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▶ シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両用の潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20241018BHJP
   C10M 129/16 20060101ALN20241018BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20241018BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241018BHJP
【FI】
C10M169/04 ZHV
C10M129/16
C10N30:12
C10N40:25
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523672
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2022059993
(87)【国際公開番号】W WO2023067493
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,763
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モニス、メンノ アントン ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ファン レーベン、イェローン アウグスティヌス
(72)【発明者】
【氏名】ホーゲンドールン、リヒャルト
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB08C
4H104BB41C
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104EB05
4H104EB07
4H104EB08
4H104EB09
4H104LA06
(57)【要約】
ハイブリッド車両用の潤滑油組成物は、大半量の潤滑粘度のオイルと、次式:R-(O-R-OHで表されるエトキシル化アルコール解乳化剤とを含む。Rは、6~20個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖炭化水素基である。Rは 2~4個の炭素原子を有する飽和炭化水素基であり、nは1~10の整数である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド車両用の潤滑油組成物であって、
a.大半量の潤滑粘度のオイルと、
b.次式のエトキシル化アルコール解乳化剤:
-(O-R-OH
(式中、Rは6~20個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖炭化水素基であり、Rは2~4個の炭素原子を有する飽和炭化水素基であり、nは1~10の整数である)と、を含む、前記潤滑油組成物。
【請求項2】
前記エトキシル化アルコール解乳化剤が、第二級アルコールである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
が、C12~C14ヒドロカルビル基である、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記エトキシル化アルコール解乳化剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.15重量%~約5重量%で存在する、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
nが3~6の整数である、請求項1に記載の潤滑油。
【請求項6】
極性調整剤、分散剤、洗浄剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、または流動点降下剤をさらに含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
ハイブリッド車両の腐食を低減する方法であって、
a.大半量の潤滑粘度のオイルと、
b.次式のエトキシル化アルコール解乳化剤:
-(O-R-OH
(式中、Rは6~20個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖炭化水素基であり、Rは2~4個の炭素原子を有する飽和炭化水素基であり、nは1~10の整数である)と、を含む潤滑油組成物をハイブリッド車両のエンジンに供給することを含む、前記方法。
【請求項8】
前記エトキシル化アルコール解乳化剤が第二級アルコールである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
がC12~C14ヒドロカルビル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記エトキシル化アルコール解乳化剤が、前記潤滑油組成物の総重量に基づいて約0.15重量%~約5重量%で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
