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特表2024-539221パウチセルを有するバッテリシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】パウチセルを有するバッテリシステム
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/367 20210101AFI20241018BHJP
   H01M 50/211 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20241018BHJP
   H01M 50/35 20210101ALI20241018BHJP
【FI】
H01M50/367
H01M50/211
H01M50/342 101
H01M50/35 201
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523913
(86)(22)【出願日】2022-10-18
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 US2022046994
(87)【国際公開番号】W WO2023069415
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】63/257,395
(32)【優先日】2021-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524147395
【氏名又は名称】カデンツァ・イノベーション・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オネルード,トード・ペール・イェンス
(72)【発明者】
【氏名】シ,ジェイ・ジエ
(72)【発明者】
【氏名】チェンバレン,ザ・セカンド,リチャード・ブイ
【テーマコード(参考)】
5H012
5H040
【Fターム(参考)】
5H012AA03
5H012BB08
5H012CC10
5H040AA33
5H040AT04
5H040AY05
(57)【要約】
ポリマーセル/パウチセルを含むバッテリシステムが提供される。ポリマーセル/パウチセルは、ポリマー/パウチセル内の圧力増加、例えば、しきい値レベルを超える圧力上昇に応答して、ポリマー/パウチが方向的に制御された方法でガスを解放するように構成され、解放されたガスとの連通を容易にするために配置された通気構造を通じてバッテリ筐体からのガスの引出しを容易にする。バッテリ筐体は、一般的に、封止、例えば、密封して封止されており、ポリマーセル/パウチセルは、例えば、交互配置されたバリア構造を含んでよい支持構造によって互いから離間してよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリシステムであって、
内部空間を画定する筐体と、
内部空間内に配置された複数のポリマー/パウチセルと、
離間した配向におけるポリマー/パウチセルの導入のための領域を画定する支持構造と
を備え、
複数のポリマー/パウチセルはそれぞれ、ポリマー/パウチセルのうちの1つから解放されたガスが所望の方向へ方向付けられるように優先的故障の領域を画定している、バッテリシステム。
【請求項2】
優先的故障の領域が、1つ以上の通気スコアを含む、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項3】
優先的故障の領域が、少なくとも1つの弱められた封止エリアを含む、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項4】
筐体が、封止されている、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項5】
筐体の面に関連した通気口をさらに備える、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項6】
ポリマー/パウチセルのうちの1つから解放されたガスのための所望の方向が、通気口に向かっている、請求項5に記載のバッテリシステム。
【請求項7】
筐体の内部空間が、共有された雰囲気領域を画定している、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項8】
ポリマー/パウチセルのうちの1つから解放されたガスのための所望の方向が、共有された雰囲気領域に向かっている、請求項7に記載のバッテリシステム。
【請求項9】
支持構造が、部分的に、複数の交互配置されたバリア構造によって画定されている、請求項1に記載のバッテリシステム。
【請求項10】
通気口が、フレームアレスタを装備する、請求項5に記載のバッテリシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、引用によりその全体が本明細書に組み込まれる、2021年10月19日に出願された米国仮特許出願第63/257,395号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、ポリマーセル/パウチセルを含むバッテリシステムに関する。開示されたポリマーセル/パウチセルは、ポリマー/パウチセル内の圧力の上昇、例えば、しきい値レベルを超える圧力上昇に応答して、ポリマー/パウチが方向的に制御された方法でガスを解放し、解放されたガスの連通を容易にするために配置された通気構造を通じてバッテリ筐体からのガスの引出しを容易にするように構造化されている。バッテリ筐体は、一般的に、封止、例えば、密封して封止されており、ポリマーセル/パウチセルは、例えば、交互配置されたバリア構造を含んでよい支持構造によって互いから離間していてよい。このようなバッテリシステム内の個々のセルは、共通のバスバー端子に電気的に接続される前に個々にヒューズが付けられてよい。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオンバッテリシステムは、動力駆動のためのエネルギ貯蔵および定置システムのためのエネルギ貯蔵を含む、多様な用途において使用される。これらのバッテリシステムは、小さな円筒状セル、より大きな角柱セル、またはポリマー(またはパウチ)セルを含む、様々なタイプの多数のLiイオンセルを組み込んだモジュールを有する。システムの容量および電圧は、モジュール内でセルを並列および/または直列に接続することによって制御される。より大きなシステムは、類似の直列または並列接続を有する、多数のモジュールを有する。コストおよび性能を最適化するために、バッテリのそれぞれの直列要素は、Ahに関して同じ容量を有する必要がある。また、バッテリシステムにおいて使用される直列のバッテリモジュールまたはセルの各ストリングは、最適な性能のために同じ相対電圧で動作する必要がある。用途に応じて、これらのバッテリは、さらに、幾何学的フォーマット/フォームファクタおよび空気または液体冷却回路によって冷却される能力など、追加的な機械的要件を有する場合がある。
【0004】
現在の慣行では、ローカルグリッドポイントが、人口過密なエリアなどの高使用量のエリアへのエネルギの流れをサポートすることができないところにおいて、高い電力利用の時間中にグリッドをサポートするためにバッテリエネルギ貯蔵システム(BESS)が配備されている。他のエリアでは、太陽光および風力、ならびに水力発電力のより高い利用をサポートするようにグリッドを強化するということが望まれている。低電力期間中に天然ガス、石炭および石油よりも安価な、再生可能資源からのエネルギをBESSに貯蔵し、高使用中に配備することができる。第3のオペレーション領域は、大きなバッテリ配列において数百のセルが動作させられる大型動力システムにある。
【0005】
しかしながら、全てのこれらのタイプの大型バッテリシステムの場合、伝播する暴走および可燃性ガスがエネルギ貯蔵設備に火災および爆発を経験させている分野では、火災リスクが識別されている。このリスクは、2つの主な原因に起因し得る:
1.時には伝播を伴う、熱暴走;および
2.爆発性の火災を生じる、可燃性/爆発性ガスの排出および関連する発火
【0006】
外部短絡および過充電により発生する故障は、ヒューズおよび電子防護によって軽減され得る。しかしながら、これらの壊滅的なイベントの大部分は、Liイオンセルにおける内部短絡から発生し、その結果、セルが熱暴走およびモジュール内の近隣のセルへの伝播を経験する。次いで、モジュールからモジュールへの伝播が生じ、カスケード的な火災が生じ、これは、バッテリラック全体およびあらゆる近隣のバッテリラックへ広がる可能性がある。伝播せずに1つのセルが故障するときでも、1つのセルの容量は非常に高い可能性があるため、排出された大量の可燃性ガスがその可燃限界に達し、さらなる火災伝播および追加的な爆発をトリガする可能性がある爆発および火災が開始される。
【0007】
BESSシステムは、一般的に、筐体または専用の建物に設置され、エネルギを貯蔵する多数のバッテリラック、インバータ(DC電圧を、電力グリッドに接続することができるAC電圧に変換する)、および制御システムからなり、制御システムは、バッテリラックと、インバータと、インバータからグリッドへの制御(建物管理システムまたは中央管理ディスパッチなど)との間で通信する。内部火災(通常は内部短絡による)が起きたときの、密にパッケージングされたLiイオンバッテリの伝播暴走のリスクは、Liイオングリッド貯蔵システムの幅広い採用および成功に対して深刻な問題である。同様に、電気自動車、バス、ボートおよび電車などの原動力のためのバッテリシステムの場合、1つ以上の電気モータは、バッテリシステムからDC電力を供給され、内部短絡時に爆発、火災および伝播を経験する可能性がある封止された筐体内にバッテリセルの大きな配列を有する。セル容量が大きくなるほど、囲まれたバッテリ空間内でより低い可燃限界、ひいては爆発のリスクに達するリスクが高まる。
【0008】
したがって、ポリマー/パウチセル内の圧力増加に応答して、バッテリシステムが、バッテリシステム内のまたはバッテリシステムによるカスケード故障の可能性を排除、低減および/または制御するように動作する、バッテリシステムが必要とされている。本開示は、上記の必要に、費用対効果が良く確実な方法で効果的に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、特に、パウチがシステムに加えられていない固体ポリマー電解質、ゲル電解質または液体電解質あるいは電極ロールからなる複数の電極アセンブリを含むバッテリシステムを提供する。これらの個々のセル構成は、以下でポリマーまたはパウチセルと呼ばれる。このようなポリマー/パウチセルにおける電極アセンブリは、一般的に、以下のタイプの電解質:固体ポリマー電解質、ゲル電解質または液体電解質のうちの1つを含む。これらの電極アセンブリは、スタンドアロンであるかまたはポリマー/パウチセルにおけるパウチに含まれていることができる。好ましくは、固体ポリマー電解質電極アセンブリは、スタンドアロン形状であり、ゲルまたは液体電解質を有する電極アセンブリは、パウチに含まれている。1つ以上の電極アセンブリがパウチに位置している場合、パウチが封止されていることがさらに好ましい。本開示によれば、ポリマーセル/パウチセルは、ポリマー/パウチセル内の圧力増加、例えば、しきい値レベルを超える圧力増加に応答して、ポリマー/パウチが方向的に制御された方法でガスを解放し、解放されたガスとの連通を容易にするために配置された通気構造を通じて電池筐体からのガスの引出しを容易にするように構造化されている。
【0010】
ポリマー/パウチセルからのガスの方向性のある解放は、本開示によれば様々な方法で達成され得る。例えば、ポリマー/パウチは、ポリマー/パウチ内の圧力が上昇、例えば、しきい値圧力レベルを超えた場合/ときに所定の故障点として機能するように構成および寸法決めされたポリマー/パウチ構造における1つ以上のスコア線を含んでよい。ポリマー/パウチの形成に関連した継ぎ目は、例えば、ポリマー/パウチ内の圧力増加、例えば、しきい値レベルを超える圧力上昇時のガスの解放のための所望の領域における所要の接着剤の選択および/または適用レベルあるいは封止動作へのその他の修正により、ポリマー/パウチの残りの部分に対して弱められてよい。
【0011】
本開示のバッテリ筐体は、一般的に、封止、好ましくは密封して封止されており、ポリマーセル/パウチセルは、交互配置されたバリア構造、例えば、セラミックセルバリア内に配置され、一般的にそれによって互いから離間している。バリア構造は、一般的に並列で接続された個々のポリマーセルのそれぞれ1つの間での電解質の共有を防止する。このようなポリマーセルは、筐体内で直列に接続されてもよい。並列に接触したポリマーセルの場合、共通のバスバーが使用され、1つは正のポリマーセル電極のためであり、別の負のバスバーは負の電極のためである。負の電極のそれぞれはさらにヒューズが付けられてよく、これにより、内部短絡時に、ヒュージング機構は、並列セルからの電流が故障セルにエネルギを供給することを可能にしない。
【0012】
交互配置されたバリア構造のうちの1つ以上は、欠陥のあるポリマーセル/パウチから解放されたガスを所望の出口領域へ案内する表面特徴を含んでよい。したがって、バリア構造は、例えば、モールド成形された特徴または同様のものに基づき、ガス流路を画定してよい。さらに、バリア構造は、電極アセンブリ間の熱伝達を防止する。1つの電極アセンブリが内部短絡回路を有する場合、この電極アセンブリにおいて発生した熱は、直接的な熱伝導によって近隣の電極アセンブリへ伝達することを防止される。
