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特表2024-539220細胞外小胞を作製するための方法、組成物、およびその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】細胞外小胞を作製するための方法、組成物、およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20241018BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241018BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20241018BHJP
   A61K 35/36 20150101ALI20241018BHJP
【FI】
C12N5/071
A61K35/12
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P37/08
A61Q19/08
A61K8/98
A61K35/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523902
(86)(22)【出願日】2022-10-24
(85)【翻訳文提出日】2024-06-18
(86)【国際出願番号】 IB2022000656
(87)【国際公開番号】W WO2023067394
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/270,875
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/333,854
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521323037
【氏名又は名称】エヴィア ライフ サイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】落谷 孝広
【テーマコード(参考)】
4B065
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AC20
4B065BA30
4B065CA44
4B065CA46
4B065CA50
4C083AA071
4C083BB51
4C083EE12
4C083EE13
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB48
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB13
4C087ZC01
(57)【要約】
ROCK阻害剤を含む培養培地中で角化細胞を培養し、上記角化細胞によって分泌された細胞外小胞(EVs)を採取することによって、EVsを作製する方法が、提供される。いくつかの実施形態において、上記EVsは、エクソソームを含むかまたはそれからなる。代表的には、角化細胞の増殖および/またはEVsの分泌は、ROCK阻害剤の非存在下と比較して、その存在下で増加する。本開示の方法に従って作製されるEVsおよびこれから形成される医薬組成物がまた、提供される。上記医薬組成物は、例えば、栄養補給適用および治療適用(例えば、皮膚を改善する、皮膚関連疾患もしくは障害を処置する、または傷害からの回復を増強する)に役立つように、有効量のEVsを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外小胞(EVs)を作製する方法であって、前記方法は、ROCK阻害剤を含む培養培地中で角化細胞を培養すること、および前記角化細胞によって分泌されたEVsを採取することを包含する方法。
【請求項2】
前記ROCK阻害剤は、Y-27632である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記Y-27632は、約1μM~約100μM、または約5μM~約25μM、または約10μMの濃度にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞は、TGFβシグナル伝達の阻害剤とともに培養される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
TGFβシグナル伝達の前記阻害剤は、A83-01である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記A83-01は、約1μM~約10μM、または約0.1μM~約10μM、または約0.5μMの濃度にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
EVsの増殖および/または分泌は、前記ROCK阻害剤の非存在下と比較して、その存在下で増加する、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記細胞は、前記ROCK阻害剤および必要に応じてTGFβシグナル伝達の阻害剤中で、少なくとも5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、もしくは20日間;または約5日間~約25日間、またはその間の任意の部分範囲もしくは整数の日数にわたって、必要に応じて、約7日間~約22日間、約5日間~約25日間、もしくは約10日間~約20日間、もしくは約12日間~約17日間;または約13日間、14日間、もしくは15日間培養される、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記EVsは、エクソソームを含むかまたはそれからなる、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の方法に従って作製される細胞外小胞(EVs)。
【請求項11】
請求項10に記載のEVsの有効量を含む医薬組成物。
【請求項12】
被験体を処置する治療的または非治療的方法であって、前記方法は、前記被験体に請求項11に記載の医薬組成物を投与することを包含する方法。
【請求項13】
前記被験体は、皮膚疾患もしくは障害または傷害を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
皮膚を改善することを必要とする被験体の皮膚を改善する治療的または非治療的方法であって、前記方法は、前記被験体に請求項11に記載の医薬組成物を投与することを包含する方法。
【請求項15】
皮膚の老化および前記皮膚の瘢痕化を低減または防止する治療的または非治療的方法であって、前記方法は、前記被験体に請求項11に記載の医薬組成物を投与することを包含する方法。
【請求項16】
皮膚および/またはその細胞と前記医薬組成物とを接触させることを包含する、請求項12~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記医薬組成物は、前記被験体の細胞においてI型コラーゲン(COL1A1)の発現を増加させる、請求項12~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記医薬組成物は、前記被験体の細胞においてエラスチンの発現を増加させる、請求項12~17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記細胞は、線維芽細胞である、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記線維芽細胞は、皮膚線維芽細胞である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アトピー性皮膚炎を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に請求項11に記載の医薬組成物を投与することを包含する方法。
【請求項22】
皮膚および/またはその細胞と前記医薬組成物とを接触させることを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記被験体の皮膚は、乾燥している、落屑性である、荒れている、敏感な、腫脹している、赤い、隆起を含むか,またはこれらの組み合わせである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記医薬組成物は、前記被験体の細胞における胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、Th2、好酸球動員ケモカイン、炎症性サイトカイン(例えば、IL-33およびIL-25)、またはこれらの組み合わせの発現を低減する、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記医薬組成物は、前記被験体の細胞におけるTSLP、IL-25、IL-33またはこれらの組み合わせの発現を低減する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記細胞は、角化細胞である、請求項16~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記角化細胞は、表皮角化細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記EVは、非長期間のまたは再プログラミングしない角化細胞培養法に従って調製したEVより有効である、請求項12~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記非長期間のまたは再プログラミングしない角化細胞培養法は、前記角化細胞をROCK阻害剤とともに培養することをしない、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記非長期間のまたは再プログラミングしない角化細胞培養法は、前記角化細胞を、TGFβシグナル伝達の阻害剤とともに培養することをしない、請求項28または29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年10月22日出願の米国特許出願第63/270,875号および2022年4月22日出願の米国特許出願第63/333,854号(これらは、それらの全体において具体的に本明細書に参考として援用される)の利益および優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明の分野は、一般に、組成物および細胞を培養する方法、細胞外小胞の収集、ならびにこれらの組成物および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
細胞外小胞(EVs)は、種々の細胞間で生物学的構成成分を交換することによって、細胞機能を調節する能力を有する分泌性の脂質膜である(Nasiriら, Stem Cell Research & Therapy volume 11, Article number: 421 (2020))。皮膚細胞(例えば、角化細胞、線維芽細胞、メラノサイト、および炎症性細胞)は、それらの生物学的状態に応じて種々のタイプのEVsを分泌し得る。これらの小胞は、皮膚の生理学的特性および病理的過程(例えば、色素沈着、皮膚免疫、および創傷治癒に影響し得る。角化細胞は、皮膚の細胞のうちの大部分を構成することから、これらの細胞からの分泌EVsが、他の皮膚細胞の病態生理学的挙動を変化させ得る。
【0004】
