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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】他励同期機用ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/042 20160101AFI20241018BHJP
【FI】
H02K11/042
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523857
(86)(22)【出願日】2022-09-06
(85)【翻訳文提出日】2024-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2022074676
(87)【国際公開番号】W WO2023072462
(87)【国際公開日】2023-05-04
(31)【優先権主張番号】102021211992.1
(32)【優先日】2021-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オスドバ フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】トパロフ ペンヨ
(72)【発明者】
【氏名】ズィマーシート フィリップ
【テーマコード(参考)】
5H611
【Fターム(参考)】
5H611AA00
5H611AA09
5H611BB06
5H611TT03
5H611UA08
5H611UB01
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つのキャビティ(15)を有するロータシャフト(4)上のロータ巻線(3)と整流器(6)とを含む他励同期機(2)用のロータ(1)に関する。整流器(6)が受ける負荷を軽減できるようにするために、整流器(6)は、少なくとも部分的にロータシャフト(4)のキャビティ(15)内に位置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのキャビティ(15)を有するロータシャフト(4)に配置されたロータ巻線(3)と、
前記ロータ巻線(3)に電気的に接続された整流器(6)と、
を備える、他励同期機(2)用のロータ(1)であって、
前記整流器(6)は、前記ロータシャフト(4)の前記キャビティ(15)に、少なくとも部分的に配置されることを特徴とする、
ロータ(1)。
【請求項2】
少なくとも部分的に中空で内部空間(20)を含むシャフト端(19)が設けられ、前記整流器(6)が、前記シャフト端(19)の前記内部空間(20)に配置され、前記シャフト端(19)が、前記ロータシャフト(4)の前記キャビティ(15)に少なくとも部分的に配置され、特に圧入され、又は
スリーブ(23)が設けられ、前記整流器(6)が前記スリーブ(23)に配置され、前記スリーブ(23)が、前記ロータシャフト(4)の前記キャビティ(15)に少なくとも部分的に配置され、特に圧入される
ことを特徴とする、
請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記整流器(6)は、片面又は両面に配置されたダイオードを備えるプラグイン式プリント回路基板(18)として形成されることを特徴とする、
請求項1又は2に記載のロータ。
【請求項4】
前記プラグイン式プリント回路基板(18)が挿入されて固定される軸方向に通る長手方向スリット(24)は、前記内部空間(20)のャビティ(15)の壁又は前記スリーブ(23)の前記キャビティ(15)の壁に設けられ、又は
軸方向(21)に通ってプラスチック(25)で射出成形される長手方向開口部(26)は、前記内部空間(20)の前記キャビティ(15)の壁に設けられ、軸方向(21)に通って前記プラグイン式プリント回路基板(18)が挿入及び固定される長手方向スリット(24)は、前記プラスチック(25)に設けられる
ことを特徴とする、
請求項1、2、及び3に記載の、又は、請求項1及び3に記載のロータ。
【請求項5】
前記整流器(5)は、相手側接触片(29)と接触するための、長手方向の末端側に配置された電気接点(28)を有することを特徴とする、
請求項1-4のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項6】
前記電気接点(28)が、接点ピンとして、プラグ接点として、又はバネ接点として形成され、及び/又は
