(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】第XI因子A2ドメイン結合抗体及びそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
C07K 16/36 20060101AFI20241018BHJP
C12N 15/06 20060101ALI20241018BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241018BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241018BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241018BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241018BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241018BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20241018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C07K16/36 ZNA
C12N15/06 100
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P7/02
A61P43/00 111
A61P9/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523663
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-05-20
(86)【国際出願番号】 US2022078530
(87)【国際公開番号】W WO2023070097
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャロソーン, ダン
(72)【発明者】
【氏名】モートン, ローリ
(72)【発明者】
【氏名】ライ, ケーディー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA43
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC01
4C085CC08
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045DA76
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、第XI因子(FXI)のA2ドメインに結合する抗体、及びそれらを使用する方法を提供する。ある特定の実施形態によれば、抗体は、PTに影響を与えることなくaPTTを延長する効果によって示されるように、止血に影響を与えることなく、内因性経路を介した血餅形成を阻害するアンタゴニスト抗体である。したがって、これらのアンタゴニスト抗体は、限定されないが、心房細動などのリスク因子として血餅形成を有する血液凝固疾患若しくは障害、又は治療レジメンを治療するために使用され得る。ある特定の実施形態では、本開示は、FXIに結合し、血餅形成又は血栓形成を媒介する抗体を含む。本開示の抗体は、完全ヒト非天然抗体であり得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝固第XI因子(FXI)のapple 2(A2)ドメインに結合する単離された抗体、又はその抗原結合断片であって、前記抗体又はその抗原結合断片が、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域(HCVR)と、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域(LCVR)と、を含み、
(a)前記HCDR1が、配列番号5のアミノ酸配列を含み、
(b)前記HCDR2が、配列番号7のアミノ酸配列を含み、
(c)前記HCDR3が、配列番号9のアミノ酸配列を含み、
(d)前記LCDR1が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
(e)前記LCDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ
(f)前記LCDR3が、配列番号19のアミノ酸配列を含むか、又は
(a)前記HCDR1が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、
(b)前記HCDR2が、配列番号35のアミノ酸配列を含み、
(c)前記HCDR3が、配列番号37のアミノ酸配列を含み、
(d)前記LCDR1が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
(e)前記LCDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ
(f)前記LCDR3が、配列番号19のアミノ酸配列を含む、単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記HCVRが、配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、配列番号13と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は
前記HCVRが、配列番号31と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、配列番号13と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項3】
前記HCVRが、配列番号3を含むアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、配列番号13を含むアミノ酸配列を含むか、又は
前記HCVRが、配列番号31を含むアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、配列番号13を含むアミノ酸配列を含む、請求項2に記載の単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項4】
凝固第XI因子(FXI)のapple 2(A2)ドメインに結合する単離された抗体、又はその抗原結合断片であって、前記抗体、又はその抗原結合断片が、
配列番号3と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号13と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)、又は
配列番号31と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号13と少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)、を含む、単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項5】
前記HCVRが、配列番号3を含むアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、配列番号13を含むアミノ酸配列を含むか、又は
前記HCVRが、配列番号31を含むアミノ酸配列を含み、前記LCVRが、配列番号13を含むアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項6】
(a)配列番号5のアミノ酸配列を含むHCDR1、
(b)配列番号7のアミノ酸配列を含むHCDR2、
(c)配列番号9のアミノ酸配列を含むHCDR3、
(d)配列番号15のアミノ酸配列を含むLCDR1、
(e)配列番号17のアミノ酸配列を含むLCDR2、及び
(f)配列番号19のアミノ酸配列を含むLCDR3を含むか、又は
(a)前記HCDR1が、配列番号33のアミノ酸配列を含み、
(b)前記HCDR2が、配列番号35のアミノ酸配列を含み、
(c)前記HCDR3が、配列番号37のアミノ酸配列を含み、
(d)前記LCDR1が、配列番号15のアミノ酸配列を含み、
(e)前記LCDR2が、配列番号17のアミノ酸配列を含み、かつ
(f)前記LCDR3が、配列番号19のアミノ酸配列を含むことを含む、請求項4又は5に記載の単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体又はその抗原結合断片が、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約1,000pM未満のK
DでヒトFXIに結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体又はその抗原結合断片が、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約800pM未満、約500pM未満、約100pM未満、又は約50pM未満からなる群から選択されるK
DでヒトFXIに結合する、請求項7に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項9】
前記抗体又はその抗原結合断片が、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約10分超、約60分超、約500分超、又は約1,000分超からなる群から選択される解離半減期(t1/2)を有するヒトFXIに結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項10】
前記抗体又はその抗原結合断片が、約10nM未満のIC
50でヒト凝固第X因子(FX)の活性化を阻害する、請求項1に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体又はその抗原結合断片が、約40pM未満のIC
50でヒト凝固第X因子(FX)の活性化を阻害する、先行請求項のいずれか一項に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項12】
前記抗体又はその抗原結合断片が、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を少なくとも2倍増加させる、先行請求項のいずれか一項に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体又はその抗原結合断片が、プロトロンビン時間(PT)を増加させない、請求項12に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項14】
前記抗体又はその抗原結合断片が、FXIa媒介性トロンビン活性を、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は5%~15%阻害する、先行請求項のいずれか一項に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項15】
前記抗体又はその抗原結合断片が、100nM以下、75nM以下、又は50nM以下の濃度のヒト血漿におけるaPTTを、少なくとも2倍延長する、先行請求項のいずれか一項に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項16】
前記抗体又はその抗原結合断片が、PTを延長しない、請求項15に記載の単離された抗体、又は抗原結合断片。
【請求項17】
前記抗体又はその抗原結合断片が、外因性凝固経路を介したトロンビンの産生又は活性化に影響を与えることなく、少なくとも10nM、少なくとも25nM、又は少なくとも50nMの濃度のヒト血漿における内因性凝固経路を介したトロンビンの産生又は活性化を阻害する、先行請求項のいずれか一項に記載の単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項18】
結合について、先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と競合する、単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項19】
先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と同じエピトープに結合する、単離された抗体、又はその抗原結合断片。
【請求項20】
先行請求項のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体又は希釈剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項21】
請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸分子を含む、ベクター。
【請求項23】
請求項22に記載のベクター、又は請求項21に記載の核酸分子を含む、細胞。
【請求項24】
FXIによって媒介される生物学的活性を阻害するための方法であって、前記方法が、
FXI又はFXIaを、生物学的有効量の、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項20に記載の薬学的組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項25】
前記生物学的活性が、血栓形成であり、血栓形成が、FXIを前記抗体又はその抗原結合断片と接触させることにより阻害される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記接触が、血漿におけるaPTTの延長又はトロンビン活性の低減をもたらす、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
対象において、FXIの活性若しくは発現に関連する疾患若しくは障害を治療若しくは予防するか、又はFXIの活性若しくは発現に関連する前記疾患若しくは障害に関連する少なくとも1つの症状を回復させるための方法であって、前記方法が、治療有効量の請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体若しくはその抗原結合断片、又は請求項20に記載の薬学的組成物を、そのような治療を必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項28】
前記疾患又は障害が、血液凝固の疾患若しくは障害、又は前記対象において血栓形成のリスクの増加をもたらす疾患若しくは障害である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患又は障害が、心房細動である、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年10月22日に出願された米国仮特許出願第63/270,629号に対する優先権の利益を主張し、その内容は参照によりそれらの全体が本明細書に明確に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、XML形式で電子的に提出されている配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当該XMLコピーは、2022年10月19日に作成され、118003-01020.XMLという名称で、45,437バイトのサイズである。
【0003】
本開示は、第XI因子(FXI)のapple 2(A2)ドメインに結合する抗体、これらの抗体を含む組成物、及びそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0004】
血餅(すなわち、血栓)の形成は、(a)接触経路又は(b)外因性経路のいずれかを通して開始される。両方の経路は、(c)可溶性フィブリノーゲンをフィブリンの不溶性鎖に変換するためのセリンプロテアーゼとして作用するトロンビンを活性化するための共通経路を通して収束する。架橋フィブリンタンパク質は、凝集した血小板及び赤血球と共に、血餅の主要な構成成分である。
【0005】
外因性経路は、血管損傷における止血を緩和する。ここで、曝露された組織因子(TF)は、第VII因子(FVII)を活性化して、FVIIa-TF複合体を形成し、これは、共通経路で第X因子(FX)を活性化して、トロンビン及びその後の血餅形成を生成するプロトロンビナーゼを生成する。
【0006】
接触経路は、止血にあまり関与しないが、それでも血餅形成に影響を及ぼすという点で、外因性経路とは異なる。ここで、凝固は、血小板からのポリリン酸塩の放出、又は第XII因子(FXII)を活性化する好中球からのヒストン及びDNAを含む好中球細胞外トラップ(NET)の押し出しなどの内因性の事象によって開始される。活性化されたFXII(すなわち、FXIIa)は、第XI因子(FXI)を更に活性化してFXIaを形成し、これは共通経路を介してトロンビンの生成をもたらす。トロンビン及び血小板産生ポリリン酸塩はまた、FXIをフィードフォワード様式で活性化して、血餅形成を増幅する。
【0007】
FXIは、FIX活性化を介してトロンビン生成を維持する血漿プロテアーゼFXIaの酵素原である。FXIは、160kDaのジスルフィド結合ホモ二量体であり、各サブユニットは、N末端からC末端に、appleドメインA1~A4、及び触媒ドメイン(CD)からなる。ジスルフィド結合は、各サブユニットのA4ドメイン間にある。FXIサブユニットは、A4ドメインとCDドメインとの間に位置するArg-Ile結合の一方又は両方の切断によって活性化されて、FXIaを形成する。一般に、Arg-Ile結合の切断は、FXIIa及び/又はトロンビンによって触媒されると考えられる。
【発明の概要】
【0008】
本明細書では、第XI因子(FXI)のA2ドメインに結合する、例えば、特異的に結合する単離されたモノクローナル抗体及びその抗原結合断片が提供される。本明細書に開示される実施形態のいずれかでは、抗体又はその抗原結合断片は、FXIのA2ドメインに特異的に結合し得る。本開示の単離された抗体及び抗原結合断片は、FXIの活性又は発現に関連する疾患及び障害を治療するのに有用である。
【0009】
その最も広い態様では、本開示は、FXIの活性又は活性化を遮断し、血餅形成を低減する抗FXI抗体を提供する。これらの抗体は、血流又は組織における血餅形成を予防する、治療する、その発生を低減する、又はその悪影響を低減することを必要とする患者において、それらを行うために使用され得る。好ましくは、抗FXI抗体は、止血を妨げることなく血栓症を減弱する。
【0010】
ある特定の実施形態では、抗FXI抗体は、疾患の治療が抗凝固療法の使用を伴い、抗凝固療法の使用に起因して患者に出血のリスクがある様々な血液凝固障害又は疾患を治療するのに有用であり得る。これらの適応症、障害、又は疾患には、高リスク心房細動、原発性静脈血栓塞栓症(VTE)予防、拡張VTE治療、急性冠動脈症候群後の再発性虚血の予防、末期腎疾患、医療機器(例えば、機械的心臓弁、心室補助装置、小口径グラフト、中心静脈カテーテルなど)、体外回路などが含まれる。
【0011】
本開示の抗体は、全長(例えば、IgG1又はIgG4抗体)であり得るか、又は抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)2、又はscFv断片)のみを含み得、機能性に影響を与えるように修飾され得、例えば、残存エフェクター機能を排除するように修飾され得る(Reddy et al.,2000,J.Immunol.164:1925-1933)。
【0012】
本開示の例示的な抗FXI抗体を、本明細書の表1に列挙する。表1は、例示的な抗FXI抗体の例示的な重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)、及び軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)のアミノ酸配列識別子及び核酸配列識別子を示す。表1は、例示的な抗FXI抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3の核酸配列識別子も記載する。
【0013】
本開示は、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVR、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0014】
本開示はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCVR、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0015】
本開示はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかと対になっている表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかを含む、HCVRとLCVRとのアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態によれば、本開示は、表1に列挙された例示的な抗FXI抗体のうちのいずれかに含まれるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0016】
したがって、第1の態様では、本開示は、血清凝固第XI因子(FXI)に結合する単離された抗体又はその抗原結合断片を提供し、抗体又はその抗原結合断片は、表1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、表1に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。
【0017】
一実施形態では、抗FXI抗体又はその抗原結合断片は、以下からなる群から選択される1つ以上の特性を示す。
(a)アンタゴニスト抗体である、
(b)25℃又は37℃で表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約35pM未満のKDでヒトFXIに結合する、
(c)25℃又は37℃で表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約765pM未満のKDでヒトFXIaに結合する、
(d)25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約1,000分超の解離半減期(t1/2)を有するヒトFXIに結合する、
(e)25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約23分超の解離半減期(t1/2)を有するヒトFXIaに結合する、
(f)約39pM未満のIC50で、正常な希釈血漿におけるFXIによる第Xa因子(FXa)の活性化を少なくとも約85%阻害する、
(g)約10nM未満のIC50で、正常な希釈血漿におけるFXIaによる第Xa因子(FXa)の活性化を少なくとも約25%阻害する、
(h)ラベルフリーバイオレイヤー干渉法によって決定されるとき、全長FXI、PKA1、PKA3、及びPKA4に対して、PKA2ドメイン(すなわち、appleドメイン2又はA2)に優先的に結合する、
(i)FXI PKA2ドメイン内のエピトープに特異的に結合し、かつFXI PKA2ドメインと重複する抗体と、FXIへの結合について競合する、
(j)外因性凝固時間の尺度であるプロトロンビン時間(PT)に測定可能な影響を与えることなく、インビボで、霊長類において、内因性凝固時間の尺度である活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を少なくとも2倍に増加させる、
(k)インビボで、霊長類において内因性経路ピークトロンビン活性を5%~15%阻害する、
(l)PTを倍加することなく、約33nM以下の濃度のインビトロでのヒト血漿におけるaPTTを約2倍に延長する、かつ/又は
m)約31nM以上の濃度でインビトロでのヒト血漿における内因性経路トロンビン産生を阻害し、最大約500nMの用量まで外因性経路トロンビン産生に影響を与えない。
【0018】
一実施形態では、本開示は、第XI因子(FXI)に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供し、抗体又はその抗原結合断片は、(a)表1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)と、(b)表1に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)のCDRと、を含む。
【0019】
一実施形態では、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3若しくは配列番号31のHCVR配列内に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号13のLCVR配列内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。
【0020】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3又は配列番号31のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0021】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を有するLCVRを更に含む。
【0022】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3又は配列番号31のアミノ酸配列を有するHCVRと、配列番号13のアミノ酸配列を有するLCVRと、を含む。
【0023】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3/13又は配列番号31/13のHCVR/LCVRアミノ酸配列対のCDRを含む。
【0024】
