(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】B/Cドメインスワッピングを有する組換え古典的豚熱ウイルスE2タンパク質
(51)【国際特許分類】
C07K 14/11 20060101AFI20241018BHJP
C12N 15/44 20060101ALI20241018BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241018BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20241018BHJP
C07K 1/14 20060101ALI20241018BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241018BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241018BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20241018BHJP
C12Q 1/70 20060101ALI20241018BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20241018BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241018BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241018BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241018BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241018BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241018BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20241018BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20241018BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20241018BHJP
C07K 16/10 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C07K14/11 ZNA
C12N15/44
C12N5/10
C12N7/01
C07K1/14
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/02 C
C12Q1/70
A61K39/12
A61P31/14
A61K48/00
A61K35/76
A61K31/7088
A61P37/04
G01N33/569 L
G01N33/531 A
C12P21/08
C07K16/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523640
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-04-19
(86)【国際出願番号】 CN2022125849
(87)【国際公開番号】W WO2023066229
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/124797
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520359778
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム フェトメディカ (チャイナ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】チェン ニン
(72)【発明者】
【氏名】リウ フアンフアン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ジアイン
(72)【発明者】
【氏名】トン チャオ
【テーマコード(参考)】
4B063
4B064
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QQ10
4B063QR79
4B064AG27
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4B065AA95Y
4B065AB01
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4C084AA13
4C084NA05
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4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
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4C087AA01
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4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB33
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045BA09
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA22
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、動物衛生の分野に関する。特に、本発明は、組換え古典的豚熱ウイルスE2タンパク質であって、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、CSFV E2タンパク質に関する。さらに、本発明は、本発明の組換えE2タンパク質を含む免疫原性組成物、並びに動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置するための免疫原性組成物の使用を提供する。さらに、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するための方法及びキットを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)E2タンパク質であって、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項2】
置き換えが、組換えCSFV E2タンパク質中に、6B8モノクローナル抗体又はその抗原結合断片の結合が特異的に阻害される変異6B8エピトープをもたらす、請求項1に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項3】
C株、QZ07、GD18及びGD191から選択される株からの野生型CSFV E2タンパク質に由来する、請求項1又は2に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項4】
野生型CSFV E2タンパク質が、配列番号9~12から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項5】
CSFV E2タンパク質の6B8エピトープが、6B8モノクローナル抗体による特異的な認識及び/又は結合を受け、前記6B8モノクローナル抗体は、
(i)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される、又は
(ii)配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(V
H)及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(V
L)を含む、又は
(iii)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体のCDRを含む、又は
(iv)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項6】
CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸が、少なくとも、CSFV E2タンパク質の14位、22位、24位、24/25位、10位、41位及び/又は64位のアミノ酸を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項7】
CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV E2タンパク質のB/Cドメイン又はその断片である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項8】
i)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸38位の配列;
ii)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸39位の配列;
iii)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸56位の配列;
iv)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸80位の配列;
v)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸90位の配列;
vi)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列;又は
vii)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸110位の配列
が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている、請求項1~7のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項9】
CSFV以外のペスチウイルスが、BVDV-2を含むウシウイルス性下痢症ウイルス;スイス、BDV-1、BDV-2、BDV-3、BDV-4、BDV-5、BDV-6、シャモア、イタリア、シチメンチョウ、及びチュニジアヒツジウイルス(TSV)を含むボーダー病ウイルス;並びにキリンペスチウイルス、BVDV-3、プロングホーン、バンゴーワンナウイルス及びノルウェーラットペスチウイルスを含む非定型ペスチウイルスから選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項10】
CSFV以外のペスチウイルスが、キリンペスチウイルスPG2株、BDV-2 トナカイV60、ノルウェーラットペスチウイルス単離体NrPV/NYC-D23、TSV9552、バンゴーワンナ6778、及びBVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaenから選択される、請求項9に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項11】
CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質が、配列番号21~27から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項12】
CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸位置に少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、それにより、6B8モノクローナル抗体のCSFV E2タンパク質への結合が特異的に阻害される、請求項1~11のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項13】
i. 組換えCSFV E2タンパク質が、表1~7で定義されるアミノ酸位置にアミノ酸変異を含む、
ii. 組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましい、
iii. 組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましく、かつ、25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、D、K、L、N、R、T及びVが好ましい、
iv. 組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸が、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましい;
v. 組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸が、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V又はSであり、A、Q、D、E、N及びSが好ましい、
vi. 組換えCSFV E2タンパク質の10位のアミノ酸が、A又はPである、
vii. 組換えCSFV E2タンパク質の41位のアミノ酸が、A、N又はEである、及び/又は
viii. 組換えCSFV E2タンパク質の64位のアミノ酸が、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K又はWであり、A、K、及びWが好ましい、
請求項1~12のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項14】
組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましく、かつ、25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、D、K、L、N、R、T及びVが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸が、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸が、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V又はSであり、A、Q、D、E、N及びSが好ましい、請求項1~13のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項15】
組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸がRであり、組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸がDであり、組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸がKであり、組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸がAである、請求項14に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項16】
組換えCSFV E2タンパク質が、配列番号27~48及び71~74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項17】
Fc断片、例えば豚Fc断片が、組換えCSFV E2タンパク質に連結されており;好ましくは、Fc断片、例えば豚Fc断片が、E2タンパク質のC末端に連結されており、好ましくはペプチドリンカーを介して連結されている、請求項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項18】
Fc断片が、配列番号20のアミノ酸配列を含む、請求項17に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項19】
ペプチドリンカーが、配列番号16~19から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項17又は18に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項20】
組換えCSFV E2タンパク質が、配列番号49~70及び75~78からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;好ましくは配列番号53、68及び75からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;より好ましくは配列番号53及び75からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項17~19のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項21】
6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、CSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列を含む、組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項22】
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸38位の配列が、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸39位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸56位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸80位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸90位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される、
請求項21に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項23】
BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片と比較して、組換えCSFV E2タンパク質が、10位、14位、22位、24位、25位、24/25位、41位及び/又は64位に少なくとも1つのアミノ酸変異をさらに含み;好ましくは、組換えCSFV E2タンパク質が、表1~7で定義されるアミノ酸位置にアミノ酸変異をさらに含み;好ましくは、組換えCSFV E2タンパク質が、組換えCSFV E2タンパク質の14位、24位、25位又は64位に単一のアミノ酸変異をさらに含む、請求項22に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項24】
- 組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸が、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましい;
- 組換えCSFV E2タンパク質の64位のアミノ酸が、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K又はWであり、Kが好ましい;
- 組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましい;
- 組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、Dが好ましい;
- 組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、Nが好ましい;又は
- 組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、Rが好ましい、
請求項23に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項25】
Fc断片、例えば豚Fc断片が、組換えCSFV E2タンパク質に連結されており;好ましくは、Fc断片、例えば豚Fc断片が、E2タンパク質のC末端に連結されており、好ましくはペプチドリンカーを介して連結されている、請求項21~24のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項26】
Fc断片が、配列番号20のアミノ酸配列を含み;及び/又はペプチドリンカーが、配列番号16~19から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項27】
組換えCSFV E2タンパク質が、配列番号96~101からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなり;好ましくは組換えCSFV E2タンパク質が、配列番号96により示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、請求項26に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする組換え核酸。
【請求項29】
請求項28に記載の核酸を含むベクター。
【請求項30】
請求項28に記載の核酸又は請求項29に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、CHO細胞などの哺乳動物細胞である宿主細胞。
【請求項31】
請求項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、
(i)請求項30に記載の宿主細胞を、CSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、及び
(ii)CSFV E2タンパク質を単離し、任意で精製するステップ
を含む方法。
【請求項32】
請求項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)。
【請求項33】
弱毒化されている、請求項32に記載の組換えCSFV。
【請求項34】
請求項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質、請求項28に記載の組換え核酸、請求項29に記載のベクター、及び/又は請求項32若しくは33に記載の組換えCSFVを含む免疫原性組成物。
【請求項35】
ワクチン、例えばマーカーワクチン又はDIVA(感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別)ワクチンである、請求項34に記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
動物におけるCSFVに関連する疾患を防止及び/又は処置する方法における使用のための請求項34又は35に記載の免疫原性組成物であって、前記方法は、請求項34又は35に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、免疫原性組成物。
【請求項37】
動物におけるCSFVに関連する疾患を防止及び/又は処置する方法であって、請求項34又は35に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む方法。
【請求項38】
CSFVに感染した動物を、請求項34又は35のいずれか1項に記載の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別する方法であって、
a)サンプルを得るステップ、及び
b)前記サンプルを、免疫試験において試験するステップ
を含む方法。
【請求項39】
免疫試験が、CSFV E2タンパク質又はその抗原結合断片の6B8エピトープを特異的に認識する抗体が、サンプル中のCSFV E2タンパク質に結合できるかどうかを試験するステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
免疫試験が、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを特異的に認識する抗体が、サンプル中に存在するかどうかを試験するステップ、及び/又は組換えCSFV E2タンパク質の変異6B8エピトープを特異的に認識する抗体が、サンプル中に存在するかどうかを試験するステップを含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
免疫試験が、EIA(酵素免疫アッセイ)又はELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)であり、好ましくは二重競合ELISAである、請求項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
6B8エピトープを特異的に認識する抗体が、
(i)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される、又は
(ii)配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(V