ロックのために、ラッチ要素(30)が前記整流器(6)に設けられるとともに、噛合側ラッチ要素(31)が前記相手側接触片(29)に設けられ、又は、ラッチ要素(30)が前記相手側接触片(29)に設けられるとともに、噛合側ラッチ要素(31)が前記整流器(6)に設けられる
ことを特徴とする、
請求項5に記載のロータ。
【請求項7】
前記整流器(6)を固定する末端片又はカバー(32)が設けられることを特徴とする、
請求項1-6のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項8】
前記整流器(6)と前記ロータシャフト(4)との間に熱伝導性材料及び電気絶縁性材料が配置されることを特徴とする、
請求項1-7のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項9】
前記ロータシャフト(4)又は前記シャフト端(19)に冷却剤用の冷却ダクト(27)が設けられることを特徴とする、
請求項2-8のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項10】
冷却剤、特に、誘電性の冷却剤としての流体が、前記整流器(6)に直接供給されることを特徴とする、
請求項1-9のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項11】
前記整流器(6)は、前記ロータシャフト(4)の回転軸(17)に隣接して配置されることを特徴とする、
請求項1-10のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項12】
電流を供給可能な請求項1-11のいずれか1項に記載のロータ(1)を備える他励同期機(12)であって、二次コイル(7)を備える回転変圧器(8)の回転変圧器ロータ(9)、及び回転変圧器ステータ(10)を備える他励同期機(2)。
【請求項13】
前記回転変圧器ステータ(10)は、一次コイル(12)、及び、磁芯材料、好ましくはフェライトの変圧器コアを有することを特徴とする、
請求項12に記載の他励同期機。
【請求項14】
自動車のトラクションモータとしての、請求項12又は13に記載の同期機(2)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに係る他励同期機用ロータに関する。本発明は更に、このようなロータを備える他励同期機に関する。
【背景技術】
【0002】
誘導式の電気励起同期機において、ロータ巻線用のエネルギーは、誘導式トランスミッタ(回転変圧器)により、ステータからロータに伝達される。変換の原理に従うと、誘導伝達には交流が必要である。この交流は、後に整流器で整流される必要があり、そのために、直流がロータに印加され、このために、異なる電子構成部品と適合した、例えばプリント回路基板などの電子構成部品が、回転整流器とも呼ばれる機械の回転部分(ロータ)に配置される。整流器に加えて、更なる回路及び構成部品(例えば、保護回路)もまた、プリント回路基板に配置することができる。この回転整流器は、別個の構成部品として、ロータシャフトに取り付けることができる。
【0003】
整流器のプリント回路基板に配置された電子構成部品は、稼働中に大きな遠心力を受け、この遠心力は、ロータの回転速度が増大すると共に大幅に増大し、且つ直径がより大きなプリント回路基板を配置すると大幅に増大し、これによって、電子構成部品又はこれらの半田付け部分が遠心力の作用によって稼働中に損傷する結果になることがあり、これは、稼働中のエラー、又は同期機の故障につながることがある。しかしながら、ハウジングによって、及びロータシャフトへの整流器の配置によって、電子構成部品を配置可能な直径が下方に制限される。したがって、目標とする設計では、対応する最大の回転速度において、ある特定の電子構成部品は、それらの性質(ハウジングの種類、重量、表面、及び、半田継手の種類)のために、整流器のセットアップにはもはや用いることができない。
【0004】
