(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】CVD単結晶ダイヤモンド
(51)【国際特許分類】
C30B 29/04 20060101AFI20241018BHJP
C23C 16/27 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
C30B29/04 A
C23C16/27
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523806
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(85)【翻訳文提出日】2024-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2022079139
(87)【国際公開番号】W WO2023067028
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514233369
【氏名又は名称】エレメント シックス テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】トラスコット ベンジャミン サイモン
(72)【発明者】
【氏名】リギンズ ステファニー
(72)【発明者】
【氏名】トゥウィッチェン ダニエル ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ギーキー ダグラス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ヒルマン ウィリアム ジョセフ
【テーマコード(参考)】
4G077
4K030
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB01
4G077AB04
4G077AB08
4G077BA03
4G077DB07
4G077DB19
4G077EA02
4G077EA10
4G077EB01
4G077ED06
4G077FE20
4G077GA06
4G077HA01
4G077HA13
4K030AA09
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA28
4K030BB02
4K030CA01
4K030CA17
4K030DA09
4K030FA01
4K030JA10
4K030LA22
(57)【要約】
最小の長さ寸法が3.5mm以上であり、EPRで測定されるように、中性の電荷状態における単一置換窒素原子(Ns0)の濃度が20から250ppbであり、色相角habが75から135°であるCVD単結晶ダイヤモンド。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の、
最小の長さ寸法が3.5mm以上であり;
EPRにより測定されるように、中性の電荷状態における単一置換窒素原子(N
s
0)濃度が20から250ppbであり;
色相角h
abが75から135°である;
特性を有するCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項2】
中性及び負電荷状態における窒素空孔センタ(NV
0及びNV
-)の総濃度が、前記N
s
0濃度の0.1倍又は10ppbの大きい方より小さい、請求項1に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項3】
85から125°、90から120°及び95から115°のいずれかから選択される色相角h
abを有する、請求項1又は2に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項4】
励起波長660nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定における、ダイヤモンドの一次ラマン信号のピーク面積に対するSiV
-ゼロフォノン線の総ピーク面積の比により定量化され、0.5未満;0.1未満;0.05未満;及び0.01未満のいずれかから選択されるSiV
-発光を示す、請求項1から3のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項5】
温度20℃で低ひずみを示す低光学複屈折を有し、少なくとも3mm×3mmの面積を測定する場合、遅相及び進相軸と平行して偏光した光の屈折率差の第3四分位数値が、サンプルの厚みで平均され、1×10
-4及び5×10
-5のいずれかから選択される値を越えない、請求項1から4のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項6】
前記単結晶CVDダイヤモンド材料の総体積が、少なくとも60mm
3、少なくとも80mm
3及び少なくとも100mm
3のいずれかから選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項7】
宝石状で、8未満、6未満及び4未満のいずれかから選択される彩度C
*
abを有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項8】
宝石状で、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)スケール及び方法に従い、前記N
s
0濃度が20から100ppbであるとき、D、E及びFのいずれかから選択され、前記N
s
0濃度が80から250ppbであるとき、G、H、I及びJのいずれかから選択されるカラーグレードを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項9】
宝石状で、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)スケール及び方法に従い、VS
2、VS
1、VVS
2、VVS
1、IF及びFLのいずれかから選択されるクラリティグレードを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項10】
H3(NVN
0)センタを更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項11】
励起波長455から459nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定において、30未満の(NV
0+NV
-)/H3比を示す請求項10に記載のCVD単結晶ダイヤモンドであって、前記NV
0、NV
-及びH3欠陥のそれぞれが、前記ダイヤモンドの一次ラマン信号に対するゼロフォノン線の前記ピーク面積比により定量される、CVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項12】
N3の場合に励起波長323から327nm、H3の場合に励起波長455から459nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定において、0.1未満のN3/H3比を示す請求項10又は11に記載のCVD単結晶ダイヤモンドであって、前記欠陥のそれぞれが、前記ダイヤモンドの一次ラマン信号に対するゼロフォノン線の前記ピーク面積比により定量される、CVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項13】
機械要素に形成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項14】
光学要素に形成される、請求項1から12のいずれか一項に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項15】
前記光学要素が、空洞光学要素、高出力伝送光学要素、ラマンレーザー光学要素、エタロン、及び全反射測定法ATR光学要素のいずれかから選択される、請求項14に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載の複数の単結晶CVDダイヤモンドを作製する方法であって、
化学気相堆積反応器内の基板キャリア上に複数の単結晶ダイヤモンド基板を配置することと;
水素含有ガス、炭素含有ガス及び窒素含有ガスを含むプロセスガスを前記反応器に供給することであって、これらのガスの相対量が1%から5%のC
2H
2/H
2比、及び4ppmから60ppmのN
2/C
2H
2比と化学量論的に等しいものである、供給することと;
前記複数の単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも一部の表面上で温度750℃から1100℃で前記複数の単結晶CVDダイヤモンドを成長させることと;
生じる複数の単結晶CVDダイヤモンドの少なくとも一部を温度1700℃から2200℃でアニーリングすることと、
を含む方法。
【請求項17】
前記基板上の成長が、単一のCVD合成サイクルとして、中断することなく実施される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記CVD合成が、少なくとも10mm
3/h、少なくとも20mm
3/h、少なくとも30mm
3/h、少なくとも40mm
3/h及び少なくとも50mm
3/hのいずれかから選択される単一の反応器で成長する単結晶ダイヤモンド材料の体積成長率を提供する、請求項16又は17に記載の方法。
【請求項19】
前記アニーリングがダイヤモンド安定化圧力下で実施される、請求項16から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
単一のアニーリング操作で処理される単結晶ダイヤモンドの総体積が、少なくとも500mm
3、少なくとも1000mm
3、少なくとも1500mm
3及び少なくとも2000mm
3のいずれかから選択される、請求項16から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記炭素含有及び水素含有プロセスガスが、2%から4%;及び2.5%から3.5%のいずれかから選択される範囲のC
2H
2/H
2比と化学量論的に同等である量で提供される、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記窒素含有及び炭素含有プロセスガスが、5ppmから20ppm;10ppmから50ppm;7ppmから15ppm;及び15ppmから35ppmのいずれかから選択される範囲のN
2/C
2H
2比と化学量論的に同等である量で提供される、請求項16から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記複数のCVD単結晶ダイヤモンドが800℃から1500℃;800℃から950℃;及び825℃から925℃のいずれかから選択される温度で成長する、請求項16から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記アニーリングが1750℃から2100℃;1800℃から2000℃;及び1850から1950℃のいずれかから選択される温度で実施される、請求項16から23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記複数の単結晶ダイヤモンドの少なくとも1つをカット及び研磨して、宝石を形成することを更に含む、請求項16から24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CVD単結晶ダイヤモンド、及びCVD単結晶ダイヤモンドの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドの化学気相堆積(CVD)合成への関心は1980年代に始まり、世界中の様々なグループによる研究が今日まで続いている。発表された単結晶CVDダイヤモンド材料に関する研究の多くが、主にマイクロ波プラズマCVDを使用した単結晶ダイヤモンド基板上のホモエピタキシャル成長による薄層(<1mm)の成長を開示している。単結晶CVDダイヤモンド材料の厚く高品質である層の合成は、多くの日数にわたって物理的に極端なプロセス条件を安定に維持することによって成功し、通常高度に特殊化した合成機械設備を必要とする。