H)及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(V
L)を含む、又は
(iii)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体のCDRを含む、又は
(iv)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
請求項39~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ又はその抗原結合断片を特異的に認識する抗体を含む、CSFVに感染した動物を、請求項34又は35に記載の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するためのキット。
【請求項44】
CHO細胞において請求項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、
a)CHO細胞を培地での高密度懸濁培養に適応させるステップ;
b)ステップa)の適応させたCHO細胞に、請求項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ;
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意で精製するステップ
を含む方法。
【請求項45】
CHO細胞において請求項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、
a)高密度懸濁培養物になるまでCHO細胞を培地で増殖させるステップ;
b)ステップa)のCHO細胞に、請求項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ;及び
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意で精製するステップ
を含む方法。
【請求項46】
ステップc)において、トランスフェクトされたCHO細胞が、約32~37℃、好ましくは約32℃で培養される、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
ステップc)において、トランスフェクトされたCHO細胞が、約5~8%CO
2の加湿雰囲気で培養される、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
組換えCSFV E2タンパク質が、トランスフェクションの約2~14日後、例えば、トランスフェクションの約4~12日後、又はトランスフェクションの約8~10日後に回収される、請求項44~47のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物の健康の分野に関する。特に、本発明は、組換え古典的豚熱ウイルス(CSFV)E2タンパク質であって、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、組換えCSFV E2タンパク質に関する。さらに、本発明は、本発明の組換えE2タンパク質を含む免疫原性組成物、並びに動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置するための免疫原性組成物の使用を提供する。さらに、本発明は、本発明の組換えE2タンパク質を含む組換えCSFV、好ましくは弱毒化された形態の組換えCSFVを提供する。さらに、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するための方法及びキットを提供する。
【背景技術】
【0002】
古典的豚熱(CSF)は、著しい経済損失を生じさせる、豚及びイノシシの高伝染性の疾患である。この疾患の原因物質は、古典的豚熱ウイルス(CSFV)である。中国では、予防的ワクチン接種及び根絶戦略の組み合わせが、CSFのアウトブレイクを制御するために実行されている。しかし、孤発性のCSFアウトブレイク及び持続的な感染が、中国のほとんどの地域において依然として報告されている。
【発明の概要】
【0003】
当技術分野において、安全で、効果的で、かつ、それをワクチン接種された動物を、野生型の野外株に感染している動物から区別することができる、新規なCSFVワクチンが依然として必要とされている。
一態様において、本発明は、組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)E2タンパク質であって、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、組換えCSFV E2タンパク質を提供する。
一態様において、本発明は、6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、CSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列を含む、組換えCSFV E2タンパク質を提供する。
一態様において、本発明は、CSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列が、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、CSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列を含む組換えCSFV E2タンパク質であって、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される、組換えCSFV E2タンパク質を提供する。
【0004】
一態様において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられているCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列が、免疫グロブリンFc断片にさらに連結されている、組換えCSFV E2タンパク質。
一態様において、免疫グロブリンFc断片に連結された組換えCSFV E2タンパク質を含む、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられているCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列が、本明細書でさらに定義される通りCSFV E2タンパク質のアミノ酸10位、14位、22位、24位、25位、24/25位、41位及び/又は64位にさらなる変異を含む、組換えCSFV E2タンパク質。一態様において、本発明は、本発明の組換えCSFV E2タンパク質をコードする組換え核酸を提供する。
一態様において、本発明は、本発明の核酸を含むベクターを提供する。
一態様において、本発明は、本発明の核酸又は本発明のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0005】
一態様において、本発明は、本発明の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、(i)本発明の宿主細胞を、CSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、及び(ii)CSFV E2タンパク質を単離し、任意で精製するステップを含む方法を提供する。
一態様において、本発明は、本発明の組換えCSFV E2タンパク質を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)を提供する。
一態様において、本発明は、本発明の組換えCSFV E2タンパク質、本発明の組換え核酸、本発明のベクター、及び/又は本発明の組換えCSFVを含む免疫原性組成物を提供する。
一態様において、本発明は、本発明の免疫原性組成物をそれを必要とする動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法を提供する。
一態様において、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別する方法であって、a)サンプルを得るステップ、及びb)前記サンプルを、免疫試験において試験するステップを含む方法を提供する。
【0006】
一態様において、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するためのキットであって、免疫原性組成物は、CSFV E2タンパク質又はその抗原結合断片の6B8エピトープを特異的に認識する抗体を含むキットを提供する。
一態様において、本発明は、CHO細胞において本明細書に記載される組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、前記方法は、a)CHO細胞を培地での高密度懸濁培養に適応させるステップ;b)ステップa)の適応させたCHO細胞に、本発明の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ;及びd)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意で精製するステップを含む方法を提供する。
一態様において、本発明は、CHO細胞において本明細書に記載される組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、a)CHO細胞を培地で増殖させるステップ;b)ステップa)のCHO細胞に、本発明の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ;及びd)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意で精製するステップを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ペスチウイルスの系統発生学的な分析及び分類(Peterhans, et al., Vet. Res. Vol. 41(6).の改訂版)を示す図である。
【
図2】組換えCSFV E2タンパク質の構造を示す図である。
【
図3】QZ07E2-トナカイ(Reindeer)V60 11-110キメラFC、QZ07E2-トナカイV60 11-56 KARDキメラFC、QZ07E2-PG2 11-56キメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-38 KARDキメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-109キメラFC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラFC、QZ07E2-Hobi様11-56キメラFC及びQZ07E2-トナカイV60 11-80キメラFCのウェスタンブロットの結果を示す図である。
【
図4】E2における6B8結合のための追加の重要な残基の同定を示す図である。CHO細胞発現系におけるE2タンパク質の変異形態のIFA検出は、10、41、又は64位のアミノ酸残基が、mAb 6B8結合に重要であることを示す。
【
図5】CHO細胞発現系におけるE2タンパク質の変異形態のウェスタンブロット検出を示す図である。
【
図6】E2における6B8結合を阻害するための22位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
【
図7】E2における6B8結合を阻害するための24位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
【
図8】E2における6B8結合を阻害するための25位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
【
図9】E2における6B8結合を阻害するための64位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
【
図10】E2における6B8結合を阻害するための14位の追加のアミノ酸の同定を示す図である。
【
図11】QZ07E2-Hobi様11-109キメラE14K FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラR64K FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラT24R FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラG25D FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラG25N FC、及びQZ07E2-Hobi様11-109キメラG25R FCの構築物から発現される組換えCSFV E2タンパク質の構造を示す図である。
【
図12】QZ07E2-Hobi様11-109キメラE14K FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラT24R FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラR64K FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラG25D FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラG25N FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラG25R FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラFC、及びQZ07E2-WT330FCの構築物の発現から調製された上清のウェスタンブロットの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の態様を記載する前に、本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈から別段のことが明らかに示されない限り、複数形での言及を含むことに留意されなくてはならない。したがって、例えば、「エピトープ(a or an epitope)」への言及は複数のエピトープを含み、「ウイルス」への言及は、1つ又は複数のウイルス及び当業者に公知のこれらの同等物への言及であり、他もまた同様である。用語「及び/又は」は、この用語によって接続される項目の任意の組み合わせを包含することを意図しており、全ての組み合わせを個別に列挙していることに等しい。例えば、「A、B、及び/又はC」は、「A」、「B」、「C」、「A及びB」、「A及びC」、「B及びC」、並びに「A及びB及びC」を包含する。別段の規定がない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書において記載されるものに類似の又は同等の任意の方法及び材料を、本発明の実施又は試験において使用することができるが、好ましい方法、装置、及び材料がここでは記載される。本明細書において言及される全ての刊行物は、本発明に関連して使用され得る刊行物において報告されているウイルス株、細胞系、ベクター、及び方法論を記載及び開示する目的で、参照によって本明細書に組み込まれる。本明細書において記載されるいずれの刊行物も、先行発明を理由に本発明がこのような開示に先行する権利を有するものではないと承認すると解釈されるものではない。
【0009】
動物衛生分野における所望の新規なワクチンの主要な特徴、特にCSFVサブユニットワクチンにおける主要な特徴は、感染した動物を、ワクチン接種された動物から区別(DIVA)するその能力である。DIVA特徴は、従来のCSFV E2サブユニットワクチンからの本質的な改善であり、重要な技術的利点を有する。
発明者らは、免疫優性のE2タンパク質表面に1つ又は複数の重要なエピトープを変更するためにDIVAの特徴を導入し、さらに、ワクチン接種の指標として野生型エピトープを認識する抗体の不在を示すためにELISAを使用する戦略を開発した(負のDIVA)、(WO2020211802Aの全体の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)。この戦略を実行するために、発明者らは、強力に中和性のマウスmAb 6B8を選択した。6B8抗体は、少なくとも、24位、25位、14位、22位、10位、41位及び/又は64位のアミノ酸を含むE2タンパク質のB/Cドメイン内の6B8エピトープを認識し、それに結合する。
一態様において、本発明は、組換えCSFV E2タンパク質であって、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、6B8エピトープと結合できない、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、組換えCSFV E2タンパク質を提供する。
本明細書において使用される用語「CSFV」は、フラビウイルス(Flaviviridae)科のペスチウイルス(Pestivirus)属の古典的豚熱ウイルス(CSFV)種に属する全てのウイルスを指す。
【0010】
用語「組換え」は、遺伝子操作によって改変されている、再配列されている、又は修飾されているタンパク質又は核酸を指す。しかし、この用語は、自然発生的な変異などの天然の事象の結果生じるポリヌクレオチド、アミノ酸配列、ヌクレオチド配列における改変は指さない。用語「キメラ」は、1つの種のタンパク質又は核酸が他の種のタンパク質又は核酸を含むことを指す。用語「キメラ」はまた、「組換え」の一例とみなすこともできる。
一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は単離される。
ポリペプチド又は核酸分子は、これらのネイティブな生物学的由来源及び/又はこれらが得られた元である反応培地若しくは培養培地中においてこれらに通常付随している少なくとも1種の他の成分、例えば、別のタンパク質/ポリペプチド、別の核酸、別の生物学的成分若しくは高分子、又は少なくとも1種の汚染物質、不純物、若しくは微量成分から、これらが分離されている場合、例えば前記由来源又は培地と比較して、「単離されている」とみなされる。特に、ポリペプチド又は核酸分子は、それが少なくとも2倍、特に少なくとも10倍、さらに特に少なくとも100倍、及び最大1000倍、又はそれを超えて精製されている場合、「単離されている」とみなされる。「単離された形態の」ポリペプチド又は核酸分子は、適切な技術、例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動などの適切なクロマトグラフィー技術を使用して決定すると、好ましくは本質的に均質である。
【0011】
用語「CSFV E2タンパク質」は、CSFVのポリタンパク質(Npro-C-Erns-E1-E2-p7-NS2-NS3-NS4A-NS4B-NS5A-NS5B)からの最終的な切断産物として生じるプロセシングされたE2タンパク質を指す。当業者は、本発明ではCSFVのいずれのE2タンパク質も使用できることを認識しているであろう。本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識される6B8エピトープを有する野生型CSFV E2タンパク質に由来する。例えば、CSFV E2タンパク質は、公知のCSFV株、例えばC株、QZ07、GD18又はGD191由来であってもよい。例えば、野外株QZ07のE2タンパク質は、配列番号10に記載のアミノ酸配列を有し、野外株GD18のE2タンパク質は、配列番号11に記載のアミノ酸配列を有し、野外株GD191のE2タンパク質は、配列番号12に記載のアミノ酸配列を有し、C株のE2タンパク質は、配列番号9に記載のアミノ酸配列を有する。
本発明で使用される場合、アミノ酸(amnio acid)残基の番号付けは、N末端からのプロセシングされたCSFV E2タンパク質におけるアミノ酸位置を指し、例えば、具体的に別段の指定がない限り、配列番号10に提供されるアミノ酸位置を指す。
【0012】
「CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ」は、本明細書において、本明細書で開示される6B8モノクローナル抗体による特異的な認識及び/又は結合を受けるCSFV E2タンパク質のエピトープを指す。6B8エピトープは、コンフォメーショナルエピトープであり得る。6B8エピトープは、CSFV E2タンパク質の24位、25位、14位、22位、10位、41位及び/又は64位に定義されたアミノ酸を含んでいてもよい。例えば、6B8エピトープは、少なくとも、CSFV E2タンパク質の14位、22位、及び24/25位に定義されたアミノ酸を含んでいてもよい。CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸位置は、少なくとも、E2タンパク質の14位、22位、24位、24/25位、10位、41位及び/又は64位を含む。例えば、6B8エピトープは、E2タンパク質の14位にS、22位にG、24位にE若しくはG、25位にG、10位にY、41位にD、及び/又は64位にRを含み得る。
【0013】
用語「6B8モノクローナル抗体」又は「mAb 6B8」は、6B8モノクローナル抗体又はその抗原結合断片を指し、6B8モノクローナル抗体は、6B8エピトープ、特にE2タンパク質の14位にアミノ酸S、22位にG、24位にE若しくはG、25位にG、10位にY、41位にD、及び/又は64位にRを少なくとも含む6B8エピトープを特異的に認識する。好ましくは、6B8モノクローナル抗体という用語は、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体のCDRを含むモノクローナル抗体を指す。好ましくは、6B8モノクローナル抗体という用語は、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖(VH)相補性決定領域1(CDR1)、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR3の可変領域を含むモノクローナル抗体を指す。さらに好ましくは、6B8モノクローナル抗体という用語は、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含むモノクローナル抗体を指す。さらに好ましくは、6B8モノクローナル抗体という用語は、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体を指す。
【0014】
本明細書において使用される場合、「抗体」は、完全長免疫グロブリンの結合特異性能力を保持する免疫グロブリン分子の可変領域の少なくとも一部を含有するその任意の断片を含む、天然の、又は部分的に若しくは完全に合成によって産生された、例えば組換えによって産生された、免疫グロブリン及び免疫グロブリン断片を指す。したがって、抗体には、免疫グロブリンの抗原結合ドメインに相同な又は実質的に相同な結合ドメイン(抗体結合部位)を有するあらゆるタンパク質が含まれる。抗体には、抗体断片が含まれる。本明細書において使用される場合、抗体という用語としては、したがって、合成抗体、組換産生抗体、多重特異的抗体(例えば二重特異的抗体)、ヒト抗体、非ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、イントラボディ、及び抗体断片が含まれる。本明細書において提供される抗体には、任意の免疫グロブリン型(例えば、IgG、IgM、IgD、IgE、IgA、及びIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)のメンバーが含まれる。
【0015】
本明細書において使用される用語「可変領域」は、当技術分野において及び以下で「フレームワーク領域1」又は「FR1」、「フレームワーク領域2」又は「FR2」、「フレームワーク領域3」又は「FR3」、及び「フレームワーク領域4」又は「FR4」とそれぞれ呼ばれる4つの「フレームワーク領域」から基本的になる免疫グロブリンドメインを意味する。これらのフレームワーク領域には、当技術分野において及び以下で「相補性決定領域1」又は「CDR1」、「相補性決定領域2」又は「CDR2」、及び「相補性決定領域3」又は「CDR3」とそれぞれ呼ばれる3つの「相補性決定領域」又は「CDR」が介在している。したがって、免疫グロブリン可変領域の一般的な構造又は配列は、以下のように示すことができる:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4。VH又はVHは重鎖可変領域を指し、VL又はVLは軽鎖可変領域を指す。同様に、VH CDR1、VH CDR2、及びVH CDR3は、重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3をそれぞれ指す。VL CDR1、VL CDR2、及びVL CDR3は、軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3をそれぞれ指す。
【0016】
