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特表2024-539153クエン酸とグリシンとの共結晶及びその使用
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  • 特表-クエン酸とグリシンとの共結晶及びその使用 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】クエン酸とグリシンとの共結晶及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 59/265 20060101AFI20241018BHJP
   C07C 229/08 20060101ALI20241018BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20241018BHJP
   A23L 27/21 20160101ALI20241018BHJP
   A23G 3/54 20060101ALI20241018BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07C59/265
C07C229/08
A23L27/00 B
A23L27/21
A23G3/54
A23G3/34 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523658
(86)(22)【出願日】2022-10-14
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 EP2022078737
(87)【国際公開番号】W WO2023066820
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21203662.8
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504421730
【氏名又は名称】ピュラック バイオケム ビー. ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オルロビッチ, マリヤ
(72)【発明者】
【氏名】マルモレホ, シンシア ベレニス
(72)【発明者】
【氏名】ファン クリーケン, ヤン
【テーマコード(参考)】
4B014
4B047
4H006
【Fターム(参考)】
4B014GB06
4B014GE03
4B014GL04
4B014GL09
4B014GP01
4B014GP19
4B014GP23
4B047LB08
4B047LB09
4B047LE07
4B047LF09
4B047LG08
4B047LG09
4B047LG15
4B047LP02
4B047LP07
4B047LP20
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB10
4H006AD15
4H006BB31
4H006BN10
4H006BS10
4H006NB16
(57)【要約】
本発明は、クエン酸とグリシンとを1:3のモル比で含有する、クエン酸とグリシンとの共結晶に関する。本発明者らは、このクエン酸とグリシンとの共結晶が、極めて低い吸湿性を示し、クエン酸の酸味と極めて類似している酸味を付与することができる粉末の形態で適切に製造することができることを予期せず発見した。本発明はまた、この共結晶を高収率で調製することを可能にするプロセスも提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クエン酸とグリシンとを1:3のモル比で含有する、クエン酸とグリシンとの共結晶。
【請求項2】
示差走査熱量測定によって決定される場合、130~200℃の温度で吸熱ピークを示し、少なくとも110J/gのエンタルピーを有する、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の共結晶を少なくとも5wt.%含有するクエン酸/グリシン共結晶粒子を含む粒状組成物。
【請求項4】