単結晶CVDダイヤモンド成長に重要な合成パラメータは、基板タイプ(例えば、CVDにより製造されるかどうか、高圧/高温、又は天然の地質合成)、元の母体結晶から基板を調製する方法、基板外形(面及び/又はエッジの結晶方位を含む)、成長中の基板温度及び成長する結晶の熱管理、並びに気相合成環境それ自体を含む。最後のものは、プロセスチャンバのサイズ、プロセスガス注入/排出外形、及びプロセスガス流量などの様々な機械設備に左右される因子に加えて、プロセスガス組成(不純物を含む)、プロセスチャンバ内のガス圧力、及び合成プロセスに供給されるマイクロ波電力量に影響される。適当な成長領域であるように、これらのパラメータの多くは、1つのパラメータが変われば、他のパラメータも正しく変わるように相互に関係する。合成プロセスの全期間で全堆積領域に好適なプロセス条件を選択及び維持できない場合、高レベルの制御されないプロセス変動性、不適当な材料性質を有する使用できない製品、さらには壊滅的なクラッキング、双晶化又は黒鉛化による結晶の完全な破壊をもたらし得る。
【0003】
ダイヤモンドは、高い熱伝導率、広い透明度、低誘電体損、硬度及び他の周知の性質を有する。これらの特性は、単独で又は組み合わせて、数多くの科学的及び技術的用途において貴重となる。合成ダイヤモンド材料は、有利な性質を有するように設計することができ、特有の形で適する用途の例は当技術分野で公知である。技術の進歩により、合成ダイヤモンドの利用可能性が改善されており、現在ではいくつかの消費者用途、並びに機械摩耗要素及び光学要素など、ますます多くの技術的用途に見出すことができる。
近年突出している1つの用途は、宝石類における合成ダイヤモンド宝石の使用である。所与の品質を有する研磨商品について、市場価格は主に宝石のサイズ(マス)によって決まり、次に所与の形状で得ることができる最大のマスも、親結晶の最小長さ寸法により決まる。最小長さ寸法は、通常CVD結晶については厚みである(幅又は深さに対して)。例えば、ラウンドブリリアント(RB)宝石形状では、通常1カラット(1ct)部分を作製するのに約4mmの最小寸法を必要とし、一方で2ctRBには約5.5mmが必要とされる。これはどちらも他の寸法に制約はないと仮定する。高低品質のダイヤモンド宝石を区別するのに使用する1つの外観は、時に消費者に販売される前にダイヤモンドに与えられるカラー「グレード」の範囲の色である。このようなグレードは、所与の宝石が示す光吸収の大きさに関連する。業界規準であるジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)のカラーグレードD、E及びFは「カラーレス」カテゴリを構成し、一方グレードG、H、I及びJは「ニアカラーレス」とみなされる。現在まで、カラーレス及び/又はニアカラーレス階層で大きなサイズのダイヤモンドを再現可能に製造することは課題であった。
特定の光学用途に関して、低光吸光度を有し、宝石として研磨したときにD、E又はFの「カラーレス」グレードを与えることができる材料を提供することが望ましい。このような材料は、不純物濃度が低い単結晶CVD合成ダイヤモンド材料を構成することができる。不純物濃度が低くなければ材料の光吸光度を増加させる。その反対も当てはまり、カラーレス宝石に好適な材料は、特定の光学用途にも望ましい性質を有する場合がある。上記光学グレードの単結晶CVD合成ダイヤモンド材料及びその用途に関する特許文献としては、国際公開第2004/046427号及び第2007/066215号が挙げられる。
【0004】
ダイヤモンド宝石のカラーは、その強度だけでなく、例えばイエロー、ブラウン、ピンク、ブルーなどの色相により特徴付けられる。ブラウンダイヤモンド又は色相に著しいブラウン成分を有するもの(例えば、ブラウンイエロー)は、通常宝石類に望ましくない。ニアカラーレスカテゴリのイエロー及び/又はブラウンダイヤモンドと類似のカラー強度を有するピンク及びブルー色のダイヤモンドは、通常ニアカラーレスよりむしろ「ファンシーライト」にグレーディングされる。現在GIAはこのようなサンプルに文字グレードを提供していない。個々の好みで変わるが、カラーレスからニアカラーレスダイヤモンドの最も広く受け入れられる色相はイエローである。
CVD合成ダイヤモンド材料は、通常成長中にブラウニッシュ色相を呈し、任意の成長後熱処理によりピンキッシュブラウン、ピンキッシュオレンジ、ピンク、オレンジーピンク又はイエローを含む色相に変化し得る。国際公開第2004/022821号で説明されるように、該熱処理は、色相変化が産業プロセスの実用的な時間内に達成されるべきであれば、1400℃を超える温度で実施するのが好ましい。特定の色相を生じる必要に応じて、1600℃を超える温度では、少なくとも数ギガパスカル(GPa)のダイヤモンド安定化圧力が適用されない限り、黒鉛化率は著しくなり得ることが更に教示される。黒鉛化が起こると、使用できるダイヤモンドのマスが不必要に減るため、問題の中でも特に、製造することができる宝石のサイズを限定する。また、不適当であるか又は十分に制御されない高圧/高温(HPHT)処理が適用されると、ダイヤモンドを黒鉛化する、又はそうでなければ損傷するリスクもあり、おそらく使用できない。
【0005】
CVD宝石の公知の性質はフォトクロミズムであり、つまり特に太陽光、又は紫外線(UV)波長を実質的に発する他の光源による照射に対し、色が変わりやすいことである。この光吸収の一次的な変化は、天然又はHPHT合成ダイヤモンドに珍しい特異的な欠陥、特にシリコン空孔(SiV)センタに関連する可逆的な電荷移動プロセスにより通常引き起こされる。明確なカラー分類及び/又は文字グレードが意図される例では、CVDダイヤモンド宝石のフォトクロミズムは通常有益でなく、この望ましくない特徴を有さない宝石が好ましい場合がある。
ダイヤモンド宝石品質の更なる別の外観はクラリティであり、つまり肉眼で見える疵が無いことである。様々な種類のインクルージョン及びクラックは最も典型的な特徴であり、クラリティが不十分となるが、市場で見られるCVD合成ダイヤモンド宝石は、時に宝石鑑定士が「グレイン」と呼ぶもの、つまり局所的な屈折率の変動を示す。Gems&Gemology volume42,issue4(winter2006)の206ページ以降に発表された論文“The Impact of Internal Whitish and Reflective Graining on the Clarity Grading of D-to-Z Color Diamonods at the GIA Laboratory”では、主に天然のダイヤモンドに関連しているが、グレインが詳細に記載されている。なお、このクラリティ特性が天然ダイヤモンドで見出されることは珍しく、グレーティングレポートに常に記載されるわけではない。グレインは研磨した宝石の意図された光の伝播経路を妨げ、透明度及びコントラストの損失が認められる場合がある。
【0006】
組合せた場合は言うまでもなく、別々に達成するのが容易ではない厚み及び品質に関する上記要求を考慮して、宝石又は工業用途であるかに関わらず、可能な限り経済的にCVD合成単結晶ダイヤモンド材料を製造することが望ましい。低コストで大規模なCVD単結晶ダイヤモンド製造に関する技術的要件は、投入資源(例えばマンパワー、消耗品、エネルギなど)の単位当たりに製造される研磨したカラット量を最大化する基準として一般的に理解することができる。投入資源は密接に関連する。例えば労働要件を最小化する鍵は自動化であり、これは再現可能な大きなバッチの製造プロセスに依存する。大きな製造バッチも多くの又は大きな反応器を必要とするが、複製装置への設備投資を最小化するために、技術的に実現可能である限りは、後者が好ましい。従って、最も重要な基本的因子は、1つの反応器で同時に成長することができる単結晶ダイヤモンドの数、及びその場合に達成可能な成長率であることがわかる。
材料品質と、生じるカラット当たりのプロセス投入資源の全体的なレベルとを維持しながら、反応器1つにつき一度に単結晶サンプルを1つのみ作製することを容認するのに十分な成長率を達成するのは難しいかもしれないが、少数の結晶を同時により速く成長させることで、多くの結晶をゆっくりと成長させるのと同等の体積率でダイヤモンドを作製することができる。例えば、0.5kWの電気を使用し、1つの結晶を1mm/hで成長させることは、1つの合成ランにおいて、合計50kWの電力を使用し、単一の成長反応器で100の結晶をそれぞれ垂直成長率0.01mm/hで製造することより難しいかもしれない。後の選択肢は、1サンプルプロセスを開始及び終了することに関わっているであろう多くの時間及び労力、例えば100の結晶が必要であれば、100の結晶を作る過程で100倍以上の時間及び労力を省くこともできる。この例で挙げられる値は単なる仮説であり、実際には具体的な反応器及びプロセス次第であるが、当業者は基本的な論理を認識するであろう。従って、1つの反応器内で複数の単結晶CVDダイヤモンドを共に合成することは、商業的に有利であり得る。
【0007】
不均一性は、形態(クラックの存在を含む)、成長率、又は不純物の含有量及び分散の観点から、複数の結晶に存在し得る。国際公開第2013/087697号に記載のように、気相化学及びプラズマ環境が実質的に均一であるように制御されているとしても、不純物の不均一な取り込みは、不純物の取り込み率に影響する成長表面の温度変動により起こり得る。更に、様々な結晶面の成長率は別々の温度依存性を有するため、温度の意図的でない変動は、結晶形態の制御を困難にすることもある。このような制御は、問題のなかでも特にクラッキングを回避するのに望ましい。温度変動は、堆積面積内の特定の点における成長方向に対し横方向(つまり、空間的分布)、及び/又は成長ランの継続時間(厚みの初めから終わり)にわたる温度の変動により、成長方向と平行(時間的又は高度分布)であり得る。所定の用途に好適である成長したダイヤモンド材料の割合は、通常反応器の充填率に応じて変わり、多くの結晶が物理的に適合するように合成することを試みる通常の実行者が、こうすることにより優れた結果を達成する可能性は低い。従って、最適なバランスは、投入資源の単位当たりに成長するダイヤモンドの体積と、この値の上昇を試みると同時に起こり得る任意の不均一性に対するプロセス、製品及び/又は用途の感度との間に存在し得る。
【0008】
宝石用途は、相当な濃度の不純物を含有する材料が、目に見えるカラーをほとんど有さず(例えば、国際公開第2006/136929号に記載のように)、従って宝石として望まれる場合があるように、特定の欠陥が必要とされない場合は、慣習上、高い純度のダイヤモンド材料が優れているが、一方で高純度のCVDダイヤモンド材料の相対的に低い成長率は、厚層を作るのに時間を費やし、高価になるという考えによって重要な好対照を成している。従って、CVDダイヤモンドの相対的に大きな断片を必要とするこの及び他の商品用途では、潜在的に純度が低下してでも、成長率及び形態のために合成プロセスの特定の最適化を促す場合がある。
成長率及び形態を制御する方法の1つは、ドーパント状の欠陥を意図的に添加することである。CVDプロセスガス中に窒素を与えることで、材料の成長率を上昇させ、転位などの構造的な結晶欠陥の形成にも影響し得ることが見出されているため、窒素はCVDダイヤモンド合成における最も重要なドーパントの1つであり、窒素を含有していないものよりもダイヤモンドを潜在的に砕けにくくする(従って、クラッキングを起こすことなく、厚層として成長しやすい)。従って、窒素をドープした単結晶CVD合成ダイヤモンド材料は、広く検討され、文献で報告されている。窒素ドーピングの成果は、ダイヤモンドに取り込まれた窒素量に応じて著しく変わり得る。国際公開第2004/046427号に記載されるように、低レベルの窒素ドーピングは、光吸収又は実際には成長率に対する効果は大きくなく、CVD結晶内のひずみを低減するのに有益であり得る。一方、窒素を多く添加すると、国際公開第2003/052177号に開示するように、該材料の成長を促進し、その成長率は相対的に早く厚層を形成するものである。これはしかしながら著しくブラウンカラーである場合がある。極端には、CVDプロセスガスにおける過剰な窒素濃度は、低品質のダイヤモンド(例えば、不適当な形態又はクラックを有する)或いは著しい非ダイヤモンド(例えば、黒鉛)部分を含有する材料を迅速、無制御に成長させる場合があり、ダイヤモンドを必要とする任意の用途における製品の価値を相応に限定する。
