(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-28
(54)【発明の名称】O-GLCNACASE(OGA)阻害剤組合せ療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241018BHJP
A61K 31/454 20060101ALI20241018BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241018BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20241018BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241018BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20241018BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61K31/454
A61P25/00
A61P25/28
A61K39/395 D
A61P43/00 121
A61P43/00 111
C07K16/18 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024523928
(86)(22)【出願日】2022-10-21
(85)【翻訳文提出日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 US2022078475
(87)【国際公開番号】W WO2023070064
(87)【国際公開日】2023-04-27
(32)【優先日】2021-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】ビグラン,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】フライシャー,アダム エス
(72)【発明者】
【氏名】マーゴット,ダスティン ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ナッサル,ヒュー エヌ
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC82
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA10
4C086GA15
4C086MA02
4C086MA04
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4C086ZA02
4C086ZA16
4C086ZC20
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045BA72
4H045DA76
4H045DA83
4H045EA20
(57)【要約】
本発明は、アミロイドベータ沈着物を特徴とする疾患並びに/あるいはアミロイドベータ沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患の進行を遅延させ、治療し、かつ/又は予防する方法を提供する。そのような方法は、そのような治療を必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体及び有効量のOGA阻害剤を投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする前記患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含み、
前記OGA阻害剤は、式:
【化1】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項2】
前記アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患が、前臨床的アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、及び前臨床的脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してシス配置にある、請求項1に記載の方法。
【化2】
【請求項4】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記OGA阻害剤が、結晶性である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、15.3°、21.6°、22.2°、22.7°、23.5°、24.3°、及び26.8°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、12.1°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、前記回折角の許容誤差が、0.2度である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗N3pG Aβ抗体が軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、前記LCVRが相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記HCVRがCDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
i)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号5によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号6によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号7によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号8によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号9によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号10によって与えられる、又は
ii)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号15によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号16によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号17によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号18によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号19によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号20によって与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、
i)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号1によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号2によって与えられる、又は
ii)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号11によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号12によって与えられる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、
i)前記LCのアミノ酸配列が配列番号3によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号4によって与えられる、又は
ii)前記LCのアミノ酸配列が配列番号13によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号14によって与えられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含み、前記OGA阻害剤が、式:
【化3】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項11】
前記アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患が、前臨床的アルツハイマー病、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、及び前臨床的脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してシス配置にある、請求項10に記載の方法。
【化4】
【請求項13】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してトランス配置にある、請求項10に記載の方法。
【化5】
【請求項14】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記OGA阻害剤が、結晶性である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記OGA阻害剤が、5.8°、13.0°、14.3°、17.5°、20.4°、21.4°、及び22.2°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、13.5°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、前記回折角の許容誤差が、0.2度である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記抗N3pG Aβ抗体が軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、前記LCVRが相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記HCVRがCDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
i)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号5によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号6によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号7によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号8によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号9によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号10によって与えられる、又は
ii)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号15によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号16によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号17によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号18によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号19によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号20によって与えられる、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、
i)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号1によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号2によって与えられる、又は
ii)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号11によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号12によって与えられる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、
i)前記LCのアミノ酸配列が配列番号3によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号4によって与えられる、又は
ii)前記LCのアミノ酸配列が配列番号13によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号14によって与えられる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする前記患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含み、
前記OGA阻害剤は、式:
【化6】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項22】
前記アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患が、前臨床的アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、及び前臨床的脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してシス配置にある、請求項21に記載の方法。
【化7】
【請求項24】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記OGA阻害剤が、結晶性である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物が、15.3°、21.6°、22.2°、22.7°、23.5°、24.3°、及び26.8°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、12.1°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、前記回折角の許容誤差が、0.2度である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗N3pG Aβ抗体が軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、前記LCVRが相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記HCVRがCDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
i)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号5によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号6によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号7によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号8によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号9によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号10によって与えられる、又は
ii)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号15によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号16によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号17によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号18によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号19によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号20によって与えられる、
請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、
i)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号1によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号2によって与えられる、又は
ii)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号11によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号12によって与えられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、
i)前記LCのアミノ酸配列が配列番号3によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号4によって与えられる、又は
ii)前記LCのアミノ酸配列が配列番号13によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号14によって与えられる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含み、前記OGA阻害剤が、式:
【化8】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である、方法。
【請求項31】
前記アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患が、前臨床的アルツハイマー病、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、及び前臨床的脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してシス配置にある、請求項30に記載の方法。
【化9】
【請求項33】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してトランス配置にある、請求項30に記載の方法。
【化10】
【請求項34】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記OGA阻害剤が、結晶性である、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記OGA阻害剤が、5.8°、13.0°、14.3°、17.5°、20.4°、21.4°、及び22.2°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、13.5°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、前記回折角の許容誤差が、0.2度である、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記抗N3pG Aβ抗体が軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、前記LCVRが相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記HCVRがCDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
i)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号5によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号6によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号7によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号8によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号9によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号10によって与えられる、又は
ii)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号15によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号16によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号17によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号18によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号19によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号20によって与えられる、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、
i)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号1によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号2によって与えられる、又は
ii)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号11によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号12によって与えられる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、
i)前記LCのアミノ酸配列が配列番号3によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号4によって与えられる、又は
ii)前記LCのアミノ酸配列が配列番号13によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号14によって与えられる、請求項39に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1つ以上のO-GlcNAcase(「OGA」)阻害剤と1つ以上の抗N3pGluアミロイドβ(抗N3pG Aβ)抗体との組合せ、並びにi)アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び/又はii)アミロイドベータ(Aβ)沈着物とタウ媒介性神経変性との組合せを特徴とする障害の治療のためにそれを使用する方法に関する。本開示のいくつかの態様は、アルツハイマー病(AD)の治療に関する。
【0002】
アルツハイマー病は、アミロイドベータ沈着物及び/又は異常なタウ凝集によって病理学的に特徴付けられる破壊的な神経変性疾患である。ADは世界中で何百万人もの人々に影響を及ぼしており、ADの治療は社会の最も重要な満たされていないニーズの1つである。ADの神経病理学的特徴は、過剰リン酸化タウタンパク質を含む細胞内神経原線維変化の存在である。ADの別の病理学的特徴は、アミロイドベータ(Aβ)沈着物の存在である。タウとAβ病理との間の相互作用は、依然として解明されている最中である。Aβがタウ病理を引き起こし、Aβとタウとの間のより複雑で相乗的な相互作用が後の段階で現れ、疾患の進行を促進する可能性がある(Busche et al.,Nature Neuroscience 23:1183-93(2020))。
【0003】
脳浸透性であるOGA阻害剤が、アルツハイマー病などのタウ媒介性神経変性障害のための治療を提供することが望まれる。Aβを標的とする抗体(抗N3pGlu Aβ抗体など)は、対象の脳におけるアミロイド沈着物の除去において有望であることが示されており、アルツハイマー病の治療薬として使用/開発されている。本開示は、i)抗N3pGlu Aβ抗体と組み合わせたOGAの阻害剤である特定の化合物、並びにii)異常なタウ及び/又はアミロイド沈着物によって媒介される疾患、例えばADを治療する関連方法を提供する。
【0004】
対形成したらせん状フィラメント(PHF)及び直線状又はねじれ状フィラメントのような、神経原線維変化(NFT)及び神経絨毛糸(NT)を生じさせるフィラメント状構造への微小管関連タンパク質タウのオリゴマー化は、アルツハイマー病及び他のタウオパチーの決定的な病理学的特徴の1つである。アルツハイマー病を有する個体の脳におけるNFTの数は、疾患の重症度と密接に相関する。これは、タウがニューロン機能不全及び神経変性において重要な役割を有することを示唆する(Nelson et al.,J Neuropathol Exp Neurol.,71(5),362-381(2012))。タウ病理は、PSPにおける疾患期間と相関することが示されており、より攻撃的な疾患経過を有する症例は、より遅い進行を有する症例よりも高いタウ負荷を有する。(Williams et al.,Brain,130,1566-76(2007))。近年の研究(Yuzwa et al.,Nat Chem Biol,4(8),483-490(2008))は、アルツハイマー病及び関連するタウ媒介性神経変性障害の治療においてタウ過剰リン酸化及び病理学的タウへの凝集を制限するためのO-GlcNAcase(OGA)阻害剤の治療可能性を支持している。具体的には、OGA阻害剤であるチアメット-Gは、JNPL3タウマウスモデルにおける運動神経喪失の遅延(Yuzwa et al.,Nat Chem Biol,8,393-399(2012))、並びにTg4510タウマウスモデルにおけるタウ病理及び変性神経突起の低減(Graham et al.,Neuropharmacology,79,307-313(2014))に関連している。したがって、OGA阻害剤は、NFT及びNTなどの過剰リン酸化病理形態のタウの蓄積を低減させるための有効な治療アプローチとして認識されている。米国特許第9,120,781号は、OGA阻害活性を有し、OGAの欠乏若しくは過剰発現、及び/又は2-アセトアミド-2-デオキシ-5β-D-グルコピラノシド(O-GlcNAc)の蓄積若しくは欠乏に関する疾患及び障害を治療する上で有用であるとして更に開示される、ヘキサヒドロベンゾオキサゾール及びヘキサヒドロベンゾチアゾール誘導体を開示している。更に、US2016/0031871は、アルツハイマー病を治療するためのある特定のグリコシダーゼ阻害剤を開示している。
【0005】
脳アミロイド沈着物の形態でのアミロイド-βペプチドの蓄積は、アルツハイマー病における初期の必須事象であり、神経変性をもたらし、その結果、認知及び機能障害等の臨床症状の発症をもたらす(Selkoe,JAMA 283:1615-7(2000);Hardy et al.,Science 297:353-6(2002);Masters et al.,Nat.Rev.Dis.Primers 1:15056(2015);及びSelkoe et al.,EMBO Mol.Med.8:595-608(2016))。アミロイドベータは、アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein:APP)と呼ばれるより大きな糖タンパク質のタンパク質分解的切断によって形成される。APPは、多くの組織において、しかし特にニューロンシナプスにおいて発現される、内在性膜タンパク質である。APPは、γ-セクレターゼによって切断されて、37~49アミノ酸残基のサイズの範囲にわたるペプチドの群を包含するAβペプチドを放出する。Aβモノマーは、オリゴマー、プロトフィブリル及びアミロイド原線維を含む、様々な種類の高次構造に凝集する。アミロイドオリゴマーは可溶性であり、脳全体に広がり得るが、一方でアミロイド原線維はより大きくかつ不溶性であり、更に凝集してアミロイド沈着物又はプラークを形成し得る。ヒト患者に見られるアミロイド沈着物は、Aβペプチドの異種混合物を含み、その一部はN末端短縮化を含み、更に、N末端修飾、例えばN末端ピログルタミン酸残基(pGlu)などを含み得る。ヒト患者において見出されるアミロイド沈着物は、Aβペプチドの不均一混合物を含む。N3pGluAβ(N3pGAβ、N3pEAβ、AβpE3-42、又はAβp3-42とも呼ばれる)は、Aβペプチドの切形形態であり、アミロイド沈着物中にのみ認められる。N3pGluAβは、ヒトAβのN末端における最初の2つのアミノ酸残基を欠失しており、Aβの第3のアミノ酸位置におけるグルタミン酸に由来したピログルタミン酸塩を有する。N3pGlu Aβペプチドは、脳の中に沈着したAβの微量構成要素であるが、研究は、N3pGlu Aβペプチドが積極的な凝集特性を有し、沈着カスケードにおいて早期に蓄積することを示唆している。
