプチドを、pH7.4の10mM TrisまたはpH5の10mM NaOAcに溶解した直後に、動的光散乱(DLS)によって評価した。酸性pHでは、TCP-25のオリゴマー化が阻害されることを以前報告している。さらに、このpHでは、ペプチドはまったく構造化されていない。HVF18の粒子は、pH5よりもpH7.4の方が大きかった。一方、sHVF18は、両方のpHにおいて、HVF18と比較してサイズが大幅に小さい粒子を示した。sHVF18のK及びR変異体の流体力学的半径を分析すると、粒子のサイズはさらに小さく、pHにまったく依存しておらず、このことは、ステープル化及び正電荷の両方によりペプチドがオリゴマー化しにくくなることを示唆している。興味深いことに、K変異体とR変異体の間で、及び配列内のこれらの正に荷電したアミノ酸の数で、有意な差は観察されなかった。
【0268】
実施例5
材料及び方法
ペプチド
ペプチドsHVF18(HVFRLKKWIXKVIXQFGE)(配列番号3)、その短いバージョン(sVFR17、sFRL16、sRLK15、sLKK14、sKKW13として示される)、sKKW13の変異体(sKKK14、sKKK15、sRKK14、sRRK15として示される)、2sGKY25として示される二重.ステープル化GKY25(cyclo(GKYGFY)THVFRLKKWIXKVIXQFGE)は、AmbioPharm,Inc.(USA)により合成された。簡単に言うと、標準的な9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成(SPSS)を使用した。炭化水素ステープル化ペプチドを得るために、オレフィン含有(S)-2-(4’ペンテニル)-アラニンを、配列番号3及び13のそれぞれのペプチド配列の特定の位置(Xで示される)に挿入した。オレフィンメタセシス反応は、1,2-ジクロロエタン中のGrubbs第1世代触媒を使用して固体担体上で実行した。生成ペプチドを樹脂から切断し、RP-HPLCによってさらに精製した。ペプチドは、酢酸塩として得られ、純度は、MALDI-TOF MSで確認した(>95%)。
【0269】
溶血アッセイ
赤血球及び/または全血に対するステープル化ペプチドの溶血効果を、sHVF18について示しているように試験した。示されているデータは、すべて3連で行われた少なくとも4つの独立した実験から得られた平均値±SEMである。各実験では、異なるドナーからの血液を使用した。
【0270】
全血アッセイ
血中のさまざまなステープル化ペプチドの抗炎症効果を、sHVF18について示しているように実施した。各実験では、異なるドナーからの血液を使用した。
【0271】
サイトカインアッセイ
血液実験から得た血漿を使用してサイトカイン放出を評価した。TNF-α及びIL-1βに特異的な、ヒト炎症DuoSet(登録商標)ELISAキット(R&D Systems)を、製造業者の指示に従って使用した。吸光度は、波長450nmで測定した。示されているデータは、4回の独立した実験から得た平均値±SEMである。
【0272】
ブタARDSモデル
動物の準備:農場で飼育された野生型アメリカヨークシャー豚(Sus scrofa domesticus)の成体雌豚と雄豚が研究に含まれた。動物を治療群または非治療群に階層化した。平均体重45kgの合計10頭のブタに、ケタミン(Ketaminol(登録商標)獣医用100mg/mL;Farmaceutici Gellini S.p.A.,Aprilia,Italy;20mg kg
-1)及びキシラジン(Rompun(登録商標)獣医用20mg mL
-1;Bayer AG,Leverkusen,Germany;2mg kg
-1)を事前投薬した。尿道カテーテルを膀胱に挿入した。末梢静脈(IV)ラインを耳たぶに設置し、ケタミン(ケタミノール(登録商標)獣医用、MSD Animal Health Sweden,Stockholm,Sweden)、ミダゾラム(ミダゾラムパンファーマ(登録商標)、Panpharma Nordics AS,Oslo,Norway)及びフェンタニル(Leptanal(登録商標)、Piramal Critical Care B.V.,Voorschoten,Netherlands)で全身麻酔を維持した。Siemens-Elema人工呼吸器(Servo900C,Siemens,Solna,Sweden)を使用して、挿管用の7.5サイズの気管内チューブで機械換気を確立した。メーカーの指示に従って、ピーク圧力を下げる「定流量」のフローパターンスイッチを備えた量調節換気(VCV)が使用した。I:E比1:2を達成するために、吸気時間を25%、休止時間を10%に設定し、二酸化炭素レベル(PaCO
2)を33~41mmHgに維持するように換気を調整した。一回換気量(Vt)は、6~8mL kg
-1に維持した。式(a)を使用して動的コンプライアンスを決定した。
【数2】
【0273】
さらに、動脈ライン(Secalon-T(商標),Merit Medical Ireland Ltd,Galway,Ireland)を右総頚動脈に挿入した。肺動脈カテーテル(Swan-Ganz CCOmbo V and Introflex,Edwards Lifesciences Services GmbH,Unterschleissheim,Germany)を右内頸静脈に配置した。
【0274】
リポ多糖によるARDS誘発:ベルリン基準(Force et al.)に従ってARDSを誘発するために、E.coli LPS(O111:B4,Sigma-Aldrich,Merck KGaA,Darmstadt,Germany)を静脈内に使用した。投与前に、LPSを生理食塩水で希釈した(2μg kg-1分-1)。LPS投与の結果、すべての動物は血行動態不安定となり、ノルエピネフリン(40μg mL-1、0.05~2μg kg-1分-1;Pfizer AB、Sollentuna、Sweden)及びドブタミン(2mg mL-1、2.5~5μg kg-1分-1;Hameln Pharma Plus GmbH,Hameln,Germany)を点滴する、継続的な変力補助を必要とした。酢酸リンゲル剤(Baxter Medical AB,Kista,Sweden)を体液損失を補うために使用した。ベルリンの定義(Force et al.)に従って、測定されたPaO2 FiO2
-1比に基づいて、さまざまなARDS段階を定義した:比が201~300mmHgの場合は軽度のARDS、比が101~200mmHgの場合は中程度のARDS、比が≦100mmHgの場合は重度のARDS。ARDS状態は、15分間隔以内に測定された2つの別々の動脈血ガス測定値が、ベルリンの定義のPaO2 FiO2
-1の範囲内に収まった場合に確定とみなした。
【0275】
sHVF18治療:治療コホートでは、各動物に、上大静脈内の中心静脈カテーテルを使用して、ペプチド溶液(50mL中12mg)を30分間かけて2回静脈内投与した。
【0276】
動脈血ガス分析:動脈血を30分ごとに収集し、ABL 90 FLEX血液ガス分析装置(Radiometer Medical ApS,Bronshoj,Denmark)で分析した。臨床基準に従って、測定値は37℃の血液温度に正規化した。
【0277】
血行動態測定:動物を注意深く観察し、ARDS誘発の開始前とその後30分ごとに、スワンガンツカテーテルと動脈ラインによる熱希釈を使用して血行動態パラメータを測定及び記録した。記録されたパラメータは、心拍数(HR)、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、平均動脈圧(MAP)、中心静脈圧(CVP)、心拍出量(CO)、収縮期肺血圧(SPP)、拡張期肺圧(DPP)、平均肺圧(MPP)、肺動脈楔入圧(PAWP)、全身血管抵抗(SVR)、及び肺血管抵抗(PVR)であった。
【0278】
