(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】抗菌性及び波長シフト性のナノ粒子を含むポリマー組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20241018BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20241018BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20241018BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20241018BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20241018BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20241018BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CER
C08L101/00
C08L63/00 C
C08L75/04
C08L83/04
C08K3/08
C08J3/22 CEZ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523633
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022047414
(87)【国際公開番号】W WO2023069704
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522014998
【氏名又は名称】エボク ナノ,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100133765
【氏名又は名称】中田 尚志
(72)【発明者】
【氏名】ニデルメイエール,ウィリアム
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA53
4F070AC06
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4J002AA021
4J002AA022
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4J002FB071
4J002FB072
4J002GB01
(57)【要約】
抗菌性及び波長シフト性金属ナノ粒子を含むポリマー組成物及びシステムの実施形態が開示される。金属ナノ粒子を含むポリマー組成物は、露出した材料をUV放射線から保護する。金属ナノ粒子を含むポリマー組成物は、入射UV光を、より長い波長を有し得る光にダウンコンバートする。予想外なことに、各々特定の粒径分布を有する少なくとも2つの異なる構成のナノ粒子成分(例:サイズ、形状、又はその両方が異なる)を選択することにより、UV放射への曝露に起因する損傷から領域を効果的に保護することが可能である。加えて、球状銀ナノ粒子は、化学合成によって製造された従来の銀ナノ粒子のように、細菌を抵抗性とすることはない。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子が埋め込まれたポリマー系製品の製造方法であって、前記方法は、
ナノ粒子溶液をポリマー顆粒に適用することであって、前記ナノ粒子溶液は、
金属ナノ粒子、及び
揮発性溶剤、
を含む、適用すること、
前記ナノ粒子溶液を含む前記ポリマー顆粒を加熱することであって、
前記ポリマー顆粒を加熱することで、前記揮発性溶媒を蒸発させ、
前記ポリマー顆粒を加熱することで、前記金属ナノ粒子を、溶融ポリマー全体にわたって均一に分散させる、
加熱すること、並びに
金属ナノ粒子が均一に分布した前記溶融ポリマーを、前記金属ナノ粒子が埋め込まれたプラスチック系製品に成形すること、
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が、金ナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が、金ナノ粒子と銀ナノ粒子との組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記プラスチック系製品中の前記埋め込まれたナノ粒子が、入射UV放射線をダウンシフトするように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記埋め込まれたナノ粒子が、入射UV放射線を、およそ200nmなど、少なくとも約50nm、又は少なくとも約100nm、又は少なくとも約150nmダウンシフトさせる、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記揮発性溶媒が、エタノール、イソプロピルアルコール、及びアセトンから成る群より選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
揮発性溶媒及び金属ナノ粒子を含むナノ粒子溶液、及び
前記ナノ粒子溶液でコーティングされた複数のポリマーペレット、
を含む、ポリマー組成物。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子を含む、請求項8に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記金属ナノ粒子が、金ナノ粒子を含む、請求項8又は9に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子及び金ナノ粒子を含む、請求項8~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
銀ナノ粒子対金ナノ粒子の比が、1:1~約50:1、又は約2.5:1~約25:1、又は約5:1~約20:1、又は約7.5:1~約15:1、又は約9:1~約11:1、又は約10:1である、請求項11に記載のポリマー組成物。
【請求項13】
前記金属ナノ粒子が、1~40nm、又は10~30nm、又は15~20nmのサイズの範囲である、請求項8~12のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項14】
前記金属ナノ粒子が、1~15ppm、又は1.5~10ppm、又は2~5ppmの濃度で存在する、請求項8~13のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項15】
多成分型硬化性樹脂であって、
前記多成分型硬化性樹脂の第1成分、
前記多成分型硬化性樹脂の第2成分、及び
前記第1成分及び第2成分の一方又は両方と組み合わされた金属ナノ粒子、
を含む、多成分型硬化性樹脂。
【請求項16】
エポキシ系、シリコーン系、及びウレタン系から選択される、請求項15に記載の多成分型硬化性樹脂。
【請求項17】
前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、及びこれらの混合物から選択される、請求項15又は16に記載の多成分型硬化性樹脂。
【請求項18】
前記金属ナノ粒子が、球状である、請求項15~17のいずれか一項に記載の多成分型硬化性樹脂。
【請求項19】
前記球状金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、及びこれらの混合物から成る群より選択される、請求項18に記載の多成分型硬化性樹脂。
【請求項20】
前記金属ナノ粒子が、サンゴ形状である、請求項15~19のいずれか一項に記載の多成分型硬化性樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、抗菌性及び波長シフト性のナノ粒子を含むポリマー組成物及びシステム、並びにポリマー製造プロセスにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医療及び他の用途に用いられるポリマーは、典型的には安価であり、多くの異なる医療機能にわたって用いられ得る。ポリマー物品は、射出成形プロセスを用いて製造され得る。射出成形されたポリマーに伴う課題の一つは、最終製品の表面仕上げ状態が、製品中の深さ数ミクロンまで伸びる場合がある細孔を伴うスポンジ状になり得ることである。
図1は、熱押出しペレットからのポリスチレン表面の走査型透過電子顕微鏡(STEM)画像であり、高い多孔度を有している。これは、細菌及び微生物が増殖するための絶好の保護された繁殖場所であり得、病院及び保険加入者にとって大きな懸念事項である。このため、感受性の高い領域で用いられるポリマーの管理には、高価で厳格な滅菌及び保管手順が必要とされ、それでも、汚染されたポリマーが患者への物質送達に用いられた場合は、組織を悪化させる結果となり得る。さらに悪いことに、薬剤耐性細菌及び/又は真菌による感染は、汚染されたポリマー製品から患者へと移った場合、高価な医療的維持管理を、さらには死亡を引き起こす場合さえある。
【0003】
抗生物質の過剰な使用は、微生物の新たに発見された株に見られる全体的な抗生物質耐性に寄与してきた。微生物の抗生物質耐性の増加は、現代の一般的な技術では制御することのできない可能性のある「スーパー耐性菌」に繋がり得ることが懸念されている。現時点では、抗生物質を用いない消毒及び微生物制御の一般的な方法はほとんど存在しない。患者が抗生物質耐性の微生物を有する場合、抗生物質を組み込んだ医療機器では、感染及びバイオフィルムの形成を阻止することはできない。このような場合、ポリマー材料中に抗生物質を用いることでは、患者は感染から保護されず、誤った安心感を与えてしまう可能性がある。
【0004】