国際公開第2004/022821号に戻り、色相が熱処理により変化し得るだけでなく、光吸収の全体的なレベルの低減が教示されており、その初期状態では所与の用途に容認できない吸収があるが、処理後に好適となるCVD単結晶ダイヤモンドを成長させることを検討することができる。このようなストラテジーは、より長い成長と比較して、処理プロセスが相対的に経済的であるときに有利となり得、その場合には通常の実行者は最終生成物の光吸収要件に束縛されるよりもむしろ、ダイヤモンド材料の合成時間を低減するための窒素ドーピング(又は他の方法)を採用する場合がある。このような最適化は、製品規格及びコスト目標のどちらも満たす確信があるなら、通常合成及び処理結果の高度な予測可能性を必要とするため、難制御性の合成プロセスにより製造されるダイヤモンドの受容性を改善するために適用されるように、成長後熱処理と異なるものとして見ることができる。
【0009】
複数のCVD単結晶ダイヤモンドを成長させること、及び該ダイヤモンド間に生じる性質の分布(堅さ他)のどちらも述べる先行技術はほとんど存在しない。特異的な用途に望ましい性質を有する複数の単結晶ダイヤモンドを高収率で成長させるのに必要な条件は、ほとんどまだ知られていない。ある領域の均一性に関する検討は、多結晶ダイヤモンドウェハ又は薄膜の観点から公知であるが、この点について開示されてきたものと、相対的に大きく、実質的に分離した多数の単結晶ダイヤモンドを成長させる要件は何ら関係しない。
【発明の概要】
【0010】
特定の最小厚みを有する高品質の単結晶CVD合成ダイヤモンド層を継続的で大規模に製造する方法を提供することが望ましい。単結晶ダイヤモンド合成について、及び特異的な用途に望ましい特定の性質を実現するための得られた単結晶ダイヤモンド材料の熱処理については多くが既に知られている。しかしながら、本発明の実施形態で達成される有利な性質を併せ持つ単結晶CVDダイヤモンドは、以前には開示されていなかった。更に、サイズ及びカラーグレードなど、再現性のある性質を有するCVDダイヤモンドを単一ランで経済的に大規模に製造するのに好適な任意のプロセスは、以前には開示されていなかった。
【0011】
第1の態様によれば、以下の:
最小の長さ寸法(例えば、長さ、幅又は深さ)が3.5mm以上であり;
EPRで測定されるように、中性の電荷状態における単一置換窒素原子(Ns
0)の濃度が20から250ppbであり;
色相角habが75から135°である、
特性を有するCVD単結晶ダイヤモンドが提供される。
国際公開第2011/076643号はCVD単結晶ダイヤモンドを開示しており、少なくとも部分的にNs
0吸収に起因する約80°より大きなhabを有する。しかしながら、このようなサンプルは、約0.5ppm(500ppb)より大きなNs
0濃度を有するように制約される。これは本発明の最大値の2倍であり、約1カラット以上の宝石におけるJ以下のカラーグレードと一致しない。更に、国際公開第2011/076643号は、クラッキングにより収率が乏しくなり得る高価なプロセスとして記載されるように、このような色相角を達成する手段としてのHPHTアニーリングではなく、代わりに合成プロセスガスに酸素を添加することを選択して、アズグロウン状態における材料のブラウンを低減することを教示している。
更なる比較において、国際公開第2004/022821号の実施例4及び5に、habが約100°及び約115°であるHPHTアニーリングしたCVD単結晶ダイヤモンドが開示されている。これらのダイヤモンドは、それぞれ2及び3mmの最小長さ寸法を有し、いずれの例も成長厚みに相当する。実際のサイズでニアカラーレスとして記載されているが、1.1及び2.2ppmのNs
0を含有しており、従って類似の材料が約1ct以上の宝石に十分なサイズで利用可能であれば、該宝石はニアカラーレスとはならない。反対に、本発明のいくつかの実施形態による材料は、少なくとも3.5mm、実施例で示すように実際少なくとも6mmの厚みに容易に成長することができ、生じる1から2ctの宝石は、アニーリング後に少なくともニアカラーレスグレードである。50ppbまで低下したNs
0濃度は国際公開第2004/022821号でクレームされているが、このような値に相当する色相角は、65°未満であるものとして規定される。
【0012】
CVD単結晶ダイヤモンドは、任意に中性及び負電荷状態の窒素空孔センタ(NV0及びNV-)の総濃度が、どちらが大きくてもNs
0濃度の0.1倍未満、又は10ppb未満である。CVD単結晶ダイヤモンドは、任意に85から125°、90から120°、及び95から115°のいずれかから選択される色相角habを有する。これらの特徴は、より綿密に最適化された熱処理プロセスに起因し、所望の「ケープ」イエロー色相により近似する。
CVD単結晶ダイヤモンドは、任意に励起波長660nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定における、ダイヤモンドの一次ラマン信号のピーク面積に対するSiV-ゼロフォノン線の総ピーク面積の比により定量され、0.5未満;0.1未満;0.05未満;及び0.01未満のいずれかから選択されるSiV-発光を示す。このような値は、シリコン不純物が非常に少ないダイヤモンド材料を示し、これは結果として顕著にフォトクロミズムではない。
CVD単結晶ダイヤモンドは、任意に温度20℃で低ひずみを示す低光学複屈折を有し、少なくとも3mm×3mmの面積を測定した場合、遅相及び進相軸に平行に偏光した光の屈折率差の第3四分位数値が、サンプルの厚みで平均され、1×10-4及び5×10-5のいずれかから選択される値を越えない。これらの低複屈折値は、「グレイン」を有さない単結晶CVDダイヤモンドを作製するのに好適なサンプルを示し、そうでなければその認識されるクラリティに影響し得る。
【0013】
CVD単結晶ダイヤモンドは、任意に少なくとも60mm3、少なくとも80mm3及び少なくとも100mm3のいずれかから選択される総体積を有する。例えば、約1ctから約1.75ct超の質量を有するラウンドブリリアント宝石として完成させるなら、これらの体積が当てはまる。
CVD単結晶ダイヤモンドは任意に宝石状でよく、8未満、6未満及び4未満のいずれかから選択される彩度C*
abを有する。このような値は、例えば少なくともニアカラーレスである宝石について測定することができる。
CVD単結晶ダイヤモンドは任意に宝石状でよく、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)スケール及び方法に従い、Ns
0濃度が20から100ppbのときはD、E及びFのいずれかから選択され、Ns
0濃度が80から250ppbのときはG、H、I及びJのいずれかから選択されるカラーグレードを有する。このような範囲及び値は、本発明より前に併せて知られておらず、いくつかの実施形態において、例えば異なる市場区分の要求を満たすために、これらは別々に選択することができる。
CVD単結晶ダイヤモンドは任意に研磨サンプルの形状でよく、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)スケール及び方法に従い、VS2、VS1、VVS2、VVS1、IF及びFLのいずれかから選択されるクラリティグレードを有する宝石を含むことができる。これらのクラリティグレードは、クラリティ欠陥を有さない、又は該欠陥を有するサンプルに相当する。しかしながら、該欠陥は拡大下で観察できるのみで、肉眼では観察できない。本発明のいくつかの実施形態は、通常これらのグレードの1つに適するであろう単結晶ダイヤモンドを提供し、それから形成した宝石を限定されないが市販品又は高品質商品として販売することができる。
【0014】
CVD単結晶ダイヤモンドは、任意にH3(NVN0)センタを含む。十分な温度で十分な時間熱処理して所望のイエロー色相を達成するときに、H3センタは通常開示した材料内に形成される。検出可能であれば、H3センタからのフォトルミネセンスは、最適範囲内のアニーリング条件を確立する助けとなるものとして、他の欠陥からのフォトルミネセンスと比較することができる。
CVD単結晶ダイヤモンドは、任意に励起波長455から459nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定において、30未満の(NV0+NV-)/H3比を示す。NV0、NV-及びH3欠陥のそれぞれは、ダイヤモンドの一次ラマン信号に対するゼロフォノン線のピーク面積比により定量される。この比の値は、任意に20未満、15未満、10未満、5未満及び2未満のいずれかから選択される。このような観察記録は、所与のサンプルにおいて可能な限り十分及び完全に、アズグロウンからイエローへの色相変化を達成するのに十分なアニーリング条件を示す。
CVD単結晶ダイヤモンドは、任意にN3については323から327nm、H3については455から459nmの励起波長を使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定において、0.1未満のN3/H3比を示す。各欠陥はダイヤモンドの一次ラマン信号に対するゼロフォノン線のピーク面積比により定量される。この比の値は、任意に0.05未満、0.02未満及び0.01未満のいずれかから選択される。このレベルの値は、本発明の範囲内における所望の範囲の色相角を達成するのに必要であるよりもそれほど厳しくない熱処理プロセスと一致している。
【0015】
従って、開示した材料の所望の品質は、カラーレス又はニアカラーレスとして設計され、広く興味を引く高品質のCVD合成ダイヤモンド宝石を作製するのに必要である少なくとも多く、いくつかの実施形態においては実質的にすべての品質とみなされる。更に、現在利用できる技術を用いて再現可能に、経済的に、大規模にCVD合成ダイヤモンド材料を製造することができる。
ダイヤモンドの用途は宝石に限定されない。選択肢として、CVD単結晶ダイヤモンドは機械要素に形成される。このような要素は、通常別の表面との滑り接触又は可動接触を受けた摩耗表面を有する。このような機械要素の非限定例としては、伸線ダイス、グラフィックツール、彫刻刀(stichels)、及び高圧ウォータージェットノズルなどの高圧流体ジェットノズルが挙げられる。
別の選択肢として、CVD単結晶ダイヤモンドは光学要素に形成される。例示的な光学要素としては、空洞光学要素(intracavity optical elements)、高出力伝送光学要素(high power transmission optical elements)、ラマンレーザー光学要素、エタロン及び全反射測定法(ATR)光学要素が挙げられる。
【0016】
第2の態様によれば、第1の態様で上記したCVD単結晶ダイヤモンドを作製する方法も提供する。本方法は、
化学気相堆積反応器内で基板キャリア上に複数の単結晶ダイヤモンド基板を配置することと;
水素含有ガス、炭素含有ガス及び窒素含有ガスを含むプロセスガスを反応器に供給することであって、これらのガスの相対量が1%から5%のC2H2/H2比、及び4ppmから60ppmのN2/C2H2比と化学量論的に等しいものである、供給することと;
複数の単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも一部の表面上で温度750℃から1100℃で複数の単結晶CVDダイヤモンドを成長させることと;
生じる複数の単結晶CVDダイヤモンドの少なくとも一部を温度1700℃から2200℃でアニーリングすることと、を含む。
本方法は、任意に基板上の成長が単一のCVD合成サイクル又は「ラン」として、中断することなく実施されることを含む。このような中断しないプロセスは、例えば装置利用効率を改善する、複数回成長用結晶を調製する必要性を回避する、及び連続する成長サイクルにより、製造される材料において成長した層間に形成される界面の任意の有害効果を防止する際、「起動停止(stop-start)」又はレイヤーバイレイヤープロセスより有利である。本出願人らの好ましい実施形態において、実施例により詳述するように、全厚みまでの成長は実質的に常に中断することなく実施される。
本方法は、任意に、CVD合成が少なくとも10mm3/h、少なくとも20mm3/h、少なくとも30mm3/h、少なくとも40mm3/h及び少なくとも50mm3/hのいずれかから選択される単結晶ダイヤモンド材料の体積成長率を提供することを含む。