組織病理学的分析:ARDSが確認された後、右下葉の生検体を採取した。生検体を直ちに10%中性緩衝ホルマリン溶液(Sigma Aldrich,St.Louis,Missouri,USA)に移し、4℃で一晩固定した。ホルマリン固定組織は、パラフィン包埋(Histolab)前に、段階的エタノールシリーズ(溶液はHistolab Products AB,Gothenburg,Swedenから取得)及び透明溶液(Sigma Aldrich)で処理した。4μmの切片を切り出し、SuperFrost Plus顕微鏡スライド(Thermo Fisher Scientific,Waltham,Massachusetts,US)に移した。切片を室温で一晩乾燥させた。脱パラフィン後、切片を、ヘマトキシリン及びエオシン(いずれもMerck Millipore,Darmstadt,Germany)で染色し、続いて連続的に段階的エタノール及びキシレン溶液(Histolab)中で脱水した。染色された切片は、最終的にPertex溶液(Histolab)で封入した。明視野画像は、Olympus CKX53顕微鏡(Olympus,Shinjuku,Tokyo,Japan)によって取得した。各動物からの画像は、5つのパラメータ:肺胞腔及び間質腔内の免疫細胞の数、タンパク性残骸の発生、肺胞中隔の肥厚及び構造的変化の提示、最後に出血、硝子膜、または損傷の増強のその他の兆候の提示、に基づいて、盲検での3人のスコアラーによって肺損傷について独立して採点した。スコアは、各基準の0~6のスケールに基づいて与えられた。スコアは、各サンプルの特性スコアの合計の平均として表示される。
【0279】
結果
sHVF18のより短い変異体の溶血活性及び抗炎症活性の分析
実施例1に示すように、HVF18のステープル化は、タンパク質分解に対するその安定性を高め、その抗炎症活性(インビトロ及びインビボ)を大幅に改善し、その抗菌活性を維持しながら、主にグラム陽性菌に対して活性を向けると同時に、溶血活性が低かった。活性ペプチドをどの程度小さくできるかを評価するために、sHVF18のより短い変異体を作製した。ダブルステープル化GKY25(2sGKY25)、すなわち、sGKY25と同様にC末端領域に1つと、N末端領域に1つを比較のために使用した。
【0280】
異なるステープル化されたペプチドのライブラリーを生成し、次いでそれらの溶血効果(
図20a)対抗炎症活性(
図20b)についてスクリーニングした。LPS刺激血液中のTNF-α及びIL-1βのIC
50に必要な同じペプチドの濃度の関数として、赤血球に対するすべてのペプチドの溶血活性の割合を示すと、特にsHVF18が有望であることが判明した(
図20c)。
【0281】
sKKW13変異体の溶血活性及び抗炎症活性の分析
sLKK14及びsKKW13は、両方とも低い溶血活性を示した(
図20a)が、sLKK14は、溶液に入るとオリゴマー化し、同時にその免疫調節効果を失う傾向があったが、一方、sKKW13はそうではなかった(
図20b)。したがって、本発明者らは、sKKW13に1つまたは2つのK及びR残基を追加すると、その抗炎症活性が向上するのではないかという仮説を立てた。本発明者らはまず、これらの新しいペプチドの溶血活性を、元のペプチド及びsHVF18と全血に対して比較した(
図21a)。K及びR変異体は、はるかに高い溶血活性を示した。次に、LPSで刺激された血液中のサイトカイン産生を減少させるそれらの能力を試験した(
図21b)。K及びR変異体はすべて、sHVF18よりも活性が低く、sKKW13と比較した場合、大きな改善は得られなかった。
【0282】
ブタARDSモデルにおけるsHVF18の効果
確立されたARDSの前臨床ブタモデルにおけるsHVF18の治療効果をさらに調査した。ARDSを、E.coliのLPSを静脈内注射することで誘発した(研究概要を
図22aに示す)。すべてのブタは、血行動態不安定となり、LPS投与後にノルエピネフリンによる変力補助を必要とした(変力補助とは、血行動態安定を維持するという臨床目的でのドブタミン及びノルエピネフリンの薬剤の使用を指す)。この血行動態不安定だけでなく、実験の経時的な処置したブタと未処置のブタの差異についても、PaO
2/FiO
2比(
図22b)、心拍出量(
図22c)、尿量(
図22d)、ノルエピネフリン(NA、
図22e)、及び乳酸レベル(
図22f)によって示される。
【0283】
全体として、sHVF18の静脈内投与後、処置した動物は血行動態が安定し、未処置の動物と比較して変力補助の必要性が大幅に減少した。処置した動物は、PaO2/FiO2比において未処置の動物ほど悪化せず、血液ガスによれば、5頭の処置した動物のうち1頭だけが軽度のARDSを示した(ベルリンの定義のARDSによる)。
【0284】
実験のエンドポイントで肺組織サンプルを右下葉から採取し、5頭の健康な対照ブタからの肺組織サンプルと比較した。組織学的分析のために健康な対照から採取した肺生検体は、異常がなく、正常であるように見えた(
図22g、左パネル)。実験のエンドポイントで処置した動物と未処置の動物の両方から採取されたすべての生検体において、免疫細胞の浸潤と、肺胞内出血による肺胞毛細血管障壁の肥厚などのびまん性肺胞損傷の兆候が示されたが、処置したブタではそれが少なかった(
図22g、中央及び右パネル)。肺組織学の主観的な分析に加えて、3人の独立した観察者によってすべてのブタに対して盲検スコアリングを実行した。健康な対照と比較して、未処置群における累積肺損傷スコアの有意な増加が見られ、これは、LPS投与による急性肺損傷発症後の肺損傷の複数の兆候を説明する。処置したブタと未処置のブタの間には有意な差が見られ(
図22h)、処置ブタでは肺損傷の兆候が少なかった。
【0285】
実施例6
材料及び方法
ペプチドステープル位置のインシリコ解析
HVF18のNMR構造(PDB:5Z5X)(Saravanan et al.,2018)を、ClusProウェブサーバーを使用してヒトCD14のモデル化された構造にドッキングした(Kozakov et al.,2017)。Saravanan et al.,2018に記載されるものと同様の結果が得られ、それによってペプチドは、CD14のN末端に結合する。最高得点のドッキングポーズの構造をテンプレートとして選択し、GKY25をモデル化した。N末端GKYGFYT残基は、Modellerバージョン9.21を使用してモデル化し、個別に最適化されたタンパク質エネルギースコアが最も低いモデル(Shen et al.、2006)を選択した。(Jo et al.,2008)に記載されているように、CHARMM-GUI Solution Builderを使用して、GKY25-CD14複合体をTIP3P水及びNaCl塩で溶媒和した。最急降下エネルギーの最小化と125psの平衡シミュレーション(それにより、タンパク質及びペプチドの主鎖原子に位置制限が適用される)を、標準CHARMM-GUIプロトコルに従って実行した(Lee et al.,2016)。平衡化後の最終スナップショットを抽出し、分子力学ポアソンボルツマン表面積(MMPBSA)法を使用してGKY25とCD14間の結合エネルギーを計算した(Kumari et al.,2014)。CHARMM-GUI Solution Builder(Jo et al.,2008)を使用して、位置i及びi+3の残基をアラニンに変異させ、それらを2つのペンテンセグメントと連結することによって、疎水性ステープルをGKY25ペプチドに付加した。次いで、CD14に結合したステープル化GKY25を、上記と同じ溶媒和、最小化及び平衡化手順に供し、その後、それらの結合エネルギーをMMPBSAを使用して決定した。同様のプロトコルを、位置i及びi+4にステープルを付加するために実行した。次に、非ステープル化GKY25に対する結合エネルギーの差を計算した。ペプチドステープル位置の同様の分析を、より短いHVF18ペプチドに対しても実施した。
【0286】