イオン性コロイド銀及び銀ナノ粒子をポリマー材料に組み込んで、ポリマーに抗菌活性を付与しようとする試みがある。しかし、コロイド状銀(化学プロセスで作製されたこれまでの銀ナノ粒子)及びイオン性銀に対して、現在抗菌剤耐性が発見されている。McNeilly et al., “Emerging Concern for Silver Nanoparticle Resistance in Acinetobacter baumannii and Other Bacteria,” Front. Microbiol., 16 April 2021は、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、及びエンテロバクター属菌種(Enterobacter spp.)を含むいくつかの抗生物質耐性菌の出現について考察している。これらのうち、A.バウマンニが特に懸念され、大腸菌(E. coli)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、S.チフィリウム(S typhimurium)、B.スブチリス(B subtilis)、S.アウレウス、P.エルジノーサ、K.ニューモニエ、セラチア・マルセセンス(Serratia marcescens)、アシネトバクター属菌種と同様に、銀ナノ粒子に対しても耐性を確立していることが見出された。
【0005】
Silver, "Bacterial silver resistance: molecular biology and uses and misuses of silver compounds," FEMS Microbiology Reviews, Volume 27, Issue 2-3, June 2003, Pages 341-35は、銀耐性サルモネラ菌(Salmonella)及び大腸菌について考察している。Elkrewi, et al., "Cryptic silver resistance is prevalent and readily activated in certain Gram-negative pathogens," J. Antimicrob. Chemother., 2017 Nov 1;72(11):3043-3046は、エンテロバクター属菌種、クレブシエラ属菌種、大腸菌、シュードモナス・エルジノーサ、アシネトバクター属菌種、シトロバクター属菌種(Citrobacter spp.)、及びプロテウス属菌種(Proteus spp.)などのグラム陰性病原体による銀ナノ粒子耐性について開示している。Hosney, “The increasing threat of silver-resistance in clinical isolates from wounds and burns,” Infect Drug Resist. 2019; 12: 1985-2001は、銀耐性のクレブシエラ・ニューモニエ、スタフィロコッカス・アウレウス、大腸菌、エンテロバクター・クロアカ、シュードモナス・エルジノーサ、及びアシネトバクター・バウマンニについて考察している。Percival, et al., “Bacterial resistance to silver in wound care, J. Hospital Infection, Vol. 60, Issue 1, May 2005, pp. 1-7は、創傷における銀耐性微生物の恐ろしさと可能性について考察している。Kedziora, et al., “Consequences Of Long-Term Bacteria’s Exposure To Silver Nanoformulations With Different PhysicoChemical Properties,” Intl. J. of Nanomedicine, 2020:15 199-213は、銀耐性のグラム陽性菌及びグラム陰性菌について考察している。
【0006】
以下の表題の論文、“Are Silver Nanoparticles a Silver Bullet Against Microbes?”July 13, 2021, https://news.engineering.pitt.edu/are-silver-nanoparticles-a-silver-bullet-against-microbes/(2022年10月12日にアクセス)は、銀ナノ粒子耐性大腸菌について考察しており、以下の記載がある。「最初、細菌は、低濃度の銀ナノ粒子でしか生存できなかったが、実験を継続するうちに、著者らは、細菌がより高い用量でも生存可能であることを見出した。(中略)興味深いことに、著者らは、細菌が銀ナノ粒子に対しては耐性を確立するが、ナノ粒子から放出された銀イオン単独に対しては耐性を確立しないことを見出した。」このグループは、銀ナノ粒子に曝露させた大腸菌のゲノムを解読し、重金属イオンを細胞外に押出す排出ポンプに相当する遺伝子に変異を発見した。「何らかの形態の銀が細胞内に入り込み、それが到達すると、細胞はそれを素早くポンプ排出するように変異する、という可能性がある。(中略)研究者が粒子設計を通してこの耐性のメカニズムを克服できる可能性があるかどうかを判断するには、さらなる研究が必要である。」
また、化学合成によって製造された銀ナノ粒子は、銀イオンを放出することができる外部結合角及びエッジを有する。ポリマー中にイオンを放出する金属ナノ粒子を添加すると、銀イオンなどの不要な金属イオンの供給源であるナノ粒子含浸ポリマー及びプラスチックが得られ、これは一般に、人間及び動物の組織に対して毒性である。
【0007】
加えて、太陽放射線への曝露は、ポリマーに対して脆弱化及び他の構造的損傷を引き起こす可能性がある。UVエネルギーは、ポリマーによって吸収されると、電子を励起して、プラスチックの劣化に繋がり得るフリーラジカルを生成し得る。UV放射線の影響を受けたポリマーは、チョークのような外観と成り得、ポリマーの表面が脆弱と成り得、及びポリマーの表面に顕著な変色が生じ得る。UVに起因する劣化は、ポリマー製品に亀裂を生じさせる場合があり、及び製品の完全な故障を引き起こす可能性がある。例えば、ポリプロピレン及び/又は低密度ポリエチレンに当たったUV放射線は、その構造内の三級炭素結合と相互作用を起こす場合があり、次いでそれが大気中の酸素と相互作用を起こし得る。これにより、構造の主鎖にカルボニル基が生成されて、プラスチック製品が亀裂又は変色を起こし易くなるということに成り得る。
【0008】
紫外線B(「UVB放射線」)は、一般に、約280~約315ナノメートルの波長範囲内にあると考えられる。紫外線A(「UVA放射線」)は、一般に、約315~約400ナノメートルの波長範囲内にあると考えられる。紫外線C(UVC)は、一般に、約100~約280ナノメートルの波長範囲内にあると考えられる。
【0009】
以上を考慮すると、移植された医療機器のコロニー形成を防止する抗菌特性を有し、及び有毒な金属(例:銀)イオンを放出する金属ナノ粒子を用いない、改善されたポリマー材料を見出すことが依然として求められている。また、太陽光への曝露時にUV損傷に耐えることができる改善されたポリマー材料を見出すことも依然として求められている。
【発明の概要】
【0010】
抗菌性及び波長シフト性金属ナノ粒子を中に組み込むことによって改質されたポリマー組成物及びシステムの実施形態が開示される。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子を含むポリマー組成物は、露出した材料をUV放射線から保護する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子を含むポリマー組成物は、入射UV光を、ポリマー結合に対する損傷がより少ない又は損傷を与えない、より長い波長の光にダウンコンバートする。
【0011】
金属ナノ粒子を組み込むことによって改質された開示されるポリマー組成物はまた、ポリマー材料及び構造体の細孔内での微生物のコロニー形成を防止するための抗菌特性も有する。このようなナノ粒子改質ポリマーは、化学合成で製造された従来のコロイド状銀及び銀ナノ粒子で起こるような銀ナノ粒子抗生物質耐性を確立させない。驚くべきことに及び予想外なことに、レーザーアブレーションによって形成された非イオン性銀ナノ粒子は、化学合成で製造され、抗菌活性の主要モードとして銀イオンを放出することが知られているこれまでのコロイド状銀及び銀ナノ粒子を用いた場合に生ずるような銀ナノ粒子耐性を引き起こさないことが見出された。
【0012】
高エネルギー法によって製造され、滑らかな球状の形態を有し、粒径分布の狭い新規で独特な金属(例:銀)ナノ粒子を、成形可能ポリマーに組み込んで、プラスチックの周囲又はプラスチック自体の中に付着し得る細菌又は微生物を軽減可能であることが提案される。パーツの製造前に、中断することのないプロセスで金属ナノ粒子をポリマーに添加する方法も開示される。予想外なことに、レーザーアブレーションによって製造され、狭い粒径分布を有する球状銀ナノ粒子は、微生物耐性をもたらすことがなく、したがって、これまでの抗生物質、銀化合物、コロイド状銀、及び銀ナノ粒子に伴う非常に大きな問題が解決される。
【0013】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子組成物は、(1)キャリアと、(2)細菌、真菌、及びウィルスから選択される標的微生物を選択的且つ優先的に殺傷するように選択された粒径及び粒径分布を有する複数の金属(例:銀及び/又は金)ナノ粒子とを含み得る。
【0014】
標的微生物が細菌である場合、抗細菌性ポリマー組成物は、約3nm~約14nm、又は約5nm~約13nm、又は約7nm~約12nm、又は約8nm~約10nmの範囲内の粒径を有する球状金属(例:銀)ナノ粒子を含み得る。これらのサイズの範囲内で、特定の細菌を標的とするのに特に有効である特定のサイズの「デザイナー抗細菌性粒子」を選択することが可能である。
【0015】
標的微生物が真菌である場合、抗真菌性ポリマー組成物は、約9nm~約20nm、又は約10nm~約18nm、又は約11nm~約16nm、又は約12nm~約15nmの範囲内の粒径を有する球状金属(例:銀)ナノ粒子を含み得る。これらのサイズの範囲内で、特定の真菌を標的とするのに特に有効である特定のサイズの「デザイナー抗真菌性粒子」を選択することが可能である。