【0006】
N3pGluAβに対する抗体は、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第8,679,498号、米国特許第8,961,972号、米国特許第10,647,759号及び米国特許第11,078,261号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、抗N3pGlu Aβ抗体、抗体を作製する方法、抗体製剤、及びそのような抗体を用いてアルツハイマー病などの疾患を治療する方法を開示している。
【0007】
沈着物に見られる、N3pGlu Aβを含むAβに対する抗体の長期慢性投与による受動免疫は、様々な動物モデルにおける脳内のAβ凝集体を破壊し、沈着物のクリアランスを促進することが示されている。ドナネマブ(米国特許第8,679,498号に開示されている)は、脳内のアミロイド沈着物にのみ存在するアミロイドベータ(N3pGlu Aβ)エピトープの3番目のアミノ酸のピログルタマート改変に対する抗体である。
【0008】
ドナネマブの治療及び予防戦略は、既存の脳アミロイド負荷を有する早期症候性AD患者の集団におけるアミロイド沈着物に特異的なN3pGlu Aβを標的とすることを含む。この理論的根拠は、Aβの産生及び沈着がADの病因における早期の必要な事象であることを述べているADのアミロイド仮説に基づいている。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるSelkoe,JAMA 283:1615-1617(2000)を参照されたい。ドナネマブは近年、アミロイド沈着物の除去及びAD進行の遅延において有効性/効力を示している。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるMintun et al.,New England Journal of Medicine 384.18:1691-1704(2021)を参照されたい。
【0009】
抗N3pG Aβに特異的に結合し、ヒト対象の脳内のアミロイドベータを減少させる抗体とOGA阻害剤との組合せは、ADなどの疾患の治療を提供することが望ましい。そのような組合せは、病原性タウ種及びタウ凝集体の減少並びにアミロイドベータ(Aβ)の減少を可能にする。そのような組合せはまた、好ましくは、いずれかの分子単独よりも効果的であろう。例えば、そのような組合せによる治療は、単独で使用される各分子と比較して、いずれか又は両方の分子のより低い用量の使用を可能にし、効能を維持しながら、より低い副作用(又は一方若しくは他方の療法のより短い期間)をもたらす可能性がある。本明細書で提供される組合せは、アミロイドベータを減少させるだけでなく、異常なタウ、病理学的タウへのタウ凝集、及びADなどの疾患の治療のためのその増殖も減少させると考えられる。
【0010】
一態様では、本開示は、アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、本開示は、アミロイドベータ沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法に関する。この方法は、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて、それを必要とする患者に投与することを含み、OGA阻害剤は、式:
【化1】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の2位のメチルは、ピペリジン環の4位の酸素に対してシス配置である:
【化2】
【0011】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は結晶性である。いくつかの実施形態では、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドは、12.1°の回折角2θにおけるX線粉末回折スペクトルのピークと、15.3°、21.6°、22.2°、22.7°、23.5°、24.3°及び26.8°からなる群から選択される1つ以上のピークとの組合せを特徴とし、回折角の許容範囲は0.2度である。本開示の別の態様は、アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法に関し、OGA阻害剤は、式:
【化3】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、本開示は、アミロイドベータ沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の2位のメチルは、ピペリジン環の4位の酸素に対してシス配置である:
【化4】
【0012】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の2位のメチルは、ピペリジン環の4位の酸素に対してトランス配置である:
【化5】
【0013】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである。実施形態では、OGA阻害剤は、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は結晶性である。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、5.8°、13.0°、14.3°、17.5°、20.4°、21.4°、及び22.2°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、13.5°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、回折角の許容誤差が、0.2度である。
【0014】
本開示の別の態様は、アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法に関し、OGA阻害剤は、式:
【化6】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、本開示は、アミロイドベータ沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法に関する。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の5位のメチルは、ピペリジン環の3位の酸素に対してシス配置である:
【化7】
【0015】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の5位のメチルは、ピペリジン環の3位の酸素に対してトランス配置である:
【化8】
【0016】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、1-(2-(((3R,5S)-1-((6-フルオロ-2-メチルベンゾ[d]チアゾール-5-イル)メチル)-5-メチルピロリジン-3-イル)オキシ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オンである。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は結晶性である。
【0017】
本開示の更に別の態様は、アミロイドベータ沈着物及び/又は異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする患者に有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法に関し、OGA阻害剤が式:
【化9】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の2位のメチルは、ピペリジン環の4位の酸素に対してシス配置である:
【化10】
【0018】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は結晶性である。いくつかの実施形態では、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドは、12.1°の回折角2θにおけるX線粉末回折スペクトルのピークと、15.3°、21.6°、22.2°、22.7°、23.5°、24.3°及び26.8°からなる群から選択される1つ以上のピークとの組合せを特徴とし、回折角の許容範囲は0.2度である。
【0019】
本開示の更に別の態様は、アミロイドベータ沈着物及び/又は異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法に関し、OGA阻害剤は、以下の式:
【化11】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の2位のメチルは、ピペリジン環の4位の酸素に対してシス配置である:
【化12】
【0020】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の2位のメチルは、ピペリジン環の4位の酸素に対してトランス配置である:
【化13】
【0021】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである。実施形態では、OGA阻害剤は、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドである。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は結晶性である。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、5.8°、13.0°、14.3°、17.5°、20.4°、21.4°、及び22.2°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、13.5°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、回折角の許容誤差が、0.2度である。
【0022】
本開示の更に別の態様は、アミロイドベータ沈着物及び/又は異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療する方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む、方法に関し、OGA阻害剤は、以下の式:
【化14】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の5位のメチルは、ピペリジン環の3位の酸素に対してシス配置である:
【化15】
【0023】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤の5位のメチルは、ピペリジン環の3位の酸素に対してトランス配置である:
【化16】
【0024】
いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、1-(2-(((3R,5S)-1-((6-フルオロ-2-メチルベンゾ[d]チアゾール-5-イル)メチル)-5-メチルピロリジン-3-イル)オキシ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オンである。いくつかの実施形態では、OGA阻害剤は結晶性である。
【0025】
本発明はまた、認知疾患又は神経変性疾患を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の抗N3pGlu Aβ抗体を含む治療を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。本発明は更に、臨床的又は前臨床的ADを治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の抗N3pGlu Aβ抗体を含む治療を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。本発明はまた、前駆期AD(軽度認知障害、又はMCIとも呼ばれることがある)、軽度AD認知症、中等度AD認知症及び/又は重度AD認知症を治療する方法であって、それを必要とする患者に、有効量の抗N3pGlu Aβ抗体を含む治療を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、本開示は、前臨床的アルツハイマー病(AD)(発症前ADとも呼ばれる)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、又は前臨床的脳アミロイド血管症と診断された患者における機能/認知低下を治療、予防、又は遅延させる方法を提供する。そのような方法は、そのような治療を必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量の本明細書に開示されるOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む。本発明は更に、脳脊髄液(CSF)中のAβ1-42のレベルが低い若しくは非常に低い、及び/又は脳内のAβ沈着物が低い若しくは非常に低い、臨床的に無症候性の対象における記憶喪失、認知低下、又は機能低下を予防する方法であって、有効量の抗N3pG Aβ抗体を、有効量の本明細書に開示されるOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、臨床的に無症候性の対象は、アルツハイマー病を引き起こす遺伝子変異を有することが知られている。本開示において、「アルツハイマー病を引き起こす遺伝子変異を有することが知られている臨床的に無症候性の対象」は、PSEN1 E280Aアルツハイマー病を引き起こす遺伝子変異(Paisa変異)、常染色体優性アルツハイマー病を引き起こす遺伝子変異、又は1つ若しくは2つのAPOE e4対立遺伝子を保有することによってADを発症するリスクがより高い遺伝子変異を有することが知られている患者を含む。いくつかの実施形態では、本開示は、PSEN 1 E280Aアルツハイマー病を引き起こす遺伝子変異(Paisa変異)、常染色体優性アルツハイマー病を引き起こす遺伝子変異、又は1つ若しくは2つのAPOE e4対立遺伝子を保有することが知られている患者の認知/機能低下を治療、予防、又は遅らせる方法であって、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量の本明細書に開示されるOGA阻害剤と組み合わせてそのような治療を必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態では、本開示はまた、前臨床的アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、及び重度AD認知症と診断された患者の認知/機能低下を治療、予防、又は遅らせる方法であって、有効量の抗N3pG Aβ抗体を本明細書に開示される有効量のOGA阻害剤と組み合わせてそのような治療を必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。本発明は更に、脳内の低レベルのNFT及び/又は脳内の低レベルのアミロイド沈着物を有する臨床的に無症候性の患者における記憶喪失又は認知/機能低下を予防する方法であって、有効量の抗N3pG Aβ抗体を本明細書に開示される有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【0028】
本発明の別の実施形態は、軽度認知障害のADへの進行を予防するための方法であって、そのような治療を必要とする患者に、有効量の抗N3pG Aβ抗体を有効量のOGA阻害剤と組み合わせて投与することを含む方法を提供する。
【0029】
本実施形態はまた、療法で使用するために、OGA阻害剤との同時、別個、又は連続的な組合せで使用するための抗N3pG Aβ抗体を提供する。
【0030】
本発明は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を有するOGA阻害剤の医薬組成物と組み合わせて、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を有する抗N3pG Aβ抗体を含む医薬組成物を更に提供する。
【0031】
更に、本発明は、抗N3pG Aβ抗体及びOGA阻害剤を含むキットを提供する。本発明は、(1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と共に)抗N3pG Aβ抗体を含む医薬組成物と、(1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と共に)OGA阻害剤を含む医薬組成物と、を含むキットを更に提供する。本明細書で使用される場合、「キット」は、各成分の別個の容器を含み、単一のパッケージの中で、1つの成分は抗N3pG Aβ抗体であり、別の成分はOGA阻害剤である。「キット」はまた、各成分の別個の容器を含み得、別個のパッケージの中で1つの成分は抗N3pG Aβ抗体であり、別の成分はOGA阻害剤であり、各成分を組み合わせて投与するための指示書を有する。
【0032】
本発明は、AD、軽度AD、前駆期ADの治療のための、又は軽度認知障害のADへの進行の防止のための医薬品の製造のための抗N3pG Aβ抗体の使用を更に提供し、医薬品は、OGA阻害剤と同時に、別々に、又は順次に投与される。
【0033】
本開示のいくつかの実施形態では、抗N3pG Aβ抗体は、重鎖(HC)及び軽鎖(LC)を含み、HCは、重鎖可変領域(HCVR)を含み、LCは、軽鎖可変領域(LCVR)を含み、当該HCVRは、相補性決定領域(CDR)のHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、当該LCVRは、CDRのLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む。いくつかの実施形態では、本発明の抗N3pG Aβ抗体は、配列番号5によって与えられるLCDR1のアミノ酸配列、配列番号6によって与えられるLCDR2のアミノ酸配列、配列番号7によって与えられるLCDR3のアミノ酸配列、配列番号8によって与えられるHCDR1のアミノ酸配列、配列番号9によって与えられるHCDR2のアミノ酸配列、及び配列番号10によって与えられるHCDR3のアミノ酸配列を有する。
【0034】
一実施形態では、本発明は、LCVR及びHCVRを含む抗N3pG Aβ抗体を提供し、LCVRのアミノ酸配列は配列番号1によって与えられ、HCVRのアミノ酸配列は配列番号2によって与えられる。更なる実施形態では、本発明は、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含む抗N3pG Aβ抗体を提供し、LCのアミノ酸配列は配列番号3によって与えられ、HCのアミノ酸配列は配列番号4によって与えられる。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明の抗N3pG Aβ抗体は、配列番号15によって与えられるLCDR1のアミノ酸配列、配列番号16によって与えられるLCDR2のアミノ酸配列、配列番号17によって与えられるLCDR3のアミノ酸配列、配列番号18によって与えられるHCDR1のアミノ酸配列、配列番号19によって与えられるHCDR2のアミノ酸配列、及び配列番号20によって与えられるHCDR3のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、本発明は、LCVR及びHCVRを含む抗N3pG Aβ抗体を提供し、LCVRのアミノ酸配列は配列番号11によって与えられ、HCVRのアミノ酸配列は配列番号12によって与えられる。更なる実施形態では、本発明は、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含む抗N3pG Aβ抗体を提供し、LCのアミノ酸配列は配列番号13によって与えられ、HCのアミノ酸配列は配列番号14によって与えられる。
【0036】
本発明の抗N3pG Aβ抗体は、公知の方法を用いて調製及び精製することができる。例えば、抗N3pG Aβ抗体のHCをコードするcDNA配列及び抗N3pG Aβ抗体のLCをコードするcDNA配列をクローニングし、GS(グルタミンシンテターゼ)発現ベクター中に操作してもよい。次に、操作した免疫グロブリン発現ベクターを、CHO細胞に安定的にトランスフェクトし得る。当業者が理解するように、抗体の哺乳動物発現は、典型的にはFc領域の高度に保存されたN-グリコシル化部位でグリコシル化をもたらすであろう。安定なクローンは、アミロイド沈着物又はN3pG Aβに特異的に結合する抗体の発現について検証され得る。陽性クローンを、バイオリアクターでの抗体産生のために無血清培養培地中に拡大し得る。抗体が分泌された培地を、従来の技術によって精製し得る。例えば、培地を、リン酸緩衝生理食塩水などの適合性のある緩衝液で平衡化されたプロテインA又はG Sepharose FFカラムに都合よく適用し得る。カラムは、非特異的結合成分を除去するために洗浄され得る。結合した抗体は、例えばpH勾配によって溶離され得、抗体画分は、SDS-PAGEなどの技術を使用して検出され得、その後プールされ得る。抗体を、一般的な技術を使用して濃縮及び/又は滅菌濾過し得る。可溶性凝集体及び多量体を、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む一般的な技術によって効果的に除去し得る。生成物を、例えば-70℃で直ちに凍結し得るか、又は凍結乾燥し得る。
【0037】
本発明の抗N3pG Aβ抗体は、ヒトN3pG Aβ(N3pGlu Aβともいう)に結合する。一実施形態では、本発明の抗N3pG Aβ抗体は、ヒトN3pG Aβの立体配座エピトープに結合する。
【0038】
本明細書で使用する場合、「抗体」とは、ジスルフィド結合によって相互に接続される2つの重鎖(HC)と、2つの軽鎖(LC)と、を含む、免疫グロブリン分子である。各LC及びHCのアミノ末端部分は、そこに含まれる相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)を介した抗原認識に関与する可変領域を含む。CDRには、フレームワーク領域と呼ばれる、より保存された領域が点在している。本発明の抗体のLCVR及びHCVR領域内のCDRドメインへのアミノ酸の割り当ては、次のようなKabat番号付け規則(Kabat,et al.,Ann.NY Acad.Sci.190:382-93(1971);Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242(1991))、及びNorth番号付け法(North et al.,A New Clustering of Antibody CDR Loop Conformations,Journal of Molecular Biology,406:228-256(2011))に基づく。上記の方法に従って、本発明の抗体のCDRを決定した。
【0039】
本発明の抗N3pGlu Aβ抗体には、カッパLC及びIgG HCが含まれる。特定の実施形態では、本発明の抗N3pGlu Aβ抗体は、ヒトIgG1アイソタイプのものである。
【0040】
本発明の抗体は、モノクローナル抗体(「mAb」)である。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ技術、組換え技術、ファージ提示技術、合成技術、例えば、CDR移植、又はそのような技術若しくは当該技術分野で既知の他の技術の組合せにより産生することができる。本発明のモノクローナル抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト抗体に由来するCDRを取り囲む1つ以上のヒトフレームワーク領域(又は実質的にヒトフレームワーク領域)を含有するように操作することができる。ヒトフレームワークの生殖系列配列は、ImMunoGeneTics(IMGT(登録商標))からそのウェブサイト(imgt.cines.fr)を通して、又はThe Immunoglobulin FactsBook by Marie-Paule Lefranc and Gerard Lefranc,Academic 25 Press,2001,ISBN 012441351から得ることができる。本発明の別の実施形態では、抗体又は抗体をコードする核酸は単離形態で提供される。本明細書で使用する場合、「単離」という用語は、細胞環境に見出される任意の他の高分子種を含まないか、又は実質的に含まない、タンパク質、ペプチド、又は核酸を指す。「実質的に含まない」とは、本明細書中で使用する場合、目的のタンパク質、ペプチド、又は核酸が(モル基準で)80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の対象の高分子種を含むことを意味する。
【0041】
本発明の抗N3pGlu Aβ抗体又はそのOGA阻害剤との組合せは、医薬組成物として投与される。本発明の医薬組成物は、非経口経路(例えば、皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内)によって、本明細書に記載の疾患又は障害のリスクがあるか、又はそれを示す患者に投与することができる。皮下及び静脈内経路が好ましい。いくつかの実施形態では、本発明の医薬組成物は、静脈内注入によって投与される。
【0042】
「治療」、「治療すること」又は「治療する」などの用語には、患者の既存の症状、状態、疾患、又は障害の進行又は重症度の抑制、遅延、又は停止が含まれる。「患者」又は「対象」という用語は、ヒトを指す。
【0043】
用語「予防」は、疾患の発症又は進行を予防するための無症候性患者又は前臨床的アルツハイマー病を有する患者への本発明の抗体の予防的投与を意味する。
【0044】
「Aβの沈着を特徴とする疾患」又は「Aβ沈着物を特徴とする疾患」という用語は、対象の脳内又は脳脈管構造内のAβ沈着物を病理学的に特徴とする疾患である。これには、アルツハイマー病(AD)、ダウン症候群(DS)、及び脳アミロイド血管症(CAA)などの疾患が含まれる。アルツハイマー病の臨床診断、病期分類又は進行は、既知の技術を使用し、結果を観察することにより、当業者のような担当診断医又は医療専門家によって容易に判定され得る。これには通常、何らかの形態の脳プラークイメージング、精神的又は認知的評価(例えば、臨床的認知症重症度判定尺度の合計点数(Clinical Dementia Rating-summary of boxes(CDR-SB))、簡易認知機能検査(Mini-Mental State Exam(MMSE))又はアルツハイマー病評価尺度の認知機能評価(Alzheimer's Disease Assessment Scale-Cognitive(ADAS-Cog)))又は機能的評価(例えば、アルツハイマー病共同研究-日常生活動作評価(Alzheimer's Disease Cooperative Study-Activities of Daily Living(ADCS-ADL)))が含まれる。認知及び機能評価を使用して、患者の認知(例えば、認知低下)及び機能(例えば、機能低下)の変化を決定することができる。本明細書で使用される「臨床的アルツハイマー病」は、アルツハイマー病の診断された段階である。それには、前駆期アルツハイマー病、軽度アルツハイマー病認知症、中等度アルツハイマー病認知症、及び重度アルツハイマー病認知症と診断された状態が含まれる。「前臨床的アルツハイマー病」という用語は、臨床的アルツハイマー病に先行する段階であり、バイオマーカーの測定可能な変化(CSFAβ42レベル又はアミロイドPETによる沈着した脳プラーク負荷など)は、臨床的アルツハイマー病に進行する、アルツハイマー病の患者の最も初期の兆候を示す。これは通常、記憶喪失及び混乱のような症状が顕著となる前である。前臨床的アルツハイマー病には、1つ又は2つのAPOE e4対立遺伝子を保持するためにADを発症するリスクが高い患者だけでなく、発症前の常染色体優性保因者も含まれる。「臨床的AD」という用語は、認知的兆候及び症状が検出可能な疾患の段階である。
【0045】