生物学的キャリアとしてのEVsの性質は、修復、再生、および若返りを含む種々の皮膚治療目的において潜在性を有する(Basuら, Expert Opin Biol Ther. 16(4):489-506 (2016))。培養中の初代ヒト角化細胞は即座に劣化することで、創薬研究におけるそれらの有用性、ならびに栄養補給用材料の供給源および再生医療の治療的使用が制限される。これらの治療的アプローチを患者に利用しやくするために、標準的プロトコールとしての医薬品等の製造管理および品質管理に関する基準(GMP)は、使用されるEVsの品質を担保するために必要とされる(Chenら, Tzu-Chi Med J., 32(2):113 (2019), Lenerら, J Extracellular Vesicles, 4(1):30087 (2015))。
従って、本発明の目的は、角化細胞を培養し、そこからEVsを作製および採取する改善された方法、Evsを含む組成物、ならびにその使用方法を提供することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Nasiriら, Stem Cell Research & Therapy volume 11, Article number: 421 (2020)
【非特許文献2】Basuら, Expert Opin Biol Ther. 16(4):489-506 (2016)
【非特許文献3】Chenら, Tzu-Chi Med J., 32(2):113 (2019)
【非特許文献4】Lenerら, J Extracellular Vesicles, 4(1):30087 (2015)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
角化細胞を、ROCK阻害剤を含む培養培地中で培養し、上記角化細胞によって分泌された細胞外小胞(EVs)を採取することによって、EVsを作製する方法が、提供される。いくつかの実施形態において、上記EVsは、エクソソームを含むかまたはそれからなる。
【0007】
代表的には、上記角化細胞の増殖および/またはEVsの分泌は、上記ROCK阻害剤の非存在下と比較して、その存在下で増加する。例示的なROCK阻害剤は、Y-27632である。いくつかの実施形態において、上記細胞はまた、TGFβシグナル伝達の阻害剤とともに培養される。TGFβシグナル伝達の例示的阻害剤は、A83-01である。
【0008】
好ましい実施形態において、上記角化細胞は、初代角化細胞である。
【0009】
本開示の方法に従って作製されるEVs、およびそこから形成される医薬組成物がまた、提供される。上記医薬組成物は、例えば、栄養補給適用および治療適用(例えば、皮膚を改善する、皮膚関連疾患もしくは障害を処置する、または傷害からの回復を増強する)に役立つように、有効量のEVsを含み得る。そしてこのような治療的および非治療的方法および使用がまた、提供される。いくつかの実施形態において、上記組成物は、皮膚の乾燥、刺激、ストレス、アレルギー、感染および/または熱/発汗を処置または防止するために使用される。例えば、いくつかの実施形態において、上記方法は、EVまたはその組成物を投与することを必要とする被験体に投与して、アトピー性皮膚炎を処置または防止することを包含する。いくつかの実施形態において、組成物は、アトピー性皮膚炎の1もしくはこれより多くの症状および/または生物学的もしくは生理学的指標を低減または防止するために、有効量で投与される。
【0010】
いくつかの実施形態において、上記エクソソームは、I型コラーゲン(COL1A1)および/またはエラスチンの発現を増加させ得る;上記エクソソームが接触される細胞における胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、Th2、好酸球動員ケモカイン、炎症性サイトカイン(例えば、IL-33およびIL-25)、またはこれらの任意の組み合わせの発現を低減し得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
図1図1A~1Hは、2日目(図1A、1B)、3日目(図1C、1D)、7日目(図1E、および1F)での角化細胞培地単独中で培養し、9日目にY-27632を添加した後(図1Gおよび1H)の角化細胞を示す、4×(図1A、1C、1E、1G)および10×(図1B、1D、1F、1H)の顕微鏡写真である。
【0012】
図2図2A~2Fは、17日目の、角化細胞単独で(図2A、2B)、Y-27632とともに(図2C、2D)、およびY-27632 + A83-01とともに(図2E、2F)培養した角化細胞を示す4×(図2A、2C、2E)および10×(図2B、2D、2F)の顕微鏡写真である。
【0013】
図3図3A~3Fは、20日目の、角化細胞単独で(図3A、3B)、Yとともに(図3C、3D)、およびY-27632 + A83-01とともに(図3E、3F)培養した角化細胞の、4×(図3A、3C、3E)および10×(図3B、3D、3F)の顕微鏡写真である。
【0014】
図4図4は、培地のみ、コントロール角化細胞、Y-27632(Y)とともに培養した角化細胞、およびY-27632 + A83-01(A)とともに培養した角化細胞中の細胞外小胞(EV)粒子(×10 粒子/ml)の濃度を示す棒グラフである。
【0015】
図5図5は、コントロール角化細胞、Y-27632(Y)とともに培養した角化細胞、およびY-27632 + A83-01(A)とともに培養した角化細胞の粒子重量(比)を示す棒グラフである。
【0016】
図6図6は、1,000 エクソソーム/細胞を添加して72時間後の、ヒト線維芽細胞におけるI型コラーゲン(COL1A1)およびエラスチンの遺伝子発現レベルを示す棒グラフである。相対的発現レベル(遺伝子/アクチン): 各遺伝子の発現レベルを、コントロールとしてのβ―アクチンの量を使用して計算した。
【0017】
図7-1】図7Aは、アトピー性皮膚炎のインビトロモデルにおける遺伝子発現に対する培養角化細胞から分泌された細胞外小胞(EVs)の効果の分析のための実験プロトコールのフローチャートである。図7Bは、通常の角化細胞培養または長期角化細胞培養によって調製したEVsで処理した表皮角化細胞と比較して、非処理コントロール表皮角化細胞におけるTSLP、IL-25、およびIL-33の遺伝子発現を示す棒グラフである。
図7-2】図7Aは、アトピー性皮膚炎のインビトロモデルにおける遺伝子発現に対する培養角化細胞から分泌された細胞外小胞(EVs)の効果の分析のための実験プロトコールのフローチャートである。図7Bは、通常の角化細胞培養または長期角化細胞培養によって調製したEVsで処理した表皮角化細胞と比較して、非処理コントロール表皮角化細胞におけるTSLP、IL-25、およびIL-33の遺伝子発現を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
I. 定義
本明細書で使用される場合、用語「キャリア」または「賦形剤」とは、1種もしくはこれより多くの活性成分が組み合わされる、製剤中の有機成分もしくは無機成分、天然のもしくは合成の不活性成分に言及する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に受容可能な」とは、上記活性成分の生物学的活性の有効性に干渉しない非毒性材料を意味する。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「薬学的に受容可能なキャリア」とは、標準的な医薬キャリア、例えば、リン酸緩衝塩類溶液、水およびエマルジョン(例えば、油/水型または水/油型エマルジョン)、ならびに種々のタイプの湿潤剤のうちのいずれかを包含する。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「有効量」または「治療上有効な量」とは、処置されている障害、疾患、もしくは状態の1もしくはこれより多くの症状を緩和する、または所望の薬理学的および/もしくは生理学的効果を別の方法で提供するために十分な投与量を意味する。正確な投与量は、被験体に依存する変数(例えば、年齢、免疫系の健康状態など)、処置されている疾患もしくは障害、ならびに投与されている薬剤の投与経路および薬物動態のような種々の要因に応じて変動する。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「防止」または「防止すること(preventing)」とは、疾患もしくは障害によって引き起こされる1もしくはこれより多くの症状に関するリスクにあるかまたはその素因を有する被験体または系に組成物を投与して、上記疾患もしくは障害の特定の症状の停止、上記疾患もしくは障害の1もしくはこれより多くの症状の低減もしくは防止、上記疾患もしくは障害の重篤度の低減、上記疾患もしくは障害の完全な除去、上記疾患もしくは障害の発生もしくは進行の安定化もしくは遅延を引き起こすことを意味する。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「被験体」、「個体」および「患者」とは、本開示の組成物を使用する処置の標的である任意の個体に言及する。上記被験体は、脊椎動物、例えば、哺乳動物であり得る。従って、上記被験体は、ヒトであり得る。上記被験体は、症候性または無症候性であり得る。上記用語は、特定の年齢または性別を意味しない。従って、成体および新生の被験体(雄性であろうと雌性であろうと)は、網羅されることが意図される。被験体は、コントロール被験体または試験被験体を含み得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、「実質的に変化した」とは、コントロールと比較して、少なくとも、例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、75%、100%、またはこれより大きい変化を意味する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「精製される」、「単離される」などの用語は、天然の環境にある分子または化合物と通常会合している他の構成成分を実質的に含まない(少なくとも60%含まない、好ましくは75%含まない、および最も好ましくは90%含まない)形態にある分子または化合物の単離に関する。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」とは、標的抗原を結合する天然のまたは合成の抗体に言及する。上記用語は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。インタクトな免疫グロブリン分子に加えて、それら免疫グロブリン分子のフラグメントもしくはポリマー、および標的抗原を結合する免疫グロブリン分子のヒト化もしくはヒト化バージョンがまた、用語「抗体」の中に包含される。
【0027】
本明細書で使用される場合、「処置」とは、疾患、病的状態、または障害を治癒、改善、安定化、または防止する意図での患者の医療的管理に言及する。この用語は、積極的処置、すなわち、具体的には、疾患、病的状態、または障害の改善に向けた処置を含み、原因処置、すなわち、その関連する疾患、病的状態、または障害の原因の除去に向けた処置をも含む。さらに、この用語は、緩和的処置、すなわち、上記疾患、病的状態、または障害を治癒するよりむしろ、症状の軽減のために設計された処置;防止的処置、すなわち、上記関連する疾患、病的状態、または障害の発生を最小化するかまたは部分的にもしくは完全に阻害することに向けた処置;および支持的処置、すなわち、上記関連する疾患、病的状態、または障害の改善に向けた別の特定の治療を補うために使用される処置を含む。
【0028】
