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特表2024-539170条件付きで活性化可能な核酸構築物及び神経学的疾患の治療におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】条件付きで活性化可能な核酸構築物及び神経学的疾患の治療におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20241018BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20241018BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20241018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20241018BHJP
   C12N 5/079 20100101ALN20241018BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
C12N15/113 140Z
C12N15/113 130Z
C12N15/88 Z
A61K48/00
A61K31/7105
A61K31/712
A61P3/00
A61P9/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/02
A61P25/16
A61P25/14
A61P25/08
A61P25/28
A61P27/16
A61K9/127
A61K9/107
A61K9/14
A61K47/40
A61K47/36
A61K47/04
A61K47/42
A61K9/06
A61K47/46
C12N5/10
C12N5/079
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523714
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 US2022078466
(87)【国際公開番号】W WO2023070057
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/270,189
(32)【優先日】2021-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/332,099
(32)【優先日】2022-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524008890
【氏名又は名称】スウィッチ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン、スー-ピン
(72)【発明者】
【氏名】ダッタ、ディープシカ
(72)【発明者】
【氏名】キラリー、マリアンナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AB01
4B065BA05
4B065CA44
4C076AA09
4C076AA17
4C076AA19
4C076AA29
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC01
4C076DD21
4C076EE30
4C076EE37
4C076EE39
4C076EE41
4C076EE57
4C084AA13
4C084MA22
4C084MA24
4C084MA43
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA65
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA06
4C084ZA16
4C084ZA22
4C084ZA34
4C084ZA36
4C084ZA94
4C084ZC21
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA22
4C086MA24
4C086MA43
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA65
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA16
4C086ZA22
4C086ZA34
4C086ZA36
4C086ZA94
4C086ZC21
(57)【要約】
この明細書では、神経学的疾患又は障害の予防及び治療での使用に適した方法、組成物及びキットを提供する。この方法は、条件付きで活性化可能な低分子干渉RNA(siRNA)複合体を含む組成物を、必要とする対象に投与することを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の神経系中の標的RNAを調節する方法であって、
核酸複合体を前記対象に投与することを含み、前記核酸複合体は、
第1の核酸鎖の1つの部分と第2の核酸鎖の結合によって形成される第1の核酸二重鎖、ここで、前記第1の核酸二重鎖は標的RNAに相補的な配列を含む、及び、
前記第1の核酸鎖の少なくとも1つの部分と第3の核酸鎖の結合によって形成される第2の核酸二重鎖、ここで、前記第3の核酸鎖はオーバーハングを有し、前記オーバーハングは、前記第1の核酸鎖に相補的ではなく、かつ、インプット核酸鎖と結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離できる;
を含み、
それによって前記核酸複合体を前記対象の神経系の1つ以上の領域に分布させ、ここで、前記インプット核酸鎖が、前記神経系の1つ以上の領域中の前記第3の核酸鎖のオーバーハングに結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離し、前記標的RNAに相補的な配列を放出し、それにより、前記対象における前記標的RNAの活性又は前記標的RNAからのタンパク質の発現を少なくとも30%低下させて、神経学的疾患又は障害を治療する
ことを含む、方法。
【請求項2】
神経学的疾患又は障害を治療する方法であって、
核酸複合体を必要とする対象に投与することを含み、前記核酸複合体は、
第1の核酸鎖の1つの部分と第2の核酸鎖の結合によって形成される第1の核酸二重鎖、ここで、前記第1の核酸二重鎖は標的RNAに相補的な配列を含む、及び、
前記第1の核酸鎖の少なくとも1つの部分と第3の核酸鎖の結合によって形成される第2の核酸二重鎖、ここで、前記第3の核酸鎖はオーバーハングを有し、前記オーバーハングは、前記第1の核酸鎖に相補的ではなく、かつ、インプット核酸鎖と結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離できる;
を含み、
それによって前記核酸複合体を前記対象の神経系の1つ以上の領域に分布させ、ここで、前記インプット核酸鎖が、前記神経系の1つ以上の領域中の前記第3の核酸鎖のオーバーハングに結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離し、前記神経学的疾患又は障害と関係がある標的RNAに相補的な配列を放出し、それにより、前記対象における前記標的RNAの活性又は前記標的RNAからのタンパク質の発現を少なくとも30%低下させて、前記神経学的疾患又は障害を治療する
ことを含む、方法。
【請求項3】
前記標的RNAは神経系に特異的なRNAである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の核酸と結合した前記第1の核酸鎖の部分は、前記標的RNAに相補的な配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記標的RNAに相補的な配列の長さは10~35ヌクレオシドであり、場合によっては10~21ヌクレオシドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の核酸は、(i) 前記第1の核酸二重鎖において3’オーバーハングを有さず、及び/又は、(ii) 5’末端に末端部分が結合せず、任意に前記末端部分はブロッカーである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記核酸複合体は、
連結した20~70のヌクレオシドを含む前記第1の核酸鎖;
前記第1の核酸鎖の中央領域に結合して前記第1の核酸二重鎖を形成する前記第2の核酸鎖;及び、
前記第1の核酸鎖の5’領域及び3’領域に結合して前記第2の核酸二重鎖を形成する前記第3の核酸鎖;
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の核酸鎖の中央領域は、前記標的RNAに相補的な配列を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の核酸鎖の中央領域は前記第1の核酸鎖の5’領域に5’コネクターを介して連結している、前記第1の核酸鎖の中央領域は前記第1の核酸鎖の3’領域に3’コネクターを介して連結している、又はその両者である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記5’コネクター、前記3’コネクター又は両者は、C 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくはエキソヌクレアーゼ切断耐性部分、又はこれらの組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記修飾ヌクレオチドは2'-O-メチルヌクレオチド又は2'-Fヌクレオチドである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の核酸鎖は、前記第1の核酸鎖の中央領域と完全に相補的で、前記第1の核酸二重鎖中の前記第2の核酸鎖の5’及び3’末端に平滑末端を形成する、請求項7~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸複合体は、
連結した20~60のヌクレオシドを含む前記第1の核酸鎖;
前記第1の核酸鎖の第1の領域に結合して前記第1の核酸二重鎖を形成する前記第2の核酸鎖;
前記第1の核酸鎖の第2の領域に結合して前記第2の核酸二重鎖を形成する前記第3の核酸鎖;
を含み、ここで、
前記第1の核酸鎖の第1の領域が、前記第1の核酸鎖の第2の領域の3’側にあり、
前記第3の核酸鎖は、前記第1の核酸鎖の第1の領域の3’側にある核酸鎖のいずれの領域にも結合しない、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2の核酸鎖は、前記第1の核酸鎖の第1の領域の連結した17~22のヌクレオチドに結合して前記第1の核酸二重鎖を形成する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第3の核酸鎖は、前記第1の核酸鎖の第2の領域の連結した約14のヌクレオチドに結合して前記第2の核酸二重鎖を形成する、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の核酸鎖の第1の領域は、リンカーを介して前記第1の核酸鎖の第2の領域にリンカーを介して連結しており、任意に、前記リンカーは、C 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくはエキソヌクレアーゼ切断耐性部分、又はこれらの組合せを含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の核酸は、前記第1の核酸二重鎖において3’オーバーハングを有し、任意に、前記第1の核酸の3’オーバーハングの長さは、1、2又は3ヌクレオチドである、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の核酸鎖は、前記第1の核酸二重鎖の3’末端、5’末端又は両者に、オーバーハングを有さない、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の核酸鎖の5’末端はブロッキング部分を含む、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第3の核酸鎖のオーバーハングは、前記インプット核酸鎖と結合してトーホールドを形成でき、それによって前記第1の核酸鎖から前記第2の核酸鎖を解離し;任意に、前記第3の核酸鎖のオーバーハングは前記第3の核酸鎖の3’末端にある、前記第3の核酸鎖のオーバーハングの長さは8~16ヌクレオチドである、又はその両者である、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第3の核酸鎖の5’末端、3’末端又は両者は、末端部分を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記末端部分は、リガンド、フルオロフォア、エキソヌクレアーゼ、脂肪酸、Cy3、トリエチレングリコールと結合した逆方向dT、又はこれらの組合せを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記末端部分はパルミチン酸であり、任意に、前記パルミチン酸は前記第3の核酸鎖の3’末端に結合している、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記第1の核酸鎖、前記第2の核酸鎖及び前記第3の核酸鎖の1つ以上の、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は全てのヌクレオシドは、化学修飾されている、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の核酸二重鎖はダイサー切断部位を含まない、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記核酸二重鎖はダイサー切断部位を含まない、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記神経系の1つ以上の領域は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)又は両者を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記神経系の1つ以上の領域は、右皮質、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球、右半球、後根神経節又はこれらの組合せを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記神経学的疾患又は障害はCNS疾患又は障害であり、任意に、前記CNS疾患又は障害は、副腎白質ジストロフィー、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、アンジェルマン症候群、毛細血管拡張性失調症、シャルコー・マリー・トゥース症候群、コケイン症候群、難聴、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、てんかん、本態性振戦、脆弱X症候群、フリードライヒ運動失調症、ゴーシェ病、ハンチントン病、レッシュ・ナイハン症候群、メープルシロップ尿症、メンケス症候群、筋強直性ジストロフィー、ナルコレプシー、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、プラダー・ウィリ症候群、レフサム病、レット症候群、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、タンジール病、テイ・サックス病、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病及びツェルウェーガー症候群からなる群から選択される、請求項2~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記神経学的疾患又は障害はCNS疾患又は障害であり、任意に、前記PNS疾患又は障害は、急性運動性軸索型ニューロパチー;ボツリスム;シャルコー・マリー・トゥース病1A、1B及び1X型;シスプラチンニューロパチー;糖尿病性ニューロパチー;ジフテリア性ニューロパチー;家族性アミロイドニュロパチー;ギラン・バレー症候群;ランバート・イートン症候群;ハンセン病;IgM1抗ミエリン関連糖タンパク質を伴うニューロパチー;ピリドキシンニューロパチー;及びレフサム病からなる群から選択される、請求項2~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記核酸複合体は、前記神経系の右皮質、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球、右半球の領域の全てに分布している、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記神経系の1つ以上の領域は、右皮質、線条体、海馬、視床、小脳又はこれらの組合せを含む、請求項1~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記神経系の1つ以上の領域は、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、中脳、小脳又はこれらの組合せを含む、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記神経系の1つ以上の領域は後根神経節を含む、請求項1~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記核酸複合体は、必要とする前記対象に、皮下注入、静脈内注入、筋肉内注入、線条体内注入、髄腔内注射、脳内注射、脳室内注入、頭蓋内注入又はその組合せにより投与される、請求項1~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記核酸複合体は、必要とする前記対象に、濃度約0.001~10nMで、任意に濃度0.004~1.0nMで投与される、請求項1~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記核酸複合体は、必要とする前記対象に、約1~100mg/kg体重で、任意に10~50mg/kg体重で投与される、請求項1~36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記核酸複合体の投与は、前記対象の体重、炎症マーカー、血液化学、及び/又は肝臓、腎臓、膵臓の酵素の、増加又は減少をもたらさない、請求項1~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記核酸複合体の投与は、前記対象の意図しない免疫学的応答をもたらさない、請求項1~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記標的RNAはmRNA又はmiRNAである、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記標的RNAは、HTT、APP、MAPT、SOD1、BACE1、CASP3、TGM2、NFE2L3、TARDBP、ADRB1、CAMK2A、CBLN1、CDK5R1、GABRA1、MAPK10、NOS1、NPTX2、NRGN、NTS、PDCD2、PDE4D、PENK、SYT1、TTR、FUS、LRDD、CYBA、ATF3、ATF6、CASP2、CASP1、CASP7、CASP8、CASP9、HRK、C1QBP、BNIP3、MAPK8、MAPK14、Rac1、GSK3B、P2RX7、TRPM2、PARG、CD38、STEAP4、BMP2、GJA1、TYROBP、CTGF、ANXA2、RHOA、DUOX1、RTP801、RTP801L、NOX4、NOX1、NOX2(gp91pho、CYBB)、NOX5、DUOX2、NOXO1、NOXO2(p47phox、NCF1)、NOXA1、NOXA2(p67phox、NCF2)、p53(TP53)、HTRA2、KEAP1、SHC1、ZNHIT1、LGALS3、HI95、SOX9、ASPP1、ASPP2、CTSD、CAPNS1、FAS及びFASLG、NOGO及びNOGO-R;TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、IL1bR、MYD88、TICAM、TIRAP、HSP47、C3、GFAP、IBA-1、NPPA、CSF1R、SLC1A2、PLP1、MBP、ACCN3、SCN10A、Edg7、HTR3B、HTR3A、GPR64、NTRK1、CHRNA6、P2RX3、KCNK18、GAL、PRPH、CALCA、CALCB、P2RX3、並びにNAV1.7遺伝子からなる群から選択される遺伝子のmRNAである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記神経学的疾患は、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症、神経障害疼痛で、前記標的RNAは、HTT、MSH3、SCNA、SOD1、GSK3B、MAPT、LRRK2、PUMA、ATXN2、CASP1、CD33、IKKB、NLRP3、RELA、RIPK1又はCD22、SCN9A、SCN10A、TRKA遺伝子を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記第3の核酸鎖は、配列番号17若しくは18で示す配列、又は配列番号17若しくは18で示す配列の1つ若しくは2つのミスマッチを含む配列を含むか、それからなる、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の核酸鎖が、配列番号2、19及び20のいずれか1つで示す配列、若しくは配列番号2、19及び20のいずれか1つで示す配列の1つ若しくは2つのミスマッチを含む配列を含むか、それからなり;並びに/又は
前記第1の核酸鎖が、配列番号1で示す配列、若しくは配列番号1で示す配列の1つ、2つ若しくは3つのミスマッチを含む配列を含むか、それからなる、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
前記インプット核酸鎖は、細胞型及び/又は細胞状態選択的mRNAを含む、請求項1~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記インプット核酸鎖は、C3、GFAP、IBA-1、NPPA、CSF1R、SLC1A2、PLP1、MBP、ACCN3、SCN10A、Edg7、HTR3B、HTR3A、GPR64、NTRK1、CHRNA6、P2RX3、KCNK18、GAL、PRPH、CALCA、CALCB、P2RX3、NAV1.7及びその組合せからなる群から選択される遺伝子の1つ以上のmRNAを含む、請求項1~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記インプット核酸鎖は、細胞型又は細胞状態選択的ではないユニバーサルmRNAを含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記インプット核酸鎖は、mir-21-5p、mir-23a-3p、mir-29c-3p、mir-29b-3p、mir-124-3p及び5.8sリボソームRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAを含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記核酸複合体は、対象に医薬組成物の形態で投与される、請求項1~48のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記核酸複合体は、対象に脂質媒介送達システムにより、任意にリポソーム、ナノ粒子又はミセルにより投与される、請求項1~49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記核酸複合体は、ナノ粒子、無機ナノ粒子、核酸脂質粒子、高分子ナノ粒子、リピドイドナノ粒子、脂質ナノ粒子(LNP)、キトサン及びイヌリンナノ粒子、シクロデキストリンナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソーム、ミセル構造、カプシド、ポリマー、ポリマーマトリクス、ヒドロゲル、デンドリマー、核酸ナノ構造物、エキソソーム、GalNAc結合メリチン様ペプチド又はその組合せにより投与される、請求項1~50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記核酸複合体の投与は、投与前の前記標的RNAのレベルを少なくとも50%又は少なくとも75%低下させる、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記核酸複合体の投与は、投与前の前記標的RNAからのタンパク質発現のレベルを少なくとも50%又は少なくとも75%低下させる、請求項1~51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記標的RNAレベルの低下及び/又は前記標的RNAからのタンパク質発現のレベルの低下は、前記投与の少なくとも30日、少なくとも60日、少なくとも90日又は少なくとも120日続き、任意に、前記低下は、前部脊髄、後部脊髄、左半球、右半球又はその組合せでの低下である、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記標的RNAレベルの低下及び/又は前記標的RNAからのタンパク質発現のレベルの低下は、前記投与の30日、60日、90日又は120日以降に判定し、任意に、前記低下は、前部脊髄、後部脊髄、左半球、右半球又はその組合せでの低下である、請求項1~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記投与の前、前記投与の後又は両方の時点で、前記標的RNAレベル及び/又は前記標的RNAからのタンパク質発現のレベルを判定することを含む、請求項1~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
前記低下は、右皮質、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球、右半球又はこれらの組合せを含む領域の1つ以上で生じる、請求項1~56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
前記投与を2回以上行い、前記核酸複合体の2回の投与の間隔は少なくとも6月である、請求項1~57のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願
この出願は、米国仮出願第63/270,189号(2021年10月21日出願)及び第63/332,099号(2022年4月18日出願)に対して、35 U.S.C. §119(e)に基づいて優先権を主張し、それらの内容は、全体がこの明細書に明示的に参照により組み込まれる。
【0002】
配列表の参照
この出願は、電子形式の配列表とともに出願している。配列表は、サイズが151KBで、2022年7月13日に作成した75EN-329794-WOと題するファイルとして提供する。配列表の電子形式での情報は、その全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本開示は、一般に、核酸の分野、例えば、条件付きで活性化可能な低分子干渉RNA複合体に関する。
【背景技術】
【0004】
関連技術の説明
動力学的核酸ナノテクノロジー及び生体分子コンピューティングの分野の新たな発展にもかかわらず、核酸論理スイッチを使用してRNA転写物(例.mRNA及びmiRNA)を感知し、RNA干渉(RNAi)療法を特定の疾患関連細胞に限定できる標的化RNAi療法の開発には依然として課題がある。特に、疾患や障害を治療するために、薬効、感度及び安定性が改善され、設計が複雑ではなく、並びに必要な用量が少ない、標的化され、条件付きで活性化されるRNAi療法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
この明細書に記載した主題の1以上の実施の詳細は、図面と以下の説明に記載している。その他の特徴、側面及び利点は、以下の説明、図面及び特許請求の範囲から明らかである。この概要も以下の詳細な説明も、この発明の主題の範囲を定義し、制限するものではない。
【0006】