結果
タンパク質分解安定性が向上した二重作用ペプチドの設計
次に、ペプチドステープル位置のインシリコ解析を実行し、残基iとi+3または残基iとi+4を連結する短い疎水性ペンテニルアラニンステープルをGKY25の配列に沿って付加した。CD14への結合に対するこのステープル付加の効果を決定するために、次に、ペプチドの非ステープル化バージョンとステープル化バージョンとの間の結合エネルギーの差を計算した。その結果を
図23に示す。本発明者らは、より長いGKY25ペプチドのほとんどの位置、特にペプチドのN末端領域にステープルを付加すると、正の結合エネルギー差によって示されるように結合が低下することを見出した(
図23A及びBの結果を参照)。親和性の低下は、ペプチドとCD14の間の相互作用を混乱させるステープルによって引き起こされた可能性がある。いくつかのステープルは、CD14への結合を改善した。i-i+3構成では、これらにはI16-V19、V19-Q22、I20-D23、及びD21-G24が含まれ、i-i+4構成では、これらにはV9-K13及びQ17-D21が含まれる。Q17-D21ステープルを除き、CD14へのより好ましい結合をもたらしたすべてのステープルは、LPSとの相互作用に重要である可能性のある疎水性残基を含んでいる。
【0287】
対照的に、より短いHVF18ペプチドでは、ほとんどのステープルで親和性の向上が見られた(
図23C及びDを参照)。i-i+3構成では、少なくとも次のステープルにて親和性が向上した:V2-L5、F3-K6、L5-W8、K6-I9、I9-V12、Q10-I13、K11-D14、V12-Q15、I13-F16、D14-G17、及びQ15-E18。i-i+4構成では、少なくとも次のステープルにて親和性が向上した:V2-K6、K6-Q10、W8-V12、I9-I13、Q10-D14、V12-F16、I13-G17、及びD14-E18。結合の改善をもたらしたステープルでは、Q10-D14(GKY25のQ17-D21に相当)が、最も負の結合エネルギー差のうちの1つを有する。
【0288】
参考文献
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【表3】
【0289】
略記:
AMP、抗菌ペプチド;AMR、抗菌耐性;CD、円二色性;PAMP、病原体関連分子パターン;TCP-25、25アミノ酸のトロンビンC末端ペプチド;TEM、透過型電子顕微鏡;TLR、toll様受容体。
【0290】
【0291】
上記の配列リストにおいて、X1及びX2は、それぞれ最初は(S)-2-(4’ペンテニル)-アラニンであり、RCMによって互いに反応してオレフィンテザーを形成する。配列表には、未反応のペプチドの配列が示されている。当業者であれば、たとえ未反応の配列が提供されても、一般にペプチドはステープル化形式で、すなわちRCMによってオレフィンテザーが形成された後に使用されることを理解するであろう。また、X3及びX4は、それぞれグリシン及びグルタミン酸であり、互いに反応してラクタム架橋の形態で共有結合を形成する。
【0292】
項目
本発明は、以下の項目にいずれか1つによってさらに定義され得る:
1.最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来の10~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドであって、
i)10~40個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、ここで前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)さらに少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248及びK252を含み、
ただし、前記ペプチドが、24~40個のアミノ酸の全長を有する場合は、2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも2つの内部共有結合を含み、第1の内部共有結合の前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、第2の内部共有結合の前記アミノ酸は、X3及びX4で示される、前記ペプチド。
【0293】
2.前記ペプチドが、配列番号1のトロンビン由来の10~40個の範囲のアミノ酸の連続配列を含む、項目1に記載のペプチド。
【0294】
3.最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来の10~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドであって、前記ペプチドは、
i)10~23個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸K247、K248及びK252を含む、前記ペプチド。
【0295】
4.最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号12のGKY25由来の10~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドであって、前記ペプチドは、
i)10~23個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)少なくとも配列番号12のGKY25のアミノ酸K13、K14及びK18を含む、前記ペプチド。
【0296】
5.ペプチドが、配列番号1のトロンビンまたは配列番号12のGKY25由来の13~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含む、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0297】
6.アミノ酸配列:
-U-U-(Z)n-I-Q-K-V-I-D-Q-(Z)m-
を含むか、またはそれからなるペプチドであって、
前記ペプチドは、10~23個のアミノ酸の全長を有し、式中、
各Zは、個別に任意の標準アミノ酸であり、
Uは、His、LysまたはArgであり、
nは、0~10の範囲の整数であり、
mは、0~5の範囲の整数であり、
前記アミノ酸のうちの2つは、アルケニル化アミノ酸に置換されており、その側鎖は、共有結合によって結合されている、前記ペプチド。
【0298】
7.前記ペプチドが、13~23個のアミノ酸の全長を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0299】
8.最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号1のトロンビン由来の13~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドであって、前記ペプチドは、
i)13~23個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸R245、K247、K248、K252を含む、前記ペプチド。
【0300】
9.前記ペプチドが、少なくとも配列番号1のトロンビンのアミノ酸R245、K247、K248、K252を含む、項目1及び8のいずれか1つに記載のペプチド。
【0301】
10.最大6個のアミノ酸置換を含有する配列番号12のGKY25由来の13~23個の範囲のアミノ酸の連続配列を含むペプチドであって、前記ペプチドは、
i)13~23個のアミノ酸の全長を有し、
ii)2つの非隣接の内部アミノ酸の側鎖間に少なくとも1つの内部共有結合を含み、前記アミノ酸は、X1及びX2で示され、
iii)少なくとも配列番号12のGKY25のアミノ酸K13、K14及びK18を含む、前記ペプチド。
【0302】