用語「阻害する」または「低減する」は、特定の特性(例えば、活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメーター)を減少させる、妨げるまたは抑えることを意味する。これが、代表的には、いくつかの標準値または予測値に関連している、すなわち、それが相対的であるが、言及されるべき標準値または相対的値に常に必要なわけではないことは理解される。「阻害する」または「低減する」はまた、標準またはコントロールと比較して、タンパク質の合成、発現または機能を妨げるまたは抑えることを意味し得る。これは、上記活性、応答、状態、または疾患の完全な除去が挙げられ得るが、これらに限定されない。阻害としてはまた、例えば、天然またはコントロールレベルと比較して、上記活性、応答、状態、疾患、または他の生物学的パラメーターにおける10%低減が挙げられ得る。従って、上記低減は、天然またはコントロールレベルと比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%%、またはこれらの間の任意の低減量であり得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「初代細胞」とは、生きている生物または組織供給源から採取される不死化されていない細胞に言及する。
【0030】
本明細書で使用される場合、細胞(例えば、初代細胞)の「生存性を延長する」とは、上記細胞が正常な成長および/または生存ができる期間を延ばすことに言及する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「老化」とは、もはや有糸分裂(細胞分裂)を起すことができなくなる点に言及する。
【0032】
本明細書中での値の範囲の記載は、本明細書で別段示されなければ、その範囲内に入る各別個の値に個々に言及する簡略法として働くことが意図されるに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書に個々に記載されているかのように、本明細書に組み込まれる。
【0033】
用語「約」の使用は、述べられた値をおよそ±10%の範囲において上回るかまたは下回るかのいずれかである値を記載することが意図される;他の形態では、値は、述べられた値をおよそ±5%の範囲において上回るかまたは下回るかのいずれかである値の範囲に及び得る;他の形態では、値は、述べられた値をおよそ±2%の範囲において上回るかまたは下回るかのいずれかである値の範囲に及び得る;他の形態では、値は、述べられた値をおよそ±1%の範囲において上回るかまたは下回るかのいずれかである値の範囲に及び得る。上述の範囲は、文脈によって明らかになることが意図され、さらなる限定は意味されない。
【0034】
範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして本明細書で表され得る。このような範囲が表される場合、文脈が別段具体的に示さなければ、その1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までの範囲がまた、具体的に企図されかつ開示されていると見做される。同様に、先行詞「約」の使用によって値が近似値として表される場合、文脈が別段具体的に示さなければ、その特定の値が、開示されたと見做されるべき別の具体的に企図される実施形態を形成することは、理解される。上記範囲の各々の端点が、文脈が別段具体的に示さなければ、他の端点との関係性においても、他の端点とは独立していても有意であることは、さらに理解される。個々の値の全ておよび明示的に開示される範囲内に含まれる値の部分範囲がまた、文脈が別段具体的に示さなければ、具体的に企図され、開示されると見做されるべきであることは、理解されるべきである。最後に、全ての範囲が、範囲として、および第1の端点から(第1の端点を含む)から第2の端点まで(第2の端点を含む)の個々の数字の集合として、その記載される範囲の両方に言及することは、理解されるべきである。後者の場合、個々の数字のうちのいずれかが、その範囲が言及する量、値、または特徴の1つの形態として選択され得ることは、理解されるべきである。このようにして、範囲は、第1の端点から(第1の端点を含む)から第2の端点まで(第2の端点を含む)の数字または値のセットを記載し、そこから、そのセットのうちの単一のメンバー(すなわち、単一の数値)が、その範囲が言及する量、値、または特徴として選択され得る。上記のことは、特定の場合に、これらの実施形態のうちのいくつかまたは全てが明示的に開示されるかどうかにかかわらず、あてはまる。
【0035】
本明細書で開示されるあらゆる化合物は、本明細書で具体的に開示されることが意図され、かつ本明細書で具体的に開示されると見做されるべきである。さらに、本開示内で特定され得るあらゆる部分範囲は、本明細書で具体的に開示されることが意図され、かつ本明細書で具体的に開示されると見做されるべきである。結果として、任意の化合物、または化合物の下位群は、使用のために具体的に含まれるかもしくは使用から排除されるか、または化合物のリストの中に含まれるかもしくはリストから排除されるかのいずれかであり得ることが、具体的に企図される。
【0036】
本開示の組成物を調製するために使用されるべき構成成分、および本明細書で開示される方法内で使用されるべき上記組成物自体が、開示される。これらおよび他の材料が本明細書で開示され、これらの材料の組み合わせ、部分セット、相互作用、群などが開示される場合、これらの化合物の各種々の個々のおよび集合的な組み合わせならびに並べ替え(permutation)の具体的な言及が明示的に開示されない場合もあるが、各々が具体的に企図され、本明細書に記載されることが理解される。例えば、特定のポリペプチドが開示され、考察され、多くのポリペプチドに対して行われ得る多くの改変が考察される場合、具体的に反対に示されなければ、ポリペプチドの各々およびあらゆる組み合わせおよび並べ替え、ならびに可能な改変が、具体的に企図される。従って、分子A、B、およびCのクラスが、分子D、E、およびFのクラスと同様に開示され、組み合わせの一例、A~Dが開示される場合、各々が個々に記載されていないとしても、各々は、個々にかつ具体的に企図される。つまり、組み合わせ、A-E、A-F、B-D、B-E、B-F、C-D、C-E、およびC-Fは、開示されていると見做される。同様に、これらの任意の部分セットまたは組み合わせがまた、開示される。従って、例えば、A-E、B-F、およびC-Eの下位群は、開示されていると見做される。この概念は、本開示の組成物を作製および使用する方法におけるステップが挙げられるが、これらに限定されない、本出願の全ての局面にあてはまる。従って、行われるべき種々のさらなるステップが存在する場合、これらのさらなるステップの各々が、本開示の方法の任意の具体的な実施形態または実施形態の組み合わせで行われ得ることは、理解される。
【0037】
II. 角化細胞を培養する方法
角化細胞は、ケラチンを生成する、表皮中に見出される細胞である。角化細胞は、表皮細胞のうちの約90%を構成する。角化細胞は、表皮の基底層における角化細胞幹細胞によって生成される。低分子シグナル伝達阻害剤が、初代ヒト角化細胞の種々の再生機能(皮膚の上皮の再生、機能的表皮バリアの再構成、および皮膚再生のための細胞外小胞の生成を誘導する成長因子生産性が挙げられる)を維持するために有用であることが発見されている。重要なことには、これらの培養条件は、初代ヒト角化細胞が細胞外小胞の生成を保持することを可能にする。従って、長期間培養した角化細胞からEVsを作製、採取、および使用する方法が、開示される。このようなEVsは、栄養補給および治療介入(例えば、無細胞の皮膚再生および/または疾患処置、ならびに上記の処置のための角化細胞ベースの創薬を促進する研究ベースのプラットフォーム)が挙げられるが、これらに限定されない種々の適用において使用され得る。本開示の培養方法に従って得られる細胞も、その医薬組成物、ならびに例えば、EVsに関して本明細書の他の箇所でさらにより詳細に記載されるとおりの皮膚疾患および状態の処置のための治療的および非治療的なその使用方法も明確に提供される。
【0038】
以下の実験の結果は、Y-27632(Rock阻害剤)単独、ならびにY-27632およびA83-01(TGFβシグナル伝達阻害剤)の組み合わせが、角化細胞の長期間の培養を増強し得、EVsの蓄積を増加させることを示す。従って、本開示の培養法は、代表的には、ROCK阻害剤および必要に応じて1もしくはこれより多くのさらなる低分子(TGFβ阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない)を含む。いくつかの実施形態において、TGFβシグナル伝達阻害剤は含まれない。
【0039】
上記角化細胞は、代表的には、ROCK阻害剤および必要に応じて1もしくはこれより多くのさらなる低分子を含む組織培養培地中で培養される。上記組織培養培地は、ヒト表皮角化細胞の長期間の無血清培養のための無菌液体培地(例えば、EpiLifeTM Medium)であり得るが、角化細胞を培養するための任意の適切な培地が使用され得る(例えば、Keratinocyte Growth Medium 2(即使用可)(Promocell; C20011)、HuMedia-KG2(KK-2150S)(Kurabou)、およびKGM-GoldTM Keratinocyte Growth Medium BulletKitTM(LONZA))。
【0040】
上記角化細胞は、非処理細胞と比較して、上記細胞の増殖を増加させるおよび/または収集され得る細胞外小胞の数を増加させるために十分な期間にわたって、上記阻害剤および/または他の阻害剤(複数可)の存在下で培養される。いくつかの実施形態において、上記角化細胞は、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、少なくとも20日間、少なくとも40日間、少なくとも60日間、少なくとも100日間、少なくとも150日間、少なくとも200日間、少なくとも250日間、少なくとも300日間、少なくとも350日間、少なくとも400日間、少なくとも450日間、または少なくとも500日間にわたって、上記阻害剤(複数可)の存在下で培養される。代表的には、上記細胞は、上記阻害剤(複数可)とともに14日間またはこれより長く培養される。
【0041】
いくつかの実施形態において、上記細胞は、上記阻害剤(複数可)が添加される前に、上記阻害剤(複数可)なしである程度の期間(例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、少なくとも20日間)にわたって培養される。
【0042】
以下の実験では、上記細胞を、上記細胞がサブコンフルエントになるまで4~8日間にわたって培養し(すなわち、9日目)、次いで、阻害剤(複数可)を添加し、上記細胞を引き続いて7~14日間培養し(すなわち、10日目)、その後、EV収集培地(無血清)をEVsの収集のために2日間にわたって添加した。代表的には、上記EV収集培地は、阻害剤を含まない。
【0043】
上記細胞は、最も代表的には、初代角化細胞として開始する。本明細書で使用される場合、「初代角化細胞」は、組織から単離され、培養物中で成長されるが、不死化されていない角化細胞である。いくつかの実施形態において、上記初代角化細胞は、組織生検によって得られる。いくつかの例では、上記組織生検は、皮膚から採取される(例えば、皮膚および/または粘膜扁平上皮)。いくつかの実施形態において、上記初代角化細胞は、包皮角化細胞、膣角化細胞、子宮頚部角化細胞、口腔角化細胞または皮膚角化細胞である。
【0044】
代表的には、本開示の方法に従って培養される初代角化細胞は、長期間培養または再プログラミングされた角化細胞であると考えられ、そうであるとして言及され得る。本開示の方法に従って処理される細胞は、通常の初代角化細胞の代表的な特性(通常の核型およびインタクトなDNA損傷応答を有することが挙げられる)を示し得る。さらに、ROCK阻害剤への曝露によって長期間培養されたかまたは再プログラミングされた初代角化細胞は、上記ROCK阻害剤の除去の際に、重層上皮へと分化する能力を保持し得る。