前記共結晶粒子が、前記クエン酸とグリシンとの共結晶を少なくとも50wt.%含有する、請求項3に記載の粒状組成物。
【請求項5】
前記共結晶粒子を少なくとも1wt.%含有する、請求項3又は4に記載の粒状組成物。
【請求項6】
前記共結晶粒子を少なくとも90wt.%含有する、請求項5に記載の粒状組成物。
【請求項7】
前記共結晶粒子を1~95wt.%及び砂糖粒子を5~99wt.%含む、請求項5に記載の粒状組成物。
【請求項8】
50~1,200μmの体積加重平均径D4,3を有する、請求項3~7のいずれか一項に記載の粒状組成物。
【請求項9】
前記粒状組成物の粒子が、以下の粒径分布:
・D10≧10μm、
・50μm≦D50≦1,000μm、
・D90≦1,600μm、
を有し、Dより小さい径を有する粒子のvol.%は、xvol.%に等しく、Dより大きい径を有する粒子のvol.%は、(100-x)vol.%に等しい、請求項3~8のいずれか一項に記載の粒状組成物。
【請求項10】
5wt.%未満の含水量を有する、請求項3~8のいずれか一項に記載の粒状組成物。
【請求項11】
・好ましくはクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸及びこれらの組み合わせから選択される有機酸を含む結晶質物質を少なくとも50wt.%含有する種晶粒子を用意するステップと、
・クエン酸とグリシンとを0.25~0.40のモル比で含有する水溶液を用意するステップと、
・前記水溶液を前記種晶粒子に噴霧して、負荷粒子を製造するステップと、
・前記負荷粒子から水を除去するステップと
を含む、クエン酸とグリシンとの共結晶を含む共結晶粒子を調製するプロセス。
【請求項12】
・クエン酸とグリシンとを0.25~0.40のモル比で含有し、1~40wt.%の水を含む水性混合物を用意するステップと、
・クエン酸とグリシンとの共結晶を結晶化させるステップと、
・前記結晶化した共結晶を乾燥させるステップと
を含む、クエン酸とグリシンとの共結晶を含む共結晶粒子を調製するプロセス。
【請求項13】
請求項1又は2に記載の共結晶を少なくとも5wt.%含有する粒子の、食品成分としての使用。
【請求項14】
請求項3~10のいずれか一項に記載の粒状組成物を、1つ又は複数の他の食品成分と組み合わせるステップを含む、食用製品を調製する方法。
【請求項15】
請求項1又は2に記載の共結晶を少なくとも5wt.%含有する共結晶粒子を少なくとも0.05wt.%含有する食用製品。
【請求項16】
菓子製品である、請求項15に記載の食用製品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、クエン酸とグリシンとの共結晶、及びそのような共結晶を調整するプロセスに関する。本発明の共結晶は、クエン酸とグリシンとを1:3のモル比で含有する。
【0002】
本発明は、上記の共結晶を少なくとも5wt.%含有する粒子を含む粒状組成物、及び食用製品中の、例えば粒状物をまぶしたキャンディー(sanding candies)用の食品成分としてのそのような組成物の適用にさらに関する。
[背景技術]
【0003】
砂糖菓子を砂糖と酸粉末とのブレンドでコーティングすることはよく知られている(「酸まぶし」と呼ばれる)。酸まぶしでの粉末クエン酸の使用は、クエン酸が吸湿性であるという事実から生じる安定性の問題を伴う。クエン酸粉末は、周囲からかなりの湿気を引き付ける。このプロセスは、コーティングされた菓子製品の外観だけでなく、味及び食感にも悪影響を及ぼす。
【0004】
米国特許第3,558,325号明細書は、アルファ-アラニン又はアルファ-グリシンを、アスコルビン酸、リンゴ酸、グルコン酸、クエン酸、酒石酸及びシクラミン酸からなる群から選択される酸と反応させることによって形成された、無毒性で口当たりの良さで許容される塩を0.01%~6.0%、アルコール飲料に組み入れることによって、前記飲料の味、滑らかさ、芳醇さ及び風味を改善する方法を記載している。実施例Iは、1.9グラムのクエン酸を3ccの湯に溶解し、次いで0.75グラムのグリシンを、全ての構成成分が溶解するまで漸次添加することによる、グリシン-クエン酸塩の調製を記載している。少量の活性炭が添加され、その溶液は吸引下で濾過された。濾液が清澄にされ、次いで少量のメタノール及びイソプロパノールが、濁りが生じるまで添加された。冷却することによって塩が結晶化された。塩は水中で再結晶化された。このようにして得られたグリシン-クエン酸塩は168~169℃で融解され、実験式C13NOが得られた。