11.前記ペプチドが、少なくとも配列番号12のトロンビンのアミノ酸R11、K13、K14及びK18を含む、項目10に記載のペプチド。
【0303】
12.前記ペプチドが、2つの非隣接の内部アミノ酸間に1つのみの内部共有結合を含む、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0304】
13.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+3位、またはn+4位、またはn+5位、またはn+6位、またはn+7位、またはn+8位、またはn+9位、またはn+10位、またはn+11位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0305】
14.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+3位、またはn+4位、またはn+7位、またはn+11位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0306】
15.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+3位、またはn+4位、またはn+7位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0307】
16.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+4位、またはn+7位に位置し、式中、nは、2~18の範囲の整数である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0308】
17.前記ペプチド配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合、
a.X2は、配列番号12のGKY25内のLysと一致しないこと、
b.X1がLysと一致する場合、X2は、Glnと一致しないことを条件とする、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0309】
18.前記ペプチド配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合、
a.X1は、配列番号12のGKY25内のArg11と一致しないこと、
b.X1は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しないこと、
c.X2は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しないこと、
d.X2は、配列番号12のGKY25内のLys18と一致しないこと、及び
e.X1が配列番号12のLys18と一致する場合、X2は、Gln22と一致しないことを条件とする、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0310】
19.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+3位に位置し、式中、nが、2~18の範囲の整数であるが、ただし、前記ペプチド配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合、
a.X1は、配列番号12のGKY25内のArg11と一致しないこと、
b.X1は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しないこと、及び
c.X2は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しないことを条件とする、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0311】
20.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+4位に位置し、式中、nが、2~18の範囲の整数であるが、ただし、前記ペプチド配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合、
a.X1は、配列番号12のGKY25内のArg11と一致しないこと、
b.X1は、配列番号12のGKY25内のLeu12と一致しないこと、
c.X1は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しないこと、
d.X2は、配列番号12のGKY25内のLys14と一致しないこと、
e.X1は、配列番号12のGKY25内のLys18と一致しないこと、及び
f.X2は、配列番号12のGKY25内のLys18と一致しないことを条件とする、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0312】
21.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+3位に位置し、式中、nが、2~18の範囲の整数であり、前記ペプチド配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合、X1及びX2は、配列番号12のVal9及びLeu12;またはPhe10及びLys13;またはLeu12及びTrp15;またはLys13及びIle16;またはIle16及びVal19;またはGln17及びIle20;またはLys18及びAsp21;またはVal19及びGln22;またはIle20及びPhe23;またはAsp21及びGly24;またはGln22及びGlu25に対応する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0313】
22.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+4位に位置し、式中、nが、2~18の範囲の整数であり、前記ペプチド配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合、X1及びX2は、配列番号12のVal9及びLys13;またはLys13及びGln17;またはTrp15及びVal19;またはIle16及びIle20;またはGln17及びAsp21;またはVal19及びPhe23;またはIle20及びGly24;またはAsp21及びGlu18に対応する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0314】
23.アミノ酸X1が、n位に位置し、アミノ酸X2が、n+4位に位置し、式中、nが、2~18の範囲の整数であり、前記ペプチド配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合、X1及びX2は、配列番号12のGln17及びAsp21に対応する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0315】
24.X1及びX2が、以下からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド:
i)X1は、Lysであり、X2は、Asp、Glu、Lys、Cys及びTyrからなる群から選択される;
ii)X1は、Cysであり、X2は、Cys、Lys及びMetからなる群から選択される;
iii)X1は、Aspであり、X2は、Lysである;
iv)X1は、Gluであり、X2は、Lys及びGluからなる群から選択される;
v)X1は、Tyrであり、X2は、Lys、Phe及びTrpからなる群から選択される;
vi)X1は、Metであり、X2は、Met及びCysからなる群から選択される;
vii)X1は、Hisであり、X2は、Hisである;