【0016】
標的微生物がウィルスである場合、抗ウィルス性ポリマー組成物は、約8nm以下、又は約1nm~約7nm、又は約2nm~約6.5nm、又は約3nm~約6nmの範囲内の粒径を有する金属(例:銀)ナノ粒子を含み得る。これらのサイズの範囲内で、特定のウィルスを標的とするのに特に有効である特定のサイズの「デザイナー抗ウィルス性粒子」を選択することが可能である。
【0017】
いくつかの実施形態では、球状金属ナノ粒子の少なくとも99%が、平均径の30%以内、若しくは平均径の20%以内、若しくは平均径の10%以内の粒径を有する、及び/又は球状金属ナノ粒子の少なくとも99%が、平均径の±3nm以内、若しくは平均径の±2nm以内、若しくは平均径の±1nm以内の粒径を有する平均径(数平均)と粒径分布とを有する球状金属(例:銀)ナノ粒子。
【0018】
いくつかの実施形態では、組成物は、球状金属ナノ粒子に加えて、サンゴ形状金属ナノ粒子を含み得る。サンゴ形状金属(例:金)ナノ粒子は、直角を持たずに一緒に接合された複数の非直線状ストランドによって形成された不均一な断面と球形構造とを有する。場合によっては、サンゴ形状金属ナノ粒子は、球状金属(例:銀)ナノ粒子の効果を増強するために用いられ得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子は、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、モリブデン、銅、鉄、ニッケル、スズ、ベリリウム、コバルト、アンチモン、クロム、マンガン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、バナジウム、ランタン、セリウム、これらの不均一混合物、及びこれらの合金から成る群より選択される少なくとも1つの金属を含み得る。銀、金、並びにこれらの混合物及び合金を含むナノ粒子は、特に有効であり得る。
【0020】
本明細書で用いられ得る金属(例:銀及び金)ナノ粒子及びナノ粒子組成物の例は、米国特許第9,849,512号、米国特許第9,434,006号、米国特許第9,919,363号、米国特許第10,137,503号、及び米国特許第10,610,934号に開示されており、これらは参照により本明細書に援用される。
【0021】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、後に所望される構造の製造品に熱可塑的に形成されるポリマービーズ又はペレットをコーティングすることなどによって、金属ナノ粒子が中に組み込まれた熱可塑性材料から製造され得る。他の実施形態では、ポリマー組成物は、金属ナノ粒子が組成物の一方又は両方の成分に含まれる2成分型組成物から製造され得る。いずれの場合も、金属ナノ粒子は、成形及び冷却前の溶融状態時又は成形及び熱硬化前の液体状態時のいずれにおいても、ポリマー組成物全体にわって混合された状態となる。
【0022】
いくつかの実施形態では、露出した材料をUV放射線から保護する方法は、(1)キャリア及び金属ナノ粒子を含むポリマー組成物を基材上に適用すること、並びに(2)ポリマー組成物が、その領域に入射するUV光の少なくとも一部分を反射及び/又はダウンコンバートすること、を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子は、球形状金属(例:銀)ナノ粒子及び/又はサンゴ形状金属(例:金)ナノ粒子を含み得る。いくつかの実施形態では、サンゴ形状金属ナノ粒子は、球形状金属ナノ粒子と共に用いられ得る(例:球形状金属ナノ粒子を増強するために)。
【0024】
いくつかの実施形態では、単一成分及び多成分ナノ粒子組成物などのナノ粒子組成物は、ナノ粒子の機能性を依然として維持しながらナノ粒子を溶液中に保持することができる安定剤を含む。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子は、既に製造されている包装材料に噴霧又はコーティングされる。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子は、熱可塑性プラスチックラップ、ポリスチレントレイ、固形プラスチック、ポリウレタンなどの包装材料に埋め込まれる。
【0025】
熱可塑性ポリマーから成形品を製造するために、金属ナノ粒子を揮発性溶媒中に分散させ、その分散体をポリマー顆粒に適用し、溶媒を蒸発させることなどによって、ポリマー製品の成形に用いられるポリマー顆粒が、金属(例:銀及び/又は金)ナノ粒子でコーティングされ得る。金属ナノ粒子でコーティングされたポリマー顆粒が、オーガ、押出機、又は射出成形機などの成形装置内で溶融状態に加熱されると、金属ナノ粒子は、溶融した熱可塑性ポリマー並びにそれから製造されたプラスチック材料及び物品全体にわたって分布した状態となる。
【0026】
熱硬化ポリマー製品の製造に2成分型硬化性樹脂が用いられる場合、金属ナノ粒子は、2成分系の一方又は両方の成分中に含まれていてよい。2つの成分が一緒に混合されると、金属ナノ粒子は、混合物全体にブレンドされ、組成物がどのような製品又は物品に成形されるかにかかわらず、その中の適切な位置で固化する。
【0027】
ポリマー材料の表面上の金属ナノ粒子の部分及び/又はポリマー表面と連通する細孔内に埋め込まれた金属ナノ粒子の部分は、ポリマー材料の表面上での微生物の増殖を防止するための抗菌活性を提供する。金属ナノ粒子はまた、入射UVエネルギーを、ポリマー材料に対して損傷が少ない又は損傷を与えない、より低いエネルギーの波長にダウンコンバートすることによって、UV放射線による損傷からポリマー材料を保護する。
【0028】
外部結合角及びエッジを持たないようにレーザーアブレーションによって製造され、水と接触した場合に検出可能な量の銀イオンを放出しない非イオン性銀ナノ粒子は、水中のナノ粒子を製品へのスプレーとして用いるEPAの表面消毒試験に合格することが既に知られている。本明細書で開示される、ナノ粒子が内部に埋め込まれたポリマー材料は、摩耗又は機械加工後であっても利用可能なナノ粒子を枯渇させない表面摩耗性を可能とする新規なアプローチである。フィラメントを直接試験し、及び表面消毒プログラムに用いられるペニシリンダー(peni-cylinders)と同様の被験体を、有効な細菌制御を測定するための確立した方法で試験した。
【0029】
本概要は、以下の詳細な記述においてさらに述べる一連の概念を簡略的に紹介するために提供される。本概要は、特許請求される主題の重要な特徴又は本質的な特徴を識別することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を示すものとして用いられることを意図するものでもない。
【0030】
本発明の様々な目的、特徴、特性、及び利点は、すべて本明細書の一部を構成する添付の図面及び添付の特許請求の範囲と合わせて、以下の実施形態の記述から明らかとなり、より容易に理解されるであろう。図面では、同様の符号が、様々な図において対応する又は類似の部分を指定するために用いられる場合があり、及び図示される様々な要素は、必ずしも縮尺通りに描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、熱押出しペレットからのポリスチレン表面の走査型透過電子顕微鏡(STEM)画像である。
【
図2A】
図2A~
図2Cは、銀(Ag)ナノ粒子を含む熱可塑性プラスチックを示すSTEM画像である。
【
図2B】
図2A~
図2Cは、銀(Ag)ナノ粒子を含む熱可塑性プラスチックを示すSTEM画像である。
【
図2C】
図2A~
図2Cは、銀(Ag)ナノ粒子を含む熱可塑性プラスチックを示すSTEM画像である。
【
図3A】
図3A~
図3Bは、基材から球形状金属ナノ粒子を吸収した後の微生物、及び球形状ナノ粒子によって触媒的に変性されているジスルフィド結合を模式的に示す図である。
【
図3B】
図3A~
図3Bは、基材から球形状金属ナノ粒子を吸収した後の微生物、及び球形状ナノ粒子によって触媒的に変性されているジスルフィド結合を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、MRSA SA62薬剤耐性細菌の内部における銀(Ag)ナノ粒子のSTEM画像を示す。
【
図5A】
図5A~
図5Cは、銀ナノ粒子が埋め込まれたTecoflex EG-93A-B20熱可塑性ポリマーのSTEM画像を示す。
【
図5B】
図5A~
図5Cは、銀ナノ粒子が埋め込まれたTecoflex EG-93A-B20熱可塑性ポリマーのSTEM画像を示す。
【
図5C】
図5A~
図5Cは、銀ナノ粒子が埋め込まれたTecoflex EG-93A-B20熱可塑性ポリマーのSTEM画像を示す。
【
図6A】
図6A~
図6Cは、銀ナノ粒子が埋め込まれたIsoplast 2510熱可塑性ポリマーのSTEM画像を示す。
【
図6B】
図6A~
図6Cは、銀ナノ粒子が埋め込まれたIsoplast 2510熱可塑性ポリマーのSTEM画像を示す。
【
図6C】
図6A~
図6Cは、銀ナノ粒子が埋め込まれたIsoplast 2510熱可塑性ポリマーのSTEM画像を示す。
【
図7A】
図7Aは、銀(Ag)ナノ粒子で処理された工業用熱可塑性プラスチックペレットを示す。
【
図7B】
図7Bは、
図7Aに示されるものなどの熱可塑性プラスチックペレットからの押出しフィラメントを示す。
【
図8A】
図8A~
図8Bは、熱可塑性材料に埋め込まれた球形状銀(Ag)ナノ粒子の拡大STEM像を示す。
【
図8B】
図8A~
図8Bは、熱可塑性材料に埋め込まれた球形状銀(Ag)ナノ粒子の拡大STEM像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