いくつかの実施形態では、放射性標識PET化合物を用いたアミロイドイメージング、又はAβ若しくはAβのバイオマーカーを検出する診断法を使用するなどの方法によって脳内でアミロイドが検出された場合、対象はアミロイド沈着物が陽性である。脳アミロイドロード/負荷を測定するために本開示において使用することができる例示的な方法としては、例えば、フロルベタピル(Carpenter,et al.,「The Use of the Exploratory IND in the Evaluation and Development of 18F-PET Radiopharmaceuticals for Amyloid Imaging in the Brain:A Review of One Company’s Experience,」The Quarterly Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging 53.4:387(2009)、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる);フロルベタベン(Florbetaben)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Syed et al.,「[18F]Florbetaben:A Review inβ-Amyloid PET Imaging in Cognitive Impairment,」CNS Drugs 29,605-613(2015))、及びフルテメタモル(Flutemetamol)(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Heurling et al.,「Imagingβ-amyloid Using[18F]Flutemetamol Positron Emission Tomography:From Dosimetry to Clinical Diagnosis,」European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging 43.2:362-373(2016))が挙げられる。
【0046】
[18F]-フロルベタピルは、前駆期AD又は軽度AD認知症の患者を含む患者の脳プラークロードの定性的及び定量的測定を提供することができる。例えば、目視読み取りにおいて有意な[18F]-フロルベタピルシグナルが存在しないことは、認知機能障害を臨床的に示す患者がアミロイドプラークをほとんど又は全く有していないことを示す。したがって、[18F]-フロルベタピルはまた、アミロイド病理の確認も提供する。[18F]-フロルベタピルPETはまた、脳内の原線維アミロイドプラークの定量的評価を提供し、いくつかの実施形態では、本開示の抗体による脳からのアミロイドプラーク減少を評価するために使用することができる。
【0047】
放射性標識PET化合物によるアミロイドイメージングを使用して、ヒト患者の脳内のAβ沈着物が減少しているか又は増加しているかを決定することもまたできる(例えば、治療後のAβ沈着物の減少割合を計算するため、又はADの進行を評価するため)。当業者は、アミロイドイメージング(放射性標識PET化合物による)から得られた標準化取込値比率(SUVr)値を相関させて、治療前後の患者の脳内のAβ沈着物の減少%を計算することができる。SUVr値を標準化されたセンチロイド単位へと変換することができ、ここで、100とはADについての平均であり、0とは若齢対照についての平均であり、これにより、アミロイドPETトレーサー間の比較可能性、及びセンチロイド単位による減少の計算が可能になる(Klunkら、「The Centiloid Project:Standardizing Quantitative Amyloid Plaque Estimation by PET」、Alzheimer’s & Dementia、第11.1巻:第1~15頁(2015年)、及びNavitskyら、「Standardization of Amyloid Quantitation with Florbetapir Standardized Uptake Value Ratios to the Centiloid Scale」、Alzheimer’s & Dementia、第14.12巻:第1565~1571頁(2018年)、これらは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、ベースラインからの脳アミロイドプラーク沈着の変化は、[18F]-フロルベタピルPETスキャンによって測定される。
【0048】
β-アミロイドの脳脊髄液又は血漿ベースの分析をまた使用して、本開示の目的のために、アミロイドロード/負荷を測定することもできる。例えば、Aβ42を使用して脳のアミロイドを測定することができる(Palmqvist,S.et al.,「Accuracy of Brain Amyloid Detection in Clinical Practice Using Cerebrospinal Fluid Beta-amyloid 42:a Cross-validation Study Against Amyloid Positron Emission Tomography.JAMA Neurol 71,1282-1289(2014))。いくつかの実施形態では、Aβ42/Aβ40又はAβ42/Aβ38の比は、アミロイドベータのバイオマーカーとして使用することができる(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Janelidze et al.,「CSF Abeta42/Abeta40 and Abeta42/Abeta38 Ratios:Better Diagnostic Markers of Alzheimer Disease,」Ann Clin Transl Neurol 3,154-165(2016))。
【0049】
いくつかの実施形態では、沈着した脳アミロイドプラーク又はCSF若しくは血漿中のAβは、対象を群へと層別化するために、及び対象のどの群が、本明細書に記載される抗体、又は方法を用いて疾患(本明細書中に記載されるような)の治療/予防に対して応答性であるかを識別するために、使用され得る。
【0050】
ヒト対象の脳におけるタウレベルは、放射性標識PET化合物を用いたタウイメージング(Leuzyら、「Diagnostic Performance of RO948 F18 Tau Positron Emission Tomography in the Differentiation of Alzheimer Disease from Other Neurodegenerative Disorders」、JAMA Neurology、第77.8巻:第955~965頁(2020年);Ossenkoppele et al.,「Discriminative Accuracy of[18F]-flortaucipir Positron Emission Tomography for Alzheimer Disease vs Other Neurodegenerative Disorders,」JAMA 320,1151-1162,(2018)、これらはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)などの方法を用いて決定され得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、PETリガンドであるバイオマーカー[18F]-フロルブタウシピルを、本開示の目的のために使用してもよい。PETタウ画像は、例えば、公開された方法によってSUVr(標準化取込値比)を推定するために(Pontecorvo et al.,「A Multicentre Longitudinal Study of Flortaucipir(18F)in Normal Ageing,Mild Cognitive Impairment and Alzheimer’s Disease Dementia,」Brain 142:1723-35(2019);Devous et al.,「Test-Retest Reproducibility for the Tau PET Imaging Agent Flortaucipir F18,」Journal of Nuclear Medicine 59:937-43(2018);Southekal et al.,「Flortaucipir F18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-51(2018)、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)、及び/又は患者を視覚的に評価するため、例えば、患者がADパターンを有するかどうかを判定するため定量的に評価することができる(Fleisher et al.,「Positron Emission Tomography Imaging With[18F]-flortaucipir and Postmortem Assessment of Alzheimer Disease Neuropathologic Changes,」JAMA Neurology 77:829-39(2020)、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。SUVr値が低いほどタウ負荷が少ないことを示し、SUVr値が高いほどタウ負荷が高いことを示す。実施形態では、flortaucipirスキャンによる定量的評価は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Southekal et al.,「Flortaucipir F18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-951(2018)に記載される自動画像処理パイプラインによって達成される。いくつかの実施形態では、脳内の特定の標的領域内のカウント(例えば、マルチブロック重心判別分析又はMUBADA、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Devous et al,「Test-Retest Reproducibility for the Tau PET Imaging Agent Flortaucipir F18,」J.Nucl.Med.59:937-943(2018)を参照されたい)を参照領域と比較し、参照領域は、例えば、小脳全体(wholeCere)、小脳GM(cereCrus)、アトラス-ベースの白質(atlasWM)、対象固有のWM(ssWM、例えば、参照シグナル強度のパラメトリック推定(PERSI)、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Southekal et al.,「Flortaucipir F18 Quantitation Using Parametric Estimation of Reference Signal Intensity,」J.Nucl.Med.59:944-951(2018))である。タウ負荷を決定する好ましい方法は、標準化取込値比率(SUVr)として報告される定量分析であり、これは、参照領域(例えば、PERSIを用いる)と比較した場合、脳内の目的の特定の標的領域内のカウント(例えば、MUBADA)を表す。
【0052】
いくつかの実施形態では、リン酸化タウ(P-タウ;トレオニン181又は217でリン酸化されたいずれか)を使用して、本開示の目的のためにタウロード/負荷を測定することができる(Barthelemy et al.,「Cerebrospinal Fluid Phospho-tau T217 Outperforms T181 as a Biomarker for the Differential Diagnosis of Alzheimer’s Disease and PET Amyloid-positive Patient Identification,」Alzheimer’s Res.Ther.12,26(2020);Mattsson et al.,「AβDeposition is Associated with Increases in Soluble and Phosphorylated Tau that Precede a Positive Tau PET in Alzheimer’s Disease,」Science Advances 6(16),(2020);参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。特定の実施形態では、残基217のトレオニンでリン酸化されたヒトタウに対する抗体を使用して、本開示の目的のために対象におけるタウロード/負荷を測定することができる(参照によりその全体が組み込まれる、国際公開第2020/242963号を参照)。本開示は、いくつかの実施形態では、国際公開2020/242963に開示された抗タウ抗体を使用して、対象におけるタウロード/負荷を測定することを含む。国際公開第2020/242963号に開示された抗タウ抗体は、CNSにおいて発現されるヒトタウのアイソフォームに対して作られる(例えば、CNSにおいて発現されるアイソフォームを認識し、もっぱらCNSの外側で発現されるヒトタウのアイソフォームを認識しない)。CNSにおいて発現されるヒトタウのアイソフォームに対するそのような抗体は、患者を、(i)本明細書中に開示される疾患を有すること、(ii)本明細書に開示される疾患を有するリスクがある;(iii)本明細書に開示される疾患の治療を必要とする;又は(iv)神経学的イメージングを必要とする、のうち1つ以上として識別/選択する方法において使用することができる。
【0053】
認知低下の軽減又は遅延は、ミニメンタルステート検査(MMSE)又はアルツハイマー病評価尺度-認知(ADAS-Cog)などの認知評価によって測定することができる。機能低下の減少又は遅延は、アルツハイマー病共同研究-日常生活動作(ADCS-ADL)などの機能評価によって測定することができる。機能的及び認知的低下の減少又は遅延は、臨床的認知症評価-ボックスの要約(CDR-SB)又は統合アルツハイマー病評価尺度(iADRS)などの複合尺度によって測定することができる。
【0054】
本明細書で使用される場合、「mg/kg」とは、キログラム単位の体重に基づいて、患者に投与される抗体又は薬物のミリグラム単位の量を意味する。用量を1回与える。例えば、体重70kgの患者に対する抗体の10mg/kg用量は、単回投与で投与される抗体の単回700mg用量である。体重70kgの患者に対する20mg/kgの用量の抗体は、単回投与で与えられる1400mgの単回用量の抗体である。同様に、体重80kgの患者に対する40mg/kg用量の抗体は、単回投与で投与される抗体の3200mg用量となる。
【0055】
本明細書中で使用される場合、句「と組み合わせて」とは、本発明の抗N3pGlu Aβ抗体を、別の分子(「組合せ分子」、例えば、OGA阻害剤、対症薬剤、又はAβ抗体)と共に、同時に、又は任意の順序で連続して、あるいはそれらの任意の組合せで投与することをいう。いくつかの実施形態では、「と組み合わせて」という句は、本発明の抗N3pGlu Aβ抗体とOGA阻害剤とを同時に、又は任意の順序で順次、又はそれらの任意の組合せで投与することを指す。2つの分子は、同じ医薬組成物の一部として又は別個の医薬組成物としてのいずれかで投与され得る。抗N3pGlu Aβ抗体は、OGA阻害剤の投与前、投与と同時に、若しくは投与後に、又はそれらの何らかの組合せで投与することができる。組合せが反復間隔(例えば、標準的な治療過程の間に)で投与される場合、抗N3pGlu Aβ抗体は、OGA阻害剤、又はそれらの何らかの組合せの各投与の前、同時期、若しくは投与後に、又はOGA阻害剤による治療に関連して異なる間隔で、又はOGA阻害剤による治療の前、治療中の任意の時点、若しくは治療の経過後に単回若しくは一連の用量で投与することができる。
【0056】
本発明の特定の実施形態では、抗体及び抗体フラグメント(例えば、抗N3pG Aβ抗体)、又はそれらをコードする核酸は、単離された形態で提供され得る。本明細書で使用される場合、「単離された」という用語は、自然界には見られず、細胞環境に見られる他の高分子種を含まないか、又は実質的に含まないタンパク質、ペプチド、又は核酸を指す。「実質的に含まない」とは、本明細書中で使用する場合、目的のタンパク質、ペプチド、又は核酸が(モル基準で)80%超、好ましくは90%超、より好ましくは95%超の対象の高分子種を含むことを意味する。
【0057】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、細胞培養物において発現される。本発明の抗体及び抗体フラグメントの発現及び/又は分泌に続いて、培地は清澄化されて細胞が除去され、清澄化された培地は、多くの一般的に使用される技術のいずれかを使用して精製される。精製された抗体及び抗体フラグメントは、非経口投与、特に皮下、髄腔内、又は静脈内投与のためのタンパク質及び抗体を処方するための周知の方法に従って医薬組成物に処方され得る。抗体及び抗体フラグメントは、適切な薬学的に許容される賦形剤と共に凍結乾燥され、使用前に水ベースの希釈剤で再構成され得る。あるいは、抗体及び抗体フラグメントは、水溶液中で処方され、使用前に保存され得る。いずれの場合も、抗体及び抗体フラグメントの医薬組成物の保存形態及び注射形態は、抗体及び抗体フラグメント以外の成分である、薬学的に許容される賦形剤(複数可)を含有するであろう。成分が薬学的に許容可能であるかどうかは、医薬組成物の安全性及び有効性、又は安全性、純度、及び効力に対するその効果に依存する。成分が安全性又は有効性(又は安全性、純度、若しくは効力)に十分に不利な効果を有し、ヒトへの投与用の組成物に使用されないことを是認して、判断された場合、それを抗体及び抗体フラグメントの医薬組成物で使用することは薬学的に許容されない。
【0058】
本発明の新規の組合せ及び方法は、脳浸透性であるOGA阻害剤を含む。本発明の新規の組合せ及び方法のいくつかの実施形態では、OGA阻害剤は、式I:
【化17】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、本発明の新規の組合せ及び方法のOGA阻害剤は、式Ia:
【化18】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩である。
【0060】
本発明の新規の組合せ及び方法のOGA阻害剤の実施形態を含む式Iの特定の構成は、
【化19】
並びにその薬学的に許容される塩を更に含む。
【0061】
式Iの5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル化合物(式中、ピペリジン環上のメチル及び酸素置換基がシス又はトランス配置にある)、又はその薬学的に許容される塩は、本発明の新規の組合せのOGA阻害剤の範囲に含まれる。本発明の新規の組合せはまた、全ての個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体を含む本発明の5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル化合物のエナンチオマーの混合物を企図する。本明細書で提供される新規の組合せ及び方法の5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル化合物の絶対構成は、
N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド、及びその薬学的に許容される塩を含み、
N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドが特に好ましい。
【0062】
本発明の5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イルOGA阻害剤化合物又はその塩は、当業者に既知の様々な手順によって調製され得る。当業者は、本発明の化合物又はその塩を調製するために、記載される経路の各々に対する特定の合成ステップを異なる様式で組み合わせることができるか、又は異なるスキームからのステップと併せることができることを認識している。以下の各工程の生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、及び結晶化を含む、当技術分野で周知の従来の方法によって回収され得る。下記のスキームにおいて、全ての置換基は、特に指示のない限り、以前に定義されているとおりである。試薬及び出発物質は、当業者であれば容易に入手可能なものである。本発明の範囲を限定することなく、本発明を更に例証するために、以下の調製及び実施例が提供される。更に、当業者は、式Ia、Ib、Ic、及びIdの化合物が、当業者によって調製され得る対応する立体化学的構成を有する出発物質を使用することによって調製され得ることを理解する。例えば、以下の調製物は、最終的に式Iaに対応する構成を有する出発物質を利用する。
【0063】
以下の調製及び実施例は、本発明を説明することを意図しているが、本発明を限定するものではなく、当業者によって様々な改変がなされ得ることを意図している。以下の実施例及びアッセイは、本発明の抗N3pG Aβ抗体が、アルツハイマー病、ダウン症候群、及びCAAなどのAβの沈着を特徴とする疾患の治療に有用であることを示している。
【0064】
調製1:tert-ブチルN-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)カルバマートの合成。
【化20】
フッ化セシウム(227g、1480mmol)を、tert-ブチルN-(4-クロロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)カルバマート(38.8g、148mmol;tert-ブチルN-(4-クロロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)カルバマートの調製のために、例えば、N.Masuda,et al.,Bioorg Med Chem,12,6171-6182(2004)を参照されたい)のジメチルスルホキシド(DMSO、776mL)中溶液に室温で添加する。反応混合物を、145℃の加熱ブロック内で、133℃の内部温度で48時間撹拌し、混合物を氷水浴で冷却する。混合物に飽和重炭酸ナトリウム水溶液(500mL)、飽和NaCl水溶液(500mL)及び酢酸エチル(500mL)を添加する。混合物を室温で10分間撹拌し、珪藻土で濾過し、酢酸エチル(500mL)で洗浄する。濾液を分液漏斗に移し、層を分離し、次に水層を酢酸エチル(1L)で抽出する。合わせた有機物を飽和NaCl水溶液(1L)で洗浄し、次いで、飽和NaCl水溶液層を酢酸エチル(300mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して残渣を得る。残渣をシリカゲルのパッド(330g)に通し、5%酢酸エチルのジクロロメタン溶液(1.5L)で溶離し、濾液を減圧下で濃縮して残渣(24.2g)を得る。
【0065】
残渣(合わせたロット32.7g、133mmol)をイソプロパノール(303mL)に溶解し、濾過し、ICカラム(セルロース多糖誘導体:トリス(3,5-ジクロロフェニルカルバマート、30×250mm,5μm)及び10%イソプロピルアルコール(添加剤なし)を3mLの注入で180mL/分で使用するSFC(超臨界流体クロマトグラフィー)によって精製する。生成物含有画分を濃縮して、表題化合物(16.1g、収率48%)を得る。MS m/z 247.0(M+H)。
【0066】
調製2:合成N-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)アセトアミド(方法A)。
【化21】

ジャケット付き容器内で、臭化亜鉛(91.9g、408mmol)を室温でtert-ブチルN-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)カルバマート(33.5g、136mmol)とジクロロメタン(503mL)との混合物に一度に添加する。反応混合物を37℃の内部温度で一晩撹拌し、次にジャケット温度を-10℃に設定し、内部温度を6℃未満に維持しながら、テトラヒドロフラン(111mL)を15分かけて滴下する。次に、ジャケット温度を-30℃に設定し、内部温度を5℃未満に維持しながら、ピリジン(110mL、1360mmol)を5分かけて滴下する。ジャケット温度を0℃に設定し、無水酢酸(116mL、1220mmol)を5分かけて滴下する。反応混合物を37℃の内部温度で一晩撹拌し、室温に冷却し、珪藻土の短いパッドに通過させ、テトラヒドロフラン(500mL)で溶離する。濾液をフラスコに移し、混合物を減圧下で濃縮して残渣を得、これを更にトルエン(50mL)から濃縮する。残渣に、クエン酸一水和物(57.2g、272mmol)の水(400mL)及び2-メチルテトラヒドロフラン(400mL)中溶液を添加し、混合物を40℃で5分間撹拌する。混合物を珪藻土の短いパッドに通過させ、2-メチルテトラヒドロフラン(100mL)で溶離する。濾液を分液漏斗に移し、層を分離する。水層を2-メチルテトラヒドロフラン(2×250mL)で抽出し、合わせた有機物を水(500mL)で希釈する。混合物に、ガスの発生が止まるまで撹拌しながら5分かけて固体重炭酸ナトリウムを少しずつ添加する。混合物を分離漏斗に移し、層を分離し、水層を2-メチルテトラヒドロフラン(200mL及び100mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得、これを2-メチルテトラヒドロフラン(100mL)で希釈し、混合物をシリカゲルの短いパッド(250g)に通し、2-メチルテトラヒドロフラン(2.5L)で溶離する。濾液を減圧下で濃縮して残渣を得、これをジクロロメタンとヘプタンとの1:1混合物(202mL)に懸濁する。混合物を室温で30分間撹拌し、濾過する。濾過した固体を回収し、真空下40℃で2時間乾燥させて、表題化合物(18.0g、収率70%)を得る。MS m/z 189.0(M+H)。
【0067】
N-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)アセトアミドの代替合成(方法B)。
ジクロロメタン(1325g、15.6mol)を2-アミノ-4-クロロチアゾール-5-カルバルデヒド(100g、0.61mol)及びピリジン(194.6g、2.46mol)に添加し、0~5℃に冷却する。温度を0~5℃に維持しながら、無水酢酸(188.4g、1.85mol)を滴下する。添加が完了したら、温度を20~25℃に調整し、41時間撹拌する。減圧下で濃縮した後、温度を40℃未満に維持しながら、35%HCl水溶液(200mL)及び水(1.5L)を添加する。20~25℃に冷却し、18時間撹拌する。得られた混合物を濾過し、回収した固体を水で洗浄する。固体を60~65℃で24時間乾燥させて、N-(4-クロロ-5-ホルミルチアゾール-2-イル)アセトアミド(75g、収率66%)を得る。
【0068】
不活性雰囲気下、スルホラン(1000mL)をN-(4-クロロ-5-ホルミルチアゾール-2-イル)アセトアミド(50g、0.24mol、上で直接調製)、塩化テトラメチルアンモニウム(107.1g、0.98mol)及びフッ化セシウム(370.6g、2.4mol)に加える。130℃に加熱し、23時間撹拌する。HPLC分析は75%の変換を示し、その場での収率は45%の表題化合物である。
【0069】
N-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)アセトアミドの代替合成(方法C)。
2-プロパノール(150mL)をフッ化テトラメチルアンモニウム四水和物(10.2g、109.0mmol)に添加し、内部温度を70℃に維持しながら真空下で混合物を約半分の体積に濃縮して水を除去する。2-プロパノール(200mL)を添加し、混合物を真空下で約半分の体積に濃縮する。更に2回繰り返す。ジメチルホルムアミド(DMF、200mL)を添加し、真空下で約半分の体積に濃縮する。テトラヒドロフラン(THF、200mL)を添加し、約半分の体積に濃縮する。更に2回繰り返す。N-(4-クロロ-5-ホルミルチアゾール-2-イル)アセトアミド(1.22g、6.0mmol、上の方法Bで調製したもの)及びDMF(12mL)を充填する。110℃に加熱し、12時間撹拌する。反応混合物を25℃に冷却する。2-メチルテトラヒドロフラン(40mL)及び水(40mL)を添加する。得られた層を分離し、水層を2-メチルテトラヒドロフラン(40mL)で抽出する。層を分離し、合わせた有機層を水(20mL)で洗浄する。層を分離し、有機層を減圧下で濃縮する。酢酸エチル(20mL)及び水(5mL)を添加し、得られた層を分離し、有機層を濃縮して溶媒を除去する。酢酸エチル(2mL)及びヘプタン(2mL)を添加し、得られた混合物を濾過する。濾過した固体を真空下、55℃で18時間乾燥させて、N-(4-クロロ-5-ホルミルチアゾール-2-イル)アセトアミドとの93%混合物として、表題化合物を得る。