ロータの稼働中に、別の損失(例えば、銅損及び鉄損)も更に生じ、これによって、ロータが加熱される。温度は、それにより、一般的に、絶縁材料(例えば、絶縁紙、エナメル銅線など)の温度の上限値で制限されており、この温度は、140~180℃の範囲に収まる。ロータ巻線の近くに整流器を配置することで、整流器の周囲温度がこのようにロータの温度の上限値によってはっきりと決定される。さらに、整流器にて生じる電力損失をなくす必要がある。したがって、共通の電子構成部品及びプリント回路基板材料の温度上限値が、ロータの温度限界を下回ることによって、ロータの温度上限値を電子構成部品の温度上限値まで下げる必要があり、これによって、モータの連続出力及びピーク出力を下げる必要、及び/又は、それに対応する高温限界を有する、高価な電子構成部品及びプリント回路基板材料を用いる必要がある。
【0005】
故に、本発明は、一般的な種類のロータに対する、改善された実施形態、又は、少なくとも代替的実施形態を明確にすることを課題とし、特に、先行技術から既知の欠点を克服するものである。
【発明の概要】
【0006】
本発明によれば、この課題は、独立請求項1の主題により解決される。有利な実施形態は、従属請求項の主題である。
【0007】
本発明は、整流器がロータのロータシャフト内に配置される電気他励同期機用のロータの整流器に作用する遠心力を低減するという概念に基づく。ロータの回転軸に対しては、径方向に比較的密接した、このコンパクトな構造によって、稼働中に生じる遠心力、即ちロータの回転に応じて生じる遠心力を低減することができる。したがって、他励同期機用の本発明に係るロータは、少なくとも1つのキャビティを有する上述のロータシャフトを有し、その外側ジャケット表面にロータ巻線が配置される。ロータ巻線に電気的に接続された整流器も同様に設けられる。ここで、本発明によれば、整流器は、それぞれ、中空ロータシャフト内、又は、ロータシャフトのキャビティ内に配置される。それ故に、直径が非常に小さい整流器を配置することで、機械的安定性の向上を実現できる。さらに、これまでは中空ロータシャフト内で利用されていなかった設置空間を利用することが可能であり、これによって、同期機全体を、よりコンパクトに構築することができる。この構成によって、整流器をキャビティに単に挿入することで、簡便な組立を実現することもできる。
【0008】
本発明に係る更に有利なロータの発展例では、少なくとも部分的に中空で内側空間を含むシャフト端が設けられ、この場合は、シャフト端の内側空間に整流器が配置され、シャフト端が、ロータシャフトのキャビティに配置され、特に、キャビティに圧入される。本実施形態により、中に配置された整流器を備えるシャフト端を、別個の組立てプロセスで、内部空間にて予め組み立てることが可能になり、予め組み立てたアセンブリとして中空ロータシャフトに固定することが可能となる。これにより、ロータシャフト又はロータをそれぞれ支持するためのベアリングを更にシャフト端に配置することも考えられることは言うまでもない。したがって、シャフト端と中空ロータシャフトとの接続は、中空シャフト端を中空ロータシャフトに圧入するだけで行うことができ、中空ロータシャフトは径方向開口部を有し、この径方向開口部は、設置状態のシャフト端の径方向開口部と同様に位置合わせされ、これにより、整流器とロータ巻線とを電気的に接続することができる。圧入の代わりに、シャフト端は、接着、溶接、又は半田付けによって、ロータシャフトのキャビティに固定することも理論的には可能である。
【0009】
この種のシャフト端が設けられない場合、整流器を、ロータシャフトのキャビティに直接配置することができ、この場合のロータシャフトの支持、したがってロータの支持は、例えば、ロータシャフトに配置されたベアリングによって行われる。
【0010】
あるいは、スリーブを設けることもでき、整流器はスリーブに配置され、スリーブは、ロータシャフトのキャビティに少なくとも部分的に配置され、特にキャビティに圧入される。この種の一実施形態、この場合は整流器がスリーブ内に配置される実施形態では、中に整流器が設置されたスリーブの事前の組み立てができ、したがって、後でロータシャフトに組み付けることができる、予め組み立てられたアセンブリグループを製造できる。これによって、特にロータの組立て時間をより短くすることができる。
【0011】
整流器は、片面又は両面に配置されたダイオードを備えるプラグイン式プリント回路基板として形成するのが好適である。特に、両面に、それぞれ、整流回路に必要なダイオード、又は、更なる電子構成部品を配置することにより、ロータシャフトの回転軸がプラグイン式プリント回路基板に存在する回転軸と同じである場合に、プラグイン式プリント回路基板上で、電子構成部品の遠心力のバランスを取る配置を実現することができる。特に、プラグイン式プリント回路基板の両面に電気部品を配置することにより、上記構成部品は、回転に応じて発生する遠心力に対して、互いにバランスを取ることが好ましい。