抗菌性及び波長シフト性金属ナノ粒子を含むポリマー組成物及びシステムの実施形態が開示される。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子を含むポリマー組成物は、露出した材料をUV放射線から保護する。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子を含むポリマー組成物は、入射UV光を、より長い波長を有する光にダウンコンバートする。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子を含むポリマー組成物は、抗菌特性を有する。驚くべきことに及び予想外なことに、レーザーアブレーションによって形成された非イオン性銀ナノ粒子は、化学合成で製造され、抗菌活性の主要モードとして銀イオンを放出することが知られている従来のコロイド状銀及び銀ナノ粒子を用いた場合に生ずるような銀ナノ粒子耐性を引き起こさない。
【0033】
いくつかの実施形態では、各々が特定の粒径分布を有する、少なくとも2つの異なる構成のナノ粒子成分(例:サイズ、形状、又はその両方が異なる)を選択し、それら少なくとも2つのナノ粒子成分を安定剤(天然ベースのポリフェノール又は他のクリーム若しくはゲル又は他の界面活性剤など)で安定化させることにより、UV放射線への曝露に起因する損傷からある領域を効果的に保護することが可能である。
【0034】
I.概論
「ナノ粒子」の用語は、多くの場合最大寸法が100nm未満である粒子を意味する。バルク材料は、典型的にはサイズに関係なく一定の物理的特性を有するが、ナノスケールでは、サイズに依存した特性が多くの場合観察される。したがって、材料の特性は、そのサイズがナノスケールに近づくに従って、及び材料表面の原子の割合が大きくなるに従って、変化する。1マイクロメートル(又はミクロン)より大きいバルク材料の場合、材料のバルク中の原子数に対して、表面の原子の割合は重要ではない。したがって、ナノ粒子の興味深く、場合によっては予想外でもある特性は、材料の比較的小さいバルクによる寄与よりも優位となっている材料の大きい表面積に主として起因している。
【0035】
特定のタイプ又はクラスの微生物を標的とすることができる金属ナノ粒子を選択及び使用可能であることは、多くの有益性を提供する。ある特定のナノ粒子径のみが特定の微生物又は微生物クラスを殺傷するのに有効である場合、正しい粒径の狭い粒径分布内の金属ナノ粒子を提供することで、標的微生物を殺傷するのに有効であるナノ粒子の割合が最大化され、及び標的微生物を殺傷するのに有効性が低い、又は有効ではないナノ粒子の割合が最小化される。そしてこのことにより、標的微生物の所望される殺傷率又は不活性化率を提供するのに必要とされるナノ粒子の全体量又は濃度が大幅に減少する。不適切なサイズのナノ粒子を排除することはまた、組成物が非標的微生物又は健康な哺乳類細胞若しくはヒト細胞などの他の細胞を殺傷する又は傷つける傾向も低減する。このようにして、高度に特異的な抗菌性組成物は、有害な微生物をより良好に標的化することができると同時に、ヒト、動物、及び植物に対してより有害性が低い又はさらには無毒である。
【0036】
さらに、他の銀ナノ粒子に関する広範なデータを考えると予想外であることには、レーザーアブレーションによって形成された非イオン性金属ナノ粒子は抗菌剤耐性をもたらさないことがここで発見されたことから、微生物を効果的に殺傷するのに必要とされる銀ナノ粒子の濃度は、経時で本質的に変化しない。このことは、外部結合角を有し、典型的にはその抗菌活性の一部として銀イオンを放出する化学プロセスによって製造された銀ナノ粒子とは対照的である。従来の銀ナノ粒子に対する抗菌剤耐性が確立された場合、微生物を殺傷する能力を維持するためには、そのようなナノ粒子の濃度を高めることが必要である。
【0037】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子組成物は、(1)ポリマー及び/又はポリマー構造体又は製造品、及び(2)細菌、真菌、及びウィルスから選択される標的微生物を選択的且つ優先的に殺傷するように選択された粒径及び粒径分布を有する複数の金属ナノ粒子を含み得る。金属ナノ粒子は、有利には、非イオン性の基底状態であり、金属イオンを放出し得る外部エッジ又は結合角を有しない。典型的には球状金属ナノ粒子が微生物を殺傷するために用いられるが、サンゴ形状金属ナノ粒子が、典型的には球状金属ナノ粒子と組み合わせて、抗菌活性を提供してもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子は、金属イオンを放出し得る外部エッジ又は結合角を有しない、非イオン性で基底状態の金属ナノ粒子を含み得る、又は本質的にそれから成り得る。例としては、球状金属ナノ粒子、サンゴ形状金属ナノ粒子、及び球状金属ナノ粒子とサンゴ形状金属ナノ粒子とのブレンドが挙げられる。
【0039】
球状ナノ粒子及びサンゴ形状ナノ粒子を含む金属ナノ粒子は、銀、金、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、モリブデン、銅、鉄、ニッケル、スズ、ベリリウム、コバルト、アンチモン、クロム、マンガン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、バナジウム、ランタン、セリウム、これらの不均一混合物、又はこれらの合金のうちの少なくとも1つを含む、所望されるいかなる金属、金属の混合物、又は金属合金を含んでもよい。銀、金、並びにこれらの混合物及び合金を含むナノ粒子は、特に有効であり得る。
【0040】
太陽放射線の吸収は、ナノ粒子で構成された材料の方が、材料の連続シートである薄膜よりもはるかに高い。太陽光PV及び太陽熱用途の両方において、粒子のサイズ、形状、及び材料を制御することにより、太陽光吸収を制御することが可能である。ナノ粒子のサイズに依存した特性変化としては、半導体粒子における量子閉じ込め、いくつかの金属粒子における表面プラズモン共鳴、及び磁性材料における超常磁性が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態では、金(Au)ナノ粒子は、入射UV放射線をダウンシフトするために、ポリマー組成物中に含まれる。金ナノ粒子は、光波を、より波長の長い、エネルギー及び有害性が低下した光にダウンコンバートし得る。金ナノ粒子は、光の波長を、光スペクトルの赤色ゾーンに向かってダウンコンバートし得る。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子は球状である。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子の粒径は、およそ1~40nmである。
【0042】
いくつかの実施形態では、銀(Ag)ナノ粒子は、ポリマー組成物に抗菌特性を付与するために、ポリマー組成物中に含まれる。銀ナノ粒子は、微生物に飲み込まれる又は摂取されることが可能であり、及び銀ナノ粒子は、微生物の生命に関わるタンパク質を破壊して、微生物を効果的に不活性化又は殺傷し得る。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子は球状である。いくつかの実施形態では、銀ナノ粒子の粒径は、およそ1~10nmである。
【0043】
本明細書で用いられ得る金属ナノ粒子及びナノ粒子組成物の例は、米国特許第9,849,512号、米国特許第9,434,006号、米国特許第9,919,363号、米国特許第10,137,503号、及び米国特許第10,610,934号に開示されており、これらは参照により本明細書に援用される。
【0044】
II.プラスチック製造
一般的なプラスチック製造プロセスには、押出成形及び射出成形がある。医療用熱可塑性プラスチックの多くは、この2つのプロセスのうちの一方を用いて製造される。押出プロセスでは、ポリマーのペレット又は顆粒が、ホッパーによって押出機に供給される。ポリマーペレット又は顆粒は、バレル内で、場合によってはオーガの補助と共に、加熱、溶融される。溶融したポリマーは、スクリューオーガによって金属ダイを通して押出され、固定された連続形状となる。得られたポリマー物体は、所望に応じて切断又はトリミングされ得る。押出プロセスは、一般的には、パイプ、チューブ、フレーム、対称のデバイスなどの製造に用いられる。
【0045】
射出成形は、溶融した熱可塑性ポリマーを既存の金型に注入することを含む。溶融した熱可塑性ポリマーは、ポリマーのペレット又は顆粒を加熱することによって形成され得る。金型に注入されると、ポリマーは、冷却及び硬化して最終形状となる。溶融したポリマーは、押出プロセスと同様に作製され、ポリマーのペレット又は顆粒が、ホッパーによってバレル又は他のチャンバーに供給され、続いてそこで加熱(及び溶融)される。中空製品が所望される場合は、押出成形と射出成形とを組み合わせたプロセスが用いられ得る。
【0046】
添加剤がプラスチックのペレット又は顆粒に含まれてもよく、これらが溶融されて最終製品が作製される。着色剤、補強剤、及び他の増強剤が、加熱前にペレット上にスプレー又はコーティングされてもよい。例えば、着色剤は、多くの場合、揮発性溶媒に溶解又は分散され、その後ペレット上にスプレーされる。加熱すると、揮発性溶媒は蒸発し、着色剤はペレットに均一に分散して残される。着色剤は、溶融したプラスチック中に均一に組み込まれ、その結果、均一に着色された製品となる。他の添加剤も同様に、最終プラスチック製品中に組み込まれ得る。
【0047】
熱硬化性ポリマーもまた、所望される物体に成形又は形状化することができる有用な材料である。熱硬化性ポリマーは、融点を超えて加熱されるのではなく、典型的には、一緒に反応して流動性の初期混合物を形成するように配合された2つ以上の別々の初期成分を混合することによって形成される。流動性混合物は、熱可塑性材料と同様の方法で所望される形状に成形することができる。熱硬化性組成物中の成分は、一緒に反応して重合及び/又は架橋を引き起こし、固化された熱硬化性ポリマーを形成する。
【0048】