viii)X1は、Pheであり、X2は、Phe、Tyr、Ala及びTrpからなる群から選択される;
ix)X1は、Alaであり、X2は、PheまたはTyrである;
x)X1は、Trpであり、X2は、Trp、Phe及びTyrからなる群から選択される;
xi)X1は、Glyであり、X2はGluである。
【0316】
25.X1が、Lysであり、X2が、Asp、Glu、CysもしくはLysであるか、またはその逆である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0317】
26.X1及びX2が、Cysであり、前記共有結合が、直接共有結合(すなわち、ジスルフィド架橋)または架橋剤を介するかのいずれかであり、前記架橋剤が、例えば、ビス-アルキル化剤、例えば少なくとも2つの(ブロモメチル)置換基を含むリンカーである、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0318】
27.X1またはX2のいずれかが、例えばSer誘導体及びAla誘導体からなる群から選択される誘導体化標準アミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0319】
28.前記共有結合が、2つの非標準アミノ酸を連結することによって形成され、場合により、前記非標準アミノ酸が、トロンビンの2つの天然アミノ酸を置換している、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0320】
29.前記共有結合が、炭化水素ステープルである、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0321】
30.X1及びX2が、2つのα-置換アルケニルアミノ酸及び/またはα,α-二置換アルケニルアミノなどの2つのC-アルケニル化アミノ酸などのアルケニル化アミノ酸であり、前記共有結合が、前記アルケニル残基間に形成されるオレフィンテザーである、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0322】
31.前記アルケニル化アミノ酸が、アルケニル化されたトロンビン固有のアミノ酸、及び/またはトロンビン固有のアミノ酸を置換したアルケニル化アミノ酸である、項目30に記載のペプチド。
【0323】
32.X1及びX2が、アルケニル化Ala、アルケニル化Leu、アルケニル化Met、アルケニル化Ser、アルケニル化Tyr、アルケニル化Lys、アルケニル化Arg及びアルケニル化Pheからなる群から個別に選択される、先行項目のいずれか1項に記載のペプチド。
【0324】
33.X1またはX2の一方が、アルケニル化Alaであり、他方が、アルケニル化Ala、アルケニル化Leu、アルケニル化Met、アルケニル化Ser、アルケニル化Tyr、アルケニル化Lys、アルケニル化Arg及びアルケニル化Pheからなる群から選択される、先行項目のいずれか1項に記載のペプチド。
【0325】
34.X1及び/またはX2が、アルケニル化アラニンである、先行項目のいずれかに1つに記載のペプチド。
【0326】
35.X1及び/またはX2が、α,α-二置換アルケニル化アラニンであり、前記共有結合が、前記アルケニル残基間に形成されるオレフィンテザーである、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0327】
36.X1及び/またはX2が、テザーによって連結されており、前記テザーが、C-アルファ炭素から数えて10個の炭素原子のアルケン鎖である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0328】
37.X1及び/またはX2が、アルケンテザーを形成する閉環メタセシスによって互いに連結されているアルケニル化アラニンであり、前記テザーが、C-アルファ炭素から数えて10個の炭素原子のアルケン鎖である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0329】
38.前記アルケン鎖が、非分岐アルケン鎖である、項目36または37に記載のペプチド。
【0330】
39.X1及び/またはX2が、O-アルケニル化Serなどのアルケニル化Serである、先行項目のいずれかに1つに記載のペプチド。
【0331】
40.前記アルケニル化アミノ酸が、アルケニル鎖中に2~10個の炭素、例えば2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素、好ましくは4、5または6個の炭素を含む、項目30~39のいずれか1つに記載のペプチド。
【0332】
41.前記アルケニル化アミノ酸が、α-置換アルケニルオレフィン末端アミノ酸及び/またはα,α-二置換アルケニルオレフィン末端アミノ酸である、項目30~40のいずれか1つに記載のペプチド。
【0333】
42.X1及び/またはX2が、α,α-二置換S-またはR-ペンテニルアラニン(S5またはR5)及びS-またはR-オクテニルアラニン(S8またはR8)アラニンである、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0334】
43.前記内部炭化水素ステープルが、2つの(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンを結合することによって形成される、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0335】
44.前記共有結合が、閉環によって確立される、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0336】
45.前記共有結合が、閉環メタセシス(RCM)によって確立される、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0337】
46.X1が、非標準的なアジド末端アミノ酸であり、X2が、非標準的なイン末端アミノ酸であるか、またはその逆である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0338】
47.X3及びX4が、X1及びX2と比べてN末端に近い、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0339】
48.アミノ酸X3が、n位に位置し、アミノ酸X4が、n+3位、またはn+4位、またはn+5位に位置し、式中、nが、整数である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。好ましい実施形態では、アミノ酸X3は、n位に位置し、アミノ酸X4は、n+4位に位置する。
【0340】
49.アミノ酸X3が、前記ペプチドの最N末端に位置する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0341】
50.アミノ酸X3が、前記ペプチドの最N末端に位置し、アミノ酸X4が、n+4位に位置する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0342】
51.前記内部共有結合が、アミンとカルボン酸との反応により形成されるアミド結合である、先行項目のいずれかに1つに記載のペプチド。
【0343】
52.前記内部共有結合が、アミンとカルボン酸との反応により形成されるラクタム架橋である、先行項目のいずれかに1つに記載のペプチド。
【0344】
53.X3が、N末端アミン基を有するN末端アミノ酸であり、X4が、カルボン酸側鎖を有するアミノ酸であり、X3及びX4が、前記アミンと前記カルボン酸とを反応させることによって形成される内部共有結合によって結合される、先行項目のいずれか1つの記載のペプチド。
【0345】