【0012】
本発明に係るロータの更に有利な実施形態では、軸方向に延び且つプラグイン式プリント回路基板、即ち整流器を挿入及び固定可能な長手方向スリットが、ロータシャフトのキャビティの壁、又は中空シャフト端の内部空間の壁がある場合はその壁、又は、スリーブの壁がある場合はその壁に設けられる。これにより、挿入するだけで、スリーブ、シャフト端、又はロータシャフト内に整流器を比較的簡単に組み付けることができる。これにより、長手方向スリットは、プラグイン式プリント回路基板を当該スリット内に圧入し、締まり嵌めで当該スリット内に保持するように形成できる。加えて、又は代わりに、整流器のプラグイン式プリント回路基板は、接着剤によって、個々の長手方向スリット又は長手方向溝にそれぞれ保持できることも言うまでもない。あるいは、軸方向に通るとともにプラスチックで射出成形される長手方向開口部を、ロータシャフトのキャビティの壁、又は、シャフト端の内部空間の壁に設け、軸方向に延びて整流器のプラグイン式プリント回路基板が挿入及び固定される長手方向スリットをプラスチックに設けることも考えられる。これにより、例えば、長手方向開口部又は長手方向溝のそれぞれをより大きくして、その後プラスチック充填物に導入される長手方向スリットを、それぞれ使用される整流器又はそのプラグイン式プリント回路基板の対応する寸法に適合させることが可能である。これにより、弾性プラスチックを使用することも可能になるので、プラグイン式プリント回路基板を長手方向スリットに対して大きなサイズで形成して長手方向スリットに圧入することが可能となり、この際に、プラスチックの弾性ばね力が、プラグイン式プリント回路基板及び整流器を当該スリットの上で保持する。これにより、記載したすべての実施形態に共通することは、長手方向スリットによって、スリーブ、内部空間又はキャビティ内で整流器を比較的簡便かつ速やかに組み立て可能になることである。
【0013】
本発明に係るロータの更に有利な発展例において、整流器は、相手側接触片と接触させるために、長手方向の末端側、即ち、軸方向の長手方向末端側に配置された電気接点を有している。軸方向の前側に配置されたこの種の電気接点は、ロータシャフトへの挿入に対応して電気的に接触し、これにより、接触のための別の稼働ステップは必要とならない。
【0014】
電気接点は、例えば、接点ピンとして、プラグ接点として、又は、バネ接点として形成することができる。挿入により実現できる比較的簡便な電気的接触を、接点ピン及びプラグ接点によって可能にすることができる。バネ接点には更に、バネ接点がある特定の寸法公差のバランスを取ることができるという大きな利点がある。
【0015】
それに加えて、又はその代わりに、整流器及び相手側接触片は、ラッチ要素を例えば整流器又は相手側接触片上の噛合側ラッチ要素に設けるために、ロック機構により互いに固定することも可能である。これにより、スリーブ若しくはシャフト端のそれぞれ、又はロータシャフトに整流器を確実に軸固定することができ、これによって、電気接点の望ましくない開放及び開きを、確実に排除することができる。この種のラッチ要素又は噛合側ラッチ要素はそれぞれ、特に相手側接触片に一体に配置することができるプラスチック製の簡便なラッチフックとして形成することができ、故に、例えば、プラスチック射出成形プロセスにおいて、一緒に製造することができる。それぞれ協働する噛合側ラッチ要素又はラッチ要素は、簡単なアンダーカット形状として形成することができ、この場合、この種のアンダーカット形状をプラグイン式プリント回路基板に形成し、対応するラッチラグを相手側接触片に形成するとよい。
【0016】
好適には、整流器を固定する末端片又はカバーが設けられる。したがって、この種の末端片又はカバーは、それぞれ、相手側接触片の軸方向反対側の長手方向端で、整流器のプラグイン式プリント回路基板と協働することができ、したがって、一方ではカバー又は末端片のそれぞれの軸方向の間に整流器を固定することができ、他方では相手側接触片を固定することができる。この種の末端片は、スリーブ、内部空間、又はキャビティと交差する、簡便なウェブとして形成することも可能であることは言うまでもない。
【0017】
