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特表2024-539204流体軸受、ギアボックス、および使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】流体軸受、ギアボックス、および使用方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/02 20060101AFI20241018BHJP
【FI】
F16C17/02 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523815
(86)(22)【出願日】2022-10-10
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2022078031
(87)【国際公開番号】W WO2023066696
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】21203612.3
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523306612
【氏名又は名称】フレンダー-グラフェンスタデン エス.アー.エス.
【氏名又は名称原語表記】FLENDER-GRAFFENSTADEN S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ゴーリエ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】マルマーニュ,トーマス
【テーマコード(参考)】
3J011
【Fターム(参考)】
3J011AA04
3J011AA07
3J011BA02
3J011CA04
3J011JA02
3J011KA02
3J011MA03
3J011PA02
3J011RA03
(57)【要約】
本発明は、回転要素(1)を収容し支持する流体軸受(10)に関する。流体軸受は、少なくとも1つの無負荷摺動面(10a)と、無負荷摺動面の下流の少なくとも1つの負荷摺動表面(10b)と、を備える。流体軸受は、無負荷摺動面内に配置された第1の注入ポケット(11)と、負荷摺動面内に配置された第2の注入ポケット(12)と、を備える。例えば本発明は、ターボ応用品、特にギアボックス(3)の流体軸受に関する。本発明は、流体軸受の使用方法、流体軸受を少なくとも1つ備えたギアボックスにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転要素(1)のための流体軸受(10)であって、
当該流体軸受は、少なくとも1つの無負荷摺動面(10a)と、該無負荷摺動面の下流の少なくとも1つの負荷摺動面(10b)と、を備え、
当該流体軸受(10)は、前記無負荷摺動面に配置された第1の注入ポケット(11)と、前記負荷摺動面に配置された第2の注入ポケット(12)と、を備え、
当該流体軸受(10)は、少なくとも1つの半径方向リセス(13)を備え、該少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面及び前記負荷摺動面の両方に配置され、円周方向(y)に延伸し、円周方向で上流および下流の両方において前記第1の注入ポケット(11)及び前記第2の注入ポケット(12)の両方と重なり、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面及び前記負荷摺動面の両方の活性エリア(A1,A2)を画定しまたは区切り、
前記第1の注入ポケット(11)および前記第2の注入ポケット(12)は、それぞれ、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)がそれぞれ配置される前記無負荷摺動面および前記負荷摺動面の対応する円周方向摺動セクションにおける上流または下流の前記活性エリア(A1,A2)の軸方向範囲よりも短い軸方向長さ(x)を有し、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、少なくとも1つの排気ポイント(P)と前記無負荷摺動面との間に流体連通を提供する、
ことを特徴とする、流体軸受(10)。
【請求項2】
前記無負荷摺動面および前記負荷摺動面の両方の前記活性エリア(A1,A2)は、前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)で半径方向クリアランスを提供することによって画定されまたは区切られ、前記半径方向クリアランスは、前記活性エリアの半径方向クリアランスよりも少なくとも3倍深く、および/または、
前記第1および第2の注入ポケット(11,12)の両方は、前記活性エリア(A1,A2)に軸受の新しい流体を供給するように配置され構成され、上流の円周方向セクションから来る古い流体の流れが、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)それぞれの上流で分割されて両脇へ向けられ、および/または、
前記第1の注入ポケット(11)の上流で、前記活性エリア(A1)は、好ましくは前記第1の注入ポケット(11)に通じる矩形ランドの形状を有する、第1の無負荷摺動セクション(A1a)を含み、および/または、
前記第1および第2の注入ポケット(11,12)は、運転状態で前記少なくとも1つのリセス(13)から古い流体を排出するように、前記古い流体を軸方向に逸らすべく配置され構成され、前記古い流体は、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)から注入される新しい流体によって押し分けられる、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)、特に半径方向リセス(13)に配置された溝(13a)は、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)の側方で両脇に配置され、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、1つの単体の一筋リセスによって、特に、当該流体軸受(10)または前記摺動面の軸方向全長にわたって延伸し、円周方向の摺動方向下流に向かってU字形状を呈し、少なくとも前記無負荷摺動面と部分的に前記負荷摺動面とに接するリセスによって、設けられ、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、少なくとも1つの排出ポイント(P)と前記無負荷摺動面との間の流体連通、すなわち、前記無負荷摺動面の前記活性エリア(A1)の両脇にある複数の排出ポイント(P)への/経由の流体連通、を提供し、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)と併せて、前記無負荷摺動面における前記第1の注入ポケット(11)の相対位置は、前記半径方向リセス(13)の前側セクションの複U字形状配置を画定し、該複U字形状配置は、前記無負荷摺動面の第1の無負荷摺動セクション(A1a)を囲繞し、該第1の無負荷摺動セクション(A1a)自体も、特に前記第1の注入ポケット(11)の両脇に延伸するランド(A1c)と共に円周方向にU字形状で前記第1の注入ポケット(11)を囲繞する、
請求項1または2に記載の流体軸受(10)。
【請求項4】
軸方向において、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)は、当該流体軸受(10)のまたは前記無負荷および負荷摺動面の軸方向全長に対し中心合わせして配置され、特に互いにも中心合わせして配置され、および/または、
前記負荷摺動面の少なくとも前記活性エリア(A2)は、前記第2の注入ポケット(12)の側方に軸方向に配置されたランド(A2c)を含み、前記ランド(A2c)は、前記無負荷摺動面の前記活性エリア(A1)と前記負荷摺動面の前記活性エリア(A2)との間に連続/繋ぎエリア(Ay)を提供し、および/または、
前記無負荷摺動面および前記負荷摺動面の前記活性エリア(A1,A2)は、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)の側方に軸方向に配置された第1および第2のランド(A1c,A2c)を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項5】
円周方向において、前記第1の注入ポケット(11)は、前記無負荷摺動面の開始ライン(Y1)から下流方向にオフセットして配置され、特に、少なくとも20°の円周方向下流オフセットであり、最大60°の円周方向下流オフセットであり、および/または、
円周方向において、前記第1の注入ポケット(11)は、前記第2の注入ポケット(12)よりも広く、特に少なくとも2倍程度広く、および/または、
軸方向において、前記第1の注入ポケット(11)は、前記第2の注入ポケット(12)よりも狭く、特に少なくとも0.6倍程度狭く、および/または、
円周方向において、前記第2の注入ポケット(12)は、前記負荷摺動面の開始ライン(Y2)のところに配置され、特に前記開始ライン(Y2)に平行に配置される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項6】
少なくとも1つの流体排出ポイント(P)が、前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)に/の中に、特に前記第1の注入ポケット(11)の下流のセクションに、特に前記半径方向リセス(13)内に配置された溝(13a)の中に、設けられ、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、円周方向に延伸する少なくとも1つの溝(13a)、特に2つの溝、を収容し、前記少なくとも1つの流体排出ポイント(P)は、前記少なくとも1つの溝(13a)の中に設けられ、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、異なる半径方向クリアランスを有する少なくとも2つのエリアまたはセクションを備え、より深い半径方向クリアランスを有する前記セクションは、好ましくは、前記少なくとも1つの溝(13a)によって設けられ、および/または、
流体の排出は、該流体を軸方向へ逸らすことを必要とする側方ボーダーエリアで主に行われる、
請求項1~5のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面の開始ライン(Y1)を画定し、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記第1の注入ポケット(11)の上流に前側セクション(Ax0)を提供し、該前側セクション(Ax0)は、好ましくは矩形の形状を有し、該前側セクション(Ax0)は、好ましくは、前記第1の注入ポケット(11)を囲繞するU字形状の活性エリア(A1a)を提供し、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面から前記負荷摺動面へ、少なくとも180°の、好ましくは少なくとも190°または200°の、円周方向長さにわたって延伸する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項8】