本開示はまた、表1に列挙されたHCDR1アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0025】
本開示はまた、表1に列挙されたHCDR2アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0026】
本開示はまた、表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0027】
本開示はまた、表1に列挙されたLCDR1アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0028】
本開示はまた、表1に列挙されたLCDR2アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0029】
本開示はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0030】
本開示はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかと対合される、表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかを含むHCDR3及びLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態によれば、本開示は、表1に列挙された例示的な抗FXI抗体のうちのいずれかに含まれるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号9/19又は配列番号37/19である。
【0031】
本開示はまた、表1に列挙された例示的な抗FXI抗体のうちのいずれかに含まれる6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含む、FXIに結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号5、7、9、15、17、及び19、又は配列番号33、35、37、15、17、及び19である。
【0032】
HCVRアミノ酸配列及びLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するための方法及び技術は、当該技術分野で周知であり、本明細書に開示される特定のHCVRアミノ酸配列及び/又はLCVRアミノ酸配列内のCDRを特定するために使用することができる。CDRの境界を特定するために使用することができる例示的な規則には、例えば、Kabat定義、Chothia定義、及びAbM定義が含まれる。一般的に言えば、Kabat定義は、配列多様性に基づき、Chothia定義は、構造ループ領域の位置に基づき、AbM定義は、KabatアプローチとChothiaアプローチとの間の折衷である。例えば、Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997);及びMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。公開データベースは、抗体内のCDR配列を特定するためにも利用可能である。
【0033】
一実施形態では、本開示は、単離された抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン、
(b)配列番号7のアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン、
(c)配列番号9のアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン、
(d)配列番号15のアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン、
(e)配列番号17のアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン、及び
(f)配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン、を含む、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0034】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、配列番号5-7-9-15-17-19の6つのCDR(HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む。
【0035】
一実施形態では、本開示は、単離された抗体又はその抗原結合断片であって、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン、
(b)配列番号35のアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン、
(c)配列番号37のアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン、
(d)配列番号15のアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン、
(e)配列番号17のアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン、及び
(f)配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン、を含む、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0036】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、配列番号33-35-37-15-17-19の6つのCDR(HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む。
【0037】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、FXIへの結合について参照抗体と競合する抗体又はその抗原結合断片を含み、参照抗体は、FXIのApple 2(A2又はPKA2)に優先的に結合する。
【0038】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体又はその抗原結合断片を含み、参照抗体は、FXIのApple 2(A2又はPKA2)に優先的に結合する。
【0039】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約1,000pM未満のKDでヒトFXIに結合する。
【0040】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約500pM未満のKDでヒトFXIに結合する。
【0041】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約250pM未満のKDでヒトFXIに結合する。
【0042】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約100pM未満のKDでヒトFXIに結合する。
【0043】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約50pM未満のKDでヒトFXIに結合する。
【0044】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約25pM未満のKDでヒトFXIに結合する。
【0045】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約10分超の解離半減期(t1/2)を有するヒトFXIに結合する。
【0046】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約20分超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0047】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約60分超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0048】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約2時間超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0049】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約5時間超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0050】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約10時間超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0051】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約15時間超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0052】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約16時間超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0053】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約1,000分超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0054】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約100nM未満のKDでヒトFXIaに結合する。
【0055】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約10nM未満のKDでヒトFXIaに結合する。
【0056】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約1,000pM未満のKDでヒトFXIaに結合する。
【0057】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約500pM未満のKDでヒトFXIaに結合する。
【0058】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約5分超の解離半減期(t1/2)を有するヒトFXIaに結合する。
【0059】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約10分超のt1/2を有するヒトFXIaに結合する。
【0060】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約15分超のt1/2を有するヒトFXIに結合する。
【0061】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約20分超のt1/2を有するヒトFXIaに結合する。
【0062】
一実施形態では、単離された抗体又はその抗原結合断片は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約25分超のt1/2を有するヒトFXIaに結合する。
【0063】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、約39pM未満のIC50で、正常希釈血清におけるFXIによる第Xa因子(FXa)の活性化を少なくとも約85%阻害する。
【0064】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、約10nM未満のIC50で、正常希釈血清におけるFXIaによる第Xa因子(FXa)の活性化を少なくとも約25%阻害する。
【0065】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、ラベルフリーバイオレイヤー干渉法によって決定されるとき、全長FXI、PKA1、PKA3、及びPKA4に対して、PKA2ドメイン(すなわち、appleドメイン2又はA2)に優先的に結合する、
【0066】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、FXI PKA2内のエピトープに特異的に結合し、FXI PKA2と重複する抗体と、FXIへの結合について競合する。
【0067】
一実施形態において、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、外因性凝固時間の尺度であるプロトロンビン時間(PT)に測定可能な影響を与えることなく、インビボで、霊長類において、内因性凝固時間の尺度である活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を少なくとも2倍増加させる。
【0068】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、インビボで、霊長類における内因性経路ピークトロンビン活性を、約5%~15%、約1%~20%、約0.5%~25%、約3%~5%、約4%~6%、約5%~7%、約6%~8%、約7%~9%、約8%~10%、約9%~11%、約10%~12%、約11%~13%、約12%~14%、約13%~15%、約14%~16%、約15%~17%、約16%~18%、約17%~19%、又は約18%~20%阻害する。
【0069】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、約100pM~100nM、約1nM~50nM、約5nM~40nM、約10nM~35nM、60nM以下、55nM以下、50nM以下、45nM以下、40nM以下、39nM以下、38nM以下、37nM以下、36nM以下、35nM以下、34nM以下、33nM以下、32nM以下、31nM以下、30nM以下、25nM、又は20nM以下の濃度で、インビトロでヒト血漿におけるaPTTを約2倍に延長する。ここで、抗FXIは、PTを倍加することなく、aPTTを約2倍に延長する。
【0070】
一実施形態では、FXIに結合する単離された抗体又はその抗原結合断片は、約10nM~100nM、約15nM~500nM、約20nM~60nM、約25nM~50nM、25nM以上、26nM以上、27nM以上、28nM以上、29nM以上、30nM以上、31nM以上、32nM以上、33nM以上、34nM以上、35nM以上、36nM以上、37nM以上、38nM以上、39nM以上、又は40nM以上の濃度で、インビトロでヒト血漿における内因性経路トロンビン産生を阻害する。ここで、抗FXIは、最大約500nMの用量でも外因性経路トロンビン産生に対して効果なく、内因性経路トロンビン産生を阻害する。
【0071】
第2の態様では、本開示は、抗FXI抗体又はその一部をコードする核酸分子を提供する。例えば、本開示は、表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたHCVR核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0072】
本開示はまた、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたLCVR核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列を含む。
【0073】
本開示はまた、表1に列挙されたHCDR1アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたHCDR1核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0074】
本開示はまた、表1に列挙されたHCDR2アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたHCDR2核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0075】
本開示はまた、表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたHCDR3核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0076】
本開示はまた、表1に列挙されたLCDR1アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたLCDR1核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0077】
本開示はまた、表1に列挙されたLCDR2アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたLCDR2核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0078】
本開示はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を提供し、ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたLCDR3核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0079】
本開示はまた、HCVRをコードする核酸分子を提供し、HCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3)を含み、HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列セットは、表1に列挙された例示的な抗FXI抗体のうちのいずれかによって定義される通りである。
【0080】
本開示はまた、LCVRをコードする核酸分子を提供し、LCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1、LCDR2、LCDR3)を含み、LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列セットは、表1に列挙された例示的な抗FXI抗体のうちのいずれかによって定義される通りである。
【0081】
本開示はまた、HCVR及びLCVRの両方をコードする核酸分子を提供し、HCVRは表1に列挙されたHCVRアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含み、LCVRは表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のうちのいずれかのアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、核酸分子は、表1に列挙されたHCVR核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列、及び表1に列挙されたLCVR核酸配列のうちのいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、又はそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。本開示明のこの態様によるある特定の実施形態では、核酸分子は、HCVR及びLCVRをコードし、HCVR及びLCVRは、共に、表1に列挙された同じ抗FXI抗体に由来する。
【0082】
第3の態様では、本開示は、抗FXI抗体の重鎖可変領域又は軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組み換え発現ベクターを提供する。例えば、本開示は、上述の核酸分子のうちのいずれか、すなわち、表1に記載のHCVR配列、LCVR配列、及び/又はCDR配列のうちのいずれかをコードする核酸分子を含む、組換え発現ベクターを含む。また、そのようなベクターが導入されている宿主細胞、並びに抗体又は抗体断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって、及びそのように産生された抗体及び抗体断片を回収することによって、抗体又はその部分を産生する方法も本開示の範囲内に含まれる。
【0083】
本開示は、修飾されたグリコシル化パターンを有する抗FXI抗体を含む。いくつかの実施形態では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための修飾、又はオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠失している抗体は、例えば、抗体依存性細胞傷害作用(ADCC)機能を増加させるために有用であり得る(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照されたい)。他の用途において、ガラクトシル化の修飾は、補体依存性細胞傷害作用(CDC)を修飾するために行うことができる。
【0084】
第4の態様では、本開示は、FXIに特異的に結合する、本開示の少なくとも1つの抗体、又はその抗原結合断片と、薬学的に許容される担体と、を含む薬学的組成物を提供する。
【0085】
関連する態様では、本開示は、抗FXI抗体と第2の治療剤との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療剤は、抗FXI抗体と有利に組み合わされる任意の薬剤である。第2の治療剤は、疾患又は障害の少なくとも1つの症状を緩和するのに有用であり得る。
【0086】
第5の態様では、本開示は、FXIによって媒介される生物学的活性を増強するための方法であって、FXIを、生物学的有効量の表1のアンタゴニスト抗FXI抗体と接触させること、又はFXIを、生物学的有効量の表1のアンタゴニスト抗FXI抗体を含む薬学的組成物と接触させることを含む、方法を提供する。
【0087】
ある特定の実施形態では、生物学的活性は、血液凝固又は内因性凝固経路の結果としての血液凝固であり、外因性(すなわち、例えば、組織因子誘導)経路の結果としての血液凝固ではなく、血液凝固又は内因性凝固経路の結果としての血液凝固、及び外因性経路の結果としてではない血液凝固は、FXI又はFXIaとアンタゴニスト抗FXI抗体との接触時に阻害されるか、又はそうでなければ低減される。
【0088】
第6の態様では、本開示は、本開示の抗FXI抗体又は抗体の抗原結合部分を使用して、FXI活性若しくは発現に関連する疾患若しくは障害、又は疾患若しくは障害に関連する少なくとも1つの症状を治療するための治療方法を提供する。本開示のこの態様による治療方法は、本開示の抗体又は抗体の抗原結合断片を含む治療有効量の薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。治療される障害は、FXIを標的とすることによって、及び/又はFXI媒介血液凝固を不活性化することによって、改善、回復、阻止、又は予防される任意の疾患又は状態である。
【0089】
一実施形態では、本開示の抗FXI抗体は、止血に悪影響を与えることなく、病理学的内因性凝固を治療する方法を提供し得る。一実施形態では、本開示の抗FXI抗体は、第V因子ライデン、プロトロンビン遺伝子変異、凝固を阻止する天然タンパク質の欠乏(例えば、アンチトロンビン、プロテインC、及びプロテインS)、ホモシステインレベルの上昇、フィブリノーゲン又は機能不全フィブリノーゲンレベルの上昇(異常フィブリノーゲン血症)、第VIII因子、第IX因子、及び/又はXIのレベル上昇、プラズミノーゲン欠損症、プラズミノーゲン異常症、及びプラズミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI-1)レベルの上昇を含む異常な線溶系、心房細動、がん、タモキシフェン、ベバシズマブ、サリドマイド、及びレナリドマイドなど、がんの治療に使用されるいくつかの薬物の副作用、最近の外傷又は手術、中心静脈カテーテルの配置、肥満、妊娠、経口避妊薬(oral contraceptive pill)(経口避妊薬(birth control pill))を含むエストロゲンの補足使用、ホルモン補充療法、長時間のベッド安静又は不動、心臓発作、うっ血性心不全、脳卒中及び活動性の減少につながる他の疾患、ヘパリン誘導性血小板減少症(ヘパリン又は低分子量ヘパリン調製物による血液中の血小板減少)、長時間の飛行機旅行、抗リン脂質抗体症候群、深部静脈血栓症又は肺塞栓症、真性多血症又は本態性血小板増加症などの骨髄増殖性疾患、発作性夜間ヘモグロビン尿症、炎症性腸症候群、HIV/AIDS、ネフローゼ症候群、COVID-19感染症又はスパイクタンパク質免疫作用などのうちのいずれか1つの疾患、障害、凝固副作用、間接凝固作用を治療する方法を提供し得る。
【0090】
本開示の第7の態様は、止血に悪影響を及ぼすことなく、対象における血栓症を予防する方法であって、本方法は、対象に、治療有効量の表1のFXIアンタゴニスト抗体、又は治療有効量の抗体又はその抗原結合断片を含む薬学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。
【0091】
一実施形態では、上述の方法は、アンタゴニスト抗FXI抗体、又はその抗原結合断片を、それを必要とする対象に投与することによって達成され得、アンタゴニスト抗FXI抗体は、表1に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)内に含まれる3つの重鎖相補性決定領域(CDR)(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、表1に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。
【0092】