この明細書では、対象の神経系中の標的RNAを調節する方法を開示する。一部の態様では、この方法は、核酸複合体を対象に投与することを含み、核酸複合体は、第1の核酸鎖の1つの部分と第2の核酸鎖の結合によって形成される第1の核酸二重鎖、ここで、前記第1の核酸二重鎖は標的RNAに相補的な配列を含む、及び、前記第1の核酸鎖の少なくとも1つの部分と第3の核酸鎖の結合によって形成される第2の核酸二重鎖、ここで、前記第3の核酸鎖はオーバーハングを有し、前記オーバーハングは、前記第1の核酸鎖に相補的ではなく、かつ、インプット核酸鎖と結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離できる;を含み、それによって前記核酸複合体を前記対象の神経系の1つ以上の領域に分布させ、ここで、前記インプット核酸鎖が、前記神経系の1つ以上の領域中の前記第3の核酸鎖のオーバーハングに結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離し、前記標的RNAに相補的な配列を放出し、それにより、前記対象における前記標的RNAの活性又は前記標的RNAからのタンパク質の発現を少なくとも30%低下させて、前記神経学的疾患又は障害を治療する;ことを含む。この明細書では、神経学的疾患又は障害を治療する方法であって、核酸複合体を必要とする対象に投与することを含み、前記核酸複合体は、第1の核酸鎖の1つの部分と第2の核酸鎖の結合によって形成される第1の核酸二重鎖、ここで、前記第1の核酸二重鎖は標的RNAに相補的な配列を含む、及び、前記第1の核酸鎖の少なくとも1つの部分と第3の核酸鎖の結合によって形成される第2の核酸二重鎖、ここで、前記第3の核酸鎖はオーバーハングを有し、前記オーバーハングは、前記第1の核酸鎖に相補的ではなく、かつ、インプット核酸鎖と結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離できる;を含み、それによって前記核酸複合体を前記対象の神経系の1つ以上の領域に分布させ、ここで、前記インプット核酸鎖が、前記神経系の1つ以上の領域中の前記第3の核酸鎖のオーバーハングに結合して、前記第1の核酸鎖から前記第3の核酸鎖を解離し、前記神経学的疾患又は障害と関係がある標的RNAに相補的な配列を放出し、それにより、前記対象における前記標的RNAの活性又は前記標的RNAからのタンパク質の発現を少なくとも30%低下させて、前記神経学的疾患又は障害を治療する;ことを含む方法も開示する。
【0007】
] 標的RNAは、例えば神経系に特異的なRNAの可能性がある。一部の態様では、第2の核酸と結合した第1の核酸鎖の部分は、標的RNAに相補的な配列を含む。標的RNAに相補的な配列の長さは、10~35ヌクレオシドの可能性があり、一部の態様では、10~21ヌクレオシドの可能性がある。一部の態様では、第2の核酸は、(i) 前記第1の核酸二重鎖において3’オーバーハングを有さず、及び/又は、(ii) 5’末端に末端部分が結合せず、任意に前記末端部分はブロッカーである。
【0008】
一部の態様では、核酸複合体は、連結した20~70のヌクレオシドを含む第1の核酸鎖;第1の核酸鎖の中央領域に結合して第1の核酸二重鎖を形成する第2の核酸鎖;及び、第1の核酸鎖の5’領域及び3’領域に結合して第2の核酸二重鎖を形成する第3の核酸鎖;を含む。
【0009】
一部の態様では、第1の核酸鎖の中央領域は、標的RNAに相補的な配列を含む。一部の態様では、第1の核酸鎖の中央領域は、第1の核酸鎖の5’領域に5’コネクターを介して連結している、第1の核酸鎖の中央領域は、第1の核酸鎖の3’領域に3’コネクターを介して連結している、又はその両者である。
【0010】
一部の態様では、5’コネクター、3’コネクター又は両者は、C 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくはエキソヌクレアーゼ切断耐性部分、又はこれらの組合せを含む。修飾ヌクレオチドは、例えば、2'-O-メチルヌクレオチド又は2'-Fヌクレオチドの可能性がある。
【0011】
一部の態様では、第2の核酸鎖は、第1の核酸鎖の中央領域と完全に相補的で、第1の核酸二重鎖中の前記第2の核酸鎖の5’及び3’末端に平滑末端を形成する。一部の態様では、核酸複合体は、連結した20~60のヌクレオシドを含む第1の核酸鎖;第1の核酸鎖の第1の領域に結合して第1の核酸二重鎖を形成する第2の核酸鎖;第1の核酸鎖の第2の領域に結合して第2の核酸二重鎖を形成する第3の核酸鎖;を含み、ここで、前記第1の核酸鎖の第1の領域が、前記第1の核酸鎖の第2の領域の3’側にあり、前記第3の核酸鎖は、前記第1の核酸鎖の第1の領域の3’側にある核酸鎖のいずれの領域にも結合しない。
【0012】
一部の態様では、第2の核酸鎖は、第1の核酸鎖の第1の領域の連結した17~22のヌクレオチドに結合して第1の核酸二重鎖を形成する。一部の態様では、第3の核酸鎖は、第1の核酸鎖の第2の領域の連結した約14のヌクレオチドに結合して第2の核酸二重鎖を形成する。一部の態様では、第1の核酸鎖の第1の領域は、リンカーを介して第1の核酸鎖の第2の領域にリンカーを介して連結しており、任意に、前記リンカーは、C 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド若しくはエキソヌクレアーゼ切断耐性部分、又はこれらの組合せを含む。一部の態様では、第1の核酸は、第1の核酸二重鎖において3’オーバーハングを有し、任意に、第1の核酸の3’オーバーハングの長さは、1、2又は3ヌクレオチドである。
【0013】
一部の態様では、第2の核酸鎖は、第1の核酸二重鎖の3’末端、5’末端又は両者にオーバーハングを有さない。一部の態様では、第2の核酸鎖の5’末端は、ブロッキング部分を含む。一部の態様では、第3の核酸鎖のオーバーハングは、インプット核酸鎖と結合してトーホールドを形成でき、それによって第1の核酸鎖から第2の核酸鎖を解離し;任意に、第3の核酸鎖のオーバーハングは第3の核酸鎖の3’末端にある、第3の核酸鎖のオーバーハングの長さは8~16ヌクレオチドである、又はその両者である。
【0014】
第3の核酸鎖の5’末端、3’末端又は両者は、末端部分を含んでいてもよい。一部の態様では、末端部分は、リガンド、フルオロフォア、エキソヌクレアーゼ、脂肪酸、Cy3、トリエチレングリコールと結合した逆方向dT、又はこれらの組合せを含む。一部の態様では、末端部分はパルミチン酸であり、例えば、パルミチン酸は、第3の核酸鎖の3’末端に結合している。
【0015】
一部の態様では、第1の核酸鎖、第2の核酸鎖及び第3の核酸鎖の1つ以上の、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は全てのヌクレオシドは、化学修飾されている。一部の態様では、第1の核酸二重鎖はダイサー切断部位を含まない。一部の態様では、核酸二重鎖はダイサー切断部位を含まない。一部の態様では、神経系の1つ以上の領域は、中枢神経系(CNS)、末梢神経系(PNS)又は両者を含む。一部の態様では、神経系の1つ以上の領域は、右皮質、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球、右半球、後根神経節又はこの組合せを含む。
【0016】
一部の態様では、神経学的疾患又は障害はCNS疾患又は障害であり、任意に、CNS疾患又は障害は、副腎白質ジストロフィー、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、アンジェルマン症候群、毛細血管拡張性失調症、シャルコー・マリー・トゥース症候群、コケイン症候群、難聴、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、てんかん、本態性振戦、脆弱X症候群、フリードライヒ運動失調症、ゴーシェ病、ハンチントン病、レッシュ・ナイハン症候群、メープルシロップ尿症、メンケス症候群、筋強直性ジストロフィー、ナルコレプシー、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、プラダー・ウィリ症候群、レフサム病、レット症候群、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、タンジール病、テイ・サックス病、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病及びツェルウェーガー症候群からなる群から選択される。一部の態様では、神経学的疾患又は障害はCNS疾患又は障害であり、任意に、PNS疾患又は障害は、急性運動性軸索型ニューロパチー;ボツリスム;シャルコー・マリー・トゥース病1A、1B及び1X型;シスプラチンニューロパチー;糖尿病性ニューロパチー;ジフテリア性ニューロパチー;家族性アミロイドニュロパチー;ギラン・バレー症候群;ランバート・イートン症候群;ハンセン病;IgM1抗ミエリン関連糖タンパク質を伴うニューロパチー;ピリドキシンニューロパチー;及びレフサム病からなる群から選択される。
【0017】
一部の態様では、核酸複合体は、神経系の右皮質、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球、右半球の領域の全てに分布している。一部の態様では、神経系の1つ以上の領域は、右皮質、線条体、海馬、視床、小脳又はこの組合せを含む。一部の態様では、神経系の1つ以上の領域は、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、中脳、小脳又はこの組合せを含む。一部の態様では、神経系の1つ以上の領域は後根神経節を含む。一部の態様では、核酸複合体は、必要とする対象に、皮下注入、静脈内注入、筋肉内注入、線条体内注入、髄腔内注射、脳内注射、脳室内注入、頭蓋内注入又はその組合せにより投与される。一部の態様では、核酸複合体は、必要とする前記対象に、濃度約0.001~10nMで、例えば濃度0.004~1.0nMで投与される。
【0018】
一部の態様では、核酸複合体は、必要とする前記対象に、約1~100mg/kg体重で、任意に10~50mg/kg体重で投与される。一部の態様では、核酸複合体の投与は、対象の体重、炎症マーカー、血液化学、及び/又は肝臓、腎臓、膵臓の酵素の、増加又は減少をもたらさない。一部の態様では、核酸複合体の投与は、対象の意図しない免疫学的応答をもたらさない。一部の態様では、標的RNAは、mRNA又はmiRNAである。一部の態様では、標的RNAは、HTT、APP、MAPT、SOD1、BACE1、CASP3、TGM2、NFE2L3、TARDBP、ADRB1、CAMK2A、CBLN1、CDK5R1、GABRA1、MAPK10、NOS1、NPTX2、NRGN、NTS、PDCD2、PDE4D、PENK、SYT1、TTR、FUS、LRDD、CYBA、ATF3、ATF6、CASP2、CASP1、CASP7、CASP8、CASP9、HRK、C1QBP、BNIP3、MAPK8、MAPK14、Rac1、GSK3B、P2RX7、TRPM2、PARG、CD38、STEAP4、BMP2、GJA1、TYROBP、CTGF、ANXA2、RHOA、DUOX1、RTP801、RTP801L、NOX4、NOX1、NOX2(gp91pho、CYBB)、NOX5、DUOX2、NOXO1、NOXO2(p47phox、NCF1)、NOXA1、NOXA2(p67phox、NCF2)、p53(TP53)、HTRA2、KEAP1、SHC1、ZNHIT1、LGALS3、HI95、SOX9、ASPP1、ASPP2、CTSD、CAPNS1、FAS及びFASLG、NOGO及びNOGO-R;TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、IL1bR、MYD88、TICAM、TIRAP、HSP47、C3、GFAP、IBA-1、NPPA、CSF1R、SLC1A2、PLP1、MBP、ACCN3、SCN10A、Edg7、HTR3B、HTR3A、GPR64、NTRK1、CHRNA6、P2RX3、KCNK18、GAL、PRPH、CALCA、CALCB、P2RX3、並びにNAV1.7遺伝子からなる群から選択される遺伝子のmRNAである。
【0019】
一部の態様では、前記神経学的疾患は、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病又は筋萎縮性側索硬化症、神経障害疼痛で、前記標的RNAは、前記HTT、MSH3、SCNA、SOD1、GSK3B、MAPT、LRRK2、PUMA、ATXN2、CASP1、CD33、IKKB、NLRP3、RELA、RIPK1又はCD22、SCN9A、SCN10A、TRKA遺伝子を含む。一部の態様では、第3の核酸鎖は、配列番号17若しくは18で示す配列、又は配列番号17若しくは18で示す配列の1つ若しくは2つのミスマッチを含む配列を含むか、それからなる。一部の態様では、第2の核酸鎖が、配列番号2、19及び20のいずれか1つで示す配列、若しくは配列番号2、19及び20のいずれか1つで示す配列の1つ若しくは2つのミスマッチを含む配列を含むか、それからなり;並びに/又は、第1の核酸鎖が、配列番号1で示す配列、若しくは配列番号1で示す配列の1つ、2つ若しくは3つのミスマッチを含む配列を含むか、それからなる。
【0020】
一部の態様では、インプット核酸鎖は、細胞型及び/又は細胞状態選択的mRNAを含む。一部の態様では、インプット核酸鎖は、C3、GFAP、IBA-1、NPPA、CSF1R、SLC1A2、PLP1、MBP、ACCN3、SCN10A、Edg7、HTR3B、HTR3A、GPR64、NTRK1、CHRNA6、P2RX3、KCNK18、GAL、PRPH、CALCA、CALCB、P2RX3、NAV1.7及びその組合せから選択される遺伝子の1つ以上のmRNAを含む。
【0021】
インプット核酸鎖は、細胞型又は細胞状態選択的ではないユニバーサルmRNAを含むことができる。一部の態様では、インプット核酸鎖は、mir-21-5p、mir-23a-3p、mir-29c-3p、mir-29b-3p、mir-124-3p及び5.8sリボソームRNAからなる群から選択される1つ以上のmiRNAを含む。一部の態様では、核酸複合体は、対象に医薬組成物の形態で投与される。一部の態様では、核酸複合体は、対象に脂質媒介送達システムにより、任意にリポソーム、ナノ粒子又はミセルにより投与される。一部の態様では、核酸複合体は、ナノ粒子、無機ナノ粒子、核酸脂質粒子、高分子ナノ粒子、リピドイドナノ粒子、脂質ナノ粒子(LNP)、キトサン及びイヌリンナノ粒子、シクロデキストリンナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソーム、ミセル構造、カプシド、ポリマー、ポリマーマトリクス、ヒドロゲル、デンドリマー、核酸ナノ構造物、エキソソーム、GalNAc結合メリチン様ペプチド又はその組合せにより投与される。
【0022】
一部の態様では、核酸複合体の投与は、投与前の標的RNAのレベルを少なくとも50%又は少なくとも75%低下させる。
【0023】
一部の態様では、核酸複合体の投与は、投与前の標的RNAからのタンパク質発現のレベルを少なくとも50%又は少なくとも75%低下させる。一部の態様では、標的RNAレベルの低下及び/又は標的RNAからのタンパク質発現のレベルの低下は、投与の少なくとも30日、少なくとも60日、少なくとも90日、又は少なくとも120日続き、任意に、低下は、前部脊髄、後部脊髄、左半球、右半球又はその組合せでの低下である。一部の態様では、標的RNAレベルの低下及び/又は標的RNAからのタンパク質発現のレベルの低下は、投与の30日、60日、90日、又は120日以降に判定し、任意に、低下は、前部脊髄、後部脊髄、左半球、右半球又はその組合せでの低下である。
【0024】
一部の態様では、この方法は、投与前、投与後又は両者の時点で、標的RNAレベル及び/又は標的RNAからのタンパク質発現のレベルを判定することを含む。一部の態様では、低下は、右皮質、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球、右半球又はこの組合せを含む領域の1つ以上で生じる。一部の態様では、投与を2回以上行い、核酸複合体の2回の投与の間隔は少なくとも6月である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、2つの限定するものではない代表的な核酸複合体構築物の概略図を示す。
図2図2は、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物の概略図を示す。
図3図3は、2つの限定するものではない代表的な核酸複合体構築物の概略図を示す。
図4図4は、限定するものではない代表的な核酸複合体のセンサー核酸鎖、コア核酸鎖及びパッセンジャー核酸鎖の概略図を示す。
図5図5は、スクリーニング領域を黄色で強調した限定するものではない代表的な核酸複合体構築物の概略図を示す。
図6図6は、コア核酸鎖からのセンサー核酸鎖の解離及びコア核酸鎖オーバーハングの分解後の活性RNAi二重鎖の形成を示す概略図である。
図7図7は、CASi複合体の血清による分解に対する経時的な安定性を示す。
図8図8は、細胞におけるsiRNAの局在化を示す。
図9図9Aは、CASi注射の48時間後におけるCASiの中枢神経系(CNS)での分布を示す顕微鏡画像である。図9Bは、注射の48時間後におけるCASiのCNS細胞への取り込みを示す顕微鏡画像である。
図10図10Aは、生理食塩水を投与した対照群と比較した、CASi C投与群の体重を示す図である。図10Bは、対照群と比較した、CASi C投与群のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)(U/L)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(U/L)、IL-6(pg/mL)、マトリクスメタロプロテイナーゼ1(MMP-1)(ng/mL)、血管細胞接着分子1(VCAM-1)(ng/mL)、IL-8(pg/mL)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)(pg/mL)、C反応性タンパク質(CRP)(μg/mL)を示す図である。
図11図11A~Bは、生理食塩水処置動物(c)と比較した、CASi処置動物(t)のさまざまな脳の領域におけるグリア線維酸性タンパク質mRNA(GFAP mRNA)(図11A)及びイオン化カルシウム結合アダプター分子1mRNA(IBA-1 mRNA)(図11B)のレベルを示すグラフである。
図12図12は、代表的なsiRNA候補のRNAi活性を示すグラフである。
図13図13Aは、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物T2 CASiの概略図である。図13Bは、センサー鎖(配列番号18)、コア鎖(配列番号19と配列番号20の核酸がC3スペーサーを介して連結)及びパッセンジャー鎖(配列番号1)を含むCASi A構築物の配列を示す。/5Sp9/ = 5’トリエチレングリコールスペーサー;/3AmMC6T/ = 3'アミノ修飾剤C6 dT。
図14図14Aは、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物T1 CASiの概略図である。図14Bは、センサー鎖(配列番号17)、コア鎖(配列番号2)及びパッセンジャー鎖(配列番号1)を含むCASi B構築物の配列を示す。図14C~Eは、それぞれ、センサー鎖(図14C:配列番号17)、パッセンジャー鎖(図14D:配列番号1)及びコア鎖(図14E:配列番号2)の代表的な化学式を示す。図14Fは、T1 CASi構築物を作製する代表的な配合を示す。図14Gは、T1 CASi構築物、それぞれの鎖及び二重鎖のポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)分析の結果を示す。
図15図15Aは、センサー1CASi構築物及びセンサー1CASi構築物のsiRNAドメインの標的タンパク質発現のデータのグラフを示す。図15Bは、細胞型特異的mRNA(例.GFAP mRNA)を発現する細胞(「+mRNA A」)及び細胞型特異的mRNAを発現しない細胞(「-mRNA A」)におけるCASi A構築物の標的タンパク質発現のデータのグラフを示す。図15Cは、CASi B構築物、CASi B構築物のsiRNAドメイン、センサー1CASi及びセンサー1CASiのsiRNAドメインの標的タンパク質発現のデータのグラフを示す。
図16図16は、表1に列挙するユニバーサルCASi構築物の標的タンパク質発現のデータを示すグラフである。
図17図17は、生理食塩水処置動物(c)と比較した、CASi B処置動物(t)の脳のさまざまな領域における標的タンパク質の発現を示すグラフである。
図18図18は、CASi投与の14日後、30日後及び90日後の、脳のさまざまな領域における標的タンパク質の発現を示すグラフである。
図19図19は、投与の30日後及び90日後の、生理食塩水処置マウスと比較した、CASi構築物処置マウスの脊髄における標的mRNAレベルを示すグラフである。
図20図20は、CASi投与の30日後の神経系のさまざまな領域における標的mRNAレベルを示すグラフである。
図21図21は、3’末端パルミチン酸を有さない(上のパネル)及び3’末端パルミチン酸を有する(下のパネル)T1 CASi構築物で処置したマウスの、注射の14日後の脳のさまざまな領域における標的mRNAレベルを示すグラフである。
図22図22は、標準的な8ヌクレオチドのトーホールドを有するCASi構築物(パルミチン酸有り又はなし)(8nt toe + PA又は8nt toe)、12ヌクレオチドのトーホールドを有するCASi構築物(12nt toe)、又は16ヌクレオチドのトーホールドを有するCASi構築物(16nt toe)で処置したマウスの、脳のさまざまな領域における標的mRNAレベルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面を通して、参照番号は、参照要素間の対応を示すために再使用されることがある。図面は、明細書に記載した態様の実施例を説明するために提供されるものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。
【0027】
詳細な説明
以下の詳細な説明では、この出願の一部を形成する図面を参照する。図面では、別段の定めがない限り、同様の記号は、通常、同様の要素を示す。詳細な説明、図面及び特許請求の範囲に記載される説明的態様は、限定することを意図したものではない。明細書に提示する主題の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他の態様を利用してもよく、他の変更を加えてもよい。明細書で一般的に説明され、図で示されるこの開示の側面を、多種多様な構成で配置すること、置換すること、組み合わせること、分離すること及び設計することができ、それらの全てが、明細書で明確に企図されており、明細書での開示の一部とされることは、容易に理解される。
【0028】
明細書で言及する全ての特許、公開特許出願、他の刊行物及びGenBankからの配列、並びに他のデータベースは、関連技術に関してそれら全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0029】
RNA干渉(RNAi)は、ほとんどの真核生物において保存される固有の細胞機構であって、細胞運命の決定、分化、生存及びウイルス感染からの防御に欠かせない遺伝子の発現を調節するのに役立つ細胞機構である。研究者は、配列特異的遺伝子サイレンシングのために合成二本鎖RNAを設計することにより、この天然の機構を活用している。動力学的核酸ナノテクノロジー及び生体分子コンピューティングの分野の新たな発展も、プログラム可能なRNAi剤を設計するための概念的アプローチを提供する。しかし、RNAサイレンシングを特定の疾患関連細胞に限定し、正常組織に毒性副作用が及ばないようにするために、核酸論理スイッチを使用してRNA転写物(例.mRNA及びmiRNA)を感知できる標的化RNAi療法を開発する上での課題が残っている。重大な課題には、十分に抑制されないバックグラウンド薬物活性、活性化状態での弱い薬効、インプット及びアウトプット配列オーバーラップ、高い設計の複雑性、短い持続期間(24時間未満)、並びに高い要求濃度(10nM超)が含まれる。
【0030】
RNAi剤は、既知の遺伝的背景に関連するさまざまな疾患の病因に関与する遺伝子のサイレンシングに使用できる。多くの神経変性障害では、原因療法が利用できないので、siRNAは、新規な治療戦略を開発する有望な選択肢である。
【0031】
この明細書では、神経学的疾患又は障害(例.中枢神経系の疾患又は障害)の予防及び治療での使用に適した方法、組成物及びキットを提供する。この方法は、条件付きで活性化可能な低分子干渉RNA(CASi RNA又はsiRNA)複合体を含む組成物を、必要とする対象に投与することを含むことができる。明細書に記載したCASi RNA複合体又はsiRNA複合体は、siRNA複合体へのインプット核酸鎖(例.神経学的疾患バイオマーカー遺伝子)の相補的結合により誘発された場合に不活性な状態から活性化された状態へスイッチでき、それによって、siRNA複合体のRNA干渉活性を活性化して、特定の標的RNA(例.サイレンシングすべきRNA)を標的とすることができる。一部の態様では、この方法は、条件付きで活性化されるRNA干渉活性により、治療対象の安全性と忍容性を維持しながら、低濃度での改善された効力、オフターゲット効果を低減する改善された特異性で、疾患関連細胞内の特定の疾患遺伝子をサイレンシングできる。一部の態様では、明細書に記載した方法は、神経系の1つ以上の領域(例.大脳皮質、線条体、海馬、視床、小脳)における神経学的疾患又は障害(例.ハンチントン病)に関連する標的核酸を少なくとも50%減少できる。
【0032】
定義
別段の定義がある場合を除き、この明細書で使用する技術及び学術用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。例えば、Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994);Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press (Cold Spring Harbor, NY 1989)を参照。この開示のために、以下の用語を定義する。
【0033】
この明細書では、用語「約」は、その値の±5%を意味する。
【0034】
この明細書では、「ヌクレオシド」は、リボース又はデオキシリボースに共有結合したプリン又はピリミジン塩基を有する分子を指す。代表的なヌクレオシドには、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン及びチミジンが含まれる。
【0035】
「ヌクレオチド」は、糖部分に1つ以上のリン酸基がエステル結合したヌクレオシドを指す。代表的なヌクレオチドには、ヌクレオシド一リン酸、二リン酸及び三リン酸が含まれる。
【0036】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」は、この明細書では同じ意味で使用され、5’炭素原子と3’炭素原子がホスホジエステル結合しているヌクレオチドのポリマーを指す。
【0037】
「RNA」、「RNA分子」又は「リボ核酸分子」は、リボヌクレオチドのポリマーを指す。「DNA」、「DNA分子」又は「デオキシリボ核酸分子」は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNA及びRNAは、(例えば、それぞれ、DNA複製又はDNAの転写により)自然に合成される。RNAを転写後に修飾できる。DNA及びRNAは、化学的にも合成できる。DNA及びRNAは、一本鎖又は多鎖状(例えば、二本鎖状又は三本鎖状)の可能性がある。「mRNA」又は「メッセンジャーRNA」は、遺伝子のDNA鎖の1つに相補的な、一本鎖RNA分子である。「miRNA」又は「マイクロRNA」は、RNAサイレンシング及び遺伝子発現の転写後調節において機能する、低分子一本鎖ノンコーディングRNA分子である。
【0038】
「RNAアナログ」は、対応する未改変又は未修飾RNAと比較して少なくとも1つの改変又は修飾ヌクレオチドを有するポリヌクレオチドを指す。ヌクレオチドは、対応する未改変又は未修飾RNAと同じ又は同様の性質又は機能、例えば、塩基対を形成する性質又は機能、を保持できる。
【0039】
一本鎖ポリヌクレオチドは、5’末端及び3’末端を有する。一本鎖ポリヌクレオチドの「5’末端」及び「3’末端」は、一本鎖ポリヌクレオチドの末端残基を示し、それぞれの末端の遊離基の性質に基づいて区別される。一本鎖ポリヌクレオチドの5’末端は、その末端(5’末端)のデオキシリボース又はリボースの5位が炭素である一本鎖ポリヌクレオチドの末端残基を示す。一本鎖ポリヌクレオチドの3’末端は、その末端(3’末端)のヌクレオチド又はヌクレオシドの3位の炭素がヒドロキシル基で終わる残基を示す。さまざまな場合に、5’末端及び3’末端は、化学的に又は生物学的に、例えば、当業者には理解されるような官能基又は他の化合物の付加により、修飾できる。
【0040】
この明細書では、「相補的結合」及び「相補的に結合する」は、2つの一本鎖が互いに塩基対合して、核酸二重鎖又は二本鎖核酸を形成することを意味する。「塩基対合する」は、この明細書では、ワトソン・クリック塩基対合則に従う、反対の相補ポリヌクレオチド鎖又は配列上の塩基対間の水素結合の形成を示す。例えば、標準ワトソン・クリックDNA塩基対合では、アデニン(A)はチミン(T)と塩基対を形成し、グアニン(G)はシトシン(C)と塩基対を形成する。RNA塩基対合の場合、アデニン(A)はウラシル(U)と塩基対を形成し、グアニン(G)はシトシン(C)と塩基対を形成する。2つの一本鎖間の、ある特定の割合のミスマッチは、安定した二本鎖の二重鎖を形成できるのであれば、許容される。一部の態様では、相補的に結合する2つの鎖のミスマッチの割合は、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%若しくは50%、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、最大でもこれらの割合、若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。