【0013】
開示されたバッテリシステムの例示的な実装は、以下の実装を含む:
・バッテリシステムの封止されたバッテリ筐体は、圧力によってアクティブ化する通気口を含み、特定の例では、圧力によってアクティブ化する通気口はフレームアレスタを装備し、圧力によってアクティブ化する通気口は一般的に約100から300psi未満の圧力においてアクティブ化する、および/または、電池は、アクティブ化したとき、バッテリ筐体内のカスケード故障の可能性を低減するためにバッテリ筐体内からガスが解放されるように構成されている。
・交互配置されたバリア構造は、ポリマーセル/パウチの間に導入されたポリマーセル/パウチのための支持構造を画定するために(全体的または部分的に)一体的に形成されてよく、これに代えて、上記支持構造の一体的形成ではなく、交互配置されたバリア構造は、取り付けられたときに、ベース部材および交互配置されたバリア構造がポリマーセル/パウチのための支持部材を画定するようにベース部材に対して取り付けられるように構成されてよい。
・交互配置されたバリア構造は、全体的または部分的に、1つ以上の吸熱材料から製造されてよく;これに代えて、吸熱材料は、交互配置されたバリア構造および/または交互配置されたバリア構造を含む支持部材に関連していてよい。本開示による使用のための例示的な吸熱材料は、アルミナ三水和物である。
・交互配置されたバリア構造は、全体的または部分的に、ケイ酸塩ベースのセラミック材料、金属酸化物および/またはミネラルウール、ポリマー材料から製造されてよい。
・交互配置されたバリア構造の集合的な厚さ(mm単位)は、Wh/kgとして測定されたポリマーセル/パウチのエネルギ密度の約1%以上であってよい。
・外部パウチを有しないセルが使用される場合、分離構造または交互配置されたバリア構造は、1つのセルが故障した場合に個々のセルの間で伝播が生じないように個々のセルの間の電解質の効果的な共有を可能にしない。ヒュージング機構は、このような場合、短絡していない近隣のセルからの継続的な電流ダンピングにより熱エネルギが故障したセルにおいて増大することを可能にしないことになる。
【0014】
本開示は、開示されたバッテリシステムの実装のための方法も提供する。
【0015】
開示されたバッテリシステムの追加的な特徴、機能および利点が、特に添付の図面に関連して読まれた場合、後述の説明から明らかになるであろう。
【0016】
当業者が開示されたアセンブリ、システムおよび方法を実施および使用することを助けるために、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】縁部に画定された通気スコアを有する例示的なポリマーセル/パウチを示す概略図である。
図2】縁部に沿って画定された弱められたエリア封止を有する代替の例示的なポリマーセル/パウチを示す概略図である。
図3】複数のポリマーセル/パウチを受けるための一連のスロットを画定する支持構造内に配置された複数のポリマーセル/パウチ(その向かい合った端部にタブを有する)を含む例示的なバッテリシステムの分解図である。
図3A】全てのポリマーセル/パウチが支持構造のスロット内に配置された、図3の例示的なバッテリシステムの分解図である。
図4】複数のポリマーセル/パウチを受けるための一連のスロットを画定する支持構造内に配置された複数のポリマーセル/パウチ(その同じ端部において離間した配向でタブを有する)を含む代替の例示的なバッテリシステムの分解図である。
図4A】全てのポリマーセル/パウチが支持構造のスロット内に配置された、図4の代替の例示的なバッテリシステムの分解図である。
図5】複数の交互配置されたバリア構造および上部/下部のバリア/要素によって画定された支持構造内に配置された複数のポリマーセル/パウチを含むさらなる例示的なバッテリシステムの分解図である。
図6】関連する安全特徴を有する例示的なケーシングアセンブリの分解図である。
図6A図6の例示的なケーシングアセンブリの組み立てられた図である。
図7】本開示による代替の例示的なケーシングアセンブリの斜視図である。
図8】本開示によるさらなる例示的なケーシングアセンブリの斜視図である。
図9A】本開示の例示的な実施形態による、ケーシング内の圧力増加に応答してたわむことができるドームの進行を示す概略的な側面図である。
図9B】本開示の例示的な実施形態による、ケーシング内の圧力増加に応答してたわむことができるドームの進行を示す概略的な側面図である。
図9C】本開示の例示的な実施形態による、ケーシング内の圧力増加に応答してたわむことができるドームの進行を示す概略的な側面図である。
図10】例示的なたわむことができるドームの側断面図である。
図11】バッテリシステム内で発生されたガスの制御された通気のための通気ガス経路を含むバッテリシステムの内部の断面図である。
図12】角柱状セルの間にセパレータが配置されている、隣り合った関係にある8つの角柱状セルの概略図である。
図13A】複数のポリマーセル/パウチの向かい合った側に離間した配向でタブを有する複数のポリマーセル/パウチを含む代替の例示的なバッテリシステムの分解図であり、タブは、本開示によるヒュージング機能を提供するように構成されている。
図13B】複数のポリマーセル/パウチの同じ端部に離間した配向でタブを有する複数のポリマーセル/パウチを含む代替の例示的なバッテリシステムの分解図であり、タブは、本開示によるヒュージング機能を提供するように構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示によれば、とりわけ、ポリマー/パウチセル内の圧力増加、例えば、しきい値レベルを超える圧力増加に応答して、ポリマー/パウチが方向的に制御された方法でガスを解放し、解放されたガスとの連通を容易化するために配置された通気構造を通じてバッテリ筐体からのガスの引出しを容易にするように構造化された複数のポリマーセル/パウチセルを含むバッテリシステムが提供される。
【0019】
ポリマー/パウチセルからのガスの方向性のある解放は、本開示によれば様々な方法で達成され得る。例えば、ポリマー/パウチは、ポリマー/パウチ内の圧力が上昇した、例えば、しきい値圧力レベルを超えた場合/ときに所定の故障点として機能するように構成および寸法決めされた、ポリマー/パウチ構造における1つ以上のスコア線を含んでよい。ポリマー/パウチの形成に関連した継ぎ目は、例えば、ポリマー/パウチ内の圧力増加、例えば、しきい値レベルを超える圧力上昇時のガスの解放のための所望の領域における所要の接着剤の選択および/または適用レベルあるいは封止動作へのその他の修正により、ポリマー/パウチの残りの部分に対して弱められてよい。
【0020】
本開示のバッテリ筐体は、一般的に封止、例えば、密封して封止されており、ポリマーセル/パウチセルは、交互配置されたバリア構造、例えば、セラミックセルバリアまたは熱プラスチック内に配置され、一般的にそれらによって互いから離間している。セラミックバリア材料の一例は、Morgan Thermal Ceramicsによって作られたKaowool、またはミネラルウールから作られた類似の製品などのセラミックペーパーを含む。熱プラスチックの一例は、ベークライトのシートであり得る。交互配置されたバリア構造のうちの1つ以上は、欠陥のあるポリマーセル/パウチから解放されたガスを所望の出口領域へ案内する表面特徴を含み得る。したがって、バリア構造は、例えば、モールド成形された特徴または同様のものに基づき、ガス流路を画定し得る。
【0021】
開示されたバッテリエネルギ貯蔵システムは、熱暴走および伝播の可能性を制限することによって、ならびに爆発的性質の発火および/または火災につながり得る可燃性/爆発性ガスに関連したリスクに対処することによって、火災/爆発の可能性を低減する。
【0022】
開示されたバッテリシステムは、車両および/または工具/アプライアンスにおける、開放したまたは囲まれた空間(例えば、部屋、データセンター、または貯蔵システム)内に配置され得る。バッテリシステムは、典型的には、バッテリ貯蔵およびエネルギ送達分野において知られているような他の従来の電子機器に関連して、幅広い適用可能性および実用性を有する。
【0023】
開示されたバッテリシステムに含まれたモジュールは、一般的にエネルギを貯蔵および送達するように設計された、複数のポリマー/パウチセル、例えば、リチウムイオンセルを含む。当技術において知られているように、リチウムイオンセルは、アノード、カソード、セパレータおよび電解質を含む。本開示は、特定の電解質化学的性質によってまたはそれに限定されず、当技術において知られているように、電解質化学的性質を横断した適用可能性/実用性を有する。
【0024】
本開示によれば、開示されたバッテリシステムに関連したモジュール(複数可)は、隣接するポリマー/パウチセルの間に配置された断熱材料(複数可)を含んでよく、それによって、断熱材料(複数可)は、断熱材料(複数可)の第1の側において生じ得る潜在的な温度増加を、第2の側におけるセル(複数可)の熱暴走および/または発火を伝播させるのに必要な程度まで、断熱材料(複数可)の第2の側におけるセル(複数可)へ伝達することから隔離する。例示的な実施形態では、断熱材料(複数可)は、隣接するリチウムイオンセル(複数可)に対してそれぞれの個々のセルを包囲またはさもなければ隔離するように配置されてよい。他の例示的な実施形態では、断熱材料(複数可)は、モジュールにおけるセルのグループまたはサブセットを隣接するセル(複数可)/モジュール(複数可)から包囲またはさもなければ隔離するように配置されている。例えば、複数のポリマー/パウチセルのグループ/サブセットは、断熱材料(複数可)の介在的な位置決めによって隣接するセル(複数可)(例えば、2つのセルの、3つのセルの、4つのセルのグループ/サブセットなど)から包囲またはさもなければ隔離されてよい。セルのグループ/サブセットの数は、所与のモジュール内で等しくてよく、またはモジュール内で異なってもよい。
【0025】
熱隔離材料(複数可)は、様々な形態を取ってよく、様々な材料に基づいてよい。例えば、熱隔離材料(複数可)は、バッテリの安全性および/または安定性に寄与する吸熱機能を示す1つ以上の材料を含んでよい。本開示の例示的な実装において、熱隔離材料(複数可)は、無機のガス発生吸熱材料を組み込んだセラミックマトリクスを含んでよい。1つのこのような無機のガス発生吸熱材料は、防火において一般的に使用されるATH、即ちアルミニウム三水和物であってよい。使用時、熱隔離材料(複数可)は、所定のレベル、例えば、通常動作に関連した最大レベルを超えて温度が上昇した場合、熱隔離材料(複数可)が、熱暴走の可能性を防止および/または最小化する目的のための1つ以上の機能を提供するために働き得るように動作し得る。例えば、断熱に加え、熱隔離材料(複数可)は、有利には、以下のさらなる機能のうちの1つ以上を提供し得る:(i)エネルギ吸収;(ii)熱隔離材料(複数可)に関連した吸熱反応(複数可)から全体的または部分的に作り出されたガスの通気;(iii)バッテリ構造内の上昇する全圧;(iv)熱隔離材料(複数可)に関連した吸熱反応(複数可)中に発生したガスの通気によるバッテリシステムからの吸収された熱の除去、および/または(v)有毒ガス(存在するならば)の希釈およびバッテリシステムからのそれらの安全な排出(全体的または部分的)。吸熱反応(複数可)に関連した通気ガスが電解質ガスを希釈し、電解質ガスに関連した発火点を遅らせるおよび/または可燃性を排除するための機会を提供することにさらに留意されたい。
【0026】
開示された熱隔離材料(複数可)の断熱特性は、バッテリシステムへのそれらの適用の異なる段階における特性の組合せにおいて有利である。出来上がったままの状態では、熱隔離材料(複数可)は、小さな温度上昇の間または熱イベントの初期区間の間、断熱を提供する。これらの比較的低い温度では、断熱機能は、熱エネルギを熱質量全体へゆっくりと拡散させるために制限された伝導を可能にしながら発熱を封じ込めるために役立つ。これらの低温では、熱隔離材料(複数可)は、いかなる吸熱ガス発生反応も被らないように選択および/または設計される。これは、断熱および/またはリチウムイオンバッテリ全体へのいかなる永久的損傷も引き起こすことなく温度逸脱を可能にするためのウィンドウを提供する。リチウムイオンタイプ貯蔵デバイスの場合、逸脱または低レベル上昇として関連した一般的範囲は、60℃と200℃の間である。上記温度範囲における吸熱反応に抵抗する無機の熱隔離材料(複数可)の選択を通して、所望の高い温度において第2の吸熱機能を開始するリチウムイオンバッテリが提供され得る。したがって、本開示によれば、開示された熱隔離材料(複数可)に関連した吸熱反応(複数可)は、60℃から200℃をはるかに超える温度範囲においてまず開始されることが一般的に望ましい。本開示による使用のための例示的な熱隔離材料(複数可)は、以下を含むが、それらに限定されない:
【表1】
【0027】