一実施形態では、本開示の方法は、本開示のアンタゴニストFXI抗体を投与することによって達成され得、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3若しくは配列番号31のHCVR配列内に含まれる3つの重鎖CDR(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、配列番号13のLCVR配列内に含まれる3つの軽鎖CDR(LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)、又はそれと少なくとも90%の配列同一性を有するその実質的に類似の配列と、を含む。
【0093】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3又は配列番号31のアミノ酸配列を有するHCVRを含む。
【0094】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号13のアミノ酸配列を有するLCVRを含む。
【0095】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3のアミノ酸配列を有するHCVRと、配列番号13のアミノ酸配列を有するLCVRと、を含む。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号31のアミノ酸配列を有するHCVRと、配列番号13のアミノ酸配列を有するLCVRと、を含む。
【0096】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3/13又は配列番号31/13のHCVR/LCVRアミノ酸配列対のCDRを含む。
【0097】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号3/13又は配列番号31/13のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
【0098】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号5のアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン、
(b)配列番号7のアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン、
(c)配列番号9のアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン、
(d)配列番号15のアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン、
(e)配列番号17のアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン、及び
(f)配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン、を含む。
【0099】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号5-7-9-15-17-19のアミノ酸配列を有する6つのCDR(HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む。
【0100】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、
(a)配列番号33のアミノ酸配列を有するHCDR1ドメイン、
(b)配列番号35のアミノ酸配列を有するHCDR2ドメイン、
(c)配列番号37のアミノ酸配列を有するHCDR3ドメイン、
(d)配列番号15のアミノ酸配列を有するLCDR1ドメイン、
(e)配列番号17のアミノ酸配列を有するLCDR2ドメイン、及び
(f)配列番号19のアミノ酸配列を有するLCDR3ドメイン、を含む。
【0101】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、配列番号33-35-37-15-17-19のアミノ酸配列を有する6つのCDR(HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)のセットを含む。
【0102】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ヒトFXIに特異的に結合する。
【0103】
一実施形態では、本開示の抗FXI抗体で治療される疾患又は障害は、血栓症、及び血栓症に起因する任意の合併症である。
【0104】
FXIの活性又は発現に関連する任意の疾患又は障害は、本開示の抗体による治療に適していると想定される。これらの障害には、有害な血餅形成がリスクである任意の疾患又は状態、特に、内因性凝固及び止血が患者にとってリスクである状態が含まれ得るが、これに限定されない。
【0105】
他の実施形態は、後述の詳細な説明の精査から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【
図1】抗体の対数濃度の関数としてのaPTTの倍率変化を示す折れ線グラフを描画する。塗りつぶされたピラミッドは、アイソタイプ対照抗体(上の頂点)又は本発明のFXI A2抗体、REGN9933(下の頂点、H4H29790P2として表示される)のいずれかを描画する。塗りつぶされた円は、FXI A2に結合する比較対象抗体を描画する。
【
図2】経時的なアイソタイプ対照抗体(REGN1945)の濃度の関数としてのトロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図3】経時的なFXI A2に結合する主題の抗体(REGN9933)の濃度の関数としてのトロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図4】経時的なFXI A2に結合する比較対象抗体(COMP3448)の濃度の関数としてのトロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図5】経時的なアイソタイプ対照抗体(REGN1945)の濃度の関数としてのトロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図6】経時的なFXI A2に結合する主題の抗体(REGN9933)の濃度の関数としてのトロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図7】経時的なFXI A2に結合する比較対象抗体(COMP3448)の濃度の関数としてのトロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図8A】抗体の対数濃度の関数としての活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の倍率変化を示す折れ線グラフを描画する。暗い色合いは、アイソタイプ対照を描画する。明るい色合いは、FXI A2に結合する主題の抗体REGN9933を描画する。aPTT凝固アッセイでは、ヒトドナー血漿を、REGN9933又はIgG4Pアイソタイプ対照19nM~1200nMのいずれかの2倍連続希釈液と共にインキュベートし、続いて、内因性凝固経路の特異的活性化因子であるエラグ酸(EA)を添加した。
【
図8B】抗体の対数濃度の関数としてのプロトロンビン時間(PT)の倍率変化を示す折れ線グラフを描画する。PT凝固アッセイでは、ヒトドナー血漿を、600nM及び1200nMでREGN9933又はIgG4Pアイソタイプ対照のいずれかと共にインキュベートし、続いて、外因性凝固経路の特異的活性化因子である組織因子(TF)を添加した。
図8Bは、PT凝固アッセイのREGN9933及びIgG4Pアイソタイプ対照の線が重複することを示し、したがって、これらの線を区別することはできない。ベースライン(すなわち、非抗体対照)と比較したaPTT及びPTの変化を決定し、重複試料の平均変化を、試験した各抗体濃度についてプロットする。
【
図9A】経時的なFXI A2に結合する主題の抗体の濃度の関数としてのエラグ酸(EA)媒介トロンピン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図9B】経時的なアイソタイプ対照抗体の濃度の関数としてのEA媒介トロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図9C】経時的なFXI A2に結合する主題の抗体、REGN9933の濃度の関数としての組織因子(TF)媒介トロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。
【
図9D】経時的なアイソタイプ対照抗体の濃度の関数としてのTF媒介トロンビン活性を示す折れ線グラフを描画する。ヒトドナー血漿を、主題のmAb又はIgG4Pアイソタイプ対照16nM~500nMのいずれかの2倍連続希釈液と共にインキュベートし、続いて、(
図9A及び9B)内因性凝固経路の特異的活性化因子であるエラグ酸(EA)、又は(
図9B及び9C)外因性凝固経路の特異的活性化因子である組織因子(TF)を添加した。測定されたリアルタイムトロンビン濃度値を、時間に対してプロットして、試験した各抗体濃度並びに非抗体対照(すなわち、PBS)についてトロンボグラムプロファイルを得た。
【
図10】REGN9933は、血漿中の総FXIレベルの増加に関連する。雌のカニクイザルに、ビヒクル(対照、n=3)、1mg/kgのREGN9933(n=3)、3mg/kgのREGN9933(n=3)、又は10mg/kgのREGN9933(n=3)の単回静脈内(IV)スローボーラス注射を投与し、投与後8週間監視した。投与前及び投与後5分、6時間、2日目、3日目、4日目、6日目、8日目、11日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目、50日目、及び57日目に、全ての動物から血液試料を収集した。投与前の測定値は、各動物のベースラインとして機能した(
図10A及び10B)。
図10Aは、マウス抗ヒトIgG Fcモノクローナル抗体(mAb)を使用した酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)で測定された血清中の総REGN9933を示す折れ線グラフを描画する。
図10 2.1.1における薬物合計は、ヤギ抗ヒトFXI mAbを使用して、ELISAを使用して測定された血漿中の総FXIを示す折れ線グラフを描画し、総FXIの倍率変化(ベースラインと比較して)が報告される。データは、群平均±平均の標準誤差(SEM)として表される。
【
図11】REGN9933は、aPTTを延長するが、PTを延長せず、持続時間に用量依存的な効果を有する。雌のカニクイザルに、ビヒクル(対照、n=3)、1mg/kgのREGN9933(n=3)、3mg/kgのREGN9933(n=3)、又は10mg/kgのREGN9933(n=3)の単回静脈内(IV)スローボーラス注射を投与し、投与後8週間監視した。投与前及び投与後5分、6時間、2日目、3日目、4日目、6日目、8日目、11日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目、50日目、及び57日目に、全ての動物から血液試料を収集した。投与前の測定値は、各動物のベースラインとして機能した。(
図11A及び11B)。
図11Aは、経時的なaPTTの倍率変化(ベースラインと比較して)の関数としてのEA媒介aPTTを示す折れ線グラフを描画する。
図11Bは、経時的なPTの倍率変化(ベースラインと比較して)の関数としてのTF媒介PTを示す折れ線グラフを描画する。データは、群平均±平均の標準誤差(SEM)として表される。
【
図12】REGN9933は、内因性及び外因性凝固経路の内因性トロンビンp生成能を低減し、内因性経路における活性の持続時間に用量依存的な効果を有する。雌のカニクイザルに、ビヒクル(対照、n=3)、1mg/kgのREGN9933(n=3)、3mg/kgのREGN9933(n=3)、又は10mg/kgのREGN9933(n=3)の単回静脈内(IV)スローボーラス注射を投与し、投与後8週間監視した。投与前及び投与後5分、6時間、2日目、3日目、4日目、6日目、8日目、11日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目、50日目、及び57日目に、全ての動物から血液試料を収集した。投与前の測定値は、各動物のベースラインとして機能した。トロンビン生成アッセイ(TGA)を、それぞれ、内因性及び外因性の凝固経路の活性化因子としてエラグ酸(EA)及び組織因子(TF)を使用して血漿試料で行った(
図12A及び12B)。
図12Aは、経時的な内因性トロンビン生成能(ETP)の倍率変化(ベースラインと比較して)の関数としてのEA媒介aPTTを示す折れ線グラフを描画する。
図12Bは、経時的なETPの倍率変化(ベースラインと比較して)の関数としてのTF媒介PTを示す折れ線グラフを描画する。データは、群平均±平均の標準誤差(SEM)として表される。
【発明を実施するための形態】
【0107】
本開示を説明する前に、本開示は、そのような方法及び条件が変化し得るため、特定の方法及び記載された実験条件に限定されないことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0108】
別段定義されない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、特定の列挙された数値に関して使用されるとき、その値が列挙された値から1%以下変動し得ることを意味する。例えば、本明細書で使用される場合、「約100」という表現には、99及び101、並びにその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)が含まれる。
【0109】
本明細書に記載されているものと類似又は均等の任意の方法及び材料が、本開示の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料をここで記載する。本明細書において言及される全ての特許、出願、及び非特許刊行物は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0110】
定義
「凝固第XI因子」又は「第XI因子」としても知られる「FXI」などの発現は、アクセッション番号NP_000119.1(配列番号21)のアミノ酸残基19~625に示されるアミノ酸配列を含むヒト血漿セリンプロテアーゼ(別の種からのものであると指定されている場合を除く)を指す。myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを含むヒトFXIは、配列番号22として示される(アミノ酸残基1~607はヒトFXIであり、アミノ酸残基608~635はmyc-myc-ヘキサヒスチジンタグである)。
【0111】
ある特定の例では、FXIタンパク質、FXIタンパク質のサブユニット、及び1つ以上のFXIサブユニット、タグ配列、及び血漿カリクレインタンパク質配列を含むキメラタンパク質を発現する細胞株を調製した。例えば、配列番号23(構築物hFXI_PKA1)は、アミノ酸1~85で、ヒトカリクレインB1のapple 1ドメイン(PKA1)(ヒトカリクレインB1のアミノ酸G20~C104[配列番号28])、アミノ酸86~606、ヒトFXIのアミノ酸H105~V625(hFXI)、及びアミノ酸607~634で、myc-myc-ヘキサジスチジンタグを含むキメラである。
【0112】
例えば、配列番号24(構築物hFXI_PKA2)は、アミノ酸1~90で、hFXIのアミノ酸E19~S108、アミノ酸91~174で、hKLKB1のapple 2ドメイン(PKA2、「A2」とも称される)(アミノ酸C111~C193配列番号28)、アミノ酸175~605で、hFXIのアミノ酸A195~V625、及びアミノ酸606~633で、myc-myc-ヘキサジスチジンタグを含むキメラである。
【0113】
例えば、配列番号25(構築物hFXI_PKA3)は、アミノ酸1~180で、hFXIのアミノ酸E19~L198、アミノ酸181~264で、hKLKB1のapple 3ドメイン(PKA3)(アミノ酸C201~C284配列番号28)、アミノ酸265~605で、hFXIのアミノ酸H285~V625、及びアミノ酸606~633で、myc-myc-ヘキサジスチジンタグを含むキメラである。
【0114】
例えば、配列番号26(構築物hFXI_PKA4)は、アミノ酸1~271で、hFXIのアミノ酸E19~V289、アミノ酸272~355で、hKLKB1のapple 4ドメイン(PKA4)(アミノ酸C292~C375配列番号28)、アミノ酸356~605で、hFXIのアミノ酸M376~V625、アミノ酸606~633で、myc-myc-ヘキサジスチジンタグを含むキメラである。
【0115】
例えば、配列番号27(構築物hKLKB1.mmh)は、アミノ酸1~619で、hKLKB1のアミノ酸G20~A638、及びアミノ酸620~647で、myc-myc-ヘキサジスチジンタグを含むキメラである。
【0116】
本明細書で使用される場合、「抗FXI抗体」という表現は、単一特異性を有する一価抗体、並びにFXIに結合する第1のアーム及び第2の(標的)抗原に結合する第2のアームを含む二重特異性抗体の両方を含み、抗FXIアームは、本明細書の表1に記載されるHCVR/LCVR配列又はCDR配列のうちのいずれかを含む。「抗FXI抗体」という表現はまた、薬物又は毒素(すなわち、細胞傷害性剤)にコンジュゲートされた抗FXI抗体又はその抗原結合部分を含む、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)も含む。「抗FXI抗体」という発現はまた、放射性核種にコンジュゲートされた抗FXI抗体又はその抗原結合部分を含む抗体-放射性核種コンジュゲート(ARC)を含む。
【0117】
本明細書で使用される場合、「抗FXI抗体」という用語は、FXI若しくはFXIの一部分、又はFXIのapple 2ドメイン若しくはFXIのapple 2ドメイン内のエピトープに特異的に結合するか、又はそれと相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む、任意の抗原結合分子又は分子複合体を意味する。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互連結された4本のポリペプチド鎖である2本の重(H)鎖及び2本の軽(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、並びにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVR又はVHと略す)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、CH1、CH2、及びCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVR又はVLと略す)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)を含む。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼称される、より保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼称される、超可変性の領域へと更に細分することができる。各VH及びVLは、3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置される。本開示の異なる実施形態では、抗FXI抗体(若しくはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であり得るか、又は天然に若しくは人工的に修飾され得る。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義することができる。
【0118】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、全長抗体分子の抗原結合断片も含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」、及び同様の用語は、本明細書で使用される場合、任意の酵素処理で入手可能な、合成の、又は遺伝子操作された、抗原に特異的に結合して複合体を形成するポリペプチド又は糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、抗体可変ドメイン及び任意選択的に抗体定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現に関与するタンパク質分解消化技法又は組換え遺伝子操作技法などの任意の好適な標準的な技法を使用して、完全抗体分子から得られ得る。かかるDNAは既知であり、かつ/又は例えば、商業的供給元、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、若しくは合成され得る。DNAは、化学的又は分子生物学技術を使用して配列決定及び操作され、例えば、1つ以上の可変ドメイン及び/又は定常ドメインを好適な配置に配置し、コドンを導入し、システイン残基を作製し、アミノ酸を修飾、追加若しくは削除することができる。
【0119】
抗原結合断片の非限定的な例としては、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)単鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、又は拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位、が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小型モジュール型免疫医薬品(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子も、本明細書で使用する「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0120】
抗体の抗原結合断片は、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。可変ドメインは、任意の大きさ又はアミノ酸組成物のものであり得、概して、1つ以上のフレームワーク配列に隣接しているか又は1つ以上のフレームワーク配列と共にインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインと結合したVHドメインを有する抗体結合断片において、VHドメイン及びVLドメインは、任意の好適な配置で互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は二量体であり、VH-VH、VH-VL、又はVL-VL二量体を含み得る。代替的に、抗体の抗原結合断片は、単量体のVHドメイン又はVLドメインを含み得る。
【0121】
ある特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含有し得る。本開示の抗体の抗原結合断片内に見出すことができる可変ドメイン及び定常ドメインの非限定的な例示的な配置としては、(i)VH-CH1、(ii)VH-CH2、(iii)VH-CH3、(iv)VH-CH1-CH2、(v)VH-CH1-CH2-CH3、(vi)VH-CH2-CH3、(vii)VH-CL、(viii)VL-CH1、(ix)VL-CH2、(x)VL-CH3、(xi)VL-CH1-CH2、(xii)VL-CH1-CH2-CH3、(xiii)VL-CH2-CH3、及び(xiv)VL-CL、が挙げられる。上に列挙される例示的な配置のうちのいずれかを含む、可変ドメイン及び定常ドメインの任意の配置において、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接連結されているか、又は完全若しくは部分的ヒンジ領域若しくはリンカー領域によって連結されているかのいずれかであり得る。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子において隣接する可変ドメイン及び/又は定常ドメイン間の可撓性又は半可撓性の結合をもたらす少なくとも2つの(例えば、5、10、15、20、40、60以上)アミノ酸からなり得る。更に、本開示の抗体の抗原結合断片は、互いとの及び/又は1つ以上の単量体VHドメイン若しくはVLドメイン(例えば、ジスルフィド結合(複数可)により)との非共有結合において、上に列挙した可変ドメイン配置及び定常ドメイン配置のいずれかのホモ二量体又はヘテロ二量体(又は他の多量体)を含み得る。
【0122】
完全抗体分子と同様に、抗原結合断片は、単一特異性又は多特異性(例えば、二重特異性)であり得る。抗体の多特異性抗原結合断片は、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、各可変ドメインは、別個の抗原又は同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体の形式を含む任意の多特異性抗体の形式は、当該技術分野で利用可能な慣例的技術を使用して、本開示の抗体の抗原結合断片の文脈での使用に適合され得る。
【0123】
ある特定の例では、例えば、血餅の形成を阻害するために、FXIをアンタゴナイズすることが望ましい場合がある。しかしながら、本開示の抗体は、FXI又はFXIaの活性の阻害剤として機能し、同時に内因性経路の血栓症/血餅形成の阻害剤として機能するアンタゴニスト抗体として機能する。本開示の抗体は、FXIとその上流活性剤凝固第XII因子(FXII)及び/又は凝固第II因子(FII又はトロンビン)との間の相互作用を防止することによって機能し得る。本開示の抗体はまた、FXIとその下流標的凝固第IX因子(FIX)との間の相互作用を防止することによって機能し得る。本開示の抗体はまた、患者の血流からFXIを隔離することによっても機能し得る。