【0045】
従って、いくつかの実施形態において、ROCK阻害剤を使用して長期間培養されたかまたは再プログラミングされた角化細胞は、通常細胞と比較して、機能的に等しいかまたは改善されている。いくつかの実施形態において、それらは、通常の核型、インタクトなDNA損傷応答を有する、および/または器官型培養において重層上皮を形成し得る。いくつかの実施形態において、上記長期間培養されたかまたは再プログラミングされた角化細胞は、アップレギュレートされたテロメラーゼmRNAレベルを示し、短くなっているが、安定な長さのままであるテロメアを有する。Myc mRNAレベルはまた、ROCK阻害剤で長期培養されたかまたは再プログラミングされた角化細胞において増加し得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、上記初代角化細胞は、ROCK阻害剤および/または他の阻害剤(複数可)の存在下で、必要に応じて上記初代角化細胞の長期間の培養または再プログラミングを可能にするために十分な時間にわたって培養され、上記ROCK阻害剤および/または他の阻害剤(複数可)の非存在下でさらに培養される。
【0047】
いくつかの実施形態において、上記培養された角化細胞は、器官型組織等価物を形成するように分化し得る。いくつかの実施形態において、上記器官型組織等価物は、これらの細胞の増殖を増加させるためにROCK阻害剤の存在下で培養されている初代角化細胞を含むが、上記細胞は、未だ不死化されていない。従って、上記初代角化細胞の増殖および/または再プログラミングを増加させるために十分な期間にわたって、ROCK阻害剤の存在下で培養されている初代角化細胞を有する器官型組織等価物がまた、提供される。
【0048】
代表的には、上記角化細胞は、少なくともROCK阻害剤の存在下で培養される。Rho関連キナーゼ(本明細書中、ROCK、Rock、Rho関連コイルドコイルキナーゼ、およびRhoキナーゼとしても公知でありかつ/またはそのようにいわれる)としては、ROCK1(ROKβまたはp160ROCKとも称される)およびROCK2(ROKαとも称される)が挙げられる。ROCKタンパク質は、Rho GTPasesと相互作用するセリン-スレオニンキナーゼである。
【0049】
ROCK阻害剤での初代角化細胞の処理は、これらの細胞の不死化をもたらし得る。例えば、米国特許出願公開番号2011/0243903(これは、その全体において本明細書に参考として具体的に援用される)を参照のこと。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、米国特許出願公開番号2011/0243903に記載されるように上記初代角化細胞を不死化しない。
【0050】
A. ROCK阻害剤
ROCK阻害剤は、ROCKの発現を低減もしくは防止するか、またはROCK活性(例えば、そのキナーゼ活性)をダウンレギュレートするタンパク質、核酸、低分子、抗体または他の薬剤である。従って、ROCK阻害剤としては、低分子、抗体、アンチセンス化合物およびROCKの負の調節因子が挙げられるが、これらに限定されない。ROCK阻害剤としては、ROCK-1、ROCK-2または両方の阻害剤が挙げられる。
【0051】
上記ROCK阻害剤はまた、ROCKの負の調節因子(例えば、Gem、RhoEおよびRadのような低分子GTP結合タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない)であり得る。他の例では、上記ROCK阻害剤は、ROCK1もしくはROCK2または両方のアイソフォームを特異的に結合する抗体である。
【0052】
他の例では、上記ROCK阻害剤は、アンチセンス化合物である.一般に、アンチセンス技術の背後にある原理は、アンチセンス化合物が標的核酸にハイブリダイズし、遺伝子発現活性、または機能(例えば、転写、翻訳またはスプライシング)のモジュレーションをもたらすことである。遺伝子発現のモジュレーションは、例えば、標的RNA分解または占有ベースの阻害によって達成され得る。分解による標的RNA機能のモジュレーションの例は、DNA様アンチセンス化合物(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド)とのハイブリダイゼーションの際の、標的RNAのRNase Hベースの分解である。アンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、占有ベースの阻害によって(例えば、スプライス部位へのアクセスを遮断することによって)、スプライシングのような遺伝子発現をモジュレートするために使用され得る。
【0053】
アンチセンス化合物としては、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、miRNA、shRNAおよびリボザイムが挙げられるが、これらに限定されない。アンチセンス化合物は、ROCK核酸を特異的に標的化し得る。
【0054】
上記のアンチセンス化合物の各々は、配列特異的標的遺伝子調節を提供する。この配列特異性は、アンチセンス化合物を、目的の標的核酸の選択的モジュレーションのための有効なツールにする。いくつかの実施形態において、上記標的核酸は、ヒトROCK1(例えば、Genbankアクセッション番号 NM_005406)および/またはヒトROCK2(Genbankアクセッション番号 NM_004850)である。しかし、他の公知のROCK配列が、アンチセンス化合物を設計するために使用され得る。ROCKを特異的に標的とするアンチセンス化合物を設計、調製および使用する方法は、当業者の能力の範囲内である。ROCKアンチセンスオリゴヌクレオチドン例は、米国特許出願公開番号2004/0115641号に記載される。
【0055】
ROCK1またはROCK2を特異的に標的化するアンチセンス化合物は、ROCK1またはROCK2ヌクレオチド配列に相補的である化合物を設計することによって調製され得る。ROCK1またはROCK2を標的化するアンチセンス化合物は、標的遺伝子に特異的にハイブリダイズし、その発現を調節するために、ROCK1またはROCK2に100%相補的である必要はない。例えば、上記アンチセンス化合物、または2本鎖化合物である場合には上記化合物のアンチセンス鎖は、その選択されたROCK1またはROCK2核酸配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%または100%相補的であり得る。特異性に関してアンチセンス化合物をスクリーニングする方法は、当該分野で周知である(例えば、米国特許出願公開番号2003/0228689を参照のこと)。アンチセンス化合物は、ヌクレアーゼ耐性を増強するおよび/または上記化合物の活性を増加させるために1またはこれより多くの改変を含み得る。改変されたアンチセンス化合物は、改変されたヌクレオシド間結合、改変された糖部分および/または改変されたヌクレオシドを含むものを含む。
【0056】
好ましくは、上記ROCK阻害剤は、低分子である。例示的な低分子ROCK阻害剤としては、Y-27632(米国特許第4,997,834号、これは、その全体において本明細書に参考として具体的に援用される)およびファスジル(HA 1077としても公知; Asanoら, J. Pharmacol. Exp. Ther. 241:1033-1040, 1987、これは、その全体において本明細書に参考として具体的に援用される)が挙げられる。これらの阻害剤は、キナーゼドメインに結合して、ROCK酵素活性を阻害する。ROCKを特異的に阻害することが報告された他の低分子としては、H-1152((S)-(+)-2-メチル-1-[(4-メチル-5-イソキノリニル)スルホニル]ホモピペラジン、 Ikenoyaら, J. Neurochem. 81:9, 2002; Sasakiら, Pharmacol. Ther. 93:225, 2002); N-(4-ピリジル)-N’-(2,4,6-トリクロロフェニル)ウレア(Takamiら, Bioorg. Med. Chem. 12:2115, 2004);および3-(4-ピリジル)-1H-インドール(Yarrowら, Chem. Biol. 12:385, 2005)、GSK269962A(Axon medchem)、およびファスジル塩酸塩(Tocris Bioscience)が挙げられる。
【0057】
さらなる低分子Rhoキナーゼ阻害剤としては、PCT公開番号WO 03/059913、WO 03/064397、WO 05/003101、WO 04/112719、WO 03/062225およびWO 03/062227;米国特許第7,217,722号および同第7,199,147号;ならびに米国特許出願公開番号2003/0220357号、同第2006/0241127号、同第2005/0182040号および同第2005/0197328号(各々が、その全体において本明細書に参考として具体的に援用される)に記載されるものが挙げられる。
【0058】
別の実施形態において。上記ROCK阻害剤は、ROCK活性の負の調節因子である。ROCK活性化の負の調節因子は、小さなGTP結合タンパク質(例えば、Gem、RhoE、およびRad)を含み、これらは、ROCK活性を減弱し得る。ROCKの自己阻害活性はまた、そのカルボキシ末端とそのキナーゼドメインとの相互作用でキナーゼ活性を低減することによって実証されている。
【0059】
別の実施形態において、上記ROCK阻害剤は、ROCK1もしくはROCK2または両方のアイソフォームを特異的に結合する抗体であり得る。1つの例では、上記抗体は、ROCK1(例えば、ヒトROCK1)またはROCK2(例えば、ヒトROCK2)を特異的に結合する。例示であって限定ではなく、ROCKタンパク質に特異的な抗体は、Rhoもしくは他の結合パートナーへのROCKの結合に干渉し得るか、または上記抗体は、ROCKのキナーゼ活性を直接破壊し得る。
【0060】
特に好ましい実施形態において、上記ROCK阻害剤は、Y-27632である。(+/-)-trans-N-(4-ピリジル)-4-(1-アミノエチル)-シクロヘキサンカルボキサミドとしても公知のY-27632は、Rho関連キナーゼの活性を特異的に阻害する低分子阻害剤である。Y-27632は、米国特許第4,997,834号およびPCT公開番号WO 98/06433に開示される。いくつかの実施形態において、ROCK阻害剤がY-27632である場合、ROCK阻害剤の有効量は、約1~約100μM、または約5~約25μM、または約10μMである。
【0061】
B. 他の阻害剤
本開示の培養法は、1もしくはこれより多くのさらなる阻害剤、例えば、TGF-β/Smadシグナル伝達の阻害剤を含み得る。例えば、以下の実験結果はまた、A83-01およびY-27632を一緒に組み合わせることが、角化細胞を培養し、細胞外小胞を生成することに関して、低分子阻害剤なしより良好であるが、Y-27632単独ほどではないようにみえることを示す。A83-01は、TGF-βRs ALK4、5、および7(これは、TGF-β/Smadシグナル伝達経路の一部である)の強力な選択的阻害剤である。従って、いくつかの実施形態において、上記細胞は、TGF-β/Smadシグナル伝達経路における分子の発現を低減もしくは防止するか、または別の方法でダウンレギュレートする、タンパク質、核酸、低分子、抗体または他の薬剤とともに培養される。従って、TGF-β/Smadシグナル伝達の阻害剤としては、低分子、抗体、アンチセンス化合物およびTGF-β/Smadシグナル伝達分子の負の調節因子が挙げられるが、これらに限定されない。抗体、アンチセンス化合物および負の調節因子は、ROCK阻害剤に関して上記で考察された同じストラテジーに従って、TGF-βシグナル伝達分子(例えば、ALK4、5、および/または7)を標的とするように設計され得る。