nが3~6の整数である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記潤滑油組成物が、極性調整剤、分散剤、洗浄剤、摩耗防止剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、粘度調整剤、または流動点降下剤をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑油組成物及び潤滑油組成物を使用する方法に関する。より具体的には、潤滑油組成物はハイブリッド車両における防錆効果を与えるものである。
【背景技術】
【0002】
最新の潤滑油は、多くの場合、OEMメーカーによって設定された厳密な規格に従って配合されている。多くの場合、これは、慎重に選択された潤滑添加剤を潤滑粘度のベースオイルと混合することを必要とする。潤滑油組成物に含まれる潤滑剤添加剤の部類または種類としては、例えば、分散剤、洗浄剤、酸化防止剤、摩耗防止剤、錆防止剤、腐食防止剤、発泡防止剤、及び/または摩擦調整剤が挙げられる。一般的に、特定の用途または使用(例えば、ハイブリッド車両)によって、潤滑油組成物に配合される添加剤の組み合わせが決まる。
【0003】
ハイブリッド車両は、内燃エンジンと電気モーターという2つの大きく異なるタイプの動力技術に依存している。内燃機関は主に高速で車両を駆動する。電気モーターは低速で車両を駆動し、追加の出力が必要な場合には内燃エンジンを補助することもできる。ハイブリッド車両では、車速が上がるにつれてエンジンとモーターの動力をバランスよく配分することが重要である。
【0004】
一般的にハイブリッド車両は、車両が停止する際にエンジンが停止する始動停止システムを備えており、エンジンの燃料システムは、車両がモーターまたはブレーキ動作によってのみ駆動されている場合には一時停止する。その結果、エンジンが水と燃料を十分に蒸発させることができないため、オイル中に水と燃料が蓄積することが問題となる。その結果、不安定なエマルジョンが形成され、エンジン性能に悪影響を及ぼし、エンジン部品の腐食/錆につながる。
【0005】
ハイブリッド車両と従来の自動車の違いは非常に大きいため、従来のエンジンオイルは必ずしもハイブリッド車での使用に最適化されているわけではない。したがって、ハイブリッド車両専用に設計された潤滑油組成物が求められている。より具体的には、ハイブリッド車両のエンジン部品の腐食防止/防錆効果を改善する潤滑油組成物が求められている。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、ハイブリッド車両用の潤滑油組成物であって、大半量の潤滑粘度のオイルと、次式のエトキシル化アルコール解乳化剤:R-(O-R-OH(式中、Rは6~20個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖炭化水素基であり、Rは2~4個の炭素原子を有する飽和炭化水素基であり、nは1~10の整数である)とを含む潤滑油組成物が提供される。
【0007】
別の態様では、ハイブリッド車両における腐食を低減する方法であって、ハイブリッド車両のエンジンに、大半量の潤滑粘度のオイルと、次式のエトキシル化アルコール解乳化剤:R-(O-R-OH(式中、Rは6~20個の炭素原子を有する分枝鎖または直鎖炭化水素基であり、Rは2~4個の炭素原子を有する飽和炭化水素基であり、nは1~10の整数である)とを含む潤滑油組成物を供給することを含む、方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示には、様々な改変及び代替形態があるが、それらの具体的な実施形態を本明細書に詳細に記載する。しかしながら、特定の実施形態の本明細書での説明は、本開示を開示された特定の形態に限定しようとするものではなく、逆に、その意図するところは、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の趣旨及び範囲内にあるすべての改変例、均等物、及び代替物を網羅することにあることを理解されたい。
【0009】
本明細書に開示される主題の理解を容易にするため、本明細書で使用されるいくつかの用語、略語、またはその他の略記を以下に定義する。定義されていない用語、略語または略記は、本出願の提出の時点で当業者によって使用される通常の意味を有するものとして理解される。
【0010】
本明細書で使用する場合、以下の用語は、特にそうでない旨の記載がない限り、以下の意味を有する。
【0011】
「大半量」とは、組成物の50重量%超を意味する。
【0012】
「少量」とは、添加剤の活性成分とみなされる、記載される添加剤に関して、及び組成物中に存在するすべての添加剤の総重量に関して表される、組成物の50重量%未満を意味する。
【0013】
「活性成分」または「活性物質」または「オイルフリー」とは、希釈剤でも溶媒でもない添加剤材料を指す。
【0014】
「油溶性」という用語は、特定の添加剤について、所望のレベルの活性または性能を与えるために必要な量を、潤滑粘度のオイルに溶解、分散または懸濁することによって添加できることを意味する。通常、「油溶性」とは、少なくとも0.001重量%の添加剤を、潤滑油組成物に組み込むことができることを意味する。「燃料可溶性」という用語は、燃料中に溶解、分散、または懸濁された添加剤を表す類似の表現である。
【0015】