【0124】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、天然に存在しないヒト抗体を含むことが意図される。この用語は、非ヒト哺乳動物又は非ヒト哺乳動物の細胞において組換え的に産生される抗体を含む。この用語は、ヒト対象から単離された、又はヒト対象において生成された抗体を含むよう意図されない。
【0125】
本開示の抗体は、いくつかの実施形態では、組換え抗体及び/又は天然に存在しないヒト抗体であり得る。本明細書で使用される場合、「組換えヒト抗体」という用語は、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現される抗体などの組換え手段によって調製、発現、作製、又は単離される全てのヒト抗体(後述)、組換え型コンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体(後述)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えばマウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照されたい)、又はヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを伴う任意の他の手段によって調製、発現、作製、若しくは単離された抗体を含むことが意図される。ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発(又は、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発)に供され、したがって、組換え抗体のVH領域及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH配列及びVL配列に関連している一方で、インビボでヒト抗体生殖系列レパートリー中に天然に存在しない場合がある配列である。
【0126】
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性に関連する2つの形態で存在することができる。一形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されているおよそ150~160kDaの安定した四本鎖構築体を含む。第2の形態では、二量体は鎖間ジスルフィド結合によって連結されておらず、共有結合した軽鎖及び重鎖からなる約75~80kDaの分子が形成される(半抗体)。これらの形態は、親和性精製後でさえも分離することが極めて困難とされている。
【0127】
様々な無傷のIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現頻度は、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造上の相違によるが、それに限定されない。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一アミノ酸置換は、ヒトIgG1ヒンジを使用して典型的に観察されるレベルまで第2の形態の出現を大幅に低減することができる(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)。本開示は、ヒンジ、CH2領域又はCH3領域において1つ以上の変異を有する抗体を包含し、それらは、例えば、産生において、所望の抗体形態の収率を改善するために望ましい場合がある。
【0128】
「specifically binds(特異的に結合する)」又は「binds specifically to(に特異的に結合する)」などの用語は、抗体又はその抗原結合断片が、生理学的条件下で比較的安定な抗原と複合体を形成することを意味する。特異的結合は、少なくとも約1×10-6M以下の平衡解離定数によって特徴付けることができる(例えば、より小さいKDは、より密接な結合を示す)。2つの分子が特異的に結合するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、平衡透析、表面プラズモン共鳴などを含む。本明細書に記載されるように、FXIに特異的に結合する抗体は、表面プラズモン共鳴、例えば、BIACORE(商標)によって特定されている。更に、本明細書で使用される場合、FXI タンパク質及び1つ以上の追加の抗原に結合する多特異性抗体、又はFXIの2つの異なる領域に結合する二重特異性抗体は、それにもかかわらず「特異的に結合する」抗体とみなされる。
【0129】
本開示の抗体は、単離された抗体であってもよい。本明細書で使用される場合、「単離された抗体」は、特定された抗体、及びその天然環境の少なくとも1つの構成成分から分離及び/又は回収された抗体を意味する。例えば、生物の少なくとも1つの構成成分から、又は抗体が自然に存在するか、若しくは自然に産生される組織若しくは細胞から分離されている、又は取り出された抗体は、本開示の目的で「単離された抗体」である。単離された抗体は、組換え細胞内のインサイチュの抗体も含む。単離された抗体は、少なくとも1つの精製又は単離ステップを受けている抗体である。ある特定の実施形態によれば、単離された抗体は他の細胞材料及び/又は化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0130】
本明細書に開示される抗FXI抗体は、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク領域及び/又はCDR領域において、1つ以上のアミノ酸置換、挿入、及び/又は欠失を含み得る。そのような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば公共の抗体配列データベースから入手可能な配列と比較することによって容易に確認することができる。いったん得られれば、1つ以上の変異を含む抗体及び抗原結合断片は、結合特異性の改善、結合親和性の増加、アンタゴニスト又はアゴニストの生物学的特性の改善又は増強(場合によって)、免疫原性の低減などの1つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な様式で得られる抗体及び抗原結合断片は、本開示の範囲内に包含される。
【0131】
本開示はまた、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、及び/又はCDRアミノ酸配列のうちのいずれかのバリアントを含む、抗FXI抗体を含む。例えば、本開示は、本明細書の表1に記載されるHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、及び/又はCDRアミノ酸配列のうちのいずれかに対して、例えば10個以下、8個以下、6個以下、又は4個以下などの保存的アミノ酸置換を伴うHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、及び/又はCDRアミノ酸配列を有する抗FXI抗体を含む。
【0132】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られている抗体分子の可変領域における特異的抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原は2つ以上のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合し得、異なる生物学的効果を有し得る。エピトープは、立体配座又は線状のいずれかであり得る。立体配座エピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に並置されたアミノ酸によって産生される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖中の隣接するアミノ酸残基によって産生されるものである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、又はスルホニル基の部分を含み得る。
【0133】
「実質的な同一性」又は「実質的に同一である」という用語は、核酸又はその断片を指す場合、適切なヌクレオチドの挿入又は欠失を用いて別の核酸(又はその相補鎖)と最適に整列させたとき、以下で考察されるようにFASTA、BLAST、又はGapなどの配列同一性の任意の周知のアルゴリズムによって測定した場合、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは約96%、97%、約98%、又は99%のヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある特定の例では、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じ又は実質的に類似のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。
【0134】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な類似性」又は「実質的に類似の」という用語は、2つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを使用して、プログラムGAP又はBESTFITによってなど最適に整列させたとき、少なくとも95%の配列同一性、更により好ましくは、少なくとも98%、又は99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷又は疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。概して、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能的特性を実質的に変化させないことになっている。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、配列同一性パーセント又は類似性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整され得る。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照されたい(参照により本明細書に組み込まれる)。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸及びグルタミン酸、並びに(7)システイン及びメチオニンである含硫側鎖が挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸、及びアスパラギン-グルタミンである。代替的に、保存的置換とは、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているPAM250対数尤度マトリックスにおいて正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度マトリックスにおいて負以外の値を有する任意の変化である。
【0135】
配列同一性とも称されるポリペプチドに対する配列類似性は、典型的には配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む様々な置換、欠失及び他の修飾へ割り当てられた類似の測定値を使用して類似の配列と一致させる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物からの相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間の、又は野生型タンパク質とその変異タンパク質との間の、配列相同性又は配列同一性を決定するための既定パラメータと共に使用することができるGap及びBestfitなどのプログラムを含む。例えば、GCGバージョン6.1を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCGバージョン6.1のプログラムである、既定パラメータ又は推奨パラメータを使用するFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列の間の最良重複の領域の整列及びパーセント配列同一性を提供する(Pearson(2000)上記)。本開示の配列を、異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを使用するコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTP又はTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照されたい(各々参照により本明細書に組み込まれる)。
【0136】
抗体の特徴
本開示は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約500pM未満のKDでヒトFXIのA2ドメインに結合する抗FXI抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、本開示は、ヒトFXIに、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約150pM未満、約100pM未満、約80pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、約5pM未満、約3pM未満、又は約1pM未満のKDで結合する抗FXI抗体を含む。
【0137】
本開示は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約1,000pM未満のKDで活性化ヒトFXI(FXIa)に結合する抗FXI抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、本開示は、ヒトFXIに、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約500pM未満、約250pM未満、約100pM未満、約80pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、約5pM未満、約3pM未満、又は約1pM未満のKDで結合する抗FXI抗体を含む。
【0138】
本開示は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約10分超の解離半減期(t1/2)を有するヒトFXIに結合する抗FXI抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、本開示は、約20分超、約50分超、約100分超、約120分超、約150分超、約300分超、約350分超、約400分超、約450分超、約500分超、約550分超、約600分超、約700分超、約800分超、約900分超、約1000分超、約1100分超、又は約1200分超のt1/2を有するヒトFXIに結合する抗FXI抗体を含む。
【0139】
本開示は、25℃又は37℃での表面プラズモン共鳴によって測定されたとき、約10分超の解離半減期(t1/2)を有するヒトFXIaに結合する抗FXI抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、本開示は、約20分超、約50分超、約100分超、約120分超、約150分超、約300分超、約350分超、約400分超、約450分超、約500分超、約550分超、約600分超、約700分超、約800分超、約900分超、約1000分超、約1100分超、又は約1200分超のt1/2を有するヒトFXIに結合する抗FXI抗体を含む。
【0140】
本開示は、非ヒトFXIに結合してもしなくてもよい抗FXI抗体を含む。本明細書で使用される場合、抗体が、表面プラズモン共鳴などの抗原結合アッセイにおいて試験されたとき、そのようなアッセイにおいて、約1000nM超のKDを示すか、又はいかなる抗原結合も示さない場合、抗体は、特定の抗原(例えば、サル、マウス、又はラットFXIに「結合しない」。本開示のこの態様による、抗体が特定の抗原に結合するか、又は結合しないかを決定するために使用することができる別のアッセイ形式は、ELISAである。
【0141】
活性化FXI(FXIa)が、arg-ala及びarg-valペプチド結合を選択的に切断することによって、第IX因子を活性化することは、当該技術分野で一般に知られている。第IXa因子は、次に、第VIIIa因子(FIXa-FVIIIa)と複合体を形成し、第X因子を活性化する。本開示は、約100pM未満のIC50で、血漿におけるヒトFXのFXI媒介活性化を少なくとも約85%阻害する抗FXI抗体を含む。実施例4に記載のアッセイ形式、又は実質的に類似のアッセイ形式を使用して、IC50値を、観察された最大半量のシグナルへのFXI媒介シグナル伝達を活性化するのに必要な抗体の濃度として計算することができる。したがって、ある特定の実施形態によれば、本明細書の実施例4に記載のアッセイ形式、又は実質的に類似のアッセイ形式を使用して測定されたとき、約500pM未満、約400pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約90pM未満、約80pM未満、約70pM未満、約60pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、又は約5pM未満のIC50で、血漿におけるヒトFXのヒトFXI媒介活性化を少なくとも約85%媒介する抗FXI抗体を含む。
【0142】
本開示はまた、約50pM未満のIC50で、血漿におけるヒトFXのFXIa媒介性活性化を少なくとも約25%阻害する抗FXI抗体も含む。実施例4に記載のアッセイ形式、又は実質的に類似のアッセイ形式を使用して、IC50値を、観察された最大半量のシグナルへのFXIa媒介シグナル伝達を活性化するのに必要な抗体の濃度として計算することができる。したがって、ある特定の実施形態によれば、本明細書の実施例4に記載のアッセイ形式、又は実質的に類似のアッセイ形式を使用して測定されたとき、約200pM未満、約300pM未満、約200pM未満、約100pM未満、約50pM未満、約40pM未満、約30pM未満、約20pM未満、約10pM未満、約9pM未満、約8pM未満、約7pM未満、約6pM未満、約5pM未満、約4pM未満、約3pM未満、約2pM未満、又は約1pM未満のIC50で、血漿におけるヒトFXのヒトFXIa媒介活性化を少なくとも約25%媒介する抗FXI抗体を含む。
【0143】
本開示は、それぞれ、実施例5及び実施例6に示されるように、A2ドメイン構築物への直接結合によって、又は1つ以上の特異的A2結合抗体と競合することによって実証されるように、apple 2ドメイン(A2)に優先的に結合する抗FXI抗体を含む。一実施形態では、本明細書に開示される抗体又はその抗原結合断片は、FXIの触媒ドメインに結合しない。
【0144】
本開示は、ヒト血漿において、外因性経路血栓形成の尺度であるプロトロンビン時間(PT)に対して測定可能な効果を有しない一方で、内因性経路血栓形成の尺度である活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を延長する、抗FXI抗体を含む。一実施形態では、aPTTは、エラグ酸で処理されたプールされたヒト血漿において測定され、PTは、実施例7に例示されるように、止血分析器を使用して組織因子で処理されたプールされたヒト血漿において測定される。エラグ酸がインビトロで血栓形成の内因性経路を刺激し、組織因子が血栓形成の外因性経路を刺激することは、当該技術分野で一般に知られている。ここで、抗FXI抗体は、100nM未満、90nM未満、80nM未満、70nM未満、60nM未満、50nM未満、40nM未満、30nM未満、20nM未満、10nM未満、1nM~100nM、1nM~100nM、1nM~50nM、100pM~50nM、5nM~50nM、5nM~40nM、5nM~15nM、10nM~20nM、15nM~25nM、20nM~30nM、25nM~35nM、30nM~40nM、35nM~45nM、40nM~50nM、45nM~55nM、50nM~60nM、55nM~65nM、60nM~100nM、65nM~75nM、70nM~80nM、75nM~85nM、80nM~90nM、85nM~95nM、90nM~100nM、又は95nM~105nMの濃度で、PTを倍加せずに、aPTTを約2倍に延長する。
【0145】
本開示は、外因性経路(外因性トロンビン)を介したトロンビンの産生にほとんど又はまったく影響を与えずに、インビトロでヒト血漿における内因性経路(内因性トロンビン)を介したトロンビンの産生を阻害する抗FXI抗体を含む。一実施形態では、経路特異的トロンビン産生は、実施例7に例示されるように、較正された自動トロンボグラムを使用して、トロンビン生成アッセイによってインビトロで決定される。ここで、トロンビン生成プロファイルが生成され、ピークトロンビン濃度は、抗FXI抗体の有無にかかわらず、エラグ酸処理血漿及び組織因子処理血漿において決定される。したがって、一実施形態では、抗FXI抗体は、0.1nM~100nM、1nM~100nM、5nM~500nM、5nM~100nM、10nM~100nM、10nM~50nM、5nM~15nM、10nM~20nM、25nM~35nM、30nM~40nM、35nM~45nM、40nM~50nM、45nM~55nM、50nM~60nM、55nM~65nM、60nM~65nM、20nM以上、25nM以上、30nM以上、35nM以上、40nM以上、45nM以上、50nM以上、55nM以上、5nM以上、10nM以上、又は15nM以上の濃度で内因性トロンビンの産生を阻害する。ここで、抗FXI抗体は、最大500nMの任意の濃度で外因性トロンビンの産生に影響を与えない。
【0146】
本開示は、プロトロンビン時間(PT)に測定可能な影響を与えることなく、インビボで霊長類における活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を少なくとも2倍増加させる抗FXI抗体を含む。ここで、霊長類に抗FXI抗体を投与し、血漿を霊長類から得、血漿を、エラグ酸又は組織因子と接触させ、次いで、実施例8に例示されるように、それぞれ、アッセイにおいて、aPTT又はPTが決定される。一実施形態では、霊長類は、ヒトである。一実施形態では、霊長類は、サルである。
【0147】
一実施形態では、抗FXI抗体は、0.01mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、又は約15mg/kgの用量で非経口投与される。
【0148】
一実施形態では、aPTTは、抗FXI処置なしと比較して、抗FXI処置で、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも2.5倍、少なくとも3倍、少なくとも3.5倍、少なくとも4倍、少なくとも4.5倍、少なくとも5倍、少なくとも5.5倍、又は少なくとも6倍延長される。
【0149】
一実施形態では、抗FXI媒介aPTT延長効果は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、又は少なくとも6ヶ月間、抗FXI抗体の用量を受けた後も対象において持続する。
【0150】
本開示は、外因性経路ピークトロンビン活性に測定可能な影響を与えることなく、インビボで霊長類における内因性経路ピークトロンビン活性を阻害する抗FXI抗体を含む。ここで、霊長類に抗FXI抗体を投与し、血漿を霊長類から得、血漿を、エラグ酸又は組織因子と接触させ、次いで、内因性トロンビン又は外因性トロンビンの生成が、それぞれ、実施例8に例示されるトロンビン生成アッセイにおいて決定される。一実施形態では、霊長類は、ヒトである。一実施形態では、霊長類は、サルである。
【0151】
一実施形態では、抗FXI抗体は、0.01mg/kg~20mg/kg、0.1mg/kg~10mg/kg、1mg/kg~10mg/kg、約0.1mg/kg、約0.2mg/kg、約0.3mg/kg、約0.4mg/kg、約0.5mg/kg、約0.6mg/kg、約0.7mg/kg、約0.8mg/kg、約0.9mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約4mg/kg、約5mg/kg、約6mg/kg、約7mg/kg、約8mg/kg、約9mg/kg、約10mg/kg、約11mg/kg、約12mg/kg、約13mg/kg、約14mg/kg、又は約15mg/kgの用量で非経口投与される。
【0152】
一実施形態では、抗FXI処置なしと比較して、抗FXI処置におけるピーク内因性トロンビン(すなわち、エラグ酸を介して生成されるトロンビン)活性は、1%~100%、5%~95%、10%~90%、20%~80%、1%~10%、5%~20%、10%~30%、15%~40%、20%~50%、25%~60%、5%~15%、10%~20%、15%~25%、20%~30%、25%~35%、30%~40%、35%~45%、40%~50%、45%~55%、50%~60%、55%~65%、60%~70%、65%~75%、70%~80%、75%~85%、80%~90%、85%~95%、90%~100%、95%~105%、又は100%以上阻害される。
【0153】
一実施形態では、ピーク内因性トロンビン活性の抗FXI媒介阻害は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間、少なくとも7週間、少なくとも8週間、少なくとも3ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも5ヶ月、又は少なくとも6ヶ月間、抗FXI抗体の用量を受けた後も対象において持続する。
【0154】
本開示の抗体の結合特徴(例えば、上記の本明細書で言及される結合特徴のいずれか)は、「表面プラズモン共鳴によって測定される」という点で開示される場合、抗体と抗原との間の相互作用に関する関連する結合特徴が、本明細書の実施例3に例解される標準的なBiacoreアッセイ条件、又は実質的に類似のアッセイ形式を使用して、表面プラズモン共鳴機器(例えば、Biacore(登録商標)機器、GE Healthcare)を使用して測定されることを意味する。ある特定の実施形態では、結合パラメータは、25℃で測定されるが、他の実施形態では、結合パラメータは、37℃で測定される。