本明細書において使用される場合、「抗体断片」又は抗体の「抗原結合断片」は、完全長よりは短いが、抗原を結合する抗体可変領域の少なくとも一部分(例えば、1つ若しくは複数のCDR及び/又は1つ若しくは複数の抗体結合部位)を有し、したがって完全長抗体の結合特異性、及び特異的結合能力の少なくとも一部を保持する、完全長抗体の任意の部分を指す。したがって、抗原結合断片は、抗体断片が由来する元である抗体と同一の抗原に結合する抗原結合部分を有する抗体断片を指す。抗体断片には、完全長抗体の酵素処理によって産生された抗体誘導体、並びに合成によって、例えば組換えによって産生された誘導体が含まれる。抗体断片は、抗体に含まれる。抗体断片の例としては、限定はしないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、Fv、dsFv、ダイアボディ、Fd及びFd’断片、並びに、修飾断片を含む他の断片が含まれる(例えば、Methods in Molecular Biology, Vol 207: Recombinant Antibodies for Cancer Therapy Methods and Protocols (2003); Chapter 1; p 3-25, Kipriyanovを参照されたい)。断片は、例えばジスルフィド架橋及び/又はペプチドリンカーによって共に連結された複数の鎖を含み得る。抗原結合断片は、(例えば、対応する領域を置き換えることによって)抗体フレームワークに挿入されると、抗原に免疫特異的に結合する(すなわち、少なくとも又は少なくとも約107~108M-1のKaを示す)抗体を生じさせる、任意の抗体断片を含む。
【0017】
用語「6B8モノクローナル抗体の抗原結合断片」は、6B8モノクローナル抗体の断片を指すか、又は6B8エピトープ、特にE2タンパク質の14位にアミノ酸S、22位にG、24位にE若しくはG、25位にG、10位にY、41位にD、及び/又は64位にRを少なくとも含む6B8エピトープを特異的に認識するアミノ酸配列を少なくともコードする。この用語は、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3、並びに/又は、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3をコードするアミノ酸断片をさらに包含する。さらに、この用語はまた、配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)、及び/又は配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含むアミノ酸断片も包含する。さらに好ましくは、この用語は、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体によってコードされるアミノ酸断片を包含し、このアミノ酸断片は、6B8エピトープに特異的に結合する。
【0018】
一態様において、置き換えは、組換えCSFV E2タンパク質において変異6B8エピトープをもたらし、例えば、6B8モノクローナル抗体又はその抗原結合断片の結合が特異的に阻害される変異6B8エピトープをもたらす。本明細書において、「置き換え/置き換えられた/置き換えること」の使用は、別段の指定がない限り、「スワップ/スワップされた/スワッピング」を意味する。一態様において、このような置き換えは、6B8モノクローナル抗体又はその抗原結合断片への組換えCSFV E2タンパク質の結合が、対応する野生型CSFV E2タンパク質と比較して特異的に阻害されることをもたらす。
【0019】
用語「特異的に阻害される」又は「特異的な阻害」は、6B8抗体が、改変されていない6B8エピトープと比較して、特に、E2タンパク質の14位にアミノ酸S、22位にG、24位にE又はG、25位にG、10位にY、41位にD、64位にR、又はそれらの組合せを有する改変されていない6B8エピトープと比較して、少なくとも2分の1、好ましくは5分の1、より好ましくは10分の1、より一層好ましくは50分の1親和性で変異6B8エピトープに結合することを意味する。「親和性」は、抗体分子上の単一の抗原結合部位と、単一のエピトープとの間の相互作用である。これは、会合定数KA=kass/kdiss、又は解離定数KD=kdiss/kassによって表される。より好ましくは、用語「特異的に阻害される」又は「特異的な阻害」は、6B8モノクローナル抗体、特に、受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体が、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、EIA(酵素免疫アッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)アッセイ若しくは二重競合ELISAアッセイ、又はドットブロットアッセイにおいて、本発明による変異6B8エピトープに検出可能に結合しないことを意味する。
用語「CSFV以外のペスチウイルス」は、本明細書で使用される場合、CSFV以外のフラビウイルス科内のペスチウイルス属の全ての他のウイルスを指す。
一態様において、「CSFV以外のペスチウイルス」のE2タンパク質は、6B8モノクローナル抗体又はその抗原結合断片による特異的な認識及び/又は結合を受けることができない。
【0020】
CSFV以外のペスチウイルスとしては、これらに限定されないが、ウシウイルス性下痢症(diarrahea)ウイルス、ボーダー病ウイルス、及び非定型ペスチウイルスからなる群から選択される種が挙げられ;好ましくは、BVDV-2を含む、ウシウイルス性下痢症ウイルス;スイス、BDV-1、BDV-2、BDV-3、BDV-4、BDV-5、BDV-6、シャモア、イタリア、シチメンチョウ、及びチュニジアヒツジウイルス(Tunisian_sheep_virus:TSV)を含む、ボーダー病ウイルス;並びにキリンペスチウイルス、BVDV-3、プロングホーン(Pronghorn antelope)、バンゴーワンナ(Bungowannah)ウイルス及びノルウェーラットペスチウイルスを含む非定型ペスチウイルスから選択される。CSFV以外のペスチウイルスの一部の特定の株としては、これらに限定されないが、キリンペスチウイルスPG2株、BDV-2 トナカイV60、ノルウェーラットペスチウイルス単離体NrPV/NYC-D23、チュニジアヒツジウイルス9552(TSV9552)、バンゴーワンナ6778、又はBVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaenが挙げられる。
一態様において、「CSFV以外のペスチウイルス」は、キリンペスチウイルスPG2株であり、その例示的なE2タンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。一態様において、「CSFV以外のペスチウイルス」は、BDV-2 トナカイV60株であり、その例示的なE2タンパク質は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。一態様において、「CSFV以外のペスチウイルス」は、ノルウェーラットペスチウイルス単離体NrPV/NYC-D23であり、その例示的なE2タンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列を含む。一態様において、「CSFV以外のペスチウイルス」は、バンゴーワンナウイルス6778であり、その例示的なE2タンパク質は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。一態様において、「CSFV以外のペスチウイルス」は、TSV9552株であり、その例示的なE2タンパク質は、配列番号25のアミノ酸配列を含む。一態様において、「CSFV以外のペスチウイルス」は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株であり、その例示的なE2タンパク質は、配列番号26のアミノ酸配列を含む。
【0021】
CSFV E2タンパク質は、4つの抗原性ドメインであるAドメイン、Bドメイン、Cドメイン、及びDドメインを有し、これらのドメインの全ては、E2タンパク質のN末端に位置する。これら4つのドメインは、一方がB/Cドメインの単位であり、他方がA/Dドメインを含む、2つの独立した抗原性単位を構成している。B/Cドメインは、アミノ酸1位から111位周辺までであり、D/Aドメインは、アミノ酸77位から177位周辺までに位置している。番号付けは、典型的な様式で、QZ07 CSFV E2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号10)の位置の番号に基づいて決定される。B/Cドメインは、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するほとんどの主要なアミノ酸をカバーする。
一態様において、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片は、CSFV E2タンパク質のB/Cドメイン又はその断片である。一態様において、CSFV E2タンパク質のB/Cドメインは、CSFV E2タンパク質のアミノ酸1位からアミノ酸111位周辺までの配列を含む。
【0022】
一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸38位の配列は、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている。一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸39位の配列は、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている。一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸56位の配列は、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている。一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸80位の配列は、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている。一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸90位の配列は、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている。一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列は、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている。一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸110位の配列は、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている。
【0023】
「CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列」は、配列アライメントにおいて置き換えようとするCSFV E2タンパク質中の配列とアライメントされる、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質中の配列を意味する。
2つのアミノ酸又はヌクレオチド配列をアライメントするための方法は当業界において周知である。配列分析ソフトウェアは、配列アライメントを実行するのに使用されることが多い。例えば、配列アライメントは、NCBIデータベースでBLASTプログラムを使用することによって行うことができる。
例えば、配列番号10のアミノ酸11位~110位の配列(QZ07 CSFV E2タンパク質)は、配列番号24のアミノ酸10位~111位(バンゴーワンナE2タンパク質)の配列と、ペアワイズ配列アライメントでアライメントされ、次いで、配列番号24のアミノ酸10位~111位の配列(102aa)(バンゴーワンナE2タンパク質)は、配列番号10のアミノ酸11位~110位の配列(100aa)(QZ07 CSFV E2タンパク質)を置き換えるのに使用することができる。
【0024】
本発明の好ましい態様において、本明細書で開示される組換えCSFV E2タンパク質は、免疫原性であり、好ましくは、CSFVに対する防御免疫を付与する。上述した4つの抗原性ドメイン(A、B、C及びDドメイン)の1つのみを含有するCSFV E2タンパク質は免疫原性のままであり、感染性のCSFV攻撃から豚を保護することができることが報告されている。したがって、本発明の好ましい態様において、本明細書において記載される組換えCSFV E2タンパク質は、上記の抗原性ドメインのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも1つを保持している。好ましくは、本発明の組換えCSFV E2タンパク質は、CSFVに対する防御免疫を付与し得る。一態様において、置き換えは、CSFVに対する組換えCSFV E2タンパク質の防御免疫原性にほとんど影響することなく導入することができる。
【0025】
本発明の一態様において、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるCSFV E2タンパク質の6B8エピトープは、少なくともCSFV E2タンパク質の14位、22位、24位、24及び25(「24/25」)位、10位、41位、並びに/又は64位のアミノ酸残基によって定義される。
本発明の一態様において、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるCSFV E2タンパク質の6B8エピトープは、例えば単離体QZ07、GD18、又はGD191では、少なくともCSFV E2タンパク質のアミノ酸残基S14、G22、E24、E24/G25、Y10、D41、及び/又はR64によって定義される。本発明の一態様において、6B8モノクローナル抗体によって特異的に認識されるCSFV E2タンパク質の6B8エピトープは、例えばC株では、少なくともE2タンパク質のアミノ酸残基S14、G22、G24、E24/G25、Y10、D41、及び/又はR64によって定義される。
本発明の一態様において、野生型CSFV E2タンパク質と比較して、本発明による組換えCSFV E2タンパク質は、6B8モノクローナル抗体のCSFV E2タンパク質への結合を特異的に阻害する、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸位置(例えば、14位、22位、24位、24位及び25位(「24/25」)、10位、41位及び/又は64位)に少なくとも1つのアミノ酸残基を含む。
【0026】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片を、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えること、並びに組換えCSFV E2タンパク質中の10位、14位、22位、24位、25位、24/25位、41位及び/又は64位におけるアミノ酸変異の組み込みは、CSFに対する組換えCSFV E2タンパク質の防御免疫原性又は効能に実質的に影響しなかったことを見出した。さらに、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている組換えCSFV E2タンパク質の、アミノ酸10位、14位、22位、24位、25位、24/25位、41位、及び/又は64位における変異はさらに、区別する能力を確実にするか、又はそのDIVAの特徴(通常6B8エピトープを認識し、それに結合する6B8抗体の結合の阻害)に関するこのような組換えCSFV E2タンパク質のDIVAの信頼度を増加させる。
【0027】
一部の実施形態において、前記少なくとも1つのアミノ酸残基は、上述の置き換えによって導入される。例えば、本発明の一態様において、「CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片」は、6B8モノクローナル抗体のCSFV E2タンパク質への結合を特異的に阻害する、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸位置(例えば、14位、22位、24位、24位及び25位(「24/25」)、10位、41位及び/又は64位)に少なくとも1つのアミノ酸残基を含むか;又は「CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片」は、野生型配列が前記アミノ酸を含まない場合、6B8モノクローナル抗体のCSFV E2タンパク質への結合を特異的に阻害する、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸位置(例えば、14位、22位、24位、24位及び25位(「24/25」)、10位、41位及び/又は64位)に少なくとも1つのアミノ酸残基を含むように操作される(変異される)。
一部の実施形態において、「CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片」での置き換えに加えて、6B8モノクローナル抗体の結合を特異的に阻害する少なくとも1つのアミノ酸残基が、組換えCSFV E2タンパク質に追加で導入される。例えば、6B8モノクローナル抗体の結合を特異的に阻害する少なくとも1つのアミノ酸残基は、置き換えようとする断片の外側に位置している。
【0028】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D又はIであり、Rが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D又はIであり、Rが好ましく、かつ、25位のアミノ酸は、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、D、K、L、N、R、T及びVが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸は、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸は、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V又はSであり、A、Q、D、E、N及びSが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の10位のアミノ酸は、A又はPであり、組換えCSFV E2タンパク質の41位のアミノ酸は、A、N又はEであり、及び/又は組換えCSFV E2タンパク質の64位のアミノ酸は、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K又はWであり、A、K、及びWが好ましい。これらのアミノ酸は、個々に、又は組合せで、CSFV E2タンパク質への6B8モノクローナル抗体の結合を特異的に阻害すると実証されてきた。本発明の一態様において、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片は、対応する位置で1つ又は複数の前記アミノ酸を導入するように変異される。
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D又はIであり、Rが好ましい。
【0029】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D又はIであり、Rが好ましく、かつ、25位のアミノ酸は、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、D、K、L、N、R、T及びVが好ましい。
一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸は、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましい。
一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸は、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V又はSであり、A、Q、D、E、N及びSが好ましい。
一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の10位のアミノ酸は、A又はPである。
一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の41位のアミノ酸は、A、N又はEである。
一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の64位のアミノ酸は、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K又はWであり、A、K、及びWが好ましい。
【0030】
本発明の一態様において、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片は、対応する位置で1つ又は複数の前記アミノ酸を導入するように変異される。例えば、本発明の一態様において、本発明による組換えCSFV E2タンパク質は、以下の表1~7で定義される通り、E2タンパク質のアミノ酸位置に変異を含む。例えば、表1の2行目は、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質が、E2タンパク質のアミノ酸10位(「10位」)に変異を含むことを意味し、表1の3行目は、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質が、E2タンパク質のアミノ酸10位及び14位に変異を含むことを意味する、などである。
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D又はIであり、Rが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D又はIであり、Rが好ましく、かつ、25位のアミノ酸は、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、D、K、L、N、R、T及びVが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸は、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸は、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V又はSであり、A、Q、D、E、N及びSが好ましい。
【0040】
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸はRであり、組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸はDであり、組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸はKであり、組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸はAである(以降、「KARD変異」と称する)。
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号27~48及び71~74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
本発明の一態様において、可溶性組換えCSFV E2タンパク質を得るために、本発明による組換えCSFV E2タンパク質は、膜貫通ドメインを除去するためにトランケートすることができる。例えば、無傷の本発明に従ったCSFV E2タンパク質のC末端の最後の約40個のアミノ酸(例えば、42個又は43個のアミノ酸)を欠失させてもよい。
【0041】
本発明の一態様において、分泌形式の本発明に従った組換えE2タンパク質を得るために、シグナルペプチドをE2タンパク質のN末端に付加することができる。例えば、E1タンパク質からの、最後の約20個のアミノ酸、特に最後の16個のアミノ酸(例えば、C株の場合)又は21~23個のアミノ酸(例えば、GD18又はQZ07の場合)を、本発明に従った組換えE2タンパク質のN末端に付加することができる。一態様において、シグナルペプチドは、配列番号13~15から選択されるアミノ酸配列を含み得る。当業者には、隠れた発現を可能にする他のシグナルペプチドもまた本発明において適用され得ることが認識されよう。
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、膜貫通ドメインを除去するためにトランケートすることができ、可溶性の分泌された組換えCSFV E2タンパク質が得られるように、シグナルペプチドを、組換えCSFV E2タンパク質のN末端に付加することができ、例えば、無傷の組換えCSFV E2タンパク質の最後の43個のアミノ酸を欠失させることができ、E1タンパク質からの最後の16個のアミノ酸又は21~23個のアミノ酸を、組換えCSFV E2タンパク質のN末端に付加することができる。
【0042】
本発明の一態様において、組換えE2タンパク質はまた、同定及び/又は精製のための融合タグも含み得る。Hisタグ又はFLAGタグなどのこのようなタグは、当技術分野において周知である。
本発明の一態様において、免疫グロブリンFc断片は、E2タンパク質に連結されていてもよい。本明細書において使用される用語「免疫グロブリンFc断片」は、免疫グロブリンの重鎖定常領域2(CH2)及び重鎖定常領域3(CH3)を含み、さらに特に、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖可変領域並びに軽鎖定常領域1(CL1)を含まないタンパク質を指す。この用語は、免疫グロブリンのヒンジ領域又はヒンジ領域の部分(つまり、重鎖定常領域のヒンジ領域)をさらに含んでもよい。また、免疫グロブリンFc断片は、重鎖定常領域1(CH1)の一部を含んでもよい。本明細書において使用される用語「免疫グロブリンFc断片」は、「Fc断片」と等価であることが理解される。