54.本発明の前記ペプチドの配列を、配列番号12のGKY25の配列とアラインメントする場合は、X3及びX4は、配列番号12のGKY25のGly1及びPhe5に対応する、先行項目のいずれか1つの記載のペプチド。
【0346】
55.X3及びX4が、配列番号14のGly1及びGlu5に対応する、先行項目のいずれか1つの記載のペプチド。
【0347】
56.前記ペプチドが、14~22個のアミノ酸長、例えば15~21個のアミノ酸長、例えば16~20個のアミノ酸長、例えば17~20個のアミノ酸長を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0348】
57.前記ペプチドが、18~20個のアミノ酸長、例えば18個または19個のアミノ酸長を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0349】
58.前記ペプチドが、配列番号1のトロンビン由来の、14~22個のアミノ酸、例えば13~18個のアミノ酸、例えば15~21個のアミノ酸、例えば16~20個のアミノ酸、例えば17~20個のアミノ酸、好ましくは17~18個のアミノ酸の連続したアミノ酸配列を含む、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0350】
59.前記ペプチドが、24~40個のアミノ酸長、例えば25~35個のアミノ酸長、例えば25~30個のアミノ酸長、例えば28~34個のアミノ酸長を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0351】
60.前記ペプチドが、最大6個のアミノ酸置換を含む、16~21個の範囲のアミノ酸の、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含む、またはそれからなる、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0352】
61.前記ペプチドが、最大2個のアミノ酸置換を含む、17~18個の範囲のアミノ酸の、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、前記ペプチドは、最大4つの追加アミノ酸を含み得る、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0353】
62.前記ペプチドは、アミノ酸X1について1つのアミノ酸の置換、及びアミノ酸X2について1つのアミノ酸の置換を含む、17~18個の範囲のアミノ酸の、配列番号1のトロンビン由来のアミノ酸の連続配列を含むか、またはそれからなり、前記ペプチドは、最大4つの追加アミノ酸を含み得る、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0354】
63.前記ペプチドは、トロンビンの連続配列と比較して、少なくとも2つのアミノ酸置換、例えば3つのアミノ酸置換、例えば4つのアミノ酸置換、例えば5つのアミノ酸置換を含む、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0355】
64.1つ以上の前記置換が、保存的置換であり、例えば、1、2、3または4つのアミノ酸置換が、保存的置換である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0356】
65.前記ペプチドが、前記ペプチドに結合した1つ以上の部分をさらに含み、場合により、前記ペプチド及び前記1つ以上の部分が、リンカーによって互いに結合しており、前記1つ以上の部分が、アルキル、アリール、ヘテロアリール、オレフィン、脂肪酸、ポリエチレングリコール(PEG)、糖類、及び多糖類からなる群から選択される、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0357】
66.前記ペプチドが、前記ペプチドの末端またはその近くに挿入された1~5個、例えば1~4個、例えば1~3個、例えば1~2個、例えば2個の正に荷電したアミノ酸をさらに含む、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0358】
67.前記正に荷電したアミノ酸が、前記N末端またはその近く、例えば、前記ペプチドのN末端に対して1、2、3、4及び/または5位から選択される位置に挿入されている、項目66に記載のペプチド。
【0359】
68.前記正に荷電したアミノ酸が、N末端に挿入されている、項目66または67に記載のペプチド。
【0360】
69.前記ペプチドが、前記N末端またはその近く、例えば、前記ペプチドのN末端に対して1、2及び/または3位から選択される位置に挿入されている、2個の正に荷電したアミノ酸を含む、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0361】
70.前記ペプチドが、配列番号1のトロンビンの15~20個の範囲の連続アミノ酸からなり、2個のアミノ酸が、内部炭化水素ステープルを形成するアルケニル化アミノ酸で置換されており、2~5個の範囲の追加のN末端アミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0362】
71.前記ペプチドが、配列番号1のトロンビンの16~18個の範囲の連続アミノ酸からなり、2個のアミノ酸が、内部炭化水素ステープルを形成するアルケニル化アミノ酸で置換されており、2~5個の範囲の追加のN末端アミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0363】
72.前記ペプチドが、配列番号1のトロンビンの17個の連続アミノ酸からなり、2個のアミノ酸が、内部炭化水素ステープルを形成するアルケニル化アミノ酸で置換されており、2~3個の範囲の追加のN末端アミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0364】
73.前記追加のN末端アミノ酸が、正に荷電している、項目66~72のいずれか1つに記載のペプチド。
【0365】
74.前記正に荷電したアミノ酸が、アルギニン、リジン及びヒスチジンからなる群から選択され、好ましくは、前記正に荷電したアミノ酸が、アルギニン及び/またはリジンであり、さらにより好ましくは、前記正に荷電したアミノ酸が、リジンである、項目66~73のいずれか1つに記載のペプチド。
【0366】
75.前記アルケニル化アミノ酸が、項目30~43のいずれか1つに記載のとおりである、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0367】
76.前記ペプチドが、配列:
-K-K-Z-Z-X1-K-Z-Z-X2-Z
を含み、式中、
各Zは、個別に任意の標準アミノ酸であり、
X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されている、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0368】
77.前記ペプチドが、配列:
U-U-(Z)n-K-K-Z-Z-X1-K-Z-Z-X2-Z
を含み、式中、
各Zは、個別に任意の標準アミノ酸であり、
Uは、His、LysまたはArgであり、
nは、0~10の範囲の整数であり、
X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は、共有結合によって結合されている、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0369】
78.前記ペプチドが、配列:
を含み、式中、
各Zは、個別に任意の標準アミノ酸であり、