【0155】
本開示は、表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列及び/又はLCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む、HCVR及び/又はLCVRを含む、FXIに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0156】
本開示の抗体は、前述の生物学的特徴うちの1つ以上、又はそれらの任意の組み合わせを有し得る。本開示の抗体の生物学的特徴の前述のリストは、包括的であることを意図しない。本開示の抗体の他の生物学的特徴は、本明細書の実施例を含む本開示の総説から、当業者には明らかであろう。
【0157】
エピトープマッピング及び関連技術
本開示の抗体が結合するエピトープは、FXIタンパク質の3つ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)のアミノ酸の単一の連続配列からなってもよい。代替的に、エピトープは、FXIの複数の連続していないアミノ酸(又はアミノ酸配列)からなってもよい。いくつかの実施形態では、エピトープは、例えば、そのリガンド、例えば、FXIIa、トロンビン、及びFIXのうちのいずれか1つと相互作用するドメイン内で、FXIの表面又はその付近に位置する。他の実施形態では、エピトープは、FXIリガンドと相互作用しないFXIの表面又はその付近に、例えば、抗体が、そのようなエピトープに結合したときに、FXIとそのリガンドとの間の相互作用を妨げないFXIの表面上の位置に位置する。
【0158】
当業者に既知の様々な技術を使用して、抗体が、ポリペプチド又はタンパク質内にある「1つ以上のアミノ酸と相互作用する」かどうかを決定することができる。例示的な技術としては、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harb.,NY)に記載されている慣例的なクロスブロッキングアッセイ、アラニンスキャニング変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke,2004,Methods Mol Biol 248:443-463)、及びペプチド切断分析が挙げられる。加えて、エピトープ切除、エピトープ抽出、及び抗原の化学修飾などの方法を用いることができる(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチドの内部にあるアミノ酸を特定するために使用することができる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般的に言えば、水素/重水素交換法は、関心対象のタンパク質を重水素標識した後、抗体を重水素標識タンパク質へ結合させることを包含する。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護されている残基(重水素標識されたままである)を除く全ての残基で水素-重水素交換を生じさせる。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断及び質量分析へ供し、それにより、抗体が相互作用する特異的アミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259、Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73/256A-265Aを参照されたい。
【0159】
本開示は、本明細書に記載の特定の例示的な抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗FXI抗体(例えば、本明細書の表1に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)を含む。同様に、本開示はまた、FXIへの結合について本明細書に記載の特定の例示的な抗体のいずれかと競合する抗FXI抗体(例えば、本明細書の表1に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)を含む。
【0160】
抗体が、参照抗FXI抗体と同じエピトープに結合するか、又は結合について参照抗FXI抗体と競合するかどうかは、当該技術分野で既知であり、本明細書で例示される慣例的方法を使用することによって、容易に決定することができる。例えば、試験抗体が、本開示の参照抗FXI抗体と同じエピトープに結合するかどうかを決定するために、参照抗体を、FXIタンパク質に結合させる。次に、FXI分子に結合する試験抗体の能力を評価する。試験抗体が、参照抗FXI抗体との飽和結合後にFXIに結合することができる場合、試験抗体は、参照抗FXI抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。その一方、試験抗体が、参照抗FXI抗体との飽和結合後にFXI分子に結合することができない場合、試験抗体は、本開示の参照抗FXI抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合している可能性がある。次いで、試験抗体の結合の観察された欠失が、実際に、参照抗体と同じエピトープへの結合によるものであるかどうか、又は立体遮断(又は別の現象)が、観察された結合の欠失の原因であるかどうか、を確認するために、更なる慣例的な実験(例えば、ペプチド変異及び結合分析)を実施することができる。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、又は当該技術分野で利用可能な任意の他の定量的若しくは定性的な抗体結合アッセイを使用して行うことができる。本開示のある特定の実施形態によれば、競合結合アッセイで測定されたとき、1倍、5倍、10倍、20倍、又は100倍過剰量の一方の抗体が、他方の結合を、少なくとも50%、しかし、好ましくは75%、90%、又は更には99%阻害する場合、2つの抗体は同じ(又は重複する)エピトープに結合する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990 50:1495-1502を参照されたい)。代替的に、一方の抗体の結合を低減又は排除する抗原において本質的に全てのアミノ酸変異が他方の結合を低減又は排除する場合、2つの抗体は同じエピトープに結合するとみなされる。一方の抗体の結合を低減又は排除するアミノ酸変異の一部のみが、他方の結合を低減又は除外する場合、2つの抗体は、「重複エピトープ」を有するとみなされる。
【0161】
抗体が、結合について、参照抗FXI抗体と競合する(又は結合について交差競合する)かどうかを決定するために、上述の結合方法論を、2つの方向から行う。第1の方向性では、参照抗体を飽和条件下でFXIタンパク質に結合させた後、試験抗体のFXI分子への結合を評価する。第2の方向性では、試験抗体を飽和条件下でFXIタンパク質に結合させた後、参照抗体のFXI分子への結合を評価する。両方の方向性で、第1の(飽和)抗体のみがFXI分子に結合することができる場合、試験抗体及び参照抗体は、FXIへの結合について競合すると結論付けられる(例えば、FXIタンパク質がセンサー先端に捕捉され、FXIでコーティングされたセンサー先端が参照抗体[mAb-1]及び試験抗FXI抗体[mAb-2]で連続的に及び両方の結合順序で処理される、本明細書の実施例に記載されるアッセイ形式を参照されたい)。当業者に理解されるように、結合について参照抗体と競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合する必要はないが、重複するエピトープ又は隣接するエピトープに結合することによって、参照抗体の結合を、立体的に遮断し得る。
【0162】
ヒト抗体の調製
本開示の抗FXI抗体は、完全にヒトであるが、天然に存在しない抗体であり得る。完全ヒトモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を生成するための方法は、当該技術分野で知られている。任意のそのような既知の方法は、ヒトFXIに特異的に結合するヒト抗体を作製するために、本開示の文脈で使用され得る。
【0163】
VELOCIMMUNE(登録商標)技術(例えば、US 6,596,541、Regeneron Pharmaceuticals,VELOCIMMUNE(登録商標)を参照されたい)又はモノクローナル抗体を生成するための任意の他の既知の方法を使用して、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する、アレルゲンに対して高親和性のキメラ抗体が最初に単離される。VELOCIMMUNE(登録商標)技術は、マウスが抗原刺激に対する応答においてヒト可変領域と、マウス定常領域と、を含む、抗体を産生するように、ヒト重鎖可変領域と、ヒト軽鎖可変領域と、を含む、ゲノムが内因性マウス定常領域座に動作可能に連結されたトランスジェニックマウスの生成を包含する。抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し、ヒト重鎖定常領域及びヒト軽鎖定常領域をコードするDNAに動作可能に連結する。次に、完全ヒト抗体を発現することができる細胞においてDNAを発現させる。
【0164】
概して、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスに関心対象の抗原を負荷し、抗体を発現するマウスからリンパ細胞(B細胞など)を回収する。リンパ細胞を骨髄腫細胞株と融合させて不死化ハイブリドーマ細胞株を調製し得、関心対象の抗原に特異的な抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を特定するためにこのようなハイブリドーマ細胞株をスクリーニング及び選択する。重鎖及び軽鎖の可変領域をコードするDNAを単離し得、重鎖及び軽鎖の望ましいアイソタイプ定常領域へ連結することができる。このような抗体タンパク質は、CHO細胞などの細胞において産生され得る。代替的に、抗原特異的キメラ抗体又は軽鎖及び重鎖の可変ドメインをコードするDNAを抗原特異的リンパ球から直接単離することができる。
【0165】
以下の実験セクションに記載されるように、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する、単離される高親和性のキメラ抗体は、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付けされ、選択される。マウス定常領域は、本開示の完全ヒト抗体、例えば、野生型又は修飾されたIgG1若しくはIgG4を生成するために、所望のヒト定常領域と置換される。選択された定常領域は特異的用途に応じて変化し得るが、高親和性抗原結合特徴及び標的特異性特徴は、可変領域に存在する。
【0166】
ある特定の実施形態では、ヒトFXI受容体を発現するように操作されているマウス又はラットにおいて、抗ヒトFXI抗体を試験することが望ましい場合がある。これらのマウス又はラットは、抗FXI抗体がヒトFXIにのみ結合し得るが、マウス又はラットFXIと交差反応しない状況で有益であり得る。そのようなFXIヒト化マウス及びラットを生成するために、当業者に既知の任意の方法を使用してもよい。
【0167】
一般に、本開示の抗体は、固相又は溶液相のいずれかに固定された抗原への結合によって測定されるとき、非常に高い親和性を有し、典型的には、約10-12~約10-9MのKDを有する。
【0168】
生物学的等価物
本開示の抗FXI抗体及び抗体断片は、記載された抗体のものとは異なるが、ヒトFXIに結合する能力を保持するアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。そのようなバリアント抗体及び抗体断片は、親配列と比較したとき、アミノ酸の1つ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、記載された抗体のものと本質的に等価である生物学的活性を示す。同様に、本開示の抗FXI抗体をコードしているDNA配列は、開示された配列と比較したとき、ヌクレオチドの1つ以上の付加、欠失、又は置換を含むが、本開示の抗FXI抗体又は抗体断片と本質的に生物学的に等価である抗FXI抗体又は抗体断片をコードする。そのようなバリアントアミノ酸配列及びDNA配列の例は、上で考察されている。
【0169】
2つの抗原結合タンパク質又は抗体は、例えば、それらが類似の実験条件下で単回用量又は複数回用量のいずれかで同じモル用量で投与された場合に、吸収速度及び吸収の程度が有意差を示さない薬学的等価物又は薬学的代替物である場合、生物学的等価物とみなされる。いくつかの抗体は、これらの吸収の程度は等価であるが吸収速度は等価ではなく、吸収速度のこのような差が意図的であり、標識することに反映されているので生物学的に等価とみなされ得る場合、等価物又は薬学的代替物とみなされることになっており、例えば長期使用に及ぼす有効な身体薬物濃度の達成に必須ではなく、研究された特定の製剤にとって医学的に有意ではないとみなされる。
【0170】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、それらの安全性、純度、及び有効性において臨床的に有意差がない場合、生物学的に等価である。
【0171】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、免疫原性の臨床的に有意な変化又は有効性の減退を含む有害作用のリスクの期待される上昇なしで参照生成物と生物学的生成物の間での切り替えなしで持続される療法と比較して、患者を1回以上切り替えられることができる場合、生物学的に等価である。
【0172】
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、これらが両方とも、使用条件(複数可)についての共通の機序又は作用機序によって、このような機序が既知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0173】
生物学的等価性は、インビボ及び/又はインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗体又はその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清又は他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒト又は他の哺乳類におけるインビボでの試験、(b)ヒト生物学的利用能データと相関した、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験、(c)抗体(又はその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定されるヒト又は他の哺乳類におけるインビボ試験、及び(d)抗体の安全性、効能、又は生物学的利用能若しくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験が含まれる。
【0174】
本開示の抗FXI抗体の生物学的に等価なバリアントは、例えば、残基若しくは配列の様々な置換を作製すること、又は生物活性に必要とされない末端若しくは内部の残基若しくは配列を欠失することによって構築され得る。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要又は不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失又は他のアミノ酸で置換することができる。他の文脈では、生物学的に等価な抗体は、抗体の特徴であるグリコシル化を修飾するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除又は除去する変異を含む抗FXI抗体のバリアントを含み得る。
【0175】
種の選択性及び種の交差反応性
本開示は、ある特定の実施形態によれば、ヒトFXIに結合するが、他の種からのFXIには結合しない抗FXI抗体を提供する。本開示はまた、ヒトFXI及び1つ以上の非ヒト種からのFXIに結合する抗FXI抗体を含む。例えば、本開示の抗FXI抗体は、ヒトFXIに結合し得るが、場合によっては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザル、又はチンパンジーFXIのうちの1つ以上に結合してもしなくてもよい。本開示のある特定の例示的な実施形態によれば、ヒトFXIに特異的に結合するが、マウス若しくはラットFXIには結合しないか、又は弱くしか結合しない抗FXI抗体が提供される。
【0176】
多特異性抗体
本開示の抗体は、単一特異性又は多特異性(例えば、二重特異性)であり得る。多特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的であり得るか、又は2つ以上の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含み得る。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69;Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照されたい。本開示の抗FXI抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチド又はタンパク質に連結されるか、又はそれと共発現される。例えば、抗体又はその断片は、別の抗体又は抗体断片などの1つ以上の他の分子実体に(例えば、化学結合、遺伝的融合、非共有結合、若しくは他の方法により)機能的に連結されて、第2の結合特異性を有する二重特異性抗体又は多特異性抗体を産生することができる。
【0177】
本開示は、免疫グロブリンの一方のアームがヒトFXIに結合し、免疫グロブリンの他方のアームが第2の抗原に特異的である、二重特異性抗体を含む。FXI結合アームは、本明細書の表1に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列又はCDRアミノ酸配列のうちのいずれかを含み得る。
【0178】
本開示の文脈上で使用することができる例示的な二重特異性抗体の形式は、第1の免疫グロブリン(Ig)CH3ドメイン及び第2のIgCH3ドメインの使用を伴い、第1及び第2のIgCH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸が互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸の相違は、アミノ酸の相違を欠く二重特異性抗体と比較して、プロテインAへの二重特異性抗体の結合を低減する。一実施形態では、第1のIgCH3ドメインはプロテインAを結合し、第2のIgCH3ドメインはH95R修飾(IMGTエクソン番号付けによる、EU番号付けではH435R)などのプロテインA結合を低減又は消失させる変異を含有する。第2のCH3は、Y96F修飾(IMGTによるものであり、EUではY436F)を更に含み得る。第2のCH3内に見出され得る更なる修飾としては、IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる、EUによればD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I)、IgG2抗体の場合、N44S、K52N、及びV82I(IMGT、EUによればN384S、K392N、及びV422I)、並びにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる、EUによればQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)が挙げられる。上述の二重特異性抗体形式のバリエーションは、本開示の範囲内であることが企図される。
【0179】
本開示の文脈で使用され得る他の例示的な二重特異性形式としては、例えば、scFvベース形式又はダイアボディ二重特異性形式、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ、ノブズ-イントゥ-ホールズ、共通の軽鎖(例えば、ノブズ-イントゥ-ホールズを備えた共通の軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用型Fab(DAF)-IgG、及びMab2二重特異性形式が含まれるが、これらに限定されない(上述の形式の総説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、及びそこに引用されている参考文献を参照されたい)。二重特異性抗体は、ペプチド/核酸結合を使用して構築することもでき、例えば、直交化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド複合体を生成し、これが次に、規定される組成物、原子価及び幾何学的形状を有する多量体複合体へと自己集合する。(例えば、Kazane et al.,J.Am.Chem.Soc.[Epub:Dec.4,2012]を参照されたい)。
【0180】
治療用製剤及び投与
本開示は、本開示の抗FXI抗体又はその抗原結合断片を含む薬学的組成物を提供する。本開示の薬学的組成物は、好適な担体、賦形剤、及び移動、送達、耐容性の改善などをもたらす他の薬剤と共に製剤化される。多くの適切な製剤は、全ての薬剤師に既知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAに見出すことができる。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有ベシクル(LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies,Carlsbad,CAなど)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型エマルション及び油中水型エマルション、エマルションカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、並びにカーボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照されたい。
【0181】
患者に投与される抗体の用量は、患者の年齢及び体格、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変動し得る。好ましい用量は、典型的には体重又は体表面積により計算される。成人患者では、本開示の抗体を、通常は約0.01~約20mg/kg体重の単回用量で、より好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5、又は約0.05~約3mg/kg体重で静脈内投与することが有利であり得る。病態の重症度に応じて、治療の頻度及び期間を調整することができる。抗FXI抗体を投与するための有効投薬量及びスケジュールは、経験的に決定され得、例えば、患者の進行は、定期的な評価によって監視され得、それに応じて用量が調整され得る。更に、投薬量の種間のスケーリングは、当該技術分野において周知の方法を使用して行うことができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0182】
様々な送達系、例えば、リポソームにおける封入、微粒子、マイクロカプセル、変異体ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスが知られており、本開示の薬学的組成物を投与するために使用され得る(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照されたい)。導入方法としては、硝子体内、眼内、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。組成物は、例えば、注入若しくはボーラス注射による、上皮又は粘膜皮膚内層(lining)(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介した吸収による任意の好都合な経路によって投与することができ、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は、全身又は局所であり得る。
【0183】
本開示の薬学的組成物は、標準的な針及び注射器を用いて皮下に又は静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本開示の薬学的組成物を送達する上での用途を容易に有する。かかるペン型送達デバイスは、再利用可能又は使い捨てであり得る。再利用可能なペン送達デバイスは、概して、薬学的組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の薬学的組成物が全て投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは容易に廃棄することができ、薬学的組成物を含む新しいカートリッジと容易に交換することができる。ペン型送達デバイスは、次いで、再利用することができる。使い捨てのペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジは存在しない。むしろ、使い捨てのペン型送達デバイスは、デバイス内の貯蔵器に保持された薬学的組成物が事前に充填されている。貯蔵器の薬学的組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0184】