【0005】
Losev et al.(Selective Effect of Carboxylic Acids on Glycine Polymorphisms and Cocrystal Formation,Doklady Physical Chemistry,2011,Vol.439,Part2,pp.153-156)は、共結晶化及びそれに伴う機械的処理に関する実験においてカルボン酸の添加がアルファ-グリシンの結晶化に及ぼす影響を調査した研究を記載している。機械的処理をすると、化学量論量の酸の1:1共結晶の形成は、結晶化の水溶液からの結晶化中には観察されなかった。
【0006】
米国特許出願公開第2018/0228753号明細書は、置換グリシン化合物と共形成剤(例えば酒石酸又はフマル酸)との共結晶を記載している。
【0007】
国際公開第2020/260194号パンフレットは、リンゴ酸塩粒子を少なくとも1wt.%含む粒状組成物を記載しており、前記リンゴ酸塩粒子は、50~1000μmの径を有し、リンゴ酸とアルカリ金属リンゴ酸水素塩との共結晶を少なくとも70wt.%含む。これらの粒状組成物は、菓子の酸まぶしに使用することができる。
[発明の概要]
[課題を解決するための手段]
【0008】
本発明者らは、極めて低い吸湿性を示し、クエン酸の酸味と極めて類似している酸味を付与することができる粉末の形態で適切に製造することができるクエン酸とグリシンとの共結晶を予期せず発見した。
【0009】
したがって、本発明の第1の態様は、クエン酸とグリシンとの共結晶に関し、前記共結晶は、クエン酸とグリシンとを1:3のモル比で含有する。
【0010】
本発明者らは理論に縛られることを望むものではないが、本発明の共結晶の粒子が唾液と接触すると、共結晶は瞬時にクエン酸とグリシンとに分離すると考えられる。したがって、この共結晶の粒子でコーティングされた食用製品を摂取すると、クエン酸の風味が口の中に即時に放出される。
【0011】
本発明の第2の態様は、上記の共結晶を少なくとも5wt.%含有するクエン酸/グリシン共結晶粒子を含む粒状組成物に関する。
【0012】
本発明の第3の態様は、
・有機酸を含む結晶質物質を少なくとも50wt.%含有する種晶粒子を用意するステップと、
・クエン酸とグリシンとを0.25~0.40のモル比で含有する水溶液を用意するステップと、
・その水溶液をその種晶粒子に噴霧して、負荷粒子を製造するステップと、
・その負荷粒子から水を除去するステップと
を含む、クエン酸とグリシンとの共結晶を含む共結晶粒子を調製するプロセスに関する。
【0013】
本発明の第4の態様は、
・クエン酸とグリシンとを0.25~0.40のモル比で含有し、1~40wt.%の水を含む水性混合物を用意するステップと、
・クエン酸とグリシンとの共結晶を結晶化させるステップと、
・結晶化した共結晶を乾燥させるステップと
を含む、クエン酸とグリシンとの共結晶を含む共結晶粒子を調製する別のプロセスに関する。
【0014】
上記の共結晶粒子を調製するプロセスは、共結晶を高収率で製造することができるという利点を提供する。クエン酸とグリシンとが1:3のモル比で適用される場合、100%に近い収率を実現することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、本発明の共結晶を少なくとも5wt.%含有する粒子の、食品成分としての使用に関する。
【0016】
本発明の第6の態様は、本発明の粒状組成物を、1つ又は複数の他の食品成分と組み合わせるステップを含む、食用製品を調製する方法に関する。
【0017】
本発明の第7の態様は、本発明の共結晶を少なくとも5wt.%含有する共結晶粒子を少なくとも0.05wt.%含有する食用製品に関する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】DSC曲線を示す。
図1B】DVSグラフを示す。