【0062】
TGF-β/Smadシグナル伝達の例示的な低分子阻害剤としては、A83-01、SB431542、LDN-193189、ガルニセルチブ(LY2157299)、LY2109761、SB525334、SB505124、GW788388、LY364947、RepSox(E-616452)、LDN-193189 2HCl、K02288、BIBF-0775、TP0427736 HCl、LDN-214117、SD-208、バクトセルチブ(TEW-7197)、ML347、LDN-212854、DMH1、ドルソモルフィン(化合物C),2HCl、ピルフェニドン(S-7701)、スルファサラジン(NSC 667219)、AUDA、PD 169316、TA-02、ITD-1、LY 3200882、アラントラクトン、ハロフジノン、SIS3 HCl、ドルソモルフィン(化合物C)、およびヘスペレチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
他の例としては、2-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-4-イル-2-tert-ブチル-1H-イミダゾール-4-イル)-6-メチルピリジン、3-(6-メチルピリジン-2-イル)-4-(4-キノリル)-1-フェニルチオカルバモイル-1H-ピラゾール(A-83-01)、2-(5-クロロ-2-フルオロフェニル)プテリジン-4-イル)ピリジン-4-イルアミン(SD-208)、3-(ピリジン-2-イル)-4-(4-キノニル)]-1H-ピラゾール、2-(3-(6-メチルピリジン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-イル)-1,5-ナフチリジン(全てMerckから)およびSB431542(Sigma Aldrich)が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい例としては、A-83-01が挙げられる。代表的には、例えば、上記阻害剤、A83-01は、約1~約10μM、または約0.1~約10μM、または約0.5μMの濃度で使用される。
【0064】
阻害剤はまた、WO 2020/080550、WO 2017/119512、米国特許第10,961,507号、および米国特許出願第17/285,038号(これらの各々は、その全体において本明細書に参考として具体的に援用される)に記載される。
【0065】
III. 細胞外小胞
細胞外小胞(EVs)を含む無細胞組成物およびその使用方法が提供される。上記EVsは、因子の不均一な混合物(例えば、馴化培地)の一部またはこれらから単離される画分であり得る。他の実施形態において、EVs、またはその1もしくはこれより多くのサブタイプは、馴化培地から単離されるかまたは別の方法で収集される。上記EVs、またはその1もしくはこれより多くのサブタイプは、上記被験体への投与の前に、薬学的に受容可能な組成物(例えば、キャリアもしくはマトリクスもしくはデポー)中に懸濁され得る。
【0066】
A. 細胞外小胞
本開示の組成物は、代表的には、初代培養角化細胞に由来する細胞外小胞、または単離もしくは分画されたサブタイプまたはそれに由来する他の細胞の種類であり得るかまたはこれらを含み得る。細胞外小胞は、細胞から天然に放出される脂質二重層に範囲が定められた粒子であり、細胞とは異なり、複製できない。EVsは、直径が、最小の物理的に可能なユニラメラリポソーム(およそ20~30ナノメートル)に近いサイズから10ミクロンもしくはこれより大きい程度までの範囲に及ぶが、EVsの大多数は、200nmより小さい。
【0067】
多様なEVサブタイプが提唱されており、これらとしては、エクトソーム、マイクロ小胞(MV)、マイクロ粒子、エクソソーム、オンコソーム、アポトーシス小体(AB)、トンネルナノチューブ(TNT)などが挙げられる(Yanez-Mo,ら, J Extracell Vesicles. 4: 27066 (2015) doi:10.3402/jev.v4.27066. PMC 4433489)。これらのEVサブタイプは、大部分はバイオジェネシス(細胞経路、細胞または組織の実体、起源の状態)に基づいて、種々の、しばしば重複する定義によって定義されている(Thery,ら, J Extracell Vesicles. 7 (1): 1535750 (2018). doi:10.1080/20013078.2018.1535750、これは、その全体において本明細書に参考として具体的に援用される)。しかし、EVサブタイプは、サイズ、構成する分子、機能、または分離方法によっても定義され得る。Theryらにおいて考察されるように、EVsのサブタイプは、以下によって定義され得る:
a)EVsの物理的特性(例えば、サイズ(「小さなEVs」(sEVs)および「中程度の/大きなEVs」(m/lEVs)、範囲が定義される(例えば、それぞれ、<100nmもしくは<200nm[小]、もしくは>200nm[大および/もしくは中])または密度(低い、中程度の、高い(各範囲が定義される));
b)生化学的組成(CD63+/CD81+- EVs、アネキシンA5染色されるEVsなど);あるいは
c)状態または起源細胞の記載(ポドサイトEVs、低酸素EVs、大きなオンコソーム、アポトーシス小体)。
【0068】
従って、いくつかの実施形態において、上記組成物は、上記で考察されるとおりの(a)、(b)、または(c)に従って定義される1またはこれより多くのEVサブタイプであるか、またはこれを含む。
【0069】
いくつかの実施形態において、上記小胞は、エクソソーム(これはまた、「小EVs」、「sEVs」などと言及されるかまたはそれを含み得る)であるか、またはこれを含む。エクソソームは、エンドサイトーシスを促進する表面タンパク質を有し、それらは、高分子を送達する能力を有する。また、エクソソームが、これらが送達される個体と同じ個体から得られる場合、上記エクソソームは、免疫寛容性である。
【0070】
エクソソームは、30~150nm、しばしば40~100nmのサイズを有する小胞であり、大部分の細胞タイプにおいて観察される。エクソソームはしばしば、MVsに類似であるが、重要な差異を有する: 形質膜から直接発生するのではなく、それらは、多胞体(MVBs)へと内向き出芽によって生成される。エクソソームの形成は、3つの異なる段階を含む:(1)形質膜からのエンドサイトーシス小胞の形成、(2)管腔内小胞(ILVs)からなるMVBsをもたらすエンドソーム小胞膜の内向き出芽。および(3)これらのMVBsと形質膜との融合(これは、小胞内容物を放出する)(エクソソームとして公知)。
【0071】
エクソソームは、約5nmの平均厚を有する脂質二重層を有する(例えば、Li, Theranostics, 7(3):789-804 (2017) doi: 10.7150/thno.18133を参照のこと)。エクソソームの脂質構成成分としては、セラミド(ときおり、エクソソームをライソソームから区別するために使用される)、コレステロール、スフィンゴ脂質、および長くかつ飽和脂肪-アシル鎖を有するホスホグリセリドが挙げられる。エクソソームの外側表面は、代表的には、サッカリド鎖(例えば、マンノース、ポリラクトサミン、α-2,6シアル酸、およびN結合型グリカン)が豊富である。
【0072】
多くのエクソソームは、血小板由来成長因子レセプター、ラクトアドヘリン、膜貫通型タンパク質およびライソソーム関連膜タンパク質-2B、膜輸送および融合タンパク質(アネキシン、フロチリン、GTPase、ヒートショックタンパク質、テトラスパニンなど)、多胞体バイオジェネシスに関与するタンパク質、ならびに脂質関連タンパク質およびホスホリパーゼなどのタンパク質を含む。従って、これらの特徴的なタンパク質は、エクソソームの単離および定量のための良好な生体マーカーとして働く。エクソソームが運ぶことができる別の重要なカーゴは、デオキシ核酸(DNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)およびマイクロRNA(miRNA)のようなコードおよび非コードリボ核酸(RNA)を含む核酸である。
【0073】
いくつかの実施形態において、上記小胞は、1またはこれより多くの代替の細胞外小胞(例えば、ABs、MVs、TNTs、または本明細書中もしくは他の箇所で考察される他のもの)を含むか、またはそれらである。
【0074】
ABsは、サイズが不均一であり、形質膜から起こる。それらは、全ての細胞タイプから放出され得、サイズが約1~5μmである。
【0075】
20nm~1μmのサイズを有するMVsは、サイトゾルタンパク質の組み込みに伴うブレビングに起因して形成される。ABsとは対照的に、MVsの形状は均一である。それらは、形質膜から起こり、大部分の細胞タイプにおいて観察される。
【0076】
TNTsは、形質膜から形成される薄く(例えば、50~700nm)かつ100μmまでの長さのアクチンを含むチューブである。
【0077】
いくつかの実施形態において、上記EVsは、約20nm~約500nmの間である。いくつかの実施形態において、上記EVsは、約20nm~約250nmまたは200nmまたは150nmまたは100nmの間である。
【0078】
B. 細胞外小胞を作製する方法
1. 作製するための細胞供給源
細胞外小胞
本明細書で使用される場合、EVs(AB、MV、エクソソーム、およびTNTが挙げられる)とは、代表的には、細胞または組織によって形成される脂質小胞に言及する。概して、EVsは、培養されたおよび培養されていない組織、細胞、または流体、ならびに培養細胞に由来するかもしくは培養細胞によって調整された流体(例えば、馴化培地)を含め、被験体から直接、組織、細胞、および流体から、単離され得る。例えば、エクソソームは、生理学的流体(例えば、血漿、リンパ液、悪性胸水、羊水、乳汁、精液、唾液、および尿)中に存在し、培養細胞の培地へと分泌される。
【0079】
開示されるEVsは、代表的には、本明細書に開示される培養初代角化細胞から形成される。
【0080】
培養されたおよび培養されていない組織、細胞、または流体、ならびに培養細胞に由来するかもしくは培養細胞によって調整された流体(例えば、馴化培地)を含め、細胞外小胞を、被験体から直接、組織、細胞、および流体から単離する方法は、当該分野で公知である。例えば、Li, Thernaostics, 7(3):789-804 (2017) doi: 10.7150/thno.18133, Ha,ら, Acta Pharmaceutica Sinica B, 6(4):287-296 (2016) doi: 10.1016/j.apsb.2016.02.001, Skotland,ら, Progress in Lipid Research, 66:30-41 (2017) doi: 10.1016/j.plipres.2017.03.001, Phinney and Pittenger, Stem Cells, 35:851-858 (2017) doi: 10.1002/stem.2575(これらの各々は、参考として具体的に援用され、細胞外小胞、特に、エクソソームを単離することを記載する)を参照のこと。
【0081】
開示されるEVsは、代表的には、培養初代細胞またはそれに由来するその後の細胞の種類から収集される。いくつかの実施形態において、上記小胞は、処置されるべき被験体から単離された初代細胞から単離される。天然の供給源から単離することができるEVsを利用することの利点としては、人工的に生成された脂質小胞と関連し得る免疫原性の回避が挙げられる。
【0082】