数多くの再利用可能なペン型送達デバイス及び自己注射器型送達デバイスは、本開示の薬学的組成物の皮下送達における用途を有する。いくつか挙げると、例としては、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I、II、及びIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson, Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis,Frankfurt,Germany)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつか挙げると、本開示の薬学的組成物の皮下送達に用途を有する使い捨てのペン型送達デバイスの例としては、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)自動注射器(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier,Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey, L.P.)、及びHUMIRA(商標)ペン(Abbott Labs,Abbott Park IL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0185】
ある特定の状況において、薬学的組成物は、徐放系で送達することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer、上記、Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができ、Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照されたい。更に別の実施形態では、徐放系を組成物の標的の近傍に配置することができ、それによって全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,1984,Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115-138を参照されたい)。他の徐放系は、Langer,1990,Science 249:1527-1533による総説において考察されている。
【0186】
注射可能な調製物としては、静脈内注射、硝子体内注射、眼内注射、皮下注射、皮内注射、及び筋肉内注射、点滴などのための剤形が含まれ得る。これらの注射可能な調製物は、公的に既知の方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、注射用に従来通り使用される滅菌水性媒体又は油性媒体中に上述の抗体又はその塩を溶解、懸濁、又は乳化させることによって調製され得る。注射液のための水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースを含有する等張溶液及び他の補助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物)]などの適切な可溶化剤と組み合わせて使用され得る。油性媒体としては、ベンジルベンゾエート、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用され得る、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが用いられている。このように調製された注射液は、好ましくは適切なアンプルに充填される。
【0187】
有益なことに、上記に記載される経口又は非経口での使用のための薬学的組成物は、有効成分の用量に適合するために好適な単位用量の剤形へと調製される。そのような単位用量の剤形には、例えば、錠剤、丸薬、カプセル、注射(アンプル)、坐剤などが含まれる。含まれる前述の抗体の量は、概して、単位用量の剤形当たり約5~約500mgであり、特に注射の形態では、前述の抗体を約5~約100mg含み、他の剤形については、約10~約250mg含むことが好ましい。
【0188】
抗体の診断的使用
本開示は、方法であって、抗FXI抗体(例えば、本明細書の表1に記載のHCVR/LCVR配列又はCDR配列のうちのいずれかを含む抗FXI抗体)を含む治療用組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を含む。治療用組成物は、本明細書に開示される抗FXI抗体又はその抗原結合断片のうちのいずれか1つ以上と、薬学的に許容される担体又は希釈剤と、を含むことができる。
【0189】
本開示の抗体は、とりわけ、FXI発現若しくは活性に関連するか又はそれによって媒介される任意の疾患若しくは障害の治療、予防、及び/又は改善のために有用である。本開示のFXIアンタゴニスト抗体は、外因性経路を介した止血及び血餅形成に悪影響を及ぼすのを最小限に抑えながら、血栓症、特に内因性経路の血栓症を治療又は予防するために使用され得る。
【0190】
本開示は、本明細書の他の箇所に開示されるように、そのような治療を必要とする患者に抗FXI抗体又はその抗原結合断片を投与することによって、血栓症を治療又は予防する方法を含む。
【0191】
一実施形態では、本開示の抗FXI抗体は、第V因子ライデン、プロトロンビン遺伝子変異、凝固を阻止する天然タンパク質の欠乏(例えば、アンチトロンビン、プロテインC、及びプロテインS)、ホモシステインレベルの上昇、フィブリノーゲン又は機能不全フィブリノーゲンレベルの上昇(異常フィブリノーゲン血症)、第VIII因子、第IX因子、及び/又はXIのレベル上昇、プラズミノーゲン欠損症、プラズミノーゲン異常症、及びプラズミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI-1)レベルの上昇を含む異常な線溶系、心房細動、がん、タモキシフェン、ベバシズマブ、サリドマイド、及びレナリドマイドなど、がんの治療に使用されるいくつかの薬物の副作用、最近の外傷又は手術、中心静脈カテーテルの配置、肥満、妊娠、経口避妊薬(経口避妊薬)を含むエストロゲンの補足使用、ホルモン補充療法、長時間のベッド安静又は不動、心臓発作、うっ血性心不全、脳卒中及び活動性の減少につながる他の疾患、ヘパリン誘導性血小板減少症(ヘパリン又は低分子量ヘパリン調製物による血液中の血小板減少)、長時間の飛行機旅行、抗リン脂質抗体症候群、深部静脈血栓症又は肺塞栓症、真性多血症又は本態性血小板増加症などの骨髄増殖性疾患、発作性夜間ヘモグロビン尿症、炎症性腸症候群、HIV/AIDS、ネフローゼ症候群、COVID-19感染症又はスパイクタンパク質免疫作用のうちの任意の1つ以上に関連する血栓症を治療又は予防する方法を提供し得る。
【0192】
本明細書に記載の治療の方法の文脈では、抗FXI抗体は、単剤療法として(すなわち、唯一の治療剤として)、又は1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0193】
併用療法及び製剤
本開示は、1つ以上の追加の治療活性成分と組み合わせて本明細書に記載の抗FXI抗体のうちのいずれかを含む組成物及び治療用製剤、並びにそのような組み合わせを、それを必要とする対象に投与することを含む治療方法を含む。
【0194】
本開示の抗FXI抗体は、第V因子ライデン、プロトロンビン遺伝子変異、凝固を阻止する天然タンパク質の欠乏(例えば、アンチトロンビン、プロテインC、及びプロテインS)、ホモシステインレベルの上昇、フィブリノーゲン又は機能不全フィブリノーゲンレベルの上昇(異常フィブリノーゲン血症)、第VIII因子、第IX因子、及び/又はXIのレベル上昇、プラズミノーゲン欠損症、プラズミノーゲン異常症、及びプラズミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI-1)レベルの上昇を含む異常な線溶系、心房細動、がん、タモキシフェン、ベバシズマブ、サリドマイド、及びレナリドマイドなど、がんの治療に使用されるいくつかの薬物の副作用、最近の外傷又は手術、中心静脈カテーテルの配置、肥満、妊娠、経口避妊薬(経口避妊薬)を含むエストロゲンの補足使用、ホルモン補充療法、長時間のベッド安静又は不動、心臓発作、うっ血性心不全、脳卒中及び活動性の減少につながる他の疾患、ヘパリン誘導性血小板減少症(ヘパリン又は低分子量ヘパリン調製物による血液中の血小板減少)、長時間の飛行機旅行、抗リン脂質抗体症候群、深部静脈血栓症又は肺塞栓症、真性多血症又は本態性血小板増加症などの骨髄増殖性疾患、発作性夜間ヘモグロビン尿症、炎症性腸症候群、HIV/AIDS、ネフローゼ症候群、COVID-19感染症又はスパイクタンパク質免疫作用などを治療するために使用される1つ以上の薬物と共製剤化され得る。
【0195】
本開示の抗FXI抗体はまた、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛剤、抗酸化剤、COX阻害剤、及び/又はNSAIDと組み合わせて投与及び/又は共製剤化されてもよい。抗FXI抗体は、幹細胞療法、緑内障濾過手術、レーザー手術、又は遺伝子療法を含む他のタイプの療法と組み合わせて使用することもできる。
【0196】
追加の治療活性成分(複数可)、例えば、上に列記される薬剤又はそれらの誘導体のいずれかは、本開示の抗FXI抗体の投与の直前に、投与と同時に、又は投与の直後に投与されてもよい(本開示の目的で、そのような投与レジメンは、追加の治療活性成分「と組み合わせた」抗FXI抗体の投与とみなされる)。本開示には、本開示の抗FXI抗体が、本明細書の他の箇所に記載される追加の治療活性成分(複数可)のうちの1つ以上と共製剤化される薬学的組成物が含まれる。
【0197】
投与レジメン
本開示のある特定の実施形態によれば、複数回用量の抗FXI抗体(又は抗FXI抗体と本明細書で言及される追加の治療活性剤のいずれかとの組み合わせを含む薬学的組成物)を所定の期間にわたって対象に投与することができる。本開示のこの態様による方法は、本開示の抗FXI抗体の複数回用量を対象に連続的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「連続的に投与すること」は、抗FXI抗体の各用量が、異なる時点、例えば、所定の間隔(例えば、数時間、数日、数週間、又は数ヶ月)よって分けられた異なる日に、対象へ投与されることを意味する。本開示には、抗FXI抗体の単回初回用量と、それに続く抗FXI抗体の1回以上の2次用量、次いで任意選択的に抗FXI抗体の1回以上の3次用量を患者に連続的に投与することを含む方法が含まれる。
【0198】
「初回用量」、「2次用量」、及び「3次用量」という用語は、本開示の抗FXI抗体の投与の時系列を指す。したがって、「初回用量」は、治療レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも称される)であり、「2次用量」は、初回用量後に投与される用量であり、「3次用量」は、2次用量後に投与される用量である。初回用量、2次用量、及び3次用量は全て、同じ量の抗FXI抗体を含み得るが、概して、投与頻度に関して互いに異なり得る。しかしながら、ある特定の実施形態では、初回用量、2次用量、及び/又は3次用量に含まれる抗FXI抗体の量は、治療経過の間に互いに異なる(例えば、必要に応じて加減される)。ある特定の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、又は5回)の用量が治療レジメンの開始時において「負荷用量(loading dose)」として投与され、続いてより少ない頻度に基づいて投与される後続用量(例えば、「維持用量」)が投与される。
【0199】
本開示のある特定の例示的な実施形態では、各2次用量及び/又は3次用量は、直前の投与から1~26(例えば、1、11/2、2、21/2、3、31/2、4、41/2、5、51/2、6、61/2、7、71/2、8、81/2、9、91/2、10、101/2、11、111/2、12、121/2、13、131/2、14、141/2、15、151/2、16、161/2、17、171/2、18、181/2、19、191/2、20、201/2、21、211/2、22、221/2、23、231/2、24、241/2、25、251/2、26、261/2、又はそれ以上)週間後に投与される。「直前の用量」という句は、本明細書で使用される場合、一連の複数回の投与において、介入用量のない順序での次の用量の投与の前に患者へ投与される抗FXI抗体の用量を意味する。
【0200】
本開示のこの態様による方法は、任意の回数の2次用量及び/又は3次用量の抗FXI抗体を患者に投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、単回の2次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回以上)の2次用量が、患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単回3次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2回以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8回以上)の3次用量が、患者に投与される。投与レジメンは、特定の対象の生涯にわたって、又はそのような治療が治療的に必要でなくなるか、若しくは有利でなくなるまで無期限に実施され得る。
【0201】
複数回の2次用量を伴う実施形態では、各2次用量は、他の2次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各2次用量は、直前の用量の1~2週間後又は1~2ヶ月後に、患者に投与され得る。同様に、複数回の3次用量を伴う実施形態では、各3次用量は、他の3次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各3次用量は、直前の用量の2~12週間後に患者に投与され得る。本開示のある特定の実施形態では、2次用量及び/又は3次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの経過にわたって変動し得る。投与頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師によって治療経過中に調整され得る。
【0202】
本開示は、2~6回の負荷用量が第1の頻度(例えば、1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、1ヶ月に1回、2ヶ月に1回など)で患者に投与され、続いてより少ない頻度で2回以上の維持用量が患者に投与される、投与レジメンを含む。例えば、本開示のこの態様によれば、負荷用量が月に1回の頻度で投与される場合、維持用量は6週間に1回、2ヶ月に1回、3ヶ月に1回などで患者に投与されてもよい。
【0203】
抗体の診断的使用
本開示の抗FXI抗体は、例えば、診断目的のために、試料中のFXI又はFXI発現細胞を検出及び/又は測定するために使用され得る。例えば、抗FXI抗体又はその断片を使用して、FXIの異常な発現(例えば、過剰発現、過少発現、発現欠如など)を特徴とする状態又は疾患を診断してもよい。FXIについての例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を、本開示の抗FXI抗体と接触させることを含み得、抗FXI抗体は、検出可能な標識若しくはレポーター分子で標識される。代替的に、非標識抗FXI抗体は、それ自体が検出可能に標識される二次抗体と組み合わせて、診断用途に使用することができる。検出可能な標識又はレポーター分子は、3H、14C、32P、35S、若しくは125Iなどの放射性同位体、又はフルオレセインイソチオシアネート若しくはローダミンなどの蛍光部分若しくは化学発光部分、又はアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、若しくはルシフェラーゼなどの酵素であり得る。試料中のFXIを検出又は測定するために使用することができる具体的な例示的アッセイには、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。
【0204】
本開示によるFXI診断アッセイにおいて使用することができる試料には、正常条件又は病理学的条件下で、検出可能な量のFXIタンパク質又はその断片を含む、患者から得ることのできる任意の組織又は体液試料が含まれる。一般に、健常な患者(例えば、異常なFXIレベル又は活性と関連した疾患又は状態に罹患していない患者)から得られた特定の試料中のFXIのレベルは、FXIのベースラインレベル又は標準レベルを最初に確立するために測定される。次いで、このFXIのベースラインレベルを、FXIに関連する疾患又は状態を有することが疑われる個体から得られた試料において測定されたFXIのレベルに対して比較することができる。
【実施例】
【0205】
以下の実施例は、本開示の方法及び組成物をどのように作製及び使用するかに関する完全な開示及び説明を当業者に提供するために提示されており、本発明者らが本開示とみなすことの範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して精度を保証するように努力がなされてはいるが、ある程度の実験誤差及び偏差が考慮されるべきである。特に指示しない限り、部(parts)は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏度であり、室温は約25℃であり、気圧は大気圧又はそれに近い。
【0206】
実施例1
FXIのA2ドメインに対するヒト抗体の生成
FXIのA2ドメインに対するヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖及びカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含むマウスにおいて生成された。一実施形態では、ヒト抗体は、VELOCIMMUNE(登録商標)マウスにおいて生成された。一実施形態では、VelocImmune(登録商標)(VI)マウスを、ヒトFXIで免疫化した。抗体の免疫応答を、FXI特異的イムノアッセイにより監視した。例えば、血清を、精製された全長FXIに対する特定の抗体価についてアッセイした。抗体産生クローンを、B細胞選別技術(BST)及びハイブリドーマ法の両方を使用して単離した。例えば、所望の免疫応答が達成されたとき、脾細胞を採取し、マウス骨髄腫細胞と融合させて、それらの生存率を維持し、ハイブリドーマ細胞株を形成した。ハイブリドーマ細胞株をスクリーニングかつ選択して、FXI特異的抗体を産生する細胞株を特定した。
【0207】
抗FXI抗体はまた、米国特許第7582298号(参照によりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる)に記載されているように、骨髄腫細胞に融合することなく、抗原陽性マウスB細胞から直接単離した。この方法を使用して、いくつかの完全ヒト抗FXI抗体(すなわち、ヒト可変ドメイン及びヒト定常ドメインを有する抗体)を得た。
【0208】
この実施例の方法により生成された例示的な抗体、対照、及び比較対象の生物学的特性を、以下に記載の実施例において詳細に記載する。
【0209】
実施例2
重鎖可変領域配列及び軽鎖可変領域配列
表1の列2及び4は、本開示の例示的な抗FXI抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域、並びにCDRのアミノ酸配列識別子を記載する。本開示の例示的な抗FXI抗体の対応する核酸配列識別子を表1の列3及び5に記載する。
【表1】
【0210】
配列番号17は、以下の1文字アミノ酸配列を含む:AAS。
【0211】
配列番号18は、以下のヌクレオチド配列を含む:GCTGCATCC。
【0212】
例示的な全長抗FXI抗体は、完全ヒトFcガンマ4重鎖(すなわち、IgG4 Fc)及び完全ヒト軽鎖配列を含む。しかしながら、当業者に理解されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換され得る(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体は、ヒトIgG4を有する抗体に変換され得る等)が、いずれにしても、表1に示される数値識別子によって示される可変ドメイン(CDRを含む)は、同じままであり、抗原への結合特性は、Fcドメインの性質にかかわらず同一であるか、又は実質的に類似していると予測される。
【0213】
以下の実施例で使用される対照構築物
比較目的のために、COMP3448と表示される対照構築物(抗FXI A2ドメイン抗体)を本明細書に開示される実験に含めた:米国特許第8,388,959号(その全容は、参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる)に記載の抗体「14E11」のVH/VL配列を有する「fXIに特異的なモノクローナル抗体」。
【0214】
実施例3
25℃及び37℃で測定された異なるFXI試薬に結合する抗FXIモノクローナル抗体のBiacore結合速度論
精製された抗FXIモノクローナル抗体に結合する異なるFXI試薬の平衡解離定数(K
D)は、リアルタイム表面プラズモン共鳴ベースのBiacore8Kバイオセンサーを使用して決定された。全ての結合研究は、25℃及び37℃で、10mMのHEPES、300mMのNaCl、及び0.05%v/vの界面活性剤Tween(登録商標)-20、pH7.4(HBS-P)の泳動用緩衝液中で行われた。BiacoreCM5センサーチップの表面を、最初にマウス抗ヒトFc特異的モノクローナル抗体(Regeneron,Tarrytown)とのアミンカップリングによって誘導体化して、抗FXIモノクローナル抗体を捕捉した。結合研究は、ヒトFXI(酵素原;第XI因子タンパク質、ヒト血漿、Enzyme Research Laboratories,South Bend,IN,catHFXI 1111)及びFXIa(活性化;第XIa因子タンパク質、ヒト血漿、Enzyme Research Laboratories,South Bend,IN,cat.HFXIa 1111a)で行われた。異なる濃度のhFXI及びhFXIa(25nM~0.39nM、4倍連続希釈液)を、最初にHBS-P泳動用緩衝液において調製し、抗ヒトFc捕捉抗FXIモノクローナル抗体の表面上に、30μL/分の流量で3分間注入し、この間、モノクローナル抗体結合FXI試薬の解離を、HBS-P泳動用緩衝液中で10分間監視した。会合速度(k
a)及び解離速度(k
d)の定数は、Scrubber2.0c曲線あてはめソフトウェアを使用して、リアルタイム結合センサーグラムを、物質移動限界(mass transport limitation)を有する1:1結合モデルにあてはめることによって決定された。結合解離平衡定数(K
D)及び解離半減期(t1/2)を、運動速度から以下のように計算した。
【数1】
【0215】
25℃及び37℃での本開示の主題の抗FXIモノクローナル抗体及びアイソタイプ対照に結合するhFXI又はhFXIaの結合の結合動態パラメータを、表2及び3に示す。
【0216】
表2に示すように、抗FXIモノクローナル抗体は、25℃で、35.1pM~7.53pMの範囲のKD値で、hFXIに結合した。表2に示すように、抗hFXIモノクローナル抗体は、37℃で、13.7pM~48.3pMの範囲のKD値で、hFXIに結合した。
【0217】
表3に示すように、抗FXIモノクローナル抗体は、25℃で、257pM~269pMの範囲のKD値で、hFXIaに結合した。表3に示すように、抗FXIモノクローナル抗体は、37℃で、763pM~893pMの範囲のKD値で、hFXIaに結合した。
【表2-1】
【表2-2】
【表3】
【0218】
実施例4
活性化部分トロンボプラスチン時間バイオアッセイ
実験手順:
BIOPHEN第XIa因子キット(HYPHEN BioMed, Neuville-sur-Oise,FR,cat.#220412)を使用して、活性第Xa因子(FXa)の生成につながる、酵素原第FXI因子(FXI)又は事前に活性化されたFXIaの活性を阻害する本開示の抗FXI抗体の能力を評価した。本開示の抗体による阻害は、FXaによって変換される発色基質の量の減少を測定することによって決定された(BIOPHENキット成分R3)。試薬1B(ヒト第IX因子)及びFXIaキャリブレータ(Cal)を除き、BIOPHENキット内の全ての試薬をアッセイで使用した。
【0219】
FXI又はFXIaの用量依存的活性を試験するために、正常なヒト血漿を、最初に、提供されたTris-BSA緩衝液(アッセイのための希釈緩衝液として使用される)中で0.65%の血漿に希釈し、次いで、無血漿対照と共に0.021%の血漿に連続的に希釈した。正常なヒト血漿も0.13%又は0.15%のいずれかの血漿に希釈した。抗体(抗FXI、対照、及び比較対象)を、緩衝液単独試料を用いて、500nM又は300nMのいずれかの開始濃度から5.1pMの濃度に連続希釈した。酵素原FXIの阻害のために、抗FXI抗体を、希釈した血漿と共に25℃で30分間事前にインキュベートし、続いて25℃で0.32μMのaPTT-XLエラグ酸と更に30分間インキュベートした。活性FXIaの阻害のために、希釈した血漿を、0.32μMのaPTT-XLエラグ酸で、25℃で30分間予め活性化し、続いて、抗FXI抗体で、25℃で30分間インキュベートした。
【0220】
血漿をエラグ酸及び抗体とインキュベートした後、試薬1A(Human FX、FVIII:C、フィブリン重合阻害剤)を添加し、37℃で5分間インキュベートした。次いで、試薬2(トロンビン、リン脂質、及びカルシウム)を添加し、37℃で5分間インキュベートした。最後に、試薬3(SXa-11 FXa基質)を添加し、37℃で30分間インキュベートした。吸光度を、405nmの波長でFLEXSTATION 3 Plate Reader(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)上で測定した。PRISM(登録商標)6ソフトウェア(GraphPad,La Jolla,CA)を用いた非線形回帰(4パラメータロジスティック)を使用して結果を分析して、EC
50及びIC
50値を得た。阻害パーセントは、以下の等式2に基づいて計算した。
【数2】
【0221】
この等式では、「吸光度
希釈血漿」は、いずれの抗体も添加せずにFXIをFXIaに切断するために、0.32μMのaPTT-XLエラグ酸で活性化された希釈血漿(0.13%又は0.15%の血漿のいずれか)の405nmでの吸光度測定を指す。「吸光度