【0043】
本明細書において使用される用語「連結された」は、特に、ポリペプチド内で免疫グロブリンFc断片を組換えCSFV E2タンパク質のC末端又はN末端に接続するためのあらゆる手段を指す。連結手段の例には、免疫グロブリンFc断片とCSFV E2タンパク質との共有結合による直接連結が含まれ得る。一態様において、Fc断片は、CSFV E2タンパク質のC末端に連結され得る。
一態様において、免疫グロブリンFc断片は、ペプチドリンカーを介してCSFV E2タンパク質に連結され得る。本明細書において使用される用語「ペプチドリンカー」は、1つ又は複数のアミノ酸残基を含むペプチドを指す。さらに特に、本明細書において使用される用語「ペプチドリンカー」は、2つの可変タンパク質及び/又はドメイン、例えばCSFV E2タンパク質及び免疫グロブリンFc断片を接続し得るペプチドを指す。本明細書において言及されるペプチドリンカーは、好ましくは、長さが3~20アミノ酸残基であるアミノ酸配列である。例えば、リンカー部分は、長さが1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10アミノ酸残基であるペプチドリンカーであり得る。ペプチドリンカーの例示的な配列は、GGS、GSGGSG、GGGGS、GGGGSGGGGSであり得る。一態様では、ペプチドリンカーのアミノ酸配列はGGS(配列番号16)である。
【0044】
一態様では、免疫グロブリンFc断片は豚IgG Fc断片である。一態様において、Fc断片は、E2タンパク質のC末端又はN末端に連結されていてもよい。一態様において、Fc断片は、ペプチドリンカーを介してE2タンパク質のC末端に連結され得る。一態様では、豚Fc断片のアミノ酸配列は、配列番号20によって示される。
本発明の一態様において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号49~70、75~78、及び96~101からなる群から選択されるアミノ酸配列の1つを含むか又はそれからなる。一実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号53、68及び75からなる群から選択されるアミノ酸配列の1つを含むか又はそれからなる。一実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号53及び75からなる群から選択されるアミノ酸配列の1つを含むか又はそれからなる。一実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号53のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号68のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号75のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0045】
本明細書に記載されるFc断片のいずれか、特に配列番号20を有するFc断片は、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えられており、本明細書で定義される通りアミノ酸10位、14位、22位、24位、25位、24/25位、41位及び/又は64位に追加の変異を有する本明細書で開示される組換えCSFV E2タンパク質のいずれかに連結されていてもよいことが当業者によって理解される。ペプチドリンカーは、あらゆるリンカーであってもよく、一部の実施形態において、リンカーは、配列番号16~19から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0046】
一態様において、本発明は、本発明の組換えCSFV E2タンパク質を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)を提供する。本発明の一態様において、組換えCSFVは弱毒化されている。
当業者には、6B8エピトープが様々なCSFV株の間で進化的に保存されていることから、本発明の組換えCSFVが様々なCSFV単離体に由来し得ることが認識されよう。本発明の一態様において、本発明の組換えCSFVは、ジェノグループ2.1の単離体に由来する。本発明の一態様において、組換えCSFVは、例えば野外株GD18又はQZ07に由来する。本発明の一態様において、本発明の組換えCSFVは、ジェノグループ1の単離体に由来する。本発明の一態様において、組換えCSFVは、当技術分野において周知のC株に由来する。
一態様において、本発明は、組換えCSFV E2タンパク質であって、6B6エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、CSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列を含む、組換えCSFV E2タンパク質を提供する。
【0047】
一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸38位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される。
一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸39位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される。
【0048】
一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸56位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される。
一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸80位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される。
一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸90位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される。
【0049】
一態様において、CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される。
一態様において、CSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される。
【0050】
一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片と比較して、組換えCSFV E2タンパク質は、10位、14位、22位、24位、25位、24/25位、41位及び/又は64位に少なくとも1つのアミノ酸変異をさらに含む。一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片と比較して、組換えCSFV E2タンパク質は、組換えCSFV E2タンパク質の14位、24位、25位又は64位に単一のアミノ酸変異をさらに含む。
一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片と比較して、組換えCSFV E2タンパク質は、表1~7で定義される通りアミノ酸10位、14位、22位、24位、25位、24/25位、41位及び/又は64位に変異をさらに含む。
【0051】
一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸は、K、A、E、Q又はRであり;好ましくは、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸は、Kである。一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の64位のアミノ酸は、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K又はWであり;好ましくは、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の64位のアミノ酸は、Kである。一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸は、R、D又はIであり;好ましくは、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸は、Rである。一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸は、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり;好ましくは、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸は、Dである。一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸は、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり;好ましくは、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸は、Nである。一部の実施形態において、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸は、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり;好ましくは、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の断片を含む組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸は、Rである。
【0052】
一部の実施形態において、Fc断片、例えば豚Fc断片は、組換えCSFV E2タンパク質に連結されており、特に6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含むCSFVの断片が、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている組換えCSFV E2タンパク質に連結されている。一部の実施形態において、Fc断片、例えば豚Fc断片は、E2タンパク質のC末端に連結されている。一部の実施形態において、Fc断片、例えば豚Fc断片は、ペプチドリンカーを介して、E2タンパク質のC末端に連結されている。
一部の実施形態において、Fc断片は、配列番号20のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、配列番号16~19から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、ペプチドリンカーは、配列番号16のアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0053】
一部の実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号96~101からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号96により示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号97により示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号98により示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号99により示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号100により示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。一部の実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、配列番号101により示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる。
【0054】
一部の実施形態において、上述される組換えCSFV E2タンパク質のBVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のそれぞれの配列は、別の非CSFVペスチウイルス配列の対応する配列で置き換えられていてもよく、例えば本明細書で列挙された株のいずれか(例えばキリンペスチウイルスPG2株、BDV-2 トナカイV60、ノルウェーラットペスチウイルス単離体NrPV/NYC-D23、チュニジアヒツジウイルス9552(TSV9552)、バンゴーワンナ6778)で置き換えられていてもよいことが十分理解される。一部の実施形態において、このような他の組換えCSFV E2タンパク質は、表1~7で定義されるアミノ酸10位、14位、22位、24位、24/25位、41位及び/又は64位に、1つ又は複数の変異をさらに含んでいてもよいことがさらに十分理解される。さらに、一部の実施形態において、このような組換えCSFV E2タンパク質はいずれも、Fc断片に連結されたていてもよいことも理解される。
【0055】
一態様において、本発明はまた、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質及び/又は本発明の組換えCSFVを含む免疫原性組成物を提供する。
本明細書において使用される用語「免疫原性組成物」は、免疫原性組成物が投与される宿主において免疫学的応答を引き起こす少なくとも1種の抗原を含む組成物を指す。このような免疫学的応答は、本発明の免疫原性組成物に対する細胞性及び/又は抗体介在性の免疫応答であり得る。宿主はまた、「対象」とも記載される。好ましくは、本明細書において記載又は言及される宿主又は対象はいずれも、動物である。
通常、「免疫学的応答」には、限定はしないが、以下の影響の1つ又は複数が含まれる:本発明の免疫原性組成物に含まれる1種又は複数種の抗原に特異的に向けられる抗体、B細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、並びに/又は細胞傷害性T細胞及び/若しくはガンマ-デルタT細胞の産生又は活性化。好ましくは、宿主は、防御免疫応答又は治療応答のいずれかを示す。
【0056】
「防御免疫応答」は、感染した宿主によって通常示される臨床徴候の低減又は欠如のいずれか、より短い回復時間及び/若しくは感染期間の短縮、又は、感染した宿主の組織若しくは体液若しくは排出物における病原体力価の低下によって示される。
本明細書において使用される「抗原」は、限定はしないが、このような抗原又はその免疫学的に活性な成分を含む、宿主において目的の免疫原性組成物又はワクチンに対する免疫学的応答を引き起こす成分を指す。
宿主が防御免疫応答を示し、その結果、新たな感染に対する耐性が増強される及び/又は疾患の臨床的重症度が低減するケースでは、免疫原性組成物は「ワクチン」と記載される。
一態様において、本発明の免疫原性組成物はワクチンである。
【0057】
本明細書において理解される用語「ワクチン」は、抗原性物質を含む獣医学的使用のためのワクチンであり、CSFV感染によって引き起こされる疾患に対する特異的かつ活性な免疫を誘発する目的で投与される。
好ましくは、本発明に従ったワクチンは、宿主動物において防御免疫応答を引き起こす、好ましくは本明細書において記載されるような組換えCSFV E2タンパク質を含む、サブユニットCSFVワクチンである。
ワクチンは、医薬組成物に典型的なさらなる成分をさらに含み得る。
【0058】
免疫応答を増強させるためのさらなる成分は、「アジュバント」と一般に呼ばれる構成成分、又は、ワクチンに添加される、若しくはこのようなさらなる成分によるそれぞれの誘導の後に身体によって生成される、補助分子、例えば限定はしないが、インターフェロン、インターロイキン、若しくは成長因子である。本明細書において使用される「アジュバント」としては、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウム、サポニン、例えば、Quil A、QS-21(Cambridge Biotech Inc.、Cambridge、MA)、GPI-0100(Galenica Pharmaceuticals,Inc.、Birmingham、AL)、油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、水中油中水型エマルジョンが含まれ得る。エマルジョンは、特に、軽質流動パラフィン油(欧州薬局方型);スクアラン又はスクアレンなどのイソプレノイド油;アルケンの、特にイソブテン又はデセンのオリゴマー化の結果生じる油;直鎖状アルキル基を有する酸又はアルコールのエステル、さらに特に、植物油、オレイン酸エチル、プロピレングリコールジ(カプリレート/カプレート)、グリセリルトリ(カプリレート/カプレート)、又はプロピレングリコールジオレエート;分枝鎖状の脂肪酸又はアルコールのエステル、特にイソステアリン酸エステルをベースにしているものであり得る。油は、エマルジョンを形成するために乳化剤と組み合わせて使用される。乳化剤は、好ましくは非イオン性界面活性剤、特に、任意でエトキシ化されている、ソルビタンの、マンニド(例えば、アンヒドロマンニトールオレエート)の、グリコールの、ポリグリセロールの、プロピレングリコールの、及びオレイン酸、イソステアリン酸、リシンオレイン酸、又はヒドロキシステアリン酸のエステル、並びにポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンコポリマーブロック、特にプルロニック製品、特にL121である。Hunter et al., The Theory and Practical Application of Adjuvants (Ed.Stewart-Tull, D. E. S.), JohnWiley and Sons, NY, pp51-94 (1995)、及びTodd et al., Vaccine 15:564-570 (1997)を参照されたい。典型的なアジュバントは、“Vaccine Design, The Subunit and Adjuvant Approach” edited by M. Powell and M. Newman, Plenum Press, 1995の第147頁に記載されているSPTエマルジョン、及びこれと同一の本の第183頁に記載されているエマルジョンMF59である。
【0059】
アジュバントのさらなる例は、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー及び無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーから選択される化合物である。有利なアジュバント化合物は、特に糖又はポリアルコールのポリアルケニルエーテルと架橋している、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマーである。これらの化合物は、カルボマーという用語で知られている(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)。当業者はまた、少なくとも3つの、好ましくは8つ以下のヒドロキシル基を有し、これら少なくとも3個のヒドロキシルの水素原子が、少なくとも2個の炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置き換えられているポリヒドロキシル化化合物と架橋している、このようなアクリルポリマーを記載している、米国特許第2,909,462号を参照することもできる。好ましいラジカルは、2~4個の炭素原子を有するラジカル、例えば、ビニル、アリル、及び他のエチレン不飽和基である。不飽和ラジカルは、それ自体、メチルなどの他の置換基を有し得る。カーボポールという名称で市販されている製品(BF Goodrich、Ohio、USA)が特に適切である。これらは、アリルショ糖又はアリルペンタエリスリトールと架橋している。これらのうち、カーボポール974P、934P、及び971Pに言及することができる。最も好ましいものは、カーボポール971Pの使用である。無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーとしては、コポリマーEMA(Monsanto)があり、これは、無水マレイン酸及びエチレンのコポリマーである。水中にこれらのポリマーを溶解すると酸性の溶液が生じ、この溶液は、免疫原性の免疫学的組成物又はワクチン組成物自体を組み込むアジュバント溶液を作製するために、好ましくは生理学的pHに中和される。
【0060】
さらなる適切なアジュバントとしては、数ある中でとりわけ、限定はしないが、RIBIアジュバント系(Ribi Inc.)、ブロックコポリマー(CytRx、Atlanta、GA)、SAF-M(Chiron、Emeryville、CA)、モノホスホリルリピドA、アブリジン脂質-アミンアジュバント、大腸菌(E.coli)(組換え又はその他)の易熱性エンテロトキシン、コレラ毒素、IMS 1314若しくはムラミルジペプチド、或いは、天然の若しくは組換えのサイトカイン若しくはこれらの類似体又は内因性サイトカイン放出の刺激物質が含まれる。
【0061】
一態様において、免疫原性組成物は、適切なアジュバントと共に、油中水型エマルジョンに製剤される。アジュバントは、油及び界面活性剤を含み得る。一態様において、アジュバントは、MONTANIDE(商標)ISA 71R VG(Seppic Incによる製造、カタログ番号:365187)である。一態様において、アジュバントは、Seppic ISA 206である。アジュバントは、用量当たり約100μg~約10mgの量で添加され得る。またさらに好ましくは、アジュバントは、用量当たり約100μg~約10mgの量で添加される。またさらに好ましくは、アジュバントは、用量当たり約500μg~約5mgの量で添加される。またさらに好ましくは、アジュバントは、用量当たり約750μg~約2.5mgの量で添加される。最も好ましくは、アジュバントは、用量当たり約1mgの量で添加される。一実施形態において、本発明の免疫原性組成物は、用量当たり、アジュバントを含有する約7割の油相、及び本発明のE2タンパク質を含有する約3割の水相を含む。
【0062】
本発明の一態様において、本明細書で開示される置き換えによって生じるCSFV E2タンパク質の変異6B8エピトープは、マーカーとして使用される。
本明細書において使用される用語「マーカー」は、本発明に従った変異6B8エピトープを指す。本発明に従った変異6B8エピトープは、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ配列(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)と異なる。したがって、本発明に従った変異6B8エピトープによって、典型的な免疫試験及び/又はゲノム解析試験を使用して、変異していない6B8エピトープを有する天然に感染した動物を、本発明に従った変異6B8エピトープを有するワクチン接種された動物から区別することが可能となる。
本発明の一態様において、本発明の免疫原性組成物は、マーカーワクチン又はDIVA(感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別(differentiation between infected and vaccinated animals))ワクチンである。
【0063】
用語「マーカーワクチン」又は「DIVA(感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別)」は、上記に示すマーカーを有するワクチンを指す。したがって、マーカーワクチンは、ワクチン接種された動物を天然に感染した動物から区別するために使用することができる。本発明の免疫原性組成物はマーカーワクチンとして作用するが、それは、野生型CSFVでの感染とは対照的に、本発明のワクチンを接種された動物において、本発明に従った変異6B8エピトープが検出され得るためである。典型的な免疫試験及び/又はゲノム解析試験によって、本発明に従った変異6B8エピトープは、野生型CSFVの6B8エピトープ配列(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)から区別され得る。最後に、マーカーエピトープは、家畜内に存在し得る他の生物によって誘導される偽陽性の血清学的結果を避けるために、病原体に特異的であるべきである。しかし、6B8エピトープは進化的に保存されている(配列アラインメントによる)ため、CSFVに特異的である(6B8 mAbはBVDVに結合しない)。したがって、本発明に従った変異6B8エピトープは、マーカーワクチンにおける使用に非常に適している。
有効なマーカーワクチンの主な利点は、ワクチンが、急性に感染した豚、又はワクチン接種された豚集団においてサンプルを採取するある程度(例えば、少なくとも約3週間)前に感染した豚の検出を可能とし、したがって、豚集団におけるCSFVの拡大又は再導入をモニタリングする能力を提供することである。したがって、ワクチンは、ある程度の信頼レベルで、実験室での試験結果に基づいて、ワクチン接種された豚集団がCSFVを有していないと断言することを可能にする。