当該流体軸受(10)は、注入ポケットを2つだけ備え、該2つの注入ポケットは、前記無負荷摺動面および前記負荷摺動面の前記活性エリア(A1,A2)と、したがって前記回転要素(1)と、直接流体連通し、該2つの注入ポケットは好ましくは矩形の形状を有し、および/または、
当該流体軸受(10)の前記注入ポケットは、互いに対しそして前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)に対し、特に、前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)が、前記第2の注入ポケット(12)と前記第2の注入ポケット(12)の軸方向両脇に配置されているランドとに円周方向で重なることで、軸受流体圧力プロファイルにおいて一定の圧力に対する最大圧力の比が最小となるように、配置される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面と前記負荷摺動面の両方の当該流体軸受(10)の両側のボーダーエリアで円周方向に延在し、好ましくは、当該流体軸受(10)の円周の半分に少なくともおおよそ相当する円周位置よりもさらに先へ延伸する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項10】
前記第1の注入ポケット(11)と前記第2の注入ポケット(12)との間に、円周方向において、当該流体軸受(10)は、連続/繋ぎエリア(Ay,Ay2a)を備える、
請求項1~9のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項11】
前記摺動面は、円周方向において前記無負荷摺動面の開始ラインから始まり、少なくとも3つの円周方向ポイント(y1,y2,y3)で増加する軸方向長さを備え、および/または、
前記無負荷摺動面の低減活性のエリアは、円周方向において前記無負荷摺動面の開始ライン(Y1)から始まり、少なくとも3つの円周方向ポイントで減少する軸方向長さを備える、
請求項1~10のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項12】
当該流体軸受(10)は、前記無負荷摺動面および前記負荷摺動面を少なくとも含む複数の摺動面を備え、前記無負荷摺動面および前記負荷摺動面は、それぞれ、軸受シェル(10.1,10.2)によって提供され、
当該流体軸受(10)は、前記無負荷摺動面および前記負荷摺動面の両方に圧力のエリアを複数備え、
前記圧力のエリアのいずれかの活性は、好ましくは、前記無負荷摺動面および前記負荷摺動面のそれぞれのセクションの半径方向の位置/深さ/高さによって定められる、
請求項1~11のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項13】
前記摺動面を平面図で見て、前記無負荷摺動面の前記活性エリア(A1)は、第1の実質的に矩形の摺動セクション(A1a)と第2の実質的に矩形の摺動セクション(A1b)とを有するT字形状であり、前記第2の摺動セクション(A1b)は、前記第1の摺動セクション(A1a)よりも長い軸方向長さと広い円周方向範囲を有し、
前記第1の注入ポケット(11)が前記第1の摺動セクション(A1a)に配置され、
前記負荷摺動面の前記活性エリア(A2)は、第1の実質的に矩形の摺動セクション(A2a)と第2の実質的に矩形の摺動セクション(A2b)とを有するT字形状であり、前記第2の摺動セクション(A2b)は、前記負荷摺動面の前記第1の摺動セクション(A2a)よりも長い軸方向長さと広い円周方向範囲を有し、
前記第2の注入ポケット(12)が前記負荷摺動面の前記第1の摺動セクション(A2a)に配置される、
請求項1~12のいずれか1項に記載の流体軸受(10)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の流体軸受(10)を備えたギアボックス(3)であって、該ギアボックス(3)は、好ましくは少なくとも60m/sのジャーナル速度を必要とするターボ応用品のために構成される、ギアボックス(3)。
【請求項15】
回転機械、特にギアボックス(3)、特にターボギアボックスにおいて請求項1~13のいずれか1項に記載の流体軸受(10)を使用する使用方法であって、前記流体軸受(10)は、回転要素(1)、特にパワートレインのシャフトを収容し支持し、前記流体軸受(10)は、流体注入のために少なくとも1つの圧力ライン(5)に接続される、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転要素を収容し支持する高効率で高い動的安定性をもつ流体軸受(特に流体ジャーナル軸受)に関する。流体軸受は、少なくとも1つの無負荷摺動面と、該無負荷摺動面の下流の少なくとも1つの負荷摺動面と、を含む。流体軸受は、無負荷摺動面内に配置される第1の注入ポケットと、負荷摺動面内に配置される第2の注入ポケットと、を含む。より具体的に言えば、本発明は、特にギアボックスにおけるターボ応用品の流体軸受に関する。また、本発明は、このような流体軸受を少なくとも1つ含むギアボックスや、このような流体軸受の使用方法にも関係する。
【背景技術】
【0002】
高速、高出力、高効率のギアボックスの技術において、例えば、特にターボギアボックスと呼ばれる、パワートレインのシャフトの回転を案内する必要がある。このようなギアボックスは、通常、高い負荷を受け、半径方向の高い力が各軸受(通常、流体ジャーナル軸受、つまりすべり軸受)に働き、この力の方向が、無負荷状態と全負荷状態との間で変化し得る。蒸気タービンやガスタービンのようなターボ機械と比較して、ターボギアボックスにおける力はさらに高い。また、通常、高いジャーナル速度(具体的には>60m/s)があるのと、通常、高い動力損失がある。特に、動力損失は[ジャーナル速度]の3乗に比例し得る。
【0003】
高効率の軸受は、好ましくは、全負荷(フルロード)時と無負荷(ノーロード)時の両方において低い/最小の動力損失を確保しているべきである、ということが分かっている。装置やシステムの各市場では、フルスピードおよびフルロードで99%をさらに上回る効率がギアボックスに要求されることもある。このような背景において、強く要求されるのは、始動時および安定運転時の両方における動的安定性であり、すなわち、流体の不安定な状態が前段階で許容され得ないということである。また、高い信頼性が求められ、つまり、最高温度および最高圧力が、当該軸受の材料に従う、例えばホワイトメタル材料に関する、所定の限界を超えてはならない。負荷や回転速度の増加に伴い、安全面からもその要求はますます厳しくなってきている。
【0004】
機能および軸受特性は、軸受面と回転要素(シャフト)との間の流体の潤滑と注入に左右される。従来知られている流体軸受は、例えば、軸受の全長にわたって設けられる大きな軸方向ポケットを備えている。このような設計は、全負荷および無負荷で低い動力損失を確保し得るが、全負荷のときに、動的安定性に加えて高圧および高温の問題を生じる可能性がある。特に、(かなり高速であるが低負荷の)始動時に主に動的安定性の問題が生じ得る。当該設計においては、各摺動面に関し、上流と下流のそれぞれに排出域を備えた圧力域が存在する。
【0005】
また、従来知られている流体軸受は、例えば、WO2017/092903A1に開示されているように、軸受の全長にわたって延在する小さな軸方向ポケットを複数備え、これら軸方向ポケットが半径方向リセス(凹部)と併せて設けられる。半径方向リセスは、円周方向に延伸し、主に流体軸受の無負荷摺動面に限定される。摺動面の入り口/始まりにおいて、流体/オイルの流れは、流体軸受の両側(横方向のエリア)に逸らされ、摩擦を最小限に抑えられるように軸方向ポケットの上流間近に配設されている排出リセスに案内され得る。このような設計は、全負荷時および好適な流体の流れで適切に低い動力損失を可能にするが、特定の用途では、無負荷時にある程度の動力損失が効果的に防止されない可能性があり、動的安定性の観点からよりいっそう最適化できる可能性があると考えられる。
【0006】
別の(従来の)設計概念によれば、例えばUS2003/081867A1に開示されているように、流体軸受は、向かい合わせに配置されて減圧を可能にする2つの比較的大きくて深い半径方向チャンバを備える。このような設計は、特に静的負荷の観点では好ましいが、高速、高出力、および高効率のギアボックスの技術でこのような設計は、高い動的安定性および剛性の要件に照らして好まれないであろうことが分かっている。
【0007】
DE2100365A1には、オイルまたはグリースの方向を変えるチャンネルを備えた軸受が開示されている。オイルまたはグリースは、円周方向に延びるチャンネル内にオイル/グリースを吸収することにより、中央開口からさらに下流の表面エリアに給送される。チャンネルのパターン/集合は、さらにオイル給送開口へ到達する前に少なくとも一回円周方向下流に再帰する。
【0008】
従来技術におけるこれらの例に鑑みると、流体ジャーナル軸受における動的安定性の問題に取り組む一般的な方法は、いわゆる「圧力ダム」技術を適用することに依然として基づいており、注入ポケットが、軸受全長のうちの一部でクリアランスの急激な変化をもたらすため特別に機械加工/設計される。このクリアランスの急激な変化は、流体膜の対応するエリアに圧力ピークを作り出し、この圧力ピークが軸受内のシャフトの位置を落ち着かせるのに役立つ。しかしながら、このアプローチは、少なくとも上述したような応用品(特にターボ応用品)に関する限り、動的不安定性の問題のすべてを完全に排除することを可能にするものではないこと、また、このアプローチは、動力損失の増加/好ましくない動力損失やオイル流量の増加/好ましくないオイル流量など、いつくかの他の不利益を克服できるものではないこと、が分かっている。したがって、いっそう良好な動的安定性および剛性を可能にするのと同時にいっそう良好な効率(動力損失の最小化)も可能にする流体軸受設計のさらなる改善に向けて新しいアプローチが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開公報WO2017/092903A1
【特許文献2】米国特許公開公報US2003/0081867A1
【特許文献3】独国特許公開公報DE2100365A1
【発明の概要】
【0010】
蒸気の状況を念頭に、本発明の目的は、特に始動運転時(始動シーケンス時)および安定運転時(継続作動時)のいずれにおいても、高負荷および高速状態で好ましい動的性能を発揮する流体軸受を提供することにある。より具体的に言えば、本発明の目的は、ターボギアボックスに適合する/ターボギアボックス用に構成された特定設計であり、好ましい効率も提供する特定設計の、流体軸受を提供することにある。
【0011】
本発明の目的は、独立形式請求項の特徴により解決される。有益な特徴が従属形式請求項に示されている。技術的に可能である場合、従属形式請求項に係る概念は、独立形式および従属形式の請求項に係る概念と適宜組み合わせることができる。