医療機器及び他のポリマー物体又は形態を製造するための一般的な材料の例としては、シリコーン、エポキシ、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、エチレン-酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリカーボネート(PC)、ポリウレタン(PU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエステル(PES)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、フェノール-ホルムアルデヒド(PF)、ナイロン又はポリイミド(PA)、メラミンホルムアルデヒド(MF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンターポリマー(ABS)、ケブラー(登録商標)、及び炭素繊維強化ポリマーが挙げられる。PE及びPVCなどの熱可塑性プラスチックは、プラスチック製造中に何回も溶融、加熱され得る。PU及びシリコーンなどの熱硬化性プラスチックは、硬化プロセスでプラスチックが固化された後、固体を維持する。
【0049】
III.ナノ粒子組成物
金属ナノ粒子及びナノ粒子組成物は、典型的には、存在すれば金属イオンを放出し得る外部エッジ又は結合角を有しない、非イオン性で基底状態の金属ナノ粒子を含む。ナノ粒子組成物は、球状金属ナノ粒子、サンゴ形状金属ナノ粒子、又はこれら2つの組み合わせを含み得る。典型的には球状金属ナノ粒子が微生物を殺傷するために用いられるが、サンゴ形状金属ナノ粒子が、典型的には球状金属ナノ粒子と組み合わせて、抗菌活性を提供してもよい。
【0050】
存在すれば金属イオンを放出し得る外部エッジ又は結合角を有しない、非イオン性で基底状態の球状金属ナノ粒子、及びそのようなナノ粒子を含む組成物は、米国特許第9,849,512号、米国特許第10,137,503号、及び同第10,610,934号の開示内容に従って製造され得る。存在すれば金属イオンを放出し得る外部エッジ又は結合角を有しない、非イオン性で基底状態のサンゴ形状金属ナノ粒子、及びそのようなナノ粒子を含む組成物は、米国特許第9,919,363号の開示内容に従って製造され得る。球状金属ナノ粒子とサンゴ形状金属ナノ粒子との混合物を含む組成物は、米国特許第9,434,006号に開示されている。前述の特許は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0051】
標的微生物が細菌である場合、抗細菌性ポリマー組成物は、約3nm~約14nm、又は約5nm~約13nm、又は約7nm~約12nm、又は約8nm~約10nmの範囲内の粒径を有する球状金属ナノ粒子を含み得る。これらのサイズの範囲内で、特定の細菌を標的とするのに特に有効である特定のサイズの「デザイナー抗細菌性粒子」を選択することが可能である。
【0052】
標的微生物が真菌である場合、抗真菌性ポリマー組成物は、約9nm~約20nm、又は約10nm~約18nm、又は約11nm~約16nm、又は約12nm~約15nmの範囲内の粒径を有する球状金属ナノ粒子を含み得る。これらのサイズの範囲内で、特定の真菌を標的とするのに特に有効である特定のサイズの「デザイナー抗真菌性粒子」を選択することが可能である。
【0053】
標的微生物がウィルスである場合、抗ウィルス性ポリマー組成物は、約8nm以下、又は約1nm~約7nm、又は約2nm~約6.5nm、又は約3nm~約6nmの範囲内の粒径を有する金属ナノ粒子を含み得る。これらのサイズの範囲内で、特定のウィルスを標的とするのに特に有効である特定のサイズの「デザイナー抗ウィルス性粒子」を選択することが可能である。
【0054】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子ポリマー組成物は、ポリマー組成物の重量基準で、約50ppb~約100ppm、又は約100ppb~約50ppm、又は約200ppb~約20ppm、又は約400ppb~約10ppm、又は約600ppb~約6ppm、又は約800ppb~約4ppm、又は約1ppm~3ppm、又は約2ppmの濃度のナノ粒子を含み得る。組成物は、この段落の前述の値のいずれか2つによって定められる終点を持つ濃度範囲のナノ粒子を含み得る。
【0055】
a.多成分ナノ粒子組成物
いくつかの実施形態では、サンゴ形状金属ナノ粒子が、球状金属ナノ粒子と合わせて用いられ得る。一般に、球状金属ナノ粒子は、サンゴ形状金属ナノ粒子よりも小さくてよく、この方法により、所望される反応を触媒するための又は他の所望される有益性を提供するための、非常に高い表面積を提供することができる。一方、一般的にはより大きいサンゴ形状ナノ粒子は、サンゴ形状ナノ粒子が、中実のコア及び外部表面のみではなく、内部の空間及び表面を有することから、球状ナノ粒子と比較して単位質量当たりにより高い表面積を呈し得る。
【0056】
場合によっては、球状ナノ粒子及びサンゴ形状ナノ粒子の両方を含むナノ粒子組成物を提供することで、相乗効果が得られ得る。例えば、サンゴ形状ナノ粒子は、それら自体の独自の有益性を提供することに加えて、球状ナノ粒子の活性を保持及び/又は増強する補助と成り得る。例えば、より小さい粒子は、UVB放射線に対してより良好な相対的保護を提供し得るものであり、一方、比較的大きい粒子は、UVA放射線に対してより良好な保護を提供し得る。いくつかの実施形態では、球状ナノ粒子とサンゴ形状ナノ粒子との組み合わせは、単一のサイズ及び/又は形状の組成物と比較して、活性原料成分の単位量当たりの保護量(例:反射されるUV放射線の量)がより大きい相乗的な広スペクトル保護をもたらすことができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物中の球状ナノ粒子対サンゴ形状ナノ粒子の質量比は、約1:1~約50:1、又は約2.5:1~約25:1、又は約5:1~約20:1、又は約7.5:1~約15:1、又は約9:1~約11:1、又は約10:1の範囲内であり得る。ナノ粒子組成物中の球状ナノ粒子対サンゴ形状ナノ粒子の粒子数比は、約10:1~約500:1、又は約25:1~約250:1、又は約50:1~約200:1、又は約75:1~約150:1、又は約90:1~約110:1、又は約100:1の範囲内であり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、球状金属ナノ粒子は、約40nm以下、約35nm以下、約30nm以下、約25nm以下、約20nm以下、約15nm以下、約10nm以下、約7.5nm以下、又は約5nm以下の粒径を有し得る。球状金属ナノ粒子は、金属ナノ粒子の少なくとも99%が、平均径の30%以内、若しくは平均径の20%以内、若しくは平均径の10%以内の粒径を有する、及び/又は球形状ナノ粒子の少なくとも99%が、平均径の±3nm以内、若しくは平均径の±2nm以内、若しくは平均径の±1nm以内の粒径を有する粒径分布を有し得る。球状ナノ粒子は、少なくとも約±10mV(絶対値)、又は少なくとも約±15mV、又は少なくとも約±20mV、又は少なくとも約±25mV、又は少なくとも約±30mVのξ電位を有し得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、球状ナノ粒子及び/又はサンゴ形状ナノ粒子の少なくとも一部分は、金、白金、銀、パラジウム、ロジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、モリブデン、銅、鉄、ニッケル、スズ、ベリリウム、コバルト、アンチモン、クロム、マンガン、ジルコニウム、スズ、亜鉛、タングステン、チタン、バナジウム、ランタン、セリウム、これらの不均一混合物、及びこれらの合金から成る群より選択される少なくとも1つの金属を含み得る。銀、金、並びにこれらの混合物及び合金を含むナノ粒子は、特に有効であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子の第1又は第2のセットの少なくとも一方が、特定の範囲の太陽放射線を選択的に反射、遮断、及び/又は散乱するように選択される。例えば、第1のセットの金属ナノ粒子は、より小さい相対サイズを有し、したがって、より強くUVB放射線を選択的に反射、散乱、及び/又は遮断する球形状金属ナノ粒子として選択されてよく、並びに第2のセットの金属ナノ粒子は、より大きい相対サイズを有し、したがって、より強くUVA放射線を選択的に反射、散乱、及び/又は遮断するサンゴ形状金属ナノ粒子として選択されてよい。他の実施形態では、第1及び第2のセットのナノ粒子は、いずれも球状であってよく、又はいずれもサンゴ形状であってよいが、異なる粒径及び/又は粒径分布を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの球状抗菌性ナノ粒子成分及びより大きいサンゴ形状ナノ粒子成分を含む。これらの実施形態では、少なくとも1つの選択された球状ナノ粒子成分は、組成物中に、約1~約15ppmの範囲内(例:1ppm以上及び15ppm以下)、より詳細には、約1~約5ppmの範囲内(例:1ppm以上及び5ppm以下)で存在する。加えて、いくつかの実施形態では、より大きいサンゴ形状ナノ粒子は、溶液中に、約1~約5ppmの範囲内(例:1ppm以上及び5ppm以下)、より詳細には、約1~約3ppm(例:1ppm以上及び3ppm以下)で存在する。上限濃度が、有効性によってはそれほど制限されず、製品の製剤コストによってより制限されることは理解されるべきである。したがって、他の実施形態では、球形状ナノ粒子成分は、5ppmを超える濃度で存在してもよく、及び/又はサンゴ形状ナノ粒子成分は、3ppmを超える濃度で存在してもよい。
【0062】
いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子を含む組成物は、ナノ粒子が埋め込まれたプラスチック製品を製造するためのプラスチック製造プロセスで用いられ得る。いくつかの実施形態では、金属ナノ粒子を含む組成物は、製品に後から(retroactively)適用される。例えば、組成物は、プラスチックチューブの内側に適用されるべきコーティングであり得る。組成物は、プラスチックチューブ上にコーティングされて、抗菌効果及びUV保護効果を提供し得る。