上記EVsはまた、細胞株または組織から収集され得る。本開示のEVsは、最も代表的には、本明細書で記載されるように培養された角化細胞から収集される。いくつかの実施形態において、培養角化細胞の培地は、EVsを収集する前に交換される。このような培地は、収集培地として記載され得、上記培養培地と同じであっても異なっていてもよい。上記収集培地は、上記細胞を培養するために使用される1もしくはこれより多くの阻害剤を含み得るが、含む必要もない。
【0083】
2. 細胞外小胞を収集する方法
細胞外小胞(エクソソームを含む)は、分画遠心分離、浮遊密度勾配遠心分離、濾過、高速液体クラマトグラフィー、および免疫アフィニティー捕捉を使用して単離され得る。
【0084】
例えば、エクソソームを細胞培養物から単離するための最も一般的な単離技術のうちの1つは、分画遠心分離であり、それによって、培養培地中の大きな粒子および細胞デブリは、200~100,000×gの間の遠心力を使用して分離され、上記エクソソームは、エクソソームを約100,000×gで沈殿させることによって、上清から分離される。しかし、純度は、スクロースまたはOptiprepでの浮遊密度勾配遠心分離を使用してサンプルを遠心分離することによって改善され得る。重水素/スクロースベースの密度勾配超遠心分離と組み合わせたタンジェンシャルフロー濾過を使用して、臨床試験のための治療用エクソソームを単離した。
【0085】
限外濾過および高速液体クラマトグラフィー(HPLC)は、それらのサイズ差に基づいてEVsを単離するさらなる方法である。HPLCによって調製されるEVsは、高度に精製される。
【0086】
流体静力学的濾過透析は、細胞外小胞を尿から単離するために使用されている。
【0087】
EV収集のための他の一般的な技術は、アフィニティーベースの方法論を使用する正の選択および/または負の選択を伴う。抗体は、異なる媒体条件において固定され得、分離のために、磁性ビーズ、クロマトグラフィーマトリクス、プレート、およびマイクロ流体デバイスと組み合わされ得る。例えば、エクソソーム関連抗原(例えば、分化抗原群(CD)分子、CD63、CD81、CD82、CD9、上皮細胞接着分子(EpCAM)、およびRas関連タンパク質(Rab5))に対する抗体は、エクソソームのアフィニティーベースの分離のために使用され得る。これらのまたは異なる抗原を運ぶ非エクソソーム小胞はまた、類似の方法において単離され得る。
【0088】
マイクロ流体ベースのデバイスはまた、EVs(例えば、エクソソーム)を迅速にかつ効率的に単離するために使用されており、マイクロスケールにおいてエクソソームの物理的および生化学的特性の両方を利用している。サイズ、密度、および免疫アフィニティーに加えて、ソーティング技術(例えば、音響、電気泳動および電磁的操作)が実行され得る。
【0089】
エクソソームを含むEVsを特徴づける方法はまた、当該分野で公知である。エクソソームは、それらのサイズ、タンパク質含有量、および脂質含有量に基づいて特徴づけられ得る。エクソソームは、40~100nmの間のサイズを有する球形の構造であり、他の系(例えば、100~500nmのサイズ範囲を有するマイクロ小胞)と比較して遙かに小さい。いくつかの方法が、EVsを特徴づけるために使用され得る(フローサイトメトリー、ナノ粒子トラッキング分析、動的光散乱、ウェスタンブロット法、質量分析法、および顕微鏡検査技術が挙げられる)。EVsはまた、それらのタンパク質組成に基づいて特徴づけおよび記録され得る。例えば、インテグリンおよびテトラスパニンは、エクソソーム中で見出される最も存在量が多いタンパク質のうちの2つである。他のタンパク質マーカーとしては、TSG101、ALG-2相互作用タンパク質X(ALIX)、フロチリン1、および細胞接着分子が挙げられる。タンパク質と同様に、脂質は、EVsの主要な構成成分であり、それらを特徴づけるために利用され得る。
【0090】
C. 医薬組成物
EVs、および/または細胞を含む医薬組成物がまた,提供される。医薬組成物は、非経口的に(筋肉内(IM)、腹腔内(IP)、静脈内(IV)、皮下注射(SubQ)、真皮下(subdermal))、経皮的に(受動的にもしくはイオントフォレシスもしくはエレクトロポレーションを使用して)、または任意の他の適切な手段によって投与され得、各投与経路に適した投与形態において製剤化され得る。
【0091】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、全身に、例えば、静脈内もしくは腹腔内投与によって、標的化した細胞への上記組成物の送達に有効な量で投与される。
【0092】
好ましい実施形態において、上記組成物は、局所に、例えば、処置されるべき部位へ直接またはその近傍に注射することによって投与される。代表的には、局所注射は、全身投与によって達成され得るものより大きな上記組成物の局所濃度の増加を引き起こす。
【0093】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、カテーテルまたはシリンジを使用することによって、適切な細胞へと局所に送達される。このような組成物を細胞に局所に送達する他の手段としては、注入ポンプ(例えば、Alza Corporation, Palo Alto, Calif.)を使用することまたは上記組成物をポリマー埋込物(例えば、P. Johnson and J. G. Lloyd-Jones, eds., Drug Delivery Systems: Fundamentals and Techniques (Chichester, England: Ellis Horwood Ltd., 1988 ISBN-10: 0895735806を参照のこと)へと組み込むことが挙げられ、これらは、埋込物の直ぐ近くの領域に材料の徐放をもたらし得る。
【0094】
上記EV組成物は、直接(例えば、それを上記細胞とまたはこれに接触させることによって)、または間接的に(例えば、任意の生物学的プロセスの作用を通じて)、いずれかで上記細胞に提供し得る。例えば、上記小胞は、生理学的に受容可能なキャリア中に製剤化され得、上記細胞の周りの組織または流体へと注射され得る。
【0095】
インビボでの方法のための例示的な投与量は、以下の実験において考察される。さらなる試験が行われるにつれて、種々の患者における種々の状態の処置に適した投与量レベルに関する情報が明らかになり、当業者は、レシピエントの治療状況、年齢、および全身の健康状態を考慮して、適切な投与を確認することができる。選択される投与量は、所望の治療効果、投与経路、および所望の処置の継続期間に依存する。
【0096】
一般に、局所注射または注入に関しては、投与量は低くてもよい。一般に、本開示の小胞を使用して個体に投与される活性薬剤の総量は、その同じ所望のもしくは意図した効果のために投与されなければならない関連する活性薬剤の量より小さくすることができる、かつ/または低減した毒性を示し得る。
【0097】
好ましい実施形態において、上記組成物は、非経口注射(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、真皮下など)によって、水性溶液で投与される。
【0098】
上記製剤は、懸濁剤または乳剤の形態にあり得る。一般に、有効量の、1またはこれより多くの活性薬剤を含む医薬組成物が提供され、必要に応じて、薬学的に受容可能な希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバントおよび/またはキャリアを含む。このような組成物は、希釈剤、滅菌水、種々のpHおよびイオン強度にある種々のバッファーの内容の緩衝化塩類溶液(例えば、Tris-HCl、アセテート、ホスフェート);ならびに必要に応じて、添加剤(例えば、洗浄剤および可溶化剤(例えば、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80(ポリソルベート20または80ともいわれる))、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、ならびに保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール)および増量物質(例えば、ラクトース、マンニトール)を含み得る。非水性溶媒またはビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物性油(例えば、オリーブ油およびコーン油)、ゼラチン、および注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)である。上記製剤は、凍結乾燥されてもよく、使用直前に再溶解/再懸濁されてもよい。上記製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通過させる濾過によって、滅菌剤を上記組成物に組み込むことによって、上記組成物に照射することによって、または上記組成物を加熱することによって、滅菌され得る。
【0099】
経皮製剤がまた、調製され得る。これらは、代表的には、軟膏剤、ローション剤、スプレー剤、またはパッチ剤であり、これらは全て、標準的技術を使用して調製され得る。経皮製剤は、浸透増強剤を含み得る。化学的増強剤ならびにエレクトロポレーションおよびマイクロニードルを含む物理的方法は、この方法とともに機能し得る。代表的には、浸透増強剤が、上記EVsの生物学的活性を破壊しないおよび/または排除しないように選択される。
【0100】
D.使用方法
本開示の組成物を使用する方法がまた、提供される。いくつかの実施形態において、上記方法は、細胞を接触させること、または投与することを必要とする被験体に、有効量の、細胞外小胞を含む組成物を投与することを包含する。
【0101】
常在皮膚細胞(例えば、角化細胞、線維芽細胞、メラノサイト、および炎症性細胞)は、それらの生物学的状態に応じて種々のタイプのEVsを分泌し得る(Nasiriら, 「Shedding light on the role of keratinocyte-derived extracellular vesicles on skin-homing cells」, Stem Cell Research & Therapy, volume 11, Article number: 421 (2020)(これは、その全体において本明細書に参考として具体的に援用される))。これらの小胞は、皮膚の生理学的特性および病理的過程(例えば、色素沈着、皮膚免疫、および創傷治癒)に影響し得る。角化細胞は皮膚細胞の大部分を構成することから、これらの細胞から分泌されるEVsは、他の皮膚細胞の病態生理学的挙動を変化させ得る。例えば、角化細胞EVsは、DNA、miRNA、mRNA、およびタンパク質を含む種々の生体分子を有することが示されている。それらは、角化細胞とメラノサイト、角化細胞と免疫細胞との間のクロストークを促進し、ホメオスタシスおよび創傷治癒中の細胞増殖、移動、および血管新生をモジュレートすると考えられている。従って、角化細胞EVsは、栄養補給および治療的アプローチのために使用され得ると考えられる。例えば、メラノサイトタンパク質の調節における角化細胞由来のエクソソームの生理学的機能はまた、十分に確立されており、色素沈着低下傷害および色素沈着過剰障害に関する治療的アプローチを提供し得る。さらに、角化細胞由来のエクソソームは、APCsとの相互作用を介して細胞間伝達物質および免疫調節物質として機能し得、これは、免疫応答の低減を通じて治療的アプローチを提供し得る。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示の方法に従って生成されるエクソソーム/EVsは、エクソソームと接触した細胞においてI型コラーゲン(COL1A1)および/またはエラスチンの発現を増加させ得る。このような細胞としては、線維芽細胞が挙げられ得るが、これに限定されない。コラーゲンおよびエラスチンは、細胞外マトリクスを形成する主要な線維である。例えば、Mehta-Ambalal, J Cutan Aesthet Surg. 2016 Jul-Sep; 9(3): 145-151. doi: 10.4103/0974-2077.191645を参照のこと。両方とも、線維芽細胞によって形成される。コラーゲンは、引張り強さを担い、エラスチンは、皮膚に弾性を提供する。両方の生成および密度は、年齢の関数として減少し、たるみおよび皺を生じる。創傷は、これらの線維の量および質を変化させる。従って、本開示の方法に従って作製されたエクソソームは、皮膚の老化および瘢痕化のような審美的状態を管理するために使用され得る。