本方法は、任意に、アニーリングがダイヤモンド安定化圧力下で実施されることを含む。これにより、黒鉛化によるCVD単結晶材料の任意の損失又は損傷を起こすことなく、高温及び/又は長いアニーリング時間を使用することができる。
本方法は、任意に、単一のアニーリング操作で処理された単結晶ダイヤモンドの総体積が少なくとも500mm3、少なくとも1000mm3、少なくとも1500mm3及び少なくとも2000mm3のいずれかから選択されることを含む。
【0017】
本方法は、任意に、炭素含有及び水素含有プロセスガスが、2%から4%;及び2.5%から3.5%のいずれかから選択される範囲のC2H2/H2比と化学量論的に同等である量で提供されることを含む。これらの範囲は、成長率及び材料品質間のバランスをとるものである。
本方法は、任意に、窒素含有及び炭素含有プロセスガスが、5ppmから20ppm;10ppmから50ppm;7ppmから15ppm;及び15ppmから35ppmのいずれかから選択される範囲のN2/C2H2比と化学量論的に同等である量で提供されることを含む。これらの範囲は、HPHTアニーリング後、カラーレスからニアカラーレスの合成宝石に好適なCVD単結晶ダイヤモンド材料を提供するのに好適であることが見出されている。より具体的には、特定の実施形態において、これらの範囲の選択は、カラーレス又はニアカラーレス宝石どちらかの選択的製造を可能にする。
本方法は、任意に、複数のCVD単結晶ダイヤモンドが800℃から1050℃;800℃から950℃;及び825℃から925℃のいずれかから選択される温度で成長することを含む。成長するサンプルすべてをこれらの狭い範囲内に維持することで、特定の実施形態においては、より均一な窒素ドーピング、及び宝石として完成させるダイヤモンド間の狭いカラーグレード分布を達成する可能性を提供する。
本方法は、任意に、アニーリングが1750℃から2100℃;1800℃から2000℃;及び1850℃から1950℃のいずれかから選択される温度で実施されることを含む。これらの狭い温度範囲は、アニーリングプロセスの有効性及び迅速さのバランスをとるものであり、一般的な装置、材料及びプロセスを用いて達成するのは難しい。
本方法は、任意に、複数の単結晶ダイヤモンドの少なくとも1つをカット及び研磨して宝石を形成することを含む。更に、任意に該宝石が単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも一部を含むことを提供する。
【0018】
以下、添付図を参照して、本発明を実施例に基づきより詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1はCVD単結晶ダイヤモンドを作製する例示的な工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
宝石などのCVD単結晶ダイヤモンドは市場で広く利用できるが、現在利用できる商品の大まかな研究により、一連の様々な品質及びサイズがあることが示されている。クラリティ、カラー及びサイズが一貫性なく組み合わさり、時には同じ製造業者でさえ、利用できる同じサンプルが2つとしてなく、優れた品質の比較的大きな単結晶CVDダイヤモンド片を再現可能に大規模に製造することができる方法は、未だ知られていなことが示唆される。
本発明者は、高品質で継続的に大量製造可能なCVD合成ダイヤモンドを開発している。ここで「大量製造可能な」は、多くの数十片の単結晶ダイヤモンド材料を単一の反応器内で一度に製造することができることを意味するだけでなく、収率の見込みは、製造の予測コスト及び明示された製造期間により、大規模要件を満たすのに必要な多数のCVD反応器に、多数の合成サイクルからなる製造ランを計画し、配置することができるようなものであることも意味する。本発明のいくつかの実施形態は、合成時に製造コストにあまり影響しない形で、宝石としてカット及び研磨して完成させた製品に適用するGIAカラーカテゴリ又はグレードを当業者が選択することができる。
【0021】
本明細書に記載される条件は、相対的に小さな内部ひずみを有するCVD単結晶ダイヤモンド材料を提供し、これによりクラッキングによる収率低下を最低限にし、完成した製品の著しい応力誘導性複屈折及び/又は可視グレインを回避する。本質的に、いくつかの実施形態によれば、合成ランで収率を限定するクラックは起こらない。これは、一つには、非ダイヤモンドのインクルージョン、双晶、研磨損傷又は表面と交差する転位など、構造的欠陥がほとんどない単結晶基板(シード)の使用によるものである。必要である高い構造的品質を達成する好適な方法は、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004/027123号に記載されるように、垂直にカットしたCVD基板を使用することである。その開示において、単結晶ダイヤモンドプレートを製造する方法が記載されており、構造的欠陥を実質的に含まない表面を有するダイヤモンド基板を提供する工程と、CVDにより表面上でホモエピタキシャルにダイヤモンドを成長させる工程と、生じる成長した結晶を、ダイヤモンド成長が起こる基板の表面に対して横断方向、通常垂直(つまり90°又はほぼ90°)に、切断して、単結晶CVDダイヤモンドプレートを製造する工程とを含む。このプレート、又はより典型的には各結晶から得られた多数の該プレートを更なる成長のために基板として使用する。拡張欠陥(転位及びこれらの集合)は成長方向に進む傾向があるため、成長方向に対して直角にダイヤモンドを薄く切ることで、欠陥が新しい最大面と交差する可能性がほとんどなくなり、結果として核形成又は転位増加の傾向は低い。
基板を成長させるための合成条件として、最終ダイヤモンド製品に使用するのと十分に類似する条件を使用するのが有利であり、基板のカラーと残りの結晶のカラーの相違は最小限となる。そうすることで、例えば宝石として完成させる前に基板を除く必要が無く、その後使用できる総厚みは基板厚み及びその後成長した厚みの合計である。
【0022】
本発明の特定の実施形態によるCVD単結晶ダイヤモンドは、ベリーグッド又はエクセレントのGIAカットグレードで1から2ctの質量を有するラウンドブリリアント宝石形状に完成させるとき、該宝石をニアカラーレスカテゴリ(GIAグレードG、H、I又はJ)に分類するなら中性の電荷を持つ単一置換窒素(Ns
0)を100から250ppb、或いはカラーレス(グレードD、E又はF)とみなすならNs
0を20から80ppbで含有すべきであることが分かっている。すべての例において、これらの濃度は、好ましくは任意の電荷移動効果を確実に回避する深UV照明後、電子常磁性共鳴(EPR)分光法により測定される通りである。カラーグレードは連続する尺度を形成しており、そのためNs
0が中間濃度である80から100ppbであれば、該宝石はカラーレス及びニアカラーレスカテゴリのほぼ境界に位置する。これはしかしながら、GIA法によるカラーグレードは一般的に様々な宝石学研究所の1ユニットにより変わり得ることを前提として、カテゴリ分類が判然としない。カラーレスCVD単結晶ダイヤモンド宝石のNs
0濃度が20ppb未満では、カラーグレードを更に改善しないだろうが(Dグレードのダイヤモンド宝石は完全に無色である必要がない)、国際公開第2004/046427号から公知である低成長率及びひずみ増加の傾向が組み合わさることで、合成はより困難で時間を消費するものになる。
【0023】
以前には開示されていなかった上記Ns
0のグレードとの一致を前提として、本発明で扱うべき別の問題は、所与のNs
0濃度、従って具体的なカラーカテゴリ又はグレードが実際にどのように達成できるかということである。本明細書中の解決策は、CVDプロセスガスで利用可能な炭素に対する窒素の比が、硬質ダイヤモンドの比に反映していると認識すること、従って以下の実施例で更に詳述するように、製品における所望の強度のイエローカラーに対してこの比を適切に選択することである。更に、利用可能な水素に対する炭素の比は、目標成長率を達成するために選択される。当業者は、このような選択が反応器及びプロセス依存性であり、従って本明細書で実施例が示されていることを認識するであろう。これは一つにはダイヤモンド成長率及び材料の性質に影響する主な因子が、C1ラジカル種(例えば、C原子、CH、CH2及びCH3)、窒素ラジカル種(例えば、N原子、NH及びCN)、並びに成長するダイヤモンド表面に付随するH原子の流動であるためである。しかしながら、これらを測定するのは難しく、通常、通常の実行者には知られておらず、プロセス及び反応器設計により間接的にのみ決定される。通常工業プロセスの最も実用的で経済的な原料であるとみなされる水素/メタン/窒素混合物とは別に、他の実行可能な化学反応もある。例えば多くの他の可能性のうち、メタンの代わりにアセチレン又はプロパン、分子窒素の代わりにアンモニア又は亜酸化窒素の使用を考慮することができる。供給原材料間の反応を検討する必要もあり得る。例えば、水素/メタンプロセス混合物にある程度の分子酸素を添加することが知られている。これを行うなら、COの全体としての形成により添加される酸素原子数だけ、メタンからの炭素原子を減らす必要がある。COはプラズマCVDプロセスの化学環境においてC1ラジカルに効果的に分解されず、従ってダイヤモンド成長に寄与しない。広い範囲のプロセス化学、例えば分子水素がほとんど無いか、全く無く、二酸化炭素及びメタンに基づくものを対象とする簡素で有用な計算は、供給原料が相互に反応して、化学量論量の分子窒素(N2)、アセチレン(C2H2)、分子水素(H2)及び一酸化炭素(CO)からなる混合物になり、残りが任意に不活性ガスなどのN、C、H又はO原子を含有しないガスとなることを前提とすべきである。一般的には使用されないが、ハロゲンを含有するプロセスは、任意のハロゲンを水素として処理することにより、適応させることもできる。従って、以下の実施例では炭素源としてアセチレンではなくメタンを使用しているが、合成環境はN2/C2H2及びC2H2/H2と同等の(計算した)比の観点からも明記しており、他のプロセス化学との比較を更に促進する。
【0024】
ダイヤモンド結晶を合成するとき、熱処理を行って元のブラウニッシュカラーから所望のイエローへの色相変換を行う。好ましい実施形態において、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2004/022821号に記載されるように、温度1600℃超、ダイヤモンド安定化圧力で熱処理を実施する。これは高圧高温(HPHT)アニーリングとして知られている。このような圧力を達成するために、HPHTでは処理する材料にかなりの機械力を働かせる必要があり、これにより微細なクラック(存在すれば)が最終用途に望ましくない程度まで拡大することがある。通常、このようなクラックはCVD単結晶の表面に副生成物として生じる多結晶材料と関連している。クラリティを損なわないために、好ましくはこの「スキン」の部分が完成したCVD単結晶ダイヤモンド宝石に含まれないように、潜在的にクラックを含む任意の多結晶材料を除去することにより、HPHTアニーリングのためにCVD単結晶ダイヤモンドを調製するのが有利である。これにより更なるクラッキングによる損失を回避する。更により有利には、結晶をアニーリング前に宝石として部分的に又は完全に完成させてよい。この場合、カット及び/又は研磨により一部が除去されることで、完成した製品がアズグロウン結晶より必然的に小さくなるため、各HPHTアニーリング操作でより多くの宝石を処理することができる。
CVD合成と同様に、HPHTアニーリングに必要なプロセスパラメータは、詳細には利用する装置、材料及び方法によって決まり、これらは所与の条件を実現する能力に影響することなく、相対費用などの付随する理由のために、通常の実行者により変わり得ることを当業者は認識するであろう。従って、重ねて、具体例は限定例としてではなく、助言のために示す。本明細書に記載するように、一般的な手法としては、相対的に高温で共に反応することにより、比較的低温でCVD合成中にダイヤモンド内に形成される光学活性の点欠陥を、熱力学的に安定形態に不可逆的に変換させることである。
通常、温度700から1200℃で実施するCVD合成中に取り込まれる主な光学活性の点欠陥は、Ns