これらの熱隔離材料(複数可)は、一般的に、場合によっては他の炭酸塩または硫酸塩との組合せにおいて、ヒドロキシル基または含水成分を含む。代替的な材料は、非含水の、炭酸塩、硫酸塩またはリン酸塩を含む。一般的な例は、50℃を超えると分解し、炭酸ナトリウム、二酸化炭素および水を与える重炭酸ナトリウムであろう。リチウムイオンバッテリに関連した熱イベントが、選択された吸熱ガス発生材料の吸熱反応(複数可)のための活性化温度よりも高く温度上昇を生じない場合、開示された熱隔離材料(複数可)は、有利には、熱エネルギを吸収し始め、それによってリチウムイオンバッテリシステムに冷却ならびに断熱の両方を提供する。可能なエネルギ吸収の量は、一般的に、熱隔離材料(複数可)に組み込まれた吸熱ガス発生材料の量およびタイプ、ならびにリチウムイオンバッテリ内のエネルギ発生源に対する吸熱材料/システムの全体的な設計/位置決めに依存する。熱を熱質量全体に制御された方法で分布させることにより、隣接するセルの温度は、危機的な分解または発火温度よりも低く維持され得る。しかしながら、熱隔離材料(複数可)を通る熱の流れが大きすぎる、即ち、エネルギ伝導がしきい値レベルを超える場合、隣接するセルは、全体としての質量が貯蔵された熱を放散することができる前に分解または発火温度に達することになる。
【0028】
本開示の熱隔離材料(複数可)は、バッテリシステムの通常動作温度よりも上であるが、加熱による熱暴走につながりやすい所定の温度よりも低い温度においてオフガシング(off-gassing)を作り出すように選択された無機吸熱材料と組み合わされたセラミック断熱マトリクスを含んでよい。
【0029】
本開示の例示的な実施形態によれば、吸熱材料の量は、ゼロよりも高く、熱搬送およびガス希釈効果を提供するために効果的な量である。僅か1重量%のガス発生吸熱材料は、デバイス設計に応じて効果的であり得るが、より高い量が望ましい場合がある。
【0030】
熱隔離材料(複数可)がセラミックマトリクスおよび吸熱材料を含む例示的な実施形態では、吸熱材料に対するセラミックマトリクスの比は、重量で1:19から9:1の範囲、好ましくは重量で1:9から6:4の範囲であってよい。所望の機能がバッテリシステム内で達成されるならば、代替的な相対レベルが、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく実装され得る。
【0031】
熱隔離材料(複数可)がセラミックマトリクスを含む例示的な実施形態では、セラミックマトリクスは、一般的に、無機繊維およびバインダを含み、粒子状材料を含んでよい。粒子状材料は、本質的に微小孔性であってよく、ヒュームドセラミック、乳白剤、およびそれらの混合物を含んでよい。バインダは、液体バインダ、ドライバインダまたはその両方を含んでよく、無機、有機またはその両方であってよい。乳白剤が存在してよく、製品形態に応じて、熱隔離材料(複数可)は、構成要素として水またはその他の溶媒を含んでよい。
【0032】
例示的な熱隔離材料の、典型的であるが非限定的な配合は、以下の表2に記載されている:
【表2】
上に挙げられた成分は、熱隔離材料の60%超、70%超、80%超、または90%超に達する。成分の比率は、製品形態に従って変化し得る。セラミック酸化物粉末の代わりに、鉱物繊維またはそれらの粉末が無機繊維として使用されてもよい。
【0033】
無機繊維は、一般的に、構造強度、断熱特性を提供し、高い温度における収縮を防止するために機能する。繊維が与える構造強度は、熱隔離材料(複数可)が、通常動作中または熱イベント中のいずれかに、過剰なクラッキングを引き起こし得る曲げ応力に抵抗することを可能にする。繊維は有機または純粋炭素ベースではないため、繊維は燃焼せず、それゆえ発熱発生に寄与しない。高温度逸脱の間、繊維は、一般的に、900℃未満の温度、即ち熱イベント中にしばしば達する温度において燃焼または溶融するものとは異なり、それらの耐火性によりマトリクスを一緒に保持するために役立つ。本開示に従って採用され得る繊維は、例えば、ロックウールの名称で市販されるおよびさもなければ天井タイル、断熱もしくはその他の防火構造において見られる鉱物繊維のような、セラミック、Eガラス、Sガラス、多結晶、リン、リーチドシリカ、石英、またはジルコニア繊維、岩石もしくは粘土からのスパン鉱物繊維、を含む。設計基準に応じて、無機繊維は不在であってよいが、典型的には、3%以上の量で存在してよい。
【0034】
微小孔性断熱材料は、典型的には、粒子間の接触点を最小限にすることにより伝導を最小限にしながら、材料が対流によるガスの平均自由行程を妨げるほど細孔サイズが非常に小さい無機酸化物を含む。微小孔性材料のために利用される典型的な材料は、セラミック酸化物粉末、例えば、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、ヒュームドジルコニア、またはそれらの混合物である。本開示の例示的な実装のために必要な微小孔性材料の量は、一般的に、バッテリシステムの性質に関連する。本開示によれば、微小孔性材料は、0%(即ち、存在しない)から最大60%の微小孔性材料を有する実施形態までの範囲のレベルで、開示された熱隔離材料(複数可)に含まれてよい。微小孔性成分の目的は、一般的に、外方への流れを行う熱流束が、影響されるセル(複数可)の外側のあらゆる点を熱発火点よりも高く上昇させることなく伝導によりアセンブリの全体を通じて搬送され得るように、十分に低いレベルに、影響されるセル(複数可)を断熱することである。例えば、バッテリシステムの全体的設計が、十分に断熱された比較的小さなセルを含む場合、および/またはバッテリシステムが、比較的低いエネルギ容量によって特徴づけられる場合、あるとしても非常に僅かな微小孔性材料が必要とされ得る。例えば、このような状況では、セラミック繊維マトリクス材料の断熱特性は、十分であり得る。しかしながら、断熱されたセル(複数可)が、高レベルの潜在的熱エネルギを含む場合、比較的大きな量の微小孔性材料が、温度が十分に高くなったときに吸熱材料が反応しエネルギを吸収するための時間を提供しつつも、隣接するセルが発火温度よりも上昇することを防止するために必要である、および/または望ましい場合がある。
【0035】
乳白剤は、温度が放射熱のレベルに上昇する熱アップセット条件中に熱隔離材料(複数可)の性能を増大し得る成分である。乳白剤の潜在的な必要性は、一般的に、微小孔性構成要素についての上記説明と類似のバッテリシステムの放熱特性に依存する。熱イベント中の温度が放熱温度に達するほど十分に高い場合、乳白剤は、発生されたあらゆる放射熱の伝達を遅くするのに役立つ。微小孔性材料、繊維マトリクスまたはそれらの組合せは、それら自体による放射伝熱に対して効果的ではない場合がある。一般的な乳白剤材料は、TiO、シリコン、アルミナ、クレー(乳白剤およびバインダの両方として機能し得る)、SiCおよび重金属酸化物を含む。これらの乳白剤は、通常の動作温度または熱イベント中のより低い温度においてさえいかなる機能も提供しない。乳白剤は、コストが高く非常に密度が高い傾向があり、したがって、バッテリシステムに重量を追加する。バッテリシステムの設計および熱イベント中の放熱の性質に応じて、乳白剤追加物についての範囲は、0から30パーセントの範囲であってよい。
【0036】
吸熱材料構成要素は、本開示の例示的な実施形態による大きな利益を提供し得る。ほとんどのエネルギ貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリは60℃以下で十分に機能することが知られている。本開示の開示された吸熱材料/システムは、一般的に、この温度よりも高いが、好ましくは、吸熱材料/システムが、影響されるセルおよび隣接するセルにおける温度上昇を最小限にするために、このようなイベントの初期の瞬間での熱イベント中に発生される熱エネルギを吸収し始めることができるように十分に低い温度で、それらのそれぞれの吸熱反応(複数可)を開始するように設計および/または選択されている。通常動作温度よりも上の設定レベルを超えると、吸熱材料は熱を吸収し、ガスを放出する。放出されたガスは、熱を希釈する、中和する、および運び去るために役立つ。また、熱の突然の発生は、エネルギ貯蔵デバイスにおける通気口に、通気を開始するように信号を送るか、または通気を開始させるために使用することができる。必要とされるまたは望まれる吸熱材料の量は、一般的に、デバイス構成、エネルギ密度および熱隔離材料(複数可)の残りの熱伝導率に依存する。76重量%以上の吸熱ガス発生材料を有する吸熱材料/システムが企図されるが、異なる比および/または範囲が採用されてもよい。
【0037】
吸熱ガス発生材料の量は、所望の体積のガス発生を達成するように調整されてもよく、タイプの選択は、吸熱ガス発生が生じるべき温度を設定するために使用することができる。断熱性の高いシステムでは、より高い温度が望まれ得るが、断熱性の低いシステムでは、近隣のセルにおける温度が臨界発火温度に達することを防止するために、より低い温度が必要とされ得る。これらの要件を満たす典型的な無機吸熱材料は、以下の吸熱材料を含むが、それらに限定されない:
【表3】
【0038】
上記のように、これらの吸熱材料は、一般的に、場合によっては他の炭酸塩または硫酸塩との組合せにおいて、ヒドロキシル基または含水成分を含む。代替的な材料は、非含水の、炭酸塩、硫酸塩およびリン酸塩を含む。一般的な例は、50℃を超えると分解して炭酸ナトリウム、二酸化炭素および水を与える、重炭酸ナトリウムであろう。
【0039】
本開示の例示的な実施形態では、マルチコア電気化学アセンブリに関連したポリマー/パウチセルがハウジング内に位置しており、個々のポリマー/パウチセルは、交互配置されたバリア構造によって分離されている。各ポリマー/パウチセルは、部分的にまたは完全にバリア材料によって包囲されてよい。ハウジングを使用する目的の1つは、熱アブユース時のポリマー/パウチセル間の熱伝搬を遅らせることによって安全性を増加させることである。ハウジングの別の目的は、いくつかの機械的故障に言及すれば、さもなければ衝撃エネルギ、外部ペネトレーション、によって作られる損傷を吸収することによってポリマー/パウチセルを機械的に保護すること、構造に対する振動損傷の防止である。
【0040】
本開示のさらなる例示的な実施形態では、複数の吸熱材料が、同じエネルギ貯蔵デバイス/バッテリに組み込まれており、構成する吸熱材料は、異なる温度においてそれぞれの吸熱反応を開始する。例えば、本開示による二重応答吸熱材料/システムを提供するために、重炭酸ナトリウムがATH(Al(OH)、アルミニウム三水和物)と組み合わされてよい。このような例示的な実装では、重炭酸ナトリウムは、50℃よりも僅かに高い温度でエネルギを吸収し始め、ガスを放出し始めると予測することができるのに対し、ATHは、システム温度が約180から200℃に達するまでエネルギを吸収し始めず、ガスを放出し始めない。したがって、特に、本開示によれば、吸熱材料は単一材料または吸熱材料の混合物であってよいと考えられる。
【0041】
いくつかの材料は2つ以上の分解温度を有することに留意すべきである。例えば、220から240℃の範囲において開始する分解温度を有するものとして上記で言及された水苦土石は、複数のステップで分解する:まず約220℃において結晶化の水の解放によって;次いで、約330℃において水酸化物イオンのブレークダウンによってより多くの水を解放し;次いで、約350℃において二酸化炭素を解放する。しかしながら、分解におけるこれらのステップは、固定されており、どの温度において熱が吸収され、どの温度においてガスが発生されるかの制御を可能にしない。
【0042】
異なる分解温度を有する2つ以上の吸熱材料の混合物を使用することにより、1つの材料のみの場合よりも広い温度範囲にわたって冷却効果を制御することができる。2つ以上の吸熱材料は、1つ以上のガス発生材料と組み合わせて1つ以上の非ガス発生吸熱材料を含んでよい。
【0043】
異なる分解温度においてガスを放出する2つ以上の吸熱材料の混合物を使用することにより、1つの材料のみの場合よりも広い温度範囲にわたってガスの生成を制御することができる。これにより、適合した熱吸収およびガス放出プロフィルを与えるように、使用される吸熱材料の数および性質を適合させることができる。異なる吸熱材料を混合することによる熱吸収およびガス放出プロフィルのこのような適合は、温度および圧力の進展の制御が、材料が使用される装置の設計要件を満たすことを可能にする。
【0044】
断熱のバインダ相は、本質的に無機または有機であることができるが、好ましくは、無機である。バインダ相の意図は、デバイスを組み立て、通常動作中にセルを所定の位置に保持し、任意選択的に、熱イベント中の機械的安定性を提供するために、十分な構造的完全性を提供することである。バインダのタイプおよび量は、組み立ておよび稼働中の機械的性能に必要な所望の剛性を可能にするために変更することができる。柔軟性の高い断熱材料を可能にするバインダの一例は、天然および/または合成ラテックス材料である。より剛性の高い構造を作り出すために、1種以上のスターチ(starch)を使用することができる。特に高レベルの微孔構造が利用されるとき、熱硬化性バインダが利用されてもよい。有機バインダが望ましくないこれらの用途の場合、これらに限定されないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、コロイダルシリカおよびコロイダルアルミナなどの無機バインダが有利には採用される。カオリンなどの耐火クレー(複数可)がバインダ(複数可)として使用されてもよい。これらのクレーは水も含み、この水は、とても高い温度において吸熱的方法で揮発し、開示されたシステムにおいてさらなる利益を提供する。採用される形成プロセスに応じて、全ての無機バインダは溶液/懸濁液においてまたは乾燥形態においてのいずれかで断熱材料に加えることができる。