図2】粉末の試料を、示差走査熱量測定(Q2000、TA Instruments製)によって分析した。試料を-10℃から200℃まで10℃/分の速度で加熱した。そのようにして得られたDSC曲線を示す。
図3】粒状体の走査型電子顕微鏡画像(50×)を示す。
図4】粒状体の試料を、実施例2と同様にDSCによって分析した。そのようにして得られたDSCを示す。
【0019】
[発明を実施するための形態]
本発明の一態様は、クエン酸とグリシンとを1:3のモル比で含有する、クエン酸とグリシンとの共結晶に関する。
【0020】
「共結晶」という用語は、本明細書で使用する場合、化学量論比で、溶媒和物でも単塩でもない2つ以上の異なる分子化合物又はイオン化合物から構成される結晶質単相物質を指す。
【0021】
好ましい実施形態によれば、本発明の共結晶は、示差走査熱量測定によって決定される場合、130~200℃の温度で、より好ましくは140~190℃の温度で吸熱ピークを示し、少なくとも110J/gの、より好ましくは少なくとも110J/gの、より一層好ましくは少なくとも120J/gの、最も好ましくは少なくとも140J/gのエンタルピーを有する。好ましくは、吸熱ピークのエンタルピーは、195J/gを超えず、より好ましくは190J/gを超えない。より一層好ましくは、共結晶は、示差走査熱量測定によって決定される場合、150~180℃の温度で、最も好ましくは155~170℃の温度で吸熱ピークを示し、少なくとも120J/gの、より好ましくは少なくとも130J/gの、最も好ましくは少なくとも150J/gのエンタルピーを有する。好ましくは、列挙した温度範囲における吸熱ピークのエンタルピーは、190J/gを超えず、より好ましくは180J/gを超えない。
【0022】
本発明の別の態様は、本発明の共結晶を少なくとも5wt.%含有するクエン酸/グリシン共結晶粒子を含む粒状組成物に関する。共結晶粒子は、共結晶を、好ましくは少なくとも40wt.%、より好ましくは少なくとも70wt.%、最も好ましくは少なくとも80wt.%含有する。
【0023】
クエン酸/グリシン共結晶粒子に加えて、本発明の粒状組成物は、砂糖、塩又は酸粉末などの他の粒状構成成分を含んでもよい。好ましい酸粉末は、リンゴ酸をベースとした粉末、例えばPURAC(登録商標)Powder MA又はPURAC(登録商標)Powder MAXなどである。「リンゴ酸」という用語は、本明細書で使用する場合、特に指定のない限り、食用のリンゴ酸の塩も包含する。
【0024】
好ましい実施形態によれば、粒状組成物中の共結晶粒子は、クエン酸とグリシンとの共結晶を、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも70wt.%、より好ましくは少なくとも85wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%含有する。
【0025】
粒状組成物は、共結晶粒子を好ましくは少なくとも1wt.%含有する。
【0026】
本発明の一実施形態では、共結晶粒子は、粒状組成物の大部分を占める。したがって、そのような粒状組成物は、共結晶粒子を、好ましくは少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも75wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%含む。
【0027】
別の実施形態では、粒状組成物は、共結晶粒子と砂糖粒子との組み合わせを含有する。そのようなブレンドは、菓子の酸まぶしに適切に使用することができる。したがって、そのような粒状組成物は、好ましくは共結晶粒子を1~95wt.%及び砂糖粒子を5~99wt.%、より好ましくは共結晶粒子を2~50wt.%及び砂糖粒子を50~98wt.%含む。より一層好ましくは、粒状組成物は、共結晶粒子を3~30wt.%及び砂糖粒子を60~97wt.%含む。好ましくは、共結晶粒子と砂糖との組み合わせは、粒状組成物の少なくとも40wt.%、より好ましくは少なくとも少なくとも60wt.%、最も好ましくは少なくとも80wt.%を構成する。
【0028】