【0063】
IV.ナノ粒子の抗細菌活性
図2A~
図2Cは、抗菌性及び/又は波長シフト性を備えたポリマー組成物が得られる、銀(Ag)ナノ粒子を含む熱可塑性プラスチックを示すSTEM画像である。
【0064】
図3A~
図3B及び
図4は、基材から球形状金属ナノ粒子を吸収した後の微生物、及びその後の微生物タンパク質の変性を模式的に示す。
図3A~
図3Bは、基材から球形状金属ナノ粒子を吸収した後の微生物、及び球形状ナノ粒子によって触媒的に変性されているジスルフィド結合を模式的に示す。
【0065】
図4は、MRSA SA62薬剤耐性細菌の内部における銀(Ag)ナノ粒子のSTEM画像を示す。STEM画像を電子回折分光法と連携させることで、ジスルフィド結合及びフェレドキシンの露出部位からの硫黄の放出が確認された。
【0066】
図3Aは、能動的吸収又は他の輸送機構などによって、固体基材602から球形状ナノ粒子604を吸収した微生物608を模式的に示す。別の選択肢として、球形状ナノ粒子604は、液体又はゲルキャリア中など、組成物(図示せず)中に提供されてもよい。ナノ粒子604は、微生物608の内部606全体を自由に動いて、変性されると微生物を殺傷又は無力化することになる1若しくは複数の生命に関わるタンパク質又は酵素610と接触することができる。
【0067】
ナノ粒子が微生物を殺傷又は変性し得る1つの方法は、生命に関わるタンパク質又は酵素内にあるジスルフィド(S-S)結合の開裂を触媒することによる。
図3Bは、ジスルフィド結合を有する微生物タンパク質又は酵素710が、隣接する球形状ナノ粒子704によって触媒変性されて、変性されたタンパク質又は酵素712となる様子を模式的に示す。細菌又は真菌の場合、生命に関わるタンパク質又は酵素のジスルフィド結合の開裂及び/又は他の化学結合の開裂が、細胞の内部で発生することにより、この方法で微生物が殺傷され得る。そのようなジスルフィド(S-S)結合の触媒開裂は、微生物のタンパク質構造が概して単純であることによって促進され、微生物の場合、多くの生命に関わるジスルフィド結合は露出した状態であり、触媒によって容易に開裂される。
【0068】
金属(例:銀)ナノ粒子が微生物を殺傷可能となる別の考え得る機構は、アミド結合を含むがこれに限定されないタンパク質の結合を酸化開裂することができる過酸化物などの活性酸素種の生成によるものである。
【0069】
非イオン性金属ナノ粒子は、微生物に対しては致死的な性質であるにもかかわらず、ヒト、哺乳類、及び健康な哺乳類細胞に対しては、それらが単純な微生物と比較して非常により複雑なタンパク質構造を有し、生命に関わるジスルフィド結合のほとんど又はすべてが、タンパク質の他のより安定な領域によって保護されているため、本質的に無害且つ無毒性である。多くの場合、非イオン性ナノ粒子は、ヒト又は哺乳類の細胞に対する相互作用又は接着を起こさず、腎臓、又は他の細胞、組織、若しくは臓器を損傷することなく、速やかに且つ安全に尿から排出可能である。
【0070】
銀(Ag)ナノ粒子の特定の場合では、銀(Ag)ナノ粒子の微生物内での相互作用は、従来のコロイド状銀組成物を用いた場合に典型的であるような、銀イオン(Ag+)の生成に依存して所望される抗菌効果を得るという必要なしに、特に致死的であることが示された。銀(Ag)ナノ粒子が、毒性の銀イオン(Ag+)を患者若しくは周囲環境中に著しく又は実際に放出することなく、効果的な微生物制御を提供することができることは、本技術分野における実質的な進歩である。銀ナノ粒子から放出される銀イオンは、存在するとしても、どのような量又は濃度であっても、哺乳類、鳥類、爬虫類、魚類、及び両生類などの動物に対する既知の又は固有の毒性レベルよりも充分に低い。
【0071】
本明細書で開示されるレーザーアブレーションを用いて製造された非イオン性銀ナノ粒子は、抗菌性銀ナノ粒子耐性を引き起こすことが知られている従来の銀ナノ粒子と比較した利点を有する。従来の又はこれまでの銀ナノ粒子は、様々な化学合成法に従って製造される。これらの様々な化学合成法を用いて形成されたナノ粒子は、丸く滑らかな表面を有する真の球形状ではなく、クラスター状、結晶状、ファセット状(faceted)、又は多面体様の形状を呈する傾向にある。クラスター状のナノ粒子は、比較的広い粒径分布を有し得る。銀ナノ粒子は、真の球形状とは反対に、多面体形状であるなどの、多くのエッジを有する粗い表面形態を有する場合がある。場合によっては、銀ナノ粒子は、非金属シード材料上に形成された銀のシェルとして形成される。
【0072】
背景技術のセクションで考察したように、化学プロセスを用いて製造された従来の銀ナノ粒子は、抗菌剤耐性を引き起こすことが知られており、これは、微生物を殺傷する効果が経時で低下することを意味する。いくつかの研究では、イオン性銀に対する微生物の耐性が、僅か6継代又は世代で示された。
【0073】
様々な細菌及び他の微生物に対して経時でその抗菌効果を喪失する化学合成を用いて製造されたものなどの従来のナノ粒子とは対照的に、本明細書に記載のレーザーアブレーションによって形成された球形状ナノ粒子は、中実の金属であり、実質的にクラスター化されておらず、所望に応じて露出されており/コーティングされておらず、狭い粒径分布と共に滑らかで丸い表面形態を有する。これらは、28継代後であっても安定した抗菌活性を有することが示され、MIC(最小発育阻止濃度)が悪化しないなど、抗菌活性の低下を伴わない。
【0074】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、1~2mg/L(1~2ppm)の濃度のナノ粒子を含む。いくつかの実施形態では、組成物はまた、抗菌性でないレベルでラウレル硫酸ナトリウム(sodium laurel sulfate:SLS)を含む。SLSが銀ナノ粒子と混合されると、銀ナノ粒子の抗菌効果が著しく高くなる。これは、SLSが、SLSと会合したナノ粒子の細菌又は他の微生物への取り込みを促進するためである。
【0075】
V.ナノ粒子 - UV保護
本明細書に開示されるタイプで、10~40nmの範囲内の粒径又はサイズを有する金属ナノ材料は、ゆるい誘電場を有する。大量の粒子が一緒に存在する場合、通過する光波に対する誘電効果は、減衰はしないが、電磁スペクトルの赤色端又は青色端のいずれかに向かって周波数シフトを起こし得る。充分な量のナノ粒子を有するポリマー組成物は、UV線に変化をもたらしてスペクトルの赤色端にそれをシフトさせ、全体的な損傷を低減するレベルで光エネルギーの進入を低減し得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、入射UV放射線を反射及び/又は散乱させるために、高い屈折率を有する金属ナノ粒子を含み得る。例えば、本開示のポリマー組成物に用いられるナノ粒子及び/又は多成分ナノ粒子は、約1.5~約4.6、又は約2.0~約4.0、又は約2.5~約3.5のUVA及び/又はUVB放射線に対する屈折率を有し得る。いくつかの実施形態では、ナノ粒子及び/又は多成分ナノ粒子の屈折率は、UVA放射線と比較してUVB放射線に対する方が高い(例:屈折率は、波長が短くなるにつれて高くなる)。しかし、他の実施形態では、ナノ粒子及び/又は多成分ナノ粒子の屈折率は、UVA放射線と比較してUVB放射線に対する方が低い(例:屈折率は、波長が長くなるにつれて高くなる)。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、太陽放射線に対する曝露時に(例:約15の比較的高いUV指数の環境中において)、少なくとも所与の時間(例:約1時間、又は約2~4時間、又は約4~6時間、約6~12時間若しくはそれ以上、又はさらには無期限)にわたって、ナノ粒子及び/又は多成分ナノ粒子がUV放射線保護効果を低下させない又は喪失しないような光安定性(例:約100%の有効性を維持する、又は約95~100%の有効性を維持する、又は約90~100%の有効性を維持する、又は約80~100%の有効性を維持する)を有するナノ粒子を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、放射線保護特性を呈する。例えば、いくつかの実施形態は、有害な放射線(例:アルファ粒子、ベータ粒子、及び/又はガンマ線)を吸収するように構成された複数のナノ粒子(例:ベリリウム及び/又は金)を含み、それによって、ナノ粒子で処理された材料を通過する放射線の量を低減又は排除する。
【0079】
いくつかの実施形態では、プラスチック材料全体に均一に分散された金ナノ粒子は、入射UV放射線を、有害性の低いUV放射線にダウンコンバートする。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子は、入射UV放射線を、およそ200nmなど、少なくとも約50nm、又は少なくとも約100nm、又は少なくとも約150nmダウンシフトさせ得る。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子は、入射UV放射線を、UV光から可視光にダウンシフトさせ得る。いくつかの実施形態では、金ナノ粒子は、入射UV放射線を、UV波長から赤色波長及び/又は緑色波長に向かってダウンシフトさせ得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物全体に均一に分散された金ナノ粒子は、高エネルギーでの入射UV放射線を吸収して低エネルギー波長を放出することができ、それによって、ポリマー組成物及びそれから製造される製品に対してUV保護を付与する。予想外なことには、参照により本明細書に援用される米国特許第9,434,006(B2)号に概説される方法によって製造された金ナノ粒子が、波長/放射線エネルギーのこのダウンシフトを永続的に行う能力は、使用と共に劣化しない。すなわち、金ナノ粒子は、そのUV保護能力を無期限に保持し、入射UV放射線によって劣化しない。このことにより、有益なことには、ポリマー組成物及びそれから製造されるプラスチック製品の効果が長く維持される。これはまた、より低濃度の金ナノ粒子、又は他の波長シフト性金属ナノ粒子が用いられ、その結果として、完全性を維持しながらより安価に製造される製品を得ることができることも意味する。