【0045】
本開示の吸熱材料/システムに関して開示された全ての構成要素が、一般的に適用される製造ルートとコンパチブルであるわけではないことに留意されたい。この理由から、特定のエネルギ貯蔵デバイス/バッテリの設計要件が、所要のおよび/または所望の製造ルートに影響し得る。特定の用途のための製造方法(複数可)を選択する際、以下のことに留意されたい:
a.脆性材料は、機械的アブユース中のクラックなしに変形させられることができる材料ほどは好ましくない。したがって、開示された吸熱材料/システムの脆性を最小限にし変形性を増加させる製造方法および配合が一般的に好ましい。
b.ポリマー/パウチセルを貫通し内部短絡を引き起こすことができない点から、硬質材料と比較して軟質な材料が一般的に好ましい。他方、硬質材料は、クラッシュが軽減され得るように強度を増加させることができ、ポリマー/パウチセルを保護することができる。したがって、開示された吸熱材料/システムを製造する際の軟質/硬質特性の上記バランスを最適化する製造方法および配合が一般的に好ましい。
c.セルまたはモジュールが変形させられると、熱保護が無傷であるように、クラッシュ後でさえも吸熱保護ができるだけ均一であることが望ましい。したがって、均一性を提供する製造方法および配合が一般的に好ましい。
d.吸熱材料/システムが、水を含み、水に対して敏感なエネルギ貯蔵デバイスとともに使用される場合、関連する電気貯蔵デバイスの通常動作温度における吸熱材料/システムに関連した水の蒸気圧は望ましくは低い。
e.複数の電気貯蔵デバイスを含む装置の異なる領域は、異なるレベルの吸熱材料を必要とする場合があり、したがって、その範囲を通じて吸熱材料の異なる濃度を有する材料が適用されてよい。例えば、材料は:
・材料のボディ内の領域よりも高い濃度の吸熱材料を有する表面領域;および/または
・材料の異なる表面領域よりも高い濃度の吸熱材料を有する表面領域
を含んでよい。
【0046】
例えば、4つの例示的な製造方法論/配合組合せが以下で説明される。しかしながら、本開示は、これらの例示的なモダリティによってまたは例示的なモダリティに限定されない。
【0047】
乾式プレス
本開示による開示された吸熱材料/システムの1つの例示的な製造方法は、まず構成要素をドライブレンドし、次いで、微孔構造が形成されるまで高圧下でそれらを所望の初期形状にプレスする。高い生強度が望ましい場合、ブラインディングステップにおいて乾燥熱硬化性バインダを加えることができ、この場合、形状は、ガスが吸熱材料から放出される温度よりも低いが、熱硬化性バインダを硬化させるには十分に高い温度に保持される。これは、プレシングステップ中またはその後のいずれかに行うことができる。完了すると、結果として生じた形状を指定された設計に機械加工することができる。この製造ルートのための典型的な配合を以下に与える。
【表4】
【0048】
プリフォームの浸透
本開示による開示された吸熱材料/システムの代替の例示的な製造方法において、製品は、繊維成分が、まず所定の形状(プリフォーム)に前もって形成され、次いで、引き続き、残りの構成要素を含む懸濁液が浸透されるプロセスにおいて形成される。
【0049】
プリフォームは、パルプモールディング、紙およびセラミック繊維形状などの、他の産業によって採用される一般的に適用される真空成形技術を用いて作られてよい。これらのプロセスでは、液体(スラリ)における繊維成分の希薄懸濁液が、メッシュスクリーンに曝され、液体(典型的には水)がメッシュスクリーンに引き通されながらメッシュスクリーン上のスラリ構成要素が増大する。スラリの濃度は、使用されるプロセスおよび繊維特性に適合するように変化する。このステップに有機または無機バインダが組み込まれてもよい。形状(または平坦な材料)が所望の厚さに増大すると、懸濁液から除去され、浸透を可能にするために十分な取扱い強度および開放気孔率が達成されるまで乾燥させられる。
【0050】
浸透は、本開示の残りの非繊維構成要素の懸濁液にプリフォーム(または平坦な材料)を沈めることによって達成され得る。毛管作用が懸濁液を小孔へ引き込み、その過程で空気と置き換える。浸透は、必要であれば、真空または圧力のいずれかの適用によって補助することができる。次いで、浸透した部品は、水を除去するために乾燥させられる。水が除去されると、バインダ(存在するならば)が硬化する。次いで、結果として生じた材料は、必要であれば、さらに機械加工および/または処理され得るか、または適切であるならばそのまま使用され得る。
【0051】
この製造ルートは、80%ローディングを容易に達成しより高いローディングへさらに拡張可能である、高い吸熱材料ローディングを有する製造配合に適している。表5は、典型的な繊維プリフォームの乾燥成分を示す(液体バインダに言及されている場合、これは、液体バインダの硬化した残留物を意味する)。
【表5】
【0052】
以下の表6は、典型的な浸透懸濁液を示す(液体バインダに言及されている場合、これは、硬化前の液体バインダを意味する)。
【表6】
【0053】
この製造ルートによって製造される本開示の結果として生じる最終形状のための典型的な組成が、以下に与えられる(液体バインダに言及されている場合、これは、液体バインダの硬化した残留物を意味する)。
【表7】
【0054】
真空成形
浸透技術の1つの特徴は、非繊維構成要素の濃度勾配の存在である。濃度は、外面において最大であり、中心に向かって減少する。これは、フィルタとして機能する断熱マトリクスによって引き起こされ、表面をさらに移動しながら浸透を制限する。不均一な分布を低減させるための1つの方法は、1つのステップで全ての構成要素を有する開示された吸熱材料/システムを形成することである。この例示的な真空成形製造方法では、全ての構成要素は、初期希薄スラリ懸濁液に導入される。次いで、懸濁液は、パルプモールディング、紙およびセラミック繊維産業において一般的に適用される標準的な真空成形技術によって所望の形状(または平坦な材料)に成形される。次いで、結果として生じた部品または紙は、乾燥させられ、そのまま使用され得るか、またはさらに機械加工され得る。
【0055】
この技術は、より均一な形状を作り出すという利点を有するが、非繊維成分の非常に高いローディングを有する配合を作り出すにはあまり適していない。これは、懸濁液が引き通される能力を妨げる成形スクリーンのブラインディングによる。したがって、この技術は、断面の厚さが10mm未満である紙などの薄い製品またはニアネットシェイプにより適している。水懸濁液の使用は、一般的に、ヒュームド酸化物の使用を除外する。なぜならば、これらの材料は、水に曝されると微小孔性構造を作ることができないからである。
【0056】
以下の表8は、プロセス水を排除する典型的な真空成形された形状の化学組成を示しており、この場合、液体バインダに言及されている場合、これは、硬化していない液体バインダを意味する。
【表8】
【0057】
モールド成形可能な製品
本開示による吸熱材料/システムは、物品の形態の代わりに、エネルギ貯蔵デバイス/バッテリのアセンブリを形成する際に使用するためのモールド成形可能な材料として作られることもできる。モールド成形可能バージョンの製造は、一般的に、十分に混合されるまで(例えば、約10分間)ミキサにおいて構成要素を湿式混合することから開始する。貯蔵中の菌成長を防止するために、この時点でバイオサイドが添加されてよい。必要であれば、pH修飾剤(pH modifier)が含まれてもよい。混合が完了すると、モールド成形可能な製品は、次いで、組み立ての前に貯蔵および分配のためにコーキングチューブまたはドラムにパッケージングされ得る。組み立て中、モールド成形可能材料は、断熱されるエリアへ、注入され、プレスされ、またはさもなければ置かれてよく、結果として生じたアセンブリは、水を除去するために乾燥させられる。一般的に、無機バインダが使用される場合、乾燥した部分は、非断熱構成要素に非常に緊密に付着することになり、装置の構造的完全性を増大させる。このような成形可能材料は、乾燥後の追加的な機械加工をほとんどまたは全く必要としない。
【0058】
モールド成形可能な製造方法のための典型的な配合が、以下の表9に与えられている。ヒュームドセラミック酸化物の性質により、それらは、一般的に、水で湿式処理されることはできず、したがって、この製造方法は、通常、本開示の実装へのそれらの組込みを排除する。
【表9】
【0059】
存在する液体は液体バインダを含んでよい、および/または追加された液体も含んでよいことに留意すべきである。液体バインダの硬化剤が、追加された液体に含まれてよい。
【0060】
その他の形態
材料は、化学的および/または機械的に発泡させられたフォームの形態であってよい。発泡セラミックは、断熱目的のために知られており(例えば、米国特許第4,596,834号)、吸熱材料は、フォームの構成要素の一部を含んでよい、および/または後からフォームに含浸させられてよい。モールド成形可能な組成に類似の組成が発泡させられてよい。
【0061】
典型的な組成
以下に、本開示による効果的な吸熱特性/機能を提供するために実証された所与の例示的な組成である。
【表10】
【0062】
成形される材料の性質
上記の説明は、ボードおよび紙などの平坦な形状を含む、形状を成形することに言及している。本願のためのこれらの形状は、特定の形態を有してよい。例えば、形状は:
・エネルギ貯蔵デバイス/バッテリまたはそのセルを受けるように成形された1つの凹所を有する材料のボディ;
・エネルギ貯蔵デバイス/バッテリまたはそのセルを受けるようにそれぞれが成形された、複数の凹所を有する材料のボディ;
・異なる濃度の吸熱材料を有する2つ以上の領域を有する材料;
・吸熱ガス発生材料の勾配を有する材料;
・材料のボディ内の領域よりも高い濃度の吸熱材料を有する材料の表面領域を含む材料;
・材料の異なる表面領域よりも高い濃度の吸熱材料を有する材料の表面領域を含む材料
を含んでよい。
【0063】
開示された吸熱材料/システムの例示的な実装を参照し、エネルギ貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリ内のその位置決め/場所は、一般的に、このようなエネルギ貯蔵デバイス/リチウムイオンバッテリに関連した基礎となるエネルギ発生および貯蔵を妨げることなく、本明細書に説明された所望のエネルギ吸収/伝達機能を促進するように選択されることに留意されたい。さらに、関連した通気機能との効果的なガス連通を可能にし、これにより、本開示の吸熱反応(複数可)によって発生した気体副産物の迅速で効果的な脱気を可能にするように、開示された吸熱材料/システムが配置される/位置することが一般的に望ましい。
【0064】
本開示の例示的な実施形態では、熱隔離材料(複数可)は、支持部材内に収容されたジェリーロールアセンブリまたはポリマーパウチセルと接触して(または近接して)配置されたブランケットまたはマットの形態を取ってよい。開示されたブランケットは、高温の粒子状残留物、例えば、液体電解質および電解質ガスの量を、1つ以上のポリマー/パウチセル(複数可)から解放された場合/ときに隣接するポリマー/パウチセルと相互作用することから、実質的に制限し得る。
【0065】
開示されたブランケットは、ブランケットを通る軸方向ガスおよび流体流を促進する流れ特性を特徴とし得るが、ブランケット内の横方向(例えば、側部から側部)の流れを実質的に低減させ得る。したがって、このようなガス/流体流に関連した粒子は、ブランケットのボディを通ってバッテリシステム筐体の共有された雰囲気(またはバッテリシステムの個々の区分化された領域)内へ強制される。本明細書に説明されているように、共有された雰囲気内で適用可能なしきい値圧力に達する程度まで、微粒子を含むガス/流体は筐体から通気される。
【0066】
優れた実施形態では、ブランケットは、軸方向の通流を促進する細孔サイズ/構造を有するセラミック材料(または類似の材料)から製造されてよい。セラミック材料は、一般的に、比較的高い温度、例えば、200℃よりも高い温度において安定である。本開示の例示的な実施形態では、開示されたブランケットの細孔サイズは、(i)より大きな高温の微粒子/デブリ、例えば、より大きなサイズの炭化したデブリ、金属デブリ、金属酸化物微粒子および溶融した金属微粒子を捕捉し、これらのより大きな微粒子/デブリが隣接するジェリーロールと接触しないことを保証するように、および(ii)より小さな微粒子およびガスがブランケットを通過し、(通気口がアクティブ化する場合)通気口から排出されることを促進するように、サイズ決めされている。本開示の目的のより小さな微粒子は、通気口出口内に捕捉されない/詰まらないように自由に通気口を通過することになる微粒子である。優れた実施形態では、ブランケットは、通気口の下またはバスバーなどの保持構造の下に設置されてよい;しかしながら、ブランケットは、バスバーの上に設置されてもよい。
【0067】
電気化学ユニット(複数可)からのガス/流体流を制御するための前記構造は、ブランケットとして説明されているが、ガス/流体流を制御する望ましい機能は、例えば、一対一の方法で、電気化学ユニットに近接して配置された複数の別個の要素によって達成され得ることに留意されたい。したがって、個々のガス/流体流要素は、上記ブランケットを参照して上記で説明されているように、より大きな微粒子を捕捉しながら、そこから追放されるガス/流体の軸方向/非横方向流を促進するために、ポリマー/パウチセルの弱められた特徴に近接して配置されてよい。同様の方法で、ガス/流体流を制御するための開示された構造は、筐体内に配置された電気化学ユニットのサブセットに関して流れ制御機能を提供する構造として構成/寸法決めされてよい。