さらに別の実施形態では、粒状組成物は、共結晶粒子とリンゴ酸を含む粒子との組み合わせを含有する。そのようなブレンドは、菓子の酸まぶしに適切に使用することができる。したがって、そのような粒状組成物は、好ましくは共結晶粒子10~90wt.%とリンゴ酸を少なくとも20wt.%含有する粒子10~90wt.%とを、より好ましくは共結晶粒子20~80wt.%とリンゴ酸を少なくとも20wt.%含有する粒子20~80wt.%とを含む。より一層好ましくは、粒状組成物は、共結晶粒子30~70wt.%とリンゴ酸を少なくとも20wt.%含有する粒子30~70wt.%とを含む。
【0029】
共結晶粒子の含水量は、典型的には5wt.%を超えず、より好ましくは、含水量は3wt.%を超えない。
【0030】
本発明の粒状組成物は、好ましくは50~1,200μm、より好ましくは300~1,100μmの体積加重平均径D4,3を有する。
【0031】
別の好ましい実施形態によれば、粒状組成物の粒子は、以下の粒径分布:
・D10≧10μm、
・50μm≦D50≦1,000μm、
・D90≦1,600μm、
を有し、Dxより小さい径を有する粒子のvol.%は、xvol.%に等しく、Dxより大きい径を有する粒子のvol.%は、(100-x)vol.%に等しい。
【0032】
粒状組成物の粒径分布は、実施例に記載されているように、レーザー回折により、Malvern Panalytical製のMastersizer3000を使用して、適切に決定することができる。
【0033】
本発明の別の態様は、
・好ましくはクエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸及びこれらの組み合わせから選択される有機酸を含む結晶質物質を少なくとも50wt.%含有する種晶粒子を用意するステップと、
・クエン酸とグリシンとを0.25~0.40のモル比で含有する水溶液を用意するステップと、
・その水溶液をその種晶粒子に噴霧して、負荷粒子を製造するステップと、
・その負荷粒子から水を除去するステップと
を含む、クエン酸とグリシンとの共結晶を含む共結晶粒子を調製するプロセスに関する。
【0034】
好ましくは、種晶粒子は、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酢酸、フマル酸、アジピン酸、酒石酸及びこれらの組み合わせから選択される有機酸を少なくとも30wt.%含有する。
【0035】
特に好ましい実施形態によれば、種晶粒子は、本明細書で上に記載したとおりのクエン酸とグリシンとの共結晶を、少なくとも50wt.%、より好ましくは少なくとも70wt.%、最も好ましくは少なくとも90wt.%含有する。
【0036】
本プロセスにおいて使用される水溶液は、クエン酸とグリシンとを、好ましくは0.28~0.37のモル比で、より好ましくは0.30~0.35のモル比で、最も好ましくは0.32~0.34のモル比で含有する。
【0037】
本プロセスにおいて使用される、クエン酸とグリシンとを含有する水溶液は、有機溶媒(例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノール)を、好ましくは30wt.%以下、より好ましくは15wt.%以下、より一層好ましくは5wt.%以下含有し、最も好ましくは有機溶媒を一切含有しない。
【0038】
クエン酸とグリシンとを含有する水溶液は、クエン酸とグリシンとの組み合わせを、好ましくは少なくとも30wt.%、より好ましくは35~55wt.%、最も好ましくは40~50wt.%含有する。
【0039】
好ましくは、水は、水が負荷粒子に接触する前に、粒子を少なくとも50℃の温度、より好ましくは60~150℃の温度を有する気体流に曝露することによって負荷粒子から除去される。気体流は、好ましくは空気を少なくとも90vol.%含有する。
【0040】
水は、流動層乾燥器中で負荷粒子から適切に除去され得る。流動化される負荷粒子の層温度は、好ましくは40~98℃に保持される。流動層乾燥器中で流動化される負荷粒子から水を除去するために使用される気体の入口温度は、好ましくは70~180℃の範囲にある。
【0041】