本発明に係るロータの更に有利な実施形態では、熱伝導性及び電気絶縁性材料が、整流器とロータシャフトとの間に配置される。比較的、回転軸の近くに設けられる整流器の電子構成部品の配置によって、必要とされる電気絶縁は、これらの構成部品と、スリーブ若しくは内部空間それぞれの壁との間、又はキャビティの壁との間に存在する空気によって既に達成可能である。しかし、空気は優れた電気絶縁剤ではあるものの、また、不十分な熱伝導体でもある。このため、整流器の稼働に応じて発生する熱を、速やかにロータシャフトに放出して、整流器又はその電子構成部品をそれぞれ冷却するために、熱伝導性材料を追加で設ける。これによって、整流器又はその電子構成部品をそれぞれ、稼働に最適な温度帯に維持することができる。
【0018】
好適には、ロータシャフト又はシャフト端に冷却剤用の冷却ダクトが設けられる。整流器、又はその電子構成部品のそれぞれの冷却を、更に支援するために、ロータシャフトを更に冷却することが可能であり、これによって、代替的に、顕著に改善された冷却性をもう一度もたらす誘電性冷却剤を整流器に直接適用することも考えられることは言うまでもない。整流器、又は、その電子構成部品がそれぞれ冷却剤と直接接触する場合、冷却剤は導電性である必要はないが、対応する冷却ダクト内のロータシャフト又はシャフト端を通る冷却剤による間接冷却に応じて、水、水-グリコール、又は油も考えられる。特に、冷却のために、プラグイン式プリント回路基板、又は一般にプリント回路基板のそれぞれ及びその上の整流器をロータの冷却に組み込み、これによりロータが冷却することも考えられる。これは通常、中空ロータシャフトを冷却剤が通って流れることによって生じ、この場合、整流器を、中空ロータシャフト内に配置することが可能であり、誘電性の冷却剤を直接、中空ロータシャフトに供給することができる。それにより重要な点は、整流器のプリント回路基板又はプラグイン式プリント回路基板のそれぞれ、加えて、その電子構成部品が冷却剤に対して耐性を有する必要がある、ということだけである。
【0019】
本発明は更に、他励同期機に、電流を供給可能なロータを設けるという先の段落に記載の概念に基づき、ここで、二次コイルを備える回転変圧器の回転変圧器ロータは、ロータと同時に配置され、一方で、対応する回転変圧器ステータは、他励同期機、特にそのハウジングに配置される。したがって、回転変圧器ロータは、ロータシャフトに外側に配置することができる。回転変圧器ロータと回転変圧器ステータを少なくとも部分的に中空のロータシャフトの中に配置することも、純粋な理論として考えることができる。
【0020】
少なくとも整流器をロータシャフト内に配置することにより、上記整流器を、非常に小さなピッチ円直径に配置することができ、それ故に、稼働中に小さな遠心力を受けるために、機械的安定性の著しい改善も実現できる。
【0021】
他励同期機の更に有利な発展例において、回転変圧器ステータは、一次コイル、及び磁芯材料、特にフェライト製の変換コアを有する。したがって、回転変圧器ステータは、回転変圧器ロータの二次コイルと協働する1次コイルを有する。
【0022】
本発明の更なる重要な特徴及び利点は、サブクレームにより、図面により、及び、図面に基づく、対応する図の説明から得られる。
【0023】
上述した特徴、及び、後述する特徴は、本発明の範囲内を逸脱することなく、明記した対応する組合せで用いることができるだけでなく、他の組合せでも、又は単独でも用いることができることは言うまでもない。
【0024】
本発明の好ましい例示的な実施形態を図面に示し、以下において、より詳細に説明する。図面はそれぞれ、概略的なものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】先行技術に係るロータの縦断面図を示す。
図2】ロータシャフト内に配置された整流器を備える、本発明に係るロータの断面図を示す。
図3】異なる断面における、図2と同様の断面図を示す。
図4】相手側接触片を備える整流器の斜視図を示す。
図5図4の例示物の側面図を示す。
図6図4の例示物の平面図を示す。
図7】シャフト端の長手方向スリットに挿入された整流器を備える、シャフト端の正面図を示す。
図8】長手方向開口部を備える、図7と同様の図を示し、長手方向開口部は、軸方向に通り、プラスチックで射出成形され、当該開口部の中に長手方向スリットが組み込まれることにより、整流器のプラグイン式プリント回路基板が中に挿入されて固定される。
図9】スリーブを備える、図7と同様の図を示し、整流器は、スリーブに配置される。