【0068】
例示的な実施形態では、熱隔離材料(複数可)(開示されたブランケットを含む)は、全体的または部分的に、断熱鉱物材料(例えば、AFB(R)材料、Cavityrock(R)材料、ComfortBatt(R)材料、およびFabrock(TM)材料(Rockwool Group、ヘデフセネ、デンマーク);Promafour(R)材料、Microtherm(R)材料(Promat Inc.、ティセルト、ベルギー);および/またはMorgan Thermal Cearmics(バーケンヘッド、英国)からのカルシウム-マグネシウム-シリケートウール製品から製造されてよい。断熱鉱物材料は、合成物として使用されてよく、繊維および/または粉末マトリクスを含んでよい。鉱物マトリクス材料は、アルカリ土類シリケートウール、玄武岩繊維、アスベスト、火山ガラス繊維(volcanic glass fiber)、ガラス繊維、気泡ガラス、およびそれらの任意の組合せを含むグループから選択されてよい。鉱物材料は、結合材料を含んでよいが、それは必要ではない。開示された構築材料は、ポリマー材料であってよく、ナイロン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリルポリマー、およびそれらの任意の組合せを含むグループから選択されてよい。鉱物材料は、さらに、難燃添加剤を含んでよいが、それは必要ではなく、その一例は、アルミナ三水和物(ATH)を含む。鉱物材料は、ロール、シート、およびボードなどの様々な媒体において作り出されてよく、高い剛性または柔軟であってよい。例えば、材料は、プレスされ、コンパクトなブロック/ボードであってよいか、またはスポンジ状で圧縮性の複数の織り合わされた繊維であってよい。鉱物材料は、バッテリシステム筐体の内壁に少なくとも部分的に関連させられてもよく、これにより、筐体の内部に絶縁体を提供する。
【0069】
添付の図面に示された例示的な実施形態を参照すると、図1は、ポリマー/パウチセル10が配備されることになるバッテリシステムの全体的な回路と電気通信するためにパウチ11の向かい合った端部から延びる第1/第2のタブ12、14を備えるパウチ11を含むポリマー/パウチセル10を概略的に示す。パウチ11は、その外周の周りを封止されており(例えば、封止15a、15b参照)、これにより、パウチ内に配置された電気化学アセンブリを外部環境から隔離している。しかしながら、パウチ11は、その細長い縁部18に沿って通気スコア16a、16b、16cを含む。通気スコア16a、16b、16cは、パウチ11内の圧力が増加した場合の故障の優先的領域を画定する。故障の優先的領域(即ち、通気スコア16a、16b、16c)の場所に基づき、パウチ11からのガス流は、優先的に、通気スコア16a、16b、16cによって弱められたパウチ領域(複数可)の方向へ、少なくとも最初はこのパウチ領域を通って出ていくことになる。通気されるガスの方向および/または場所を制御することにより、全体的なバッテリシステムは、ガス流路を制御することができ、これにより、隣接するパウチ/モジュールとのガス相互作用の可能性を最小限にし、バッテリシステムから通気口に近接する領域へガスを方向付ける。さらに、本開示の例示的な実施形態では、ガス流路は、封止されたバッテリ筐体内の共有された雰囲気領域内へ方向付けられてよく、これにより、パウチ11からのガス解放に関連した全体的な圧力増大を低減させ、バッテリシステムからの通気をより低い圧力において動作させることを可能にする。通気スコア16a、16b、16cに関連した利益の組合せは、パウチ11からのガス解放に関連したバッテリシステム内のカスケード故障の可能性を低減させるのに役立つ。外部通気口は、さらに、セルアセンブリから離れるように可燃性ガスを方向付けるという目的を果たす。
【0070】
注目すべきことには、図1は、縁部18に沿って3つの通気スコアを概略的に示しているが、開示された実施形態は、通気スコア16a、16b、16cの数および相対的位置決めによって限定されずまたはこれに限定されない。むしろ、より多くのまたはより少ない通気スコアが縁部18に沿って提供されてよく、このような通気スコアの相対的位置決めは、等距離であっても、間隔が異なっていてもよい(例えば、所望のガス流路に基づき、タブ12またはタブ14に向かってグループ化される)。さらに、個々の通気スコアは、本開示に関連した優先的故障領域をさらに画定するために、長さ/深さが等しくてよい、または長さ、深さ、またはその両方が異なってもよい。さらに注目すべきことには、端部12、14が、パウチ11の向かい合った端部に配備されている。しかしながら、タブ12、14は、パウチ11の同じ端部において互いに対して離間した関係で配備され得る。
【0071】
図2を参照すると、ポリマー/パウチセル20に関連した故障の優先的ゾーンを確立するための代替的な実施形態技術が概略的に示されている。ポリマー/パウチセル20は、ポリマー/パウチセル20が配備されることになるバッテリシステムの全体的回路と電気通信するための、パウチ21の向かい合った端部から延びる第1/第2のタブ22、24を有するパウチ21を含む。パウチ21は、その外周の周りを封止されており(例えば、封止25a、25b参照)、これにより、パウチ内に配置された電気化学を外部環境から隔離している。しかしながら、パウチ21は、その細長い縁部28に沿って弱められたエリア封止26を含む。弱められたエリア封止は、パウチ21内の圧力が増加した場合の故障の優先的領域を画定する。故障の優先的領域(即ち、弱められたエリア封止26)の場所に基づき、パウチ21からのガス流は、優先的に、弱められたエリア封止26の方向へ、少なくとも最初は弱められたエリア封止26を通って出ていく。通気されるガスの方向および/または場所を制御することにより、全体的なバッテリシステムは、ガス流路を制御することができ、これにより、隣接するパウチ/モジュールとのガス相互作用の可能性を最小限にし、バッテリシステムからの通気に近接した領域へガスを方向付ける。さらに、本開示の例示的な実施形態では、ガス流路は、封止されたバッテリ筐体内の共有された雰囲気領域内へ方向付けられてよく、これにより、パウチ21からのガス解放に関連した全体的な圧力増大を低減させ、バッテリシステムからの通気をより低い圧力で動作させることを可能にする。弱められたエリア封止26に関連した利益の組合せは、パウチ21からのガス解放に関連したバッテリシステム内のカスケード故障の可能性を減じるのに役立つ。外部機械構造によって圧縮されるセルの場合、弱める構造は、タブにあることができる。
【0072】
いくつかの場合、成形プロセスの間にガスが逃げることを可能にするために構造を開放したままにし、次いで、アセンブリにおいて多数のセルの周りに外部構造を封止することが有益であり得る。アルミニウム角柱状セル構造の場合、レーザ溶接による封止が好ましく、商用の一般的な製造プロセスである。
【0073】
注目すべきことには、図2は、縁部28に沿った連続的な弱められたエリア封止26を概略的に示すが、開示された実施形態は、連続的な弱められた縁部を含む実装によってまたはその実装に限定されない。むしろ、本開示に関連した優先的故障領域をさらに画定するために縁部28に沿った他の領域と比較してより大きな弱さの領域が存在するように、弱められたエリア封止26は、縁部28に沿って弱さが異なってもよい。さらに注目すべきことには、タブ22、24が、パウチ21の向かい合った端部に配備されている。しかしながら、タブ22、24は、パウチ21の同じ端部において互いに対して離間した関係で配備され得る。
【0074】
図3および図3Aを参照すると、例示的なバッテリシステム30の分解図が示されている。バッテリシステム30は、ケース32、カバー34、支持構造36、および複数のポリマー/パウチセル38を含む。完全に組み立てられたとき、ケース32およびカバー34は、封止された筐体、例えば、密封して封止された筐体を画定する。支持構造36は、支持構造36を貫通して延びる複数の離間したスロット40を画定しており、スロット40は、個々のポリマー/パウチセル38を受けるために構成および寸法決めされている。図3における例示のために、ポリマー/パウチセル38のうちの3つが支持構造36の第1の側において延びた状態で示されており、ポリマー/パウチセル38のうちの2つが支持構造36の第2の側に延びた状態で示されており、第6のポリマー/パウチセル38が支持構造36から完全に除去されている。しかしながら、図3Aに示されているように、完全に組み立てられたとき、各ポリマー/パウチセル38は、支持構造36によって画定されたスロット40内に配置される。
【0075】
各ポリマー/パウチセル38は、ポリマー/パウチセル38の向かい合った端部から延びる第1および第2のタブ42、44を含む。各ポリマー/パウチセル38は、例えば、図1および図2を参照して上記で説明したように、故障の優先的領域(複数可)を画定する構造(複数可)/特徴(複数可)を含む。したがって、ポリマー/パウチセル38は、縁部に沿った通気スコア、弱められたエリア封止、またはそれらの組合せを含んでよい。これにより、ポリマー/パウチセル38内の圧力が増加すると、通気されるガスの流れは、所望の経路によってケース32内の所望の領域へ方向付けられるように制御されることになる。図3および図3Aの例示的な実施形態では、通気されたガスを受けるための所望の領域は、ケース32の面を通って延びる通気口46に近接している。通気口46およびケース32の面に関して取り付けられたその他の要素の特徴および機能は、例えば、図6図9Aから図9C、および図10を参照して、以下で説明される。
【0076】
個々のポリマー/パウチセルは、好ましくは、ヒューズを用いて組み立てられるべきであり、ヒューズは、セルのうちの1つにおける内部短絡時に、インシデントセル(incident cell)を切断するように設計されている。これは、セル故障をさらに悪化させ、伝播の可能性のある追加の熱を引き起こし得る故障セルへ電流が流れることを可能にしない。このようなヒューズは、ポリマー/パウチセルの正および負のタブの部分から金属を除去することによって、またはポリマー/パウチセルのタブのうちの一方または両方に接続されるバスバー構造の一部として実装されるヒュージング構造を使用することによって製造され得る。
【0077】
図4および図4Aを参照すると、代替の例示的なバッテリシステム50の分解図が示されている。バッテリシステム50は、ケース52、カバー54、支持構造56、および複数のポリマー/パウチセル58を含む。完全に組み立てられたとき、ケース52およびカバー54は、例えば、密封して封止された筐体など、封止された筐体を画定する。支持構造56は、支持構造56を貫通して延びる複数の離間したスロット60を画定し、スロット60は、個々のポリマー/パウチセル58を受けるために構成および寸法決めされている。図4Aに示されているように、完全に組み立てられたとき、各ポリマー/パウチセル58は、支持構造56によって画定されたスロット60内に配置される。
【0078】
各ポリマー/パウチセル58は、離間した、ポリマー/パウチセル58の同じ端部から延びる第1および第2のタブ62、64を含む。各ポリマー/パウチセル58は、例えば、図1および図2を参照して上記で説明したように、故障の優先的領域(複数可)を画定する構造(複数可)/特徴(複数可)を含む。したがって、ポリマー/パウチセル58は、縁部に沿った通気スコア、弱められたエリア封止、またはそれらの組合せを含んでよい。このように、ポリマー/パウチセル58内の圧力が増加すると、通気されるガスの流れは、所望の経路によって、ケース52内の所望の領域へ方向付けられるように制御されることになる。図4および図4Aの例示的な実施形態では、通気されたガスを受けるための所望の領域は、ケース52の面を貫通して延びる通気口66に近接している。通気口66およびケース52の面に関して取り付けられた他の要素の特徴および機能は、例えば、図6図9Aから図9C、および図10を参照して以下で説明される。
【0079】
図5を参照すると、本開示によるバッテリシステムのさらなる例示的な実施形態が概略的に示されている。バッテリシステム100は、ケース102およびカバー104を含み、これらは、組み立てられたとき、封止された筐体、例えば、密封して封止された筐体を画定する。バッテリシステム100は、さらに、交互配置されたバリア構造108によって互いから離間した複数のポリマー/パウチセル106を含む。注目すべきことには、図5では、ポリマーパウチセル106のうちの2つおよび交互配置されたバリア構造108のうちの2つのみが、セル/バリア構造(互いに近接して示されている)の残りに対して分解されている。上側バリア110、例えば、セラミック上側バリアまたはベークライトバリア(単独でまたは鉱物材料またはフェルト状材料と組み合わされて)、および下側バリア112、例えば、セラミック下側バリアは、ポリマー/パウチセル106を捕捉するために協働する。組合せにおいて、上側バリア110、下側バリア112、および交互配置されたバリア構造108は、ケース102およびカバー104によって画定された筐体への導入のために複数のポリマー/パウチセル106を支持する支持部材を画定する。注目すべきことには、交互配置されたバリア構造は、多数の機能的利益を提供し、これは、(i)隣接するセルの間の電気的接続を遮断すること、(ii)隣接するセルの間に熱バリアを提供すること、および(iii)隣接するセルの間に材料バリアを提供すること、を含む。下方へ延びるタブ114および116は、カバー104に配置された端子に関連しており、ポリマー/パウチセル106から延びたタブ(図示せず)と電気的に通信する。