【0041】
この明細書では、「RNA干渉」及び「RNAi」は、RNAの選択的細胞内分解を指す。RNAiが細胞内で自然に生じ、外来RNA(例.ウイルスRNA)を除去できる。自然のRNAiは、分解機構を他の類似のRNA配列に方向付ける、遊離dsRNAから切断された断片によって進行する。あるいは、RNAiは、例えば標的遺伝子の発現をサイレンシングするために、人間の手によって開始できる。
【0042】
この明細書では、「低分子干渉RNA」及び「siRNA」は、siRNAが標的遺伝子と同じ細胞内で活性化された場合に、遺伝子又は標的遺伝子の発現を低下又は阻害できるRNA又はRNAアナログを指す。この明細書で使用するsiRNAは、天然に存在する核酸塩基及び/又は化学修飾された核酸塩基(RNAアナログ)を含むことができる。
【0043】
この明細書では、「治療」は、患者に現れた、又は患者が罹患する可能性のある疾患、障害又は生理学的状態に応じて行われる臨床介入を指す。治療の目的には、症状の緩和若しくは予防、疾患、障害若しくは状態の進行若しくは悪化の遅延若しくは停止、及び/又は、疾患、障害、若しくは状態の寛解が含まれるが、これらには限定されない。「治療」とは、治療的処置と予防的若しくは防止的手段のいずれか又は両者を指す。治療を必要とする対象には、疾患、障害又は望ましくない生理学的状態に既に罹患している人、並びに、疾患、障害又は望ましくない生理学的状態を予防する必要がある人が含まれる。
【0044】
この明細書では、用語「予防、予防する(prophylaxis、prevent、preventing、prevention)」及びその文法的変形は、臨床的な疾患状態の発生の可能性を低減するための、対象、例えば哺乳動物(ヒトを含む)の無症状の疾患状態の予防的処置を指す。この方法は、障害若しくは状態及び/若しくはその1つ以上の付随する症状の発症若しくは再発を部分的若しくは完全に遅延若しくは排除させる、対象が障害若しくは状態を獲得若しくは再獲得するのを妨げる、又は、障害若しくは状態若しくはその1つ以上の付随する症状の獲得若しくは再獲得する対象のリスクを低減することができる。対象は、一般集団と比較して、臨床的な疾患状態に罹患するリスクを高めることが知られている因子に基づいて、予防的治療のために選択される。「予防」治療は、(a)一次予防及び(b)二次予防に分けることができる。一次予防は、臨床的な疾患状態をまだ示していない対象の治療として定義され、二次予防は、同じ又は類似する臨床的な疾患状態の2回目の発生の予防として定義される。
【0045】
明細書では、用語「薬学的に許容される」担体は、予定の投与量及び濃度で、曝露される細胞又は哺乳動物に対して毒性がないものである。「薬学的に許容される」担体は、経口適用又は注射といった選択した適用様式に適しており、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤などの固体、及び、液剤、乳剤、懸濁液などの液体といった従来の医薬製剤の形態で投与される、有機又は無機、固体又は液体の賦形剤であってもよいが、これらには限定されない。生理学的に許容される担体は、リン酸緩衝液やクエン酸緩衝液といった水性pH緩衝液であることが多い。生理学的に許容される担体は、アスコルビン酸を含む抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、アミノ酸、グルコース、マンノース又はデキストリンなどの炭水化物、EDTAなどのキレート剤、マンニトール又はソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオン、並びに、ツイーン(登録商標)、ポリエチレングリコール及びプルロニック(登録商標)などの非イオン性界面活性剤を1つ以上含んでいてもよい。補助剤、安定化剤、乳化剤、潤滑剤、結合剤、pH調整剤、制御剤、等張化剤及び他の従来の添加剤も、担体に添加してもよい。
【0046】
この明細書では、用語「有効量」、「薬学的有効量」又は「治療有効量」は、有益な又は望ましい生物学的な結果及び/又は臨床的な結果をもたらすのに十分な量を指す。
【0047】
この明細書では、用語「薬学的に許容される賦形剤」は、対象に化合物を投与するための薬学的に許容される担体、添加剤又は希釈剤を提供する適切な物質を指す。薬学的に許容される賦形剤は、薬学的に許容される希釈剤、薬学的に許容される添加剤及び薬学的に許容される担体と呼ばれる物質を包含できる。
【0048】
この明細書では、「対象」は、診断、処置又は治療が望まれる動物を指す。一部の態様では、対象は哺乳動物である。この明細書では、「哺乳動物」は、哺乳類に属する個体を指し、ヒト、家畜、動物園の動物、スポーツやペットの動物を含むが、これらには限定されない。哺乳動物の限定するものではない例には、マウス;ラット;ウサギ;モルモット;イヌ;ネコ;ヒツジ;ヤギ;ウシ;ウマ;サル、チンパンジー及び類人猿などの霊長類、特にヒトが含まれる。一部の態様では、哺乳動物は霊長類である。一部の態様では、哺乳動物はヒトである。一部の態様では、哺乳動物はヒト以外である。
【0049】
核酸複合体
この明細書では、核酸複合体のセンサー核酸鎖の配列とインプット核酸鎖(例.標的細胞(疾患関連細胞等)に特異的な疾患バイオマーカー遺伝子のmRNA)との相補的結合時に条件付きで活性化される核酸複合体を提供する。活性化された核酸複合体は、コア核酸鎖とパッセンジャー核酸鎖で形成される多くのRNAi二重鎖を放出でき、標的RNAを特異的に阻害又はサイレンシングできる。標的RNAの配列は、インプット核酸鎖とは無関係の可能性がある。標的RNAは、インプット核酸鎖が由来する遺伝子とは異なる遺伝子に由来する可能性がある。一部の態様では、標的RNAは、インプット核酸鎖が由来する遺伝子と同じ遺伝子に由来する。核酸複合体、関連する組成物及びキットを使用して、神経学的疾患又は障害、例えば、中枢神経系の疾患又は障害を予防又は治療できる。
【0050】
図1~3は、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物の概略図を示す。
【0051】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体は、図4の限定的するものではない態様に示されるように、コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及びセンサー核酸鎖を含む。これらの3つの鎖は、互いに塩基対を形成して、例えば、RNAi二重鎖及びセンサー二重鎖を形成できる。コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及びセンサー核酸鎖のうちの1つ以上が、修飾ヌクレオチドを含むRNAアナログの可能性がある。
【0052】
「核酸二重鎖」は、この明細書では、相補的結合によって互いに結合している2つの一本鎖ポリヌクレオチドを指す。核酸二重鎖は、主として、2つの一本鎖ポリヌクレオチド間の塩基対の非共有結合により及び塩基スタッキング相互作用により維持されるらせん構造、例えば、二本鎖RNA分子を形成できる。
【0053】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体のコア核酸鎖は、5’領域、3’領域、及び5’領域と3’領域の間の中央領域を含むことができる(例えば、図1及び3を参照)。コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の5’領域及び/又は3’領域にコネクターを介して連結できる。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の5’領域に5’コネクターを介して連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の3’領域に3’コネクターを介して連結している。コア核酸鎖の中央領域は、パッセンジャー核酸鎖と相補的に結合してRNAi二重鎖を形成する。コア核酸鎖の配列全体が、パッセンジャー核酸鎖と相補的に結合するとは限らない。例えば、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域は、パッセンジャー核酸鎖を相補的に結合しない。
【0054】
コア核酸鎖は、第1の領域及び第2の領域を含むことができ、第1の領域は、第2の領域の3’の方向にある(例えば、図2及び3を参照)。言い換えると、第1の領域はコア核酸鎖の3’末端に、第2の領域はコア核酸鎖の5’末端にある。コア核酸鎖の第1の領域は、コア核酸鎖の第2の領域に、5’コネクターともいうことができるコネクターを介して連結できる。5’コネクターは、隣接する2つのヌクレオシドを接続する標準的なホスホジエステルヌクレオシド間結合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖は、1つのコネクター(例.5’コネクター)のみを含み、3’コネクターを含まない。コア核酸鎖の第1の領域は、パッセンジャー核酸鎖と相補的に結合してRNAi二重鎖を形成する。コア核酸鎖の配列全体が、パッセンジャー核酸鎖と相補的に結合するとは限らない。例えば、コア核酸鎖の第2の領域は、パッセンジャー核酸鎖と相補的に結合しない。一部の態様では、コア核酸鎖の第1の領域は、パッセンジャー核酸鎖と完全に相補的で、コア核酸鎖の第1の領域の5’及び3’末端に、オーバーハングのない平滑末端を有するRNAi二重鎖を形成する。一部の態様では、RNAi二重鎖のコア核酸鎖は、3’末端のオーバーハングが短く(例.1,2又は3ヌクレオシド)、3’オーバーハングは、センサー二重鎖の中央部まで伸びてセンサー核酸鎖と結合しない(例えば、図2及び3を参照)。一部の態様では、コア核酸鎖は、その第1の領域の3’側に領域が存在しない。
【0055】
コア核酸鎖(例.デザイン1とデザイン2の中央領域又はデザイン3の第1の領域)は、標的核酸(例.サイレンシングすべきRNA)に相補的な配列を含むことができる。したがって、核酸複合体のコア核酸鎖は、ガイド鎖(アンチセンス鎖)としての役割を果たし、標的RNAと塩基対合するために使用される。したがって、パッセンジャー核酸鎖は、同じ標的核酸と相同の配列を更に含むことができる。
【0056】
核酸複合体が活性化(例.インプット核酸鎖と結合)されると、放出されたRNAi二重鎖は、標的核酸とコア核酸鎖との結合により標的核酸と相補的に結合できる。一部の態様では、コア核酸鎖の標的RNAに相補的な配列の長さは約10~35ヌクレオシドの可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖は、連結した20~70のヌクレオシドを含む。一部の態様では、コア核酸鎖は、連結した20~60のヌクレオシドを含む。
【0057】
(例えば、図1及び2における)コア核酸鎖が5’領域、中央領域及び3’領域を含む一部の態様では、センサー核酸鎖は、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域と相補的に結合してセンサー二重鎖を形成する。センサー核酸鎖は、コア核酸鎖の中央領域にも、パッセンジャー核酸鎖にも結合しない。
【0058】
(例えば、図2及び3における)コア核酸鎖が第1の領域及び第2の領域を含む一部の態様では、センサー核酸鎖は、コア核酸鎖の第2の領域と相補的に結合してセンサー二重鎖を形成する。センサー核酸鎖は、コア核酸鎖の第1の領域とは結合せず、コア核酸鎖の第1の領域の3’であるコア核酸鎖のいずれの領域にも結合しない。センサー核酸鎖は、パッセンジャー核酸鎖とも結合しない。
【0059】
センサー核酸鎖は、オーバーハングを有することができる。「オーバーハング」は、この明細書では、二本鎖ポリヌクレオチド(例.二重鎖)の末端の1つにおける突出する不対ヌクレオチドの伸長を指す。オーバーハングは、ポリヌクレオチドのいずれかの鎖に存在する可能性があり、鎖の3’末端(3’オーバーハング)又は5’末端(5’オーバーハング)に含まれる可能性がある。オーバーハングは、センサー核酸鎖の3’末端に存在する可能性がある。センサー核酸鎖のオーバーハングは、コア核酸鎖のいずれの領域とも結合しない。
【0060】
センサー核酸鎖は、インプット核酸鎖(例.疾患関連細胞を含む標的細胞に特異的な疾患バイオマーカー遺伝子のmRNA)に結合できる配列を含むことができる。活性化すると、センサー核酸鎖とインプット核酸鎖の結合がコア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離してその放出を引き起こすことができ、それにより、多くのRNAi二重鎖が放出され、RNAi二重鎖のRNA干渉活性のスイッチが入る。インプット核酸鎖が存在しないか、インプット核酸が検出できなければ、明細書に記載した核酸複合体は、不活性な状態(スイッチオフ状態)のままで、コア核酸鎖からのセンサー核酸鎖の解離は生じない。したがって、インプット核酸鎖は、核酸複合体(例.RNAi二重鎖)のRNA干渉活性を活性化(スイッチオン)するトリガーとしての役割を果たすことができる。
【0061】
明細書に記載した核酸複合体のRNAi二重鎖の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、RNAi二重鎖の長さは、10~35ヌクレオチド、必要に応じて10~30ヌクレオチドの可能性がある。例えば、RNAi二重鎖の長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、これらの値のいずれか2つの範囲のヌクレオチドの可能性がある。一部の態様では、RNAi二重鎖の長さは、19~25ヌクレオチドの可能性がある。一部の態様では、RNAi二重鎖の長さは、17~22ヌクレオチドの可能性がある。
【0062】
明細書に記載した核酸複合体のセンサー二重鎖の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、センサー二重鎖の長さは、10~35ヌクレオチド、必要に応じて10~30ヌクレオチドの可能性がある。例えば、センサー二重鎖の長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、これらの値のいずれか2つの範囲のヌクレオチドの可能性がある。一部の態様では、センサー二重鎖の長さは約14ヌクレオチドである。一部の態様では、センサー二重鎖の長さは、RNAi二重鎖と比較して短い。
【0063】
一部の態様では、それぞれが2つの二重鎖のうちの1つの末端に位置する、隣接する2つのヌクレオシドを接続する標準的なホスホジエステル結合を除き、センサー二重鎖と核酸複合体のRNAi二重鎖の間にリンカー分子は存在しない。
【0064】
一部の態様では、コア核酸鎖の一部分及びセンサー核酸鎖の一部分によって形成されるセンサー二重鎖は、1つ以上のゆらぎ塩基対又はミスマッチを含むことができる。この明細書では、用語「ゆらぎ塩基対」は、ワトソン-クリック塩基対規則に従わない核酸二重鎖中の2つのヌクレオチド間の塩基対形成を指す。ゆらぎ塩基対は、グアニン-ウラシル(G-U)、ヒポキサンチン-ウラシル(I-U)、ヒポキサンチン-アデニン(I-A)及びヒポキサンチン-シトシン(I-C)を含むことができる。表記「I」は、リボース環に結合した場合にイノシンを形成するヒポキサンチンを指す。ゆらぎ塩基対とセンサー二本鎖内の可能な位置についての詳細は、米国特許仮出願第63/218,850号(2021年7月6日出願)に記載されており、参照によりこの明細書に組み込まれる。一部の態様では、センサー二重鎖の一部分における結合の強度又は塩基対の強度は、ゆらぎ塩基対(G-U、I-U、I-A及び/又はI-C)の存在のために低下する。したがって、一部の態様では、センサー二重鎖中のゆらぎ塩基対は、センサー二重鎖の熱力学的安定性、例えば、センサー二重鎖の融解温度を低下させ、それによって、インプット核酸鎖によって引き起こされるコア核酸鎖からのセンサー核酸鎖のトーホールド媒介解離を促進する。
【0065】
明細書に記載した核酸複合体を、例えば、Oligonucleotide Synthesis by Herdewijin, Piet (2005) and Modified oligonucleotides: Synthesis and Strategy for Users, by Verma and Eckstein, Annul Rev. Biochem. (1998): 67:99-134をはじめとする、当技術分野で周知のオリゴヌクレオチド合成のための標準的な方法を使用して合成でき、この文献の内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。当業者には明らかであるように、合成された核酸複合体に望ましい生理条件下でその二次構造を形成させることができる。形成される二次構造を、当技術分野で公知の標準的な方法、例えば、化学的マッピング、NMR又はコンピュータシミュレーションを使用して、試験できる。核酸複合体構築物は、試験結果に従い、所望の構築物が得られるまで、必要に応じて化学修飾又はミスマッチを導入又は除去することで、更に修飾できる。
【0066】
好適なソフトウェアを使用して、核酸構造の設計及び解析を支援できる。例えば、Nupackを使用して二重鎖の形成をチェックし、二重鎖の熱力学的安定性をランク付けできる。オリゴヌクレオチド設計ツールを使用して、LNA修飾の配置を最適化できる。明細書に記載した核酸複合体における1つ以上の鎖のいずれかの領域を、明細書に記載したインプット核酸配列、標的核酸配列及び/又は化学修飾についてスクリーニングできる。例えば、図5に、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物の概略図を示し、LNA置換や明細書に記載した他のヌクレオチドアナログといった化学修飾についてスクリーニングされる末端塩基を黄色で強調している。
【0067】
RNA干渉(RNAi)
明細書では、核酸複合体のセンサー核酸鎖の配列に相補的な配列を有するインプット核酸(例.疾患関連細胞を含む標的細胞に特異的な核酸配列)の検出に応答して、組み立てられた不活性な状態から活性化された状態に変化し、特定の標的核酸に作用(例.分解又は阻害)できる、(例えば、標的細胞に特異的な遺伝子のmRNAの存在を示すシグナルを介して)条件付きで活性化される核酸複合体を説明する。
【0068】
組み立てられた不活性な状態では、核酸複合体のセンサー核酸鎖がRNAi二重鎖の酵素プロセシングを阻害し、RNAi活性をスイッチオフ状態に保つ。
【0069】
核酸複合体のセンサー核酸鎖と相補的なインプット核酸鎖が存在する場合、インプット核酸鎖は、トーホールド媒介鎖置換によってコア核酸鎖からのセンサー核酸鎖の解離を誘導することで、核酸複合体を活性化できる。解離は、センサー核酸鎖の3’又は5’末端に形成されたトーホールド(例.5’トーホールド又は3’トーホールド)から、インプット核酸鎖とセンサー核酸鎖のオーバーハングとの相補的結合によって開始できる。
【0070】
センサー核酸鎖の除去後、パッセンジャー核酸鎖と相補的に結合しないコア核酸鎖の領域は、ヌクレアーゼ(例.エキソヌクレアーゼ)が分解できるオーバーハング領域となる。例えば、一部の態様(例.図1中)では、コア核酸鎖の3’及び5’領域は、3’及び5’オーバーハングとなる。一部の態様(例.図2及び3中)では、コア核酸鎖の第2の領域は、5’オーバーハングとなる。
【0071】
この分解は、化学修飾ヌクレオチド及び/又はエキソヌクレアーゼ切断抵抗性部分の存在に起因して、RNAi二重鎖の3’末端及び/又は5’末端で停止し、その結果、活性RNAi二重鎖が、必要に応じて更なるエンドヌクレアーゼ処理と、RNA誘導サイレシング複合体(RISC)ロードに提供される。
【0072】
図6は、コア核酸鎖からのセンサー核酸鎖の解離及びコア核酸鎖オーバーハングの分解後の活性RNAi二重鎖の形成を示す限定するものではない概略図である。
【0073】
RISCは、siRNA又はmiRNAの1つの鎖を組み込み、相補的な標的核酸を認識する鋳型としてsiRNA又はmiRNAを使用する、多タンパク質複合体である。標的核酸が特定されると、RISCは、RNase(例.アルゴノート)を活性化し、標的核酸を切断により阻害する。一部の態様では、ダイサーは、RNAi二重鎖をRISCにローディングするために必要とされない。
【0074】
パッセンジャー核酸鎖はその後廃棄され、コア核酸鎖は、RICSに組み込まれる。この明細書で開示する核酸複合体のコア核酸鎖は、ガイド鎖(アンチセンス鎖)としての役割を果たし、標的RNAと塩基対合するために使用される。パッセンジャー核酸鎖は、コア核酸鎖がRICSにロードされる前には保護鎖としての役割を果たす。RICSは、組み込まれたコア核酸鎖を、コア核酸鎖、特にコア核酸鎖の中央の領域と相補な配列を有する標的RNAを認識する鋳型として使用する。標的RNAに結合すると、RICSの触媒成分であるアルゴノートが活性化され、結合した標的RNAを分解できる。標的RNAは分解される可能性があり、また、標的RNAの翻訳が阻害される可能性がある。
【0075】
一部の態様では、本願の核酸複合体は、ダイサー切断部位を有さず、したがって、核酸複合体により媒介されるRNAi干渉は、ダイサー媒介切断を回避できる。ダイサーは、二本鎖RNA(dsRNA)分子を長さ約20~25ヌクレオチドのdsRNAの短い断片へと切断することによりRNAi経路を開始できる、RNAse IIIファミリーのエンドリボヌクレアーゼである。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体は、それがダイサーによるプロセシングを回避できる点で、国際公開第2020/033938号で開示されている条件付きで活性化される低分子干渉RNA(Cond-siRNA)と区別される。
【0076】
一部の態様では、本願の核酸複合体には、ダイサー結合を抑止する構造的特徴がある。一部の態様では、RNAi二重鎖はダイサー基質を作り出さない。例えば、パッセンジャー核酸鎖とコア核酸鎖で形成されるRNAi二重鎖は、3’及び/又は5’オーバーハングを有さず、代わりに、パッセンジャー核酸鎖をダイサー結合に好ましくないものにする可能性がある平滑末端を形成する。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の長さは、約17~22ヌクレオチドであり、ダイサー切断を回避できるほど十分に短い。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、パッセンジャー核酸鎖の3’及び/又は5’末端側にG/Cリッチ塩基を有さない。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、ダイサー結合を回避するために、末端部分に結合している。
【0077】
本願の核酸複合体は、活性化によって、標的細胞中の標的核酸を阻害でき、標的細胞中の標的核酸の発現を低下又は喪失させる。標的細胞は、疾患又は障害に関連付けられる又は関係する細胞である。「関連付けられる」「関係する」は、この明細書では、疾患又は状態の発生が標的細胞の発生に付随して生じるような、細胞と疾患又は状態との関係を指し、この関係には、原因-結果関係及び徴候/症状-疾患関係が含まれるが、これらに限定されるものではない。この明細書で使用する標的細胞は、通常、インプット核酸を検出可能に発現する。
【0078】
一部の態様では、標的細胞における標的核酸の発現は、約、少なくとも、少なくとも約、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%若しくは100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、阻害される。
【0079】
この明細書では、遺伝子発現の阻害は、標的細胞における標的遺伝子からのタンパク質及び/又はmRNA産物のレベルの非存在又は観察可能な減少を指す。阻害の程度は、実施例で示すように標的遺伝子の発現レベルの検査により評価できる。
【0080】
遺伝子の発現及び/又は標的遺伝子発現の阻害は、タンパク質産物が容易にアッセイされるレポーター又は薬物耐性遺伝子の使用により判定できる。代表的なレポーター遺伝子には、アセトヒドロキシ酸シンターゼ(AHAS)、アルカリホスファターゼ(AP)、βガラクトシダーゼ(LacZ)、βグルクロニダーゼ(GUS)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、ルシフェラーゼ(Luc)、ノパリンシンターゼ(NOS)、オクトピンシンターゼ(OCS)及びこれらの誘導体が含まれるが、それらには限定されない。アンピシリン、ブレオマイシン、クロラムフェニコール、ゲンタマイシン、ハイグロマイシン、カナマイシン、リンコマイシン、メトトレキサート、ホスフィノトリシン、ピューロマイシン及びテトラサイクリンに対する耐性を付与する複数の選択可能なマーカーが、利用可能である。遺伝子の発現量の定量によって、核酸複合体で処理していない細胞又は陰性若しくは陽性対照で処理した細胞と比較した阻害の程度の決定が可能となる。当業者には明らかであるように、さまざまな生化学技術、例えば、RNA溶液ハイブリダイゼーション、ヌクレアーゼ保護、ノーザンハイブリダイゼーション、逆転写、マイクロアレイによる遺伝子発現モニタリング、抗体結合、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ウェスタンブロット法、ラジオイムノアッセイ(RIA)、他のイムノアッセイ及び蛍光活性化細胞解析(FACS)を利用できる。
【0081】
一部の態様では、本願の核酸複合体は、スイッチング性能の改善及びオフターゲット効果の減少を示す。本願の核酸複合体は、核酸複合体が不活性な状態(スイッチオフ状態)の場合に不要なRNAi活性を低下でき、インプット核酸鎖の検知によって核酸複合体が活性化された場合にRNAi活性を増強できる。
【0082】
一部の態様では、標的ではない細胞(例.インプット核酸鎖を有さない細胞)での標的核酸の発現は、およそ、最大でも若しくは最大でもおよそ、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、又は、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲が、阻害される。標的ではない細胞は、標的細胞以外の対象の細胞を含むことができる。
【0083】
一部の態様では、本願の核酸複合体は、効力を増強し、低濃度でRNAi活性を惹起できる。非特異的なオフターゲット効果及び毒性(例.望ましくない炎症誘発応答)を、低濃度の核酸複合体を使用することにより、最小限に抑えることができる。
【0084】
本願の核酸複合体の濃度は、態様によって変化することがある。一部の態様では、本願の核酸複合体を、およそ、最大でも若しくは最大でもおよそ、0.001nM、0.01nM、0.02nM、0.03nM、0.04nM、0.05nM、0.06nM、0.07nM、0.08nM、0.09nM、0.1nM、0.2nM、0.3nM、0.4nM、0.5nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、1.0nM、1.5nM、2.0nM、2.5nM、3.0nM、3.5nM、4.0nM、4.5nM、5.0nM、5.5nM、6.0nM、6.5nM、7.0nM、7.5nM、8.0nM、8.5nM、9.0nM、9.5nM、10nM、11nM、12nM、13nM、14nM、15nM、16nM、17nM、18nM、19nM、20nM、30nM、40nM、50nM、又は、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の濃度で提供できる。例えば、本願の核酸複合体は、約0.1~10nM、好ましくは約0.1~1nMの濃度で提供できる。一部の態様では、本願の核酸複合体のトランスフェクション濃度は、約0.1nM以下である。
【0085】
明細書に記載した核酸複合体は、低濃度において、持続的で一貫した強力な阻害効果を可能にする。例えば、核酸複合体は、1時間、2時間、6時間、12時間、24時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間、5日間、6日間、7日間、2週間、若しくはこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、又はそれ以上、といった長期間、活性を維持できる。一部の態様では、核酸複合体は、少なくとも12時間、少なくとも24時間、少なくとも36時間、少なくとも48時間、少なくとも60時間、少なくとも72時間、少なくとも84時間、又は少なくとも96時間、活性を維持できる。一部の態様では、核酸複合体は、活性を、30日以下、60日以下又は90日以下、維持できる。
【0086】
コア鎖
明細書に記載した核酸複合体のコア核酸鎖は、5’領域、3’領域、及び5’領域と3’領域の間の中央領域を含むことができる。5’領域、3’領域及び中央領域のそれぞれは互いに直接隣接でき、つまり、隣接する2つの領域の間にヌクレオチドがない。一部の態様では、5’領域の3’末端は、中央領域の5’末端から、1、2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、20、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲のヌクレオチドで離れている可能性がある。一部の態様では、3’領域の5’末端は、中央領域の3’末端から、1、2、3、4、5、8、9、10、11、12、13、14、15、20、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲のヌクレオチドで離れている可能性がある。