【0070】
調製3:tert-ブチル(2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラートの合成。
【化22】
フラスコに、tert-ブチル(2S)-2-メチル-4-オキソ-ピペリジン-1-カルボキシラート(50g、234.4mmol)及びテトラヒドロフラン(500mL)を添加する。混合物を窒素雰囲気下で-65℃に冷却し、水素化ホウ素リチウムトリ(sec-ブチル)(304.77mL、304.8mmol)のテトラヒドロフラン中1M溶液を45分かけて滴下し、内部温度を-60℃未満に維持する。反応混合物を室温で1時間撹拌し、-30℃に冷却する。内部温度を-20℃未満に維持しながら、反応混合物に水(25.3mL)とテトラヒドロフラン(100.2mL)との混合物を添加する。内部温度を10℃未満に維持しながら、30%重量/重量過酸化水素(118.9mL、1.2mol)の水溶液(126.70mL)を1時間かけて滴下する。混合物に5M HCl水溶液(46.9mL、234.4mmol)及びメチルt-ブチルエーテル(1L)を添加し、混合物を室温に加温する。層を分離し、水(500mL)中で有機相をメタ重亜硫酸ナトリウム(222.8g、1.17mol)の溶液と室温で10分間撹拌する。層を分離し、有機相を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮する。残渣を、0~50%メチルt-ブチルエーテル/イソヘキサン)で溶離するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、生成物含有画分を合わせ、減圧下で濃縮して、表題化合物(40.4g、収率78%)を得る。ES/MS m/z 238(M+Na)。
【0071】
tert-ブチル(2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラートの代替合成。
【化23】
脱イオン水(460L)とリン酸二水素カリウム(6.5kg、0.41当量)とを含有するガラスライニング反応器に、20℃でDMSO(27.4kg、1.0体積)及びD-(+)-グルコース一水和物(28.9kg、1.25当量)を充填する。内部温度を30℃に調整し、8%水酸化ナトリウム水溶液(15L、0.3当量)の添加によって反応物のpHを6.9に調整する。反応器に、tert-ブチル(2S)-2-メチル-4-オキソ-ピペリジン-1-カルボキシラート(24.9kg、1.0当量(99.1%ee))を装入し、混合物を30℃で15分間撹拌する。ケトレダクターゼ(KRED-130、250g、1%重量/重量)、グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH-101、250g、1%重量/重量)、及びNADPナトリウム塩(63g、0.25%重量/重量)を開放ポートを介して反応混合物に直接装入する。混合物を、NaHCO
3の8%水溶液の添加によって30℃の温度及びpH7.0±0.2に維持する。16.5時間撹拌した後、反応物に珪藻土(12.5kg、50%重量/重量)及びトルエン(125L、5容量)を加える。30℃で30分間撹拌した後、混合物をインラインGAFフィルター(4ソケット)を介して別の2000L反応器に1時間かけて移す。混合物を撹拌せずに30分間放置し、層を分離し、水層をトルエン(2×125L)で逆抽出する。合わせた有機層を濾過し(インラインGAFフィルター)、トルエン混合物を25℃で25%塩化ナトリウム水溶液(125L、5体積)で洗浄する。得られたトルエン溶液を0.10重量/重量%の水に共沸乾燥(部分真空、内部温度<60℃)し、20℃に冷却する。混合物を、カートリッジフィルターを介して反応器から濾過し、正の窒素圧下で清浄なドラムに入れる。次に反応混合物をドラムから500Lのガラス内張り容器に移し、真空下(<60℃)で、目標とする残留容積約56L(2.25体積)に濃縮する。n-ヘプタン(169kg、10体積)を40℃で入れ、混合物に、25gのtert-ブチル(2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラートを加える。得られた濃厚なスラリーを追加のn-ヘプタン(25L、1体積)で希釈し、4時間かけて16℃に冷却する。生成物を遠心分離により単離し、n-ヘプタン(1回転当たり25L;4回転必要)で洗浄して、20.3kg(収率81%;>99.9%ee)を、30℃のトレイ乾燥機で11時間乾燥させた後に得る。ES/MS m/z 238(M+Na)。
【0072】
調製4:tert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラートの合成。
【化24】
3-(クロロメチル)-5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール(43.5g、301mmol)を、室温でアセトニトリル(590mL)中のtert-ブチル(2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラート(29.5g、137mmol)の溶液に添加する。反応混合物を氷水浴中で撹拌し、ナトリウムtert-ブトキシド(54.3g、548mmol)を10分かけて小分けで添加し、内部温度を10℃未満に維持する。反応混合物を氷水浴中で、5℃の内部温度で9時間撹拌し、ゆっくりと室温に温め、一晩撹拌する。反応混合物を氷水浴で冷却し、飽和塩化アンモニウム水溶液(200mL)を5分かけて添加し、添加中、内部温度を10℃未満に維持する。次に、混合物を水(100mL)で希釈し、室温に温める。混合物をメチルtert-ブチルエーテル(2×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を飽和NaCl水溶液(300mL)で洗浄する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して残渣を得る。残渣を、メチルtert-ブチルエーテル(1L)で溶離するシリカゲル(300g)のパッドに素早く通し、濾液を減圧下で濃縮して、表題化合物(46.5g、>99%収率)を得る。MS m/z 334.0(M+Na)。
【0073】
tert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラートの代替合成。
【化25】
窒素下0℃のtert-ブチル(2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラート(0.25g、1.16mmol)及び3-(クロロメチル)-5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール(308mg、2.3mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(3mL)中溶液に、ナトリウムtert-ブトキシド(0.35g、3.5mmol)を5分間にわたって少しずつ添加する。反応混合物を室温で10分間及び40℃で12時間撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、水(10mL)でクエンチする。層を分離し、水相をメチルtert-ブチルエーテル(2×10mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を5%塩化リチウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物(0.49g、収率81%、純度60%)を褐色油として得る。MS m/z 334.0(M+Na)。
【0074】
調製5:5-メチル-3-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,2,4-オキサジアゾール塩酸塩の合成。
【化26】
tert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラート(4.0g、12.9mmol)を含むフラスコを氷水浴に沈める。このフラスコに、1,4-ジオキサン(25.9mL、104mmol)中の塩酸の4Mの溶液を、撹拌しながら5分かけて滴下し、添加中、内部温度を20℃未満に維持する。反応混合物を室温で1時間撹拌し、減圧下で濃縮して、表題化合物(3.5g、
1H NMRによって測定した純度83%に基づいて収率92%)を得る。MS m/z 212.0(M+H)。
【0075】
5-メチル-3-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,2,4-オキサジアゾール塩酸塩の代替合成。
メタノール(50mL)をtert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラート(12.9g、0.04mol)に添加する。混合物を0℃に冷却する。内部温度を20℃未満に維持しながら、メタノール中の塩酸の4M溶液(80mL)を冷却した混合物に滴下する。反応混合物を室温で18時間撹拌する。混合物を濃縮して、溶媒を除去する。アセトン(10mL)を添加し、混合物を20分間撹拌する。テトラヒドロフラン(40mL)を添加し、混合物を3時間撹拌する。固体を窒素下で濾過することによって回収し、濾過した固体ケーキをテトラヒドロフランですすぐ。濾過した固体を真空下45℃で2時間乾燥させて、純度90%の表題化合物を得る。アセトンを使用した再結晶によって、表題化合物の純度を95%に増加させることができる。
【0076】
調製6:5-メチル-3-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,2,4-オキサジアゾールの合成。
【化27】
窒素下、tert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラート(0.49g、1.6mmol)のジクロロメタン(10mL)中溶液に、トリフルオロ酢酸(1.8mL、23mmol)を添加する。この混合物を室温で3時間撹拌する。混合物を減圧下で濃縮して、黄色の油を得る。残渣をメタノール(5mL)に溶解し、カチオン交換カートリッジに注ぎ、メタノール(2×10mL)及びメタノール中アンモニアの2M溶液(10mL)で順次溶離する。濾液を減圧下で濃縮して、表題化合物(0.3g、収率91%)を得る。MS m/z 212.0(M+H)。
【0077】
本発明の新規の組合せ及び方法の他の実施形態では、OGA阻害剤、式X:
【化28】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【0078】
更に、本発明は、式Xa:
【化29】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0079】
本発明の新規の組合せ及び方法のOGA阻害剤の実施形態を含む式Xの特定の構成は、
【化30】
並びにその薬学的に許容される塩を更に含む。
【0080】
式Xの5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル化合物(式中、ピペリジン環上のメチル及び酸素置換基がシス又はトランス配置である)、又はその薬学的に許容される塩は、本発明の新規の組合せのOGA阻害剤の範囲に含まれる。本発明の新規の組合せはまた、全ての個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体を含む本発明の5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル化合物のエナンチオマーの混合物を企図する。本明細書で提供される新規の組合せ及び方法の5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル化合物の絶対構成は、
N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド、及び遊離塩基を含み、結晶形態を含む、その薬学的に許容される塩を含む。
【0081】
本発明の新規の組合せ及び方法の5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル化合物、又はその塩は、当業者に既知の様々な手順によって調製され得、そのうちのいくつかは、以下のスキーム、調製、及び実施例で例証される。当業者は、本発明の化合物又はその塩を調製するために、記載される経路の各々に対する特定の合成ステップを異なる様式で組み合わせることができるか、又は異なるスキームからのステップと併せることができることを認識している。以下の各工程の生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、及び結晶化を含む、当技術分野で周知の従来の方法によって回収され得る。以下のスキームにおいて、全ての置換基は、別途示されない限り、以前に定義されたとおりである。試薬及び出発物質は、当業者であれば容易に入手可能なものである。本発明の範囲を限定することなく、本発明を更に説明するために以下のスキーム、調製及び実施例を提供する。更に、当業者は、式Xa、Xb、Xc、及びXdの化合物が、当業者によって調製され得る対応する立体化学的構成を有する出発物質を使用することによって調製され得ることを理解する。例えば、以下の調製物は、最終的に式Xaに対応する構成を有する出発物質を利用する。
【0082】
調製7:2-[[(2S,4S)-1-tert-ブトキシカルボニル-2-メチル-4-ピペリジル]オキシ]酢酸の合成。
【化31】
2-クロロ-1-モルホリノ-エタノン(59.4g、363mmol)を、室温でアセトニトリル(521mL)中のtert-ブチル(2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラート(52.1g、242mmol)の溶液に添加する。反応混合物を氷水浴中で撹拌し、ナトリウムtert-ブトキシド(48.0g、484mmol)を10分かけて小分けで添加し、内部温度を15℃未満に維持する。反応混合物を室温で2時間撹拌し、氷水浴冷却で飽和塩化アンモニウム水溶液(250mL)及び水(250mL)を含む別のフラスコに5分かけて添加し、添加中、内部温度を15℃未満に維持する。混合物を室温に加温し、メチルtert-ブチルエーテル(2×500mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を飽和NaCl水溶液(300mL)で洗浄する。合わせた有機物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、残渣を得、これを室温で2-プロパノール(414mL)及び2Mの水酸化ナトリウム水溶液(303mL、605mmol)と組み合わせる。反応混合物を47℃の加熱ブロック内で、45℃の内部温度で一晩撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、濃縮して、2-プロパノールを除去し、混合物を水(50mL)で希釈する。混合物をメチルtert-ブチルエーテル(250mL)で抽出し、水層を氷水浴で冷却し、酢酸(55.6mL、968mmol)で酸性化する。水性混合物を酢酸エチル(4×250mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して残渣を得、これをトルエン(3×100mL)から濃縮して、表題化合物(79.8g、>99%収率)を得る。MS m/z 272.0(M+H)。
【0083】
調製8:tert-ブチル(2S,4S)-4-[2-(2-アセチルヒドラジノ)-2-オキソ-エトキシ]-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラートの合成。
【化32】
2-[[(2S,4S)-1-tert-ブトキシカルボニル-2-メチル-4-ピペリジル]オキシ]酢酸(79.8g、224mmol)を含有するフラスコにテトラヒドロフラン(798mL)を加え、混合物を内部温度5℃の氷水浴で撹拌する。混合物に、1,1’-カルボニルジイミダゾール(43.5g、268mmol)を一度に添加し、反応混合物を室温で2時間撹拌する。1,1’-カルボニルジイミダゾールの追加分(7.25g、44.7mmol)を添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌する。反応混合物を氷水浴に浸し、アセトヒドラジド(21.5g、291mmol)を一度に添加する。反応混合物を室温で一晩撹拌する。反応混合物を氷水浴中で撹拌しながら冷却し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(500mL)を2分かけて添加し、内部温度を15℃未満に維持する。混合物を水(300mL)で希釈し、得られた混合物を減圧下で濃縮してテトラヒドロフランを除去する。得られた水性混合物を2-メチルテトラヒドロフラン(4×500mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して残渣を得て、これを酢酸エチル(200mL)及びヘプタン(200mL)と合わせる。混合物を室温で30分間撹拌し、ヘプタン(200mL)で希釈し、室温で更に30分間激しく撹拌し、濾過する。濾過した固体を真空下、40℃で2時間乾燥させて、表題化合物の第1の収穫物を得る(71.5g)。濾液を再濾過し、濾過した固体を窒素ガス流下、室温で15分間乾燥させて、表題化合物の第2の収穫物を得る(1.98g)。生成物の第1の収穫物(71.1g、216mmol)及び生成物の第2の収穫物(1.97g、5.98mmol)の大部分をtert-ブチルメチルエーテル(731mL)と合わせ、混合物を45℃の加熱ブロック中、内部温度40℃で30分間撹拌し、撹拌しながら1時間にわたって室温に冷却し、濾過する。濾過した固体を真空下、窒素ガス流下、室温で30分間乾燥させて、表題化合物(53.7g、収率71%)を得る。MS m/z 352.0(M+Na)。
【0084】
調製9:tert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラートの合成。
【化33】
窒素下、室温で、tert-ブチル(2S,4S)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラート(0.5g、2mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(5mL)中溶液に、ナトリウムtert-ブトキシド(920mg、9.3mmol)を少しずつ添加する。得られた反応混合物を室温で40分間撹拌する。反応混合物を0℃に冷却し、2-(クロロメチル)-5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール(416mg、3.1mmol)を添加する。得られた溶液を室温で一晩撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた残渣を水で希釈する。混合物を酢酸エチルで3回抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、粗油を得る。
【0085】
残渣をジメチルスルホキシド(総体積2mLまで)に溶解し、15%(CH3CN及び10mM重炭酸アンモニウムを水酸化アンモニウムでpH9に調整した水)~100%CH3CNの勾配で(50mL/分、1回注入、204nm)7分間にわたって溶離する分取HPLC(Phenomenex Gemini-NX 10 Micron 30×100mm C-18)によって精製して、表題化合物(28mg、収率4%)を得る。MS m/z 312(M+H)。
【0086】
tert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラートの代替合成。
【化34】
フラスコに、tert-ブチル(2S,4S)-4-[2-(2-アセチルヒドラジノ)-2-オキソ-エトキシ]-2-メチル-ピペリジン-1-カルボキシラート(53.7g、163mmol)及びアセトニトリル(537mL)を添加し、スラリーを室温で撹拌する。混合物に、水浴冷却下で5分間にわたって、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(114mL、652mmol)を1回で添加し、p-トルエンスルホニルクロリド(77.7g、408mmol)を3回に分けて添加する。反応混合物を室温で一晩撹拌し、次いで、氷水浴中で冷却する。N’,N’-ジメチルエタン-1,2-ジアミン(21.8g、245mmol)を10分かけて滴下し、内部温度を15℃未満に維持する。反応混合物を室温で30分間撹拌し、室温で飽和クエン酸水溶液(50mL)、酢酸エチル(500mL)及び水(450mL)で希釈する。層を分離し、有機層を飽和クエン酸水溶液(50mL)と水(450mL)との混合物で洗浄する。有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(500mL)で洗浄し、次に水層を酢酸エチル(500mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して残渣を得て、これをヘプタン中25%酢酸エチル(2×500mL画分)及び酢酸エチル(5×500mL画分)で順次溶離するシリカゲルの短いパッド(400g)に通す。生成物含有画分を濃縮して、表題化合物(53.3g、>99%収率)を得る。MS m/z 312.2(M+H)。
【0087】
調製10:5-メチル-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,3,4-オキサジアゾール2,2,2-トリフルオロ酢酸の合成。
【化35】
窒素下、tert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラート(27.5mg、0.09mmol)のジクロロメタン(3mL)中溶液に、トリフルオロ酢酸(0.035mL、0.45mmol)を添加する。混合物を室温で一晩撹拌する。混合物を減圧下で濃縮して、表題化合物(0.04g、収率84%)を得る。MS m/z 212.0(M+H)。
【0088】
調製11:2-メチル-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,3,4-オキサジアゾールの合成。
【化36】
フラスコに、tert-ブチル(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]ピペリジン-1-カルボキシラート(52.9g、170mmol)及びジクロロメタン(265mL)を室温で添加する。反応混合物を内部温度5℃の氷水浴中で撹拌し、トリフルオロ酢酸(265mL、3500mmol)を内部温度を10℃未満に維持しながら5分間にわたって滴下する。反応混合物を室温で15分間撹拌し、濃縮して残渣を得、これを水(300mL)及びメチルtert-ブチルエーテル(300mL)で希釈する。層を分離し、水層を氷水浴中で撹拌し、50%水酸化ナトリウム水溶液(20mL)で塩基性化し、添加中、内部温度を10℃未満に維持する。混合物をジクロロメタン(4×300mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、表題化合物(30.5g、収率85%)を得る。MS m/z 212.2(M+H)。
【0089】
本発明の新規の組合せ及び方法の他の実施形態では、OGA阻害剤、式XX:
【化37】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【0090】
更に、本発明は、式XXa:
【化38】
の化合物、又はその薬学的に許容される塩を提供する。
【0091】
本発明の新規の組合せ及び方法のOGA阻害剤の実施形態を含む式Xの特定の構成は、
【化39】
並びにその薬学的に許容される塩を更に含む。
【0092】
ピロリジン環上のメチル及び酸素置換基がシス又はトランス配置にある式XXの5-(メチルピロリジン-3-イル)オキシ化合物又はその薬学的に許容される塩は、本発明の新規組合せのOGA阻害剤の範囲内に含まれる。本発明の新規な組合せはまた、全ての個々のエナンチオマー及びジアステレオマー、並びにラセミ体を含む本発明の5-(メチルピロリジン-3-イル)オキシ化合物のエナンチオマーの混合物を意図する。本明細書で提供される新規な組合せ及び方法の5-(メチルピロリジン-3-イル)オキシ化合物の絶対構成には、
遊離塩基を含み、結晶形態を含む、1-(2-(((3R,5S)-1-((6-フルオロ-2-メチルベンゾ[d]チアゾール-5-イル)メチル)-5-メチルピロリジン-3-イル)オキシ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オン及びその薬学的に許容される塩を含む。
【0093】
本発明の新規な組合せ及び方法の5-(メチルピロリジン-3-イル)オキシ化合物又はその塩は、当業者に公知の様々な手順によって調製することができ、そのいくつかは以下のスキーム、調製及び実施例に示される。当業者は、本発明の化合物又はその塩を調製するために、記載される経路の各々に対する特定の合成ステップを異なる様式で組み合わせることができるか、又は異なるスキームからのステップと併せることができることを認識している。以下の各工程の生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、及び結晶化を含む、当技術分野で周知の従来の方法によって回収され得る。以下のスキームにおいて、全ての置換基は、別途示されない限り、以前に定義されたとおりである。試薬及び出発物質は、当業者であれば容易に入手可能なものである。本発明の範囲を限定することなく、本発明を更に説明するために以下のスキーム、調製及び実施例を提供する。更に、当業者は、式XXa、XXb、XXc、及びXXdの化合物が、当業者によって調製され得る対応する立体化学的構成を有する出発物質を使用することによって調製され得ることを理解する。例えば、以下の調製物は、最終的に式XXaに対応する構成を有する出発物質を利用する。
【0094】
調製12:1-(2-クロロ-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オン
【化40】
N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、3.6mL、21mmol)及び塩化アセチル(0.4mL、6mmol)を、2-クロロ-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[3,4-b]ピリジン塩酸塩(1.0g、5.2mmol)のジクロロメタン(DCM、13mL)中0℃溶液に滴下する。反応混合物を室温で24時間撹拌する。得られた混合物をDCM(20mL)及び飽和NaHCO
3水溶液(30mL)で希釈する。水層をDCM(30mL中2×)で抽出する。合わせた有機抽出物をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた残渣をDCMに溶解し、珪藻土に吸着させ、シリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン中50~100%アセトンの勾配で溶離して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後に表題化合物(0.95g、収率92%)を得る。ES/MS m/z:197(M+H)。
【0095】
調製13:tert-ブチル(2S,4R)-4-((6-アセチル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-2-イル)オキシ)-2-メチルピロリジン-1-カルボキシラート。
【化41】
室温(RT)でtert-ブチル(2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピロリジン-1-カルボキシラート(0.41g、2.03mmol)、1-(2-クロロ-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オン(0.47g、2.36mmol)及びテトラヒドロフラン(THF、8mL)の溶液に、カリウムtert-ブトキシド(KO-t-Bu、0.45g、4mmol)を少しずつ加え、混合物を50℃で4.5時間撹拌する。反応混合物を水(50mL)及び酢酸エチル(EtOAc、50mL)で希釈する。水層をEtOAc(50mL中2回)で抽出し、合わせた有機抽出物をMgSO
4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた残渣をDCMに溶解させ、ヘキサン中40~100%アセトンの勾配で溶離させる、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後に表題化合物を得る(0.34g、収率47%)。ES/MS m/z:262(M+H-C
4H
9).