図10】回路図のような図で電気式回転変圧器の電気配線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1では、他励同期機2’用のロータ1’は、ロータ巻線3’を有し、これは、ロータシャフト4’に配置される。同様に、ロータ1’は、バランスリング5’、加えて整流器6’を有し、バランスリング5’により任意に生じる不釣り合いを補正することができる。整流器6’は、それにより、電流を整流し、当該電流は、回転変圧器8’から二次コイル7’に伝達され、二次コイルは、ロータシャフト4’に、回転可能に取り付けられるように接続される。整流器6’は、この電流を直流に変換し、ロータ巻線3’に伝達し、ここで、電磁場を生み出すことができる。それにより、二次コイル7’は回転変圧器ロータ9’の一部であり、これは、固定された回転変圧器ステータ10’と共に、回転変圧器8’を形成する。回転変圧器ステータ10’は、変圧器コア11’、加えて、一次コイル12’を有する。したがって、変圧器コア11’は、磁芯材料、例えば、フェライト製である。ロータ1’は、ベアリング13’を介して支持される。整流器6’と電気的に接触する端部巻線14’は、各場合において、ロータ巻線3’の前側に設けられる。
【0027】
図1に係る、先行技術から周知のロータ1’の場合、整流器7’が、ロータシャフト4’の外側に比較的大きな直径を有し、これにより、一方では設置空間を大きくする必要が生じ、他方では稼働中に整流器6’に作用する遠心力の形態の比較的大きな力が生じることが欠点である。稼働中に、ロータ1’において、別の損失(例えば、銅損及び鉄損)が更に生じ、これによって、ロータ1’が加熱する。温度は、それにより、絶縁材料(例えば、絶縁紙、エナメル銅線など)の温度の上限値で制限され、この温度は140~180℃の範囲に収まる。ロータ巻線3’の近くに整流器6’を配置することで、整流器6’の周囲温度が、ロータ1’の温度の上限値により、はっきりと決定される。したがって、整流器6’の温度上限値が、ロータ1’の温度限界を下回ることによって、ロータ1’の温度上限値を電子構成部品の温度上限値まで下げる必要があり、これによって、同期機2’の連続性能及びピーク性能を下げる必要、及び/又は、それに対応する高温限界を有する高価な電子構成部品及びプリント回路基板材料を用いる必要がある。
【0028】
ここで、本発明に係るロータ1を、図2、3、及び、図7~9に従い、以下でより詳細に記載する。これに関し、図2~10に対して用いた参照番号を、アポストロフィーを付けずに、図1にも同様に用いていることに留意されたい。
【0029】
ここで、少なくとも、ロータ1の回転に応じた、整流器6に作用する遠心力とその強力な加熱とに関する、先行技術で周知の欠点を減らすために、図2図3、及び図7~9に係る本発明では、ロータ1の場合、ロータシャフト4のキャビティ15に整流器6を配置する。それによって、例えばダイオードなどの整流器6の個別の構成部品16と整流器6全体とを、ロータ1の回転軸17の近くに配置することが可能であり、これにより、図1に示す配置と比較して、個別の構成部品16及び整流器6全体は、著しく小さい機械的な力、特に遠心力を吸収することになる。ロータシャフト4のキャビティ15に整流器6を配置することで、整流器6の冷却及び加熱を著しく改善することができ、これにより、同期機2の連続性能及びピーク性能の増大が可能となる。それぞれ、電子構成部品16又は概して整流器6の冷却が改善されることにより、一層費用対効果の高い電子構成部品16、及びプリント回路基板材料を、整流器6のプラグイン式プリント回路基板18に対して使用することも可能になる。
【0030】
図2図3、及び図7~9に従った本発明に係るロータ1の図では、内側空間20を備えて少なくとも部分的に中空のシャフト端19が設けられ、これらの図では、シャフト端19の内部空間20に整流器6が配置され、このシャフト端19が、ロータシャフト4のキャビティ15に配置、例えば、キャビティに圧入される。したがって、図2及び3から、整流器6は、軸方向21においてロータシャフト4のキャビティ15内に部分的に配置されているに過ぎないが、本出願によれば、ロータシャフト4のキャビティ15内に整流器6を少なくとも部分的に配置することも、本発明に含まれると考えることも可能である。
【0031】
シャフト端19は、カラーのような径方向段差22を有し、これは、ロータシャフト4内へのシャフト端19の押し込みに応じて、軸方向ストッパを形成する。径方向段差22は同時に、シャフト端19の外側ジャケット表面に適合するベアリング13、例えば押し込まれるベアリング13、例えばボールベアリング用の軸方向ストッパを形成する。
【0032】