【0087】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体のコア核酸鎖は、第1の領域及び第2の領域を含むことができる。第1の領域は、第2の領域の3’の方向にある。コア核酸鎖の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖は、連結した20~70のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖は、連結した20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69又は70のヌクレオシドを含むことができる。一部の態様では、コア核酸鎖は、連結した20~60のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖は、連結した20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59又は60のヌクレオシドを含むことができる。
【0088】
コア核酸鎖が、5’領域、中央領域及び3’領域を含む一部の態様(例.図1及び3におけるデザイン2)では、コア核酸鎖の中央領域の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、連結した10~35のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖の中央領域は、連結した10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35のヌクレオシドを含むことができる。
【0089】
コア核酸鎖の3’領域及び5’領域は、同じ長さにすることも、異なる長さにすることもできる。コア核酸鎖の3’領域及び5’領域の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖の3’領域及び5’領域の長さは、連結した2~33のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖の3’領域及び5’領域は、連結した2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32又は33のヌクレオシドを含むことができる。
【0090】
コア核酸鎖の中央領域は、標的RNAに相補的な配列を含む。標的RNAに相補的な配列の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、標的RNAに相補的な配列の長さは10~21ヌクレオチドである。例えば、標的RNAに相補的な配列の長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20又は21ヌクレオチドである。
【0091】
コア核酸鎖の中央領域は、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列を含む。パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは19~25ヌクレオチドである。例えば、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは、19、20、21、22、23、24又は25ヌクレオチドである。
【0092】
コア核酸鎖が、第1の領域及び第2の領域を含む一部の態様(例.図2及び3におけるデザイン3)では、コア核酸鎖の第1の領域の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖の第1の領域は、連結した10~30のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖の第1の領域は、連結した10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30のヌクレオシドを含むことができる。一部の態様では、コア核酸鎖の第1の領域は、連結した17~22のヌクレオシドを含む。
【0093】
コア核酸鎖の第2の領域の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖の第2の領域は、連結した10~30のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖の第2の領域は、連結した10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30のヌクレオシドを含むことができる。コア核酸鎖の第1の領域及び第2の領域は、同じ長さ又は異なる長さの可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の第2の領域の長さは、コア核酸鎖の第1の領域と比較して短い。一部の態様では、コア核酸鎖の第2の領域は、連結した約14のヌクレオシドを有する。
【0094】
コア核酸鎖の第1の領域は、標的RNAに相補的な配列を含む。標的RNAに相補的な配列の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、標的RNAに相補的な配列の長さは10~35ヌクレオチドである。例えば、標的RNAに相補的な配列の長さは、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35ヌクレオチドである。一部の態様では、標的RNAに相補的な配列の長さは10~21ヌクレオチドである。
【0095】
コア核酸鎖の第1の領域は、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列を含む。パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは17~22ヌクレオチドである。例えば、パッセンジャー核酸鎖に相補的な配列の長さは、17、18、19、20、21又は22ヌクレオチドである。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖に相補的なコア核酸鎖の配列の長さは、約21ヌクレオチドである。
【0096】
一部の態様では、コア核酸鎖の領域は、その隣接する領域にコネクターを介して接続している。例えば、コア核酸鎖が、5’領域、中央領域及び3’領域を含む一部の態様(例.図1及び3におけるデザイン2)では、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の5’領域及び3’領域にコネクターを介して連結している。例えば、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の5’領域に5’コネクターを介して連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、コア核酸鎖の3’領域に3’コネクターを介して連結している。
【0097】
コア核酸鎖が、第1の領域及び第2の領域を含む一部の態様(例.図2及び3におけるデザイン3)では、コア核酸鎖の第1の領域は、コア核酸鎖の第2の領域にコネクターを介して連結している。例えば、コア核酸鎖の第1の領域は、コア核酸鎖の第2の領域に5’コネクターを介して連結している。一部の態様では、コア核酸鎖は、1つのコネクター(例.5’コネクター)のみを含み、3’コネクターを含まない。
【0098】
5’コネクター及び/又は3’コネクターは、3炭素リンカー(Cリンカー)、ヌクレオチド、明細書に記載した修飾ヌクレオチド、又はコア核酸鎖が一本鎖である場合(例.センサー核酸鎖のコア核酸鎖からの解離後)にエキソヌクレアーゼ切断に抵抗できる部分を含むことができる。例えば、5’コネクター及び/又は3’コネクターは、2'-F-アデノシン、2'-F-グアノシン、2'-F-ウリジン又は2'-F-シチジンといった2'-Fヌクレオチドを含むことができる。5’コネクター及び/又は3’コネクターは、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン又は2'-O-メチルシチジンといった2'-O-メチルヌクレオチドを含むことができる。5’コネクター及び/又は3’コネクターは、天然に存在するヌクレオチド、例えば、シチジン、ウリジン、アデノシン又はグアノシンを含むことができる。コア核酸鎖の5’コネクター及び/又は3’コネクターは、一本鎖形態の場合にエキソヌクレアーゼにより切断可能なホスホジエステル結合(ホスホジエステル5’及び3’接続)を含むことができる。コア核酸鎖の5’コネクター及び/又は3’コネクターは、一本鎖形態の場合にエキソヌクレアーゼ切断に抵抗できるいずれかの好適な部分を含むことができる。一部の態様では、それぞれが2つの二重鎖のうちの1つの末端に位置する、隣接する2つのヌクレオシドを接続する標準的なホスホジエステル結合(例えば、図2及び3におけるデザイン3を参照)を除き、コア核酸鎖の5’コネクターはリンカー分子を含まない。
【0099】
一部の態様では、5’コネクターは、C 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド(2'-O-メチルヌクレオチド、2'-Fヌクレオチド)、一本鎖形態の場合にエキソヌクレアーゼにより切断可能なホスホジエステル5’及び3’接続を有するヌクレオチド若しくはこれらの組合せを含むことができるか、又は前述のものである。一部の態様では、5’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン若しくは2'-O-メチルシチジンを含むことができるか、又は前述のものである。一部の態様では、5’コネクターは、2’-F-ヌクレオチド、例えば、2’-F-アデノシン、2’-F-グアノシン、2’-F-ウリジン若しくは2’-F-シチジンを含むことができるか、又は前述のものである。
【0100】
一部の態様では、3’コネクターは、C 3炭素リンカー、ヌクレオチド、修飾ヌクレオチド、一本鎖形態の場合のエキソヌクレアーゼ切断抵抗性部分若しくはこれらの組合せを含むことができるか、又は前述のものである。一部の態様では、3’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン若しくは2'-O-メチルシチジンを含むことができるか、又は前述のものである。一部の態様では、3’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン若しくは2'-O-メチルシチジンを含むか、又は前述のものであり、5’コネクターは、2'-O-メチルヌクレオチド、例えば、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン若しくは2'-O-メチルシチジンを含むか、又は前述のものである。
【0101】
一部の態様では、コア核酸鎖の5’コネクターは、C 3炭素リンカーを含まないか、C 3炭素リンカーではない。一部の態様では、コア核酸鎖の3’コネクターは、C 3炭素リンカーを含むか、C 3炭素リンカーである。一部の態様では、C 3炭素リンカーを5’コネクターとして有さないことが有利である。一部の態様では、C 3炭素リンカーを3’コネクターとして有することが有利である。一部の態様では、コア核酸鎖の5’コネクターは、C 3炭素リンカーを含まないか、C 3炭素リンカーではなく、一方、コア核酸鎖の3’コネクターは、C 3炭素リンカーを含むか、C 3炭素リンカーである。
【0102】
一部の態様では、C 3炭素リンカーを5’コネクターとして有さない核酸複合体は、高いRNA干渉活性を示す。核酸複合体は、修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドを5’コネクターとして有する可能性がある。核酸複合体は、5’コネクターを有さない可能性がある。核酸複合体は、C 3炭素リンカー、修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドを3’コネクターとして有する可能性がある。核酸複合体は、3’コネクターを有さない可能性がある。一部の態様では、C 3炭素リンカーを5’コネクターとして有さないことによって、核酸複合体のRNA干渉活性が、C 3炭素リンカーを5’コネクターとして有する核酸複合体の、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲に、増加する。
【0103】
一部の態様では、C 3炭素リンカーを3’コネクターとして有する核酸複合体は、より高いRNA干渉活性を示す。核酸複合体は、修飾ヌクレオチド又はヌクレオチドを5’コネクターとして有する可能性がある。核酸複合体は、5’コネクターを有さない可能性がある。核酸複合体は、C 3炭素リンカーを5’コネクターとして有さない。一部の態様では、C 3炭素リンカーを3’コネクターとして有することによって、核酸複合体のRNA干渉活性が、修飾ヌクレオチド(例.2'-O-メチルヌクレオチド)を3’コネクターとして有する核酸複合体の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲に、増加する。一部の態様では、C 3炭素リンカーを3’コネクターとして有することによって、核酸複合体のRNA干渉活性が、3’コネクターを有さない核酸複合体の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲に、増加する。
【0104】
一部の態様では、コア核酸鎖は、5’コネクター及び/又は3’コネクターを含まない。代わりに、コア核酸鎖の異なる領域は、標準的なホスホジエステル結合によって隣接する領域と連結している。
【0105】
例えば、コア核酸鎖が、5’領域、中央領域及び3’領域を含む一部の態様(例.図1及び3におけるデザイン2)では、コア核酸鎖の中央領域は、標準的なホスホジエステル結合によって3’領域及び/又は5’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の5’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の3’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の3’領域と連結しており、さらに、コア核酸鎖の中央領域は、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン又は2'-O-メチルシチジンといった2'-O-メチルヌクレオチドによって、コア核酸鎖の5’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の5’領域と連結しており、さらに、コア核酸鎖の中央領域は、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン、又は2'-O-メチルシチジンといった2'-O-メチルヌクレオチドによって、コア核酸鎖の3’領域と連結している。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、ホスホジエステル結合によってコア核酸鎖の3’領域及び5’領域と連結している。
【0106】
コア核酸鎖が、第1の領域及び第2の領域を含む一部の態様(例.図2及び3におけるデザイン3)では、コア核酸鎖の第1の領域は、隣接する2つのヌクレオシドを接続する標準的なホスホジエステル結合によって、第2の領域と連結している。
【0107】
一部の態様では、5’コネクター及び/又は3’コネクターを有さないことによって、核酸複合体のRNA干渉活性が、C 3炭素リンカーを5’コネクターとして有する核酸複合体の少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲に、増加する。
【0108】
一部の態様では、コア核酸鎖はオーバーハングを有していてもよい。オーバーハングは、コア核酸鎖の3’末端に存在する可能性がある(3’オーバーハング)。一部の態様では、コア核酸鎖は、3’末端に短い(例.1~3ヌクレオシド)オーバーハングを有することができるが、3’オーバーハングは、センサー二重鎖の中央部まで伸びてセンサー核酸鎖と結合しない(例.図2及び3におけるデザイン3を参照)。オーバーハングの長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、3’オーバーハングの長さは、約1~3ヌクレオチドである。例えば、3’オーバーハングの長さは、1,2又は3ヌクレオチドの可能性がある。オーバーハングは、2'-O-メチルヌクレオチドのような1つ以上の修飾ヌクレオチドを含むことができる。例えば、3’オーバーハングは、2つの2'-O-メチルヌクレオチド(例.図2及び3におけるデザイン3を参照)を含むことができる。オーバーハングは、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合のような修飾ヌクレオシド間結合を含むことができる。一部の態様では、全てのオーバーハングのヌクレオシドが化学修飾されている。一部の態様では、コア核酸鎖の3’オーバーハング中の全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0109】
パッセンジャー核酸鎖
明細書に記載した核酸複合体のパッセンジャー核酸鎖は、コア核酸鎖の領域と相補的に結合してRNAi二重鎖(例.第1の核酸二重鎖)を形成する。一部の態様では、コア核酸鎖は、標的核酸鎖に相補的な配列を含む。一部の態様では、核酸複合体のパッセンジャー核酸鎖は、標的核酸鎖と相同の配列を含むことができる。
【0110】
この明細書では、「相同(の)」又は「相同性」は、少なくとも2つの配列間の配列同一性を指す。2つの核酸又はポリペプチド配列についての用語「配列同一性」又は「同一性」は、指定比較ウィンドウにわたって最大に一致するようにアラインした場合に同じである2つの配列中のヌクレオチド塩基又は残基を指す。
【0111】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖と標的核酸又はその一部分との配列同一性は、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。核酸複合体のパッセンジャー核酸鎖は、標的核酸又はその一部分と実質的に同一、例えば、少なくとも80%、90%又は100%同一、の配列を有する可能性がある。
【0112】
パッセンジャー核酸鎖の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、連結した10~35のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖は、連結した10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35のヌクレオシドを含むことができる。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、連結した17~21のヌクレオシドを含む。
【0113】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、RNAi二重鎖に3’オーバーハング、5’オーバーハング又は両者を有する。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は3’オーバーハングを有し、3’オーバーハングの長さは1~5ヌクレオシドである。
【0114】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングは、インプット核酸鎖に結合してトーホールドを形成でき、それにより、トーホールド媒介鎖置換を開始し、コア核酸鎖からパッセンジャー核酸鎖を解離する。
【0115】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの長さは5~20ヌクレオシドである。例えば、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの長さは、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20ヌクレオシドの可能性がある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの長さは9ヌクレオシドである。
【0116】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの1つ以上のヌクレオシド間結合は、オーバーハングを分解から保護できるホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖のオーバーハングの全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合の可能性がある。
【0117】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、コア核酸鎖の第1の領域と完全に相補的であり、そのため、RNAi二重鎖のパッセンジャー核酸鎖の5’及び3’末端にオーバーハングを形成しない。したがって、一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、RNAi二重鎖中に3’オーバーハング、5’オーバーハング又は両者を有さない。一部の態様では、オーバーハングのない平滑末端を有することにより、パッセンジャー核酸鎖をダイサー結合に好ましくないものとし、それによってダイサー媒介切断を回避できる。
【0118】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、末端部分及び/又はブロッキング部分に結合している。パッセンジャー核酸鎖がRNAi経路の酵素(例.ダイサー、RISC)と相互作用するのを阻止できる明細書に記載した好適な末端部分が使用できる。ブロッキング部分は、エキソヌクレアーゼブロッキング部分のような、ヌクレアーゼによる分解から、一本鎖核酸を保護できる1つ以上の好適な末端リンカー又は修飾(例.ブロッカー)を含むことができる。好適なブロッキング部分の例には、色素(例.フルオロフォア、Cy3、ダーククエンチャー)、逆方向dT、オリゴヌクレオチドとは別の分子若しくは特定の表面を連結させるリンカー(ビオチン、アミノ修飾剤、アルキン、チオール修飾剤、アジド、N-ヒドロキシスクシンイミド及びコレステロール)、スペース(例.C3スペーサー、スペーサー9、スペーサー18、dスペーサー、トリエチレングリコールスペーサー、ヘキサエチレングリコールスペーサー)、脂肪酸、1つ以上の修飾ヌクレオチド(例.2'-O-メチル、2'-F、PS骨格接続、LNA及び/又は2’-4’架橋塩基)又はその組合せが含まれるが、これらに限定されるものではない。一部の態様では、パッセンジャー核酸の5’末端は、逆方向dT、トリエチレングリコール又はフルオロフォアに結合している。例えば、フルオロフォアは、ホスホロチオエート結合によってパッセンジャー核酸鎖の5’末端に結合できる。
【0119】
センサー核酸鎖
明細書に記載した核酸複合体のセンサー核酸鎖は、コア核酸鎖の少なくとも一つの領域と相補的に結合してセンサー二重鎖(例.第2の核酸二重鎖)を形成する領域を含む。例えば、センサー核酸鎖は、(例えば、図1及び3におけるデザイン2では)コア核酸鎖の5’領域及び3’領域と相補的に結合する領域を含むことができる。別の例では、センサー核酸鎖は、(例えば、図2及び3におけるデザイン3では)コア核酸鎖の第2の領域と相補的に結合する領域を含むことができる。
【0120】
コア核酸鎖と相補的に結合する領域の長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、コア核酸鎖と相補的に結合する領域は、連結した10~35のヌクレオシドを含む。例えば、コア核酸鎖と相補的に結合するセンサー核酸鎖内の領域は、連結した10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34又は35のヌクレオシドを含むことができる。一部の態様では、コア核酸鎖に相補的に結合する領域は、連結した10~30のヌクレオシドを含む。一部の態様では、コア核酸鎖に相補的に結合するセンサー核酸鎖内の領域は、連結した約14のヌクレオシドを含む。
【0121】
センサー核酸鎖は、トーホールド(オーバーハング)を含むことができる。オーバーハングは、センサー核酸鎖の3’末端、5’末端又は両者に存在する可能性がある。例えば、オーバーハングは、コア核酸鎖に相補的なセンサー領域の3’に存在できる。オーバーハングは、コア核酸鎖に相補的ではなく、インプット核酸鎖に結合でき、それにより、トーホールド媒介鎖置換を開始し、コア核酸鎖からパッセンジャー核酸鎖を解離する。
【0122】
センサー核酸鎖のオーバーハングの長さは、態様によって変化することがある。一部の態様では、オーバーハングの長さは、連結した5~20のヌクレオチドの可能性がある。例えば、センサー核酸鎖のオーバーハングは、長さ5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20のヌクレオチドを含むことができる。一部の態様では、センサー核酸鎖のオーバーハングの長さは12ヌクレオチドである。
【0123】
センサー核酸鎖のオーバーハングは、塩基対合親和性を改善するために、一本鎖オーバーハングのヌクレアーゼ抵抗性を改善するために、及び鎖の誤ったエキソヌクレアーゼ誘導活性化を回避するための熱力学的安定性を改善するために導入される、ヌクレオチド修飾を含むことができる。代表的な修飾としては、2'-O-メチル修飾、2'-フルオロ修飾、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合、LNAの組み入れ、及び当業者が特定可能な同様のものが含まれるが、これらには限定されない。一部の態様では、センサー核酸鎖のオーバーハング内のヌクレオシド間結合の少なくとも50%は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。例えば、センサー核酸鎖のオーバーハング内のヌクレオシド間結合の少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はいずれか2つの間の数若しくは範囲は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、センサー核酸鎖のオーバーハング内の全てのヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0124】
一部の態様では、センサー核酸鎖の5’末端及び/又は3’末端には、末端部分を含むことができる。明細書に記載した好適な末端部分が使用できる。一部の態様では、末端部分は、トリ若しくはヘキサエチレングリコールスペーサー、C3スペーサー、逆方向dT、アミンリンカー、リガンド(例.標的化リガンド)、フルオロフォア、エキソヌクレアーゼ、脂肪酸、Cy3、トリエチレングリコールと結合した逆方向dT、又はこれらの組合せを含むことができる。一部の態様では、センサー核酸鎖の3’末端は、送達リガンド、色素(例.フルオロフォア)又はエキソヌクレアーゼと結合できる。5’末端は、脂肪酸、色素(例.Cy3)、逆方向dT、トリエチレングリコール又はトリエチレングリコールと結合した逆方向dTと結合できる。3’末端に結合した送達リガンドは、この明細書に記載した特定の細胞型への核酸複合体の標的化における使用に好適なリガンドの可能性がある。一部の態様では、送達リガンドはパルミチン酸である。一部の態様では、パルミチン酸が、センサー核酸鎖の3’末端に結合している。一部の態様では、センサー核酸の3’末端に結合したパルミチン酸を有するセンサー核酸鎖を含む核酸複合体構築物は、3’末端パルミチン酸が存在しない対応する構築物よりも、標的核酸を阻害する度合いが高い。
【0125】
センサー核酸鎖の配列を、インプット核酸鎖又はその一部分を感知するように設計できる。例えば、インプットバイオマーカーの配列から、インプット鎖に対してアンチセンスである全ての可能性のあるセンサーセグメントのリストを生成できる。NCBIのBLASTを使用して、標的動物のトランスクリプトームにおけるセンサー配列の独自性をランク付けできる。ヒトがん細胞系については、BLASTnアルゴリズムを使用して配列をヒト転写物及びゲノムコレクションに照らしてチェックできる。一部の態様では、既知又は予測RNA転写物に対する17塩基超の配列相補性及び完全オーバーハング相補性を有するセンサーセグメントは、排除されてもよい。明細書に記載した核酸複合体に使用できるセンサー核酸鎖の設計の例は、例えば国際公開第2020/033938号として公開された国際特許出願に記載されており、その内容は参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0126】
インプット核酸鎖
明細書に記載したインプット核酸鎖は、核酸複合体におけるセンサー核酸の配列への結合時に核酸複合体(例.RNAi二重鎖)のRNA干渉活性を活性化(スイッチオン)するためのトリガーとしての役割を果たす。
【0127】
インプット核酸鎖は、核酸複合体のセンサー核酸の配列に相補的な配列を含む。インプット核酸鎖とセンサー核酸鎖(例.オーバーハング)との相補的結合は、コア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離し、それにより、パッセンジャー核酸鎖とコア核酸鎖の中央領域で形成されるRNAi二重鎖のRNA干渉活性が活性化される。