阻害」は、0.32μMのエラグ酸によって活性化された希釈血漿による特定の抗体の用量応答からの405nmでの最小吸光度測定を指す。「吸光度
無血漿対照」は、任意の血漿の不在下でのTris-BSA緩衝液単独の405nmでの吸光度測定を指す。
【表4】
【0222】
表4に示すように、抗FXI/FXIa抗体は、39~220pM(一実施例では、39pM)の範囲のIC50値で希釈正常血漿におけるFXIの阻害を示し、最大阻害は85~87%(一実施例では、85%)の範囲であった。本開示の抗FXI/FXIa抗体はまた、680pM~10nM超(一実施例では、10nM)の範囲のIC50値で希釈血漿におけるFXIaを阻害し、最大阻害は、22%~25%の範囲であり、一実施例では、25%である)。比較対象mAbは、27pM~29pMの範囲のIC50値を有するFXIの阻害を示し、最大阻害は86%~106%の範囲であった。比較対象mAbはまた、10nM超~5nM超の範囲のIC50値でFXIaの阻害を示し、最大阻害は35%~38%の範囲であった。アイソタイプ対照mAbは、FXIaの阻害を示さなかったが、抗体の高濃度でFXIの阻害を示し、IC50値は100nM超~120nmの範囲であり、最大阻害は58~102%の範囲の阻害であった。
【0223】
実施例5
FXIサブユニットに対する抗FXI結合特異性
ヒトFXIの異なる切断appleドメインに対する様々な抗FXIモノクローナル抗体の結合特異性は、OCTETHTXバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.,Port Washington,NY)でのリアルタイムラベルフリーバイオレイヤー干渉法アッセイを使用して決定された。実験は、プレートを1000rpmの速度で振盪しながら、25℃で、10mMのHEPES、150mMのNaCl、3mMのEDTA、及び0.05% v/vの界面活性剤TWEEN(登録商標)-20、1mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)、pH7.4(HBS-EBT)の緩衝液中で行われた。組換えヒトFXIタンパク質上のそれらのそれぞれのエピトープへの抗FXIモノクローナル抗体の結合を、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現されたヒトFXI(hFXI-mmh;配列番号22)、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現されたヒトFXI PKA1ドメイン(hFXI-PKA1-mmh;配列番号23)、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現されたヒトFXI PKA2ドメイン(hFXI-PKA2-mmh;配列番号24)、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現されたヒトFXI PKA3ドメイン(hFXI-PKA3-mmh;配列番号25)、及びC末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現されたヒトFXI PKA4ドメイン(hFXI-PKA4-mmh;配列番号26)(まとめてFXI-mmh試薬)を使用して試験した。PK(血漿カリクレイン)でマークされたFXI-mmh試薬は、特定されたappleドメインを対応するPKappleドメインに置き換えており、結合特異性は、本明細書に記載の組換えヒトFXIタンパク質上の抗体のそれぞれのエピトープへの非結合によって決定されることを意味する。例えば、hFXI-PKA2-mmhが血漿カリクレインappleドメイン2を発現するため、対象のmAbは、hFXI-PKA2-mmhではなく、hFXI-PKA1-mmh、hFXI-PKA3-mmh、及びhFXI-PKA4-mmhにのみ結合すると仮定される。
【0224】
FXI-mmh試薬を、まず、抗Penta-His抗体でコーティングしたOCTETバイオセンサー先端(Pall Fortebio Inc,cat.#18-5122)上に、ヒトFXI-mmh試薬の100nMの溶液を各々含むウェルにバイオセンサー先端を2分間浸すことによって個々に捕捉した。次いで、得られた抗原捕捉バイオセンサー先端を、133nMの抗FXIモノクローナル抗体溶液を含むウェルに180秒間浸すことによって、各抗FXIモノクローナル抗体と個々に飽和させた。次いで、バイオセンサー先端を、実験の各ステップ間に、HBS-ETB緩衝液で洗浄した。リアルタイム結合応答を、実験の全過程中監視し、各ステップの終わりに結合応答を記録した。表5に示されるように、抗FXIモノクローナル抗体の結合特異性応答を、異なる切断FXI-mmh試薬と比較した。
【表5】
【0225】
実施例6
競合アッセイ
6.1:Apple 2ドメインの競合結合
抗FXIモノクローナル抗体間の結合競合は、OCTETHTXバイオセンサー(Pall ForteBio Corp.,Port Washington,NY)でのリアルタイムラベルフリーバイオレイヤー干渉法アッセイを使用して決定した。全実験は、プレートを1000rpmの速度で振盪しながら、25℃で、0.01MのHEPES、pH7.4、0.15MのNaCl、0.05%v/vの界面活性剤Tween(登録商標)-20、1mg/mLのBSA(Octet HBS-P緩衝液)中で行われた。任意の2つの抗体が、ヒトFXI(ERL)(ヒト血漿からの第XI因子タンパク質、Ensyme Research Laboratories,South Bend,IN,cat.#HFXI 1111)上のそれらのそれぞれのエピトープへの結合について互いに競合することができるかを評価するために、約1.5~2.8nMの抗ヒトFXIモノクローナル抗体を、まず、先端を、5分間、50μg/mLの抗ヒトFXIモノクローナル抗体(以降、第1のmAbと称される)溶液を含むウェルに浸すことによって、抗hFc抗体でコーティング(AHC)したOCTETバイオセンサー先端(Pall ForteBio Corp.,#18-5060,Port Washington,NY)上に捕捉した。次いで、抗体を捕捉したバイオセンサー先端を、50μg/mLの遮断mAb溶液を含むウェルに4分間浸すことによって、遮断H4Hアイソタイプ(ヒトIgG4)対照モノクローナル抗体(以降、遮断mAbと称される)で飽和した。次いで、バイオセンサー先端を、事前に2時間インキュベートされた25nMのhFXI(ERL,#HFXI 1111)及び1μMの第2の抗ヒトFXIモノクローナル抗体(以降、第2のmAbと称される)の共複合体化溶液を含むウェルに浸した。バイオセンサーチップは、実験の各ステップ間に、オクテットHBS-P緩衝液で洗浄した。
【0226】
リアルタイム結合応答を、実験の過程中監視し、各ステップの終わりに結合応答を記録した。第1のmAbに結合する、ヒトFXIと事前に複合体化された第2のmAbの応答を、バックグラウンド結合について修正し、比較し、異なる抗FXIモノクローナル抗体の競合/非競合挙動を決定した。
【0227】
表6は、結合の順序に関係なく、両方向で競合する抗体の関係を明示的に定義する。ここで、抗FXI mAb REGN9933は、FXIのA2(apple 2)ドメインに結合することが知られているH4H29801P2と血漿由来のhFXIへの結合について競合する。
【表6】
【0228】
6.2:FXI競合結合
抗FXIモノクローナル抗体と陰性アイソタイプ対照との間の第2の結合競合を、以下の材料及び方法を使用して実施した。
【0229】
材料
使用された機器:Octet HTX 384 RED
温度:25℃
泳動用緩衝液:HBS-P+1mg/ml BSA、pH 7.4
センサーのタイプ:ForteBIO Anti-hFc
捕捉流量/時間:1000rpm、300秒(mAb-1)、300秒の会合(Ag mAb-2プレミックス)180秒の解離mAb-2
【0230】
方法
約1.5~2.8nmのα-ヒトFXI mAbを、50μg/mLのα-ヒトFXI mAbを含むウェルにα-hFcでコーティングされたOctetバイオセンサーを5分間浸すことによって捕捉した。H4H hFc(アイソタイプ対照)を、陰性対照として使用した。未占有のα-hFc Octetセンサーを、遮断mAb溶液(50μg/mLのH4HヒトFc(アイソタイプ対照)1)を含むウェルに4分間浸すことによって飽和した。25nMのhFXI(ERL)を、50μg/mLのH4H hFcを含む緩衝液中の1uMのα-FXI mAbと少なくとも1時間事前にインキュベートした。次に、遮断mAb飽和Octetバイオセンサーを、αC5 mAb及びhC5のプレミックスを含むウェルに5分間浸した。各サイクルの終わりに、α-hFc Octetセンサーを、10mMのHCl中で再生した。分析中、自己-自己バックグラウンドシグナル(捕捉表面へのmAb結合)は、カラム全体から差し引かれた。mAb-1の結合応答を記録し、競合/非競合mAbを、それらのそれぞれのmAb-2結合応答に基づいてビニングした。
【0231】
【0232】
主題のmAb REGN9933及びH4H29801P2は、双方向に交差競合した。
【0233】
実施例7
凝固時間及びトロンビン生成(TGA)のための機能的血漿アッセイ
凝固因子は、血小板と共に、血管損傷中の止血のプロセスに関連する血液成分である。調節(すなわち、産生及び/又は活性)で不均衡が発生した場合、これらの構成成分が血栓症の原動力となり得ることは十分に確立されている。血栓性疾患は主に(組織因子を介して)外因性経路の異常な活性化から生じると考えられていたが、最近では、F11以前の膝関節形成術に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用した臨床研究が、術後の静脈血栓症を予防することが見出された(Buller HR,Bethune C,Bhanot S,Gailani D,Monia BP,Raskob GE,Segers A,Verhamme P,Weitz JI.Factor XI antisense oligonucleotide for prevention of venous thrombosis.N Engl J Med.2015 Jan 15;372(3):232-40)。したがって、FXI活性の阻害は、血栓性凝固の低減に重要である(Weitz JI.Factor XI and factor XII as targets for new anticoagulants.Thromb Res.2016 May;141 Suppl 2:S40-5)。
【0234】
この実施例は、抗FXI抗体が、4回の機能的血漿アッセイにおいてヒトFXIに結合し、その活性を阻害することを実証する。エラグ酸によって誘発された1)活性化部分トロンボプラスチンの時間(aPTT)、2)プロトロンビンの時間(PT)、3)トロンビン生成アッセイ(TGA)、及び組織因子によって誘発された4)TGA。aPTT試験は、カルシウム及びエラグ酸の添加後に凝固が形成される時間を測定することによって、凝固カスケードの内因性及び共通経路の全ての凝固因子を評価するが、PT試験は、カルシウム及び組織因子の添加後に凝固カスケードの外因性及び共通経路の全ての凝固因子を評価する。エラグ酸によって誘発されたTGAは、内因性経路及び共通経路を介して生成されたトロンビンの速度及び量を測定するが、組織因子によって誘発されたTGAは、外因性経路及び共通経路を介して生成されるトロンビンの速度及び量を測定する。
【0235】
実験手順:
aPTTは、Diagnostica STAGO START4 Hemostasis Analyzer(Daignostica Stago,Parsippany,NJ)で、以下の様式で決定された。合計50μlのプールされた正常ヒト血漿を37℃でキュベットに添加した。1分後、5μlの2倍連続希釈したPBS中の試験物質(抗体又は小分子阻害剤)をキュベットに添加し、5分間インキュベートした。次いで、50μlのAPPT-XLエラグ酸(Thermo Scientific,Waltham,MA)を添加し、300秒間インキュベートした後、50μlの20mMの塩化カルシウム(Thermo Scientific,Waltham,MA)を添加して、反応を開始させた。試験物質濃度の測定された凝固時間を、ベースライン(薬物なし)血漿凝固時間に正規化し、試験物質の対数モル濃度に対してプロットした。PRISM5ソフトウェア(GraphPad,La Jolla,CA)を用いた非線形回帰(4パラメータロジスティクス)を使用して結果を分析して、倍加時間濃度を得た。
【0236】
PTは、Diagnostica Stago START4 Hemostasis Analyzer(Daignostica Stago,Parsippany,NJ)で、以下の様式で決定された。合計50μlのプールされた正常ヒト血漿を37℃でキュベットに添加した。1分後、5μlの2倍連続希釈したPBS中の試験物質(抗体又は小分子阻害剤)をキュベットに添加し、5分間インキュベートした。次いで、100ulの組織因子(TriniCLOT PT Excel,Diagnostica Stago,Parsippany,NJ,cat.#T1106)を添加して、反応を開始させた。試験物質濃度の測定された凝固時間を、ベースライン(薬物なし)血漿凝固時間に正規化し、試験物質の対数モル濃度に対してプロットした。PRISM5ソフトウェア(GraphPad,La Jolla,CA)を用いた非線形回帰(4パラメータロジスティクス)を使用して結果を分析して、倍加時間濃度を得た。
【0237】
内因性凝固経路下でのトロンビン生成プロファイルを、Diagnostica Stago Calibrated Automated Thrombogram(Stago,Parsippany,NJ)で、以下の様式で決定した。合計55μlのプールされた正常ヒト血漿を、37℃でマイクロプレートのウェルに添加した。次いで、5μlの2倍連続希釈したPBS中の試験物質(抗体又は小分子阻害剤)をマイクロプレートのウェルに添加し、30分間インキュベートした。15ulのAPPT-XLエラグ酸(Thermo Scientific,Waltham,MA,cat.#95059-804)を微粒子(MP)試薬(Diagnostica Stago,cat.#86222)中に希釈し、次いでウェルに添加して、45分間インキュベートした。次いで、15μlのFluo Flu Cal基質(Diagnostica Stago,cat.#86197)を、マイクロプレートの連続90分読み取り直前に添加した。測定されたリアルタイムトロンビン濃度値を、時間に対してプロットして、使用した試験物質の各濃度についてトロンボグラム(thrombogram)を得た。
【0238】
外因性凝固経路下でのトロンビン生成プロファイルを、Diagnostica Stago Calibrated Automated Thrombogram(Diagnostica Stago,Parsippany,NJ)で、以下の様式で決定した。合計55μlのプールされた正常ヒト血漿を、37℃でマイクロプレートのウェルに添加した。次いで、5μlの2倍連続希釈したPBS中の試験物質(抗体又は小分子阻害剤)をマイクロプレートのウェルに添加し、30分間インキュベートした。15μlの組織因子PPP試薬(Diagnostica Stago,cat.#86194)をウェルに添加し、45分間インキュベートした。次いで、15μlのFluo Flu Cal基質(Diagnostica Stago,cat.#86197)を、マイクロプレートの連続90分読み取り直前に添加した。測定されたリアルタイムトロンビン濃度値を、時間に対してプロットして、使用した試験物質の各濃度についてトロンボグラム(thrombogram)を得た。
【0239】
結果の概要及び結論:
用量反応曲線を生成して、血漿aPTT及びPTに対する各薬物の効果を決定した。IgG4アイソタイプ対照mAb(対照mAbは、aPTT(
図1)又はPTに影響を及ぼさなかった。REGN9933は、PT(図示せず)を増加させることなくaPTT(
図1)を延長した。FXI-A2結合比較対象mAb(comp mAb)COMP3448も、PTを増加させることなくaPTTを延長した。
【0240】
凝固活性を阻害する薬物の効率は、任意の「倍加時間」濃度又はC2xt(凝固時間をベースライン値よりも2倍延長するために必要な薬物の濃度)によってインデックス化する。薬物及び対照のこれらの外挿C2xt値(すなわち、「倍加時間線」を横切る曲線)を、以下で考察した。REGN9933は、aPTT(内因性経路)について33nM以下でC2xtに達した。試験された最大4μMで、REGN9933がPT凝固時間を倍増することは見出されなかった。comp mAb COMP3448は、aPTT C2xtに達するために62nMを必要としたが、4μMでPT CC2xtに達しなかった。これらのデータは、COMP3448と比較して大幅に低い抗体濃度でC2xtを達成することにおけるREGN9933の優位性を示す。
【0241】
血漿をエラグ酸又は組織因子によって誘発したとき、これらのmAbの効果を、トロンビン生成を阻害するそれらの能力について評価した(すなわち、トロンビンの検出までの延長時間=遅延時間、トロンビンピークの低減、及び生成されたトロンビンの総量の低減=内因性トロンビン生成能)。対照mAbは、トロンビン生成に影響を与えなかった(
図2)。主題の抗FXI/FXIa mAbは、16nMでのトロンビン生成のわずかな低減を示したが、31nM以上の濃度でのトロンビン産生を著しく又は完全に阻害し(
図3)、これは、主題の抗FXI mAbが、次いでトロンビン生成を妨げる内因性経路の活性化を抑制することを示す。comp mAbは、31nM以上でのほぼ完全な阻害で、トロンビン生成に関する主題の抗FXI/FXIa mAbと同様の応答を示した(
図4)。
【0242】
組織因子によって誘発されたトロンビン生成は、対照アイソタイプmAbの影響を受けなかった(
図5)。主題の抗FXI/FXIa mAb REGN9933は、組織因子によって誘発されたトロンビン生成に対してわずかから軽度の阻害効果を有した(
図6)。Comp mAb COMP3448は、組織因子によって誘発されたトロンビン生成に最も少ない効果を有した(
図7)。
【0243】
凝固をエラグ酸又は組織因子によって活性化したときに、遅延時間を2倍延長し、トロンビンのピーク及びトロンビン生成の総量を半減するのに必要な試験物質の濃度を、表9に要約する。
【表9】
【0244】
実施例8
カニクイザルにおける主題の抗FXI抗体原薬の薬物動態研究
本研究の目的は、8週間にわたるカニクイザルにおける抗FXIモノクローナル抗体(mAb)の静脈内単回用量薬力学/薬物動態(PK/PD)パラメータを決定することであった。
【0245】
2~4kgの体重の2~4歳の雌カニクイザル(n=39)を、mAb投与の開始前に少なくとも2週間、実験室飼育に馴化させた。動物を、確立された社会群に基づいて投与群に割り当て、ここで、層別無作為化スキームを使用して、各社会単位からの1匹の動物からの体重を組み込んで、動物を研究群に割り当てた(表8)。動物を標準条件(それぞれ、18℃~29℃の温度、30%~70%の相対湿度)で飼育し、明(12時間)/暗(12時間)サイクルを維持した。食餌(PMI LABDIET FIBER-PLUS Monkey Diet 5049ビスケット、LabDiet,St.Louis,MO)を1日2回提供し、水を自由に提供した。
【表10】
【0246】
対照群(群1)に、ビヒクル(10mMのヒスチジン、pH6.0)を2mL/kgの体積で静脈内投与した。2~7群に、1、3、又は10mg/kgで適切なmAb(対象及び比較対象)を静脈内に投与した。各動物の2mL/kgの用量体積は、つい最近の体重測定に基づいた。血液試料を、8週間の研究期間前及び研究期間にわたって複数回採取した(静脈採血)。血液を、血清の薬物レベルを測定するために、及び血漿の標的レベル及び凝固活性の両方を測定するために処理した。
【0247】
捕捉mAbとしてマウス抗ヒトIgG Fc、及び検出mAbとしてビオチン化抗ヒトIgカッパ軽鎖特異的を用いた酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して、血清中の薬物レベルを測定した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(NeutrAvidin-HRP)とコンジュゲートされたNeutrAvidinを使用して、ルミノール系基質を、総FXI mAb濃度の濃度に比例するシグナルに変換した。
【0248】
サルFXIに交差するAffinity Biologicals Factor XI ELISAキット(FXI-AG)(Ancaster,ON)を使用して、血漿中の標的(FXI)レベルを測定した。サルのFXI濃度を決定するために、製造元のプロトコルに従った。
【0249】
血漿の凝固活性は、凝固時間及びトロンビン生成を測定した機能的アッセイにおいて決定した。凝固時間を、Diagnostica Stago START 4 Hemostasis Analyzer (Diagnostica Stago,Parsippany,NJ)を使用して決定して、内因性経路活性化因子(エラグ酸)によって活性化された凝固を測定する活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、及び外因性経路活性化因子(組織因子)によって活性化された凝固を測定するプロトロンビン時間(PT)を測定した。凝固までの時間は、ベースラインに対する倍率変化として報告された。トロンビン生成は、Stago Diagnostica Calibrated Automated Thrombogram(CAT)(Diagnostica Stago,Parsippany,NJ)で測定した。トロンビン生成アッセイ(TGA)を、内因性経路活性化因子のエラグ酸(EA)又は外因性経路活性化因子の組織因子(TF)を用いて行った。TGAのデータは、以下のパラメータについてベースラインからのパーセンテージ変化として報告される:遅延時間、ピークトロンビン濃度、及びトロンビン総濃度。
【0250】
結果の概要及び結論:
薬物動態(PK)パラメータは、非コンパートメント分析及び集団コンパートメント分析を使用して推定された。静脈内ボーラス後のmAb濃度-時間プロファイルは、最初の短い分布相、続いて線形ベータ除去相、及び末端標的媒介除去相を特徴とした(表11及び12)。mAb C最大の用量比例的増加は、静脈内投与で観察され(表13)、用量正規化C最大(C最大/用量)は、mAb投与群にわたって同等であることが見出された。用量(AUCinf/用量)に正規化されたときの薬物曝露(AUCinf)は、より高い用量で増加することが見出され、群にわたって曝露が用量比例的増加より大きいことを示し、これは、mAbの非線形動態と一致するであろう。これらの観察は、平行線形及び非線形標的媒介クリアランス(TMC)と一致し、ここで観察されるクリアランスの減少は、用量の増加の関数である。血漿中の標的(FXI)は、comp mAb COMP3448(A2結合剤)を受けている動物を除く全ての動物でベースラインから約2~3倍増加した(表14及び15)。より高い用量のmAbは、標的FXI濃度の用量依存的保持を示さなかった。
【0251】
抗FXI mAbの阻害活性(主題及び比較対象)を、血漿凝固時間又はトロンビン生成を測定する機能的アッセイによって評価した。各時点で、血漿のアリコートを使用して、それぞれ、内因性凝固活性及び外因性凝固活性の凝固活性を測定する、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)及びプロトロンビン時間(PT)アッセイによって評価される凝固時間を決定した。データを、aPTT(表16及び17)及びPT(表18及び19)のベースライン凝固時間に対する凝固時間として示す。comp mAb及び主題の抗FXI mAbは、aPTT凝固時間に対して同様の2倍の延長(すなわち、阻害効果)を示した。PT凝固時間のベースラインからの変化は、試験された任意のmAb、又は任意のmAbの用量の増加によって影響を受けなかった。
【0252】
凝固活性はまた、内因性経路活性化因子(エラグ酸)又は外因性経路活性化因子(組織因子)によって活性化されたときのトロンビン生成のプロファイルを測定することによって評価された。トロンビン生成曲線からの1つの測定されたパラメータは、遅延時間であり、これは、活性化因子が血漿に添加された後にトロンビンを生成するのに必要な時間を評価する。データは、ベースライン遅延時間値からの倍率変化を表した。1mg/kg用量のmAbは、エラグ酸で活性化した血漿中で約7日間、遅延時間を約2倍延長した(表20及び21)。エラグ酸で活性化されたときに、mAbの3及び10mg/kgの用量について、最大約3週間、遅延時間をベースライン時間の約3~4倍延長した。凝固の活性化因子として組織因子を使用した場合、遅延時間は延長されなかった(表22及び23)。
【0253】
トロンビン生成アッセイで測定された第2のパラメータは、トロンビンの生成がピークに達したときの濃度を評価するピークトロンビンであった。データは、ベースラインのトロンビンピークのパーセンテージとして表された。mAbは、使用される3つの濃度のmAbで、トロンビンピーク濃度(エラグ酸によって誘導された場合)をベースラインの約5~15%に顕著に阻害することができたが、効果は、1mg/kg用量で短命(約5日)であることが見出された(表24及び25)。3mg/kgは最大2週間低減し、10mg/kgのmAb用量は約4週間低減した。組織因子を活性化因子として使用したときのピークトロンビンに対するmAbの効果は、ピークトロンビン濃度が50%増加及び減少したため、可変であった(表26及び27)。
【0254】
トロンビン生成アッセイで測定された第3のパラメータは、活性の間に生成されたトロンビンの総濃度を評価する内因性トロンビン生成能であった。データは、ベースラインの総トロンビン生成のパーセンテージとして表された。mAbは、総トロンビン生成の阻害に対して、エラグ酸を使用して凝固を活性化したときのピークトロンビン阻害と同様の効果を示した(表28及び29)。同様に、結果は、組織因子を活性化因子で使用したときに可変であった(表30及び31)。
【表11】
【表12-1】
【表12-2】
【表13】
【表14-1】
【表14-2】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21-1】