【0080】
各ポリマー/パウチセル106は、例えば、図1および図2を参照して上記で説明されているように、故障の優先的領域(複数可)を画定する構造/特徴を含む。したがって、ポリマー/パウチセル106は、縁部に沿った通気スコア、弱められたエリア封止、またはそれらの組合せを含んでよい。これにより、ポリマー/パウチセル106内の圧力が上昇すると、通気されたガスの流れは、所望の経路によって、ケース102およびカバー104によって画定された筐体内の所望の領域へ方向付けられるように制御されることになる。図5の例示的な実施形態では、通気されたガスを受け入れるための所望の領域は、カバー104の面を貫通して延びる通気口118に近接している。通気口118およびカバー104の面に関して取り付けられた他の要素の特徴および機能は、例えば、図6図9Aから図9C、および図10を参照して、以下で説明される。
【0081】
いくつかのアセンブリの場合、構造がヒュージング機構およびセルアセンブリの高温エリアから離れるような可燃性ガスの方向を可能にする限り、密封して封止されていない外部構造が使用されてよいことに留意すべきである。このようなアセンブリは、優先的には、可燃性ガスがその濃度を可燃性レベルよりも低くなるように迅速に低下させることができるように、セルアセンブリの近くに通気エリアを有する。このような分散は、1つのポリマー/パウチセルの故障時の潜在的な爆発を回避するために重要である。
【0082】
図5を参照して説明された例示的な実施形態(図1から図4を参照して説明された他の実施形態への適用可能性とともに)を参照して注目すべきことには:
・リチウムイオンコア部材をジェリーロールに巻くまたは積層ユニットにすることができる。
・電解質は、液体、ゲルまたは固体電解質であることができる。
・キャビティを有するハウジングは、連続的な一体化されたブロックであることができる。
・キャビティを有するハウジング/支持構造は、プレートまたはシート、例えば、交互配置されたバリアによって形成することができる。
・リチウムイオンコア部材のためのライナは、ポリマー材料、例えば、ポリマーラミネートされた金属箔であってよい。
・ライナは、リチウムイオンコア部材のまたはリチウムイオンコア部材における雰囲気が他のコア部材と連通することを可能にするための少なくとも1つの開口を有してよい。
・セルケースを封止する前のセルにおけるリチウムイオンコア部材は、いかなる電気化学的工程もなしにまたは電気化学的成形の後に単に電解質後適用の状態にあることができる。
・交互配置されたバリア構造は、ポリマー/パウチセルからガスが解放された場合に所望の方向へまたは所望の経路に沿ってガス流をさらに案内する、突出した特徴/構造を含んでよい。
・例示的な実施形態では、解放されたガスは、共有された雰囲気領域、即ち、複数のポリマー/パウチセルのそれぞれからの通気されたガスが方向付けられる開放領域へ方向付けられ、共有された雰囲気領域は、バッテリシステム内のしきい値圧力を超えたときにガスを雰囲気へ送り出すように構成された通気口と連通している(および好ましくは物理的に近接している)。
【0083】
本明細書に開示されたタイプのバッテリシステムにおいて通気構造を確立する際に、比較的大きい金属残留物がスコア部位において維持され得ることによる通常使用時に厄介な故障のリスクなしに非常に低い圧力(図1におけるP3)で動作する通気機構を提供することが望ましい。P3についてのこの低い圧力は、機械的に封止された缶/コンテナの使用を可能にするか、または代替的に、缶を封止するためのレーザ溶接の使用を可能にするが、なぜならば、P4圧力も、P3とのオーバーラップのリスクなしに低減され得るからである。したがって、P3を確実に減じるための能力は、バッテリシステムの設計および動作における全体的な改善に変換され得る。
【0084】
さらに、通気口のエリアは、制御可能な流れエリアを有する確実な開放圧力を可能にするように比較的大きくなっているべきであり、より迅速な圧力解放を可能にし、電解質の霧化を排除する。より大きな通気口エリアは、一般的に、安全性が増加した設計を作り出すべきである。
【0085】
通気機構のみを含む(即ち、圧力切断デバイスを有さない)本開示の例示的な実施形態において、通気圧力(P3)は、約10psigから約140psigのオーダにあり、コンテナの構造的限界圧力(P4)は、少なくとも通気圧力よりも約10%高い。
【0086】
圧力切断デバイスおよび通気機構の両方を含む例示的な実施形態では、圧力切断デバイスがアクティブ化する圧力は、一般的にリチウムイオンバッテリの全体的設計に依存する。しかしながら、開示された圧力切断デバイスをアクティブ化するケーシング内のしきい値圧力は、一般的に10psig以上であり、一般的に10から40psigの範囲にある。通気機構も含む実施形態では、通気するために、即ち、ケーシングから加圧ガスを解放するために通気機構がアクティブ化する圧力は、一般的に、圧力切断デバイスがアクティブ化する圧力よりも少なくとも5psig高い。したがって、例えば、15psigでアクティブ化するように圧力切断デバイスが設定されている場合、本開示の例示的な実施形態では、独立した通気構造は、20psigで通気するように選択されてよい。注目すべきことには、ケーシング自体の全体的な圧力定格、即ち、ケーシングが故障し得る圧力は、一般的に、通気構造がアクティブ化する圧力よりも少なくとも5psig高い圧力に設定されている。したがって、上記で説明された例では(15psigにおける圧力切断デバイスのアクティブ化;20psigにおける通気構造のアクティブ化)、ケーシングは、一般的に少なくとも25psigの内部圧力に耐えるように設計されている。ケーシングの圧力定格は、故障がより起こりやすい封止機構を含む界面溶接およびその他の接合/開口に関して特に重要である。例示的な圧力切断は、20psigから50psigにおいて動作し、60psigから300psigにおいて通気し、ここで、構造は、>310psigを保持し、設計圧力に対して製造ウィンドウを残す。
【0087】
今日、いくつかの通気タイプ幾何学的形状が存在し、一般的に、指定された圧力において、通気口を画定するスコア線(複数可)において故障されるように設計されている。直線通気口、「Y」通気口、および放射状通気口に関する主な懸念は、クラック伝播が常に同じ経路を選ぶわけではないために通気口が一般的に完全に開放しないということである。丸い通気口は一般的に好ましく、なぜならば、それは、大きなエリアを迅速に開放させることができ、残りの金属フラップは、コンテナの著しい圧力増加なしにガスを解放させることができるように邪魔にならないように迅速に曲がることができるからである。最適な通気口設計は、さらなるガス発生による缶/コンテナ内の増加した圧力の増大なしに通気イベント時に全てのガスを迅速に解放させることができるという点において効果的である。
【0088】
例えば、円形または実質的に円形の通気開口の場合、約1.5インチの開口直径は、本開示のバッテリのための適切な通気機能を提供し得るが、特定のバッテリ実装の特徴/機能に基づいて代替的な直径の開口が採用されてよい。非円形通気開口の場合、約0.4cmから約12cmの全体通気面積が効果的に採用され得るが、この場合も、特定のバッテリ実装の特徴/機能に基づき代替的な通気面積が提供されてよい。
【0089】
増加した通気面積は、通気イベントに関して電解質の噴霧化を制限するが、フラッシュバックのリスクが存在する。このようなフラッシュバックは、内部短絡などのアブユース条件の間に故障しなかったセル内の隔離された電極構造の電解質を発火させる可能性がある。このリスクを制限するために、マルチロール構造を含む筐体に火炎前面が再進入することを防止するためにフレームアレスタが有利には通気口に近接して配置されてよい。本開示の例示的な実施形態では、フレームアレスタは、通気構造の内部に、即ち、通気構造を形成/画定するおよび/または通気機能を開始するスコア線によっておよび/もしくはスコア線の近くに画定されたエリアを横切って、配置される。
【0090】
個々のジェリーロールまたはパウチ/ポリマーセル構造の故障の場合、大量のガス(約10リットル)が発生され、このガスは高温(~250から300℃)および可燃性の両方である。通気が生じた後、このガスがマルチジェリーロール筐体の外側で発火する可能性がある。火炎がセルに入ることになる可能性を防止するおよび/または低減させるために、フレームアレスタとして機能するためにメッシュが有利には通気エリア上に置かれて/配置されてよい。このメッシュは、出ていくガス流の温度を自然発火温度よりも低く低減させるために機能する。
【0091】
メッシュが熱交換器として働いているので、より大きな表面積およびより小さな開口が、より多くの熱を拒絶するが、メッシュの開放面積を減少させることは、通気中のメッシュにおける力を増大させる。30米国規格メッシュ、0.012インチワイヤ直径が、試験された大型Liイオンバッテリのための逆火を防止する際に効果的であることが分かった。その他のメッシュサイズが効果的に機能すると予想されるが、Liイオンバッテリのための一般的な供給利用可能性および効果的なアレスタ機能により、30メッシュが好ましい。30メッシュは、40%の開放面積を有し、これは、70psiにおける通気において、メッシュが、通気面積の70psi*0.6=42lbf/inの瞬間的な力に耐えなければならないことを意味する。Liイオン用途のために使用されるものなど、合理的な通気面積について、このローディングからのメッシュにおける計算される応力は、穏当である。例えば、2インチ直径の通気口の場合(従来のバッテリコンテナの側壁に適合することができるものよりも大きい)、通気口におけるメッシュにおける瞬間的な応力は大まかに:
((pi*1in)*42lbf/in)/(pi*2in*0.012*0.6*0.7854)=~3714psi
である。銅の降伏強度は、~20,000psiである。
【0092】
さらに、図6図6A図7および図8(集合的に図6から図8)を参照すると、開示されたバッテリシステムに関連した例示的な安全特徴が提供されており、通気アセンブリ200および圧力切断デバイス(PDD)アセンブリ300を含む。図6から図8の例示的なバッテリによれば、通気アセンブリ200およびPDDアセンブリ300の動作構成要素は、外側缶102の上壁126に沿って取り付けられている/配置されている。しかしながら、通気アセンブリ200および/またはPDDアセンブリ300のうちの一方または両方の代替的な位置決め(全体的または部分的)は、本開示に基づいて当業者に明らかになるように、本開示の趣旨/範囲から逸脱することなく実施されてよい。
【0093】
最初に通気アセンブリ200を参照すると、外側缶またはケーシング102の上壁126は、開口128を画定していることに留意されたい。フレームアレスタ202および通気ディスク204が、開口128を横切って取り付けられている。封止が、通気アダプタリング206によってフレームアレスタ202および通気ディスク204の領域において維持されている。様々な取付け機構、例えば、溶接、接着剤、機械的取付け構造、および同様のもの(それらの組合せを含む)が、通気アダプタリング206を上壁126に固定するために採用されてよい。注目すべきことには、通気ディスク204は、必然的に上壁126に対して封止して係合させられ、例えば、当技術で知られているように、スコア線(複数可)および/または上壁126に対して低減された厚さによって、現場で形成されてよい。
【0094】
上記のように、個々のジェリーロール(または複数のジェリーロール)またはポリマー/パウチセルの故障の場合、大量のガス(~10リットル)が発生される場合があり、このガスは、高温(~250から300℃)および可燃性である。通気が生じた後、マルチジェリーロール筐体の外側でこのガスが発火する可能性がある。火炎前面がケーシングに入ることを防止するために、メッシュがフレームアレスタ202として機能するために提供されてよく、有利には通気エリア、即ち、開口128上に配置または位置決めされてよい。このメッシュは、出ていくガス流の温度を自然発火温度よりも低く低減させるために機能する。メッシュが熱交換器として働いているので、より大きな表面積およびより小さな開口は、より多くの熱を拒絶するが、メッシュの開放面積を減少させることは、通気中のメッシュに対する力を増加させる。
【0095】
開示されたバッテリの電気的態様に移ると、図6の分解図は、開示されたリチウムイオンバッテリのためのアノードとして機能し外側缶またはケーシング102の上壁126に形成されたさらなる開口130を通って上方へ延びるように構成および寸法決めされた、直立した銅端子115を示す。直立した端子115は、ケーシング102の内部の銅バスバー114およびバスバーコネクタ117と電気通信しており、外側缶/ケーシング102の上方および外方へ曝されるようにバスバーコネクタ絶縁体119を通って延びている。直立した銅端子115の上端部は、ヒューズホルダ302内に配置されており、このヒューズホルダは、外側缶/ケーシング102の上壁126に沿って取り付けられた実質的に矩形の、非伝導性(例えば、高分子)構造を画定してよい。直立した端子115は、ヒューズ304によって端子コンタクト面121と電気通信する。