【0103】
さらにまたは代わりに、遺伝的物質、タンパク質、またはさらには阻害剤薬剤のような特定のさらなる治療用分子が、EVsへと操作され得、例えば、色素沈着異常のような皮膚障害、乾癬のような自己免疫疾患、慢性創傷などの処置のためにそれらの生物学的活性を改善するために、標的の異常な細胞、すなわち、線維芽細胞、メラノサイト、または炎症性細胞へと送達され得る。エクソソームを含む予め形成された小胞へと薬物をロードする方法は、当該分野で公知であり、Haら, Acta Pharmaceutica Sinica B, 6(4):287-296 (2016) doi: 10.1016/j.apsb.2016.02.001において総説され、Yangら, J Control Release, 243:160-171 (2016). doi: 10.1016/j.jconrel.2016.10.008において考察される(これらの各々は、参考として具体的に援用される)。
【0104】
簡潔には、低分子は、混合およびインキュベーションによって、ならびに例えば、表面要素との複合体化を介してロードされている。タンパク質およびペプチドは、凍結融解サイクリング、超音波処理、および押し出し手順を介して、透過処理剤(permeabilizer)(例えば、サポニン)ありまたはなしでのインキュベーションによってロードされている。核酸は、化学的トランスフェクションおよびエレクトロポレーションによってロードされている。Haら, Acta Pharmaceutica Sinica B, 6(4):287-296 (2016) doi: 10.1016/j.apsb.2016.02.001の表2、およびその中で引用される参考文献も参照のこと。
【0105】
従って、いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、細胞と接触させられるか、または皮膚の1もしくはこれより多くの細胞タイプ(例えば、角化細胞、線維芽細胞、メラノサイト、炎症性細胞など)に対する生化学的もしくは生理学的効果を有するように、投与することを必要とする被験体に有効量において投与される。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、例えば、栄養補給または治療的効果を有するように、投与することを必要とする被験体に有効量において投与される。いくつかの実施形態において、上記組成物は、例えば、被験体の皮膚との接触によって、局所投与される。例示的な非限定的疾患としては、皮膚障害(例えば、色素沈着異常)、乾癬のような自己免疫疾患、慢性創傷、アトピー性皮膚炎など、ならびに本明細書および他の箇所で言及される他のものが挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態において、上記組成物は、皮膚、刺激、ストレス、アレルギー、感染および/または皮膚の熱/発汗を処置または防止するために使用される。例えば、以下の実験は、本開示の方法に従って調製された角化細胞EVsが、アトピー性皮膚炎の病因の誘導に高度に関連する因子であるTSLP、IL-25、およびIL-33を阻害したことを示す。アトピー性皮膚炎(湿疹としても公知のとおり)は、赤いかつ痒みのある皮膚によって特徴づけられる状態である。それは、小児において一般的であるが、任意の年齢で起こり得る。アトピー性皮膚炎は、長期間持続し(慢性的であり)、周期的に発赤する傾向があり、喘息または枯草熱が付随し得る。アトピー性皮膚炎症状は、個人間で広く変動し、以下が挙げられ得る: 乾燥肌;痒み(これは、特に夜間にひどくなる場合がある);赤から褐色がかった灰色の斑(特に、手、足、足首、手首、首、上胸部、瞼、肘および膝の屈曲部の内側、ならびに幼児においては顔面および頭皮):小さな盛りあがった隆起(これは、掻いた場合には流体を漏出して、かさぶたになる場合もある);肥厚化した、ひび割れた、落屑性の皮膚;および掻いたことで荒れている、敏感な、腫脹している皮膚。
【0107】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物(例えば、開示される培養法によって調製されるEVsおよび/またはそこから形成される組成物)は、旧来の(例えば、長期間でない、再プログラミングしない方法)に従って調製した対応する組成物より有効である。いくつかの実施形態において、上記旧来の方法は、上記角化細胞をROCK阻害剤および/またはTGFβシグナル伝達の阻害剤とともに培養することをしない。従って、いくつかの実施形態において、上記旧来の培養方法は、上記角化細胞をROCK阻害剤および/またはTGFβシグナル伝達の阻害剤とともに培養することをしない。
【0108】
例えば、以下の実験は、本明細書で開示される長期間の培養法に従って調製したEVsの阻害効果が、旧来の角化細胞培養法に従って調製したEVsより遙かに強いことを示す。従って、いくつかの実施形態において、処置されるべき皮膚疾患または障害は、アトピー性皮膚炎である。いくつかの実施形態において、本開示の方法論によって調製したEVsは、アトピー性皮膚炎の1もしくはこれより多くの症状または生化学的もしくは生理学的指標を低減または防止する。生化学的および生理学的指標としては、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、Th2、好酸球動員ケモカイン、炎症性サイトカイン(例えば、IL-33およびIL-25)、およびこれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。従って、いくつかの実施形態において、本開示の方法論によって調製されたEVsは、アトピー性皮膚炎の1もしくはこれより多くの症状または生化学的もしくは生理学的指標を、旧来の(例えば、長期間でない)培養法に従って調製されたEVsより大きい程度まで低減または防止する。
【0109】
いくつかの実施形態において、上記EVsは、因子の不均一な混合物(例えば、馴化培地またはこれらから単離される画分)の一部として投与され得る。いくつかの実施形態において、EVs、またはそのより多くのサブタイプのより多くのものは、馴化培地から単離されるかまたは別の方法で収集される。上記EVs、またはその1もしくはこれより多くのサブタイプは、上記被験体への投与の前に、薬学的に受容可能な組成物(例えば、キャリアもしくはマトリクスもしくはデポー)中に懸濁され得る。
【0110】
EVsは、細胞応答を調節するために、遠隔領域において複数の細胞タイプと即座に相互作用する汎用性および能力を有し得る(Zhang ら, Cell Prolif., 49:3-13 (2016))。従って、目的の部位またはそこに隣接した部位への局部または局所投与は好ましいが、全身投与も企図される。
【0111】
処置方法の投与頻度は、例えば、毎日、毎週、2週間毎、または毎月1回、2回、3回、4回またはより多くの回数であり得る。いくつかの実施形態において、上記組成物は、1日ごと、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、7日ごと、8日ごと、9日ごと、10日ごと、11日ごと、12日ごと、13日ごと、14日ごと、15日ごと、16日ごと、17日ごと、18日ごと、19日ごと、20日ごと、21日ごと、22日ごと、23日ごと、24日ごと、25日ごと、26日ごと、27日ごと、28日ごと、29日ごと、30日ごと、または31日ごとに1回、被験体に投与される。いくつかの実施形態において、投与頻度は、毎週1回、2回もしくは3回であるか、または2週間ごとに1回、2回もしくは3回であるか、または4週間ごとに1回、2回もしくは3回である。いくつかの実施形態において、上記組成物は、1週間に1~3回、好ましくは2回、被験体に投与される。
【0112】
いくつかの実施形態において、被験体に対する本開示の組成物および方法の効果は、コントロールに対して比較される。例えば、特定の症状、薬理学的、もしくは生理学的指標(上記でおよび本明細書中の他の箇所で言及したものを含む)に対する上記組成物の効果は、処置されていない被験体、または処置前の被験体の状態と比較され得る。いくつかの実施形態において、上記症状、薬理学的、もしくは生理学的指標は、処置前に被験体において測定され、処置が開始された後に再び1回もしくはこれより多く測定される。いくつかの実施形態において、上記コントロールは、参照レベル、または処置されるべき疾患もしくは状態を有しない1もしくはこれより多くの被験体(例えば、健常被験体)において上記症状、薬理学的、もしくは生理学的指標の測定に基づいて決定した平均である。いくつかの実施形態において、処置の効果は、当該分野で公知の従来の処置(例えば、本明細書中で考察されるもののうちの1つ)と比較される。
【0113】
E.キット
本開示の組成物を、例えば、輸送および貯蔵ならびに/または投与のために薬学的に受容可能なキャリア中に含む投薬単位がまた、開示される。キットの構成成分は、個々にパッケージされていてもよく、無菌であり得る。いくつかの実施形態において、上記組成物の有効量を含む薬学的に受容可能なキャリアは、無菌バイアルで輸送および貯蔵される。上記無菌バイアルは、1またはこれより多くの用量のための十分な組成物を含み得る。上記組成物は、投与に適した体積で輸送および貯蔵されてもよいし、または投与前に希釈される濃度で提供されてもよい。別の実施形態において、薬物を含む薬学的に受容可能なキャリアは、シリンジで輸送および貯蔵され得る。
【0114】
種々の容量のシリンジまたは押しつぶして開口部から液体組成物を押し出すことができる変形可能な側面を有する容器(例えば、プラスチック容器または側面がプラスチックの容器)を含むキットが提供される。シリンジのサイズおよび設計は、投与経路に依存する。キットのいずれも、使用のための指示を含み得る。
【0115】
本発明は、以下の番号付けした段落によってさらに理解され得る:
1. 細胞外小胞(EVs)を作製する方法であって、前記方法は、ROCK阻害剤を含む培養培地中で角化細胞を培養すること、および前記角化細胞によって分泌されたEVsを採取することを包含する方法。
【0116】
2. 前記ROCK阻害剤は、Y-27632である、段落1に記載の方法。
【0117】
3. 前記Y-27632は、約1μM~約100μM、または約5μM~約25μM、または約10μMの濃度にある、段落2に記載の方法。
【0118】
4. 前記細胞は、TGFβシグナル伝達の阻害剤とともに培養される、段落1~3のいずれか1項に記載の方法。
【0119】
5. TGFβシグナル伝達の前記阻害剤は、A83-01である、段落4に記載の方法。
【0120】
6. 前記A83-01は、約1μM~約10μM、または約0.1μM~約10μM、または約0.5μMの濃度にある、段落5に記載の方法。
【0121】
7. EVsの増殖および/または分泌は、前記ROCK阻害剤の非存在下と比較して、その存在下で増加する、段落1~6のいずれか1項に記載の方法。
【0122】