【0096】
調製14:1-(2-(((3R,5S)-5-メチルピロリジン-3-イル)オキシ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オン塩酸塩。
【化42】
tert-ブチル(2S,4R)-4-((6-アセチル-6,7-ジヒドロ-5H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-2-イル)オキシ)-2-メチルピロリジン-1-カルボキシラート(0.34g、0.94mmol)のDCM(5.0mL)中溶液に、HClの1,4-ジオキサン中4M溶液(1.2mL、4.8mmol)を加える。得られた混合物を室温で3時間撹拌する。得られた懸濁液を減圧下で濃縮し、得られた残渣を真空下に1時間置いて、表題化合物(0.28g、>99%収率)を得る。ES/MS m/z:262(M+H)。
【0097】
調製15:N-(5-ブロモ-2,4-ジフルオロフェニル)アセトアミド。
【化43】
フラスコに、約61℃(内部温度60℃)の加熱ブロック中で撹拌しながら無水酢酸(Ac
2O、389mL)を添加する。フラスコに5-ブロモ-2,4-ジフルオロアニリン(77.7g、374mmol)を30分間にわたって少量ずつ添加し、添加中は内部温度を65℃未満に維持する。反応混合物を加熱ブロック内で約61℃にて10分間撹拌し、RTまで冷却して残渣を得て、これをトルエン(4×200mL)から濃縮して淡褐色/ピンク色固体を得る。濃縮した固体をヘプタン(80mL)に懸濁させ、混合物を50℃の水浴内で回転蒸発器にて大気圧で15分間撹拌し、RTまで冷却し、濾過する。濾過した固体を回収し、40℃にて真空下で2時間乾燥させて、表題化合物(89.6g、収率95%)をオフホワイト色固体として得る。ES/MS m/z:250(M+H)。
【0098】
調製16:N-(5-ブロモ-2,4-ジフルオロフェニル)チオアセトアミド。
【化44】
N-(5-ブロモ-2,4-ジフルオロフェニル)アセトアミド(89.6g、358mmol)の無水アセトニトリル(ACN、896mL)中溶液に、ピリジン-1-イウム-1-イル-[ピリジン-1-イウム-1-イル(スルフィド)ホスフィノチオイル]スルファニル-スルフィド-チオキソ-ホスファン(68.2g、179mmol、J.Org.Chem.76,1546-1553(2011))を室温で添加する。スラリーを85℃の加熱ブロック内で一晩(内部温度80℃)撹拌し、RTまで冷却し、氷(200g)及び飽和NaCl水溶液(700mL)の混合物に注ぐ。混合物をEtOAc(900mL)で希釈し、RTにて10分間撹拌し、層を分離し、水層を更にEtOAc(900mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を飽和NaCl水溶液(900mL)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、表題化合物を暗褐色油として得て、これをRTにてDMF(953mL)に溶解させて、更に精製せずに使用する。
【0099】
調製17:5-ブロモ-6-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール。
【化45】
N-(5-ブロモ-2,4-ジフルオロフェニル)チオアセトアミドのDMF溶液に、ナトリウムtert-ブトキシド(NaO-t-Bu、42.6g、430mmol)を撹拌しながら20分間にわたって少しずつ添加し、内部温度を30℃未満に維持する。反応混合物をRTにて5分間撹拌し、42℃の加熱ブロック(内部温度40℃)中で一晩撹拌し、RTまで冷却する。反応混合物を氷(250g)及びH
2O(700mL)の混合物に5分間にわたって滴下し、内部温度を20℃未満に維持する。混合物をRTにて10分間撹拌し、濾過する。濾過した固体を40℃にて一晩真空下で乾燥させ、50%MeOH/H
2O(480mL)に懸濁させる。混合物を45℃の加熱ブロック内で15分間撹拌し、RTまで冷却し、濾過する。濾過した固体を真空下40℃にて72時間乾燥させて、淡褐色固体を得る。材料をEtOAc(700mL)と合わせ、混合物をRTにて10分間撹拌し、H
2O(700mL)を添加し、層を分離する。水層をEtOAc(700mL)で抽出し、次に合わせた有機抽出物を飽和NaCl水溶液(700mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、表題化合物(62.7g、収率71%)を褐色固体として得る。
1H NMR(d
6-DMSO)δ:2.82(s,3H),7.57(m,1H),8.12(m,1H)。
【0100】
調製18:6-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-5-カルバルデヒド。
【化46】
DMF(1009mL)中の5-ブロモ-6-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール(100.9g、410mmol)を、撹拌しながら室温で5分間N
2でスパージする。ギ酸カリウム(52.3g、615.0mmol)、酢酸パラジウム(II)(2.82g、12.30mmol)、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)ビフェニル(5.19g、17.2mmol)及び1,1,3,3-テトラメチルブチルイソシアニド(90.8mL、492.0mmol)を添加し、混合物を撹拌しながらRTにてN
2で30分間スパージする。反応混合物を65℃の内部温度にて一晩撹拌し、20~25℃まで冷却し、2M HCl水溶液(820mL)を30分間にわたって滴下し、内部温度を30℃未満に維持する。得られた混合物を20~25℃で2時間撹拌し、EtOAc(1.5L)及びH
2O(1L)で希釈する。層を分離し、有機層を10%N-アセチル-システイン水溶液(2×1L)、飽和Na
2CO
3水溶液(750mL×2)及び飽和NaCl水溶液(750mL)で洗浄し、有機抽出物をMgSO
4上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製材料の第1のバッチを得る。最初の抽出物からの水性HCl層を更にEtOAc(1L、次に500mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を飽和NaCl水溶液(500mL)で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製材料の第2のバッチを得る。次いで、合わせたN-アセチル-システイン水層をEtOAc(1L、次いで500mL)で抽出し、合わせた有機抽出物を飽和Na
2CO
3水溶液(500mL)及び飽和NaCl水溶液(500mL)で順次洗浄し、合わせた有機抽出物をMgSO
4上で乾燥させ、減圧下で濃縮して、粗製材料の第3のバッチを得る。粗製材料の3つのバッチを、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE、250mL)及びヘプタン(250mL)中で合わせ、得られたスラリーを室温で20分間撹拌する。得られた沈殿物を濾過し、ヘプタン(250mL)で洗浄する。濾過した固体を45℃で真空下で乾燥させて、生成物の第1のバッチを得る。濾液を濃縮し、残渣を、0~100%EtOAc/ヘプタンの勾配で溶離させる、シリカでのカラムクロマトグラフィーによって精製する。生成物含有画分を合わせ、約400mLの体積まで濃縮し、得られたスラリーをRTにて15分間撹拌し、濾過し、濾過した固体をヘプタン(200mL)で洗浄して、生成物の第2のバッチを得る。生成物の第1及び第2のバッチをヘプタン(500mL)と合わせ、RTにてスラリー化し、濾過して、濾過した固体をヘプタン(250mL)で洗浄する。濾過した固体を真空下で45℃にて一晩乾燥させて、表題化合物(63.5g、収率79%)を得る。ES/MS m/z:196(M+H)。
【0101】
本発明の新規の組合せ及び方法の一部として本明細書で提供されるOGA阻害剤化合物の個々の異性体、エナンチオマー、及びジアステレオマーは、選択的結晶化技術又はキラルクロマトグラフィーなどの方法による本発明の化合物の合成において、任意の都合のよい時点で当業者によって分離又は分解され得ることを理解されるべきである(例えば、J.Jacques,et al.,「Enantiomers,Racemates,and Resolutions,」John Wiley and Sons,Inc.,1981,and E.L.Eliel and S.H.Wilen,「Stereochemistry of Organic Compounds,」Wiley-Interscience,1994を参照されたい)。
【0102】
本発明のOGA阻害剤化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、当技術分野で周知の標準的な条件下での好適な溶媒中で、本発明の化合物の適切な遊離塩基と適切な薬学的に許容される酸との反応によって形成され得る。そのような塩の形成は、当該技術分野で周知であり、理解されている。例えば、Gould,P.L.,「Salt selection for basic drugs,」International Journal of Pharmaceutics,33:201-217(1986)、Bastin,R.J.,et al.「Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities,」Organic Process Research and Development,4:427-435(2000)、及びBerge,S.M.,et al.,「Pharmaceutical Salts,」Journal of Pharmaceutical Sciences,66:1-19,(1977).
【0103】
実施例1:OGA阻害剤N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド(式Ia)の合成。
【化47】
この化合物及びその合成は、米国特許第10,081,625号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0104】
N-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)アセトアミド(28.3g、150mmol)を、室温で酢酸エチル(707mL)中の5-メチル-3-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,2,4-オキサジアゾール塩酸塩(48.7g、185mmol、純度94%)に添加する。反応混合物を室温で撹拌し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(34.1mL、195mmol)を1分かけて滴下し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(98.5g、451mmol)を一度に添加する。反応混合物を、31℃の加熱ブロック内で、30℃の内部温度で一晩撹拌し、氷水浴中で5℃の内部温度に冷却する。内部温度を10℃未満に維持しながら、混合物に2Mの塩酸水溶液(226mL)を15分かけて添加する。混合物に水(250mL)を添加し、混合物を室温で5分間撹拌する。層を分離し、有機層を水(50mL)中の2Mの塩酸水溶液(28mL)の混合物で抽出する。第1の水層を氷水浴中で撹拌し、内部温度を10℃未満に維持しながら、50%水酸化ナトリウム水溶液(25.7mL)を10分かけて滴下する。混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(100mL)で希釈し、次に室温で10分間撹拌し、酢酸エチル(3×400mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して残渣を得る。水性塩酸で抽出した第2の水層を2-メチルテトラヒドロフラン(200mL)で希釈し、混合物を珪藻土の短いパッドに通過させる。濾液を分液漏斗に移し、層を分離する。水層を氷水浴中で撹拌し、内部温度を10℃未満に維持しながら、50%水酸化ナトリウム水溶液(3.15mL)を5分かけて滴下する。混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(10mL)で希釈し、次に室温で5分間撹拌し、次に酢酸エチル(3×40mL)及び酢酸エチル中の10%イソプロパノール(100mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して、残渣を得、これを処理した第1の部分からの残渣と組み合わせる。組み合わせた残渣をシリカゲル(350g)のパッドに通過させ、酢酸エチル(3.5L)で溶離し、濾液を濃縮して、残渣(45.8g)を得る。残渣(合わせたロット47.5g、123.9mmol)を、ヘプタン中50~100%酢酸エチルで溶離するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。生成物含有画分を残渣に濃縮し、これを、メチル-tert-ブチルエーテルとヘプタンとの1:1混合物(448mL)に懸濁する。混合物を46℃の加熱ブロック内で、45℃の内部温度で30分間撹拌し、撹拌しながら2時間かけて室温に冷却する。混合物を濾過し、回収した固体をメチル-tert-ブチルエーテルとヘプタンとの1:1混合物(30mL)で洗浄する。濾過した固体を真空下40℃で一晩乾燥させて、表題化合物(28.5g、収率49%)を得る。MS m/z 384.0(M+H)。旋光度[α]D
20=+33.4°(C=0.26,メタノール).
【0105】
N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドの代替合成。
窒素下、N-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)アセトアミド(50mg、0.28mmol)及び5-メチル-3-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,2,4-オキサジアゾール(40mg、0.19mmol)のジクロロメタン(10mL)中溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.1mL、0.57mmol)及びトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(120mg、0.57mmol)を添加する。反応混合物を室温で12時間撹拌する。反応混合物を重炭酸ナトリウムの飽和水溶液(10mL)に注ぐ。層を分離し、水相をジクロロメタン(2×10mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、オレンジ色の油を得る。残渣をメタノール(総体積9.8mLまで)に溶解し、濾過し、15%(CH3CN及び10mM重炭酸アンモニウムを水酸化アンモニウムでpH9に調整した水)~100%CH3CNの勾配(110mL/分、1回注入、271/204nm)で10分間にわたって溶離する分取HPLC(Phenomenex Gemini-NX 10 Micron 50×150mm C-18)によって精製して、表題化合物(20mg、収率28%)を得る。MS m/z 384.2(M+H)。
【0106】
実施例1A:結晶性N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド。
ヘプタン中の448mLの50%メチルtert-ブチルエーテル中の粗N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド(29.9g)を46℃で30分間懸濁する。混合物を撹拌し、2時間かけて19℃に冷却してから濾過し、続いてヘプタン中の30mLの50%メチルtert-ブチルエーテルで洗浄して、表題化合物(28.5g、95%収率)を提供する。
【0107】
実施例1AのX線粉末回折(XRPD)。
結晶性固体のXRPDパターンは、35kV及び50mAで作動する、CuKa源(λ=1.54060Å)及びVantec検出器を備えたBruker D4 Endeavor X線粉末回折計において得られる。試料は、2θで4°~40°の間、2θで0.0087°の工程サイズ及び0.5秒/工程の走査速度で、0.6mmの発散、5.28mmの固定散乱防止、及び9.5mmの検出器スリットで走査される。乾燥粉末は、石英試料ホルダーに充填され、滑らかな表面は、ガラススライドを使用して得られる。結晶学の分野において、任意の所与の結晶形態に関して、結晶形態及び晶癖などの要因から生じる好ましい配向に起因して、回折ピークの相対強度が変化し得ることは周知である。優先配向の効果が存在する場合、ピーク強度は改変されるが、多形体の特徴的なピーク位置は不変である。例えば、米国薬局方38-National Formulary 35 Chapter 941、X線粉末回折(XRPD)公式2015年5月1日による結晶性及び部分的に結晶性の固体の特性評価を参照されたい。更に、所与の任意の結晶形態について、角ピーク位置がわずかに変化し得ることも、結晶学の分野において周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度若しくは湿度の変動、試料の変位、又は内部標準の有無に起因して変動し得る。この場合、2θの±0.2のピーク位置変動は、示された結晶形態の明確な識別を妨げることなく、これらの潜在的な変動を考慮する。結晶形態の確認は、特徴的なピーク(単位は°2θ)、典型的にはより顕著なピークの任意の独自の組合せに基づいて行われ得る。周囲温度及び相対湿度で収集された結晶形態の回折パターンは、8.85度及び26.77度の2-シータでのNIST675標準ピークに基づいて調整される。
【0108】
結晶性N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドの調製試料は、以下の表1に記載されるように、回折ピーク(2-シータ値)を有するときにCuKa放射線を使用したXRPDパターンを特徴とする。具体的には、パターンは、15.3°、21.6°、22.2°、22.7°、23.5°、24.3°、及び26.8°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、12.1°でピークを含み、回折角の許容誤差は0.2度である。
【0109】
【0110】
実施例2:OGA阻害剤N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド(式Xa)の合成。
【化48】
この化合物及びその合成は、米国特許第10,081,625号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
2-メチル-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,3,4-オキサジアゾール2,2,2-トリフルオロ酢酸(160mg、0.7mmol)の酢酸エチル(1mL)中溶液に、窒素下、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(210μL、0.12mmol)を添加し、溶液を5分間撹拌する。N-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)アセトアミド(40mg、0.12mmol)を添加し、5分間撹拌し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(55mg、0.25mmol)を添加し、反応混合物を40℃に加温し、一晩撹拌する。混合物を減圧下で濃縮して、褐色の固体を得る。残渣をジメチルスルホキシドに溶かし(総量1mLまで)、15%(CH3CN及び10mMの重炭酸アンモニウムを水酸化アンモニウムでpH9に調整した水)~100%のCH3CNの勾配で12分かけて(100mL/分、1回注入、271/204nm)で溶離するprep-HPLC(Phenomenex Gemini-NX 10 Micron 30*100mm C-18)により精製して、表題化合物(7mg、14%)を得る。MS m/z 384.2(M+H)。
【0112】
結晶性N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドの代替合成。
【化49】

トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(59.1g、279mmol)を2-メチル-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-ピペリジル]オキシメチル]-1,3,4-オキサジアゾール(23.3g、93.0mmol)、酢酸エチル(438mL)、及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(32.4mL、186mmol)の混合物に室温で添加する。反応混合物を31℃の加熱ブロック内で、30℃の内部温度で15分間撹拌し、次にN-(4-フルオロ-5-ホルミル-チアゾール-2-イル)アセトアミド(17.5g、93.0mmol)を5分かけて少しずつ添加する。反応混合物を、31℃の加熱ブロック内で、30℃の内部温度で一晩撹拌し、氷水浴中で5℃の内部温度に冷却する。内部温度を10℃未満に維持しながら、混合物に2Mの塩酸水溶液(140mL)を15分かけて添加する。混合物を室温で15分間撹拌し、水(50mL)及び酢酸エチル(20mL)で希釈し、層を分離する。有機層を水(100mL)中の2Mの塩酸水溶液(35mL)の混合物で抽出する。組み合わせた水層を氷水浴中で撹拌し、内部温度を10℃未満に維持しながら、50%水酸化ナトリウム水溶液(19.5mL)を10分かけて滴下する。混合物を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(50mL)で希釈し、2-メチルテトラヒドロフラン(3×200mL)で抽出する。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮して残渣を得、これをジクロロメタン中0~15%2-プロパノールで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって精製する。生成物含有画分を濃縮して、残基を得、これをヘプタン(100mL)から濃縮する。濃縮した材料をヘプタン(457mL)中の40%酢酸エチルと組み合わせ、混合物を50℃の加熱ブロック内で1時間撹拌し、室温に冷却し、濾過する。濾過した固体を真空下、40℃で1時間乾燥させて、生成物の第1の収穫物(22.9g)を得る。濾液を濃縮して、残渣を得、これをヘプタン(50mL)中の40%酢酸エチルと組み合わせ、混合物を50℃の加熱ブロック内で30分間撹拌し、室温に冷却し、濾過する。濾過した固体をヘプタン(33mL)中の50%酢酸エチルと組み合わせ、混合物を50℃の加熱ブロック内で1時間撹拌し、室温に冷却し、濾過する。濾過した固体を真空下、40℃で1時間乾燥させて、生成物の第2の収穫物(2.50g)を得る。
【0113】
生成物の第1及び第2の収穫物(29.3g)を含むロットの組合せを、室温で酢酸エチル(117mL)及びヘプタン(117mL)と組み合わせる。混合物を51℃の加熱ブロック中、内部温度50℃で30分間撹拌し、続いて室温に冷却し、濾過する。濾過した固体を真空下40℃で一晩乾燥させて、表題化合物(26.7g、収率75%)を結晶性固体として得る。MS m/z 384.0(M+H)。旋光度[α]D
20=+39°(C=0.2,メタノール).