0及び空孔複合体(例えば、ブラウンカラーに寄与するクラスタ及びチェーン)である。温度約1600℃超のHPHTアニーリングにより、空孔複合体を解離することができる。これにより、後に除去することができるため、すべての用途のために、アズグロウン状態のブラウンを最低限にする必要はない。生じる自由空孔は、別の欠陥に遭遇し、より高温で安定する形態を取るまで、結晶内で移動する。一般的に、これらは置換窒素原子と結合して、オレンジーピンクからレディッシュピンクを経てパープリッシュピンクまでのピンキッシュカラーとなるNV欠陥を形成する。
【0025】
自由空孔は、存在すれば置換型シリコン原子とも結合することができ、シリコン空孔(SiV)欠陥を形成する。シリコン含有ガスを使用した計画的なシリコンドーピングも知られているが、シリコンはCVD合成ダイヤモンド材料における不純物として広く認められており、一般的に石英ガラス誘電体バリアなどのCVD反応器成分に由来する。シリコンは主に置換原子SisとしてCVDダイヤモンドに取り込まれている。Sisは光学的に活性でないため、低濃度で材料中に検出することは難しい。一方、SiV欠陥は、アニーリングでNVに優先して形成され、中性及び負電荷状態の両方で容易に観察できる。室温で、SiV0は946nm(1.31eV)に吸収線、及び関係するフォノンサイドバンドを示し、一方SiV-は737nm(1.68eV)に吸収線、及び同様に関係するバンドを示す。特にSiV0のサイドバンドは可視スペクトルまで伸び、十分な濃度でこの欠陥を含有するサンプルはグレー又はグレイッシュブルーに見える場合がある。特に、SiVは強い電子受容体であるため、ダイヤモンドサンプルにNsと共に存在する場合、その間の電荷移動は通常主要な電荷状態をNs
+及びSiV-とする。どちらもサンプルの認識されるカラーにはそれほど寄与しない。相対的に高濃度の置換窒素を含有するが、シリコンドーピングによってNs
0による光吸収が実質的にないCVD単結晶ダイヤモンドが、国際公開第2006/136929号に開示されている。その手法の重要なデメリットは、生じるCVD単結晶ダイヤモンドが強いフォトクロミズムであることである。Physical Review B volume84(December 2011)の文献番号245208として発表された“Optical properties of the neutral silicon split-vacancy center in diamond”に記載されるように、このようなサンプルをUV照射すると、イオン化プロセスNs
++SiV-→Ns
0+SiV0が引き起こされ、イエローのNs
0及びグレーブルーのSiV0の光吸収の組合せからグレーイッシュカラーを付与する。それ自体のフォトクロミズム並びに生じるカラーは、どちらもカラーレス及びニアカラーレス宝石用途及び特定の工業用途においてそれほど望まれておらず、そのようなカラーを回避するために、通常の実行者はSiV欠陥の濃度を数十ppb以下、好ましくはそれ未満に限定する必要がある。アニーリングしたサンプルについて、この要件を満たすことは、通常CVD単結晶ダイヤモンド材料におけるシリコンの総濃度を最小限にすることを含むが、そうでなければ自由空孔の存在下でSiVの形成を本質的に避けることができないためである。
【0026】
処理温度約1700℃で、NV欠陥は結晶内で1単位として移動することができ、他の欠陥に遭遇するか又は互いに遭遇し、再び結合して該温度で安定する新しい欠陥を形成する。このような欠陥はH3センタであり、全体的な中性の電荷状態で空孔により分離した2つの置換窒素原子(N-V-N)0からなる。H3は503.2nm(2.463eV)に光吸収線、及び関係するバンドを示し、イエローカラーを呈する。注目すべきは、H3センタを形成する重要な経路である2つのNV欠陥の結合は、自由空孔を放出する。つまりNV+NV→NVN(H3)+Vである。この空孔はNsと結合してNVを再形成することができるため、H3への変換により除去される残りのNV欠陥のはっきりした温度閾値はない。むしろ、変換程度(ピンキッシュからイエローへの色変化の程度)は、アニーリングの継続時間、及び反応NV+Ns→NVNを促進する過剰なNsの有用性(或いはその逆)によっても決まる。欠陥濃度が不明である材料を処理するとき、イエローの最終色相を確実にするための1つの手法は、更にNVを解離するために、単に温度を上昇させることである。しかしながら、そのためには非常に高温、例えば2200℃以上を必要とする場合があり、従って処理により改善しているはずであった材料の黒鉛化及び破壊リスクが大きくなる。このような高温での黒鉛化は、より高い圧力、例えば8GPa以上を印加することにより阻害することができるが、大きく強力な圧力発生装置、又は高圧を付することができるような体積の低減のどちらかが必要である。実際的制限により、より一般的な解決策は後者であるが、これはHPHTサイクル当たり必要とされる処理時間、或いは労働又は消耗品の量を相応に低減することなく、各アニーリング操作で処理することができるCVD単結晶ダイヤモンド材料の量を必然的に低減する。従って、一般的に、過度に高い温度及び圧力を使用する場合、アニーリング工程は経済的でない。該アニーリングを行う理由が、一つにはダイヤモンド材料を製造する総コストを最低限にすることである場合には、明らかに望ましくない。
開示したCVD単結晶材料を処理するとき、HPHTの通常の実行者により達成可能な典型的な圧力下、ダイヤモンドを黒鉛に変換する温度よりかなり低く、予測可能な比較的狭い範囲の温度内でアニーリングすることにより、ブラウン又はピンクのニュアンスのない、所望の光安定性であるペールイエローカラーが生じることが見出されている。この範囲内の温度を提供するプロセス条件を見出し、その後再現することにより、宝石などのカット及び研磨した部分として完全に完成させるときでさえ、任意の黒鉛化又は顕著な表面損傷を起こすことなく、当業者は量的に確実に開示した材料を処理することができる。しかしながら、黒鉛化することなく色相変換を達成する最適温度は、少なくともある程度アニーリングの適用圧力及び継続時間によって決まり、いずれの場合でも、多くの種類のHPHT装置で達成されてきた温度及び/又は圧力を正確に測定することは容易ではない。従って、処理した材料を試験するだけで、当業者がこれを決定することができる測定方法を更に開示している。実際の測定の詳細は実施例に示す。
【0027】
最低限に十分な条件の最も直接的な定量的指標は、CIE015:2004:“Technical Report,Colorimetry,3rd Edition”に国際照明委員会により定義されるように、測定したCIELAB色相角habである。本願の目的に重要なことに、他の同等の材料について、この値はほぼ処理条件のみによって決まり、実際にサンプルのサイズ及び形状と無関係である(従って、例えば宝石が意図された最終製品であれば、測定は完全に完成させた宝石を必要としない)。光吸収スペクトルからhabを計算する手順はCIE015:2004に詳述されており、このようなスペクトルは例えば研磨した平行面のあるサンプルの透過、又は宝石を含む不規則形状のための積分球を使用し、測定することができる。他の測定手法も可能であり、その1つを実施例で使用する。CIELABカラーモデルにおいて、hab=0°は赤を表し、hab=90°はイエローである。ブラウンオレンジ色相を表す中間値は、未処理又は非常に軽く処理したCVD材料に典型的である。処理温度が上昇すると、反応が起こらない間は色相角は初めは変化せず、その後条件が最適範囲に接近するにつれ、NV欠陥の形成により最低値に向かって減少する傾向にある。最適領域の下限でhabが再度上昇し始め、これは色相角の最低値よりもわずかに高い温度(約50℃以上)である。しかしながら、最低最適温度(以下、閾値温度、約1700℃)での処理は、色相角がイエローに向かってゆっくりと上昇するため、所望の色相変換を達成するのに長時間必要となる。閾値温度で、又はそれ未満で黒鉛化が起こるなら、プロセスウィンドウを広げるために圧力を上昇させる必要がある。NV欠陥の可動性が高いほど、温度が上昇するにつれて色相角変化が迅速になり、約1750℃で必要な処理時間は通常1時間未満まで減少する。必要なアニーリング時間を短縮するために、温度を更に上昇させることは通常の実行者の判断であり、装置、材料及びプロセスの選択による経済面によって決まり得る。完全な色相変換は90<hab<120°を示し、つまりイエローからわずかにグリーニッシュイエロー色相である。終点での正確な色相角は、アニーリングした材料におけるNs
0及びH3の濃度間のバランスによって決まる。これは主にアズグロウン状態のブラウンの作用であり、材料がブラウンであるほど、多くの空孔を含有し、その結果その処理によって多くのH3が作製される。
【0028】
CVD単結晶ダイヤモンド材料を処理するときに回復を損なう点を超える、従って黒鉛化閾値に不必要に近い条件の優れた指標は、著しい濃度のN3欠陥形成である。N3センタは空孔を囲む3つの置換窒素原子(3N+V)からなり、415.2nm(2.985eV)に吸収線、及び関係する振電バンドを示す。この可視スペクトルの青色端における吸収のため、CVD材料において、通常観察したカラーに著しく影響するような濃度を実現することはないだろうが、イエロー色相も呈する。重要なことに、N3はH3よりも熱力学的に安定であるため、特に2200℃で又は2200℃超の高温で優先的に形成される。敏感にN3を検出し(例えば、フォトルミネセンス分光法)、H3などの他の関連する欠陥に対して、特定レベル未満の濃度を開示した材料において維持することにより、通常の実行者は温度及び圧力の直接の知識を必要とすることなく、最適範囲の上限を定めることができる。
【実施例】
【0029】
国際公開第2004/027123号に記載のように、複数のCVD単結晶ダイヤモンド基板を横にカットしたプレートとして作製した。プレートは(100)配向面及びエッジを有し、1ctラウンドブリリアント宝石製品を作るのに必要とされる4.5×4.5×0.3mm、又は類似の2ct製品用の5.5×5.5×0.3mm寸法で完成させた。国際公開第2005/010245号及び国際公開第2017/050620号に従い、好適に調製した基板キャリアに基板を取り付け、CVD反応器に配置した。
CVD反応器の設計及び構造は、ダイヤモンド材料におけるシリコン不純物源を最小化するものであった。例えば、国際公開第2012/084660号に記載されるように、石英ガラス誘電体バリアは反応器のプロセスに露出する表面積のわずかな部分を構成し、良好に冷却され、堆積面積から離れて位置していた。該反応器は、国際公開第01/096633号及び国際公開第01/096634号に開示される電子グレードの単結晶CVDダイヤモンドを製造するのに十分なプロセス純度を提供することができる。
分子水素、炭素含有ガス(本実施例ではメタン)及び窒素含有ガス(ここでは分子窒素)を含むプロセスガスをCVD反応器に供給した。様々な実行者により使用されるCVD反応器は、性能特性の点で広く異なり、利用する合成プロセスも例えば成長温度により偶発的であるが、それでも著しく異なり得る。これらの差異への適応は当技術分野で公知である。本発明に係る装置を使用し、ニアカラーレスCVD単結晶ダイヤモンド宝石に必要であるように、100から250ppbのNs
0を含有する材料は、上記計算方法により18から34ppmのN2/C2H2と同等の気相濃度を利用する合成プロセスに由来することが解明された。これは本出願人らのプロセス化学では9から17ppmのN2/CH4により示された。Ns
0が20から80ppbであり、従ってカラーレスグレードである類似の宝石は、7から15ppmのN2/C2H2と同等のもの、又は本出願人らの例では3.5から7.5ppmのN2/CH4を必要とする。重要なことに、最終生成物のNs
0濃度は合成中のN2/C2H2と同等の比にほぼ直線的に比例し、これは必要な関係を確立するために少数の実験が必要であることを意味した。このほぼ直線性は、合成した材料及び処理結果の高い一貫性と併せて、カテゴリだけでなく特異的なカラーグレードによる意図した製品の選択を促進した。従って、本実施例について、宝石がカテゴリ内の中間グレードに近いカラーグレードを有するように、本出願人らは28及び12ppmのN2/C2H2と同等の比を選択した。つまりそれぞれH/I及びEであった。こうして、材料品質、均一性、並びに合成過程中に必要とされるガスの総体積及び総電力量などのプロセス投入資源を考慮して、成長率が最適範囲内であるように、C2H2/H2と同等の比を選択した。最適成長率範囲は2.5から3.5%のC2H2/H2と同等のもの(5.5から7.5%のCH4/H2比)を使用して達成した。C2H2/H2と同等の比及び成長率の関係は、反応器設計に応じて変わることが知られているが、通常の実行者は容易に決定することができる。本出願人らの反応器では、ほぼ直線であることを本出願人らは見出した。