X1及びX2は、共有結合によって結合されたアミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0370】
79.前記ペプチドが、配列:
U-U-Z-Z-R-Z-K-K-Z-Z-X1-K-Z-Z-X2-Z
を含むか、またはそれからなり、式中、
各Zは、個別に任意の標準アミノ酸であり、
Uは、His、ArgまたはLysであり、
X1及びX2は、共有結合によって結合されたアミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0371】
80.前記ペプチドが、配列:
V-F-R-L-K-K-W-I-X1-K-V-I-X2-Q-F-G-E
を含むか、またはそれからなり、式中、
X1及びX2は、共有結合によって結合されたアミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0372】
81.前記ペプチドが、配列:
U-U-V-F-R-L-K-K-W-I-X1-K-V-I-X2-Q-F-G-E
を含むか、またはそれからなり、式中、
Uは、His、ArgまたはLysであり、
X1及びX2は、共有結合によって結合されたアミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0373】
82.式中、UがLysまたはArgである、項目76~81のいずれか1つに記載のペプチド。
【0374】
83.前記ペプチドが、
i)配列番号3、
ii)配列番号4、
iii)配列番号5、
iv)配列番号6、
v)配列番号7、
vi)配列番号8、
vii)配列番号9、
viii)配列番号10、
ix)配列番号11、
x)配列番号17、
xi)配列番号18、
xii)配列番号19、
xiii)配列番号20、
xiv)配列番号21、
xv)配列番号22、
xvi)配列番号23、
xvii)配列番号24、
xviii)配列番号25、または
xix)配列番号26
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、共有結合によって結合されたアミノ酸であり、X3及びX4は、共有結合によって結合されたアミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0375】
84.前記ペプチドが、
iv)配列番号3、
v)配列番号4、
vi)配列番号5、
vii)配列番号8、または
viii)配列番号9
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、共有結合によって結合されたアミノ酸である、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0376】
85.前記ペプチドが、
i)配列番号3、
ii)配列番号5、
iii)配列番号6、または
iv)配列番号7
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は共有結合によって結合されており、場合により、X1及びX2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は、互いに反応してアルケニルテザーを形成しており、さらに場合により、X1及びX2は、Alaであり、その側鎖は、1つの二重結合を含むC8アルケニルテザーによって互いに共有結合している、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0377】
86.前記ペプチドが、
i)配列番号3、または
ii)配列番号5
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2は、アミノ酸であり、その側鎖は共有結合によって結合されており、場合によりX1及びX2は、(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は、互いに反応してアルケニルテザーを形成しており、さらに場合により、X1及びX2は、Alaであり、その側鎖は、1つの二重結合を含むC8アルケニルテザーによって互いに共有結合している、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0378】
87.前記ペプチドが、
i)配列番号14、または
ii)配列番号26
に記載される配列を含むか、またはそれからなり、式中、X1及びX2はアミノ酸であり、その側鎖は共有結合によって結合されており、さらに、X3及びX4はアミノ酸であり、その側鎖は共有結合によって結合されており、好ましくはX1及びX2は(S)-2-(4’-ペンテニル)-アラニンであり、その側鎖は互いに反応してアルケニルテザーを形成し、X3及びX4はそれぞれGly及びGluであり、互いに反応してラクタム架橋を形成している、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0379】
88.X1及びX2が、項目13~47のいずれか1つに記載のとおりである、項目49~55のいずれか1つに記載のペプチド。
【0380】
89.X3及びX4が、項目13~55のいずれか1つに記載のとおりである、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0381】
90.前記ペプチドが、水溶液中で少なくとも1つのアルファヘリックス二次構造単位を含む、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0382】
91.前記アルファヘリックス二次構造単位が、クラスター分化14(CD14)などの標的分子との結合時に維持される、項目90に記載のペプチド。
【0383】
92.前記ペプチドが、150nm未満、例えばpH7.4で100nm未満、及び/または100nm未満、例えばpH5で80nm未満の流体力学的半径を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0384】
93.前記ペプチドは、アミノ酸X1及びX2が共有結合を欠く他のアミノ酸に交換されている以外は同じ配列を有するペプチドと比較して、前記ペプチドを同じ条件下で試験した場合に、インビボ及び/またはインビトロでの増加した安定性を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0385】
94.前記ペプチドは、例えば、アミノ酸X1及びX2が共有結合を欠く他のアミノ酸に交換されている以外は同じ配列を有するペプチドと比較して、前記ペプチドを同じ条件下で試験した場合に、セリンプロテアーゼの存在下で増加した安定性を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0386】
95.50μMの前記ペプチドが、新鮮な全血中において、最大5%(最大4%など)、例えば、最大3%(最大2%など)の溶血活性を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0387】
96.インビトロでLPS刺激血液中のTNF-α放出を50%減少させるペプチド濃度において、新鮮な全血中、最大10%、好ましくは最大5%の溶血活性を有する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0388】
97.前記ペプチドが、抗凝固活性を有する、先行項目のいずれか1つペプチド。
【0389】
98.前記ペプチドが、60μMの濃度でaPPTによって測定される凝固時間を少なくとも100%増加させる、及び/またはaPPTによって測定される凝固時間を40μMのペプチド濃度で少なくとも90%増加させる、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0390】