【0114】
結晶性N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドのX粉末線回折(XRPD)。
結晶性N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド(218mg)を1.25mLのメタノールに60℃で5分間溶解する。溶液を20分間撹拌しながら周囲温度に冷却する。得られた固体を真空濾過によって単離する。最終的な固体生成物は、163mg又は75%の収率である。
【0115】
結晶性固体のXRPDパターンは、35kV及び50mAで作動する、CuKa源(λ=1.54060Å)及びVantec検出器を備えたBruker D4 Endeavor X線粉末回折計において得られる。試料は、2θで4°~40°の間、2θで0.0087°の工程サイズ及び0.5秒/工程の走査速度で、0.6mmの発散、5.28mmの固定散乱防止、及び9.5mmの検出器スリットで走査される。乾燥粉末は、石英試料ホルダーに充填され、滑らかな表面は、ガラススライドを使用して得られる。結晶学の分野において、任意の所与の結晶形態に関して、結晶形態及び晶癖などの要因から生じる好ましい配向に起因して、回折ピークの相対強度が変化し得ることは周知である。優先配向の効果が存在する場合、ピーク強度は改変されるが、多形体の特徴的なピーク位置は不変である。例えば、米国薬局方38-National Formulary 35 Chapter<941>、X線粉末回折(XRPD)公式2015年5月1日による結晶性及び部分的に結晶性の固体の特性評価を参照されたい。更に、所与の任意の結晶形態について、角ピーク位置がわずかに変化し得ることも、結晶学の分野において周知である。例えば、ピーク位置は、試料が分析される温度若しくは湿度の変動、試料の変位、又は内部標準の有無に起因して変動し得る。この場合、2θの±0.2のピーク位置変動は、示された結晶形態の明確な識別を妨げることなく、これらの潜在的な変動を考慮する。結晶形態の確認は、特徴的なピーク(単位は°2θ)、典型的にはより顕著なピークの任意の独自の組合せに基づいて行われ得る。周囲温度及び相対湿度で収集された結晶形態の回折パターンは、8.85度及び26.77度の2-シータでのNIST675標準ピークに基づいて調整された。
【0116】
したがって、結晶性N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミドは、表2に記載されるように、回折ピーク(2-シータ値)を有するときにCuKa放射線を使用したXRPDパターンを特徴とする。より具体的には、パターンは、好ましくは、5.8°、13.0°、14.3°、17.5°、20.4°、21.4°、及び22.2°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、13.5°でピークを含み、回折角の許容誤差は0.2度である。
【0117】
【0118】
インビトロヒトOGA酵素アッセイ
OGAタンパク質の生成
全長ヒトO-GlcNAc-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(NM_012215)をコードするヌクレオチド配列を、N末端ポリヒスチジン(HIS)タグと共にpFastBac1(Invitrogen)ベクターに挿入する。バキュロウイルス(Baculovirus)生成を、Bac-to-Bacバキュロウイルス発現システム(Invitrogen)プロトコルに従って行う。Sf9細胞を、培養液1リットル当たり10mLのP1ウイルスを用いて1.5×106個/mLで感染させ、28℃で48時間インキュベートする。細胞を遠心沈降させ、PBSですすぎ、ペレットを-80℃で保存する。
【0119】
上述のOGAタンパク質(His-OGA)を次のように精製する。細胞4Lを、50mMトリス、pH8.0、300mM NaCl、10%グリセロール、10mMイミダゾール、1mMジチオトレイトール(DTT)、0.1%Triton(商標)X-100、プロテアーゼ阻害剤4錠(完全EDTA非含有、Roche)を含有する緩衝液200mL中で、4℃にて45分間溶解させる。次に、この細胞溶解物を16500rpm、4℃で40分間スピンし、上清を6mLのNi-NTA樹脂(ニッケル-ニトリロ三酢酸)を用いて4℃で2時間インキュベートする。
【0120】
次に、樹脂をカラムに充填し、50mMのトリス、pH8.0、300mMのNaCl、10%のグリセロール、10mMのイミダゾール、0.1%のTriton(商標)X-100、1mMのDTTで洗浄し、続いて、50mMのトリス、pH8.0、150mMのNaCl、10mMのイミダゾール、10%のグリセロール、1mMのDTTで洗浄する。タンパク質を、50mMのTris、pH8.0、150mMのNaCl、300mMのイミダゾール、10%グリセロール、1mMのDTTで溶離する。プールしたHis-OGA含有画分を6mLに濃縮し、Superdex75に添加する(16/60)。タンパク質を50mM Tris、pH8.0、150mM NaCl、10%グリセロール、2mM DTTで溶離させる。His-OGA含有画分をプールし、タンパク質濃度をBCA(Bradford比色アッセイ)で測定する。
【0121】
OGA酵素アッセイ
OGA酵素は、核細胞質タンパク質からのO-GlcNAcの除去を触媒する。この活性を測定するために、フルオレセインジ-N-アセチル-β-N-アセチル-D-グルコサミニド(FD-GlcNAc,Kim,et al.,Carbohydrate Research(2006),341(8),971-982)を10μM(96ウェルアッセイフォーマット)又は6.7μM(384ウェルアッセイフォーマット)の最終濃度で基質として使用する。この蛍光発生基質は、OGAによる切断の際に蛍光性となるので、酵素活性は、535nm(485nmでの励起)で検出される蛍光の増大によって測定することができる。
【0122】
アッセイ緩衝液を調製し、50mMのH2NaPO3-HNa2PO3、0.01%のウシ血清アルブミン、及び0.01%のTriton(商標)X-100の水中での最終濃度、pH7を得る。最終的な酵素濃度は、3nM(96ウェルアッセイフォーマット)又は3.24nM(384ウェルアッセイフォーマット)である。両方のアッセイフォーマットから本質的に同等の結果が得られる。
【0123】
試験化合物を、10点濃度応答曲線を用いて、純粋なジメチルスルホキシド(DMSO)中に希釈する。反応混合物中の最大化合物濃度は、30μMである。基質の添加によって反応が開始する前に、適切な濃度の化合物をOGA酵素と共に30分間プレインキュベートする。反応を室温で60分間進行させる。次いで、反応を停止させずに、蛍光を読み取る。化合物の正規化されたデータと対数とをプロットし、4つのパラメータのロジスティック方程式を使用してデータを適合することによって、IC50値を計算する。
【0124】
実施例1の化合物を本質的に上記のように試験して、1.97nM±1.22(n=9)のIC50を示した。このデータは、実施例1の化合物がインビトロでOGA酵素活性を阻害することを示す。
【0125】
実施例2の化合物もまた本質的に上記のように試験すると、2.13nM±0.89(n=5)のIC50を示した。この結果は、実施例2の化合物がインビトロでOGA酵素活性を阻害することを示す。
【0126】
OGA酵素活性の阻害を測定するための全細胞アッセイ
細胞プレーティング:
当技術分野で既知の標準条件を利用して、微小管関連タンパク質タウのP301S-1N4R形態の誘発性発現のために改変されたTRex-293細胞を生成し、10%テトラサイクリン不含ウシ胎児血清(FBS、Sigma F2442)、20mMのHEPES、5μg/mLのブラスチシジン(Life Technologies#A11139-03)、及び200μg/mLのゼオシン(Life Technologies#R250-01)で補足したDMEM高グルコース(Sigma#D5796)からなる成長培地で維持する。実験のために、細胞をポリ-D-リジンでコーティングされたCorning Biocoat(356663)384ウェルプレートのウェル当たり10,000~14,000細胞で成長培地にプレーティングし、37℃/5%CO2の細胞インキュベーターで20~24時間インキュベートする。タウ発現を誘発せずに実験を行う。
【0127】
化合物処理:
試験する化合物を、10点の濃度応答曲線を使用して純粋なDMSO中で1/3に段階希釈し、成長培地で更に希釈する。プレーティングの20~24時間後、細胞を増殖培地中の試験化合物で処理し、最大化合物濃度は15μM(0.15%DMSO)である。最大阻害は15μMのチアメットGの反復測定によって定義され、最小阻害は0.15%DMSO処理の反復測定によって定義される。細胞を37℃/5%CO2のインキュベーターに20~24時間戻す。化合物を各プレート内で2回ずつ試験する。
【0128】
免疫染色:
20~24時間の化合物処理後、培地をアッセイプレートから除去し、DPBS(Sigma#D8537;ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)中の25μLの3.7%ホルムアルデヒド溶液(Sigma#F1635)を各ウェルに添加し、30分間インキュベートする。次いで、細胞をDPBSで1回洗浄し、次いで0.1%のTriton(商標)X-100(Sigma#T9284)で透過処理する。30分後、細胞をDPBSで2回洗浄し、次いでブロッキング溶液(1%のBSA/DPBS/0.1%のTriton(商標)X-100)を各ウェルに添加し、60分間インキュベートする。ブロッキング溶液を除去し、ブロッキング溶液中のO-GlcNAcタンパク質抗体(RL2クローン、Thermo、MA1072)の0.40~0.33μg/mLの溶液を細胞に添加し、2~8℃で一晩静置する。翌日、細胞をDPBSで2回洗浄し、DPBS中の2μg/mLの二次抗体であるAlexa Fluor488ヤギ抗マウスIgG(Life Technologies#A11001)を各ウェルに添加し、室温で90分間静置する。二次抗体を除去し、細胞をDPBS及びDAPI(Sigma#D9564;4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール、ジラクテート)及びRNase(Sigma、R6513))のDPBS中溶液で2回洗浄し、それぞれ1及び50μg/mLの濃度で各ウェルに添加する。プレートを密封し、1時間インキュベートし、Acumen eX3 hci(TTP Labtech)で分析する。上記の全てのインキュベーション及び洗浄工程は、一次抗体を除いて、室温で行う。
【0129】
分析及び結果:
プレートをAcumen eX3機器で488及び405nm励起レーザー、並びに2つの発光フィルターFL2(500~530nm)及びFL1(420~490nm)を使用して分析する。FL2フィルターはO-GlcNAcタンパク質抗体(RL2クローン)に対応するシグナルであり、FL1フィルターは細胞核(DAPI)に対応するシグナルである。総FL2/総FL1(オブジェクト又は集団を選択しない各ウェルの総蛍光)の比率をデータ分析に使用する。データをチアメットGの15μM処理によって参照される最大阻害及び0.15%DMSO処理によって達成される最小阻害に正規化する。データを非線形曲線適合アプリケーション(4パラメータロジスティック方程式)で適合し、IC50値を計算及び報告する。
【0130】
実施例1の化合物を本質的に上記のように試験して、21.9nM±7.3(n=5)のIC50を示した。このデータは、実施例1の化合物が細胞アッセイにおいてOGA酵素活性を阻害することを示す。
【0131】
実施例2の化合物もまた本質的に上記のように試験すると、22.6nM±7.3(n=3)のIC50を示した。この結果は、実施例2の化合物が細胞アッセイにおいてOGA酵素活性を阻害することを示す。
【0132】
実施例1の化合物の安全性及び薬物動態を評価するための健常被験者における単回漸増用量試験
健常被験者における実施例1の化合物の安全性、忍容性、及び薬物動態(PK)を評価するために、第1相、単一施設、被験者及び治験責任医師盲検、単回漸増用量、プラセボ対照、クロスオーバー、無作為研究を行う。当該研究を、6つの用量レベルにわたって最大3つの研究期間で2つの交互コホート(コホート1及び2)に行う。被験者を各コホートにおいて3つの治療順序のうちの1つに無作為に割り付け、各順序は、3つの試験期間にわたる実施例1の化合物の投与2回及びプラセボの投与1回を完全クロスオーバー様式で含む。臨床研究のデザインを表3に要約する。
【0133】
【0134】
少なくとも8時間の夜間絶食後、経口カプセル剤を座位で各投与日の朝に約240mLの室温の水で投与する。0.15mg~2mgの用量を、経口カプセル剤投与と同様に、水を含む経口投与シリンジにより実施例1の化合物の経口溶剤として投与する。表4a及び表4bは、治療レジメンを要約したものである。
【0135】
【0136】
【0137】
実施例1の化合物を含むカプセル剤を即時調製する。0.15mg~2mgの実施例1の化合物の経口用量を薬溶剤として即座調製する。任意の特定のコホート/投与期間について、投与されるカプセルの総数は、プラセボ又は実施例1の化合物に割り当てられているかどうかにかかわらず、全ての被験者について同じである。しかしながら、カプセルの数は、投与期間とコホートとの間で異なり得る。これは、盲検を維持するために即時調製された経口投与溶剤の場合も同様である。実施例1の化合物を、即時調製のために不活性成分を含まない遊離塩基の形態で供給する。実施例1の化合物を含まない経口溶剤ビヒクルの適合体積を、0.15mg~2mgの用量のプラセボとして使用する。
【0138】
静脈血各約3mLの試料を採取して、実施例1の化合物の血漿中濃度を決定する。実施例1の化合物の濃度を、タンデム質量分析法による有効な液体クロマトグラフィーを使用してアッセイする。実施例1の化合物のPKパラメータ推定値を標準の非コンパートメント分析法を使用して計算する。実施例1の化合物の血漿中濃度を、実施例1の化合物の投与量及びPK血液試料採取のおおよその時間によって要約する。本質的に上記の手順に従って、健常被験者における実施例1の化合物の単一漸増用量のPKデータを表5及び表6に示す。
【0139】
【0140】
【表7】
1 別途記載のない限り、データを幾何平均(%CV幾何平均)として提示する。
2 投与する実施例1の化合物の量
3 N=被験者数
4 CL/F=経口投与後に計算した見かけのクリアランス
5 AUC(0-∞)=時間ゼロから無限大までの濃度対時間曲線下面積
6 Cmax=観察された最大薬物濃度
7 V
z/F=経口投与後の見かけの分布容積
8 t
1/2=終末相半減期(幾何平均(最小-最大))
9 t
max=観察された最大薬物濃度の時間;中央値(最小-最大)
10 Ae0-24=投与後24時間までに尿中に排泄された実施例1の化合物の量
11 CLr=腎クリアランス
12 N=5
13 N=3
14 NC=計算されず
【0141】
データは、AUC(0-∞)及びCmaxが、実施例1の化合物0.6mg~16mgの用量範囲にわたってほぼ用量比例的に増加することを明らかにしている。実施例1の化合物のtmax中央値は約1時間であり、t1/2中央値は約6時間である。
【0142】
健常被験者における放射性リガンド[18F]LSN3316612を用いた陽電子放出断層撮影法によって測定される、実施例1の化合物の単回経口投与後の脳O-GlcNAcase酵素占有率の評価
0.25mg、1mg、及び5mgのN-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド(式Iの化合物)の単回経口投与後の脳O-GlcNAcase(OGA)の脳透過性及び標的関与を実証する単一施設、非盲検、非無作為化、陽電子放出断層撮影法(PET)研究が、本質的に以下に記載するように当業者により行われる。[18F]LSN3316612は、脳内のOGAのインビボ撮像用の陽電子放出放射性医薬品であり、OGAを阻害する化合物の標的関与を評価するために使用される。PET放射性リガンドとしての18F-LSN3316612の調製及び使用は、例えば、S.Lu,et.al,Science Translational Medicine,12,(2020)に記載されているように、当該技術分野で知られている。[18F]LSN3316612トレーサーを使用したこの単回投与PET研究では、安全で忍容性が高いことが実証されている好適な用量範囲にわたって脳OGA酵素占有率(EO)を評価する。
【0143】
健常被験者を4つのコホートのうちの1つに割り付け、各コホートの4名の被験者が本研究を完了する。全ての被験者は、1回のベースラインPETスキャン及び2回の投与後PETスキャンを受ける。ベースラインPETスキャンは、実施例1の化合物の投与の最大約14日前から実施される。全体として、各被験者は、実施例1の化合物の単回投与及び[18F]LSN3316612 PETトレーサーの3回投与を受ける。実施例1の化合物の投与をベースラインPETスキャンの完了後に行う。走査は、実施例1の化合物の0.25mg及び5mgの用量については投与のおよそ2時間後及び24時間後に、実施例1の化合物の1mgの用量については投与のおよそ2時間後及び24時間後又は30時間後及び54時間後に行う。脳の動的PETデータは、トレーサー注入直後に120分間にわたって取得される。EOを実施例1の化合物の用量及びおおよその走査時間によって要約する。
【0144】
実施例1の化合物をカプセル製剤で3mg以上の用量で経口投与する。3mg未満の用量の場合、実施例1の化合物を適切な容器に秤量し、適切な体積の脱気したSprite(登録商標)又は希釈剤に溶解する。
【0145】
[18F]LSN3316612を、各PETスキャンの日に非放射性前駆体から臨床現場の放射化学施設で生成する。[18F]LSN3316612注射剤は、エタノール、注射用滅菌水、及びアスコルビン酸ナトリウムを含む生理食塩水で製剤化した静脈内注射用の透明な溶液である。[18F]LSN3316612を、およそ3.3%(v/v)のエタノール(EtOH)及びアスコルビン酸ナトリウム(4.67mg/mL)を含むように製剤化した生理食塩水(0.9%NaCl)に入れる。[18F]LSN3316612を、注入ポンプを使用して3分間の注入期間にわたって静脈内投与し、その後、10mLの生理食塩水を流す。PET撮像前に、標準の臨床診療に従って、静脈内カテーテル(放射性トレーサー注入用)を被験者に挿入する。各被験体は、画像検査毎に[18F]LSN3316612の単回注射を受ける。放射性医薬品を、およそ5mCi(6mCi以下)の線量で、最大質量線量10μg及び最大体積10mLで静脈内注射する。
【0146】
各PETスキャンについて、放射化学研究所は、Lee,J.,Liow,J.,Paul,S.et al.「PET Quantification of Brain O-GlcNAcase With[18F]LSN3316612 in Healthy Human Volunteers,」EJNMMI Res 10,20(2020)に記載されているものなどの当技術分野で公知のPETユニット製造プロトコルに従って前駆体から放射性リガンドを合成する。
【0147】
動脈血試料を各PETスキャン中に全ての被験者から採取して放射能を測定して、PETトレーサー動態分析用の情報を提供する。実施例1の化合物を投与した後に静脈血試料を採取し、タンデム質量分析アッセイを伴う検証された液体クロマトグラフィーを用いて実施例1の化合物の血漿中濃度を測定する。
【0148】
[18F]LSN3316612 PETの撮像主要アウトカムは、皮質領域、基底核領域、視床領域、及び小脳領域を含むOGAが存在する領域で決定される総分布容積(VT)である。分析では、異なる脳領域における減衰補正した時間放射能データを使用する。撮像データを、動脈入力関数を用いて2組織コンパートメントモデルで分析して、VTを決定する。実施例1の化合物の単回投与後のOGA EOを、占有プロットに従ってグラフ解析を用いて得る。
VT(ベースライン)-VT(投与)=占有率*(VT(ベースライン)-VND)、
式中、VT(ベースライン)及びVT(投与)は、それぞれベースライン及び実施例1の化合物投与後に得られたいくつかの領域の総分布容積である。占有率をプロットの線形回帰の勾配として決定し、非変位分布容積VNDをx切片として決定する。
【0149】
本質的に上記の手順の後、実施例1の化合物0.25mg、1mg及び5mgの単回経口投与後の脳OGAの目標係合を表7a~7cに示す。
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
上記の表7a~7cに提供されたデータは、実施例1の化合物の5mg用量についてのEOが投与後24時間で90%EOを超える脳OGA EOの血漿中濃度依存的変化を開示している。1mg用量の実施例1の化合物は、投与後24時間時点でEO80.6%であり、投与後54時間時点でEO30.3%であることが分かった。0.25mg用量の実施例1の化合物は、投与後24時間時点でEO46%であることが分かった。
【0154】
上に開示される実施例1の化合物の単回経口投与後の脳浸透及び脳OGAの標的関与を実証する、健常被験者における実施例1の化合物の単回漸増用量研究及びPET研究からのPKデータを利用して、AD及び他の神経変性タウオパチーを含む神経変性疾患を実施例1の化合物で治療するための低用量及び投与レジメンを以下に記載する。
【0155】
実施例1の化合物の総用量0.25mg/日~5mg/日。
【0156】
実施例1の化合物の総用量0.1mg/日~3mg/日。
【0157】
実施例1の化合物の総用量0.25mg/日~3mg/日。
【0158】