【0081】
VI.ナノ粒子埋め込みポリマーの製造方法
中断することなくポリマーにナノ粒子を添加する方法が開示される。金属ナノ粒子の製造方法(上記参照)により、ナノ粒子は、ポリマーペレット又は顆粒に直接適用可能な液体中で製造することができる。例えば、レーザーアブレーションによって形成されたナノ粒子(米国特許第9,849,512(B2)号、同第9,434,006(B2)号、及び/又は同第9,919,363(B2)号に記載されているものなど)は、エタノール、イソプロピルアルコール、又はアセトンなどの溶媒中に分散されていてよく、押出成形又は射出成形プロセスの前にポリマーペレット又は顆粒に適用されてよい。ナノ粒子でコーティングされたポリマーペレット又は顆粒が、例えば押出成形又は射出成形プロセスの前又は最中に加熱されると、溶媒は蒸発し、ナノ粒子は、得られる溶融プラスチック中に均一に組み込まれる。溶媒は、揮発性溶媒、ガス状溶媒、又は他の適切な蒸発性溶媒であってよい。
【0082】
均一に分散したナノ粒子を含む得られた溶融ポリマーは、続いて、押出成形、射出成形、又は他のプラスチックプロセスで用いられて、ポリマー系製品が製造され得る。最終的なポリマー系製品は、製品の全体にわたって均一に分散したナノ粒子を含む。例えば、この溶融ポリマーから製造されたチューブは、抗菌性とすること、及びUV放射線からチューブを保護することが可能とされた、均一に分布したナノ粒子を含む。
【0083】
ポリマー系の医療機器又は他の製造品は、UV放射線及び微生物の増殖から保護される。ポリマー系の装置又は物品中に埋め込まれた金属ナノ粒子は、入射UV放射線をより低いエネルギーの放射線にダウンコンバートすることができる。これは、有益なことには、UV放射線によるポリマー系の装置又は物品の一般的な劣化を防止する。ポリマー系の装置又は物品は、亀裂、変色、曇り、漏れ、及び/又は完全な故障を起こすことなく、より長期間にわたって使用することができる。
【0084】
金属ナノ粒子はまた、微生物を不活性化又は殺傷することができ、ポリマー系製品の内部に微生物が蓄積するのを防ぐことができる。このことにより、有益なことには、特に医療現場(病院又は診療所など)において、ポリマー系製品の使用期間が長くなる。これはまた、ポリマー系製品の滅菌を長く維持し、保管及び滅菌処置のコスト低減に繋がる。
【実施例】
【0085】
VII.例
実施例1
金属ナノ粒子(銀及び/又は金)を、99.9%のイソプロピルアルコールに懸濁した。誘導結合プラズマ発光分光分析(ICPOES)を用いて、ナノ粒子濃度を確認した。動的光散乱(DLS)を用いてナノ粒子径を確認したところ、およそ6~10nmであることが分かった。電子損失分光法(ELS)を用いたSTEMイメージングにより、表面組成及びより短い結合長を確認した。
【0086】
薬剤耐性細菌は、0.5mg/L(0.5ppm)~2mg/L(2ppm)のナノ粒子の濃度範囲で殺傷されることが分かった。薬剤耐性細菌を殺傷することが見出された最高濃度は、8mg/L(8ppm)であった。染色剤を用いず、3nmのカーボンコーティングを施した暗視野カメラを用いたSTEMイメージングにより、細菌の中及び細菌周辺にあるナノ粒子の追跡が可能となった(
図4参照)。STEMイメージングを電子回折分光法(EDS)と連動させることで、ジスルフィド結合及びフェレドキシンの露出部位からの硫黄の放出が確認された。
【0087】
実施例2
銀ナノ粒子を埋め込んだポリエチレン(PE)を、抗細菌性について試験した。2つのポリマー、Tecoflex FG-93A-B20(Wフィラメント)及びIsoplast 2510(Dフィラメント)を提供し、各々を銀ナノ粒子で処理した。
図5A~
図5Cは、ナノ粒子が埋め込まれたTecoflex EG-93A-B20熱可塑性プラスチックのSTEM画像を示す。
図6A~
図6Cは、ナノ粒子が埋め込まれたIsoplast 2510熱可塑性プラスチックのSTEM画像を示す。
図8A~
図8Bは、熱可塑性プラスチックに埋め込まれた銀ナノ粒子を示す。
【0088】
銀ナノ粒子を、イソプロピルアルコール中、38mg/L(38ppm)の濃度で製造した。このアルコール混合物を、ポリマービーズ又は顆粒に適用した。ポリマービーズ又は顆粒を溶融し、得られたPEポリマー中の最終濃度を6mg/K(6ppm)とした。この6mg/kgの濃度は、これまでに表面抗細菌性試験で成功したものである。
【0089】
窒素ブローダウンシステムを用いてアルコールを除去し、プラスチックビーズの表面に分布したナノ粒子を残した。続いて、ポリマービーズを230℃の押出溶融システムに通して、フィラメントを形成した。ポリマービーズ表面のナノ粒子は、製造したフィラメント中に混合された。次に、フィラメントを薄片化用ポリマー(toming polymer)に埋め込み、80~100nmの厚さに薄片化し、イメージングのために200メッシュのホルムバールカーボンB TEMグリッドに取り付けた。
【0090】
イメージングは、暗視野カメラ、明視野カメラ、及び二次表面カメラを備えたJEOL 2800走査型透過電子顕微鏡(STEM)で行った。1nm2分解能の元素マッピングを行い、三角測量及びネットカウント精度のためにデュアルEDS検出器を用いて、ナノ粒子及び微粒子を同定した。
【0091】
Tecoflex FG-93A-B20熱可塑性プラスチックは、薄紫色で、230℃での溶融押出し後にクレンチング(clenching)又は冷却段階を必要とした。
図5A~
図5Cに示すように、STEM下では、数百ナノメートルのサイズの大きい中実金属粒子が観察された。EDSマッピングにより、これらは硫酸バリウムであることが分かった。
【0092】
銀ナノ粒子は、硫黄化学物質と直接相互作用し、圧倒的な量の硫酸バリウム(Tecoflex FG-93A-B20の充填剤及び補強剤として用いられている)が、銀ナノ粒子を封鎖したものと考えられる。STEMイメージングからは、どのグリッド上にも直接のナノ粒子は見出されなかった。バックグラウンドの銀は、硫酸バリウム粒子中に検出された。フィラメント表面に熱解離が見られたが、これは最終的なフィラメント形成において熱制御が不充分であったために予想されたことである。
【0093】
Isoplast 2510熱可塑性プラスチックは、より濃い紫色で、表面仕上げはよりガラス様であった。Isoplast 2510を、230℃で溶融し、室温(22.5℃)で冷却した。この熱可塑性プラスチックは、硫酸バリウムの代わりにホスフェートを充填剤及び補強剤として用いていた。
図6A~
図6Cに示すように、ホスフェートはAgナノ粒子と相互作用せず、存在する銀ナノ粒子を見つけること及び元素マッピングすることは容易であった。Isoplast 2510は、プラスチック中に銀ナノ粒子を均等に分布させるのにより適した候補である。表面は同じ種類の熱解離を起こさなかった。
【0094】
所望される効果を得るための材料の濃度は、適切に調整され得る。本明細書に記載のような同様の分析方法によって、他のいくつかのプラスチックを用いてさらに試験を行うことは、材料の目的及び必要性に応じて成される継続的なプロセスである。
【0095】
実施例3
ペニシリンダーとして知られる確立された規格を用いて、典型的な表面抗細菌性試験を行う。従来のペニシリンダーは、外径7.8mm、内径5.8mm、及び長さ9.9mmである。表面積は次のように計算することができる。
【0096】
As=(外表面積)+(内表面積)+2(端部表面積)
As=242.6mm2+180.4mm2+42mm2
As=465mm2
ペニシリンダーの両端が45°のテーパーを有していることから、全体の表面積は計算値よりも少し小さいが、その差は重要ではない。
【0097】
ペニシリンダーに類似した長さ20mmのフィラメントを抗細菌性試験に用いた。フィラメント径は1.2mmで、長さ1mmにつき7.5mm2の外表面積があり、両端の表面積は2.3mm2である。長さ20mmのフィラメントの総表面積は、Af=152.3mm2である。ペニシリンダーの代わりとするのに必要な長さ20mmのフィラメントの総数は以下の通りである。
【0098】
As/Af=465/152.3=3.1
ペニシリンダー1つの表面積にほぼ等しくなるように、各試験サンプルセットに3つのフィラメントを用いた。金属ナノ粒子は、各フィラメント全体に懸濁していた。
【0099】
70%以上のイソプロピルアルコールで洗浄した使い捨て直刃カミソリでフィラメントを切断した。フィラメントを、20mm間隔で2つの印がある連続面に対して測定し、フィラメントをその長さに切断した。切断したフィラメントを25mLのイソプロピルアルコールの入った50mLのサンプルチューブに移し、1分間ボルテックスした。その後、火炎滅菌/加熱滅菌したピンセットを用いて、フィラメントを50mLのサンプル保持容器に取り出した。
【0100】
抗菌性試験は、105、106、及び107コロニー形成単位(CFU)のレベルの大腸菌を用いて行った。3つのフィラメントの各セットを、トリプシンソイブロス中の大腸菌に導入し、1時間大腸菌に暴露した。各濃度の大腸菌に対して、サンプルセット(3つフィラメント)を2つ用いた。
【0101】
大腸菌のコロニーを含むトリプシンソイブロスからフィラメントを取り出し、フィラメントに液体がなくなるまで滴下させた。続いて、フィラメントを、紫色のdey-engley(DE)ブロスに導入した。DEブロスに移したフィラメントから大腸菌が増殖した場合、ブロスの色は黄色に変わる。
【0102】
DEブロスのサンプルを、コロニー増殖のために、トリプシンソイカンテンプレートで培養し、最初に調製した105、106、及び107CFUの培養物と比較した。続いて、増殖の24時間後及び48時間後にコロニー数をカウントした。大腸菌のCFUを、以下のカンテンカウントで確認した:105=23CFU;106=256CFU;及び107=1000CFU。
【0103】