【0012】
一例をあげると、本発明の目的は、少なくとも1つの無負荷摺動面と、この無負荷摺動面の下流(すべり方向、つまり円周方向)の少なくとも1つの負荷摺動面と、を備える、回転要素のための流体軸受によって、解決される。当該流体軸受は、無負荷摺動面内に配置された第1の注入ポケットと、負荷摺動面内に配置された第2の注入ポケットと、を備え、これら第1及び第2の注入ポケットはそれぞれ、回転要素と摺動面の1つとの間に流体を注入する。当該流体軸受は、無負荷摺動面内と負荷摺動面内の両方に配置された少なくとも1つの半径方向リセスを備え、この半径方向リセスは、円周方向に延伸し、円周方向で上流と下流の両方において第1の注入ポケットおよび第2の注入ポケットの両方に重なる。少なくとも1つの半径方向リセスは、無負荷摺動面および負荷摺動面の両方の活性エリアを画定するまたは区切っている。第1の注入ポケットおよび第2の注入ポケットは、それぞれ、注入ポケットがそれぞれ配置される無負荷/負荷摺動面の対応する円周方向摺動セクションにおける上流または下流の活性エリアの軸方向範囲よりも短い軸方向長さを有し、例えば、少なくとも0.9~0.4倍ほど短い。このような構成は、特に高効率要件の観点において、ここに開示するような複数の望ましい利点(例えば流体力学的利点)を実現もする。
【0013】
他の言い方をすれば、本発明は、無負荷状態と全負荷状態の両方で低い動力損失を可能にする流体(ジャーナル)軸受に関する。例えば、複数の摺動面、つまり異なる圧力の活性エリア、が、無負荷面および負荷面によって提供される。圧力の活性エリアは、注入ポケットの相対位置および少なくとも1つの半径方向リセスの相対位置の両方によって画定可能である。
【0014】
この開示に係る摺動面は、それぞれの軸受シェルにおいて固定可能(動かない)であるか移動可能である、ことに留意が必要である。
【0015】
例えば、本発明は、大きい半径方向負荷を特色とするギアボックス用の流体軸受に関する。この半径方向負荷(ラジアル荷重)は、通常、有効重力とは異なる方向を向く、すなわち、機械の始動時には、軸受にかかる負荷は、値が増加すると共に方向も変化する。軸受の摺動面は、全負荷時にシャフト(回転要素)にかかる力に対抗するかどうかに応じて「負荷」または「無負荷」と呼び、すなわち、負荷面が全負荷時の力に対向する面(ギアボックスで見て)で、無負荷面がその他の面である。運転状態に従う負荷方向の変化(静止状態における重力に実質的に対応する負荷方向、および動的運転状態において上に向く負荷方向)のために、無負荷面は、機械始動のごく初期に負荷に対向している面であり得る(この状況は、用語「負荷」とこれに対する「無負荷」とは呼ばれない)、すなわち、軸受下側の円周方向セクションであり得る。言い換えると、軸受が例えば2個の軸受ハーフシェル(二分割シェル)で構成される設計において、動的運転状態では、上側ハーフシェルが負荷の大部分に対処するシェルである。本発明によれば、第2の注入ポケットは、軸受の上側セクション(つまりシェル)に配置するのが好ましい。
【0016】
本発明によれば、例えば流体摩擦および動力損失の低減を可能にするために、無負荷摺動面の活性エリアを縮小することができる。対照的に、好ましくは、負荷摺動面の活性エリアは、該エリアが最高温度および最高圧力(特にホワイトメタルの劣化の観点から、軸受の信頼性にとって問題となり得る)の両方を増大させる原因となり得るので、縮小されない。
【0017】
負荷摺動面の活性エリアは、半径方向負荷を支持する。したがって、この表面上の流体膜の圧力は比較的高い。ただし、この圧力は、表面全体で一定ではない。むしろ、本発明に係る圧力プロファイルは、好ましくは、負荷摺動面の始まりに低圧ゾーンのあるパラボラ形状を有する。摺動面のコーナー(角)/ボーダー(境界)で圧力はかなり低くなる。軸受の総活性エリア、したがって動力損失を、さらに減少させるために、これらのコーナー/ボーダーエリアで活性エリアを断つ(凹ませる)ことができる、ということが分かっている。活性エリアの設計/形状は、少なくとも1つのリセスによっても画定することができる。
【0018】
本発明によれば、「活性エリア」は、摺動面のセクション(区域)のことを特にそう呼ぶものであり、このセクションは、半径方向において移動せず/オフセットしておらず、すなわち、意図された摺動および接触エリアを画定するように設けられ、そして、高い剛性および安定性も可能にする、ということに留意すべきである。対照的に、受動(非活性)エリアは、半径方向のオフセットまたはクリアランスによって特徴付けられる。例えば、非活性エリアの半径方向クリアランスは非常に深く(大きく)、例えば活性エリアの浅い(小さな)半径方向クリアランスに比べて3~10倍深く、例えば活性エリアの浅い半径方向クリアランスよりもはるかに深い。例えば、受動(非活性)エリア、すなわち、活性エリアよりもかなり深いクリアランスを有するエリアおよびセクションは、流体の排出も提供し得る。したがって、流体の(局所的な)量に応じて、半径方向のクリアランスは、活性エリアの一部とならない各表面セクションで個別に設計することができる。
【0019】
少なくとも1つの半径方向リセス(例えば排出リセス)は、半径方向外側へオフセットした面、すなわち、摺動面よりも低められた面(回転要素/シャフトから半径方向に離れた面)、すなわち、活性エリアよりも半径方向クリアランスが深い面、を有する。例えば、円周方向に延伸する半径方向リセスの表面は全体的に、摺動面よりも低い半径方向位置、すなわち、半径方向外側へオフセットした位置、に配置されている。
【0020】
本発明は、高い動的安定性を可能にする。例えば、本発明は、流体の流れの不安定性に起因してある速度で生じる動的安定性の問題を解決することを可能にする。以下の技術的特徴は、それぞれでまたは組み合わせて、流れの不安定性を制限して軸受の動的安定性を改善することを可能にする、ということが分かっている。
【0021】
好ましくは、無負荷摺動面のオイル注入ポケットは、無負荷摺動面の始まりではなく、それより下流に配置される(円周方向/角度オフセット)。これにより、無負荷摺動面の中間域にキャビテーションゾーンが発生するのを防ぐことができ、動的不安定性を効果的に防ぐことができる。
【0022】
好ましくは、連続エリア(それぞれの円周方向セクション内に注入ポケットなし)が、無負荷摺動面と負荷摺動面との間に設けられる。これは、安定性に関する軸受予荷重の好影響を効果的に使用することを可能にし、また、オイル/流体の流れの摂動を回避することによって不安定性をさらに改善することを可能にする。
【0023】
好ましくは、軸受は、強化した予荷重と減らした作動クリアランス(熱歪みを考慮した)で設計され、軸受の剛性と安定性も向上させることができる。
【0024】
例えば、本発明は、次の概念および知見に基づく。摺動面の最適化された活性エリアは、少なくとも1つの半径方向リセスと注入ポケットとによって画定することができ、機械の始動時(例えば、ギアボックスの始動時、つまりパワートレインの始動シーケンス)に加えられる半径方向負荷の方向の変化が考慮され、無負荷状態と全負荷状態の両方で動力損失が低減される。また、オイル/流体注入ポケットの最適化された位置取りは、最高圧力および最高温度の両方を低くすることを可能にすると共に、広いゾーンにおいて(例えば軸受の全周において)キャビテーションの発生を防止し、より良好な信頼性と動的不安定性のリスク減少を得ることができる。
【0025】
軸方向において、第1および第2の注入ポケットは、流体軸受の全周のうちの軸方向の一部分に沿ってのみ設けられ、すなわち、摺動面の全長にわたっては、つまり流体軸受の全周にわたっては、設けられない。
【0026】
最高圧力および最高温度の両方の低下と共に広いゾーンにおける(例えば軸受の全周における)キャビテーションの発生の防止も、本開示で説明するように、流体注入ポケットの最適化された寸法(形状)に基づいて実現することができ、その結果、より良好な信頼性と動的不安定性のリスク低減が得られる。
【0027】
本発明は、最適化された作動クリアランス(熱歪みを考慮した)および最適化された予荷重も可能にする。本発明は、動的不安定性のリスクを低減すること(特に、直接剛性と結合剛性との間の最適化されたバランスも)を容易にもする。これは、「圧力ダム」と呼ばれる技術--この技術は対照的に動力損失とオイル流量の増加をもたらし、ある種の構成において(特に、特定の速度/負荷比において)動的不安定性を有効には低減できないものである--を使用することなく達成される。したがって、本発明は、例えば、第1および第2の注入ポケットの両方に円周方向で重なる少なくとも1つの半径方向リセスを設けることによって、従来の「圧力ダム」から離れることを説示する。
【0028】
本発明によれば、第1および第2の注入ポケットのそれぞれを通る流体の流れは、好ましくは異なる。例えば、第1の注入ポケットを通る流体の流量は、加圧流体流全体の10~30%だけである。例えば、第1の注入ポケットを通る流体の流量は、第2の注入ポケットを通る流体の流量の10~45%ほどである。このようなスループットの分布は、第2の注入ポケットが、特に回転要素の上方の配置において、負荷の大部分に面していることから、好ましい。
【0029】
本発明によれば、無負荷摺動面と負荷摺動面とは、それぞれハーフシェルによって提供することができる、ということに留意すべきである。このことに関わらず、「表面(面)」は、ただ1つの単一要素によって提供される表面を意味するわけではない。むしろ、流体軸受の各シェルまたはハウジングは、特定の用途の特定の設計要件に従って当業者が設計し得る構成要素によって、設けることができる。好ましくは、第1の注入ポケットは、回転要素の下方に配置される第1のハーフシェルに設けられ、第2の注入ポケットは、回転要素の上方に配置される第2のハーフシェルに設けられる。
【0030】
本発明において、「注入ポケット」は、例えば、負荷/無負荷摺動面の活性エリアに直接流れる/通じる流体供給口を指し、一方、以下に言及する「排出ポイント」は、例えば、活性エリアとは異なるエリアの流体用出口を指す、ということに留意すべきである。例えば、少なくとも1つの排出ポイントを、少なくとも1つの半径方向リセスのエリアに、すなわち、1つ以上の注入ポケットの流体出口(すなわち、軸受への入口)の半径方向位置よりも低い(半径方向クリアランスをあけた)半径方向位置に、配置することができる。
【0031】
「円周」は、必ずしも全周を意図するものではなく、円周の方向のみを言う場合もある。円周方向の範囲は、(円周の)角度の特定の値に言及することによって、より具体的に指定することができる。
【0032】
本発明は、回転機械、例えば高いジャーナル速度(例えば>60m/s)および/または大きい半径方向負荷が発生する回転機械、と関連させて実施することができる。例えば、ここに説明する軸受は、発電用途および/またはオイルおよびガス産業の用途に関して設定される。
【0033】
以下では、特許請求の範囲に係る発明の有益な態様を説明し、それに続いて、本発明の実施形態を説明する。例えば特徴の利点および定義に関する開示は、基本的に解説であり好適であるが、限定的な例ではない。説明が限定的な場合にはその旨明示される。
【0034】