【0064】
本発明のマーカーワクチンは、豚の発熱の検出又はアウトブレイクのケースにおける緊急のワクチン接種に理想的に適している。マーカーワクチンは、迅速かつ効果的な投与を容易にし、野外ウイルス(疾患に関連する)に感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別を可能にする。
本発明の一態様において、本発明の免疫原性組成物で処置された動物は、天然の豚熱ウイルスに感染した動物から、免疫試験及び/又はゲノム解析試験を使用する前記動物から得たサンプルの分析を介して、区別され得る。
用語「サンプル」は、体液のサンプル、分離された細胞のサンプル、又は組織若しくは器官のサンプルを指す。体液のサンプルは周知の技術によって得ることができ、これには、好ましくは、血液、血漿、血清、又は尿のサンプル、さらに好ましくは、血液、血漿、又は血清のサンプルが含まれる。組織又は器官のサンプルは、例えば生検によって、任意の組織又は器官から得ることができる。分離された細胞は、遠心分離又は細胞選別などの分離技術によって、体液又は組織又は器官から得ることができる。
「得られた」という用語は、沈殿、カラムなどを好ましくは使用する、当業者に公知の単離及び/又は精製ステップを含み得る。
用語「免疫試験」及び「ゲノム解析試験」は、以下に詳述される。しかし、前記「免疫試験」及び「ゲノム解析試験」の分析はそれぞれ、本発明に従った免疫原性組成物をワクチン接種された動物と、天然の(疾患に関連する)豚熱ウイルスに感染した動物とを区別するための基礎である。
【0065】
本発明の一態様において、前記免疫原性組成物は、単回用量投与のために製剤される。
有利には、本発明によって提供される実験データは、本発明の免疫原性組成物の単回用量投与が防御免疫応答を確実にかつ効果的に刺激したことを開示している。したがって、本発明の一態様において、前記免疫原性組成物は、単回用量投与のために製剤され、単回用量投与によって効果的である。
また、本発明は、医薬品として使用するための本発明の免疫原性組成物の使用も提供する。
一態様において、本発明は、本発明に従った免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法を提供する。一態様において、CSFVに関連する疾患は、CSFである。
本発明はまた、本発明に従った免疫原性組成物のいずれかを動物に投与することを含む、動物を免疫化するための方法に関する。本発明はまた、本発明に従った免疫原性組成物のいずれかを動物に単回投与することを含む、動物を免疫化するための方法に関する。好ましくは、動物を免疫化するための方法は、このような動物への本発明に従った免疫原性組成物の単回投与によって効果的である。
【0066】
用語「免疫化」は、免疫化される動物に免疫原性組成物を投与し、これによって、このような免疫原性組成物に含まれる抗原に対する免疫学的応答を生じさせることによる、能動免疫化に関連する。
免疫化は、群れにおける特定のCSFV感染の発生の減少、又は、特定のCSFV感染によって生じる若しくは特定のCSFV感染に関連する臨床徴候の重症度の低減をもたらす。好ましくは、免疫化は、本発明に従った免疫原性組成物の単回投与によって、群れにおける特定のCSFV感染の発生の減少、又は、特定のCSFV感染によって生じる若しくは特定のCSFV感染に関連する臨床徴候の重症度の低減をもたらす。
本発明の一態様に従うと、本明細書で提供される免疫原性組成物での、必要とする動物の免疫化は、好ましくは本発明に従った免疫原性組成物の単回投与によって、CSFV感染による対象の感染の予防をもたらす。またさらに好ましくは、免疫化は、CSFV感染に対する効果的な、長期の、免疫学的応答をもたらす。前記期間は、2カ月間超、好ましくは3カ月間超、さらに好ましくは4カ月間超、さらに好ましくは5カ月間超、さらに好ましくは6カ月間超、継続することが理解されよう。免疫化は、免疫化された動物の全てにおいて効果的でなくてもよいことが理解される。しかし、この用語は、群れにおける有意な割合の動物が効果的に免疫化されることを要する。
【0067】
好ましくは、この文脈において、通常は、すなわち免疫化されていないと、CSFV感染によって通常生じる又はCSFV感染に関連する臨床徴候を発症する動物の群れが想定される。群れの動物が効果的に免疫化されているかどうかは、当業者によって、さらなる苦労を伴うことなく決定され得る。好ましくは、免疫化は、所与の群れの動物の少なくとも33%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%における臨床徴候が、発生又は重症度において、免疫化されていない又は本発明の前に利用可能であった免疫原性組成物で免疫化されているがその後CSFVに感染している動物と比較して少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、またさらに好ましくは少なくとも30%、またさらに好ましくは少なくとも40%、またさらに好ましくは少なくとも50%、またさらに好ましくは少なくとも60%、またさらに好ましくは少なくとも70%、またさらに好ましくは少なくとも80%、またさらに好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%低下している場合、効果的であるとされるべきである。
【0068】
本発明の一態様において、動物は豚である。一態様において、動物は子豚である。子豚は通常、3~4週齢よりも若い。一態様において、子豚は、1~4週齢の間にワクチン接種される。一態様において、動物は雌豚である。一態様において、動物は、妊娠中の雌豚である。
本発明の一態様において、免疫原性組成物は、真皮内、気管内、膣内、筋肉内、鼻腔内、静脈内、動脈内、腹腔内、経口、髄腔内、皮下、皮内、心臓内、葉内(intralobal)、髄内、肺内、及びこれらの組み合わせで投与される。しかし、化合物の性質及び作用機序に応じて、免疫原性組成物は、他の経路でも投与され得る。
本発明はまた、本発明に従った免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、CSFに関連する1つ又は複数の臨床徴候の発生又は動物における重症度を低減させる方法であって、1つ又は複数の臨床徴候の発生又は重症度の低減が、免疫原性組成物を投与されていない動物と比較される方法を提供する。好ましくは、本方法は、単回用量の免疫原性組成物の投与を含み、また、免疫原性組成物のこのような単回投与によって、1つ又は複数の臨床徴候の発生又は重症度の低減において効果的である。
【0069】
本明細書において使用される用語「臨床徴候」は、動物のCSFV感染の徴候を指す。臨床徴候は、以下でさらに定義される。しかし、臨床徴候としてはまた、限定はしないが、生きている動物から直接観察可能な臨床徴候も含まれる。生きている動物から直接観察可能な臨床徴候の例には、鼻及び眼の排出物、嗜眠、咳、喘鳴、動悸、発熱、体重増加又は体重減少、脱水、下痢、関節の腫れ、跛行、衰弱、皮膚の蒼白、発育不全、及びそれに類するものが含まれる。Mittelholzerら(Vet.Microbiol., 2000. 74(4): p. 293-308)は、CSFの動物実験において臨床スコアを決定するためのチェックリストを開発した。このチェックリストは、活気、身体の緊張、体形、呼吸、歩行、皮膚、眼/結膜、食欲、排便、及び強制給餌の食べ残しというパラメータを含む。
好ましくは、臨床徴候は、発生又は重症度において、処置されていない又は本発明の前に利用可能であった免疫原性組成物で処置されているがその後CSFVに感染している対象と比較して少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%、またさらに好ましくは少なくとも30%、またさらに好ましくは少なくとも40%、またさらに好ましくは少なくとも50%、またさらに好ましくは少なくとも60%、またさらに好ましくは少なくとも70%、またさらに好ましくは少なくとも80%、またさらに好ましくは少なくとも90%、及び最も好ましくは少なくとも95%低下する。
【0070】
本発明の一態様において、免疫原性組成物は1回投与され、また、このような単回投与によって有効である。
しかし、単回用量投与が好ましいものの、免疫原性組成物は2回又は数回投与することもでき、第1の用量は、第2の(ブースター)用量の投与の前に投与される。好ましくは、第2の用量は、第1の用量の少なくとも15日後に投与される。さらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の15~40日後の間に投与される。またさらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の少なくとも17日後に投与される。またさらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の17~30日後の間に投与される。またさらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の少なくとも19日後に投与される。またさらに好ましくは、第2の用量は、第1の用量の19~25日後の間に投与される。最も好ましくは、第2の用量は、第1の用量の少なくとも21日後に投与される。2回投与レジメンの好ましい態様において、免疫原性組成物の第1の用量及び第2の用量の両方は、同一の量で投与される。第1及び第2の用量レジメンに加えて、別の実施形態は、さらなるその後の用量を含む。例えば、第3、第4、又は第5の用量を、これらの態様において投与することができる。好ましくは、その後の第3、第4、及び第5の用量のレジメンは、第1の用量と同一の量で投与され、用量間の時間枠は、上記の第1の用量と第2の用量との間の時間と一致する。
【0071】
本発明の一態様において、1つ又は複数の臨床徴候は、呼吸窮迫、努力呼吸、咳、くしゃみ、鼻炎、頻呼吸、呼吸困難、肺炎、耳及び外陰部の赤/青の変色、黄疸、リンパ球浸潤、リンパ節腫脹、肝炎、腎炎、食欲不振、発熱、嗜眠、乳汁分泌不全(agalatia)、下痢、鼻からの排出物、結膜炎、進行性の体重減少、体重増加の低減、皮膚の蒼白、胃潰瘍、器官及び組織での肉眼的及び顕微鏡的な病変、リンパの病変、死亡を免れない状態、ウイルス誘発性の流産、死産、子豚の奇形、ミイラ変性、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
一態様において、本発明はまた、
a)サンプルを得るステップ、及び
b)前記サンプルを免疫試験において試験するステップ
を含む、CSFVに感染した動物を、本発明に従った免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別する方法も提供する。
【0072】
用語「免疫試験」は、CSFVのE2タンパク質の6B8エピトープに特異的な抗体を含む試験を指す。抗体は、本発明に従った変異6B8エピトープに、又は野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的であり得る。しかし、用語「免疫試験」は、本発明に従った変異6B8エピトープペプチド又は野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープペプチド(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)を含む試験も指す。免疫試験の例としては、任意の酵素免疫学的又は免疫化学的な検出方法、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、二重競合ELISA、EIA(酵素免疫アッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、サンドイッチ酵素免疫試験、蛍光抗体試験(FAT)、電気化学発光サンドイッチ免疫アッセイ(ECLIA)、解離-増強ランタニドフルオロ免疫アッセイ(DELFIA)又は固相免疫試験、免疫蛍光試験(IFT)、免疫組織染色、ウェスタンブロット分析、又は当業者に利用可能なあらゆる他の適切な方法などが含まれる。使用するアッセイに応じて、抗原又は抗体は、酵素、フルオロフォア、又は放射性同位体によって標識することができる。例えば、Coligan et al. Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons Inc., New York, N.Y. (1994);及びFrye et al., Oncogen 4: 1153-1157, 1987を参照されたい。
【0073】
好ましくは、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープに特異的な抗体は、野生型CSFVに感染していることが疑われる、又は本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質を含むワクチンを接種された動物(豚など)の血清中細胞(白血球など)又は単離された器官(扁桃腺、脾臓、腎臓、リンパ節、回腸の遠位部分など)のクリオスタット切片におけるCSFV抗原を検出するために使用される。このようなケースでは、野生型CSFVに感染した動物のサンプルのみが、前記6B8エピトープ特異的抗体による陽性結果を示す。逆に、本発明の組換えCSFV E2タンパク質を含むワクチンを接種された動物のサンプルは、本発明に従った6B8エピトープ内での変異を理由に、前記6B8エピトープ特異的抗体による結果を示さない。代替的な試験では、CSFVは、例えば、野生型CSFVに感染した、感染していることが疑われる、又はワクチン接種された動物の器官(動物の扁桃腺など)又は血清中細胞(白血球など)から単離され、ウイルスでの細胞の感染のために、適切な細胞系(SK-6細胞又はPK-15細胞など)とインキュベートされる。複製したウイルスはその後、野外(野生型、疾患に関連する)CSFVと本発明に従った組換えCSFVとの間を区別する6B8エピトープ特異的抗体を使用して、細胞において検出される。さらに、ペプチドを、非特異的な交差反応性をブロックするために使用することができる。さらに、野生型CSFVの他のエピトープに特異的な抗体を、ポジティブコントロールとして使用することができる。
【0074】
さらに好ましくはELISAが使用され、この場合、感染した豚を、本発明に従ったワクチンを接種された豚から区別するために、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的な抗体がマイクロウェルアッセイプレートに架橋される。前記架橋は、好ましくは、例えばポリ-L-リジンなどのアンカータンパク質を介して行われる。このような架橋を利用するELISAは、通常、受動的にコーティングされる技術を利用するELISAと比較した場合、感度が高い。野生型(疾患に関連する)CSFVは、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的な抗体に結合する。野生型CSFVの6B8エピトープに特異的な抗体への野生型CSFVウイルスの結合の検出は、CSFVに特異的なさらなる抗体によって行うことができる。このようなケースでは、感染した豚のサンプルのみが、6B8エピトープ特異的抗体による陽性結果を示す。さらに、ペプチドを、非特異的な交差反応性をブロックするために使用することができる。さらに、野生型CSFVの他のエピトープに特異的な抗体を、ポジティブコントロールとして使用することができる。
或いは、マイクロウェルアッセイプレートを、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的な抗体以外の、CSFVに特異的な抗体と架橋させてもよい。野生型(疾患に関連する)CSFVは、架橋した抗体に結合する。架橋した抗体への野生型CSFVの結合の検出は、野生型CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に特異的な抗体によって行うことができる。
【0075】
上記で既に示したように、6B8エピトープは進化的に保存されており、野生型CSFVに特異的である。
したがって、さらに好ましくは、ELISAは、本発明に従った変異6B8エピトープ又は野生型CSFVの6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)に対する抗体をサンプルにおいて検出するために使用される。このような試験は、本発明に従った変異6B8エピトープペプチド又は野生型CSFVの6B8エピトープペプチド(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)を含む。
このような試験は、マイクロウェルアッセイプレートに架橋した本発明に従った変異6B8エピトープ又は野生型CSFVの6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)を有するウェルを例えば含み得る。前記架橋は、好ましくは、例えばポリ-L-リジンなどのアンカータンパク質を介して行われる。変異体又は野生型6B8エピトープを得るための発現系は、当業者に周知である。或いは、前記6B8エピトープは、化学的に合成することができる。変異6B8エピトープ又は野生型6B8エピトープはこうして、本発明に従った試験において使用することができるが、完全なE2タンパク質を含むタンパク質又は前記6B8エピトープを含むE2タンパク質の断片を、比較的短いエピトープの代わりにそのまま使用することが都合が良い可能性があることが理解されるべきである。特に、エピトープが、標準的なELISA試験におけるウェルのコーティング剤に例えば使用される場合、エピトープを含む、より大きなタンパク質をコーティングステップに使用することが、より効率的であり得る。
【0076】
本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質を含むワクチンを接種された動物は、野生型6B8エピトープに対する抗体を産生しなかった。しかし、このような動物は、本発明に従った変異6B8エピトープに対する抗体を産生している。その結果、野生型6B8エピトープでコーティングしたウェルに結合する抗体はない。逆に、ウェルが本発明に従った変異6B8エピトープでコーティングされている場合、抗体は、前記変異6B8エピトープに結合する。
野生型CSFVに感染した動物は、しかし、CSFVの野生型エピトープに対する抗体を産生している。しかし、このような動物は、本発明に従った変異6B8エピトープに対する抗体を産生していない。その結果、本発明に従った変異6B8エピトープでコーティングされたウェルに結合する抗体はない。逆に、ウェルが野生型6B8エピトープでコーティングされている場合、抗体は、野生型6B8エピトープに結合する。
【0077】
本発明に従った変異6B8エピトープ又は野生型CSFVの6B8エピトープ(遺伝子修飾されていない6B8エピトープ)への抗体の結合は、当業者に周知の方法によって行うことができる。
好ましくは、ELISAは、サンドイッチタイプのELISAである。さらに好ましくは、ELISAは競合ELISAである。最も好ましくは、ELISAは二重競合ELISAである。しかし、様々なELISA技術が当業者に周知である。ELISAは典型的には、Wensvoort G. et al., 1988 (Vet. Microbiol. 17(2): 129-140)によって、Robiolo B. et al., 2010 (J. Virol. Methods. 166(1-2): 21-27)によって、及びColijn, E.O. et al., 1997 (Vet. Microbiology 59: 15-25)によって記載されている。
【0078】
本発明の一態様において、免疫試験は、CSFV E2タンパク質の無傷の6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中のCSFV E2タンパク質に結合しているかどうかの試験を含む。本発明の一態様において、免疫試験は、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかの試験、及び/又は、CSFV E2タンパク質の変異6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかの試験を含む。このような変異6B8エピトープは、本明細書において定義される6B8エピトープにおける変異を含む。
本発明の一態様において、免疫学的試験は、EIA(酵素免疫アッセイ)又はELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)である。本発明の一態様において、ELISAは、間接ELISA、サンドイッチELISA、競合ELISA、又は二重競合ELISAであり、好ましくは二重競合ELISAである。
一態様において、本発明はまた、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸も提供する。
【0079】
用語「核酸」は、DNA分子、RNA分子、cDNA分子、又は誘導体を含むポリヌクレオチドを指す。この用語は、一本鎖ポリヌクレオチドも二本鎖ポリヌクレオチドも包含する。本発明の核酸は、組換えポリヌクレオチド(すなわち、その天然の背景からの組換え)及び遺伝子修飾された形態を包含する。さらに、天然の修飾されたポリヌクレオチド、例えばグリコシル化若しくはメチル化されたポリヌクレオチド、又は人工的に修飾されたポリヌクレオチド、例えばビオチン化されたポリヌクレオチドを含む、化学的に修飾されたポリヌクレオチドも含まれる。さらに、本発明の組換えCSFV E2タンパク質が、縮重した遺伝子コードを理由として多くのポリヌクレオチドによってコードされ得ることを理解されたい。本発明の一態様において、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸は、核酸が導入されることになる宿主細胞に応じてコドン最適化されている。
一態様において、本発明はまた、本発明に従った組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸を含むベクターも提供する。一態様において、ベクターは発現ベクターである。
【0080】
用語「ベクター」は、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、又はレトロウイルスベクター、及び人工染色体、例えば細菌又は酵母の人工染色体を包含する。さらに、この用語はまた、ゲノムDNAへの標的化構築物のランダムな又は部位特異的な組み込みを可能にする、標的化構築物も指す。このような標的構築物は、好ましくは、以下に詳述するような相同組換え又は非相同組換えに十分な長さのDNAを含む。本発明の核酸を包含するベクターは、好ましくは、宿主における増殖及び/又は選択のための選択マーカーをさらに含む。ベクターは、当技術分野において周知の様々な技術によって宿主細胞に組み込むことができる。例えば、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿若しくは塩化ルビジウム沈殿などの沈殿に、又は荷電した脂質との複合体に、又はフラーレンなどの炭素ベースのクラスターに、導入することができる。或いは、プラスミドベクターは、熱ショック又はエレクトロポレーション技術によって導入することができる。ベクターがウイルスである場合には、ベクターは、宿主細胞に適用する前に、適切なパッケージング細胞系を使用してインビトロでパッケージングしてよい。レトロウイルスベクターは、複製増殖型又は複製欠損型であり得る。後者のケースでは、ウイルス増殖は一般に、補完性の宿主/細胞でのみ生じる。さらに好ましくは、ポリヌクレオチドは発現制御配列に作動可能に連結しており、その結果、原核細胞若しくは真核細胞又はこれらの単離画分における発現を可能にする。前記ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへの、ポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を確実にする調節エレメントは、当技術分野において周知である。これらは、好ましくは、転写の開始を確実にする調節配列、並びに任意に、転写の終結及び転写産物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。さらなる調節エレメントには、転写エンハンサー及び翻訳エンハンサーが含まれ得る。原核宿主細胞における発現を可能にする、考えられる調節エレメントは、例えば、大腸菌のlac、trp、又はtacプロモーターを含み、真核宿主細胞における発現を可能にする調節エレメントの例は、酵母のAOX1若しくはGAL1プロモーター、又は、哺乳動物細胞及び他の動物細胞のCMV-プロモーター、SV40-プロモーター、RSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMV-エンハンサー、SV40-エンハンサー、若しくはグロビンイントロンである。さらに、誘導性の発現制御配列を、本発明によって包含される発現ベクターにおいて使用してもよい。このような誘導性ベクターは、tet若しくはlacオペレーター配列、又は熱ショック若しくは他の環境因子によって誘導可能な配列を含み得る。適切な発現制御配列は、当技術分野において周知である。例えば、この技術は、Sambrook, Molecular Cloning A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1989) N.Y.及びAusubel, Current Protocols in Molecular Biology, Green Publishing Associates and Wiley Interscience, N.Y. (1994)において記載されている。好ましくは、本発明のベクターは、バキュロウイルスベクターである。さらに好ましくは、本発明のベクターは、CHO細胞などの哺乳動物細胞における発現のための哺乳動物発現ベクターである。