「エンジン」または「燃焼機関」は、燃焼室内での燃料の燃焼が行われる熱機関である。「内燃機関」は、燃料の燃焼が制限された空間(「燃焼室」)内で行われる熱機関である。「火花点火機関」は、通常は点火プラグからの火花によって燃焼が点火される熱機関である。これは、燃料の噴射と圧縮によって生成される熱が外部の火花なしで燃焼を開始するのに十分である、「圧縮点火エンジン」、通常はディーゼルエンジン、とは対照的である。
【0016】
「ヒドロカルビル」という用語は、飽和及び不飽和炭化水素を含む炭化水素に由来する化学基または部分を指す。ヒドロカルビル基の例としては、アルケニル、アルキル、ポリアルケニル、ポリアルキル、フェニルなどが挙げられる。
【0017】
報告されるすべてのパーセンテージは、特に断らない限り、活性成分に基づく(すなわち、キャリアオイルまたは希釈油に関係なく)重量%である。
【0018】
本明細書で言及するすべてのASTM基準は、本出願の出願日の時点での最新版である。
【0019】
本発明は、特に腐食及び/または摩耗しやすいエンジン(例えば、ハイブリッド車両のエンジン)において有用な潤滑油組成物を提供する。潤滑油組成物は、一般的に、(a)大半量の潤滑粘度のオイルと、(b)エトキシル化アルコール解乳化剤と、を含む。
潤滑油添加剤
【0020】
本発明の潤滑油組成物は、本明細書に記載の潤滑油添加剤を含むことができる。
【0021】
本発明の潤滑油添加剤組成物は、次式を有するエトキシル化アルコール解乳化剤を含む。
-(O-R-OH
は、6~20個の炭素原子(例えば、8~18個、10~18個、10~16個、12~14個など)を有する分枝鎖または直鎖炭化水素基である。Rは、2~4個の炭素原子を有する飽和炭化水素基であり、nは1~10の整数(例えば、2~8、3~6など)である。
【0022】
いくつかの実施形態では、Rヒドロカルビル基はアルキル基またはアルケニル基であってよい。アルキル基とは、直鎖状、分枝鎖状、環状、または環状、直鎖状及び/または分枝鎖状の組み合わせであり得る、飽和炭化水素基を指す。アルケニル基とは、直鎖状、分枝鎖状、環状、または環状、直鎖状及び/または分枝鎖状の組み合わせであり得る、不飽和炭化水素基を指す。
【0023】
いくつかの実施形態では、エトキシル化アルコール解乳化剤は第一級アルコールである。いくつかの実施形態では、エトキシル化アルコール解乳化剤は第二級アルコールである。いくつかの実施形態では、エトキシル化アルコール解乳化剤は第三級アルコールである。
【0024】
説明のために、エトキシル化アルコール解乳化剤の以下の非限定的な例を示す。

【化1】
【0025】
一般に、エトキシル化アルコール解乳化剤は、潤滑油組成物の全重量に対して約0.15~約5.0重量%の範囲の量で存在する。一実施形態では、1つ以上の添加剤化合物は、本開示の潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全重量に対して約0.15~約4.0重量%の範囲の量で存在することができる。一実施形態では、1つ以上の添加剤化合物は、本開示の潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全重量に対して約0.15~約3.0重量%の範囲の量で存在することができる。一実施形態では、1つ以上の添加剤化合物は、本開示の潤滑油組成物中に、潤滑油組成物の全重量に対して約0.15~約2.0重量%の範囲の量で存在することができる。
【0026】
潤滑油組成物
潤滑粘度のオイル(「ベースストック」または「ベースオイル」と称される場合もある)は、潤滑剤の主要液体構成成分であり、その中に添加剤及び場合によっては他のオイルが混合されることで例えば最終的な潤滑剤(すなわち潤滑剤組成物)を与えるものである。濃縮物を作製するため、及びそこから潤滑油組成物を作製するために有用な基油は、天然(植物性、動物性、または鉱物性)及び合成潤滑油ならびにそれらの混合物から選択されてもよい。
【0027】
本開示における基材及び基油の定義は、American Petroleum Institute(API)Publication 1509 Annex E(“API Base Oil Interchangeability Guidelines for Passenger Car Motor Oils and Diesel Engine Oils、”December 2016)に記載されているものと同じである。グループIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%未満の飽和分及び/または0.03%を超える硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和硫黄及び0.03%以下の硫黄を含有し、80以上120未満の粘度指数を有する。グループIIIのベースストックは、表E-1に定める試験方法を使用して、90%以上の飽和分及び0.03%以下の硫黄を含有し、120以上の粘度指数を有する。グループIVのベースストックは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。グループVのベースストックには、グループI、II、III、またはIVに含まれないすべての他のベースストックが含まれる。
【0028】