本発明の一態様によれば、無負荷摺動面および負荷摺動面(1つ以上)の両方の活性エリアが、少なくとも1つの半径方向リセスで半径方向クリアランス(隙間)を提供することによって画定されるか区切られる。半径方向クリアランスは、活性エリアの半径方向クリアランスよりも少なくとも3倍深い。半径方向クリアランスのこの差が活性エリアを明確に画定し、新旧の流体の誘導を容易にし得る。
【0035】
本発明の一態様によれば、第1および第2の注入ポケットの両方は、活性エリア内に新しい流体を供給するように配置、構成される。この配置と構成により、より上流の円周周方向セクションから来る古い流体の流れが、注入ポケットそれぞれの上流で分割され、両脇へ向けられる。また、この設計は、古い流体のセクションから新しい流体のセクションへ比較的スムーズな移行を可能にし、これは、「圧力ダム」と言われる技術とは明らかに異なる概念である。
【0036】
本発明において、「新しい」流体は、第1および第2の注入ポケットから注入される流体(例えば加圧流体)を言い、「古い」つまり「使用後の」流体は、より上流の円周方向セクションから来る流体で、非活性ボーダーエリアを経て、好適には溝を経て、排出されるべき流体を言う、ということに留意すべきである。
【0037】
本発明の一態様によれば、第1の注入ポケットの上流で、活性エリアは、好ましくは第1の注入ポケットに通じる矩形ランド(矩形帯)の形状を有する第1の無負荷摺動セクションを含む。このような設計も、第1の注入ポケットの上流において古い流体を比較的滑らかに横向きに逸らし案内する補助をし得る。
【0038】
本発明の一態様によれば、第1および第2の注入ポケットは、運転状態で少なくとも1つのリセスから古い流体を排出するように、例えば、横方向/軸方向に限って流体を排出するように、古い流体を軸方向に逸らすべく配置、構成される。古い流体は、第1および第2の注入ポケットから注入される新しい流体によって押し分けられる。言い換えると、流体軸受は、軸方向に古い流体を、2つの異なる円周方向のポイントで、側部ボーダーエリアへ(少なくとも1つの半径方向リセスへ、つまり溝へ)、押し分けることができるように構成される。ただし、ボーダーエリアでの相互混合も可能にする。注入ポケットおよび少なくとも1つのリセスのこのような設計と相対配置は、高い効率(例えば抑制された抵抗/抗力での制限されない流体循環による)および高い安定性と剛性という効果を奏することが分かっている。「圧力ダム」技術と比較して、古い流体は、各注入ポケットを(少なくとも僅かに)通過し得るが、軸方向に逸らして排出することは継続して実行される。
【0039】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの半径方向リセス、例えば半径方向リセス内に配設されたそれぞれの溝が、第1および第2の注入ポケットの側方両脇に配設され、各溝は、少なくとも第1の注入ポケットに重なるように設けられる。これも、好ましい対称配置を可能にする。各溝は、有益な流体の流れを可能にする。
【0040】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの半径方向リセスは、1つの単体の一筋リセスによって、例えば、流体軸受または摺動面の全幅にわたって延伸し、円周方向の摺動方向下流に向かってU字形状を呈し、少なくとも無負荷摺動面と部分的に負荷摺動面とに接するリセスによって、設けられる。この構成も、軸受の/軸受内で好ましい流体/流体特性を提供する。
【0041】
本発明によれば、少なくとも1つの半径方向リセスは、少なくとも1つの排出ポイントと無負荷摺動面との間の流体連通を提供する。このような構成も、軸受の有効エリアにおけるオイルの流れ方を正確に予め画定する能力を向上させ、負荷摺動面は、無負荷摺動面から有効な方法で区別可能となる。
【0042】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの半径方向リセスは、少なくとも1つの排出ポイントと無負荷摺動面との間の流体連通、すなわち、無負荷摺動面の活性エリアの両脇にある複数の排出ポイントへの/経由の流体連通を提供する。これも、軸受の/における流体/流体特性にさらに影響を及ぼすことを可能にする。
【0043】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つのリセスと併せて、無負荷摺動面における第1の注入ポケットの相対位置は、半径方向リセスの前側セクションの複(二重/重層)U字形状配置を画定する。すなわち、このU字形状配置は、無負荷摺動面の第1の無負荷摺動セクションを囲繞し、このセクション自体も、例えば第1の注入ポケットの両脇に延伸するランドと共に円周方向にU字形状で第1の注入ポケットを囲繞する。これも、円周方向の好適な流体連通に有益である。
【0044】
例えば、本発明は、軸受の各側部における(比較的)広い側方円周方向リセスの概念に基づく。好ましくは、この半径方向リセスは、円周方向範囲の180°を十分に超えて連続し得る。好ましくは、この1つ以上の半径方向リセス内に設けられる排出ポイントは、無負荷摺動面のセクションに設けられ、例えば、約70~110°の円周位置、すなわちおおよそ1/4回転(例えば、完全な円周の1番目の1/4の範囲または完全な円周の1番目から2番目の1/4への移行部)のところに設けられる。
【0045】
本発明の一態様によれば、軸方向において、第1および第2の注入ポケットは、流体軸受のまたは無負荷/負荷摺動面の軸方向全長に対し中心合わせして配置され、また例えば、互いに中心合わせして配置される。これも、軸方向の対称特性に有利に働く。
【0046】
本発明の一態様によれば、負荷摺動面の少なくとも活性エリアは、第2の注入ポケットの脇に軸方向に配置されたランドを含む。ランドは、無負荷摺動面の活性エリアと負荷摺動面の活性エリアとの間に連続/繋ぎエリアを提供する。これも、円周方向の流体連通に有効に働く。
【0047】
本発明の一態様によれば、無負荷摺動面および負荷摺動面の活性エリアは、第1および第2の注入ポケットの脇に軸方向に配置された第1および第2のランドを含む。これも、無負荷摺動面と負荷摺動面との間の(流体)移行エリアを提供する。
【0048】
本発明の一態様によれば、円周方向において、第1の注入ポケットは、無負荷摺動面の開始ラインから下流方向にオフセットして配置され、例えば、少なくとも20°の円周方向下流オフセットであり、例えば、最大60°の下流オフセットである。これは、例えばキャビテーションのリスクを大きく減少させることから、安定性を高める効果を期待できる。例えば、開始ラインは、流体軸受の軸受シェルの始まりによって画定することができる。
【0049】
本発明の一態様によれば、円周方向において、第1の注入ポケットは、第2の注入ポケットよりも広く、例えば少なくとも2倍程度広い。これも、好ましい流体の流れ(質量流束、スループット)を確実にし得る。
【0050】
本発明の一態様によれば、軸方向(横断方向)において、第1の注入ポケットは、第2の注入ポケットよりも短く、例えば少なくとも0.6倍程度短い。これも、例えば活性エリアおよび比較的狭い活性エリアの有益なU字形状との関連において、有利な設計をもたらし得る。
【0051】
本発明の一態様によれば、円周方向において、第2の注入ポケットは、負荷摺動面の開始ラインに(直接的に)配置され、例えば開始ラインに平行に配置される。これも、好ましい円周位置において、第2の注入ポケットを介して、軸受特性に(流体に関する)影響を及ぼすことに有利である。例えば、負荷摺動面は、軸受のシェルによって(例えば2つのハーフシェルのうちの1つによって)提供され、第2の注入ポケットは、そのシェルの上流前側に(直接)配置される。
【0052】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの流体排出ポイントが、少なくとも1つの半径方向リセスに/の中に、例えば第1の注入ポケットより下流のセクションに、例えば半径方向リセス内に配置された溝の中に、設けられる。これも、2つの注入ポケットを介して提供される流体制御に加えて、摺動面に沿って側方エリアで流体特性に関する影響/制御の付与を可能にする。例えば、流体の流れは、注入ポケットから排出ポイントつまり溝へ、向かうようにすることができる。
【0053】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの半径方向リセスは、円周方向に延伸する少なくとも1つの溝、例えば2つの溝、を収容する。少なくとも1つの流体排出ポイントは、少なくとも1つの溝の中に設けられる。流体の排出は、好ましくは、無負荷摺動面の両脇で対称的に行われる。好ましくは、溝は、軸受の第1のハーフシェルにのみ設けられ、軸受の底部セクションに設けられる。
【0054】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの半径方向リセスは、異なる半径方向クリアランスを有する少なくとも2つのエリアまたはセクションを備える。より深い半径方向クリアランスを有するセクションは、好ましくは、少なくとも1つの溝によって設けられる。非活性エリアの半径方向クリアランスは、活性エリアの浅い半径方向クリアランスよりも深い。当業者は、例えば効果的な流体排出も可能にするために、各非活性表面セクションの半径方向クリアランスの正確な量を最適化することができる。
【0055】
本発明の一態様によれば、(古い)流体の排出は、流体を軸方向へ逸らすことを必要とする側方ボーダーエリアでもっぱら行われる。例えば、排出ポイントは溝の中にのみ設けられ、この溝は、側方ボーダーエリアに配置され、円周方向に延伸している。このような設計も、流体膜温度および効率に関して有害である高圧ピークのリスクを低減することを可能にする。
【0056】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの半径方向リセスは、無負荷摺動面の開始ラインを画定する。この構成も、軸受の良好な設計つまり構造を提供する。例えば、少なくとも1つの半径方向リセスは、軸受の軸方向全長にわたって不活性エリア(または活性の低いエリア)を提供することができ、これも、流体特性の自己/自動調節に有利となり得る。
【0057】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの半径方向リセスは、第1の注入ポケットの上流に(活性エリアの)前側セクションを提供する。この前側セクションは、好ましくは矩形の形状を有する。前側セクションは、好ましくは、第1の注入ポケットを囲繞するU字形状の活性エリア(例えば第1の無負荷摺動セクション)を提供する。この幾何学的構成も、流体の再分割/分散および動的安定性に有利であり、活性エリアは、カスケード(縦列)に、つまり所定の周方向位置で、構築/設定可能とされる。
【0058】
本発明の一態様によれば、少なくとも1つの半径方向リセスは、無負荷摺動面から負荷摺動面内へ、少なくとも180°[度、回転位置]、好ましくは少なくとも190°または200°の(合計の)円周方向長さにわたって延伸する。この極めて広い円周方向の範囲も、広い円周方向セクションで流体を案内し方向付けることを可能とし、活性エリアの幾何学的形状および寸法をさらに最適化することができる。