本プロセスは、有利なことには、流動層造粒機中又は噴霧乾燥機中で行うことができる。噴霧乾燥機の場合、種晶粒子及び水溶液は、噴霧乾燥機中に同時に導入される。種晶粒子は、乾燥生成物の微粉から得ることができる(リサイクル)。
【0042】
流動層造粒機の場合、最初に種晶粒子の流動層が形成される。次に、水溶液を種晶粒子に噴霧して、負荷粒子を製造し、同時に気体流を流動層に通過させて、負荷粒子から水を除去する。
【0043】
特に好ましい実施形態によれば、本プロセスは、本明細書で上記に定義したとおりのクエン酸/グリシン共結晶粒子をもたらす。
【0044】
本発明のさらに別の態様は、
・クエン酸とグリシンとを0.25~0.40のモル比で含有し、1~40wt.%の水を含む水性混合物を用意するステップと、
・クエン酸とグリシンとの共結晶を結晶化させるステップと、
・結晶化した共結晶を乾燥させるステップと
を含む、クエン酸とグリシンとの共結晶を含む共結晶粒子を調製する別のプロセスに関する。
【0045】
本明細書に記載される水性混合物の含水量は、クエン酸一水和物などの水和物中に含有されるいかなる水をも含む総含水量を指す。
【0046】
このプロセスにおいて使用される水性混合物は、沈殿ステップの前に十分に溶解したクエン酸及び十分に溶解したグリシンを含む水溶液とすることができる。この溶液からの共結晶の沈殿は、例えば、種晶の添加、冷却及び/又は脱水によって誘導してもよい。
【0047】
別の実施形態によれば、水性混合物は、不溶解のグリシン及び/又は不溶解のクエン酸を含む。本発明者らは、水が、クエン酸とグリシンとを0.25~0.40のモル比で含有する混合物に添加されるなら、クエン酸とグリシンとの共結晶が形成されることを予期せず発見した。
【0048】
水性混合物中に存在する水の量は、好ましくは、1~40wt.%、より好ましくは2~25wt.%、より一層好ましくは3~15wt.%、最も好ましくは5~10wt.%の範囲にある。
【0049】
好ましくは、クエン酸とグリシンとの共結晶の沈殿は、10~95℃、より好ましくは20~90℃、最も好ましくは30~80℃の範囲の温度で行われる。
【0050】
本プロセスにおいて使用される水性混合物は、クエン酸とグリシンとを好ましくは0.28~0.37のモル比で、より好ましくは0.30~0.35のモル比で、最も好ましくは0.32~0.34のモル比で含有する。
【0051】
本プロセスにおいて使用されるクエン酸とグリシンとを含有する水性混合物は、有機溶媒(例えばメタノール、エタノール又はイソプロパノール)を、好ましくは15wt.%以下、より好ましくは5wt.%以下、より一層好ましくは2wt.%以下含有し、最も好ましくは有機溶媒を一切含有しない。
【0052】
クエン酸とグリシンとを含有する水性混合物は、クエン酸とグリシンとの組み合わせを、好ましくは少なくとも60wt.%、より好ましくは75~98wt.%、最も好ましくは90~95wt.%含有する。
【0053】
好ましい実施形態では、回収された共結晶は乾燥ステップに供されて、含水量が、5wt.%未満、より好ましくは2wt.%未満、最も好ましくは1wt.%未満に減少される。
【0054】
さらなる好ましい実施形態によれば、回収された共結晶又は回収されて乾燥された共結晶は、粉砕又は磨砕などのサイズ減少ステップに供される。サイズ減少された共結晶粒子を、例えば篩分によって分類することを利用して、より均一な粒径を実現することができる。
【0055】
特に好ましい実施形態によれば、本プロセスは、本明細書で上記に定義したとおりのクエン酸/グリシン共結晶粒子をもたらす。
【0056】
本発明のさらなる態様は、本明細書で上記に定義したとおりのクエン酸とグリシンとの共結晶を少なくとも5wt.%、より好ましくは少なくとも50wt.%、最も好ましくは少なくとも80wt.%含有する粒子の、食品成分としての使用に関する。
【0057】
好ましくは、本使用は、30wt.%未満、より好ましくは15wt.%未満、最も好ましくは15wt.%未満の含水量を有する食用製品の中又は表面への共結晶粒子の適用を含む。
【0058】
好ましい実施形態によれば、本使用は、菓子製品の中又は表面への共結晶の適用を含む。
【0059】
特に好ましい実施形態によれば、本使用は、菓子製品などの食用製品の表面へのコーティングとしての共結晶粒子の適用を含む。