【0128】
インプット核酸鎖は、一連の標的細胞(例.CNS細胞)には比較的高い発現レベルで存在し、一連の標的ではない細胞には比較的低い発現レベルで存在する細胞RNA転写物の可能性がある。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体は、標的細胞において活性化(スイッチオン)され、標的ではない細胞中にある間、核酸複合体は、不活性な状態(スイッチオフ状態)のままである。一部の態様では、標的細胞は中枢神経系細胞である。
【0129】
一部の態様では、標的細胞において、インプット核酸鎖は、標的ではない細胞におけるレベルの2倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍若しくは100倍のレベル、又は、およそこれらのレベル、少なくともこれらのレベル若しくは少なくともおよそこれらのレベルで、発現する。一部の態様では、標的細胞において、インプット核酸鎖は、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000転写物のレベルで、又は、およそこれらのレベルで、少なくともこれらのレベルで若しくは少なくともおよそこれらのレベルで、発現する。一部の態様では、標的ではない細胞において、インプット核酸鎖は、転写物50個未満、40個未満、30個未満、20個未満、又は10個未満のレベルで発現する。好ましくは、標的ではない細胞は、インプット核酸鎖の発現を検出できない。
【0130】
インプット核酸鎖は、mRNA、miRNA、長鎖ノンコーディングRNAのようなノンコーディングRNA、RNA断片、又はウイルスのRNA転写物を含むことができる。一部の態様では、インプット核酸鎖は、疾患の進行を引き起こし、RNAi療法の標的となる細胞において発現されるRNA転写物である。通常、標的ではない細胞は、標的RNAのサイレンシングが治療に有益でない副作用を引き起こす可能性がある一連の細胞である。インプットRNAが標的細胞で過剰発現している疾患又は状態を治療するために、核酸複合体は、センサー核酸鎖がインプットRNA配列に相補的な配列を含むように設計できる。核酸複合体を投与すると、インプットRNAへのセンサー核酸鎖の結合により、標的細胞でセンサー二重鎖からRNAi二重鎖が解離し、疾患又は状態を標的とするRNAiが活性化する。
【0131】
一部の態様では、インプット核酸鎖はバイオマーカーを含む。この明細書では、「バイオマーカー」は、疾患若しくは障害の、疾患若しくは障害に対する感受性の、及び/又は治療薬若しくは他の介入に対する応答の指標である、核酸配列(DNA又はRNA)を指す。バイオマーカーは、遺伝子の発現、機能又は調節を反映できる。インプット核酸鎖は、当技術分野で公知のいずれかの疾患バイオマーカーを含むことができる。一部の態様では、インプット核酸鎖は、中枢神経系(CNS)の疾患又は障害などの神経学的疾患又は障害に関連する疾患バイオマーカーを含むことができる。
【0132】
一部の態様では、インプット核酸鎖は、mRNAである。インプット核酸鎖は、GFAP、IBA-1、NPpA、CSF1R、SLC1A2、PLP1、MBP、アミロライド感受性カチオンチャネル3(ACCN3)、SCN10A(Nav1.8ナトリウムイオンチャネル)、Edg7(内皮分化)、GPCR(リゾホスファチジン酸受容体3)、HTR3B(セロトニン受容体3b)、HTR3A(セロトニン受容体3a)、GPR64(GPCR)、NTRK1(NGF受容体、受容体チロシンキナーゼ)、CHRNA6(AChRの構成要素)、P2RX3(ATPゲートイオンチャネル)、KCNK18(カリウムイオンチャネル)、GAL(ガラニン及びGMAPプレプロペプチド)、PRPH(ペリフェリン、細胞骨格タンパク質)、CALCA(カルシトニンホルモン)、CALCB(カルシトニンペプチドB)、P2RX3(ATPゲートイオンチャネル)及びNAV1.7(ナトリウムイオンチャネル)を含むがこれらには限定されない中枢神経系の細胞に特異的なmRNAのような、細胞型又は細胞状態に特異的又は選択的なmRNAである。
【0133】
一部の態様では、インプット核酸鎖は、細胞型特異的又は選択的ではないユニバーサルmRNAである。ユニバーサルmRNAの例は、miR-133b、miR218-2、miR-15b、miR101-1、miR107、miR-335、miR-345、miR-146a、miR-197、miR-320、miR-423、miR-511、miR-1、miR-22、miR-29a、miR-330、miR-132、miR-196、miR-486、miR-100、miR-151-3p、miR-16、miR-219-2-3p、miR-27b、miR-451、miR-92a、miR-34b、miR-338-3p、miR-27a、miR-155、miR-146a、miR-32-3p、miR-146、miR-524-5p、miR-582-3p、miR-24-2、miR-142-3p、miR-142-5p、miR-1461、miR-146b、mir-21-5p、mir-23a-3p、mir-29c-3p、mir-29b-3p、mir-124-3p及び5.8sリボソームRNAを含むが、これらに限定されるものではない。一部の態様では、インプット核酸鎖は、mir-21-5p、mir-23a-3p、mir-29c-3p、mir-29b-3p、mir-124-3p及び5.8sリボソームRNAを含む。一部の態様では、インプット核酸鎖は、ノンコーディングRNA、例えば、MALAT1(転移関連肺腺癌転写物1)であり、これは、NEAT2(ノンコーディング核濃縮豊富転写物2)としても公知である。
【0134】
一部の態様では、明細書に記載したユニバーサルインプット核酸に結合するように設計された核酸複合体により、分布の改善、より深いノックダウン、困難なCNS標的の強力で長期の阻害が可能になる。一部の態様では、明細書に記載した細胞選択的なインプット核酸に結合するように設計された核酸複合体は、領域(例.線条体)の阻害又は細胞型(例.運動ニューロン)限定の阻害により、副作用を低減でき、特定の細胞型(例.アストログリア)又は状態(例.反応状態)を標的として、多面的な影響を解きほぐすことができる。
【0135】
標的RNA
コア核酸鎖は、標的特異的RNA干渉を方向付けるために標的RNAに相補的な配列を含む。一部の態様では、標的RNAは、細胞RNA転写物である。標的RNAは、mRNA、miRNA、ノンコーディングRNA、ウイルスRNA転写物又はこれらの組合せの可能性がある。
【0136】
この明細書では、「標的RNA」は、その発現をRNA干渉によって選択的に阻害又はサイレンシングすべきRNAを指す。標的RNAは、その発現又は活性が、疾患、障害又は状態に関連する細胞の遺伝子又は遺伝子断片を含む標的遺伝子の可能性がある。一部の態様では、標的RNAは、その発現又は活性が中枢神経系の疾患又は障害などの神経学的疾患又は障害に関連する標的遺伝子である。標的RNAは、その発現又は活性が、疾患、障害又はある特定の状態に関連付けられる外来の若しくは外因性のRNA又はRNA断片(例.ウイルスRNA転写物又はプロウイルス遺伝子)の可能性もある。
【0137】
神経学的疾患又は障害(例.CNS疾患又は状態)に関連する代表的な遺伝子としては、HTT(ハンチンチン遺伝子)、APP、ALS2、SETX、SMN、Rab7、α-COP、TDP-43、VAPB、IT15、DRPLA、SCA3/MJD、SNCA、SPR、DJ1、MAPT、SOD1、PSEN1、PSEN2、C9orf72、GRN、SNCA、PRKN、PINK1、PARK7、LRRK2、VPS35、FUS、TARDBP、UBQLN2、BACE1、CASP3、TGM2、NFE2L3、ADRB1、CAMK2A、CBLN1、CDK5R1、GABRA1、MAPK10、NOS1、NPTX2、NRGN、NTS、PDCD2、PDE4D、PENK、SYT1、TTR、LRDD、CYBA、ATF3、ATF6、CASP2、CASP1、CASP7、CASP8、CASP9、HRK、C1QBP、BNIP3、MAPK8、MAPK14、Rac1、GSK3B、P2RX7、TRPM2、PARG、CD38、STEAP4、BMP2、GJA1、TYROBP、CTGF、ANXA2、RHOA、DUOX1、RTP801、RTP801L、NOX4、NOX1、NOX2(gp91pho、CYBB)、NOX5、DUOX2、NOXO1、NOXO2(p47phox、NCF1)、NOXA1、NOXA2(p67phox、NCF2)、p53(TP53)、HTRA2、KEAP1、SHC1、ZNHIT1、LGALS3、HI95、SOX9、ASPP1、ASPP2、CTSD、CAPNS1、FAS及びFASLG、NOGO及びNOGO-R;TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR6、TLR7、TLR8、TLR9、IL1bR、MYD88、TICAM、TIRAP、HSP47並びに当業者に明らかな他の遺伝子が含まれるが、これらには限定されない。
【0138】
一部の態様では、CNS疾患又は状態に関連する代表的な遺伝子には、HTT、C3、GFAP、IBA-1、NPPA、CSF1R、SLC1A2、PLP1、MBP、アミロライド感受性カチオンチャネル3(ACCN3)、SCN10A(Nav1.8ナトリウムイオンチャネル)、Edg7(内皮分化)、GPCR(リゾホスファチジン酸受容体3)、HTR3B(セロトニン受容体3b)、HTR3A(セロトニン受容体3a)、GPR64(GPCR)、NTRK1(NGF受容体、受容体チロシンキナーゼ)、CHRNA6(AChRの構成要素)、P2RX3(ATPゲートイオンチャネル)、KCNK18(カリウムイオンチャネル)、GAL(ガラニン及びGMAPプレプロペプチド)、PRPH(ペリフェリン、細胞骨格タンパク質)、CALCA(カルシトニンホルモン)、CALCB(カルシトニンペプチドB)、P2RX3(ATPゲートイオンチャネル)及びNAV1.7(ナトリウムイオンチャネル)が含まる。
【0139】
化学修飾
明細書に記載した核酸複合体に含まれている核酸鎖(コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及び/又はセンサー核酸鎖)は、非標準、修飾ヌクレオチド(ヌクレオチドアナログ)又は、非標準、修飾ヌクレオシド(ヌクレオシドアナログ)を含む、非標準、修飾核酸鎖の可能性がある。「ヌクレオチドアナログ」又は「修飾ヌクレオチド」は、天然に存在しないリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含む、1つ以上の修飾(例.化学修飾)を含む非標準ヌクレオチドを指す。「ヌクレオシドアナログ」又は「修飾ヌクレオシド」は、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン及びチミジン以外の天然に存在しないヌクレオシドを含む、1つ以上の修飾(例.化学修飾)を含む非標準ヌクレオシドを指す。修飾ヌクレオシドは、リン酸基のない修飾ヌクレオチドである。化学修飾は、1つ以上の原子又は部分の、異なる原子又は異なる部分若しくは官能基(例.メチル基、ヒドロキシル基)による置換を含むことができる。
【0140】
ヌクレオチド/ヌクレオシドのある特定の化学的特性を改変するために、例えば、熱力学的安定性を増加させる若しくは減少させるために、ヌクレアーゼ分解に対する抵抗性(例.エキソヌクレアーゼ抵抗性)を増加させるために、並びに/又は、結合特異性を増加させてオフターゲット効果を最小限に抑えるために、修飾が行われる。例えば、熱力学的安定性は融解温度Tの測定に基づいて決定できる。高いTは、熱力学的に安定な化学物質に関連している可能性がある。
【0141】
一部の態様では、修飾は、核酸複合体における核酸鎖のうちの1つ以上を、エキソヌクレアーゼ分解/切断に対して抵抗性にすることができる。「エキソヌクレアーゼ」は、この明細書では、ポリヌクレオチド鎖の末端(エキソ)から一度に1つずつヌクレオチドを切断することにより働くタイプの酵素を示す。3’又は5’末端でホスホジエステル結合を切断する加水分解反応が生じる。3’及び5’エキソヌクレアーゼは、高い効率及び速い動力学的速度で、細胞内のRNA及びDNA並びに細胞間の間質腔内及び血漿中のRNA及びDNAを分解できる。近縁種は、ポリヌクレオチド鎖の中間(エンド)のホスホジエステル結合を切断するエンドヌクレアーゼである。3’及び5’エキソヌクレアーゼ及びエキソヌクレアーゼ複合体は、細胞内のRNA及びDNA並びに細胞間の間質腔内及び血漿中のRNA及びDNAを分解できる。「エキソリボヌクレアーゼ」は、この明細書では、RNA分子の5’末端又は3’末端のいずれかから末端ヌクレオチドを除去することによりRNAを分解する酵素である、エキソヌクレアーゼリボヌクレアーゼを指す。5’末端からヌクレオチドを除去する酵素は、5’-3’エキソリボヌクレアーゼと呼ばれ、3’末端からヌクレオチドを除去する酵素は、3’-5’エキソリボヌクレアーゼと呼ばれる。
【0142】
修飾は、リン酸修飾、リボース修飾(糖部分における)及び/又は塩基修飾を含むことができる。
【0143】
一部の態様では、修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチドの糖部分の修飾を含むことができる。例えば、ヌクレオチドの2'-OH基を、H、OR、R、F、Cl、Br、I、SH、SR、NH、NHR、NR、COOR又はORから選択される基により置換でき、ここで、Rは、置換又は非置換C~Cアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールなどである。一部の態様では、ヌクレオチド又はヌクレオシドの2'-OH基は、2'-O-メチル基で置換されており、修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドは、2'-O-メチルヌクレオチド又は2'-O-メチルヌクレオシド(2'-OMe)である。2'-O-メチルヌクレオチド又は2'-O-メチルヌクレオシドは、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルウリジン又は2'-O-メチルシチジンの可能性がある。一部の態様では、ヌクレオチドの2'-OH基は、フッ素(F)により置換されており、修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドは、2'-Fヌクレオチド又は2'-Fヌクレオシド(2'-デオキシ-2'-フルオロ又は2'-F)である。2'-Fヌクレオチド又は2'-Fヌクレオシドは、2'-F-アデノシン、2'-F-グアノシン、2'-F-ウリジン又は2'-F-シチジンの可能性がある。修飾は、他の修飾、例えば、ヌクレオシドアナログホスホロアミダイトも含むことができる。一部の態様では、グリコール核酸が使用できる。
【0144】
一部の態様では、修飾ヌクレオチドは、例えば、リン酸基の酸素のうちの1つ以上を硫黄又はメチル基で置換することによる、ヌクレオチドのリン酸基の修飾を含むことができる。一部の態様では、ヌクレオチドのリン酸基の非架橋酸素のうちの1つ以上は、硫黄で置換されている。
【0145】
一部の態様では、明細書に記載した核酸鎖は、ホスホジエステル結合ではない1つ以上の非標準ヌクレオシド間結合を含む。一部の態様では、明細書に記載した核酸鎖は、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。「ホスホロチオエート結合」(PS)は、この明細書では、非架橋酸素のうちの1つが硫黄で置換されている、ヌクレオチド間の結合を示す。一部の態様では、2つの非架橋酸素が硫黄で置換されていてもよい(PS2)。一部の態様では、非架橋酸素のうちの1つが、メチル基で置換されていてもよい。この明細書における「ホスホジエステル結合」は、リン酸が2つの糖を架橋している、DNA及びRNAにおける通常の糖リン酸骨格結合を示す。一部の態様では、コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及び/又はセンサー核酸鎖における1つ以上のホスホロチオエート結合の導入は、ヌクレアーゼ(例.エンドヌクレアーゼ及び/又はエキソヌクレアーゼ)に対する修飾ヌクレオチドの抵抗性を大きくすることができる。
【0146】
一部の態様では、修飾ヌクレオチドは、ヌクレオチドの塩基部分の修飾又は置換を含むことができる。例えば、ウリジン及びシチジン残基は、プソイドウリジン、2-チオウリジン、N6-メチルアデノシン、5-メチルシチジン、又はウリジン及びシチジン残基の他の塩基アナログで置換されていることがある。アデノシンは、アデノシンの、フーグスティーン面の修飾(例.7-トリアゾロ-8-アザ-7-デアザアデノシン)及び/又はワトソン-クリック面の修飾(例.N2-アルキル-2-アミノプリン)を含むことができる。アデノシンアナログの例には、フーグスティーン又はワトソン-クリック面局在N-エチルピペリジントリアゾール修飾アデノシンアナログ、N-エチルピペリジン7-EAAトリアゾール(例.7-EAA、7-エチニル-8-アザ-7-デアザアデノシン)、及び当業者が特定可能な他のアデノシンアナログも含まれる。シトシンは、当業者が特定可能ないずれの好適なシトシンアナログで置換されていてもよい。例えば、シトシンは、同等の塩基対合忠実度、熱安定性及び高度な蛍光を示す6'-フェニルピロロシトシン(PhpC)で置換されていることがある。
【0147】
一部の態様では、この明細書で開示する核酸複合体における1つ以上のヌクレオチドは、ユニバーサル塩基で置換されていることがある。「ユニバーサル塩基」は、天然ヌクレオチドのそれぞれと、ほとんどそれらの間の区別なしに塩基対を形成するヌクレオチドアナログを指す。ユニバーサル塩基の例には、ヒポキサンチン及びその誘導体、イノシン及びその誘導体、アゾールカルボキサミド及びその誘導体、ニトロアゾール及びその誘導体(例.3-ニトロピロール、4-ニトロインドール、5-ニトロインドール、6-ニトロインドール、ニトロイミダゾール及び4-ニトロピラゾール)、フェニル C-リボヌクレオシド及びその誘導体、ナフチル C-リボヌクレオシド及びその誘導体、並びに他の芳香族誘導体、又はその組合せが含まれるが、これらには限定されない。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体に含まれるユニバーサル塩基は、イノシン又はその類似体を含む。イノシンの類似体には、例えば、2'-デオキシイソイノシン、7-デアザ-2'-デオキシイノシン及び2-アザ-2'-デオキシイノシンが含まれる。ユニバーサル塩基及びその類似体の例は、例えばLoakes, 2001, Nucleic Acids Research, 29, 2437-2447に記載されており、その内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0148】
一部の態様では、この明細書で開示する塩基修飾は自然免疫による認識を低下でき、核酸複合体のヌクレアーゼに対する抵抗性を高くできる。この明細書で開示する核酸複合体において使用できる塩基修飾の例は、例えばHuら, Signal Transduction and targeted Therapy 5: 101 (2020)にも記載されており、その内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。一部の態様では、この明細書で開示する塩基修飾(例.ユニバーサル塩基)は、塩基対形成の強度を低下でき、形成された二重鎖(例.センサー二重鎖)の熱力学的安定性及び融解温度を低下させる。
【0149】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体に含まれる核酸鎖(コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及び/又はセンサー核酸鎖)は、1つ以上のロックド核酸又はそのアナログを含むことができる。代表的なロックド核酸アナログには、例えば、それらの対応するロックドアナログホスホロアミダイト及び当業者には明らかな他の誘導体が含まれる。
【0150】
この明細書では、「ロックド核酸」(LNA)は、修飾RNAヌクレオチドを示す。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’炭素と4’炭素を接続する追加の架橋(2’-O,4’-Cメチレン架橋)で修飾されている。架橋は、リボースを3’エンド立体構造に「ロック」してリボフラノース環の柔軟性を制限し、構造を堅固な二環式構造に固定する。LNAヌクレオチドは、必要な場合いつでも、オリゴヌクレオチドのDNA又はRNA塩基と混合できる。この明細書で開示する核酸複合体へのLNAへの組込みは、熱安定性(例.融解温度)、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション特異性、並びにアレル判別の精度を高めることができる。LNAオリゴヌクレオチドは、相補一本鎖RNAへの及び相補一本鎖又は二本鎖DNAへのハイブリダイゼーション親和性を示す。LNAについての追加情報は、例えば、www.sigmaaldrich.com/technical-documents/articles/biology/locked-nucleic-acids-faq.htmlに記載されている。一部の態様では、グリコール核酸が使用できる。
【0151】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体に含まれる核酸鎖(コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及び/又はセンサー核酸鎖)は、2’-4’架橋修飾を有する他の化学修飾ヌクレオチド又はヌクレオシドを含むことができる。2’-4’架橋修飾は、ヌクレオチドの2’及び4’炭素を接続する架橋の導入を指す。架橋は、(例えばLNAにおける)2’-O,4’-Cメチレン架橋の可能性がある。架橋は、(例えはエチレン架橋型核酸(ENA)中の)2’-O,4’-Cエチレン架橋又は当該技術分野の当業者が特定可能な他の化学的結合の場合もある。
【0152】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体への、LNA、その類似体又は2’-4’架橋修飾を有する他の化学修飾ヌクレオチドの導入は、ハイブリダイゼーションの安定性を向上でき、ミスマッチ判別も向上できる。例えば、LNA、その類似体、又は2’-4’架橋修飾を有する他の化学修飾ヌクレオチドを有するセンサー核酸鎖を含む核酸複合体の、インプット核酸鎖のマッチとミスマッチとを(例えば、インプット核酸鎖とセンサー核酸鎖との相補的結合で)区別する感度は、向上できる。
【0153】
一部の態様では、核酸複合体の核酸鎖のうちの1つ以上は、鎖の3’及び/又は5’末端と連結した化学的部分を含むことができる。末端部分は、1つ以上の好適な末端リンカー又は修飾を含むことができる。例えば、末端部分は、オリゴヌクレオチドと別の分子又は特定の表面を連結させるリンカー(ビオチン、アミノ修飾剤、アルキン、チオール修飾剤、アジド、N-ヒドロキシスクシンイミド及びコレステロール)、色素(例.フルオロフォア、Cy3又はダーククエンチャー)、フッ素修飾リボース、スペース(例.C3スペーサー、スペーサー9、スペーサー18、dスペーサー、トリエチレングリコールスペーサー、ヘキサエチレングリコールスペーサー)、クリックケミストリーに関与する部分及び化学修飾(例.アルキン及びアジド)、並びに、抗体、金又は他の金属ナノ粒子、高分子ナノ粒子、デンドリマーナノ粒子、低分子、単鎖又は分枝状脂肪酸、ペプチド、タンパク質、アプタマー、並びに他の核酸鎖及び核酸ナノ構造のような、3’及び5’末端を他の化学的部分に結合させるために使用できるリンカー又は末端修飾を含むことができる。末端部分は、検出できる標識、又は一本鎖核酸をヌクレアーゼによる分解から保護するためのブロッカーとして役立つ可能性がある。センサー核酸鎖の末端に結合できる別のリンカー及び末端修飾は、www.idtdna.com/pages/products/custom-dna-rna/oligo-modifications及びwww.glenresearch.com/browse/labels-and-modifiersに記載されており、その内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0154】
ヌクレオチド及び/又はヌクレオシドの更なる修飾、例えば、Huら(Signal Transduction and targeted Therapy 5: 101 (2020))に記載されている修飾を、明細書に記載した核酸複合体の1つ以上の鎖に導入することもでき、その内容は全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0155】
リボース修飾
核酸複合体の修飾ヌクレオシドの割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、核酸複合体のヌクレオチドの少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲が、修飾されている(例.非DNA及び非RNAである)。一部の態様では、全ての核酸複合体のヌクレオチドが修飾されている(例.非DNA及び非RNA)。
【0156】
核酸複合体の1つ以上の鎖の修飾ヌクレオシドの割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0157】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖に相補的に結合するコア核酸鎖の領域(図1及び3におけるデザイン1及びデザイン2における中央の領域、又は図2及び3におけるデザイン3の第1の領域)内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の第1の領域の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0158】
一部の態様では、センサー核酸鎖に相補的に結合するコア核酸鎖の領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%、95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。
【0159】
コア核酸鎖が、5’領域、中央領域及び3’領域を含む一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖の5’領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%、95%、99%、100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の5’の領域の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0160】
一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖の3’領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、80%、85%、90%、95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の3’の領域の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0161】
コア核酸鎖が、第1の領域及び第2の領域を含む一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖の第1の領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の第1の領域の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0162】
一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖の第2の領域内の修飾ヌクレオシドの割合は、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の第2の領域の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。一部の態様では、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖内の修飾ヌクレオシドの割合は、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0163】
一部の態様では、明細書に記載したセンサー核酸鎖内の修飾ヌクレオシドの割合は、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、少なくともこれらの割合、若しくは少なくともおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、センサー核酸鎖の全てのヌクレオシドが化学修飾されている。
【0164】
コア核酸鎖、パッセンジャー核酸鎖及びセンサー核酸鎖のうちの1つ以上における修飾ヌクレオシドは、2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドを含むことができる。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体内の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。一部の態様では、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。一部の態様では、明細書に記載したセンサー核酸鎖の2'-O-メチルヌクレオシド及び/又は2'-Fヌクレオシドの割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。