天然油は、動物油、植物油(例えばひまし油及びラード油)、及び鉱物油を含む。好ましい熱酸化安定性を有する動物油及び植物油を使用することができる。天然油のうち、鉱油が好ましい。鉱物油は、例えば、パラフィン系か、ナフテン系か、パラフィン系とナフテン系との混合系かなど、それらの粗製品源に応じて大きく異なる。石炭または頁岩由来の油も有用である。天然油はまた、それらの生成及び精製に使用される方法、例えば、それらの蒸留範囲、ならびにそれらが直留であるか、分解されているか、水素精製されているか、または溶媒で抽出されているかによっても異なる。
【0029】
合成油は炭化水素油を含む。炭化水素油としては、重合及び共重合化オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマー、エチレン-オレフィンコポリマー及びエチレン-アルファオレフィンコポリマー)などの油が挙げられる。ポリα-オレフィン(PAO)油基材が、一般的に使用される合成炭化水素油材である。一例として、C-C14オレフィン、例えばC、C10、C12、C14オレフィン、またはそれらの混合物から誘導されるPAOが利用される場合がある。
【0030】
基油として使用するための他の有用な流体には、高性能特性を提供するために処理された(好ましくは触媒的に)、または合成された非従来型(non-conventional)、または異色の(unconventional)基材が含まれる。
【0031】
非従来型または異色の基材/基油には、1種以上のガス液化(Gas-to-Liquids)(GTL)材料に由来する基材(複数可)の1種以上の混合物、ならびに天然ワックスまたはワックス状原料由来の異性体/イソ脱ろう体基材(複数可)、スラックワックスなどの鉱物油及び/または非鉱物油のワックス状原料、天然ワックス、及びガスオイルなどのワックス状基材、ワックス状燃料水素添加分解装置の底留分、ワックス状ラフィネート、水素添加分解物、熱分解物、またはその他の鉱物、鉱物油、または石炭液化物もしくはシェールオイルから得られるワックス状材料のような非石油由来ワックス状材料さえも、及びそのような基材の混合物が含まれる。
【0032】
本開示の潤滑油組成物において使用するための基油は、APIグループI、グループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油材、ならびにそれらの混合物に対応する様々な油材のいずれかであり、好ましくはAPIグループII、グループIII、グループIV、及びグループVの油材、ならびにそれらの混合物であり、より好ましくは、その卓越した揮発性、安定性、粘度及び清浄性の特徴により、グループIIIからグループVの基油である。
【0033】
典型的には、基油は100℃において、2.5~20mm/s(例えば、3~12mm/s、4~10mm/s、または4.5~8mm/s)の範囲の動粘度(ASTM D445)を有する。
【0034】
本潤滑油組成物はまた、補助機能を付与するための従来の潤滑剤添加剤を含有して、これらの添加剤が分散または溶解される完成した潤滑油組成物を得てもよい。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤、無灰分散剤、摩耗防止剤、金属洗浄剤などの洗浄剤、防錆剤、曇り止め剤、解乳化剤、摩擦調整剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、粘度調整剤、消泡剤、共溶媒、パッケージ適合剤、腐食抑制剤、色素、極圧剤など、及びそれらの混合物と混合することができる。様々な添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤またはその類似化合物は、通常の配合手順により、本発明の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0035】
上記の添加剤のそれぞれは、使用される場合、潤滑剤に所望の特性を付与するための機能的有効量で使用される。したがって、例えば、添加剤が無灰分散剤である場合、この無灰分散剤の機能的に有効な量は、潤滑剤に所望の分散特徴を付与するのに十分な量である。一般に、これらの添加剤の使用時の各々の濃度は、特に断らない限り、約0.001~約20重量%、例えば、約0.01~約10重量%の範囲とすることができる。
追加の潤滑油添加剤
【0036】
本開示の潤滑油組成物は、これらの添加剤が分散または溶解される潤滑油組成物に所望の特性を付与するかまたは潤滑油組成物を改善することができる他の従来の添加剤を含んでもよい。当業者には周知のいずれの添加剤も本明細書に開示される潤滑油組成物において使用することができる。いくつかの適当な添加剤が、いずれも参照によって本明細書に援用するところのMortier et al.,“Chemistry and Technology of Lubricants,”2nd Edition,London,Springer,(1996)、及びLeslie R.Rudnick,“Lubricant Additives:Chemistry and Applications,”New York,Marcel Dekker(2003)に記載されている。例えば、潤滑油組成物は、酸化防止剤(例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェノール系酸化防止剤)、摩耗防止剤、金属洗浄剤などの洗浄剤、防錆剤、曇り止め剤、解乳化剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤(例えば、エステル系摩擦調整剤)、粘度調整剤(例えば、オレフィンコポリマー)、流動点降下剤、消泡剤(例えば、シリコン系消泡剤)、共溶剤、腐食防止剤、分散剤、多機能剤、色素、極圧剤など、及びそれらの混合物と混合することができる。様々な添加剤が知られており、市販されている。これらの添加剤、またはそれらの類似した化合物は、通常の混合方法によって本開示の潤滑油組成物の調製に使用することができる。