8. 前記細胞は、前記ROCK阻害剤および必要に応じてTGFβシグナル伝達の阻害剤中で、少なくとも5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間、もしくは20日間;または約5日間~約25日間、またはその間の任意の部分範囲もしくは整数の日数にわたって、必要に応じて、約7日間~約22日間、約5日間~約25日間、もしくは約10日間~約20日間、もしくは約12日間~約17日間;または約13日間、14日間、もしくは15日間培養される、段落1~7のいずれか1項に記載の方法。
【0123】
9. 前記EVsは、エクソソームを含むかまたはそれからなる、段落1~8のいずれか1項に記載の方法。
【0124】
10. 段落1~9のいずれか1項に記載の方法に従って作製される細胞外小胞(EVs)。
【0125】
11. 段落10に記載のEVsの有効量を含む医薬組成物。
【0126】
12. 被験体を処置する治療的または非治療的方法であって、前記方法は、前記被験体に段落11に記載の医薬組成物を投与することを包含する方法。
【0127】
13. 前記被験体は、皮膚疾患もしくは障害または傷害を有する、段落12に記載の方法。
【0128】
14. 皮膚を改善することを必要とする被験体の皮膚を改善する治療的または非治療的方法であって、前記方法は、前記被験体に段落11に記載の医薬組成物を投与することを包含する方法。
【0129】
15. 皮膚の老化および前記皮膚の瘢痕化を低減または防止する治療的または非治療的方法であって、前記方法は、前記被験体に段落11に記載の医薬組成物を投与することを包含する方法。
【0130】
16. 皮膚および/またはその細胞と前記医薬組成物とを接触させることを包含する、段落12~15のいずれか1項に記載の方法。
【0131】
17. 前記医薬組成物は、前記被験体の細胞においてI型コラーゲン(COL1A1)の発現を増加させる、段落12~16のいずれか1項に記載の方法。
【0132】
18. 前記医薬組成物は、前記被験体の細胞においてエラスチンの発現を増加させる、段落12~17のいずれかに記載の方法。
【0133】
19. 前記細胞は、線維芽細胞である、段落16~18のいずれか1項に記載の方法。
【0134】
20. 前記線維芽細胞は、皮膚線維芽細胞である、段落19に記載の方法。
【0135】
21. アトピー性皮膚炎を処置する方法であって、前記方法は、前記被験体に段落11に記載の医薬組成物を投与することを包含する方法。
【0136】
22. 皮膚および/またはその細胞と前記医薬組成物とを接触させることを包含する、段落21に記載の方法。
【0137】
23. 前記被験体の皮膚は、乾燥している、落屑性である、荒れている、敏感な、腫脹している、赤い、隆起を含むか,またはこれらの組み合わせである、段落22に記載の方法。
【0138】
24. 前記医薬組成物は、前記被験体の細胞における胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、Th2、好酸球動員ケモカイン、炎症性サイトカイン(例えば、IL-33およびIL-25)、またはこれらの組み合わせの発現を低減する、段落21~23のいずれか1項に記載の方法。
【0139】
25. 前記医薬組成物は、前記被験体の細胞におけるTSLP、IL-25、IL-33またはこれらの組み合わせの発現を低減する、段落24に記載の方法。
【0140】
26. 前記細胞は、角化細胞である、段落16~18のいずれか1項に記載の方法。
【0141】
27. 前記角化細胞は、表皮角化細胞である、段落26に記載の方法。
【0142】
28. 前記EVは、非長期間のまたは再プログラミングしない角化細胞培養法に従って調製したEVsより有効である、段落12~27のいずれか1項に記載の方法。
【0143】
29. 前記非長期間のまたは再プログラミングしない角化細胞培養法は、前記角化細胞をROCK阻害剤とともに培養することをしない、段落28に記載の方法。
【0144】
30. 前記非長期間のまたは再プログラミングしない角化細胞培養法は、前記角化細胞を、TGFβシグナル伝達の阻害剤とともに培養することをしない、段落28または29に記載の方法。
【実施例
【0145】
実施例
実施例1: Rock阻害剤は、角化細胞の長期間培養中に細胞外小胞の分泌を増強する
材料および方法
「Y」とは、Y-27632(Rock阻害剤)をいう。
「A」とは、A83-01(TGFβシグナル伝達阻害剤)をいう。
「KC」とは、角化細胞の細胞をいう。
【0146】
ヒト初代角化細胞を、以下のスケジュールに従って、YまたはY+Aを補充して、または補充せずに、EpiLifeTM培地中で培養し、細胞外小胞分泌に関して分析した。10μM Y-27632(Wako)および0.5μM A-83-01(Wako)を使用した。収集培地は、阻害剤なしの無血清EpiLifeTM培地であった。従って、実験、または実験の段階に応じて、ヒト表皮角化細胞を、低分子阻害剤、すなわち、10μM Y-27632(Wako)単独、または10μM Y-27632 + 0.5μM A-83-01(Wako)ありまたはなしで(without or without)、EpiLifeTM Mediumのような無血清倍中で培養した。
【表1】
【0147】
結果
角化細胞の長期間培養を、低分子量化合物、YおよびY+Aを添加することによって行った。
【0148】
通常KC(EpiLife培養のみコントロール)から分泌されたEVsの量を、低分子量化合物YおよびYAとともに長期間培養したKCから分泌されたEVsの量と比較した。
【0149】
結果は、低分子量化合物Yとの培養が、細胞増殖およびEVs分泌を増加させることを示した。非処理細胞は、わずかに進んだ細胞分化を示した。Y処理細胞は、良好な細胞成長および良好な形態を示した。YA処理細胞は、状態が悪くかつ不十分な接着を示した。
【0150】
Yとの培養によって、細胞増殖は、Yの添加なしで通常細胞を培養した場合と比較して増強された。通常KC-EVsと比較すると、分泌されるEVsの量は、低分子量化合物YおよびYAとの培養によって増加した。しかし、細胞の形態は、低分子量化合物Yに関して最良であり、細胞の状態はYA培養において悪かった。
【0151】
結果を、表2(以下)および図1A-5に図示する。
【0152】
阻害剤処理角化細胞(Y単独またはY+A)は、阻害剤なしの角化細胞の元々の培養と比較して、非常に多くのエクソソーム/EVを分泌した(例えば、図4および5を参照のこと)。阻害剤処理角化細胞のエクソソームs/EVsは、CD9陽性およびCD63陽性を示した。ナノ粒子トラッキングシステムnanosightは、粒子が直径サイズおよそ100nmであることを示した。これは、上記粒子がエクソソームまたは小さなEVsであることと一致する。
【表2】
【0153】
実施例2: 培養角化細胞からのエクソソームは、コラーゲンおよびエラスチンの発現を増加させる
材料および方法
エクソソーム/EVsを、10μM Y-27632で14日間、Y(阻害剤)で処理した角化細胞から採取し、培養培地を採取した培養上清へと交換した。上記培養上清を濾過して、細胞デブリを除去し、次いで、超遠心分離してエクソソーム/EVsを採取および精製した。その精製したエクソソーム/EVsをPBS(-)中で再懸濁し、粒子数をNanosightで計数した。
【0154】
ヒト皮膚線維芽細胞の培養: ヒト皮膚線維芽細胞(成体、通常の、凍結保存<NHDF-c Adult>: C-12302 Funakoshi p2を、HFDM-1培地(Funakoshi 2102P05)中でp10(継代10回)まで培養した(70%コンフルエント。細胞培養)ディッシュ6cm)。
【0155】
角化細胞のエクソソーム/EVsを、ヒト線維芽細胞(グルコースを補充したDMEM中で培養)に、1,000 エクソソーム/ウェルで添加した。
【0156】
72時間後、線維芽細胞を回収し、mRNAをQiagen’s RNeasy Miniキットで細胞から調製し、cDNAを合成し、I型コラーゲン(COL1A1)(ThermoFisher Assay ID: Hs00164004_m1)およびエラスチン(ThermoFisher Assay ID: Dr03073243_g1)の発現レベルを、Taqmanプローブ(カタログ番号: 4331182)での定量的PCRによって定量した。
【0157】
結果
結果を図6に示し、低分子量化合物で処理したヒト角化細胞によって分泌されるエクソソーム粒子がヒト線維芽細胞においてI型コラーゲンおよびエラスチン遺伝子の発現を誘導することを示す。これらの結果は、低分子量化合物で処理した角化細胞に由来するエクソソームの皮膚を美しくする効果と一致する。
【0158】
実施例3: 培養角化細胞に由来するエクソソームは、アトピー性皮膚炎を誘発する因子を阻害する
材料および方法
アトピー性皮膚炎のインビトロモデルを開発した。これを図7Aに図示する。表皮角化細胞を、10μM IL-10、TNFα、およびIFNγとともに24時間培養して、炎症を誘発した。
【0159】
長期角化細胞を、角化細胞を10μM Y-27632で14日間処理することによって調製した。エクソソーム/EVsを、通常角化細胞(EpiLifeのみ)および長期角化細胞(EpiLifeのみ)を48時間培養し、その上清を収集することによって調製した。その培養上清を濾過して、細胞デブリを除去し、次いで、超遠心分離して、エクソソーム/EVsを採取および精製した。その精製したエクソソーム/EVsをPBS(-)中で再懸濁し、粒子数をNanosightで計数した。
【0160】
角化細胞のエクソソーム/EVsを、表皮角化細胞に48時間、100粒子/細胞の濃度で添加した。TSLP、IL-25、およびIL-33の遺伝子発現をqPCRによって分析した。
【0161】
結果
胸腺間質リンホポエチン(TSLP)、Th2、および好酸球動員ケモカインを角化細胞から放出されるIL-33およびIL-25と一緒に刺激するバリア破壊および角化細胞傷害は、アトピー性皮膚炎の病因における重要なプレイヤーである。例えば、Rerknimitrら, Inflamm Regen. 37:14, doi:10.1186/s41232-017-0044-7 (2017)を参照のこと。
【0162】
インビトロモデルを開発および使用して、アトピー性皮膚炎の病因に対する角化細胞のエクソソーム/EVsの影響を試験した。結果(図7Bに示される)は、長期培養を使用して調製した角化細胞のエクソソーム/EVsがTSLP、IL-25、およびIL-33(これは、アトピー性皮膚炎の病因の誘発に非常に関連している)を有意に阻害したことを示す。長期培養によって調製した角化細胞のエクソソーム/EVsの阻害効果は、通常培養の角化細胞から調製したエクソソーム/EVsのものより遙かに強力であった。これらの結果は、再プログラミングされた角化細胞から採取したエクソソーム/EVsが、アトピー性皮膚炎の有効な処置であり得るという結論を裏付ける。
【0163】
別段定義されなければ、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示の発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で引用される刊行物およびこれらが飲料される資料は、参照により具体的に援用される。
【0164】
当業者は、慣用的な実験法のみを使用して、本明細書に記載される発明の具体的実施形態に対する多くの均等物を認識するかまたは確認し得る。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されることが意図される。
図1A-1B】
図1C-1D】
図1E-1F】
図1G-1H】
図2A-2B】
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C-3D】
図3E-3F】
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
【国際調査報告】