故に、図2~9に示す整流器6は、上述のプラグイン式プリント回路基板18を有し、この場合、当該基板18上の両面に、電子構成部品16、即ち、この場合はダイオードが配置される。純粋に理論的に、片面配置を考えることもできることは言うまでもないが、回転に対応して生じる不釣り合いに対しては、両面配置が好ましい。
【0033】
シャフト端19に加えて、または、この代わりに、スリーブ23(図9を参照されたい)を設けることもでき、整流器6がスリーブ23に配置され、スリーブ23はロータシャフト4のキャビティ15に、または、シャフト端19の内部空間20に配置される。
【0034】
できる限り簡便なアセンブリを提供するために、かつ同時に、キャビティ15若しくは内部空間20にそれぞれ、又はスリーブ23に整流器6を確実に固定するために、軸方向21に通る長手方向スリット24であってプラグイン式プリント回路基板18を中に挿入して例えばクランプ留め、接着、又はプレスして固定できる(図2、3、7、及び9を参照されたい)長手方向スリット24が、内部空間20のキャビティ15の壁、又はスリーブ23のキャビティ15の壁に設けられる。あるいは、それぞれが軸方向21に通り、プラスチック25で射出成形される長手方向ボア、又は概して長手方向の開口部26が、キャビティ15の壁、又は内部空間20の壁に設けられる(図8を参照されたい)こともまた考えられ、ここで、軸方向21に通り、プラグイン式プリント回路基板18が中に挿入されて固定される長手方向スリット24が、プラスチック25に設けられる。特に、プラスチック25における長手方向スリット24について、この長手方向スリット24は、プラグイン式プリント回路基板18と比較して大きなサイズで製造することができ、これにより、プラスチック25の長手方向スリット24への挿入に応じたプラグイン式プリント回路基板18の弾性的な押し込み、及び故に、確実な固定が生じる。
【0035】
整流器6、又はその電子構成部品16をそれぞれ、回転軸17の近くに配置することで、電子構成部品16と、ロータシャフト4若しくはシャフト端19との間、又は、例えば、空気を充填可能なスリーブ23との間に、十分大きな隙間が残り、これにより、確実に電気絶縁される。それにより、整流器6に作用する遠心力もまた、軽減することができる。あるいは、整流器6の電子構成部品16を冷却することによって整流器6を稼働に最適な温度帯(Temperaturfenster)に維持する熱伝導性及び絶縁性の材料を、整流器6とスリーブ23の間、若しくは、整流器6とシャフト端19の間、又は、整流器6とロータシャフト4の間に、配置することができる。
【0036】
整流器6の冷却性を更に改善することができるように、冷却ダクト27(特に、図3を参照されたい)を、ロータシャフト4、及び/またはシャフト端19に設けることができる。冷却流体、例えば、水、油、又は、水-グリコール混合物を、これらの冷却ダクト27を通して誘導することができ、故に、ロータシャフト4又はシャフト端19のそれぞれを直接冷却することによって、整流器6を間接的に冷却することができる。
【0037】
あるいは、冷却液を、整流器6、特に、その電子構成部品16に直接適用することが考えられるが、その場合、上記冷却液は、短絡を除外するために、誘電体として、即ち、非導電性にする必要があることは言うまでもない。この種の直接冷却は極めて効果的であり、例えば、既存のロータ冷却にも組み込むことができる。したがって、この場合、冷却剤は、ロータシャフト4のキャビティ15若しくはシャフト端19の内部空間20のそれぞれを通って、又はスリーブ23内の空間を直接通って流れる。
【0038】
一方で整流器6とロータ巻線3との電気接触を実現し、他方で請求器6と回転変圧器8との電気接触を実現するために、整流器6は、相手側接触片29と電気接触させるための、長手方向の末端側に配置された電気接点28を有することができる。軸方向21の前端側に配置された電気接点28は、これにより、個々に簡便な差し込み又は挿入により、相手側接触片29との、それぞれが比較的簡便なアセンブリ又は電気接触をもたらす。
【0039】
したがって、電気接触28を、例えば、接点ピンとして、プラグ接点として、又はバネ接点として形成することができ、ここで、説明した実施形態は全て、ある特定の寸法公差のバランスを取ることを可能にし、これにより、アセンブリが著しく簡便化される。
【0040】