試験の24時間後、すべての調製した濃度の大腸菌において、フィラメントカンテンプレート上のCFUはいずれも0であった。試験の48時間後、すべての調製した濃度の大腸菌において、フィラメントカンテンプレート上のCFUはいずれも0であった。DEブロスは、24時間後及び48時間後、フィラメントに曝露されたすべての調製した濃度の大腸菌において、色の変化を示さなかった。105、106、及び107CFUの大腸菌濃度に1時間曝露したフィラメントの表面には、いずれも生菌は存在しなかった。試験の2連のサンプルは、同じ結果を示した。
【0104】
実施例4
図7Aに示す業界標準のペレットにスプレーする方法を、良好に用いた。次に、スプレーされたペレットを、
図7Bに示すように、ホットミキサーを通してフィラメントに押出した。フィラメントを損傷から保護するためにECONポリマーで包んだ後、フィラメントを、ダイヤモンドエッジカッターで100nm未満の厚さに切断した。このフィラメントの薄片を、STEM/EDSイメージングに用いた。ナノ粒子は、プラスチックと良好に一体化し、プラスチックポリマー鎖と排他的ではない、興味深い均一な分布を示した。ナノ粒子は、流体力及び温度又はエネルギー勾配が存在すれば、プラスチックの周囲を自由に移動できると思われる。
【0105】
実施例5
外部結合角又はエッジを持たないようにレーザーアブレーションによって製造され、非イオン性で銀イオンを放出しない球形状銀ナノ粒子を、それが銀ナノ粒子耐性細菌を引き起こすかどうか特定するために試験した。28継代後でも、そのような耐性は検出されなかった。
【0106】
この研究の題名は、「P.エルジノーサATCC 15442及び大腸菌ATCC 25922に対する変異発生試験」であった。以下の2種類の異なる球状銀ナノ粒子を試験した:銀のロット番号 デスクトップレーザー:Ag200917-104(19PPM)及び銀のロット番号 工業用レーザー:171229-101(16.8PPM)。デスクトップレーザーを用いたアブレーションによって製造された球形状銀ナノ粒子は、8~10nmの狭い粒径分布を有し、工業用レーザーを用いたアブレーションによって製造された球形状銀ナノ粒子は、8~12nmの僅かに広い粒径分布を有していた。
【0107】
研究の手順は以下の通りである。
細菌調製
1. 細菌をトリプシンソイカンテン(TSA)プレートに画線塗布し、37℃で一晩インキュベートする。
2. 翌日、ミューラーヒントンブロスミックスによる銀10mLに、1コロニーを接種する。
a. デスクトップレーザー:
i. 大腸菌 - ブロス中の4.75ppmの銀ナノ粒子ミックスを作製する(2.5mLのAg+7.5mLのブロス)。
ii. P.エルジノーサ - ブロス中の4.75ppmの銀ナノ粒子ミックスを作製する(2.5mLのAg+7.5mLのブロス)。
b. 工業用レーザー:
i. 大腸菌 - ブロス中の2ppmの銀ナノ粒子ミックスを作製する(1.2mLのAg+8.8mLのブロス)。
ii. P.エルジノーサ - ブロス中の2ppmの銀ナノ粒子ミックスを作製する(1.2mLのAg+8.8mLのブロス)。
3. 37℃、250RPMで24~36時間インキュベートする。
4. 翌日に増殖をモニタリングする。
5. 接種用ループを培養物に入れることで、新しい銀ブロス混合物中での連続継代を続ける。
6. 5~7日ごとに、培養物ループをTSAプレートに画線塗布して継代を保存し、次にコロニーに対してMIC試験を実施して、細菌が球状銀ナノ粒子に対して耐性を発生させたかどうかを測定する。
【0108】
研究結果は以下の通りである。
結果 MIC値:
大腸菌 - 工業用レーザーサンプル:MICは28連続継代まで2ppmに維持された。
DTレーザーサンプル:培養は21継代で再生を停止した。MICはそれ以前の継代で維持された。
P.エルジノーサ - 工業用レーザーサンプル:MICは28連続継代まで2ppmに維持された。
DTレーザーサンプル:培養は21継代で再生を停止した。MICはそれ以前の継代で維持された。
陰性及び陽性コントロールはすべて合格であった。
【0109】
比較例
化学合成プロセスで製造された従来の銀ナノ粒子を用いて同様の試験を行う。この銀ナノ粒子は、外部結合角及びエッジを有し、水中で銀イオンを放出する。MIC値の上昇から、6継代以内での銀耐性が明らかである。
【0110】
追加の用語及び定義
本開示のある特定の実施形態について、特定の構成、パラメータ、成分、要素などを参照して詳細に述べてきたが、これらの記述は例示的なものであり、請求される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0111】
さらに、記載された実施形態の成分の所与のいかなる要素についても、暗黙的又は明示的にそれ以外が記載されていない限り、その要素又は成分について列挙された考え得る選択肢のいずれが、一般的には、個別に又は互いに組み合わせて用いられてもよいことは理解されたい。
【0112】
加えて、特に断りのない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる量、構成成分、距離、又は他の測定値を表す数値は、所望に応じて「約」の用語又はその類義語によって修飾されているものと理解されたい。「約」、「およそ」、「実質的に」などの用語が、記載された量、値、又は条件と合わせて用いられる場合、それは、量、値、又は条件が、記載された量、値、又は条件の20%未満、10%未満、5%未満、1%未満、0.1%未満、又は0.01%未満で逸脱することを意味すると解釈され得る。少なくとも、そして特許請求の範囲への均等論の適用を制限することを企図するものではないが、各数値パラメータは、報告された有効数字の桁数を考慮し、通常の四捨五入法を適用することで解釈されるべきである。
【0113】
本明細書で用いられる見出し及び小見出しは、単に構成上の目的のためであり、本明細書又は特許請求の範囲を限定するために用いることを意図するものではない。
また、本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明らかにそうでないことが指示されない限り、複数の指示対象を除外しないことにも留意されたい。したがって、例えば、単数形の指示対象(例:「ウィジット」)を参照する実施形態は、2つ以上のそのような指示対象も含み得る。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子が埋め込まれたポリマー系製品の製造方法であって、前記方法は、
ナノ粒子溶液をポリマー顆粒に適用することであって、前記ナノ粒子溶液は、
金属ナノ粒子、及び
揮発性溶剤、
を含む、適用すること、
前記ナノ粒子溶液を含む前記ポリマー顆粒を加熱することであって、
前記ポリマー顆粒を加熱することで、前記揮発性溶媒を蒸発させ、
前記ポリマー顆粒を加熱することで、前記金属ナノ粒子を、溶融ポリマー全体にわたって均一に分散させる、
加熱すること、並びに
金属ナノ粒子が均一に分布した前記溶融ポリマーを、前記金属ナノ粒子が埋め込まれたプラスチック系製品に成形すること、
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記金属ナノ粒子が、金ナノ粒子と銀ナノ粒子との組み合わせを含む等、金ナノ粒子を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記プラスチック系製品中の前記埋め込まれたナノ粒子が、入射UV放射線をダウンシフトするように、好ましくは、入射UV放射線を、およそ200nmなど、少なくとも約50nm、又は少なくとも約100nm、又は少なくとも約150nmダウンシフトするように、構成されている、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記揮発性溶媒が、エタノール、イソプロピルアルコール、及びアセトンから成る群より選択される、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項6】
揮発性溶媒及び金属ナノ粒子を含むナノ粒子溶液、及び
前記ナノ粒子溶液でコーティングされた複数のポリマーペレット、
を含む、ポリマー組成物。
【請求項7】
前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子及び/又は金ナノ粒子を含む、請求項6に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
銀ナノ粒子対金ナノ粒子の比が、1:1~約50:1、又は約2.5:1~約25:1、又は約5:1~約20:1、又は約7.5:1~約15:1、又は約9:1~約11:1、又は約10:1である、請求項7に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子が、1~40nm、又は10~30nm、又は15~20nmのサイズの範囲である、請求項6~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記金属ナノ粒子が、1~15ppm、又は1.5~10ppm、又は2~5ppmの濃度で存在する、請求項6~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
多成分型硬化性樹脂であって、
前記多成分型硬化性樹脂の第1成分、
前記多成分型硬化性樹脂の第2成分、及び
前記第1成分及び第2成分の一方又は両方と組み合わされた金属ナノ粒子、
を含む、多成分型硬化性樹脂。
【請求項12】
エポキシ系、シリコーン系、及びウレタン系から選択される、請求項11に記載の多成分型硬化性樹脂。
【請求項13】
前記金属ナノ粒子が、銀ナノ粒子、金ナノ粒子、及びこれらの混合物から選択される、請求項11又は12に記載の多成分型硬化性樹脂。
【請求項14】
前記金属ナノ粒子が、球状である、請求項11又は12に記載の多成分型硬化性樹脂。
【請求項15】
前記金属ナノ粒子が、サンゴ形状である、請求項11又は12に記載の多成分型硬化性樹脂。
【国際調査報告】