【0030】
マイクロ波エネルギを896又は915MHzの周波数で供給し、プロセスガスのプラズマを反応器内で形成した。必要な動作周波数は主に反応器の寸法によって決まり、通常の実行者は例えば本明細書に示す任意の他の詳細から実質的に逸脱することなく、本実施例より小さな反応器と組み合わせ、マイクロ波周波数2450MHzの利用を選択してよい。約4mmから約6mmの厚みまで、複数の単結晶ダイヤモンド基板のそれぞれの表面上で中断することなく、単結晶CVDダイヤモンド材料を成長させた。成長中の結晶温度は、プロセスガスにおける所与のN2/C2H2と同等の比に合わせて取り込まれる窒素量に影響する。ここで、波長2.2μmで動作する光学パイロメータを使用して、隣接する単結晶間の多結晶ダイヤモンド領域上で温度を測定し、これは8mm厚のIRグレードである石英ガラス観察窓越しに示された。多結晶ダイヤモンドについて伝送損失がなく、放射率0.9であると仮定して1色測定を行った。これは(例えば)2色式パイロメータを使用して測定するように、約10℃の真熱力学温度内の一貫した再現可能な示度を示す。このように測定した温度は成長継続時間の間、825から925℃の範囲であった。
本実施例において、最終生成物に使用可能なCVD単結晶ダイヤモンド材料は、利用する正確なプロセスパラメータに応じ、反応器あたり約45から約60mm3/hの体積率で成長させた。これらの値は、反応器時間あたり成長する約0.8から約1.1ctの高品質単結晶ダイヤモンドに相当する。
【0031】
成長後、CVD単結晶ダイヤモンド結晶を基板キャリアから外した。基板キャリアは結晶の周囲に成長し、ブラウンカラーの強度で特徴付けられる任意の多結晶ダイヤモンドから分離している。他の暗い環境において、均一な白色バックライトに対する透過(厚みを通した、つまり基板から上面)時のアズグロウンサンプルを撮影することにより、カラー測定を行った。同じ条件下で撮影した標準のANSI IT8.7/1-1993透過試験対象を参照して、較正したCIELABカラー座標を得た。このように、周囲のバックライト領域からの白色点に対して、彩度C*
ab(やはり、CIE015:2004による)及び色相角habを各結晶について測定した。カラーレス宝石を意図したCVD単結晶ダイヤモンド結晶は、おおよそ55°から65°のhabを示し、一方でニアカラーレス宝石用に成長し、窒素含有量が高いものは、平均でわずかに大きな約60°から70°の色相角を有していた。彩度値はカラーの認識された強度に関連し、C*
ab=0はニュートラルカラー又は無色、つまり白、グレー又は黒に相当し、高い値は任意の非ニュートラル色相の高飽和と相関がある。5.5から6.5mmの総厚み(つまり基板を含む)で測定したとき、カラーレス宝石用のCVD単結晶ダイヤモンド結晶の大部分が3.5から5.5のC*
abを有し、一方ニアカラーレス宝石用はより大きな値を有する傾向があり、約4から12の広い範囲のC*
abであった。
【0032】
アニーリング前、成長したCVD単結晶ダイヤモンド結晶から、任意の表面欠陥と共に、任意の非ダイヤモンドの多結晶材料を除去し、成長した結晶を宝石として半分又は完全に完成させた。表面欠陥はアニーリング中にクラックの開始又は伝播により失敗のリスクを高め得る。その後、その多くを集めてダイヤモンドからなる成形体にし、圧力伝達塩(pressure-transmitting salt)のマトリックス内に埋め込み、この成形体をHPHT装置に配置した。本実施例では、合計約1500mm3から2500mm3の単結晶ダイヤモンド(おおよそ30から40ct)を成形体に含むことができ、すべての個別のサンプルを相互に矛盾のない結果に処理した。HPHT処理に使用した条件を1900℃、圧力7GPa(70kバール)として間接的に推定し、アニーリング時間はおおよそ10分であった。この圧力で、処理時間を好適に調節し、1700から約2100℃の任意の温度で同等の結果が可能であったが、これよりも高い温度には高い圧力が必要であった。実用的に、圧力7GPaの最適範囲のおおまかに中央になるように温度を選択した。アニーリング後、成形体を水に溶解して、ダイヤモンド及び塩を回収した。ダイヤモンドのクラッキング又は黒鉛化は観察されず、完全に完成させたサンプルは処理を通して研磨グレードを維持していた。
【0033】
処理後Ns及びNVの濃度を定量するのに電子常磁性共鳴(EPR;電子スピン共鳴ESRとしても知られる)分光法を使用した。この実験技術を(特に赤外線又はUV/可視吸収分光法などのほかの一般的な方法より)高い感度、定量的精度、及び宝石を含む任意の形状のサンプルへ使用される能力のために選択した。しかしながら、Ns
+及びNV0はEPRにより検出することができず、代表的測定を行うなら、これらの濃度を(検出可能及び定量可能な)Ns
0及びNV-を選択して、最小化しなければいけないことに言及するのは重要である。従って、Ns
0について深UV照射により、NV-について暗所で550℃まで加熱することにより、測定前に必要とされる電荷状態を調製した。カラーレスのCVD単結晶ダイヤモンドサンプルは、約65ppbのNs
0(3つの名目上同一のサンプルの平均)及び検出不可能な量のNV-を含有することが見出された。ニアカラーレスサンプルは、約190ppbのNs
0(2つの名目上同一のサンプルの平均、そのうちの1つをそれぞれの測定において数パーセントの誤差内で本出願人らと同一の結果を提供する外部研究所にも提出した)及び同様に検出不可能なNV-を含有していた。他のEPRスキームによりNV-の検出を試みて更なる測定を行ったが、濃度が小さすぎるために、これらは検出できなかった。検出可能な量のNVを含有する異なるサンプル(本発明のものではない)に対する手法を実証した後、真値はニアカラーレスサンプルでは5ppb未満、カラーレスサンプルでは2ppb未満のようであるが、検出限界は10ppb未満のNV-であることが明らかとなった。このように、アニーリング後に残存するNVの濃度はNsの約10分の1より大きいはずはなく、すべてにおいて確率は更に小さかった。
【0034】
処理したCVD単結晶ダイヤモンドサンプルのフォトルミネセンス(PL)スペクトルは、NV、H3及びN3の寄与を比較するのに測定した。PLは非常に高感度な技術であるが、欠陥発光強度は所与の欠陥に関する励起及び検出効率並びにその濃度によって決まるため、それぞれのシグナルの強度比は関連濃度に比例するが、等しくはない。各欠陥の励起効率は、その吸収スペクトル及び励起波長間のオーバーラップによって決まり、検出効率は蛍光性量子収量によって決まる。これらの影響は、欠陥の物理特性、選択した励起及び検出波長、並びに測定を行う温度により決定される。液体窒素クライオスタットを使用し、温度77Kで本出願人らの測定を行い、励起波長は325nm(ヘリウムカドミウムレーザー)及び457nm(アルゴンイオンレーザー)であった。
NV欠陥の中性及び負電荷状態の両方、並びにH3は457nmで励起することができ、これらをゼロフォノン発光線(ZPL)によって検出した。NV0は575.1nm(2.156eV)、NV-は637.5nm(1.945eV)、及びH3は503.2nm(2.463eV)に位置する。各測定したZPL強度をダイヤモンドの一次ラマン線R1457の同時に測定した強度で割った。従って例えばNV0
457=I(575.1nm)/I(R1457)であり、I(・)はピーク面積を表す。これは全体的なカップリング効率を除外した。この効率は設備依存性であり、また例えば研磨したサンプル表面からの(方向依存性の)反射により影響され得る。その後、本出願人らはカラーレス及びニアカラーレスサンプルについて比(NV0
457+NV-
457)/H3457、以降NV/H3を試験した。NV/H3は最適アニーリング条件下で最小化されるであろうが、最小値はNs及び自由空孔からNVを形成後、このNVが移動してNs
0又は別のNVと反応することによるH3の段階的生成を調節する反応速度論により決定される。窒素又は(特に)空孔をほとんど含有しないサンプルにおいて、後のプロセスは限られたアニーリング時間内でわずかな確率で起こり、NV/H3が他より大きくなる。該サンプルはアニーリング後にピンキッシュ色相を有するが、むしろNV及びH3の濃度がどちらも非常に小さく、これにより(イエロー)色相の主要な一因がNs
0であることを示唆すると解釈されるべきではない。類似の成長率(従って類似濃度の空孔を含有する)で合成されたニアカラーレスサンプル及びカラーレスサンプルはどちらもアニーリング後に、NV/H3のPLが約1.5であった。低成長率で合成されてきたカラーレスサンプルは、大きく、変動するNV/H3値、おおよそ3から7を示し、このようなサンプルにおいてH3の形成がより妨げられることを反映している。Eではなく、Dグレードサンプルが作製されれば、同じ理由で更に大きな値が予期される。
【0035】
N3は457nmの励起では、そのZPL(415.2nm、2.985eV)が励起より短い波長にあるため観察することができず、励起効率は非常に低い。従って、325nmレーザーを使用してN3を励起した。最大最適温度を超えないアニーリング条件について予想されるように、N3は1900℃で処理したサンプルのいずれにも検出することができず、2000℃で4時間処理したサンプルでも検出できないだろう。これらの後者の条件は、色相変換を達成するのに必要な域を越えるが、7GPaの適度な圧力で行うときに黒鉛化のリスクがほとんどないため、やはり最適範囲内である。本出願人らの高温限界で、予期されるN3のPL量を定量化するために、更なるサンプルを2200℃で1時間アニーリングした。これはしかしながら、損傷を回避するために、圧力を8GPaまで上昇させる必要があった。325nmで励起したスペクトルがH3のZPLにオーバーラップするいくつかの割り当てられていない線を含有するため、H3に対する直接の比を推測することは困難であった。従って、本出願人らはN3325/H3457、つまり上記のようにそれぞれの一次ラマンピーク面積に対する比率で示した後に試験した。異なる励起を使用して測定を組み合わせることは不便に思われるが、実際にはこれらの励起波長(及び関連するガスレーザー)は、最も一般的に用いられるものであり、限定された選択がこのスペクトル範囲の他の波長に利用可能である。N3325/H3457は2200℃の処理後、0.01から0.02の値であることが分かった。少し大きな値は、空孔を使った窒素集合によりアズグロウン状態で極端にブラウンであるサンプルと同じ条件下で予期される。
【0036】
完成させた宝石カラーの定量測定は、鏡面性、多数の内部反射、及び研磨物内の分散のため、アズグロウン結晶の測定より難しい。主に照明条件次第で局在する明部及び見掛けのカラーの閃光を生じ、これらを宝石の真のボディカラーを評価するのに考慮に入れない必要がある。該測定を行うために、国際公開第2016/203210号に記載される写真的アプローチを使用した。この手法は速いが、分光光度計及び積分球の使用の更に信頼できる代替であり、従って多くの研磨した宝石を測定するときに特に有用である。アニーリング後に色相角を測定すると、カラーレス宝石の大部分で105°<hab<115°、ニアカラーレス宝石の大部分で95°<hab<105°の範囲内にある。これはすべてのサンプルがイエローであり、ブラウン、ピンク又はオレンジカラーは残存しないことを示す。
CVD単結晶ダイヤモンドサンプルのいずれも任意の測定可能なフォトクロミズムを示さなかったことを考慮し、660nmのダイオードレーザーを使用して励起し、77KでSiV-のPL測定を実施した。低温PLの感受性が最高度であるため、吸収で検出可能であるよりもSiVが桁違いに少ないサンプルでさえ、定量化可能なSiV-信号は、CVD合成ダイヤモンド材料の測定でほぼ常に観察される。他のPL測定と同様に、低温でSiV-が2つのZPLをそれぞれ736.5及び736.8nmに示すこと以外、記録した値はダイヤモンドの一次ラマン線に対するSiV-のPL特徴の面積比であり、従ってSiV-
660=I(736.5nm)/I(R1660)+I(736.8nm)/I(R1660)である。これらのサンプルにおいて、SiV-