【0165】
リン酸修飾
明細書に記載した核酸複合体内のヌクレオチドのリン酸修飾の割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、リン酸修飾は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含むか、又はそれである。一部の態様では、コア核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、5%未満、10%未満、25%未満、50%未満、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲である。一部の態様では、コア核酸鎖は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合修飾を含まない。
【0166】
一部の態様では、コア核酸鎖のホスホジエステルヌクレオシド間結合の割合は、およそ、少なくとも又は少なくともおよそ、50%、80%若しくは95%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲である。一部の態様では、コア核酸鎖の全てのヌクレオシド間結合が、ホスホジエステルヌクレオシド間結合である。
【0167】
コア核酸鎖が、5’領域、中央領域及び3’領域を含む一部の態様(例.図1及び3におけるデザイン2)では、コア核酸鎖の中央領域の5’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域の3’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域の5’末端及びコア核酸鎖の中央領域の3’末端は、それぞれ独立して、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、コア核酸鎖の中央領域は、中央領域の5’末端、3’末端又は両者における2又は3ヌクレオシド間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。
【0168】
一部の態様では、コア核酸鎖の5’コネクターの3’に隣接する1~3ヌクレオチド(例.1、2又は3ヌクレオチド)間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、コア核酸鎖の3’コネクターの5’に隣接する1又は2ヌクレオチド間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、コア核酸鎖の3’コネクターの3’に隣接する1~3ヌクレオチド(例.1、2又は3ヌクレオチド)間のヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。一部の態様では、コア核酸鎖の3’領域は、コア核酸鎖の3’コネクターの3’に隣接する1~3ヌクレオチド(例.1、2又は3ヌクレオチド)間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。一部の態様では、コア核酸鎖の5’領域は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。
【0169】
コア核酸鎖が、第1の領域及び第2の領域を含む一部の態様(例.図2及び3におけるデザイン3)では、コア核酸鎖の第1の領域の3’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。コア核酸鎖の第1の領域の3’末端における最後の2、3又は4ヌクレオシドの間の結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の第1の領域の5’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。コア核酸鎖の第1の領域の5’末端における最後の2、3又は4ヌクレオシドの間の結合は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合の可能性がある。一部の態様では、コア核酸鎖の第1の領域の5’末端及びコア核酸鎖の第1の領域の3’末端は、それぞれ独立して、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、コア核酸鎖の第1の領域は、第1の領域の5’末端、3’末端又は両者における最後の2又は3ヌクレオシド間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。例えば、コア核酸鎖の第1の領域は、5’末端における最後の3ヌクレオシドと3’末端における最後の3ヌクレオシドとの間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。
【0170】
一部の態様では、コア核酸鎖の第2の領域のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、5%未満、10%未満、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲である。一部の態様では、コア核酸鎖の第2の領域は、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。
【0171】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。パッセンジャー核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、5%未満、10%未満、25%未満、50%未満、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲である。
【0172】
一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の5’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖の3’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、パッセンジャー核酸鎖の5’末端、3’末端又は両者における最後の2、3又は4ヌクレオシド間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。一部の態様では、パッセンジャー核酸鎖は、パッセンジャー核酸鎖の5’末端における最後の2~3ヌクレオシド間及び3’末端における最後の2~3ヌクレオシド間のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。
【0173】
一部の態様では、センサー核酸鎖は、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含む。センサー核酸鎖のホスホロチオエートヌクレオシド間結合の割合は、5%未満、10%未満、25%未満、50%未満、60%未満、70%未満、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性がある。
【0174】
一部の態様では、センサー核酸鎖の5’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1、2又は3のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、センサー核酸鎖の3’末端は、少なくとも1つのホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.1~20のホスホロチオエートヌクレオシド間結合)を含む。一部の態様では、センサー核酸鎖の5’末端、及びセンサー核酸鎖の3’末端は、独立して、1つ以上のホスホロチオエートヌクレオシド間結合(例.5’末端に1、2若しくは3又は3’末端に1~20)を含む。一部の態様では、センサー核酸鎖は、その5’末端、3’末端又は両者におけるホスホロチオエートヌクレオシド間結合を除き、ホスホロチオエートヌクレオシド間結合を含まない。一部の態様では、センサー核酸鎖の3’末端におけるホスホロチオエートヌクレオシド間結合は、センサー核酸鎖の一本鎖オーバーハング内にある。
【0175】
LNA、その類似体、及び2’-4’架橋修飾
核酸複合体のLNA又はその類似体の割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体のLNA又はその類似体の割合は、約10%~50%の可能性がある。
【0176】
核酸複合体の1つ以上の鎖のLNA又はその類似体の割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載したコア核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、5%、10%若しくは15%の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、5%、10%若しくは15%の可能性があるか、又は、およそこれらの割合、最大でもこれらの割合若しくは最大でもおよそこれらの割合の可能性がある。一部の態様では、5%を超える、10%を超える又は15%を超える、明細書に記載したパッセンジャー核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、核酸複合体のRNAi活性を減少させることができる。一部の態様では、明細書に記載したセンサー核酸鎖のLNA又はその類似体の割合は、10%~50%の可能性があるか、又は、およそこの範囲、少なくともこの範囲、少なくともおよそこの範囲、最大でもこの範囲若しくは最大でもおよそこの範囲の可能性がある。
【0177】
核酸複合体の2’-4’架橋修飾の割合は、態様によって変化することがある。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体の2’-4’架橋修飾の割合は、約10%~50%の可能性がある。
【0178】
塩基修飾
コア核酸鎖が、5’領域、中央領域及び3’領域を含む一部の態様(例.図1及び3におけるデザイン2)では、コア核酸鎖の5’領域及び/又は3’領域は、明細書に記載した1つ以上のユニバーサル塩基を含むことができる。例えば、コア核酸鎖の5’領域及び/又は3’領域は、1つ以上のイノシンを含むことができる。
【0179】
コア核酸鎖が、第1の領域及び第2の領域を含む一部の態様(例.図2及び3におけるデザイン3)では、コア核酸鎖の第2の領域は、明細書に記載した1つ以上のユニバーサル塩基を含むことができる。例えば、コア核酸鎖の第2の領域は、1つ以上のイノシンを含むことができる。
【0180】
一部の態様では、センサー核酸、特に、コア核酸鎖と相補的に結合するセンサー核酸の領域は、明細書に記載した1つ以上のユニバーサル塩基を含むことができる。
【0181】
医薬組成物及び投与の方法
組成物
この明細書では、明細書に記載した核酸複合体を1つ以上の相溶性の薬学的に許容される担体と組み合わせて含む医薬組成物も提供する。
【0182】
明細書に記載した核酸複合体は、構築物の十分な部分が細胞に侵入して遺伝子サイレンシングの誘導を可能にする手段によって、適切に製剤化し、細胞に導入できる。
【0183】
核酸複合体は、送達中の取り込み、分配及び/又は吸収を補助するために、他の分子、分子構造、化合物若しくは薬剤の混合物、又は他の製剤と、混合、封入、複合化又は結合させることができる。
【0184】
「薬学的に許容される」は、正当な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題や合併症がなく、妥当なベネフィット-リスク比に見合った、人間及び動物の組織と接触して使用することに適している、薬剤、材料、組成物及び/又は剤形を指すためにこの明細書で用いられる。
【0185】
「薬学的に許容される担体」は、この明細書では、体の1つの器官又は部分から体の別の器官又は部分に対象化学物質を運ぶこと又は輸送することに関与する、薬学的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体若しくは固体フィラー、希釈剤、賦形剤、溶媒又は封入材料を意味する。それぞれの担体は、製剤の他の構成成分と相溶性である及び対象にとって有害でないという意味で、「許容される」ものでなければならない。薬学的に許容される担体として役立つ可能性がある材料の一部の例には、(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えば、トウモロコシデンプン及びバレイショデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)トラガント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えば、カカオ脂及び坐薬用ワックス;(9)油、例えば、落花生油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油;(10)グリコール、例えば、プロピレングリコール;(11)ポリオール、例えば、グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール;(12)エステル、例えば、オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば、水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)パイロジェンフリー水;(17)等張食塩水;(18)リンゲル液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝溶液;並びに(21)医薬製剤に利用される他の非毒性相溶性物質が含まれる。
【0186】
薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される塩を含むことができる。この明細書では、「薬学的に許容される塩」は、この明細書で開示する組成物の成分のうちの1つの酸形態のものの塩を含む。これらは、アミンの有機又は無機酸塩を含む。好ましい酸塩は、塩酸塩、酢酸塩、サリチル酸塩、硝酸塩及びリン酸塩である。他の好適な薬学的に許容される塩は、当業者に周知であり、さまざまな無機及び有機酸の塩基性塩を含む。
【0187】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体とともに使用される薬学的に許容される塩としては、(1)ナトリウム、カリウム、アンモニウム、マグネシウム、カルシウムといったカチオン、スペルミン及びスペルミジンといったポリアミン、とで形成される塩;(2)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等、とで形成される酸付加塩;(3)有機酸、例えば、酢酸、シュウ酸、酒石酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、安息香酸、タンニン酸、パルミチン酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等、とで形成される塩;並びに(4)元素アニオン、例えば、塩素、臭素及びヨウ素、から形成される塩を含むが、これらには限定されない。
【0188】
送達ベシクル
さまざまな送達システム、例えば、数ある中でも特に、抗体複合体、ミセル、天然多糖、ペプチド、合成カチオン性ポリマー、微粒子、脂質ベースのナノベクターを、明細書に記載した核酸複合体を送達するために利用できる。
【0189】
明細書に記載した核酸複合体の送達に使用される送達システム及び関連する賦形剤は、態様によって変化することがある。送達システムは、利用する投与方法、製剤、標的部位、及び治療すべき疾患又は障害に基づいて、組織透過性、細胞取り込みを助長するように、並びに血管外遊出及びエンドソーム脱出を防止するように選択できる。
【0190】
一部の態様では、核酸複合体を1つ以上のポリマーとともに製剤化して、核酸複合体と多次元ポリマーネットワークとを含有する超分子複合体を形成できる。ポリマーは、直鎖状であることも、分枝していることもある。超分子複合体は、いずれかの好適な形態をとることができ、好ましくは粒子の形態である。
【0191】
核酸複合体を脂質媒介送達システムによって送達できる。一部の態様では、核酸複合体をリポソームに封入すること又はリポソームに付随させることができる。例えば、核酸複合体をポリカチオン縮合剤で縮合させ、低イオン強度水性媒体に懸濁させ、カチオン性リポソームをカチオン性小胞形成性脂質から形成できる。
【0192】
この明細書では、「リポソーム」は、通常は1つ以上の脂質二重層で形成されている外側の脂質シェルを有し、それによって水性内部が封入されている、脂質小胞を指す。一部の態様では、リポソームは、約20~80モル%がカチオン性小胞形成性脂質で構成されており、残部が中性小胞形成性脂質及び/又は他の成分である、カチオン性リポソームである。この明細書では、「小胞形成性脂質」は、疎水性及び極性頭部基部分を有し、それによって水中で自発的に二層小胞になることができる、いずれかの両親媒性脂質(例.リン脂質)を指す。好ましい小胞形成性脂質は、通常は長さが約14~22の炭素原子で不飽和度がさまざまなアシル鎖を有する、リン脂質のようなジアシル鎖脂質である。
【0193】
カチオン性小胞形成性脂質は、極性頭部基が、使用可能なpH(例.pH4~9)で正味正電荷の小胞形成性脂質である。その例には、リン脂質(例.ホスファチジルエタノールアミン)、糖脂質(例.カチオン性極性頭部基を有する、セレブロシド及びガングリオシド)、コレステロールアミン及び関連カチオン性ステロール(例.1,2-ジオレイルオキシ-3-(トリメチルアミノ)プロパン(DOTAP)、N-[1-(2,3-ジテトラデシルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、3β[N-(N',N'-ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Choi)及びジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB))が含まれる。
【0194】
中性小胞形成性脂質は、正味電荷を有さない、又は極性頭部基に負電荷を有する脂質のわずかな割合を含む、小胞形成性脂質である。小胞形成性脂質の例には、リン脂質、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)及びスフィンゴミエリン(SM)、並びにコレステロール、コレステロール誘導体及び他の非荷電ステロールが含まれる。
【0195】
一部の態様では、この明細書で使用する送達システムは、ナノ粒子(NP)、無機ナノ粒子(例.シリカNP、金NP、Qドット、超常磁性酸化鉄NP、常磁性ランタニドイオン)及び他のナノ材料、核酸脂質粒子、高分子ナノ粒子、リピドイドナノ粒子(LNP)、キトサン及びイヌリンナノ粒子、シクロデキストリンナノ粒子、カーボンナノチューブ、リポソーム、ミセル構造物、カプシド、ポリマー(例.ポリエチレンイミン、アニオン性ポリマー)、ポリマーマトリクス、ヒドロゲル、デンドリマー(例.ポリプロピレンイミン(PPI)及びポリアミドアミン(PAMAM))、核酸ナノ構造物、エキソソーム及びGalNAc結合メリチン様ペプチド(NAG-MLP)を含むが、これらには限定されない。一部の態様では、緩衝溶液、例えばリン酸緩衝食塩溶液中で、核酸複合体を製剤化できる。
【0196】
一部の実験では、明細書に記載した核酸複合体は、リピドイドナノ粒子(LNP)によって送達される。LNPは、イオン化可能なLNP、カチオン性LNP及び/又は中性LNPを含むことができる。イオン化可能なLNPは、循環している間はほぼ非荷電であるが、低pH環境で、例えばエンドソーム及びリソソーム内で、プロトン化される。カチオン性LNPは、血流中及びエンドソーム又はリソソーム内で恒常的な正電荷を示す。中性LNPは、循環している間、及びエンドソーム又はリソソーム内で、中性、非荷電である。
【0197】
明細書に記載した核酸複合体は、裸で提供でき、又はリガンドと複合化できる。裸のsiRNAは、共有結合又は非共有結合のいずれかによりsiRNAに付随している送達システムを含有しない、システムを指す。裸の形態で送達する場合、裸のsiRNAを、標的部位に、例えば比較的閉じておりヌクレアーゼをほとんど含有しない特定の器官(例.眼)に、局所注入できる。
【0198】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体をリガンドと結合(例.融合又は複合化)させてリガンド-siRNAコンジュゲートを形成でき、このコンジュゲートは、細胞又は組織の表面受容体とリガンドとの特異的認識と相互作用によって、siRNAを所望の組織及び細胞に輸送できる。一般的な標的化リガンドには、炭水化物、アプタマー、抗体又は抗体断片、ペプチド(例.細胞膜透過性ペプチド、エンドソーム溶解性ペプチド)及び低分子(例.N-アセチルガラクトサミン(GalNAc))、並びに当業者には明らかである他のものが含まれる。
【0199】
一部の態様では、核酸複合体はアプタマーと結合している。「アプタマー」は、この明細書では、特定の標的に高い親和性及び特異性で結合する、オリゴヌクレオチド又はペプチド分子を指す。特に、核酸アプタマーは、例えば、in vitro選択の反復ラウンド、即ちSELEX法によってさまざまな分子標的、例えば、低分子、タンパク質、核酸並びに更には細胞、組織及び生物に結合するように操作された、核酸種を含むことができる。ペプチドアプタマーは、細胞内のタンパク質に特異的に結合し、タンパク質間相互作用に干渉するように設計される、ペプチドである。特に、ペプチドアプタマーは、例えば、酵母ツーハイブリッド(Y2H)システムから導出される選択戦略に従って得ることができる。アプタマーは、抗体のものに匹敵する分子認識特性を提供するので、バイオテクノロジー及び治療への応用に有用である。
【0200】
一部の態様では、核酸複合体は低分子と結合する。「低分子」は、この明細書では、合成又は生体起源の有機化合物であって、モノマー及び/又は一次代謝産物を含むことがあるがポリマーではない有機化合物を示す。一部の態様では、低分子は、タンパク質でも核酸でもない分子であって、内因性の生物学的役割(例.標的の阻害若しくは活性化)若しくは外因性の生物学的役割(例.細胞シグナル伝達)を果たす分子、分子生物学においてツールとして使用される分子、又は医学において薬物として好適である分子を含むことができる。低分子は、天然生体分子とは無関係の場合もある。通常は、低分子は、1kg/mol未満のモル質量を有する。代表的な低分子には、二次代謝産物(例.アクチノマイシンD)、ある特定の抗ウイルス薬(例えば、アマンタジン及びリマンタジン)、催奇形物質及び発がん性物質(例えば、13-酢酸12-ミリスチン酸ホルボール)、天然物(例えば、ペニシリン、モルフィン及びパクリタキセル)、及び当業者により特定可能な更なる分子が含まれる。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体はGalNAcと結合する。
【0201】
特定の細胞型への核酸複合体の標的化における使用に好適なリガンドの例には、上皮がん及び骨髄幹細胞の葉酸受容体に結合できるフォレート、さまざまな細胞のビタミン受容体に結合できる水溶性ビタミン類、CD4リンパ球のCD4に結合できるリン酸ピリドキサール、肝臓肝細胞及び血管内皮細胞のLDLに結合できるアポリポタンパク質、インスリン受容体に結合できるインスリン、内皮細胞のトランスフェリン受容体に結合できるトランスフェリン、肝臓肝細胞のアシアロ糖タンパク質受容体に結合できるガラクトース、活性化内皮細胞のE、Pセレクチンに結合できるシアリル-ルイス、好中球及び白血球のLセレクチンに結合できるMac-1、腫瘍上皮細胞のFlk-1、2に結合できるVEGF、腫瘍上皮細胞のFGF受容体に結合できる塩基性FGF、上皮細胞のEFG受容体に結合できるEFG、血管内皮細胞のaインテグリンに結合できるVCAM-1、血管内皮細胞のaインテグリンに結合できるICAM-1、血管内皮細胞及び活性化血小板のavb3インテグリンに結合できるPECAM-1/CD31、アテローム性動脈硬化プラークにおける内皮細胞及び平滑筋細胞のaインテグリン及びaインテグリンに結合できるオステオポンチン、腫瘍内皮細胞及び血管平滑筋細胞のaインテグリンに結合できるRGD配列、又はCD4リンパ球のCD4に結合できるHIV GP 120/41若しくはGP120、並びに当業者に特定可能な他のものが含まれるが、これらには限定されない。
【0202】
一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体の送達は、標的細胞の少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれより多くが核酸複合体を取り込むような送達である。一部の態様では、約0.1~10nM核酸複合体が、標的細胞に送達される。
【0203】
製剤
いずれかの好適な医薬製剤を利用できる。一部の態様では、本開示の医薬組成物を、下記に適しているものを含めて、固体又は液体形態での投与のために特別に製剤化してもよい:(1)経口投与、例えば、液剤(水溶液若しくは非水溶液又は水性若しくは非水性懸濁液)、錠剤、ボーラス、散剤、顆粒剤、ペースト;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内若しくは静脈内注入により、例えば、無菌溶液若しくは懸濁液として:(3)局所的適用、例えば、皮膚に適用されるクリーム、軟膏若しくはスプレー剤として;(4)膣内に若しくは直腸内に、例えば、ペッサリー、クリーム若しくはフォームとして;又は(5)エアロゾル、例えば、ヒドロゲル組成物を含有する水性エアロゾル、リポソーム調製物若しくは固体粒子として。医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0204】
この明細書で開示する方法において有用な製剤は、経口、鼻腔、局所(頬側及び舌下を含む)、直腸内、膣内、エアロゾル及び/又は非経口投与に好適なものを含む。製剤を単位剤形で提供してもよく、薬学技術分野において周知のいずれの方法で調製してもよい。担体材料と組み合わせて単一剤形を生成できる有効成分の量は、治療する宿主、特定の投与方法に依存して変化する。担体材料と組み合わせて単一剤形を生成できる有効成分の量は、一般に、治療効果を生じさせるRNAi構築物の量である。一般に、この量は、有効成分の約1%~約99%、好ましくは約5%~約70%、最も好ましくは約10%~約30%である。
【0205】
経口投与に好適な製剤は、各々が所定量の呼吸脱共役剤を有効成分として含有する、カプセル、カシェー、丸剤、錠剤、トローチ(着香基材、通常はスクロース及びアラビアゴム若しくはトラガントを使用する)、散剤、顆粒の形態、又は水性若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液としての形態、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルジョンとしての形態、又はエリキシル若しくはシロップとしての形態、又はトローチ剤(不活性基剤、例えば、ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアラビアゴムを使用する)としての形態、並びに/又はマウスウォッシュ等としての形態であってもよい。核酸複合体組成物は、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与してもよい。
【0206】
経口投与のための固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤等)の場合、有効成分は、1つ以上の薬学的に許容される担体、例えば、クエン酸ナトリウム若しくはリン酸水素カルシウム、並びに/又は以下のもののいずれかと混合される:(1)フィラー又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及び/又はケイ酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び又はアラビアゴムなど、(3)保湿剤、例えば、グリセリン;(4)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプン又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えば、パラフィン;(6)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物;(7)湿潤剤、例えば、アセチルアルコール及びモノステアリン酸グリセリンなど;(8)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイト粘土;(9)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物;並びに(10)着色剤。カプセル、錠剤及び丸剤の場合、医薬組成物は、緩衝剤を含んでいてもよい。同様のタイプの固体組成物は、賦形剤、例えばラクトース又は乳糖、並びに高分子量ポリエチレングリコール等を使用する、ゼラチン軟及び硬カプセル中のフィラーとして利用してもよい。