【表21-2】
【表22】
【表23-1】
【表23-2】
【表24】
【表25-1】
【表25-2】
【表26】
【表27-1】
【表27-2】
【表28】
【表29-1】
【表29-2】
【表30】
【表31-1】
【表31-2】
【0255】
実施例9
一次薬物動態
9.1:インビトロ薬理学
インビトロアッセイを使用して、REGN9933の有効性及び安全性を評価するために一連の研究を行った。インビトロ研究の目的は、以下を含む。(a)ヒト及び非ヒト種、並びにヒトFXIaからのFXIに対するREGN9933結合親和性及び特異性の決定、(b)ヒト及びカニクイザルのドナーからの血漿中の内因性及び外因性凝固経路のREGN9933媒介遮断の特徴付け、(c)C1qへの結合についての主題のmAb REGN9933-FXI及び主題のmAb REGN9933-FXIa免疫複合体の評価、並びに(d)末梢血単核細胞(PBMC)増殖及びサイトカイン放出を誘導するためのREGN9933などのIgG4P抗体の潜在的リスクの評価。
【0256】
REGN9933とヒト、カニクイザル、ウサギ、及びマウスFXI又はヒトFXIaとの間の結合相互作用を、表面プラズモン共鳴(SPR)ベースのアッセイを使用して評価した。これらのアッセイでは、REGN9933は、ヒトFXI及びFXIa、並びにカニクイザルFXIにナノモル以下の親和性で結合した。REGN9933はまた、ウサギFXIに弱く結合したが、マウスFXIには結合しなかった(実施例9.1.1)。
【0257】
ヒト又はカニクイザルのいずれかのドナーからのプールされた血漿における凝固経路を遮断するREGN9933の能力は、凝固アッセイ及びトロンビン生成アッセイ(TGA)を使用してインビトロで評価された。これらのアッセイでは、REGN9933は、ヒトのプールされた血漿における内因性凝固経路に対して濃度依存的な効果を発揮し、外因性経路にわずかな効果を有した。REGN9933はまた、カニクイザルのプールされた血漿における内因性凝固経路に対して濃度依存的な効果を発揮したが、外因性凝固経路に対して濃度依存的な効果を発揮しなかった(実施例9.1.2.1)。
【0258】
REGN9933は、ヒンジ安定化されたIgG4由来の重鎖断片結晶化可能(Fc)定常ドメイン(IgG4Pと称される)を含み、IgG4は、IgG1と同様にC1qに結合しないため、C1qに結合することができる免疫複合体を形成する可能性は低い(Patel,2015)。それにもかかわらず、REGN9933-FXI及びREGN9933-FXIa複合体のC1qへの結合の可能性を評価するために、酵素免疫吸着アッセイ(EIA)を行った。このアッセイでは、REGN9933-FXI及びREGN9933-FXIa複合体は、C1qへの陽性結合を実証しなかった(実施例9.1.2.2)。
【0259】
細胞ベースのインビトロ実験の結果は、REGN9933などの免疫細胞表面分子を特異的に標的としないIgG4P抗体が、PBMCのサイトカイン放出又は増殖を誘導する可能性が低いことを実証する(実施例9.1.3)。
【0260】
主題のmAbのインビトロ機能特徴付け
9.1.1:ヒト、カニクイザル、ウサギ、及びマウスからのFXI及びヒトからのFXIaとの主題のmAb相互作用の動態及び平衡結合パラメータの決定
この研究では、SPR技術を使用して、血漿に由来するヒトFXI及びFXIaタンパク質、並びにC末端myc-myc-ヘキサヒスチジン(mmH)-タグで産生された組換えヒト、カニクイザル、ウサギ、及びマウスFXIタンパク質に対するREGN9933の結合親和性を決定した。ヒトFXI(E19-V625)は、それぞれ、カニクイザル、ウサギ、及びマウスFXIと96%、86%、及び79%のアミノ酸配列同一性を共有する。25℃及びpH7.4で、様々な濃度の可溶性FXI又はFXIaタンパク質を表面捕捉REGN9933上に注入し、続いて解離相を注入した。ヒト、カニクイザル、及びマウスタンパク質の動態結合パラメータは、質量輸送制限を伴う1:1の結合モデルを使用して決定され、ウサギタンパク質の結合親和性は、1:1の定常状態結合モデルを使用して決定された。
【0261】
血漿由来のヒトタンパク質を使用した試験では、REGN9933は、それぞれ、14.4及び141pMの平衡解離定数(KD)でヒトFXI(hFXI)及びFXIa(hFXIa)に結合した(データ示さず)。
【0262】
mmH-タグで産生された生成タンパク質を使用した試験では、主題の抗FXI mAb REGN9933は、KD値が、それぞれ、144及び104pMの組換えヒト(hFXI.mmH)及びカニクイザル(Macaca fascicularis)(MfFXI.mmH)FXIに結合し、KD値が171nMの組換えウサギFXI(rbFXI.mmH)に弱いが検出可能な結合を示した。主題の抗FXI mAb REGN9933は、試験した最高濃度(50nM)まで、組換えマウスFXI(mFXI.mmH)への検出可能な結合を示さなかった(データ示さず)。
【0263】
9.1.2.1:プールされたヒト又はカニクイザル血漿における凝固経路を遮断する主題の抗FXI抗体原薬の能力のインビトロ評価
この研究では、ヒト又はカニクイザルのいずれかのドナーからのプールされた血漿における凝固経路を遮断するREGN9933の能力は、凝固アッセイ及びTGAを使用してインビトロで評価された。これらのアッセイでは、それぞれ、EA又はTFのいずれかによって血漿において凝固を誘導して、内因性又は外因性の凝固経路に対するREGN9933の効果を測定した。
【0264】
ヒト及びカニクイザル血漿を使用した凝固アッセイ及びTGAの結果の概要を表32に示す。
【表32】
【0265】
凝固アッセイでは、主題の抗FXI mAb REGN9933は、ベースライン(抗体なし)に対して、濃度依存的にaPTTを増加させ、それぞれ、試験した抗体濃度の範囲(19nM~1.2μM)で、ヒト(
図8A)及びカニクイザル(データ示さず)の血漿において最大2.7倍及び2.1倍の増加が観察された。ベースラインに対するaPTTの倍加は、それぞれ、ヒト及びカニクイザルの血漿において25nM及び1.1μMで生じると推定された。試験した最大抗体濃度(1.2μM)で、ヒト又はカニクイザルのいずれかの血漿においてベースラインに対してPTの変化は観察されなかった(
図8B)。
【0266】
トロンビン生成がヒト血漿における内因性経路を介してEAによって誘導されたTGAにおいて、主題の抗FXI mAb REGN9933は、トロンビン生成の遅延時間をベースラインに対して最大4.9倍に増加させ(抗体なし)、ピークトロンビンレベルをベースラインの8%まで低減し、内因性トロンビン生成能をベースラインの28%まで低減した(
図9A及び9B)。主題の抗FXI mAb REGN9933は、濃度依存的にこれらの効果を発揮し、250nM以上の濃度で最大の効果を達成した(
図9A)。トロンビン生成が外因性経路を介してTFによって誘導された場合、主題の抗FXI mAb REGN9933は、ピークトロンビンレベルをベースラインの86%までわずかに低減し、内因性トロンビン生成能をベースラインの89%まで低減した(
図9C及び9D)。主題の抗FXI mAb REGN9933は、濃度依存的にこれらの効果を発揮し、125nM以上の濃度で最大の効果を達成した(
図9C)。試験した最大抗体濃度(500nM)まで、主題の抗FXI mAb REGN9933では、トロンビン生成の遅延時間の濃度依存的な増加は観察されなかった(
図9C)。
【0267】
トロンビン生成がカニクイザル血漿における内因性経路を介してEAによって誘導されたTGAにおいて、主題の抗FXI mAb REGN9933は、トロンビン生成の遅延時間をベースラインに対して最大2.2倍まで増加させ(抗体なし)、ピークトロンビンレベルをベースラインの43%まで低減し、内因性トロンビン生成能をベースラインの66%まで低減した(データ示さず)。主題の抗FXI mAb REGN9933は、濃度依存的にこれらの効果を発揮し、62nM以上の濃度で最大の効果を達成した。外因性経路を介してTFによってトロンビン生成が誘導された場合、試験した最大抗体濃度(500nM)まで、主題の抗FXI mAb REGN9933では、トロンビン生成の遅延時間の濃度依存的な増加、又はピークトロンビン若しくは内因性トロンビン生成能の減少は観察されなかった(データ示さず)。
【0268】
9.1.2.2:C1qに結合するための主題のmAb REGN9933-FXI及び-FXIa免疫複合体の評価。
循環免疫複合体(CIC)は、可溶性抗原による抗体の多量体化によって形成される。組織内のCICの堆積及びそれに伴う炎症反応は、堆積部位での組織損傷をもたらす可能性がある。大型免疫複合体はまた、血清中の補体成分C1qを活性化することができる(Rojko,2014)。REGN9933は、ヒンジ安定化されたIgG4由来の重鎖Fc定常ドメイン(IgG4Pと称される)を含み、IgG4は、IgG1と同様にC1qに結合しないため、C1qに結合することができる免疫複合体を形成する可能性は低い(Patel,2015)。それにもかかわらず、主題のmAb-FXI及び主題のmAb-FXIa複合体のC1qへの結合の可能性を評価するために、EIAを行った。
【0269】
この研究では、REGN9933をヒトFXI又はFXIaタンパク質でインキュベートし、プレート吸着C1qに添加し、続いて抗ヒトIgGを使用して検出した。
【0270】
主題のmAb REGN9933-FXI及び主題のmAb REGN9933-FXIa複合体は、アッセイキットの仕様によって陽性とみなされる結合レベルを実証しなかった(データ示さず)。対照的に、C1q結合は、陽性対照複合体、熱凝集ヒトガンマグロブリン(HAGG)について検出された。
【0271】
9.1.3:非免疫細胞表面結合IgG4Pアイソタイプ対照抗体によるヒト末梢血単核細胞の処理後の増殖及びサイトカイン放出のインビトロ特徴付け
主題の抗FXI mAb REGN9933は、免疫細胞表面分子を標的としないIgG4P抗体である。そのような非結合IgG4Pが、ヒトPBMCにおいてサイトカインの放出又は増殖を誘導する能力を、IgG4Pアイソタイプ対照抗体[REGN1945]を使用して評価した。
【0272】
IgG4Pアイソタイプ対照抗体[REGN1945]は、スーパーアゴニスト抗CD28抗体(TeGenero TGN1412)(Findlay,2010)(Vessillier,2015)によって誘導されるPBMC増殖及びサイトカイン放出を検出する確立された方法に従って行われた社内研究(データ示さず)では、PBMCサイトカイン放出又は増殖を誘導しなかった。このアッセイでは、IFN-γ、IL-2、TNF-α、IL-10、IL-6、IL-13、IL-4、及びIL-12p70の蓄積を、PBMCを試験抗体とインキュベートした後に評価した。TGN1412と同じ一次配列(S228P置換を除いて)を有するIgG4P抗CD28スーパーアゴニスト抗体[REGN2329]、及び刺激性抗CD3抗体(OKT3)は、陽性対照として機能した。0.4~10μg/mLの範囲の濃度のIgG4Pアイソタイプ対照抗体[REGN1945]は、いかなる試験条件下でも、PBMCの増殖(データ示さず)又はサイトカイン放出(データ示さず)に影響を及ぼさなかった。対照的に、抗CD28陽性対照抗体は、PBMCの顕著な増殖及び顕著なサイトカイン放出を媒介したが、抗CD3陽性対照抗体は、顕著なサイトカイン放出を媒介した。
【0273】
要約すると、免疫細胞表面分子を特異的に標的としないIgG4P抗体は、標準的なインビトロアッセイにおいて、PBMCからのサイトカイン放出又はPBMCの増殖を誘導しなかった。本研究は、免疫細胞表面分子を特異的に標的としないIgG4P抗体が、ヒトにおいてサイトカイン放出症候群を誘導する可能性が低いことを示す。
【0274】
9.1.4:考察
主題のm-Ab REGN9933は、FXI/FXIaに結合し、ヒト血漿における外因性凝固経路にわずかな影響を伴う内因性凝固経路を選択的に阻害するヒトIgG4ベースのmAbである。主題のm-Ab REGN9933は、血栓塞栓性疾患の予防及び治療のために開発されている。インビトロアッセイ及びインビボモデルを使用して、主題のm-Ab REGN9933の有効性及び安全性を評価するために一連の非臨床研究を行った。
【0275】
SPR研究は、主題のm-Ab REGN9933が、ヒトFXI及びFXIa、並びにピコモル範囲のKD値でカニクイザルFXIに特異的に結合することを示した。主題のm-Ab REGN9933はまた、高いナノモルKD値でウサギFXIに弱く結合したが、マウスFXIへの結合は検出されなかった。ヒト又はカニクイザルのドナーからのプールされた血漿を使用したインビトロ凝固時間アッセイ及びTGAは、主題のm-Ab REGN9933が、濃度依存的な効果を持続時間に対しては有するが、大きさに対しては有しない内因性凝固経路活性を遮断することを示した。ヒト血漿における外因性凝固経路活性へのわずかな影響が観察され、カニクイザル血漿における外因性凝固経路活性に対する効果は観察されなかった。併せて、これらのインビトロ結合及び活性研究は、主題のm-Ab REGN9933が、ヒト及びサル血漿中のFXIに結合し、内因性凝固経路活性を遮断することができ、それによって、主題のm-Ab REGN9933を用いた薬理学研究及び/又は毒性学研究のための関連種としてのカニクイザルの使用を支持することができることを実証した。
【0276】
インビトロEIAでは、主題のm-Ab REGN9933-FXI及び主題のm-Ab REGN9933-FXIa複合体は、C1qへの結合の陽性レベルを実証せず、主題のm-Ab REGN9933が、免疫複合体媒介性炎症応答を誘導する可能性が低いことを示唆する。
【0277】
9.2:インビボ薬理学
カニクイザルにおける凝固経路の主題のm-Ab REGN9933媒介遮断を、主題のm-Ab REGN9933の1、3、又は10mg/kgの単回IV用量を評価するパイロットPK/PD研究(実施例9.2.1)、及びIV経路を介した主題のm-Ab REGN9933の0.5、5、若しくは30mg/kgの単回用量、又はSC経路を介した主題m-Ab REGN9933の30mg/kgの単回用量を評価する研究(実施例9.2.2)において評価した。
【0278】
主題のm-Ab REGN9933の1、3、又は10mg/kgの単回IV用量を受けたカニクイザルからの血漿を使用する凝固アッセイ及びTGA(実施例9.2.1)において、及び静脈内(IV)経路を介して主題のm-Ab REGN9933の0.5、5、若しくは30mg/kgの単回用量、又は皮下(SC)経路を介して主題のm-Ab REGN9933の30mg/kgの単回用量を受けたカニクイザルからの血漿を使用するTGA(実施例9.2.2)において、凝固経路のREGN9933媒介遮断を評価した。前述の各研究で行われた凝固アッセイにおいて、REGN9933は、内因性凝固経路に対するPD効果(すなわち、ベースラインに対する活性化部分トロンボプラスチン時間[aPTT]の延長)を発揮し、外因性凝固経路に対する影響はなかった(すなわち、ベースラインに対するプロトロンビン時間[PT]に対する影響はなかった)。行われたTGAにおいて、主題のm-Ab REGN9933は、内因性凝固経路に対するPD効果(すなわち、ベースラインに対して、トロンビン生成の延長された遅延時間、ピークトロンビンレベルの低減、及びエラグ酸[EA]によって誘導される内因性トロンビン生成能の低減)を発揮し、外因性凝固経路に対する効果は最小限であった(すなわち、トロンビン生成の遅延時間に対して効果はなく、ベースラインに対して、組織因子[TF]によって誘導されるピークトロンビンレベル及び内因性トロンビン生成能のわずかな低減)。両方の研究で、内因性凝固経路に対する効果(凝固アッセイ及びTGAで観察される)の持続時間は、用量依存的であったが、外因性凝固経路に対するわずかな効果(TGAで観察される)は、用量依存的ではなかった。内因性凝固経路への影響は、FXIの濃度を低減するのではなく、主題のm-Ab REGN9933濃度を増加させることによって駆動された可能性が高い。
【0279】
9.2.1:カニクイザルにおける凝固経路活性に関する主題のmAb IVの1、3、又は10mg/kgの単回用量のエクスビボ評価(R3448 PK 19085)
カニクイザルにおける凝固経路の主題のm-Ab REGN9933媒介遮断の特徴付けを、単回用量PK研究の一部として評価した(データ示さず)。雌カニクイザルに、ビヒクル(対照)又は主題のm-Ab REGN9933の単回IVスローボーラス注射を、1、3、又は10mg/kg(群当たりn=3)の用量で投与し、投与後8週間監視した。投与前及び投与後5分、6時間、2日目、3日目、4日目、6日目、8日目、11日目、15日目、22日目、29日目、36日目、43日目、50日目、及び57日目に、全ての動物から血液試料を収集した。投与前の測定値は、各動物のベースラインとして機能した。血清中の主題の総m-Ab REGN9933(全ての薬物、標的の存在とは無関係)及び血漿中の総FXI(主題のm-Ab REGN9933結合及び遊離)の濃度を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定した。様々なPD分析を血漿試料を使用して行い、これには、凝固アッセイ及びTGAを使用した凝固経路に対する主題のm-Ab REGN9933の効果の測定が含まれた。これらのアッセイでは、それぞれ、EA又はTFのいずれかによって血漿試料において凝固を誘導して、内因性又は外因性の凝固経路に対する主題のm-Ab REGN9933の効果を測定した。総FXI濃度、並びに凝固アッセイ及びTGAからの測定値は、ベースラインに対して正規化され(すなわち、投与前測定値)、ベースラインに対する変化として表された。
【0280】
9.2.1.1:血漿中の総FXIレベルに対する主題のmAb REGN9933の効果の評価
主題の総m-Ab REGN9933の濃度-時間プロファイルは、最初の短い分布相、続いて短い線形ベータ除去相、及び末端標的媒介除去相を特徴とした。主題のピークm-Ab REGN9933濃度は用量比例的に増加したが、用量正規化された主題のm-Ab REGN9933曝露は、用量群にわたって曝露の用量比例的増加よりも大きいことを示した(
図10A)。
【0281】
ベースラインに対する総FXIの増加は、3mg/kg以上の主題のm-Ab REGN9933用量で観察された。ベースラインに対する総FXIの統計的に有意な増加は、対照群と比較して、10mg/kgの主題のm-Ab REGN9933群のみで観察された(
図10B)。これらの増加は、用量群にわたって主題の総m-Ab REGN9933への曝露の用量比例的増加よりも大きいことと関連していた。主題のm-Ab REGN9933は、主題のm-Ab REGN9933と結合することによる循環中のFXIの安定化に起因する可能性が高いため、血漿中の総FXIの濃度の減少と関連付けられなかった。
【0282】
9.2.1.2:血漿におけるaPTT及びPTに対する主題のm-Ab REGN9933の効果の評価
主題のm-Ab REGN9933は、試験した全ての用量レベルのベースラインに対して、内因性経路活性の指標である活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)を延長し、活性の持続時間に用量依存的な効果を有する。ベースラインに対する、外因性経路活性の指標であるプロトロンビン時間(PT)に対する効果は、試験した任意の用量レベルの主題のm-Ab REGN9933で観察されなかった(
図11B)。
【0283】
9.2.1.3:血漿中のトロンビン生成に対するREGN9933の効果の評価
EAで誘導されたTGA(TGA-EA)において、主題のm-Ab REGN9933は、試験した全ての用量レベルで、ベースラインに対して、トロンビン生成の遅延時間を延長し(データ示さず)、ピークトロンビンレベルを低減し(データ示さず)、内因性経路によって媒介される内因性トロンビン生成能を低減し(
図12A)、活性の持続時間に用量依存的効果を有した。TFで誘導されたTGA(TGA-TF)において、ベースラインに対して、外因性経路によって媒介されるトロンビン生成の遅延時間に対する効果は、試験した任意の用量レベルの主題のm-Ab REGN9933で観察されなかった(データ示さず)。主題のm-Ab REGN9933は、試験した全ての用量レベルで、ベースラインに対して、外因性経路によって媒介されるピークトロンビンレベル(データ示さず)及び内因性トロンビン生成能(
図12B)を低減した。しかしながら、外因性経路に対する主題のm-Ab REGN9933の効果は、内因性経路に対する効果と比較して大きさが小さく、外因性経路に対する効果の大きさも持続時間も用量依存的ではないように見えた。
【0284】
TGAで測定したベースラインに対して、内因性凝固経路に対する統計的に有意な効果は、対照群と比較して、それぞれ、1、3、及び10mg/kgの主題のm-Ab REGN9933群で、最大6日目、11日目、及び50日目まで観察された(データ示さず)。全てのパラメータは、8週間の研究の終了までにベースライン又はベースラインレベルに近くに戻った。
【0285】
9.2.2:カニクイザルにおける凝固経路活性に対する主題のm-Ab REGN9933 IVの0.5、5、若しくは30mg/kgの単回用量、又は主題のm-Ab REGN9933 SCの30mg/kgの単回用量のエクスビボ評価
雌カニクイザルにおけるPK/PD研究を行った(データ示さず)。10週間の監視期間にわたって収集された血液試料を使用して、凝固に対する主題のm-Ab REGN9933の効果を評価するために、エクスビボアッセイを行った。主題のm-Ab REGN9933を、0.5、5、又は30mg/kg(群当たりn=5)IV又は30mg/kg(群当たりn=5)SCで動物に単回用量として与えた。
【0286】
9.2.2.1:血漿中の総FXIレベルに対する主題のm-Ab REGN9933の効果の評価
主題の総m-Ab REGN9933の濃度-時間プロファイルは、最初の短い分布相、続いて短い線形ベータ除去相、末端標的媒介除去相、及び標的媒介除去後相を特徴とした(データ示さず)。主題のピークm-Ab REGN9933濃度は、用量比例的に増加した(データ示さず)。用量正規化された主題のm-Ab REGN9933の曝露の用量比例増加よりも大きい増加は、用量群にわたって観察され、低用量及び濃度の主題のm-Ab REGN9933でより顕著である非線形動態と一致した(データ示さず)。これらの所見は、用量及び関連する濃度の増加に伴う観察されたクリアランスの減少と一致する。主題のm-Ab REGN9933の投与後、血漿中の可溶性FXIの濃度は、ベースラインレベルと比較して、全ての用量群(IV及びSC)にわたって1.0~1.9倍増加し、ベースラインに対して薬物効果があったことを示す。しかしながら、血清中の主題のm-Ab REGN9933濃度との相関はなかった(データ示さず)。
【0287】
9.2.2:血漿におけるaPTT及びPTに対する主題のm-Ab REGN9933の効果の評価
エクスビボ凝固時間アッセイを、経時的に収集された血液試料からの血漿を使用して行い、主題のm-Ab REGN9933の投与の、内因性経路活性の指標であるaPTT、及び外因性経路活性の指標であるPTに対する効果を決定した。3日目以前の血液試料収集は、誤った抗凝固剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いて行ったが、3日目から71日目までの試料収集は、凝固アッセイの性能にあまり干渉しない、好ましい抗凝固剤、クエン酸ナトリウムを用いて行った。したがって、3日目~71日目までの血液試料について生成された値のみをプロットし、凝固アッセイにおける研究特異的投与前測定の代わりに、これとカニクイザルにおける以前のPK/PD研究からの組み合わせ値(データ示さず)を使用して、aPTT及びPTの過去のベースラインを決定した。
【0288】
主題のm-Ab REGN9933は、活性の持続時間に用量依存的な効果を有する過去のベースラインに対して1.5~2.1倍増加で平均aPTTを延長したが、試験した全ての投与群にわたって同様の大きさであった(データ示さず)。過去のベースラインに対するaPTTの1.5倍以上の増加の最初の発生は、全ての用量レベルについて3日目に観察されたが、この効果は、それぞれ、主題のm-Ab REGN9933の0.5mg/kg(IV)、5mg/kg(IV)、及び30mg/kg(IV)の用量レベルの増加で、1、19、又は54日間の増加持続期間について観察された。加えて、主題のm-Ab REGN9933を30mg/kg(SC)で投与した後の47日間、過去のベースラインに対して、aPTTの1.5倍以上の増加が観察された。全ての投与群にわたって、最大平均効果は、aPTT延長において2.1倍の増加であった。
【0289】
試験した任意の用量レベルの主題のm-Ab REGN9933で、過去のベースラインに対してしてPTへの効果は観察されなかった(データ示さず)。
【0290】
9.2.3:考察
主題のm-Ab REGN9933の1、3、又は10mg/kgの単回IV用量を受けたカニクイザルからの血漿を使用する血液凝固アッセイ及びTGAにおいて、及びIVを介して主題のm-Ab REGN9933の0.5、5、若しくは30mg/kgの単回用量、又はSCを介して主題のm-Ab REGN9933の30mg/kgの単回用量を受けたカニクイザルからの血漿を使用するTGAにおいて、凝固経路の主題のm-Ab REGN9933媒介遮断を評価した。前述の各研究で行われた凝固アッセイにおいて、主題のm-Ab REGN9933は、持続時間に用量依存的な効果を有するが、大きさは用量依存的な効果はなく、内因性凝固経路を遮断し、外因性凝固経路への効果は観察されなかった。行われたTGAにおいて、主題のm-Ab REGN9933は、持続時間に用量依存的な効果を有するが、大きさは用量依存的な効果はなく、内因性凝固経路を遮断し、外因性凝固経路に対する最小限の効果が観察された。
【0291】
実施例10
安全性薬理学
安全性薬理学的エンドポイントは、カニクイザルで実施されたGLP反復投与毒性研究に組み込まれた(データ示さず)。投与された最高用量である100mg/kg/週までの用量(SC又はIV)で、試験試料関連の心血管系(心拍数、血圧、及び心電図)、呼吸器系(呼吸/分及びパルスオキシメトリ)、又は中枢神経系の変化は明らかではなかった。
【配列表】
【国際調査報告】