【0081】
一態様において、本発明はまた、本発明の核酸又はベクターを含む宿主細胞も提供する。宿主細胞は、大腸菌などの原核細胞、又は例えば昆虫(inset)細胞などの真核細胞であり得る。好ましくは、宿主細胞はSF9細胞である。さらに好ましくは、宿主細胞は、CHO細胞などの哺乳動物細胞である。
一態様において、本発明はまた、本発明の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、
(i)宿主細胞、好ましくは本明細書において定義されるCHO細胞を、CSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、及び
(ii)CSFV E2タンパク質を単離し、任意で精製するステップ
を含む方法も提供する。
CSFV E2タンパク質の精製は、例えば、CSFV E2タンパク質に付着した融合タグ又は融合ペプチドを介して、例えばHisタグ、FLAGタグ、又は存在する場合はFc断片を介して行うことができる。
一態様において、本発明はまた、(i)E2タンパク質を発現し得る発現ベクターを有する細胞を培養すること、及び(ii)本明細書において上記で定義されているE2タンパク質又は当該E2タンパク質を含む細胞培養物全体を採取することを含む、免疫原性組成物を調製する方法も提供する。
【0082】
本発明の一態様において、発現ベクターは、本発明の核酸分子を含む組換え哺乳動物発現ベクターである。一態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、商品に由来する。一態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、pcDNA3.4(Invitrogen)に由来する。一態様において、細胞は哺乳動物細胞である。一態様において、哺乳動物細胞はCHO細胞である。
一態様において、この方法は、ユーザーマニュアル(改訂版D.0、2018年5月25日、Thermo Fisher Scientific Inc)に従って、ExpiCHO(商標)発現系(Gibico、カタログ番号A29133)を使用することによって実施される。一実施形態において、CHO細胞は、Gibicoからカタログ番号A29127で販売されているExpiCHO-S(商標)細胞である。一実施形態において、この方法は、哺乳動物細胞を、例えばExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(Gibico、カタログ番号A29129)を使用して、本発明の組換え哺乳動物発現ベクターに感染させるステップを含む。
本発明の一態様において、発現ベクターは、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスである。一態様において、組換えバキュロウイルスは、商品に由来する。一態様において、組換えバキュロウイルスは、Sapphire(商標)バキュロウイルスという商標で販売されている商品(Allele Biotechnology)に由来する。一態様において、細胞は昆虫細胞である。一態様において、昆虫細胞はSF+細胞である。一実施形態において、SF+細胞は、Protein Sciences Corporation(Meriden、CT)によって販売されている商品である。
【0083】
本発明の一態様において、本方法は、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製するステップを含む。一態様において、組換えバキュロウイルスは、商品に由来する。一態様において、組換えバキュロウイルスは、Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)という商標で販売されている商品に由来する。
本発明の一態様において、本方法は、本発明の組換えバキュロウイルスで細胞を感染させるステップを含む。一実施形態において、細胞は昆虫細胞である。一実施形態において、昆虫細胞はSF+細胞である。一実施形態において、SF+細胞は、Protein Sciences Corporation(Meriden、CT)によって販売されている商品である。
【0084】
本発明の一態様において、本方法は、本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製すること、及び組換えバキュロウイルスで昆虫細胞を感染させることを含む。一実施形態において、組換えバキュロウイルスは、Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)という商標で販売されている商品に由来する。一実施形態において、昆虫細胞はSF+細胞である。一実施形態において、SF+細胞は、Protein Sciences Corporation(Meriden、CT)によって販売されている商品である。
本発明の一態様において、本方法は、(i)本発明の核酸分子を含む組換えバキュロウイルスを調製すること、(ii)組換えバキュロウイルスで昆虫細胞を感染させること、(iii)昆虫細胞を培養培地において培養すること、及び(iv)本発明のE2タンパク質又は本発明のE2タンパク質を含む細胞培養物全体を採取することを含む。一態様において、組換えバキュロウイルスは、Sapphire(商標)バキュロウイルス(Allele Biotechnology)という商標で販売されている商品に由来する。一実施形態において、昆虫細胞はSF+細胞である。一実施形態において、SF+細胞は、Protein Sciences Corporation(Meriden、CT)によって販売されている商品である。
【0085】
本発明の一態様において、本発明の細胞を培養するための培養培地は、当業者によって決定される。一態様において、培養培地は、無血清昆虫細胞培地である。一態様において、培養培地は、Ex-CELL 420(昆虫細胞用のEx-CELL(登録商標)420無血清培養培地、Sigma-Aldrich、カタログ番号14420C)である。
本発明の一態様において、昆虫細胞は、E2タンパク質の発現に適した条件下で培養される。一態様において、昆虫細胞は、最長10日間、好ましくは約2日間~約10日間、さらに好ましくは約4日間~約9日間、及びまたさらに好ましくは約5日間~約8日間の期間にわたりインキュベートされる。一態様において、昆虫細胞の培養に適した条件は、約22~32℃の間、好ましくは約24~30℃の間、さらに好ましくは約25~29℃の間、またさらに好ましくは約26~28℃の間、及び最も好ましくは約27℃の温度を含む。
本発明の一態様において、本方法は、本発明の細胞培養物を不活化するステップをさらに含む。限定はしないが化学的及び/又は物理学的処理を含む任意の従来の不活化方法を、本発明の目的に使用することができる。
一態様において、不活化ステップは、好ましくは約1~約20mMの、好ましくは約2~約10mMの、さらに好ましくは約5mM又は10mMの濃度の、環化バイナリエチレンイミン(BEI)の添加を含む。一実施形態において、不活化ステップは、NaOH中で環化してBEIを形成する2-ブロモエチレンアミンヒドロブロミドの溶液の添加を含む。
【0086】
一態様において、不活化ステップは、25~40℃の間、好ましくは28~39℃の間、さらに好ましくは30~39℃の間、さらに好ましくは35~39℃の間で行われる。一実施形態において、不活化ステップは、24~72時間、好ましくは30~72時間、さらに好ましくは48~72時間行われる。通常、不活化ステップは、検出可能なウイルスベクターの複製がなくなるまで行われる。
本発明の一態様において、本方法は、不活化ステップの後に中和ステップをさらに含む。中和ステップは、溶液中の不活化剤を中和する等量の薬剤の添加を含む。一実施形態において、不活化剤はBEIである。一態様において、中和剤はチオ硫酸ナトリウムである。一態様において、不活化剤がBEIである場合、等量のチオ硫酸ナトリウムが添加される。例えば、BEIが最終濃度5mMまで添加される場合、1.0Mのチオ硫酸ナトリウム溶液が、全ての残留BEIを中和するための最終最小濃度5mMとなるまで添加される。一態様において、中和ステップは、不活化剤がBEIである場合、チオ硫酸ナトリウム溶液を最終濃度1~20mM、好ましくは2~10mM、さらに好ましくは5mM又は10mMまで添加することを含む。一態様において、中和剤は、不活化ステップが完了した後、すなわち、ウイルスベクターの複製が検出され得なくなった後に添加される。一態様において、中和剤は、不活化ステップが24時間行われた後に添加される。一態様において、中和剤は、不活化ステップが30時間行われた後に添加される。一態様において、中和剤は、不活化ステップが48時間行われた後に添加される。一態様において、中和剤は、不活化ステップが72時間行われた後に添加される。
【0087】
本発明の一態様において、CSFV E2タンパク質はさらに精製される。例えば、本発明に従ったCSFV E2タンパク質は、CSFV E2タンパク質に付着している、例えばHisタグ、FLAGタグ、又はFc断片などの融合ペプチドを含み得る。Hisタグを有するCSFV E2タンパク質は、例えば、Ni-NTA親和性(ニトリロ三酢酸にカップリングされたニッケル2+イオン)によって精製することができる。FLAGタグ(例えばDYKDDDDK)を有するCSFV E2タンパク質は、例えば、FLAGタグに特異的に結合するモノクローナル抗体によって精製することもできる(市販のキットは、例えば、Sigma-Aldrichから入手可能である(Anti-FLAG(登録商標)M1アガロース(Agarsose)親和性ゲル))。Fc断片に連結されたCSFV E2タンパク質は、例えばプロテインA又はプロテインG親和性のいずれかによって精製することができる。
【0088】
一態様において、本発明はまた、CHO細胞において本発明の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、
a)CHO細胞を培地で増殖させるステップ;
b)ステップa)の細胞に、本発明の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む組換え哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ;
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意で精製するステップ
を含む方法も提供する。
一実施形態において、CHO細胞は、高密度懸濁培養物になるまで培地で増殖するように適応させる。
一実施形態において、組換え哺乳動物発現ベクターは、pcDNA3.4(Invitrogen)に由来する。
一実施形態において、CHO細胞は、Gibicoからカタログ番号A29127で販売されているExpiCHO-S(商標)細胞である。
一実施形態において、この方法で使用される培地は、Gibicoからカタログ番号A29100で販売されているExpiCHO(商標)発現培地である。
【0089】
一実施形態において、適応させたCHO細胞は、ExpiFectamine(商標)CHOトランスフェクションキット(Gibico、カタログ番号A29129)を使用することによってトランスフェクトされる。
一実施形態において、ステップc)では、トランスフェクトされたCHO細胞は、約32~37℃、好ましくは約32℃で培養される。
一実施形態において、ステップc)では、トランスフェクトされたCHO細胞は、約5~8%CO2の加湿雰囲気で培養される。
一実施形態において、ExpiFectamine(商標)CHOエンハンサー及びExpiCHO(商標)Feedが、ステップc)にて添加される。
一実施形態において、組換えCSFV E2タンパク質は、トランスフェクションの約2~14日後、例えば、トランスフェクションの約4~12日後、又はトランスフェクションの約8~10日後に回収される。
一態様において、本発明は、CSFVに感染した動物を、本発明の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するためのキットを提供する。一態様において、キットは、本明細書で定義される抗体若しくはその抗原結合断片、変異6B8エピトープを有する本発明の組換えE2タンパク質、及び/又は本明細書で定義される6B8エピトープを含むCSFVの野生型E2タンパク質を含む。キットはまた、使用説明書も含み得る。
【0090】
本発明の一態様において、CSFV E2タンパク質はさらに精製される。例えば、本発明に従ったCSFV E2タンパク質は、CSFV E2タンパク質に付着している、例えばHisタグ、FLAGタグ、又はFc断片などの融合ペプチドを含み得る。Hisタグを有するCSFV E2タンパク質は、例えば、Ni-NTA親和性(ニトリロ三酢酸にカップリングされたニッケル2+イオン)によって精製することができる。FLAGタグ(DYKDDDDKなど)を有するCSFV E2タンパク質は、例えば、FLAGタグに特異的に結合するモノクローナル抗体によって精製することができる(市販のキットは、例えば、Sigma-Aldrichから入手可能である(Anti-FLAG(登録商標)M1アガロース親和性ゲル))。Fc断片に連結されたCSFV E2タンパク質は、例えば、プロテインA親和性又はプロテインG親和性のいずれかによって精製することができる。
【0091】
以下の項もまた本明細書に記載され、本発明の開示の一部である。
項
以下の項もまた本明細書に記載され、本発明の開示の一部である。
1. 組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)E2タンパク質であって、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、組換えCSFV E2タンパク質。
2. 置き換えが、組換えCSFV E2タンパク質中に、6B8モノクローナル抗体又はその抗原結合断片の結合が特異的に阻害される変異6B8エピトープをもたらす、項1に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
3. C株、QZ07、GD18及びGD191から選択される株からの野生型CSFV E2タンパク質に由来する、項1又は2に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
4. 野生型CSFV E2タンパク質が、配列番号9~12から選択されるアミノ酸配列を含む、項1~3のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0092】
5. CSFV E2タンパク質の6B8エピトープが、6B8モノクローナル抗体による特異的な認識及び/又は結合を受け、6B8モノクローナル抗体は、
(i)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される、又は
(ii)配列番号7に示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号8に示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、又は
(iii)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されたモノクローナル抗体のCDRを含む、又は
(iv)配列番号1に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3に記載のアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、項1~4のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
6. CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸が、少なくとも、CSFV E2タンパク質の14位、22位、24位、24/25位、10位、41位及び/又は64位のアミノ酸を含む、項1~5のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0093】
7. CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、CSFV E2タンパク質のB/Cドメイン又はその断片である、項1~6のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
8. i)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸38位の配列;
ii)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸39位の配列;
iii)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸56位の配列;
iv)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸80位の配列;
v)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸90位の配列;
vi)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列;又は
vii)CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸110位の配列
が、CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられている、項1~7のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
9. CSFV以外のペスチウイルスが、BVDV-2を含むウシウイルス性下痢症ウイルス;スイス、BDV-1、BDV-2、BDV-3、BDV-4、BDV-5、BDV-6、シャモア、イタリア、シチメンチョウ、及びチュニジアヒツジウイルス(TSV)を含むボーダー病ウイルス;並びにキリンペスチウイルス、BVDV-3、プロングホーン、バンゴーワンナウイルス及びノルウェーラットペスチウイルスを含む非定型ペスチウイルスから選択される、項1~8のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0094】
10. CSFV以外のペスチウイルスが、キリンペスチウイルスPG2株、BDV-2 トナカイV60、ノルウェーラットペスチウイルス単離体NrPV/NYC-D23、TSV9552、バンゴーワンナ6778、及びBVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaenから選択される、項9に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
11. CSFV以外のペスチウイルスからのE2タンパク質が、配列番号21~26から選択されるアミノ酸配列を含む、項1~10のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
12. CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを定義するアミノ酸位置に少なくとも1つのアミノ酸残基を含み、それにより6B8モノクローナル抗体のCSFV E2タンパク質への結合が特異的に阻害される、項1~11のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0095】
13. i. 組換えCSFV E2タンパク質が、表1~7で定義されるアミノ酸位置にアミノ酸変異を含む、
ii.組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましい、
iii. 組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましく、かつ、25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、D、K、L、N、R、T及びVが好ましい、
iv. 組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸が、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましい、
v. 組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸が、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V又はSであり、A、Q、D、E、N及びSが好ましい、
vi. 組換えCSFV E2タンパク質の10位のアミノ酸が、A又はPである、
vii. 組換えCSFV E2タンパク質の41位のアミノ酸が、A、N又はEである、及び/又は
viii. 組換えCSFV E2タンパク質の64位のアミノ酸が、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K又はWであり、A、K、及びWが好ましい、項12に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0096】
14. 組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましく、かつ、25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、D、K、L、N、R、T及びVが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸が、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましく、組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸が、A、R、Q、E、D、N、K、L、P、T、V又はSであり、A、Q、D、E、N及びSが好ましい、項1~13のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
15. 組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸がRであり、組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸がDであり、組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸がKであり、組換えCSFV E2タンパク質の22位のアミノ酸がAである、項14に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
16. 配列番号27~48及び71~74からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項1~15のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0097】
17. Fc断片、例えば豚Fc断片が、組換えCSFV E2タンパク質に連結されており;好ましくは、Fc断片、例えば豚Fc断片が、E2タンパク質のC末端に連結されており、好ましくはペプチドリンカーを介して連結されている、項1~16のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
18. Fc断片が、配列番号20のアミノ酸配列を含む、項17に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
19. ペプチドリンカーが、配列番号16~19から選択されるアミノ酸配列を含む、項17又は18に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
20. 組換えCSFV E2タンパク質が、配列番号49~70及び75~78からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;好ましくは配列番号53、68及び75からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み;より好ましくは配列番号53及び75からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、項17~19のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
21. 6B8エピトープを定義するアミノ酸のうちの少なくとも1つを含む断片が、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片で置き換えられている、CSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列を含む、組換えCSFV E2タンパク質。
【0098】
22. CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸38位の配列が、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸39位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸56位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸80位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸90位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される;又は
CSFV E2タンパク質のアミノ酸11位からアミノ酸109位の配列は、BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株からのE2タンパク質の対応する配列で置き換えられており、アミノ酸位置の番号付けは、配列番号10により示されるCSFV野外株QZ07のE2タンパク質のアミノ酸配列の位置の番号に基づいて決定される、項21に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0099】
23. BVDV3 Hobi様Th/04 KhonKaen株のE2タンパク質の対応する断片と比較して、組換えCSFV E2タンパク質が、10位、14位、22位、24位、25位、24/25位、41位及び/又は64位に少なくとも1つのアミノ酸変異をさらに含み;好ましくは、組換えCSFV E2タンパク質が、表1~7で定義されるアミノ酸位置にアミノ酸変異をさらに含み;好ましくは、組換えCSFV E2タンパク質が、組換えCSFV E2タンパク質の14位、24位、25位又は64位に単一のアミノ酸変異をさらに含む、項21又は22に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
24. - 組換えCSFV E2タンパク質の14位のアミノ酸が、K、A、E、Q又はRであり、Kが好ましい;
- 組換えCSFV E2タンパク質の64位のアミノ酸が、A、S、E、D、G、H、T、L、P、K又はWであり、Kが好ましい;
- 組換えCSFV E2タンパク質の24位のアミノ酸が、R、D又はIであり、Rが好ましい;
- 組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、Dが好ましい;
- 組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、Nが好ましい;又は
- 組換えCSFV E2タンパク質の25位のアミノ酸が、D、K、L、N、R、T、V、E又はPであり、Rが好ましい、項23に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0100】
25. Fc断片、例えば豚Fc断片が、組換えCSFV E2タンパク質に連結されており;好ましくは、Fc断片、例えば豚Fc断片が、E2タンパク質のC末端に連結されており、好ましくはペプチドリンカーを介して連結されている、項21~24のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
26. Fc断片が、配列番号20のアミノ酸配列を含むか又はそれからなり;及び/又はペプチドリンカーが、配列番号16~19から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、項25に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
【0101】
27. 組換えCSFV E2タンパク質が、配列番号96~101からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなり;好ましくは組換えCSFV E2タンパク質が、配列番号96により示されるアミノ酸配列を含むか又はそれからなる、項26に記載の組換えCSFV E2タンパク質。
28. 項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする組換え核酸。
29. 項28の核酸を含むベクター。
30. 項28に記載の核酸又は項29に記載のベクターを含む宿主細胞であって、好ましくは、CHO細胞などの哺乳動物細胞である宿主細胞。
【0102】
31. 項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、
(i)項30に記載の宿主細胞を、CSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、及び
(ii)CSFV E2タンパク質を単離し、任意で精製するステップ
を含む方法。
32. 項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を含む組換えCSFV(古典的豚熱ウイルス)。
33. 弱毒化されている、項32に記載の組換えCSFV。
34. 項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質、項28に記載の組換え核酸、項29に記載のベクター、及び/又は項32若しくは33に記載の組換えCSFVを含む免疫原性組成物。
35. ワクチン、例えばマーカーワクチン又はDIVA(感染した動物とワクチン接種された動物との間の区別)ワクチンである、項34に記載の免疫原性組成物。
36. 動物におけるCSFVに関連する疾患を防止及び/又は処置する方法における使用のための項34又は35に記載の免疫原性組成物であって、前記方法は、項34又は35に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、免疫原性組成物。
【0103】
37. 項34又は35に記載の免疫原性組成物を、それを必要とする動物に投与するステップを含む、動物におけるCSFVに関連する疾患を予防及び/又は処置する方法。
38. a)サンプルを得るステップ、及び
b)前記サンプルを免疫試験において試験するステップ
を含む、CSFVに感染した動物を、項34又は35に記載の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別する方法。
39. 免疫試験が、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ又はその抗原結合断片を特異的に認識する抗体がサンプル中のCSFV E2タンパク質に結合し得るかどうかを試験するステップを含む、項38に記載の方法。
40. 免疫試験が、CSFV E2タンパク質の6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかを試験するステップ、及び/又は組換えCSFV E2タンパク質の変異6B8エピトープを特異的に認識する抗体がサンプル中に存在するかどうかを試験するステップを含む、項38又は39に記載の方法。
41. 免疫試験が、EIA(酵素免疫アッセイ)又はELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、好ましくは二重競合ELISAである、項38~40のいずれか1項に記載の方法。
【0104】
42. 6B8エピトープを特異的に認識する抗体が、
(i)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生される、又は
(ii)配列番号7で示されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(VH)及び配列番号8で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(VL)を含む、又は
(iii)受託番号CCTCC C2018120の下でCCTCCに寄託されているハイブリドーマによって産生されるモノクローナル抗体のCDRを含む、又は
(iv)配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR2、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むVH CDR3、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR1、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR2、及び配列番号6で示されるアミノ酸配列を含むVL CDR3を含む、
項39~41のいずれか1項に記載の方法。
43. CSFV E2タンパク質の6B8エピトープ又はその抗原結合断片を特異的に認識する抗体を含む、CSFVに感染した動物を、項34又は35に記載の免疫原性組成物をワクチン接種された動物から区別するためのキット。
【0105】
44. CHO細胞において項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を産生するための方法であって、
a)CHO細胞を培地での高密度懸濁培養に適応させるステップ;
b)ステップa)の適応させたCHO細胞に、項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ;及び
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意で精製するステップ
を含む方法。
45. 項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質を、CHO細胞において産生するための方法であって、
a)培地での高密度懸濁培養にCHO細胞を増殖させるステップ、
b)ステップa)のCHO細胞に、項1~27のいずれか1項に記載の組換えCSFV E2タンパク質をコードする核酸分子を含む哺乳動物発現ベクターをトランスフェクトするステップ、
c)ステップb)のトランスフェクトされたCHO細胞を、組換えCSFV E2タンパク質の発現に適した条件下で培養するステップ、及び
d)組換えCSFV E2タンパク質を回収し、任意で精製するステップ
を含む方法。
【0106】
46. ステップc)において、トランスフェクトされたCHO細胞が、約32~37℃、好ましくは、約32℃で培養される、項44又は45に記載の方法。
47. ステップc)において、トランスフェクトされたCHO細胞が、約5~8%CO2の加湿雰囲気で培養される、項44~46のいずれか1項に記載の方法。
48. 組換えCSFV E2タンパク質が、トランスフェクションの約2~14日後、例えば、トランスフェクションの約4~12日後、又はトランスフェクションの約8~10日後に回収される、項44~47のいずれか1項に記載の方法。
49. CSFV E2タンパク質がさらに精製される、項44~48のいずれか1項に記載の方法。
50. CSFV E2タンパク質が融合ペプチドを含み、CSFV E2タンパク質の精製が、融合ペプチドに特異的に結合するマトリックスに対する親和性によって行われる、項44~49のいずれか1項に記載の方法。
51. CSFV E2タンパク質が、Hisタグを融合ペプチドとして含み、CSFV E2タンパク質が、CSFV E2タンパク質をHisタグを介してNi-NTAに結合させ、CSFV E2タンパク質をNi-NTAから放出させることによって精製される、項44~50のいずれか1項に記載の方法。
【0107】
52. CSFV E2タンパク質が、FLAGタグを融合ペプチドとして含み、CSFV E2タンパク質が、CSFV E2タンパク質を、FLAGタグを介して、FLAGタグに特異的に結合するモノクローナル抗体に結合させ、CSFV E2タンパク質をそのようなモノクローナル抗体から放出させることによって精製される、項44~50のいずれか1項に記載の方法。
53. CSFV E2タンパク質がFc断片に連結されており、CSFV E2タンパク質が、CSFV E2タンパク質をFc断片を介してプロテインA又はプロテインGに結合させ、CSFV E2タンパク質をプロテインA又はプロテインGから放出させることによって精製される、項44~50のいずれか1項に記載の方法。
【実施例】
【0108】
以下の実施例は、本発明を例示的な様式でさらに説明する。本発明は以下に記載されるような実施例のいずれかに限定されるものではないことを理解されたい。当業者には、これらの実施例の性能、結果、及び所見が本発明の全体的な記載に照らしてより広い意味で適合及び適用され得ることが理解される。
【0109】
(実施例1)
6B8エピトープに基づくB/Cドメインスワッピングを用いた組換えCSFV E2タンパク質の発現のための構築物の構築
1.1 スワッピングのためのE2タンパク質のB/Cドメイン又はB/Cドメインの断片
6B8エピトープに基づくB/Cドメインスワッピングを用いて組換えCSFV E2タンパク質の発現のための構築物を調製するために、CSFV以外の7つのペスチウイルス株を、スワッピングのためのE2タンパク質のB/Cドメイン又はB/Cドメインの断片のアミノ酸配列を提供するための、Ernst Peterhansの刊行物(
図1、Peterhans, et al., Cytopathic bovine viral diarrhea viruses (BVDV): emerging pestiviruses doomed to extinction. Vet. Res. Vol. 41(6)からの改訂版)に基づいて選択し、7つのペスチウイルス株は、以下の通りであった:
- トナカイV60(ウイルス株のポリタンパク質配列のGenBank受託番号は、AAF02524.2であり;ウイルス株のE2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号22によって示される)、
- チュニジアヒツジウイルス9552(TSV9552)(ウイルス株のポリタンパク質配列のGenBank受託番号は、AAR24375.1であり;ウイルス株のE2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号25によって示される)、
- PG2(ウイルス株のポリタンパク質配列のGenBank受託番号は、AHW57610.1であり;ウイルス株のE2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号21によって示される)、
- Hobi様Th/04 KhonKaen(以下、「Hobi様」と名付けられた)(ウイルス株のポリタンパク質配列のGenBank受託番号は、ACM79934.1であり;ウイルス株のE2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号26によって示される)、
- バンゴーワンナ6778(以下、「バンゴーワンナ」と名付けられた)(ウイルス株のポリタンパク質配列のGenBank受託番号は、ABK58639.1であり;ウイルス株のE2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号24によって示される);及び
- ノルウェーラットNrPV/NYC-D23(以下、「ノルウェーラット」と名付けられた)(ウイルス株のポリタンパク質配列のGenBank受託番号は、YP_009109567であり;ウイルス株のE2タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号23によって示される)。
【0110】
1.2 6B8エピトープに基づくB/Cドメインスワッピングを用いた組換えCSFV E2タンパク質の発現のための構築物の構築
6B8エピトープに基づくB/Cドメインスワッピングを用いた組換えCSFV E2タンパク質は、CSFV QZ07株からのE2タンパク質(配列番号10)及びスワッピングのための実施例1.1で開示されたペスチウイルス株からのE2タンパク質のB/Cドメインの断片を含む。組換えCSFV E2タンパク質はまた、組換えCSFV E2タンパク質のC末端にFc断片(配列番号20)を含んでいてもよいし、Fc断片とE2タンパク質との間にペプチドリンカー(配列番号16)を含んでいてもよい。組換えCSFV E2タンパク質はまた、KARD変異を含んでいてもよい。
図2に、組換えCSFV E2タンパク質の構造を模式的に示した。
【0111】
組換えCSFV E2タンパク質のアミノ酸配列のそれぞれを、構築物としての対応するヌクレオチド配列の設計のために使用し(表8にそれぞれの構築物の名称を列挙した)、次いで設計されたヌクレオチド配列をコドンが最適化し、CHO発現系(ExpiCHO(商標)発現系、Thermo Fisher)の説明書に従って合成した。可溶性及び分泌型E2タンパク質を得るために、E2の最後の43個のアミノ酸(aa)を、最終的な最適化された配列において欠失させ、一方でE1タンパク質からの最後の21個のaaをシグナルペプチドとして付加した(配列番号14)。それぞれ合成された配列をpCDNA3.4プラスミドにクローニングした。QZ07E2株の330アミノ酸の長さを有する野生型E2タンパク質を発現させるための構築物(QZ07E2-WT330FC)も構築した。
【0112】
表8に、スワッピングのためのアミノ酸配列の由来となるウイルス株の名称、スワッピングのためのアミノ酸配列、ウイルス株の元の6B8エピトープ、構築物の名称、及び構築物を設計するための組換えCSFV E2タンパク質のアミノ酸配列を列挙した。
スワッピングのためのアミノ酸配列に関して、表8に列挙されたそれらの位置の番号、例えば「11~39、11~56など」は、QZ07 CSFV E2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号10)の位置の番号に基づいて決定される。例えば、「PG2 11-39」は、配列番号10(QZ07 CSFV E2タンパク質)のアミノ酸11位~39位のアミノ酸配列を、ペアワイズ配列アライメントでPG2株のE2タンパク質のアミノ酸配列とアライメントし、次いで、PG2株のE2タンパク質の対応するアライメントされた配列を使用して、配列番号10(QZ07 CSFV E2タンパク質)のアミノ酸11位~39位の配列をスワッピングすることを指す。
【0113】
構築物の名称に関して(構築物の類似の学術名は、類似の意味を有する)、例えば、
- 「QZ07E2-PG2 11-110キメラFC」は、配列番号10のアミノ酸11位~110位(QZ07 CSFV E2タンパク質)のアミノ酸配列を、PG2株のE2タンパク質のアミノ酸配列とペアワイズ配列アライメントでアライメントし、次いで、PG2株のE2タンパク質の対応するアライメントされた配列を使用して、配列番号10のアミノ酸11位~110位(すなわち「QZ07E2-PG2 11-110キメラ」)の配列をスワッピングし、構築物の対応するヌクレオチド配列を設計するために得られた配列を使用することによって、構築物を設計したことを意味する。構築物はまた、組換えCSFV E2タンパク質のC末端にFc断片をコードするヌクレオチド配列(配列番号20)(すなわち「FC」)も含む。ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列及びシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列も構築物中に存在する。
【0114】
- 「QZ07E2-PG2 11-39キメラ」は、配列番号10のアミノ酸11位~39位(QZ07 CSFV E2タンパク質)のアミノ酸配列を、PG2株のE2タンパク質のアミノ酸配列とペアワイズ配列アライメントでアライメントし、次いで、PG2株のE2タンパク質の対応するアライメントされた配列を使用して、配列番号10のアミノ酸11位~39位(すなわち「QZ07E2-PG2 11-39キメラ」)の配列をスワッピングし、構築物の対応するヌクレオチド配列を設計するために得られた配列を使用することによって、構築物を設計したことを意味する。シグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列も構築物中に存在する。しかしながら、構築物はまた、Fc断片をコードするヌクレオチド配列及びペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列を含まない。
【0115】
- 「QZ07E2-トナカイV60 11-56 KARDキメラFC」は、配列番号10のアミノ酸11位~56位(QZ07 CSFV E2タンパク質)のアミノ酸配列を、トナカイV60株のE2タンパク質のアミノ酸配列とペアワイズ配列アライメントでアライメントし、次いで、トナカイV60株のE2タンパク質の対応するアライメントされた配列を使用して、配列番号10のアミノ酸11位~56位(すなわち「QZ07E2-トナカイV60 11-56キメラ」)の配列をスワッピングし、構築物の対応するヌクレオチド配列を設計するために得られた配列を使用することによって、構築物を設計したことを意味する。構築物はまた、KARD変異(すなわち「KARD」)にするヌクレオチド変異も含む。構築物はまた、組換えCSFV E2タンパク質のC末端にFc断片をコードするヌクレオチド配列(配列番号20)(すなわち「FC」)も含む。ペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列及びシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列も構築物中に存在する。
【0116】
【0117】
(実施例2)
CHO細胞における組換えCSFV E2タンパク質のための構築物の発現
表8に列挙された構築物を、組換えCSFV E2タンパク質の発現のためのCHO細胞にトランスフェクトした。トランスフェクション及び培養を、Thermo FisherからのExpiCHO(商標)発現系ガイドの説明書に従って実行した。最後に、細胞培養培地を、4℃で、4000rpmで15分間遠心分離することによって回収し、上清を回収した。
【0118】
上清に含有される組換えCSFV E2タンパク質の収量を、SDS-PAGE及びウェスタンブロットを使用することによって検出した。各上清からの90μlのサンプルを、30μlのローディング緩衝液と混合し、95℃で10分沸騰させ、遠心分離の後、10μlの各サンプルを、SDS-PAGEゲルのウェルに分子量マーカーと共にローディングした。その後、以下のステップ:色素の先頭がゲルの底部に達するまで(約90分)150Vでゲルを泳動するステップ、装置から泳動したゲルを除去するステップ、及び約20mlの染色溶液を添加することによって1つのゲルを小さいトレイに置くステップ、及び穏やかに振盪しながら60分より長く染色するステップ、ゲルが視覚的に脱色するまで(2時間より長く)穏やかに振盪しながらH2Oによって脱色するステップを実行した。ウェスタンブロットゲルの場合、タンパク質をゲルからPVDF膜に移動させた後、ブロッキング緩衝液(PBST中の5%スキムミルク)を使用して、室温で1時間又は4℃で一晩、膜をブロックするステップ、次いでブロッキング緩衝液での一次抗体WH303(CSFV E2タンパク質に結合することも可能な抗体)及び6B8の適切な希釈物と共に膜をインキュベートするステップ、それぞれ5分間のPBSTの3回の洗浄で膜を洗浄するステップ、ブロッキング緩衝液中の推奨された希釈率のコンジュゲートした二次抗体と共に膜を室温で1時間インキュベートするステップ、次いでそれぞれ5分間のPBSTの3回の洗浄で膜を洗浄するステップ、及びシグナル発生に供するステップ。
【0119】
さらなるウェスタンブロッティング実験、又はDIVA及び効能評価のための候補として、組換えCSFV E2タンパク質の17種の上清をランダムに選択した。上清は、以下の構築物:QZ07E2-PG2 11-39キメラFC、QZ07E2-PG2 11-56キメラFC、QZ07E2-トナカイV60 11-38キメラFC、QZ07E2-トナカイV60 11-56キメラFC、QZ07E2-トナカイV60 11-56 KARDキメラFC、QZ07E2-トナカイV60 11-80キメラFC、QZ07E2-トナカイV60 11-110キメラFC、QZ07E2-TSV11-38キメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-38 KARDキメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-56キメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-56 KARDキメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-80キメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-109キメラFC、QZ07E2-Hobi様11-39キメラFC、QZ07E2-Hobi様11-56キメラFC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラFC、及びQZ07E2-バンゴーワンナ11-38キメラFCの発現から調製されたものであった。構築物QZ07E2-WT330FCの発現から調製された上清も調製し、さらなる試験に使用した。
【0120】
(実施例3)
6B8抗体結合の阻害に関する試験
この実施例の目的は、組換えCSFV E2タンパク質のB/Cドメインのスワッピング又は組換えCSFV E2タンパク質のB/Cドメインのスワッピングが、KARD変異と共に、6B8抗体の組換えCSFV E2タンパク質への結合ブロックできるかどうかをインビトロで評価することであった。
実施例2に列挙された上記の17種の候補をウェスタンブロッティング実験に供して、DIVAの主要な特徴である6B8抗体結合の阻害を決定した。ウェスタンブロッティング実験の詳細なステップは、実施例2を参照することができる。
全ての上清が、6B8抗体への抗体結合を示さなかったが、WH303抗体への結合は示した。