【0207】
錠剤は、必要に応じて1つ以上の補助構成成分とともに、圧縮又は成形によって製造してもよい。圧縮錠剤を、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を使用して製造してもよい。成形錠剤を、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状ペプチド又はペプチドミメティックの混合物を好適な機械で成形することにより製造してもよい。
【0208】
特定の対象、組成物及び投与方法で所望の治療応答を達成するのに有効であり、対象に対して毒性がない有効成分の量を得るために、本開示の医薬組成物中の有効成分の実際の投与量を本発明の方法で決定してもよい。
【0209】
錠剤、並びに、糖衣錠、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤のような他の固体剤形には、必要応じて割線を入れてもよく、腸溶コーティング及び医薬製剤の技術分野で周知の他のコーティングのようなコーティング及びシェルを施してもよい。また、製剤中の有効成分を徐放又は制御放出するために、例えば、所望の放出プロファイルをもたらすためのさまざまな割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、リポソーム及び/又はマイクロスフェアを使用して、製剤化してもよい。それらを、例えば、細菌保留フィルターによる濾過により、又は使用直前に滅菌水若しくは他の無菌の注入可能な媒体に溶解できる無菌固体組成物に滅菌剤を配合することで、滅菌してもよい。これらの組成物には、必要に応じて乳白剤を含めてもよく、また、有効成分を消化管の特定の部分でのみで、又はその部分で優先的に、場合によっては徐々に、放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例には、高分子物質及びワックスが含まれる。有効成分は、必要に応じて上記賦形剤の1つ以上と共に、マイクロカプセル化できる。
【0210】
経口投与のための液体剤形は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルを含む。有効成分に加えて、液体剤形は、当技術分野において一般に使用されている不活性希釈剤、例えば、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実、ラッカセイ、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ及びゴマ油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物などを含有してもよい。
【0211】
不活性希釈剤の他に、経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化及び懸濁化剤、甘味剤、着香剤、着色剤、芳香剤及び/又は保存剤も含む可能性がある。
【0212】
懸濁液は、有効成分に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガント、並びにこれらの混合物などを含有してもよい。
【0213】
直腸内又は膣内投与のための製剤を坐薬として提供してもよく、この坐薬は、1つ以上の呼吸脱共役剤と、例えば、カカオ脂、ポリエチレングリコール、坐薬用ワックス又はサリチル酸塩を含む1つ以上の適切な非刺激性の賦形剤又は担体とを混合することにより調製してもよく、室温で固体であるが体温では液体であり、そのため、直腸又は膣腔内で融解し、有効成分を放出する。
【0214】
膣内投与に好適である製剤は、担体、例えば、当技術分野において適切であることが公知である担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤も含む。
【0215】
ヒドロゲル組成物の局所又は経皮投与のための剤形は、散剤、スプレー剤、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、液剤、パッチ及び吸入剤を含む。有効成分を、無菌条件下で薬学的に許容される担体と、及び必要とされることがあるいずれかの保存剤、緩衝剤又は噴射剤と、混合してもよい。
【0216】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、呼吸脱共役剤に加えて、賦形剤、例えば、動物性及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク並びに酸化亜鉛、又はこれらの混合物を含有してもよい。
【0217】
眼科用製剤、眼軟膏、散剤、液剤(例.点眼剤)等も、この開示の範囲内と考えられる。
【0218】
本発明の医薬組成物に利用してもよい適切な水性及び非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)及びこれらの適切な混合物、植物油、例えばオリーブ油、並びに注入可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが含まれる。適正な流動性は、例えば、コーティング剤、例えばレシチンの使用により、分散液の場合は必要粒径の維持により、及び界面活性剤の使用により、維持できる。
【0219】
これらの組成物は、アジュバント、例えば、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤を含有してもよい。微生物の作用の防止を、さまざまな抗菌及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって確実にしてもよい。等張化剤、例えば、糖、塩化ナトリウム等を組成物に含めることが望ましい場合もある。加えて、注入可能な医薬の形態の持続的吸収を、吸収を遅らせる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによってもたらしてもよい。
【0220】
明細書に記載した医薬組成物は、核酸複合体の治療有効量を含む。
【0221】
「治療有効量」は、この明細書では、所望の治療効果、例えばがん治療、を妥当なベネフィット-リスク比で生じさせるのに有効である、この明細書で開示する核酸複合体の量を意味する。治療有効量は、当業者には理解されるように、構築物の構造、投与経路、標的部位、及び治療すべき特定の疾患又は障害によっても異なる。例えば、臨床治療が、疾患又は障害に関連する測定可能なパラメーターの少なくとも20%低下があったときに有効と見なされる場合、その疾患又は障害の治療のための構築物の治療有効量は、当該パラメーターの少なくとも20%低下を達成するために必要な量である。
【0222】
一部の態様では、明細書に記載した医薬組成物は、治療を受ける対象(例.動物又はヒト)における標的遺伝子の発現を阻害するのに十分な好適な投与量で核酸複合体を含む。一部の態様では、核酸複合体の好適な投与量は、1日に対象のkg体重当たり0.001~0.25mg、0.01~20μg、0.01~10μg、0.10~5μg又は0.1~2.5μgである。核酸複合体を含む医薬組成物を、1日1回、1日2回、1日3回、又は必要に応じて若しくは医師による処方に応じて、投与できる。明細書に記載した医薬組成物を、一日を通して適切な間隔で投与される2、3、4、5、6以上の分割用量を含む投薬単位で、提供することもできる。投薬単位を、制御された様式で数日にわたって持続的に放出できる単一用量(例.持続又は制御放出製剤を使用する)用に配合することもできる。
【0223】
当業者には明らかであるように、明細書に記載した医薬組成物の好適な投薬単位は、細胞培養アッセイから得られるデータから推定でき、さらに、動物実験で得られるデータから決定できる。例えば、明細書に記載した医薬組成物の毒性及び治療効果を、例えば、LD50(集団の50%にとって致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療に有効な用量)を決定するための、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順により、決定できる。毒性効果と治療効果との用量比が治療指数であり、それをLD50/ED50として表すことができる。治療指数が大きい組成物が好ましい。毒性を最小限に抑えるために、例えば、標的としない細胞の潜在的な損傷を最小限に抑えるために、及び副作用を低下させるために、特定の送達システムと組み合わせた組成物の好適な投与量を選択できる。
【0224】
投与
当業者には明らかであるように、明細書に記載した核酸複合体及びその組成物を、いずれかの好適な投与経路を使用して対象に投与できる。核酸複合体及びその組成物を標的部位に局所投与すること又は全身投与することができる。
【0225】
「局所投与」又は「局所的投与」は、この明細書では、組成物を個体と接触させた結果、体内での組成物の位置が局所(イメージングが望まれる特定の組織、器官又は他の体の部分に限られる)となる投与経路を示す。代表的な局所投与経路には、針による特定の組織への注入、消化管への強制投与及びヒドロゲル組成物を含有する溶液の皮膚表面への塗布が含まれる。
【0226】
「全身投与」は、この明細書では、核酸複合体組成物を個体と接触させた結果、体内での組成物の位置が全身的(即ち、イメージングが望まれる特定の組織、器官又は他の体の部分に限定されない)となる投与経路を示す。全身投与は、経腸及び非経口投与を含む。経腸投与は、物質が消化管経由で投与される全身投与経路であり、経口投与、胃栄養チューブによる投与、十二指腸栄養チューブによる投与、胃瘻造設術、経腸栄養法及び直腸内投与を含むが、これらには限定されない。非経口投与は、物質が消化管以外の経路により投与される全身投与経路であり、静脈内投与、動脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、腹腔内投与及び膀胱内注入を含むが、これらには限定されない。
【0227】
一部の態様では、投与方法は、エアロゾル送達、経鼻送達、経膣送達、直腸送達、頬側送達、眼内送達、局所送達、局所的送達、大槽内送達、腹腔内送達、経口送達、筋肉内注入、静脈内(IV)注入、皮下(SC)注入、結節内注入、腫瘍内注入、腹腔内注入及び/若しくは皮内注入又はこれらの組合せを含むことができる。投与は、部位特異的注入(例.眼内又は脳脊髄液中)の場合もある。
【0228】
一部の態様では、投与は、ex vivo形質導入、細胞注入、皮下注入、静脈内注入、髄腔内送達、脳室内注入、皮内注入、硝子体内送達、腫瘍内送達又は局所的適用(例.局所的点眼)の可能性がある。
【0229】
投与方法は、標的部位、標的となる細胞/組織の型、及び構築物が製剤化される方法に依存する。一部の態様では、脂質製剤を動物に、例えば、静脈内、筋肉内若しくは腹腔内注入により、経口的に、吸入により、又は当技術分野で公知の他の方法で投与できる。
【0230】
一部の態様では、投与は、表皮及び真皮の下の脂肪組織へのSC注入の可能性がある。一部の態様では、SC投与は、明細書に記載したリガンド結合核酸複合体と関連している可能性がある。一部の態様では、SC投与は、薬物の血流への放出速度を遅くして、リンパ系に侵入させる可能性があり、取り込みを媒介する細胞受容体のリサイクルに多くの時間を与える。一部の態様では、SC投与は、迅速かつ容易に投与できる可能性があり、治療の負担が軽減される。
【0231】
一部の態様では、投与は、薬物の血液脳関門の通過を可能にする投与経路の可能性がある。血液脳関門は非常に選択的であり、血中の潜在的に有害な物質がCNSに入るのを防ぐ。一部の態様では、投与経路は、治療物質の脳脊髄液への直接的な、脳注射、膜貫通拡散又は脳室内注入の可能性がある。一部の態様では、投与は、線条体内注射、髄腔内注射、脳内注射、頭蓋内注射、実質内注射、鼻腔内送達又は脳室内注射の可能性がある。一部の態様では、投与は、脳への薬物分布を制限する血液脳関門や他の機構を回避するCNSへの脳室内注射の可能性があり、高濃度の薬物が中心区画に入ることが可能となる。
【0232】
IV投与は、例えば、ナノ粒子及び脂質ナノ粒子を用いて製剤化した明細書に記載の核酸複合体に関連している可能性がある。一部の態様では、IV投与は、肝臓での初回通過代謝を回避でき、血流を介して標的組織への迅速な進入をもたらす。
【0233】
標的部位
明細書に記載した組成物は、好適な標的部位に投与できる。一部の態様では、標的部位は、中枢神経系(例.脳、脊髄)、末梢神経系(例.脊髄から分岐する神経)、及び中枢神経系と末梢神経系との間の経路と機能に関与する結合組織/器官(例.後根、前根)である。標的部位は、脳、脊髄、脳神経、末梢神経、神経根、自律神経系、神経筋接合部及び筋肉を含むことができる。一部の態様では、標的部位は中枢神経系である。
【0234】
標的部位は、疾患若しくは障害の部位を含むことでき、又は疾患若しくは障害の部位に近接している可能性がある。疾患又は障害の1つ以上の部位の位置を予め決定できる。疾患又は障害の1つ以上の部位の位置を、この方法中に(例えば.超音波又はMRIといったイメージングに基づく方法により)決定できる。一部の態様では、標的部位は、例えば、灰白質、白質、神経節、神経、神経内膜、神経周膜、神経上膜などの組織を含むことができる。
【0235】
一部の態様では、核酸複合体又はその組成物を投与できる標的部位は、利用する投与方法及び治療すべき疾患又は障害のタイプに応じた態様によって変化することがある。
【0236】
イメージングについての用語「個体」、「対象」又は「患者」は、この明細書では、動物、特に高等動物、特に脊椎動物、例えば、哺乳動物、更に特に人間を含む。
【0237】
一部の態様では、対象の標的部位(例.CNS)における核酸複合体の濃度の、標的部位外(例.対象の血流、血清又は血漿中)の核酸複合体濃度に対する比は、変化することがある。一部の態様では、対象の標的部位(例.CNS)における核酸複合体の濃度の、標的以外の部位(例.対象の血流、血清又は血漿中)の核酸複合体の濃度に対する比は、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1、39:1、40:1、41:1、42:1、43:1、44:1、45:1、46:1、47:1、48:1、49:1、50:1、51:1、52:1、53:1、54:1、55:1、56:1、57:1、58:1、59:1、60:1、61:1、62:1、63:1、64:1、65:1、66:1、67:1、68:1、69:1、70:1、71:1、72:1、73:1、74:1、75:1、76:1、77:1、78:1、79:1、80:1、81:1、82:1、83:1、84:1、85:1、86:1、87:1、88:1、89:1、90:1、91:1、92:1、93:1、94:1、95:1、96:1、97:1、98:1、99:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、2000:1、3000:1、4000:1、5000:1、6000:1、7000:1、8000:1、9000:1、10000:1、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの比、少なくともこれらの比、少なくともおよそこれらの比、最大でもこれらの比若しくは最大でもおよそこれらの比の可能性がある。
【0238】
標的部位は標的細胞を含むことができる。標的細胞は、錐体細胞、プルキンエ細胞、顆粒細胞、紡錘体ニューロン、中型有棘ニューロン、介在ニューロン、星状細胞、上衣細胞、ミクログリア、オリゴデンドロサイト及びオリゴデンドロサイト前駆細胞を含む、神経細胞及びグリア細胞を含むことができる。標的細胞は、後根神経節、前根神経節及び自立神経節も含むことができる。
【0239】
一部の態様では、この明細書に記載される核酸複合体及び/又は組成物の対象の標的部位への投与は、標的細胞における標的核酸発現の、少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約100%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲が減少する結果となる。一部の態様では、核酸複合体及び/又は組成物の投与後の標的核酸の減少の、標的細胞対非標的細胞の比は、少なくとも約2:1の可能性がある。一部の態様では、この比は、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、1.6:1、1.7:1、1.8:1、1.9:1、2:1、2.5:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1、20:1、21:1、22:1、23:1、24:1、25:1、26:1、27:1、28:1、29:1、30:1、31:1、32:1、33:1、34:1、35:1、36:1、37:1、38:1、39:1、40:1、41:1、42:1、43:1、44:1、45:1、46:1、47:1、48:1、49:1、50:1、51:1、52:1、53:1、54:1、55:1、56:1、57:1、58:1、59:1、60:1、61:1、62:1、63:1、64:1、65:1、66:1、67:1、68:1、69:1、70:1、71:1、72:1、73:1、74:1、75:1、76:1、77:1、78:1、79:1、80:1、81:1、82:1、83:1、84:1、85:1、86:1、87:1、88:1、89:1、90:1、91:1、92:1、93:1、94:1、95:1、96:1、97:1、98:1、99:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、2000:1、3000:1、4000:1、5000:1、6000:1、7000:1、8000:1、9000:1、10000:1、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲の可能性があるか、又は、およそこれらの比、少なくともこれらの比、少なくともおよそこれらの比、最大でもこれらの比若しくは最大でもおよそこれらの比の可能性がある。
【0240】
神経学的疾患又は障害を治療する方法
この明細書では、明細書に記載した核酸複合体又はその組成物を使用して疾患又は障害を治療する方法も提供する。この方法は、明細書に記載した核酸複合体を、必要とする対象に投与することを含むことができる。インプット核酸鎖(例.疾患バイオマーカー)を検知すると、インプット核酸鎖は、センサー核酸鎖のオーバーハングに結合でき、コア核酸鎖からセンサー核酸鎖を解離して、標的RNAに相補的な配列を放出し、それにより、対象における標的RNAの活性又は標的RNAからのタンパク質発現を低下させて疾患又は状態を治療する。一部の態様では、疾患又は障害は、神経学的疾患又は障害、神経変性疾患又は障害、及び/又は中枢神経系(CNS)の疾患又は障害である。
【0241】
「状態」は、この明細書では、個体の完全な肉体的、精神的及び社会的健康状態に関連する標準的な状況に適合していない、個体(全体又はその1つ以上の部分として)身体状況を示す。明細書に記載した状態は、障害及び疾患を含むが、これらには限定されず、「障害」は、体又はその一部分についての機能的異常を伴う生存個体の状態を示し、「疾患」は、体又はその一部分についての正常機能を害する、並びに特徴的な徴候及び症状が通常は現れる、生存個体の状態を示す。
【0242】
さまざまな疾患及び障害が、この明細書で提供する核酸複合体組成物で治療できる。一部の態様では、疾患又は障害は、神経学的疾患又は障害の可能性がある。神経疾患又は障害は、脳、脊髄、脳神経、末梢神経、神経根、自律神経系、神経筋接合部及び筋肉を含む、中枢神経系及び末梢神経系の疾患又は障害である。神経障害には、てんかん、アルツハイマー病及び他の認知症、脳卒中を含む脳血管疾患、片頭痛及び他の頭痛障害、多発性硬化症、パーキンソン病、神経感染症、脳腫瘍、並びに頭部外傷による神経系の外傷性障害が含まれる可能性がある。
【0243】
神経学的疾患又は障害の例には、透明中隔欠損、酸性リパーゼ病、急性散在性脳脊髄炎、副腎白質ジストロフィー、脳梁欠損症、失認、エカルディ・グティエール症候群障害、アイカルディ症候群、アレキサンダー病、アルパース病、ALS筋萎縮性側索硬化症、交代性片麻痺、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症ALS、無脳症、アンジェルマン症候群、抗リン脂質抗体症候群、失語症、失行症、くも膜嚢胞、くも膜炎、動静脈奇形、アスペルガー症候群、毛細血管拡張性運動失調症、失調症及び小脳又は脊髄小脳変性症、心房細動と心臓発作、注意欠陥多動性障害、自閉症、自閉スペクトラム症、背部痛、バース症候群、バッテン病、ベーチェット病、ベル麻痺、良性本態性眼瞼けいれん、ビンスワンガー病、腕神経叢損傷、脳及び脊髄腫瘍、ブラウン・セカール症候群、CADASIL、カナバン病、手根管症候群、中心性脊髄症候群、中枢性疼痛症候群、橋中心髄鞘融解症、頭部疾患、小脳変性症、小脳形成不全、脳動脈瘤、脳動脈硬化症、脳萎縮症、脳海綿状血管腫、脳性低酸素症、脳性麻痺、脳眼顔骨格症候群COFS、シャルコー・マリー・トゥース病、キアリ奇形、舞踏病、慢性炎症性脱髄性多発神経炎CIDP、慢性疼痛、コフィン・ローリー症候群、側脳室後角拡大、昏睡、複合性局所疼痛症候群、先天性筋無力症、先天性ミオパチー、大脳皮質基底核変性症、頭蓋骨癒合症、クロイツフェルト・ヤコブ病、クッシング症候群、ダンディ・ウォーカー症候群、パーキンソン病の脳深部刺激療法、認知症、レビー小体型認知症、皮膚筋炎、発達性統合運動障害、糖尿病性神経障害、ドラベ症候群、自律神経失調症、書字表出障害、読字障害、ミオクローヌス性小脳性共同運動障害、ジストニア、エンプティ・セラ症候群、嗜眠性脳炎、脳瘤、脳疾患、てんかん、エルブ・デュシェンヌ型及びデジェリーヌ・クランプケ型麻痺、本態性振戦、ファブリー病、ファール症候群、家族性周期性麻痺、ファーバー病、熱性けいれん、線維筋性異形成、下垂足、フリードライヒ運動失調症、前頭側頭型認知症、ゴーシェ病、全身性ガングリオシドーシス、ゲルストマン症候群、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、巨大軸索性ニューロパチー、舌咽神経痛、ギラン・バレー症候群、頭痛、持続性片側頭痛、片側顔面けいれん、遺伝性ニューロパチー、遺伝性痙性対麻痺、耳帯状疱疹、ホームズ・アディー症候群、全前脳胞症、ハンチントン病、水無脳症、水頭症、水脊髄症、過眠症、筋過緊張、筋緊張低下、封入体筋炎、色素失調症、乳児神経軸索ジストロフィー、小児レフサム病、乳児けいれん、炎症性ミオパチー、後頭孔脳脱出、アイザック症候群、カーンズ・セイヤー症候群、ケネディ病、クライネ・レビン症候群、クリッペル・ファイル症候群、クリッペル・トレノネー症候群KTS、クラッベ病、ランバート・イートン筋無力症候群、ランドウ・クレフナー症候群、学習障害、リー病、レノックス・ガストー症候群、レッシュ・ナイハン症候群、白質ジストロフィー、脂質蓄積症、リポイドタンパク症、滑脳症、閉じ込め症候群、マチャド・ジョセフ病、巨大頭症、メルカーソン・ローゼンタール症候群、髄膜炎と脳炎、メンケス病、外側大腿皮神経痛、異染性白質ジストロフィー、小頭症、片頭痛、ミラー・フィッシャー症候群、ミトコンドリアミオパチー、メビウス症候群、単肢性筋萎縮症、運動ニューロン疾患、もやもや病、ムコリピドーシス、ムコ多糖症、多発梗塞性認知症、多巣性運動ニューロパチー、多発性硬化症、多系統萎縮症、起立性低血圧を伴う多系統萎縮症、筋ジストロフィー、重症筋無力症、ミオクローヌス、ミオパチー、ミオトニア、先天性ミオトニア、ナルコレプシー、神経有棘赤血球症、脳内鉄蓄積を伴う神経変性症、神経線維腫症、神経遮断薬悪性症候群、エイズの神経学的合併症、ライム病の神経学的合併症、サイトメガロウイルス感染の神経学的結果、狼瘡の神経学的後遺症、視神経脊髄炎、神経細胞遊走障害、神経サルコイドーシス、神経梅毒、神経毒性、ニーマン・ピック病、正常圧水頭症、後頭神経痛、大田原症候群、オリーブ橋小脳萎縮症、オプソクローヌスミオクローヌス、起立性低血圧、腫瘍随伴症候群、知覚異常、パーキンソン病、発作性舞踏病アテトーゼ、発作性片側頭痛、パリー・ロンベルグ症候群、ペリツェウス・メルツバッハー病、末梢神経障害、脳室周囲白質軟化症、広汎性発達障害、圧迫神経、梨状筋症候群、下垂体腫瘍、多発性筋炎、ポンペ病、孔脳症、ポリオ後症候群、体位性頻脈症候群、原発性側索硬化症、進行性多巣性白質脳症、進行性核上性麻痺、相貌失認、偽性脳腫瘍、心因性運動障害、ラスムッセン脳炎、レフサム病、反復性運動障害、レストレスレッグス症候群、レット症候群、ライ症候群、サンドホフ病、シルダー病、裂脳症、中隔視神経形成異常症、乳幼児揺さぶられ症候群、帯状疱疹、シェーグレン症候群、睡眠時無呼吸症候群、ソトス症候群、痙縮、二分脊椎、脊髄梗塞、脊髄損傷、脊髄性筋萎縮症、スティッフパーソン症候群、線条体黒質変性症、脳卒中、スタージ・ウェーバー症候群、亜急性硬化性全脳炎、SUNCT頭痛、嚥下障害、シデナム舞踏病、失神、脊髄空洞症、脊髄ろう、遅発性ジスキネジア、タルロフのう胞、テイ・サックス病、脊髄係留症候群、胸郭出口症候群、甲状腺中毒性ミオパチー、トッド麻痺、トゥレット症候群、一過性脳虚血発作、伝染性海綿状脳症、横断性脊髄炎、外傷性脳損傷、振戦、三叉神経痛、熱帯性痙性対麻痺、トロイヤー症候群、結節性硬化症、中枢及び末梢の血管炎症候群、フォン・ヒッペル・リンドウ病VHL、ワレンベルグ症候群、ウェルニッケ・コルサコフ症候群、むち打ち症、ホイップル病、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病、並びにゼルウィガー症候群が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0244】
一部の態様では、疾患又は障害は、神経変性疾患又は神経変性障害である。神経変性疾患又は障害は、中枢神経系又は末梢神経系の構造及び機能の進行性の変性を特徴とする異質な一群の障害である。一部の態様では、神経変性疾患は、外傷や感染によって生じるものではない、継続的で進行性の神経細胞の機能低下を特徴とする疾患である。代表的な神経変性疾患又は障害には、アルツハイマー病(AD)、ハンチントン病(HD)、パーキンソン病(PD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及びプリオン病が含まれるが、これらには限定されない。
【0245】
一部の態様では、疾患又は障害は、中枢神経系(CNS)の疾患又は状態である。CNSの代表的な疾患又は状態には、副腎白質ジストロフィー、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、アンジェルマン症候群、毛細血管拡張性失調症、シャルコー・マリー・トゥース症候群、コケイン症候群、難聴、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、てんかん、本態性振戦、脆弱X症候群、フリードライヒ運動失調症、ゴーシェ病、ハンチントン病、レッシュ・ナイハン症候群、メープルシロップ尿症、メンケス症候群、筋強直性ジストロフィー、ナルコレプシー、神経線維腫症、ニーマン・ピック病、パーキンソン病、フェニルケトン尿症、プラダー・ウィリ症候群、レフサム病、レット症候群、脊髄性筋萎縮症、脊髄小脳失調症、タンジール病、テイ・サックス病、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ症候群、ウィリアムズ症候群、ウィルソン病及びツェルウェーガー症候群が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0246】
一部の態様では、CNS疾患は、運動障害、記憶障害、嗜癖、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、自閉症、双極性障害、うつ状態、脳炎、癲癇/発作、片頭痛、多発性硬化症、神経変性障害、精神疾患、神経炎症性疾患、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、トゥレット症候群、ジストニア又はこれらの組合せである。一部の態様では、疾患は、神経炎症性疾患である。例えば、神経炎症性疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症又はこれらの組合せである。一部の態様では、CNS疾患はハンチントン病である。
【0247】
一部の態様では、疾患又は障害は、CNSの疾患又は状態の可能性がある。明細書に記載した核酸複合体又はその組成物は、明細書に記載した好適な投与経路により、CNSの細胞、組織及び/又は器官に投与できる。例えば、核酸複合体又はその組成物を、対象のCNSの細胞、組織及び/又は器官に、髄腔内注入、脳室内注入又は脳内注入によって投与して脳血液関門を通過させることができる。一部の態様では、CNSの細胞、組織及び/又は器官は、損傷を受けた又は炎症を起こした細胞、組織又は器官を含む。一部の態様では、CNSの細胞、組織及び/又は器官は、脳、白質、灰白質、脳幹、小脳、間脳、大脳、脊髄、脳神経、前述の細胞、前述の組織又はその組合せを含む。
【0248】
一部の態様では、この明細書に記載の方法は、明細書に記載した核酸複合体を必要とする対象に投与して、核酸複合体を神経系の1つ以上の領域に分布させ、インプット核酸鎖が第3の核酸鎖のオーバーハングに結合して第1の核酸鎖から第3の核酸鎖を解離し、標的RNAに相補的な配列を放出させることを含み、それにより、対象の神経系の1つ以上の領域における標的RNAの活性又は標的RNAからのタンパク質の発現を低下させて、神経疾患又は障害を治療する。一部の態様では、神経系の1つ以上の領域は、中枢神経系、末梢神経系又はその両者を含む。