実施例1の化合物の総用量0.1mg/日~2mg/日。
【0159】
実施例1の化合物の総用量0.25mg/日~2mg/日。
【0160】
実施例1の化合物の総用量0.1mg/日~1mg/日。
【0161】
実施例1の化合物の総用量0.25mg/日~1mg/日。
【0162】
実施例1の化合物の総用量5mg/日。
【0163】
実施例1の化合物の総用量3mg/日。
【0164】
実施例1の化合物の総用量2mg/日。
【0165】
実施例1の化合物の総用量1mg/日。
【0166】
実施例1の化合物の総用量0.25mg/日。
【0167】
実施例1の化合物の総用量0.1mg/日。
【0168】
投与される実施例1の化合物の1日総用量が1単位用量であることが好ましい。
【0169】
投与される実施例1の化合物の1日総用量が2単位用量であることが更に好ましい。実施例1の化合物の総1日用量は、各用量が等量の実施例1の化合物を含有する2単位用量で投与されることが好ましい。実施例1の化合物の1日総用量を2回の単位用量で投与する場合、各単位用量の投与は少なくとも8時間離すことが好ましい。
【0170】
加えて、医薬組成物中の実施例1の化合物の総用量を以下に記載する。
【0171】
実施例1の化合物の総用量は0.25mg~5mgである。
【0172】
実施例1の化合物の総用量は0.1mg~3mgである。
【0173】
実施例1の化合物の総用量は0.25mg~3mgである。
【0174】
実施例1の化合物の総用量は0.1mg~2mgである。
【0175】
実施例1の化合物の総用量は0.25mg~2mgである。
【0176】
実施例1の化合物の総用量は0.1mg~1mgである。
【0177】
実施例1の化合物の総用量は0.25mg~1mgである。
【0178】
実施例1の化合物の総用量は3mgである。
【0179】
実施例1の化合物の総用量は2mgである。
【0180】
実施例1の化合物の総用量は1mgである。
【0181】
実施例1の化合物の総用量は0.25mgである。
【0182】
加えて、実施例1の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の総用量が1単位用量で含まれることが好ましい。
【0183】
実施例1の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の総用量が1単位用量で含まれ、1単位用量が1日1回投与されることが更に好ましい。
【0184】
実施例1の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の総用量が2単位用量で含まれることも好ましい。
【0185】
実施例1の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の総用量が2単位用量で含まれ、各単位用量が等量の実施例1の化合物を含むことが好ましい。
【0186】
実施例1の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の総用量が2単位用量で含まれ、各用量が1日で投与されることが更に好ましい。
【0187】
実施例1の化合物又はその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物の総用量が2単位用量で含まれ、各単位用量が等量の実施例1の化合物を含み、各用量が好ましくは少なくとも8時間空けて1日で投与されることが更に好ましい。
【0188】
実施例3:操作された抗N3pGlu Aβ抗体の発現及び精製
N3pGluAβに対する抗体は、当該技術分野において既知である。例えば、米国特許第8,679,498号、米国特許第8,961,972号、米国特許第10,647,759号及び米国特許第11,078,261号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、抗N3pGlu Aβ抗体、抗体を作製する方法、抗体製剤、及びそのような抗体を用いてアルツハイマー病などの疾患を治療する方法を開示している。例示的な抗N3pG Aβ抗体のアミノ酸配列を以下の表8に提供する。
【0189】
【0190】
本発明の抗N3pGlu A抗体は、本質的に以下のようにして作製及び精製することができる。抗体Iの場合、HEK 293 EBNA又はCHOなどの適切な宿主細胞に、最適な所定のHC:LCベクター比、又は配列番号22などのHC及び配列番号21などのLCの両方をコードする単一ベクター系を使用して抗体を分泌するための発現系を一過性又は安定にトランスフェクトする。抗体が分泌された清澄化培地を、多くの一般的に使用される技術のいずれかを使用して精製する。例えば、培地は、適合する緩衝液、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)等で平衡化したプロテインA又はGのセファロースFFカラムに都合よく適用され得る。カラムを洗浄して、非特異的結合構成成分を除去する。結合した抗体を、例えば、pH勾配(例えば、0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8)から0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.5)へ)によって、溶出される。抗体画分をSDS-PAGEなどにより検出し、次いでプールする。意図する使用に応じて、更なる精製は任意選択的である。抗体を、一般的な技術を使用して濃縮及び/又は滅菌濾過し得る。可溶性凝集体及び多量体を、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、又はヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーを含む一般的な技術によって効果的に除去し得る。これらのクロマトグラフィー工程後の抗体Iの純度は、99%を上回る。生成物は、-70℃ですぐに凍結されてもよいか、又は凍結乾燥されてもよい。
【0191】
抗体IIは、本質的に以下のように発現及び精製され得る。配列番号24のHCアミノ酸配列をコードするDNA配列、及び配列番号23のLCアミノ酸配列をコードするDNA配列を含むグルタミンシンテターゼ(GS)発現ベクターを用いて、エレクトロポレーションによりチャイニーズハムスター卵巣細胞株(CHO)をトランスフェクトする。発現ベクターは、SV Early(Simian Virus 40E)プロモーター及びGSの遺伝子をコードする。トランスフェクション後、細胞は、0~50μMのL-メチオニンスルホキシミン(MSX)を用いたバルク選択を受ける。その後、選択されたバルク細胞又はマスターウェルが無血清懸濁培養で増殖させて、産生で使用される。抗体が分泌された清澄化培地を、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)などの適合性緩衝液で平衡化したタンパク質A親和性カラムに適用する。このカラムは1M NaClで洗浄して、非特異的結合構成成分を除去する。結合したN3pGlu Aβ抗体を、例えば、pH(およそ)3.5のクエン酸ナトリウムを用いて溶離し、画分を1Mトリス緩衝液で中和する。抗N3pGlu Aβ抗体画分を、例えばSDS-PAGE又は分析的サイズ排除によって検出し、プールする。抗N3pGlu Aβ抗体IIを、pH7.4のPBS緩衝液又はpH約6の10mMクエン酸ナトリウム緩衝液、150mM NaClのいずれかで濃縮する。最終材料は、一般的な技法を使用して滅菌濾過され得る。抗N3pGlu Aβ抗体IIの純度は95%超である。本発明の抗N3pGlu Aβ抗体IIは、直ちに-70℃で凍結してもよいし、4℃で数ヶ月間保存してもよい。
【0192】
実施例4:抗N3pGlu Aβ抗体の結合親和性及び動態。
pE3-42 Aβペプチドに対する本発明の抗N3pGlu Aβ抗体(抗体I又は抗体II)の結合親和性及び動態は、BIACORE(登録商標)3000(GE Healthcare)を用いた表面プラズモン共鳴によって測定される。結合親和性は、BIACORE(登録商標)CMSチップ上の固定化プロテインAを介して抗N3pGlu Aβ抗体を捕捉し、100 nMから出発して3.125nMまで2倍段階希釈でpE3-42 Aβペプチドを流すことによって測定する。実験は、25℃で、HBS-EP緩衝液(GE Healthcare BR100669;10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%界面活性剤P20、pH7.4)で実施する。
【0193】
各サイクルについて、抗体は、10μL/分の流量での10μg/mLの濃度の抗体溶液の5μL注入により捕捉される。ペプチドは、50μL/分での250μL注入により結合され、その後10分間解離される。チップ表面は、10μL/mLの流量でグリシン緩衝液(pH1.5)の5μL注入で再生される。データは、1:1ラングミュア結合モデルに適合され、kon及びkoffを導出し、KDを計算する。本質的に上記のような手順の後、以下のパラメータ(表9に示す)が観察される。
【0194】
【0195】
これらのデータは、本発明の抗体がpE3-42 Aβに結合することを示している。
【0196】
実施例5:エクスビボ標的係合
固定されたPDAPP脳からの脳切片に対するエクスビボ標的関与を明らかにするために、本発明の外因的に付加された抗N3pGlu Aβ抗体(抗体I又は抗体II)を用いて免疫組織化学的分析を行う。老齢のPDAPPマウス(25月齢)から得られるクライオスタット連続冠状切片を、20μg/mLの本発明の例示的な抗N3pGlu Aβ抗体とインキュベーションする。ヒトIgGに特異的な二次HRP試薬を用い、沈着したプラークをDAB-Plus(DAKO)で可視化する。ビオチン化マウス3D6抗体、続いて、Step-HRP二次抗体を陽性対照として使用する。陽性対照抗体(ビオチン化3D6)は、PDAPP海馬中のかなりの量の沈着したAβを標識し、抗N3pGluAβ抗体(抗体I又は抗体II)は、沈着物のサブセットを標識した。これらの組織学的試験は、本発明の抗N3pGlu Aβ抗体が堆積したAβ標的をエクスビボで関与させることを実証した。
【0197】
実施例6:インビボ標的係合研究
本開示の抗N3pGlu Aβ抗体が血液脳関門を通過し、堆積したプラークにインビボで結合する能力を測定する。老齢PDAPPトランスジェニックマウス(18.5月齢~32月齢)に、抗N3pGlu Aβ抗体(例えば、抗体I又は抗体II)又は陰性コントロールIgGを腹腔内注射する。1群当たり6匹のマウスは、1日目及び3日目に抗体の40mg/kg注射を1回受ける。マウスを屠殺し、組織化学分析のために脳を回収する6日目に、インビボでの標的係合を決定する。
【0198】
インビボ標的係合の程度は、シスター切片に対する外因性対照抗体免疫染色によって定義される総プラーク面積に対して正規化されたインビボ抗N3pGlu Aβ抗体係合について陽性のパーセント面積として定量化される(TE比)。TE比は、抗体が結合する面積の割合を測定し、可能性のある標的の面積の合計割合(シスター切片上の陽性対照抗体(3D6)を用いた外因性免疫組織化学によって視覚化された総沈着Aβ)に対して値を正規化することによって生成される。
【0199】
本質的に上記のような手順の後、抗N3pGlu Aβ抗体I及びIIの両方が沈着したプラークに係合することが見出される。これらの結果は、末梢投与された場合の抗N3pGlu抗体I及びIIが血液脳関門を通過し、沈着したAβの意図された標的と係合することができることを実証している。
【0200】
実施例7:OGA阻害剤1-(2-(((3R,5S)-1-((6-フルオロ-2-メチルベンゾ[d]チアゾール-5-イル)メチル)-5-メチルピロリジン-3-イル)オキシ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オンの調製。
【化50】
この化合物及びその合成は、米国特許第10,752,362号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0201】
6-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-5-カルバルデヒド(0.19g、0.95mmol)及び1-(2-(((3R,5S)-5-メチルピロリジン-3-イル)オキシ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オンヒドロクロリド(0.28g、0.94mmol)のDCM(9mL)中溶液に、DIPEA(0.45mL、2.6mmol)を添加する。得られた溶液を室温で40分間撹拌する。溶液に(NaBH(OAc)3、0.65g、3.04mmol)を添加する。得られた溶液をRTで17時間撹拌する。反応混合物を飽和NaHCO3水溶液(5mL)でゆっくりとクエンチする。水層をDCM(2×5mL)で抽出する。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。得られた残渣をDCMに溶解させ、ヘキサン中40~100%アセトンの勾配で溶離させる、シリカゲルでのフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、所望のクロマトグラフィー画分の溶媒蒸発後に表題化合物を得る(0.27g、収率65%)。ES/MS m/z:441(M+H);[α]D
20=+101.4°(c=0.2,MeOH).
【0202】
OGA阻害剤1-(2-(((3R,5S)-1-((6-フルオロ-2-メチルベンゾ[d]チアゾール-5-イル)メチル)-5-メチルピロリジン-3-イル)オキシ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オンの代替調製:
4-メチルベンゼンスルホン酸;(3R,5S)-5-メチルピロリジン-3-オールの調製。
【化51】
フラスコに、tert-ブチル(2S,4R)-4-ヒドロキシ-2-メチル-ピロリジン-1-カルボキシラート(53.0g、263mmol)及び2-プロパノール(265mL)を室温にて添加する。混合物を室温(内部温度20℃)で撹拌し、p-トルエンスルホン酸一水和物(60.1g、316mmol)を一度に添加する。反応混合物を62℃の加熱ブロック内で一晩撹拌し、次に室温まで冷却して、総量約150mLまで濃縮する。混合物をメチルtert-ブチルエーテル(MTBE、530mL)で希釈し、混合物を室温で30分間激しく撹拌し、次いで、N
2ガス流下で濾過する。濾過した固体を真空下40℃で2時間乾燥させて、4-メチルベンゼンスルホン酸;(3R,5S)-5-メチルピロリジン-3-オール(67.6g、収率93%)を白色固体として得る。ES/MS m/z:102(M+H)。
【0203】
(3R,5S)-1-[(6-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-5-イル)メチル]-5-メチル-ピロリジン-3-オールの調製。
【化52】
フラスコに、4-メチルベンゼンスルホン酸;(3R,5S)-5-メチルピロリジン-3-オール(61.9g、226mmol)、EtOAc(850mL)及び6-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-5-カルバルデヒド(42.5g、216mmol)を室温にて添加する。反応混合物を氷水浴(内部温度3℃)中で撹拌し、トリエチルアミン(60.1mL、431mmol)を一度に添加する。反応混合物を氷水浴中で30分間撹拌し、次にトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(91.4g、431mmol)を一度に添加する。反応混合物を氷水浴中で10分間、次に室温にて2時間(内部温度20℃)撹拌する。反応混合物を氷水浴中で撹拌し、15%KHSO
4水溶液(650mL)を5分かけて添加し、添加中に内部温度を15℃未満に維持する。混合物を室温で1時間激しく撹拌し、次いで、飽和クエン酸水溶液(100mL)を添加し、混合物を室温で5分間撹拌し、次いで、層を分離する。水層をEtOAc(400mL)で洗浄し、次に水層を氷水浴中で撹拌し、固体Na
2CO
3(80g)を、pH=10(pH紙によって測定)まで激しく撹拌しながら10分間にわたって少量ずつ添加する。次に、水層をEtOAc(3×400mL)で抽出する。合わせた有機物をNa
2SO
4で乾燥させ、濃縮して得られた残渣を、乳棒及び乳鉢を使用して粉砕して微細粉末とし、次に25%MTBE/ヘプタン(280mL)と合わせる。混合物を45℃の加熱ブロック内で1時間、次に室温にて1時間激しく撹拌し、次に濾過して、濾過した固体の最初のバッチを得る。濾液を濃縮し、次に残渣を25%MTBE/ヘプタン(40mL)と合わせ、混合物を室温にて30分間激しく撹拌し、次に濾過して、濾過した固体の第2のバッチを得る。濾過した固体の第1及び第2のバッチを合わせ、混合物をスパチュラで粉砕し、次に真空下、室温にて一晩乾燥させて、(3R,5S)-1-[(6-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-5-イル)メチル]-5-メチル-ピロリジン-3-オール(53.3g、収率87%)をクリーム色固体として得た。ES/MS m/z:281(M+H)。
【0204】
OGA阻害剤1-(2-(((3R,5S)-1-((6-フルオロ-2-メチルベンゾ[d]チアゾール-5-イル)メチル)-5-メチルピロリジン-3-イル)オキシ)-5,7-ジヒドロ-6H-ピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタン-1-オンの代替調製。
フラスコに(3R,5S)-1-[(6-フルオロ-2-メチル-1,3-ベンゾチアゾール-5-イル)メチル]-5-メチル-ピロリジン-3-オール(26.9g、95.0mmol)、1-(2-クロロ-5,7-ジヒドロピロロ[3,4-b]ピリジン-6-イル)エタノン(22.1g、109mmol)、炭酸セシウム(92.8g、285mmol)、MorDalPhos(1.76g、3.80mmol)、パラジウム(II)(π-シンナミル)クロリドダイマー(984mg、1.90mmol)及びトルエン(538mL)を室温にて添加する。混合物にN2ガスを室温にて30分間撹拌しながらバブリングし、次に反応混合物を86℃の加熱ブロック内で一晩撹拌する(内部温度80℃)。反応混合物を室温まで冷却し、EtOAc(269mL)で希釈し、珪藻土(27g)を添加する。混合物を室温にて5分間撹拌し、次いで珪藻土で濾過し、EtOAc(200mL)で洗浄する。濾液を濃縮して残渣を得、これをEtOAc(100mL)に溶解させ、EtOAc(2L)、次に20%イソプロパノール/EtOAc(IPA/EtOAc、2L)で溶離させるシリカゲルの短いパッド(300g)に、混合物を通す。IPA/EtOAc画分を濃縮して残渣を得て、これを真空下、室温にて1時間乾燥させて、表題化合物(42.1g、収率88%、純度88質量%)を淡褐色泡状物として得る。
【0205】
泡状物を同じ純度の別のロットと合わせて、合わせた材料(46.0g、92.3mmol)を室温にてMTBE(230mL)及びヘプタン(230mL)と合わせる。混合物を45℃の加熱ブロック内で1時間、次に室温にて30分間激しく撹拌し、次に濾過する。濾過した固体をEtOAc(400mL)と合わせ、SiliaMetS(登録商標)チオール(40g)を添加する。混合物を回転蒸発器で室温にて1時間撹拌し、次に濾過する。濾液を濃縮して残渣を得て、これを25%EtOAc/ヘプタン(400mL)と合わせ、混合物を50℃の加熱ブロック内で1時間、次に室温にて10分間激しく撹拌し、次に濾過して、濾液の第1のバッチを取り置く。濾過した固体を35%EtOAc/ヘプタン(400mL)と混合し、混合物を50℃の加熱ブロック内で1時間、次に室温にて10分間激しく撹拌し、次に濾過し、濾液の第2のバッチを取り置く。濾過した固体をEtOAc(500mL)及び15%KHSO4水溶液(500mL)と合わせる。混合物を室温にて15分間激しく撹拌し、次に分液漏斗に移し、層を分離して、有機物中にラグ層を残す。有機層を更に15%KHSO4水溶液(100mL)で抽出し、有機物中にラグ層を残す。ラグ層を有機物から除去し、CH2Cl2(100mL)及び15%KHSO4水溶液(100mL)で希釈し、層を分離する。合わせた水層を氷水浴中で撹拌し、固体Na2CO3(100g)を撹拌しながら5分間にわたって少量ずつ添加する(pHはpH紙により10と測定される)。混合物をCH2Cl2(2×500mL)で抽出し、合わせた有機物をNa2SO4で乾燥させて、濃縮して、粗生成物の第1のバッチを得る。濾液からの濾液の第1及び第2のバッチを合わせて濃縮し、次いで、残渣をEtOAc(100mL)及び15%KHSO4水溶液(100mL)と合わせる。混合物を室温にて15分間激しく撹拌し、次に分液漏斗に移し、層を分離する。水層を氷水浴中で撹拌し、固体Na2CO3(15g)を撹拌しながら5分間にわたって少量ずつ添加する(pHはpH紙により10と測定)。混合物をCH2Cl2(2×100mL)で抽出し、合わせた有機物をNa2SO4で乾燥させ、濃縮して残渣を得て、これを25%EtOAc/ヘプタン(80mL)と合わせ、混合物を50℃の加熱ブロック内で30分間、次に室温で10分間加熱し、次に濾過して、粗生成物の第2のバッチを得る。粗生成物の2つのバッチを25%EtOAc/ヘプタン(400mL)と合わせ、混合物を50℃の加熱ブロック内で30分間、次に室温にて10分間激しく撹拌し、次に濾過する。濾過した固体を真空下、室温にて3日間乾燥させて、最終表題化合物(37.4g、収率90%)を白色固体として得る。ES/MS m/z:441(M+H)。旋光度[α]D20=+104.0°(c=0.2,MeOH).