【0059】
本発明の一態様によれば、流体軸受は、注入ポケットを2つだけ備え、これら注入ポケットは、無負荷摺動面および負荷摺動面の活性エリアと、したがって回転要素と、直接流体連通する。注入ポケットは両方とも矩形の形状を有することが好ましい。この構成も、2つのポケットおよび流体の供給に基づく(つまり2つだけのポケットでの流体供給の制御に基づく)軸受特性の流体連通つまり流体相互依存性を可能にする。
【0060】
本発明の一態様によれば、流体軸受の注入ポケットは、軸受の流体圧力プロファイルが、好ましくは、負荷が加えられる円周方向のポイント、例えば無負荷摺動面の開始ラインから270°、に少なくとも等しい円周方向位置でパラボラ形状となるように、互いに対して配置される。好ましくは、最大圧力ポイントは、負荷が作用するポイントの少し後(下流)、約270°から300°の間に、位置する。このような圧力プロファイルが好ましい動的特性を提供することが示されており、注入ポケットの相対位置と組み合わされた少なくとも1つの半径方向リセスの配置は、そのパラボラ形圧力プロファイルの発生を容易にする。
【0061】
例えば、2つだけの注入ポケットが、互いに対し、少なくとも110°、最大で170°、好ましくはおおよそ130~160°、の円周方向間隔で配置される。ポケットを互いに対しこのような間隔で配置することでも、流体の好ましい再分割/分散が可能になる。
【0062】
本発明の一態様によれば、流体軸受の注入ポケットは、互いに対しそして少なくとも1つのリセスに対し、例えば、少なくとも1つのリセスが、第2の注入ポケットと第2の注入ポケットの軸方向両脇に配置されているランドとに円周方向で重なり合うことで、軸受の流体圧力プロファイルにおいて一定の圧力に対する最大圧力の比が最小となるように、配置される。言い換えると、設計は、最大膜圧力が高すぎないような方法で最適化される(高い圧力は、高温および高い応力を誘発するため、すなわち、例えば、摺動面が相対的に低い温度で既にクリープが進むホワイトメタルで作られている場合、摺動面の劣化が進むため)。膜圧力の値は、絶対値で定義することも、最大圧力/一定圧力の比で定義することもできる。本発明によれば、円周方向(y)にあまり長くない第2の注入ポケットによって、そして、負荷摺動面内で低圧力プロファイル(PPL)のゾーンのみ(すなわち、圧力が高いゾーン以外)に届く半径方向リセスによって、好ましい膜圧力が達成され、負荷摺動面の活性エリアが比較的広く維持される。
【0063】
本発明の一態様によれば、流体軸受の少なくとも1つの半径方向リセスは、無負荷摺動面と負荷摺動面の両方の流体軸受両側のボーダーエリアで円周方向に延在し、好ましくは、軸受の円周の半分に少なくともおおよそ相当する円周位置よりもさらに先へ延伸する(好ましくは円周位置180°よりも延びた円周方向範囲、例えば無負荷摺動面の開始ラインから先へ約200°~220°の円周方向範囲)。この設計も、有益な圧力プロファイルの形状に貢献する。
【0064】
本発明の一態様によれば、第1の注入ポケットと第2の注入ポケットとの間に、円周方向において、流体軸受は、連続/繋ぎエリアを備える(このエリアには、別の注入ポケットまたは排出キャビティが設けられない)。これも、キャビテーションのリスクを最小限に抑える。
【0065】
本発明の一態様によれば、摺動面は、円周方向において無負荷摺動面の開始ラインから始まり、例えばカスケード(三重カスケード)型(縦列)に分散させた、少なくとも円周方向の3つのポイントで増加する長さを備える。活性エリアのこのような段階的拡大(軸方向での)は、好ましい(動的)軸受特性を提供することを示している。
【0066】
本発明の一態様によれば、無負荷摺動面の低減活性のエリア(例えば半径方向リセスによって画定される)は、円周方向において無負荷摺動面の開始ラインから始まり、少なくとも3つの円周方向のポイントで、例えばカスケード型に分散して減少する長さを示す。この概念も、流体条件および圧力プロファイルの自動調節に関する良好な能力を提供する。ただし、当業者は、特定の用途に対する特定の要求に応じて、各表面セクション間のできるだけ連続的な移行を提供するために、分散カスケード設計を変更することができる。
【0067】
本発明の一態様によれば、流体軸受は、上述の無負荷摺動面および負荷摺動面を少なくとも含む複数の摺動面を備え、その無負荷摺動面および負荷摺動面は、それぞれ、軸受シェル(好ましくはそれぞれのハーフシェル)によって提供される。流体軸受は、無負荷摺動面および負荷摺動面の両方に圧力のエリアを複数備える。圧力のエリアのいずれかの活性は、好ましくは、無負荷摺動面および負荷摺動面のそれぞれのセクションの半径方向の位置/深さ/高さによって定められる。この構成も、無負荷摺動面の活性エリアの上流に横方向に配置されると共に負荷摺動面の活性エリアから(少なくとも部分的に)横方向に延伸する少なくとも1つのリセスを提供し、幾何学的に整形/調節/設計することによって、特性に影響を及ぼすことを容易にする。好ましくは、第1の軸受シェルが回転要素の下方に配置され、第2の軸受シェルが回転要素の上方に配置される。好ましくは、第1の注入ポケットが第1の軸受シェルに配置され、第2の注入ポケットが第2の軸受シェルに配置される。
【0068】
本発明の一態様によれば、摺動面を平面図で見て、好ましくは少なくとも1つのリセスによって提供される、無負荷摺動面の低減活性エリア(すなわち、活性エリアに属さないエリア)は、円周方向の摺動方向下流に向かってU字形状であり、無負荷摺動面の活性エリアと部分的に負荷摺動面の活性エリアとの境界となる。この設計も、流体の分散と軸受の動的安定性の向上に寄与し、活性エリアは、円周方向にカスケード型で拡大することが可能である。
【0069】
本発明の一態様によれば、摺動面を平面図で見て、無負荷摺動面の活性エリアは、(第1の注入ポケットを含むエリアから離れるに従い)T字形状であり、第1の実質的に矩形の摺動セクションと、(円周方向の摺動方向でさらに下流の)第2の実質的に矩形の摺動セクションと、を有し、第2の実質的に矩形の摺動セクションは、第1の摺動セクションよりも長い軸方向長さと広い円周方向の範囲を有する。第1の摺動セクションに第1の注入ポケットが配置される。負荷摺動面の活性エリアも、(第2の注入ポケットを含むエリアから離れるに従い)T字形状であり、第1の実質的に矩形の摺動セクションと、(円周方向の摺動方向でさらに下流の)第2の実質的に矩形の摺動セクションと、を有し、第2の実質的に矩形の摺動セクションは、負荷摺動面の第1の摺動セクションよりも長い長さと広い円周方向の範囲を有する。第2の注入ポケットは負荷摺動面の第1の摺動セクションに配置される。この構成も、それぞれ第1および第2のポケットを利用した無負荷セクションおよび負荷セクションの流体制御を容易にする。
【0070】
本発明の上述した目的は、上述の流体軸受を少なくとも1つ備えるギアボックスによっても解決される。好ましくは、ギアボックスは、少なくとも60m/sのジャーナル速度を必要とするターボ応用品のために構成される。当該構成は、上述の利点を提供する。
【0071】
本発明の上述した目的は、回転機械、例えばギアボックス、例えばターボギアボックス(例えば、高負荷用途のために構成されると共に少なくとも60m/sのジャーナル速度用に構成されたターボギアボックス)、において上述の流体軸受を使用することによっても解決される。流体軸受は、回転要素、例えばパワートレインのシャフトを収容し支持する。流体軸受は、流体注入のために少なくとも1つの圧力ライン(管路)に接続される。このような構成は、上述の利点を提供する。圧力ラインに、ギアボックスを設ける、または、ギアボックスと連動する他のコンポーネントやその他のシステムコンポーネント(1つ以上)を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
以下に、好ましい設計例を用い、添付の図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。図中、「Figure(図面)」は、「FIG」として省略記載してある。
図1A-1E】本発明の好適な設計例に係る流体軸受を別々の視点で示す図。
図2A-2C】本発明の設計例に係る流体軸受の摺動面を3つの概略的な上面図で示し、それぞれ、完全な円周が上面図で図示してある。
図3A-3B】それぞれ、本発明の設計例に係る流体軸受により得られる圧力プロファイルを概略的に説明する図。
図4】本発明の設計例に係る少なくとも1つの流体軸受を含んだギアボックスの概略説明図。
図5A-5B】本発明の好適な設計例に係る流体軸受における流体の流路を概略的に説明する別々の視点の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0073】
説明する設計例は、特許請求の範囲内で多くの方法により修正および/または補完することができる単なる一例である。特定の設計例について説明される各特徴は、単独でも利用可能であるし、別の設計例における他の特徴と組み合わせても利用可能である。特定の請求項のカテゴリーの設計例について説明する各特徴は、別の請求項のカテゴリーの設計例において対応させて使用することもできる。最初に、図示した要素および部品を概略的に説明し、具体的な説明を個々の図面と関連させて提供する。
【0074】
例えばすべり軸受またはジャーナル軸受の流体軸受10は、例えば、ターボ応用品などのギアボックス3において、回転要素1(シャフト)を収容し支持する。流体F(例えばオイル)は、流体を注入する少なくとも1つの圧力ライン/パイプ5を通して軸受に供給される。例えば、流体軸受10は、少なくとも2つのシェル、一例として第1の軸受シェル10.1と第2の軸受シェル10.2とを備える。円周方向yにおいて、無負荷摺動面10aは、負荷摺動面10b(すなわち全負荷時に力に対向する面)の上流に配置されている。例えば、無負荷摺動面10aおよび負荷摺動面10bは、それぞれ、半円、すなわち約180°を包囲する。無負荷面には第1の注入ポケット11が設けられ、負荷面には第2の注入ポケット12が設けられている。半径方向リセス13が、第1の注入ポケット11の上流に、そして第1および第2の注入ポケット11,12の側方に/から設けられる。径方向リセス13は、円周方向に延伸し、無負荷摺動面の活性エリアA1の側方に配置され、さらに、負荷摺動面の活性エリアA2の側方にも部分的に配置される。少なくとも1つの半径方向リセス13は、主に無負荷摺動面に沿って延在するコーナー/ボーダーエリアAxを提供する。また、少なくとも1つの半径方向リセス13は、コーナー/ボーダーエリアの前側セクションAx0を提供し、この前側セクションAx0は、無負荷摺動面の活性エリアA1の前側/上流側に、したがって第1の注入ポケット11の前側/上流側に、配置される。すなわち、活性エリアA1は、無負荷摺動面の開始ラインY1よりも下流の円周方向オフセットYA1で/をもって始まり、第1の注入ポケット11は、無負荷摺動面の開始ラインY1よりも下流の円周方向オフセットY11で/をもって始まる。
【0075】
流体排出ポイントPは、半径方向リセス13の中に設けられ、例えば、無負荷摺動面の活性エリアA1の側方に円周方向に延伸する半径方向リセス13のセクションに設けることができる。