【0060】
本発明の別の態様は、本明細書で上に記載したとおりの粒状組成物を1つ又は複数の他の食品成分と組み合わせるステップを含む、食用製品を調製する方法に関する。好ましくは、粒状組成物を1つ又は複数の他の食品成分と組み合わせるステップは、共結晶の分解を伴わない。
【0061】
一実施形態では、本方法は、粒状組成物を砂糖と組み合わせるステップを含む。この実施形態では、粒状組成物は、好ましくは少なくとも20wt.%、より好ましくは少なくとも30wt.%の共結晶粒子を、最も好ましくは少なくとも50wt.%の共結晶粒子を含有する。粒状組成物を砂糖と混合することにより、菓子製品の酸まぶしに適切に使用することができるコーティング組成物を調製することができる。
【0062】
別の実施形態では、本方法は、菓子製品などの食用製品の表面への粒状組成物の適用を含む。この実施形態では、粒状組成物は、好ましくは1~95wt.%の共結晶粒子及び5~99wt.%の砂糖粒子、より好ましくは2~50wt.%の共結晶粒子及び50~98wt.%の砂糖粒子を含む。
【0063】
別の好ましい実施形態では、粒状組成物は、共結晶粒子10~90wt.%とリンゴ酸を少なくとも20wt.%含む粒子10~90wt.%とを、より好ましくは共結晶粒子20~80wt.%とリンゴ酸を少なくとも20wt.%含む粒子20~80wt.%とを含む。
【0064】
本発明のさらに別の態様は、本明細書で上に記載したとおりのクエン酸とグリシンとの共結晶を少なくとも5wt.%含有する共結晶粒子を、少なくとも0.05wt.%、より好ましくは0.15~30wt.%含有する食用製品に関する。
【0065】
本発明の共結晶粒子が適用される食用製品の含水量は、好ましくは30wt.%未満、より好ましくは15wt.%未満、最も好ましくは15wt.%未満である。
【0066】
好ましくは、共結晶粒子に加えて、食用製品は、リンゴ酸を少なくとも20wt.%含む粒子を、少なくとも0.05wt.%、より好ましくは0.15~30wt.%含有する。
【0067】
特に好ましい実施形態によれば、食用製品は、共結晶粒子でコーティングされる。より好ましくは、食用製品は、共結晶粒子と砂糖粒子との混合物でコーティングされる。より一層好ましくは、食用製品は、上記のとおりの共結晶粒子及び砂糖粒子を含有する粒状組成物でコーティングされる。
【0068】
本発明の食用製品は、好ましくは菓子製品であり、より特定するとソフトキャンディーである。
【0069】
本発明は、以下の非限定的な実施例により、さらに説明される。
[実施例]
【0070】
実施例1
100mlのガラス瓶に、21.11gのクエン酸一水和物食品グレード(0.10mol)及び22.72gのグリシン(0.30mol)を入れた。フラスコを振盪させることによってこの粉末を混合した。水(2.63g)を瓶に添加し、そのようにして得られた混合物を40℃で保管した。2時間後、濃厚スラリーが白色固体塊に変化していた。
【0071】
翌日、固体塊の一部(11.02g)を、室温にて減圧下で(p<10mbara)終夜乾燥した。乾燥生成物の含水量は0.4wt.%であった。乾燥生成物を、示差走査熱量測定(Q2000、TA Instruments製)及び動的蒸気収着(DVS)によって分析した。
【0072】
そのようにして得られたDSC曲線は、図1Aに示されている。そのようにして得られたDVSグラフは、図1Bに示されている。
【0073】
DSC曲線に観察された128.1J/gのエンタルピー及び158.6℃の吸熱ピークの温度は、下記の実験の一部に観察されるものよりも幾分低い。これは、出発物質の1:3共結晶への変換が不完全であることが原因であり得る。
【0074】
DVSグラフは、80%RHでの吸湿が約2~3wt.%であったことを示し、これは、80%RHでのクエン酸一水和物の吸湿(約20wt.%)よりもかなり低い。
【0075】
実施例2
クエン酸とグリシンとを1:3のモル比で含有する水溶液およそ4,255グラムを、表1に示されている配合に基づいて調製した。
【0076】
【表1】
【0077】
Demiウォーターを秤量して、マグネチックスターラを供えた5Lガラスビーカーに入れた。粉末を、撹拌しながら徐々に添加した。溶液を40℃に加熱して、粉末を溶解した。粉末が溶解すると、溶液を室温まで冷却した。