実施例7の化合物を、インビトロヒトOGA酵素アッセイについて本質的に上記のように試験したところ、0.214 nM±0.037(n=4)のIC50を示した。このデータは、実施例7の化合物がインビトロでOGA酵素活性を阻害することを示す。実施例7の化合物を、OGA酵素の活性の阻害を測定するためのホールセルアッセイについて本質的に上記のように試験したところ、70.5nM+0.002(n=2)のIC50を示した。このデータは、実施例7の化合物が細胞アッセイにおいてOGA酵素活性を阻害することを示す。
【0206】
実施例8:インビボ併用研究
以下の実施例は、本開示の抗N3pGlu Aβ抗体と組み合わせた本開示のOGA阻害剤の組合せが、ADなどのアミロイド沈着物及び/又は異常なタウ凝集を特徴とする疾患の治療に有用であり得ることを検証するために研究をどのように設計することができるかを実証する。しかしながら、以下の説明は例示であって限定するものではなく、様々な改変が当業者によって行われ得ることを理解されるべきである。
【0207】
例示されるOGA阻害剤によるタウ過剰リン酸化及び凝集減少、並びに抗N3pGlu Aβ抗体によって例示されるアミロイドベータ沈着物減少の影響を評価するために、本明細書中に記載されるような併用療法において、疾患進行の遅延が、バイオマーカーによって、並びに/あるいは、検証された評価尺度を使用する認知及び機能の低下評価によって評価される場合がある。
【0208】
患者は、二重盲検プラセボ群及び併用療法群からなる治療群に分けることができる。併用療法群は、有効量の抗N3pGlu Aβ抗体と組み合わせて、有効量のOGA阻害剤を投与される。単剤療法群(併用群のOGA阻害剤と同じ用量のOGA阻害剤の単剤療法群、及び併用療法群の抗N3pGlu Aβ抗体と同じ用量の抗N3pGlu Aβ抗体の単剤療法群)を、疾患の修正に対する各個々の分子の寄与を更に解明するために含めることができる。更に、治療群は、前臨床的若しくは臨床的ADの診断に基づいて、又は患者が(ADの無症候性ではあるが)AD疾患を引き起こす遺伝子変異を有しているという診断に基づいて特徴付けることができる。例えば、群は、(a)無症候性であるがADを引き起こす遺伝子変異陽性;(b)前駆期AD;(c)軽度AD認知症;(d)中等度AD認知症;及び(e)重度AD認知症のうちの1つ以上を含み得る。各治療群は、9ヶ月~18ヶ月の治療期間にわたってそれぞれの治療(例えば、抗N3pGlu Aβ抗体については4週間毎に、OGA阻害剤については毎日)を受けることができる。
【0209】
治療期間後、AD神経変性は、以下のバイオマーカー評価のうちの1つ以上を通して評価され得る:(a)アミロイドPETイメージング;(b)リン酸化タウ(P-タウ;トレオニン181又は217でリン酸化されたかのいずれか);(c)タウPETイメージング(NFT蓄積の評価);(d)容積測定MRI(神経解剖学的萎縮の評価);(e)FDG-PEG PETイメージング(代謝低下の評価);(f)フロルベタピル灌流PETイメージング(代謝低下の評価);(g)CSFタウ濃度(神経変性の評価);及び/又は(i)CSFリン酸化タウ濃度(神経変性の評価)。更に、各治療群の認知及び機能低下を評価する1つ以上の検証済みの評価尺度、例えば、ADAS-cog、MMSE、CDR-SB、ADCS-ADL、及び機能的活動アンケート(FAQ)が適用され得る。
【0210】
この試験は、本発明のOGA阻害剤と本発明の抗N3pGlu Aβ抗体との併用療法が、ADなどの疾患の治療のために、Aβプラークの減少をもたらし、タウ過剰リン酸化及びNFTなどの病理学的タウへのニューロン内凝集を制限し得ることを示し得る。
【0211】
配列
配列番号1抗体IのLCVR
DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSLLYSRGKTYLNWLLQKPGQSPQLLIYAVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCVQGTHYPFTFGQGTKLEIK
【0212】
配列番号2抗体IのHCVR
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYDFTRYYINWVRQAPGQGLEWMGWINPGSGNTKYNEKFKGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAREGITVYWGQGTTVTVSS
【0213】
配列番号3抗体IのLC
DIVMTQTPLSLSVTPGQPASISCKSSQSLLYSRGKTYLNWLLQKPGQSPQLLIYAVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCVQGTHYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0214】
配列番号4抗体IのHC
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYDFTRYYINWVRQAPGQGLEWMGWINPGSGNTKYNEKFKGRVTITADESTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAREGITVYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0215】
配列番号5抗体IのLCDR1
KSSQSLLYSRGKTYLN
【0216】
配列番号6抗体IのLCDR2
AVSKLDS
【0217】
配列番号7抗体IのLCDR3
VQGTHYPFT
【0218】
配列番号8抗体IのHCDR1
GYDFTRYYIN
【0219】
配列番号9抗体IのHCDR2
WINPGSGNTKYNEKFKG
【0220】
配列番号10抗体IのHCDR3
EGITVY
【0221】
配列番号11抗体IIのLCVR
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSLGNWLAWYQQKPGKAPKLLIYQASTLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQHYKGSFWTFGQGTKVEIK
【0222】
配列番号12抗体IIのHCVR
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYPMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGSGSYYNGFDYWGQGTLVTVSS
【0223】
配列番号13抗体IIのLC
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCRASQSLGNWLAWYQQKPGKAPKLLIYQASTLESGVPSRFSGSGSGTEFTLTISSLQPDDFATYYCQHYKGSFWTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【0224】
配列番号14抗体IIのHC
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYPMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAREGGSGSYYNGFDYWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0225】
配列番号15抗体IIのLCDR1
RASQSLGNWLA
【0226】
配列番号16抗体IIのLCDR2
YQASTLES
【0227】
配列番号17抗体IIのLCDR3
QHYKGSFWT
【0228】
配列番号18抗体IIのHCDR1
AASGFTFSSYPMS
【0229】
配列番号19抗体IIのHCDR2
AISGSGGSTYYADSVKG
【0230】
配列番号20抗体IIのHCDR3
AREGGSGSYYNGFDY
【0231】
配列番号21抗体IのLC DNA配列
gatattgtgatgactcagactccactctccctgtccgtcacccctggacagccggcctccatctcctgcaagtcaagtcagagcctcttatatagtcgcggaaaaacctatttgaattggctcctgcagaagccaggccaatctccacagctcctaatttatgcggtgtctaaactggactctggggtcccagacagattcagcggcagtgggtcaggcacagatttcacactgaaaatcagcagggtggaggccgaagatgttggggtttattactgcgtgcaaggtacacattacccattcacgtttggccaagggaccaagctggagatcaaacgaactgtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgc
【0232】
配列番号22抗体IのHC DNA配列
caggtgcagctggtgcagtctggggctgaggtgaagaagcctgggtcctcagtgaaggtttcctgcaaggcatctggttacgacttcactagatactatataaactgggtgcgacaggcccctggacaagggcttgagtggatgggatggattaatcctggaagcggtaatactaagtacaatgagaaattcaagggcagagtcaccattaccgcggacgaatccacgagcacagcctacatggagctgagcagcctgagatctgaggacacggccgtgtattactgtgcgagagaaggcatcacggtctactggggccaagggaccacggtcaccgtctcctcagcctccaccaagggcccatcggtcttcccgctagcaccctcctccaagagcacctctgggggcacagcggccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacccagacctacatctgcaacgtgaatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagaaagttgagcccaaatcttgtgacaaaactcacacatgcccaccgtgcccagcacctgaactcctggggggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagtacaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggacgagctgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgccccccgtgctggactccgacggctccttcttcctctatagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggt
【0233】
配列番号23抗体IIのLC DNA配列
Gacatccagatgacccagtctccttccaccctgtctgcatctgtaggagacagagtcaccatcacttgccgggccagtcagagtcttggtaactggttggcctggtatcagcagaaaccagggaaagcccctaaactcctgatctatcaggcgtctactttagaatctggggtcccatcaagattcagcggcagtggatctgggacagagttcactctcaccatcagcagcctgcagcctgatgattttgcaacttattactgccaacattataaaggttctttttggacgttcggccaagggaccaaggtggaaatcaaacggaccgtggctgcaccatctgtcttcatcttcccgccatctgatgagcagttgaaatctggaactgcctctgttgtgtgcctgctgaataacttctatcccagagaggccaaagtacagtggaaggtggataacgccctccaatcgggtaactcccaggagagtgtcacagagcaggacagcaaggacagcacctacagcctcagcagcaccctgacgctgagcaaagcagactacgagaaacacaaagtctacgcctgcgaagtcacccatcagggcctgagctcgcccgtcacaaagagcttcaacaggggagagtgc
【0234】
配列番号24抗体IIのHC DNA配列
gaggtgcagctgttggagtctgggggaggcttggtacagcctggggggtccctgagactctcctgtgcagcctctggattcacctttagcagctatcctatgagctgggtccgccaggctccagggaaggggctggagtgggtctcagctattagtggtagtggtggtagcacatactacgcagactccgtgaagggccggttcaccatctccagagacaattccaagaacacgctgtatctgcaaatgaacagcctgagagccgaggacacggccgtatattactgtgcgagagaggggggctcagggagttattataacggctttgattattggggccagggaaccctggtcaccgtctcctcagcctccaccaagggcccatcggtcttcccgctagcaccctcctccaagagcacctctgggggcacagcggccctgggctgcctggtcaaggactacttccccgaaccggtgacggtgtcgtggaactcaggcgccctgaccagcggcgtgcacaccttcccggctgtcctacagtcctcaggactctactccctcagcagcgtggtgaccgtgccctccagcagcttgggcacccagacctacatctgcaacgtgaatcacaagcccagcaacaccaaggtggacaagaaagttgagcccaaatcttgtgacaaaactcacacatgcccaccgtgcccagcacctgaactcctggggggaccgtcagtcttcctcttccccccaaaacccaaggacaccctcatgatctcccggacccctgaggtcacatgcgtggtggtggacgtgagccacgaagaccctgaggtcaagttcaactggtacgtggacggcgtggaggtgcataatgccaagacaaagccgcgggaggagcagtacaacagcacgtaccgtgtggtcagcgtcctcaccgtcctgcaccaggactggctgaatggcaaggagtacaagtgcaaggtctccaacaaagccctcccagcccccatcgagaaaaccatctccaaagccaaagggcagccccgagaaccacaggtgtacaccctgcccccatcccgggacgagctgaccaagaaccaggtcagcctgacctgcctggtcaaaggcttctatcccagcgacatcgccgtggagtgggagagcaatgggcagccggagaacaactacaagaccacgccccccgtgctggactccgacggctccttcttcctctatagcaagctcaccgtggacaagagcaggtggcagcaggggaacgtcttctcatgctccgtgatgcatgaggctctgcacaaccactacacgcagaagagcctctccctgtctccgggt
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-04-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を有する患者を治療するための薬剤であって、前記薬剤が、抗N3pG Aβ抗体及びOGA阻害剤を組み合わせて前記患者に投与されることを特徴とし、
前記OGA阻害剤が、式:
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である、薬剤。
【請求項2】
前記アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患が、前臨床的アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、及び前臨床的脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してシス配置にある、請求項1に記載の薬剤。
【化2】
【請求項4】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項3に記載の薬剤。
【請求項5】
前記OGA阻害剤が、結晶性である、請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
前記化合物が、15.3°、21.6°、22.2°、22.7°、23.5°、24.3°、及び26.8°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、12.1°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、前記回折角の許容誤差が、0.2度である、請求項5に記載の薬剤。
【請求項7】
前記抗N3pG Aβ抗体が軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、前記LCVRが相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記HCVRがCDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
i)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号5によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号6によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号7によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号8によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号9によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号10によって与えられる、又は
ii)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号15によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号16によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号17によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号18によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号19によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号20によって与えられる、請求項1に記載の薬剤。
【請求項8】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、
i)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号1によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号2によって与えられる、又は
ii)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号11によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号12によって与えられる、請求項7に記載の薬剤。
【請求項9】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、
i)前記LCのアミノ酸配列が配列番号3によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号4によって与えられる、又は
ii)前記LCのアミノ酸配列が配列番号13によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号14によって与えられる、請求項8に記載の薬剤。
【請求項10】
アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患を有する患者を治療するための薬剤であって、前記薬剤が、抗N3pG Aβ抗体及びOGA阻害剤を組み合わせて前記患者に投与されることを特徴とし、前記OGA阻害剤が、式:
【化3】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である、薬剤。
【請求項11】
前記アミロイドベータ(Aβ)沈着物を特徴とする疾患が、前臨床的アルツハイマー病、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、及び前臨床的脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項10に記載の薬剤。
【請求項12】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してシス配置にある、請求項10に記載の薬剤。
【化4】
【請求項13】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してトランス配置にある、請求項10に記載の薬剤。
【化5】
【請求項14】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項12に記載の薬剤。
【請求項15】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項13に記載の薬剤。
【請求項16】
前記OGA阻害剤が、結晶性である、請求項14に記載の薬剤。
【請求項17】
前記OGA阻害剤が、5.8°、13.0°、14.3°、17.5°、20.4°、21.4°、及び22.2°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、13.5°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、前記回折角の許容誤差が、0.2度である、請求項15に記載の薬剤。
【請求項18】
前記抗N3pG Aβ抗体が軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、前記LCVRが相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記HCVRがCDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
i)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号5によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号6によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号7によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号8によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号9によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号10によって与えられる、又は
ii)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号15によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号16によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号17によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号18によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号19によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号20によって与えられる、請求項10に記載の薬剤。
【請求項19】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、
i)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号1によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号2によって与えられる、又は
ii)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号11によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号12によって与えられる、請求項18に記載の薬剤。
【請求項20】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、
i)前記LCのアミノ酸配列が配列番号3によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号4によって与えられる、又は
ii)前記LCのアミノ酸配列が配列番号13によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号14によって与えられる、請求項19に記載の薬剤。
【請求項21】
アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療するための薬剤であって、前記薬剤が、抗N3pG Aβ抗体及びOGA阻害剤を組み合わせて前記患者に投与されることを特徴とし、
前記OGA阻害剤が、式:
【化6】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である、薬剤。
【請求項22】
前記アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患が、前臨床的アルツハイマー病(AD)、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、及び前臨床的脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項21に記載の薬剤。
【請求項23】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してシス配置にある、請求項21に記載の薬剤。
【化7】
【請求項24】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項23に記載の薬剤。
【請求項25】
前記OGA阻害剤が、結晶性である、請求項24に記載の薬剤。
【請求項26】
前記化合物が、15.3°、21.6°、22.2°、22.7°、23.5°、24.3°、及び26.8°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、12.1°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、前記回折角の許容誤差が、0.2度である、請求項25に記載の薬剤。
【請求項27】
前記抗N3pG Aβ抗体が軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、前記LCVRが相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記HCVRがCDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
i)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号5によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号6によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号7によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号8によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号9によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号10によって与えられる、又は
ii)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号15によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号16によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号17によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号18によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号19によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号20によって与えられる、
請求項21に記載の薬剤。
【請求項28】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、
i)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号1によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号2によって与えられる、又は
ii)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号11によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号12によって与えられる、請求項27に記載の薬剤。
【請求項29】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、
i)前記LCのアミノ酸配列が配列番号3によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号4によって与えられる、又は
ii)前記LCのアミノ酸配列が配列番号13によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号14によって与えられる、請求項28に記載の薬剤。
【請求項30】
アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患を有する患者を治療するための薬剤であって、前記薬剤が、抗N3pG Aβ抗体及びOGA阻害剤を組み合わせて前記患者に投与されることを特徴とし、前記OGA阻害剤が、式:
【化8】
の化合物又はその薬学的に許容される塩である、薬剤。
【請求項31】
前記アミロイドベータ(Aβ)沈着物及び異常なタウ凝集を特徴とする疾患が、前臨床的アルツハイマー病、臨床的AD、前駆期AD、軽度AD認知症、中等度AD認知症、重度AD認知症、ダウン症候群、臨床的脳アミロイド血管症、及び前臨床的脳アミロイド血管症からなる群から選択される、請求項30に記載の薬剤。
【請求項32】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してシス配置にある、請求項30に記載の薬剤。
【化9】
【請求項33】
前記OGA阻害剤の2位のメチルが、以下のピペリジン環上の4位の酸素に対してトランス配置にある、請求項30に記載の薬剤。
【化10】
【請求項34】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項32に記載の薬剤。
【請求項35】
前記OGA阻害剤が、N-[4-フルオロ-5-[[(2S,4S)-2-メチル-4-[(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)メトキシ]-1-ピペリジル]メチル]チアゾール-2-イル]アセトアミド又はその薬学的に許容される塩である、請求項33に記載の薬剤。
【請求項36】
前記OGA阻害剤が、結晶性である、請求項34に記載の薬剤。
【請求項37】
前記OGA阻害剤が、5.8°、13.0°、14.3°、17.5°、20.4°、21.4°、及び22.2°からなる群から選択される1つ以上のピークと組み合わせた、13.5°の回折角2-シータでのX線粉末回折スペクトルのピークを特徴とし、前記回折角の許容誤差が、0.2度である、請求項35に記載の薬剤。
【請求項38】
前記抗N3pG Aβ抗体が軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、前記LCVRが相補性決定領域(CDR)LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含み、前記HCVRがCDR HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、
i)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号5によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号6によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号7によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号8によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号9によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号10によって与えられる、又は
ii)LCDR1のアミノ酸配列が配列番号15によって与えられ、LCDR2のアミノ酸配列が配列番号16によって与えられ、LCDR3のアミノ酸配列が配列番号17によって与えられ、HCDR1のアミノ酸配列が配列番号18によって与えられ、HCDR2のアミノ酸配列が配列番号19によって与えられ、HCDR3のアミノ酸配列が配列番号20によって与えられる、請求項30に記載の薬剤。
【請求項39】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖可変領域(LCVR)及び重鎖可変領域(HCVR)を含み、
i)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号1によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号2によって与えられる、又は
ii)前記LCVRのアミノ酸配列が配列番号11によって与えられ、前記HCVRのアミノ酸配列が配列番号12によって与えられる、請求項38に記載の薬剤。
【請求項40】
前記抗N3pG Aβ抗体が、軽鎖(LC)及び重鎖(HC)を含み、
i)前記LCのアミノ酸配列が配列番号3によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号4によって与えられる、又は
ii)前記LCのアミノ酸配列が配列番号13によって与えられ、前記HCのアミノ酸配列が配列番号14によって与えられる、請求項39に記載の薬剤。
【国際調査報告】