【0076】
以下、摺動面10a,10bの特定の領域/区域について、より詳細に説明する。無負荷摺動面10aの活性エリアA1は、第1の無負荷摺動セクションA1a(第1の注入ポケットに通じる矩形ランド)と、第1の無負荷摺動セクションA1aの下流かつ第1の注入ポケット11の下流に配置される第2の無負荷摺動セクションA1bと、を備える。第1の注入ポケット11に沿って側方に延びる第1のランドA1cが、第1の無負荷摺動セクションA1aと第2の無負荷摺動セクションA1bとを接続する。第1の無負荷摺動セクションA1aの軸方向範囲(幅)A1xは、第1の注入ポケット11の軸方向範囲よりも広いが、第2の無負荷摺動セクションA1bの軸方向範囲A1x’に比べるとかなり狭い。
【0077】
負荷摺動面10bの活性エリアA2は、第1の負荷摺動セクションA2aと、第1の負荷摺動セクションA2aの下流に配置された第2の負荷摺動セクションA2bと、を備える。両方の負荷摺動セクションA2a,A2bは、第2の注入ポケット12の下流に配置される。第2の注入ポケット12に沿って側方に延伸する第2のランドA2cが第2の無負荷摺動セクションA1bと第1の負荷摺動セクションA2aとを接続する。第1の負荷摺動セクションA2aの軸方向範囲(幅)A2xは、第2の注入ポケット12の軸方向範囲よりも広いが、第2の負荷摺動セクションA2bの軸方向範囲A2x’に比べるとかなり狭い。
【0078】
第1の注入ポケット11から第2の注入ポケット12まで延びる連続エリアAy(注入ポケットの無い、つまりそこに排出ポイントが配置される)は、図2Bに示されるように、第2の注入ポケット12を越えて、すなわち、第2のランドA2cを経て、さらに円周方向に延伸する(連続エリアAyは、負荷摺動面10bの、つまりその活性エリアA2の端部に至るまで中断がない)。
【0079】
第1の注入ポケット11は、好ましくは、第1の無負荷摺動セクションA1aから第2の無負荷摺動セクションA1bへの移行に対応する(すなわち円周方向位置y2に対応する)円周方向位置で終わる/終端する。無負荷摺動面A1の構成とは対照的に、負荷摺動面A2は、第2の注入ポケット12の下流の第1の負荷摺動セクションA2aの中に連続エリアAy2aを備える。すなわち、第2の注入ポケット12は、好ましくは、第1の負荷摺動セクションA2aから第2の負荷摺動セクションA2bへの移行部分の十分に上流(すなわち周方向位置y3の上流)の円周方向位置で終わる/終端する。
【0080】
ここに説明する構成によって提供される圧力プロファイルは、参照符号PPによって示される。なお、参照符号PPLは、低圧力ゾーンを示す。
【0081】
総合すると、無負荷面10aの活性エリアA1内における第1の注入ポケット11の相対位置XY11は、(周方向において)U字形状配置として説明する/示すことができる。無負荷摺動面の第1の無負荷摺動セクションA1aを囲む半径方向リセス13の前側部分のU字形状配置と、第1の注入ポケット11を囲む第1の無負荷摺動セクションA1aのU字形状配置と、の両方が設けられ、ランドA1cが第1の注入ポケットの両脇に延伸している。
【0082】
参照符号Y2は、負荷摺動面A2の開始ラインを示し、第2の注入ポケット12は、その開始ラインY2と平行に該開始ラインY2のところに配置される。
【0083】
第1および第2のランドA1c,A2cの軸方向の長さは参照符号Δxによって示され、軸方向オフセット、つまり注入ポケットまたは排出ポイントの無い軸方向連続エリア/セクションを表す。
【0084】
参照符号YYは、全周/全周期(360°の内側面/エリアに係る長さ)を表し、pは、例えば[バール(bar)]で膜/流体圧力を表し、rは、半径方向を表し、xは、軸方向(横断方向)、yは、例えば360°中の[°]で円周方向/摺動方向を表す。参照符号y1、y2、y3は、それぞれ、円周方向位置、つまり、摺動面の活性エリアの軸方向長さ(広さ/幅)が増加する円周方向位置を示す。
【0085】
以下、図面を個々に参照して、本発明の特定の態様をより詳細に説明する。
【0086】
図1は、2つのハーフシェル10.1,10.2を備えた流体軸受10を示す。第1のハーフシェル10.1(例えば運転状態で無負荷シェルであるハーフシェル)は、無負荷摺動面10aを提供し、第2のハーフシェル10.2(例えば運転状態で負荷シェルであるハーフシェル)は、負荷摺動面10bを提供する。側方の半径方向リセス13が第1の注入ポケット11に沿って円周方向に延在し、第1のハーフシェル10.1に備えられたリセスセクション13は、第1の注入ポケット11の上流に配置された低減活性の前側セクションAx0を提供する。第1のハーフシェル10.1は、また、円周方向に延在するリセス13の2つのセクションのそれぞれにつながるいくつかの流体排出ポイントPを提供する。例えば、第1のハーフシェル10.1に配置されているリセス13の円周セクションは、リセス13の他のセクションよりも深く(例えば溝または波形によって提供される)することができる。活性無負荷エリアA1から側方に延伸するリセス13のこの特別な構成は、個々の用途に応じて、例えば、必要な流体流量などに応じて(また例えば、軸受の軸方向全長にも応じて)、設計することができる。
【0087】
一例として、図1Aは、第1および第2の無負荷摺動セクションA1a,A1bに対する第1の注入ポケット11の相対的な円周方向位置を示す。
【0088】
一例として、図1Bは、負荷摺動面10bの開始ラインY2に対する、また、負荷摺動面エリアにおいて円周方向に重なり合う/延伸するリセス13に対する、第2の注入ポケット12の相対的な円周方向位置を示す。
【0089】
一例として、軸受の軸方向全範囲(幅)XX(軸方向全長)を基準にして、図1Cは、次のとおりの各無負荷表面セクションの軸方向範囲(幅)x1、x2、x3、x4、A1xを図示する。すなわち、これらは例えば、(少なくともおおよそで)次の係数に従う:0.1*XX<x1<0.3*XX;0.1*XX<x2<0.3*XX;0.15*XX<A1x<0.45*XX;0.3*XX<x3<0.45*XX;0.1*XX <x4<0.4*XX;(x1とx2が同時にその最大値/最小値であることを含む)。代わりにまたは加えて、相対サイズは、第1の注入ポケット11の軸方向範囲x4によっても決まり得る。これは例えば、(少なくともおおよそで)次の係数に従う:0.25*x4<x1<3*x4(例えば約係数1.5*x4);0.25*x4<x2<3*x4(例えば係数1.5*x4前後);1*x4<x3<4.5*x4(例えば係数2.5*x4前後);1*x4<A1x<2*x4(例えば係数1.5*x4前後)。当業者は、XXに対するおよび/またはx4に対する好適な参照値を選択することができる。
【0090】
一例として、軸受の軸方向全範囲XX(軸方向全長)を基準にして、図1Dは、次のとおりの各無負荷および負荷表面セクションの以下の軸方向範囲(幅)x5、x6、x7、x8、x9を図示する。すなわち、これらは例えば、(少なくともおおよそで)次の係数に従う:0.3*XX<x5<0.6*XX;0.2*XX<x6<0.35*XX;0.1*XX<x7<0.3*XX。軸方向範囲x8およびx9は、(少なくともおおよそで)次の係数に従い、軸方向範囲x7によって決められる:0.5*x7<x8<0.7*x7;0.15*x7<x9<0.25*x7。代わりにまたは加えて、相対的サイズは、第2の注入ポケット12の軸方向範囲x5によっても決まり得る。これは例えば、(少なくともおおよそで)次の係数に従う:0.5*x5<x6<1*x5(例えば係数0.75*x5前後);0.2*x5<x7<1.0*x5(例えば係数0.5*x5前後);0.2*x5<x8<0.5*x5(例えば係数0.3*x5前後);0.05*x5<x9<0.2*x5(例えば係数0.1*x5前後)。当業者は、XXに対するおよび/またはx5に対する好適な参照値を選択することができる。
【0091】
図1Dに示すように、参照符号y12は、第2の注入ポケット12の円周方向範囲を示す。好ましくは、第2の注入ポケット12の円周方向範囲y12に対する軸方向長さx5の比(x5:y12)は、6~15の範囲であり、例えば約10である。
【0092】
図1Eに示すように、各シェル10.1,10.2において、オプションとして、摺動面の中心の偏心(e)を設けることができる。これは例えば、無負荷および負荷摺動セクションをより明確に画定するためであり、加圧された「新しい」流体と、排出ポイントPから排出されるべき「使用後の」流体と、の両方のより際立った流体の流れを可能にするためである。偏心は、すなわち直径(d)は、回転要素の直径および/または運転条件および/または必要な性能(例えば剛性)との関連で特に設計することができる。
【0093】
図2は、概略的に、表面セクションの相対位置および寸法をさらに示す。図2A図2Bにおいて、低減活性エリアはブランク(空白)エリアで図示されている。無負荷摺動面および負荷摺動面の活性エリアは斜線エリアで図示されている。
【0094】
例えば、図2Aは、リセス13(二対の対向両脇部を有する二重U字形状リセス)を示す。リセス13は、両側方で延伸(これにより第2の開始ラインY2と重なる)すると共に、軸方向に延在して、前側(完全に受動の)セクションAx0を提供し、また、3つの周方向ポイントy1,y2,y3で(軸方向範囲が)広がる活性エリアの三重カスケードを提供する。
【0095】
例えば、図2Bは、各注入ポケット11,12の側方の第1および第2のランドA1c,A2cの相対位置を図示する。また、円周方向オフセットYA1,Y11が、開始ラインY1、Y2を基準にして、また、無負荷および負荷摺動面の活性エリアの長さ(広さ/幅)が増加する周方向位置を基準にして、説明されている。
【0096】
無負荷摺動面10aの低減活性エリアAxは、動力損失の低減も可能にする。負荷摺動面10bの低減活性エリアAxは、低圧力PPLの領域に配置される。
【0097】
本発明は、さらに、次の概念および知見に基づく。第1の注入ポケット11のところで、流体の第1の中央内向き流が、無負荷表面の活性エリアに直接供給され、第2の注入ポケット12のところで、流体の第2の中央内向き流が、負荷表面の活性エリアに直接供給される。両方の注入ポケット11,12は、(軸方向xに対して)中央に配置され、そして、両方の注入ポケット11,12は、例えばランドA1c,A2cを介して、より上流の活性エリアセクションに(流体的に)連結される。第1の注入ポケット11は、無負荷摺動面の始まり(開始ライン)までの間に円周方向オフセットYA1をもって配置されており、これによって、例えば無負荷摺動面の中間におけるキャビテーションを防止することも可能になる。第1の注入ポケット11は、円周方向の摺動方向yにおいて(比較的)広く、良好な(比較的多い)流体流量も可能にする。第1の注入ポケット11は、軸方向xにおいて(比較的)狭く、低減活性の(比較的)広いエリアAxを有する設計を可能にする。第2の注入ポケット12は、負荷摺動面の始まり(開始ライン)に直接(隣接)配置され、これは、活性エリアを最大にし、最高温度および最高圧力を軽減することも可能にする。第2の注入ポケット12は、円周方向の摺動方向yにおいて(比較的)狭く、これは、活性エリアを最大化することも可能にする。第2の注入ポケット12は、軸方向xにおいて(比較的)広く、これは、良好な潤滑特性も可能にする。ランドA1c,A2cは、無負荷摺動面と負荷摺動面との間の流体連通も可能にし、動的安定性を高めることができる。また、これらランドA1c,A2cは、無負荷摺動面と負荷摺動面との間の軸受プロファイルの連続性を確保することにも貢献する。