整流器6と相手側接触片29との電気的接触、さらに回転変圧器8との電気的接触、加えてロータ巻線3との電気的接触を、安定させると共に長続きさせることを保証するために、ラッチ要素30を、整流器6、又は、そのプラグイン式プリント回路基板18にそれぞれ設けることができ、相手側接触片29には、噛合側ラッチ要素31をロック目的で設けることができる。したがって、ラッチ要素30は、ラッチフック又はアンダーカット形状部として形成することができる一方で、噛合側ラッチ要素31は、それぞれ、ラッチ要素30と補完し合う形状のアンダーカット形状部又はラッチフックとして形成することができる。この場合において、図4~6に示すように、整流器6のプラグイン式プリント回路基板18のラッチ要素30がアンダーカット形状部として形成され、相手側接触片29の噛合側ラッチ要素31がラッチフックとして形成される。
【0041】
好ましくは相手側接触片29とは反対側に位置するように構成された末端片又はカバー32(図3を参照されたい)を設けることもできる。末端片又はカバー32は、整流器6を、末端片又はカバー32自体と相手側接触片29との間でクランプ留めすることによって、同時に、整流器6と相手側接触片29との間での電気接触も確立する。末端片又はカバー32はそれぞれ、例えば、内部空間20(図3を参照されたい)に、又はロータシャフト4のスリーブ23又はキャビティ15にそれぞれ、任意に押し込むことができる。したがって、本発明に係るロータ1により提供される本発明に係る他励同期機2は、整流器6を少なくとも部分的にロータシャフト4のキャビティ15の中に配置することによって、費用対効果の高い構成と同時に高性能をもたらし、これにより、設置空間に関する効果に加え、整流器6又はその電子構成部品16の機械的負荷の軽減及び冷却性の改善のそれぞれ、ひいては同期機2の性能向上も達成することができる。
【0042】
本発明に係るロータ1を備える本発明に係る同期機2を、自動車のトラクションモータとして使用することができる。
【0043】
本発明に係る同期機2に挿入される電気回転変圧器8の実施可能な電気巻線の回路図のような例について、ここで図10に基づいて以下に説明する。
【0044】
回転変圧器8は、一次側に、一次コイル12を備える回転変圧器ステータ10を備える。回転変圧器8は、二次側に、回転軸17を中心として回転変圧器ステータ10に対して回転可能となるように形成されるとともに二次コイル7を有する回転変圧器ロータ9を更に備える。二次コイル7は、一次コイル12に誘導結合される。一次コイル12から二次コイル7に電気エネルギー移動を行うためには、一次コイル12にて、交流電流を生成する必要がある。このために必要な交流電流は、一次側に配置され且つ一次コイル12に電気的に接続されるトランジスタ回路34により生成される。トランジスタ回路34は、4つのパワートランジスタ35a、35b、35c、35dを備えることができ、これらは、2つの集積回路37a、37bを備える制御装置36により制御される。一次コイル33に交流電流を電流供給すると、交流電流が二次コイル7において誘導される。二次コイル7は、この例では、整流器要素39a、39b、39c、39dとして形成される4つの電子構成部品16を備えるとともに誘導された交流電流を直流電流に変換することを可能にする整流器6の電気整流回路38に電気的に接続される。4つの整流器要素39a~39dは、それぞれにおいて整流器ダイオードにより形成することも可能である。このようにして生成された直流電流は、電気式同期機2のロータ1に電流を電気的に供給する役割を果たし、これをず10では、参照番号40で識別される誘導抵抗器により、そして参照番号33で識別されるオーム抵抗器により概略的に示唆している。
【0045】
全体として、本発明に係るロータ1、及び本発明に係る同期機2によって、以下の効果を得ることができる。
整流器6が、比較的小さな外径を有し、したがってこれまではロータシャフト4の外側に配置されていた従来技術の整流器6’よりも受ける遠心力が著しく小さいことによる機械的安定性の改善。
これまでは利用されていない設置空間の最適な利用、ひいては同期機2を全体としてよりコンパクトに構築可能となるという選択肢。
長手方向スリット24への挿入による、整流器6の簡便な組み立て。
高性能の同期機2に付随する、整流器6の冷却性の改善という選択肢。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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【国際調査報告】