【0037】
潤滑油配合物の調製では、添加剤を、炭化水素系油(例えば鉱油系潤滑油)または他の適当な溶媒中に10~100重量%の活性成分濃縮物の形態で導入することは一般的な方法である。
【0038】
通常、これらの濃縮物は、完成した潤滑剤(例えばクランク室モーターオイル)を形成する際に1重量部の添加剤パッケージ当たり3~100(例えば5~40)重量部の潤滑油により希釈することができる。濃縮物の目的は、言うまでもなく種々の材料の取り扱いの困難及び扱いにくさを軽減し、最終混合物中での溶解または分散を促進することにある。
【0039】
上記の添加剤のそれぞれは、使用される場合、潤滑剤に所望の特性を付与するための機能的有効量で使用される。したがって、例えば、添加剤が摩擦調整剤である場合、この摩擦調整剤の機能的有効量は、潤滑剤に所望の摩擦調整特性を付与するうえで十分な量である。
【0040】
一般に、潤滑油組成物中の添加剤のそれぞれの濃度は、使用される場合、潤滑油組成物の全重量に対して約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約15重量%、または約0.1重量%~約10重量%、約0.005重量%~約5重量%、または約0.1重量%~約2.5重量%の範囲とすることができる。さらに、潤滑油組成物中の添加剤の総量は、潤滑油組成物の全重量に対して約0.001重量%~約20重量%、約0.01重量%~約10重量%、または約0.1重量%~約5重量%の範囲とすることができる。
【0041】
以下の実施例は、本開示の実施形態を例示するために示されるものであるが、本開示を記載される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。特に断りがない限り、すべての部及びパーセンテージは重量基準である。数値はすべて概算値である。数値範囲が与えられる場合、記載される範囲外の実施形態も本発明の範囲に含まれ得る点は理解されるべきである。各実施例に記載される具体的な詳細は、本発明の必須の特徴として解釈されるべきではない。
【0042】
様々な改変が本明細書に開示される実施形態に対してなされ得る点は理解されよう。したがって、上記の説明は、限定するものとして解釈されるべきではなく、あくまで好ましい実施形態の例示としてのみ解釈されるべきである。例えば、上記に記載され、本発明を機能させるための最良の態様として実施される機能は、あくまで例示を目的としたものにすぎない。他の構成及び方法が、本開示の範囲及び趣旨から逸脱することなく当業者によって実施され得る。さらに、当業者によれば、添付の「特許請求の範囲」の範囲及び趣旨の範囲内の他の改変が想到されよう。
【実施例
【0043】
以下の実施例は、あくまで例示を目的としたものであって、いかなる意味でも本開示の範囲を限定するものではない。
【0044】
各潤滑油を、ハイブリッド車潤滑剤用に若干の変更を加えた日本工業規格(JIS)K2246試験によって評価した。JIS K2246試験では、試験試料片に試験オイルをコーティングし、試験試料の錆の発生を確認する。改変JIS K2246試験は、試験試料片に試験オイル及び蒸留水を含有する混合物をコーティングする点においてのみ、標準のJIS K2246試験と異なる。その結果、改良JIS K2246試験は、錆を生じやすい車両(例えば、ハイブリッド車両)の予想される錆性能を評価するのにより適したものとなっている。表1に改変JIS K2246の試験結果を要約する。
【0045】
試験試料片を、49℃、相対湿度(RH)95%超の湿度キャビネット内に置き、72時間放置した。この試験では、オイルが、主として鉄鋼からなる金属材料または金属製品の錆を防止する能力を評価した。
【0046】
ASTM D1748試験(湿度キャビネット錆試験)を同様にして行った。錆発生評価が低いほど、耐腐食性能が優れていることを示す。10以下の評価は合格を示す。
【0047】
試験オイル及び蒸留水を含有する混合物を、以下のステップに従って調製した。
1.プラスチック容器中で蒸留水30mlと試験オイル270mlを混合する。
2.この試験オイルと蒸留水の混合物を500mlの容器に移す。
3.JIS K2246試験当日に試験オイルと蒸留水を含む混合物を撹拌した後、30秒間手で振盪する。
4.試験オイルを70℃の対流オーブンで30分間加熱する。
5.30分後、試験オイルをオーブンから取り出し、室温まで冷ます。
6.試験試料を試験オイルに浸す直前に、試験オイルを再度30秒間手で振盪する。
7.JIS K2246試験を開始する。
比較例1
【0048】
大半量の潤滑粘度のグループIIIベースオイルと、以下の各添加剤とを含む潤滑油組成物を調製し、5W-30SAE粘度グレードの完成オイルを得た。すなわち、