660は通常0.001から0.01の値であり、市販のCVD合成宝石の基準に基づいて例外的に小さい。成長後処理を利用していない第3者の製造業者による宝石を比較すると、通常SiV-
660が0.5から1.5であった。しかしながら、供給業者の間でかなりの変動があり、HPHTアニーリングした第3者の宝石で、約50から100の値が測定された。
【0037】
処理したCVD単結晶ダイヤモンド宝石は、アニーリング前に行った同じ測定と比較して、常にC*
abが低かった。これはカラーの深みの全体的な減少を示す。宝石をグレーディングする色について確立された慣習の通り、カラーレスCVD単結晶ダイヤモンド宝石は、ラウンドブリリアント形状について、テーブルファセットが下に面する状態でパビリオンを通して見て測定したとき、C*
abが1.5から3.5(多くのサンプルが1.8から2.8の狭い範囲内に含まれる)であった。この形状及びこの方向について観察されたカラー強度は、宝石サイズ(質量)への依存がわずかであり、同じ条件下で合成及び処理されたCVD結晶から製造する場合、1ct及び2ctのラウンドブリリアントではほぼ同じC*
abが測定される。ニアカラーレスCVD単結晶ダイヤモンド宝石は、3.5から6.5の一般的に大きなC*
ab値により区別され、更に多くがその範囲の中間、すなわち4.2から5.2に近い。これらの値は多数の装置セットを使用し、異なる時間、異なる工場で合成及び処理された数百の宝石の検査を要約しており、任意の品質コントロール基準が最終生成物に課される前に、大規模製造で生じる分布とほぼ同じである。
【0038】
本出願人らは、測定したC*
ab値に基づきGIAと同等のカラーグレードを評価し、C*
ab及びカラーグレードがどちらも公知である一連の天然ダイヤモンドサンプルを使用して較正した。参照サンプルのカラーグレードは、GIAにより広く教示され、Gems&Gemology,volume44,number4(winter2008)の296ページ以降の論文‘Color grading “D-to-Z” diamonds at the GIA laboratory’に記載された方法に従って与えた。これに基づき、グレードF及びG、つまりカラーレス及びニアカラーレスカテゴリ間の境界はC*
ab=3.5であると判断され、おおよそC*
ab=7はニアカラーレス範囲の上端と考えられ、それを超えるとサンプルはわずかに色付いているとみなされる(Kグレード以上)。より具体的には、カラーレスサンプルの大部分に測定された1.8<C*
ab<2.8はおおよそEグレードに相当し、4.2<C*
ab<5.2の範囲に含まれるニアカラーレスサンプルはHにグレーディングされる。本出願人らの推定ではIグレードは5.2<C*
ab<6.2になる。従って、更にグレードの推定における妥当な誤差、並びにグレーディングする研究所間の不一致の可能性を考慮し、測定した宝石のすべては製造計画段階で意図したカラーカテゴリに含まれていた。
完成したCVD単結晶ダイヤモンド宝石の一部をニューヨークのGIA研究所に提出し、この研究所はほぼすべての例のグレードを本出願人らの1つのグレード内に与えた。すなわち、GIAグレードはカラーレス宝石では概してE、ニアカラーレス宝石では概してIであった。更に、各カラーカテゴリ内の異なるサンプルは、ほぼ常にGIAにより同一のグレードが与えられたが、例外が1つのみあった。GIAグレードが推定と系統的に異なっていれば、N2/CH4比(言い換えれば、計算したN2/C2H2比)を合成プロセスで調整して、ダイヤモンドに多かれ少なかれ窒素を取り込み、必要に応じて最終グレードを増減することができた。その後、経済的に最適値に成長率を維持するようにCH4比(計算したC2H2/H2比)を調整する。HPHTアニーリング工程を変更する必要はなかった。
【0039】
複屈折測定はCVD単結晶ダイヤモンド材料に行った。成長したダイヤモンド材料を立方体に形成した。立方体は基板の対角線と等しいエッジ長さの{110}配向側面を有し、結果として元の基板の面積、並びに{100}配向上面及び底面を限定した。立方体を上記のようにアニーリングした後、0.7mmの厚みのプレートに水平にカットし、主な面をどちらも研磨した。市販の機器(ソーラボLCC7201)を使用し、波長590nmでプレートの複屈折(遅相及び進相軸に平行して偏光した光の屈折率差として定義され、サンプルの厚みで平均される)を測定し、その面積の大部分について、エタロンなどの光学用途に好適な材料を記載している国際公開第2004/046427号の十分に範囲内である10-5オーダーの値であった。例外は、基板エッジの真上の領域であった。転位は横及び縦の成長領域間の境界に集中する傾向があり、局所的な最大複屈折は10-4オーダーであった。結晶のこれらのより複屈折部分のインクルージョンは、すべての技術的用途で好ましくないかもしれないが、総体積のほんのわずかのみを占めることを考慮して、CVD単結晶ダイヤモンドの目視クラリティに害はないことが分かっており、任意の例では、最大複屈折が合成モアッサナイト(“Synthetic moissanite:a new diamond substitute”,Gems and Gemology volume33,issue4,winter1997に挙げられるように4.3×10-2)の1%未満である。
【0040】
図1は、CVD単結晶ダイヤモンドを作製する例示的な工程を説明するフローチャートである。以下の番号付けは
図1に相当する。
S1.複数の単結晶ダイヤモンド基板をCVD反応器内の基板キャリア上に配置する。
S2.プロセスガスを反応器に供給する。プロセスガスは水素含有ガス、炭素含有ガス及び窒素含有ガスを含む。これらのガスの相対量は、1%から5%のC
2H
2/H
2比及び4ppmから60ppmのN
2/C
2H
2比と化学量論的に等しいものである。マイクロ波を使用してガスからプラズマを生成する。
S3.単結晶CVDダイヤモンドを複数の単結晶ダイヤモンド基板の表面上で、温度750℃から1100℃で成長させる。成長は、好ましくは単一の連続する中断しないCVD合成サイクル又は「ラン」として実施される。
S4.生じる複数の単結晶CVDダイヤモンドを温度1700℃から2200℃でアニーリングする。アニーリングは好ましくはダイヤモンド安定化圧力下で実施される。
成長した単結晶ダイヤモンドをカット及び研磨して宝石を形成することができ、これは単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも一部を含んでよい。カット及び研磨は、アニーリング前又は後に実施してよい。
【0041】
実施形態を参照して本発明を具体的に示し、記載してきたが、添付の特許請求の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更がなされ得ることが当業者に理解されるであろう。例えば、当業者は、本明細書に開示される単結晶ダイヤモンド材料が、添付の特許請求の範囲に記載されるように、低く制御可能な光吸収、低複屈折、意図的に導入した窒素を除いた高純度、低蛍光性、比較的大きなサイズ、及び量的に経済的に製造される能力を組み合わせ、多様な潜在的用途を有することを認識するであろう。これらは必ずしも消費者向けではなく、光学、熱又は機械要素、或いは他の技術的製品のための使用を含み得る。
例えば、ダイヤモンドは機械用途、例えば伸線ダイス、グラフィックツール、彫刻刀、及び高圧ウォータージェットノズルなどの高圧流体ジェットノズルに使用してよい。
或いは、ダイヤモンドは光学要素に形成される。例示的な光学要素としては、空洞光学要素、高出力伝送光学要素、ラマンレーザー光学要素、エタロン、及び全反射測定法(ATR)光学要素が挙げられる。これらは、本明細書に記載されるダイヤモンドが示す低吸収及び低複屈折から恩恵を受けることができる。ダイヤモンドの高熱伝導率により、この材料は熱拡散が必要である用途に特に有用となる。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の、
最小の長さ寸法が3.5mm以上であり;
EPRにより測定される
、中性の電荷状態における単一置換窒素原子(N
s
0)濃度が20から250ppbであり;
色相角h
abが75から135°である;
特性を有
し、
H3(NVN
0
)センタを更に含む、CVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項2】
中性及び負電荷状態における窒素空孔センタ(NV
0及びNV
-)の総濃度が、前記N
s
0濃度の0.1倍又は10ppbの大きい方より小さい、請求項1に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項3】
85から125°、90から120°及び95から115°のいずれかから選択される色相角h
abを有する、請求項1
に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項4】
励起波長660nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定における、ダイヤモンドの一次ラマン信号のピーク面積に対するSiV
-ゼロフォノン線の総ピーク面積の比により定量化され、0.5未満;0.1未満;0.05未満;及び0.01未満のいずれかから選択されるSiV
-発光を示す、請求項1
に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項5】
前記単結晶CVDダイヤモンド材料の総体積が、少なくとも60mm
3、少なくとも80mm
3及び少なくとも100mm
3のいずれかから選択される、請求項1
に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項6】
宝石状で、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)スケール及び方法に従い、前記N
s
0濃度が20から100ppbであるとき、D、E及びFのいずれかから選択され、前記N
s
0濃度が80から250ppbであるとき、G、H、I及びJのいずれかから選択されるカラーグレードを有する、請求項1
に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項7】
宝石状で、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)スケール及び方法に従い、VS
2、VS
1、VVS
2、VVS
1、IF及びFLのいずれかから選択されるクラリティグレードを有する、請求項1
に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項8】
励起波長455から459nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定において、30未満の(NV
0+NV
-)/H3比を示す請求項
1に記載のCVD単結晶ダイヤモンドであって、前記NV
0、NV
-及びH3欠陥のそれぞれが、前記ダイヤモンドの一次ラマン信号に対するゼロフォノン線の前記ピーク面積比により定量される、CVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項9】
N3の場合に励起波長323から327nm、H3の場合に励起波長455から459nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定において、0.1未満のN3/H3比を示す請求項
1に記載のCVD単結晶ダイヤモンドであって、前記欠陥のそれぞれが、前記ダイヤモンドの一次ラマン信号に対するゼロフォノン線の前記ピーク面積比により定量される、CVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項10】
機械要素に形成される、請求項1
に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項11】
光学要素に形成される、請求項1
に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項12】
前記光学要素が、空洞光学要素、高出力伝送光学要素、ラマンレーザー光学要素、エタロン、及び全反射測定法ATR光学要素のいずれかから選択される、請求項
11に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