99.前記ペプチドが、炎症及び/または感染を軽減する、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0391】
100.前記ペプチドが、LPSなどの1つ以上のエンドトキシンの存在下で炎症誘発性サイトカインの分泌を減少させる、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0392】
101.前記ペプチドが、LPSなどの1つ以上のエンドトキシンを含む血液中の炎症誘発性サイトカインの分泌をインビボで減少させる、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0393】
102.前記炎症誘発性サイトカインが、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキンβ(IL-1β)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン10(IL-10)、インターフェロン(IFN-γ)及び/または単球走化性タンパク質-1(MCP-1)からなる群から選択される、項目100または102に記載のペプチド。
【0394】
103.前記ペプチドが、リポ多糖類(LPS)、リポテイコ酸(LTA)、Staphylococcus aureusペプチドグリカン(SA-PGN)及び/またはザイモサンなどのtoll様受容体(TLR)アゴニストの存在下で、NF-κB活性を低下させる、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0395】
104.10μMの濃度のペプチドが、LPSの存在下で新鮮な血液中でインキュベートした後、TNF-α及び/またはIL-1βの分泌を、前記アミノ酸X1及びX2が共有結合を欠く他のアミノ酸に交換されている以外は同じ配列のペプチドと比較して、前記ペプチドを同じ条件下で試験した場合に、少なくとも50%(少なくとも60%など)、例えば、少なくとも70%減少させる、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0396】
105.前記ペプチドが、殺菌性であり、例えば、前記ペプチドが、細菌膜を損傷することによって細菌を殺すことができる、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0397】
106.前記細菌が、Staphylococcus aureus、Pseudomonas aeruginosa及びEscherichia coliからなる群より選択される、項目105に記載のペプチド。
【0398】
107.前記ペプチドの抗炎症効果が、前記ペプチドの全身投与後24時間インビボで維持される、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0399】
108.医薬として使用するための、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0400】
109.炎症及び/または感染症の治療及び/または予防を必要とする個体における、炎症及び/または感染症の治療及び/または予防の方法で使用するための、先行項目のいずれか1つに記載のペプチド。
【0401】
110.前記炎症が、感染症に関連する、項目109に記載の使用のためのペプチド。
【0402】
111.急性炎症、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、喘息、アレルギー性鼻炎、その他の種類の鼻炎、血管炎、血栓症、播種性血管内凝固症候群(DIC)、胃腸炎、及び肺炎症からなる群から選択される疾患の治療または予防の方法で使用するための、項目1~108のいずれか1つに記載のペプチド。
【0403】
112.前記炎症が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、胃腸炎、及び肺炎症からなる群から選択される、項目109または110に記載の使用のためのペプチド。
【0404】
113.前記炎症が、ARDSである、項目109または110に記載の使用のためのペプチド。
【0405】
114.前記治療が全身的である、項目109~113のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0406】
115.前記方法が、皮下投与または静脈内投与などの前記ペプチドの非経口投与を含む、項目109~114のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0407】
116.前記個体が、ヒトである、項目109~115のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0408】
117.前記感染症が、細菌感染症またはウイルス感染症などの微生物による感染症である、項目109~116のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0409】
118.前記個体が、細菌感染症に罹患している、項目109~117のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0410】
119.前記細菌感染症が、急性または慢性細菌感染症、例えば、グラム陰性細菌による感染症である、項目118に記載の使用のためのペプチド。
【0411】
120.前記個体が、LPS、LTA及び/またはSA-PGNの増加したレベルのなど、エンドトキシンの増加したレベルを有する、項目109~119のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0412】
121.前記個体が、1つ以上の体液中の増加したレベルのエンドトキシンを有し、場合により、前記体液は、血液、血清、唾液、鼻咽頭スワブサンプル及び気管支肺胞洗浄(BAL)サンプルからなる群から選択され、さらに場合により、前記エンドトキシンが、LPSである、項目109~120のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0413】
122.前記LPSの増加したレベルが、少なくとも50pg/mlのLPSの血清レベルなど、少なくとも50pg/mlのレベルである、項目109~121のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0414】
123.前記個体が、ウイルス感染症に罹患している、項目109~122のいずれか1つに記載の使用のためのペプチド。
【0415】
124.前記ウイルス感染症が、Sタンパク質ウイルス、例えば、コロナウイルス科のウイルスによる感染症であり、前記ウイルスは、以下からなる群から選択される、項目123に記載の使用のためのペプチド:
PorCov-HKU15、
SARS-CoV、
HCoV NL63、
HKU1、
MERS-CoV、
SARS-CoV 2、及び
MERS-CoV。
【0416】
125.必要とする固体における、炎症及び/または感染症の治療及び/または予防の方法であって、治療有効量の項目1~107のいずれか1つに記載のペプチドを、前記個体に投与することを含む、前記方法。
【0417】
126.前記治療、前記炎症、前記感染及び/または前記個体が、項目110~124のいずれか1つに定義される、項目125に記載の方法。
【0418】
127.必要とする個体における、炎症及び/または感染症の治療及び/または予防のための医薬を調製するための、項目1~107のいずれか1つに記載のペプチドの使用。
【0419】
128.前記治療、前記炎症、前記感染及び/または前記個体が、項目110~124のいずれか1つに定義される、項目127に記載の使用。
【0420】
129.項目1~107のいずれか1つに記載のペプチドを含む医薬組成物。
【配列表】
【国際調査報告】