1.ホウ素化及び非ホウ素化スクシンイミド分散剤の混合物、
2.850ppm(カルシウム含有量として)の過塩基性及び低塩基性/中性カルシウム洗浄剤の混合物、
3.610ppm(マグネシウム含有量として)の過塩基性マグネシウム洗浄剤、
4.810ppm(亜鉛含有量として)の第二級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、
5.0.1重量%のモリブデンコハク酸イミド錯体、
6.1.5重量%のアルキル化ジフェニルアミン酸化防止剤とフェノール系酸化防止剤との混合物、
7.0.3重量%のエステル系摩擦調整剤、
8.少量のシリコン系発泡抑制剤、オレフィン共重合体(OCP)粘度調整剤、及び流動点降下剤。
【0049】
実施例1~5
実施例1~5は、0.5~1.0重量%の構造1に示されるエトキシル化第二級アルコールであるエトキシル化アルコール解乳化剤を添加した点以外は比較例1と同様に調製した。表1に、JIS K2246の結果を要約する。さらなる解乳化剤を含む実施例1~5は、ベースライン配合物と比較して改善された防錆効果を示している。
【表1】
【0050】
本文書と矛盾しない限り、あらゆる優先権書類及び/または試験手順を含む、本明細書に記載のすべての文書を本明細書に参照によって援用する。前述の一般的な記載及び特定の実施形態から明らかであるとおり、本開示の複数の形態を図示及び記載してきたものの、様々な変更を、本開示の精神と範囲から逸脱することなしに加えることができる。したがって、本開示がそれにより限定されることは意図されていない。
【0051】
簡潔にするため、本明細書では特定の範囲のみを明示的に開示する。しかし、任意の下限値からの範囲を任意の上限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を列挙する場合があり、同様に、任意の下限値からの範囲を他の任意の下限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を列挙する場合があり、同様に、任意の上限値からの範囲を他の任意の上限値と組み合わせて、明示的に記述されていない範囲を列挙する場合がある。さらに、範囲内には、明示的に列挙されていなくても、その端点間のすべての点または個々の値が含まれる。したがって、すべての点または個々の値は、他の点または個々の値、あるいは他の下限値または上限値と組み合わされて、それ自体の下限値または上限値として機能し、明示的に記述されていない範囲を列挙する場合がある。
【0052】
同様に、「を含む(comprising)」という用語は、「を含む(including)」という用語と同義であると見なされる。同様に、組成物、要素、または要素群の前に移行句「を含む(comprising)」がある場合は常に、組成物、要素、または要素群の記述の前に移行句「を本質的にからなる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、または「である」がある同じ組成物または要素群も想定していると理解され、逆もまた同様である。
【0053】
本明細書で使用される「a」及び「the」という用語は、単数形だけでなく複数形も包含すると理解される。
【0054】
様々な用語が上記で定義されている。請求項で使用される用語が上記で定義されていない範囲では、少なくとも1つの印刷刊行物または発行済み特許に反映されているように、関連技術分野の専門家がその用語に与えている最も広い定義が与えられるべきである。さらに、本出願において引用されたすべての特許、試験方法、及びその他の文書は、かかる開示が本出願と矛盾しない限りにおいて、またかかる組み込みが許可されているすべての法域において、参照により完全に組み込まれるものとする。
【0055】
以上の本開示の説明は、本開示を例示し説明するものである。さらに、本開示は、好ましい実施形態のみを示し、説明するが、上述したように、本開示は、他の様々な組み合わせ、修正、及び環境において使用可能であり、本明細書で表現される概念の範囲内で、上記の教示及び/または関連技術の技術もしくは知識に見合った変更もしくは修正が可能であることを理解されたい。上記は、本開示の実施形態に向けられたものであるが、本開示の他のさらなる実施形態は、その基本的範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、以下に続く特許請求の範囲によって決定される。
【0056】
要素の組み合わせ、サブセット、グループなど(例えば、組成物中の構成成分の組み合わせ、または方法中のステップの組み合わせ)が開示される場合、これらの要素の様々な個々の及び集合的な組み合わせ及び順列のそれぞれの特定の参照が、明示的に開示されていないことがあるが、それぞれが具体的に企図され、本明細書に記載されると理解される。
【0057】
本明細書で上記した実施形態はさらに、本発明を実施するために既知の最良の形態をさらに説明するよう、かつ他の当業者が、そのような、または他の実施形態において、特定の用途または使用に必要な様々な修正を伴って、本開示を利用することを可能にするよう意図されている。したがって、記載は、本明細書で開示する形態に限定することを意図するものではない。また、添付の特許請求の範囲が代替の実施形態を包含するよう解釈されることが意図されている。
【国際調査報告】