【0098】
例えば、図2Cは、活性エリアA1,A2aに接する境界線の別の輪郭を図示している。すなわち、図2A図2Bに図示されている矩形の形状も、いずれか個々の縁が丸くなるように丸みを付けることができる。図2A図2Bに示す実施例から出発して、当業者であれば、効率および流体の流れをより改善するために、特定の用途に関し設計代替案を提供することができる。境界線の半径、つまり曲率は、設計代替案、つまり活性エリアセクション各々の幾何学的形状のバリエーション、の理解を促進するために、図2Cにおいて過度に誇張して図示してあることに留意すべきである。
【0099】
図3は、低圧力ゾーンPPLを備えた有益な圧力プロファイルPPを示し、このプロファイルは、負荷摺動面の円周のほぼ半分、おおよそ270°を少し越えたところにピークのあるパラボラ形状を有する。
【0100】
例えば、図3Aは、主圧力ピークが、円周方向および軸方向の両方において、極めて均質な態様で増減することを示す。
【0101】
例えば、図3Bは、約90°~180°における第1の増加(比較的小さい圧力波)を示す。約270°~300°の円周ポイントにおいて、主圧力ピーク(負荷摺動面エリアにおける圧力に相当する)は、有益な圧力プロファイルのパラボラ形状を示す。
【0102】
図4は、本発明に係る少なくとも1つの流体軸受10を備えたギアボックス装置3の構成要素をさらに示している。回転要素1は、例えばターボ応用品におけるパワートレインの一部である。
【0103】
圧力ライン5は、第1および第2の注入ポケットの両方に流体を提供するか、第1および第2の注入ポケットのそれぞれに別々に(この場合、複数の圧力ライン5を設けてもよい)流体を提供する。また、排出ポイントPから排出される流体は、別個に、または、注入ポケット11,12への流体の供給との併用で、当該ライン5を介して排出可能である。したがって、図4に示される圧力ライン5(または排出ライン)は、概略的な例としてのみ見なされるべきであり、当業者は、個々の用途に応じいくつかのラインを介して圧力/流体の供給および流体の排出のための適切な設計を選択することができる。
【0104】
図5は、流体Fの流れを示すと共に、小さい半径方向クリアランスを有する活性表面エリアと、比較的大きな半径方向クリアランス(例えば、活性エリアの少ない/小さいクリアランスよりも少なくとも3倍から5倍まで)を有する不活性表面エリア(つまり、少なくとも1つの半径方向リセス)と、を示す。シェルの外側表面には、新鮮なオイル供給のための少なくとも1つの供給路または溝がある。半径方向リセス13内に配置された深い溝13aは、「使用後の」流体を半径方向に排出するために設けられ、排出ポイントPと連通する。
【0105】
例えば、図5Aは、活性エリアセクションA1bに沿って流すために第1の注入ポケット11で注入される加圧された「新しい」流体Fと、非活性ボーダーエリアAxおよび溝13aを介して排出される「古い」流体と、を示す。例えば、第1の(ハーフ)シェル10.1内の第1の注入ポケットの円周方向位置は、好ましくは40~60°の範囲であり、好ましくは約50°(180°のまたは無負荷シェルの円周方向範囲の約25~30%)である。したがって、エリアA1aとは別に、主非活性円周セクション(円周360°の約10~15%)は、自己調節および良好な効率を可能にし、好ましい相対位置で新しい流体を供給することを可能にする。破線の矢印は、負荷摺動面から来る熱い「使用後の」オイルを示し、無負荷摺動面、つまりシェルの無負荷セクションの始まりで溝13aへ向けられている。実線の矢印は、第1の注入ポケットから供給される新鮮な「新しい」オイルを示し、無負荷摺動面の摺動面に供給されている。
【0106】
例えば、図5Bは、活性エリアセクションA2a,A2bに沿って流すために、第2の注入ポケット12から注入される加圧された「新しい」流体Fと、非活性ボーダーエリアAxおよび溝13a(リフローして)を介して排出される「古い」流体と、を示す。破線の矢印は、無負荷摺動面つまりハーフシェルから来る熱い「使用後の」つまり「古い」オイルを示し、無負荷摺動セクションの端部で溝13aへ向かう。このオイルは、溝からホール(排出ポイント)を通って半径方向に放出/排出される。実線の矢印は、第2の注入ポケットから供給される新鮮な「新しい」オイルを示し、負荷摺動面つまりハーフシェルの摺動面に供給される。このようなオイル注入方法は、「使用後の」オイルを溝へ押し出すことにも役立つ。その「新しい」オイルの少しの部分は、不活性表面に流れることができ、また、無負荷摺動セクションに配置されている排出溝に戻す一種の小さな逆流をつくる(破線の矢印参照)ことができる。
【0107】
流体軸受のいくつかの形態を添付図面に示し、ここに詳細に説明してきたが、当業者にとっては、開示の範囲および思想を逸脱することなく、他の形態が明らかであるし、他の形態を容易に実施することができる。したがって、以上の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。以上に説明した発明は、特許請求の範囲の範囲によって定義され、特許請求の範囲の等価の意味や範囲に属する発明のすべての変更は、特許請求の範囲に含まれるべきものである。
【符号の説明】
【0108】
1 回転要素
3 ギアボックス
5 流体注入用の圧力ライン/パイプ
10 流体軸受、例えばすべり軸受、ジャーナル軸受
10.1 例えば回転要素の下側に配置される第1の軸受シェル
10.2 例えば回転要素の上側に配置される第2の軸受シェル
11 無負荷表面の、例えば第1の軸受シェルの、(第1の)注入ポケット
12 負荷表面の、例えば第2の軸受シェルの、(第2の)注入ポケット
13 円周方向に延在すると共に摺動面の活性エリアの側方に配置され、選択的に排出ポイントと組み合わせられる、半径方向リセス
13a 溝
10a 無負荷摺動面
10b 負荷摺動面(全負荷時の力に対向)
A1 無負荷摺動面の活性エリア
A1a 第1の無負荷摺動セクション
A1b 第2の無負荷摺動セクション
A1c 第1のランド
A1x 第1の無負荷摺動セクションの軸方向範囲
A1x’ 第2の無負荷摺動セクションの軸方向範囲
A2 負荷摺動面の活性エリア
A2a 第1の負荷摺動セクション
A2b 第2の負荷摺動セクション
A2c 第2のランド
A2x 第1の負荷摺動セクションの軸方向範囲
A2x’ 第2の負荷摺動セクションの軸方向範囲
Ax 例えば無負荷摺動面のコーナー/ボーダーエリア
Ax0 コーナー/ボーダーエリアの前側セクション
Ay 排出ポイントまたは注入ポケットの無い連続エリア
Ay2a 第2の注入ポケットの下流の第1の負荷摺動セクションの連続エリア
d 直径
e 偏心
F 流体(流体の流れ方向)
P 排出ポイント
PP 圧力プロファイル
PPL 低圧力ゾーン
XX 総軸方向範囲(軸方向全長)
XY11 例えばU字形状配置における無負荷表面内の第1の注入ポケットの相対位置
YA1 開始ラインから活性無負荷エリア下流への円周方向オフセット
Y11 無負荷表面内の注入ポケット下流への円周方向オフセット
Y1 無負荷摺動面の開始ライン
Y2 負荷摺動面の開始ライン
YY 全円周/全周期(内側面/エリアの360°に係る長さ)
p 例えば[バール(bar)]の、膜/流体圧力
r 半径方向
x 軸(横断)方向
x1,x2,x3,x4 図1Cに示す各無負荷面セクションの軸方向範囲
x5,x6,x7,x8,x9 図1Dに示す各非負荷面セクションの軸方向範囲
Δx 軸方向オフセット、注入ポケットまたは排出ポイントの無い軸方向連続エリア/セクション
y 例えば360°のうちの[°]の、円周方向/摺動方向
y1,y2,y3 円周方向ポイント、摺動面の長さ(広さ/幅)が増加する円周位置
y12 第2の注入ポケットの円周方向範囲
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
【手続補正書】
【提出日】2024-07-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転要素(1)のための流体軸受(10)であって、
当該流体軸受(10)は、少なくとも1つの無負荷摺動面(10a)と、該無負荷摺動面(10a)の下流の少なくとも1つの負荷摺動面(10b)と、を備え、
当該流体軸受(10)は、前記無負荷摺動面(10a)に配置された第1の注入ポケット(11)と、前記負荷摺動面(10b)に配置された第2の注入ポケット(12)と、を備え、
当該流体軸受(10)は、少なくとも1つの半径方向リセス(13)を備え、該少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面(10a)及び前記負荷摺動面(10b)の両方に配置され、円周方向に延伸し、円周方向で上流および下流の両方において前記第1の注入ポケット(11)及び前記第2の注入ポケット(12)の両方と重なり、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面(10a)及び前記負荷摺動面(10b)の両方の活性エリア(A1,A2)を画定しまたは区切り、
前記第1の注入ポケット(11)および前記第2の注入ポケット(12)は、それぞれ、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)がそれぞれ配置される前記無負荷摺動面(10a)および前記負荷摺動面(10b)の対応する円周方向摺動セクションにおける上流または下流の前記活性エリア(A1,A2)の軸方向範囲よりも短い軸方向長さを有し、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、少なくとも1つの排出ポイント(P)と前記無負荷摺動面(10a)との間に流体連通を提供する、
ことを特徴とする、流体軸受(10)。
【請求項2】
前記無負荷摺動面(10a)および前記負荷摺動面(10b)の両方の前記活性エリア(A1,A2)は、前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)で半径方向クリアランスを提供することによって画定されまたは区切られ、前記半径方向クリアランスは、前記活性エリア(A1,A2)の半径方向クリアランスよりも少なくとも3倍深く、および/または、
前記第1および第2の注入ポケット(11,12)の両方は、前記活性エリア(A1,A2)に軸受の新しい流体を供給するように配置され構成され、上流の円周方向セクションから来る古い流体の流れが、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)それぞれの上流で分割されて両脇へ向けられ、および/または、
前記第1の注入ポケット(11)の上流で、前記活性エリア(A1)は、好ましくは前記第1の注入ポケット(11)に通じる矩形ランドの形状を有する、第1の無負荷摺動セクション(A1a)を含み、および/または、