【0096】
ヒューズ304は、直立する銅端子115および端子コンタクト面121と電気通信するようにヒューズホルダ302内に、外側缶/ケーシング102の外側に配置されている。端子ねじ306が、ヒューズ304をヒューズホルダ302および直立する端子115に対して固定するために設けられてよく、ヒューズ構成要素は、ヒューズカバー308によってヒューズホルダ302内に電気的に隔離されてよい。
【0097】
実質的にU字形の端子310は、外側缶/ケーシング102の上壁126と電気的および取付け接触している、離間したフランジ面311を画定している。ケーシング102の内部にあるアルミニウムバスバー104は外側缶/ケーシング102と電気通信しており、これにより端子310との電気通信を確立する。端子310は、当業者に容易に明らかになるように、様々な幾何学的形態を取り得る。端子310は、一般的に、アルミニウムから製造され、開示されたリチウムイオンバッテリのためのカソードとして機能する。
【0098】
したがって、アノード端子コンタクト面121およびカソード端子310は、ケーシング102の上壁126に隣り合った関係で配置されており、電気接続のために利用可能であり、これによりバッテリ100から所望のアプリケーション(複数可)へのエネルギ供給を提供する。
【0099】
例示的なPDDアセンブリ300を参照すると、伝導性ドーム312が、外側缶/ケーシング102の上壁126に画定されたさらなる開口132に関して配置されている。ドーム312は最初、外側缶/ケーシング102に対して内方へたわまされており、これにより、ドーム312の外方/上方へのたわみによって、外側缶内の圧力増加に応答するように配置されている。ドーム312は、一般的に上壁126に対して溶接されたドームアダプタリング314によって上壁126に対して取り付けられてよい。例示的な実装において、製造を容易にするために、ドームアダプタリング314は、ドーム312の外周に予め溶接されてよく、これにより、ドームアダプタリング314によって提供される増加した表面積により、上壁126に対するドーム312の取付けに関連した溶接作業を容易にする。
【0100】
図6から図8に示された例示的な実施形態では、非伝導性(即ち、絶縁性)ハンマホルダ315がドーム312の上面と係合して配置されており、これにより、以下で説明するように、端子コンタクト面121の下側からドーム312を電気的に隔離している。
【0101】
しかしながら、非伝導性ハンマホルダ315および編組(braid)アセンブリは、本明細書に説明されているように、本開示の代替的な実装において排除されてもよいと企図される。例示的な非編組実装では、ドーム312の上方/外方へのたわみ(外側缶/ケーシング102内の圧力上昇に基づく)は、ドーム312を端子コンタクト面121の下側と直接接触させてよい。このアプローチを選択する際、ドーム312を通って流れる電流がドーム312の構造的完全性に悪影響を与えないように注意が払われるべきである。これに関して、図6から図8の実施形態を参照して説明されたハンマホルダ/編組アセンブリ実装は、端子コンタクト面121との直接接触からドームを電気的に隔離することによって、ドームの潜在的な構造的損傷および/または故障を回避および/または最小化するための例示的なアプローチを提供する。
【0102】
さらに図6を参照すると、ハンマホルダ315は、伝導性編組317に画定された開口を通過し、編組317の他方の側に配置された切断ハンマ320にスナップ接続されるように構成および寸法決めされた上方延長部を含む。このように、ハンマホルダ315および切断ハンマ320は、編組317に関して固定されており、これらと一緒に移動する。編組317は、編組クランプ318によって編組ベース316に対して取り付けられており、サブアセンブリは、例えば、溶接によって、外側缶/ケーシング102の上壁126に対して固定される。注目すべきことには、伝導性編組317は、外側缶/ケーシング102に対する、ドーム312、ハンマホルダ315および切断ハンマ320の上方移動を収容するために伸縮性である。
【0103】
使用時、外側缶/ケーシング102および上側カバー120によって画定されたアセンブリ内の圧力増大に応答して、ドーム312は、外側缶/ケーシング102の上壁126に対して上方へたわむことになる。十分に上方へたわむと、即ち、バッテリ100に関連した内圧がしきい値レベルに達することに基づき、切断ハンマ320が、ヒューズホルダ302内のヒューズ304と電気通信する端子コンタクト面121の下側と接触させられる。切断ハンマ320の上方移動は、編組317の「ストレッチング」により可能となる。切断ハンマ320(伝導性である)の間の接触は、カバー126から編組317、ハンマヘッド320、端子コンタクト面121、ヒューズ302、および直立した端子115を通る回路を完成させる。この回路の完成は、ヒューズ302を「飛ばし」、これにより、外側缶102および上側カバー120によって画定されたアセンブリ内に配置されたマルチコア構成要素からの回路を遮断する。電流は、外側缶102を通じてバイパスされる。注目すべきことには、PDDアセンブリ300の全ての動作構成要素は、たわむことができるドーム312を除き、有利には、外側缶102および上側カバー120の外側に配置されている。
【0104】
図9を参照すると、代替の例示的なマルチコアリチウムイオンバッテリ400の分解図が示されている。例示的なリチウムイオンバッテリの組み立てられた図は、図9Aに示されている。図9は、図5から図8の実施形態を参照して最初に説明されたものなどの通気アセンブリ200およびPDDアセンブリ300のための代替的な位置を示す。
【0105】
図9Aから図9Cを参照して、例示的な特にドーム912およびハンマヘッド928を含む、PDD900の追加的な特徴および機能が、本開示に従って説明される。ハンマヘッド928は、周方向フランジまたはヘッド領域930およびそこから延びるねじ山付きシャンク932を画定する。ねじ山付きシャンク932は、ヒューズホルダ902に画定されたアパーチャ934に形成された対応するねじ山に係合するように構成されている。ヘッド領域930は、端子コンタクト面721と協働して、その実質的に平坦な上面を画定する。アパーチャ932に対してハンマヘッド928をねじ的に係合させる(threadingly engage)ために、工具、例えば、ねじ回しまたは同様のものとの相互作用を容易にするために、ヘッド領域930に駆動特徴936が画定されている。所定の位置にねじ込まれると、ハンマヘッド928はドーム912に対して所望の位置に固定して保持され、これにより、バッテリケーシング内の圧力条件がドーム912をアクティブ化したときにドーム912とハンマヘッド928との間の確実で厳格な電気的接触を保証する。
【0106】
図9Aから図9Cに示された組み立てられた条件において、ハンマヘッド928の遠位面938は、有利にはヒューズホルダ902の下側を超えて延びている。ハンマヘッド928の中心軸線(図9Bに破線Xとして示されている)は、円形のドーム912の中心と実質的に整列している。図9Aの初期位置において、ドーム912は、ハンマヘッド928の遠位面938から離れるように曲げられている。この相対的な配向は、缶702および上側カバー720によって境界が定められた体積内の圧力が通常作動範囲内にある、即ち、ドーム912のたわみ応答が開始したような高いレベルにはないという条件を反映している。本開示によるリチウムイオンバッテリの通常作動条件に関連した圧力は、バッテリの電力/エネルギ容量、ケーシング内に配置されたジェリーロール/電気化学ユニットの数、共有された雰囲気領域の体積、電解質の組成(特に脱気剤のタイプおよびレベルを含む)を含む多くの要因に依存して異なることになる。
【0107】
バッテリ容量が30アンペア毎時以上である本開示の典型的なリチウムイオンバッテリ実装では、通常条件下での動作圧力は0から5psigの間である。したがって、10psigから70psigの間の動作圧力がPDDアクティブ化のために許容できると見なされ得るが、本開示の例示的な実装では、より低い圧力範囲、例えば、10psigから30psigの範囲の圧力が許容できる圧力動作範囲と見なされ得る。本開示のPDDは、バッテリのケーシング内の選択された圧力(または制限された圧力範囲)、例えば、20psig±0.1psigまたは同様のものにおいて応答するように設計されている。注目すべきことには、PDDアクティブ化圧力は、少なくとも部分的に、バッテリケーシング内の温度が、許容できるレベル、例えば、110℃から120℃を超えない初期温度を超えないことを保証するように選択されてよい。内部温度が約110℃から120℃を超えることが許可されると、ジェリーロール(複数可)/電気化学ユニット(複数可)の内部短絡(複数可)(例えば、セパレータ収縮または断裂に基づく)および/または熱暴走につながる可能性がある大きな問題が生じ得る。本開示によれば、所定の圧力しきい値における開示されたPDDのアクティブ化は、熱暴走およびその他の潜在的に壊滅的な故障条件を防止するために一般的に効果的である。
【0108】
特に、例示的な本開示の実施形態では、内部圧力がPDDしきい値に達すると、ドームディスクがハンマヘッドに接触するように跳ね上がり、正および負の端子の間の短絡を引き起こされ、その結果、ヒューズ故障を生じる。ヒューズが故障した(即ち、「飛んだ」)後、外部回路に接続している負の端子は、コンテナ内のジェリーロールから隔離され、負の端子は、ケースおよびハンマヘッドを介して正の端子に接続され続け、その結果、電流が負の端子からケースへ直接流れ、即ち、ジェリーロールをバイパスする。
【0109】
本開示の例示的な実施形態では、図10の断面図に示されているように、ドーム912(伝導性フィルムディスク913を加える前)は、その外周(ただし周方向取付けフランジ942の内側)において周方向溝940を含むまたは画定してよい。溝940は、バッテリケーシング内で展開された内部圧力に対するドーム912の応答を容易にする。
【0110】
ドーム912が、中央領域の厚さが約0.015から0.022インチ(フィルムディスク913を有するまたは有さない)であるようにアルミニウムから製造される本開示の例示的な実施形態では、ドーム912の直径(取付けフランジ領域942を除外する)は約1.18インチであり、溝940の内側のドーム912の直径は約1.03インチであり、ハンマヘッド928の遠位面938の半径は約0.06から0.08インチであり、アクティブ化圧力は約20から25psigであり、フィルムディスク913(約0.404インチの直径)がドーム912の中央領域(図10には示されていない)に適用されたときの取付けフランジ942の上面からドームの中心点におけるドーム912の表面までの距離「D」は約0.115インチから約0.123インチである。
【0111】
本開示のPDDは、第1の圧力、例えば、10から40psig(またはバッテリ設計に応じて、より高い)でのアクティブ化のために設計されてよく、通気口アセンブリは、PDDのアクティブ化圧力よりも少なくとも5から10psig高い第2の圧力でのアクティブ化(即ち、圧力開放/通気)のために設計されてよく、バッテリケーシングの全体的設計(即ち、溶接、封止、接合部および同様のもの)は、通気アセンブリのアクティブ化圧力よりも少なくとも5から10psig高い故障圧力定格で設計されてよい。このように、バッテリ設計の安全性応答のためのシーケンスは、バッテリ設計および動作に関連したリスクを最小化するように確立されてよい。
【0112】
開示されたバッテリシステムのそれぞれから明らかなように、本開示のPDD構成要素および通気構造は、有利には、ケーシングの缶または蓋に直接形成されたアパーチャ/開口に関して取り付けられた構成要素に基づいてバッテリケーシング内の条件と相互作用し、これに応答する。例えば、開示されたドームは、図6において缶自体に形成された開口に関して取り付けられているのに対し、開示されたドームは、蓋に形成された開口に関して取り付けられてよい。等しく有益には、通気口は、図6において缶に直接形成された開口に関して取り付けられているのに対し、開示された通気口は、蓋に形成された開口に関して取り付けられてもよい。
【0113】
本開示のPPDおよび/または通気構造を支持するために中間またはアクセサリ構造は必要とされない。事実、本開示の実施形態によれば、バッテリの内部に対して1つの追加的な開口のみ、即ち、Cu端子の通過を収容するための開口が必要とされる。開示されたバッテリシステムの簡略性および製造/組み立ての容易性は、開示されたバッテリシステムの製造可能性およびコストパラメータを改善する。さらに、開示されたバッテリの缶および/または蓋に対するPDDおよび通気アセンブリの直接取付けは、開示されたバッテリの低プロフィルをさらに高める。低プロフィルとは、高容量バッテリシステム、例えば、30Ah以上を送達しながら、開示されたPDDおよび通気安全性構造/システムを収容するために必要とされる低減された体積または空間を意味する。
【0114】
例示的な圧力切断デバイスにおけるドームに対するアーク発生の緩和
ドームがアクティブ化するときのアーク発生により孔(複数可)を作り得るドームディスクの溶け落ちの可能性を回避するために、本開示によれば、2つの有利な設計オプション:(i)より厚いドームディスク、および(ii)ディスクに追加的な箔を溶接すること、が開発された。2つのオプションは、独立して実装されてよい、または組み合わせて実装されてよい。