【0249】
一部の態様では、中枢神経系は、脳、白質、灰白質、脳幹、小脳、間脳、大脳、脊髄、脳神経又はその組合せを含むことができる。一部の態様では、中枢神経系の1つ以上の領域は、脊髄、大脳(例.前頭葉、頭頂葉、後頭葉、側頭葉、左半球、右半球)、大脳皮質(例.前頭前野、感覚野、視覚野、聴覚野、運動野)、大脳基底核(例.線条体)、視床、視床腹部、視床上部、視床下部、扁桃体、海馬(例.腹側海馬、背側海馬、中間海馬)、小脳、脳幹(例.中脳、脳橋、延髄)、左半球、右半球、脳梁又はこの組合せを含む。一部の態様では、CNSの1つ以上の領域は、大脳皮質、海馬台皮質、海馬、脳梁、脳弓、側脳室、分界条、新線条体、内包、梨状皮質、淡蒼球、視索、扁桃核、前交連、腹側線条体、外側嗅索、小脳、脳橋、延髄、中小脳脚又はその組合せを含む。一部の態様では、CNSの1つ以上の領域は、右皮質、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球、右半球又はこの組合せを含む。一部の態様では、神経系の1つ以上の領域は、機能及び中枢神経系と末梢神経系の間の経路に関与する結合組織/器官を含む。一部の態様では、神経系の1つ以上の領域は、PNSからCNSに感覚神経信号を伝達する後根神経節を含む。
【0250】
標的RNAは、明細書に記載した遺伝子、又は、当該技術分野で公知であって、その発現若しくは活性が神経学的疾患若しくは障害(例.神経変性疾患)に関連する遺伝子を含むことができる。例えば、一部の態様では、神経学的疾患又は障害はハンチントン病で、標的RNAはHTT遺伝子を含む。
【0251】
核酸複合体のセンサー核酸鎖は、明細書に記載したバイオマーカー、又は、関連する技術分野で公知であって、中枢神経系の疾患若しくは障害などの神経学的疾患若しくは障害に関連するバイオマーカーを検出するように設計できる。バイオマーカーは、中枢神経系の細胞に特異的なmRNA(例.GFAP mRNA)といった、細胞型又は細胞状態に特異的又は選択的なmRNAである。バイオマーカーは、細胞型特異的又は選択的ではないユニバーサルmRNA(例.mir-23a-3p、mir-21-5p、mir-29c-3p、5.8sリボソームRNA)の可能性もある。
【0252】
一部の態様では、核酸複合体は、必要とする対象に濃度約0.001~10nMで投与される。例えば、核酸複合体は、およそ、最大でも若しくは最大でもおよそ、0.001nM、0.002mM、0.004mM、0.006mM、0.008mM、0.01nM、0.02nM、0.03nM、0.04nM、0.05nM、0.06nM、0.07nM、0.08nM、0.09nM、0.1nM、0.2nM、0.3nM、0.4nM、0.5nM、0.6nM、0.7nM、0.8nM、0.9nM、1.0nM、1.5nM、2.0nM、2.5nM、3.0nM、3.5nM、4.0nM、4.5nM、5.0nM、5.5nM、6.0nM、6.5nM、7.0nM、7.5nM、8.0nM、8.5nM、9.0nM、9.5nM、10nM、又は、これらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、の濃度で提供できる。一部の態様では、核酸複合体は、濃度約0.004~1.0nMで提供される。
【0253】
一部の態様では、核酸複合体は、必要とする対象に、用量約1~100mg/kg体重、好ましくは10~50mg/kg体重で投与される。あるいは、用量は、当業者に理解が理解しているように、治療される対象、治療される症状の重症度及び応答性、投与方法並びに処方する医師の判断に基づいて決定及び計算してもよい。一部の態様では、治療のために、対象に核酸複合体を1回、2回、3回、4回又はそれ以上投与できる。一部の態様では、所望の治療結果を得るために、最大で1回、2回、3回又は4回の投与が必要である。一部の態様では、必要な投与は1回のみである。核酸複合体の2回の投与は、適切な期間を空けることができる。2回の投与の適切な間隔は、他の2回の投与の適切な間隔と同じであっても異なっていてもよい。一部の態様では、2回の投与の間隔は、およそ、少なくとも、又は少なくともおよそ、1月、2月、3月、4月、5月、6月、7月、8月、9月、10月、11月、12月又はそれ以上の可能性がある。一部の態様では、2回の投与の間隔は、少なくとも6月の可能性がある。
【0254】
一部の態様では、必要とする対象への核酸複合体の投与は、標的細胞中の標的核酸の発現を低下又は喪失させる。一部の態様では、明細書に記載した核酸複合体の投与後の標的核酸の低下は、投与前の標的核酸のレベルと比較して、約、少なくとも、又は少なくとも約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はいずれか2つの間の数若しくは範囲である。一部の態様では、低下は、右皮質、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球、右半球又はこの組合せからなる群から選択される1つ以上の領域で生じる。
【0255】
一部の態様では、核酸複合体の投与後、標的核酸の発現は、右皮質、線条体、海馬、視床及び/又は小脳において、およそ、少なくとも又は少なくともおよそ、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、減少する。一部の態様では、核酸複合体の投与後、標的核酸の発現は、前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、小脳、中脳、左半球及び/又は右半球において、およそ、少なくとも又は少なくともおよそ、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又はこれらの値のいずれか2つの間の数若しくは範囲、減少する。
【0256】
実験の結果は、核酸複合体は、特異的かつ強力であると同時に、治療対象で安全性と忍容性を達成することを示す。例えば、核酸複合体の投与により、対象の体重、炎症マーカー、血液化学、及び/又は肝臓、腎臓、膵臓の酵素は、投与前から、有意に増加し、又は減少しない(例えば、基準値又は差の±5%は統計学的に有意ではない)。一部の態様では、核酸複合体の投与は、意図しない炎症反応を誘導しない。例えば、一部の態様では、核酸複合体の投与により、対象のグリア線維酸性タンパク質(GFAP)及び/又はイオン化カルシウム結合アダプター分子1(IBA-1)レベルは、投与前と比較して上昇しない。
【0257】
キット
この明細書では、神経学的疾患を予防又は治療するためのキットも提供する。キットは、容器、パック又はディスペンサーのような好適な包装材料の中に、明細書に記載した1つ以上の組成物を含み、使用説明書、臨床研究の考察、副作用の一覧表等の文書を更に含む。例えば、キットには、神経学的疾患又は障害(例.CNS疾患又は障害)の治療又は予防などの、明細書に記載した方法を実施するためにキットの構成要素を使用するための説明書が含まれる場合がある。そのようなキットは、組成物の活性及び/若しくは利点を示す若しくは確証する、並びに/又は投薬、投与、副作用、薬物の相互作用、若しくは医療提供者にとって有用な他の情報を説明する、情報、例えば、参考文献、添付文書、臨床試験結果、並びに/又はこれらの概要等も含むことができる。そのような情報は、さまざまな研究、例えば、in vivoモデルを含む実験動物を使用する研究及びヒト臨床試験に基づく研究、の結果に基づく可能性がある。キットは、1つ以上の明細書に記載した単位用量を含むことができる。組成物は、キット・オブ・パーツの形態の可能性がある。キット・オブ・パーツの場合、この明細書で開示する組成物の1つ以上の成分は、互いに独立して提供され(例.構築物、賦形剤及び/又は希釈剤は、別々の組成物として提供され)、その後、組成物を生成するために(例えば使用者により)用いられる。
【実施例
【0258】
これまでに説明した態様のいくつかの側面を、以下の実施例において更に詳細に開示しているが、これらの実施例は、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0259】
実施例1 血清及び細胞取り込みにおけるCASi安定性の調査
この実施例では、アガロースゲル電気泳動により、血清の成分による分解に対するCASiの能力を調べた。CASiを33%ウシ胎児血清(FBS)とインキュベートした。24時間、48時間、72時間、96時間、120時間、144時間及び168時間の時点でアリコートを採取した。図7は、CASi複合体の血清による分解に対する経時的な安定性を示す。FBS中では7日後に分解は観察されなかった。
【0260】
CASi複合体のsiRNA取り込み効率も評価した。センサー鎖の3’末端にリガンドを有さない、パルミチン酸リガンド(リガンド1)を有する、又はコレステロールリガンド(リガンド2)を有するCy3で標識したCASi(50nM、赤)を培地に加え、Hela細胞とインキュベートした。処理の24時間後に、細胞をDAPI染色(青)した。siRNA複合体の局在化を顕微鏡で観察した。図8は、siRNAの局在化を示す。培地からのCASiの細胞取り込みが、24時間後に顕微鏡によって容易に検出できる結果が示された。
【0261】
実施例2 CASiのCNS取り込み及び分布
この実施例は、CASi複合体を脳室内(ICV)投与した場合の、中枢神経系(CNS)全体の分布の範囲を検討する。
【0262】
1nM又は3nMのCy3標識CASiをマウスの脳室内に注射した。マウスを24時間又は48時間後に安楽死させ、脳組織を採取して蛍光顕微鏡で調べた。図9Aは、注射の24時間後におけるCASiのCNSでの分布を示す。蛍光標識CASiのイメージングにおいて、CASiは広範囲に分布する結果を示す。Cy3シグナルは、毛細血管とアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のような関係があることが判明した。CASi取り込みを観察するために、3nMのCy3標識CASiを投与し、採取した脳組織の領域を20倍の倍率でイメージングした。図9Bは、24時間後のCASiのCNS細胞への取り込みを示す。点状の特徴と細胞との共局在は、多くのCASi取り込みを示唆する。
【0263】
実施例3 in vivo及びCNSにおけるCASi耐性の評価
この実施例は、in vivo及びCNSにおけるCASi複合体の耐性を評価する。
【0264】
健康なマウスの皮下にCASi Cを用量20mg/kgで注射した。CASi Cでは、センサー鎖は3’末端に(パルミチン酸の代わりに)コレステロールを有するmir-23センサー8ntを有し、パッセンジャー鎖はHTTパッセンジャー鎖で、コア鎖はmir23-HTTコア鎖である。体重、並びに炎症マーカー類、肝臓、腎臓及び膵臓酵素類を含む血液生化学をモニターした。図10Aは、生理食塩水を投与した対照群と比較した、CASi C投与群の体重を示す。2つの群の間で体重に有意な差は観察されなかった。図10Bは、対照群と比較した、CASi C投与群のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)(U/L)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)(U/L)、IL-6(pg/mL)、マトリクスメタロプロテイナーゼ1(MMP-1)(ng/mL)、血管細胞接着分子1(VCAM-1)(ng/mL)、IL-8(pg/mL)、単球走化性タンパク質1(MCP-1)(pg/mL)、C反応性タンパク質(CRP)(μg/mL)を示す。2つの群の間に有意な差は観察されなかった。
【0265】
425μgのCASiをマウスのICVに注射して、CNSの炎症をアストロサイト(GFAP)及びミクログリア(IBA-1)の活性化を測定することで試験した。図11A~Bは、生理食塩水処置動物(c)と比較した、CASi処置動物(t)のさまざまな脳の領域におけるGFAP mRNA(図11A)及びIBA-1 mRNA(図11B)のレベルを示す。CASi処置の14日後において、生理食塩水を注射した動物との間で、GFAP及びIBA-1のレベルに有意な差がないことが判明した。
【0266】
実施例4 CASi構築物のRNAi活性
この実施例は、さまざまなCASi構築物及びそのsiRNAドメインを有するCASi構築物のRNAi活性を示す。
【0267】
CASi siRNAセグメントのRNAi活性は、デュアルルシフェラーゼアッセイで測定した。CASi構築物又はsiRNAドメインは、リポフェクタミン2000を使用して、ハンチンチン遺伝子siRNA標的配列を有するデュアルルシフェラーゼベクターとともにHCT116細胞に同時トランスフェクトした。48時間後、細胞を溶解し、標的配列を有するウミシイタケルシフェラーゼの発光値と参照対照として使用したホタルルシフェラーゼとを比較することで、標的遺伝子のノックダウンをアッセイした。
【0268】
図12は、代表的なsiRNA候補のRNAi活性を示す。ここで評価したsiRNA候補は、主な治療用siRNAプラットフォームと競合する効力及び特異性を示す。siRNA候補が、最適化した細胞選択的又は非選択的CASiセンサー(例.ユニバーサルセンサー)と組み合わせて、リード化合物を形成できる結果が示された。
【0269】
図13Aは、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物T2 CASiの概略図を示す。図13Bは、センサー鎖(配列番号1)、コア鎖(配列番号2)及びパッセンジャー鎖(配列番号3)を含むCASi A構築物(GFAP-HTT T2 CASi#228ともいう)の配列を示す。CASi A構築物は、霊長類とげっ歯類のグリア線維酸性タンパク質mRNA(GFAP mRNA)を検出するように設計さていれる。CASi A構築物は、霊長類とげっ歯類のハンチンチン遺伝子mRNAを標的としてRNAiサイレンシングするように設計されている。
【0270】
図14Aは、限定するものではない代表的な核酸複合体構築物T1 CASiの概略図を示す。図14Bは、センサー鎖(配列番号4)(標準的な8ヌクレオチドのトーホールドを有する)、コア鎖(配列番号5)及びパッセンジャー鎖(配列番号3)を含むCASi B構築物(mir23-HTT T1 CASiともいう)の配列を示す。CASi B構築物はユニバーサルmir-23a-3pマイクロRNAを検出するように設計さていれる。CASi B構築物は、霊長類とげっ歯類のハンチンチン遺伝子mRNAを標的としてRNAiサイレンシングするように設計されている。
【0271】
表1に、ユニバーサルCASi構築物及び鎖の配列を示す。表1で示すCASi構築物は、ユニバーサルmRNA、すなわち細胞型選択的ではないmRNAを検出できるユニバーサルセンサーを含む。以下に列挙する全ての構築物は、ハンチンチン遺伝子mRNAを標的としてRNAiサイレンシングし、列挙したマイクロRNA又は非コードRNAを検出する。
【0272】
【表1】
【0273】
この明細書で開示するCASi siRNAは、全て、IC50が小さく、10pMオーダーの最先端の効力を示す。
【0274】
図15Aは、センサー1CASi構築物及びセンサー1CASi構築物のsiRNAドメインの標的タンパク質発現のデータのグラフを示す。センサー1CASiは、mir-21-5p mRNAを検出するユニバーサルセンサー鎖を含むように設計されている。標的タンパク質の発現を、4つの異なる濃度:0.004nM、0.02nM、0.1nM及び0.5nMのCASi構築物及びsiRNAドメインで試験した。RNAi活性が高いことが、標的タンパク質の発現が低いことによって示唆される。CASi構築物とそのsiRNAドメインは、トランスフェクション後にRNAi活性が同様であるという結果が示された。
【0275】
図15Bは、細胞型特異的mRNA(例.GFAP mRNA)を発現する細胞(「+mRNA A」)及び細胞型特異的mRNAを発現しない細胞(「-mRNA A」)におけるCASi A構築物の標的タンパク質発現のデータのグラフを示す。図13Bが示すように、CASi A構築物は、GFAP mRNAを検出するセンサー鎖を含む。標的タンパク質の発現を、4つの異なる濃度:0.008nM、0.04nM、0.2nM及び1.0nMのCASi A構築物で試験した。CASi Aは、GFAP mRNAを発現しない細胞と比較して、GFAP mRNAを発現する細胞で、RNAi活性が有意に高いという結果が示された。
【0276】
図15Cは、CASi B構築物、CASi B構築物のsiRNAドメイン、センサー1CASi及びセンサー1CASiのsiRNAドメインの標的タンパク質発現のデータのグラフを示す。標的タンパク質の発現を、4つの異なる濃度:0.004nM、0.02nM、0.1nM及び0.5nMのCASi構築物及びsiRNAドメインで試験した。全てのCASi及びsiRNA多様体において、標的タンパク質発現の有意な減少が観察された。
【0277】
図16は、表1に列挙するユニバーサルCASi構築物の標的タンパク質発現のデータを示すグラフである。標的タンパク質の発現を、4つの異なる濃度:0.004nM、0.02nM、0.1nM及び0.5nMのCASi構築物及びsiRNAドメインで試験した。ユニバーサルCASiは、そのsiRNAドメインを完全に放出するため、RNAi活性が高いという結果が示された。これは主に、細胞中にmir-21-5p、mir-29c-3p及び5.8sリボソームRNA転写物が多く存在し、利用可能性が高まったためである。
【0278】
実施例5 脳のさまざまな領域におけるRNAi活性の評価
この実施例は、神経系のさまざまな領域におけるユニバーサルCASi B構築物(mir23-HTT T1 CASi)のRNAi活性を評価する。
【0279】
mir23-HTT T1 CASiは、センサー鎖、コア鎖及びパッセンジャー鎖からなる(図14A)。センサー鎖は、脳の組織で高発現するマイクロRNA、mir23a-3pのガイド鎖に相補的である。コア鎖には2つのドメインがある。第1のドメインは、センサー鎖に相補的で、センサー二重鎖の形成を可能にする。第2のドメインは、げっ歯類と霊長類のハンチンチン遺伝子mRNAに相補的である。パッセンジャー鎖は、コア鎖の第2のドメインに相補的で、コア鎖と塩基対形成しsiRNAを形成する。センサー鎖にパルミチン酸リガンドを付加して、送達を増強できる。いくつかのT1 CASi構築物では、パルミチン酸はセンサー鎖の3’末端に結合させることができる。代表的なT1 CASi鎖の配列を図14Bに示す。mir23センサー鎖(パルミチン酸を有する8nt)、HTTパッセンジャー鎖及びmir23-HTTコア鎖の化学式を、それぞれ、図14C、14D及び14Eに示す。
【0280】
構築物を熱アニーリングして組み立てた。鎖をPBS緩衝液中で1:1:1.1のパッセンジャー:コア:センサー比で混合し、次いで75℃より高温に加熱して、室温に冷却した。図14Fは、T1 CASi構築物を作製する代表的な配合を示す。
【0281】
非変性PAGEゲルによって、組み立てた構築物(図14Gのレーン2)をそれぞれの鎖(図14Gのレーン3:コア鎖;図14Gのレーン4:パッセンジャー鎖)及び二本鎖サブ構築物(図14Gのレーン1:RNAi二重鎖)と比較した。一本鎖(レーン3及び4)及び二重鎖(レーン1)よりも移動が遅い単一バンド(レーン2)の存在は、正しい構築物の組立てを示す。
【0282】
図17は、生理食塩水処置動物(c)と比較した、CASi B処置動物(t)の脳のさまざまな領域における標的タンパク質の発現を示す。14日間の試験期間中、右皮質、線条体、海馬、視床及び小脳を含むほとんどの脳の領域で統計学的に有意なRNAi活性が観察された。細胞特異的なCASi構築物では、siRNA放出の改善及び高い効力が期待される。
【0283】
図18は、CASi投与の14日後、30日後及び90日後の、脳のさまざまな領域における標的タンパク質の発現データを示す。15nMのCASi B(425μg)CASi構築物を、片側ICV注射で動物に投与した。統計学的に有意なRNAi活性が、脳の前頭前野、感覚野、視覚野、線条体、背側海馬、腹側海馬、視床、中脳、小脳、右半球及び左半球領域を含む脳領域で観察された。このデータは、注射から90日経過してもRNAi活性が強力であることも示し、投与の頻度を減らして、投与間隔が長い投薬レジメンが可能となる。
【0284】
図19は、脊髄におけるCASi構築物のHTTmRNAノックダウンを示す。このデータは、注射の30日後、更に90日後であっても、脊髄では標的ノックダウン率約80%を達成していることを示す。
【0285】
図20は、CASi投与の30日後における脳のさまざまな領域のHTTmRNAレベルを示すグラフである。mir23-HTT CASi構築物(パルミチン酸を有する8ヌクレオチドのトーホールド)5nMを、片側ICV注射によって動物に投与した。脳の各領域と脊髄に加えて、マウスから10の後根神経節(DRG)も採取し、HTTmRNAノックダウンについて試験した。約25%のHTTmRNAノックダウンが中枢神経系及びDRGで観察された。この結果は、統計学的に有意なRNAi活性が中枢神経系で観察されただけでなく、CASi構築物は、中枢への投与で末梢神経領域にも効果的に到達し、DRGでは中枢神経系と同等のノックダウンが達成されたことを示唆する。
【0286】
さまざまな長さのオーバーハング/トーホールド(8nt、12nt及び16nt)を有し、その3’末端にパルミチン酸が結合した又は結合していないセンサー核酸鎖を有するT1 CASi構築物についても、RNAi活性を評価した。表2に、8ntのトーホールド(パルミチン酸あり、パルミチン酸なし)、12ntのトーホールド及び16ntのトーホールドを有するmir23センサー鎖の配列を示す。
【0287】
【表2】
【0288】
図21は、注射の14日後の脳のさまざまな領域における3’末端パルミチン酸を有する(下のパネル)及び3’末端パルミチン酸を有さない(上のパネル)mir23-HTT構築物(T1 CASi)のmRNAノックダウンを示す。3’末端にパルミチン酸を有するmir23-HTT構築物が、3’末端にパルミチン酸を有さないmir23-HTT構築物と比較して、脳の全ての領域で高いHTTmRNAノックダウン(残存するHTTmRNAが少ない)を達成した結果が示された。
【0289】
図22は、標準的な8ヌクレオチドのトーホールド(パルミチン酸有り/なし)、伸長した12ヌクレオチドのトーホールド、又は16ヌクレオチドのトーホールドを有するmir23-HTT構築物(T1 CASi)のmRNAノックダウンを示す。データは、トーホールドの長さ及びパルミチン酸が、脳のさまざまな領域においてmir23-HTT CASi活性に対して異なる影響を及ぼすことを示唆する。8ヌクレオチドのトーホールド及びパルミチン酸を有するCASi構築物は、脳の領域全体で概して最高のノックダウン効果を達成した。パルミチン酸が存在しない場合、トーホールドを8ntから12ntに増加させると、皮質及び海馬でノックダウン活性が改善された。
【0290】
用語法
これまでに説明した態様の少なくとも一部では、ある態様で使用する1つ以上の要素を別の態様で相互交換可能に使用することが、そのような置換が技術的に実行できない場合を除き、可能である。さまざまな他の省略、追加及び修飾を、請求項に記載の主題の範囲から逸脱せずに上記方法及び構造に追加してもよいことは、当業者には理解される。全てのそのような修飾及び変更は、特許請求の範囲で規定する主題の範囲に含まれるように意図されている。
【0291】
本明細書での実質的にいかなる複数形及び/又は単数形の用語の使用に関しても、当業者は、文脈及び/又は用途に適切であるように、複数形を単数形に及び/又は単数形を複数形に言い換えることができる。明確にするために、さまざまな単数形/複数形の置き換えを明示的に示すことがある。本明細書及び特許請求の範囲では、単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」は、明らかに別段の定めがある場合を除き、複数の対象を含む。この明細書における「又は」も、別段の説明がある場合を除き、「及び/又は」を包含するように意図している。
【0292】
一般に、明細書において、特に、特許請求の範囲で使用する用語は、「限定するものではない」という用語として一般に意図されていることが、当業者には理解される(例.「含む」は、「含むが、それらに限定されない」と解釈すべきであり、「有する」は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「~を含む」は、「~を含むが、それらに限定されない」と解釈すべきである、など)。請求項の記載において特定の数が意図されている場合、そのような意図は、請求項に明示的に記載されることになり、そのような記載がない場合にはそのような意図は存在しないことが、当業者に更に理解される。例えば、理解の補助として、特許請求の範囲は、請求項の記載を導入するための導入語句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」の利用を含むことがある。しかし、そのような語句の使用を、不定冠詞「a」又は「an」による請求項の記載の導入によって、そのような導入される請求項の記載を含むいずれかの特定の請求項が、1つだけのそのような請求項の記載を含む態様に、たとえ同請求項が、導入語句「1つ以上」又は「少なくとも1つ」及び不定冠詞、例えば、「a」又は「an」を含む(例.「a」及び/又は「an」は、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味すると解釈すべきである)場合であっても、限定されることを含意すると、解釈すべきではなく;同じことが、請求項の記載を導入するために使用される定冠詞の使用にもあてはまる。加えて、導入される請求項の記載の特定の数が明示的に記載されている場合であっても、そのような記載を、少なくとも記載されている数を意味すると解釈すべきであることは(例.他の修飾語のない「2つの記載」という裸の記載は、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)当業者には理解される。さらに、「A、B及びCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される場合、一般に、このような構成は、当業者には慣例(例.「A、B及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、これらには限定されないが、単独でA、単独でB、単独でC、一緒にAとB、一緒にAとC、一緒にBとC、及び/又は一緒にAとBとC、などを有するシステムを含む)が理解されるという意味で意図されたものである。「A、B又はCなどのうちの少なくとも1つ」に類似した慣例が使用される場合、一般に、このような構成は、当業者には慣例(例.「A、B又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、これらには限定されないが、単独でA、単独でB、単独でC、一緒にAとB、一緒にAとC、一緒にBとC、及び/又は一緒にAとBとC、などを有するシステムを含むことになる)が理解されるという意味で意図されたものである。2つ以上の代替用語を示す事実上いかなる離接語及び/又は語句も、本明細書中、特許請求の範囲中又は図面中を問わず、用語のうちの1つ、用語のいずれか又は両者の用語を含む可能性を企図すると解するべきであることは、当業者には更に理解される。例えば、語句「A又はB」は、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと解されることになる。
【0293】
加えて、本開示の特徴又は側面が、マーカッシュによって記載されている場合、それにより、本開示が、マーカッシュのいずれかの個々の要素、又は要素のサブグループに関しても記載されていることは、当業者には理解される。
【0294】
当業者には理解されるように、いずれかの及びあらゆる目的で、例えば、明細書を提供する観点で、この明細書で開示するあらゆる範囲は、それらのいずれかの及びあらゆる可能な部分的範囲及び部分的範囲の組合せも包含する。いずれの収載される範囲も、同範囲が少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分などに分けられることを十分に記載しており、可能にすると、容易に認識できる。限定するものではない例として、この明細書で論じるそれぞれの範囲を下3分の1、中3分の1及び上3分の1などに容易に分けることができる。同じく当業者には理解されるように、あらゆる言葉、例えば、「以下」、「少なくとも」、「より多くの」、「未満の」等の言葉は、記載されている数を含み、上で論じたように部分的範囲に後に分けることができる範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は、それぞれの個々の要素を含む。したがって、例えば、1~3個の物品を有する群は、1、2又は3個の物品を有する群を指す。同様に、1~5個の物品を有する群は、1、2、3、4又は5個の物品を有する群を指す、等々。
【0295】
さまざまな側面及び態様をこの明細書で開示したが、他の側面及び態様は、当業者には明らかである。この明細書で開示するさまざまな側面及び態様は、説明を目的としたものであり、限定することを意図したものではなく、真の範囲及び趣旨は、特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【配列表】
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【国際調査報告】