前記第1および第2の注入ポケット(11,12)は、運転状態で前記少なくとも1つのリセス(13)から古い流体を排出するように、前記古い流体を軸方向に逸らすべく配置され構成され、前記古い流体は、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)から注入される新しい流体によって押し分けられる、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)、特に半径方向リセス(13)に配置された溝(13a)は、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)の側方で両脇に配置され、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、1つの単体の一筋リセスによって、特に、当該流体軸受(10)または前記無負荷摺動面(10a)の軸方向全長にわたって延伸し、円周方向の摺動方向下流に向かってU字形状を呈し、少なくとも前記無負荷摺動面(10a)と部分的に前記負荷摺動面(10b)とに接するリセスによって、設けられ、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、少なくとも1つの排出ポイント(P)と前記無負荷摺動面(10a)との間の流体連通、すなわち、前記無負荷摺動面(10a)の前記活性エリア(A1)の両脇にある複数の排出ポイント(P)への/経由の流体連通、を提供し、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)と併せて、前記無負荷摺動面(10a)における前記第1の注入ポケット(11)の相対位置は、前記半径方向リセス(13)の前側セクション(Ax0)の複U字形状配置を画定し、該複U字形状配置は、前記無負荷摺動面(10a)の第1の無負荷摺動セクション(A1a)を囲繞し、該第1の無負荷摺動セクション(A1a)自体も、特に前記第1の注入ポケット(11)の両脇に延伸するランド(A1c)と共に円周方向にU字形状で前記第1の注入ポケット(11)を囲繞する、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項4】
軸方向において、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)は、当該流体軸受(10)のまたは前記無負荷および負荷摺動面(10a,10b)の軸方向全長に対し中心合わせして配置され、特に互いにも中心合わせして配置され、および/または、
前記負荷摺動面(10b)の少なくとも前記活性エリア(A2)は、前記第2の注入ポケット(12)の側方に軸方向に配置されたランド(A2c)を含み、前記ランド(A2c)は、前記無負荷摺動面(10a)の前記活性エリア(A1)と前記負荷摺動面(10b)の前記活性エリア(A2)との間に連続/繋ぎエリア(Ay)を提供し、および/または、
前記無負荷摺動面(10a)および前記負荷摺動面(10b)の前記活性エリア(A1,A2)は、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)の側方に軸方向に配置された第1および第2のランド(A1c,A2c)を含む、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項5】
円周方向において、前記第1の注入ポケット(11)は、前記無負荷摺動面(10a)の開始ライン(Y1)から下流方向にオフセットして配置され、特に、少なくとも20°の円周方向下流オフセットであり、最大60°の円周方向下流オフセットであり、および/または、
円周方向において、前記第1の注入ポケット(11)は、前記第2の注入ポケット(12)よりも広く、特に少なくとも2倍程度広く、および/または、
軸方向において、前記第1の注入ポケット(11)は、前記第2の注入ポケット(12)よりも狭く、特に少なくとも0.6倍程度狭く、および/または、
円周方向において、前記第2の注入ポケット(12)は、前記負荷摺動面(10b)の開始ライン(Y2)のところに配置され、特に前記開始ライン(Y2)に平行に配置される、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの排出ポイント(P)、前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)に/の中に、特に前記第1の注入ポケット(11)の下流のセクションに、特に前記半径方向リセス(13)内に配置された溝(13a)の中に、設けられ、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、円周方向に延伸する少なくとも1つの溝(13a)、特に2つの溝、を収容し、前記少なくとも1つの排出ポイント(P)は、前記少なくとも1つの溝(13a)の中に設けられ、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、異なる半径方向クリアランスを有する少なくとも2つのエリアまたはセクションを備え、より深い半径方向クリアランスを有する前記セクションは、好ましくは、前記少なくとも1つの溝(13a)によって設けられ、および/または、
流体の排出は、該流体を軸方向へ逸らすことを必要とする側方ボーダーエリアで主に行われる、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面(10a)の開始ライン(Y1)を画定し、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記第1の注入ポケット(11)の上流に前側セクション(Ax0)を提供し、該前側セクション(Ax0)は、好ましくは矩形の形状を有し、該前側セクション(Ax0)は、好ましくは、前記第1の注入ポケット(11)を囲繞するU字形状の活性エリア(A1a)を提供し、および/または、
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面(10a)から前記負荷摺動面(10b)へ、少なくとも180°の、好ましくは少なくとも190°または200°の、円周方向長さにわたって延伸する、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項8】
当該流体軸受(10)は、前記第1および第2の注入ポケット(11,12)の2つだけを備え、該2つの注入ポケット(11,12)は、前記無負荷摺動面(10a)および前記負荷摺動面(10b)の前記活性エリア(A1,A2)と、したがって前記回転要素(1)と、直接流体連通し、該2つの注入ポケット(11,12)は好ましくは矩形の形状を有し、および/または、
当該流体軸受(10)の前記2つの注入ポケット(11,12)は、互いに対しそして前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)に対し、特に、前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)が、前記第2の注入ポケット(12)と前記第2の注入ポケット(12)の軸方向両脇に配置されているランドとに円周方向で重なることで、軸受流体圧力プロファイルにおいて一定の圧力に対する最大圧力の比が最小となるように、配置される、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの半径方向リセス(13)は、前記無負荷摺動面(10a)と前記負荷摺動面(10b)の両方の当該流体軸受(10)の両側のボーダーエリアで円周方向に延在し、好ましくは、当該流体軸受(10)の円周の半分に少なくともおおよそ相当する円周位置よりもさらに先へ延伸する、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項10】
前記第1の注入ポケット(11)と前記第2の注入ポケット(12)との間に、円周方向において、当該流体軸受(10)は、連続/繋ぎエリア(Ay,Ay2a)を備える、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項11】
前記無負荷および負荷摺動面(10a,10b)は、円周方向において前記無負荷摺動面(10a)の開始ライン(Y1)から始まり、少なくとも3つの円周方向ポイント(y1,y2,y3)で増加する軸方向長さを備え、および/または、
前記無負荷摺動面(10a)の低減活性のエリアは、円周方向において前記無負荷摺動面(10a)前記開始ライン(Y1)から始まり、少なくとも3つの円周方向ポイントで減少する軸方向長さを備える、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項12】
当該流体軸受(10)は、前記無負荷摺動面(10a)および前記負荷摺動面(10b)を少なくとも含む複数の摺動面を備え、前記無負荷摺動面(10a)および前記負荷摺動面(10b)は、それぞれ、軸受シェル(10.1,10.2)によって提供され、
当該流体軸受(10)は、前記無負荷摺動面(10a)および前記負荷摺動面(10b)の両方に圧力のエリアを複数備え、
前記圧力のエリアのいずれかの活性は、好ましくは、前記無負荷摺動面(10a)および前記負荷摺動面(10b)のそれぞれのセクションの半径方向の位置/深さ/高さによって定められる、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項13】
前記摺動面(10a,10b)を平面図で見て、前記無負荷摺動面(10a)の前記活性エリア(A1)は、第1の実質的に矩形の摺動セクション(A1a)と第2の実質的に矩形の摺動セクション(A1b)とを有するT字形状であり、前記第2の摺動セクション(A1b)は、前記第1の摺動セクション(A1a)よりも長い軸方向長さと広い円周方向範囲を有し、
前記第1の注入ポケット(11)が前記第1の摺動セクション(A1a)に配置され、
前記負荷摺動面(10b)の前記活性エリア(A2)は、第1の実質的に矩形の摺動セクション(A2a)と第2の実質的に矩形の摺動セクション(A2b)とを有するT字形状であり、前記第2の摺動セクション(A2b)は、前記負荷摺動面(10b)の前記第1の摺動セクション(A2a)よりも長い軸方向長さと広い円周方向範囲を有し、
前記第2の注入ポケット(12)が前記負荷摺動面(10b)の前記第1の摺動セクション(A2a)に配置される、
請求項1に記載の流体軸受(10)。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の流体軸受(10)を備えたギアボックス(3)であって、該ギアボックス(3)は、好ましくは少なくとも60m/sのジャーナル速度を必要とするターボ応用品のために構成される、ギアボックス(3)。
【請求項15】
回転機械、特にギアボックス(3)、特にターボギアボックスにおいて請求項1~13のいずれか1項に記載の流体軸受(10)を使用する使用方法であって、前記流体軸受(10)は、回転要素(1)、特にパワートレインのシャフトを収容し支持し、前記流体軸受(10)は、流体注入のために少なくとも1つの圧力ライン(5)に接続される、使用方法。
【国際調査報告】