【0078】
次にクエン酸とグリシンとの共結晶(1:3mol/mol)0.3gを添加し、その溶液を終夜放置して結晶化させた。翌日、溶液は白色ペーストに変化していた。遠心分離による固液分離を実行して、母液を除去した(遠心分離機:10分、3000rpm、HERMLE Sieva-2(X-6449))、25μm-濾布)。回収した固体を複数の金属トレイ上に置き、減圧オーブン中で(20℃で)残余の液体を乾燥した。
【0079】
2日後、結晶の含湿量はおよそ7.5wt.%であった。その固体を、減圧オーブン中、30℃で5時間さらに乾燥し、含湿量を5wt.%に減少させた。フードプロセッサを使用して、得られたケークを粉末に変換した。
【0080】
粉末の試料を、示差走査熱量測定(Q2000、TA Instruments製)によって分析した。試料を-10℃から200℃まで10℃/分の速度で加熱した。そのようにして得られたDSC曲線は、図2に示されている。
【0081】
実施例3
実施例2の溶液と同じ組成を有するクエン酸とグリシンとの水溶液(噴霧溶液)およそ7450グラムを、実施例2と同様に調製した。
【0082】
造粒試験を流動層造粒機(Procell LabSystem)中で実行し、流動化した実施例2の粉末に噴霧溶液を噴霧した。造粒機の作動条件は表2にまとめられている。
【0083】
【表2】
【0084】
図3は、粒状体の走査型電子顕微鏡画像(50×)を示す。
【0085】
粒状体の試料を、実施例2と同様にDSCによって分析した。そのようにして得られたDSCは、図4に示されている。含湿量及びDSC特性は、表3に示されている。
【0086】
【表3】
【0087】
164.42℃への吸熱ピークの上方移行(実施例2のDSC曲線と比較して)は、含水量の減少及び対応する結晶質の共結晶の増加が原因であると考えられる。
【0088】
粒状体の粒径分布を、Mastersizer3000、Malvernを使用して決定した。
・測定:乾燥分散体
・分析モデル:汎用
・圧力:0.5bar
・分散剤屈折率:1
・粒子吸収率:0
・粒子屈折率:1.53
【0089】
粒径測定の結果は、表4に示されている。
【0090】
【表4】
【0091】
実施例4
実施例3の粒状体の水分収着を20℃及び40℃で決定した。20℃では、RH90%での最大吸湿は0.5wt.%であった。40℃では、RH90%での最大吸湿は1.2wt.%であった。
【0092】
実施例5
実施例3の粒状体の試料の吸湿性を、市販のコーティングされたクエン酸(Iwata Chemical Japan製)の吸湿性と比較した。30℃、75%RHで開放カップ中に1カ月保管した場合、粒状体は水を一切吸収しなかったが、コーティングされたクエン酸は水を8.4wt.%まで吸収したことが判明した。
【0093】
実施例6
実施例3の粒状体及び市販のコーティングされたクエン酸の粉末(Iwata製及びCapol製)を、酸粉末と砂糖との15:85(w/w)ブレンドでの酸まぶしに使用することによって、実施例3の粒状体の官能特性を、市販のコーティングされたクエン酸の官能特性と比較した。粒状体中のクエン酸の実際の含量は、Capolのコーティングされたクエン酸と比較して少なかったが、酸味強度に有意差はない(表6を参照)。
【0094】
属性等級付け官能評価(1~9のスコア)を、訓練されたパネリスト18人のセッションで行った。結果は表5にまとめられている。
【0095】
【表5】
【0096】
比較例
100mlのガラス瓶に、21.00gのクエン酸一水和物食品グレード(0.10mol)及び7.56gのグリシン(0.10mol)を入れた。フラスコを振盪させることによってこの粉末を混合した。水(2.61g)を瓶に添加し、この混合物を40℃で保管した。
【0097】
2時間後、透明な粘稠溶液が形成され、少量の残余固体がフラスコの底に残った。翌日、生成物の一部(10.35g)を、室温にて減圧下で(p<10mbara)終夜乾燥した。
【0098】
起泡粘稠シロップが形成され、これはプロセス及び分析が困難であった。
図1A
図1B
図2
図3
図4
【国際調査報告】