図3A及び3Bは、QZ07E2-トナカイV60 11-110キメラFC、QZ07E2-トナカイV60 11-56 KARDキメラFC、QZ07E2-PG2 11-56キメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-38 KARDキメラFC、QZ07E2-TSV9552 11-109キメラFC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラFC、QZ07E2-Hobi様11-56キメラFC及びQZ07E2-トナカイV60 11-80キメラFCのウェスタンブロットの結果を示した。
図3A及び3Bからわかるように、
図3Aのレーン1~3及び
図3Bのレーン2~6は、6B8抗体結合を示さなかった;
図3Bのレーン1において、QZ07E2株の野生型E2タンパク質からの上清を添加したところ、6B8抗体結合が示される;レーン中の全てのバンドは、WH303抗体に結合することができ、これは、全てのタンパク質が十分発現され、存在していたことを意味する。これらのタンパク質と6B8抗体との反応性の無効化が、KARD変異を含んでも、又は含まなくても、B/Cドメインのスワッピングによって直接引き起こされたことが実証された。
【0121】
(実施例4)
効能評価
この実施例の目的は、典型的な様式で実施例2の上清から調製された組成物を使用することによって、組換えE2タンパク質の効能を評価することであった。実施例3の8種の上清を候補としてランダムに選択した。
簡単に言えば、合計60頭の市販の混合品種の21±7日齢(3週齢)の子豚を、11群に割り振った:
- 5頭の子豚を含有する群1は、DIVAの特徴なしのE2コントロールとして機能した;
- 各群につき5頭の子豚を含有する群2~9は、効能評価のために使用された;
- 5頭の子豚を含有する群10は、チャレンジコントロールとして機能した;
- 5頭の子豚を含有する群11は、厳密な(ネガティブ)コントロールとして機能した。
【0122】
表9に、組換えE2タンパク質の各群の名称及び効能評価を列挙した。実施例2から調製された上清をそれぞれ、免疫原性組成物が調製されるようにSeppic ISA 206アジュバントと混合した。55~65μgの未精製組換えE2タンパク質を、投与のための組成物の1用量(2ml)に含有させ、これをこのような実験で使用した。組成物中において、上清に含有される組換えE2タンパク質とSeppic ISA 206アジュバントとの質量比は、約1:1である。
【表10】
【0123】
0日目に、群1~9の子豚にそれぞれ、子豚1頭当たり2mLのSeppic ISA 206アジュバントを含む組成物を接種した(IM)。0日目に、群10に、チャレンジコントロールとして機能する2mLのPBS+アジュバント(Seppic ISA 206)を接種した(IM)。21日目に、群1~10の子豚に、感染性CSFVシメン(Shimen)株(Institute of Military Veterinary Medicine, Academy of Military Sciencesによって提供された)を105MLD/mL以上の用量で接種した(IM)。全ての子豚は臨床的に健康であり、0日目に、CSFV及びPRRSV抗体を有しておらず、BVDV、PRVを含む抗原を有していなかった。全ての子豚が、免疫化の時点で健康であった。
【0124】
血清サンプルを、-0日目から開始して7日毎に回収した。21、24、28、31及び37日目に(チャレンジ後0、3、7、10、16日目(DPC))、全ての子豚の全血サンプルを回収した。ワクチン効能を決定するための主要なパラメーターは死亡率であった。死亡率は、重度の典型的な豚熱(CSF)感染症に関連する。
以下の表10で示されるように、チャレンジコントロール群(群10)において子豚は全て死亡した。群4、5及び8について、それらは全て20%の死亡率を示したが、それでもなおチャレンジ群よりかなり優れており、他の群は全てシメン株チャレンジに対して100%の死亡からの保護を示した。結果から、他のペスチウイルスからの対応する断片での置き換え及び組換えE2タンパク質におけるアミノ酸変異の組み込みは、ワクチン効能に影響を与えなかったことが示された。したがって、全てのワクチン候補がワクチン効能を示した。
【0125】
以下の表10に、全ての候補の効能評価の結果を要約した。
【表11】
【0126】
(実施例5)
免疫応答評価
この実施例において、表9の構築物から調製された組換えE2タンパク質(群2~9)を免疫応答評価に供した。これらの組換えE2タンパク質の免疫原性組成物の調製方法及び子豚の群分けや免疫化の投薬量などを含むそれに続く実験設計は、実施例4に記載された方法と同じであった。群1~10の子豚を、21日目に、105MLD/mL以上の用量で、感染性CSFVシメン株(Institute of Military Veterinary Medicine, Academy of Military Sciencesによって提供された)を接種すること(IM)によってチャレンジした。
血清サンプルを、0日目から開始してチャレンジ後16日目(DPC16)までに、7日毎に回収した。ワクチン接種後の抗体応答を評価するための主要なパラメーターは、ワクチン接種された子豚の抗体レベルを反映する抗体ブロック率であった。抗体ブロック率の値を、IDEXX CSFV Ab ELISAアッセイキット(IDEXX Laboratories.Inc)のプロトコールに従って決定した。
【0127】
表11は、異なる日における各群のワクチン接種された子豚の平均抗体ブロック率(%)を示す。
【表12】
【0128】
表11で示されるように、2つのコントロール群10~11を除いて、14日目に、ワクチン接種された群1~9の抗体ブロック率は陽性になり始め(ブロック率>40%、これは、大量の抗体が血清サンプル中に存在することを意味する)、次いで21日目まで急速に上昇し、DPC7に、ワクチン接種された群1~9の抗体ブロック率はピーク値に達した。さらに、ワクチン接種された群2~9の抗体ブロック率は、DPC7からDPC16にかけてワクチン接種された群1の抗体ブロック率と同等であった。これらの結果から、表9に列挙された構築物から調製された組換えE2タンパク質は、ワクチン接種された子豚において抗体応答をうまく惹起し、他のペスチウイルスからの対応する断片での置き換え、及びアミノ酸変異の組み込みは、ワクチンの免疫原性に影響を与えなかったことが示された。
【0129】
(実施例6)
インビボでのDIVA試験
この実施例において、表9の構築物から調製された組換えE2タンパク質(群2~9)は、インビボでのDIVA試験に供された。これらの組換えE2タンパク質の免疫原性組成物の調製方法及び子豚の群分けや免疫化の投薬量などを含むそれに続く実験設計は、実施例4に記載された方法と同じであった。群1~10の子豚を、21日目に、105MLD/mL以上の用量で、感染性CSFVシメン株(Institute of Military Veterinary Medicine, Academy of Military Sciencesによって提供された)を接種すること(IM)によってチャレンジした。DIVA試験のために、21日目(D21)及びチャレンジ後16日目(DPC16)に血清サンプルを回収した。
【0130】
血清サンプルを二重競合ELISA(dcELISA)方法に供して、DIVAマーカーとして使用された6B8抗体に対する抗体応答を検出した。dcELISA方法を、Bruderer U., J Immunol Methods. 2015 May; 420:18-23に従って実行し、6B8モノクローナル抗体を、dcELISA方法において競合抗体として使用した。ワクチン接種された子豚の抗体レベルを評価するための値は、抗体ブロック率であり、これは、各群につきOD450で血清サンプル及び厳密なコントロールの平均吸光度値を測定し、次いで厳密なコントロールのOD450値と血清サンプルのOD450値との間の差の値を厳密なコントロールのOD450値で割ることによって、抗体ブロック率を計算することによって得られた。試験血清サンプルは、>30%のブロックのパーセンテージを示す場合、陽性である(6B8抗体が存在する)。試験血清サンプルは、≦30%のブロックのパーセンテージを示す場合、陰性である(6B8抗体は存在しない)。
【0131】
表12は、D21及びDPC16における各群のワクチン接種された子豚の平均抗体ブロック率(%)を示す。
【表13】
表12で示されるように、群1を除いて、ワクチン接種された群2~9の6B8抗体ブロック率は、ワクチン接種後のD21に陰性であり、DPC16に、全ての群1~9の6B8抗体ブロック率は陽性になり始めた。これらの結果から、他のペスチウイルスからのキメラE2断片を含む組換えE2タンパク質は、DIVA能力を有し、アミノ酸変異のさらなる組み込みは、DIVA能力を確実にできることが示された。したがって、表9に列挙された構築物から調製された組換えE2タンパク質は、DIVA能力を有する。
【0132】
(実施例7)
E2タンパク質における6B8結合に関する重要なアミノ酸位置の同定
WO2020211802Aにおいて(WO2020211802Aの全体の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる)、CSFV E2タンパク質におけるアミノ酸14位、22位、24位、及び24/25位は、6B8モノクローナル抗体の結合にとって重要であるとしてすでに同定されている。具体的には、E2タンパク質のアミノ酸24位におけるE又はGのR又はKへの置換、アミノ酸24位におけるE又はGのR又はKへの置換、並びにE2タンパク質のアミノ酸25位におけるGのDへの置換、E2タンパク質のアミノ酸14位におけるSのK、Q又はRへの置換、及び/又はE2タンパク質のアミノ酸22位におけるGのA、R、Q、又はEへの置換は、6B8抗体のCSFV E2タンパク質への結合を特異的に阻害すると実証された。
以下の実施例は、E2タンパク質における6B8結合に関する追加の重要なアミノ酸位置を同定するためである。
この実施例において、E2におけるアミノ酸10位、41位及び64位が、6B8 mAb結合に関する追加の重要な位置としてさらに同定された。
【0133】
変異QZ07-E2タンパク質は、それぞれY10A、Y10P、D41A、D41N、D41E、R64A、R64S、又はR64E(それぞれ配列番号79~86に示されるアミノ酸配列;コドン最適化されたコード配列がそれぞれ配列番号87~94に示される)を含有する。変異を有さないQZ07-E2タンパク質のコドン最適化されたコード配列は、配列番号95に示されていた。それぞれのコドン最適化された配列を合成し、次いでBamH I及びEcoR IによってpVL1393シャトルプラスミドにクローニングして、さらなるコトランスフェクションのためのpVL1393-シャトルプラスミドを完成させた。可溶性及び分泌型E2タンパク質を得るために、最終的な配列においてE2の最後の42個のアミノ酸を欠失させ、一方でシグナルペプチドとしてE1タンパク質からの最後の16個のアミノ酸を付加した。タンパク質のさらなる発現のために、CHO発現系(ExpiCHO(商標)発現系、Thermo Fisher)を使用した。6B8 mAbの、変異6B8エピトープを有する変異QZ07-E2タンパク質への結合を決定するための免疫蛍光(Immunoinfluoscent)アッセイ(IFA)。変異QZ07-E2タンパク質を構築し発現させる詳細な方法、加えてIFA試験は、WO2020211802Aを参照することができる。
【0134】
結果は
図4に示され、結果は、置換Y10A、Y10P、D41A、D41N、D41E、R64A、R64S、及びR64Eがそれぞれ、6B8 mAb結合を阻害できることを示す。Y10A、Y10P、D41A、D41N、D41E、R64A、R64S、又はR64Eを含む変異体QZ07-E2タンパク質の発現を、ウェスタンブロッティングによって検出した。結果は
図5に示され、結果は、変異R64A及びR64Sが、CHO細胞系においてタンパク質の発現分泌にわずかしか影響しないことを示す。
【0135】
(実施例8)
E2タンパク質における6B8結合を阻害するための追加のアミノ酸変異の同定
この実施例において、E2におけるアミノ酸14位、22位、24位、25位及び64位におけるさらなる変異が、6B8 mAb結合を阻害することに関して追加で重要であるとして同定された。
14位、22位、24位、25位及び64位に様々な変異を含有する変異QZ07-E2タンパク質をそれぞれ設計し、変異QZ07-E2タンパク質の対応するコード配列をコドンが最適化し、CHO発現系(ExpiCHO(商標)発現系、Thermo Fisher)の説明書に従って合成した。可溶性及び分泌型E2タンパク質を得るために、E2の最後の43個のアミノ酸を、最終的な最適化された配列において欠失させ、一方でE1タンパク質からの最後の21個のアミノ酸をシグナルペプチドとして付加した。変異QZ07-E2タンパク質のさらなる発現のために、CHO発現系(ExpiCHO(商標)発現系、Thermo Fisher)を使用した。変異QZ07-E2タンパク質を構築し発現させる詳細な方法は、上記の実施例1及びWO2020211802Aの実施例1~3に従った。
【0136】
変異体QZ07-E2-Fc-R64D、変異体QZ07-E2-Fc-R64H、変異体QZ07-E2-Fc-R64T、変異体QZ07-E2-Fc-R64G、変異体QZ07-E2-Fc-R64Kを含む一部の変異体を、タンパク質発現を増強するために変異体E2のC末端をFc断片にさらに連結することによって調製した。ペプチドリンカーも、E2タンパク質とFc断片との間に付加した。変異QZ07-E2-Fcタンパク質のコドン最適化された配列を、pCDNA3.4プラスミドにクローニングした。
【0137】
組換えpCDNA3.4プラスミドのトランスフェクション及び培養もまた、Thermo FisherからのExpiCHO(商標)発現系ガイドの説明書に従ってなされた。
トランスフェクションの前日(-1日目)、ExpiCHO-S(商標)培養物を、3×106~4×106生存細胞/mLの最終密度に分割し、細胞の一晩増殖を可能にした。トランスフェクションの当日(0日目)に、生存細胞密度及び生存率を決定した。細胞が約7×106~10×106生存細胞/mLの密度に達し、生存率が95~99%だったら、細胞を、新鮮なExpiCHO(商標)発現培地で6×106生存細胞/mLの最終密度に希釈した。フラスコを穏やかに回旋させて細胞を混合した。冷却試薬(4℃)を使用してExpiFectamine(商標)CHO/プラスミドDNA複合体を調製した。試薬を単に冷蔵庫から取り出し、DNA複合体形成を開始させた。以下のステップが含まれていた:a)ExpiFectamine(商標)CHO試薬ボトルを4~5回を穏やかに逆さにして混合するステップ、b)プラスミドDNAを冷却OptiPRO(商標)培地で希釈し、チューブを回旋させることによって及び/又は逆さにすることによって混合するステップ、c)ExpiFectamine(商標)CHO試薬をOptiPRO(商標)培地で希釈し、チューブを回旋させることによって及び/又は逆さにすることによって又は2~3回穏やかにピペッティングすることによって混合し、チューブを回旋させることによって又は逆さにすることによって混合し、ExpiFectamine(商標)CHO/プラスミドDNA複合体(ステップdからの)を室温で1~5分間インキュベートし、次いで溶液をゆっくりとシェーカーフラスコに移し、添加中はフラスコを穏やかに旋回させるステップ。1日目、トランスフェクションの翌日(1日目、トランスフェクションの18~22時間後)、ExpiFectamine(商標)CHOエンハンサー及びExpiCHO(商標)Feedをフラスコに添加し(ガイドに従った容積を添加)、続いて添加中はフラスコを穏やかに回旋させた。フラスコを、空気中5%CO2の加湿雰囲気を有する32℃インキュベーターに移し、振盪しながら6~10日間培養した。細胞培養培地を、4℃にて15分間4000rpmで遠心分離することによって回収した。
【0138】
変異QZ07-E2-Fcタンパク質の精製を、それぞれThermoからのプロテインAアガロースを使用することによって実行した。精製溶液は、1M Tris緩衝液(pH9.0)を含む。精製プロセスは、以下のステップを含む:プロテインアガロース及び全ての緩衝液を室温に平衡化するステップ;カラムに付属の使用説明書に従って、カラムに、0.5ml(64位の変異などのQZ07-E2-Fc変異のため)の樹脂スラリーを慎重に充填するステップ;5mlの結合緩衝液を添加することによってカラムを平衡化し、溶液がカラムから排出されることを可能にするステップ;サンプルをプロテインAカラムにアプライする前に結合緩衝液で1:2に希釈して、最適な結合のために適正なイオン強度及びpHを維持するステップ;希釈したサンプルをカラムにアプライし、サンプルが樹脂へと完全に流れ込むことを可能にするステップ;10mlの結合緩衝液でプロテインAカラムを洗浄するステップ;5mLの溶出緩衝液で抗体を溶出し、画分を回収するステップ;100μlの中和緩衝液を1mlの溶出物に添加することによって、溶出画分を生理学的pHへと直ちに調整するステップ;溶出物を遠心分離フィルターに移し、6mlのPBSを添加するステップ;チューブを15分間4000rpmで遠心分離するステップ;10mlのPBSを使用してチューブを洗浄するステップ;遠心分離ステップを繰り返して、サンプルを1~2mlに濃縮するステップ;Qubitキットを使用して、精製緩衝液交換サンプルを測定するステップ;並びにSDS-PAGE及びウェスタンブロット分析によって産物を確認するステップ。
【0139】
変異QZ07-E2タンパク質及び変異QZ07-E2-Fcタンパク質の精製生成物を、SDS-PAGE及びウェスタンブロット分析によって確認した。結果は
図6~10に示される。
アミノ酸22位の場合、G22A、G22Q、G22D、G22E、G22N、及びG22Sが、収量及びmAb 6B8との反応性の両方の点で置換候補であり得る。
アミノ酸24位の場合、G24Rは、依然としてmAb 6B8との弱い反応性を示し、G24D及びG24I変異体は、mAb 6B8と反応することができないが、収量が低い。
【0140】
アミノ酸25位の場合、G25D、G25K、G25L、G25N、G25R、G25T、及びG25Vが、収量及びmAb 6B8との反応性の両方の点で置換候補であり得る。
アミノ酸64位の場合、R64A、R64K、及びR64Wが、収量及びmAb 6B8との反応性の点で変異体候補である。
アミノ酸14位について、S14A、S14Q、S14R、S14Eは、非常に弱いmAb 6B8との反応性を示したことから、これらの変異は、収量とmAb 6B8との反応性の両方に関して好適な候補置換である。mAb 6B8との非常に弱い反応性は、mAb 6B8陽性の反応性とmAb 6B8陰性の反応性とを明確に区別して、カットオフ値を定義することを可能にする。
【0141】
(実施例9)
B/Cドメインスワッピング及び1つの単一の変異を有する組換えCSFV E2タンパク質の発現のための追加の構築物の構築及び発現
この実施例において、実施例1及び2に記載された方法に従って、6つの追加の構築物を調製し、次いでCHO細胞において発現させた。構築物は、QZ07E2-Hobi様11-109キメラE14K FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラR64K FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラT24R FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラG25D FC、QZ07E2-Hobi様11-109キメラG25N FC、及びQZ07E2-Hobi様11-109キメラG25R FCと名付けられた。
【0142】
配列番号10のアミノ酸11位~109位(QZ07 CSFV E2タンパク質)のアミノ酸配列を、Hobi様株のE2タンパク質のアミノ酸配列とペアワイズ配列アライメントでアライメントし、次いで、Hobi様株のE2タンパク質の対応するアライメントされた配列を使用して、配列番号10のアミノ酸11位~109位の配列をスワッピングし、得られたアミノ酸配列を使用して、構築物の対応するヌクレオチド配列を設計することによって、構築物QZ07E2-Hobi様11-109キメラE14K FCを調製した。またE14K変異をもたらすヌクレオチド変異も、構築物の対応するヌクレオチド配列に導入した。またFc断片をコードするヌクレオチド配列(配列番号20)、及びペプチドリンカーをコードするヌクレオチド配列(配列番号16)、及びシグナルペプチドをコードするヌクレオチド配列(配列番号14)も構築物に付加した。他の構築物を同じ方法で調製した。
これらの構築物によって発現された組換えCSFV E2タンパク質は、実施例7~8において6B8 mAb結合を阻害することにとって重要であると同定された位置にB/Cドメインスワッピング及び単一のアミノ酸変異を有する。実施例2に記載された方法に従って、組換えCSFV E2タンパク質を含有する上清を得て、回収した。
【0143】
図11において、これらの構築物から発現された組換えCSFV E2タンパク質の構造を図式化した。組換えCSFV E2タンパク質を発現させるためのこれらの構築物のヌクレオチド配列、及び構築物から発現される組換えCSFV E2タンパク質のアミノ酸配列(発現後にシグナルペプチドは除去された)を表13に列挙した。
【表14】
【0144】
(実施例10)
6B8抗体結合の阻害に関するインビトロでの試験
この実施例において、実施例9の6つの構築物の発現から調製された上清は、QZ07E2-WT330FC及びQZ07E2-Hobi様11-109キメラFCと共に、6B8抗体結合の阻害を決定するためにウェスタンブロッティング実験に供された。ウェスタンブロッティング実験は、実施例2~3に記載された方法に従って実行した。
図12は、これらの構築物の発現から調製された上清のウェスタンブロットの結果を示す。
図12のレーン1~8に結合ブロットが存在していたことから(左の図)、構築物の全てから調製された上清がWH303モノクローナル抗体と反応できることが示される。
図12のレーン1~7に結合ブロットは存在しなかったことから(右の図)、対応する構築物から調製された上清が6B8モノクローナル抗体と反応できないことが示される。これらの結果から、これらのタンパク質の6B8モノクローナル抗体との反応性の無効化は、B/Cドメインのスワッピング及び単一の変異によって直接的に引き起こされることが示され、これは、これらの構築物から発現される組換えE2タンパク質が、野生型野外株に感染した動物からのワクチン接種された動物の区別に使用できることを示唆する。
【0145】
(実施例11)
免疫応答評価
この実施例において、表13の構築物から調製された組換えE2タンパク質を、免疫応答評価に供した。21±7日齢(3週齢)の合計39頭の市販の混合品種の子豚(Rugao Boyi Animal Husbandry Co., Ltd.、NanTong、Chinaより)を9群に割り振った:
- 各群につき5頭の子豚を含有する群1~7を免疫応答評価に使用した;
- 2頭の子豚を含有する群8は、DIVAの特徴なしのE2コントロールとして機能した;
- 2頭の子豚を含有する群9は、厳密な(ネガティブ)コントロールとして機能した。
【0146】
実施例8の6つの構築物の発現から調製された上清を、QZ07E2-WT330FC及びQZ07E2-Hobi様11-109キメラFCと共に、免疫原性組成物が調製されるように、Seppic ISA 206アジュバントとそれぞれ混合した。免疫原性組成物のそれぞれにおいて、上清に含有される組換えE2タンパク質と、Seppic ISA 206アジュバントとの質量比は、約1:1である。各子豚に免疫原性組成物(2ml)の1つの用量を投与した。表14に、免疫原性組成物の1つの用量に含有される組換えE2タンパク質の量を列挙した。
【表15】
0日目に、群1~8の各子豚に、2mLの組成物を接種した(IM)。0日目に、群9に、2mLのPBS+アジュバント(Seppic ISA 206)を接種し(IM)、厳密なコントロールとして機能させた。21日目に、群1~9の子豚を、0日目に使用したのと同じ抗原でブーストした。全ての子豚は臨床的に健康であり、0日目に、CSFV及びPRRSV抗体を有しておらず、BVDV、PRVを含む抗原を有していなかった。全ての子豚が、免疫化の時点で健康であった。
【0147】
血清サンプルを、0日目から開始して56日目までに、7日毎に回収した。ワクチン接種後の抗体応答を評価するための主要なパラメーターを、ワクチン接種された子豚の抗体レベルを反映する抗体ブロック率と称した。抗体ブロック率の値を、IDEXX CSFV Ab ELISAアッセイキット(IDEXX Laboratories.Inc)のプロトコールに従って決定した。
【0148】
表15は、異なる日における各群のワクチン接種された子豚の平均抗体ブロック率(%)を示す。表15に示されるように、コントロール群9を除いて、21日目に、ワクチン接種された群1~8の抗体ブロック率は、陽性になり始め(ブロック率>40%)、ブースト免疫化の後、ワクチン接種された群1~8の抗体ブロック率は連続的に増加し、次いでピーク値に達した。さらに、21日目から56日目まで、ワクチン接種された群1~7の抗体ブロック率は、ワクチン接種された群8の抗体ブロック率と同等であった。これらの結果から、他のペスチウイルスからの対応する断片での置き換え、及びアミノ酸変異の組み込みは、ワクチンの免疫原性に影響を与えず、構築物から調製された組換えE2タンパク質は、ワクチン接種された子豚において良好な抗体応答をうまく惹起したことが示された。
【0149】
【配列表】
【国際調査報告】