【請求項13】
請求項1
に記載の複数の単結晶CVDダイヤモンドを作製する方法であって、
化学気相堆積反応器内の基板キャリア上に複数の単結晶ダイヤモンド基板を配置することと;
水素含有ガス、炭素含有ガス及び窒素含有ガスを含むプロセスガスを前記反応器に供給することであって、これらのガスの相対量が1%から5%のC
2H
2/H
2比、及び4ppmから60ppmのN
2/C
2H
2比と化学量論的に等しいものである、供給することと;
前記複数の単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも一部の表面上で温度750℃から1100℃で前記複数の単結晶CVDダイヤモンドを成長させることと;
生じる複数の単結晶CVDダイヤモンドの少なくとも一部を温度1700℃から2200℃でアニーリングすることと、
を含む方法。
【請求項14】
前記CVD合成が、少なくとも10mm
3/h、少なくとも20mm
3/h、少なくとも30mm
3/h、少なくとも40mm
3/h及び少なくとも50mm
3/hのいずれかから選択される単一の反応器で成長する単結晶ダイヤモンド材料の体積成長率を提供する、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記アニーリングがダイヤモンド安定化圧力下で実施される、請求項
13に記載の方法。
【請求項16】
単一のアニーリング操作で処理される単結晶ダイヤモンドの総体積が、少なくとも500mm
3、少なくとも1000mm
3、少なくとも1500mm
3及び少なくとも2000mm
3のいずれかから選択される、請求項
13に記載の方法。
【請求項17】
前記炭素含有及び水素含有プロセスガスが、2%から4%;及び2.5%から3.5%のいずれかから選択される範囲のC
2H
2/H
2比と化学量論的に同等である量で提供される、請求項
13に記載の方法。
【請求項18】
前記窒素含有及び炭素含有プロセスガスが、5ppmから20ppm;10ppmから50ppm;7ppmから15ppm;及び15ppmから35ppmのいずれかから選択される範囲のN
2/C
2H
2比と化学量論的に同等である量で提供される、請求項
13に記載の方法。
【請求項19】
前記複数のCVD単結晶ダイヤモンドが800℃から1500℃;800℃から950℃;及び825℃から925℃のいずれかから選択される温度で成長する、請求項
13に記載の方法。
【請求項20】
前記アニーリングが1750℃から2100℃;1800℃から2000℃;及び1850から1950℃のいずれかから選択される温度で実施される、請求項
13に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0041
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0041】
実施形態を参照して本発明を具体的に示し、記載してきたが、添付の特許請求の範囲に定められる本発明の範囲を逸脱することなく、形態及び詳細において様々な変更がなされ得ることが当業者に理解されるであろう。例えば、当業者は、本明細書に開示される単結晶ダイヤモンド材料が、添付の特許請求の範囲に記載されるように、低く制御可能な光吸収、低複屈折、意図的に導入した窒素を除いた高純度、低蛍光性、比較的大きなサイズ、及び量的に経済的に製造される能力を組み合わせ、多様な潜在的用途を有することを認識するであろう。これらは必ずしも消費者向けではなく、光学、熱又は機械要素、或いは他の技術的製品のための使用を含み得る。
例えば、ダイヤモンドは機械用途、例えば伸線ダイス、グラフィックツール、彫刻刀、及び高圧ウォータージェットノズルなどの高圧流体ジェットノズルに使用してよい。
或いは、ダイヤモンドは光学要素に形成される。例示的な光学要素としては、空洞光学要素、高出力伝送光学要素、ラマンレーザー光学要素、エタロン、及び全反射測定法(ATR)光学要素が挙げられる。これらは、本明細書に記載されるダイヤモンドが示す低吸収及び低複屈折から恩恵を受けることができる。ダイヤモンドの高熱伝導率により、この材料は熱拡散が必要である用途に特に有用となる。
本発明のまた別の態様は、以下の通りであってもよい。
〔1〕以下の、
最小の長さ寸法が3.5mm以上であり;
EPRにより測定されるように、中性の電荷状態における単一置換窒素原子(N
s
0
)濃度が20から250ppbであり;
色相角h
ab
が75から135°である;
特性を有するCVD単結晶ダイヤモンド。
〔2〕中性及び負電荷状態における窒素空孔センタ(NV
0
及びNV
-
)の総濃度が、前記N
s
0
濃度の0.1倍又は10ppbの大きい方より小さい、前記〔1〕に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔3〕85から125°、90から120°及び95から115°のいずれかから選択される色相角h
ab
を有する、前記〔1〕又は〔2〕に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔4〕励起波長660nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定における、ダイヤモンドの一次ラマン信号のピーク面積に対するSiV
-
ゼロフォノン線の総ピーク面積の比により定量化され、0.5未満;0.1未満;0.05未満;及び0.01未満のいずれかから選択されるSiV
-
発光を示す、前記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔5〕温度20℃で低ひずみを示す低光学複屈折を有し、少なくとも3mm×3mmの面積を測定する場合、遅相及び進相軸と平行して偏光した光の屈折率差の第3四分位数値が、サンプルの厚みで平均され、1×10
-4
及び5×10
-5
のいずれかから選択される値を越えない、前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔6〕前記単結晶CVDダイヤモンド材料の総体積が、少なくとも60mm
3
、少なくとも80mm
3
及び少なくとも100mm
3
のいずれかから選択される、前記〔1〕から〔5〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔7〕宝石状で、8未満、6未満及び4未満のいずれかから選択される彩度C
*
ab
を有する、前記〔1〕から〔6〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔8〕宝石状で、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)スケール及び方法に従い、前記N
s
0
濃度が20から100ppbであるとき、D、E及びFのいずれかから選択され、前記N
s
0
濃度が80から250ppbであるとき、G、H、I及びJのいずれかから選択されるカラーグレードを有する、前記〔1〕から〔7〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔9〕宝石状で、ジェモロジカル・インスティテュート・オブ・アメリカ(GIA)スケール及び方法に従い、VS
2
、VS
1
、VVS
2
、VVS
1
、IF及びFLのいずれかから選択されるクラリティグレードを有する、前記〔1〕から〔8〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔10〕H3(NVN
0
)センタを更に含む、前記〔1〕から〔9〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔11〕励起波長455から459nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定において、30未満の(NV
0
+NV
-
)/H3比を示す前記〔10〕に記載のCVD単結晶ダイヤモンドであって、前記NV
0
、NV
-
及びH3欠陥のそれぞれが、前記ダイヤモンドの一次ラマン信号に対するゼロフォノン線の前記ピーク面積比により定量される、CVD単結晶ダイヤモンド。
〔12〕N3の場合に励起波長323から327nm、H3の場合に励起波長455から459nmを使用し、温度77Kで実施するフォトルミネセンス測定において、0.1未満のN3/H3比を示す前記〔10〕又は〔11〕に記載のCVD単結晶ダイヤモンドであって、前記欠陥のそれぞれが、前記ダイヤモンドの一次ラマン信号に対するゼロフォノン線の前記ピーク面積比により定量される、CVD単結晶ダイヤモンド。
〔13〕機械要素に形成される、前記〔1〕から〔12〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔14〕光学要素に形成される、前記〔1〕から〔12〕のいずれかに記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔15〕前記光学要素が、空洞光学要素、高出力伝送光学要素、ラマンレーザー光学要素、エタロン、及び全反射測定法ATR光学要素のいずれかから選択される、前記〔14〕に記載のCVD単結晶ダイヤモンド。
〔16〕前記〔1〕から〔12〕のいずれかに記載の複数の単結晶CVDダイヤモンドを作製する方法であって、
化学気相堆積反応器内の基板キャリア上に複数の単結晶ダイヤモンド基板を配置することと;
水素含有ガス、炭素含有ガス及び窒素含有ガスを含むプロセスガスを前記反応器に供給することであって、これらのガスの相対量が1%から5%のC
2
H
2
/H
2
比、及び4ppmから60ppmのN
2
/C
2
H
2
比と化学量論的に等しいものである、供給することと;
前記複数の単結晶ダイヤモンド基板の少なくとも一部の表面上で温度750℃から1100℃で前記複数の単結晶CVDダイヤモンドを成長させることと;
生じる複数の単結晶CVDダイヤモンドの少なくとも一部を温度1700℃から2200℃でアニーリングすることと、
を含む方法。
〔17〕前記基板上の成長が、単一のCVD合成サイクルとして、中断することなく実施される、前記〔16〕に記載の方法。
〔18〕前記CVD合成が、少なくとも10mm
3
/h、少なくとも20mm
3
/h、少なくとも30mm
3
/h、少なくとも40mm
3
/h及び少なくとも50mm
3
/hのいずれかから選択される単一の反応器で成長する単結晶ダイヤモンド材料の体積成長率を提供する、前記〔16〕又は〔17〕に記載の方法。
〔19〕前記アニーリングがダイヤモンド安定化圧力下で実施される、前記〔16〕から〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕単一のアニーリング操作で処理される単結晶ダイヤモンドの総体積が、少なくとも500mm
3
、少なくとも1000mm
3
、少なくとも1500mm
3
及び少なくとも2000mm
3
のいずれかから選択される、前記〔16〕から〔19〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕前記炭素含有及び水素含有プロセスガスが、2%から4%;及び2.5%から3.5%のいずれかから選択される範囲のC
2
H
2
/H
2
比と化学量論的に同等である量で提供される、前記〔19〕又は〔20〕に記載の方法。
〔22〕前記窒素含有及び炭素含有プロセスガスが、5ppmから20ppm;10ppmから50ppm;7ppmから15ppm;及び15ppmから35ppmのいずれかから選択される範囲のN
2
/C
2
H
2
比と化学量論的に同等である量で提供される、前記〔16〕から〔21〕のいずれかに記載の方法。
〔23〕前記複数のCVD単結晶ダイヤモンドが800℃から1500℃;800℃から950℃;及び825℃から925℃のいずれかから選択される温度で成長する、前記〔16〕から〔22〕のいずれかに記載の方法。
〔24〕前記アニーリングが1750℃から2100℃;1800℃から2000℃;及び1850から1950℃のいずれかから選択される温度で実施される、前記〔16〕から〔23〕のいずれかに記載の方法。
〔25〕前記複数の単結晶ダイヤモンドの少なくとも1つをカット及び研磨して、宝石を形成することを更に含む、前記〔16〕から〔24〕のいずれかに記載の方法。
【国際調査報告】