【0115】
ドームディスクを厚くすることおよびドームディスクに追加的な箔を溶接することの両方(これにより、ドームディスクの領域における質量を増加させること)は、800AのDC電流を適用したときのドームディスクにおける溶け落ちした孔を排除することが示された。これらの試験の結果は、以下に示された表に示されている。
【表11】
【0116】
Alドームディスクに溶接された異なる厚さのAl箔およびCu箔による、ドームディスク吹き出し圧力への追加的な溶接金属箔の厚さおよびタイプの効果が調査された。これらの研究に基づき、表12に示されているように、Al箔厚さおよびCu箔厚さは、ドーム吹き出し圧力への大きな効果は有さない。
【表12】
【0117】
追加的な金属箔は、有利には、アークが発生したときに犠牲層として機能することができ、これにより、溶け落ちからドームディスクを保護する。加えて、本明細書に開示されたオプションに関連したより大きな熱質量およびより低い抵抗は、有益には、ハンマとドームディスクとの間のコンタクトエリアにおける局所的な熱を低減させる。箔がより厚くより伝導性になるほど、開示された設計は、アークが溶け落ちすることを防止することにおいてより効果的となると予想される。
【0118】
ドームがアクティブ化したとき、即ち、開示された圧力切断デバイスがトリガされたときの溶け落ちのリスクを緩和するための設計を実装することにおいて、異なる材料の選択および使用が有益に採用され得ることに留意されたい。例えば、より高い融点を示す材料は、容易に溶け落ちしにくいため有利であり得る。また、選択された材料の導電性は、ドームトリガの設計および動作に利益をもたらす場合があり、例えば、より高い導電性を示す材料は、ドーム領域から電流をより効果的に/迅速に消散させ、これにより、溶け落ちのリスクを低減させる。
【0119】
事実、ドーム(またはその他のPDDトリガ機構)が圧力切断条件に応答する速度は、設計が、潜在的な溶け落ちに対して緩和させなければならない程度に影響し、即ち、ドーム/トリガがより迅速に応答するほど、溶け落ち条件が生じ得る可能性が低くなる(また、その逆でもある)。したがって、所与のPDD解放圧力(例えば、40psi)の場合、その圧力において応答するように設計されたドーム/トリガ機構が、その材料(複数可)の構成、形状、厚さ/質量などに基づいてある速度において応答すると予想することができる。第2のPDD解放圧力(例えば、90psi)の場合、その圧力において応答するように設計されたドーム/トリガ機構が、その材料(複数可)の構成、形状、厚さ/質量などに基づいて潜在的に異なる速度で応答すると予想することができる。本開示によれば、ドーム/トリガ機構の設計は、PDD応答の予想速度を考慮して溶け落ちを防止するために(例えば、材料(複数可)の、構造、ジオミトリ、厚さ/質量などに基づいて)選択されてよい。
【0120】
図11を参照すると、隣り合った関係にある複数のセル1302を含むバッテリモジュール1300の側断面図が示されている。断熱マット1303が、隣接するセル1302の間に位置しており、これにより、それらの間の熱伝達を最小限にしている。セル1302が熱暴走を被ると、その通気口1304が開放する。セラミックカップ1305が通気口1304の上方に置かれており、これにより、通気ガスはセラミックカップ1306を通って流れる。断熱カバー層1306が、それぞれの個々のセラミックカップ1305と、その上に横方向に延びる通気ガス通過チャネル1307との間に配置されている。通気ガス通過チャネル1307は、それぞれのセル1302に関連したセラミックカップ1305のそれぞれと連通している。セル1302が通気および熱暴走を被ると、断熱カバー層1306が通気ガスによって吹き飛ばされ、通気ガスがガス通過チャネル1307内へ案内される。他のセラミックカップ1305を覆う断熱カバー層1307は、通気ガス通過チャネル1307における通気ガスがモジュール1300における他のセル1302へ逆流することを防止する。したがって、通気ガスが近隣のセルに達することが防止される。
【0121】
一般的に、通気ガス通過チャネル1307には窒素、二酸化炭素などの不活性ガスが予め満たされていることが好ましい。通気ガスがガス通過チャネル1307へ流入すると、通気ガスは、空気の不在により発火しないことになる。不活性ガスを予め満たすことを可能にするために、通気ガス通過チャネル1307は封止される必要がある。通気ガス通過チャネル1307と個々のセラミックカップ(複数可)1305との間の封止は、各断熱カバー層1306の下に配置することができる。これらの封止は、通気ガスがこのような封止を突き破ることを可能にするように十分に弱い必要がある。加えて、通気ガス通過チャネル1307の端部のうちの少なくとも1つも、セル1302からのガスの通気が生じた瞬間に通気ガスを通流させることを可能にするように弱く封止されている。通気ガス通過チャネル1307の両端部が、その両端部において通気ガスの潜在的な解放を可能にするように弱く封止されていてよい。
【0122】
例示的な実施形態によれば、通気ガス通過チャネル1307は、個々のモジュールのために使用することができるが、バッテリパック/ユニットにおける複数のモジュールによって共有されることもできる。
【0123】
図12を参照すると、例示的なバッテリモジュール1400の斜視図が示されている。モジュール1400は、隣り合った関係にある8つのセル1402を含む。マット1404、例えば、セラミックマットが、隣接するセル1402の間に配置されており、隣接するセルの間の熱伝達を最小限にしている。例えば、熱暴走の場合に、セルによって発生したガスの通気を可能にするために、各セル1402に対して通気口1406が設けられている。隣接するセル1402は、隣接するセル1402の端子間で通信するバスバー1408に基づいて互いに電気通信する。一対のモジュールエンドプレート1410が、モジュール1400の各端部に1つずつ設けられており、モジュールストラップ1412が、セルを互いに対して固定するためにモジュールアセンブリ全体の周りに延びている。したがって、モジュールストラップ1412のそれぞれは、2つのモジュールエンドプレート1410および隣り合ったセル1402(それらの間にセラミックマット1404が配置されている)の周囲に延びており、これにより、組み立てられたバッテリモジュール1400を画定している。
【0124】
図13Aおよび図13Bを参照すると、代替の例示的なバッテリシステム1500および1600の分解図が示されている。バッテリシステム1500/1600は、バッテリシステム1500/1600が、本明細書に説明されているように、ヒュージング機能を提供するタブを含むことを除き、図3および図4に概略的に示されたバッテリシステム30/50に対応する。
【0125】
したがって、図13Aにおけるバッテリシステム1500は、ケース1532、カバー1534、支持構造1536、および複数のポリマー/パウチセル1538を含む。完全に組み立てられると、ケース1532およびカバー1534は、封止された筐体、例えば、密封して封止された筐体を画定する。支持構造1536は、離間した複数のスロット1540を画定しており、これらのスロット1540は、支持構造1536を貫通して延びており、個々のポリマー/パウチセル1538を受けるように構成および寸法決めされている。完全に組み立てられると、ポリマー/パウチセル1538のそれぞれは、支持構造1536によって画定されたスロット1540内に配置される。
【0126】
ポリマー/パウチセル1538のそれぞれは、ポリマー/パウチセル1538の向かい合った端部から延びる第1および第2のタブ1542、1544を含む。第1/第2のタブ1542/1544は、実質的にT字形であり、第1/第2のネック領域1543/1545のそれぞれの側におけるタブ領域と比較して、幅/質量が低減された第1/第2のネック領域1543/1545を画定している。第1/第2のネック領域1543/1545の低減された幅/質量は、個々のポリマー/パウチセル1538にヒュージング機能を提供し、これにより、(関連するバスバーに対して)タブ1542または1544を横切る電流の流れがしきい値レベルを超えて増加すると、適用可能なネック領域1543/1545の故障を引き起こすことになり、これにより内部短絡を作り、関連するポリマー/パウチセル1538と、関連するバスバー(図示せず)との間の電気通信を遮断する。このように、不安定な条件に達したポリマー/パウチセル1538は、影響されるタブに関連したネック領域のヒューズ的な故障によりバッテリシステムから電気的に隔離されることになる。したがって、それぞれの個々のポリマー/パウチセルは、内部短絡時に、インシデントセルを切断するヒューズを含む。これは、セル故障をさらに悪化させ伝播の可能性を伴う追加的な熱を引き起こし得る故障セルへの電流の流れを可能にしない。
【0127】
ポリマー/パウチセル1538のそれぞれは、例えば、上記で説明されているように、故障の優先的領域(複数可)を画定する構造(複数可)/特徴(複数可)を含む。したがって、ポリマー/パウチセル1538は、縁部に沿った通気スコア、弱められたエリア封止、またはそれらの組合せを含んでよい。このように、ポリマー/パウチセル1538内の圧力が増加すると、通気されるガスの流れが、所望の経路によって、ケース1532内の所望の領域へ方向付けられるように制御されることになる。図13Aの例示的な実施形態では、通気されたガスを受けるための所望の領域が、ケース1532の面を貫通して延びる通気口1546に近接している。通気口1546およびケース1532の面に関して取り付けられたその他の要素の特徴および機能は、例えば、図6図9Aから図9C、および図10を参照して上記で説明されている。
【0128】
図13Bを参照すると、代替の例示的なバッテリシステム1650の分解図が示されている。バッテリシステム1650は、ケース1652、カバー1654、支持構造1656、および複数のポリマー/パウチセル1658を含む。完全に組み立てられると、ケース1652およびカバー1654は、封止された筐体、例えば、密封して封止された筐体を画定する。支持構造1656は、離間した複数のスロット1660を画定しており、スロット1660は、支持構造1656を貫通して延びており、個々のポリマー/パウチセル1658を受けるように構成および寸法決めされている。完全に組み立てられると、ポリマー/パウチセル1658のそれぞれは、支持構造1656によって画定されたスロット1660内に配置される。
【0129】
ポリマー/パウチセル1658のそれぞれは、離間した関係にあり、ポリマー/パウチセル1658の同じ端部から延びる第1および第2のタブ1662、1664を含む。第1/第2のタブ1642/1644は、実質的にT字形であり、第1/第2のネック領域1643/1645のいずれの側におけるタブ領域と比較して幅/質量が低減された第1/第2のネック領域1643/1645を画定している。第1/第2のネック領域1643/1645の低減された幅/質量は、個々のポリマー/パウチセル1638にヒュージング機能を提供し、これにより、(関連するバスバーに対して)タブ1642または1644を横切る電流の流れがしきい値レベルを超えて増加すると、適用可能なネック領域1643/1645の故障を引き起こすことになり、これにより、内部短絡を作り、関連するポリマー/パウチセル1638と、関連するバスバー(図示せず)との間の電気通信を遮断する。このように、不安定な条件に達したポリマー/パウチセル1638は、影響されるタブに関連したネック領域のヒューズ的な故障によりバッテリシステムから電気的に隔離される。したがって、それぞれの個々のポリマー/パウチセルは、内部短絡時に、インシデントセルを切断するヒューズを含む。これは、セル故障をさらに悪化させ伝播の可能性を伴う追加的な熱を引き起こし得る故障セルへの電流の流れを可能にしない。
【0130】
ポリマー/パウチセル1658のそれぞれは、例えば、図1および図2に関して上記で説明されているように、故障の優先的領域(複数可)を画定する構造(複数可)/特徴(複数可)を含む。したがって、ポリマー/パウチセル1658は、縁部に沿った通気スコア、弱められたエリア封止、またはそれらの組合せを含んでよい。このように、ポリマー/パウチセル1658内の圧力が増加すると、通気されるガスの流れが、所望の経路によって、ケース1652内の所望の領域へ方向付けられるように制御されることになる。図13Bの例示的な実施形態では、通気されたガスを受けるための所望の領域が、ケース1652の面を貫通して延びる通気口1666に近接している。通気口1666およびケース1652の面に関して取り付けられたその他の要素の特徴および機能は、例えば、図6図9Aから図9C、および図10を参照して上記で説明されている。
【0131】
本開示は、その例示的な実施形態および実装を参照して説明されているが、本開示は、このような例示的な実施形態または実装によってまたはそれらに限定されない。むしろ、本開示は、その趣旨または本質的特徴から逸脱することなくその他の形式で具体化され得る。したがって、本実施形態は、限定的ではなく例示的であると考えられるべきである。
図1
図2
図3
図3A
図4
図4A
図5
図6
図6A
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13A
図13B
【国際調査報告】